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1 01 1 1 はじめに神は天と地とを創造された。
2 01 1 2 地は形なく、むなしく、やみが淵のおもてにあり、神の霊が水のおもてをおおっていた。
3 01 1 3 神は「光あれ」と言われた。すると光があった。
4 01 1 4 神はその光を見て、良しとされた。神はその光とやみとを分けられた。
5 01 1 5 神は光を昼と名づけ、やみを夜と名づけられた。夕となり、また朝となった。第一日である。
6 01 1 6 神はまた言われた、「水の間におおぞらがあって、水と水とを分けよ」。
7 01 1 7 そのようになった。神はおおぞらを造って、おおぞらの下の水とおおぞらの上の水とを分けられた。
8 01 1 8 神はそのおおぞらを天と名づけられた。夕となり、また朝となった。第二日である。
9 01 1 9 神はまた言われた、「天の下の水は一つ所に集まり、かわいた地が現れよ」。そのようになった。
10 01 1 10 神はそのかわいた地を陸と名づけ、水の集まった所を海と名づけられた。神は見て、良しとされた。
11 01 1 11 神はまた言われた、「地は青草と、種をもつ草と、種類にしたがって種のある実を結ぶ果樹とを地の上にはえさせよ」。そのようになった。
12 01 1 12 地は青草と、種類にしたがって種をもつ草と、種類にしたがって種のある実を結ぶ木とをはえさせた。神は見て、良しとされた。
13 01 1 13 夕となり、また朝となった。第三日である。
14 01 1 14 神はまた言われた、「天のおおぞらに光があって昼と夜とを分け、しるしのため、季節のため、日のため、年のためになり、
15 01 1 15 天のおおぞらにあって地を照らす光となれ」。そのようになった。
16 01 1 16 神は二つの大きな光を造り、大きい光に昼をつかさどらせ、小さい光に夜をつかさどらせ、また星を造られた。
17 01 1 17 神はこれらを天のおおぞらに置いて地を照らさせ、
18 01 1 18 昼と夜とをつかさどらせ、光とやみとを分けさせられた。神は見て、良しとされた。
19 01 1 19 夕となり、また朝となった。第四日である。
20 01 1 20 神はまた言われた、「水は生き物の群れで満ち、鳥は地の上、天のおおぞらを飛べ」。
21 01 1 21 神は海の大いなる獣と、水に群がるすべての動く生き物とを、種類にしたがって創造し、また翼のあるすべての鳥を、種類にしたがって創造された。神は見て、良しとされた。
22 01 1 22 神はこれらを祝福して言われた、「生めよ、ふえよ、海の水に満ちよ、また鳥は地にふえよ」。
23 01 1 23 夕となり、また朝となった。第五日である。
24 01 1 24 神はまた言われた、「地は生き物を種類にしたがっていだせ。家畜と、這うものと、地の獣とを種類にしたがっていだせ」。そのようになった。
25 01 1 25 神は地の獣を種類にしたがい、家畜を種類にしたがい、また地に這うすべての物を種類にしたがって造られた。神は見て、良しとされた。
26 01 1 26 神はまた言われた、「われわれのかたちに、われわれにかたどって人を造り、これに海の魚と、空の鳥と、家畜と、地のすべての獣と、地のすべての這うものとを治めさせよう」。
27 01 1 27 神は自分のかたちに人を創造された。すなわち、神のかたちに創造し、男と女とに創造された。
28 01 1 28 神は彼らを祝福して言われた、「生めよ、ふえよ、地に満ちよ、地を従わせよ。また海の魚と、空の鳥と、地に動くすべての生き物とを治めよ」。
29 01 1 29 神はまた言われた、「わたしは全地のおもてにある種をもつすべての草と、種のある実を結ぶすべての木とをあなたがたに与える。これはあなたがたの食物となるであろう。
30 01 1 30 また地のすべての獣、空のすべての鳥、地を這うすべてのもの、すなわち命あるものには、食物としてすべての青草を与える」。そのようになった。
31 01 1 31 神が造ったすべての物を見られたところ、それは、はなはだ良かった。夕となり、また朝となった。第六日である。
32 01 2 1 こうして天と地と、その万象とが完成した。
33 01 2 2 神は第七日にその作業を終えられた。すなわち、そのすべての作業を終って第七日に休まれた。
34 01 2 3 神はその第七日を祝福して、これを聖別された。神がこの日に、そのすべての創造のわざを終って休まれたからである。
35 01 2 4 これが天地創造の由来である。
36 01 2 5 地にはまだ野の木もなく、また野の草もはえていなかった。主なる神が地に雨を降らせず、また土を耕す人もなかったからである。
37 01 2 6 しかし地から泉がわきあがって土の全面を潤していた。
38 01 2 7 主なる神は土のちりで人を造り、命の息をその鼻に吹きいれられた。そこで人は生きた者となった。
39 01 2 8 主なる神は東のかた、エデンに一つの園を設けて、その造った人をそこに置かれた。
40 01 2 9 また主なる神は、見て美しく、食べるに良いすべての木を土からはえさせ、更に園の中央に命の木と、善悪を知る木とをはえさせられた。
41 01 2 10 また一つの川がエデンから流れ出て園を潤し、そこから分れて四つの川となった。
42 01 2 11 その第一の名はピソンといい、金のあるハビラの全地をめぐるもので、
43 01 2 12 その地の金は良く、またそこはブドラクと、しまめのうとを産した。
44 01 2 13 第二の川の名はギホンといい、クシの全地をめぐるもの。
45 01 2 14 第三の川の名はヒデケルといい、アッスリヤの東を流れるもの。第四の川はユフラテである。
46 01 2 15 主なる神は人を連れて行ってエデンの園に置き、これを耕させ、これを守らせられた。
47 01 2 16 主なる神はその人に命じて言われた、「あなたは園のどの木からでも心のままに取って食べてよろしい。
48 01 2 17 しかし善悪を知る木からは取って食べてはならない。それを取って食べると、きっと死ぬであろう」。
49 01 2 18 また主なる神は言われた、「人がひとりでいるのは良くない。彼のために、ふさわしい助け手を造ろう」。
50 01 2 19 そして主なる神は野のすべての獣と、空のすべての鳥とを土で造り、人のところへ連れてきて、彼がそれにどんな名をつけるかを見られた。人がすべて生き物に与える名は、その名となるのであった。
51 01 2 20 それで人は、すべての家畜と、空の鳥と、野のすべての獣とに名をつけたが、人にはふさわしい助け手が見つからなかった。
52 01 2 21 そこで主なる神は人を深く眠らせ、眠った時に、そのあばら骨の一つを取って、その所を肉でふさがれた。
53 01 2 22 主なる神は人から取ったあばら骨でひとりの女を造り、人のところへ連れてこられた。
54 01 2 23 そのとき、人は言った。「これこそ、ついにわたしの骨の骨、わたしの肉の肉。男から取ったものだから、これを女と名づけよう」。
55 01 2 24 それで人はその父と母を離れて、妻と結び合い、一体となるのである。
56 01 2 25 人とその妻とは、ふたりとも裸であったが、恥ずかしいとは思わなかった。
57 01 3 1 さて主なる神が造られた野の生き物のうちで、へびが最も狡猾であった。へびは女に言った、「園にあるどの木からも取って食べるなと、ほんとうに神が言われたのですか」。
58 01 3 2 女はへびに言った、「わたしたちは園の木の実を食べることは許されていますが、
59 01 3 3 ただ園の中央にある木の実については、これを取って食べるな、これに触れるな、死んではいけないからと、神は言われました」。
60 01 3 4 へびは女に言った、「あなたがたは決して死ぬことはないでしょう。
61 01 3 5 それを食べると、あなたがたの目が開け、神のように善悪を知る者となることを、神は知っておられるのです」。
62 01 3 6 女がその木を見ると、それは食べるに良く、目には美しく、賢くなるには好ましいと思われたから、その実を取って食べ、また共にいた夫にも与えたので、彼も食べた。
63 01 3 7 すると、ふたりの目が開け、自分たちの裸であることがわかったので、いちじくの葉をつづり合わせて、腰に巻いた。
64 01 3 8 彼らは、日の涼しい風の吹くころ、園の中に主なる神の歩まれる音を聞いた。そこで、人とその妻とは主なる神の顔を避けて、園の木の間に身を隠した。
65 01 3 9 主なる神は人に呼びかけて言われた、「あなたはどこにいるのか」。
66 01 3 10 彼は答えた、「園の中であなたの歩まれる音を聞き、わたしは裸だったので、恐れて身を隠したのです」。
67 01 3 11 神は言われた、「あなたが裸であるのを、だれが知らせたのか。食べるなと、命じておいた木から、あなたは取って食べたのか」。
68 01 3 12 人は答えた、「わたしと一緒にしてくださったあの女が、木から取ってくれたので、わたしは食べたのです」。
69 01 3 13 そこで主なる神は女に言われた、「あなたは、なんということをしたのです」。女は答えた、「へびがわたしをだましたのです。それでわたしは食べました」。
70 01 3 14 主なる神はへびに言われた、「おまえは、この事を、したので、すべての家畜、野のすべての獣のうち、最ものろわれる。おまえは腹で、這いあるき、一生、ちりを食べるであろう。
71 01 3 15 わたしは恨みをおく、おまえと女とのあいだに、おまえのすえと女のすえとの間に。彼はおまえのかしらを砕き、おまえは彼のかかとを砕くであろう」。
72 01 3 16 つぎに女に言われた、「わたしはあなたの産みの苦しみを大いに増す。あなたは苦しんで子を産む。それでもなお、あなたは夫を慕い、彼はあなたを治めるであろう」。
73 01 3 17 更に人に言われた、「あなたが妻の言葉を聞いて、食べるなと、わたしが命じた木から取って食べたので、地はあなたのためにのろわれ、あなたは一生、苦しんで地から食物を取る。
74 01 3 18 地はあなたのために、いばらとあざみとを生じ、あなたは野の草を食べるであろう。
75 01 3 19 あなたは顔に汗してパンを食べ、ついに土に帰る、あなたは土から取られたのだから。あなたは、ちりだから、ちりに帰る」。
76 01 3 20 さて、人はその妻の名をエバと名づけた。彼女がすべて生きた者の母だからである。
77 01 3 21 主なる神は人とその妻とのために皮の着物を造って、彼らに着せられた。
78 01 3 22 主なる神は言われた、「見よ、人はわれわれのひとりのようになり、善悪を知るものとなった。彼は手を伸べ、命の木からも取って食べ、永久に生きるかも知れない」。
79 01 3 23 そこで主なる神は彼をエデンの園から追い出して、人が造られたその土を耕させられた。
80 01 3 24 神は人を追い出し、エデンの園の東に、ケルビムと、回る炎のつるぎとを置いて、命の木の道を守らせられた。
81 01 4 1 人はその妻エバを知った。彼女はみごもり、カインを産んで言った、「わたしは主によって、ひとりの人を得た」。
82 01 4 2 彼女はまた、その弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。
83 01 4 3 日がたって、カインは地の産物を持ってきて、主に供え物とした。
84 01 4 4 アベルもまた、その群れのういごと肥えたものとを持ってきた。主はアベルとその供え物とを顧みられた。
85 01 4 5 しかしカインとその供え物とは顧みられなかったので、カインは大いに憤って、顔を伏せた。
86 01 4 6 そこで主はカインに言われた、「なぜあなたは憤るのですか、なぜ顔を伏せるのですか。
87 01 4 7 正しい事をしているのでしたら、顔をあげたらよいでしょう。もし正しい事をしていないのでしたら、罪が門口に待ち伏せています。それはあなたを慕い求めますが、あなたはそれを治めなければなりません」。
88 01 4 8 カインは弟アベルに言った、「さあ、野原へ行こう」。彼らが野にいたとき、カインは弟アベルに立ちかかって、これを殺した。
89 01 4 9 主はカインに言われた、「弟アベルは、どこにいますか」。カインは答えた、「知りません。わたしが弟の番人でしょうか」。
90 01 4 10 主は言われた、「あなたは何をしたのです。あなたの弟の血の声が土の中からわたしに叫んでいます。
91 01 4 11 今あなたはのろわれてこの土地を離れなければなりません。この土地が口をあけて、あなたの手から弟の血を受けたからです。
92 01 4 12 あなたが土地を耕しても、土地は、もはやあなたのために実を結びません。あなたは地上の放浪者となるでしょう」。
93 01 4 13 カインは主に言った、「わたしの罰は重くて負いきれません。
94 01 4 14 あなたは、きょう、わたしを地のおもてから追放されました。わたしはあなたを離れて、地上の放浪者とならねばなりません。わたしを見付ける人はだれでもわたしを殺すでしょう」。
95 01 4 15 主はカインに言われた、「いや、そうではない。だれでもカインを殺す者は七倍の復讐を受けるでしょう」。そして主はカインを見付ける者が、だれも彼を打ち殺すことのないように、彼に一つのしるしをつけられた。
96 01 4 16 カインは主の前を去って、エデンの東、ノドの地に住んだ。
97 01 4 17 カインはその妻を知った。彼女はみごもってエノクを産んだ。カインは町を建て、その町の名をその子の名にしたがって、エノクと名づけた。
98 01 4 18 エノクにはイラデが生れた。イラデの子はメホヤエル、メホヤエルの子はメトサエル、メトサエルの子はレメクである。
99 01 4 19 レメクはふたりの妻をめとった。ひとりの名はアダといい、ひとりの名はチラといった。
100 01 4 20 アダはヤバルを産んだ。彼は天幕に住んで、家畜を飼う者の先祖となった。
101 01 4 21 その弟の名はユバルといった。彼は琴や笛を執るすべての者の先祖となった。
102 01 4 22 チラもまたトバルカインを産んだ。彼は青銅や鉄のすべての刃物を鍛える者となった。トバルカインの妹をナアマといった。
103 01 4 23 レメクはその妻たちに言った、「アダとチラよ、わたしの声を聞け、レメクの妻たちよ、わたしの言葉に耳を傾けよ。わたしは受ける傷のために、人を殺し、受ける打ち傷のために、わたしは若者を殺す。
104 01 4 24 カインのための復讐が七倍ならば、レメクのための復讐は七十七倍」。
105 01 4 25 アダムはまたその妻を知った。彼女は男の子を産み、その名をセツと名づけて言った、「カインがアベルを殺したので、神はアベルの代りに、ひとりの子をわたしに授けられました」。
106 01 4 26 セツにもまた男の子が生れた。彼はその名をエノスと名づけた。この時、人々は主の名を呼び始めた。
107 01 5 1 アダムの系図は次のとおりである。神が人を創造された時、神をかたどって造り、
108 01 5 2 彼らを男と女とに創造された。彼らが創造された時、神は彼らを祝福して、その名をアダムと名づけられた。
109 01 5 3 アダムは百三十歳になって、自分にかたどり、自分のかたちのような男の子を生み、その名をセツと名づけた。
110 01 5 4 アダムがセツを生んで後、生きた年は八百年であって、ほかに男子と女子を生んだ。
111 01 5 5 アダムの生きた年は合わせて九百三十歳であった。そして彼は死んだ。
112 01 5 6 セツは百五歳になって、エノスを生んだ。
113 01 5 7 セツはエノスを生んだ後、八百七年生きて、男子と女子を生んだ。
114 01 5 8 セツの年は合わせて九百十二歳であった。そして彼は死んだ。
115 01 5 9 エノスは九十歳になって、カイナンを生んだ。
116 01 5 10 エノスはカイナンを生んだ後、八百十五年生きて、男子と女子を生んだ。
117 01 5 11 エノスの年は合わせて九百五歳であった。そして彼は死んだ。
118 01 5 12 カイナンは七十歳になって、マハラレルを生んだ。
119 01 5 13 カイナンはマハラレルを生んだ後、八百四十年生きて、男子と女子を生んだ。
120 01 5 14 カイナンの年は合わせて九百十歳であった。そして彼は死んだ。
121 01 5 15 マハラレルは六十五歳になって、ヤレドを生んだ。
122 01 5 16 マハラレルはヤレドを生んだ後、八百三十年生きて、男子と女子を生んだ。
123 01 5 17 マハラレルの年は合わせて八百九十五歳であった。そして彼は死んだ。
124 01 5 18 ヤレドは百六十二歳になって、エノクを生んだ。
125 01 5 19 ヤレドはエノクを生んだ後、八百年生きて、男子と女子を生んだ。
126 01 5 20 ヤレドの年は合わせて九百六十二歳であった。そして彼は死んだ。
127 01 5 21 エノクは六十五歳になって、メトセラを生んだ。
128 01 5 22 エノクはメトセラを生んだ後、三百年、神とともに歩み、男子と女子を生んだ。
129 01 5 23 エノクの年は合わせて三百六十五歳であった。
130 01 5 24 エノクは神とともに歩み、神が彼を取られたので、いなくなった。
131 01 5 25 メトセラは百八十七歳になって、レメクを生んだ。
132 01 5 26 メトセラはレメクを生んだ後、七百八十二年生きて、男子と女子を生んだ。
133 01 5 27 メトセラの年は合わせて九百六十九歳であった。そして彼は死んだ。
134 01 5 28 レメクは百八十二歳になって、男の子を生み、
135 01 5 29 「この子こそ、主が地をのろわれたため、骨折り働くわれわれを慰めるもの」と言って、その名をノアと名づけた。
136 01 5 30 レメクはノアを生んだ後、五百九十五年生きて、男子と女子を生んだ。
137 01 5 31 レメクの年は合わせて七百七十七歳であった。そして彼は死んだ。
138 01 5 32 ノアは五百歳になって、セム、ハム、ヤペテを生んだ。
139 01 6 1 人が地のおもてにふえ始めて、娘たちが彼らに生れた時、
140 01 6 2 神の子たちは人の娘たちの美しいのを見て、自分の好む者を妻にめとった。
141 01 6 3 そこで主は言われた、「わたしの霊はながく人の中にとどまらない。彼は肉にすぎないのだ。しかし、彼の年は百二十年であろう」。
142 01 6 4 そのころ、またその後にも、地にネピリムがいた。これは神の子たちが人の娘たちのところにはいって、娘たちに産ませたものである。彼らは昔の勇士であり、有名な人々であった。
143 01 6 5 主は人の悪が地にはびこり、すべてその心に思いはかることが、いつも悪い事ばかりであるのを見られた。
144 01 6 6 主は地の上に人を造ったのを悔いて、心を痛め、
145 01 6 7 「わたしが創造した人を地のおもてからぬぐい去ろう。人も獣も、這うものも、空の鳥までも。わたしは、これらを造ったことを悔いる」と言われた。
146 01 6 8 しかし、ノアは主の前に恵みを得た。
147 01 6 9 ノアの系図は次のとおりである。ノアはその時代の人々の中で正しく、かつ全き人であった。ノアは神とともに歩んだ。
148 01 6 10 ノアはセム、ハム、ヤペテの三人の子を生んだ。
149 01 6 11 時に世は神の前に乱れて、暴虐が地に満ちた。
150 01 6 12 神が地を見られると、それは乱れていた。すべての人が地の上でその道を乱したからである。
151 01 6 13 そこで神はノアに言われた、「わたしは、すべての人を絶やそうと決心した。彼らは地を暴虐で満たしたから、わたしは彼らを地とともに滅ぼそう。
152 01 6 14 あなたは、いとすぎの木で箱舟を造り、箱舟の中にへやを設け、アスファルトでそのうちそとを塗りなさい。
153 01 6 15 その造り方は次のとおりである。すなわち箱舟の長さは三百キュビト、幅は五十キュビト、高さは三十キュビトとし、
154 01 6 16 箱舟に屋根を造り、上へ一キュビトにそれを仕上げ、また箱舟の戸口をその横に設けて、一階と二階と三階のある箱舟を造りなさい。
155 01 6 17 わたしは地の上に洪水を送って、命の息のある肉なるものを、みな天の下から滅ぼし去る。地にあるものは、みな死に絶えるであろう。
156 01 6 18 ただし、わたしはあなたと契約を結ぼう。あなたは子らと、妻と、子らの妻たちと共に箱舟にはいりなさい。
157 01 6 19 またすべての生き物、すべての肉なるものの中から、それぞれ二つずつを箱舟に入れて、あなたと共にその命を保たせなさい。それらは雄と雌とでなければならない。
158 01 6 20 すなわち、鳥はその種類にしたがい獣はその種類にしたがい、また地のすべての這うものも、その種類にしたがって、それぞれ二つずつ、あなたのところに入れて、命を保たせなさい。
159 01 6 21 また、すべての食物となるものをとって、あなたのところにたくわえ、あなたとこれらのものとの食物としなさい」。
160 01 6 22 ノアはすべて神の命じられたようにした。
161 01 7 1 主はノアに言われた、「あなたと家族とはみな箱舟にはいりなさい。あなたがこの時代の人々の中で、わたしの前に正しい人であるとわたしは認めたからである。
162 01 7 2 あなたはすべての清い獣の中から雄と雌とを七つずつ取り、清くない獣の中から雄と雌とを二つずつ取り、
163 01 7 3 また空の鳥の中から雄と雌とを七つずつ取って、その種類が全地のおもてに生き残るようにしなさい。
164 01 7 4 七日の後、わたしは四十日四十夜、地に雨を降らせて、わたしの造ったすべての生き物を、地のおもてからぬぐい去ります」。
165 01 7 5 ノアはすべて主が命じられたようにした。
166 01 7 6 さて洪水が地に起った時、ノアは六百歳であった。
167 01 7 7 ノアは子らと、妻と、子らの妻たちと共に洪水を避けて箱舟にはいった。
168 01 7 8 また清い獣と、清くない獣と、鳥と、地に這うすべてのものとの、
169 01 7 9 雄と雌とが、二つずつノアのもとにきて、神がノアに命じられたように箱舟にはいった。
170 01 7 10 こうして七日の後、洪水が地に起った。
171 01 7 11 それはノアの六百歳の二月十七日であって、その日に大いなる淵の源は、ことごとく破れ、天の窓が開けて、
172 01 7 12 雨は四十日四十夜、地に降り注いだ。
173 01 7 13 その同じ日に、ノアと、ノアの子セム、ハム、ヤペテと、ノアの妻と、その子らの三人の妻とは共に箱舟にはいった。
174 01 7 14 またすべての種類の獣も、すべての種類の家畜も、地のすべての種類の這うものも、すべての種類の鳥も、すべての翼あるものも、皆はいった。
175 01 7 15 すなわち命の息のあるすべての肉なるものが、二つずつノアのもとにきて、箱舟にはいった。
176 01 7 16 そのはいったものは、すべて肉なるものの雄と雌とであって、神が彼に命じられたようにはいった。そこで主は彼のうしろの戸を閉ざされた。
177 01 7 17 洪水は四十日のあいだ地上にあった。水が増して箱舟を浮べたので、箱舟は地から高く上がった。
178 01 7 18 また水がみなぎり、地に増したので、箱舟は水のおもてに漂った。
179 01 7 19 水はまた、ますます地にみなぎり、天の下の高い山々は皆おおわれた。
180 01 7 20 水はその上、さらに十五キュビトみなぎって、山々は全くおおわれた。
181 01 7 21 地の上に動くすべて肉なるものは、鳥も家畜も獣も、地に群がるすべての這うものも、すべての人もみな滅びた。
182 01 7 22 すなわち鼻に命の息のあるすべてのもの、陸にいたすべてのものは死んだ。
183 01 7 23 地のおもてにいたすべての生き物は、人も家畜も、這うものも、空の鳥もみな地からぬぐい去られて、ただノアと、彼と共に箱舟にいたものだけが残った。
184 01 7 24 水は百五十日のあいだ地上にみなぎった。
185 01 8 1 神はノアと、箱舟の中にいたすべての生き物と、すべての家畜とを心にとめられた。神が風を地の上に吹かせられたので、水は退いた。
186 01 8 2 また淵の源と、天の窓とは閉ざされて、天から雨が降らなくなった。
187 01 8 3 それで水はしだいに地の上から引いて、百五十日の後には水が減り、
188 01 8 4 箱舟は七月十七日にアララテの山にとどまった。
189 01 8 5 水はしだいに減って、十月になり、十月一日に山々の頂が現れた。
190 01 8 6 四十日たって、ノアはその造った箱舟の窓を開いて、
191 01 8 7 からすを放ったところ、からすは地の上から水がかわききるまで、あちらこちらへ飛びまわった。
192 01 8 8 ノアはまた地のおもてから、水がひいたかどうかを見ようと、彼の所から、はとを放ったが、
193 01 8 9 はとは足の裏をとどめる所が見つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰ってきた。水がまだ全地のおもてにあったからである。彼は手を伸べて、これを捕え、箱舟の中の彼のもとに引き入れた。
194 01 8 10 それから七日待って再びはとを箱舟から放った。
195 01 8 11 はとは夕方になって彼のもとに帰ってきた。見ると、そのくちばしには、オリブの若葉があった。ノアは地から水がひいたのを知った。
196 01 8 12 さらに七日待ってまた、はとを放ったところ、もはや彼のもとには帰ってこなかった。
197 01 8 13 六百一歳の一月一日になって、地の上の水はかれた。ノアが箱舟のおおいを取り除いて見ると、土のおもては、かわいていた。
198 01 8 14 二月二十七日になって、地は全くかわいた。
199 01 8 15 この時、神はノアに言われた、
200 01 8 16 「あなたは妻と、子らと、子らの妻たちと共に箱舟を出なさい。
201 01 8 17 あなたは、共にいる肉なるすべての生き物、すなわち鳥と家畜と、地のすべての這うものとを連れて出て、これらのものが地に群がり、地の上にふえ広がるようにしなさい」。
202 01 8 18 ノアは共にいた子らと、妻と、子らの妻たちとを連れて出た。
203 01 8 19 またすべての獣、すべての這うもの、すべての鳥、すべて地の上に動くものは皆、種類にしたがって箱舟を出た。
204 01 8 20 ノアは主に祭壇を築いて、すべての清い獣と、すべての清い鳥とのうちから取って、燔祭を祭壇の上にささげた。
205 01 8 21 主はその香ばしいかおりをかいで、心に言われた、「わたしはもはや二度と人のゆえに地をのろわない。人が心に思い図ることは、幼い時から悪いからである。わたしは、このたびしたように、もう二度と、すべての生きたものを滅ぼさない。
206 01 8 22 地のある限り、種まきの時も、刈入れの時も、暑さ寒さも、夏冬も、昼も夜もやむことはないであろう」。
207 01 9 1 神はノアとその子らとを祝福して彼らに言われた、「生めよ、ふえよ、地に満ちよ。
208 01 9 2 地のすべての獣、空のすべての鳥、地に這うすべてのもの、海のすべての魚は恐れおののいて、あなたがたの支配に服し、
209 01 9 3 すべて生きて動くものはあなたがたの食物となるであろう。さきに青草をあなたがたに与えたように、わたしはこれらのものを皆あなたがたに与える。
210 01 9 4 しかし肉を、その命である血のままで、食べてはならない。
211 01 9 5 あなたがたの命の血を流すものには、わたしは必ず報復するであろう。いかなる獣にも報復する。兄弟である人にも、わたしは人の命のために、報復するであろう。
212 01 9 6 人の血を流すものは、人に血を流される、神が自分のかたちに人を造られたゆえに。
213 01 9 7 あなたがたは、生めよ、ふえよ、地に群がり、地の上にふえよ」。
214 01 9 8 神はノアおよび共にいる子らに言われた、
215 01 9 9 「わたしはあなたがた及びあなたがたの後の子孫と契約を立てる。
216 01 9 10 またあなたがたと共にいるすべての生き物、あなたがたと共にいる鳥、家畜、地のすべての獣、すなわち、すべて箱舟から出たものは、地のすべての獣にいたるまで、わたしはそれと契約を立てよう。
217 01 9 11 わたしがあなたがたと立てるこの契約により、すべて肉なる者は、もはや洪水によって滅ぼされることはなく、また地を滅ぼす洪水は、再び起らないであろう」。
218 01 9 12 さらに神は言われた、「これはわたしと、あなたがた及びあなたがたと共にいるすべての生き物との間に代々かぎりなく、わたしが立てる契約のしるしである。
219 01 9 13 すなわち、わたしは雲の中に、にじを置く。これがわたしと地との間の契約のしるしとなる。
220 01 9 14 わたしが雲を地の上に起すとき、にじは雲の中に現れる。
221 01 9 15 こうして、わたしは、わたしとあなたがた、及びすべて肉なるあらゆる生き物との間に立てた契約を思いおこすゆえ、水はふたたび、すべて肉なる者を滅ぼす洪水とはならない。
222 01 9 16 にじが雲の中に現れるとき、わたしはこれを見て、神が地上にあるすべて肉なるあらゆる生き物との間に立てた永遠の契約を思いおこすであろう」。
223 01 9 17 そして神はノアに言われた、「これがわたしと地にあるすべて肉なるものとの間に、わたしが立てた契約のしるしである」。
224 01 9 18 箱舟から出たノアの子らはセム、ハム、ヤペテであった。ハムはカナンの父である。
225 01 9 19 この三人はノアの子らで、全地の民は彼らから出て、広がったのである。
226 01 9 20 さてノアは農夫となり、ぶどう畑をつくり始めたが、
227 01 9 21 彼はぶどう酒を飲んで酔い、天幕の中で裸になっていた。
228 01 9 22 カナンの父ハムは父の裸を見て、外にいるふたりの兄弟に告げた。
229 01 9 23 セムとヤペテとは着物を取って、肩にかけ、うしろ向きに歩み寄って、父の裸をおおい、顔をそむけて父の裸を見なかった。
230 01 9 24 やがてノアは酔いがさめて、末の子が彼にした事を知ったとき、
231 01 9 25 彼は言った、「カナンはのろわれよ。彼はしもべのしもべとなって、その兄弟たちに仕える」。
232 01 9 26 また言った、「セムの神、主はほむべきかな、カナンはそのしもべとなれ。
233 01 9 27 神はヤペテを大いならしめ、セムの天幕に彼を住まわせられるように。カナンはそのしもべとなれ」。
234 01 9 28 ノアは洪水の後、なお三百五十年生きた。
235 01 9 29 ノアの年は合わせて九百五十歳であった。そして彼は死んだ。
236 01 10 1 ノアの子セム、ハム、ヤペテの系図は次のとおりである。洪水の後、彼らに子が生れた。
237 01 10 2 ヤペテの子孫はゴメル、マゴグ、マダイ、ヤワン、トバル、メセク、テラスであった。
238 01 10 3 ゴメルの子孫はアシケナズ、リパテ、トガルマ。
239 01 10 4 ヤワンの子孫はエリシャ、タルシシ、キッテム、ドダニムであった。
240 01 10 5 これらから海沿いの地の国民が分れて、おのおのその土地におり、その言語にしたがい、その氏族にしたがって、その国々に住んだ。
241 01 10 6 ハムの子孫はクシ、ミツライム、プテ、カナンであった。
242 01 10 7 クシの子孫はセバ、ハビラ、サブタ、ラアマ、サブテカであり、ラアマの子孫はシバとデダンであった。
243 01 10 8 クシの子はニムロデであって、このニムロデは世の権力者となった最初の人である。
244 01 10 9 彼は主の前に力ある狩猟者であった。これから「主の前に力ある狩猟者ニムロデのごとし」ということわざが起った。
245 01 10 10 彼の国は最初シナルの地にあるバベル、エレク、アカデ、カルネであった。
246 01 10 11 彼はその地からアッスリヤに出て、ニネベ、レホボテイリ、カラ、
247 01 10 12 およびニネベとカラとの間にある大いなる町レセンを建てた。
248 01 10 13 ミツライムからルデ族、アナミ族、レハビ族、ナフト族、
249 01 10 14 パテロス族、カスル族、カフトリ族が出た。カフトリ族からペリシテ族が出た。
250 01 10 15 カナンからその長子シドンが出て、またヘテが出た。
251 01 10 16 その他エブスびと、アモリびと、ギルガシびと、
252 01 10 17 ヒビびと、アルキびと、セニびと、
253 01 10 18 アルワデびと、ゼマリびと、ハマテびとが出た。後になってカナンびとの氏族がひろがった。
254 01 10 19 カナンびとの境はシドンからゲラルを経てガザに至り、ソドム、ゴモラ、アデマ、ゼボイムを経て、レシャに及んだ。
255 01 10 20 これらはハムの子孫であって、その氏族とその言語とにしたがって、その土地と、その国々にいた。
256 01 10 21 セムにも子が生れた。セムはエベルのすべての子孫の先祖であって、ヤペテの兄であった。
257 01 10 22 セムの子孫はエラム、アシュル、アルパクサデ、ルデ、アラムであった。
258 01 10 23 アラムの子孫はウヅ、ホル、ゲテル、マシであった。
259 01 10 24 アルパクサデの子はシラ、シラの子はエベルである。
260 01 10 25 エベルにふたりの子が生れた。そのひとりの名をペレグといった。これは彼の代に地の民が分れたからである。その弟の名をヨクタンといった。
261 01 10 26 ヨクタンにアルモダデ、シャレフ、ハザルマウテ、エラ、
262 01 10 27 ハドラム、ウザル、デクラ、
263 01 10 28 オバル、アビマエル、シバ、
264 01 10 29 オフル、ハビラ、ヨバブが生れた。これらは皆ヨクタンの子であった。
265 01 10 30 彼らが住んだ所はメシャから東の山地セパルに及んだ。
266 01 10 31 これらはセムの子孫であって、その氏族とその言語とにしたがって、その土地と、その国々にいた。
267 01 10 32 これらはノアの子らの氏族であって、血統にしたがって国々に住んでいたが、洪水の後、これらから地上の諸国民が分れたのである。
268 01 11 1 全地は同じ発音、同じ言葉であった。
269 01 11 2 時に人々は東に移り、シナルの地に平野を得て、そこに住んだ。
270 01 11 3 彼らは互に言った、「さあ、れんがを造って、よく焼こう」。こうして彼らは石の代りに、れんがを得、しっくいの代りに、アスファルトを得た。
271 01 11 4 彼らはまた言った、「さあ、町と塔とを建てて、その頂を天に届かせよう。そしてわれわれは名を上げて、全地のおもてに散るのを免れよう」。
272 01 11 5 時に主は下って、人の子たちの建てる町と塔とを見て、
273 01 11 6 言われた、「民は一つで、みな同じ言葉である。彼らはすでにこの事をしはじめた。彼らがしようとする事は、もはや何事もとどめ得ないであろう。
274 01 11 7 さあ、われわれは下って行って、そこで彼らの言葉を乱し、互に言葉が通じないようにしよう」。
275 01 11 8 こうして主が彼らをそこから全地のおもてに散らされたので、彼らは町を建てるのをやめた。
276 01 11 9 これによってその町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を乱されたからである。主はそこから彼らを全地のおもてに散らされた。
277 01 11 10 セムの系図は次のとおりである。セムは百歳になって洪水の二年の後にアルパクサデを生んだ。
278 01 11 11 セムはアルパクサデを生んで後、五百年生きて、男子と女子を生んだ。
279 01 11 12 アルパクサデは三十五歳になってシラを生んだ。
280 01 11 13 アルパクサデはシラを生んで後、四百三年生きて、男子と女子を生んだ。
281 01 11 14 シラは三十歳になってエベルを生んだ。
282 01 11 15 シラはエベルを生んで後、四百三年生きて、男子と女子を生んだ。
283 01 11 16 エベルは三十四歳になってペレグを生んだ。
284 01 11 17 エベルはペレグを生んで後、四百三十年生きて、男子と女子を生んだ。
285 01 11 18 ペレグは三十歳になってリウを生んだ。
286 01 11 19 ペレグはリウを生んで後、二百九年生きて、男子と女子を生んだ。
287 01 11 20 リウは三十二歳になってセルグを生んだ。
288 01 11 21 リウはセルグを生んで後、二百七年生きて、男子と女子を生んだ。
289 01 11 22 セルグは三十歳になってナホルを生んだ。
290 01 11 23 セルグはナホルを生んで後、二百年生きて、男子と女子を生んだ。
291 01 11 24 ナホルは二十九歳になってテラを生んだ。
292 01 11 25 ナホルはテラを生んで後、百十九年生きて、男子と女子を生んだ。
293 01 11 26 テラは七十歳になってアブラム、ナホルおよびハランを生んだ。
294 01 11 27 テラの系図は次のとおりである。テラはアブラム、ナホルおよびハランを生み、ハランはロトを生んだ。
295 01 11 28 ハランは父テラにさきだって、その生れた地、カルデヤのウルで死んだ。
296 01 11 29 アブラムとナホルは妻をめとった。アブラムの妻の名はサライといい、ナホルの妻の名はミルカといってハランの娘である。ハランはミルカの父、またイスカの父である。
297 01 11 30 サライはうまずめで、子がなかった。
298 01 11 31 テラはその子アブラムと、ハランの子である孫ロトと、子アブラムの妻である嫁サライとを連れて、カナンの地へ行こうとカルデヤのウルを出たが、ハランに着いてそこに住んだ。
299 01 11 32 テラの年は二百五歳であった。テラはハランで死んだ。
300 01 12 1 時に主はアブラムに言われた、「あなたは国を出て、親族に別れ、父の家を離れ、わたしが示す地に行きなさい。
301 01 12 2 わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大きくしよう。あなたは祝福の基となるであろう。
302 01 12 3 あなたを祝福する者をわたしは祝福し、あなたをのろう者をわたしはのろう。地のすべてのやからは、あなたによって祝福される」。
303 01 12 4 アブラムは主が言われたようにいで立った。ロトも彼と共に行った。アブラムはハランを出たとき七十五歳であった。
304 01 12 5 アブラムは妻サライと、弟の子ロトと、集めたすべての財産と、ハランで獲た人々とを携えてカナンに行こうとしていで立ち、カナンの地にきた。
305 01 12 6 アブラムはその地を通ってシケムの所、モレのテレビンの木のもとに着いた。そのころカナンびとがその地にいた。
306 01 12 7 時に主はアブラムに現れて言われた、「わたしはあなたの子孫にこの地を与えます」。アブラムは彼に現れた主のために、そこに祭壇を築いた。
307 01 12 8 彼はそこからベテルの東の山に移って天幕を張った。西にはベテル、東にはアイがあった。そこに彼は主のために祭壇を築いて、主の名を呼んだ。
308 01 12 9 アブラムはなお進んでネゲブに移った。
309 01 12 10 さて、その地にききんがあったのでアブラムはエジプトに寄留しようと、そこに下った。ききんがその地に激しかったからである。
310 01 12 11 エジプトにはいろうとして、そこに近づいたとき、彼は妻サライに言った、「わたしはあなたが美しい女であるのを知っています。
311 01 12 12 それでエジプトびとがあなたを見る時、これは彼の妻であると言ってわたしを殺し、あなたを生かしておくでしょう。
312 01 12 13 どうかあなたは、わたしの妹だと言ってください。そうすればわたしはあなたのおかげで無事であり、わたしの命はあなたによって助かるでしょう」。
313 01 12 14 アブラムがエジプトにはいった時エジプトびとはこの女を見て、たいそう美しい人であるとし、
314 01 12 15 またパロの高官たちも彼女を見てパロの前でほめたので、女はパロの家に召し入れられた。
315 01 12 16 パロは彼女のゆえにアブラムを厚くもてなしたので、アブラムは多くの羊、牛、雌雄のろば、男女の奴隷および、らくだを得た。
316 01 12 17 ところで主はアブラムの妻サライのゆえに、激しい疫病をパロとその家に下された。
317 01 12 18 パロはアブラムを召し寄せて言った、「あなたはわたしになんという事をしたのですか。なぜ彼女が妻であるのをわたしに告げなかったのですか。
318 01 12 19 あなたはなぜ、彼女はわたしの妹ですと言ったのですか。わたしは彼女を妻にしようとしていました。さあ、あなたの妻はここにいます。連れて行ってください」。
319 01 12 20 パロは彼の事について人々に命じ、彼とその妻およびそのすべての持ち物を送り去らせた。
320 01 13 1 アブラムは妻とすべての持ち物を携え、エジプトを出て、ネゲブに上った。ロトも彼と共に上った。
321 01 13 2 アブラムは家畜と金銀に非常に富んでいた。
322 01 13 3 彼はネゲブから旅路を進めてベテルに向かい、ベテルとアイの間の、さきに天幕を張った所に行った。
323 01 13 4 すなわち彼が初めに築いた祭壇の所に行き、その所でアブラムは主の名を呼んだ。
324 01 13 5 アブラムと共に行ったロトも羊、牛および天幕を持っていた。
325 01 13 6 その地は彼らをささえて共に住ませることができなかった。彼らの財産が多かったため、共に住めなかったのである。
326 01 13 7 アブラムの家畜の牧者たちとロトの家畜の牧者たちの間に争いがあった。そのころカナンびととペリジびとがその地に住んでいた。
327 01 13 8 アブラムはロトに言った、「わたしたちは身内の者です。わたしとあなたの間にも、わたしの牧者たちとあなたの牧者たちの間にも争いがないようにしましょう。
328 01 13 9 全地はあなたの前にあるではありませんか。どうかわたしと別れてください。あなたが左に行けばわたしは右に行きます。あなたが右に行けばわたしは左に行きましょう」。
329 01 13 10 ロトが目を上げてヨルダンの低地をあまねく見わたすと、主がソドムとゴモラを滅ぼされる前であったから、ゾアルまで主の園のように、またエジプトの地のように、すみずみまでよく潤っていた。
330 01 13 11 そこでロトはヨルダンの低地をことごとく選びとって東に移った。こうして彼らは互に別れた。
331 01 13 12 アブラムはカナンの地に住んだが、ロトは低地の町々に住み、天幕をソドムに移した。
332 01 13 13 ソドムの人々はわるく、主に対して、はなはだしい罪びとであった。
333 01 13 14 ロトがアブラムに別れた後に、主はアブラムに言われた、「目をあげてあなたのいる所から北、南、東、西を見わたしなさい。
334 01 13 15 すべてあなたが見わたす地は、永久にあなたとあなたの子孫に与えます。
335 01 13 16 わたしはあなたの子孫を地のちりのように多くします。もし人が地のちりを数えることができるなら、あなたの子孫も数えられることができましょう。
336 01 13 17 あなたは立って、その地をたてよこに行き巡りなさい。わたしはそれをあなたに与えます」。
337 01 13 18 アブラムは天幕を移してヘブロンにあるマムレのテレビンの木のかたわらに住み、その所で主に祭壇を築いた。
338 01 14 1 シナルの王アムラペル、エラサルの王アリオク、エラムの王ケダラオメルおよびゴイムの王テダルの世に、
339 01 14 2 これらの王はソドムの王ベラ、ゴモラの王ビルシャ、アデマの王シナブ、ゼボイムの王セメベル、およびベラすなわちゾアルの王と戦った。
340 01 14 3 これら五人の王はみな同盟してシデムの谷、すなわち塩の海に向かって行った。
341 01 14 4 すなわち彼らは十二年の間ケダラオメルに仕えたが、十三年目にそむいたので、
342 01 14 5 十四年目にケダラオメルは彼と連合した王たちと共にきて、アシタロテ・カルナイムでレパイムびとを、ハムでズジびとを、シャベ・キリアタイムでエミびとを撃ち、
343 01 14 6 セイルの山地でホリびとを撃って、荒野のほとりにあるエル・パランに及んだ。
344 01 14 7 彼らは引き返してエン・ミシパテすなわちカデシへ行って、アマレクびとの国をことごとく撃ち、またハザゾン・タマルに住むアモリびとをも撃った。
345 01 14 8 そこでソドムの王、ゴモラの王、アデマの王、ゼボイムの王およびベラすなわちゾアルの王は出てシデムの谷で彼らに向かい、戦いの陣をしいた。
346 01 14 9 すなわちエラムの王ケダラオメル、ゴイムの王テダル、シナルの王アムラペル、エラサルの王アリオクの四人の王に対する五人の王であった。
347 01 14 10 シデムの谷にはアスファルトの穴が多かったので、ソドムの王とゴモラの王は逃げてそこに落ちたが、残りの者は山にのがれた。
348 01 14 11 そこで彼らはソドムとゴモラの財産と食料とをことごとく奪って去り、
349 01 14 12 またソドムに住んでいたアブラムの弟の子ロトとその財産を奪って去った。
350 01 14 13 時に、ひとりの人がのがれてきて、ヘブルびとアブラムに告げた。この時アブラムはエシコルの兄弟、またアネルの兄弟であるアモリびとマムレのテレビンの木のかたわらに住んでいた。彼らはアブラムと同盟していた。
351 01 14 14 アブラムは身内の者が捕虜になったのを聞き、訓練した家の子三百十八人を引き連れてダンまで追って行き、
352 01 14 15 そのしもべたちを分けて、夜かれらを攻め、これを撃ってダマスコの北、ホバまで彼らを追った。
353 01 14 16 そして彼はすべての財産を取り返し、また身内の者ロトとその財産および女たちと民とを取り返した。
354 01 14 17 アブラムがケダラオメルとその連合の王たちを撃ち破って帰った時、ソドムの王はシャベの谷、すなわち王の谷に出て彼を迎えた。
355 01 14 18 その時、サレムの王メルキゼデクはパンとぶどう酒とを持ってきた。彼はいと高き神の祭司である。
356 01 14 19 彼はアブラムを祝福して言った、「願わくは天地の主なるいと高き神が、アブラムを祝福されるように。
357 01 14 20 願わくはあなたの敵をあなたの手に渡されたいと高き神があがめられるように」。アブラムは彼にすべての物の十分の一を贈った。
358 01 14 21 時にソドムの王はアブラムに言った、「わたしには人をください。財産はあなたが取りなさい」。
359 01 14 22 アブラムはソドムの王に言った、「天地の主なるいと高き神、主に手をあげて、わたしは誓います。
360 01 14 23 わたしは糸一本でも、くつひも一本でも、あなたのものは何にも受けません。アブラムを富ませたのはわたしだと、あなたが言わないように。
361 01 14 24 ただし若者たちがすでに食べた物は別です。そしてわたしと共に行った人々アネルとエシコルとマムレとにはその分を取らせなさい」。
362 01 15 1 これらの事の後、主の言葉が幻のうちにアブラムに臨んだ、「アブラムよ恐れてはならない、わたしはあなたの盾である。あなたの受ける報いは、はなはだ大きいであろう」。
363 01 15 2 アブラムは言った、「主なる神よ、わたしには子がなく、わたしの家を継ぐ者はダマスコのエリエゼルであるのに、あなたはわたしに何をくださろうとするのですか」。
364 01 15 3 アブラムはまた言った、「あなたはわたしに子を賜わらないので、わたしの家に生れたしもべが、あとつぎとなるでしょう」。
365 01 15 4 この時、主の言葉が彼に臨んだ、「この者はあなたのあとつぎとなるべきではありません。あなたの身から出る者があとつぎとなるべきです」。
366 01 15 5 そして主は彼を外に連れ出して言われた、「天を仰いで、星を数えることができるなら、数えてみなさい」。また彼に言われた、「あなたの子孫はあのようになるでしょう」。
367 01 15 6 アブラムは主を信じた。主はこれを彼の義と認められた。
368 01 15 7 また主は彼に言われた、「わたしはこの地をあなたに与えて、これを継がせようと、あなたをカルデヤのウルから導き出した主です」。
369 01 15 8 彼は言った、「主なる神よ、わたしがこれを継ぐのをどうして知ることができますか」。
370 01 15 9 主は彼に言われた、「三歳の雌牛と、三歳の雌やぎと、三歳の雄羊と、山ばとと、家ばとのひなとをわたしの所に連れてきなさい」。
371 01 15 10 彼はこれらをみな連れてきて、二つに裂き、裂いたものを互に向かい合わせて置いた。ただし、鳥は裂かなかった。
372 01 15 11 荒い鳥が死体の上に降りるとき、アブラムはこれを追い払った。
373 01 15 12 日の入るころ、アブラムが深い眠りにおそわれた時、大きな恐ろしい暗やみが彼に臨んだ。
374 01 15 13 時に主はアブラムに言われた、「あなたはよく心にとめておきなさい。あなたの子孫は他の国に旅びととなって、その人々に仕え、その人々は彼らを四百年の間、悩ますでしょう。
375 01 15 14 しかし、わたしは彼らが仕えたその国民をさばきます。その後かれらは多くの財産を携えて出て来るでしょう。
376 01 15 15 あなたは安らかに先祖のもとに行きます。そして高齢に達して葬られるでしょう。
377 01 15 16 四代目になって彼らはここに帰って来るでしょう。アモリびとの悪がまだ満ちないからです」。
378 01 15 17 やがて日は入り、暗やみになった時、煙の立つかまど、炎の出るたいまつが、裂いたものの間を通り過ぎた。
379 01 15 18 その日、主はアブラムと契約を結んで言われた、「わたしはこの地をあなたの子孫に与える。エジプトの川から、かの大川ユフラテまで。
380 01 15 19 すなわちケニびと、ケニジびと、カドモニびと、
381 01 15 20 ヘテびと、ペリジびと、レパイムびと、
382 01 15 21 アモリびと、カナンびと、ギルガシびと、エブスびとの地を与える」。
383 01 16 1 アブラムの妻サライは子を産まなかった。彼女にひとりのつかえめがあった。エジプトの女で名をハガルといった。
384 01 16 2 サライはアブラムに言った、「主はわたしに子をお授けになりません。どうぞ、わたしのつかえめの所におはいりください。彼女によってわたしは子をもつことになるでしょう」。アブラムはサライの言葉を聞きいれた。
385 01 16 3 アブラムの妻サライはそのつかえめエジプトの女ハガルをとって、夫アブラムに妻として与えた。これはアブラムがカナンの地に十年住んだ後であった。
386 01 16 4 彼はハガルの所にはいり、ハガルは子をはらんだ。彼女は自分のはらんだのを見て、女主人を見下げるようになった。
387 01 16 5 そこでサライはアブラムに言った、「わたしが受けた害はあなたの責任です。わたしのつかえめをあなたのふところに与えたのに、彼女は自分のはらんだのを見て、わたしを見下さげます。どうか、主があなたとわたしの間をおさばきになるように」。
388 01 16 6 アブラムはサライに言った、「あなたのつかえめはあなたの手のうちにある。あなたの好きなように彼女にしなさい」。そしてサライが彼女を苦しめたので、彼女はサライの顔を避けて逃げた。
389 01 16 7 主の使は荒野にある泉のほとり、すなわちシュルの道にある泉のほとりで、彼女に会い、
390 01 16 8 そして言った、「サライのつかえめハガルよ、あなたはどこからきたのですか、またどこへ行くのですか」。彼女は言った、「わたしは女主人サライの顔を避けて逃げているのです」。
391 01 16 9 主の使は彼女に言った、「あなたは女主人のもとに帰って、その手に身を任せなさい」。
392 01 16 10 主の使はまた彼女に言った、「わたしは大いにあなたの子孫を増して、数えきれないほどに多くしましょう」。
393 01 16 11 主の使はまた彼女に言った、「あなたは、みごもっています。あなたは男の子を産むでしょう。名をイシマエルと名づけなさい。主があなたの苦しみを聞かれたのです。
394 01 16 12 彼は野ろばのような人となり、その手はすべての人に逆らい、すべての人の手は彼に逆らい、彼はすべての兄弟に敵して住むでしょう」。
395 01 16 13 そこで、ハガルは自分に語られた主の名を呼んで、「あなたはエル・ロイです」と言った。彼女が「ここでも、わたしを見ていられるかたのうしろを拝めたのか」と言ったことによる。
396 01 16 14 それでその井戸は「ベエル・ラハイ・ロイ」と呼ばれた。これはカデシとベレデの間にある。
397 01 16 15 ハガルはアブラムに男の子を産んだ。アブラムはハガルが産んだ子の名をイシマエルと名づけた。
398 01 16 16 ハガルがイシマエルをアブラムに産んだ時、アブラムは八十六歳であった。
399 01 17 1 アブラムの九十九歳の時、主はアブラムに現れて言われた、「わたしは全能の神である。あなたはわたしの前に歩み、全き者であれ。
400 01 17 2 わたしはあなたと契約を結び、大いにあなたの子孫を増すであろう」。
401 01 17 3 アブラムは、ひれ伏した。神はまた彼に言われた、
402 01 17 4 「わたしはあなたと契約を結ぶ。あなたは多くの国民の父となるであろう。
403 01 17 5 あなたの名は、もはやアブラムとは言われず、あなたの名はアブラハムと呼ばれるであろう。わたしはあなたを多くの国民の父とするからである。
404 01 17 6 わたしはあなたに多くの子孫を得させ、国々の民をあなたから起そう。また、王たちもあなたから出るであろう。
405 01 17 7 わたしはあなた及び後の代々の子孫と契約を立てて、永遠の契約とし、あなたと後の子孫との神となるであろう。
406 01 17 8 わたしはあなたと後の子孫とにあなたの宿っているこの地、すなわちカナンの全地を永久の所有として与える。そしてわたしは彼らの神となるであろう」。
407 01 17 9 神はまたアブラハムに言われた、「あなたと後の子孫とは共に代々わたしの契約を守らなければならない。あなたがたのうち
408 01 17 10 男子はみな割礼をうけなければならない。これはわたしとあなたがた及び後の子孫との間のわたしの契約であって、あなたがたの守るべきものである。
409 01 17 11 あなたがたは前の皮に割礼を受けなければならない。それがわたしとあなたがたとの間の契約のしるしとなるであろう。
410 01 17 12 あなたがたのうちの男子はみな代々、家に生れた者も、また異邦人から銀で買い取った、あなたの子孫でない者も、生れて八日目に割礼を受けなければならない。
411 01 17 13 あなたの家に生れた者も、あなたが銀で買い取った者も必ず割礼を受けなければならない。こうしてわたしの契約はあなたがたの身にあって永遠の契約となるであろう。
412 01 17 14 割礼を受けない男子、すなわち前の皮を切らない者はわたしの契約を破るゆえ、その人は民のうちから断たれるであろう」。
413 01 17 15 神はまたアブラハムに言われた、「あなたの妻サライは、もはや名をサライといわず、名をサラと言いなさい。
414 01 17 16 わたしは彼女を祝福し、また彼女によって、あなたにひとりの男の子を授けよう。わたしは彼女を祝福し、彼女を国々の民の母としよう。彼女から、もろもろの民の王たちが出るであろう」。
415 01 17 17 アブラハムはひれ伏して笑い、心の中で言った、「百歳の者にどうして子が生れよう。サラはまた九十歳にもなって、どうして産むことができようか」。
416 01 17 18 そしてアブラハムは神に言った、「どうかイシマエルがあなたの前に生きながらえますように」。
417 01 17 19 神は言われた、「いや、あなたの妻サラはあなたに男の子を産むでしょう。名をイサクと名づけなさい。わたしは彼と契約を立てて、後の子孫のために永遠の契約としよう。
418 01 17 20 またイシマエルについてはあなたの願いを聞いた。わたしは彼を祝福して多くの子孫を得させ、大いにそれを増すであろう。彼は十二人の君たちを生むであろう。わたしは彼を大いなる国民としよう。
419 01 17 21 しかしわたしは来年の今ごろサラがあなたに産むイサクと、わたしの契約を立てるであろう」。
420 01 17 22 神はアブラハムと語り終え、彼を離れて、のぼられた。
421 01 17 23 アブラハムは神が自分に言われたように、この日その子イシマエルと、すべて家に生れた者およびすべて銀で買い取った者、すなわちアブラハムの家の人々のうち、すべての男子を連れてきて、前の皮に割礼を施した。
422 01 17 24 アブラハムが前の皮に割礼を受けた時は九十九歳、
423 01 17 25 その子イシマエルが前の皮に割礼を受けた時は十三歳であった。
424 01 17 26 この日アブラハムとその子イシマエルは割礼を受けた。
425 01 17 27 またその家の人々は家に生れた者も、銀で異邦人から買い取った者も皆、彼と共に割礼を受けた。
426 01 18 1 主はマムレのテレビンの木のかたわらでアブラハムに現れられた。それは昼の暑いころで、彼は天幕の入口にすわっていたが、
427 01 18 2 目を上げて見ると、三人の人が彼に向かって立っていた。彼はこれを見て、天幕の入口から走って行って彼らを迎え、地に身をかがめて、
428 01 18 3 言った、「わが主よ、もしわたしがあなたの前に恵みを得ているなら、どうぞしもべを通り過ごさないでください。
429 01 18 4 水をすこし取ってこさせますから、あなたがたは足を洗って、この木の下でお休みください。
430 01 18 5 わたしは一口のパンを取ってきます。元気をつけて、それからお出かけください。せっかくしもべの所においでになったのですから」。彼らは言った、「お言葉どおりにしてください」。
431 01 18 6 そこでアブラハムは急いで天幕に入り、サラの所に行って言った、「急いで細かい麦粉三セヤをとり、こねてパンを造りなさい」。
432 01 18 7 アブラハムは牛の群れに走って行き、柔らかな良い子牛を取って若者に渡したので、急いで調理した。
433 01 18 8 そしてアブラハムは凝乳と牛乳および子牛の調理したものを取って、彼らの前に供え、木の下で彼らのかたわらに立って給仕し、彼らは食事した。
434 01 18 9 彼らはアブラハムに言った、「あなたの妻サラはどこにおられますか」。彼は言った、「天幕の中です」。
435 01 18 10 そのひとりが言った、「来年の春、わたしはかならずあなたの所に帰ってきましょう。その時、あなたの妻サラには男の子が生れているでしょう」。サラはうしろの方の天幕の入口で聞いていた。
436 01 18 11 さてアブラハムとサラとは年がすすみ、老人となり、サラは女の月のものが、すでに止まっていた。
437 01 18 12 それでサラは心の中で笑って言った、「わたしは衰え、主人もまた老人であるのに、わたしに楽しみなどありえようか」。
438 01 18 13 主はアブラハムに言われた、「なぜサラは、わたしは老人であるのに、どうして子を産むことができようかと言って笑ったのか。
439 01 18 14 主にとって不可能なことがありましょうか。来年の春、定めの時に、わたしはあなたの所に帰ってきます。そのときサラには男の子が生れているでしょう」。
440 01 18 15 サラは恐れたので、これを打ち消して言った、「わたしは笑いません」。主は言われた、「いや、あなたは笑いました」。
441 01 18 16 その人々はそこを立ってソドムの方に向かったので、アブラハムは彼らを見送って共に行った。
442 01 18 17 時に主は言われた、「わたしのしようとする事をアブラハムに隠してよいであろうか。
443 01 18 18 アブラハムは必ず大きな強い国民となって、地のすべての民がみな、彼によって祝福を受けるのではないか。
444 01 18 19 わたしは彼が後の子らと家族とに命じて主の道を守らせ、正義と公道とを行わせるために彼を知ったのである。これは主がかつてアブラハムについて言った事を彼の上に臨ませるためである」。
445 01 18 20 主はまた言われた、「ソドムとゴモラの叫びは大きく、またその罪は非常に重いので、
446 01 18 21 わたしはいま下って、わたしに届いた叫びのとおりに、すべて彼らがおこなっているかどうかを見て、それを知ろう」。
447 01 18 22 その人々はそこから身を巡らしてソドムの方に行ったが、アブラハムはなお、主の前に立っていた。
448 01 18 23 アブラハムは近寄って言った、「まことにあなたは正しい者を、悪い者と一緒に滅ぼされるのですか。
449 01 18 24 たとい、あの町に五十人の正しい者があっても、あなたはなお、その所を滅ぼし、その中にいる五十人の正しい者のためにこれをゆるされないのですか。
450 01 18 25 正しい者と悪い者とを一緒に殺すようなことを、あなたは決してなさらないでしょう。正しい者と悪い者とを同じようにすることも、あなたは決してなさらないでしょう。全地をさばく者は公義を行うべきではありませんか」。
451 01 18 26 主は言われた、「もしソドムで町の中に五十人の正しい者があったら、その人々のためにその所をすべてゆるそう」。
452 01 18 27 アブラハムは答えて言った、「わたしはちり灰に過ぎませんが、あえてわが主に申します。
453 01 18 28 もし五十人の正しい者のうち五人欠けたなら、その五人欠けたために町を全く滅ぼされますか」。主は言われた、「もしそこに四十五人いたら、滅ぼさないであろう」。
454 01 18 29 アブラハムはまた重ねて主に言った、「もしそこに四十人いたら」。主は言われた、「その四十人のために、これをしないであろう」。
455 01 18 30 アブラハムは言った、「わが主よ、どうかお怒りにならぬよう。わたしは申します。もしそこに三十人いたら」。主は言われた、「そこに三十人いたら、これをしないであろう」。
456 01 18 31 アブラハムは言った、「いまわたしはあえてわが主に申します。もしそこに二十人いたら」。主は言われた、「わたしはその二十人のために滅ぼさないであろう」。
457 01 18 32 アブラハムは言った、「わが主よ、どうかお怒りにならぬよう。わたしはいま一度申します、もしそこに十人いたら」。主は言われた、「わたしはその十人のために滅ぼさないであろう」。
458 01 18 33 主はアブラハムと語り終り、去って行かれた。アブラハムは自分の所に帰った。
459 01 19 1 そのふたりのみ使は夕暮にソドムに着いた。そのときロトはソドムの門にすわっていた。ロトは彼らを見て、立って迎え、地に伏して、
460 01 19 2 言った、「わが主よ、どうぞしもべの家に立寄って足を洗い、お泊まりください。そして朝早く起きてお立ちください」。彼らは言った、「いや、われわれは広場で夜を過ごします」。
461 01 19 3 しかしロトがしいて勧めたので、彼らはついに彼の所に寄り、家にはいった。ロトは彼らのためにふるまいを設け、種入れぬパンを焼いて食べさせた。
462 01 19 4 ところが彼らの寝ないうちに、ソドムの町の人々は、若い者も老人も、民がみな四方からきて、その家を囲み、
463 01 19 5 ロトに叫んで言った、「今夜おまえの所にきた人々はどこにいるか。それをここに出しなさい。われわれは彼らを知るであろう」。
464 01 19 6 ロトは入口におる彼らの所に出て行き、うしろの戸を閉じて、
465 01 19 7 言った、「兄弟たちよ、どうか悪い事はしないでください。
466 01 19 8 わたしにまだ男を知らない娘がふたりあります。わたしはこれをあなたがたに、さし出しますから、好きなようにしてください。ただ、わたしの屋根の下にはいったこの人たちには、何もしないでください」。
467 01 19 9 彼らは言った、「退け」。また言った、「この男は渡ってきたよそ者であるのに、いつも、さばきびとになろうとする。それで、われわれは彼らに加えるよりも、おまえに多くの害を加えよう」。彼らはロトの身に激しく迫り、進み寄って戸を破ろうとした。
468 01 19 10 その時、かのふたりは手を伸べてロトを家の内に引き入れ、戸を閉じた。
469 01 19 11 そして家の入口におる人々を、老若の別なく打って目をくらましたので、彼らは入口を捜すのに疲れた。
470 01 19 12 ふたりはロトに言った、「ほかにあなたの身内の者がここにおりますか。あなたのむこ、むすこ、娘およびこの町におるあなたの身内の者を、皆ここから連れ出しなさい。
471 01 19 13 われわれがこの所を滅ぼそうとしているからです。人々の叫びが主の前に大きくなり、主はこの所を滅ぼすために、われわれをつかわされたのです」。
472 01 19 14 そこでロトは出て行って、その娘たちをめとるむこたちに告げて言った、「立ってこの所から出なさい。主がこの町を滅ぼされます」。しかしそれはむこたちには戯むれごとに思えた。
473 01 19 15 夜が明けて、み使たちはロトを促して言った 「立って、ここにいるあなたの妻とふたりの娘とを連れ出しなさい。そうしなければ、あなたもこの町の不義のために滅ぼされるでしょう」。
474 01 19 16 彼はためらっていたが、主は彼にあわれみを施されたので、かのふたりは彼の手と、その妻の手と、ふたりの娘の手を取って連れ出し、町の外に置いた。
475 01 19 17 彼らを外に連れ出した時そのひとりは言った、「のがれて、自分の命を救いなさい。うしろをふりかえって見てはならない。低地にはどこにも立ち止まってはならない。山にのがれなさい。そうしなければ、あなたは滅びます」。
476 01 19 18 ロトは彼らに言った、「わが主よ、どうか、そうさせないでください。
477 01 19 19 しもべはすでにあなたの前に恵みを得ました。あなたはわたしの命を救って、大いなるいつくしみを施されました。しかしわたしは山まではのがれる事ができません。災が身に追い迫ってわたしは死ぬでしょう。
478 01 19 20 あの町をごらんなさい。逃げていくのに近く、また小さい町です。どうかわたしをそこにのがれさせてください。それは小さいではありませんか。そうすればわたしの命は助かるでしょう」。
479 01 19 21 み使は彼に言った、「わたしはこの事でもあなたの願いをいれて、あなたの言うその町は滅ぼしません。
480 01 19 22 急いでそこへのがれなさい。あなたがそこに着くまでは、わたしは何事もすることができません」。これによって、その町の名はゾアルと呼ばれた。
481 01 19 23 ロトがゾアルに着いた時、日は地の上にのぼった。
482 01 19 24 主は硫黄と火とを主の所すなわち天からソドムとゴモラの上に降らせて、
483 01 19 25 これらの町と、すべての低地と、その町々のすべての住民と、その地にはえている物を、ことごとく滅ぼされた。
484 01 19 26 しかしロトの妻はうしろを顧みたので塩の柱になった。
485 01 19 27 アブラハムは朝早く起き、さきに主の前に立った所に行って、
486 01 19 28 ソドムとゴモラの方、および低地の全面をながめると、その地の煙が、かまどの煙のように立ちのぼっていた。
487 01 19 29 こうして神が低地の町々をこぼたれた時、すなわちロトの住んでいた町々を滅ぼされた時、神はアブラハムを覚えて、その滅びの中からロトを救い出された。
488 01 19 30 ロトはゾアルを出て上り、ふたりの娘と共に山に住んだ。ゾアルに住むのを恐れたからである。彼はふたりの娘と共に、ほら穴の中に住んだ。
489 01 19 31 時に姉が妹に言った、「わたしたちの父は老い、またこの地には世のならわしのように、わたしたちの所に来る男はいません。
490 01 19 32 さあ、父に酒を飲ませ、共に寝て、父によって子を残しましょう」。
491 01 19 33 彼女たちはその夜、父に酒を飲ませ、姉がはいって父と共に寝た。ロトは娘が寝たのも、起きたのも知らなかった。
492 01 19 34 あくる日、姉は妹に言った、「わたしは昨夜、父と寝ました。わたしたちは今夜もまた父に酒を飲ませましょう。そしてあなたがはいって共に寝なさい。わたしたちは父によって子を残しましょう」。
493 01 19 35 彼らはその夜もまた父に酒を飲ませ、妹が行って父と共に寝た。ロトは娘の寝たのも、起きたのも知らなかった。
494 01 19 36 こうしてロトのふたりの娘たちは父によってはらんだ。
495 01 19 37 姉娘は子を産み、その名をモアブと名づけた。これは今のモアブびとの先祖である。
496 01 19 38 妹もまた子を産んで、その名をベニアンミと名づけた。これは今のアンモンびとの先祖である。
497 01 20 1 アブラハムはそこからネゲブの地に移って、カデシとシュルの間に住んだ。彼がゲラルにとどまっていた時、
498 01 20 2 アブラハムは妻サラのことを、「これはわたしの妹です」と言ったので、ゲラルの王アビメレクは、人をつかわしてサラを召し入れた。
499 01 20 3 ところが神は夜の夢にアビメレクに臨んで言われた、「あなたは召し入れたあの女のゆえに死なねばならない。彼女は夫のある身である」。
500 01 20 4 アビメレクはまだ彼女に近づいていなかったので言った、「主よ、あなたは正しい民でも殺されるのですか。
501 01 20 5 彼はわたしに、これはわたしの妹ですと言ったではありませんか。また彼女も自分で、彼はわたしの兄ですと言いました。わたしは心も清く、手もいさぎよく、このことをしました」。
502 01 20 6 神はまた夢で彼に言われた、「そうです、あなたが清い心をもってこのことをしたのを知っていたから、わたしもあなたを守って、わたしに対して罪を犯させず、彼女にふれることを許さなかったのです。
503 01 20 7 いま彼の妻を返しなさい。彼は預言者ですから、あなたのために祈って、命を保たせるでしょう。もし返さないなら、あなたも身内の者もみな必ず死ぬと知らなければなりません」。
504 01 20 8 そこでアビメレクは朝早く起き、しもべたちをことごとく召し集めて、これらの事をみな語り聞かせたので、人々は非常に恐れた。
505 01 20 9 そしてアビメレクはアブラハムを召して言った、「あなたはわれわれに何をするのですか。あなたに対してわたしがどんな罪を犯したために、あなたはわたしとわたしの国とに、大きな罪を負わせるのですか。あなたはしてはならぬことをわたしにしたのです」。
506 01 20 10 アビメレクはまたアブラハムに言った、「あなたはなんと思って、この事をしたのですか」。
507 01 20 11 アブラハムは言った、「この所には神を恐れるということが、まったくないので、わたしの妻のゆえに人々がわたしを殺すと思ったからです。
508 01 20 12 また彼女はほんとうにわたしの妹なのです。わたしの父の娘ですが、母の娘ではありません。そして、わたしの妻になったのです。
509 01 20 13 神がわたしに父の家を離れて、行き巡らせた時、わたしは彼女に、あなたはわたしたちの行くさきざきでわたしを兄であると言ってください。これはあなたがわたしに施す恵みであると言いました」。
510 01 20 14 そこでアビメレクは羊、牛および男女の奴隷を取ってアブラハムに与え、その妻サラを彼に返した。
511 01 20 15 そしてアビメレクは言った、「わたしの地はあなたの前にあります。あなたの好きな所に住みなさい」。
512 01 20 16 またサラに言った、「わたしはあなたの兄に銀千シケルを与えました。これはあなたの身に起ったすべての事について、あなたに償いをするものです。こうしてすべての人にあなたは正しいと認められます」。
513 01 20 17 そこでアブラハムは神に祈った。神はアビメレクとその妻および、はしためたちをいやされたので、彼らは子を産むようになった。
514 01 20 18 これは主がさきにアブラハムの妻サラのゆえに、アビメレクの家のすべての者の胎を、かたく閉ざされたからである。
515 01 21 1 主は、さきに言われたようにサラを顧み、告げられたようにサラに行われた。
516 01 21 2 サラはみごもり、神がアブラハムに告げられた時になって、年老いたアブラハムに男の子を産んだ。
517 01 21 3 アブラハムは生れた子、サラが産んだ男の子の名をイサクと名づけた。
518 01 21 4 アブラハムは神が命じられたように八日目にその子イサクに割礼を施した。
519 01 21 5 アブラハムはその子イサクが生れた時百歳であった。
520 01 21 6 そしてサラは言った、「神はわたしを笑わせてくださった。聞く者は皆わたしのことで笑うでしょう」。
521 01 21 7 また言った、「サラが子に乳を飲ませるだろうと、だれがアブラハムに言い得たであろう。それなのに、わたしは彼が年とってから、子を産んだ」。
522 01 21 8 さて、おさなごは育って乳離れした。イサクが乳離れした日にアブラハムは盛んなふるまいを設けた。
523 01 21 9 サラはエジプトの女ハガルのアブラハムに産んだ子が、自分の子イサクと遊ぶのを見て、
524 01 21 10 アブラハムに言った、「このはしためとその子を追い出してください。このはしための子はわたしの子イサクと共に、世継となるべき者ではありません」。
525 01 21 11 この事で、アブラハムはその子のために非常に心配した。
526 01 21 12 神はアブラハムに言われた、「あのわらべのため、またあなたのはしためのために心配することはない。サラがあなたに言うことはすべて聞きいれなさい。イサクに生れる者が、あなたの子孫と唱えられるからです。
527 01 21 13 しかし、はしための子もあなたの子ですから、これをも、一つの国民とします」。
528 01 21 14 そこでアブラハムは明くる朝はやく起きて、パンと水の皮袋とを取り、ハガルに与えて、肩に負わせ、その子を連れて去らせた。ハガルは去ってベエルシバの荒野にさまよった。
529 01 21 15 やがて皮袋の水が尽きたので、彼女はその子を木の下におき、
530 01 21 16 「わたしはこの子の死ぬのを見るに忍びない」と言って、矢の届くほど離れて行き、子供の方に向いてすわった。彼女が子供の方に向いてすわったとき、子供は声をあげて泣いた。
531 01 21 17 神はわらべの声を聞かれ、神の使は天からハガルを呼んで言った、「ハガルよ、どうしたのか。恐れてはいけない。神はあそこにいるわらべの声を聞かれた。
532 01 21 18 立って行き、わらべを取り上げてあなたの手に抱きなさい。わたしは彼を大いなる国民とするであろう」。
533 01 21 19 神がハガルの目を開かれたので、彼女は水の井戸のあるのを見た。彼女は行って皮袋に水を満たし、わらべに飲ませた。
534 01 21 20 神はわらべと共にいまし、わらべは成長した。彼は荒野に住んで弓を射る者となった。
535 01 21 21 彼はパランの荒野に住んだ。母は彼のためにエジプトの国から妻を迎えた。
536 01 21 22 そのころアビメレクとその軍勢の長ピコルはアブラハムに言った、「あなたが何事をなさっても、神はあなたと共におられる。
537 01 21 23 それゆえ、今ここでわたしをも、わたしの子をも、孫をも欺かないと、神をさしてわたしに誓ってください。わたしがあなたに親切にしたように、あなたもわたしと、このあなたの寄留の地とに、しなければなりません」。
538 01 21 24 アブラハムは言った、「わたしは誓います」。
539 01 21 25 アブラハムはアビメレクの家来たちが、水の井戸を奪い取ったことについてアビメルクを責めた。
540 01 21 26 しかしアビメレクは言った、「だれがこの事をしたかわたしは知りません。あなたもわたしに告げたことはなく、わたしもきょうまで聞きませんでした」。
541 01 21 27 そこでアブラハムは羊と牛とを取ってアビメレクに与え、ふたりは契約を結んだ。
542 01 21 28 アブラハムが雌の小羊七頭を分けて置いたところ、
543 01 21 29 アビメレクはアブラハムに言った、「あなたがこれらの雌の小羊七頭を分けて置いたのは、なんのためですか」。
544 01 21 30 アブラハムは言った、「あなたはわたしの手からこれらの雌の小羊七頭を受け取って、わたしがこの井戸を掘ったことの証拠としてください」。
545 01 21 31 これによってその所をベエルシバと名づけた。彼らがふたりそこで誓いをしたからである。
546 01 21 32 このように彼らはベエルシバで契約を結び、アビメレクとその軍勢の長ピコルは立ってペリシテの地に帰った。
547 01 21 33 アブラハムはベエルシバに一本のぎょりゅうの木を植え、その所で永遠の神、主の名を呼んだ。
548 01 21 34 こうしてアブラハムは長い間ペリシテびとの地にとどまった。
549 01 22 1 これらの事の後、神はアブラハムを試みて彼に言われた、「アブラハムよ」。彼は言った、「ここにおります」。
550 01 22 2 神は言われた、「あなたの子、あなたの愛するひとり子イサクを連れてモリヤの地に行き、わたしが示す山で彼を燔祭としてささげなさい」。
551 01 22 3 アブラハムは朝はやく起きて、ろばにくらを置き、ふたりの若者と、その子イサクとを連れ、また燔祭のたきぎを割り、立って神が示された所に出かけた。
552 01 22 4 三日目に、アブラハムは目をあげて、はるかにその場所を見た。
553 01 22 5 そこでアブラハムは若者たちに言った、「あなたがたは、ろばと一緒にここにいなさい。わたしとわらべは向こうへ行って礼拝し、そののち、あなたがたの所に帰ってきます」。
554 01 22 6 アブラハムは燔祭のたきぎを取って、その子イサクに負わせ、手に火と刃物とを執って、ふたり一緒に行った。
555 01 22 7 やがてイサクは父アブラハムに言った、「父よ」。彼は答えた、「子よ、わたしはここにいます」。イサクは言った、「火とたきぎとはありますが、燔祭の小羊はどこにありますか」。
556 01 22 8 アブラハムは言った、「子よ、神みずから燔祭の小羊を備えてくださるであろう」。こうしてふたりは一緒に行った。
557 01 22 9 彼らが神の示された場所にきたとき、アブラハムはそこに祭壇を築き、たきぎを並べ、その子イサクを縛って祭壇のたきぎの上に載せた。
558 01 22 10 そしてアブラハムが手を差し伸べ、刃物を執ってその子を殺そうとした時、
559 01 22 11 主の使が天から彼を呼んで言った、「アブラハムよ、アブラハムよ」。彼は答えた、「はい、ここにおります」。
560 01 22 12 み使が言った、「わらべを手にかけてはならない。また何も彼にしてはならない。あなたの子、あなたのひとり子をさえ、わたしのために惜しまないので、あなたが神を恐れる者であることをわたしは今知った」。
561 01 22 13 この時アブラハムが目をあげて見ると、うしろに、角をやぶに掛けている一頭の雄羊がいた。アブラハムは行ってその雄羊を捕え、それをその子のかわりに燔祭としてささげた。
562 01 22 14 それでアブラハムはその所の名をアドナイ・エレと呼んだ。これにより、人々は今日もなお「主の山に備えあり」と言う。
563 01 22 15 主の使は再び天からアブラハムを呼んで、
564 01 22 16 言った、「主は言われた、『わたしは自分をさして誓う。あなたがこの事をし、あなたの子、あなたのひとり子をも惜しまなかったので、
565 01 22 17 わたしは大いにあなたを祝福し、大いにあなたの子孫をふやして、天の星のように、浜べの砂のようにする。あなたの子孫は敵の門を打ち取り、
566 01 22 18 また地のもろもろの国民はあなたの子孫によって祝福を得るであろう。あなたがわたしの言葉に従ったからである』」。
567 01 22 19 アブラハムは若者たちの所に帰り、みな立って、共にベエルシバへ行った。そしてアブラハムはベエルシバに住んだ。
568 01 22 20 これらの事の後、ある人がアブラハムに告げて言った、「ミルカもまたあなたの兄弟ナホルに子どもを産みました。
569 01 22 21 長男はウヅ、弟はブズ、次はアラムの父ケムエル、
570 01 22 22 次はケセデ、ハゾ、ピルダシ、エデラフ、ベトエルです」。
571 01 22 23 ベトエルの子はリベカであって、これら八人はミルカがアブラハムの兄弟ナホルに産んだのである。
572 01 22 24 ナホルのそばめで、名をルマという女もまたテバ、ガハム、タハシおよびマアカを産んだ。
573 01 23 1 サラの一生は百二十七年であった。これがサラの生きながらえた年である。
574 01 23 2 サラはカナンの地のキリアテ・アルバすなわちヘブロンで死んだ。アブラハムは中にはいってサラのために悲しみ泣いた。
575 01 23 3 アブラハムは死人のそばから立って、ヘテの人々に言った、
576 01 23 4 「わたしはあなたがたのうちの旅の者で寄留者ですが、わたしの死人を出して葬るため、あなたがたのうちにわたしの所有として一つの墓地をください」。
577 01 23 5 ヘテの人々はアブラハムに答えて言った、
578 01 23 6 「わが主よ、お聞きなさい。あなたはわれわれのうちにおられて、神のような主君です。われわれの墓地の最も良い所にあなたの死人を葬りなさい。その墓地を拒んで、あなたにその死人を葬らせない者はわれわれのうちには、ひとりもないでしょう」。
579 01 23 7 アブラハムは立ちあがり、その地の民ヘテの人々に礼をして、
580 01 23 8 彼らに言った、「もしわたしの死人を葬るのに同意されるなら、わたしの願いをいれて、わたしのためにゾハルの子エフロンに頼み、
581 01 23 9 彼が持っている畑の端のマクペラのほら穴をじゅうぶんな代価でわたしに与え、あなたがたのうちに墓地を持たせてください」。
582 01 23 10 時にエフロンはヘテの人々のうちにすわっていた。そこでヘテびとエフロンはヘテの人々、すなわちすべてその町の門にはいる人々の聞いているところで、アブラハムに答えて言った、
583 01 23 11 「いいえ、わが主よ、お聞きなさい。わたしはあの畑をあなたにさしあげます。またその中にあるほら穴もさしあげます。わたしの民の人々の前で、それをさしあげます。あなたの死人を葬りなさい」。
584 01 23 12 アブラハムはその地の民の前で礼をし、
585 01 23 13 その地の民の聞いているところでエフロンに言った、「あなたがそれを承諾されるなら、お聞きなさい。わたしはその畑の代価を払います。お受け取りください。わたしの死人をそこに葬りましょう」。
586 01 23 14 エフロンはアブラハムに答えて言った、
587 01 23 15 「わが主よ、お聞きなさい。あの地は銀四百シケルですが、これはわたしとあなたの間で、なにほどのことでしょう。あなたの死人を葬りなさい」。
588 01 23 16 そこでアブラハムはエフロンの言葉にしたがい、エフロンがヘテの人々の聞いているところで言った銀、すなわち商人の通用銀四百シケルを量ってエフロンに与えた。
589 01 23 17 こうしてマムレの前のマクペラにあるエフロンの畑は、畑も、その中のほら穴も、畑の中およびその周囲の境にあるすべての木も皆、
590 01 23 18 ヘテの人々の前、すなわちその町の門にはいるすべての人々の前で、アブラハムの所有と決まった。
591 01 23 19 その後、アブラハムはその妻サラをカナンの地にあるマムレ、すなわちヘブロンの前のマクペラの畑のほら穴に葬った。
592 01 23 20 このように畑とその中にあるほら穴とはヘテの人々によってアブラハムの所有の墓地と定められた。
593 01 24 1 アブラハムは年が進んで老人となった。主はすべての事にアブラハムを恵まれた。
594 01 24 2 さてアブラハムは所有のすべてを管理させていた家の年長のしもべに言った、「あなたの手をわたしのももの下に入れなさい。
595 01 24 3 わたしはあなたに天地の神、主をさして誓わせる。あなたはわたしが今一緒に住んでいるカナンびとのうちから、娘をわたしの子の妻にめとってはならない。
596 01 24 4 あなたはわたしの国へ行き、親族の所へ行って、わたしの子イサクのために妻をめとらなければならない」。
597 01 24 5 しもべは彼に言った、「もしその女がわたしについてこの地に来ることを好まない時は、わたしはあなたの子をあなたの出身地に連れ帰るべきでしょうか」。
598 01 24 6 アブラハムは彼に言った、「わたしの子は決して向こうへ連れ帰ってはならない。
599 01 24 7 天の神、主はわたしを父の家、親族の地から導き出してわたしに語り、わたしに誓って、おまえの子孫にこの地を与えると言われた。主は、み使をあなたの前につかわされるであろう。あなたはあそこからわたしの子に妻をめとらねばならない。
600 01 24 8 けれどもその女があなたについて来ることを好まないなら、あなたはこの誓いを解かれる。ただわたしの子を向こうへ連れ帰ってはならない」。
601 01 24 9 そこでしもべは手を主人アブラハムのももの下に入れ、この事について彼に誓った。
602 01 24 10 しもべは主人のらくだのうちから十頭のらくだを取って出かけた。すなわち主人のさまざまの良い物を携え、立ってアラム・ナハライムにむかい、ナホルの町へ行った。
603 01 24 11 彼はらくだを町の外の、水の井戸のそばに伏させた。時は夕暮で、女たちが水をくみに出る時刻であった。
604 01 24 12 彼は言った、「主人アブラハムの神、主よ、どうか、きょう、わたしにしあわせを授け、主人アブラハムに恵みを施してください。
605 01 24 13 わたしは泉のそばに立っています。町の人々の娘たちが水をくみに出てきたとき、
606 01 24 14 娘に向かって『お願いです、あなたの水がめを傾けてわたしに飲ませてください』と言い、娘が答えて、『お飲みください。あなたのらくだにも飲ませましょう』と言ったなら、その者こそ、あなたがしもべイサクのために定められた者ということにしてください。わたしはこれによって、あなたがわたしの主人に恵みを施されることを知りましょう」。
607 01 24 15 彼がまだ言い終らないうちに、アブラハムの兄弟ナホルの妻ミルカの子ベトエルの娘リベカが、水がめを肩に載せて出てきた。
608 01 24 16 その娘は非常に美しく、男を知らぬ処女であった。彼女が泉に降りて、水がめを満たし、上がってきた時、
609 01 24 17 しもべは走り寄って、彼女に会って言った、「お願いです。あなたの水がめの水を少し飲ませてください」。
610 01 24 18 すると彼女は「わが主よ、お飲みください」と言って、急いで水がめを自分の手に取りおろして彼に飲ませた。
611 01 24 19 飲ませ終って、彼女は言った、「あなたのらくだもみな飲み終るまで、わたしは水をくみましょう」。
612 01 24 20 彼女は急いでかめの水を水ぶねにあけ、再び水をくみに井戸に走って行って、すべてのらくだのために水をくんだ。
613 01 24 21 その間その人は主が彼の旅の祝福されるか、どうかを知ろうと、黙って彼女を見つめていた。
614 01 24 22 らくだが飲み終ったとき、その人は重さ半シケルの金の鼻輪一つと、重さ十シケルの金の腕輪二つを取って、
615 01 24 23 言った、「あなたはだれの娘か、わたしに話してください。あなたの父の家にわたしどもの泊まる場所がありましょうか」。
616 01 24 24 彼女は彼に言った、「わたしはナホルの妻ミルカの子ベトエルの娘です」。
617 01 24 25 また彼に言った、「わたしどもには、わらも、飼葉もたくさんあります。また泊まる場所もあります」。
618 01 24 26 その人は頭を下げ、主を拝して、
619 01 24 27 言った、「主人アブラハムの神、主はほむべきかな。主はわたしの主人にいつくしみと、まこととを惜しまれなかった。そして主は旅にあるわたしを主人の兄弟の家に導かれた」。
620 01 24 28 娘は走って行って、母の家のものにこれらの事を告げた。
621 01 24 29 リベカにひとりの兄があって、名をラバンといった。ラバンは泉のそばにいるその人の所へ走って行った。
622 01 24 30 彼は鼻輪と妹の手にある腕輪とを見、また妹リベカが「その人はわたしにこう言った」というのを聞いて、その人の所へ行ってみると、その人は泉のほとりで、らくだのそばに立っていた。
623 01 24 31 そこでその人に言った、「主に祝福された人よ、おはいりください。なぜ外に立っておられますか。わたしは家を準備し、らくだのためにも場所を準備しておきました」。
624 01 24 32 その人は家にはいった。ラバンはらくだの荷を解いて、わらと飼葉をらくだに与え、また水を与えてその人の足と、その従者たちの足を洗わせた。
625 01 24 33 そして彼の前に食物を供えたが、彼は言った、「わたしは用向きを話すまでは食べません」。ラバンは言った、「お話しください」。
626 01 24 34 そこで彼は言った、「わたしはアブラハムのしもべです。
627 01 24 35 主はわたしの主人を大いに祝福して、大いなる者とされました。主はまた彼に羊、牛、銀、金、男女の奴隷、らくだ、ろばを与えられました。
628 01 24 36 主人の妻サラは年老いてから、主人に男の子を産みました。主人はその所有を皆これに与えました。
629 01 24 37 ところで主人はわたしに誓わせて言いました、『わたしの住んでいる地のカナンびとの娘を、わたしの子の妻にめとってはならない。
630 01 24 38 おまえはわたしの父の家、親族の所へ行って、わたしの子に妻をめとらなければならない』。
631 01 24 39 わたしは主人に言いました、『もしその女がわたしについてこない時はどういたしましょうか』。
632 01 24 40 主人はわたしに言いました、『わたしの仕えている主は、み使をおまえと一緒につかわして、おまえの旅にさいわいを与えられるであろう。おまえはわたしの親族、わたしの父の家からわたしの子に妻をめとらなければならない。
633 01 24 41 そのとき、おまえはわたしにした誓いから解かれるであろう。またおまえがわたしの親族に行く時、彼らがおまえにその娘を与えないなら、おまえはわたしにした誓いから解かれるであろう』。
634 01 24 42 わたしはきょう、泉のところにきて言いました、『主人アブラハムの神、主よ、どうか今わたしのゆく道にさいわいを与えてください。
635 01 24 43 わたしはこの泉のそばに立っていますが、水をくみに出てくる娘に向かって、「お願いです。あなたの水がめの水を少し飲ませてください」と言い、
636 01 24 44 「お飲みください。あなたのらくだのためにも、くみましょう」とわたしに言うなら、その娘こそ、主がわたしの主人の子のために定められた女ということにしてください』。
637 01 24 45 わたしが心のうちでそう言い終らないうちに、リベカが水がめを肩に載せて出てきて、水をくみに泉に降りたので、わたしは『お願いです、飲ませてください』と言いますと、
638 01 24 46 彼女は急いで水がめを肩からおろし、『お飲みください。わたしはあなたのらくだにも飲ませましょう』と言いました。それでわたしは飲みましたが、彼女はらくだにも飲ませました。
639 01 24 47 わたしは彼女に尋ねて、『あなたはだれの娘ですか』と言いますと、『ナホルとその妻ミルカの子ベトエルの娘です』と答えました。そこでわたしは彼女の鼻に鼻輪をつけ、手に腕輪をつけました。
640 01 24 48 そしてわたしは頭をさげて主を拝し、主人アブラハムの神、主をほめたたえました。主は主人の兄弟の娘を子にめとらせようと、わたしを正しい道に導かれたからです。
641 01 24 49 あなたがたが、もしわたしの主人にいつくしみと、まことを尽そうと思われるなら、そうとわたしにお話しください。そうでなければ、そうでないとお話しください。それによってわたしは右か左に決めましょう」。
642 01 24 50 ラバンとベトエルは答えて言った、「この事は主から出たことですから、わたしどもはあなたによしあしを言うことができません。
643 01 24 51 リベカがここにおりますから連れて行って、主が言われたように、あなたの主人の子の妻にしてください」。
644 01 24 52 アブラハムのしもべは彼らの言葉を聞いて、地に伏し、主を拝した。
645 01 24 53 そしてしもべは銀の飾りと、金の飾り、および衣服を取り出してリベカに与え、その兄と母とにも価の高い品々を与えた。
646 01 24 54 彼と従者たちは飲み食いして宿ったが、あくる朝彼らが起きた時、しもべは言った、「わたしを主人のもとに帰らせてください」。
647 01 24 55 リベカの兄と母とは言った、「娘は数日、少なくとも十日、わたしどもと共にいて、それから行かせましょう」。
648 01 24 56 しもべは彼らに言った、「主はわたしの道にさいわいを与えられましたから、わたしを引きとめずに、主人のもとに帰らせてください」。
649 01 24 57 彼らは言った、「娘を呼んで聞いてみましょう」。
650 01 24 58 彼らはリベカを呼んで言った、「あなたはこの人と一緒に行きますか」。彼女は言った、「行きます」。
651 01 24 59 そこで彼らは妹リベカと、そのうばと、アブラハムのしもべと、その従者とを送り去らせた。
652 01 24 60 彼らはリベカを祝福して彼女に言った、「妹よ、あなたは、ちよろずの人の母となれ。あなたの子孫はその敵の門を打ち取れ」。
653 01 24 61 リベカは立って侍女たちと共にらくだに乗り、その人に従って行った。しもべはリベカを連れて立ち去った。
654 01 24 62 さてイサクはベエル・ラハイ・ロイからきて、ネゲブの地に住んでいた。
655 01 24 63 イサクは夕暮、野に出て歩いていたが、目をあげて、らくだの来るのを見た。
656 01 24 64 リベカは目をあげてイサクを見、らくだからおりて、
657 01 24 65 しもべに言った、「わたしたちに向かって、野を歩いて来るあの人はだれでしょう」。しもべは言った、「あれはわたしの主人です」。するとリベカは、被衣で身をおおった。
658 01 24 66 しもべは自分がしたことのすべてをイサクに話した。
659 01 24 67 イサクはリベカを天幕に連れて行き、リベカをめとって妻とし、彼女を愛した。こうしてイサクは母の死後、慰めを得た。
660 01 25 1 アブラハムは再び妻をめとった。名をケトラという。
661 01 25 2 彼女はジムラン、ヨクシャン、メダン、ミデアン、イシバクおよびシュワを産んだ。
662 01 25 3 ヨクシャンの子はシバとデダン。デダンの子孫はアシュリびと、レトシびと、レウミびとである。
663 01 25 4 ミデアンの子孫はエパ、エペル、ヘノク、アビダ、エルダアであって、これらは皆ケトラの子孫であった。
664 01 25 5 アブラハムはその所有をことごとくイサクに与えた。
665 01 25 6 またそのそばめたちの子らにもアブラハムは物を与え、なお生きている間に彼らをその子イサクから離して、東の方、東の国に移らせた。
666 01 25 7 アブラハムの生きながらえた年は百七十五年である。
667 01 25 8 アブラハムは高齢に達し、老人となり、年が満ちて息絶え、死んでその民に加えられた。
668 01 25 9 その子イサクとイシマエルは彼をヘテびとゾハルの子エフロンの畑にあるマクペラのほら穴に葬った。これはマムレの向かいにあり、
669 01 25 10 アブラハムがヘテの人々から、買い取った畑であって、そこにアブラハムとその妻サラが葬られた。
670 01 25 11 アブラハムが死んだ後、神はその子イサクを祝福された。イサクはベエル・ラハイ・ロイのほとりに住んだ。
671 01 25 12 サラのつかえめエジプトびとハガルがアブラハムに産んだアブラハムの子イシマエルの系図は次のとおりである。
672 01 25 13 イシマエルの子らの名を世代にしたがって、その名をいえば次のとおりである。すなわちイシマエルの長子はネバヨテ、次はケダル、アデビエル、ミブサム、
673 01 25 14 ミシマ、ドマ、マッサ、
674 01 25 15 ハダデ、テマ、エトル、ネフシ、ケデマ。
675 01 25 16 これはイシマエルの子らであり、村と宿営とによる名であって、その氏族による十二人の君たちである。
676 01 25 17 イシマエルのよわいは百三十七年である。彼は息絶えて死に、その民に加えられた。
677 01 25 18 イシマエルの子らはハビラからエジプトの東、シュルまでの間に住んで、アシュルに及んだ。イシマエルはすべての兄弟の東に住んだ。
678 01 25 19 アブラハムの子イサクの系図は次のとおりである。アブラハムの子はイサクであって、
679 01 25 20 イサクは四十歳の時、パダンアラムのアラムびとベトエルの娘で、アラムびとラバンの妹リベカを妻にめとった。
680 01 25 21 イサクは妻が子を産まなかったので、妻のために主に祈り願った。主はその願いを聞かれ、妻リベカはみごもった。
681 01 25 22 ところがその子らが胎内で押し合ったので、リベカは言った、「こんなことでは、わたしはどうなるでしょう」。彼女は行って主に尋ねた。
682 01 25 23 主は彼女に言われた、「二つの国民があなたの胎内にあり、二つの民があなたの腹から別れて出る。一つの民は他の民よりも強く、兄は弟に仕えるであろう」。
683 01 25 24 彼女の出産の日がきたとき、胎内にはふたごがあった。
684 01 25 25 さきに出たのは赤くて全身毛ごろものようであった。それで名をエサウと名づけた。
685 01 25 26 その後に弟が出た。その手はエサウのかかとをつかんでいた。それで名をヤコブと名づけた。リベカが彼らを産んだ時、イサクは六十歳であった。
686 01 25 27 さてその子らは成長し、エサウは巧みな狩猟者となり、野の人となったが、ヤコブは穏やかな人で、天幕に住んでいた。
687 01 25 28 イサクは、しかの肉が好きだったので、エサウを愛したが、リベカはヤコブを愛した。
688 01 25 29 ある日ヤコブが、あつものを煮ていた時、エサウは飢え疲れて野から帰ってきた。
689 01 25 30 エサウはヤコブに言った、「わたしは飢え疲れた。お願いだ。赤いもの、その赤いものをわたしに食べさせてくれ」。彼が名をエドムと呼ばれたのはこのためである。
690 01 25 31 ヤコブは言った、「まずあなたの長子の特権をわたしに売りなさい」。
691 01 25 32 エサウは言った、「わたしは死にそうだ。長子の特権などわたしに何になろう」。
692 01 25 33 ヤコブはまた言った、「まずわたしに誓いなさい」。彼は誓って長子の特権をヤコブに売った。
693 01 25 34 そこでヤコブはパンとレンズ豆のあつものとをエサウに与えたので、彼は飲み食いして、立ち去った。このようにしてエサウは長子の特権を軽んじた。
694 01 26 1 アブラハムの時にあった初めのききんのほか、またききんがその国にあったので、イサクはゲラルにいるペリシテびとの王アビメレクの所へ行った。
695 01 26 2 その時、主は彼に現れて言われた、「エジプトへ下ってはならない。わたしがあなたに示す地にとどまりなさい。
696 01 26 3 あなたがこの地にとどまるなら、わたしはあなたと共にいて、あなたを祝福し、これらの国をことごとくあなたと、あなたの子孫とに与え、わたしがあなたの父アブラハムに誓った誓いを果そう。
697 01 26 4 またわたしはあなたの子孫を増して天の星のようにし、あなたの子孫にこれらの地をみな与えよう。そして地のすべての国民はあなたの子孫によって祝福をえるであろう。
698 01 26 5 アブラハムがわたしの言葉にしたがってわたしのさとしと、いましめと、さだめと、おきてとを守ったからである」。
699 01 26 6 こうしてイサクはゲラルに住んだ。
700 01 26 7 その所の人々が彼の妻のことを尋ねたとき、「彼女はわたしの妹です」と彼は言った。リベカは美しかったので、その所の人々がリベカのゆえに自分を殺すかもしれないと思って、「わたしの妻です」と言うのを恐れたからである。
701 01 26 8 イサクは長らくそこにいたが、ある日ペリシテびとの王アビメレクは窓から外をながめていて、イサクがその妻リベカと戯れているのを見た。
702 01 26 9 そこでアビメレクはイサクを召して言った、「彼女は確かにあなたの妻です。あなたはどうして『彼女はわたしの妹です』と言われたのですか」。イサクは彼に言った、「わたしは彼女のゆえに殺されるかもしれないと思ったからです」。
703 01 26 10 アビメレクは言った、「あなたはどうしてこんな事をわれわれにされたのですか。民のひとりが軽々しくあなたの妻と寝るような事があれば、その時あなたはわれわれに罪を負わせるでしょう」。
704 01 26 11 それでアビメレクはすべての民に命じて言った、「この人、またはその妻にさわる者は必ず死ななければならない」。
705 01 26 12 イサクはその地に種をまいて、その年に百倍の収穫を得た。このように主が彼を祝福されたので、
706 01 26 13 彼は富み、またますます栄えて非常に裕福になり、
707 01 26 14 羊の群れ、牛の群れ及び多くのしもべを持つようになったので、ペリシテびとは彼をねたんだ。
708 01 26 15 またペリシテびとは彼の父アブラハムの時に、父のしもべたちが掘ったすべての井戸をふさぎ、土で埋めた。
709 01 26 16 アビメレクはイサクに言った、「あなたはわれわれよりも、はるかに強くなられたから、われわれの所を去ってください」。
710 01 26 17 イサクはそこを去り、ゲラルの谷に天幕を張ってその所に住んだ。
711 01 26 18 そしてイサクは父アブラハムの時に人々の掘った水の井戸を再び掘った。アブラハムの死後、ペリシテびとがふさいだからである。イサクは父がつけた名にしたがってそれらに名をつけた。
712 01 26 19 しかしイサクのしもべたちが谷の中を掘って、そこにわき出る水の井戸を見つけたとき、
713 01 26 20 ゲラルの羊飼たちは、「この水はわれわれのものだ」と言って、イサクの羊飼たちと争ったので、イサクはその井戸の名をエセクと名づけた。彼らが彼と争ったからである。
714 01 26 21 彼らはまた一つの井戸を掘ったが、これをも争ったので、名をシテナと名づけた。
715 01 26 22 イサクはそこから移ってまた一つの井戸を掘ったが、彼らはこれを争わなかったので、その名をレホボテと名づけて言った、「いま主がわれわれの場所を広げられたから、われわれはこの地にふえるであろう」。
716 01 26 23 彼はそこからベエルシバに上った。
717 01 26 24 その夜、主は彼に現れて言われた、「わたしはあなたの父アブラハムの神である。あなたは恐れてはならない。わたしはあなたと共におって、あなたを祝福し、わたしのしもべアブラハムのゆえにあなたの子孫を増すであろう」。
718 01 26 25 それで彼はその所に祭壇を築いて、主の名を呼び、そこに天幕を張った。またイサクのしもべたちはそこに一つの井戸を掘った。
719 01 26 26 時にアビメレクがその友アホザテと、軍勢の長ピコルと共にゲラルからイサクのもとにきたので、
720 01 26 27 イサクは彼らに言った、「あなたがたはわたしを憎んで、あなたがたの中からわたしを追い出されたのに、どうしてわたしの所にこられたのですか」。
721 01 26 28 彼らは言った、「われわれは主があなたと共におられるのを、はっきり見ましたので、いまわれわれの間、すなわちわれわれとあなたとの間に一つの誓いを立てて、あなたと契約を結ぼうと思います。
722 01 26 29 われわれはあなたに害を加えたことはなく、ただ良い事だけをして、安らかに去らせたのですから、あなたはわれわれに悪い事をしてはなりません。まことにあなたは主に祝福されたかたです」。
723 01 26 30 そこでイサクは彼らのためにふるまいを設けた。彼らは飲み食いし、
724 01 26 31 あくる朝、はやく起きて互に誓った。こうしてイサクは彼らを去らせたので、彼らはイサクのもとから穏やかに去った。
725 01 26 32 その日、イサクのしもべたちがきて、自分たちが掘った井戸について彼に告げて言った、「わたしたちは水を見つけました」。
726 01 26 33 イサクはそれをシバと名づけた。これによってその町の名は今日にいたるまでベエルシバといわれている。
727 01 26 34 エサウは四十歳の時、ヘテびとベエリの娘ユデテとヘテびとエロンの娘バスマテとを妻にめとった。
728 01 26 35 彼女たちはイサクとリベカにとって心の痛みとなった。
729 01 27 1 イサクは年老い、目がかすんで見えなくなった時、長子エサウを呼んで言った、「子よ」。彼は答えて言った、「ここにおります」。
730 01 27 2 イサクは言った。「わたしは年老いて、いつ死ぬかも知れない。
731 01 27 3 それであなたの武器、弓矢をもって野に出かけ、わたしのために、しかの肉をとってきて、
732 01 27 4 わたしの好きなおいしい食べ物を作り、持ってきて食べさせよ。わたしは死ぬ前にあなたを祝福しよう」。
733 01 27 5 イサクがその子エサウに語るのをリベカは聞いていた。やがてエサウが、しかの肉を獲ようと野に出かけたとき、
734 01 27 6 リベカはその子ヤコブに言った、「わたしは聞いていましたが、父は兄エサウに、
735 01 27 7 『わたしのために、しかの肉をとってきて、おいしい食べ物を作り、わたしに食べさせよ。わたしは死ぬ前に、主の前であなたを祝福しよう』と言いました。
736 01 27 8 それで、子よ、わたしの言葉にしたがい、わたしの言うとおりにしなさい。
737 01 27 9 群れの所へ行って、そこからやぎの子の良いのを二頭わたしの所に取ってきなさい。わたしはそれで父のために、父の好きなおいしい食べ物を作りましょう。
738 01 27 10 あなたはそれを持って行って父に食べさせなさい。父は死ぬ前にあなたを祝福するでしょう」。
739 01 27 11 ヤコブは母リベカに言った、「兄エサウは毛深い人ですが、わたしはなめらかです。
740 01 27 12 おそらく父はわたしにさわってみるでしょう。そうすればわたしは父を欺く者と思われ、祝福を受けず、かえってのろいを受けるでしょう」。
741 01 27 13 母は彼に言った、「子よ、あなたがうけるのろいはわたしが受けます。ただ、わたしの言葉に従い、行って取ってきなさい」。
742 01 27 14 そこで彼は行ってやぎの子を取り、母の所に持ってきたので、母は父の好きなおいしい食べ物を作った。
743 01 27 15 リベカは家にあった長子エサウの晴着を取って、弟ヤコブに着せ、
744 01 27 16 また子やぎの皮を手と首のなめらかな所とにつけさせ、
745 01 27 17 彼女が作ったおいしい食べ物とパンとをその子ヤコブの手にわたした。
746 01 27 18 そこでヤコブは父の所へ行って言った、「父よ」。すると父は言った、「わたしはここにいる。子よ、あなたはだれか」。
747 01 27 19 ヤコブは父に言った、「長子エサウです。あなたがわたしに言われたとおりにいたしました。どうぞ起きて、すわってわたしのしかの肉を食べ、あなたみずからわたしを祝福してください」。
748 01 27 20 イサクはその子に言った、「子よ、どうしてあなたはこんなに早く手に入れたのか」。彼は言った、「あなたの神、主がわたしにしあわせを授けられたからです」。
749 01 27 21 イサクはヤコブに言った、「子よ、近寄りなさい。わたしは、さわってみて、あなたが確かにわが子エサウであるかどうかをみよう」。
750 01 27 22 ヤコブが、父イサクに近寄ったので、イサクは彼にさわってみて言った、「声はヤコブの声だが、手はエサウの手だ」。
751 01 27 23 ヤコブの手が兄エサウの手のように毛深かったため、イサクはヤコブを見わけることができなかったので、彼を祝福した。
752 01 27 24 イサクは言った、「あなたは確かにわが子エサウですか」。彼は言った、「そうです」。
753 01 27 25 イサクは言った、「わたしの所へ持ってきなさい。わが子のしかの肉を食べて、わたしみずから、あなたを祝福しよう」。ヤコブがそれを彼の所に持ってきたので、彼は食べた。またぶどう酒を持ってきたので、彼は飲んだ。
754 01 27 26 そして父イサクは彼に言った、「子よ、さあ、近寄ってわたしに口づけしなさい」。
755 01 27 27 彼が近寄って口づけした時、イサクはその着物のかおりをかぎ、彼を祝福して言った、「ああ、わが子のかおりは、主が祝福された野のかおりのようだ。
756 01 27 28 どうか神が、天の露と、地の肥えたところと、多くの穀物と、新しいぶどう酒とをあなたに賜わるように。
757 01 27 29 もろもろの民はあなたに仕え、もろもろの国はあなたに身をかがめる。あなたは兄弟たちの主となり、あなたの母の子らは、あなたに身をかがめるであろう。あなたをのろう者はのろわれ、あなたを祝福する者は祝福される」。
758 01 27 30 イサクがヤコブを祝福し終って、ヤコブが父イサクの前から出て行くとすぐ、兄エサウが狩から帰ってきた。
759 01 27 31 彼もまたおいしい食べ物を作って、父の所に持ってきて、言った、「父よ、起きてあなたの子のしかの肉を食べ、あなたみずから、わたしを祝福してください」。
760 01 27 32 父イサクは彼に言った、「あなたは、だれか」。彼は言った、「わたしはあなたの子、長子エサウです」。
761 01 27 33 イサクは激しくふるえて言った、「それでは、あのしかの肉を取って、わたしに持ってきた者はだれか。わたしはあなたが来る前に、みんな食べて彼を祝福した。ゆえに彼が祝福を得るであろう」。
762 01 27 34 エサウは父の言葉を聞いた時、大声をあげ、激しく叫んで、父に言った、「父よ、わたしを、わたしをも祝福してください」。
763 01 27 35 イサクは言った、「あなたの弟が偽ってやってきて、あなたの祝福を奪ってしまった」。
764 01 27 36 エサウは言った、「よくもヤコブと名づけたものだ。彼は二度までもわたしをおしのけた。さきには、わたしの長子の特権を奪い、こんどはわたしの祝福を奪った」。また言った、「あなたはわたしのために祝福を残しておかれませんでしたか」。
765 01 27 37 イサクは答えてエサウに言った、「わたしは彼をあなたの主人とし、兄弟たちを皆しもべとして彼に与え、また穀物とぶどう酒を彼に授けた。わが子よ、今となっては、あなたのために何ができようか」。
766 01 27 38 エサウは父に言った、「父よ、あなたの祝福はただ一つだけですか。父よ、わたしを、わたしをも祝福してください」。エサウは声をあげて泣いた。
767 01 27 39 父イサクは答えて彼に言った、「あなたのすみかは地の肥えた所から離れ、また上なる天の露から離れるであろう。
768 01 27 40 あなたはつるぎをもって世を渡り、あなたの弟に仕えるであろう。しかし、あなたが勇み立つ時、首から、そのくびきを振り落すであろう」。
769 01 27 41 こうしてエサウは父がヤコブに与えた祝福のゆえにヤコブを憎んだ。エサウは心の内で言った、「父の喪の日も遠くはないであろう。その時、弟ヤコブを殺そう」。
770 01 27 42 しかしリベカは長子エサウのこの言葉を人づてに聞いたので、人をやり、弟ヤコブを呼んで言った、「兄エサウはあなたを殺そうと考えて、みずから慰めています。
771 01 27 43 子よ、今わたしの言葉に従って、すぐハランにいるわたしの兄ラバンのもとにのがれ、
772 01 27 44 あなたの兄の怒りが解けるまで、しばらく彼の所にいなさい。
773 01 27 45 兄の憤りが解けて、あなたのした事を兄が忘れるようになったならば、わたしは人をやって、あなたをそこから迎えましょう。どうして、わたしは一日のうちにあなたがたふたりを失ってよいでしょうか」。
774 01 27 46 リベカはイサクに言った、「わたしはヘテびとの娘どものことで、生きているのがいやになりました。もしヤコブがこの地の、あの娘どものようなヘテびとの娘を妻にめとるなら、わたしは生きていて、何になりましょう」。
775 01 28 1 イサクはヤコブを呼んで、これを祝福し、命じて言った、「あなたはカナンの娘を妻にめとってはならない。
776 01 28 2 立ってパダンアラムへ行き、あなたの母の父ベトエルの家に行って、そこであなたの母の兄ラバンの娘を妻にめとりなさい。
777 01 28 3 全能の神が、あなたを祝福し、多くの子を得させ、かつふえさせて、多くの国民とし、
778 01 28 4 またアブラハムの祝福をあなたと子孫とに与えて、神がアブラハムに授けられたあなたの寄留の地を継がせてくださるように」。
779 01 28 5 こうしてイサクはヤコブを送り出した。ヤコブはパダンアラムに向かい、アラムびとベトエルの子で、ヤコブとエサウとの母リベカの兄ラバンのもとへ行った。
780 01 28 6 さてエサウは、イサクがヤコブを祝福して、パダンアラムにつかわし、そこから妻をめとらせようとしたこと、彼を祝福し、命じて「あなたはカナンの娘を妻にめとってはならない」と言ったこと、
781 01 28 7 そしてヤコブが父母の言葉に従って、パダンアラムへ行ったことを知ったとき、
782 01 28 8 彼はカナンの娘が父イサクの心にかなわないのを見た。
783 01 28 9 そこでエサウはイシマエルの所に行き、すでにある妻たちのほかにアブラハムの子イシマエルの娘で、ネバヨテの妹マハラテを妻にめとった。
784 01 28 10 さてヤコブはベエルシバを立って、ハランへ向かったが、
785 01 28 11 一つの所に着いた時、日が暮れたので、そこに一夜を過ごし、その所の石を取ってまくらとし、そこに伏して寝た。
786 01 28 12 時に彼は夢をみた。一つのはしごが地の上に立っていて、その頂は天に達し、神の使たちがそれを上り下りしているのを見た。
787 01 28 13 そして主は彼のそばに立って言われた、「わたしはあなたの父アブラハムの神、イサクの神、主である。あなたが伏している地を、あなたと子孫とに与えよう。
788 01 28 14 あなたの子孫は地のちりのように多くなって、西、東、北、南にひろがり、地の諸族はあなたと子孫とによって祝福をうけるであろう。
789 01 28 15 わたしはあなたと共にいて、あなたがどこへ行くにもあなたを守り、あなたをこの地に連れ帰るであろう。わたしは決してあなたを捨てず、あなたに語った事を行うであろう」。
790 01 28 16 ヤコブは眠りからさめて言った、「まことに主がこの所におられるのに、わたしは知らなかった」。
791 01 28 17 そして彼は恐れて言った、「これはなんという恐るべき所だろう。これは神の家である。これは天の門だ」。
792 01 28 18 ヤコブは朝はやく起きて、まくらとしていた石を取り、それを立てて柱とし、その頂に油を注いで、
793 01 28 19 その所の名をベテルと名づけた。その町の名は初めはルズといった。
794 01 28 20 ヤコブは誓いを立てて言った、「神がわたしと共にいまし、わたしの行くこの道でわたしを守り、食べるパンと着る着物を賜い、
795 01 28 21 安らかに父の家に帰らせてくださるなら、主をわたしの神といたしましょう。
796 01 28 22 またわたしが柱に立てたこの石を神の家といたしましょう。そしてあなたがくださるすべての物の十分の一を、わたしは必ずあなたにささげます」。
797 01 29 1 ヤコブはその旅を続けて東の民の地へ行った。
798 01 29 2 見ると野に一つの井戸があって、そのかたわらに羊の三つの群れが伏していた。人々はその井戸から群れに水を飲ませるのであったが、井戸の口には大きな石があった。
799 01 29 3 群れが皆そこに集まると、人々は井戸の口から石をころがして羊に水を飲ませ、その石をまた井戸の口の元のところに返しておくのである。
800 01 29 4 ヤコブは人々に言った、「兄弟たちよ、あなたがたはどこからこられたのですか」。彼らは言った、「わたしたちはハランからです」。
801 01 29 5 ヤコブは彼らに言った、「あなたがたはナホルの子ラバンを知っていますか」。彼らは言った、「知っています」。
802 01 29 6 ヤコブはまた彼らに言った、「彼は無事ですか」。彼らは言った、「無事です。御覧なさい。彼の娘ラケルはいま羊と一緒にここへきます」。
803 01 29 7 ヤコブは言った、「日はまだ高いし、家畜を集める時でもない。あなたがたは羊に水を飲ませてから、また行って飼いなさい」。
804 01 29 8 彼らは言った、「わたしたちはそれはできないのです。群れがみな集まった上で、井戸の口から石をころがし、それから羊に水を飲ませるのです」。
805 01 29 9 ヤコブがなお彼らと語っている時に、ラケルは父の羊と一緒にきた。彼女は羊を飼っていたからである。
806 01 29 10 ヤコブは母の兄ラバンの娘ラケルと母の兄ラバンの羊とを見た。そしてヤコブは進み寄って井戸の口から石をころがし、母の兄ラバンの羊に水を飲ませた。
807 01 29 11 ヤコブはラケルに口づけし、声をあげて泣いた。
808 01 29 12 ヤコブはラケルに、自分がラケルの父のおいであり、リベカの子であることを告げたので、彼女は走って行って父に話した。
809 01 29 13 ラバンは妹の子ヤコブがきたという知らせを聞くとすぐ、走って行ってヤコブを迎え、これを抱いて口づけし、家に連れてきた。そこでヤコブはすべての事をラバンに話した。
810 01 29 14 ラバンは彼に言った、「あなたはほんとうにわたしの骨肉です」。ヤコブは一か月の間彼と共にいた。
811 01 29 15 時にラバンはヤコブに言った、「あなたはわたしのおいだからといって、ただでわたしのために働くこともないでしょう。どんな報酬を望みますか、わたしに言ってください」。
812 01 29 16 さてラバンにはふたりの娘があった。姉の名はレアといい、妹の名はラケルといった。
813 01 29 17 レアは目が弱かったが、ラケルは美しくて愛らしかった。
814 01 29 18 ヤコブはラケルを愛したので、「わたしは、あなたの妹娘ラケルのために七年あなたに仕えましょう」と言った。
815 01 29 19 ラバンは言った、「彼女を他人にやるよりもあなたにやる方がよい。わたしと一緒にいなさい」。
816 01 29 20 こうして、ヤコブは七年の間ラケルのために働いたが、彼女を愛したので、ただ数日のように思われた。
817 01 29 21 ヤコブはラバンに言った、「期日が満ちたから、わたしの妻を与えて、妻の所にはいらせてください」。
818 01 29 22 そこでラバンはその所の人々をみな集めて、ふるまいを設けた。
819 01 29 23 夕暮となったとき、娘レアをヤコブのもとに連れてきたので、ヤコブは彼女の所にはいった。
820 01 29 24 ラバンはまた自分のつかえめジルパを娘レアにつかえめとして与えた。
821 01 29 25 朝になって、見ると、それはレアであったので、ヤコブはラバンに言った、「あなたはどうしてこんな事をわたしにされたのですか。わたしはラケルのために働いたのではありませんか。どうしてあなたはわたしを欺いたのですか」。
822 01 29 26 ラバンは言った、「妹を姉より先にとつがせる事はわれわれの国ではしません。
823 01 29 27 まずこの娘のために一週間を過ごしなさい。そうすればあの娘もあなたにあげよう。あなたは、そのため更に七年わたしに仕えなければならない」。
824 01 29 28 ヤコブはそのとおりにして、その一週間が終ったので、ラバンは娘ラケルをも妻として彼に与えた。
825 01 29 29 ラバンはまた自分のつかえめビルハを娘ラケルにつかえめとして与えた。
826 01 29 30 ヤコブはまたラケルの所にはいった。彼はレアよりもラケルを愛して、更に七年ラバンに仕えた。
827 01 29 31 主はレアがきらわれるのを見て、その胎を開かれたが、ラケルは、みごもらなかった。
828 01 29 32 レアは、みごもって子を産み、名をルベンと名づけて、言った、「主がわたしの悩みを顧みられたから、今は夫もわたしを愛するだろう」。
829 01 29 33 彼女はまた、みごもって子を産み、「主はわたしが嫌われるのをお聞きになって、わたしにこの子をも賜わった」と言って、名をシメオンと名づけた。
830 01 29 34 彼女はまた、みごもって子を産み、「わたしは彼に三人の子を産んだから、こんどこそは夫もわたしに親しむだろう」と言って、名をレビと名づけた。
831 01 29 35 彼女はまた、みごもって子を産み、「わたしは今、主をほめたたえる」と言って名をユダと名づけた。そこで彼女の、子を産むことはやんだ。
832 01 30 1 ラケルは自分がヤコブに子を産まないのを知った時、姉をねたんでヤコブに言った、「わたしに子どもをください。さもないと、わたしは死にます」。
833 01 30 2 ヤコブはラケルに向かい怒って言った、「あなたの胎に子どもをやどらせないのは神です。わたしが神に代ることができようか」。
834 01 30 3 ラケルは言った、「わたしのつかえめビルハがいます。彼女の所におはいりなさい。彼女が子を産んで、わたしのひざに置きます。そうすれば、わたしもまた彼女によって子を持つでしょう」。
835 01 30 4 ラケルはつかえめビルハを彼に与えて、妻とさせたので、ヤコブは彼女の所にはいった。
836 01 30 5 ビルハは、みごもってヤコブに子を産んだ。
837 01 30 6 そこでラケルは、「神はわたしの訴えに答え、またわたしの声を聞いて、わたしに子を賜わった」と言って、名をダンと名づけた。
838 01 30 7 ラケルのつかえめビルハはまた、みごもって第二の子をヤコブに産んだ。
839 01 30 8 そこでラケルは、「わたしは激しい争いで、姉と争って勝った」と言って、名をナフタリと名づけた。
840 01 30 9 さてレアは自分が子を産むことのやんだのを見たとき、つかえめジルパを取り、妻としてヤコブに与えた。
841 01 30 10 レアのつかえめジルパはヤコブに子を産んだ。
842 01 30 11 そこでレアは、「幸運がきた」と言って、名をガドと名づけた。
843 01 30 12 レアのつかえめジルパは第二の子をヤコブに産んだ。
844 01 30 13 そこでレアは、「わたしは、しあわせです。娘たちはわたしをしあわせな者と言うでしょう」と言って、名をアセルと名づけた。
845 01 30 14 さてルベンは麦刈りの日に野に出て、野で恋なすびを見つけ、それを母レアのもとに持ってきた。ラケルはレアに言った、「あなたの子の恋なすびをどうぞわたしにください」。
846 01 30 15 レアはラケルに言った、「あなたがわたしの夫を取ったのは小さな事でしょうか。その上、あなたはまたわたしの子の恋なすびをも取ろうとするのですか」。ラケルは言った、「それではあなたの子の恋なすびに換えて、今夜彼をあなたと共に寝させましょう」。
847 01 30 16 夕方になって、ヤコブが野から帰ってきたので、レアは彼を出迎えて言った、「わたしの子の恋なすびをもって、わたしがあなたを雇ったのですから、あなたはわたしの所に、はいらなければなりません」。ヤコブはその夜レアと共に寝た。
848 01 30 17 神はレアの願いを聞かれたので、彼女はみごもって五番目の子をヤコブに産んだ。
849 01 30 18 そこでレアは、「わたしがつかえめを夫に与えたから、神がわたしにその価を賜わったのです」と言って、名をイッサカルと名づけた。
850 01 30 19 レアはまた、みごもって六番目の子をヤコブに産んだ。
851 01 30 20 そこでレアは、「神はわたしに良い賜物をたまわった。わたしは六人の子を夫に産んだから、今こそ彼はわたしと一緒に住むでしょう」と言って、その名をゼブルンと名づけた。
852 01 30 21 その後、彼女はひとりの娘を産んで、名をデナと名づけた。
853 01 30 22 次に神はラケルを心にとめられ、彼女の願いを聞き、その胎を開かれたので、
854 01 30 23 彼女は、みごもって男の子を産み、「神はわたしの恥をすすいでくださった」と言って、
855 01 30 24 名をヨセフと名づけ、「主がわたしに、なおひとりの子を加えられるように」と言った。
856 01 30 25 ラケルがヨセフを産んだ時、ヤコブはラバンに言った、「わたしを去らせて、わたしの故郷、わたしの国へ行かせてください。
857 01 30 26 あなたに仕えて得たわたしの妻子を、わたしに与えて行かせてください。わたしがあなたのために働いた骨折りは、あなたがごぞんじです」。
858 01 30 27 ラバンは彼に言った、「もし、あなたの心にかなうなら、とどまってください。わたしは主があなたのゆえに、わたしを恵まれるしるしを見ました」。
859 01 30 28 また言った、「あなたの報酬を申し出てください。わたしはそれを払います」。
860 01 30 29 ヤコブは彼に言った、「わたしがどのようにあなたに仕えたか、またどのようにあなたの家畜を飼ったかは、あなたがごぞんじです。
861 01 30 30 わたしが来る前には、あなたの持っておられたものはわずかでしたが、ふえて多くなりました。主はわたしの行く所どこでも、あなたを恵まれました。しかし、いつになったらわたしも自分の家を成すようになるでしょうか」。
862 01 30 31 彼は言った、「何をあなたにあげようか」。ヤコブは言った、「なにもわたしにくださるに及びません。もしあなたが、わたしのためにこの一つの事をしてくださるなら、わたしは今一度あなたの群れを飼い、守りましょう。
863 01 30 32 わたしはきょう、あなたの群れをみな回ってみて、その中からすべてぶちとまだらの羊、およびすべて黒い小羊と、やぎの中のまだらのものと、ぶちのものとを移しますが、これをわたしの報酬としましょう。
864 01 30 33 あとで、あなたがきて、あなたの前でわたしの報酬をしらべる時、わたしの正しい事が証明されるでしょう。もしも、やぎの中にぶちのないもの、まだらでないものがあったり、小羊の中に黒くないものがあれば、それはみなわたしが盗んだものとなるでしょう」。
865 01 30 34 ラバンは言った、「よろしい。あなたの言われるとおりにしましょう」。
866 01 30 35 そこでラバンはその日、雄やぎのしまのあるもの、まだらのもの、すべて雌やぎのぶちのもの、まだらのもの、すべて白みをおびているもの、またすべて小羊の中の黒いものを移して子らの手にわたし、
867 01 30 36 ヤコブとの間に三日路の隔たりを設けた。ヤコブはラバンの残りの群れを飼った。
868 01 30 37 ヤコブは、はこやなぎと、あめんどうと、すずかけの木のなまの枝を取り、皮をはいでそれに白い筋をつくり、枝の白い所を表わし、
869 01 30 38 皮をはいだ枝を、群れがきて水を飲む鉢、すなわち水ぶねの中に、群れに向かわせて置いた。群れは水を飲みにきた時に、はらんだ。
870 01 30 39 すなわち群れは枝の前で、はらんで、しまのあるもの、ぶちのもの、まだらのものを産んだ。
871 01 30 40 ヤコブはその小羊を別においた。彼はまた群れの顔をラバンの群れのしまのあるものと、すべて黒いものとに向かわせた。そして自分の群れを別にまとめておいて、ラバンの群れには、入れなかった。
872 01 30 41 また群れの強いものが発情した時には、ヤコブは水ぶねの中に、その群れの目の前に、かの枝を置いて、枝の間で、はらませた。
873 01 30 42 けれども群れの弱いものの時には、それを置かなかった。こうして弱いものはラバンのものとなり、強いものはヤコブのものとなったので、
874 01 30 43 この人は大いに富み、多くの群れと、男女の奴隷、およびらくだ、ろばを持つようになった。
875 01 31 1 さてヤコブはラバンの子らが、「ヤコブはわれわれの父の物をことごとく奪い、父の物によってあのすべての富を獲たのだ」と言っているのを聞いた。
876 01 31 2 またヤコブがラバンの顔を見るのに、それは自分に対して以前のようではなかった。
877 01 31 3 主はヤコブに言われた、「あなたの先祖の国へ帰り、親族のもとに行きなさい。わたしはあなたと共にいるであろう」。
878 01 31 4 そこでヤコブは人をやって、ラケルとレアとを、野にいる自分の群れのところに招き、
879 01 31 5 彼女らに言った、「わたしがあなたがたの父の顔を見るのに、わたしに対して以前のようではない。しかし、わたしの父の神はわたしと共におられる。
880 01 31 6 あなたがたが知っているように、わたしは力のかぎり、あなたがたの父に仕えてきた。
881 01 31 7 しかし、あなたがたの父はわたしを欺いて、十度もわたしの報酬を変えた。けれども神は彼がわたしに害を加えることをお許しにならなかった。
882 01 31 8 もし彼が、『ぶちのものはあなたの報酬だ』と言えば、群れは皆ぶちのものを産んだ。もし彼が、『しまのあるものはあなたの報酬だ』と言えば、群れは皆しまのあるものを産んだ。
883 01 31 9 こうして神はあなたがたの父の家畜をとってわたしに与えられた。
884 01 31 10 また群れが発情した時、わたしが夢に目をあげて見ると、群れの上に乗っている雄やぎは皆しまのあるもの、ぶちのもの、霜ふりのものであった。
885 01 31 11 その時、神の使が夢の中でわたしに言った、『ヤコブよ』。わたしは答えた、『ここにおります』。
886 01 31 12 神の使は言った、『目を上げて見てごらん。群れの上に乗っている雄やぎは皆しまのあるもの、ぶちのもの、霜ふりのものです。わたしはラバンがあなたにしたことをみな見ています。
887 01 31 13 わたしはベテルの神です。かつてあなたはあそこで柱に油を注いで、わたしに誓いを立てましたが、いま立ってこの地を出て、あなたの生れた国へ帰りなさい』」。
888 01 31 14 ラケルとレアは答えて言った、「わたしたちの父の家に、なおわたしたちの受くべき分、また嗣業がありましょうか。
889 01 31 15 わたしたちは父に他人のように思われているではありませんか。彼はわたしたちを売ったばかりでなく、わたしたちのその金をさえ使い果たしたのです。
890 01 31 16 神がわたしたちの父から取りあげられた富は、みなわたしたちとわたしたちの子どものものです。だから何事でも神があなたにお告げになった事をしてください」。
891 01 31 17 そこでヤコブは立って、子らと妻たちをらくだに乗せ、
892 01 31 18 またすべての家畜、すなわち彼がパダンアラムで獲た家畜と、すべての財産を携えて、カナンの地におる父イサクのもとへ赴いた。
893 01 31 19 その時ラバンは羊の毛を切るために出ていたので、ラケルは父の所有のテラピムを盗み出した。
894 01 31 20 またヤコブはアラムびとラバンを欺き、自分の逃げ去るのを彼に告げなかった。
895 01 31 21 こうして彼はすべての持ち物を携えて逃げ、立って川を渡り、ギレアデの山地へ向かった。
896 01 31 22 三日目になって、ヤコブの逃げ去ったことが、ラバンに聞えたので、
897 01 31 23 彼は一族を率いて、七日の間そのあとを追い、ギレアデの山地で追いついた。
898 01 31 24 しかし、神は夜の夢にアラムびとラバンに現れて言われた、「あなたは心してヤコブに、よしあしを言ってはなりません」。
899 01 31 25 ラバンはついにヤコブに追いついたが、ヤコブが山に天幕を張っていたので、ラバンも一族と共にギレアデの山に天幕を張った。
900 01 31 26 ラバンはヤコブに言った、「あなたはなんという事をしたのですか。あなたはわたしを欺いてわたしの娘たちをいくさのとりこのように引いて行きました。
901 01 31 27 なぜあなたはわたしに告げずに、ひそかに逃げ去ってわたしを欺いたのですか。わたしは手鼓や琴で喜び歌ってあなたを送りだそうとしていたのに。
902 01 31 28 なぜわたしの孫や娘にわたしが口づけするのを許さなかったのですか。あなたは愚かな事をしました。
903 01 31 29 わたしはあなたがたに害を加える力をもっているが、あなたがたの父の神が昨夜わたしに告げて、『おまえは心して、ヤコブによしあしを言うな』と言われました。
904 01 31 30 今あなたが逃げ出したのは父の家が非常に恋しくなったからでしょうが、なぜあなたはわたしの神を盗んだのですか」。
905 01 31 31 ヤコブはラバンに答えた、「たぶんあなたが娘たちをわたしから奪いとるだろうと思ってわたしは恐れたからです。
906 01 31 32 だれの所にでもあなたの神が見つかったら、その者を生かしてはおきません。何かあなたの物がわたしのところにあるか、われわれの一族の前で、調べてみて、それをお取りください」。ラケルが神を盗んだことをヤコブは知らなかったからである。
907 01 31 33 そこでラバンはヤコブの天幕にはいり、またレアの天幕にはいり、更にふたりのはしための天幕にはいってみたが、見つからなかったので、レアの天幕を出てラケルの天幕にはいった。
908 01 31 34 しかし、ラケルはすでにテラピムを取って、らくだのくらの下に入れ、その上にすわっていたので、ラバンは、くまなく天幕の中を捜したが、見つからなかった。
909 01 31 35 その時ラケルは父に言った、「わたしは女の常のことがあって、あなたの前に立ち上がることができません。わが主よ、どうかお怒りにならぬよう」。彼は捜したがテラピムは見つからなかった。
910 01 31 36 そこでヤコブは怒ってラバンを責めた。そしてヤコブはラバンに言った、「わたしにどんなあやまちがあり、どんな罪があって、あなたはわたしのあとを激しく追ったのですか。
911 01 31 37 あなたはわたしの物をことごとく探られたが、何かあなたの家の物が見つかりましたか。それを、ここに、わたしの一族と、あなたの一族の前に置いて、われわれふたりの間をさばかせましょう。
912 01 31 38 わたしはこの二十年、あなたと一緒にいましたが、その間あなたの雌羊も雌やぎも子を産みそこねたことはなく、またわたしはあなたの群れの雄羊を食べたこともありませんでした。
913 01 31 39 また野獣が、かみ裂いたものは、あなたのもとに持ってこないで、自分でそれを償いました。また昼盗まれたものも、夜盗まれたものも、あなたはわたしにその償いを求められました。
914 01 31 40 わたしのことを言えば、昼は暑さに、夜は寒さに悩まされて、眠ることもできませんでした。
915 01 31 41 わたしはこの二十年あなたの家族のひとりでありました。わたしはあなたのふたりの娘のために十四年、またあなたの群れのために六年、あなたに仕えましたが、あなたは十度もわたしの報酬を変えられました。
916 01 31 42 もし、わたしの父の神、アブラハムの神、イサクのかしこむ者がわたしと共におられなかったなら、あなたはきっとわたしを、から手で去らせたでしょう。神はわたしの悩みと、わたしの労苦とを顧みられて昨夜あなたを戒められたのです」。
917 01 31 43 ラバンは答えてヤコブに言った、「娘たちはわたしの娘、子どもたちはわたしの孫です。また群れはわたしの群れ、あなたの見るものはみなわたしのものです。これらのわたしの娘たちのため、また彼らが産んだ子どもたちのため、きょうわたしは何をすることができましょうか。
918 01 31 44 さあ、それではわたしとあなたと契約を結んで、これをわたしとあなたとの間の証拠としましょう」。
919 01 31 45 そこでヤコブは石を取り、それを立てて柱とした。
920 01 31 46 ヤコブはまた一族の者に言った、「石を集めてください」。彼らは石を取って、一つの石塚を造った。こうして彼らはその石塚のかたわらで食事をした。
921 01 31 47 ラバンはこれをエガル・サハドタと名づけ、ヤコブはこれをガルエドと名づけた。
922 01 31 48 そしてラバンは言った、「この石塚はきょうわたしとあなたとの間の証拠となります」。それでその名はガルエドと呼ばれた。
923 01 31 49 またミズパとも呼ばれた。彼がこう言ったからである、「われわれが互に別れたのちも、どうか主がわたしとあなたとの間を見守られるように。
924 01 31 50 もしあなたがわたしの娘を虐待したり、わたしの娘のほかに妻をめとることがあれば、たといそこにだれひとりいなくても、神はわたしとあなたとの間の証人でいらせられる」。
925 01 31 51 更にラバンはヤコブに言った、「あなたとわたしとの間にわたしが建てたこの石塚をごらんなさい、この柱をごらんなさい。
926 01 31 52 この石塚を越えてわたしがあなたに害を加えず、またこの石塚とこの柱を越えてあなたがわたしに害を加えないように、どうかこの石塚があかしとなり、この柱があかしとなるように。
927 01 31 53 どうかアブラハムの神、ナホルの神、彼らの父の神がわれわれの間をさばかれるように」。ヤコブは父イサクのかしこむ者によって誓った。
928 01 31 54 そしてヤコブは山で犠牲をささげ、一族を招いて、食事をした。彼らは食事をして山に宿った。
929 01 31 55 あくる朝ラバンは早く起き、孫と娘たちに口づけして彼らを祝福し、去って家に帰った。
930 01 32 1 さて、ヤコブが旅路に進んだとき、神の使たちが彼に会った。
931 01 32 2 ヤコブは彼らを見て、「これは神の陣営です」と言って、その所の名をマハナイムと名づけた。
932 01 32 3 ヤコブはセイルの地、エドムの野に住む兄エサウのもとに、さきだって使者をつかわした。
933 01 32 4 すなわちそれに命じて言った、「あなたがたはわたしの主人エサウにこう言いなさい、『あなたのしもべヤコブはこう言いました。わたしはラバンのもとに寄留して今までとどまりました。
934 01 32 5 わたしは牛、ろば、羊、男女の奴隷を持っています。それでわが主に申し上げて、あなたの前に恵みを得ようと人をつかわしたのです』」。
935 01 32 6 使者はヤコブのもとに帰って言った、「わたしたちはあなたの兄エサウのもとへ行きました。彼もまたあなたを迎えようと四百人を率いてきます」。
936 01 32 7 そこでヤコブは大いに恐れ、苦しみ、共にいる民および羊、牛、らくだを二つの組に分けて、
937 01 32 8 言った、「たとい、エサウがきて、一つの組を撃っても、残りの組はのがれるであろう」。
938 01 32 9 ヤコブはまた言った、「父アブラハムの神、父イサクの神よ、かつてわたしに『おまえの国へ帰り、おまえの親族に行け。わたしはおまえを恵もう』と言われた主よ、
939 01 32 10 あなたがしもべに施されたすべての恵みとまことをわたしは受けるに足りない者です。わたしは、つえのほか何も持たないでこのヨルダンを渡りましたが、今は二つの組にもなりました。
940 01 32 11 どうぞ、兄エサウの手からわたしをお救いください。わたしは彼がきて、わたしを撃ち、母や子供たちにまで及ぶのを恐れます。
941 01 32 12 あなたは、かつて、『わたしは必ずおまえを恵み、おまえの子孫を海の砂の数えがたいほど多くしよう』と言われました」。
942 01 32 13 彼はその夜そこに宿り、持ち物のうちから兄エサウへの贈り物を選んだ。
943 01 32 14 すなわち雌やぎ二百、雄やぎ二十、雌羊二百、雄羊二十、
944 01 32 15 乳らくだ三十とその子、雌牛四十、雄牛十、雌ろば二十、雄ろば十。
945 01 32 16 彼はこれらをそれぞれの群れに分けて、しもべたちの手にわたし、しもべたちに言った、「あなたがたはわたしの先に進みなさい、そして群れと群れとの間には隔たりをおきなさい」。
946 01 32 17 また先頭の者に命じて言った、「もし、兄エサウがあなたに会って『だれのしもべで、どこへ行くのか。あなたの前にあるこれらのものはだれの物か』と尋ねたら、
947 01 32 18 『あなたのしもべヤコブの物で、わが主エサウにおくる贈り物です。彼もわたしたちのうしろにおります』と言いなさい」。
948 01 32 19 彼は第二の者にも、第三の者にも、また群れ群れについて行くすべての者にも命じて言った、「あなたがたがエサウに会うときは、同じように彼に告げて、
949 01 32 20 『あなたのしもべヤコブもわれわれのうしろにおります』と言いなさい」。ヤコブは、「わたしがさきに送る贈り物をもってまず彼をなだめ、それから、彼の顔を見よう。そうすれば、彼はわたしを迎えてくれるであろう」と思ったからである。
950 01 32 21 こうして贈り物は彼に先立って渡り、彼はその夜、宿営にやどった。
951 01 32 22 彼はその夜起きて、ふたりの妻とふたりのつかえめと十一人の子どもとを連れてヤボクの渡しをわたった。
952 01 32 23 すなわち彼らを導いて川を渡らせ、また彼の持ち物を渡らせた。
953 01 32 24 ヤコブはひとりあとに残ったが、ひとりの人が、夜明けまで彼と組打ちした。
954 01 32 25 ところでその人はヤコブに勝てないのを見て、ヤコブのもものつがいにさわったので、ヤコブのもものつがいが、その人と組打ちするあいだにはずれた。
955 01 32 26 その人は言った、「夜が明けるからわたしを去らせてください」。ヤコブは答えた、「わたしを祝福してくださらないなら、あなたを去らせません」。
956 01 32 27 その人は彼に言った、「あなたの名はなんと言いますか」。彼は答えた、「ヤコブです」。
957 01 32 28 その人は言った、「あなたはもはや名をヤコブと言わず、イスラエルと言いなさい。あなたが神と人とに、力を争って勝ったからです」。
958 01 32 29 ヤコブは尋ねて言った、「どうかわたしにあなたの名を知らせてください」。するとその人は、「なぜあなたはわたしの名をきくのですか」と言ったが、その所で彼を祝福した。
959 01 32 30 そこでヤコブはその所の名をペニエルと名づけて言った、「わたしは顔と顔をあわせて神を見たが、なお生きている」。
960 01 32 31 こうして彼がペニエルを過ぎる時、日は彼の上にのぼったが、彼はそのもものゆえにびっこを引いていた。
961 01 32 32 そのため、イスラエルの子らは今日まで、もものつがいの上にある腰の筋を食べない。かの人がヤコブのもものつがい、すなわち腰の筋にさわったからである。
962 01 33 1 さてヤコブは目をあげ、エサウが四百人を率いて来るのを見た。そこで彼は子供たちを分けてレアとラケルとふたりのつかえめとにわたし、
963 01 33 2 つかえめとその子供たちをまっ先に置き、レアとその子供たちを次に置き、ラケルとヨセフを最後に置いて、
964 01 33 3 みずから彼らの前に進み、七たび身を地にかがめて、兄に近づいた。
965 01 33 4 するとエサウは走ってきて迎え、彼を抱き、そのくびをかかえて口づけし、共に泣いた。
966 01 33 5 エサウは目をあげて女と子供たちを見て言った、「あなたと一緒にいるこれらの者はだれですか」。ヤコブは言った、「神がしもべに授けられた子供たちです」。
967 01 33 6 そこでつかえめたちはその子供たちと共に近寄ってお辞儀した。
968 01 33 7 レアもまたその子供たちと共に近寄ってお辞儀し、それからヨセフとラケルが近寄ってお辞儀した。
969 01 33 8 するとエサウは言った、「わたしが出会ったあのすべての群れはどうしたのですか」。ヤコブは言った、「わが主の前に恵みを得るためです」。
970 01 33 9 エサウは言った、「弟よ、わたしはじゅうぶんもっている。あなたの物はあなたのものにしなさい」。
971 01 33 10 ヤコブは言った、「いいえ、もしわたしがあなたの前に恵みを得るなら、どうか、わたしの手から贈り物を受けてください。あなたが喜んでわたしを迎えてくださるので、あなたの顔を見て、神の顔を見るように思います。
972 01 33 11 どうかわたしが持ってきた贈り物を受けてください。神がわたしを恵まれたので、わたしはじゅうぶんもっていますから」。こうして彼がしいたので、彼は受け取った。
973 01 33 12 そしてエサウは言った、「さあ、立って行こう。わたしが先に行く」。
974 01 33 13 ヤコブは彼に言った、「ごぞんじのように、子供たちは、かよわく、また乳を飲ませている羊や牛をわたしが世話をしています。もし一日でも歩かせ過ぎたら群れはみな死んでしまいます。
975 01 33 14 わが主よ、どうか、しもべの先においでください。わたしはわたしの前にいる家畜と子供たちの歩みに合わせて、ゆっくり歩いて行き、セイルでわが主と一緒になりましょう」。
976 01 33 15 エサウは言った、「それならわたしが連れている者どものうち幾人かをあなたのもとに残しましょう」。ヤコブは言った、「いいえ、それには及びません。わが主の前に恵みを得させてください」。
977 01 33 16 その日エサウはセイルへの帰途についた。
978 01 33 17 ヤコブは立ってスコテに行き、自分のために家を建て、また家畜のために小屋を造った。これによってその所の名はスコテと呼ばれている。
979 01 33 18 こうしてヤコブはパダンアラムからきて、無事カナンの地のシケムの町に着き、町の前に宿営した。
980 01 33 19 彼は天幕を張った野の一部をシケムの父ハモルの子らの手から百ケシタで買い取り、
981 01 33 20 そこに祭壇を建てて、これをエル・エロヘ・イスラエルと名づけた。
982 01 34 1 レアがヤコブに産んだ娘デナはその地の女たちに会おうと出かけて行ったが、
983 01 34 2 その地のつかさ、ヒビびとハモルの子シケムが彼女を見て、引き入れ、これと寝てはずかしめた。
984 01 34 3 彼は深くヤコブの娘デナを慕い、この娘を愛して、ねんごろに娘に語った。
985 01 34 4 シケムは父ハモルに言った、「この娘をわたしの妻にめとってください」。
986 01 34 5 さてヤコブはシケムが、娘デナを汚したことを聞いたけれども、その子らが家畜を連れて野にいたので、彼らの帰るまで黙っていた。
987 01 34 6 シケムの父ハモルはヤコブと話し合おうと、ヤコブの所に出てきた。
988 01 34 7 ヤコブの子らは野から帰り、この事を聞いて、悲しみ、かつ非常に怒った。シケムがヤコブの娘と寝て、イスラエルに愚かなことをしたためで、こんなことは、してはならぬ事だからである。
989 01 34 8 ハモルは彼らと語って言った、「わたしの子シケムはあなたがたの娘を心に慕っています。どうか彼女を彼の妻にください。
990 01 34 9 あなたがたはわたしたちと婚姻し、あなたがたの娘をわたしたちに与え、わたしたちの娘をあなたがたにめとってください。
991 01 34 10 こうしてあなたがたとわたしたちとは一緒に住みましょう。地はあなたがたの前にあります。ここに住んで取引し、ここで財産を獲なさい」。
992 01 34 11 シケムはまたデナの父と兄弟たちとに言った、「あなたがたの前に恵みを得させてください。あなたがたがわたしに言われるものは、なんでもさしあげましょう。
993 01 34 12 たくさんの結納金と贈り物とをお求めになっても、あなたがたの言われるとおりさしあげます。ただこの娘はわたしの妻にください」。
994 01 34 13 しかし、ヤコブの子らはシケムが彼らの妹デナを汚したので、シケムとその父ハモルに偽って答え、
995 01 34 14 彼らに言った、「われわれは割礼を受けない者に妹をやる事はできません。それはわれわれの恥とするところですから。
996 01 34 15 ただ、こうなさればわれわれはあなたがたに同意します。もしあなたがたのうち男子がみな割礼を受けて、われわれのようになるなら、
997 01 34 16 われわれの娘をあなたがたに与え、あなたがたの娘をわれわれにめとりましょう。そしてわれわれはあなたがたと一緒に住んで一つの民となりましょう。
998 01 34 17 けれども、もしあなたがたがわれわれに聞かず、割礼を受けないなら、われわれは娘を連れて行きます」。
999 01 34 18 彼らの言葉がハモルとハモルの子シケムとの心にかなったので、
1000 01 34 19 若者は、ためらわずにこの事をした。彼がヤコブの娘を愛したからである。また彼は父の家のうちで一番重んじられた者であった。
1001 01 34 20 そこでハモルとその子シケムとは町の門に行き、町の人々に語って言った、
1002 01 34 21 「この人々はわれわれと親しいから、この地に住まわせて、ここで取引をさせよう。地は広く、彼らをいれるにじゅうぶんである。そしてわれわれは彼らの娘を妻にめとり、われわれの娘を彼らに与えよう。
1003 01 34 22 彼らが割礼を受けているように、もしわれわれのうちの男子が皆、割礼を受けるなら、ただこの事だけで、この人々はわれわれに同意し、われわれと一緒に住んで一つの民となるのだ。
1004 01 34 23 そうすれば彼らの家畜と財産とすべての獣とは、われわれのものとなるではないか。ただわれわれが彼らに同意すれば、彼らはわれわれと一緒に住むであろう」。
1005 01 34 24 そこで町の門に出入りする者はみなハモルとその子シケムとに聞き従って、町の門に出入りするすべての男子は割礼を受けた。
1006 01 34 25 三日目になって彼らが痛みを覚えている時、ヤコブのふたりの子、すなわちデナの兄弟シメオンとレビとは、おのおのつるぎを取って、不意に町を襲い、男子をことごとく殺し、
1007 01 34 26 またつるぎの刃にかけてハモルとその子シケムとを殺し、シケムの家からデナを連れ出した。
1008 01 34 27 そしてヤコブの子らは殺された人々をはぎ、町をかすめた。彼らが妹を汚したからである。
1009 01 34 28 すなわち羊、牛、ろば及び町にあるものと、野にあるもの、
1010 01 34 29 並びにすべての貨財を奪い、その子女と妻たちを皆とりこにし、家の中にある物をことごとくかすめた。
1011 01 34 30 そこでヤコブはシメオンとレビとに言った、「あなたがたはわたしをこの地の住民、カナンびととペリジびとに忌みきらわせ、わたしに迷惑をかけた。わたしは、人数が少ないから、彼らが集まってわたしを攻め撃つならば、わたしも家族も滅ぼされるであろう」。
1012 01 34 31 彼らは言った、「わたしたちの妹を遊女のように彼が扱ってよいのですか」。
1013 01 35 1 ときに神はヤコブに言われた、「あなたは立ってベテルに上り、そこに住んで、あなたがさきに兄エサウの顔を避けてのがれる時、あなたに現れた神に祭壇を造りなさい」。
1014 01 35 2 ヤコブは、その家族および共にいるすべての者に言った、「あなたがたのうちにある異なる神々を捨て、身を清めて着物を着替えなさい。
1015 01 35 3 われわれは立ってベテルに上り、その所でわたしの苦難の日にわたしにこたえ、かつわたしの行く道で共におられた神に祭壇を造ろう」。
1016 01 35 4 そこで彼らは持っている異なる神々と、耳につけている耳輪をことごとくヤコブに与えたので、ヤコブはこれをシケムのほとりにあるテレビンの木の下に埋めた。
1017 01 35 5 そして彼らは、いで立ったが、大いなる恐れが周囲の町々に起ったので、ヤコブの子らのあとを追う者はなかった。
1018 01 35 6 こうしてヤコブは共にいたすべての人々と一緒にカナンの地にあるルズ、すなわちベテルにきた。
1019 01 35 7 彼はそこに祭壇を築き、その所をエル・ベテルと名づけた。彼が兄の顔を避けてのがれる時、神がそこで彼に現れたからである。
1020 01 35 8 時にリベカのうばデボラが死んで、ベテルのしもの、かしの木の下に葬られた。これによってその木の名をアロン・バクテと呼ばれた。
1021 01 35 9 さてヤコブがパダンアラムから帰ってきた時、神は再び彼に現れて彼を祝福された。
1022 01 35 10 神は彼に言われた、「あなたの名はヤコブである。しかしあなたの名をもはやヤコブと呼んではならない。あなたの名をイスラエルとしなさい」。こうして彼をイスラエルと名づけられた。
1023 01 35 11 神はまた彼に言われた、「わたしは全能の神である。あなたは生めよ、またふえよ。一つの国民、また多くの国民があなたから出て、王たちがあなたの身から出るであろう。
1024 01 35 12 わたしはアブラハムとイサクとに与えた地を、あなたに与えよう。またあなたの後の子孫にその地を与えよう」。
1025 01 35 13 神は彼と語っておられたその場所から彼を離れてのぼられた。
1026 01 35 14 そこでヤコブは神が自分と語られたその場所に、一本の石の柱を立て、その上に灌祭をささげ、また油を注いだ。
1027 01 35 15 そしてヤコブは神が自分と語られたその場所をベテルと名づけた。
1028 01 35 16 こうして彼らはベテルを立ったが、エフラタに行き着くまでに、なお隔たりのある所でラケルは産気づき、その産は重かった。
1029 01 35 17 その難産に当って、産婆は彼女に言った、「心配することはありません。今度も男の子です」。
1030 01 35 18 彼女は死にのぞみ、魂の去ろうとする時、子の名をベノニと呼んだ。しかし、父はこれをベニヤミンと名づけた。
1031 01 35 19 ラケルは死んでエフラタ、すなわちベツレヘムの道に葬られた。
1032 01 35 20 ヤコブはその墓に柱を立てた。これはラケルの墓の柱であって、今日に至っている。
1033 01 35 21 イスラエルはまた、いで立ってミグダル・エダルの向こうに天幕を張った。
1034 01 35 22 イスラエルがその地に住んでいた時、ルベンは父のそばめビルハのところへ行って、これと寝た。イスラエルはこれを聞いた。
1035 01 35 23 すなわちレアの子らはヤコブの長子ルベンとシメオン、レビ、ユダ、イッサカル、ゼブルン。
1036 01 35 24 ラケルの子らはヨセフとベニヤミン。
1037 01 35 25 ラケルのつかえめビルハの子らはダンとナフタリ。
1038 01 35 26 レアのつかえめジルパの子らはガドとアセル。これらはヤコブの子らであって、パダンアラムで彼に生れた者である。
1039 01 35 27 ヤコブはキリアテ・アルバ、すなわちヘブロンのマムレにいる父イサクのもとへ行った。ここはアブラハムとイサクとが寄留した所である。
1040 01 35 28 イサクの年は百八十歳であった。
1041 01 35 29 イサクは年老い、日満ちて息絶え、死んで、その民に加えられた。その子エサウとヤコブとは、これを葬った。
1042 01 36 1 エサウ、すなわちエドムの系図は次のとおりである。
1043 01 36 2 エサウはカナンの娘たちのうちから妻をめとった。すなわちヘテびとエロンの娘アダと、ヒビびとヂベオンの子アナの娘アホリバマとである。
1044 01 36 3 また、イシマエルの娘ネバヨテの妹バスマテをめとった。
1045 01 36 4 アダはエリパズをエサウに産み、バスマテはリウエルを産み、
1046 01 36 5 アホリバマはエウシ、ヤラム、コラを産んだ。これらはエサウの子であって、カナンの地で彼に生れた者である。
1047 01 36 6 エサウは妻と子と娘と家のすべての人、家畜とすべての獣、またカナンの地で獲たすべての財産を携え、兄弟ヤコブを離れてほかの地へ行った。
1048 01 36 7 彼らの財産が多くて、一緒にいることができなかったからである。すなわち彼らが寄留した地は彼らの家畜のゆえに、彼らをささえることができなかったのである。
1049 01 36 8 こうしてエサウはセイルの山地に住んだ。エサウはすなわちエドムである。
1050 01 36 9 セイルの山地におったエドムびとの先祖エサウの系図は次のとおりである。
1051 01 36 10 エサウの子らの名は次のとおりである。すなわちエサウの妻アダの子はエリパズ。エサウの妻バスマテの子はリウエル。
1052 01 36 11 エリパズの子らはテマン、オマル、ゼポ、ガタム、ケナズである。
1053 01 36 12 テムナはエサウの子エリパズのそばめで、アマレクをエリパズに産んだ。これらはエサウの妻アダの子らである。
1054 01 36 13 リウエルの子らは次のとおりである。すなわちナハテ、ゼラ、シャンマ、ミザであって、これらはエサウの妻バスマテの子らである。
1055 01 36 14 ヂベオンの子アナの娘で、エサウの妻アホリバマの子らは次のとおりである。すなわち彼女はエウシ、ヤラム、コラをエサウに産んだ。
1056 01 36 15 エサウの子らの中で、族長たる者は次のとおりである。すなわちエサウの長子エリパズの子らはテマンの族長、オマルの族長、ゼポの族長、ケナズの族長、
1057 01 36 16 コラの族長、ガタムの族長、アマレクの族長である。これらはエリパズから出た族長で、エドムの地におった。これらはアダの子らである。
1058 01 36 17 エサウの子リウエルの子らは次のとおりである。すなわちナハテの族長、ゼラの族長、シャンマの族長、ミザの族長。これらはリウエルから出た族長で、エドムの地におった。これらはエサウの妻バスマテの子らである。
1059 01 36 18 エサウの妻アホリバマの子らは次のとおりである。すなわちエウシの族長、ヤラムの族長、コラの族長。これらはアナの娘で、エサウの妻アホリバマから出た族長である。
1060 01 36 19 これらはエサウすなわちエドムの子らで、族長たる者である。
1061 01 36 20 この地の住民ホリびとセイルの子らは次のとおりである。すなわちロタン、ショバル、ヂベオン、アナ、
1062 01 36 21 デション、エゼル、デシャン。これらはセイルの子ホリびとから出た族長で、エドムの地におった。
1063 01 36 22 ロタンの子らはホリ、ヘマムであり、ロタンの妹はテムナであった。
1064 01 36 23 ショバルの子らは次のとおりである。すなわちアルワン、マナハテ、エバル、シポ、オナム。
1065 01 36 24 ヂベオンの子らは次のとおりである。すなわちアヤとアナ。このアナは父ヂベオンのろばを飼っていた時、荒野で温泉を発見した者である。
1066 01 36 25 アナの子らは次のとおりである。すなわちデションとアホリバマ。アホリバマはアナの娘である。
1067 01 36 26 デションの子らは次のとおりである。すなわちヘムダン、エシバン、イテラン、ケラン。
1068 01 36 27 エゼルの子らは次のとおりである。すなわちビルハン、ザワン、アカン。
1069 01 36 28 デシャンの子らは次のとおりである。すなわちウズとアラン。
1070 01 36 29 ホリびとから出た族長は次のとおりである。すなわちロタンの族長、ショバルの族長、ヂベオンの族長、アナの族長、
1071 01 36 30 デションの族長、エゼルの族長、デシャンの族長。これらはホリびとから出た族長であって、その氏族に従ってセイルの地におった者である。
1072 01 36 31 イスラエルの人々を治める王がまだなかった時、エドムの地を治めた王たちは次のとおりである。
1073 01 36 32 ベオルの子ベラはエドムを治め、その都の名はデナバであった。
1074 01 36 33 ベラが死んで、ボズラのゼラの子ヨバブがこれに代って王となった。
1075 01 36 34 ヨバブが死んで、テマンびとの地のホシャムがこれに代って王となった。
1076 01 36 35 ホシャムが死んで、ベダデの子ハダデがこれに代って王となった。彼はモアブの野でミデアンを撃った者である。その都の名はアビテであった。
1077 01 36 36 ハダデが死んで、マスレカのサムラがこれに代って王となった。
1078 01 36 37 サムラが死んでユフラテ川のほとりにあるレホボテのサウルがこれに代って王となった。
1079 01 36 38 サウルが死んでアクボルの子バアル・ハナンがこれに代って王となった。
1080 01 36 39 アクボルの子バアル・ハナンが死んで、ハダルがこれに代って王となった。その都の名はパウであった。その妻の名はメヘタベルといって、メザハブの娘マテレデの娘であった。
1081 01 36 40 エサウから出た族長の名は、その氏族と住所と名に従って言えば次のとおりである。すなわちテムナの族長、アルワの族長、エテテの族長、
1082 01 36 41 アホリバマの族長、エラの族長、ピノンの族長、
1083 01 36 42 ケナズの族長、テマンの族長、ミブザルの族長、
1084 01 36 43 マグデエルの族長、イラムの族長。これらはエドムの族長たちであって、その領地内の住所に従っていったものである。エドムびとの先祖はエサウである。
1085 01 37 1 ヤコブは父の寄留の地、すなわちカナンの地に住んだ。
1086 01 37 2 ヤコブの子孫は次のとおりである。
1087 01 37 3 ヨセフは年寄り子であったから、イスラエルは他のどの子よりも彼を愛して、彼のために長そでの着物をつくった。
1088 01 37 4 兄弟たちは父がどの兄弟よりも彼を愛するのを見て、彼を憎み、穏やかに彼に語ることができなかった。
1089 01 37 5 ある時、ヨセフは夢を見て、それを兄弟たちに話したので、彼らは、ますます彼を憎んだ。
1090 01 37 6 ヨセフは彼らに言った、「どうぞわたしが見た夢を聞いてください。
1091 01 37 7 わたしたちが畑の中で束を結わえていたとき、わたしの束が起きて立つと、あなたがたの束がまわりにきて、わたしの束を拝みました」。
1092 01 37 8 すると兄弟たちは彼に向かって、「あなたはほんとうにわたしたちの王になるのか。あなたは実際わたしたちを治めるのか」と言って、彼の夢とその言葉のゆえにますます彼を憎んだ。
1093 01 37 9 ヨセフはまた一つの夢を見て、それを兄弟たちに語って言った、「わたしはまた夢を見ました。日と月と十一の星とがわたしを拝みました」。
1094 01 37 10 彼はこれを父と兄弟たちに語ったので、父は彼をとがめて言った、「あなたが見たその夢はどういうのか。ほんとうにわたしとあなたの母と、兄弟たちとが行って地に伏し、あなたを拝むのか」。
1095 01 37 11 兄弟たちは彼をねたんだ。しかし父はこの言葉を心にとめた。
1096 01 37 12 さて兄弟たちがシケムに行って、父の羊の群れを飼っていたとき、
1097 01 37 13 イスラエルはヨセフに言った、「あなたの兄弟たちはシケムで羊を飼っているではないか。さあ、あなたを彼らの所へつかわそう」。ヨセフは父に言った、「はい、行きます」。
1098 01 37 14 父は彼に言った、「どうか、行って、あなたの兄弟たちは無事であるか、また群れは無事であるか見てきて、わたしに知らせてください」。父が彼をヘブロンの谷からつかわしたので、彼はシケムに行った。
1099 01 37 15 ひとりの人が彼に会い、彼が野をさまよっていたので、その人は彼に尋ねて言った、「あなたは何を捜しているのですか」。
1100 01 37 16 彼は言った、「兄弟たちを捜しているのです。彼らが、どこで羊を飼っているのか、どうぞわたしに知らせてください」。
1101 01 37 17 その人は言った、「彼らはここを去りました。彼らが『ドタンへ行こう』と言うのをわたしは聞きました」。そこでヨセフは兄弟たちのあとを追って行って、ドタンで彼らに会った。
1102 01 37 18 ヨセフが彼らに近づかないうちに、彼らははるかにヨセフを見て、これを殺そうと計り、
1103 01 37 19 互に言った、「あの夢見る者がやって来る。
1104 01 37 20 さあ、彼を殺して穴に投げ入れ、悪い獣が彼を食ったと言おう。そして彼の夢がどうなるか見よう」。
1105 01 37 21 ルベンはこれを聞いて、ヨセフを彼らの手から救い出そうとして言った、「われわれは彼の命を取ってはならない」。
1106 01 37 22 ルベンはまた彼らに言った、「血を流してはいけない。彼を荒野のこの穴に投げ入れよう。彼に手をくだしてはならない」。これはヨセフを彼らの手から救いだして父に返すためであった。
1107 01 37 23 さて、ヨセフが兄弟たちのもとへ行くと、彼らはヨセフの着物、彼が着ていた長そでの着物をはぎとり、
1108 01 37 24 彼を捕えて穴に投げ入れた。その穴はからで、その中に水はなかった。
1109 01 37 25 こうして彼らはすわってパンを食べた。時に彼らが目をあげて見ると、イシマエルびとの隊商が、らくだに香料と、乳香と、もつやくとを負わせてエジプトへ下り行こうとギレアデからやってきた。
1110 01 37 26 そこでユダは兄弟たちに言った、「われわれが弟を殺し、その血を隠して何の益があろう。
1111 01 37 27 さあ、われわれは彼をイシマエルびとに売ろう。彼はわれわれの兄弟、われわれの肉身だから、彼に手を下してはならない」。兄弟たちはこれを聞き入れた。
1112 01 37 28 時にミデアンびとの商人たちが通りかかったので、彼らはヨセフを穴から引き上げ、銀二十シケルでヨセフをイシマエルびとに売った。彼らはヨセフをエジプトへ連れて行った。
1113 01 37 29 さてルベンは穴に帰って見たが、ヨセフが穴の中にいなかったので、彼は衣服を裂き、
1114 01 37 30 兄弟たちのもとに帰って言った、「あの子はいない。ああ、わたしはどこへ行くことができよう」。
1115 01 37 31 彼らはヨセフの着物を取り、雄やぎを殺して、着物をその血に浸し、
1116 01 37 32 その長そでの着物を父に持ち帰って言った、「わたしたちはこれを見つけましたが、これはあなたの子の着物か、どうか見さだめてください」。
1117 01 37 33 父はこれを見さだめて言った、「わが子の着物だ。悪い獣が彼を食ったのだ。確かにヨセフはかみ裂かれたのだ」。
1118 01 37 34 そこでヤコブは衣服を裂き、荒布を腰にまとって、長い間その子のために嘆いた。
1119 01 37 35 子らと娘らとは皆立って彼を慰めようとしたが、彼は慰められるのを拒んで言った、「いや、わたしは嘆きながら陰府に下って、わが子のもとへ行こう」。こうして父は彼のために泣いた。
1120 01 37 36 さて、かのミデアンびとらはエジプトでパロの役人、侍衛長ポテパルにヨセフを売った。
1121 01 38 1 そのころユダは兄弟たちを離れて下り、アドラムびとで、名をヒラという者の所へ行った。
1122 01 38 2 ユダはその所で、名をシュアというカナンびとの娘を見て、これをめとり、その所にはいった。
1123 01 38 3 彼女はみごもって男の子を産んだので、ユダは名をエルと名づけた。
1124 01 38 4 彼女は再びみごもって男の子を産み、名をオナンと名づけた。
1125 01 38 5 また重ねて、男の子を産み、名をシラと名づけた。彼女はこの男の子を産んだとき、クジブにおった。
1126 01 38 6 ユダは長子エルのために、名をタマルという妻を迎えた。
1127 01 38 7 しかしユダの長子エルは主の前に悪い者であったので、主は彼を殺された。
1128 01 38 8 そこでユダはオナンに言った、「兄の妻の所にはいって、彼女をめとり、兄に子供を得させなさい」。
1129 01 38 9 しかしオナンはその子が自分のものとならないのを知っていたので、兄の妻の所にはいった時、兄に子を得させないために地に洩らした。
1130 01 38 10 彼のした事は主の前に悪かったので、主は彼をも殺された。
1131 01 38 11 そこでユダはその子の妻タマルに言った、「わたしの子シラが成人するまで、寡婦のままで、あなたの父の家にいなさい」。彼は、シラもまた兄弟たちのように死ぬかもしれないと、思ったからである。それでタマルは行って父の家におった。
1132 01 38 12 日がたってシュアの娘ユダの妻は死んだ。その後、ユダは喪を終ってその友アドラムびとヒラと共にテムナに上り、自分の羊の毛を切る者のところへ行った。
1133 01 38 13 時に、ひとりの人がタマルに告げて、「あなたのしゅうとが羊の毛を切るためにテムナに上って来る」と言ったので、
1134 01 38 14 彼女は寡婦の衣服を脱ぎすて、被衣で身をおおい隠して、テムナへ行く道のかたわらにあるエナイムの入口にすわっていた。彼女はシラが成人したのに、自分がその妻にされないのを知ったからである。
1135 01 38 15 ユダは彼女を見たとき、彼女が顔をおおっていたため、遊女だと思い、
1136 01 38 16 道のかたわらで彼女に向かって言った、「さあ、あなたの所にはいらせておくれ」。彼はこの女がわが子の妻であることを知らなかったからである。彼女は言った、「わたしの所にはいるため、何をくださいますか」。
1137 01 38 17 ユダは言った、「群れのうちのやぎの子をあなたにあげよう」。彼女は言った、「それをくださるまで、しるしをわたしにくださいますか」。
1138 01 38 18 ユダは言った、「どんなしるしをあげようか」。彼女は言った、「あなたの印と紐と、あなたの手にあるつえとを」。彼はこれらを与えて彼女の所にはいった。彼女はユダによってみごもった。
1139 01 38 19 彼女は起きて去り、被衣を脱いで寡婦の衣服を着た。
1140 01 38 20 やがてユダはその女からしるしを取りもどそうと、その友アドラムびとに託してやぎの子を送ったけれども、その女を見いだせなかった。
1141 01 38 21 そこで彼はその所の人々に尋ねて言った、「エナイムで道のかたわらにいた遊女はどこにいますか」。彼らは言った、「ここには遊女はいません」。
1142 01 38 22 彼はユダのもとに帰って言った、「わたしは彼女を見いだせませんでした。またその所の人々は、『ここには遊女はいない』と言いました」。
1143 01 38 23 そこでユダは言った、「女に持たせておこう。わたしたちは恥をかくといけないから。とにかく、わたしはこのやぎの子を送ったが、あなたは彼女を見いだせなかったのだ」。
1144 01 38 24 ところが三月ほどたって、ひとりの人がユダに言った、「あなたの嫁タマルは姦淫しました。そのうえ、彼女は姦淫によってみごもりました」。ユダは言った、「彼女を引き出して焼いてしまえ」。
1145 01 38 25 彼女は引き出された時、そのしゅうとに人をつかわして言った、「わたしはこれをもっている人によって、みごもりました」。彼女はまた言った、「どうか、この印と、紐と、つえとはだれのものか、見定めてください」。
1146 01 38 26 ユダはこれを見定めて言った、「彼女はわたしよりも正しい。わたしが彼女をわが子シラに与えなかったためである」。彼は再び彼女を知らなかった。
1147 01 38 27 さて彼女の出産の時がきたが、胎内には、ふたごがあった。
1148 01 38 28 出産の時に、ひとりの子が手を出したので、産婆は、「これがさきに出た」と言い、緋の糸を取って、その手に結んだ。
1149 01 38 29 そして、その子が手をひっこめると、その弟が出たので、「どうしてあなたは自分で破って出るのか」と言った。これによって名はペレヅと呼ばれた。
1150 01 38 30 その後、手に緋の糸のある兄が出たので、名はゼラと呼ばれた。
1151 01 39 1 さてヨセフは連れられてエジプトに下ったが、パロの役人で侍衛長であったエジプトびとポテパルは、彼をそこに連れ下ったイシマエルびとらの手から買い取った。
1152 01 39 2 主がヨセフと共におられたので、彼は幸運な者となり、その主人エジプトびとの家におった。
1153 01 39 3 その主人は主が彼とともにおられることと、主が彼の手のすることをすべて栄えさせられるのを見た。
1154 01 39 4 そこで、ヨセフは彼の前に恵みを得、そのそば近く仕えた。彼はヨセフに家をつかさどらせ、持ち物をみな彼の手にゆだねた。
1155 01 39 5 彼がヨセフに家とすべての持ち物をつかさどらせた時から、主はヨセフのゆえにそのエジプトびとの家を恵まれたので、主の恵みは彼の家と畑とにあるすべての持ち物に及んだ。
1156 01 39 6 そこで彼は持ち物をみなヨセフの手にゆだねて、自分が食べる物のほかは、何をも顧みなかった。
1157 01 39 7 これらの事の後、主人の妻はヨセフに目をつけて言った、「わたしと寝なさい」。
1158 01 39 8 ヨセフは拒んで、主人の妻に言った、「御主人はわたしがいるので家の中の何をも顧みず、その持ち物をみなわたしの手にゆだねられました。
1159 01 39 9 この家にはわたしよりも大いなる者はありません。また御主人はあなたを除いては、何をもわたしに禁じられませんでした。あなたが御主人の妻であるからです。どうしてわたしはこの大きな悪をおこなって、神に罪を犯すことができましょう」。
1160 01 39 10 彼女は毎日ヨセフに言い寄ったけれども、ヨセフは聞きいれず、彼女と寝なかった。また共にいなかった。
1161 01 39 11 ある日ヨセフが務をするために家にはいった時、家の者がひとりもそこにいなかったので、
1162 01 39 12 彼女はヨセフの着物を捕えて、「わたしと寝なさい」と言った。ヨセフは着物を彼女の手に残して外にのがれ出た。
1163 01 39 13 彼女はヨセフが着物を自分の手に残して外にのがれたのを見て、
1164 01 39 14 その家の者どもを呼び、彼らに告げて言った、「主人がわたしたちの所に連れてきたヘブルびとは、わたしたちに戯れます。彼はわたしと寝ようとして、わたしの所にはいったので、わたしは大声で叫びました。
1165 01 39 15 彼はわたしが声をあげて叫ぶのを聞くと、着物をわたしの所に残して外にのがれ出ました」。
1166 01 39 16 彼女はその着物をかたわらに置いて、主人の帰って来るのを待った。
1167 01 39 17 そして彼女は次のように主人に告げた、「あなたがわたしたちに連れてこられたヘブルのしもべはわたしに戯れようとして、わたしの所にはいってきました。
1168 01 39 18 わたしが声をあげて叫んだので、彼は着物をわたしの所に残して外にのがれました」。
1169 01 39 19 主人はその妻が「あなたのしもべは、わたしにこんな事をした」と告げる言葉を聞いて、激しく怒った。
1170 01 39 20 そしてヨセフの主人は彼を捕えて、王の囚人をつなぐ獄屋に投げ入れた。こうしてヨセフは獄屋の中におったが、
1171 01 39 21 主はヨセフと共におられて彼にいつくしみを垂れ、獄屋番の恵みをうけさせられた。
1172 01 39 22 獄屋番は獄屋におるすべての囚人をヨセフの手にゆだねたので、彼はそこでするすべての事をおこなった。
1173 01 39 23 獄屋番は彼の手にゆだねた事はいっさい顧みなかった。主がヨセフと共におられたからである。主は彼のなす事を栄えさせられた。
1174 01 40 1 これらの事の後、エジプト王の給仕役と料理役とがその主君エジプト王に罪を犯した。
1175 01 40 2 パロはふたりの役人、すなわち給仕役の長と料理役の長に向かって憤り、
1176 01 40 3 侍衛長の家の監禁所、すなわちヨセフがつながれている獄屋に入れた。
1177 01 40 4 侍衛長はヨセフに命じて彼らと共におらせたので、ヨセフは彼らに仕えた。こうして彼らは監禁所で幾日かを過ごした。
1178 01 40 5 さて獄屋につながれたエジプト王の給仕役と料理役のふたりは一夜のうちにそれぞれ意味のある夢を見た。
1179 01 40 6 ヨセフが朝、彼らのところへ行って見ると、彼らは悲しみに沈んでいた。
1180 01 40 7 そこでヨセフは自分と一緒に主人の家の監禁所にいるパロの役人たちに尋ねて言った、「どうして、きょう、あなたがたの顔色が悪いのですか」。
1181 01 40 8 彼らは言った、「わたしたちは夢を見ましたが、解いてくれる者がいません」。ヨセフは彼らに言った、「解くことは神によるのではありませんか。どうぞ、わたしに話してください」。
1182 01 40 9 給仕役の長はその夢をヨセフに話して言った、「わたしが見た夢で、わたしの前に一本のぶどうの木がありました。
1183 01 40 10 そのぶどうの木に三つの枝があって、芽を出し、花が咲き、ぶどうのふさが熟しました。
1184 01 40 11 時にわたしの手に、パロの杯があって、わたしはそのぶどうを取り、それをパロの杯にしぼり、その杯をパロの手にささげました」。
1185 01 40 12 ヨセフは言った、「その解き明かしはこうです。三つの枝は三日です。
1186 01 40 13 今から三日のうちにパロはあなたの頭を上げて、あなたを元の役目に返すでしょう。あなたはさきに給仕役だった時にされたように、パロの手に杯をささげられるでしょう。
1187 01 40 14 それで、あなたがしあわせになられたら、わたしを覚えていて、どうかわたしに恵みを施し、わたしの事をパロに話して、この家からわたしを出してください。
1188 01 40 15 わたしは、実はヘブルびとの地からさらわれてきた者です。またここでもわたしは地下の獄屋に入れられるような事はしなかったのです」。
1189 01 40 16 料理役の長はその解き明かしの良かったのを見て、ヨセフに言った、「わたしも夢を見たが、白いパンのかごが三つ、わたしの頭の上にあった。
1190 01 40 17 一番上のかごには料理役がパロのために作ったさまざまの食物があったが、鳥がわたしの頭の上のかごからそれを食べていた」。
1191 01 40 18 ヨセフは答えて言った、「その解き明かしはこうです。三つのかごは三日です。
1192 01 40 19 今から三日のうちにパロはあなたの頭を上げ離して、あなたを木に掛けるでしょう。そして鳥があなたの肉を食い取るでしょう」。
1193 01 40 20 さて三日目はパロの誕生日であったので、パロはすべての家来のためにふるまいを設け、家来のうちの給仕役の長の頭と、料理役の長の頭を上げた。
1194 01 40 21 すなわちパロは給仕役の長を給仕役の職に返したので、彼はパロの手に杯をささげた。
1195 01 40 22 しかしパロは料理役の長を木に掛けた。ヨセフが彼らに解き明かしたとおりである。
1196 01 40 23 ところが、給仕役の長はヨセフを思い出さず、忘れてしまった。
1197 01 41 1 二年の後パロは夢を見た。夢に、彼はナイル川のほとりに立っていた。
1198 01 41 2 すると、その川から美しい、肥え太った七頭の雌牛が上がってきて葦を食っていた。
1199 01 41 3 その後、また醜い、やせ細った他の七頭の雌牛が川から上がってきて、川の岸にいた雌牛のそばに立ち、
1200 01 41 4 その醜い、やせ細った雌牛が、あの美しい、肥えた七頭の雌牛を食いつくした。ここでパロは目が覚めた。
1201 01 41 5 彼はまた眠って、再び夢を見た。夢に、一本の茎に太った良い七つの穂が出てきた。
1202 01 41 6 その後また、やせて、東風に焼けた七つの穂が出てきて、
1203 01 41 7 そのやせた穂が、あの太って実った七つの穂をのみつくした。ここでパロは目が覚めたが、それは夢であった。
1204 01 41 8 朝になって、パロは心が騒ぎ、人をつかわして、エジプトのすべての魔術師とすべての知者とを呼び寄せ、彼らに夢を告げたが、これをパロに解き明かしうる者がなかった。
1205 01 41 9 そのとき給仕役の長はパロに告げて言った、「わたしはきょう、自分のあやまちを思い出しました。
1206 01 41 10 かつてパロがしもべらに向かって憤り、わたしと料理役の長とを侍衛長の家の監禁所にお入れになった時、
1207 01 41 11 わたしも彼も一夜のうちに夢を見、それぞれ意味のある夢を見ましたが、
1208 01 41 12 そこに侍衛長のしもべで、ひとりの若いヘブルびとがわれわれと共にいたので、彼に話したところ、彼はわれわれの夢を解き明かし、その夢によって、それぞれ解き明かしをしました。
1209 01 41 13 そして彼が解き明かしたとおりになって、パロはわたしを職に返し、彼を木に掛けられました」。
1210 01 41 14 そこでパロは人をつかわしてヨセフを呼んだ。人々は急いで彼を地下の獄屋から出した。ヨセフは、ひげをそり、着物を着替えてパロのもとに行った。
1211 01 41 15 パロはヨセフに言った、「わたしは夢を見たが、これを解き明かす者がない。聞くところによると、あなたは夢を聞いて、解き明かしができるそうだ」。
1212 01 41 16 ヨセフはパロに答えて言った、「いいえ、わたしではありません。神がパロに平安をお告げになりましょう」。
1213 01 41 17 パロはヨセフに言った、「夢にわたしは川の岸に立っていた。
1214 01 41 18 その川から肥え太った、美しい七頭の雌牛が上がってきて葦を食っていた。
1215 01 41 19 その後、弱く、非常に醜い、やせ細った他の七頭の雌牛がまた上がってきた。わたしはエジプト全国で、このような醜いものをまだ見たことがない。
1216 01 41 20 ところがそのやせた醜い雌牛が、初めの七頭の肥えた雌牛を食いつくしたが、
1217 01 41 21 腹にはいっても、腹にはいった事が知れず、やはり初めのように醜かった。ここでわたしは目が覚めた。
1218 01 41 22 わたしはまた夢をみた。一本の茎に七つの実った良い穂が出てきた。
1219 01 41 23 その後、やせ衰えて、東風に焼けた七つの穂が出てきたが、
1220 01 41 24 そのやせた穂が、あの七つの良い穂をのみつくした。わたしは魔術師に話したが、わたしにそのわけを示しうる者はなかった」。
1221 01 41 25 ヨセフはパロに言った、「パロの夢は一つです。神がこれからしようとすることをパロに示されたのです。
1222 01 41 26 七頭の良い雌牛は七年です。七つの良い穂も七年で、夢は一つです。
1223 01 41 27 あとに続いて、上がってきた七頭のやせた醜い雌牛は七年で、東風に焼けた実の入らない七つの穂は七年のききんです。
1224 01 41 28 わたしがパロに申し上げたように、神がこれからしようとすることをパロに示されたのです。
1225 01 41 29 エジプト全国に七年の大豊作があり、
1226 01 41 30 その後七年のききんが起り、その豊作はみなエジプトの国で忘れられて、そのききんは国を滅ぼすでしょう。
1227 01 41 31 後に来るそのききんが、非常に激しいから、その豊作は国のうちで記憶されなくなるでしょう。
1228 01 41 32 パロが二度重ねて夢を見られたのは、この事が神によって定められ、神がすみやかにこれをされるからです。
1229 01 41 33 それゆえパロは今、さとく、かつ賢い人を尋ね出してエジプトの国を治めさせなさい。
1230 01 41 34 パロはこうして国中に監督を置き、その七年の豊作のうちに、エジプトの国の産物の五分の一を取り、
1231 01 41 35 続いて来る良い年々のすべての食糧を彼らに集めさせ、穀物を食糧として、パロの手で町々にたくわえ守らせなさい。
1232 01 41 36 こうすれば食糧は、エジプトの国に臨む七年のききんに備えて、この国のためにたくわえとなり、この国はききんによって滅びることがないでしょう」。
1233 01 41 37 この事はパロとそのすべての家来たちの目にかなった。
1234 01 41 38 そこでパロは家来たちに言った、「われわれは神の霊をもつこのような人を、ほかに見いだし得ようか」。
1235 01 41 39 またパロはヨセフに言った、「神がこれを皆あなたに示された。あなたのようにさとく賢い者はない。
1236 01 41 40 あなたはわたしの家を治めてください。わたしの民はみなあなたの言葉に従うでしょう。わたしはただ王の位でだけあなたにまさる」。
1237 01 41 41 パロは更にヨセフに言った、「わたしはあなたをエジプト全国のつかさとする」。
1238 01 41 42 そしてパロは指輪を手からはずして、ヨセフの手にはめ、亜麻布の衣服を着せ、金の鎖をくびにかけ、
1239 01 41 43 自分の第二の車に彼を乗せ、「ひざまずけ」とその前に呼ばわらせ、こうして彼をエジプト全国のつかさとした。
1240 01 41 44 ついでパロはヨセフに言った、「わたしはパロである。あなたの許しがなければエジプト全国で、だれも手足を上げることはできない」。
1241 01 41 45 パロはヨセフの名をザフナテ・パネアと呼び、オンの祭司ポテペラの娘アセナテを妻として彼に与えた。ヨセフはエジプトの国を巡った。
1242 01 41 46 ヨセフがエジプトの王パロの前に立った時は三十歳であった。ヨセフはパロの前を出て、エジプト全国をあまねく巡った。
1243 01 41 47 さて七年の豊作のうちに地は豊かに物を産した。
1244 01 41 48 そこでヨセフはエジプトの国にできたその七年間の食糧をことごとく集め、その食糧を町々に納めさせた。すなわち町の周囲にある畑の食糧をその町の中に納めさせた。
1245 01 41 49 ヨセフは穀物を海の砂のように、非常に多くたくわえ、量りきれなくなったので、ついに量ることをやめた。
1246 01 41 50 ききんの年の来る前にヨセフにふたりの子が生れた。これらはオンの祭司ポテペラの娘アセナテが産んだのである。
1247 01 41 51 ヨセフは長子の名をマナセと名づけて言った、「神がわたしにすべての苦難と父の家のすべての事を忘れさせられた」。
1248 01 41 52 また次の子の名をエフライムと名づけて言った、「神がわたしを悩みの地で豊かにせられた」。
1249 01 41 53 エジプトの国にあった七年の豊作が終り、
1250 01 41 54 ヨセフの言ったように七年のききんが始まった。そのききんはすべての国にあったが、エジプト全国には食物があった。
1251 01 41 55 やがてエジプト全国が飢えた時、民はパロに食物を叫び求めた。そこでパロはすべてのエジプトびとに言った、「ヨセフのもとに行き、彼の言うようにせよ」。
1252 01 41 56 ききんが地の全面にあったので、ヨセフはすべての穀倉を開いて、エジプトびとに売った。ききんはますますエジプトの国に激しくなった。
1253 01 41 57 ききんが全地に激しくなったので、諸国の人々がエジプトのヨセフのもとに穀物を買うためにきた。
1254 01 42 1 ヤコブはエジプトに穀物があると知って、むすこたちに言った、「あなたがたはなぜ顔を見合わせているのですか」。
1255 01 42 2 また言った、「エジプトに穀物があるということだが、あなたがたはそこへ下って行って、そこから、われわれのため穀物を買ってきなさい。そうすれば、われわれは生きながらえて、死を免れるであろう」。
1256 01 42 3 そこでヨセフの十人の兄弟は穀物を買うためにエジプトへ下った。
1257 01 42 4 しかし、ヤコブはヨセフの弟ベニヤミンを兄弟たちと一緒にやらなかった。彼が災に会うのを恐れたからである。
1258 01 42 5 こうしてイスラエルの子らは穀物を買おうと人々に交じってやってきた。カナンの地にききんがあったからである。
1259 01 42 6 ときにヨセフは国のつかさであって、国のすべての民に穀物を売ることをしていた。ヨセフの兄弟たちはきて、地にひれ伏し、彼を拝した。
1260 01 42 7 ヨセフは兄弟たちを見て、それと知ったが、彼らに向かっては知らぬ者のようにし、荒々しく語った。すなわち彼らに言った、「あなたがたはどこからきたのか」。彼らは答えた、「食糧を買うためにカナンの地からきました」。
1261 01 42 8 ヨセフは、兄弟たちであるのを知っていたが、彼らはヨセフとは知らなかった。
1262 01 42 9 ヨセフはかつて彼らについて見た夢を思い出して、彼らに言った、「あなたがたは回し者で、この国のすきをうかがうためにきたのです」。
1263 01 42 10 彼らはヨセフに答えた、「いいえ、わが主よ、しもべらはただ食糧を買うためにきたのです。
1264 01 42 11 われわれは皆、ひとりの人の子で、真実な者です。しもべらは回し者ではありません」。
1265 01 42 12 ヨセフは彼らに言った、「いや、あなたがたはこの国のすきをうかがうためにきたのです」。
1266 01 42 13 彼らは言った、「しもべらは十二人兄弟で、カナンの地にいるひとりの人の子です。末の弟は今、父と一緒にいますが、他のひとりはいなくなりました」。
1267 01 42 14 ヨセフは彼らに言った、「わたしが言ったとおり、あなたがたは回し者です。
1268 01 42 15 あなたがたをこうしてためしてみよう。パロのいのちにかけて誓います。末の弟がここにこなければ、あなたがたはここを出ることはできません。
1269 01 42 16 あなたがたのひとりをやって弟を連れてこさせなさい。それまであなたがたをつないでおいて、あなたがたに誠実があるかどうか、あなたがたの言葉をためしてみよう。パロのいのちにかけて誓います。あなたがたは確かに回し者です」。
1270 01 42 17 ヨセフは彼らをみな一緒に三日の間、監禁所に入れた。
1271 01 42 18 三日目にヨセフは彼らに言った、「こうすればあなたがたは助かるでしょう。わたしは神を恐れます。
1272 01 42 19 もしあなたがたが真実な者なら、兄弟のひとりをあなたがたのいる監禁所に残し、あなたがたは穀物を携えて行って、家族の飢えを救いなさい。
1273 01 42 20 そして末の弟をわたしのもとに連れてきなさい。そうすればあなたがたの言葉のほんとうであることがわかって、死を免れるでしょう」。彼らはそのようにした。
1274 01 42 21 彼らは互に言った、「確かにわれわれは弟の事で罪がある。彼がしきりに願った時、その心の苦しみを見ながら、われわれは聞き入れなかった。それでこの苦しみに会うのだ」。
1275 01 42 22 ルベンが彼らに答えて言った、「わたしはあなたがたに、この子供に罪を犯すなと言ったではないか。それにもかかわらず、あなたがたは聞き入れなかった。それで彼の血の報いを受けるのです」。
1276 01 42 23 彼らはヨセフが聞きわけているのを知らなかった。相互の間に通訳者がいたからである。
1277 01 42 24 ヨセフは彼らを離れて行って泣き、また帰ってきて彼らと語り、そのひとりシメオンを捕えて、彼らの目の前で縛った。
1278 01 42 25 そしてヨセフは人々に命じて、彼らの袋に穀物を満たし、めいめいの銀を袋に返し、道中の食料を与えさせた。ヨセフはこのように彼らにした。
1279 01 42 26 彼らは穀物をろばに負わせてそこを去った。
1280 01 42 27 そのひとりが宿で、ろばに飼葉をやるため袋をあけて見ると、袋の口に自分の銀があった。
1281 01 42 28 彼は兄弟たちに言った、「わたしの銀は返してある。しかも見よ、それは袋の中にある」。そこで彼らは非常に驚き、互に震えながら言った、「神がわれわれにされたこのことは何事だろう」。
1282 01 42 29 こうして彼らはカナンの地にいる父ヤコブのもとに帰り、その身に起った事をことごとく告げて言った、
1283 01 42 30 「あの国の君は、われわれに荒々しく語り、国をうかがう回し者だと言いました。
1284 01 42 31 われわれは彼に答えました、『われわれは真実な者であって回し者ではない。
1285 01 42 32 われわれは十二人兄弟で、同じ父の子である。ひとりはいなくなり、末の弟は今父と共にカナンの地にいる』。
1286 01 42 33 その国の君であるその人はわれわれに言いました、『わたしはこうしてあなたがたの真実な者であるのを知ろう。あなたがたは兄弟のひとりをわたしのもとに残し、穀物を携えて行って、家族の飢えを救いなさい。
1287 01 42 34 そして末の弟をわたしのもとに連れてきなさい。そうすればあなたがたが回し者ではなく、真実な者であるのを知って、あなたがたの兄弟を返し、この国であなたがたに取引させましょう』」。
1288 01 42 35 彼らが袋のものを出して見ると、めいめいの金包みが袋の中にあったので、彼らも父も金包みを見て恐れた。
1289 01 42 36 父ヤコブは彼らに言った、「あなたがたはわたしに子を失わせた。ヨセフはいなくなり、シメオンもいなくなった。今度はベニヤミンをも取り去る。これらはみなわたしの身にふりかかって来るのだ」。
1290 01 42 37 ルベンは父に言った、「もしわたしが彼をあなたのもとに連れて帰らなかったら、わたしのふたりの子を殺してください。ただ彼をわたしの手にまかせてください。わたしはきっと、あなたのもとに彼を連れて帰ります」。
1291 01 42 38 ヤコブは言った、「わたしの子はあなたがたと共に下って行ってはならない。彼の兄は死に、ただひとり彼が残っているのだから。もしあなたがたの行く道で彼が災に会えば、あなたがたは、しらがのわたしを悲しんで陰府に下らせるであろう」。
1292 01 43 1 ききんはその地に激しかった。
1293 01 43 2 彼らがエジプトから携えてきた穀物を食い尽した時、父は彼らに言った、「また行って、われわれのために少しの食糧を買ってきなさい」。
1294 01 43 3 ユダは父に答えて言った、「あの人はわれわれをきびしく戒めて、弟が一緒でなければ、わたしの顔を見てはならないと言いました。
1295 01 43 4 もしあなたが弟をわれわれと一緒にやってくださるなら、われわれは下って行って、あなたのために食糧を買ってきましょう。
1296 01 43 5 しかし、もし彼をやられないなら、われわれは下って行きません。あの人がわれわれに、弟が一緒でなければわたしの顔を見てはならないと言ったのですから」。
1297 01 43 6 イスラエルは言った、「なぜ、もうひとりの弟があるとあの人に言って、わたしを苦しめるのか」。
1298 01 43 7 彼らは言った、「あの人がわれわれと一族とのことを問いただして、父はまだ生きているか、もうひとりの弟があるかと言ったので、問われるままに答えましたが、その人が、弟を連れてこいと言おうとは、どうして知ることができたでしょう」。
1299 01 43 8 ユダは父イスラエルに言った、「あの子をわたしと一緒にやってくだされば、われわれは立って行きましょう。そしてわれわれもあなたも、われわれの子供らも生きながらえ、死を免れましょう。
1300 01 43 9 わたしが彼の身を請け合います。わたしの手から彼を求めなさい。もしわたしが彼をあなたのもとに連れ帰って、あなたの前に置かなかったら、わたしはあなたに対して永久に罪を負いましょう。
1301 01 43 10 もしわれわれがこんなにためらわなかったら、今ごろは二度も行ってきたでしょう」。
1302 01 43 11 父イスラエルは彼らに言った、「それではこうしなさい。この国の名産を器に入れ、携え下ってその人に贈り物にしなさい。すなわち少しの乳香、少しの蜜、香料、もつやく、ふすだしう、あめんどう。
1303 01 43 12 そしてその上に、倍額の銀を手に持って行きなさい。また袋の口に返してあった銀は持って行って返しなさい。たぶんそれは誤りであったのでしょう。
1304 01 43 13 弟も連れ、立って、またその人の所へ行きなさい。
1305 01 43 14 どうか全能の神がその人の前であなたがたをあわれみ、もうひとりの兄弟とベニヤミンとを、返させてくださるように。もしわたしが子を失わなければならないのなら、失ってもよい」。
1306 01 43 15 そこでその人々は贈り物を取り、また倍額の銀を携え、ベニヤミンを連れ、立ってエジプトへ下り、ヨセフの前に立った。
1307 01 43 16 ヨセフはベニヤミンが彼らと共にいるのを見て、家づかさに言った、「この人々を家に連れて行き、獣をほふって、したくするように。この人々は昼、わたしと一緒に食事をします」。
1308 01 43 17 その人はヨセフの言ったようにして、この人々をヨセフの家へ連れて行った。
1309 01 43 18 ところがこの人々はヨセフの家へ連れて行かれたので恐れて言った、「初めの時に袋に返してあったあの銀のゆえに、われわれを引き入れたのです。そしてわれわれを襲い、攻め、捕えて奴隷とし、われわれのろばをも奪うのです」。
1310 01 43 19 彼らはヨセフの家づかさに近づいて、家の入口で、言った、
1311 01 43 20 「ああ、わが主よ、われわれは最初、食糧を買うために下ってきたのです。
1312 01 43 21 ところが宿に行って袋をあけて見ると、めいめいの銀は袋の口にあって、銀の重さは元のままでした。それでわれわれはそれを持って参りました。
1313 01 43 22 そして食糧を買うために、ほかの銀をも持って下ってきました。われわれの銀を袋に入れた者が、だれであるかは分りません」。
1314 01 43 23 彼は言った、「安心しなさい。恐れてはいけません。その宝はあなたがたの神、あなたがたの父の神が、あなたがたの袋に入れてあなたがたに賜わったのです。あなたがたの銀はわたしが受け取りました」。そして彼はシメオンを彼らの所へ連れてきた。
1315 01 43 24 こうしてその人はこの人々をヨセフの家へ導き、水を与えて足を洗わせ、また、ろばに飼葉を与えた。
1316 01 43 25 彼らはその所で食事をするのだと聞き、贈り物を整えて、昼にヨセフの来るのを待った。
1317 01 43 26 さてヨセフが家に帰ってきたので、彼らはその家に携えてきた贈り物をヨセフにささげ、地に伏して、彼を拝した。
1318 01 43 27 ヨセフは彼らの安否を問うて言った、「あなたがたの父、あなたがたがさきに話していたその老人は無事ですか。なお生きながらえておられますか」。
1319 01 43 28 彼らは答えた、「あなたのしもべ、われわれの父は無事で、なお生きながらえています」。そして彼らは、頭をさげて拝した。
1320 01 43 29 ヨセフは目をあげて同じ母の子である弟ベニヤミンを見て言った、「これはあなたがたが前にわたしに話した末の弟ですか」。また言った、「わが子よ、どうか神があなたを恵まれるように」。
1321 01 43 30 ヨセフは弟なつかしさに心がせまり、急いで泣く場所をたずね、へやにはいって泣いた。
1322 01 43 31 やがて彼は顔を洗って出てきた。そして自分を制して言った、「食事にしよう」。
1323 01 43 32 そこでヨセフはヨセフ、彼らは彼ら、陪食のエジプトびとはエジプトびと、と別々に席に着いた。エジプトびとはヘブルびとと共に食事することができなかった。それはエジプトびとの忌むところであったからである。
1324 01 43 33 こうして彼らはヨセフの前に、長子は長子として、弟は弟としてすわらせられたので、その人々は互に驚いた。
1325 01 43 34 またヨセフの前から、めいめいの分が運ばれたが、ベニヤミンの分は他のいずれの者の分よりも五倍多かった。こうして彼らは飲み、ヨセフと共に楽しんだ。
1326 01 44 1 さてヨセフは家づかさに命じて言った、「この人々の袋に、運べるだけ多くの食糧を満たし、めいめいの銀を袋の口に入れておきなさい。
1327 01 44 2 またわたしの杯、銀の杯をあの年下の者の袋の口に、穀物の代金と共に入れておきなさい」。家づかさはヨセフの言葉のとおりにした。
1328 01 44 3 夜が明けると、その人々と、ろばとは送り出されたが、
1329 01 44 4 町を出て、まだ遠くへ行かないうちに、ヨセフは家づかさに言った、「立って、あの人々のあとを追いなさい。追いついて、彼らに言いなさい、『あなたがたはなぜ悪をもって善に報いるのですか。なぜわたしの銀の杯を盗んだのですか。
1330 01 44 5 これはわたしの主人が飲む時に使い、またいつも占いに用いるものではありませんか。あなたがたのした事は悪いことです』」。
1331 01 44 6 家づかさが彼らに追いついて、これらの言葉を彼らに告げたとき、
1332 01 44 7 彼らは言った、「わが主は、どうしてそのようなことを言われるのですか。しもべらは決してそのようなことはいたしません。
1333 01 44 8 袋の口で見つけた銀でさえ、カナンの地からあなたの所に持ち帰ったほどです。どうして、われわれは御主人の家から銀や金を盗みましょう。
1334 01 44 9 しもべらのうちのだれの所でそれが見つかっても、その者は死に、またわれわれはわが主の奴隷となりましょう」。
1335 01 44 10 家づかさは言った、「それではあなたがたの言葉のようにしよう。杯の見つかった者はわたしの奴隷とならなければならない。ほかの者は無罪です」。
1336 01 44 11 そこで彼らは、めいめい急いで袋を地におろし、ひとりひとりその袋を開いた。
1337 01 44 12 家づかさは年上から捜し始めて年下に終ったが、杯はベニヤミンの袋の中にあった。
1338 01 44 13 そこで彼らは衣服を裂き、おのおの、ろばに荷を負わせて町に引き返した。
1339 01 44 14 ユダと兄弟たちとは、ヨセフの家にはいったが、ヨセフがなおそこにいたので、彼らはその前で地にひれ伏した。
1340 01 44 15 ヨセフは彼らに言った、「あなたがたのこのしわざは何事ですか。わたしのような人は、必ず占い当てることを知らないのですか」。
1341 01 44 16 ユダは言った、「われわれはわが主に何を言い、何を述べ得ましょう。どうしてわれわれは身の潔白をあらわし得ましょう。神がしもべらの罪をあばかれました。われわれと、杯を持っていた者とは共にわが主の奴隷となりましょう」。
1342 01 44 17 ヨセフは言った、「わたしは決してそのようなことはしない。杯を持っている者だけがわたしの奴隷とならなければならない。ほかの者は安全に父のもとへ上って行きなさい」。
1343 01 44 18 この時ユダは彼に近づいて言った、「ああ、わが主よ、どうぞわが主の耳にひとこと言わせてください。しもべをおこらないでください。あなたはパロのようなかたです。
1344 01 44 19 わが主はしもべらに尋ねて、『父があるか、また弟があるか』と言われたので、
1345 01 44 20 われわれはわが主に言いました、『われわれには老齢の父があり、また年寄り子の弟があります。その兄は死んで、同じ母の子で残っているのは、ただこれだけですから父はこれを愛しています』。
1346 01 44 21 その時あなたはしもべらに言われました、『その者をわたしの所へ連れてきなさい。わたしはこの目で彼を見よう』。
1347 01 44 22 われわれはわが主に言いました。『その子供は父を離れることができません。もし父を離れたら父は死ぬでしょう』。
1348 01 44 23 しかし、あなたはしもべらに言われました、『末の弟が一緒に下ってこなければ、おまえたちは再びわたしの顔を見ることはできない』。
1349 01 44 24 それであなたのしもべである父のもとに上って、わが主の言葉を彼に告げました。
1350 01 44 25 ところで、父が『おまえたちは再び行って、われわれのために少しの食糧を買ってくるように』と言ったので、
1351 01 44 26 われわれは言いました、『われわれは下って行けません。もし末の弟が一緒であれば行きましょう。末の弟が一緒でなければ、あの人の顔を見ることができません』。
1352 01 44 27 あなたのしもべである父は言いました、『おまえたちの知っているとおり、妻はわたしにふたりの子を産んだ。
1353 01 44 28 ひとりは外へ出たが、きっと裂き殺されたのだと思う。わたしは今になっても彼を見ない。
1354 01 44 29 もしおまえたちがこの子をもわたしから取って行って、彼が災に会えば、おまえたちは、しらがのわたしを悲しんで陰府に下らせるであろう』。
1355 01 44 30 わたしがあなたのしもべである父のもとに帰って行くとき、もしこの子供が一緒にいなかったら、どうなるでしょう。父の魂は子供の魂に結ばれているのです。
1356 01 44 31 この子供がわれわれと一緒にいないのを見たら、父は死ぬでしょう。そうすればしもべらは、あなたのしもべであるしらがの父を悲しんで陰府に下らせることになるでしょう。
1357 01 44 32 しもべは父にこの子供の身を請け合って『もしわたしがこの子をあなたのもとに連れ帰らなかったら、わたしは父に対して永久に罪を負いましょう』と言ったのです。
1358 01 44 33 どうか、しもべをこの子供の代りに、わが主の奴隷としてとどまらせ、この子供を兄弟たちと一緒に上り行かせてください、
1359 01 44 34 この子供を連れずに、どうしてわたしは父のもとに上り行くことができましょう。父が災に会うのを見るに忍びません」。
1360 01 45 1 そこでヨセフはそばに立っているすべての人の前で、自分を制しきれなくなったので、「人は皆ここから出てください」と呼ばわった。それゆえヨセフが兄弟たちに自分のことを明かした時、ひとりも彼のそばに立っている者はなかった。
1361 01 45 2 ヨセフは声をあげて泣いた。エジプトびとはこれを聞き、パロの家もこれを聞いた。
1362 01 45 3 ヨセフは兄弟たちに言った、「わたしはヨセフです。父はまだ生きながらえていますか」。兄弟たちは答えることができなかった。彼らは驚き恐れたからである。
1363 01 45 4 ヨセフは兄弟たちに言った、「わたしに近寄ってください」。彼らが近寄ったので彼は言った、「わたしはあなたがたの弟ヨセフです。あなたがたがエジプトに売った者です。
1364 01 45 5 しかしわたしをここに売ったのを嘆くことも、悔むこともいりません。神は命を救うために、あなたがたよりさきにわたしをつかわされたのです。
1365 01 45 6 この二年の間、国中にききんがあったが、なお五年の間は耕すことも刈り入れることもないでしょう。
1366 01 45 7 神は、あなたがたのすえを地に残すため、また大いなる救をもってあなたがたの命を助けるために、わたしをあなたがたよりさきにつかわされたのです。
1367 01 45 8 それゆえわたしをここにつかわしたのはあなたがたではなく、神です。神はわたしをパロの父とし、その全家の主とし、またエジプト全国のつかさとされました。
1368 01 45 9 あなたがたは父のもとに急ぎ上って言いなさい、『あなたの子ヨセフが、こう言いました。神がわたしをエジプト全国の主とされたから、ためらわずにわたしの所へ下ってきなさい。
1369 01 45 10 あなたはゴセンの地に住み、あなたも、あなたの子らも、孫たちも、羊も牛も、その他のものもみな、わたしの近くにおらせます。
1370 01 45 11 ききんはなお五年つづきますから、あなたも、家族も、その他のものも、みな困らないように、わたしはそこで養いましょう』。
1371 01 45 12 あなたがたと弟ベニヤミンが目に見るとおり、あなたがたに口ら語っているのはこのわたしです。
1372 01 45 13 あなたがたはエジプトでの、わたしのいっさいの栄えと、あなたがたが見るいっさいの事をわたしの父に告げ、急いでわたしの父をここへ連れ下りなさい」。
1373 01 45 14 そしてヨセフは弟ベニヤミンのくびを抱いて泣き、ベニヤミンも彼のくびを抱いて泣いた。
1374 01 45 15 またヨセフはすべての兄弟たちに口づけし、彼らを抱いて泣いた。そして後、兄弟たちは彼と語った。
1375 01 45 16 時に、「ヨセフの兄弟たちがきた」と言ううわさがパロの家に聞えたので、パロとその家来たちとは喜んだ。
1376 01 45 17 パロはヨセフに言った、「兄弟たちに言いなさい、『あなたがたは、こうしなさい。獣に荷を負わせてカナンの地へ行き、
1377 01 45 18 父と家族とを連れてわたしのもとへきなさい。わたしはあなたがたに、エジプトの地の良い物を与えます。あなたがたは、この国の最も良いものを食べるでしょう』。
1378 01 45 19 また彼らに命じなさい、『あなたがたは、こうしなさい。幼な子たちと妻たちのためにエジプトの地から車をもって行き、父を連れてきなさい。
1379 01 45 20 家財に心を引かれてはなりません。エジプト全国の良い物は、あなたがたのものだからです』」。
1380 01 45 21 イスラエルの子らはそのようにした。ヨセフはパロの命に従って彼らに車を与え、また途中の食料をも与えた。
1381 01 45 22 まためいめいに晴着を与えたが、ベニヤミンには銀三百シケルと晴着五着とを与えた。
1382 01 45 23 また彼は父に次のようなものを贈った。すなわちエジプトの良い物を負わせたろば十頭と、穀物、パン及び父の道中の食料を負わせた雌ろば十頭。
1383 01 45 24 こうしてヨセフは兄弟たちを送り去らせ、彼らに言った、「途中で争ってはなりません」。
1384 01 45 25 彼らはエジプトから上ってカナンの地に入り、父ヤコブのもとへ行って、
1385 01 45 26 彼に言った、「ヨセフはなお生きていてエジプト全国のつかさです」。ヤコブは気が遠くなった。彼らの言うことが信じられなかったからである。
1386 01 45 27 そこで彼らはヨセフが語った言葉を残らず彼に告げた。父ヤコブはヨセフが自分を乗せるために送った車を見て元気づいた。
1387 01 45 28 そしてイスラエルは言った、「満足だ。わが子ヨセフがまだ生きている。わたしは死ぬ前に行って彼を見よう」。
1388 01 46 1 イスラエルはその持ち物をことごとく携えて旅立ち、ベエルシバに行って、父イサクの神に犠牲をささげた。
1389 01 46 2 この時、神は夜の幻のうちにイスラエルに語って言われた、「ヤコブよ、ヤコブよ」。彼は言った、「ここにいます」。
1390 01 46 3 神は言われた、「わたしは神、あなたの父の神である。エジプトに下るのを恐れてはならない。わたしはあそこであなたを大いなる国民にする。
1391 01 46 4 わたしはあなたと一緒にエジプトに下り、また必ずあなたを導き上るであろう。ヨセフが手ずからあなたの目を閉じるであろう」。
1392 01 46 5 そしてヤコブはベエルシバを立った。イスラエルの子らはヤコブを乗せるためにパロの送った車に、父ヤコブと幼な子たちと妻たちを乗せ、
1393 01 46 6 またその家畜とカナンの地で得た財産を携え、ヤコブとその子孫は皆ともにエジプトへ行った。
1394 01 46 7 こうしてヤコブはその子と、孫および娘と孫娘などその子孫をみな連れて、エジプトへ行った。
1395 01 46 8 イスラエルの子らでエジプトへ行った者の名は次のとおりである。すなわちヤコブとその子らであるが、ヤコブの長子はルベン。
1396 01 46 9 ルベンの子らはハノク、パル、ヘヅロン、カルミ。
1397 01 46 10 シメオンの子らはエムエル、ヤミン、オハデ、ヤキン、ゾハル及びカナンの女の産んだ子シャウル。
1398 01 46 11 レビの子らはゲルション、コハテ、メラリ。
1399 01 46 12 ユダの子らはエル、オナン、シラ、ペレヅ、ゼラ。エルとオナンはカナンの地で死んだ。ペレヅの子らはヘヅロンとハムル。
1400 01 46 13 イッサカルの子らはトラ、プワ、ヨブ、シムロン。
1401 01 46 14 ゼブルンの子らはセレデ、エロン、ヤリエル。
1402 01 46 15 これらと娘デナとはレアがパダンアラムでヤコブに産んだ子らである。その子らと娘らは合わせて三十三人。
1403 01 46 16 ガドの子らはゼポン、ハギ、シュニ、エヅボン、エリ、アロデ、アレリ。
1404 01 46 17 アセルの子らはエムナ、イシワ、イスイ、ベリアおよび妹サラ。ベリアの子らはヘベルとマルキエル。
1405 01 46 18 これらはラバンが娘レアに与えたジルパの子らである。彼女はこれらをヤコブに産んだ。合わせて十六人。
1406 01 46 19 ヤコブの妻ラケルの子らはヨセフとベニヤミンとである。
1407 01 46 20 エジプトの国でヨセフにマナセとエフライムとが生れた。これはオンの祭司ポテペラの娘アセナテが彼に産んだ者である。
1408 01 46 21 ベニヤミンの子らはベラ、ベケル、アシベル、ゲラ、ナアマン、エヒ、ロシ、ムッピム、ホパム、アルデ。
1409 01 46 22 これらはラケルがヤコブに産んだ子らである。合わせて十四人。
1410 01 46 23 ダンの子はホシム。
1411 01 46 24 ナフタリの子らはヤジエル、グニ、エゼル、シレム。
1412 01 46 25 これらはラバンが娘ラケルに与えたビルハの子らである。彼女はこれらをヤコブに産んだ。合わせて七人。
1413 01 46 26 ヤコブと共にエジプトへ行ったすべての者、すなわち彼の身から出た者はヤコブの子らの妻をのぞいて、合わせて六十六人であった。
1414 01 46 27 エジプトでヨセフに生れた子がふたりあった。エジプトへ行ったヤコブの家の者は合わせて七十人であった。
1415 01 46 28 さてヤコブはユダをさきにヨセフにつかわして、ゴセンで会おうと言わせた。そして彼らはゴセンの地へ行った。
1416 01 46 29 ヨセフは車を整えて、父イスラエルを迎えるためにゴセンに上り、父に会い、そのくびを抱き、くびをかかえて久しく泣いた。
1417 01 46 30 時に、イスラエルはヨセフに言った、「あなたがなお生きていて、わたしはあなたの顔を見たので今は死んでもよい」。
1418 01 46 31 ヨセフは兄弟たちと父の家族とに言った、「わたしは上ってパロに言おう、『カナンの地にいたわたしの兄弟たちと父の家族とがわたしの所へきました。
1419 01 46 32 この者らは羊を飼う者、家畜の牧者で、その羊、牛および持ち物をみな携えてきました』。
1420 01 46 33 もしパロがあなたがたを召して、『あなたがたの職業は何か』と言われたら、
1421 01 46 34 『しもべらは幼い時から、ずっと家畜の牧者です。われわれも、われわれの先祖もそうです』と言いなさい。そうすればあなたがたはゴセンの地に住むことができましょう。羊飼はすべて、エジプトびとの忌む者だからです」。
1422 01 47 1 ヨセフは行って、パロに言った、「わたしの父と兄弟たち、その羊、牛およびすべての持ち物がカナンの地からきて、今ゴセンの地におります」。
1423 01 47 2 そしてその兄弟のうちの五人を連れて行って、パロに会わせた。
1424 01 47 3 パロはヨセフの兄弟たちに言った、「あなたがたの職業は何か」。彼らはパロに言った、「しもべらは羊を飼う者です。われわれも、われわれの先祖もそうです」。
1425 01 47 4 彼らはまたパロに言った、「この国に寄留しようとしてきました。カナンの地はききんが激しく、しもべらの群れのための牧草がないのです。どうかしもべらをゴセンの地に住ませてください」。
1426 01 47 5 パロはヨセフに言った、「あなたの父と兄弟たちとがあなたのところにきた。
1427 01 47 6 エジプトの地はあなたの前にある。地の最も良い所にあなたの父と兄弟たちとを住ませなさい。ゴセンの地に彼らを住ませなさい。もしあなたが彼らのうちに有能な者があるのを知っているなら、その者にわたしの家畜をつかさどらせなさい」。
1428 01 47 7 そこでヨセフは父ヤコブを導いてパロの前に立たせた。ヤコブはパロを祝福した。
1429 01 47 8 パロはヤコブに言った、「あなたの年はいくつか」。
1430 01 47 9 ヤコブはパロに言った、「わたしの旅路のとしつきは、百三十年です。わたしのよわいの日はわずかで、ふしあわせで、わたしの先祖たちのよわいの日と旅路の日には及びません」。
1431 01 47 10 ヤコブはパロを祝福し、パロの前を去った。
1432 01 47 11 ヨセフはパロの命じたように、父と兄弟たちとのすまいを定め、彼らにエジプトの国で最も良い地、ラメセスの地を所有として与えた。
1433 01 47 12 またヨセフは父と兄弟たちと父の全家とに、家族の数にしたがい、食物を与えて養った。
1434 01 47 13 さて、ききんが非常に激しかったので、全地に食物がなく、エジプトの国もカナンの国も、ききんのために衰えた。
1435 01 47 14 それでヨセフは人々が買った穀物の代金としてエジプトの国とカナンの国にあった銀をみな集め、その銀をパロの家に納めた。
1436 01 47 15 こうしてエジプトの国とカナンの国に銀が尽きたとき、エジプトびとはみなヨセフのもとにきて言った、「食物をください。銀が尽きたからとて、どうしてあなたの前で死んでよいでしょう」。
1437 01 47 16 ヨセフは言った、「あなたがたの家畜を出しなさい。銀が尽きたのなら、あなたがたの家畜と引き替えで食物をわたそう」。
1438 01 47 17 彼らはヨセフの所へ家畜をひいてきたので、ヨセフは馬と羊の群れと牛の群れ及びろばと引き替えで、食物を彼らにわたした。こうして彼はその年、すべての家畜と引き替えた食物で彼らを養った。
1439 01 47 18 やがてその年は暮れ、次の年、人々はまたヨセフの所へきて言った、「わが主には何事も隠しません。われわれの銀は尽き、獣の群れもわが主のものになって、われわれのからだと田地のほかはわが主の前に何も残っていません。
1440 01 47 19 われわれはどうして田地と一緒に、あなたの目の前で滅んでよいでしょう。われわれと田地とを食物と引き替えで買ってください。われわれは田地と一緒にパロの奴隷となりましょう。また種をください。そうすればわれわれは生きながらえ、死を免れて、田地も荒れないでしょう」。
1441 01 47 20 そこでヨセフはエジプトの田地をみなパロのために買い取った。ききんがエジプトびとに、きびしかったので、めいめいその田畑を売ったからである。こうして地はパロのものとなった。
1442 01 47 21 そしてヨセフはエジプトの国境のこの端からかの端まで民を奴隷とした。
1443 01 47 22 ただ祭司の田地は買い取らなかった。祭司にはパロの給与があって、パロが与える給与で生活していたので、その田地を売らなかったからである。
1444 01 47 23 ヨセフは民に言った、「わたしはきょう、あなたがたとその田地とを買い取って、パロのものとした。あなたがたに種をあげるから地にまきなさい。
1445 01 47 24 収穫の時は、その五分の一をパロに納め、五分の四を自分のものとして田畑の種とし、自分と家族の食糧とし、また子供の食糧としなさい」。
1446 01 47 25 彼らは言った、「あなたはわれわれの命をお救いくださった。どうかわが主の前に恵みを得させてください。われわれはパロの奴隷になりましょう」。
1447 01 47 26 ヨセフはエジプトの田地について、収穫の五分の一をパロに納めることをおきてとしたが、それは今日に及んでいる。ただし祭司の田地だけはパロのものとならなかった。
1448 01 47 27 さてイスラエルはエジプトの国でゴセンの地に住み、そこで財産を得、子を生み、大いにふえた。
1449 01 47 28 ヤコブはエジプトの国で十七年生きながらえた。ヤコブのよわいの日は百四十七年であった。
1450 01 47 29 イスラエルは死ぬ時が近づいたので、その子ヨセフを呼んで言った、「もしわたしがあなたの前に恵みを得るなら、どうか手をわたしのももの下に入れて誓い、親切と誠実とをもってわたしを取り扱ってください。どうかわたしをエジプトには葬らないでください。
1451 01 47 30 わたしが先祖たちと共に眠るときには、わたしをエジプトから運び出して先祖たちの墓に葬ってください」。ヨセフは言った、「あなたの言われたようにいたします」。
1452 01 47 31 ヤコブがまた、「わたしに誓ってください」と言ったので、彼は誓った。イスラエルは床のかしらで拝んだ。
1453 01 48 1 これらの事の後に、「あなたの父は、いま病気です」とヨセフに告げる者があったので、彼はふたりの子、マナセとエフライムとを連れて行った。
1454 01 48 2 時に人がヤコブに告げて、「あなたの子ヨセフがあなたのもとにきました」と言ったので、イスラエルは努めて床の上にすわった。
1455 01 48 3 そしてヤコブはヨセフに言った、「先に全能の神がカナンの地ルズでわたしに現れ、わたしを祝福して、
1456 01 48 4 言われた、『わたしはおまえに多くの子を得させ、おまえをふやし、おまえを多くの国民としよう。また、この地をおまえの後の子孫に与えて永久の所有とさせる』。
1457 01 48 5 エジプトにいるあなたの所にわたしが来る前に、エジプトの国で生れたあなたのふたりの子はいまわたしの子とします。すなわちエフライムとマナセとはルベンとシメオンと同じようにわたしの子とします。
1458 01 48 6 ただし彼らの後にあなたに生れた子らはあなたのものとなります。しかし、その嗣業はその兄弟の名で呼ばれるでしょう。
1459 01 48 7 わたしがパダンから帰って来る途中ラケルはカナンの地で死に、わたしは悲しんだ。そこはエフラタに行くまでには、なお隔たりがあった。わたしはエフラタ、すなわちベツレヘムへ行く道のかたわらに彼女を葬った」。
1460 01 48 8 ところで、イスラエルはヨセフの子らを見て言った、「これはだれですか」。
1461 01 48 9 ヨセフは父に言った、「神がここでわたしにくださった子どもです」。父は言った、「彼らをわたしの所に連れてきて、わたしに祝福させてください」。
1462 01 48 10 イスラエルの目は老齢のゆえに、かすんで見えなかったが、ヨセフが彼らを父の所に近寄らせたので、父は彼らに口づけし、彼らを抱いた。
1463 01 48 11 そしてイスラエルはヨセフに言った、「あなたの顔が見られようとは思わなかったのに、神はあなたの子らをもわたしに見させてくださった」。
1464 01 48 12 そこでヨセフは彼らをヤコブのひざの間から取り出し、地に伏して拝した。
1465 01 48 13 ヨセフはエフライムを右の手に取ってイスラエルの左の手に向かわせ、マナセを左の手に取ってイスラエルの右の手に向かわせ、ふたりを近寄らせた。
1466 01 48 14 すると、イスラエルは右の手を伸べて弟エフライムの頭に置き、左の手をマナセの頭に置いた。マナセは長子であるが、ことさらそのように手を置いたのである。
1467 01 48 15 そしてヨセフを祝福して言った、「わが先祖アブラハムとイサクの仕えた神、生れてからきょうまでわたしを養われた神、
1468 01 48 16 すべての災からわたしをあがなわれたみ使よ、この子供たちを祝福してください。またわが名と先祖アブラハムとイサクの名とが、彼らによって唱えられますように、また彼らが地の上にふえひろがりますように」。
1469 01 48 17 ヨセフは父が右の手をエフライムの頭に置いているのを見て不満に思い、父の手を取ってエフライムの頭からマナセの頭へ移そうとした。
1470 01 48 18 そしてヨセフは父に言った、「父よ、そうではありません。こちらが長子です。その頭に右の手を置いてください」。
1471 01 48 19 父は拒んで言った、「わかっている。子よ、わたしにはわかっている。彼もまた一つの民となり、また大いなる者となるであろう。しかし弟は彼よりも大いなる者となり、その子孫は多くの国民となるであろう」。
1472 01 48 20 こうして彼はこの日、彼らを祝福して言った、「あなたを指して、イスラエルは、人を祝福して言うであろう、『神があなたをエフライムのごとく、またマナセのごとくにせられるように』」。このように、彼はエフライムをマナセの先に立てた。
1473 01 48 21 イスラエルはまたヨセフに言った、「わたしはやがて死にます。しかし、神はあなたがたと共におられて、あなたがたを先祖の国に導き返されるであろう。
1474 01 48 22 なおわたしは一つの分を兄弟よりも多くあなたに与える。これはわたしがつるぎと弓とを持ってアモリびとの手から取ったものである」。
1475 01 49 1 ヤコブはその子らを呼んで言った、「集まりなさい。後の日に、あなたがたの上に起ることを、告げましょう、
1476 01 49 2 ヤコブの子らよ、集まって聞け。父イスラエルのことばを聞け。
1477 01 49 3 ルベンよ、あなたはわが長子、わが勢い、わが力のはじめ、威光のすぐれた者、権力のすぐれた者。
1478 01 49 4 しかし、沸き立つ水のようだから、もはや、すぐれた者ではあり得ない。あなたは父の床に上って汚した。ああ、あなたはわが寝床に上った。
1479 01 49 5 シメオンとレビとは兄弟。彼らのつるぎは暴虐の武器。
1480 01 49 6 わが魂よ、彼らの会議に臨むな。わが栄えよ、彼らのつどいに連なるな。彼らは怒りに任せて人を殺し、ほしいままに雄牛の足の筋を切った。
1481 01 49 7 彼らの怒りは、激しいゆえにのろわれ、彼らの憤りは、はなはだしいゆえにのろわれる。わたしは彼らをヤコブのうちに分け、イスラエルのうちに散らそう。
1482 01 49 8 ユダよ、兄弟たちはあなたをほめる。あなたの手は敵のくびを押え、父の子らはあなたの前に身をかがめるであろう。
1483 01 49 9 ユダは、ししの子。わが子よ、あなたは獲物をもって上って来る。彼は雄じしのようにうずくまり、雌じしのように身を伏せる。だれがこれを起すことができよう。
1484 01 49 10 つえはユダを離れず、立法者のつえはその足の間を離れることなく、シロの来る時までに及ぶであろう。もろもろの民は彼に従う。
1485 01 49 11 彼はそのろばの子をぶどうの木につなぎ、その雌ろばの子を良きぶどうの木につなぐ。彼はその衣服をぶどう酒で洗い、その着物をぶどうの汁で洗うであろう。
1486 01 49 12 その目はぶどう酒によって赤く、その歯は乳によって白い。
1487 01 49 13 ゼブルンは海べに住み、舟の泊まる港となって、その境はシドンに及ぶであろう。
1488 01 49 14 イッサカルはたくましいろば、彼は羊のおりの間に伏している。
1489 01 49 15 彼は定住の地を見て良しとし、その国を見て楽しとした。彼はその肩を下げてにない、奴隷となって追い使われる。
1490 01 49 16 ダンはおのれの民をさばくであろう、イスラエルのほかの部族のように。
1491 01 49 17 ダンは道のかたわらのへび、道のほとりのまむし。馬のかかとをかんで、乗る者をうしろに落すであろう。
1492 01 49 18 主よ、わたしはあなたの救を待ち望む。
1493 01 49 19 ガドには略奪者が迫る。しかし彼はかえって敵のかかとに迫るであろう。
1494 01 49 20 アセルはその食物がゆたかで、王の美味をいだすであろう。
1495 01 49 21 ナフタリは放たれた雌じか、彼は美しい子じかを生むであろう。
1496 01 49 22 ヨセフは実を結ぶ若木、泉のほとりの実を結ぶ若木。その枝は、かきねを越えるであろう。
1497 01 49 23 射る者は彼を激しく攻め、彼を射、彼をいたく悩ました。
1498 01 49 24 しかし彼の弓はなお強く、彼の腕は素早い。これはヤコブの全能者の手により、イスラエルの岩なる牧者の名により、
1499 01 49 25 あなたを助ける父の神により、また上なる天の祝福、下に横たわる淵の祝福、乳ぶさと胎の祝福をもって、あなたを恵まれる全能者による。
1500 01 49 26 あなたの父の祝福は永遠の山の祝福にまさり、永久の丘の賜物にまさる。これらの祝福はヨセフのかしらに帰し、その兄弟たちの君たる者の頭の頂に帰する。
1501 01 49 27 ベニヤミンはかき裂くおおかみ、朝にその獲物を食らい、夕にその分捕物を分けるであろう」。
1502 01 49 28 すべてこれらはイスラエルの十二の部族である。そしてこれは彼らの父が彼らに語り、彼らを祝福したもので、彼は祝福すべきところに従って、彼らおのおのを祝福した。
1503 01 49 29 彼はまた彼らに命じて言った、「わたしはわが民に加えられようとしている。あなたがたはヘテびとエフロンの畑にあるほら穴に、わたしの先祖たちと共にわたしを葬ってください。
1504 01 49 30 そのほら穴はカナンの地のマムレの東にあるマクペラの畑にあり、アブラハムがヘテびとエフロンから畑と共に買い取り、所有の墓地としたもので、
1505 01 49 31 そこにアブラハムと妻サラとが葬られ、イサクと妻リベカもそこに葬られたが、わたしはまたそこにレアを葬った。
1506 01 49 32 あの畑とその中にあるほら穴とはヘテの人々から買ったものです」。
1507 01 49 33 こうしてヤコブは子らに命じ終って、足を床におさめ、息絶えて、その民に加えられた。
1508 01 50 1 ヨセフは父の顔に伏して泣き、口づけした。
1509 01 50 2 そしてヨセフは彼のしもべである医者たちに、父に薬を塗ることを命じたので、医者たちはイスラエルに薬を塗った。
1510 01 50 3 このために四十日を費した。薬を塗るにはこれほどの日数を要するのである。エジプトびとは七十日の間、彼のために泣いた。
1511 01 50 4 彼のために泣く日が過ぎて、ヨセフはパロの家の者に言った、「今もしわたしがあなたがたの前に恵みを得るなら、どうかパロに伝えてください。
1512 01 50 5 『わたしの父はわたしに誓わせて言いました「わたしはやがて死にます。カナンの地に、わたしが掘って置いた墓に葬ってください」。それで、どうかわたしを上って行かせ、父を葬らせてください。そうすれば、わたしはまた帰ってきます』」。
1513 01 50 6 パロは言った、「あなたの父があなたに誓わせたように上って行って彼を葬りなさい」。
1514 01 50 7 そこでヨセフは父を葬るために上って行った。彼と共に上った者はパロのもろもろの家来たち、パロの家の長老たち、エジプトの国のもろもろの長老たち、
1515 01 50 8 ヨセフの全家とその兄弟たち及びその父の家族であった。ただ子供と羊と牛はゴセンの地に残した。
1516 01 50 9 また戦車と騎兵も彼と共に上ったので、その行列はたいそう盛んであった。
1517 01 50 10 彼らはヨルダンの向こうのアタデの打ち場に行き着いて、そこで大いに嘆き、非常に悲しんだ。そしてヨセフは七日の間父のために嘆いた。
1518 01 50 11 その地の住民、カナンびとがアタデの打ち場の嘆きを見て、「これはエジプトびとの大いなる嘆きだ」と言ったので、その所の名はアベル・ミツライムと呼ばれた。これはヨルダンの向こうにある。
1519 01 50 12 ヤコブの子らは命じられたようにヤコブにおこなった。
1520 01 50 13 すなわちその子らは彼をカナンの地へ運んで行って、マクペラの畑のほら穴に葬った。このほら穴はマムレの東にあって、アブラハムがヘテびとエフロンから畑と共に買って、所有の墓地としたものである。
1521 01 50 14 ヨセフは父を葬った後、その兄弟たち及びすべて父を葬るために一緒に上った者と共にエジプトに帰った。
1522 01 50 15 ヨセフの兄弟たちは父の死んだのを見て言った、「ヨセフはことによるとわれわれを憎んで、われわれが彼にしたすべての悪に、仕返しするに違いない」。
1523 01 50 16 そこで彼らはことづけしてヨセフに言った、「あなたの父は死ぬ前に命じて言われました、
1524 01 50 17 『おまえたちはヨセフに言いなさい、「あなたの兄弟たちはあなたに悪をおこなったが、どうかそのとがと罪をゆるしてやってください」』。今どうかあなたの父の神に仕えるしもべらのとがをゆるしてください」。ヨセフはこの言葉を聞いて泣いた。
1525 01 50 18 やがて兄弟たちもきて、彼の前に伏して言った、「このとおり、わたしたちはあなたのしもべです」。
1526 01 50 19 ヨセフは彼らに言った、「恐れることはいりません。わたしが神に代ることができましょうか。
1527 01 50 20 あなたがたはわたしに対して悪をたくらんだが、神はそれを良きに変らせて、今日のように多くの民の命を救おうと計らわれました。
1528 01 50 21 それゆえ恐れることはいりません。わたしはあなたがたとあなたがたの子供たちを養いましょう」。彼は彼らを慰めて、親切に語った。
1529 01 50 22 このようにしてヨセフは父の家族と共にエジプトに住んだ。そしてヨセフは百十年生きながらえた。
1530 01 50 23 ヨセフはエフライムの三代の子孫を見た。マナセの子マキルの子らも生れてヨセフのひざの上に置かれた。
1531 01 50 24 ヨセフは兄弟たちに言った、「わたしはやがて死にます。神は必ずあなたがたを顧みて、この国から連れ出し、アブラハム、イサク、ヤコブに誓われた地に導き上られるでしょう」。
1532 01 50 25 さらにヨセフは、「神は必ずあなたがたを顧みられる。その時、あなたがたはわたしの骨をここから携え上りなさい」と言ってイスラエルの子らに誓わせた。
1533 01 50 26 こうしてヨセフは百十歳で死んだ。彼らはこれに薬を塗り、棺に納めて、エジプトに置いた。
1534 02 1 1 さて、ヤコブと共に、おのおのその家族を伴って、エジプトへ行ったイスラエルの子らの名は次のとおりである。
1535 02 1 2 すなわちルベン、シメオン、レビ、ユダ、
1536 02 1 3 イッサカル、ゼブルン、ベニヤミン、
1537 02 1 4 ダン、ナフタリ、ガド、アセルであった。
1538 02 1 5 ヤコブの腰から出たものは、合わせて七十人。ヨセフはすでにエジプトにいた。
1539 02 1 6 そして、ヨセフは死に、兄弟たちも、その時代の人々もみな死んだ。
1540 02 1 7 けれどもイスラエルの子孫は多くの子を生み、ますますふえ、はなはだ強くなって、国に満ちるようになった。
1541 02 1 8 ここに、ヨセフのことを知らない新しい王が、エジプトに起った。
1542 02 1 9 彼はその民に言った、「見よ、イスラエルびとなるこの民は、われわれにとって、あまりにも多く、また強すぎる。
1543 02 1 10 さあ、われわれは、抜かりなく彼らを取り扱おう。彼らが多くなり、戦いの起るとき、敵に味方して、われわれと戦い、ついにこの国から逃げ去ることのないようにしよう」。
1544 02 1 11 そこでエジプトびとは彼らの上に監督をおき、重い労役をもって彼らを苦しめた。彼らはパロのために倉庫の町ピトムとラメセスを建てた。
1545 02 1 12 しかしイスラエルの人々が苦しめられるにしたがって、いよいよふえひろがるので、彼らはイスラエルの人々のゆえに恐れをなした。
1546 02 1 13 エジプトびとはイスラエルの人々をきびしく使い、
1547 02 1 14 つらい務をもってその生活を苦しめた。すなわち、しっくいこね、れんが作り、および田畑のあらゆる務に当らせたが、そのすべての労役はきびしかった。
1548 02 1 15 またエジプトの王は、ヘブルの女のために取上げをする助産婦でひとりは名をシフラといい、他のひとりは名をプアという者にさとして、
1549 02 1 16 言った、「ヘブルの女のために助産をするとき、産み台の上を見て、もし男の子ならばそれを殺し、女の子ならば生かしておきなさい」。
1550 02 1 17 しかし助産婦たちは神をおそれ、エジプトの王が彼らに命じたようにはせず、男の子を生かしておいた。
1551 02 1 18 エジプトの王は助産婦たちを召して言った、「あなたがたはなぜこのようなことをして、男の子を生かしておいたのか」。
1552 02 1 19 助産婦たちはパロに言った、「ヘブルの女はエジプトの女とは違い、彼女たちは健やかで助産婦が行く前に産んでしまいます」。
1553 02 1 20 それで神は助産婦たちに恵みをほどこされた。そして民はふえ、非常に強くなった。
1554 02 1 21 助産婦たちは神をおそれたので、神は彼女たちの家を栄えさせられた。
1555 02 1 22 そこでパロはそのすべての民に命じて言った、「ヘブルびとに男の子が生れたならば、みなナイル川に投げこめ。しかし女の子はみな生かしておけ」。
1556 02 2 1 さて、レビの家のひとりの人が行ってレビの娘をめとった。
1557 02 2 2 女はみごもって、男の子を産んだが、その麗しいのを見て、三月のあいだ隠していた。
1558 02 2 3 しかし、もう隠しきれなくなったので、パピルスで編んだかごを取り、それにアスファルトと樹脂とを塗って、子をその中に入れ、これをナイル川の岸の葦の中においた。
1559 02 2 4 その姉は、彼がどうされるかを知ろうと、遠く離れて立っていた。
1560 02 2 5 ときにパロの娘が身を洗おうと、川に降りてきた。侍女たちは川べを歩いていたが、彼女は、葦の中にかごのあるのを見て、つかえめをやり、それを取ってこさせ、
1561 02 2 6 あけて見ると子供がいた。見よ、幼な子は泣いていた。彼女はかわいそうに思って言った、「これはヘブルびとの子供です」。
1562 02 2 7 そのとき幼な子の姉はパロの娘に言った、「わたしが行ってヘブルの女のうちから、あなたのために、この子に乳を飲ませるうばを呼んでまいりましょうか」。
1563 02 2 8 パロの娘が「行ってきてください」と言うと、少女は行ってその子の母を呼んできた。
1564 02 2 9 パロの娘は彼女に言った、「この子を連れて行って、わたしに代り、乳を飲ませてください。わたしはその報酬をさしあげます」。女はその子を引き取って、これに乳を与えた。
1565 02 2 10 その子が成長したので、彼女はこれをパロの娘のところに連れて行った。そして彼はその子となった。彼女はその名をモーセと名づけて言った、「水の中からわたしが引き出したからです」。
1566 02 2 11 モーセが成長して後、ある日のこと、同胞の所に出て行って、そのはげしい労役を見た。彼はひとりのエジプトびとが、同胞のひとりであるヘブルびとを打つのを見たので、
1567 02 2 12 左右を見まわし、人のいないのを見て、そのエジプトびとを打ち殺し、これを砂の中に隠した。
1568 02 2 13 次の日また出て行って、ふたりのヘブルびとが互に争っているのを見、悪い方の男に言った、「あなたはなぜ、あなたの友を打つのですか」。
1569 02 2 14 彼は言った、「だれがあなたを立てて、われわれのつかさ、また裁判人としたのですか。エジプトびとを殺したように、あなたはわたしを殺そうと思うのですか」。モーセは恐れた。そしてあの事がきっと知れたのだと思った。
1570 02 2 15 パロはこの事を聞いて、モーセを殺そうとした。
1571 02 2 16 さて、ミデヤンの祭司に七人の娘があった。彼女たちはきて水をくみ、水槽にみたして父の羊の群れに飲ませようとしたが、
1572 02 2 17 羊飼たちがきて彼女らを追い払ったので、モーセは立ち上がって彼女たちを助け、その羊の群れに水を飲ませた。
1573 02 2 18 彼女たちが父リウエルのところに帰った時、父は言った、「きょうは、どうして、こんなに早く帰ってきたのか」。
1574 02 2 19 彼女たちは言った、「ひとりのエジプトびとが、わたしたちを羊飼たちの手から助け出し、そのうえ、水をたくさんくんで、羊の群れに飲ませてくれたのです」。
1575 02 2 20 彼は娘たちに言った、「そのかたはどこにおられるか。なぜ、そのかたをおいてきたのか。呼んできて、食事をさしあげなさい」。
1576 02 2 21 モーセがこの人と共におることを好んだので、彼は娘のチッポラを妻としてモーセに与えた。
1577 02 2 22 彼女が男の子を産んだので、モーセはその名をゲルショムと名づけた。「わたしは外国に寄留者となっている」と言ったからである。
1578 02 2 23 多くの日を経て、エジプトの王は死んだ。イスラエルの人々は、その苦役の務のゆえにうめき、また叫んだが、その苦役のゆえの叫びは神に届いた。
1579 02 2 24 神は彼らのうめきを聞き、神はアブラハム、イサク、ヤコブとの契約を覚え、
1580 02 2 25 神はイスラエルの人々を顧み、神は彼らをしろしめされた。
1581 02 3 1 モーセは妻の父、ミデヤンの祭司エテロの羊の群れを飼っていたが、その群れを荒野の奥に導いて、神の山ホレブにきた。
1582 02 3 2 ときに主の使は、しばの中の炎のうちに彼に現れた。彼が見ると、しばは火に燃えているのに、そのしばはなくならなかった。
1583 02 3 3 モーセは言った、「行ってこの大きな見ものを見、なぜしばが燃えてしまわないかを知ろう」。
1584 02 3 4 主は彼がきて見定ようとするのを見、神はしばの中から彼を呼んで、「モーセよ、モーセよ」と言われた。彼は「ここにいます」と言った。
1585 02 3 5 神は言われた、「ここに近づいてはいけない。足からくつを脱ぎなさい。あなたが立っているその場所は聖なる地だからである」。
1586 02 3 6 また言われた、「わたしは、あなたの先祖の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である」。モーセは神を見ることを恐れたので顔を隠した。
1587 02 3 7 主はまた言われた、「わたしは、エジプトにいるわたしの民の悩みを、つぶさに見、また追い使う者のゆえに彼らの叫ぶのを聞いた。わたしは彼らの苦しみを知っている。
1588 02 3 8 わたしは下って、彼らをエジプトびとの手から救い出し、これをかの地から導き上って、良い広い地、乳と蜜の流れる地、すなわちカナンびと、ヘテびと、アモリびと、ペリジびと、ヒビびと、エブスびとのおる所に至らせようとしている。
1589 02 3 9 いまイスラエルの人々の叫びがわたしに届いた。わたしはまたエジプトびとが彼らをしえたげる、そのしえたげを見た。
1590 02 3 10 さあ、わたしは、あなたをパロにつかわして、わたしの民、イスラエルの人々をエジプトから導き出させよう」。
1591 02 3 11 モーセは神に言った、「わたしは、いったい何者でしょう。わたしがパロのところへ行って、イスラエルの人々をエジプトから導き出すのでしょうか」。
1592 02 3 12 神は言われた、「わたしは必ずあなたと共にいる。これが、わたしのあなたをつかわしたしるしである。あなたが民をエジプトから導き出したとき、あなたがたはこの山で神に仕えるであろう」。
1593 02 3 13 モーセは神に言った、「わたしがイスラエルの人々のところへ行って、彼らに『あなたがたの先祖の神が、わたしをあなたがたのところへつかわされました』と言うとき、彼らが『その名はなんというのですか』とわたしに聞くならば、なんと答えましょうか」。
1594 02 3 14 神はモーセに言われた、「わたしは、有って有る者」。また言われた、「イスラエルの人々にこう言いなさい、『「わたしは有る」というかたが、わたしをあなたがたのところへつかわされました』と」。
1595 02 3 15 神はまたモーセに言われた、「イスラエルの人々にこう言いなさい『あなたがたの先祖の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である主が、わたしをあなたがたのところへつかわされました』と。これは永遠にわたしの名、これは世々のわたしの呼び名である。
1596 02 3 16 あなたは行って、イスラエルの長老たちを集めて言いなさい、『あなたがたの先祖の神、アブラハム、イサク、ヤコブの神である主は、わたしに現れて言われました、「わたしはあなたがたを顧み、あなたがたがエジプトでされている事を確かに見た。
1597 02 3 17 それでわたしはあなたがたを、エジプトの悩みから導き出して、カナンびと、ヘテびと、アモリびと、ペリジびと、ヒビびと、エブスびとの地、乳と蜜の流れる地へ携え上ろうと決心した」と』。
1598 02 3 18 彼らはあなたの声に聞き従うであろう。あなたはイスラエルの長老たちと一緒にエジプトの王のところへ行って言いなさい、『ヘブルびとの神、主がわたしたちに現れられました。それで、わたしたちを、三日の道のりほど荒野に行かせて、わたしたちの神、主に犠牲をささげることを許してください』と。
1599 02 3 19 しかし、エジプトの王は強い手をもって迫らなければ、あなたがたを行かせないのをわたしは知っている。
1600 02 3 20 それで、わたしは手を伸べて、エジプトのうちに行おうとする、さまざまの不思議をもってエジプトを打とう。その後に彼はあなたがたを去らせるであろう。
1601 02 3 21 わたしはこの民にエジプトびとの好意を得させる。あなたがたは去るときに、むなし手で去ってはならない。
1602 02 3 22 女はみな、その隣の女と、家に宿っている女に、銀の飾り、金の飾り、また衣服を求めなさい。そしてこれらを、あなたがたのむすこ、娘に着けさせなさい。このようにエジプトびとのものを奪い取りなさい」。
1603 02 4 1 モーセは言った、「しかし、彼らはわたしを信ぜず、またわたしの声に聞き従わないで言うでしょう、『主はあなたに現れなかった』と」。
1604 02 4 2 主は彼に言われた、「あなたの手にあるそれは何か」。彼は言った、「つえです」。
1605 02 4 3 また言われた、「それを地に投げなさい」。彼がそれを地に投げると、へびになったので、モーセはその前から身を避けた。
1606 02 4 4 主はモーセに言われた、「あなたの手を伸ばして、その尾を取りなさい。――そこで手を伸ばしてそれを取ると、手のなかでつえとなった。――
1607 02 4 5 これは、彼らの先祖たちの神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である主が、あなたに現れたのを、彼らに信じさせるためである」。
1608 02 4 6 主はまた彼に言われた、「あなたの手をふところに入れなさい」。彼が手をふところに入れ、それを出すと、手は、らい病にかかって、雪のように白くなっていた。
1609 02 4 7 主は言われた、「手をふところにもどしなさい」。彼は手をふところにもどし、それをふところから出して見ると、回復して、もとの肉のようになっていた。
1610 02 4 8 主は言われた、「彼らがもしあなたを信ぜず、また初めのしるしを認めないならば、後のしるしは信じるであろう。
1611 02 4 9 彼らがもしこの二つのしるしをも信ぜず、あなたの声に聞き従わないならば、あなたはナイル川の水を取って、かわいた地に注ぎなさい。あなたがナイル川から取った水は、かわいた地で血となるであろう」。
1612 02 4 10 モーセは主に言った、「ああ主よ、わたしは以前にも、またあなたが、しもべに語られてから後も、言葉の人ではありません。わたしは口も重く、舌も重いのです」。
1613 02 4 11 主は彼に言われた、「だれが人に口を授けたのか。おし、耳しい、目あき、目しいにだれがするのか。主なるわたしではないか。
1614 02 4 12 それゆえ行きなさい。わたしはあなたの口と共にあって、あなたの言うべきことを教えるであろう」。
1615 02 4 13 モーセは言った、「ああ、主よ、どうか、ほかの適当な人をおつかわしください」。
1616 02 4 14 そこで、主はモーセにむかって怒りを発して言われた、「あなたの兄弟レビびとアロンがいるではないか。わたしは彼が言葉にすぐれているのを知っている。見よ、彼はあなたに会おうとして出てきている。彼はあなたを見て心に喜ぶであろう。
1617 02 4 15 あなたは彼に語って言葉をその口に授けなさい。わたしはあなたの口と共にあり、彼の口と共にあって、あなたがたのなすべきことを教え、
1618 02 4 16 彼はあなたに代って民に語るであろう。彼はあなたの口となり、あなたは彼のために、神に代るであろう。
1619 02 4 17 あなたはそのつえを手に執り、それをもって、しるしを行いなさい」。
1620 02 4 18 モーセは妻の父エテロのところに帰って彼に言った、「どうかわたしを、エジプトにいる身うちの者のところに帰らせ、彼らがまだ生きながらえているか、どうかを見させてください」。エテロはモーセに言った、「安んじて行きなさい」。
1621 02 4 19 主はミデヤンでモーセに言われた、「エジプトに帰って行きなさい。あなたの命を求めた人々はみな死んだ」。
1622 02 4 20 そこでモーセは妻と子供たちをとり、ろばに乗せて、エジプトの地に帰った。モーセは手に神のつえを執った。
1623 02 4 21 主はモーセに言われた、「あなたがエジプトに帰ったとき、わたしがあなたの手に授けた不思議を、みなパロの前で行いなさい。しかし、わたしが彼の心をかたくなにするので、彼は民を去らせないであろう。
1624 02 4 22 あなたはパロに言いなさい、『主はこう仰せられる。イスラエルはわたしの子、わたしの長子である。
1625 02 4 23 わたしはあなたに言う。わたしの子を去らせて、わたしに仕えさせなさい。もし彼を去らせるのを拒むならば、わたしはあなたの子、あなたの長子を殺すであろう』と」。
1626 02 4 24 さてモーセが途中で宿っている時、主は彼に会って彼を殺そうとされた。
1627 02 4 25 その時チッポラは火打ち石の小刀を取って、その男の子の前の皮を切り、それをモーセの足につけて言った、「あなたはまことに、わたしにとって血の花婿です」。
1628 02 4 26 そこで、主はモーセをゆるされた。この時「血の花婿です」とチッポラが言ったのは割礼のゆえである。
1629 02 4 27 主はアロンに言われた、「荒野に行ってモーセに会いなさい」。彼は行って神の山でモーセに会い、これに口づけした。
1630 02 4 28 モーセは自分をつかわされた主のすべての言葉と、命じられたすべてのしるしをアロンに告げた。
1631 02 4 29 そこでモーセとアロンは行ってイスラエルの人々の長老たちをみな集めた。
1632 02 4 30 そしてアロンは主がモーセに語られた言葉を、ことごとく告げた。また彼は民の前でしるしを行ったので、
1633 02 4 31 民は信じた。彼らは主がイスラエルの人々を顧み、その苦しみを見られたのを聞き、伏して礼拝した。
1634 02 5 1 その後、モーセとアロンは行ってパロに言った、「イスラエルの神、主はこう言われる、『わたしの民を去らせ、荒野で、わたしのために祭をさせなさい』と」。
1635 02 5 2 パロは言った、「主とはいったい何者か。わたしがその声に聞き従ってイスラエルを去らせなければならないのか。わたしは主を知らない。またイスラエルを去らせはしない」。
1636 02 5 3 彼らは言った、「ヘブルびとの神がわたしたちに現れました。どうか、わたしたちを三日の道のりほど荒野に行かせ、わたしたちの神、主に犠牲をささげさせてください。そうしなければ主は疫病か、つるぎをもって、わたしたちを悩まされるからです」。
1637 02 5 4 エジプトの王は彼らに言った、「モーセとアロンよ、あなたがたは、なぜ民に働きをやめさせようとするのか。自分の労役につくがよい」。
1638 02 5 5 パロはまた言った、「見よ、今や土民の数は多い。しかも、あなたがたは彼らに労役を休ませようとするのか」。
1639 02 5 6 その日、パロは民を追い使う者と、民のかしらたちに命じて言った、
1640 02 5 7 「あなたがたは、れんがを作るためのわらを、もはや、今までのように、この民に与えてはならない。彼らに自分で行って、わらを集めさせなさい。
1641 02 5 8 また前に作っていた、れんがの数どおりに彼らに作らせ、それを減らしてはならない。彼らはなまけ者だ。それだから、彼らは叫んで、『行ってわたしたちの神に犠牲をささげさせよ』と言うのだ。
1642 02 5 9 この人々の労役を重くして、働かせ、偽りの言葉に心を寄せさせぬようにしなさい」。
1643 02 5 10 そこで民を追い使う者たちと、民のかしらたちは出て行って、民に言った、「パロはこう仰せられる、『あなたがたに、わらは与えない。
1644 02 5 11 自分で行って、見つかる所から、わらを取って来るがよい。しかし働きは少しも減らしてはならない』と」。
1645 02 5 12 そこで民はエジプトの全地に散って、わらのかわりに、刈り株を集めた。
1646 02 5 13 追い使う者たちは、彼らをせき立てて言った、「わらがあった時と同じように、あなたがたの働きの、日ごとの分を仕上げなければならない」。
1647 02 5 14 パロの追い使う者たちがイスラエルの人々の上に立てたかしらたちは、打たれて、「なぜ、あなたがたは、れんが作りの仕事を、きょうも、前のように仕上げないのか」と言われた。
1648 02 5 15 そこで、イスラエルの人々のかしらたちはパロのところに行き、叫んで言った、「あなたはなぜ、しもべどもにこんなことをなさるのですか。
1649 02 5 16 しもべどもは、わらを与えられず、しかも彼らはわたしたちに、『れんがは作れ』と言うのです。その上、しもべどもは打たれています。罪はあなたの民にあるのです」。
1650 02 5 17 パロは言った、「あなたがたは、なまけ者だ、なまけ者だ。それだから、『行って、主に犠牲をささげさせよ』と言うのだ。
1651 02 5 18 さあ、行って働きなさい。わらは与えないが、なおあなたがたは定めた数のれんがを納めなければならない」。
1652 02 5 19 イスラエルの人々のかしらたちは、「れんがの日ごとの分を減らしてはならない」と言われたので、悪い事態になったことを知った。
1653 02 5 20 彼らがパロを離れて出てきた時、彼らに会おうとして立っていたモーセとアロンに会ったので、
1654 02 5 21 彼らに言った、「主があなたがたをごらんになって、さばかれますように。あなたがたは、わたしたちをパロとその家来たちにきらわせ、つるぎを彼らの手に渡して、殺させようとしておられるのです」。
1655 02 5 22 モーセは主のもとに帰って言った、「主よ、あなたは、なぜこの民をひどい目にあわされるのですか。なんのためにわたしをつかわされたのですか。
1656 02 5 23 わたしがパロのもとに行って、あなたの名によって語ってからこのかた、彼はこの民をひどい目にあわせるばかりです。また、あなたは、すこしもあなたの民を救おうとなさいません」。
1657 02 6 1 主はモーセに言われた、「今、あなたは、わたしがパロに何をしようとしているかを見るであろう。すなわちパロは強い手にしいられて、彼らを去らせるであろう。否、彼は強い手にしいられて、彼らを国から追い出すであろう」。
1658 02 6 2 神はモーセに言われた、「わたしは主である。
1659 02 6 3 わたしはアブラハム、イサク、ヤコブには全能の神として現れたが、主という名では、自分を彼らに知らせなかった。
1660 02 6 4 わたしはまたカナンの地、すなわち彼らが寄留したその寄留の地を、彼らに与えるという契約を彼らと立てた。
1661 02 6 5 わたしはまた、エジプトびとが奴隷としているイスラエルの人々のうめきを聞いて、わたしの契約を思い出した。
1662 02 6 6 それゆえ、イスラエルの人々に言いなさい、『わたしは主である。わたしはあなたがたをエジプトびとの労役の下から導き出し、奴隷の務から救い、また伸べた腕と大いなるさばきをもって、あなたがたをあがなうであろう。
1663 02 6 7 わたしはあなたがたを取ってわたしの民とし、わたしはあなたがたの神となる。わたしがエジプトびとの労役の下からあなたがたを導き出すあなたがたの神、主であることを、あなたがたは知るであろう。
1664 02 6 8 わたしはアブラハム、イサク、ヤコブに与えると手を挙げて誓ったその地にあなたがたをはいらせ、それを所有として、与えるであろう。わたしは主である』と」。
1665 02 6 9 モーセはこのようにイスラエルの人々に語ったが、彼らは心の痛みと、きびしい奴隷の務のゆえに、モーセに聞き従わなかった。
1666 02 6 10 さて主はモーセに言われた、
1667 02 6 11 「エジプトの王パロのところに行って、彼がイスラエルの人々をその国から去らせるように話しなさい」。
1668 02 6 12 モーセは主にむかって言った、「イスラエルの人々でさえ、わたしの言うことを聞かなかったのに、どうして、くちびるに割礼のないわたしの言うことを、パロが聞き入れましょうか」。
1669 02 6 13 しかし、主はモーセとアロンに語って、イスラエルの人々と、エジプトの王パロのもとに行かせ、イスラエルの人々をエジプトの地から導き出せと命じられた。
1670 02 6 14 彼らの先祖の家の首長たちは次のとおりである。すなわちイスラエルの長子ルベンの子らはハノク、パル、ヘヅロン、カルミで、これらはルベンの一族である。
1671 02 6 15 シメオンの子らはエムエル、ヤミン、オハデ、ヤキン、ゾハル、およびカナンの女から生れたシャウルで、これらはシメオンの一族である。
1672 02 6 16 レビの子らの名は、その世代に従えば、ゲルション、コハテ、メラリで、レビの一生は百三十七年であった。
1673 02 6 17 ゲルションの子らの一族はリブニとシメイである。
1674 02 6 18 コハテの子らはアムラム、イヅハル、ヘブロン、ウジエルで、コハテの一生は百三十三年であった。
1675 02 6 19 メラリの子らはマヘリとムシである。これらはその世代によるレビの一族である。
1676 02 6 20 アムラムは父の妹ヨケベデを妻としたが、彼女はアロンとモーセを彼に産んだ。アムラムの一生は百三十七年であった。
1677 02 6 21 イヅハルの子らはコラ、ネペグ、ジクリである。
1678 02 6 22 ウジエルの子らはミサエル、エルザパン、シテリである。
1679 02 6 23 アロンはナションの姉妹、アミナダブの娘エリセバを妻とした。エリセバは彼にナダブ、アビウ、エレアザル、イタマルを産んだ。
1680 02 6 24 コラの子らはアッシル、エルカナ、アビアサフで、これらはコラびとの一族である。
1681 02 6 25 アロンの子エレアザルはプテエルの娘のひとりを妻とした。彼女はピネハスを彼に産んだ。これらは、その一族によるレビびとの先祖の家の首長たちである。
1682 02 6 26 主が、「イスラエルの人々をその軍団に従って、エジプトの地から導き出しなさい」と言われたのは、このアロンとモーセである。
1683 02 6 27 彼らはイスラエルの人々をエジプトから導き出すことについて、エジプトの王パロに語ったもので、すなわちこのモーセとアロンである。
1684 02 6 28 主がエジプトの地でモーセに語られた日に、
1685 02 6 29 主はモーセに言われた、「わたしは主である。わたしがあなたに語ることは、みなエジプトの王パロに語りなさい」。
1686 02 6 30 しかしモーセは主にむかって言った、「ごらんのとおり、わたしは、くちびるに割礼のない者です。パロがどうしてわたしの言うことを聞きいれましょうか」。
1687 02 7 1 主はモーセに言われた、「見よ、わたしはあなたをパロに対して神のごときものとする。あなたの兄弟アロンはあなたの預言者となるであろう。
1688 02 7 2 あなたはわたしが命じることを、ことごとく彼に告げなければならない。そしてあなたの兄弟アロンはパロに告げて、イスラエルの人々をその国から去らせるようにさせなければならない。
1689 02 7 3 しかし、わたしはパロの心をかたくなにするので、わたしのしるしと不思議をエジプトの国に多く行っても、
1690 02 7 4 パロはあなたがたの言うことを聞かないであろう。それでわたしは手をエジプトの上に加え、大いなるさばきをくだして、わたしの軍団、わたしの民イスラエルの人々を、エジプトの国から導き出すであろう。
1691 02 7 5 わたしが手をエジプトの上にさし伸べて、イスラエルの人々を彼らのうちから導き出す時、エジプトびとはわたしが主であることを知るようになるであろう」。
1692 02 7 6 モーセとアロンはそのように行った。すなわち主が彼らに命じられたように行った。
1693 02 7 7 彼らがパロと語った時、モーセは八十歳、アロンは八十三歳であった。
1694 02 7 8 主はモーセとアロンに言われた、
1695 02 7 9 「パロがあなたがたに、『不思議をおこなって証拠を示せ』と言う時、あなたはアロンに言いなさい、『あなたのつえを取って、パロの前に投げなさい』と。するとそれはへびになるであろう」。
1696 02 7 10 それで、モーセとアロンはパロのところに行き、主の命じられたとおりにおこなった。すなわちアロンはそのつえを、パロとその家来たちの前に投げると、それはへびになった。
1697 02 7 11 そこでパロもまた知者と魔法使を召し寄せた。これらのエジプトの魔術師らもまた、その秘術をもって同じように行った。
1698 02 7 12 すなわち彼らは、おのおのそのつえを投げたが、それらはへびになった。しかし、アロンのつえは彼らのつえを、のみつくした。
1699 02 7 13 けれども、パロの心はかたくなになって、主の言われたように、彼らの言うことを聞かなかった。
1700 02 7 14 主はモーセに言われた、「パロの心はかたくなで、彼は民を去らせることを拒んでいる。
1701 02 7 15 あなたは、あすの朝、パロのところに行きなさい。見よ、彼は水のところに出ている。あなたは、へびに変ったあのつえを手に執り、ナイル川の岸に立って彼に会い、
1702 02 7 16 そして彼に言いなさい、『ヘブルびとの神、主がわたしをあなたにつかわして言われます、「わたしの民を去らせ、荒野で、わたしに仕えるようにさせよ」と。しかし今もなお、あなたが聞きいれようとされないので、
1703 02 7 17 主はこう仰せられます、「これによってわたしが主であることを、あなたは知るでしょう。見よ、わたしが手にあるつえでナイル川の水を打つと、それは血に変るであろう。
1704 02 7 18 そして川の魚は死に、川は臭くなり、エジプトびとは川の水を飲むことをいとうであろう」』と」。
1705 02 7 19 主はまたモーセに言われた、「あなたはアロンに言いなさい、『あなたのつえを執って、手をエジプトの水の上、川の上、流れの上、池の上、またそのすべての水たまりの上にさし伸べて、それを血にならせなさい。エジプト全国にわたって、木の器、石の器にも、血があるようになるでしょう』と」。
1706 02 7 20 モーセとアロンは主の命じられたようにおこなった。すなわち、彼はパロとその家来たちの目の前で、つえをあげてナイル川の水を打つと、川の水は、ことごとく血に変った。
1707 02 7 21 それで川の魚は死に、川は臭くなり、エジプトびとは川の水を飲むことができなくなった。そしてエジプト全国にわたって血があった。
1708 02 7 22 エジプトの魔術師らも秘術をもって同じようにおこなった。しかし、主の言われたように、パロの心はかたくなになり、彼らの言うことを聞かなかった。
1709 02 7 23 パロは身をめぐらして家に入り、またこのことをも心に留めなかった。
1710 02 7 24 すべてのエジプトびとはナイル川の水が飲めなかったので、飲む水を得ようと、川のまわりを掘った。
1711 02 7 25 主がナイル川を打たれてのち七日を経た。
1712 02 8 1 主はモーセに言われた、「あなたはパロのところに行って言いなさい、『主はこう仰せられます、「わたしの民を去らせて、わたしに仕えさせなさい。
1713 02 8 2 しかし、去らせることを拒むならば、見よ、わたしは、かえるをもって、あなたの領土を、ことごとく撃つであろう。
1714 02 8 3 ナイル川にかえるが群がり、のぼって、あなたの家、あなたの寝室にはいり、寝台にのぼり、あなたの家来と民の家にはいり、またあなたのかまどや、こね鉢にはいり、
1715 02 8 4 あなたと、あなたの民と、すべての家来のからだに、はい上がるであろう」と』」。
1716 02 8 5 主はモーセに言われた、「あなたはアロンに言いなさい、『つえを持って、手を川の上、流れの上、、池の上にさし伸べ、かえるをエジプトの地にのぼらせなさい』と」。
1717 02 8 6 アロンが手をエジプトの水の上にさし伸べたので、かえるはのぼってエジプトの地をおおった。
1718 02 8 7 魔術師らも秘術をもって同じように行い、かえるをエジプトの地にのぼらせた。
1719 02 8 8 パロはモーセとアロンを召して言った、「かえるをわたしと、わたしの民から取り去るように主に願ってください。そのときわたしはこの民を去らせて、主に犠牲をささげさせるでしょう」。
1720 02 8 9 モーセはパロに言った、「あなたと、あなたの家来と、あなたの民のために、わたしがいつ願って、このかえるを、あなたとあなたの家から断って、ナイル川だけにとどまらせるべきか、きめてください」。
1721 02 8 10 パロは言った、「明日」。モーセは言った、「仰せのとおりになって、わたしたちの神、主に並ぶもののないことを、あなたが知られますように。
1722 02 8 11 そして、かえるはあなたと、あなたの家と、あなたの家来と、あなたの民を離れてナイル川にだけとどまるでしょう」。
1723 02 8 12 こうしてモーセとアロンはパロを離れて出た。モーセは主がパロにつかわされたかえるの事について、主に呼び求めたので、
1724 02 8 13 主はモーセのことばのようにされ、かえるは家から、庭から、また畑から死に絶えた。
1725 02 8 14 これをひと山ひと山に積んだので、地は臭くなった。
1726 02 8 15 ところがパロは息つくひまのできたのを見て、主が言われたように、その心をかたくなにして彼らの言うことを聞かなかった。
1727 02 8 16 主はモーセに言われた、「あなたはアロンに言いなさい、『あなたのつえをさし伸べて地のちりを打ち、それをエジプトの全国にわたって、ぶよとならせなさい』と」。
1728 02 8 17 彼らはそのように行った。すなわちアロンはそのつえをとって手をさし伸べ、地のちりを打ったので、ぶよは人と家畜についた。すなわち、地のちりはみなエジプトの全国にわたって、ぶよとなった。
1729 02 8 18 魔術師らも秘術をもって同じように行い、ぶよを出そうとしたが、彼らにはできなかった。ぶよが人と家畜についたので、
1730 02 8 19 魔術師らはパロに言った、「これは神の指です」。しかし主の言われたように、パロの心はかたくなになって、彼らのいうことを聞かなかった。
1731 02 8 20 主はモーセに言われた、「あなたは朝早く起きてパロの前に立ちなさい。ちょうど彼は水のところに出ているから彼に言いなさい、『主はこう仰せられる、「わたしの民を去らせて、わたしに仕えさせなさい。
1732 02 8 21 あなたがわたしの民を去らせないならば、わたしは、あなたとあなたの家来と、あなたの民とあなたの家とに、あぶの群れをつかわすであろう。エジプトびとの家々は、あぶの群れで満ち、彼らの踏む地もまた、そうなるであろう。
1733 02 8 22 その日わたしは、わたしの民の住むゴセンの地を区別して、そこにあぶの群れを入れないであろう。国の中でわたしが主であることをあなたが知るためである。
1734 02 8 23 わたしはわたしの民とあなたの民の間に区別をおく。このしるしは、あす起るであろう」と』」。
1735 02 8 24 主はそのようにされたので、おびただしいあぶが、パロの家と、その家来の家と、エジプトの全国にはいってきて、地はあぶの群れのために害をうけた。
1736 02 8 25 そこで、パロはモーセとアロンを召して言った、「あなたがたは行ってこの国の内で、あなたがたの神に犠牲をささげなさい」。
1737 02 8 26 モーセは言った、「そうすることはできません。わたしたちはエジプトびとの忌むものを犠牲として、わたしたちの神、主にささげるからです。もし、エジプトびとの目の前で、彼らの忌むものを犠牲にささげるならば、彼らはわたしたちを石で打たないでしょうか。
1738 02 8 27 わたしたちは三日の道のりほど、荒野にはいって、わたしたちの神、主に犠牲をささげ、主がわたしたちに命じられるようにしなければなりません」。
1739 02 8 28 パロは言った、「わたしはあなたがたを去らせ、荒野で、あなたがたの神、主に犠牲をささげさせよう。ただあまり遠くへ行ってはならない。わたしのために祈願しなさい」。
1740 02 8 29 モーセは言った、「わたしはあなたのもとから出て行って主に祈願しましょう。あすあぶの群れがパロと、その家来と、その民から離れるでしょう。ただパロはまた欺いて、民が主に犠牲をささげに行くのをとめないようにしてください」。
1741 02 8 30 こうしてモーセはパロのもとを出て、主に祈願したので、
1742 02 8 31 主はモーセの言葉のようにされた。すなわち、あぶの群れをパロと、その家来と、その民から取り去られたので、一つも残らなかった。
1743 02 8 32 しかしパロはこんどもまた、その心をかたくなにして民を去らせなかった。
1744 02 9 1 主はモーセに言われた、「パロのもとに行って、彼に言いなさい、『ヘブルびとの神、主はこう仰せられる、「わたしの民を去らせて、わたしに仕えさせなさい。
1745 02 9 2 あなたがもし彼らを去らせることを拒んで、なお彼らを留めおくならば、
1746 02 9 3 主の手は最も激しい疫病をもって、野にいるあなたの家畜、すなわち馬、ろば、らくだ、牛、羊の上に臨むであろう。
1747 02 9 4 しかし、主はイスラエルの家畜と、エジプトの家畜を区別され、すべてイスラエルの人々に属するものには一頭も死ぬものがないであろう」と』」。
1748 02 9 5 主は、また、時を定めて仰せられた、「あす、主はこのことを国に行うであろう」。
1749 02 9 6 あくる日、主はこのことを行われたので、エジプトびとの家畜はみな死んだ。しかし、イスラエルの人々の家畜は一頭も死ななかった。
1750 02 9 7 パロは人をつかわして見させたが、イスラエルの家畜は一頭も死んでいなかった。それでもパロの心はかたくなで、民を去らせなかった。
1751 02 9 8 主はモーセとアロンに言われた、「あなたがたは、かまどのすすを両手いっぱい取り、それをモーセはパロの目の前で天にむかって、まき散らしなさい。
1752 02 9 9 それはエジプトの全国にわたって、細かいちりとなり、エジプト全国で人と獣に付いて、うみの出るはれものとなるであろう」。
1753 02 9 10 そこで彼らは、かまどのすすを取ってパロの前に立ち、モーセは天にむかってこれをまき散らしたので、人と獣に付いて、うみの出るはれものとなった。
1754 02 9 11 魔術師らは、はれもののためにモーセの前に立つことができなかった。はれものが魔術師らと、すべてのエジプトびとに生じたからである。
1755 02 9 12 しかし、主はパロの心をかたくなにされたので、彼は主がモーセに語られたように、彼らの言うことを聞かなかった。
1756 02 9 13 主はまたモーセに言われた、「朝早く起き、パロの前に立って、彼に言いなさい、『ヘブルびとの神、主はこう仰せられる、「わたしの民を去らせて、わたしに仕えさせなさい。
1757 02 9 14 わたしは、こんどは、もろもろの災を、あなたと、あなたの家来と、あなたの民にくだし、わたしに並ぶものが全地にないことを知らせるであろう。
1758 02 9 15 わたしがもし、手をさし伸べ、疫病をもって、あなたと、あなたの民を打っていたならば、あなたは地から断ち滅ぼされていたであろう。
1759 02 9 16 しかし、わたしがあなたをながらえさせたのは、あなたにわたしの力を見させるため、そして、わたしの名が全地に宣べ伝えられるためにほかならない。
1760 02 9 17 それに、あなたはなお、わたしの民にむかって、おのれを高くし、彼らを去らせようとしない。
1761 02 9 18 ゆえに、あすの今ごろ、わたしは恐ろしく大きな雹を降らせるであろう。それはエジプトの国が始まった日から今まで、かつてなかったほどのものである。
1762 02 9 19 それゆえ、いま、人をやって、あなたの家畜と、あなたが野にもっているすべてのものを、のがれさせなさい。人も獣も、すべて野にあって家に帰らないものは降る雹に打たれて死ぬであろう」と』」。
1763 02 9 20 パロの家来のうち、主の言葉をおそれる者は、そのしもべと家畜を家にのがれさせたが、
1764 02 9 21 主の言葉を意にとめないものは、そのしもべと家畜を野に残しておいた。
1765 02 9 22 主はモーセに言われた、「あなたの手を天にむかってさし伸べ、エジプトの全国にわたって、エジプトの地にいる人と獣と畑のすべての青物の上に雹を降らせなさい」。
1766 02 9 23 モーセが天にむかってつえをさし伸べると、主は雷と雹をおくられ、火は地にむかって、はせ下った。こうして主は、雹をエジプトの地に降らされた。
1767 02 9 24 そして雹が降り、雹の間に火がひらめき渡った。雹は恐ろしく大きく、エジプト全国には、国をなしてこのかた、かつてないものであった。
1768 02 9 25 雹はエジプト全国にわたって、すべて畑にいる人と獣を打った。雹はまた畑のすべての青物を打ち、野のもろもろの木を折り砕いた。
1769 02 9 26 ただイスラエルの人々のいたゴセンの地には、雹が降らなかった。
1770 02 9 27 そこで、パロは人をつかわし、モーセとアロンを召して言った、「わたしはこんどは罪を犯した。主は正しく、わたしと、わたしの民は悪い。
1771 02 9 28 主に祈願してください。この雷と雹はもうじゅうぶんです。わたしはあなたがたを去らせます。もはやとどまらなくてもよろしい」。
1772 02 9 29 モーセは彼に言った、「わたしは町を出ると、すぐ、主にむかってわたしの手を伸べひろげます。すると雷はやみ、雹はもはや降らなくなり、あなたは、地が主のものであることを知られましょう。
1773 02 9 30 しかし、あなたとあなたの家来たちは、なお、神なる主を恐れないことを、わたしは知っています」。
1774 02 9 31 ――亜麻と大麦は打ち倒された。大麦は穂を出し、亜麻は花が咲いていたからである。
1775 02 9 32 小麦とスペルタ麦はおくてであるため打ち倒されなかった。――
1776 02 9 33 モーセはパロのもとを去り、町を出て、主にむかって手を伸べひろげたので、雷と雹はやみ、雨は地に降らなくなった。
1777 02 9 34 ところがパロは雨と雹と雷がやんだのを見て、またも罪を犯し、心をかたくなにした。彼も家来も、そうであった。
1778 02 9 35 すなわちパロは心をかたくなにし、主がモーセによって語られたように、イスラエルの人々を去らせなかった。
1779 02 10 1 そこで、主はモーセに言われた、「パロのもとに行きなさい。わたしは彼の心とその家来たちの心をかたくなにした。これは、わたしがこれらのしるしを、彼らの中に行うためである。
1780 02 10 2 また、わたしがエジプトびとをあしらったこと、また彼らの中にわたしが行ったしるしを、あなたがたが、子や孫の耳に語り伝えるためである。そしてあなたがたは、わたしが主であることを知るであろう」。
1781 02 10 3 モーセとアロンはパロのもとに行って彼に言った、「ヘブルびとの神、主はこう仰せられる、『いつまで、あなたは、わたしに屈伏することを拒むのですか。民を去らせて、わたしに仕えさせなさい。
1782 02 10 4 もし、わたしの民を去らせることを拒むならば、見よ、あす、わたしはいなごを、あなたの領土にはいらせるであろう。
1783 02 10 5 それは地のおもてをおおい、人が地を見ることもできないほどになるであろう。そして雹を免れて、残されているものを食い尽し、野にはえているあなたがたの木をみな食い尽すであろう。
1784 02 10 6 またそれはあなたの家とあなたのすべての家来の家、および、すべてのエジプトびとの家に満ちるであろう。このようなことは、あなたの父たちも、また、祖父たちも、彼らが地上にあった日から今日に至るまで、かつて見たことのないものである』と」。そして彼は身をめぐらして、パロのもとを出て行った。
1785 02 10 7 パロの家来たちは王に言った、「いつまで、この人はわれわれのわなとなるのでしょう。この人々を去らせ、彼らの神なる主に仕えさせては、どうでしょう。エジプトが滅びてしまうことに、まだ気づかれないのですか」。
1786 02 10 8 そこで、モーセとアロンは、また、パロのもとに召し出された。パロは彼らに言った、「行って、あなたがたの神、主に仕えなさい。しかし、行くものはだれだれか」。
1787 02 10 9 モーセは言った、「わたしたちは幼い者も、老いた者も行きます。むすこも娘も携え、羊も牛も連れて行きます。わたしたちは主の祭を執り行わなければならないのですから」。
1788 02 10 10 パロは彼らに言った、「万一、わたしが、あなたがたに子供を連れてまで去らせるようなことがあれば、主があなたがたと共にいますがよい。あなたがたは悪いたくらみをしている。
1789 02 10 11 それはいけない。あなたがたは男だけ行って主に仕えるがよい。それが、あなたがたの要求であった」。彼らは、ついにパロの前から追い出された。
1790 02 10 12 主はモーセに言われた、「あなたの手をエジプトの地の上にさし伸べて、エジプトの地にいなごをのぼらせ、地のすべての青物、すなわち、雹が打ち残したものを、ことごとく食べさせなさい」。
1791 02 10 13 そこでモーセはエジプトの地の上に、つえをさし伸べたので、主は終日、終夜、東風を地に吹かせられた。朝となって、東風は、いなごを運んできた。
1792 02 10 14 いなごはエジプト全国にのぞみ、エジプトの全領土にとどまり、その数がはなはだ多く、このようないなごは前にもなく、また後にもないであろう。
1793 02 10 15 いなごは地の全面をおおったので、地は暗くなった。そして地のすべての青物と、雹の打ち残した木の実を、ことごとく食べたので、エジプト全国にわたって、木にも畑の青物にも、緑の物とては何も残らなかった。
1794 02 10 16 そこで、パロは、急いでモーセとアロンを召して言った、「わたしは、あなたがたの神、主に対し、また、あなたがたに対して罪を犯しました。
1795 02 10 17 それで、どうか、もう一度だけ、わたしの罪をゆるしてください。そしてあなたがたの神、主に祈願して、ただ、この死をわたしから離れさせてください」。
1796 02 10 18 そこで彼はパロのところから出て、主に祈願したので、
1797 02 10 19 主は、はなはだ強い西風に変らせ、いなごを吹き上げて、これを紅海に追いやられたので、エジプト全土には一つのいなごも残らなかった。
1798 02 10 20 しかし、主がパロの心をかたくなにされたので、彼はイスラエルの人々を去らせなかった。
1799 02 10 21 主はまたモーセに言われた、「天にむかってあなたの手をさし伸べ、エジプトの国に、くらやみをこさせなさい。そのくらやみは、さわれるほどである」。
1800 02 10 22 モーセが天にむかって手をさし伸べたので、濃いくらやみは、エジプト全国に臨み三日に及んだ。
1801 02 10 23 三日の間、人々は互に見ることもできず、まただれもその所から立つ者もなかった。しかし、イスラエルの人々には、みな、その住む所に光があった。
1802 02 10 24 そこでパロはモーセを召して言った、「あなたがたは行って主に仕えなさい。あなたがたの子供も連れて行ってもよろしい。ただ、あなたがたの羊と牛は残して置きなさい」。
1803 02 10 25 しかし、モーセは言った、「あなたは、また、わたしたちの神、主にささげる犠牲と燔祭の物をも、わたしたちにくださらなければなりません。
1804 02 10 26 わたしたちは家畜も連れて行きます。ひずめ一つも残しません。わたしたちは、そのうちから取って、わたしたちの神、主に仕えねばなりません。またわたしたちは、その場所に行くまでは、何をもって、主に仕えるべきかを知らないからです」。
1805 02 10 27 けれども、主がパロの心をかたくなにされたので、パロは彼らを去らせようとしなかった。
1806 02 10 28 それでパロはモーセに言った、「わたしの所から去りなさい。心して、わたしの顔は二度と見てはならない。わたしの顔を見る日には、あなたの命はないであろう」。
1807 02 10 29 モーセは言った、「よくぞ仰せられました。わたしは、二度と、あなたの顔を見ないでしょう」。
1808 02 11 1 主はモーセに言われた、「わたしは、なお一つの災を、パロとエジプトの上にくだし、その後、彼はあなたがたをここから去らせるであろう。彼が去らせるとき、彼はあなたがたを、ことごとくここから追い出すであろう。
1809 02 11 2 あなたは民の耳に語って、男は隣の男から、女は隣の女から、それぞれ銀の飾り、金の飾りを請い求めさせなさい」。
1810 02 11 3 主は民にエジプトびとの好意を得させられた。またモーセその人は、エジプトの国で、パロの家来たちの目と民の目とに、はなはだ大いなるものと見えた。
1811 02 11 4 モーセは言った、「主はこう仰せられる、『真夜中ごろ、わたしはエジプトの中へ出て行くであろう。
1812 02 11 5 エジプトの国のうちのういごは、位に座するパロのういごをはじめ、ひきうすの後にいる、はしためのういごに至るまで、みな死に、また家畜のういごもみな死ぬであろう。
1813 02 11 6 そしてエジプト全国に大いなる叫びが起るであろう。このようなことはかつてなく、また、ふたたびないであろう』と。
1814 02 11 7 しかし、すべて、イスラエルの人々にむかっては、人にむかっても、獣にむかっても、犬さえその舌を鳴らさないであろう。これによって主がエジプトびととイスラエルびととの間の区別をされるのを、あなたがたは知るであろう。
1815 02 11 8 これらのあなたの家来たちは、みな、わたしのもとに下ってきて、ひれ伏して言うであろう、『あなたもあなたに従う民もみな出て行ってください』と。その後、わたしは出て行きます」。彼は激しく怒ってパロのもとから出て行った。
1816 02 11 9 主はモーセに言われた、「パロはあなたがたの言うことを聞かないであろう。それゆえ、わたしはエジプトの国に不思議を増し加えるであろう」。
1817 02 11 10 モーセとアロンは、すべてこれらの不思議をパロの前に行ったが、主がパロの心をかたくなにされたので、彼はイスラエルの人々をその国から去らせなかった。
1818 02 12 1 主はエジプトの国で、モーセとアロンに告げて言われた、
1819 02 12 2 「この月をあなたがたの初めの月とし、これを年の正月としなさい。
1820 02 12 3 あなたがたはイスラエルの全会衆に言いなさい、『この月の十日におのおの、その父の家ごとに小羊を取らなければならない。すなわち、一家族に小羊一頭を取らなければならない。
1821 02 12 4 もし家族が少なくて一頭の小羊を食べきれないときは、家のすぐ隣の人と共に、人数に従って一頭を取り、おのおの食べるところに応じて、小羊を見計らわなければならない。
1822 02 12 5 小羊は傷のないもので、一歳の雄でなければならない。羊またはやぎのうちから、これを取らなければならない。
1823 02 12 6 そしてこの月の十四日まで、これを守って置き、イスラエルの会衆はみな、夕暮にこれをほふり、
1824 02 12 7 その血を取り、小羊を食する家の入口の二つの柱と、かもいにそれを塗らなければならない。
1825 02 12 8 そしてその夜、その肉を火に焼いて食べ、種入れぬパンと苦菜を添えて食べなければならない。
1826 02 12 9 生でも、水で煮ても、食べてはならない。火に焼いて、その頭を足と内臓と共に食べなければならない。
1827 02 12 10 朝までそれを残しておいてはならない。朝まで残るものは火で焼きつくさなければならない。
1828 02 12 11 あなたがたは、こうして、それを食べなければならない。すなわち腰を引きからげ、足にくつをはき、手につえを取って、急いでそれを食べなければならない。これは主の過越である。
1829 02 12 12 その夜わたしはエジプトの国を巡って、エジプトの国におる人と獣との、すべてのういごを打ち、またエジプトのすべての神々に審判を行うであろう。わたしは主である。
1830 02 12 13 その血はあなたがたのおる家々で、あなたがたのために、しるしとなり、わたしはその血を見て、あなたがたの所を過ぎ越すであろう。わたしがエジプトの国を撃つ時、災が臨んで、あなたがたを滅ぼすことはないであろう。
1831 02 12 14 この日はあなたがたに記念となり、あなたがたは主の祭としてこれを守り、代々、永久の定めとしてこれを守らなければならない。
1832 02 12 15 七日の間あなたがたは種入れぬパンを食べなければならない。その初めの日に家からパン種を取り除かなければならない。第一日から第七日までに、種を入れたパンを食べる人はみなイスラエルから断たれるであろう。
1833 02 12 16 かつ、あなたがたは第一日に聖会を、また第七日に聖会を開かなければならない。これらの日には、なんの仕事もしてはならない。ただ、おのおのの食べものだけは作ることができる。
1834 02 12 17 あなたがたは、種入れぬパンの祭を守らなければならない。ちょうど、この日、わたしがあなたがたの軍勢をエジプトの国から導き出したからである。それゆえ、あなたがたは代々、永久の定めとして、その日を守らなければならない。
1835 02 12 18 正月に、その月の十四日の夕方に、あなたがたは種入れぬパンを食べ、その月の二十一日の夕方まで続けなければならない。
1836 02 12 19 七日の間、家にパン種を置いてはならない。種を入れたものを食べる者は、寄留の他国人であれ、国に生れた者であれ、すべて、イスラエルの会衆から断たれるであろう。
1837 02 12 20 あなたがたは種を入れたものは何も食べてはならない。すべてあなたがたのすまいにおいて種入れぬパンを食べなければならない』」。
1838 02 12 21 そこでモーセはイスラエルの長老をみな呼び寄せて言った、「あなたがたは急いで家族ごとに一つの小羊を取り、その過越の獣をほふらなければならない。
1839 02 12 22 また一束のヒソプを取って鉢の血に浸し、鉢の血を、かもいと入口の二つの柱につけなければならない。朝まであなたがたは、ひとりも家の戸の外に出てはならない。
1840 02 12 23 主が行き巡ってエジプトびとを撃たれるとき、かもいと入口の二つの柱にある血を見て、主はその入口を過ぎ越し、滅ぼす者が、あなたがたの家にはいって、撃つのを許されないであろう。
1841 02 12 24 あなたがたはこの事を、あなたと子孫のための定めとして、永久に守らなければならない。
1842 02 12 25 あなたがたは、主が約束されたように、あなたがたに賜る地に至るとき、この儀式を守らなければならない。
1843 02 12 26 もし、あなたがたの子供たちが『この儀式はどんな意味ですか』と問うならば、
1844 02 12 27 あなたがたは言いなさい、『これは主の過越の犠牲である。エジプトびとを撃たれたとき、エジプトにいたイスラエルの人々の家を過ぎ越して、われわれの家を救われたのである』」。民はこのとき、伏して礼拝した。
1845 02 12 28 イスラエルの人々は行ってそのようにした。すなわち主がモーセとアロンに命じられたようにした。
1846 02 12 29 夜中になって主はエジプトの国の、すべてのういご、すなわち位に座するパロのういごから、地下のひとやにおる捕虜のういごにいたるまで、また、すべての家畜のういごを撃たれた。
1847 02 12 30 それでパロとその家来およびエジプトびとはみな夜のうちに起きあがり、エジプトに大いなる叫びがあった。死人のない家がなかったからである。
1848 02 12 31 そこでパロは夜のうちにモーセとアロンを呼び寄せて言った、「あなたがたとイスラエルの人々は立って、わたしの民の中から出て行くがよい。そしてあなたがたの言うように、行って主に仕えなさい。
1849 02 12 32 あなたがたの言うように羊と牛とを取って行きなさい。また、わたしを祝福しなさい」。
1850 02 12 33 こうしてエジプトびとは民をせき立てて、すみやかに国を去らせようとした。彼らは「われわれはみな死ぬ」と思ったからである。
1851 02 12 34 民はまだパン種を入れない練り粉を、こばちのまま着物に包んで肩に負った。
1852 02 12 35 そしてイスラエルの人々はモーセの言葉のようにして、エジプトびとから銀の飾り、金の飾り、また衣服を請い求めた。
1853 02 12 36 主は民にエジプトびとの情を得させ、彼らの請い求めたものを与えさせられた。こうして彼らはエジプトびとのものを奪い取った。
1854 02 12 37 さて、イスラエルの人々はラメセスを出立してスコテに向かった。女と子供を除いて徒歩の男子は約六十万人であった。
1855 02 12 38 また多くの入り混じった群衆および羊、牛など非常に多くの家畜も彼らと共に上った。
1856 02 12 39 そして彼らはエジプトから携えて出た練り粉をもって、種入れぬパンの菓子を焼いた。まだパン種を入れていなかったからである。それは彼らがエジプトから追い出されて滞ることができず、また、何の食料をも整えていなかったからである。
1857 02 12 40 イスラエルの人々がエジプトに住んでいた間は、四百三十年であった。
1858 02 12 41 四百三十年の終りとなって、ちょうどその日に、主の全軍はエジプトの国を出た。
1859 02 12 42 これは彼らをエジプトの国から導き出すために主が寝ずの番をされた夜であった。ゆえにこの夜、すべてのイスラエルの人々は代々、主のために寝ずの番をしなければならない。
1860 02 12 43 主はモーセとアロンとに言われた、「過越の祭の定めは次のとおりである。すなわち、異邦人はだれもこれを食べてはならない。
1861 02 12 44 しかし、おのおのが金で買ったしもべは、これに割礼を行ってのち、これを食べさせることができる。
1862 02 12 45 仮ずまいの者と、雇人とは、これを食べてはならない。
1863 02 12 46 ひとつの家でこれを食べなければならない。その肉を少しも家の外に持ち出してはならない。また、その骨を折ってはならない。
1864 02 12 47 イスラエルの全会衆はこれを守らなければならない。
1865 02 12 48 寄留の外国人があなたのもとにとどまっていて、主に過越の祭を守ろうとするときは、その男子はみな割礼を受けてのち、近づいてこれを守ることができる。そうすれば彼は国に生れた者のようになるであろう。しかし、無割礼の者はだれもこれを食べてはならない。
1866 02 12 49 この律法は国に生れたものにも、あなたがたのうちに寄留している外国人にも同一である」。
1867 02 12 50 イスラエルの人々は、みなこのようにし、主がモーセとアロンに命じられたようにした。
1868 02 12 51 ちょうどその日に、主はイスラエルの人々を、その軍団に従ってエジプトの国から導き出された。
1869 02 13 1 主はモーセに言われた、
1870 02 13 2 「イスラエルの人々のうちで、すべてのういご、すなわちすべて初めに胎を開いたものを、人であれ、獣であれ、みな、わたしのために聖別しなければならない。それはわたしのものである」。
1871 02 13 3 モーセは民に言った、「あなたがたは、エジプトから、奴隷の家から出るこの日を覚えなさい。主が強い手をもって、あなたがたをここから導き出されるからである。種を入れたパンを食べてはならない。
1872 02 13 4 あなたがたはアビブの月のこの日に出るのである。
1873 02 13 5 主があなたに与えると、あなたの先祖たちに誓われたカナンびと、ヘテびと、アモリびと、ヒビびと、エブスびとの地、乳と蜜との流れる地に、導き入れられる時、あなたはこの月にこの儀式を守らなければならない。
1874 02 13 6 七日のあいだ種入れぬパンを食べ、七日目には主に祭をしなければならない。
1875 02 13 7 種入れぬパンを七日のあいだ食べなければならない。種を入れたパンをあなたの所に置いてはならない。また、あなたの地区のどこでも、あなたの所にパン種を置いてはならない。
1876 02 13 8 その日、あなたの子に告げて言いなさい、『これはわたしがエジプトから出るときに、主がわたしになされたことのためである』。
1877 02 13 9 そして、これを、手につけて、しるしとし、目の間に置いて記念とし、主の律法をあなたの口に置かなければならない。主が強い手をもって、あなたをエジプトから導き出されるからである。
1878 02 13 10 それゆえ、あなたはこの定めを年々その期節に守らなければならない。
1879 02 13 11 主があなたとあなたの先祖たちに誓われたように、あなたをカナンびとの地に導いて、それをあなたに賜わる時、
1880 02 13 12 あなたは、すべて初めに胎を開いた者、およびあなたの家畜の産むういごは、ことごとく主にささげなければならない。すなわち、それらの男性のものは主に帰せしめなければならない。
1881 02 13 13 また、すべて、ろばの、初めて胎を開いたものは、小羊をもって、あがなわなければならない。もし、あがなわないならば、その首を折らなければならない。あなたの子らのうち、すべて、男のういごは、あがなわなければならない。
1882 02 13 14 後になって、あなたの子が『これはどんな意味ですか』と問うならば、これに言わなければならない、『主が強い手をもって、われわれをエジプトから、奴隷の家から導き出された。
1883 02 13 15 そのときパロが、かたくなで、われわれを去らせなかったため、主はエジプトの国のういごを、人のういごも家畜のういごも、ことごとく殺された。それゆえ、初めて胎を開く男性のものはみな、主に犠牲としてささげるが、わたしの子供のうちのういごは、すべてあがなうのである』。
1884 02 13 16 そして、これを手につけて、しるしとし、目の間に置いて覚えとしなければならない。主が強い手をもって、われわれをエジプトから導き出されたからである」。
1885 02 13 17 さて、パロが民を去らせた時、ペリシテびとの国の道は近かったが、神は彼らをそれに導かれなかった。民が戦いを見れば悔いてエジプトに帰るであろうと、神は思われたからである。
1886 02 13 18 神は紅海に沿う荒野の道に、民を回らされた。イスラエルの人々は武装してエジプトの国を出て、上った。
1887 02 13 19 そのときモーセはヨセフの遺骸を携えていた。ヨセフが、「神は必ずあなたがたを顧みられるであろう。そのとき、あなたがたは、わたしの遺骸を携えて、ここから上って行かなければならない」と言って、イスラエルの人々に固く誓わせたからである。
1888 02 13 20 こうして彼らは更にスコテから進んで、荒野の端にあるエタムに宿営した。
1889 02 13 21 主は彼らの前に行かれ、昼は雲の柱をもって彼らを導き、夜は火の柱をもって彼らを照し、昼も夜も彼らを進み行かせられた。
1890 02 13 22 昼は雲の柱、夜は火の柱が、民の前から離れなかった。
1891 02 14 1 主はモーセに言われた、
1892 02 14 2 「イスラエルの人々に告げ、引き返して、ミグドルと海との間にあるピハヒロテの前、バアルゼポンの前に宿営させなさい。あなたがたはそれにむかって、海のかたわらに宿営しなければならない。
1893 02 14 3 パロはイスラエルの人々について、『彼らはその地で迷っている。荒野は彼らを閉じ込めてしまった』と言うであろう。
1894 02 14 4 わたしがパロの心をかたくなにするから、パロは彼らのあとを追うであろう。わたしはパロとそのすべての軍勢を破って誉を得、エジプトびとにわたしが主であることを知らせるであろう」。彼らはそのようにした。
1895 02 14 5 民の逃げ去ったことが、エジプトの王に伝えられたので、パロとその家来たちとは、民に対する考えを変えて言った、「われわれはなぜこのようにイスラエルを去らせて、われわれに仕えさせないようにしたのであろう」。
1896 02 14 6 それでパロは戦車を整え、みずからその民を率い、
1897 02 14 7 また、えり抜きの戦車六百と、エジプトのすべての戦車およびすべての指揮者たちを率いた。
1898 02 14 8 主がエジプトの王パロの心をかたくなにされたので、彼はイスラエルの人々のあとを追った。イスラエルの人々は意気揚々と出たのである。
1899 02 14 9 エジプトびとは彼らのあとを追い、パロのすべての馬と戦車およびその騎兵と軍勢とは、バアルゼポンの前にあるピハヒロテのあたりで、海のかたわらに宿営している彼らに追いついた。
1900 02 14 10 パロが近寄った時、イスラエルの人々は目を上げてエジプトびとが彼らのあとに進んできているのを見て、非常に恐れた。そしてイスラエルの人々は主にむかって叫び、
1901 02 14 11 かつモーセに言った、「エジプトに墓がないので、荒野で死なせるために、わたしたちを携え出したのですか。なぜわたしたちをエジプトから導き出して、こんなにするのですか。
1902 02 14 12 わたしたちがエジプトであなたに告げて、『わたしたちを捨てておいて、エジプトびとに仕えさせてください』と言ったのは、このことではありませんか。荒野で死ぬよりもエジプトびとに仕える方が、わたしたちにはよかったのです」。
1903 02 14 13 モーセは民に言った、「あなたがたは恐れてはならない。かたく立って、主がきょう、あなたがたのためになされる救を見なさい。きょう、あなたがたはエジプトびとを見るが、もはや永久に、二度と彼らを見ないであろう。
1904 02 14 14 主があなたがたのために戦われるから、あなたがたは黙していなさい」。
1905 02 14 15 主はモーセに言われた、「あなたは、なぜわたしにむかって叫ぶのか。イスラエルの人々に語って彼らを進み行かせなさい。
1906 02 14 16 あなたはつえを上げ、手を海の上にさし伸べてそれを分け、イスラエルの人々に海の中のかわいた地を行かせなさい。
1907 02 14 17 わたしがエジプトびとの心をかたくなにするから、彼らはそのあとを追ってはいるであろう。こうしてわたしはパロとそのすべての軍勢および戦車と騎兵とを打ち破って誉を得よう。
1908 02 14 18 わたしがパロとその戦車とその騎兵とを打ち破って誉を得るとき、エジプトびとはわたしが主であることを知るであろう」。
1909 02 14 19 このとき、イスラエルの部隊の前に行く神の使は移って彼らのうしろに行った。雲の柱も彼らの前から移って彼らのうしろに立ち、
1910 02 14 20 エジプトびとの部隊とイスラエルびとの部隊との間にきたので、そこに雲とやみがあり夜もすがら、かれとこれと近づくことなく、夜がすぎた。
1911 02 14 21 モーセが手を海の上にさし伸べたので、主は夜もすがら強い東風をもって海を退かせ、海を陸地とされ、水は分かれた。
1912 02 14 22 イスラエルの人々は海の中のかわいた地を行ったが、水は彼らの右と左に、かきとなった。
1913 02 14 23 エジプトびとは追ってきて、パロのすべての馬と戦車と騎兵とは、彼らのあとについて海の中にはいった。
1914 02 14 24 暁の更に、主は火と雲の柱のうちからエジプトびとの軍勢を見おろして、エジプトびとの軍勢を乱し、
1915 02 14 25 その戦車の輪をきしらせて、進むのに重くされたので、エジプトびとは言った、「われわれはイスラエルを離れて逃げよう。主が彼らのためにエジプトびとと戦う」。
1916 02 14 26 そのとき主はモーセに言われた、「あなたの手を海の上にさし伸べて、水をエジプトびとと、その戦車と騎兵との上に流れ返らせなさい」。
1917 02 14 27 モーセが手を海の上にさし伸べると、夜明けになって海はいつもの流れに返り、エジプトびとはこれにむかって逃げたが、主はエジプトびとを海の中に投げ込まれた。
1918 02 14 28 水は流れ返り、イスラエルのあとを追って海にはいった戦車と騎兵およびパロのすべての軍勢をおおい、ひとりも残らなかった。
1919 02 14 29 しかし、イスラエルの人々は海の中のかわいた地を行ったが、水は彼らの右と左に、かきとなった。
1920 02 14 30 このように、主はこの日イスラエルをエジプトびとの手から救われた。イスラエルはエジプトびとが海べに死んでいるのを見た。
1921 02 14 31 イスラエルはまた、主がエジプトびとに行われた大いなるみわざを見た。それで民は主を恐れ、主とそのしもべモーセとを信じた。
1922 02 15 1 そこでモーセとイスラエルの人々は、この歌を主にむかって歌った。彼らは歌って言った、「主にむかってわたしは歌おう、彼は輝かしくも勝ちを得られた、彼は馬と乗り手を海に投げ込まれた。
1923 02 15 2 主はわたしの力また歌、わたしの救となられた、彼こそわたしの神、わたしは彼をたたえる、彼はわたしの父の神、わたしは彼をあがめる。
1924 02 15 3 主はいくさびと、その名は主。
1925 02 15 4 彼はパロの戦車とその軍勢とを海に投げ込まれた、そのすぐれた指揮者たちは紅海に沈んだ。
1926 02 15 5 大水は彼らをおおい、彼らは石のように淵に下った。
1927 02 15 6 主よ、あなたの右の手は力をもって栄光にかがやく、主よ、あなたの右の手は敵を打ち砕く。
1928 02 15 7 あなたは大いなる威光をもって、あなたに立ちむかう者を打ち破られた。あなたが怒りを発せられると、彼らは、わらのように焼きつくされた。
1929 02 15 8 あなたの鼻の息によって水は積みかさなり、流れは堤となって立ち、大水は海のもなかに凝り固まった。
1930 02 15 9 敵は言った、『わたしは追い行き、追い着いて、分捕物を分かち取ろう、わたしの欲望を彼らによって満たそう、つるぎを抜こう、わたしの手は彼らを滅ぼそう』。
1931 02 15 10 あなたが息を吹かれると、海は彼らをおおい、彼らは鉛のように、大水の中に沈んだ。
1932 02 15 11 主よ、神々のうち、だれがあなたに比べられようか、だれがあなたのように、聖にして栄えあるもの、ほむべくして恐るべきもの、くすしきわざを行うものであろうか。
1933 02 15 12 あなたが右の手を伸べられると、地は彼らをのんだ。
1934 02 15 13 あなたは、あがなわれた民を恵みをもって導き、み力をもって、あなたの聖なるすまいに伴われた。
1935 02 15 14 もろもろの民は聞いて震え、ペリシテの住民は苦しみに襲われた。
1936 02 15 15 エドムの族長らは、おどろき、モアブの首長らは、わななき、カナンの住民は、みな溶け去った。
1937 02 15 16 恐れと、おののきとは彼らに臨み、み腕の大いなるゆえに、彼らは石のように黙した、主よ、あなたの民の通りすぎるまで、あなたが買いとられた民の通りすぎるまで。
1938 02 15 17 あなたは彼らを導いて、あなたの嗣業の山に植えられる。主よ、これこそあなたのすまいとして、みずから造られた所、主よ、み手によって建てられた聖所。
1939 02 15 18 主は永遠に統べ治められる」。
1940 02 15 19 パロの馬が、その戦車および騎兵と共に海にはいると、主は海の水を彼らの上に流れ返らされたが、イスラエルの人々は海の中のかわいた地を行った。
1941 02 15 20 そのとき、アロンの姉、女預言者ミリアムはタンバリンを手に取り、女たちも皆タンバリンを取って、踊りながら、そのあとに従って出てきた。
1942 02 15 21 そこでミリアムは彼らに和して歌った、「主にむかって歌え、彼は輝かしくも勝ちを得られた、彼は馬と乗り手を海に投げ込まれた」。
1943 02 15 22 さて、モーセはイスラエルを紅海から旅立たせた。彼らはシュルの荒野に入り、三日のあいだ荒野を歩いたが、水を得なかった。
1944 02 15 23 彼らはメラに着いたが、メラの水は苦くて飲むことができなかった。それで、その所の名はメラと呼ばれた。
1945 02 15 24 ときに、民はモーセにつぶやいて言った、「わたしたちは何を飲むのですか」。
1946 02 15 25 モーセは主に叫んだ。主は彼に一本の木を示されたので、それを水に投げ入れると、水は甘くなった。
1947 02 15 26 言われた、「あなたが、もしあなたの神、主の声に良く聞き従い、その目に正しいと見られることを行い、その戒めに耳を傾け、すべての定めを守るならば、わたしは、かつてエジプトびとに下した病を一つもあなたに下さないであろう。わたしは主であって、あなたをいやすものである」。
1948 02 15 27 こうして彼らはエリムに着いた。そこには水の泉十二と、なつめやしの木七十本があった。その所で彼らは水のほとりに宿営した。
1949 02 16 1 イスラエルの人々の全会衆はエリムを出発し、エジプトの地を出て二か月目の十五日に、エリムとシナイとの間にあるシンの荒野にきたが、
1950 02 16 2 その荒野でイスラエルの人々の全会衆は、モーセとアロンにつぶやいた。
1951 02 16 3 イスラエルの人々は彼らに言った、「われわれはエジプトの地で、肉のなべのかたわらに座し、飽きるほどパンを食べていた時に、主の手にかかって死んでいたら良かった。あなたがたは、われわれをこの荒野に導き出して、全会衆を餓死させようとしている」。
1952 02 16 4 そのとき主はモーセに言われた、「見よ、わたしはあなたがたのために、天からパンを降らせよう。民は出て日々の分を日ごとに集めなければならない。こうして彼らがわたしの律法に従うかどうかを試みよう。
1953 02 16 5 六日目には、彼らが取り入れたものを調理すると、それは日ごとに集めるものの二倍あるであろう」。
1954 02 16 6 モーセとアロンは、イスラエルのすべての人々に言った、「夕暮には、あなたがたは、エジプトの地からあなたがたを導き出されたのが、主であることを知るであろう。
1955 02 16 7 また、朝には、あなたがたは主の栄光を見るであろう。主はあなたがたが主にむかってつぶやくのを聞かれたからである。あなたがたは、いったいわれわれを何者として、われわれにむかってつぶやくのか」。
1956 02 16 8 モーセはまた言った、「主は夕暮にはあなたがたに肉を与えて食べさせ、朝にはパンを与えて飽き足らせられるであろう。主はあなたがたが、主にむかってつぶやくつぶやきを聞かれたからである。いったいわれわれは何者なのか。あなたがたのつぶやくのは、われわれにむかってでなく、主にむかってである」。
1957 02 16 9 モーセはアロンに言った、「イスラエルの人々の全会衆に言いなさい、『あなたがたは主の前に近づきなさい。主があなたがたのつぶやきを聞かれたからである』と」。
1958 02 16 10 それでアロンがイスラエルの人々の全会衆に語ったとき、彼らが荒野の方を望むと、見よ、主の栄光が雲のうちに現れていた。
1959 02 16 11 主はモーセに言われた、
1960 02 16 12 「わたしはイスラエルの人々のつぶやきを聞いた。彼らに言いなさい、『あなたがたは夕には肉を食べ、朝にはパンに飽き足りるであろう。そうしてわたしがあなたがたの神、主であることを知るであろう』と」。
1961 02 16 13 夕べになると、うずらが飛んできて宿営をおおった。また、朝になると、宿営の周囲に露が降りた。
1962 02 16 14 その降りた露がかわくと、荒野の面には、薄いうろこのようなものがあり、ちょうど地に結ぶ薄い霜のようであった。
1963 02 16 15 イスラエルの人々はそれを見て互に言った、「これはなんであろう」。彼らはそれがなんであるのか知らなかったからである。モーセは彼らに言った、「これは主があなたがたの食物として賜わるパンである。
1964 02 16 16 主が命じられるのはこうである、『あなたがたは、おのおのその食べるところに従ってそれを集め、あなたがたの人数に従って、ひとり一オメルずつ、おのおのその天幕におるもののためにそれを取りなさい』と」。
1965 02 16 17 イスラエルの人々はそのようにして、ある者は多く、ある者は少なく集めた。
1966 02 16 18 しかし、オメルでそれを計ってみると、多く集めた者にも余らず、少なく集めた者にも不足しなかった。おのおのその食べるところに従って集めていた。
1967 02 16 19 モーセは彼らに言った、「だれも朝までそれを残しておいてはならない」。
1968 02 16 20 しかし彼らはモーセに聞き従わないで、ある者は朝までそれを残しておいたが、虫がついて臭くなった。モーセは彼らにむかって怒った。
1969 02 16 21 彼らは、おのおのその食べるところに従って、朝ごとにそれを集めたが、日が熱くなるとそれは溶けた。
1970 02 16 22 六日目には、彼らは二倍のパン、すなわちひとりに二オメルを集めた。そこで、会衆の長たちは皆きて、モーセに告げたが、
1971 02 16 23 モーセは彼らに言った、「主の語られたのはこうである、『あすは主の聖安息日で休みである。きょう、焼こうとするものを焼き、煮ようとするものを煮なさい。残ったものはみな朝までたくわえて保存しなさい』と」。
1972 02 16 24 彼らはモーセの命じたように、それを朝まで保存したが、臭くならず、また虫もつかなかった。
1973 02 16 25 モーセは言った、「きょう、それを食べなさい。きょうは主の安息日であるから、きょうは野でそれを獲られないであろう。
1974 02 16 26 六日の間はそれを集めなければならない。七日目は安息日であるから、その日には無いであろう」。
1975 02 16 27 ところが民のうちには、七日目に出て集めようとした者があったが、獲られなかった。
1976 02 16 28 そこで主はモーセに言われた、「あなたがたは、いつまでわたしの戒めと、律法とを守ることを拒むのか。
1977 02 16 29 見よ、主はあなたがたに安息日を与えられた。ゆえに六日目には、ふつか分のパンをあなたがたに賜わるのである。おのおのその所にとどまり、七日目にはその所から出てはならない」。
1978 02 16 30 こうして民は七日目に休んだ。
1979 02 16 31 イスラエルの家はその物の名をマナと呼んだ。それはコエンドロの実のようで白く、その味は蜜を入れたせんべいのようであった。
1980 02 16 32 モーセは言った、「主の命じられることはこうである、『それを一オメルあなたがたの子孫のためにたくわえておきなさい。それはわたしが、あなたがたをエジプトの地から導き出した時、荒野であなたがたに食べさせたパンを彼らに見させるためである』と」。
1981 02 16 33 そしてモーセはアロンに言った「一つのつぼを取り、マナ一オメルをその中に入れ、それを主の前に置いて、子孫のためにたくわえなさい」。
1982 02 16 34 そこで主がモーセに命じられたように、アロンはそれをあかしの箱の前に置いてたくわえた。
1983 02 16 35 イスラエルの人々は人の住む地に着くまで四十年の間マナを食べた。すなわち、彼らはカナンの地の境に至るまでマナを食べた。
1984 02 16 36 一オメルは一エパの十分の一である。
1985 02 17 1 イスラエルの人々の全会衆は、主の命に従って、シンの荒野を出発し、旅路を重ねて、レピデムに宿営したが、そこには民の飲む水がなかった。
1986 02 17 2 それで、民はモーセと争って言った、「わたしたちに飲む水をください」。モーセは彼らに言った、「あなたがたはなぜわたしと争うのか、なぜ主を試みるのか」。
1987 02 17 3 民はその所で水にかわき、モーセにつぶやいて言った、「あなたはなぜわたしたちをエジプトから導き出して、わたしたちを、子供や家畜と一緒に、かわきによって死なせようとするのですか」。
1988 02 17 4 このときモーセは主に叫んで言った、「わたしはこの民をどうすればよいのでしょう。彼らは、今にも、わたしを石で打ち殺そうとしています」。
1989 02 17 5 主はモーセに言われた、「あなたは民の前に進み行き、イスラエルの長老たちを伴い、あなたがナイル川を打った、つえを手に取って行きなさい。
1990 02 17 6 見よ、わたしはホレブの岩の上であなたの前に立つであろう。あなたは岩を打ちなさい。水がそれから出て、民はそれを飲むことができる」。モーセはイスラエルの長老たちの目の前で、そのように行った。
1991 02 17 7 そして彼はその所の名をマッサ、またメリバと呼んだ。これはイスラエルの人々が争ったゆえ、また彼らが「主はわたしたちのうちにおられるかどうか」と言って主を試みたからである。
1992 02 17 8 ときにアマレクがきて、イスラエルとレピデムで戦った。
1993 02 17 9 モーセはヨシュアに言った、「われわれのために人を選び、出てアマレクと戦いなさい。わたしはあす神のつえを手に取って、丘の頂に立つであろう」。
1994 02 17 10 ヨシュアはモーセが彼に言ったようにし、アマレクと戦った。モーセとアロンおよびホルは丘の頂に登った。
1995 02 17 11 モーセが手を上げているとイスラエルは勝ち、手を下げるとアマレクが勝った。
1996 02 17 12 しかしモーセの手が重くなったので、アロンとホルが石を取って、モーセの足もとに置くと、彼はその上に座した。そしてひとりはこちらに、ひとりはあちらにいて、モーセの手をささえたので、彼の手は日没までさがらなかった。
1997 02 17 13 ヨシュアは、つるぎにかけてアマレクとその民を打ち敗った。
1998 02 17 14 主はモーセに言われた、「これを書物にしるして記念とし、それをヨシュアの耳に入れなさい。わたしは天が下からアマレクの記憶を完全に消し去るであろう」。
1999 02 17 15 モーセは一つの祭壇を築いてその名を「主はわが旗」と呼んだ。
2000 02 17 16 そしてモーセは言った、「主の旗にむかって手を上げる、主は世々アマレクと戦われる」。
2001 02 18 1 さて、モーセのしゅうと、ミデアンの祭司エテロは、神がモーセと、み民イスラエルとにされたすべての事、主がイスラエルをエジプトから導き出されたことを聞いた。
2002 02 18 2 それでモーセのしゅうと、エテロは、さきに送り返されていたモーセの妻チッポラと、
2003 02 18 3 そのふたりの子とを連れてきた。そのひとりの名はゲルショムといった。モーセが、「わたしは外国で寄留者となっている」と言ったからである。
2004 02 18 4 ほかのひとりの名はエリエゼルといった。「わたしの父の神はわたしの助けであって、パロのつるぎからわたしを救われた」と言ったからである。
2005 02 18 5 こうしてモーセのしゅうと、エテロは、モーセの妻子を伴って、荒野に行き、神の山に宿営しているモーセの所にきた。
2006 02 18 6 その時、ある人がモーセに言った、「ごらんなさい。あなたのしゅうと、エテロは、あなたの妻とそのふたりの子を連れて、あなたの所にこられます」。
2007 02 18 7 そこでモーセはしゅうとを出迎えて、身をかがめ、彼に口づけして、互に安否を問い、共に天幕にはいった。
2008 02 18 8 そしてモーセは、主がイスラエルのために、パロとエジプトびととにされたすべての事、道で出会ったすべての苦しみ、また主が彼らを救われたことを、しゅうとに物語ったので、
2009 02 18 9 エテロは主がイスラエルをエジプトびとの手から救い出して、もろもろの恵みを賜わったことを喜んだ。
2010 02 18 10 そしてエテロは言った、「主はほむべきかな。主はあなたがたをエジプトびとの手と、パロの手から救い出し、民をエジプトびとの手の下から救い出された。
2011 02 18 11 今こそわたしは知った。実に彼らはイスラエルびとにむかって高慢にふるまったが、主はあらゆる神々にまさって大いにいますことを」。
2012 02 18 12 そしてモーセのしゅうとエテロは燔祭と犠牲を神に供え、アロンとイスラエルの長老たちもみなきて、モーセのしゅうとと共に神の前で食事をした。
2013 02 18 13 あくる日モーセは座して民をさばいたが、民は朝から晩まで、モーセのまわりに立っていた。
2014 02 18 14 モーセのしゅうとは、彼がすべて民にしていることを見て、言った、「あなたが民にしているこのことはなんですか。あなたひとりが座し、民はみな朝から晩まで、あなたのまわりに立っているのはなぜですか」。
2015 02 18 15 モーセはしゅうとに言った、「民が神に伺おうとして、わたしの所に来るからです。
2016 02 18 16 彼らは事があれば、わたしの所にきます。わたしは相互の間をさばいて、神の定めと判決を知らせるのです」。
2017 02 18 17 モーセのしゅうとは彼に言った、「あなたのしていることは良くない。
2018 02 18 18 あなたも、あなたと一緒にいるこの民も、必ず疲れ果てるであろう。このことはあなたに重過ぎるから、ひとりですることができない。
2019 02 18 19 今わたしの言うことを聞きなさい。わたしはあなたに助言する。どうか神があなたと共にいますように。あなたは民のために神の前にいて、事件を神に述べなさい。
2020 02 18 20 あなたは彼らに定めと判決を教え、彼らの歩むべき道と、なすべき事を彼らに知らせなさい。
2021 02 18 21 また、すべての民のうちから、有能な人で、神を恐れ、誠実で不義の利を憎む人を選び、それを民の上に立てて、千人の長、百人の長、五十人の長、十人の長としなさい。
2022 02 18 22 平素は彼らに民をさばかせ、大事件はすべてあなたの所に持ってこさせ、小事件はすべて彼らにさばかせなさい。こうしてあなたを身軽にし、あなたと共に彼らに、荷を負わせなさい。
2023 02 18 23 あなたが、もしこの事を行い、神もまたあなたに命じられるならば、あなたは耐えることができ、この民もまた、みな安んじてその所に帰ることができよう」。
2024 02 18 24 モーセはしゅうとの言葉に従い、すべて言われたようにした。
2025 02 18 25 すなわち、モーセはすべてのイスラエルのうちから有能な人を選んで、民の上に長として立て、千人の長、百人の長、五十人の長、十人の長とした。
2026 02 18 26 平素は彼らが民をさばき、むずかしい事件はモーセに持ってきたが、小さい事件はすべて彼らみずからさばいた。
2027 02 18 27 こうしてモーセはしゅうとを送り返したので、その国に帰って行った。
2028 02 19 1 イスラエルの人々は、エジプトの地を出て後三月目のその日に、シナイの荒野にはいった。
2029 02 19 2 すなわち彼らはレピデムを出立してシナイの荒野に入り、荒野に宿営した。イスラエルはその所で山の前に宿営した。
2030 02 19 3 さて、モーセが神のもとに登ると、主は山から彼を呼んで言われた、「このように、ヤコブの家に言い、イスラエルの人々に告げなさい、
2031 02 19 4 『あなたがたは、わたしがエジプトびとにした事と、あなたがたを鷲の翼に載せてわたしの所にこさせたことを見た。
2032 02 19 5 それで、もしあなたがたが、まことにわたしの声に聞き従い、わたしの契約を守るならば、あなたがたはすべての民にまさって、わたしの宝となるであろう。全地はわたしの所有だからである。
2033 02 19 6 あなたがたはわたしに対して祭司の国となり、また聖なる民となるであろう』。これがあなたのイスラエルの人々に語るべき言葉である」。
2034 02 19 7 それでモーセは行って民の長老たちを呼び、主が命じられたこれらの言葉を、すべてその前に述べたので、
2035 02 19 8 民はみな共に答えて言った、「われわれは主が言われたことを、みな行います」。モーセは民の言葉を主に告げた。
2036 02 19 9 主はモーセに言われた、「見よ、わたしは濃い雲のうちにあって、あなたに臨むであろう。それはわたしがあなたと語るのを民に聞かせて、彼らに長くあなたを信じさせるためである」。
2037 02 19 10 主はモーセに言われた、「あなたは民のところに行って、きょうとあす、彼らをきよめ、彼らにその衣服を洗わせ、
2038 02 19 11 三日目までに備えさせなさい。三日目に主が、すべての民の目の前で、シナイ山に下るからである。
2039 02 19 12 あなたは民のために、周囲に境を設けて言いなさい、『あなたがたは注意して、山に上らず、また、その境界に触れないようにしなさい。山に触れる者は必ず殺されるであろう。
2040 02 19 13 手をそれに触れてはならない。触れる者は必ず石で打ち殺されるか、射殺されるであろう。獣でも人でも生きることはできない』。ラッパが長く響いた時、彼らは山に登ることができる」と。
2041 02 19 14 そこでモーセは山から民のところに下り、民をきよめた。彼らはその衣服を洗った。
2042 02 19 15 モーセは民に言った、「三日目までに備えをしなさい。女に近づいてはならない」。
2043 02 19 16 三日目の朝となって、かみなりと、いなずまと厚い雲とが、山の上にあり、ラッパの音が、はなはだ高く響いたので、宿営におる民はみな震えた。
2044 02 19 17 モーセが民を神に会わせるために、宿営から導き出したので、彼らは山のふもとに立った。
2045 02 19 18 シナイ山は全山煙った。主が火のなかにあって、その上に下られたからである。その煙は、かまどの煙のように立ち上り、全山はげしく震えた。
2046 02 19 19 ラッパの音が、いよいよ高くなったとき、モーセは語り、神は、かみなりをもって、彼に答えられた。
2047 02 19 20 主はシナイ山の頂に下られた。そして主がモーセを山の頂に召されたので、モーセは登った。
2048 02 19 21 主はモーセに言われた、「下って行って民を戒めなさい。民が押し破って、主のところにきて、見ようとし、多くのものが死ぬことのないようにするためである。
2049 02 19 22 主に近づく祭司たちにもまた、その身をきよめさせなさい。主が彼らを打つことのないようにするためである」。
2050 02 19 23 モーセは主に言った、「民はシナイ山に登ることはできないでしょう。あなたがわたしたちを戒めて『山のまわりに境を設け、それをきよめよ』と言われたからです」。
2051 02 19 24 主は彼に言われた、「行け、下れ。そしてあなたはアロンと共に登ってきなさい。ただし、祭司たちと民とが、押し破って主のところに登ることのないようにしなさい。主が彼らを打つことのないようにするためである」。
2052 02 19 25 モーセは民の所に下って行って彼らに告げた。
2053 02 20 1 神はこのすべての言葉を語って言われた。
2054 02 20 2 「わたしはあなたの神、主であって、あなたをエジプトの地、奴隷の家から導き出した者である。
2055 02 20 3 あなたはわたしのほかに、なにものをも神としてはならない。
2056 02 20 4 あなたは自分のために、刻んだ像を造ってはならない。上は天にあるもの、下は地にあるもの、また地の下の水のなかにあるものの、どんな形をも造ってはならない。
2057 02 20 5 それにひれ伏してはならない。それに仕えてはならない。あなたの神、主であるわたしは、ねたむ神であるから、わたしを憎むものは、父の罪を子に報いて、三四代に及ぼし、
2058 02 20 6 わたしを愛し、わたしの戒めを守るものには、恵みを施して、千代に至るであろう。
2059 02 20 7 あなたは、あなたの神、主の名を、みだりに唱えてはならない。主は、み名をみだりに唱えるものを、罰しないでは置かないであろう。
2060 02 20 8 安息日を覚えて、これを聖とせよ。
2061 02 20 9 六日のあいだ働いてあなたのすべてのわざをせよ。
2062 02 20 10 七日目はあなたの神、主の安息であるから、なんのわざをもしてはならない。あなたもあなたのむすこ、娘、しもべ、はしため、家畜、またあなたの門のうちにいる他国の人もそうである。
2063 02 20 11 主は六日のうちに、天と地と海と、その中のすべてのものを造って、七日目に休まれたからである。それで主は安息日を祝福して聖とされた。
2064 02 20 12 あなたの父と母を敬え。これは、あなたの神、主が賜わる地で、あなたが長く生きるためである。
2065 02 20 13 あなたは殺してはならない。
2066 02 20 14 あなたは姦淫してはならない。
2067 02 20 15 あなたは盗んではならない。
2068 02 20 16 あなたは隣人について、偽証してはならない。
2069 02 20 17 あなたは隣人の家をむさぼってはならない。隣人の妻、しもべ、はしため、牛、ろば、またすべて隣人のものをむさぼってはならない」。
2070 02 20 18 民は皆、かみなりと、いなずまと、ラッパの音と、山の煙っているのとを見た。民は恐れおののき、遠く離れて立った。
2071 02 20 19 彼らはモーセに言った、「あなたがわたしたちに語ってください。わたしたちは聞き従います。神がわたしたちに語られぬようにしてください。それでなければ、わたしたちは死ぬでしょう」。
2072 02 20 20 モーセは民に言った、「恐れてはならない。神はあなたがたを試みるため、またその恐れをあなたがたの目の前において、あなたがたが罪を犯さないようにするために臨まれたのである」。
2073 02 20 21 そこで、民は遠く離れて立ったが、モーセは神のおられる濃い雲に近づいて行った。
2074 02 20 22 主はモーセに言われた、「あなたはイスラエルの人々にこう言いなさい、『あなたがたは、わたしが天からあなたがたと語るのを見た。
2075 02 20 23 あなたがたはわたしと並べて、何をも造ってはならない。銀の神々も、金の神々も、あなたがたのために、造ってはならない。
2076 02 20 24 あなたはわたしのために土の祭壇を築き、その上にあなたの燔祭、酬恩祭、羊、牛をささげなければならない。わたしの名を覚えさせるすべての所で、わたしはあなたに臨んで、あなたを祝福するであろう。
2077 02 20 25 あなたがもしわたしに石の祭壇を造るならば、切り石で築いてはならない。あなたがもし、のみをそれに当てるならば、それをけがすからである。
2078 02 20 26 あなたは階段によって、わたしの祭壇に登ってはならない。あなたの隠し所が、その上にあらわれることのないようにするためである』。
2079 02 21 1 これはあなたが彼らの前に示すべきおきてである。
2080 02 21 2 あなたがヘブルびとである奴隷を買う時は、六年のあいだ仕えさせ、七年目には無償で自由の身として去らせなければならない。
2081 02 21 3 彼がもし独身できたならば、独身で去らなければならない。もし妻を持っていたならば、その妻は彼と共に去らなければならない。
2082 02 21 4 もしその主人が彼に妻を与えて、彼に男の子また女の子を産んだならば、妻とその子供は主人のものとなり、彼は独身で去らなければならない。
2083 02 21 5 奴隷がもし『わたしは、わたしの主人と、わたしの妻と子供を愛します。わたしは自由の身となって去ることを好みません』と明言するならば、
2084 02 21 6 その主人は彼を神のもとに連れて行き、戸あるいは柱のところに連れて行って、主人は、きりで彼の耳を刺し通さなければならない。そうすれば彼はいつまでもこれに仕えるであろう。
2085 02 21 7 もし人がその娘を女奴隷として売るならば、その娘は男奴隷が去るように去ってはならない。
2086 02 21 8 彼女がもし彼女を自分のものと定めた主人の気にいらない時は、その主人は彼女が、あがなわれることを、これに許さなければならない。彼はこれを欺いたのであるから、これを他国の民に売る権利はない。
2087 02 21 9 彼がもし彼女を自分の子のものと定めるならば、これを娘のように扱わなければならない。
2088 02 21 10 彼が、たとい、ほかに女をめとることがあっても、前の女に食物と衣服を与えることと、その夫婦の道とを絶えさせてはならない。
2089 02 21 11 彼がもしこの三つを行わないならば、彼女は金を償わずに去ることができる。
2090 02 21 12 人を撃って死なせた者は、必ず殺されなければならない。
2091 02 21 13 しかし、人がたくむことをしないのに、神が彼の手に人をわたされることのある時は、わたしはあなたのために一つの所を定めよう。彼はその所へのがれることができる。
2092 02 21 14 しかし人がもし、ことさらにその隣人を欺いて殺す時は、その者をわたしの祭壇からでも、捕えて行って殺さなければならない。
2093 02 21 15 自分の父または母を撃つ者は、必ず殺されなければならない。
2094 02 21 16 人をかどわかした者は、これを売っていても、なお彼の手にあっても、必ず殺されなければならない。
2095 02 21 17 自分の父または母をのろう者は、必ず殺されなければならない。
2096 02 21 18 人が互に争い、そのひとりが石または、こぶしで相手を撃った時、これが死なないで床につき、
2097 02 21 19 再び起きあがって、つえにすがり、外を歩くようになるならば、これを撃った者は、ゆるされるであろう。ただその仕事を休んだ損失を償い、かつこれにじゅうぶん治療させなければならない。
2098 02 21 20 もし人がつえをもって、自分の男奴隷または女奴隷を撃ち、その手の下に死ぬならば、必ず罰せられなければならない。
2099 02 21 21 しかし、彼がもし一日か、ふつか生き延びるならば、その人は罰せられない。奴隷は彼の財産だからである。
2100 02 21 22 もし人が互に争って、身ごもった女を撃ち、これに流産させるならば、ほかの害がなくとも、彼は必ずその女の夫の求める罰金を課せられ、裁判人の定めるとおりに支払わなければならない。
2101 02 21 23 しかし、ほかの害がある時は、命には命、
2102 02 21 24 目には目、歯には歯、手には手、足には足、
2103 02 21 25 焼き傷には焼き傷、傷には傷、打ち傷には打ち傷をもって償わなければならない。
2104 02 21 26 もし人が自分の男奴隷の片目、または女奴隷の片目を撃ち、これをつぶすならば、その目のためにこれを自由の身として去らせなければならない。
2105 02 21 27 また、もしその男奴隷の一本の歯、またはその女奴隷の一本の歯を撃ち落すならば、その歯のためにこれを自由の身として去らせなければならない。
2106 02 21 28 もし牛が男または女を突いて殺すならば、その牛は必ず石で撃ち殺されなければならない。その肉は食べてはならない。しかし、その牛の持ち主は罪がない。
2107 02 21 29 牛がもし以前から突く癖があって、その持ち主が注意されても、これを守りおかなかったために、男または女を殺したならば、その牛は石で撃ち殺され、その持ち主もまた殺されなければならない。
2108 02 21 30 彼がもし、あがないの金を課せられたならば、すべて課せられたほどのものを、命の償いに支払わなければならない。
2109 02 21 31 男の子を突いても、女の子を突いても、この定めに従って処置されなければならない。
2110 02 21 32 牛がもし男奴隷または女奴隷を突くならば、その主人に銀三十シケルを支払わなければならない。またその牛は石で撃ち殺されなければならない。
2111 02 21 33 もし人が穴をあけたままに置き、あるいは穴を掘ってこれにおおいをしないために、牛または、ろばがこれに落ち込むことがあれば、
2112 02 21 34 穴の持ち主はこれを償い、金をその持ち主に支払わなければならない。しかし、その死んだ獣は彼のものとなるであろう。
2113 02 21 35 ある人の牛が、もし他人の牛を突いて殺すならば、彼らはその生きている牛を売って、その価を分け、またその死んだものをも分けなければならない。
2114 02 21 36 あるいはその牛が以前から突く癖のあることが知られているのに、その持ち主がこれを守りおかなかったならば、その人は必ずその牛のために牛をもって償わなければならない。しかし、その死んだ獣は彼のものとなるであろう。
2115 02 22 1 もし人が牛または羊を盗んで、これを殺し、あるいはこれを売るならば、彼は一頭の牛のために五頭の牛をもって、一頭の羊のために四頭の羊をもって償わなければならない。
2116 02 22 4 もしその盗んだ物がなお生きて、彼の手もとにあれば、それは牛、ろば、羊のいずれにせよ、これを二倍にして償わなければならない。
2117 02 22 2 もし盗びとが穴をあけてはいるのを見て、これを撃って殺したときは、その人には血を流した罪はない。
2118 02 22 5 もし人が畑またはぶどう畑のものを食わせ、その家畜を放って他人の畑のものを食わせた時は、自分の畑の最も良い物と、ぶどう畑の最も良い物をもって、これを償わなければならない。
2119 02 22 6 もし火が出て、いばらに移り、積みあげた麦束、または立穂、または畑を焼いたならば、その火を燃やした者は、必ずこれを償わなければならない。
2120 02 22 7 もし人が金銭または物品の保管を隣人に託し、それが隣人の家から盗まれた時、その盗びとが見つけられたならば、これを二倍にして償わせなければならない。
2121 02 22 8 もし盗びとが見つけられなければ、家の主人を神の前に連れてきて、彼が隣人の持ち物に手をかけたかどうかを、確かめなければならない。
2122 02 22 9 牛であれ、ろばであれ、羊であれ、衣服であれ、あるいはどんな失った物であれ、それについて言い争いが起り『これがそれです』と言う者があれば、その双方の言い分を、神の前に持ち出さなければならない。そして神が有罪と定められる者は、それを二倍にしてその相手に償わなければならない。
2123 02 22 10 もし人が、ろば、または牛、または羊、またはどんな家畜でも、それを隣人に預けて、それが死ぬか、傷つくか、あるいは奪い去られても、それを見た者がなければ、
2124 02 22 11 双方の間に、隣人の持ち物に手をかけなかったという誓いが、主の前になされなければならない。そうすれば、持ち主はこれを受け入れ、隣人は償うに及ばない。
2125 02 22 12 けれども、それがまさしく自分の所から盗まれた時は、その持ち主に償わなければならない。
2126 02 22 13 もしそれが裂き殺された時は、それを証拠として持って来るならば、その裂き殺されたものは償うに及ばない。
2127 02 22 14 もし人が隣人から家畜を借りて、それが傷つき、または死ぬ場合、その持ち主がそれと共にいない時は、必ずこれを償わなければならない。
2128 02 22 15 もしその持ち主がそれと共におれば、それを償うに及ばない。もしそれが賃借りしたものならば、その借賃をそれに当てなければならない。
2129 02 22 16 もし人がまだ婚約しない処女を誘って、これと寝たならば、彼は必ずこれに花嫁料を払って、妻としなければならない。
2130 02 22 17 もしその父がこれをその人に与えることをかたく拒むならば、彼は処女の花嫁料に当るほどの金を払わなければならない。
2131 02 22 18 魔法使の女は、これを生かしておいてはならない。
2132 02 22 19 すべて獣を犯す者は、必ず殺されなければならない。
2133 02 22 20 主のほか、他の神々に犠牲をささげる者は、断ち滅ぼされなければならない。
2134 02 22 21 あなたは寄留の他国人を苦しめてはならない。また、これをしえたげてはならない。あなたがたも、かつてエジプトの国で、寄留の他国人であったからである。
2135 02 22 22 あなたがたはすべて寡婦、または孤児を悩ましてはならない。
2136 02 22 23 もしあなたが彼らを悩まして、彼らがわたしにむかって叫ぶならば、わたしは必ずその叫びを聞くであろう。
2137 02 22 24 そしてわたしの怒りは燃えたち、つるぎをもってあなたがたを殺すであろう。あなたがたの妻は寡婦となり、あなたがたの子供たちは孤児となるであろう。
2138 02 22 25 あなたが、共におるわたしの民の貧しい者に金を貸す時は、これに対して金貸しのようになってはならない。これから利子を取ってはならない。
2139 02 22 26 もし隣人の上着を質に取るならば、日の入るまでにそれを返さなければならない。
2140 02 22 27 これは彼の身をおおう、ただ一つの物、彼の膚のための着物だからである。彼は何を着て寝ることができよう。彼がわたしにむかって叫ぶならば、わたしはこれに聞くであろう。わたしはあわれみ深いからである。
2141 02 22 28 あなたは神をののしってはならない。また民の司をのろってはならない。
2142 02 22 29 あなたの豊かな穀物と、あふれる酒とをささげるに、ためらってはならない。
2143 02 22 30 あなたはまた、あなたの牛と羊をも同様にしなければならない。七日の間その母と共に置いて、八日目にそれをわたしに、ささげなければならない。
2144 02 22 31 あなたがたは、わたしに対して聖なる民とならなければならない。あなたがたは、野で裂き殺されたものの肉を食べてはならない。それは犬に投げ与えなければならない。
2145 02 23 1 あなたは偽りのうわさを言いふらしてはならない。あなたは悪人と手を携えて、悪意のある証人になってはならない。
2146 02 23 2 あなたは多数に従って悪をおこなってはならない。あなたは訴訟において、多数に従って片寄り、正義を曲げるような証言をしてはならない。
2147 02 23 3 また貧しい人をその訴訟において、曲げてかばってはならない。
2148 02 23 4 もし、あなたが敵の牛または、ろばの迷っているのに会う時は、必ずこれを彼の所に連れて行って、帰さなければならない。
2149 02 23 5 もしあなたを憎む者のろばが、その荷物の下に倒れ伏しているのを見る時は、これを見捨てて置かないように気をつけ、必ずその人に手を貸して、これを起さなければならない。
2150 02 23 6 あなたは貧しい者の訴訟において、裁判を曲げてはならない。
2151 02 23 7 あなたは偽り事に遠ざからなければならない。あなたは罪のない者と正しい者とを殺してはならない。わたしは悪人を義とすることはないからである。
2152 02 23 8 あなたは賄賂を取ってはならない。賄賂は人の目をくらまし、正しい者の事件をも曲げさせるからである。
2153 02 23 9 あなたは寄留の他国人をしえたげてはならない。あなたがたはエジプトの国で寄留の他国人であったので、寄留の他国人の心を知っているからである。
2154 02 23 10 あなたは六年のあいだ、地に種をまき、その産物を取り入れることができる。
2155 02 23 11 しかし、七年目には、これを休ませて、耕さずに置かなければならない。そうすれば、あなたの民の貧しい者がこれを食べ、その残りは野の獣が食べることができる。あなたのぶどう畑も、オリブ畑も同様にしなければならない。
2156 02 23 12 あなたは六日のあいだ、仕事をし、七日目には休まなければならない。これはあなたの牛および、ろばが休みを得、またあなたのはしための子および寄留の他国人を休ませるためである。
2157 02 23 13 わたしが、あなたがたに言ったすべての事に心を留めなさい。他の神々の名を唱えてはならない。また、これをあなたのくちびるから聞えさせてはならない。
2158 02 23 14 あなたは年に三度、わたしのために祭を行わなければならない。
2159 02 23 15 あなたは種入れぬパンの祭を守らなければならない。わたしが、あなたに命じたように、アビブの月の定めの時に七日のあいだ、種入れぬパンを食べなければならない。それはその月にあなたがエジプトから出たからである。だれも、むなし手でわたしの前に出てはならない。
2160 02 23 16 また、あなたが畑にまいて獲た物の勤労の初穂をささげる刈入れの祭と、あなたの勤労の実を畑から取り入れる年の終りに、取入れの祭を行わなければならない。
2161 02 23 17 男子はみな、年に三度、主なる神の前に出なければならない。
2162 02 23 18 あなたはわたしの犠牲の血を、種を入れたパンと共にささげてはならない。また、わたしの祭の脂肪を翌朝まで残して置いてはならない。
2163 02 23 19 あなたの土地の初穂の最も良い物を、あなたの神、主の家に携えてこなければならない。あなたは子やぎを、その母の乳で煮てはならない。
2164 02 23 20 見よ、わたしは使をあなたの前につかわし、あなたを道で守らせ、わたしが備えた所に導かせるであろう。
2165 02 23 21 あなたはその前に慎み、その言葉に聞き従い、彼にそむいてはならない。わたしの名が彼のうちにあるゆえに、彼はあなたがたのとがをゆるさないであろう。
2166 02 23 22 しかし、もしあなたが彼の声によく聞き従い、すべてわたしが語ることを行うならば、わたしはあなたの敵を敵とし、あなたのあだをあだとするであろう。
2167 02 23 23 わたしの使はあなたの前に行って、あなたをアモリびと、ヘテびと、ペリジびと、カナンびと、ヒビびと、およびエブスびとの所に導き、わたしは彼らを滅ぼすであろう。
2168 02 23 24 あなたは彼らの神々を拝んではならない。これに仕えてはならない。また彼らのおこないにならってはならない。あなたは彼らを全く打ち倒し、その石の柱を打ち砕かなければならない。
2169 02 23 25 あなたがたの神、主に仕えなければならない。そうすれば、わたしはあなたがたのパンと水を祝し、あなたがたのうちから病を除き去るであろう。
2170 02 23 26 あなたの国のうちには流産する女もなく、不妊の女もなく、わたしはあなたの日の数を満ち足らせるであろう。
2171 02 23 27 わたしはあなたの先に、わたしの恐れをつかわし、あなたが行く所の民を、ことごとく打ち敗り、すべての敵に、その背をあなたの方へ向けさせるであろう。
2172 02 23 28 わたしはまた、くまばちをあなたの先につかわすであろう。これはヒビびと、カナンびと、およびヘテびとをあなたの前から追い払うであろう。
2173 02 23 29 しかし、わたしは彼らを一年のうちには、あなたの前から追い払わないであろう。土地が荒れすたれ、野の獣が増して、あなたを害することのないためである。
2174 02 23 30 わたしは徐々に彼らをあなたの前から追い払うであろう。あなたは、ついにふえひろがって、この地を継ぐようになるであろう。
2175 02 23 31 わたしは紅海からペリシテびとの海に至るまでと、荒野からユフラテ川に至るまでを、あなたの領域とし、この地に住んでいる者をあなたの手にわたすであろう。あなたは彼らをあなたの前から追い払うであろう。
2176 02 23 32 あなたは彼ら、および彼らの神々と契約を結んではならない。
2177 02 23 33 彼らはあなたの国に住んではならない。彼らがあなたをいざなって、わたしに対して罪を犯させることのないためである。もし、あなたが彼らの神に仕えるならば、それは必ずあなたのわなとなるであろう」。
2178 02 24 1 また、モーセに言われた、「あなたはアロン、ナダブ、アビウおよびイスラエルの七十人の長老たちと共に、主のもとにのぼってきなさい。そしてあなたがたは遠く離れて礼拝しなさい。
2179 02 24 2 ただモーセひとりが主に近づき、他の者は近づいてはならない。また、民も彼と共にのぼってはならない」。
2180 02 24 3 モーセはきて、主のすべての言葉と、すべてのおきてとを民に告げた。民はみな同音に答えて言った、「わたしたちは主の仰せられた言葉を皆、行います」。
2181 02 24 4 そしてモーセは主の言葉を、ことごとく書きしるし、朝はやく起きて山のふもとに祭壇を築き、イスラエルの十二部族に従って十二の柱を建て、
2182 02 24 5 イスラエルの人々のうちの若者たちをつかわして、主に燔祭をささげさせ、また酬恩祭として雄牛をささげさせた。
2183 02 24 6 その時モーセはその血の半ばを取って、鉢に入れ、また、その血の半ばを祭壇に注ぎかけた。
2184 02 24 7 そして契約の書を取って、これを民に読み聞かせた。すると、彼らは答えて言った、「わたしたちは主が仰せられたことを皆、従順に行います」。
2185 02 24 8 そこでモーセはその血を取って、民に注ぎかけ、そして言った、「見よ、これは主がこれらのすべての言葉に基いて、あなたがたと結ばれる契約の血である」。
2186 02 24 9 こうしてモーセはアロン、ナダブ、アビウおよびイスラエルの七十人の長老たちと共にのぼって行った。
2187 02 24 10 そして、彼らがイスラエルの神を見ると、その足の下にはサファイアの敷石のごとき物があり、澄み渡るおおぞらのようであった。
2188 02 24 11 神はイスラエルの人々の指導者たちを手にかけられなかったので、彼らは神を見て、飲み食いした。
2189 02 24 12 ときに主はモーセに言われた、「山に登り、わたしの所にきて、そこにいなさい。彼らを教えるために、わたしが律法と戒めとを書きしるした石の板をあなたに授けるであろう」。
2190 02 24 13 そこでモーセは従者ヨシュアと共に立ちあがり、モーセは神の山に登った。
2191 02 24 14 彼は長老たちに言った、「わたしたちがあなたがたの所に帰って来るまで、ここで待っていなさい。見よ、アロンとホルとが、あなたがたと共にいるから、事ある者は、だれでも彼らの所へ行きなさい」。
2192 02 24 15 こうしてモーセは山に登ったが、雲は山をおおっていた。
2193 02 24 16 主の栄光がシナイ山の上にとどまり、雲は六日のあいだ、山をおおっていたが、七日目に主は雲の中からモーセを呼ばれた。
2194 02 24 17 主の栄光は山の頂で、燃える火のようにイスラエルの人々の目に見えたが、
2195 02 24 18 モーセは雲の中にはいって、山に登った。そしてモーセは四十日四十夜、山にいた。
2196 02 25 1 主はモーセに言われた、
2197 02 25 2 「イスラエルの人々に告げて、わたしのためにささげ物を携えてこさせなさい。すべて、心から喜んでする者から、わたしにささげる物を受け取りなさい。
2198 02 25 3 あなたがたが彼らから受け取るべきささげ物はこれである。すなわち金、銀、青銅、
2199 02 25 4 青糸、紫糸、緋糸、亜麻の撚糸、やぎの毛糸、
2200 02 25 5 あかね染の雄羊の皮、じゅごんの皮、アカシヤ材、
2201 02 25 6 ともし油、注ぎ油と香ばしい薫香のための香料、
2202 02 25 7 縞めのう、エポデと胸当にはめる宝石。
2203 02 25 8 また、彼らにわたしのために聖所を造らせなさい。わたしが彼らのうちに住むためである。
2204 02 25 9 すべてあなたに示す幕屋の型および、そのもろもろの器の型に従って、これを造らなければならない。
2205 02 25 10 彼らはアカシヤ材で箱を造らなければならない。長さは二キュビト半、幅は一キュビト半、高さは一キュビト半。
2206 02 25 11 あなたは純金でこれをおおわなければならない。すなわち内外ともにこれをおおい、その上の周囲に金の飾り縁を造らなければならない。
2207 02 25 12 また金の環四つを鋳て、その四すみに取り付けなければならない。すなわち二つの環をこちら側に、二つの環をあちら側に付けなければならない。
2208 02 25 13 またアカシヤ材のさおを造り、金でこれをおおわなければならない。
2209 02 25 14 そしてそのさおを箱の側面の環に通し、それで箱をかつがなければならない。
2210 02 25 15 さおは箱の環に差して置き、それを抜き放してはならない。
2211 02 25 16 そしてその箱に、わたしがあなたに与えるあかしの板を納めなければならない。
2212 02 25 17 また純金の贖罪所を造らなければならない。長さは二キュビト半、幅は一キュビト半。
2213 02 25 18 また二つの金のケルビムを造らなければならない。これを打物造りとし、贖罪所の両端に置かなければならない。
2214 02 25 19 一つのケルブをこの端に、一つのケルブをかの端に造り、ケルビムを贖罪所の一部としてその両端に造らなければならない。
2215 02 25 20 ケルビムは翼を高く伸べ、その翼をもって贖罪所をおおい、顔は互にむかい合い、ケルビムの顔は贖罪所にむかわなければならない。
2216 02 25 21 あなたは贖罪所を箱の上に置き、箱の中にはわたしが授けるあかしの板を納めなければならない。
2217 02 25 22 その所でわたしはあなたに会い、贖罪所の上から、あかしの箱の上にある二つのケルビムの間から、イスラエルの人々のために、わたしが命じようとするもろもろの事を、あなたに語るであろう。
2218 02 25 23 あなたはまたアカシヤ材の机を造らなければならない。長さは二キュビト、幅は一キュビト、高さは一キュビト半。
2219 02 25 24 純金でこれをおおい、周囲に金の飾り縁を造り、
2220 02 25 25 またその周囲に手幅の棧を造り、その棧の周囲に金の飾り縁を造らなければならない。
2221 02 25 26 また、そのために金の環四つを造り、その四つの足のすみ四か所にその環を取り付けなければならない。
2222 02 25 27 環は棧のわきに付けて、机をかつぐさおを入れる所としなければならない。
2223 02 25 28 またアカシヤ材のさおを造り、金でこれをおおい、それをもって、机をかつがなければならない。
2224 02 25 29 また、その皿、乳香を盛る杯および灌祭を注ぐための瓶と鉢を造り、これらは純金で造らなければならない。
2225 02 25 30 そして机の上には供えのパンを置いて、常にわたしの前にあるようにしなければならない。
2226 02 25 31 また純金の燭台を造らなければならない。燭台は打物造りとし、その台、幹、萼、節、花を一つに連ならせなければならない。
2227 02 25 32 また六つの枝をそのわきから出させ、燭台の三つの枝をこの側から、燭台の三つの枝をかの側から出させなければならない。
2228 02 25 33 あめんどうの花の形をした三つの萼が、それぞれ節と花をもって一つの枝にあり、また、あめんどうの花の形をした三つの萼が、それぞれ節と花をもってほかの枝にあるようにし、燭台から出る六つの枝を、みなそのようにしなければならない。
2229 02 25 34 また、燭台の幹には、あめんどうの花の形をした四つの萼を付け、その萼にはそれぞれ節と花をもたせなさい。
2230 02 25 35 すなわち二つの枝の下に一つの節を取り付け、次の二つの枝の下に一つの節を取り付け、更に次の二つの枝の下に一つの節を取り付け、燭台の幹から出る六つの枝に、みなそのようにしなければならない。
2231 02 25 36 それらの節と枝を一つに連ね、ことごとく純金の打物造りにしなければならない。
2232 02 25 37 また、それのともしび皿を七つ造り、そのともしび皿に火をともして、その前方を照させなければならない。
2233 02 25 38 その芯切りばさみと、芯取り皿は純金で造らなければならない。
2234 02 25 39 すなわち純金一タラントで燭台と、これらのもろもろの器とが造られなければならない。
2235 02 25 40 そしてあなたが山で示された型に従い、注意してこれを造らなければならない。
2236 02 26 1 あなたはまた十枚の幕をもって幕屋を造らなければならない。すなわち亜麻の撚糸、青糸、紫糸、緋糸で幕を作り、巧みなわざをもって、それにケルビムを織り出さなければならない。
2237 02 26 2 幕の長さは、おのおの二十八キュビト、幕の幅は、おのおの四キュビトで、幕は皆同じ寸法でなければならない。
2238 02 26 3 その幕五枚を互に連ね合わせ、また他の五枚の幕をも互に連ね合わせなければならない。
2239 02 26 4 その一連の端にある幕の縁に青色の乳をつけ、また他の一連の端にある幕の縁にもそのようにしなければならない。
2240 02 26 5 あなたは、その一枚の幕に乳五十をつけ、また他の一連の幕の端にも乳五十をつけ、その乳を互に相向かわせなければならない。
2241 02 26 6 あなたはまた金の輪五十を作り、その輪で幕を互に連ね合わせて一つの幕屋にしなければならない。
2242 02 26 7 また幕屋をおおう天幕のためにやぎの毛糸で幕を作らなければならない。すなわち幕十一枚を作り、
2243 02 26 8 その一枚の幕の長さは三十キュビト、その一枚の幕の幅は四キュビトで、その十一枚の幕は同じ寸法でなければならない。
2244 02 26 9 そして、その幕五枚を一つに連ね合わせ、またその幕六枚を一つに連ね合わせて、その六枚目の幕を天幕の前で折り重ねなければならない。
2245 02 26 10 またその一連の端にある幕の縁に乳五十をつけ、他の一連の幕の縁にも乳五十をつけなさい。
2246 02 26 11 そして青銅の輪五十を作り、その輪を乳に掛け、その天幕を連ね合わせて一つにし、
2247 02 26 12 その天幕の幕の残りの垂れる部分、すなわちその残りの半幕を幕屋のうしろに垂れさせなければならない。
2248 02 26 13 そして天幕の幕のたけで余るものの、こちらのキュビトと、あちらのキュビトとは、幕屋をおおうように、その両側のこちらとあちらとに垂れさせなければならない。
2249 02 26 14 また、あかね染めの雄羊の皮で天幕のおおいと、じゅごんの皮でその上にかけるおおいとを造らなければならない。
2250 02 26 15 あなたは幕屋のために、アカシヤ材で立枠を造らなければならない。
2251 02 26 16 枠の長さを十キュビト、枠の幅を一キュビト半とし、
2252 02 26 17 枠ごとに二つの柄を造って、かれとこれとを食い合わさせ、幕屋のすべての枠にこのようにしなければならない。
2253 02 26 18 あなたは幕屋のために枠を造り、南側のために枠二十とし、
2254 02 26 19 その二十の枠の下に銀の座四十を造って、この枠の下に、その二つの柄のために二つの座を置き、かの枠の下にもその二つの柄のために二つの座を置かなければならない。
2255 02 26 20 また幕屋の他の側、すなわち北側のためにも枠二十を造り、
2256 02 26 21 その銀の座四十を造って、この枠の下に、二つの座を置き、かの枠の下にも二つの座を置かなければならない。
2257 02 26 22 また幕屋のうしろ、すなわち西側のために枠六つを造り、
2258 02 26 23 幕屋のうしろの二つのすみのために枠二つを造らなければならない。
2259 02 26 24 これらは下で重なり合い、同じくその頂でも第一の環まで重なり合うようにし、その二つともそのようにしなければならない。それらは二つのすみのために設けるものである。
2260 02 26 25 こうしてその枠は八つ、その銀の座は十六、この枠の下に二つの座、かの枠の下にも二つの座を置かなければならない。
2261 02 26 26 またアカシヤ材で横木を造らなければならない。すなわち幕屋のこの側の枠のために五つ、
2262 02 26 27 また幕屋のかの側の枠のために横木五つ、幕屋のうしろの西側の枠のために横木五つを造り、
2263 02 26 28 枠のまん中にある中央の横木は端から端まで通るようにしなければならない。
2264 02 26 29 そしてその枠を金でおおい、また横木を通すその環を金で造り、また、その横木を金でおおわなければならない。
2265 02 26 30 こうしてあなたは山で示された様式に従って幕屋を建てなければならない。
2266 02 26 31 また青糸、紫糸、緋糸、亜麻の撚糸で垂幕を作り、巧みなわざをもって、それにケルビムを織り出さなければならない。
2267 02 26 32 そして金でおおった四つのアカシヤ材の柱の金の鉤にこれを掛け、その柱は四つの銀の座の上にすえなければならない。
2268 02 26 33 その垂幕の輪を鉤に掛け、その垂幕の内にあかしの箱を納めなさい。その垂幕はあなたがたのために聖所と至聖所とを隔て分けるであろう。
2269 02 26 34 また至聖所にあるあかしの箱の上に贖罪所を置かなければならない。
2270 02 26 35 そしてその垂幕の外に机を置き、幕屋の南側に、机に向かい合わせて燭台を置かなければならない。ただし机は北側に置かなければならない。
2271 02 26 36 あなたはまた天幕の入口のために青糸、紫糸、緋糸、亜麻の撚糸で、色とりどりに織ったとばりを作らなければならない。
2272 02 26 37 あなたはそのとばりのためにアカシヤ材の柱五つを造り、これを金でおおい、その鉤を金で造り、またその柱のために青銅の座五つを鋳て造らなければならない。
2273 02 27 1 あなたはまたアカシヤ材で祭壇を造らなければならない。長さ五キュビト、幅五キュビトの四角で、高さは三キュビトである。
2274 02 27 2 その四すみの上にその一部としてそれの角を造り、青銅で祭壇をおおわなければならない。
2275 02 27 3 また灰を取るつぼ、十能、鉢、肉叉、火皿を造り、その器はみな青銅で造らなければならない。
2276 02 27 4 また祭壇のために青銅の網細工の格子を造り、その四すみで、網の上に青銅の環を四つ取り付けなければならない。
2277 02 27 5 その網を祭壇の出張りの下に取り付け、これを祭壇の高さの半ばに達するようにしなければならない。
2278 02 27 6 また祭壇のために、さおを造らなければならない。すなわちアカシヤ材で、さおを造り、青銅で、これをおおわなければならない。
2279 02 27 7 そのさおを環に通し、さおを祭壇の両側にして、これをかつがなければならない。
2280 02 27 8 祭壇は板で空洞に造り、山で示されたように、これを造らなければならない。
2281 02 27 9 あなたはまた幕屋の庭を造り、両側では庭のために長さ百キュビトの亜麻の撚糸のあげばりを設け、その一方に当てなければならない。
2282 02 27 10 その柱は二十、その柱の二十の座は青銅にし、その柱の鉤と桁とは銀にしなければならない。
2283 02 27 11 また同じく北側のために、長さ百キュビトのあげばりを設けなければならない。その柱は二十、その柱の二十の座は青銅にし、その柱の鉤と桁とは銀にしなければならない。
2284 02 27 12 また庭の西側の幅のために五十キュビトのあげばりを設けなければならない。その柱は十、その座も十。
2285 02 27 13 また東側でも庭の幅を五十キュビトにしなければならない。
2286 02 27 14 そしてその一方に十五キュビトのあげばりを設けなければならない。その柱は三つ、その座も三つ。
2287 02 27 15 また他の一方にも十五キュビトのあげばりを設けなければならない。その柱は三つ、その座も三つ。
2288 02 27 16 庭の門のために青糸、紫糸、緋糸、亜麻の撚糸で、色とりどりに織った長さ二十キュビトのとばりを設けなければならない。その柱は四つ、その座も四つ。
2289 02 27 17 庭の周囲の柱はみな銀の桁でつなぎ、その鉤は銀、その座は青銅にしなければならない。
2290 02 27 18 庭の長さは百キュビト、その幅は五十キュビト、その高さは五キュビトで、亜麻の撚糸の布を掛けめぐらし、その座を青銅にしなければならない。
2291 02 27 19 すべて幕屋に用いるもろもろの器、およびそのすべての釘、また庭のすべての釘は青銅で造らなければならない。
2292 02 27 20 あなたはまたイスラエルの人々に命じて、オリブをつぶして採った純粋の油を、ともし火のために持ってこさせ、絶えずともし火をともさなければならない。
2293 02 27 21 アロンとその子たちとは、会見の幕屋の中のあかしの箱の前にある垂幕の外で、夕から朝まで主の前に、そのともし火を整えなければならない。これはイスラエルの人々の守るべき世々変らざる定めでなければならない。
2294 02 28 1 またイスラエルの人々のうちから、あなたの兄弟アロンとその子たち、すなわちアロンとアロンの子ナダブ、アビウ、エレアザル、イタマルとをあなたのもとにこさせ、祭司としてわたしに仕えさせ、
2295 02 28 2 またあなたの兄弟アロンのために聖なる衣服を作って、彼に栄えと麗しきをもたせなければならない。
2296 02 28 3 あなたはすべて心に知恵ある者、すなわち、わたしが知恵の霊を満たした者たちに語って、アロンの衣服を作らせ、アロンを聖別し、祭司としてわたしに仕えさせなければならない。
2297 02 28 4 彼らの作るべき衣服は次のとおりである。すなわち胸当、エポデ、衣、市松模様の服、帽子、帯である。彼らはあなたの兄弟アロンとその子たちとのために聖なる衣服を作り、祭司としてわたしに仕えさせなければならない。
2298 02 28 5 彼らは金糸、青糸、紫糸、緋糸、亜麻の撚糸を受け取らなければならない。
2299 02 28 6 そして彼らは金糸、青糸、紫糸、緋糸、亜麻の撚糸を用い、巧みなわざをもってエポデを作らなければならない。
2300 02 28 7 これに二つの肩ひもを付け、その両端を、これに付けなければならない。
2301 02 28 8 エポデの上で、これをつかねる帯は、同じきれでエポデの作りのように、金糸、青糸、紫糸、緋糸、亜麻の撚糸で作らなければならない。
2302 02 28 9 あなたは二つの縞めのうを取って、その上にイスラエルの子たちの名を刻まなければならない。
2303 02 28 10 すなわち、その名六つを一つの石に、残りの名六つを他の石に、彼らの生れた順に刻まなければならない。
2304 02 28 11 宝石に彫刻する人が印を彫刻するように、イスラエルの子たちの名をその二つの石に刻み、それを金の編細工にはめ、
2305 02 28 12 この二つの石をエポデの肩ひもにつけて、イスラエルの子たちの記念の石としなければならない。こうしてアロンは主の前でその両肩に彼らの名を負うて記念としなければならない。
2306 02 28 13 あなたはまた金の編細工を作らなければならない。
2307 02 28 14 そして二つの純金の鎖を、ひも細工にねじて作り、そのひもの鎖をかの編細工につけなければならない。
2308 02 28 15 あなたはまたさばきの胸当を巧みなわざをもって作り、これをエポデの作りのように作らなければならない。すなわち金糸、青糸、紫糸、緋糸、亜麻の撚糸で、これを作らなければならない。
2309 02 28 16 これは二つに折って四角にし、長さは一指当り、幅も一指当りとしなければならない。
2310 02 28 17 またその中に宝石を四列にはめ込まなければならない。すなわち紅玉髄、貴かんらん石、水晶の列を第一列とし、
2311 02 28 18 第二列は、ざくろ石、るり、赤縞めのう。
2312 02 28 19 第三列は黄水晶、めのう、紫水晶。
2313 02 28 20 第四列は黄碧玉、縞めのう、碧玉であって、これらを金の編細工の中にはめ込まなければならない。
2314 02 28 21 その宝石はイスラエルの子らの名に従い、その名とひとしく十二とし、おのおの印の彫刻のように十二の部族のためにその名を刻まなければならない。
2315 02 28 22 またひも細工にねじた純金の鎖を胸当につけなければならない。
2316 02 28 23 また、胸当のために金の環二つを作り、胸当の両端にその二つの環をつけ、
2317 02 28 24 かの二筋の金のひもを胸当の端の二つの環につけなければならない。
2318 02 28 25 ただし、その二筋のひもの他の両端をかの二つの編細工につけ、エポデの肩ひもにつけて、前にくるようにしなければならない。
2319 02 28 26 あなたはまた二つの金の環を作って、これを胸当の両端につけなければならない。すなわちエポデに接する内側の縁にこれをつけなければならない。
2320 02 28 27 また二つの金の環を作って、これをエポデの二つの肩ひもの下の部分につけ、前の方で、そのつなぎ目に近く、エポデの帯の上の方にあるようにしなければならない。
2321 02 28 28 胸当は青ひもをもって、その環をエポデの環に結びつけ、エポデの帯の上の方にあるようにしなければならない。こうして胸当がエポデから離れないようにしなければならない。
2322 02 28 29 アロンが聖所にはいる時は、さばきの胸当にあるイスラエルの子たちの名をその胸に置き、主の前に常に覚えとしなければならない。
2323 02 28 30 あなたはさばきの胸当にウリムとトンミムを入れて、アロンが主の前にいたる時、その胸の上にあるようにしなければならない。こうしてアロンは主の前に常にイスラエルの子たちのさばきを、その胸に置かなければならない。
2324 02 28 31 あなたはまた、エポデに属する上服をすべて青地で作らなければならない。
2325 02 28 32 頭を通す口を、そのまん中に設け、その口の周囲には、よろいのえりのように織物の縁をつけて、ほころびないようにし、
2326 02 28 33 そのすそには青糸、紫糸、緋糸で、ざくろを作り、そのすその周囲につけ、また周囲に金の鈴をざくろの間々につけなければならない。
2327 02 28 34 すなわち金の鈴にざくろ、また金の鈴にざくろと、上服のすその周囲につけなければならない。
2328 02 28 35 アロンは務の時、これを着なければならない。彼が聖所にはいって主の前にいたる時、また出る時、その音が聞えて、彼は死を免れるであろう。
2329 02 28 36 あなたはまた純金の板を造り、印の彫刻のように、その上に『主に聖なる者』と刻み、
2330 02 28 37 これを青ひもで帽子に付け、それが帽子の前の方に来るようにしなければならない。
2331 02 28 38 これはアロンの額にあり、そしてアロンはイスラエルの人々がささげる聖なる物、すなわち彼らのもろもろの聖なる供え物についての罪の責めを負うであろう。これは主の前にそれらの受けいれられるため、常にアロンの額になければならない。
2332 02 28 39 あなたは亜麻糸で市松模様に下服を織り、亜麻布で、ずきんを作り、また、帯を色とりどりに織って作らなければならない。
2333 02 28 40 あなたはまたアロンの子たちのために下服を作り、彼らのために帯を作り、彼らのために、ずきんを作って、彼らに栄えと麗しきをもたせなければならない。
2334 02 28 41 そしてあなたはこれをあなたの兄弟アロンおよび彼と共にいるその子たちに着せ、彼らに油を注ぎ、彼らを職に任じ、彼らを聖別し、祭司として、わたしに仕えさせなければならない。
2335 02 28 42 また、彼らのために、その隠し所をおおう亜麻布のしたばきを作り、腰からももに届くようにしなければならない。
2336 02 28 43 アロンとその子たちは会見の幕屋にはいる時、あるいは聖所で務をするために祭壇に近づく時に、これを着なければならない。そうすれば、彼らは罪を得て死ぬことはないであろう。これは彼と彼の後の子孫とのための永久の定めでなければならない。
2337 02 29 1 あなたは彼らを聖別し、祭司としてわたしに仕えさせるために、次の事を彼らにしなければならない。すなわち若い雄牛一頭と、きずのない雄羊二頭とを取り、
2338 02 29 2 また種入れぬパンと、油を混ぜた種入れぬ菓子と、油を塗った種入れぬせんべいとを取りなさい。これらは小麦粉で作らなければならない。
2339 02 29 3 そしてこれを一つのかごに入れ、そのかごに入れたまま、かの一頭の雄牛および二頭の雄羊と共に携えてこなければならない。
2340 02 29 4 あなたはまたアロンとその子たちを会見の幕屋の入口に連れてきて、水で彼らを洗い清め、
2341 02 29 5 また衣服を取り、下服とエポデに属する上服と、エポデと胸当とをアロンに着せ、エポデの帯を締めさせなければならない。
2342 02 29 6 そして彼の頭に帽子をかぶらせ、その帽子の上にかの聖なる冠をいただかせ、
2343 02 29 7 注ぎ油を取って彼の頭にかけ、彼に油注ぎをしなければならない。
2344 02 29 8 あなたはまた彼の子たちを連れてきて下服を着せ、
2345 02 29 9 彼ら、すなわちアロンとその子たちに帯を締めさせ、ずきんをかぶらせなければならない。祭司の職は永久の定めによって彼らに帰するであろう。あなたはこうして、アロンとその子たちを職に任じなければならない。
2346 02 29 10 あなたは会見の幕屋の前に雄牛を引いてきて、アロンとその子たちは、その雄羊の頭に手を置かなければならない。
2347 02 29 11 そして会見の幕屋の入口で、主の前にその雄牛をほふり、
2348 02 29 12 その雄牛の血を取り、指をもって、これを祭壇の角につけ、その残りの血を祭壇の基に注ぎかけなさい。
2349 02 29 13 また、その内臓をおおうすべての脂肪と肝臓の小葉と、二つの腎臓と、その上の脂肪とを取って、これを祭壇の上で焼かなければならない。
2350 02 29 14 ただし、その雄牛の肉と皮と汚物とは、宿営の外で火で焼き捨てなければならない。これは罪祭である。
2351 02 29 15 あなたはまた、かの雄羊の一頭を取り、そしてアロンとその子たちは、その雄羊の頭に手を置かなければならない。
2352 02 29 16 あなたはその雄羊をほふり、その血を取って、祭壇の四つの側面に注ぎかけなければならない。
2353 02 29 17 またその雄羊を切り裂き、その内臓と、その足とを洗って、これをその肉の切れ、および頭と共に置き、
2354 02 29 18 その雄羊をみな祭壇の上で焼かなければならない。これは主にささげる燔祭である。すなわち、これは香ばしいかおりであって、主にささげる火祭である。
2355 02 29 19 あなたはまた雄羊の他の一頭を取り、アロンとその子たちは、その雄羊の頭に手を置かなければならない。
2356 02 29 20 そしてあなたはその雄羊をほふり、その血を取って、アロンの右の耳たぶと、その子たちの右の耳たぶとにつけ、また彼らの右の手の親指と、右の足の親指とにつけ、その残りの血を祭壇の四つの側面に注ぎかけなければならない。
2357 02 29 21 また祭壇の上の血および注ぎ油を取って、アロンとその衣服、およびその子たちと、その子たちの衣服とに注がなければならない。彼とその衣服、およびその子らと、その衣服とは聖別されるであろう。
2358 02 29 22 あなたはまた、その雄羊の脂肪、脂尾、内臓をおおう脂肪、肝臓の小葉、二つの腎臓、その上の脂肪、および右のももを取らなければならない。これは任職の雄羊である。
2359 02 29 23 また主の前にある種入れぬパンのかごの中からパン一個と、油菓子一個と、せんべい一個とを取り、
2360 02 29 24 これをみなアロンの手と、その子たちの手に置き、これを主の前に揺り動かして、揺祭としなければならない。
2361 02 29 25 そしてあなたはこれを彼らの手から受け取り、燔祭に加えて祭壇の上で焼き、主の前に香ばしいかおりとしなければならない。これは主にささげる火祭である。
2362 02 29 26 あなたはまた、アロンの任職の雄羊の胸を取り、これを主の前に揺り動かして、揺祭としなければならない。これはあなたの受ける分となるであろう。
2363 02 29 27 あなたはアロンとその子たちの任職の雄羊の胸ともも、すなわち揺り動かした揺祭の胸と、ささげたももとを聖別しなければならない。
2364 02 29 28 これはイスラエルの人々から永久に、アロンとその子たちの受くべきささげ物であって、イスラエルの人々の酬恩祭の犠牲の中から受くべきもの、すなわち主にささげるささげ物である。
2365 02 29 29 アロンの聖なる衣服は彼の後の子孫に帰すべきである。彼らはこれを着て、油注がれ、職に任ぜられなければならない。
2366 02 29 30 その子たちのうち、彼に代って祭司となり、聖所で仕えるために会見の幕屋にはいる者は、七日の間これを着なければならない。
2367 02 29 31 あなたは任職の雄羊を取り、聖なる場所でその肉を煮なければならない。
2368 02 29 32 アロンとその子たちは会見の幕屋の入口で、その雄羊の肉と、かごの中のパンとを食べなければならない。
2369 02 29 33 彼らを職に任じ、聖別するため、あがないに用いたこれらのものを、彼らは食べなければならない。他の人はこれを食べてはならない。これは聖なる物だからである。
2370 02 29 34 もし任職の肉、あるいはパンのうち、朝まで残るものがあれば、その残りは火で焼かなければならない。これは聖なる物だから食べてはならない。
2371 02 29 35 あなたはわたしがすべて命じるように、アロンとその子たちにしなければならない。すなわち彼らのために七日のあいだ、任職の式を行わなければならない。
2372 02 29 36 あなたは毎日、あがないのために、罪祭の雄牛一頭をささげなければならない。また祭壇のために、あがないをなす時、そのために罪祭をささげ、また、これに油を注いで聖別しなさい。
2373 02 29 37 あなたは七日の間、祭壇のために、あがないをして、これを聖別しなければならない。こうして祭壇は、いと聖なる物となり、すべて祭壇に触れる者は聖となるであろう。
2374 02 29 38 あなたが祭壇の上にささぐべき物は次のとおりである。すなわち当歳の小羊二頭を毎日絶やすことなくささげなければならない。
2375 02 29 39 その一頭の小羊は朝にこれをささげ、他の一頭の小羊は夕にこれをささげなければならない。
2376 02 29 40 一頭の小羊には、つぶして取った油一ヒンの四分の一をまぜた麦粉十分の一エパを添え、また灌祭として、ぶどう酒一ヒンの四分の一を添えなければならない。
2377 02 29 41 他の一頭の小羊は夕にこれをささげ、朝の素祭および灌祭と同じものをこれに添えてささげ、香ばしいかおりのために主にささげる火祭としなければならない。
2378 02 29 42 これはあなたがたが代々会見の幕屋の入口で、主の前に絶やすことなく、ささぐべき燔祭である。わたしはその所であなたに会い、あなたと語るであろう。
2379 02 29 43 また、その所でわたしはイスラエルの人々に会うであろう。幕屋はわたしの栄光によって聖別されるであろう。
2380 02 29 44 わたしは会見の幕屋と祭壇とを聖別するであろう。またアロンとその子たちを聖別し、祭司としてわたしに仕えさせるであろう。
2381 02 29 45 わたしはイスラエルの人々のうちに住んで、彼らの神となるであろう。
2382 02 29 46 わたしが彼らのうちに住むために、彼らをエジプトの国から導き出した彼らの神、主であることを彼らは知るであろう。わたしは彼らの神、主である。
2383 02 30 1 あなたはまた香をたく祭壇を造らなければならない。アカシヤ材でこれを造り、
2384 02 30 2 長さ一キュビト、幅一キュビトの四角にし、高さ二キュビトで、これにその一部として角をつけなければならない。
2385 02 30 3 その頂、その四つの側面、およびその角を純金でおおい、その周囲に金の飾り縁を造り、
2386 02 30 4 また、その両側に、飾り縁の下に金の環二つをこれのために造らなければならない。すなわち、その二つの側にこれを造らなければならない。これはそれをかつぐさおを通すところである。
2387 02 30 5 そのさおはアカシヤ材で造り、金でおおわなければならない。
2388 02 30 6 あなたはそれを、あかしの箱の前にある垂幕の前に置いて、わたしがあなたと会うあかしの箱の上にある贖罪所に向かわせなければならない。
2389 02 30 7 アロンはその上で香ばしい薫香をたかなければならない。朝ごとに、ともしびを整える時、これをたかなければならない。
2390 02 30 8 アロンはまた夕べにともしびをともす時にも、これをたかなければならない。これは主の前にあなたがたが代々に絶やすことなく、ささぐべき薫香である。
2391 02 30 9 あなたがたはその上で異なる香をささげてはならない。燔祭をも素祭をもその上でささげてはならない。また、その上に灌祭を注いではならない。
2392 02 30 10 アロンは年に一度その角に血をつけてあがないをしなければならない。すなわち、あがないの罪祭の血をもって代々にわたり、年に一度これがために、あがないをしなければならない。これは主に最も聖なるものである」。
2393 02 30 11 主はモーセに言われた、
2394 02 30 12 「あなたがイスラエルの人々の数の総計をとるに当り、おのおのその数えられる時、その命のあがないを主にささげなければならない。これは数えられる時、彼らのうちに災の起らないためである。
2395 02 30 13 すべて数に入る者は聖所のシケルで、半シケルを払わなければならない。一シケルは二十ゲラであって、おのおの半シケルを主にささげ物としなければならない。
2396 02 30 14 すべて数に入る二十歳以上の者は、主にささげ物をしなければならない。
2397 02 30 15 あなたがたの命をあがなうために、主にささげ物をする時、富める者も半シケルより多く出してはならず、貧しい者もそれより少なく出してはならない。
2398 02 30 16 あなたはイスラエルの人々から、あがないの銀を取って、これを会見の幕屋の用に当てなければならない。これは主の前にイスラエルの人々のため記念となって、あなたがたの命をあがなうであろう」。
2399 02 30 17 主はモーセに言われた、
2400 02 30 18 「あなたはまた洗うために洗盤と、その台を青銅で造り、それを会見の幕屋と祭壇との間に置いて、その中に水を入れ、
2401 02 30 19 アロンとその子たちは、それで手と足とを洗わなければならない。
2402 02 30 20 彼らは会見の幕屋にはいる時、水で洗って、死なないようにしなければならない。また祭壇に近づいて、その務をなし、火祭を主にささげる時にも、そうしなければならない。
2403 02 30 21 すなわち、その手、その足を洗って、死なないようにしなければならない。これは彼とその子孫の代々にわたる永久の定めでなければならない」。
2404 02 30 22 主はまたモーセに言われた、
2405 02 30 23 「あなたはまた最も良い香料を取りなさい。すなわち液体の没薬五百シケル、香ばしい肉桂をその半ば、すなわち二百五十シケル、におい菖蒲二百五十シケル、
2406 02 30 24 桂枝五百シケルを聖所のシケルで取り、また、オリブの油一ヒンを取りなさい。
2407 02 30 25 あなたはこれを聖なる注ぎ油、すなわち香油を造るわざにしたがい、まぜ合わせて、におい油に造らなければならない。これは聖なる注ぎ油である。
2408 02 30 26 あなたはこの油を会見の幕屋と、あかしの箱とに注ぎ、
2409 02 30 27 机と、そのもろもろの器、燭台と、そのもろもろの器、香の祭壇、
2410 02 30 28 燔祭の祭壇と、そのもろもろの器、洗盤と、その台とに油を注ぎ、
2411 02 30 29 これらをきよめて最も聖なる物としなければならない。すべてこれに触れる者は聖となるであろう。
2412 02 30 30 あなたはアロンとその子たちに油を注いで、彼らを聖別し、祭司としてわたしに仕えさせなければならない。
2413 02 30 31 そしてあなたはイスラエルの人々に言わなければならない、『これはあなたがたの代々にわたる、わたしの聖なる注ぎ油であって、
2414 02 30 32 常の人の身にこれを注いではならない。またこの割合をもって、これと等しいものを造ってはならない。これは聖なるものであるから、あなたがたにとっても聖なる物でなければならない。
2415 02 30 33 すべてこれと等しい物を造る者、あるいはこれを祭司以外の人につける者は、民のうちから断たれるであろう』」。
2416 02 30 34 主はまた、モーセに言われた、「あなたは香料、すなわち蘇合香、シケレテ香、楓子香、純粋の乳香の香料を取りなさい。おのおの同じ量でなければならない。
2417 02 30 35 あなたはこれをもって香、すなわち香料をつくるわざにしたがって薫香を造り、塩を加え、純にして聖なる物としなさい。
2418 02 30 36 また、その幾ぶんを細かに砕き、わたしがあなたと会う会見の幕屋にある、あかしの箱の前にこれを供えなければならない。これはあなたがたに最も聖なるものである。
2419 02 30 37 あなたが造る香の同じ割合をもって、それを自分のために造ってはならない。これはあなたにとって主に聖なるものでなければならない。
2420 02 30 38 すべてこれと等しいものを造って、これをかぐ者は民のうちから断たれるであろう」。
2421 02 31 1 主はモーセに言われた、
2422 02 31 2 「見よ、わたしはユダの部族に属するホルの子なるウリの子ベザレルを名ざして召し、
2423 02 31 3 これに神の霊を満たして、知恵と悟りと知識と諸種の工作に長ぜしめ、
2424 02 31 4 工夫を凝らして金、銀、青銅の細工をさせ、
2425 02 31 5 また宝石を切りはめ、木を彫刻するなど、諸種の工作をさせるであろう。
2426 02 31 6 見よ、わたしはまたダンの部族に属するアヒサマクの子アホリアブを彼と共ならせ、そしてすべて賢い者の心に知恵を授け、わたしがあなたに命じたものを、ことごとく彼らに造らせるであろう。
2427 02 31 7 すなわち会見の幕屋、あかしの箱、その上にある贖罪所、幕屋のもろもろの器、
2428 02 31 8 机とその器、純金の燭台と、そのもろもろの器、香の祭壇、
2429 02 31 9 燔祭の祭壇とそのもろもろの器、洗盤とその台、
2430 02 31 10 編物の服、すなわち祭司の務をするための祭司アロンの聖なる服、およびその子たちの服、
2431 02 31 11 注ぎ油、聖所のための香ばしい香などを、すべてわたしがあなたに命じたように造らせるであろう」。
2432 02 31 12 主はまたモーセに言われた、
2433 02 31 13 「あなたはイスラエルの人々に言いなさい、『あなたがたは必ずわたしの安息日を守らなければならない。これはわたしとあなたがたとの間の、代々にわたるしるしであって、わたしがあなたがたを聖別する主であることを、知らせるためのものである。
2434 02 31 14 それゆえ、あなたがたは安息日を守らなければならない。これはあなたがたに聖なる日である。すべてこれを汚す者は必ず殺され、すべてこの日に仕事をする者は、民のうちから断たれるであろう。
2435 02 31 15 六日のあいだは仕事をしなさい。七日目は全き休みの安息日で、主のために聖である。すべて安息日に仕事をする者は必ず殺されるであろう。
2436 02 31 16 ゆえに、イスラエルの人々は安息日を覚え、永遠の契約として、代々安息日を守らなければならない。
2437 02 31 17 これは永遠にわたしとイスラエルの人々との間のしるしである。それは主が六日のあいだに天地を造り、七日目に休み、かつ、いこわれたからである』」。
2438 02 31 18 主はシナイ山でモーセに語り終えられたとき、あかしの板二枚、すなわち神が指をもって書かれた石の板をモーセに授けられた。
2439 02 32 1 民はモーセが山を下ることのおそいのを見て、アロンのもとに集まって彼に言った、「さあ、わたしたちに先立って行く神を、わたしたちのために造ってください。わたしたちをエジプトの国から導きのぼった人、あのモーセはどうなったのかわからないからです」。
2440 02 32 2 アロンは彼らに言った、「あなたがたの妻、むすこ、娘らの金の耳輪をはずしてわたしに持ってきなさい」。
2441 02 32 3 そこで民は皆その金の耳輪をはずしてアロンのもとに持ってきた。
2442 02 32 4 アロンがこれを彼らの手から受け取り、工具で型を造り、鋳て子牛としたので、彼らは言った、「イスラエルよ、これはあなたをエジプトの国から導きのぼったあなたの神である」。
2443 02 32 5 アロンはこれを見て、その前に祭壇を築いた。そしてアロンは布告して言った、「あすは主の祭である」。
2444 02 32 6 そこで人々はあくる朝早く起きて燔祭をささげ、酬恩祭を供えた。民は座して食い飲みし、立って戯れた。
2445 02 32 7 主はモーセに言われた、「急いで下りなさい。あなたがエジプトの国から導きのぼったあなたの民は悪いことをした。
2446 02 32 8 彼らは早くもわたしが命じた道を離れ、自分のために鋳物の子牛を造り、これを拝み、これに犠牲をささげて、『イスラエルよ、これはあなたをエジプトの国から導きのぼったあなたの神である』と言っている」。
2447 02 32 9 主はまたモーセに言われた、「わたしはこの民を見た。これはかたくなな民である。
2448 02 32 10 それで、わたしをとめるな。わたしの怒りは彼らにむかって燃え、彼らを滅ぼしつくすであろう。しかし、わたしはあなたを大いなる国民とするであろう」。
2449 02 32 11 モーセはその神、主をなだめて言った、「主よ、大いなる力と強き手をもって、エジプトの国から導き出されたあなたの民にむかって、なぜあなたの怒りが燃えるのでしょうか。
2450 02 32 12 どうしてエジプトびとに『彼は悪意をもって彼らを導き出し、彼らを山地で殺し、地の面から断ち滅ぼすのだ』と言わせてよいでしょうか。どうかあなたの激しい怒りをやめ、あなたの民に下そうとされるこの災を思い直し、
2451 02 32 13 あなたのしもべアブラハム、イサク、イスラエルに、あなたが御自身をさして誓い、『わたしは天の星のように、あなたがたの子孫を増し、わたしが約束したこの地を皆あなたがたの子孫に与えて、長くこれを所有させるであろう』と彼らに仰せられたことを覚えてください」。
2452 02 32 14 それで、主はその民に下すと言われた災について思い直された。
2453 02 32 15 モーセは身を転じて山を下った。彼の手には、かの二枚のあかしの板があった。板はその両面に文字があった。すなわち、この面にも、かの面にも文字があった。
2454 02 32 16 その板は神の作、その文字は神の文字であって、板に彫ったものである。
2455 02 32 17 ヨシュアは民の呼ばわる声を聞いて、モーセに言った、「宿営の中に戦いの声がします」。
2456 02 32 18 しかし、モーセは言った、「勝どきの声でなく、敗北の叫び声でもない。わたしの聞くのは歌の声である」。
2457 02 32 19 モーセが宿営に近づくと、子牛と踊りとを見たので、彼は怒りに燃え、手からかの板を投げうち、これを山のふもとで砕いた。
2458 02 32 20 また彼らが造った子牛を取って火に焼き、こなごなに砕き、これを水の上にまいて、イスラエルの人々に飲ませた。
2459 02 32 21 モーセはアロンに言った、「この民があなたに何をしたので、あなたは彼らに大いなる罪を犯させたのですか」。
2460 02 32 22 アロンは言った、「わが主よ、激しく怒らないでください。この民の悪いのは、あなたがごぞんじです。
2461 02 32 23 彼らはわたしに言いました、『わたしたちに先立って行く神を、わたしたちのために造ってください。わたしたちをエジプトの国から導きのぼった人、あのモーセは、どうなったのかわからないからです』。
2462 02 32 24 そこでわたしは『だれでも、金を持っている者は、それを取りはずしなさい』と彼らに言いました。彼らがそれをわたしに渡したので、わたしがこれを火に投げ入れると、この子牛が出てきたのです」。
2463 02 32 25 モーセは民がほしいままにふるまったのを見た。アロンは彼らがほしいままにふるまうに任せ、敵の中に物笑いとなったからである。
2464 02 32 26 モーセは宿営の門に立って言った、「すべて主につく者はわたしのもとにきなさい」。レビの子たちはみな彼のもとに集まった。
2465 02 32 27 そこでモーセは彼らに言った、「イスラエルの神、主はこう言われる、『あなたがたは、おのおの腰につるぎを帯び、宿営の中を門から門へ行き巡って、おのおのその兄弟、その友、その隣人を殺せ』」。
2466 02 32 28 レビの子たちはモーセの言葉どおりにしたので、その日、民のうち、おおよそ三千人が倒れた。
2467 02 32 29 そこで、モーセは言った、「あなたがたは、おのおのその子、その兄弟に逆らって、きょう、主に身をささげた。それで主は、きょう、あなたがたに祝福を与えられるであろう」。
2468 02 32 30 あくる日、モーセは民に言った、「あなたがたは大いなる罪を犯した。それで今、わたしは主のもとに上って行く。あなたがたの罪を償うことが、できるかも知れない」。
2469 02 32 31 モーセは主のもとに帰って、そして言った、「ああ、この民は大いなる罪を犯し、自分のために金の神を造りました。
2470 02 32 32 今もしあなたが、彼らの罪をゆるされますならば――。しかし、もしかなわなければ、どうぞあなたが書きしるされたふみから、わたしの名を消し去ってください」。
2471 02 32 33 主はモーセに言われた、「すべてわたしに罪を犯した者は、これをわたしのふみから消し去るであろう。
2472 02 32 34 しかし、今あなたは行って、わたしがあなたに告げたところに民を導きなさい。見よ、わたしの使はあなたに先立って行くであろう。ただし刑罰の日に、わたしは彼らの罪を罰するであろう」。
2473 02 32 35 そして主は民を撃たれた。彼らが子牛を造ったからである。それはアロンが造ったのである。
2474 02 33 1 さて、主はモーセに言われた、「あなたと、あなたがエジプトの国から導きのぼった民とは、ここを立ってわたしがアブラハム、イサク、ヤコブに誓って、『これをあなたの子孫に与える』と言った地にのぼりなさい。
2475 02 33 2 わたしはひとりの使をつかわしてあなたに先立たせ、カナンびと、アモリびと、ヘテびと、ペリジびと、ヒビびと、エブスびとを追い払うであろう。
2476 02 33 3 あなたがたは乳と蜜の流れる地にのぼりなさい。しかし、あなたがたは、かたくなな民であるから、わたしが道であなたがたを滅ぼすことのないように、あなたがたのうちにあって一緒にはのぼらないであろう」。
2477 02 33 4 民はこの悪い知らせを聞いて憂い、ひとりもその飾りを身に着ける者はなかった。
2478 02 33 5 主はモーセに言われた、「イスラエルの人々に言いなさい、『あなたがたは、かたくなな民である。もしわたしが一刻でも、あなたがたのうちにあって、一緒にのぼって行くならば、あなたがたを滅ぼすであろう。ゆえに、今、あなたがたの飾りを身から取り去りなさい。そうすればわたしはあなたがたになすべきことを知るであろう』」。
2479 02 33 6 それで、イスラエルの人々はホレブ山以来その飾りを取り除いていた。
2480 02 33 7 モーセは幕屋を取って、これを宿営の外に、宿営を離れて張り、これを会見の幕屋と名づけた。すべて主に伺い事のある者は出て、宿営の外にある会見の幕屋に行った。
2481 02 33 8 モーセが出て、幕屋に行く時には、民はみな立ちあがり、モーセが幕屋にはいるまで、おのおのその天幕の入口に立って彼を見送った。
2482 02 33 9 モーセが幕屋にはいると、雲の柱が下って幕屋の入口に立った。そして主はモーセと語られた。
2483 02 33 10 民はみな幕屋の入口に雲の柱が立つのを見ると、立っておのおの自分の天幕の入口で礼拝した。
2484 02 33 11 人がその友と語るように、主はモーセと顔を合わせて語られた。こうしてモーセは宿営に帰ったが、その従者なる若者、ヌンの子ヨシュアは幕屋を離れなかった。
2485 02 33 12 モーセは主に言った、「ごらんください。あなたは『この民を導きのぼれ』とわたしに言いながら、わたしと一緒につかわされる者を知らせてくださいません。しかも、あなたはかつて『わたしはお前を選んだ。お前はまたわたしの前に恵みを得た』と仰せになりました。
2486 02 33 13 それで今、わたしがもし、あなたの前に恵みを得ますならば、どうか、あなたの道を示し、あなたをわたしに知らせ、あなたの前に恵みを得させてください。また、この国民があなたの民であることを覚えてください」。
2487 02 33 14 主は言われた「わたし自身が一緒に行くであろう。そしてあなたに安息を与えるであろう」。
2488 02 33 15 モーセは主に言った「もしあなた自身が一緒に行かれないならば、わたしたちをここからのぼらせないでください。
2489 02 33 16 わたしとあなたの民とが、あなたの前に恵みを得ることは、何によって知られましょうか。それはあなたがわたしたちと一緒に行かれて、わたしとあなたの民とが、地の面にある諸民と異なるものになるからではありませんか」。
2490 02 33 17 主はモーセに言われた、「あなたはわたしの前に恵みを得、またわたしは名をもってあなたを知るから、あなたの言ったこの事をもするであろう」。
2491 02 33 18 モーセは言った、「どうぞ、あなたの栄光をわたしにお示しください」。
2492 02 33 19 主は言われた、「わたしはわたしのもろもろの善をあなたの前に通らせ、主の名をあなたの前にのべるであろう。わたしは恵もうとする者を恵み、あわれもうとする者をあわれむ」。
2493 02 33 20 また言われた、「しかし、あなたはわたしの顔を見ることはできない。わたしを見て、なお生きている人はないからである」。
2494 02 33 21 そして主は言われた、「見よ、わたしのかたわらに一つの所がある。あなたは岩の上に立ちなさい。
2495 02 33 22 わたしの栄光がそこを通り過ぎるとき、わたしはあなたを岩の裂け目に入れて、わたしが通り過ぎるまで、手であなたをおおうであろう。
2496 02 33 23 そしてわたしが手をのけるとき、あなたはわたしのうしろを見るが、わたしの顔は見ないであろう」。
2497 02 34 1 主はモーセに言われた、「あなたは前のような石の板二枚を、切って造りなさい。わたしはあなたが砕いた初めの板にあった言葉を、その板に書くであろう。
2498 02 34 2 あなたは朝までに備えをし、朝のうちにシナイ山に登って、山の頂でわたしの前に立ちなさい。
2499 02 34 3 だれもあなたと共に登ってはならない。また、だれも山の中にいてはならない。また山の前で羊や牛を飼っていてはならない」。
2500 02 34 4 そこでモーセは前のような石の板二枚を、切って造り、朝早く起きて、主が彼に命じられたようにシナイ山に登った。彼はその手に石の板二枚をとった。
2501 02 34 5 ときに主は雲の中にあって下り、彼と共にそこに立って主の名を宣べられた。
2502 02 34 6 主は彼の前を過ぎて宣べられた。「主、主、あわれみあり、恵みあり、怒ることおそく、いつくしみと、まこととの豊かなる神、
2503 02 34 7 いつくしみを千代までも施し、悪と、とがと、罪とをゆるす者、しかし、罰すべき者をば決してゆるさず、父の罪を子に報い、子の子に報いて、三、四代におよぼす者」。
2504 02 34 8 モーセは急ぎ地に伏して拝し、
2505 02 34 9 そして言った、「ああ主よ、わたしがもし、あなたの前に恵みを得ますならば、かたくなな民ですけれども、どうか主がわたしたちのうちにあって一緒に行ってください。そしてわたしたちの悪と罪とをゆるし、わたしたちをあなたのものとしてください」。
2506 02 34 10 主は言われた、「見よ、わたしは契約を結ぶ。わたしは地のいずこにも、いかなる民のうちにも、いまだ行われたことのない不思議を、あなたのすべての民の前に行うであろう。あなたが共に住む民はみな、主のわざを見るであろう。わたしがあなたのためになそうとすることは、恐るべきものだからである。
2507 02 34 11 わたしが、きょう、あなたに命じることを守りなさい。見よ、わたしはアモリびと、カナンびと、ヘテびと、ペリジびと、ヒビびと、エブスびとを、あなたの前から追い払うであろう。
2508 02 34 12 あなたが行く国に住んでいる者と、契約を結ばないように、気をつけなければならない。おそらく彼らはあなたのうちにあって、わなとなるであろう。
2509 02 34 13 むしろあなたがたは、彼らの祭壇を倒し、石の柱を砕き、アシラ像を切り倒さなければならない。
2510 02 34 14 あなたは他の神を拝んではならない。主はその名を『ねたみ』と言って、ねたむ神だからである。
2511 02 34 15 おそらくあなたはその国に住む者と契約を結び、彼らの神々を慕って姦淫を行い、その神々に犠牲をささげ、招かれて彼らの犠牲を食べ、
2512 02 34 16 またその娘たちを、あなたのむすこたちにめとり、その娘たちが自分たちの神々を慕って姦淫を行い、また、あなたのむすこたちをして、彼らの神々を慕わせ、姦淫を行わせるに至るであろう。
2513 02 34 17 あなたは自分のために鋳物の神々を造ってはならない。
2514 02 34 18 あなたは種入れぬパンの祭を守らなければならない。すなわち、わたしがあなたに命じたように、アビブの月の定めの時に、七日のあいだ、種入れぬパンを食べなければならない。あなたがアビブの月にエジプトを出たからである。
2515 02 34 19 すべて初めに生れる者は、わたしのものである。すべてあなたの家畜のういごの雄は、牛も羊もそうである。
2516 02 34 20 ただし、ろばのういごは小羊であがなわなければならない。もしあがなわないならば、その首を折らなければならない。あなたのむすこのうちのういごは、みなあがなわなければならない。むなし手でわたしの前に出てはならない。
2517 02 34 21 あなたは六日のあいだ働き、七日目には休まなければならない。耕し時にも、刈入れ時にも休まなければならない。
2518 02 34 22 あなたは七週の祭、すなわち小麦刈りの初穂の祭を行わなければならない。また年の終りに取り入れの祭を行わなければならない。
2519 02 34 23 年に三度、男子はみな主なる神、イスラエルの神の前に出なければならない。
2520 02 34 24 わたしは国々の民をあなたの前から追い払って、あなたの境を広くするであろう。あなたが年に三度のぼって、あなたの神、主の前に出る時には、だれもあなたの国を侵すことはないであろう。
2521 02 34 25 あなたは犠牲の血を、種を入れたパンと共に供えてはならない。また過越の祭の犠牲を、翌朝まで残して置いてはならない。
2522 02 34 26 あなたの土地の初穂の最も良いものを、あなたの神、主の家に携えてこなければならない。あなたは子やぎをその母の乳で煮てはならない」。
2523 02 34 27 また主はモーセに言われた、「これらの言葉を書きしるしなさい。わたしはこれらの言葉に基いて、あなたおよびイスラエルと契約を結んだからである」。
2524 02 34 28 モーセは主と共に、四十日四十夜、そこにいたが、パンも食べず、水も飲まなかった。そして彼は契約の言葉、十誡を板の上に書いた。
2525 02 34 29 モーセはそのあかしの板二枚を手にして、シナイ山から下ったが、その山を下ったとき、モーセは、さきに主と語ったゆえに、顔の皮が光を放っているのを知らなかった。
2526 02 34 30 アロンとイスラエルの人々とがみな、モーセを見ると、彼の顔の皮が光を放っていたので、彼らは恐れてこれに近づかなかった。
2527 02 34 31 モーセは彼らを呼んだ。アロンと会衆のかしらたちとがみな、モーセのもとに帰ってきたので、モーセは彼らと語った。
2528 02 34 32 その後、イスラエルの人々がみな近よったので、モーセは主がシナイ山で彼に語られたことを、ことごとく彼らにさとした。
2529 02 34 33 モーセは彼らと語り終えた時、顔おおいを顔に当てた。
2530 02 34 34 しかしモーセは主の前に行って主と語る時は、出るまで顔おおいを取り除いていた。そして出て来ると、その命じられた事をイスラエルの人人に告げた。
2531 02 34 35 イスラエルの人々はモーセの顔を見ると、モーセの顔の皮が光を放っていた。モーセは行って主と語るまで、また顔おおいを顔に当てた。
2532 02 35 1 モーセはイスラエルの人々の全会衆を集めて言った、「これは主が行えと命じられた言葉である。
2533 02 35 2 六日の間は仕事をしなさい。七日目はあなたがたの聖日で、主の全き休みの安息日であるから、この日に仕事をする者はだれでも殺されなければならない。
2534 02 35 3 安息日にはあなたがたのすまいのどこでも火をたいてはならない」。
2535 02 35 4 モーセはイスラエルの人々の全会衆に言った、「これは主が命じられたことである。
2536 02 35 5 あなたがたの持ち物のうちから、主にささげる物を取りなさい。すべて、心から喜んでする者は、主にささげる物を持ってきなさい。すなわち金、銀、青銅。
2537 02 35 6 青糸、紫糸、緋糸、亜麻糸、やぎの毛糸。
2538 02 35 7 あかね染めの雄羊の皮、じゅごんの皮、アカシヤ材、
2539 02 35 8 ともし油、注ぎ油と香ばしい薫香とのための香料、
2540 02 35 9 縞めのう、エポデと胸当とにはめる宝石。
2541 02 35 10 すべてあなたがたのうち、心に知恵ある者はきて、主の命じられたものをみな造りなさい。
2542 02 35 11 すなわち幕屋、その天幕と、そのおおい、その鉤と、その枠、その横木、その柱と、その座、
2543 02 35 12 箱と、そのさお、贖罪所、隔ての垂幕、
2544 02 35 13 机と、そのさお、およびそのもろもろの器、供えのパン、
2545 02 35 14 また、ともしびのための燭台と、その器、ともしび皿と、ともし油、
2546 02 35 15 香の祭壇と、そのさお、注ぎ油、香ばしい薫香、幕屋の入口のとばり、
2547 02 35 16 燔祭の祭壇およびその青銅の網、そのさおと、そのもろもろの器、洗盤と、その台、
2548 02 35 17 庭のあげばり、その柱とその座、庭の門のとばり、
2549 02 35 18 幕屋の釘、庭の釘およびそのひも、
2550 02 35 19 聖所における務のための編物の服、すなわち祭司の務をなすための祭司アロンの聖なる服およびその子たちの服」。
2551 02 35 20 イスラエルの人々の全会衆はモーセの前を去り、
2552 02 35 21 すべて心に感じた者、すべて心から喜んでする者は、会見の幕屋の作業と、そのもろもろの奉仕と、聖なる服とのために、主にささげる物を携えてきた。
2553 02 35 22 すなわち、すべて心から喜んでする男女は、鼻輪、耳輪、指輪、首飾り、およびすべての金の飾りを携えてきた。すべて金のささげ物を主にささげる者はそのようにした。
2554 02 35 23 すべて青糸、紫糸、緋糸、亜麻糸、やぎの毛糸、あかね染めの雄羊の皮、じゅごんの皮を持っている者は、それを携えてきた。
2555 02 35 24 すべて銀、青銅のささげ物をささげることのできる者は、それを主にささげる物として携えてきた。また、すべて組立ての工事に用いるアカシヤ材を持っている者は、それを携えてきた。
2556 02 35 25 また、すべて心に知恵ある女たちは、その手をもって紡ぎ、その紡いだ青糸、紫糸、緋糸、亜麻糸を携えてきた。
2557 02 35 26 すべて知恵があって、心に感じた女たちは、やぎの毛を紡いだ。
2558 02 35 27 また、かしらたちは縞めのう、およびエポデと胸当にはめる宝石を携えてきた。
2559 02 35 28 また、ともしびと、注ぎ油と、香ばしい薫香のための香料と、油とを携えてきた。
2560 02 35 29 このようにイスラエルの人々は自発のささげ物を主に携えてきた。すなわち主がモーセによって、なせと命じられたすべての工作のために、物を携えてこようと、心から喜んでする男女はみな、そのようにした。
2561 02 35 30 モーセはイスラエルの人々に言った、「見よ、主はユダの部族に属するホルの子なるウリの子ベザレルを名ざして召し、
2562 02 35 31 彼に神の霊を満たして、知恵と悟りと知識と諸種の工作に長ぜしめ、
2563 02 35 32 工夫を凝らして金、銀、青銅の細工をさせ、
2564 02 35 33 また宝石を切りはめ、木を彫刻するなど、諸種の工作をさせ、
2565 02 35 34 また人を教えうる力を、彼の心に授けられた。彼とダンの部族に属するアヒサマクの子アホリアブとが、それである。
2566 02 35 35 主は彼らに知恵の心を満たして、諸種の工作をさせられた。すなわち彫刻、浮き織および青糸、紫糸、緋糸、亜麻糸の縫取り、また機織など諸種の工作をさせ、工夫を凝らして巧みなわざをさせられた。
2567 02 36 1 ベザレルとアホリアブおよびすべて心に知恵ある者、すなわち主が知恵と悟りとを授けて、聖所の組立ての諸種の工事を、いかになすかを知らせられた者は、すべて主が命じられたようにしなければならない」。
2568 02 36 2 そこで、モーセはベザレルとアホリアブおよびすべて心に知恵ある者、すなわち、その心に主が知恵を授けられた者、またきて、その工事をなそうと心に望むすべての者を召し寄せた。
2569 02 36 3 彼らは聖所の組立ての工事をするために、イスラエルの人々が携えてきたもろもろのささげ物を、モーセから受け取ったが、民はなおも朝ごとに、自発のささげ物を彼のもとに携えてきた。
2570 02 36 4 そこで聖所のもろもろの工事をする賢い人々はみな、おのおのしていた工事をやめて、
2571 02 36 5 モーセに言った「民があまりに多く携えて来るので、主がせよと命じられた組立ての工事には余ります」。
2572 02 36 6 モーセは命令を発し、宿営中にふれさせて言った、「男も女も、もはや聖所のために、ささげ物をするに及ばない」。それで民は携えて来ることをやめた。
2573 02 36 7 材料はすべての工事をするのにじゅうぶんで、かつ余るからである。
2574 02 36 8 すべて工作をする者のうちの心に知恵ある者は、十枚の幕で幕屋を造った。すなわち亜麻の撚糸、青糸、紫糸、緋糸で造り、巧みなわざをもって、それにケルビムを織り出した。
2575 02 36 9 幕の長さは、おのおの二十八キュビト、幕の幅は、おのおの四キュビトで、幕はみな同じ寸法である。
2576 02 36 10 その幕五枚を互に連ね合わせ、また他の五枚の幕をも互に連ね合わせ、
2577 02 36 11 その一連の端にある幕の縁に青色の乳をつけ、他の一連の端にある幕の縁にも、そのようにした。
2578 02 36 12 その一枚の幕に乳五十をつけ、他の一連の幕の端にも、乳五十をつけた。その乳を互に相向かわせた。
2579 02 36 13 そして金の輪五十を作り、その輪で、幕を互に連ね合わせたので、一つの幕屋になった。
2580 02 36 14 また、やぎの毛糸で幕を作り、幕屋をおおう天幕にした。すなわち幕十一枚を作った。
2581 02 36 15 おのおのの幕の長さは三十キュビト、おのおのの幕の幅は四キュビトで、その十一枚の幕は同じ寸法である。
2582 02 36 16 そして、その幕五枚を一つに連ね合わせ、また、その幕六枚を一つに連ね合わせ、
2583 02 36 17 その一連の端にある幕の縁に、乳五十をつけ、他の一連の幕の縁にも、乳五十をつけた。
2584 02 36 18 そして、青銅の輪五十を作り、その天幕を連ね合わせて一つにした。
2585 02 36 19 また、あかね染めの雄羊の皮で、天幕のおおいと、じゅごんの皮で、その上にかけるおおいとを作った。
2586 02 36 20 また幕屋のためにアカシヤ材をもって、立枠を造った。
2587 02 36 21 枠の長さは十キュビト、枠の幅は、おのおの一キュビト半とし、
2588 02 36 22 枠ごとに二つの柄を造って、かれとこれとをくい合わせ、幕屋のすべての枠にこのようにした。
2589 02 36 23 幕屋のために枠を造った。すなわち南側のために枠二十を造った。
2590 02 36 24 その二十の枠の下に銀の座四十を造って、この枠の下に、その二つの柄のために二つの座を置き、かの枠の下にも、その二つの柄のために二つの座を置いた。
2591 02 36 25 また幕屋の他の側、すなわち北側のためにも枠二十を造った。
2592 02 36 26 その銀の座四十を造って、この枠の下にも二つの座を置き、かの枠の下にも二つの座を置いた。
2593 02 36 27 また幕屋のうしろ、西側のために枠六つを造り、
2594 02 36 28 幕屋のうしろの二つのすみのために枠二つを造った。
2595 02 36 29 これらは、下で重なり合い、同じくその頂でも第一の環まで重なり合うようにし、その二つとも二つのすみのために、そのように造った。
2596 02 36 30 こうして、その枠は八つ、その銀の座は十六、おのおのの枠の下に、二つずつ座があった。
2597 02 36 31 またアカシヤ材の横木を造った。すなわち幕屋のこの側の枠のために五つ、
2598 02 36 32 また幕屋のかの側の枠のために横木五つ、幕屋のうしろの西側の枠のために横木五つを造った。
2599 02 36 33 枠のまん中にある中央の横木は、端から端まで通るようにした。
2600 02 36 34 そして、その枠を金でおおい、また横木を通すその環を金で造り、またその横木を金でおおった。
2601 02 36 35 また青糸、紫糸、緋糸、亜麻の撚糸で、垂幕を作り、巧みなわざをもって、それにケルビムを織り出した。
2602 02 36 36 また、これがためにアカシヤ材の柱四本を作り、金でこれをおおい、その鉤を金にし、その柱のために銀の座四つを鋳た。
2603 02 36 37 また幕屋の入口のために青糸、紫糸、緋糸、亜麻の撚糸で、色とりどりに織ったとばりを作った。
2604 02 36 38 その柱五本と、その鉤とを造り、その柱の頭と桁とを金でおおった。ただし、その五つの座は青銅であった。
2605 02 37 1 ベザレルはアカシヤ材の箱を造った。長さは二キュビト半、幅は一キュビト半、高さは一キュビト半である。
2606 02 37 2 純金で、内そとをおおい、その周囲に金の飾り縁を造った。
2607 02 37 3 また金の環四つを鋳て、その四すみに取りつけた。すなわち二つの環をこちら側に、二つの環をあちら側に取りつけた。
2608 02 37 4 またアカシヤ材のさおを造り、金でこれをおおい、
2609 02 37 5 そのさおを箱の側面の環に通して、箱をかつぐようにした。
2610 02 37 6 また純金で贖罪所を造った。長さは二キュビト半、幅は一キュビト半である。
2611 02 37 7 また金で、二つのケルビムを造った。すなわち、これを打物造りとし、贖罪所の両端に置いた。
2612 02 37 8 一つのケルブをこの端に、一つのケルブをかの端に置いた。すなわちケルビムを贖罪所の一部として、その両端に造った。
2613 02 37 9 ケルビムは翼を高く伸べ、その翼で贖罪所をおおい、顔は互に向かい合った。すなわちケルビムの顔は贖罪所に向かっていた。
2614 02 37 10 またアカシヤ材で、机を造った。長さは二キュビト、幅は一キュビト、高さは一キュビト半である。
2615 02 37 11 純金でこれをおおい、その周囲に金の飾り縁を造った。
2616 02 37 12 またその周囲に手幅の棧を造り、その周囲の棧に金の飾り縁を造った。
2617 02 37 13 またこれがために金の環四つを鋳て、その四つの足のすみ四か所にその環を取りつけた。
2618 02 37 14 その環は棧のわきにあって、机をかつぐさおを入れる所とした。
2619 02 37 15 またアカシヤ材で、机をかつぐさおを造り、金でこれをおおった。
2620 02 37 16 また机の上の器、すなわちその皿、乳香を盛る杯および灌祭を注ぐための鉢と瓶とを純金で造った。
2621 02 37 17 また純金の燭台を造った。すなわち打物造りで燭台を造り、その台、幹、萼、節、花を一つに連ねた。
2622 02 37 18 また六つの枝をそのわきから出させた。すなわち燭台の三つの枝をこの側から、燭台の三つの枝をかの側から出させた。
2623 02 37 19 あめんどうの花の形をした三つの萼が、節と花とをもって、この枝にあり、また、あめんどうの花の形をした三つの萼が、節と花とをもって、かの枝にあり、燭台から出る六つの枝をみなそのようにした。
2624 02 37 20 また燭台の幹には、あめんどうの花の形をした四つの萼を、その節と花とをもたせて取りつけた。
2625 02 37 21 また二つの枝の下に一つの節を取りつけ、次の二つの枝の下に一つの節を取りつけ、さらに次の二つの枝の下に一つの節を取りつけ、燭台の幹から出る六つの枝に、みなそのようにした。
2626 02 37 22 それらの節と枝を一つに連ね、ことごとく純金の打物造りとした。
2627 02 37 23 また、それのともしび皿七つと、その芯切りばさみと、芯取り皿とを純金で造った。
2628 02 37 24 すなわち純金一タラントをもって、燭台とそのすべての器とを造った。
2629 02 37 25 またアカシヤ材で香の祭壇を造った。長さ一キュビト、幅一キュビトの四角にし、高さ二キュビトで、これにその一部として角をつけた。
2630 02 37 26 そして、その頂、その周囲の側面、その角を純金でおおい、その周囲に金の飾り縁を造った。
2631 02 37 27 また、その両側に、飾り縁の下に金の環二つを、そのために造った。すなわちその二つの側にこれを造った。これはそれをかつぐさおを通す所である。
2632 02 37 28 そのさおはアカシヤ材で造り、金でこれをおおった。
2633 02 37 29 また香料を造るわざにしたがって、聖なる注ぎ油と純粋の香料の薫香とを造った。
2634 02 38 1 またアカシヤ材で燔祭の祭壇を造った。長さ五キュビト、幅五キュビトの四角で、高さは三キュビトである。
2635 02 38 2 その四すみの上に、その一部とし、それの角を造り、青銅で祭壇をおおった。
2636 02 38 3 また祭壇のもろもろの器、すなわち、つぼ、十能、鉢、肉叉、火皿を造った。そのすべての器を青銅で造った。
2637 02 38 4 また祭壇のために、青銅の網細工の格子を造り、これを祭壇の出張りの下に取りつけて、祭壇の高さの半ばに達するようにした。
2638 02 38 5 また青銅の格子の四すみのために、環四つを鋳て、さおを通す所とした。
2639 02 38 6 アカシヤ材で、そのさおを造り、青銅でこれをおおい、
2640 02 38 7 そのさおを祭壇の両側にある環に通して、それをかつぐようにした。祭壇は板をもって、空洞に造った。
2641 02 38 8 また洗盤と、その台を青銅で造った。すなわち会見の幕屋の入口で務をなす女たちの鏡をもって造った。
2642 02 38 9 また庭を造った。その南側のために百キュビトの亜麻の撚糸の庭のあげばりを設けた。
2643 02 38 10 その柱は二十、その柱の二十の座は青銅で、その柱の鉤と桁は銀とした。
2644 02 38 11 また北側のためにも百キュビトのあげばりを設けた。その柱二十、その柱の二十の座は青銅で、その柱の鉤と桁は銀とした。
2645 02 38 12 また西側のために、五十キュビトのあげばりを設けた。その柱は十、その座も十で、その柱の鉤と桁は銀とした。
2646 02 38 13 また東側のためにも、五十キュビトのあげばりを設けた。
2647 02 38 14 その一方に十五キュビトのあげばりを設けた。その柱は三つ、その座も三つ。
2648 02 38 15 また他の一方にも、同じようにした。すなわち庭の門のこなたかなたともに、十五キュビトのあげばりを設けた。その柱は三つ、その座も三つ。
2649 02 38 16 庭の周囲のあげばりはみな亜麻の撚糸である。
2650 02 38 17 柱の座は青銅、柱の鉤と桁とは銀、柱の頭のおおいも銀である。庭の柱はみな銀の桁で連ねた。
2651 02 38 18 庭の門のとばりは青糸、紫糸、緋糸、亜麻の撚糸で、色とりどりに織ったものであった。長さは二十キュビト、幅なる高さは五キュビトで、庭のあげばりと等しかった。
2652 02 38 19 その柱は四つ、その座も四つで、ともに青銅。その鉤は銀、柱の頭のおおいと桁は銀である。
2653 02 38 20 ただし、幕屋および、その周囲の庭の釘はみな青銅であった。
2654 02 38 21 幕屋、すなわちあかしの幕屋に用いた物の総計は次のとおりである。すなわちモーセの命に従い、祭司アロンの子イタマルがレビびとを用いて量ったものである。
2655 02 38 22 ユダの部族に属するホルの子なるウリの子ベザレルは、主がモーセに命じられた事をことごとくした。
2656 02 38 23 ダンの部族に属するアヒサマクの子アホリアブは彼と共にあって彫刻、浮き織をなし、また青糸、紫糸、緋糸、亜麻糸で、縫取りをする者であった。
2657 02 38 24 聖所のもろもろの工作に用いたすべての金、すなわち、ささげ物なる金は聖所のシケルで、二十九タラント七百三十シケルであった。
2658 02 38 25 会衆のうちの数えられた者のささげた銀は聖所のシケルで、百タラント千七百七十五シケルであった。
2659 02 38 26 これはひとり当り一ベカ、すなわち聖所のシケルの半シケルであって、すべて二十歳以上で数えられた者が六十万三千五百五十人であったからである。
2660 02 38 27 聖所の座と垂幕の座とを鋳るために用いた銀は百タラントであった。すなわち百座につき百タラント、一座につき一タラントである。
2661 02 38 28 また千七百七十五シケルで柱の鉤を造り、また柱の頭をおおい、柱のために桁を造った。
2662 02 38 29 ささげ物なる青銅は七十タラント二千四百シケルであった。
2663 02 38 30 これを用いて会見の幕屋の入口の座、青銅の祭壇と、それにつく青銅の格子、および祭壇のもろもろの器を造った。
2664 02 38 31 また庭の周囲の座、庭の門の座、および幕屋のもろもろの釘と、庭の周囲のもろもろの釘を造った。
2665 02 39 1 彼らは青糸、紫糸、緋糸で、聖所の務のための編物の服を作った。またアロンのために聖なる服を作った。主がモーセに命じられたとおりである。
2666 02 39 2 また金糸、青糸、紫糸、緋糸、亜麻の撚糸でエポデを作った。
2667 02 39 3 また金を打ち延べて板とし、これを切って糸とし、青糸、紫糸、緋糸、亜麻の撚糸に交えて、巧みな細工とした。
2668 02 39 4 また、これがために肩ひもを作ってこれにつけ、その両端でこれにつけた。
2669 02 39 5 エポデの上で、これをつかねる帯は、同じきれで、同じように、金糸、青糸、紫糸、緋糸、亜麻の撚糸で作った。主がモーセに命じられたとおりである。
2670 02 39 6 また、縞めのうを細工して、金糸の編細工にはめ、これに印を彫刻するように、イスラエルの子たちの名を刻み、
2671 02 39 7 これをエポデの肩ひもにつけて、イスラエルの子たちの記念の石とした。主がモーセに命じられたとおりである。
2672 02 39 8 また胸当を巧みなわざをもって、エポデの作りのように作った。すなわち金糸、青糸、紫糸、緋糸、亜麻の撚糸で作った。
2673 02 39 9 胸当は二つに折って四角にした。すなわち二つに折って、長さを一指当りとし、幅も一指当りとした。
2674 02 39 10 その中に宝石四列をはめた。すなわち、紅玉髄、貴かんらん石、水晶の列を第一列とし、
2675 02 39 11 第二列は、ざくろ石、るり、赤縞めのう、
2676 02 39 12 第三列は黄水晶、めのう、紫水晶、
2677 02 39 13 第四列は黄碧玉、縞めのう、碧玉であって、これらを金の編細工の中にはめ込んだ。
2678 02 39 14 その宝石はイスラエルの子たちの名にしたがい、その名と等しく十二とし、おのおの印の彫刻のように、十二部族のためにその名を刻んだ。
2679 02 39 15 またひも細工にねじた純金のくさりを胸当につけた。
2680 02 39 16 また金の二つの編細工と、二つの金の環とを作り、その二つの環を胸当の両端につけた。
2681 02 39 17 かの二筋の金のひもを胸当の端の二つの環につけた。
2682 02 39 18 ただし、その二筋のひもの他の両端を、かの二つの編細工につけ、エポデの肩ひもにつけて前にくるようにした。
2683 02 39 19 また二つの金の環を作って、これを胸当の両端につけた。すなわちエポデに接する内側の縁にこれをつけた。
2684 02 39 20 また金の環二つを作って、これをエポデの二つの肩ひもの下の部分につけ、前の方で、そのつなぎ目に近く、エポデの帯の上の方にくるようにした。
2685 02 39 21 胸当は青ひもをもって、その環をエポデの環に結びつけ、エポデの帯の上の方にくるようにした。こうして、胸当がエポデから離れないようにした。主がモーセに命じられたとおりである。
2686 02 39 22 またエポデに属する上服は、すべて青地の織物で作った。
2687 02 39 23 上服の口はそのまん中にあって、その口の周囲には、よろいのえりのように縁をつけて、ほころびないようにした。
2688 02 39 24 上服のすそには青糸、紫糸、緋糸、亜麻の撚糸で、ざくろを作りつけ、
2689 02 39 25 また純金で鈴を作り、その鈴を上服のすその周囲の、ざくろとざくろとの間につけた。
2690 02 39 26 すなわち鈴にざくろ、鈴にざくろと、務の上服のすその周囲につけた。主がモーセに命じられたとおりである。
2691 02 39 27 またアロンとその子たちのために、亜麻糸で織った下服を作り、
2692 02 39 28 亜麻布で帽子を作り、亜麻布で麗しい頭布を作り、亜麻の撚糸の布で、下ばきを作り、
2693 02 39 29 亜麻の撚糸および青糸、紫糸、緋糸で、色とりどりに織った帯を作った。主がモーセに命じられたとおりである。
2694 02 39 30 また純金をもって、聖なる冠の前板を作り、印の彫刻のように、その上に「主に聖なる者」という文字を書き、
2695 02 39 31 これに青ひもをつけて、それを帽子の上に結びつけた。主がモーセに命じられたとおりである。
2696 02 39 32 こうして会見の天幕なる幕屋の、もろもろの工事が終った。イスラエルの人々はすべて主がモーセに命じられたようにおこなった。
2697 02 39 33 彼らは幕屋と天幕およびそのもろもろの器をモーセのもとに携えてきた。すなわち、その鉤、その枠、その横木、その柱、その座、
2698 02 39 34 あかね染めの雄羊の皮のおおい、じゅごんの皮のおおい、隔ての垂幕、
2699 02 39 35 あかしの箱と、そのさお、贖罪所、
2700 02 39 36 机と、そのもろもろの器、供えのパン、
2701 02 39 37 純金の燭台と、そのともしび皿、すなわち列に並べるともしび皿と、そのもろもろの器、およびそのともし油、
2702 02 39 38 金の祭壇、注ぎ油、香ばしい薫香、幕屋の入口のとばり、
2703 02 39 39 青銅の祭壇、その青銅の格子と、そのさお、およびそのもろもろの器、洗盤とその台、
2704 02 39 40 庭のあげばり、その柱とその座、庭の門のとばり、そのひもとその釘、また会見の天幕の幕屋に用いるもろもろの器、
2705 02 39 41 聖所で務をなす編物の服、すなわち祭司の務をなすための祭司アロンの聖なる服およびその子たちの服。
2706 02 39 42 イスラエルの人々は、すべて主がモーセに命じられたように、そのすべての工事をした。
2707 02 39 43 モーセがそのすべての工事を見ると、彼らは主が命じられたとおりに、それをなしとげていたので、モーセは彼らを祝福した。
2708 02 40 1 主はモーセに言われた。
2709 02 40 2 「正月の元日にあなたは会見の天幕なる幕屋を建てなければならない。
2710 02 40 3 そして、その中にあかしの箱を置き、垂幕で、箱を隔て隠し、
2711 02 40 4 また、机を携え入れ、それに並べるものを並べ、燭台を携え入れて、そのともしびをともさなければならない。
2712 02 40 5 あなたはまた金の香の祭壇を、あかしの箱の前にすえ、とばりを幕屋の入口にかけなければならない。
2713 02 40 6 また燔祭の祭壇を会見の天幕なる幕屋の入口の前にすえ、
2714 02 40 7 洗盤を会見の天幕と祭壇との間にすえて、これに水を入れなければならない。
2715 02 40 8 また周囲に庭を設け、庭の門にとばりをかけなければならない。
2716 02 40 9 そして注ぎ油をとって、幕屋とその中のすべてのものに注ぎ、それとそのもろもろの器とを聖別しなければならない、こうして、それは聖となるであろう。
2717 02 40 10 あなたはまた燔祭の祭壇と、そのすべての器に油を注いで、その祭壇を聖別しなければならない。こうして祭壇は、いと聖なるものとなるであろう。
2718 02 40 11 また洗盤と、その台とに油を注いで、これを聖別し、
2719 02 40 12 アロンとその子たちを会見の幕屋の入口に連れてきて、水で彼らを洗い、
2720 02 40 13 アロンに聖なる服を着せ、これに油を注いで聖別し、祭司の務をさせなければならない。
2721 02 40 14 また彼の子たちを連れてきて、これに服を着せ、
2722 02 40 15 その父に油を注いだように、彼らにも油を注いで、祭司の務をさせなければならない。彼らが油そそがれることは、代々ながく祭司職のためになすべきことである」。
2723 02 40 16 モーセはそのように行った。すなわち主が彼に命じられたように行った。
2724 02 40 17 第二年の正月になって、その月の元日に幕屋は建った。
2725 02 40 18 すなわちモーセは幕屋を建て、その座をすえ、その枠を立て、その横木をさし込み、その柱を立て、
2726 02 40 19 幕屋の上に天幕をひろげ、その上に天幕のおおいをかけた。主がモーセに命じられたとおりである。
2727 02 40 20 彼はまたあかしの板をとって箱に納め、さおを箱につけ、贖罪所を箱の上に置き、
2728 02 40 21 箱を幕屋に携え入れ、隔ての垂幕をかけて、あかしの箱を隠した。主がモーセに命じられたとおりである。
2729 02 40 22 彼はまた会見の天幕なる幕屋の内部の北側、垂幕の外に机をすえ、
2730 02 40 23 その上にパンを列に並べて、主の前に供えた。主がモーセに命じられたとおりである。
2731 02 40 24 彼はまた会見の天幕なる幕屋の内部の南側に、机にむかい合わせて燭台をすえ、
2732 02 40 25 主の前にともしびをともした。主がモーセに命じられたとおりである。
2733 02 40 26 彼は会見の幕屋の中、垂幕の前に金の祭壇をすえ、
2734 02 40 27 その上に香ばしい薫香をたいた。主がモーセに命じられたとおりである。
2735 02 40 28 彼はまた幕屋の入口にとばりをかけ、
2736 02 40 29 燔祭の祭壇を会見の天幕なる幕屋の入口にすえ、その上に燔祭と素祭をささげた。主がモーセに命じられたとおりである。
2737 02 40 30 彼はまた会見の天幕と祭壇との間に洗盤を置き、洗うためにそれに水を入れた。
2738 02 40 31 モーセとアロンおよびその子たちは、それで手と足を洗った。
2739 02 40 32 すなわち会見の天幕にはいるとき、また祭壇に近づくとき、そこで洗った。主がモーセに命じられたとおりである。
2740 02 40 33 また幕屋と祭壇の周囲に庭を設け、庭の門にとばりをかけた。このようにしてモーセはその工事を終えた。
2741 02 40 34 そのとき、雲は会見の天幕をおおい、主の栄光が幕屋に満ちた。
2742 02 40 35 モーセは会見の幕屋に、はいることができなかった。雲がその上にとどまり、主の栄光が幕屋に満ちていたからである。
2743 02 40 36 雲が幕屋の上からのぼる時、イスラエルの人々は道に進んだ。彼らはその旅路において常にそうした。
2744 02 40 37 しかし、雲がのぼらない時は、そののぼる日まで道に進まなかった。
2745 02 40 38 すなわちイスラエルの家のすべての者の前に、昼は幕屋の上に主の雲があり、夜は雲の中に火があった。彼らの旅路において常にそうであった。
2746 03 1 1 主はモーセを呼び、会見の幕屋からこれに告げて言われた、
2747 03 1 2 「イスラエルの人々に言いなさい、『あなたがたのうちだれでも家畜の供え物を主にささげるときは、牛または羊を供え物としてささげなければならない。
2748 03 1 3 もしその供え物が牛の燔祭であるならば、雄牛の全きものをささげなければならない。会見の幕屋の入口で、主の前に受け入れられるように、これをささげなければならない。
2749 03 1 4 彼はその燔祭の獣の頭に手を置かなければならない。そうすれば受け入れられて、彼のためにあがないとなるであろう。
2750 03 1 5 彼は主の前でその子牛をほふり、アロンの子なる祭司たちは、その血を携えてきて、会見の幕屋の入口にある祭壇の周囲に、その血を注ぎかけなければならない。
2751 03 1 6 彼はまたその燔祭の獣の皮をはぎ、節々に切り分かたなければならない。
2752 03 1 7 祭司アロンの子たちは祭壇の上に火を置き、その火の上にたきぎを並べ、
2753 03 1 8 アロンの子なる祭司たちはその切り分けたものを、頭および脂肪と共に、祭壇の上にある火の上のたきぎの上に並べなければならない。
2754 03 1 9 その内臓と足とは水で洗わなければならない。こうして祭司はそのすべてを祭壇の上で焼いて燔祭としなければならない。これは火祭であって、主にささげる香ばしいかおりである。
2755 03 1 10 もしその燔祭の供え物が群れの羊または、やぎであるならば、雄の全きものをささげなければならない。
2756 03 1 11 彼は祭壇の北側で、主の前にこれをほふり、アロンの子なる祭司たちは、その血を祭壇の周囲に注ぎかけなければならない。
2757 03 1 12 彼はまたこれを節々に切り分かち、祭司はこれを頭および脂肪と共に、祭壇の上にある火の上のたきぎの上に並べなければならない。
2758 03 1 13 その内臓と足とは水で洗わなければならない。こうして祭司はそのすべてを祭壇の上で焼いて燔祭としなければならない。これは火祭であって、主にささげる香ばしいかおりである。
2759 03 1 14 もし主にささげる供え物が、鳥の燔祭であるならば、山ばと、または家ばとのひなを、その供え物としてささげなければならない。
2760 03 1 15 祭司はこれを祭壇に携えて行き、その首を摘み破り、祭壇の上で焼かなければならない。その血は絞り出して祭壇の側面に塗らなければならない。
2761 03 1 16 またその餌袋は羽と共に除いて、祭壇の東の方にある灰捨場に捨てなければならない。
2762 03 1 17 これは、その翼を握って裂かなければならない。ただし引き離してはならない。祭司はこれを祭壇の上で、火の上のたきぎの上で燔祭として焼かなければならない。これは火祭であって、主にささげる香ばしいかおりである。
2763 03 2 1 人が素祭の供え物を主にささげるときは、その供え物は麦粉でなければならない。その上に油を注ぎ、またその上に乳香を添え、
2764 03 2 2 これをアロンの子なる祭司たちのもとに携えて行かなければならない。祭司はその麦粉とその油の一握りを乳香の全部と共に取り、これを記念の分として、祭壇の上で焼かなければならない。これは火祭であって、主にささげる香ばしいかおりである。
2765 03 2 3 素祭の残りはアロンとその子らのものになる。これは主の火祭のいと聖なる物である。
2766 03 2 4 あなたが、もし天火で焼いたものを素祭としてささげるならば、それは麦粉に油を混ぜて作った種入れぬ菓子、または油を塗った種入れぬ煎餅でなければならない。
2767 03 2 5 あなたの供え物が、もし、平鍋で焼いた素祭であるならば、それは麦粉に油を混ぜて作った種入れぬものでなければならない。
2768 03 2 6 あなたはそれを細かく砕き、その上に油を注がなければならない。これは素祭である。
2769 03 2 7 あなたの供え物が、もし深鍋で煮た素祭であるならば、麦粉に油を混ぜて作らなければならない。
2770 03 2 8 あなたはこれらの物で作った素祭を、主に携えて行かなければならない。それを祭司に渡すならば、祭司はそれを祭壇に携えて行き、
2771 03 2 9 その素祭のうちから記念の分を取って、祭壇の上で焼かなければならない。これは火祭であって、主にささげる香ばしいかおりである。
2772 03 2 10 素祭の残りはアロンとその子らのものになる。これは、主の火祭のいと聖なる物である。
2773 03 2 11 あなたがたが主にささげる素祭は、すべて種を入れて作ってはならない。パン種も蜜も、すべて主にささげる火祭として焼いてはならないからである。
2774 03 2 12 ただし、初穂の供え物としては、これらを主にささげることができる。しかし香ばしいかおりとして祭壇にささげてはならない。
2775 03 2 13 あなたの素祭の供え物は、すべて塩をもって味をつけなければならない。あなたの素祭に、あなたの神の契約の塩を欠いてはならない。すべて、あなたの供え物は、塩を添えてささげなければならない。
2776 03 2 14 もしあなたが初穂の素祭を主にささげるならば、火で穂を焼いたもの、新穀の砕いたものを、あなたの初穂の素祭としてささげなければならない。
2777 03 2 15 あなたはそれに油を加え、その上に乳香を置かなければならない。これは素祭である。
2778 03 2 16 祭司は、その砕いた物およびその油のうちから記念の分を取って、乳香の全部と共に焼かなければならない。これは主にささげる火祭である。
2779 03 3 1 もし彼の供え物が酬恩祭の犠牲であって、牛をささげるのであれば、雌雄いずれであっても、全きものを主の前にささげなければならない。
2780 03 3 2 彼はその供え物の頭に手を置き、会見の幕屋の入口で、これをほふらなければならない。そしてアロンの子なる祭司たちは、その血を祭壇の周囲に注ぎかけなければならない。
2781 03 3 3 彼はまたその酬恩祭の犠牲のうちから火祭を主にささげなければならない。すなわち内臓をおおう脂肪と、内臓の上のすべての脂肪、
2782 03 3 4 二つの腎臓とその上の腰のあたりにある脂肪、ならびに腎臓と共にとられる肝臓の上の小葉である。
2783 03 3 5 そしてアロンの子たちは祭壇の上で、火の上のたきぎの上に置いた燔祭の上で、これを焼かなければならない。これは火祭であって、主にささげる香ばしいかおりである。
2784 03 3 6 もし彼の供え物が主にささげる酬恩祭の犠牲で、それが羊であるならば、雌雄いずれであっても、全きものをささげなければならない。
2785 03 3 7 もし小羊を供え物としてささげるならば、それを主の前に連れてきて、
2786 03 3 8 その供え物の頭に手を置き、それを会見の幕屋の前で、ほふらなければならない。そしてアロンの子たちはその血を祭壇の周囲に注ぎかけなければならない。
2787 03 3 9 彼はその酬恩祭の犠牲のうちから、火祭を主にささげなければならない。すなわちその脂肪、背骨に接して切り取る脂尾の全部、内臓をおおう脂肪と内臓の上のすべての脂肪、
2788 03 3 10 二つの腎臓とその上の腰のあたりにある脂肪、ならびに腎臓と共に取られる肝臓の上の小葉である。
2789 03 3 11 祭司はこれを祭壇の上で焼かなければならない。これは火祭であって、主にささげる食物である。
2790 03 3 12 もし彼の供え物が、やぎであるならば、それを主の前に連れてきて、
2791 03 3 13 その頭に手を置き、それを会見の幕屋の前で、ほふらなければならない。そしてアロンの子たちは、その血を祭壇の周囲に注ぎかけなければならない。
2792 03 3 14 彼はまたそのうちから供え物を取り、火祭として主にささげなければならない。すなわち内臓をおおう脂肪と内臓の上のすべての脂肪、
2793 03 3 15 二つの腎臓とその上の腰のあたりにある脂肪、ならびに腎臓と共に取られる肝臓の上の小葉である。
2794 03 3 16 祭司はこれを祭壇の上で焼かなければならない。これは火祭としてささげる食物であって、香ばしいかおりである。脂肪はみな主に帰すべきものである。
2795 03 3 17 あなたがたは脂肪と血とをいっさい食べてはならない。これはあなたがたが、すべてその住む所で、代々守るべき永久の定めである』」。
2796 03 4 1 主はまたモーセに言われた、
2797 03 4 2 「イスラエルの人々に言いなさい、『もし人があやまって罪を犯し、主のいましめにそむいて、してはならないことの一つをした時は次のようにしなければならない。
2798 03 4 3 すなわち、油注がれた祭司が罪を犯して、とがを民に及ぼすならば、彼はその犯した罪のために雄の全き子牛を罪祭として主にささげなければならない。
2799 03 4 4 その子牛を会見の幕屋の入口に連れてきて主の前に至り、その子牛の頭に手を置き、その子牛を主の前で、ほふらなければならない。
2800 03 4 5 油注がれた祭司は、その子牛の血を取って、それを会見の幕屋に携え入り、
2801 03 4 6 そして祭司は指をその血に浸して、聖所の垂幕の前で主の前にその血を七たび注がなければならない。
2802 03 4 7 祭司はまたその血を取り、主の前で会見の幕屋の中にある香ばしい薫香の祭壇の角に、それを塗らなければならない。その子牛の血の残りはことごとく会見の幕屋の入口にある燔祭の祭壇のもとに注がなければならない。
2803 03 4 8 またその罪祭の子牛から、すべての脂肪を取らなければならない。すなわち内臓をおおう脂肪と内臓の上のすべての脂肪、
2804 03 4 9 二つの腎臓とその上の腰のあたりにある脂肪、ならびに腎臓と共に取られる肝臓の上の小葉である。
2805 03 4 10 これを取るには酬恩祭の犠牲の雄牛から取るのと同じようにしなければならない。そして祭司はそれを燔祭の祭壇の上で焼かなければならない。
2806 03 4 11 その子牛の皮とそのすべての肉、およびその頭と足と内臓と汚物など、
2807 03 4 12 すべてその子牛の残りは、これを宿営の外の、清い場所なる灰捨場に携え出し、火をもってこれをたきぎの上で焼き捨てなければならない。すなわちこれは灰捨場で焼き捨てらるべきである。
2808 03 4 13 もしイスラエルの全会衆があやまちを犯し、そのことが会衆の目に隠れていても、主のいましめにそむいて、してはならないことの一つをなして、とがを得たならば、
2809 03 4 14 その犯した罪が現れた時、会衆は雄の子牛を罪祭としてささげなければならない。すなわちそれを会見の幕屋の前に連れてきて、
2810 03 4 15 会衆の長老たちは、主の前でその子牛の頭に手を置き、その子牛を主の前で、ほふらなければならない。
2811 03 4 16 そして、油注がれた祭司は、その子牛の血を会見の幕屋に携え入り、
2812 03 4 17 祭司は指をその血に浸し、垂幕の前で主の前に七たび注がなければならない。
2813 03 4 18 またその血を取って、会見の幕屋の中の主の前にある祭壇の角に、それを塗らなければならない。その血の残りはことごとく会見の幕屋の入口にある燔祭の祭壇のもとに注がなければならない。
2814 03 4 19 またそのすべての脂肪を取って祭壇の上で焼かなければならない。
2815 03 4 20 すなわち祭司は罪祭の雄牛にしたように、この雄牛にも、しなければならない。こうして、祭司が彼らのためにあがないをするならば、彼らはゆるされるであろう。
2816 03 4 21 そして、彼はその雄牛を宿営の外に携え出し、はじめの雄牛を焼き捨てたように、これを焼き捨てなければならない。これは会衆の罪祭である。
2817 03 4 22 またつかさたる者が罪を犯し、あやまって、その神、主のいましめにそむき、してはならないことの一つをして、とがを得、
2818 03 4 23 もしその犯した罪を知るようになったときは、供え物として雄やぎの全きものを連れてきて、
2819 03 4 24 そのやぎの頭に手を置き、燔祭をほふる場所で、主の前にこれをほふらなければならない。これは罪祭である。
2820 03 4 25 祭司は指でその罪祭の血を取り、燔祭の祭壇の角にそれを塗り、残りの血は燔祭の祭壇のもとに注がなければならない。
2821 03 4 26 また、そのすべての脂肪は、酬恩祭の犠牲の脂肪と同じように、祭壇の上で焼かなければならない。こうして、祭司が彼のためにその罪のあがないをするならば、彼はゆるされるであろう。
2822 03 4 27 また一般の人がもしあやまって罪を犯し、主のいましめにそむいて、してはならないことの一つをして、とがを得、
2823 03 4 28 その犯した罪を知るようになったときは、その犯した罪のために供え物として雌やぎの全きものを連れてきて、
2824 03 4 29 その罪祭の頭に手を置き、燔祭をほふる場所で、その罪祭をほふらなければならない。
2825 03 4 30 そして祭司は指でその血を取り、燔祭の祭壇の角にこれを塗り、残りの血をことごとく祭壇のもとに注がなければならない。
2826 03 4 31 またそのすべての脂肪は酬恩祭の犠牲から脂肪を取るのと同じように取り、これを祭壇の上で焼いて主にささげる香ばしいかおりとしなければならない。こうして祭司が彼のためにあがないをするならば、彼はゆるされるであろう。
2827 03 4 32 もし小羊を罪祭のために供え物として連れてくるならば、雌の全きものを連れてこなければならない。
2828 03 4 33 その罪祭の頭に手を置き、燔祭をほふる場所で、これをほふり、罪祭としなければならない。
2829 03 4 34 そして祭司は指でその罪祭の血を取り、燔祭の祭壇の角にそれを塗り、残りの血はことごとく祭壇のもとに注がなければならない。
2830 03 4 35 またそのすべての脂肪は酬恩祭の犠牲から小羊の脂肪を取るのと同じように取り、祭司はこれを主にささげる火祭のように祭壇の上で焼かなければならない。こうして祭司が彼の犯した罪のためにあがないをするならば、彼はゆるされるであろう。
2831 03 5 1 もし人が証人に立ち、誓いの声を聞きながら、その見たこと、知っていることを言わないで、罪を犯すならば、彼はそのとがを負わなければならない。
2832 03 5 2 また、もし人が汚れた野獣の死体、汚れた家畜の死体、汚れた這うものの死体など、すべて汚れたものに触れるならば、そのことに気づかなくても、彼は汚れたものとなって、とがを得る。
2833 03 5 3 また、もし彼が人の汚れに触れるならば、その人の汚れが、どのような汚れであれ、それに気づかなくても、彼がこれを知るようになった時は、とがを得る。
2834 03 5 4 また、もし人がみだりにくちびるで誓い、悪をなそう、または善をなそうと言うならば、その人が誓ってみだりに言ったことは、それがどんなことであれ、それに気づかなくても、彼がこれを知るようになった時は、これらの一つについて、とがを得る。
2835 03 5 5 もしこれらの一つについて、とがを得たときは、その罪を犯したことを告白し、
2836 03 5 6 その犯した罪のために償いとして、雌の家畜、すなわち雌の小羊または雌やぎを主のもとに連れてきて、罪祭としなければならない。こうして祭司は彼のために罪のあがないをするであろう。
2837 03 5 7 もし小羊に手のとどかない時は、山ばと二羽か、家ばとのひな二羽かを、彼が犯した罪のために償いとして主に携えてきて、一羽を罪祭に、一羽を燔祭にしなければならない。
2838 03 5 8 すなわち、これらを祭司に携えてきて、祭司はその罪祭のものを先にささげなければならない。すなわち、その頭を首の根のところで、摘み破らなければならない。ただし、切り離してはならない。
2839 03 5 9 そしてその罪祭の血を祭壇の側面に注ぎ、残りの血は祭壇のもとに絞り出さなければならない。これは罪祭である。
2840 03 5 10 また第二のものは、定めにしたがって燔祭としなければならない。こうして、祭司が彼のためにその犯した罪のあがないをするならば、彼はゆるされるであろう。
2841 03 5 11 もし二羽の山ばとにも、二羽の家ばとのひなにも、手の届かないときは、彼の犯した罪のために、供え物として麦粉十分の一エパを携えてきて、これを罪祭としなければならない。ただし、その上に油をかけてはならない。またその上に乳香を添えてはならない。これは罪祭だからである。
2842 03 5 12 彼はこれを祭司のもとに携えて行き、祭司は一握りを取って、記念の分とし、これを主にささげる火祭のように、祭壇の上で焼かなければならない。これは罪祭である。
2843 03 5 13 こうして、祭司が彼のため、すなわち、彼がこれらの一つを犯した罪のために、あがないをするならば、彼はゆるされるであろう。そしてその残りは素祭と同じく、祭司に帰するであろう』」。
2844 03 5 14 主はまたモーセに言われた、
2845 03 5 15 「もし人が不正をなし、あやまって主の聖なる物について罪を犯したときは、その償いとして、あなたの値積りにしたがい、聖所のシケルで、銀数シケルに当る雄羊の全きものを、群れのうちから取り、それを主に携えてきて、愆祭としなければならない。
2846 03 5 16 そしてその聖なる物について犯した罪のために償いをし、またその五分の一をこれに加えて、祭司に渡さなければならない。こうして祭司がその愆祭の雄羊をもって、彼のためにあがないをするならば、彼はゆるされるであろう。
2847 03 5 17 また人がもし罪を犯し、主のいましめにそむいて、してはならないことの一つをしたときは、たといそれを知らなくても、彼は罪を得、そのとがを負わなければならない。
2848 03 5 18 彼はあなたの値積りにしたがって、雄羊の全きものを群れのうちから取り、愆祭としてこれを祭司のもとに携えてこなければならない。こうして、祭司が彼のために、すなわち彼が知らないで、しかもあやまって犯した過失のために、あがないをするならば、彼はゆるされるであろう。
2849 03 5 19 これは愆祭である。彼は確かに主の前にとがを得たからである」。
2850 03 6 1 主はまたモーセに言われた、
2851 03 6 2 「もし人が罪を犯し、主に対して不正をなしたとき、すなわち預かり物、手にした質草、またはかすめた物について、その隣人を欺き、あるいはその隣人をしえたげ、
2852 03 6 3 あるいは落し物を拾い、それについて欺き、偽って誓うなど、すべて人がそれをなして罪となることの一つについて、
2853 03 6 4 罪を犯し、とがを得たならば、彼はそのかすめた物、しえたげて取った物、預かった物、拾った落し物、
2854 03 6 5 または偽り誓ったすべての物を返さなければならない。すなわち残りなく償い、更にその五分の一をこれに加え、彼が愆祭をささげる日に、これをその元の持ち主に渡さなければならない。
2855 03 6 6 彼はその償いとして、あなたの値積りにしたがい、雄羊の全きものを、群れの中から取り、これを祭司のもとに携えてきて、愆祭として主にささげなければならない。
2856 03 6 7 こうして、祭司が主の前で彼のためにあがないをするならば、彼はそのいずれを行ってとがを得てもゆるされるであろう」。
2857 03 6 8 主はまたモーセに言われた、
2858 03 6 9 「アロンとその子たちに命じて言いなさい、『燔祭のおきては次のとおりである。燔祭は祭壇の炉の上に、朝まで夜もすがらあるようにし、そこに祭壇の火を燃え続かせなければならない。
2859 03 6 10 祭司は亜麻布の服を着、亜麻布のももひきを身につけ、祭壇の上で火に焼けた燔祭の灰を取って、これを祭壇のそばに置き、
2860 03 6 11 その衣服を脱ぎ、ほかの衣服を着て、その灰を宿営の外の清い場所に携え出さなければならない。
2861 03 6 12 祭壇の上の火は、そこに燃え続かせ、それを消してはならない。祭司は朝ごとに、たきぎをその上に燃やし、燔祭をその上に並べ、また酬恩祭の脂肪をその上で焼かなければならない。
2862 03 6 13 火は絶えず祭壇の上に燃え続かせ、これを消してはならない。
2863 03 6 14 素祭のおきては次のとおりである。アロンの子たちはそれを祭壇の前で主の前にささげなければならない。
2864 03 6 15 すなわち素祭の麦粉一握りとその油を、素祭の上にある全部の乳香と共に取って、祭壇の上で焼き、香ばしいかおりとし、記念の分として主にささげなければならない。
2865 03 6 16 その残りはアロンとその子たちが食べなければならない。すなわち、種を入れずに聖なる所で食べなければならない。会見の幕屋の庭でこれを食べなければならない。
2866 03 6 17 これは種を入れて焼いてはならない。わたしはこれをわたしの火祭のうちから彼らの分として与える。これは罪祭および愆祭と同様に、いと聖なるものである。
2867 03 6 18 アロンの子たちのうち、すべての男子はこれを食べることができる。これは主にささげる火祭のうちから、あなたがたが代々永久に受けるように定められた分である。すべてこれに触れるものは聖となるであろう』」。
2868 03 6 19 主はまたモーセに言われた、
2869 03 6 20 「アロンとその子たちが、アロンの油注がれる日に、主にささぐべき供え物は次のとおりである。すなわち麦粉十分の一エパを、絶えずささげる素祭とし、半ばは朝に、半ばは夕にささげなければならない。
2870 03 6 21 それは油をよく混ぜて平鍋で焼き、それを携えてきて、細かく砕いた素祭とし、香ばしいかおりとして、主にささげなければならない。
2871 03 6 22 彼の子たちのうち、油注がれて彼についで祭司となる者は、これをささげなければならない。これは永久に主に帰する分として、全く焼きつくすべきものである。
2872 03 6 23 すべて祭司の素祭は全く焼きつくすべきものであって、これを食べてはならない」。
2873 03 6 24 主はまたモーセに言われた、
2874 03 6 25 「アロンとその子たちに言いなさい、『罪祭のおきては次のとおりである。罪祭は燔祭をほふる場所で、主の前にほふらなければならない。これはいと聖なる物である。
2875 03 6 26 罪のためにこれをささげる祭司が、これを食べなければならない。すなわち会見の幕屋の庭の聖なる所で、これを食べなければならない。
2876 03 6 27 すべてその肉に触れる者は聖となるであろう。もしその血が衣服にかかったならば、そのかかったものは聖なる所で洗わなければならない。
2877 03 6 28 またそれを煮た土の器は砕かなければならない。もし青銅の器で煮たのであれば、それはみがいて、水で洗わなければならない。
2878 03 6 29 祭司たちのうちのすべての男子は、これを食べることができる。これはいと聖なるものである。
2879 03 6 30 しかし、その血を会見の幕屋に携えていって、聖所であがないに用いた罪祭は食べてはならない。これは火で焼き捨てなければならない。
2880 03 7 1 愆祭のおきては次のとおりである。それはいと聖なる物である。
2881 03 7 2 愆祭は燔祭をほふる場所でほふらなければならない。そして祭司はその血を祭壇の周囲に注ぎかけ、
2882 03 7 3 そのすべての脂肪をささげなければならない。すなわち脂尾、内臓をおおう脂肪、
2883 03 7 4 二つの腎臓とその上の腰のあたりにある脂肪、腎臓と共に取られる肝臓の上の小葉である。
2884 03 7 5 祭司はこれを祭壇の上で焼いて、主に火祭としなければならない。これは愆祭である。
2885 03 7 6 祭司たちのうちのすべての男子は、これを食べることができる。これは聖なる所で食べなければならない。これはいと聖なる物である。
2886 03 7 7 罪祭も愆祭も、そのおきては一つであって、異なるところはない。これは、あがないをなす祭司に帰する。
2887 03 7 8 人が携えてくる燔祭をささげる祭司、その祭司に、そのささげる燔祭のものの皮は帰する。
2888 03 7 9 すべて天火で焼いた素祭、またすべて深鍋または平鍋で作ったものは、これをささげる祭司に帰する。
2889 03 7 10 すべて素祭は、油を混ぜたものも、かわいたものも、アロンのすべての子たちにひとしく帰する。
2890 03 7 11 主にささぐべき酬恩祭の犠牲のおきては次のとおりである。
2891 03 7 12 もしこれを感謝のためにささげるのであれば、油を混ぜた種入れぬ菓子と、油を塗った種入れぬ煎餅と、よく混ぜた麦粉に油を混ぜて作った菓子とを、感謝の犠牲に合わせてささげなければならない。
2892 03 7 13 また種を入れたパンの菓子をその感謝のための酬恩祭の犠牲に合わせ、供え物としてささげなければならない。
2893 03 7 14 すなわちこのすべての供え物のうちから、菓子一つずつを取って主にささげなければならない。これは酬恩祭の血を注ぎかける祭司に帰する。
2894 03 7 15 その感謝のための酬恩祭の犠牲の肉は、その供え物をささげた日のうちに食べなければならない。少しでも明くる朝まで残して置いてはならない。
2895 03 7 16 しかし、その供え物の犠牲がもし誓願の供え物、または自発の供え物であるならば、その犠牲をささげた日のうちにそれを食べ、その残りはまた明くる日に食べることができる。
2896 03 7 17 ただし、その犠牲の肉の残りは三日目には火で焼き捨てなければならない。
2897 03 7 18 もしその酬恩祭の犠牲の肉を三日目に少しでも食べるならば、それは受け入れられず、また供え物と見なされず、かえって忌むべき物となるであろう。そしてそれを食べる者はとがを負わなければならない。
2898 03 7 19 その肉がもし汚れた物に触れるならば、それを食べることなく、火で焼き捨てなければならない。犠牲の肉はすべて清い者がこれを食べることができる。
2899 03 7 20 もし人がその身に汚れがあるのに、主にささげた酬恩祭の犠牲の肉を食べるならば、その人は民のうちから断たれるであろう。
2900 03 7 21 また人がもしすべて汚れたもの、すなわち人の汚れ、あるいは汚れた獣、あるいは汚れた這うものに触れながら、主にささげた酬恩祭の犠牲の肉を食べるならば、その人は民のうちから断たれるであろう』」。
2901 03 7 22 主はまたモーセに言われた、
2902 03 7 23 「イスラエルの人々に言いなさい、『あなたがたは、すべて牛、羊、やぎの脂肪を食べてはならない。
2903 03 7 24 自然に死んだ獣の脂肪および裂き殺された獣の脂肪は、さまざまのことに使ってもよい。しかし、それは決して食べてはならない。
2904 03 7 25 だれでも火祭として主にささげる獣の脂肪を食べるならば、これを食べる人は民のうちから断たれるであろう。
2905 03 7 26 またあなたがたはすべてその住む所で、鳥にせよ、獣にせよ、すべてその血を食べてはならない。
2906 03 7 27 だれでもすべて血を食べるならば、その人は民のうちから断たれるであろう』」。
2907 03 7 28 主はまたモーセに言われた、
2908 03 7 29 「イスラエルの人々に言いなさい、『酬恩祭の犠牲を主にささげる者は、その酬恩祭の犠牲のうちから、その供え物を主に携えてこなければならない。
2909 03 7 30 主の火祭は手ずからこれを携えてこなければならない。すなわちその脂肪と胸とを携えてきて、その胸を主の前に揺り動かして、揺祭としなければならない。
2910 03 7 31 そして祭司はその脂肪を祭壇の上で焼かなければならない。その胸はアロンとその子たちに帰する。
2911 03 7 32 あなたがたの酬恩祭の犠牲のうちから、その右のももを挙祭として、祭司に与えなければならない。
2912 03 7 33 アロンの子たちのうち、酬恩祭の血と脂肪とをささげる者は、その右のももを自分の分として、獲るであろう。
2913 03 7 34 わたしはイスラエルの人々の酬恩祭の犠牲のうちから、その揺祭の胸と挙祭のももを取って、祭司アロンとその子たちに与え、これをイスラエルの人々から永久に彼らの受くべき分とする。
2914 03 7 35 これは主の火祭のうちから、アロンの受ける分と、その子たちの受ける分とであって、祭司の職をなすため、彼らが主にささげられた日に定められたのである。
2915 03 7 36 すなわち、これは彼らに油を注ぐ日に、イスラエルの人々が彼らに与えるように、主が命じられたものであって、代々永久に受くべき分である』」。
2916 03 7 37 これは燔祭、素祭、罪祭、愆祭、任職祭、酬恩祭の犠牲のおきてである。
2917 03 7 38 すなわち、主がシナイの荒野においてイスラエルの人々にその供え物を主にささげることを命じられた日に、シナイ山でモーセに命じられたものである。
2918 03 8 1 主はまたモーセに言われた、
2919 03 8 2 「あなたはアロンとその子たち、およびその衣服、注ぎ油、罪祭の雄牛、雄羊二頭、種入れぬパン一かごを取り、
2920 03 8 3 また全会衆を会見の幕屋の入口に集めなさい」。
2921 03 8 4 モーセは主が命じられたようにした。そして会衆は会見の幕屋の入口に集まった。
2922 03 8 5 そこでモーセは会衆にむかって言った、「これは主があなたがたにせよと命じられたことである」。
2923 03 8 6 そしてモーセはアロンとその子たちを連れてきて、水で彼らを洗い清め、
2924 03 8 7 アロンに服を着させ、帯をしめさせ、衣をまとわせ、エポデを着けさせ、エポデの帯をしめさせ、それをもってエポデを身に結いつけ、
2925 03 8 8 また胸当を着けさせ、その胸当にウリムとトンミムを入れ、
2926 03 8 9 その頭に帽子をかぶらせ、その帽子の前に金の板、すなわち聖なる冠をつけさせた。主がモーセに命じられたとおりである。
2927 03 8 10 モーセはまた注ぎ油を取り、幕屋とそのうちのすべての物に油を注いでこれを聖別し、
2928 03 8 11 かつ、それを七たび祭壇に注ぎ、祭壇とそのもろもろの器、洗盤とその台に油を注いでこれを聖別し、
2929 03 8 12 また注ぎ油をアロンの頭に注ぎ、彼に油を注いでこれを聖別した。
2930 03 8 13 モーセはまたアロンの子たちを連れてきて、服を彼らに着させ、帯を彼らにしめさせ、頭巾を頭に巻かせた。主がモーセに命じられたとおりである。
2931 03 8 14 彼はまた罪祭の雄牛を連れてこさせ、アロンとその子たちは、その罪祭の雄牛の頭に手を置いた。
2932 03 8 15 モーセはこれをほふり、その血を取り、指をもってその血を祭壇の四すみの角につけて祭壇を清め、また残りの血を祭壇のもとに注いで、これを聖別し、これがためにあがないをした。
2933 03 8 16 モーセはまたその内臓の上のすべての脂肪、肝臓の小葉、二つの腎臓とその脂肪とを取り、これを祭壇の上で焼いた。
2934 03 8 17 ただし、その雄牛の皮と肉と汚物は宿営の外で、火をもって焼き捨てた。主がモーセに命じられたとおりである。
2935 03 8 18 彼はまた燔祭の雄羊を連れてこさせ、アロンとその子たちは、その雄羊の頭に手を置いた。
2936 03 8 19 モーセはこれをほふって、その血を祭壇の周囲に注ぎかけた。
2937 03 8 20 そして、モーセはその雄羊を節々に切り分かち、その頭と切り分けたものと脂肪とを焼いた。
2938 03 8 21 またモーセは水でその内臓と足とを洗い、その雄羊をことごとく祭壇の上で焼いた。これは香ばしいかおりのための燔祭であって、主にささげる火祭である。主がモーセに命じられたとおりである。
2939 03 8 22 彼はまたほかの雄羊、すなわち任職の雄羊を連れてこさせ、アロンとその子たちは、その雄羊の頭に手を置いた。
2940 03 8 23 モーセはこれをほふり、その血を取って、アロンの右の耳たぶと、右手の親指と、右足の親指とにつけた。
2941 03 8 24 またモーセはアロンの子たちを連れてきて、その血を彼らの右の耳たぶと、右手の親指と、右足の親指とにつけた。そしてモーセはその残りの血を、祭壇の周囲に注ぎかけた。
2942 03 8 25 彼はまたその脂肪、すなわち脂尾、内臓の上のすべての脂肪、肝臓の小葉、二つの腎臓とその脂肪、ならびにその右のももを取り、
2943 03 8 26 また主の前にある種入れぬパンのかごから種入れぬ菓子一つと、油を入れたパンの菓子一つと、煎餅一つとを取って、かの脂肪と右のももとの上に載せ、
2944 03 8 27 これをすべてアロンの手と、その子たちの手に渡し、主の前に揺り動かさせて揺祭とした。
2945 03 8 28 そしてモーセはこれを彼らの手から取り、祭壇の上で燔祭と共に焼いた。これは香ばしいかおりとする任職の供え物であって、主にささげる火祭である。
2946 03 8 29 そしてモーセはその胸を取り、主の前にこれを揺り動かして揺祭とした。これは任職の雄羊のうちモーセに帰すべき分であった。主がモーセに命じられたとおりである。
2947 03 8 30 モーセはまた注ぎ油と祭壇の上の血とを取り、これをアロンとその服、またその子たちとその服とに注いで、アロンとその服、およびその子たちと、その服とを聖別した。
2948 03 8 31 モーセはまたアロンとその子たちに言った、「会見の幕屋の入口でその肉を煮なさい。そして任職祭のかごの中のパンと共に、それをその所で食べなさい。これは『アロンとその子たちが食べなければならない、と言え』とわたしが命じられたとおりである。
2949 03 8 32 あなたがたはその肉とパンとの残ったものを火で焼き捨てなければならない。
2950 03 8 33 あなたがたはその任職祭の終る日まで七日の間、会見の幕屋の入口から出てはならない。あなたがたの任職は七日を要するからである。
2951 03 8 34 きょう行ったように、あなたがたのために、あがないをせよ、と主はお命じになった。
2952 03 8 35 あなたがたは会見の幕屋の入口に七日の間、日夜とどまり、主の仰せを守って、死ぬことのないようにしなければならない。わたしはそのように命じられたからである」。
2953 03 8 36 アロンとその子たちは主がモーセによってお命じになったことを、ことごとく行った。
2954 03 9 1 八日目になって、モーセはアロンとその子たち、およびイスラエルの長老たちを呼び寄せ、
2955 03 9 2 アロンに言った、「あなたは雄の子牛の全きものを罪祭のために取り、また雄羊の全きものを燔祭のために取って、主の前にささげなさい。
2956 03 9 3 あなたはまたイスラエルの人々に言いなさい、『あなたがたは雄やぎを罪祭のために取り、また一歳の全き子牛と小羊とを燔祭のために取りなさい、
2957 03 9 4 また主の前にささげる酬恩祭のために雄牛と雄羊とを取り、また油を混ぜた素祭を取りなさい。主がきょうあなたがたに現れたもうからである』」。
2958 03 9 5 彼らはモーセが命じたものを会見の幕屋の前に携えてきた。会衆がみな近づいて主の前に立ったので、
2959 03 9 6 モーセは言った、「これは主があなたがたに、せよと命じられたことである。こうして主の栄光はあなたがたに現れるであろう」。
2960 03 9 7 モーセはまたアロンに言った、「あなたは祭壇に近づき、あなたの罪祭と燔祭をささげて、あなたのため、また民のためにあがないをし、また民の供え物をささげて、彼らのためにあがないをし、すべて主がお命じになったようにしなさい」。
2961 03 9 8 そこでアロンは祭壇に近づき、自分のための罪祭の子牛をほふった。
2962 03 9 9 そしてアロンの子たちは、その血を彼のもとに携えてきたので、彼は指をその血に浸し、それを祭壇の角につけ、残りの血を祭壇のもとに注ぎ、
2963 03 9 10 また罪祭の脂肪と腎臓と肝臓の小葉とを祭壇の上で焼いた。主がモーセに命じられたとおりである。
2964 03 9 11 またその肉と皮とは宿営の外で火をもって焼き捨てた。
2965 03 9 12 彼はまた燔祭の獣をほふり、アロンの子たちがその血を彼に渡したので、これを祭壇の周囲に注ぎかけた。
2966 03 9 13 彼らがまた燔祭のもの、すなわち、その切り分けたものと頭とを彼に渡したので、彼はこれを祭壇の上で焼いた。
2967 03 9 14 またその内臓と足とを洗い、祭壇の上で燔祭と共にこれを焼いた。
2968 03 9 15 彼はまた民の供え物をささげた。すなわち、民のための罪祭のやぎを取ってこれをほふり、前のようにこれを罪のためにささげた。
2969 03 9 16 また燔祭をささげた。すなわち、これを定めのようにささげた。
2970 03 9 17 また素祭をささげ、そのうちから一握りを取り、朝の燔祭に加えて、これを祭壇の上で焼いた。
2971 03 9 18 彼はまた民のためにささげる酬恩祭の犠牲の雄牛と雄羊とをほふり、アロンの子たちが、その血を彼に渡したので、彼はこれを祭壇の周囲に注ぎかけた。
2972 03 9 19 またその雄牛と雄羊との脂肪、すなわち、脂尾、内臓をおおうもの、腎臓、肝臓の小葉。
2973 03 9 20 これらの脂肪を彼らはその胸の上に載せて携えてきたので、彼はその脂肪を祭壇の上で焼いた。
2974 03 9 21 その胸と右のももとは、アロンが主の前に揺り動かして揺祭とした。モーセが命じたとおりである。
2975 03 9 22 アロンは民にむかって手をあげて、彼らを祝福し、罪祭、燔祭、酬恩祭をささげ終って降りた。
2976 03 9 23 モーセとアロンは会見の幕屋に入り、また出てきて民を祝福した。そして主の栄光はすべての民に現れ、
2977 03 9 24 主の前から火が出て、祭壇の上の燔祭と脂肪とを焼きつくした。民はみな、これを見て喜びよばわり、そしてひれ伏した。
2978 03 10 1 さてアロンの子ナダブとアビフとは、おのおのその香炉を取って火をこれに入れ、薫香をその上に盛って、異火を主の前にささげた。これは主の命令に反することであったので、
2979 03 10 2 主の前から火が出て彼らを焼き滅ぼし、彼らは主の前に死んだ。
2980 03 10 3 その時モーセはアロンに言った、「主は、こう仰せられた。すなわち『わたしは、わたしに近づく者のうちに、わたしの聖なることを示し、すべての民の前に栄光を現すであろう』」。アロンは黙していた。
2981 03 10 4 モーセはアロンの叔父ウジエルの子ミシヤエルとエルザパンとを呼び寄せて彼らに言った、「近寄って、あなたがたの兄弟たちを聖所の前から、宿営の外に運び出しなさい」。
2982 03 10 5 彼らは近寄って、彼らをその服のまま宿営の外に運び出し、モーセの言ったようにした。
2983 03 10 6 モーセはまたアロンおよびその子エレアザルとイタマルとに言った、「あなたがたは髪の毛を乱し、また衣服を裂いてはならない。あなたがたが死ぬことのないため、また主の怒りが、すべての会衆に及ぶことのないためである。ただし、あなたがたの兄弟イスラエルの全家は、主が火をもって焼き滅ぼしたもうたことを嘆いてもよい。
2984 03 10 7 また、あなたがたは死ぬことのないように、会見の幕屋の入口から外へ出てはならない。あなたがたの上に主の注ぎ油があるからである」。彼らはモーセの言葉のとおりにした。
2985 03 10 8 主はアロンに言われた、
2986 03 10 9 「あなたも、あなたの子たちも会見の幕屋にはいる時には、死ぬことのないように、ぶどう酒と濃い酒を飲んではならない。これはあなたがたが代々永く守るべき定めとしなければならない。
2987 03 10 10 これはあなたがたが聖なるものと俗なるもの、汚れたものと清いものとの区別をすることができるため、
2988 03 10 11 また主がモーセによって語られたすべての定めを、イスラエルの人々に教えることができるためである」。
2989 03 10 12 モーセはまたアロンおよびその残っている子エレアザルとイタマルとに言った、「あなたがたは主の火祭のうちから素祭の残りを取り、パン種を入れずに、これを祭壇のかたわらで食べなさい。これはいと聖なる物である。
2990 03 10 13 これは主の火祭のうちからあなたの受ける分、またあなたの子たちの受ける分であるから、あなたがたはこれを聖なる所で食べなければならない。わたしはこのように命じられたのである。
2991 03 10 14 また揺り動かした胸とささげたももとは、あなたとあなたのむすこ、娘たちがこれを清い所で食べなければならない。これはイスラエルの人々の酬恩祭の犠牲の中からあなたの分、あなたの子たちの分として与えられるものだからである。
2992 03 10 15 彼らはそのささげたももと揺り動かした胸とを、火祭の脂肪と共に携えてきて、これを主の前に揺り動かして揺祭としなければならない。これは主がお命じになったように、長く受くべき分としてあなたと、あなたの子たちとに帰するであろう」。
2993 03 10 16 さてモーセは罪祭のやぎを、ていねいに捜したが、見よ、それがすでに焼かれていたので、彼は残っているアロンの子エレアザルとイタマルとにむかい、怒って言った、
2994 03 10 17 「あなたがたは、なぜ罪祭のものを聖なる所で食べなかったのか。これはいと聖なる物であって、あなたがたが会衆の罪を負って、彼らのために主の前にあがないをするため、あなたがたに賜わった物である。
2995 03 10 18 見よ、その血は聖所の中に携え入れなかった。その肉はわたしが命じたように、あなたがたは必ずそれを聖なる所で食べるべきであった」。
2996 03 10 19 アロンはモーセに言った、「見よ、きょう、彼らはその罪祭と燔祭とを主の前にささげたが、このような事がわたしに臨んだ。もしわたしが、きょう罪祭のものを食べたとしたら、主はこれを良しとせられたであろうか」。
2997 03 10 20 モーセはこれを聞いて良しとした。
2998 03 11 1 主はまたモーセとアロンに言われた、
2999 03 11 2 「イスラエルの人々に言いなさい、『地にあるすべての獣のうち、あなたがたの食べることができる動物は次のとおりである。
3000 03 11 3 獣のうち、すべてひずめの分かれたもの、すなわち、ひずめの全く切れたもの、反芻するものは、これを食べることができる。
3001 03 11 4 ただし、反芻するもの、またはひずめの分かれたもののうち、次のものは食べてはならない。すなわち、らくだ、これは、反芻するけれども、ひずめが分かれていないから、あなたがたには汚れたものである。
3002 03 11 5 岩たぬき、これは、反芻するけれども、ひずめが分かれていないから、あなたがたには汚れたものである。
3003 03 11 6 野うさぎ、これは、反芻するけれども、ひずめが分かれていないから、あなたがたには汚れたものである。
3004 03 11 7 豚、これは、ひずめが分かれており、ひずめが全く切れているけれども、反芻することをしないから、あなたがたには汚れたものである。
3005 03 11 8 あなたがたは、これらのものの肉を食べてはならない。またその死体に触れてはならない。これらは、あなたがたには汚れたものである。
3006 03 11 9 水の中にいるすべてのもののうち、あなたがたの食べることができるものは次のとおりである。すなわち、海でも、川でも、すべて水の中にいるもので、ひれと、うろこのあるものは、これを食べることができる。
3007 03 11 10 すべて水に群がるもの、またすべての水の中にいる生き物のうち、すなわち、すべて海、また川にいて、ひれとうろこのないものは、あなたがたに忌むべきものである。
3008 03 11 11 これらはあなたがたに忌むべきものであるから、あなたがたはその肉を食べてはならない。またその死体は忌むべきものとしなければならない。
3009 03 11 12 すべて水の中にいて、ひれも、うろこもないものは、あなたがたに忌むべきものである。
3010 03 11 13 鳥のうち、次のものは、あなたがたに忌むべきものとして、食べてはならない。それらは忌むべきものである。すなわち、はげわし、ひげはげわし、みさご、
3011 03 11 14 とび、はやぶさの類、
3012 03 11 15 もろもろのからすの類、
3013 03 11 16 だちょう、よたか、かもめ、たかの類、
3014 03 11 17 ふくろう、う、みみずく、
3015 03 11 18 むらさきばん、ペリカン、はげたか、
3016 03 11 19 こうのとり、さぎの類、やつがしら、こうもり。
3017 03 11 20 また羽があって四つの足で歩くすべての這うものは、あなたがたに忌むべきものである。
3018 03 11 21 ただし、羽があって四つの足で歩くすべての這うもののうち、その足のうえに、跳ね足があり、それで地の上をはねるものは食べることができる。
3019 03 11 22 すなわち、そのうち次のものは食べることができる。移住いなごの類、遍歴いなごの類、大いなごの類、小いなごの類である。
3020 03 11 23 しかし、羽があって四つの足で歩く、そのほかのすべての這うものは、あなたがたに忌むべきものである。
3021 03 11 24 あなたがたは次の場合に汚れたものとなる。すなわち、すべてこれらのものの死体に触れる者は夕まで汚れる。
3022 03 11 25 すべてこれらのものの死体を運ぶ者は、その衣服を洗わなければならない。彼は夕まで汚れる。
3023 03 11 26 すべて、ひずめの分かれた獣で、その切れ目の切れていないもの、また、反芻することをしないものは、あなたがたに汚れたものである。すべて、これに触れる者は汚れる。
3024 03 11 27 すべて四つの足で歩く獣のうち、その足の裏のふくらみで歩くものは皆あなたがたに汚れたものである。すべてその死体に触れる者は夕まで汚れる。
3025 03 11 28 その死体を運ぶ者は、その衣服を洗わなければならない。彼は夕まで汚れる。これは、あなたがたに汚れたものである。
3026 03 11 29 地にはう這うもののうち、次のものはあなたがたに汚れたものである。すなわち、もぐらねずみ、とびねずみ、とげ尾とかげの類、
3027 03 11 30 やもり、大とかげ、とかげ、すなとかげ、カメレオン。
3028 03 11 31 もろもろの這うもののうち、これらはあなたがたに汚れたものである。すべてそれらのものが死んで、それに触れる者は夕まで汚れる。
3029 03 11 32 またそれらのものが死んで、それが落ちかかった物はすべて汚れる。木の器であれ、衣服であれ、皮であれ、袋であれ、およそ仕事に使う器はそれを水に入れなければならない。それは夕まで汚れているが、そののち清くなる。
3030 03 11 33 またそれらのものが、土の器の中に落ちたならば、その中にあるものは皆汚れる。あなたがたはその器をこわさなければならない。
3031 03 11 34 またすべてその中にある食物で、水分のあるものは汚れる。またすべてそのような器の中にある飲み物も皆汚れる。
3032 03 11 35 またそれらのものの死体が落ちかかったならば、その物はすべて汚れる。天火であれ、かまどであれ、それをこわさなければならない。これらは汚れたもので、あなたがたに汚れたものとなる。
3033 03 11 36 ただし、泉、あるいは水の集まった水たまりは汚れない。しかし、その死体に触れる者は汚れる。
3034 03 11 37 それらのものの死体が、まく種の上に落ちても、それは汚れない。
3035 03 11 38 ただし、種の上に水がかかっていて、その上にそれらのものの死体が、落ちるならば、それはあなたがたに汚れたものとなる。
3036 03 11 39 あなたがたの食べる獣が死んだ時、その死体に触れる者は夕まで汚れる。
3037 03 11 40 その死体を食べる者は、その衣服を洗わなければならない。夕まで汚れる。その死体を運ぶ者も、その衣服を洗わなければならない。夕まで汚れる。
3038 03 11 41 すべて地にはう這うものは忌むべきものである。これを食べてはならない。
3039 03 11 42 すべて腹ばい行くもの、四つ足で歩くもの、あるいは多くの足をもつもの、すなわち、すべて地にはう這うものは、あなたがたはこれを食べてはならない。それらは忌むべきものだからである。
3040 03 11 43 あなたがたはすべて這うものによって、あなたがたの身を忌むべきものとしてはならない。また、これをもって身を汚し、あるいはこれによって汚されてはならない。
3041 03 11 44 わたしはあなたがたの神、主であるから、あなたがたはおのれを聖別し、聖なる者とならなければならない。わたしは聖なる者である。地にはう這うものによって、あなたがたの身を汚してはならない。
3042 03 11 45 わたしはあなたがたの神となるため、あなたがたをエジプトの国から導き上った主である。わたしは聖なる者であるから、あなたがたは聖なる者とならなければならない』」。
3043 03 11 46 これは獣と鳥と、水の中に動くすべての生き物と、地に這うすべてのものに関するおきてであって、
3044 03 11 47 汚れたものと清いもの、食べられる生き物と、食べられない生き物とを区別するものである。
3045 03 12 1 主はまたモーセに言われた、
3046 03 12 2 「イスラエルの人々に言いなさい、『女がもし身ごもって男の子を産めば、七日のあいだ汚れる。すなわち、月のさわりの日かずほど汚れるであろう。
3047 03 12 3 八日目にはその子の前の皮に割礼を施さなければならない。
3048 03 12 4 その女はなお、血の清めに三十三日を経なければならない。その清めの日の満ちるまでは、聖なる物に触れてはならない。また聖なる所にはいってはならない。
3049 03 12 5 もし女の子を産めば、二週間、月のさわりと同じように汚れる。その女はなお、血の清めに六十六日を経なければならない。
3050 03 12 6 男の子または女の子についての清めの日が満ちるとき、女は燔祭のために一歳の小羊、罪祭のために家ばとのひな、あるいは山ばとを、会見の幕屋の入口の、祭司のもとに、携えてこなければならない。
3051 03 12 7 祭司はこれを主の前にささげて、その女のために、あがないをしなければならない。こうして女はその出血の汚れが清まるであろう。これは男の子または女の子を産んだ女のためのおきてである。
3052 03 12 8 もしその女が小羊に手の届かないときは、山ばと二羽か、家ばとのひな二羽かを取って、一つを燔祭、一つを罪祭とし、祭司はその女のために、あがないをしなければならない。こうして女は清まるであろう』」。
3053 03 13 1 主はまたモーセとアロンに言われた、
3054 03 13 2 「人がその身の皮に腫、あるいは吹出物、あるいは光る所ができ、これがその身の皮にらい病の患部のようになるならば、その人を祭司アロンまたは、祭司なるアロンの子たちのひとりのもとに、連れて行かなければならない。
3055 03 13 3 祭司はその身の皮の患部を見、その患部の毛がもし白く変り、かつ患部が、その身の皮よりも深く見えるならば、それはらい病の患部である。祭司は彼を見て、これを汚れた者としなければならない。
3056 03 13 4 もしまたその身の皮の光る所が白くて、皮よりも深く見えず、また毛も白く変っていないならば、祭司はその患者を七日のあいだ留め置かなければならない。
3057 03 13 5 七日目に祭司はこれを見て、もし患部の様子に変りがなく、また患部が皮に広がっていないならば、祭司はその人をさらに七日のあいだ留め置かなければならない。
3058 03 13 6 七日目に祭司は再びその人を見て、患部がもし薄らぎ、また患部が皮に広がっていないならば、祭司はこれを清い者としなければならない。これは吹出物である。その人は衣服を洗わなければならない。そして清くなるであろう。
3059 03 13 7 しかし、その人が祭司に見せて清い者とされた後に、その吹出物が皮に広くひろがるならば、再び祭司にその身を見せなければならない。
3060 03 13 8 祭司はこれを見て、その吹出物が皮に広がっているならば、祭司はその人を汚れた者としなければならない。これはらい病である。
3061 03 13 9 もし人にらい病の患部があるならば、その人を祭司のもとに連れて行かなければならない。
3062 03 13 10 祭司がこれを見て、その皮に白い腫があり、その毛も白く変り、かつその腫に生きた生肉が見えるならば、
3063 03 13 11 これは古いらい病がその身の皮にあるのであるから、祭司はその人を汚れた者としなければならない。その人は汚れた者であるから、これを留め置くに及ばない。
3064 03 13 12 もしらい病が広く皮に出て、そのらい病が、その患者の皮を頭から足まで、ことごとくおおい、祭司の見るところすべてに及んでおれば、
3065 03 13 13 祭司はこれを見、もしらい病がその身をことごとくおおっておれば、その患者を清い者としなければならない。それはことごとく白く変ったから、彼は清い者である。
3066 03 13 14 しかし、もし生肉がその人に現れておれば、汚れた者である。
3067 03 13 15 祭司はその生肉を見て、その人を汚れた者としなければならない。生肉は汚れたものであって、それはらい病である。
3068 03 13 16 もしまたその生肉が再び白く変るならば、その人は祭司のもとに行かなければならない。
3069 03 13 17 祭司はその人を見て、もしその患部が白く変っておれば、祭司はその患者を清い者としなければならない。その人は清い者である。
3070 03 13 18 また身の皮に腫物があったが、直って、
3071 03 13 19 その腫物の場所に白い腫、または赤みをおびた白い光る所があれば、これを祭司に見せなければならない。
3072 03 13 20 祭司はこれを見て、もし皮よりも低く見え、その毛が白く変っていれば、祭司はその人を汚れた者としなければならない。それは腫物に起ったらい病の患部だからである。
3073 03 13 21 しかし、祭司がこれを見て、もしその所に白い毛がなく、また皮よりも低い所がなく、かえって薄らいでいるならば、祭司はその人を七日のあいだ留め置かなければならない。
3074 03 13 22 そしてもし皮に広くひろがっているならば、祭司はその人を汚れた者としなければならない。それは患部だからである。
3075 03 13 23 しかし、その光る所がもしその所にとどまって広がらなければ、それは腫物の跡である。祭司はその人を清い者としなければならない。
3076 03 13 24 また身の皮にやけどがあって、そのやけどの生きた肉がもし赤みをおびた白、または、ただ白くて光る所となるならば、
3077 03 13 25 祭司はこれを見なければならない。そしてもし、その光る所にある毛が白く変って、そこが皮よりも深く見えるならば、これはやけどに生じたらい病である。祭司はその人を汚れた者としなければならない。これはらい病の患部だからである。
3078 03 13 26 けれども祭司がこれを見て、その光る所に白い毛がなく、また皮よりも低い所がなく、かえって薄らいでいるならば、祭司はその人を七日のあいだ留め置き、
3079 03 13 27 七日目に祭司は彼を見なければならない。もし皮に広くひろがっているならば、祭司はその人を汚れた者としなければならない。これはらい病の患部だからである。
3080 03 13 28 もしその光る所が、その所にとどまって、皮に広がらずに、かえって薄らいでいるならば、これはやけどの腫である。祭司はその人を清い者としなければならない。これはやけどの跡だからである。
3081 03 13 29 男あるいは女がもし、頭またはあごに患部が生じたならば、
3082 03 13 30 祭司はその患部を見なければならない。もしそれが皮よりも深く見え、またそこに黄色の細い毛があるならば、祭司はその人を汚れた者としなければならない。それはかいせんであって、頭またはあごのらい病だからである。
3083 03 13 31 また祭司がそのかいせんの患部を見て、もしそれが皮よりも深く見えず、またそこに黒い毛がないならば、祭司はそのかいせんの患者を七日のあいだ留め置き、
3084 03 13 32 七日目に祭司はその患部を見なければならない。そのかいせんがもし広がらず、またそこに黄色の毛がなく、そのかいせんが皮よりも深く見えないならば、
3085 03 13 33 その人は身をそらなければならない。ただし、そのかいせんをそってはならない。祭司はそのかいせんのある者をさらに七日のあいだ留め置き、
3086 03 13 34 七日目に祭司はそのかいせんを見なければならない。もしそのかいせんが皮に広がらず、またそれが皮よりも深く見えないならば、祭司はその人を清い者としなければならない。その人はまたその衣服を洗わなければならない。そして清くなるであろう。
3087 03 13 35 しかし、もし彼が清い者とされた後に、そのかいせんが、皮に広くひろがるならば、
3088 03 13 36 祭司はその人を見なければならない。もしそのかいせんが皮に広がっているならば、祭司は黄色の毛を捜すまでもなく、その人は汚れた者である。
3089 03 13 37 しかし、もしそのかいせんの様子に変りなく、そこに黒い毛が生じているならば、そのかいせんは直ったので、その人は清い。祭司はその人を清い者としなければならない。
3090 03 13 38 また男あるいは女がもし、その身の皮に光る所、すなわち白い光る所があるならば、
3091 03 13 39 祭司はこれを見なければならない。もしその身の皮の光る所が、鈍い白であるならば、これはただ白せんがその皮に生じたのであって、その人は清い。
3092 03 13 40 人がもしその頭から毛が抜け落ちても、それがはげならば清い。
3093 03 13 41 もしその額の毛が抜け落ちても、それが額のはげならば清い。
3094 03 13 42 けれども、もしそのはげ頭または、はげ額に赤みをおびた白い患部があるならば、それはそのはげ頭または、はげ額にらい病が発したのである。
3095 03 13 43 祭司はこれを見なければならない。もしそのはげ頭または、はげ額の患部の腫が白く赤みをおびて、身の皮にらい病があらわれているならば、
3096 03 13 44 その人はらい病に冒された者であって、汚れた者である。祭司はその人を確かに汚れた者としなければならない。患部が頭にあるからである。
3097 03 13 45 患部のあるらい病人は、その衣服を裂き、その頭を現し、その口ひげをおおって『汚れた者、汚れた者』と呼ばわらなければならない。
3098 03 13 46 その患部が身にある日の間は汚れた者としなければならない。その人は汚れた者であるから、離れて住まなければならない。すなわち、そのすまいは宿営の外でなければならない。
3099 03 13 47 また衣服にらい病の患部が生じた時は、それが羊毛の衣服であれ、亜麻の衣服であれ、
3100 03 13 48 あるいは亜麻または羊毛の縦糸であれ、横糸であれ、あるいは皮であれ、皮で作ったどのような物であれ、
3101 03 13 49 もしその衣服あるいは皮、あるいは縦糸、あるいは横糸、あるいは皮で作ったどのような物であれ、その患部が青みをおびているか、あるいは赤みをおびているならば、これはらい病の患部である。これを祭司に見せなければならない。
3102 03 13 50 祭司はその患部を見て、その患部のある物を七日のあいだ留め置き、
3103 03 13 51 七日目に患部を見て、もしその衣服、あるいは縦糸、あるいは横糸、あるいは皮、またどのように用いられている皮であれ、患部が広がっているならば、その患部は悪性のらい病であって、それは汚れた物である。
3104 03 13 52 彼はその患部のある衣服、あるいは羊毛、または亜麻の縦糸、または横糸、あるいはすべて皮で作った物を焼かなければならない。これは悪性のらい病であるから、その物を火で焼かなければならない。
3105 03 13 53 しかし、祭司がこれを見て、もし患部がその衣服、あるいは縦糸、あるいは横糸、あるいはすべて皮で作った物に広がっていないならば、
3106 03 13 54 祭司は命じて、その患部のある物を洗わせ、さらに七日の間これを留め置かなければならない。
3107 03 13 55 そしてその患部を洗った後、祭司はそれを見て、もし患部の色が変らなければ、患部が広がらなくても、それは汚れた物である。それが表にあっても裏にあっても腐れであるから、それを火で焼かなければならない。
3108 03 13 56 しかし、祭司がこれを見て、それを洗った後に、その患部が薄らいだならば、その衣服、あるいは皮、あるいは縦糸、あるいは横糸から、それを切り取らなければならない。
3109 03 13 57 しかし、なおその衣服、あるいは縦糸、あるいは横糸、あるいはすべて皮で作った物にそれが現れれば、それは再発したのである。その患部のある物を火で焼かなければならない。
3110 03 13 58 また洗った衣服、あるいは縦糸、あるいは横糸、あるいはすべて皮で作った物から、患部が消え去るならば、再びそれを洗わなければならない。そうすれば清くなるであろう」。
3111 03 13 59 これは羊毛または亜麻の衣服、あるいは縦糸、あるいは横糸、あるいはすべて皮で作った物に生じるらい病の患部について、それを清い物とし、または汚れた物とするためのおきてである。
3112 03 14 1 主はまたモーセに言われた、
3113 03 14 2 「らい病人が清い者とされる時のおきては次のとおりである。すなわち、その人を祭司のもとに連れて行き、
3114 03 14 3 祭司は宿営の外に出て行って、その人を見、もしらい病の患部がいえているならば、
3115 03 14 4 祭司は命じてその清められる者のために、生きている清い小鳥二羽と、香柏の木と、緋の糸と、ヒソプとを取ってこさせ、
3116 03 14 5 祭司はまた命じて、その小鳥の一羽を、流れ水を盛った土の器の上で殺させ、
3117 03 14 6 そして生きている小鳥を、香柏の木と、緋の糸と、ヒソプと共に取って、これをかの流れ水を盛った土の器の上で殺した小鳥の血に、その生きている小鳥と共に浸し、
3118 03 14 7 これをらい病から清められる者に七たび注いで、その人を清い者とし、その生きている小鳥は野に放たなければならない。
3119 03 14 8 清められる者はその衣服を洗い、毛をことごとくそり落し、水に身をすすいで清くなり、その後、宿営にはいることができる。ただし七日の間はその天幕の外にいなければならない。
3120 03 14 9 そして七日目に毛をことごとくそらなければならい。頭の毛も、ひげも、まゆも、ことごとくそらなければならない。彼はその衣服を洗い、水に身をすすいで清くなるであろう。
3121 03 14 10 八日目にその人は雄の小羊の全きもの二頭と、一歳の雌の小羊の全きもの一頭とを取り、また麦粉十分の三エパに油を混ぜた素祭と、油一ログとを取らなければならない。
3122 03 14 11 清めをなす祭司は、清められる人とこれらの物とを、会見の幕屋の入口で主の前に置き、
3123 03 14 12 祭司は、かの雄の小羊一頭を取って、これを一ログの油と共に愆祭としてささげ、またこれを主の前に揺り動かして揺祭としなければならない。
3124 03 14 13 この雄の小羊は罪祭および燔祭をほふる場所、すなわち聖なる所で、これをほふらなければならない。愆祭は罪祭と同じく、祭司に帰するものであって、いと聖なる物である。
3125 03 14 14 そして祭司はその愆祭の血を取り、これを清められる者の右の耳たぶと、右の手の親指と、右の足の親指とにつけなければならない。
3126 03 14 15 祭司はまた一ログの油を取って、これを自分の左の手のひらに注ぎ、
3127 03 14 16 そして祭司は右の指を左の手のひらにある油に浸し、その指をもって、その油を七たび主の前に注がなければならない。
3128 03 14 17 祭司は手のひらにある油の残りを、清められる者の右の耳たぶと、右の手の親指と、右の足の親指とに、さきにつけた愆祭の血の上につけなければならない。
3129 03 14 18 そして祭司は手のひらになお残っている油を、清められる者の頭につけ、主の前で、その人のためにあがないをしなければならない。
3130 03 14 19 また祭司は罪祭をささげて、汚れのゆえに、清められねばならぬ者のためにあがないをし、その後、燔祭のものをほふらなければならない。
3131 03 14 20 そして祭司は燔祭と素祭とを祭壇の上にささげ、その人のために、あがないをしなければならない。こうしてその人は清くなるであろう。
3132 03 14 21 その人がもし貧しくて、それに手の届かない時は、自分のあがないのために揺り動かす愆祭として、雄の小羊一頭を取り、また素祭として油を混ぜた麦粉十分の一エパと、油一ログとを取り、
3133 03 14 22 さらにその手の届く山ばと二羽、または家ばとのひな二羽を取らなければならない。その一つは罪祭のため、他の一つは燔祭のためである。
3134 03 14 23 そして八日目に、その清めのために会見の幕屋の入口におる祭司のもと、主の前にこれを携えて行かなければならない。
3135 03 14 24 祭司はその愆祭の雄の小羊と、一ログの油とを取り、これを主の前に揺り動かして揺祭としなければならない。
3136 03 14 25 そして祭司は愆祭の雄の小羊をほふり、その愆祭の血を取って、これを清められる者の右の耳たぶと、右の手の親指と、右の足の親指とにつけなければならない。
3137 03 14 26 また祭司はその油を自分の左の手のひらに注ぎ、
3138 03 14 27 祭司はその右の指をもって、左の手のひらにある油を、七たび主の前に注がなければならない。
3139 03 14 28 また祭司はその手のひらにある油を、清められる者の右の耳たぶと、右の手の親指と、右の足の親指とに、すなわち、愆祭の血をつけたところにつけなければならない。
3140 03 14 29 また祭司は手のひらに残っている油を、清められる者の頭につけ、主の前で、その人のために、あがないをしなければならない。
3141 03 14 30 その人はその手の届く山ばと一羽、または家ばとのひな一羽をささげなければならない。
3142 03 14 31 すなわち、その手の届くものの一つを罪祭とし、他の一つを燔祭として素祭と共にささげなければならない。こうして祭司は清められる者のために、主の前にあがないをするであろう。
3143 03 14 32 これはらい病の患者で、その清めに必要なものに、手の届かない者のためのおきてである」。
3144 03 14 33 主はまたモーセとアロンに言われた、
3145 03 14 34 「あなたがたに所有として与えるカナンの地に、あなたがたがはいる時、その所有の地において、家にわたしがらい病の患部を生じさせることがあれば、
3146 03 14 35 その家の持ち主はきて、祭司に告げ、『患部のようなものが、わたしの家にあります』と言わなければならない。
3147 03 14 36 祭司は命じて、祭司がその患部を見に行く前に、その家をあけさせ、その家にあるすべての物が汚されないようにし、その後、祭司は、はいってその家を見なければならない。
3148 03 14 37 その患部を見て、もしその患部が家の壁にあって、青または赤のくぼみをもち、それが壁よりも低く見えるならば、
3149 03 14 38 祭司はその家を出て、家の入口にいたり、七日の間その家を閉鎖しなければならない。
3150 03 14 39 祭司は七日目に、またきてそれを見、その患部がもし家の壁に広がっているならば、
3151 03 14 40 祭司は命じて、その患部のある石を取り出し、町の外の汚れた物を捨てる場所に捨てさせ、
3152 03 14 41 またその家の内側のまわりを削らせ、その削ったしっくいを町の外の汚れた物を捨てる場所に捨てさせ、
3153 03 14 42 ほかの石を取って、元の石のところに入れさせ、またほかのしっくいを取って、家を塗らせなければならない。
3154 03 14 43 このように石を取り出し、家を削り、塗りかえた後に、その患部がもし再び家に出るならば、
3155 03 14 44 祭司はまたきて見なければならない。患部がもし家に広がっているならば、これは家にある悪性のらい病であって、これは汚れた物である。
3156 03 14 45 その家は、こぼち、その石、その木、その家のしっくいは、ことごとく町の外の汚れた物を捨てる場所に運び出さなければならない。
3157 03 14 46 その家が閉鎖されている日の間に、これにはいる者は夕まで汚れるであろう。
3158 03 14 47 その家に寝る者はその衣服を洗わなければならない。その家で食する者も、その衣服を洗わなければならない。
3159 03 14 48 しかし、祭司がはいって見て、もし家を塗りかえた後に、その患部が家に広がっていなければ、これはその患部がいえたのであるから、祭司はその家を清いものとしなければならない。
3160 03 14 49 また彼はその家を清めるために、小鳥二羽と、香柏の木と、緋の糸と、ヒソプとを取り、
3161 03 14 50 その小鳥の一羽を流れ水を盛った土の器の上で殺し、
3162 03 14 51 香柏の木と、ヒソプと、緋の糸と、生きている小鳥とを取って、その殺した小鳥の血と流れ水に浸し、これを七たび家に注がなければならない。
3163 03 14 52 こうして祭司は小鳥の血と流れ水と、生きている小鳥と、香柏の木と、ヒソプと、緋の糸とをもって家を清め、
3164 03 14 53 その生きている小鳥は町の外の野に放して、その家のために、あがないをしなければならない。こうして、それは清くなるであろう」。
3165 03 14 54 これはらい病のすべての患部、かいせん、
3166 03 14 55 および衣服と家のらい病、
3167 03 14 56 ならびに腫と、吹出物と、光る所とに関するおきてであって、
3168 03 14 57 いつそれが汚れているか、いつそれが清いかを教えるものである。これがらい病に関するおきてである。
3169 03 15 1 主はまた、モーセとアロンに言われた、
3170 03 15 2 「イスラエルの人々に言いなさい、『だれでもその肉に流出があれば、その流出は汚れである。
3171 03 15 3 その流出による汚れは次のとおりである。すなわち、その肉の流出が続いていても、あるいは、その肉の流出が止まっていても、共に汚れである。
3172 03 15 4 流出ある者の寝た床はすべて汚れる。またその人のすわった物はすべて汚れるであろう。
3173 03 15 5 その床に触れる者は、その衣服を洗い、水に身をすすがなければならない。彼は夕まで汚れるであろう。
3174 03 15 6 流出ある者のすわった物の上にすわる者は、その衣服を洗い、水に身をすすがなければならない。彼は夕まで汚れるであろう。
3175 03 15 7 流出ある者の肉に触れる者は衣服を洗い、水に身をすすがなければならない。彼は夕まで汚れるであろう。
3176 03 15 8 流出ある者のつばきが、清い者にかかったならば、その人は衣服を洗い、水に身をすすがなければならない。彼は夕まで汚れるであろう。
3177 03 15 9 流出ある者の乗った鞍はすべて汚れる。
3178 03 15 10 また彼の下になった物に触れる者は、すべて夕まで汚れるであろう。またそれらの物を運ぶ者は、その衣服を洗い、水に身をすすがなければならない。彼は夕まで汚れるであろう。
3179 03 15 11 流出ある者が、水で手を洗わずに人に触れるならば、その人は衣服を洗い、水に身をすすがなければならない。彼は夕まで汚れるであろう。
3180 03 15 12 流出ある者が触れた土の器は砕かなければならない。木の器はすべて水で洗わなければならない。
3181 03 15 13 流出ある者の流出がやんで清くなるならば、清めのために七日を数え、その衣服を洗い、流れ水に身をすすがなければならない。そうして清くなるであろう。
3182 03 15 14 八日目に、山ばと二羽、または家ばとのひな二羽を取って、会見の幕屋の入口に行き、主の前に出て、それを祭司に渡さなければならない。
3183 03 15 15 祭司はその一つを罪祭とし、他の一つを燔祭としてささげなければならない。こうして祭司はその人のため、その流出のために主の前に、あがないをするであろう。
3184 03 15 16 人がもし精を漏らすことがあれば、その全身を水にすすがなければならない。彼は夕まで汚れるであろう。
3185 03 15 17 すべて精のついた衣服および皮で作った物は水で洗わなければならない。これは夕まで汚れるであろう。
3186 03 15 18 男がもし女と寝て精を漏らすことがあれば、彼らは共に水に身をすすがなければならない。彼らは夕まで汚れるであろう。
3187 03 15 19 また女に流出があって、その身の流出がもし血であるならば、その女は七日のあいだ不浄である。すべてその女に触れる者は夕まで汚れるであろう。
3188 03 15 20 その不浄の間に、その女の寝た物はすべて汚れる。またその女のすわった物も、すべて汚れるであろう。
3189 03 15 21 すべてその女の床に触れる者は、その衣服を洗い、水に身をすすがなければならない。彼は夕まで汚れるであろう。
3190 03 15 22 すべてその女のすわった物に触れる者は皆その衣服を洗い、水に身をすすがなければならない。彼は夕まで汚れるであろう。
3191 03 15 23 またその女が床の上、またはすわる物の上におる時、それに触れるならば、その人は夕まで汚れるであろう。
3192 03 15 24 男がもし、その女と寝て、その不浄を身にうけるならば、彼は七日のあいだ汚れるであろう。また彼の寝た床はすべて汚れるであろう。
3193 03 15 25 女にもし、その不浄の時のほかに、多くの日にわたって血の流出があるか、あるいはその不浄の時を越して流出があれば、その汚れの流出の日の間は、すべてその不浄の時と同じように、その女は汚れた者である。
3194 03 15 26 その流出の日の間に、その女の寝た床は、すべてその女の不浄の時の床と同じようになる。すべてその女のすわった物は、不浄の汚れのように汚れるであろう。
3195 03 15 27 すべてこれらの物に触れる人は汚れる。その衣服を洗い、水に身をすすがなければならない。彼は夕まで汚れるであろう。
3196 03 15 28 しかし、その女の流出がやんで、清くなるならば、自分のために、なお七日を数えなければならない。そして後、清くなるであろう。
3197 03 15 29 その女は八日目に山ばと二羽、または家ばとのひな二羽を自分のために取り、それを会見の幕屋の入口におる祭司のもとに携えて行かなければならない。
3198 03 15 30 祭司はその一つを罪祭とし、他の一つを燔祭としてささげなければならない。こうして祭司はその女のため、その汚れの流出のために主の前に、あがないをするであろう。
3199 03 15 31 このようにしてあなたがたは、イスラエルの人々を汚れから離さなければならない。これは彼らのうちにあるわたしの幕屋を彼らが汚し、その汚れのために死ぬことのないためである』」。
3200 03 15 32 これは流出ある者、精を漏らして汚れる者、
3201 03 15 33 不浄をわずらう女、ならびに男あるいは女の流出ある者、および不浄の女と寝る者に関するおきてである。
3202 03 16 1 アロンのふたりの子が、主の前に近づいて死んだ後、
3203 03 16 2 主はモーセに言われた、「あなたの兄弟アロンに告げて、彼が時をわかたず、垂幕の内なる聖所に入り、箱の上なる贖罪所の前に行かぬようにさせなさい。彼が死を免れるためである。なぜなら、わたしは雲の中にあって贖罪所の上に現れるからである。
3204 03 16 3 アロンが聖所に、はいるには、次のようにしなければならない。すなわち雄の子牛を罪祭のために取り、雄羊を燔祭のために取り、
3205 03 16 4 聖なる亜麻布の服を着、亜麻布のももひきをその身にまとい、亜麻布の帯をしめ、亜麻布の帽子をかぶらなければならない。これらは聖なる衣服である。彼は水に身をすすいで、これを着なければならない。
3206 03 16 5 またイスラエルの人々の会衆から雄やぎ二頭を罪祭のために取り、雄羊一頭を燔祭のために取らなければならない。
3207 03 16 6 そしてアロンは自分のための罪祭の雄牛をささげて、自分と自分の家族のために、あがないをしなければならない。
3208 03 16 7 アロンはまた二頭のやぎを取り、それを会見の幕屋の入口で主の前に立たせ、
3209 03 16 8 その二頭のやぎのために、くじを引かなければならない。すなわち一つのくじは主のため、一つのくじはアザゼルのためである。
3210 03 16 9 そしてアロンは主のためのくじに当ったやぎをささげて、これを罪祭としなければならない。
3211 03 16 10 しかし、アザゼルのためのくじに当ったやぎは、主の前に生かしておき、これをもって、あがないをなし、これをアザゼルのために、荒野に送らなければならない。
3212 03 16 11 すなわち、アロンは自分のための罪祭の雄牛をささげて、自分と自分の家族のために、あがないをしなければならない。彼は自分のための罪祭の雄牛をほふり、
3213 03 16 12 主の前の祭壇から炭火を満たした香炉と、細かくひいた香ばしい薫香を両手いっぱい取って、これを垂幕の内に携え入り、
3214 03 16 13 主の前で薫香をその火にくべ、薫香の雲に、あかしの箱の上なる贖罪所をおおわせなければならない。こうして、彼は死を免れるであろう。
3215 03 16 14 彼はまたその雄牛の血を取り、指をもってこれを贖罪所の東の面に注ぎ、また指をもってその血を贖罪所の前に、七たび注がなければならない。
3216 03 16 15 また民のための罪祭のやぎをほふり、その血を垂幕の内に携え入り、その血をかの雄牛の血のように、贖罪所の上と、贖罪所の前に注ぎ、
3217 03 16 16 イスラエルの人々の汚れと、そのとが、すなわち、彼らのもろもろの罪のゆえに、聖所のためにあがないをしなければならない。また彼らの汚れのうちに、彼らと共にある会見の幕屋のためにも、そのようにしなければならない。
3218 03 16 17 彼が聖所であがないをするために、はいった時は、自分と自分の家族と、イスラエルの全会衆とのために、あがないをなし終えて出るまで、だれも会見の幕屋の内にいてはならない。
3219 03 16 18 そして彼は主の前の祭壇のもとに出てきて、これがために、あがないをしなければならない、すなわち、かの雄牛の血と、やぎの血とを取って祭壇の四すみの角につけ、
3220 03 16 19 また指をもって七たびその血をその上に注ぎ、イスラエルの人々の汚れを除いてこれを清くし、聖別しなければならない。
3221 03 16 20 こうして聖所と会見の幕屋と祭壇とのために、あがないをなし終えたとき、かの生きているやぎを引いてこなければならない。
3222 03 16 21 そしてアロンは、その生きているやぎの頭に両手をおき、イスラエルの人々のもろもろの悪と、もろもろのとが、すなわち、彼らのもろもろの罪をその上に告白して、これをやぎの頭にのせ、定めておいた人の手によって、これを荒野に送らなければならない。
3223 03 16 22 こうしてやぎは彼らのもろもろの悪をになって、人里離れた地に行くであろう。すなわち、そのやぎを荒野に送らなければならない。
3224 03 16 23 そして、アロンは会見の幕屋に入り、聖所に入る時に着た亜麻布の衣服を脱いで、そこに置き、
3225 03 16 24 聖なる所で水に身をすすぎ、他の衣服を着、出てきて、自分の燔祭と民の燔祭とをささげて、自分のため、また民のために、あがないをしなければならない。
3226 03 16 25 また罪祭の脂肪を祭壇の上で焼かなければならない。
3227 03 16 26 かのやぎをアザゼルに送った者は衣服を洗い、水に身をすすがなければならない。その後、宿営に入ることができる。
3228 03 16 27 聖所で、あがないをするために、その血を携え入れられた罪祭の雄牛と、罪祭のやぎとは、宿営の外に携え出し、その皮と肉と汚物とは、火で焼き捨てなければならない。
3229 03 16 28 これを焼く者は衣服を洗い、水に身をすすがなければならない。その後、宿営に入ることができる。
3230 03 16 29 これはあなたがたが永久に守るべき定めである。すなわち、七月になって、その月の十日に、あなたがたは身を悩まし、何の仕事もしてはならない。この国に生れた者も、あなたがたのうちに宿っている寄留者も、そうしなければならない。
3231 03 16 30 この日にあなたがたのため、あなたがたを清めるために、あがないがなされ、あなたがたは主の前に、もろもろの罪が清められるからである。
3232 03 16 31 これはあなたがたの全き休みの安息日であって、あなたがたは身を悩まさなければならない。これは永久に守るべき定めである。
3233 03 16 32 油を注がれ、父に代って祭司の職に任じられる祭司は、亜麻布の衣服、すなわち、聖なる衣服を着て、あがないをしなければならない。
3234 03 16 33 彼は至聖所のために、あがないをなし、また会見の幕屋のためと、祭壇のために、あがないをなし、また祭司たちのためと、民の全会衆のために、あがないをしなければならない。
3235 03 16 34 これはあなたがたの永久に守るべき定めであって、イスラエルの人々のもろもろの罪のために、年に一度あがないをするものである」。
3236 03 17 1 主はまたモーセに言われた、
3237 03 17 2 「アロンとその子たち、およびイスラエルのすべての人々に言いなさい、『主が命じられることはこれである。すなわち
3238 03 17 3 イスラエルの家のだれでも、牛、羊あるいは、やぎを宿営の内でほふり、または宿営の外でほふり、
3239 03 17 4 それを会見の幕屋の入口に携えてきて主の幕屋の前で、供え物として主にささげないならば、その人は血を流した者とみなされる。彼は血を流したゆえ、その民のうちから断たれるであろう。
3240 03 17 5 これはイスラエルの人々に、彼らが野のおもてでほふるのを常としていた犠牲を主のもとにひいてこさせ、会見の幕屋の入口におる祭司のもとにきて、これを主にささげる酬恩祭の犠牲としてほふらせるためである。
3241 03 17 6 祭司はその血を会見の幕屋の入口にある主の祭壇に注ぎかけ、またその脂肪を焼いて香ばしいかおりとし、主にささげなければならない。
3242 03 17 7 彼らが慕って姦淫をおこなったみだらな神に、再び犠牲をささげてはならない。これは彼らが代々ながく守るべき定めである』。
3243 03 17 8 あなたはまた彼らに言いなさい、『イスラエルの家の者、またはあなたがたのうちに宿る寄留者のだれでも、燔祭あるいは犠牲をささげるのに、
3244 03 17 9 これを会見の幕屋の入口に携えてきて、主にささげないならば、その人は、その民のうちから断たれるであろう。
3245 03 17 10 イスラエルの家の者、またはあなたがたのうちに宿る寄留者のだれでも、血を食べるならば、わたしはその血を食べる人に敵して、わたしの顔を向け、これをその民のうちから断つであろう。
3246 03 17 11 肉の命は血にあるからである。あなたがたの魂のために祭壇の上で、あがないをするため、わたしはこれをあなたがたに与えた。血は命であるゆえに、あがなうことができるからである。
3247 03 17 12 このゆえに、わたしはイスラエルの人々に言った。あなたがたのうち、だれも血を食べてはならない。またあなたがたのうちに宿る寄留者も血を食べてはならない。
3248 03 17 13 イスラエルの人々のうち、またあなたがたのうちに宿る寄留者のうち、だれでも、食べてもよい獣あるいは鳥を狩り獲た者は、その血を注ぎ出し、土でこれをおおわなければならない。
3249 03 17 14 すべて肉の命は、その血と一つだからである。それで、わたしはイスラエルの人々に言った。あなたがたは、どんな肉の血も食べてはならない。すべて肉の命はその血だからである。すべて血を食べる者は断たれるであろう。
3250 03 17 15 自然に死んだもの、または裂き殺されたものを食べる人は、国に生れた者であれ、寄留者であれ、その衣服を洗い、水に身をすすがなければならない。彼は夕まで汚れているが、その後、清くなるであろう。
3251 03 17 16 もし、洗わず、また身をすすがないならば、彼はその罪を負わなければならない』」。
3252 03 18 1 主はまたモーセに言われた、
3253 03 18 2 「イスラエルの人々に言いなさい、『わたしはあなたがたの神、主である。
3254 03 18 3 あなたがたの住んでいたエジプトの国の習慣を見習ってはならない。またわたしがあなたがたを導き入れるカナンの国の習慣を見習ってはならない。また彼らの定めに歩んではならない。
3255 03 18 4 わたしのおきてを行い、わたしの定めを守り、それに歩まなければならない。わたしはあなたがたの神、主である。
3256 03 18 5 あなたがたはわたしの定めとわたしのおきてを守らなければならない。もし人が、これを行うならば、これによって生きるであろう。わたしは主である。
3257 03 18 6 あなたがたは、だれも、その肉親の者に近づいて、これを犯してはならない。わたしは主である。
3258 03 18 7 あなたの母を犯してはならない。それはあなたの父をはずかしめることだからである。彼女はあなたの母であるから、これを犯してはならない。
3259 03 18 8 あなたの父の妻を犯してはならない。それはあなたの父をはずかしめることだからである。
3260 03 18 9 あなたの姉妹、すなわちあなたの父の娘にせよ、母の娘にせよ、家に生れたのと、よそに生れたのとを問わず、これを犯してはならない。
3261 03 18 10 あなたのむすこの娘、あるいは、あなたの娘の娘を犯してはならない。それはあなた自身をはずかしめることだからである。
3262 03 18 11 あなたの父の妻があなたの父によって産んだ娘は、あなたの姉妹であるから、これを犯してはならない。
3263 03 18 12 あなたの父の姉妹を犯してはならない。彼女はあなたの父の肉親だからである。
3264 03 18 13 またあなたの母の姉妹を犯してはならない。彼女はあなたの母の肉親だからである。
3265 03 18 14 あなたの父の兄弟の妻を犯し、父の兄弟をはずかしめてはならない。彼女はあなたのおばだからである。
3266 03 18 15 あなたの嫁を犯してはならない。彼女はあなたのむすこの妻であるから、これを犯してはならない。
3267 03 18 16 あなたの兄弟の妻を犯してはならない。それはあなたの兄弟をはずかしめることだからである。
3268 03 18 17 あなたは女とその娘とを一緒に犯してはならない。またその女のむすこの娘、またはその娘の娘を取って、これを犯してはならない。彼らはあなたの肉親であるから、これは悪事である。
3269 03 18 18 あなたは妻のなお生きているうちにその姉妹を取って、同じく妻となし、これを犯してはならない。
3270 03 18 19 あなたは月のさわりの不浄にある女に近づいて、これを犯してはならない。
3271 03 18 20 隣の妻と交わり、彼女によって身を汚してはならない。
3272 03 18 21 あなたの子どもをモレクにささげてはならない。またあなたの神の名を汚してはならない。わたしは主である。
3273 03 18 22 あなたは女と寝るように男と寝てはならない。これは憎むべきことである。
3274 03 18 23 あなたは獣と交わり、これによって身を汚してはならない。また女も獣の前に立って、これと交わってはならない。これは道にはずれたことである。
3275 03 18 24 あなたがたはこれらのもろもろの事によって身を汚してはならない。わたしがあなたがたの前から追い払う国々の人は、これらのもろもろの事によって汚れ、
3276 03 18 25 その地もまた汚れている。ゆえに、わたしはその悪のためにこれを罰し、その地もまたその住民を吐き出すのである。
3277 03 18 26 ゆえに、あなたがたはわたしの定めとわたしのおきてを守り、これらのもろもろの憎むべき事の一つでも行ってはならない。国に生れた者も、あなたがたのうちに宿っている寄留者もそうである。
3278 03 18 27 あなたがたの先にいたこの地の人々は、これらのもろもろの憎むべき事を行ったので、その地も汚れたからである。
3279 03 18 28 これは、あなたがたがこの地を汚して、この地があなたがたの先にいた民を吐き出したように、あなたがたをも吐き出すことのないためである。
3280 03 18 29 これらのもろもろの憎むべき事の一つでも行う者があれば、これを行う人は、だれでもその民のうちから断たれるであろう。
3281 03 18 30 それゆえに、あなたがたはわたしの言いつけを守り、先に行われたこれらの憎むべき風習の一つをも行ってはならない。またこれによって身を汚してはならない。わたしはあなたがたの神、主である』」。
3282 03 19 1 主はモーセに言われた、
3283 03 19 2 「イスラエルの人々の全会衆に言いなさい、『あなたがたの神、主なるわたしは、聖であるから、あなたがたも聖でなければならない。
3284 03 19 3 あなたがたは、おのおのその母とその父とをおそれなければならない。またわたしの安息日を守らなければならない。わたしはあなたがたの神、主である。
3285 03 19 4 むなしい神々に心を寄せてはならない。また自分のために神々を鋳て造ってはならない。わたしはあなたがたの神、主である。
3286 03 19 5 酬恩祭の犠牲を主にささげるときは、あなたがたが受け入れられるように、それをささげなければならない。
3287 03 19 6 それは、ささげた日と、その翌日とに食べ、三日目まで残ったものは、それを火で焼かなければならない。
3288 03 19 7 もし三日目に、少しでも食べるならば、それは忌むべきものとなって、あなたは受け入れられないであろう。
3289 03 19 8 それを食べる者は、主の聖なる物を汚すので、そのとがを負わなければならない。その人は民のうちから断たれるであろう。
3290 03 19 9 あなたがたの地の実のりを刈り入れるときは、畑のすみずみまで刈りつくしてはならない。またあなたの刈入れの落ち穂を拾ってはならない。
3291 03 19 10 あなたのぶどう畑の実を取りつくしてはならない。またあなたのぶどう畑に落ちた実を拾ってはならない。貧しい者と寄留者とのために、これを残しておかなければならない。わたしはあなたがたの神、主である。
3292 03 19 11 あなたがたは盗んではならない。欺いてはならない。互に偽ってはならない。
3293 03 19 12 わたしの名により偽り誓って、あなたがたの神の名を汚してはならない。わたしは主である。
3294 03 19 13 あなたの隣人をしえたげてはならない。また、かすめてはならない。日雇人の賃銀を明くる朝まで、あなたのもとにとどめておいてはならない。
3295 03 19 14 耳しいを、のろってはならない。目しいの前につまずく物を置いてはならない。あなたの神を恐れなければならない。わたしは主である。
3296 03 19 15 さばきをするとき、不正を行ってはならない。貧しい者を片よってかばい、力ある者を曲げて助けてはならない。ただ正義をもって隣人をさばかなければならない。
3297 03 19 16 民のうちを行き巡って、人の悪口を言いふらしてはならない。あなたの隣人の血にかかわる偽証をしてはならない。わたしは主である。
3298 03 19 17 あなたは心に兄弟を憎んではならない。あなたの隣人をねんごろにいさめて、彼のゆえに罪を身に負ってはならない。
3299 03 19 18 あなたはあだを返してはならない。あなたの民の人々に恨みをいだいてはならない。あなた自身のようにあなたの隣人を愛さなければならない。わたしは主である。
3300 03 19 19 あなたがたはわたしの定めを守らなければならない。あなたの家畜に異なった種をかけてはならない。あなたの畑に二種の種をまいてはならない。二種の糸の混ぜ織りの衣服を身につけてはならない。
3301 03 19 20 だれでも、人と婚約のある女奴隷で、まだあがなわれず、自由を与えられていない者と寝て交わったならば、彼らふたりは罰を受ける。しかし、殺されることはない。彼女は自由の女ではないからである。
3302 03 19 21 しかし、その男は愆祭を主に携えてこなければならない。すなわち、愆祭の雄羊を、会見の幕屋の入口に連れてこなければならない。
3303 03 19 22 そして、祭司は彼の犯した罪のためにその愆祭の雄羊をもって、主の前に彼のために、あがないをするであろう。こうして彼の犯した罪はゆるされるであろう。
3304 03 19 23 あなたがたが、かの地にはいって、もろもろのくだものの木を植えるときは、その実はまだ割礼をうけないものと、見なさなければならない。すなわち、それは三年の間あなたがたには、割礼のないものであって、食べてはならない。
3305 03 19 24 四年目には、そのすべての実を聖なる物とし、それをさんびの供え物として主にささげなければならない。
3306 03 19 25 しかし五年目には、あなたがたはその実を食べることができるであろう。こうするならば、それはあなたがたのために、多くの実を結ぶであろう。わたしはあなたがたの神、主である。
3307 03 19 26 あなたがたは何をも血のままで食べてはならない。また占いをしてはならない。魔法を行ってはならない。
3308 03 19 27 あなたがたのびんの毛を切ってはならない。ひげの両端をそこなってはならない。
3309 03 19 28 死人のために身を傷つけてはならない。また身に入墨をしてはならない。わたしは主である。
3310 03 19 29 あなたの娘に遊女のわざをさせて、これを汚してはならない。これはみだらな事が国に行われ、悪事が地に満ちないためである。
3311 03 19 30 あなたがたはわたしの安息日を守り、わたしの聖所を敬わなければならない。わたしは主である。
3312 03 19 31 あなたがたは口寄せ、または占い師のもとにおもむいてはならない。彼らに問うて汚されてはならない。わたしはあなたがたの神、主である。
3313 03 19 32 あなたは白髪の人の前では、起立しなければならない。また老人を敬い、あなたの神を恐れなければならない。わたしは主である。
3314 03 19 33 もし他国人があなたがたの国に寄留して共にいるならば、これをしえたげてはならない。
3315 03 19 34 あなたがたと共にいる寄留の他国人を、あなたがたと同じ国に生れた者のようにし、あなた自身のようにこれを愛さなければならない。あなたがたもかつてエジプトの国で他国人であったからである。わたしはあなたがたの神、主である。
3316 03 19 35 あなたがたは、さばきにおいても、物差しにおいても、はかりにおいても、ますにおいても、不正を行ってはならない。
3317 03 19 36 あなたがたは正しいてんびん、正しいおもり石、正しいエパ、正しいヒンを使わなければならない。わたしは、あなたがたをエジプトの国から導き出したあなたがたの神、主である。
3318 03 19 37 あなたがたはわたしのすべての定めと、わたしのすべてのおきてを守って、これを行わなければならない。わたしは主である』」。
3319 03 20 1 主はまたモーセに言われた、
3320 03 20 2 「イスラエルの人々に言いなさい、『イスラエルの人々のうち、またイスラエルのうちに寄留する他国人のうち、だれでもその子供をモレクにささげる者は、必ず殺されなければならない。すなわち、国の民は彼を石で撃たなければならない。
3321 03 20 3 わたしは顔をその人に向け、彼を民のうちから断つであろう。彼がその子供をモレクにささげてわたしの聖所を汚し、またわたしの聖なる名を汚したからである。
3322 03 20 4 その人が子供をモレクにささげるとき、国の民がもしことさらに、この事に目をおおい、これを殺さないならば、
3323 03 20 5 わたし自身、顔をその人とその家族とに向け、彼および彼に見ならってモレクを慕い、これと姦淫する者を、すべて民のうちから断つであろう。
3324 03 20 6 もし口寄せ、または占い師のもとにおもむき、彼らを慕って姦淫する者があれば、わたしは顔をその人に向け、これを民のうちから断つであろう。
3325 03 20 7 ゆえにあなたがたは、みずからを聖別し、聖なる者とならなければならない。わたしはあなたがたの神、主である。
3326 03 20 8 あなたがたはわたしの定めを守って、これを行わなければならない。わたしはあなたがたを聖別する主である。
3327 03 20 9 だれでも父または母をのろう者は、必ず殺されなければならない。彼が父または母をのろったので、その血は彼に帰するであろう。
3328 03 20 10 人の妻と姦淫する者、すなわち隣人の妻と姦淫する者があれば、その姦夫、姦婦は共に必ず殺されなければならない。
3329 03 20 11 その父の妻と寝る者は、その父をはずかしめる者である。彼らはふたりとも必ず殺されなければならない。その血は彼らに帰するであろう。
3330 03 20 12 子の妻と寝る者は、ふたり共に必ず殺されなければならない。彼らは道ならぬことをしたので、その血は彼らに帰するであろう。
3331 03 20 13 女と寝るように男と寝る者は、ふたりとも憎むべき事をしたので、必ず殺されなければならない。その血は彼らに帰するであろう。
3332 03 20 14 女をその母と一緒にめとるならば、これは悪事であって、彼も、女たちも火に焼かれなければならない。このような悪事をあなたがたのうちになくするためである。
3333 03 20 15 男がもし、獣と寝るならば彼は必ず殺されなければならない。あなたがたはまた、その獣を殺さなければならない。
3334 03 20 16 女がもし、獣に近づいて、これと寝るならば、あなたは、その女と獣とを殺さなければならない。彼らは必ず殺さるべきである。その血は彼らに帰するであろう。
3335 03 20 17 人がもし、その姉妹、すなわち父の娘、あるいは母の娘に近づいて、その姉妹のはだを見、女はその兄弟のはだを見るならば、これは恥ずべき事である。彼らは、その民の人々の目の前で、断たれなければならない。彼は、その姉妹を犯したのであるから、その罪を負わなければならない。
3336 03 20 18 人がもし、月のさわりのある女と寝て、そのはだを現すならば、男は女の源を現し、女は自分の血の源を現したのであるから、ふたり共にその民のうちから断たれなければならない。
3337 03 20 19 あなたの母の姉妹、またはあなたの父の姉妹を犯してはならない。これは、自分の肉親の者を犯すことであるから、彼らはその罪を負わなければならない。
3338 03 20 20 人がもし、そのおばと寝るならば、これはおじをはずかしめることであるから、彼らはその罪を負い、子なくして死ぬであろう。
3339 03 20 21 人がもし、その兄弟の妻を取るならば、これは汚らわしいことである。彼はその兄弟をはずかしめたのであるから、彼らは子なき者となるであろう。
3340 03 20 22 あなたがたはわたしの定めとおきてとをことごとく守って、これを行わなければならない。そうすれば、わたしがあなたがたを住まわせようと導いて行く地は、あなたがたを吐き出さぬであろう。
3341 03 20 23 あなたがたの前からわたしが追い払う国びとの風習に、あなたがたは歩んではならない。彼らは、このもろもろのことをしたから、わたしは彼らを憎むのである。
3342 03 20 24 わたしはあなたがたに言った、「あなたがたは、彼らの地を獲るであろう。わたしはこれをあなたがたに与えて、これを獲させるであろう。これは乳と蜜との流れる地である」。わたしはあなたがたを他の民から区別したあなたがたの神、主である。
3343 03 20 25 あなたがたは清い獣と汚れた獣、汚れた鳥と清い鳥を区別しなければならない。わたしがあなたがたのために汚れたものとして区別した獣、または鳥またはすべて地を這うものによって、あなたがたの身を忌むべきものとしてはならない。
3344 03 20 26 あなたがたはわたしに対して聖なる者でなければならない。主なるわたしは聖なる者で、あなたがたをわたしのものにしようと、他の民から区別したからである。
3345 03 20 27 男または女で、口寄せ、または占いをする者は、必ず殺されなければならない。すなわち、石で撃ち殺さなければならない。その血は彼らに帰するであろう』」。
3346 03 21 1 主はまたモーセに言われた、「アロンの子なる祭司たちに告げて言いなさい、『民のうちの死人のために、身を汚す者があってはならない。
3347 03 21 2 ただし、近親の者、すなわち、父、母、むすこ、娘、兄弟のため、
3348 03 21 3 また彼の近親で、まだ夫のない処女なる姉妹のためには、その身を汚してもよい。
3349 03 21 4 しかし、夫にとついだ姉妹のためには、身を汚してはならない。
3350 03 21 5 彼らは頭の頂をそってはならない。ひげの両端をそり落してはならない。また身に傷をつけてはならない。
3351 03 21 6 彼らは神に対して聖でなければならない。また神の名を汚してはならない。彼らは主の火祭、すなわち、神の食物をささげる者であるから、聖でなければならない。
3352 03 21 7 彼らは遊女や汚れた女をめとってはならない。また夫に出された女をめとってはならない。祭司は神に対して聖なる者だからである。
3353 03 21 8 あなたは彼を聖としなければならない。彼はあなたの神の食物をささげる者だからである。彼はあなたにとって聖なる者でなければならない。あなたがたを聖とする主、すなわち、わたしは聖なる者だからである。
3354 03 21 9 祭司の娘である者が、淫行をなして、その身を汚すならば、その父を汚すのであるから、彼女を火で焼かなければならない。
3355 03 21 10 その兄弟のうち、頭に注ぎ油を注がれ、職に任ぜられて、その衣服をつけ、大祭司となった者は、その髪の毛を乱してはならない。またその衣服を裂いてはならない。
3356 03 21 11 死人のところに、はいってはならない。また父のためにも母のためにも身を汚してはならない。
3357 03 21 12 また聖所から出てはならない。神の聖所を汚してはならない。その神の注ぎ油による聖別が、彼の上にあるからである。わたしは主である。
3358 03 21 13 彼は処女を妻にめとらなければならない。
3359 03 21 14 寡婦、出された女、汚れた女、遊女などをめとってはならない。ただ、自分の民のうちの処女を、妻にめとらなければならない。
3360 03 21 15 そうすれば、彼は民のうちに、自分の子孫を汚すことはない。わたしは彼を聖別する主だからである』」。
3361 03 21 16 主はまたモーセに言われた、
3362 03 21 17 「アロンに告げて言いなさい、『あなたの代々の子孫で、だれでも身にきずのある者は近寄って、神の食物をささげてはならない。
3363 03 21 18 すべて、その身にきずのある者は近寄ってはならない。すなわち、目しい、足なえ、鼻のかけた者、手足の不つりあいの者、
3364 03 21 19 足の折れた者、手の折れた者、
3365 03 21 20 せむし、こびと、目にきずのある者、かいせんの者、かさぶたのある者、こうがんのつぶれた者などである。
3366 03 21 21 すべて祭司アロンの子孫のうち、身にきずのある者は近寄って、主の火祭をささげてはならない。彼は身にきずがあるから、神の食物をささげるために、近寄ってはならない。
3367 03 21 22 彼は神の食物の聖なる物も、最も聖なる物も食べることができる。
3368 03 21 23 ただし、垂幕に近づいてはならない。また祭壇に近寄ってはならない。身にきずがあるからである。彼はわたしの聖所を汚してはならない。わたしはそれを聖別する主である』」。
3369 03 21 24 モーセはこれをアロンとその子ら及びイスラエルのすべての人々に告げた。
3370 03 22 1 主はまたモーセに言われた、
3371 03 22 2 「アロンとその子たちに告げて、イスラエルの人々の聖なる物、すなわち、彼らがわたしにささげる物をみだりに用いて、わたしの聖なる名を汚さないようにさせなさい。わたしは主である。
3372 03 22 3 彼らに言いなさい、『あなたがたの代々の子孫のうち、だれでも、イスラエルの人々が主にささげる聖なる物に、汚れた身をもって近づく者があれば、その人はわたしの前から断たれるであろう。わたしは主である。
3373 03 22 4 アロンの子孫のうち、だれでも、らい病の者、また流出ある者は清くなるまで、聖なる物を食べてはならない。また、すべて死体によって汚れた物に触れた者、精を漏らした者、
3374 03 22 5 または、すべて人を汚す這うものに触れた者、または、どのような汚れにせよ、人を汚れさせる人に触れた者、
3375 03 22 6 このようなものに触れた人は夕まで汚れるであろう。彼はその身を水にすすがないならば、聖なる物を食べてはならない。
3376 03 22 7 日が入れば、彼は清くなるであろう。そののち、聖なる物を食べることができる。それは彼の食物だからである。
3377 03 22 8 自然に死んだもの、または裂き殺されたものを食べ、それによって身を汚してはならない。わたしは主である。
3378 03 22 9 それゆえに、彼らはわたしの言いつけを守らなければならない。彼らがこれを汚し、これがために、罪を獲て死ぬことのないためである。わたしは彼らを聖別する主である。
3379 03 22 10 すべて一般の人は聖なる物を食べてはならない。祭司の同居人や雇人も聖なる物を食べてはならない。
3380 03 22 11 しかし、祭司が金をもって人を買った時は、その者はこれを食べることができる。またその家に生れた者も祭司の食物を食べることができる。
3381 03 22 12 もし祭司の娘が一般の人にとついだならば、彼女は聖なる供え物を食べてはならない。
3382 03 22 13 もし祭司の娘が、寡婦となり、または出されて、子供もなく、その父の家に帰り、娘の時のようであれば、その父の食物を食べることができる。ただし、一般の人は、すべてこれを食べてはならない。
3383 03 22 14 もし人があやまって聖なる物を食べるならば、それにその五分の一を加え、聖なる物としてこれを祭司に渡さなければならない。
3384 03 22 15 祭司はイスラエルの人々が、主にささげる聖なる物を汚してはならない。
3385 03 22 16 人々が聖なる物を食べて、その罪のとがを負わないようにさせなければならない。わたしは彼らを聖別する主である』」。
3386 03 22 17 主はまたモーセに言われた、
3387 03 22 18 「アロンとその子たち、およびイスラエルのすべての人々に言いなさい、『イスラエルの家の者、またはイスラエルにおる他国人のうちのだれでも、誓願の供え物、または自発の供え物を燔祭として主にささげようとするならば、
3388 03 22 19 あなたがたの受け入れられるように牛、羊、あるいはやぎの雄の全きものをささげなければならない。
3389 03 22 20 すべてきずのあるものはささげてはならない。それはあなたがたのために、受け入れられないからである。
3390 03 22 21 もし人が特別の誓願をなすため、または自発の供え物のために、牛または羊を酬恩祭の犠牲として、主にささげようとするならば、その受け入れられるために、それは全きものでなければならない。それには、どんなきずもあってはならない。
3391 03 22 22 すなわち獣のうちで、めくらのもの、折れた所のあるもの、切り取った所のあるもの、うみの出る者、かいせんの者、かさぶたのある者など、あなたがたは、このようなものを主にささげてはならない。また祭壇の上に、これらを火祭として、主にささげてはならない。
3392 03 22 23 牛あるいは羊で、足の長すぎる者、または短すぎる者は、あなたがたが自発の供え物とすることはできるが、誓願の供え物としては受け入れられないであろう。
3393 03 22 24 あなたがたは、こうがんの破れたもの、つぶれたもの、裂けたもの、または切り取られたものを、主にささげてはならない。またあなたがたの国のうちで、このようなことを、行ってはならない。
3394 03 22 25 また、あなたがたは異邦人の手からこれらのものを受けて、あなたがたの神の食物としてささげてはならない。これらのものには欠点があり、きずがあって、あなたがたのために受け入れられないからである』」。
3395 03 22 26 主はまたモーセに言われた、
3396 03 22 27 「牛、または羊、またはやぎが生れたならば、これを七日の間その母親のもとに置かなければならない。八日目からは主にささげる火祭として受け入れられるであろう。
3397 03 22 28 あなたがたは雌牛または雌羊をその子と同じ日にほふってはならない。
3398 03 22 29 あなたがたが感謝の犠牲を主にささげるときは、あなたがたの受け入れられるようにささげなければならない。
3399 03 22 30 これはその日のうちに食べなければならない。明くる日まで残しておいてはならない。わたしは主である。
3400 03 22 31 あなたがたはわたしの戒めを守り、これを行わなければならない。わたしは主である。
3401 03 22 32 あなたがたはわたしの聖なる名を汚してはならない。かえって、わたしはイスラエルの人々のうちに聖とされなければならない。わたしはあなたがたを聖別する主である。
3402 03 22 33 あなたがたの神となるために、あなたがたをエジプトの国から導き出した者である。わたしは主である」。
3403 03 23 1 主はまたモーセに言われた、
3404 03 23 2 「イスラエルの人々に言いなさい、『あなたがたが、ふれ示して聖会とすべき主の定めの祭は次のとおりである。これらはわたしの定めの祭である。
3405 03 23 3 六日の間は仕事をしなければならない。第七日は全き休みの安息日であり、聖会である。どのような仕事もしてはならない。これはあなたがたのすべてのすまいにおいて守るべき主の安息日である。
3406 03 23 4 その時々に、あなたがたが、ふれ示すべき主の定めの祭なる聖会は次のとおりである。
3407 03 23 5 正月の十四日の夕は主の過越の祭である。
3408 03 23 6 またその月の十五日は主の種入れぬパンの祭である。あなたがたは七日の間は種入れぬパンを食べなければならない。
3409 03 23 7 その初めの日に聖会を開かなければならない。どんな労働もしてはならない。
3410 03 23 8 あなたがたは七日の間、主に火祭をささげなければならない。第七日には、また聖会を開き、どのような労働もしてはならない』」。
3411 03 23 9 主はまたモーセに言われた、
3412 03 23 10 「イスラエルの人々に言いなさい、『わたしが与える地にはいって穀物を刈り入れるとき、あなたがたは穀物の初穂の束を、祭司のところへ携えてこなければならない。
3413 03 23 11 彼はあなたがたの受け入れられるように、その束を主の前に揺り動かすであろう。すなわち、祭司は安息日の翌日に、これを揺り動かすであろう。
3414 03 23 12 またその束を揺り動かす日に、一歳の雄の小羊の全きものを燔祭として主にささげなければならない。
3415 03 23 13 その素祭には油を混ぜた麦粉十分の二エパを用い、これを主にささげて火祭とし、香ばしいかおりとしなければならない。またその灌祭には、ぶどう酒一ヒンの四分の一を用いなければならない。
3416 03 23 14 あなたがたの神にこの供え物をささげるその日まで、あなたがたはパンも、焼麦も、新穀も食べてはならない。これはあなたがたのすべてのすまいにおいて、代々ながく守るべき定めである。
3417 03 23 15 また安息日の翌日、すなわち、揺祭の束をささげた日から満七週を数えなければならない。
3418 03 23 16 すなわち、第七の安息日の翌日までに、五十日を数えて、新穀の素祭を主にささげなければならない。
3419 03 23 17 またあなたがたのすまいから、十分の二エパの麦粉に種を入れて焼いたパン二個を携えてきて揺祭としなければならない。これは初穂として主にささげるものである。
3420 03 23 18 あなたがたはまたパンのほかに、一歳の全き小羊七頭と、若き雄牛一頭と、雄羊二頭をささげなければならない。すなわち、これらをその素祭および灌祭とともに主にささげて燔祭としなければならない。これは火祭であって、主に香ばしいかおりとなるであろう。
3421 03 23 19 また雄やぎ一頭を罪祭としてささげ、一歳の小羊二頭を酬恩祭の犠牲としてささげなければならない。
3422 03 23 20 そして祭司はその初穂のパンと共に、この二頭の小羊を主の前に揺祭として揺り動かさなければならない。これらは主にささげる聖なる物であって、祭司に帰するであろう。
3423 03 23 21 あなたがたは、その日にふれ示して、聖会を開かなければならない。どのような労働もしてはならない。これはあなたがたのすべてのすまいにおいて、代々ながく守るべき定めである。
3424 03 23 22 あなたがたの地の穀物を刈り入れるときは、その刈入れにあたって、畑のすみずみまで刈りつくしてはならない。またあなたの穀物の落ち穂を拾ってはならない。貧しい者と寄留者のために、それを残しておかなければならない。わたしはあなたがたの神、主である』」。
3425 03 23 23 主はまたモーセに言われた、
3426 03 23 24 「イスラエルの人々に言いなさい、『七月一日をあなたがたの安息の日とし、ラッパを吹き鳴らして記念する聖会としなければならない。
3427 03 23 25 どのような労働もしてはならない。しかし、主に火祭をささげなければならない』」。
3428 03 23 26 主はまたモーセに言われた、
3429 03 23 27 「特にその七月の十日は贖罪の日である。あなたがたは聖会を開き、身を悩まし、主に火祭をささげなければならない。
3430 03 23 28 その日には、どのような仕事もしてはならない。これはあなたがたのために、あなたがたの神、主の前にあがないをなすべき贖罪の日だからである。
3431 03 23 29 すべてその日に身を悩まさない者は、民のうちから断たれるであろう。
3432 03 23 30 またすべてその日にどのような仕事をしても、その人をわたしは民のうちから滅ぼし去るであろう。
3433 03 23 31 あなたがたはどのような仕事もしてはならない。これはあなたがたのすべてのすまいにおいて、代々ながく守るべき定めである。
3434 03 23 32 これはあなたがたの全き休みの安息日である。あなたがたは身を悩まさなければならない。またその月の九日の夕には、その夕から次の夕まで安息を守らなければならない」。
3435 03 23 33 主はまたモーセに言われた、
3436 03 23 34 「イスラエルの人々に言いなさい、『その七月の十五日は仮庵の祭である。七日の間、主の前にそれを守らなければならない。
3437 03 23 35 初めの日に聖会を開かなければならない。どのような労働もしてはならない。
3438 03 23 36 また七日の間、主に火祭をささげなければならない。八日目には聖会を開き、主に火祭をささげなければならない。これは聖会の日であるから、どのような労働もしてはならない。
3439 03 23 37 これらは主の定めの祭であって、あなたがたがふれ示して聖会とし、主に火祭すなわち、燔祭、素祭、犠牲および灌祭を、そのささぐべき日にささげなければならない。
3440 03 23 38 このほかに主の安息日があり、またほかに、あなたがたのささげ物があり、またほかに、あなたがたのもろもろの誓願の供え物があり、またそのほかに、あなたがたのもろもろの自発の供え物がある。これらは皆あなたがたが主にささげるものである。
3441 03 23 39 あなたがたが、地の産物を集め終ったときは、七月の十五日から七日のあいだ、主の祭を守らなければならない。すなわち、初めの日にも安息をし、八日目にも安息をしなければならない。
3442 03 23 40 初めの日に、美しい木の実と、なつめやしの枝と、茂った木の枝と、谷のはこやなぎの枝を取って、七日の間あなたがたの神、主の前に楽しまなければならない。
3443 03 23 41 あなたがたは年に七日の間、主にこの祭を守らなければならない。これはあなたがたの代々ながく守るべき定めであって、七月にこれを守らなければならない。
3444 03 23 42 あなたがたは七日の間、仮庵に住み、イスラエルで生れた者はみな仮庵に住まなければならない。
3445 03 23 43 これはわたしがイスラエルの人々をエジプトの国から導き出したとき、彼らを仮庵に住まわせた事を、あなたがたの代々の子孫に知らせるためである。わたしはあなたがたの神、主である』」。
3446 03 23 44 モーセは主の定めの祭をイスラエルの人々に告げた。
3447 03 24 1 主はまたモーセに言われた、
3448 03 24 2 「イスラエルの人々に命じて、オリブを砕いて採った純粋の油を、ともしびのためにあなたの所へ持ってこさせ、絶えずともしびをともさせなさい。
3449 03 24 3 すなわち、アロンは会見の幕屋のうちのあかしの垂幕の外で、夕から朝まで絶えず、そのともしびを主の前に整えなければならない。これはあなたがたが代々ながく守るべき定めである。
3450 03 24 4 彼は純金の燭台の上に、そのともしびを絶えず主の前に整えなければならない。
3451 03 24 5 あなたは麦粉を取り、それで十二個の菓子を焼かなければならない。菓子一個に麦粉十分の二エパを用いなければならない。
3452 03 24 6 そしてそれを主の前の純金の机の上に、ひと重ね六個ずつ、ふた重ねにして置かなければならない。
3453 03 24 7 あなたはまた、おのおのの重ねの上に、純粋の乳香を置いて、そのパンの記念の分とし、主にささげて火祭としなければならない。
3454 03 24 8 安息日ごとに絶えず、これを主の前に整えなければならない。これはイスラエルの人々のささぐべきものであって、永遠の契約である。
3455 03 24 9 これはアロンとその子たちに帰する。彼らはこれを聖なる所で食べなければならない。これはいと聖なる物であって、主の火祭のうち彼に帰すべき永久の分である」。
3456 03 24 10 イスラエルの女を母とし、エジプトびとを父とするひとりの者が、イスラエルの人々のうちに出てきて、そのイスラエルの女の産んだ子と、ひとりのイスラエルびとが宿営の中で争いをし、
3457 03 24 11 そのイスラエルの女の産んだ子が主の名を汚して、のろったので、人々は彼をモーセのもとに連れてきた。その母はダンの部族のデブリの娘で、名をシロミテといった。
3458 03 24 12 人々は彼を閉じ込めて置いて、主の示しを受けるのを待っていた。
3459 03 24 13 時に主はモーセに言われた、
3460 03 24 14 「あの、のろいごとを言った者を宿営の外に引き出し、それを聞いた者に、みな手を彼の頭に置かせ、全会衆に彼を石で撃たせなさい。
3461 03 24 15 あなたはまたイスラエルの人々に言いなさい、『だれでも、その神をのろう者は、その罪を負わなければならない。
3462 03 24 16 主の名を汚す者は必ず殺されるであろう。全会衆は必ず彼を石で撃たなければならない。他国の者でも、この国に生れた者でも、主の名を汚すときは殺されなければならない。
3463 03 24 17 だれでも、人を撃ち殺した者は、必ず殺されなければならない。
3464 03 24 18 獣を撃ち殺した者は、獣をもってその獣を償わなければならない。
3465 03 24 19 もし人が隣人に傷を負わせるなら、その人は自分がしたように自分にされなければならない。
3466 03 24 20 すなわち、骨折には骨折、目には目、歯には歯をもって、人に傷を負わせたように、自分にもされなければならない。
3467 03 24 21 獣を撃ち殺した者はそれを償い、人を撃ち殺した者は殺されなければならない。
3468 03 24 22 他国の者にも、この国に生れた者にも、あなたがたは同一のおきてを用いなければならない。わたしはあなたがたの神、主だからである』」。
3469 03 24 23 モーセがイスラエルの人々に向かい、「あの、のろいごとを言った者を宿営の外に引き出し、石で撃て」と命じたので、イスラエルの人々は、主がモーセに命じられたようにした。
3470 03 25 1 主はシナイ山で、モーセに言われた、
3471 03 25 2 「イスラエルの人々に言いなさい、『わたしが与える地に、あなたがたがはいったときは、その地にも、主に向かって安息を守らせなければならない。
3472 03 25 3 六年の間あなたは畑に種をまき、また六年の間ぶどう畑の枝を刈り込み、その実を集めることができる。
3473 03 25 4 しかし、七年目には、地に全き休みの安息を与えなければならない。これは、主に向かって守る安息である。あなたは畑に種をまいてはならない。また、ぶどう畑の枝を刈り込んではならない。
3474 03 25 5 あなたの穀物の自然に生えたものは刈り取ってはならない。また、あなたのぶどうの枝の手入れをしないで結んだ実は摘んではならない。これは地のために全き休みの年だからである。
3475 03 25 6 安息の年の地の産物は、あなたがたの食物となるであろう。すなわち、あなたと、男女の奴隷と、雇人と、あなたの所に宿っている他国人と、
3476 03 25 7 あなたの家畜と、あなたの国のうちの獣とのために、その産物はみな、食物となるであろう。
3477 03 25 8 あなたは安息の年を七たび、すなわち、七年を七回数えなければならない。安息の年七たびの年数は四十九年である。
3478 03 25 9 七月の十日にあなたはラッパの音を響き渡らせなければならない。すなわち、贖罪の日にあなたがたは全国にラッパを響き渡らせなければならない。
3479 03 25 10 その五十年目を聖別して、国中のすべての住民に自由をふれ示さなければならない。この年はあなたがたにはヨベルの年であって、あなたがたは、おのおのその所有の地に帰り、おのおのその家族に帰らなければならない。
3480 03 25 11 その五十年目はあなたがたにはヨベルの年である。種をまいてはならない。また自然に生えたものは刈り取ってはならない。手入れをしないで結んだぶどうの実は摘んではならない。
3481 03 25 12 この年はヨベルの年であって、あなたがたに聖であるからである。あなたがたは畑に自然にできた物を食べなければならない。
3482 03 25 13 このヨベルの年には、おのおのその所有の地に帰らなければならない。
3483 03 25 14 あなたの隣人に物を売り、また隣人から物を買うときは、互に欺いてはならない。
3484 03 25 15 ヨベルの後の年の数にしたがって、あなたは隣人から買い、彼もまた畑の産物の年数にしたがって、あなたに売らなければならない。
3485 03 25 16 年の数の多い時は、その値を増し、年の数の少ない時は、値を減らさなければならない。彼があなたに売るのは産物の数だからである。
3486 03 25 17 あなたがたは互に欺いてはならない。あなたの神を恐れなければならない。わたしはあなたがたの神、主である。
3487 03 25 18 あなたがたはわたしの定めを行い、またわたしのおきてを守って、これを行わなければならない。そうすれば、あなたがたは安らかにその地に住むことができるであろう。
3488 03 25 19 地はその実を結び、あなたがたは飽きるまでそれを食べ、安らかにそこに住むことができるであろう。
3489 03 25 20 「七年目に種をまくことができず、また産物を集めることができないならば、わたしたちは何を食べようか」とあなたがたは言うのか。
3490 03 25 21 わたしは命じて六年目に、あなたがたに祝福をくだし、三か年分の産物を実らせるであろう。
3491 03 25 22 あなたがたは八年目に種をまく時には、なお古い産物を食べているであろう。九年目にその産物のできるまで、あなたがたは古いものを食べることができるであろう。
3492 03 25 23 地は永代には売ってはならない。地はわたしのものだからである。あなたがたはわたしと共にいる寄留者、また旅びとである。
3493 03 25 24 あなたがたの所有としたどのような土地でも、その土地の買いもどしに応じなければならない。
3494 03 25 25 あなたの兄弟が落ちぶれてその所有の地を売った時は、彼の近親者がきて、兄弟の売ったものを買いもどさなければならない。
3495 03 25 26 たといその人に、それを買いもどしてくれる人がいなくても、その人が富み、自分でそれを買いもどすことができるようになったならば、
3496 03 25 27 それを売ってからの年を数えて残りの分を買い手に返さなければならない。そうすればその人はその所有の地に帰ることができる。
3497 03 25 28 しかし、もしそれを買いもどすことができないならば、その売った物はヨベルの年まで買い主の手にあり、ヨベルにはもどされて、その人はその所有の地に帰ることができるであろう。
3498 03 25 29 人が城壁のある町の住宅を売った時は、売ってから満一年の間は、それを買いもどすことができる。その間は彼に買いもどすことを許さなければならない。
3499 03 25 30 満一年のうちに、それを買いもどさない時は、城壁のある町の内のその家は永代にそれを買った人のものと定まって、代々の所有となり、ヨベルの年にももどされないであろう。
3500 03 25 31 しかし、周囲に城壁のない村々の家は、その地方の畑に附属するものとみなされ、買いもどすことができ、またヨベルの年には、もどされるであろう。
3501 03 25 32 レビびとの町々、すなわち、彼らの所有の町々の家は、レビびとはいつでも買いもどすことができる。
3502 03 25 33 レビびとのひとりが、それを買いもどさない時は、その所有の町にある売った家はヨベルの年にはもどされるであろう。レビびとの町々の家はイスラエルの人々のうちに彼らがもっている所有だからである。
3503 03 25 34 ただし、彼らの町々の周囲の放牧地は売ってはならない。それは彼らの永久の所有だからである。
3504 03 25 35 あなたの兄弟が落ちぶれ、暮して行けない時は、彼を助け、寄留者または旅びとのようにして、あなたと共に生きながらえさせなければならない。
3505 03 25 36 彼から利子も利息も取ってはならない。あなたの神を恐れ、あなたの兄弟をあなたと共に生きながらえさせなければならない。
3506 03 25 37 あなたは利子を取って彼に金を貸してはならない。また利益をえるために食物を貸してはならない。
3507 03 25 38 わたしはあなたがたの神、主であって、カナンの地をあなたがたに与え、かつあなたがたの神となるためにあなたがたをエジプトの国から導き出した者である。
3508 03 25 39 あなたの兄弟が落ちぶれて、あなたに身を売るときは、奴隷のように働かせてはならない。
3509 03 25 40 彼を雇人のように、また旅びとのようにしてあなたの所におらせ、ヨベルの年まであなたの所で勤めさせなさい。
3510 03 25 41 その時には、彼は子供たちと共にあなたの所から出て、その一族のもとに帰り、先祖の所有の地にもどるであろう。
3511 03 25 42 彼らはエジプトの国からわたしが導き出したわたしのしもべであるから、身を売って奴隷となってはならない。
3512 03 25 43 あなたは彼をきびしく使ってはならない。あなたの神を恐れなければならない。
3513 03 25 44 あなたがもつ奴隷は男女ともにあなたの周囲の異邦人のうちから買わなければならない。すなわち、彼らのうちから男女の奴隷を買うべきである。
3514 03 25 45 また、あなたがたのうちに宿っている旅びとの子供のうちからも買うことができる。また彼らのうちあなたがたの国で生れて、あなたがたと共におる人々の家族からも買うことができる。そして彼らはあなたがたの所有となるであろう。
3515 03 25 46 あなたがたは彼らを獲て、あなたがたの後の子孫に所有として継がせることができる。すなわち、彼らは長くあなたがたの奴隷となるであろう。しかし、あなたがたの兄弟であるイスラエルの人々をあなたがたは互にきびしく使ってはならない。
3516 03 25 47 あなたと共にいる寄留者または旅びとが富み、そのかたわらにいるあなたの兄弟が落ちぶれて、あなたと共にいるその寄留者、旅びと、または寄留者の一族のひとりに身を売った場合、
3517 03 25 48 身を売った後でも彼を買いもどすことができる。その兄弟のひとりが彼を買いもどさなければならない。
3518 03 25 49 あるいは、おじ、または、おじの子が彼を買いもどさなければならない。あるいは一族の近親の者が、彼を買いもどさなければならない。あるいは自分に富ができたならば、自分で買いもどさなければならない。
3519 03 25 50 その時、彼は自分の身を売った年からヨベルの年までを、その買い主と共に数え、その年数によって、身の代金を決めなければならない。その年数は雇われた年数として数えなければならない。
3520 03 25 51 なお残りの年が多い時は、その年数にしたがい、買われた金額に照して、あがないの金を払わなければならない。
3521 03 25 52 またヨベルの年までに残りの年が少なければ、その人と共に計算し、その年数にしたがって、あがないの金を払わなければならない。
3522 03 25 53 彼は年々雇われる人のように扱われなければならない。あなたの目の前で彼をきびしく使わせてはならない。
3523 03 25 54 もし彼がこのようにしてあがなわれないならば、ヨベルの年に彼は子供と共に出て行くことができる。
3524 03 25 55 イスラエルの人々は、わたしのしもべだからである。彼らはわたしがエジプトの国から導き出したわたしのしもべである。わたしはあなたがたの神、主である。
3525 03 26 1 あなたがたは自分のために、偶像を造ってはならない。また刻んだ像も石の柱も立ててはならない。またあなたがたの地に石像を立てて、それを拝んではならない。わたしはあなたがたの神、主だからである。
3526 03 26 2 あなたがたはわたしの安息日を守り、またわたしの聖所を敬わなければならない。わたしは主である。
3527 03 26 3 もしあなたがたがわたしの定めに歩み、わたしの戒めを守って、これを行うならば、
3528 03 26 4 わたしはその季節季節に、雨をあなたがたに与えるであろう。地は産物を出し、畑の木々は実を結ぶであろう。
3529 03 26 5 あなたがたの麦打ちは、ぶどうの取入れの時まで続き、ぶどうの取入れは、種まきの時まで続くであろう。あなたがたは飽きるほどパンを食べ、またあなたがたの地に安らかに住むであろう。
3530 03 26 6 わたしが国に平和を与えるから、あなたがたは安らかに寝ることができ、あなたがたを恐れさすものはないであろう。わたしはまた国のうちから悪い獣を絶やすであろう。つるぎがあなたがたの国を行き巡ることはないであろう。
3531 03 26 7 あなたがたは敵を追うであろう。彼らは、あなたがたのつるぎに倒れるであろう。
3532 03 26 8 あなたがたの五人は百人を追い、百人は万人を追い、あなたがたの敵はつるぎに倒れるであろう。
3533 03 26 9 わたしはあなたがたを顧み、多くの子を獲させ、あなたがたを増し、あなたがたと結んだ契約を固めるであろう。
3534 03 26 10 あなたがたは古い穀物を食べている間に、また新しいものを獲て、その古いものを捨てるようになるであろう。
3535 03 26 11 わたしは幕屋をあなたがたのうちに建て、心にあなたがたを忌みきらわないであろう。
3536 03 26 12 わたしはあなたがたのうちに歩み、あなたがたの神となり、あなたがたはわたしの民となるであろう。
3537 03 26 13 わたしはあなたがたの神、主であって、あなたがたをエジプトの国から導き出して、奴隷の身分から解き放った者である。わたしはあなたがたのくびきの横木を砕いて、まっすぐに立って歩けるようにしたのである。
3538 03 26 14 しかし、あなたがたがもしわたしに聞き従わず、またこのすべての戒めを守らず、
3539 03 26 15 わたしの定めを軽んじ、心にわたしのおきてを忌みきらって、わたしのすべての戒めを守らず、わたしの契約を破るならば、
3540 03 26 16 わたしはあなたがたにこのようにするであろう。すなわち、あなたがたの上に恐怖を臨ませ、肺病と熱病をもって、あなたがたの目を見えなくし、命をやせ衰えさせるであろう。あなたがたが種をまいてもむだである。敵がそれを食べるであろう。
3541 03 26 17 わたしは顔をあなたがたにむけて攻め、あなたがたは敵の前に撃ちひしがれるであろう。またあなたがたの憎む者があなたがたを治めるであろう。あなたがたは追う者もないのに逃げるであろう。
3542 03 26 18 それでもなお、あなたがたがわたしに聞き従わないならば、わたしはあなたがたの罪を七倍重く罰するであろう。
3543 03 26 19 わたしはあなたがたの誇とする力を砕き、あなたがたの天を鉄のようにし、あなたがたの地を青銅のようにするであろう。
3544 03 26 20 あなたがたの力は、むだに費されるであろう。すなわち、地は産物をいださず、国のうちの木々は実を結ばないであろう。
3545 03 26 21 もしあなたがたがわたしに逆らって歩み、わたしに聞き従わないならば、わたしはあなたがたの罪に従って七倍の災をあなたがたに下すであろう。
3546 03 26 22 わたしはまた野獣をあなたがたのうちに送るであろう。それはあなたがたの子供を奪い、また家畜を滅ぼし、あなたがたの数を少なくするであろう。あなたがたの大路は荒れ果てるであろう。
3547 03 26 23 もしあなたがたがこれらの懲しめを受けてもなお改めず、わたしに逆らって歩むならば、
3548 03 26 24 わたしもまたあなたがたに逆らって歩み、あなたがたの罪を七倍重く罰するであろう。
3549 03 26 25 わたしはあなたがたの上につるぎを臨ませ、違約の恨みを報いるであろう。あなたがたが町々に集まる時は、あなたがたのうちに疫病を送り、あなたがたは敵の手にわたされるであろう。
3550 03 26 26 わたしがあなたがたのつえとするパンを砕くとき、十人の女が一つのかまどでパンを焼き、それをはかりにかけてあなたがたに渡すであろう。あなたがたは食べても満たされないであろう。
3551 03 26 27 それでもなお、あなたがたがわたしに聞き従わず、わたしに逆らって歩むならば、
3552 03 26 28 わたしもあなたがたに逆らい、怒りをもって歩み、あなたがたの罪を七倍重く罰するであろう。
3553 03 26 29 あなたがたは自分のむすこの肉を食べ、また自分の娘の肉を食べるであろう。
3554 03 26 30 わたしはあなたがたの高き所をこぼち、香の祭壇を倒し、偶像の死体の上に、あなたがたの死体を投げ捨てて、わたしは心にあなたがたを忌みきらうであろう。
3555 03 26 31 わたしはまたあなたがたの町々を荒れ地とし、あなたがたの聖所を荒らすであろう。またわたしはあなたがたのささげる香ばしいかおりをかがないであろう。
3556 03 26 32 わたしがその地を荒らすゆえ、そこに住むあなたがたの敵はそれを見て驚くであろう。
3557 03 26 33 わたしはあなたがたを国々の間に散らし、つるぎを抜いて、あなたがたの後を追うであろう。あなたがたの地は荒れ果て、あなたがたの町々は荒れ地となるであろう。
3558 03 26 34 こうしてその地が荒れ果てて、あなたがたは敵の国にある間、地は安息を楽しむであろう。すなわち、その時、地は休みを得て、安息を楽しむであろう。
3559 03 26 35 それは荒れ果てている日の間、休むであろう。あなたがたがそこに住んでいる間、あなたがたの安息のときに休みを得なかったものである。
3560 03 26 36 またあなたがたのうちの残っている者の心に、敵の国でわたしは恐れをいだかせるであろう。彼らは木の葉の動く音にも驚いて逃げ、つるぎを避けて逃げる者のように逃げて、追う者もないのにころび倒れるであろう。
3561 03 26 37 彼らは追う者もないのに、つるぎをのがれる者のように折り重なって、つまずき倒れるであろう。あなたがたは敵の前に立つことができないであろう。
3562 03 26 38 あなたがたは国々のうちにあって滅びうせ、あなたがたの敵の地はあなたがたをのみつくすであろう。
3563 03 26 39 あなたがたのうちの残っている者は、あなたがたの敵の地で自分の罪のゆえにやせ衰え、また先祖たちの罪のゆえに彼らと同じようにやせ衰えるであろう。
3564 03 26 40 しかし、彼らがもし、自分の罪と、先祖たちの罪、すなわち、わたしに反逆し、またわたしに逆らって歩んだことを告白するならば、
3565 03 26 41 たといわたしが彼らに逆らって歩み、彼らを敵の国に引いて行っても、もし彼らの無割礼の心が砕かれ、あまんじて罪の罰を受けるならば、
3566 03 26 42 そのときわたしはヤコブと結んだ契約を思い起し、またイサクと結んだ契約およびアブラハムと結んだ契約を思い起し、またその地を思い起すであろう。
3567 03 26 43 しかし、彼らが地を離れて地が荒れ果てている間、地はその安息を楽しむであろう。彼らはまた、あまんじて罪の罰を受けるであろう。彼らがわたしのおきてを軽んじ、心にわたしの定めを忌みきらったからである。
3568 03 26 44 それにもかかわらず、なおわたしは彼らが敵の国におるとき、彼らを捨てず、また忌みきらわず、彼らを滅ぼし尽さず、彼らと結んだわたしの契約を破ることをしないであろう。わたしは彼らの神、主だからである。
3569 03 26 45 わたしは彼らの先祖たちと結んだ契約を彼らのために思い起すであろう。彼らはわたしがその神となるために国々の人の目の前で、エジプトの地から導き出した者である。わたしは主である』」。
3570 03 26 46 これらは主が、シナイ山で、自分とイスラエルの人々との間に、モーセによって立てられた定めと、おきてと、律法である。
3571 03 27 1 主はモーセに言われた、
3572 03 27 2 「イスラエルの人々に言いなさい、『人があなたの値積りに従って主に身をささげる誓願をする時は、
3573 03 27 3 あなたの値積りは、二十歳から六十歳までの男には、その値積りを聖所のシケルに従って銀五十シケルとし、
3574 03 27 4 女には、その値積りは三十シケルとしなければならない。
3575 03 27 5 また五歳から二十歳までは、男にはその値積りを二十シケルとし、女には十シケルとしなければならない。
3576 03 27 6 一か月から五歳までは、男にはその値積りを銀五シケルとし、女にはその値積りを銀三シケルとしなければならない。
3577 03 27 7 また六十歳以上は、男にはその値積りを十五シケルとし、女には十シケルとしなければならない。
3578 03 27 8 もしその人が貧しくて、あなたの値積りに応じることができないならば、祭司の前に立ち、祭司の値積りを受けなければならない。祭司はその誓願者の力に従って値積らなければならない。
3579 03 27 9 主に供え物とすることができる家畜で、人が主にささげるものはすべて聖なる物となる。
3580 03 27 10 ほかのものをそれに代用してはならない。良い物を悪い物に、悪い物を良い物に取り換えてはならない。もし家畜と家畜とを取り換えるならば、その物も、それと取り換えた物も共に聖なる物となるであろう。
3581 03 27 11 もしそれが汚れた家畜で、主に供え物としてささげられないものであるならば、その人はその家畜を祭司の前に引いてこなければならない。
3582 03 27 12 祭司はその良い悪いに従って、それを値積らなければならない。それは祭司が値積るとおりになるであろう。
3583 03 27 13 もしその人が、それをあがなおうとするならば、その値積りにその五分の一を加えなければならない。
3584 03 27 14 もし人が自分の家を主に聖なる物としてささげるときは、祭司はその良い悪いに従って、それを値積らなければならない。それは祭司が値積ったとおりになるであろう。
3585 03 27 15 もしその家をささげる人が、それをあがなおうとするならば、その値積りの金に、その五分の一を加えなければならない。そうすれば、それは彼のものとなるであろう。
3586 03 27 16 もし人が相続した畑の一部を主にささげるときは、あなたはそこにまく種の多少に応じて、値積らなければならない。すなわち、大麦一ホメルの種を銀五十シケルに値積らなければならない。
3587 03 27 17 もしその畑をヨベルの年からささげるのであれば、その価はあなたの値積りのとおりになるであろう。
3588 03 27 18 もしその畑をヨベルの年の後にささげるのであれば、祭司はヨベルの年までに残っている年の数に従ってその金を数え、それをあなたの値積りからさし引かなければならない。
3589 03 27 19 もしまた、その畑をささげる人が、それをあがなおうとするならば、あなたの値積りの金にその五分の一を加えなければならない。そうすれば、それは彼のものと決まるであろう。
3590 03 27 20 しかし、もしその畑をあがなわず、またそれを他の人に売るならば、それはもはやあがなうことができないであろう。
3591 03 27 21 その畑は、ヨベルの年になって期限が切れるならば、奉納の畑と同じく、主の聖なる物となり、祭司の所有となるであろう。
3592 03 27 22 もしまた相続した畑の一部でなく、買った畑を主にささげる時は、
3593 03 27 23 祭司は値積りしてヨベルの年までの金を数えなければならない。その人はその値積りの金をその日に主にささげて、聖なる物としなければならない。
3594 03 27 24 ヨベルの年にその畑は売り主であるその地の相続者に返るであろう。
3595 03 27 25 すべてあなたの値積りは聖所のシケルによってしなければならない。二十ゲラを一シケルとする。
3596 03 27 26 しかし、家畜のういごは、ういごとしてすでに主のものだから、だれもこれをささげてはならない。牛でも羊でも、それは主のものである。
3597 03 27 27 もし汚れた家畜であるならば、あなたの値積りにその五分の一を加えて、その人はこれをあがなわなければならない。もしあがなわないならば、それを値積りに従って売らなければならない。
3598 03 27 28 ただし、人が自分の持っているもののうちから奉納物として主にささげたものは、人であっても、家畜であっても、また相続の畑であっても、いっさいこれを売ってはならない。またあがなってはならない。奉納物はすべて主に属するいと聖なる物である。
3599 03 27 29 またすべて人のうちから奉納物としてささげられた人は、あがなってはならない。彼は必ず殺されなければならない。
3600 03 27 30 地の十分の一は地の産物であれ、木の実であれ、すべて主のものであって、主に聖なる物である。
3601 03 27 31 もし人がその十分の一をあがなおうとする時は、それにその五分の一を加えなければならない。
3602 03 27 32 牛または羊の十分の一については、すべて牧者のつえの下を十番目に通るものは、主に聖なる物である。
3603 03 27 33 その良い悪いを問うてはならない。またそれを取り換えてはならない。もし取り換えたならば、それと、その取り換えたものとは、共に聖なる物となるであろう。それをあがなうことはできない』」。
3604 03 27 34 これらは主が、シナイ山で、イスラエルの人々のために、モーセに命じられた戒めである。
3605 04 1 1 エジプトの国を出た次の年の二月一日に、主はシナイの荒野において、会見の幕屋で、モーセに言われた、
3606 04 1 2 「あなたがたは、イスラエルの人々の全会衆を、その氏族により、その父祖の家によって調査し、そのすべての男子の名の数を、ひとりびとり数えて、その総数を得なさい。
3607 04 1 3 イスラエルのうちで、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者を、あなたとアロンとは、その部隊にしたがって数えなければならない。
3608 04 1 4 また、すべての部族は、おのおの父祖の家の長たるものを、ひとりずつ出して、あなたがたと協力させなければならない。
3609 04 1 5 すなわち、あなたがたに協力すべき人々の名は、次のとおりである。ルベンからはシデウルの子エリヅル。
3610 04 1 6 シメオンからはツリシャダイの子シルミエル。
3611 04 1 7 ユダからはアミナダブの子ナション。
3612 04 1 8 イッサカルからはツアルの子ネタニエル。
3613 04 1 9 ゼブルンからはヘロンの子エリアブ。
3614 04 1 10 ヨセフの子たちのうち、エフライムからはアミホデの子エリシャマ、マナセからはパダヅルの子ガマリエル。
3615 04 1 11 ベニヤミンからはギデオニの子アビダン。
3616 04 1 12 ダンからはアミシャダイの子アヒエゼル。
3617 04 1 13 アセルからはオクランの子パギエル。
3618 04 1 14 ガドからはデウエルの子エリアサフ。
3619 04 1 15 ナフタリからはエナンの子アヒラ」。
3620 04 1 16 これらは会衆のうちから選び出された人々で、その父祖の部族のつかさたち、またイスラエルの氏族のかしらたちである。
3621 04 1 17 こうして、モーセとアロンが、ここに名を掲げた人々を引き連れて、
3622 04 1 18 二月一日に会衆をことごとく集めたので、彼らはその氏族により、その父祖の家により、その名の数にしたがって二十歳以上のものが、ひとりびとり登録した。
3623 04 1 19 主が命じられたように、モーセはシナイの荒野で彼らを数えた。
3624 04 1 20 すなわち、イスラエルの長子ルベンの子たちから生れたものを、その氏族により、その父祖の家によって調べ、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の男子の名の数を、ひとりびとり得たが、
3625 04 1 21 ルベンの部族のうちで、数えられたものは四万六千五百人であった。
3626 04 1 22 またシメオンの子たちから生れたものを、その氏族により、その父祖の家によって調べ、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の男子の名の数を、ひとりびとり得たが、
3627 04 1 23 シメオンの部族のうちで、数えられたものは五万九千三百人であった。
3628 04 1 24 またガドの子たちから生れたものを、その氏族により、その父祖の家によって調べ、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者の名の数を得たが、
3629 04 1 25 ガドの部族のうちで、数えられたものは四万五千六百五十人であった。
3630 04 1 26 ユダの子たちから生れたものを、その氏族により、その父祖の家によって調べ、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者の名の数を得たが、
3631 04 1 27 ユダの部族のうちで、数えられたものは七万四千六百人であった。
3632 04 1 28 イッサカルの子たちから生れたものを、その氏族により、その父祖の家によって調べ、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者の名の数を得たが、
3633 04 1 29 イッサカルの部族のうちで、数えられたものは五万四千四百人であった。
3634 04 1 30 ゼブルンの子たちから生れたものを、その氏族により、その父祖の家によって調べ、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者の名の数を得たが、
3635 04 1 31 ゼブルンの部族のうちで、数えられたものは五万七千四百人であった。
3636 04 1 32 ヨセフの子たちのうち、エフライムの子たちから生れたものを、その氏族により、その父祖の家によって調べ、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者の名の数を得たが、
3637 04 1 33 エフライムの部族のうちで、数えられたものは四万五百人であった。
3638 04 1 34 マナセの子たちから生れたものを、その氏族により、その父祖の家によって調べ、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者の名の数を得たが、
3639 04 1 35 マナセの部族のうちで、数えられたものは三万二千二百人であった。
3640 04 1 36 ベニヤミンの子たちから生れたものを、その氏族により、その父祖の家によって調べ、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者の名の数を得たが、
3641 04 1 37 ベニヤミンの部族のうちで、数えられたものは三万五千四百人であった。
3642 04 1 38 ダンの子たちから生れたものを、その氏族により、その父祖の家によって調べ、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者の名の数を得たが、
3643 04 1 39 ダンの部族のうちで、数えられたものは六万二千七百人であった。
3644 04 1 40 アセルの子たちから生れたものを、その氏族により、その父祖の家によって調べ、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者の名の数を得たが、
3645 04 1 41 アセルの部族のうちで、数えられたものは四万一千五百人であった。
3646 04 1 42 ナフタリの子たちから生れたものを、その氏族により、その父祖の家によって調べ、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者の名の数を得たが、
3647 04 1 43 ナフタリの部族のうちで、数えられたものは、五万三千四百人であった。
3648 04 1 44 これらが数えられた人々であって、モーセとアロンとイスラエルのつかさたちとが数えた人々である。そのつかさたちは十二人であって、おのおのその父祖の家のために出たものである。
3649 04 1 45 そしてイスラエルの人々のうち、その父祖の家にしたがって数えられた者は、すべてイスラエルのうち、戦争に出ることのできる二十歳以上の者であって、
3650 04 1 46 その数えられた者は合わせて六十万三千五百五十人であった。
3651 04 1 47 しかし、レビびとは、その父祖の部族にしたがって、そのうちに数えられなかった。
3652 04 1 48 すなわち、主はモーセに言われた、
3653 04 1 49 「あなたはレビの部族だけは数えてはならない。またその総数をイスラエルの人々のうちに数えあげてはならない。
3654 04 1 50 あなたはレビびとに、あかしの幕屋と、そのもろもろの器と、それに附属するもろもろの物を管理させなさい。彼らは幕屋と、そのもろもろの器とを持ち運び、またそこで務をし、幕屋のまわりに宿営しなければならない。
3655 04 1 51 幕屋が進む時は、レビびとがこれを取りくずし、幕屋を張る時は、レビびとがこれを組み立てなければならない。ほかの人がこれに近づく時は殺されるであろう。
3656 04 1 52 イスラエルの人々はその部隊にしたがって、おのおのその宿営に、おのおのその旗のもとにその天幕を張らなければならない。
3657 04 1 53 しかし、レビびとは、あかしの幕屋のまわりに宿営しなければならない。そうすれば、主の怒りはイスラエルの人々の会衆の上に臨むことがないであろう。レビびとは、あかしの幕屋の務を守らなければならない」。
3658 04 1 54 イスラエルの人々はこのようにして、すべて主がモーセに命じられたように行った。
3659 04 2 1 主はモーセとアロンに言われた、
3660 04 2 2 「イスラエルの人々は、おのおのその部隊の旗のもとに、その父祖の家の旗印にしたがって宿営しなければならない。また会見の幕屋のまわりに、それに向かって宿営しなければならない。
3661 04 2 3 すなわち、日の出る方、東に宿営するものは、ユダの宿営の旗につく者であって、その部隊にしたがって宿営し、アミナダブの子ナションが、ユダの子たちのつかさとなるであろう。
3662 04 2 4 その部隊、すなわち、数えられた者は七万四千六百人である。
3663 04 2 5 そのかたわらに宿営する者はイッサカルの部族で、ツアルの子ネタニエルが、イッサカルの子たちのつかさとなるであろう。
3664 04 2 6 その部隊、すなわち、数えられた者は五万四千四百人である。
3665 04 2 7 次はゼブルンの部族で、ヘロンの子エリアブが、ゼブルンの子たちのつかさとなるであろう。
3666 04 2 8 その部隊、すなわち、数えられた者は五万七千四百人である。
3667 04 2 9 ユダの宿営の、その部隊にしたがって数えられた者は、合わせて十八万六千四百人である。これらの者は、まっ先に進まなければならない。
3668 04 2 10 南の方では、ルベンの宿営の旗につく者が、その部隊にしたがっており、シデウルの子エリヅルが、ルベンの子たちのつかさとなるであろう。
3669 04 2 11 その部隊、すなわち、数えられた者は四万六千五百人である。
3670 04 2 12 そのかたわらに宿営する者はシメオンの部族で、ツリシャダイの子シルミエルが、シメオンの子たちのつかさとなるであろう。
3671 04 2 13 その部隊、すなわち、数えられた者は五万九千三百人である。
3672 04 2 14 次はガドの部族で、デウエルの子エリアサフが、ガドの子たちのつかさとなるであろう。
3673 04 2 15 その部隊、すなわち、数えられた者は四万五千六百五十人である。
3674 04 2 16 ルベンの宿営の、その部隊にしたがって数えられた者は、合わせて十五万一千四百五十人である。これらの者は二番目に進まなければならない。
3675 04 2 17 その次に会見の幕屋を、レビびとの宿営とともに、もろもろの宿営の中央にして進まなければならない。彼らは宿営するのと同じように、おのおのその位置で、その旗にしたがって進まなければならない。
3676 04 2 18 西の方では、エフライムの宿営の旗につく者が、その部隊にしたがっており、アミホデの子エリシャマが、エフライムの子たちのつかさとなるであろう。
3677 04 2 19 その部隊、すなわち、数えられた者は四万五百人である。
3678 04 2 20 そのかたわらにマナセの部族がおって、パダヅルの子ガマリエルが、マナセの子たちのつかさとなるであろう。
3679 04 2 21 その部隊、すなわち、数えられた者は三万二千二百人である。
3680 04 2 22 次にベニヤミンの部族がおって、ギデオニの子アビダンが、ベニヤミンの子たちのつかさとなるであろう。
3681 04 2 23 その部隊、すなわち、数えられた者は三万五千四百人である。
3682 04 2 24 エフライムの宿営の、その部隊にしたがって数えられた者は、合わせて十万八千百人である。これらの者は三番目に進まなければならない。
3683 04 2 25 北の方では、ダンの宿営の旗につく者が、その部隊にしたがっており、アミシャダイの子アヒエゼルが、ダンの子たちのつかさとなるであろう。
3684 04 2 26 その部隊、すなわち、数えられた者は六万二千七百人である。
3685 04 2 27 そのかたわらに宿営する者は、アセルの部族であって、オクランの子パギエルが、アセルの子たちのつかさとなるであろう。
3686 04 2 28 その部隊、すなわち、数えられた者は四万一千五百人である。
3687 04 2 29 次にナフタリの部族がおって、エナンの子アヒラが、ナフタリの子たちのつかさとなるであろう。
3688 04 2 30 その部隊、すなわち、数えられた者は五万三千四百人である。
3689 04 2 31 ダンの宿営の、数えられた者は合わせて十五万七千六百人である。これらの者はその旗にしたがって、最後に進まなければならない」。
3690 04 2 32 これがイスラエルの人々の、その父祖の家にしたがって数えられた人々である。もろもろの宿営の、その部隊にしたがって数えられた者は合わせて六十万三千五百五十人であった。
3691 04 2 33 しかし、レビびとはイスラエルの人々のうちに数えられなかった。主がモーセに命じられたとおりである。
3692 04 2 34 イスラエルの人々は、すべて主がモーセに命じられたとおりに行い、その旗にしたがって宿営し、おのおのその氏族に従い、その父祖の家に従って進んだ。
3693 04 3 1 主がシナイ山で、モーセと語られた時の、アロンとモーセの一族は、次のとおりであった。
3694 04 3 2 アロンの子たちの名は、次のとおりである。長子はナダブ、次はアビウ、エレアザル、イタマル。
3695 04 3 3 これがアロンの子たちの名であって、彼らはみな油を注がれ、祭司の職に任じられて祭司となった。
3696 04 3 4 ナダブとアビウとは、シナイの荒野において、異火を主の前にささげたので、主の前で死んだ。彼らには子供がなかった。そしてエレアザルとイタマルとが、父アロンの前で祭司の務をした。
3697 04 3 5 主はまたモーセに言われた、
3698 04 3 6 「レビの部族を召し寄せ、祭司アロンの前に立って仕えさせなさい。
3699 04 3 7 彼らは会見の幕屋の前にあって、アロンと全会衆のために、その務をし、幕屋の働きをしなければならない。
3700 04 3 8 すなわち、彼らは会見の幕屋の、すべての器をまもり、イスラエルの人々のために務をし、幕屋の働きをしなければならない。
3701 04 3 9 あなたはレビびとを、アロンとその子たちとに、与えなければならない。彼らはイスラエルの人々のうちから、全くアロンに与えられたものである。
3702 04 3 10 あなたはアロンとその子たちとを立てて、祭司の職を守らせなければならない。ほかの人で近づくものは殺されるであろう」。
3703 04 3 11 主はまたモーセに言われた、
3704 04 3 12 「わたしは、イスラエルの人々のうちの初めに生れたすべてのういごの代りに、レビびとをイスラエルの人々のうちから取るであろう。レビびとは、わたしのものとなるであろう。
3705 04 3 13 ういごはすべてわたしのものだからである。わたしは、エジプトの国において、すべてのういごを撃ち殺した日に、イスラエルのういごを、人も獣も、ことごとく聖別して、わたしに帰せしめた。彼らはわたしのものとなるであろう。わたしは主である」。
3706 04 3 14 主はまたシナイの荒野でモーセに言われた、
3707 04 3 15 「あなたはレビの子たちを、その父祖の家により、その氏族によって数えなさい。すなわち、一か月以上の男子を数えなければならない」。
3708 04 3 16 それでモーセは主の言葉にしたがって、命じられたとおりに、それを数えた。
3709 04 3 17 レビの子たちの名は次のとおりである。すなわち、ゲルション、コハテ、メラリ。
3710 04 3 18 ゲルションの子たちの名は、その氏族によれば次のとおりである。すなわち、リブニ、シメイ。
3711 04 3 19 コハテの子たちは、その氏族によれば、アムラム、イヅハル、ヘブロン、ウジエル。
3712 04 3 20 メラリの子たちは、その氏族によれば、マヘリ、ムシ。これらはその父祖の家によるレビの氏族である。
3713 04 3 21 ゲルションからリブニびとの氏族と、シメイびとの氏族とが出た。これらはゲルションびとの氏族である。
3714 04 3 22 その数えられた者、すなわち、一か月以上の男子の数は合わせて七千五百人であった。
3715 04 3 23 ゲルションびとの氏族は幕屋の後方、すなわち、西の方に宿営し、
3716 04 3 24 ラエルの子エリアサフが、ゲルションびとの父祖の家のつかさとなるであろう。
3717 04 3 25 会見の幕屋の、ゲルションの子たちの務は、幕屋、天幕とそのおおい、会見の幕屋の入口のとばり、
3718 04 3 26 庭のあげばり、幕屋と祭壇のまわりの庭の入口のとばり、そのひも、およびすべてそれに用いる物を守ることである。
3719 04 3 27 また、コハテからアムラムびとの氏族、イヅハルびとの氏族、ヘブロンびとの氏族、ウジエルびとの氏族が出た。これらはコハテびとの氏族である。
3720 04 3 28 一か月以上の男子の数は、合わせて八千六百人であって、聖所の務を守る者たちである。
3721 04 3 29 コハテの子たちの氏族は、幕屋の南の方に宿営し、
3722 04 3 30 ウジエルの子エリザパンが、コハテびとの氏族の父祖の家のつかさとなるであろう。
3723 04 3 31 彼らの務は、契約の箱、机、燭台、二つの祭壇、聖所の務に用いる器、とばり、およびすべてそれに用いる物を守ることである。
3724 04 3 32 祭司アロンの子エレアザルが、レビびとのつかさたちの長となり、聖所の務を守るものたちを監督するであろう。
3725 04 3 33 メラリからマヘリびとの氏族と、ムシびとの氏族とが出た。これらはメラリの氏族である。
3726 04 3 34 その数えられた者、すなわち、一か月以上の男子の数は、合わせて六千二百人であった。
3727 04 3 35 アビハイルの子ツリエルが、メラリの氏族の父祖の家のつかさとなるであろう。彼らは幕屋の北の方に宿営しなければならない。
3728 04 3 36 メラリの子たちが、その務として管理すべきものは、幕屋の枠、その横木、その柱、その座、そのすべての器、およびそれに用いるすべての物、
3729 04 3 37 ならびに庭のまわりの柱とその座、その釘、およびそのひもである。
3730 04 3 38 また幕屋の前、その東の方、すなわち、会見の幕屋の東の方に宿営する者は、モーセとアロン、およびアロンの子たちであって、イスラエルの人々の務に代って、聖所の務を守るものである。ほかの人で近づく者は殺されるであろう。
3731 04 3 39 モーセとアロンとが、主の言葉にしたがって数えたレビびとで、その氏族によって数えられた者、一か月以上の男子は、合わせて二万二千人であった。
3732 04 3 40 主はまたモーセに言われた、「あなたは、イスラエルの人々のうち、すべてういごである男子の一か月以上のものを数えて、その名の数を調べなさい。
3733 04 3 41 また主なるわたしのために、イスラエルの人々のうちの、すべてのういごの代りにレビびとを取り、またイスラエルの人々の家畜のうちの、すべてのういごの代りに、レビびとの家畜を取りなさい」。
3734 04 3 42 そこでモーセは主の命じられたように、イスラエルの人々のうちの、すべてのういごを数えた。
3735 04 3 43 その数えられたういごの男子、すべて一か月以上の者は、その名の数によると二万二千二百七十三人であった。
3736 04 3 44 主はモーセに言われた、
3737 04 3 45 「あなたはイスラエルの人々のうちの、すべてのういごの代りに、レビびとを取り、また彼らの家畜の代りに、レビびとの家畜を取りなさい。レビびとはわたしのものとなる。わたしは主である。
3738 04 3 46 またイスラエルの人々のういごは、レビびとの数を二百七十三人超過しているから、そのあがないのために、
3739 04 3 47 そのあたまかずによって、ひとりごとに銀五シケルを取らなければならない。すなわち、聖所のシケルにしたがって、それを取らなければならない。一シケルは二十ゲラである。
3740 04 3 48 あなたは、その超過した者をあがなう金を、アロンと、その子たちに渡さなければならない」。
3741 04 3 49 そこでモーセは、レビびとによってあがなわれた者を超過した人々から、あがないの金を取った。
3742 04 3 50 すなわち、モーセは、イスラエルの人々のういごから、聖所のシケルにしたがって千三百六十五シケルの銀を取り、
3743 04 3 51 そのあがないの金を、主の言葉にしたがって、アロンとその子たちに渡した。主がモーセに命じられたとおりである。
3744 04 4 1 主はまたモーセとアロンに言われた、
3745 04 4 2 「レビの子たちのうちから、コハテの子たちの総数を、その氏族により、その父祖の家にしたがって調べ、
3746 04 4 3 三十歳以上五十歳以下で、務につき、会見の幕屋で働くことのできる者を、ことごとく数えなさい。
3747 04 4 4 コハテの子たちの、会見の幕屋の務は、いと聖なる物にかかわるものであって、次のとおりである。
3748 04 4 5 すなわち、宿営の進む時に、アロンとその子たちとは、まず、はいって、隔ての垂幕を取りおろし、それをもって、あかしの箱をおおい、
3749 04 4 6 その上に、じゅごんの皮のおおいを施し、またその上に総青色の布をうちかけ、環にさおをさし入れる。
3750 04 4 7 また供えのパンの机の上には、青色の布をうちかけ、その上に、さら、乳香を盛る杯、鉢、および灌祭の瓶を並べ、また絶やさず供えるパンを置き、
3751 04 4 8 緋色の布をその上にうちかけ、じゅごんの皮のおおいをもって、これをおおい、さおをさし入れる。
3752 04 4 9 また青色の布を取って、燭台とそのともし火ざら、芯切りばさみ、芯取りざら、およびそれに用いるもろもろの油の器をおおい、
3753 04 4 10 じゅごんの皮のおおいのうちに、燭台とそのもろもろの器をいれて、担架に載せる。
3754 04 4 11 また、金の祭壇の上に青色の布をうちかけ、じゅごんの皮のおおいで、これをおおい、そのさおをさし入れる。
3755 04 4 12 また聖所の務に用いる務の器をみな取り、青色の布に包み、じゅごんの皮のおおいで、これをおおって、担架に載せる。
3756 04 4 13 また祭壇の灰を取り去って、紫の布をその祭壇の上にうちかけ、
3757 04 4 14 その上に、務をするのに用いるもろもろの器、すなわち、火ざら、肉さし、十能、鉢、および祭壇のすべての器を載せ、またその上に、じゅごんの皮のおおいをうちかけ、そしてさおをさし入れる。
3758 04 4 15 宿営の進むとき、アロンとその子たちとが、聖所と聖所のすべての器をおおうことを終ったならば、その後コハテの子たちは、それを運ぶために、はいってこなければならない。しかし、彼らは聖なる物に触れてはならない。触れると死ぬであろう。会見の幕屋のうちの、これらの物は、コハテの子たちが運ぶものである。
3759 04 4 16 祭司アロンの子エレアザルは、ともし油、香ばしい薫香、絶やさず供える素祭および注ぎ油をつかさどり、また幕屋の全体と、そのうちにあるすべての聖なる物、およびその所のもろもろの器をつかさどらなければならない」。
3760 04 4 17 主はまた、モーセとアロンに言われた、
3761 04 4 18 「あなたがたはコハテびとの一族を、レビびとのうちから絶えさせてはならない。
3762 04 4 19 彼らがいと聖なる物に近づく時、死なないで、命を保つために、このようにしなさい、すなわち、アロンとその子たちが、まず、はいり、彼らをおのおのその働きにつかせ、そのになうべきものを取らせなさい。
3763 04 4 20 しかし、彼らは、はいって、ひと目でも聖なる物を見てはならない。見るならば死ぬであろう」。
3764 04 4 21 主はまたモーセに言われた、
3765 04 4 22 「あなたはまたゲルションの子たちの総数を、その父祖の家により、その氏族にしたがって調べ、
3766 04 4 23 三十歳以上五十歳以下で、務につき、会見の幕屋で働くことのできる者を、ことごとく数えなさい。
3767 04 4 24 ゲルションびとの氏族の務として働くことと、運ぶ物とは次のとおりである。
3768 04 4 25 すなわち、彼らは幕屋の幕、会見の幕屋およびそのおおいと、その上のじゅごんの皮のおおい、ならびに会見の幕屋の入口のとばりを運び、
3769 04 4 26 また庭のあげばり、および幕屋と祭壇のまわりの庭の門の入口のとばりと、そのひも、ならびにそれに用いるすべての器を運ばなければならない。そして彼らはすべてこれらのものについての働きをしなければならない。
3770 04 4 27 ゲルションびとの子たちのすべての務、すなわち、その運ぶことと、働くこととは、すべてアロンとその子たちの命に従わなければならない。あなたがたは彼らにすべてその運ぶべき物を定めて、これを守らせなければならない。
3771 04 4 28 これはすなわちゲルションびとの子たちの氏族が、会見の幕屋でする働きであって、彼らの務は祭司アロンの子イタマルの指揮のもとにおかなければならない。
3772 04 4 29 メラリの子たちをもまたあなたはその氏族により、その祖父の家にしたがって調べ、
3773 04 4 30 三十歳以上五十歳以下で、務につき、会見の幕屋の働きをすることのできる者を、ことごとく数えなさい。
3774 04 4 31 彼らが会見の幕屋でするすべての務にしたがって、その運ぶ責任のある物は次のとおりである。すなわち、幕屋の枠、その横木、その柱、その座、
3775 04 4 32 庭のまわりの柱、その座、その釘、そのひも、またそのすべての器、およびそれに用いるすべてのものである。あなたがたは彼らが運ぶ責任のある器を、その名によって割り当てなければならない。
3776 04 4 33 これはすなわちメラリの子たちの氏族の働きであって、彼らは祭司アロンの子イタマルの指揮のもとに、会見の幕屋で、このすべての働きをしなければならない」。
3777 04 4 34 そこでモーセとアロン、および会衆のつかさたちは、コハテの子たちをその氏族により、その父祖の家にしたがって調べ、
3778 04 4 35 三十歳以上五十歳以下で、務につき、会見の幕屋で働くことのできる者を、ことごとく数えたが、
3779 04 4 36 その氏族にしたがって数えられた者は二千七百五十人であった。
3780 04 4 37 これはすなわち、コハテびとの氏族の数えられた者で、すべて会見の幕屋で働くことのできる者であった。モーセとアロンが、主のモーセによって命じられたところにしたがって数えたのである。
3781 04 4 38 またゲルションの子たちを、その氏族により、その父祖の家にしたがって調べ、
3782 04 4 39 三十歳以上五十歳以下で、務につき、会見の幕屋で働くことのできる者を、ことごとく数えたが、
3783 04 4 40 その氏族により、その父祖の家にしたがって数えられた者は二千六百三十人であった。
3784 04 4 41 これはすなわち、ゲルションの子たちの氏族の数えられた者で、すべて会見の幕屋で働くことのできる者であった。モーセとアロンが、主の命にしたがって数えたのである。
3785 04 4 42 またメラリの子たちの氏族を、その氏族により、その父祖の家にしたがって調べ、
3786 04 4 43 三十歳以上五十歳以下で、務につき、会見の幕屋で働くことのできる者を、ことごとく数えたが、
3787 04 4 44 その氏族にしたがって数えられた者は三千二百人であった。
3788 04 4 45 これはすなわち、メラリの子たちの氏族の数えられた者で、モーセとアロンが、主のモーセによって命じられたところにしたがって数えたのである。
3789 04 4 46 モーセとアロン、およびイスラエルのつかさたちは、レビびとを、その氏族により、その父祖の家にしたがって調べ、
3790 04 4 47 三十歳以上五十歳以下で、会見の幕屋にはいって務の働きをし、また、運ぶ働きをする者を、ことごとく数えたが、
3791 04 4 48 その数えられた者は八千五百八十人であった。
3792 04 4 49 彼らは主の命により、モーセによって任じられ、おのおのその働きにつき、かつその運ぶところを受け持った。こうして彼らは主のモーセに命じられたように数えられたのである。
3793 04 5 1 主はまたモーセに言われた、
3794 04 5 2 「イスラエルの人々に命じて、らい病人、流出のある者、死体にふれて汚れた者を、ことごとく宿営の外に出させなさい。
3795 04 5 3 男でも女でも、あなたがたは彼らを宿営の外に出してそこにおらせ、彼らに宿営を汚させてはならない。わたしがその中に住んでいるからである」。
3796 04 5 4 イスラエルの人々はそのようにして、彼らを宿営の外に出した。すなわち、主がモーセに言われたようにイスラエルの人々は行った。
3797 04 5 5 主はまたモーセに言われた、
3798 04 5 6 「イスラエルの人々に告げなさい、『男または女が、もし人の犯す罪をおかして、主に罪を得、その人がとがある者となる時は、
3799 04 5 7 その犯した罪を告白し、その物の価にその五分の一を加えて、彼がとがを犯した相手方に渡し、そのとがをことごとく償わなければならない。
3800 04 5 8 しかし、もし、そのとがの償いを受け取るべき親族も、その人にない時は、主にそのとがの償いをして、これを祭司に帰せしめなければならない。なお、このほか、そのあがないをするために用いた贖罪の雄羊も、祭司に帰せしめなければならない。
3801 04 5 9 イスラエルの人々が、祭司のもとに携えて来るすべての聖なるささげ物は、みな祭司に帰せしめなければならない。
3802 04 5 10 すべて人の聖なるささげ物は祭司に帰し、すべて人が祭司に与える物は祭司に帰するであろう』」。
3803 04 5 11 主はまたモーセに言われた、
3804 04 5 12 「イスラエルの人々に告げなさい、『もし人の妻たる者が、道ならぬ事をして、その夫に罪を犯し、
3805 04 5 13 人が彼女と寝たのに、その事が夫の目に隠れて現れず、彼女はその身を汚したけれども、それに対する証人もなく、彼女もまたその時に捕えられなかった場合、
3806 04 5 14 すなわち、妻が身を汚したために、夫が疑いの心を起して妻を疑うことがあり、または妻が身を汚した事がないのに、夫が疑いの心を起して妻を疑うことがあれば、
3807 04 5 15 夫は妻を祭司のもとに伴い、彼女のために大麦の粉一エパの十分の一を供え物として携えてこなければならない。ただし、その上に油を注いではならない。また乳香を加えてはならない。これは疑いの供え物、覚えの供え物であって罪を覚えさせるものだからである。
3808 04 5 16 祭司はその女を近く進ませ、主の前に立たせなければならない。
3809 04 5 17 祭司はまた土の器に聖なる水を入れ、幕屋のゆかのちりを取ってその水に入れ、
3810 04 5 18 その女を主の前に立たせ、女にその髪の毛をほどかせ、覚えの供え物すなわち、疑いの供え物を、その手に持たせなければならない。そして祭司は、のろいの苦い水を手に取り、
3811 04 5 19 女に誓わせて、これに言わなければならない、「もし人があなたと寝たことがなく、またあなたが、夫のもとにあって、道ならぬ事をして汚れたことがなければ、のろいの苦い水も、あなたに害を与えないであろう。
3812 04 5 20 しかし、あなたが、もし夫のもとにあって、道ならぬことをして身を汚し、あなたの夫でない人が、あなたと寝たことがあるならば、――
3813 04 5 21 祭司はその女に、のろいの誓いをもって誓わせ、その女に言わなければならない。――主はあなたのももをやせさせ、あなたの腹をふくれさせて、あなたを民のうちの、のろいとし、また、ののしりとされるように。
3814 04 5 22 また、のろいの水が、あなたの腹にはいってあなたの腹をふくれさせ、あなたのももをやせさせるように」。その時、女は「アァメン、アァメン」と言わなければならない。
3815 04 5 23 祭司は、こののろいを書き物に書きしるし、それを苦い水に洗い落し、
3816 04 5 24 女にそののろいの水を飲ませなければならない。そののろいの水は彼女のうちにはいって苦くなるであろう。
3817 04 5 25 そして祭司はその女の手から疑いの供え物を取り、その供え物を主の前に揺り動かして、それを祭壇に持ってこなければならない。
3818 04 5 26 祭司はその供え物のうちから、覚えの分、一握りを取って、それを祭壇で焼き、その後、女にその水を飲ませなければならない。
3819 04 5 27 その水を女に飲ませる時、もしその女が身を汚し、夫に罪を犯した事があれば、そののろいの水は女のうちにはいって苦くなり、その腹はふくれ、ももはやせて、その女は民のうちののろいとなるであろう。
3820 04 5 28 しかし、もし女が身を汚した事がなく、清いならば、害を受けないで、子を産むことができるであろう。
3821 04 5 29 これは疑いのある時のおきてである。妻たる者が夫のもとにあって、道ならぬ事をして身を汚した時、
3822 04 5 30 または夫たる者が疑いの心を起して、妻を疑う時、彼はその女を主の前に立たせ、祭司はこのおきてを、ことごとく彼女に行わなければならない。
3823 04 5 31 こうするならば、夫は罪がなく、妻は罪を負うであろう』」。
3824 04 6 1 主はまたモーセに言われた、
3825 04 6 2 「イスラエルの人々に言いなさい、『男または女が、特に誓いを立て、ナジルびととなる誓願をして、身を主に聖別する時は、
3826 04 6 3 ぶどう酒と濃い酒を断ち、ぶどう酒の酢となったもの、濃い酒の酢となったものを飲まず、また、ぶどうの汁を飲まず、また生でも干したものでも、ぶどうを食べてはならない。
3827 04 6 4 ナジルびとである間は、すべて、ぶどうの木からできるものは、種も皮も食べてはならない。
3828 04 6 5 また、ナジルびとたる誓願を立てている間は、すべて、かみそりを頭に当ててはならない。身を主に聖別した日数の満ちるまで、彼は聖なるものであるから、髪の毛をのばしておかなければならない。
3829 04 6 6 身を主に聖別している間は、すべて死体に近づいてはならない。
3830 04 6 7 父母、兄弟、姉妹が死んだ時でも、そのために身を汚してはならない。神に聖別したしるしが、頭にあるからである。
3831 04 6 8 彼はナジルびとである間は、すべて主の聖なる者である。
3832 04 6 9 もし人がはからずも彼のかたわらに死んで、彼の聖別した頭を汚したならば、彼は身を清める日に、頭をそらなければならない。すなわち、七日目にそれをそらなければならない。
3833 04 6 10 そして八日目に山ばと二羽、または家ばとのひな二羽を携えて、会見の幕屋の入口におる祭司の所に行かなければならない。
3834 04 6 11 祭司はその一羽を罪祭に、一羽を燔祭にささげて、彼が死体によって得た罪を彼のためにあがない、その日に彼の頭を聖別しなければならない。
3835 04 6 12 彼はまたナジルびとたる日の数を、改めて主に聖別し、一歳の雄の小羊を携えてきて、愆祭としなければならない。それ以前の日は、彼がその聖別を汚したので、無効になるであろう。
3836 04 6 13 これがナジルびとの律法である。聖別の日数が満ちた時は、その人を会見の幕屋の入口に連れてこなければならない。
3837 04 6 14 そしてその人は供え物を主にささげなければならない。すなわち、一歳の雄の小羊の全きもの一頭を燔祭とし、一歳の雌の小羊の全きもの一頭を罪祭とし、雄羊の全きもの一頭を酬恩祭とし、
3838 04 6 15 また種入れぬパンの一かご、油を混ぜて作った麦粉の菓子、油を塗った種入れぬ煎餅、および素祭と灌祭を携えてこなければならない。
3839 04 6 16 祭司はこれを主の前に携えてきて、その罪祭と燔祭とをささげ、
3840 04 6 17 また雄羊を種入れぬパンの一かごと共に、酬恩祭の犠牲として、主にささげなければならない。祭司はまたその素祭と灌祭をもささげなければならない。
3841 04 6 18 そのナジルびとは会見の幕屋の入口で、聖別した頭をそり、その聖別した頭の髪を取って、これを酬恩祭の犠牲の下にある火の上に置かなければならない。
3842 04 6 19 祭司はその雄羊の肩の煮えたものと、かごから取った種入れぬ菓子一つと、種入れぬ煎餅一つを取って、これをナジルびとが、その聖別した頭をそった後、その手に授け、
3843 04 6 20 祭司は主の前でこれを揺り動かして揺祭としなければならない。これは聖なる物であって、その揺り動かした胸と、ささげたももと共に、祭司に帰するであろう。こうして後、そのナジルびとは、ぶどう酒を飲むことができる。
3844 04 6 21 これは誓願をするナジルびとと、そのナジルびとたる事のために、主にささげる彼の供え物についての律法である。このほかにその力の及ぶ物をささげることができる。すなわち、彼はその誓う誓願のように、ナジルびとの律法にしたがって行わなければならない』」。
3845 04 6 22 主はまたモーセに言われた、
3846 04 6 23 「アロンとその子たちに言いなさい、『あなたがたはイスラエルの人々を祝福してこのように言わなければならない。
3847 04 6 24 「願わくは主があなたを祝福し、あなたを守られるように。
3848 04 6 25 願わくは主がみ顔をもってあなたを照し、あなたを恵まれるように。
3849 04 6 26 願わくは主がみ顔をあなたに向け、あなたに平安を賜わるように」』。
3850 04 6 27 こうして彼らがイスラエルの人々のために、わたしの名を唱えるならば、わたしは彼らを祝福するであろう」。
3851 04 7 1 モーセが幕屋を建て終り、これに油を注いで聖別し、またそのすべての器、およびその祭壇と、そのすべての器に油を注いで、これを聖別した日に、
3852 04 7 2 イスラエルのつかさたち、すなわち、その父祖の家の長たちは、ささげ物をした。彼らは各部族のつかさたちであって、その数えられた人々をつかさどる者どもであった。
3853 04 7 3 彼らはその供え物を、主の前に携えてきたが、おおいのある車六両と雄牛十二頭であった。つかさふたりに車一両、ひとりに雄牛一頭である。彼らはこれを幕屋の前に引いてきた。
3854 04 7 4 その時、主はモーセに言われた、
3855 04 7 5 「あなたはこれを会見の幕屋の務に用いるために、彼らから受け取って、レビびとに、おのおのその務にしたがって、渡さなければならない」。
3856 04 7 6 そこでモーセはその車と雄牛を受け取って、これをレビびとに渡した。
3857 04 7 7 すなわち、ゲルションの子たちには、その務にしたがって、車二両と雄牛四頭を渡し、
3858 04 7 8 メラリの子たちには、その務にしたがって車四両と雄牛八頭を渡し、祭司アロンの子イタマルに、これを監督させた。
3859 04 7 9 しかし、コハテの子たちには、何をも渡さなかった。彼らの務は聖なる物を、肩にになって運ぶことであったからである。
3860 04 7 10 つかさたちは、また祭壇に油を注ぐ日に、祭壇奉納の供え物を携えてきて、その供え物を祭壇の前にささげた。
3861 04 7 11 主はモーセに言われた、「つかさたちは一日にひとりずつ、祭壇奉納の供え物をささげなければならない」。
3862 04 7 12 第一日に供え物をささげた者は、ユダの部族のアミナダブの子ナションであった。
3863 04 7 13 その供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シケル、銀の鉢一つ、これは七十シケル、共に聖所のシケルによる。この二つには素祭に使う油を混ぜた麦粉を満たしていた。
3864 04 7 14 また十シケルの金の杯一つ。これには薫香を満たしていた。
3865 04 7 15 また燔祭に使う若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の小羊一頭。
3866 04 7 16 罪祭に使う雄やぎ一頭。
3867 04 7 17 酬恩祭の犠牲に使う雄牛二頭、雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の雄の小羊五頭であって、これはアミナダブの子ナションの供え物であった。
3868 04 7 18 第二日にはイッサカルのつかさ、ツアルの子ネタニエルがささげ物をした。
3869 04 7 19 そのささげた供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シケル、銀の鉢一つ、これは七十シケル、共に聖所のシケルによる。この二つには素祭に使う油を混ぜた麦粉を満たしていた。
3870 04 7 20 また十シケルの金の杯一つ、これには薫香を満たしていた。
3871 04 7 21 また燔祭に使う若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の小羊一頭。
3872 04 7 22 罪祭に使う雄やぎ一頭。
3873 04 7 23 酬恩祭の犠牲に使う雄牛二頭、雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の雄の小羊五頭であって、これはツアルの子ネタニエルの供え物であった。
3874 04 7 24 第三日にはゼブルンの子たちのつかさ、ヘロンの子エリアブ。
3875 04 7 25 その供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シケル、銀の鉢一つ、これは七十シケル、共に聖所のシケルによる。この二つには素祭に使う油を混ぜた麦粉を満たしていた。
3876 04 7 26 また十シケルの金の杯一つ、これには薫香を満たしていた。
3877 04 7 27 また燔祭に使う若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の小羊一頭。
3878 04 7 28 罪祭に使う雄やぎ一頭。
3879 04 7 29 酬恩祭の犠牲に使う雄牛二頭、雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の雄の小羊五頭であって、これはヘロンの子エリアブの供え物であった。
3880 04 7 30 第四日にはルベンの子たちのつかさ、シデウルの子エリヅル。
3881 04 7 31 その供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シケル、銀の鉢一つ、これは七十シケル、共に聖所のシケルによる。この二つには素祭に使う油を混ぜた麦粉を満たしていた。
3882 04 7 32 また十シケルの金の杯一つ、これには薫香を満たしていた。
3883 04 7 33 また燔祭に使う若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の小羊一頭。
3884 04 7 34 罪祭に使う雄やぎ一頭。
3885 04 7 35 酬恩祭の犠牲に使う雄牛二頭、雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の雄の小羊五頭であって、これはシデウルの子エリヅルの供え物であった。
3886 04 7 36 第五日にはシメオンの子たちのつかさ、ツリシャダイの子シルミエル。
3887 04 7 37 その供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シケル、銀の鉢一つ、これは七十シケル、共に聖所のシケルによる。この二つには素祭に使う油を混ぜた麦粉を満たしていた。
3888 04 7 38 また十シケルの金の杯一つ、これには薫香を満たしていた。
3889 04 7 39 また燔祭に使う若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の小羊一頭。
3890 04 7 40 罪祭に使う雄やぎ一頭。
3891 04 7 41 酬恩祭の犠牲に使う雄牛二頭、雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の雄の小羊五頭であって、これはツリシャダイの子シルミエルの供え物であった。
3892 04 7 42 第六日にはガドの子たちのつかさ、デウエルの子エリアサフ。
3893 04 7 43 その供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シケル、銀の鉢一つ、これは七十シケル、共に聖所のシケルによる。この二つには素祭に使う油を混ぜた麦粉を満たしていた。
3894 04 7 44 また十シケルの金の杯一つ、これには薫香を満たしていた。
3895 04 7 45 また燔祭に使う若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の小羊一頭。
3896 04 7 46 罪祭に使う雄やぎ一頭。
3897 04 7 47 酬恩祭の犠牲に使う雄牛二頭、雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の雄の小羊五頭であって、これはデウエルの子エリアサフの供え物であった。
3898 04 7 48 第七日にはエフライムの子たちのつかさ、アミホデの子エリシャマ。
3899 04 7 49 その供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シケル、銀の鉢一つ、これは七十シケル、共に聖所のシケルによる。この二つには素祭に使う油を混ぜた麦粉を満たしていた。
3900 04 7 50 また十シケルの金の杯一つ、これには薫香を満たしていた。
3901 04 7 51 また燔祭に使う若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の小羊一頭。
3902 04 7 52 罪祭に使う雄やぎ一頭。
3903 04 7 53 酬恩祭の犠牲に使う雄牛二頭、雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の雄の小羊五頭であって、これはアミホデの子エリシャマの供え物であった。
3904 04 7 54 第八日にはマナセの子たちのつかさ、パダヅルの子ガマリエル。
3905 04 7 55 その供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シケル、銀の鉢一つ、これは七十シケル、共に聖所のシケルによる。この二つには素祭に使う油を混ぜた麦粉を満たしていた。
3906 04 7 56 また十シケルの金の杯一つ、これには薫香を満たしていた。
3907 04 7 57 また燔祭に使う若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の小羊一頭。
3908 04 7 58 罪祭に使う雄やぎ一頭。
3909 04 7 59 酬恩祭の犠牲に使う雄牛二頭、雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の雄の小羊五頭であって、これはパダヅルの子ガマリエルの供え物であった。
3910 04 7 60 第九日にはベニヤミンの子らのつかさ、ギデオニの子アビダン。
3911 04 7 61 その供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シケル、銀の鉢一つ、これは七十シケル、共に聖所のシケルによる。この二つには素祭に使う油を混ぜた麦粉を満たしていた。
3912 04 7 62 また十シケルの金の杯一つ、これには薫香を満たしていた。
3913 04 7 63 また燔祭に使う若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の小羊一頭。
3914 04 7 64 罪祭に使う雄やぎ一頭。
3915 04 7 65 酬恩祭の犠牲に使う雄牛二頭、雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の雄の小羊五頭であって、これはギデオニの子アビダンの供え物であった。
3916 04 7 66 第十日にはダンの子たちのつかさ、アミシャダイの子アヒエゼル。
3917 04 7 67 その供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シケル、銀の鉢一つ、これは七十シケル、共に聖所のシケルによる。この二つには素祭に使う油を混ぜた麦粉を満たしていた。
3918 04 7 68 また十シケルの金の杯一つ、これには薫香を満たしていた。
3919 04 7 69 また燔祭に使う若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の小羊一頭。
3920 04 7 70 罪祭に使う雄やぎ一頭。
3921 04 7 71 酬恩祭の犠牲に使う雄牛二頭、雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の雄の小羊五頭であって、これはアミシャダイの子アヒエゼルの供え物であった。
3922 04 7 72 第十一日にはアセルの子たちのつかさ、オクランの子パギエル。
3923 04 7 73 その供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シケル、銀の鉢一つ、これは七十シケル、共に聖所のシケルによる。この二つには素祭に使う油を混ぜた麦粉を満たしていた。
3924 04 7 74 また十シケルの金の杯一つ、これには薫香を満たしていた。
3925 04 7 75 また燔祭に使う若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の小羊一頭。
3926 04 7 76 罪祭に使う雄やぎ一頭。
3927 04 7 77 酬恩祭の犠牲に使う雄牛二頭、雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の雄の小羊五頭であって、これはオクランの子パギエルの供え物であった。
3928 04 7 78 第十二日にはナフタリの子たちのつかさ、エナンの子アヒラ。
3929 04 7 79 その供え物は銀のさら一つ、その重さは百三十シケル、銀の鉢一つ、これは七十シケル、共に聖所のシケルによる。この二つには素祭に使う油を混ぜた麦粉を満たしていた。
3930 04 7 80 また十シケルの金の杯一つ、これには薫香を満たしていた。
3931 04 7 81 また燔祭に使う若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の小羊一頭。
3932 04 7 82 罪祭に使う雄やぎ一頭。
3933 04 7 83 酬恩祭の犠牲に使う雄牛二頭。雄羊五頭、雄やぎ五頭、一歳の雄の小羊五頭であって、これはエナンの子アヒラの供え物であった。
3934 04 7 84 以上は祭壇に油を注ぐ日に、イスラエルのつかさたちが、祭壇を奉納する供え物として、ささげたものである。すなわち、銀のさら十二、銀の鉢十二、金の杯十二。
3935 04 7 85 銀のさらはそれぞれ百三十シケル、鉢はそれぞれ七十シケル、聖所のシケルによれば、この銀の器は合わせて二千四百シケル。
3936 04 7 86 また薫香の満ちている十二の金の杯は、聖所のシケルによれば、それぞれ十シケル、その杯の金は合わせて百二十シケルであった。
3937 04 7 87 また燔祭に使う雄牛は合わせて十二、雄羊は十二、一歳の雄の小羊は十二、このほかにその素祭のものがあった。また罪祭に使う雄やぎは十二。
3938 04 7 88 酬恩祭の犠牲に使う雄牛は合わせて二十四、雄羊は六十、雄やぎは六十、一歳の雄の小羊は六十であって、これは祭壇に油を注いだ後に、祭壇奉納の供え物としてささげたものである。
3939 04 7 89 さてモーセは主と語るために、会見の幕屋にはいって、あかしの箱の上の、贖罪所の上、二つのケルビムの間から自分に語られる声を聞いた。すなわち、主は彼に語られた。
3940 04 8 1 主はモーセに言われた、
3941 04 8 2 「アロンに言いなさい、『あなたがともし火をともす時は、七つのともし火で燭台の前方を照すようにしなさい』」。
3942 04 8 3 アロンはそのようにした。すなわち、主がモーセに命じられたように、燭台の前方を照すように、ともし火をともした。
3943 04 8 4 燭台の造りは次のとおりである。それは金の打ち物で、その台もその花も共に打物造りであった。モーセは主に示された型にしたがって、そのようにその燭台を造った。
3944 04 8 5 主はまたモーセに言われた、
3945 04 8 6 「レビびとをイスラエルの人々のうちから取って、彼らを清めなさい。
3946 04 8 7 あなたはこのようにして彼らを清めなければならない。すなわち、罪を清める水を彼らに注ぎかけ、彼らに全身をそらせ、衣服を洗わせて、身を清めさせ、
3947 04 8 8 そして彼らに若い雄牛一頭と、油を混ぜた麦粉の素祭とを取らせなさい。あなたはまた、ほかに若い雄牛を罪祭のために取らなければならない。
3948 04 8 9 そして、あなたはレビびとを会見の幕屋の前に連れてきて、イスラエルの人々の全会衆を集め、
3949 04 8 10 レビびとを主の前に進ませ、イスラエルの人々をして、手をレビびとの上に置かせなければならない。
3950 04 8 11 そしてアロンは、レビびとをイスラエルの人々のささげる揺祭として、主の前にささげなければならない。これは彼らに主の務をさせるためである。
3951 04 8 12 それからあなたはレビびとをして、手をかの雄牛の頭の上に置かせ、その一つを罪祭とし、一つを燔祭として主にささげ、レビびとのために罪のあがないをしなければならない。
3952 04 8 13 あなたはレビびとを、アロンとその子たちの前に立たせ、これを揺祭として主にささげなければならない。
3953 04 8 14 こうして、あなたはレビびとをイスラエルの人々のうちから分かち、レビびとをわたしのものとしなければならない。
3954 04 8 15 こうして後レビびとは会見の幕屋にはいって務につくことができる。あなたは彼らを清め、彼らをささげて揺祭としなければならない。
3955 04 8 16 彼らはイスラエルの人々のうちから、全くわたしにささげられたものだからである。イスラエルの人々のうちの初めに生れた者、すなわち、すべてのういごの代りに、わたしは彼らを取ってわたしのものとした。
3956 04 8 17 イスラエルの人々のうちのういごは、人も獣も、みなわたしのものだからである。わたしはエジプトの地で、すべてのういごを撃ち殺した日に、彼らを聖別してわたしのものとした。
3957 04 8 18 それでわたしはイスラエルの人々のうちの、すべてのういごの代りにレビびとを取った。
3958 04 8 19 わたしはイスラエルの人々のうちからレビびとを取って、アロンとその子たちに与え、彼らに会見の幕屋で、イスラエルの人々に代って務をさせ、またイスラエルの人々のために罪のあがないをさせるであろう。これはイスラエルの人々が、聖所に近づいて、イスラエルの人々のうちに災の起ることのないようにするためである」。
3959 04 8 20 モーセとアロン、およびイスラエルの人々の全会衆は、すべて主がレビびとの事につき、モーセに命じられた所にしたがって、レビびとに行った、すなわち、イスラエルの人々は、そのように彼らに行った。
3960 04 8 21 そこでレビびとは身を清め、その衣服を洗った。アロンは彼らを主の前にささげて揺祭とした。アロンはまた彼らのために、罪のあがないをして彼らを清めた。
3961 04 8 22 こうして後、レビびとは会見の幕屋にはいって、アロンとその子たちに仕えて務をした。すなわち、彼らはレビびとの事について、主がモーセに命じられた所にしたがって、そのように彼らに行った。
3962 04 8 23 主はまたモーセに言われた、
3963 04 8 24 「レビびとは次のようにしなければならない。すなわち、二十五歳以上の者は務につき、会見の幕屋の働きをしなければならない。
3964 04 8 25 しかし、五十歳からは務の働きを退き、重ねて務をしてはならない。
3965 04 8 26 ただ、会見の幕屋でその兄弟たちの務の助けをすることができる。しかし、務をしてはならない。あなたがレビびとにその務をさせるには、このようにしなければならない」。
3966 04 9 1 エジプトの国を出た次の年の正月、主はシナイの荒野でモーセに言われた、
3967 04 9 2 「イスラエルの人々に、過越の祭を定めの時に行わせなさい。
3968 04 9 3 この月の十四日の夕暮、定めの時に、それを行わなければならない。あなたがたは、そのすべての定めと、そのすべてのおきてにしたがって、それを行わなければならない」。
3969 04 9 4 そこでモーセがイスラエルの人々に、過越の祭を行わなければならないと言ったので、
3970 04 9 5 彼らは正月の十四日の夕暮、シナイの荒野で過越の祭を行った。すなわち、イスラエルの人々は、すべて主がモーセに命じられたようにおこなった。
3971 04 9 6 ところが人の死体に触れて身を汚したために、その日に過越の祭を行うことのできない人々があって、その日モーセとアロンの前にきて、
3972 04 9 7 その人々は彼に言った、「わたしたちは人の死体に触れて身を汚しましたが、なぜその定めの時に、イスラエルの人々と共に、主に供え物をささげることができないのですか」。
3973 04 9 8 モーセは彼らに言った、「しばらく待て。主があなたがたについて、どう仰せになるかを聞こう」。
3974 04 9 9 主はモーセに言われた、
3975 04 9 10 「イスラエルの人々に言いなさい、『あなたがたのうち、また、あなたがたの子孫のうち、死体に触れて身を汚した人も、遠い旅路にある人も、なお、過越の祭を主に対して行うことができるであろう。
3976 04 9 11 すなわち、二月の十四日の夕暮、それを行い、種入れぬパンと苦菜を添えて、それを食べなければならない。
3977 04 9 12 これを少しでも朝まで残しておいてはならない。またその骨は一本でも折ってはならない。過越の祭のすべての定めにしたがってこれを行わなければならない。
3978 04 9 13 しかし、その身は清く、旅に出てもいないのに、過越の祭を行わないときは、その人は民のうちから断たれるであろう。このような人は、定めの時に主の供え物をささげないゆえ、その罪を負わなければならない。
3979 04 9 14 もし他国の人が、あなたがたのうちに寄留していて、主に対して過越の祭を行おうとするならば、過越の祭の定めにより、そのおきてにしたがって、これを行わなければならない。あなたがたは他国の人にも、自国の人にも、同一の定めを用いなければならない』」。
3980 04 9 15 幕屋を建てた日に、雲は幕屋をおおった。すれはすなわち、あかしの幕屋であって、夕には、幕屋の上に、雲は火のように見えて、朝にまで及んだ。
3981 04 9 16 常にそうであって、昼は雲がそれをおおい、夜は火のように見えた。
3982 04 9 17 雲が幕屋を離れてのぼる時は、イスラエルの人々は、ただちに道に進んだ。また雲がとどまる所に、イスラエルの人々は宿営した。
3983 04 9 18 すなわち、イスラエルの人々は、主の命によって道に進み、主の命によって宿営し、幕屋の上に雲がとどまっている間は、宿営していた。
3984 04 9 19 幕屋の上に、日久しく雲のとどまる時は、イスラエルの人々は主の言いつけを守って、道に進まなかった。
3985 04 9 20 また幕屋の上に、雲のとどまる日の少ない時もあったが、彼らは、ただ主の命にしたがって宿営し、主の命にしたがって、道に進んだ。
3986 04 9 21 また雲は夕から朝まで、とどまることもあったが、朝になって、雲がのぼる時は、彼らは道に進んだ。また昼でも夜でも、雲がのぼる時は、彼らは道に進んだ。
3987 04 9 22 ふつかでも、一か月でも、あるいはそれ以上でも、幕屋の上に、雲がとどまっている間は、イスラエルの人々は宿営していて、道に進まなかったが、それがのぼると道に進んだ。
3988 04 9 23 すなわち、彼らは主の命にしたがって宿営し、主の命にしたがって道に進み、モーセによって、主が命じられたとおりに、主の言いつけを守った。
3989 04 10 1 主はモーセに言われた、
3990 04 10 2 「銀のラッパを二本つくりなさい。すなわち、打物造りとし、それで会衆を呼び集め、また宿営を進ませなさい。
3991 04 10 3 この二つを吹くときは、全会衆が会見の幕屋の入口に、あなたの所に集まってこなければならない。
3992 04 10 4 もしその一つだけを吹くときは、イスラエルの氏族の長であるつかさたちが、あなたの所に集まってこなければならない。
3993 04 10 5 またあなたがたが警報を吹き鳴らす時は、東の方の宿営が、道に進まなければならない。
3994 04 10 6 二度目の警報を吹き鳴らす時は、南の方の宿営が、道に進まなければならない。すべて道に進む時は、警報を吹き鳴らさなければならない。
3995 04 10 7 また会衆を集める時にも、ラッパを吹き鳴らすが、警報は吹き鳴らしてはならない。
3996 04 10 8 アロンの子である祭司たちが、ラッパを吹かなければならない。これはあなたがたが、代々ながく守るべき定めとしなければならない。
3997 04 10 9 また、あなたがたの国で、あなたがたをしえたげるあだとの戦いに出る時は、ラッパをもって、警報を吹き鳴らさなければならない。そうするならば、あなたがたは、あなたがたの神、主に覚えられて、あなたがたの敵から救われるであろう。
3998 04 10 10 また、あなたがたの喜びの日、あなたがたの祝いの時、および月々の第一日には、あなたがたの燔祭と酬恩祭の犠牲をささげるに当って、ラッパを吹き鳴らさなければならない。そうするならば、あなたがたの神は、それによって、あなたがたを覚えられるであろう。わたしはあなたがたの神、主である」。
3999 04 10 11 第二年の二月二十日に、雲があかしの幕屋を離れてのぼったので、
4000 04 10 12 イスラエルの人々は、シナイの荒野を出て、その旅路に進んだが、パランの荒野に至って、雲はとどまった。
4001 04 10 13 こうして彼らは、主がモーセによって、命じられたところにしたがって、道に進むことを始めた。
4002 04 10 14 先頭には、ユダの子たちの宿営の旗が、その部隊を従えて進んだ。ユダの部隊の長はアミナダブの子ナション、
4003 04 10 15 イッサカルの子たちの部族の部隊の長はツアルの子ネタニエル、
4004 04 10 16 ゼブルンの子たちの部族の部隊の長はヘロンの子エリアブであった。
4005 04 10 17 そして幕屋は取りくずされ、ゲルションの子たち、およびメラリの子たちは幕屋を運び進んだ。
4006 04 10 18 次にルベンの宿営の旗が、その部隊を従えて進んだ。ルベンの部隊の長はシデウルの子エリヅル、
4007 04 10 19 シメオンの子たちの部族の部隊の長はツリシャダイの子シルミエル、
4008 04 10 20 ガドの子たちの部族の部隊の長はデウエルの子エリアサフであった。
4009 04 10 21 そしてコハテびとは聖なる物を運び進んだ。これが着くまでに、人々は幕屋を建て終るのである。
4010 04 10 22 次にエフライムの子たちの宿営の旗が、その部隊を従えて進んだ。エフライムの部隊の長はアミホデの子エリシャマ、
4011 04 10 23 マナセの子たちの部族の部隊の長はパダヅルの子ガマリエル、
4012 04 10 24 ベニヤミンの子たちの部族の部隊の長はギデオニの子アビダンであった。
4013 04 10 25 次にダンの子たちの宿営の旗が、その部隊を従えて進んだ。この部隊はすべての宿営のしんがりであった。ダンの部隊の長はアミシャダイの子アヒエゼル、
4014 04 10 26 アセルの子たちの部族の部隊の長はオクランの子パギエル、
4015 04 10 27 ナフタリの子たちの部族の部隊の長はエナンの子アヒラであった。
4016 04 10 28 イスラエルの人々が、その道に進む時は、このように、その部隊に従って進んだ。
4017 04 10 29 さて、モーセは、妻の父、ミデヤンびとリウエルの子ホバブに言った、「わたしたちは、かつて主がおまえたちに与えると約束された所に向かって進んでいます。あなたも一緒においでください。あなたが幸福になられるようにいたしましょう。主がイスラエルに幸福を約束されたのですから」。
4018 04 10 30 彼はモーセに言った、「わたしは行きません。わたしは国に帰って、親族のもとに行きます」。
4019 04 10 31 モーセはまた言った、「どうかわたしたちを見捨てないでください。あなたは、わたしたちが荒野のどこに宿営すべきかを御存じですから、わたしたちの目となってください。
4020 04 10 32 もしあなたが一緒においでくださるなら、主がわたしたちに賜わる幸福をあなたにも及ぼしましょう」。
4021 04 10 33 こうして彼らは主の山を去って、三日の行程を進んだ。主の契約の箱は、その三日の行程の間、彼らに先立って行き、彼らのために休む所を尋ねもとめた。
4022 04 10 34 彼らが宿営を出て、道に進むとき、昼は主の雲が彼らの上にあった。
4023 04 10 35 契約の箱の進むときモーセは言った、「主よ、立ちあがってください。あなたの敵は打ち散らされ、あなたを憎む者どもは、あなたの前から逃げ去りますように」。
4024 04 10 36 またそのとどまるとき、彼は言った、「主よ、帰ってきてください、イスラエルのちよろずの人に」。
4025 04 11 1 さて、民は災難に会っている人のように、主の耳につぶやいた。主はこれを聞いて怒りを発せられ、主の火が彼らのうちに燃えあがって、宿営の端を焼いた。
4026 04 11 2 そこで民はモーセにむかって叫んだ。モーセが主に祈ったので、その火はしずまった。
4027 04 11 3 主の火が彼らのうちに燃えあがったことによって、その所の名はタベラと呼ばれた。
4028 04 11 4 また彼らのうちにいた多くの寄り集まりびとは欲心を起し、イスラエルの人々もまた再び泣いて言った、「ああ、肉が食べたい。
4029 04 11 5 われわれは思い起すが、エジプトでは、ただで、魚を食べた。きゅうりも、すいかも、にらも、たまねぎも、そして、にんにくも。
4030 04 11 6 しかし、いま、われわれの精根は尽きた。われわれの目の前には、このマナのほか何もない」。
4031 04 11 7 マナは、こえんどろの実のようで、色はブドラクの色のようであった。
4032 04 11 8 民は歩きまわって、これを集め、ひきうすでひき、または、うすでつき、かまで煮て、これをもちとした。その味は油菓子の味のようであった。
4033 04 11 9 夜、宿営の露がおりるとき、マナはそれと共に降った。
4034 04 11 10 モーセは、民が家ごとに、おのおのその天幕の入口で泣くのを聞いた。そこで主は激しく怒られ、またモーセは不快に思った。
4035 04 11 11 そして、モーセは主に言った、「あなたはなぜ、しもべに悪い仕打ちをされるのですか。どうしてわたしはあなたの前に恵みを得ないで、このすべての民の重荷を負わされるのですか。
4036 04 11 12 わたしがこのすべての民を、はらんだのですか。わたしがこれを生んだのですか。そうではないのに、あなたはなぜわたしに『養い親が乳児を抱くように、彼らをふところに抱いて、あなたが彼らの先祖たちに誓われた地に行け』と言われるのですか。
4037 04 11 13 わたしはどこから肉を獲て、このすべての民に与えることができましょうか。彼らは泣いて、『肉を食べさせよ』とわたしに言っているのです。
4038 04 11 14 わたしひとりでは、このすべての民を負うことができません。それはわたしには重過ぎます。
4039 04 11 15 もしわたしがあなたの前に恵みを得ますならば、わたしにこのような仕打ちをされるよりは、むしろ、ひと思いに殺し、このうえ苦しみに会わせないでください」。
4040 04 11 16 主はモーセに言われた、「イスラエルの長老たちのうち、民の長老となり、つかさとなるべきことを、あなたが知っている者七十人をわたしのもとに集め、会見の幕屋に連れてきて、そこにあなたと共に立たせなさい。
4041 04 11 17 わたしは下って、その所で、あなたと語り、またわたしはあなたの上にある霊を、彼らにも分け与えるであろう。彼らはあなたと共に、民の重荷を負い、あなたが、ただひとりで、それを負うことのないようにするであろう。
4042 04 11 18 あなたはまた民に言いなさい、『あなたがたは身を清めて、あすを待ちなさい。あなたがたは肉を食べることができるであろう。あなたがたが泣いて主の耳に、わたしたちは肉が食べたい。エジプトにいた時は良かったと言ったからである。それゆえ、主はあなたがたに肉を与えて食べさせられるであろう。
4043 04 11 19 あなたがたがそれを食べるのは、一日や二日や五日や十日や二十日ではなく、
4044 04 11 20 一か月に及び、ついにあなたがたの鼻から出るようになり、あなたがたは、それに飽き果てるであろう。それはあなたがたのうちにおられる主を軽んじて、その前に泣き、なぜ、わたしたちはエジプトから出てきたのだろうと言ったからである』」。
4045 04 11 21 モーセは言った、「わたしと共におる民は徒歩の男子だけでも六十万です。ところがあなたは、『わたしは彼らに肉を与えて一か月のあいだ食べさせよう』と言われます。
4046 04 11 22 羊と牛の群れを彼らのためにほふって、彼らを飽きさせるというのですか。海のすべての魚を彼らのために集めて、彼らを飽きさせるというのですか」。
4047 04 11 23 主はモーセに言われた、「主の手は短かろうか。あなたは、いま、わたしの言葉の成るかどうかを見るであろう」。
4048 04 11 24 この時モーセは出て、主の言葉を民に告げ、民の長老たち七十人を集めて、幕屋の周囲に立たせた。
4049 04 11 25 主は雲のうちにあって下り、モーセと語られ、モーセの上にある霊を、その七十人の長老たちにも分け与えられた。その霊が彼らの上にとどまった時、彼らは預言した。ただし、その後は重ねて預言しなかった。
4050 04 11 26 その時ふたりの者が、宿営にとどまっていたが、ひとりの名はエルダデと言い、ひとりの名はメダデといった。彼らの上にも霊がとどまった。彼らは名をしるされた者であったが、幕屋に行かなかったので、宿営のうちで預言した。
4051 04 11 27 時にひとりの若者が走ってきて、モーセに告げて言った、「エルダデとメダデとが宿営のうちで預言しています」。
4052 04 11 28 若い時からモーセの従者であったヌンの子ヨシュアは答えて言った、「わが主、モーセよ、彼らをさし止めてください」。
4053 04 11 29 モーセは彼に言った、「あなたは、わたしのためを思って、ねたみを起しているのか。主の民がみな預言者となり、主がその霊を彼らに与えられることは、願わしいことだ」。
4054 04 11 30 こうしてモーセはイスラエルの長老たちと共に、宿営に引きあげた。
4055 04 11 31 さて、主のもとから風が起り、海の向こうから、うずらを運んできて、これを宿営の近くに落した。その落ちた範囲は、宿営の周囲で、こちら側も、おおよそ一日の行程、あちら側も、おおよそ一日の行程、地面から高さおおよそ二キュビトであった。
4056 04 11 32 そこで民は立ち上がってその日は終日、その夜は終夜、またその次の日も終日、うずらを集めたが、集める事の最も少ない者も、十ホメルほど集めた。彼らはみな、それを宿営の周囲に広げておいた。
4057 04 11 33 その肉がなお、彼らの歯の間にあって食べつくさないうちに、主は民にむかって怒りを発し、主は非常に激しい疫病をもって民を撃たれた。
4058 04 11 34 これによって、その所の名はキブロテ・ハッタワと呼ばれた。欲心を起した民を、そこに埋めたからである。
4059 04 11 35 キブロテ・ハッタワから、民はハゼロテに進み、ハゼロテにとどまった。
4060 04 12 1 モーセはクシの女をめとっていたが、そのクシの女をめとったゆえをもって、ミリアムとアロンはモーセを非難した。
4061 04 12 2 彼らは言った、「主はただモーセによって語られるのか。われわれによっても語られるのではないのか」。主はこれを聞かれた。
4062 04 12 3 モーセはその人となり柔和なこと、地上のすべての人にまさっていた。
4063 04 12 4 そこで、主は突然モーセとアロン、およびミリアムにむかって「あなたがた三人、会見の幕屋に出てきなさい」と言われたので、彼ら三人は出てきたが、
4064 04 12 5 主は雲の柱のうちにあって下り、幕屋の入口に立って、アロンとミリアムを呼ばれた。彼らふたりが進み出ると、
4065 04 12 6 彼らに言われた、「あなたがたは、いま、わたしの言葉を聞きなさい。あなたがたのうちに、もし、預言者があるならば、主なるわたしは幻をもって、これにわたしを知らせ、また夢をもって、これと語るであろう。
4066 04 12 7 しかし、わたしのしもべモーセとは、そうではない。彼はわたしの全家に忠信なる者である。
4067 04 12 8 彼とは、わたしは口ずから語り、明らかに言って、なぞを使わない。彼はまた主の形を見るのである。なぜ、あなたがたはわたしのしもべモーセを恐れず非難するのか」。
4068 04 12 9 主は彼らにむかい怒りを発して去られた。
4069 04 12 10 雲が幕屋の上を離れ去った時、ミリアムは、らい病となり、その身は雪のように白くなった。アロンがふり返ってミリアムを見ると、彼女はらい病になっていた。
4070 04 12 11 そこで、アロンはモーセに言った、「ああ、わが主よ、わたしたちは愚かなことをして罪を犯しました。どうぞ、その罰をわたしたちに受けさせないでください。
4071 04 12 12 どうぞ彼女を母の胎から肉が半ば滅びうせて出る死人のようにしないでください」。
4072 04 12 13 その時モーセは主に呼ばわって言った、「ああ、神よ、どうぞ彼女をいやしてください」。
4073 04 12 14 主はモーセに言われた、「彼女の父が彼女の顔につばきしてさえ、彼女は七日のあいだ、恥じて身を隠すではないか。彼女を七日のあいだ、宿営の外で閉じこめておかなければならない。その後、連れもどしてもよい」。
4074 04 12 15 そこでミリアムは七日のあいだ、宿営の外で閉じこめられた。民はミリアムが連れもどされるまでは、道に進まなかった。
4075 04 12 16 その後、民はハゼロテを立って進み、パランの荒野に宿営した。
4076 04 13 1 主はモーセに言われた、
4077 04 13 2 「人をつかわして、わたしがイスラエルの人々に与えるカナンの地を探らせなさい。すなわち、その父祖の部族ごとに、すべて彼らのうちのつかさたる者ひとりずつをつかわしなさい」。
4078 04 13 3 モーセは主の命にしたがって、パランの荒野から彼らをつかわした。その人々はみなイスラエルの人々のかしらたちであった。
4079 04 13 4 彼らの名は次のとおりである。ルベンの部族ではザックルの子シャンマ、
4080 04 13 5 シメオンの部族ではホリの子シャパテ、
4081 04 13 6 ユダの部族ではエフンネの子カレブ、
4082 04 13 7 イッサカルの部族ではヨセフの子イガル、
4083 04 13 8 エフライムの部族ではヌンの子ホセア、
4084 04 13 9 ベニヤミンの部族ではラフの子パルテ、
4085 04 13 10 ゼブルンの部族ではソデの子ガデエル、
4086 04 13 11 ヨセフの部族すなわち、マナセの部族ではスシの子ガデ、
4087 04 13 12 ダンの部族ではゲマリの子アンミエル、
4088 04 13 13 アセルの部族ではミカエルの子セトル、
4089 04 13 14 ナフタリの部族ではワフシの子ナヘビ、
4090 04 13 15 ガドの部族ではマキの子ギウエル。
4091 04 13 16 以上はモーセがその地を探らせるためにつかわした人々の名である。そしてモーセはヌンの子ホセアをヨシュアと名づけた。
4092 04 13 17 モーセは彼らをつかわし、カナンの地を探らせようとして、これに言った、「あなたがたはネゲブに行って、山に登り、
4093 04 13 18 その地の様子を見、そこに住む民は、強いか弱いか、少ないか多いか、
4094 04 13 19 また彼らの住んでいる地は、良いか悪いか。人々の住んでいる町々は、天幕か、城壁のある町か、
4095 04 13 20 その地は、肥えているか、やせているか、そこには、木があるかないかを見なさい。あなたがたは、勇んで行って、その地のくだものを取ってきなさい」。時は、ぶどうの熟し始める季節であった。
4096 04 13 21 そこで、彼らはのぼっていって、その地をチンの荒野からハマテの入口に近いレホブまで探った。
4097 04 13 22 彼らはネゲブにのぼって、ヘブロンまで行った。そこにはアナクの子孫であるアヒマン、セシャイ、およびタルマイがいた。ヘブロンはエジプトのゾアンよりも七年前に建てられたものである。
4098 04 13 23 ついに彼らはエシコルの谷に行って、そこで一ふさのぶどうの枝を切り取り、これを棒をもって、ふたりでかつぎ、また、ざくろといちじくをも取った。
4099 04 13 24 イスラエルの人々が、そこで切り取ったぶどうの一ふさにちなんで、その所はエシコルの谷と呼ばれた。
4100 04 13 25 四十日の後、彼らはその地を探り終って帰ってきた。
4101 04 13 26 そして、パランの荒野にあるカデシにいたモーセとアロン、およびイスラエルの人々の全会衆のもとに行って、彼らと全会衆とに復命し、その地のくだものを彼らに見せた。
4102 04 13 27 彼らはモーセに言った、「わたしたちはあなたが、つかわした地へ行きました。そこはまことに乳と蜜の流れている地です。これはそのくだものです。
4103 04 13 28 しかし、その地に住む民は強く、その町々は堅固で非常に大きく、わたしたちはそこにアナクの子孫がいるのを見ました。
4104 04 13 29 またネゲブの地には、アマレクびとが住み、山地にはヘテびと、エブスびと、アモリびとが住み、海べとヨルダンの岸べには、カナンびとが住んでいます」。
4105 04 13 30 そのとき、カレブはモーセの前で、民をしずめて言った、「わたしたちはすぐにのぼって、攻め取りましょう。わたしたちは必ず勝つことができます」。
4106 04 13 31 しかし、彼とともにのぼって行った人々は言った、「わたしたちはその民のところへ攻めのぼることはできません。彼らはわたしたちよりも強いからです」。
4107 04 13 32 そして彼らはその探った地のことを、イスラエルの人々に悪く言いふらして言った、「わたしたちが行き巡って探った地は、そこに住む者を滅ぼす地です。またその所でわたしたちが見た民はみな背の高い人々です。
4108 04 13 33 わたしたちはまたそこで、ネピリムから出たアナクの子孫ネピリムを見ました。わたしたちには自分が、いなごのように思われ、また彼らにも、そう見えたに違いありません」。
4109 04 14 1 そこで、会衆はみな声をあげて叫び、民はその夜、泣き明かした。
4110 04 14 2 またイスラエルの人々はみなモーセとアロンにむかってつぶやき、全会衆は彼らに言った、「ああ、わたしたちはエジプトの国で死んでいたらよかったのに。この荒野で死んでいたらよかったのに。
4111 04 14 3 なにゆえ、主はわたしたちをこの地に連れてきて、つるぎに倒れさせ、またわたしたちの妻子をえじきとされるのであろうか。エジプトに帰る方が、むしろ良いではないか」。
4112 04 14 4 彼らは互に言った、「わたしたちはひとりのかしらを立てて、エジプトに帰ろう」。
4113 04 14 5 そこで、モーセとアロンはイスラエルの人々の全会衆の前でひれふした。
4114 04 14 6 このとき、その地を探った者のうちのヌンの子ヨシュアとエフンネの子カレブは、その衣服を裂き、
4115 04 14 7 イスラエルの人々の全会衆に言った、「わたしたちが行き巡って探った地は非常に良い地です。
4116 04 14 8 もし、主が良しとされるならば、わたしたちをその地に導いて行って、それをわたしたちにくださるでしょう。それは乳と蜜の流れている地です。
4117 04 14 9 ただ、主にそむいてはなりません。またその地の民を恐れてはなりません。彼らはわたしたちの食い物にすぎません。彼らを守る者は取り除かれます。主がわたしたちと共におられますから、彼らを恐れてはなりません」。
4118 04 14 10 ところが会衆はみな石で彼らを撃ち殺そうとした。
4119 04 14 11 主はモーセに言われた、「この民はいつまでわたしを侮るのか。わたしがもろもろのしるしを彼らのうちに行ったのに、彼らはいつまでわたしを信じないのか。
4120 04 14 12 わたしは疫病をもって彼らを撃ち滅ぼし、あなたを彼らよりも大いなる強い国民としよう」。
4121 04 14 13 モーセは主に言った、「エジプトびとは、あなたが力をもって、この民を彼らのうちから導き出されたことを聞いて、
4122 04 14 14 この地の住民に告げるでしょう。彼らは、主なるあなたが、この民のうちにおられ、主なるあなたが、まのあたり現れ、あなたの雲が、彼らの上にとどまり、昼は雲の柱のうちに、夜は火の柱のうちにあって、彼らの前に行かれるのを聞いたのです。
4123 04 14 15 いま、もし、あなたがこの民をひとり残らず殺されるならば、あなたのことを聞いた国民は語って、
4124 04 14 16 『主は与えると誓った地に、この民を導き入れることができなかったため、彼らを荒野で殺したのだ』と言うでしょう。
4125 04 14 17 どうぞ、あなたが約束されたように、いま主の大いなる力を現してください。
4126 04 14 18 あなたはかつて、『主は怒ることおそく、いつくしみに富み、罪ととがをゆるす者、しかし、罰すべき者は、決してゆるさず、父の罪を子に報いて、三、四代に及ぼす者である』と言われました。
4127 04 14 19 どうぞ、あなたの大いなるいつくしみによって、エジプトからこのかた、今にいたるまで、この民をゆるされたように、この民の罪をおゆるしください」。
4128 04 14 20 主は言われた、「わたしはあなたの言葉のとおりにゆるそう。
4129 04 14 21 しかし、わたしは生きている。また主の栄光が、全世界に満ちている。
4130 04 14 22 わたしの栄光と、わたしがエジプトと荒野で行ったしるしを見ながら、このように十度もわたしを試みて、わたしの声に聞きしたがわなかった人々はひとりも、
4131 04 14 23 わたしがかつて彼らの先祖たちに与えると誓った地を見ないであろう。またわたしを侮った人々も、それを見ないであろう。
4132 04 14 24 ただし、わたしのしもべカレブは違った心をもっていて、わたしに完全に従ったので、わたしは彼が行ってきた地に彼を導き入れるであろう。彼の子孫はそれを所有するにいたるであろう。
4133 04 14 25 谷にはアマレクびととカナンびとが住んでいるから、あなたがたは、あす、身をめぐらして紅海の道を荒野へ進みなさい」。
4134 04 14 26 主はモーセとアロンに言われた、
4135 04 14 27 「わたしにむかってつぶやくこの悪い会衆をいつまで忍ぶことができようか。わたしはイスラエルの人々が、わたしにむかってつぶやくのを聞いた。
4136 04 14 28 あなたは彼らに言いなさい、『主は言われる、「わたしは生きている。あなたがたが、わたしの耳に語ったように、わたしはあなたがたにするであろう。
4137 04 14 29 あなたがたは死体となって、この荒野に倒れるであろう。あなたがたのうち、わたしにむかってつぶやいた者、すなわち、すべて数えられた二十歳以上の者はみな倒れるであろう。
4138 04 14 30 エフンネの子カレブと、ヌンの子ヨシュアのほかは、わたしがかつて、あなたがたを住まわせようと、手をあげて誓った地に、はいることができないであろう。
4139 04 14 31 しかし、あなたがたが、えじきになるであろうと言ったあなたがたの子供は、わたしが導いて、はいるであろう。彼らはあなたがたが、いやしめた地を知るようになるであろう。
4140 04 14 32 しかしあなたがたは死体となってこの荒野に倒れるであろう。
4141 04 14 33 あなたがたの子たちは、あなたがたの死体が荒野に朽ち果てるまで四十年のあいだ、荒野で羊飼となり、あなたがたの不信の罪を負うであろう。
4142 04 14 34 あなたがたは、かの地を探った四十日の日数にしたがい、その一日を一年として、四十年のあいだ、自分の罪を負い、わたしがあなたがたを遠ざかったことを知るであろう」。
4143 04 14 35 主なるわたしがこれを言う。わたしは必ずわたしに逆らって集まったこの悪い会衆に、これをことごとく行うであろう。彼らはこの荒野に朽ち、ここで死ぬであろう』」。
4144 04 14 36 こうして、モーセにつかわされ、かの地を探りに行き、帰ってきて、その地を悪く言い、全会衆を、モーセにむかって、つぶやかせた人々、
4145 04 14 37 すなわち、その地を悪く言いふらした人々は、疫病にかかって主の前に死んだが、
4146 04 14 38 その地を探りに行った人々のうち、ヌンの子ヨシュアと、エフンネの子カレブとは生き残った。
4147 04 14 39 モーセが、これらのことを、イスラエルのすべての人々に告げたとき、民は非常に悲しみ、
4148 04 14 40 朝早く起きて山の頂きに登って言った、「わたしたちはここにいる。さあ、主が約束された所へ上って行こう。わたしたちは罪を犯したのだから」。
4149 04 14 41 モーセは言った、「あなたがたは、それをなし遂げることもできないのに、どうして、そのように主の命にそむくのか。
4150 04 14 42 あなたがたは上って行ってはならない。主があなたがたのうちにおられないから、あなたがたは敵の前に、撃ち破られるであろう。
4151 04 14 43 そこには、アマレクびとと、カナンびとがあなたがたの前にいるから、あなたがたは、つるぎに倒れるであろう。あなたがたがそむいて、主に従わなかったゆえ、主はあなたがたと共におられないからである」。
4152 04 14 44 しかし、彼らは、ほしいままに山の頂に登った。ただし、主の契約の箱と、モーセとは、宿営の中から出なかった。
4153 04 14 45 そこで、その山に住んでいたアマレクびとと、カナンびとが下ってきて、彼らを撃ち破り、ホルマまで追ってきた。
4154 04 15 1 主はモーセに言われた、
4155 04 15 2 「イスラエルの人々に言いなさい、『あなたがたが、わたしの与えて住ませる地に行って、
4156 04 15 3 主に火祭をささげる時、すなわち特別の誓願の供え物、あるいは自発の供え物、あるいは祝のときの供え物として、牛または羊を燔祭または犠牲としてささげ、主に香ばしいかおりとするとき、
4157 04 15 6 もし、また雄羊を用いるときは、麦粉一エパの十分の二に、油一ヒンの三分の一を混ぜたものを、素祭としてささげ、
4158 04 15 7 また、ぶどう酒一ヒンの三分の一を、灌祭としてささげて、主に香ばしいかおりとしなければならない。
4159 04 15 8 またあなたが特別の誓願の供え物、あるいは酬恩祭を、主にささげる時、若い雄牛を、燔祭または犠牲とするならば、
4160 04 15 9 麦粉一エパの十分の三に、油一ヒンの二分の一を混ぜたものを、素祭として、若い雄牛と共にささげ、
4161 04 15 10 また、ぶどう酒一ヒンの二分の一を、灌祭としてささげなければならない。これは火祭であって、主に香ばしいかおりとするものである。
4162 04 15 11 雄牛、あるいは雄羊、あるいは小羊、あるいは子やぎは、一頭ごとに、このようにしなければならない。
4163 04 15 12 すなわち、あなたがたのささげる数にてらし、その数にしたがって、一頭ごとに、このようにしなければならない。
4164 04 15 13 すべて国に生れた者が、火祭をささげて、主に香ばしいかおりとするときは、このように、これらのことを行わなければならない。
4165 04 15 14 またあなたがたのうちに寄留している他国人、またはあなたがたのうちに、代々ながく住む者が、火祭をささげて、主に香ばしいかおりとしようとする時は、あなたがたがするように、その人もしなければならない。
4166 04 15 15 会衆たる者は、あなたがたも、あなたがたのうちに寄留している他国人も、同一の定めに従わなければならない。これは、あなたがたが代々ながく守るべき定めである。他国の人も、主の前には、あなたがたと等しくなければならない。
4167 04 15 16 すなわち、あなたがたも、あなたがたのうちに寄留している他国人も、同一の律法、同一のおきてに従わなければならない』」。
4168 04 15 17 主はまたモーセに言われた、
4169 04 15 18 「イスラエルの人々に言いなさい、『わたしが導いて行く地に、あなたがたがはいって、
4170 04 15 19 その地の食物を食べるとき、あなたがたは、ささげ物を主にささげなければならない。
4171 04 15 20 すなわち、麦粉の初物で作った菓子を、ささげ物としなければならない。これを、打ち場からのささげ物のように、ささげなければならない。
4172 04 15 21 あなたがたは代々その麦粉の初物で、主にささげ物をしなければならない。
4173 04 15 22 あなたがたが、もしあやまって、主がモーセに告げられたこのすべての戒めを行わず、
4174 04 15 23 主がモーセによって戒めを与えられた日からこのかた、代々にわたり、あなたがたに命じられたすべての事を行わないとき、
4175 04 15 24 すなわち、会衆が知らずに、あやまって犯した時は、全会衆は若い雄牛一頭を、燔祭としてささげ、主に香ばしいかおりとし、これに素祭と灌祭とを定めのように加え、また雄やぎ一頭を、罪祭としてささげなければならない。
4176 04 15 25 そして祭司は、イスラエルの人々の全会衆のために、罪のあがないをしなければならない。そうすれば、彼らはゆるされるであろう。それは過失だからである。彼らはその過失のために、その供え物として、火祭を主にささげ、また罪祭を主の前にささげなければならない。
4177 04 15 26 そうすれば、イスラエルの人々の全会衆はゆるされ、また彼らのうちに寄留している他国人も、ゆるされるであろう。民はみな過失を犯したからである。
4178 04 15 27 もし人があやまって罪を犯す時は、一歳の雌やぎ一頭を罪祭としてささげなければならない。
4179 04 15 28 そして祭司は、人があやまって罪を犯した時、そのあやまって罪を犯した人のために、主の前に罪のあがないをして、その罪をあがなわなければならない。そうすれば、彼はゆるされるであろう。
4180 04 15 29 イスラエルの人々のうちの、国に生れた者でも、そのうちに寄留している他国人でも、あやまって罪を犯す者には、あなたがたは同一の律法を用いなければならない。
4181 04 15 30 しかし、国に生れた者でも、他国の人でも、故意に罪を犯す者は主を汚すもので、その人は民のうちから断たれなければならない。
4182 04 15 31 彼は主の言葉を侮り、その戒めを破ったのであるから、必ず断たれ、その罪を負わなければならない』」。
4183 04 15 32 イスラエルの人々が荒野におるとき、安息日にひとりの人が、たきぎを集めるのを見た。
4184 04 15 33 そのたきぎを集めるのを見た人々は、その人をモーセとアロン、および全会衆のもとに連れてきたが、
4185 04 15 34 どう取り扱うべきか、まだ示しを受けていなかったので、彼を閉じ込めておいた。
4186 04 15 35 そのとき、主はモーセに言われた、「その人は必ず殺されなければならない。全会衆は宿営の外で、彼を石で撃ち殺さなければならない」。
4187 04 15 36 そこで、全会衆は彼を宿営の外に連れ出し、彼を石で撃ち殺し、主がモーセに命じられたようにした。
4188 04 15 37 主はまたモーセに言われた、
4189 04 15 38 「イスラエルの人々に命じて、代々その衣服のすその四すみにふさをつけ、そのふさを青ひもで、すその四すみにつけさせなさい。
4190 04 15 39 あなたがたが、そのふさを見て、主のもろもろの戒めを思い起して、それを行い、あなたがたが自分の心と、目の欲に従って、みだらな行いをしないためである。
4191 04 15 40 こうして、あなたがたは、わたしのもろもろの戒めを思い起して、それを行い、あなたがたの神に聖なる者とならなければならない。
4192 04 15 41 わたしはあなたがたの神、主であって、あなたがたの神となるために、あなたがたをエジプトの国から導き出した者である。わたしはあなたがたの神、主である」。
4193 04 16 1 ここに、レビの子コハテの子なるイヅハルの子コラと、ルベンの子なるエリアブの子ダタンおよびアビラムと、ルベンの子なるペレテの子オンとが相結び、
4194 04 16 2 イスラエルの人々のうち、会衆のうちから選ばれて、つかさとなった名のある人々二百五十人と共に立って、モーセに逆らった。
4195 04 16 3 彼らは集まって、モーセとアロンとに逆らって言った、「あなたがたは、分を越えています。全会衆は、ことごとく聖なるものであって、主がそのうちにおられるのに、どうしてあなたがたは、主の会衆の上に立つのですか」。
4196 04 16 4 モーセはこれを聞いてひれ伏した。
4197 04 16 5 やがて彼はコラと、そのすべての仲間とに言った、「あす、主は、主につくものはだれ、聖なる者はだれであるかを示して、その人をみもとに近づけられるであろう。すなわち、その選んだ人を、みもとに近づけられるであろう。
4198 04 16 6 それで、次のようにしなさい。コラとそのすべての仲間とは、火ざらを取り、
4199 04 16 7 その中に火を入れ、それに薫香を盛って、あす、主の前に出なさい。その時、主が選ばれる人は聖なる者である。レビの子たちよ、あなたがたこそ、分を越えている」。
4200 04 16 8 モーセはまたコラに言った、「レビの子たちよ、聞きなさい。
4201 04 16 9 イスラエルの神はあなたがたをイスラエルの会衆のうちから分かち、主に近づかせて、主の幕屋の務をさせ、かつ会衆の前に立って仕えさせられる。これはあなたがたにとって、小さいことであろうか。
4202 04 16 10 神はあなたとあなたの兄弟なるレビの子たちをみな近づけられた。あなたがたはなお、その上に祭司となることを求めるのか。
4203 04 16 11 あなたとあなたの仲間は、みなそのために集まって主に敵している。あなたがたはアロンをなんと思って、彼に対してつぶやくのか」。
4204 04 16 12 モーセは人をやって、エリアブの子ダタンとアビラムとを呼ばせたが、彼らは言った、「わたしたちは参りません。
4205 04 16 13 あなたは乳と蜜の流れる地から、わたしたちを導き出して、荒野でわたしたちを殺そうとしている。これは小さいことでしょうか。その上、あなたはわたしたちに君臨しようとしている。
4206 04 16 14 かつまた、あなたはわたしたちを、乳と蜜の流れる地に導いて行かず、畑と、ぶどう畑とを嗣業として与えもしない。これらの人々の目をくらまそうとするのですか。わたしたちは参りません」。
4207 04 16 15 モーセは大いに怒って、主に言った、「彼らの供え物を顧みないでください。わたしは彼らから、ろば一頭をも取ったことなく、また彼らのひとりをも害したことはありません」。
4208 04 16 16 そしてモーセはコラに言った、「あなたとあなたの仲間はみなアロンと一緒に、あす、主の前に出なさい。
4209 04 16 17 あなたがたは、おのおの火ざらを取って、それに薫香を盛り、おのおのその火ざらを主の前に携えて行きなさい。その火ざらは会わせて二百五十。あなたとアロンも、おのおの火ざらを携えて行きなさい」。
4210 04 16 18 彼らは、おのおの火ざらを取り、火をその中に入れ、それに薫香を盛り、モーセとアロンも共に、会見の幕屋の入口に立った。
4211 04 16 19 そのとき、コラは会衆を、ことごとく会見の幕屋の入口に集めて、彼らふたりに逆らわせようとしたが、主の栄光は全会衆に現れた。
4212 04 16 20 主はモーセとアロンに言われた、
4213 04 16 21 「あなたがたはこの会衆を離れなさい。わたしはただちに彼らを滅ぼすであろう」。
4214 04 16 22 彼らふたりは、ひれ伏して言った、「神よ、すべての肉なる者の命の神よ、このひとりの人が、罪を犯したからといって、あなたは全会衆に対して怒られるのですか」。
4215 04 16 23 主はモーセに言われた、
4216 04 16 24 「あなたは会衆に告げて、コラとダタンとアビラムのすまいの周囲を去れと言いなさい」。
4217 04 16 25 モーセは立ってダタンとアビラムのもとに行ったが、イスラエルの長老たちも、彼に従って行った。
4218 04 16 26 モーセは会衆に言った、「どうぞ、あなたがたはこれらの悪い人々の天幕を離れてください。彼らのものには何にも触れてはならない。彼らのもろもろの罪によって、あなたがたも滅ぼされてはいけないから」。
4219 04 16 27 そこで人々はコラとダタンとアビラムのすまいの周囲を離れ去った。そして、ダタンとアビラムとは、妻、子、および幼児と一緒に出て、天幕の入口に立った。
4220 04 16 28 モーセは言った、「あなたがたは主がこれらのすべての事をさせるために、わたしをつかわされたこと、またわたしが、これを自分の心にしたがって行うものでないことを、次のことによって知るであろう。
4221 04 16 29 すなわち、もしこれらの人々が、普通の死に方で死に、普通の運命に会うのであれば、主がわたしをつかわされたのではない。
4222 04 16 30 しかし、主が新しい事をされ、地が口を開いて、これらの人々と、それに属する者とを、ことごとくのみつくして、生きながら陰府に下らせられるならば、あなたがたはこれらの人々が、主を侮ったのであることを知らなければならない」。
4223 04 16 31 モーセが、これらのすべての言葉を述べ終ったとき、彼らの下の土地が裂け、
4224 04 16 32 地は口を開いて、彼らとその家族、ならびにコラに属するすべての人々と、すべての所有物をのみつくした。
4225 04 16 33 すなわち、彼らと、彼らに属するものは、皆生きながら陰府に下り、地はその上を閉じふさいで、彼らは会衆のうちから、断ち滅ぼされた。
4226 04 16 34 この時、その周囲にいたイスラエルの人々は、みな彼らの叫びを聞いて逃げ去り、「恐らく地はわたしたちをも、のみつくすであろう」と言った。
4227 04 16 35 また主のもとから火が出て、薫香を供える二百五十人をも焼きつくした。
4228 04 16 36 主はモーセに言われた、
4229 04 16 37 「あなたは祭司アロンの子エレアザルに告げて、その燃える火の中から、かの火ざらを取り出させ、その中の火を遠く広くまき散らさせなさい。それらの火ざらは聖となったから、
4230 04 16 38 罪を犯して命を失った人々の、これらの火ざらを、広い延べ板として、祭壇のおおいとしなさい。これは主の前にささげられて、聖となったからである。こうして、これはイスラエルの人々に、しるしとなるであろう」。
4231 04 16 39 そこで祭司エレアザルは、かの焼き殺された人々が供えた青銅の火ざらを取り、これを広く打ち延ばして、祭壇のおおいとし、
4232 04 16 40 これをイスラエルの人々の記念の物とした。これはアロンの子孫でないほかの人が、主の前に近づいて、薫香をたくことのないようにするため、またその人がコラ、およびその仲間のようにならないためである。すなわち、主がモーセによってエレアザルに言われたとおりである。
4233 04 16 41 その翌日、イスラエルの人々の会衆は、みなモーセとアロンとにつぶやいて言った、「あなたがたは主の民を殺しました」。
4234 04 16 42 会衆が集まって、モーセとアロンとに逆らったとき、会見の幕屋を望み見ると、雲がこれをおおい、主の栄光が現れていた。
4235 04 16 43 モーセとアロンとが、会見の幕屋の前に行くと、
4236 04 16 44 主はモーセに言われた、
4237 04 16 45 「あなたがたはこの会衆を離れなさい。わたしはただちに彼らを滅ぼそう」。そこで彼らふたりは、ひれ伏した。
4238 04 16 46 モーセはアロンに言った、「あなたは火ざらを取って、それに祭壇から取った火を入れ、その上に薫香を盛り、急いでそれを会衆のもとに持って行って、彼らのために罪のあがないをしなさい。主が怒りを発せられ、疫病がすでに始まったからです」。
4239 04 16 47 そこで、アロンはモーセの言ったように、それを取って会衆の中に走って行ったが、疫病はすでに民のうちに始まっていたので、薫香をたいて、民のために罪のあがないをし、
4240 04 16 48 すでに死んだ者と、なお生きている者との間に立つと、疫病はやんだ。
4241 04 16 49 コラの事によって死んだ者のほかに、この疫病によって死んだ者は一万四千七百人であった。
4242 04 16 50 アロンは会見の幕屋の入口にいるモーセのもとに帰った。こうして疫病はやんだ。
4243 04 17 1 主はモーセに言われた、
4244 04 17 2 「イスラエルの人々に告げて、彼らのうちから、おのおのの父祖の家にしたがって、つえ一本ずつを取りなさい。すなわち、そのすべてのつかさたちから、父祖の家にしたがって、つえ十二本を取り、その人々の名を、おのおのそのつえに書きしるし、
4245 04 17 3 レビのつえにはアロンの名を書きしるしなさい。父祖の家のかしらは、おのおののつえ一本を出すのだからである。
4246 04 17 4 そして、これらのつえを、わたしがあなたがたに会う会見の幕屋の中の、あかしの箱の前に置きなさい。
4247 04 17 5 わたしの選んだ人のつえには、芽が出るであろう。こうして、わたしはイスラエルの人々が、あなたがたにむかって、つぶやくのをやめさせるであろう」。
4248 04 17 6 モーセが、このようにイスラエルの人々に語ったので、つかさたちはみな、その父祖の家にしたがって、おのおの、つえ一本ずつを彼に渡した。そのつえは合わせて十二本。アロンのつえも、そのつえのうちにあった。
4249 04 17 7 モーセは、それらのつえを、あかしの幕屋の中の、主の前に置いた。
4250 04 17 8 その翌日、モーセが、あかしの幕屋にはいって見ると、レビの家のために出したアロンのつえは芽をふき、つぼみを出し、花が咲いて、あめんどうの実を結んでいた。
4251 04 17 9 モーセがそれらのつえを、ことごとく主の前から、イスラエルのすべての人の所に持ち出したので、彼らは見て、おのおの自分のつえを取った。
4252 04 17 10 主はモーセに言われた、「アロンのつえを、あかしの箱の前に持ち帰り、そこに保存して、そむく者どものために、しるしとしなさい。こうして、彼らのわたしに対するつぶやきをやめさせ、彼らの死ぬのをまぬかれさせなければならない」。
4253 04 17 11 モーセはそのようにして、主が彼に命じられたとおりに行った。
4254 04 17 12 イスラエルの人々は、モーセに言った、「ああ、わたしたちは死ぬ。破滅です、全滅です。
4255 04 17 13 主の幕屋に近づく者が、みな死ぬのであれば、わたしたちは死に絶えるではありませんか」。
4256 04 18 1 そこで、主はアロンに言われた、「あなたとあなたの子たち、およびあなたの父祖の家の者は、聖所に関する罪を負わなければならない。また、あなたとあなたの子たちとは、祭司職に関する罪を負わなければならない。
4257 04 18 2 あなたはまた、あなたの兄弟なるレビの部族の者、すなわち、あなたの父祖の部族の者どもを、あなたに近づかせ、あなたに連なり、あなたに仕えさせなければならない。ただし、あなたとあなたの子たちとは、共にあかしの幕屋の前で仕えなければならない。
4258 04 18 3 彼らは、あなたの務と、すべての幕屋の務とを守らなければならない。ただし、聖所の器と、祭壇とに近づいてはならない。彼らもあなたがたも、死ぬことのないためである。
4259 04 18 4 彼らはあなたに連なって、会見の幕屋の務を守り、幕屋のもろもろの働きをしなければならない。ほかの者は、あなたがたに近づいてはならない。
4260 04 18 5 このように、あなたがたは、聖所の務と、祭壇の務とを守らなければならない。そうすれば、主の激しい怒りは、かさねてイスラエルの人々に臨まないであろう。
4261 04 18 6 わたしはあなたがたの兄弟たるレビびとを、イスラエルの人々のうちから取り、主のために、これを賜物として、あなたがたに与え、会見の幕屋の働きをさせる。
4262 04 18 7 あなたとあなたの子たちは共に祭司職を守って、祭壇と、垂幕のうちのすべての事を執り行い、共に勤めなければならない。わたしは祭司の職務を賜物として、あなたがたに与える。ほかの人で近づく者は殺されるであろう」。
4263 04 18 8 主はまたアロンに言われた、「わたしはイスラエルの人々の、すべての聖なる供え物で、わたしにささげる物の一部をあなたに与える。すなわち、わたしはこれをあなたと、あなたの子たちに、その分け前として与え、永久に受くべき分とする。
4264 04 18 9 いと聖なる供え物のうち、火で焼かずに、あなたに帰すべきものは次のとおりである。すなわち、わたしにささげるすべての供え物、素祭、罪祭、愆祭はみな、いと聖なる物であって、あなたとあなたの子たちに帰するであろう。
4265 04 18 10 いと聖なる所で、それを食べなければならない。男子はみな、それを食べることができる。それはあなたに帰すべき聖なる物である。
4266 04 18 11 またあなたに帰すべきものはこれである。すなわち、イスラエルの人々のささげる供え物のうち、すべて揺祭とするものであって、これをあなたとあなたのむすこ娘に与えて、永久に受くべき分とする。あなたの家の者のうち、清い者はみな、これを食べることができる。
4267 04 18 12 すべて油の最もよい物、およびすべて新しいぶどう酒と、穀物の最も良い物など、人々が主にささげる初穂をあなたに与える。
4268 04 18 13 国のすべての産物の初物で、人々が主のもとに携えてきたものは、あなたに帰するであろう。あなたの家の者のうち、清い者はみな、これを食べることができる。
4269 04 18 14 イスラエルのうちの奉納物はみな、あなたに帰する。
4270 04 18 15 すべて肉なる者のういごであって、主にささげられる者はみな、人でも獣でも、あなたに帰する。ただし、人のういごは必ずあがなわなければならない。また汚れた獣のういごも、あがなわなければならない。
4271 04 18 16 人のういごは生後一か月で、あがなわなければならない。そのあがない金はあなたの値積りにより、聖所のシケルにしたがって、銀五シケルでなければならない。一シケルは二十ゲラである。
4272 04 18 17 しかし、牛のういご、羊のういご、やぎのういごは、あがなってはならない。これらは聖なるものである。その血を祭壇に注ぎかけ、その脂肪を焼いて火祭とし、香ばしいかおりとして、主にささげなければならない。
4273 04 18 18 その肉はあなたに帰する。それは揺祭の胸や右のももと同じく、あなたに帰する。
4274 04 18 19 イスラエルの人々が、主にささげる聖なる供え物はみな、あなたとあなたのむすこ娘とに与えて、永久に受ける分とする。これは主の前にあって、あなたとあなたの子孫とに対し、永遠に変らぬ塩の契約である」。
4275 04 18 20 主はまたアロンに言われた、「あなたはイスラエルの人々の地のうちに、嗣業をもってはならない。また彼らのうちに、何の分をも持ってはならない。彼らのうちにあって、わたしがあなたの分であり、あなたの嗣業である。
4276 04 18 21 わたしはレビの子孫にはイスラエルにおいて、すべて十分の一を嗣業として与え、その働き、すなわち、会見の幕屋の働きに報いる。
4277 04 18 22 イスラエルの人々は、かさねて会見の幕屋に近づいてはならない。罪を得て死なないためである。
4278 04 18 23 レビびとだけが会見の幕屋の働きをしなければならない。彼らがその罪を負うであろう。彼らがイスラエルの人々のうちに、嗣業の地を持たないことをもって、あなたがたの代々ながく守るべき定めとしなければならない。
4279 04 18 24 わたしはイスラエルの人々が供え物として主にささげる十分の一を、レビびとに嗣業として与えた。それで『彼らはイスラエルの人々のうちに、嗣業の地を持ってはならない』と、わたしは彼らに言ったのである」。
4280 04 18 25 主はモーセに言われた、
4281 04 18 26 「レビびとに言いなさい、『わたしがイスラエルの人々から取って、嗣業として与える十分の一を受ける時、あなたがたはその十分の一の十分の一を、主にささげなければならない。
4282 04 18 27 あなたがたのささげ物は、打ち場からの穀物や、酒ぶねからのぶどう酒と同じように見なされるであろう。
4283 04 18 28 そのようにあなたがたもまた、イスラエルの人々から受けるすべての十分の一の物のうちから、主に供え物をささげ、主にささげたその供え物を、祭司アロンに与えなければならない。
4284 04 18 29 あなたがたの受けるすべての贈物のうちから、その良いところ、すなわち、聖なる部分を取って、ことごとく供え物として、主にささげなければならない』。
4285 04 18 30 あなたはまた彼らに言いなさい、『あなたがたが、そのうちから良いところを取ってささげる時、その残りの部分はレビびとには、打ち場の産物や、酒ぶねの産物と同じように見なされるであろう。
4286 04 18 31 あなたがたと、あなたがたの家族とは、どこでそれを食べてもよい。これは会見の幕屋であなたがたがする働きの報酬である。
4287 04 18 32 あなたがたが、その良いところをささげるときは、それによって、あなたがたは罪を負わないであろう。あなたがたはイスラエルの人々の聖なる供え物を汚してはならない。死をまぬかれるためである』」。
4288 04 19 1 主はモーセとアロンに言われた、
4289 04 19 2 「主の命じられた律法の定めは次のとおりである。すなわち『イスラエルの人々に告げて、完全で、傷がなく、まだくびきを負ったことのない赤い雌牛を、あなたのもとに引いてこさせ、
4290 04 19 3 これを祭司エレアザルにわたして、宿営の外にひき出させ、彼の前でこれをほふらせなければならない。
4291 04 19 4 そして祭司エレアザルは、指をもってその血を取り、会見の幕屋の表に向かって、その血を七たびふりかけなければならない。
4292 04 19 5 ついでその雌牛を自分の目の前で焼かせ、その皮と肉と血とは、その汚物と共に焼かなければならない。
4293 04 19 6 そして祭司は香柏の木と、ヒソプと、緋の糸とを取って雌牛の燃えているなかに投げ入れなければならない。
4294 04 19 7 そして祭司は衣服を洗い、水に身をすすいで後、宿営に、はいることができる。ただし祭司は夕まで汚れる。
4295 04 19 8 またその雌牛を焼いた者も水で衣服を洗い、水に身をすすがなければならない。彼も夕まで汚れる。
4296 04 19 9 それから身の清い者がひとり、その雌牛の灰を集め、宿営の外の清い所にたくわえておかなければならない。これはイスラエルの人々の会衆のため、汚れを清める水をつくるために備えるものであって、罪を清めるものである。
4297 04 19 10 その雌牛の灰を集めた者は衣服を洗わなければならない。その人は夕まで汚れる。これはイスラエルの人々と、そのうちに宿っている他国人との、永久に守るべき定めとしなければならない。
4298 04 19 11 すべて人の死体に触れる者は、七日のあいだ汚れる。
4299 04 19 12 その人は三日目と七日目とに、この灰の水をもって身を清めなければならない。そうすれば清くなるであろう。しかし、もし三日目と七日目とに、身を清めないならば、清くならないであろう。
4300 04 19 13 すべて死人の死体に触れて、身を清めない者は主の幕屋を汚す者で、その人はイスラエルから断たれなければならない。汚れを清める水がその身に注ぎかけられないゆえ、その人は清くならず、その汚れは、なお、その身にあるからである。
4301 04 19 14 人が天幕の中で死んだ時に用いる律法は次のとおりである。すなわち、すべてその天幕にはいった者、およびすべてその天幕にいた者は七日のあいだ汚れる。
4302 04 19 15 ふたで上をおおわない器はみな汚れる。
4303 04 19 16 つるぎで殺された者、または死んだ者、または人の骨、または墓などに、野外で触れる者は皆、七日のあいだ汚れる。
4304 04 19 17 汚れた者があった時には、罪を清める焼いた雌牛の灰を取って器に入れ、流れの水をこれに加え、
4305 04 19 18 身の清い者がひとりヒソプを取って、その水に浸し、これをその天幕と、すべての器と、そこにいた人々と、骨、あるいは殺された者、あるいは死んだ者、あるいは墓などに触れた者とにふりかけなければならない。
4306 04 19 19 すなわちその身の清い人は三日目と七日目とにその汚れたものに、それをふりかけなければならない。そして七日目にその人は身を清め、衣服を洗い、水に身をすすがなければならない。そうすれば夕になって清くなるであろう。
4307 04 19 20 しかし、汚れて身を清めない人は主の聖所を汚す者で、その人は会衆のうちから断たれなければならない。汚れを清める水がその身に注ぎかけられないゆえ、その人は汚れているからである。
4308 04 19 21 これは彼らの永久に守るべき定めとしなければならない。すなわち汚れを清める水をふりかけた者は衣服を洗わなければならない。また汚れを清める水に触れた者も夕まで汚れるであろう。
4309 04 19 22 すべて汚れた人の触れる物は汚れる。またそれに触れる人も夕まで汚れるであろう』」。
4310 04 20 1 イスラエルの人々の全会衆は正月になってチンの荒野にはいった。そして民はカデシにとどまったが、ミリアムがそこで死んだので、彼女をそこに葬った。
4311 04 20 2 そのころ会衆は水が得られなかったため、相集まってモーセとアロンに迫った。
4312 04 20 3 すなわち民はモーセと争って言った、「さきにわれわれの兄弟たちが主の前に死んだ時、われわれも死んでいたらよかったものを。
4313 04 20 4 なぜ、あなたがたは主の会衆をこの荒野に導いて、われわれと、われわれの家畜とを、ここで死なせようとするのですか。
4314 04 20 5 どうしてあなたがたはわれわれをエジプトから上らせて、この悪い所に導き入れたのですか。ここには種をまく所もなく、いちじくもなく、ぶどうもなく、ざくろもなく、また飲む水もありません」。
4315 04 20 6 そこでモーセとアロンは会衆の前を去り、会見の幕屋の入口へ行ってひれ伏した。すると主の栄光が彼らに現れ、
4316 04 20 7 主はモーセに言われた、
4317 04 20 8 「あなたは、つえをとり、あなたの兄弟アロンと共に会衆を集め、その目の前で岩に命じて水を出させなさい。こうしてあなたは彼らのために岩から水を出して、会衆とその家畜に飲ませなさい」。
4318 04 20 9 モーセは命じられたように主の前にあるつえを取った。
4319 04 20 10 モーセはアロンと共に会衆を岩の前に集めて彼らに言った、「そむく人たちよ、聞きなさい。われわれがあなたがたのためにこの岩から水を出さなければならないのであろうか」。
4320 04 20 11 モーセは手をあげ、つえで岩を二度打つと、水がたくさんわき出たので、会衆とその家畜はともに飲んだ。
4321 04 20 12 そのとき主はモーセとアロンに言われた、「あなたがたはわたしを信じないで、イスラエルの人々の前にわたしの聖なることを現さなかったから、この会衆をわたしが彼らに与えた地に導き入れることができないであろう」。
4322 04 20 13 これがメリバの水であって、イスラエルの人々はここで主と争ったが、主は自分の聖なることを彼らのうちに現された。
4323 04 20 14 さて、モーセはカデシからエドムの王に使者をつかわして言った、「あなたの兄弟、イスラエルはこう申します、『あなたはわたしたちが遭遇したすべての患難をご存じです。
4324 04 20 15 わたしたちの先祖はエジプトに下って行って、わたしたちは年久しくエジプトに住んでいましたが、エジプトびとがわたしたちと、わたしたちの先祖を悩ましたので、
4325 04 20 16 わたしたちが主に呼ばわったとき、主はわたしたちの声を聞き、ひとりの天の使をつかわして、わたしたちをエジプトから導き出されました。わたしたちは今あなたの領地の端にあるカデシの町におります。
4326 04 20 17 どうぞ、わたしたちにあなたの国を通らせてください。わたしたちは畑もぶどう畑も通りません。また井戸の水も飲みません。ただ王の大路を通り、あなたの領地を過ぎるまでは右にも左にも曲りません』」。
4327 04 20 18 しかし、エドムはモーセに言った、「あなたはわたしの領地をとおってはなりません。さもないと、わたしはつるぎをもって出て、あなたに立ちむかうでしょう」。
4328 04 20 19 イスラエルの人々はエドムに言った、「わたしたちは大路を通ります。もしわたしたちとわたしたちの家畜とが、あなたの水を飲むことがあれば、その価を払います。わたしは徒歩で通るだけですから何事もないでしょう」。
4329 04 20 20 しかし、エドムは「あなたは通ることはなりません」と言って、多くの民と強い軍勢とを率い、出て、これに立ちむかってきた。
4330 04 20 21 このようにエドムはイスラエルに、その領地を通ることを拒んだので、イスラエルはエドムからほかに向かった。
4331 04 20 22 こうしてイスラエルの人々の全会衆はカデシから進んでホル山に着いた。
4332 04 20 23 主はエドムの国境に近いホル山で、モーセとアロンに言われた、
4333 04 20 24 「アロンはその民に連ならなければならない。彼はわたしがイスラエルの人々に与えた地に、はいることができない。これはメリバの水で、あなたがたがわたしの言葉にそむいたからである。
4334 04 20 25 あなたはアロンとその子エレアザルを連れてホル山に登り、
4335 04 20 26 アロンに衣服を脱がせて、それをその子エレアザルに着せなさい。アロンはそのところで死んで、その民に連なるであろう」。
4336 04 20 27 モーセは主が命じられたとおりにし、連れだって全会衆の目の前でホル山に登った。
4337 04 20 28 そしてモーセはアロンに衣服を脱がせ、それをその子エレアザルに着せた。アロンはその山の頂で死んだ。そしてモーセとエレアザルは山から下ったが、
4338 04 20 29 全会衆がアロンの死んだのを見たとき、イスラエルの全家は三十日の間アロンのために泣いた。
4339 04 21 1 時にネゲブに住んでいたカナンびとアラデの王は、イスラエルがアタリムの道をとおって来ると聞いて、イスラエルを攻撃し、そのうちの数人を捕虜にした。
4340 04 21 2 そこでイスラエルは主に誓いを立てて言った、「もし、あなたがこの民をわたしの手にわたしてくださるならば、わたしはその町々をことごとく滅ぼしましょう」。
4341 04 21 3 主はイスラエルの言葉を聞きいれ、カナンびとをわたされたので、イスラエルはそのカナンびとと、その町々とをことごとく滅ぼした。それでその所の名はホルマと呼ばれた。
4342 04 21 4 民はホル山から進み、紅海の道をとおって、エドムの地を回ろうとしたが、民はその道に堪えがたくなった。
4343 04 21 5 民は神とモーセとにむかい、つぶやいて言った、「あなたがたはなぜわたしたちをエジプトから導き上って、荒野で死なせようとするのですか。ここには食物もなく、水もありません。わたしたちはこの粗悪な食物はいやになりました」。
4344 04 21 6 そこで主は、火のへびを民のうちに送られた。へびは民をかんだので、イスラエルの民のうち、多くのものが死んだ。
4345 04 21 7 民はモーセのもとに行って言った、「わたしたちは主にむかい、またあなたにむかい、つぶやいて罪を犯しました。どうぞへびをわたしたちから取り去られるように主に祈ってください」。モーセは民のために祈った。
4346 04 21 8 そこで主はモーセに言われた、「火のへびを造って、それをさおの上に掛けなさい。すべてのかまれた者が仰いで、それを見るならば生きるであろう」。
4347 04 21 9 モーセは青銅で一つのへびを造り、それをさおの上に掛けて置いた。すべてへびにかまれた者はその青銅のへびを仰いで見て生きた。
4348 04 21 10 イスラエルの人々は道を進んでオボテに宿営した。
4349 04 21 11 またオボテから進んで東の方、モアブの前にある荒野において、イエアバリムに宿営した。
4350 04 21 12 またそこから進んでゼレデの谷に宿営し、
4351 04 21 13 さらにそこから進んでアルノン川のかなたに宿営した。アルノン川はアモリびとの境から延び広がる荒野を流れるもので、モアブとアモリびととの間にあって、モアブの境をなしていた。
4352 04 21 14 それゆえに、「主の戦いの書」にこう言われている。「スパのワヘブ、アルノンの谷々、
4353 04 21 15 谷々の斜面、アルの町まで傾き、モアブの境に寄りかかる」。
4354 04 21 16 彼らはそこからベエルへ進んで行った。これは主がモーセにむかって、「民を集めよ。わたしはかれらに水を与えるであろう」と言われた井戸である。
4355 04 21 17 その時イスラエルはこの歌をうたった。「井戸の水よ、わきあがれ、人々よ、この井戸のために歌え、
4356 04 21 18 笏とつえとをもってつかさたちがこの井戸を掘り、民のおさたちがこれを掘った」。そして彼らは荒野からマッタナに進み、
4357 04 21 19 マッタナからナハリエルに、ナハリエルからバモテに、
4358 04 21 20 バモテからモアブの野にある谷に行き、荒野を見おろすピスガの頂に着いた。
4359 04 21 21 ここでイスラエルはアモリびとの王シホンに使者をつかわして言わせた、
4360 04 21 22 「わたしにあなたの国を通らせてください。わたしたちは畑にもぶどう畑にも、はいりません。また井戸の水も飲みません。わたしたちはあなたの領地を通り過ぎるまで、ただ王の大路を通ります」。
4361 04 21 23 しかし、シホンはイスラエルに自分の領地を通ることを許さなかった。そしてシホンは民をことごとく集め、荒野に出て、イスラエルを攻めようとし、ヤハズにきてイスラエルと戦った。
4362 04 21 24 イスラエルは、やいばで彼を撃ちやぶり、アルノンからヤボクまで彼の地を占領し、アンモンびとの境に及んだ。ヤゼルはアンモンびとの境だからである。
4363 04 21 25 こうしてイスラエルはこれらの町々をことごとく取った。そしてイスラエルはアモリびとのすべての町々に住み、ヘシボンとそれに附属するすべての村々にいた。
4364 04 21 26 ヘシボンはアモリびとの王シホンの都であって、シホンはモアブの以前の王と戦って、彼の地をアルノンまで、ことごとくその手から奪い取ったのである。
4365 04 21 27 それゆえに歌にうたわれている。「人々よ、ヘシボンにきたれ、シホンの町を築き建てよ。
4366 04 21 28 ヘシボンから火が燃え出し、シホンの都から炎が出て、モアブのアルを焼き尽し、アルノンの高地の君たちを滅ぼしたからだ。
4367 04 21 29 モアブよ、お前はわざわいなるかな、ケモシの民よ、お前は滅ぼされるであろう。彼は、むすこらを逃げ去らせ、娘らをアモリびとの王シホンの捕虜とならせた。
4368 04 21 30 彼らの子らは滅び去った、ヘシボンからデボンまで。われわれは荒した、火はついてメデバに及んだ」。
4369 04 21 31 こうしてイスラエルはアモリびとの地に住んだが、
4370 04 21 32 モーセはまた人をつかわしてヤゼルを探らせ、ついにその村々を取って、そこにいたアモリびとを追い出し、
4371 04 21 33 転じてバシャンの道に上って行ったが、バシャンの王オグは、その民をことごとく率い、エデレイで戦おうとして出迎えた。
4372 04 21 34 主はモーセに言われた、「彼を恐れてはならない。わたしは彼とその民とその地とを、ことごとくあなたの手にわたす。あなたはヘシボンに住んでいたアモリびとの王シホンにしたように彼にもするであろう」。
4373 04 21 35 そこで彼とその子とすべての民とを、ひとり残らず撃ち殺して、その地を占領した。
4374 04 22 1 さて、イスラエルの人々はまた道を進んで、エリコに近いヨルダンのかなたのモアブの平野に宿営した。
4375 04 22 2 チッポルの子バラクはイスラエルがアモリびとにしたすべての事を見たので、
4376 04 22 3 モアブは大いにイスラエルの民を恐れた。その数が多かったためである。モアブはイスラエルの人々をひじょうに恐れたので、
4377 04 22 4 ミデアンの長老たちに言った、「この群衆は牛が野の草をなめつくすように、われわれの周囲の物をみな、なめつくそうとしている」。チッポルの子バラクはこの時モアブの王であった。
4378 04 22 5 彼はアンモンびとの国のユフラテ川のほとりにあるペトルに使者をつかわし、ベオルの子バラムを招こうとして言わせた、「エジプトから出てきた民があり、地のおもてをおおってわたしの前にいます。
4379 04 22 6 どうぞ今きてわたしのためにこの民をのろってください。彼らはわたしよりも強いのです。そうしてくだされば、われわれは彼らを撃って、この国から追い払うことができるかもしれません。あなたが祝福する者は祝福され、あなたがのろう者はのろわれることをわたしは知っています」。
4380 04 22 7 モアブの長老たちとミデアンの長老たちは占いの礼物を手にして出発し、バラムのもとへ行って、バラクの言葉を告げた。
4381 04 22 8 バラムは彼らに言った、「今夜ここに泊まりなさい。主がわたしに告げられるとおりに、あなたがたに返答しましょう」。それでモアブのつかさたちはバラムのもとにとどまった。
4382 04 22 9 ときに神はバラムに臨んで言われた、「あなたのところにいるこの人々はだれですか」。
4383 04 22 10 バラムは神に言った、「モアブの王チッポルの子バラクが、わたしに人をよこして言いました。
4384 04 22 11 『エジプトから出てきた民があり、地のおもてをおおっています。どうぞ今きてわたしのために彼らをのろってください。そうすればわたしは戦って、彼らを追い払うことができるかもしれません』」。
4385 04 22 12 神はバラムに言われた、「あなたは彼らと一緒に行ってはならない。またその民をのろってはならない。彼らは祝福された者だからである」。
4386 04 22 13 明くる朝起きて、バラムはバラクのつかさたちに言った、「あなたがたは国にお帰りなさい。主はわたしがあなたがたと一緒に行くことを、お許しになりません」。
4387 04 22 14 モアブのつかさたちは立ってバラクのもとに行って言った、「バラムはわたしたちと一緒に来ることを承知しません」。
4388 04 22 15 バラクはまた前の者よりも身分の高いつかさたちを前よりも多くつかわした。
4389 04 22 16 彼らはバラムのところへ行って言った、「チッポルの子バラクはこう申します、『どんな妨げをも顧みず、どうぞわたしのところへおいでください。
4390 04 22 17 わたしはあなたを大いに優遇します。そしてあなたがわたしに言われる事はなんでもいたします。どうぞきてわたしのためにこの民をのろってください』」。
4391 04 22 18 しかし、バラムはバラクの家来たちに答えた、「たといバラクがその家に満ちるほどの金銀をわたしに与えようとも、事の大小を問わず、わたしの神、主の言葉を越えては何もすることができません。
4392 04 22 19 それで、どうぞ、あなたがたも今夜ここにとどまって、主がこの上、わたしになんと仰せられるかを確かめさせてください」。
4393 04 22 20 夜になり、神はバラムに臨んで言われた、「この人々はあなたを招きにきたのだから、立ってこの人々と一緒に行きなさい。ただしわたしが告げることだけを行わなければならない」。
4394 04 22 21 明くる朝起きてバラムは、ろばにくらをおき、モアブのつかさたちと一緒に行った。
4395 04 22 22 しかるに神は彼が行ったために怒りを発せられ、主の使は彼を妨げようとして、道に立ちふさがっていた。バラムは、ろばに乗り、そのしもべふたりも彼と共にいたが、
4396 04 22 23 ろばは主の使が、手に抜き身のつるぎをもって、道に立ちふさがっているのを見、道をそれて畑にはいったので、バラムは、ろばを打って道に返そうとした。
4397 04 22 24 しかるに主の使はまたぶどう畑の間の狭い道に立ちふさがっていた。道の両側には石がきがあった。
4398 04 22 25 ろばは主の使を見て、石がきにすり寄り、バラムの足を石がきに押しつけたので、バラムは、また、ろばを打った。
4399 04 22 26 主の使はまた先に進んで、狭い所に立ちふさがっていた。そこは右にも左にも、曲る道がなかったので、
4400 04 22 27 ろばは主の使を見てバラムの下に伏した。そこでバラムは怒りを発し、つえでろばを打った。
4401 04 22 28 すると、主が、ろばの口を開かれたので、ろばはバラムにむかって言った、「わたしがあなたに何をしたというのですか。あなたは三度もわたしを打ったのです」。
4402 04 22 29 バラムは、ろばに言った、「お前がわたしを侮ったからだ。わたしの手につるぎがあれば、いま、お前を殺してしまうのだが」。
4403 04 22 30 ろばはまたバラムに言った、「わたしはあなたが、きょうまで長いあいだ乗られたろばではありませんか。わたしはいつでも、あなたにこのようにしたでしょうか」。バラムは言った、「いや、しなかった」。
4404 04 22 31 このとき主がバラムの目を開かれたので、彼は主の使が手に抜き身のつるぎをもって、道に立ちふさがっているのを見て、頭を垂れてひれ伏した。
4405 04 22 32 主の使は彼に言った、「なぜあなたは三度もろばを打ったのか。あなたが誤って道を行くので、わたしはあなたを妨げようとして出てきたのだ。
4406 04 22 33 ろばはわたしを見て三度も身を巡らしてわたしを避けた。もし、ろばが身を巡らしてわたしを避けなかったなら、わたしはきっと今あなたを殺して、ろばを生かしておいたであろう」。
4407 04 22 34 バラムは主の使に言った、「わたしは罪を犯しました。あなたがわたしをとどめようとして、道に立ちふさがっておられるのを、わたしは知りませんでした。それで今、もし、お気に召さないのであれば、わたしは帰りましょう」。
4408 04 22 35 主の使はバラムに言った、「この人々と一緒に行きなさい。ただし、わたしが告げることのみを述べなければならない」。こうしてバラムはバラクのつかさたちと一緒に行った。
4409 04 22 36 さて、バラクはバラムがきたと聞いて、国境のアルノン川のほとり、国境の一端にあるモアブの町まで出て行って迎えた。
4410 04 22 37 そしてバラクはバラムに言った、「わたしは人をつかわしてあなたを招いたではありませんか。あなたはなぜわたしのところへきませんでしたか。わたしは実際あなたを優遇することができないでしょうか」。
4411 04 22 38 バラムはバラクに言った、「ごらんなさい。わたしはあなたのところにきています。しかし、今、何事かをみずから言うことができましょうか。わたしはただ神がわたしの口に授けられることを述べなければなりません」。
4412 04 22 39 こうしてバラムはバラクと一緒に行き、キリアテ・ホゾテにきたとき、
4413 04 22 40 バラクは牛と羊とをほふって、バラムおよび彼と共にいたバラムを連れてきたつかさたちに贈った。
4414 04 22 41 明くる朝バラクはバラムを伴ってバモテバアルにのぼり、そこからイスラエルの民の宿営の一端をながめさせた。
4415 04 23 1 バラムはバラクに言った、「わたしのために、ここに七つの祭壇を築き、七頭の雄牛と七頭の雄羊とを整えなさい」。
4416 04 23 2 バラクはバラムの言ったとおりにした。そしてバラクとバラムとは、その祭壇ごとに雄牛一頭と雄羊一頭とをささげた。
4417 04 23 3 バラムはバラクに言った、「あなたは燔祭のかたわらに立っていてください。その間にわたしは行ってきます。主はたぶんわたしに会ってくださるでしょう。そして、主がわたしに示される事はなんでもあなたに告げましょう」。こうして彼は一つのはげ山に登った。
4418 04 23 4 神がバラムに会われたので、バラムは神に言った、「わたしは七つの祭壇を設け、祭壇ごとに雄牛一頭と雄羊一頭とをささげました」。
4419 04 23 5 主はバラムの口に言葉を授けて言われた、「バラクのもとに帰ってこう言いなさい」。
4420 04 23 6 彼がバラクのもとに帰ってみると、バラクはモアブのすべてのつかさたちと共に燔祭のかたわらに立っていた。
4421 04 23 7 バラムはこの託宣を述べた。「バラクはわたしをアラムから招き寄せ、モアブの王はわたしを東の山から招き寄せて言う、『きてわたしのためにヤコブをのろえ、きてイスラエルをのろえ』と。
4422 04 23 8 神ののろわない者を、わたしがどうしてのろえよう。主ののろわない者を、わたしがどうしてのろえよう。
4423 04 23 9 岩の頂からながめ、丘の上から見たが、これはひとり離れて住む民、もろもろの国民のうちに並ぶものはない。
4424 04 23 10 だれがヤコブの群衆を数え、イスラエルの無数の民を数え得よう。わたしは義人のように死に、わたしの終りは彼らの終りのようでありたい」。
4425 04 23 11 そこでバラクはバラムに言った、「あなたはわたしに何をするのですか。わたしは敵をのろうために、あなたを招いたのに、あなたはかえって敵を祝福するばかりです」。
4426 04 23 12 バラムは答えた、「わたしは、主がわたしの口に授けられる事だけを語るように注意すべきではないでしょうか」。
4427 04 23 13 バラクは彼に言った、「わたしと一緒にほかのところへ行って、そこから彼らをごらんください。あなたはただ彼らの一端を見るだけで、全体を見ることはできないでしょうが、そこからわたしのために彼らをのろってください」。
4428 04 23 14 そして彼はバラムを連れてゾピムの野に行き、ピスガの頂に登って、そこに七つの祭壇を築き、祭壇ごとに雄牛一頭と雄羊一頭とをささげた。
4429 04 23 15 ときにはバラムはバラクに言った、「あなたはここで、燔祭のかたわらに立っていてください。わたしは向こうへ行って、主に伺いますから」。
4430 04 23 16 主はバラムに臨み、言葉を口に授けて言われた、「バラクのもとに帰ってこう言いなさい」。
4431 04 23 17 彼がバラクのところへ行って見ると、バラクは燔祭のかたわらに立ち、モアブのつかさたちも共にいた。バラクはバラムに言った、「主はなんと言われましたか」。
4432 04 23 18 そこでバラムはまたこの託宣を述べた。「バラクよ、立って聞け、チッポルの子よ、わたしに耳を傾けよ。
4433 04 23 19 神は人のように偽ることはなく、また人の子のように悔いることもない。言ったことで、行わないことがあろうか、語ったことで、しとげないことがあろうか。
4434 04 23 20 祝福せよとの命をわたしはうけた、すでに神が祝福されたものを、わたしは変えることができない。
4435 04 23 21 だれもヤコブのうちに災のあるのを見ない、またイスラエルのうちに悩みのあるのを見ない。彼らの神、主が共にいまし、王をたたえる声がその中に聞える。
4436 04 23 22 神は彼らをエジプトから導き出された、彼らは野牛の角のようだ。
4437 04 23 23 ヤコブには魔術がなく、イスラエルには占いがない。神がそのなすところを時に応じてヤコブに告げ、イスラエルに示されるからだ。
4438 04 23 24 見よ、この民は雌じしのように立ち上がり、雄じしのように身を起す。これはその獲物を食らい、その殺した者の血を飲むまでは身を横たえない」。
4439 04 23 25 バラクはバラムに言った、「あなたは彼らをのろうことも祝福することも、やめてください」。
4440 04 23 26 バラムは答えてバラクに言った、「主の言われることは、なんでもしなければならないと、わたしはあなたに告げませんでしたか」。
4441 04 23 27 バラクはバラムに言った、「どうぞ、おいでください。わたしはあなたをほかの所へお連れしましょう。神はあなたがそこからわたしのために彼らをのろうことを許されるかもしれません」。
4442 04 23 28 そしてバラクはバラムを連れて、荒野を見おろすペオルの頂に行った。
4443 04 23 29 バラムはバラクに言った、「わたしのためにここに七つの祭壇を築き、雄牛七頭と、雄羊七頭とを整えなさい」。
4444 04 23 30 バラクはバラムの言ったとおりにし、その祭壇ごとに雄牛一頭と雄羊一頭とをささげた。
4445 04 24 1 バラムはイスラエルを祝福することが主の心にかなうのを見たので、今度はいつものように行って魔術を求めることをせず、顔を荒野にむけ、
4446 04 24 2 目を上げて、イスラエルがそれぞれ部族にしたがって宿営しているのを見た。その時、神の霊が臨んだので、
4447 04 24 3 彼はこの託宣を述べた。「ベオルの子バラムの言葉、目を閉じた人の言葉、
4448 04 24 4 神の言葉を聞く者、全能者の幻を見る者、倒れ伏して、目の開かれた者の言葉。
4449 04 24 5 ヤコブよ、あなたの天幕は麗しい、イスラエルよ、あなたのすまいは、麗しい。
4450 04 24 6 それは遠くひろがる谷々のよう、川べの園のよう、主が植えられた沈香樹のよう、流れのほとりの香柏のようだ。
4451 04 24 7 水は彼らのかめからあふれ、彼らの種は水の潤いに育つであろう。彼らの王はアガグよりも高くなり、彼らの国はあがめられるであろう。
4452 04 24 8 神は彼らをエジプトから導き出された、彼らは野牛の角のようだ。彼らは敵なる国々の民を滅ぼし、その骨を砕き、矢をもって突き通すであろう。
4453 04 24 9 彼らは雄じしのように身をかがめ、雌じしのように伏している。だれが彼らを起しえよう。あなたを祝福する者は祝福され、あなたをのろう者はのろわれるであろう」。
4454 04 24 10 そこでバラクはバラムにむかって怒りを発し、手を打ち鳴らした。そしてバラクはバラムに言った、「敵をのろうために招いたのに、あなたはかえって三度までも彼らを祝福した。
4455 04 24 11 それで今あなたは急いで自分のところへ帰ってください。わたしはあなたを大いに優遇しようと思った。しかし、主はその優遇をあなたに得させないようにされました」。
4456 04 24 12 バラムはバラクに言った、「わたしはあなたがつかわされた使者たちに言ったではありませんか、
4457 04 24 13 『たといバラクがその家に満ちるほどの金銀をわたしに与えようとも、主の言葉を越えて心のままに善も悪も行うことはできません。わたしは主の言われることを述べるだけです』。
4458 04 24 14 わたしは今わたしの民のところへ帰って行きます。それでわたしはこの民が後の日にあなたの民にどんなことをするかをお知らせしましょう」。
4459 04 24 15 そしてこの託宣を述べた。「ベオルの子バラムの言葉、目を閉じた人の言葉。
4460 04 24 16 神の言葉を聞く者、いと高き者の知識をもつ者、全能者の幻を見、倒れ伏して、目の開かれた者の言葉。
4461 04 24 17 わたしは彼を見る、しかし今ではない。わたしは彼を望み見る、しかし近くではない。ヤコブから一つの星が出、イスラエルから一本のつえが起り、モアブのこめかみと、セツのすべての子らの脳天を撃つであろう。
4462 04 24 18 敵のエドムは領地となり、セイルもまた領地となるであろう。そしてイスラエルは勝利を得るであろう。
4463 04 24 19 権を執る者がヤコブから出、生き残った者を町から断ち滅ぼすであろう」。
4464 04 24 20 バラムはまたアマレクを望み見て、この託宣を述べた。「アマレクは諸国民のうちの最初のもの、しかし、ついに滅び去るであろう」。
4465 04 24 21 またケニびとを望み見てこの託宣を述べた。「お前のすみかは堅固だ、岩に、お前は巣をつくっている。
4466 04 24 22 しかし、カインは滅ぼされるであろう。アシュルはいつまでお前を捕虜とするであろうか」。
4467 04 24 23 彼はまたこの託宣を述べた。「ああ、神が定められた以上、だれが生き延びることができよう。
4468 04 24 24 キッテムの海岸から舟がきて、アシュルを攻めなやまし、エベルを攻めなやますであろう。そして彼もまたついに滅び去るであろう」。
4469 04 24 25 こうしてバラムは立ち上がって、自分のところへ帰っていった。バラクもまた立ち去った。
4470 04 25 1 イスラエルはシッテムにとどまっていたが、民はモアブの娘たちと、みだらな事をし始めた。
4471 04 25 2 その娘たちが神々に犠牲をささげる時に民を招くと、民は一緒にそれを食べ、娘たちの神々を拝んだ。
4472 04 25 3 イスラエルはこうしてペオルのバアルにつきしたがったので、主はイスラエルにむかって怒りを発せられた。
4473 04 25 4 そして主はモーセに言われた、「民の首領をことごとく捕え、日のあるうちにその人々を主の前で処刑しなさい。そうすれば主の怒りはイスラエルを離れるであろう」。
4474 04 25 5 モーセはイスラエルのさばきびとたちにむかって言った、「あなたがたはおのおの、配下の者どもでペオルのバアルにつきしたがったものを殺しなさい」。
4475 04 25 6 モーセとイスラエルの人々の全会衆とが会見の幕屋の入口で泣いていた時、彼らの目の前で、ひとりのイスラエルびとが、その兄弟たちの中に、ひとりのミデアンの女を連れてきた。
4476 04 25 7 祭司アロンの子なるエレアザルの子ピネハスはこれを見て、会衆のうちから立ち上がり、やりを手に執り、
4477 04 25 8 そのイスラエルの人の後を追って、奥の間に入り、そのイスラエルの人を突き、またその女の腹を突き通して、ふたりを殺した。こうして疫病がイスラエルの人々に及ぶのがやんだ。
4478 04 25 9 しかし、その疫病で死んだ者は二万四千人であった。
4479 04 25 10 主はモーセに言われた、
4480 04 25 11 「祭司アロンの子なるエレアザルの子ピネハスは自分のことのように、わたしの憤激をイスラエルの人々のうちに表わし、わたしの怒りをそのうちから取り去ったので、わたしは憤激して、イスラエルの人々を滅ぼすことをしなかった。
4481 04 25 12 このゆえにあなたは言いなさい、『わたしは平和の契約を彼に授ける。
4482 04 25 13 これは彼とその後の子孫に永遠の祭司職の契約となるであろう。彼はその神のために熱心であって、イスラエルの人々のために罪のあがないをしたからである』と」。
4483 04 25 14 ミデアンの女と共に殺されたイスラエルの人の名はジムリといい、サルの子で、シメオンびとのうちの一族のつかさであった。
4484 04 25 15 またその殺されたミデアンの女の名はコズビといい、ツルの娘であった。ツルはミデアンの民の一族のかしらであった。
4485 04 25 16 主はまたモーセに言われた、
4486 04 25 17 「ミデアンびとを打ち悩ましなさい。
4487 04 25 18 彼らはたくらみをもって、あなたがたを悩まし、ペオルの事と、彼らの姉妹、ミデアンのつかさの娘コズビ、すなわちペオルの事により、疫病の起った日に殺された女の事とによって、あなたがたを惑わしたからである」。
4488 04 26 1 疫病の後、主はモーセと祭司アロンの子エレアザルとに言われた、
4489 04 26 2 「イスラエルの人々の全会衆の総数をその父祖の家にしたがって調べ、イスラエルにおいて、すべて戦争に出ることのできる二十歳以上の者を数えなさい」。
4490 04 26 3 そこでモーセと祭司エレアザルとは、エリコに近いヨルダンのほとりにあるモアブの平野で彼らに言った、
4491 04 26 4 「主がモーセに命じられたように、あなたがたのうちの二十歳以上の者を数えなさい」。エジプトの地から出てきたイスラエルの人々は次のとおりである。
4492 04 26 5 ルベンはイスラエルの長子である。ルベンの子孫は、ヘノクからヘノクびとの氏族が出、パルからパルびとの氏族が出、
4493 04 26 6 ヘヅロンからヘヅロンびとの氏族が出、カルミからカルミびとの氏族が出た。
4494 04 26 7 これらはルベンびとの氏族であって、数えられた者は四万三千七百三十人であった。
4495 04 26 8 またパルの子はエリアブ。
4496 04 26 9 エリアブの子はネムエル、ダタン、アビラムである。このダタンとアビラムとは会衆のうちから選び出された者で、コラのともがらと共にモーセとアロンとに逆らって主と争った時、
4497 04 26 10 地は口を開いて彼らとコラとをのみ、その仲間は死んだ。その時二百五十人が火に焼き滅ぼされて、戒めの鏡となった。
4498 04 26 11 ただし、コラの子たちは死ななかった。
4499 04 26 12 シメオンの子孫は、その氏族によれば、ネムエルからネムエルびとの氏族が出、ヤミンからヤミンびとの氏族が出、ヤキンからヤキンびとの氏族が出、
4500 04 26 13 ゼラからゼラびとの氏族が出、シャウルからシャウルびとの氏族が出た。
4501 04 26 14 これらはシメオンびとの氏族であって、数えられた者は二万二千二百人であった。
4502 04 26 15 ガドの子孫は、その氏族によれば、ゼポンからゼポンびとの氏族が出、ハギからハギびとの氏族が出、シュニからシュニびとの氏族が出、
4503 04 26 16 オズニからオズニびとの氏族が出、エリからエリびとの氏族が出、
4504 04 26 17 アロドからアロドびとの氏族が出、アレリからアレリびとの氏族が出た。
4505 04 26 18 これらはガドの子孫の氏族であって、数えられた者は四万五百人であった。
4506 04 26 19 ユダの子らはエルとオナンとであって、エルとオナンとはカナンの地で死んだ。
4507 04 26 20 ユダの子孫は、その氏族によれば、シラからシラびとの氏族が出、ペレヅからペレヅびとの氏族が出、ゼラからゼラびとの氏族が出た。
4508 04 26 21 ペレヅの子孫は、ヘヅロンからヘヅロンびとの氏族が出、ハムルからハムルびとの氏族が出た。
4509 04 26 22 これらはユダの氏族であって、数えられた者は七万六千五百人であった。
4510 04 26 23 イッサカルの子孫は、その氏族によれば、トラからトラびとの氏族が出、プワからプワびとの氏族が出、
4511 04 26 24 ヤシュブからヤシュブびとの氏族が出、シムロンからシムロンびとの氏族が出た。
4512 04 26 25 これらはイッサカルの氏族であって、数えられた者は六万四千三百人であった。
4513 04 26 26 ゼブルンの子孫は、その氏族によれば、セレデからセレデびとの氏族が出、エロンからエロンびとの氏族が出、ヤリエルからヤリエルびとの氏族が出た。
4514 04 26 27 これらはゼブルンびとの氏族であって、数えられた者は六万五百人であった。
4515 04 26 28 ヨセフの子らは、その氏族によれば、マナセとエフライムとであって、
4516 04 26 29 マナセの子孫は、マキルからマキルびとの氏族が出た。マキルからギレアデが生れ、ギレアデからギレアデびとの氏族が出た。
4517 04 26 30 ギレアデの子孫は次のとおりである。イエゼルからイエゼルびとの氏族が出、ヘレクからヘレクびとの氏族が出、
4518 04 26 31 アスリエルからアスリエルびとの氏族が出、シケムからシケムびとの氏族が出、
4519 04 26 32 セミダからセミダびとの氏族が出、ヘペルからヘペルびとの氏族が出た。
4520 04 26 33 ヘペルの子ゼロペハデには男の子がなく、ただ女の子のみで、ゼロペハデの女の子の名はマアラ、ノア、ホグラ、ミルカ、テルザといった。
4521 04 26 34 これらはマナセの氏族であって、数えられた者は五万二千七百人であった。
4522 04 26 35 エフライムの子孫は、その氏族によれば、次のとおりである。シュテラからはシュテラびとの氏族が出、ベケルからベケルびとの氏族が出、タハンからタハンびとの氏族が出た。
4523 04 26 36 またシュテラの子孫は次のとおりである。すなわちエランからエランびとの氏族が出た。
4524 04 26 37 これらはエフライムの子孫の氏族であって、数えられた者は三万二千五百人であった。以上はヨセフの子孫で、その氏族によるものである。
4525 04 26 38 ベニヤミンの子孫は、その氏族によれば、ベラからベラびとの氏族が出、アシベルからアシベルびとの氏族が出、アヒラムからアヒラムびとの氏族が出、
4526 04 26 39 シュパムからシュパムびとの氏族が出、ホパムからホパムびとの氏族が出た。
4527 04 26 40 ベラの子はアルデとナアマンとであって、アルデからアルデびとの氏族が出、ナアマンからナアマンびとの氏族が出た。
4528 04 26 41 これらはベニヤミンの子孫であって、その氏族によれば数えられた者は四万五千六百人であった。
4529 04 26 42 ダンの子孫は、その氏族によれば、次のとおりである。シュハムからシュハムびとの氏族が出た。これらはダンの氏族であって、その氏族によるものである。
4530 04 26 43 シュハムびとのすべての氏族のうち、数えられた者は六万四千四百人であった。
4531 04 26 44 アセルの子孫は、その氏族によれば、エムナからエムナびとの氏族が出、エスイからエスイびとの氏族が出、ベリアからベリアびとの氏族が出た。
4532 04 26 45 ベリアの子孫のうちヘベルからヘベルびとの氏族が出、マルキエルからマルキエルびとの氏族が出た。
4533 04 26 46 アセルの娘の名はサラといった。
4534 04 26 47 これらはアセルの子孫の氏族であって、数えられた者は五万三千四百人であった。
4535 04 26 48 ナフタリの子孫は、その氏族によれば、ヤジエルからヤジエルびとの氏族が出、グニからグニびとの氏族が出、
4536 04 26 49 エゼルからエゼルびとの氏族が出、シレムからシレムびとの氏族が出た。
4537 04 26 50 これらはナフタリの氏族であって、その氏族により、数えられた者は四万五千四百人であった。
4538 04 26 51 これらはイスラエルの子孫の数えられた者であって、六十万一千百三十人であった。
4539 04 26 52 主はモーセに言われた、
4540 04 26 53 「これらの人々に、その名の数にしたがって地を分け与え、嗣業とさせなさい。
4541 04 26 54 大きい部族には多くの嗣業を与え、小さい部族には少しの嗣業を与えなさい。すなわち数えられた数にしたがって、おのおのの部族にその嗣業を与えなければならない。
4542 04 26 55 ただし地は、くじをもって分け、その父祖の部族の名にしたがって、それを継がなければならない。
4543 04 26 56 すなわち、くじをもってその嗣業を大きいものと、小さいものとに分けなければならない」。
4544 04 26 57 レビびとのその氏族にしたがって数えられた者は次のとおりである。ゲルションからゲルションびとの氏族が出、コハテからコハテびとの氏族が出、メラリからメラリびとの氏族が出た。
4545 04 26 58 レビの氏族は次のとおりである。すなわちリブニびとの氏族、ヘブロンびとの氏族、マヘリびとの氏族、ムシびとの氏族、コラびとの氏族であって、コハテからアムラムが生れた。
4546 04 26 59 アムラムの妻の名はヨケベデといって、レビの娘である。彼女はエジプトでレビに生れた者であるが、アムラムにとついで、アロンとモーセおよびその姉妹ミリアムを産んだ。
4547 04 26 60 アロンにはナダブ、アビウ、エレアザルおよびイタマルが生れた。
4548 04 26 61 ナダブとアビウは異火を主の前にささげた時に死んだ。
4549 04 26 62 その数えられた一か月以上のすべての男子は二万三千人であった。彼らはイスラエルの人々のうちに嗣業を与えられなかったため、イスラエルの人々のうちに数えられなかった者である。
4550 04 26 63 これらはモーセと祭司エレアザルが、エリコに近いヨルダンのほとりにあるモアブの平野で数えたイスラエルの人々の数である。
4551 04 26 64 ただしそのうちには、モーセと祭司アロンがシナイの荒野でイスラエルの人々を数えた時に数えられた者はひとりもなかった。
4552 04 26 65 それは主がかつて彼らについて「彼らは必ず荒野で死ぬであろう」と言われたからである。それで彼らのうちエフンネの子カレブとヌンの子ヨシュアのほか、ひとりも残った者はなかった。
4553 04 27 1 さて、ヨセフの子マナセの氏族のうちのヘペルの子、ゼロペハデの娘たちが訴えてきた。ヘペルはギレアデの子、ギレアデはマキルの子、マキルはマナセの子である。その娘たちは名をマアラ、ノア、ホグラ、ミルカ、テルザといったが、
4554 04 27 2 彼らは会見の幕屋の入口でモーセと、祭司エレアザルと、つかさたちと全会衆との前に立って言った、
4555 04 27 3 「わたしたちの父は荒野で死にました。彼は、コラの仲間となって主に逆らった者どもの仲間のうちには加わりませんでした。彼は自分の罪によって死んだのですが、男の子がありませんでした。
4556 04 27 4 男の子がないからといって、どうしてわたしたちの父の名がその氏族のうちから削られなければならないのでしょうか。わたしたちの父の兄弟と同じように、わたしたちにも所有地を与えてください」。
4557 04 27 5 モーセがその事を主の前に述べると、
4558 04 27 6 主はモーセに言われた、
4559 04 27 7 「ゼロペハデの娘たちの言うことは正しい。あなたは必ず彼らの父の兄弟たちと同じように、彼らにも嗣業の所有地を与えなければならない。すなわち、その父の嗣業を彼らに渡さなければならない。
4560 04 27 8 あなたはイスラエルの人々に言いなさい、『もし人が死んで、男の子がない時は、その嗣業を娘に渡さなければならない。
4561 04 27 9 もしまた娘もない時は、その嗣業を兄弟に与えなければならない。
4562 04 27 10 もし兄弟もない時は、その嗣業を父の兄弟に与えなければならない。
4563 04 27 11 もしまた父に兄弟がない時は、その氏族のうちで彼に最も近い親族にその嗣業を与えて所有させなければならない』。主がモーセに命じられたようにイスラエルの人々は、これをおきての定めとしなければならない」。
4564 04 27 12 主はモーセに言われた、「このアバリムの山に登って、わたしがイスラエルの人々に与える地を見なさい。
4565 04 27 13 あなたはそれを見てから、兄弟アロンのようにその民に加えられるであろう。
4566 04 27 14 これは会衆がチンの荒野で逆らい争った時、あなたがたはわたしの命にそむき、あの水のかたわらで彼らの目の前にわたしの聖なることを現さなかったからである」。これはチンの荒野にあるカデシのメリバの水である。
4567 04 27 15 モーセは主に言った、
4568 04 27 16 「すべての肉なるものの命の神、主よ、どうぞ、この会衆の上にひとりの人を立て、
4569 04 27 17 彼らの前に出入りし、彼らを導き出し、彼らを導き入れる者とし、主の会衆を牧者のない羊のようにしないでください」。
4570 04 27 18 主はモーセに言われた、「神の霊のやどっているヌンの子ヨシュアを選び、あなたの手をその上におき、
4571 04 27 19 彼を祭司エレアザルと全会衆の前に立たせて、彼らの前で職に任じなさい。
4572 04 27 20 そして彼にあなたの権威を分け与え、イスラエルの人々の全会衆を彼に従わせなさい。
4573 04 27 21 彼は祭司エレアザルの前に立ち、エレアザルは彼のためにウリムをもって、主の前に判断を求めなければならない。ヨシュアとイスラエルの人々の全会衆とはエレアザルの言葉に従っていで、エレアザルの言葉に従ってはいらなければならない」。
4574 04 27 22 そこでモーセは主が命じられたようにし、ヨシュアを選んで、祭司エレアザルと全会衆の前に立たせ、
4575 04 27 23 彼の上に手をおき、主がモーセによって語られたとおりに彼を任命した。
4576 04 28 1 主はモーセに言われた、
4577 04 28 2 「イスラエルの人々に命じて言いなさい、『あなたがたは香ばしいかおりとしてわたしにささげる火祭、すなわち、わたしの供え物、わたしの食物を定めの時にわたしにささげることを怠ってはならない』。
4578 04 28 3 また彼らに言いなさい、『あなたがたが主にささぐべき火祭はこれである。すなわち一歳の雄の全き小羊二頭を毎日ささげて常燔祭としなければならない。
4579 04 28 4 すなわち一頭の小羊を朝にささげ、一頭の小羊を夕にささげなければならない。
4580 04 28 5 また麦粉一エパの十分の一に、砕いて取った油一ヒンの四分の一を混ぜて素祭としなければならない。
4581 04 28 6 これはシナイ山で定められた常燔祭であって、主に香ばしいかおりとしてささげる火祭である。
4582 04 28 7 またその灌祭は小羊一頭について一ヒンの四分の一をささげなければならない。すなわち聖所において主のために濃い酒をそそいで灌祭としなければならない。
4583 04 28 8 夕には他の一頭の小羊をささげなければならない。その素祭と灌祭とは朝のものと同じようにし、その小羊を火祭としてささげ、主に香ばしいかおりとしなければならない。
4584 04 28 9 また安息日には一歳の雄の全き小羊二頭と、麦粉一エパの十分の二に油を混ぜた素祭と、その灌祭とをささげなければならない。
4585 04 28 10 これは安息日ごとの燔祭であって、常燔祭とその灌祭とに加えらるべきものである。
4586 04 28 11 またあなたがたは月々の第一日に燔祭を主にささげなければならない。すなわち若い雄牛二頭、雄羊一頭、一歳の雄の全き小羊七頭をささげ、
4587 04 28 12 雄牛一頭には麦粉一エパの十分の三に油を混ぜたものを素祭とし、雄羊一頭には麦粉一エパの十分の二に油を混ぜたものを素祭とし、
4588 04 28 13 小羊一頭には麦粉十分の一に油を混ぜたものを素祭とし、これを香ばしいかおりの燔祭として主のために火祭としなければならない。
4589 04 28 14 またその灌祭は雄牛一頭についてぶどう酒一ヒンの二分の一、雄羊一頭について一ヒンの三分の一、小羊一頭について一ヒンの四分の一をささげなければならない。これは年の月々を通じて、新月ごとにささぐべき燔祭である。
4590 04 28 15 また常燔祭とその灌祭とのほかに、雄やぎ一頭を罪祭として主にささげなければならない。
4591 04 28 16 正月の十四日は主の過越の祭である。
4592 04 28 17 またその月の十五日は祭日としなければならない。七日のあいだ種入れぬパンを食べなければならない。
4593 04 28 18 その初めの日には聖会を開かなければならない。なんの労役をもしてはならない。
4594 04 28 19 あなたがたは火祭として主に燔祭をささげなければならない。すなわち若い雄牛二頭、雄羊一頭、一歳の雄の小羊七頭をささげなければならない。これらはみな全きものでなければならない。
4595 04 28 20 その素祭には油を混ぜた麦粉をささげなければならない。すなわち雄牛一頭につき麦粉一エパの十分の三、雄羊一頭につき十分の二をささげ、
4596 04 28 21 また七頭の小羊にはその一頭ごとに十分の一をささげなければならない。
4597 04 28 22 また雄やぎ一頭を罪祭としてささげ、あなたがたのために罪のあがないをしなければならない。
4598 04 28 23 あなたがたは朝にささげる常燔祭の燔祭のほかに、これらをささげなければならない。
4599 04 28 24 このようにあなたがたは七日のあいだ毎日、火祭の食物をささげて、主に香ばしいかおりとしなければならない。これは常燔祭とその灌祭とのほかにささぐべきものである。
4600 04 28 25 そして第七日に、あなたがたは聖会を開かなければならない。なんの労役をもしてはならない。
4601 04 28 26 あなたがたは七週の祭、すなわち新しい素祭を主にささげる初穂の日にも聖会を開かなければならない。なんの労役をもしてはならない。
4602 04 28 27 あなたがたは燔祭をささげて、主に香ばしいかおりとしなければならない。すなわち若い雄牛二頭、雄羊一頭、一歳の雄の小羊七頭をささげなければならない。
4603 04 28 28 その素祭には油を混ぜた麦粉をささげなければならない。すなわち雄牛一頭につき一エパの十分の三、雄羊一頭につき十分の二をささげ、
4604 04 28 29 また七頭の小羊には一頭ごとに十分の一をささげなければならない。
4605 04 28 30 また雄やぎ一頭をささげてあなたがたのために罪のあがないをしなければならない。
4606 04 28 31 あなたがたは常燔祭とその素祭とその灌祭とのほかに、これらをささげなければならない。これらはみな、全きものでなければならない。
4607 04 29 1 七月には、その月の第一日に聖会を開かなければならない。なんの労役をもしてはならない。これはあなたがたがラッパを吹く日である。
4608 04 29 2 あなたがたは燔祭をささげて、主に香ばしいかおりとしなければならない。すなわち若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の全き小羊七頭をささげなければならない。
4609 04 29 3 その素祭には油を混ぜた麦粉をささげなければならない。すなわち雄牛一頭について一エパの十分の三、雄羊一頭について十分の二をささげ、
4610 04 29 4 また七頭の小羊には一頭ごとに十分の一をささげなければならない。
4611 04 29 5 また雄やぎ一頭を罪祭としてささげ、あなたがたのために罪のあがないをしなければならない。
4612 04 29 6 これは新月の燔祭とその素祭、常燔祭とその素祭、および灌祭のほかのものであって、これらのものの定めにしたがい、香ばしいかおりとして、主に火祭としなければならない。
4613 04 29 7 またその七月の十日に聖会を開き、かつあなたがたの身を悩まさなければならない。なんの仕事もしてはならない。
4614 04 29 8 あなたがたは主に燔祭をささげて、香ばしいかおりとしなければならない。すなわち若い雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の小羊七頭をささげなければならない。これらはみな全きものでなければならない。
4615 04 29 9 その素祭には油を混ぜた麦粉をささげなければならない。すなわち雄牛一頭につき一エパの十分の三、雄羊一頭につき十分の二をささげ、
4616 04 29 10 また七頭の小羊には一頭ごとに十分の一をささげなければならない。
4617 04 29 11 また雄やぎ一頭を罪祭としてささげなければならない。これらは贖罪の罪祭と常燔祭とその素祭、および灌祭のほかのものである。
4618 04 29 12 七月の十五日に聖会を開かなければならない。なんの労役もしてはならない。七日のあいだ主のために祭をしなければならない。
4619 04 29 13 あなたがたは燔祭をささげて、主に香ばしいかおりの火祭としなければならない。すなわち若い雄牛十三頭、雄羊二頭、一歳の雄の小羊十四頭をささげなければならない。これらはみな全きものでなければならない。
4620 04 29 14 その素祭には油を混ぜた麦粉をささげなければならない。すなわち十三頭の雄牛には一頭ごとに十分の三、その二頭の雄羊には一頭ごとに十分の二をささげ、
4621 04 29 15 その十四頭の小羊には一頭ごとに十分の一をささげなければならない。
4622 04 29 16 また雄やぎ一頭を罪祭としてささげなければならない。これらは常燔祭とその素祭および灌祭のほかのものである。
4623 04 29 17 第二日には若い雄牛十二頭、雄羊二頭、一歳の雄の全き小羊十四頭をささげなければならない。
4624 04 29 18 その雄牛と雄羊と小羊とのための素祭と灌祭とはその数にしたがって、定めのようにささげなければならない。
4625 04 29 19 また雄やぎ一頭を罪祭としてささげなければならない。これらは常燔祭とその素祭および灌祭のほかのものである。
4626 04 29 20 第三日には雄牛十一頭、雄羊二頭、一歳の雄の全き小羊十四頭をささげなければならない。
4627 04 29 21 その雄牛と雄羊と小羊とのための素祭と灌祭とは、その数にしたがって定めのようにささげなければならない。
4628 04 29 22 また雄やぎ一頭を罪祭としてささげなければならない。これらは常燔祭とその素祭および灌祭のほかのものである。
4629 04 29 23 第四日には雄牛十頭、雄羊二頭、一歳の雄の全き小羊十四頭をささげなければならない。
4630 04 29 24 その雄牛と雄羊と小羊とのための素祭と灌祭とは、その数にしたがって定めのようにささげなければならない。
4631 04 29 25 また雄やぎ一頭を罪祭としてささげなければならない。これらは常燔祭とその素祭および灌祭のほかのものである。
4632 04 29 26 第五日には雄牛九頭、雄羊二頭、一歳の雄の全き小羊十四頭をささげなければならない。
4633 04 29 27 その雄牛と雄羊と小羊とのための素祭と灌祭とは、その数にしたがって定めのようにささげなければならない。
4634 04 29 28 また雄やぎ一頭を罪祭としてささげなければならない。これらは常燔祭とその素祭および灌祭のほかのものである。
4635 04 29 29 第六日には雄牛八頭、雄羊二頭、一歳の雄の全き小羊十四頭をささげなければならない。
4636 04 29 30 その雄牛と雄羊と小羊とのための素祭と灌祭とは、その数にしたがって定めのようにささげなければならない。
4637 04 29 31 また雄やぎ一頭を罪祭としてささげなければならない。これらは常燔祭とその素祭および灌祭のほかのものである。
4638 04 29 32 第七日には雄牛七頭、雄羊二頭、一歳の雄の全き小羊十四頭をささげなければならない。
4639 04 29 33 その雄牛と雄羊と小羊とのための素祭と灌祭とは、その数にしたがって定めのようにささげなければならない。
4640 04 29 34 また雄やぎ一頭を罪祭としてささげなければならない。これらは常燔祭とその素祭および灌祭のほかのものである。
4641 04 29 35 第八日にはまた集会を開かなければならない。なんの労役をもしてはならない。
4642 04 29 36 あなたがたは燔祭をささげて主に香ばしいかおりの火祭としなければならない。すなわち雄牛一頭、雄羊一頭、一歳の雄の全き小羊七頭をささげなければならない。
4643 04 29 37 その雄牛と雄羊と小羊とのための素祭と灌祭とは、その数にしたがって定めのようにささげなければならない。
4644 04 29 38 また雄やぎ一頭を罪祭としてささげなければならない。これらは常燔祭とその素祭および灌祭のほかのものである。
4645 04 29 39 あなたがたは定めの祭の時に、これらのものを主にささげなければならない。これらはあなたがたの誓願、または自発の供え物としてささげる燔祭、素祭、灌祭および酬恩祭のほかのものである』」。
4646 04 29 40 モーセは主が命じられた事をことごとくイスラエルの人々に告げた。
4647 04 30 1 モーセはイスラエルの人々の部族のかしらたちに言った、「これは主が命じられた事である。
4648 04 30 2 もし人が主に誓願をかけ、またはその身に物断ちをしようと誓いをするならば、その言葉を破ってはならない。口で言ったとおりにすべて行わなければならない。
4649 04 30 3 またもし女がまだ若く、父の家にいて、主に誓願をかけ、またはその身に物断ちをしようとする時、
4650 04 30 4 父が彼女の誓願、または彼女の身に断った物断ちのことを聞いて、彼女に何も言わないならば、彼女はすべて誓願を行い、またその身に断った物断ちをすべて守らなければならない。
4651 04 30 5 しかし、彼女の父がそれを聞いた日に、それを承認しない時は、彼女はその誓願、またはその身に断った物断ちをすべてやめることができる。父が承認しないのであるから、主は彼女をゆるされるであろう。
4652 04 30 6 またもし夫のある身で、みずから誓願をかけ、またはその身に物断ちをしようと、軽々しく口で言った場合、
4653 04 30 7 夫がそれを聞き、それを聞いた日に彼女に何も言わないならば、彼女はその誓願を行い、その身に断った物断ちを守らなければならない。
4654 04 30 8 しかし、もし夫がそれを聞いた日に、それを承認しないならば、夫はその女がかけた誓願、またはその身に物断ちをしようと、軽々しく口に言ったことをやめさせることができる。主はその女をゆるされるであろう。
4655 04 30 9 しかし、寡婦あるいは離縁された女の誓願、すべてその身に断った物断ちは、それを守らなければならない。
4656 04 30 10 もし女が夫の家で誓願をかけ、またはその身に物断ちをしようと誓った時、
4657 04 30 11 夫がそれを聞いて、彼女に何も言わず、またそれに反対しないならば、その誓願はすべて行わなければならない。またその身に断った物断ちはすべて守らなければならない。
4658 04 30 12 しかし、もし夫がそれを聞いた日にそれを認めないならば、彼女の誓願、または身の物断ちについて、彼女が口で言った事は、すべてやめることができる。夫がそれを認めなかったのだから、主はその女をゆるされるであろう。
4659 04 30 13 すべての誓願およびすべてその身を悩ます物断ちの誓約は、夫がそれを守らせることができ、または夫がそれをやめさせることができる。
4660 04 30 14 もし夫が彼女に何も言わずに日を送るならば、彼は妻がした誓願、または物断ちをすべて認めたのである。彼はそれを聞いた日に妻に何も言わなかったのだから、それを認めたのである。
4661 04 30 15 しかし、もし夫がそれを聞き、あとになって、それを認めないならば、彼は妻の罪を負わなければならない」。
4662 04 30 16 これらは主がモーセに命じられた定めであって、夫と妻との間、および父とまだ若くて父の家にいる娘との間に関するものである。
4663 04 31 1 さて主はモーセに言われた、
4664 04 31 2 「ミデアンびとにイスラエルの人々のあだを報いなさい。その後、あなたはあなたの民に加えられるであろう」。
4665 04 31 3 モーセは民に言った、「あなたがたのうちから人を選んで戦いのために武装させ、ミデアンびとを攻めて、主のためミデアンびとに復讐しなさい。
4666 04 31 4 すなわちイスラエルのすべての部族から、部族ごとに千人ずつを戦いに送り出さなければならない」。
4667 04 31 5 そこでイスラエルの部族のうちから部族ごとに千人ずつを選び、一万二千人を得て、戦いのために武装させた。
4668 04 31 6 モーセは各部族から千人ずつを戦いにつかわし、また祭司エレアザルの子ピネハスに、聖なる器と吹き鳴らすラッパとを執らせて、共に戦いにつかわした。
4669 04 31 7 彼らは主がモーセに命じられたようにミデアンびとと戦って、その男子をみな殺した。
4670 04 31 8 その殺した者のほかにまたミデアンの王五人を殺した。その名はエビ、レケム、ツル、フル、レバである。またベオルの子バラムをも、つるぎにかけて殺した。
4671 04 31 9 またイスラエルの人々はミデアンの女たちとその子供たちを捕虜にし、その家畜と、羊の群れと、貨財とをことごとく奪い取り、
4672 04 31 10 そのすまいのある町々と、その部落とを、ことごとく火で焼いた。
4673 04 31 11 こうして彼らはすべて奪ったものと、かすめたものとは人をも家畜をも取り、
4674 04 31 12 その生けどった者と、かすめたものと、奪ったものとを携えて、エリコに近いヨルダンのほとりのモアブの平野の宿営におるモーセと祭司エレアザルとイスラエルの人々の会衆のもとへもどってきた。
4675 04 31 13 ときにモーセと祭司エレアザルと会衆のつかさたちはみな宿営の外に出て迎えたが、
4676 04 31 14 モーセは軍勢の将たち、すなわち戦場から帰ってきた千人の長たちと、百人の長たちに対して怒った。
4677 04 31 15 モーセは彼らに言った、「あなたがたは女たちをみな生かしておいたのか。
4678 04 31 16 彼らはバラムのはかりごとによって、イスラエルの人々に、ペオルのことで主に罪を犯させ、ついに主の会衆のうちに疫病を起すに至った。
4679 04 31 17 それで今、この子供たちのうちの男の子をみな殺し、また男と寝て、男を知った女をみな殺しなさい。
4680 04 31 18 ただし、まだ男と寝ず、男を知らない娘はすべてあなたがたのために生かしておきなさい。
4681 04 31 19 そしてあなたがたは七日のあいだ宿営の外にとどまりなさい。あなたがたのうちすべて人を殺した者、およびすべて殺された者に触れた者は、あなたがた自身も、あなたがたの捕虜も共に、三日目と七日目とに身を清めなければならない。
4682 04 31 20 またすべての衣服と、すべての皮の器と、すべてやぎの毛で作ったものと、すべての木の器とを清めなければならない」。
4683 04 31 21 祭司エレアザルは戦いに出たいくさびとたちに言った、「これは主がモーセに命じられた律法の定めである。
4684 04 31 22 金、銀、青銅、鉄、すず、鉛など、
4685 04 31 23 すべて火に耐える物は火の中を通さなければならない。そうすれば清くなるであろう。なおその上、汚れを清める水で、清めなければならない。しかし、すべて火に耐えないものは水の中を通さなければならない。
4686 04 31 24 あなたがたは七日目に衣服を洗わなければならない。そして清くなり、その後宿営にはいることができる」。
4687 04 31 25 主はモーセに言われた、
4688 04 31 26 「あなたと祭司エレアザルおよび会衆の氏族のかしらたちは、その生けどった人と家畜の獲物の総数を調べ、
4689 04 31 27 その獲物を戦いに出た勇士と、全会衆とに折半しなさい。
4690 04 31 28 そして戦いに出たいくさびとに、人または牛、またはろば、または羊を、おのおの五百ごとに一つを取り、みつぎとして主にささげさせなさい。
4691 04 31 29 すなわち彼らが受ける半分のなかから、それを取り、主にささげる物として祭司エレアザルに渡しなさい。
4692 04 31 30 またイスラエルの人々が受ける半分のなかから、その獲た人または牛、またはろば、または羊などの家畜を、おのおの五十ごとに一つを取り、主の幕屋の務をするレビびとに与えなさい」。
4693 04 31 31 モーセと祭司エレアザルとは主がモーセに命じられたとおりに行った。
4694 04 31 32 そこでその獲物、すなわち、いくさびとたちが奪い取ったものの残りは羊六十七万五千、
4695 04 31 33 牛七万二千、
4696 04 31 34 ろば六万一千、
4697 04 31 35 人三万二千、これはみな男と寝ず、男を知らない女であった。
4698 04 31 36 そしてその半分、すなわち戦いに出た者の分は羊三十三万七千五百、
4699 04 31 37 主にみつぎとした羊は六百七十五。
4700 04 31 38 牛は三万六千、そのうちから主にみつぎとしたものは七十二。
4701 04 31 39 ろばは三万五百、そのうちから主にみつぎとしたものは六十一。
4702 04 31 40 人は一万六千、そのうちから主にみつぎとしたものは三十二人であった。
4703 04 31 41 モーセはそのみつぎを主にささげる物として祭司エレアザルに渡した。主がモーセに命じられたとおりである。
4704 04 31 42 モーセが戦いに出た人々とは別にイスラエルの人々に与えた半分、
4705 04 31 43 すなわち会衆の受けた半分は羊三十三万七千五百、
4706 04 31 44 牛三万六千、
4707 04 31 45 ろば三万五百、
4708 04 31 46 人一万六千であって、
4709 04 31 47 モーセはイスラエルの人々の受けた半分のなかから、人および獣をおのおの五十ごとに一つを取って、主の幕屋の務をするレビびとに与えた。主がモーセに命じられたとおりである。
4710 04 31 48 時に軍勢の将であったものども、すなわち千人の長たちと百人の長たちとがモーセのところにきて、
4711 04 31 49 モーセに言った、「しもべらは、指揮下のいくさびとを数えましたが、われわれのうち、ひとりも欠けた者はありませんでした。
4712 04 31 50 それで、われわれは、おのおの手に入れた金の飾り物、すなわち腕飾り、腕輪、指輪、耳輪、首飾りなどを主に携えてきて供え物とし、主の前にわれわれの命のあがないをしようと思います」。
4713 04 31 51 モーセと祭司エレアザルとは、彼らから細工を施した金の飾り物を受け取った。
4714 04 31 52 千人の長たちと百人の長たちとが、主にささげものとした金は合わせて一万六千七百五十シケル。
4715 04 31 53 いくさびとは、おのおの自分のぶんどり物を獲た。
4716 04 31 54 モーセと祭司エレアザルとは、千人の長たちと百人の長たちとから、その金を受け取り、それを携えて会見の幕屋に入り、主の前に置いてイスラエルの人々のために記念とした。
4717 04 32 1 ルベンの子孫とガドの子孫とは非常に多くの家畜の群れを持っていた。彼らがヤゼルの地と、ギレアデの地とを見ると、そこは家畜を飼うのに適していたので、
4718 04 32 2 ガドの子孫とルベンの子孫とがきて、モーセと、祭司エレアザルと、会衆のつかさたちとに言った、
4719 04 32 3 「アタロテ、デボン、ヤゼル、ニムラ、ヘシボン、エレアレ、シバム、ネボ、ベオン、
4720 04 32 4 すなわち主がイスラエルの会衆の前に撃ち滅ぼされた国は、家畜を飼うのに適した地ですが、しもべらは家畜を持っています」。
4721 04 32 5 彼らはまた言った、「それでもし、あなたの恵みを得られますなら、どうぞこの地をしもべらの領地にして、われわれにヨルダンを渡らせないでください」。
4722 04 32 6 モーセはガドの子孫とルベンの子孫とに言った、「あなたがたは兄弟が戦いに行くのに、ここにすわっていようというのか。
4723 04 32 7 どうしてあなたがたはイスラエルの人々の心をくじいて、主が彼らに与えられる地に渡ることができないようにするのか。
4724 04 32 8 あなたがたの先祖も、わたしがカデシ・バルネアから、その地を見るためにつかわした時に、同じようなことをした。
4725 04 32 9 すなわち彼らはエシコルの谷に行って、その地を見たとき、イスラエルの人々の心をくじいて、主が与えられる地に行くことができないようにした。
4726 04 32 10 そこでその時、主は怒りを発し、誓って言われた、
4727 04 32 11 『エジプトから出てきた人々で二十歳以上の者はひとりもわたしがアブラハム、イサク、ヤコブに誓った地を見ることはできない。彼らはわたしに従わなかったからである。
4728 04 32 12 ただケニズびとエフンネの子カレブとヌンの子ヨシュアとはそうではない。このふたりは全く主に従ったからである』。
4729 04 32 13 主はこのようにイスラエルにむかって怒りを発し、彼らを四十年のあいだ荒野にさまよわされたので、主の前に悪を行ったその世代の人々は、ついにみな滅びた。
4730 04 32 14 あなたがたはその父に代って立った罪びとのやからであって、主のイスラエルに対する激しい怒りをさらに増そうとしている。
4731 04 32 15 あなたがたがもしそむいて主に従わないならば、主はまたこの民を荒野にすておかれるであろう。そうすればあなたがたはこの民をことごとく滅ぼすに至るであろう」。
4732 04 32 16 彼らはモーセのところへ進み寄って言った、「われわれはこの所に、群れのために羊のおりを建て、また子供たちのために町々を建てようと思います。
4733 04 32 17 しかし、われわれは武装してイスラエルの人々の前に進み、彼らをその所へ導いて行きましょう。ただわれわれの子供たちは、この地の住民の害をのがれるため、堅固な町々に住ませておかなければなりません。
4734 04 32 18 われわれはイスラエルの人々が、おのおのその嗣業を受けるまでは、家に帰りません。
4735 04 32 19 またわれわれはヨルダンのかなたで彼らとともには嗣業を受けません。われわれはヨルダンのこなた、すなわち東の方で嗣業を受けるからです」。
4736 04 32 20 モーセは彼らに言った、「もし、あなたがたがそのようにし、みな武装して主の前に行って戦い、
4737 04 32 21 みな武装して主の前に行ってヨルダン川を渡り、主がその敵を自分の前から追い払われて、
4738 04 32 22 この国が主の前に征服されて後、帰ってくるならば、あなたがたは主の前にも、イスラエルの前にも、とがめはないであろう。そしてこの地は主の前にあなたがたの所有となるであろう。
4739 04 32 23 しかし、そうしないならば、あなたがたは主にむかって罪を犯した者となり、その罪は必ず身に及ぶことを知らなければならない。
4740 04 32 24 あなたがたは子供たちのために町々を建て、羊のために、おりを建てなさい。しかし、あなたがたは約束したことは行わなければならない」。
4741 04 32 25 ガドの子孫とルベンの子孫とは、モーセに言った、「しもべらはあなたの命じられたとおりにいたします。
4742 04 32 26 われわれの子供たちと妻と羊と、すべての家畜とは、このギレアデの町々に残します。
4743 04 32 27 しかし、しもべらはみな武装して、あなたの言われるとおり、主の前に渡って行って戦います」。
4744 04 32 28 モーセは彼らのことについて、祭司エレアザルと、ヌンの子ヨシュアと、イスラエルの人々の部族のうちの氏族のかしらたちとに命じた。
4745 04 32 29 そしてモーセは彼らに言った、「ガドの子孫と、ルベンの子孫とが、おのおの武装してあなたがたと一緒にヨルダンを渡り、主の前に戦って、その地をあなたがたが征服するならば、あなたがたは彼らにギレアデの地を領地として与えなければならない。
4746 04 32 30 しかし、もし彼らが武装してあなたがたと一緒に渡って行かないならば、彼らはカナンの地であなたがたのうちに領地を獲なければならない」。
4747 04 32 31 ガドの子孫と、ルベンの子孫とは答えて言った、「しもべらは主が言われたとおりにいたします。
4748 04 32 32 われわれは武装して、主の前にカナンの地へ渡って行きますが、ヨルダンのこなたで、われわれの嗣業をもつことにします」。
4749 04 32 33 そこでモーセはガドの子孫と、ルベンの子孫と、ヨセフの子マナセの部族の半ばとに、アモリびとの王シホンの国と、バシャンの王オグの国とを与えた。すなわち、その国およびその領内の町々とその町々の周囲の地とを与えた。
4750 04 32 34 こうしてガドの子孫は、デボン、アタロテ、アロエル、
4751 04 32 35 アテロテ・ショパン、ヤゼル、ヨグベハ、
4752 04 32 36 ベテニムラ、ベテハランなどの堅固な町々を建て、羊のおりを建てた。
4753 04 32 37 またルベンの子孫は、ヘシボン、エレアレ、キリヤタイム、
4754 04 32 38 および後に名を改めたネボと、バアル・メオンの町を建て、またシブマの町を建てた。彼らは建てた町々に新しい名を与えた。
4755 04 32 39 またマナセの子マキルの子孫はギレアデに行って、そこを取り、その住民アモリびとを追い払ったので、
4756 04 32 40 モーセはギレアデをマナセの子マキルに与えてそこに住まわせた。
4757 04 32 41 またマナセの子ヤイルは行って村々を取り、それをハオテヤイルと名づけた。
4758 04 32 42 またノバは行ってケナテとその村々を取り、自分の名にしたがって、それをノバと名づけた。
4759 04 33 1 イスラエルの人々が、モーセとアロンとに導かれ、その部隊に従って、エジプトの国を出てから経た旅路は次のとおりである。
4760 04 33 2 モーセは主の命により、その旅路にしたがって宿駅を書きとめた。その宿駅にしたがえば旅路は次のとおりである。
4761 04 33 3 彼らは正月の十五日にラメセスを出立した。すなわち過越の翌日イスラエルの人々は、すべてのエジプトびとの目の前を意気揚々と出立した。
4762 04 33 4 その時エジプトびとは、主に撃ち殺されたすべてのういごを葬っていた。主はまた彼らの神々にも罰を加えられた。
4763 04 33 5 こうしてイスラエルの人々はラメセスを出立してスコテに宿営し、
4764 04 33 6 スコテを出立して荒野の端にあるエタムに宿営し、
4765 04 33 7 エタムを出立してバアル・ゼポンの前にあるピハヒロテに引き返してミグドルの前に宿営し、
4766 04 33 8 ピハヒロテを出立して、海のなかをとおって荒野に入り、エタムの荒野を三日路ほど行って、メラに宿営し、
4767 04 33 9 メラを出立し、エリムに行って宿営した。エリムには水の泉十二と、なつめやし七十本とがあった。
4768 04 33 10 エリムを出立して紅海のほとりに宿営し、
4769 04 33 11 紅海を出立してシンの荒野に宿営し、
4770 04 33 12 シンの荒野を出立してドフカに宿営し、
4771 04 33 13 ドフカを出立してアルシに宿営し、
4772 04 33 14 アルシを出立してレピデムに宿営した。そこには民の飲む水がなかった。
4773 04 33 15 レピデムを出立してシナイの荒野に宿営し、
4774 04 33 16 シナイの荒野を出立してキブロテ・ハッタワに宿営し、
4775 04 33 17 キブロテ・ハッタワを出立してハゼロテに宿営し、
4776 04 33 18 ハゼロテを出立してリテマに宿営し、
4777 04 33 19 リテマを出立してリンモン・パレツに宿営し、
4778 04 33 20 リンモン・パレツを出立してリブナに宿営し、
4779 04 33 21 リブナを出立してリッサに宿営し、
4780 04 33 22 リッサを出立してケヘラタに宿営し、
4781 04 33 23 ケヘラタを出立してシャペル山に宿営し、
4782 04 33 24 シャペル山を出立してハラダに宿営し、
4783 04 33 25 ハラダを出立してマケロテに宿営し、
4784 04 33 26 マケロテを出立してタハテに宿営し、
4785 04 33 27 タハテを出立してテラに宿営し、
4786 04 33 28 テラを出立してミテカに宿営し、
4787 04 33 29 ミテカを出立してハシモナに宿営し、
4788 04 33 30 ハシモナを出立してモセラに宿営し、
4789 04 33 31 モセラを出立してベネヤカンに宿営し、
4790 04 33 32 ベネヤカンを出立してホル・ハギデガデに宿営し、
4791 04 33 33 ホル・ハギデガデを出立してヨテバタに宿営し、
4792 04 33 34 ヨテバタを出立してアブロナに宿営し、
4793 04 33 35 アブロナを出立してエジオン・ゲベルに宿営し、
4794 04 33 36 エジオン・ゲベルを出立してチンの荒野すなわちカデシに宿営し、
4795 04 33 37 カデシを出立してエドムの国の端にあるホル山に宿営した。
4796 04 33 38 イスラエルの人々がエジプトの国を出て四十年目の五月一日に、祭司アロンは主の命によりホル山に登って、その所で死んだ。
4797 04 33 39 アロンはホル山で死んだとき百二十三歳であった。
4798 04 33 40 カナンの地のネゲブに住んでいたカナンびとアラデの王は、イスラエルの人々の来るのを聞いた。
4799 04 33 41 ついで、ホル山を出立してザルモナに宿営し、
4800 04 33 42 ザルモナを出立してプノンに宿営し、
4801 04 33 43 プノンを出立してオボテに宿営し、
4802 04 33 44 オボテを出立してモアブの境にあるイエ・アバリムに宿営し、
4803 04 33 45 イエ・アバリムを出立してデボン・ガドに宿営し、
4804 04 33 46 デボン・ガドを出立してアルモン・デブラタイムに宿営し、
4805 04 33 47 アルモン・デブラタイムを出立してネボの前にあるアバリムの山に宿営し、
4806 04 33 48 アバリムの山を出立してエリコに近いヨルダンのほとりのモアブの平野に宿営した。
4807 04 33 49 すなわちヨルダンのほとりのモアブの平野で、ベテエシモテとアベル・シッテムとの間に宿営した。
4808 04 33 50 エリコに近いヨルダンのほとりのモアブの平野で、主はモーセに言われた、
4809 04 33 51 「イスラエルの人々に言いなさい。あなたがたがヨルダンを渡ってカナンの地にはいるときは、
4810 04 33 52 その地の住民をことごとくあなたがたの前から追い払い、すべての石像をこぼち、すべての鋳像をこぼち、すべての高き所を破壊しなければならない。
4811 04 33 53 またあなたがたはその地の民を追い払って、そこに住まなければならない。わたしがその地をあなたがたの所有として与えたからである。
4812 04 33 54 あなたがたは、おのおの氏族ごとにくじを引き、その地を分けて嗣業としなければならない。大きい部族には多くの嗣業を与え、小さい部族には少しの嗣業を与えなければならない。そのくじの当った所がその所有となるであろう。あなたがたは父祖の部族にしたがって、それを継がなければならない。
4813 04 33 55 しかし、その地の住民をあなたがたの前から追い払わないならば、その残して置いた者はあなたがたの目にとげとなり、あなたがたの脇にいばらとなり、あなたがたの住む国において、あなたがたを悩ますであろう。
4814 04 33 56 また、わたしは彼らにしようと思ったとおりに、あなたがたにするであろう」。
4815 04 34 1 主はモーセに言われた、
4816 04 34 2 「イスラエルの人々に命じて言いなさい。あなたがたがカナンの地にはいるとき、あなたがたの嗣業となるべき地はカナンの地で、その全域は次のとおりである。
4817 04 34 3 南の方はエドムに接するチンの荒野に始まり、南の境は、東は塩の海の端に始まる。
4818 04 34 4 その境はアクラビムの坂の南を巡ってチンに向かい、カデシ・バルネアの南に至り、ハザル・アダルに進み、アズモンに及ぶ。
4819 04 34 5 その境はまたアズモンから転じてエジプトの川に至り、海に及んで尽きる。
4820 04 34 6 西の境はおおうみとその沿岸で、これがあなたがたの西の境である。
4821 04 34 7 あなたがたの北の境は次のとおりである。すなわちおおうみからホル山まで線を引き、
4822 04 34 8 ホル山からハマテの入口まで線を引き、その境をゼダデに至らせ、
4823 04 34 9 またその境はジフロンに進み、ハザル・エノンに至って尽きる。これがあなたがたの北の境である。
4824 04 34 10 あなたがたの東の境は、ハザル・エノンからシパムまで線を引き、
4825 04 34 11 またその境はアインの東の方で、シパムからリブラに下り、またその境は下ってキンネレテの海の東の斜面に至り、
4826 04 34 12 またその境はヨルダンに下り、塩の海に至って尽きる。あなたがたの国の周囲の境は以上のとおりである」。
4827 04 34 13 モーセはイスラエルの人々に命じて言った、「これはあなたがたが、くじによって継ぐべき地である。主はこれを九つの部族と半部族とに与えよと命じられた。
4828 04 34 14 それはルベンの子孫の部族とガドの子孫の部族とが共に父祖の家にしたがって、すでにその嗣業を受け、またマナセの半部族もその嗣業を受けていたからである。
4829 04 34 15 この二つの部族と半部族とはエリコに近いヨルダンのかなた、すなわち東の方、日の出る方で、その嗣業を受けた」。
4830 04 34 16 主はまたモーセに言われた、
4831 04 34 17 「あなたがたに、嗣業として地を分け与える人々の名は次のとおりである。すなわち祭司エレアザルと、ヌンの子ヨシュアとである。
4832 04 34 18 あなたがたはまた、おのおの部族から、つかさひとりずつを選んで、地を分け与えさせなければならない。
4833 04 34 19 その人々の名は次のとおりである。すなわちユダの部族ではエフンネの子カレブ、
4834 04 34 20 シメオンの子孫の部族ではアミホデの子サムエル、
4835 04 34 21 ベニヤミンの部族ではキスロンの子エリダデ、
4836 04 34 22 ダンの子孫の部族ではヨグリの子つかさブッキ、
4837 04 34 23 ヨセフの子孫、すなわちマナセの部族ではエポデの子つかさハニエル、
4838 04 34 24 エフライムの子孫の部族ではシフタンの子つかさケムエル、
4839 04 34 25 ゼブルンの子孫の部族ではパルナクの子つかさエリザパン、
4840 04 34 26 イッサカルの子孫の部族ではアザンの子つかさパルテエル、
4841 04 34 27 アセルの子孫の部族ではシロミの子つかさアヒウデ、
4842 04 34 28 ナフタリの子孫の部族では、アミホデの子つかさパダヘル。
4843 04 34 29 カナンの地でイスラエルの人々に嗣業を分け与えることを主が命じられた人々は以上のとおりである」。
4844 04 35 1 エリコに近いヨルダンのほとりのモアブの平野で、主はモーセに言われた、
4845 04 35 2 「イスラエルの人々に命じて、その獲た嗣業のうちから、レビびとに住むべき町々を与えさせなさい。また、あなたがたは、その町々の周囲の放牧地をレビびとに与えなければならない。
4846 04 35 3 その町々は彼らの住む所、その放牧地は彼らの家畜と群れ、およびすべての獣のためである。
4847 04 35 4 あなたがたがレビびとに与える町々の放牧地は、町の石がきから一千キュビトの周囲としなければならない。
4848 04 35 5 あなたがたは町の外で東側に二千キュビト、南側に二千キュビト、西側に二千キュビト、北側に二千キュビトを計り、町はその中央にしなければならない。彼らの町の放牧地はこのようにしなければならない。
4849 04 35 6 あなたがたがレビびとに与える町々は六つで、のがれの町とし、人を殺した者がのがれる所としなければならない。なおこのほかに四十二の町を与えなければならない。
4850 04 35 7 すなわちあなたがたがレビびとに与える町は合わせて四十八で、これをその放牧地と共に与えなければならない。
4851 04 35 8 あなたがたがイスラエルの人々の所有のうちからレビびとに町々を与えるには、大きい部族からは多く取り、小さい部族からは少なく取り、おのおの受ける嗣業にしたがって、その町々をレビびとに与えなければならない」。
4852 04 35 9 主はモーセに言われた、
4853 04 35 10 「イスラエルの人々に言いなさい。あなたがたがヨルダンを渡ってカナンの地にはいるときは、
4854 04 35 11 あなたがたのために町を選んで、のがれの町とし、あやまって人を殺した者を、そこにのがれさせなければならない。
4855 04 35 12 これはあなたがたが復讐する者を避けてのがれる町であって、人を殺した者が会衆の前に立って、さばきを受けないうちに、殺されることのないためである。
4856 04 35 13 あなたがたが与える町々のうち、六つをのがれの町としなければならない。
4857 04 35 14 すなわちヨルダンのかなたで三つの町を与え、カナンの地で三つの町を与えて、のがれの町としなければならない。
4858 04 35 15 これらの六つの町は、イスラエルの人々と、他国の人および寄留者のために、のがれの場所としなければならない。すべてあやまって人を殺した者が、そこにのがれるためである。
4859 04 35 16 もし人が鉄の器で、人を打って死なせたならば、その人は故殺人である。故殺人は必ず殺されなければならない。
4860 04 35 17 またもし人を殺せるほどの石を取って、人を打って死なせたならば、その人は故殺人である。故殺人は必ず殺されなければならない。
4861 04 35 18 あるいは人を殺せるほどの木の器を取って、人を打って死なせたならば、その人は故殺人である。故殺人は必ず殺されなければならない。
4862 04 35 19 血の復讐をする者は、自分でその故殺人を殺すことができる。すなわち彼に出会うとき、彼を殺すことができる。
4863 04 35 20 またもし恨みのために人を突き、あるいは故意に人に物を投げつけて死なせ、
4864 04 35 21 あるいは恨みによって手で人を打って死なせたならば、その打った者は必ず殺されなければならない。彼は故殺人だからである。血の復讐をする者は、その故殺人に出会うとき殺すことができる。
4865 04 35 22 しかし、もし恨みもないのに思わず人を突き、または、なにごころなく人に物を投げつけ、
4866 04 35 23 あるいは人のいるのも見ずに、人を殺せるほどの石を投げつけて死なせた場合、その人がその敵でもなく、また害を加えようとしたのでもない時は、
4867 04 35 24 会衆はこれらのおきてによって、その人を殺した者と、血の復讐をする者との間をさばかなければならない。
4868 04 35 25 すなわち会衆はその人を殺した者を血の復讐をする者の手から救い出して、逃げて行ったのがれの町に返さなければならない。その者は聖なる油を注がれた大祭司の死ぬまで、そこにいなければならない。
4869 04 35 26 しかし、もし人を殺した者が、その逃げて行ったのがれの町の境を出た場合、
4870 04 35 27 血の復讐をする者は、のがれの町の境の外で、これに出会い、血の復讐をする者が、その人を殺した者を殺しても、彼には血を流した罪はない。
4871 04 35 28 彼は大祭司の死ぬまで、そののがれの町におるべきものだからである。大祭司の死んだ後は、人を殺した者は自分の所有の地にかえることができる。
4872 04 35 29 これらのことはすべてあなたがたの住む所で、代々あなたがたのためのおきての定めとしなければならない。
4873 04 35 30 人を殺した者、すなわち故殺人はすべて証人の証言にしたがって殺されなければならない。しかし、だれもただひとりの証言によって殺されることはない。
4874 04 35 31 あなたがたは死に当る罪を犯した故殺人の命のあがないしろを取ってはならない。彼は必ず殺されなければならない。
4875 04 35 32 また、のがれの町にのがれた者のために、あがないしろを取って大祭司の死ぬ前に彼を自分の地に帰り住まわせてはならない。
4876 04 35 33 あなたがたはそのおる所の地を汚してはならない。流血は地を汚すからである。地の上に流された血は、それを流した者の血によらなければあがなうことができない。
4877 04 35 34 あなたがたは、その住む所の地、すなわちわたしのおる地を汚してはならない。主なるわたしがイスラエルの人々のうちに住んでいるからである」。
4878 04 36 1 ヨセフの子孫の氏族のうち、マナセの子マキルの子であるギレアデの子らの氏族のかしらたちがきて、モーセとイスラエルの人々のかしらであるつかさたちとの前で語って、
4879 04 36 2 言った、「イスラエルの人々に、その嗣業の地をくじによって与えることを主はあなたに命じられ、あなたもまた、われわれの兄弟ゼロペハデの嗣業を、その娘たちに与えるよう、主によって命じられました。
4880 04 36 3 その娘たちがもし、イスラエルの人々のうちの他の部族のむすこたちにとつぐならば、彼女たちの嗣業は、われわれの父祖の嗣業のうちから取り除かれて、そのとつぐ部族の嗣業に加えられるでしょう。こうしてそれはわれわれの嗣業の分から取り除かれるでしょう。
4881 04 36 4 そしてイスラエルの人々のヨベルの年がきた時、彼女たちの嗣業は、そのとついだ部族の嗣業に加えられるでしょう。こうして彼女たちの嗣業は、われわれの父祖の部族の嗣業のうちから取り除かれるでしょう」。
4882 04 36 5 モーセは主の言葉にしたがって、イスラエルの人々に命じて言った、「ヨセフの子孫の部族の言うところは正しい。
4883 04 36 6 ゼロペハデの娘たちについて、主が命じられたことはこうである。すなわち『彼女たちはその心にかなう者にとついでもよいが、ただその父祖の部族の一族にのみ、とつがなければならない。
4884 04 36 7 そうすればイスラエルの人々の嗣業は、部族から部族に移るようなことはないであろう。イスラエルの人々は、おのおのその父祖の部族の嗣業をかたく保つべきだからである。
4885 04 36 8 イスラエルの人々の部族のうち、嗣業をもっている娘はみな、その父の部族に属する一族にとつがなければならない。そうすればイスラエルの人々は、おのおのその父祖の嗣業を保つことができる。
4886 04 36 9 こうして嗣業は一つの部族から他の部族に移ることはなかろう。イスラエルの人々の部族はおのおのその嗣業をかたく保つべきだからである』」。
4887 04 36 10 そこでゼロペハデの娘たちは、主がモーセに命じられたようにした。
4888 04 36 11 すなわちゼロペハデの娘たち、マアラ、テルザ、ホグラ、ミルカおよびノアは、その父の兄弟のむすこたちにとついだ。
4889 04 36 12 彼女たちはヨセフの子マナセのむすこたちの一族にとついだので、その嗣業はその父の一族の属する部族にとどまった。
4890 04 36 13 これらはエリコに近いヨルダンのほとりのモアブの平野で、主がモーセによってイスラエルの人々に命じられた命令とおきてである。
4891 05 1 1 これはヨルダンの向こうの荒野、パランと、トペル、ラバン、ハゼロテ、デザハブとの間の、スフの前にあるアラバにおいて、モーセがイスラエルのすべての人に告げた言葉である。
4892 05 1 2 ホレブからセイル山の道を経て、カデシ・バルネアに達するには、十一日の道のりである。
4893 05 1 3 第四十年の十一月となり、その月の一日に、モーセはイスラエルの人々にむかって、主が彼らのため彼に授けられた命令を、ことごとく告げた。
4894 05 1 4 これはモーセがヘシボンに住んでいたアモリびとの王シホン、およびアシタロテとエデレイとに住んでいたバシャンの王オグを殺した後であった。
4895 05 1 5 すなわちモーセはヨルダンの向こうのモアブの地で、みずから、この律法の説明に当った、そして言った、
4896 05 1 6 「われわれの神、主はホレブにおいて、われわれに言われた、『あなたがたはすでに久しく、この山にとどまっていたが、
4897 05 1 7 身をめぐらして道に進み、アモリびとの山地に行き、その近隣のすべての所、アラバ、山地、低地、ネゲブ、海べ、カナンびとの地、またレバノンに行き、大川ユフラテにまで行きなさい。
4898 05 1 8 見よ、わたしはこの地をあなたがたの前に置いた。この地にはいって、それを自分のものとしなさい。これは主が、あなたがたの先祖アブラハム、イサク、ヤコブに誓って、彼らとその後の子孫に与えると言われた所である』。
4899 05 1 9 あの時、わたしはあなたがたに言った、『わたしはひとりであなたがたを負うことができない。
4900 05 1 10 あなたがたの神、主はあなたがたを多くされたので、あなたがたは、きょう、空の星のように多い。
4901 05 1 11 ――どうぞ、あなたがたの先祖の神、主があなたがたを、今あるより千倍も多くし、またあなたがたに約束されたように、あなたがたを恵んでくださるように。――
4902 05 1 12 わたしひとりで、どうして、あなたがたを負い、あなたがたの重荷と、あなたがたの争いを処理することができようか。
4903 05 1 13 あなたがたは、おのおの部族ごとに、知恵があり、知識があって、人に知られている人々を選び出しなさい。わたしはその人々を、あなたがたのかしらとするであろう』。
4904 05 1 14 その時、あなたがたはわたしに答えた、『あなたがしようと言われることは良いことです』。
4905 05 1 15 そこで、わたしは、あなたがたのうちから、知恵があり、人に知られている人々を取って、あなたがたのかしらとした。すなわち千人の長、百人の長、五十人の長、十人の長とし、また、あなたがたの部族のつかさびととした。
4906 05 1 16 また、あのとき、わたしはあなたがたのさばきびとたちに命じて言った、『あなたがたは、兄弟たちの間の訴えを聞き、人とその兄弟、または寄留の他国人との間を、正しくさばかなければならない。
4907 05 1 17 あなたがたは、さばきをする時、人を片寄り見てはならない。小さい者にも大いなる者にも聞かなければならない。人の顔を恐れてはならない。さばきは神の事だからである。あなたがたで決めるのにむずかしい事は、わたしのところに持ってこなければならない。わたしはそれを聞くであろう』。
4908 05 1 18 わたしはまた、あの時、あなたがたがしなければならないことを、ことごとく命じた。
4909 05 1 19 われわれの神、主が命じられたように、われわれは、ホレブを出立して、あなたがたが見た、あの大きな恐ろしい荒野を通り、アモリびとの山地へ行く道によって、カデシ・バルネアにきた。
4910 05 1 20 その時わたしはあなたがたに言った、『あなたがたは、われわれの神、主がお与えになるアモリびとの山地に着いた。
4911 05 1 21 見よ、あなたの神、主はこの地をあなたの前に置かれた。あなたの先祖の神、主が告げられたように、上って行って、これを自分のものとしなさい。恐れてはならない。おののいてはならない』。
4912 05 1 22 あなたがたは皆わたしに近寄って言った、『われわれは人をさきにつかわして、その地を探らせ、どの道から上るべきか、どの町々に入るべきかを、復命させましょう』。
4913 05 1 23 このことは良いと思ったので、わたしはあなたがたのうち、おのおのの部族から、ひとりずつ十二人の者を選んだ。
4914 05 1 24 彼らは身をめぐらして、山地に上って行き、エシコルの谷へ行ってそれを探り、
4915 05 1 25 その地のくだものを手に取って、われわれのところに持って下り、復命して言った、『われわれの神、主が賜わる地は良い地です』。
4916 05 1 26 しかし、あなたがたは上って行くことを好まないで、あなたがたの神、主の命令にそむいた。
4917 05 1 27 そして天幕でつぶやいて言った。『主はわれわれを憎んでアモリびとの手に渡し、滅ぼそうとしてエジプトの国から導き出されたのだ。
4918 05 1 28 われわれはどこへ上って行くのか。兄弟たちは、「その民はわれわれよりも大きくて、背も高い。町々は大きく、その石がきは天に届いている。われわれは、またアナクびとの子孫をその所で見た」と言って、われわれの心をくじいた』。
4919 05 1 29 その時、わたしはあなたがたに言った、『彼らをこわがってはならない。また恐れてはならない。
4920 05 1 30 先に立って行かれるあなたがたの神、主はエジプトにおいて、あなたがたの目の前で、すべてのことを行われたように、あなたがたのために戦われるであろう。
4921 05 1 31 あなたがたはまた荒野で、あなたの神、主が、人のその子を抱くように、あなたを抱かれるのを見た。あなたがたが、この所に来るまで、その道すがら、いつもそうであった』。
4922 05 1 32 このように言っても、あなたがたはなお、あなたがたの神、主を信じなかった。
4923 05 1 33 主は道々あなたがたの先に立って行き、あなたがたが宿営する場所を捜し、夜は火のうちにあり、昼は雲のうちにあって、あなたがたに行くべき道を示された。
4924 05 1 34 主は、あなたがたの言葉を聞いて怒り、誓って言われた、
4925 05 1 35 『この悪い世代の人々のうちには、わたしが、あなたがたの先祖たちに与えると誓ったあの良い地を見る者は、ひとりもないであろう。
4926 05 1 36 ただエフンネの子カレブだけはそれを見ることができるであろう。彼が踏んだ地を、わたしは彼とその子孫に与えるであろう。彼が全く主に従ったからである』。
4927 05 1 37 主はまた、あなたがたのゆえに、わたしをも怒って言われた、『おまえもまた、そこにはいることができないであろう。
4928 05 1 38 おまえに仕えているヌンの子ヨシュアが、そこにはいるであろう。彼を力づけよ。彼はイスラエルにそれを獲させるであろう。
4929 05 1 39 またあなたがたが、かすめられるであろうと言ったあなたがたのおさなごたち、およびその日にまだ善悪をわきまえないあなたがたの子供たちが、そこにはいるであろう。わたしはそれを彼らに与える。彼らはそれを所有とするであろう。
4930 05 1 40 あなたがたは身をめぐらし、紅海の道によって、荒野に進んで行きなさい』。
4931 05 1 41 しかし、あなたがたはわたしに答えて言った、『われわれは主にむかって罪を犯しました。われわれの神、主が命じられたように、われわれは上って行って戦いましょう』。そして、おのおの武器を身に帯びて、かるがるしく山地へ上って行こうとした。
4932 05 1 42 その時、主はわたしに言われた、『彼らに言いなさい、「あなたがたは上って行ってはならない。また戦ってはならない。わたしはあなたがたのうちにいない。おそらく、あなたがたは敵に撃ち敗られるであろう」』。
4933 05 1 43 このようにわたしが告げたのに、あなたがたは聞かないで主の命令にそむき、ほしいままに山地へ上って行ったが、
4934 05 1 44 その山地に住んでいるアモリびとが、あなたがたに向かって出てきて、はちが追うように、あなたがたを追いかけ、セイルで撃ち敗って、ホルマにまで及んだ。
4935 05 1 45 あなたがたは帰ってきて、主の前で泣いたが、主はあなたがたの声を聞かず、あなたがたに耳を傾けられなかった。
4936 05 1 46 こうしてあなたがたは、日久しくカデシにとどまった。あなたがたのそこにとどまった日数のとおりである。
4937 05 2 1 それから、われわれは身をめぐらし、主がわたしに告げられたように、紅海の方に向かって荒野に進み入り、日久しくセイル山を行きめぐっていたが、
4938 05 2 2 主はわたしに言われた、
4939 05 2 3 『あなたがたは既に久しくこの山を行きめぐっているが、身をめぐらして北に進みなさい。
4940 05 2 4 おまえはまた民に命じて言え、「あなたがたは、エサウの子孫、すなわちセイルに住んでいるあなたがたの兄弟の領内を通ろうとしている。彼らはあなたがたを恐れるであろう。それゆえ、あなたがたはみずから深く慎み、
4941 05 2 5 彼らと争ってはならない。彼らの地は、足の裏で踏むほどでも、あなたがたに与えないであろう。わたしがセイル山をエサウに与えて、領地とさせたからである。
4942 05 2 6 あなたがたは彼らから金で食物を買って食べ、また金で水を買って飲まなければならない。
4943 05 2 7 あなたの神、主が、あなたのするすべての事において、あなたを恵み、あなたがこの大いなる荒野を通るのを、見守られたからである。あなたの神、主がこの四十年の間、あなたと共におられたので、あなたは何も乏しいことがなかった」』。
4944 05 2 8 こうしてわれわれは、エサウの子孫でセイルに住んでいる兄弟を離れ、アラバの道を避け、エラテとエジオン・ゲベルを離れて進んだ。
4945 05 2 9 その時、主はわたしに言われた、『モアブを敵視してはならない。またそれと争い戦ってはならない。彼らの地は、領地としてあなたに与えない。ロトの子孫にアルを与えて、領地とさせたからである。
4946 05 2 10 (むかし、エミびとがこの所に住んでいた。この民は大いなる民であって、数も多く、アナクびとのように背も高く、
4947 05 2 11 またアナクびとと同じくレパイムであると、みなされていたが、モアブびとは、これをエミびとと呼んでいた。
4948 05 2 12 ホリびとも、むかしはセイルに住んでいたが、エサウの子孫がこれを追い払い、これを滅ぼし、彼らに代ってそこに住んだ。主が賜わった所有の地に、イスラエルがおこなったのと同じである。)
4949 05 2 13 あなたがたは、いま、立ちあがってゼレデ川を渡りなさい』。そこでわれわれはゼレデ川を渡った。
4950 05 2 14 カデシ・バルネアを出てこのかた、ゼレデ川を渡るまでの間の日は三十八年であって、その世代のいくさびとはみな死に絶えて、宿営のうちにいなくなった。主が彼らに誓われたとおりである。
4951 05 2 15 まことに主の手が彼らを攻め、宿営のうちから滅ぼし去られたので、彼らはついに死に絶えた。
4952 05 2 16 いくさびとがみな民のうちから死に絶えたとき、
4953 05 2 17 主はわたしに言われた、
4954 05 2 18 『おまえは、きょう、モアブの領地アルを通ろうとしている。
4955 05 2 19 アンモンの子孫に近づく時、おまえは彼らを敵視してはならない。また争ってはならない。わたしはアンモンの子孫の地を領地として、おまえに与えない。それをロトの子孫に領地として与えたからである。
4956 05 2 20 (これもまたレパイムの国とみなされた。むかし、レパイムがここに住んでいたからである。しかし、アンモンびとは彼らをザムズミびとと呼んだ。
4957 05 2 21 この民は大いなる民であって数も多く、アナクびとのように背も高かったが、主はアンモンびとの前から、これを滅ぼされ、アンモンびとがこれを追い払って、彼らに代ってそこに住んだ。
4958 05 2 22 この事は、セイルに住んでいるエサウの子孫のためにその前から、ホリびとを滅ぼされたのと同じである。彼らはホリびとを追い払い、これに代って今日までそこに住んでいる。
4959 05 2 23 またカフトルから出たカフトルびとは、ガザにまで及ぶ村々に住んでいたアビびとを滅ぼして、これに代ってそこに住んでいる。)
4960 05 2 24 あなたがたは立ちあがり、進んでアルノン川を渡りなさい。わたしはヘシボンの王アモリびとシホンとその国とを、おまえの手に渡した。それを征服し始めよ。彼と争って戦え。
4961 05 2 25 きょうから、わたしは全天下の民に、おまえをおびえ恐れさせるであろう。彼らはおまえのうわさを聞いて震え、おまえのために苦しむであろう』。
4962 05 2 26 そこでわたしは、ケデモテの荒野から、ヘシボンの王シホンに使者をつかわし、平和の言葉を述べさせた。
4963 05 2 27 『あなたの国を通らせてください。わたしは大路をとおっていきます、右にも左にも曲りません。
4964 05 2 28 金で食物を売ってわたしに食べさせ、金をとって水を与えてわたしに飲ませてください。徒歩で通らせてくださるだけでよいのです。
4965 05 2 29 セイルに住むエサウの子孫と、アルに住むモアブびとが、わたしにしたようにしてください。そうすれば、わたしはヨルダンを渡って、われわれの神、主が賜わる地に行きます』。
4966 05 2 30 しかし、ヘシボンの王シホンは、われわれを通らせるのを好まなかった。あなたの神、主が彼をあなたの手に渡すため、その気を強くし、その心をかたくなにされたからである。今日見るとおりである。
4967 05 2 31 時に主はわたしに言われた、『わたしはシホンと、その地とを、おまえに渡し始めた。おまえはそれを征服しはじめ、その地を自分のものとせよ』。
4968 05 2 32 そこでシホンは、われわれを攻めようとして、その民をことごとく率い、出てきてヤハズで戦ったが、
4969 05 2 33 われわれの神、主が彼を渡されたので、われわれは彼とその子らと、そのすべての民とを撃ち殺した。
4970 05 2 34 その時、われわれは彼のすべての町を取り、そのすべての町の男、女および子供を全く滅ぼして、ひとりをも残さなかった。
4971 05 2 35 ただその家畜は、われわれが取った町々のぶんどり物と共に、われわれが獲て自分の物とした。
4972 05 2 36 アルノンの谷のほとりにあるアロエルおよび谷の中にある町からギレアデに至るまで、われわれが攻めて取れなかった町は一つもなかった。われわれの神、主がことごとくわれわれに渡されたのである。
4973 05 2 37 ただアンモンの子孫の地、すなわちヤボク川の全岸、および山地の町々、またすべてわれわれの神、主が禁じられた所には近寄らなかった。
4974 05 3 1 そしてわれわれは身をめぐらして、バシャンの道を上って行ったが、バシャンの王オグは、われわれを迎え撃とうとして、その民をことごとく率い、出てきてエデレイで戦った。
4975 05 3 2 時に主はわたしに言われた、『彼を恐れてはならない。わたしは彼と、そのすべての民と、その地をおまえの手に渡している。おまえはヘシボンに住んでいたアモリびとの王シホンにしたように、彼にするであろう』。
4976 05 3 3 こうしてわれわれの神、主はバシャンの王オグと、そのすべての民を、われわれの手に渡されたので、われわれはこれを撃ち殺して、ひとりをも残さなかった。
4977 05 3 4 その時、われわれは彼の町々を、ことごとく取った。われわれが取らなかった町は一つもなかった。取った町は六十。アルゴブの全地方であって、バシャンにおけるオグの国である。
4978 05 3 5 これらは皆、高い石がきがあり、門があり、貫の木のある堅固な町であった。このほかに石がきのない町は、非常に多かった。
4979 05 3 6 われわれはヘシボンの王シホンにしたように、これらを全く滅ぼし、そのすべての町の男、女および子供をことごとく滅ぼした。
4980 05 3 7 ただし、そのすべての家畜と、その町々からのぶんどり物とは、われわれが獲て自分の物とした。
4981 05 3 8 その時われわれはヨルダンの向こう側にいるアモリびとのふたりの王の手から、アルノン川からヘルモン山までの地を取った。
4982 05 3 9 (シドンびとはヘルモンをシリオンと呼び、アモリびとはこれをセニルと呼んでいる。)
4983 05 3 10 すなわち高原のすべての町、ギレアデの全地、バシャンの全地、サルカおよびエデレイまで、バシャンにあるオグの国の町々をことごとく取った。
4984 05 3 11 (バシャンの王オグはレパイムのただひとりの生存者であった。彼の寝台は鉄の寝台であった。これは今なおアンモンびとのラバにあるではないか。これは普通のキュビト尺で、長さ九キュビト、幅四キュビトである。)
4985 05 3 12 その時われわれは、この地を獲た。そしてわたしはアルノン川のほとりのアロエルから始まる地と、ギレアデの山地の半ばと、その町々とは、ルベンびとと、ガドびととに与えた。
4986 05 3 13 わたしはまたギレアデの残りの地と、オグの国であったバシャンの全地とは、マナセの半部族に与えた。すなわちアルゴブの全地方である。(そのバシャンの全地はレパイムの国と唱えられる。
4987 05 3 14 マナセの子ヤイルは、アルゴブの全地方を取って、ゲシュルびとと、マアカびとの境にまで達し、自分の名にしたがって、バシャンをハボテ・ヤイルと名づけた。この名は今日にまでおよんでいる。)
4988 05 3 15 またわたしはマキルにはギレアデを与えた。
4989 05 3 16 ルベンびとと、ガドびととには、ギレアデからアルノン川までを与え、その川のまん中をもって境とし、またアンモンびとの境であるヤボク川にまで達せしめた。
4990 05 3 17 またヨルダンを境として、キンネレテからアラバの海すなわち塩の海まで、アラバをこれに与えて、東の方ピスガのふもとに達せしめた。
4991 05 3 18 その時わたしはあなたがたに命じて言った、『あなたがたの神、主はこの地をあなたがたに与えて、これを獲させられるから、あなたがた勇士はみな武装して、兄弟であるイスラエルの人々に先立って、渡って行かなければならない。
4992 05 3 19 ただし、あなたがたの妻と、子供と、家畜とは、わたしが与えた町々にとどまらなければならない。(わたしはあなたがたが多くの家畜を持っているのを知っている。)
4993 05 3 20 主がすでにあなたがたに与えられたように、あなたがたの兄弟にも安息を与えられて、彼らもまたヨルダンの向こう側で、あなたがたの神、主が与えられる地を獲るようになったならば、あなたがたはおのおのわたしがあなたがたに与えた領地に帰ることができる』。
4994 05 3 21 その時わたしはヨシュアに命じて言った、『あなたの目はあなたがたの神、主がこのふたりの王に行われたすべてのことを見た。主はまたあなたが渡って行くもろもろの国にも、同じように行われるであろう。
4995 05 3 22 彼らを恐れてはならない。あなたがたの神、主があなたがたのために戦われるからである』。
4996 05 3 23 その時わたしは主に願って言った、
4997 05 3 24 『主なる神よ、あなたの大いなる事と、あなたの強い手とを、たった今、しもべに示し始められました。天にも地にも、あなたのようなわざをなし、あなたのような力あるわざのできる神が、ほかにありましょうか。
4998 05 3 25 どうぞ、わたしにヨルダンを渡って行かせ、その向こう側の良い地、あの良い山地、およびレバノンを見ることのできるようにしてください』。
4999 05 3 26 しかし主はあなたがたのゆえにわたしを怒り、わたしに聞かれなかった。そして主はわたしに言われた、『おまえはもはや足りている。この事については、重ねてわたしに言ってはならない。
5000 05 3 27 おまえはピスガの頂に登り、目をあげて西、北、南、東を望み見よ。おまえはこのヨルダンを渡ることができないからである。
5001 05 3 28 しかし、おまえはヨシュアに命じ、彼を励まし、彼を強くせよ。彼はこの民に先立って渡って行き、彼らにおまえの見る地を継がせるであろう』。
5002 05 3 29 こうしてわれわれはベテペオルに対する谷にとどまっていた。
5003 05 4 1 イスラエルよ、いま、わたしがあなたがたに教える定めと、おきてとを聞いて、これを行いなさい。そうすれば、あなたがたは生きることができ、あなたがたの先祖の神、主が賜わる地にはいって、それを自分のものとすることができよう。
5004 05 4 2 わたしがあなたがたに命じる言葉に付け加えてはならない。また減らしてはならない。わたしが命じるあなたがたの神、主の命令を守ることのできるためである。
5005 05 4 3 あなたがたの目は、主がバアル・ペオルで行われたことを見た。ペオルのバアルに従った人々は、あなたの神、主がことごとく、あなたのうちから滅ぼしつくされたのである。
5006 05 4 4 しかし、あなたがたの神、主につき従ったあなたがたは皆、きょう、生きながらえている。
5007 05 4 5 わたしはわたしの神、主が命じられたとおりに、定めと、おきてとを、あなたがたに教える。あなたがたがはいって、自分のものとする地において、そのように行うためである。
5008 05 4 6 あなたがたは、これを守って行わなければならない。これは、もろもろの民にあなたがたの知恵、また知識を示す事である。彼らは、このもろもろの定めを聞いて、『この大いなる国民は、まことに知恵あり、知識ある民である』と言うであろう。
5009 05 4 7 われわれの神、主は、われわれが呼び求める時、つねにわれわれに近くおられる。いずれの大いなる国民に、このように近くおる神があるであろうか。
5010 05 4 8 また、いずれの大いなる国民に、きょう、わたしがあなたがたの前に立てるこのすべての律法のような正しい定めと、おきてとがあるであろうか。
5011 05 4 9 ただあなたはみずから慎み、またあなた自身をよく守りなさい。そして目に見たことを忘れず、生きながらえている間、それらの事をあなたの心から離してはならない。またそれらのことを、あなたの子孫に知らせなければならない。
5012 05 4 10 あなたがホレブにおいて、あなたの神、主の前に立った日に、主はわたしに言われた、『民をわたしのもとに集めよ。わたしは彼らにわたしの言葉を聞かせ、地上に生きながらえる間、彼らにわたしを恐れることを学ばせ、またその子供を教えることのできるようにさせよう』。
5013 05 4 11 そこであなたがたは近づいて、山のふもとに立ったが、山は火で焼けて、その炎は中天に達し、暗黒と雲と濃い雲とがあった。
5014 05 4 12 時に主は火の中から、あなたがたに語られたが、あなたがたは言葉の声を聞いたけれども、声ばかりで、なんの形も見なかった。
5015 05 4 13 主はその契約を述べて、それを行うように、あなたがたに命じられた。それはすなわち十誡であって、主はそれを二枚の石の板に書きしるされた。
5016 05 4 14 その時、主はわたしに命じて、あなたがたに定めと、おきてとを教えさせられた。あなたがたが渡って行って自分のものとする地で、行わせるためであった。
5017 05 4 15 それゆえ、あなたがたはみずから深く慎まなければならない。ホレブで主が火の中からあなたがたに語られた日に、あなたがたはなんの形も見なかった。
5018 05 4 16 それであなたがたは道を誤って、自分のために、どんな形の刻んだ像をも造ってはならない。男または女の像を造ってはならない。
5019 05 4 17 すなわち地の上におるもろもろの獣の像、空を飛ぶもろもろの鳥の像、
5020 05 4 18 地に這うもろもろの物の像、地の下の水の中におるもろもろの魚の像を造ってはならない。
5021 05 4 19 あなたはまた目を上げて天を望み、日、月、星すなわちすべて天の万象を見、誘惑されてそれを拝み、それに仕えてはならない。それらのものは、あなたの神、主が全天下の万民に分けられたものである。
5022 05 4 20 しかし、主はあなたがたを取って、鉄の炉すなわちエジプトから導き出し、自分の所有の民とされた。きょう、見るとおりである。
5023 05 4 21 ところで主はあなたがたのゆえに、わたしを怒り、わたしがヨルダンを渡って行くことができないことと、あなたの神、主が嗣業としてあなたに賜わる良い地にはいることができないこととを誓われた。
5024 05 4 22 わたしはこの地で死ぬ。ヨルダンを渡って行くことはできない。しかしあなたがたは渡って行って、あの良い地を獲るであろう。
5025 05 4 23 あなたがたは慎み、あなたがたの神、主があなたがたと結ばれた契約を忘れて、あなたの神、主が禁じられたどんな形の刻んだ像をも造ってはならない。
5026 05 4 24 あなたの神、主は焼きつくす火、ねたむ神である。
5027 05 4 25 あなたがたが子を生み、孫を得、長くその地におるうちに、道を誤って、すべて何かの形に刻んだ像を造り、あなたの神、主の目の前に悪をなして、その憤りを引き起すことがあれば、
5028 05 4 26 わたしは、きょう、天と地を呼んであなたがたに対してあかしとする。あなたがたはヨルダンを渡って行って獲る地から、たちまち全滅するであろう。あなたがたはその所で長く命を保つことができず、全く滅ぼされるであろう。
5029 05 4 27 主はあなたがたを国々に散らされるであろう。そして主があなたがたを追いやられる国民のうちに、あなたがたの残る者の数は少ないであろう。
5030 05 4 28 その所であなたがたは人が手で作った、見ることも、聞くことも、食べることも、かぐこともない木や石の神々に仕えるであろう。
5031 05 4 29 しかし、その所からあなたの神、主を求め、もし心をつくし、精神をつくして、主を求めるならば、あなたは主に会うであろう。
5032 05 4 30 後の日になって、あなたがなやみにあい、これらのすべての事が、あなたに臨むとき、もしあなたの神、主に立ち帰ってその声に聞きしたがうならば、
5033 05 4 31 あなたの神、主はいつくしみの深い神であるから、あなたを捨てず、あなたを滅ぼさず、またあなたの先祖に誓った契約を忘れられないであろう。
5034 05 4 32 試みにあなたの前に過ぎ去った日について問え。神が地上に人を造られた日からこのかた、天のこの端から、かの端までに、かつてこのように大いなる事があったであろうか。このようなことを聞いたことがあったであろうか。
5035 05 4 33 火の中から語られる神の声をあなたが聞いたように、聞いてなお生きていた民がかつてあったであろうか。
5036 05 4 34 あるいはまた、あなたがたの神、主がエジプトにおいて、あなたがたの目の前に、あなたがたのためにもろもろの事をなされたように、試みと、しるしと、不思議と、戦いと、強い手と、伸ばした腕と、大いなる恐るべき事とをもって臨み、一つの国民を他の国民のうちから引き出して、自分の民とされた神が、かつてあったであろうか。
5037 05 4 35 あなたにこの事を示したのは、主こそ神であって、ほかに神のないことを知らせるためであった。
5038 05 4 36 あなたを訓練するために、主は天からその声を聞かせ、地上では、またその大いなる火を示された。あなたはその言葉が火の中から出るのを聞いた。
5039 05 4 37 主はあなたの先祖たちを愛されたので、その後の子孫を選び、大いなる力をもって、みずからあなたをエジプトから導き出し、
5040 05 4 38 あなたよりも大きく、かつ強いもろもろの国民を、あなたの前から追い払い、あなたをその地に導き入れて、これを嗣業としてあなたに与えようとされること、今日見るとおりである。
5041 05 4 39 それゆえ、あなたは、きょう知って、心にとめなければならない。上は天、下は地において、主こそ神にいまし、ほかに神のないことを。
5042 05 4 40 あなたは、きょう、わたしが命じる主の定めと命令とを守らなければならない。そうすれば、あなたとあなたの後の子孫はさいわいを得、あなたの神、主が永久にあなたに賜わる地において、長く命を保つことができるであろう」。
5043 05 4 41 それからモーセはヨルダンの向こう側、東の方に三つの町々を指定した。
5044 05 4 42 過去の恨みによるのではなく、あやまって隣人を殺した者をそこにのがれさせ、その町の一つにのがれて、命を全うさせるためであった。
5045 05 4 43 すなわちルベンびとのためには荒野の中の高地にあるベゼルを、ガドびとのためにはギレアデのラモテを、マナセびとのためにはバシャンのゴランを定めた。
5046 05 4 44 モーセがイスラエルの人々の前に示した律法はこれである。
5047 05 4 45 イスラエルの人々がエジプトから出たとき、モーセが彼らに述べたあかしと、定めと、おきてとはこれである。
5048 05 4 46 すなわちヨルダンの向こう側、アモリびとの王シホンの国のベテペオルに対する谷においてこれを述べた。シホンはヘシボンに住んでいたが、モーセとイスラエルの人々が、エジプトを出てきた時、これを撃ち敗って、
5049 05 4 47 その国を獲、またバシャンの王オグの国を獲た。このふたりはアモリびとの王であって、ヨルダンの向こう側、東の方におった。
5050 05 4 48 彼らの獲た地はアルノン川のほとりにあるアロエルからシリオン山すなわちヘルモンに及び、
5051 05 4 49 ヨルダンの東側のアラバの全部をかねて、アラバの海に達し、ピスガのふもとに及んだ。
5052 05 5 1 さてモーセはイスラエルのすべての人を召し寄せて言った、「イスラエルよ、きょう、わたしがあなたがたの耳に語る定めと、おきてを聞き、これを学び、これを守って行え。
5053 05 5 2 われわれの神、主はホレブで、われわれと契約を結ばれた。
5054 05 5 3 主はこの契約をわれわれの先祖たちとは結ばず、きょう、ここに生きながらえているわれわれすべての者と結ばれた。
5055 05 5 4 主は山で火の中から、あなたがたと顔を合わせて語られた。
5056 05 5 5 その時、わたしは主とあなたがたとの間に立って主の言葉をあなたがたに伝えた。あなたがたは火のゆえに恐れて山に登ることができなかったからである。主は言われた、
5057 05 5 6 『わたしはあなたの神、主であって、あなたをエジプトの地、奴隷の家から導き出した者である。
5058 05 5 7 あなたはわたしのほかに何ものをも神としてはならない。
5059 05 5 8 あなたは自分のために刻んだ像を造ってはならない。上は天にあるもの、下は地にあるもの、また地の下の水の中にあるものの、どのような形をも造ってはならない。
5060 05 5 9 それを拝んではならない。またそれに仕えてはならない。あなたの神、主であるわたしは、ねたむ神であるから、わたしを憎むものには、父の罪を子に報いて三、四代に及ぼし、
5061 05 5 10 わたしを愛し、わたしの戒めを守る者には恵みを施して千代に至るであろう。
5062 05 5 11 あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。主はその名をみだりに唱える者を罰しないではおかないであろう。
5063 05 5 12 安息日を守ってこれを聖とし、あなたの神、主があなたに命じられたようにせよ。
5064 05 5 13 六日のあいだ働いて、あなたのすべてのわざをしなければならない。
5065 05 5 14 七日目はあなたの神、主の安息であるから、なんのわざをもしてはならない。あなたも、あなたのむすこ、娘、しもべ、はしため、牛、ろば、もろもろの家畜も、あなたの門のうちにおる他国の人も同じである。こうしてあなたのしもべ、はしためを、あなたと同じように休ませなければならない。
5066 05 5 15 あなたはかつてエジプトの地で奴隷であったが、あなたの神、主が強い手と、伸ばした腕とをもって、そこからあなたを導き出されたことを覚えなければならない。それゆえ、あなたの神、主は安息日を守ることを命じられるのである。
5067 05 5 16 あなたの神、主が命じられたように、あなたの父と母とを敬え。あなたの神、主が賜わる地で、あなたが長く命を保ち、さいわいを得ることのできるためである。
5068 05 5 17 あなたは殺してはならない。
5069 05 5 18 あなたは姦淫してはならない。
5070 05 5 19 あなたは盗んではならない。
5071 05 5 20 あなたは隣人について偽証してはならない。
5072 05 5 21 あなたは隣人の妻をむさぼってはならない。また隣人の家、畑、しもべ、はしため、牛、ろば、またすべて隣人のものをほしがってはならない』。
5073 05 5 22 主はこれらの言葉を山で火の中、雲の中、濃い雲の中から、大いなる声をもって、あなたがたの全会衆にお告げになったが、このほかのことは言われず、二枚の石の板にこれを書きしるして、わたしに授けられた。
5074 05 5 23 時に山は火で燃えていたが、あなたがたが暗黒のうちから聞える声を聞くに及んで、あなたがたの部族のすべてのかしらと長老たちは、わたしに近寄って、
5075 05 5 24 言った、『われわれの神、主がその栄光と、その大いなることとを、われわれに示されて、われわれは火の中から出るその声を聞きました。きょう、われわれは神が人と語られ、しかもなおその人が生きているのを見ました。
5076 05 5 25 われわれはなぜ死ななければならないでしょうか。この大いなる火はわれわれを焼き滅ぼそうとしています。もしこの上なおわれわれの神、主の声を聞くならば、われわれは死んでしまうでしょう。
5077 05 5 26 およそ肉なる者のうち、だれが、火の中から語られる生ける神の声を、われわれのように聞いてなお生きている者がありましょうか。
5078 05 5 27 あなたはどうぞ近く進んで行って、われわれの神、主が言われることをみな聞き、われわれの神、主があなたにお告げになることをすべてわれわれに告げてください。われわれは聞いて行います』。
5079 05 5 28 あなたがたがわたしに語っている時、主はあなたがたの言葉を聞いて、わたしに言われた、『わたしはこの民がおまえに語っている言葉を聞いた。彼らの言ったことはみな良い。
5080 05 5 29 ただ願わしいことは、彼らがつねにこのような心をもってわたしを恐れ、わたしのすべての命令を守って、彼らもその子孫も永久にさいわいを得るにいたることである。
5081 05 5 30 おまえは行って彼らに、「あなたがたはおのおのその天幕に帰れ」と言え。
5082 05 5 31 しかし、おまえはこの所でわたしのそばに立て。わたしはすべての命令と、定めと、おきてとをおまえに告げ示すであろう。おまえはこれを彼らに教え、わたしが彼らに与えて獲させる地において、これを行わせなければならない』。
5083 05 5 32 それゆえ、あなたがたの神、主が命じられたとおりに、慎んで行わなければならない。そして左にも右にも曲ってはならない。
5084 05 5 33 あなたがたの神、主が命じられた道に歩まなければならない。そうすればあなたがたは生きることができ、かつさいわいを得て、あなたがたの獲る地において、長く命を保つことができるであろう。
5085 05 6 1 これはあなたがたの神、主があなたがたに教えよと命じられた命令と、定めと、おきてであって、あなたがたは渡って行って獲る地で、これを行わなければならない。
5086 05 6 2 これはあなたが子や孫と共に、あなたの生きながらえる日の間、つねにあなたの神、主を恐れて、わたしが命じるもろもろの定めと、命令とを守らせるため、またあなたが長く命を保つことのできるためである。
5087 05 6 3 それゆえ、イスラエルよ、聞いて、それを守り行え。そうすれば、あなたはさいわいを得、あなたの先祖の神、主があなたに言われたように、乳と蜜の流れる国で、あなたの数は大いに増すであろう。
5088 05 6 4 イスラエルよ聞け。われわれの神、主は唯一の主である。
5089 05 6 5 あなたは心をつくし、精神をつくし、力をつくして、あなたの神、主を愛さなければならない。
5090 05 6 6 きょう、わたしがあなたに命じるこれらの言葉をあなたの心に留め、
5091 05 6 7 努めてこれをあなたの子らに教え、あなたが家に座している時も、道を歩く時も、寝る時も、起きる時も、これについて語らなければならない。
5092 05 6 8 またあなたはこれをあなたの手につけてしるしとし、あなたの目の間に置いて覚えとし、
5093 05 6 9 またあなたの家の入口の柱と、あなたの門とに書きしるさなければならない。
5094 05 6 10 あなたの神、主は、あなたの先祖アブラハム、イサク、ヤコブに向かって、あなたに与えると誓われた地に、あなたをはいらせられる時、あなたが建てたものでない大きな美しい町々を得させ、
5095 05 6 11 あなたが満たしたものでないもろもろの良い物を満たした家を得させ、あなたが掘ったものでない掘り井戸を得させ、あなたが植えたものでないぶどう畑とオリブの畑とを得させられるであろう。あなたは食べて飽きるであろう。
5096 05 6 12 その時、あなたはみずから慎み、エジプトの地、奴隷の家から導き出された主を忘れてはならない。
5097 05 6 13 あなたの神、主を恐れてこれに仕え、その名をさして誓わなければならない。
5098 05 6 14 あなたがたは他の神々すなわち周囲の民の神々に従ってはならない。
5099 05 6 15 あなたのうちにおられるあなたの神、主はねたむ神であるから、おそらく、あなたに向かって怒りを発し、地のおもてからあなたを滅ぼし去られるであろう。
5100 05 6 16 あなたがたがマッサでしたように、あなたがたの神、主を試みてはならない。
5101 05 6 17 あなたがたの神、主があなたがたに命じられた命令と、あかしと、定めとを、努めて守らなければならない。
5102 05 6 18 あなたは主が見て正しいとし、良いとされることを行わなければならない。そうすれば、あなたはさいわいを得、かつ主があなたの先祖に誓われた、あの良い地にはいって、自分のものとすることができるであろう。
5103 05 6 19 また主が仰せられたように、あなたの敵を皆あなたの前から追い払われるであろう。
5104 05 6 20 後の日となって、あなたの子があなたに問うて言うであろう、『われわれの神、主があなたがたに命じられたこのあかしと、定めと、おきてとは、なんのためですか』。
5105 05 6 21 その時あなたはその子に言わなければならない。『われわれはエジプトでパロの奴隷であったが、主は強い手をもって、われわれをエジプトから導き出された。
5106 05 6 22 主はわれわれの目の前で、大きな恐ろしいしるしと不思議とをエジプトと、パロとその全家とに示され、
5107 05 6 23 われわれをそこから導き出し、かつてわれわれの先祖に誓われた地にはいらせ、それをわれわれに賜わった。
5108 05 6 24 そして主はこのすべての定めを行えと、われわれに命じられた。これはわれわれの神、主を恐れて、われわれが、つねにさいわいであり、また今日のように、主がわれわれを守って命を保たせるためである。
5109 05 6 25 もしわれわれが、命じられたとおりに、このすべての命令をわれわれの神、主の前に守って行うならば、それはわれわれの義となるであろう』。
5110 05 7 1 あなたの神、主が、あなたの行って取る地にあなたを導き入れ、多くの国々の民、ヘテびと、ギルガシびと、アモリびと、カナンびと、ペリジびと、ヒビびと、およびエブスびと、すなわちあなたよりも数多く、また力のある七つの民を、あなたの前から追いはらわれる時、
5111 05 7 2 すなわちあなたの神、主が彼らをあなたに渡して、これを撃たせられる時は、あなたは彼らを全く滅ぼさなければならない。彼らとなんの契約をもしてはならない。彼らに何のあわれみをも示してはならない。
5112 05 7 3 また彼らと婚姻をしてはならない。あなたの娘を彼のむすこに与えてはならない。かれの娘をあなたのむすこにめとってはならない。
5113 05 7 4 それは彼らがあなたのむすこを惑わしてわたしに従わせず、ほかの神々に仕えさせ、そのため主はあなたがたにむかって怒りを発し、すみやかにあなたがたを滅ぼされることとなるからである。
5114 05 7 5 むしろ、あなたがたはこのように彼らに行わなければならない。すなわち彼らの祭壇をこぼち、その石の柱を撃ち砕き、そのアシラ像を切り倒し、その刻んだ像を火で焼かなければならない。
5115 05 7 6 あなたはあなたの神、主の聖なる民である。あなたの神、主は地のおもてのすべての民のうちからあなたを選んで、自分の宝の民とされた。
5116 05 7 7 主があなたがたを愛し、あなたがたを選ばれたのは、あなたがたがどの国民よりも数が多かったからではない。あなたがたはよろずの民のうち、もっとも数の少ないものであった。
5117 05 7 8 ただ主があなたがたを愛し、またあなたがたの先祖に誓われた誓いを守ろうとして、主は強い手をもってあなたがたを導き出し、奴隷の家から、エジプトの王パロの手から、あがない出されたのである。
5118 05 7 9 それゆえあなたは知らなければならない。あなたの神、主は神にましまし、真実の神にましまして、彼を愛し、その命令を守る者には、契約を守り、恵みを施して千代に及び、
5119 05 7 10 また彼を憎む者には、めいめいに報いて滅ぼされることを。主は自分を憎む者には猶予することなく、めいめいに報いられる。
5120 05 7 11 それゆえ、きょうわたしがあなたに命じる命令と、定めと、おきてとを守って、これを行わなければならない。
5121 05 7 12 あなたがたがこれらのおきてを聞いて守り行うならば、あなたの神、主はあなたの先祖たちに誓われた契約を守り、いつくしみを施されるであろう。
5122 05 7 13 あなたを愛し、あなたを祝福し、あなたの数を増し、あなたに与えると先祖たちに誓われた地で、あなたの子女を祝福し、あなたの地の産物、穀物、酒、油、また牛の子、羊の子を増されるであろう。
5123 05 7 14 あなたは万民にまさって祝福されるであろう。あなたのうち、男も女も子のないものはなく、またあなたの家畜にも子のないものはないであろう。
5124 05 7 15 主はまたすべての病をあなたから取り去り、あなたの知っている、あのエジプトの悪疫にかからせず、ただあなたを憎むすべての者にそれを臨ませられるであろう。
5125 05 7 16 あなたの神、主があなたに渡される国民を滅ぼしつくし、彼らを見てあわれんではならない。また彼らの神々に仕えてはならない。それがあなたのわなとなるからである。
5126 05 7 17 あなたは心のうちで『これらの国民はわたしよりも多いから、どうしてこれを追い払うことができようか』と言うのか。
5127 05 7 18 彼らを恐れてはならない。あなたの神、主がパロと、すべてのエジプトびととにされたことを、よく覚えなさい。
5128 05 7 19 すなわち、あなたが目で見た大いなる試みと、しるしと、不思議と、強い手と、伸ばした腕とを覚えなさい。あなたの神、主はこれらをもって、あなたを導き出されたのである。またそのように、あなたの神、主はあなたが恐れているすべての民にされるであろう。
5129 05 7 20 あなたの神、主はまた、くまばちを彼らのうちに送って、なお残っている者と逃げ隠れている者を滅ぼしつくされるであろう。
5130 05 7 21 あなたは彼らを恐れてはならない。あなたの神、主である大いなる恐るべき神があなたのうちにおられるからである。
5131 05 7 22 あなたの神、主はこれらの国民を徐々にあなたの前から追い払われるであろう。あなたはすみやかに彼らを滅ぼしつくしてはならない。そうでなければ、野の獣が増してあなたを害するであろう。
5132 05 7 23 しかし、あなたの神、主は彼らをあなたに渡し、大いなる混乱におとしいれて、ついに滅ぼされるであろう。
5133 05 7 24 また彼らの王たちをあなたの手に渡されるであろう。あなたは彼らの名を天の下から消し去るであろう。あなたに立ちむかうものはなく、あなたはついに彼らを滅ぼすにいたるであろう。
5134 05 7 25 あなたは彼らの神々の彫像を火に焼かなければならない。それに着せた銀または金をむさぼってはならない。これを取って自分のものにしてはならない。そうでなければ、あなたはこれによって、わなにかかるであろう。これはあなたの神が忌みきらわれるものだからである。
5135 05 7 26 あなたは忌むべきものを家に持ちこんで、それと同じようにあなた自身も、のろわれたものとなってはならない。あなたはそれを全く忌みきらわなければならない。それはのろわれたものだからである。
5136 05 8 1 わたしが、きょう、命じるこのすべての命令を、あなたがたは守って行わなければならない。そうすればあなたがたは生きることができ、かつふえ増し、主があなたがたの先祖に誓われた地にはいって、それを自分のものとすることができるであろう。
5137 05 8 2 あなたの神、主がこの四十年の間、荒野であなたを導かれたそのすべての道を覚えなければならない。それはあなたを苦しめて、あなたを試み、あなたの心のうちを知り、あなたがその命令を守るか、どうかを知るためであった。
5138 05 8 3 それで主はあなたを苦しめ、あなたを飢えさせ、あなたも知らず、あなたの先祖たちも知らなかったマナをもって、あなたを養われた。人はパンだけでは生きず、人は主の口から出るすべてのことばによって生きることをあなたに知らせるためであった。
5139 05 8 4 この四十年の間、あなたの着物はすり切れず、あなたの足は、はれなかった。
5140 05 8 5 あなたはまた人がその子を訓練するように、あなたの神、主もあなたを訓練されることを心にとめなければならない。
5141 05 8 6 あなたの神、主の命令を守り、その道に歩んで、彼を恐れなければならない。
5142 05 8 7 それはあなたの神、主があなたを良い地に導き入れられるからである。そこは谷にも山にもわき出る水の流れ、泉、および淵のある地、
5143 05 8 8 小麦、大麦、ぶどう、いちじく及びざくろのある地、油のオリブの木、および蜜のある地、
5144 05 8 9 あなたが食べる食物に欠けることなく、なんの乏しいこともない地である。その地の石は鉄であって、その山からは銅を掘り取ることができる。
5145 05 8 10 あなたは食べて飽き、あなたの神、主がその良い地を賜わったことを感謝するであろう。
5146 05 8 11 あなたは、きょう、わたしが命じる主の命令と、おきてと、定めとを守らず、あなたの神、主を忘れることのないように慎まなければならない。
5147 05 8 12 あなたは食べて飽き、麗しい家を建てて住み、
5148 05 8 13 また牛や羊がふえ、金銀が増し、持ち物がみな増し加わるとき、
5149 05 8 14 おそらく心にたかぶり、あなたの神、主を忘れるであろう。主はあなたをエジプトの地、奴隷の家から導き出し、
5150 05 8 15 あなたを導いて、あの大きな恐ろしい荒野、すなわち火のへびや、さそりがいて、水のない、かわいた地を通り、あなたのために堅い岩から水を出し、
5151 05 8 16 先祖たちも知らなかったマナを荒野であなたに食べさせられた。それはあなたを苦しめ、あなたを試みて、ついにはあなたをさいわいにするためであった。
5152 05 8 17 あなたは心のうちに『自分の力と自分の手の働きで、わたしはこの富を得た』と言ってはならない。
5153 05 8 18 あなたはあなたの神、主を覚えなければならない。主はあなたの先祖たちに誓われた契約を今日のように行うために、あなたに富を得る力を与えられるからである。
5154 05 8 19 もしあなたの神、主を忘れて他の神々に従い、これに仕え、これを拝むならば、――わたしは、きょう、あなたがたに警告する。――あなたがたはきっと滅びるであろう。
5155 05 8 20 主があなたがたの前から滅ぼし去られる国々の民のように、あなたがたも滅びるであろう。あなたがたの神、主の声に従わないからである。
5156 05 9 1 イスラエルよ、聞きなさい。あなたは、きょう、ヨルダンを渡って行って、あなたよりも大きく、かつ強い国々を取ろうとしている。その町々は大きく、石がきは天に達している。
5157 05 9 2 その民は、あなたの知っているアナクびとの子孫であって、大きく、また背が高い。あなたはまた『アナクの子孫の前に、だれが立つことができようか』と人の言うのを聞いた。
5158 05 9 3 それゆえ、あなたは、きょう、あなたの神、主は焼きつくす火であって、あなたの前に進まれることを知らなければならない。主は彼らを滅ぼし、彼らをあなたの前に屈伏させられるであろう。主があなたに言われたように、彼らを追い払い、すみやかに滅ぼさなければならない。
5159 05 9 4 あなたの神、主があなたの前から彼らを追い払われた後に、あなたは心のなかで『わたしが正しいから主はわたしをこの地に導き入れてこれを獲させられた』と言ってはならない。この国々の民が悪いから、主はこれをあなたの前から追い払われるのである。
5160 05 9 5 あなたが行ってその地を獲るのは、あなたが正しいからではなく、またあなたの心がまっすぐだからでもない。この国々の民が悪いから、あなたの神、主は彼らをあなたの前から追い払われるのである。これは主があなたの先祖アブラハム、イサク、ヤコブに誓われた言葉を行われるためである。
5161 05 9 6 それであなたは、あなたの神、主があなたにこの良い地を与えてこれを得させられるのは、あなたが正しいからではないことを知らなければならない。あなたは強情な民である。
5162 05 9 7 あなたは荒野であなたの神、主を怒らせたことを覚え、それを忘れてはならない。あなたがたはエジプトの地を出た日からこの所に来るまで、いつも主にそむいた。
5163 05 9 8 またホレブにおいてさえ、あなたがたが主を怒らせたので、主は怒ってあなたがたを滅ぼそうとされた。
5164 05 9 9 わたしが石の板すなわち主があなたがたと結ばれた契約の板を受けるために山に登った時、わたしは四十日四十夜、山にいて、パンも食べず水も飲まなかった。
5165 05 9 10 主は神の指をもって書きしるした石の板二枚をわたしに授けられた。その上には、集会の日に主が山で火の中から、あなたがたに告げられた言葉が、ことごとく書いてあった。
5166 05 9 11 すなわち四十日四十夜が終った時、主はわたしにその契約の板である石の板二枚を授け、
5167 05 9 12 そして主はわたしに言われた、『おまえは立って、すみやかにこの所から降りなさい。おまえがエジプトから導き出した民は悪を行ったからである。彼らはわたしが命じた道を早くも離れて、鋳た像を自分たちのために造った』。
5168 05 9 13 主はまたわたしに言われた、『この民を見るのに、これは強情な民である。
5169 05 9 14 わたしを止めるな。わたしは彼らを滅ぼし、彼らの名を天の下から消し去り、おまえを彼らよりも強く、かつ大いなる国民としよう』。
5170 05 9 15 そこでわたしは身をめぐらして山を降りたが、山は火で焼けていた。契約の板二枚はわたしの両手にあった。
5171 05 9 16 そしてわたしが見ると、あなたがたは、あなたがたの神、主にむかって罪を犯し、自分たちのために鋳物の子牛を造って、主が命じられた道を早くも離れたので、
5172 05 9 17 わたしはその二枚の板をつかんで、両手から投げ出し、あなたがたの目の前でこれを砕いた。
5173 05 9 18 そしてわたしは前のように四十日四十夜、主の前にひれ伏し、パンも食べず、水も飲まなかった。これはあなたがたが主の目の前に悪をおこない、罪を犯して主を怒らせたすべての罪によるのである。
5174 05 9 19 主は怒りを発し、憤りを起し、あなたがたを怒って滅ぼそうとされたので、わたしは恐れたが、その時もまた主はわたしの願いを聞かれた。
5175 05 9 20 主はまた、はなはだしくアロンを怒って、彼を滅ぼそうとされたが、わたしはその時もまたアロンのために祈った。
5176 05 9 21 わたしはあなたがたが造って罪を得た子牛を取り、それを火で焼き、それを撃ち砕き、よくひいて細かいちりとし、そのちりを山から流れ下る谷川に投げ捨てた。
5177 05 9 22 あなたがたはタベラ、マッサおよびキブロテ・ハッタワにおいてもまた主を怒らせた。
5178 05 9 23 また主はカデシ・バルネアから、あなたがたをつかわそうとされた時、『上って行って、わたしが与える地を占領せよ』と言われた。ところが、あなたがたはあなたがたの神、主の命令にそむき、彼を信ぜず、また彼の声に聞き従わなかった。
5179 05 9 24 わたしがあなたがたを知ったその日からこのかた、あなたがたはいつも主にそむいた。
5180 05 9 25 そしてわたしは、さきにひれ伏したように、四十日四十夜、主の前にひれ伏した。主があなたがたを滅ぼすと言われたからである。
5181 05 9 26 わたしは主に祈って言った、『主なる神よ、あなたが大いなる力をもってあがない、強い手をもってエジプトから導き出されたあなたの民、あなたの嗣業を滅ぼさないでください。
5182 05 9 27 あなたのしもべアブラハム、イサク、ヤコブを覚えてください。この民の強情と悪と罪とに目をとめないでください。
5183 05 9 28 あなたがわれわれを導き出された国の人はおそらく、「主は、約束した地に彼らを導き入れることができず、また彼らを憎んだので、彼らを導き出して荒野で殺したのだ」と言うでしょう。
5184 05 9 29 しかし彼らは、あなたの民、あなたの嗣業であって、あなたが大いなる力と伸ばした腕とをもって導き出されたのです』。
5185 05 10 1 その時、主はわたしに言われた、『おまえは、前のような石の板二枚を切って作り、山に登って、わたしのもとにきなさい。また木の箱一つを作りなさい。
5186 05 10 2 さきにおまえが砕いた二枚の板に書いてあった言葉を、わたしはその板に書きしるそう。おまえはそれをその箱におさめなければならない』。
5187 05 10 3 そこでわたしはアカシヤ材の箱一つを作り、また前のような石の板二枚を切って作り、その二枚の板を手に持って山に登った。
5188 05 10 4 主はかつて、かの集会の日に山で火の中からあなたがたに告げられた十誡を書きしるされたように、その板に書きしるし、それを主はわたしに授けられた。
5189 05 10 5 それでわたしは身をめぐらして山から降り、その板を、わたしが作った箱におさめた。今なおその中にある。主がわたしに命じられたとおりである。
5190 05 10 6 (こうしてイスラエルの人々はベエロテ・ベネ・ヤカンを出立してモセラに着いた。アロンはその所で死んでそこに葬られ、その子エレアザルが彼に代って祭司となった。
5191 05 10 7 またそこを出立してグデゴダに至り、グデゴダを出立してヨテバタに着いた。この地には多くの水の流れがあった。
5192 05 10 8 その時、主はレビの部族を選んで、主の契約の箱をかつぎ、主の前に立って仕え、また主の名をもって祝福することをさせられた。この事は今日に及んでいる。
5193 05 10 9 そのためレビは兄弟たちと一緒には分け前がなく、嗣業もない。あなたの神、主が彼に言われたとおり、主みずからが彼の嗣業であった。)
5194 05 10 10 わたしは前の時のように四十日四十夜、山におったが、主はその時にもわたしの願いを聞かれた。主はあなたを滅ぼすことを望まれなかった。
5195 05 10 11 そして主はわたしに『おまえは立ちあがり、民に先立って進み行き、わたしが彼らに与えると、その先祖に誓った地に彼らをはいらせ、それを取らせよ』と言われた。
5196 05 10 12 イスラエルよ、今、あなたの神、主があなたに求められる事はなんであるか。ただこれだけである。すなわちあなたの神、主を恐れ、そのすべての道に歩んで、彼を愛し、心をつくし、精神をつくしてあなたの神、主に仕え、
5197 05 10 13 また、わたしがきょうあなたに命じる主の命令と定めとを守って、さいわいを得ることである。
5198 05 10 14 見よ、天と、もろもろの天の天、および地と、地にあるものとはみな、あなたの神、主のものである。
5199 05 10 15 そうであるのに、主はただあなたの先祖たちを喜び愛し、その後の子孫であるあなたがたを万民のうちから選ばれた。今日見るとおりである。
5200 05 10 16 それゆえ、あなたがたは心に割礼をおこない、もはや強情であってはならない。
5201 05 10 17 あなたがたの神である主は、神の神、主の主、大いにして力ある恐るべき神にましまし、人をかたより見ず、また、まいないを取らず、
5202 05 10 18 みなし子とやもめのために正しいさばきを行い、また寄留の他国人を愛して、食物と着物を与えられるからである。
5203 05 10 19 それゆえ、あなたがたは寄留の他国人を愛しなさい。あなたがたもエジプトの国で寄留の他国人であった。
5204 05 10 20 あなたの神、主を恐れ、彼に仕え、彼に従い、その名をさして誓わなければならない。
5205 05 10 21 彼はあなたのさんびすべきもの、またあなたの神であって、あなたが目に見たこれらの大いなる恐るべき事を、あなたのために行われた。
5206 05 10 22 あなたの先祖たちは、わずか七十人でエジプトに下ったが、いま、あなたの神、主はあなたを天の星のように多くされた。
5207 05 11 1 それゆえ、あなたの神、主を愛し、常にそのさとしと、定めと、おきてと、戒めとを守らなければならない。
5208 05 11 2 あなたがたは、きょう、次のことを知らなければならない。わたしが語るのは、あなたがたの子供たちに対してではない。彼らはあなたがたの神、主の訓練と、主の大いなる事と、その強い手と、伸べた腕とを知らず、また見なかった。
5209 05 11 3 また彼らは主がエジプトで、エジプト王パロとその全国に対して行われたしるしと、わざ、
5210 05 11 4 また主がエジプトの軍勢とその馬と戦車とに行われた事、すなわち彼らがあなたがたのあとを追ってきた時に、紅海の水を彼らの上にあふれさせ、彼らを滅ぼされて、今日に至った事、
5211 05 11 5 またあなたがたがこの所に来るまで、主が荒野で、あなたがたに行われた事、
5212 05 11 6 およびルベンの子のエリアブの子、ダタンとアビラムとにされた事、すなわちイスラエルのすべての人々の中で、地が口を開き、彼らと、その家族と、天幕と、彼らに従うすべてのものを、のみつくした事などを彼らは知らず、また見なかった。
5213 05 11 7 しかし、あなたがたは主が行われたこれらの大いなる事を、ことごとく目に見たのである。
5214 05 11 8 ゆえに、わたしが、きょう、あなたがたに命じる戒めを、ことごとく守らなければならない。そうすればあなたがたは強くなり、渡って行って取ろうとする地にはいって、それを取ることができ、
5215 05 11 9 かつ、主が先祖たちに誓って彼らとその子孫とに与えようと言われた地、乳と蜜の流れる国において、長く生きることができるであろう。
5216 05 11 10 あなたがたが行って取ろうとする地は、あなたがたが出てきたエジプトの地のようではない。あそこでは、青物畑でするように、あなたがたは種をまき、足でそれに水を注いだ。
5217 05 11 11 しかし、あなたがたが渡って行って取る地は、山と谷の多い地で、天から降る雨で潤っている。
5218 05 11 12 その地は、あなたの神、主が顧みられる所で、年の始めから年の終りまで、あなたの神、主の目が常にその上にある。
5219 05 11 13 もし、きょう、あなたがたに命じるわたしの命令によく聞き従って、あなたがたの神、主を愛し、心をつくし、精神をつくして仕えるならば、
5220 05 11 14 主はあなたがたの地に雨を、秋の雨、春の雨ともに、時にしたがって降らせ、穀物と、ぶどう酒と、油を取り入れさせ、
5221 05 11 15 また家畜のために野に草を生えさせられるであろう。あなたは飽きるほど食べることができるであろう。
5222 05 11 16 あなたがたは心が迷い、離れ去って、他の神々に仕え、それを拝むことのないよう、慎まなければならない。
5223 05 11 17 おそらく主はあなたがたにむかい怒りを発して、天を閉ざされるであろう。そのため雨は降らず、地は産物を出さず、あなたがたは主が賜わる良い地から、すみやかに滅びうせるであろう。
5224 05 11 18 それゆえ、これらのわたしの言葉を心と魂におさめ、またそれを手につけて、しるしとし、目の間に置いて覚えとし、
5225 05 11 19 これを子供たちに教え、家に座している時も、道を歩く時も、寝る時も、起きる時も、それについて語り、
5226 05 11 20 また家の入口の柱と、門にそれを書きしるさなければならない。
5227 05 11 21 そうすれば、主が先祖たちに与えようと誓われた地に、あなたがたの住む日数およびあなたがたの子供たちの住む日数は、天が地をおおう日数のように多いであろう。
5228 05 11 22 もしわたしがあなたがたに命じるこのすべての命令をよく守って行い、あなたがたの神、主を愛し、そのすべての道に歩み、主につき従うならば、
5229 05 11 23 主はこの国々の民を皆、あなたがたの前から追い払われ、あなたがたはあなたがたよりも大きく、かつ強い国々を取るに至るであろう。
5230 05 11 24 あなたがたが足の裏で踏む所は皆、あなたがたのものとなり、あなたがたの領域は荒野からレバノンに及び、また大川ユフラテから西の海に及ぶであろう。
5231 05 11 25 だれもあなたがたに立ち向かうことのできる者はないであろう。あなたがたの神、主は、かつて言われたように、あなたがたの踏み入る地の人々が、あなたがたを恐れおののくようにされるであろう。
5232 05 11 26 見よ、わたしは、きょう、あなたがたの前に祝福と、のろいとを置く。
5233 05 11 27 もし、きょう、わたしがあなたがたに命じるあなたがたの神、主の命令に聞き従うならば、祝福を受けるであろう。
5234 05 11 28 もしあなたがたの神、主の命令に聞き従わず、わたしが、きょう、あなたがたに命じる道を離れ、あなたがたの知らなかった他の神々に従うならば、のろいを受けるであろう。
5235 05 11 29 あなたの神、主が、あなたの行って占領する地にあなたを導き入れられる時、あなたはゲリジム山に祝福を置き、エバル山にのろいを置かなければならない。
5236 05 11 30 これらの山はヨルダンの向こう側、アラバに住んでいるカナンびとの地で、日の入る方の道の西側にあり、ギルガルに向かいあって、モレのテレビンの木の近くにあるではないか。
5237 05 11 31 あなたがたはヨルダンを渡り、あなたがたの神、主が賜わる地にはいって、それを占領しようとしている。あなたがたはそれを占領して、そこに住むであろう。
5238 05 11 32 それゆえ、わたしが、きょう、あなたがたに授ける定めと、おきてをことごとく守って行わなければならない。
5239 05 12 1 これはあなたの先祖たちの神、主が所有として賜わる地で、あなたがたが世に生きながらえている間、守り行わなければならない定めと、おきてである。
5240 05 12 2 あなたがたの追い払う国々の民が、その神々に仕えた所は、高い山にあるものも、丘にあるものも、青木の下にあるものも、ことごとくこわし、
5241 05 12 3 その祭壇をこぼち、柱を砕き、アシラ像を火で焼き、また刻んだ神々の像を切り倒して、その名をその所から消し去らなければならない。
5242 05 12 4 ただし、あなたがたの神、主にはそのようにしてはならない。
5243 05 12 5 あなたがたの神、主がその名を置くために、あなたがたの全部族のうちから選ばれる場所、すなわち主のすまいを尋ね求めて、そこに行き、
5244 05 12 6 あなたがたの燔祭と、犠牲と、十分の一と、ささげ物と、誓願の供え物と、自発の供え物および牛、羊のういごをそこに携えて行って、
5245 05 12 7 そこであなたがたの神、主の前で食べ、あなたがたも、家族も皆、手を労して獲るすべての物を喜び楽しまなければならない。これはあなたの神、主の恵みによって獲るものだからである。
5246 05 12 8 そこでは、われわれがきょうここでしているように、めいめいで正しいと思うようにふるまってはならない。
5247 05 12 9 あなたがたはまだ、あなたがたの神、主から賜わる安息と嗣業の地に、はいっていないのである。
5248 05 12 10 しかし、あなたがたがヨルダンを渡り、あなたがたの神、主が嗣業として賜わる地に住むようになり、さらに主があなたがたの周囲の敵をことごとく除いて、安息を与え、あなたがたが安らかに住むようになる時、
5249 05 12 11 あなたがたの神、主はその名を置くために、一つの場所を選ばれるであろう。あなたがたはそこにわたしの命じる物をすべて携えて行かなければならない。すなわち、あなたがたの燔祭と、犠牲と、十分の一と、ささげ物およびあなたがたが主に誓ったすべての誓願の供え物とを携えて行かなければならない。
5250 05 12 12 そしてあなたがたのむすこ、娘、しもべ、はしためと共にあなたがたの神、主の前に喜び楽しまなければならない。また町の内におるレビびととも、そうしなければならない。彼はあなたがたのうちに分け前がなく、嗣業を持たないからである。
5251 05 12 13 慎んで、すべてあなたがよいと思う場所で、みだりに燔祭をささげないようにしなければならない。
5252 05 12 14 ただあなたの部族の一つのうちに、主が選ばれるその場所で、燔祭をささげ、またわたしが命じるすべての事をしなければならない。
5253 05 12 15 しかし、あなたの神、主が賜わる恵みにしたがって、すべて心に好む獣を、どの町ででも殺して、その肉を食べることができる。すなわち、かもしかや雄じかの肉と同様にそれを、汚れた人も、清い人も、食べることができる。
5254 05 12 16 ただし、その血は食べてはならない。水のようにそれを地に注がなければならない。
5255 05 12 17 あなたの穀物と、ぶどう酒と、油との十分の一および牛、羊のういご、ならびにあなたが立てる誓願の供え物と、自発の供え物およびささげ物は、町の内で食べることはできない。
5256 05 12 18 あなたの神、主が選ばれる場所で、あなたの神、主の前でそれを食べなければならない。すなわちあなたのむすこ、娘、しもべ、はしため、および町の内におるレビびとと共にそれを食べ、手を労して獲るすべての物を、あなたの神、主の前に喜び楽しまなければならない。
5257 05 12 19 慎んで、あなたが世に生きながらえている間、レビびとを捨てないようにしなければならない。
5258 05 12 20 あなたの神、主が約束されたように、あなたの領域を広くされるとき、あなたは肉を食べたいと願って、『わたしは肉を食べよう』と言うであろう。その時、あなたはほしいだけ肉を食べることができる。
5259 05 12 21 もしあなたの神、主がその名を置くために選ばれる場所が、遠く離れているならば、わたしが命じるように、主が賜わる牛、羊をほふり、門の内で、ほしいだけ食べることができる。
5260 05 12 22 かもしかや、雄じかを食べるように、それを食べることができる。すなわち汚れた人も、清い人も一様にそれを食べることができる。
5261 05 12 23 ただ堅く慎んで、その血を食べないようにしなければならない。血は命だからである。その命を肉と一緒に食べてはならない。
5262 05 12 24 あなたはそれを食べてはならない。水のようにそれを地に注がなければならない。
5263 05 12 25 あなたはそれを食べてはならない。こうして、主が正しいと見られる事を行うならば、あなたにも後の子孫にも、さいわいがあるであろう。
5264 05 12 26 ただあなたのささげる聖なる物と、誓願の物とは、主が選ばれる場所へ携えて行かなければならない。
5265 05 12 27 そして燔祭をささげる時は、肉と血とをあなたの神、主の祭壇の上にささげなければならない。犠牲をささげる時は、血をあなたの神、主の祭壇にそそぎかけ、肉はみずから食べることができる。
5266 05 12 28 あなたはわたしが命じるこれらの事を、ことごとく聞いて守らなければならない。こうしてあなたの神、主が見て良いとし、正しいとされる事を行うならば、あなたにも後の子孫にも、長くさいわいがあるであろう。
5267 05 12 29 あなたの神、主が、あなたの行って追い払おうとする国々の民を、あなたの前から断ち滅ぼされ、あなたがついにその国々を獲て、その地に住むようになる時、
5268 05 12 30 あなたはみずから慎み、彼らがあなたの前から滅ぼされた後、彼らにならって、わなにかかってはならない。また彼らの神々を尋ね求めて、『これらの国々の民はどのようにその神々に仕えたのか、わたしもそのようにしよう』と言ってはならない。
5269 05 12 31 あなたの神、主に対しては、そのようにしてはならない。彼らは主の憎まれるもろもろの忌むべき事を、その神々にむかって行い、むすこ、娘をさえ火に焼いて、神々にささげたからである。
5270 05 12 32 あなたがたはわたしが命じるこのすべての事を守って行わなければならない。これにつけ加えてはならない。また減らしてはならない。
5271 05 13 1 あなたがたのうちに預言者または夢みる者が起って、しるしや奇跡を示し、
5272 05 13 2 あなたに告げるそのしるしや奇跡が実現して、あなたがこれまで知らなかった『ほかの神々に、われわれは従い仕えよう』と言っても、
5273 05 13 3 あなたはその預言者または夢みる者の言葉に聞き従ってはならない。あなたがたの神、主はあなたがたが心をつくし、精神をつくして、あなたがたの神、主を愛するか、どうかを知ろうと、このようにあなたがたを試みられるからである。
5274 05 13 4 あなたがたの神、主に従って歩み、彼を恐れ、その戒めを守り、その言葉に聞き従い、彼に仕え、彼につき従わなければならない。
5275 05 13 5 その預言者または夢みる者を殺さなければならない。あなたがたをエジプトの国から導き出し、奴隷の家からあがなわれたあなたがたの神、主にあなたがたをそむかせ、あなたの神、主が歩めと命じられた道を離れさせようとして語るゆえである。こうしてあなたがたのうちから悪を除き去らなければならない。
5276 05 13 6 同じ母に生れたあなたの兄弟、またはあなたのむすこ、娘、またはあなたのふところの妻、またはあなたと身命を共にする友が、ひそかに誘って『われわれは行って他の神々に仕えよう』と言うかも知れない。これはあなたも先祖たちも知らなかった神々、
5277 05 13 7 すなわち地のこのはてから、地のかのはてまで、あるいは近く、あるいは遠く、あなたの周囲にある民の神々である。
5278 05 13 8 しかし、あなたはその人に従ってはならない。その人の言うことを聞いてはならない。その人をあわれんではならない。その人を惜しんではならない。その人をかばってはならない。
5279 05 13 9 必ず彼を殺さなければならない。彼を殺すには、あなたがまず彼に手を下し、その後、民がみな手を下さなければならない。
5280 05 13 10 彼はエジプトの国、奴隷の家からあなたを導き出されたあなたの神、主からあなたを離れさせようとしたのであるから、あなたは石をもって彼を撃ち殺さなければならない。
5281 05 13 11 そうすればイスラエルは皆聞いて恐れ、重ねてこのような悪い事を、あなたがたのうちに行わないであろう。
5282 05 13 12 あなたの神、主があなたに与えて住まわせられる町の一つで、
5283 05 13 13 よこしまな人々があなたがたのうちに起って、あなたがたの知らなかった『ほかの神々に、われわれは行って仕えよう』と言って、その町に住む人々を誘惑したことを聞くならば、
5284 05 13 14 あなたはそれを尋ね、探り、よく問いたださなければならない。そして、そのような憎むべき事があなたがたのうちに行われた事が、真実で、確かならば、
5285 05 13 15 あなたは必ず、その町に住む者をつるぎの刃にかけて撃ち殺し、その町と、そのうちにおるすべての者、およびその家畜をつるぎの刃にかけて、ことごとく滅ぼさなければならない。
5286 05 13 16 またそのすべてのぶんどり物は、町の広場の中央に集め、火をもってその町と、すべてのぶんどり物とを、ことごとく焼いて、あなたの神、主にささげなければならない。これはながく荒塚となって、再び建て直されないであろう。
5287 05 13 17 そののろわれた物は一つもあなたの手に留めおいてはならない。主が激しい怒りをやめ、あなたに慈悲を施して、あなたをあわれみ、先祖たちに誓われたように、あなたの数を多くされるためである。
5288 05 13 18 あなたの神、主の言葉に聞き従い、わたしが、きょう、命じるすべての戒めを守り、あなたの神、主が正しいと見られる事を行うならば、このようになるであろう。
5289 05 14 1 あなたがたはあなたがたの神、主の子供である。死んだ人のために自分の身に傷をつけてはならない。また額の髪をそってはならない。
5290 05 14 2 あなたはあなたの神、主の聖なる民だからである。主は地のおもてのすべての民のうちからあなたを選んで、自分の宝の民とされた。
5291 05 14 3 忌むべき物は、どんなものでも食べてはならない。
5292 05 14 4 あなたがたの食べることができる獣は次のとおりである。すなわち牛、羊、やぎ、
5293 05 14 5 雄じか、かもしか、こじか、野やぎ、くじか、おおじか、野羊など、
5294 05 14 6 獣のうち、すべて、ひずめの分れたもの、ひずめが二つに切れたもので、反芻するものは食べることができる。
5295 05 14 7 ただし、反芻するものと、ひずめの分れたもののうち、次のものは食べてはならない。すなわち、らくだ、野うさぎ、および岩だぬき、これらは反芻するけれども、ひずめが分れていないから汚れたものである。
5296 05 14 8 また豚、これは、ひずめが分れているけれども、反芻しないから、汚れたものである。その肉を食べてはならない。またその死体に触れてはならない。
5297 05 14 9 水の中にいるすべての物のうち、次のものは食べることができる。すなわち、すべて、ひれと、うろこのあるものは、食べることができる。
5298 05 14 10 すべて、ひれと、うろこのないものは、食べてはならない。これは汚れたものである。
5299 05 14 11 すべて清い鳥は食べることができる。
5300 05 14 12 ただし、次のものは食べてはならない。すなわち、はげわし、ひげはげわし、みさご、
5301 05 14 13 黒とび、はやぶさ、とびの類。
5302 05 14 14 各種のからすの類。
5303 05 14 15 だちょう、夜たか、かもめ、たかの類。
5304 05 14 16 ふくろう、みみずく、むらさきばん、
5305 05 14 17 ペリカン、はげたか、う、
5306 05 14 18 こうのとり、さぎの類。やつがしら、こうもり。
5307 05 14 19 またすべて羽があって這うものは汚れたものである。それを食べてはならない。
5308 05 14 20 すべて翼のある清いものは食べることができる。
5309 05 14 21 すべて自然に死んだものは食べてはならない。町の内におる寄留の他国人に、それを与えて食べさせることができる。またそれを外国人に売ってもよい。あなたはあなたの神、主の聖なる民だからである。
5310 05 14 22 あなたは毎年、畑に種をまいて獲るすべての産物の十分の一を必ず取り分けなければならない。
5311 05 14 23 そしてあなたの神、主の前、すなわち主がその名を置くために選ばれる場所で、穀物と、ぶどう酒と、油との十分の一と、牛、羊のういごを食べ、こうして常にあなたの神、主を恐れることを学ばなければならない。
5312 05 14 24 ただし、その道があまりに遠く、あなたの神、主がその名を置くために選ばれる場所が、非常に遠く離れていて、あなたの神、主があなたを恵まれるとき、それを携えて行くことができないならば、
5313 05 14 25 あなたはその物を金に換え、その金を包んで手に取り、あなたの神、主が選ばれる場所に行き、
5314 05 14 26 その金をすべてあなたの好む物に換えなければならない。すなわち牛、羊、ぶどう酒、濃い酒など、すべてあなたの欲する物に換え、その所であなたの神、主の前でそれを食べ、家族と共に楽しまなければならない。
5315 05 14 27 町の内におるレビびとを捨ててはならない。彼はあなたがたのうちに分がなく、嗣業を持たない者だからである。
5316 05 14 28 三年の終りごとに、その年の産物の十分の一を、ことごとく持ち出して、町の内にたくわえ、
5317 05 14 29 あなたがたのうちに分け前がなく、嗣業を持たないレビびと、および町の内におる寄留の他国人と、孤児と、寡婦を呼んで、それを食べさせ、満足させなければならない。そうすれば、あなたの神、主はあなたが手で行うすべての事にあなたを祝福されるであろう。
5318 05 15 1 あなたは七年の終りごとに、ゆるしを行わなければならない。
5319 05 15 2 そのゆるしのしかたは次のとおりである。すべてその隣人に貸した貸主はそれをゆるさなければならない。その隣人または兄弟にそれを督促してはならない。主のゆるしが、ふれ示されたからである。
5320 05 15 3 外国人にはそれを督促することができるが、あなたの兄弟に貸した物はゆるさなければならない。
5321 05 15 4 しかしあなたがたのうちに貧しい者はなくなるであろう。(あなたの神、主が嗣業として与えられる地で、あなたを祝福されるからである。)
5322 05 15 5 ただ、あなたの神、主の言葉に聞き従って、わたしが、きょう、あなたに命じることの戒めを、ことごとく守り行うとき、そのようになるであろう。
5323 05 15 6 あなたの神、主が約束されたようにあなたを祝福されるから、あなたは多くの国びとに貸すようになり、借りることはないであろう。またあなたは多くの国びとを治めるようになり、彼らがあなたを治めることはないであろう。
5324 05 15 7 あなたの神、主が賜わる地で、もしあなたの兄弟で貧しい者がひとりでも、町の内におるならば、その貧しい兄弟にむかって、心をかたくなにしてはならない。また手を閉じてはならない。
5325 05 15 8 必ず彼に手を開いて、その必要とする物を貸し与え、乏しいのを補わなければならない。
5326 05 15 9 あなたは心に邪念を起し、『第七年のゆるしの年が近づいた』と言って、貧しい兄弟に対し、物を惜しんで、何も与えないことのないように慎まなければならない。その人があなたを主に訴えるならば、あなたは罪を得るであろう。
5327 05 15 10 あなたは心から彼に与えなければならない。彼に与える時は惜しんではならない。あなたの神、主はこの事のために、あなたをすべての事業と、手のすべての働きにおいて祝福されるからである。
5328 05 15 11 貧しい者はいつまでも国のうちに絶えることがないから、わたしは命じて言う、『あなたは必ず国のうちにいるあなたの兄弟の乏しい者と、貧しい者とに、手を開かなければならない』。
5329 05 15 12 もしあなたの兄弟であるヘブルの男、またはヘブルの女が、あなたのところに売られてきて、六年仕えたならば、第七年には彼に自由を与えて去らせなければならない。
5330 05 15 13 彼に自由を与えて去らせる時は、から手で去らせてはならない。
5331 05 15 14 群れと、打ち場と、酒ぶねのうちから取って、惜しみなく彼に与えなければならない。すなわちあなたの神、主があなたを恵まれたように、彼に与えなければならない。
5332 05 15 15 あなたはかつてエジプトの国で奴隷であったが、あなたの神、主があなたをあがない出された事を記憶しなければならない。このゆえにわたしは、きょう、この事を命じる。
5333 05 15 16 しかしその人があなたと、あなたの家族を愛し、あなたと一緒にいることを望み、『わたしはあなたを離れて去りたくありません』と言うならば、
5334 05 15 17 あなたは、きりを取って彼の耳を戸に刺さなければならない。そうすれば、彼はいつまでもあなたの奴隷となるであろう。女奴隷にもそうしなければならない。
5335 05 15 18 彼に自由を与えて去らせる時には、快く去らせなければならない。彼が六年間、賃銀を取る雇人の二倍あなたに仕えて働いたからである。あなたがそうするならば、あなたの神、主はあなたが行うすべての事にあなたを祝福されるであろう。
5336 05 15 19 牛、羊の産む雄のういごは皆あなたの神、主に聖別しなければならない。牛のういごを用いてなんの仕事をもしてはならない。また羊のういごの毛を切ってはならない。
5337 05 15 20 あなたの神、主が選ばれる所で、主の前にあなたは家族と共に年ごとにそれを食べなければならない。
5338 05 15 21 しかし、その獣がもし傷のあるもの、すなわち足なえまたは、めくらなど、すべて悪い傷のあるものである時は、あなたの神、主にそれを犠牲としてささげてはならない。
5339 05 15 22 町の内でそれを食べなければならない。汚れた人も、清い人も、かもしかや、雄じかと同様にそれを食べることができる。
5340 05 15 23 ただし、その血は食べてはならない。水のようにそれを地にそそがなければならない。
5341 05 16 1 あなたはアビブの月を守って、あなたの神、主のために過越の祭を行わなければならない。アビブの月に、あなたの神、主が夜の間にあなたをエジプトから導き出されたからである。
5342 05 16 2 主がその名を置くために選ばれる場所で、羊または牛をあなたの神、主に過越の犠牲としてほふらなければならない。
5343 05 16 3 種を入れたパンをそれと共に食べてはならない。七日のあいだ、種入れぬパンすなわち悩みのパンを、それと共に食べなければならない。あなたがエジプトの国から出るとき、急いで出たからである。こうして世に生きながらえる日の間、エジプトの国から出てきた日を常に覚えなければならない。
5344 05 16 4 その七日の間は、国の内どこにもパン種があってはならない。また初めの日の夕暮にほふるものの肉を、翌朝まで残しておいてはならない。
5345 05 16 5 あなたの神、主が賜わる町の内で、過越の犠牲をほふってはならない。
5346 05 16 6 ただあなたの神、主がその名を置くために選ばれる場所で、夕暮の日の入るころ、あなたがエジプトから出た時刻に、過越の犠牲をほふらなければならない。
5347 05 16 7 そしてあなたの神、主が選ばれる場所で、それを焼いて食べ、朝になって天幕に帰らなければならない。
5348 05 16 8 六日のあいだ種入れぬパンを食べ、七日目にあなたの神、主のために聖会を開かなければならない。なんの仕事もしてはならない。
5349 05 16 9 また七週間を数えなければならない。すなわち穀物に、かまを入れ始める時から七週間を数え始めなければならない。
5350 05 16 10 そしてあなたの神、主のために七週の祭を行い、あなたの神、主が賜わる祝福にしたがって、力に応じ、自発の供え物をささげなければならない。
5351 05 16 11 こうしてあなたはむすこ、娘、しもべ、はしためおよび町の内におるレビびと、ならびにあなたがたのうちにおる寄留の他国人と孤児と寡婦と共に、あなたの神、主がその名を置くために選ばれる場所で、あなたの神、主の前に喜び楽しまなければならない。
5352 05 16 12 あなたはかつてエジプトで奴隷であったことを覚え、これらの定めを守り行わなければならない。
5353 05 16 13 打ち場と、酒ぶねから取入れをしたとき、七日のあいだ仮庵の祭を行わなければならない。
5354 05 16 14 その祭の時には、あなたはむすこ、娘、しもべ、はしためおよび町の内におるレビびと、寄留の他国人、孤児、寡婦と共に喜び楽しまなければならない。
5355 05 16 15 主が選ばれる場所で七日の間、あなたの神、主のために祭を行わなければならない。あなたの神、主はすべての産物と、手のすべてのわざとにおいて、あなたを祝福されるから、あなたは大いに喜び楽しまなければならない。
5356 05 16 16 あなたのうちの男子は皆あなたの神、主が選ばれる場所で、年に三度、すなわち種入れぬパンの祭と、七週の祭と、仮庵の祭に、主の前に出なければならない。ただし、から手で主の前に出てはならない。
5357 05 16 17 あなたの神、主が賜わる祝福にしたがい、おのおの力に応じて、ささげ物をしなければならない。
5358 05 16 18 あなたの神、主が賜わるすべての町々の内に、部族にしたがって、さばきびとと、つかさびととを、立てなければならない。そして彼らは正しいさばきをもって民をさばかなければならない。
5359 05 16 19 あなたはさばきを曲げてはならない。人をかたより見てはならない。また賄賂を取ってはならない。賄賂は賢い者の目をくらまし、正しい者の事件を曲げるからである。
5360 05 16 20 ただ公義をのみ求めなければならない。そうすればあなたは生きながらえて、あなたの神、主が賜わる地を所有するにいたるであろう。
5361 05 16 21 あなたの神、主のために築く祭壇のかたわらに、アシラの木像をも立ててはならない。
5362 05 16 22 またあなたの神、主が憎まれる柱を立ててはならない。
5363 05 17 1 すべて傷があり、欠けた所のある牛または羊はあなたの神、主にささげてはならない。そのようなものはあなたの神、主の忌みきらわれるものだからである。
5364 05 17 2 あなたの神、主が賜わる町で、あなたがたのうちに、もし男子または女子があなたの神、主の前に悪事をおこなって、契約にそむき、
5365 05 17 3 行って他の神々に仕え、それを拝み、わたしの禁じる、日や月やその他の天の万象を拝むことがあり、
5366 05 17 4 その事を知らせる者があって、あなたがそれを聞くならば、あなたはそれをよく調べなければならない。そしてその事が真実であり、そのような憎むべき事が確かにイスラエルのうちに行われていたならば、
5367 05 17 5 あなたはその悪事をおこなった男子または女子を町の門にひき出し、その男子または女子を石で撃ち殺さなければならない。
5368 05 17 6 ふたりの証人または三人の証人の証言によって殺すべき者を殺さなければならない。ただひとりの証人の証言によって殺してはならない。
5369 05 17 7 そのような者を殺すには、証人がまず手を下し、それから民が皆、手を下さなければならない。こうしてあなたのうちから悪を除き去らなければならない。
5370 05 17 8 町の内に訴え事が起り、その事件がもし血を流す事、または権利を争う事、または人を撃った事などであって、あなたが、さばきかねるものである時は、立ってあなたの神、主が選ばれる場所にのぼり、
5371 05 17 9 レビびとである祭司と、その時の裁判人とに行って尋ねなければならない。彼らはあなたに判決の言葉を告げるであろう。
5372 05 17 10 あなたは、主が選ばれるその場所で、彼らが告げる言葉に従っておこない、すべて彼らが教えるように守り行わなければならない。
5373 05 17 11 すなわち彼らが教える律法と、彼らが告げる判決とに従って行わなければならない。彼らが告げる言葉にそむいて、右にも左にもかたよってはならない。
5374 05 17 12 もし人がほしいままにふるまい、あなたの神、主の前に立って仕える祭司または裁判人に聞き従わないならば、その人を殺して、イスラエルのうちから悪を除かなければならない。
5375 05 17 13 そうすれば民は皆、聞いて恐れ、重ねてほしいままにふるまうことをしないであろう。
5376 05 17 14 あなたの神、主が賜わる地に行き、それを獲てそこに住むようになる時、もしあなたが『わたしも周囲のすべての国びとのように、わたしの上に王を立てよう』と言うならば、
5377 05 17 15 必ずあなたの神、主が選ばれる者を、あなたの上に立てて王としなければならない。同胞のひとりを、あなたの上に立てて王としなければならない。同胞でない外国人をあなたの上に立ててはならない。
5378 05 17 16 王となる人は自分のために馬を多く獲ようとしてはならない。また馬を多く獲るために民をエジプトに帰らせてはならない。主はあなたがたにむかって、『この後かさねてこの道に帰ってはならない』と仰せられたからである。
5379 05 17 17 また妻を多く持って心を、迷わしてはならない。また自分のために金銀を多くたくわえてはならない。
5380 05 17 18 彼が国の王位につくようになったら、レビびとである祭司の保管する書物から、この律法の写しを一つの書物に書きしるさせ、
5381 05 17 19 世に生きながらえる日の間、常にそれを自分のもとに置いて読み、こうしてその神、主を恐れることを学び、この律法のすべての言葉と、これらの定めとを守って行わなければならない。
5382 05 17 20 そうすれば彼の心が同胞を見くだして、高ぶることなく、また戒めを離れて、右にも左にも曲ることなく、その子孫と共にイスラエルにおいて、長くその位にとどまることができるであろう。
5383 05 18 1 レビびとである祭司すなわちレビの全部族はイスラエルのうちに、分も嗣業も持たない。彼らは主にささげられる火祭の物と、その他のささげ物とを食べなければならない。
5384 05 18 2 彼らはその兄弟のうちに嗣業を持たない。かつて彼らに約束されたとおり主が彼らの嗣業である。
5385 05 18 3 祭司が民から受ける分は次のとおりである。すなわち犠牲をささげる者は、牛でも、羊でも、その肩と、両方のほおと、胃とを祭司に与えなければならない。
5386 05 18 4 また穀物と、ぶどう酒と、油の初物および羊の毛の初物をも彼に与えなければならない。
5387 05 18 5 あなたの神、主がすべての部族のうちから彼を選び出して、彼とその子孫を長く主の名によって立って仕えさせられるからである。
5388 05 18 6 レビびとはイスラエルの全地のうち、どこにいる者でも、彼が宿っている町を出て、主が選ばれる場所に行くならば、
5389 05 18 7 彼は主の前に立っているすべての兄弟レビびとと同じように、その神、主の名によって仕えることができる。
5390 05 18 8 彼が食べる分は彼らと同じである。ただし彼はこのほかに父の遺産を売って獲た物を持つことができる。
5391 05 18 9 あなたの神、主が賜わる地にはいったならば、その国々の民の憎むべき事を習いおこなってはならない。
5392 05 18 10 あなたがたのうちに、自分のむすこ、娘を火に焼いてささげる者があってはならない。また占いをする者、卜者、易者、魔法使、
5393 05 18 11 呪文を唱える者、口寄せ、かんなぎ、死人に問うことをする者があってはならない。
5394 05 18 12 主はすべてこれらの事をする者を憎まれるからである。そしてこれらの憎むべき事のゆえにあなたの神、主は彼らをあなたの前から追い払われるのである。
5395 05 18 13 あなたの神、主の前にあなたは全き者でなければならない。
5396 05 18 14 あなたが追い払うかの国々の民は卜者、占いをする者に聞き従うからである。しかし、あなたには、あなたの神、主はそうする事を許されない。
5397 05 18 15 あなたの神、主はあなたのうちから、あなたの同胞のうちから、わたしのようなひとりの預言者をあなたのために起されるであろう。あなたがたは彼に聞き従わなければならない。
5398 05 18 16 これはあなたが集会の日にホレブであなたの神、主に求めたことである。すなわちあなたは『わたしが死ぬことのないようにわたしの神、主の声を二度とわたしに聞かせないでください。またこの大いなる火を二度と見させないでください』と言った。
5399 05 18 17 主はわたしに言われた、『彼らが言ったことは正しい。
5400 05 18 18 わたしは彼らの同胞のうちから、おまえのようなひとりの預言者を彼らのために起して、わたしの言葉をその口に授けよう。彼はわたしが命じることを、ことごとく彼らに告げるであろう。
5401 05 18 19 彼がわたしの名によって、わたしの言葉を語るのに、もしこれに聞き従わない者があるならば、わたしはそれを罰するであろう。
5402 05 18 20 ただし預言者が、わたしが語れと命じないことを、わたしの名によってほしいままに語り、あるいは他の神々の名によって語るならば、その預言者は殺さなければならない』。
5403 05 18 21 あなたは心のうちに『われわれは、その言葉が主の言われたものでないと、どうして知り得ようか』と言うであろう。
5404 05 18 22 もし預言者があって、主の名によって語っても、その言葉が成就せず、またその事が起らない時は、それは主が語られた言葉ではなく、その預言者がほしいままに語ったのである。その預言者を恐れるに及ばない。
5405 05 19 1 あなたの神、主が国々の民を滅ぼしつくして、あなたの神、主がその地を賜わり、あなたがそれを獲て、その町々と、その家々に住むようになる時は、
5406 05 19 2 あなたの神、主が与えて獲させられる地のうちに、三つの町をあなたのために指定しなければならない。
5407 05 19 3 そしてそこに行く道を備え、またあなたの神、主があなたに継がせられる地の領域を三区に分け、すべて人を殺した者をそこにのがれさせなければならない。
5408 05 19 4 人を殺した者がそこにのがれて、命を全うすべき場合は次のとおりである。すなわち以前から憎むこともないのに、知らないでその隣人を殺した場合、
5409 05 19 5 たとえば人が木を切ろうとして、隣人と一緒に林に入り、手におのを取って、木を切り倒そうと撃ちおろすとき、その頭が柄から抜け、隣人にあたって、死なせたような場合がそれである。そういう人はこれらの町の一つにのがれて、命を全うすることができる。
5410 05 19 6 そうしなければ、復讐する者が怒って、その殺した者を追いかけ、道が長いために、ついに追いついて殺すであろう。しかし、その人は以前から彼を憎んでいた者でないから、殺される理由はない。
5411 05 19 7 それでわたしはあなたに命じて『三つの町をあなたのために指定しなければならない』と言ったのである。
5412 05 19 8 あなたの神、主が先祖たちに誓われたように、あなたの領域を広め、先祖たちに与えると言われた地を、ことごとく賜わる時、――
5413 05 19 9 わたしが、きょう、命じるこのすべての戒めを守って、それをおこない、あなたの神、主を愛して、常にその道に歩む時――あなたはこれら三つの町のほかに、また三つの町をあなたのために増し加えなければならない。
5414 05 19 10 これはあなたの神、主が与えて嗣業とされる地のうちで、罪のない者の血が流されないようにするためである。そうしなければ、その血を流したとがは、あなたに帰するであろう。
5415 05 19 11 しかし、もし人が隣人を憎んでそれをつけねらい、立ちかかってその人を撃ち殺し、そしてこれらの町の一つにのがれるならば、
5416 05 19 12 その町の長老たちは人をつかわして彼をそこから引いてこさせ、復讐する者にわたして殺させなければならない。
5417 05 19 13 彼をあわれんではならない。罪のない者の血を流したとがを、イスラエルから除かなければならない。そうすればあなたにさいわいがあるであろう。
5418 05 19 14 あなたの神、主が与えて獲させられる地で、あなたが継ぐ嗣業において、先祖の定めたあなたの隣人の土地の境を移してはならない。
5419 05 19 15 どんな不正であれ、どんなとがであれ、すべて人の犯す罪は、ただひとりの証人によって定めてはならない。ふたりの証人の証言により、または三人の証人の証言によって、その事を定めなければならない。
5420 05 19 16 もし悪意のある証人が起って、人に対して悪い証言をすることがあれば、
5421 05 19 17 その相争うふたりの者は主の前に行って、その時の祭司と裁判人の前に立たなければならない。
5422 05 19 18 その時、裁判人は詳細にそれを調べなければならない。そしてその証人がもし偽りの証人であって、兄弟にむかって偽りの証言をした者であるならば、
5423 05 19 19 あなたがたは彼が兄弟にしようとしたことを彼に行い、こうしてあなたがたのうちから悪を除き去らなければならない。
5424 05 19 20 そうすれば他の人たちは聞いて恐れ、その後ふたたびそのような悪をあなたがたのうちに行わないであろう。
5425 05 19 21 あわれんではならない。命には命、目には目、歯には歯、手には手、足には足をもって償わせなければならない。
5426 05 20 1 あなたが敵と戦うために出る時、馬と戦車と、あなたよりも大ぜいの軍隊を見ても、彼らを恐れてはならない。あなたをエジプトの国から導きのぼられたあなたの神、主が共におられるからである。
5427 05 20 2 あなたがたが戦いに臨むとき、祭司は進み出て民に告げて、
5428 05 20 3 彼らに言わなければならない、『イスラエルよ聞け。あなたがたは、きょう、敵と戦おうとしている。気おくれしてはならない。恐れてはならない。あわててはならない。彼らに驚いてはならない。
5429 05 20 4 あなたがたの神、主が共に行かれ、あなたがたのために敵と戦って、あなたがたを救われるからである』。
5430 05 20 5 次につかさたちは民に告げて言わなければならない。『新しい家を建てて、まだそれをささげていない者があれば、その人を家に帰らせなければならない。そうしなければ、彼が戦いに死んだとき、ほかの人がそれをささげるようになるであろう。
5431 05 20 6 ぶどう畑を作って、まだその実を食べていない者があれば、その人を家に帰らせなければならない。そうしなければ彼が戦いに死んだとき、ほかの人がそれを食べるようになるであろう。
5432 05 20 7 女と婚約して、まだその女をめとっていない者があれば、その人を家に帰らせなければならない。そうしなければ彼が戦いに死んだとき、ほかの人が彼女をめとるようになるであろう』。
5433 05 20 8 つかさたちは、また民に告げて言わなければならない。『恐れて気おくれする者があるならば、その人を家に帰らせなければならない。そうしなければ、兄弟たちの心が彼の心のようにくじけるであろう』。
5434 05 20 9 つかさたちがこのように民に告げ終ったならば、軍勢のかしらたちを立てて民を率いさせなければならない。
5435 05 20 10 一つの町へ進んで行って、それを攻めようとする時は、まず穏やかに降服することを勧めなければならない。
5436 05 20 11 もしその町が穏やかに降服しようと答えて、門を開くならば、そこにいるすべての民に、みつぎを納めさせ、あなたに仕えさせなければならない。
5437 05 20 12 もし穏やかに降服せず、戦おうとするならば、あなたはそれを攻めなければならない。
5438 05 20 13 そしてあなたの神、主がそれをあなたの手にわたされる時、つるぎをもってそのうちの男をみな撃ち殺さなければならない。
5439 05 20 14 ただし女、子供、家畜およびすべて町のうちにあるもの、すなわちぶんどり物は皆、戦利品として取ることができる。また敵からぶんどった物はあなたの神、主が賜わったものだから、あなたはそれを用いることができる。
5440 05 20 15 遠く離れている町々、すなわちこれらの国々に属さない町々には、すべてこのようにしなければならない。
5441 05 20 16 ただし、あなたの神、主が嗣業として与えられるこれらの民の町々では、息のある者をひとりも生かしておいてはならない。
5442 05 20 17 すなわちヘテびと、アモリびと、カナンびと、ペリジびと、ヒビびと、エブスびとはみな滅ぼして、あなたの神、主が命じられたとおりにしなければならない。
5443 05 20 18 これは彼らがその神々を拝んでおこなったすべての憎むべき事を、あなたがたに教えて、それを行わせ、あなたがたの神、主に罪を犯させることのないためである。
5444 05 20 19 長く町を攻め囲んで、それを取ろうとする時でも、おのをふるって、そこの木を切り枯らしてはならない。それはあなたの食となるものだから、切り倒してはならない。あなたは田野の木までも、人のように攻めなければならないであろうか。
5445 05 20 20 ただし実を結ばない木とわかっている木は切り倒して、あなたと戦っている町にむかい、それをもってとりでを築き、陥落するまで、それを攻めることができる。
5446 05 21 1 あなたの神、主が与えて獲させられる地で、殺されて野に倒れている人があって、だれが殺したのかわからない時は、
5447 05 21 2 長老たちと、さばきびとたちが出てきて、その殺された者のある所から、周囲の町々までの距離をはからなければならない。
5448 05 21 3 そしてその殺された者のある所に最も近い町の長老たちは、まだ使わない、まだくびきを負わせて引いたことのない若い雌牛をとり、
5449 05 21 4 その町の長老たちはその雌牛を、耕すことも、種まくこともしない、絶えず水の流れている谷へ引いていって、その谷で雌牛のくびを折らなければならない。
5450 05 21 5 その時レビの子孫である祭司たちは、そこに進み出なければならない。彼らはあなたの神、主が自分に仕えさせ、また主の名によって祝福させるために選ばれた者で、すべての論争と、すべての暴行は彼らの言葉によって解決されるからである。
5451 05 21 6 そしてその殺された者のある所に最も近い町の長老たちは皆、彼らが谷でくびを折った雌牛の上で手を洗い、
5452 05 21 7 証言して言わなければならない、『われわれの手はこの血を流さず、われわれの目もそれを見なかった。
5453 05 21 8 主よ、あなたがあがなわれた民イスラエルをおゆるしください。罪のない者の血を流したとがを、あなたの民イスラエルのうちにとどめないでください。そして血を流したとがをおゆるしください』。
5454 05 21 9 このようにして、あなたは主が正しいと見られる事をおこない、罪のない者の血を流したとがを、あなたがたのうちから除き去らなければならない。
5455 05 21 10 あなたが出て敵と戦う際、あなたの神、主がそれをあなたの手にわたされ、あなたがそれを捕虜とした時、
5456 05 21 11 もし捕虜のうちに美しい女のあるのを見て、それを好み、妻にめとろうとするならば、
5457 05 21 12 その女をあなたの家に連れて帰らなければならない。女は髪をそり、つめを切り、
5458 05 21 13 また捕虜の着物を脱ぎすてて、あなたの家におり、自分の父母のために一か月のあいだ嘆かなければならない。そして後、あなたは彼女の所にはいって、その夫となり、彼女を妻とすることができる。
5459 05 21 14 その後あなたがもし彼女を好まなくなったならば、彼女を自由に去らせなければならない。決して金で売ってはならない。あなたはすでに彼女をはずかしめたのだから、彼女を奴隷のようにあしらってはならない。
5460 05 21 15 人がふたりの妻をもち、そのひとりは愛する者、ひとりは気にいらない者であって、その愛する者と気にいらない者のふたりが、ともに男の子を産み、もしその長子が、気にいらない女の産んだ者である時は、
5461 05 21 16 その子たちに自分の財産を継がせる時、気にいらない女の産んだ長子をさしおいて、愛する女の産んだ子を長子とすることはできない。
5462 05 21 17 必ずその気にいらない者の産んだ子が長子であることを認め、自分の財産を分ける時には、これに二倍の分け前を与えなければならない。これは自分の力の初めであって、長子の特権を持っているからである。
5463 05 21 18 もし、わがままで、手に負えない子があって、父の言葉にも、母の言葉にも従わず、父母がこれを懲らしてもきかない時は、
5464 05 21 19 その父母はこれを捕えて、その町の門に行き、町の長老たちの前に出し、
5465 05 21 20 町の長老たちに言わなければならない、『わたしたちのこの子はわがままで、手に負えません。わたしたちの言葉に従わず、身持ちが悪く、大酒飲みです』。
5466 05 21 21 そのとき、町の人は皆、彼を石で撃ち殺し、あなたがたのうちから悪を除き去らなければならない。そうすれば、イスラエルは皆聞いて恐れるであろう。
5467 05 21 22 もし人が死にあたる罪を犯して殺され、あなたがそれを木の上にかける時は、
5468 05 21 23 翌朝までその死体を木の上に留めておいてはならない。必ずそれをその日のうちに埋めなければならない。木にかけられた者は神にのろわれた者だからである。あなたの神、主が嗣業として賜わる地を汚してはならない。
5469 05 22 1 あなたの兄弟の牛、または羊の迷っているのを見て、それを見捨てておいてはならない。必ずそれを兄弟のところへ連れて帰らなければならない。
5470 05 22 2 もしその兄弟が近くの者でなく、知らない人であるならば、それを自分の家にひいてきて、あなたのところにおき、その兄弟が尋ねてきた時に、それを彼に返さなければならない。
5471 05 22 3 あなたの兄弟のろばの場合も、そうしなければならない。着物の場合も、そうしなければならない。またすべてあなたの兄弟の失った物を見つけた場合も、そうしなければならない。それを見捨てておくことはできない。
5472 05 22 4 あなたの兄弟のろばまたは牛が道に倒れているのを見て、見捨てておいてはならない。必ずそれを助け起さなければならない。
5473 05 22 5 女は男の着物を着てはならない。また男は女の着物を着てはならない。あなたの神、主はそのような事をする者を忌みきらわれるからである。
5474 05 22 6 もしあなたが道で、木の上、または地面に鳥の巣のあるのを見つけ、その中に雛または卵があって、母鳥がその雛または卵を抱いているならば、母鳥を雛と一緒に取ってはならない。
5475 05 22 7 必ず母鳥を去らせ、ただ雛だけを取らなければならない。そうすればあなたはさいわいを得、長く生きながらえることができるであろう。
5476 05 22 8 新しい家を建てる時は、屋根に欄干を設けなければならない。それは人が屋根から落ちて、血のとがをあなたの家に帰することのないようにするためである。
5477 05 22 9 ぶどう畑に二種の種を混ぜてまいてはならない。そうすればあなたがまいた種から産する物も、ぶどう畑から出る物も、みな忌むべき物となるであろう。
5478 05 22 10 牛と、ろばとを組み合わせて耕してはならない。
5479 05 22 11 羊毛と亜麻糸を混ぜて織った着物を着てはならない。
5480 05 22 12 身にまとう上着の四すみに、ふさをつけなければならない。
5481 05 22 13 もし人が妻をめとり、妻のところにはいって後、その女をきらい、
5482 05 22 14 『わたしはこの女をめとって近づいた時、彼女に処女の証拠を見なかった』と言って虚偽の非難をもって、その女に悪名を負わせるならば、
5483 05 22 15 その女の父と母は、彼女の処女の証拠を取って、門におる町の長老たちに差し出し、
5484 05 22 16 そして彼女の父は長老たちに言わなければならない。『わたしはこの人に娘を与えて妻にさせましたが、この人は娘をきらい、
5485 05 22 17 虚偽の非難をもって、「わたしはあなたの娘に処女の証拠を見なかった」と言います。しかし、これがわたしの娘の処女の証拠です』と言って、その父母はかの布を町の長老たちの前にひろげなければならない。
5486 05 22 18 その時、町の長老たちは、その人を捕えて撃ち懲らし、
5487 05 22 19 また銀百シケルの罰金を課し、それを女の父に与えなければならない。彼はイスラエルの処女に悪名を負わせたからである。彼はその女を妻とし、一生その女を出すことはできない。
5488 05 22 20 しかし、この非難が真実であって、その女に処女の証拠が見られない時は、
5489 05 22 21 その女を父の家の入口にひき出し、町の人々は彼女を石で撃ち殺さなければならない。彼女は父の家で、みだらな事をおこない、イスラエルのうちに愚かな事をしたからである。あなたはこうしてあなたがたのうちから悪を除き去らなければならない。
5490 05 22 22 もし夫のある女と寝ている男を見つけたならば、その女と寝た男およびその女を一緒に殺し、こうしてイスラエルのうちから悪を除き去らなければならない。
5491 05 22 23 もし処女である女が、人と婚約した後、他の男が町の内でその女に会い、これを犯したならば、
5492 05 22 24 あなたがたはそのふたりを町の門にひき出して、石で撃ち殺さなければならない。これはその女が町の内におりながら叫ばなかったからであり、またその男は隣人の妻をはずかしめたからである。あなたはこうしてあなたがたのうちから悪を除き去らなければならない。
5493 05 22 25 しかし、男が、人と婚約した女に野で会い、その女を捕えてこれを犯したならば、その男だけを殺さなければならない。
5494 05 22 26 その女には何もしてはならない。女には死にあたる罪がない。人がその隣人に立ちむかって、それを殺したと同じ事件だからである。
5495 05 22 27 これは男が野で女に会ったので、人と婚約したその女が叫んだけれども、救う者がなかったのである。
5496 05 22 28 まだ人と婚約しない処女である女に、男が会い、これを捕えて犯し、ふたりが見つけられたならば、
5497 05 22 29 女を犯した男は女の父に銀五十シケルを与えて、女を自分の妻としなければならない。彼はその女をはずかしめたゆえに、一生その女を出すことはできない。
5498 05 22 30 だれも父の妻をめとってはならない。父の妻と寝てはならない。
5499 05 23 1 すべて去勢した男子は主の会衆に加わってはならない。
5500 05 23 2 私生児は主の会衆に加わってはならない。その子孫は十代までも主の会衆に加わってはならない。
5501 05 23 3 アンモンびととモアブびとは主の会衆に加わってはならない。彼らの子孫は十代までも、いつまでも主の会衆に加わってはならない。
5502 05 23 4 これはあなたがたがエジプトから出てきた時に、彼らがパンと水を携えてあなたがたを道に迎えず、アラム・ナハライムのペトルからベオルの子バラムを雇って、あなたをのろわせようとしたからである。
5503 05 23 5 しかし、あなたの神、主はバラムの言うことを聞こうともせず、あなたの神、主はあなたのために、そののろいを変えて、祝福とされた。あなたの神、主があなたを愛されたからである。
5504 05 23 6 あなたは一生いつまでも彼らのために平安をも、幸福をも求めてはならない。
5505 05 23 7 あなたはエドムびとを憎んではならない。彼はあなたの兄弟だからである。またエジプトびとを憎んではならない。あなたはかつてその国の寄留者であったからである。
5506 05 23 8 そして彼らが産んだ子どもは三代目には、主の会衆に加わることができる。
5507 05 23 9 敵を攻めるために出て陣営におる時は、すべての汚れた物を避けなければならない。
5508 05 23 10 あなたがたのうちに、夜の思いがけない事によって身の汚れた人があるならば、陣営の外に出なければならない。陣営の内に、はいってはならない。
5509 05 23 11 しかし、夕方になって、水で身を洗い、日が没して後、陣営の内に、はいることができる。
5510 05 23 12 あなたはまた陣営の外に一つの所を設けておいて、用をたす時、そこに出て行かなければならない。
5511 05 23 13 また武器と共に、くわを備え、外に出て、かがむ時、それをもって土を掘り、向きをかえて、出た物をおおわなければならない。
5512 05 23 14 あなたの神、主があなたを救い、敵をあなたにわたそうと、陣営の中を歩まれるからである。ゆえに陣営は聖なる所として保たなければならない。主があなたのうちにきたない物のあるのを見て、離れ去られることのないためである。
5513 05 23 15 主人を避けて、あなたのところに逃げてきた奴隷を、その主人にわたしてはならない。
5514 05 23 16 その者をあなたがたのうちに、あなたと共におらせ、町の一つのうち、彼が好んで選ぶ場所に住ませなければならない。彼を虐待してはならない。
5515 05 23 17 イスラエルの女子は神殿娼婦となってはならない。またイスラエルの男子は神殿男娼となってはならない。
5516 05 23 18 娼婦の得た価または男娼の価をあなたの神、主の家に携えて行って、どんな誓願にも用いてはならない。これはともにあなたの神、主の憎まれるものだからである。
5517 05 23 19 兄弟に利息を取って貸してはならない。金銭の利息、食物の利息などすべて貸して利息のつく物の利息を取ってはならない。
5518 05 23 20 外国人には利息を取って貸してもよい。ただ兄弟には利息を取って貸してはならない。これはあなたが、はいって取る地で、あなたの神、主がすべてあなたのする事に祝福を与えられるためである。
5519 05 23 21 あなたの神、主に誓願をかける時、それを果すことを怠ってはならない。あなたの神、主は必ずそれをあなたに求められるからである。それを怠るときは罪を得るであろう。
5520 05 23 22 しかし、あなたが誓願をかけないならば、罪を得ることはない。
5521 05 23 23 あなたが口で言った事は守って行わなければならない。あなたが口で約束した事は、あなたの神、主にあなたが自発的に誓願したのだからである。
5522 05 23 24 あなたが隣人のぶどう畑にはいる時、そのぶどうを心にまかせて飽きるほど食べてもよい。しかし、あなたの器の中に取り入れてはならない。
5523 05 23 25 あなたが隣人の麦畑にはいる時、手でその穂を摘んで食べてもよい。しかし、あなたの隣人の麦畑にかまを入れてはならない。
5524 05 24 1 人が妻をめとって、結婚したのちに、その女に恥ずべきことのあるのを見て、好まなくなったならば、離縁状を書いて彼女の手に渡し、家を去らせなければならない。
5525 05 24 2 女がその家を出てのち、行って、ほかの人にとつぎ、
5526 05 24 3 後の夫も彼女をきらって、離縁状を書き、その手に渡して家を去らせるか、または妻にめとった後の夫が死んだときは、
5527 05 24 4 彼女はすでに身を汚したのちであるから、彼女を去らせた先の夫は、ふたたび彼女を妻にめとることはできない。これは主の前に憎むべき事だからである。あなたの神、主が嗣業としてあなたに与えられる地に罪を負わせてはならない。
5528 05 24 5 人が新たに妻をめとった時は、戦争に出してはならない。また何の務もこれに負わせてはならない。その人は一年の間、束縛なく家にいて、そのめとった妻を慰めなければならない。
5529 05 24 6 ひきうす、またはその上石を質にとってはならない。これは命をつなぐものを質にとることだからである。
5530 05 24 7 イスラエルの人々のうちの同胞のひとりをかどわかして、これを奴隷のようにあしらい、またはこれを売る者を見つけたならば、そのかどわかした者を殺して、あなたがたのうちから悪を除き去らなければならない。
5531 05 24 8 らい病の起った時は気をつけて、すべてレビびとたる祭司が教えることを、よく守って行わなければならない。すなわちわたしが彼らに命じたように、あなたがたはそれを守って行わなければならない。
5532 05 24 9 あなたがたがエジプトから出てきたとき、道であなたの神、主がミリアムにされたことを記憶しなければならない。
5533 05 24 10 あなたが隣人に物を貸すときは、自分でその家にはいって、質物を取ってはならない。
5534 05 24 11 あなたは外に立っていて、借りた人が質物を外にいるあなたのところへ持ち出さなければならない。
5535 05 24 12 もしその人が貧しい人である時は、あなたはその質物を留めおいて寝てはならない。
5536 05 24 13 その質物は日の入るまでに、必ず返さなければならない。そうすれば彼は自分の上着をかけて寝ることができて、あなたを祝福するであろう。それはあなたの神、主の前にあなたの義となるであろう。
5537 05 24 14 貧しく乏しい雇人は、同胞であれ、またはあなたの国で、町のうちに寄留している他国人であれ、それを虐待してはならない。
5538 05 24 15 賃銀はその日のうちに払い、それを日の入るまで延ばしてはならない。彼は貧しい者で、その心をこれにかけているからである。そうしなければ彼はあなたを主に訴えて、あなたは罪を得るであろう。
5539 05 24 16 父は子のゆえに殺さるべきではない。子は父のゆえに殺さるべきではない。おのおの自分の罪のゆえに殺さるべきである。
5540 05 24 17 寄留の他国人または孤児のさばきを曲げてはならない。寡婦の着物を質に取ってはならない。
5541 05 24 18 あなたはかつてエジプトで奴隷であったが、あなたの神、主がそこからあなたを救い出されたことを記憶しなければならない。それでわたしはあなたにこの事をせよと命じるのである。
5542 05 24 19 あなたが畑で穀物を刈る時、もしその一束を畑におき忘れたならば、それを取りに引き返してはならない。それは寄留の他国人と孤児と寡婦に取らせなければならない。そうすればあなたの神、主はすべてあなたがする事において、あなたを祝福されるであろう。
5543 05 24 20 あなたがオリブの実をうち落すときは、ふたたびその枝を捜してはならない。それを寄留の他国人と孤児と寡婦に取らせなければならない。
5544 05 24 21 またぶどう畑のぶどうを摘み取るときは、その残ったものを、ふたたび捜してはならない。それを寄留の他国人と孤児と寡婦に取らせなければならない。
5545 05 24 22 あなたはかつてエジプトの国で奴隷であったことを記憶しなければならない。それでわたしはあなたにこの事をせよと命じるのである。
5546 05 25 1 人と人との間に争い事があって、さばきを求めてきたならば、さばきびとはこれをさばいて、正しい者を正しいとし、悪い者を悪いとしなければならない。
5547 05 25 2 その悪い者が、むち打つべき者であるならば、さばきびとは彼を伏させ、自分の前で、その罪にしたがい、数えて彼をむち打たせなければならない。
5548 05 25 3 彼をむち打つには四十を越えてはならない。もしそれを越えて、それよりも多くむちを打つときは、あなたの兄弟はあなたの目の前で、はずかしめられることになるであろう。
5549 05 25 4 脱穀をする牛にくつこを掛けてはならない。
5550 05 25 5 兄弟が一緒に住んでいて、そのうちのひとりが死んで子のない時は、その死んだ者の妻は出て、他人にとついではならない。その夫の兄弟が彼女の所にはいり、めとって妻とし、夫の兄弟としての道を彼女につくさなければならない。
5551 05 25 6 そしてその女が初めに産む男の子に、死んだ兄弟の名を継がせ、その名をイスラエルのうちに絶やさないようにしなければならない。
5552 05 25 7 しかしその人が兄弟の妻をめとるのを好まないならば、その兄弟の妻は町の門へ行って、長老たちに言わなければならない、『わたしの夫の兄弟はその兄弟の名をイスラエルのうちに残すのを拒んで、夫の兄弟としての道をつくすことを好みません』。
5553 05 25 8 そのとき町の長老たちは彼を呼び寄せて、さとさなければならない。もし彼が固執して、『わたしは彼女をめとることを好みません』と言うならば、
5554 05 25 9 その兄弟の妻は長老たちの目の前で、彼のそばに行き、その足のくつを脱がせ、その顔につばきして、答えて言わなければならない。『兄弟の家をたてない者には、このようにすべきです』。
5555 05 25 10 そして彼の家の名は、くつを脱がされた者の家と、イスラエルのうちで呼ばれるであろう。
5556 05 25 11 ふたりの人が互に争うときに、そのひとりの人の妻が、打つ者の手から夫を救おうとして近づき、手を伸べて、その人の隠し所をつかまえるならば、
5557 05 25 12 その女の手を切り落さなければならない。あわれみをかけてはならない。
5558 05 25 13 あなたの袋に大小二種の重り石を入れておいてはならない。
5559 05 25 14 あなたの家に大小二種のますをおいてはならない。
5560 05 25 15 不足のない正しい重り石を持ち、また不足のない正しいますを持たなければならない。そうすればあなたの神、主が賜わる地で、あなたは長く命を保つことができるであろう。
5561 05 25 16 すべてこのような不正をする者を、あなたの神、主が憎まれるからである。
5562 05 25 17 あなたがエジプトから出てきた時、道でアマレクびとがあなたにしたことを記憶しなければならない。
5563 05 25 18 すなわち彼らは道であなたに出会い、あなたがうみ疲れている時、うしろについてきていたすべての弱っている者を攻め撃った。このように彼らは神を恐れなかった。
5564 05 25 19 それで、あなたの神、主が嗣業として賜わる地で、あなたの神、主があなたの周囲のすべての敵を征服して、あなたに安息を与えられる時、あなたはアマレクの名を天の下から消し去らなければならない。この事を忘れてはならない。
5565 05 26 1 あなたの神、主が嗣業として賜わる国にはいって、それを所有し、そこに住む時は、
5566 05 26 2 あなたの神、主が賜わる国にできる、地のすべての実の初物を取ってかごに入れ、あなたの神、主がその名を置くために選ばれる所へ携えて行かなければならない。
5567 05 26 3 そしてその時の祭司の所へ行って彼に言わなければならない、『きょう、あなたの神、主にわたしは申します。主がわれわれに与えると先祖たちに誓われた国に、わたしははいることができました』。
5568 05 26 4 そのとき祭司はあなたの手からそのかごを受け取ってあなたの神、主の祭壇の前に置かなければならない。
5569 05 26 5 そして、あなたはあなたの神、主の前に述べて言わなければならない、『わたしの先祖は、さすらいの一アラムびとでありましたが、わずかの人を連れてエジプトへ下って行って、その所に寄留し、ついにそこで大きく、強い、人数の多い国民になりました。
5570 05 26 6 ところがエジプトびとはわれわれをしえたげ、また悩まして、つらい労役を負わせましたが、
5571 05 26 7 われわれが先祖たちの神、主に叫んだので、主はわれわれの声を聞き、われわれの悩みと、骨折りと、しえたげとを顧み、
5572 05 26 8 主は強い手と、伸べた腕と、大いなる恐るべき事と、しるしと、不思議とをもって、われわれをエジプトから導き出し、
5573 05 26 9 われわれをこの所へ連れてきて、乳と蜜の流れるこの地をわれわれに賜わりました。
5574 05 26 10 主よ、ごらんください。あなたがわたしに賜わった地の実の初物を、いま携えてきました』。そしてあなたはそれをあなたの神、主の前に置いて、あなたの神、主の前に礼拝し、
5575 05 26 11 あなたの神、主があなたとあなたの家とに賜わったすべての良い物をもって、レビびとおよびあなたのなかにいる寄留の他国人と共に喜び楽しまなければならない。
5576 05 26 12 第三年すなわち十分の一を納める年に、あなたがすべての産物の十分の一を納め終って、それをレビびとと寄留の他国人と孤児と寡婦とに与え、町のうちで彼らに飽きるほど食べさせた時、
5577 05 26 13 あなたの神、主の前で言わなければならない、『わたしはその聖なる物を家から取り出し、またレビびとと寄留の他国人と孤児と寡婦とにそれを与え、すべてあなたが命じられた命令のとおりにいたしました。わたしはあなたの命令にそむかず、またそれを忘れませんでした。
5578 05 26 14 わたしはその聖なる物を喪のうちで食べたことがなく、また汚れた身でそれを取り出したことがなく、また死人にそれを供えたことがありませんでした。わたしはわたしの神、主の声に聞き従い、すべてあなたがわたしに命じられたとおりにいたしました。
5579 05 26 15 あなたの聖なるすみかである天からみそなわして、あなたの民イスラエルと、あなたがわれわれに与えられた地とを祝福してください。これはあなたがわれわれの先祖に誓われた乳と蜜の流れる地です』。
5580 05 26 16 きょう、あなたの神、主はこれらの定めと、おきてとを行うことをあなたに命じられる。それゆえ、あなたは心をつくし、精神をつくしてそれを守り行わなければならない。
5581 05 26 17 きょう、あなたは主をあなたの神とし、かつその道に歩み、定めと、戒めと、おきてとを守り、その声に聞き従うことを明言した。
5582 05 26 18 そして、主は先に約束されたように、きょう、あなたを自分の宝の民とされること、また、あなたがそのすべての命令を守るべきことを明言された。
5583 05 26 19 主は誉と良き名と栄えとをあなたに与えて、主の造られたすべての国民にまさるものとされるであろう。あなたは主が言われたように、あなたの神、主の聖なる民となるであろう」。
5584 05 27 1 モーセとイスラエルの長老たちとは民に命じて言った、「わたしが、きょう、あなたがたに命じるすべての戒めを守りなさい。
5585 05 27 2 あなたがたがヨルダンを渡ってあなたの神、主が賜わる国にはいる時、あなたは大きな石数個を立てて、それにしっくいを塗り、
5586 05 27 3 そしてあなたが渡って、あなたの先祖たちの神、主が約束されたようにあなたの神、主が賜わる地、すなわち乳と蜜の流れる地にはいる時、この律法のすべての言葉をその上に書きしるさなければならない。
5587 05 27 4 すなわち、あなたがたが、ヨルダンを渡ったならば、わたしが、きょう、あなたがたに命じるそれらの石をエバル山に立て、それにしっくいを塗らなければならない。
5588 05 27 5 またそこにあなたの神、主のために、祭壇、すなわち石の祭壇を築かなければならない。鉄の器を石に当てず、
5589 05 27 6 自然のままの石であなたの神、主のために祭壇を築き、その上であなたの神、主に燔祭をささげなければならない。
5590 05 27 7 また酬恩祭の犠牲をささげて、その所で食べ、あなたの神、主の前で喜び楽しまなければならない。
5591 05 27 8 あなたはこの律法のすべての言葉をその石の上に明らかに書きしるさなければならない」。
5592 05 27 9 またモーセとレビびとたる祭司たちとは、イスラエルのすべての人々に言った、「イスラエルよ、静かに聞きなさい。あなたは、きょう、あなたの神、主の民となった。
5593 05 27 10 それゆえ、あなたの神、主の声に聞き従い、わたしが、きょう、命じる戒めと定めとを行わなければならない」。
5594 05 27 11 その日またモーセは民に命じて言った、
5595 05 27 12 「あなたがたがヨルダンを渡った時、次の人たちはゲリジム山に立って民を祝福しなければならない。すなわちシメオン、レビ、ユダ、イッサカル、ヨセフおよびベニヤミン。
5596 05 27 13 また次の人たちはエバル山に立ってのろわなければならない。すなわちルベン、ガド、アセル、ゼブルン、ダンおよびナフタリ。
5597 05 27 14 そしてレビびとは大声でイスラエルのすべての人々に告げて言わなければならない。
5598 05 27 15 『工人の手の作である刻んだ像、または鋳た像は、主が憎まれるものであるから、それを造って、ひそかに安置する者はのろわれる』。民は、みな答えてアァメンと言わなければならない。
5599 05 27 16 『父や母を軽んずる者はのろわれる』。民はみなアァメンと言わなければならない。
5600 05 27 17 『隣人との土地の境を移す者はのろわれる』。民はみなアァメンと言わなければならない。
5601 05 27 18 『盲人を道に迷わす者はのろわれる』。民はみなアァメンと言わなければならない。
5602 05 27 19 『寄留の他国人や孤児、寡婦のさばきを曲げる者はのろわれる』。民はみなアァメンと言わなければならない。
5603 05 27 20 『父の妻を犯す者は、父を恥ずかしめるのであるからのろわれる』。民はみなアァメンと言わなければならない。
5604 05 27 21 『すべて獣を犯す者はのろわれる』。民はみなアァメンと言わなければならない。
5605 05 27 22 『父の娘、または母の娘である自分の姉妹を犯す者はのろわれる』。民はみなアァメンと言わなければならない。
5606 05 27 23 『妻の母を犯す者はのろわれる』。民はみなアァメンと言わなければならない。
5607 05 27 24 『ひそかに隣人を撃ち殺す者はのろわれる』。民はみなアァメンと言わなければならない。
5608 05 27 25 『まいないを取って罪なき者を殺す者はのろわれる』。民はみなアァメンと言わなければならない。
5609 05 27 26 『この律法の言葉を守り行わない者はのろわれる』。民はみなアァメンと言わなければならない。
5610 05 28 1 もしあなたが、あなたの神、主の声によく聞き従い、わたしが、きょう、命じるすべての戒めを守り行うならば、あなたの神、主はあなたを地のもろもろの国民の上に立たせられるであろう。
5611 05 28 2 もし、あなたがあなたの神、主の声に聞き従うならば、このもろもろの祝福はあなたに臨み、あなたに及ぶであろう。
5612 05 28 3 あなたは町の内でも祝福され、畑でも祝福されるであろう。
5613 05 28 4 またあなたの身から生れるもの、地に産する物、家畜の産むもの、すなわち牛の子、羊の子は祝福されるであろう。
5614 05 28 5 またあなたのかごと、こねばちは祝福されるであろう。
5615 05 28 6 あなたは、はいるにも祝福され、出るにも祝福されるであろう。
5616 05 28 7 敵が起ってあなたを攻める時は、主はあなたにそれを撃ち敗らせられるであろう。彼らは一つの道から攻めて来るが、あなたの前で七つの道から逃げ去るであろう。
5617 05 28 8 主は命じて祝福をあなたの倉と、あなたの手のすべてのわざにくだし、あなたの神、主が賜わる地であなたを祝福されるであろう。
5618 05 28 9 もし、あなたの神、主の戒めを守り、その道を歩むならば、主は誓われたようにあなたを立てて、その聖なる民とされるであろう。
5619 05 28 10 そうすれば地のすべての民は皆あなたが主の名をもって唱えられるのを見てあなたを恐れるであろう。
5620 05 28 11 主があなたに与えると先祖に誓われた地で、主は良い物、すなわちあなたの身から生れる者、家畜の産むもの、地に産する物を豊かにされるであろう。
5621 05 28 12 主はその宝の蔵である天をあなたのために開いて、雨を季節にしたがってあなたの地に降らせ、あなたの手のすべてのわざを祝福されるであろう。あなたは多くの国民に貸すようになり、借りることはないであろう。
5622 05 28 13 主はあなたをかしらとならせ、尾とはならせられないであろう。あなたはただ栄えて衰えることはないであろう。きょう、わたしが命じるあなたの神、主の戒めに聞き従って、これを守り行うならば、あなたは必ずこのようになるであろう。
5623 05 28 14 きょう、わたしが命じるこのすべての言葉を離れて右または左に曲り、他の神々に従い、それに仕えてはならない。
5624 05 28 15 しかし、あなたの神、主の声に聞き従わず、きょう、わたしが命じるすべての戒めと定めとを守り行わないならば、このもろもろののろいがあなたに臨み、あなたに及ぶであろう。
5625 05 28 16 あなたは町のうちでものろわれ、畑でものろわれ、
5626 05 28 17 あなたのかごも、こねばちものろわれ、
5627 05 28 18 あなたの身から生れるもの、地に産する物、牛の子、羊の子ものろわれるであろう。
5628 05 28 19 あなたは、はいるにものろわれ、出るにものろわれるであろう。
5629 05 28 20 主はあなたが手をくだすすべての働きにのろいと、混乱と、懲しめとを送られ、あなたはついに滅び、すみやかにうせ果てるであろう。これはあなたが悪をおこなってわたしを捨てたからである。
5630 05 28 21 主は疫病をあなたの身につかせ、あなたが行って取る地から、ついにあなたを断ち滅ぼされるであろう。
5631 05 28 22 主はまた肺病と熱病と炎症と間けつ熱と、かんばつと、立ち枯れと、腐り穂とをもってあなたを撃たれるであろう。これらのものはあなたを追い、ついにあなたを滅ぼすであろう。
5632 05 28 23 あなたの頭の上の天は青銅となり、あなたの下の地は鉄となるであろう。
5633 05 28 24 主はあなたの地の雨を、ちりと、ほこりに変らせ、それが天からあなたの上にくだって、ついにあなたを滅ぼすであろう。
5634 05 28 25 主はあなたを敵の前で敗れさせられるであろう。あなたは一つの道から彼らを攻めて行くが、彼らの前で七つの道から逃げ去るであろう。そしてあなたは地のもろもろの国に恐るべき見せしめとなるであろう。
5635 05 28 26 またあなたの死体は空のもろもろの鳥と、地の獣とのえじきとなり、しかもそれを追い払う者はないであろう。
5636 05 28 27 主はエジプトの腫物と潰瘍と壊血病とひぜんとをもってあなたを撃たれ、あなたはいやされることはないであろう。
5637 05 28 28 また主はあなたを撃って気を狂わせ、目を見えなくし、心を混乱させられるであろう。
5638 05 28 29 あなたは盲人が暗やみに手探りするように、真昼にも手探りするであろう。あなたは行く道で栄えることがなく、ただ常にしえたげられ、かすめられるだけで、あなたを救う者はないであろう。
5639 05 28 30 あなたは妻をめとっても、ほかの人が彼女と寝るであろう。家を建てても、その中に住まないであろう。ぶどう畑を作っても、その実を摘み取ることがないであろう。
5640 05 28 31 あなたの牛が目の前でほふられても、あなたはそれを食べることができず、あなたのろばが目の前で奪われても、返されないであろう。あなたの羊が敵のものになっても、それを救ってあなたに返す者はないであろう。
5641 05 28 32 あなたのむすこや娘は他国民にわたされる。あなたの目はそれを見、終日、彼らを慕って衰えるが、あなたは手を施すすべもないであろう。
5642 05 28 33 あなたの地の産物およびあなたの労して獲た物はみなあなたの知らない民が食べるであろう。あなたは、ただ常にしえたげられ、苦しめられるのみであろう。
5643 05 28 34 こうしてあなたは目に見る事柄によって、気が狂うにいたるであろう。
5644 05 28 35 主はあなたのひざと、はぎとに悪い、いやし得ない腫物を生じさせて、足の裏から頭の頂にまで及ぼされるであろう。
5645 05 28 36 主はあなたとあなたが立てた王とを携えて、あなたもあなたの先祖も知らない国に移されるであろう。あなたはそこで木や石で造ったほかの神々に仕えるであろう。
5646 05 28 37 あなたは主があなたを追いやられるもろもろの民のなかで驚きとなり、ことわざとなり、笑い草となるであろう。
5647 05 28 38 あなたが多くの種を畑に携えて出ても、その収穫は少ないであろう。いなごがそれを食いつくすからである。
5648 05 28 39 あなたがぶどう畑を作り、それにつちかっても、そのぶどう酒を飲むことができず、その実を集めることもないであろう。虫がそれを食べるからである。
5649 05 28 40 あなたの国にはあまねくオリブの木があるであろう。しかし、あなたはその油を身に塗ることができないであろう。その実がみな落ちてしまうからである。
5650 05 28 41 むすこや、娘があなたに生れても、あなたのものにならないであろう。彼らは捕えられて行くからである。
5651 05 28 42 あなたのもろもろの木、および地の産物は、いなごが取って食べるであろう。
5652 05 28 43 あなたのうちに寄留する他国人は、ますます高くなり、あなたの上に出て、あなたはますます低くなるであろう。
5653 05 28 44 彼はあなたに貸し、あなたは彼に貸すことができない。彼はかしらとなり、あなたは尾となるであろう。
5654 05 28 45 このもろもろののろいが、あなたに臨み、あなたを追い、ついに追いついて、あなたを滅ぼすであろう。これはあなたの神、主の声に聞き従わず、あなたに命じられた戒めと定めとを、あなたが守らなかったからである。
5655 05 28 46 これらの事は長くあなたとあなたの子孫のうえにあって、しるしとなり、また不思議となるであろう。
5656 05 28 47 あなたがすべての物に豊かになり、あなたの神、主に心から喜び楽しんで仕えないので、
5657 05 28 48 あなたは飢え、かわき、裸になり、すべての物に乏しくなって、主があなたにつかわされる敵に仕えるであろう。敵は鉄のくびきをあなたのくびにかけ、ついにあなたを滅ぼすであろう。
5658 05 28 49 すなわち主は遠い所から、地のはてから一つの民を、はげたかが飛びかけるように、あなたに攻めきたらせられるであろう。これはあなたがその言葉を知らない民、
5659 05 28 50 顔の恐ろしい民であって、彼らは老人の身を顧みず、幼い者をあわれまず、
5660 05 28 51 あなたの家畜が産むものや、地の産物を食って、あなたを滅ぼし、穀物をも、酒をも、油をも、牛の子をも、羊の子をも、あなたの所に残さず、ついにあなたを全く滅ぼすであろう。
5661 05 28 52 その民は全国ですべての町を攻め囲み、ついにあなたが頼みとする、堅固な高い石がきをことごとく撃ちくずし、あなたの神、主が賜わった国のうちのすべての町々を攻め囲むであろう。
5662 05 28 53 あなたは敵に囲まれ、激しく攻めなやまされて、ついにあなたの神、主が賜わったあなたの身から生れた者、むすこ、娘の肉を食べるに至るであろう。
5663 05 28 54 あなたがたのうちのやさしい、温和な男でさえも、自分の兄弟、自分のふところの妻、最後に残っている子供にも食物を惜しんで与えず、
5664 05 28 55 自分が自分の子供を食べ、その肉を少しでも、この人々のだれにも与えようとはしないであろう。これは敵があなたのすべての町々を囲み、激しく攻め悩まして、何をもその人に残さないからである。
5665 05 28 56 またあなたがたのうちのやさしい、柔和な女、すなわち柔和で、やさしく、足の裏を土に付けようともしない者でも、自分のふところの夫や、むすこ、娘にもかくして、
5666 05 28 57 自分の足の間からでる後産や、自分の産む子をひそかに食べるであろう。敵があなたの町々を囲み、激しく攻めなやまして、すべての物が欠乏するからである。
5667 05 28 58 もしあなたが、この書物にしるされているこの律法のすべての言葉を守り行わず、あなたの神、主というこの栄えある恐るべき名を恐れないならば、
5668 05 28 59 主はあなたとその子孫の上に激しい災を下されるであろう。その災はきびしく、かつ久しく、その病気は重く、かつ久しいであろう。
5669 05 28 60 主はまた、あなたが恐れた病気、すなわちエジプトのもろもろの病気を再び臨ませて、あなたの身につかせられるであろう。
5670 05 28 61 またこの律法の書にのせてないもろもろの病気と、もろもろの災とを、主はあなたが滅びるまで、あなたの上に下されるであろう。
5671 05 28 62 あなたがたは天の星のように多かったが、あなたの神、主の声に聞き従わなかったから、残る者が少なくなるであろう。
5672 05 28 63 さきに主があなたがたを良くあしらい、あなたがたを多くするのを喜ばれたように、主は今あなたがたを滅ぼし絶やすのを喜ばれるであろう。あなたがたは、はいって取る地から抜き去られるであろう。
5673 05 28 64 主は地のこのはてから、かのはてまでのもろもろの民のうちにあなたがたを散らされるであろう。その所で、あなたもあなたの先祖たちも知らなかった木や石で造ったほかの神々にあなたは仕えるであろう。
5674 05 28 65 その国々の民のうちであなたは安きを得ず、また足の裏を休める所も得られないであろう。主はその所で、あなたの心をおののかせ、目を衰えさせ、精神を打ちしおれさせられるであろう。
5675 05 28 66 あなたの命は細い糸にかかっているようになり、夜昼恐れおののいて、その命もおぼつかなく思うであろう。
5676 05 28 67 あなたが心にいだく恐れと、目に見るものによって、朝には『ああ夕であればよいのに』と言い、夕には『ああ朝であればよいのに』と言うであろう。
5677 05 28 68 主はあなたを舟に乗せ、かつてわたしがあなたに告げて、『あなたは再びこれを見ることはない』と言った道によって、あなたをエジプトへ連れもどされるであろう。あなたがたはそこで男女の奴隷として敵に売られるが、だれも買う者はないであろう」。
5678 05 29 1 これは主がモーセに命じて、モアブの地でイスラエルの人々と結ばせられた契約の言葉であって、ホレブで彼らと結ばれた契約のほかのものである。
5679 05 29 2 モーセはイスラエルのすべての人を呼び集めて言った、「あなたがたは主がエジプトの地で、パロと、そのすべての家来と、その全地とにせられたすべての事をまのあたり見た。
5680 05 29 3 すなわちその大きな試みと、しるしと、大きな不思議とをまのあたり見たのである。
5681 05 29 4 しかし、今日まで主はあなたがたの心に悟らせず、目に見させず、耳に聞かせられなかった。
5682 05 29 5 わたしは四十年の間、あなたがたを導いて荒野を通らせたが、あなたがたの身につけた着物は古びず、足のくつは古びなかった。
5683 05 29 6 あなたがたはまたパンも食べず、ぶどう酒も濃い酒も飲まなかった。こうしてあなたがたは、わたしがあなたがたの神、主であることを知るに至った。
5684 05 29 7 あなたがたがこの所にきたとき、ヘシボンの王シホンと、バシャンの王オグがわれわれを迎えて戦ったが、われわれは彼らを撃ち敗って、
5685 05 29 8 その地を取り、これをルベンびとと、ガドびとと、マナセびとの半ばとに、嗣業として与えた。
5686 05 29 9 それゆえ、あなたがたはこの契約の言葉を守って、それを行わなければならない。そうすればあなたがたのするすべての事は栄えるであろう。
5687 05 29 10 あなたがたは皆、きょう、あなたがたの神、主の前に立っている。すなわちあなたがたの部族のかしらたち、長老たち、つかさたちなど、イスラエルのすべての人々、
5688 05 29 11 あなたがたの小さい者たちも、妻たちも、宿営のうちに寄留している他国人も、あなたのために、たきぎを割る者も、水をくむ者も、みな主の前に立って、
5689 05 29 12 あなたの神、主が、きょう、あなたと結ばれるあなたの神、主の契約と誓いとに、はいろうとしている。
5690 05 29 13 これは主がさきにあなたに約束されたように、またあなたの先祖アブラハム、イサク、ヤコブに誓われたように、きょう、あなたを立てて自分の民とし、またみずからあなたの神となられるためである。
5691 05 29 14 わたしはただあなたがたとだけ、この契約と誓いとを結ぶのではない。
5692 05 29 15 きょう、ここで、われわれの神、主の前にわれわれと共に立っている者ならびに、きょう、ここにわれわれと共にいない者とも結ぶのである。
5693 05 29 16 われわれがどのようにエジプトの国に住んでいたか、どのように国々の民の中を通ってきたか、それはあなたがたが知っている。
5694 05 29 17 またあなたがたは木や石や銀や金で造った憎むべき物と偶像とが、彼らのうちにあるのを見た。
5695 05 29 18 それゆえ、あなたがたのうちに、きょう、その心にわれわれの神、主を離れてそれらの国民の神々に行って仕える男や女、氏族や部族があってはならない。またあなたがたのうちに、毒草や、にがよもぎを生ずる根があってはならない。
5696 05 29 19 そのような人はこの誓いの言葉を聞いても、心に自分を祝福して『心をかたくなにして歩んでもわたしには平安がある』と言うであろう。そうすれば潤った者も、かわいた者もひとしく滅びるであろう。
5697 05 29 20 主はそのような人をゆるすことを好まれない。かえって主はその人に怒りとねたみを発し、この書物にしるされたすべてののろいを彼の上に加え、主はついにその人の名を天の下から消し去られるであろう。
5698 05 29 21 主はイスラエルのすべての部族のうちからその人を区別して災をくだし、この律法の書にしるされた契約の中のもろもろののろいのようにされるであろう。
5699 05 29 22 後の代の人、すなわちあなたがたののちに起るあなたがたの子孫および遠い国から来る外国人は、この地の災を見、主がこの地にくだされた病気を見て言うであろう。
5700 05 29 23 ――全地は硫黄となり、塩となり、焼け土となって、種もまかれず、実も結ばず、なんの草も生じなくなって、むかし主が怒りと憤りをもって滅ぼされたソドム、ゴモラ、アデマ、ゼボイムの破滅のようである。――
5701 05 29 24 すなわち、もろもろの国民は言うであろう、『なぜ、主はこの地にこのようなことをされたのか。この激しい大いなる怒りは何ゆえか』。
5702 05 29 25 そのとき人々は言うであろう、『彼らはその先祖の神、主がエジプトの国から彼らを導き出して彼らと結ばれた契約をすて、
5703 05 29 26 行って彼らの知らない、また授からない、ほかの神々に仕えて、それを拝んだからである。
5704 05 29 27 それゆえ主はこの地にむかって怒りを発し、この書物にしるされたもろもろののろいをこれにくだし、
5705 05 29 28 そして主は怒りと、はげしい怒りと大いなる憤りとをもって彼らをこの地から抜き取って、ほかの国に投げやられた。今日見るとおりである』。
5706 05 29 29 隠れた事はわれわれの神、主に属するものである。しかし表わされたことは長くわれわれとわれわれの子孫に属し、われわれにこの律法のすべての言葉を行わせるのである。
5707 05 30 1 わたしがあなたがたの前に述べたこのもろもろの祝福と、のろいの事があなたに臨み、あなたがあなたの神、主に追いやられたもろもろの国民のなかでこの事を心に考えて、
5708 05 30 2 あなたもあなたの子供も共にあなたの神、主に立ち帰り、わたしが、きょう、命じるすべてのことにおいて、心をつくし、精神をつくして、主の声に聞き従うならば、
5709 05 30 3 あなたの神、主はあなたを再び栄えさせ、あなたをあわれみ、あなたの神、主はあなたを散らされた国々から再び集められるであろう。
5710 05 30 4 たといあなたが天のはてに追いやられても、あなたの神、主はそこからあなたを集め、そこからあなたを連れ帰られるであろう。
5711 05 30 5 あなたの神、主はあなたの先祖が所有した地にあなたを帰らせ、あなたはそれを所有するに至るであろう。主はまたあなたを栄えさせ、数を増して先祖たちよりも多くされるであろう。
5712 05 30 6 そしてあなたの神、主はあなたの心とあなたの子孫の心に割礼を施し、あなたをして、心をつくし、精神をつくしてあなたの神、主を愛させ、こうしてあなたに命を得させられるであろう。
5713 05 30 7 あなたの神、主はまた、あなたを迫害する敵と、あなたを憎む者とに、このもろもろののろいをこうむらせられるであろう。
5714 05 30 8 しかし、あなたは再び主の声に聞き従い、わたしが、きょう、あなたに命じるすべての戒めを守るであろう。
5715 05 30 9 そうすればあなたの神、主はあなたのするすべてのことと、あなたの身から生れる者と、家畜の産むものと、地に産する物を豊かに与えて、あなたを栄えさせられるであろう。すなわち主はあなたの先祖たちを喜ばれたように再びあなたを喜んで、あなたを栄えさせられるであろう。
5716 05 30 10 これはあなたが、あなたの神、主の声に聞きしたがい、この律法の書にしるされた戒めと定めとを守り、心をつくし、精神をつくしてあなたの神、主に帰するからである。
5717 05 30 11 わたしが、きょう、あなたに命じるこの戒めは、むずかしいものではなく、また遠いものでもない。
5718 05 30 12 これは天にあるのではないから、『だれがわれわれのために天に上り、それをわれわれのところへ持ってきて、われわれに聞かせ、行わせるであろうか』と言うに及ばない。
5719 05 30 13 またこれは海のかなたにあるのではないから、『だれがわれわれのために海を渡って行き、それをわれわれのところへ携えてきて、われわれに聞かせ、行わせるであろうか』と言うに及ばない。
5720 05 30 14 この言葉はあなたに、はなはだ近くあってあなたの口にあり、またあなたの心にあるから、あなたはこれを行うことができる。
5721 05 30 15 見よ、わたしは、きょう、命とさいわい、および死と災をあなたの前に置いた。
5722 05 30 16 すなわちわたしは、きょう、あなたにあなたの神、主を愛し、その道に歩み、その戒めと定めと、おきてとを守ることを命じる。それに従うならば、あなたは生きながらえ、その数は多くなるであろう。またあなたの神、主はあなたが行って取る地であなたを祝福されるであろう。
5723 05 30 17 しかし、もしあなたが心をそむけて聞き従わず、誘われて他の神々を拝み、それに仕えるならば、
5724 05 30 18 わたしは、きょう、あなたがたに告げる。あなたがたは必ず滅びるであろう。あなたがたはヨルダンを渡り、はいって行って取る地でながく命を保つことができないであろう。
5725 05 30 19 わたしは、きょう、天と地を呼んであなたがたに対する証人とする。わたしは命と死および祝福とのろいをあなたの前に置いた。あなたは命を選ばなければならない。そうすればあなたとあなたの子孫は生きながらえることができるであろう。
5726 05 30 20 すなわちあなたの神、主を愛して、その声を聞き、主につき従わなければならない。そうすればあなたは命を得、かつ長く命を保つことができ、主が先祖アブラハム、イサク、ヤコブに与えると誓われた地に住むことができるであろう」。
5727 05 31 1 そこでモーセは続いてこの言葉をイスラエルのすべての人に告げて、
5728 05 31 2 彼らに言った、「わたしは、きょう、すでに百二十歳になり、もはや出入りすることはできない。また主はわたしに『おまえはこのヨルダンを渡ることはできない』と言われた。
5729 05 31 3 あなたの神、主はみずからあなたに先立って渡り、あなたの前から、これらの国々の民を滅ぼし去って、あなたにこれを獲させられるであろう。また主がかつて言われたように、ヨシュアはあなたを率いて渡るであろう。
5730 05 31 4 主がさきにアモリびとの王シホンとオグおよびその地にされたように、彼らにもおこなって彼らを滅ぼされるであろう。
5731 05 31 5 主は彼らをあなたがたに渡されるから、あなたがたはわたしが命じたすべての命令のとおりに彼らに行わなければならない。
5732 05 31 6 あなたがたは強く、かつ勇ましくなければならない。彼らを恐れ、おののいてはならない。あなたの神、主があなたと共に行かれるからである。主は決してあなたを見放さず、またあなたを見捨てられないであろう」。
5733 05 31 7 モーセはヨシュアを呼び、イスラエルのすべての人の目の前で彼に言った、「あなたはこの民と共に行き、主が彼らの先祖たちに与えると誓われた地に入るのであるから、あなたは強く、かつ勇ましくなければならない。あなたは彼らにそれを獲させるであろう。
5734 05 31 8 主はみずからあなたに先立って行き、またあなたと共におり、あなたを見放さず、見捨てられないであろう。恐れてはならない、おののいてはならない」。
5735 05 31 9 モーセはこの律法を書いて、主の契約の箱をかつぐレビの子孫である祭司およびイスラエルのすべての長老たちに授けた。
5736 05 31 10 そしてモーセは彼らに命じて言った、「七年の終りごとに、すなわち、ゆるしの年の定めの時になり、かりいおの祭に、
5737 05 31 11 イスラエルのすべての人があなたの神、主の前に出るため、主の選ばれる場所に来るとき、あなたはイスラエルのすべての人の前でこの律法を読んで聞かせなければならない。
5738 05 31 12 すなわち男、女、子供およびあなたの町のうちに寄留している他国人など民を集め、彼らにこれを聞かせ、かつ学ばせなければならない。そうすれば彼らはあなたがたの神、主を恐れてこの律法の言葉を、ことごとく守り行うであろう。
5739 05 31 13 また彼らの子供たちでこれを知らない者も聞いて、あなたがたの神、主を恐れることを学ぶであろう。あなたがたがヨルダンを渡って行って取る地にながらえる日のあいだ常にそうしなければならない」。
5740 05 31 14 主はまたモーセに言われた、「あなたの死ぬ日が近づいている。ヨシュアを召して共に会見の幕屋に立ちなさい。わたしは彼に務を命じるであろう」。モーセとヨシュアが行って会見の幕屋に立つと、
5741 05 31 15 主は幕屋で雲の柱のうちに現れられた。その雲の柱は幕屋の入口のかたわらにとどまった。
5742 05 31 16 主はモーセに言われた、「あなたはまもなく眠って先祖たちと一緒になるであろう。そのときこの民はたちあがり、はいって行く地の異なる神々を慕って姦淫を行い、わたしを捨て、わたしが彼らと結んだ契約を破るであろう。
5743 05 31 17 その日には、わたしは彼らにむかって怒りを発し、彼らを捨て、わたしの顔を彼らに隠すゆえに、彼らは滅ぼしつくされ、多くの災と悩みが彼らに臨むであろう。そこでその日、彼らは言うであろう、『これらの災がわれわれに臨むのは、われわれの神がわれわれのうちにおられないからではないか』。
5744 05 31 18 しかも彼らがほかの神々に帰して、もろもろの悪を行うゆえに、わたしはその日には必ずわたしの顔を隠すであろう。
5745 05 31 19 それであなたがたは今、この歌を書きしるし、イスラエルの人々に教えてその口に唱えさせ、この歌をイスラエルの人々に対するわたしのあかしとならせなさい。
5746 05 31 20 わたしが彼らの先祖たちに誓った、乳と蜜の流れる地に彼らを導き入れる時、彼らは食べて飽き、肥え太るに及んで、ほかの神々に帰し、それに仕えて、わたしを軽んじ、わたしの契約を破るであろう。
5747 05 31 21 こうして多くの災と悩みとが彼らに臨む時、この歌は彼らに対して、あかしとなるであろう。(それはこの歌が彼らの子孫の口にあって、彼らはそれを忘れないからである。)わたしが誓った地に彼らを導き入れる前、すでに彼らが思いはかっている事をわたしは知っているからである」。
5748 05 31 22 モーセはその日、この歌を書いてイスラエルの人々に教えた。
5749 05 31 23 主はヌンの子ヨシュアに命じて言われた、「あなたはイスラエルの人々をわたしが彼らに誓った地に導き入れなければならない。それゆえ強くかつ勇ましくあれ。わたしはあなたと共にいるであろう」。
5750 05 31 24 モーセがこの律法の言葉を、ことごとく書物に書き終った時、
5751 05 31 25 モーセは主の契約の箱をかつぐレビびとに命じて言った、
5752 05 31 26 「この律法の書をとって、あなたがたの神、主の契約の箱のかたわらに置き、その所であなたにむかってあかしをするものとしなさい。
5753 05 31 27 わたしはあなたのそむくことと、かたくななこととを知っている。きょう、わたしが生きながらえて、あなたがたと一緒にいる間ですら、あなたがたは主にそむいた。ましてわたしが死んだあとはどんなであろう。
5754 05 31 28 あなたがたの部族のすべての長老たちと、つかさたちをわたしのもとに集めなさい。わたしはこれらの言葉を彼らに語り聞かせ、天と地とを呼んで彼らにむかってあかしさせよう。
5755 05 31 29 わたしは知っている。わたしが死んだのち、あなたがたは必ず悪い事をして、わたしが命じた道を離れる。そして後の日に災があなたがたに臨むであろう。これは主の悪と見られることを行い、あなたがたのすることをもって主を怒らせるからである」。
5756 05 31 30 そしてモーセはイスラエルの全会衆に次の歌の言葉を、ことごとく語り聞かせた。
5757 05 32 1 「天よ、耳を傾けよ、わたしは語る、地よ、わたしの口の言葉を聞け。
5758 05 32 2 わたしの教は雨のように降りそそぎ、わたしの言葉は露のようにしたたるであろう。若草の上に降る小雨のように、青草の上にくだる夕立ちのように。
5759 05 32 3 わたしは主の名をのべよう、われわれの神に栄光を帰せよ。
5760 05 32 4 主は岩であって、そのみわざは全く、その道はみな正しい。主は真実なる神であって、偽りなく、義であって、正である。
5761 05 32 5 彼らは主にむかって悪を行い、そのきずのゆえに、もはや主の子らではなく、よこしまで、曲ったやからである。
5762 05 32 6 愚かな知恵のない民よ、あなたがたはこのようにして主に報いるのか。主はあなたを生み、あなたを造り、あなたを堅く立てられたあなたの父ではないか。
5763 05 32 7 いにしえの日を覚え、代々の年を思え。あなたの父に問え、彼はあなたに告げるであろう。長老たちに問え、彼らはあなたに語るであろう。
5764 05 32 8 いと高き者は人の子らを分け、諸国民にその嗣業を与えられたとき、イスラエルの子らの数に照して、もろもろの民の境を定められた。
5765 05 32 9 主の分はその民であって、ヤコブはその定められた嗣業である。
5766 05 32 10 主はこれを荒野の地で見いだし、獣のほえる荒れ地で会い、これを巡り囲んでいたわり、目のひとみのように守られた。
5767 05 32 11 わしがその巣のひなを呼び起し、その子の上に舞いかけり、その羽をひろげて彼らをのせ、そのつばさの上にこれを負うように、
5768 05 32 12 主はただひとりで彼を導かれて、ほかの神々はあずからなかった。
5769 05 32 13 主は彼に地の高き所を乗り通らせ、田畑の産物を食わせ、岩の中から蜜を吸わせ、堅い岩から油を吸わせ、
5770 05 32 14 牛の凝乳、羊の乳、小羊と雄羊の脂肪、バシャンの牛と雄やぎ、小麦の良い物を食わせられた。またあなたはぶどうのしるのあわ立つ酒を飲んだ。
5771 05 32 15 しかるにエシュルンは肥え太って、足でけった。あなたは肥え太って、つややかになり、自分を造った神を捨て、救の岩を侮った。
5772 05 32 16 彼らはほかの神々に仕えて、主のねたみを起し、憎むべきおこないをもって主の怒りをひき起した。
5773 05 32 17 彼らは神でもない悪霊に犠牲をささげた。それは彼らがかつて知らなかった神々、近ごろ出た新しい神々、先祖たちの恐れることもしなかった者である。
5774 05 32 18 あなたは自分を生んだ岩を軽んじ、自分を造った神を忘れた。
5775 05 32 19 主はこれを見、そのむすこ、娘を怒ってそれを捨てられた。
5776 05 32 20 そして言われた、『わたしはわたしの顔を彼らに隠そう。わたしは彼らの終りがどうなるかを見よう。彼らはそむき、もとるやから、真実のない子らである。
5777 05 32 21 彼らは神でもない者をもって、わたしにねたみを起させ、偶像をもって、わたしを怒らせた。それゆえ、わたしは民ともいえない者をもって、彼らにねたみを起させ、愚かな民をもって、彼らを怒らせるであろう。
5778 05 32 22 わたしの怒りによって、火は燃えいで、陰府の深みにまで燃え行き、地とその産物とを焼きつくし、山々の基を燃やすであろう。
5779 05 32 23 わたしは彼らの上に災を積みかさね、わたしの矢を彼らにむかって射つくすであろう。
5780 05 32 24 彼らは飢えて、やせ衰え、熱病と悪い疫病によって滅びるであろう。わたしは彼らを獣の歯にかからせ、地に這うものの毒にあたらせるであろう。
5781 05 32 25 外にはつるぎ、内には恐れがあって、若き男も若き女も、乳のみ子も、しらがの人も滅びるであろう。
5782 05 32 26 わたしはまさに言おうとした、「彼らを遠く散らし、彼らの事を人々が記憶しないようにしよう」。
5783 05 32 27 しかし、わたしは敵が誇るのを恐れる。あだびとはまちがえて言うであろう、「われわれの手が勝ちをえたのだ。これはみな主がされたことではない」』。
5784 05 32 28 彼らは思慮の欠けた民、そのうちには知識がない。
5785 05 32 29 もし、彼らに知恵があれば、これをさとり、その身の終りをわきまえたであろうに。
5786 05 32 30 彼らの岩が彼らを売らず、主が彼らをわたされなかったならば、どうして、ひとりで千人を追い、ふたりで万人を敗ることができたであろう。
5787 05 32 31 彼らの岩はわれらの岩に及ばない。われらの敵もこれを認めている。
5788 05 32 32 彼らのぶどうの木は、ソドムのぶどうの木から出たもの、またゴモラの野から出たもの、そのぶどうは毒ぶどう、そのふさは苦い。
5789 05 32 33 そのぶどう酒はへびの毒のよう、まむしの恐ろしい毒のようである。
5790 05 32 34 これはわたしのもとにたくわえられ、わたしの倉に封じ込められているではないか。
5791 05 32 35 彼らの足がすべるとき、わたしはあだを返し、報いをするであろう。彼らの災の日は近く、彼らの破滅は、すみやかに来るであろう。
5792 05 32 36 主はついにその民をさばき、そのしもべらにあわれみを加えられるであろう。これは彼らの力がうせ去り、つながれた者もつながれない者も、もはやいなくなったのを、主が見られるからである。
5793 05 32 37 そのとき主は言われるであろう、『彼らの神々はどこにいるか、彼らの頼みとした岩はどこにあるか。
5794 05 32 38 彼らの犠牲のあぶらを食い、灌祭の酒を飲んだ者はどこにいるか。立ちあがってあなたがたを助けさせよ、あなたがたを守らせよ。
5795 05 32 39 今見よ、わたしこそは彼である。わたしのほかに神はない。わたしは殺し、また生かし、傷つけ、またいやす。わたしの手から救い出しうるものはない。
5796 05 32 40 わたしは天にむかい手をあげて誓う、「わたしは永遠に生きる。
5797 05 32 41 わたしがきらめくつるぎをとぎ、手にさばきを握るとき、わたしは敵にあだを返し、わたしを憎む者に報復するであろう。
5798 05 32 42 わたしの矢を血に酔わせ、わたしのつるぎに肉を食わせるであろう。殺された者と捕えられた者の血を飲ませ、敵の長髪の頭の肉を食わせるであろう」』。
5799 05 32 43 国々の民よ、主の民のために喜び歌え。主はそのしもべの血のために報復し、その敵にあだを返し、その民の地の汚れを清められるからである」。
5800 05 32 44 モーセとヌンの子ヨシュアは共に行って、この歌の言葉を、ことごとく民に読み聞かせた。
5801 05 32 45 モーセはこの言葉を、ことごとくイスラエルのすべての人に告げ終って、
5802 05 32 46 彼らに言った、「あなたがたはわたしが、きょう、あなたがたに命じるこのすべての言葉を心におさめ、子供たちにもこの律法のすべての言葉を守り行うことを命じなければならない。
5803 05 32 47 この言葉はあなたがたにとって、むなしい言葉ではない。これはあなたがたのいのちである。この言葉により、あなたがたはヨルダンを渡って行って取る地で、長く命を保つことができるであろう」。
5804 05 32 48 この日、主はモーセに言われた、
5805 05 32 49 「あなたはエリコに対するモアブの地にあるアバリム山すなわちネボ山に登り、わたしがイスラエルの人々に与えて獲させるカナンの地を見渡たせ。
5806 05 32 50 あなたは登って行くその山で死に、あなたの民に連なるであろう。あなたの兄弟アロンがホル山で死んでその民に連なったようになるであろう。
5807 05 32 51 これはあなたがたがチンの荒野にあるメリバテ・カデシの水のほとりで、イスラエルの人々のうちでわたしにそむき、イスラエルの人々のうちでわたしを聖なるものとして敬わなかったからである。
5808 05 32 52 それであなたはわたしがイスラエルの人々に与える地を、目の前に見るであろう。しかし、その地に、はいることはできない」。
5809 05 33 1 神の人モーセは死ぬ前にイスラエルの人々を祝福した。祝福の言葉は次のとおりである。
5810 05 33 2 「主はシナイからこられ、セイルからわれわれにむかってのぼられ、パランの山から光を放たれ、ちよろずの聖者の中からこられた。その右の手には燃える火があった。
5811 05 33 3 まことに主はその民を愛される。すべて主に聖別されたものは、み手のうちにある。彼らはあなたの足もとに座して、教をうける。
5812 05 33 4 モーセはわれわれに律法を授けて、ヤコブの会衆の所有とさせた。
5813 05 33 5 民のかしらたちが集まり、イスラエルの部族がみな集まった時、主はエシュルンのうちに王となられた」。
5814 05 33 6 「ルベンは生きる、死にはしない。しかし、その人数は少なくなるであろう」。
5815 05 33 7 ユダについては、こう言った、「主よ、ユダの声を聞いて、彼をその民に導きかえしてください。み手をもって、彼のために戦ってください。彼を助けて、敵に当らせてください」。
5816 05 33 8 レビについては言った、「あなたのトンミムをレビに与えてください。ウリムをあなたに仕える人に与えてください。かつてあなたはマッサで彼を試み、メリバの水のほとりで彼と争われた。
5817 05 33 9 彼はその父、その母について言った、『わたしは彼らを顧みない』。彼は自分の兄弟をも認めず、自分の子供をも顧みなかった。彼らはあなたの言葉にしたがい、あなたの契約を守ったからである。
5818 05 33 10 彼らはあなたのおきてをヤコブに教え、あなたの律法をイスラエルに教え、薫香をあなたの前に供え、燔祭を祭壇の上にささげる。
5819 05 33 11 主よ、彼の力を祝福し、彼の手のわざを喜び受けてください。彼に逆らう者と、彼を憎む者との腰を打ち砕いて、立ち上がることのできないようにしてください」。
5820 05 33 12 ベニヤミンについては言った、「主に愛される者、彼は安らかに主のそばにおり、主は終日、彼を守り、その肩の間にすまいを営まれるであろう」。
5821 05 33 13 ヨセフについては言った、「どうぞ主が彼の地を祝福されるように。上なる天の賜物と露、下に横たわる淵の賜物、
5822 05 33 14 日によって産する尊い賜物、月によって生ずる尊い賜物、
5823 05 33 15 いにしえの山々の産する賜物、とこしえの丘の尊い賜物、
5824 05 33 16 地とそれに満ちる尊い賜物、しばの中におられた者の恵みが、ヨセフの頭に臨み、その兄弟たちの君たる者の頭の頂にくだるように。
5825 05 33 17 彼の牛のういごは威厳があり、その角は野牛の角のよう、これをもって国々の民をことごとく突き倒し、地のはてにまで及ぶ。このような者はエフライムに幾万とあり、またこのような者はマナセに幾千とある」。
5826 05 33 18 ゼブルンについては言った、「ゼブルンよ、あなたは外に出て楽しみを得よ。イッサカルよ、あなたは天幕にいて楽しみを得よ。
5827 05 33 19 彼らは国々の民を山に招き、その所で正しい犠牲をささげるであろう。彼らは海の富を吸い、砂に隠れた宝を取るからである」。
5828 05 33 20 ガドについては言った、「ガドを大きくする者は、ほむべきかな。ガドは、ししのように伏し、腕や頭の頂をかき裂くであろう。
5829 05 33 21 彼は初穂の地を自分のために選んだ。そこには将軍の分も取り置かれていた。彼は民のかしらたちと共にきて、イスラエルと共に主の正義と審判とを行った」。
5830 05 33 22 ダンについては言った、「ダンはししの子であって、バシャンからおどりでる」。
5831 05 33 23 ナフタリについては言った、「ナフタリよ、あなたは恵みに満たされ、主の祝福に満ちて、湖とその南の地を所有する」。
5832 05 33 24 アセルについては言った、「アセルは他の子らにまさって祝福される。彼はその兄弟たちに愛せられ、その足を油にひたすことができるように。
5833 05 33 25 あなたの貫の木は鉄と青銅、あなたの力はあなたの年と共に続くであろう」。
5834 05 33 26 「エシュルンよ、神に並ぶ者はほかにない。あなたを助けるために天に乗り、威光をもって空を通られる。
5835 05 33 27 とこしえにいます神はあなたのすみかであり、下には永遠の腕がある。敵をあなたの前から追い払って、『滅ぼせ』と言われた。
5836 05 33 28 イスラエルは安らかに住み、ヤコブの泉は穀物とぶどう酒の地に、ひとりいるであろう。また天は露をくだすであろう。
5837 05 33 29 イスラエルよ、あなたはしあわせである。だれがあなたのように、主に救われた民があるであろうか。主はあなたを助ける盾、あなたの威光のつるぎ、あなたの敵はあなたにへつらい服し、あなたは彼らの高き所を踏み進むであろう」。
5838 05 34 1 モーセはモアブの平野からネボ山に登り、エリコの向かいのピスガの頂へ行った。そこで主は彼にギレアデの全地をダンまで示し、
5839 05 34 2 ナフタリの全部、エフライムとマナセの地およびユダの全地を西の海まで示し、
5840 05 34 3 ネゲブと低地、すなわち、しゅろの町エリコの谷をゾアルまで示された。
5841 05 34 4 そして主は彼に言われた、「わたしがアブラハム、イサク、ヤコブに、これをあなたの子孫に与えると言って誓った地はこれである。わたしはこれをあなたの目に見せるが、あなたはそこへ渡って行くことはできない」。
5842 05 34 5 こうして主のしもべモーセは主の言葉のとおりにモアブの地で死んだ。
5843 05 34 6 主は彼をベテペオルに対するモアブの地の谷に葬られたが、今日までその墓を知る人はない。
5844 05 34 7 モーセは死んだ時、百二十歳であったが、目はかすまず、気力は衰えていなかった。
5845 05 34 8 イスラエルの人々はモアブの平野で三十日の間モーセのために泣いた。そしてモーセのために泣き悲しむ日はついに終った。
5846 05 34 9 ヌンの子ヨシュアは知恵の霊に満ちた人であった。モーセが彼の上に手を置いたからである。イスラエルの人々は彼に聞き従い、主がモーセに命じられたとおりにおこなった。
5847 05 34 10 イスラエルには、こののちモーセのような預言者は起らなかった。モーセは主が顔を合わせて知られた者であった。
5848 05 34 11 主はエジプトの地で彼をパロとそのすべての家来およびその全地につかわして、もろもろのしるしと不思議を行わせられた。
5849 05 34 12 モーセはイスラエルのすべての人の前で大いなる力をあらわし、大いなる恐るべき事をおこなった。
5850 06 1 1 主のしもべモーセが死んだ後、主はモーセの従者、ヌンの子ヨシュアに言われた、
5851 06 1 2 「わたしのしもべモーセは死んだ。それゆえ、今あなたと、このすべての民とは、共に立って、このヨルダンを渡り、わたしがイスラエルの人々に与える地に行きなさい。
5852 06 1 3 あなたがたが、足の裏で踏む所はみな、わたしがモーセに約束したように、あなたがたに与えるであろう。
5853 06 1 4 あなたがたの領域は、荒野からレバノンに及び、また大川ユフラテからヘテびとの全地にわたり、日の入る方の大海に達するであろう。
5854 06 1 5 あなたが生きながらえる日の間、あなたに当ることのできる者は、ひとりもないであろう。わたしは、モーセと共にいたように、あなたと共におるであろう。わたしはあなたを見放すことも、見捨ることもしない。
5855 06 1 6 強く、また雄々しくあれ。あなたはこの民に、わたしが彼らに与えると、その先祖たちに誓った地を獲させなければならない。
5856 06 1 7 ただ強く、また雄々しくあって、わたしのしもべモーセがあなたに命じた律法をことごとく守って行い、これを離れて右にも左にも曲ってはならない。それはすべてあなたが行くところで、勝利を得るためである。
5857 06 1 8 この律法の書をあなたの口から離すことなく、昼も夜もそれを思い、そのうちにしるされていることを、ことごとく守って行わなければならない。そうするならば、あなたの道は栄え、あなたは勝利を得るであろう。
5858 06 1 9 わたしはあなたに命じたではないか。強く、また雄々しくあれ。あなたがどこへ行くにも、あなたの神、主が共におられるゆえ、恐れてはならない、おののいてはならない」。
5859 06 1 10 そこでヨシュアは民のつかさたちに命じて言った、
5860 06 1 11 「宿営のなかを巡って民に命じて言いなさい、『糧食の備えをしなさい。三日のうちに、あなたがたはこのヨルダンを渡って、あなたがたの神、主があなたがたに与えて獲させようとされる地を獲るために、進み行かなければならないからである』」。
5861 06 1 12 ヨシュアはまたルベンびと、ガドびと、およびマナセの半部族に言った、
5862 06 1 13 「主のしもべモーセがあなたがたに命じて、『あなたがたの神、主はあなたがたのために安息の場所を備え、この地をあなたがたに賜わるであろう』と言った言葉を記憶しなさい。
5863 06 1 14 あなたがたの妻子と家畜とは、モーセがあなたがたに与えたヨルダンのこちら側の地にとどまらなければならない。しかし、あなたがたのうちの勇士はみな武装して、兄弟たちの先に立って渡り、これを助けなければならない。
5864 06 1 15 そして主があなたがたに賜わったように、あなたがたの兄弟たちにも安息を賜わり、彼らもあなたがたの神、主が賜わる地を獲るようになるならば、あなたがたは、主のしもべモーセから与えられた、ヨルダンのこちら側、日の出の方にある、あなたがたの所有の地に帰って、それを保つことができるであろう」。
5865 06 1 16 彼らはヨシュアに答えた、「あなたがわれわれに命じられたことをみな行います。あなたがつかわされる所へは、どこへでも行きます。
5866 06 1 17 われわれはすべてのことをモーセに聞き従ったように、あなたに聞き従います。ただ、どうぞ、あなたの神、主がモーセと共におられたように、あなたと共におられますように。
5867 06 1 18 だれであっても、あなたの命令にそむき、あなたの命じられる言葉に聞き従わないものがあれば、生かしてはおきません。ただ、強く、また雄々しくあってください」。
5868 06 2 1 ヌンの子ヨシュアは、シッテムから、ひそかにふたりの斥候をつかわして彼らに言った、「行って、その地、特にエリコを探りなさい」。彼らは行って、名をラハブという遊女の家にはいり、そこに泊まったが、
5869 06 2 2 エリコの王に、「イスラエルの人々のうちの数名の者が今夜この地を探るために、はいってきました」と言う者があったので、
5870 06 2 3 エリコの王は人をやってラハブに言った、「あなたの所にきて、あなたの家にはいった人々をここへ出しなさい。彼らはこの国のすべてを探るためにきたのです」。
5871 06 2 4 しかし、女はすでにそのふたりの人を入れて彼らを隠していた。そして彼女は言った、「確かにその人々はわたしの所にきました。しかし、わたしはその人々がどこからきたのか知りませんでしたが、
5872 06 2 5 たそがれ時、門の閉じるころに、その人々は出て行きました。どこへ行ったのかわたしは知りません。急いであとを追いなさい。追いつけるでしょう」。
5873 06 2 6 その実、彼女はすでに彼らを連れて屋根にのぼり、屋上に並べてあった亜麻の茎の中に彼らを隠していたのである。
5874 06 2 7 そこでその人々は彼らのあとを追ってヨルダンの道を進み、渡し場へ向かった。あとを追う者が出て行くとすぐ門は閉ざされた。
5875 06 2 8 ふたりの人がまだ寝ないうち、ラハブは屋上にのぼって彼らの所にきた。
5876 06 2 9 そして彼らに言った、「主がこの地をあなたがたに賜わったこと、わたしたちがあなたがたをひじょうに恐れていること、そしてこの地の民がみなあなたがたの前に震えおののいていることをわたしは知っています。
5877 06 2 10 あなたがたがエジプトから出てこられた時、主があなたがたの前で紅海の水を干されたこと、およびあなたがたが、ヨルダンの向こう側にいたアモリびとのふたりの王シホンとオグにされたこと、すなわちふたりを、全滅されたことを、わたしたちは聞いたからです。
5878 06 2 11 わたしたちはそれを聞くと、心は消え、あなたがたのゆえに人々は全く勇気を失ってしまいました。あなたがたの神、主は上の天にも、下の地にも、神でいらせられるからです。
5879 06 2 12 それで、どうか、わたしがあなたがたを親切に扱ったように、あなたがたも、わたしの父の家を親切に扱われることをいま主をさして誓い、確かなしるしをください。
5880 06 2 13 そしてわたしの父母、兄弟、姉妹およびすべて彼らに属するものを生きながらえさせ、わたしたちの命を救って、死を免れさせてください」。
5881 06 2 14 ふたりの人は彼女に言った、「もしあなたがたが、われわれのこのことを他に漏らさないならば、われわれは命にかけて、あなたがたを救います。また主がわれわれにこの地を賜わる時、あなたがたを親切に扱い、真実をつくしましょう」。
5882 06 2 15 そこでラハブは綱をもって彼らを窓からつりおろした。その家が町の城壁の上に建っていて、彼女はその城壁の上に住んでいたからである。
5883 06 2 16 ラハブは彼らに言った、「追手に会わないように、あなたがたは山へ行って、三日の間そこに身を隠し、追手の帰って行くのを待って、それから去って行きなさい」。
5884 06 2 17 ふたりの人は彼女に言った、「あなたがわれわれに誓わせたこの誓いについて、われわれは罪を犯しません。
5885 06 2 18 われわれがこの地に討ち入る時、わたしたちをつりおろした窓に、この赤い糸のひもを結びつけ、またあなたの父母、兄弟、およびあなたの父の家族をみなあなたの家に集めなさい。
5886 06 2 19 ひとりでも家の戸口から外へ出て、血を流されることがあれば、その責めはその人自身のこうべに帰すでしょう。われわれに罪はありません。しかしあなたの家の中にいる人に手をかけて血を流すことがあれば、その責めはわれわれのこうべに帰すでしょう。
5887 06 2 20 またあなたが、われわれのこのことを他に漏らすならば、あなたがわれわれに誓わせた誓いについては、われわれに罪はありません」。
5888 06 2 21 ラハブは言った、「あなたがたの仰せのとおりにいたしましょう」。こうして彼らを送り出したので、彼らは去った。そして彼女は赤いひもを窓に結んだ。
5889 06 2 22 彼らは立ち去って山にはいり、追手が帰るのを待って、三日の間そこにとどまった。追手は彼らをあまねく道に捜したが、ついに見つけることができなかった。
5890 06 2 23 こうしてふたりの人はまた山を下り、川を渡って、ヌンの子ヨシュアのもとにきて、その身に起ったことをつぶさに述べた。
5891 06 2 24 そしてヨシュアに言った、「ほんとうに主はこの国をことごとくわれわれの手にお与えになりました。この国の住民はみなわれわれの前に震えおののいています」。
5892 06 3 1 ヨシュアは朝早く起き、イスラエルの人々すべてとともにシッテムを出立して、ヨルダンに行き、それを渡らずに、そこに宿った。
5893 06 3 2 三日の後、つかさたちは宿営の中を行き巡り、
5894 06 3 3 民に命じて言った、「レビびとである祭司たちが、あなたがたの神、主の契約の箱をかきあげるのを見るならば、あなたがたはその所を出立して、そのあとに従わなければならない。
5895 06 3 4 そうすれば、あなたがたは行くべき道を知ることができるであろう。あなたがたは前にこの道をとおったことがないからである。しかし、あなたがたと箱との間には、おおよそ二千キュビトの距離をおかなければならない。それに近づいてはならない」。
5896 06 3 5 ヨシュアはまた民に言った、「あなたがたは身を清めなさい。あす、主があなたがたのうちに不思議を行われるからである」。
5897 06 3 6 ヨシュアは祭司たちに言った、「契約の箱をかき、民に先立って渡りなさい」。そこで彼らは契約の箱をかき、民に先立って進んだ。
5898 06 3 7 主はヨシュアに言われた、「きょうからわたしはすべてのイスラエルの前にあなたを尊い者とするであろう。こうしてわたしがモーセと共にいたように、あなたとともにおることを彼らに知らせるであろう。
5899 06 3 8 あなたは契約の箱をかく祭司たちに命じて言わなければならない、『あなたがたは、ヨルダンの水ぎわへ行くと、すぐ、ヨルダンの中に立ちとどまらなければならない』」。
5900 06 3 9 ヨシュアはイスラエルの人々に言った、「あなたがたはここに近づいて、あなたがたの神、主の言葉を聞きなさい」。
5901 06 3 10 そしてヨシュアは言った、「生ける神があなたがたのうちにおいでになり、あなたがたの前から、カナンびと、ヘテびと、ヒビびと、ペリジびと、ギルガシびと、アモリびと、エブスびとを、必ず追い払われることを、次のことによって、あなたがたは知るであろう。
5902 06 3 11 ごらんなさい。全地の主の契約の箱は、あなたがたに先立ってヨルダンを渡ろうとしている。
5903 06 3 12 それゆえ、今、イスラエルの部族のうちから、部族ごとにひとりずつ、合わせて十二人を選びなさい。
5904 06 3 13 全地の主なる神の箱をかく祭司たちの足の裏が、ヨルダンの水の中に踏みとどまる時、ヨルダンの水は流れをせきとめられ、上から流れくだる水はとどまって、うず高くなるであろう」。
5905 06 3 14 こうして民はヨルダンを渡ろうとして天幕をいで立ち、祭司たちは契約の箱をかき、民に先立って行ったが、
5906 06 3 15 箱をかく者がヨルダンにきて、箱をかく祭司たちの足が水ぎわにひたると同時に、――ヨルダンは刈入れの間中、岸一面にあふれるのであるが、――
5907 06 3 16 上から流れくだる水はとどまって、はるか遠くのザレタンのかたわらにある町アダムのあたりで、うず高く立ち、アラバの海すなわち塩の海の方に流れくだる水は全くせきとめられたので、民はエリコに向かって渡った。
5908 06 3 17 すべてのイスラエルが、かわいた地を渡って行く間、主の契約の箱をかく祭司たちは、ヨルダンの中のかわいた地に立っていた。そしてついに民はみなヨルダンを渡り終った。
5909 06 4 1 民が皆、ヨルダンを渡り終った時、主はヨシュアに言われた、
5910 06 4 2 「民のうちから、部族ごとにひとりずつ、合わせて十二人を選び、
5911 06 4 3 彼らに命じて言いなさい、『ヨルダンの中で祭司たちが足を踏みとどめたその所から、石十二を取り、それを携えて渡り、今夜あなたがたが宿る場所にすえなさい』」。
5912 06 4 4 そこでヨシュアはイスラエルの人々のうちから、部族ごとに、ひとりずつ、かねて定めておいた十二人の者を召し寄せ、
5913 06 4 5 ヨシュアは彼らに言った、「あなたがたの神、主の契約の箱の前に立って行き、ヨルダンの中に進み入り、イスラエルの人々の部族の数にしたがって、おのおの石一つを取り上げ、肩にのせて運びなさい。
5914 06 4 6 これはあなたがたのうちに、しるしとなるであろう。後の日になって、あなたがたの子どもたちが、『これらの石は、どうしたわけですか』と問うならば、
5915 06 4 7 その時あなたがたは彼らに、むかしヨルダンの水が、主の契約の箱の前で、せきとめられたこと、すなわちその箱がヨルダンを渡った時、ヨルダンの水が、せきとめられたことを告げなければならない。こうして、それらの石は永久にイスラエルの人々の記念となるであろう」。
5916 06 4 8 イスラエルの人々はヨシュアが命じたようにし、主がヨシュアに言われたように、イスラエルの人々の部族の数にしたがって、ヨルダンの中から十二の石を取り、それを携えて渡り、彼らの宿る場所へ行って、そこにすえた。
5917 06 4 9 ヨシュアはまたヨルダンの中で、契約の箱をかく祭司たちが、足を踏みとどめた所に、十二の石を立てたが、今日まで、そこに残っている。
5918 06 4 10 箱をかく祭司たちは、主がヨシュアに命じて、民に告げさせられた事が、すべて行われてしまうまで、ヨルダンの中に立っていた。すべてモーセがヨシュアに命じたとおりである。民は急いで渡った。
5919 06 4 11 民がみな渡り終った時、主の箱と祭司たちとは、民の見る前で渡った。
5920 06 4 12 ルベンの子孫とガドの子孫、およびマナセの部族の半ばは、モーセが彼らに命じていたように武装して、イスラエルの人々に先立って渡り、
5921 06 4 13 戦いのために武装したおおよそ四万の者が戦うため、主の前に渡って、エリコの平野に着いた。
5922 06 4 14 この日、主はイスラエルのすべての人の前にヨシュアを尊い者とされたので、彼らはみなモーセを敬ったように、ヨシュアを一生のあいだ敬った。
5923 06 4 15 主はヨシュアに言われた、
5924 06 4 16 「あかしの箱をかく祭司たちに命じて、ヨルダンから上がってこさせなさい」。
5925 06 4 17 ヨシュアは祭司たちに命じて言った、「ヨルダンから上がってきなさい」。
5926 06 4 18 主の契約の箱をかく祭司たちはヨルダンの中から上がってきたが、祭司たちの足の裏がかわいた地にあがると同時に、ヨルダンの水はもとの所に流れかえって、以前のように、その岸にことごとくあふれた。
5927 06 4 19 民は正月の十日に、ヨルダンから上がってきて、エリコの東の境にあるギルガルに宿営した。
5928 06 4 20 そしてヨシュアは、人々がヨルダンから取ってきた十二の石をギルガルに立て、
5929 06 4 21 イスラエルの人々に言った、「後の日にあなたがたの子どもたちが、その父に『これらの石は、どうしたわけですか』とたずねたならば、
5930 06 4 22 『むかしイスラエルがこのヨルダンを、かわいた地にされて渡ったのだ』と言って、その子どもたちに知らせなければならない。
5931 06 4 23 すなわちあなたがたの神、主はヨルダンの水を、あなたがたのために干しからして、あなたがたを渡らせてくださった。それはあたかも、あなたがたの神、主が、われわれのために紅海を干しからして、われわれを渡らせてくださったのと同じである。
5932 06 4 24 このようにされたのは、地のすべての民に、主の手に力のあることを知らせ、あなたがたの神、主をつねに恐れさせるためである」。
5933 06 5 1 ヨルダンの向こう側、すなわち西の方におるアモリびとの王たちと、海べにおるカナンびとの王たちとは皆、主がイスラエルの人々の前で、ヨルダンの水を干しからして、彼らを渡らせられたと聞いて、イスラエルの人々のゆえに、心は消え、彼らのうちに、もはや元気もなくなった。
5934 06 5 2 その時、主はヨシュアに言われた、「火打石の小刀を造り、重ねてまたイスラエルの人々に割礼を行いなさい」。
5935 06 5 3 そこでヨシュアは火打石の小刀を造り、陽皮の丘で、イスラエルの人々に割礼を行った。
5936 06 5 4 ヨシュアが人々に割礼を行った理由はこうである。エジプトから出てきた民のうちの、すべての男子、すなわち、いくさびとたちは皆、エジプトを出た後、途中、荒野で死んだが、
5937 06 5 5 その出てきた民は皆、割礼を受けた者であった。しかし、エジプトを出た後に、途中、荒野で生まれた民は、みな割礼を受けていなかった。
5938 06 5 6 イスラエルの人々は四十年の間、荒野を歩いていて、そのエジプトから出てきた民、すなわち、いくさびとたちは、みな死に絶えた。これは彼らが主の声に聞き従わなかったので、主は彼らの先祖たちに誓って、われわれに与えると仰せられた地、乳と蜜の流れる地を、彼らに見させないと誓われたからである。
5939 06 5 7 ヨシュアが割礼を行ったのは、この人々についで起されたその子どもたちであった。彼らは途中で割礼を受けていなかったので、無割礼の者であったからである。
5940 06 5 8 すべての民に割礼を行うことが終ったので、民は宿営のうちの自分の所にとどまって傷の直るのを待った。
5941 06 5 9 その時、主はヨシュアに言われた、「きょう、わたしはエジプトのはずかしめを、あなたがたからころがし去った」。それでその所の名は、今日までギルガルと呼ばれている。
5942 06 5 10 イスラエルの人々はギルガルに宿営していたが、その月の十四日の夕暮、エリコの平野で過越の祭を行った。
5943 06 5 11 そして過越の祭の翌日、その地の穀物、すなわち種入れぬパンおよびいり麦を、その日に食べたが、
5944 06 5 12 その地の穀物を食べた翌日から、マナの降ることはやみ、イスラエルの人々は、もはやマナを獲なかった。その年はカナンの地の産物を食べた。
5945 06 5 13 ヨシュアがエリコの近くにいたとき、目を上げて見ると、ひとりの人が抜き身のつるぎを手に持ち、こちらに向かって立っていたので、ヨシュアはその人のところへ行って言った、「あなたはわれわれを助けるのですか。それともわれわれの敵を助けるのですか」。
5946 06 5 14 彼は言った、「いや、わたしは主の軍勢の将として今きたのだ」。ヨシュアは地にひれ伏し拝して言った、「わが主は何をしもべに告げようとされるのですか」。
5947 06 5 15 すると主の軍勢の将はヨシュアに言った、「あなたの足のくつを脱ぎなさい。あなたが立っている所は聖なる所である」。ヨシュアはそのようにした。
5948 06 6 1 さてエリコは、イスラエルの人々のゆえに、かたく閉ざして、出入りするものがなかった。
5949 06 6 2 主はヨシュアに言われた、「見よ、わたしはエリコと、その王および大勇士を、あなたの手にわたしている。
5950 06 6 3 あなたがた、いくさびとはみな、町を巡って、町の周囲を一度回らなければならない。六日の間そのようにしなければならない。
5951 06 6 4 七人の祭司たちは、おのおの雄羊の角のラッパを携えて、箱に先立たなければならない。そして七日目には七度町を巡り、祭司たちはラッパを吹き鳴らさなければならない。
5952 06 6 5 そして祭司たちが雄羊の角を長く吹き鳴らし、そのラッパの音が、あなたがたに聞える時、民はみな大声に呼ばわり、叫ばなければならない。そうすれば、町の周囲の石がきは、くずれ落ち、民はみなただちに進んで、攻め上ることができる」。
5953 06 6 6 ヌンの子ヨシュアは祭司たちを召して言った、「あなたがたは契約の箱をかき、七人の祭司たちは雄羊の角のラッパ七本を携えて、主の箱に先立たなければならない」。
5954 06 6 7 そして民に言った、「あなたがたは進んで行って町を巡りなさい。武装した者は主の箱に先立って進まなければならない」。
5955 06 6 8 ヨシュアが民に命じたように、七人の祭司たちは、雄羊の角のラッパ七本を携えて、主に先立って進み、ラッパを吹き鳴らした。主の契約の箱はそのあとに従った。
5956 06 6 9 武装した者はラッパを吹き鳴らす祭司たちに先立って行き、しんがりは箱に従った。ラッパは絶え間なく鳴り響いた。
5957 06 6 10 しかし、ヨシュアは民に命じて言った、「あなたがたは呼ばわってはならない。あなたがたの声を聞えさせてはならない。また口から言葉を出してはならない。ただ、わたしが呼ばわれと命じる日に、あなたがたは呼ばわらなければならない」。
5958 06 6 11 こうして主の箱を持って、町を巡らせ、その周囲を一度回らせた。人々は宿営に帰り、夜を宿営で過ごした。
5959 06 6 12 翌朝ヨシュアは早く起き、祭司たちは主の箱をかき、
5960 06 6 13 七人の祭司たちは、雄羊の角のラッパ七本を携えて、主の箱に先立ち、絶えず、ラッパを吹き鳴らして進み、武装した者はこれに先立って行き、しんがりは主の箱に従った。ラッパは絶え間なく鳴り響いた。
5961 06 6 14 その次の日にも、町の周囲を一度巡って宿営に帰った。六日の間そのようにした。
5962 06 6 15 七日目には、夜明けに、早く起き、同じようにして、町を七度めぐった。町を七度めぐったのはこの日だけであった。
5963 06 6 16 七度目に、祭司たちがラッパを吹いた時、ヨシュアは民に言った、「呼ばわりなさい。主はこの町をあなたがたに賜わった。
5964 06 6 17 この町と、その中のすべてのものは、主への奉納物として滅ぼされなければならない。ただし遊女ラハブと、その家に共におる者はみな生かしておかなければならない。われわれが送った使者たちをかくまったからである。
5965 06 6 18 また、あなたがたは、奉納物に手を触れてはならない。奉納に当り、その奉納物をみずから取って、イスラエルの宿営を、滅ぼさるべきものとし、それを悩ますことのないためである。
5966 06 6 19 ただし、銀と金、青銅と鉄の器は、みな主に聖なる物であるから、主の倉に携え入れなければならない」。
5967 06 6 20 そこで民は呼ばわり、祭司たちはラッパを吹き鳴らした。民はラッパの音を聞くと同時に、みな大声をあげて呼ばわったので、石がきはくずれ落ちた。そこで民はみな、すぐに上って町にはいり、町を攻め取った。
5968 06 6 21 そして町にあるものは、男も、女も、若い者も、老いた者も、また牛、羊、ろばをも、ことごとくつるぎにかけて滅ぼした。
5969 06 6 22 その時ヨシュアは、この地を探ったふたりの人に言った、「あの遊女の家にはいって、その女と彼女に属するすべてのものを連れ出し、彼女に誓ったようにしなさい」。
5970 06 6 23 斥候となったその若い人たちははいって、ラハブとその父母、兄弟、そのほか彼女に属するすべてのものを連れ出し、その親族をみな連れ出して、イスラエルの宿営の外に置いた。
5971 06 6 24 そして火で町とその中のすべてのものを焼いた。ただ、銀と金、青銅と鉄の器は、主の家の倉に納めた。
5972 06 6 25 しかし、遊女ラハブとその父の家の一族と彼女に属するすべてのものとは、ヨシュアが生かしておいたので、ラハブは今日までイスラエルのうちに住んでいる。これはヨシュアがエリコを探らせるためにつかわした使者たちをかくまったためである。
5973 06 6 26 ヨシュアは、その時、人々に誓いを立てて言った、「おおよそ立って、このエリコの町を再建する人は、主の前にのろわれるであろう。その礎をすえる人は長子を失い、その門を建てる人は末の子を失うであろう」。
5974 06 6 27 主はヨシュアと共におられ、ヨシュアの名声は、あまねくその地に広がった。
5975 06 7 1 しかし、イスラエルの人々は奉納物について罪を犯した。すなわちユダの部族のうちの、ゼラの子ザブデの子であるカルミの子アカンが奉納物を取ったのである。それで主はイスラエルの人々にむかって怒りを発せられた。
5976 06 7 2 ヨシュアはエリコから人々をつかわし、ベテルの東、ベテアベンの近くにあるアイに行かせようとして、その人々に言った、「上って行って、かの地を探ってきなさい」。人々は上って行って、アイを探ったが、
5977 06 7 3 ヨシュアのもとに帰ってきて言った、「民をことごとく行かせるには及びません。ただ二、三千人を上らせて、アイを撃たせなさい。彼らは少ないのですから、民をことごとくあそこへやってほねおりをさせるには及びません」。
5978 06 7 4 そこで民のうち、おおよそ三千人がそこに上ったが、ついにアイの人々の前から逃げ出した。
5979 06 7 5 アイの人々は彼らのうち、おおよそ三十六人を殺し、更に彼らを門の前からシバリムまで追って、下り坂で彼らを殺したので、民の心は消えて水のようになった。
5980 06 7 6 そのためヨシュアは衣服を裂き、イスラエルの長老たちと共に、主の箱の前で、夕方まで地にひれ伏し、ちりをかぶった。
5981 06 7 7 ヨシュアは言った、「ああ、主なる神よ、あなたはなにゆえ、この民にヨルダンを渡らせ、われわれをアモリびとの手に渡して滅ぼさせられるのですか。われわれはヨルダンの向こうに、安んじてとどまればよかったのです。
5982 06 7 8 ああ、主よ。イスラエルがすでに敵に背をむけた今となって、わたしはまた何を言い得ましょう。
5983 06 7 9 カナンびと、およびこの地に住むすべてのものは、これを聞いて、われわれを攻めかこみ、われわれの名を地から断ち去ってしまうでしょう。それであなたは、あなたの大いなる名のために、何をしようとされるのですか」。
5984 06 7 10 主はヨシュアに言われた、「立ちなさい。あなたはどうして、そのようにひれ伏しているのか。
5985 06 7 11 イスラエルは罪を犯し、わたしが彼らに命じておいた契約を破った。彼らは奉納物を取り、盗み、かつ偽って、それを自分の所有物のうちに入れた。
5986 06 7 12 それでイスラエルの人々は敵に当ることができず、敵に背をむけた。彼らも滅ぼされるべきものとなったからである。あなたがたが、その滅ぼされるべきものを、あなたがたのうちから滅ぼし去るのでなければ、わたしはもはやあなたがたとは共にいないであろう。
5987 06 7 13 立って、民を清めて言いなさい、『あなたがたは身を清めて、あすのために備えなさい。イスラエルの神、主はこう仰せられる、「イスラエルよ、あなたがたのうちに、滅ぼされるべきものがある。その滅ぼされるべきものを、あなたがたのうちから除き去るまでは、敵に当ることはできないであろう」。
5988 06 7 14 それゆえ、あすの朝、あなたがたは部族ごとに進み出なければならない。そして主がくじを当てられる部族は、氏族ごとに進みいで、主がくじを当てられる氏族は、家族ごとに進みいで、主がくじを当てられる家族は、男ひとりびとり進み出なければならない。
5989 06 7 15 そしてその滅ぼされるべきものを持っていて、くじを当てられた者は、その持ち物全部と共に、火で焼かれなければならない。主の契約を破りイスラエルのうちに愚かなことを行ったからである』」。
5990 06 7 16 こうしてヨシュアは朝早く起き、イスラエルを部族ごとに進み出させたところ、ユダの部族がくじに当り、
5991 06 7 17 ユダのもろもろの氏族を進み出させたところ、ゼラびとの氏族が、くじに当った。ゼラびとの氏族を家族ごとに進み出させたところ、ザブデの家族が、くじに当った。
5992 06 7 18 ザブデの家族を男ひとりびとり進み出させたところ、アカンがくじに当った。アカンはユダの部族のうちの、ゼラの子、ザブデの子なるカルミの子である。
5993 06 7 19 その時ヨシュアはアカンに言った、「わが子よ、イスラエルの神、主に栄光を帰し、また主をさんびし、あなたのしたことを今わたしに告げなさい。わたしに隠してはならない」。
5994 06 7 20 アカンはヨシュアに答えた、「ほんとうにわたしはイスラエルの神、主に対して罪を犯しました。わたしがしたのはこうです。
5995 06 7 21 わたしはぶんどり物のうちに、シナルの美しい外套一枚と銀二百シケルと、目方五十シケルの金の延べ棒一本のあるのを見て、ほしくなり、それを取りました。わたしの天幕の中に、地に隠してあります。銀はその下にあります」。
5996 06 7 22 そこでヨシュアは使者たちをつかわした。使者たちが天幕に走っていって見ると、それは彼の天幕に隠してあって、銀もその下にあった。
5997 06 7 23 彼らはそれを天幕の中から取り出して、ヨシュアとイスラエルのすべての人々の所に携えてきたので、それを主の前に置いた。
5998 06 7 24 ヨシュアはすべてのイスラエルびとと共に、ゼラの子アカンを捕え、かの銀と外套と金の延べ棒、および彼のむすこ、娘、牛、ろば、羊、天幕など、彼の持ち物をことごとく取って、アコルの谷へ引いていった。
5999 06 7 25 そしてヨシュアは言った、「なぜあなたはわれわれを悩ましたのか。主は、きょう、あなたを悩まされるであろう」。やがてすべてのイスラエルびとは石で彼を撃ち殺し、また彼の家族をも石で撃ち殺し、火をもって焼いた。
6000 06 7 26 そしてアカンの上に石塚を大きく積み上げたが、それは今日まで残っている。そして主は激しい怒りをやめられたが、このことによって、その所の名は今日までアコルの谷と呼ばれている。
6001 06 8 1 主はヨシュアに言われた、「恐れてはならない、おののいてはならない。いくさびとを皆、率い、立って、アイに攻め上りなさい。わたしはアイの王とその民、その町、その地をあなたの手に授ける。
6002 06 8 2 あなたは、さきにエリコとその王にしたとおり、アイとその王とにしなければならない。ただし、ぶんどり物と家畜とは戦利品としてあなたがたのものとすることができるであろう。あなたはまず、町のうしろに伏兵を置きなさい」。
6003 06 8 3 ヨシュアは立って、すべてのいくさびとと共に、アイに攻め上ろうとして、まず大勇士三万人を選び、それを夜のうちにつかわした。
6004 06 8 4 ヨシュアは彼らに命じて言った、「あなたがたは町に向かって、町のうしろに伏せていなければならない。町を遠く離れないで、みな備えをしていなければならない。
6005 06 8 5 わたしとわたしに従う民とは皆共に、町に攻め寄せよう。そして彼らが前のようにわれわれにむかって出てくるとき、われわれは彼らの前から逃げるであろう。
6006 06 8 6 そうすれば彼らはわれわれを追って出てくるであろうから、われわれはついに彼らを町からおびき出すことができる。彼らは言うであろう、『この人々はまた前のように、われわれの前から逃げていく』。こうしてわれわれは彼らの前から逃げるであろう。
6007 06 8 7 その時、あなたがたは伏せている所から立ち上がって、町を取らなければならない。あなたがたの神、主がそれをあなたがたの手に与えられるからである。
6008 06 8 8 あなたがたが、町を取ったならば、町に火を放ち、主が命じられたようにしなければならない。わたしはこう、あなたがたに命じるのである」。
6009 06 8 9 そうしてヨシュアが彼らをつかわしたので、彼らはアイの西方、ベテルとアイの間の待ち伏せする場所に行って身を伏せた。ヨシュアはその夜、民の中に宿った。
6010 06 8 10 ヨシュアは明くる朝、早く起きて、民を集め、イスラエルの長老たちと共に、民に先立って、アイに上っていった。
6011 06 8 11 彼と共にいたいくさびとたちもみな上っていって、町の前に近づき、アイの北に陣を取った。彼らとアイの間には、一つの谷があった。
6012 06 8 12 ヨシュアはおおよそ五千人をとって、町の西方、ベテルとアイの間に、伏せておいた。
6013 06 8 13 こうして民の主力を町の北におき、しんがりを町の西においた。ヨシュアはその夜、谷の中で宿った。
6014 06 8 14 アイの王はこれを見て、すべての民と共に、急いで、早く起き、アラバに行く下り坂に進み出て、イスラエルと戦った。しかし、王は町のうしろに、すきをうかがう伏兵のおることを知らなかった。
6015 06 8 15 ヨシュアはイスラエルのすべての人々と共に、彼らに打ち破られたふりをして、荒野の方向へ逃げだしたので、
6016 06 8 16 その町の民はみな呼ばわり集まって彼らのあとを追い、ヨシュアのあとを追って町からおびき出され、
6017 06 8 17 アイにもベテルにも残っているものはひとりもなく、みな出てイスラエルのあとを追い、町を開け放して、イスラエルのあとを追った。
6018 06 8 18 その時、主はヨシュアに言われた、「あなたの手にあるなげやりを、アイの方にさし伸べなさい。わたしはその町をあなたの手に与えるであろう」。そこでヨシュアが手にしていたなげやりを、アイの方にさし伸べると、
6019 06 8 19 伏兵はたちまちその場所から立ち上がり、ヨシュアが手をのべると同時に、走って町に入り、それを取って、ただちに町に火をかけた。
6020 06 8 20 それでアイの人々が、うしろをふり返って見ると、町の焼ける煙が天に立ちのぼっていたので、こちらへもあちらへも逃げるすべがなかった。荒野へ逃げていった民も身をかえして、追ってきた者に迫った。
6021 06 8 21 ヨシュアとすべてのイスラエルびとは、伏兵が町を取り、町の焼ける煙が立ち上るのを見て、身をかえしてアイの人々を撃った。
6022 06 8 22 また町を取ったものは町を出て彼らに向かったので、彼らは、こちらとあちらとからイスラエルの中にはさまれた。こうしてイスラエルびとが彼らを撃ったので、生き残ったもの、逃げおおせたものは、ひとりもなかった。
6023 06 8 23 そしてアイの王を生けどりにして、ヨシュアのもとへ連れてきた。
6024 06 8 24 イスラエルびとは、荒野に追撃してきたアイの住民をことごとく野で殺し、つるぎをもってひとりも残さず撃ち倒してのち、皆アイに帰り、つるぎをもってその町を撃ち滅ぼした。
6025 06 8 25 その日アイの人々はことごとく倒れた。その数は男女あわせて一万二千人であった。
6026 06 8 26 ヨシュアはアイの住民をことごとく滅ぼしつくすまでは、なげやりをさし伸べた手を引っこめなかった。
6027 06 8 27 ただし、その町の家畜および、ぶんどり品はイスラエルびとが自分たちの戦利品として取った。主がヨシュアに命じられた言葉にしたがったのである。
6028 06 8 28 こうしてヨシュアはアイを焼いて、永久に荒塚としたが、それは今日まで荒れ地となっている。
6029 06 8 29 ヨシュアはまた、アイの王を夕方まで木に掛けてさらし、日の入るころ、命じて、その死体を木から取りおろし、町の門の入口に投げすて、その上に石の大塚を積み上げさせたが、それは今日まで残っている。
6030 06 8 30 そしてヨシュアはエバル山にイスラエルの神、主のために一つの祭壇を築いた。
6031 06 8 31 これは主のしもべモーセがイスラエルの人々に命じたことにもとづき、モーセの律法の書にしるされているように、鉄の道具を当てない自然のままの石の祭壇であって、人々はその上で、主に燔祭をささげ、酬恩祭を供えた。
6032 06 8 32 その所で、ヨシュアはまたモーセの書きしるした律法を、イスラエルの人々の前で、石に書き写した。
6033 06 8 33 こうしてすべてのイスラエルびとは、本国人も、寄留の他国人も、長老、つかさびと、さばきびとと共に、主の契約の箱をかくレビびとである祭司たちの前で、箱のこなたとかなたに分れて、半ばはゲリジム山の前に、半ばはエバル山の前に立った。これは主のしもべモーセがさきに命じたように、イスラエルの民を祝福するためであった。
6034 06 8 34 そして後、ヨシュアはすべての律法の書にしるされている所にしたがって、祝福と、のろいとに関する律法の言葉をことごとく読んだ。
6035 06 8 35 モーセが命じたすべての言葉のうち、ヨシュアがイスラエルの全会衆および女と子どもたち、ならびにイスラエルのうちに住む寄留の他国人の前で、読まなかったものは一つもなかった。
6036 06 9 1 さて、ヨルダンの西側の、山地、平地、およびレバノンまでの大海の沿岸に住むもろもろの王たち、すなわちヘテびと、アモリびと、カナンびと、ペリジびと、ヒビびと、エブスびとの王たちは、これを聞いて、
6037 06 9 2 心を合わせ、相集まって、ヨシュアおよびイスラエルと戦おうとした。
6038 06 9 3 しかし、ギベオンの住民たちは、ヨシュアがエリコとアイにおこなったことを聞いて、
6039 06 9 4 自分たちも策略をめぐらし、行って食料品を準備し、古びた袋と、古びて破れたのを繕ったぶどう酒の皮袋とを、ろばに負わせ、
6040 06 9 5 繕った古ぐつを足にはき、古びた着物を身につけた。彼らの食料のパンは、みなかわいて、砕けていた。
6041 06 9 6 彼らはギルガルの陣営のヨシュアの所にきて、彼とイスラエルの人々に言った、「われわれは遠い国からまいりました。それで今われわれと契約を結んでください」。
6042 06 9 7 しかし、イスラエルの人々はそのヒビびとたちに言った、「あなたがたはわれわれのうちに住んでいるのかも知れないから、われわれはどうしてあなたがたと契約が結べましょう」。
6043 06 9 8 彼らはヨシュアに言った、「われわれはあなたのしもべです」。ヨシュアは彼らに言った、「あなたがたはだれですか。どこからきたのですか」。
6044 06 9 9 彼らはヨシュアに言った、「しもべどもはあなたの神、主の名のゆえに、ひじょうに遠い国からまいりました。われわれは主の名声、および主がエジプトで行われたすべての事を聞き、
6045 06 9 10 また主がヨルダンの向こう側にいたアモリびとのふたりの王、すなわちヘシボンの王シホン、およびアシタロテにおったバシャンの王オグに行われたすべてのことを聞いたからです。
6046 06 9 11 それで、われわれの長老たち、および国の住民はみなわれわれに言いました、『おまえたちは旅路の食料を手に携えていって、彼らに会って言いなさい、「われわれはあなたがたのしもべです。それで今われわれと契約を結んでください」』。
6047 06 9 12 ここにあるこのパンは、あなたがたの所に来るため、われわれが出立する日に、おのおの家から、まだあたたかなのを旅の食料として準備したのですが、今はもうかわいて砕けています。
6048 06 9 13 またぶどう酒を満たしたこれらの皮袋も、新しかったのですが、破れました。われわれのこの着物も、くつも、旅路がひじょうに長かったので、古びてしまいました」。
6049 06 9 14 そこでイスラエルの人々は彼らの食料品を共に食べ、主のさしずを求めようとはしなかった。
6050 06 9 15 そしてヨシュアは彼らと和を講じ、契約を結んで、彼らを生かしておいた。会衆の長たちは彼らに誓いを立てた。
6051 06 9 16 契約を結んで三日の後に、彼らはその人々が近くの人々で、自分たちのうちに住んでいるということを聞いた。
6052 06 9 17 イスラエルの人々は進んで、三日目にその町々に着いた。その町々とは、ギベオン、ケピラ、ベエロテおよびキリアテ・ヤリムであった。
6053 06 9 18 ところで会衆の長たちが、すでにイスラエルの神、主をさして彼らに誓いを立てていたので、イスラエルの人々は彼らを殺さなかった。そこで会衆はみな、長たちにむかってつぶやいた。
6054 06 9 19 しかし、長たちは皆、全会衆に言った、「われわれはイスラエルの神、主をさして彼らに誓った。それゆえ今、彼らに触れてはならない。
6055 06 9 20 われわれは、こうして彼らを生かしておこう。そうすれば、われわれが彼らに立てた誓いのゆえに、怒りがわれわれに臨むことはないであろう」。
6056 06 9 21 長たちはまた人々に「彼らを生かしておこう」と言ったので、彼らはついに、全会衆のために、たきぎを切り、水をくむものとなった。長たちが彼らに言ったとおりである。
6057 06 9 22 ヨシュアは彼らを呼び寄せて言った、「あなたがたは、われわれのうちに住みながら、なぜ『われわれはあなたがたからは遠く離れている』と言って、われわれをだましたのか。
6058 06 9 23 それであなたがたは今のろわれ、奴隷となってわたしの神の家のために、たきぎを切り、水をくむものが、絶えずあなたがたのうちから出るであろう」。
6059 06 9 24 彼らはヨシュアに答えて言った、「あなたの神、主がそのしもべモーセに、この地をことごとくあなたがたに与え、この地に住む民をことごとくあなたがたの前から滅ぼし去るようにと、お命じになったことを、しもべどもは明らかに伝え聞きましたので、あなたがたのゆえに、命が危いと、われわれは非常に恐れて、このことをしたのです。
6060 06 9 25 われわれは、今、あなたの手のうちにあります。われわれにあなたがして良いと思い、正しいと思うことをしてください」。
6061 06 9 26 そこでヨシュアは、彼らにそのようにし、彼らをイスラエルの人々の手から救って殺させなかった。
6062 06 9 27 しかし、ヨシュアは、その日、彼らを、会衆のため、また主の祭壇のため、主が選ばれる場所で、たきぎを切り、水をくむ者とした。これは今日までつづいている。
6063 06 10 1 エルサレムの王アドニゼデクは、ヨシュアがアイを攻め取って、それを全く滅ぼし、さきにエリコとその王とにしたように、アイとその王にもしたこと、またギベオンの住民が、イスラエルと和を講じて、そのうちにおることを聞き、
6064 06 10 2 大いに恐れた。それは、ギベオンが大きな町であって、王の都にもひとしいものであり、またアイより大きくて、そのうちの人々が、すべて強かったからである。
6065 06 10 3 それでエルサレムの王アドニゼデクは、ヘブロンの王ホハム、ヤルムテの王ピラム、ラキシの王ヤピア、およびエグロンの王デビルに人をつかわして言った、
6066 06 10 4 「わたしの所に上ってきて、わたしを助けてください。われわれはギベオンを撃ちましょう。ギベオンはヨシュアおよびイスラエルの人々と和を講じたからです」。
6067 06 10 5 アモリびとの五人の王、すなわちエルサレムの王、ヘブロンの王、ヤルムテの王、ラキシの王、およびエグロンの王は兵を集め、そのすべての軍勢を率いて上ってきて、ギベオンに向かって陣を取り、それを攻めて戦った。
6068 06 10 6 ギベオンの人々は、ギルガルの陣営に人をつかわし、ヨシュアに言った、「あなたの手を引かないで、しもべどもを助けてください。早く、われわれの所に上ってきて、われわれを救い、助けてください。山地に住むアモリびとの王たちがみな集まって、われわれを攻めるからです」。
6069 06 10 7 そこでヨシュアはすべてのいくさびとと、すべての大勇士を率いて、ギルガルから上って行った。
6070 06 10 8 その時、主はヨシュアに言われた、「彼らを恐れてはならない。わたしが彼らをあなたの手にわたしたからである。彼らのうちには、あなたに当ることのできるものは、ひとりもないであろう」。
6071 06 10 9 ヨシュアは、ギルガルから、よもすがら進みのぼって、にわかに彼らに攻めよせたところ、
6072 06 10 10 主は彼らを、イスラエルの前に、恐れあわてさせられたので、イスラエルはギベオンで彼らをおびただしく撃ち殺し、ベテホロンの上り坂をとおって逃げる彼らを、アゼカとマッケダまで追撃した。
6073 06 10 11 彼らがイスラエルの前から逃げ走って、ベテホロンの下り坂をおりていた時、主は天から彼らの上に大石を降らし、アゼカにいたるまでもそうされたので、多くの人々が死んだ。イスラエルの人々がつるぎをもって殺したものよりも、雹に打たれて死んだもののほうが多かった。
6074 06 10 12 主がアモリびとをイスラエルの人々にわたされた日に、ヨシュアはイスラエルの人々の前で主にむかって言った、「日よ、ギベオンの上にとどまれ、月よ、アヤロンの谷にやすらえ」。
6075 06 10 13 民がその敵を撃ち破るまで、日はとどまり、月は動かなかった。これはヤシャルの書にしるされているではないか。日が天の中空にとどまって、急いで没しなかったこと、おおよそ一日であった。
6076 06 10 14 これより先にも、あとにも、主がこのように人の言葉を聞きいれられた日は一日もなかった。主がイスラエルのために戦われたからである。
6077 06 10 15 こうしてヨシュアはイスラエルのすべての人と共にギルガルの陣営に帰った。
6078 06 10 16 かの五人の王たちは逃げて行って、マッケダのほら穴に隠れたが、
6079 06 10 17 五人の王たちがマッケダのほら穴にかくれているのが見つかったと、ヨシュアに告げる者があったので、
6080 06 10 18 ヨシュアは言った、「ほら穴の口に大石をころがし、そのそばに人を置いて、守らせなさい。
6081 06 10 19 ただし、あなたがたは、そこにとどまらないで、敵のあとを追い、そのしんがりを撃ち、彼らをその町にはいらせてはならない。あなたがたの神、主が彼らをあなたがたの手に渡されたからである」。
6082 06 10 20 ヨシュアとイスラエルの人々は、大いに彼らを撃ち殺し、ついに彼らを滅ぼしつくしたが、彼らのうちのがれて生き残った者どもは、堅固な町々に逃げこんだので、
6083 06 10 21 民はみな安らかにマッケダの陣営のヨシュアのもとに帰ってきたが、イスラエルの人々にむかって舌を鳴らす者はひとりもなかった。
6084 06 10 22 その時ヨシュアは言った、「ほら穴の口を開いて、ほら穴から、かの五人の王たちを、わたしのもとにひき出しなさい」。
6085 06 10 23 やがて、そのようにして、かの五人の王たち、すなわち、エルサレムの王、ヘブロンの王、ヤルムテの王、ラキシの王、およびエグロンの王を、ほら穴から彼のもとにひき出した。
6086 06 10 24 この王たちをヨシュアのもとにひき出した時、ヨシュアはイスラエルのすべての人々を呼び寄せ、自分と共に行ったいくさびとの長たちに言った、「近寄って、この王たちのくびに足をかけなさい」。そこで近寄って、その王たちのくびに足をかけたので、
6087 06 10 25 ヨシュアは彼らに言った、「恐れおののいてはならない。強くまた雄々しくあれ。あなたがたが攻めて戦うすべての敵には、主がこのようにされるのである」。
6088 06 10 26 そして後ヨシュアは彼らを撃って死なせ、五本の木にかけて、夕暮れまで木の上にさらして置いたが、
6089 06 10 27 日の入るころになって、ヨシュアが命じたので、これを木からおろし、彼らが隠れていたほら穴に投げ入れ、ほら穴の口に大石を置いた。これは今日まで残っている。
6090 06 10 28 その日ヨシュアはマッケダを取り、つるぎをもって、それと、その王とを撃ち、その中のすべての人を、ことごとく滅ぼして、ひとりも残さず、エリコの王にしたように、マッケダの王にもした。
6091 06 10 29 こうしてヨシュアはイスラエルのすべての人を率いて、マッケダからリブナに進み、リブナを攻めて戦った。
6092 06 10 30 主が、それと、その王をも、イスラエルの手に渡されたので、つるぎをもって、それと、その中のすべての人を撃ち滅ぼして、ひとりもその中に残さず、エリコの王にしたように、その王にもした。
6093 06 10 31 ヨシュアはまたイスラエルのすべての人を率いて、リブナからラキシに進み、これに向かって陣をしき、攻め戦った。
6094 06 10 32 主がラキシをイスラエルの手に渡されたので、ふつか目にこれを取り、つるぎをもって、それと、その中のすべての人を撃ち滅ぼした。すべてリブナにしたとおりであった。
6095 06 10 33 その時、ゲゼルの王ホラムが、ラキシを助けるために上ってきたので、ヨシュアは彼と、その民とを撃ち滅ぼして、ついにひとりも残さなかった。
6096 06 10 34 ヨシュアはまたイスラエルのすべての人を率いて、ラキシからエグロンに進み、これに向かって陣をしき、攻め戦った。
6097 06 10 35 その日これを取り、つるぎをもって、これを撃ち、その中のすべての人を、ことごとくその日に滅ぼした。すべてラキシにしたとおりであった。
6098 06 10 36 ヨシュアはまたイスラエルのすべての人を率いて、エグロンからヘブロンに進み上り、これを攻めて戦い、
6099 06 10 37 それを取って、それと、その王、およびそのすべての町々と、その中のすべての人を、つるぎをもって撃ち滅ぼし、ひとりも残さなかった。すべてエグロンにしたとおりであった。すなわち、それとその中のすべての人を、ことごとく滅ぼした。
6100 06 10 38 またヨシュアはイスラエルのすべての人を率いて、デビルへひきかえし、これを攻めて戦い、
6101 06 10 39 それと、その王、およびそのすべての町々を取り、つるぎをもってそれを撃ち、その中のすべての人を、ことごとく滅ぼし、ひとりも残さなかった。彼がデビルと、その王にしたことは、ヘブロンにしたとおりであり、またリブナと、その王にしたとおりであった。
6102 06 10 40 こうしてヨシュアはその地の全部、すなわち、山地、ネゲブ、平地、および山腹の地と、そのすべての王たちを撃ち滅ぼして、ひとりも残さず、すべて息のあるものは、ことごとく滅ぼした。イスラエルの神、主が命じられたとおりであった。
6103 06 10 41 ヨシュアはカデシ・バルネアからガザまでの国々、およびゴセンの全地を撃ち滅ぼして、ギベオンにまで及んだ。
6104 06 10 42 イスラエルの神、主がイスラエルのために戦われたので、ヨシュアはこれらすべての王たちと、その地をいちどきに取った。
6105 06 10 43 そしてヨシュアはイスラエルのすべての人を率いて、ギルガルの陣営に帰った。
6106 06 11 1 ハゾルの王ヤビンは、これを聞いて、マドンの王ヨバブ、シムロンの王、およびアクサフの王、
6107 06 11 2 また北の山地、キンネロテの南のアラバ、平地、西の方のドルの高地におる王たち、
6108 06 11 3 すなわち、東西のカナンびと、アモリびと、ヘテびと、ペリジびと、山地のエブスびと、ミヅパの地にあるヘルモンのふもとのヒビびとに使者をつかわした。
6109 06 11 4 そして彼らは、そのすべての軍勢を率いて出てきた。その大軍は浜べの砂のように数多く、馬と戦車も、ひじょうに多かった。
6110 06 11 5 これらの王たちはみな軍を集め、進んできて、共にメロムの水のほとりに陣をしき、イスラエルと戦おうとした。
6111 06 11 6 その時、主はヨシュアに言われた、「彼らのゆえに恐れてはならない。あすの今ごろ、わたしは彼らを皆イスラエルに渡して、ことごとく殺させるであろう。あなたは彼らの馬の足の筋を切り、戦車を火で焼かなければならない」。
6112 06 11 7 そこでヨシュアは、すべてのいくさびとを率いて、にわかにメロムの水のほとりにおし寄せ、彼らを襲った。
6113 06 11 8 主は彼らをイスラエルの手に渡されたので、これを撃ち破り、大シドンおよびミスレポテ・マイムまで、これを追撃し、東の方では、ミヅパの谷まで彼らを追い、ついにひとりも残さず撃ちとった。
6114 06 11 9 ヨシュアは主が命じられたとおりに彼らに行い、彼らの馬の足の筋を切り、戦車を火で焼いた。
6115 06 11 10 その時、ヨシュアはひきかえして、ハゾルを取り、つるぎをもって、その王を撃った。ハゾルは昔、これらすべての国々の盟主であったからである。
6116 06 11 11 彼らはつるぎをもって、その中のすべての人を撃ち、ことごとくそれを滅ぼし、息のあるものは、ひとりも残さなかった。そして火をもってハゾルを焼いた。
6117 06 11 12 ヨシュアはこれらの王たちのすべての町々、およびその諸王を取り、つるぎをもって、これを撃ち、ことごとく滅ぼした。主のしもべモーセが命じたとおりであった。
6118 06 11 13 ただし、丘の上に立っている町々をイスラエルは焼かなかった。ヨシュアはただハゾルだけを焼いた。
6119 06 11 14 これらの町のすべてのぶんどり物と家畜とは、イスラエルの人々が戦利品として取ったが、人はみなつるぎをもって、滅ぼし尽し、息のあるものは、ひとりも残さなかった。
6120 06 11 15 主がそのしもべモーセに命じられたように、モーセはヨシュアに命じたが、ヨシュアはそのとおりにおこなった。すべて主がモーセに命じられたことで、ヨシュアが行わなかったことは一つもなかった。
6121 06 11 16 こうしてヨシュアはその全地、すなわち、山地、ネゲブの全地、ゴセンの全地、平地、アラバならびにイスラエルの山地と平地を取り、
6122 06 11 17 セイルへ上って行く道のハラク山から、ヘルモン山のふもとのレバノンの谷にあるバアルガデまでを獲た。そしてそれらの王たちを、ことごとく捕えて、撃ち殺した。
6123 06 11 18 ヨシュアはこれらすべての王たちと、長いあいだ戦った。
6124 06 11 19 ギベオンの住民ヒビびとのほかには、イスラエルの人々と和を講じた町は一つもなかった。町々はみな戦争をして、攻め取ったものであった。
6125 06 11 20 彼らが心をかたくなにして、イスラエルに攻めよせたのは、もともと主がそうさせられたので、彼らがのろわれた者となり、あわれみを受けず、ことごとく滅ぼされるためであった。主がモーセに命じられたとおりである。
6126 06 11 21 その時、ヨシュアはまた行って、山地、ヘブロン、デビル、アナブ、ユダのすべての山地、イスラエルのすべての山地から、アナクびとを断ち、彼らの町々をも共に滅ぼした。
6127 06 11 22 それでイスラエルの人々の地に、アナクびとは、ひとりもいなくなった。ただガサ、ガテ、アシドドには、少し残っているだけであった。
6128 06 11 23 こうしてヨシュアはその地を、ことごとく取った。すべて主がモーセに告げられたとおりである。そしてヨシュアはイスラエルの部族にそれぞれの分を与えて、嗣業とさせた。こうしてその地に戦争はやんだ。
6129 06 12 1 さてヨルダンの向こう側、日の出の方で、アルノンの谷からヘルモン山まで、および東アラバの全土のうちで、イスラエルの人々が撃ち滅ぼして地を取った国の王たちは、次のとおりである。
6130 06 12 2 まず、アモリびとの王シホン。彼はヘシボンに住み、その領地は、アルノンの谷のほとりにあるアロエル、および谷の中の町から、ギレアデの半ばを占めて、アンモンびととの境であるヤボク川に達し、
6131 06 12 3 東の方ではアラバをキンネレテの湖まで占め、またアラバの海すなわち塩の海の東におよび、ベテエシモテの道を経て、南はピスガの山のふもとに達した。
6132 06 12 4 次にレパイムの生き残りのひとりであったバシャンの王オグ。彼はアシタロテとエデレイとに住み、
6133 06 12 5 ヘルモン山、サレカ、およびバシャンの全土を領したので、ゲシュルびと、およびマアカびとと境を接し、またギレアデの半ばを領したので、ヘシボンの王シホンと境を接していた。
6134 06 12 6 主のしもべモーセと、イスラエルの人々とが、彼らを撃ち滅ぼし、そして主のしもべモーセは、これらの地を、ルベンびと、ガドびと、およびマナセの半部族に与えて所有とさせた。
6135 06 12 7 ヨルダンのこちら側、西の方にあって、レバノンの谷にあるバアルガデから、セイルへ上って行く道のハラク山までの間で、ヨシュアと、イスラエルの人々とが、撃ち滅ぼした国の王たちは、次のとおりである。ヨシュアは彼らの地をイスラエルの部族に、それぞれの分を与えて嗣業とさせた。
6136 06 12 8 これは、山地、平地、アラバ、山腹、荒野、およびネゲブであって、ヘテびと、アモリびと、カナンびと、ペリジびと、ヒビびと、エブスびとの所領であった。
6137 06 12 9 エリコの王ひとり。ベテルのほとりのアイの王ひとり。
6138 06 12 10 エルサレムの王ひとり。ヘブロンの王ひとり。
6139 06 12 11 ヤルムテの王ひとり。ラキシの王ひとり。
6140 06 12 12 エグロンの王ひとり。ゲゼルの王ひとり。
6141 06 12 13 デビルの王ひとり。ゲデルの王ひとり。
6142 06 12 14 ホルマの王ひとり。アラデの王ひとり。
6143 06 12 15 リブナの王ひとり。アドラムの王ひとり。
6144 06 12 16 マッケダの王ひとり。ベテルの王ひとり。
6145 06 12 17 タップアの王ひとり。ヘペルの王ひとり。
6146 06 12 18 アペクの王ひとり。シャロンの王ひとり。
6147 06 12 19 マドンの王ひとり。ハゾルの王ひとり。
6148 06 12 20 シムロン・メロンの王ひとり。アクサフの王ひとり。
6149 06 12 21 タアナクの王ひとり。メギドの王ひとり。
6150 06 12 22 ケデシの王ひとり。カルメルのヨクネアムの王ひとり。
6151 06 12 23 ドルの高地におるドルの王ひとり。ガリラヤのゴイイムの王ひとり。
6152 06 12 24 テルザの王ひとり。合わせて三十一王である。
6153 06 13 1 さてヨシュアは年が進んで老いたが、主は彼に言われた、「あなたは年が進んで老いたが、取るべき地は、なお多く残っている。
6154 06 13 2 その残っている地は、次のとおりである。ペリシテびとの全地域、ゲシュルびとの全土、
6155 06 13 3 エジプトの東のシホルから北にのびて、カナンびとに属するといわれるエクロンの境までの地、ペリシテびとの五人の君たちの地、すなわち、ガザ、アシドド、アシケロン、ガテ、およびエクロン。
6156 06 13 4 南のアビびとの地、カナンびとの全地、シドンびとに属するメアラからアモリびとの境にあるアペクまでの部分。
6157 06 13 5 またヘルモン山のふもとのバアルガデからハマテの入口に至るゲバルびとの地、およびレバノンの東の全土。
6158 06 13 6 レバノンからミスレポテ・マイムまでの山地のすべての民、すなわちシドンびとの全土。わたしはみずから彼らをイスラエルの人々の前から追い払うであろう。わたしが命じたように、あなたはその地をイスラエルに分け与えて、嗣業とさせなければならない。
6159 06 13 7 すなわち、その地を九つの部族と、マナセの半部族とに分け与えて、嗣業とさせなければならない」。
6160 06 13 8 マナセの他の半部族と共に、ルベンびとと、ガドびととは、ヨルダンの向こう側、東の方で、その嗣業をモーセから受けた。主のしもべモーセが、彼らに与えたのは、
6161 06 13 9 アルノンの谷のほとりにあるアロエル、および谷の中にある町から、デボンとメデバの間にある高原のすべての地。
6162 06 13 10 ヘシボンで世を治めた、アモリびとの王シホンのすべての町々を含めて、アンモンの人々の境までの地。
6163 06 13 11 ギレアデと、ゲシュルびと、ならびにマアカびとの領地、ヘルモン山の全土、サルカまでのバシャン全体。
6164 06 13 12 アシタロテとエデレイで世を治めたバシャンの王オグの全国。オグはレパイムの生き残りであった。モーセはこれらを撃って、追い払った。
6165 06 13 13 ただし、イスラエルの人々は、ゲシュルびとと、マアカびとを追い払わなかった。ゲシュルびとと、マアカびとは、今日までイスラエルのうちに住んでいる。
6166 06 13 14 ただレビの部族には、ヨシュアはなんの嗣業をも与えなかった。イスラエルの神、主の火祭が彼らの嗣業であるからである。主がヨシュアに言われたとおりである。
6167 06 13 15 モーセはルベンびとの部族に、その家族にしたがって嗣業を与えたが、
6168 06 13 16 その領域はアルノンの谷のほとりにあるアロエル、および谷の中にある町からメデバのほとりのすべての高原、
6169 06 13 17 ヘシボンおよびその高原のすべての町々、デボン、バモテ・バアル、ベテ・バアル・メオン、
6170 06 13 18 ヤハヅ、ケデモテ、メパアテ、
6171 06 13 19 キリアタイム、シブマ、谷の中の山にあるゼレテ・シャハル、
6172 06 13 20 ベテペオル、ピスガの山腹、ベテエシモテ、
6173 06 13 21 すなわち高原のすべての町々と、ヘシボンで世を治めたアモリびとの王シホンの全国に及んだ。モーセはシホンを、ミデアンのつかさたちエビ、レケム、ツル、ホルおよびレバと共に撃ち殺した。これらはみなシホンの諸侯であって、その地に住んでいた者である。
6174 06 13 22 イスラエルの人々はまたベオルの子、占い師バラムをもつるぎにかけて、そのほかに殺した者どもと共に殺した。
6175 06 13 23 ルベンびとの領域はヨルダンを境とした。これはルベンびとが、その家族にしたがって獲た嗣業であって、その町々と村々とを含む。
6176 06 13 24 モーセはまたガドの部族、ガドの子孫にも、その家族にしたがって、嗣業を与えたが、
6177 06 13 25 その領域はヤゼル、ギレアデのすべての町々、アンモンびとの地の半ばで、ラバの東のアロエルまでの地。
6178 06 13 26 ヘシボンからラマテ・ミゾパまでの地、およびベトニム、マハナイムからデビルの境までの地。
6179 06 13 27 谷の中ではベテハラム、ベテニムラ、スコテ、およびザポンなど、ヘシボンの王シホンの国の残りの部分。ヨルダンを境として、ヨルダンの東側、キンネレテの湖の南の端までの地。
6180 06 13 28 これはガドびとが、その家族にしたがって獲た嗣業であって、その町々と村々とを含む。
6181 06 13 29 モーセはまたマナセの半部族にも、嗣業を与えたが、それはマナセの半部族が、その家族にしたがって与えられたものである。
6182 06 13 30 その領域はマハナイムからバシャンの全土に及び、バシャンの王オグの全国、バシャンにあるヤイルのすべての町々、すなわちその六十の町。
6183 06 13 31 またギレアデの半ば、バシャンのオグの国の町であるアシタロテとエデレイ。これらはマナセの子マキルの子孫に与えられた。すなわちマキルの子孫の半ばが、その家族にしたがって、それを獲た。
6184 06 13 32 これらはヨルダンの向こう側、エリコの東のモアブの平野で、モーセが分け与えた嗣業である。
6185 06 13 33 ただし、レビの部族には、モーセはなんの嗣業をも与えなかった。イスラエルの神、主がその嗣業だからである。主がモーセに言われたとおりである。
6186 06 14 1 イスラエルの人々が、カナンの地で受けた嗣業の地は、次のとおりである。すなわち、祭司エレアザル、ヌンの子ヨシュア、およびイスラエルの人々の部族の首長たちが、これを彼らに分かち、
6187 06 14 2 主がモーセによって命じられたように、くじによって、これを九つの部族と、半ばの部族とに、嗣業として与えた。
6188 06 14 3 これはヨルダンの向こう側で、モーセがすでに他の二つの部族と、半ばの部族とに、嗣業を与えていたからである。ただしレビびとには、彼らの中で嗣業を与えず、
6189 06 14 4 ヨセフの子孫が、マナセと、エフライムの二つの部族となったからである。レビびとには土地の分け前を与えず、ただ、その住むべき町々および、家畜と持ち物とを置くための放牧地を与えたばかりであった。
6190 06 14 5 イスラエルの人々は、主がモーセに命じられたようにおこなって、その地を分けた。
6191 06 14 6 時に、ユダの人々がギルガルのヨシュアの所にきて、ケニズびとエフンネの子カレブが、ヨシュアに言った、「主がカデシ・バルネアで、あなたとわたしとについて、神の人モーセに言われたことを、あなたはごぞんじです。
6192 06 14 7 主のしもべモーセが、この地を探るために、わたしをカデシ・バルネアからつかわした時、わたしは四十歳でした。そしてわたしは、自分の信ずるところを復命しました。
6193 06 14 8 しかし、共に上って行った兄弟たちは、民の心をくじいてしまいましたが、わたしは全くわが神、主に従いました。
6194 06 14 9 その日モーセは誓って、言いました、『おまえの足で踏んだ地は、かならず長くおまえと子孫との嗣業となるであろう。おまえが全くわが神、主に従ったからである』。
6195 06 14 10 主がこの言葉をモーセに語られた時からこのかた、イスラエルが荒野に歩んだ四十五年の間、主は言われたように、わたしを生きながらえさせてくださいました。わたしは今日すでに八十五歳ですが、
6196 06 14 11 今もなお、モーセがわたしをつかわした日のように、健やかです。わたしの今の力は、あの時の力に劣らず、どんな働きにも、戦いにも堪えることができます。
6197 06 14 12 それで主があの日語られたこの山地を、どうか今、わたしにください。あの日あなたも聞いたように、そこにはアナキびとがいて、その町々は大きく堅固です。しかし、主がわたしと共におられて、わたしはついには、主が言われたように、彼らを追い払うことができるでしょう」。
6198 06 14 13 そこでヨシュアはエフンネの子カレブを祝福し、ヘブロンを彼に与えて嗣業とさせた。
6199 06 14 14 こうしてヘブロンは、ケニズびとエフンネの子カレブの嗣業となって、今日に至っている。彼が全くイスラエルの神、主に従ったからである。
6200 06 14 15 ヘブロンの名は、もとはキリアテ・アルバといった。アルバは、アナキびとのうちの、最も大いなる人であった。こうしてこの地に戦争はやんだ。
6201 06 15 1 ユダの人々の部族が、その家族にしたがって、くじで獲た地は、南の方では、エドムの境に達し、南のはてにあるチンの荒野に及んでいた。
6202 06 15 2 その南の境は、塩の海の南の端の、入海から起り、
6203 06 15 3 アクラビムの坂の南に出てチンに進み、カデシ・バルネアの南から上って、ヘヅロンに進み、アダルに上っていって、カルカに回り、
6204 06 15 4 アヅモンに進んで、エジプトの川に達し、その境は海に至って尽きる。これが彼らの南の境である。
6205 06 15 5 東の境は塩の海であって、ヨルダンの川口に達する。北の方の境は、ヨルダンの川口の、入海から起り、
6206 06 15 6 上ってベテホグラに行き、ベテアラバの北を過ぎ、上ってルベンびとボハンの石に達し、
6207 06 15 7 またアコルの谷からデビルに上って、北におもむき、川の南にあるアドミムの坂に対するギルガルに向かって進み、エンシメシの水に達し、エンロゲルに至って尽きる。
6208 06 15 8 またその境はベンヒンノムの谷に沿って、エブスびとの地、すなわちエルサレムの南のわきに上り、ヒンノムの谷の西にある山の頂に上る。これはレパイムの谷の北の果にあるものである。
6209 06 15 9 その境は、この山の頂からネフトアの水の源に至り、その所からエフロン山の町々に及び、その境は曲ってバアラに達する。これは、すなわちキリアテ・ヤリムである。
6210 06 15 10 その境は、バアラから西に回って、セイル山に及び、ヤリム山、すなわちケサロンの北のわきを経て、ベテシメシに下り、テムナに進み、
6211 06 15 11 エクロンの北の丘のわきに出て、シッケロンに曲り、バアラ山に進み、ヤブネルに達し、海に至って尽きる。
6212 06 15 12 また西の境は大海であって、海岸を境とした。これがユダの人々の、その家族にしたがって獲た地の四方の境である。
6213 06 15 13 ヨシュアは、主に命じられたように、エフンネの子カレブに、ユダの人々のうちで、キリアテ・アルバ、すなわちヘブロンを与えて、その分とさせた。アルバはアナクの父であった。
6214 06 15 14 カレブはその所から、アナクの子三人を追い払った。すなわち、セシャイ、アヒマン、およびタルマイであって、アナクから出たものである。
6215 06 15 15 そして彼はこの所からデビルに住む民の所に攻め上った。デビルの名は、もとはキリアテ・セペルといった。
6216 06 15 16 カレブは言った、「キリアテ・セペルを撃って、これを取る者には、わたしの娘アクサを妻として与えるであろう」。
6217 06 15 17 ケナズの子で、カレブの弟オテニエルがそれを取ったので、カレブは娘アクサを、妻として彼に与えた。
6218 06 15 18 彼女がとつぐ時、畑を父に求めるようにと、オテニエルに勧められた。そして彼女が、ろばから降りたので、カレブは彼女に、何を望むのかとたずねた。
6219 06 15 19 彼女は答えて言った、「わたしに贈り物をください。あなたはネゲブの地に、わたしをやられるのですから、泉をもください」。カレブは彼女に上の泉と下の泉とを与えた。
6220 06 15 20 ユダの人々の部族が、その家族にしたがって獲た嗣業は、次のとおりである。
6221 06 15 21 ユダの人々の部族が、南でエドムの境の方にもっていた遠くの町々は、カブジエル、エデル、ヤグル、
6222 06 15 22 キナ、デモナ、アダダ、
6223 06 15 23 ケデシ、ハゾル、イテナン、
6224 06 15 24 ジフ、テレム、ベアロテ、
6225 06 15 25 ハゾル・ハダッタ、ケリオテ・ヘヅロンすなわちハゾル、
6226 06 15 26 アマム、シマ、モラダ、
6227 06 15 27 ハザルガダ、ヘシモン、ベテペレテ、
6228 06 15 28 ハザル・シュアル、ベエルシバ、ビジョテヤ、
6229 06 15 29 バアラ、イイム、エゼム、
6230 06 15 30 エルトラデ、ケシル、ホルマ、
6231 06 15 31 チクラグ、マデマンナ、サンサンナ、
6232 06 15 32 レバオテ、シルヒム、アイン、リンモン。これらの町は合わせて二十九、ならびにそれに属する村々。
6233 06 15 33 平地では、エシタオル、ゾラ、アシナ、
6234 06 15 34 ザノア、エンガンニム、タップア、エナム、
6235 06 15 35 ヤルムテ、アドラム、ソコ、アゼカ、
6236 06 15 36 シャアライム、アデタイム、ゲデラ、ゲデロタイム。すなわち十四の町々と、それに属する村々。
6237 06 15 37 ゼナン、ハダシャ、ミグダルガデ、
6238 06 15 38 デラン、ミヅパ、ヨクテル、
6239 06 15 39 ラキシ、ボヅカテ、エグロン、
6240 06 15 40 カボン、ラマム、キテリシ、
6241 06 15 41 ゲデロテ、ベテダゴン、ナアマ、マッケダ。すなわち十六の町々と、それに属する村々。
6242 06 15 42 またリブナ、エテル、アシャン、
6243 06 15 43 イフタ、アシナ、ネジブ、
6244 06 15 44 ケイラ、アクジブ、マレシャ。すなわち九つの町々と、それに属する村々。
6245 06 15 45 エクロンと、その町々、および村々。
6246 06 15 46 エクロンから海まで、すべてアシドドのほとりにある町々、およびそれに属する村々。
6247 06 15 47 アシドドとその町々および村々。ガザとその町々および村々。エジプトの川と大海の海岸までが、その境であった。
6248 06 15 48 山地では、シャミル、ヤッテル、ソコ、
6249 06 15 49 ダンナ、キリアテ・サンナすなわちデビル、
6250 06 15 50 アナブ、エシテモ、アニム、
6251 06 15 51 ゴセン、ホロン、ギロ。すなわち十一の町々と、それに属する村々。
6252 06 15 52 アラブ、ドマ、エシャン、
6253 06 15 53 ヤニム、ベテタップア、アペカ、
6254 06 15 54 ホムタ、キリアテ・アルバすなわちヘブロン、ヂオル。すなわち九つの町々と、それに属する村々。
6255 06 15 55 マオン、カルメル、ジフ、ユッタ、
6256 06 15 56 エズレル、ヨクデアム、ザノア、
6257 06 15 57 カイン、ギベア、テムナ。すなわち十の町々と、それに属する村々。
6258 06 15 58 ハルホル、ベテズル、ゲドル、
6259 06 15 59 マアラテ、ベテアノテ、エルテコン。すなわち六つの町々と、それに属する村々。
6260 06 15 60 キリアテ・バアルすなわちキリアテ・ヤリム、ラバ。これらの二つの町とそれに属する村々。
6261 06 15 61 荒野では、ベテアラバ、ミデン、セカカ、
6262 06 15 62 ニブシャン、塩の町、エンゲデ。すなわち六つの町々と、それに属する村々。
6263 06 15 63 しかし、ユダの人々は、エルサレムの住民エブスびとを追い払うことができなかった。それでエブスびとは今日まで、ユダの人々と共にエルサレムに住んでいる。
6264 06 16 1 ヨセフの子孫が、くじによって獲た地の境は、エリコのほとりのヨルダン、すなわちエリコの水の東から起って、荒野に延び、エリコから山地に上っている荒野を経て、ベテルに至り、
6265 06 16 2 ベテルからルズにおもむき、アルキびとの領地であるアタロテに進み、
6266 06 16 3 西に下ってヤフレテびとの領地に達し、下ベテホロンの地域に及び、ゲゼルに達し、海に至って尽きる。
6267 06 16 4 こうしてヨセフの子孫のマナセと、エフライムとは、その嗣業を受けた。
6268 06 16 5 エフライムの子孫が、その家族にしたがって獲た地の境は、次のとおりである。彼らの嗣業の東の境は、アタロテ・アダルであって、上ベテホロンに達し、
6269 06 16 6 その境は、その所から海に及ぶ。北にはミクメタテがあり、東ではその境はタアナテシロで曲り、進んでヤノアの東に至り、
6270 06 16 7 ヤノアからアタロテとナアラに下り、エリコに達し、ヨルダンに至って尽きる。
6271 06 16 8 タップアからその境は西に進んで、カナの川に達し、海に至って尽きる。これはエフライムの子孫の部族が、その家族にしたがって獲た嗣業である。
6272 06 16 9 このほかにマナセの子孫の嗣業のうちにも、エフライムの子孫のために分け与えられた町々があって、そのすべての町々と、それに属する村々を獲た。
6273 06 16 10 ただし、ゲゼルに住むカナンびとを、追い払わなかったので、カナンびとは今日までエフライムの中に住み、奴隷となって追い使われている。
6274 06 17 1 マナセの部族が、くじによって獲た地は、次のとおりである。マナセはヨセフの長子であった。マナセの長子で、ギレアデの父であるマキルは、軍人であったので、ギレアデとバシャンを獲た。
6275 06 17 2 マナセの部族の他のものにも、その家族にしたがって、地を与えたが、それは、アビエゼル、ヘレク、アスリエル、シケム、ヘペル、セミダで、これらはヨセフの子マナセの男の子孫であって、その家族にしたがって、あげたものである。
6276 06 17 3 しかし、マナセの子マキル、その子ギレアデ、その子ヘペル、その子であったゼロペハデには、女の子だけで、男の子がなかった。女の子たちの名は、マヘラ、ノア、ホグラ、ミルカ、テルザといった。
6277 06 17 4 彼女たちは、祭司エレアザル、ヌンの子ヨシュアおよび、つかさたちの前に進み出て、「わたしたちの兄弟と同じように、わたしたちにも、嗣業を与えよと、主はモーセに命じおきになりました」と言ったので、ヨシュアは主の命にしたがって、彼らの父の兄弟たちと同じように、彼女たちにも嗣業を与えた。
6278 06 17 5 こうしてマナセはヨルダンの向こう側で、ギレアデとバシャンの地のほかに、なお十の部分を獲た。
6279 06 17 6 マナセの娘たちが、男の子らと共に、嗣業を獲たからである。ギレアデの地は、そのほかのマナセの子孫に分け与えられた。
6280 06 17 7 マナセの獲た地の境は、アセルからシケムの東のミクメタテに及び、その境は南に延びて、エンタップアの住民に達する。
6281 06 17 8 タップアの地はマナセに属していたが、マナセの境にあるタップアの町は、エフライムの子孫に属していた。
6282 06 17 9 またその境はカナの川に下って、川の南に至る。そこの町々はマナセの町々の中にあって、エフライムに属した。マナセの境は、川の北に沿って進み、海に達して尽きる。
6283 06 17 10 その川の南の地は、エフライムに属し、北はマナセに属する。海がその境となる。マナセは北はアセルに接し、東はイッサカルに接する。
6284 06 17 11 マナセはまたイッサカルとアセルの中に、ベテシャンとその村々、イブレアムとその村々、ドルの住民とその村々、エンドルの住民とその村々、タアナクの住民とその村々、メギドの住民とその村々を獲た。このうち第三のものは高地である。
6285 06 17 12 しかし、マナセの子孫は、これらの町々を取ることができなかったので、カナンびとは長くこの地に住み続けようとした。
6286 06 17 13 しかし、イスラエルの人々が強くなるにしたがって、カナンびとを使役するようになり、ことごとく追い払うことはしなかった。
6287 06 17 14 ヨセフの子孫はヨシュアに言った、「主が今まで、わたしを祝福されたので、わたしは数の多い民となったのに、あなたはなぜ、わたしの嗣業として、ただ一つのくじ、一つの分だけを、くださったのですか」。
6288 06 17 15 ヨシュアは彼らに言った、「もしあなたが数の多い民ならば、林に上っていって、そこで、ペリジびとやレパイムびとの地を自分で切り開くがよい。エフライムの山地が、あなたがたには狭いのだから」。
6289 06 17 16 ヨセフの子孫は答えた、「山地はわたしどもに十分ではありません。かつまた平地におるカナンびとは、ベテシャンとその村々におるものも、エズレルの谷におるものも、みな鉄の戦車を持っています」。
6290 06 17 17 ヨシュアはまたヨセフの家、すなわちエフライムとマナセに言った、「あなたは数の多い民で、大きな力をもっています。それでただ一つのくじでは足りません。
6291 06 17 18 山地をもあなたのものとしなければなりません。それは林ではあるが、切り開いて、向こうの端まで、自分のものとしなければなりません。カナンびとは鉄の戦車があって、強くはあるが、あなたはそれを追い払うことができます」。
6292 06 18 1 そこでイスラエルの人々の全会衆は、その地を征服したので、シロに集まり、そこに会見の幕屋を立てた。
6293 06 18 2 その時、イスラエルの人々のうちに、まだ嗣業を分かち取らない部族が、七つ残っていたので、
6294 06 18 3 ヨシュアはイスラエルの人々に言った、「あなたがたは、先祖の神、主が、あなたがたに与えられた地を取りに行くのを、いつまで怠っているのですか。
6295 06 18 4 部族ごとに三人ずつを出しなさい。わたしはその人々をつかわしましょう。彼らは立っていって、その地を行き巡り、おのおのの嗣業のために、それを図面にして、わたしのところへ持ってこなければならない。
6296 06 18 5 彼らはその地を七つの部分に分けなければならない。ユダは南のその領地にとどまり、ヨセフの家は北のその領地にとどまらなければならない。
6297 06 18 6 あなたがたは、その地を七つに分けて、図面にし、それをここに、わたしのところへ持ってこなければならない。わたしはここで、われわれの神、主の前に、あなたがたのために、くじを引くであろう。
6298 06 18 7 レビびとは、あなたがたのうちに何の分をも持たない。主の祭司たることが、彼らの嗣業だからである。またガドとルベンとマナセの半部族とは、ヨルダンの向こう側、東の方で、すでにその嗣業を受けた。それは主のしもべモーセが、彼らに与えたものである」。
6299 06 18 8 そこでその人々は立って行った。その地の図面を作るために出て行く人々に、ヨシュアは命じて言った、「あなたがたは行って、その地を行き巡り、それを図面にして、わたしのところに持って帰りなさい。わたしはシロで、主の前に、あなたがたのために、ここでくじを引きましょう」。
6300 06 18 9 こうしてその人々は行って、その地を経めぐり、町々にしたがって、それを七つの部分とし、図面にして、書物に書きしるし、シロの宿営におるヨシュアのもとへ持ってきた。
6301 06 18 10 ヨシュアはシロで、彼らのために主の前に、くじを引いた。そしてヨシュアはその所で、イスラエルの人々に、それぞれの分として、地を分け与えた。
6302 06 18 11 まずベニヤミンの子孫の部族のために、その家族にしたがって、くじを引いた。そしてそのくじによって獲た領地は、ユダの子孫と、ヨセフの子孫との間にあった。
6303 06 18 12 すなわち、その北の方の境は、ヨルダンに始まり、エリコの北のわきに上り、また西の方の山地をとおって上り、ベテアベンの荒野に達して尽きる。
6304 06 18 13 そこから、その境はルズに進み、ルズの南のわきに至る。ルズはベテルである。ついでその境は下ベテホロンの南の山にあるアタロテ・アダルに下り、
6305 06 18 14 西の方では、ベテホロンの南にある山から南に曲り、ユダの子孫の町キリアテ・バアルに至って尽きる。キリアテ・バアルはキリアテ・ヤリムである。これが西の方の境であった。
6306 06 18 15 また南の方は、キリアテ・ヤリムの端に始まり、その境はそこからエフロンにおもむき、ネフトアの水の源に至り、
6307 06 18 16 ついでその境は、レパイムの谷の北の端にあるベンヒンノムの谷を見おろす山の端に下り、進んでエブスびとのわきの南、ヒンノムの谷に下り、また下ってエンロゲルに至り、
6308 06 18 17 北に曲ってエンシメシにおもむき、アドミムの坂に対するゲリロテにおもむき、ルベンびとボハンの石に下り、
6309 06 18 18 ベテアラバのわきを北に進んで、アラバに下り、
6310 06 18 19 その境は、ベテホグラの北のわきに進み、ヨルダンの南端で、塩の海の北の入海に至って尽きる。これが南の境である。
6311 06 18 20 ヨルダンは東の方の境となっていた。これがベニヤミンの子孫の、その家族にしたがって獲た嗣業の四方の境である。
6312 06 18 21 ベニヤミンの子孫の部族が、その家族にしたがって獲た町々は、エリコ、ベテホグラ、エメクケジツ、
6313 06 18 22 ベテアラバ、ゼマライム、ベテル、
6314 06 18 23 アビム、パラ、オフラ、
6315 06 18 24 ケパル・アンモニ、オフニ、ゲバ。すなわち十二の町々と、それに属する村々。
6316 06 18 25 またギベオン、ラマ、ベエロテ、
6317 06 18 26 ミヅパ、ケピラ、モザ、
6318 06 18 27 レケム、イルピエル、タララ、
6319 06 18 28 ゼラ、エレフ、エブスすなわちエルサレム、ギベア、キリアテ・ヤリム。すなわち十四の町々と、それに属する村々。これがベニヤミンの子孫の、その家族にしたがって獲た嗣業である。
6320 06 19 1 次にシメオンのため、すなわちシメオンの子孫の部族のために、その家族にしたがって、くじを引いた。その嗣業はユダの子孫の嗣業のうちにあった。
6321 06 19 2 その嗣業として獲たものは、ベエルシバ、すなわちシバ、モラダ、
6322 06 19 3 ハザル・シュアル、バラ、エゼム、
6323 06 19 4 エルトラデ、ベトル、ホルマ、
6324 06 19 5 チクラグ、ベテ・マルカボテ、ハザルスサ、
6325 06 19 6 ベテレバオテ、シャルヘン。すなわち十三の町々と、それに属する村々。
6326 06 19 7 またアイン、リンモン、エテル、アシャン。すなわち四つの町々と、それに属する村々。
6327 06 19 8 およびこれらの町の周囲にあって、バアラテ・ベエル、すなわちネゲブのラマに至るまでのすべての村々。これがシメオンの子孫の部族の、その家族にしたがって獲た嗣業である。
6328 06 19 9 シメオンの子孫の嗣業は、ユダの子孫の領域のうちにあった。これはユダの子孫の分が大きかったので、シメオンの子孫が、その嗣業を彼らの嗣業の中に獲たからである。
6329 06 19 10 第三にゼブルンの子孫のために、その家族にしたがって、くじを引いた。その嗣業の領域はサリデに及び、
6330 06 19 11 その境は西に上って、マララに至り、ダバセテに達し、ヨクネアムの東にある川に達し、
6331 06 19 12 サリデから、東の方、日の出の方に曲り、キスロテ・タボルの境に至り、ダベラテに出て、ヤピアに上り、
6332 06 19 13 そこから東の方、日の出の方に進んで、ガテヘペルとイッタ・カジンに至り、リンモンに進んで、ネアの方に曲る。
6333 06 19 14 北ではその境はハンナトンに回り、イフタエルの谷に至って尽きる。
6334 06 19 15 そしてカッタテ、ナハラル、シムロン、イダラ、ベツレヘムなど十二の町々と、それに属する村々があった。
6335 06 19 16 これがゼブルンの子孫の、その家族にしたがって獲た嗣業であって、その町々と、それに属する村々とである。
6336 06 19 17 第四にイッサカル、すなわちイッサカルの子孫のために、その家族にしたがって、くじを引いた。
6337 06 19 18 その領域には、エズレル、ケスロテ、シュネム、
6338 06 19 19 ハパライム、シオン、アナハラテ、
6339 06 19 20 ラビテ、キション、エベツ、
6340 06 19 21 レメテ、エンガンニム、エンハダ、ベテパッゼズがあり、
6341 06 19 22 その境はタボル、シャハヂマ、ベテシメシに達し、その境はヨルダンに至って尽きる。十六の町々と、それに属する村々があった。
6342 06 19 23 これがイッサカルの子孫の部族の、その家族にしたがって獲た嗣業であって、その町々と、それに属する村々とである。
6343 06 19 24 第五に、アセルの子孫の部族のために、その家族にしたがって、くじを引いた。
6344 06 19 25 その領域には、ヘルカテ、ハリ、ベテン、アクサフ、
6345 06 19 26 アランメレク、アマデ、ミシャルがあり、その境は西では、カルメルとシホル・リブナテに達し、
6346 06 19 27 それから東に折れて、ベテダゴンに至り、北の方ゼブルンと、イプタエルの谷に達し、ベテエメクおよびネイエルに至り、北はカブルにいで、
6347 06 19 28 更にエブロン、レホブ、ハンモン、カナを経て、大シドンに及び、
6348 06 19 29 それから、その境はラマに曲り、堅固な町ツロに至る。またその境はホサに曲り、海に至って尽きる。そして、マハラブ、アクジブ、
6349 06 19 30 ウンマ、アペク、レホブなど、二十二の町々と、それに属する村々があった。
6350 06 19 31 これがアセルの子孫の部族の、その家族にしたがって獲た嗣業であって、その町々と、それに属する村々とである。
6351 06 19 32 第六に、ナフタリの子孫のために、その家族にしたがって、くじを引いた。
6352 06 19 33 その境はヘレフから、すなわちザアナニイムのかしの木から起り、アダミ・ネケブおよび、ヤブネルを経て、ラクムに至り、ヨルダンに至って尽きる。
6353 06 19 34 そしてその境は西に向かって、アズノテ・タボルに至り、そこからホッコクに出る。南はゼブルンに接し、西はアセルに接し、東はヨルダンのユダに達する。
6354 06 19 35 その堅固な町々は、ヂデム、ゼル、ハンマテ、ラッカテ、キンネレテ、
6355 06 19 36 アダマ、ラマ、ハゾル、
6356 06 19 37 ケデシ、エデレイ、エンハゾル、
6357 06 19 38 イロン、ミグダルエル、ホレム、ベテアナテ、ベテシメシなどで、十九の町々と、それに属する村々があった。
6358 06 19 39 これがナフタリの子孫の部族が、その家族にしたがって獲た嗣業であって、その町々と、それに属する村々とである。
6359 06 19 40 第七に、ダンの子孫の部族のために、その家族にしたがって、くじを引いた。
6360 06 19 41 その嗣業の領域には、ゾラ、エシタオル、イルシメシ、
6361 06 19 42 シャラビム、アヤロン、イテラ、
6362 06 19 43 エロン、テムナ、エクロン、
6363 06 19 44 エルテケ、ギベトン、バアラテ、
6364 06 19 45 エホデ、ベネベラク、ガテリンモン、
6365 06 19 46 メヤルコン、ラッコン、およびヨッパと相対する地域があった。
6366 06 19 47 ただし、ダンの子孫の領域は、彼らのために小さかったので、ダンの子孫は、上って行き、レセムを攻めてそれを取り、つるぎにかけて撃ち滅ぼし、それを獲てそこに住み、先祖ダンの名にしたがって、レセムをダンと名づけた。
6367 06 19 48 これがダンの子孫の部族の、その家族にしたがって獲た嗣業であって、その町々と、それに属する村々とである。
6368 06 19 49 こうして国の各地域を嗣業として分け与えることを終ったとき、イスラエルの人々は、自分たちのうちに、一つの嗣業を、ヌンの子ヨシュアに与えた。
6369 06 19 50 すなわち、主の命に従って、彼が求めた町を与えたが、それはエフライムの山地にあるテムナテ・セラであって、彼はその町を建てなおして、そこに住んだ。
6370 06 19 51 これらは、祭司エレアザル、ヌンの子ヨシュア、およびイスラエルの子孫の部族の族長たちが、シロにおいて会見の幕屋の入口で、主の前に、くじを引いて分け与えた嗣業である。こうして地を分けることを終った。
6371 06 20 1 そこで主はヨシュアに言われた、
6372 06 20 2 「イスラエルの人々に言いなさい、『先にわたしがモーセによって言っておいた、のがれの町を選び定め、
6373 06 20 3 あやまって、知らずに人を殺した者を、そこへのがれさせなさい。これはあなたがたが、あだを討つ者をさけて、のがれる場所となるでしょう。
6374 06 20 4 その人は、これらの町の一つにのがれて行って、町の門の入口に立ち、その町の長老たちに、そのわけを述べなければならない。そうすれば、彼らはその人を町に受け入れて、場所を与え、共に住ませるであろう。
6375 06 20 5 たとい、あだを討つ者が追ってきても、人を殺したその者を、その手に渡してはならない。彼はあやまって隣人を殺したのであって、もとからそれを憎んでいたのではないからである。
6376 06 20 6 その人は、会衆の前に立って、さばきを受けるまで、あるいはその時の大祭司が死ぬまで、その町に住まなければならない。そして後、彼は自分の町、自分の家に帰って行って、逃げ出してきたその町に住むことができる』」。
6377 06 20 7 そこで、ナフタリの山地にあるガリラヤのケデシ、エフライムの山地にあるシケム、およびユダの山地にあるキリアテ・アルバすなわちヘブロンを、これがために選び分かち、
6378 06 20 8 またヨルダンの向こう側、エリコの東の方では、ルベンの部族のうちから、高原の荒野にあるベゼル、ガドの部族のうちから、ギレアデのラモテ、マナセの部族のうちから、バシャンのゴランを選び定めた。
6379 06 20 9 これらは、イスラエルのすべての人々、およびそのうちに寄留する他国人のために設けられた町々であって、すべて、あやまって人を殺した者を、そこにのがれさせ、会衆の前に立たないうちに、あだを討つ者の手にかかって死ぬことのないようにするためである。
6380 06 21 1 時にレビの族長たちは、祭司エレアザル、ヌンの子ヨシュアおよびイスラエルの部族の族長たちのもとにきて、
6381 06 21 2 カナンの地のシロで彼らに言った、「主はかつて、われわれに住むべき町々を与えることと、それに属する放牧地を、家畜のために与えることを、モーセによって命じられました」。
6382 06 21 3 それでイスラエルの人々は、主の命にしたがって、自分たちの嗣業のうちから、次の町々と、その放牧地とを、レビびとに与えた。
6383 06 21 4 まずコハテびとの氏族のために、くじを引いた。祭司アロンの子孫であるこれらのレビびとは、くじによって、ユダの部族、シメオンの部族、およびベニヤミンの部族のうちから、十三の町を獲た。
6384 06 21 5 その他のコハテびとは、くじによって、エフライムの部族の氏族、ダンの部族、およびマナセの半部族のうちから、十の町を獲た。
6385 06 21 6 またゲルションびとは、くじによって、イッサカルの部族の氏族、アセルの部族、ナフタリの部族、およびバシャンにあるマナセの半部族のうちから、十三の町を獲た。
6386 06 21 7 またメラリびとは、その氏族にしたがって、ルベンの部族、ガドの部族、およびゼブルンの部族のうちから、十二の町を獲た。
6387 06 21 8 イスラエルの人々は、主がモーセによって命じられたとおりに、これらの町と、その放牧地とを、くじによって、レビびとに与えた。
6388 06 21 9 まずユダの部族と、シメオンの部族のうちから、次に名をあげる町々を与えた。
6389 06 21 10 これらはレビびとに属するコハテびとの氏族の一つである、アロンの子孫に与えられた。最初のくじが彼らに当ったからである。
6390 06 21 11 すなわちユダの山地にあるキリアテ・アルバすなわちヘブロンおよびその周囲の放牧地を彼らに与えた。このアルバはアナクの父であった。
6391 06 21 12 ただし、この町の畑と、それに属する村々とは、すでにエフンネの子カレブが、それを受けて所有していた。
6392 06 21 13 祭司アロンの子孫に与えたのは、人を殺した者の、のがれる町であるヘブロンとその放牧地、リブナとその放牧地、
6393 06 21 14 ヤッテルとその放牧地、エシテモアとその放牧地、
6394 06 21 15 ホロンとその放牧地、デビルとその放牧地、
6395 06 21 16 アインとその放牧地、ユッタとその放牧地、ベテシメシとその放牧地など、九つの町であって、この二つの部族のうちから分け与えたものである。
6396 06 21 17 またベニヤミンの部族のうちから、ギベオンとその放牧地、ゲバとその放牧地、
6397 06 21 18 アナトテとその放牧地、アルモンとその放牧地など、四つの町を与えた。
6398 06 21 19 アロンの子孫である祭司たちの町は、合わせて十三であって、それに属する放牧地があった。
6399 06 21 20 その他のコハテびとであるレビびとの氏族は、くじによって、エフライムの部族のうちから町を獲た。
6400 06 21 21 すなわち、その町は、人を殺したものの、のがれる町であるエフライムの山地のシケムとその放牧地、ゲゼルとその放牧地、
6401 06 21 22 キブザイムとその放牧地、ベテホロンとその放牧地など、四つの町である。
6402 06 21 23 またダンの部族のうちから分け与えた町は、エルテケとその放牧地、ギベトンとその放牧地、
6403 06 21 24 アヤロンとその放牧地、ガテリンモンとその放牧地など、四つの町である。
6404 06 21 25 またマナセの半部族のうちから分け与えた町は、タアナクとその放牧地、およびガテリンモンとその放牧地など、二つの町である。
6405 06 21 26 その他のコハテびとの氏族の町は、合わせて十であって、それに属する放牧地があった。
6406 06 21 27 ゲルションびとであるレビびとの氏族の一つに与えられた町は、マナセの半部族のうちからは、人を殺した者の、のがれる町であるバシャンのゴランとその放牧地、およびベエシテラとその放牧地など、二つの町である。
6407 06 21 28 イッサカルの部族のうちからは、キションとその放牧地、ダベラテとその放牧地、
6408 06 21 29 ヤルムテとその放牧地、エンガンニムとその放牧地など、四つの町である。
6409 06 21 30 アセルの部族のうちからは、ミシャルとその放牧地、アブドンとその放牧地、
6410 06 21 31 ヘルカテとその放牧地、レホブとその放牧地など、四つの町である。
6411 06 21 32 ナフタリの部族のうちからは、人を殺した者の、のがれる町であるガリラヤのケデシとその放牧地、ハンモテ・ドルとその放牧地、カルタンとその放牧地など、三つの町である。
6412 06 21 33 ゲルションびとが、その氏族にしたがって獲た町は、合わせて十三の町であって、それに属する放牧地があった。
6413 06 21 34 その他のレビびとである、メラリびとの氏族に与えられた町は、ゼブルンの部族のうちからは、ヨクネアムとその放牧地、カルタとその放牧地、
6414 06 21 35 デムナとその放牧地、ナハラルとその放牧地など、四つの町である。
6415 06 21 36 ルベンの部族のうちからは、ベゼルとその放牧地、ヤハヅとその放牧地、
6416 06 21 37 ケデモテとその放牧地、メパアテとその放牧地など、四つの町である。
6417 06 21 38 ガドの部族のうちからは、人を殺した者の、のがれる町であるギレアデのラモテとその放牧地、マハナイムとその放牧地、
6418 06 21 39 ヘシボンとその放牧地、ヤゼルとその放牧地など、合わせて四つの町である。
6419 06 21 40 これらはみな、ほかのレビびとであるメラリびとが、その氏族にしたがって、くじをもって獲た町であって、合わせて十二であった。
6420 06 21 41 イスラエルの人々の所有のうちに、レビびとが持った町々は、合わせて四十八であって、それに属する放牧地があった。
6421 06 21 42 これらの町々は、それぞれその周囲に放牧地があった。これらの町々はみなそうであった。
6422 06 21 43 このように、主が、イスラエルに与えると、その先祖たちに誓われた地を、ことごとく与えられたので、彼らはそれを獲て、そこに住んだ。
6423 06 21 44 主は彼らの先祖たちに誓われたように、四方に安息を賜わったので、すべての敵のうち、ひとりも彼らに手向かう者はなかった。主が敵をことごとく彼らの手に渡されたからである。
6424 06 21 45 主がイスラエルの家に約束されたすべての良いことは、一つとしてたがわず、みな実現した。
6425 06 22 1 時にヨシュアは、ルベンびと、ガドびと、およびマナセの部族の半ばを呼び集めて、
6426 06 22 2 言った、「あなたがたは主のしもべモーセが命じたことを、ことごとく守り、またわたしの命じたすべての事にも、わたしの言葉に聞きしたがいました。
6427 06 22 3 今日まで長い年月の間、あなたがたの兄弟たちを捨てず、あなたがたの神、主の命令を、よく守ってきました。
6428 06 22 4 今はすでに、あなたがたの神、主が、あなたがたの兄弟たちに、先に約束されたとおり、安息を賜わるようになりました。それで、あなたがたは身を返して、主のしもべモーセが、あなたがたに与えたヨルダンの向こう側の所有の地に行き、自分たちの天幕に帰りなさい。
6429 06 22 5 ただ主のしもべモーセが、あなたがたに命じた戒めと、律法とを慎んで行い、あなたがたの神、主を愛し、そのすべての道に歩み、その命令を守って、主につき従い、心をつくし、精神をつくして、主に仕えなさい」。
6430 06 22 6 そしてヨシュアが彼らを祝福して去らせたので、彼らはその天幕に帰った。
6431 06 22 7 マナセの部族の半ばには、すでにモーセがバシャンで所有地を与えたが、他の半ばには、ヨシュアがヨルダンのこちら側、西の方で、その兄弟たちのうちに、所有地を与えた。ヨシュアは、彼らをその天幕に送りかえす時、彼らを祝福して、
6432 06 22 8 言った、「あなたがたは多くの貨財と、おびただしい数の家畜と、金、銀、青銅、鉄、および多くの衣服を持って天幕に帰り、敵から獲たぶんどり物を兄弟たちに分けなさい」。
6433 06 22 9 こうしてルベンの子孫、ガドの子孫、およびマナセの部族の半ばは、主がモーセによって命じられたように、すでに自分の所有地となっているギレアデの地に行こうと、カナンの地のシロで、イスラエルの人々と別れて帰って行った。
6434 06 22 10 ルベンの子孫、ガドの子孫、およびマナセの部族の半ばが、カナンの地のヨルダンのほとりにきた時、その所で、ヨルダンの岸べに一つの祭壇を築いた。それは大きくて遠くから見える祭壇であった。
6435 06 22 11 イスラエルの人々は、「ルベンの子孫、ガドの子孫、およびマナセの部族の半ばが、カナンの地の国境、ヨルダンのほとりのイスラエルの人々に属する方で、一つの祭壇を築いた」といううわさを聞いた。
6436 06 22 12 イスラエルの人々が、それを聞くとひとしく、イスラエルの人々の全会衆はシロに集まって、彼らの所に攻め上ろうとした。
6437 06 22 13 そしてイスラエルの人々は、祭司エレアザルの子ピネハスをギレアデの地のルベンの子孫、ガドの子孫、およびマナセの半部族の所につかわし、
6438 06 22 14 イスラエルの各部族のうちから、父祖の家のつかさ、ひとりずつをあげて、合わせて十人のつかさたちを、彼と共に行かせた。これらはみなイスラエルの氏族のうちで、父祖の家のかしらたる人々であった。
6439 06 22 15 彼らはギレアデの地に行き、ルベンの子孫、ガドの子孫、およびマナセの半部族に語って言った、
6440 06 22 16 「主の全会衆はこう言います、『あなたがたがイスラエルの神にむかって、とがを犯し、今日、ひるがえって主に従うことをやめ、自分のために一つの祭壇を築いて、今日、主にそむこうとするのは何事か。
6441 06 22 17 ペオルで犯した罪で、なお足りないとするのか。それがために主の会衆に災が下ったが、われわれは今日もなお、その罪から清められていない。
6442 06 22 18 しかもあなたがたは、今日、ひるがえって主に従うことをやめようとするのか。あなたがたが、きょう、主にそむくならば、あす、主はイスラエルの全会衆にむかって怒られるであろう。
6443 06 22 19 もしあなたがたの所有の地が清くないのであれば、主の幕屋の立っている主の所有の地に渡ってきて、われわれのうちに、所有の地を獲なさい。ただ、われわれの神、主の祭壇のほかに、自分のために祭壇を築いて、主にそむき、またわれわれをそむく者とならせないでください。
6444 06 22 20 ゼラの子アカンは、のろわれた物について、とがを犯し、それがためイスラエルの全会衆に、怒りが臨んだではないか。またその罪によって滅びた者は、彼ひとりではなかった』」。
6445 06 22 21 その時、ルベンの子孫、ガドの子孫、およびマナセの半部族は、イスラエルの氏族のかしらたちに答えて言った、
6446 06 22 22 「力ある者、神、主。力ある者、神、主。主は知ろしめす。イスラエルもまた知らなければならない。もしそれがそむくことであり、あるいは主に罪を犯すことであるならば、きょう、われわれをゆるさないでください。
6447 06 22 23 われわれが祭壇を築いたことが、もし主に従うことをやめるためであり、またその上に、燔祭、素祭をささげるためであり、あるいはまたその上に、酬恩祭の犠牲をささげるためであったならば、主みずから、その罪を問いただしてください。
6448 06 22 24 しかし、われわれは次のことを考えてしたのです。すなわち、のちの日になって、あなたがたの子孫が、われわれの子孫にむかって言うことがあるかも知れません、『あなたがたは、イスラエルの神、主と、なんの関係があるのですか。
6449 06 22 25 ルベンの子孫と、ガドの子孫よ、主は、あなたがたと、われわれとの間に、ヨルダンを境とされました。あなたがたは主の民の特権がありません』。こう言って、あなたがたの子孫が、われわれの子孫に、主を拝むことをやめさせるかも知れないので、
6450 06 22 26 われわれは言いました、『さあ、われわれは一つの祭壇を築こう。燔祭のためではなく、また犠牲のためでもなく、
6451 06 22 27 ただあなたがたと、われわれとの間、およびわれわれの後の子孫の間に、証拠とならせて、われわれが、燔祭と犠牲、および酬恩祭をもって、主の前で、主につとめをするためである。こうすれば、のちの日になって、あなたがたの子孫が、われわれの子孫に、「あなたがたは主の民の特権がありません」とは言わないであろう』。
6452 06 22 28 またわれわれは言いました、『のちの日に、われわれ、またわれわれの子孫が、もしそのようなことを言われるならば、その時、われわれは言おう、「われわれの先祖が造った主の祭壇の型をごらんなさい。これは燔祭のためではなく、また犠牲のためでもなく、あなたがたと、われわれとの間の証拠である」。
6453 06 22 29 主にそむき、ひるがえって今日、主に従うことをやめて、われわれの神、主の幕屋の前にある祭壇のほかに、燔祭、素祭、または犠牲をささげるための祭壇を築くようなことは、決していたしません』」。
6454 06 22 30 祭司ピネハス、および会衆のつかさたち、すなわち彼と共に行ったイスラエルの氏族のかしらたちは、ルベンの子孫、ガドの子孫、およびマナセの子孫が語った言葉を聞いて、それを良しとした。
6455 06 22 31 そして祭司エレアザルの子ピネハスは、ルベンの子孫、ガドの子孫、およびマナセの子孫に言った、「今日、われわれは、主がわれわれのうちにいますことを知った。あなたがたが、主にむかって、このとがを犯さなかったからである。あなたがたは今、イスラエルの人々を、主の手から救い出したのです」。
6456 06 22 32 こうして祭司エレアザルの子ピネハスと、つかさたちは、ルベンの子孫、およびガドの子孫に別れて、ギレアデの地からカナンの地に帰り、イスラエルの人々のところに行って復命したので、
6457 06 22 33 イスラエルの人々はそれを良しとした。そしてイスラエルの人々は神をほめたたえ、ルベンの子孫、およびガドの子孫の住んでいる国を滅ぼすために攻め上ろうとは、もはや言わなかった。
6458 06 22 34 ルベンの子孫とガドの子孫は、その祭壇を「あかし」と名づけて言った、「これは、われわれの間にあって、主が神にいますというあかしをするものである」。
6459 06 23 1 主がイスラエルの周囲の敵を、ことごとく除いて、イスラエルに安息を賜わってのち、久しくたち、ヨシュアも年が進んで老いた。
6460 06 23 2 ヨシュアはイスラエルのすべての人、その長老、かしらたち、さばきびと、つかさびとたちを呼び集めて言った、「わたしは年も進んで老人となった。
6461 06 23 3 あなたがたは、すでにあなたがたの神、主が、このもろもろの国びとに行われたすべてのことを見た。あなたがたのために戦われたのは、あなたがたの神、主である。
6462 06 23 4 見よ、わたしはヨルダンから、日の入る方、大海までの、このもろもろの残っている国々と、すでにわたしが滅ぼし去ったすべての国々を、くじをもって、あなたがたに分け与え、あなたがたの各部族の嗣業とさせた。
6463 06 23 5 あなたがたの前から、その国民を打ち払い、あなたがたの目の前から追い払われるのは、あなたがたの神、主である。そしてあなたがたの神、主が約束されたように、あなたがたは彼らの地を獲るであろう。
6464 06 23 6 それゆえ、あなたがたは堅く立って、モーセの律法の書にしるされていることを、ことごとく守って行わなければならない。それを離れて右にも左にも曲ってはならない。
6465 06 23 7 あなたがたのうちに残っている、これらの国民と交じってはならない。彼らの神々の名を唱えてはならない。それをさして誓ってはならない。またそれに仕え、それを拝んではならない。
6466 06 23 8 ただ、今日までしてきたように、あなたがたの神、主につき従わなければならない。
6467 06 23 9 主が大いなる強き国民を、あなたがたの前から追い払われた。あなたがたには今日まで、立ち向かうことのできる者は、ひとりもなかった。
6468 06 23 10 あなたがたのひとりは、千人を追い払うことができるであろう。あなたがたの神、主が約束されたように、みずからあなたがたのために戦われるからである。
6469 06 23 11 それゆえ、あなたがたは深く慎んで、あなたがたの神、主を愛さなければならない。
6470 06 23 12 しかし、あなたがたがもしひるがえって、これらの国民の、生き残って、あなたがたの中にとどまる者どもと親しくなり、これと婚姻し、ゆききするならば、
6471 06 23 13 あなたがたは、しかと知らなければならない。あなたがたの神、主は、もはや、これらの国民をあなたがたの前から、追い払うことをされないであろう。彼らは、かえって、あなたがたのわなとなり、網となり、あなたがたのわきに、むちとなり、あなたがたの目に、とげとなって、あなたがたはついに、あなたがたの神、主が賜わったこの良い地から、滅びうせるであろう。
6472 06 23 14 見よ、今日、わたしは世の人のみな行く道を行こうとする。あなたがたがみな、心のうちにまた、肝に銘じて知っているように、あなたがたの神、主が、あなたがたについて約束されたもろもろの良いことで、一つも欠けたものはなかった。みなあなたがたに臨んで、一つも欠けたものはなかった。
6473 06 23 15 しかし、あなたがたの神、主があなたがたについて約束された、もろもろの良いことが、あなたがたに臨んだように、主はまた、もろもろの悪いことをあなたがたに下して、あなたがたの神、主が賜わったこの良い地から、ついに、あなたがたを滅ぼし断たれるであろう。
6474 06 23 16 もし、あなたがたの神、主が命じられたその契約を犯し、行って他の神々に仕え、それを拝むならば、主はあなたがたにむかって怒りを発し、あなたがたは、主が賜わった良い地から、すみやかに滅びうせるであろう」。
6475 06 24 1 ヨシュアは、イスラエルのすべての部族をシケムに集め、イスラエルの長老、かしら、さばきびと、つかさたちを召し寄せて、共に神の前に進み出た。
6476 06 24 2 そしてヨシュアはすべての民に言った、「イスラエルの神、主は、こう仰せられる、『あなたがたの先祖たち、すなわちアブラハムの父、ナホルの父テラは、昔、ユフラテ川の向こうに住み、みな、ほかの神々に仕えていたが、
6477 06 24 3 わたしは、あなたがたの先祖アブラハムを、川の向こうから連れ出して、カナンの全地を導き通り、その子孫を増した。わたしは彼にイサクを与え、
6478 06 24 4 イサクにヤコブとエサウを与え、エサウにはセイルの山地を与えて、所有とさせたが、ヤコブとその子供たちはエジプトに下った。
6479 06 24 5 わたしはモーセとアロンをつかわし、またエジプトのうちに不思議をおこなって、これに災を下し、その後あなたがたを導き出した。
6480 06 24 6 わたしはあなたがたの父たちを、エジプトから導き出し、あなたがたが海にきたとき、エジプトびとは、戦車と騎兵とをもって、あなたがたの父たちを紅海に追ってきた。
6481 06 24 7 そのとき、あなたがたの父たちが主に呼ばわったので、主は暗やみをあなたがたとエジプトびととの間に置き、海を彼らの上に傾けて彼らをおおわれた。あなたがたは、わたしがエジプトでしたことを目で見た。そして長い間、荒野に住んでいた。
6482 06 24 8 わたしはまたヨルダンの向こう側に住んでいたアモリびとの地に、あなたがたを導き入れた。彼らはあなたがたと戦ったので、わたしは彼らをあなたがたの手に渡して、彼らの地を獲させ、彼らをあなたがたの前から滅ぼし去った。
6483 06 24 9 ついで、モアブの王チッポルの子バラクが立って、イスラエルに敵し、人をつかわし、ベオルの子バラムを招き、あなたがたをのろわせようとしたが、
6484 06 24 10 わたしがバラムに聞こうとしなかったので、彼は、かえって、あなたがたを祝福した。こうしてわたしは彼の手からあなたがたを救い出した。
6485 06 24 11 そしてあなたがたは、ヨルダンを渡って、エリコにきたが、エリコの人々はあなたがたと戦い、アモリびと、ペリジびと、カナンびと、ヘテびと、ギルガシびと、ヒビびと、およびエブスびとも、あなたがたと戦ったが、わたしは彼らをあなたがたの手に渡した。
6486 06 24 12 わたしは、あなたがたの前に、くまばちを送って、あのアモリびとのふたりの王を、あなたがたの前から追い払った。これはあなたがたのつるぎ、または、あなたがたの弓によってではなかった。
6487 06 24 13 そしてわたしは、あなたがたが自分で労しなかった地を、あなたがたに与え、あなたがたが建てなかった町を、あなたがたに与えた。そしてあなたがたはいまその所に住んでいる。あなたがたはまた自分で作らなかったぶどう畑と、オリブ畑の実を食べている』。
6488 06 24 14 それゆえ、いま、あなたがたは主を恐れ、まことと、まごころと、真実とをもって、主に仕え、あなたがたの先祖が、川の向こう、およびエジプトで仕えた他の神々を除き去って、主に仕えなさい。
6489 06 24 15 もしあなたがたが主に仕えることを、こころよしとしないのならば、あなたがたの先祖が、川の向こうで仕えた神々でも、または、いまあなたがたの住む地のアモリびとの神々でも、あなたがたの仕える者を、きょう、選びなさい。ただし、わたしとわたしの家とは共に主に仕えます」。
6490 06 24 16 その時、民は答えて言った、「主を捨てて、他の神々に仕えるなど、われわれは決していたしません。
6491 06 24 17 われわれの神、主がみずからわれわれと、われわれの先祖とを、エジプトの地、奴隷の家から導き上り、またわれわれの目の前で、あの大いなるしるしを行い、われわれの行くすべての道で守り、われわれが通ったすべての国民の中でわれわれを守られたからです。
6492 06 24 18 主はまた、この地に住んでいたアモリびとなど、すべての民を、われわれの前から追い払われました。それゆえ、われわれも主に仕えます。主はわれわれの神だからです」。
6493 06 24 19 しかし、ヨシュアは民に言った、「あなたがたは主に仕えることはできないであろう。主は聖なる神であり、ねたむ神であって、あなたがたの罪、あなたがたのとがを、ゆるされないからである。
6494 06 24 20 もしあなたがたが主を捨てて、異なる神々に仕えるならば、あなたがたにさいわいを下されたのちにも、ひるがえってあなたがたに災をくだし、あなたがたを滅ぼしつくされるであろう」。
6495 06 24 21 民はヨシュアに言った、「いいえ、われわれは主に仕えます」。
6496 06 24 22 そこでヨシュアは民に言った、「あなたがたは主を選んで、主に仕えると言った。あなたがたみずからその証人である」。彼らは言った、「われわれは証人です」。
6497 06 24 23 ヨシュアはまた言った、「それならば、あなたがたのうちにある、異なる神々を除き去り、イスラエルの神、主に、心を傾けなさい」。
6498 06 24 24 民はヨシュアに言った、「われわれの神、主に、われわれは仕え、その声に聞きしたがいます」。
6499 06 24 25 こうしてヨシュアは、その日、民と契約をむすび、シケムにおいて、定めと、おきてを、彼らのために設けた。
6500 06 24 26 ヨシュアはこれらの言葉を神の律法の書にしるし、大きな石を取って、その所で、主の聖所にあるかしの木の下にそれを立て、
6501 06 24 27 ヨシュアは、すべての民に言った、「見よ、この石はわれわれのあかしとなるであろう。主がわれわれに語られたすべての言葉を、聞いたからである。それゆえ、あなたがたが自分の神を捨てることのないために、この石が、あなたがたのあかしとなるであろう」。
6502 06 24 28 こうしてヨシュアは民を、おのおのその嗣業の地に帰し去らせた。
6503 06 24 29 これらの事の後、主のしもべ、ヌンの子ヨシュアは百十歳で死んだ、
6504 06 24 30 人々は彼をその嗣業の地のうちのテムナテ・セラに葬った。テムナテ・セラは、エフライムの山地で、ガアシ山の北にある。
6505 06 24 31 イスラエルはヨシュアの世にある日の間、また主がイスラエルのために行われたもろもろのことを知っていて、ヨシュアのあとに生き残った長老たちが世にある日の間、つねに主に仕えた。
6506 06 24 32 イスラエルの人々が、エジプトから携え上ったヨセフの骨は、むかしヤコブが銀百枚で、シケムの父ハモルの子らから買い取ったシケムのうちの地所の一部に葬られた。これはヨセフの子孫の嗣業となった。
6507 06 24 33 アロンの子エレアザルも死んだ。人々は彼を、その子ピネハスに与えられた町で、エフライムの山地にあるギベアに葬った。
6508 07 1 1 ヨシュアが死んだ後、イスラエルの人々は主に問うて言った、「わたしたちのうち、だれが先に攻め上って、カナンびとと戦いましょうか」。
6509 07 1 2 主は言われた、「ユダが上るべきである。わたしはこの国を彼の手にわたした」。
6510 07 1 3 ユダはその兄弟シメオンに言った、「わたしと一緒に、わたしに割り当てられた領地へ上って行って、カナンびとと戦ってください。そうすればわたしもあなたと一緒に、あなたに割り当てられた領地へ行きましょう」。そこでシメオンは彼と一緒に行った。
6511 07 1 4 ユダが上って行くと、主は彼らの手にカナンびととペリジびととをわたされたので、彼らはベゼクで一万人を撃ち破り、
6512 07 1 5 またベゼクでアドニベゼクに会い、彼と戦ってカナンびととペリジびととを撃ち破った。
6513 07 1 6 アドニベゼクは逃げたが、彼らはそのあとを追って彼を捕え、その手足の親指を切り放った。
6514 07 1 7 アドニベゼクは言った、「かつて七十人の王たちが手足の親指を切られて、わたしの食卓の下で、くずを拾ったことがあったが、神はわたしがしたように、わたしに報いられたのだ」。人々は彼をエルサレムへ連れて行ったが、彼はそこで死んだ。
6515 07 1 8 ユダの人々はエルサレムを攻めて、これを取り、つるぎをもってこれを撃ち、町に火を放った。
6516 07 1 9 その後、ユダの人々は山地とネゲブと平地に住んでいるカナンびとと戦うために下ったが、
6517 07 1 10 ユダはまずヘブロンに住んでいるカナンびとを攻めて、セシャイとアヒマンとタルマイを撃ち破った。ヘブロンのもとの名はキリアテ・アルバであった。
6518 07 1 11 またそこから進んでデビルの住民を攻めた。(デビルのもとの名はキリアテ・セペルであった。)
6519 07 1 12 時にカレブは言った、「キリアテ・セペルを撃って、これを取る者には、わたしの娘アクサを妻として与えるであろう」。
6520 07 1 13 カレブの弟ケナズの子オテニエルがそれを取ったので、カレブは娘アクサを妻として彼に与えた。
6521 07 1 14 アクサは行くとき彼女の父に畑を求めることを夫にすすめられたので、アクサがろばから降りると、カレブは彼女に言った、「あなたは何を望むのか」。
6522 07 1 15 アクサは彼に言った、「わたしに贈り物をください。あなたはわたしをネゲブの地へやられるのですから、泉をもください」。それでカレブは上の泉と下の泉とを彼女に与えた。
6523 07 1 16 モーセのしゅうとであるケニびとの子孫はユダの人々と共に、しゅろの町からアラドに近いネゲブにあるユダの野に上ってきて、アマレクびとと共に住んだ。
6524 07 1 17 そしてユダはその兄弟シメオンと共に行って、ゼパテに住んでいたカナンびとを撃ち、それをことごとく滅ぼした。これによってその町の名はホルマと呼ばれた。
6525 07 1 18 ユダはまたガザとその地域、アシケロンとその地域、エクロンとその地域を取った。
6526 07 1 19 主がユダと共におられたので、ユダはついに山地を手に入れたが、平地に住んでいた民は鉄の戦車をもっていたので、これを追い出すことができなかった。
6527 07 1 20 人々はモーセがかつて言ったように、ヘブロンをカレブに与えたので、カレブはその所からアナクの三人の子を追い出した。
6528 07 1 21 ベニヤミンの人々はエルサレムに住んでいたエブスびとを追い出さなかったので、エブスびとは今日までベニヤミンの人々と共にエルサレムに住んでいる。
6529 07 1 22 ヨセフの一族はまたベテルに攻め上ったが、主は彼らと共におられた。
6530 07 1 23 すなわちヨセフの一族は人をやってベテルを探らせた。この町のもとの名はルズであった。
6531 07 1 24 その斥候たちは町から出てきた人を見て、言った、「どうぞこの町にはいる道を教えてください。そうすればわたしたちはあなたに恵みを施しましょう」。
6532 07 1 25 彼が町にはいる道を教えたので、彼らはつるぎをもって町を撃った。しかし、かの人とその家族は自由に去らせた。
6533 07 1 26 その人はヘテびとの地に行って町を建て、それをルズと名づけた。これは今日までその名である。
6534 07 1 27 マナセはベテシャンとその村里の住民、タアナクとその村里の住民、ドルとその村里の住民、イブレアムとその村里の住民、メギドとその村里の住民を追い出さなかったので、カナンびとは引き続いてその地に住んでいたが、
6535 07 1 28 イスラエルは強くなったとき、カナンびとを強制労働に服させ、彼らをことごとくは追い出さなかった。
6536 07 1 29 またエフライムはゲゼルに住んでいたカナンびとを追い出さなかったので、カナンびとはゲゼルにおいて彼らのうちに住んでいた。
6537 07 1 30 ゼブルンはキテロンの住民およびナハラルの住民を追い出さなかったので、カナンびとは彼らのうちに住んで強制労働に服した。
6538 07 1 31 アセルはアッコの住民およびシドン、アヘラブ、アクジブ、ヘルバ、アピク、レホブの住民を追い出さなかったので、
6539 07 1 32 アセルびとは、その地の住民であるカナンびとのうちに住んでいた。彼らが追い出さなかったからである。
6540 07 1 33 ナフタリはベテシメシの住民およびベテアナテの住民を追い出さずに、その地の住民であるカナンびとのうちに住んでいた。しかしベテシメシとベテアナテの住民は、ついに彼らの強制労働に服した。
6541 07 1 34 アモリびとはダンの人々を山地に追い込んで平地に下ることを許さなかった。
6542 07 1 35 アモリびとは引き続いてハルヘレス、アヤロン、シャラビムに住んでいたが、ヨセフの一族の手が強くなったので、彼らは強制労働に服した。
6543 07 1 36 アモリびとの境はアクラビムの坂からセラを経て上の方に及んだ。
6544 07 2 1 主の使がギルガルからボキムに上って言った、「わたしはあなたがたをエジプトから上らせて、あなたがたの先祖に誓った地に連れてきて、言った、『わたしはあなたと結んだ契約を決して破ることはない。
6545 07 2 2 あなたがたはこの国の住民と契約を結んではならない。彼らの祭壇をこぼたなければならない』と。しかし、あなたがたはわたしの命令に従わなかった。あなたがたは、なんということをしたのか。
6546 07 2 3 それでわたしは言う、『わたしはあなたがたの前から彼らを追い払わないであろう。彼らはかえってあなたがたの敵となり、彼らの神々はあなたがたのわなとなるであろう』と」。
6547 07 2 4 主の使がこれらの言葉をイスラエルのすべての人々に告げたので、民は声をあげて泣いた。
6548 07 2 5 それでその所の名をボキムと呼んだ。そして彼らはその所で主に犠牲をささげた。
6549 07 2 6 ヨシュアが民を去らせたので、イスラエルの人々はおのおのその領地へ行って土地を獲た。
6550 07 2 7 民はヨシュアの在世中も、またヨシュアのあとに生き残った長老たち、すなわち主がかつてイスラエルのために行われたすべての大いなるわざを見た人々の在世中も主に仕えた。
6551 07 2 8 こうして主のしもべヌンの子ヨシュアは百十歳で死んだ。
6552 07 2 9 人々は彼をエフライムの山地のガアシ山の北のテムナテ・ヘレスにある彼の領地内に葬った。
6553 07 2 10 そしてその時代の者もまたことごとくその先祖たちのもとにあつめられた。その後ほかの時代が起ったが、これは主を知らず、また主がイスラエルのために行われたわざをも知らなかった。
6554 07 2 11 イスラエルの人々は主の前に悪を行い、もろもろのバアルに仕え、
6555 07 2 12 かつてエジプトの地から彼らを導き出された先祖たちの神、主を捨てて、ほかの神々すなわち周囲にある国民の神々に従い、それにひざまずいて、主の怒りをひき起した。
6556 07 2 13 すなわち彼らは主を捨てて、バアルとアシタロテに仕えたので、
6557 07 2 14 主の怒りがイスラエルに対して燃え、かすめ奪う者の手にわたして、かすめ奪わせ、かつ周囲のもろもろの敵の手に売られたので、彼らは再びその敵に立ち向かうことができなかった。
6558 07 2 15 彼らがどこへ行っても、主の手は彼らに災をした。これは主がかつて言われ、また主が彼らに誓われたとおりで、彼らはひどく悩んだ。
6559 07 2 16 その時、主はさばきづかさを起して、彼らをかすめ奪う者の手から救い出された。
6560 07 2 17 しかし彼らはそのさばきづかさにも従わず、かえってほかの神々を慕ってそれと姦淫を行い、それにひざまずき、先祖たちが主の命令に従って歩んだ道を、いちはやく離れ去って、そのようには行わなかった。
6561 07 2 18 主が彼らのためにさばきづかさを起されたとき、そのさばきづかさの在世中、主はさばきづかさと共におられて、彼らを敵の手から救い出された。これは彼らが自分をしえたげ悩ました者のゆえに、うめき悲しんだので、主が彼らをあわれまれたからである。
6562 07 2 19 しかしさばきづかさが死ぬと、彼らはそむいて、先祖たちにまさって悪を行い、ほかの神々に従ってそれに仕え、それにひざまずいてそのおこないをやめず、かたくなな道を離れなかった。
6563 07 2 20 それで主はイスラエルに対し激しく怒って言われた、「この民はわたしがかつて先祖たちに命じた契約を犯し、わたしの命令に従わないゆえ、
6564 07 2 21 わたしもまたヨシュアが死んだときに残しておいた国民を、この後、彼らの前から追い払わないであろう。
6565 07 2 22 これはイスラエルが、先祖たちの守ったように主の道を守ってそれに歩むかどうかをわたしが試みるためである」。
6566 07 2 23 それゆえ主はこれらの国民を急いで追い払わずに残しておいて、ヨシュアの手にわたされなかったのである。
6567 07 3 1 すべてカナンのもろもろの戦争を知らないイスラエルの人々を試みるために、主が残しておかれた国民は次のとおりである。
6568 07 3 2 これはただイスラエルの代々の子孫、特にまだ戦争を知らないものに、それを教え知らせるためである。
6569 07 3 3 すなわちペリシテびとの五人の君たちと、すべてのカナンびとと、シドンびとおよびレバノン山に住んで、バアル・ヘルモン山からハマテの入口までを占めていたヒビびとなどであって、
6570 07 3 4 これらをもってイスラエルを試み、主がモーセによって先祖たちに命じられた命令に、彼らが従うかどうかを知ろうとされたのである。
6571 07 3 5 しかるにイスラエルの人々はカナンびと、ヘテびと、アモリびと、ペリジびと、ヒビびと、エブスびとのうちに住んで、
6572 07 3 6 彼らの娘を妻にめとり、また自分たちの娘を彼らのむすこに与えて、彼らの神々に仕えた。
6573 07 3 7 こうしてイスラエルの人々は主の前に悪を行い、自分たちの神、主を忘れて、バアルおよびアシラに仕えた。
6574 07 3 8 そこで主はイスラエルに対して激しく怒り、彼らをメソポタミヤの王クシャン・リシャタイムの手に売りわたされたので、イスラエルの人々は八年の間、クシャン・リシャタイムに仕えた。
6575 07 3 9 しかし、イスラエルの人々が主に呼ばわったとき、主はイスラエルの人々のために、ひとりの救助者を起して彼らを救われた。すなわちカレブの弟、ケナズの子オテニエルである。
6576 07 3 10 主の霊がオテニエルに臨んだので、彼はイスラエルをさばいた。彼が戦いに出ると、主はメソポタミヤの王クシャン・リシャタイムをその手にわたされたので、オテニエルの手はクシャン・リシャタイムに勝ち、
6577 07 3 11 国は四十年のあいだ太平であった。ケナズの子オテニエルはついに死んだ。
6578 07 3 12 イスラエルの人々はまた主の前に悪をおこなった。すなわち彼らが主の前に悪をおこなったので、主はモアブの王エグロンを強めて、イスラエルに敵対させられた。
6579 07 3 13 エグロンはアンモンおよびアマレクの人々を集め、きてイスラエルを撃ち、しゅろの町を占領した。
6580 07 3 14 こうしてイスラエルの人々は十八年の間モアブの王エグロンに仕えた。
6581 07 3 15 しかしイスラエルの人々が主に呼ばわったとき、主は彼らのために、ひとりの救助者を起された。すなわちベニヤミンびと、ゲラの子、左ききのエホデである。イスラエルの人々は彼によってモアブの王エグロンに、みつぎ物を送った。
6582 07 3 16 エホデは長さ一キュビトのもろ刃のつるぎを作らせ、それを衣の下、右のももの上に帯びて、
6583 07 3 17 モアブの王エグロンにみつぎ物をもってきた。エグロンは非常に肥えた人であった。
6584 07 3 18 エホデがみつぎ物をささげ終ったとき、彼はみつぎ物をになってきた民を帰らせ、
6585 07 3 19 かれ自身はギルガルに近い石像のある所から引きかえして言った、「王よ、わたしはあなたに申しあげる機密をもっています」。そこで王は「さがっておれ」と言ったので、かたわらに立っている者は皆出て行った。
6586 07 3 20 エホデが王のところにはいって来ると、王はひとりで涼みの高殿に座していたので、エホデが「わたしは神の命によってあなたに申しあげることがあります」と言うと、王は座から立ちあがった。
6587 07 3 21 そのときエホデは左の手を伸ばし、右のももからつるぎをとって王の腹を刺した。
6588 07 3 22 つるぎのつかも刃と共にはいったが、つるぎを腹から抜き出さなかったので、脂肪が刃をふさいだ。そして汚物が出た。
6589 07 3 23 エホデは廊下に出て、王のおる高殿の戸を閉じ、錠をおろした。
6590 07 3 24 彼が出た後、王のしもべどもがきて、高殿の戸に錠のおろされてあるのを見て、「王はきっと涼み殿のへやで足をおおっておられるのだ」と思った。
6591 07 3 25 しもべどもは長いあいだ待っていたが、王がなお高殿の戸を開かないので、心配してかぎをとって開いて見ると、王は床にたおれて死んでいた。
6592 07 3 26 エホデは彼らのためらうまに、のがれて石像のある所を過ぎ、セイラに逃げていった。
6593 07 3 27 彼が行ってエフライムの山地にラッパを吹き鳴らしたので、イスラエルの人々は彼と共に山地から下ってエホデに従った。
6594 07 3 28 エホデは彼らに言った、「わたしについてきなさい。主はあなたがたの敵モアブびとをあなたがたの手にわたされます」。そこで彼らはエホデに従って下り、ヨルダンの渡し場をおさえ、モアブびとをひとりも渡らせなかった。
6595 07 3 29 そのとき彼らはモアブびとおおよそ一万人を殺した。これはいずれも肥え太った勇士であって、ひとりも、のがれた者がなかった。
6596 07 3 30 こうしてモアブはその日イスラエルの手に服し、国は八十年のあいだ太平であった。
6597 07 3 31 エホデの後、アナテの子シャムガルが起り、牛のむちをもってペリシテびと六百人を殺した。この人もまたイスラエルを救った。
6598 07 4 1 エホデが死んだ後、イスラエルの人々がまた主の前に悪をおこなったので、
6599 07 4 2 主は、ハゾルで世を治めていたカナンの王ヤビンの手に彼らを売りわたされた。ヤビンの軍勢の長はハロセテ・ゴイムに住んでいたシセラであった。
6600 07 4 3 彼は鉄の戦車九百両をもち、二十年の間イスラエルの人々を激しくしえたげたので、イスラエルの人々は主に向かって呼ばわった。
6601 07 4 4 そのころラピドテの妻、女預言者デボラがイスラエルをさばいていた。
6602 07 4 5 彼女はエフライムの山地のラマとベテルの間にあるデボラのしゅろの木の下に座し、イスラエルの人々は彼女のもとに上ってきて、さばきをうけた。
6603 07 4 6 デボラは人をつかわして、ナフタリのケデシからアビノアムの子バラクを招いて言った、「イスラエルの神、主はあなたに、こう命じられるではありませんか、『ナフタリの部族とゼブルンの部族から一万人を率い、行って、タボル山に陣をしけ。
6604 07 4 7 わたしはヤビンの軍勢の長シセラとその戦車と軍隊とをキション川に引き寄せて、あなたに出あわせ、彼をあなたの手にわたすであろう』」。
6605 07 4 8 バラクは彼女に言った、「あなたがもし一緒に行ってくだされば、わたしは行きます。しかし、一緒に行ってくださらないならば、行きません」。
6606 07 4 9 デボラは言った、「必ずあなたと一緒に行きます。しかしあなたは今行く道では誉を得ないでしょう。主はシセラを女の手にわたされるからです」。デボラは立ってバラクと一緒にケデシに行った。
6607 07 4 10 バラクはゼブルンとナフタリをケデシに呼び集め、一万人を従えて上った。デボラも彼と共に上った。
6608 07 4 11 時にケニびとヘベルはモーセのしゅうとホバブの子孫であるケニびとから分れて、ケデシに近いザアナイムのかしの木までも遠く行って天幕を張っていた。
6609 07 4 12 アビノアムの子バラクがタボル山に上ったと、人々がシセラに告げたので、
6610 07 4 13 シセラは自分の戦車の全部すなわち鉄の戦車九百両と、自分と共におるすべての民をハロセテ・ゴイムからキション川に呼び集めた。
6611 07 4 14 デボラはバラクに言った、「さあ、立ちあがりなさい。きょうは主がシセラをあなたの手にわたされる日です。主はあなたに先立って出られるではありませんか」。そこでバラクは一万人を従えてタボル山から下った。
6612 07 4 15 主はつるぎをもってシセラとすべての戦車および軍勢をことごとくバラクの前に撃ち敗られたので、シセラは戦車から飛びおり、徒歩で逃げ去った。
6613 07 4 16 バラクは戦車と軍勢とを追撃してハロセテ・ゴイムまで行った。シセラの軍勢はことごとくつるぎにたおれて、残ったものはひとりもなかった。
6614 07 4 17 しかしシセラは徒歩で逃げ去って、ケニびとヘベルの妻ヤエルの天幕に行った。ハゾルの王ヤビンとケニびとヘベルの家とは互にむつまじかったからである。
6615 07 4 18 ヤエルは出てきてシセラを迎え、彼に言った、「おはいりください。主よ、どうぞうちへおはいりください。恐れるにはおよびません」。シセラが天幕にはいったので、ヤエルは毛布をもって彼をおおった。
6616 07 4 19 シセラはヤエルに言った、「どうぞ、わたしに水を少し飲ませてください。のどがかわきましたから」。ヤエルは乳の皮袋を開いて彼に飲ませ、また彼をおおった。
6617 07 4 20 シセラはまたヤエルに言った、「天幕の入口に立っていてください。もし人がきて、あなたに『だれか、ここにおりますか』と問うならば『おりません』と答えてください」。
6618 07 4 21 しかし彼が疲れて熟睡したとき、ヘベルの妻ヤエルは天幕のくぎを取り、手に槌を携えて彼に忍び寄り、こめかみにくぎを打ち込んで地に刺し通したので、彼は息絶えて死んだ。
6619 07 4 22 バラクがシセラを追ってきたとき、ヤエルは彼を出迎えて言った、「おいでなさい。あなたが求めている人をお見せしましょう」。彼がヤエルの天幕にはいって見ると、シセラはこめかみにくぎを打たれて倒れて死んでいた。
6620 07 4 23 こうしてその日、神はカナンの王ヤビンをイスラエルの人々の前に撃ち敗られた。
6621 07 4 24 そしてイスラエルの人々の手はますますカナンびとの王ヤビンの上に重くなって、ついにカナンの王ヤビンを滅ぼすに至った。
6622 07 5 1 その日デボラとアビノアムの子バラクは歌って言った。
6623 07 5 2 「イスラエルの指導者たちは先に立ち、民は喜び勇んで進み出た。主をさんびせよ。
6624 07 5 3 もろもろの王よ聞け、もろもろの君よ、耳を傾けよ。わたしは主に向かって歌おう、わたしはイスラエルの神、主をほめたたえよう。
6625 07 5 4 主よ、あなたがセイルを出、エドムの地から進まれたとき、地は震い、天はしたたり、雲は水をしたたらせた。
6626 07 5 5 もろもろの山は主の前に揺り動き、シナイの主、すなわちイスラエルの神、主の前に揺り動いた。
6627 07 5 6 アナテの子シャムガルのとき、ヤエルの時には隊商は絶え、旅人はわき道をとおった。
6628 07 5 7 イスラエルには農民が絶え、かれらは絶え果てたが、デボラよ、ついにあなたは立ちあがり、立ってイスラエルの母となった。
6629 07 5 8 人々が新しい神々を選んだとき、戦いは門に及んだ。イスラエルの四万人のうちに、盾あるいは槍の見られたことがあったか。
6630 07 5 9 わたしの心は民のうちの喜び勇んで進み出たイスラエルのつかさたちと共にある。主をさんびせよ。
6631 07 5 10 茶色のろばに乗るもの、毛氈の上にすわるもの、および道を歩むものよ、共に歌え。
6632 07 5 11 楽人の調べは水くむ所に聞える。かれらはそこで主の救を唱え、イスラエルの農民の救を唱えている。その時、主の民は門に下って行った。
6633 07 5 12 起きよ、起きよ、デボラ。起きよ、起きよ、歌をうたえ。立てよ、バラク、とりこを捕えよ、アビノアムの子よ。
6634 07 5 13 その時、残った者は尊い者のように下って行き、主の民は勇士のように下って行った。
6635 07 5 14 彼らはエフライムから出て谷に進み、兄弟ベニヤミンはあなたの民のうちにある。マキルからはつかさたちが下って行き、ゼブルンからは指揮を執るものが下って行った。
6636 07 5 15 イッサカルの君たちはデボラと共におり、イッサカルはバラクと同じく、直ちにそのあとについて谷に突進した。しかしルベンの氏族は大いに思案した。
6637 07 5 16 なぜ、あなたは、おりの間にとどまって、羊の群れに笛吹くのを聞いているのか。ルベンの氏族は大いに思案した。
6638 07 5 17 ギレアデはヨルダンの向こうにとどまっていた。なぜ、ダンは舟のかたわらにとどまったか。アセルは浜べに座し、その波止場のかたわらにとどまっていた。
6639 07 5 18 ゼブルンは命をすてて、死を恐れぬ民である。野の高い所におるナフタリもまたそうであった。
6640 07 5 19 もろもろの王たちはきて戦った。その時カナンの王たちは、メギドの水のほとりのタアナクで戦った。彼らは一片の銀をも獲なかった。
6641 07 5 20 もろもろの星は天より戦い、その軌道をはなれてシセラと戦った。
6642 07 5 21 キションの川は彼らを押し流した、激しく流れる川、キションの川。わが魂よ、勇ましく進め。
6643 07 5 22 その時、軍馬ははせ駆けり、馬のひずめは地を踏みならした。
6644 07 5 23 主の使は言った、『メロズをのろえ、激しくその民をのろえ、彼らはきて主を助けず、主を助けて勇士を攻めなかったからである』。
6645 07 5 24 ケニびとヘベルの妻ヤエルは、女のうちの最も恵まれた者、天幕に住む女のうち最も恵まれた者である。
6646 07 5 25 シセラが水を求めると、ヤエルは乳を与えた。すなわち貴重な鉢に凝乳を盛ってささげた。
6647 07 5 26 ヤエルはくぎに手をかけ、右手に重い槌をとって、シセラを打ち、その頭を砕き、粉々にして、そのこめかみを打ち貫いた。
6648 07 5 27 シセラはヤエルの足もとにかがんで倒れ伏し、その足もとにかがんで倒れ、そのかがんだ所に倒れて死んだ。
6649 07 5 28 シセラの母は窓からながめ、格子窓から叫んで言った、『どうして彼の車の来るのがおそいのか、どうして彼の車の歩みがはかどらないのか』。
6650 07 5 29 その侍女たちの賢い者は答え、母またみずからおのれに答えて言った、
6651 07 5 30 『彼らは獲物を得て、それを分けているのではないか、人ごとにひとり、ふたりのおなごを取り、シセラの獲物は色染めの衣、縫い取りした色染めの衣の獲物であろう。すなわち縫い取りした色染めの衣二つを、獲物としてそのくびにまとうであろう』。
6652 07 5 31 主よ、あなたの敵はみなこのように滅び、あなたを愛する者を太陽の勢いよく上るようにしてください」。こうして後、国は四十年のあいだ太平であった。
6653 07 6 1 イスラエルの人々はまた主の前に悪をおこなったので、主は彼らを七年の間ミデアンびとの手にわたされた。
6654 07 6 2 ミデアンびとの手はイスラエルに勝った。イスラエルの人々はミデアンびとのゆえに、山にある岩屋と、ほら穴と要害とを自分たちのために造った。
6655 07 6 3 イスラエルびとが種をまいた時には、いつもミデアンびと、アマレクびとおよび東方の民が上ってきてイスラエルびとを襲い、
6656 07 6 4 イスラエルびとに向かって陣を取り、地の産物を荒してガザの附近にまで及び、イスラエルのうちに命をつなぐべき物を残さず、羊も牛もろばも残さなかった。
6657 07 6 5 彼らが家畜と天幕を携えて、いなごのように多く上ってきたからである。すなわち彼らとそのらくだは無数であって、彼らは国を荒すためにはいってきたのであった。
6658 07 6 6 こうしてイスラエルはミデアンびとのために非常に衰え、イスラエルの人々は主に呼ばわった。
6659 07 6 7 イスラエルの人々がミデアンびとのゆえに、主に呼ばわったとき、
6660 07 6 8 主はひとりの預言者をイスラエルの人々につかわして彼らに言われた、「イスラエルの神、主はこう言われる、『わたしはかつてあなたがたをエジプトから導き上り、あなたがたを奴隷の家から携え出し、
6661 07 6 9 エジプトびとの手およびすべてあなたがたをしえたげる者の手から救い出し、あなたがたの前から彼らを追い払って、その国をあなたがたに与えた。
6662 07 6 10 そしてあなたがたに言った、「わたしはあなたがたの神、主である。あなたがたが住んでいる国のアモリびとの神々を恐れてはならない」と。しかし、あなたがたはわたしの言葉に従わなかった』」。
6663 07 6 11 さて主の使がきて、アビエゼルびとヨアシに属するオフラにあるテレビンの木の下に座した。時にヨアシの子ギデオンはミデアンびとの目を避けるために酒ぶねの中で麦を打っていたが、
6664 07 6 12 主の使は彼に現れて言った、「大勇士よ、主はあなたと共におられます」。
6665 07 6 13 ギデオンは言った、「ああ、君よ、主がわたしたちと共におられるならば、どうしてこれらの事がわたしたちに臨んだのでしょう。わたしたちの先祖が『主はわれわれをエジプトから導き上られたではないか』といって、わたしたちに告げたそのすべての不思議なみわざはどこにありますか。今、主はわたしたちを捨てて、ミデアンびとの手にわたされました」。
6666 07 6 14 主はふり向いて彼に言われた、「あなたはこのあなたの力をもって行って、ミデアンびとの手からイスラエルを救い出しなさい。わたしがあなたをつかわすのではありませんか」。
6667 07 6 15 ギデオンは主に言った、「ああ主よ、わたしはどうしてイスラエルを救うことができましょうか。わたしの氏族はマナセのうちで最も弱いものです。わたしはまたわたしの父の家族のうちで最も小さいものです」。
6668 07 6 16 主は言われた、「しかし、わたしがあなたと共におるから、ひとりを撃つようにミデアンびとを撃つことができるでしょう」。
6669 07 6 17 ギデオンはまた主に言った、「わたしがもしあなたの前に恵みを得ていますならば、どうぞ、わたしと語るのがあなたであるというしるしを見せてください。
6670 07 6 18 どうぞ、わたしが供え物を携えてあなたのもとにもどってきて、あなたの前に供えるまで、ここを去らないでください」。主は言われた、「わたしはあなたがもどって来るまで待ちましょう」。
6671 07 6 19 そこでギデオンは自分の家に行って、やぎの子を整え、一エパの粉で種入れぬパンをつくり、肉をかごに入れ、あつものをつぼに盛り、テレビンの木の下におる彼のもとに持ってきて、それを供えた。
6672 07 6 20 神の使は彼に言った、「肉と種入れぬパンをとって、この岩の上に置き、それにあつものを注ぎなさい」。彼はそのようにした。
6673 07 6 21 すると主の使が手にもっていたつえの先を出して、肉と種入れぬパンに触れると、岩から火が燃えあがって、肉と種入れぬパンとを焼きつくした。そして主の使は去って見えなくなった。
6674 07 6 22 ギデオンはその人が主の使であったことをさとって言った、「ああ主なる神よ、どうなることでしょう。わたしは顔をあわせて主の使を見たのですから」。
6675 07 6 23 主は彼に言われた、「安心せよ、恐れるな。あなたは死ぬことはない」。
6676 07 6 24 そこでギデオンは主のために祭壇をそこに築いて、それを「主は平安」と名づけた。これは今日までアビエゼルびとのオフラにある。
6677 07 6 25 その夜、主はギデオンに言われた、「あなたの父の雄牛と七歳の第二の雄牛とを取り、あなたの父のもっているバアルの祭壇を打ちこわし、そのかたわらにあるアシラ像を切り倒し、
6678 07 6 26 あなたの神、主のために、このとりでの頂に、石を並べて祭壇を築き、第二の雄牛を取り、あなたが切り倒したアシラの木をもって燔祭をささげなさい」。
6679 07 6 27 ギデオンはしもべ十人を連れて、主が言われたとおりにおこなった。ただし彼は父の家族のもの、および町の人々を恐れたので、昼それを行うことができず、夜それを行った。
6680 07 6 28 町の人々が朝早く起きて見ると、バアルの祭壇は打ちこわされ、そのかたわらのアシラ像は切り倒され、新たに築いた祭壇の上に、第二の雄牛がささげられてあった。
6681 07 6 29 そこで彼らは互に「これはだれのしわざか」と言って問い尋ねたすえ、「これはヨアシの子ギデオンのしわざだ」と言った。
6682 07 6 30 町の人々はヨアシに言った、「あなたのむすこを引き出して殺しなさい。彼はバアルの祭壇を打ちこわしそのかたわらにあったアシラ像を切り倒したのです」。
6683 07 6 31 しかしヨアシは自分に向かって立っているすべての者に言った、「あなたがたはバアルのために言い争うのですか。あるいは彼を弁護しようとなさるのですか。バアルのために言い争う者は、あすの朝までに殺されるでしょう。バアルがもし神であるならば、自分の祭壇が打ちこわされたのだから、彼みずから言い争うべきです」。
6684 07 6 32 そこでその日、「自分の祭壇が打ちこわされたのだから、バアルみずからその人と言い争うべきです」と言ったので、ギデオンはエルバアルと呼ばれた。
6685 07 6 33 時にミデアンびと、アマレクびとおよび東方の民がみな集まってヨルダン川を渡り、エズレルの谷に陣を取ったが、
6686 07 6 34 主の霊がギデオンに臨み、ギデオンがラッパを吹いたので、アビエゼルびとは集まって彼に従った。
6687 07 6 35 次に彼があまねくマナセに使者をつかわしたので、マナセびともまた集まって彼に従った。彼がまたアセル、ゼブルンおよびナフタリに使者をつかわすと、その人々も上って彼を迎えた。
6688 07 6 36 ギデオンは神に言った、「あなたがかつて言われたように、わたしの手によってイスラエルを救おうとされるならば、
6689 07 6 37 わたしは羊の毛一頭分を打ち場に置きますから、露がその羊の毛の上にだけあって、地がすべてかわいているようにしてください。これによってわたしは、あなたがかつて言われたように、わたしの手によってイスラエルをお救いになることを知るでしょう」。
6690 07 6 38 すなわちそのようになった。彼が翌朝早く起きて、羊の毛をかき寄せ、その毛から露を絞ると、鉢に満ちるほどの水が出た。
6691 07 6 39 ギデオンは神に言った、「わたしをお怒りにならないように願います。わたしにもう一度だけ言わせてください。どうぞ、もう一度だけ羊の毛をもってためさせてください。どうぞ、羊の毛だけをかわかして、地にはことごとく露があるようにしてください」。
6692 07 6 40 神はその夜、そうされた。すなわち羊の毛だけかわいて、地にはすべて露があった。
6693 07 7 1 さてエルバアルと呼ばれるギデオンおよび彼と共にいたすべての民は朝早く起き、ハロデの泉のほとりに陣を取った。ミデアンびとの陣は彼らの北の方にあり、モレの丘に沿って谷の中にあった。
6694 07 7 2 主はギデオンに言われた、「あなたと共におる民はあまりに多い。ゆえにわたしは彼らの手にミデアンびとをわたさない。おそらくイスラエルはわたしに向かってみずから誇り、『わたしは自身の手で自分を救ったのだ』と言うであろう。
6695 07 7 3 それゆえ、民の耳に触れ示して、『だれでも恐れおののく者は帰れ』と言いなさい」。こうしてギデオンは彼らを試みたので、民のうち帰った者は二万二千人あり、残った者は一万人であった。
6696 07 7 4 主はまたギデオンに言われた、「民はまだ多い。彼らを導いて水ぎわに下りなさい。わたしはそこで、あなたのために彼らを試みよう。わたしがあなたに告げて『この人はあなたと共に行くべきだ』と言う者は、あなたと共に行くべきである。またわたしがあなたに告げて『この人はあなたと共に行ってはならない』と言う者は、だれも行ってはならない」。
6697 07 7 5 そこでギデオンが民を導いて水ぎわに下ると、主は彼に言われた、「すべて犬のなめるように舌をもって水をなめる者はそれを別にしておきなさい。またすべてひざを折り、かがんで水を飲む者もそうしなさい」。
6698 07 7 6 そして手を口にあてて水をなめた者の数は三百人であった。残りの民はみなひざを折り、かがんで水を飲んだ。
6699 07 7 7 主はギデオンに言われた、「わたしは水をなめた三百人の者をもって、あなたがたを救い、ミデアンびとをあなたの手にわたそう。残りの民はおのおのその家に帰らせなさい」。
6700 07 7 8 そこで彼はかの三百人を留めおき、残りのイスラエルびとの手から、つぼとラッパを取り、民をおのおのその天幕に帰らせた。時にミデアンびとの陣は下の谷の中にあった。
6701 07 7 9 その夜、主はギデオンに言われた、「立てよ、下っていって敵陣に攻め入れ。わたしはそれをあなたの手にわたす。
6702 07 7 10 もしあなたが下って行くことを恐れるならば、あなたのしもべプラと共に敵陣に下っていって、
6703 07 7 11 彼らの言うところを聞け。そうすればあなたの手が強くなって、敵陣に攻め下ることができるであろう」。ギデオンがしもべプラと共に下って、敵陣にある兵隊たちの前哨地点に行ってみると、
6704 07 7 12 ミデアンびと、アマレクびとおよびすべての東方の民はいなごのように数多く谷に沿って伏していた。そのらくだは海べの砂のように多くて数えきれなかった。
6705 07 7 13 ギデオンがそこへ行ったとき、ある人がその仲間に夢を語っていた。その人は言った、「わたしは夢を見た。大麦のパン一つがミデアンの陣中にころがってきて、天幕に達し、それを打ち倒し、くつがえしたので、天幕は倒れ伏した」。
6706 07 7 14 仲間は答えて言った、「それはイスラエルの人、ヨアシの子ギデオンのつるぎにちがいない。神はミデアンとすべての軍勢を彼の手にわたされるのだ」。
6707 07 7 15 ギデオンは夢の物語とその解き明かしとを聞いたので、礼拝し、イスラエルの陣営に帰り、そして言った、「立てよ、主はミデアンの軍勢をあなたがたの手にわたされる」。
6708 07 7 16 そして彼は三百人を三組に分け、手に手にラッパと、からつぼとを取らせ、つぼの中にたいまつをともさせ、
6709 07 7 17 彼らに言った、「わたしを見て、わたしのするようにしなさい。わたしが敵陣のはずれに達したとき、あなたがたもわたしのするようにしなさい。
6710 07 7 18 わたしと共におる者がみなラッパを吹くと、あなたがたもまたすべての陣営の四方でラッパを吹き、『主のためだ、ギデオンのためだ』と言いなさい」。
6711 07 7 19 こうしてギデオンと、彼と共にいた百人の者が、中更の初めに敵陣のはずれに行ってみると、ちょうど番兵を交代した時であったので、彼らはラッパを吹き、手に携えていたつぼを打ち砕いた。
6712 07 7 20 すなわち三組の者がラッパを吹き、つぼを打ち砕き、左の手にはたいまつをとり、右の手にはラッパを持ってそれを吹き、「主のためのつるぎ、ギデオンのためのつるぎ」と叫んだ。
6713 07 7 21 そしておのおのその持ち場に立ち、敵陣を取り囲んだので、敵軍はみな走り、大声をあげて逃げ去った。
6714 07 7 22 三百人のものがラッパを吹くと、主は敵軍をしてみな互に同志打ちさせられたので、敵軍はゼレラの方、ベテシッタおよびアベルメホラの境、タバテの近くまで逃げ去った。
6715 07 7 23 イスラエルの人々はナフタリ、アセルおよび全マナセから集まってきて、ミデアンびとを追撃した。
6716 07 7 24 ギデオンは使者をあまねくエフライムの山地につかわし、「下ってきて、ミデアンびとを攻め、ベタバラに至るまでの流れを取り、またヨルダンをも取れ」と言わせた。そこでエフライムの人々はみな集まってきて、ベタバラに至るまでの流れを取り、またヨルダンをも取った。
6717 07 7 25 彼らはまたミデアンびとのふたりの君オレブとゼエブを捕え、オレブをオレブ岩のほとりで殺し、ゼエブをゼエブの酒ぶねのほとりで殺した。またミデアンびとを追撃し、オレブとゼエブの首を携えてヨルダンの向こうのギデオンのもとへ行った。
6718 07 8 1 エフライムの人々はギデオンに向かい「あなたが、ミデアンびとと戦うために行かれたとき、われわれを呼ばれなかったが、どうしてそういうことをされたのですか」と言って激しく彼を責めた。
6719 07 8 2 ギデオンは彼らに言った、「今わたしのした事は、あなたがたのした事と比べものになりましょうか。エフライムの拾い集めた取り残りのぶどうはアビエゼルの収穫したぶどうにもまさるではありませんか。
6720 07 8 3 神はミデアンの君オレブとゼエブをあなたがたの手にわたされました。わたしのなし得た事は、あなたがたのした事と比べものになりましょうか」。ギデオンがこの言葉を述べると、彼らの憤りは解けた。
6721 07 8 4 ギデオンは自分に従っていた三百人と共にヨルダンに行ってこれを渡り、疲れながらもなお追撃したが、
6722 07 8 5 彼はスコテの人々に言った、「どうぞわたしに従っている民にパンを与えてください。彼らが疲れているのに、わたしはミデアンの王ゼバとザルムンナを追撃しているのですから」。
6723 07 8 6 スコテのつかさたちは言った、「ゼバとザルムンナは、すでにあなたの手のうちにあるのですか。われわれはどうしてあなたの軍勢にパンを与えねばならないのですか」。
6724 07 8 7 ギデオンは言った、「それならば主がわたしの手にゼバとザルムンナをわたされるとき、わたしは野のいばらと、おどろをもって、あなたがたの肉を打つであろう」。
6725 07 8 8 そしてギデオンはそこからペヌエルに上り、同じことをペヌエルの人々に述べると、彼らもスコテの人々が答えたように答えたので、
6726 07 8 9 ペヌエルの人々に言った、「わたしが安らかに帰ってきたとき、このやぐらを打ちこわすであろう」。
6727 07 8 10 さてゼバとザルムンナは軍勢おおよそ一万五千人を率いて、カルコルにいた。これは皆、東方の民の全軍のうち生き残ったもので、戦死した者は、つるぎを帯びているものが十二万人あった。
6728 07 8 11 ギデオンはノバとヨグベハの東の隊商の道を上って、敵軍の油断しているところを撃った。
6729 07 8 12 ゼバとザルムンナは逃げたが、ギデオンは追撃して、ミデアンのふたりの王ゼバとザルムンナを捕え、その軍勢をことごとく撃ち敗った。
6730 07 8 13 こうしてヨアシの子ギデオンはヘレスの坂をとおって戦いから帰り、
6731 07 8 14 スコテの若者ひとりを捕えて、尋ねたところ、彼はスコテのつかさたち及び長老たち七十七人の名をギデオンのために書きしるした。
6732 07 8 15 ギデオンはスコテの人々のところへ行って言った、「あなたがたがかつて『ゼバとザルムンナはすでにあなたの手のうちにあるのか。われわれはどうしてあなたの疲れた人々にパンを与えねばならないのか』と言って、わたしをののしったそのゼバとザルムンナを見なさい」。
6733 07 8 16 そして彼は、その町の長老たちを捕え、野のいばらと、おどろとを取り、それをもってスコテの人々を懲らし、
6734 07 8 17 またペヌエルのやぐらを打ちこわして町の人々を殺した。
6735 07 8 18 そしてギデオンはゼバとザルムンナに言った、「あなたがたがタボルで殺したのは、どんな人々であったか」。彼らは答えた、「彼らはあなたに似てみな王子のように見えました」。
6736 07 8 19 ギデオンは言った、「彼らはわたしの兄弟、わたしの母の子たちだ。主は生きておられる。もしあなたがたが彼らを生かしておいたならば、わたしはあなたがたを殺さないのだが」。
6737 07 8 20 そして長子エテルに言った、「立って、彼らを殺しなさい」。しかしその若者はなお年が若かったので、恐れてつるぎを抜かなかった。
6738 07 8 21 そこでゼバとザルムンナは言った、「あなた自身が立って、わたしたちを撃ってください。人によってそれぞれ力も違いますから」。ギデオンは立ちあがってゼバとザルムンナを殺し、彼らのらくだの首に掛けてあった月形の飾りを取った。
6739 07 8 22 イスラエルの人々はギデオンに言った、「あなたはミデアンの手からわれわれを救われたのですから、あなたも、あなたの子も孫もわれわれを治めてください」。
6740 07 8 23 ギデオンは彼らに言った、「わたしはあなたがたを治めることはいたしません。またわたしの子もあなたがたを治めてはなりません。主があなたがたを治められます」。
6741 07 8 24 ギデオンはまた彼らに言った、「わたしはあなたがたに一つの願いがあります。あなたがたのぶんどった耳輪をめいめいわたしにください」。ミデアンびとはイシマエルびとであったゆえに、金の耳輪を持っていたからである。
6742 07 8 25 彼らは答えた、「わたしどもは喜んでそれをさしあげます」。そして衣をひろげ、めいめいぶんどった耳輪をその中に投げ入れた。
6743 07 8 26 こうしてギデオンが求めて得た金の耳輪の重さは一千七百金シケルであった。ほかに月形の飾りと耳飾りと、ミデアンの王たちの着た紫の衣およびらくだの首に掛けた首飾りなどもあった。
6744 07 8 27 ギデオンはそれをもって一つのエポデを作り、それを自分の町オフラに置いた。イスラエルは皆それを慕って姦淫をおこなった。それはギデオンとその家にとって、わなとなった。
6745 07 8 28 このようにしてミデアンはイスラエルの人々に征服されて、再びその頭をあげることができなかった。そして国はギデオンの世にあるうち、四十年のあいだ太平であった。
6746 07 8 29 ヨアシの子エルバアルは行って自分の家に住んだ。
6747 07 8 30 ギデオンは多くの妻をもっていたので、自分の子供だけで七十人あった。
6748 07 8 31 シケムにいた彼のめかけがまたひとりの子を産んだので、アビメレクと名づけた。
6749 07 8 32 ヨアシの子ギデオンは高齢に達して死に、アビエゼルびとのオフラにある父ヨアシの墓に葬られた。
6750 07 8 33 ギデオンが死ぬと、イスラエルの人々はまたバアルを慕って、これと姦淫を行い、バアル・ベリテを自分たちの神とした。
6751 07 8 34 すなわちイスラエルの人々は周囲のもろもろの敵の手から自分たちを救われた彼らの神、主を覚えず、
6752 07 8 35 またエルバアルすなわちギデオンがイスラエルのためにしたもろもろの善行に応じて彼の家族に親切をつくすこともしなかった。
6753 07 9 1 さてエルバアルの子アビメレクはシケムに行き、母の身内の人たちのもとに行って、彼らと母の父の家の一族とに言った、
6754 07 9 2 「どうぞ、シケムのすべての人々の耳に告げてください、『エルバアルのすべての子七十人であなたがたを治めるのと、ただひとりであなたがたを治めるのと、どちらがよいか。わたしがあなたがたの骨肉であることを覚えてください』と」。
6755 07 9 3 そこで母の身内の人たちがアビメレクに代ってこれらの言葉をことごとくシケムのすべての人々の耳に告げると、彼らは心をアビメレクに傾け、「彼はわれわれの兄弟だ」と言って、
6756 07 9 4 バアル・ベリテの宮から銀七十シケルを取って彼に与えた。アビメレクはそれをもって、やくざのならず者を雇って自分に従わせ、
6757 07 9 5 オフラにある父の家に行って、エルバアルの子で、自分の兄弟である七十人を、一つの石の上で殺した。ただしエルバアルの末の子ヨタムは身を隠したので生き残った。
6758 07 9 6 そこでシケムのすべての人々とベテミロのすべての人々は集まり、行ってシケムにある石の柱のかたわらのテレビンの木のもとで、アビメレクを立てて王とした。
6759 07 9 7 このことをヨタムに告げる者があったので、ヨタムは行ってゲリジム山の頂に立ち、大声に叫んで彼らに言った、「シケムの人々よ、わたしに聞きなさい。そうすれば神はあなたがたに聞かれるでしょう。
6760 07 9 8 ある時、もろもろの木が自分たちの上に王を立てようと出て行ってオリブの木に言った、『わたしたちの王になってください』。
6761 07 9 9 しかしオリブの木は彼らに言った、『わたしはどうして神と人とをあがめるために用いられるわたしの油を捨てて行って、もろもろの木を治めることができましょう』。
6762 07 9 10 もろもろの木はまたいちじくの木に言った、『きてわたしたちの王になってください』。
6763 07 9 11 しかしいちじくの木は彼らに言った、『わたしはどうしてわたしの甘味と、わたしの良い果実とを捨てて行って、もろもろの木を治めることができましょう』。
6764 07 9 12 もろもろの木はまたぶどうの木に言った、『きてわたしたちの王になってください』。
6765 07 9 13 しかし、ぶどうの木は彼らに言った、『わたしはどうして神と人とを喜ばせるわたしのぶどう酒を捨てて行って、もろもろの木を治めることができましょう』。
6766 07 9 14 そこですべての木はいばらに言った、『きてわたしたちの王になってください』。
6767 07 9 15 いばらはもろもろの木に言った、『あなたがたが真実にわたしを立てて王にするならば、きてわたしの陰に難を避けなさい。そうしなければ、いばらから火が出てレバノンの香柏を焼きつくすでしょう』。
6768 07 9 16 あなたがたがアビメレクを立てて王にしたことは、真実と敬意とをもってしたものですか。あなたがたはエルバアルとその家をよく扱い、彼のおこないに応じてしたのですか。
6769 07 9 17 わたしの父はあなたがたのために戦い、自分の命を投げ出して、あなたがたをミデアンの手から救い出したのに、
6770 07 9 18 あなたがたは、きょう、わたしの父の家に反抗して起り、その子七十人を一つの石の上で殺し、その腰元の子アビメレクをあなたがたの身内の者であるゆえに立てて、シケムの人々の王にしました。
6771 07 9 19 あなたがたが、きょう、エルバアルとその家になされたことが真実と敬意をもってしたものであるならば、アビメレクのために喜びなさい。彼もまたあなたがたのために喜ぶでしょう。
6772 07 9 20 しかし、そうでなければ、アビメレクから火が出て、シケムの人々とベテミロとを焼きつくし、またシケムの人々とベテミロからも火が出てアビメレクを焼きつくすでしょう」。
6773 07 9 21 こうしてヨタムは走って逃げ去り、ベエルに行き、兄弟アビメレクの顔をさけてそこに住んだ。
6774 07 9 22 アビメレクは三年の間イスラエルを治めたが、
6775 07 9 23 神はアビメレクとシケムの人々の間に悪霊をおくられたので、シケムの人々はアビメレクを欺くようになった。
6776 07 9 24 これはエルバアルの七十人の子が受けた暴虐と彼らの血が、彼らを殺した兄弟アビメレクの上と、彼の手を強めてその兄弟を殺させたシケムの人々の上とに報いとなってきたのである。
6777 07 9 25 シケムの人々は彼に敵して待ち伏せする者を山々の頂におき、すべてその道を通り過ぎる者を略奪させた。このことがアビメレクに告げ知らされた。
6778 07 9 26 さてエベデの子ガアルはその身内の人々と一緒にシケムに移住したが、シケムの人々は彼を信用した。
6779 07 9 27 人々は畑に出てぶどうを取り入れ、それを踏み絞って祭をし、神の宮に行って飲み食いしてアビメレクをのろった。
6780 07 9 28 そしてエベデの子ガアルは言った、「アビメレクは何ものか。シケムのわれわれは何ものなれば彼に仕えなければならないのか。エルバアルの子とその役人ゼブルはシケムの先祖ハモルの一族に仕えたではないか。われわれはどうして彼に仕えなければならないのか。
6781 07 9 29 ああ、この民がわたしの手の下にあったらよいのだが。そうすればわたしはアビメレクをやめさせ、アビメレクに向かって『おまえの軍勢を増して出てこい』と言うであろう」。
6782 07 9 30 町のつかさゼブルはエベデの子ガアルの言葉を聞いて怒りを発し、
6783 07 9 31 使者をアルマにおるアビメレクにつかわして言わせた、「エベデの子ガアルとその身内の人々がシケムにきて、町を騒がせ、あなたにそむかせようとしています。
6784 07 9 32 それであなたと、あなたと共におる人々が夜のうちに行って、野に身を伏せ、
6785 07 9 33 朝になって、日ののぼるとき、早く起き出て町を襲うならば、ガアルと、彼と共におる民は出てきて、あなたに抵抗するでしょう。その時あなたは機を得て、彼らを撃つことができるでしょう」。
6786 07 9 34 アビメレクと、彼と共にいたすべての民は夜のうちに起き出て、四組に分れ、身を伏せてシケムをうかがった。
6787 07 9 35 エベデの子ガアルが出て、町の門の入口に立ったとき、アビメレクと、彼と共にいた民が身を伏せていたところから立ちあがったので、
6788 07 9 36 ガアルは民を見てゼブルに言った、「ごらんなさい。民が山々の頂からおりてきます」。ゼブルは彼に言った、「あなたは山々の影を人のように見るのです」。
6789 07 9 37 ガアルは再び言った、「ごらんなさい。民が国の中央部からおりてきます。一組は占い師のテレビンの木の方からきます」。
6790 07 9 38 ゼブルは彼に言った、「あなたがかつて『アビメレクは何ものか。われわれは何ものなれば彼に仕えなければならないのか』と言ったあなたの口は今どこにありますか。これはあなたが侮った民ではありませんか。今、出て彼らと戦いなさい」。
6791 07 9 39 そこでガアルはシケムの人々を率い、出てアビメレクと戦ったが、
6792 07 9 40 アビメレクは彼を追ったので、ガアルは彼の前から逃げた。そして傷つき倒れる者が多く、門の入口にまで及んだ。
6793 07 9 41 こうしてアビメレクは引き続いてアルマにいたが、ゼブルはガアルとその身内の人々を追い出してシケムにおらせなかった。
6794 07 9 42 翌日、民が畑に出ると、そのことがアビメレクに聞えた。
6795 07 9 43 アビメレクは自分の民を率い、それを三組に分け、野に身を伏せて、うかがっていると、民が町から出てきたので、たちあがってこれを撃った。
6796 07 9 44 アビメレクと、彼と共にいた組の者は襲って行って、町の門の入口に立ち、他の二組は野にいたすべてのものを襲って、それを殺した。
6797 07 9 45 アビメレクはその日、終日、町を攻め、ついに町を取って、そのうちの民を殺し、町を破壊して、塩をまいた。
6798 07 9 46 シケムのやぐらの人々は皆これを聞いて、エルベリテの宮の塔にはいった。
6799 07 9 47 シケムのやぐらの人々が皆集まったことがアビメレクに聞えたので、
6800 07 9 48 アビメレクは自分と一緒にいた民をことごとく率いてザルモン山にのぼり、アビメレクは手におのを取って、木の枝を切り落し、それを取りあげて自分の肩にのせ、一緒にいた民にむかって言った、「あなたがたはわたしがしたことを見たとおりに急いでしなさい」。
6801 07 9 49 そこで民もまた皆おのおのその枝を切り落し、アビメレクに従って行って、枝を塔によせかけ、塔に火をつけて彼らを攻めた。こうしてシケムのやぐらの人々もまたことごとく死んだ。男女おおよそ一千人であった。
6802 07 9 50 ついでアビメレクはテベツに行き、テベツに向かって陣を張り、これを攻め取ったが、
6803 07 9 51 町の中に一つの堅固なやぐらがあって、すべての男女すなわち町の人々が皆そこに逃げ込み、あとを閉ざして、やぐらの屋根に上ったので、
6804 07 9 52 アビメレクはやぐらのもとに押し寄せてこれを攻め、やぐらの入口に近づいて、火をつけて焼こうとしたとき、
6805 07 9 53 ひとりの女がアビメレクの頭に、うすの上石を投げて、その頭骸骨を砕いた。
6806 07 9 54 アビメレクは自分の武器を持つ若者を急ぎ呼んで言った、「つるぎを抜いてわたしを殺せ。さもないと人々はわたしを、女に殺されたのだと言うであろう」。その若者が彼を刺し通したので彼は死んだ。
6807 07 9 55 イスラエルの人々はアビメレクの死んだのを見て、おのおの去って家に帰った。
6808 07 9 56 このように神はアビメレクがその兄弟七十人を殺して、自分の父に対して犯した悪に報いられた。
6809 07 9 57 また神はシケムの人々のすべての悪を彼らのこうべに報いられた。こうしてエルバアルの子ヨタムののろいが、彼らに臨んだのである。
6810 07 10 1 アビメレクの後、イッサカルの人で、ドドの子であるプワの子トラが起ってイスラエルを救った。彼はエフライムの山地のシャミルに住み、
6811 07 10 2 二十三年の間イスラエルをさばいたが、ついに死んでシャミルに葬られた。
6812 07 10 3 彼の後にギレアデびとヤイルが起って二十二年の間イスラエルをさばいた。
6813 07 10 4 彼に三十人の子があった。彼らは三十頭のろばに乗り、また三十の町をもっていた。ギレアデの地で今日まで、ハボテ・ヤイルと呼ばれているものがそれである。
6814 07 10 5 ヤイルは死んで、カモンに葬られた。
6815 07 10 6 イスラエルの人々は再び主の前に悪を行い、バアルとアシタロテおよびスリヤの神々、シドンの神々、モアブの神々、アンモンびとの神々、ペリシテびとの神々に仕え、主を捨ててこれに仕えなかった。
6816 07 10 7 主はイスラエルに対して怒りを発し、彼らをペリシテびとの手およびアンモンびとの手に売りわたされたので、
6817 07 10 8 彼らはその年イスラエルの人々をしえたげ悩ました。すなわち彼らはヨルダンの向こうのギレアデにあるアモリびとの地にいたすべてのイスラエルびとを十八年のあいだ悩ました。
6818 07 10 9 またアンモンの人々がユダとベニヤミンとエフライムの氏族を攻めるためにヨルダンを渡ってきたので、イスラエルは非常に悩まされた。
6819 07 10 10 そこでイスラエルの人々は主に呼ばわって言った、「わたしたちはわたしたちの神を捨ててバアルに仕え、あなたに罪を犯しました」。
6820 07 10 11 主はイスラエルの人々に言われた、「わたしはかつてエジプトびと、アモリびと、アンモンびと、ペリシテびとからあなたがたを救い出したではないか。
6821 07 10 12 またシドンびと、アマレクびとおよびマオンびとがあなたがたをしえたげた時、わたしに呼ばわったので、あなたがたを彼らの手から救い出した。
6822 07 10 13 しかしあなたがたはわたしを捨てて、ほかの神々に仕えた。それゆえ、わたしはかさねてあなたがたを救わないであろう。
6823 07 10 14 あなたがたが選んだ神々に行って呼ばわり、あなたがたの悩みの時、彼らにあなたがたを救わせるがよい」。
6824 07 10 15 イスラエルの人々は主に言った、「わたしたちは罪を犯しました。なんでもあなたが良いと思われることをしてください。ただどうぞ、きょう、わたしたちを救ってください」。
6825 07 10 16 そうして彼らは自分たちのうちから異なる神々を取り除いて、主に仕えた。それで主の心はイスラエルの悩みを見るに忍びなくなった。
6826 07 10 17 時にアンモンの人々は召集されてギレアデに陣を取ったが、イスラエルの人々は集まってミヅパに陣を取った。
6827 07 10 18 その時、民とギレアデの君たちとは互に言った、「だれがアンモンの人々に向かって戦いを始めるか。その人はギレアデのすべての民のかしらとなるであろう」。
6828 07 11 1 さてギレアデびとエフタは強い勇士であったが遊女の子で、エフタの父はギレアデであった。
6829 07 11 2 ギレアデの妻も子供を産んだが、その妻の子供たちが成長したとき、彼らはエフタを追い出して彼に言った、「あなたはほかの女の産んだ子だから、わたしたちの父の家を継ぐことはできません」。
6830 07 11 3 それでエフタはその兄弟たちのもとから逃げ去って、トブの地に住んでいると、やくざ者がエフタのもとに集まってきて、彼と一緒に出かけて略奪を事としていた。
6831 07 11 4 日がたって後、アンモンの人々はイスラエルと戦うことになり、
6832 07 11 5 アンモンの人々がイスラエルと戦ったとき、ギレアデの長老たちは行ってエフタをトブの地から連れてこようとして、
6833 07 11 6 エフタに言った、「きて、わたしたちの大将になってください。そうすればわたしたちはアンモンの人々と戦うことができます」。
6834 07 11 7 エフタはギレアデの長老たちに言った、「あなたがたはわたしを憎んで、わたしの父の家から追い出したではありませんか。しかるに今あなたがたが困っている時とはいえ、わたしのところに来るとはどういうわけですか」。
6835 07 11 8 ギレアデの長老たちはエフタに言った、「それでわたしたちは今、あなたに帰ったのです。どうぞ、わたしたちと一緒に行って、アンモンの人々と戦ってください。そしてわたしたちとギレアデに住んでいるすべてのものとのかしらになってください」。
6836 07 11 9 エフタはギレアデの長老たちに言った、「もしあなたがたが、わたしをつれて帰って、アンモンの人々と戦わせるとき、主が彼らをわたしにわたされるならば、わたしはあなたがたのかしらとなりましょう」。
6837 07 11 10 ギレアデの長老たちはエフタに言った、「主はあなたとわたしたちの間の証人です。わたしたちは必ずあなたの言われるとおりにしましょう」。
6838 07 11 11 そこでエフタはギレアデの長老たちと一緒に行った。民は彼を立てて自分たちのかしらとし、大将とした。それでエフタはミヅパで、自分の言葉をことごとく主の前に述べた。
6839 07 11 12 かくてエフタはアンモンの人々の王に使者をつかわして言った、「あなたはわたしとなんのかかわりがあって、わたしのところへ攻めてきて、わたしの国と戦おうとするのですか」。
6840 07 11 13 アンモンの人々の王はエフタの使者に答えた、「昔、イスラエルがエジプトから上ってきたとき、アルノンからヤボクに及び、またヨルダンに及ぶわたしの国を奪い取ったからです。それゆえ今、穏やかにそれを返しなさい」。
6841 07 11 14 エフタはまた使者をアンモンの人々の王につかわして、
6842 07 11 15 言わせた、「エフタはこう申します、『イスラエルはモアブの地も、またアンモンの人々の地も取りませんでした。
6843 07 11 16 イスラエルはエジプトから上ってきたとき、荒野をとおって紅海にいたり、カデシにきました。
6844 07 11 17 そしてイスラエルは使者をエドムの王につかわして「どうぞ、われわれにあなたの国を通らせてください」と言わせましたが、エドムの王は聞きいれませんでした。また同じように人をモアブの王につかわしたが、彼も承諾しなかったので、イスラエルはカデシにとどまりました。
6845 07 11 18 それから荒野をとおって、エドムの地とモアブの地を回り、モアブの地の東部に達し、アルノンの向こうに宿営しましたがモアブの領域には、はいりませんでした。アルノンはモアブの境だからです。
6846 07 11 19 次にイスラエルはヘシボンの王すなわちアモリびとの王シホンに使者をつかわし、シホンに向かって「どうぞ、われわれにあなたの国をとおって、われわれの目的地へ行かせてください」と言わせました。
6847 07 11 20 ところがシホンはイスラエルを信ぜず、その領域を通らせないばかりか、かえってすべての民を集めてヤハヅに陣を取り、イスラエルと戦いましたが、
6848 07 11 21 イスラエルの神、主はシホンとそのすべての民をイスラエルの手にわたされたので、イスラエルは彼らを撃ち破って、その土地に住んでいたアモリびとの地をことごとく占領し、
6849 07 11 22 アルノンからヤボクまでと、荒野からヨルダンまで、アモリびとの領域をことごとく占領しました。
6850 07 11 23 このようにイスラエルの神、主はその民イスラエルの前からアモリびとを追い払われたのに、あなたはそれを取ろうとするのですか。
6851 07 11 24 あなたは、あなたの神ケモシがあなたに取らせるものを取らないのですか。われわれはわれわれの神、主がわれわれの前から追い払われたものの土地を取るのです。
6852 07 11 25 あなたはモアブの王チッポルの子バラクにまさる者ですか。バラクはかつてイスラエルと争ったことがありますか。かつて彼らと戦ったことがありますか。
6853 07 11 26 イスラエルはヘシボンとその村里に住み、またアロエルとその村里およびアルノンの岸に沿うすべての町々に住むこと三百年になりますが、あなたがたはどうしてその間にそれを取りもどさなかったのですか。
6854 07 11 27 わたしはあなたに何も悪い事をしたこともないのに、あなたはわたしと戦って、わたしに害を加えようとします。審判者であられる主よ、どうぞ、きょう、イスラエルの人々とアンモンの人々との間をおさばきください』」。
6855 07 11 28 しかしアンモンの人々の王はエフタが言いつかわした言葉をききいれなかった。
6856 07 11 29 時に主の霊がエフタに臨み、エフタはギレアデおよびマナセをとおって、ギレアデのミヅパに行き、ギレアデのミヅパから進んでアンモンの人々のところに行った。
6857 07 11 30 エフタは主に誓願を立てて言った、「もしあなたがアンモンの人々をわたしの手にわたされるならば、
6858 07 11 31 わたしがアンモンの人々に勝って帰るときに、わたしの家の戸口から出てきて、わたしを迎えるものはだれでも主のものとし、その者を燔祭としてささげましょう」。
6859 07 11 32 エフタはアンモンの人々のところに進んで行って、彼らと戦ったが、主は彼らをエフタの手にわたされたので、
6860 07 11 33 アロエルからミンニテの附近まで、二十の町を撃ち敗り、アベル・ケラミムに至るまで、非常に多くの人を殺した。こうしてアンモンの人々はイスラエルの人々の前に攻め伏せられた。
6861 07 11 34 やがてエフタはミヅパに帰り、自分の家に来ると、彼の娘が鼓をもち、舞い踊って彼を出迎えた。彼女はエフタのひとり子で、ほかに男子も女子もなかった。
6862 07 11 35 エフタは彼女を見ると、衣を裂いて言った、「ああ、娘よ、あなたは全くわたしを打ちのめした。わたしを悩ますものとなった。わたしが主に誓ったのだから改めることはできないのだ」。
6863 07 11 36 娘は言った、「父よ、あなたは主に誓われたのですから、主があなたのために、あなたの敵アンモンの人々に報復された今、あなたが言われたとおりにわたしにしてください」。
6864 07 11 37 娘はまた父に言った、「どうぞ、この事をわたしにさせてください。すなわち二か月の間わたしをゆるし、友だちと一緒に行って、山々をゆきめぐり、わたしの処女であることを嘆かせてください」。
6865 07 11 38 エフタは「行きなさい」と言って、彼女を二か月の間、出してやった。彼女は友だちと一緒に行って、山の上で自分の処女であることを嘆いたが、
6866 07 11 39 二か月の後、父のもとに帰ってきたので、父は誓った誓願のとおりに彼女におこなった。彼女はついに男を知らなかった。
6867 07 11 40 これによって年々イスラエルの娘たちは行って、年に四日ほどギレアデびとエフタの娘のために嘆くことがイスラエルのならわしとなった。
6868 07 12 1 エフライムの人々は集まってザポンに行き、エフタに言った、「なぜあなたは進んで行ってアンモンの人々と戦いながら、われわれを招いて一緒に行かせませんでしたか。われわれはあなたの家に火をつけてあなたを一緒に焼いてしまいます」。
6869 07 12 2 エフタは彼らに言った、「かつてわたしとわたしの民がアンモンの人々と大いに争ったとき、あなたがたを呼んだが、あなたがたはわたしを彼らの手から救ってくれませんでした。
6870 07 12 3 あなたがたが救ってくれないのを見たから、わたしは命がけでアンモンの人々のところへ攻めて行きますと、主は彼らをわたしの手にわたされたのです。どうしてあなたがたは、きょう、わたしのところに上ってきて、わたしと戦おうとするのですか」。
6871 07 12 4 そこでエフタはギレアデの人々をことごとく集めてエフライムと戦い、ギレアデの人々はエフライムを撃ち破った。これはエフライムが「ギレアデびとよ、あなたがたはエフライムとマナセのうちにいるエフライムの落人だ」と言ったからである。
6872 07 12 5 そしてギレアデびとはエフライムに渡るヨルダンの渡し場を押えたので、エフライムの落人が「渡らせてください」と言うとき、ギレアデの人々は「あなたはエフライムびとですか」と問い、その人がもし「そうではありません」と言うならば、
6873 07 12 6 またその人に「では『シボレテ』と言ってごらんなさい」と言い、その人がそれを正しく発音することができないで「セボレテ」と言うときは、その人を捕えて、ヨルダンの渡し場で殺した。その時エフライムびとの倒れたものは四万二千人であった。
6874 07 12 7 エフタは六年の間イスラエルをさばいた。ギレアデびとエフタはついに死んで、ギレアデの自分の町に葬られた。
6875 07 12 8 彼の後にベツレヘムのイブザンがイスラエルをさばいた。
6876 07 12 9 彼に三十人のむすこがあった。また三十人の娘があったが、それを自分の氏族以外の者にとつがせ、むすこたちのためには三十人の娘をほかからめとった。彼は七年の間イスラエルをさばいた。
6877 07 12 10 イブザンはついに死んで、ベツレヘムに葬られた。
6878 07 12 11 彼の後にゼブルンびとエロンがイスラエルをさばいた。彼は十年の間イスラエルをさばいた。
6879 07 12 12 ゼブルンびとエロンはついに死んで、ゼブルンの地のアヤロンに葬られた。
6880 07 12 13 彼の後にピラトンびとヒレルの子アブドンがイスラエルをさばいた。
6881 07 12 14 彼に四十人のむすこ及び三十人の孫があり、七十頭のろばに乗った。彼は八年の間イスラエルをさばいた。
6882 07 12 15 ピラトンびとヒレルの子アブドンはついに死んで、エフライムの地のアマレクびとの山地にあるピラトンに葬られた。
6883 07 13 1 イスラエルの人々がまた主の前に悪を行ったので、主は彼らを四十年の間ペリシテびとの手にわたされた。
6884 07 13 2 ここにダンびとの氏族の者で、名をマノアというゾラの人があった。その妻はうまずめで、子を産んだことがなかった。
6885 07 13 3 主の使がその女に現れて言った、「あなたはうまずめで、子を産んだことがありません。しかし、あなたは身ごもって男の子を産むでしょう。
6886 07 13 4 それであなたは気をつけて、ぶどう酒または濃い酒を飲んではなりません。またすべて汚れたものを食べてはなりません。
6887 07 13 5 あなたは身ごもって男の子を産むでしょう。その頭にかみそりをあててはなりません。その子は生れた時から神にささげられたナジルびとです。彼はペリシテびとの手からイスラエルを救い始めるでしょう」。
6888 07 13 6 そこでその女はきて夫に言った、「神の人がわたしのところにきました。その顔かたちは神の使の顔かたちのようで、たいそう恐ろしゅうございました。わたしはその人が、どこからきたのか尋ねませんでしたが、その人もわたしに名を告げませんでした。
6889 07 13 7 しかしその人はわたしに『あなたは身ごもって男の子を産むでしょう。それであなたはぶどう酒または濃い酒を飲んではなりません。またすべて汚れたものを食べてはなりません。その子は生れた時から死ぬ日まで神にささげられたナジルびとです』と申しました」。
6890 07 13 8 そこでマノアは主に願い求めて言った、「ああ、主よ、どうぞ、あなたがさきにつかわされた神の人をもう一度わたしたちに臨ませて、わたしたちがその生れる子になすべきことを教えさせてください」。
6891 07 13 9 神がマノアの願いを聞かれたので、神の使は女が畑に座していた時、ふたたび彼女に臨んだ。しかし夫マノアは一緒にいなかった。
6892 07 13 10 女は急ぎ走って行って夫に言った、「さきごろ、わたしに臨まれた人がまたわたしに現れました」。
6893 07 13 11 マノアは立って妻のあとについて行き、その人のもとに行って言った、「あなたはかつてこの女にお告げになったおかたですか」。その人は言った、「そうです」。
6894 07 13 12 マノアは言った、「あなたの言われたことが事実となったとき、その子の育て方およびこれになすべき事はなんでしょうか」。
6895 07 13 13 主の使はマノアに言った、「わたしがさきに女に言ったことは皆、守らせなければなりません。
6896 07 13 14 すなわちぶどうの木から産するものはすべて食べてはなりません。またぶどう酒と濃い酒を飲んではなりません。またすべて汚れたものを食べてはなりません。わたしが彼女に命じたことは皆、守らせなければなりません」。
6897 07 13 15 マノアは主の使に言った、「どうぞ、わたしたちに、あなたを引き留めさせ、あなたのために子やぎを備えさせてください」。
6898 07 13 16 主の使はマノアに言った、「あなたがわたしを引き留めても、わたしはあなたの食物をたべません。しかしあなたが燔祭を備えようとなさるのであれば、主にそれをささげなさい」。マノアは彼が主の使であるのを知らなかったからである。
6899 07 13 17 マノアは主の使に言った、「あなたの名はなんといいますか。あなたの言われたことが事実となったとき、わたしたちはあなたをあがめましょう」。
6900 07 13 18 主の使は彼に言った、「わたしの名は不思議です。どうしてあなたはそれをたずねるのですか」。
6901 07 13 19 そこでマノアは子やぎと素祭とをとり、岩の上でそれを主にささげた。主は不思議なことをされ、マノアとその妻はそれを見た。
6902 07 13 20 すなわち炎が祭壇から天にあがったとき、主の使は祭壇の炎のうちにあってのぼった。マノアとその妻は見て、地にひれ伏した。
6903 07 13 21 主の使はふたたびマノアとその妻に現れなかった。その時マノアは彼が主の使であることを知った。
6904 07 13 22 マノアは妻に向かって言った、「わたしたちは神を見たから、きっと死ぬであろう」。
6905 07 13 23 妻は彼に言った、「主がもし、わたしたちを殺そうと思われたのならば、わたしたちの手から燔祭と素祭をおうけにならなかったでしょう。またこれらのすべての事をわたしたちにお示しになるはずはなく、また今わたしたちにこのような事をお告げにならなかったでしょう」。
6906 07 13 24 やがて女は男の子を産んで、その名をサムソンと呼んだ。その子は成長し、主は彼を恵まれた。
6907 07 13 25 主の霊はゾラとエシタオルの間のマハネダンにおいて初めて彼を感動させた。
6908 07 14 1 サムソンはテムナに下って行き、ペリシテびとの娘で、テムナに住むひとりの女を見た。
6909 07 14 2 彼は帰ってきて父母に言った、「わたしはペリシテびとの娘で、テムナに住むひとりの女を見ました。彼女をめとってわたしの妻にしてください」。
6910 07 14 3 父母は言った、「あなたが行って、割礼をうけないペリシテびとのうちから妻を迎えようとするのは、身内の娘たちのうちに、あるいはわたしたちのすべての民のうちに女がないためなのですか」。しかしサムソンは父に言った、「彼女をわたしにめとってください。彼女はわたしの心にかないますから」。
6911 07 14 4 父母はこの事が主から出たものであることを知らなかった。サムソンはペリシテびとを攻めようと、おりをうかがっていたからである。そのころペリシテびとはイスラエルを治めていた。
6912 07 14 5 かくてサムソンは父母と共にテムナに下って行った。彼がテムナのぶどう畑に着くと、一頭の若いししがほえたけって彼に向かってきた。
6913 07 14 6 時に主の霊が激しく彼に臨んだので、彼はあたかも子やぎを裂くようにそのししを裂いたが、手にはなんの武器も持っていなかった。しかしサムソンはそのしたことを父にも母にも告げなかった。
6914 07 14 7 サムソンは下って行って女と話し合ったが、女はサムソンの心にかなった。
6915 07 14 8 日がたって後、サムソンは彼女をめとろうとして帰ったが、道を転じて、かのししのしかばねを見ると、ししのからだに、はちの群れと、蜜があった。
6916 07 14 9 彼はそれをかきあつめ、手にとって歩きながら食べ、父母のもとに帰って、彼らに与えたので、彼らもそれを食べた。しかし、ししのからだからその蜜をかきあつめたことは彼らに告げなかった。
6917 07 14 10 そこで父が下って、女のもとに行ったので、サムソンはそこにふるまいを設けた。そうすることは花婿のならわしであったからである。
6918 07 14 11 人々はサムソンを見ると、三十人の客を連れてきて、同席させた。
6919 07 14 12 サムソンは彼らに言った、「わたしはあなたがたに一つのなぞを出しましょう。あなたがたがもし七日のふるまいのうちにそれを解いて、わたしに告げることができたなら、わたしはあなたがたに亜麻の着物三十と、晴れ着三十をさしあげましょう。
6920 07 14 13 しかしあなたがたが、それをわたしに告げることができなければ、亜麻の着物三十と晴れ着三十をわたしにくれなければなりません」。彼らはサムソンに言った、「なぞを出しなさい。わたしたちはそれを聞きましょう」。
6921 07 14 14 サムソンは彼らに言った、「食らう者から食い物が出、強い者から甘い物が出た」。彼らは三日のあいだなぞを解くことができなかった。
6922 07 14 15 四日目になって、彼らはサムソンの妻に言った、「あなたの夫を説きすすめて、なぞをわたしたちに明かすようにしてください。そうしなければ、わたしたちは火をつけてあなたとあなたの父の家を焼いてしまいます。あなたはわたしたちの物を取るために、わたしたちを招いたのですか」。
6923 07 14 16 そこでサムソンの妻はサムソンの前に泣いて言った、「あなたはただわたしを憎むだけで、愛してくれません。あなたはわたしの国の人々になぞを出して、それをわたしに解き明かしませんでした」。サムソンは彼女に言った、「わたしは自分の父にも母にも解き明かさなかった。どうしてあなたに解き明かせよう」。
6924 07 14 17 彼女は七日のふるまいの間、彼の前に泣いていたが、七日目になって、サムソンはついに彼女に解き明かした。ひどく彼に迫ったからである。そこで彼女はなぞを自分の国の人々にあかした。
6925 07 14 18 七日目になって、日の没する前に町の人々はサムソンに言った、「蜜より甘いものに何があろう。ししより強いものに何があろう」。サムソンは彼らに言った、「わたしの若い雌牛で耕さなかったなら、わたしのなぞは解けなかった」。
6926 07 14 19 この時、主の霊が激しくサムソンに臨んだので、サムソンはアシケロンに下って行って、その町の者三十人を殺し、彼らからはぎ取って、かのなぞを解いた人々に、その晴れ着を与え、激しく怒って父の家に帰った。
6927 07 14 20 サムソンの妻は花婿付添人であった客の妻となった。
6928 07 15 1 日がたって後、麦刈の時にサムソンは子やぎを携えて妻をおとずれ、「へやにはいって、妻に会いましょう」と言ったが、妻の父ははいることを許さなかった。
6929 07 15 2 そして父は言った、「あなたが確かに彼女をきらったに相違ないと思ったので、わたしは彼女をあなたの客であった者にやりました。彼女の妹は彼女よりもきれいではありませんか。どうぞ、彼女の代りに妹をめとってください」。
6930 07 15 3 サムソンは彼らに言った、「今度はわたしがペリシテびとに害を加えても、彼らのことでは、わたしに罪がない」。
6931 07 15 4 そこでサムソンは行って、きつね三百匹を捕え、たいまつをとり、尾と尾をあわせて、その二つの尾の間に一つのたいまつを結びつけ、
6932 07 15 5 たいまつに火をつけて、そのきつねをペリシテびとのまだ刈らない麦の中に放し入れ、そのたばね積んだものと、まだ刈らないものとを焼き、オリブ畑をも焼いた。
6933 07 15 6 ペリシテびとは言った、「これはだれのしわざか」。人々は言った、「テムナびとの婿サムソンだ。そのしゅうとがサムソンの妻を取り返して、その客であった者に与えたからだ」。そこでペリシテびとは上ってきて彼女とその父の家を火で焼き払った。
6934 07 15 7 サムソンは彼らに言った、「あなたがたがそんなことをするならば、わたしはあなたがたに仕返しせずにはおかない」。
6935 07 15 8 そしてサムソンは彼らを、さんざんに撃って大ぜい殺した。こうしてサムソンは下って行って、エタムの岩の裂け目に住んでいた。
6936 07 15 9 そこでペリシテびとは上ってきて、ユダに陣を取り、レヒを攻めたので、
6937 07 15 10 ユダの人々は言った、「あなたがたはどうしてわれわれのところに攻めのぼってきたのですか」。彼らは言った、「われわれはサムソンを縛り、彼がわれわれにしたように、彼にするために上ってきたのです」。
6938 07 15 11 そこでユダの人々三千人がエタムの岩の裂け目に下って行って、サムソンに言った、「ペリシテびとはわれわれの支配者であることをあなたは知らないのですか。あなたはどうしてわれわれにこんな事をしたのですか」。サムソンは彼らに言った、「彼らがわたしにしたように、わたしは彼らにしたのです」。
6939 07 15 12 彼らはまたサムソンに言った、「われわれはあなたを縛って、ペリシテびとの手にわたすために下ってきたのです」。サムソンは彼らに言った、「あなたがた自身はわたしを撃たないということを誓いなさい」。
6940 07 15 13 彼らはサムソンに言った、「いや、われわれはただ、あなたを縛って、ペリシテびとの手にわたすだけです。決してあなたを殺しません」。彼らは二本の新しい綱をもって彼を縛って、岩からひきあげた。
6941 07 15 14 サムソンがレヒにきたとき、ペリシテびとは声をあげて、彼に近づいた。その時、主の霊が激しく彼に臨んだので、彼の腕にかかっていた綱は火に焼けた亜麻のようになって、そのなわめが手から解けて落ちた。
6942 07 15 15 彼はろばの新しいあご骨一つを見つけたので、手を伸べて取り、それをもって一千人を打ち殺した。
6943 07 15 16 そしてサムソンは言った、「ろばのあご骨をもって山また山を築き、ろばのあご骨をもって一千人を打ち殺した」。
6944 07 15 17 彼は言い終ると、その手からあご骨を投げすてた。これがためにその所は「あご骨の丘」と呼ばれた。
6945 07 15 18 時に彼はひどくかわきを覚えたので、主に呼ばわって言った、「あなたはしもべの手をもって、この大きな救を施されたのに、わたしは今、かわいて死に、割礼をうけないものの手に陥ろうとしています」。
6946 07 15 19 そこで神はレヒにあるくぼんだ所を裂かれたので、そこから水が流れ出た。サムソンがそれを飲むと彼の霊はもとにかえって元気づいた。それでその名を「呼ばわった者の泉」と呼んだ。これは今日までレヒにある。
6947 07 15 20 サムソンはペリシテびとの時代に二十年の間イスラエルをさばいた。
6948 07 16 1 サムソンはガザへ行って、そこでひとりの遊女を見、その女のところにはいった。
6949 07 16 2 「サムソンがここにきた」と、ガザの人々に告げるものがあったので、ガザの人々はその所を取り囲み、夜通し町の門で待ち伏せし、「われわれは朝まで待って彼を殺そう」と言って、夜通し静かにしていた。
6950 07 16 3 サムソンは夜中まで寝たが、夜中に起きて、町の門のとびらと二つの門柱に手をかけて、貫の木もろともに引き抜き、肩に載せて、ヘブロンの向かいにある山の頂に運んで行った。
6951 07 16 4 この後、サムソンはソレクの谷にいるデリラという女を愛した。
6952 07 16 5 ペリシテびとの君たちはその女のところにきて言った、「あなたはサムソンを説きすすめて、彼の大力はどこにあるのか、またわれわれはどうすれば彼に勝って、彼を縛り苦しめることができるかを見つけなさい。そうすればわれわれはおのおの銀千百枚ずつをあなたにさしあげましょう」。
6953 07 16 6 そこでデリラはサムソンに言った、「あなたの大力はどこにあるのか、またどうすればあなたを縛って苦しめることができるか、どうぞわたしに聞かせてください」。
6954 07 16 7 サムソンは女に言った、「人々がもし、かわいたことのない七本の新しい弓弦をもってわたしを縛るなら、わたしは弱くなってほかの人のようになるでしょう」。
6955 07 16 8 そこでペリシテびとの君たちが、かわいたことのない七本の新しい弓弦を女に持ってきたので、女はそれをもってサムソンを縛った。
6956 07 16 9 女はかねて奥のへやに人を忍ばせておいて、サムソンに言った、「サムソンよ、ペリシテびとがあなたに迫っています」。しかしサムソンはその弓弦を、あたかも亜麻糸が火にあって断たれるように断ち切った。こうして彼の力の秘密は知れなかった。
6957 07 16 10 デリラはサムソンに言った、「あなたはわたしを欺いて、うそを言いました。どうしたらあなたを縛ることができるか、どうぞ今わたしに聞かせてください」。
6958 07 16 11 サムソンは女に言った、「もし人々がまだ用いたことのない新しい綱をもって、わたしを縛るなら、弱くなってほかの人のようになるでしょう」。
6959 07 16 12 そこでデリラは新しい綱をとり、それをもって彼を縛り、そして彼に言った、「サムソンよ、ペリシテびとがあなたに迫っています」。時に人々は奥のへやに忍んでいたが、サムソンはその綱を糸のように腕から断ち落した。
6960 07 16 13 そこでデリラはサムソンに言った、「あなたは今まで、わたしを欺いて、うそを言いましたが、どうしたらあなたを縛ることができるか、わたしに聞かせてください」。彼は女に言った、「あなたがもし、わたしの髪の毛七ふさを機の縦糸と一緒に織って、くぎでそれを留めておくならば、わたしは弱くなってほかの人のようになるでしょう」。そこで彼が眠ったとき、デリラはサムソンの髪の毛、七ふさをとって、それを機の縦糸に織り込み、
6961 07 16 14 くぎでそれを留めておいて、彼に言った、「サムソンよ、ペリシテびとがあなたに迫っています」。しかしサムソンは目をさまして、くぎと機と縦糸とを引き抜いた。
6962 07 16 15 そこで女はサムソンに言った、「あなたの心がわたしを離れているのに、どうして『おまえを愛する』と言うことができますか。あなたはすでに三度もわたしを欺き、あなたの大力がどこにあるかをわたしに告げませんでした」。
6963 07 16 16 女は毎日その言葉をもって彼に迫り促したので、彼の魂は死ぬばかりに苦しんだ。
6964 07 16 17 彼はついにその心をことごとく打ち明けて女に言った、「わたしの頭にはかみそりを当てたことがありません。わたしは生れた時から神にささげられたナジルびとだからです。もし髪をそり落されたなら、わたしの力は去って弱くなり、ほかの人のようになるでしょう」。
6965 07 16 18 デリラはサムソンがその心をことごとく打ち明けたのを見、人をつかわしてペリシテびとの君たちを呼んで言った、「サムソンはその心をことごとくわたしに打ち明けましたから、今度こそ上っておいでなさい」。そこでペリシテびとの君たちは、銀を携えて女のもとに上ってきた。
6966 07 16 19 女は自分のひざの上にサムソンを眠らせ、人を呼んで髪の毛、七ふさをそり落させ、彼を苦しめ始めたが、その力は彼を去っていた。
6967 07 16 20 そして女が「サムソンよ、ペリシテびとがあなたに迫っています」と言ったので、彼は目をさまして言った、「わたしはいつものように出て行って、からだをゆすろう」。彼は主が自分を去られたことを知らなかった。
6968 07 16 21 そこでペリシテびとは彼を捕えて、両眼をえぐり、ガザに引いて行って、青銅の足かせをかけて彼をつないだ。こうしてサムソンは獄屋の中で、うすをひいていたが、
6969 07 16 22 その髪の毛はそり落された後、ふたたび伸び始めた。
6970 07 16 23 さてペリシテびとの君たちは、彼らの神ダゴンに大いなる犠牲をささげて祝をしようと、共に集まって言った、「われわれの神は、敵サムソンをわれわれの手にわたされた」。
6971 07 16 24 民はサムソンを見て、自分たちの神をほめたたえて言った、「われわれの神は、われわれの国を荒し、われわれを多く殺した敵をわれわれの手にわたされた」。
6972 07 16 25 彼らはまた心に喜んで言った、「サムソンを呼んで、われわれのために戯れ事をさせよう」。彼らは獄屋からサムソンを呼び出して、彼らの前に戯れ事をさせた。彼らがサムソンを柱のあいだに立たせると、
6973 07 16 26 サムソンは自分の手をひいている若者に言った、「わたしの手を放して、この家をささえている柱をさぐらせ、それに寄りかからせてください」。
6974 07 16 27 その家には男女が満ち、ペリシテびとの君たちも皆そこにいた。また屋根の上には三千人ばかりの男女がいて、サムソンの戯れ事をするのを見ていた。
6975 07 16 28 サムソンは主に呼ばわって言った、「ああ、主なる神よ、どうぞ、わたしを覚えてください。ああ、神よ、どうぞもう一度、わたしを強くして、わたしの二つの目の一つのためにでもペリシテびとにあだを報いさせてください」。
6976 07 16 29 そしてサムソンは、その家をささえている二つの中柱の一つを右の手に、一つを左の手にかかえて、身をそれに寄せ、
6977 07 16 30 「わたしはペリシテびとと共に死のう」と言って、力をこめて身をかがめると、家はその中にいた君たちと、すべての民の上に倒れた。こうしてサムソンが死ぬときに殺したものは、生きているときに殺したものよりも多かった。
6978 07 16 31 やがて彼の身内の人たちおよび父の家族の者がみな下ってきて、彼を引き取り、携え上って、ゾラとエシタオルの間にある父マノアの墓に葬った。サムソンがイスラエルをさばいたのは二十年であった。
6979 07 17 1 ここにエフライムの山地の人で、名をミカと呼ぶものがあった。
6980 07 17 2 彼は母に言った、「あなたはかつて銀千百枚を取られたので、それをのろい、わたしにも話されましたが、その銀はわたしが持っています。わたしがそれを取ったのです」。母は言った、「どうぞ主がわが子を祝福されますように」。
6981 07 17 3 そして彼が銀千百枚を母に返したので、母は言った、「わたしはわたしの子のために一つの刻んだ像と、一つの鋳た像を造るためにその銀をわたしの手から主に献納します。それで今それをあなたに返しましょう」。
6982 07 17 4 ミカがその銀を母に返したので、母はその銀二百枚をとって、それを銀細工人に与え、一つの刻んだ像と、一つの鋳た像を造らせた。その像はミカの家にあった。
6983 07 17 5 このミカという人は神の宮をもち、エポデとテラピムを造り、その子のひとりを立てて、自分の祭司とした。
6984 07 17 6 そのころイスラエルには王がなかったので、人々はおのおの自分たちの目に正しいと思うことを行った。
6985 07 17 7 さてここにユダの氏族のもので、ユダのベツレヘムからきたひとりの若者があった。彼はレビびとであって、そこに寄留していたのである。
6986 07 17 8 この人は自分の住むべきところを尋ねて、ユダのベツレヘムの町を去り、旅してエフライムの山地のミカの家にきた。
6987 07 17 9 ミカは彼に言った、「あなたはどこからおいでになりましたか」。彼は言った、「わたしはユダのベツレヘムのレビびとですが、住むべきところを尋ねて旅をしているのです」。
6988 07 17 10 ミカは言った、「わたしと一緒にいて、わたしのために父とも祭司ともなってください。そうすれば年に銀十枚と衣服ひとそろいと食物とをさしあげましょう」。
6989 07 17 11 レビびとはついにその人と一緒に住むことを承諾した。そしてその若者は彼の子のひとりのようになった。
6990 07 17 12 ミカはレビびとであるこの若者を立てて自分の祭司としたので、彼はミカの家にいた。
6991 07 17 13 それでミカは言った、「今わたしはレビびとを祭司に持つようになったので、主がわたしをお恵みくださることがわかりました」。
6992 07 18 1 そのころイスラエルには王がなかった。そのころダンびとの部族はイスラエルの部族のうちにあって、その日までまだ嗣業の地を得なかったので自分たちの住むべき嗣業の地を求めていた。
6993 07 18 2 それでダンの人々は自分の部族の総勢のうちから、勇者五人をゾラとエシタオルからつかわして土地をうかがい探らせた。すなわち彼らに言った、「行って土地を探ってきなさい」。彼らはエフライムの山地に行き、ミカの家に着いて、そこに宿ろうとした。
6994 07 18 3 彼らがミカの家に近づいたとき、レビびとである若者の声を聞きわけたので、身をめぐらしてそこにはいって彼に言った、「だれがあなたをここに連れてきたのですか。あなたはここで何をしているのですか。ここになんの用があるのですか」。
6995 07 18 4 若者は彼らに言った、「ミカが、かようかようにしてわたしを雇ったので、わたしはその祭司となったのです」。
6996 07 18 5 彼らは言った、「どうぞ、神に伺って、われわれが行く道にしあわせがあるかどうかを知らせてください」。
6997 07 18 6 その祭司は彼らに言った、「安心して行きなさい。あなたがたが行く道は主が見守っておられます」。
6998 07 18 7 そこで五人の者は去ってライシに行き、そこにいる民を見ると、彼らは安らかに住まい、その穏やかで安らかなことシドンびとのようであって、この国には一つとして欠けたものがなく、富を持ち、またシドンびとと遠く離れており、ほかの民と交わることがなかった。
6999 07 18 8 かくて彼らがゾラとエシタオルにおる兄弟たちのもとに帰ってくると、兄弟たちは彼らに言った、「いかがでしたか」。
7000 07 18 9 彼らは言った、「立って彼らのところに攻め上りましょう。われわれはかの地を見たが、非常に豊かです。あなたがたはなぜじっとしているのですか。ためらわずに進んで行って、かの地を取りなさい。
7001 07 18 10 あなたがたが行けば、安らかにおる民の所に行くでしょう。その地は広く、神はそれをあなたがたの手に賜わるのです。そこには地にあるもの一つとして欠けているものはありません」。
7002 07 18 11 そこでダンの氏族のもの六百人が武器を帯びて、ゾラとエシタオルを出発し、
7003 07 18 12 上って行ってユダのキリアテ・ヤリムに陣を張った。このゆえに、その所は今日までマハネダンと呼ばれる。それはキリアテ・ヤリムの西にある。
7004 07 18 13 彼らはそこからエフライムの山地に進み、ミカの家に着いた。
7005 07 18 14 かのライシの国をうかがいに行った五人の者はその兄弟たちに言った、「あなたがたはこれらの家にエポデとテラピムと刻んだ像と鋳た像のあるのを知っていますか。それであなたがたは今、なすべきことを決めなさい」。
7006 07 18 15 そこで彼らはその方へ身をめぐらして、かのレビびとの若者の家すなわちミカの家に行って、彼に安否を問うた。
7007 07 18 16 しかし武器を帯びた六百人のダンの人々は門の入口に立っていた。
7008 07 18 17 かの土地をうかがいに行った五人の者は上って行って、そこにはいり、刻んだ像とエポデとテラピムと鋳た像とを取ったが、祭司は武器を帯びた六百人の者と共に門の入口に立っていた。
7009 07 18 18 彼らがミカの家にはいって刻んだ像とエポデとテラピムと鋳た像とを取った時、祭司は彼らに言った、「あなたがたは何をなさいますか」。
7010 07 18 19 彼らは言った、「黙りなさい。あなたの手を口にあてて、われわれと一緒にきて、われわれのために父とも祭司ともなりなさい。ひとりの家の祭司であるのと、イスラエルの一部族、一氏族の祭司であるのと、どちらがよいですか」。
7011 07 18 20 祭司は喜んで、エポデとテラピムと刻んだ像とを取り、民のなかに加わった。
7012 07 18 21 かくて彼らは身をめぐらして去り、その子供たちと家畜と貨財をさきにたてて進んだが、
7013 07 18 22 ミカの家をはるかに離れたとき、ミカは家に近い家の人々を集め、ダンの人々に追いつき、
7014 07 18 23 ダンの人々を呼んだので、彼らはふり向いてミカに言った、「あなたがそのように仲間を連れてきたのは、どうしたのですか」。
7015 07 18 24 彼は言った、「あなたがたが、わたしの造った神々および祭司を奪い去ったので、わたしに何が残っていますか。しかるにあなたがたがわたしに向かって『どうしたのですか』と言われるとは何事ですか」。
7016 07 18 25 ダンの人々は彼に言った、「あなたは大きな声を出さないがよい。気の荒い連中があなたに撃ちかかって、あなたは自分の命と家族の命を失うようになるでしょう」。
7017 07 18 26 こうしてダンの人々は去って行ったが、ミカは彼らの強いのを見て、くびすをかえして自分の家に帰った。
7018 07 18 27 さて彼らはミカが造った物と、ミカと共にいた祭司とを奪ってライシにおもむき、穏やかで、安らかな民のところへ行って、つるぎをもって彼らを撃ち、火をつけてその町を焼いたが、
7019 07 18 28 シドンを遠く離れており、ほかの民との交わりがなかったので、それを救うものがなかった。その町はベテレホブに属する谷にあった。彼らは町を建てなおしてそこに住み、
7020 07 18 29 イスラエルに生れた先祖ダンの名にしたがって、その町の名をダンと名づけた。その町の名はもとはライシであった。
7021 07 18 30 そしてダンの人々は刻んだ像を自分たちのために安置し、モーセの孫すなわちゲルショムの子ヨナタンとその子孫がダンびとの部族の祭司となって、国が捕囚となる日にまで及んだ。
7022 07 18 31 神の家がシロにあったあいだ、常に彼らはミカが造ったその刻んだ像を飾って置いた。
7023 07 19 1 そのころ、イスラエルに王がなかった時、エフライムの山地の奥にひとりのレビびとが寄留していた。彼はユダのベツレヘムからひとりの女を迎えて、めかけとしていたが、
7024 07 19 2 そのめかけは怒って、彼のところを去り、ユダのベツレヘムの父の家に帰って、そこに四か月ばかり過ごした。
7025 07 19 3 そこで夫は彼女をなだめて連れ帰ろうと、しもべと二頭のろばを従え、立って彼女のあとを追って行った。彼が女の父の家に着いた時、娘の父は彼を見て、喜んで迎えた。
7026 07 19 4 娘の父であるしゅうとが引き留めたので、彼は三日共におり、みな飲み食いしてそこに宿った。
7027 07 19 5 四日目に彼らは朝はやく起き、彼が立ち去ろうとしたので、娘の父は婿に言った、「少し食事をして元気をつけ、それから出かけなさい」。
7028 07 19 6 そこでふたりは座して共に飲み食いしたが、娘の父はその人に言った、「どうぞもう一晩泊まって楽しく過ごしなさい」。
7029 07 19 7 その人は立って去ろうとしたが、しゅうとがしいたので、ついにまたそこに宿った。
7030 07 19 8 五日目になって、朝はやく起きて去ろうとしたが、娘の父は言った、「どうぞ、元気をつけて、日が傾くまでとどまりなさい」。そこで彼らふたりは食事をした。
7031 07 19 9 その人がついにめかけおよびしもべと共に去ろうとして立ちあがったとき、娘の父であるしゅうとは彼に言った、「日も暮れようとしている。どうぞもう一晩泊まりなさい。日は傾いた。ここに宿って楽しく過ごしなさい。そしてあしたの朝はやく起きて出立し、家に帰りなさい」。
7032 07 19 10 しかし、その人は泊まることを好まないので、立って去り、エブスすなわちエルサレムの向かいに着いた。くらをおいた二頭のろばと彼のめかけも一緒であった。
7033 07 19 11 彼らがエブスに近づいたとき、日はすでに没したので、しもべは主人に言った、「さあ、われわれは道を転じてエブスびとのこの町にはいって、そこに宿りましょう」。
7034 07 19 12 主人は彼に言った、「われわれは道を転じて、イスラエルの人々の町でない外国人の町に、はいってはならない。ギベアまで行こう」。
7035 07 19 13 彼はまたしもべに言った、「さあ、われわれはギベアかラマか、そのうちの一つに着いてそこに宿ろう」。
7036 07 19 14 彼らは進んで行ったが、ベニヤミンに属するギベアの近くで日が暮れたので、
7037 07 19 15 ギベアへ行って宿ろうと、そこに道を転じ、町にはいって、その広場に座した。だれも彼らを家に迎えて泊めてくれる者がなかったからである。
7038 07 19 16 時にひとりの老人が夕暮に畑の仕事から帰ってきた。この人はエフライムの山地の者で、ギベアに寄留していたのである。ただしこの所の人々はベニヤミンびとであった。
7039 07 19 17 彼は目をあげて、町の広場に旅人のおるのを見た。老人は言った、「あなたはどこへ行かれるのですか。どこからおいでになりましたか」。
7040 07 19 18 その人は言った、「われわれはユダのベツレヘムから、エフライムの山地の奥へ行くものです。わたしはあそこの者で、ユダのベツレヘムへ行き、今わたしの家に帰るところですが、だれもわたしを家に泊めてくれる者がありません。
7041 07 19 19 われわれには、ろばのわらも飼葉もあり、またわたしと、はしためと、しもべと共にいる若者との食物も酒もあって、何も欠けているものはありません」。
7042 07 19 20 老人は言った、「安心しなさい。あなたの必要なものはなんでも備えましょう。ただ広場で夜を過ごしてはなりません」。
7043 07 19 21 そして彼を家に連れていって、ろばに飼葉を与えた。彼らは足を洗って飲み食いした。
7044 07 19 22 彼らが楽しく過ごしていた時、町の人々の悪い者どもがその家を取り囲み、戸を打ちたたいて、家のあるじである老人に言った、「あなたの家にきた人を出しなさい。われわれはその者を知るであろう」。
7045 07 19 23 しかし家のあるじは彼らのところに出ていって言った、「いいえ、兄弟たちよ、どうぞ、そんな悪いことをしないでください。この人はすでにわたしの家にはいったのだから、そんなつまらない事をしないでください。
7046 07 19 24 ここに処女であるわたしの娘と、この人のめかけがいます。今それを出しますから、それをはずかしめ、あなたがたの好きなようにしなさい。しかしこの人にはそのようなつまらない事をしないでください」。
7047 07 19 25 しかし人々が聞きいれなかったので、その人は自分のめかけをとって彼らのところに出した。彼らはその女を犯して朝まで終夜はずかしめ、日ののぼるころになって放し帰らせた。
7048 07 19 26 朝になって女は自分の主人を宿してくれた人の家の戸口にきて倒れ伏し、夜のあけるまでに及んだ。
7049 07 19 27 彼女の主人は朝起きて家の戸を開き、出て旅立とうとすると、そのめかけである女が家の戸口に、手を敷居にかけて倒れていた。
7050 07 19 28 彼は女に向かって、「起きよ、行こう」と言ったけれども、なんの答もなかった。そこでその人は女をろばに乗せ、立って自分の家におもむいたが、
7051 07 19 29 その家に着いたとき、刀を執り、めかけを捕えて、そのからだを十二切れに断ち切り、それをイスラエルの全領域にあまねく送った。
7052 07 19 30 それを見たものはみな言った、「イスラエルの人々がエジプトの地から上ってきた日から今日まで、このような事は起ったこともなく、また見たこともない。この事をよく考え、協議して言うことを決めよ」。
7053 07 20 1 そこでイスラエルの人々は、ダンからベエルシバまで、またギレアデの地からもみな出てきて、その会衆はひとりのようにミヅパで主のもとに集まった。
7054 07 20 2 民の首領たち、すなわちイスラエルのすべての部族の首領たちは、みずから神の民の集合に出た。つるぎを帯びている歩兵が四十万人あった。
7055 07 20 3 ベニヤミンの人々は、イスラエルの人々がミヅパに上ったことを聞いた。イスラエルの人々は言った、「どうして、この悪事が起ったのか、われわれに話してください」。
7056 07 20 4 殺された女の夫であるレビびとは答えて言った、「わたしは、めかけと一緒にベニヤミンに属するギベアへ行って宿りましたが、
7057 07 20 5 ギベアの人々は立ってわたしを攻め、夜の間に、わたしのおる家を取り囲んで、わたしを殺そうと企て、ついにわたしのめかけをはずかしめて、死なせました。
7058 07 20 6 それでわたしはめかけを捕えて断ち切り、それをイスラエルの嗣業のすべての地方にあまねく送りました。彼らがイスラエルにおいて憎むべきみだらなことを行ったからです。
7059 07 20 7 イスラエルの人々よ、あなたがたは皆自分の意見と考えをここに述べてください」。
7060 07 20 8 民は皆ひとりのように立って言った、「われわれはだれも自分の天幕に行きません。まただれも自分の家に帰りません。
7061 07 20 9 われわれが今ギベアに対してしようとする事はこれです。われわれはくじを引いて、ギベアに攻めのぼりましょう。
7062 07 20 10 すなわちイスラエルのすべての部族から百人について十人、千人について百人、万人について千人を選んで、民の糧食をとらせ、民はベニヤミンのギベアに行って、ベニヤミンびとがイスラエルにおいておこなったすべてのみだらな事に対して、報復しましょう」。
7063 07 20 11 こうしてイスラエルの人々は皆集まり、一致結束して町を攻めようとした。
7064 07 20 12 イスラエルのもろもろの部族は人々をあまねくベニヤミンの部族のうちにつかわして言わせた、「あなたがたのうちに起ったこの事は、なんたる悪事でしょうか。
7065 07 20 13 それで今ギベアにいるあの悪い人々をわたしなさい。われわれは彼らを殺して、イスラエルから悪を除き去りましょう」。しかしベニヤミンの人々はその兄弟であるイスラエルの人々の言葉を聞きいれなかった。
7066 07 20 14 かえってベニヤミンの人々は町々からギベアに集まり、出てイスラエルの人々と戦おうとした。
7067 07 20 15 その日、町々から集まったベニヤミンの人々はつるぎを帯びている者二万六千人あり、ほかにギベアの住民で集まった精兵が七百人あった。
7068 07 20 16 このすべての民のうちに左ききの精兵が七百人あって、いずれも一本の毛すじをねらって石を投げても、はずれることがなかった。
7069 07 20 17 イスラエルの人々の集まった者はベニヤミンを除いて、つるぎを帯びている者四十万人あり、いずれも軍人であった。
7070 07 20 18 イスラエルの人々は立ちあがってベテルにのぼり、神に尋ねた、「われわれのうち、いずれがさきにのぼって、ベニヤミンの人々と戦いましょうか」。主は言われた、「ユダがさきに」。
7071 07 20 19 そこでイスラエルの人々は、朝起きて、ギベアに対し陣を取った。
7072 07 20 20 すなわちイスラエルの人々はベニヤミンと戦うために出て行って、ギベアで彼らに対して戦いの備えをしたが、
7073 07 20 21 ベニヤミンの人々はギベアから出てきて、その日イスラエルの人々のうち二万二千人を地に撃ち倒した。
7074 07 20 22 しかしイスラエルの民の人々は奮いたって初めの日に備えをした所にふたたび戦いの備えをした。
7075 07 20 23 そしてイスラエルの人々は上って行って主の前に夕暮まで泣き、主に尋ねた、「われわれは再びわれわれの兄弟であるベニヤミンの人々と戦いを交えるべきでしょうか」。主は言われた、「攻めのぼれ」。
7076 07 20 24 そこでイスラエルの人々は、次の日またベニヤミンの人々の所に攻めよせたが、
7077 07 20 25 ベニヤミンは次の日またギベアから出て、これを迎え、ふたたびイスラエルの人々のうち一万八千人を地に撃ち倒した。これらは皆つるぎを帯びている者であった。
7078 07 20 26 これがためにイスラエルのすべての人々すなわち全軍はベテルに上って行って泣き、その所で主の前に座して、その日夕暮まで断食し、燔祭と酬恩祭を主の前にささげた。
7079 07 20 27 そしてイスラエルの人々は主に尋ね、――そのころ神の契約の箱はそこにあって、
7080 07 20 28 アロンの子エレアザルの子であるピネハスが、それに仕えていた――そして言った、「われわれはなおふたたび出て、われわれの兄弟であるベニヤミンの人々と戦うべきでしょうか。あるいはやめるべきでしょうか」。主は言われた、「のぼれ。わたしはあす彼らをあなたがたの手にわたすであろう」。
7081 07 20 29 そこでイスラエルはギベアの周囲に伏兵を置き、
7082 07 20 30 そしてイスラエルの人々は三日目にまたベニヤミンの人々のところに攻めのぼり、前のようにギベアに対して備えをした。
7083 07 20 31 ベニヤミンの人々は出て、民を迎えたが、ついに町からおびき出されたので、彼らは前のように大路で民を撃ちはじめ、また野でイスラエルの人を三十人ばかり殺した。その大路は、一つはベテルに至り、一つはギベアに至るものであった。
7084 07 20 32 ベニヤミンの人々は言った、「彼らは初めのように、われわれの前に撃ち破られる」。しかしイスラエルの人々は言った、「われわれは逃げて、彼らを町から大路におびき出そう」。
7085 07 20 33 そしてイスラエルの人々は皆その所から立ってバアル・タマルに備えをした。その間に待ち伏せていたイスラエルの人々がその所から、すなわちゲバの西から現れ出た。
7086 07 20 34 すなわちイスラエルの全軍のうちから精兵一万人がきて、ギベアを襲い、その戦いは激しかった。しかしベニヤミンの人々は災の自分たちに迫っているのを知らなかった。
7087 07 20 35 主がイスラエルの前にベニヤミンを撃ち敗られたので、イスラエルの人々は、その日ベニヤミンびと二万五千一百人を殺した。これらは皆つるぎを帯びている者であった。
7088 07 20 36 こうしてベニヤミンの人々は自分たちの撃ち敗られたのを見た。
7089 07 20 37 伏兵は急いでギベアに突き入り、進んでつるぎをもって町をことごとく撃った。
7090 07 20 38 イスラエルの人々と伏兵の間に定めた合図は、町から大いなるのろしがあがるとき、
7091 07 20 39 イスラエルの人々が戦いに転じることであった。さてベニヤミンは初めイスラエルの人々を撃って三十人ばかりを殺したので言った、「まことに彼らは最初の戦いのようにわれわれの前に撃ち敗られる」。
7092 07 20 40 しかし、のろしが煙の柱となって町からのぼりはじめたので、ベニヤミンの人々がうしろを見ると、町はみな煙となって天にのぼっていた。
7093 07 20 41 その時イスラエルの人々が向きを変えたので、ベニヤミンの人々は災が自分たちに迫ったのを見て、うろたえ、
7094 07 20 42 イスラエルの人々の前から身をめぐらして荒野の方に向かったが、戦いが彼らに追い迫り、町から出てきた者どもは、彼らを中にはさんで殺した。
7095 07 20 43 すなわちイスラエルの人々はベニヤミンの人々を切り倒し、追い撃ち、踏みにじって、ノハから東の方ギベアの向かいにまで及んだ。
7096 07 20 44 ベニヤミンの倒れた者は一万八千人で、みな勇士であった。
7097 07 20 45 彼らは身をめぐらして荒野の方、リンモンの岩まで逃げたが、イスラエルの人々は大路でそのうち五千人を切り倒し、なおも追撃してギドムに至り、そのうちの二千人を殺した。
7098 07 20 46 こうしてその日ベニヤミンの倒れた者はつるぎを帯びている者合わせて二万五千人で、みな勇士であった。
7099 07 20 47 しかし六百人の者は身をめぐらして荒野の方、リンモンの岩まで逃げて、四か月の間リンモンの岩に住んだ。
7100 07 20 48 そこでイスラエルの人々はまた身をかえしてベニヤミンの人々を攻め、つるぎをもって人も獣もすべて見つけたものを撃ち殺し、また見つけたすべての町に火をかけた。
7101 07 21 1 かつてイスラエルの人々はミヅパで、「われわれのうちひとりもその娘をベニヤミンびとの妻として与える者があってはならない」と言って誓ったので、
7102 07 21 2 民はベテルに行って、そこで夕暮まで神の前に座し、声をあげて激しく泣いて、
7103 07 21 3 言った、「イスラエルの神、主よ、どうしてイスラエルにこのような事が起って、今日イスラエルに一つの部族が欠けるようになったのですか」。
7104 07 21 4 翌日、民は早く起きて、そこに祭壇を築き、燔祭と酬恩祭をささげた。
7105 07 21 5 そしてイスラエルの人々は言った、「イスラエルのすべての部族のうちで集会に上って、主のもとに行かなかった者はだれか」。これは彼らがミヅパにのぼって、主のもとに行かない者のことについて大いなる誓いを立てて、「その人は必ず殺されなければならない」と言ったからである。
7106 07 21 6 しかしイスラエルの人々は兄弟ベニヤミンをあわれんで言った、「今日イスラエルに一つの部族が絶えた。
7107 07 21 7 われわれは主をさして、われわれの娘を彼らに妻として与えないと誓ったので、かの残った者どもに妻をめとらせるにはどうしたらよいであろうか」。
7108 07 21 8 彼らはまた言った、「イスラエルの部族のうちで、ミヅパにのぼって主のもとに行かなかったのはどの部族か」。ところがヤベシ・ギレアデからはひとりも陣営にきて集会に臨んだ者がなかった。
7109 07 21 9 すなわち民を集めて見ると、ヤベシ・ギレアデの住民はひとりもそこにいなかった。
7110 07 21 10 そこで会衆は勇士一万二千人をかしこにつかわし、これに命じて言った、「ヤベシ・ギレアデに行って、その住民を、女、子供もろともつるぎをもって撃て。
7111 07 21 11 そしてこのようにしなければならない。すなわち男および男と寝た女はことごとく滅ぼさなければならない」。
7112 07 21 12 こうして彼らはヤベシ・ギレアデの住民のうちで四百人の若い処女を獲た。これはまだ男と寝たことがなく、男を知らない者である。彼らはこれをカナンの地にあるシロの陣営に連れてきた。
7113 07 21 13 そこで全会衆は人をつかわして、リンモンの岩におるベニヤミンの人々に平和を告げた。
7114 07 21 14 ベニヤミンの人々がその時、帰ってきたので、彼らはヤベシ・ギレアデの女のうちから生かしておいた女をこれに与えたが、なお足りなかった。
7115 07 21 15 こうして民は、主がイスラエルの部族のうちに欠陥をつくられたことのために、ベニヤミンをあわれんだ。
7116 07 21 16 会衆の長老たちは言った、「ベニヤミンの女が絶えたので、かの残りの者どもに妻をめとらせるにはどうしたらよいでしょうか」。
7117 07 21 17 彼らはまた言った、「イスラエルから一つの部族が消えうせないためにベニヤミンのうちの残りの者どもに、あとつぎがなければならない。
7118 07 21 18 しかし、われわれの娘を彼らの妻に与えることはできない。イスラエルの人々が『ベニヤミンに妻を与える者はのろわれる』と言って誓ったからである」。
7119 07 21 19 それで彼らは言った、「年々シロに主の祭がある」。シロはベテルの北にあって、ベテルからシケムにのぼる大路の東、レバナの南にある。
7120 07 21 20 そして彼らはベニヤミンの人々に命じて言った、「あなたがたは行って、ぶどう畑に待ち伏せして、
7121 07 21 21 うかがいなさい。もしシロの娘たちが踊りを踊りに出てきたならば、ぶどう畑から出て、シロの娘たちのうちから、めいめい自分の妻をとって、ベニヤミンの地に連れて行きなさい。
7122 07 21 22 もしその父あるいは兄弟がきて、われわれに訴えるならば、われわれは彼らに、『われわれのために彼らをゆるしてください。戦争のときにわれわれは、彼らおのおのに妻をとってやらなかったし、またあなたがたも彼らに与えなかったからです。もし与えたならば、あなたがたは罪を犯したことになるからでした』と言いましょう」。
7123 07 21 23 ベニヤミンの人々はそのように行い、踊っている者どものうちから自分たちの数にしたがって妻を取り、それを連れて領地に帰り、町々を建てなおして、そこに住んだ。
7124 07 21 24 こうしてイスラエルの人々は、その時そこを去って、おのおのその部族および氏族に帰った。すなわちそこを立って、おのおのその嗣業の地に帰った。
7125 07 21 25 そのころ、イスラエルには王がなかったので、おのおの自分の目に正しいと見るところをおこなった。
7126 08 1 1 さばきづかさが世を治めているころ、国に飢きんがあったので、ひとりの人がその妻とふたりの男の子を連れてユダのベツレヘムを去り、モアブの地へ行ってそこに滞在した。
7127 08 1 2 その人の名はエリメレク、妻の名はナオミ、ふたりの男の子の名はマロンとキリオンといい、ユダのベツレヘムのエフラタびとであった。彼らはモアブの地へ行って、そこにおったが、
7128 08 1 3 ナオミの夫エリメレクは死んで、ナオミとふたりの男の子が残された。
7129 08 1 4 ふたりの男の子はそれぞれモアブの女を妻に迎えた。そのひとりの名はオルパといい、ひとりの名はルツといった。彼らはそこに十年ほど住んでいたが、
7130 08 1 5 マロンとキリオンのふたりもまた死んだ。こうしてナオミはふたりの子と夫とに先だたれた。
7131 08 1 6 その時、ナオミはモアブの地で、主がその民を顧みて、すでに食物をお与えになっていることを聞いたので、その嫁と共に立って、モアブの地からふるさとへ帰ろうとした。
7132 08 1 7 そこで彼女は今いる所を出立し、ユダの地へ帰ろうと、ふたりの嫁を連れて道に進んだ。
7133 08 1 8 しかしナオミはふたりの嫁に言った、「あなたがたは、それぞれ自分の母の家に帰って行きなさい。あなたがたが、死んだふたりの子とわたしに親切をつくしたように、どうぞ、主があなたがたに、いつくしみを賜わりますよう。
7134 08 1 9 どうぞ、主があなたがたに夫を与え、夫の家で、それぞれ身の落ち着き所を得させられるように」。こう言って、ふたりの嫁に口づけしたので、彼らは声をあげて泣き、
7135 08 1 10 ナオミに言った、「いいえ、わたしたちは一緒にあなたの民のところへ帰ります」。
7136 08 1 11 しかしナオミは言った、「娘たちよ、帰って行きなさい。どうして、わたしと一緒に行こうというのですか。あなたがたの夫となる子がまだわたしの胎内にいると思うのですか。
7137 08 1 12 娘たちよ、帰って行きなさい。わたしは年をとっているので、夫をもつことはできません。たとい、わたしが今夜、夫をもち、また子を産む望みがあるとしても、
7138 08 1 13 そのためにあなたがたは、子どもの成長するまで待っているつもりなのですか。あなたがたは、そのために夫をもたずにいるつもりなのですか。娘たちよ、それはいけません。主の手がわたしに臨み、わたしを責められたことで、あなたがたのために、わたしは非常に心を痛めているのです」。
7139 08 1 14 彼らはまた声をあげて泣いた。そしてオルパはそのしゅうとめに口づけしたが、ルツはしゅうとめを離れなかった。
7140 08 1 15 そこでナオミは言った、「ごらんなさい。あなたの相嫁は自分の民と自分の神々のもとへ帰って行きました。あなたも相嫁のあとについて帰りなさい」。
7141 08 1 16 しかしルツは言った、「あなたを捨て、あなたを離れて帰ることをわたしに勧めないでください。わたしはあなたの行かれる所へ行き、またあなたの宿られる所に宿ります。あなたの民はわたしの民、あなたの神はわたしの神です。
7142 08 1 17 あなたの死なれる所でわたしも死んで、そのかたわらに葬られます。もし死に別れでなく、わたしがあなたと別れるならば、主よ、どうぞわたしをいくえにも罰してください」。
7143 08 1 18 ナオミはルツが自分と一緒に行こうと、固く決心しているのを見たので、そのうえ言うことをやめた。
7144 08 1 19 そしてふたりは旅をつづけて、ついにベツレヘムに着いた。彼らがベツレヘムに着いたとき、町はこぞって彼らのために騒ぎたち、女たちは言った、「これはナオミですか」。
7145 08 1 20 ナオミは彼らに言った、「わたしをナオミ(楽しみ)と呼ばずに、マラ(苦しみ)と呼んでください。なぜなら全能者がわたしをひどく苦しめられたからです。
7146 08 1 21 わたしは出て行くときは豊かでありましたが、主はわたしをから手で帰されました。主がわたしを悩まし、全能者がわたしに災をくだされたのに、どうしてわたしをナオミと呼ぶのですか」。
7147 08 1 22 こうしてナオミは、モアブの地から帰った嫁、モアブの女ルツと一緒に帰ってきて、大麦刈の初めにベツレヘムに着いた。
7148 08 2 1 さてナオミには、夫エリメレクの一族で、非常に裕福なひとりの親戚があって、その名をボアズといった。
7149 08 2 2 モアブの女ルツはナオミに言った、「どうぞ、わたしを畑に行かせてください。だれか親切な人が見当るならば、わたしはその方のあとについて落ち穂を拾います」。ナオミが彼女に「娘よ、行きなさい」と言ったので、
7150 08 2 3 ルツは行って、刈る人たちのあとに従い、畑で落ち穂を拾ったが、彼女ははからずもエリメレクの一族であるボアズの畑の部分にきた。
7151 08 2 4 その時ボアズは、ベツレヘムからきて、刈る者どもに言った、「主があなたがたと共におられますように」。彼らは答えた、「主があなたを祝福されますように」。
7152 08 2 5 ボアズは刈る人たちを監督しているしもべに言った、「これはだれの娘ですか」。
7153 08 2 6 刈る人たちを監督しているしもべは答えた、「あれはモアブの女で、モアブの地からナオミと一緒に帰ってきたのですが、
7154 08 2 7 彼女は『どうぞ、わたしに、刈る人たちのあとについて、束のあいだで、落ち穂を拾い集めさせてください』と言いました。そして彼女は朝早くきて、今まで働いて、少しのあいだも休みませんでした」。
7155 08 2 8 ボアズはルツに言った、「娘よ、お聞きなさい。ほかの畑に穂を拾いに行ってはいけません。またここを去ってはなりません。わたしのところで働く女たちを離れないで、ここにいなさい。
7156 08 2 9 人々が刈りとっている畑に目をとめて、そのあとについて行きなさい。わたしは若者たちに命じて、あなたのじゃまをしないようにと、言っておいたではありませんか。あなたがかわく時には水がめのところへ行って、若者たちのくんだのを飲みなさい」。
7157 08 2 10 彼女は地に伏して拝し、彼に言った、「どうしてあなたは、わたしのような外国人を顧みて、親切にしてくださるのですか」。
7158 08 2 11 ボアズは答えて彼女に言った、「あなたの夫が死んでこのかた、あなたがしゅうとめにつくしたこと、また自分の父母と生れた国を離れて、かつて知らなかった民のところにきたことは皆わたしに聞えました。
7159 08 2 12 どうぞ、主があなたのしたことに報いられるように。どうぞ、イスラエルの神、主、すなわちあなたがその翼の下に身を寄せようとしてきた主からじゅうぶんの報いを得られるように」。
7160 08 2 13 彼女は言った、「わが主よ、まことにありがとうございます。わたしはあなたのはしためのひとりにも及ばないのに、あなたはこんなにわたしを慰め、はしためにねんごろに語られました」。
7161 08 2 14 食事の時、ボアズは彼女に言った、「ここへきて、パンを食べ、あなたの食べる物を酢に浸しなさい」。彼女が刈る人々のかたわらにすわったので、ボアズは焼麦を彼女に与えた。彼女は飽きるほど食べて残した。
7162 08 2 15 そして彼女がまた穂を拾おうと立ちあがったとき、ボアズは若者たちに命じて言った、「彼女には束の間でも穂を拾わせなさい。とがめてはならない。
7163 08 2 16 また彼女のために束からわざと抜き落しておいて拾わせなさい。しかってはならない」。
7164 08 2 17 こうして彼女は夕暮まで畑で落ち穂を拾った。そして拾った穂を打つと、大麦は一エパほどあった。
7165 08 2 18 彼女はそれを携えて町にはいり、しゅうとめにその拾ったものを見せ、かつ食べ飽きて、残して持ちかえったものを取り出して与えた。
7166 08 2 19 しゅうとめは彼女に言った、「あなたは、きょう、どこで穂を拾いましたか。どこで働きましたか。あなたをそのように顧みてくださったかたに、どうか祝福があるように」。そこで彼女は自分がだれの所で働いたかを、しゅうとめに告げて、「わたしが、きょう働いたのはボアズという名の人の所です」と言った。
7167 08 2 20 ナオミは嫁に言った、「生きている者をも、死んだ者をも、顧みて、いつくしみを賜わる主が、どうぞその人を祝福されますように」。ナオミはまた彼女に言った、「その人はわたしたちの縁者で、最も近い親戚のひとりです」。
7168 08 2 21 モアブの女ルツは言った、「その人はまたわたしに『あなたはわたしのところの刈入れが全部終るまで、わたしのしもべたちのそばについていなさい』と言いました」。
7169 08 2 22 ナオミは嫁ルツに言った、「娘よ、その人のところで働く女たちと一緒に出かけるのはけっこうです。そうすればほかの畑で人にいじめられるのを免れるでしょう」。
7170 08 2 23 それで彼女はボアズのところで働く女たちのそばについていて穂を拾い、大麦刈と小麦刈の終るまでそうした。こうして彼女はしゅうとめと一緒に暮した。
7171 08 3 1 時にしゅうとめナオミは彼女に言った、「娘よ、わたしはあなたの落ち着き所を求めて、あなたをしあわせにすべきではないでしょうか。
7172 08 3 2 あなたが一緒に働いた女たちの主人ボアズはわたしたちの親戚ではありませんか。彼は今夜、打ち場で大麦をあおぎ分けます。
7173 08 3 3 それであなたは身を洗って油をぬり、晴れ着をまとって打ち場に下って行きなさい。ただ、あなたはその人が飲み食いを終るまで、その人に知られてはなりません。
7174 08 3 4 そしてその人が寝る時、その寝る場所を見定め、はいって行って、その足の所をまくって、そこに寝なさい。彼はあなたのすべきことを知らせるでしょう」。
7175 08 3 5 ルツはしゅうとめに言った、「あなたのおっしゃることを皆いたしましょう」。
7176 08 3 6 こうして彼女は打ち場に下り、すべてしゅうとめが命じたとおりにした。
7177 08 3 7 ボアズは飲み食いして、心をたのしませたあとで、麦を積んである場所のかたわらへ行って寝た。そこで彼女はひそかに行き、ボアズの足の所をまくって、そこに寝た。
7178 08 3 8 夜中になって、その人は驚き、起きかえって見ると、ひとりの女が足のところに寝ていたので、
7179 08 3 9 「あなたはだれですか」と言うと、彼女は答えた、「わたしはあなたのはしためルツです。あなたのすそで、はしためをおおってください。あなたは最も近い親戚です」。
7180 08 3 10 ボアズは言った、「娘よ、どうぞ、主があなたを祝福されるように。あなたは貧富にかかわらず若い人に従い行くことはせず、あなたが最後に示したこの親切は、さきに示した親切にまさっています。
7181 08 3 11 それで、娘よ、あなたは恐れるにおよびません。あなたが求めることは皆、あなたのためにいたしましょう。わたしの町の人々は皆、あなたがりっぱな女であることを知っているからです。
7182 08 3 12 たしかにわたしは近い親戚ではありますが、わたしよりも、もっと近い親戚があります。
7183 08 3 13 今夜はここにとどまりなさい。朝になって、もしその人が、あなたのために親戚の義務をつくすならば、よろしい、その人にさせなさい。しかし主は生きておられます。その人が、あなたのために親戚の義務をつくすことを好まないならば、わたしはあなたのために親戚の義務をつくしましょう。朝までここにおやすみなさい」。
7184 08 3 14 ルツは朝まで彼の足のところに寝たが、だれかれの見分け難いころに起きあがった。それはボアズが「この女の打ち場にきたことが人に知られてはならない」と言ったからである。
7185 08 3 15 そしてボアズは言った、「あなたの着る外套を持ってきて、それを広げなさい」。彼女がそれを広げると、ボアズは大麦六オメルをはかって彼女に負わせた。彼女は町に帰り、
7186 08 3 16 しゅうとめのところへ行くと、しゅうとめは言った、「娘よ、どうでしたか」。そこでルツはその人が彼女にしたことをことごとく告げて、
7187 08 3 17 言った、「あのかたはわたしに向かって、から手で、しゅうとめのところへ帰ってはならないと言って、この大麦六オメルをわたしにくださいました」。
7188 08 3 18 しゅうとめは言った、「娘よ、この事がどうなるかわかるまでお待ちなさい。あの人は、きょう、その事を決定しなければ落ち着かないでしょう」。
7189 08 4 1 ボアズは町の門のところへ上っていって、そこにすわった。すると、さきにボアズが言った親戚の人が通り過ぎようとしたので、ボアズはその人に言った、「友よ、こちらへきて、ここにおすわりください」。彼はきてすわった。
7190 08 4 2 ボアズはまた町の長老十人を招いて言った、「ここにおすわりください」。彼らがすわった時、
7191 08 4 3 ボアズは親戚の人に言った、「モアブの地から帰ってきたナオミは、われわれの親族エリメレクの地所を売ろうとしています。
7192 08 4 4 それでわたしはそのことをあなたに知らせて、ここにすわっている人々と、民の長老たちの前で、それを買いなさいと、あなたに言おうと思いました。もし、あなたが、それをあがなおうと思われるならば、あがなってください。しかし、あなたがそれをあがなわないならば、わたしにそう言って知らせてください。それをあがなう人は、あなたのほかにはなく、わたしはあなたの次ですから」。彼は言った、「わたしがあがないましょう」。
7193 08 4 5 そこでボアズは言った、「あなたがナオミの手からその地所を買う時には、死んだ者の妻であったモアブの女ルツをも買って、死んだ者の名を起してその嗣業を伝えなければなりません」。
7194 08 4 6 その親戚の人は言った、「それでは、わたしにはあがなうことができません。そんなことをすれば自分の嗣業をそこないます。あなたがわたしに代って、自分であがなってください。わたしはあがなうことができませんから」。
7195 08 4 7 むかしイスラエルでは、物をあがなう事と、権利の譲渡について、万事を決定する時のならわしはこうであった。すなわち、その人は、自分のくつを脱いで、相手の人に渡した。これがイスラエルでの証明の方法であった。
7196 08 4 8 そこで親戚の人がボアズにむかい「あなたが自分であがないなさい」と言って、そのくつを脱いだので、
7197 08 4 9 ボアズは長老たちとすべての民に言った、「あなたがたは、きょう、わたしがエリメレクのすべての物およびキリオンとマロンのすべての物をナオミの手から買いとった事の証人です。
7198 08 4 10 またわたしはマロンの妻であったモアブの女ルツをも買って、わたしの妻としました。これはあの死んだ者の名を起してその嗣業を伝え、死んだ者の名がその一族から、またその郷里の門から断絶しないようにするためです。きょうあなたがたは、その証人です」。
7199 08 4 11 すると門にいたすべての民と長老たちは言った、「わたしたちは証人です。どうぞ、主があなたの家にはいる女を、イスラエルの家をたてたラケルとレアのふたりのようにされますよう。どうぞ、あなたがエフラタで富を得、ベツレヘムで名を揚げられますように。
7200 08 4 12 どうぞ、主がこの若い女によってあなたに賜わる子供により、あなたの家が、かのタマルがユダに産んだペレヅの家のようになりますように」。
7201 08 4 13 こうしてボアズはルツをめとって妻とし、彼女のところにはいった。主は彼女をみごもらせられたので、彼女はひとりの男の子を産んだ。
7202 08 4 14 そのとき、女たちはナオミに言った、「主はほむべきかな、主はあなたを見捨てずに、きょう、あなたにひとりの近親をお授けになりました。どうぞ、その子の名がイスラエルのうちに高く揚げられますように。
7203 08 4 15 彼はあなたのいのちを新たにし、あなたの老年を養う者となるでしょう。あなたを愛するあなたの嫁、七人のむすこにもまさる彼女が彼を産んだのですから」。
7204 08 4 16 そこでナオミはその子をとり、ふところに置いて、養い育てた。
7205 08 4 17 近所の女たちは「ナオミに男の子が生れた」と言って、彼に名をつけ、その名をオベデと呼んだ。彼はダビデの父であるエッサイの父となった。
7206 08 4 18 さてペレヅの子孫は次のとおりである。ペレヅからヘヅロンが生れ、
7207 08 4 19 ヘヅロンからラムが生れ、ラムからアミナダブが生れ、
7208 08 4 20 アミナダブからナションが生れ、ナションからサルモンが生れ、
7209 08 4 21 サルモンからボアズが生れ、ボアズからオベデが生れ、
7210 08 4 22 オベデからエッサイが生れ、エッサイからダビデが生れた。
7211 09 1 1 エフライムの山地のラマタイム・ゾピムに、エルカナという名の人があった。エフライムびとで、エロハムの子であった。エロハムはエリウの子、エリウはトフの子、トフはツフの子である。
7212 09 1 2 エルカナには、ふたりの妻があって、ひとりの名はハンナといい、ひとりの名はペニンナといった。ペニンナには子どもがあったが、ハンナには子どもがなかった。
7213 09 1 3 この人は年ごとに、その町からシロに上っていって、万軍の主を拝し、主に犠牲をささげるのを常とした。シロには、エリのふたりの子、ホフニとピネハスとがいて、主に仕える祭司であった。
7214 09 1 4 エルカナは、犠牲をささげる日、妻ペニンナとそのむすこ娘にはみな、その分け前を与えた。
7215 09 1 5 エルカナはハンナを愛していたが、彼女には、ただ一つの分け前を与えるだけであった。主がその胎を閉ざされたからである。
7216 09 1 6 また彼女を憎んでいる他の妻は、ひどく彼女を悩まして、主がその胎を閉ざされたことを恨ませようとした。
7217 09 1 7 こうして年は暮れ、年は明けたが、ハンナが主の宮に上るごとに、ペニンナは彼女を悩ましたので、ハンナは泣いて食べることもしなかった。
7218 09 1 8 夫エルカナは彼女に言った、「ハンナよ、なぜ泣くのか。なぜ食べないのか。どうして心に悲しむのか。わたしはあなたにとって十人の子どもよりもまさっているではないか」。
7219 09 1 9 シロで彼らが飲み食いしたのち、ハンナは立ちあがった。その時、祭司エリは主の神殿の柱のかたわらの座にすわっていた。
7220 09 1 10 ハンナは心に深く悲しみ、主に祈って、はげしく泣いた。
7221 09 1 11 そして誓いを立てて言った、「万軍の主よ、まことに、はしための悩みをかえりみ、わたしを覚え、はしためを忘れずに、はしために男の子を賜わりますなら、わたしはその子を一生のあいだ主にささげ、かみそりをその頭にあてません」。
7222 09 1 12 彼女が主の前で長く祈っていたので、エリは彼女の口に目をとめた。
7223 09 1 13 ハンナは心のうちで物を言っていたので、くちびるが動くだけで、声は聞えなかった。それゆえエリは、酔っているのだと思って、
7224 09 1 14 彼女に言った、「いつまで酔っているのか。酔いをさましなさい」。
7225 09 1 15 しかしハンナは答えた、「いいえ、わが主よ。わたしは不幸な女です。ぶどう酒も濃い酒も飲んだのではありません。ただ主の前に心を注ぎ出していたのです。
7226 09 1 16 はしためを、悪い女と思わないでください。積る憂いと悩みのゆえに、わたしは今まで物を言っていたのです」。
7227 09 1 17 そこでエリは答えた、「安心して行きなさい。どうかイスラエルの神があなたの求める願いを聞きとどけられるように」。
7228 09 1 18 彼女は言った、「どうぞ、はしためにも、あなたの前に恵みを得させてください」。こうして、その女は去って食事し、その顔は、もはや悲しげではなくなった。
7229 09 1 19 彼らは朝早く起きて、主の前に礼拝し、そして、ラマにある家に帰って行った。エルカナは妻ハンナを知り、主が彼女を顧みられたので、
7230 09 1 20 彼女はみごもり、その時が巡ってきて、男の子を産み、「わたしがこの子を主に求めたからだ」といって、その名をサムエルと名づけた。
7231 09 1 21 エルカナその人とその家族とはみな上っていって、年ごとの犠牲と、誓いの供え物とをささげた。
7232 09 1 22 しかしハンナは上って行かず、夫に言った、「わたしはこの子が乳離れしてから、主の前に連れていって、いつまでも、そこにおらせましょう」。
7233 09 1 23 夫エルカナは彼女に言った、「あなたが良いと思うようにして、この子の乳離れするまで待ちなさい。ただどうか主がその言われたことを実現してくださるように」。こうしてその女はとどまって、その子に乳をのませ、乳離れするのを待っていたが、
7234 09 1 24 乳離れした時、三歳の雄牛一頭、麦粉一エパ、ぶどう酒のはいった皮袋一つを取り、その子を連れて、シロにある主の宮に行った。その子はなお幼かった。
7235 09 1 25 そして彼らはその牛を殺し、子供をエリのもとへ連れて行った。
7236 09 1 26 ハンナは言った、「わが君よ、あなたは生きておられます。わたしは、かつてここに立って、あなたの前で、主に祈った女です。
7237 09 1 27 この子を与えてくださいと、わたしは祈りましたが、主はわたしの求めた願いを聞きとどけられました。
7238 09 1 28 それゆえ、わたしもこの子を主にささげます。この子は一生のあいだ主にささげたものです」。
7239 09 2 1 ハンナは祈って言った、「わたしの心は主によって喜び、わたしの力は主によって強められた、わたしの口は敵をあざ笑う、あなたの救によってわたしは楽しむからである。
7240 09 2 2 主のように聖なるものはない、あなたのほかには、だれもない、われわれの神のような岩はない。
7241 09 2 3 あなたがたは重ねて高慢に語ってはならない、たかぶりの言葉を口にすることをやめよ。主はすべてを知る神であって、もろもろのおこないは主によって量られる。
7242 09 2 4 勇士の弓は折れ、弱き者は力を帯びる。
7243 09 2 5 飽き足りた者は食のために雇われ、飢えたものは、もはや飢えることがない。うまずめは七人の子を産み、多くの子をもつ女は孤独となる。
7244 09 2 6 主は殺し、また生かし、陰府にくだし、また上げられる。
7245 09 2 7 主は貧しくし、また富ませ、低くし、また高くされる。
7246 09 2 8 貧しい者を、ちりのなかから立ちあがらせ、乏しい者を、あくたのなかから引き上げて、王侯と共にすわらせ、栄誉の位を継がせられる。地の柱は主のものであって、その柱の上に、世界をすえられたからである。
7247 09 2 9 主はその聖徒たちの足を守られる、しかし悪いものどもは暗黒のうちに滅びる。人は力をもって勝つことができないからである。
7248 09 2 10 主と争うものは粉々に砕かれるであろう、主は彼らにむかって天から雷をとどろかし、地のはてまでもさばき、王に力を与え、油そそがれた者の力を強くされるであろう」。
7249 09 2 11 エルカナはラマにある家に帰ったが、幼な子は祭司エリの前にいて主に仕えた。
7250 09 2 12 さて、エリの子らは、よこしまな人々で、主を恐れなかった。
7251 09 2 13 民のささげ物についての祭司のならわしはこうである。人が犠牲をささげる時、その肉を煮る間に、祭司のしもべは、みつまたの肉刺しを手に持ってきて、
7252 09 2 14 それをかま、またはなべ、またはおおがま、または鉢に突きいれ、肉刺しの引き上げるものは祭司がみな自分のものとした。彼らはシロで、そこに来るすべてのイスラエルの人に、このようにした。
7253 09 2 15 人々が脂肪を焼く前にもまた、祭司のしもべがきて、犠牲をささげる人に言うのであった、「祭司のために焼く肉を与えよ。祭司はあなたから煮た肉を受けない。生の肉がよい」。
7254 09 2 16 その人が、「まず脂肪を焼かせましょう。その後ほしいだけ取ってください」と言うと、しもべは、「いや、今もらいたい。くれないなら、わたしは力づくで、それを取ろう」と言う。
7255 09 2 17 このように、その若者たちの罪は、主の前に非常に大きかった。この人々が主の供え物を軽んじたからである。
7256 09 2 18 サムエルはまだ幼く、身に亜麻布のエポデを着けて、主の前に仕えていた。
7257 09 2 19 母は彼のために小さい上着を作り、年ごとに、夫と共にその年の犠牲をささげるために上る時、それを持ってきた。
7258 09 2 20 エリはいつもエルカナとその妻を祝福して言った、「この女が主にささげた者のかわりに、主がこの女によってあなたに子を与えられるように」。そして彼らはその家に帰るのを常とした。
7259 09 2 21 こうして主がハンナを顧みられたので、ハンナはみごもって、三人の男の子とふたりの女の子を産んだ。わらべサムエルは主の前で育った。
7260 09 2 22 エリはひじょうに年をとった。そしてその子らがイスラエルの人々にしたいろいろのことを聞き、また会見の幕屋の入口で勤めていた女たちと寝たことを聞いて、
7261 09 2 23 彼らに言った、「なにゆえ、そのようなことをするのか。わたしはこのすべての民から、あなたがたの悪いおこないのことを聞く。
7262 09 2 24 わが子らよ、それはいけない。わたしの聞く、主の民の言いふらしている風説は良くない。
7263 09 2 25 もし人が人に対して罪を犯すならば、神が仲裁されるであろう。しかし人が主に対して罪を犯すならば、だれが、そのとりなしをすることができようか」。しかし彼らは父の言うことに耳を傾けようともしなかった。主が彼らを殺そうとされたからである。
7264 09 2 26 わらべサムエルは育っていき、主にも、人々にも、ますます愛せられた。
7265 09 2 27 このとき、ひとりの神の人が、エリのもとにきて言った、「主はかく仰せられる、『あなたの先祖の家がエジプトでパロの家の奴隷であったとき、わたしはその先祖の家に自らを現した。
7266 09 2 28 そしてイスラエルのすべての部族のうちからそれを選び出して、わたしの祭司とし、わたしの祭壇に上って、香をたかせ、わたしの前でエポデを着けさせ、また、イスラエルの人々の火祭をことごとくあなたの先祖の家に与えた。
7267 09 2 29 それにどうしてあなたがたは、わたしが命じた犠牲と供え物をむさぼりの目をもって見るのか。またなにゆえ、わたしよりも自分の子らを尊び、わたしの民イスラエルのささげるもろもろの供え物の、最も良き部分をもって自分を肥やすのか』。
7268 09 2 30 それゆえイスラエルの神、主は仰せられる、『わたしはかつて、「あなたの家とあなたの父の家とは、永久にわたしの前に歩むであろう」と言った』。しかし今、主は仰せられる、『決してそうはしない。わたしを尊ぶ者を、わたしは尊び、わたしを卑しめる者は、軽んぜられるであろう。
7269 09 2 31 見よ、日が来るであろう。その日、わたしはあなたの力と、あなたの父の家の力を断ち、あなたの家に年老いた者をなくするであろう。
7270 09 2 32 そのとき、あなたは災のうちにあって、イスラエルに与えられるもろもろの繁栄を、ねたみ見るであろう。あなたの家には永久に年老いた者がいなくなるであろう。
7271 09 2 33 しかしあなたの一族のひとりを、わたしの祭壇から断たないであろう。彼は残されてその目を泣きはらし、心を痛めるであろう。またあなたの家に生れ出るものは、みなつるぎに死ぬであろう。
7272 09 2 34 あなたのふたりの子ホフニとピネハスの身に起ることが、あなたのためにそのしるしとなるであろう。すなわちそのふたりは共に同じ日に死ぬであろう。
7273 09 2 35 わたしは自分のために、ひとりの忠実な祭司を起す。その人はわたしの心と思いとに従って行うであろう。わたしはその家を確立しよう。その人はわたしが油そそいだ者の前につねに歩むであろう。
7274 09 2 36 そしてあなたの家で生き残っている人々はみなきて、彼に一枚の銀と一個のパンを請い求め、「どうぞ、わたしを祭司の職の一つに任じ、一口のパンでも食べることができるようにしてください」と言うであろう』」。
7275 09 3 1 わらべサムエルは、エリの前で、主に仕えていた。そのころ、主の言葉はまれで、黙示も常ではなかった。
7276 09 3 2 さてエリは、しだいに目がかすんで、見ることができなくなり、そのとき自分のへやで寝ていた。
7277 09 3 3 神のともしびはまだ消えず、サムエルが神の箱のある主の神殿に寝ていた時、
7278 09 3 4 主は「サムエルよ、サムエルよ」と呼ばれた。彼は「はい、ここにおります」と言って、
7279 09 3 5 エリの所へ走っていって言った、「あなたがお呼びになりました。わたしは、ここにおります」。しかしエリは言った、「わたしは呼ばない。帰って寝なさい」。彼は行って寝た。
7280 09 3 6 主はまたかさねて「サムエルよ、サムエルよ」と呼ばれた。サムエルは起きてエリのもとへ行って言った、「あなたがお呼びになりました。わたしは、ここにおります」。エリは言った、「子よ、わたしは呼ばない。もう一度寝なさい」。
7281 09 3 7 サムエルはまだ主を知らず、主の言葉がまだ彼に現されなかった。
7282 09 3 8 主はまた三度目にサムエルを呼ばれたので、サムエルは起きてエリのもとへ行って言った、「あなたがお呼びになりました。わたしは、ここにおります」。その時、エリは主がわらべを呼ばれたのであることを悟った。
7283 09 3 9 そしてエリはサムエルに言った、「行って寝なさい。もしあなたを呼ばれたら、『しもべは聞きます。主よ、お話しください』と言いなさい」。サムエルは行って自分の所で寝た。
7284 09 3 10 主はきて立ち、前のように、「サムエルよ、サムエルよ」と呼ばれたので、サムエルは言った、「しもべは聞きます。お話しください」。
7285 09 3 11 その時、主はサムエルに言われた、「見よ、わたしはイスラエルのうちに一つの事をする。それを聞く者はみな、耳が二つとも鳴るであろう。
7286 09 3 12 その日には、わたしが、かつてエリの家について話したことを、はじめから終りまでことごとく、エリに行うであろう。
7287 09 3 13 わたしはエリに、彼が知っている悪事のゆえに、その家を永久に罰することを告げる。その子らが神をけがしているのに、彼がそれをとめなかったからである。
7288 09 3 14 それゆえ、わたしはエリの家に誓う。エリの家の悪は、犠牲や供え物をもってしても、永久にあがなわれないであろう」。
7289 09 3 15 サムエルは朝まで寝て、主の宮の戸をあけたが、サムエルはその幻のことをエリに語るのを恐れた。
7290 09 3 16 しかしエリはサムエルを呼んで言った、「わが子サムエルよ」。サムエルは言った、「はい、ここにおります」。
7291 09 3 17 エリは言った、「何事をお告げになったのか。隠さず話してください。もしお告げになったことを一つでも隠して、わたしに言わないならば、どうぞ神があなたを罰し、さらに重く罰せられるように」。
7292 09 3 18 そこでサムエルは、その事をことごとく話して、何も彼に隠さなかった。エリは言った、「それは主である。どうぞ主が、良いと思うことを行われるように」。
7293 09 3 19 サムエルは育っていった。主が彼と共におられて、その言葉を一つも地に落ちないようにされたので、
7294 09 3 20 ダンからベエルシバまで、イスラエルのすべての人は、サムエルが主の預言者と定められたことを知った。
7295 09 3 21 主はふたたびシロで現れられた。すなわち主はシロで、主の言葉によって、サムエルに自らを現された。こうしてサムエルの言葉は、あまねくイスラエルの人々に及んだ。
7296 09 4 1 イスラエルびとは出てペリシテびとと戦おうとして、エベネゼルのほとりに陣をしき、ペリシテびとはアペクに陣をしいた。
7297 09 4 2 ペリシテびとはイスラエルびとにむかって陣備えをしたが、戦うに及んで、イスラエルびとはペリシテびとの前に敗れ、ペリシテびとは戦場において、おおよそ四千人を殺した。
7298 09 4 3 民が陣営に退いた時、イスラエルの長老たちは言った、「なにゆえ、主はきょう、ペリシテびとの前にわれわれを敗られたのか。シロへ行って主の契約の箱をここへ携えてくることにしよう。そして主をわれわれのうちに迎えて、敵の手から救っていただこう」。
7299 09 4 4 そこで民は人をシロにつかわし、ケルビムの上に座しておられる万軍の主の契約の箱を、そこから携えてこさせた。その時エリのふたりの子、ホフニとピネハスは神の契約の箱と共に、その所にいた。
7300 09 4 5 主の契約の箱が陣営についた時、イスラエルびとはみな大声で叫んだので、地は鳴り響いた。
7301 09 4 6 ペリシテびとは、その叫び声を聞いて言った、「ヘブルびとの陣営の、この大きな叫び声は何事か」。そして主の箱が、陣営に着いたことを知った時、
7302 09 4 7 ペリシテびとは恐れて言った、「神々が陣営にきたのだ」。彼らはまた言った、「ああ、われわれはわざわいである。このようなことは今までなかった。
7303 09 4 8 ああ、われわれはわざわいである。だれがわれわれをこれらの強い神々の手から救い出すことができようか。これらの神々は、もろもろの災をもってエジプトびとを荒野で撃ったのだ。
7304 09 4 9 ペリシテびとよ、勇気を出して男らしくせよ。ヘブルびとがあなたがたに仕えたように、あなたがたが彼らに仕えることのないために、男らしく戦え」。
7305 09 4 10 こうしてペリシテびとが戦ったので、イスラエルびとは敗れて、おのおのその家に逃げて帰った。戦死者はひじょうに多く、イスラエルの歩兵で倒れたものは三万であった。
7306 09 4 11 また神の箱は奪われ、エリのふたりの子、ホフニとピネハスは殺された。
7307 09 4 12 その日ひとりのベニヤミンびとが、衣服を裂き、頭に土をかぶって、戦場から走ってシロにきた。
7308 09 4 13 彼が着いたとき、エリは道のかたわらにある自分の座にすわって待ちかまえていた。その心に神の箱の事を気づかっていたからである。その人が町にはいって、情報をつたえたので、町はこぞって叫んだ。
7309 09 4 14 エリはその叫び声を聞いて言った、「この騒ぎ声は何か」。その人は急いでエリの所へきてエリに告げた。
7310 09 4 15 その時エリは九十八歳で、その目は固まって見ることができなかった。
7311 09 4 16 その人はエリに言った、「わたしは戦場からきたものです。きょう戦場からのがれたのです」。エリは言った、「わが子よ、様子はどうであったか」。
7312 09 4 17 しらせをもたらしたその人は答えて言った、「イスラエルびとは、ペリシテびとの前から逃げ、民のうちにはまた多くの戦死者があり、あなたのふたりの子、ホフニとピネハスも死に、神の箱は奪われました」。
7313 09 4 18 彼が神の箱のことを言ったとき、エリはその座から、あおむけに門のかたわらに落ち、首を折って死んだ。老いて身が重かったからである。彼のイスラエルをさばいたのは四十年であった。
7314 09 4 19 彼の嫁、ピネハスの妻はみごもって出産の時が近づいていたが、神の箱が奪われたこと、しゅうとと夫が死んだというしらせを聞いたとき、陣痛が起り身をかがめて子を産んだ。
7315 09 4 20 彼女が死にかかっている時、世話をしていた女が彼女に言った、「恐れることはありません。男の子が生れました」。しかし彼女は答えもせず、また顧みもしなかった。
7316 09 4 21 ただ彼女は「栄光はイスラエルを去った」と言って、その子をイカボデと名づけた。これは神の箱の奪われたこと、また彼女のしゅうとと夫のことによるのである。
7317 09 4 22 彼女はまた、「栄光はイスラエルを去った。神の箱が奪われたからです」と言った。
7318 09 5 1 ペリシテびとは神の箱をぶんどって、エベネゼルからアシドドに運んできた。
7319 09 5 2 そしてペリシテびとはその神の箱を取ってダゴンの宮に運びこみ、ダゴンのかたわらに置いた。
7320 09 5 3 アシドドの人々が、次の日、早く起きて見ると、ダゴンが主の箱の前に、うつむきに地に倒れていたので、彼らはダゴンを起して、それをもとの所に置いた。
7321 09 5 4 その次の朝また早く起きて見ると、ダゴンはまた、主の箱の前に、うつむきに地に倒れていた。そしてダゴンの頭と両手とは切れて離れ、しきいの上にあり、ダゴンはただ胴体だけとなっていた。
7322 09 5 5 それゆえダゴンの祭司たちやダゴンの宮にはいる人々は、だれも今日にいたるまで、アシドドのダゴンのしきいを踏まない。
7323 09 5 6 そして主の手はアシドドびとの上にきびしく臨み、主は腫物をもってアシドドとその領域の人々を恐れさせ、また悩まされた。
7324 09 5 7 アシドドの人々は、このありさまを見て言った、「イスラエルの神の箱を、われわれの所に、とどめ置いてはならない。その神の手が、われわれと、われわれの神ダゴンの上にきびしく臨むからである」。
7325 09 5 8 そこで彼らは人をつかわして、ペリシテびとの君たちを集めて言った、「イスラエルの神の箱をどうしましょう」。彼らは言った、「イスラエルの神の箱はガテに移そう」。人々はイスラエルの神の箱をそこに移した。
7326 09 5 9 彼らがそれを移すと、主の手がその町に臨み、非常な騒ぎが起った。そして老若を問わず町の人々を撃たれたので、彼らの身に腫物ができた。
7327 09 5 10 そこで人々は神の箱をエクロンに送ったが、神の箱がエクロンに着いた時、エクロンの人々は叫んで言った、「彼らがイスラエルの神の箱をわれわれの所に移したのは、われわれと民を滅ぼすためである」。
7328 09 5 11 そこで彼らは人をつかわして、ペリシテびとの君たちをみな集めて言った、「イスラエルの神の箱を送り出して、もとの所に返し、われわれと民を滅ぼすことのないようにしよう」。恐ろしい騒ぎが町中に起っていたからである。そこには神の手が非常にきびしく臨んでいたので、
7329 09 5 12 死なない人は腫物をもって撃たれ、町の叫びは天に達した。
7330 09 6 1 主の箱は七か月の間ペリシテびとの地にあった。
7331 09 6 2 ペリシテびとは、祭司や占い師を呼んで言った、「イスラエルの神の箱をどうしましょうか。どのようにして、それをもとの所へ送り返せばよいか告げてください」。
7332 09 6 3 彼らは言った、「イスラエルの神の箱を送り返す時には、それをむなしく返してはならない。必ず彼にとがの供え物をもって償いをしなければならない。そうすれば、あなたがたはいやされ、また彼の手がなぜあなたがたを離れないかを知ることができるであろう」。
7333 09 6 4 人々は言った、「われわれが償うとがの供え物には何をしましょうか」。彼らは答えた、「ペリシテびとの君たちの数にしたがって、金の腫物五つと金のねずみ五つである。あなたがたすべてと、君たちに臨んだ災は一つだからである。
7334 09 6 5 それゆえ、あなたがたの腫物の像と、地を荒すねずみの像を造り、イスラエルの神に栄光を帰するならば、たぶん彼は、あなたがた、およびあなたがたの神々と、あなたがたの地に、その手を加えることを軽くされるであろう。
7335 09 6 6 なにゆえ、あなたがたはエジプトびととパロがその心をかたくなにしたように、自分の心をかたくなにするのか。神が彼らを悩ましたので、彼らは民を行かせ、民は去ったではないか。
7336 09 6 7 それゆえ今、新しい車一両を造り、まだくびきを付けたことのない乳牛二頭をとり、その牛を車につなぎ、そのおのおのの子牛を乳牛から離して家に連れ帰り、
7337 09 6 8 主の箱をとって、それをその車に載せ、あなたがたがとがの供え物として彼に償う金の作り物を一つの箱におさめてそのかたわらに置き、それを送って去らせなさい。
7338 09 6 9 そして見ていて、それが自分の領地へ行く道を、ベテシメシへ上るならば、この大いなる災を、われわれに下したのは彼である。しかし、そうしない時は、われわれを撃ったのは彼の手ではなく、その事の偶然であったことを知るであろう」。
7339 09 6 10 人々はそのようにした。すなわち、彼らは二頭の乳牛をとって、これを車につなぎ、そのおのおのの子牛を家に閉じこめ、
7340 09 6 11 主の箱、および金のねずみと、腫物の像をおさめた箱とを車に載せた。
7341 09 6 12 すると雌牛はまっすぐにベテシメシの方向へ、ひとすじに大路を歩み、鳴きながら進んでいって、右にも左にも曲らなかった。ペリシテびとの君たちは、ベテシメシの境までそのあとについていった。
7342 09 6 13 時にベテシメシの人々は谷で小麦を刈り入れていたが、目をあげて、その箱を見、それを迎えて喜んだ。
7343 09 6 14 車はベテシメシびとヨシュアの畑にはいって、そこにとどまった。その所に大きな石があった。人々は車の木を割り、その雌牛を燔祭として主にささげた。
7344 09 6 15 レビびとは主の箱と、そのかたわらの、金の作り物をおさめた箱を取りおろし、それを大石の上に置いた。そしてベテシメシの人々は、その日、主に燔祭を供え、犠牲をささげた。
7345 09 6 16 ペリシテびとの五人の君たちはこれを見て、その日、エクロンに帰った。
7346 09 6 17 ペリシテびとが、とがの供え物として、主に償いをした金の腫物は、次のとおりである。すなわちアシドドのために一つ、ガザのために一つ、アシケロンのために一つ、ガテのために一つ、エクロンのために一つであった。
7347 09 6 18 また金のねずみは、城壁をめぐらした町から城壁のない村里にいたるまで、すべて五人の君たちに属するペリシテびとの町の数にしたがって造った。主の箱をおろした所のかたわらにあった大石は、今日にいたるまで、ベテシメシびとヨシュアの畑にあって、あかしとなっている。
7348 09 6 19 ベテシメシの人々で主の箱の中を見たものがあったので、主はこれを撃たれた。すなわち民のうち七十人を撃たれた。主が民を撃って多くの者を殺されたので、民はなげき悲しんだ。
7349 09 6 20 ベテシメシの人々は言った、「だれが、この聖なる神、主の前に立つことができようか。主はわれわれを離れてだれの所へ上って行かれたらよいのか」。
7350 09 6 21 そして彼らは、使者をキリアテ・ヤリムの人々につかわして言った、「ペリシテびとが主の箱を返したから、下ってきて、それをあなたがたの所へ携え上ってください」。
7351 09 7 1 キリアテ・ヤリムの人々は、きて、主の箱を携え上り、丘の上のアビナダブの家に持ってきて、その子エレアザルを聖別して、主の箱を守らせた。
7352 09 7 2 その箱は久しくキリアテ・ヤリムにとどまって、二十年を経た。イスラエルの全家は主を慕って嘆いた。
7353 09 7 3 その時サムエルはイスラエルの全家に告げていった、「もし、あなたがたが一心に主に立ち返るのであれば、ほかの神々とアシタロテを、あなたがたのうちから捨て去り、心を主に向け、主にのみ仕えなければならない。そうすれば、主はあなたがたをペリシテびとの手から救い出されるであろう」。
7354 09 7 4 そこでイスラエルの人々はバアルとアシタロテを捨て去り、ただ主にのみ仕えた。
7355 09 7 5 サムエルはまた言った、「イスラエルびとを、ことごとくミヅパに集めなさい。わたしはあなたがたのために主に祈りましょう」。
7356 09 7 6 人々はミヅパに集まり、水をくんでそれを主の前に注ぎ、その日、断食してその所で言った、「われわれは主に対して罪を犯した」。サムエルはミヅパでイスラエルの人々をさばいた。
7357 09 7 7 イスラエルの人々のミヅパに集まったことがペリシテびとに聞えたので、ペリシテびとの君たちは、イスラエルに攻め上ってきた。イスラエルの人々はそれを聞いて、ペリシテびとを恐れた。
7358 09 7 8 そしてイスラエルの人々はサムエルに言った、「われわれのため、われわれの神、主に叫ぶことを、やめないでください。そうすれば主がペリシテびとの手からわれわれを救い出されるでしょう」。
7359 09 7 9 そこでサムエルは乳を飲む小羊一頭をとり、これを全き燔祭として主にささげた。そしてサムエルはイスラエルのために主に叫んだので、主はこれに答えられた。
7360 09 7 10 サムエルが燔祭をささげていた時、ペリシテびとはイスラエルと戦おうとして近づいてきた。しかし主はその日、大いなる雷をペリシテびとの上にとどろかせて、彼らを乱されたので、彼らはイスラエルびとの前に敗れて逃げた。
7361 09 7 11 イスラエルの人々はミヅパを出てペリシテびとを追い、これを撃って、ベテカルの下まで行った。
7362 09 7 12 その時サムエルは一つの石をとってミヅパとエシャナの間にすえ、「主は今に至るまでわれわれを助けられた」と言って、その名をエベネゼルと名づけた。
7363 09 7 13 こうしてペリシテびとは征服され、ふたたびイスラエルの領地に、はいらなかった。サムエルの一生の間、主の手が、ペリシテびとを防いだ。
7364 09 7 14 ペリシテびとがイスラエルから取った町々は、エクロンからガテまで、イスラエルにかえり、イスラエルはその周囲の地をもペリシテびとの手から取りかえした。またイスラエルとアモリびととの間には平和があった。
7365 09 7 15 サムエルは一生の間イスラエルをさばいた。
7366 09 7 16 年ごとにサムエルはベテルとギルガル、およびミヅパを巡って、その所々でイスラエルをさばき、
7367 09 7 17 ラマに帰った。そこに彼の家があったからである。その所でも彼はイスラエルをさばき、またそこで主に祭壇を築いた。
7368 09 8 1 サムエルは年老いて、その子らをイスラエルのさばきづかさとした。
7369 09 8 2 長子の名はヨエルといい、次の子の名はアビヤと言った。彼らはベエルシバでさばきづかさであった。
7370 09 8 3 しかしその子らは父の道を歩まないで、利にむかい、まいないを取って、さばきを曲げた。
7371 09 8 4 この時、イスラエルの長老たちはみな集まってラマにおるサムエルのもとにきて、
7372 09 8 5 言った、「あなたは年老い、あなたの子たちはあなたの道を歩まない。今ほかの国々のように、われわれをさばく王を、われわれのために立ててください」。
7373 09 8 6 しかし彼らが、「われわれをさばく王を、われわれに与えよ」と言うのを聞いて、サムエルは喜ばなかった。そしてサムエルが主に祈ると、
7374 09 8 7 主はサムエルに言われた、「民が、すべてあなたに言う所の声に聞き従いなさい。彼らが捨てるのはあなたではなく、わたしを捨てて、彼らの上にわたしが王であることを認めないのである。
7375 09 8 8 彼らは、わたしがエジプトから連れ上った日から、きょうまで、わたしを捨ててほかの神々に仕え、さまざまの事をわたしにしたように、あなたにもしているのである。
7376 09 8 9 今その声に聞き従いなさい。ただし、深く彼らを戒めて、彼らを治める王のならわしを彼らに示さなければならない」。
7377 09 8 10 サムエルは王を立てることを求める民に主の言葉をことごとく告げて、
7378 09 8 11 言った、「あなたがたを治める王のならわしは次のとおりである。彼はあなたがたのむすこを取って、戦車隊に入れ、騎兵とし、自分の戦車の前に走らせるであろう。
7379 09 8 12 彼はまたそれを千人の長、五十人の長に任じ、またその地を耕させ、その作物を刈らせ、またその武器と戦車の装備を造らせるであろう。
7380 09 8 13 また、あなたがたの娘を取って、香をつくる者とし、料理をする者とし、パンを焼く者とするであろう。
7381 09 8 14 また、あなたがたの畑とぶどう畑とオリブ畑の最も良い物を取って、その家来に与え、
7382 09 8 15 あなたがたの穀物と、ぶどう畑の、十分の一を取って、その役人と家来に与え、
7383 09 8 16 また、あなたがたの男女の奴隷および、あなたがたの最も良い牛とろばを取って、自分のために働かせ、
7384 09 8 17 また、あなたがたの羊の十分の一を取り、あなたがたは、その奴隷となるであろう。
7385 09 8 18 そしてその日あなたがたは自分のために選んだ王のゆえに呼ばわるであろう。しかし主はその日にあなたがたに答えられないであろう」。
7386 09 8 19 ところが民はサムエルの声に聞き従うことを拒んで言った、「いいえ、われわれを治める王がなければならない。
7387 09 8 20 われわれも他の国々のようになり、王がわれわれをさばき、われわれを率いて、われわれの戦いにたたかうのである」。
7388 09 8 21 サムエルは民の言葉をことごとく聞いて、それを主の耳に告げた。
7389 09 8 22 主はサムエルに言われた、「彼らの声に聞き従い、彼らのために王を立てよ」。サムエルはイスラエルの人々に言った、「あなたがたは、めいめいその町に帰りなさい」。
7390 09 9 1 さて、ベニヤミンの人で、キシという名の裕福な人があった。キシはアビエルの子、アビエルはゼロルの子、ゼロルはベコラテの子、ベコラテはアピヤの子、アピヤはベニヤミンびとである。
7391 09 9 2 キシにはサウルという名の子があった。若くて麗しく、イスラエルの人々のうちに彼よりも麗しい人はなく、民のだれよりも肩から上、背が高かった。
7392 09 9 3 サウルの父キシの数頭のろばがいなくなった。そこでキシは、その子サウルに言った、「しもべをひとり連れて、立って行き、ろばを捜してきなさい」。
7393 09 9 4 そこでふたりはエフライムの山地を通りすぎ、シャリシャの地を通り過ぎたけれども見当らず、シャリムの地を通り過ぎたけれどもおらず、ベニヤミンの地を通り過ぎたけれども見当らなかった。
7394 09 9 5 彼らがツフの地にきた時、サウルは連れてきたしもべに言った、「さあ、帰ろう。父は、ろばのことよりも、われわれのことを心配するだろう」。
7395 09 9 6 ところが、しもべは言った、「この町には神の人がおられます。尊い人で、その言われることはみなそのとおりになります。その所へ行きましょう。われわれの出てきた旅のことについて何か示されるでしょう」。
7396 09 9 7 サウルはしもべに言った、「しかし行くのであれば、その人に何を贈ろうか。袋のパンはもはや、なくなり、神の人に持っていく贈り物がない。何かありますか」。
7397 09 9 8 しもべは、またサウルに答えた、「わたしの手に四分の一シケルの銀があります。わたしはこれを、神の人に与えて、われわれの道を示してもらいましょう」。
7398 09 9 9 ――昔イスラエルでは、神に問うために行く時には、こう言った、「さあ、われわれは先見者のところへ行こう」。今の預言者は、昔は先見者といわれていたのである。――
7399 09 9 10 サウルはそのしもべに言った、「それは良い。さあ、行こう」。こうして彼らは、神の人のいるその町へ行った。
7400 09 9 11 彼らは町へ行く坂を上っている時、水をくむために出てくるおとめたちに出会ったので、彼らに言った、「先見者はここにおられますか」。
7401 09 9 12 おとめたちは答えた、「おられます。ごらんなさい、この先です。急いで行きなさい。民がきょう高き所で犠牲をささげるので、たった今、町にこられたところです。
7402 09 9 13 あなたがたは、町にはいるとすぐ、あのかたが高き所に上って食事される前に会えるでしょう。民はそのかたがこられるまでは食事をしません。あのかたが犠牲を祝福されてから、招かれた人々が食事をするのです。さあ、上っていきなさい。すぐに会えるでしょう」。
7403 09 9 14 こうして彼らは町に上っていった。そして町の中に、はいろうとした時、サムエルは高き所に上るため彼らのほうに向かって出てきた。
7404 09 9 15 さてサウルが来る一日前に、主はサムエルの耳に告げて言われた、
7405 09 9 16 「あすの今ごろ、あなたの所に、ベニヤミンの地から、ひとりの人をつかわすであろう。あなたはその人に油を注いで、わたしの民イスラエルの君としなさい。彼はわたしの民をペリシテびとの手から救い出すであろう。わたしの民の叫びがわたしに届き、わたしがその悩みを顧みるからである」。
7406 09 9 17 サムエルがサウルを見た時、主は言われた、「見よ、わたしの言ったのはこの人である。この人がわたしの民を治めるであろう」。
7407 09 9 18 そのときサウルは、門の中でサムエルに近づいて言った、「先見者の家はどこですか。どうか教えてください」。
7408 09 9 19 サムエルはサウルに答えた、「わたしがその先見者です。わたしの前に行って、高き所に上りなさい。あなたがたは、きょう、わたしと一緒に食事しなさい。わたしはあすの朝あなたを帰らせ、あなたの心にあることをみな示しましょう。
7409 09 9 20 三日前に、いなくなったあなたのろばは、もはや見つかったので心にかけなくてもよろしい。しかしイスラエルのすべての望ましきものはだれのものですか。それはあなたのもの、あなたの父の家のすべての人のものではありませんか」。
7410 09 9 21 サウルは答えた、「わたしはイスラエルのうちの最も小さい部族のベニヤミンびとであって、わたしの一族はまたベニヤミンのどの一族よりも卑しいものではありませんか。どうしてあなたは、そのようなことをわたしに言われるのですか」。
7411 09 9 22 サムエルはサウルとそのしもべを導いて、へやにはいり、招かれた三十人ほどのうちの上座にすわらせた。
7412 09 9 23 そしてサムエルは料理人に言った、「あなたに渡して、取りのけておくようにと言っておいた分を持ってきなさい」。
7413 09 9 24 料理人は、ももとその上の部分を取り上げて、それをサウルの前に置いた。そしてサムエルは言った、「ごらんなさい。取っておいた物が、あなたの前に置かれています。召しあがってください。あなたが客人たちと一緒に食事ができるように、この時まで、あなたのために取っておいたものです」。
7414 09 9 25 そして彼らが高き所を下って町にはいった時、サウルのために屋上に床が設けられ、彼はその上に身を横たえて寝た。
7415 09 9 26 そして夜明けになって、サムエルは屋上のサウルに呼ばわって言った、「起きなさい。あなたをお送りします」。サウルは起き上がった。そしてサウルとサムエルのふたりは、共に外に出た。
7416 09 9 27 彼らが町はずれに下った時、サムエルはサウルに言った、「あなたのしもべに先に行くように言いなさい。しもべが先に行ったら、あなたは、しばらくここに立ちとどまってください。神の言葉を知らせましょう」。
7417 09 10 1 その時サムエルは油のびんを取って、サウルの頭に注ぎ、彼に口づけして言った、「主はあなたに油を注いで、その民イスラエルの君とされたではありませんか。あなたは主の民を治め、周囲の敵の手から彼らを救わなければならない。主があなたに油を注いで、その嗣業の君とされたことの、しるしは次のとおりです。
7418 09 10 2 あなたがきょう、わたしを離れて、去って行くとき、ベニヤミンの領地のゼルザにあるラケルの墓のかたわらで、ふたりの人に会うでしょう。そして彼らはあなたに言います、『あなたが捜しに行かれたろばは見つかりました。いま父上は、ろばよりもあなたがたの事を心配して、「わが子のことは、どうしよう」と言っておられます』。
7419 09 10 3 あなたが、そこからなお進んで、タボルのかしの木の所へ行くと、そこでベテルに上って神を拝もうとする三人の者に会うでしょう。ひとりは三頭の子やぎを連れ、ひとりは三つのパンを携え、ひとりは、ぶどう酒のはいった皮袋一つを携えている。
7420 09 10 4 彼らはあなたにあいさつし、二つのパンをくれるでしょう。あなたはそれを、その手から受けなければならない。
7421 09 10 5 その後、あなたは神のギベアへ行く。そこはペリシテびとの守備兵のいる所である。あなたはその所へ行って、町にはいる時、立琴、手鼓、笛、琴を執る人々を先に行かせて、預言しながら高き所から降りてくる一群の預言者に会うでしょう。
7422 09 10 6 その時、主の霊があなたの上にもはげしく下って、あなたは彼らと一緒に預言し、変って新しい人となるでしょう。
7423 09 10 7 これらのしるしが、あなたの身に起ったならば、あなたは手当たりしだいになんでもしなさい。神があなたと一緒におられるからです。
7424 09 10 8 あなたはわたしに先立ってギルガルに下らなければならない。わたしはあなたのもとに下っていって、燔祭を供え、酬恩祭をささげるでしょう。わたしがあなたのもとに行って、あなたのしなければならない事をあなたに示すまで、七日のあいだ待たなければならない」。
7425 09 10 9 サウルが背をかえしてサムエルを離れたとき、神は彼に新しい心を与えられた。これらのしるしは皆その日に起った。
7426 09 10 10 彼らはギベアにきた時、預言者の一群に出会った。そして神の霊が、はげしくサウルの上に下り、彼は彼らのうちにいて預言した。
7427 09 10 11 もとからサウルを知っていた人々はみな、サウルが預言者たちと共に預言するのを見て互に言った、「キシの子に何事が起ったのか。サウルもまた預言者たちのうちにいるのか」。
7428 09 10 12 その所のひとりの者が答えた、「彼らの父はだれなのか」。それで「サウルもまた預言者たちのうちにいるのか」というのが、ことわざとなった。
7429 09 10 13 サウルは預言することを終えて、高き所へ行った。
7430 09 10 14 サウルのおじが、サウルとそのしもべとに言った、「あなたがたは、どこへ行ったのか」。サウルは言った、「ろばを捜しにいったのですが、どこにもいないので、サムエルのもとに行きました」。
7431 09 10 15 サウルのおじは言った、「サムエルが、どんなことを言ったか、どうぞ話してください」。
7432 09 10 16 サウルはおじに言った、「ろばが見つかったと、はっきり、わたしたちに言いました」。しかしサムエルが言った王国のことについて、おじには何も告げなかった。
7433 09 10 17 さて、サムエルは民をミヅパで主の前に集め、
7434 09 10 18 イスラエルの人々に言った、「イスラエルの神、主はこう仰せられる、『わたしはイスラエルをエジプトから導き出し、あなたがたをエジプトびとの手、およびすべてあなたがたをしえたげる王国の手から救い出した』。
7435 09 10 19 しかしあなたがたは、きょう、あなたがたをその悩みと苦しみの中から救われるあなたがたの神を捨て、その上、『いいえ、われわれの上に王を立てよ』と言う。それゆえ今、あなたがたは、部族にしたがい、また氏族にしたがって、主の前に出なさい」。
7436 09 10 20 こうしてサムエルがイスラエルのすべての部族を呼び寄せた時、ベニヤミンの部族が、くじに当った。
7437 09 10 21 またベニヤミンの部族をその氏族にしたがって呼び寄せた時、マテリの氏族が、くじに当り、マテリの氏族を人ごとに呼び寄せた時、キシの子サウルが、くじに当った。しかし人々が彼を捜した時、見つからなかった。
7438 09 10 22 そこでまた主に「その人はここにきているのですか」と問うと、主は言われた、「彼は荷物の間に隠れている」。
7439 09 10 23 人々は走って行って、彼をそこから連れてきた。彼は民の中に立ったが、肩から上は、民のどの人よりも高かった。
7440 09 10 24 サムエルはすべての民に言った、「主が選ばれた人をごらんなさい。民のうちに彼のような人はないではありませんか」。民はみな「王万歳」と叫んだ。
7441 09 10 25 その時サムエルは王国のならわしを民に語り、それを書にしるして、主の前におさめた。こうしてサムエルはすべての民をそれぞれ家に帰らせた。
7442 09 10 26 サウルもまたギベアにある彼の家に帰った。そして神にその心を動かされた勇士たちも彼と共に行った。
7443 09 10 27 しかし、よこしまな人々は「この男がどうしてわれわれを救うことができよう」と言って、彼を軽んじ、贈り物をしなかった。しかしサウルは黙っていた。
7444 09 11 1 アンモンびとナハシは上ってきて、ヤベシ・ギレアデを攻め囲んだ。ヤベシの人々はナハシに言った、「われわれと契約を結びなさい。そうすればわれわれはあなたに仕えます」。
7445 09 11 2 しかしアンモンびとナハシは彼らに言った、「次の条件であなたがたと契約を結ぼう。すなわち、わたしが、あなたがたすべての右の目をえぐり取って、全イスラエルをはずかしめるということだ」。
7446 09 11 3 ヤベシの長老たちは彼に言った、「われわれに七日の猶予を与え、イスラエルの全領土に使者を送ることを許してください。そしてもしわれわれを救う者がない時は降伏します」。
7447 09 11 4 こうして使者が、サウルのギベアにきて、この事を民の耳に告げたので、民はみな声をあげて泣いた。
7448 09 11 5 その時サウルは畑から牛のあとについてきた。そしてサウルは言った、「民が泣いているのは、どうしたのか」。人々は彼にヤベシの人々の事を告げた。
7449 09 11 6 サウルがこの言葉を聞いた時、神の霊が激しく彼の上に臨んだので、彼の怒りははなはだしく燃えた。
7450 09 11 7 彼は一くびきの牛をとり、それを切り裂き、使者の手によってイスラエルの全領土に送って言わせた、「だれであってもサウルとサムエルとに従って出ない者は、その牛がこのようにされるであろう」。民は主を恐れて、ひとりのように出てきた。
7451 09 11 8 サウルはベゼクでそれを数えたが、イスラエルの人々は三十万、ユダの人々は三万であった。
7452 09 11 9 そして人々は、きた使者たちに言った、「ヤベシ・ギレアデの人にこう言いなさい、『あす、日の暑くなるころ、あなたがたは救を得るであろう』と」。使者が帰って、ヤベシの人々に告げたので、彼らは喜んだ。
7453 09 11 10 そこでヤベシの人々は言った、「あす、われわれは降伏します。なんでも、あなたがたが良いと思うことを、われわれにしてください」。
7454 09 11 11 明くる日、サウルは民を三つの部隊に分け、あかつきに敵の陣営に攻め入り、日の暑くなるころまで、アンモンびとを殺した。生き残った者はちりぢりになって、ふたり一緒にいるものはなかった。
7455 09 11 12 その時、民はサムエルに言った、「さきに、『サウルがどうしてわれわれを治めることができようか』と言ったものはだれでしょうか。その人々を引き出してください。われわれはその人々を殺します」。
7456 09 11 13 しかしサウルは言った、「主はきょう、イスラエルに救を施されたのですから、きょうは人を殺してはなりません」。
7457 09 11 14 そこでサムエルは民に言った、「さあ、ギルガルへ行って、あそこで王国を一新しよう」。
7458 09 11 15 こうして民はみなギルガルへ行って、その所で主の前にサウルを王とし、酬恩祭を主の前にささげ、サウルとイスラエルの人々は皆、その所で大いに祝った。
7459 09 12 1 サムエルはイスラエルの人々に言った、「見よ、わたしは、あなたがたの言葉に聞き従って、あなたがたの上に王を立てた。
7460 09 12 2 見よ王は今、あなたがたの前に歩む。わたしは年老いて髪は白くなった。わたしの子らもあなたがたと共にいる。わたしは若い時から、きょうまで、あなたがたの前に歩んだ。
7461 09 12 3 わたしはここにいる。主の前と、その油そそがれた者の前に、わたしを訴えよ。わたしが、だれの牛を取ったか。だれのろばを取ったか。だれを欺いたか。だれをしえたげたか。だれの手から、まいないを取って、自分の目をくらましたか。もしそのようなことがあれば、わたしはそれを、あなたがたに償おう」。
7462 09 12 4 彼らは言った、「あなたは、われわれを欺いたことも、しえたげたこともありません。また人の手から何も取ったことはありません」。
7463 09 12 5 サムエルは彼らに言った、「あなたがたが、わたしの手のうちに、なんの不正をも見いださないことを、主はあなたがたにあかしされる。その油そそがれた者も、きょうそれをあかしする」。彼らは言った、「あかしされます」。
7464 09 12 6 サムエルは民に言った、「モーセとアロンを立てて、あなたがたの先祖をエジプトの地から導き出された主が証人です。
7465 09 12 7 それゆえ、あなたがたは今、立ちなさい。わたしは主が、あなたがたとあなたがたの先祖のために行われたすべての救のわざについて、主の前に、あなたがたと論じよう。
7466 09 12 8 ヤコブがエジプトに行って、エジプトびとが、彼らを、しえたげた時、あなたがたの先祖は主に呼ばわったので、主はモーセとアロンをつかわされた。そこで彼らは、あなたがたの先祖をエジプトから導き出して、この所に住まわせた。
7467 09 12 9 しかし、彼らがその神、主を忘れたので、主は彼らをハゾルの王ヤビンの軍の長シセラの手に渡し、またペリシテびとの手とモアブの王の手にわたされた。そこで彼らがイスラエルを攻めたので、
7468 09 12 10 民は主に呼ばわって言った、『われわれは主を捨て、バアルとアシタロテに仕えて、罪を犯しました。今、われわれを敵の手から救い出してください。われわれはあなたに仕えます』。
7469 09 12 11 主はエルバアルとバラクとエフタとサムエルをつかわして、あなたがたを周囲の敵の手から救い出されたので、あなたがたは安らかに住むことができた。
7470 09 12 12 ところが、アンモンびとの王ナハシが攻めてくるのを見たとき、あなたがたの神、主があなたがたの王であるのに、あなたがたはわたしに、『いいえ、われわれを治める王がなければならない』と言った。
7471 09 12 13 それゆえ、今あなたがたの選んだ王、あなたがたが求めた王を見なさい。主はあなたがたの上に王を立てられた。
7472 09 12 14 もし、あなたがたが主を恐れ、主に仕えて、その声に聞き従い、主の戒めにそむかず、あなたがたも、あなたがたを治める王も共に、あなたがたの神、主に従うならば、それで良い。
7473 09 12 15 しかし、もしあなたがたが主の声に聞き従わず、主の戒めにそむくならば、主の手は、あなたがたとあなたがたの王を攻めるであろう。
7474 09 12 16 それゆえ、今、あなたがたは立って、主が、あなたがたの目の前で行われる、この大いなる事を見なさい。
7475 09 12 17 きょうは小麦刈の時ではないか。わたしは主に呼ばわるであろう。そのとき主は雷と雨を下して、あなたがたが王を求めて、主の前に犯した罪の大いなることを見させ、また知らせられるであろう」。
7476 09 12 18 そしてサムエルが主に呼ばわったので、主はその日、雷と雨を下された。民は皆ひじょうに主とサムエルとを恐れた。
7477 09 12 19 民はみなサムエルに言った、「しもべらのために、あなたの神、主に祈って、われわれの死なないようにしてください。われわれは、もろもろの罪を犯した上に、また王を求めて、悪を加えました」。
7478 09 12 20 サムエルは民に言った、「恐れることはない。あなたがたは、このすべての悪をおこなった。しかし主に従うことをやめず、心をつくして主に仕えなさい。
7479 09 12 21 むなしい物に迷って行ってはならない。それは、あなたがたを助けることも救うこともできないむなしいものだからである。
7480 09 12 22 主は、その大いなる名のゆえに、その民を捨てられないであろう。主が、あなたがたを自分の民とすることを良しとされるからである。
7481 09 12 23 また、わたしは、あなたがたのために祈ることをやめて主に罪を犯すことは、けっしてしないであろう。わたしはまた良い、正しい道を、あなたがたに教えるであろう。
7482 09 12 24 あなたがたは、ただ主を恐れ、心をつくして、誠実に主に仕えなければならない。そして主がどんなに大きいことをあなたがたのためにされたかを考えなければならない。
7483 09 12 25 しかし、あなたがたが、なおも悪を行うならば、あなたがたも、あなたがたの王も、共に滅ぼされるであろう」。
7484 09 13 1 サウルは三十歳で王の位につき、二年イスラエルを治めた。
7485 09 13 2 さてサウルはイスラエルびと三千を選んだ。二千はサウルと共にミクマシ、およびベテルの山地におり、一千はヨナタンと共にベニヤミンのギベアにいた。サウルはその他の民を、おのおの、その天幕に帰らせた。
7486 09 13 3 ヨナタンは、ゲバにあるペリシテびとの守備兵を敗った。ペリシテびとはそのことを聞いた。そこで、サウルは国中に、あまねく角笛を吹きならして言わせた、「ヘブルびとよ、聞け」。
7487 09 13 4 イスラエルの人は皆、サウルがペリシテびとの守備兵を敗ったこと、そしてイスラエルがペリシテびとに憎まれるようになったことを聞いた。こうして民は召されて、ギルガルのサウルのもとに集まった。
7488 09 13 5 ペリシテびとはイスラエルと戦うために集まった。戦車三千、騎兵六千、民は浜べの砂のように多かった。彼らは上ってきて、ベテアベンの東のミクマシに陣を張った。
7489 09 13 6 イスラエルびとは、ひどく圧迫され、味方が危くなったのを見て、ほら穴に、縦穴に、岩に、墓に、ため池に身を隠した。
7490 09 13 7 また、あるヘブルびとはヨルダンを渡って、ガドとギレアデの地へ行った。しかしサウルはなおギルガルにいて、民はみな、ふるえながら彼に従った。
7491 09 13 8 サウルは、サムエルが定めたように、七日のあいだ待ったが、サムエルがギルガルにこなかったので、民は彼を離れて散って行った。
7492 09 13 9 そこでサウルは言った、「燔祭と酬恩祭をわたしの所に持ってきなさい」。こうして彼は燔祭をささげた。
7493 09 13 10 その燔祭をささげ終ると、サムエルがきた。サウルはあいさつをしようと、彼を迎えに出た。
7494 09 13 11 その時サムエルは言った、「あなたは何をしたのですか」。サウルは言った、「民はわたしを離れて散って行き、あなたは定まった日のうちにこられないのに、ペリシテびとがミクマシに集まったのを見たので、
7495 09 13 12 わたしは、ペリシテびとが今にも、ギルガルに下ってきて、わたしを襲うかも知れないのに、わたしはまだ主の恵みを求めることをしていないと思い、やむを得ず燔祭をささげました」。
7496 09 13 13 サムエルはサウルに言った、「あなたは愚かなことをした。あなたは、あなたの神、主の命じられた命令を守らなかった。もし守ったならば、主は今あなたの王国を長くイスラエルの上に確保されたであろう。
7497 09 13 14 しかし今は、あなたの王国は続かないであろう。主は自分の心にかなう人を求めて、その人に民の君となることを命じられた。あなたが主の命じられた事を守らなかったからである」。
7498 09 13 15 こうしてサムエルは立って、ギルガルからベニヤミンのギベアに上っていった。
7499 09 13 16 サウルとその子ヨナタン、ならびに、共にいる民は、ベニヤミンのゲバにおり、ペリシテびとはミクマシに陣を張っていた。
7500 09 13 17 そしてペリシテびとの陣から三つの部隊にわかれた略奪隊が出てきて、一部隊はオフラの方に向かって、シュアルの地に行き、
7501 09 13 18 一部隊はベテホロンの方に向かい、一部隊は荒野の方のゼボイムの谷を見おろす境の方に向かった。
7502 09 13 19 そのころ、イスラエルの地にはどこにも鉄工がいなかった。ペリシテびとが「ヘブルびとはつるぎも、やりも造ってはならない」と言ったからである。
7503 09 13 20 ただしイスラエルの人は皆、そのすきざき、くわ、おの、かまに刃をつけるときは、ペリシテびとの所へ下って行った。
7504 09 13 21 すきざきと、くわのための料金は一ピムであり、おのに刃をつけるのと、とげのあるむちを直すのは三分の一シケルであった。
7505 09 13 22 それでこの戦いの日には、サウルおよびヨナタンと共にいた民の手には、つるぎもやりもなく、ただサウルとその子ヨナタンとがそれを持っていた。
7506 09 13 23 ペリシテびとの先陣はミクマシの渡りに進み出た。
7507 09 14 1 ある日、サウルの子ヨナタンは、その武器を執る若者に「さあ、われわれは向こう側の、ペリシテびとの先陣へ渡って行こう」と言った。しかしヨナタンは父には告げなかった。
7508 09 14 2 サウルはギベアのはずれで、ミグロンにある、ざくろの木の下にとどまっていたが、共にいた民はおおよそ六百人であった。
7509 09 14 3 またアヒヤはエポデを身に着けて共にいた。アヒヤはアヒトブの子、アヒトブはイカボデの兄弟、イカボデはピネハスの子、ピネハスはシロにおいて主の祭司であったエリの子である。民はヨナタンが出かけることを知らなかった。
7510 09 14 4 ヨナタンがペリシテびとの先陣に渡って行こうとする渡りには、一方に険しい岩があり、他方にも険しい岩があり、一方の名をボゼヅといい、他方の名をセネといった。
7511 09 14 5 岩の一つはミクマシの前にあって北にあり、一つはゲバの前にあって南にあった。
7512 09 14 6 ヨナタンはその武器を執る若者に言った、「さあ、われわれは、この割礼なき者どもの先陣へ渡って行こう。主がわれわれのために何か行われるであろう。多くの人をもって救うのも、少ない人をもって救うのも、主にとっては、なんの妨げもないからである」。
7513 09 14 7 武器を執る者は彼に言った、「あなたの望みどおりにしなさい。わたしは一緒にいます。わたしはあなたと同じ心です」。
7514 09 14 8 ヨナタンはまた言った、「われわれは、あの人々の所に渡っていって、彼らに身を現そう。
7515 09 14 9 そして、もし彼らがわれわれに、『こちらから行くまで待て』と言うならば、われわれはその場にとどまり、彼らの所に上っていかないであろう。
7516 09 14 10 しかし、もし彼らが『われわれのところへ上ってこい』と言うならば、われわれは上って行こう。主が彼らをわれわれの手に渡されるからである。これをもってしるしとしよう」。
7517 09 14 11 こうしてふたりはペリシテびとの先陣に、その身を現したので、ペリシテびとは言った、「見よ、ヘブルびとが、隠れていた穴から出てくる」。
7518 09 14 12 先陣の人々はヨナタンと、その武器を執る者に叫んで言った、「われわれのところに上ってこい。目に、もの見せてくれよう」。ヨナタンは、その武器を執る者に言った、「わたしのあとについて上ってきなさい。主は彼らをイスラエルの手に渡されたのだ」。
7519 09 14 13 そしてヨナタンはよじ登り、武器を執る者もそのあとについて登った。ペリシテびとはヨナタンの前に倒れた。武器を執る者も、あとについていってペリシテびとを殺した。
7520 09 14 14 ヨナタンとその武器を執る者とが、手始めに殺したものは、おおよそ二十人であって、このことは一くびきの牛の耕す畑のおおよそ半分の内で行われた。
7521 09 14 15 そして陣営にいる者、野にいるもの、およびすべての民は恐怖に襲われ、先陣のもの、および略奪隊までも、恐れおののいた。また地は震い動き、非常に大きな恐怖となった。
7522 09 14 16 ベニヤミンのギベアにいたサウルの番兵たちが見ると、ペリシテびとの群衆はくずれて右往左往していた。
7523 09 14 17 その時サウルは、共にいる民に言った、「人数を調べて、われわれのうちのだれが出て行ったかを見よ」。人数を調べたところ、ヨナタンとその武器を執る者とがそこにいなかった。
7524 09 14 18 サウルはアヒヤに言った、「エポデをここに持ってきなさい」。その時、アヒヤはイスラエルの人々の前でエポデを身に着けていたからである。
7525 09 14 19 サウルが祭司に語っている間にも、ペリシテびとの陣営の騒ぎはますます大きくなったので、サウルは祭司に言った、「手を引きなさい」。
7526 09 14 20 こうしてサウルおよび共にいる民は皆、集まって戦いに出た。ペリシテびとはつるぎをもって同志打ちしたので、非常に大きな混乱となった。
7527 09 14 21 また先にペリシテびとと共にいて、彼らと共に陣営にきていたヘブルびとたちも、翻ってサウルおよびヨナタンと共にいるイスラエルびとにつくようになった。
7528 09 14 22 またエフライムの山地に身を隠していたイスラエルびとたちも皆、ペリシテびとが逃げると聞いて、彼らもまた戦いに出て、それを追撃した。
7529 09 14 23 こうして主はその日イスラエルを救われた。そして戦いはベテアベンに移った。
7530 09 14 24 しかしその日イスラエルの人々は苦しんだ。これはサウルが民に誓わせて「夕方まで、わたしが敵にあだを返すまで、食物を食べる者は、のろわれる」と言ったからである。それゆえ民のうちには、ひとりも食物を口にしたものはなかった。
7531 09 14 25 ところで、民がみな森の中にはいると、地のおもてに蜜があった。
7532 09 14 26 民は森にはいった時、蜜のしたたっているのを見た。しかしだれもそれを手に取って口につけるものがなかった。民が誓いを恐れたからである。
7533 09 14 27 しかしヨナタンは、父が民に誓わせたことを聞かなかったので、手を伸べてつえの先を蜜ばちの巣に浸し、手に取って口につけた。すると彼は目がはっきりした。
7534 09 14 28 その時、民のひとりが言った、「あなたの父は、かたく民に誓わせて『きょう、食物を食べる者は、のろわれる』と言われました。それで民は疲れているのです」。
7535 09 14 29 ヨナタンは言った、「父は国を悩ませました。ごらんなさい。この蜜をすこしなめたばかりで、わたしの目がこんなに、はっきりしたではありませんか。
7536 09 14 30 まして、民がきょう敵からぶんどった物を、じゅうぶん食べていたならば、さらに多くのペリシテびとを殺していたでしょうに」。
7537 09 14 31 その日イスラエルびとは、ペリシテびとを撃って、ミクマシからアヤロンに及んだ。そして民は、ひじょうに疲れたので、
7538 09 14 32 ぶんどり物に、はせかかって、羊、牛、子牛を取って、それを地の上に殺し、血のままでそれを食べた。
7539 09 14 33 人々はサウルに言った、「民は血のままで食べて、主に罪を犯しています」。サウルは言った、「あなたがたはそむいている。この所へ、わたしのもとに大きな石をころがしてきなさい」。
7540 09 14 34 サウルはまた言った、「あなたがたは分れて、民の中にはいって、彼らに言いなさい、『おのおの牛または、羊を引いてきてここでほふって食べなさい。血のままで食べて、主に罪を犯してはならない』」。そこで民は皆、その夜、おのおの牛を引いてきて、それを、その所でほふった。
7541 09 14 35 こうしてサウルは主に一つの祭壇を築いた。これはサウルが主のために築いた最初の祭壇である。
7542 09 14 36 サウルは言った、「われわれは夜のうちにペリシテびとを追って下り、夜明けまで彼らをかすめて、ひとりも残らぬようにしよう」。人々は言った、「良いと思われることを、なんでもしてください」。しかし祭司は言った、「われわれは、ここで、神に尋ねましょう」。
7543 09 14 37 そこでサウルは神に伺った、「わたしはペリシテびとを追って下るべきでしょうか。あなたは彼らをイスラエルの手に渡されるでしょうか」。しかし神はその日は答えられなかった。
7544 09 14 38 そこでサウルは言った、「民の長たちよ、みなこの所に近よりなさい。あなたがたは、よく見きわめて、きょうのこの罪が起きたわけを知らなければならない。
7545 09 14 39 イスラエルを救う主は生きておられる。たとい、それがわたしの子ヨナタンであっても、必ず死ななければならない」。しかし民のうちにはひとりも、これに答えるものがいなかった。
7546 09 14 40 サウルはイスラエルのすべての人に言った、「あなたがたは向こう側にいなさい。わたしとわたしの子ヨナタンはこちら側にいましょう」。民はサウルに言った、「良いと思われることをしてください」。
7547 09 14 41 そこでサウルは言った、「イスラエルの神、主よ、あなたはきょう、なにゆえしもべに答えられなかったのですか。もしこの罪がわたしにあるか、またはわたしの子ヨナタンにあるのでしたら、イスラエルの神、主よ、ウリムをお与えください。しかし、もしこの罪が、あなたの民イスラエルにあるのでしたらトンミムをお与えください」。こうしてヨナタンとサウルとが、くじに当り、民はのがれた。
7548 09 14 42 サウルは言った、「わたしか、わたしの子ヨナタンかを決めるために、くじを引きなさい」。くじはヨナタンに当った。
7549 09 14 43 サウルはヨナタンに言った、「あなたがしたことを、わたしに言いなさい」。ヨナタンは言った、「わたしは確かに手にあったつえの先に少しばかりの蜜をつけて、なめました。わたしはここにいます。死は覚悟しています」。
7550 09 14 44 サウルは言った、「神がわたしをいくえにも罰してくださるように。ヨナタンよ、あなたは必ず死ななければならない」。
7551 09 14 45 その時、民はサウルに言った、「イスラエルのうちにこの大いなる勝利をもたらしたヨナタンが死ななければならないのですか。決してそうではありません。主は生きておられます。ヨナタンの髪の毛一すじも地に落してはなりません。彼は神と共にきょう働いたのです」。こうして民はヨナタンを救ったので彼は死を免れた。
7552 09 14 46 サウルはペリシテびとを追うことをやめて引きあげ、ペリシテびとはその国へ帰った。
7553 09 14 47 サウルはイスラエルの王となって、周囲のもろもろの敵、すなわちモアブ、アンモンの人々、エドム、ゾバの王たちおよびペリシテびとと戦い、すべて向かう所で勝利を得た。
7554 09 14 48 サウルは勇ましく働き、アマレクびとを撃って、イスラエルびとを略奪者の手から救い出した。
7555 09 14 49 さて、サウルのむすこたちはヨナタン、エスイ、およびマルキシュアである。ふたりの娘の名は次のとおりである。すなわち姉の名はメラブ、妹の名はミカルである。
7556 09 14 50 サウルの妻の名はアヒノアムといい、アヒマアズの娘である。また軍の長の名はアブネルといい、サウルのおじネルの子である。
7557 09 14 51 サウルの父キシとアブネルの父ネルとは、アビエルの子である。
7558 09 14 52 サウルの一生の間、ペリシテびとと激しい戦いがあった。サウルは力の強い人や勇気のある人を見るごとに、それを召しかかえた。
7559 09 15 1 さて、サムエルはサウルに言った、「主は、わたしをつかわし、あなたに油をそそいで、その民イスラエルの王とされました。それゆえ、今、主の言葉を聞きなさい。
7560 09 15 2 万軍の主は、こう仰せられる、『わたしは、アマレクがイスラエルにした事、すなわちイスラエルがエジプトから上ってきた時、その途中で敵対したことについて彼らを罰するであろう。
7561 09 15 3 今、行ってアマレクを撃ち、そのすべての持ち物を滅ぼしつくせ。彼らをゆるすな。男も女も、幼な子も乳飲み子も、牛も羊も、らくだも、ろばも皆、殺せ』」。
7562 09 15 4 サウルは民を呼び集め、テライムで人数を調べたところ、歩兵は二十万、ユダの人は一万であった。
7563 09 15 5 そしてサウルはアマレクの町へ行って、谷に兵を伏せた。
7564 09 15 6 サウルはケニびとに言った、「さあ、あなたがたはアマレクびとを離れて、下っていってください。彼らと一緒にあなたがたを滅ぼすようなことがあってはならない。あなたがたは、イスラエルの人々がエジプトから上ってきた時、親切にしてくれたのですから」。そこでケニびとはアマレクびとを離れて行った。
7565 09 15 7 サウルはアマレクびとを撃って、ハビラからエジプトの東にあるシュルにまで及んだ。
7566 09 15 8 そしてアマレクびとの王アガグをいけどり、つるぎをもってその民をことごとく滅ぼした。
7567 09 15 9 しかしサウルと民はアガグをゆるし、また羊と牛の最も良いもの、肥えたものならびに小羊と、すべての良いものを残し、それらを滅ぼし尽すことを好まず、ただ値うちのない、つまらない物を滅ぼし尽した。
7568 09 15 10 その時、主の言葉がサムエルに臨んだ、
7569 09 15 11 「わたしはサウルを王としたことを悔いる。彼がそむいて、わたしに従わず、わたしの言葉を行わなかったからである」。サムエルは怒って、夜通し、主に呼ばわった。
7570 09 15 12 そして朝サウルに会うため、早く起きたが、サムエルに告げる人があった、「サウルはカルメルにきて、自分のために戦勝記念碑を建て、身をかえして進み、ギルガルへ下って行きました」。
7571 09 15 13 サムエルがサウルのもとへ来ると、サウルは彼に言った、「どうぞ、主があなたを祝福されますように。わたしは主の言葉を実行しました」。
7572 09 15 14 サムエルは言った、「それならば、わたしの耳にはいる、この羊の声と、わたしの聞く牛の声は、いったい、なんですか」。
7573 09 15 15 サウルは言った、「人々がアマレクびとの所から引いてきたのです。民は、あなたの神、主にささげるために、羊と牛の最も良いものを残したのです。そのほかは、われわれが滅ぼし尽しました」。
7574 09 15 16 サムエルはサウルに言った、「おやめなさい。昨夜、主がわたしに言われたことを、あなたに告げましょう」。サウルは彼に言った、「言ってください」。
7575 09 15 17 サムエルは言った、「たとい、自分では小さいと思っても、あなたはイスラエルの諸部族の長ではありませんか。主はあなたに油を注いでイスラエルの王とされた。
7576 09 15 18 そして主はあなたに使命を授け、つかわして言われた、『行って、罪びとなるアマレクびとを滅ぼし尽せ。彼らを皆殺しにするまで戦え』。
7577 09 15 19 それであるのに、どうしてあなたは主の声に聞き従わないで、ぶんどり物にとびかかり、主の目の前に悪をおこなったのですか」。
7578 09 15 20 サウルはサムエルに言った、「わたしは主の声に聞き従い、主がつかわされた使命を帯びて行き、アマレクの王アガグを連れてきて、アマレクびとを滅ぼし尽しました。
7579 09 15 21 しかし民は滅ぼし尽すべきもののうち最も良いものを、ギルガルで、あなたの神、主にささげるため、ぶんどり物のうちから羊と牛を取りました」。
7580 09 15 22 サムエルは言った、「主はそのみ言葉に聞き従う事を喜ばれるように、燔祭や犠牲を喜ばれるであろうか。見よ、従うことは犠牲にまさり、聞くことは雄羊の脂肪にまさる。
7581 09 15 23 そむくことは占いの罪に等しく、強情は偶像礼拝の罪に等しいからである。あなたが主のことばを捨てたので、主もまたあなたを捨てて、王の位から退けられた」。
7582 09 15 24 サウルはサムエルに言った、「わたしは主の命令とあなたの言葉にそむいて罪を犯しました。民を恐れて、その声に聞き従ったからです。
7583 09 15 25 どうぞ、今わたしの罪をゆるし、わたしと一緒に帰って、主を拝ませてください」。
7584 09 15 26 サムエルはサウルに言った、「あなたと一緒に帰りません。あなたが主の言葉を捨てたので、主もあなたを捨てて、イスラエルの王位から退けられたからです」。
7585 09 15 27 こうしてサムエルが去ろうとして身をかえした時、サウルがサムエルの上着のすそを捕えたので、それは裂けた。
7586 09 15 28 サムエルは彼に言った、「主はきょう、あなたからイスラエルの王国を裂き、もっと良いあなたの隣人に与えられた。
7587 09 15 29 またイスラエルの栄光は偽ることもなく、悔いることもない。彼は人ではないから悔いることはない」。
7588 09 15 30 サウルは言った、「わたしは罪を犯しましたが、どうぞ、民の長老たち、およびイスラエルの前で、わたしを尊び、わたしと一緒に帰って、あなたの神、主を拝ませてください」。
7589 09 15 31 そこでサムエルはサウルのあとについて帰った。そしてサウルは主を拝んだ。
7590 09 15 32 時にサムエルは言った、「わたしの所にアマレクびとの王アガグを引いてきなさい」。アガグはうれしそうにサムエルの所にきた。アガグは「死の苦しみはきっと過ぎ去ったのだ」と思った。
7591 09 15 33 サムエルは言った、「あなたのつるぎは多くの女に子供を失わせた。そのようにあなたの母も女のうちで最も無惨に子供を失う者となるであろう」。サムエルはギルガルで主の前に、アガグを寸断した。
7592 09 15 34 そしてサムエルはラマに行き、サウルは故郷のギベアに上って、その家に帰った。
7593 09 15 35 サムエルは死ぬ日まで、二度とサウルを見なかった。しかしサムエルはサウルのために悲しんだ。また主はサウルをイスラエルの王としたことを悔いられた。
7594 09 16 1 さて主はサムエルに言われた、「わたしがすでにサウルを捨てて、イスラエルの王位から退けたのに、あなたはいつまで彼のために悲しむのか。角に油を満たし、それをもって行きなさい。あなたをベツレヘムびとエッサイのもとにつかわします。わたしはその子たちのうちにひとりの王を捜し得たからである」。
7595 09 16 2 サムエルは言った、「どうしてわたしは行くことができましょう。サウルがそれを聞けば、わたしを殺すでしょう」。主は言われた、「一頭の子牛を引いていって、『主に犠牲をささげるためにきました』と言いなさい。
7596 09 16 3 そしてエッサイを犠牲の場所に呼びなさい。その時わたしはあなたのすることを示します。わたしがあなたに告げる人に油を注がなければならない」。
7597 09 16 4 サムエルは主が命じられたようにして、ベツレヘムへ行った。町の長老たちは、恐れながら出て、彼を迎え、「穏やかな事のためにこられたのですか」と言った。
7598 09 16 5 サムエルは言った、「穏やかな事のためです。わたしは主に犠牲をささげるためにきました。身をきよめて、犠牲の場所にわたしと共にきてください」。そしてサムエルはエッサイとその子たちをきよめて犠牲の場に招いた。
7599 09 16 6 彼らがきた時、サムエルはエリアブを見て、「自分の前にいるこの人こそ、主が油をそそがれる人だ」と思った。
7600 09 16 7 しかし主はサムエルに言われた、「顔かたちや身のたけを見てはならない。わたしはすでにその人を捨てた。わたしが見るところは人とは異なる。人は外の顔かたちを見、主は心を見る」。
7601 09 16 8 そこでエッサイはアビナダブを呼んでサムエルの前を通らせた。サムエルは言った、「主が選ばれたのはこの人でもない」。
7602 09 16 9 エッサイはシャンマを通らせたが、サムエルは言った、「主が選ばれたのはこの人でもない」。
7603 09 16 10 エッサイは七人の子にサムエルの前を通らせたが、サムエルはエッサイに言った、「主が選ばれたのはこの人たちではない」。
7604 09 16 11 サムエルはエッサイに言った、「あなたのむすこたちは皆ここにいますか」。彼は言った、「まだ末の子が残っていますが羊を飼っています」。サムエルはエッサイに言った、「人をやって彼を連れてきなさい。彼がここに来るまで、われわれは食卓につきません」。
7605 09 16 12 そこで人をやって彼をつれてきた。彼は血色のよい、目のきれいな、姿の美しい人であった。主は言われた、「立ってこれに油をそそげ。これがその人である」。
7606 09 16 13 サムエルは油の角をとって、その兄弟たちの中で、彼に油をそそいだ。この日からのち、主の霊は、はげしくダビデの上に臨んだ。そしてサムエルは立ってラマへ行った。
7607 09 16 14 さて主の霊はサウルを離れ、主から来る悪霊が彼を悩ました。
7608 09 16 15 サウルの家来たちは彼に言った、「ごらんなさい。神から来る悪霊があなたを悩ましているのです。
7609 09 16 16 どうぞ、われわれの主君が、あなたの前に仕えている家来たちに命じて、じょうずに琴をひく者ひとりを捜させてください。神から来る悪霊があなたに臨む時、彼が手で琴をひくならば、あなたは良くなられるでしょう」。
7610 09 16 17 そこでサウルは家来たちに言った、「じょうずに琴をひく者を捜して、わたしのもとに連れてきなさい」。
7611 09 16 18 その時、ひとりの若者がこたえた、「わたしはベツレヘムびとエッサイの子を見ましたが、琴がじょうずで、勇気もあり、いくさびとで、弁舌にひいで、姿の美しい人です。また主が彼と共におられます」。
7612 09 16 19 そこでサウルはエッサイのもとに使者をつかわして言った、「羊を飼っているあなたの子ダビデをわたしのもとによこしなさい」。
7613 09 16 20 エッサイは、ろばにパンを負わせ、皮袋にいれたぶどう酒一袋と、やぎの子とを取って、その子ダビデの手によってサウルに送った。
7614 09 16 21 ダビデはサウルのもとにきて、彼に仕えた。サウルはひじょうにこれを愛して、その武器を執る者とした。
7615 09 16 22 またサウルは人をつかわしてエッサイに言った、「ダビデをわたしに仕えさせてください。彼はわたしの心にかないました」。
7616 09 16 23 神から出る悪霊がサウルに臨む時、ダビデは琴をとり、手でそれをひくと、サウルは気が静まり、良くなって、悪霊は彼を離れた。
7617 09 17 1 さてペリシテびとは、軍を集めて戦おうとし、ユダに属するソコに集まって、ソコとアゼカの間にあるエペス・ダミムに陣取った。
7618 09 17 2 サウルとイスラエルの人々は集まってエラの谷に陣取り、ペリシテびとに対して戦列をしいた。
7619 09 17 3 ペリシテびとは向こうの山の上に立ち、イスラエルはこちらの山の上に立った。その間に谷があった。
7620 09 17 4 時に、ペリシテびとの陣から、ガテのゴリアテという名の、戦いをいどむ者が出てきた。身のたけは六キュビト半。
7621 09 17 5 頭には青銅のかぶとを頂き、身には、うろことじのよろいを着ていた。そのよろいは青銅で重さ五千シケル。
7622 09 17 6 また足には青銅のすね当を着け、肩には青銅の投げやりを背負っていた。
7623 09 17 7 手に持っているやりの柄は、機の巻棒のようであり、やりの穂の鉄は六百シケルであった。彼の前には、盾を執る者が進んだ。
7624 09 17 8 ゴリアテは立ってイスラエルの戦列に向かって叫んだ、「なにゆえ戦列をつくって出てきたのか。わたしはペリシテびと、おまえたちはサウルの家来ではないか。おまえたちから、ひとりを選んで、わたしのところへ下ってこさせよ。
7625 09 17 9 もしその人が戦ってわたしを殺すことができたら、われわれはおまえたちの家来となる。しかしわたしが勝ってその人を殺したら、おまえたちは、われわれの家来になって仕えなければならない」。
7626 09 17 10 またこのペリシテびとは言った、「わたしは、きょうイスラエルの戦列にいどむ。ひとりを出して、わたしと戦わせよ」。
7627 09 17 11 サウルとイスラエルのすべての人は、ペリシテびとのこの言葉を聞いて驚き、ひじょうに恐れた。
7628 09 17 12 さて、ダビデはユダのベツレヘムにいたエフラタびとエッサイという名の人の子で、この人に八人の子があったが、サウルの世には年が進んで、すでに年老いていた。
7629 09 17 13 エッサイの子らのうち、上の三人はサウルに従って戦争に出た。その戦いに出た三人の子の名は、長子をエリアブといい、次をアビナダブといい、第三をシャンマと言った。
7630 09 17 14 ダビデは末の子であって、兄三人はサウルにしたがった。
7631 09 17 15 ダビデはサウルの所から行ったりきたりして、ベツレヘムで父の羊を飼っていた。
7632 09 17 16 あのペリシテびとは四十日の間、朝夕出てきて、彼らの前に立った。
7633 09 17 17 時に、エッサイはその子ダビデに言った、「兄たちのため、このいり麦一エパと、この十個のパンをとって、急いで陣営にいる兄の所へ持っていきなさい。
7634 09 17 18 またこの十の乾酪を取って、千人の長にもって行き、兄たちの安否を見とどけて、そのしるしをもらってきなさい」。
7635 09 17 19 さてサウルと彼らおよびイスラエルのすべての人は、エラの谷でペリシテびとと戦っていた。
7636 09 17 20 ダビデは朝はやく起きて、羊を番人に託し、エッサイが命じたように食料品を携えて行った。彼が陣営に着いた時、軍勢は、ときの声をあげて戦線に出ようとしていた。
7637 09 17 21 そしてイスラエルとペリシテびととは戦列を敷いて、軍と軍と向き合った。
7638 09 17 22 ダビデは荷物をおろして、荷物を守る者にあずけ、戦列の方へ走って、兄たちの所へ行き、彼らの安否を尋ねた。
7639 09 17 23 兄たちと語っている時、ペリシテびとの戦列から、ガテのペリシテびとで、名をゴリアテという、あの戦いをいどむ者が上ってきて、前と同じ言葉を言ったので、ダビデはそれを聞いた。
7640 09 17 24 イスラエルのすべての人は、その人を見て、避けて逃げ、ひじょうに恐れた。
7641 09 17 25 イスラエルの人々はまた言った、「あなたがたは、あの上ってきた人を見たか。確かにイスラエルにいどむために上ってきたのだ。彼を殺す人は、王が大いなる富を与えて富ませ、その娘を与え、その父の家にはイスラエルのうちで税を免れさせるであろう」。
7642 09 17 26 ダビデはかたわらに立っている人々に言った、「このペリシテびとを殺し、イスラエルの恥をすすぐ人には、どうされるのですか。この割礼なきペリシテびとは何者なので、生ける神の軍をいどむのか」。
7643 09 17 27 民は前と同じように、「彼を殺す人にはこうされるであろう」と答えた。
7644 09 17 28 上の兄エリアブはダビデが人々と語るのを聞いて、ダビデに向かい怒りを発して言った、「なんのために下ってきたのか。野にいるわずかの羊はだれに託したのか。あなたのわがままと悪い心はわかっている。戦いを見るために下ってきたのだ」。
7645 09 17 29 ダビデは言った、「わたしが今、何をしたというのですか。ただひと言いっただけではありませんか」。
7646 09 17 30 またふり向いて、ほかの人に前のように語ったところ、民はまた同じように答えた。
7647 09 17 31 人々はダビデの語った言葉を聞いて、それをサウルに告げたので、サウルは彼を呼び寄せた。
7648 09 17 32 ダビデはサウルに言った、「だれも彼のゆえに気を落してはなりません。しもべが行ってあのペリシテびとと戦いましょう」。
7649 09 17 33 サウルはダビデに言った、「行って、あのペリシテびとと戦うことはできない。あなたは年少だが、彼は若い時からの軍人だからです」。
7650 09 17 34 しかしダビデはサウルに言った、「しもべは父の羊を飼っていたのですが、しし、あるいはくまがきて、群れの小羊を取った時、
7651 09 17 35 わたしはそのあとを追って、これを撃ち、小羊をその口から救いだしました。その獣がわたしにとびかかってきた時は、ひげをつかまえて、それを撃ち殺しました。
7652 09 17 36 しもべはすでに、ししと、くまを殺しました。この割礼なきペリシテびとも、生ける神の軍をいどんだのですから、あの獣の一頭のようになるでしょう」。
7653 09 17 37 ダビデはまた言った、「ししのつめ、くまのつめからわたしを救い出された主は、またわたしを、このペリシテびとの手から救い出されるでしょう」。サウルはダビデに言った、「行きなさい。どうぞ主があなたと共におられるように」。
7654 09 17 38 そしてサウルは自分のいくさ衣をダビデに着せ、青銅のかぶとを、その頭にかぶらせ、また、うろことじのよろいを身にまとわせた。
7655 09 17 39 ダビデは、いくさ衣の上に、つるぎを帯びて行こうとしたが、できなかった。それに慣れていなかったからである。そこでダビデはサウルに言った、「わたしはこれらのものを着けていくことはできません。慣れていないからです」。
7656 09 17 40 ダビデはそれらを脱ぎすて、手につえをとり、谷間からなめらかな石五個を選びとって自分の持っている羊飼の袋に入れ、手に石投げを執って、あのペリシテびとに近づいた。
7657 09 17 41 そのペリシテびとは進んできてダビデに近づいた。そのたてを執る者が彼の前にいた。
7658 09 17 42 ペリシテびとは見まわしてダビデを見、これを侮った。まだ若くて血色がよく、姿が美しかったからである。
7659 09 17 43 ペリシテびとはダビデに言った、「つえを持って、向かってくるが、わたしは犬なのか」。ペリシテびとは、また神々の名によってダビデをのろった。
7660 09 17 44 ペリシテびとはダビデに言った、「さあ、向かってこい。おまえの肉を、空の鳥、野の獣のえじきにしてくれよう」。
7661 09 17 45 ダビデはペリシテびとに言った、「おまえはつるぎと、やりと、投げやりを持って、わたしに向かってくるが、わたしは万軍の主の名、すなわち、おまえがいどんだ、イスラエルの軍の神の名によって、おまえに立ち向かう。
7662 09 17 46 きょう、主は、おまえをわたしの手にわたされるであろう。わたしは、おまえを撃って、首をはね、ペリシテびとの軍勢の死かばねを、きょう、空の鳥、地の野獣のえじきにし、イスラエルに、神がおられることを全地に知らせよう。
7663 09 17 47 またこの全会衆も、主は救を施すのに、つるぎとやりを用いられないことを知るであろう。この戦いは主の戦いであって、主がわれわれの手におまえたちを渡されるからである」。
7664 09 17 48 そのペリシテびとが立ち上がり、近づいてきてダビデに立ち向かったので、ダビデは急ぎ戦線に走り出て、ペリシテびとに立ち向かった。
7665 09 17 49 ダビデは手を袋に入れて、その中から一つの石を取り、石投げで投げて、ペリシテびとの額を撃ったので、石はその額に突き入り、うつむきに地に倒れた。
7666 09 17 50 こうしてダビデは石投げと石をもってペリシテびとに勝ち、ペリシテびとを撃って、これを殺した。ダビデの手につるぎがなかったので、
7667 09 17 51 ダビデは走りよってペリシテびとの上に乗り、そのつるぎを取って、さやから抜きはなし、それをもって彼を殺し、その首をはねた。ペリシテの人々は、その勇士が死んだのを見て逃げた。
7668 09 17 52 イスラエルとユダの人々は立ちあがり、ときをあげて、ペリシテびとを追撃し、ガテおよびエクロンの門にまで及んだ。そのためペリシテびとの負傷者は、シャライムからガテおよびエクロンに行く道の上に倒れた。
7669 09 17 53 イスラエルの人々はペリシテびとの追撃を終えて帰り、その陣営を略奪した。
7670 09 17 54 ダビデは、あのペリシテびとの首を取ってエルサレムへ持って行ったが、その武器は自分の天幕に置いた。
7671 09 17 55 サウルはダビデがあのペリシテびとに向かって出ていくのを見て、軍の長アブネルに言った、「アブネルよ、この若者はだれの子か」。アブネルは言った、「王よ、あなたのいのちにかけて誓います。わたしは知らないのです」。
7672 09 17 56 王は言った、「この若者がだれの子か、尋ねてみよ」。
7673 09 17 57 ダビデが、あのペリシテびとを殺して帰ってきた時、アブネルは、ペリシテびとの首を手に持っている彼を、サウルの前に連れて行った。
7674 09 17 58 サウルは彼に言った、「若者よ、あなたはだれの子か」。ダビデは答えた、「あなたのしもべ、ベツレヘムびとエッサイの子です」。
7675 09 18 1 ダビデがサウルに語り終えた時、ヨナタンの心はダビデの心に結びつき、ヨナタンは自分の命のようにダビデを愛した。
7676 09 18 2 この日、サウルはダビデを召しかかえて、父の家に帰らせなかった。
7677 09 18 3 ヨナタンとダビデとは契約を結んだ。ヨナタンが自分の命のようにダビデを愛したからである。
7678 09 18 4 ヨナタンは自分が着ていた上着を脱いでダビデに与えた。また、そのいくさ衣、およびつるぎも弓も帯も、そのようにした。
7679 09 18 5 ダビデはどこでもサウルがつかわす所に出て行って、てがらを立てたので、サウルは彼を兵の隊長とした。それはすべての民の心にかない、またサウルの家来たちの心にもかなった。
7680 09 18 6 人々が引き揚げてきた時、すなわちダビデが、かのペリシテびとを殺して帰った時、女たちはイスラエルの町々から出てきて、手鼓と祝い歌と三糸の琴をもって、歌いつ舞いつ、サウル王を迎えた。
7681 09 18 7 女たちは踊りながら互に歌いかわした、「サウルは千を撃ち殺し、ダビデは万を撃ち殺した」。
7682 09 18 8 サウルは、ひじょうに怒り、この言葉に気を悪くして言った、「ダビデには万と言い、わたしには千と言う。この上、彼に与えるものは、国のほかないではないか」。
7683 09 18 9 サウルは、この日からのちダビデをうかがった。
7684 09 18 10 次の日、神から来る悪霊がサウルにはげしく臨んで、サウルが家の中で狂いわめいたので、ダビデは、いつものように、手で琴をひいた。その時、サウルの手にやりがあったので、
7685 09 18 11 サウルは「ダビデを壁に刺し通そう」と思って、そのやりをふり上げた。しかしダビデは二度身をかわしてサウルを避けた。
7686 09 18 12 主がサウルを離れて、ダビデと共におられたので、サウルはダビデを恐れた。
7687 09 18 13 それゆえサウルは、ダビデを遠ざけて、千人の長としたので、ダビデは民の先に立って出入りした。
7688 09 18 14 またダビデは、すべてそのすることに、てがらを立てた。主が共におられたからである。
7689 09 18 15 サウルはダビデが大きなてがらを立てるのを見て彼を恐れたが、
7690 09 18 16 イスラエルとユダのすべての人はダビデを愛した。彼が民の先に立って出入りしたからである。
7691 09 18 17 その時サウルはダビデに言った、「わたしの長女メラブを、あなたに妻として与えよう。ただ、あなたはわたしのために勇ましく、主の戦いを戦いなさい」。サウルは「自分の手で彼を殺さないで、ペリシテびとの手で殺そう」と思ったからである。
7692 09 18 18 ダビデはサウルに言った、「わたしは何者なのでしょう。わたしの親族、わたしの父の一族はイスラエルのうちで何者なのでしょう。そのわたしが、どうして王のむこになることができましょう」。
7693 09 18 19 しかしサウルの娘メラブは、ダビデにとつぐべき時になって、メホラびとアデリエルに妻として与えられた。
7694 09 18 20 サウルの娘ミカルはダビデを愛した。人々がそれをサウルに告げたとき、サウルはその事を喜んだ。
7695 09 18 21 サウルは「ミカルを彼に与えて、彼を欺く手だてとし、ペリシテびとの手で彼を殺そう」と思ったので、サウルはふたたびダビデに言った、「あなたを、きょう、わたしのむこにします」。
7696 09 18 22 そしてサウルは家来たちに命じた、「ひそかにダビデに言いなさい、『王はあなたが気に入り、王の家来たちも皆あなたを愛しています。それゆえ王のむこになりなさい』」。
7697 09 18 23 そこでサウルの家来たちはこの言葉をダビデの耳に語ったので、ダビデは言った、「わたしのような貧しく、卑しい者が、王のむこになることは、あなたがたには、たやすいことと思われますか」。
7698 09 18 24 サウルの家来たちはサウルに、「ダビデはこう言った」と告げた。
7699 09 18 25 サウルは言った、「あなたがたはダビデにこう言いなさい、『王はなにも結納を望まれない。ただペリシテびとの陽の皮一百を獲て、王のあだを討つことを望まれる』」。これはサウルが、ダビデをペリシテびとの手によって倒そうと思ったからである。
7700 09 18 26 サウルの家来たちが、この言葉をダビデに告げた時、ダビデは王のむこになることを良しとした。そして定めた日がまだこないうちに、
7701 09 18 27 ダビデは従者をつれて、立って行き、ペリシテびと二百人を殺して、その陽の皮を携え帰り、王のむこになるために、それをことごとく王にささげた。そこでサウルは娘ミカルを彼に妻として与えた。
7702 09 18 28 しかしサウルは見て、主がダビデと共におられること、またイスラエルのすべての人がダビデを愛するのを知った時、
7703 09 18 29 サウルは、ますますダビデを恐れた。こうしてサウルは絶えずダビデに敵した。
7704 09 18 30 さてペリシテびとの君たちが攻めてきたが、ダビデは、彼らが攻めてくるごとに、サウルのどの家来よりも多くのてがらを立てたので、その名はひじょうに尊敬された。
7705 09 19 1 サウルはその子ヨナタンおよびすべての家来たちにダビデを殺すようにと言った。しかしサウルの子ヨナタンは深くダビデを愛していた。
7706 09 19 2 ヨナタンはダビデに言った、「父サウルはあなたを殺そうとしています。それゆえあすの朝、気をつけて、わからない場所に身を隠していてください。
7707 09 19 3 わたしは出て行って、あなたがいる野原で父のかたわらに立ち、父にあなたのことを話しましょう。そして、何かわたしにわかれば、あなたに告げましょう」。
7708 09 19 4 ヨナタンは父サウルにダビデのことをほめて言った、「王よ、どうか家来ダビデに対して罪を犯さないでください。彼は、あなたに罪を犯さず、また彼のしたことは、あなたのためになることでした。
7709 09 19 5 彼は命をかけて、あのペリシテびとを殺し、主はイスラエルの人々に大いなる勝利を与えられたのです。あなたはそれを見て喜ばれました。それであるのに、どうしてゆえなくダビデを殺し、罪なき者の血を流して罪を犯そうとされるのですか」。
7710 09 19 6 サウルはヨナタンの言葉を聞きいれた。そしてサウルは誓った、「主は生きておられる。わたしは決して彼を殺さない」。
7711 09 19 7 ヨナタンはダビデを呼んでこれらのことをみなダビデに告げた。そしてヨナタンがダビデをサウルのもとに連れてきたので、ダビデは、もとのようにサウルの前にいた。
7712 09 19 8 ところがまた戦争がおこって、ダビデは出てペリシテびとと戦い、大いに彼らを殺したので、彼らはその前から逃げ去った。
7713 09 19 9 さてサウルが家にいて手にやりを持ってすわっていた時、主から来る悪霊がサウルに臨んだので、ダビデは琴をひいていたが、
7714 09 19 10 サウルはそのやりをもってダビデを壁に刺し通そうとした。しかし彼はサウルの前に身をかわしたので、やりは壁につきささった。そしてダビデは逃げ去った。
7715 09 19 11 その夜、サウルはダビデの家に使者たちをつかわして見張りをさせ、朝になって彼を殺させようとした。しかしダビデの妻ミカルはダビデに言った、「もし今夜のうちに、あなたが自分の命を救わないならば、あすは殺されるでしょう」。
7716 09 19 12 そしてミカルがダビデを窓からつりおろしたので、彼は逃げ去った。
7717 09 19 13 ミカルは一つの像をとって、寝床の上に横たえ、その頭にやぎの毛の網をかけ、着物をもってそれをおおった。
7718 09 19 14 サウルはダビデを捕えるため使者たちをつかわしたが、彼女は言った、「あの人は病気です」。
7719 09 19 15 そこでサウルは、ダビデを見させようと使者たちをつかわして言った、「彼を寝床のまま、わたしの所に連れてきなさい。わたしが彼を殺そう」。
7720 09 19 16 使者たちがはいって見ると、寝床には像が横たえてあって、その頭には、やぎの毛の網がかけてあった。
7721 09 19 17 サウルはミカルに言った、「あなたはどうして、このようにわたしを欺いて、わたしの敵を逃がしたのか」。ミカルはサウルに答えた、「あの人はわたしに『逃がしてくれ。さもないと、おまえを殺す』と言いました」。
7722 09 19 18 ダビデは逃げ去り、ラマにいるサムエルのもとへ行って、サウルが自分にしたすべてのことを彼に告げた。そしてダビデとサムエルは行ってナヨテに住んだ。
7723 09 19 19 ある人がサウルに「ダビデはラマのナヨテにいます」と告げたので、
7724 09 19 20 サウルは、ダビデを捕えるために、使者たちをつかわした。彼らは預言者の一群が預言していて、サムエルが、そのうちの、かしらとなって立っているのを見たが、その時、神の霊はサウルの使者たちにも臨んで、彼らもまた預言した。
7725 09 19 21 サウルは、このことを聞いて、他の使者たちをつかわしたが、彼らもまた預言した。サウルは三たび使者たちをつかわしたが、彼らもまた預言した。
7726 09 19 22 そこでサウルはみずからラマに行き、セクの大井戸に着いた時、問うて言った、「サムエルとダビデは、どこにおるか」。ひとりの人が答えた、「彼らはラマのナヨテにいます」。
7727 09 19 23 そこでサウルはそこからラマのナヨテに行ったが、神の霊はまた彼にも臨んで、彼はラマのナヨテに着くまで歩きながら預言した。
7728 09 19 24 そして彼もまた着物を脱いで、同じようにサムエルの前で預言し、一日一夜、裸で倒れ伏していた。人々が「サウルもまた預言者たちのうちにいるのか」というのはこのためである。
7729 09 20 1 ダビデはラマのナヨテから逃げてきて、ヨナタンに言った、「わたしが何をし、どのような悪いことがあり、あなたの父の前にどんな罪を犯したので、わたしを殺そうとされるのでしょうか」。
7730 09 20 2 ヨナタンは彼に言った、「決して殺されることはありません。父は事の大小を問わず、わたしに告げないですることはありません。どうして父がわたしにその事を隠しましょう。そのようなことはありません」。
7731 09 20 3 しかしダビデは答えた、「あなたの父は、わたしがあなたの好意をえていることをよく知っておられます。それで『ヨナタンが悲しむことのないように、これを知らせないでおこう』と思っておられるのです。しかし、主は生きておられ、あなたの魂は生きています。わたしと死との間は、ただ一歩です」。
7732 09 20 4 ヨナタンはダビデに言った、「あなたが言われることはなんでもします」。
7733 09 20 5 ダビデはヨナタンに言った、「あすは、ついたちですから、わたしは王と一緒に食事をしなければなりません。しかしわたしを行かせて三日目の夕方まで、野原に隠れることを許してください。
7734 09 20 6 もしあなたの父がわたしのことを尋ねられるならば、その時、言ってください、『ダビデはふるさとの町ベツレヘムへ急いで行くことを許してくださいと、しきりにわたしに求めました。そこで全家の年祭があるからです』。
7735 09 20 7 もし彼が「良し」と言われるなら、しもべは安全ですが、怒られるなら、わたしに害を加える決心でおられるのを知ってください。
7736 09 20 8 あなたは、主の前で、しもべと契約を結んでくださいました。それでどうぞしもべにいつくしみを施してください。しかし、もしわたしに悪いことがあるならば、あなた自らわたしを殺してください。どうしてあなたの父のもとへわたしを引いていかなければならないでしょう」。
7737 09 20 9 ヨナタンは言った、「そのようなことは決してありません。父があなたに害を加える決心をしていることがわたしにわかっているならば、わたしはそれをあなたに告げないでおきましょうか」。
7738 09 20 10 ダビデはヨナタンに言った、「あなたの父が荒々しくあなたに答えられる時、だれがわたしに告げるでしょうか」。
7739 09 20 11 ヨナタンはダビデに言った、「さあ、野原へ出ていこう」。こうしてふたりは野原へ出て行った。
7740 09 20 12 そしてヨナタンはダビデに言った、「イスラエルの神、主が、証人です。明日か明後日の今ごろ、わたしが父の心を探って、父がダビデに対して良いのを見ながら、人をつかわしてあなたに知らせないようなことをするでしょうか。
7741 09 20 13 しかし、もし父があなたに害を加えようと思っているのに、それをあなたに知らせず、あなたを逃がして、安全に去らせないならば、主よ、どうぞ幾重にも、このヨナタンを罰してください。どうぞ主が父と共におられたように、あなたと共におられますように。
7742 09 20 14 もしわたしがなお生きながらえているならば、主のいつくしみをわたしに施し、死を免れさせてください。
7743 09 20 15 またわたしの家をも、長くあなたのいつくしみにあずからせてください。主がダビデの敵をことごとく地のおもてから断ち滅ぼされる時、
7744 09 20 16 ヨナタンの名をダビデの家から絶やさないでください。どうぞ主がダビデの敵に、あだを返されるように」。
7745 09 20 17 そしてヨナタンは重ねてダビデに誓わせた。彼を愛したからである。ヨナタンは自分の命のように彼を愛していた。
7746 09 20 18 ヨナタンはダビデに言った、「あすはついたちです。あなたの席があいているので、どうしたのかと尋ねられるでしょう。
7747 09 20 19 三日目には、きびしく尋ねられるでしょうから、先にあなたが隠れた場所へ行って、向こうの石塚のかたわらにいてください。
7748 09 20 20 わたしは的を射るようにして、矢を三本、そのそばに放ちます。
7749 09 20 21 そして、『行って矢を捜してきなさい』と言って子供をつかわしましょう。わたしが子供に、『矢は手前にある。それを取ってきなさい』と言うならば、その時あなたはきてください。主が生きておられるように、あなたは安全で、何も危険がないからです。
7750 09 20 22 しかしわたしがその子供に、『矢は向こうにある』と言うならば、その時、あなたは去って行きなさい。主があなたを去らせられるのです。
7751 09 20 23 あなたとわたしとで話しあった事については、主が常にあなたとわたしとの間におられます」。
7752 09 20 24 そこでダビデは野原に身を隠した。さて、ついたちになったので、王は食事をするため席に着いた。
7753 09 20 25 王はいつものように壁寄りに席に着き、ヨナタンはその向かい側の席に着き、アブネルはサウルの横の席に着いたが、ダビデの場所にはだれもいなかった。
7754 09 20 26 ところがその日サウルは何も言わなかった、「彼に何か起って汚れたのだろう。きっと汚れたのにちがいない」と思ったからである。
7755 09 20 27 しかし、ふつか目すなわち、ついたちの明くる日も、ダビデの場所はあいていたので、サウルは、その子ヨナタンに言った、「どうしてエッサイの子は、きのうもきょうも食事にこないのか」。
7756 09 20 28 ヨナタンはサウルに答えた、「ダビデは、ベツレヘムへ行くことを許してくださいと、しきりにわたしに求めました。
7757 09 20 29 彼は言いました、『わたしに行かせてください。われわれの一族が町で祭をするので、兄がわたしに来るようにと命じました。それでもし、あなたの前に恵みを得ますならば、どうぞ、わたしに行くことを許し、兄弟たちに会わせてください』。それで彼は王の食卓にこなかったのです」。
7758 09 20 30 その時サウルはヨナタンにむかって怒りを発し、彼に言った、「あなたは心の曲った、そむく女の産んだ子だ。あなたがエッサイの子を選んで、自分の身をはずかしめ、また母の身をはずかしめていることをわたしが知らないと思うのか。
7759 09 20 31 エッサイの子がこの世に生きながらえている間は、あなたも、あなたの王国も堅く立っていくことはできない。それゆえ今、人をつかわして、彼をわたしのもとに連れてこさせなさい。彼は必ず死ななければならない」。
7760 09 20 32 ヨナタンは父サウルに答えた、「どうして彼は殺されなければならないのですか。彼は何をしたのですか」。
7761 09 20 33 ところがサウルはヨナタンを撃とうとして、やりを彼に向かって振り上げたので、ヨナタンは父がダビデを殺そうと、心に決めているのを知った。
7762 09 20 34 ヨナタンは激しく怒って席を立ち、その月のふつかには食事をしなかった。父がダビデをはずかしめたので、ダビデのために憂えたからである。
7763 09 20 35 あくる朝、ヨナタンは、ひとりの小さい子供を連れて、ダビデと打ち合わせたように野原に出て行った。
7764 09 20 36 そしてその子供に言った、「走って行って、わたしの射る矢を捜しなさい」。子供が走って行く間に、ヨナタンは矢を彼の前の方に放った。
7765 09 20 37 そして子供が、ヨナタンの放った矢のところへ行った時、ヨナタンは子供のうしろから呼ばわって、「矢は向こうにあるではないか」と言った。
7766 09 20 38 ヨナタンはまた、その子供のうしろから呼ばわって言った、「早くせよ、急げ。とどまるな」。その子供は矢を拾い集めて主人ヨナタンのもとにきた。
7767 09 20 39 しかし子供は何も知らず、ヨナタンとダビデだけがそのことを知っていた。
7768 09 20 40 ヨナタンは自分の武器をその子供に渡して言った、「あなたはこれを町へ運んで行きなさい」。
7769 09 20 41 子供が行ってしまうとダビデは石塚のかたわらをはなれて立ちいで、地にひれ伏して三度敬礼した。そして、ふたりは互に口づけし、互に泣いた。やがてダビデは心が落ち着いた。
7770 09 20 42 その時ヨナタンはダビデに言った、「無事に行きなさい。われわれふたりは、『主が常にわたしとあなたの間におられ、また、わたしの子孫とあなたの子孫の間におられる』と言って、主の名をさして誓ったのです」。こうしてダビデは立ち去り、ヨナタンは町にはいった。
7771 09 21 1 ダビデはノブに行き、祭司アヒメレクのところへ行った。アヒメレクはおののきながらダビデを迎えて言った、「どうしてあなたはひとりですか。だれも供がいないのですか」。
7772 09 21 2 ダビデは祭司アヒメレクに言った、「王がわたしに一つの事を命じて、『わたしがおまえをつかわしてさせる事、またわたしが命じたことについては、何をも人に知らせてはならない』と言われました。そこでわたしは、ある場所に若者たちを待たせてあります。
7773 09 21 3 ところで今あなたの手もとにパン五個でもあれば、それをわたしにください。なければなんでも、あるものをください」。
7774 09 21 4 祭司はダビデに答えて言った、「常のパンはわたしの手もとにありません。ただその若者たちが女を慎んでさえいたのでしたら、聖別したパンがあります」。
7775 09 21 5 ダビデは祭司に答えた、「わたしが戦いに出るいつもの時のように、われわれはたしかに女たちを近づけていません。若者たちの器は、常の旅であったとしても、清いのです。まして、きょう、彼らの器は清くないでしょうか」。
7776 09 21 6 そこで祭司は彼に聖別したパンを与えた。その所に、供えのパンのほかにパンがなく、このパンは、これを取り下げる日に、あたたかいパンと置きかえるため、主の前から取り下さげたものである。
7777 09 21 7 その日、その所に、サウルのしもべのひとりが、主の前に留め置かれていた。その名はドエグといい、エドムびとであって、サウルの牧者の長であった。
7778 09 21 8 ダビデはまたアヒメレクに言った、「ここに、あなたの手もとに、やりかつるぎがありませんか。王の事が急を要したので、わたしはつるぎも武器も持ってこなかったのです」。
7779 09 21 9 祭司は言った、「あなたがエラの谷で殺したペリシテびとゴリアテのつるぎが、布に包んでエポデのうしろにあります。もしあなたがこれを取ろうとおもわれるなら、お取りください。ここにはそのほかにはありません」。ダビデは言った、「それにまさるものはありません。それをわたしにください」。
7780 09 21 10 ダビデはその日サウルを恐れて、立ってガテの王アキシのところへ逃げて行った。
7781 09 21 11 アキシの家来たちはアキシに言った、「これはあの国の王ダビデではありませんか。人々が踊りながら、互に歌いかわして、『サウルは千を撃ち殺し、ダビデは万を撃ち殺した』と言ったのは、この人のことではありませんか」。
7782 09 21 12 ダビデは、これらの言葉を心におき、ガテの王アキシを、ひじょうに恐れたので、
7783 09 21 13 人々の前で、わざと挙動を変え、捕えられて気違いのふりをし、門のとびらを打ちたたき、よだれを流して、ひげに伝わらせた。
7784 09 21 14 アキシは家来たちに言った、「あなたがたの見るように、この人は気違いだ。どうして彼をわたしの所へ連れてきたのか。
7785 09 21 15 わたしに気違いが必要なのか。この者を連れてきて、わたしの前で狂わせようというのか。この者をわたしの家へ入れようとするのか」。
7786 09 22 1 こうしてダビデはその所を去り、アドラムのほら穴へのがれた。彼の兄弟たちと父の家の者は皆、これを聞き、その所に下って彼のもとにきた。
7787 09 22 2 また、しえたげられている人々、負債のある人々、心に不満のある人々も皆、彼のもとに集まってきて、彼はその長となった。おおよそ四百人の人々が彼と共にあった。
7788 09 22 3 ダビデはそこからモアブのミヅパへ行き、モアブの王に言った、「神がわたしのためにどんなことをされるかわかるまで、どうぞわたしの父母をあなたの所におらせてください」。
7789 09 22 4 そして彼はモアブの王に彼らを託したので、彼らはダビデが要害におる間、王の所におった。
7790 09 22 5 さて、預言者ガドはダビデに言った、「要害にとどまっていないで、去ってユダの地へ行きなさい」。そこでダビデは去って、ハレテの森へ行った。
7791 09 22 6 サウルは、ダビデおよび彼と共にいる人々が見つかったということを聞いた。サウルはギベアで、やりを手にもって、丘のぎょりゅうの木の下にすわっており、家来たちはみなそのまわりに立っていた。
7792 09 22 7 サウルはまわりに立っている家来たちに言った、「あなたがたベニヤミンびとは聞きなさい。エッサイの子もまた、あなたがたおのおのに畑やぶどう畑を与え、おのおのを千人の長、百人の長にするであろうか。
7793 09 22 8 あなたがたは皆共にはかってわたしに敵した。わたしの子がエッサイの子と契約を結んでも、それをわたしに告げるものはなく、またあなたがたのうち、ひとりもわたしのために憂えず、きょうのように、わたしの子がわたしのしもべをそそのかしてわたしに逆らわせ、道で彼がわたしを待ち伏せするようになっても、わたしに告げる者はない」。
7794 09 22 9 その時エドムびとドエグは、サウルの家来たちのそばに立っていたが、答えて言った、「わたしはエッサイの子がノブにいるアヒトブの子アヒメレクの所にきたのを見ました。
7795 09 22 10 アヒメレクは彼のために主に問い、また彼に食物を与え、ペリシテびとゴリアテのつるぎを与えました」。
7796 09 22 11 そこで王は人をつかわして、アヒトブの子祭司アヒメレクとその父の家のすべての者、すなわちノブの祭司たちを召したので、みな王の所にきた。
7797 09 22 12 サウルは言った、「アヒトブの子よ、聞きなさい」。彼は答えた、「わが主よ、わたしはここにおります」。
7798 09 22 13 サウルは彼に言った、「どうしてあなたはエッサイの子と共にはかってわたしに敵し、彼にパンとつるぎを与え、彼のために神に問い、きょうのように彼をわたしに逆らって立たせ、道で待ち伏せさせるのか」。
7799 09 22 14 アヒメレクは王に答えて言った、「あなたの家来のうち、ダビデのように忠義な者がほかにありますか。彼は王の娘婿であり、近衛兵の長であって、あなたの家で尊ばれる人ではありませんか。
7800 09 22 15 彼のために神に問うたのは、きょう初めてでしょうか。いいえ、決してそうではありません。王よ、どうぞ、しもべと父の全家に罪を負わせないでください。しもべは、これについては、事の大小を問わず、何をも知らなかったのです」。
7801 09 22 16 王は言った、「アヒメレクよ、あなたは必ず殺されなければならない。あなたの父の全家も同じである」。
7802 09 22 17 そして王はまわりに立っている近衛の兵に言った、「身をひるがえして、主の祭司たちを殺しなさい。彼らもダビデと協力していて、ダビデの逃げたのを知りながら、それをわたしに告げなかったからです」。ところが王の家来たちは主の祭司たちを殺すために手を下そうとはしなかった。
7803 09 22 18 そこで王はドエグに言った、「あなたが身をひるがえして、祭司たちを殺しなさい」。エドムびとドエグは身をひるがえして祭司たちを撃ち、その日亜麻布のエポデを身につけている者八十五人を殺した。
7804 09 22 19 彼はまた、つるぎをもって祭司の町ノブを撃ち、つるぎをもって男、女、幼な子、乳飲み子、牛、ろば、羊を殺した。
7805 09 22 20 しかしアヒトブの子アヒメレクの子たちのひとりで、名をアビヤタルという人は、のがれてダビデの所に走った。
7806 09 22 21 そしてアビヤタルは、サウルが主の祭司たちを殺したことをダビデに告げたので、
7807 09 22 22 ダビデはアビヤタルに言った、「あの日、エドムびとドエグがあそこにいたので、わたしは彼がきっとサウルに告げるであろうと思った。わたしがあなたの父の家の人々の命を失わせるもととなったのです。
7808 09 22 23 あなたはわたしの所にとどまってください。恐れることはありません。あなたの命を求める者は、わたしの命をも求めているのです。わたしの所におられるならば、あなたは安全でしょう」。
7809 09 23 1 さて人々はダビデに告げて言った、「ペリシテびとがケイラを攻めて、打ち場の穀物をかすめています」。
7810 09 23 2 そこでダビデは主に問うて言った、「わたしが行って、このペリシテびとを撃ちましょうか」。主はダビデに言われた、「行ってペリシテびとを撃ち、ケイラを救いなさい」。
7811 09 23 3 しかしダビデの従者たちは彼に言った、「われわれは、ユダのここにおってさえ、恐れているのに、ましてケイラへ行って、ペリシテびとの軍に当ることができましょうか」。
7812 09 23 4 ダビデが重ねて主に問うたところ、主は彼に答えて言われた、「立って、ケイラへ下りなさい。わたしはペリシテびとをあなたの手に渡します」。
7813 09 23 5 ダビデとその従者たちはケイラへ行って、ペリシテびとと戦い、彼らの家畜を奪いとり、彼らを多く撃ち殺した。こうしてダビデはケイラの住民を救った。
7814 09 23 6 アヒメレクの子アビヤタルは、ケイラにいるダビデのもとにのがれてきた時、手にエポデをもって下ってきた。
7815 09 23 7 さてダビデのケイラにきたことがサウルに聞えたので、サウルは言った、「神はわたしの手に彼をわたされた。彼は門と貫の木のある町にはいって、自分で身を閉じこめたからである」。
7816 09 23 8 そこでサウルはすべての民を戦いに呼び集めて、ケイラに下り、ダビデとその従者を攻め囲もうとした。
7817 09 23 9 ダビデはサウルが自分に害を加えようとしているのを知って、祭司アビヤタルに言った、「エポデを持ってきてください」。
7818 09 23 10 そしてダビデは言った、「イスラエルの神、主よ、しもべはサウルがケイラにきて、わたしのために、この町を滅ぼそうとしていることを確かに聞きました。
7819 09 23 11 ケイラの人々はわたしを彼の手に渡すでしょうか。しもべの聞いたように、サウルは下ってくるでしょうか。イスラエルの神、主よ、どうぞ、しもべに告げてください」。主は言われた、「彼は下って来る」。
7820 09 23 12 ダビデは言った、「ケイラの人々はわたしと従者たちをサウルの手にわたすでしょうか」。主は言われた、「彼らはあなたがたを渡すであろう」。
7821 09 23 13 そこでダビデとその六百人ほどの従者たちは立って、ケイラを去り、いずこともなくさまよった。ダビデのケイラから逃げ去ったことがサウルに聞えたので、サウルは戦いに出ることをやめた。
7822 09 23 14 ダビデは荒野にある要害におり、またジフの荒野の山地におった。サウルは日々に彼を尋ね求めたが、神は彼をその手に渡されなかった。
7823 09 23 15 さてダビデはサウルが自分の命を求めて出てきたので恐れた。その時ダビデはジフの荒野のホレシにいたが、
7824 09 23 16 サウルの子ヨナタンは立って、ホレシにいるダビデのもとに行き、神によって彼を力づけた。
7825 09 23 17 そしてヨナタンは彼に言った、「恐れるにはおよびません。父サウルの手はあなたに届かないでしょう。あなたはイスラエルの王となり、わたしはあなたの次となるでしょう。このことは父サウルも知っています」。
7826 09 23 18 こうして彼らふたりは主の前で契約を結び、ダビデはホレシにとどまり、ヨナタンは家に帰った。
7827 09 23 19 その時ジフびとはギベアにいるサウルのもとに上って行き、そして言った、「ダビデは、荒野の南にあるハキラの丘の上のホレシの要害に隠れて、われわれと共にいるではありませんか。
7828 09 23 20 それゆえ王よ、あなたが下って行こうという望みのとおり、いま下ってきてください。われわれは彼を王の手に渡します」。
7829 09 23 21 サウルは言った、「あなたがたはわたしに同情を寄せてくれたのです。どうぞ主があなたがたを祝福されるように。
7830 09 23 22 あなたがたは行って、なお確かめてください。彼のよく行く所とだれがそこで彼を見たかを見きわめてください。人の語るところによると、彼はひじょうに悪賢いそうだ。
7831 09 23 23 それで、あなたがたは彼が隠れる隠れ場所をみな見きわめ、確かな知らせをもってわたしの所に帰ってきなさい。その時わたしはあなたがたと共に行きます。もし彼がこの地にいるならば、わたしはユダの氏族をあまねく尋ねて彼を捜しだします」。
7832 09 23 24 彼らは立って、サウルに先立ってジフへ行った。
7833 09 23 25 そしてサウルとその従者たちはきて彼を捜した。人々がこれをダビデに告げたので、ダビデはマオンの荒野にある岩の所へ下って行った。サウルはこれを聞いて、マオンの荒野にきてダビデを追った。
7834 09 23 26 サウルは山のこちら側を行き、ダビデとその従者たちとは山のむこう側を行った。そしてダビデは急いでサウルからのがれようとした。サウルとその従者たちが、ダビデとその従者たちを囲んで捕えようとしたからである。
7835 09 23 27 その時、サウルの所に、ひとりの使者がきて言った、「ペリシテびとが国を侵しています。急いできてください」。
7836 09 23 28 そこでサウルはダビデを追うことをやめて帰り、行ってペリシテびとに当った。それで人々は、その所を「のがれの岩」と名づけた。
7837 09 23 29 ダビデはそこから上ってエンゲデの要害にいた。
7838 09 24 1 サウルがペリシテびとを追うことをやめて帰ってきたとき、人々は彼に告げて言った、「ダビデはエンゲデの野にいます」。
7839 09 24 2 そこでサウルは、全イスラエルから選んだ三千の人を率い、ダビデとその従者たちとを捜すため、「やぎの岩」の前へ出かけた。
7840 09 24 3 途中、羊のおりの所にきたが、そこに、ほら穴があり、サウルは足をおおうために、その中にはいった。その時、ダビデとその従者たちは、ほら穴の奥にいた。
7841 09 24 4 ダビデの従者たちは彼に言った、「主があなたに告げて、『わたしはあなたの敵をあなたの手に渡す。あなたは自分の良いと思うことを彼にすることができる』と言われた日がきたのです」。そこでダビデは立って、ひそかに、サウルの上着のすそを切った。
7842 09 24 5 しかし後になって、ダビデはサウルの上着のすそを切ったことに、心の責めを感じた。
7843 09 24 6 ダビデは従者たちに言った、「主が油を注がれたわが君に、わたしがこの事をするのを主は禁じられる。彼は主が油を注がれた者であるから、彼に敵して、わたしの手をのべるのは良くない」。
7844 09 24 7 ダビデはこれらの言葉をもって従者たちを差し止め、サウルを撃つことを許さなかった。サウルは立って、ほら穴を去り、道を進んだ。
7845 09 24 8 ダビデもまた、そのあとから立ち、ほら穴を出て、サウルのうしろから呼ばわって、「わが君、王よ」と言った。サウルがうしろをふり向いた時、ダビデは地にひれ伏して拝した。
7846 09 24 9 そしてダビデはサウルに言った、「どうして、あなたは『ダビデがあなたを害しようとしている』という人々の言葉を聞かれるのですか。
7847 09 24 10 あなたは、この日、自分の目で、主があなたをきょう、ほら穴の中でわたしの手に渡されたのをごらんになりました。人々はわたしにあなたを殺すことを勧めたのですが、わたしは殺しませんでした。『わが君は主が油を注がれた方であるから、これに敵して手をのべることはしない』とわたしは言いました。
7848 09 24 11 わが父よ、ごらんなさい。あなたの上着のすそは、わたしの手にあります。わたしがあなたの上着のすそを切り、しかも、あなたを殺さなかったことによって、あなたは、わたしの手に悪も、とがもないことを見て知られるでしょう。あなたはわたしの命を取ろうと、ねらっておられますが、わたしはあなたに対して罪をおかしたことはないのです。
7849 09 24 12 どうぞ主がわたしとあなたの間をさばかれますように。また主がわたしのために、あなたに報いられますように。しかし、わたしはあなたに手をくだすことをしないでしょう。
7850 09 24 13 昔から、ことわざに言っているように、『悪は悪人から出る』。しかし、わたしはあなたに手をくだすことをしないでしょう。
7851 09 24 14 イスラエルの王は、だれを追って出てこられたのですか。あなたは、だれを追っておられるのですか。死んだ犬を追っておられるのです。一匹の蚤を追っておられるのです。
7852 09 24 15 どうぞ主がさばきびととなって、わたしとあなたの間をさばき、かつ見て、わたしの訴えを聞き、わたしをあなたの手から救い出してくださるように」。
7853 09 24 16 ダビデがこれらの言葉をサウルに語り終ったとき、サウルは言った、「わが子ダビデよ、これは、あなたの声であるか」。そしてサウルは声をあげて泣いた。
7854 09 24 17 サウルはまたダビデに言った、「あなたはわたしよりも正しい。わたしがあなたに悪を報いたのに、あなたはわたしに善を報いる。
7855 09 24 18 きょう、あなたはいかに良くわたしをあつかったかを明らかにしました。すなわち主がわたしをあなたの手にわたされたのに、あなたはわたしを殺さなかったのです。
7856 09 24 19 人は敵に会ったとき、敵を無事に去らせるでしょうか。あなたが、きょう、わたしにした事のゆえに、どうぞ主があなたに良い報いを与えられるように。
7857 09 24 20 今わたしは、あなたがかならず王となることを知りました。またイスラエルの王国が、あなたの手によって堅く立つことを知りました。
7858 09 24 21 それゆえ、あなたはわたしのあとに、わたしの子孫を断たず、またわたしの父の家から、わたしの名を滅ぼし去らないと、いま主をさして、わたしに誓ってください」。
7859 09 24 22 そこでダビデはサウルに、そのように誓った。そしてサウルは家に帰り、ダビデとその従者たちは要害にのぼって行った。
7860 09 25 1 さてサムエルが死んだので、イスラエルの人々はみな集まって、彼のためにひじょうに悲しみ、ラマにあるその家に彼を葬った。
7861 09 25 2 マオンに、ひとりの人があって、カルメルにその所有があり、ひじょうに裕福で、羊三千頭、やぎ一千頭を持っていた。彼はカルメルで羊の毛を切っていた。
7862 09 25 3 その人の名はナバルといい、妻の名はアビガイルといった。アビガイルは賢くて美しかったが、その夫は剛情で、粗暴であった。彼はカレブびとであった。
7863 09 25 4 ダビデは荒野にいて、ナバルがその羊の毛を切っていることを聞いたので、
7864 09 25 5 十人の若者をつかわし、その若者たちに言った、「カルメルに上って行ってナバルの所へ行き、わたしの名をもって彼にあいさつし、
7865 09 25 6 彼にこう言いなさい、『どうぞあなたに平安があるように。あなたの家に平安があるように。またあなたのすべての持ち物に平安があるように。
7866 09 25 7 わたしはあなたが羊の毛を切っておられることを聞きました。あなたの羊飼たちはわれわれと一緒にいたのですが、われわれは彼らを少しも害しませんでした。また彼らはカルメルにいる間に、何ひとつ失ったことはありません。
7867 09 25 8 あなたの若者たちに聞いてみられるならば、わかります。それゆえ、わたしの若者たちに、あなたの好意を示してください。われわれは祝の日にきたのです。どうぞ、あなたの手もとにあるものを、贈り物として、しもべどもとあなたの子ダビデにください』」。
7868 09 25 9 ダビデの若者たちは行って、ダビデの名をもって、これらの言葉をナバルに語り、そして待っていた。
7869 09 25 10 ナバルはダビデの若者たちに答えて言った、「ダビデとはだれか。エッサイの子とはだれか。このごろは、主人を捨てて逃げるしもべが多い。
7870 09 25 11 どうしてわたしのパンと水、またわたしの羊の毛を切る人々のためにほふった肉をとって、どこからきたのかわからない人々に与えることができようか」。
7871 09 25 12 ダビデの若者たちは、そこを去り、帰ってきて、彼にこのすべての事を告げた。
7872 09 25 13 そこでダビデは従者たちに言った、「おのおの、つるぎを帯びなさい」。彼らはおのおのつるぎを帯び、ダビデもまたつるぎを帯びた。そしておおよそ四百人がダビデに従って上っていき、二百人は荷物のところにとどまった。
7873 09 25 14 ところで、ひとりの若者がナバルの妻アビガイルに言った、「ダビデが荒野から使者をつかわして、主人にあいさつをしたのに、主人はその使者たちをののしられました。
7874 09 25 15 しかし、あの人々はわれわれに大へんよくしてくれて、われわれは少しも害を受けず、またわれわれが野にいた時、彼らと共にいた間は、何ひとつ失ったことはありませんでした。
7875 09 25 16 われわれが羊を飼って彼らと共にいる間、彼らは夜も昼もわれわれのかきとなってくれました。
7876 09 25 17 それで、あなたは今それを知って、自分のすることを考えてください。主人とその一家に災が起きるからです。しかも主人はよこしまな人で、話しかけることもできません」。
7877 09 25 18 その時、アビガイルは急いでパン二百、ぶどう酒の皮袋二つ、調理した羊五頭、いり麦五セア、ほしぶどう百ふさ、ほしいちじくのかたまり二百を取って、ろばにのせ、
7878 09 25 19 若者たちに言った、「わたしのさきに進みなさい。わたしはあなたがたのうしろに、ついて行きます」。しかし彼女は夫ナバルには告げなかった。
7879 09 25 20 アビガイルが、ろばに乗って山陰を下ってきた時、ダビデと従者たちは彼女の方に向かって降りてきたので、彼女はその人々に出会った。
7880 09 25 21 さて、ダビデはさきにこう言った、「わたしはこの人が荒野で持っている物をみな守って、その人に属する物を何ひとつなくならないようにしたが、それは全くむだであった。彼はわたしのした親切に悪をもって報いた。
7881 09 25 22 もしわたしがあすの朝まで、ナバルに属するすべての者のうち、ひとりの男でも残しておくならば、神が幾重にもダビデを罰してくださるように」。
7882 09 25 23 アビガイルはダビデを見て、急いで、ろばを降り、ダビデの前で地にひれ伏し、
7883 09 25 24 その足もとに伏して言った、「わが君よ、このとがをわたしだけに負わせてください。しかしどうぞ、はしために、あなたの耳に語ることを許し、はしための言葉をお聞きください。
7884 09 25 25 わが君よ、どうぞ、このよこしまな人ナバルのことを気にかけないでください。あの人はその名のとおりです。名はナバルで、愚かな者です。あなたのはしためであるわたしは、わが君なるあなたがつかわされた若者たちを見なかったのです。
7885 09 25 26 それゆえ今、わが君よ、主は生きておられます。またあなたは生きておられます。主は、あなたがきて血を流し、また手ずから、あだを報いるのをとどめられました。どうぞ今、あなたの敵、およびわが君に害を加えようとする者は、ナバルのごとくになりますように。
7886 09 25 27 今、あなたのつかえめが、わが君に携えてきた贈り物を、わが君に従う若者たちに与えてください。
7887 09 25 28 どうぞ、はしためのとがを許してください。主は必ずわが君のために確かな家を造られるでしょう。わが君が主のいくさを戦い、またこの世に生きながらえられる間、あなたのうちに悪いことが見いだされないからです。
7888 09 25 29 たとい人が立ってあなたを追い、あなたの命を求めても、わが君の命は、生きている者の束にたばねられて、あなたの神、主のもとに守られるでしょう。しかし主はあなたの敵の命を、石投げの中から投げるように、投げ捨てられるでしょう。
7889 09 25 30 そして主があなたについて語られたすべての良いことをわが君に行い、あなたをイスラエルのつかさに任じられる時、
7890 09 25 31 あなたが、ゆえなく血を流し、またわが君がみずからあだを報いたと言うことで、それがあなたのつまずきとなり、またわが君の心の責めとなることのないようにしてください。主がわが君を良くせられる時、このはしためを思いだしてください」。
7891 09 25 32 ダビデはアビガイルに言った、「きょう、あなたをつかわして、わたしを迎えさせられたイスラエルの神、主はほむべきかな。
7892 09 25 33 あなたの知恵はほむべきかな。またあなたはほむべきかな。あなたは、きょう、わたしがきて血を流し、手ずからあだを報いることをとどめられたのです。
7893 09 25 34 わたしがあなたを害することをとどめられたイスラエルの神、主はまことに生きておられる。もしあなたが急いでわたしに会いにこなかったならば、あすの朝までには、ナバルのところに、ひとりの男も残らなかったでしょう」。
7894 09 25 35 ダビデはアビガイルが携えてきた物をその手から受けて、彼女に言った、「あなたは無事にのぼって、家に帰りなさい。わたしはあなたの声を聞きいれ、あなたの願いを許します」。
7895 09 25 36 こうしてアビガイルはナバルのもとにきたが、見よ、彼はその家で、王の酒宴のような酒宴を開いていた。ナバルは心に楽しみ、ひじょうに酔っていたので、アビガイルは明くる朝まで事の大小を問わず何をも彼に告げなかった。
7896 09 25 37 朝になってナバルの酔いがさめたとき、その妻が彼にこれらの事を告げると、彼の心はそのうちに死んで、彼は石のようになった。
7897 09 25 38 十日ばかりして主がナバルを撃たれたので彼は死んだ。
7898 09 25 39 ダビデはナバルが死んだと聞いて言った、「主はほむべきかな。主はわたしがナバルの手から受けた侮辱に報いて、しもべが悪をおこなわないようにされた。主はナバルの悪行をそのこうべに報いられたのだ」。ダビデはアビガイルを妻にめとろうと、人をつかわして彼女に申し込んだ。
7899 09 25 40 ダビデのしもべたちはカルメルにいるアビガイルの所にきて、彼女に言った、「ダビデはあなたを妻にめとろうと、われわれをあなたの所へつかわしたのです」。
7900 09 25 41 アビガイルは立ち、地にひれ伏し拝して言った、「はしためは、わが君のしもべたちの足を洗うつかえめです」。
7901 09 25 42 アビガイルは急いで立ち、ろばに乗って、五人の侍女たちを連れ、ダビデの使者たちに従って行き、ダビデの妻となった。
7902 09 25 43 ダビデはまたエズレルのアヒノアムをめとった。彼女たちはふたりともダビデの妻となった。
7903 09 25 44 ところでサウルはその娘、ダビデの妻ミカルを、ガリムの人であるライシの子パルテに与えた。
7904 09 26 1 そのころジフびとがギベアにおるサウルのもとにきて言った、「ダビデは荒野の前にあるハキラの山に隠れているではありませんか」。
7905 09 26 2 サウルは立って、ジフの荒野でダビデを捜すために、イスラエルのうちから選んだ三千人をひき連れて、ジフの荒野に下った。
7906 09 26 3 サウルは荒野の前の道のかたわらにあるハキラの山に陣を取った。ダビデは荒野にとどまっていたが、サウルが自分のあとを追って荒野にきたのを見て、
7907 09 26 4 斥候を出し、サウルが確かにきたのを知った。
7908 09 26 5 そしてダビデは立って、サウルが陣を取っている所へ行って、サウルとその軍の長、ネルの子アブネルの寝ている場所を見た。サウルは陣所のうちに寝ていて、民はその周囲に宿営していた。
7909 09 26 6 ダビデは、ヘテびとアヒメレク、およびゼルヤの子で、ヨアブの兄弟であるアビシャイに言った、「だれがわたしと共にサウルの陣に下って行くか」。アビシャイは言った、「わたしが一緒に下って行きます」。
7910 09 26 7 こうしてダビデとアビシャイとが夜、民のところへ行ってみると、サウルは陣所のうちに身を横たえて寝ており、そのやりは枕もとに地に突きさしてあった。そしてアブネルと民らとはその周囲に寝ていた。
7911 09 26 8 アビシャイはダビデに言った、「神はきょう敵をあなたの手に渡されました。どうぞわたしに、彼のやりをもってひと突きで彼を地に刺しとおさせてください。ふたたび突くには及びません」。
7912 09 26 9 しかしダビデはアビシャイに言った、「彼を殺してはならない。主が油を注がれた者に向かって、手をのべ、罪を得ない者があろうか」。
7913 09 26 10 ダビデはまた言った、「主は生きておられる。主が彼を撃たれるであろう。あるいは彼の死ぬ日が来るであろう。あるいは戦いに下って行って滅びるであろう。
7914 09 26 11 主が油を注がれた者に向かって、わたしが手をのべることを主は禁じられる。しかし今、そのまくらもとにあるやりと水のびんを取りなさい。そしてわれわれは去ろう」。
7915 09 26 12 こうしてダビデはサウルの枕もとから、やりと水のびんを取って彼らは去ったが、だれもそれを見ず、だれも知らず、また、だれも目をさまさず、みな眠っていた。主が彼らを深く眠らされたからである。
7916 09 26 13 ダビデは向こう側に渡って行って、遠く離れて山の頂に立った。彼らの間の隔たりは大きかった。
7917 09 26 14 ダビデは民とネルの子アブネルに呼ばわって言った、「アブネルよ、あなたは答えないのか」。アブネルは答えて言った、「王を呼んでいるあなたはだれか」。
7918 09 26 15 ダビデはアブネルに言った、「あなたは男ではないか。イスラエルのうちに、あなたに及ぶ人があろうか。それであるのに、どうしてあなたは主君である王を守らなかったのか。民のひとりが、あなたの主君である王を殺そうとして、はいりこんだではないか。
7919 09 26 16 あなたがしたこの事は良くない。主は生きておられる。あなたがたは、まさに死に値する。主が油をそそがれた、あなたの主君を守らなかったからだ。いま王のやりがどこにあるか。その枕もとにあった水のびんがどこにあるかを見なさい」。
7920 09 26 17 サウルはダビデの声を聞きわけて言った、「わが子ダビデよ、これはあなたの声か」。ダビデは言った、「王、わが君よ、わたしの声です」。
7921 09 26 18 ダビデはまた言った、「わが君はどうしてしもべのあとを追われるのですか。わたしが何をしたのですか。わたしの手になんのわるいことがあるのですか。
7922 09 26 19 王、わが君よ、どうぞ、今しもべの言葉を聞いてください。もし主があなたを動かして、わたしの敵とされたのであれば、どうぞ主が供え物を受けて和らいでくださるように。もし、それが人であるならば、どうぞその人々が主の前にのろいを受けるように。彼らが『おまえは行って他の神々に仕えなさい』と言って、きょう、わたしを追い出し、主の嗣業にあずかることができないようにしたからです。
7923 09 26 20 それゆえ今、主の前を離れて、わたしの血が地に落ちることのないようにしてください。イスラエルの王は、人が山で、しゃこを追うように、わたしの命を取ろうとして出てこられたのです」。
7924 09 26 21 その時、サウルは言った、「わたしは罪を犯した。わが子ダビデよ、帰ってきてください。きょう、わたしの命があなたの目に尊く見られたゆえ、わたしは、もはやあなたに害を加えないであろう。わたしは愚かなことをして、非常なまちがいをした」。
7925 09 26 22 ダビデは答えた、「王のやりは、ここにあります。ひとりの若者に渡ってこさせ、これを持ちかえらせてください。
7926 09 26 23 主は人おのおのにその義と真実とに従って報いられます。主がきょう、あなたをわたしの手に渡されたのに、わたしは主が油を注がれた者に向かって、手をのべることをしなかったのです。
7927 09 26 24 きょう、わたしがあなたの命を重んじたように、どうぞ主がわたしの命を重んじて、もろもろの苦難から救い出してくださるように」。
7928 09 26 25 サウルはダビデに言った、「わが子ダビデよ、あなたはほむべきかな。あなたは多くの事をおこなって、それをなし遂げるであろう」。こうしてダビデはその道を行き、サウルは自分の所へ帰った。
7929 09 27 1 ダビデは心のうちに言った、「わたしは、いつかはサウルの手にかかって滅ぼされるであろう。早くペリシテびとの地へのがれるほかはない。そうすればサウルはこの上イスラエルの地にわたしをくまなく捜すことはやめ、わたしは彼の手からのがれることができるであろう」。
7930 09 27 2 こうしてダビデは、共にいた六百人と一緒に、立ってガテの王マオクの子アキシの所へ行った。
7931 09 27 3 ダビデと従者たちは、おのおのその家族とともに、ガテでアキシと共に住んだ。ダビデはそのふたりの妻、すなわちエズレルの女アヒノアムと、カルメルの女でナバルの妻であったアビガイルと共におった。
7932 09 27 4 ダビデがガテにのがれたことがサウルに聞えたので、サウルはもはや彼を捜さなかった。
7933 09 27 5 さてダビデはアキシに言った、「もしわたしがあなたの前に恵みを得るならば、どうぞ、いなかにある町のうちで一つの場所をわたしに与えてそこに住まわせてください。どうしてしもべがあなたと共に王の町に住むことができましょうか」。
7934 09 27 6 アキシはその日チクラグを彼に与えた。こうしてチクラグは今日にいたるまでユダの王に属している。
7935 09 27 7 ダビデがペリシテびとの国に住んだ日の数は一年と四か月であった。
7936 09 27 8 さてダビデは従者と共にのぼって、ゲシュルびと、ゲゼルびとおよびアマレクびとを襲った。これらは昔からシュルに至るまでの地の住民であって、エジプトに至るまでの地に住んでいた。
7937 09 27 9 ダビデはその地を撃って、男も女も生かしおかず、羊と牛とろばとらくだと衣服とを取って、アキシのもとに帰ってきた。
7938 09 27 10 アキシが「あなたはきょうどこを襲いましたか」と尋ねると、ダビデは、その時々、「ユダのネゲブです」、「エラメルびとのネゲブです」「ケニびとのネゲブです」と言った。
7939 09 27 11 ダビデは男も女も生かしおかず、ひとりをもガテに引いて行かなかった。それはダビデが、「恐らくは、彼らが、『ダビデはこうした』と言って、われわれのことを告げるであろう」と思ったからである。ダビデはペリシテびとのいなかに住んでいる間はこうするのが常であった。
7940 09 27 12 アキシはダビデを信じて言った、「彼は自分を全くその民イスラエルに憎まれるようにした。それゆえ彼は永久にわたしのしもべとなるであろう」。
7941 09 28 1 そのころ、ペリシテびとがイスラエルと戦おうとして、いくさのために軍勢を集めたので、アキシはダビデに言った、「あなたは、しかと承知してください。あなたとあなたの従者たちとは、わたしと共に出て、軍勢に加わらなければなりません」。
7942 09 28 2 ダビデはアキシに言った、「よろしい、あなたはしもべが何をするかを知られるでしょう」。アキシはダビデに言った、「よろしい、あなたを終身わたしの護衛の長としよう」。
7943 09 28 3 さてサムエルはすでに死んで、イスラエルのすべての人は彼のために悲しみ、その町ラマに葬った。また先にサウルは口寄せや占い師をその地から追放した。
7944 09 28 4 ペリシテびとが集まってきてシュネムに陣を取ったので、サウルはイスラエルのすべての人を集めて、ギルボアに陣を取った。
7945 09 28 5 サウルはペリシテびとの軍勢を見て恐れ、その心はいたくおののいた。
7946 09 28 6 そこでサウルは主に伺いをたてたが、主は夢によっても、ウリムによっても、預言者によっても彼に答えられなかった。
7947 09 28 7 サウルはしもべたちに言った、「わたしのために、口寄せの女を捜し出しなさい。わたしは行ってその女に尋ねよう」。しもべたちは彼に言った、「見よ、エンドルにひとりの口寄せがいます」。
7948 09 28 8 サウルは姿を変えてほかの着物をまとい、ふたりの従者を伴って行き、夜の間に、その女の所にきた。そしてサウルは言った、「わたしのために口寄せの術を行って、わたしがあなたに告げる人を呼び起してください」。
7949 09 28 9 女は彼に言った、「あなたはサウルがしたことをごぞんじでしょう。彼は口寄せや占い師をその国から断ち滅ぼしました。どうしてあなたは、わたしの命にわなをかけて、わたしを死なせようとするのですか」。
7950 09 28 10 サウルは主をさして彼女に誓って言った、「主は生きておられる。この事のためにあなたが罰を受けることはないでしょう」。
7951 09 28 11 女は言った、「あなたのためにだれを呼び起しましょうか」。サウルは言った、「サムエルを呼び起してください」。
7952 09 28 12 女はサムエルを見た時、大声で叫んだ。そしてその女はサウルに言った、「どうしてあなたはわたしを欺かれたのですか。あなたはサウルです」。
7953 09 28 13 王は彼女に言った、「恐れることはない。あなたには何が見えるのですか」。女はサウルに言った、「神のようなかたが地からのぼられるのが見えます」。
7954 09 28 14 サウルは彼女に言った、「その人はどんな様子をしていますか」。彼女は言った、「ひとりの老人がのぼってこられます。その人は上着をまとっておられます」。サウルはその人がサムエルであるのを知り、地にひれ伏して拝した。
7955 09 28 15 サムエルはサウルに言った、「なぜ、わたしを呼び起して、わたしを煩わすのか」。サウルは言った、「わたしは、ひじょうに悩んでいます。ペリシテびとがわたしに向かっていくさを起し、神はわたしを離れて、預言者によっても、夢によっても、もはやわたしに答えられないのです。それで、わたしのすべきことを知るために、あなたを呼びました」。
7956 09 28 16 サムエルは言った、「主があなたを離れて、あなたの敵となられたのに、どうしてあなたはわたしに問うのですか。
7957 09 28 17 主は、わたしによって語られたとおりにあなたに行われた。主は王国を、あなたの手から裂きはなして、あなたの隣人であるダビデに与えられた。
7958 09 28 18 あなたは主の声に聞き従わず、主の激しい怒りに従って、アマレクびとを撃ち滅ぼさなかったゆえに、主はこの事を、この日、あなたに行われたのである。
7959 09 28 19 主はまたイスラエルをも、あなたと共に、ペリシテびとの手に渡されるであろう。あすは、あなたもあなたの子らもわたしと一緒になるであろう。また主はイスラエルの軍勢をもペリシテびとの手に渡される」。
7960 09 28 20 そのときサウルは、ただちに、地に伸び、倒れ、サムエルの言葉のために、ひじょうに恐れ、またその力はうせてしまった。その一日一夜、食物をとっていなかったからである。
7961 09 28 21 女はサウルのもとにきて、彼のおののいているのを見て言った、「あなたのつかえめは、あなたの声に聞き従い、わたしの命をかけて、あなたの言われた言葉に従いました。
7962 09 28 22 それゆえ今あなたも、つかえめの声に聞き従い、一口のパンをあなたの前にそなえさせてください。あなたはそれをめしあがって力をつけ、道を行ってください」。
7963 09 28 23 ところがサウルは断って言った、「わたしは食べません」。しかし彼のしもべたちも、その女もしいてすすめたので、サウルはその言葉を聞きいれ、地から起きあがり、床の上にすわった。
7964 09 28 24 その女は家に肥えた子牛があったので、急いでそれをほふり、また麦粉をとり、こねて、種入れぬパンを焼き、
7965 09 28 25 サウルとそのしもべたちの前に持ってきたので、彼らは食べた。そして彼らは立ち上がって、その夜のうちに去った。
7966 09 29 1 さてペリシテびとは、その軍勢をことごとくアペクに集めた。イスラエルびとはエズレルにある泉のかたわらに陣を取った。
7967 09 29 2 ペリシテびとの君たちは、あるいは百人、あるいは千人を率いて進み、ダビデとその従者たちはアキシと共に、しんがりになって進んだ。
7968 09 29 3 その時、ペリシテびとの君たちは言った、「これらのヘブルびとはここで何をしているのか」。アキシはペリシテびとたちに言った、「これはイスラエルの王サウルのしもべダビデではないか。彼はこの日ごろ、この年ごろ、わたしと共にいたが、逃げ落ちてきた日からきょうまで、わたしは彼にあやまちがあったのを見たことがない」。
7969 09 29 4 しかしペリシテびとの君たちは彼に向かって怒った。そしてペリシテびとの君たちは彼に言った、「この人を帰らせて、あなたが彼を置いたもとの所へ行かせなさい。われわれと一緒に彼を戦いに下らせてはならない。戦いの時、彼がわれわれの敵となるかも知れないからである。この者は何をもってその主君とやわらぐことができようか。ここにいる人々の首をもってするほかはあるまい。
7970 09 29 5 これは、かつて人々が踊りのうちに歌いかわして、『サウルは千を撃ち殺し、ダビデは万を撃ち殺した』と言った、あのダビデではないか」。
7971 09 29 6 そこでアキシはダビデを呼んで言った、「主は生きておられる。あなたは正しい人である。あなたがわたしと一緒に戦いに出入りすることをわたしは良いと思っている。それはあなたがわたしの所にきた日からこの日まで、わたしは、あなたに悪い事があったのを見たことがないからである。しかしペリシテびとの君たちはあなたを良く言わない。
7972 09 29 7 それゆえ今安らかに帰って行きなさい。彼らが悪いと思うことはしないがよかろう」。
7973 09 29 8 ダビデはアキシに言った、「しかしわたしが何をしたというのですか。わたしがあなたに仕えはじめた日からこの日までに、あなたはしもべの身に何を見られたので、わたしは行って、わたしの主君である王の敵と戦うことができないのですか」。
7974 09 29 9 アキシはダビデに答えた、「わたしは見て、あなたが神の使のようにりっぱな人であることを知っている。しかし、ペリシテびとの君たちは、『われわれと一緒に彼を戦いに上らせてはならない』と言っている。
7975 09 29 10 それで、あなたは、一緒にきたあなたの主君のしもべたちと共に朝早く起きなさい。そして朝早く起き、夜が明けてから去りなさい」。
7976 09 29 11 こうしてダビデとその従者たちとは共にペリシテびとの地へ帰ろうと、朝早く起きて出立したが、ペリシテびとはエズレルへ上って行った。
7977 09 30 1 さてダビデとその従者たちが三日目にチクラグにきた時、アマレクびとはすでにネゲブとチクラグを襲っていた。彼らはチクラグを撃ち、火をはなってこれを焼き、
7978 09 30 2 その中にいた女たちおよびすべての者を捕虜にし、小さい者をも大きい者をも、ひとりも殺さずに、引いて、その道に行った。
7979 09 30 3 ダビデと従者たちはその町にきて、町が火で焼かれ、その妻とむすこ娘らは捕虜となったのを見た。
7980 09 30 4 ダビデおよび彼と共にいた民は声をあげて泣き、ついに泣く力もなくなった。
7981 09 30 5 ダビデのふたりの妻すなわちエズレルの女アヒノアムと、カルメルびとナバルの妻であったアビガイルも捕虜になった。
7982 09 30 6 その時、ダビデはひじょうに悩んだ。それは民がみなおのおのそのむすこ娘のために心を痛めたため、ダビデを石で撃とうと言ったからである。しかしダビデはその神、主によって自分を力づけた。
7983 09 30 7 ダビデはアヒメレクの子、祭司アビヤタルに、「エポデをわたしのところに持ってきなさい」と言ったので、アビヤタルは、エポデをダビデのところに持ってきた。
7984 09 30 8 ダビデは主に伺いをたてて言った、「わたしはこの軍隊のあとを追うべきですか。わたしはそれに追いつくことができましょうか」。主は彼に言われた、「追いなさい。あなたは必ず追いついて、確かに救い出すことができるであろう」。
7985 09 30 9 そこでダビデは、一緒にいた六百人の者と共に出立してベソル川へ行ったが、あとに残る者はそこにとどまった。
7986 09 30 10 すなわちダビデは四百人と共に追撃をつづけたが、疲れてベソル川を渡れない者二百人はとどまった。
7987 09 30 11 彼らは野で、ひとりのエジプトびとを見て、それをダビデのもとに引いてきて、パンを食べさせ、水を飲ませた。
7988 09 30 12 また彼らはほしいちじくのかたまり一つと、ほしぶどう二ふさを彼に与えた。彼は食べて元気を回復した。彼は三日三夜、パンを食べず、水を飲んでいなかったからである。
7989 09 30 13 ダビデは彼に言った、「あなたはだれのものか。どこからきたのか」。彼は言った、「わたしはエジプトの若者で、アマレクびとの奴隷です。三日前にわたしが病気になったので、主人はわたしを捨てて行きました。
7990 09 30 14 わたしどもは、ケレテびとのネゲブと、ユダに属する地と、カレブのネゲブを襲い、また火でチクラグを焼きはらいました」。
7991 09 30 15 ダビデは彼に言った、「あなたはその軍隊のところへわたしを導き下ってくれるか」。彼は言った、「あなたはわたしを殺さないこと、またわたしを主人の手に渡さないことを、神をさしてわたしに誓ってください。そうすればあなたをその軍隊のところへ導き下りましょう」。
7992 09 30 16 彼はダビデを導き下ったが、見よ、彼らはペリシテびとの地とユダの地から奪い取ったさまざまの多くのぶんどり物のゆえに、食い飲み、かつ踊りながら、地のおもてにあまねく散りひろがっていた。
7993 09 30 17 ダビデは夕ぐれから翌日の夕方まで、彼らを撃ったので、らくだに乗って逃げた四百人の若者たちのほかには、ひとりものがれた者はなかった。
7994 09 30 18 こうしてダビデはアマレクびとが奪い取ったものをみな取りもどした。またダビデはそのふたりの妻を救い出した。
7995 09 30 19 そして彼らに属するものは、小さいものも大きいものも、むすこも娘もぶんどり物も、アマレクびとが奪い去った物は何をも失わないで、ダビデがみな取りもどした。
7996 09 30 20 ダビデはまたすべての羊と牛を取った。人々はこれらの家畜を彼の前に追って行きながら、「これはダビデのぶんどり物だ」と言った。
7997 09 30 21 そしてダビデが、あの疲れてダビデについて行くことができずに、ベソル川のほとりにとどまっていた二百人の者のところへきた時、彼らは出てきてダビデを迎え、またダビデと共にいる民を迎えた。ダビデは民に近づいてその安否を問うた。
7998 09 30 22 そのときダビデと共に行った人々のうちで、悪く、かつよこしまな者どもはみな言った、「彼らはわれわれと共に行かなかったのだから、われわれはその人々にわれわれの取りもどしたぶんどり物を分け与えることはできない。ただおのおのにその妻子を与えて、連れて行かせましょう」。
7999 09 30 23 しかしダビデは言った、「兄弟たちよ、主はわれわれを守って、攻めてきた軍隊をわれわれの手に渡された。その主が賜わったものを、あなたがたはそのようにしてはならない。
8000 09 30 24 だれがこの事について、あなたがたに聞き従いますか。戦いに下って行った者の分け前と、荷物のかたわらにとどまっていた者の分け前を同様にしなければならない。彼らはひとしく分け前を受けるべきである」。
8001 09 30 25 この日以来、ダビデはこれをイスラエルの定めとし、おきてとして今日に及んでいる。
8002 09 30 26 ダビデはチクラグにきて、そのぶんどり物の一部をユダの長老である友人たちにおくって言った、「これは主の敵から取ったぶんどり物のうちからあなたがたにおくる贈り物である」。
8003 09 30 27 そのおくり先は、ベテルにいる人々、ネゲブのラモテにいる人々、ヤッテルにいる人々、
8004 09 30 28 アロエルにいる人々、シフモテにいる人々、エシテモアにいる人々、ラカルにいる人々、
8005 09 30 29 エラメルびとの町々にいる人々、ケニびとの町々にいる人々、
8006 09 30 30 ホルマにいる人々、ボラシャンにいる人々、アタクにいる人々、
8007 09 30 31 ヘブロンにいる人々、およびダビデとその従者たちが、さまよい歩いたすべての所にいる人々であった。
8008 09 31 1 さてペリシテびとはイスラエルと戦った。イスラエルの人々はペリシテびとの前から逃げ、多くの者は傷ついてギルボア山にたおれた。
8009 09 31 2 ペリシテびとはサウルとその子らに攻め寄り、そしてペリシテびとはサウルの子ヨナタン、アビナダブ、およびマルキシュアを殺した。
8010 09 31 3 戦いは激しくサウルに迫り、弓を射る者どもがサウルを見つけて、彼を射たので、サウルは射る者たちにひどい傷を負わされた。
8011 09 31 4 そこでサウルはその武器を執る者に言った、「つるぎを抜き、それをもってわたしを刺せ。さもないと、これらの無割礼の者どもがきて、わたしを刺し、わたしをなぶり殺しにするであろう」。しかしその武器を執る者は、ひじょうに恐れて、それに応じなかったので、サウルは、つるぎを執って、その上に伏した。
8012 09 31 5 武器を執る者はサウルが死んだのを見て、自分もまたつるぎの上に伏して、彼と共に死んだ。
8013 09 31 6 こうしてサウルとその三人の子たち、およびサウルの武器を執る者、ならびにその従者たちは皆、この日共に死んだ。
8014 09 31 7 イスラエルの人々で、谷の向こう側、およびヨルダンの向こう側にいる者が、イスラエルの人々の逃げるのを見、またサウルとその子たちの死んだのを見て町々を捨てて逃げたので、ペリシテびとはきてその中に住んだ。
8015 09 31 8 あくる日、ペリシテびとは殺された者から、はぎ取るためにきたが、サウルとその三人の子たちがギルボア山にたおれているのを見つけた。
8016 09 31 9 彼らはサウルの首を切り、そのよろいをはぎ取り、ペリシテびとの全地に人をつかわして、この良い知らせを、その偶像と民とに伝えさせた。
8017 09 31 10 また彼らは、そのよろいをアシタロテの神殿に置き、彼のからだをベテシャンの城壁にくぎづけにした。
8018 09 31 11 ヤベシ・ギレアデの住民たちは、ペリシテびとがサウルにした事を聞いて、
8019 09 31 12 勇士たちはみな立ち、夜もすがら行って、サウルのからだと、その子たちのからだをベテシャンの城壁から取りおろし、ヤベシにきて、これをそこで焼き、
8020 09 31 13 その骨を取って、ヤベシのぎょりゅうの木の下に葬り、七日の間、断食した。
8021 10 1 1 サウルが死んだ後、ダビデはアマレクびとを撃って帰り、ふつかの間チクラグにとどまっていたが、
8022 10 1 2 三日目となって、ひとりの人が、その着物を裂き、頭に土をかぶって、サウルの陣営からきた。そしてダビデのもとにきて、地に伏して拝した。
8023 10 1 3 ダビデは彼に言った、「あなたはどこからきたのか」。彼はダビデに言った、「わたしはイスラエルの陣営から、のがれてきたのです」。
8024 10 1 4 ダビデは彼に言った、「様子はどうであったか話しなさい」。彼は答えた、「民は戦いから逃げ、民の多くは倒れて死に、サウルとその子ヨナタンもまた死にました」。
8025 10 1 5 ダビデは自分と話している若者に言った、「あなたはサウルとその子ヨナタンが死んだのを、どうして知ったのか」。
8026 10 1 6 彼に話している若者は言った、「わたしは、はからずも、ギルボア山にいましたが、サウルはそのやりによりかかっており、戦車と騎兵とが彼に攻め寄ろうとしていました。
8027 10 1 7 その時、彼はうしろを振り向いてわたしを見、わたしを呼びましたので、『ここにいます』とわたしは答えました。
8028 10 1 8 彼は『おまえはだれか』と言いましたので、『アマレクびとです』と答えました。
8029 10 1 9 彼はまたわたしに言いました、『そばにきて殺してください。わたしは苦しみに耐えない。まだ命があるからです』。
8030 10 1 10 そこで、わたしはそのそばにいって彼を殺しました。彼がすでに倒れて、生きることのできないのを知ったからです。そしてわたしは彼の頭にあった冠と、腕につけていた腕輪とを取って、それをわが主のもとに携えてきたのです」。
8031 10 1 11 そのときダビデは自分の着物をつかんでそれを裂き、彼と共にいた人々も皆同じようにした。
8032 10 1 12 彼らはサウルのため、またその子ヨナタンのため、また主の民のため、またイスラエルの家のために悲しみ泣いて、夕暮まで食を断った。それは彼らがつるぎに倒れたからである。
8033 10 1 13 ダビデは自分と話していた若者に言った、「あなたはどこの人ですか」。彼は言った、「アマレクびとで、寄留の他国人の子です」。
8034 10 1 14 ダビデはまた彼に言った、「どうしてあなたは手を伸べて主の油を注がれた者を殺すことを恐れなかったのですか」。
8035 10 1 15 ダビデはひとりの若者を呼び、「近寄って彼を撃て」と言った。そこで彼を撃ったので死んだ。
8036 10 1 16 ダビデは彼に言った、「あなたの流した血の責めはあなたに帰する。あなたが自分の口から、『わたしは主の油を注がれた者を殺した』と言って、自身にむかって証拠を立てたからである」。
8037 10 1 17 ダビデはこの悲しみの歌をもって、サウルとその子ヨナタンのために哀悼した。――
8038 10 1 18 これは、ユダの人々に教えるための弓の歌で、ヤシャルの書にしるされている。――彼は言った、
8039 10 1 19 「イスラエルよ、あなたの栄光は、あなたの高き所で殺された。ああ、勇士たちは、ついに倒れた。
8040 10 1 20 ガテにこの事を告げてはいけない。アシケロンのちまたに伝えてはならない。おそらくはペリシテびとの娘たちが喜び、割礼なき者の娘たちが勝ちほこるであろう。
8041 10 1 21 ギルボアの山よ、露はおまえの上におりるな。死の野よ、雨もおまえの上に降るな。その所に勇士たちの盾は捨てられ、サウルの盾は油を塗らずに捨てられた。
8042 10 1 22 殺した者の血を飲まずには、ヨナタンの弓は退かず、勇士の脂肪を食べないでは、サウルのつるぎは、むなしくは帰らなかった。
8043 10 1 23 サウルとヨナタンとは、愛され、かつ喜ばれた。彼らは生きるにも、死ぬにも離れず、わしよりも早く、ししよりも強かった。
8044 10 1 24 イスラエルの娘たちよ、サウルのために泣け。彼は緋色の着物をもって、はなやかにあなたがたを装い、あなたがたの着物に金の飾りをつけた。
8045 10 1 25 ああ、勇士たちは戦いのさなかに倒れた。ヨナタンは、あなたの高き所で殺された。
8046 10 1 26 わが兄弟ヨナタンよ、あなたのためわたしは悲しむ。あなたはわたしにとって、いとも楽しい者であった。あなたがわたしを愛するのは世の常のようでなく、女の愛にもまさっていた。
8047 10 1 27 ああ、勇士たちは倒れた。戦いの器はうせた」。
8048 10 2 1 この後、ダビデは主に問うて言った、「わたしはユダの一つの町に上るべきでしょうか」。主は彼に言われた、「上りなさい」。ダビデは言った、「どこへ上るべきでしょうか」。主は言われた、「ヘブロンへ」。
8049 10 2 2 そこでダビデはその所へ上った。彼のふたりの妻、エズレルの女アヒノアムと、カルメルびとナバルの妻であったアビガイルも上った。
8050 10 2 3 ダビデはまた自分と共にいた人々を、皆その家族と共に連れて上った。そして彼らはヘブロンの町々に住んだ。
8051 10 2 4 時にユダの人々がきて、その所でダビデに油を注ぎ、ユダの家の王とした。
8052 10 2 5 ダビデは使者をヤベシ・ギレアデの人々につかわして彼らに言った、「あなたがたは、主君サウルにこの忠誠をあらわして彼を葬った。どうぞ主があなたがたを祝福されるように。
8053 10 2 6 どうぞ主がいまあなたがたに、いつくしみと真実を示されるように。あなたがたが、この事をしたので、わたしもまたあなたがたに好意を示すであろう。
8054 10 2 7 今あなたがたは手を強くし、雄々しくあれ。あなたがたの主君サウルは死に、ユダの家がわたしに油を注いで、彼らの王としたからである」。
8055 10 2 8 さてサウルの軍の長、ネルの子アブネルは、さきにサウルの子イシボセテを取り、マハナイムに連れて渡り、
8056 10 2 9 彼をギレアデ、アシュルびと、エズレル、エフライム、ベニヤミンおよび全イスラエルの王とした。
8057 10 2 10 サウルの子イシボセテはイスラエルの王となった時、四十歳であって、二年の間、世を治めたが、ユダの家はダビデに従った。
8058 10 2 11 ダビデがヘブロンにいてユダの家の王であった日数は七年と六か月であった。
8059 10 2 12 ネルの子アブネル、およびサウルの子イシボセテの家来たちはマハナイムを出てギベオンへ行った。
8060 10 2 13 ゼルヤの子ヨアブとダビデの家来たちも出ていって、ギベオンの池のそばで彼らと出会い、一方は池のこちら側に、一方は池のあちら側にすわった。
8061 10 2 14 アブネルはヨアブに言った、「さあ、若者たちを立たせて、われわれの前で勝負をさせよう」。ヨアブは言った、「彼らを立たせよう」。
8062 10 2 15 こうしてサウルの子イシボセテとベニヤミンびととのために十二人、およびダビデの家来たち十二人を数えて出した。彼らは立って進み、
8063 10 2 16 おのおの相手の頭を捕え、つるぎを相手のわき腹に刺し、こうして彼らは共に倒れた。それゆえ、その所はヘルカテ・ハヅリムと呼ばれた。それはギベオンにある。
8064 10 2 17 その日、戦いはひじょうに激しく、アブネルとイスラエルの人々はダビデの家来たちの前に敗れた。
8065 10 2 18 その所にゼルヤの三人の子、ヨアブ、アビシャイ、およびアサヘルがいたが、アサヘルは足の早いこと、野のかもしかのようであった。
8066 10 2 19 アサヘルはアブネルのあとを追っていったが、行くのに右にも左にも曲ることなく、アブネルのあとに走った。
8067 10 2 20 アブネルは後をふりむいて言った、「あなたはアサヘルであったか」。アサヘルは答えた、「わたしです」。
8068 10 2 21 アブネルは彼に言った、「右か左に曲って、若者のひとりを捕え、そのよろいを奪いなさい」。しかしアサヘルはアブネルを追うことをやめず、ほかに向かおうともしなかった。
8069 10 2 22 アブネルはふたたびアサヘルに言った、「わたしを追うことをやめて、ほかに向かいなさい。あなたを地に撃ち倒すことなど、どうしてわたしにできようか。それをすれば、わたしは、どうしてあなたの兄ヨアブに顔を合わせることができようか」。
8070 10 2 23 それでもなお彼は、ほかに向かうことを拒んだので、アブネルは、やりの石突きで彼の腹を突いたので、やりはその背中に出た。彼はそこに倒れて、その場で死んだ。そしてアサヘルが倒れて死んでいる場所に来る者は皆立ちとどまった。
8071 10 2 24 しかしヨアブとアビシャイとは、なおアブネルのあとを追ったが、彼らがギベオンの荒野の道のほとり、ギアの前にあるアンマの山にきた時、日は暮れた。
8072 10 2 25 ベニヤミンの人々はアブネルのあとについてきて、集まり、一隊となって、一つの山の頂に立った。
8073 10 2 26 その時アブネルはヨアブに呼ばわって言った、「いつまでもつるぎをもって滅ぼそうとするのか。あなたはその結果の悲惨なのを知らないのか。いつまで民にその兄弟を追うことをやめよと命じないのか」。
8074 10 2 27 ヨアブは言った、「神は生きておられる。もしあなたが言いださなかったならば、民はおのおのその兄弟を追わずに、朝のうちに去っていたであろう」。
8075 10 2 28 こうしてヨアブは角笛を吹いたので、民はみな立ちとどまって、もはやイスラエルのあとを追わず、また重ねて戦わなかった。
8076 10 2 29 アブネルとその従者たちは、夜もすがら、アラバを通って行き、ヨルダンを渡り、昼まで行進を続けてマハナイムに着いた。
8077 10 2 30 ヨアブはアブネルを追うことをやめて帰り、民をみな集めたが、ダビデの家来たち十九人とアサヘルとが見当らなかった。
8078 10 2 31 しかし、ダビデの家来たちは、アブネルの従者であるベニヤミンの人々三百六十人を撃ち殺した。
8079 10 2 32 人々はアサヘルを取り上げてベツレヘムにあるその父の墓に葬った。ヨアブとその従者たちは、夜もすがら行って、夜明けにヘブロンに着いた。
8080 10 3 1 サウルの家とダビデの家との間の戦争は久しく続き、ダビデはますます強くなり、サウルの家はますます弱くなった。
8081 10 3 2 ヘブロンでダビデに男の子が生れた。彼の長子はエズレルの女アヒノアムの産んだアムノン、
8082 10 3 3 その次はカルメルびとナバルの妻であったアビガイルの産んだキレアブ、第三はゲシュルの王タルマイの娘マアカの子アブサロム、
8083 10 3 4 第四はハギテの子アドニヤ、第五はアビタルの子シパテヤ、
8084 10 3 5 第六はダビデの妻エグラの産んだイテレアム。これらの子がヘブロンでダビデに生れた。
8085 10 3 6 サウルの家とダビデの家とが戦いを続けている間に、アブネルはサウルの家で、強くなってきた。
8086 10 3 7 さてサウルには、ひとりのそばめがあった。その名をリヅパといい、アヤの娘であったが、イシボセテはアブネルに言った、「あなたはなぜわたしの父のそばめのところにはいったのですか」。
8087 10 3 8 アブネルはイシボセテの言葉を聞き、非常に怒って言った、「わたしはユダの犬のかしらですか。わたしはきょう、あなたの父サウルの家と、その兄弟と、その友人とに忠誠をあらわして、あなたをダビデの手に渡すことをしなかったのに、あなたはきょう、女の事のあやまちを挙げてわたしを責められる。
8088 10 3 9 主がダビデに誓われたことを、わたしが彼のためになし遂げないならば、神がアブネルをいくえにも罰しられるように。
8089 10 3 10 すなわち王国をサウルの家から移し、ダビデの位をダンからベエルシバに至るまで、イスラエルとユダの上に立たせられるであろう」。
8090 10 3 11 イシボセテはアブネルを恐れたので、ひと言も彼に答えることができなかった。
8091 10 3 12 アブネルはヘブロンにいるダビデのもとに使者をつかわして言った、「国はだれのものですか。わたしと契約を結びなさい。わたしはあなたに力添えして、イスラエルをことごとくあなたのものにしましょう」。
8092 10 3 13 ダビデは言った、「よろしい。わたしは、あなたと契約を結びましょう。ただし一つの事をあなたに求めます。あなたがきてわたしの顔を見るとき、まずサウルの娘ミカルを連れて来るのでなければ、わたしの顔を見ることはできません」。
8093 10 3 14 それからダビデは使者をサウルの子イシボセテにつかわして言った、「ペリシテびとの陽の皮一百をもってめとったわたしの妻ミカルを引き渡しなさい」。
8094 10 3 15 そこでイシボセテは人をやって彼女をその夫、ライシの子パルテエルから取ったので、
8095 10 3 16 その夫は彼女と共に行き、泣きながら彼女のあとについて、バホリムまで行ったが、アブネルが彼に「帰って行け」と言ったので彼は帰った。
8096 10 3 17 アブネルはイスラエルの長老たちと協議して言った、「あなたがたは以前からダビデをあなたがたの王とすることを求めていましたが、
8097 10 3 18 今それをしなさい。主がダビデについて、『わたしのしもべダビデの手によって、わたしの民イスラエルをペリシテびとの手、およびもろもろの敵の手から救い出すであろう』と言われたからです」。
8098 10 3 19 アブネルはまたベニヤミンにも語った。そしてアブネルは、イスラエルとベニヤミンの全家が良いと思うことをみな、ヘブロンでダビデに告げようとして出発した。
8099 10 3 20 アブネルが二十人を従えてヘブロンにいるダビデのもとに行った時、ダビデはアブネルと彼に従っている従者たちのために酒宴を設けた。
8100 10 3 21 アブネルはダビデに言った、「わたしは立って行き、イスラエルをことごとく、わが主、王のもとに集めて、あなたと契約を結ばせ、あなたの望むものをことごとく治められるようにいたしましょう」。こうしてダビデはアブネルを送り帰らせたので彼は安全に去って行った。
8101 10 3 22 ちょうどその時、ダビデの家来たちはヨアブと共に多くのぶんどり物を携えて略奪から帰ってきた。しかしアブネルはヘブロンのダビデのもとにはいなかった。ダビデが彼を帰らせて彼が安全に去ったからである。
8102 10 3 23 ヨアブおよび彼と共にいた軍勢がみな帰ってきたとき、人々はヨアブに言った、「ネルの子アブネルが王のもとにきたが、王が彼を帰らせたので彼は安全に去った」。
8103 10 3 24 そこでヨアブは王のもとに行って言った、「あなたは何をなさったのですか。アブネルがあなたの所にきたのに、あなたはどうして、彼を返し去らせられたのですか。
8104 10 3 25 ネルの子アブネルがあなたを欺くためにきたこと、そしてあなたの出入りを知り、またあなたのなさっていることを、ことごとく知るためにきたことをあなたはごぞんじです」。
8105 10 3 26 ヨアブはダビデの所から出てきて、使者をつかわし、アブネルを追わせたので、彼らはシラの井戸から彼を連れて帰った。しかしダビデはその事を知らなかった。
8106 10 3 27 アブネルがヘブロンに帰ってきたとき、ヨアブはひそかに語ろうといって彼を門のうちに連れて行き、その所で彼の腹を刺して死なせ、自分の兄弟アサヘルの血を報いた。
8107 10 3 28 その後ダビデはこの事を聞いて言った、「わたしとわたしの王国とは、ネルの子アブネルの血に関して、主の前に永久に罪はない。
8108 10 3 29 どうぞ、その罪がヨアブの頭と、その父の全家に帰するように。またヨアブの家には流出を病む者、らい病人、つえにたよる者、つるぎに倒れる者、または食物の乏しい者が絶えないように」。
8109 10 3 30 こうしてヨアブとその弟アビシャイとはアブネルを殺したが、それは彼がギベオンの戦いで彼らの兄弟アサヘルを殺したためであった。
8110 10 3 31 ダビデはヨアブおよび自分と共にいるすべての民に言った、「あなたがたは着物を裂き、荒布をまとい、アブネルの前に嘆きながら行きなさい」。そしてダビデ王はその棺のあとに従った。
8111 10 3 32 人々はアブネルをヘブロンに葬った。王はアブネルの墓で声をあげて泣き、民もみな泣いた。
8112 10 3 33 王はアブネルのために悲しみの歌を作って言った、「愚かな人の死ぬように、アブネルがどうして死んだのか。
8113 10 3 34 あなたの手は縛られず、足には足かせもかけられないのに、悪人の前に倒れる人のように、あなたは倒れた」。そして民は皆、ふたたび彼のために泣いた。
8114 10 3 35 民はみなきて、日のあるうちに、ダビデにパンを食べさせようとしたが、ダビデは誓って言った、「もしわたしが日の入る前に、パンでも、ほかのものでも味わうならば、神がわたしをいくえにも罰しられるように」。
8115 10 3 36 民はみなそれを見て満足した。すべて王のすることは民を満足させた。
8116 10 3 37 その日すべての民およびイスラエルは皆、ネルの子アブネルを殺したのは、王の意思によるものでないことを知った。
8117 10 3 38 王はその家来たちに言った、「この日イスラエルで、ひとりの偉大なる将軍が倒れたのをあなたがたは知らないのか。
8118 10 3 39 わたしは油を注がれた王であるけれども、今日なお弱い。ゼルヤの子であるこれらの人々はわたしの手におえない。どうぞ主が悪を行う者に、その悪にしたがって報いられるように」。
8119 10 4 1 サウルの子イシボセテは、アブネルがヘブロンで死んだことを聞いて、その力を失い、イスラエルは皆あわてた。
8120 10 4 2 サウルの子イシボセテにはふたりの略奪隊の隊長があった。ひとりの名はバアナ、他のひとりの名はレカブといって、ベニヤミンの子孫であるベロテびとリンモンの子たちであった。(それはベロテもまたベニヤミンのうちに数えられているからである。
8121 10 4 3 ベロテびとはギッタイムに逃げていって、今日までその所に寄留している)。
8122 10 4 4 さてサウルの子ヨナタンに足のなえた子がひとりあった。エズレルからサウルとヨナタンの事の知らせがきた時、彼は五歳であった。うばが彼を抱いて逃げたが、急いで逃げる時、その子は落ちて足なえとなった。その名はメピボセテといった。
8123 10 4 5 ベロテびとリンモンの子たち、レカブとバアナとは出立して、日の暑いころイシボセテの家にきたが、イシボセテは昼寝をしていた。
8124 10 4 6 家の門を守る女は麦をあおぎ分けていたが、眠くなって寝てしまった。そこでレカブとその兄弟バアナは、ひそかに中にはいった。
8125 10 4 7 彼らが家にはいった時、イシボセテは寝室で床の上に寝ていたので、彼らはそれを撃って殺し、その首をはね、その首を取って、よもすがらアラバの道を行き、
8126 10 4 8 イシボセテの首をヘブロンにいるダビデのもとに携えて行って王に言った、「あなたの命を求めたあなたの敵サウルの子イシボセテの首です。主はきょう、わが君、王のためにサウルとそのすえとに報復されました」。
8127 10 4 9 ダビデはベロテびとリンモンの子レカブとその兄弟バアナに答えた、「わたしの命を、もろもろの苦難から救われた主は生きておられる。
8128 10 4 10 わたしはかつて、人がわたしに告げて、『見よ、サウルは死んだ』と言って、みずから良いおとずれを伝える者と思っていた者を捕えてチクラグで殺し、そのおとずれに報いたのだ。
8129 10 4 11 悪人が正しい人をその家の床の上で殺したときは、なおさらのことだ。今わたしが、彼の血を流した罪を報い、あなたがたを、この地から絶ち滅ぼさないでおくであろうか」。
8130 10 4 12 そしてダビデは若者たちに命じたので、若者たちは彼らを殺し、その手足を切り離し、ヘブロンの池のほとりで木に掛けた。人々はイシボセテの首を持って行って、ヘブロンにあるアブネルの墓に葬った。
8131 10 5 1 イスラエルのすべての部族はヘブロンにいるダビデのもとにきて言った、「われわれは、あなたの骨肉です。
8132 10 5 2 先にサウルがわれわれの王であった時にも、あなたはイスラエルを率いて出入りされました。そして主はあなたに、『あなたはわたしの民イスラエルを牧するであろう。またあなたはイスラエルの君となるであろう』と言われました」。
8133 10 5 3 このようにイスラエルの長老たちが皆、ヘブロンにいる王のもとにきたので、ダビデ王はヘブロンで主の前に彼らと契約を結んだ。そして彼らはダビデに油を注いでイスラエルの王とした。
8134 10 5 4 ダビデは王となったとき三十歳で、四十年の間、世を治めた。
8135 10 5 5 すなわちヘブロンで七年六か月ユダを治め、またエルサレムで三十三年、全イスラエルとユダを治めた。
8136 10 5 6 王とその従者たちとはエルサレムへ行って、その地の住民エブスびとを攻めた。エブスびとはダビデに言った、「あなたはけっして、ここに攻め入ることはできない。かえって、めしいや足なえでも、あなたを追い払うであろう」。彼らが「ダビデはここに攻め入ることはできない」と思ったからである。
8137 10 5 7 ところがダビデはシオンの要害を取った。これがダビデの町である。
8138 10 5 8 その日ダビデは、「だれでもエブスびとを撃とうとする人は、水をくみ上げる縦穴を上って行って、ダビデが心に憎んでいる足なえやめしいを撃て」と言った。それゆえに人々は、「めしいや足なえは、宮にはいってはならない」と言いならわしている。
8139 10 5 9 ダビデはその要害に住んで、これをダビデの町と名づけた。またダビデはミロから内の周囲に城壁を築いた。
8140 10 5 10 こうしてダビデはますます大いなる者となり、かつ万軍の神、主が彼と共におられた。
8141 10 5 11 ツロの王ヒラムはダビデに使者をつかわして、香柏および大工と石工を送った。彼らはダビデのために家を建てた。
8142 10 5 12 そしてダビデは主が自分を堅く立ててイスラエルの王とされたこと、主がその民イスラエルのためにその王国を興されたことを悟った。
8143 10 5 13 ダビデはヘブロンからきて後、さらにエルサレムで妻とそばめを入れたので、むすこと娘がまたダビデに生れた。
8144 10 5 14 エルサレムで彼に生れた者の名は次のとおりである。シャンムア、ショバブ、ナタン、ソロモン、
8145 10 5 15 イブハル、エリシュア、ネペグ、ヤピア、
8146 10 5 16 エリシャマ、エリアダ、およびエリペレテ。
8147 10 5 17 さてペリシテびとは、ダビデが油を注がれてイスラエルの王になったことを聞き、みな上ってきてダビデを捜したが、ダビデはそれを聞いて要害に下って行った。
8148 10 5 18 ペリシテびとはきて、レパイムの谷に広がっていた。
8149 10 5 19 ダビデは主に問うて言った、「ペリシテびとに向かって上るべきでしょうか。あなたは彼らをわたしの手に渡されるでしょうか」。主はダビデに言われた、「上るがよい。わたしはかならずペリシテびとをあなたの手に渡すであろう」。
8150 10 5 20 そこでダビデはバアル・ペラジムへ行って、彼らをその所で撃ち破り、そして言った、「主は、破り出る水のように、敵をわたしの前に破られた」。それゆえにその所の名はバアル・ペラジムと呼ばれている。
8151 10 5 21 ペリシテびとはその所に彼らの偶像を捨てて行ったので、ダビデとその従者たちはそれを運び去った。
8152 10 5 22 ペリシテびとが、ふたたび上ってきて、レパイムの谷に広がったので、
8153 10 5 23 ダビデは主に問うたが、主は言われた、「上ってはならない。彼らのうしろに回り、バルサムの木の前から彼らを襲いなさい。
8154 10 5 24 バルサムの木の上に行進の音が聞えたならば、あなたは奮い立たなければならない。その時、主があなたの前に出て、ペリシテびとの軍勢を撃たれるからである」。
8155 10 5 25 ダビデは、主が命じられたようにして、ペリシテびとを撃ち、ゲバからゲゼルに及んだ。
8156 10 6 1 ダビデは再びイスラエルのえり抜きの者三万人をことごとく集めた。
8157 10 6 2 そしてダビデは立って、自分と共にいるすべての民と共にバアレ・ユダへ行って、神の箱をそこからかき上ろうとした。この箱はケルビムの上に座しておられる万軍の主の名をもって呼ばれている。
8158 10 6 3 彼らは神の箱を新しい車に載せて、山の上にあるアビナダブの家から運び出した。
8159 10 6 4 アビナダブの子たち、ウザとアヒオとが神の箱を載せた新しい車を指揮し、ウザは神の箱のかたわらに沿い、アヒオは箱の前に進んだ。
8160 10 6 5 ダビデとイスラエルの全家は琴と立琴と手鼓と鈴とシンバルとをもって歌をうたい、力をきわめて、主の前に踊った。
8161 10 6 6 彼らがナコンの打ち場にきた時、ウザは神の箱に手を伸べて、それを押えた。牛がつまずいたからである。
8162 10 6 7 すると主はウザに向かって怒りを発し、彼が手を箱に伸べたので、彼をその場で撃たれた。彼は神の箱のかたわらで死んだ。
8163 10 6 8 主がウザを撃たれたので、ダビデは怒った。その所は今日までペレヅ・ウザと呼ばれている。
8164 10 6 9 その日ダビデは主を恐れて言った、「どうして主の箱がわたしの所に来ることができようか」。
8165 10 6 10 ダビデは主の箱をダビデの町に入れることを好まず、これを移してガテびとオベデエドムの家に運ばせた。
8166 10 6 11 神の箱はガテびとオベデエドムの家に三か月とどまった。主はオベデエドムとその全家を祝福された。
8167 10 6 12 しかしダビデ王は、「主が神の箱のゆえに、オベデエドムの家とそのすべての所有を祝福されている」と聞き、ダビデは行って、喜びをもって、神の箱をオベデエドムの家からダビデの町にかき上った。
8168 10 6 13 主の箱をかく者が六歩進んだ時、ダビデは牛と肥えた物を犠牲としてささげた。
8169 10 6 14 そしてダビデは力をきわめて、主の箱の前で踊った。その時ダビデは亜麻布のエポデをつけていた。
8170 10 6 15 こうしてダビデとイスラエルの全家とは、喜びの叫びと角笛の音をもって、神の箱をかき上った。
8171 10 6 16 主の箱がダビデの町にはいった時、サウルの娘ミカルは窓からながめ、ダビデ王が主の前に舞い踊るのを見て、心のうちにダビデをさげすんだ。
8172 10 6 17 人々は主の箱をかき入れて、ダビデがそのために張った天幕の中のその場所に置いた。そしてダビデは燔祭と酬恩祭を主の前にささげた。
8173 10 6 18 ダビデは燔祭と酬恩祭をささげ終った時、万軍の主の名によって民を祝福した。
8174 10 6 19 そしてすべての民、イスラエルの全民衆に、男にも女にも、おのおのパンの菓子一個、肉一きれ、ほしぶどう一かたまりを分け与えた。こうして民はみなおのおのその家に帰った。
8175 10 6 20 ダビデが家族を祝福しようとして帰ってきた時、サウルの娘ミカルはダビデを出迎えて言った、「きょうイスラエルの王はなんと威厳のあったことでしょう。いたずら者が、恥も知らず、その身を現すように、きょう家来たちのはしためらの前に自分の身を現されました」。
8176 10 6 21 ダビデはミカルに言った、「あなたの父よりも、またその全家よりも、むしろわたしを選んで、主の民イスラエルの君とせられた主の前に踊ったのだ。わたしはまた主の前に踊るであろう。
8177 10 6 22 わたしはこれよりももっと軽んじられるようにしよう。そしてあなたの目には卑しめられるであろう。しかしわたしは、あなたがさきに言った、はしためたちに誉を得るであろう」。
8178 10 6 23 こうしてサウルの娘ミカルは死ぬ日まで子供がなかった。
8179 10 7 1 さて、王が自分の家に住み、また主が周囲の敵をことごとく打ち退けて彼に安息を賜わった時、
8180 10 7 2 王は預言者ナタンに言った、「見よ、今わたしは、香柏の家に住んでいるが、神の箱はなお幕屋のうちにある」。
8181 10 7 3 ナタンは王に言った、「主があなたと共におられますから、行って、すべてあなたの心にあるところを行いなさい」。
8182 10 7 4 その夜、主の言葉がナタンに臨んで言った、
8183 10 7 5 「行って、わたしのしもべダビデに言いなさい、『主はこう仰せられる。あなたはわたしの住む家を建てようとするのか。
8184 10 7 6 わたしはイスラエルの人々をエジプトから導き出した日から今日まで、家に住まわず、天幕をすまいとして歩んできた。
8185 10 7 7 わたしがイスラエルのすべての人々と共に歩んだすべての所で、わたしがわたしの民イスラエルを牧することを命じたイスラエルのさばきづかさのひとりに、ひと言でも「どうしてあなたがたはわたしのために香柏の家を建てないのか」と、言ったことがあるであろうか』。
8186 10 7 8 それゆえ、今あなたは、わたしのしもべダビデにこう言いなさい、『万軍の主はこう仰せられる。わたしはあなたを牧場から、羊に従っている所から取って、わたしの民イスラエルの君とし、
8187 10 7 9 あなたがどこへ行くにも、あなたと共におり、あなたのすべての敵をあなたの前から断ち去った。わたしはまた地上の大いなる者の名のような大いなる名をあなたに得させよう。
8188 10 7 10 そしてわたしの民イスラエルのために一つの所を定めて、彼らを植えつけ、彼らを自分の所に住ませ、重ねて動くことのないようにするであろう。
8189 10 7 11 また前のように、わたしがわたしの民イスラエルの上にさばきづかさを立てた日からこのかたのように、悪人が重ねてこれを悩ますことはない。わたしはあなたのもろもろの敵を打ち退けて、あなたに安息を与えるであろう。主はまた「あなたのために家を造る」と仰せられる。
8190 10 7 12 あなたが日が満ちて、先祖たちと共に眠る時、わたしはあなたの身から出る子を、あなたのあとに立てて、その王国を堅くするであろう。
8191 10 7 13 彼はわたしの名のために家を建てる。わたしは長くその国の位を堅くしよう。
8192 10 7 14 わたしは彼の父となり、彼はわたしの子となるであろう。もし彼が罪を犯すならば、わたしは人のつえと人の子のむちをもって彼を懲らす。
8193 10 7 15 しかしわたしはわたしのいつくしみを、わたしがあなたの前から除いたサウルから取り去ったように、彼からは取り去らない。
8194 10 7 16 あなたの家と王国はわたしの前に長く保つであろう。あなたの位は長く堅うせられる』」。
8195 10 7 17 ナタンはすべてこれらの言葉のように、またすべてこの幻のようにダビデに語った。
8196 10 7 18 その時ダビデ王は、はいって主の前に座して言った、「主なる神よ、わたしがだれ、わたしの家が何であるので、あなたはこれまでわたしを導かれたのですか。
8197 10 7 19 主なる神よ、これはなおあなたの目には小さい事です。主なる神よ、あなたはまたしもべの家の、はるか後の事を語って、きたるべき代々のことを示されました。
8198 10 7 20 ダビデはこの上なにをあなたに申しあげることができましょう。主なる神よ、あなたはしもべを知っておられるのです。
8199 10 7 21 あなたの約束のゆえに、またあなたの心に従って、あなたはこのもろもろの大いなる事を行い、しもべにそれを知らせられました。
8200 10 7 22 主なる神よ、あなたは偉大です。それは、われわれがすべて耳に聞いたところによれば、あなたのような者はなく、またあなたのほかに神はないからです。
8201 10 7 23 地のどの国民が、あなたの民イスラエルのようでありましょうか。これは神が行って、自分のためにあがなって民とし、自らの名をあげられたもの、また彼らのために大いなる恐るべきことをなし、その民の前から国びととその神々とを追い出されたものです。
8202 10 7 24 そしてあなたの民イスラエルを永遠にあなたの民として、自分のために、定められました。主よ、あなたは彼らの神となられたのです。
8203 10 7 25 主なる神よ、今あなたが、しもべとしもべの家とについて語られた言葉を長く堅うして、あなたの言われたとおりにしてください。
8204 10 7 26 そうすれば、あなたの名はとこしえにあがめられて、『万軍の主はイスラエルの神である』と言われ、あなたのしもべダビデの家は、あなたの前に堅く立つことができましょう。
8205 10 7 27 万軍の主、イスラエルの神よ、あなたはしもべに示して、『おまえのために家を建てよう』と言われました。それゆえ、しもべはこの祈をあなたにささげる勇気を得たのです。
8206 10 7 28 主なる神よ、あなたは神にましまし、あなたの言葉は真実です。あなたはこの良き事をしもべに約束されました。
8207 10 7 29 どうぞ今、しもべの家を祝福し、あなたの前に長くつづかせてくださるように。主なる神よ、あなたがそれを言われたのです。どうぞあなたの祝福によって、しもべの家がながく祝福されますように」。
8208 10 8 1 この後ダビデはペリシテびとを撃って、これを征服した。ダビデはまたペリシテびとの手からメテグ・アンマを取った。
8209 10 8 2 彼はまたモアブを撃ち、彼らを地に伏させ、なわをもって彼らを測った。すなわち二筋のなわをもって殺すべき者を測り、一筋のなわをもって生かしておく者を測った。そしてモアブびとは、ダビデのしもべとなって、みつぎを納めた。
8210 10 8 3 ダビデはまたレホブの子であるゾバの王ハダデゼルが、ユフラテ川のほとりにその勢力を回復しようとして行くところを撃った。
8211 10 8 4 そしてダビデは彼から騎兵千七百人、歩兵二万人を取った。ダビデはまた一百の戦車の馬を残して、そのほかの戦車の馬はみなその足の筋を切った。
8212 10 8 5 ダマスコのスリヤびとが、ゾバの王ハダデゼルを助けるためにきたので、ダビデはスリヤびと二万二千人を殺した。
8213 10 8 6 そしてダビデはダマスコのスリヤに守備隊を置いた。スリヤびとは、ダビデのしもべとなって、みつぎを納めた。主はダビデにすべてその行く所で勝利を与えられた。
8214 10 8 7 ダビデはハダデゼルのしもべらが持っていた金の盾を奪って、エルサレムに持ってきた。
8215 10 8 8 ダビデ王はまたハダデゼルの町、ベタとベロタイから、ひじょうに多くの青銅を取った。
8216 10 8 9 時にハマテの王トイは、ダビデがハダデゼルのすべての軍勢を撃ち破ったことを聞き、
8217 10 8 10 その子ヨラムをダビデ王のもとにつかわして、彼にあいさつし、かつ祝を述べさせた。ハダデゼルはかつてしばしばトイと戦いを交えたが、ダビデがハダデゼルと戦ってこれを撃ち破ったからである。ヨラムが銀の器と金の器と青銅の器を携えてきたので、
8218 10 8 11 ダビデ王は征服したすべての国民から取ってささげた金銀と共にこれらをも主にささげた。
8219 10 8 12 すなわちエドム、モアブ、アンモンの人々、ペリシテびと、アマレクから獲た物、およびゾバの王レホブの子ハダデゼルから獲たぶんどり物と共にこれをささげた。
8220 10 8 13 こうしてダビデは名声を得た。彼は帰ってきてから塩の谷でエドムびと一万八千人を撃ち殺した。
8221 10 8 14 そしてエドムに守備隊を置いた。すなわちエドムの全地に守備隊を置き、エドムびとは皆ダビデのしもべとなった。主はダビデにすべてその行く所で勝利を与えられた。
8222 10 8 15 こうしてダビデはイスラエルの全地を治め、そのすべての民に正義と公平を行った。
8223 10 8 16 ゼルヤの子ヨアブは軍の長、アヒルデの子ヨシャパテは史官、
8224 10 8 17 アヒトブの子ザドクとアビヤタルの子アヒメレクは祭司、セラヤは書記官、
8225 10 8 18 エホヤダの子ベナヤはケレテびととペレテびとの長、ダビデの子たちは祭司であった。
8226 10 9 1 時にダビデは言った、「サウルの家の人で、なお残っている者があるか。わたしはヨナタンのために、その人に恵みを施そう」。
8227 10 9 2 さて、サウルの家にヂバという名のしもべがあったが、人々が彼をダビデのもとに呼び寄せたので、王は彼に言った、「あなたがヂバか」。彼は言った、「しもべがそうです」。
8228 10 9 3 王は言った、「サウルの家の人がまだ残っていませんか。わたしはその人に神の恵みを施そうと思う」。ヂバは王に言った、「ヨナタンの子がまだおります。あしなえです」。
8229 10 9 4 王は彼に言った、「その人はどこにいるのか」。ヂバは王に言った、「彼はロ・デバルのアンミエルの子マキルの家におります」。
8230 10 9 5 ダビデ王は人をつかわして、ロ・デバルのアンミエルの子マキルの家から、彼を連れてこさせた。
8231 10 9 6 サウルの子ヨナタンの子であるメピボセテはダビデのもとにきて、ひれ伏して拝した。ダビデが、「メピボセテよ」と言ったので、彼は、「しもべは、ここにおります」と答えた。
8232 10 9 7 ダビデは彼に言った、「恐れることはない。わたしはかならずあなたの父ヨナタンのためにあなたに恵みを施しましょう。あなたの父サウルの地をみなあなたに返します。またあなたは常にわたしの食卓で食事をしなさい」。
8233 10 9 8 彼は拝して言った、「あなたは、しもべを何とおぼしめして、死んだ犬のようなわたしを顧みられるのですか」。
8234 10 9 9 王はサウルのしもべヂバを呼んで言った、「すべてサウルとその家に属する物を皆、わたしはあなたの主人の子に与えた。
8235 10 9 10 あなたと、あなたの子たちと、しもべたちとは、彼のために地を耕して、あなたの主人の子が食べる食物を取り入れなければならない。しかしあなたの主人の子メピボセテはいつもわたしの食卓で食事をするであろう」。ヂバには十五人の男の子と二十人のしもべがあった。
8236 10 9 11 ヂバは王に言った、「すべて王わが主君がしもべに命じられるとおりに、しもべはいたしましょう」。こうしてメピボセテは王の子のひとりのようにダビデの食卓で食事をした。
8237 10 9 12 メピボセテには小さい子があって、名をミカといった。そしてヂバの家に住んでいる者はみなメピボセテのしもべとなった。
8238 10 9 13 メピボセテはエルサレムに住んだ。彼がいつも王の食卓で食事をしたからである。彼は両足ともに、なえていた。
8239 10 10 1 この後アンモンの人々の王が死んで、その子ハヌンがこれに代って王となった。
8240 10 10 2 そのときダビデは言った、「わたしはナハシの子ハヌンに、その父がわたしに恵みを施したように、恵みを施そう」。そしてダビデは彼を、その父のゆえに慰めようと、しもべをつかわした。ダビデのしもべたちはアンモンの人々の地に行ったが、
8241 10 10 3 アンモンの人々のつかさたちはその主君ハヌンに言った、「ダビデが慰める者をあなたのもとにつかわしたのは彼があなたの父を尊ぶためだと思われますか。ダビデがあなたのもとに、しもべたちをつかわしたのは、この町をうかがい、それを探って、滅ぼすためではありませんか」。
8242 10 10 4 そこでハヌンはダビデのしもべたちを捕え、おのおの、ひげの半ばをそり落し、その着物を中ほどから断ち切り腰の所までにして、彼らを帰らせた。
8243 10 10 5 人々がこれをダビデに告げたので、ダビデは人をつかわして彼らを迎えさせた。その人々はひじょうに恥じたからである。そこで王は言った、「ひげがのびるまでエリコにとどまって、その後、帰りなさい」。
8244 10 10 6 アンモンの人々は自分たちがダビデに憎まれていることがわかったので、人をつかわして、ベテ・レホブのスリヤびととゾバのスリヤびととの歩兵二万人およびマアカの王とその一千人、トブの人一万二千人を雇い入れた。
8245 10 10 7 ダビデはそれを聞いて、ヨアブと勇士の全軍をつかわしたので、
8246 10 10 8 アンモンの人々は出て、門の入口に戦いの備えをした。ゾバとレホブとのスリヤびと、およびトブとマアカの人々は別に野にいた。
8247 10 10 9 ヨアブは戦いが前後から自分に迫ってくるのを見て、イスラエルのえり抜きの兵士のうちから選んで、これをスリヤびとに対して備え、
8248 10 10 10 そのほかの民を自分の兄弟アビシャイの手にわたして、アンモンの人々に対して備えさせ、
8249 10 10 11 そして言った、「もしスリヤびとがわたしに手ごわいときは、わたしを助けてください。もしアンモンの人々があなたに手ごわいときは、行ってあなたを助けましょう。
8250 10 10 12 勇ましくしてください。われわれの民のため、われわれの神の町々のため、勇ましくしましょう。どうぞ主が良いと思われることをされるように」。
8251 10 10 13 ヨアブが自分と一緒にいる民と共に、スリヤびとに向かって戦おうとして近づいたとき、スリヤびとは彼の前から逃げた。
8252 10 10 14 アンモンの人々はスリヤびとが逃げるのを見て、彼らもまたアビシャイの前から逃げて町にはいった。そこでヨアブはアンモンの人々を撃つことをやめてエルサレムに帰った。
8253 10 10 15 しかしスリヤびとは自分たちのイスラエルに打ち敗られたのを見て、共に集まった。
8254 10 10 16 そしてハダデゼルは人をつかわし、ユフラテ川の向こう側にいるスリヤびとを率いてヘラムにこさせた。ハダデゼルの軍の長ショバクがこれを率いた。
8255 10 10 17 この事がダビデに聞えたので、彼はイスラエルをことごとく集め、ヨルダンを渡ってヘラムにきた。スリヤびとはダビデに向かって備えをして彼と戦った。
8256 10 10 18 しかしスリヤびとがイスラエルの前から逃げたので、ダビデはスリヤびとの戦車の兵七百、騎兵四万を殺し、またその軍の長ショバクを撃ったので、彼はその所で死んだ。
8257 10 10 19 ハダデゼルの家来であった王たちはみな、自分たちがイスラエルに打ち敗られたのを見て、イスラエルと和を講じ、これに仕えた。こうしてスリヤびとは恐れて再びアンモンの人々を助けることをしなかった。
8258 10 11 1 春になって、王たちが戦いに出るに及んで、ダビデはヨアブおよび自分と共にいる家来たち、並びにイスラエルの全軍をつかわした。彼らはアンモンの人々を滅ぼし、ラバを包囲した。しかしダビデはエルサレムにとどまっていた。
8259 10 11 2 さて、ある日の夕暮、ダビデは床から起き出て、王の家の屋上を歩いていたが、屋上から、ひとりの女がからだを洗っているのを見た。その女は非常に美しかった。
8260 10 11 3 ダビデは人をつかわしてその女のことを探らせたが、ある人は言った、「これはエリアムの娘で、ヘテびとウリヤの妻バテシバではありませんか」。
8261 10 11 4 そこでダビデは使者をつかわして、その女を連れてきた。女は彼の所にきて、彼はその女と寝た。(女は身の汚れを清めていたのである。)こうして女はその家に帰った。
8262 10 11 5 女は妊娠したので、人をつかわしてダビデに告げて言った、「わたしは子をはらみました」。
8263 10 11 6 そこでダビデはヨアブに、「ヘテびとウリヤをわたしの所につかわせ」と言ってやったので、ヨアブはウリヤをダビデの所につかわした。
8264 10 11 7 ウリヤがダビデの所にきたので、ダビデは、ヨアブはどうしているか、民はどうしているか、戦いはうまくいっているかとたずねた。
8265 10 11 8 そしてダビデはウリヤに言った、「あなたの家に行って、足を洗いなさい」。ウリヤは王の家を出ていったが、王の贈り物が彼の後に従った。
8266 10 11 9 しかしウリヤは王の家の入口で主君の家来たちと共に寝て、自分の家に帰らなかった。
8267 10 11 10 人々がダビデに、「ウリヤは自分の家に帰りませんでした」と告げたので、ダビデはウリヤに言った、「旅から帰ってきたのではないか。どうして家に帰らなかったのか」。
8268 10 11 11 ウリヤはダビデに言った、「神の箱も、イスラエルも、ユダも、小屋の中に住み、わたしの主人ヨアブと、わが主君の家来たちが野のおもてに陣を取っているのに、わたしはどうして家に帰って食い飲みし、妻と寝ることができましょう。あなたは生きておられます。あなたの魂は生きています。わたしはこの事をいたしません」。
8269 10 11 12 ダビデはウリヤに言った、「きょうも、ここにとどまりなさい。わたしはあす、あなたを去らせましょう」。そこでウリヤはその日と次の日エルサレムにとどまった。
8270 10 11 13 ダビデは彼を招いて自分の前で食い飲みさせ、彼を酔わせた。夕暮になって彼は出ていって、その床に、主君の家来たちと共に寝た。そして自分の家には下って行かなかった。
8271 10 11 14 朝になってダビデはヨアブにあてた手紙を書き、ウリヤの手に託してそれを送った。
8272 10 11 15 彼はその手紙に、「あなたがたはウリヤを激しい戦いの最前線に出し、彼の後から退いて、彼を討死させよ」と書いた。
8273 10 11 16 ヨアブは町を囲んでいたので、勇士たちがいると知っていた場所にウリヤを置いた。
8274 10 11 17 町の人々が出てきてヨアブと戦ったので、民のうち、ダビデの家来たちにも、倒れるものがあり、ヘテびとウリヤも死んだ。
8275 10 11 18 ヨアブは人をつかわして戦いのことをつぶさにダビデに告げた。
8276 10 11 19 ヨアブはその使者に命じて言った、「あなたが戦いのことをつぶさに王に語り終ったとき、
8277 10 11 20 もし王が怒りを起して、『あなたがたはなぜ戦おうとしてそんなに町に近づいたのか。彼らが城壁の上から射るのを知らなかったのか。
8278 10 11 21 エルベセテの子アビメレクを撃ったのはだれか。ひとりの女が城壁の上から石うすの上石を投げて彼をテベツで殺したのではなかったか。あなたがたはなぜそんなに城壁に近づいたのか』と言われたならば、その時あなたは、『あなたのしもべ、ヘテびとウリヤもまた死にました』と言いなさい」。
8279 10 11 22 こうして使者は行き、ダビデのもとにきて、ヨアブが言いつかわしたことをことごとく告げた。
8280 10 11 23 使者はダビデに言った、「敵はわれわれよりも有利な位置を占め、出てきてわれわれを野で攻めましたが、われわれは町の入口まで彼らを追い返しました。
8281 10 11 24 その時、射手どもは城壁からあなたの家来たちを射ましたので、王の家来のある者は死に、また、あなたの家来ヘテびとウリヤも死にました」。
8282 10 11 25 ダビデは使者に言った、「あなたはヨアブにこう言いなさい、『この事で心配することはない。つるぎはこれをも彼をも同じく滅ぼすからである。強く町を攻めて戦い、それを攻め落しなさい』と。そしてヨアブを励ましなさい」。
8283 10 11 26 ウリヤの妻は夫ウリヤが死んだことを聞いて、夫のために悲しんだ。
8284 10 11 27 その喪が過ぎた時、ダビデは人をつかわして彼女を自分の家に召し入れた。彼女は彼の妻となって男の子を産んだ。しかしダビデがしたこの事は主を怒らせた。
8285 10 12 1 主はナタンをダビデにつかわされたので、彼はダビデの所にきて言った、「ある町にふたりの人があって、ひとりは富み、ひとりは貧しかった。
8286 10 12 2 富んでいる人は非常に多くの羊と牛を持っていたが、
8287 10 12 3 貧しい人は自分が買った一頭の小さい雌の小羊のほかは何も持っていなかった。彼がそれを育てたので、その小羊は彼および彼の子供たちと共に成長し、彼の食物を食べ、彼のわんから飲み、彼のふところで寝て、彼にとっては娘のようであった。
8288 10 12 4 時に、ひとりの旅びとが、その富んでいる人のもとにきたが、自分の羊または牛のうちから一頭を取って、自分の所にきた旅びとのために調理することを惜しみ、その貧しい人の小羊を取って、これを自分の所にきた人のために調理した」。
8289 10 12 5 ダビデはその人の事をひじょうに怒ってナタンに言った、「主は生きておられる。この事をしたその人は死ぬべきである。
8290 10 12 6 かつその人はこの事をしたため、またあわれまなかったため、その小羊を四倍にして償わなければならない」。
8291 10 12 7 ナタンはダビデに言った、「あなたがその人です。イスラエルの神、主はこう仰せられる、『わたしはあなたに油を注いでイスラエルの王とし、あなたをサウルの手から救いだし、
8292 10 12 8 あなたに主人の家を与え、主人の妻たちをあなたのふところに与え、またイスラエルとユダの家をあなたに与えた。もし少なかったならば、わたしはもっと多くのものをあなたに増し加えたであろう。
8293 10 12 9 どうしてあなたは主の言葉を軽んじ、その目の前に悪事をおこなったのですか。あなたはつるぎをもってヘテびとウリヤを殺し、その妻をとって自分の妻とした。すなわちアンモンの人々のつるぎをもって彼を殺した。
8294 10 12 10 あなたがわたしを軽んじてヘテびとウリヤの妻をとり、自分の妻としたので、つるぎはいつまでもあなたの家を離れないであろう』。
8295 10 12 11 主はこう仰せられる、『見よ、わたしはあなたの家からあなたの上に災を起すであろう。わたしはあなたの目の前であなたの妻たちを取って、隣びとに与えるであろう。その人はこの太陽の前で妻たちと一緒に寝るであろう。
8296 10 12 12 あなたはひそかにそれをしたが、わたしは全イスラエルの前と、太陽の前にこの事をするのである』」。
8297 10 12 13 ダビデはナタンに言った、「わたしは主に罪をおかしました」。ナタンはダビデに言った、「主もまたあなたの罪を除かれました。あなたは死ぬことはないでしょう。
8298 10 12 14 しかしあなたはこの行いによって大いに主を侮ったので、あなたに生れる子供はかならず死ぬでしょう」。
8299 10 12 15 こうしてナタンは家に帰った。
8300 10 12 16 ダビデはその子のために神に嘆願した。すなわちダビデは断食して、へやにはいり終夜地に伏した。
8301 10 12 17 ダビデの家の長老たちは、彼のかたわらに立って彼を地から起そうとしたが、彼は起きようとはせず、また彼らと一緒に食事をしなかった。
8302 10 12 18 七日目にその子は死んだ。ダビデの家来たちはその子が死んだことをダビデに告げるのを恐れた。それは彼らが、「見よ、子のなお生きている間に、われわれが彼に語ったのに彼はその言葉を聞きいれなかった。どうして彼にその子の死んだことを告げることができようか。彼は自らを害するかも知れない」と思ったからである。
8303 10 12 19 しかしダビデは、家来たちが互にささやき合うのを見て、その子の死んだのを悟り、家来たちに言った、「子は死んだのか」。彼らは言った、「死なれました」。
8304 10 12 20 そこで、ダビデは地から起き上がり、身を洗い、油をぬり、その着物を替えて、主の家にはいって拝した。そののち自分の家に行き、求めて自分のために食物を備えさせて食べた。
8305 10 12 21 家来たちは彼に言った、「あなたのなさったこの事はなんでしょうか。あなたは子の生きている間はその子のために断食して泣かれました。しかし子が死ぬと、あなたは起きて食事をなさいました」。
8306 10 12 22 ダビデは言った、「子の生きている間に、わたしが断食して泣いたのは、『主がわたしをあわれんで、この子を生かしてくださるかも知れない』と思ったからです。
8307 10 12 23 しかし今は死んだので、わたしはどうして断食しなければならないでしょうか。わたしは再び彼をかえらせることができますか。わたしは彼の所に行くでしょうが、彼はわたしの所に帰ってこないでしょう」。
8308 10 12 24 ダビデは妻バテシバを慰め、彼女の所にはいって、彼女と共に寝たので、彼女は男の子を産んだ。ダビデはその名をソロモンと名づけた。主はこれを愛された。
8309 10 12 25 そして預言者ナタンをつかわし、命じてその名をエデデアと呼ばせられた。
8310 10 12 26 さてヨアブはアンモンの人々のラバを攻めて王の町を取った。
8311 10 12 27 ヨアブは使者をダビデにつかわして言った、「わたしはラバを攻めて水の町を取りました。
8312 10 12 28 あなたは今、残りの民を集め、この町に向かって陣をしき、これを取りなさい。わたしがこの町を取って、人がわたしの名をもって、これを呼ぶようにならないためです」。
8313 10 12 29 そこでダビデは民をことごとく集めてラバへ行き、攻めてこれを取った。
8314 10 12 30 そしてダビデは彼らの王の冠をその頭から取りはなした。それは金で重さは一タラントであった。宝石がはめてあり、それをダビデの頭に置いた。ダビデはその町からぶんどり物を非常に多く持ち出した。
8315 10 12 31 またダビデはそのうちの民を引き出して、彼らをのこぎりや、鉄のつるはし、鉄のおのを使う仕事につかせ、また、れんが造りの労役につかせた。彼はアンモンの人々のすべての町にこのようにした。そしてダビデと民とは皆エルサレムに帰った。
8316 10 13 1 さてダビデの子アブサロムには名をタマルという美しい妹があったが、その後ダビデの子アムノンはこれを恋した。
8317 10 13 2 アムノンは妹タマルのために悩んでついにわずらった。それはタマルが処女であって、アムノンは彼女に何事もすることができないと思ったからである。
8318 10 13 3 ところがアムノンにはひとりの友だちがあった。名をヨナダブといい、ダビデの兄弟シメアの子である。ヨナダブはひじょうに賢い人であった。
8319 10 13 4 彼はアムノンに言った、「王子よ、あなたは、どうして朝ごとに、そんなにやせ衰えるのですか。わたしに話さないのですか」。アムノンは彼に言った、「わたしは兄弟アブサロムの妹タマルを恋しているのです」。
8320 10 13 5 ヨナダブは彼に言った、「あなたは病と偽り、寝床に横たわって、あなたの父がきてあなたを見るとき彼に言いなさい、『どうぞ、わたしの妹タマルをこさせ、わたしの所に食物を運ばせてください。そして彼女がわたしの目の前で食物をととのえ、彼女の手からわたしが食べることのできるようにさせてください』」。
8321 10 13 6 そこでアムノンは横になって病と偽ったが、王がきて彼を見た時、アムノンは王に言った、「どうぞわたしの妹タマルをこさせ、わたしの目の前で二つの菓子を作らせて、彼女の手からわたしが食べることのできるようにしてください」。
8322 10 13 7 ダビデはタマルの家に人をつかわして言わせた、「あなたの兄アムノンの家へ行って、彼のために食物をととのえなさい」。
8323 10 13 8 そこでタマルはその兄アムノンの家へ行ったところ、アムノンは寝ていた。タマルは粉を取って、これをこね、彼の目の前で、菓子を作り、その菓子を焼き、
8324 10 13 9 なべを取って彼の前にそれをあけた。しかし彼は食べることを拒んだ。そしてアムノンは、「みな、わたしを離れて出てください」と言ったので、皆、彼を離れて出た。
8325 10 13 10 アムノンはタマルに言った、「食物を寝室に持ってきてください。わたしはあなたの手から食べます」。そこでタマルは自分の作った菓子をとって、寝室にはいり兄アムノンの所へ持っていった。
8326 10 13 11 タマルが彼に食べさせようとして近くに持って行った時、彼はタマルを捕えて彼女に言った、「妹よ、来て、わたしと寝なさい」。
8327 10 13 12 タマルは言った、「いいえ、兄上よ、わたしをはずかしめてはなりません。このようなことはイスラエルでは行われません。この愚かなことをしてはなりません。
8328 10 13 13 わたしの恥をわたしはどこへ持って行くことができましょう。あなたはイスラエルの愚か者のひとりとなるでしょう。それゆえ、どうぞ王に話してください。王がわたしをあなたに与えないことはないでしょう」。
8329 10 13 14 しかしアムノンは彼女の言うことを聞こうともせず、タマルよりも強かったので、タマルをはずかしめてこれと共に寝た。
8330 10 13 15 それからアムノンは、ひじょうに深くタマルを憎むようになった。彼女を憎む憎しみは、彼女を恋した恋よりも大きかった。アムノンは彼女に言った、「立って、行きなさい」。
8331 10 13 16 タマルはアムノンに言った、「いいえ、兄上よ、わたしを返すことは、あなたがさきにわたしになさった事よりも大きい悪です」。しかしアムノンは彼女の言うことを聞こうともせず、
8332 10 13 17 彼に仕えている若者を呼んで言った、「この女をわたしの所から外におくり出し、そのあとに戸を閉ざすがよい」。
8333 10 13 18 この時、タマルは長そでの着物を着ていた。昔、王の姫たちの処女である者はこのような着物を着たからである。アムノンのしもべは彼女を外に出して、そのあとに戸を閉ざした。
8334 10 13 19 タマルは灰を頭にかぶり、着ていた長そでの着物を裂き、手を頭にのせて、叫びながら去って行った。
8335 10 13 20 兄アブサロムは彼女に言った、「兄アムノンがあなたと一緒にいたのか。しかし妹よ、今は黙っていなさい。彼はあなたの兄です。この事を心にとめなくてよろしい」。こうしてタマルは兄アブサロムの家に寂しく住んでいた。
8336 10 13 21 ダビデ王はこれらの事をことごとく聞いて、ひじょうに怒った。
8337 10 13 22 アブサロムはアムノンに良いことも悪いことも語ることをしなかった。それはアムノンがアブサロムの妹タマルをはずかしめたので、アブサロムが彼を憎んでいたからである。
8338 10 13 23 満二年の後、アブサロムはエフライムの近くにあるバアル・ハゾルで羊の毛を切らせていた時、王の子たちをことごとく招いた。
8339 10 13 24 そしてアブサロムは王のもとにきて言った、「見よ、しもべは羊の毛を切らせております。どうぞ王も王の家来たちも、しもべと共にきてください」。
8340 10 13 25 王はアブサロムに言った、「いいえ、わが子よ、われわれが皆行ってはならない。あなたの重荷になるといけないから」。アブサロムはダビデにしいて願った。しかしダビデは行くことを承知せず彼に祝福を与えた。
8341 10 13 26 そこでアブサロムは言った、「それでは、どうぞわたしの兄アムノンをわれわれと共に行かせてください」。王は彼に言った、「どうして彼があなたと共に行かなければならないのか」。
8342 10 13 27 しかしアブサロムは彼にしいて願ったので、ついにアムノンと王の子たちを皆、アブサロムと共に行かせた。
8343 10 13 28 そこでアブサロムは若者たちに命じて言った、「アムノンが酒を飲んで、心楽しくなった時を見すまし、わたしがあなたがたに、『アムノンを撃て』と言う時、彼を殺しなさい。恐れることはない。わたしが命じるのではないか。雄々しくしなさい。勇ましくしなさい」。
8344 10 13 29 アブサロムの若者たちはアブサロムの命じたようにアムノンにおこなったので、王の子たちは皆立って、おのおのその騾馬に乗って逃げた。
8345 10 13 30 彼らがまだ着かないうちに、「アブサロムは王の子たちをことごとく殺して、ひとりも残っている者がない」という知らせがダビデに達したので、
8346 10 13 31 王は立ち、その着物を裂いて、地に伏した。そのかたわらに立っていた家来たちも皆その着物を裂いた。
8347 10 13 32 しかしダビデの兄弟シメアの子ヨナダブは言った、「わが主よ、王の子たちである若者たちがみな殺されたと、お考えになってはなりません。アムノンだけが死んだのです。これは彼がアブサロムの妹タマルをはずかしめた日から、アブサロムの命によって定められていたことなのです。
8348 10 13 33 それゆえ、わが主、王よ、王の子たちが皆死んだと思って、この事を心にとめられてはなりません。アムノンだけが死んだのです」。
8349 10 13 34 アブサロムはのがれた。時に見張りをしていた若者が目をあげて見ると、山のかたわらのホロナイムの道から多くの民の来るのが見えた。
8350 10 13 35 ヨナダブは王に言った、「見よ、王の子たちがきました。しもべの言ったとおりです」。
8351 10 13 36 彼が語ることを終った時、王の子たちはきて声をあげて泣いた。王もその家来たちも皆、非常にはげしく泣いた。
8352 10 13 37 しかしアブサロムはのがれて、ゲシュルの王アミホデの子タルマイのもとに行った。ダビデは日々その子のために悲しんだ。
8353 10 13 38 アブサロムはのがれてゲシュルに行き、三年の間そこにいた。
8354 10 13 39 王は心に、アブサロムに会うことを、せつに望んだ。アムノンは死んでしまい、ダビデが彼のことはあきらめていたからである。
8355 10 14 1 ゼルヤの子ヨアブは王の心がアブサロムに向かっているのを知った。
8356 10 14 2 そこでヨアブはテコアに人をつかわして、そこからひとりの賢い女を連れてこさせ、その女に言った、「あなたは悲しみのうちにある人をよそおって、喪服を着、油を身に塗らず、死んだ人のために長いあいだ悲しんでいる女のように、よそおって、
8357 10 14 3 王のもとに行き、しかじかと彼に語りなさい」。こうしてヨアブはその言葉を彼女の口に授けた。
8358 10 14 4 テコアの女は王のもとに行き、地に伏して拝し、「王よ、お助けください」と言った。
8359 10 14 5 王は女に言った、「どうしたのか」。女は言った、「まことにわたしは寡婦でありまして、夫は死にました。
8360 10 14 6 つかえめにはふたりの子どもがあり、ふたりは野で争いましたが、だれも彼らを引き分ける者がなかったので、ひとりはついに他の者を撃って殺しました。
8361 10 14 7 すると全家族がつかえめに逆らい立って、『兄弟を撃ち殺した者を引き渡たすがよい。われわれは彼が殺したその兄弟の命のために彼を殺そう』と言い、彼らは世継をも殺そうとしました。こうして彼らは残っているわたしの炭火を消して、わたしの夫の名をも、跡継をも、地のおもてにとどめないようにしようとしています」。
8362 10 14 8 王は女に言った、「家に帰りなさい。わたしはあなたのことについて命令を下します」。
8363 10 14 9 テコアの女は王に言った、「わが主、王よ、わたしとわたしの父の家にその罪を帰してください。どうぞ王と王の位には罪がありませんように」。
8364 10 14 10 王は言った、「もしあなたに何か言う者があれば、わたしの所に連れてきなさい。そうすれば、その人は重ねてあなたに触れることはないでしょう」。
8365 10 14 11 女は言った、「どうぞ王が、あなたの神、主をおぼえて、血の報復をする者に重ねて滅ぼすことをさせず、わたしの子の殺されることのないようにしてください」。王は言った、「主は生きておられる。あなたの子の髪の毛一筋も地に落ちることはないでしょう」。
8366 10 14 12 女は言った、「どうぞ、つかえめにひと言、わが主、王に言わせてください」。ダビデは言った、「言いなさい」。
8367 10 14 13 女は言った、「あなたは、それならばどうして、神の民に向かってこのような事を図られたのですか。王は今この事を言われたことによって自分を罪ある者とされています。それは王が追放された者を帰らせられないからです。
8368 10 14 14 わたしたちはみな死ななければなりません。地にこぼれた水の再び集めることのできないのと同じです。しかし神は、追放された者が捨てられないように、てだてを設ける人の命を取ることはなさいません。
8369 10 14 15 わたしがこの事を王、わが主に言おうとして来たのは、わたしが民を恐れたからです。つかえめは、こう思ったのです、『王に申し上げよう。王は、はしための願いのようにしてくださるかもしれない。
8370 10 14 16 王は聞いてくださる。わたしとわたしの子を共に滅ぼして神の嗣業から離れさせようとする人の手から、はしためを救い出してくださるのだから』。
8371 10 14 17 つかえめはまた、こう思ったのです、『王、わが主の言葉はわたしを安心させるであろう』と。それは王、わが主は神の使のように善と悪を聞きわけられるからです。どうぞあなたの神、主があなたと共におられますように」。
8372 10 14 18 王は女に答えて言った、「わたしが問うことに隠さず答えてください」。女は言った、「王、わが主よ、どうぞ言ってください」。
8373 10 14 19 王は言った、「このすべての事において、ヨアブの手があなたと共にありますか」。女は答えた、「あなたはたしかに生きておられます。王、わが主よ、すべて王、わが主の言われた事から人は右にも左にも曲ることはできません。わたしに命じたのは、あなたのしもべヨアブです。彼がつかえめの口に、これらの言葉をことごとく授けたのです。
8374 10 14 20 事のなりゆきを変えるため、あなたのしもべヨアブがこの事をしたのです。わが君には神の使の知恵のような知恵があって、地の上のすべてのことを知っておられます」。
8375 10 14 21 そこで王はヨアブに言った、「この事を許す。行って、若者アブサロムを連れ帰るがよい」。
8376 10 14 22 ヨアブは地にひれ伏して拝し、王を祝福した。そしてヨアブは言った、「わが主、王よ、王がしもべの願いを許されたので、きょうしもべは、あなたの前に恵みを得たことを知りました」。
8377 10 14 23 そこでヨアブは立ってゲシュルに行き、アブサロムをエルサレムに連れてきた。
8378 10 14 24 王は言った、「彼を自分の家に引きこもらせるがよい。わたしの顔を見てはならない」。こうしてアブサロムは自分の家に引きこもり、王の顔を見なかった。
8379 10 14 25 さて全イスラエルのうちにアブサロムのように、美しさのためほめられた人はなかった。その足の裏から頭の頂まで彼には傷がなかった。
8380 10 14 26 アブサロムがその頭を刈る時、その髪の毛をはかったが、王のはかりで二百シケルあった。毎年の終りにそれを刈るのを常とした。それが重くなると、彼はそれを刈ったのである。
8381 10 14 27 アブサロムに三人のむすこと、タマルという名のひとりの娘が生れた。タマルは美しい女であった。
8382 10 14 28 こうしてアブサロムは満二年の間エルサレムに住んだが、王の顔を見なかった。
8383 10 14 29 そこでアブサロムはヨアブを王のもとにつかわそうとして、ヨアブの所に人をつかわしたが、ヨアブは彼の所にこようとはしなかった。彼は再び人をつかわしたがヨアブはこようとはしなかった。
8384 10 14 30 そこでアブサロムはその家来に言った、「ヨアブの畑はわたしの畑の隣にあって、そこに大麦がある。行ってそれに火を放ちなさい」。アブサロムの家来たちはその畑に火を放った。
8385 10 14 31 ヨアブは立ってアブサロムの家にきて彼に言った、「どうしてあなたの家来たちはわたしの畑に火を放ったのですか」。
8386 10 14 32 アブサロムはヨアブに言った、「わたしはあなたに人をつかわして、ここへ来るようにと言ったのです。あなたを王のもとにつかわし、『なんのためにわたしはゲシュルからきたのですか。なおあそこにいたならば良かったでしょうに』と言わせようとしたのです。それゆえ今わたしに王の顔を見させてください。もしわたしに罪があるなら王にわたしを殺させてください」。
8387 10 14 33 そこでヨアブは王のもとへ行って告げたので、王はアブサロムを召しよせた。彼は王のもとにきて、王の前に地にひれ伏して拝した。王はアブサロムに口づけした。
8388 10 15 1 この後、アブサロムは自分のために戦車と馬、および自分の前に駆ける者五十人を備えた。
8389 10 15 2 アブサロムは早く起きて門の道のかたわらに立つのを常とした。人が訴えがあって王に裁判を求めに来ると、アブサロムはその人を呼んで言った、「あなたはどの町の者ですか」。その人が「しもべはイスラエルのこれこれの部族のものです」と言うと、
8390 10 15 3 アブサロムはその人に言った、「見よ、あなたの要求は良く、また正しい。しかしあなたのことを聞くべき人は王がまだ立てていない」。
8391 10 15 4 アブサロムはまた言った、「ああ、わたしがこの地のさばきびとであったならばよいのに。そうすれば訴え、または申立てのあるものは、皆わたしの所にきて、わたしはこれに公平なさばきを行うことができるのだが」。
8392 10 15 5 そして人が彼に敬礼しようとして近づくと、彼は手を伸べ、その人を抱きかかえて口づけした。
8393 10 15 6 アブサロムは王にさばきを求めて来るすべてのイスラエルびとにこのようにした。こうしてアブサロムはイスラエルの人々の心を自分のものとした。
8394 10 15 7 そして四年の終りに、アブサロムは王に言った、「どうぞわたしを行かせ、ヘブロンで、かつて主に立てた誓いを果させてください。
8395 10 15 8 それは、しもべがスリヤのゲシュルにいた時、誓いを立てて、『もし主がほんとうにわたしをエルサレムに連れ帰ってくださるならば、わたしは主に礼拝をささげます』と言ったからです」。
8396 10 15 9 王が彼に、「安らかに行きなさい」と言ったので、彼は立ってヘブロンへ行った。
8397 10 15 10 そしてアブサロムは密使をイスラエルのすべての部族のうちにつかわして言った、「ラッパの響きを聞くならば、『アブサロムがヘブロンで王となった』と言いなさい」。
8398 10 15 11 二百人の招かれた者がエルサレムからアブサロムと共に行った。彼らは何心なく行き、何事をも知らなかった。
8399 10 15 12 アブサロムは犠牲をささげている間に人をつかわして、ダビデの議官ギロびとアヒトペルを、その町ギロから呼び寄せた。徒党は強く、民はしだいにアブサロムに加わった。
8400 10 15 13 ひとりの使者がダビデのところにきて、「イスラエルの人々の心はアブサロムに従いました」と言った。
8401 10 15 14 ダビデは、自分と一緒にエルサレムにいるすべての家来に言った、「立て、われわれは逃げよう。そうしなければアブサロムの前からのがれることはできなくなるであろう。急いで行くがよい。さもないと、彼らが急ぎ追いついて、われわれに害をこうむらせ、つるぎをもって町を撃つであろう」。
8402 10 15 15 王のしもべたちは王に言った、「しもべたちは、わが主君、王の選ばれる所をすべて行います」。
8403 10 15 16 こうして王は出て行き、その全家は彼に従った。王は十人のめかけを残して家を守らせた。
8404 10 15 17 王は出て行き、民はみな彼に従った。彼らは町はずれの家にとどまった。
8405 10 15 18 彼のしもべたちは皆、彼のかたわらを進み、すべてのケレテびとと、すべてのペレテびと、および彼に従ってガテからきた六百人のガテびとは皆、王の前に進んだ。
8406 10 15 19 時に王はガテびとイッタイに言った、「どうしてあなたもまた、われわれと共に行くのですか。あなたは帰って王と共にいなさい。あなたは外国人で、また自分の国から追放された者だからです。
8407 10 15 20 あなたは、きのう来たばかりです。わたしは自分の行く所を知らずに行くのに、どうしてきょう、あなたを、われわれと共にさまよわせてよいでしょう。あなたは帰りなさい。あなたの兄弟たちも連れて帰りなさい。どうぞ主が恵みと真実をあなたに示してくださるように」。
8408 10 15 21 しかしイッタイは王に答えた、「主は生きておられる。わが君、王は生きておられる。わが君、王のおられる所に、死ぬも生きるも、しもべもまたそこにおります」。
8409 10 15 22 ダビデはイッタイに言った、「では進んで行きなさい」。そこでガテびとイッタイは進み、また彼のすべての従者および彼と共にいた子どもたちも皆、進んだ。
8410 10 15 23 国中みな大声で泣いた。民はみな進んだ。王もまたキデロンの谷を渡って進み、民は皆進んで荒野の方に向かった。
8411 10 15 24 そしてアビヤタルも上ってきた。見よ、ザドクおよび彼と共にいるすべてのレビびともまた、神の契約の箱をかいてきた。彼らは神の箱をおろして、民がことごとく町を出てしまうのを待った。
8412 10 15 25 そこで王はザドクに言った、「神の箱を町にかきもどすがよい。もしわたしが主の前に恵みを得るならば、主はわたしを連れ帰って、わたしにその箱とそのすまいとを見させてくださるであろう。
8413 10 15 26 しかしもし主が、『わたしはおまえを喜ばない』とそう言われるのであれば、どうぞ主が良しと思われることをわたしにしてくださるように。わたしはここにおります」。
8414 10 15 27 王はまた祭司ザドクに言った、「見よ、あなたもアビヤタルも、ふたりの子たち、すなわちあなたの子アヒマアズとアビヤタルの子ヨナタンを連れて、安らかに町に帰りなさい。
8415 10 15 28 わたしはあなたがたから言葉があって知らせをうけるまで、荒野の渡し場にとどまります」。
8416 10 15 29 そこでザドクとアビヤタルは神の箱をエルサレムにかきもどり、そこにとどまった。
8417 10 15 30 ダビデはオリブ山の坂道を登ったが、登る時に泣き、その頭をおおい、はだしで行った。彼と共にいる民もみな頭をおおって登り、泣きながら登った。
8418 10 15 31 時に、「アヒトペルがアブサロムと共謀した者のうちにいる」とダビデに告げる人があったのでダビデは言った、「主よ、どうぞアヒトペルの計略を愚かなものにしてください」。
8419 10 15 32 ダビデが山の頂にある神を礼拝する場所にきた時、見よ、アルキびとホシャイはその上着を裂き、頭に土をかぶり、来てダビデを迎えた。
8420 10 15 33 ダビデは彼に言った、「もしあなたがわたしと共に進むならば、わたしの重荷となるであろう。
8421 10 15 34 しかしもしあなたが町に帰ってアブサロムに向かい、『王よ、わたしはあなたのしもべとなります。わたしがこれまで、あなたの父のしもべであったように、わたしは今あなたのしもべとなります』と言うならば、あなたはわたしのためにアヒトペルの計略を破ることができるであろう。
8422 10 15 35 祭司たち、ザドクとアビヤタルとは、あなたと共にあそこにいるではないか。それゆえ、あなたは王の家から聞くことをことごとく祭司たち、ザドクとアビヤタルとに告げなさい。
8423 10 15 36 あそこには彼らと共にそのふたりの子たち、すなわちザドクの子アヒマアズとアビヤタルの子ヨナタンとがいる。あなたがたは聞いたことをことごとく彼らの手によってわたしに通報しなさい」。
8424 10 15 37 そこでダビデの友ホシャイは町にはいった。その時アブサロムはすでにエルサレムにはいっていた。
8425 10 16 1 ダビデが山の頂を過ぎて、すこし行った時、メピボセテのしもべヂバは、くらを置いた二頭のろばを引き、その上にパン二百個、干ぶどう百ふさ、夏のくだもの一百、ぶどう酒一袋を載せてきてダビデを迎えた。
8426 10 16 2 王はヂバに言った、「あなたはどうしてこれらのものを持ってきたのですか」。ヂバは答えた、「ろばは王の家族が乗るため、パンと夏のくだものは若者たちが食べるため、ぶどう酒は荒野で弱った者が飲むためです」。
8427 10 16 3 王は言った、「あなたの主人の子はどこにおるのですか」。ヂバは王に言った、「エルサレムにとどまっています。彼は、『イスラエルの家はきょう、わたしの父の国をわたしに返すであろう』と思ったのです」。
8428 10 16 4 王はヂバに言った、「見よ、メピボセテのものはことごとくあなたのものです」。ヂバは言った、「わたしは敬意を表します。わが主、王よ、あなたの前にいつまでも恵みを得させてください」。
8429 10 16 5 ダビデ王がバホリムにきた時、サウルの家の一族の者がひとりそこから出てきた。その名をシメイといい、ゲラの子である。彼は出てきながら絶えずのろった。
8430 10 16 6 そして彼はダビデとダビデ王のもろもろの家来に向かって石を投げた。その時、民と勇士たちはみな王の左右にいた。
8431 10 16 7 シメイはのろう時にこう言った、「血を流す人よ、よこしまな人よ、立ち去れ、立ち去れ。
8432 10 16 8 あなたが代って王となったサウルの家の血をすべて主があなたに報いられたのだ。主は王国をあなたの子アブサロムの手に渡された。見よ、あなたは血を流す人だから、災に会うのだ」。
8433 10 16 9 時にゼルヤの子アビシャイは王に言った、「この死んだ犬がどうしてわが主、王をのろってよかろうか。わたしに、行って彼の首を取らせてください」。
8434 10 16 10 しかし王は言った、「ゼルヤの子たちよ、あなたがたと、なんのかかわりがあるのか。彼がのろうのは、主が彼に、『ダビデをのろえ』と言われたからであるならば、だれが、『あなたはどうしてこういうことをするのか』と言ってよいであろうか」。
8435 10 16 11 ダビデはまたアビシャイと自分のすべての家来とに言った、「わたしの身から出たわが子がわたしの命を求めている。今、このベニヤミンびととしてはなおさらだ。彼を許してのろわせておきなさい。主が彼に命じられたのだ。
8436 10 16 12 主はわたしの悩みを顧みてくださるかもしれない。また主はきょう彼ののろいにかえて、わたしに善を報いてくださるかも知れない」。
8437 10 16 13 こうしてダビデとその従者たちとは道を行ったが、シメイはダビデに並んで向かいの山の中腹を行き、行きながらのろい、また彼に向かって石や、ちりを投げつけた。
8438 10 16 14 王および共にいる民はみな疲れてヨルダンに着き、彼はその所で息をついだ。
8439 10 16 15 さてアブサロムとすべての民、イスラエルの人々はエルサレムにきた。アヒトペルもアブサロムと共にいた。
8440 10 16 16 ダビデの友であるアルキびとホシャイがアブサロムのもとにきた時、ホシャイはアブサロムに「王万歳、王万歳」と言った。
8441 10 16 17 アブサロムはホシャイに言った、「これはあなたがその友に示す真実なのか。あなたはどうしてあなたの友と一緒に行かなかったのか」。
8442 10 16 18 ホシャイはアブサロムに言った、「いいえ、主とこの民とイスラエルのすべての人々が選んだ者にわたしは属し、かつその人と一緒におります。
8443 10 16 19 かつまたわたしはだれに仕えるべきですか。その子の前に仕えるべきではありませんか。あなたの父の前に仕えたように、わたしはあなたの前に仕えます」。
8444 10 16 20 そこでアブサロムはアヒトペルに言った、「あなたがたは、われわれがどうしたらよいのか、計りごとを述べなさい」。
8445 10 16 21 アヒトペルはアブサロムに言った、「あなたの父が家を守るために残された、めかけたちの所にはいりなさい。そうすればイスラエルは皆あなたが父上に憎まれることを聞くでしょう。そしてあなたと一緒にいる者の手は強くなるでしょう」。
8446 10 16 22 こうして彼らがアブサロムのために屋上に天幕を張ったので、アブサロムは全イスラエルの目の前で父のめかけたちの所にはいった。
8447 10 16 23 そのころアヒトペルが授ける計りごとは人が神のみ告げを伺うようであった。アヒトペルの計りごとは皆ダビデにもアブサロムにも共にそのように思われた。
8448 10 17 1 時にアヒトペルはアブサロムに言った、「わたしに一万二千の人を選び出させてください。わたしは立って、今夜ダビデのあとを追い、
8449 10 17 2 彼が疲れて手が弱くなっているところを襲って、彼をあわてさせましょう。そして彼と共にいる民がみな逃げるとき、わたしは王ひとりを撃ち取り、
8450 10 17 3 すべての民を花嫁がその夫のもとに帰るようにあなたに帰らせましょう。あなたが求めておられるのはただひとりの命だけですから、民はみな穏やかになるでしょう」。
8451 10 17 4 この言葉はアブサロムとイスラエルのすべての長老の心にかなった。
8452 10 17 5 そこでアブサロムは言った、「アルキびとホシャイをも呼びよせなさい。われわれは彼の言うことを聞きましょう」。
8453 10 17 6 ホシャイがアブサロムのもとにきた時、アブサロムは彼に言った、「アヒトペルはこのように言った。われわれは彼の言葉のように行うべきか。いけないのであれば、言いなさい」。
8454 10 17 7 ホシャイはアブサロムに言った、「このたびアヒトペルが授けた計りごとは良くありません」。
8455 10 17 8 ホシャイはまた言った、「ごぞんじのように、あなたの父とその従者たちとは勇士です。その上彼らは、野で子を奪われた熊のように、ひどく怒っています。また、あなたの父はいくさびとですから、民と共に宿らないでしょう。
8456 10 17 9 彼は今でも穴の中か、どこかほかの所にかくれています。もし民のうちの幾人かが手始めに倒れるならば、それを聞く者はだれでも、『アブサロムに従う民のうちに戦死者があった』と言うでしょう。
8457 10 17 10 そうすれば、ししの心のような心のある勇ましい人であっても、恐れて消え去ってしまうでしょう。それはイスラエルのすべての人が、あなたの父の勇士であること、また彼と共にいる者が、勇ましい人々であることを知っているからです。
8458 10 17 11 ところでわたしの計りごとは、イスラエルをダンからベエルシバまで、海べの砂のように多くあなたのもとに集めて、あなたみずから戦いに臨むことです。
8459 10 17 12 こうしてわれわれは彼の見つかる場所で彼を襲い、つゆが地におりるように彼の上に下る。そして彼および彼と共にいるすべての人をひとりも残さないでしょう。
8460 10 17 13 もし彼がいずれかの町に退くならば、全イスラエルはその町になわをかけ、われわれはそれを谷に引き倒して、そこに一つの小石も見られないようにするでしょう」。
8461 10 17 14 アブサロムとイスラエルの人々はみな、「アルキびとホシャイの計りごとは、アヒトペルの計りごとよりもよい」と言った。それは主がアブサロムに災を下そうとして、アヒトペルの良い計りごとを破ることを定められたからである。
8462 10 17 15 そこでホシャイは祭司たち、ザドクとアビヤタルとに言った、「アヒトペルはアブサロムとイスラエルの長老たちのためにこういう計りごとをした。またわたしはこういう計りごとをした。
8463 10 17 16 それゆえ、あなたがたはすみやかに人をつかわしてダビデに告げ、『今夜、荒野の渡し場に宿らないで、必ず渡って行きなさい。さもないと王および共にいる民はみな、滅ぼされるでしょう』と言いなさい」。
8464 10 17 17 時に、ヨナタンとアヒマアズはエンロゲルで待っていた。ひとりのつかえめが行って彼らに告げ、彼らは行ってダビデ王に告げるのが常であった。それは彼らが町にはいるのを見られないようにするためである。
8465 10 17 18 ところがひとりの若者が彼らを見てアブサロムに告げたので、彼らふたりは急いで去り、バホリムの、あるひとりの人の家にきた。その人の庭に井戸があって、彼らはその中に下ったので、
8466 10 17 19 女はおおいを取ってきて井戸の口の上にひろげ、麦をその上にまき散らした。それゆえその事は何も知れなかった。
8467 10 17 20 アブサロムのしもべたちはその女の家にきて言った、「アヒマアズとヨナタンはどこにいますか」。女は彼らに言った、「あの人々は小川を渡って行きました」。彼らは尋ねたが見当らなかったのでエルサレムに帰った。
8468 10 17 21 彼らが去った後、人々は井戸から上り、行ってダビデ王に告げた。すなわち彼らはダビデに言った、「立って、すみやかに川を渡りなさい。アヒトペルがあなたがたに対してこういう計りごとをしたからです」。
8469 10 17 22 そこでダビデは立って、共にいるすべての民と一緒にヨルダンを渡った。夜明けには、ヨルダンを渡らない者はひとりもなかった。
8470 10 17 23 アヒトペルは、自分の計りごとが行われないのを見て、ろばにくらを置き、立って自分の町に行き、その家に帰った。そして家の人に遺言してみずからくびれて死に、その父の墓に葬られた。
8471 10 17 24 ダビデはマハナイムにきた。またアブサロムは自分と共にいるイスラエルのすべての人々と一緒にヨルダンを渡った。
8472 10 17 25 アブサロムはアマサをヨアブの代りに軍の長とした。アマサはかのナハシの娘でヨアブの母ゼルヤの妹であるアビガルをめとったイシマエルびと、名はイトラという人の子である。
8473 10 17 26 そしてイスラエルとアブサロムはギレアデの地に陣取った。
8474 10 17 27 ダビデがマハナイムにきた時、アンモンの人々のうちのラバのナハシの子ショビと、ロ・デバルのアンミエルの子マキル、およびロゲリムのギレアデびとバルジライは、
8475 10 17 28 寝床と鉢、土器、小麦、大麦、粉、いり麦、豆、レンズ豆、
8476 10 17 29 蜜、凝乳、羊、乾酪をダビデおよび共にいる民が食べるために持ってきた。それは彼らが、「民は荒野で飢え疲れかわいている」と思ったからである。
8477 10 18 1 さてダビデは自分と共にいる民を調べて、その上に千人の長、百人の長を立てた。
8478 10 18 2 そしてダビデは民をつかわし、三分の一をヨアブの手に、三分の一をゼルヤの子ヨアブの兄弟アビシャイの手に、三分の一をガテびとイッタイの手にあずけた。こうして王は民に言った、「わたしもまた必ずあなたがたと一緒に出ます」。
8479 10 18 3 しかし民は言った、「あなたは出てはなりません。それはわれわれがどんなに逃げても、彼らはわれわれに心をとめず、われわれの半ばが死んでも、われわれに心をとめないからです。しかしあなたはわれわれの一万に等しいのです。それゆえあなたは町の中からわれわれを助けてくださる方がよろしい」。
8480 10 18 4 王は彼らに言った、「あなたがたの最も良いと思うことをわたしはしましょう」。こうして王は門のかたわらに立ち、民は皆あるいは百人、あるいは千人となって出て行った。
8481 10 18 5 王はヨアブ、アビシャイおよびイッタイに命じて、「わたしのため、若者アブサロムをおだやかに扱うように」と言った。王がアブサロムの事についてすべての長たちに命じている時、民は皆聞いていた。
8482 10 18 6 こうして民はイスラエルに向かって野に出て行き、エフライムの森で戦ったが、
8483 10 18 7 イスラエルの民はその所でダビデの家来たちの前に敗れた。その日その所に戦死者が多く、二万に及んだ。
8484 10 18 8 そして戦いはあまねくその地のおもてに広がった。この日、森の滅ぼした者は、つるぎの滅ぼした者よりも多かった。
8485 10 18 9 さてアブサロムはダビデの家来たちに行き会った。その時アブサロムは騾馬に乗っていたが、騾馬は大きいかしの木の、茂った枝の下を通ったので、アブサロムの頭がそのかしの木にかかって、彼は天地の間につりさがった。騾馬は彼を捨てて過ぎて行った。
8486 10 18 10 ひとりの人がそれを見てヨアブに告げて言った、「わたしはアブサロムが、かしの木にかかっているのを見ました」。
8487 10 18 11 ヨアブはそれを告げた人に言った、「あなたはそれを見たというのか。それなら、どうしてあなたは彼をその所で、地に撃ち落さなかったのか。わたしはあなたに銀十シケルと帯一筋を与えたであろうに」。
8488 10 18 12 その人はヨアブに言った、「たといわたしの手に銀千シケルを受けても、手を出して王の子に敵することはしません。王はわれわれが聞いているところで、あなたとアビシャイとイッタイに、『わたしのため若者アブサロムを保護せよ』と命じられたからです。
8489 10 18 13 もしわたしがそむいて彼の命をそこなったのであれば、何事も王に隠れることはありませんから、あなたはみずから立ってわたしを責められたでしょう」。
8490 10 18 14 そこで、ヨアブは「こうしてあなたと共にとどまってはおられない」と言って、手に三筋の投げやりを取り、あのかしの木にかかって、なお生きているアブサロムの心臓にこれを突き通した。
8491 10 18 15 ヨアブの武器を執る十人の若者たちは取り巻いて、アブサロムを撃ち殺した。
8492 10 18 16 こうしてヨアブがラッパを吹いたので、民はイスラエルのあとを追うことをやめて帰った。ヨアブが民を引きとめたからである。
8493 10 18 17 人々はアブサロムを取って、森の中の大きな穴に投げいれ、その上にひじょうに大きい石塚を積み上げた。そしてイスラエルはみなおのおのその天幕に逃げ帰った。
8494 10 18 18 さてアブサロムは生きている間に、王の谷に自分のために一つの柱を建てた。それは彼が、「わたしは自分の名を伝える子がない」と思ったからである。彼はその柱に自分の名をつけた。その柱は今日までアブサロムの碑ととなえられている。
8495 10 18 19 さてザドクの子アヒマアズは言った、「わたしは走って行って、主が王を敵の手から救い出されたおとずれを王に伝えましょう」。
8496 10 18 20 ヨアブは彼に言った、「きょうは、おとずれを伝えてはならない。おとずれを伝えるのは、ほかの日にしなさい。きょうは王の子が死んだので、おとずれを伝えてはならない」。
8497 10 18 21 ヨアブはクシびとに言った、「行って、あなたの見た事を王に告げなさい」。クシびとはヨアブに礼をして走って行った。
8498 10 18 22 ザドクの子アヒマアズは重ねてヨアブに言った、「何事があろうとも、わたしにもクシびとのあとから走って行かせてください」。ヨアブは言った、「子よ、おとずれの報いを得られないのに、どうしてあなたは走って行こうとするのか」。
8499 10 18 23 彼は言った、「何事があろうとも、わたしは走って行きます」。ヨアブは彼に言った、「走って行きなさい」。そこでアヒマアズは低地の道を走って行き、クシびとを追い越した。
8500 10 18 24 時にダビデは二つの門の間にすわっていた。そして見張りの者が城壁の門の屋根にのぼり、目をあげて見ていると、ただひとりで走ってくる者があった。
8501 10 18 25 見張りの者が呼ばわって王に告げたので、王は言った、「もしひとりならば、その口におとずれがあるであろう」。その人は急いできて近づいた。
8502 10 18 26 見張りの者は、ほかにまたひとり走ってくるのを見たので、門の方に呼ばわって言った、「見よ、ほかにただひとりで走って来る者があります」。王は言った、「彼もまたおとずれを持ってくるのだ」。
8503 10 18 27 見張りの者は言った、「まっ先に走って来る人はザドクの子アヒマアズのようです」。王は言った、「彼は良い人だ。良いおとずれを持ってくるであろう」。
8504 10 18 28 時にアヒマアズは呼ばわって王に言った、「平安でいらせられますように」。そして王の前に地にひれ伏して言った、「あなたの神、主はほむべきかな。主は王、わが君に敵して手をあげた人々を引き渡されました」。
8505 10 18 29 王は言った、「若者アブサロムは平安ですか」。アヒマアズは答えた、「ヨアブがしもべをつかわす時、わたしは大きな騒ぎを見ましたが、何事であったか知りません」。
8506 10 18 30 王は言った、「わきへ行って、そこに立っていなさい」。彼はわきへ行って立った。
8507 10 18 31 その時クシびとがきた。そしてそのクシびとは言った、「わが君、王が良いおとずれをお受けくださるよう。主はきょう、すべてあなたに敵して立った者どもの手から、あなたを救い出されたのです」。
8508 10 18 32 王はクシびとに言った、「若者アブサロムは平安ですか」。クシびとは答えた、「王、わが君の敵、およびすべてあなたに敵して立ち、害をしようとする者は、あの若者のようになりますように」。
8509 10 18 33 王はひじょうに悲しみ、門の上のへやに上って泣いた。彼は行きながらこのように言った、「わが子アブサロムよ。わが子、わが子アブサロムよ。ああ、わたしが代って死ねばよかったのに。アブサロム、わが子よ、わが子よ」。
8510 10 19 1 時にヨアブに告げる者があって、「見よ、王はアブサロムのために泣き悲しんでいる」と言った。
8511 10 19 2 こうしてその日の勝利はすべての民の悲しみとなった。それはその日、民が、「王はその子のために悲しんでいる」と人の言うのを聞いたからである。
8512 10 19 3 そして民はその日、戦いに逃げて恥じている民がひそかに、はいるように、ひそかに町にはいった。
8513 10 19 4 王は顔をおおった。そして王は大声に叫んで、「わが子アブサロムよ。アブサロム、わが子よ、わが子よ」と言った。
8514 10 19 5 時にヨアブは家にはいり、王のもとにきて言った、「あなたは、きょう、あなたの命と、あなたのむすこ娘たちの命、およびあなたの妻たちの命と、めかけたちの命を救ったすべての家来の顔をはずかしめられました。
8515 10 19 6 それはあなたが自分を憎む者を愛し、自分を愛する者を憎まれるからです。あなたは、きょう、軍の長たちをも、しもべたちをも顧みないことを示されました。きょう、わたしは知りました。もし、アブサロムが生きていて、われわれが皆きょう死んでいたら、あなたの目にかなったでしょう。
8516 10 19 7 今立って出て行って、しもべたちにねんごろに語ってください。わたしは主をさして誓います。もしあなたが出られないならば、今夜あなたと共にとどまる者はひとりもないでしょう。これはあなたが若い時から今までにこうむられたすべての災よりも、あなたにとって悪いでしょう」。
8517 10 19 8 そこで王は立って門のうちの座についた。人々はすべての民に、「見よ、王は門に座している」と告げたので、民はみな王の前にきた。
8518 10 19 9 そしてイスラエルのもろもろの部族の中で民はみな争って言った、「王はわれわれを敵の手から救い出し、またわれわれをペリシテびとの手から助け出された。しかし今はアブサロムのために国のそとに逃げておられる。
8519 10 19 10 またわれわれが油を注いで、われわれの上に立てたアブサロムは戦いで死んだ。それであるのに、どうしてあなたがたは王を導きかえることについて、何をも言わないのか」。
8520 10 19 11 ダビデ王は祭司たちザドクとアビヤタルとに人をつかわして言った、「ユダの長老たちに言いなさい、『全イスラエルの言葉が王に達したのに、どうしてあなたがたは王をその家に導きかえる最後の者となるのですか。
8521 10 19 12 あなたがたはわたしの兄弟、わたしの骨肉です。それにどうして王を導きかえる最後の者となるのですか』。
8522 10 19 13 またアマサに言いなさい、『あなたはわたしの骨肉ではありませんか。これから後あなたをヨアブに代えて、わたしの軍の長とします。もしそうしないときは、神が幾重にもわたしを罰してくださるように』」。
8523 10 19 14 こうしてダビデはユダのすべての人の心を、ひとりのように自分に傾けさせたので、彼らは王に、「どうぞあなたも、すべての家来たちも帰ってきてください」と言いおくった。
8524 10 19 15 そこで王は帰ってきてヨルダンまで来ると、ユダの人人は王を迎えるためギルガルにきて、王にヨルダンを渡らせた。
8525 10 19 16 バホリムのベニヤミンびと、ゲラの子シメイは、急いでユダの人々と共に下ってきて、ダビデ王を迎えた。
8526 10 19 17 一千人のベニヤミンびとが彼と共にいた。またサウルの家のしもべヂバもその十五人のむすこと、二十人のしもべを従えて、王の前にヨルダンに駆け下った。
8527 10 19 18 そして王の家族を渡し、王の心にかなうことをしようと渡し場を渡った。ゲラの子シメイはヨルダンを渡ろうとする時、王の前にひれ伏し、
8528 10 19 19 王に言った、「どうぞわが君が、罪をわたしに帰しられないように。またわが君、王のエルサレムを出られた日に、しもべがおこなった悪い事を思い出されないように。どうぞ王がそれを心に留められないように。
8529 10 19 20 しもべは自分が罪を犯したことを知っています。それゆえ、見よ、わたしはきょう、ヨセフの全家のまっ先に下ってきて、わが主、王を迎えるのです」。
8530 10 19 21 ゼルヤの子アビシャイは答えて言った、「シメイは主が油を注がれた者をのろったので、そのために殺されるべきではありませんか」。
8531 10 19 22 ダビデは言った、「あなたがたゼルヤの子たちよ、あなたがたとなにのかかわりがあって、あなたがたはきょうわたしに敵対するのか。きょう、イスラエルのうちで人を殺して良かろうか。わたしが、きょうイスラエルの王となったことを、どうして自分で知らないことがあろうか」。
8532 10 19 23 こうして王はシメイに、「あなたを殺さない」と言って、王は彼に誓った。
8533 10 19 24 サウルの子メピボセテは下ってきて王を迎えた。彼は王が去った日から安らかに帰る日まで、その足を飾らず、そのひげを整えず、またその着物を洗わなかった。
8534 10 19 25 彼がエルサレムからきて王を迎えた時、王は彼に言った、「メピボセテよ、あなたはどうしてわたしと共に行かなかったのか」。
8535 10 19 26 彼は答えた、「わが主、王よ、わたしの家来がわたしを欺いたのです。しもべは彼に、『わたしのために、ろばにくらを置け。わたしはそれに乗って王と共に行く』と言ったのです。しもべは足なえだからです。
8536 10 19 27 ところが彼はしもべのことをわが主、王の前に、あしざまに言ったのです。しかし、わが主、王は神の使のようでいらせられます。それで、あなたの良いと思われることをしてください。
8537 10 19 28 わたしの父の全家はわが主、王の前にはみな死んだ人にすぎないのに、あなたはしもべを、あなたの食卓で食事をする人々のうちに置かれました。わたしになんの権利があって、重ねて王に訴えることができましょう」。
8538 10 19 29 王は彼に言った、「あなたはどうしてなおも自分のことを言うのですか。わたしは決めました。あなたとヂバとはその土地を分けなさい」。
8539 10 19 30 メピボセテは王に言った、「わが主、王が安らかに家に帰られたのですから、彼にそれをみな取らせてください」。
8540 10 19 31 さてギレアデびとバルジライはロゲリムから下ってきて、ヨルダンで王を見送るため、王と共にヨルダンに進んだ。
8541 10 19 32 バルジライは、ひじょうに年老いた人で八十{歳であった。彼はまた、ひじょうに裕福な人であったので、王がマハナイムにとどまっている間、王を養った。
8542 10 19 33 王はバルジライに言った、「わたしと一緒に渡って行きなさい。わたしはエルサレムであなたをわたしと共におらせて養いましょう」。
8543 10 19 34 バルジライは王に言った、「わたしは、なお何年いきながらえるので、王と共にエルサレムに上るのですか。
8544 10 19 35 わたしは今日八十歳です。わたしに、良いこと悪いことがわきまえられるでしょうか。しもべは食べるもの、飲むものを味わうことができましょうか。わたしは歌う男や歌う女の声をまだ聞くことができましょうか。それであるのに、しもべはどうしてなおわが主、王の重荷となってよろしいでしょうか。
8545 10 19 36 しもべは王と共にヨルダンを渡って、ただ少し行きましょう。どうして王はこのような報いをわたしに報いられなければならないのでしょうか。
8546 10 19 37 どうぞしもべを帰らせてください。わたしは自分の町で、父母の墓の近くで死にます。ただし、あなたのしもべキムハムがここにおります。わが主、王と共に彼を渡って行かせてください。またあなたが良いと思われる事を彼にしてください」。
8547 10 19 38 王は答えた、「キムハムはわたしと共に渡って行かせます。わたしは、あなたが良いと思われる事を彼にしましょう。またあなたが望まれることはみな、あなたのためにいたします」。
8548 10 19 39 こうして民はみなヨルダンを渡った。王は渡った時、バルジライに口づけして、祝福したので、彼は自分の家に帰っていった。
8549 10 19 40 王はギルガルに進んだ。キムハムも彼と共に進んだ。ユダの民はみな王を送り、イスラエルの民の半ばもまたそうした。
8550 10 19 41 さてイスラエルの人々はみな王の所にきて、王に言った、「われわれの兄弟であるユダの人々は、何ゆえにあなたを盗み去って、王とその家族、およびダビデに伴っているすべての従者にヨルダンを渡らせたのですか」。
8551 10 19 42 ユダの人々はみなイスラエルの人々に答えた、「王はわれわれの近親だからです。あなたがたはどうしてこの事で怒られるのですか。われわれが少しでも王の物を食べたことがありますか。王が何か賜物をわれわれに与えたことがありますか」。
8552 10 19 43 イスラエルの人々はユダの人々に答えた、「われわれは王のうちに十の分を持っています。またダビデのうちにもわれわれはあなたがたよりも多くを持っています。それであるのに、どうしてあなたがたはわれわれを軽んじたのですか。われらの王を導き帰ろうと最初に言ったのはわれわれではないのですか」。しかしユダの人々の言葉はイスラエルの人々の言葉よりも激しかった。
8553 10 20 1 さて、その所にひとりのよこしまな人があって、名をシバといった。ビクリの子で、ベニヤミンびとであった。彼はラッパを吹いて言った、「われわれはダビデのうちに分がない。またエッサイの子のうちに嗣業を持たない。イスラエルよ、おのおのその天幕に帰りなさい」。
8554 10 20 2 そこでイスラエルの人々は皆ダビデに従う事をやめて、ビクリの子シバに従った。しかしユダの人々はその王につき従って、ヨルダンからエルサレムへ行った。
8555 10 20 3 ダビデはエルサレムの自分の家にきた。そして王は家を守るために残しておいた十人のめかけたちを取って、一つの家に入れて守り、また養ったが、彼女たちの所には、はいらなかった。彼女たちは死ぬ日まで閉じこめられ一生、寡婦としてすごした。
8556 10 20 4 王はアマサに言った、「わたしのため三日のうちにユダの人々を呼び集めて、ここにきなさい」。
8557 10 20 5 アマサはユダを呼び集めるために行ったが、彼は定められた時よりもおくれた。
8558 10 20 6 ダビデはアビシャイに言った、「ビクリの子シバは今われわれにアブサロムよりも多くの害をするであろう。あなたの主君の家来たちを率いて、彼のあとを追いなさい。さもないと彼は堅固な町々を獲て、われわれを悩ますであろう」。
8559 10 20 7 こうしてヨアブとケレテびととペレテびと、およびすべての勇士はアビシャイに従って出た。すなわち彼らはエルサレムを出て、ビクリの子シバのあとを追った。
8560 10 20 8 彼らがギベオンにある大石のところにいた時、アマサがきて彼らに会った。時にヨアブは軍服を着て、帯をしめ、その上にさやに納めたつるぎを腰に結んで帯びていたが、彼が進み出た時つるぎは抜け落ちた。
8561 10 20 9 ヨアブはアマサに、「兄弟よ、あなたは安らかですか」と言って、ヨアブは右の手をもってアマサのひげを捕えて彼に口づけしようとしたが、
8562 10 20 10 アマサはヨアブの手につるぎがあることに気づかなかったので、ヨアブはそれをもってアマサの腹部を刺して、そのはらわたを地に流し出し、重ねて撃つこともなく彼を殺した。
8563 10 20 11 時にヨアブの若者のひとりがアマサのかたわらに立って言った、「ヨアブに味方する者、ダビデにつく者はヨアブのあとに従いなさい」。
8564 10 20 12 アマサは血に染んで大路の中にころがっていたので、そのそばに来る者はみな彼を見て立ちどまった。この人は民がみな立ちどまるのを見て、アマサを大路から畑に移し、衣服をその上にかけた。
8565 10 20 13 アマサが大路から移されたので、民は皆ヨアブに従って進み、ビクリの子シバのあとを追った。
8566 10 20 14 シバはイスラエルのすべての部族のうちを通ってベテマアカのアベルにきた。ビクリびとは皆、集まってきて彼に従った。
8567 10 20 15 そこでヨアブと共にいたすべての人々がきて、彼をベテマアカのアベルに囲み、町に向かって土塁を築いた。それはとりでに向かって立てられた。こうして彼らは城壁をくずそうとしてこれを撃った。
8568 10 20 16 その時、ひとりの賢い女が町から呼ばわった、「あなたがたは聞きなさい。あなたがたは聞きなさい。ヨアブに、『ここにきてください。わたしはあなたに言うことがあります』と言ってください」。
8569 10 20 17 彼がその女に近寄ると、女は「あなたがヨアブですか」と言った。彼は「そうです」と答えた。すると女は彼に「はしための言葉をお聞きください」と言ったので、「聞きましょう」と彼は言った。
8570 10 20 18 そこで女は言った、「昔、人々はいつも、『アベルで尋ねなさい』と言って、事を定めました。
8571 10 20 19 わたしはイスラエルのうちの平和な、忠誠な者です。そうであるのに、あなたはイスラエルのうちで母ともいうべき町を滅ぼそうとしておられます。どうして主の嗣業を、のみ尽そうとされるのですか」。
8572 10 20 20 ヨアブは答えた、「いいえ、決してそうではなく、わたしが、のみ尽したり、滅ぼしたりすることはありません。
8573 10 20 21 事実はそうではなく、エフライムの山地の人ビクリの子、名をシバという者が手をあげて王ダビデにそむいたのです。あなたがたが彼ひとりを渡すならば、わたしはこの町を去ります」。女はヨアブに言った、「彼の首は城壁の上からあなたの所へ投げられるでしょう」。
8574 10 20 22 こうしてこの女が知恵をもって、すべての民の所に行ったので、彼らはビクリの子シバの首をはねてヨアブの所へ投げ出した。そこでヨアブはラッパを吹きならしたので、人々は散って町を去り、おのおの家に帰った。ヨアブはエルサレムにいる王のもとに帰った。
8575 10 20 23 ヨアブはイスラエルの全軍の長であった。エホヤダの子ベナヤはケレテびと、およびペレテびとの長、
8576 10 20 24 アドラムは徴募人の長、アヒルデの子ヨシャパテは史官、
8577 10 20 25 シワは書記官、ザドクとアビヤタルとは祭司。
8578 10 20 26 またヤイルびとイラはダビデの祭司であった。
8579 10 21 1 ダビデの世に、年また年と三年、ききんがあったので、ダビデが主に尋ねたところ、主は言われた、「サウルとその家とに、血を流した罪がある。それはかつて彼がギベオンびとを殺したためである」。
8580 10 21 2 そこで王はギベオンびとを召しよせた。ギベオンびとはイスラエルの子孫ではなく、アモリびとの残りであって、イスラエルの人々は彼らと誓いを立てて、その命を助けた。ところがサウルはイスラエルとユダの人々のために熱心であったので、彼らを殺そうとしたのである。
8581 10 21 3 それでダビデはギベオンびとに言った、「わたしはあなたがたのために、何をすればよいのですか。どんな償いをすれば、あなたがたは主の嗣業を祝福するのですか」。
8582 10 21 4 ギベオンびとは彼に言った、「これはわれわれと、サウルまたはその家との間の金銀の問題ではありません。またイスラエルのうちのひとりでも、われわれが殺そうというのでもありません」。ダビデは言った、「わたしがあなたがたのために何をすればよいと言うのですか」。
8583 10 21 5 かれらは王に言った、「われわれを滅ぼした人、われわれを滅ぼしてイスラエルの領域のどこにもおらせないようにと、たくらんだ人、
8584 10 21 6 その人の子孫七人を引き渡してください。われわれは主の山にあるギベオンで、彼らを主の前に木にかけましょう」。王は言った、「引き渡しましょう」。
8585 10 21 7 しかし王はサウルの子ヨナタンの子であるメピボセテを惜しんだ。彼らの間、すなわちダビデとサウルの子ヨナタンとの間に、主をさして立てた誓いがあったからである。
8586 10 21 8 王はアヤの娘リヅパがサウルに産んだふたりの子アルモニとメピボセテ、およびサウルの娘メラブがメホラびとバルジライの子アデリエルに産んだ五人の子を取って、
8587 10 21 9 彼らをギベオンびとの手に引き渡したので、ギベオンびとは彼らを山で主の前に木にかけた。彼ら七人は共に倒れた。彼らは刈入れの初めの日、すなわち大麦刈りの初めに殺された。
8588 10 21 10 アヤの娘リヅパは荒布をとって、それを自分のために岩の上に敷き、刈入れの初めから、その人々の死体の上に天から雨が降るまで、昼は空の鳥が死体の上にこないようにし、夜は野の獣を近寄らせなかった。
8589 10 21 11 アヤの娘でサウルのめかけであったリヅパのしたことがダビデに聞えたので、
8590 10 21 12 ダビデは行ってサウルの骨とその子ヨナタンの骨を、ヤベシギレアデの人々の所から取ってきた。これはペリシテびとがサウルをギルボアで殺した日に、木にかけたベテシャンの広場から、彼らが盗んでいたものである。
8591 10 21 13 ダビデはそこからサウルの骨と、その子ヨナタンの骨を携えて上った。また人々はそのかけられた者どもの骨を集めた。
8592 10 21 14 こうして彼らはサウルとその子ヨナタンの骨を、ベニヤミンの地のゼラにあるその父キシの墓に葬り、すべて王の命じたようにした。この後、神はその地のために、祈を聞かれた。
8593 10 21 15 ペリシテびとはまたイスラエルと戦争をした。ダビデはその家来たちと共に下ってペリシテびとと戦ったが、ダビデは疲れていた。
8594 10 21 16 時にイシビベノブはダビデを殺そうと思った。イシビベノブは巨人の子孫で、そのやりは青銅で重さ三百シケルあり、彼は新しいつるぎを帯びていた。
8595 10 21 17 しかしゼルヤの子アビシャイはダビデを助けて、そのペリシテびとを撃ち殺した。そこでダビデの従者たちは彼に誓って言った、「あなたはわれわれと共に、重ねて戦争に出てはなりません。さもないと、あなたはイスラエルのともし火を消すでしょう」。
8596 10 21 18 この後、再びゴブでペリシテびととの戦いがあった。時にホシャびとシベカイは巨人の子孫のひとりサフを殺した。
8597 10 21 19 ここにまたゴブで、ペリシテびととの戦いがあったが、そこではベツレヘムびとヤレオレギムの子エルハナンは、ガテびとゴリアテを殺した。そのやりの柄は機の巻棒のようであった。
8598 10 21 20 またガテで再び戦いがあったが、そこにひとりの背の高い人があり、その手の指と足の指は六本ずつで、その数は合わせて二十四本であった。彼もまた巨人から生れた者であった。
8599 10 21 21 彼はイスラエルをののしったので、ダビデの兄弟シメアの子ヨナタンが彼を殺した。
8600 10 21 22 これらの四人はガテで巨人から生れた者であったが、ダビデの手とその家来たちの手に倒れた。
8601 10 22 1 ダビデは主がもろもろの敵の手とサウルの手から、自分を救い出された日に、この歌の言葉を主に向かって述べ、
8602 10 22 2 彼は言った、「主はわが岩、わが城、わたしを救う者、
8603 10 22 3 わが神、わが岩。わたしは彼に寄り頼む。わが盾、わが救の角、わが高きやぐら、わが避け所、わが救主。あなたはわたしを暴虐から救われる。
8604 10 22 4 わたしは、ほめまつるべき主に呼ばわって、わたしの敵から救われる。
8605 10 22 5 死の波はわたしをとりまき、滅びの大水はわたしを襲った。
8606 10 22 6 陰府の綱はわたしをとりかこみ、死のわなはわたしに、たち向かった。
8607 10 22 7 苦難のうちにわたしは主を呼び、またわが神に呼ばわった。主がその宮からわたしの声を聞かれて、わたしの叫びはその耳にとどいた。
8608 10 22 8 その時地は震いうごき、天の基はゆるぎふるえた。彼が怒られたからである。
8609 10 22 9 煙はその鼻からたち上り、火はその口から出て焼きつくし、白熱の炭は彼から燃え出た。
8610 10 22 10 彼は天を低くして下られ、暗やみが彼の足の下にあった。
8611 10 22 11 彼はケルブに乗って飛び、風の翼に乗ってあらわれた。
8612 10 22 12 彼はその周囲に幕屋として、やみと濃き雲と水の集まりとを置かれた。
8613 10 22 13 そのみ前の輝きから炭火が燃え出た。
8614 10 22 14 主は天から雷をとどろかせ、いと高き者は声を出された。
8615 10 22 15 彼はまた矢を放って彼らを散らし、いなずまを放って彼らを撃ち破られた。
8616 10 22 16 主のとがめと、その鼻のいぶきとによって、海の底はあらわれ、世界の基が、あらわになった。
8617 10 22 17 彼は高き所から手を伸べてわたしを捕え、大水の中からわたしを引き上げ、
8618 10 22 18 わたしの強い敵と、わたしを憎む者とからわたしを救われた。彼らはわたしにとって、あまりにも強かったからだ。
8619 10 22 19 彼らはわたしの災の日にわたしに、たち向かった。しかし主はわたしの支柱となられた。
8620 10 22 20 彼はまたわたしを広い所へ引きだされ、わたしを喜ばれて、救ってくださった。
8621 10 22 21 主はわたしの義にしたがってわたしに報い、わたしの手の清きにしたがってわたしに報いかえされた。
8622 10 22 22 それは、わたしが主の道を守り、悪を行わず、わが神から離れたことがないからである。
8623 10 22 23 そのすべてのおきてはわたしの前にあって、わたしはその、み定めを離れたことがない。
8624 10 22 24 わたしは主の前に欠けた所なく、自らを守って罪を犯さなかった。
8625 10 22 25 それゆえ、主はわたしの義にしたがい、その目のまえにわたしの清きにしたがって、わたしに報いられた。
8626 10 22 26 忠実な者には、あなたは忠実な者となり、欠けた所のない人には、あなたは欠けた所のない者となり、
8627 10 22 27 清い者には、あなたは清い者となり、まがった者には、かたいぢな者となられる。
8628 10 22 28 あなたはへりくだる民を救われる、しかしあなたの目は高ぶる者を見てこれをひくくせられる。
8629 10 22 29 まことに、主よ、あなたはわたしのともし火、わが神はわたしのやみを照される。
8630 10 22 30 まことに、あなたによってわたしは敵軍をふみ滅ぼし、わが神によって石がきをとび越えることができる。
8631 10 22 31 この神こそ、その道は非のうちどころなく、主の約束は真実である。彼はすべて彼に寄り頼む者の盾である。
8632 10 22 32 主のほかに、だれが神か、われらの神のほか、だれが岩であるか。
8633 10 22 33 この神こそわたしの堅固な避け所であり、わたしの道を安全にされた。
8634 10 22 34 わたしの足をめじかの足のようにして、わたしを高い所に安全に立たせ、
8635 10 22 35 わたしの手を戦いに慣らされたので、わたしの腕は青銅の弓を引くことができる。
8636 10 22 36 あなたはその救の盾をわたしに与え、あなたの助けは、わたしを大いなる者とされた。
8637 10 22 37 あなたはわたしが歩く広い場所を与えられたので、わたしの足はすべらなかった。
8638 10 22 38 わたしは敵を追って、これを滅ぼし、これを絶やすまでは帰らなかった。
8639 10 22 39 わたしは彼らを絶やし、彼らを砕いたので彼らは立つことができず、わたしの足もとに倒れた。
8640 10 22 40 あなたは戦いのために、わたしに力を帯びさせわたしを攻める者をわたしの下にかがませられた。
8641 10 22 41 あなたによって、敵はそのうしろをわたしに向けたので、わたしを憎む者をわたしは滅ぼした。
8642 10 22 42 彼らは見まわしたが、救う者はいなかった。彼らは主に叫んだが、彼らには答えられなかった。
8643 10 22 43 わたしは彼らを地のちりのように細かに打ちくだき、ちまたのどろのように、踏みにじった。
8644 10 22 44 あなたはわたしを国々の民との争いから救い出し、わたしをもろもろの国民のかしらとされた。わたしの知らなかった民がわたしに仕えた。
8645 10 22 45 異国の人たちはきてわたしにこび、わたしの事を聞くとすぐわたしに従った。
8646 10 22 46 異国の人たちは、うちしおれてその城からふるえながら出てきた。
8647 10 22 47 主は生きておられる。わが岩はほむべきかな。わが神、わが救の岩はあがむべきかな。
8648 10 22 48 この神はわたしのために、あだを報い、もろもろの民をわたしの下に置かれた。
8649 10 22 49 またわたしを敵から救い出し、あだの上にわたしをあげ、暴虐の人々からわたしを救い出された。
8650 10 22 50 それゆえ、主よ、わたしはもろもろの国民の中で、あなたをたたえ、あなたの、み名をほめ歌うであろう。
8651 10 22 51 主はその王に大いなる勝利を与え、油を注がれた者に、ダビデとその子孫とに、とこしえに、いつくしみを施される」。
8652 10 23 1 これはダビデの最後の言葉である。エッサイの子ダビデの託宣、すなわち高く挙げられた人、ヤコブの神に油を注がれた人、イスラエルの良き歌びとの託宣。
8653 10 23 2 「主の霊はわたしによって語る、その言葉はわたしの舌の上にある。
8654 10 23 3 イスラエルの神は語られた、イスラエルの岩はわたしに言われた、『人を正しく治める者、神を恐れて、治める者は、
8655 10 23 4 朝の光のように、雲のない朝に、輝きでる太陽のように、地に若草を芽ばえさせる雨のように人に臨む』。
8656 10 23 5 まことに、わが家はそのように、神と共にあるではないか。それは、神が、よろず備わって確かなとこしえの契約をわたしと結ばれたからだ。どうして彼はわたしの救と願いを、皆なしとげられぬことがあろうか。
8657 10 23 6 しかし、よこしまな人は、いばらのようで、手をもって取ることができないゆえ、みな共に捨てられるであろう。
8658 10 23 7 これに触れようとする人は鉄や、やりの柄をもって武装する、彼らはことごとく火で焼かれるであろう」。
8659 10 23 8 ダビデの勇士たちの名は次のとおりである。タクモンびとヨセブ・バッセベテはかの三人のうちの長であったが、彼はいちじに八百人に向かって、やりをふるい、それを殺した。
8660 10 23 9 彼の次はアホアびとドドの子エレアザルであって、三勇士のひとりである。彼は、戦おうとしてそこに集まったペリシテびとに向かって戦いをいどみ、イスラエルの人々が退いた時、ダビデと共にいたが、
8661 10 23 10 立ってペリシテびとを撃ち、ついに手が疲れ、手がつるぎに着いて離れないほどになった。その日、主は大いなる勝利を与えられた。民は彼のあとに帰ってきて、ただ殺された者をはぎ取るばかりであった。
8662 10 23 11 彼の次はハラルびとアゲの子シャンマであった。ある時、ペリシテびとはレヒに集まった。そこに一面にレンズ豆を作った地所があった。民はペリシテびとの前から逃げたが、
8663 10 23 12 彼はその地所の中に立って、これを防ぎ、ペリシテびとを殺した。そして主は大いなる救を与えられた。
8664 10 23 13 三十人の長たちのうちの三人は下って行って刈入れのころに、アドラムのほら穴にいるダビデのもとにきた。時にペリシテびとの一隊はレパイムの谷に陣を取っていた。
8665 10 23 14 その時ダビデは要害におり、ペリシテびとの先陣はベツレヘムにあったが、
8666 10 23 15 ダビデは、せつに望んで、「だれかベツレヘムの門のかたわらにある井戸の水をわたしに飲ませてくれるとよいのだが」と言った。
8667 10 23 16 そこでその三人の勇士たちはペリシテびとの陣を突き通って、ベツレヘムの門のかたわらにある井戸の水を汲み取って、ダビデのもとに携えてきた。しかしダビデはそれを飲もうとはせず、主の前にそれを注いで、
8668 10 23 17 言った、「主よ、わたしは断じて飲むことをいたしません。いのちをかけて行った人々の血を、どうしてわたしは飲むことができましょう」。こうして彼はそれを飲もうとはしなかった。三勇士はこれらのことを行った。
8669 10 23 18 ゼルヤの子ヨアブの兄弟アビシャイは三十人の長であった。彼は三百人に向かって、やりをふるい、それを殺した。そして、彼は三人と共に名を得た。
8670 10 23 19 彼は三十人のうち最も尊ばれた者で、彼らの長となった。しかし、かの三人には及ばなかった。
8671 10 23 20 エホヤダの子ベナヤはカブジエル出身の勇士であって、多くのてがらを立てた。彼はモアブのアリエルのふたりの子を撃ち殺した。彼はまた雪の日に下っていって、穴の中でししを撃ち殺した。
8672 10 23 21 彼はまた姿のうるわしいエジプトびとを撃ち殺した。そのエジプトびとは手にやりを持っていたが、ベナヤはつえをとってその所に下っていき、エジプトびとの手からやりをもぎとって、そのやりをもって殺した。
8673 10 23 22 エホヤダの子ベナヤはこれらの事をして三勇士と共に名を得た。
8674 10 23 23 彼は三十人のうちに有名であったが、かの三人には及ばなかった。ダビデは彼を侍衛の長とした。
8675 10 23 24 三十人のうちにあったのは、ヨアブの兄弟アサヘル。ベツレヘム出身のドドの子エルハナン。
8676 10 23 25 ハロデ出身のシャンマ。ハロデ出身のエリカ。
8677 10 23 26 パルテびとヘレヅ。テコア出身のイッケシの子イラ。
8678 10 23 27 アナトテ出身のアビエゼル。ホシャびとメブンナイ。
8679 10 23 28 アホアびとザルモン。ネトパ出身のマハライ。
8680 10 23 29 ネトパ出身のバアナの子ヘレブ。ベニヤミンびとのギベアから出たリバイの子イッタイ。
8681 10 23 30 ピラトンのベナヤ。ガアシの谷出身のヒダイ。
8682 10 23 31 アルバテびとアビアルボン。バホリム出身のアズマウテ。
8683 10 23 32 シャルボン出身のエリヤバ。ヤセンの子たち。ヨナタン。
8684 10 23 33 ハラルびとシャンマ。ハラルびとシャラルの子アヒアム。
8685 10 23 34 マアカ出身のアハスバイの子エリペレテ。ギロ出身のアヒトペルの子エリアム。
8686 10 23 35 カルメル出身のヘヅロ。アルバびとパアライ。
8687 10 23 36 ゾバ出身のナタンの子イガル。ガドびとバニ。
8688 10 23 37 アンモンびとゼレク。ゼルヤの子ヨアブの武器を執る者、ベエロテ出身のナハライ。
8689 10 23 38 イテルびとイラ。イテルびとガレブ。
8690 10 23 39 ヘテびとウリヤ。合わせて三十七人である。
8691 10 24 1 主は再びイスラエルに向かって怒りを発し、ダビデを感動して彼らに逆らわせ、「行ってイスラエルとユダとを数えよ」と言われた。
8692 10 24 2 そこで王はヨアブおよびヨアブと共にいる軍の長たちに言った、「イスラエルのすべての部族のうちを、ダンからベエルシバまで行き巡って民を数え、わたしに民の数を知らせなさい」。
8693 10 24 3 ヨアブは王に言った、「どうぞあなたの神、主が、民を今よりも百倍に増してくださいますように。そして王、わが主がまのあたり、それを見られますように。しかし王、わが主は何ゆえにこの事を喜ばれるのですか」。
8694 10 24 4 しかし王の言葉がヨアブと軍の長たちとに勝ったので、ヨアブと軍の長たちとは王の前を退き、イスラエルの民を数えるために出て行った。
8695 10 24 5 彼らはヨルダンを渡り、アロエルから、すなわち谷の中にある町から始めて、ガドに向かい、ヤゼルに進んだ。
8696 10 24 6 それからギレアデに行き、またヘテびとの地にあるカデシに行き、それからダンに至り、ダンからシドンにまわり、
8697 10 24 7 またツロの要害に行き、ヒビびと、およびカナンびとのすべての町に行き、ユダのネゲブに出てベエルシバへ行った。
8698 10 24 8 こうして彼らは国をあまねく行き巡って、九か月と二十日を経てエルサレムにきた。
8699 10 24 9 そしてヨアブは民の総数を王に告げた。すなわちイスラエルには、つるぎを抜く勇士たちが八十万あった。ただしユダの人々は五十万であった。
8700 10 24 10 しかしダビデは民を数えた後、心に責められた。そこでダビデは主に言った、「わたしはこれをおこなって大きな罪を犯しました。しかし主よ、今どうぞしもべの罪を取り去ってください。わたしはひじょうに愚かなことをいたしました」。
8701 10 24 11 ダビデが朝起きたとき、主の言葉はダビデの先見者である預言者ガデに臨んで言った、
8702 10 24 12 「行ってダビデに言いなさい、『主はこう仰せられる、「わたしは三つのことを示す。あなたはその一つを選ぶがよい。わたしはそれをあなたに行うであろう」と』」。
8703 10 24 13 ガデはダビデのもとにきて、彼に言った、「あなたの国に三年のききんをこさせようか。あなたが敵に追われて三か月敵の前に逃げるようにしようか。それとも、あなたの国に三日の疫病をおくろうか。あなたは考えて、わたしがどの答を、わたしをつかわされた方になすべきかを決めなさい」。
8704 10 24 14 ダビデはガデに言った、「わたしはひじょうに悩んでいますが、主のあわれみは大きいゆえ、われわれを主の手に陥らせてください。わたしを人の手には陥らせないでください」。
8705 10 24 15 そこで主は朝から定めの時まで疫病をイスラエルに下された。ダンからベエルシバまでに民の死んだ者は七万人あった。
8706 10 24 16 天の使が手をエルサレムに伸べてこれを滅ぼそうとしたが、主はこの害悪を悔い、民を滅ぼしている天の使に言われた、「もはや、じゅうぶんである。今あなたの手をとどめるがよい」。その時、主の使はエブスびとアラウナの打ち場のかたわらにいた。
8707 10 24 17 ダビデは民を撃っている天の使を見た時、主に言った、「わたしは罪を犯しました。わたしは悪を行いました。しかしこれらの羊たちは何をしたのですか。どうぞあなたの手をわたしとわたしの父の家に向けてください」。
8708 10 24 18 その日ガデはダビデのところにきて彼に言った、「上って行ってエブスびとアラウナの打ち場で主に祭壇を建てなさい」。
8709 10 24 19 ダビデはガデの言葉に従い、主の命じられたように上って行った。
8710 10 24 20 アラウナは見おろして、王とそのしもべたちが自分の方に進んでくるのを見たので、アラウナは出てきて王の前に地にひれ伏して拝した。
8711 10 24 21 そしてアラウナは言った、「どうして王わが主は、しもべの所にこられましたか」。ダビデは言った、「あなたから打ち場を買い取り、主に祭壇を築いて民に下る災をとどめるためです」。
8712 10 24 22 アラウナはダビデに言った、「どうぞ王、わが主のよいと思われる物を取ってささげてください。燔祭にする牛もあります。たきぎにする打穀機も牛のくびきもあります。
8713 10 24 23 王よ、アラウナはこれをことごとく王にささげます」。アラウナはまた王に、「あなたの神、主があなたを受けいれられますように」と言った。
8714 10 24 24 しかし王はアラウナに言った、「いいえ、代価を支払ってそれをあなたから買い取ります。わたしは費用をかけずに燔祭をわたしの神、主にささげることはしません」。こうしてダビデは銀五十シケルで打ち場と牛とを買い取った。
8715 10 24 25 ダビデはその所で主に祭壇を築き、燔祭と酬恩祭をささげた。そこで主はその地のために祈を聞かれたので、災がイスラエルに下ることはとどまった。
8716 11 1 1 ダビデ王は年がすすんで老い、夜着を着せても暖まらなかったので、
8717 11 1 2 その家来たちは彼に言った、「王わが主のために、ひとりの若いおとめを捜し求めて王にはべらせ、王の付添いとし、あなたのふところに寝て、王わが主を暖めさせましょう」。
8718 11 1 3 そして彼らはあまねくイスラエルの領土に美しいおとめを捜し求めて、シュナミびとアビシャグを得、王のもとに連れてきた。
8719 11 1 4 おとめは非常に美しく、王の付添いとなって王に仕えたが、王は彼女を知ることがなかった。
8720 11 1 5 さてハギテの子アドニヤは高ぶって、「わたしは王となろう」と言い、自分のために戦車と騎兵および自分の前に駆ける者五十人を備えた。
8721 11 1 6 彼の父は彼が生れてこのかた一度も「なぜ、そのような事をするのか」と言って彼をたしなめたことがなかった。アドニヤもまた非常に姿の良い人であって、アブサロムの次に生れた者である。
8722 11 1 7 彼がゼルヤの子ヨアブと祭司アビヤタルとに相談したので、彼らはアドニヤに従って彼を助けた。
8723 11 1 8 しかし祭司ザドクと、エホヤダの子ベナヤと、預言者ナタンおよびシメイとレイ、ならびにダビデの勇士たちはアドニヤに従わなかった。
8724 11 1 9 アドニヤはエンロゲルのほとりにある「へびの石」のかたわらで、羊と牛と肥えた家畜をほふって、王の子である自分の兄弟たち、および王の家来であるユダの人々をことごとく招いた。
8725 11 1 10 しかし預言者ナタンと、ベナヤと、勇士たちと、自分の兄弟ソロモンとは招かなかった。
8726 11 1 11 時にナタンはソロモンの母バテシバに言った、「ハギテの子アドニヤが王となったのをお聞きになりませんでしたか。われわれの主ダビデはそれをごぞんじないのです。
8727 11 1 12 それでいま、あなたに計りごとを授けて、あなたの命と、あなたの子ソロモンの命を救うようにいたしましょう。
8728 11 1 13 あなたはすぐダビデ王のところへ行って、『王わが主よ、あなたは、はしために誓って、おまえの子ソロモンが、わたしに次いで王となり、わたしの位に座するであろうと言われたではありませんか。そうであるのに、どうしてアドニヤが王となったのですか』と言いなさい。
8729 11 1 14 あなたがなお王と話しておられる間に、わたしもまた、あなたのあとから、はいって行って、あなたの言葉を確認しましょう」。
8730 11 1 15 そこでバテシバは寝室にはいって王の所へ行った。(王は非常に老いて、シュナミびとアビシャグが王に仕えていた)。
8731 11 1 16 バテシバは身をかがめて王を拝した。王は言った、「何の用か」。
8732 11 1 17 彼女は王に言った、「わが主よ、あなたは、あなたの神、主をさして、はしために誓い、『おまえの子ソロモンがわたしに次いで王となり、わたしの位に座するであろう』と言われました。
8733 11 1 18 そうであるのに、ごらんなさい、今アドニヤが王となりました。王わが主よ、あなたはそれをごぞんじないのです。
8734 11 1 19 彼は牛と肥えた家畜と羊をたくさんほふって、王の子たち、および祭司アビヤタルと、軍の長ヨアブを招きましたが、あなたのしもべソロモンは招きませんでした。
8735 11 1 20 王わが主よ、イスラエルのすべての目はあなたに注がれ、だれがあなたに次いで、王わが主の位に座すべきかを告げられるのを望んでいます。
8736 11 1 21 王わが主が先祖と共に眠られるとき、わたしと、わたしの子ソロモンは謀叛人とみなされるでしょう」。
8737 11 1 22 バテシバがなお王と話しているうちに、預言者ナタンがはいってきた。
8738 11 1 23 人々は王に告げて、「預言者ナタンがここにおります」と言った。彼は王の前にはいり、地に伏して王を拝した。
8739 11 1 24 そしてナタンは言った、「王わが主よ、あなたは、『アドニヤがわたしに次いで王となり、わたしの位に座するであろう』と仰せられましたか。
8740 11 1 25 彼はきょう下っていって、牛と、肥えた家畜と羊をたくさんほふって、王の子たちと、軍の長ヨアブと、祭司アビヤタルを招きました。彼らはアドニヤの前で食い飲みして、『アドニヤ万歳』と言いました。
8741 11 1 26 しかし、あなたのしもべであるわたしと、祭司ザドクと、エホヤダの子ベナヤと、あなたのしもべソロモンを招きませんでした。
8742 11 1 27 この事は王わが主がさせられた事ですか。あなたはしもべたちに、だれがあなたに次いで王わが主の位に座すべきかを告げられませんでした」。
8743 11 1 28 ダビデ王は答えて言った、「バテシバをわたしのところに呼びなさい」。彼女は王の前にはいってきて、王の前に立った。
8744 11 1 29 すると王は誓って言った、「わたしの命をすべての苦難から救われた主は生きておられる。
8745 11 1 30 わたしがイスラエルの神、主をさしてあなたに誓い、『あなたの子ソロモンがわたしに次いで王となり、わたしに代って、わたしの位に座するであろう』と言ったように、わたしはきょう、そのようにしよう」。
8746 11 1 31 そこでバテシバは身をかがめ、地に伏して王を拝し、「わが主ダビデ王が、とこしえに生きながらえられますように」と言った。
8747 11 1 32 ダビデは言った、「祭司ザドクと、預言者ナタンおよびエホヤダの子ベナヤをわたしの所に呼びなさい」。やがて彼らは王の前にきた。
8748 11 1 33 王は彼らに言った、「あなたがたの主君の家来たちを連れ、わが子ソロモンをわたしの騾馬に乗せ、彼を導いてギホンに下り、
8749 11 1 34 その所で祭司ザドクと預言者ナタンは彼に油を注いでイスラエルの王としなさい。そしてラッパを吹いて、『ソロモン王万歳』と言いなさい。
8750 11 1 35 それから、あなたがたは彼に従って上ってきなさい。彼はきて、わたしの位に座し、わたしに代って王となるであろう。わたしは彼を立ててイスラエルとユダの上に主君とする」。
8751 11 1 36 エホヤダの子ベナヤは王に答えて言った、「アァメン、願わくは、王わが主君の神、主もまたそう仰せられますように。
8752 11 1 37 願わくは、主が王わが主君と共におられたように、ソロモンと共におられて、その位をわが主君ダビデ王の位よりも大きくせられますように」。
8753 11 1 38 そこで祭司ザドクと預言者ナタンおよびエホヤダの子ベナヤ、ならびにケレテびとと、ペレテびとは下って行って、ソロモンをダビデ王の騾馬に乗せ、彼をギホンに導いて行った。
8754 11 1 39 祭司ザドクは幕屋から油の角を取ってきて、ソロモンに油を注いだ。そしてラッパを吹き鳴らし、民は皆「ソロモン王万歳」と言った。
8755 11 1 40 民はみな彼に従って上り、笛を吹いて大いに喜び祝った。地は彼らの声で裂けるばかりであった。
8756 11 1 41 アドニヤおよび彼と共にいた客たちは皆食事を終ったとき、これを聞いた。ヨアブはラッパの音を聞いて言った、「町の中のあの騒ぎは何か」。
8757 11 1 42 彼の言葉のなお終らないうちに、そこへ祭司アビヤタルの子ヨナタンがきたので、アドニヤは彼に言った、「はいりなさい。あなたは勇敢な人で、よい知らせを持ってきたのでしょう」。
8758 11 1 43 ヨナタンは答えてアドニヤに言った、「いいえ、主君ダビデ王はソロモンを王とせられました。
8759 11 1 44 王は祭司ザドクと預言者ナタンおよびエホヤダの子ベナヤ、ならびにケレテびとと、ペレテびとをソロモンと共につかわされたので、彼らはソロモンを王の騾馬に乗せて行き、
8760 11 1 45 祭司ザドクと預言者ナタンはギホンで彼に油を注いで王としました。そして彼らがそこから喜んで上って来るので、町が騒がしいのです。あなたが聞いた声はそれなのです。
8761 11 1 46 こうしてソロモンは王の位に座し、
8762 11 1 47 かつ王の家来たちがきて、主君ダビデ王に祝いを述べて、『願わくは、あなたの神がソロモンの名をあなたの名よりも高くし、彼の位をあなたの位よりも大きくされますように』と言いました。そして王は床の上で拝されました。
8763 11 1 48 王はまたこう言われました、『イスラエルの神、主はほむべきかな。主はきょう、わたしの位に座するひとりの子を与えて、これをわたしに見せてくださった』と」。
8764 11 1 49 その時アドニヤと共にいた客はみな驚き、立っておのおの自分の道に去って行った。
8765 11 1 50 そしてアドニヤはソロモンを恐れ、立って行って祭壇の角をつかんだ。
8766 11 1 51 ある人がこれをソロモンに告げて言った、「アドニヤはソロモンを恐れ、今彼は祭壇の角をつかんで、『どうぞ、ソロモン王がきょう、つるぎをもってしもべを殺さないとわたしに誓ってくださるように』と言っています」。
8767 11 1 52 ソロモンは言った、「もし彼がよい人となるならば、その髪の毛ひとすじも地に落ちることはなかろう。しかし彼のうちに悪のあることがわかるならば、彼は死ななければならない」。
8768 11 1 53 ソロモンは人をつかわして彼を祭壇からつれて下らせた。彼がきてソロモンを拝したので、ソロモンは彼に「家に帰りなさい」と言った。
8769 11 2 1 ダビデの死ぬ日が近づいたので、彼はその子ソロモンに命じて言った、
8770 11 2 2 「わたしは世のすべての人の行く道を行こうとしている。あなたは強く、男らしくなければならない。
8771 11 2 3 あなたの神、主のさとしを守り、その道に歩み、その定めと戒めと、おきてとあかしとを、モーセの律法にしるされているとおりに守らなければならない。そうすれば、あなたがするすべての事と、あなたの向かうすべての所で、あなたは栄えるであろう。
8772 11 2 4 また主がさきにわたしについて語って『もしおまえの子たちが、その道を慎み、心をつくし、精神をつくして真実をもって、わたしの前に歩むならば、おまえに次いでイスラエルの位にのぼる人が、欠けることはなかろう』と言われた言葉を確実にされるであろう。
8773 11 2 5 またあなたはゼルヤの子ヨアブがわたしにした事、すなわち彼がイスラエルのふたりの軍の長ネルの子アブネルと、エテルの子アマサにした事を知っている。彼はこのふたりを殺して、戦争で流した地を太平の時に報い、罪のない者の血をわたしの腰のまわりの帯と、わたしの足のくつにつけた。
8774 11 2 6 それゆえ、あなたの知恵にしたがって事を行い、彼のしらがを安らかに陰府に下らせてはならない。
8775 11 2 7 ただしギレアデびとバルジライの子らには恵みを施し、彼らをあなたの食卓で食事する人々のうちに加えなさい。彼らはわたしがあなたの兄弟アブサロムを避けて逃げた時、わたしを迎えてくれたからである。
8776 11 2 8 またバホリムのベニヤミンびとゲラの子シメイがあなたと共にいる。彼はわたしがマハナイムへ行った時、激しいのろいの言葉をもってわたしをのろった。しかし彼がヨルダンへ下ってきて、わたしを迎えたので、わたしは主をさして彼に誓い、『わたしはつるぎをもってあなたを殺さない』と言った。
8777 11 2 9 しかし彼を罪のない者としてはならない。あなたは知恵のある人であるから、彼になすべき事を知っている。あなたは彼のしらがを血に染めて陰府に下らせなければならない」。
8778 11 2 10 ダビデはその先祖と共に眠って、ダビデの町に葬られた。
8779 11 2 11 ダビデがイスラエルを治めた日数は四十年であった。すなわちヘブロンで七年、エルサレムで三十三年、王であった。
8780 11 2 12 このようにしてソロモンは父ダビデの位に座し、国は堅く定まった。
8781 11 2 13 さて、ハギテの子アドニヤがソロモンの母バテシバのところへきたので、バテシバは言った、「あなたは穏やかな事のためにきたのですか」。彼は言った、「穏やかな事のためです」。
8782 11 2 14 彼はまた言った、「あなたに申しあげる事があります」。バテシバは言った、「言いなさい」。
8783 11 2 15 彼は言った、「ごぞんじのように、国はわたしのもので、イスラエルの人は皆わたしが王になるものと期待していました。しかし国は転じて、わたしの兄弟のものとなりました。彼のものとなったのは、主から出たことです。
8784 11 2 16 今わたしはあなたに一つのお願いがあります。断らないでください」。バテシバは彼に言った、「言いなさい」。
8785 11 2 17 彼は言った、「どうかソロモン王に請うて、――王はあなたに断るようなことはないでしょうから――シュナミびとアビシャグをわたしに与えて妻にさせてください」。
8786 11 2 18 バテシバは言った、「よろしい。わたしはあなたのために王に話しましょう」。
8787 11 2 19 バテシバはアドニヤのためにソロモン王に話すため、王のもとへ行った。王は立って迎え、彼女を拝して王座に着き、王母のために座を設けさせたので、彼女は王の右に座した。
8788 11 2 20 そこでバテシバは言った、「あなたに一つの小さいお願いがあります。お断りにならないでください」。王は彼女に言った、「母上よ、あなたの願いを言ってください。わたしは断らないでしょう」。
8789 11 2 21 彼女は言った、「どうぞ、シュナミびとアビシャグをあなたの兄弟アドニヤに与えて、妻にさせてください」。
8790 11 2 22 ソロモン王は答えて母に言った、「どうしてアドニヤのためにシュナミびとアビシャグを求められるのですか。彼のためには国をも求めなさい。彼はわたしの兄で、彼の味方には祭司アビヤタルとゼルヤの子ヨアブがいるのですから」。
8791 11 2 23 そしてソロモン王は主をさして誓って言った、「もしアドニヤがこの言葉によって自分の命を失うのでなければ、どんなにでもわたしを罰してください。
8792 11 2 24 わたしを立てて、父ダビデの位にのぼらせ、主が約束されたように、わたしに一家を与えてくださった主は生きておられる。アドニヤはきょう殺されなければならない」。
8793 11 2 25 ソロモン王はエホヤダの子ベナヤをつかわしたので、彼はアドニヤを撃って殺した。
8794 11 2 26 王はまた祭司アビヤタルに言った、「あなたの領地アナトテへ行きなさい。あなたは死に当る者ですが、さきにわたしの父ダビデの前に神、主の箱をかつぎ、またすべてわたしの父が受けた苦しみを、あなたも共に苦しんだので、わたしは、きょうは、あなたを殺しません」。
8795 11 2 27 そしてソロモンはアビヤタルを主の祭司職から追放した。こうして主がシロでエリの家について言われた主の言葉が成就した。
8796 11 2 28 さてこの知らせがヨアブに達したので、ヨアブは主の幕屋にのがれて、祭壇の角をつかんだ。ヨアブはアブサロムを支持しなかったけれども、アドニヤを支持したからである。
8797 11 2 29 ヨアブが主の幕屋にのがれて、祭壇のかたわらにいることを、ソロモン王に告げる者があったので、ソロモン王はエホヤダの子ベナヤをつかわし、「行って彼を撃て」と言った。
8798 11 2 30 ベナヤは主の幕屋へ行って彼に言った、「王はあなたに、出て来るようにと申されます」。しかし彼は言った、「いや、わたしはここで死にます」。ベナヤは王に復命して言った、「ヨアブはこう申しました。またわたしにこう答えました」。
8799 11 2 31 そこで王はベナヤに言った、「彼が言うようにし、彼を撃ち殺して葬り、ヨアブがゆえなく流した血のとがをわたしと、わたしの父の家から除き去りなさい。
8800 11 2 32 主はまたヨアブが血を流した行為を、彼自身のこうべに報いられるであろう。これは彼が自分よりも正しいすぐれたふたりの人、すなわちイスラエルの軍の長ネルの子アブネルと、ユダの軍の長エテルの子アマサを、つるぎをもって撃ち殺し、わたしの父ダビデのあずかり知らない事をしたからである。
8801 11 2 33 それゆえ、彼らの血は永遠にヨアブのこうべと、その子孫のこうべに帰すであろう。しかしダビデと、その子孫と、その家と、その位とには、主から賜わる平安が永久にあるであろう」。
8802 11 2 34 そこでエホヤダの子ベナヤは上っていって、彼を撃ち殺した。彼は荒野にある自分の家に葬られた。
8803 11 2 35 王はエホヤダの子ベナヤを、ヨアブに代って軍の長とした。王はまた祭司ザドクをアビヤタルに代らせた。
8804 11 2 36 また王は人をつかわし、シメイを召して言った、「あなたはエルサレムのうちに、自分のために家を建てて、そこに住み、そこからどこへも出てはならない。
8805 11 2 37 あなたが出て、キデロン川を渡る日には必ず殺されることを、しかと知らなければならない。あなたの血はあなたのこうべに帰すであろう」。
8806 11 2 38 シメイは王に言った、「お言葉は結構です。王、わが主の仰せられるとおりに、しもべはいたしましょう」。こうしてシメイは久しくエルサレムに住んだ。
8807 11 2 39 ところが三年の後、シメイのふたりの奴隷が、ガテの王マアカの子アキシのところへ逃げ去った。人々がシメイに告げて、「ごらんなさい、あなたの奴隷はガテにいます」と言ったので、
8808 11 2 40 シメイは立って、ろばにくらを置き、ガテのアキシのところへ行って、その奴隷を尋ねた。すなわちシメイは行ってその奴隷をガテから連れてきたが、
8809 11 2 41 シメイがエルサレムからガテへ行って帰ったことがソロモン王に聞えたので、
8810 11 2 42 王は人をつかわし、シメイを召して言った、「わたしはあなたに主をさして誓わせ、かつおごそかにあなたを戒めて、『あなたが出て、どこかへ行く日には、必ず殺されることを、しかと知らなければならない』と言ったではないか。そしてあなたは、わたしに『お言葉は結構です。従います』と言った。
8811 11 2 43 ところで、あなたはなぜ主に対する誓いと、わたしが命じた命令を守らなかったのか」。
8812 11 2 44 王はまたシメイに言った、「あなたは自分の心に、あなたがわたしの父ダビデにしたもろもろの悪を知っている。主はあなたの悪をあなたのこうべに報いられるであろう。
8813 11 2 45 しかしソロモン王は祝福をうけ、ダビデの位は永久に主の前に堅く立つであろう」。
8814 11 2 46 王がエホヤダの子ベナヤに命じたので、彼は出ていってシメイを撃ち殺した。こうして国はソロモンの手に堅く立った。
8815 11 3 1 ソロモン王はエジプトの王パロと縁を結び、パロの娘をめとってダビデの町に連れてきて、自分の家と、主の宮と、エルサレムの周囲の城壁を建て終るまでそこにおらせた。
8816 11 3 2 そのころまで主の名のために建てた宮がなかったので、民は高き所で犠牲をささげていた。
8817 11 3 3 ソロモンは主を愛し、父ダビデの定めに歩んだが、ただ彼は高き所で犠牲をささげ、香をたいた。
8818 11 3 4 ある日、王はギベオンへ行って、そこで犠牲をささげようとした。それが主要な高き所であったからである。ソロモンは一千の燔祭をその祭壇にささげた。
8819 11 3 5 ギベオンで主は夜の夢にソロモンに現れて言われた、「あなたに何を与えようか、求めなさい」。
8820 11 3 6 ソロモンは言った、「あなたのしもべであるわたしの父ダビデがあなたに対して誠実と公義と真心とをもって、あなたの前に歩んだので、あなたは大いなるいつくしみを彼に示されました。またあなたは彼のために、この大いなるいつくしみをたくわえて、今日、彼の位に座する子を授けられました。
8821 11 3 7 わが神、主よ、あなたはこのしもべを、わたしの父ダビデに代って王とならせられました。しかし、わたしは小さい子供であって、出入りすることを知りません。
8822 11 3 8 かつ、しもべはあなたが選ばれた、あなたの民、すなわちその数が多くて、数えることも、調べることもできないほどのおびただしい民の中におります。
8823 11 3 9 それゆえ、聞きわける心をしもべに与えて、あなたの民をさばかせ、わたしに善悪をわきまえることを得させてください。だれが、あなたのこの大いなる民をさばくことができましょう」。
8824 11 3 10 ソロモンはこの事を求めたので、そのことが主のみこころにかなった。
8825 11 3 11 そこで神は彼に言われた、「あなたはこの事を求めて、自分のために長命を求めず、また自分のために富を求めず、また自分の敵の命をも求めず、ただ訴えをききわける知恵を求めたゆえに、
8826 11 3 12 見よ、わたしはあなたの言葉にしたがって、賢い、英明な心を与える。あなたの先にはあなたに並ぶ者がなく、あなたの後にもあなたに並ぶ者は起らないであろう。
8827 11 3 13 わたしはまたあなたの求めないもの、すなわち富と誉をもあなたに与える。あなたの生きているかぎり、王たちのうちにあなたに並ぶ者はないであろう。
8828 11 3 14 もしあなたが、あなたの父ダビデの歩んだように、わたしの道に歩んで、わたしの定めと命令とを守るならば、わたしはあなたの日を長くするであろう」。
8829 11 3 15 ソロモンが目をさましてみると、それは夢であった。そこで彼はエルサレムへ行き、主の契約の箱の前に立って燔祭と酬恩祭をささげ、すべての家来のために祝宴を設けた。
8830 11 3 16 さて、ふたりの遊女が王のところにきて、王の前に立った。
8831 11 3 17 ひとりの女は言った、「ああ、わが主よ、この女とわたしとはひとつの家に住んでいますが、わたしはこの女と一緒に家にいる時、子を産みました。
8832 11 3 18 ところがわたしの産んだ後、三日目にこの女もまた子を産みました。そしてわたしたちは一緒にいましたが、家にはほかにだれもわたしたちと共にいた者はなく、ただわたしたちふたりだけでした。
8833 11 3 19 ところがこの女は自分の子の上に伏したので、夜のうちにその子は死にました。
8834 11 3 20 彼女は夜中に起きて、はしための眠っている間に、わたしの子をわたしのかたわらから取って、自分のふところに寝かせ、自分の死んだ子をわたしのふところに寝かせました。
8835 11 3 21 わたしは朝、子に乳を飲ませようとして起きて見ると死んでいました。しかし朝になってよく見ると、それはわたしが産んだ子ではありませんでした」。
8836 11 3 22 ほかの女は言った、「いいえ、生きているのがわたしの子です。死んだのはあなたの子です」。初めの女は言った、「いいえ、死んだのがあなたの子です。生きているのはわたしの子です」。彼らはこのように王の前に言い合った。
8837 11 3 23 この時、王は言った、「ひとりは『この生きているのがわたしの子で、死んだのがあなたの子だ』と言い、またひとりは『いいえ、死んだのがあなたの子で、生きているのはわたしの子だ』と言う」。
8838 11 3 24 そこで王は「刀を持ってきなさい」と言ったので、刀を王の前に持ってきた。
8839 11 3 25 王は言った、「生きている子を二つに分けて、半分をこちらに、半分をあちらに与えよ」。
8840 11 3 26 すると生きている子の母である女は、その子のために心がやけるようになって、王に言った、「ああ、わが主よ、生きている子を彼女に与えてください。決してそれを殺さないでください」。しかしほかのひとりは言った、「それをわたしのものにも、あなたのものにもしないで、分けてください」。
8841 11 3 27 すると王は答えて言った、「生きている子を初めの女に与えよ。決して殺してはならない。彼女はその母なのだ」。
8842 11 3 28 イスラエルは皆王が与えた判決を聞いて王を恐れた。神の知恵が彼のうちにあって、さばきをするのを見たからである。
8843 11 4 1 ソロモン王はイスラエルの全地の王であった。
8844 11 4 2 彼の高官たちは次のとおりである。ザドクの子アザリヤは祭司。
8845 11 4 3 シシャの子エリホレフとアヒヤは書記官。アヒルデの子ヨシャバテは史官。
8846 11 4 4 エホヤダの子ベナヤは軍の長。ザドクとアビヤタルは祭司。
8847 11 4 5 ナタンの子アザリヤは代官の長。ナタンの子ザブデは祭司で、王の友であった。
8848 11 4 6 アヒシャルは宮内卿。アブダの子アドニラムは徴募の長であった。
8849 11 4 7 ソロモンはまたイスラエルの全地に十二人の代官を置いた。その人々は王とその家のために食物を備えた。すなわちおのおの一年に一月ずつ食物を備えるのであった。
8850 11 4 8 その名は次のとおりである。エフライムの山地にはベンホル。
8851 11 4 9 マカヅと、シャラビムと、ベテシメシと、エロン・ベテハナンにはベンデケル。
8852 11 4 10 アルボテにはベンヘセデ、(彼はソコとヘペルの全地を担当した)。
8853 11 4 11 ドルの高地の全部にはベン・アビナダブ、(彼はソロモンの娘タパテを妻とした)。
8854 11 4 12 アヒルデの子バアナはタアナクとメギドと、エズレルの下、ザレタンのかたわらにあるベテシャンの全地を担当して、ベテシャンからアベル・メホラに至り、ヨクメアムの向こうにまで及んだ。
8855 11 4 13 ラモテ・ギレアデにはベンゲベル、(彼はギレアデにあるマナセの子ヤイルの村々を担当し、またバシャンにあるアルゴブの地方の城壁と青銅の貫の木のある大きな町六十を担当した)。
8856 11 4 14 マハナイムにはイドの子アヒナダブ。
8857 11 4 15 ナフタリにはアヒマアズ、(彼もソロモンの娘バスマテを妻にめとった)。
8858 11 4 16 アセルとベアロテにはホシャイの子バアナ。
8859 11 4 17 イッサカルにはパルアの子ヨシャパテ。
8860 11 4 18 ベニヤミンにはエラの子シメイ。
8861 11 4 19 アモリびとの王シホンの地およびバシャンの王オグの地なるギレアデの地にはウリの子ゲベル。彼はその地のただひとりの代官であった。
8862 11 4 20 ユダとイスラエルの人々は多くて、海べの砂のようであったが、彼らは飲み食いして楽しんだ。
8863 11 4 21 ソロモンはユフラテ川からペリシテびとの地と、エジプトの境に至るまでの諸国を治めたので、皆みつぎ物を携えてきて、ソロモンの一生のあいだ仕えた。
8864 11 4 22 さてソロモンの一日の食物は細かい麦粉三十コル、荒い麦粉六十コル、
8865 11 4 23 肥えた牛十頭、牧場の牛二十頭、羊百頭で、そのほかに雄じか、かもしか、こじか、および肥えた鳥があった。
8866 11 4 24 これはソロモンがユフラテ川の西の地方をテフサからガザまで、ことごとく治めたからである。すなわち彼はユフラテ川の西の諸王をことごとく治め、周囲至る所に平安を得た。
8867 11 4 25 ソロモンの一生の間、ユダとイスラエルはダンからベエルシバに至るまで、安らかにおのおの自分たちのぶどうの木の下と、いちじくの木の下に住んだ。
8868 11 4 26 ソロモンはまた戦車の馬の、うまや四千と、騎兵一万二千を持っていた。
8869 11 4 27 そしてそれらの代官たちはおのおの当番の月にソロモン王のため、およびすべてソロモン王の食卓に連なる者のために、食物を備えて欠けることのないようにした。
8870 11 4 28 また彼らはおのおのその割当にしたがって馬および早馬に食わせる大麦とわらを、その馬のいる所に持ってきた。
8871 11 4 29 神はソロモンに非常に多くの知恵と悟りを授け、また海べの砂原のように広い心を授けられた。
8872 11 4 30 ソロモンの知恵は東の人々の知恵とエジプトのすべての知恵にまさった。
8873 11 4 31 彼はすべての人よりも賢く、エズラびとエタンよりも、またマホルの子ヘマン、カルコル、ダルダよりも賢く、その名声は周囲のすべての国々に聞えた。
8874 11 4 32 彼はまた箴言三千を説いた。またその歌は一千五首あった。
8875 11 4 33 彼はまた草木のことを論じてレバノンの香柏から石がきにはえるヒソプにまで及んだ。彼はまた獣と鳥と這うものと魚のことを論じた。
8876 11 4 34 諸国の人々はソロモンの知恵を聞くためにきた。地の諸王はソロモンの知恵を聞いて人をつかわした。
8877 11 5 1 さてツロの王ヒラムは、ソロモンが油を注がれ、その父に代って、王となったのを聞いて、家来をソロモンにつかわした。ヒラムは常にダビデを愛したからである。
8878 11 5 2 そこでソロモンはヒラムに人をつかわして言った、
8879 11 5 3 「あなたの知られるとおり、父ダビデはその周囲にあった敵との戦いのゆえに、彼の神、主の名のために宮を建てることができず、主が彼らをその足の裏の下に置かれるのを待ちました。
8880 11 5 4 ところが今わが神、主はわたしに四方の太平を賜わって、敵もなく、災もなくなったので、
8881 11 5 5 主が父ダビデに『おまえに代って、おまえの位に、わたしがつかせるおまえの子、その人がわが名のために宮を建てるであろう』と言われたように、わが神、主の名のために宮を建てようと思います。
8882 11 5 6 それゆえ、あなたは命令を下して、レバノンの香柏をわたしのために切り出させてください。わたしのしもべたちをあなたのしもべたちと一緒に働かせます。またわたしはすべてあなたのおっしゃるとおり、あなたのしもべたちの賃銀をあなたに払います。あなたの知られるとおり、わたしたちのうちにはシドンびとのように木を切るに巧みな人がないからです」。
8883 11 5 7 ヒラムはソロモンの言葉を聞いて大いに喜び、「きょう、主はあがむべきかな。主はこのおびただしい民を治める賢い子をダビデに賜わった」と言った。
8884 11 5 8 そしてヒラムはソロモンに人をつかわして言った、「わたしはあなたが申しおくられたことを聞きました。香柏の材木と、いとすぎの材木については、すべてお望みのようにいたします。
8885 11 5 9 わたしのしもべどもにそれをレバノンから海に運びおろさせましょう。わたしはそれをいかだに組んで、海路、あなたの指示される場所まで送り、そこでそれをくずしましょう。あなたはそれを受け取ってください。また、あなたはわたしの家のために食物を供給して、わたしの望みをかなえてください」。
8886 11 5 10 こうしてヒラムはソロモンにすべて望みのように香柏の材木と、いとすぎの材木を与えた。
8887 11 5 11 またソロモンはヒラムにその家の食物として小麦二万コルを与え、またオリブをつぶして取った油二万コルを与えた。このようにソロモンは年々ヒラムに与えた。
8888 11 5 12 主は約束されたようにソロモンに知恵を賜わった。またヒラムとソロモンの間は平和であって、彼らふたりは条約を結んだ。
8889 11 5 13 ソロモン王はイスラエルの全地から強制的に労働者を徴募した。その徴募人員は三万人であった。
8890 11 5 14 ソロモンは彼らを一か月交代に一万人ずつレバノンにつかわした。すなわち一か月レバノンに、二か月家にあり、アドニラムは徴募の監督であった。
8891 11 5 15 ソロモンにはまた荷を負う者が七万人、山で石を切る者が八万人あった。
8892 11 5 16 ほかにソロモンには工事を監督する上役の官吏が三千三百人あって、工事に働く民を監督した。
8893 11 5 17 王は命じて大きい高価な石を切り出させ、切り石をもって宮の基をすえさせた。
8894 11 5 18 こうしてソロモンの建築者と、ヒラムの建築者およびゲバルびとは石を切り、材木と石とを宮を建てるために備えた。
8895 11 6 1 イスラエルの人々がエジプトの地を出て後四百八十年、ソロモンがイスラエルの王となって第四年のジフの月すなわち二月に、ソロモンは主のために宮を建てることを始めた。
8896 11 6 2 ソロモン王が主のために建てた宮は長さ六十キュビト、幅二十キュビト、高さ三十キュビトであった。
8897 11 6 3 宮の拝殿の前の廊は宮の幅にしたがって長さ二十キュビト、その幅は宮の前で十キュビトであった。
8898 11 6 4 彼は宮に、内側の広い枠の窓を造った。
8899 11 6 5 また宮の壁につけて周囲に脇屋を設け、宮の壁すなわち拝殿と本殿の壁の周囲に建てめぐらし、宮の周囲に脇間があるようにした。
8900 11 6 6 下の脇間は広さ五キュビト、中の広さ六キュビト、第三のは広さ七キュビトであった。宮の外側には壁に段を造って、梁を宮の壁の中に差し込まないようにした。
8901 11 6 7 宮は建てる時に、石切り場で切り整えた石をもって造ったので、建てている間は宮のうちには、つちも、おのも、その他の鉄器もその音が聞えなかった。
8902 11 6 8 下の脇間の入口は宮の右側にあり、回り階段によって中の脇間に、中の脇間から第三の脇間にのぼった。
8903 11 6 9 こうして彼は宮を建て終り、香柏のたるきと板をもって宮の天井を造った。
8904 11 6 10 また宮につけて、おのおの高さ五キュビトの脇間のある脇屋を建てめぐらし、香柏の材木をもって宮に接続させた。
8905 11 6 11 そこで主の言葉がソロモンに臨んだ、
8906 11 6 12 「あなたが建てるこの宮については、もしあなたがわたしの定めに歩み、おきてを行い、すべての戒めを守り、それに従って歩むならば、わたしはあなたの父ダビデに約束したことを成就する。
8907 11 6 13 そしてわたしはイスラエルの人々のうちに住み、わたしの民イスラエルを捨てることはない」。
8908 11 6 14 こうしてソロモンは宮を建て終った。
8909 11 6 15 彼は香柏の板をもって宮の壁の内側を張った。すなわち宮の床から天井のたるきまで香柏の板で張った。また、いとすぎの板をもって宮の床を張った。
8910 11 6 16 また宮の奥に二十キュビトの室を床から天井のたるきまで香柏の板をもって造った。すなわち宮の内に至聖所としての本堂を造った。
8911 11 6 17 宮すなわち本殿の前にある拝殿は長さ四十キュビトであった。
8912 11 6 18 宮の内側の香柏の板は、ひさごの形と、咲いた花を浮彫りにしたもので、みな香柏の板で、石は見えなかった。
8913 11 6 19 そして主の契約の箱を置くために、宮の内の奥に本殿を設けた。
8914 11 6 20 本殿は長さ二十キュビト、幅二十キュビト、高さ二十キュビトであって、純金でこれをおおった。また香柏の祭壇を造った。
8915 11 6 21 ソロモンは純金をもって宮の内側をおおい、本殿の前に金の鎖をもって隔てを造り、金をもってこれをおおった。
8916 11 6 22 また金をもって残らず宮をおおい、ついに宮を飾ることをことごとく終えた。また本殿に属する祭壇をことごとく金でおおった。
8917 11 6 23 本殿のうちにオリブの木をもって二つのケルビムを造った。その高さはおのおの十キュビト。
8918 11 6 24 そのケルブの一つの翼の長さは五キュビト、またそのケルブの他の翼の長さも五キュビトであった。一つの翼の端から他の翼の端までは十キュビトあった。
8919 11 6 25 他のケルブも十キュビトであって、二つのケルビムは同じ寸法、同じ形であった。
8920 11 6 26 このケルブの高さは十キュビト、かのケルブの高さも同じであった。
8921 11 6 27 ソロモンは宮のうちの奥にケルビムをすえた。ケルビムの翼を伸ばしたところ、このケルブの翼はこの壁に達し、かのケルブの翼はかの壁に達し、他の二つの翼は宮の中で互に触れ合った。
8922 11 6 28 彼は金をもってそのケルビムをおおった。
8923 11 6 29 彼は宮の周囲の壁に、内外の室とも皆ケルビムと、しゅろの木と、咲いた花の形の彫り物を刻み、
8924 11 6 30 宮の床は、内外の室とも金でおおった。
8925 11 6 31 本殿の入口にはオリブの木のとびらを造った。そのとびらの上のかまちと脇柱とで五辺形をなしていた。
8926 11 6 32 その二つのとびらもオリブの木であって、ソロモンはその上にケルビムと、しゅろの木と、咲いた花の形を刻み、金をもっておおった。すなわちケルビムと、しゅろの木の上に金を着せた。
8927 11 6 33 こうしてソロモンはまた拝殿の入口のためにオリブの木で四角の形に脇柱を造った。
8928 11 6 34 その二つのとびらはいとすぎであって、一つのとびらは二つにたたむ折り戸であり、他のとびらも二つにたたむ折り戸であった。
8929 11 6 35 ソロモンはその上にケルビムと、しゅろの木と、咲いた花を刻み、金をもって彫り物の上を形どおりにおおった。
8930 11 6 36 また切り石三かさねと、香柏の角材ひとかさねとをもって内庭を造った。
8931 11 6 37 第四年のジフの月に主の宮の基をすえ、
8932 11 6 38 第十一年のブルの月すなわち八月に、宮のすべての部分が設計どおりに完成した。ソロモンはこれを建てるのに七年を要した。
8933 11 7 1 またソロモンは自分の家を建てたが、十三年かかってその家を全部建て終った。
8934 11 7 2 彼はレバノンの森の家を建てた。長さ百キュビト、幅五十キュビト、高さ三十キュビトで、三列の香柏の柱があり、その柱の上に香柏の梁があった。
8935 11 7 3 四十五本の柱の上にある室は香柏の板でおおった。柱は各列十五本あった。
8936 11 7 4 また窓わくが三列あって、窓と窓と三段に向かい合っていた。
8937 11 7 5 戸口と窓はみな四角の枠をもち、窓と窓と三段に向かい合った。
8938 11 7 6 また柱の広間を造った。長さ五十キュビト、幅三十キュビトであった。柱の前に一つの広間があり、その玄関に柱とひさしがあった。
8939 11 7 7 またソロモンはみずから審判をするために玉座の広間、すなわち審判の広間を造った。床からたるきまで香柏をもっておおった。
8940 11 7 8 ソロモンが住んだ宮殿はその広間のうしろの他の庭にあって、その造作は同じであった。ソロモンはまた彼がめとったパロの娘のために家を建てたが、その広間と同じであった。
8941 11 7 9 これらはみな内外とも、土台から軒まで、また主の宮の庭から大庭まで、寸法に合わせて切った石、すなわち、のこぎりでひいた高価な石で造られた。
8942 11 7 10 また土台は高価な石、大きな石、すなわち八キュビトの石、十キュビトの石であった。
8943 11 7 11 その上には寸法に合わせて切った高価な石と香柏とがあった。
8944 11 7 12 また大庭の周囲には三かさねの切り石と、一かさねの香柏の角材があった。主の宮の内庭と宮殿の広間の庭の場合と同じである。
8945 11 7 13 ソロモン王は人をつかわしてツロからヒラムを呼んできた。
8946 11 7 14 彼はナフタリの部族の寡婦の子であって、その父はツロの人で、青銅の細工人であった。ヒラムは青銅のいろいろな細工をする知恵と悟りと知識に満ちた者であったが、ソロモン王のところにきて、そのすべての細工をした。
8947 11 7 15 彼は青銅の柱二本を鋳た。一本の柱の高さは十八キュビト、そのまわりは綱をもって測ると十二キュビトあり、指四本の厚さで空洞であった。他の柱も同じである。
8948 11 7 16 また青銅を溶かして柱頭二つを造り、柱の頂にすえた。その一つの柱頭の高さは五キュビト、他の柱頭の高さも五キュビトであった。
8949 11 7 17 柱の頂にある柱頭のために鎖に編んだ飾りひもで市松模様の網細工二つを造った。すなわちこの柱頭のために一つ、かの柱頭のために一つを造った。
8950 11 7 18 またざくろを造った。すなわち二並びのざくろを一つの網細工の上のまわりに造って、柱の頂にある柱頭を巻いた。他の柱頭にも同じようにした。
8951 11 7 19 この廊の柱の頂にある柱頭の上に四キュビトのゆりの花の細工があった。
8952 11 7 20 二つの柱の上端の丸い突出部の上にある網細工の柱頭の周囲には、おのおの二百のざくろが二並びになっていた。
8953 11 7 21 この柱を神殿の廊に立てた。すなわち南に柱を立てて、その名をヤキンと名づけ、北に柱を立てて、その名をボアズと名づけた。
8954 11 7 22 その柱の頂にはゆりの花の細工があった。こうしてその柱の造作ができあがった。
8955 11 7 23 また海を鋳て造った。縁から縁まで十キュビトであって、周囲は円形をなし、高さ五キュビトで、その周囲は綱をもって測ると三十キュビトであった。
8956 11 7 24 その縁の下には三十キュビトの周囲をめぐるひさごがあって、海の周囲を囲んでいた。そのひさごは二並びで、海を鋳る時に鋳たものである。
8957 11 7 25 その海は十二の牛の上に置かれ、その三つは北に向かい、三つは西に向かい、三つは南に向かい、三つは東に向かっていた。海はその上に置かれ、牛のうしろは皆内に向かっていた。
8958 11 7 26 海の厚さは手の幅で、その縁は杯の縁のように、ゆりの花に似せて造られた。海には水が二千バテはいった。
8959 11 7 27 また青銅の台を十個造った。台は長さ四キュビト、幅四キュビト、高さ三キュビトであった。
8960 11 7 28 その台の構造は次のとおりである。台には鏡板があり、鏡板は枠の中にあった。
8961 11 7 29 枠の中にある鏡板には、ししと牛とケルビムとがあり、また、ししと牛の上と下にある枠の斜面には花飾りが細工してあった。
8962 11 7 30 また台にはおのおの四つの青銅の車輪と、青銅の車軸があり、その四すみには洗盤のささえがあった。そのささえは、おのおの花飾りのかたわらに鋳て造りつけてあった。
8963 11 7 31 その口は一キュビト上に突き出て、台の頂の内にあり、その口は丸く、台座のように造られ、深さ一キュビト半であった。またその口には彫り物があった。その鏡板は四角で、丸くなかった。
8964 11 7 32 四つの車輪は鏡板の下にあり、車軸は台に取り付けてあり、車輪の高さはおのおの一キュビト半であった。
8965 11 7 33 車輪の構造は戦車の車輪の構造と同じで、その車軸と縁と輻と轂とはみな鋳物であった。
8966 11 7 34 おのおのの台の四すみに四つのささえがあり、そのささえは台の一部をなしていた。
8967 11 7 35 台の上には高さ半キュビトの丸い帯輪があった。そして台の上にあるその支柱と鏡板とはその一部をなしていた。
8968 11 7 36 その支柱の表面と鏡板にはそれぞれの場所に、ケルビムと、ししと、しゅろを刻み、またその周囲に花飾りを施した。
8969 11 7 37 このようにして十個の台を造った。それはみな同じ鋳方、同じ寸法、同じ形であった。
8970 11 7 38 また青銅の洗盤を十個造った。洗盤はおのおの四十バテの水がはいり、洗盤はおのおの四キュビトであった。十個の台の上にはおのおの一つずつの洗盤があった。
8971 11 7 39 その台の五個を宮の南の方に、五個を宮の北の方に置き、宮の東南の方に海をすえた。
8972 11 7 40 ヒラムはまたつぼと十能と鉢を造った。こうしてヒラムはソロモン王のために主の宮のすべての細工をなし終えた。
8973 11 7 41 すなわち二本の柱と、その柱の頂にある柱頭の二つの玉と、柱の頂にある柱頭の二つの玉をおおう二つの網細工と、
8974 11 7 42 その二つの網細工のためのざくろ四百。このざくろは一つの網細工に、二並びにつけて、柱の頂にある柱頭の二つの玉を巻いた。
8975 11 7 43 また十個の台と、その台の上の十個の洗盤と、
8976 11 7 44 一つの海と、その海の下の十二の牛とであった。
8977 11 7 45 さてつぼと十能と鉢、すなわちヒラムがソロモン王のために造った主の宮のこれらの器はみな光のある青銅であった。
8978 11 7 46 王はヨルダンの低地で、スコテとザレタンの間の粘土の地でこれらを鋳た。
8979 11 7 47 ソロモンはその器が非常に多かったので、皆それをはからずにおいた。その青銅の重さは、はかり得なかった。
8980 11 7 48 またソロモンは主の宮にあるもろもろの器を造った。すなわち金の祭壇と、供えのパンを載せる金の机、
8981 11 7 49 および純金の燭台。この燭台は本殿の前に、五つは南に、五つは北にあった。また金の花と、ともしび皿と、心かきと、
8982 11 7 50 純金の皿と、心切りばさみと、鉢と、香の杯と、心取り皿と、至聖所である宮の奥のとびらのためおよび、宮の拝殿のとびらのために、金のひじつぼを造った。
8983 11 7 51 こうしてソロモン王が主の宮のために造るすべての細工は終った。そしてソロモンは父ダビデがささげた物、すなわち金銀および器物を携え入り、主の宮の宝蔵の中にたくわえた。
8984 11 8 1 ソロモンは主の契約の箱をダビデの町、すなわちシオンからかつぎ上ろうとして、イスラエルの長老たちと、すべての部族のかしらたちと、イスラエルの人々の氏族の長たちをエルサレムでソロモン王のもとに召し集めた。
8985 11 8 2 イスラエルの人は皆エタニムの月すなわち七月の祭にソロモン王のもとに集まった。
8986 11 8 3 イスラエルの長老たちが皆来たので、祭司たちは箱を取りあげた。
8987 11 8 4 そして彼らは主の箱と、会見の幕屋と、幕屋にあるすべての聖なる器をかつぎ上った。すなわち祭司とレビびとがこれらの物をかつぎ上った。
8988 11 8 5 ソロモン王および彼のもとに集まったイスラエルの会衆は皆彼と共に箱の前で、羊と牛をささげたが、その数が多くて調べることも数えることもできなかった。
8989 11 8 6 祭司たちは主の契約の箱をその場所にかつぎ入れた。すなわち宮の本殿である至聖所のうちのケルビムの翼の下に置いた。
8990 11 8 7 ケルビムは翼を箱の所に伸べていたので、ケルビムは上から箱とそのさおをおおった。
8991 11 8 8 さおは長かったので、さおの端が本殿の前の聖所から見えた。しかし外には見えなかった。そのさおは今日までそこにある。
8992 11 8 9 箱の内には二つの石の板のほか何もなかった。これはイスラエルの人々がエジプトの地から出たとき、主が彼らと契約を結ばれたときに、モーセがホレブで、それに納めたものである。
8993 11 8 10 そして祭司たちが聖所から出たとき、雲が主の宮に満ちたので、
8994 11 8 11 祭司たちは雲のために立って仕えることができなかった。主の栄光が主の宮に満ちたからである。
8995 11 8 12 そこでソロモンは言った、「主は日を天に置かれた。しかも主は自ら濃き雲の中に住まおうと言われた。
8996 11 8 13 わたしはあなたのために高き家、とこしえのみすまいを建てた」。
8997 11 8 14 王は身をめぐらして、イスラエルのすべての会衆を祝福した。その時イスラエルのすべての会衆は立っていた。
8998 11 8 15 彼は言った、「イスラエルの神、主はほむべきかな。主はその口をもってわたしの父ダビデに約束されたことを、その手をもってなし遂げられた。主は言われた、
8999 11 8 16 『わが民イスラエルをエジプトから導き出した日から、わたしはわたしの名を置くべき宮を建てるために、イスラエルのもろもろの部族のうちから、どの町をも選んだことがなかった。ただダビデを選んで、わが民イスラエルの上に立たせた』と。
9000 11 8 17 イスラエルの神、主の名のために宮を建てることは、わたしの父ダビデの心にあった。
9001 11 8 18 しかし主はわたしの父ダビデに言われた、『わたしの名のために宮を建てることはあなたの心にあった。あなたの心にこの事のあったのは結構である。
9002 11 8 19 けれどもあなたはその宮を建ててはならない。あなたの身から出るあなたの子がわたしの名のために宮を建てるであろう』と。
9003 11 8 20 そして主はその言われた言葉を行われた。すなわちわたしは父ダビデに代って立ち、主が言われたように、イスラエルの位に座し、イスラエルの神、主の名のために宮を建てた。
9004 11 8 21 わたしはまたそこに主の契約を納めた箱のために一つの場所を設けた。その契約は主がわれわれの先祖をエジプトの地から導き出された時に、彼らと結ばれたものである」。
9005 11 8 22 ソロモンはイスラエルの全会衆の前で、主の祭壇の前に立ち、手を天に伸べて、
9006 11 8 23 言った、「イスラエルの神、主よ、上の天にも、下の地にも、あなたのような神はありません。あなたは契約を守られ、心をつくしてあなたの前に歩むあなたのしもべらに、いつくしみを施し、
9007 11 8 24 あなたのしもべであるわたしの父ダビデに約束されたことを守られました。あなたが口をもって約束されたことを、手をもってなし遂げられたことは、今日見るとおりであります。
9008 11 8 25 それゆえ、イスラエルの神、主よ、あなたのしもべであるわたしの父ダビデに、あなたが約束して『おまえがわたしの前に歩んだように、おまえの子孫が、その道を慎んで、わたしの前に歩むならば、おまえにはイスラエルの位に座する人が、わたしの前に欠けることはないであろう』と言われたことを、ダビデのために守ってください。
9009 11 8 26 イスラエルの神よ、どうぞ、あなたのしもべであるわたしの父ダビデに言われた言葉を確認してください。
9010 11 8 27 しかし神は、はたして地上に住まわれるでしょうか。見よ、天も、いと高き天もあなたをいれることはできません。ましてわたしの建てたこの宮はなおさらです。
9011 11 8 28 しかしわが神、主よ、しもべの祈と願いを顧みて、しもべがきょう、あなたの前にささげる叫びと祈をお聞きください。
9012 11 8 29 あなたが『わたしの名をそこに置く』と言われた所、すなわち、この宮に向かって夜昼あなたの目をお開きください。しもべがこの所に向かって祈る祈をお聞きください。
9013 11 8 30 しもべと、あなたの民イスラエルがこの所に向かって祈る時に、その願いをお聞きください。あなたのすみかである天で聞き、聞いておゆるしください。
9014 11 8 31 もし人がその隣り人に対して罪を犯し、誓いをすることを求められる時、来てこの宮であなたの祭壇の前に誓うならば、
9015 11 8 32 あなたは天で聞いて行い、あなたのしもべらをさばき、悪人を罰して、そのおこないの報いをそのこうべに帰し、義人を義として、その義にしたがって、その人に報いてください。
9016 11 8 33 もしあなたの民イスラエルが、あなたに対して罪を犯したために敵の前に敗れた時、あなたに立ち返って、あなたの名をあがめ、この宮であなたに祈り願うならば、
9017 11 8 34 あなたは天にあって聞き、あなたの民イスラエルの罪をゆるして、あなたが彼らの先祖に賜わった地に彼らを帰らせてください。
9018 11 8 35 もし彼らがあなたに罪を犯したために、天が閉ざされて雨がなく、あなたが彼らを苦しめられる時、彼らがこの所に向かって祈り、あなたの名をあがめ、その罪を離れるならば、
9019 11 8 36 あなたは天で聞き、あなたのしもべ、あなたの民イスラエルの罪をゆるし、彼らに歩むべき良い道を教えて、あなたが、あなたの民に嗣業として与えられた地に雨を降らせてください。
9020 11 8 37 もし国にききんがあるか、もしくは疫病、立ち枯れ、腐り穂、いなご、青虫があるか、もしくは敵のために町の中に攻め囲まれることがあるか、どんな災害、どんな病気があっても、
9021 11 8 38 もし、だれでも、あなたの民イスラエルがみな、おのおのその心の悩みを知って、この宮に向かい、手を伸べるならば、どんな祈、どんな願いでも、
9022 11 8 39 あなたは、あなたのすみかである天で聞いてゆるし、かつ行い、おのおのの人に、その心を知っておられるゆえ、そのすべての道にしたがって報いてください。ただ、あなただけ、すべての人の心を知っておられるからです。
9023 11 8 40 あなたが、われわれの先祖に賜わった地に、彼らの生きながらえる日の間、常にあなたを恐れさせてください。
9024 11 8 41 またあなたの民イスラエルの者でなく、あなたの名のために遠い国から来る異邦人が、
9025 11 8 42 ――それは彼らがあなたの大いなる名と、強い手と、伸べた腕とについて聞き及ぶからです、――もしきて、この宮に向かって祈るならば、
9026 11 8 43 あなたは、あなたのすみかである天で聞き、すべて異邦人があなたに呼び求めることをかなえさせてください。そうすれば、地のすべての民は、あなたの民イスラエルのように、あなたの名を知り、あなたを恐れ、またわたしが建てたこの宮があなたの名によって呼ばれることを知るにいたるでしょう。
9027 11 8 44 あなたの民が敵と戦うために、あなたがつかわされる道を通って出て行くとき、もし彼らがあなたの選ばれた町、わたしがあなたの名のために建てた宮の方に向かって、主に祈るならば、
9028 11 8 45 あなたは天で、彼らの祈と願いを聞いて彼らをお助けください。
9029 11 8 46 彼らがあなたに対して罪を犯すことがあって、――人は罪を犯さない者はないのです、――あなたが彼らを怒り、彼らを敵にわたし、敵が彼らを捕虜として遠近にかかわらず、敵の地に引いて行く時、
9030 11 8 47 もし彼らが捕われていった地で、みずから省みて悔い、自分を捕えていった者の地で、あなたに願い、『われわれは罪を犯しました、そむいて悪を行いました』と言い、
9031 11 8 48 自分を捕えていった敵の地で、心をつくし、精神をつくしてあなたに立ち返り、あなたが彼らの先祖に与えられた地、あなたが選ばれた町、わたしがあなたの名のために建てた宮の方に向かって、あなたに祈るならば、
9032 11 8 49 あなたのすみかである天で、彼らの祈と願いを聞いて、彼らを助け、
9033 11 8 50 あなたの民が、あなたに対して犯した罪と、あなたに対して行ったすべてのあやまちをゆるし、彼らを捕えていった者の前で、彼らにあわれみを得させ、その人々が彼らをあわれむようにしてください。
9034 11 8 51 (彼らはあなたがエジプトから、鉄のかまどの中から導き出されたあなたの民、あなたの嗣業であるからです)。
9035 11 8 52 どうぞ、しもべの願いと、あなたの民イスラエルの願いに、あなたの目を開き、すべてあなたに呼び求める時、彼らの願いをお聞きください。
9036 11 8 53 あなたは彼らを地のすべての民のうちから区別して、あなたの嗣業とされたからです。主なる神よ、あなたがわれわれの先祖をエジプトから導き出された時、モーセによって言われたとおりです」。
9037 11 8 54 ソロモンはこの祈と願いをことごとく主にささげ終ると、それまで天に向かって手を伸べ、ひざまずいていた主の祭壇の前から立ちあがり、
9038 11 8 55 立って大声でイスラエルの全会衆を祝福して言った、
9039 11 8 56 「主はほむべきかな。主はすべて約束されたように、その民イスラエルに太平を賜わった。そのしもべモーセによって仰せられたその良き約束は皆一つもたがわなかった。
9040 11 8 57 われわれの神がわれわれの先祖と共におられたように、われわれと共におられるように。われわれを離れず、またわれわれを見捨てられないように。
9041 11 8 58 われわれの心を主に傾けて、主のすべての道に歩ませ、われわれの先祖に命じられた戒めと定めと、おきてとを守らせられるように。
9042 11 8 59 主の前にわたしが述べたこれらの願いの言葉が、日夜われわれの神、主に覚えられるように。そして主は日々の事に、しもべを助け、主の民イスラエルを助けられるように。
9043 11 8 60 そうすれば、地のすべての民は主が神であることと、他に神のないことを知るに至るであろう。
9044 11 8 61 それゆえ、あなたがたは、今日のようにわれわれの神、主に対して、心は全く真実であり、主の定めに歩み、主の戒めを守らなければならない」。
9045 11 8 62 そして王および王と共にいるすべてのイスラエルびとは主の前に犠牲をささげた。
9046 11 8 63 ソロモンは酬恩祭として牛二万二千頭、羊十二万頭を主にささげた。こうして王とイスラエルの人々は皆主の宮を奉献した。
9047 11 8 64 その日、王は主の宮の前にある庭の中を聖別し、その所で燔祭と素祭と酬恩祭の脂肪をささげた。これは主の前にある青銅の祭壇が素祭と酬恩祭の脂肪とを受けるに足りなかったからである。
9048 11 8 65 その時ソロモンは七日の間われわれの神、主の前に祭を行った。ハマテの入口からエジプトの川に至るまでのすべてのイスラエルびとの大いなる会衆が彼と共にいた。
9049 11 8 66 八日目にソロモンは民を帰らせた。民は王を祝福し、主がそのしもべダビデと、その民イスラエルとに施されたもろもろの恵みを喜び、心に楽しんでその天幕に帰って行った。
9050 11 9 1 ソロモンが主の宮と王の宮殿およびソロモンが建てようと望んだすべてのものを建て終った時、
9051 11 9 2 主はかつてギベオンでソロモンに現れられたように再び現れて、
9052 11 9 3 彼に言われた、「あなたが、わたしの前に願った祈と願いとを聞いた。わたしはあなたが建てたこの宮を聖別して、わたしの名を永久にそこに置く。わたしの目と、わたしの心は常にそこにあるであろう。
9053 11 9 4 あなたがもし、あなたの父ダビデが歩んだように全き心をもって正しくわたしの前に歩み、すべてわたしが命じたようにおこなって、わたしの定めと、おきてとを守るならば、
9054 11 9 5 わたしは、あなたの父ダビデに約束して『イスラエルの王位にのぼる人があなたに欠けることはないであろう』と言ったように、あなたのイスラエルに王たる位をながく確保するであろう。
9055 11 9 6 しかし、あなたがた、またはあなたがたの子孫がそむいてわたしに従わず、わたしがあなたがたの前に置いた戒めと定めとを守らず、他の神々に行って、それに仕え、それを拝むならば、
9056 11 9 7 わたしはイスラエルを、わたしが与えた地のおもてから断つであろう。またわたしの名のために聖別した宮をわたしの前から投げすてるであろう。そしてイスラエルはもろもろの民のうちにことわざとなり、笑い草となるであろう。
9057 11 9 8 かつ、この宮は荒塚となり、そのかたわらを過ぎる者は皆驚き、うそぶいて『なにゆえ、主はこの地と、この宮とにこのようにされたのか』と言うであろう。
9058 11 9 9 その時人々は答えて『彼らは自分の先祖をエジプトの地から導き出した彼らの神、主を捨てて、他の神々につき従い、それを拝み、それに仕えたために、主はこのすべての災を彼らの上に下したのである』と言うであろう」。
9059 11 9 10 ソロモンは二十年を経て二つの家すなわち主の宮と王の宮殿とを建て終った時、
9060 11 9 11 ツロの王ヒラムがソロモンの望みに任せて香柏と、いとすぎと、金とを供給したので、ソロモン王はガリラヤの地の町二十をヒラムに与えた。
9061 11 9 12 しかしヒラムがツロから来て、ソロモンが彼に与えた町々を見たとき、それらは彼の気にいらなかったので、
9062 11 9 13 彼は、「兄弟よ、あなたがくださったこれらの町々は、いったいなんですか」と言った。それで、そこは今日までカブルの地と呼ばれている。
9063 11 9 14 ヒラムはかつて金百二十タラントを王に贈った。
9064 11 9 15 ソロモン王が強制的に労働者を徴募したのはこうである。すなわち主の宮と自分の宮殿と、ミロとエルサレムの城壁と、ハゾルとメギドとゲゼルを建てるためであった。
9065 11 9 16 (エジプトの王パロはかつて上ってきて、ゲゼルを取り、火でこれを焼き、その町に住んでいたカナンびとを殺し、これをソロモンの妻である自分の娘に与えて婚姻の贈り物としたので、
9066 11 9 17 ソロモンはそのゲゼルを建て直した)。また下ベテホロンと、
9067 11 9 18 バアラテとユダの国の荒野にあるタマル、
9068 11 9 19 およびソロモンが持っていた倉庫の町々、戦車の町々、騎兵の町々ならびにソロモンがエルサレム、レバノンおよびそのすべての領地において建てようと望んだものをことごとく建てるためであった。
9069 11 9 20 すべてイスラエルの子孫でないアモリびと、ヘテびと、ペリジびと、ヒビびと、エブスびとの残った者、
9070 11 9 21 その地にあって彼らのあとに残った子孫すなわちイスラエルの人々の滅ぼしつくすことのできなかった者を、ソロモンは強制的に奴隷として徴募をおこない、今日に至っている。
9071 11 9 22 しかしイスラエルの人々をソロモンはひとりも奴隷としなかった。彼らは軍人、また彼の役人、司令官、指揮官、戦車隊長、騎兵隊長であったからである。
9072 11 9 23 ソロモンの工事を監督する上役の官吏は五百五十人であって、工事に働く民を治めた。
9073 11 9 24 パロの娘はダビデの町から上って、ソロモンが彼女のために建てた家に住んだ。その時ソロモンはミロを建てた。
9074 11 9 25 ソロモンは主のために築いた祭壇の上に年に三度燔祭と酬恩祭をささげ、また主の前に香をたいた。こうしてソロモンは宮を完成した。
9075 11 9 26 ソロモン王はエドムの地、紅海の岸のエラテに近いエジオン・ゲベルで数隻の船を造った。
9076 11 9 27 ヒラムは海の事を知っている船員であるそのしもべをソロモンのしもべと共にその船でつかわした。
9077 11 9 28 彼らはオフルへ行って、そこから金四百二十タラントを取って、ソロモン王の所にもってきた。
9078 11 10 1 シバの女王は主の名にかかわるソロモンの名声を聞いたので、難問をもってソロモンを試みようとたずねてきた。
9079 11 10 2 彼女は多くの従者を連れ、香料と、たくさんの金と宝石とをらくだに負わせてエルサレムにきた。彼女はソロモンのもとにきて、その心にあることをことごとく彼に告げたが、
9080 11 10 3 ソロモンはそのすべての問に答えた。王が知らないで彼女に説明のできないことは一つもなかった。
9081 11 10 4 シバの女王はソロモンのもろもろの知恵と、ソロモンが建てた宮殿、
9082 11 10 5 その食卓の食物と、列座の家来たちと、その侍臣たちの伺候ぶり、彼らの服装と、彼の給仕たち、および彼が主の宮でささげる燔祭を見て、全く気を奪われてしまった。
9083 11 10 6 彼女は王に言った、「わたしが国であなたの事と、あなたの知恵について聞いたことは真実でありました。
9084 11 10 7 しかしわたしがきて、目に見るまでは、その言葉を信じませんでしたが、今見るとその半分もわたしは知らされていなかったのです。あなたの知恵と繁栄はわたしが聞いたうわさにまさっています。
9085 11 10 8 あなたの奥方たちはさいわいです。常にあなたの前に立って、あなたの知恵を聞く家来たちはさいわいです。
9086 11 10 9 あなたの神、主はほむべきかな。主はあなたを喜び、あなたをイスラエルの位にのぼらせられました。主は永久にイスラエルを愛せられるゆえ、あなたを王として公道と正義とを行わせられるのです」。
9087 11 10 10 そして彼女は金百二十タラントおよび多くの香料と宝石とを王に贈った。シバの女王がソロモン王に贈ったような多くの香料は再びこなかった。
9088 11 10 11 オフルから金を載せてきたヒラムの船は、またオフルからたくさんのびゃくだんの木と宝石とを運んできたので、
9089 11 10 12 王はびゃくだんの木をもって主の宮と王の宮殿のために壁柱を造り、また歌う人々のために琴と立琴とを造った。このようなびゃくだんの木は、かつてきたこともなく、また今日まで見たこともなかった。
9090 11 10 13 ソロモン王はその豊かなのにしたがってシバの女王に贈り物をしたほかに、彼女の望みにまかせて、すべてその求める物を贈った。そして彼女はその家来たちと共に自分の国へ帰っていった。
9091 11 10 14 さて一年の間にソロモンのところに、はいってきた金の目方は六百六十六タラントであった。
9092 11 10 15 そのほかに貿易商および商人の取引、ならびにアラビヤの諸王と国の代官たちからも、はいってきた。
9093 11 10 16 ソロモン王は延金の大盾二百を造った。その大盾にはおのおの六百シケルの金を用いた。
9094 11 10 17 また延金の小盾三百を造った。その小盾にはおのおの三ミナの金を用いた。王はこれらをレバノンの森の家に置いた。
9095 11 10 18 王はまた大きな象牙の玉座を造り、純金をもってこれをおおった。
9096 11 10 19 その玉座に六つの段があり、玉座の後に子牛の頭があり、座席の両側にひじ掛けがあって、ひじ掛けのわきに二つのししが立っていた。
9097 11 10 20 また六つの段のおのおのの両側に十二のししが立っていた。このような物はどこの国でも造られたことがなかった。
9098 11 10 21 ソロモン王が飲むときに用いた器は皆金であった。またレバノンの森の家の器も皆純金であって、銀のものはなかった。銀はソロモンの世には顧みられなかった。
9099 11 10 22 これは王が海にタルシシの船隊を所有して、ヒラムの船隊と一緒に航海させ、タルシシの船隊に三年に一度、金、銀、象牙、さる、くじゃくを載せてこさせたからである。
9100 11 10 23 このようにソロモン王は富も知恵も、地のすべての王にまさっていたので、
9101 11 10 24 全地の人々は神がソロモンの心に授けられた知恵を聞こうとしてソロモンに謁見を求めた。
9102 11 10 25 人々はおのおの贈り物を携えてきた。すなわち銀の器、金の器、衣服、没薬、香料、馬、騾馬など年々定まっていた。
9103 11 10 26 ソロモンは戦車と騎兵とを集めたが、戦車一千四百両、騎兵一万二千あった。ソロモンはこれを戦車の町とエルサレムの王のもとに置いた。
9104 11 10 27 王はエルサレムで、銀を石のように用い、香柏を平地にあるいちじく桑のように多く用いた。
9105 11 10 28 ソロモンが馬を輸入したのはエジプトとクエからであった。すなわち王の貿易商はクエから代価を払って受け取ってきた。
9106 11 10 29 エジプトから輸入される戦車一両は銀六百シケル、馬は百五十シケルであった。このようにして、これらのものが王の貿易商によって、ヘテびとのすべての王たちおよびスリヤの王たちに輸出された。
9107 11 11 1 ソロモン王は多くの外国の女を愛した。すなわちパロの娘、モアブびと、アンモンびと、エドムびと、シドンびと、ヘテびとの女を愛した。
9108 11 11 2 主はかつてこれらの国民について、イスラエルの人々に言われた、「あなたがたは彼らと交わってはならない。彼らもまたあなたがたと交わってはならない。彼らは必ずあなたがたの心を転じて彼らの神々に従わせるからである」。しかしソロモンは彼らを愛して離れなかった。
9109 11 11 3 彼には王妃としての妻七百人、そばめ三百人があった。その妻たちが彼の心を転じたのである。
9110 11 11 4 ソロモンが年老いた時、その妻たちが彼の心を転じて他の神々に従わせたので、彼の心は父ダビデの心のようには、その神、主に真実でなかった。
9111 11 11 5 これはソロモンがシドンびとの女神アシタロテに従い、アンモンびとの神である憎むべき者ミルコムに従ったからである。
9112 11 11 6 このようにソロモンは主の目の前に悪を行い、父ダビデのように全くは主に従わなかった。
9113 11 11 7 そしてソロモンはモアブの神である憎むべき者ケモシのために、またアンモンの人々の神である憎むべき者モレクのためにエルサレムの東の山に高き所を築いた。
9114 11 11 8 彼はまた外国のすべての妻たちのためにもそうしたので、彼女たちはその神々に香をたき、犠牲をささげた。
9115 11 11 9 このようにソロモンの心が転じて、イスラエルの神、主を離れたため、主は彼を怒られた。すなわち主がかつて二度彼に現れ、
9116 11 11 10 この事について彼に、他の神々に従ってはならないと命じられたのに、彼は主の命じられたことを守らなかったからである。
9117 11 11 11 それゆえ、主はソロモンに言われた、「これがあなたの本心であり、わたしが命じた契約と定めとを守らなかったので、わたしは必ずあなたから国を裂き離して、それをあなたの家来に与える。
9118 11 11 12 しかしあなたの父ダビデのために、あなたの世にはそれをしないが、あなたの子の手からそれを裂き離す。
9119 11 11 13 ただし、わたしは国をことごとくは裂き離さず、わたしのしもべダビデのために、またわたしが選んだエルサレムのために一つの部族をあなたの子に与えるであろう」。
9120 11 11 14 こうして主はエドムびとハダデを起して、ソロモンの敵とされた。彼はエドムの王家の者であった。
9121 11 11 15 さきにダビデはエドムにいたが、軍の長ヨアブが上っていって、戦死した者を葬り、エドムの男子をことごとく打ち殺した時、
9122 11 11 16 (ヨアブはイスラエルの人々と共に六か月そこにとどまって、エドムの男子をことごとく断った)。
9123 11 11 17 ハダデはその父のしもべである数人のエドムびとと共に逃げてエジプトへ行こうとした。その時ハダデはまだ少年であった。
9124 11 11 18 彼らがミデアンを立ってパランへ行き、パランから人々を伴ってエジプトへ行き、エジプトの王パロのところへ行くと、パロは彼に家を与え、食糧を定め、かつ土地を与えた。
9125 11 11 19 ハダデは大いにパロの心にかなったので、パロは自分の妻の妹すなわち王妃タペネスの妹を妻として彼に与えた。
9126 11 11 20 タペネスの妹は彼に男の子ゲヌバテを産んだので、タペネスはその子をパロの家のうちで乳離れさせた。ゲヌバテはパロの家で、パロの子どもたちと一緒にいた。
9127 11 11 21 さてハダデはエジプトで、ダビデがその先祖と共に眠ったことと、軍の長ヨアブが死んだことを聞いたので、ハダデはパロに言った、「わたしを去らせて、国へ帰らせてください」。
9128 11 11 22 パロは彼に言った、「わたしと共にいて、なんの不足があって国へ帰ることを求めるのですか」。彼は言った、「ただ、わたしを帰らせてください」。
9129 11 11 23 神はまたエリアダの子レゾンを起してソロモンの敵とされた。彼はその主人ゾバの王ハダデゼルのもとを逃げ去った者であった。
9130 11 11 24 ダビデがゾバの人々を殺した後、彼は人々を自分のまわりに集めて略奪隊の首領となった。彼らはダマスコへ行って、そこに住み、ダマスコで彼を王とした。
9131 11 11 25 彼はソロモンの一生の間、イスラエルの敵となって、ハダデがしたように害をなし、イスラエルを憎んでスリヤを治めた。
9132 11 11 26 ゼレダのエフライムびとネバテの子ヤラベアムはソロモンの家来であったが、その母の名はゼルヤといって寡婦であった。彼もまたその手をあげて王に敵した。
9133 11 11 27 彼が手をあげて、王に敵した事情はこうである。ソロモンはミロを築き、父ダビデの町の破れ口をふさいでいた。
9134 11 11 28 ヤラベアムは非常に手腕のある人であったが、ソロモンはこの若者がよく働くのを見て、彼にヨセフの家のすべての強制労働の監督をさせた。
9135 11 11 29 そのころ、ヤラベアムがエルサレムを出たとき、シロびとである預言者アヒヤが道で彼に会った。アヒヤは新しい着物を着ていた。そして彼らふたりだけが野にいた。
9136 11 11 30 アヒヤは着ている着物をつかんで、それを十二切れに裂き、
9137 11 11 31 ヤラベアムに言った、「あなたは十切れを取りなさい。イスラエルの神、主はこう言われる、『見よ、わたしは国をソロモンの手から裂き離して、あなたに十部族を与えよう。
9138 11 11 32 (ただし彼はわたしのしもべダビデのために、またわたしがイスラエルのすべての部族のうちから選んだ町エルサレムのために、一つの部族をもつであろう)。
9139 11 11 33 それは彼がわたしを捨てて、シドンびとの女神アシタロテと、モアブの神ケモシと、アンモンの人々の神ミルコムを拝み、父ダビデのように、わたしの道に歩んで、わたしの目にかなう事を行い、わたしの定めと、おきてを守ることをしなかったからである。
9140 11 11 34 しかし、わたしは国をことごとくは彼の手から取らない。わたしが選んだ、わたしのしもべダビデが、わたしの命令と定めとを守ったので、わたしは彼のためにソロモンを一生の間、君としよう。
9141 11 11 35 そして、わたしはその子の手から国を取って、その十部族をあなたに与える。
9142 11 11 36 その子には一つの部族を与えて、わたしの名を置くために選んだ町エルサレムで、わたしのしもべダビデに、わたしの前に常に一つのともしびを保たせるであろう。
9143 11 11 37 わたしがあなたを選び、あなたはすべて心の望むところを治めて、イスラエルの上に王となるであろう。
9144 11 11 38 もし、あなたが、わたしの命じるすべての事を聞いて、わたしの道に歩み、わたしの目にかなう事を行い、わたしのしもべダビデがしたように、わたしの定めと戒めとを守るならば、わたしはあなたと共にいて、わたしがダビデのために建てたように、あなたのために堅固な家を建てて、イスラエルをあなたに与えよう。
9145 11 11 39 わたしはこのためにダビデの子孫を苦しめる。しかし永久にではない』」。
9146 11 11 40 ソロモンはヤラベアムを殺そうとしたが、ヤラベアムは立ってエジプトにのがれ、エジプト王シシャクのところへ行って、ソロモンの死ぬまでエジプトにいた。
9147 11 11 41 ソロモンのそのほかの事績と、彼がしたすべての事およびその知恵は、ソロモンの事績の書にしるされているではないか。
9148 11 11 42 ソロモンがエルサレムでイスラエルの全地を治めた日は四十年であった。
9149 11 11 43 ソロモンはその先祖と共に眠って、父ダビデの町に葬られ、その子レハベアムが代って王となった。
9150 11 12 1 レハベアムはシケムへ行った。すべてのイスラエルびとが彼を王にしようとシケムへ行ったからである。
9151 11 12 2 ネバテの子ヤラベアムはソロモンを避けてエジプトにのがれ、なおそこにいたが、これを聞いてエジプトから帰ったので、
9152 11 12 3 人々は人をつかわして彼を招いた。そしてヤラベアムとイスラエルの会衆は皆レハベアムの所にきて言った、
9153 11 12 4 「父上はわれわれのくびきを重くされましたが、今父上のきびしい使役と、父上がわれわれに負わせられた重いくびきとを軽くしてください。そうすればわれわれはあなたに仕えます」。
9154 11 12 5 レハベアムは彼らに言った、「去って、三日過ぎてから、またわたしのところにきなさい」。それで民は立ち去った。
9155 11 12 6 レハベアム王は父ソロモンの存命中ソロモンに仕えた老人たちに相談して言った、「この民にどう返答すればよいと思いますか」。
9156 11 12 7 彼らはレハベアムに言った、「もし、あなたが、きょう、この民のしもべとなって彼らに仕え、彼らに答えるとき、ねんごろに語られるならば、彼らは永久にあなたのしもべとなるでしょう」。
9157 11 12 8 しかし彼は老人たちが与えた勧めを捨てて、自分と一緒に大きくなって自分に仕えている若者たちに相談して、
9158 11 12 9 彼らに言った、「この民がわたしにむかって『あなたの父がわれわれに負わせたくびきを軽くしてください』というのに、われわれはなんと返答すればよいと思いますか」。
9159 11 12 10 彼と一緒に大きくなった若者たちは彼に言った、「あなたにむかって『父上はわれわれのくびきを重くされましたが、あなたは、それをわれわれのために軽くしてください』と言うこの民に、こう言いなさい、『わたしの小指は父の腰よりも太い。
9160 11 12 11 父はあなたがたに重いくびきを負わせたが、わたしはさらに、あなたがたのくびきを重くしよう。父はむちであなたがたを懲らしたが、わたしはさそりをもってあなたがたを懲らそう』と」。
9161 11 12 12 さてヤラベアムと民は皆、王が「三日目に再びわたしのところに来るように」と言ったとおりに、三日目にレハベアムのところにきた。
9162 11 12 13 王は荒々しく民に答え、老人たちが与えた勧めを捨てて、
9163 11 12 14 若者たちの勧めに従い、彼らに告げて言った、「父はあなたがたのくびきを重くしたが、わたしはあなたがたのくびきを、さらに重くしよう。父はむちであなたがたを懲らしたが、わたしはさそりをもってあなたがたを懲らそう」。
9164 11 12 15 このように王は民の言うことを聞きいれなかった。これはかつて主がシロびとアヒヤによって、ネバテの子ヤラベアムに言われた言葉を成就するために、主が仕向けられた事であった。
9165 11 12 16 イスラエルの人々は皆、王が自分たちの言うことを聞きいれないのを見たので、民は王に答えて言った、「われわれはダビデのうちに何の分があろうか、エッサイの子のうちに嗣業がない。イスラエルよ、あなたがたの天幕へ帰れ。ダビデよ、今自分の家の事を見よ」。そしてイスラエルはその天幕へ去っていった。
9166 11 12 17 しかしレハベアムはユダの町々に住んでいるイスラエルの人々を治めた。
9167 11 12 18 レハベアム王は徴募の監督であったアドラムをつかわしたが、イスラエルが皆、彼を石で撃ち殺したので、レハベアム王は急いで車に乗り、エルサレムへ逃げた。
9168 11 12 19 こうしてイスラエルはダビデの家にそむいて今日に至った。
9169 11 12 20 イスラエルは皆ヤラベアムの帰ってきたのを聞き、人をつかわして彼を集会に招き、イスラエルの全家の上に王とした。ユダの部族のほかはダビデの家に従う者がなかった。
9170 11 12 21 ソロモンの子レハベアムはエルサレムに来て、ユダの全家とベニヤミンの部族の者、すなわちえり抜きの軍人十八万を集め、国を取りもどすために、イスラエルの家と戦おうとしたが、
9171 11 12 22 神の言葉が神の人シマヤに臨んだ、
9172 11 12 23 「ソロモンの子であるユダの王レハベアム、およびユダとベニヤミンの全家、ならびにそのほかの民に言いなさい、
9173 11 12 24 『主はこう仰せられる。あなたがたは上っていってはならない。あなたがたの兄弟であるイスラエルの人々と戦ってはならない。おのおの家に帰りなさい。この事はわたしから出たのである』」。それで彼らは主の言葉をきき、主の言葉に従って帰っていった。
9174 11 12 25 ヤラベアムはエフライムの山地にシケムを建てて、そこに住んだ。彼はまたそこから出てペヌエルを建てた。
9175 11 12 26 しかしヤラベアムはその心のうちに言った、「国は今ダビデの家にもどるであろう。
9176 11 12 27 もしこの民がエルサレムにある主の宮に犠牲をささげるために上るならば、この民の心はユダの王である彼らの主君レハベアムに帰り、わたしを殺して、ユダの王レハベアムに帰るであろう」。
9177 11 12 28 そこで王は相談して、二つの金の子牛を造り、民に言った、「あなたがたはもはやエルサレムに上るには、およばない。イスラエルよ、あなたがたをエジプトの国から導き上ったあなたがたの神を見よ」。
9178 11 12 29 そして彼は一つをベテルにすえ、一つをダンに置いた。
9179 11 12 30 この事は罪となった。民がベテルへ行って一つを礼拝し、ダンへ行って一つを礼拝したからである。
9180 11 12 31 彼はまた高き所に家を造り、レビの子孫でない一般の民を祭司に任命した。
9181 11 12 32 またヤラベアムはユダで行う祭と同じ祭を八月の十五日に定め、そして祭壇に上った。彼はベテルでそのように行い、彼が造った子牛に犠牲をささげた。また自分の造った高き所の祭司をベテルに立てた。
9182 11 12 33 こうして彼はベテルに造った祭壇に八月の十五日に上った。これは彼が自分で勝手に考えついた月であった。そして彼はイスラエルの人々のために祭を定め、祭壇に上って香をたいた。
9183 11 13 1 見よ、神の人が主の命によってユダからベテルにきた。その時ヤラベアムは祭壇の上に立って香をたいていた。
9184 11 13 2 神の人は祭壇にむかい主の命によって呼ばわって言った、「祭壇よ、祭壇よ、主はこう仰せられる、『見よ、ダビデの家にひとりの子が生れる。その名をヨシヤという。彼はおまえの上で香をたく高き所の祭司らを、おまえの上にささげる。また人の骨がおまえの上で焼かれる』」。
9185 11 13 3 その日、彼はまた一つのしるしを示して言った、「主の言われたしるしはこれである、『見よ、祭壇は裂け、その上にある灰はこぼれ出るであろう』」。
9186 11 13 4 ヤラベアム王は、神の人がベテルにある祭壇にむかって呼ばわる言葉を聞いた時、祭壇から手を伸ばして、「彼を捕えよ」と言ったが、彼にむかって伸ばした手が枯れて、ひっ込めることができなかった。
9187 11 13 5 そして神の人が主の言葉をもって示したしるしのように祭壇は裂け、灰は祭壇からこぼれ出た。
9188 11 13 6 王は神の人に言った、「あなたの神、主に願い、わたしのために祈って、わたしの手をもとに返らせてください」。神の人が主に願ったので、王の手はもとに返って、前のようになった。
9189 11 13 7 そこで王は神の人に言った、「わたしと一緒に家にきて、身を休めなさい。あなたに謝礼をさしあげましょう」。
9190 11 13 8 神の人は王に言った、「たとい、あなたの家の半ばをくださっても、わたしはあなたと一緒にまいりません。またこの所では、パンも食べず水も飲みません。
9191 11 13 9 主の言葉によってわたしは、『パンを食べてはならない、水を飲んではならない。また来た道から帰ってはならない』と命じられているからです」。
9192 11 13 10 こうして彼はほかの道を行き、ベテルに来た道からは帰らなかった。
9193 11 13 11 さてベテルにひとりの年老いた預言者が住んでいたが、そのむすこたちがきて、その日神の人がベテルでした事どもを彼に話した。また神の人が王に言った言葉をもその父に話した。
9194 11 13 12 父が彼らに「その人はどの道を行ったか」と聞いたので、むすこたちはユダからきた神の人の行った道を父に示した。
9195 11 13 13 父はむすこたちに言った、「わたしのためにろばにくらを置きなさい」。彼らがろばにくらを置いたので、彼はそれに乗り、
9196 11 13 14 神の人のあとを追って行き、かしの木の下にすわっているのを見て、その人に言った、「あなたはユダからこられた神の人ですか」。その人は言った、「そうです」。
9197 11 13 15 そこで彼はその人に言った、「わたしと一緒に家にきてパンを食べてください」。
9198 11 13 16 その人は言った、「わたしはあなたと一緒に引き返すことはできません。あなたと一緒に行くことはできません。またわたしはこの所であなたと一緒にパンも食べず水も飲みません。
9199 11 13 17 主の言葉によってわたしは、『その所でパンを食べてはならない、水を飲んではならない。また来た道から帰ってはならない』と言われているからです」。
9200 11 13 18 彼はその人に言った、「わたしもあなたと同じ預言者ですが、天の使が主の命によってわたしに告げて、『その人を一緒に家につれ帰り、パンを食べさせ、水を飲ませよ』と言いました」。これは彼がその人を欺いたのである。
9201 11 13 19 そこでその人は彼と一緒に引き返し、その家でパンを食べ、水を飲んだ。
9202 11 13 20 彼らが食卓についていたとき、主の言葉が、その人をつれて帰った預言者に臨んだので、
9203 11 13 21 彼はユダからきた神の人にむかい呼ばわって言った、「主はこう仰せられます、『あなたが主の言葉にそむき、あなたの神、主がお命じになった命令を守らず、
9204 11 13 22 引き返して、主があなたに、パンを食べてはならない、水を飲んではならない、と言われた場所でパンを食べ、水を飲んだゆえ、あなたの死体はあなたの先祖の墓に行かないであろう』」。
9205 11 13 23 そしてその人がパンを食べ、水を飲んだ後、彼はその人のため、すなわちつれ帰った預言者のためにろばにくらを置いた。
9206 11 13 24 こうしてその人は立ち去ったが、道でししが彼に会って彼を殺した。そしてその死体は道に捨てられ、ろばはそのかたわらに立ち、ししもまた死体のかたわらに立っていた。
9207 11 13 25 人々はそこをとおって、道に捨てられている死体と、死体のかたわらに立っているししを見て、かの老預言者の住んでいる町にきてそれを話した。
9208 11 13 26 その人を道からつれて帰った預言者はそれを聞いて言った、「それは主の言葉にそむいた神の人だ。主が彼に言われた言葉のように、主は彼をししにわたされ、ししが彼を裂き殺したのだ」。
9209 11 13 27 そしてむすこたちに言った、「わたしのためにろばにくらを置きなさい」。彼らがくらを置いたので、
9210 11 13 28 彼は行って、死体が道に捨てられ、ろばとししが死体のかたわらに立っているのを見た。ししはその死体を食べず、ろばも裂いていなかった。
9211 11 13 29 そこで預言者は神の人の死体を取りあげ、それをろばに載せて町に持ち帰り、悲しんでそれを葬った。
9212 11 13 30 すなわちその死体を自分の墓に納め、皆これがために「ああ、わが兄弟よ」と言って悲しんだ。
9213 11 13 31 彼はそれを葬って後、むすこたちに言った、「わたしが死んだ時は、神の人を葬った墓に葬り、わたしの骨を彼の骨のかたわらに納めなさい。
9214 11 13 32 彼が主の命によって、ベテルにある祭壇にむかい、またサマリヤの町々にある高き所のすべての家にむかって呼ばわった言葉は必ず成就するのです」。
9215 11 13 33 この事の後も、ヤラベアムはその悪い道を離れて立ち返ることをせず、また一般の民を、高き所の祭司に任命した。すなわち、だれでも好む者は、それを立てて高き所の祭司とした。
9216 11 13 34 この事はヤラベアムの家の罪となって、ついにこれを地のおもてから断ち滅ぼすようになった。
9217 11 14 1 そのころヤラベアムの子アビヤが病気になったので、
9218 11 14 2 ヤラベアムは妻に言った、「立って姿を変え、ヤラベアムの妻であることの知られないようにしてシロへ行きなさい。わたしがこの民の王となることを、わたしに告げた預言者アヒヤがそこにいます。
9219 11 14 3 パン十個と菓子数個および、みつ一びんを携えて彼のところへ行きなさい。彼はこの子がどうなるかをあなたに告げるでしょう」。
9220 11 14 4 ヤラベアムの妻はそのようにして、立ってシロへ行き、アヒヤの家に着いたが、アヒヤは年老いたため、目がかすんで見ることができなかった。
9221 11 14 5 しかし主はアヒヤに言われた、「ヤラベアムの妻が子供の事をあなたに尋ねるために来る。子供は病気だ。あなたは彼女にこうこう言わなければならない」。
9222 11 14 6 しかし彼女が戸口にはいってきたとき、アヒヤはその足音を聞いて言った、「ヤラベアムの妻よ、はいりなさい。なぜ、他人を装うのですか。わたしはあなたにきびしい事を告げるよう、命じられています。
9223 11 14 7 行ってヤラベアムに言いなさい、『イスラエルの神、主はこう仰せられる、「わたしはあなたを民のうちからあげ、わたしの民イスラエルの上に立てて君とし、
9224 11 14 8 国をダビデの家から裂き離して、それをあなたに与えたのに、あなたはわたしのしもべダビデが、わたしの命令を守って一心にわたしに従い、ただわたしの目にかなった事のみを行ったようにではなく、
9225 11 14 9 あなたよりも先にいたすべての者にまさって悪をなし、行って自分のために他の神々と鋳た像を造り、わたしを怒らせ、わたしをうしろに捨て去った。
9226 11 14 10 それゆえ、見よ、わたしはヤラベアムの家に災を下し、ヤラベアムに属する男は、イスラエルについて、つながれた者も、自由な者もことごとく断ち、人があくたを残りなく焼きつくすように、ヤラベアムの家を全く断ち滅ぼすであろう。
9227 11 14 11 ヤラベアムに属する者は、町で死ぬ者を犬が食べ、野で死ぬ者を空の鳥が食べるであろう。主がこれを言われるのである」』。
9228 11 14 12 あなたは立って、家へ帰りなさい。あなたの足が町にはいる時に、子どもは死にます。
9229 11 14 13 そしてイスラエルは皆、彼のために悲しんで彼を葬るでしょう。ヤラベアムに属する者は、ただ彼だけ墓に葬られるでしょう。ヤラベアムの家のうちで、彼はイスラエルの神、主にむかって良い思いをいだいていたからです。
9230 11 14 14 主はイスラエルの上にひとりの王を起されます。彼はその日ヤラベアムの家を断つでしょう。
9231 11 14 15 その後主はイスラエルを撃って、水に揺らぐ葦のようにし、イスラエルを、その先祖に賜わったこの良い地から抜き去って、ユフラテ川の向こうに散らされるでしょう。彼らがアシラ像を造って主を怒らせたからです。
9232 11 14 16 主はヤラベアムの罪のゆえに、すなわち彼がみずから犯し、またイスラエルに犯させたその罪のゆえにイスラエルを捨てられるでしょう」。
9233 11 14 17 ヤラベアムの妻は立って去り、テルザへ行って、家の敷居をまたいだ時、子どもは死んだ。
9234 11 14 18 イスラエルは皆彼を葬り、彼のために悲しんだ。主がそのしもべ預言者アヒヤによって言われた言葉のとおりである。
9235 11 14 19 ヤラベアムのその他の事績、彼がどのように戦い、どのように世を治めたかは、イスラエルの王の歴代志の書にしるされている。
9236 11 14 20 ヤラベアムが世を治めた日は二十二年であった。彼はその先祖と共に眠って、その子ナダブが代って王となった。
9237 11 14 21 ソロモンの子レハベアムはユダで世を治めた。レハベアムは王となったとき四十一歳であったが、主がその名を置くために、イスラエルのすべての部族のうちから選ばれた町エルサレムで、十七年世を治めた。その母の名はナアマといってアンモンびとであった。
9238 11 14 22 ユダの人々はその先祖の行ったすべての事にまさって、主の目の前に悪を行い、その犯した罪によって主の怒りを引き起した。
9239 11 14 23 彼らもすべての高い丘の上と、すべての青木の下に、高き所と石の柱とアシラ像とを建てたからである。
9240 11 14 24 その国にはまた神殿男娼たちがいた。彼らは主がイスラエルの人々の前から追い払われた国民のすべての憎むべき事をならい行った。
9241 11 14 25 レハベアムの王の第五年にエジプトの王シシャクがエルサレムに攻め上ってきて、
9242 11 14 26 主の宮の宝物と、王の宮殿の宝物を奪い去った。彼はそれをことごとく奪い去り、またソロモンの造った金の盾をみな奪い去った。
9243 11 14 27 レハベアムはその代りに青銅の盾を造って、王の宮殿の門を守る侍衛長の手にわたした。
9244 11 14 28 王が主の宮にはいるごとに、侍衛はそれを携え、また、それを侍衛のへやへ持ち帰った。
9245 11 14 29 レハベアムのその他の事績と、彼がしたすべての事は、ユダの王の歴代志の書にしるされているではないか。
9246 11 14 30 レハベアムとヤラベアムの間には絶えず戦争があった。
9247 11 14 31 レハベアムはその先祖と共に眠って先祖と共にダビデの町に葬られた。その母の名はナアマといってアンモンびとであった。その子アビヤムが代って王となった。
9248 11 15 1 ネバテの子ヤラベアム王の第十八年にアビヤムがユダの王となり、
9249 11 15 2 エルサレムで三年世を治めた。その母の名はマアカといって、アブサロムの娘であった。
9250 11 15 3 彼はその父が先に行ったもろもろの罪をおこない、その心は父ダビデの心のようにその神、主に対して全く真実ではなかった。
9251 11 15 4 それにもかかわらず、その神、主はダビデのために、エルサレムにおいて彼に一つのともしびを与え、その子を彼のあとに立てて、エルサレムを固められた。
9252 11 15 5 それはダビデがヘテびとウリヤの事のほか、一生の間、主の目にかなう事を行い、主が命じられたすべての事に、そむかなかったからである。
9253 11 15 6 レハベアムとヤラベアムの間には一生の間、戦争があった。
9254 11 15 7 アビヤムのその他の行為と、彼がしたすべての事は、ユダの王の歴代志の書にしるされているではないか。アビヤムとヤラベアムの間にも戦争があった。
9255 11 15 8 アビヤムはその先祖と共に眠って、ダビデの町に葬られ、その子アサが代って王となった。
9256 11 15 9 イスラエルの王ヤラベアムの第二十年にアサはユダの王となり、
9257 11 15 10 エルサレムで四十一年世を治めた。その母の名はマアカといってアブサロムの娘であった。
9258 11 15 11 アサはその父ダビデがしたように主の目にかなう事をし、
9259 11 15 12 神殿男娼を国から追い出し、先祖たちの造ったもろもろの偶像を除いた。
9260 11 15 13 彼はまたその母マアカが、アシラのために憎むべき像を造らせたので、彼女を太后の位から退けた。そしてアサはその憎むべき像を切り倒してキデロンの谷で焼き捨てた。
9261 11 15 14 ただし高き所は除かなかった。けれどもアサの心は一生の間、主に対して全く真実であった。
9262 11 15 15 彼は父の献納した物と自分の献納した物、金銀および器物を主の宮に携え入れた。
9263 11 15 16 アサとイスラエルの王バアシャの間には一生の間、戦争があった。
9264 11 15 17 イスラエルの王バアシャはユダに攻め上り、ユダの王アサの所に、だれをも出入りさせないためにラマを築いた。
9265 11 15 18 そこでアサは主の宮の宝蔵と、王の宮殿の宝蔵に残っている金銀をことごとく取って、これを家来たちの手にわたし、そしてアサ王は彼らをダマスコに住んでいるスリヤの王、ヘジョンの子タブリモンの子であるベネハダデにつかわして言わせた、
9266 11 15 19 「わたしの父とあなたの父との間に結ばれていたように、わたしとあなたの間に同盟を結びましょう。わたしはあなたに金銀の贈り物をさしあげます。行って、あなたとイスラエルの王バアシャとの同盟を破棄し、彼をわたしの所から撤退させてください」。
9267 11 15 20 ベネハダデはアサ王の言うことを聞き、自分の軍勢の長たちをつかわしてイスラエルの町々を攻め、イヨンとダンとアベル・ベテ・マアカおよびキンネレテの全地と、ナフタリの全地を撃った。
9268 11 15 21 バアシャはこれを聞き、ラマを築くことをやめて、テルザにとどまった。
9269 11 15 22 そこでアサ王はユダ全国に布告を発した。ひとりも免れる者はなかった。すなわちバアシャがラマを築くために用いた石と材木を運びこさせ、アサ王はそれを用いて、ベニヤミンのゲバとミヅパを築いた。
9270 11 15 23 アサのその他の事績とそのすべての勲功と、彼がしたすべての事および彼が建てた町々は、ユダの王の歴代志の書にしるされているではないか。彼は老年になって足を病んだ。
9271 11 15 24 アサはその先祖と共に眠って、父ダビデの町に先祖と共に葬られ、その子ヨシャパテが代って王となった。
9272 11 15 25 ユダの王アサの第二年にヤラベアムの子ナダブがイスラエルの王となって、二年イスラエルを治めた。
9273 11 15 26 彼は主の目の前に悪を行い、その父の道に歩み、父がイスラエルに犯させた罪をおこなった。
9274 11 15 27 イッサカルの家のアヒヤの子バアシャは彼に対してむほんを企て、ペリシテびとに属するギベトンで彼を撃った。これはナダブとイスラエルが皆ギベトンを囲んでいたからである。
9275 11 15 28 こうしてユダの王アサの第三年にバアシャは彼を殺し、彼に代って王となった。
9276 11 15 29 彼は王となるとすぐヤラベアムの全家を撃ち、息のある者をひとりもヤラベアムの家に残さず、ことごとく滅ぼした。主がそのしもべシロびとアヒヤによって言われた言葉のとおりであって、
9277 11 15 30 これはヤラベアムがみずから犯し、またイスラエルに犯させた罪のため、また彼がイスラエルの神、主を怒らせたその怒りによるのであった。
9278 11 15 31 ナダブのその他の事績と、彼がしたすべての事は、イスラエルの王の歴代志の書にしるされているではないか。
9279 11 15 32 アサとイスラエルの王バアシャの間には一生の間戦争があった。
9280 11 15 33 ユダの王アサの第三年にアヒヤの子バアシャはテルザでイスラエルの全地の王となって、二十四年世を治めた。
9281 11 15 34 彼は主の目の前に悪を行い、ヤラベアムの道に歩み、ヤラベアムがイスラエルに犯させた罪をおこなった。
9282 11 16 1 そこで主の言葉がハナニの子エヒウに臨み、バアシャを責めて言った、
9283 11 16 2 「わたしはあなたをちりの中からあげて、わたしの民イスラエルの上に君としたが、あなたはヤラベアムの道に歩み、わたしの民イスラエルに罪を犯させ、その罪をもってわたしを怒らせた。
9284 11 16 3 それでわたしは、バアシャとその家を全く滅ぼし去り、あなたの家をネバテの子ヤラベアムの家のようにする。
9285 11 16 4 バアシャに属する者で、町で死ぬ者は犬が食べ、彼に属する者で、野で死ぬ者は空の鳥が食べるであろう」。
9286 11 16 5 バアシャのその他の事績と、彼がした事と、その勲功とは、イスラエルの王の歴代志の書にしるされているではないか。
9287 11 16 6 バアシャはその先祖と共に眠って、テルザに葬られ、その子エラが代って王となった。
9288 11 16 7 主の言葉はまたハナニの子預言者エヒウによって臨み、バアシャとその家を責めた。これは彼が主の目の前に、もろもろの悪を行い、その手のわざをもって主を怒らせ、ヤラベアムの家にならったためであり、また彼がヤラベアムの家を滅ぼしたためであった。
9289 11 16 8 ユダの王アサの第二十六年にバアシャの子エラはテルザでイスラエルの王となり、二年世を治めた。
9290 11 16 9 彼がテルザにいて、テルザの宮殿のつかさアルザの家で酒を飲んで酔った時、その家来で戦車隊の半ばを指揮していたジムリが、彼にそむいた。
9291 11 16 10 そしてユダの王アサの第二十七年にジムリは、はいってきて彼を撃ち殺し、彼に代って王となった。
9292 11 16 11 ジムリは王となって、位についた時、バアシャの全家を殺し、その親族または友だちの男子は、ひとりも残さなかった。
9293 11 16 12 こうしてジムリはバアシャの全家を滅ぼした。主が預言者エヒウによってバアシャを責めて言われた言葉のとおりである。
9294 11 16 13 これはバアシャのもろもろの罪と、その子エラの罪のためであって、彼らが罪を犯し、またイスラエルに罪を犯させ、彼らの偶像をもってイスラエルの神、主を怒らせたからである。
9295 11 16 14 エラのその他の事績と、彼がしたすべての事は、イスラエルの王の歴代志の書にしるされているではないか。
9296 11 16 15 ユダの王アサの第二十七年にジムリはテルザで七日の間、世を治めた。民はペリシテびとに属するギベトンにむかって陣取っていたが、
9297 11 16 16 その陣取っていた民が「ジムリはむほんを起して王を殺した」と人のいうのを聞いたので、イスラエルは皆その日陣営で、軍の長オムリをイスラエルの王とした。
9298 11 16 17 そこでオムリはイスラエルの人々と共にギベトンから上ってテルザを囲んだ。
9299 11 16 18 ジムリはその町の陥るのを見て、王の宮殿の天守にはいり、王の宮殿に火をかけてその中で死んだ。
9300 11 16 19 これは彼が犯した罪のためであって、彼が主の目の前に悪を行い、ヤラベアムの道に歩み、ヤラベアムがイスラエルに犯させたその罪を行ったからである。
9301 11 16 20 ジムリのその他の事績と、彼が企てた陰謀は、イスラエルの王の歴代志の書にしるされているではないか。
9302 11 16 21 その時イスラエルの民は二つに分れ、民の半ばはギナテの子テブニに従って、これを王としようとし、半ばはオムリに従った。
9303 11 16 22 しかしオムリに従った民はギナテの子テブニに従った民に勝って、テブニは死に、オムリが王となった。
9304 11 16 23 ユダの王アサの第三十一年にオムリはイスラエルの王となって十二年世を治めた。彼はテルザで六年王であった。
9305 11 16 24 彼は銀二タラントでセメルからサマリヤの山を買い、その上に町を建て、その建てた町の名をその山の持ち主であったセメルの名に従ってサマリヤと呼んだ。
9306 11 16 25 オムリは主の目の前に悪を行い、彼よりも先にいたすべての者にまさって悪い事をした。
9307 11 16 26 彼はネバテの子ヤラベアムのすべての道に歩み、ヤラベアムがイスラエルに罪を犯させ、彼らの偶像をもってイスラエルの神、主を怒らせたその罪を行った。
9308 11 16 27 オムリが行ったその他の事績と、彼があらわした勲功とは、イスラエルの王の歴代志の書にしるされているではないか。
9309 11 16 28 オムリはその先祖と共に眠って、サマリヤに葬られ、その子アハブが代って王となった。
9310 11 16 29 ユダの王アサの第三十八年にオムリの子アハブがイスラエルの王となった。オムリの子アハブはサマリヤで二十二年イスラエルを治めた。
9311 11 16 30 オムリの子アハブは彼よりも先にいたすべての者にまさって、主の目の前に悪を行った。
9312 11 16 31 彼はネバテの子ヤラベアムの罪を行うことを、軽い事とし、シドンびとの王エテバアルの娘イゼベルを妻にめとり、行ってバアルに仕え、これを拝んだ。
9313 11 16 32 彼はサマリヤに建てたバアルの宮に、バアルのために祭壇を築いた。
9314 11 16 33 アハブはまたアシラ像を造った。アハブは彼よりも先にいたイスラエルのすべての王にまさってイスラエルの神、主を怒らせることを行った。
9315 11 16 34 彼の代にベテルびとヒエルはエリコを建てた。彼はその基をすえる時に長子アビラムを失い、その門を立てる時に末の子セグブを失った。主がヌンの子ヨシュアによって言われた言葉のとおりである。
9316 11 17 1 ギレアデのテシベに住むテシベびとエリヤはアハブに言った、「わたしの仕えているイスラエルの神、主は生きておられます。わたしの言葉のないうちは、数年雨も露もないでしょう」。
9317 11 17 2 主の言葉がエリヤに臨んだ、
9318 11 17 3 「ここを去って東におもむき、ヨルダンの東にあるケリテ川のほとりに身を隠しなさい。
9319 11 17 4 そしてその川の水を飲みなさい。わたしはからすに命じて、そこであなたを養わせよう」。
9320 11 17 5 エリヤは行って、主の言葉のとおりにした。すなわち行って、ヨルダンの東にあるケリテ川のほとりに住んだ。
9321 11 17 6 すると、からすが朝ごとに彼の所にパンと肉を運び、また夕ごとにパンと肉を運んできた。そして彼はその川の水を飲んだ。
9322 11 17 7 しかし国に雨がなかったので、しばらくしてその川はかれた。
9323 11 17 8 その時、主の言葉が彼に臨んで言った、
9324 11 17 9 「立ってシドンに属するザレパテへ行って、そこに住みなさい。わたしはそのところのやもめ女に命じてあなたを養わせよう」。
9325 11 17 10 そこで彼は立ってザレパテへ行ったが、町の門に着いたとき、ひとりのやもめ女が、その所でたきぎを拾っていた。彼はその女に声をかけて言った、「器に水を少し持ってきて、わたしに飲ませてください」。
9326 11 17 11 彼女が行って、それを持ってこようとした時、彼は彼女を呼んで言った、「手に一口のパンを持ってきてください」。
9327 11 17 12 彼女は言った、「あなたの神、主は生きておられます。わたしにはパンはありません。ただ、かめに一握りの粉と、びんに少しの油があるだけです。今わたしはたきぎ二、三本を拾い、うちへ帰って、わたしと子供のためにそれを調理し、それを食べて死のうとしているのです」。
9328 11 17 13 エリヤは彼女に言った、「恐れるにはおよばない。行って、あなたが言ったとおりにしなさい。しかしまず、それでわたしのために小さいパンを、一つ作って持ってきなさい。その後、あなたと、あなたの子供のために作りなさい。
9329 11 17 14 『主が雨を地のおもてに降らす日まで、かめの粉は尽きず、びんの油は絶えない』とイスラエルの神、主が言われるからです」。
9330 11 17 15 彼女は行って、エリヤが言ったとおりにした。彼女と彼および彼女の家族は久しく食べた。
9331 11 17 16 主がエリヤによって言われた言葉のように、かめの粉は尽きず、びんの油は絶えなかった。
9332 11 17 17 これらの事の後、その家の主婦であるこの女の男の子が病気になった。その病気はたいそう重く、息が絶えたので、
9333 11 17 18 彼女はエリヤに言った、「神の人よ、あなたはわたしに、何の恨みがあるのですか。あなたはわたしの罪を思い出させるため、またわたしの子を死なせるためにおいでになったのですか」。
9334 11 17 19 エリヤは彼女に言った、「子をわたしによこしなさい」。そして彼女のふところから子供を取り、自分のいる屋上のへやへかかえて上り、自分の寝台に寝かせ、
9335 11 17 20 主に呼ばわって言った、「わが神、主よ、あなたはわたしが宿っている家のやもめにさえ災をくだして、子供を殺されるのですか」。
9336 11 17 21 そして三度その子供の上に身を伸ばし、主に呼ばわって言った、「わが神、主よ、この子供の魂をもとに帰らせてください」。
9337 11 17 22 主はエリヤの声を聞きいれられたので、その子供の魂はもとに帰って、彼は生きかえった。
9338 11 17 23 エリヤはその子供を取って屋上のへやから家の中につれて降り、その母にわたして言った、「ごらんなさい。あなたの子は生きかえりました」。
9339 11 17 24 女はエリヤに言った、「今わたしはあなたが神の人であることと、あなたの口にある主の言葉が真実であることを知りました」。
9340 11 18 1 多くの日を経て、三年目に主の言葉がエリヤに臨んだ、「行って、あなたの身をアハブに示しなさい。わたしは雨を地に降らせる」。
9341 11 18 2 エリヤはその身をアハブに示そうとして行った。その時、サマリヤにききんが激しかった。
9342 11 18 3 アハブは家づかさオバデヤを召した。(オバデヤは深く主を恐れる人で、
9343 11 18 4 イゼベルが主の預言者を断ち滅ぼした時、オバデヤは百人の預言者を救い出して五十人ずつほら穴に隠し、パンと水をもって彼らを養った)。
9344 11 18 5 アハブはオバデヤに言った、「国中のすべての水の源と、すべての川に行ってみるがよい。馬と騾馬を生かしておくための草があるかもしれない。そうすれば、われわれは家畜をいくぶんでも失わずにすむであろう」。
9345 11 18 6 彼らは行き巡る地をふたりで分け、アハブはひとりでこの道を行き、オバデヤはひとりで他の道を行った。
9346 11 18 7 オバデヤが道を進んでいた時、エリヤが彼に会った。彼はエリヤを認めて伏して言った、「わが主エリヤよ、あなたはここにおられるのですか」。
9347 11 18 8 エリヤは彼に言った、「そうです。行って、あなたの主人に、エリヤはここにいると告げなさい」。
9348 11 18 9 彼は言った、「わたしにどんな罪があって、あなたはしもべをアハブの手にわたして殺そうとされるのですか。
9349 11 18 10 あなたの神、主は生きておられます。わたしの主人があなたを尋ねるために、人をつかわさない民はなく、国もありません。そしてエリヤはいないと言う時は、その国、その民に、あなたが見つからないという誓いをさせるのです。
9350 11 18 11 あなたは今『行って、エリヤはここにいると主人に告げよ』と言われます。
9351 11 18 12 しかしわたしがあなたを離れて行くと、主の霊はあなたを、わたしの知らない所へ連れて行くでしょう。わたしが行ってアハブに告げ、彼があなたを見つけることができなければ、彼はわたしを殺すでしょう。しかし、しもべは幼い時から主を恐れている者です。
9352 11 18 13 イゼベルが主の預言者を殺した時に、わたしがした事、すなわち、わたしが主の預言者のうち百人を五十人ずつほら穴に隠して、パンと水をもって養った事を、わが主は聞かれませんでしたか。
9353 11 18 14 ところが今あなたは『行って、エリヤはここにいると主人に告げよ』と言われます。そのようなことをすれば彼はわたしを殺すでしょう」。
9354 11 18 15 エリヤは言った、「わたしの仕える万軍の主は生きておられる。わたしは必ず、きょう、わたしの身を彼に示すであろう」。
9355 11 18 16 オバデヤは行ってアハブに会い、彼に告げたので、アハブはエリヤに会おうとして行った。
9356 11 18 17 アハブはエリヤを見たとき、彼に言った、「イスラエルを悩ます者よ、あなたはここにいるのですか」。
9357 11 18 18 彼は答えた、「わたしがイスラエルを悩ますのではありません。あなたと、あなたの父の家が悩ましたのです。あなたがたが主の命令を捨て、バアルに従ったためです。
9358 11 18 19 それで今、人をつかわしてイスラエルのすべての人およびバアルの預言者四百五十人、ならびにアシラの預言者四百人、イゼベルの食卓で食事する者たちをカルメル山に集めて、わたしの所にこさせなさい」。
9359 11 18 20 そこでアハブはイスラエルのすべての人に人をつかわして、預言者たちをカルメル山に集めた。
9360 11 18 21 そのときエリヤはすべての民に近づいて言った、「あなたがたはいつまで二つのものの間に迷っているのですか。主が神ならばそれに従いなさい。しかしバアルが神ならば、それに従いなさい」。民はひと言も彼に答えなかった。
9361 11 18 22 エリヤは民に言った、「わたしはただひとり残った主の預言者です。しかしバアルの預言者は四百五十人あります。
9362 11 18 23 われわれに二頭の牛をください。そして一頭の牛を彼らに選ばせ、それを切り裂いて、たきぎの上に載せ、それに火をつけずにおかせなさい。わたしも一頭の牛を整え、それをたきぎの上に載せて火をつけずにおきましょう。
9363 11 18 24 こうしてあなたがたはあなたがたの神の名を呼びなさい。わたしは主の名を呼びましょう。そして火をもって答える神を神としましょう」。民は皆答えて「それがよかろう」と言った。
9364 11 18 25 そこでエリヤはバアルの預言者たちに言った、「あなたがたは大ぜいだから初めに一頭の牛を選んで、それを整え、あなたがたの神の名を呼びなさい。ただし火をつけてはなりません」。
9365 11 18 26 彼らは与えられた牛を取って整え、朝から昼までバアルの名を呼んで「バアルよ、答えてください」と言った。しかしなんの声もなく、また答える者もなかったので、彼らは自分たちの造った祭壇のまわりに踊った。
9366 11 18 27 昼になってエリヤは彼らをあざけって言った、「彼は神だから、大声をあげて呼びなさい。彼は考えにふけっているのか、よそへ行ったのか、旅に出たのか、または眠っていて起されなければならないのか」。
9367 11 18 28 そこで彼らは大声に呼ばわり、彼らのならわしに従って、刀とやりで身を傷つけ、血をその身に流すに至った。
9368 11 18 29 こうして昼が過ぎても彼らはなお叫び続けて、夕の供え物をささげる時にまで及んだ。しかしなんの声もなく、答える者もなく、また顧みる者もなかった。
9369 11 18 30 その時エリヤはすべての民にむかって「わたしに近寄りなさい」と言ったので、民は皆彼に近寄った。彼はこわれている主の祭壇を繕った。
9370 11 18 31 そしてエリヤは昔、主の言葉がヤコブに臨んで、「イスラエルをあなたの名とせよ」と言われたヤコブの子らの部族の数にしたがって十二の石を取り、
9371 11 18 32 その石で主の名によって祭壇を築き、祭壇の周囲に種二セヤをいれるほどの大きさの、みぞを作った。
9372 11 18 33 また、たきぎを並べ、牛を切り裂いてたきぎの上に載せて言った、「四つのかめに水を満たし、それを燔祭とたきぎの上に注げ」。
9373 11 18 34 また言った、「それを二度せよ」。二度それをすると、また言った、「三度それをせよ」。三度それをした。
9374 11 18 35 水は祭壇の周囲に流れた。またみぞにも水を満たした。
9375 11 18 36 夕の供え物をささげる時になって、預言者エリヤは近寄って言った、「アブラハム、イサク、ヤコブの神、主よ、イスラエルでは、あなたが神であること、わたしがあなたのしもべであって、あなたの言葉に従ってこのすべての事を行ったことを、今日知らせてください。
9376 11 18 37 主よ、わたしに答えてください、わたしに答えてください。主よ、この民にあなたが神であること、またあなたが彼らの心を翻されたのであることを知らせてください」。
9377 11 18 38 そのとき主の火が下って燔祭と、たきぎと、石と、ちりとを焼きつくし、またみぞの水をなめつくした。
9378 11 18 39 民は皆見て、ひれ伏して言った、「主が神である。主が神である」。
9379 11 18 40 エリヤは彼らに言った、「バアルの預言者を捕えよ。そのひとりも逃がしてはならない」。そこで彼らを捕えたので、エリヤは彼らをキション川に連れくだって、そこで彼らを殺した。
9380 11 18 41 エリヤはアハブに言った、「大雨の音がするから、上って行って、食い飲みしなさい」。
9381 11 18 42 アハブは食い飲みするために上っていった。しかしエリヤはカルメルの頂に登り、地に伏して顔をひざの間に入れていたが、
9382 11 18 43 彼はしもべに言った、「上っていって海の方を見なさい」。彼は上っていって、見て、「何もありません」と言ったので、エリヤは「もう一度行きなさい」と言って七度に及んだ。
9383 11 18 44 七度目にしもべは言った、「海から人の手ほどの小さな雲が起っています」。エリヤは言った、「上っていって、『雨にとどめられないように車を整えて下れ』とアハブに言いなさい」。
9384 11 18 45 すると間もなく、雲と風が起り、空が黒くなって大雨が降ってきた。アハブは車に乗ってエズレルへ行った。
9385 11 18 46 また主の手がエリヤに臨んだので、彼は腰をからげ、エズレルの入口までアハブの前に走っていった。
9386 11 19 1 アハブはエリヤのしたすべての事、また彼がすべての預言者を刀で殺したことをイゼベルに告げたので、
9387 11 19 2 イゼベルは使者をエリヤにつかわして言った、「もしわたしが、あすの今ごろ、あなたの命をあの人々のひとりの命のようにしていないならば、神々がどんなにでも、わたしを罰してくださるように」。
9388 11 19 3 そこでエリヤは恐れて、自分の命を救うために立って逃げ、ユダに属するベエルシバへ行って、しもべをそこに残し、
9389 11 19 4 自分は一日の道のりほど荒野にはいって行って、れだまの木の下に座し、自分の死を求めて言った、「主よ、もはや、じゅうぶんです。今わたしの命を取ってください。わたしは先祖にまさる者ではありません」。
9390 11 19 5 彼はれだまの木の下に伏して眠ったが、天の使が彼にさわり、「起きて食べなさい」と言ったので、
9391 11 19 6 起きて見ると、頭のそばに、焼け石の上で焼いたパン一個と、一びんの水があった。彼は食べ、かつ飲んでまた寝た。
9392 11 19 7 主の使は再びきて、彼にさわって言った、「起きて食べなさい。道が遠くて耐えられないでしょうから」。
9393 11 19 8 彼は起きて食べ、かつ飲み、その食物で力づいて四十日四十夜行って、神の山ホレブに着いた。
9394 11 19 9 その所で彼はほら穴にはいって、そこに宿ったが、主の言葉が彼に臨んで、彼に言われた、「エリヤよ、あなたはここで何をしているのか」。
9395 11 19 10 彼は言った、「わたしは万軍の神、主のために非常に熱心でありました。イスラエルの人々はあなたの契約を捨て、あなたの祭壇をこわし、刀をもってあなたの預言者たちを殺したのです。ただわたしだけ残りましたが、彼らはわたしの命を取ろうとしています」。
9396 11 19 11 主は言われた、「出て、山の上で主の前に、立ちなさい」。その時主は通り過ぎられ、主の前に大きな強い風が吹き、山を裂き、岩を砕いた。しかし主は風の中におられなかった。風の後に地震があったが、地震の中にも主はおられなかった。
9397 11 19 12 地震の後に火があったが、火の中にも主はおられなかった。火の後に静かな細い声が聞えた。
9398 11 19 13 エリヤはそれを聞いて顔を外套に包み、出てほら穴の口に立つと、彼に語る声が聞えた、「エリヤよ、あなたはここで何をしているのか」。
9399 11 19 14 彼は言った、「わたしは万軍の神、主のために非常に熱心でありました。イスラエルの人々はあなたの契約を捨て、あなたの祭壇をこわし、刀であなたの預言者たちを殺したからです。ただわたしだけ残りましたが、彼らはわたしの命を取ろうとしています」。
9400 11 19 15 主は彼に言われた、「あなたの道を帰って行って、ダマスコの荒野におもむき、ダマスコに着いて、ハザエルに油を注ぎ、スリヤの王としなさい。
9401 11 19 16 またニムシの子エヒウに油を注いでイスラエルの王としなさい。またアベルメホラのシャパテの子エリシャに油を注いで、あなたに代って預言者としなさい。
9402 11 19 17 ハザエルのつるぎをのがれる者をエヒウが殺し、エヒウのつるぎをのがれる者をエリシャが殺すであろう。
9403 11 19 18 また、わたしはイスラエルのうちに七千人を残すであろう。皆バアルにひざをかがめず、それに口づけしない者である」。
9404 11 19 19 さてエリヤはそこを去って行って、シャパテの子エリシャに会った。彼は十二くびきの牛を前に行かせ、自分は十二番目のくびきと共にいて耕していた。エリヤは彼のかたわらを通り過ぎて外套を彼の上にかけた。
9405 11 19 20 エリシャは牛を捨て、エリヤのあとに走ってきて言った、「わたしの父母に口づけさせてください。そして後あなたに従いましょう」。エリヤは彼に言った、「行ってきなさい。わたしはあなたに何をしましたか」。
9406 11 19 21 エリシャは彼を離れて帰り、ひとくびきの牛を取って殺し、牛のくびきを燃やしてその肉を煮、それを民に与えて食べさせ、立って行ってエリヤに従い、彼に仕えた。
9407 11 20 1 スリヤの王ベネハダデはその軍勢をことごとく集めた。三十二人の王が彼と共におり、また馬と戦車もあった。彼は上ってサマリヤを囲み、これを攻めた。
9408 11 20 2 また彼は町に使者をつかわし、イスラエルの王アハブに言った、「ベネハダデはこう申します、
9409 11 20 3 『あなたの金銀はわたしのもの、またあなたの妻たちと子供たちの最も美しい者もわたしのものです』」。
9410 11 20 4 イスラエルの王は答えた、「王、わが主よ、仰せのとおり、わたしと、わたしの持ち物は皆あなたのものです」。
9411 11 20 5 使者は再びきて言った、「ベネハダデはこう申します、『わたしはさきに人をつかわして、あなたの金銀、妻子を引きわたせと言いました。
9412 11 20 6 しかし、あすの今ごろ、しもべたちをあなたにつかわします。彼らはあなたの家と、あなたの家来の家を探って、すべて彼らの気にいる物を手に入れて奪い去るでしょう』」。
9413 11 20 7 そこでイスラエルの王は国の長老をことごとく召して言った、「よく注意して、この人が無理な事を求めているのを知りなさい。彼は人をつかわして、わたしの妻子と金銀を求めたが、わたしはそれを拒まなかった」。
9414 11 20 8 すべての長老および民は皆彼に言った、「聞いてはなりません。承諾してはなりません」。
9415 11 20 9 それで彼はベネハダデの使者に言った、「王、わが主に告げなさい。『あなたが初めに要求されたことは皆いたしましょう。しかし今度の事はできません』」。使者は去って復命した。
9416 11 20 10 ベネハダデは彼に人をつかわして言った、「もしサマリヤのちりが、わたしに従うすべての民の手を満たすに足りるならば、神々がどんなにでも、わたしを罰してくださるように」。
9417 11 20 11 イスラエルの王は答えた、「『武具を帯びる者は、それを脱ぐ者のように誇ってはならない』と告げなさい」。
9418 11 20 12 ベネハダデは仮小屋で、王たちと酒を飲んでいたが、この事を聞いて、その家来たちに言った、「戦いの備えをせよ」。彼らは町にむかって戦いの備えをした。
9419 11 20 13 この時ひとりの預言者がイスラエルの王アハブのもとにきて言った、「主はこう仰せられる、『あなたはこの大軍を見たか。わたしはきょう、これをあなたの手にわたす。あなたは、わたしが主であることを、知るようになるであろう』」。
9420 11 20 14 アハブは言った、「だれにさせましょうか」。彼は言った、「主はこう仰せられる、『地方の代官の家来たちにさせよ』」。アハブは言った、「だれが戦いを始めましょうか」。彼は答えた、「あなたです」。
9421 11 20 15 そこでアハブは地方の代官の家来たちを調べたところ二百三十二人あった。次にすべての民、すなわちイスラエルのすべての人を調べたところ七千人あった。
9422 11 20 16 彼らは昼ごろ出ていったが、ベネハダデは仮小屋で、味方の三十二人の王たちと共に酒を飲んで酔っていた。
9423 11 20 17 地方の代官の家来たちが先に出ていった。ベネハダデは斥候をつかわしたが、彼らは「サマリヤから人々が出てきた」と報告したので、
9424 11 20 18 彼は言った、「和解のために出てきたのであっても、生どりにせよ。また戦いのために出てきたのであっても、生どりにせよ」。
9425 11 20 19 地方の代官の家来たちと、それに従う軍勢が町から出ていって、
9426 11 20 20 おのおのその相手を撃ち殺したので、スリヤびとは逃げた。イスラエルはこれを追ったが、スリヤの王ベネハダデは馬に乗り、騎兵を従えてのがれた。
9427 11 20 21 イスラエルの王は出ていって、馬と戦車をぶんどり、また大いにスリヤびとを撃ち殺した。
9428 11 20 22 時に、かの預言者がイスラエルの王のもとにきて言った、「行って、力を養い、なすべき事をよく考えなさい。来年の春にはスリヤの王が、あなたのところに攻め上ってくるからです」。
9429 11 20 23 スリヤの王の家来たちは王に言った、「彼らの神々は山の神ですから彼らがわれわれよりも強かったのです。もしわれわれが平地で戦うならば、必ず彼らよりも強いでしょう。
9430 11 20 24 それでこうしなさい。王たちをおのおのその地位から退かせ、総督を置いてそれに代らせなさい。
9431 11 20 25 またあなたが失った軍勢に等しい軍勢を集め、馬は馬、戦車は戦車をもって補いなさい。こうしてわれわれが平地で戦うならば必ず彼らよりも強いでしょう」。彼はその言葉を聞きいれて、そのようにした。
9432 11 20 26 春になって、ベネハダデはスリヤびとを集めて、イスラエルと戦うために、アペクに上ってきた。
9433 11 20 27 イスラエルの人々は召集され、糧食を受けて彼らを迎え撃つために出かけた。イスラエルの人々はやぎの二つの小さい群れのように彼らの前に陣取ったが、スリヤびとはその地に満ちていた。
9434 11 20 28 その時神の人がきて、イスラエルの王に言った、「主はこう仰せられる、『スリヤびとが、主は山の神であって、谷の神ではないと言っているから、わたしはこのすべての大軍をあなたの手にわたす。あなたは、わたしが主であることを知るようになるであろう』」。
9435 11 20 29 彼らは七日の間、互にむかいあって陣取り、七日目になって戦いを交えたが、イスラエルの人々は一日にスリヤびとの歩兵十万人を殺した。
9436 11 20 30 そのほかの者はアペクの町に逃げこんだが、城壁がくずれて、その残った二万七千人の上に倒れた。
9437 11 20 31 家来たちは彼に言った、「イスラエルの家の王たちはあわれみ深い王であると聞いています。それでわれわれの腰に荒布をつけ、くびになわをかけて、イスラエルの王の所へ行かせてください。たぶん彼はあなたの命を助けるでしょう」。
9438 11 20 32 そこで彼らは荒布を腰にまき、なわをくびにかけてイスラエルの王の所へ行って言った、「あなたのしもべベネハダデが『どうぞ、わたしの命を助けてください』と申しています」。アハブは言った、「彼はまだ生きているのですか。彼はわたしの兄弟です」。
9439 11 20 33 その人々はこれを吉兆としてすみやかに彼の言葉をうけ、「そうです。ベネハダデはあなたの兄弟です」と言ったので、彼は言った、「行って彼をつれてきなさい」。それでベネハダデは彼の所に出てきたので、彼はこれを自分の車に乗せた。
9440 11 20 34 ベネハダデは彼に言った、「わたしの父が、あなたの父上から取った町々は返します。またわたしの父がサマリヤに造ったように、あなたはダマスコに、あなたのために市場を設けなさい」。アハブは言った、「わたしはこの契約をもってあなたを帰らせましょう」。こうしてアハブは彼と契約を結び、彼を帰らせた。
9441 11 20 35 さて預言者のともがらのひとりが主の言葉に従ってその仲間に言った、「どうぞ、わたしを撃ってください」。しかしその人は撃つことを拒んだので、
9442 11 20 36 彼はその人に言った、「あなたは主の言葉に聞き従わないゆえ、わたしを離れて行くとすぐ、ししがあなたを殺すでしょう」。その人が彼のそばを離れて行くとすぐ、ししが彼に会って彼を殺した。
9443 11 20 37 彼はまたほかの人に会って言った、「どうぞ、わたしを撃ってください」。するとその人は彼を撃ち、撃って傷つけた。
9444 11 20 38 こうしてその預言者は行って、道のかたわらで王を待ち、目にほうたいを当てて姿を変えていた。
9445 11 20 39 王が通り過ぎる時、王に呼ばわって言った、「しもべはいくさの中に出て行きましたが、ある軍人が、ひとりの人をわたしの所につれてきて言いました、『この人を守っていなさい。もし彼がいなくなれば、あなたの命を彼の命に代えるか、または銀一タラントを払わなければならない』。
9446 11 20 40 ところが、しもべはあちらこちらと忙しくしていたので、ついに彼はいなくなりました」。イスラエルの王は彼に言った、「あなたはそのとおりにさばかれなければならない。あなたが自分でそれを定めたのです」。
9447 11 20 41 そこで彼が急いで目のほうたいを取り除いたので、イスラエルの王はそれが預言者のひとりであることを知った。
9448 11 20 42 彼は王に言った、「主はこう仰せられる、『わたしが滅ぼそうと定めた人を、あなたは自分の手から放して行かせたので、あなたの命は彼の命に代り、あなたの民は彼の民に代るであろう』と」。
9449 11 20 43 イスラエルの王は悲しみ、かつ怒って自分の家におもむき、サマリヤに帰った。
9450 11 21 1 さてエズレルびとナボテはエズレルにぶどう畑をもっていたが、サマリヤの王アハブの宮殿のかたわらにあったので、
9451 11 21 2 アハブはナボテに言った、「あなたのぶどう畑はわたしの家の近くにあるので、わたしに譲って青物畑にさせてください。その代り、わたしはそれよりも良いぶどう畑をあなたにあげましょう。もしお望みならば、その価を金でさしあげましょう」。
9452 11 21 3 ナボテはアハブに言った、「わたしは先祖の嗣業をあなたに譲ることを断じていたしません」。
9453 11 21 4 アハブはエズレルびとナボテが言った言葉を聞いて、悲しみ、かつ怒って家にはいった。ナボテが「わたしは先祖の嗣業をあなたに譲りません」と言ったからである。アハブは床に伏し、顔をそむけて食事をしなかった。
9454 11 21 5 妻イゼベルは彼の所にきて、言った、「あなたは何をそんなに悲しんで、食事をなさらないのですか」。
9455 11 21 6 彼は彼女に言った、「わたしはエズレルびとナボテに『あなたのぶどう畑を金で譲ってください。もし望むならば、その代りに、ほかのぶどう畑をあげよう』と言ったが、彼は答えて『わたしはぶどう畑を譲りません』と言ったからだ」。
9456 11 21 7 妻イゼベルは彼に言った、「あなたが今イスラエルを治めているのですか。起きて食事をし、元気を出してください。わたしがエズレルびとナボテのぶどう畑をあなたにあげます」。
9457 11 21 8 彼女はアハブの名で手紙を書き、彼の印をおして、ナボテと同じように、その町に住んでいる長老たちと身分の尊い人々に、その手紙を送った。
9458 11 21 9 彼女はその手紙に書きしるした、「断食を布告して、ナボテを民のうちの高い所にすわらせ、
9459 11 21 10 またふたりのよこしまな者を彼の前にすわらせ、そして彼を訴えて、『あなたは神と王とをのろった』と言わせなさい。こうして彼を引き出し、石で撃ち殺しなさい」。
9460 11 21 11 その町の人々、すなわち、その町に住んでいる長老たちおよび身分の尊い人々は、イゼベルが言いつかわしたようにした。彼女が彼らに送った手紙に書きしるされていたように、
9461 11 21 12 彼らは断食を布告して、ナボテを民のうちの高い所にすわらせた。
9462 11 21 13 そしてふたりのよこしまな者がはいってきて、その前にすわり、そのよこしまな者たちが民の前でナボテを訴えて、「ナボテは神と王とをのろった」と言った。そこで人々は彼を町の外に引き出し、石で撃ち殺した。
9463 11 21 14 そして人々はイゼベルに「ナボテは石で撃ち殺された」と言い送った。
9464 11 21 15 イゼベルはナボテが石で撃ち殺されたのを聞くとすぐ、アハブに言った、「立って、あのエズレルびとナボテが、あなたに金で譲ることを拒んだぶどう畑を取りなさい。ナボテは生きていません。死んだのです」。
9465 11 21 16 アハブはナボテの死んだのを聞くとすぐ、立って、エズレルびとナボテのぶどう畑を取るために、そこへ下っていった。
9466 11 21 17 そのとき、主の言葉がテシベびとエリヤに臨んだ、
9467 11 21 18 「立って、下って行き、サマリヤにいるイスラエルの王アハブに会いなさい。彼はナボテのぶどう畑を取ろうとしてそこへ下っている。
9468 11 21 19 あなたは彼に言わなければならない、『主はこう仰せられる、あなたは殺したのか、また取ったのか』と。また彼に言いなさい、『主はこう仰せられる、犬がナボテの血をなめた場所で、犬があなたの血をなめるであろう』」。
9469 11 21 20 アハブはエリヤに言った、「わが敵よ、ついに、わたしを見つけたのか」。彼は言った、「見つけました。あなたが主の目の前に悪を行うことに身をゆだねたゆえ、
9470 11 21 21 わたしはあなたに災を下し、あなたを全く滅ぼし、アハブに属する男は、イスラエルにいてつながれた者も、自由な者もことごとく断ち、
9471 11 21 22 またあなたの家をネバテの子ヤラベアムの家のようにし、アヒヤの子バアシャの家のようにするでしょう。これはあなたがわたしを怒らせた怒りのゆえ、またイスラエルに罪を犯させたゆえです。
9472 11 21 23 イゼベルについて、主はまた言われました、『犬がエズレルの地域でイゼベルを食うであろう』と。
9473 11 21 24 アハブに属する者は、町で死ぬ者を犬が食い、野で死ぬ者を空の鳥が食うでしょう」。
9474 11 21 25 アハブのように主の目の前に悪を行うことに身をゆだねた者はなかった。その妻イゼベルが彼をそそのかしたのである。
9475 11 21 26 彼は主がイスラエルの人々の前から追い払われたアモリびとがしたように偶像に従って、はなはだ憎むべき事を行った。
9476 11 21 27 アハブはこれらの言葉を聞いた時、衣を裂き、荒布を身にまとい、食を断ち、荒布に伏し、打ちしおれて歩いた。
9477 11 21 28 この時、主の言葉がテシベびとエリヤに臨んだ、
9478 11 21 29 「アハブがわたしの前にへりくだっているのを見たか。彼がわたしの前にへりくだっているゆえ、わたしは彼の世には災を下さない。その子の世に災をその家に下すであろう」。
9479 11 22 1 スリヤとイスラエルの間に戦争がなくて三年を経た。
9480 11 22 2 しかし三年目にユダの王ヨシャパテがイスラエルの王の所へ下っていったので、
9481 11 22 3 イスラエルの王はその家来たちに言った、「あなたがたは、ラモテ・ギレアデがわれわれの所有であることを知っていますか。しかもなおわれわれはスリヤの王の手からそれを取らずに黙っているのです」。
9482 11 22 4 彼はヨシャパテに言った、「ラモテ・ギレアデで戦うためにわたしと一緒に行かれませんか」。ヨシャパテはイスラエルの王に言った、「わたしはあなたと一つです。わたしの民はあなたの民と一つです。わたしの馬はあなたの馬と一つです」。
9483 11 22 5 ヨシャパテはまたイスラエルの王に言った、「まず、主の言葉を伺いなさい」。
9484 11 22 6 そこでイスラエルの王は預言者四百人ばかりを集めて、彼らに言った、「わたしはラモテ・ギレアデに戦いに行くべきでしょうか、あるいは控えるべきでしょうか」。彼らは言った、「上っていきなさい。主はそれを王の手にわたされるでしょう」。
9485 11 22 7 ヨシャパテは言った、「ここには、われわれの問うべき主の預言者がほかにいませんか」。
9486 11 22 8 イスラエルの王はヨシャパテに言った、「われわれが主に問うことのできる人が、まだひとりいます。イムラの子ミカヤです。彼はわたしについて良い事を預言せず、ただ悪い事だけを預言するので、わたしは彼を憎んでいます」。ヨシャパテは言った、「王よ、そう言わないでください」。
9487 11 22 9 そこでイスラエルの王は役人を呼んで、「急いでイムラの子ミカヤを連れてきなさい」と言った。
9488 11 22 10 さてイスラエルの王およびユダの王ヨシャパテは王の服を着て、サマリヤの門の入口の広場に、おのおのその王座にすわり、預言者たちは皆その前で預言していた。
9489 11 22 11 ケナアナの子ゼデキヤは鉄の角を造って言った、「主はこう仰せられます、『あなたはこれらの角をもってスリヤびとを突いて彼らを滅ぼしなさい』」。
9490 11 22 12 預言者たちは皆そのように預言して言った、「ラモテ・ギレアデに上っていって勝利を得なさい。主はそれを王の手にわたされるでしょう」。
9491 11 22 13 さてミカヤを呼びにいった使者は彼に言った、「預言者たちは一致して王に良い事を言いました。どうぞ、あなたも、彼らのひとりの言葉のようにして、良い事を言ってください」。
9492 11 22 14 ミカヤは言った、「主は生きておられます。主がわたしに言われる事を申しましょう」。
9493 11 22 15 彼が王の所へ行くと、王は彼に言った、「ミカヤよ、われわれはラモテ・ギレアデに戦いに行くべきでしょうか、あるいは控えるべきでしょうか」。彼は王に言った、「上っていって勝利を得なさい。主はそれを王の手にわたされるでしょう」。
9494 11 22 16 しかし王は彼に言った、「幾たびあなたを誓わせたら、あなたは主の名をもって、ただ真実のみをわたしに告げるでしょうか」。
9495 11 22 17 彼は言った、「わたしはイスラエルが皆、牧者のない羊のように、山に散っているのを見ました。すると主は『これらの者は飼主がいない。彼らをそれぞれ安らかに、その家に帰らせよ』と言われました」。
9496 11 22 18 イスラエルの王はヨシャパテに言った、「彼がわたしについて良い事を預言せず、ただ悪い事だけを預言すると、あなたに告げたではありませんか」。
9497 11 22 19 ミカヤは言った、「それゆえ主の言葉を聞きなさい。わたしは主がその玉座にすわり、天の万軍がそのかたわらに、右左に立っているのを見たが、
9498 11 22 20 主は『だれがアハブをいざなってラモテ・ギレアデに上らせ、彼を倒れさせるであろうか』と言われました。するとひとりはこの事を言い、ひとりはほかの事を言いました。
9499 11 22 21 その時一つの霊が進み出て、主の前に立ち、『わたしが彼をいざないましょう』と言いました。
9500 11 22 22 主は『どのような方法でするのか』と言われたので、彼は『わたしが出て行って、偽りを言う霊となって、すべての預言者の口に宿りましょう』と言いました。そこで主は『おまえは彼をいざなって、それを成し遂げるであろう。出て行って、そうしなさい』と言われました。
9501 11 22 23 それで主は偽りを言う霊をあなたのすべての預言者の口に入れ、また主はあなたの身に起る災を告げられたのです」。
9502 11 22 24 するとケナアナの子ゼデキヤは近寄って、ミカヤのほおを打って言った、「どのようにして主の霊がわたしを離れて、あなたに語りましたか」。
9503 11 22 25 ミカヤは言った、「あなたが奥の間にはいって身を隠すその日に、わかるでしょう」。
9504 11 22 26 イスラエルの王は言った、「ミカヤを捕え、町のつかさアモンと、王の子ヨアシの所へ引いて帰って、
9505 11 22 27 言いなさい、『王がこう言います、この者を獄屋に入れ、わずかのパンと水をもって彼を養い、わたしが勝利を得て帰ってくるのを待て』」。
9506 11 22 28 ミカヤは言った、「もしあなたが勝利を得て帰ってこられるならば、主がわたしによって語られなかったのです」。また彼は言った、「あなたがた、すべての民よ、聞きなさい」。
9507 11 22 29 こうしてイスラエルの王とユダの王ヨシャパテはラモテ・ギレアデに上っていった。
9508 11 22 30 イスラエルの王はヨシャパテに言った、「わたしは姿を変えて、戦いに行きます。あなたは王の服を着けなさい」。イスラエルの王は姿を変えて戦いに行った。
9509 11 22 31 さて、スリヤの王は、その戦車長三十二人に命じて言った、「あなたがたは、小さい者とも大きい者とも戦わないで、ただイスラエルの王とだけ戦いなさい」。
9510 11 22 32 戦車長らはヨシャパテを見たとき、これはきっとイスラエルの王だと思ったので、身をめぐらして、これと戦おうとすると、ヨシャパテは呼ばわった。
9511 11 22 33 戦車長らは彼がイスラエルの王でないのを見たので、彼を追うことをやめて引き返した。
9512 11 22 34 しかし、ひとりの人が何心なく弓をひいて、イスラエルの王の胸当と草摺の間を射たので、彼はその戦車の御者に言った、「わたしは傷を受けた。戦車をめぐらして、わたしを戦場から運び出せ」。
9513 11 22 35 その日戦いは激しくなった。王は戦車の中にささえられて立ち、スリヤびとにむかっていたが、ついに、夕暮になって死んだ。傷の血は戦車の底に流れた。
9514 11 22 36 日の没するころ、軍勢の中に呼ばわる声がした、「めいめいその町へ、めいめいその国へ帰れ」。
9515 11 22 37 王は死んで、サマリヤへ携え行かれた。人々は王をサマリヤに葬った。
9516 11 22 38 またその戦車をサマリヤの池で洗ったが、犬がその血をなめた。また遊女がそこで身を洗った。主が言われた言葉のとおりである。
9517 11 22 39 アハブのそのほかの事績と、彼がしたすべての事と、その建てた象牙の家と、その建てたすべての町は、イスラエルの王の歴代志の書にしるされているではないか。
9518 11 22 40 こうしてアハブはその先祖と共に眠って、その子アハジヤが代って王となった。
9519 11 22 41 アサの子ヨシャパテはイスラエルの王アハブの第四年にユダの王となった。
9520 11 22 42 ヨシャパテは王となった時、三十五歳であったが、エルサレムで二十五年世を治めた。その母の名はアズバといい、シルヒの娘であった。
9521 11 22 43 ヨシャパテは父アサのすべての道に歩み、それを離れることなく、主の目にかなう事をした。ただし高き所は除かなかったので、民はなお高き所で犠牲をささげ、香をたいた。
9522 11 22 44 ヨシャパテはまたイスラエルの王と、よしみを結んだ。
9523 11 22 45 ヨシャパテのその他の事績と、彼があらわした勲功およびその戦争については、ユダの王の歴代志の書にしるされているではないか。
9524 11 22 46 彼は父アサの世になお残っていた神殿男娼たちを国のうちから追い払った。
9525 11 22 47 そのころエドムには王がなく、代官が王であった。
9526 11 22 48 ヨシャパテはタルシシの船を造って、金を獲るためにオフルに行かせようとしたが、その船はエジオン・ゲベルで難破したため、ついに行かなかった。
9527 11 22 49 そこでアハブの子アハジヤはヨシャパテに「わたしの家来をあなたの家来と一緒に船で行かせなさい」と言ったが、ヨシャパテは承知しなかった。
9528 11 22 50 ヨシャパテはその先祖と共に眠って、父ダビデの町に先祖と共に葬られ、その子ヨラムが代って王となった。
9529 11 22 51 アハブの子アハジヤはユダの王ヨシャパテの第十七年にサマリヤでイスラエルの王となり、二年イスラエルを治めた。
9530 11 22 52 彼は主の目の前に悪を行い、その父の道と、その母の道、およびかのイスラエルに罪を犯させたネバテの子ヤラベアムの道に歩み、
9531 11 22 53 バアルに仕えて、それを拝み、イスラエルの神、主を怒らせた。すべて彼の父がしたとおりであった。
9532 12 1 1 アハブが死んだ後、モアブはイスラエルにそむいた。
9533 12 1 2 さてアハジヤはサマリヤにある高殿のらんかんから落ちて病気になったので、使者をつかわし、「行ってエクロンの神バアル・ゼブブに、この病気がなおるかどうかを尋ねよ」と命じた。
9534 12 1 3 時に、主の使はテシベびとエリヤに言った、「立って、上って行き、サマリヤの王の使者に会って言いなさい、『あなたがたがエクロンの神バアル・ゼブブに尋ねようとして行くのは、イスラエルに神がないためか』。
9535 12 1 4 それゆえ主はこう仰せられる、『あなたは、登った寝台から降りることなく、必ず死ぬであろう』」。そこでエリヤは上って行った。
9536 12 1 5 使者たちがアハジヤのもとに帰ってきたので、アハジヤは彼らに言った、「なぜ帰ってきたのか」。
9537 12 1 6 彼らは言った、「ひとりの人が上ってきて、われわれに会って言いました、『おまえたちをつかわした王の所へ帰って言いなさい。主はこう仰せられる、あなたがエクロンの神バアル・ゼブブに尋ねようとして人をつかわすのは、イスラエルに神がないためなのか。それゆえあなたは、登った寝台から降りることなく、必ず死ぬであろう』」。
9538 12 1 7 アハジヤは彼らに言った、「上ってきて、あなたがたに会って、これらの事を告げた人はどんな人であったか」。
9539 12 1 8 彼らは答えた、「その人は毛ごろもを着て、腰に皮の帯を締めていました」。彼は言った、「その人はテシべびとエリヤだ」。
9540 12 1 9 そこで王は五十人の長を、部下の五十人と共にエリヤの所へつかわした。彼がエリヤの所へ上っていくと、エリヤは山の頂にすわっていたので、エリヤに言った、「神の人よ、王があなたに、下って来るようにと言われます」。
9541 12 1 10 しかしエリヤは五十人の長に答えた、「わたしがもし神の人であるならば、火が天から下って、あなたと部下の五十人とを焼き尽すでしょう」。そのように火が天から下って、彼と部下の五十人とを焼き尽した。
9542 12 1 11 王はまた他の五十人の長を、部下の五十人と共にエリヤにつかわした。彼は上っていってエリヤに言った、「神の人よ、王がこう命じられます、『すみやかに下ってきなさい』」。
9543 12 1 12 しかしエリヤは彼らに答えた、「わたしがもし神の人であるならば、火が天から下って、あなたと部下の五十人とを焼き尽すでしょう」。そのように神の火が天から下って、彼と部下の五十人とを焼き尽した。
9544 12 1 13 王はまた第三の五十人の長を部下の五十人と共につかわした。第三の五十人の長は上っていって、エリヤの前にひざまずき、彼に願って言った、「神の人よ、どうぞ、わたしの命と、あなたのしもべであるこの五十人の命をあなたの目に尊いものとみなしてください。
9545 12 1 14 ごらんなさい、火が天からくだって、さきの五十人の長ふたりと、その部下の五十人ずつとを焼き尽しました。しかし今わたしの命をあなたの目に尊いものとみなしてください」。
9546 12 1 15 その時、主の使はエリヤに言った、「彼と共に下りなさい。彼を恐れてはならない」。そこでエリヤは立って、彼と共に下り、王のもとへ行って、
9547 12 1 16 王に言った、「主はこう仰せられます、『あなたはエクロンの神バアル・ゼブブに尋ねようと使者をつかわしたが、それはイスラエルに、その言葉を求むべき神がないためであるか。それゆえあなたは、登った寝台から降りることなく、必ず死ぬであろう』」。
9548 12 1 17 彼はエリヤが言った主の言葉のとおりに死んだが、彼に子がなかったので、その兄弟ヨラムが彼に代って王となった。これはユダの王ヨシャパテの子ヨラムの第二年である。
9549 12 1 18 アハジヤのその他の事績は、イスラエルの王の歴代志の書にしるされているではないか。
9550 12 2 1 主がつむじ風をもってエリヤを天に上らせようとされた時、エリヤはエリシャと共にギルガルを出て行った。
9551 12 2 2 エリヤはエリシャに言った、「どうぞ、ここにとどまってください。主はわたしをベテルにつかわされるのですから」。しかしエリシャは言った、「主は生きておられます。またあなたも生きておられます。わたしはあなたを離れません」。そして彼らはベテルへ下った。
9552 12 2 3 ベテルにいる預言者のともがらが、エリシャのもとに出てきて彼に言った、「主がきょう、あなたの師事する主人をあなたから取られるのを知っていますか」。彼は言った、「はい、知っています。あなたがたは黙っていてください」。
9553 12 2 4 エリヤは彼に言った、「エリシャよ、どうぞ、ここにとどまってください。主はわたしをエリコにつかわされるのですから」。しかしエリシャは言った、「主は生きておられます。またあなたも生きておられます。わたしはあなたを離れません」。そして彼らはエリコへ行った。
9554 12 2 5 エリコにいた預言者のともがらが、エリシャのもとにきて彼に言った、「主がきょう、あなたの師事する主人をあなたから取られるのを知っていますか」。彼は言った、「はい、知っています。あなたがたは黙っていてください」。
9555 12 2 6 エリヤはまた彼に言った、「どうぞ、ここにとどまってください。主はわたしをヨルダンにつかわされるのですから」。しかし彼は言った、「主は生きておられます。またあなたも生きておられます。わたしはあなたを離れません」。そしてふたりは進んで行った。
9556 12 2 7 預言者のともがら五十人も行って、彼らにむかって、はるかに離れて立っていた。彼らふたりは、ヨルダンのほとりに立ったが、
9557 12 2 8 エリヤは外套を取り、それを巻いて水を打つと、水が左右に分れたので、ふたりはかわいた土の上を渡ることができた。
9558 12 2 9 彼らが渡ったとき、エリヤはエリシャに言った、「わたしが取られて、あなたを離れる前に、あなたのしてほしい事を求めなさい」。エリシャは言った、「どうぞ、あなたの霊の二つの分をわたしに継がせてください」。
9559 12 2 10 エリヤは言った、「あなたはむずかしい事を求める。あなたがもし、わたしが取られて、あなたを離れるのを見るならば、そのようになるであろう。しかし見ないならば、そのようにはならない」。
9560 12 2 11 彼らが進みながら語っていた時、火の車と火の馬があらわれて、ふたりを隔てた。そしてエリヤはつむじ風に乗って天にのぼった。
9561 12 2 12 エリシャはこれを見て「わが父よ、わが父よ、イスラエルの戦車よ、その騎兵よ」と叫んだが、再び彼を見なかった。
9562 12 2 13 またエリヤの身から落ちた外套を取り上げ、帰ってきてヨルダンの岸に立った。
9563 12 2 14 そしてエリヤの身から落ちたその外套を取って水を打ち、「エリヤの神、主はどこにおられますか」と言い、彼が水を打つと、水は左右に分れたので、エリシャは渡った。
9564 12 2 15 エリコにいる預言者のともがらは彼の近づいて来るのを見て、「エリヤの霊がエリシャの上にとどまっている」と言った。そして彼らは来て彼を迎え、その前に地に伏して、
9565 12 2 16 彼に言った、「しもべらの所に力の強い者が五十人います。どうぞ彼らをつかわして、あなたの主人を尋ねさせてください。主の霊が彼を引きあげて、彼を山か谷に投げたのかも知れません」。エリシャは「つかわしてはならない」と言ったが、
9566 12 2 17 彼の恥じるまで、しいたので、彼は「つかわしなさい」と言った。それで彼らは五十人の者をつかわし、三日の間尋ねたが、彼を見いださなかった。
9567 12 2 18 エリシャのなおエリコにとどまっている時、彼らが帰ってきたので、エリシャは彼らに言った、「わたしは、あなたがたに、行ってはならないと告げたではないか」。
9568 12 2 19 町の人々はエリシャに言った、「見られるとおり、この町の場所は良いが水が悪いので、この地は流産を起すのです」。
9569 12 2 20 エリシャは言った、「新しい皿に塩を盛って、わたしに持ってきなさい」。彼らは持ってきた。
9570 12 2 21 エリシャは水の源へ出て行って、塩をそこに投げ入れて言った、「主はこう仰せられる、『わたしはこの水を良い水にした。もはやここには死も流産も起らないであろう』」。
9571 12 2 22 こうしてその水はエリシャの言ったとおりに良い水になって今日に至っている。
9572 12 2 23 彼はそこからベテルへ上ったが、上って行く途中、小さい子供らが町から出てきて彼をあざけり、彼にむかって「はげ頭よ、のぼれ。はげ頭よ、のぼれ」と言ったので、
9573 12 2 24 彼はふり返って彼らを見、主の名をもって彼らをのろった。すると林の中から二頭の雌ぐまが出てきて、その子供らのうち四十二人を裂いた。
9574 12 2 25 彼はそこからカルメル山へ行き、そこからサマリヤに帰った。
9575 12 3 1 ユダの王ヨシャパテの第十八年にアハブの子ヨラムはサマリヤでイスラエルの王となり、十二年世を治めた。
9576 12 3 2 彼は主の目の前に悪をおこなったが、その父母のようではなかった。彼がその父の造ったバアルの石柱を除いたからである。
9577 12 3 3 しかし彼はイスラエルに罪を犯させたネバテの子ヤラベアムの罪につき従って、それを離れなかった。
9578 12 3 4 モアブの王メシャは羊の飼育者で、十万の小羊と、十万の雄羊の毛とを年々イスラエルの王に納めていたが、
9579 12 3 5 アハブが死んだ後、モアブの王はイスラエルの王にそむいた。
9580 12 3 6 そこでヨラム王はその時サマリヤを出て、イスラエルびとをことごとく集め、
9581 12 3 7 また、人をユダの王ヨシャパテにつかわし、「モアブの王はわたしにそむきました。あなたはモアブと戦うために、わたしと一緒に行かれませんか」と言わせた。彼は言った、「行きましょう。わたしはあなたと一つです。わたしの民はあなたの民と一つです。わたしの馬はあなたの馬と一つです」。
9582 12 3 8 彼はまた言った、「われわれはどの道を上るのですか」。ヨラムは答えた、「エドムの荒野の道を上りましょう」。
9583 12 3 9 こうしてイスラエルの王はユダの王およびエドムの王と共に出て行った。しかし彼らは回り道をして、七日の間進んだが、軍勢とそれに従う家畜の飲む水がなかったので、
9584 12 3 10 イスラエルの王は言った、「ああ、主は、この三人の王をモアブの手に渡そうとして召し集められたのだ」。
9585 12 3 11 ヨシャパテは言った、「われわれが主に問うことのできる主の預言者はここにいませんか」。イスラエルの王のひとりの家来が答えた、「エリヤの手に水を注いだシャパテの子エリシャがここにいます」。
9586 12 3 12 ヨシャパテは言った、「主の言葉が彼にあります」。そこでイスラエルの王とヨシャパテとエドムの王とは彼のもとへ下っていった。
9587 12 3 13 エリシャはイスラエルの王に言った、「わたしはあなたとなんのかかわりがありますか。あなたの父上の預言者たちと母上の預言者たちの所へ行きなさい」。イスラエルの王は彼に言った、「いいえ、主がこの三人の王をモアブの手に渡そうとして召し集められたのです」。
9588 12 3 14 エリシャは言った、「わたしの仕える万軍の主は生きておられます。わたしはユダの王ヨシャパテのためにするのでなければ、あなたを顧み、あなたに会うことはしないのだが、
9589 12 3 15 いま楽人をわたしの所に連れてきなさい」。そこで楽人が楽を奏すると、主の手が彼に臨んで、
9590 12 3 16 彼は言った、「主はこう仰せられる、『わたしはこの谷を水たまりで満たそう』。
9591 12 3 17 これは主がこう仰せられるからである、『あなたがたは風も雨も見ないのに、この谷に水が満ちて、あなたがたと、その家畜および獣が飲むであろう』。
9592 12 3 18 これは主の目には小さい事である。主はモアブびとをも、あなたがたの手に渡される。
9593 12 3 19 そしてあなたがたはすべての堅固な町と、すべての良い町を撃ち、すべての良い木を切り倒し、すべての水の井戸をふさぎ、石をもって地のすべての良い所を荒すであろう」。
9594 12 3 20 あくる朝になって、供え物をささげる時に、水がエドムの方から流れてきて、水は国に満ちた。
9595 12 3 21 さてモアブびとは皆、王たちが自分たちを攻めるために上ってきたのを聞いたので、よろいを着ることのできる者を、老いも若きもことごとく召集して、国境に配置したが、
9596 12 3 22 朝はやく起きて、太陽がのぼって水を照したとき、モアブびとは目の前に血のように赤い水を見たので、
9597 12 3 23 彼らは言った、「これは血だ、きっと王たちが互に戦って殺し合ったのだ。だから、モアブよ、ぶんどりに行きなさい」。
9598 12 3 24 しかしモアブびとがイスラエルの陣営に行くと、イスラエルびとは立ちあがってモアブびとを撃ったので、彼らはイスラエルの前から逃げ去った。イスラエルびとは進んで、モアブびとを撃ち、その国にはいって、
9599 12 3 25 町々を滅ぼし、おのおの石を一つずつ、地のすべての良い所に投げて、これに満たし、水の井戸をことごとくふさぎ、良い木をことごとく切り倒して、ただキル・ハラセテはその名を残すのみとなったが、石を投げる者がこれを囲んで撃ち滅ぼした。
9600 12 3 26 モアブの王は戦いがあまりに激しく、当りがたいのを見て、つるぎを抜く者七百人を率い、エドムの王の所に突き入ろうとしたが、果さなかったので、
9601 12 3 27 自分の位を継ぐべきその長子をとって城壁の上で燔祭としてささげた。その時イスラエルに大いなる憤りが臨んだので、彼らは彼をすてて自分の国に帰った。
9602 12 4 1 預言者のともがらの、ひとりの妻がエリシャに呼ばわって言った、「あなたのしもべであるわたしの夫が死にました。ごぞんじのように、あなたのしもべは主を恐れる者でありましたが、今、債主がきて、わたしのふたりの子供を取って奴隷にしようとしているのです」。
9603 12 4 2 エリシャは彼女に言った、「あなたのために何をしましょうか。あなたの家にどんな物があるか、言いなさい」。彼女は言った、「一びんの油のほかは、はしための家に何もありません」。
9604 12 4 3 彼は言った、「ほかへ行って、隣の人々から器を借りなさい。あいた器を借りなさい。少しばかりではいけません。
9605 12 4 4 そして内にはいって、あなたの子供たちと一緒に戸の内に閉じこもり、そのすべての器に油をついで、いっぱいになったとき、一つずつそれを取りのけておきなさい」。
9606 12 4 5 彼女は彼を離れて去り、子供たちと一緒に戸の内に閉じこもり、子供たちの持って来る器に油をついだ。
9607 12 4 6 油が満ちたとき、彼女は子供に「もっと器を持ってきなさい」と言ったが、子供が「器はもうありません」と言ったので、油はとまった。
9608 12 4 7 そこで彼女は神の人のところにきて告げたので、彼は言った、「行って、その油を売って負債を払いなさい。あなたと、あなたの子供たちはその残りで暮すことができます」。
9609 12 4 8 ある日エリシャはシュネムへ行ったが、そこにひとりの裕福な婦人がいて、しきりに彼に食事をすすめたので、彼はそこを通るごとに、そこに寄って食事をした。
9610 12 4 9 その女は夫に言った、「いつもわたしたちの所を通るあの人は確かに神の聖なる人です。
9611 12 4 10 わたしたちは屋上に壁のある一つの小さいへやを造り、そこに寝台と机といすと燭台とを彼のために備えましょう。そうすれば彼がわたしたちの所に来るとき、そこに、はいることができます」。
9612 12 4 11 さて、ある日エリシャはそこにきて、そのへやにはいり、そこに休んだが、
9613 12 4 12 彼はそのしもべゲハジに「このシュネムの女を呼んできなさい」と言った。彼がその女を呼ぶと、彼女はきてエリシャの前に立ったので、
9614 12 4 13 エリシャはゲハジに言った、「彼女に言いなさい、『あなたはこんなにねんごろに、わたしたちのために心を用いられたが、あなたのためには何をしたらよいでしょうか。王または軍勢の長にあなたの事をよろしく頼むことをお望みですか』」。彼女は答えて言った、「わたしは自分の民のうちに住んでいます」。
9615 12 4 14 エリシャは言った、「それでは彼女のために何をしようか」。ゲハジは言った、「彼女には子供がなく、その夫は老いています」。
9616 12 4 15 するとエリシャが「彼女を呼びなさい」と言ったので、彼女を呼ぶと、来て戸口に立った。
9617 12 4 16 エリシャは言った、「来年の今ごろ、あなたはひとりの子を抱くでしょう」。彼女は言った、「いいえ、わが主よ、神の人よ、はしためを欺かないでください」。
9618 12 4 17 しかし女はついに身ごもって、エリシャが彼女に言ったように、次の年のそのころに子を産んだ。
9619 12 4 18 その子が成長して、ある日、刈入れびとの所へ出ていって、父のもとへ行ったが、
9620 12 4 19 父にむかって「頭が、頭が」と言ったので、父はしもべに「彼を母のもとへ背負っていきなさい」と言った。
9621 12 4 20 彼を背負って母のもとへ行くと、昼まで母のひざの上にすわっていたが、ついに死んだ。
9622 12 4 21 母は上がっていって、これを神の人の寝台の上に置き、戸を閉じて出てきた。
9623 12 4 22 そして夫を呼んで言った、「どうぞ、しもべひとりと、ろば一頭をわたしにかしてください。急いで神の人の所へ行って、また帰ってきます」。
9624 12 4 23 夫は言った、「どうしてきょう彼の所へ行こうとするのか。きょうは、ついたちでもなく、安息日でもない」。彼女は言った、「よろしいのです」。
9625 12 4 24 そして彼女はろばにくらを置いて、しもべに言った、「速く駆けさせなさい。わたしが命じる時でなければ、歩調をゆるめてはなりません」。
9626 12 4 25 こうして彼女は出発してカルメル山へ行き、神の人の所へ行った。
9627 12 4 26 すぐ走って行って、彼女を迎えて言いなさい、『あなたは無事ですか。あなたの夫は無事ですか。あなたの子供は無事ですか』」。彼女は答えた、「無事です」。
9628 12 4 27 ところが彼女は山にきて、神の人の所へくるとエリシャの足にすがりついた。ゲハジが彼女を追いのけようと近よった時、神の人は言った、「かまわずにおきなさい。彼女は心に苦しみがあるのだから。主はそれを隠して、まだわたしにお告げにならないのだ」。
9629 12 4 28 そこで彼女は言った、「わたしがあなたに子を求めましたか。わたしを欺かないでくださいと言ったではありませんか」。
9630 12 4 29 エリシャはゲハジに言った、「腰をひきからげ、わたしのつえを手に持って行きなさい。だれに会っても、あいさつしてはならない。またあなたにあいさつする者があっても、それに答えてはならない。わたしのつえを子供の顔の上に置きなさい」。
9631 12 4 30 子供の母は言った、「主は生きておられます。あなたも生きておられます。わたしはあなたを離れません」。そこでエリシャはついに立ちあがって彼女のあとについて行った。
9632 12 4 31 ゲハジは彼らの先に行って、つえを子供の顔の上に置いたが、なんの声もなく、生きかえったしるしもなかったので、帰ってきてエリシャに会い、彼に告げて「子供はまだ目をさましません」と言った。
9633 12 4 32 エリシャが家にはいって見ると、子供は死んで、寝台の上に横たわっていたので、
9634 12 4 33 彼ははいって戸を閉じ、彼らふたりだけ内にいて主に祈った。
9635 12 4 34 そしてエリシャが上がって子供の上に伏し、自分の口を子供の口の上に、自分の目を子供の目の上に、自分の両手を子供の両手の上にあて、その身を子供の上に伸ばしたとき、子供のからだは暖かになった。
9636 12 4 35 こうしてエリシャは再び起きあがって、家の中をあちらこちらと歩み、また上がって、その身を子供の上に伸ばすと、子供は七たびくしゃみをして目を開いた。
9637 12 4 36 エリシャはただちにゲハジを呼んで、「あのシュネムの女を呼べ」と言ったので、彼女を呼んだ。彼女がはいってくるとエリシャは言った、「あなたの子供をつれて行きなさい」。
9638 12 4 37 彼女ははいってきて、エリシャの足もとに伏し、地に身をかがめた。そしてその子供を取りあげて出ていった。
9639 12 4 38 エリシャはギルガルに帰ったが、その地にききんがあった。預言者のともがらが彼の前に座していたので、エリシャはそのしもべに言った、「大きなかまをすえて、預言者のともがらのために野菜の煮物をつくりなさい」。
9640 12 4 39 彼らのうちのひとりが畑に出ていって青物をつんだが、つる草のあるのを見て、その野うりを一包つんできて、煮物のかまの中に切り込んだ。彼らはそれが何であるかを知らなかったからである。
9641 12 4 40 やがてこれを盛って人々に食べさせようとしたが、彼らがその煮物を食べようとした時、叫んで、「ああ神の人よ、かまの中に、たべると死ぬものがはいっています」と言って、食べることができなかったので、
9642 12 4 41 エリシャは「それでは粉を持って来なさい」と言って、それをかまに投げ入れ、「盛って人々に食べさせなさい」と言った。かまの中には、なんの毒物もなくなった。
9643 12 4 42 その時、バアル・シャリシャから人がきて、初穂のパンと、大麦のパン二十個と、新穀一袋とを神の人のもとに持ってきたので、エリシャは「人々に与えて食べさせなさい」と言ったが、
9644 12 4 43 その召使は言った、「どうしてこれを百人の前に供えるのですか」。しかし彼は言った、「人々に与えて食べさせなさい。主はこう言われる、『彼らは食べてなお余すであろう』」。
9645 12 4 44 そこで彼はそれを彼らの前に供えたので、彼らは食べてなお余した。主の言葉のとおりであった。
9646 12 5 1 スリヤ王の軍勢の長ナアマンはその主君に重んじられた有力な人であった。主がかつて彼を用いてスリヤに勝利を得させられたからである。彼は大勇士であったが、らい病をわずらっていた。
9647 12 5 2 さきにスリヤびとが略奪隊を組んで出てきたとき、イスラエルの地からひとりの少女を捕えて行った。彼女はナアマンの妻に仕えたが、
9648 12 5 3 その女主人にむかって、「ああ、御主人がサマリヤにいる預言者と共におられたらよかったでしょうに。彼はそのらい病をいやしたことでしょう」と言ったので、
9649 12 5 4 ナアマンは行って、その主君に、「イスラエルの地からきた娘がこういう事を言いました」と告げると、
9650 12 5 5 スリヤ王は言った、「それでは行きなさい。わたしはイスラエルの王に手紙を書きましょう」。
9651 12 5 6 彼がイスラエルの王に持って行った手紙には、「この手紙があなたにとどいたならば、わたしの家来ナアマンを、あなたにつかわしたことと御承知ください。あなたに彼のらい病をいやしていただくためです」とあった。
9652 12 5 7 イスラエルの王はその手紙を読んだ時、衣を裂いて言った、「わたしは殺したり、生かしたりすることのできる神であろうか。どうしてこの人は、らい病人をわたしにつかわして、それをいやせと言うのか。あなたがたは、彼がわたしに争いをしかけているのを知って警戒するがよい」。
9653 12 5 8 神の人エリシャは、イスラエルの王がその衣を裂いたことを聞き、王に人をつかわして言った、「どうしてあなたは衣を裂いたのですか。彼をわたしのもとにこさせなさい。そうすれば彼はイスラエルに預言者のあることを知るようになるでしょう」。
9654 12 5 9 そこでナアマンは馬と車とを従えてきて、エリシャの家の入口に立った。
9655 12 5 10 するとエリシャは彼に使者をつかわして言った、「あなたはヨルダンへ行って七たび身を洗いなさい。そうすれば、あなたの肉はもとにかえって清くなるでしょう」。
9656 12 5 11 しかしナアマンは怒って去り、そして言った、「わたしは、彼がきっとわたしのもとに出てきて立ち、その神、主の名を呼んで、その箇所の上に手を動かして、らい病をいやすのだろうと思った。
9657 12 5 12 ダマスコの川アバナとパルパルはイスラエルのすべての川水にまさるではないか。わたしはこれらの川に身を洗って清まることができないのであろうか」。こうして彼は身をめぐらし、怒って去った。
9658 12 5 13 その時、しもべたちは彼に近よって言った、「わが父よ、預言者があなたに、何か大きな事をせよと命じても、あなたはそれをなさらなかったでしょうか。まして彼はあなたに『身を洗って清くなれ』と言うだけではありませんか」。
9659 12 5 14 そこでナアマンは下って行って、神の人の言葉のように七たびヨルダンに身を浸すと、その肉がもとにかえって幼な子の肉のようになり、清くなった。
9660 12 5 15 彼はすべての従者を連れて神の人のもとに帰ってきて、その前に立って言った、「わたしは今、イスラエルのほか、全地のどこにも神のおられないことを知りました。それゆえ、どうぞ、しもべの贈り物を受けてください」。
9661 12 5 16 エリシャは言った、「わたしの仕える主は生きておられる。わたしは何も受けません」。彼はしいて受けさせようとしたが、それを拒んだ。
9662 12 5 17 そこでナアマンは言った、「もしお受けにならないのであれば、どうぞ騾馬に二駄の土をしもべにください。これから後しもべは、他の神には燔祭も犠牲もささげず、ただ主にのみささげます。
9663 12 5 18 どうぞ主がこの事を、しもべにおゆるしくださるように。すなわち、わたしの主君がリンモンの宮にはいって、そこで礼拝するとき、わたしの手によりかかることがあり、またわたしもリンモンの宮で身をかがめることがありましょう。わたしがリンモンの宮で身をかがめる時、どうぞ主がその事を、しもべにおゆるしくださるように」。
9664 12 5 19 エリシャは彼に言った、「安んじて行きなさい」。
9665 12 5 20 神の人エリシャのしもべゲハジは言った、「主人はこのスリヤびとナアマンをいたわって、彼が携えてきた物を受けなかった。主は生きておられる。わたしは彼のあとを追いかけて、彼から少し、物を受けよう」。
9666 12 5 21 そしてゲハジはナアマンのあとを追ったが、ナアマンは自分のあとから彼が走ってくるのを見て、車から降り、彼を迎えて、「変った事があるのですか」と言うと、
9667 12 5 22 彼は言った、「無事です。主人がわたしをつかわして言わせます、『ただいまエフライムの山地から、預言者のともがらのふたりの若者が、わたしのもとに来ましたので、どうぞ彼らに銀一タラントと晴れ着二着を与えてください』」。
9668 12 5 23 ナアマンは、「どうぞ二タラントを受けてください」と言って彼にしい、銀二タラントを二つの袋に入れ、晴れ着二着を添えて、自分のふたりのしもべに渡したので、彼らはそれを負ってゲハジの先に立って進んだが、
9669 12 5 24 彼は丘にきたとき、それを彼らの手から受け取って家のうちにおさめ、人々を送りかえしたので、彼らは去った。
9670 12 5 25 彼がはいって主人の前に立つと、エリシャは彼に言った、「ゲハジよ、どこへ行ってきたのか」。彼は言った、「しもべはどこへも行きません」。
9671 12 5 26 エリシャは言った、「あの人が車をはなれて、あなたを迎えたとき、わたしの心はあなたと一緒にそこにいたではないか。今は金を受け、着物を受け、オリブ畑、ぶどう畑、羊、牛、しもべ、はしためを受ける時であろうか。
9672 12 5 27 それゆえ、ナアマンのらい病はあなたに着き、ながくあなたの子孫に及ぶであろう」。彼がエリシャの前を出ていくとき、らい病が発して雪のように白くなっていた。
9673 12 6 1 さて預言者のともがらはエリシャに言った、「わたしたちがあなたと共に住んでいる所は狭くなりましたので、
9674 12 6 2 わたしたちをヨルダンに行かせ、そこからめいめい一本ずつ材木を取ってきて、わたしたちの住む場所を造らせてください」。エリシャは言った、「行きなさい」。
9675 12 6 3 時にそのひとりが、「どうぞあなたも、しもべらと一緒に行ってください」と言ったので、エリシャは「行きましょう」と答えた。
9676 12 6 4 そしてエリシャは彼らと一緒に行った。彼らはヨルダンへ行って木を切り倒したが、
9677 12 6 5 ひとりが材木を切り倒しているとき、おのの頭が水の中に落ちたので、彼は叫んで言った。「ああ、わが主よ。これは借りたものです」。
9678 12 6 6 神の人は言った、「それはどこに落ちたのか」。彼がその場所を知らせると、エリシャは一本の枝を切り落し、そこに投げ入れて、そのおのの頭を浮ばせ、
9679 12 6 7 「それを取りあげよ」と言ったので、その人は手を伸べてそれを取った。
9680 12 6 8 かつてスリヤの王がイスラエルと戦っていたとき、家来たちと評議して「しかじかの所にわたしの陣を張ろう」と言うと、
9681 12 6 9 神の人はイスラエルの王に「あなたは用心して、この所をとおってはなりません。スリヤびとがそこに下ってきますから」と言い送った。
9682 12 6 10 それでイスラエルの王は神の人が自分に告げてくれた所に人をつかわし、警戒したので、その所でみずからを防ぎえたことは一、二回にとどまらなかった。
9683 12 6 11 スリヤの王はこの事のために心を悩まし、家来たちを召して言った、「われわれのうち、だれがイスラエルの王と通じているのか、わたしに告げる者はないか」。
9684 12 6 12 ひとりの家来が言った、「王、わが主よ、だれも通じている者はいません。ただイスラエルの預言者エリシャが、あなたが寝室で語られる言葉でもイスラエルの王に告げるのです」。
9685 12 6 13 王は言った、「彼がどこにいるか行って捜しなさい。わたしは人をやって彼を捕えよう」。時に「彼はドタンにいる」と王に告げる者があったので、
9686 12 6 14 王はそこに馬と戦車および大軍をつかわした。彼らは夜のうちに来て、その町を囲んだ。
9687 12 6 15 神の人の召使が朝早く起きて出て見ると、軍勢が馬と戦車をもって町を囲んでいたので、その若者はエリシャに言った、「ああ、わが主よ、わたしたちはどうしましょうか」。
9688 12 6 16 エリシャは言った、「恐れることはない。われわれと共にいる者は彼らと共にいる者よりも多いのだから」。
9689 12 6 17 そしてエリシャが祈って「主よ、どうぞ、彼の目を開いて見させてください」と言うと、主はその若者の目を開かれたので、彼が見ると、火の馬と火の戦車が山に満ちてエリシャのまわりにあった。
9690 12 6 18 スリヤびとがエリシャの所に下ってきた時、エリシャは主に祈って言った、「どうぞ、この人々の目をくらましてください」。するとエリシャの言葉のとおりに彼らの目をくらまされた。
9691 12 6 19 そこでエリシャは彼らに「これはその道ではない。これはその町でもない。わたしについてきなさい。わたしはあなたがたを、あなたがたの尋ねる人の所へ連れて行きましょう」と言って、彼らをサマリヤへ連れて行った。
9692 12 6 20 彼らがサマリヤにはいったとき、エリシャは言った、「主よ、この人々の目を開いて見させてください」。主は彼らの目を開かれたので、彼らが見ると、見よ、彼らはサマリヤのうちに来ていた。
9693 12 6 21 イスラエルの王は彼らを見て、エリシャに言った、「わが父よ、彼らを撃ち殺しましょうか。彼らを撃ち殺しましょうか」。
9694 12 6 22 エリシャは答えた、「撃ち殺してはならない。あなたはつるぎと弓をもって、捕虜にした者どもを撃ち殺すでしょうか。パンと水を彼らの前に供えて食い飲みさせ、その主君のもとへ行かせなさい」。
9695 12 6 23 そこで王は彼らのために盛んなふるまいを設けた。彼らが食い飲みを終ると彼らを去らせたので、その主君の所へ帰った。スリヤの略奪隊は再びイスラエルの地にこなかった。
9696 12 6 24 この後スリヤの王ベネハダデはその全軍を集め、上ってきてサマリヤを攻め囲んだので、
9697 12 6 25 サマリヤに激しいききんが起った。すなわち彼らがこれを攻め囲んだので、ついに、ろばの頭一つが銀八十シケルで売られ、はとのふん一カブの四分の一が銀五シケルで売られるようになった。
9698 12 6 26 イスラエルの王が城壁の上をとおっていた時、ひとりの女が彼に呼ばわって、「わが主、王よ、助けてください」と言ったので、
9699 12 6 27 彼は言った、「もし主があなたを助けられないならば、何をもってわたしがあなたを助けることができよう。打ち場の物をもってか、酒ぶねの物をもってか」。
9700 12 6 28 そして王は女に尋ねた、「何事なのですか」。彼女は答えた、「この女はわたしにむかって『あなたの子をください。わたしたちは、きょうそれを食べ、あす、わたしの子を食べましょう』と言いました。
9701 12 6 29 それでわたしたちは、まずわたしの子を煮て食べましたが、次の日わたしが彼女にむかって『あなたの子をください。わたしたちはそれを食べましょう』と言いますと、彼女はその子を隠しました」。
9702 12 6 30 王はその女の言葉を聞いて、衣を裂き、――王は城壁の上をとおっていたが、民が見ると、その身に荒布を着けていた――
9703 12 6 31 そして王は言った「きょう、シャパテの子エリシャの首がその肩の上にすわっているならば、神がどんなにでもわたしを罰してくださるように」。
9704 12 6 32 さてエリシャはその家に座していたが、長老たちもきて彼と共に座した。王は自分の所から人をつかわしたが、エリシャはその使者がまだ着かないうちに長老たちに言った、「あなたがたは、この人を殺す者がわたしの首を取るために、人をつかわすのを見ますか。その使者がきたならば、戸を閉じて、内に入れてはなりません。彼のうしろに、その主君の足音がするではありませんか」。
9705 12 6 33 彼がなお彼らと語っているうちに、王は彼のもとに下ってきて言った、「この災は主から出たのです。わたしはどうしてこの上、主を待たなければならないでしょうか」。
9706 12 7 1 エリシャは言った、「主の言葉を聞きなさい。主はこう仰せられる、『あすの今ごろサマリヤの門で、麦粉一セアを一シケルで売り、大麦二セアを一シケルで売るようになるであろう』」。
9707 12 7 2 時にひとりの副官すなわち王がその人の手によりかかっていた者が神の人に答えて言った、「たとい主が天に窓を開かれても、そんな事がありえましょうか」。エリシャは言った、「あなたは自分の目をもってそれを見るであろう。しかしそれを食べることはなかろう」。
9708 12 7 3 さて町の門の入口に四人のらい病人がいたが、彼らは互に言った、「われわれはどうしてここに座して死を待たねばならないのか。
9709 12 7 4 われわれがもし町にはいろうといえば、町には食物が尽きているから、われわれはそこで死ぬであろう。しかしここに座していても死ぬのだ。いっその事、われわれはスリヤびとの陣営へ逃げて行こう。もし彼らがわれわれを生かしておいてくれるならば、助かるが、たといわれわれを殺しても死ぬばかりだ」。
9710 12 7 5 そこで彼らはスリヤびとの陣営へ行こうと、たそがれに立ちあがったが、スリヤびとの陣営のほとりに行って見ると、そこにはだれもいなかった。
9711 12 7 6 これは主がスリヤびとの軍勢に戦車の音、馬の音、大軍の音を聞かせられたので、彼らは互に「見よ、イスラエルの王がわれわれを攻めるために、ヘテびとの王たちおよびエジプトの王たちを雇ってきて、われわれを襲うのだ」と言って、
9712 12 7 7 たそがれに立って逃げ、その天幕と、馬と、ろばを捨て、陣営をそのままにしておいて、命を全うしようと逃げたからである。
9713 12 7 8 そこでらい病人たちは陣営のほとりに行き、一つの天幕にはいって食い飲みし、そこから金銀、衣服を持ち出してそれを隠し、また来て、他の天幕に入り、そこからも持ち出してそれを隠した。
9714 12 7 9 そして彼らは互に言った、「われわれのしている事はよくない。きょうは良いおとずれのある日であるのに、黙っていて、夜明けまで待つならば、われわれは罰をこうむるであろう。さあ、われわれは行って王の家族に告げよう」。
9715 12 7 10 そこで彼らは来て、町の門を守る者を呼んで言った、「わたしたちがスリヤびとの陣営に行って見ると、そこにはだれの姿も見えず、また人声もなく、ただ、馬とろばがつないであり、天幕はそのままでした」。
9716 12 7 11 そこで門を守る者は呼ばわって、それを王の家族のうちに知らせた。
9717 12 7 12 王は夜のうちに起きて、家来たちに言った、「スリヤびとがわれわれに対して図っている事をあなたがたに告げよう。彼らは、われわれの飢えているのを知って、陣営を出て野に隠れ、『イスラエルびとが町を出たら、いけどりにして、町に押し入ろう』と考えているのだ」。
9718 12 7 13 家来のひとりが答えて言った、「人々に、ここに残っている馬のうち五頭を連れてこさせてください。ここに残っているこれらの人々は、すでに滅びうせたイスラエルの全群衆と同じ運命にあうのですから。わたしたちは人をやってうかがわせましょう」。
9719 12 7 14 そこで彼らはふたりの騎兵を選んだ。王はそれをつかわし、「行って見よ」と言って、スリヤびとの軍勢のあとをつけさせたので、
9720 12 7 15 彼らはそのあとを追ってヨルダンまで行ったが、道にはすべて、スリヤびとがあわてて逃げる時に捨てていった衣服と武器が散らばっていた。その使者は帰ってきて、これを王に告げた。
9721 12 7 16 そこで民が出ていって、スリヤびとの陣営をかすめたので、麦粉一セアは一シケルで売られ、大麦二セアは一シケルで売られ、主の言葉のとおりになった。
9722 12 7 17 王は自分がその人の手によりかかっていた、あの副官を立てて門を管理させたが、民は門で彼を踏みつけたので、彼は死んだ。すなわち、王が神の人のところに下ってきた時、神の人が言ったとおりであった。
9723 12 7 18 これは神の人が王にむかって、「あすの今ごろ、サマリヤの門で大麦二セアを一シケルで売り、麦粉一セアを一シケルで売るようになるであろう」と言ったときに、
9724 12 7 19 その副官が神の人に答えて、「たとい主が天に窓を開かれても、そんな事がありえようか」と言ったからである。そのとき神の人は「あなたは自分の目をもってそれを見るであろう。しかしそれを食べることはなかろう」と言ったが、
9725 12 7 20 これはそのとおり彼に臨んだ。すなわち民が門で彼を踏みつけたので彼は死んだ。
9726 12 8 1 エリシャはかつて、その子を生きかえらせてやった女に言ったことがある。「あなたは、ここを立って、あなたの家族と共に行き、寄留しようと思う所に寄留しなさい。主がききんを呼び下されたので、七年の間それがこの地に臨むから」。
9727 12 8 2 そこで女は立って神の人の言葉のようにし、その家族と共に行ってペリシテびとの地に七年寄留した。
9728 12 8 3 七年たって後、女はペリシテびとの地から帰ってきて、自分の家と畑のために王に訴えようと出ていった。
9729 12 8 4 時に王は神の人のしもべゲハジにむかって「エリシャがしたもろもろの大きな事をわたしに話してください」と言って、彼と物語っていた。
9730 12 8 5 すなわちエリシャが死人を生きかえらせた事を、ゲハジが王と物語っていたとき、その子を生きかえらせてもらった女が、自分の家と畑のために王に訴えてきたので、ゲハジは言った、「わが主、王よ、これがその女です。またこれがその子で、エリシャが生きかえらせたのです」。
9731 12 8 6 王がその女に尋ねると、彼女は王に話したので、王は彼女のためにひとりの役人に命じて言った、「すべて彼女に属する物、ならびに彼女がこの地を去った日から今までのその畑の産物をことごとく彼女に返しなさい」。
9732 12 8 7 さてエリシャはダマスコに来た。時にスリヤの王ベネハダデは病気であったが、「神の人がここに来た」と告げる者があったので、
9733 12 8 8 王はハザエルに言った、「贈り物を携えて行って神の人を迎え、彼によって主に『わたしのこの病気はなおりましょうか』と言って尋ねなさい」。
9734 12 8 9 そこでハザエルは彼を迎えようと、ダマスコのもろもろの良い物をらくだ四十頭に載せ、贈り物として携え行き、エリシャの前に立って言った、「あなたの子、スリヤの王ベネハダデがわたしをあなたにつかわして、『わたしのこの病気はなおりましょうか』と言わせています」。
9735 12 8 10 エリシャは彼に言った、「行って彼に『あなたは必ずなおります』と告げなさい。ただし主はわたしに、彼が必ず死ぬことを示されました」。
9736 12 8 11 そして神の人がひとみを定めて彼の恥じるまでに見つめ、やがて泣き出したので、
9737 12 8 12 ハザエルは言った、「わが主よ、どうして泣かれるのですか」。エリシャは答えた、「わたしはあなたがイスラエルの人々にしようとする害悪を知っているからです。すなわち、あなたは彼らの城に火をかけ、つるぎをもって若者を殺し、幼な子を投げうち、妊娠の女を引き裂くでしょう」。
9738 12 8 13 ハザエルは言った、「しもべは一匹の犬にすぎないのに、どうしてそんな大きな事をすることができましょう」。エリシャは言った、「主がわたしに示されました。あなたはスリヤの王となるでしょう」。
9739 12 8 14 彼がエリシャのもとを去って、主君のところへ行くと、「エリシャはあなたになんと言ったか」と尋ねられたので、「あなたが必ずなおるでしょうと、彼はわたしに告げました」と答えた。
9740 12 8 15 しかし翌日になってハザエルは布を取って水に浸し、それをもって王の顔をおおったので、王は死んだ。ハザエルは彼に代って王となった。
9741 12 8 16 イスラエルの王アハブの子ヨラムの第五年に、ユダの王ヨシャパテの子ヨラムが位についた。
9742 12 8 17 彼は王となったとき三十二歳で、八年の間エルサレムで世を治めた。
9743 12 8 18 彼はアハブの家がしたようにイスラエルの王たちの道に歩んだ。アハブの娘が彼の妻であったからである。彼は主の目の前に悪をおこなったが、
9744 12 8 19 主はしもべダビデのためにユダを滅ぼすことを好まれなかった。すなわち主は彼とその子孫に常にともしびを与えると、彼に約束されたからである。
9745 12 8 20 ヨラムの世にエドムがそむいてユダの支配を脱し、みずから王を立てたので、
9746 12 8 21 ヨラムはすべての戦車を従えてザイルにわたって行き、その戦車の指揮官たちと共に、夜のうちに立ちあがって、彼を包囲しているエドムびとを撃った。しかしヨラムの軍隊は天幕に逃げ帰った。
9747 12 8 22 エドムはこのようにそむいてユダの支配を脱し、今日に至っている。リブナもまた同時にそむいた。
9748 12 8 23 ヨラムのその他の事績および彼がしたすべての事は、ユダの歴代志の書にしるされているではないか。
9749 12 8 24 ヨラムはその先祖たちと共に眠って、ダビデの町にその先祖たちと共に葬られ、その子アハジヤが代って王となった。
9750 12 8 25 イスラエルの王アハブの子ヨラムの第十二年にユダの王ヨラムの子アハジヤが位についた。
9751 12 8 26 アハジヤは王となったとき二十二歳で、エルサレムで一年世を治めた。その母は名をアタリヤと言って、イスラエルの王オムリの孫娘であった。
9752 12 8 27 アハジヤはまたアハブの家の道に歩み、アハブの家がしたように主の目の前に悪をおこなった。彼はアハブの家の婿であったからである。
9753 12 8 28 彼はアハブの子ヨラムと共に行って、スリヤの王ハザエルとラモテ・ギレアデで戦ったが、スリヤびとらはヨラムに傷を負わせた。
9754 12 8 29 ヨラム王はそのスリヤの王ハザエルと戦うときにラマでスリヤびとに負わされた傷をいやすため、エズレルに帰ったが、ユダの王ヨラムの子アハジヤはアハブの子ヨラムが病んでいたので、エズレルに下って彼をおとずれた。
9755 12 9 1 時に預言者エリシャは預言者のともがらのひとりを呼んで言った、「腰をひきからげ、この油のびんを携えて、ラモテ・ギレアデへ行きなさい。
9756 12 9 2 そこに着いたならば、ニムシの子ヨシャパテの子であるエヒウを尋ね出し、内にはいって彼をその同僚たちのうちから立たせて、奥の間に連れて行き、
9757 12 9 3 油のびんを取って、その頭に注ぎ、『主はこう仰せられる、わたしはあなたに油を注いでイスラエルの王とする』と言い、そして戸をあけて逃げ去りなさい。とどまってはならない」。
9758 12 9 4 そこで預言者であるその若者はラモテ・ギレアデへ行ったが、
9759 12 9 5 来て見ると、軍勢の長たちが会議中であったので、彼は「将軍よ、わたしはあなたに申しあげる事があります」と言うと、エヒウが答えて、「われわれすべてのうちの、だれにですか」と言ったので、彼は「将軍よ、あなたにです」と言った。
9760 12 9 6 するとエヒウが立ちあがって家にはいったので、若者はその頭に油を注いで彼に言った、「イスラエルの神、主はこう仰せられます、『わたしはあなたに油を注いで、主の民イスラエルの王とする。
9761 12 9 7 あなたは主君アハブの家を撃ち滅ぼさなければならない。それによってわたしは、わたしのしもべである預言者たちの血と、主のすべてのしもべたちの血をイゼベルに報いる。
9762 12 9 8 アハブの全家は滅びるであろう。アハブに属する男は、イスラエルにいて、つながれた者も、自由な者も、ことごとくわたしは断ち、
9763 12 9 9 アハブの家をネバテの子ヤラベアムのようにし、アヒヤの子バアシャの家のようにする。
9764 12 9 10 犬がイズレルの地域でイゼベルを食い、彼女を葬る者はないであろう』」。そして彼は戸をあけて逃げ去った。
9765 12 9 11 やがてエヒウが主君の家来たちの所へ出て来ると、彼らはエヒウに言った、「変った事はありませんか。あの気違いは、なんのためにあなたの所にきたのですか」。エヒウは彼らに言った、「あなたがたは、あの人を知っています。またその言う事も知っています」。
9766 12 9 12 彼らは言った、「それは違います。どうぞわれわれに話してください」。そこでエヒウは言った、「彼はこうこう、わたしに告げて言いました、『主はこう仰せられる、わたしはあなたに油を注いで、イスラエルの王とする』」。
9767 12 9 13 すると彼らは急いで、おのおの衣服をとり、それを階段の上のエヒウの下に敷き、ラッパを吹いて「エヒウは王である」と言った。
9768 12 9 14 こうしてニムシの子であるヨシャパテの子エヒウはヨラムにそむいた。(ヨラムはイスラエルをことごとく率いて、ラモテ・ギレアデでスリヤの王ハザエルを防いだが、
9769 12 9 15 ヨラム王はスリヤの王ハザエルと戦った時に、スリヤびとに負わされた傷をいやすため、エズレルに帰っていた。)エヒウは言った、「もしこれがあなたがたの本心であるならば、ひとりもこの町から忍び出て、これをエズレルに告げてはならない」。
9770 12 9 16 そしてエヒウは車に乗ってエズレルへ行った。ヨラムがそこに伏していたからである。またユダの王アハジヤはヨラムを見舞うために下っていた。
9771 12 9 17 さてエズレルのやぐらに、ひとりの物見が立っていたが、エヒウの群衆が来るのを見て、「群衆が見える」と言ったので、ヨラムは言った、「ひとりを馬に乗せてつかわし、それに会わせて『平安ですか』と言わせなさい」。
9772 12 9 18 そこでひとりが馬に乗って行き、彼に会って言った、「王はこう仰せられます、『平安ですか』」。エヒウ言った、「あなたは平安となんの関係がありますか。わたしのあとについてきなさい」。物見はまた告げて言った、「使者は彼らの所へ行きましたが、帰ってきません」。
9773 12 9 19 そこで再び人を馬でつかわしたので、彼らの所へ行って言った、「王はこう仰せられます、『平安ですか』」。エヒウは答えて言った、「あなたは平安となんの関係がありますか。わたしのあとについてきなさい」。
9774 12 9 20 物見はまた告げて言った、「彼も、彼らの所へ行きましたが帰ってきません。あの車の操縦はニムシの子エヒウの操縦するのに似て、猛烈な勢いで操縦して来ます」。
9775 12 9 21 そこでヨラムが「車を用意せよ」と言ったので、車を用意すると、イスラエルの王ヨラムと、ユダの王アハジヤは、おのおのその車で出て行った。すなわちエヒウに会うために出ていって、エズレルびとナボテの地所で彼に会った。
9776 12 9 22 ヨラムはエヒウを見て言った、「エヒウよ、平安ですか」。エヒウは答えた、「あなたの母イゼベルの姦淫と魔術とが、こんなに多いのに、どうして平安でありえましょうか」。
9777 12 9 23 その時ヨラムは車をめぐらして逃げ、アハジヤにむかって、「アハジヤよ、反逆です」と言うと、
9778 12 9 24 エヒウは手に弓をひきしぼって、ヨラムの両肩の間を射たので、矢は彼の心臓を貫き、彼は車の中に倒れた。
9779 12 9 25 エヒウはその副官ビデカルに言った、「彼を取りあげて、エズレルびとナボテの畑に投げ捨てなさい。かつて、わたしとあなたと、ふたり共に乗って、彼の父アハブに従ったとき、主が彼について、この預言をされたことを記憶しなさい。
9780 12 9 26 すなわち主は言われた、『まことに、わたしはきのうナボテの血と、その子らの血を見た』。また主は言われた、『わたしはこの地所であなたに報復する』と。それゆえ彼を取りあげて、その地所に投げすて、主の言葉のようにしなさい」。
9781 12 9 27 ユダの王アハジヤはこれを見てベテハガンの方へ逃げたが、エヒウはそのあとを追い、「彼をも撃て」と言ったので、イブレアムのほとりのグルの坂で車の中の彼を撃った。彼はメギドまで逃げていって、そこで死んだ。
9782 12 9 28 その家来たちは彼を車に載せてエルサレムに運び、ダビデの町で彼の墓にその先祖たちと共に葬った。
9783 12 9 29 アハブの子ヨラムの第十一年にアハジヤはユダの王となったのである。
9784 12 9 30 エヒウがエズレルにきた時、イゼベルはそれを聞いて、その目を塗り、髪を飾って窓から望み見たが、
9785 12 9 31 エヒウが門にはいってきたので、「主君を殺したジムリよ、無事ですか」と言った。
9786 12 9 32 するとエヒウは顔をあげて窓にむかい、「だれか、わたしに味方する者があるか。だれかあるか」と言うと、二、三人の宦官がエヒウを望み見たので、
9787 12 9 33 エヒウは「彼女を投げ落せ」と言った。彼らは彼女を投げ落したので、その血が壁と馬とにはねかかった。そして馬は彼女を踏みつけた。
9788 12 9 34 エヒウは内にはいって食い飲みし、そして言った、「あののろわれた女を見、彼女を葬りなさい。彼女は王の娘なのだ」。
9789 12 9 35 しかし彼らが彼女を葬ろうとして行って見ると、頭蓋骨と、足と、たなごころのほか何もなかったので、
9790 12 9 36 帰って、彼に告げると、彼は言った、「これは主が、そのしもべ、テシベびとエリヤによってお告げになった言葉である。すなわち『エズレルの地で犬がイゼベルの肉を食うであろう。
9791 12 9 37 イゼベルの死体はエズレルの地で、糞土のように野のおもてに捨てられて、だれも、これはイゼベルだ、と言うことができないであろう』」。
9792 12 10 1 アハブはサマリヤに七十人の子供があった。エヒウは手紙をしたためてサマリヤに送り、町のつかさたちと、長老たちと、アハブの子供の守役たちとに伝えて言った、
9793 12 10 2 「あなたがたの主君の子供たちがあなたがたと共におり、また戦車も馬も、堅固な町も武器もあるのだから、この手紙があなたがたのもとに届いたならば、すぐ、
9794 12 10 3 あなたがたは主君の子供たちのうち最もすぐれた、最も適当な者を選んで、その父の位にすえ、主君の家のために戦いなさい」。
9795 12 10 4 彼らは大いに恐れて言った、「ふたりの王たちがすでに彼に当ることができなかったのに、われわれがどうして当ることができよう」。
9796 12 10 5 そこで宮廷のつかさ、町のつかさ、長老たちと守役たちはエヒウに人をつかわして言った、「わたしたちは、あなたのしもべです。すべてあなたが命じられる事をいたします。わたしたちは王を立てることを好みません。あなたがよいと思われることをしてください」。
9797 12 10 6 そこでエヒウは再び彼らに手紙を書き送って言った、「もしあなたがたが、わたしに味方し、わたしに従おうとするならば、あなたがたの主君の子供たちの首を取って、あすの今ごろエズレルにいるわたしのもとに持ってきなさい」。そのころ、王の子供たち七十人は彼らを育てていた町のおもだった人々と共にいた。
9798 12 10 7 彼らはその手紙を受け取ると、王の子供たちを捕えて、その七十人をことごとく殺し、その首をかごにつめて、エズレルにいるエヒウのもとに送った。
9799 12 10 8 使者が来て、エヒウに告げ、「人々が王の子供たちの首を持ってきました」と言うと、「あくる朝までそれを門の入口に、ふた山に積んでおけ」と言った。
9800 12 10 9 朝になると、彼は出て行って立ち、すべての民に言った、「あなたがたは正しい。主君にそむいて彼を殺したのはわたしです。しかしこのすべての者どもを殺したのはだれですか。
9801 12 10 10 これであなたがたは、主がアハブの家について告げられた主の言葉は一つも地に落ちないことを知りなさい。主は、そのしもべエリヤによってお告げになった事をなし遂げられたのです」。
9802 12 10 11 こうしてエヒウは、アハブの家に属する者でエズレルに残っている者をことごとく殺し、またそのすべてのおもだった者、その親しい者およびその祭司たちを殺して、彼に属する者はひとりも残さなかった。
9803 12 10 12 さてエヒウは立ってサマリヤへ行ったが、途中、牧者の集まり場で、
9804 12 10 13 ユダの王アハジヤの身内の人々に会い、「あなたがたはどなたですか」と言うと、「わたしたちはアハジヤの身内の者ですが、王の子供たちと、王母の子供たちの安否を問うために下ってきたのです」と答えたので、
9805 12 10 14 エヒウは「彼らをいけどれ」と命じた。そこで彼らをいけどって、集まり場の穴のかたわらで彼ら四十二人をことごとく殺し、ひとりをも残さなかった。
9806 12 10 15 エヒウはそこを立って行ったが、自分を迎えにきたレカブの子ヨナダブに会ったので、彼にあいさつして、「あなたの心は、わたしがあなたに対するように真実ですか」と言うと、ヨナダブは「真実です」と答えた。するとエヒウは「それならば、あなたの手をわたしに伸べなさい」と言ったので、その手を伸べると、彼を引いて自分の車に上らせ、
9807 12 10 16 「わたしと一緒にきて、わたしが主に熱心なのを見なさい」と言った。そして彼を自分の車に乗せ、
9808 12 10 17 サマリヤへ行って、アハブに属する者で、サマリヤに残っている者をことごとく殺して、その一族を滅ぼした。主がエリヤにお告げになった言葉のとおりである。
9809 12 10 18 次いでエヒウは民をことごとく集めて彼らに言った、「アハブは少しばかりバアルに仕えたが、エヒウは大いにこれに仕えるであろう。
9810 12 10 19 それゆえ、今バアルのすべての預言者、すべての礼拝者、すべての祭司をわたしのもとに召しなさい。ひとりもこない者のないようにしなさい。わたしは大いなる犠牲をバアルにささげようとしている。すべてこない者は生かしておかない」。しかしエヒウはバアルの礼拝者たちを滅ぼすために偽ってこうしたのである。
9811 12 10 20 そしてエヒウは「バアルのために聖会を催しなさい」と命じたので、彼らはこれを布告した。
9812 12 10 21 エヒウはあまねくイスラエルに人をつかわしたので、バアルの礼拝者たちはことごとく来た。こないで残った者はひとりもなかった。彼らはバアルの宮にはいったので、バアルの宮は端から端までいっぱいになった。
9813 12 10 22 その時エヒウは衣装をつかさどる者に「祭服を取り出してバアルのすべての礼拝者に与えよ」と言ったので、彼らのために祭服を取り出した。
9814 12 10 23 そしてエヒウはレカブの子ヨナダブと共にバアルの宮に入り、バアルの礼拝者たちに言った、「調べてみて、ここにはただバアルの礼拝者のみで、主のしもべはひとりも、あなたがたのうちにいないようにしなさい」。
9815 12 10 24 こうして彼は犠牲と燔祭とをささげるためにはいった。
9816 12 10 25 こうして燔祭をささげることが終ったとき、エヒウはその侍衛と将校たちに言った、「はいって彼らを殺せ。ひとりも逃がしてはならない」。侍衛と将校たちはつるぎをもって彼らを撃ち殺し、それを投げ出して、バアルの宮の本殿に入り、
9817 12 10 26 バアルの宮にある柱の像を取り出して、それを焼いた。
9818 12 10 27 また彼らはバアルの石柱をこわし、バアルの宮をこわして、かわやとしたが今日まで残っている。
9819 12 10 28 このようにエヒウはイスラエルのうちからバアルを一掃した。
9820 12 10 29 しかしエヒウはイスラエルに罪を犯させたネバテの子ヤラベアムの罪、すなわちベテルとダンにある金の子牛に仕えることをやめなかった。
9821 12 10 30 主はエヒウに言われた、「あなたはわたしの目にかなう事を行うにあたって、よくそれを行い、またわたしの心にあるすべての事をアハブの家にしたので、あなたの子孫は四代までイスラエルの位に座するであろう」。
9822 12 10 31 しかしエヒウはイスラエルの神、主の律法を心をつくして守り行おうとはせず、イスラエルに罪を犯させたヤラベアムの罪を離れなかった。
9823 12 10 32 この時にあたって、主はイスラエルの領地を切り取ることを始められた。すなわちハザエルはイスラエルのすべての領域を侵し、
9824 12 10 33 ヨルダンの東で、ギレアデの全地、カドびと、ルベンびと、マナセびとの地を侵し、アルノン川のほとりにあるアロエルからギレアデとバシャンに及んだ。
9825 12 10 34 エヒウのその他の事績と、彼がしたすべての事およびその武勇は、ことごとくイスラエルの王の歴代志の書にしるされているではないか。
9826 12 10 35 エヒウはその先祖たちと共に眠ったので、彼をサマリヤに葬った。その子エホアハズが代って王となった。
9827 12 10 36 エヒウがサマリヤでイスラエルを治めたのは二十八年であった。
9828 12 11 1 さてアハジヤの母アタリヤはその子の死んだのを見て、立って王の一族をことごとく滅ぼしたが、
9829 12 11 2 ヨラム王の娘で、アハジヤの姉妹であるエホシバはアハジヤの子ヨアシを、殺されようとしている王の子たちのうちから盗み取り、彼とそのうばとを寝室に入れて、アタリヤに隠したので、彼はついに殺されなかった。
9830 12 11 3 ヨアシはうばと共に六年の間、主の宮に隠れていたが、その間アタリヤが国を治めた。
9831 12 11 4 第七年になってエホヤダは人をつかわして、カリびとと近衛兵との大将たちを招きよせ、主の宮にいる自分のもとにこさせ、彼らと契約を結び、主の宮で彼らに誓いをさせて王の子を見せ、
9832 12 11 5 命じて言った、「あなたがたのする事はこれです、すなわち、安息日に非番となって王の家を守るあなたがたの三分の一は、
9833 12 11 6 宮殿を守らなければならない。(他の三分の一はスルの門におり、三分の一は近衛兵のうしろの門におる)。
9834 12 11 7 すべて安息日に当番で主の宮を守るあなたがたの二つの部隊は、
9835 12 11 8 おのおのの武器を手に取って王のまわりに立たなければならない。すべて列に近よる者は殺されなければならない。あなたがたは王が出る時にも、はいる時にも王と共にいなければならない」。
9836 12 11 9 そこでその大将たちは祭司エホヤダがすべて命じたとおりにおこなった。すなわち彼らはおのおの安息日に非番となる者と、安息日に当番となる者とを率いて祭司エホヤダのもとにきたので、
9837 12 11 10 祭司は主の宮にあるダビデ王のやりと盾を大将たちに渡した。
9838 12 11 11 近衛兵はおのおの手に武器をとって主の宮の南側から北側まで、祭壇と宮を取り巻いて立った。
9839 12 11 12 そこでエホヤダは王の子をつれ出して冠をいただかせ、律法の書を渡し、彼を王と宣言して油を注いだので、人々は手を打って「王万歳」と言った。
9840 12 11 13 アタリヤは近衛兵と民の声を聞いて、主の宮に入り、民のところへ行って、
9841 12 11 14 見ると、王は慣例にしたがって柱のかたわらに立ち、王のかたわらには大将たちとラッパ手たちが立ち、また国の民は皆喜んでラッパを吹いていたので、アタリヤはその衣を裂いて、「反逆です、反逆です」と叫んだ。
9842 12 11 15 その時祭司エホヤダは軍勢を指揮していた大将たちに命じて、「彼女を列の間をとおって出て行かせ、彼女に従う者をつるぎをもって殺しなさい」と言った。これは祭司がさきに「彼女を主の宮で殺してはならない」と言ったからである。
9843 12 11 16 そこで彼らは彼女を捕え、王の家の馬道へ連れて行ったが、彼女はついにそこで殺された。
9844 12 11 17 かくてエホヤダは主と王および民との間に、皆主の民となるという契約を立てさせ、また王と民との間にもそれを立てさせた。
9845 12 11 18 そこで国の民は皆バアルの宮に行って、これをこわし、その祭壇とその像を打ち砕き、バアルの祭司マッタンをその祭壇の前で殺した。そして祭司は主の宮に管理人を置いた。
9846 12 11 19 次いでエホヤダは大将たちと、カリびとと、近衛兵と国のすべての民を率いて、主の宮から王を導き下り、近衛兵の門の道から王の家に入り、王の位に座せしめた。
9847 12 11 20 こうして国の民は皆喜び、町はアタリヤが王の家でつるぎをもって殺されてのち、おだやかになった。
9848 12 11 21 ヨアシは位についた時七歳であった。
9849 12 12 1 ヨアシはエヒウの第七年に位につき、エルサレムで四十年の間、世を治めた。その母はベエルシバの出身で、名をヂビアといった。
9850 12 12 2 ヨアシは一生の間、主の目にかなう事をおこなった。祭司エホヤダが彼を教えたからである。
9851 12 12 3 しかし高き所は除かなかったので、民はなおその高き所で犠牲をささげ、香をたいた。
9852 12 12 4 ヨアシは祭司たちに言った、「すべて主の宮に聖別してささげる銀、すなわちおのおのが課せられて、割当にしたがって人々の出す銀、および人々が心から願って主の宮の持ってくる銀は、
9853 12 12 5 これを祭司たちがおのおのその知る人から受け取り、どこでも主の宮に破れの見える時は、それをもってその破れを繕わなければならない」。
9854 12 12 6 ところがヨアシ王の二十三年に至るまで、祭司たちは主の宮の破れを繕わなかった。
9855 12 12 7 それで、ヨアシ王は祭司エホヤダおよび他の祭司たちを召して言った、「なぜ、あなたがたは主の宮の破れを繕わないのか。あなたがたはもはや知人から銀を受けてはならない。主の宮の破れを繕うためにそれを渡しなさい」。
9856 12 12 8 祭司たちは重ねて民から銀を受けない事と、主の宮の破れを繕わない事とに同意した。
9857 12 12 9 そこで祭司エホヤダは一つの箱を取り、そのふたに穴をあけて、それを主の宮の入口の右側、祭壇のかたわらに置いた。そして門を守る祭司たちは主の宮にはいってくる銀をことごとくその中に入れた。
9858 12 12 10 こうしてその箱の中に銀が多くなったのを見ると、王の書記官と大祭司が上ってきて、主の宮にある銀を数えて袋に詰めた。
9859 12 12 11 そしてその数えた銀を、工事をつかさどる主の宮の監督者の手にわたしたので、彼らはそれを主の宮に働く木工と建築師に払い、
9860 12 12 12 石工および石切りに払い、またそれをもって主の宮の破れを繕う材木と切り石を買い、主の宮を繕うために用いるすべての物のために費した。
9861 12 12 13 ただし、主の宮にはいってくるその銀をもって主の宮のために銀のたらい、心切りばさみ、鉢、ラッパ、金の器、銀の器などを造ることはしなかった。
9862 12 12 14 ただこれを工事をする者に渡して、それで主の宮を繕わせた。
9863 12 12 15 またその銀を渡して工事をする者に払わせた人々と計算することはしなかった。彼らは正直に事をおこなったからである。
9864 12 12 16 愆祭の銀と罪祭の銀は主の宮に、はいらないで、祭司に帰した。
9865 12 12 17 そのころ、スリヤの王ハザエルが上ってきて、ガテを攻めてこれを取った。そしてハザエルがエルサレムに攻め上ろうとして、その顔を向けたとき、
9866 12 12 18 ユダの王ヨアシはその先祖、ユダの王ヨシャパテ、ヨラム、アハジヤが聖別してささげたすべての物、およびヨアシ自身が聖別してささげた物、ならびに主の宮の倉と、主の宮にある金をことごとく取って、スリヤ王のハザエルに贈ったので、ハザエルはエルサレムを離れ去った。
9867 12 12 19 ヨアシのその他の事績および彼がしたすべての事は、ユダの王の歴代志の書にしるされているではないか。
9868 12 12 20 ヨアシの家来たちは立って徒党を結び、シラに下る道にあるミロの家でヨアシを殺した。
9869 12 12 21 すなわちその家来シメアテの子ヨザカルと、ショメルの子ヨザバデが彼を撃って殺し、彼をその先祖と同じく、ダビデの町に葬った。その子アマジヤが代って王となった。
9870 12 13 1 ユダの王アハジヤの子ヨアシの第二十三年にエヒウの子エホアハズはサマリヤでイスラエルの王となり、十七年世を治めた。
9871 12 13 2 彼は主の目の前に悪を行い、イスラエルに罪を犯させたネバテの子ヤラベアムの罪を行いつづけて、それを離れなかった。
9872 12 13 3 そこで主はイスラエルに対して怒りを発し、エホアハズの治世の間、絶えずイスラエルをスリヤの王ハザエルの手にわたし、またハザエルの子ベネハダデの手にわたされた。
9873 12 13 4 しかしエホアハズが主に願い求めたので、主はついにこれを聞きいれられた。スリヤの王によって悩まされたイスラエルの悩みを見られたからである。
9874 12 13 5 それで主がひとりの救助者をイスラエルに賜わったので、イスラエルの人々はスリヤびとの手をのがれ、前のように自分たちの天幕に住むようになった。
9875 12 13 6 それにもかかわらず、彼らはイスラエルに罪を犯させたヤラベアムの家の罪を離れず、それを行いつづけた。またアシラの像もサマリヤに立ったままであった。
9876 12 13 7 さきにスリヤの王が彼らを滅ぼし、踏み砕くちりのようにしたのでエホアハズの軍勢で残ったものは、ただ騎兵五十人、戦車十両、歩兵一万人のみであった。
9877 12 13 8 エホアハズその他の事績と、彼がしたすべての事およびその武勇は、イスラエルの王の歴代志の書にしるされているではないか。
9878 12 13 9 エホアハズは先祖たちと共に眠ったので、彼をサマリヤに葬った。その子ヨアシが代って王となった。
9879 12 13 10 ユダの王ヨアシの第三十七年に、エホアハズの子ヨアシはサマリヤでイスラエルの王となり、十六年世を治めた。
9880 12 13 11 彼は主の目の前に悪を行い、イスラエルに罪を犯させたネバテの子ヤラベアムのもろもろの罪を離れず、それに歩んだ。
9881 12 13 12 ヨアシのその他の事績と、彼がしたすべての事およびユダの王アマジヤと戦ったその武勇は、イスラエルの王の歴代志の書にしるされているではないか。
9882 12 13 13 ヨアシは先祖たちと共に眠って、ヤラベアムがその位に座した。そしてヨアシはイスラエルの王たちと同じくサマリヤに葬られた。
9883 12 13 14 さてエリシャは死ぬ病気にかかっていたが、イスラエルの王ヨアシは下ってきて彼の顔の上に涙を流し、「わが父よ、わが父よ、イスラエルの戦車よ、その騎兵よ」と言った。
9884 12 13 15 エリシャは彼に「弓と矢を取りなさい」と言ったので、弓と矢を取った。
9885 12 13 16 エリシャはまたイスラエルの王に「弓に手をかけなさい」と言ったので、手をかけた。するとエリシャは自分の手を王の手の上におき、
9886 12 13 17 「東向きの窓をあけなさい」と言ったので、それをあけると、エリシャはまた「射なさい」と言った。彼が射ると、エリシャは言った、「主の救の矢、スリヤに対する救の矢。あなたはアペクでスリヤびとを撃ち破り、彼らを滅ぼしつくすであろう」。
9887 12 13 18 エリシャはまた「矢を取りなさい」と言ったので、それを取った。エリシャはまたイスラエルの王に「それをもって地を射なさい」と言ったので、三度射てやめた。
9888 12 13 19 すると神の人は怒って言った、「あなたは五度も六度も射るべきであった。そうしたならば、あなたはスリヤを撃ち破り、それを滅ぼしつくすことができたであろう。しかし今あなたはそうしなかったので、スリヤを撃ち破ることはただ三度だけであろう」。
9889 12 13 20 こうしてエリシャは死んで葬られた。さてモアブの略奪隊は年が改まるごとに、国にはいって来るのを常とした。
9890 12 13 21 時に、ひとりの人を葬ろうとする者があったが、略奪隊を見たので、その人をエリシャの墓に投げ入れて去った。その人はエリシャの骨に触れるとすぐ生きかえって立ちあがった。
9891 12 13 22 スリヤの王ハザエルはエホアハズの一生の間、イスラエルを悩ましたが、
9892 12 13 23 主はアブラハム、イサク、ヤコブと結ばれた契約のゆえにイスラエルを恵み、これをあわれみ、これを顧みて滅ぼすことを好まず、なおこれをみ前から捨てられなかった。
9893 12 13 24 スリヤの王ハザエルはついに死んで、その子ベネハダデが代って王となった。
9894 12 13 25 そこでエホアハズの子ヨアシは、父エホアハズがハザエルに攻め取られた町々を、ハザエルの子ベネハダデの手から取り返した。すなわちヨアシは三度彼を撃ち破って、イスラエルの町々を取り返した。
9895 12 14 1 イスラエルの王エホアハズの子ヨアシの第二年に、ユダの王ヨアシの子アマジヤが王となった。
9896 12 14 2 彼は王となった時二十五歳で、二十九年の間エルサレムで世を治めた。その母はエルサレムの出身で、名をエホアダンといった。
9897 12 14 3 アマジヤは主の目にかなう事をおこなったが、先祖ダビデのようではなかった。彼はすべての事を父ヨアシがおこなったようにおこなった。
9898 12 14 4 ただし高き所は除かなかったので、民はなおその高き所で犠牲をささげ、香をたいた。
9899 12 14 5 彼は国が彼の手のうちに強くなった時、父ヨアシ王を殺害した家来たちを殺したが、
9900 12 14 6 その殺害者の子供たちは殺さなかった。これはモーセの律法の書にしるされている所に従ったのであって、そこに主は命じて「父は子のゆえに殺さるべきではない。子は父のゆえに殺さるべきではない。おのおの自分の罪のゆえに殺さるべきである」と言われている。
9901 12 14 7 アマジヤはまた塩の谷でエドムびと一万人を殺した。またセラを攻め取って、その名をヨクテルと名づけたが、今日までそのとおりである。
9902 12 14 8 そこでアマジヤがエヒウの子エホアハズの子であるイスラエルの王ヨアシに使者をつかわして、「さあ、われわれは互に顔を合わせよう」と言わせたので、
9903 12 14 9 イスラエルの王ヨアシはユダの王アマジヤに言い送った、「かつてレバノンのいばらがレバノンの香柏に、『あなたの娘をわたしのむすこの妻にください』と言い送ったことがあったが、レバノンの野獣がとおって、そのいばらを踏み倒した。
9904 12 14 10 あなたは大いにエドムを撃って、心にたかぶっているが、その栄誉に満足して家にとどまりなさい。何ゆえ、あなたは災をひき起して、自分もユダも共に滅びるような事をするのですか」。
9905 12 14 11 しかしアマジヤが聞きいれなかったので、イスラエルの王ヨアシは上ってきた。そこで彼とユダの王アマジヤはユダのベテシメシで互に顔をあわせたが、
9906 12 14 12 ユダはイスラエルに敗られて、おのおのその天幕に逃げ帰った。
9907 12 14 13 イスラエルの王ヨアシはアハジヤの子ヨアシの子であるユダの王アマジヤをベテシメシで捕え、エルサレムにきて、エルサレムの城壁をエフライムの門から隅の門まで、おおよそ四百キュビトにわたってこわし、
9908 12 14 14 また主の宮と王の家の倉にある金銀およびもろもろの器をことごとく取り、かつ人質をとってサマリヤに帰った。
9909 12 14 15 ヨアシのその他の事績と、その武勇および彼がユダの王アマジヤと戦った事は、イスラエルの王の歴代志の書にしるされているではないか。
9910 12 14 16 ヨアシはその先祖たちと共に眠って、イスラエルの王たちと共にサマリヤに葬られ、その子ヤラベアムが代って王となった。
9911 12 14 17 ヨアシの子であるユダの王アマジヤは、エホアハズの子であるイスラエルの王ヨアシが死んで後、なお十五年生きながらえた。
9912 12 14 18 アマジヤのその他の事績は、ユダの王の歴代志の書にしるされているではないか。
9913 12 14 19 時に人々がエルサレムで徒党を結び、彼に敵対したので、彼はラキシに逃げていったが、その人々はラキシに人をつかわして彼をそこで殺させた。
9914 12 14 20 人々は彼を馬に載せて運んできて、エルサレムで彼を先祖たちと共にダビデの町に葬った。
9915 12 14 21 そしてユダの民は皆アザリヤを父アマジヤの代りに王とした。時に年十六歳であった。
9916 12 14 22 彼はエラテの町を建てて、これをユダに復帰させた。これはかの王がその先祖たちと共に眠った後であった。
9917 12 14 23 ユダの王ヨアシの子アマジヤの第十五年に、イスラエルの王ヨアシの子ヤラべアムがサマリヤで王となって四十一年の間、世を治めた。
9918 12 14 24 彼は主の目の前に悪を行い、イスラエルに罪を犯させたネバテの子ヤラベアムの罪を離れなかった。
9919 12 14 25 彼はハマテの入口からアラバの海まで、イスラエルの領域を回復した。イスラエルの神、主がガテヘペルのアミッタイの子である、そのしもべ預言者ヨナによって言われた言葉のとおりである。
9920 12 14 26 主はイスラエルの悩みの非常に激しいのを見られた。そこにはつながれた者も、自由な者もいなくなり、またイスラエルを助ける者もいなかった。
9921 12 14 27 しかし主はイスラエルの名を天が下から消し去ろうとは言われなかった。そして彼らをヨアシの子ヤラベアムの手によって救われた。
9922 12 14 28 ヤラベアムのその他の事績と、彼がしたすべての事およびその武勇、すなわち彼が戦争をした事および、かつてユダに属していたダマスコとハマテを、イスラエルに復帰させた事は、イスラエルの王の歴代志の書にしるされているではないか。
9923 12 14 29 ヤラベアムはその先祖であるイスラエルの王たちと共に眠って、その子ゼカリヤが代って王となった。
9924 12 15 1 イスラエルの王ヤラベアムの第二十七年に、ユダの王アマジヤの子アザリヤが王となった。
9925 12 15 2 彼が王となった時は十六歳で、五十二年の間エルサレムで世を治めた。その母はエルサレムの出身で、名をエコリアといった。
9926 12 15 3 彼は主の目にかなう事を行い、すべての事を父アマジヤが行ったようにおこなった。
9927 12 15 4 ただし高き所は除かなかったので、民はなおその高き所で犠牲をささげ、香をたいた。
9928 12 15 5 主が王を撃たれたので、その死ぬ日まで、らい病人となって、離れ家に住んだ。王の子ヨタムが家の事を管理し、国の民をさばいた。
9929 12 15 6 アザリヤのその他の事績と、彼がしたすべての事は、ユダの王の歴代志の書にしるされているではないか。
9930 12 15 7 アザリヤはその先祖たちと共に眠ったので、彼をダビデの町にその先祖たちと共に葬った。その子ヨタムが代って王となった。
9931 12 15 8 ユダの王アザリヤの第三十八年にヤラベアムの子ゼカリヤがサマリヤでイスラエルの王となり、六か月世を治めた。
9932 12 15 9 彼はその先祖たちがおこなったように主の目の前に悪を行い、イスラエルに罪を犯させたネバテの子ヤラベアムの罪を離れなかった。
9933 12 15 10 ヤベシの子シャルムが徒党を結んで彼に敵し、イブレアムで彼を撃ち殺し、彼に代って王となった。
9934 12 15 11 ゼカリヤのその他の事績は、イスラエルの王の歴代志の書にしるされている。
9935 12 15 12 主はかつてエヒウに、「あなたの子孫は四代までイスラエルの位に座するであろう」と告げられたが、はたしてそのとおりになった。
9936 12 15 13 ヤベシの子シャルムはユダの王ウジヤの第三十九年に王となり、サマリヤで一か月世を治めた。
9937 12 15 14 時にガデの子メナヘムがテルザからサマリヤに上ってきて、ヤベシの子シャルムをサマリヤで撃ち殺し、彼に代って王となった。
9938 12 15 15 シャルムのその他の事績と、彼が徒党を結んだ事は、イスラエルの王の歴代志の書にしるされている。
9939 12 15 16 その時メナヘムはテルザから進んでいって、タップアと、そのうちにいるすべての者、およびその領域を撃った。すなわち彼らが彼のために開かなかったので、これを撃って、そのうちの妊娠の女をことごとく引き裂いた。
9940 12 15 17 ユダの王アザリヤの第三十九年に、ガデの子メナヘムはイスラエルの王となり、サマリヤで十年の間、世を治めた。
9941 12 15 18 彼は主の目の前に悪を行い、イスラエルに罪を犯させたネバテの子ヤラベアムの罪を一生の間、離れなかった。
9942 12 15 19 時にアッスリヤの王プルが国に攻めてきたので、メナヘムは銀一千タラントをプルに与えた。これは彼がプルの助けを得て、国を自分の手のうちに強くするためであった。
9943 12 15 20 すなわちメナヘムはその銀をイスラエルのすべての富める者に課し、その人々におのおの銀五十シケルを出させてアッスリヤの王に与えた。こうしてアッスリヤの王は国にとどまらないで帰っていった。
9944 12 15 21 メナヘムのその他の事績と彼がしたすべての事は、イスラエルの王の歴代志の書にしるされているではないか。
9945 12 15 22 メナヘムは先祖たちと共に眠り、その子ペカヒヤが代って王となった。
9946 12 15 23 メナヘムの子ペカヒヤはユダの王アザリヤの第五十年に、サマリヤでイスラエルの王となり、二年の間、世を治めた。
9947 12 15 24 彼は主の目の前に悪を行い、イスラエルに罪を犯せたネバテの子ヤラベアムの罪を離れなかった。
9948 12 15 25 時に彼の副官であったレマリヤのペカが、ギレアデびと五十人と共に徒党を結んで彼に敵し、サマリヤの、王の宮殿の天守で彼を撃ち殺した。すなわちペカは彼を殺し、彼に代って王となった。
9949 12 15 26 ペカヒヤのその他の事績と彼がしたすべての事は、イスラエルの王の歴代志の書にしるされている。
9950 12 15 27 レマリヤの子ペカはユダの王アザリヤの第五十二年に、サマリヤでイスラエルの王となり、二十年の間、世を治めた。
9951 12 15 28 彼は主の目の前に悪をおこない、イスラエルに罪を犯させたネバテの子ヤラベアムの罪を離れなかった。
9952 12 15 29 イスラエルの王ペカの世に、アッスリヤの王テグラテピレセルが来て、イヨン、アベル・ベテマアカ、ヤノア、ケデシ、ハゾル、ギレアデ、ガリラヤ、ナフタリの全地を取り、人々をアッスリヤへ捕え移した。
9953 12 15 30 時にエラの子ホセアは徒党を結んで、レマリヤの子ペカに敵し、彼を撃ち殺し、彼に代って王となった。これはウジヤの子ヨタムの第二十年であった。
9954 12 15 31 ペカのその他の事績と彼がしたすべての事は、イスラエルの王の歴代志の書にしるされている。
9955 12 15 32 レマリヤの子イスラエルの王ペカの第二年に、ユダの王ウジヤの子ヨタムが王となった。
9956 12 15 33 彼は王となった時二十五歳であったが、エルサレムで十六年の間、世を治めた。母はザドクの娘で、名をエルシャといった。
9957 12 15 34 彼は主の目にかなう事を行い、すべて父ウジヤの行ったようにおこなった。
9958 12 15 35 ただし高き所は除かなかったので、民はなおその高き所で犠牲をささげ、香をたいた。彼は主の宮の上の門を建てた。
9959 12 15 36 ヨタムのその他の事績と彼がしたすべての事は、ユダの王の歴代志の書にしるされているではないか。
9960 12 15 37 そのころ、主はスリヤの王レヂンとレマリヤの子ペカをユダに攻めこさせられた。
9961 12 15 38 ヨタムは先祖たちと共に眠って、その先祖ダビデの町に先祖たちと共に葬られ、その子アハズが代って王となった。
9962 12 16 1 レマリヤの子ペカの第十七年にユダの王ヨタムの子アハズが王となった。
9963 12 16 2 アハズは王となった時二十歳で、エルサレムで十六年の間、世を治めたが、その神、主の目にかなう事を先祖ダビデのようには行わなかった。
9964 12 16 3 彼はイスラエルの王たちの道に歩み、また主がイスラエルの人々の前から追い払われた異邦人の憎むべきおこないにしたがって、自分の子を火に焼いてささげ物とした。
9965 12 16 4 かつ彼は高き所、また丘の上、すべての青木の下で犠牲をささげ、香をたいた。
9966 12 16 5 そのころ、スリヤの王レヂンおよびレマリヤの子であるイスラエルの王ペカがエルサレムに攻め上って、アハズを囲んだが、勝つことができなかった。
9967 12 16 6 その時エドムの王はエラテを回復してエドムの所領とし、ユダの人々をエラテから追い出した。そしてエドムびとがエラテにきて、そこに住み、今日に至っている。
9968 12 16 7 そこでアハズは使者をアッスリヤの王テグラテピレセルにつかわして言わせた、「わたしはあなたのしもべ、あなたの子です。スリヤの王とイスラエルの王がわたしを攻め囲んでいます。どうぞ上ってきて、彼らの手からわたしを救い出してください」。
9969 12 16 8 そしてアハズは主の宮と王の家の倉にある金と銀をとり、これを贈り物としてアッスリヤの王におくったので、
9970 12 16 9 アッスリヤの王は彼の願いを聞きいれた。すなわちアッスリヤの王はダマスコに攻め上って、これを取り、その民をキルに捕え移し、またレヂンを殺した。
9971 12 16 10 アハズ王はアッスリヤの王テグラテピレセルに会おうとダマスコへ行ったが、ダマスコにある祭壇を見たので、アハズ王はその祭壇の作りにしたがって、その詳しい図面と、ひな型とを作って、祭司ウリヤに送った。
9972 12 16 11 そこで祭司ウリヤはアハズ王がダマスコから送ったものにしたがって祭壇を建てた。すなわち祭司ウリヤはアハズ王がダマスコから帰るまでにそのとおりに作った。
9973 12 16 12 王はダマスコから帰ってきて、その祭壇を見、祭壇に近づいてその上に登り、
9974 12 16 13 燔祭と素祭を焼き、灌祭を注ぎ、酬恩祭の血を祭壇にそそぎかけた。
9975 12 16 14 彼はまた主の前にあった青銅の祭壇を宮の前から移した。すなわちそれを新しい祭壇と主の宮の間から移して、新しい祭壇の北の方にすえた。
9976 12 16 15 そしてアハズ王は祭司ウリヤに命じて言った、「朝の燔祭と夕の素祭および王の燔祭とその素祭、ならびに国中の民の燔祭とその素祭および灌祭は、この大きな祭壇の上で焼きなさい。また燔祭の血と犠牲の血はすべてこれにそそぎかけなさい。あの青銅の祭壇をわたしは伺いを立てるのに用いよう」。
9977 12 16 16 祭司ウリヤはアハズ王がすべて命じたとおりにおこなった。
9978 12 16 17 またアハズ王は台の鏡板を切り取って、洗盤をその上から移し、また海をその下にある青銅の牛の上からおろして、石の座の上にすえ、
9979 12 16 18 また宮のうちに造られていた安息日用のおおいのある道、および王の用いる外の入口をアッスリヤの王のために主の宮から除いた。
9980 12 16 19 アハズのその他の事績は、ユダの王の歴代志の書にしるされているではないか。
9981 12 16 20 アハズは先祖たちと共に眠って、ダビデの町にその先祖たちと共に葬られ、その子ヒゼキヤが代って王となった。
9982 12 17 1 ユダの王アハズの第十二年にエラの子ホセアが王となり、サマリヤで九年の間、イスラエルを治めた。
9983 12 17 2 彼は主の目の前に悪を行ったが、彼以前のイスラエルの王たちのようではなかった。
9984 12 17 3 アッスリヤの王シャルマネセルが攻め上ったので、ホセアは彼に隷属して、みつぎを納めたが、
9985 12 17 4 アッスリヤの王はホセアがついに自分にそむいたのを知った。それはホセアが使者をエジプトの王ソにつかわし、また年々納めていたみつぎを、アッスリヤの王に納めなかったからである。そこでアッスリヤの王は彼を監禁し、獄屋につないだ。
9986 12 17 5 そしてアッスリヤの王は攻め上って国中を侵し、サマリヤに上ってきて三年の間、これを攻め囲んだ。
9987 12 17 6 ホセアの第九年になって、アッスリヤの王はついにサマリヤを取り、イスラエルの人々をアッスリヤに捕えていって、ハラと、ゴザンの川ハボルのほとりと、メデアの町々においた。
9988 12 17 7 この事が起ったのは、イスラエルの人々が、自分たちをエジプトの地から導き上って、エジプトの王パロの手をのがれさせられたその神、主にむかって罪を犯し、他の神々を敬い、
9989 12 17 8 主がイスラエルの人々の前から追い払われた異邦人のならわしに従って歩み、またイスラエルの王たちが定めたならわしに従って歩んだからである。
9990 12 17 9 イスラエルの人々はその神、主にむかって正らぬ事をひそかに行い、見張台から堅固な町に至るまで、すべての町々に高き所を建て、
9991 12 17 10 またすべての高い丘の上、すべての青木の下に石の柱とアシラ像を立て、
9992 12 17 11 主が彼らの前から捕え移された異邦人がしたように、すべての高き所で香をたき、悪事を行って、主を怒らせた。
9993 12 17 12 また主が彼らに「あなたがたはこの事をしてはならない」と言われたのに偶像に仕えた。
9994 12 17 13 主はすべての預言者、すべての先見者によってイスラエルとユダを戒め、「翻って、あなたがたの悪い道を離れ、わたしがあなたがたの先祖たちに命じ、またわたしのしもべである預言者たちによってあなたがたに伝えたすべての律法のとおりに、わたしの戒めと定めとを守れ」と仰せられたが、
9995 12 17 14 彼らは聞きいれず、彼らの先祖たちがその神、主を信じないで、強情であったように、彼らは強情であった。
9996 12 17 15 そして彼らは主の定めを捨て、主が彼らの先祖たちと結ばれた契約を破り、また彼らに与えられた警告を軽んじ、かつむなしい偶像に従ってむなしくなり、また周囲の異邦人に従った。これは主が、彼らのようにおこなってはならないと彼らに命じられたものである。
9997 12 17 16 彼らはその神、主のすべての戒めを捨て、自分のために二つの子牛の像を鋳て造り、またアシラ像を造り、天の万象を拝み、かつバアルに仕え、
9998 12 17 17 またそのむすこ、娘を火に焼いてささげ物とし、占いおよびまじないをなし、主の目の前に悪をおこなうことに身をゆだねて、主を怒らせた。
9999 12 17 18 それゆえ、主は大いにイスラエルを怒り、彼らをみ前から除かれたので、ユダの部族のほか残った者はなかった。
10000 12 17 19 ところがユダもまたその神、主の戒めを守らず、イスラエルが定めたならわしに歩んだので、
10001 12 17 20 主はイスラエルの子孫をことごとく捨て、彼らを苦しめ、彼らを略奪者の手にわたして、ついに彼らをみ前から打ちすてられた。
10002 12 17 21 主はイスラエルをダビデの家から裂き離されたので、イスラエルはネバテの子ヤラベアムを王としたが、ヤラベアムはイスラエルに、主に従うことをやめさせ、大きな罪を犯させた。
10003 12 17 22 イスラエルの人々がヤラベアムのおこなったすべての罪をおこない続けて、それを離れなかったので、
10004 12 17 23 ついに主はそのしもべである預言者たちによって言われたように、イスラエルをみ前から除き去られた。こうしてイスラエルは自分の国からアッスリヤに移されて今日に至っている。
10005 12 17 24 かくてアッスリヤの王はバビロン、クタ、アワ、ハマテおよびセパルワイムから人々をつれてきて、これをイスラエルの人々の代りにサマリヤの町々におらせたので、その人々はサマリヤを領有して、その町々に住んだ。
10006 12 17 25 彼らがそこに住み始めた時、主を敬うことをしなかったので、主は彼らのうちにししを送り、ししは彼らのうちの数人を殺した。
10007 12 17 26 そこで人々はアッスリヤの王に告げて言った、「あなたが移してサマリヤの町々におらせられたあの国々の民は、その地の神のおきてを知らないゆえに、その神は彼らのうちにししを送り、ししは彼らを殺した。これは彼らが、その地の神のおきてを知らないためです」。
10008 12 17 27 アッスリヤの王は命じて言った、「あなたがたがあそこから移した祭司のひとりをあそこへ連れて行きなさい。彼をあそこへやって住まわせ、その国の神のおきてをその人々に教えさせなさい」。
10009 12 17 28 そこでサマリヤから移された祭司のひとりが来てベテルに住み、どのように主を敬うべきかを彼らに教えた。
10010 12 17 29 しかしその民はおのおの自分の神々を造って、それをサマリヤびとが造った高き所の家に安置した。民は皆住んでいる町々でそのようにおこなった。
10011 12 17 30 すなわちバビロンの人々はスコテ・ベノテを造り、クタの人々はネルガルを造り、ハマテの人々はアシマを造り、
10012 12 17 31 アワの人々はニブハズとタルタクを造り、セパルワイムびとはその子を火に焼いて、セパルワイムの神アデランメレクおよびアナンメレクにささげた。
10013 12 17 32 彼はまた主を敬い、自分たちのうちから一般の民を立てて高き所の祭司としたので、その人々は高き所の家で勤めをした。
10014 12 17 33 このように彼らは主を敬ったが、また彼らが出てきた国々のならわしにしたがって、自分たちの神々にも仕えた。
10015 12 17 34 今日に至るまで彼らは先のならわしにしたがっておこなっている。
10016 12 17 35 主はかつて彼らと契約を結び、彼らに命じて言われた、「あなたがたは他の神々を敬ってはならない。また彼らを拝み、彼らに仕え、彼らに犠牲をささげてはならない。
10017 12 17 36 ただ大きな力と伸べた腕とをもって、あなたがたをエジプトの地から導き上った主をのみ敬い、これを拝み、これに犠牲をささげなければならない。
10018 12 17 37 またあなたがたのために書きしるされた定めと、おきてと、律法と、戒めとを、慎んで常に守らなければならない。他の神々を敬ってはならない。
10019 12 17 38 わたしがあなたがたと結んだ契約を忘れてはならない。また他の神々を敬ってはならない。
10020 12 17 39 ただあなたがたの神、主を敬わなければならない。主はあなたがたをそのすべての敵の手から救い出されるであろう」。
10021 12 17 40 しかし彼らは聞きいれず、かえって先のならわしにしたがっておこなった。
10022 12 17 41 このように、これらの民は主を敬い、またその刻んだ像にも仕えたが、その子たちも、孫たちも同様であって、彼らはその先祖がおこなったように今日までおこなっている。
10023 12 18 1 イスラエルの王エラの子ホセアの第三年にユダの王アハズの子ヒゼキヤが王となった。
10024 12 18 2 彼は王となった時二十五歳で、エルサレムで二十九年の間、世を治めた。その母はゼカリヤの娘で、名をアビといった。
10025 12 18 3 ヒゼキヤはすべて先祖ダビデがおこなったように主の目にかなう事を行い、
10026 12 18 4 高き所を除き、石柱をこわし、アシラ像を切り倒し、モーセの造った青銅のへびを打ち砕いた。イスラエルの人々はこの時までそのへびに向かって香をたいていたからである。人々はこれをネホシタンと呼んだ。
10027 12 18 5 ヒゼキヤはイスラエルの神、主に信頼した。そのために彼のあとにも彼の先にも、ユダのすべての王のうちに彼に及ぶ者はなかった。
10028 12 18 6 すなわち彼は固く主に従って離れることなく、主がモーセに命じられた命令を守った。
10029 12 18 7 主が彼と共におられたので、すべて彼が出て戦うところで功をあらわした。彼はアッスリヤの王にそむいて、彼に仕えなかった。
10030 12 18 8 彼はペリシテびとを撃ち敗って、ガザとその領域にまで達し、見張台から堅固な町にまで及んだ。
10031 12 18 9 ヒゼキヤ王の第四年すなわちイスラエルの王エラの子ホセアの第七年に、アッスリヤの王シャルマネセルはサマリヤに攻め上って、これを囲んだが、
10032 12 18 10 三年の後ついにこれを取った。サマリヤが取られたのはヒゼキヤの第六年で、それはイスラエルの王ホセアの第九年であった。
10033 12 18 11 アッスリヤの王はイスラエルの人々をアッスリヤに捕えていって、ハラと、ゴザンの川ハボルのほとりと、メデアの町々に置いた。
10034 12 18 12 これは彼らがその神、主の言葉にしたがわず、その契約を破り、主のしもべモーセの命じたすべての事に耳を傾けず、また行わなかったからである。
10035 12 18 13 ヒゼキヤ王の第十四年にアッスリヤの王セナケリブが攻め上ってユダのすべての堅固な町々を取ったので、
10036 12 18 14 ユダの王ヒゼキヤは人をラキシにつかわしてアッスリヤの王に言った、「わたしは罪を犯しました。どうぞ引き上げてください。わたしに課せられることはなんでもいたします」。アッスリヤの王は銀三百タラントと金三十タラントをユダの王ヒゼキヤに課した。
10037 12 18 15 ヒゼキヤは主の宮と王の家の倉とにある銀をことごとく彼に与えた。
10038 12 18 16 この時ユダの王ヒゼキヤはまた主の神殿の戸および柱から自分が着せた金をはぎ取って、アッスリヤの王に与えた。
10039 12 18 17 アッスリヤの王はまたタルタン、ラブサリスおよびラブシャケを、ラキシから大軍を率いてエルサレムにいるヒゼキヤ王のもとにつかわした。彼らは上ってエルサレムに来た。彼らはエルサレムに着くと、布さらし場に行く大路に沿っている上の池の水道のかたわらへ行って、そこに立った。
10040 12 18 18 そして彼らが王を呼んだので、ヒルキヤの子である宮内卿エリアキム、書記官セブナ、およびアサフの子である史官ヨアが彼らのところに出てきた。
10041 12 18 19 ラブシャケは彼らに言った、「ヒゼキヤに言いなさい、『大王、アッスリヤの王はこう仰せられる。あなたが頼みとする者は何か。
10042 12 18 20 口先だけの言葉が戦争をする計略と力だと考えるのか。あなたは今だれにたよって、わたしにそむいたのか。
10043 12 18 21 今あなたは、あの折れかけている葦のつえ、エジプトを頼みとしているが、それは人がよりかかる時、その人の手を刺し通すであろう。エジプトの王パロはすべて寄り頼む者にそのようにする。
10044 12 18 22 しかしあなたがもし「われわれは、われわれの神、主を頼む」とわたしに言うのであれば、その神はヒゼキヤがユダとエルサレムに告げて、「あなたがたはエルサレムで、この祭壇の前に礼拝しなければならない」と言って、その高き所と祭壇とを除いた者ではないか。
10045 12 18 23 さあ、わたしの主君アッスリヤの王とかけをせよ。もしあなたの方に乗る人があるならば、わたしは馬二千頭を与えよう。
10046 12 18 24 あなたはエジプトを頼み、戦車と騎兵を請い求めているが、わたしの主君の家来のうちの最も小さい一隊長でさえ、どうして撃退することができようか。
10047 12 18 25 わたしがこの所を滅ぼすために上ってきたのは、主の許しなしにしたことであろうか。主がわたしにこの地に攻め上ってこれを滅ぼせと言われたのだ』」。
10048 12 18 26 その時ヒルキヤの子エリアキムおよびセブナとヨアはラブシャケに言った、「どうぞ、アラム語でしもべどもに話してください。わたしたちは、それがわかるからです。城壁の上にいる民の聞いているところで、わたしたちにユダヤの言葉で話さないでください」。
10049 12 18 27 しかしラブシャケは彼らに言った、「わたしの主君は、あなたの主君とあなたにだけでなく、城壁の上に座している人々にも、この言葉を告げるためにわたしをつかわしたのではないか。彼らも、あなたがたと共に自分の糞尿を食い飲みするに至るであろう」。
10050 12 18 28 そしてラブシャケは立ちあがり、ユダヤの言葉で大声に呼ばわって言った。「大王、アッスリヤの王の言葉を聞け。
10051 12 18 29 王はこう仰せられる、『あなたがたはヒゼキヤに欺かれてはならない。彼はあなたがたをわたしの手から救いだすことはできない。
10052 12 18 30 ヒゼキヤが「主は必ずわれわれを救い出される。この町はアッスリヤ王の手に陥ることはない」と言っても、あなたがたは主を頼みとしてはならない』。
10053 12 18 31 あなたがたはヒゼキヤの言葉を聞いてはならない。アッスリヤの王はこう仰せられる、『あなたがたはわたしと和解して、わたしに降服せよ。そうすればあなたがたはおのおの自分のぶどうの実を食べ、おのおの自分のいちじくの実を食べ、おのおの自分の井戸の水を飲むことができるであろう。
10054 12 18 32 やがてわたしが来て、あなたがたを一つの国へ連れて行く。それはあなたがたの国のように穀物とぶどう酒のある地、パンとぶどう畑のある地、オリブの木と蜜のある地である。あなたがたは生きながらえることができ、死ぬことはない。ヒゼキヤが「主はわれわれを救われる」と言って、あなたがたを惑わしても彼に聞いてはならない。
10055 12 18 33 諸国民の神々のうち、どの神がその国をアッスリヤの王の手から救ったか。
10056 12 18 34 ハマテやアルパデの神々はどこにいるのか。セパルワイム、ヘナおよびイワの神々はどこにいるのか。彼らはサマリヤをわたしの手から救い出したか。
10057 12 18 35 国々のすべての神々のうち、その国をわたしの手から救い出した者があったか。主がどうしてエルサレムをわたしの手から救い出すことができよう』」。
10058 12 18 36 しかし民は黙して、ひと言も彼に答えなかった。王が命じて「彼に答えてはならない」と言っておいたからである。
10059 12 18 37 こうしてヒルキヤの子である宮内卿エリアキム、書記官セブナ、およびアサフの子である史官ヨアは衣を裂き、ヒゼキヤのもとに来て、ラブシャケの言葉を彼に告げた。
10060 12 19 1 ヒゼキヤ王はこれを聞いて、衣を裂き、荒布を身にまとって主に宮に入り、
10061 12 19 2 宮内卿エリアキムと書記官セブナおよび祭司のうちの年長者たちに荒布をまとわせて、アモツの子預言者イザヤのもとにつかわした。
10062 12 19 3 彼らはイザヤに言った、「ヒゼキヤはこう申されます、『きょうは悩みと、懲しめと、はずかしめの日です。胎児がまさに生れようとして、これを産み出す力がないのです。
10063 12 19 4 あなたの神、主はラブシャケがその主君アッスリヤの王につかわされて、生ける神をそしったもろもろの言葉を聞かれたかもしれません。そしてあなたの神、主はその聞いた言葉をとがめられるかもしれません。それゆえ、この残っている者のために祈をささげてください』」。
10064 12 19 5 ヒゼキヤ王の家来たちがイザヤのもとに来たとき、
10065 12 19 6 イザヤは彼らに言った、「あなたがたの主君にこう言いなさい、『主はこう仰せられる、アッスリヤの王の家来たちが、わたしをそしった言葉を聞いて恐れるには及ばない。
10066 12 19 7 見よ、わたしは一つの霊を彼らのうちに送って、一つのうわさを聞かせ、彼を自分の国へ帰らせて、自分の国でつるぎに倒れさせるであろう』」。
10067 12 19 8 ラブシャケは引き返して、アッスリヤの王がリブナを攻めているところへ行った。彼が王のラキシを去ったことを聞いたからである。
10068 12 19 9 この時アッスリヤの王はエチオピヤの王テルハカについて、「彼はあなたと戦うために出てきた」と人々がいうのを聞いたので、再び使者をヒゼキヤにつかわして言った、
10069 12 19 10 「ユダの王ヒゼキヤにこう言いなさい、『あなたは、エルサレムはアッスリヤの王の手に陥ることはない、と言うあなたの信頼する神に欺かれてはならない。
10070 12 19 11 あなたはアッスリヤの王たちがもろもろの国々にした事、彼らを全く滅ぼした事を聞いている。どうしてあなたが救われることができようか。
10071 12 19 12 わたしの父たちはゴザン、ハラン、レゼフ、およびテラサルにいたエデンの人々を滅ぼしたが、その国々の神々は彼らを救ったか。
10072 12 19 13 ハマテの王、アルパデの王、セパルワイムの町の王、ヘナの王およびイワの王はどこにいるのか』」。
10073 12 19 14 ヒゼキヤは使者の手から手紙を受け取ってそれを読み、主の宮にのぼっていって、主の前にそれをひろげ、
10074 12 19 15 そしてヒゼキヤは主の前に祈って言った、「ケルビムの上に座しておられるイスラエルの神、主よ、地のすべての国のうちで、ただあなただけが神でいらせられます。あなたは天と地を造られました。
10075 12 19 16 主よ、耳を傾けて聞いてください。主よ、目を開いてごらんください。セナケリブが生ける神をそしるために書き送った言葉をお聞きください。
10076 12 19 17 主よ、まことにアッスリヤの王たちはもろもろの民とその国々を滅ぼし、
10077 12 19 18 またその神々を火に投げ入れました。それらは神ではなく、人の手の作ったもので、木や石だから滅ぼされたのです。
10078 12 19 19 われわれの神、主よ、どうぞ、今われわれを彼の手から救い出してください。そうすれば地の国々は皆、主であるあなただけが神でいらせられることを知るようになるでしょう」。
10079 12 19 20 その時アモツの子イザヤは人をつかわしてヒゼキヤに言った、「イスラエルの神、主はこう仰せられる、『アッスリヤの王セナケリブについてあなたがわたしに祈ったことは聞いた』。
10080 12 19 21 主が彼について語られた言葉はこうである、『処女であるシオンの娘はあなたを侮り、あなたをあざける。エルサレムの娘はあなたのうしろで頭を振る。
10081 12 19 22 あなたはだれをそしり、だれをののしったのか。あなたはだれにむかって声をあげ、目を高くあげたのか。イスラエルの聖者にむかってしたのだ。
10082 12 19 23 あなたは使者をもって主をそしって言った、「わたしは多くの戦車をひきいて山々の頂にのぼり、レバノンの奥に行き、たけの高い香柏と最も良いいとすぎを切り倒し、またその果の野営地に行き、その密林にはいった。
10083 12 19 24 わたしは井戸を掘って外国の水を飲んだ。わたしは足の裏で、エジプトのすべての川を踏みからした」。
10084 12 19 25 あなたは聞かなかったか、昔わたしがこれを定めたことを。堅固な町々をあなたが荒塚とすることも、いにしえの日からわたしが計画して今これをおこなうのだ。
10085 12 19 26 そのうちに住む民は力弱くおののき、恥をいだいて、野の草のように、青菜のようになり、育たないで枯れる屋根の草のようになった。
10086 12 19 27 わたしはあなたのすわること、出入りすること、わたしにむかって怒り叫んだことをも知っている。
10087 12 19 28 あなたがわたしにむかって怒り叫んだことと、あなたの高慢がわたしの耳にはいったため、わたしはあなたの鼻に輪をつけ、あなたの口にくつわをはめて、あなたをもときた道へ引きもどすであろう』。
10088 12 19 29 『あなたに与えるしるしはこれである。すなわち、ことしは落ち穂からはえたものを食べ、二年目にはまたその落ち穂からはえたものを食べ、三年目には種をまき、刈り入れ、ぶどう畑を作ってその実を食べるであろう。
10089 12 19 30 ユダの家ののがれて残る者は再び下に根を張り、上に実を結ぶであろう。
10090 12 19 31 すなわち残る者がエルサレムから出てき、のがれた者がシオンの山から出て来るであろう。主の熱心がこれをされるであろう』。
10091 12 19 32 それゆえ、主はアッスリヤの王について、こう仰せられる、『彼はこの町にこない、またここに矢を放たない、盾をもってその前に来ることなく、また塁を築いてこれを攻めることはない。
10092 12 19 33 彼は来た道を帰って、この町に、はいることはない。主がこれを言う。
10093 12 19 34 わたしは自分のため、またわたしのしもべダビデのためにこの町を守って、これを救うであろう』」。
10094 12 19 35 その夜、主の使が出て、アッスリヤの陣営で十八万五千人を撃ち殺した。人々が朝早く起きて見ると、彼らは皆、死体となっていた。
10095 12 19 36 アッスリヤの王セナケリブは立ち去り、帰って行ってニネベにいたが、
10096 12 19 37 その神ニスロクの神殿で礼拝していた時、その子アデランメレクとシャレゼルが、つるぎをもって彼を殺し、ともにアララテの地へ逃げて行った。そこでその子エサルハドンが代って王となった。
10097 12 20 1 そのころ、ヒゼキヤは病気になって死にかかっていた。アモツの子預言者イザヤは彼のところにきて言った、「主はこう仰せられます、『家の人に遺言をなさい。あなたは死にます。生きながらえることはできません』」。
10098 12 20 2 そこでヒゼキヤは顔を壁に向けて主に祈って言った、
10099 12 20 3 「ああ主よ、わたしが真実を真心をもってあなたの前に歩み、あなたの目にかなうことをおこなったのをどうぞ思い起してください」。そしてヒゼキヤは激しく泣いた。
10100 12 20 4 イザヤがまだ中庭を出ないうちに主の言葉が彼に臨んだ、
10101 12 20 5 「引き返して、わたしの民の君ヒゼキヤに言いなさい、『あなたの父ダビデの神、主はこう仰せられる、わたしはあなたの祈を聞き、あなたの涙を見た。見よ、わたしはあなたをいやす。三日目にはあなたは主の宮に上るであろう。
10102 12 20 6 かつ、わたしはあなたのよわいを十五年増す。わたしはあなたと、この町とをアッスリヤの王の手から救い、わたしの名のため、またわたしのしもべダビデのためにこの町を守るであろう』」。
10103 12 20 7 そしてイザヤは言った、「干しいちじくのひとかたまりを持ってきて、それを腫物につけさせなさい。そうすれば直るでしょう」。
10104 12 20 8 ヒゼキヤはイザヤに言った、「主がわたしをいやされる事と、三日目にわたしが主の家に上ることについて、どんなしるしがありましょうか」。
10105 12 20 9 イザヤは言った、「主が約束されたことを行われることについては、主からこのしるしを得られるでしょう。すなわち日影が十度進むか、あるいは十度退くかです」。
10106 12 20 10 ヒゼキヤは答えた、「日影が十度進むことはたやすい事です。むしろ日影を十度退かせてください」。
10107 12 20 11 そこで預言者イザヤが主に呼ばわると、アハズの日時計の上に進んだ日影を、十度退かせられた。
10108 12 20 12 そのころ、バラダンの子であるバビロンの王メロダクバラダンは、手紙と贈り物を持たせて使節をヒゼキヤにつかわした。これはヒゼキヤが病んでいることを聞いたからである。
10109 12 20 13 ヒゼキヤは彼らを喜び迎えて、宝物の蔵、金銀、香料、貴重な油および武器倉、ならびにその倉庫にあるすべての物を彼らに見せた。家にある物も、国にある物も、ヒゼキヤが彼らに見せない物は一つもなかった。
10110 12 20 14 その時、預言者イザヤはヒゼキヤ王のもとにきて言った、「あの人々は何を言いましたか。どこからきたのですか」。ヒゼキヤは言った、「彼らは遠い国から、バビロンからきたのです」。
10111 12 20 15 イザヤは言った、「彼らはあなたの家で何を見ましたか」。ヒゼキヤは答えて言った、「わたしの家にある物を皆見ました。わたしの倉庫のうちには、わたしが彼らに見せない物は一つもありません」。
10112 12 20 16 そこでイザヤはヒゼキヤに言った、「主の言葉を聞きなさい、
10113 12 20 17 『主は言われる、見よ、すべてあなたの家にある物、および、あなたの先祖たちが今日までに積みたくわえた物の、バビロンに運び去られる日が来る。何も残るものはないであろう。
10114 12 20 18 また、あなたの身から出るあなたの子たちも連れ去られ、バビロンの王の宮殿で宦官となるであろう』」。
10115 12 20 19 ヒゼキヤはイザヤに言った、「あなたが言われた主の言葉は結構です」。彼は「せめて自分が世にあるあいだ、平和と安全があれば良いことではなかろうか」と思ったからである。
10116 12 20 20 ヒゼキヤのその他の事績とその武勇および、彼が貯水池と水道を作って、町に水を引いた事は、ユダの王の歴代志の書にしるされているではないか。
10117 12 20 21 ヒゼキヤはその先祖たちと共に眠って、その子マナセが代って王となった。
10118 12 21 1 マナセは十二歳で王となり、五十五年の間、エルサレムで世を治めた。母の名はヘフジバといった。
10119 12 21 2 マナセは主がイスラエルの人々の前から追い払われた国々の民の憎むべきおこないにならって、主の目の前に悪をおこなった。
10120 12 21 3 彼は父ヒゼキヤがこわした高き所を建て直し、またイスラエルの王アハブがしたようにバアルのために祭壇を築き、アシラ像を造り、かつ天の万象を拝んで、これに仕えた。
10121 12 21 4 また主の宮のうちに数個の祭壇を築いた。これは主が「わたしの名をエルサレムに置こう」と言われたその宮である。
10122 12 21 5 彼はまた主の宮の二つの庭に天の万象のために祭壇を築いた。
10123 12 21 6 またその子を火に焼いてささげ物とし、占いをし、魔術を行い、口寄せと魔法使を用い、主の目の前に多くの悪を行って、主の怒りを引き起した。
10124 12 21 7 彼はまたアシラの彫像を作って主の宮に置いた。主はこの宮についてダビデとその子ソロモンに言われたことがある、「わたしはこの宮と、わたしがイスラエルのすべての部族のうちから選んだエルサレムとに、わたしの名を永遠に置く。
10125 12 21 8 もし、彼らがわたしが命じたすべての事、およびわたしのしもべモーセが命じたすべての律法を守り行うならば、イスラエルの足を、わたしが彼らの先祖たちに与えた地から、重ねて迷い出させないであろう」。
10126 12 21 9 しかし彼らは聞きいれなかった。マナセが人々をいざなって悪を行ったことは、主がイスラエルの人々の前に滅ぼされた国々の民よりもはなはだしかった。
10127 12 21 10 そこで主はそのしもべである預言者たちによって言われた、
10128 12 21 11 「ユダの王マナセがこれらの憎むべき事を行い、彼の先にあったアモリびとの行ったすべての事よりも悪い事を行い、またその偶像をもってユダに罪を犯させたので、
10129 12 21 12 イスラエルの神、主はこう仰せられる、見よ、わたしはエルサレムとユダに災をくだそうとしている。これを聞く者は、その耳が二つながら鳴るであろう。
10130 12 21 13 わたしはサマリヤをはかった測りなわと、アハブの家に用いた下げ振りをエルサレムにほどこし、人が皿をぬぐい、これをぬぐって伏せるように、エルサレムをぬぐい去る。
10131 12 21 14 わたしは、わたしの嗣業の民の残りを捨て、彼らを敵の手に渡す。彼らはもろもろの敵のえじきとなり、略奪にあうであろう。
10132 12 21 15 これは彼らの先祖たちがエジプトを出た日から今日に至るまで、彼らがわたしの目の前に悪を行って、わたしを怒らせたためである」。
10133 12 21 16 マナセはまた主の目の前に悪を行って、ユダに罪を犯させたその罪のほかに、罪なき者の血を多く流して、エルサレムのこの果から、かの果にまで満たした。
10134 12 21 17 マナセのその他の事績と、彼がおこなったすべての事およびその犯した罪は、ユダの王の歴代志の書にしるされているではないか。
10135 12 21 18 マナセは先祖たちと共に眠って、その家の園すなわちウザの園に葬られ、その子アモンが代って王となった。
10136 12 21 19 アモンは王となった時二十二歳であって、エルサレムで二年の間、世を治めた。母はヨテバのハルツの娘で、名をメシュレメテといった。
10137 12 21 20 アモンはその父マナセのおこなったように、主の目の前に悪を行った。
10138 12 21 21 すなわち彼はすべてその父の歩んだ道に歩み、父の仕えた偶像に仕えて、これを拝み、
10139 12 21 22 先祖たちの神、主を捨てて、主の道に歩まなかった。
10140 12 21 23 アモンの家来たちはついに彼に敵して徒党を結び、王をその家で殺したが、
10141 12 21 24 国の民は、アモン王に敵して徒党を結んだ者をことごとく撃ち殺した。そして国の民はアモンの子ヨシヤを王としてアモンに代らせた。
10142 12 21 25 アモンのその他の事績は、ユダの王の歴代志の書にしるされているではないか。
10143 12 21 26 アモンはウザの園にある墓に葬られ、その子ヨシヤが代って王となった。
10144 12 22 1 ヨシヤは八歳で王となり、エルサレムで三十一年の間、世を治めた。母はボヅカテのアダヤの娘で、名をエデダといった。
10145 12 22 2 ヨシヤは主の目にかなう事を行い、先祖ダビデの道に歩んで右にも左にも曲らなかった。
10146 12 22 3 ヨシヤ王の第十八年に王はメシュラムの子アザリヤの子である書記官シャパンを主の宮につかわして言った、
10147 12 22 4 「大祭司ヒルキヤのもとへのぼって行って、主に宮にはいってきた銀、すなわち門を守る者が民から集めたものの総額を彼に数えさせ、
10148 12 22 5 それを工事をつかさどる主の宮の監督者の手に渡させ、彼らから主の宮で工事をする者にそれを渡して、宮の破れを繕わせなさい。
10149 12 22 6 すなわち木工と建築師と石工にそれを渡し、また宮を繕う材木と切り石を買わせなさい。
10150 12 22 7 ただし彼らは正直に事を行うから、彼らに渡した銀については彼らと計算するに及ばない」。
10151 12 22 8 その時大祭司ヒルキヤは書記官シャパンに言った、「わたしは主の宮で律法の書を見つけました」。そしてヒルキヤがその書物をシャパンに渡したので、彼はそれを読んだ。
10152 12 22 9 書記官シャパンは王のもとへ行き、王に報告して言った、「しもべどもは宮にあった銀を皆出して、それを工事をつかさどる主の宮の監督者の手に渡しました」。
10153 12 22 10 書記官シャパンはまた王に告げて「祭司ヒルキヤはわたしに一つの書物を渡しました」と言い、それを王の前で読んだ。
10154 12 22 11 王はその律法の書の言葉を聞くと、その衣を裂いた。
10155 12 22 12 そして王は祭司ヒルキヤと、シャパンの子アヒカムと、ミカヤの子アクボルと、書記官シャパンと、王の大臣アサヤとに命じて言った、
10156 12 22 13 「あなたがたは行って、この見つかった書物の言葉について、わたしのため、民のため、またユダ全国のために主に尋ねなさい。われわれの先祖たちがこの書物の言葉に聞き従わず、すべてわれわれについてしるされている事を行わなかったために、主はわれわれにむかって、大いなる怒りを発しておられるからです」。
10157 12 22 14 そこで祭司ヒルキヤ、アヒカム、アクボル、シャパンおよびアサヤはシャルムの妻である女預言者ホルダのもとへ行った。シャルムはハルハスの子であるテクワの子で、衣装べやを守る者であった。その時ホルダはエルサレムの下町に住んでいた。彼らがホルダに告げたので、
10158 12 22 15 ホルダは彼らに言った、「イスラエルの神、主はこう仰せられます、『あなたがたをわたしにつかわした人に言いなさい。
10159 12 22 16 主はこう言われます、見よ、わたしはユダの王が読んだあの書物のすべての言葉にしたがって、災をこの所と、ここに住んでいる民に下そうとしている。
10160 12 22 17 彼らがわたしを捨てて他の神々に香をたき、自分たちの手で作ったもろもろの物をもって、わたしを怒らせたからである。それゆえ、わたしはこの所にむかって怒りの火を発する。これは消えることがないであろう』。
10161 12 22 18 ただし主に尋ねるために、あなたがたをつかわしたユダの王にはこう言いなさい、『あなたが聞いた言葉についてイスラエルの神、主はこう仰せられます、
10162 12 22 19 あなたは、わたしがこの所と、ここに住んでいる民にむかって、これは荒れ地となり、のろいとなるであろうと言うのを聞いた時、心に悔い、主の前にへりくだり、衣を裂いてわたしの前に泣いたゆえ、わたしもまたあなたの言うことを聞いたのであると主は言われる。
10163 12 22 20 それゆえ、見よ、わたしはあなたを先祖たちのもとに集める。あなたは安らかに墓に集められ、わたしがこの所に下すもろもろの災を目に見ることはないであろう』」。彼らはこの言葉を王に持ち帰った。
10164 12 23 1 そこで王は人をつかわしてユダとエルサレムの長老たちをことごとく集めた。
10165 12 23 2 そして王はユダのもろもろの人々と、エルサレムのすべての住民および祭司、預言者ならびに大小のすべての民を従えて主の宮にのぼり、主の宮で見つかった契約の書の言葉をことごとく彼らに読み聞かせた。
10166 12 23 3 次いで王は柱のかたわらに立って、主の前に契約を立て、主に従って歩み、心をつくし精神をつくして、主の戒めと、あかしと、定めとを守り、この書物にしるされているこの契約の言葉を行うことを誓った。民は皆その契約に加わった。
10167 12 23 4 こうして王は大祭司ヒルキヤと、それに次ぐ祭司たちおよび門を守る者どもに命じて、主の神殿からバアルとアシラと天の万象とのために作ったもろもろの器を取り出させ、エルサレムの外のキデロンの野でそれを焼き、その灰をベテルに持って行かせた。
10168 12 23 5 また、ユダの町々とエルサレムの周囲にある高き所で香をたくためにユダの王たちが任命した祭司たちを廃し、またバアルと日と月と星宿と天の万象とに香をたく者どもをも廃した。
10169 12 23 6 彼はまた主の宮からアシラ像を取り出し、エルサレムの外のキデロン川に持って行って、キデロン川でそれを焼き、それを打ち砕いて粉とし、その粉を民の墓に投げすてた。
10170 12 23 7 また主の宮にあった神殿男娼の家をこわした。そこは女たちがアシラ像のために掛け幕を織る所であった。
10171 12 23 8 彼はまたユダの町々から祭司をことごとく召しよせ、また祭司が香をたいたゲバからベエルシバまでの高き所を汚し、また門にある高き所をこわした。これらの高き所は町のつかさヨシュアの門の入口にあり、町の門にはいる人の左にあった。
10172 12 23 9 高き所の祭司たちはエルサレムで主の祭壇にのぼることをしなかったが、その兄弟たちのうちにあって種入れぬパンを食べた。
10173 12 23 10 王はまた、だれもそのむすこ娘を火に焼いて、モレクにささげ物とすることのないように、ベンヒンノムの谷にあるトペテを汚した。
10174 12 23 11 またユダの王たちが太陽にささげて主の宮の門に置いた馬を、境内にある侍従ナタンメレクのへやのかたわらに移し、太陽の車を火で焼いた。
10175 12 23 12 また王はユダの王たちがアハズの高殿の屋上に造った祭壇と、マナセが主の宮の二つの庭に造った祭壇とをこわして、それを打ち砕き、砕けたものをキデロン川に投げすてた。
10176 12 23 13 また王はイスラエルの王ソロモンが昔シドンびとの憎むべき者アシタロテと、モアブびとの憎むべき者ケモシと、アンモンの人々の憎むべき者ミルコムのためにエルサレムの東、滅亡の山の南に築いた高き所を汚した。
10177 12 23 14 またもろもろの石柱を打ち砕き、アシラ像を切り倒し、人の骨をもってその所を満たした。
10178 12 23 15 また、ベテルにある祭壇と、イスラエルに罪を犯させたネバテの子ヤラベアムが造った高き所、すなわちその祭壇と高き所とを彼はこわし、その石を打ち砕いて粉とし、かつアシラ像を焼いた。
10179 12 23 16 そしてヨシヤは身をめぐらして山に墓のあるのを見、人をつかわしてその墓から骨を取らせ、それをその祭壇の上で焼いて、それを汚した。昔、神の人が主の言葉としてこの事を呼ばわり告げたが、そのとおりになった。
10180 12 23 17 その時ヨシヤは「あそこに見える石碑は何か」と尋ねた。町の人々が彼に「あれはあなたがベテルの祭壇に対して行われたこれらの事を、ユダからきて預言した神の人の墓です」と言ったので、
10181 12 23 18 彼は言った、「そのままにして置きなさい。だれもその骨を移してはならない」。それでその骨と、サマリヤからきた預言者の骨には手をつけなかった。
10182 12 23 19 またイスラエルの王たちがサマリヤの町々に造って、主を怒らせた高き所の家も皆ヨシヤは取り除いて、彼がすべてベテルに行ったようにこれに行った。
10183 12 23 20 彼はまた、そこにあった高き所の祭司たちを皆祭壇の上で殺し、人の骨を祭壇の上で焼いた。こうして彼はエルサレムに帰った。
10184 12 23 21 そして王はすべての民に命じて、「あなたがたはこの契約の書にしるされているように、あなたがたの神、主に過越の祭を執り行いなさい」と言った。
10185 12 23 22 さばきづかさがイスラエルをさばいた日からこのかた、またイスラエルの王たちとユダの王たちの世にも、このような過越の祭を執り行ったことはなかったが、
10186 12 23 23 ヨシヤ王の第十八年に、エルサレムでこの過越の祭を主に執り行ったのである。
10187 12 23 24 ヨシヤはまた祭司ヒルキヤが主の宮で見つけた書物にしるされている律法の言葉を確実に行うために、口寄せと占い師と、テラピムと偶像およびユダの地とエルサレムに見られるもろもろの憎むべき者を取り除いた。
10188 12 23 25 ヨシヤのように心をつくし、精神をつくし、力をつくしてモーセのすべての律法にしたがい、主に寄り頼んだ王はヨシヤの先にはなく、またその後にも彼のような者は起らなかった。
10189 12 23 26 けれども主はなおユダにむかって発せられた激しい大いなる怒りをやめられなかった。これはマナセがもろもろの腹だたしい行いをもって主を怒らせたためである。
10190 12 23 27 それゆえ主は言われた、「わたしはイスラエルを移したように、ユダをもわたしの目の前から移し、わたしが選んだこのエルサレムの町と、わたしの名をそこに置こうと言ったこの宮とを捨てるであろう」。
10191 12 23 28 ヨシヤのその他の事績と、彼が行ったすべての事は、ユダの王の歴代志の書にしるされているではないか。
10192 12 23 29 ヨシヤの世にエジプトの王パロ・ネコが、アッスリヤの王のところへ行こうと、ユフラテ川をさして上ってきたので、ヨシヤ王は彼を迎え撃とうと出て行ったが、パロ・ネコは彼を見るや、メギドにおいて彼を殺した。
10193 12 23 30 その家来たちは彼の死体を車に載せ、メギドからエルサレムに運んで彼の墓に葬った。国の民はヨシヤの子エホアハズを立て、彼に油を注ぎ、王として父に代らせた。
10194 12 23 31 エホアハズは王となった時二十三歳で、エルサレムで三か月の間、世を治めた。母はリブナのエレミヤの娘で、名をハムタルといった。
10195 12 23 32 エホアハズは先祖たちがすべて行ったように主の目の前に悪を行ったが、
10196 12 23 33 パロ・ネコは彼をハマテの地のリブラにつないで置いて、エルサレムで世を治めることができないようにした。また銀百タラントと金一タラントのみつぎを国に課した。
10197 12 23 34 そしてパロ・ネコはヨシヤの子エリアキムを父ヨシヤに代って王とならせ、名をエホヤキムと改め、エホアハズをエジプトへ引いて行った。エホアハズはエジプトへ行ってそこで死んだ。
10198 12 23 35 エホヤキムは金銀をパロに送った。しかし彼はパロの命に従って金を送るために国に税を課し、国の民おのおのからその課税にしたがって金銀をきびしく取り立てて、それをパロ・ネコに送った。
10199 12 23 36 エホヤキムは二十五歳で王となり、エルサレムで十一年の間、世を治めた。母はルマのペダヤの娘で、名をゼビダといった。
10200 12 23 37 エホヤキムは先祖たちがすべて行ったように主の目の前に悪を行った。
10201 12 24 1 エホヤキムの世にバビロンの王ネブカデネザルが上ってきたので、エホヤキムは彼に隷属して三年を経たが、ついに翻って彼にそむいた。
10202 12 24 2 主はカルデヤびとの略奪隊、スリヤびとの略奪隊、モアブびとの略奪隊、アンモンびとの略奪隊をつかわしてエホヤキムを攻められた。すなわちユダを攻め、これを滅ぼすために彼らをつかわされた。主がそのしもべである預言者たちによって語られた言葉のとおりである。
10203 12 24 3 これは全く主の命によってユダに臨んだもので、ユダを主の目の前から払い除くためであった。すなわちマナセがすべておこなったその罪のため、
10204 12 24 4 また彼が罪なき人の血を流し、罪なき人の血をエルサレムに満たしたためであって、主はその罪をゆるそうとはされなかった。
10205 12 24 5 エホヤキムのその他の事績と、彼がおこなったすべての事は、ユダの王の歴代志の書にしるされているではないか。
10206 12 24 6 エホヤキムは先祖たちとともに眠り、その子エホヤキンが代って王となった。
10207 12 24 7 エジプトの王は再びその国から出てこなかった。バビロンの王がエジプトの川からユフラテ川まで、すべてエジプトの王に属するものを取ったからである。
10208 12 24 8 エホヤキンは王となった時十八歳で、エルサレムで三か月の間、世を治めた。母はエルサレムのエルナタンの娘で、名をネホシタといった。
10209 12 24 9 エホヤキンはすべてその父がおこなったように主の目の前に悪を行った。
10210 12 24 10 そのころ、バビロンの王ネブカデネザルの家来たちはエルサレムに攻め上って、町を囲んだ。
10211 12 24 11 その家来たちが町を囲んでいたとき、バビロンの王ネブカデネザルもまた町に攻めてきた。
10212 12 24 12 ユダの王エホヤキンはその母、その家来、そのつかさたち、および侍従たちと共に出て、バビロンの王に降服したので、バビロンの王は彼を捕虜とした。これはネブカデネザルの治世の第八年であった。
10213 12 24 13 彼はまた主の宮のもろもろの宝物および王の家の宝物をことごとく持ち出し、イスラエルの王ソロモンが造って主の神殿に置いたもろもろの金の器を切りこわした。主が言われたとおりである。
10214 12 24 14 彼はまたエルサレムのすべての市民、およびすべてのつかさとすべての勇士、ならびにすべての木工と鍛冶一万人を捕えて行った。残った者は国の民の貧しい者のみであった。
10215 12 24 15 さらに彼はエホヤキンをバビロンに捕えて行き、また王の母、王の妻たち、および侍従と国のうちのおもな人々をも、エルサレムからバビロンへ捕えて行った。
10216 12 24 16 またバビロンの王はすべて勇敢な者七千人、木工と鍛冶一千人ならびに強くて良く戦う者をみな捕えてバビロンへ連れて行った。
10217 12 24 17 そしてバビロンの王はエホヤキンの父の兄弟マッタニヤを王としてエホヤキンに代え、名をゼデキヤと改めた。
10218 12 24 18 ゼデキヤは二十一歳で王となり、エルサレムで十一年の間、世を治めた。母はリブナのエレミヤの娘で、名をハムタルといった。
10219 12 24 19 ゼデキヤはすべてエホヤキムがおこなったように主の目の前に悪を行った。
10220 12 24 20 エルサレムとユダにこのような事の起ったのは主の怒りによるので、主はついに彼らをみ前から払いすてられた。
10221 12 25 1 そこでゼデキヤの治世の第九年の十月十日に、バビロンの王ネブカデネザルはもろもろの軍勢を率い、エルサレムにきて、これにむかって陣を張り、周囲にとりでを築いてこれを攻めた。
10222 12 25 2 こうして町は囲まれて、ゼデキヤ王の第十一年にまで及んだが、
10223 12 25 3 その四月九日になって、町のうちにききんが激しくなり、その地の民に食物がなくなった。
10224 12 25 4 町の一角がついに破れたので、王はすべての兵士とともに、王の園のかたわらにある二つの城壁のあいだの門の道から夜のうちに逃げ出して、カルデヤびとが町を囲んでいる間に、アラバの方へ落ち延びた。
10225 12 25 5 しかしカルデヤびとの軍勢は王を追い、エリコの平地で彼に追いついた。彼の軍勢はみな彼を離れて散り去ったので、
10226 12 25 6 カルデヤびとは王を捕え、彼をリブラにいるバビロンの王のもとへ引いていって彼の罪を定め、
10227 12 25 7 ゼデキヤの子たちをゼデキヤの目の前で殺し、ゼデキヤの目をえぐり、足かせをかけてバビロンへ連れて行った。
10228 12 25 8 バビロンの王ネブカデネザルの第十九年の五月七日に、バビロンの王の臣、侍衛の長ネブザラダンがエルサレムにきて、
10229 12 25 9 主の宮と王の家とエルサレムのすべての家を焼いた。すなわち火をもってすべての大きな家を焼いた。
10230 12 25 10 また侍衛の長と共にいたカルデヤびとのすべての軍勢はエルサレムの周囲の城壁を破壊した。
10231 12 25 11 そして侍衛の長ネブザラダンは、町に残された民およびバビロン王に降服した者と残りの群衆を捕え移した。
10232 12 25 12 ただし侍衛の長はその地の貧しい者を残して、ぶどうを作る者とし、農夫とした。
10233 12 25 13 カルデヤびとはまた主の宮の青銅の柱と、主の宮の洗盤の台と、青銅の海を砕いて、その青銅をバビロンに運び、
10234 12 25 14 またつぼと、十能と、心切りばさみと、香を盛る皿およびすべて神殿の務に用いる青銅の器、
10235 12 25 15 また心取り皿と鉢を取り去った。侍衛の長はまた金で作った物と銀で作った物を取り去った。
10236 12 25 16 ソロモンが主の宮のために造った二つの柱と、一つの海と洗盤の台など、これらのもろもろの器の青銅の重さは量ることができなかった。
10237 12 25 17 一つの柱の高さは十八キュビトで、その上に青銅の柱頭があり、柱頭の高さは三キュビトで、柱頭の周囲に網細工とざくろがあって、みな青銅であった。他の柱もその網細工もこれと同じであった。
10238 12 25 18 侍衛の長は祭司長セラヤと次席の祭司ゼパニヤと三人の門を守る者を捕え、
10239 12 25 19 また兵士をつかさどるひとりの役人と、王の前にはべる者のうち、町で見つかった者五人と、その地の民を募った軍勢の長の書記官と、町で見つかったその地の民六十人を町から捕え去った。
10240 12 25 20 侍衛の長ネブザラダンは彼らを捕えて、リブラにいるバビロンの王のもとへ連れて行ったので、
10241 12 25 21 バビロンの王はハマテの地のリブラで彼らを撃ち殺した。このようにしてユダはその地から捕え移された。
10242 12 25 22 さてバビロンの王ネブカデネザルはユダの地に残してとどまらせた民の上に、シャパンの子アヒカムの子であるゲダリヤを立てて総督とした。
10243 12 25 23 時に軍勢の長たちおよびその部下の人々は、バビロンの王がゲダリヤを総督としたことを聞いて、ミヅパにいるゲダリヤのもとにきた。すなわちネタニヤの子イシマエル、カレヤの子ヨハナン、ネトパびとタンホメテの子セラヤ、マアカびとの子ヤザニヤおよびその部下の人々がゲダリヤのもとにきた。
10244 12 25 24 ゲダリヤは彼らとその部下の人々に誓って言った、「あなたがたはカルデヤびとのしもべとなることを恐れてはならない。この地に住んで、バビロンの王に仕えなさい。そうすればあなたがたは幸福を得るでしょう」。
10245 12 25 25 ところが七月になって、王の血統のエリシャマの子であるネタニヤの子イシマエルは十人の者と共にきて、ゲダリヤを撃ち殺し、また彼と共にミヅパにいたユダヤ人と、カルデヤびとを殺した。
10246 12 25 26 そのため、大小の民および軍勢の長たちは、みな立ってエジプトへ行った。彼らはカルデヤびとを恐れたからである。
10247 12 25 27 ユダの王エホヤキンが捕え移されて後三十七年の十二月二十七日、すなわちバビロンの王エビルメロダクの治世の第一年に、王はユダの王エホヤキンを獄屋から出して
10248 12 25 28 ねんごろに彼を慰め、その位を彼と共にバビロンにいる王たちの位よりも高くした。
10249 12 25 29 こうしてエホヤキンはその獄屋の衣を脱ぎ、一生の間、常に王の前で食事した。
10250 12 25 30 彼は一生の間、たえず日々の分を王から賜わって、その食物とした。
10251 13 1 1 アダム、セツ、エノス、
10252 13 1 2 ケナン、マハラレル、ヤレド、
10253 13 1 3 エノク、メトセラ、ラメク、
10254 13 1 4 ノア、セム、ハム、ヤペテ。
10255 13 1 5 ヤペテの子らはゴメル、マゴグ、マダイ、ヤワン、トバル、メセク、テラス。
10256 13 1 6 ゴメルの子らはアシケナズ、デパテ、トガルマ。
10257 13 1 7 ヤワンの子らはエリシャ、タルシシ、キッテム、ロダニム。
10258 13 1 8 ハムの子らはクシ、エジプト、プテ、カナン。
10259 13 1 9 クシの子らはセバ、ハビラ、サブタ、ラアマ、サブテカ。ラアマの子らはシバとデダン。
10260 13 1 10 クシはニムロデを生んだ。ニムロデは初めて世の権力ある者となった。
10261 13 1 11 エジプトはルデびと、アナムびと、レハブびと、ナフトびと、
10262 13 1 12 パテロスびと、カスルびと、カフトルびとを生んだ。カフトルびとからペリシテびとが出た。
10263 13 1 13 カナンは長子シドンとヘテを生んだ。
10264 13 1 14 またエブスびと、アモリびと、ギルガシびと、
10265 13 1 15 ヒビびと、アルキびと、セニびと、
10266 13 1 16 アルワデびと、ゼマリびと、ハマテびとを生んだ。
10267 13 1 17 セムの子らはエラム、アシュル、アルパクサデ、ルデ、アラム、ウズ、ホル、ゲテル、メセクである。
10268 13 1 18 アルパクサデはシラを生み、シラはエベルを生んだ。
10269 13 1 19 エベルにふたりの子が生れた。ひとりの名はペレグ――彼の代に地の民が散り分れたからである――その弟の名はヨクタンといった。
10270 13 1 20 ヨクタンはアルモダデ、シャレフ、ハザル・マウテ、エラ、
10271 13 1 21 ハドラム、ウザル、デクラ、
10272 13 1 22 エバル、アビマエル、シバ、
10273 13 1 23 オフル、ハビラ、ヨバブを生んだ。これらはみなヨクタンの子である。
10274 13 1 24 セム、アルパクサデ、シラ、
10275 13 1 25 エベル、ペレグ、リウ、
10276 13 1 26 セルグ、ナホル、テラ、
10277 13 1 27 アブラムすなわちアブラハムである。
10278 13 1 28 アブラハムの子らはイサクとイシマエルである。
10279 13 1 29 彼らの子孫は次のとおりである。イシマエルの長子はネバヨテ、次はケダル、アデビエル、ミブサム、
10280 13 1 30 ミシマ、ドマ、マッサ、ハダデ、テマ、
10281 13 1 31 エトル、ネフシ、ケデマ。これらはイシマエルの子孫である。
10282 13 1 32 アブラハムのそばめケトラの子孫は次のとおりである。彼女はジムラン、ヨクシャン、メダン、ミデアン、イシバク、シュワを産んだ。ヨクシャンの子らはシバとデダンである。
10283 13 1 33 ミデアンの子らはエパ、エペル、ヘノク、アビダ、エルダア。これらはみなケトラの子孫である。
10284 13 1 34 アブラハムはイサクを生んだ。イサクの子らはエサウとイスラエル。
10285 13 1 35 エサウの子らはエリパズ、リウエル、エウシ、ヤラム、コラ。
10286 13 1 36 エリパズの子らはテマン、オマル、ゼピ、ガタム、ケナズ、テムナ、アマレク。
10287 13 1 37 リウエルの子らはナハテ、ゼラ、シャンマ、ミッザ。
10288 13 1 38 セイルの子らはロタン、ショバル、ヂベオン、アナ、デション、エゼル、デシャン。
10289 13 1 39 ロタンの子らはホリとホマム。ロタンの妹はテムナ。
10290 13 1 40 ショバルの子らはアルヤン、マナハテ、エバル、シピ、オナム。ヂベオンの子らはアヤとアナ。
10291 13 1 41 アナの子はデション。デションの子らはハムラン、エシバン、イテラン、ケラン。
10292 13 1 42 エゼルの子らはビルハン、ザワン、ヤカン。デシャンの子らはウズとアラン。
10293 13 1 43 イスラエルの人々を治める王がまだなかった時、エドムの地を治めた王たちは次のとおりである。ベオルの子ベラ。その都の名はデナバといった。
10294 13 1 44 ベラが死んで、ボズラのゼラの子ヨバブが代って王となった。
10295 13 1 45 ヨバブが死んで、テマンびとの地のホシャムが代って王となった。
10296 13 1 46 ホシャムが死んで、ベダテの子ハダデが代って王となった。彼はモアブの野でミデアンを撃った。彼の都の名はアビテといった。
10297 13 1 47 ハダデが死んで、マスレカのサムラが代って王となった。
10298 13 1 48 サムラが死んで、ユフラテ川のほとりのレホボテのサウルが代って王となった。
10299 13 1 49 サウルが死んで、アクボルの子バアル・ハナンが代って王となった。
10300 13 1 50 バアル・ハナンが死んで、ハダデが代って王となった。彼の都の名はパイといった。彼の妻はマテレデの娘であって、名をメヘタベルといった。マテレデはメザハブの娘である。
10301 13 1 51 ハダデも死んだ。
10302 13 1 52 アホリバマ侯、エラ侯、ピノン侯、
10303 13 1 53 ケナズ侯、テマン侯、ミブザル侯、
10304 13 1 54 マグデエル侯、イラム侯。これらはエドムの族長である。
10305 13 2 1 イスラエルの子らは次のとおりである。ルベン、シメオン、レビ、ユダ、イッサカル、ゼブルン、
10306 13 2 2 ダン、ヨセフ、ベニヤミン、ナフタリ、ガド、アセル。
10307 13 2 3 ユダの子らはエル、オナン、シラである。この三人はカナンの女バテシュアがユダによって産んだ者である。ユダの長子エルは主の前に悪を行ったので、主は彼を殺された。
10308 13 2 4 ユダの嫁タマルはユダによってペレヅとゼラを産んだ。ユダの子らは合わせて五人である。
10309 13 2 5 ペレヅの子らはヘヅロンとハムル。
10310 13 2 6 ゼラの子らはジムリ、エタン、ヘマン、カルコル、ダラで、合わせて五人である。
10311 13 2 7 カルミの子はアカル。アカルは奉納物について罪を犯し、イスラエルを悩ました者である。
10312 13 2 8 エタンの子はアザリヤである。
10313 13 2 9 ヘヅロンに生れた子らはエラメル、ラム、ケルバイである。
10314 13 2 10 ラムはアミナダブを生み、アミナダブはユダの子孫のつかさナションを生んだ。
10315 13 2 11 ナションはサルマを生み、サルマはボアズを生み、
10316 13 2 12 ボアズはオベデを生み、オベデはエッサイを生んだ。
10317 13 2 13 エッサイは長子エリアブ、次にアビナダブ、第三にシメア、
10318 13 2 14 第四にネタンエル、第五にラダイ、
10319 13 2 15 第六にオゼム、第七にダビデを生んだ。
10320 13 2 16 彼らの姉妹はゼルヤとアビガイルである。ゼルヤの産んだ子はアビシャイ、ヨアブ、アサヘルの三人である。
10321 13 2 17 アビガイルはアマサを産んだ。アマサの父はイシマエルびとエテルである。
10322 13 2 18 ヘヅロンの子カレブはその妻アズバおよびエリオテによって子をもうけた。その子らはエシル、ショバブ、アルドンである。
10323 13 2 19 カレブはアズバが死んだのでエフラタをめとった。エフラタはカレブによってホルを産んだ。
10324 13 2 20 ホルはウリを生み、ウリはベザレルを生んだ。
10325 13 2 21 そののちヘヅロンはギレアデの父マキルの娘の所にはいった。彼が彼女をめとったときは六十歳であった。彼女はヘヅロンによってセグブを産んだ。
10326 13 2 22 セグブはヤイルを生んだ。ヤイルはギレアデの地に二十三の町をもっていた。
10327 13 2 23 しかしゲシュルとアラムは彼らからハボテ・ヤイルおよびケナテとその村里など合わせて六十の町を取った。これらはみなギレアデの父マキルの子孫であった。
10328 13 2 24 ヘヅロンが死んだのち、カレブは父ヘヅロンの妻エフラタの所にはいった。彼女は彼にテコアの父アシュルを産んだ。
10329 13 2 25 ヘヅロンの長子エラメルの子らは長子ラム、次はブナ、オレン、オゼム、アヒヤである。
10330 13 2 26 エラメルはまたほかの妻をもっていた。名をアタラといって、オナムの母である。
10331 13 2 27 エラメルの長子ラムの子らはマアツ、ヤミン、エケルである。
10332 13 2 28 オナムの子らはシャンマイとヤダである。シャンマイの子らはナダブとアビシュルである。
10333 13 2 29 アビシュルの妻の名はアビハイルといって、アバンとモリデを産んだ。
10334 13 2 30 ナダブの子らはセレデとアッパイムである。セレデは子をもたずに死んだ。
10335 13 2 31 アッパイムの子はイシ、イシの子はセシャン、セシャンの子はアヘライである。
10336 13 2 32 シャンマイの兄弟ヤダの子らはエテルとヨナタンである。エテルは子をもたずに死んだ。
10337 13 2 33 ヨナタンの子らはペレテとザザである。以上はエラメルの子孫である。
10338 13 2 34 セシャンには男の子はなく、ただ女の子のみであったが、彼はヤルハと呼ぶエジプトびとの奴隷をもっていたので、
10339 13 2 35 セシャンは娘を奴隷ヤルハに与えてその妻とさせた。彼女はヤルハによってアッタイを産んだ。
10340 13 2 36 アッタイはナタンを生み、ナタンはザバデを生み、
10341 13 2 37 ザバデはエフラルを生み、エフラルはオベデを生み、
10342 13 2 38 オベデはエヒウを生み、エヒウはアザリヤを生み、
10343 13 2 39 アザリヤはヘレヅを生み、ヘレヅはエレアサを生み、
10344 13 2 40 エレアサはシスマイを生み、シスマイはシャルムを生み、
10345 13 2 41 シャルムはエカミヤを生み、エカミヤはエリシャマを生んだ。
10346 13 2 42 エラメルの兄弟であるカレブの子らは長子をマレシャといってジフの父である。マレシャの子はヘブロン。
10347 13 2 43 ヘブロンの子らはコラ、タップア、レケム、シマである。
10348 13 2 44 シマはラハムを生んだ。ラハムはヨルカムの父である。またレケムはシャンマイを生んだ。
10349 13 2 45 シャンマイの子はマオン。マオンはベテヅルの父である。
10350 13 2 46 カレブのそばめエパはハラン、モザ、ガゼズを産んだ。ハランはガゼズを生んだ。
10351 13 2 47 エダイの子らはレゲム、ヨタム、ゲシャン、ペレテ、エパ、シャフである。
10352 13 2 48 カレブのそばめマアカはシベルとテルハナを産み、
10353 13 2 49 またマデマンナの父シャフおよびマクベナとギベアの父シワを産んだ。カレブの娘はアクサである。
10354 13 2 50 これらはカレブの子孫であった。
10355 13 2 51 ベツレヘムの父サルマおよびベテガデルの父ハレフである。
10356 13 2 52 キリアテ・ヤリムの父ショバル子らはハロエとメヌコテびとの半ばである。
10357 13 2 53 キリアテ・ヤリムの氏族はイテルびと、プテびと、シュマびと、ミシラびとであって、これらからザレアびとおよびエシタオルびとが出た。
10358 13 2 54 サルマの子らはベツレヘム、ネトパびと、アタロテ・ベテ・ヨアブ、マナハテびとの半ばおよびゾリびとである。
10359 13 2 55 またヤベヅに住んでいた書記の氏族テラテびと、シメアテびと、スカテびとである。これらはケニびとであってレカブの家の先祖ハマテから出た者である。
10360 13 3 1 ヘブロンで生れたダビデの子らは次のとおりである。長子はアムノンでエズレルびとアヒノアムから生れ、次はダニエルでカルメルびとアビガイルから生れ、
10361 13 3 2 第三はアブサロムでゲシュルの王タルマイの娘マアカの産んだ子、第四はアドニヤでハギテの産んだ子、
10362 13 3 3 第五はシパテヤでアビタルから生れ、第六はイテレアムで、彼の妻エグラから生れた。
10363 13 3 4 この六人はヘブロンで彼に生れた。ダビデがそこで王となっていたのは七年六か月、エルサレムで王となっていたのは三十三年であった。
10364 13 3 5 エルサレムで生れたものは次のとおりである。すなわちシメア、ショバブ、ナタン、ソロモン。この四人はアンミエルの娘バテシュアから生れた。
10365 13 3 6 またイブハル、エリシャマ、エリペレテ、
10366 13 3 7 ノガ、ネペグ、ヤピア、
10367 13 3 8 エリシャマ、エリアダ、エリペレテの九人、
10368 13 3 9 これらはみなダビデの子である。このほかに、そばめどもの産んだ子らがあり、タマルは彼らの姉妹であった。
10369 13 3 10 ソロモンの子はレハベアム、その子はアビヤ、その子はアサ、その子はヨシャパテ、
10370 13 3 11 その子はヨラム、その子はアハジヤ、その子はヨアシ、
10371 13 3 12 その子はアマジヤ、その子はアザリヤ、その子はヨタム、
10372 13 3 13 その子はアハズ、その子はヒゼキヤ、その子はマナセ、
10373 13 3 14 その子はアモン、その子はヨシヤ、
10374 13 3 15 ヨシヤの子らは長子ヨハナン、次はエホヤキム、第三はゼデキヤ、第四はシャルムである。
10375 13 3 16 エホヤキムの子孫はその子はエコニア、その子はゼデキヤである。
10376 13 3 17 捕虜となったエコニヤの子らはその子シャルテル、
10377 13 3 18 マルキラム、ペダヤ、セナザル、エカミア、ホシャマ、ネダビヤである。
10378 13 3 19 ペダヤの子らはゼルバベルとシメイである。ゼルバベルの子らはメシュラムとハナニヤ。シロミテは彼らの姉妹である。
10379 13 3 20 またハシュバ、オヘル、ベレキヤ、ハサデヤ、ユサブ・ヘセデの五人がある。
10380 13 3 21 ハナニヤの子らはペラテヤとエシャヤ、その子レパヤ、その子アルナン、その子オバデヤ、その子シカニヤである。
10381 13 3 22 シカニヤの子らはシマヤ。シマヤの子らはハットシ、イガル、バリア、ネアリヤ、シャパテの六人である。
10382 13 3 23 ネアリヤの子らはエリオエナイ、ヒゼキヤ、アズリカムの三人である。
10383 13 3 24 エリオエナイの子らはホダヤ、エリアシブ、ペラヤ、アックブ、ヨハナン、デラヤ、アナニの七人である。
10384 13 4 1 ユダの子らはペレヅ、ヘヅロン、カルミ、ホル、ショバルである。
10385 13 4 2 ショバルの子レアヤはヤハテを生み、ヤハテはアホマイとラハデを生んだ。これらはザレアびとの一族である。
10386 13 4 3 エタムの子らはエズレル、イシマおよびイデバシ、彼らの姉妹の名はハゼレルポニである。
10387 13 4 4 ゲドルの父はペヌエル、ホシャの父はエゼルである。これらはベツレヘムの父エフラタの長子ホルの子らである。
10388 13 4 5 テコアの父アシュルにはふたりの妻ヘラとナアラとがあった。
10389 13 4 6 ナアラはアシュルによってアホザム、ヘペル、テメニおよびアハシタリを産んだ。これらはナアラの子である。
10390 13 4 7 ヘラの子らはゼレテ、エゾアル、エテナンである。
10391 13 4 8 コヅはアヌブとゾベバを生んだ。またハルムの子アハルヘルの氏族も彼から出た。
10392 13 4 9 ヤベヅはその兄弟のうちで最も尊ばれた者であった。その母が「わたしは苦しんでこの子を産んだから」と言ってその名をヤベヅと名づけたのである。
10393 13 4 10 ヤベヅはイスラエルの神に呼ばわって言った、「どうか、あなたが豊かにわたしを恵み、わたしの国境を広げ、あなたの手がわたしとともにあって、わたしを災から免れさせ、苦しみをうけさせられないように」。神は彼の求めるところをゆるされた。
10394 13 4 11 シュワの兄弟ケルブはメヒルを生んだ。メヒルはエシトンの父、
10395 13 4 12 エシトンはベテラパ、パセアおよびイルナハシの父テヒンナを生んだ。これらはレカの人々である。
10396 13 4 13 ケナズの子らはオテニエルとセラヤ。オテニエルの子らはハタテとメオノタイ。
10397 13 4 14 メオノタイはオフラを生み、セラヤはゲハラシムの父ヨアブを生んだ。彼らは工人であったのでゲハラシムと呼ばれたのである。
10398 13 4 15 エフンネの子カレブの子らはイル、エラおよびナアム。エラの子はケナズ。
10399 13 4 16 エハレレルの子らはジフ、ジバ、テリア、アサレルである。
10400 13 4 17 エズラの子らはエテル、メレデ、エペル、ヤロン。次のものはメレデがめとったパロの娘ビテヤの子らである。すなわち彼女はみごもってミリアム、シャンマイおよびイシバを産んだ。イシバはエシテモアの父である。
10401 13 4 18 彼の妻はユダヤ人で、ゲドルの父エレデとソコの父ヘベルとザノアの父エクテエルを産んだ。
10402 13 4 19 ナハムの姉妹であるホデヤの妻の子らはガルムびとケイラの父およびマアカびとエシテモアである。
10403 13 4 20 シモンの子らはアムノン、リンナ、ベネハナン、テロンである。イシの子らはゾヘテとベネゾヘテである。
10404 13 4 21 ユダの子シラの子らはレカの父エル、マレシャの父ラダおよびベテアシベアの亜麻布織の家の一族、
10405 13 4 22 ならびにモアブを治めてレヘムに帰ったヨキム、コゼバの人々、ヨアシおよびサラフである。その記録は古い。
10406 13 4 23 これらの者は陶器を造る人で、ネタイムおよびゲデラに住み、王の用をするため、王とともに、そこに住んだ。
10407 13 4 24 シメオンの子らはネムエル、ヤミン、ヤリブ、ゼラ、シャウル。
10408 13 4 25 シャウルの子はシャルム、その子はミブサム、その子はミシマ。
10409 13 4 26 ミシマの子孫は、その子はハムエル、その子はザックル、その子はシメイ。
10410 13 4 27 シメイには男の子十六人、女の子六人あったが、その兄弟たちには多くの子はなかった。またその氏族の者はすべてユダの子孫ほどにはふえなかった。
10411 13 4 28 彼らの住んだ所はベエルシバ、モラダ、ハザル・シュアル、
10412 13 4 29 ビルハ、エゼム、トラデ、
10413 13 4 30 ベトエル、ホルマ、チクラグ、
10414 13 4 31 ベテ・マルカボテ、ハザル・スシム、ベテ・ビリ、およびシャライムである。これらはダビデの世に至るまで彼らの町であった。
10415 13 4 32 その村里はエタム、アイン、リンモン、トケン、アシャンの五つの町である。
10416 13 4 33 またこれらの町々の周囲に多くの村があって、バアルまでおよんだ。彼らのすみかは以上のとおりで、彼らはおのおの系図をもっていた。
10417 13 4 34 メショバブ、ヤムレク、アマジヤの子ヨシャ、
10418 13 4 35 ヨエル、アシエルのひこ、セラヤの孫、ヨシビアの子エヒウ。
10419 13 4 36 エリオエナイ、ヤコバ、エショハヤ、アサヤ、アデエル、エシミエル、ベナヤ、
10420 13 4 37 およびシピの子ジザ。シピはアロンの子、アロンはエダヤの子、エダヤはシムリの子、シムリはシマヤの子である。
10421 13 4 38 ここに名をあげた者どもはその氏族の長であって、それらの氏族は大いにふえ広がった。
10422 13 4 39 彼らは群れのために牧場を求めてゲドルの入口に行き、谷の東の方まで進み、
10423 13 4 40 ついに豊かな良い牧場を見いだした。その地は広く穏やかで、安らかであった。その地の前の住民はハムびとであったからである。
10424 13 4 41 これらの名をしるした者どもはユダの王ヒゼキヤの世に行って、彼らの天幕と、そこにいたメウニびとを撃ち破り、彼らをことごとく滅ぼして今日に至っている。そこには、群れのための牧場があったので、彼らはそこに住んだ。
10425 13 4 42 またシメオンびとのうちの五百人はイシの子らペラテヤ、ネアリヤ、レパヤ、ウジエルをかしらとしてセイル山に行き、
10426 13 4 43 アマレクびとで、のがれて残っていた者を撃ち滅ぼして、今日までそこに住んでいる。
10427 13 5 1 イスラエルの長子ルベンの子らは次のとおりである。――ルベンは長子であったが父の床を汚したので、長子の権はイスラエルの子ヨセフの子らに与えられた。それで長子の権による系図にしるされていない。
10428 13 5 2 またユダは兄弟たちにまさる者となり、その中から君たる者がでたが長子の権はヨセフのものとなったのである。――
10429 13 5 3 すなわちイスラエルの長子ルベンの子らはハノク、パル、ヘヅロン、カルミ。
10430 13 5 4 ヨエルの子らはその子はシマヤ、その子はゴグ、その子はシメイ、
10431 13 5 5 その子はミカ、その子はレアヤ、その子はバアル、
10432 13 5 6 その子はベエラである。このベエラはアッスリヤの王テルガテ・ピルネセルが捕え移した者である。彼はルベンびとのつかさであった。
10433 13 5 7 彼の兄弟たちは、その氏族により、その歴代の系図によれば、かしらエイエルおよびゼカリヤ、
10434 13 5 8 ベラなどである。ベラはアザズの子、シマの孫、ヨエルのひこである。彼はアロエルに住み、ネボおよびバアル・メオンまで及んでいたが、
10435 13 5 9 ギレアデの地で彼の家畜がふえ増したので、彼は東の方ユフラテ川のこなたの荒野の入口にまで住んだ。
10436 13 5 10 またサウルの時、彼らはハガルびとと戦って、これを撃ち倒し、ギレアデの東の全部にわたって彼らの天幕に住んだ。
10437 13 5 11 ガドの子孫はこれと相対してバシャンの地に住み、サルカまで及んでいた。
10438 13 5 12 そのかしらはヨエル、次はシャパム、ヤアナイ、シャパテで、ともにバシャンに住んだ。
10439 13 5 13 彼らの兄弟たちは、その氏族によればミカエル、メシュラム、シバ、ヨライ、ヤカン、ジア、エベルの七人である。
10440 13 5 14 これらはホリの子アビハイルの子らである。ホリはヤロアの子、ヤロアはギレアデの子、ギレアデはミカエルの子、ミカエルはエシサイの子、エシサイはヤドの子、ヤドはブズの子である。
10441 13 5 15 アヒはアブデルの子、アブデルはグニの子、グニはその氏族の長である。
10442 13 5 16 彼らはギレアデとバシャンとその村里とシャロンのすべての放牧地に住んで、その四方の境にまで及んでいた。
10443 13 5 17 これらはみなユダの王ヨタムの世とイスラエルの王ヤラベアムの世に系図にのせられた。
10444 13 5 18 ルベンびとと、ガドびとと、マナセの半部族には出て戦いうる者四万四千七百六十人あり、皆勇士で、盾とつるぎをとり、弓をひき、戦いに巧みな人々であった。
10445 13 5 19 彼らはハガルびとおよびエトル、ネフシ、ノダブなどと戦ったが、
10446 13 5 20 助けを得てこれを攻めたので、ハガルびとおよびこれとともにいた者は皆、彼らの手にわたされた。これは彼らが戦いにあたって神に呼ばわり、神に寄り頼んだので神はその願いを聞かれたからである。
10447 13 5 21 彼らはその家畜を奪い取ったが、らくだ五万、羊二十五万、ろば二千あり、また人は十万人あった。
10448 13 5 22 これはその戦いが神によったので、多くの者が殺されて倒れたからである。そして彼らは捕え移される時まで、これに代ってその所に住んだ。
10449 13 5 23 マナセの半部族の人々はこの地に住み、ふえ広がって、ついにバシャンからバアル・ヘルモン、セニルおよびヘルモン山にまで及んだ。
10450 13 5 24 その氏族の長たちは次のとおりである。すなわち、エペル、イシ、エリエル、アズリエル、エレミヤ、ホダヤ、ヤデエル。これらは皆その氏族の長で名高い大勇士であった。
10451 13 5 25 彼らは先祖たちの神にむかって罪を犯し、神が、かつて彼らの前から滅ぼされた国の民の神々を慕って、これと姦淫したので、
10452 13 5 26 イスラエルの神は、アッスリヤの王プルの心を奮い起し、またアッスリヤの王テルガテ・ピルネセルの心を奮い起されたので、彼はついにルベンびとと、ガドびとと、マナセの半部族を捕えて行き、ハウラとハボルとハラとゴザン川のほとりに移して今日に至っている。
10453 13 6 1 レビの子らはゲルション、コハテ、メラリ。
10454 13 6 2 コハテの子らはアムラム、イヅハル、ヘブロン、ウジエル。
10455 13 6 3 アムラムの子らはアロン、モーセ、ミリアム。アロンの子らはナダブ、アビウ、エレアザル、イタマル。
10456 13 6 4 エレアザルはピネハスを生み、ピネハスはアビシュアを生み、
10457 13 6 5 アビシュアはブッキを生み、ブッキはウジを生み、
10458 13 6 6 ウジはゼラヒヤを生み、ゼラヒヤはメラヨテを生み、
10459 13 6 7 メラヨテはアマリヤを生み、アマリヤはアヒトブを生み、
10460 13 6 8 アヒトブはザドクを生み、ザドクはアヒマアズを生み、
10461 13 6 9 アヒマアズはアザリヤを生み、アザリヤはヨナハンを生み、
10462 13 6 10 ヨナハンはアザリヤを生んだ。このアザリヤはソロモンがエルサレムに建てた宮で祭司の務をした者である。
10463 13 6 11 アザリヤはアマリヤを生み、アマリヤはアヒトブを生み、
10464 13 6 12 アヒトブはザトクを生み、ザトクはシャルムを生み、
10465 13 6 13 シャルムはヒルキヤを生み、ヒルキヤはアザリヤを生み、
10466 13 6 14 アザリヤはセラヤを生み、セラヤはヨザダクを生んだ。
10467 13 6 15 ヨザダクは主がネブカデネザルの手によってユダとエルサレムの人を捕え移された時に捕えられて行った。
10468 13 6 16 レビの子らはゲルション、コハテおよびメラリ。
10469 13 6 17 ゲルションの子らの名はリブニとシメイ。
10470 13 6 18 コハテの子らはアムラム、イヅハル、ヘブロン、ウジエルである。
10471 13 6 19 メラリの子らはマヘリとムシ。これらはレビびとのその家筋による氏族である。
10472 13 6 20 ゲルションの子はリブニ、その子はヤハテ、その子はジンマ、
10473 13 6 21 その子はヨア、その子はイド、その子はゼラ、その子はヤテライ。
10474 13 6 22 コハテの子はアミナダブ、その子はコラ、その子はアシル、
10475 13 6 23 その子はエルカナ、その子はエビアサフ、その子はアシル、
10476 13 6 24 その子はタハテ、その子はウリエル、その子はウジヤ、その子はシャウル。
10477 13 6 25 エルカナの子らはアマサイとアヒモテ、
10478 13 6 26 その子はエルカナ、その子はゾパイ、その子はナハテ、
10479 13 6 27 その子はエリアブ、その子はエロハム、その子はエルカナ。
10480 13 6 28 サムエルの子らは、長子はヨエル、次はアビヤ。
10481 13 6 29 メラリの子はマヘリ、その子はリブニ、その子はシメイ、その子はウザ、
10482 13 6 30 その子はシメア、その子はハギヤ、その子はアサヤである。
10483 13 6 31 契約の箱を安置したのち、ダビデが主の宮で歌をうたう事をつかさどらせた人々は次のとおりである。
10484 13 6 32 彼らは会見の幕屋の前で歌をもって仕えたが、ソロモンがエルサレムに主の宮を建ててからは、一定の秩序に従って務を行った。
10485 13 6 33 その務をしたもの、およびその子らは次のとおりである。コハテびとの子らのうちヘマンは歌をうたう者、ヘマンはヨエルの子、ヨエルはサムエルの子、
10486 13 6 34 サムエルはエルカナの子、エルカナはエロハムの子、エロハムはエリエルの子、エリエルはトアの子、
10487 13 6 35 トアはヅフの子、ヅフはエルカナの子、エルカナはマハテの子、マハテはアマサイの子、
10488 13 6 36 アマサイはエルカナの子、エルカナはヨエルの子、ヨエルはアザリヤの子、アザリヤはゼパニヤの子、
10489 13 6 37 ゼパニヤはタハテの子、タハテはアシルの子、アシルはエビアサフの子、エビアサフはコラの子、
10490 13 6 38 コラはイヅハルの子、イヅハルはコハテの子、コハテはレビの子、レビはイスラエルの子である。
10491 13 6 39 ヘマンの兄弟アサフはヘマンの右に立った。アサフはベレキヤの子、ベレキヤはシメアの子、
10492 13 6 40 シメアはミカエルの子、ミカエルはバアセヤの子、バアセヤはマルキヤの子、
10493 13 6 41 マルキヤはエテニの子、エテニはゼラの子、ゼラはアダヤの子、
10494 13 6 42 アダヤはエタンの子、エタンはジンマの子、ジンマはシメイの子、
10495 13 6 43 シメイはヤハテの子、ヤハテはゲルションの子、ゲルションはレビの子である。
10496 13 6 44 また彼らの兄弟であるメラリの子らが左に立った。そのうちのエタンはキシの子、キシはアブデの子、アブデはマルクの子、
10497 13 6 45 マルクはハシャビヤの子、ハシャビヤはアマジヤの子、アマジヤはヒルキヤの子、
10498 13 6 46 ヒルキヤはアムジの子、アムジはバニの子、バニはセメルの子、
10499 13 6 47 セメルはマヘリの子、マヘリはムシの子、ムシはメラリの子、メラリはレビの子である。
10500 13 6 48 彼らの兄弟であるレビびとたちは、神の宮の幕屋のもろもろの務に任じられた。
10501 13 6 49 アロンとその子らは燔祭の壇と香の祭壇の上にささげることをなし、また至聖所のすべてのわざをなし、かつイスラエルのためにあがないをなした。すべて神のしもべモーセの命じたとおりである。
10502 13 6 50 アロンの子孫は次のとおりである。アロンの子はエレアザル、その子はピネハス、その子はアビシュア、
10503 13 6 51 その子はブッキ、その子はウジ、その子はゼラヒヤ、
10504 13 6 52 その子はメラヨテ、その子はアマリヤ、その子はアヒトブ、
10505 13 6 53 その子はザドク、その子はアヒマアズである。
10506 13 6 54 アロンの子孫の住む所はその境のうちにある宿営によっていえば次のとおりである。まずコハテびとの氏族がくじによって得たところ、
10507 13 6 55 すなわち彼らが与えられたところは、ユダの地にあるヘブロンとその周囲の放牧地である。
10508 13 6 56 ただし、その町の田畑とその村々は、エフンネの子カレブに与えられた。
10509 13 6 57 そしてアロンの子孫に与えられたものは、のがれの町であるヘブロンおよびリブナとその放牧地、ヤッテルおよびエシテモアとその放牧地、
10510 13 6 58 ヒレンとその放牧地、デビルとその放牧地、
10511 13 6 59 アシャンとその放牧地、ベテシメシとその放牧地である。
10512 13 6 60 またベニヤミンの部族のうちからはゲバとその放牧地、アレメテとその放牧地、アナトテとその放牧地を与えられた。彼らの町は、すべてその氏族のうちに十三あった。
10513 13 6 61 またコハテの子孫の残りの者は部族の氏族のうちからと、半部族すなわちマナセの半部族のうちからくじによって十の町を与えられた。
10514 13 6 62 またゲルションの子孫はその氏族によってイッサカルの部族、アセルの部族、ナフタリの部族、およびバシャンのマナセの部族のうちから十三の町が与えられた。
10515 13 6 63 メラリの子孫はその氏族によってルベンの部族、ガドの部族、およびゼブルンの部族のうちからくじによって十二の町が与えられた。
10516 13 6 64 このようにイスラエルの人々はレビびとに町々とその放牧地とを与えた。
10517 13 6 65 すなわちユダの子孫の部族とシメオンの部族の子孫と、ベニヤミンの子孫の部族のうちからここに名をあげたこれらの町をくじによって与えた。
10518 13 6 66 コハテの子孫の氏族はまたエフライムの部族のうちからも町々を獲てその領地とした。
10519 13 6 67 すなわち彼らが与えられた、のがれの町はエフライムの山地にあるシケムとその放牧地、ゲゼルとその放牧地、
10520 13 6 68 ヨクメアムとその放牧地、ベテホロンとその放牧地、
10521 13 6 69 アヤロンとその放牧地、ガテリンモンとその放牧地である。
10522 13 6 70 またマナセの半部族のうちからは、アネルとその放牧地およびビレアムとその放牧地を、コハテの子孫の氏族の残りのものに与えた。
10523 13 6 71 ゲルションの子孫に与えられたものはマナセの半部族のうちからはバシャンのゴランとその放牧地、アシタロテとその放牧地。
10524 13 6 72 イッサカルの部族のうちからはケデシとその放牧地、ダベラテとその放牧地、
10525 13 6 73 ラモテとその放牧地、アネムとその放牧地。
10526 13 6 74 アセルの部族のうちからはマシャルとその放牧地、アブドンとその放牧地、
10527 13 6 75 ホコクとその放牧地、レホブとその放牧地。
10528 13 6 76 ナフタリの部族のうちからはガリラヤのケデシとその放牧地、ハンモンとその放牧地、キリアタイムとその放牧地である。
10529 13 6 77 このほかのもの、すなわちメラリの子孫に与えられたものはゼブルンの部族のうちからリンモンとその放牧地、タボルとその放牧地、
10530 13 6 78 エリコに近いヨルダンのかなた、すなわちヨルダンの東ではルベンの部族のうちからは荒野のベゼルとその放牧地、ヤザとその放牧地、
10531 13 6 79 ケデモテとその放牧地、メパアテとその放牧地。
10532 13 6 80 ガドの部族のうちからはギレアデのラモテとその放牧地、マハナイムとその放牧地、
10533 13 6 81 ヘシボンとその放牧地、ヤゼルとその放牧地である。
10534 13 7 1 イッサカルの子らはトラ、プワ、ヤシュブ、シムロムの四人。
10535 13 7 2 トラの子らはウジ、レパヤ、エリエル、ヤマイ、エブサム、サムエル。これは皆トラの子で、その氏族の長である。その子孫の大勇士たる者はダビデの世にはその数二万二千六百人であった。
10536 13 7 3 ウジの子はイズラヒヤ、イズラヒヤの子らはミカエル、オバデヤ、ヨエル、イシアの五人で、みな長たる者であった。
10537 13 7 4 その子孫のうちに、その氏族に従えば軍勢の士卒三万六千人あった。これは彼らが妻子を多くもっていたからである。
10538 13 7 5 イッサカルのすべての氏族のうちの兄弟たちで系図によって数えられた大勇士は合わせて八万七千人あった。
10539 13 7 6 ベニヤミンの子らはベラ、ベケル、エデアエルの三人。
10540 13 7 7 ベラの子らはエヅボン、ウジ、ウジエル、エレモテ、イリの五人で、皆その氏族の長である。その系図によって数えられた大勇士は二万二千三十四人あった。
10541 13 7 8 ベケルの子らはゼミラ、ヨアシ、エリエゼル、エリオエナイ、オムリ、エレモテ、アビヤ、アナトテ、アラメテで皆ベケルの子らである。
10542 13 7 9 その子孫のうち、その氏族の長として系図によって数えられた大勇士は二万二百人あった。
10543 13 7 10 エデアエルの子はビルハン。ビルハンの子らはエウシ、ベニヤミン、エホデ、ケナアナ、ゼタン、タルシシ、アヒシャハル。
10544 13 7 11 皆エデアエルの子らで氏族の長であった。その子孫のうちには、いくさに出てよく戦う大勇士が一万七千二百人あった。
10545 13 7 12 またイルの子らはシュパムとホパム。アヘルの子はホシムである。
10546 13 7 13 ナフタリの子らはヤハジエル、グニ、エゼル、シャルムで皆ビルハの産んだ子である。
10547 13 7 14 マナセの子らはそのそばめであるスリヤの女の産んだアスリエル。彼女はまたギレアデの父マキルを産んだ。
10548 13 7 15 マキルはホパムとシュパムの妹マアカという者を妻にめとった。二番目の子はゼロペハデという。ゼロペハデには女の子だけがあった。
10549 13 7 16 マキルの妻マアカは男の子を産んで名をペレシと名づけた。その弟の名はシャレシ。シャレシの子らはウラムとラケムである。
10550 13 7 17 ウラムの子はベダン。これらはマナセの子マキルの子であるギレアデの子らである。
10551 13 7 18 その妹ハンモレケテはイシホデ、アビエゼル、マヘラを産んだ。
10552 13 7 19 セミダの子らはアヒアン、シケム、リキ、アニアムである。
10553 13 7 20 エフライムの子はシュテラ、その子はベレデ、その子はタハテ、その子はエラダ、その子はタハテ、
10554 13 7 21 その子はザバデ、その子はシュテラである。エゼルとエレアデはガテの土人らに殺された。これは彼らが下って行ってその家畜を奪おうとしたからである。
10555 13 7 22 父エフライムが日久しくこのために悲しんだので、その兄弟たちが来て彼を慰めた。
10556 13 7 23 そののち、エフライムは妻のところにはいった。妻ははらんで男の子を産み、その名をベリアと名づけた。その家に災があったからである。
10557 13 7 24 エフライムの娘セラは上と下のベテホロンおよびウゼン・セラを建てた。
10558 13 7 25 ベリアの子はレパ、その子はレセフ、その子はテラ、その子はタハン、
10559 13 7 26 その子はラダン、その子はアミホデ、その子はエリシャマ、
10560 13 7 27 その子はヌン、その子はヨシュア。
10561 13 7 28 エフライムの子孫の領地と住所はベテルとその村々、また東の方ではナアラン、西の方ではゲゼルとその村々、またシケムとその村々、アワとその村々。
10562 13 7 29 またマナセの子孫の国境に沿って、ベテシャンとその村々、タアナクとその村々、メギドンとその村々、ドルとその村々で、イスラエルの子ヨセフの子孫はこれらの所に住んだ。
10563 13 7 30 アセルの子らはイムナ、イシワ、エスイ、ベリアおよびその姉妹セラ。
10564 13 7 31 ベリアの子らはヘベルとマルキエル。マルキエルはビルザヒテの父である。
10565 13 7 32 ヘベルはヤフレテ、ショメル、ホタムおよびその姉妹シュアを生んだ。
10566 13 7 33 ヤフレテの子らはパサク、ビムハル、アシワテ。これらはヤレフテの子らである。
10567 13 7 34 彼の兄弟ショメルの子らはロガ、ホバおよびアラム。
10568 13 7 35 ショメルの兄弟ヘレムの子らはゾパ、イムナ、シレシ、アマル。
10569 13 7 36 ゾパの子らはスア、ハルネペル、シュアル、ベリ、イムラ、
10570 13 7 37 ベゼル、ホド、シャンマ、シルシャ、イテラン、ベエラ。
10571 13 7 38 エテルの子らはエフンネ、ピスパおよびアラ。
10572 13 7 39 ウラの子らはアラ、ハニエル、およびリヂア。
10573 13 7 40 これらは皆アセルの子孫であって、その氏族の長、えりぬきの大勇士、つかさたちのかしらであった。その系図によって数えられた者で、いくさに出てよく戦う者の数は二万六千人であった。
10574 13 8 1 ベニヤミンの生んだ者は長子はベラ、その次はアシベル、第三はアハラ、
10575 13 8 2 第四はノハ、第五はラパ。
10576 13 8 3 ベラの子らはアダル、ゲラ、アビウデ、
10577 13 8 4 アビシュア、ナアマン、アホア、
10578 13 8 5 ゲラ、シフパム、ヒラム。
10579 13 8 6 エホデの子らは次のとおりである。(これらはゲバの住民の氏族の長であって、マナハテに捕え移されたものである。)
10580 13 8 7 すなわちナアマン、アヒヤ、ゲラすなわちヘグラム。ゲラはウザとアヒフデの父であった。
10581 13 8 8 シャハライムは妻ホシムとバアラを離別してのち、モアブの国で子らをもうけた。
10582 13 8 9 彼が妻ホデシによってもうけた子らはヨバブ、ヂビア、メシャ、マルカム、
10583 13 8 10 エウヅ、シャキヤ、ミルマ。これらはその子らであって氏族の長である。
10584 13 8 11 彼はまたホシムによってアビトブとエルパアルをもうけた。
10585 13 8 12 エルパアルの子らはエベル、ミシャムおよびセメド。彼はオノとロドとその村々を建てた者である。
10586 13 8 13 またベリアとシマがあった。(これはアヤロンの住民の氏族の長であって、ガテの住民を追い払ったものである。)
10587 13 8 14 またアヒオ、シャシャク、エレモテ。
10588 13 8 15 ゼバデヤ、アラデ、アデル、
10589 13 8 16 ミカエル、イシパおよびヨハはベリアの子らであった。
10590 13 8 17 ゼバデヤ、メシュラム、ヘゼキ、ヘベル、
10591 13 8 18 イシメライ、エズリアおよびヨバブはエルパアルの子らであった。
10592 13 8 19 ヤキン、ジクリ、ザベデ、
10593 13 8 20 エリエナイ、チルタイ、エリエル、
10594 13 8 21 アダヤ、ベラヤおよびシムラテはシマの子らであった。
10595 13 8 22 イシパン、ヘベル、エリエル、
10596 13 8 23 アブドン、ジクリ、ハナン、
10597 13 8 24 ハナニヤ、エラム、アントテヤ、
10598 13 8 25 イペデヤおよびペヌエルはシャシャクの子らであった。
10599 13 8 26 シャムセライ、シハリア、アタリヤ、
10600 13 8 27 ヤレシャ、エリヤおよびジクリはエロハムの子らであった。
10601 13 8 28 これらは歴代の氏族の長であり、またかしらであって、エルサレムに住んだ。
10602 13 8 29 ギベオンの父エイエルはギベオンに住み、その妻の名はマアカといった。
10603 13 8 30 その長子はアブドンで、次はツル、キシ、バアル、ナダブ、
10604 13 8 31 ゲドル、アヒオ、ザケル、
10605 13 8 32 およびミクロテ。ミクロテはシメアを生んだ。これらもまた兄弟たちと向かいあってエルサレムに住んだ。
10606 13 8 33 ネルはキシを生み、キシはサウルを生み、サウルはヨナタン、マルキシュア、アビナダブ、エシバアルを生んだ。
10607 13 8 34 ヨナタンの子はメリバアルで、メリバアルはミカエルを生んだ。
10608 13 8 35 ミカの子らはピトン、メレク、タレア、アハズである。
10609 13 8 36 アハズはエホアダを生み、エホアダはアレメテ、アズマウテ、ジムリを生み、ジムリはモザを生み、
10610 13 8 37 モザはビネアを生んだ。ビネアの子はラパ、ラパの子はエレアサ、エレアサの子はアゼルである。
10611 13 8 38 アゼルには六人の子があり、その名はアズリカム、ボケル、イシマエル、シャリヤ、オバデヤ、ハナンで、皆アゼルの子である。
10612 13 8 39 その兄弟エセクの子らは、長子はウラム、次はエウシ、第三はエリペレテである。
10613 13 8 40 ウラムの子らは大勇士で、よく弓を射る者であった。彼は多くの子と孫をもち、百五十人もあった。これらは皆ベニヤミンの子孫である。
10614 13 9 1 このようにすべてのイスラエルびとは系図によって数えられた。これらはイスラエルの列王紀にしるされている。ユダはその不信のゆえにバビロンに捕囚となった。
10615 13 9 2 その領地の町々に最初に住んだものはイスラエルびと、祭司、レビびとおよび宮に仕えるしもべたちであった。
10616 13 9 3 またエルサレムにはユダの子孫、ベニヤミンの子孫およびエフライムとマナセの子孫が住んでいた。
10617 13 9 4 すなわちユダの子ペレヅの子孫のうちではアミホデの子ウタイ。アミホデはオムリの子、オムリはイムリの子、イムリはバニの子である。
10618 13 9 5 シロびとのうちでは長子アサヤとそのほかの子たち。
10619 13 9 6 ゼラの子孫のうちではユエルとその兄弟六百九十人。
10620 13 9 7 ベニヤミンの子孫のうちではハセヌアの子ホダビヤの子であるメシュラムの子サル、
10621 13 9 8 エロハムの子イブニヤ、ミクリの子であるウジの子エラおよびイブニヤの子リウエルの子であるシパテヤの子メシュラム、
10622 13 9 9 ならびに彼らの兄弟たちで、その系図によれば合わせて九百五十六人。これらの人々は皆その氏族の長であった。
10623 13 9 10 祭司のうちではエダヤ、ヨアリブ、ヤキン、
10624 13 9 11 およびヒルキヤの子アザリヤ、ヒルキヤはメシュラムの子、メシュラムはザドクの子、ザドクはメラヨテの子、メラヨテはアヒトブの子である。アザリヤは神の宮のつかさである。
10625 13 9 12 またエロハムの子アダヤ、エロハムはパシュルの子、パシュルはマルキヤの子である。またアデエルの子はマアセヤ、アデエルはヤゼラの子、ヤゼラはメシュラムの子、メシュラムはメシレモテの子、メシレモテはインメルの子である。
10626 13 9 13 そのほかに彼らの兄弟たちもあった。これらはその氏族の長で、合わせて一千七百六十人、みな神の宮の務をするのに、はなはだ力のある人々であった。
10627 13 9 14 レビびとのうちではハシュブの子シマヤ、ハシュブはアズリカムの子、アズリカムはハシャビヤの子で、これらはメラリの子孫である。
10628 13 9 15 またバクバッカル、ヘレシ、ガラル、およびアサフの子ジクリの子であるミカの子マッタニヤ、
10629 13 9 16 ならびにエドトンの子ガラルの子であるシマヤの子オバデヤおよびエルカナの子であるアサの子ベレキヤ、エルカナはネトパびとの村里に住んだ者である。
10630 13 9 17 門を守るものはシャルム、アックブ、タルモン、アヒマンおよびその兄弟たちで、シャルムはその長であった。
10631 13 9 18 彼は今日まで東の方にある王の門を守っている。これらはレビの子孫で営の門を守る者である。
10632 13 9 19 コラの子エビヤサフの子であるコレの子シャルムおよびその氏族の兄弟たちなどのコラびとは幕屋のもろもろの門を守る務をつかさどった。その先祖たちは主の営をつかさどり、その入口を守る者であった。
10633 13 9 20 エレアザルの子ピネハスが、むかし彼らのつかさであった。主は彼とともにおられた。
10634 13 9 21 メシレミヤの子ゼカリヤは会見の幕屋の門を守る者であった。
10635 13 9 22 これらは皆選ばれて門を守る者で、合わせて二百十二人あった。彼らはその村々で系図によって数えられた者で、ダビデと先見者サムエルが彼らを職に任じたのである。
10636 13 9 23 こうして彼らとその子孫は監守人として、主の家である幕屋の家の門をつかさどった。
10637 13 9 24 門を守る者は東西南北の四方にいた。
10638 13 9 25 またその村々にいる兄弟たちは七日ごとに代り、来て彼らを助けた。
10639 13 9 26 門を守る者の長である四人のレビびとは神の家のもろもろの室と宝とをつかさどった。
10640 13 9 27 彼らは神の家を守る身であるから、そのまわりに宿った。そして朝ごとにこれを開くことをした。
10641 13 9 28 そのうちに務の器をつかさどる者があった。彼らはその数を調べて携え入り、またその数を調べて携え出した。
10642 13 9 29 またそのほかの品、すべての聖なる器および麦粉、ぶどう酒、油、乳香、香料をつかさどる者があった。
10643 13 9 30 また祭司のともがらのうちに香料を混ぜる者があった。
10644 13 9 31 コラびとシャルムの長子でレビびとのひとりであるマタテヤはせんべいを造る勤めをつかさどった。
10645 13 9 32 またコハテびとの子孫であるその兄弟たちのうちに供えのパンをつかさどって、安息日ごとにこれを整える者どもがあった。
10646 13 9 33 レビびとの氏族の長であるこれらの者は歌うたう者であって、宮のもろもろの室に住み、ほかの務はしなかった。彼らは日夜自分の務に従ったからである。
10647 13 9 34 これらはレビびとの歴代の氏族の長であって、かしらたる人々であった。彼らはエルサレムに住んだ。
10648 13 9 35 ギベオンの父エヒエルはギベオンに住んでいた。その妻の名はマアカといった。
10649 13 9 36 彼の長子はアブドン、次はツル、キシ、バアル、ネル、ナダブ、
10650 13 9 37 ゲドル、アヒオ、ゼカリヤ、ミクロテである。
10651 13 9 38 ミクロテはシメアムを生んだ。彼らもその兄弟たちとともにエルサレムに住んで、その兄弟たちと向かいあっていた。
10652 13 9 39 ネルはキシを生み、キシはサウルを生み、サウルはヨナタン、マルキシュア、アビナダブ、エシバアルを生んだ。
10653 13 9 40 ヨナタンの子はメリバアルで、メリバアルはミカを生んだ。
10654 13 9 41 ミカの子らはピトン、メレク、タレアおよびアハズである。
10655 13 9 42 アハズはヤラを生み、ヤラはアレメテ、アズマウテおよびジムリを生み、ジムリはモザを生み、
10656 13 9 43 モザはビネアを生んだ。ビネアの子はレパヤ、その子はエレアサ、その子はアゼルである。
10657 13 9 44 アゼルに六人の男の子があった。その名はアズリカム、ボケル、イシマエル、シャリヤ、オバデヤ、ハナン。これらはみなアゼルの子らであった。
10658 13 10 1 さてペリシテびとはイスラエルと戦ったが、イスラエルの人々がペリシテびとの前から逃げ、ギルボア山で殺されて倒れたので、
10659 13 10 2 ペリシテびとはサウルとその子たちのあとを追い、サウルの子ヨナタン、アビナダブおよびマルキシュアを殺した。
10660 13 10 3 戦いは激しくサウルにおし迫り、射手の者どもがついにサウルを見つけたので、彼は射手の者どもに傷を負わされた。
10661 13 10 4 そこでサウルはその武器を執る者に言った、「つるぎを抜き、それをもってわたしを刺せ。さもないと、これらの割礼なき者が来て、わたしをはずかしめるであろう」。しかしその武器を執る者がいたく恐れて聞きいれなかったので、サウルはつるぎをとってその上に伏した。
10662 13 10 5 武器を執る者はサウルの死んだのを見て、自分もまたつるぎの上に伏して死んだ。
10663 13 10 6 こうしてサウルと三人の子らおよびその家族は皆ともに死んだ。
10664 13 10 7 谷にいたイスラエルの人々は皆彼らの逃げるのを見、またサウルとその子らの死んだのを見て、町々をすてて逃げたので、ペリシテびとが来てそのうちに住んだ。
10665 13 10 8 あくる日ペリシテびとは殺された者から、はぎ取るために来て、サウルとその子らのギルボア山に倒れているのを見、
10666 13 10 9 サウルをはいでその首と、よろいかぶとを取り、ペリシテびとの国の四方に人をつかわして、この良き知らせをその偶像と民に告げさせた。
10667 13 10 10 そしてサウルのよろいかぶとを彼らの神の家に置き、首をダゴンの神殿にくぎづけにした。
10668 13 10 11 しかしヤベシ・ギレアデの人々は皆ペリシテびとがサウルにしたことを聞いたので、
10669 13 10 12 勇士たちが皆立ち上がり、サウルのからだとその子らのからだをとって、これをヤベシに持って来て、ヤベシのかしの木の下にその骨を葬り、七日の間、断食した。
10670 13 10 13 こうしてサウルは主にむかって犯した罪のために死んだ。すなわち彼は主の言葉を守らず、また口寄せに問うことをして、
10671 13 10 14 主に問うことをしなかった。それで主は彼を殺し、その国を移してエッサイの子ダビデに与えられた。
10672 13 11 1 ここにイスラエルの人は皆ヘブロンにいるダビデのもとに集まって来て言った、「われわれは、あなたの骨肉です。
10673 13 11 2 先にサウルが王であった時にも、あなたはイスラエルを率いて出入りされました。そしてあなたの神、主はあなたに『あなたはわが民イスラエルを牧する者となり、わが民イスラエルの君となるであろう』と言われました」。
10674 13 11 3 このようにイスラエルの長老が皆ヘブロンにいる王のもとに来たので、ダビデはヘブロンで主の前に彼らと契約を結んだ。そして彼らは、サムエルによって語られた主の言葉に従ってダビデに油を注ぎ、イスラエルの王とした。
10675 13 11 4 ダビデとすべてのイスラエルはエルサレムへ行った。エルサレムはすなわちエブスであって、そこにはその地の住民であるエブスびとがいた。
10676 13 11 5 エブスの住民はダビデに言った、「あなたはここにはいってはならない」。しかし、ダビデはシオンの要害を取った。これがすなわちダビデの町である。
10677 13 11 6 この時ダビデは言った、「だれでも第一にエブスびとを撃つ者を、かしらとし、将とする」。ゼルヤの子ヨアブが第一にのぼっていったので、かしらとなった。
10678 13 11 7 そしてダビデがその要害に住んだので人々はこれをダビデの町と名づけた。
10679 13 11 8 ダビデはまたその町の周囲すなわちミロから四方に石がきを築き、ヨアブは町のほかの部分を繕った。
10680 13 11 9 こうしてダビデはますます大いなる者となった。万軍の主が彼とともにおられたからである。
10681 13 11 10 ダビデの勇士のおもなものは次のとおりである。彼らはイスラエルのすべての人とともにダビデに力をそえて国を得させ、主がイスラエルについて言われた言葉にしたがって、彼を王とした人々である。
10682 13 11 11 ダビデの勇士の数は次のとおりである。すなわち三人の長であるハクモニびとの子ヤショベアム、彼はやりをふるって三百人に向かい、一度にこれを殺した者である。
10683 13 11 12 彼の次はアホアびとドドの子エレアザルで、三勇士のひとりである。
10684 13 11 13 彼はダビデとともにパスダミムにいたが、ペリシテびとがそこに集まって来て戦った。そこに一面に大麦のはえた地所があった。民はペリシテびとの前から逃げた。
10685 13 11 14 しかし彼は地所の中に立ってこれを防ぎ、ペリシテびとを殺した。そして主は大いなる勝利を与えて彼らを救われた。
10686 13 11 15 三十人の長たちのうちの三人は下っていってアドラムのほらあなの岩の所にいるダビデのもとへ行った。時にペリシテびとの軍勢はレパイムの谷に陣を取っていた。
10687 13 11 16 その時ダビデは要害におり、ペリシテびとの先陣はベツレヘムにあったが、
10688 13 11 17 ダビデはせつに望んで、「だれかベツレヘムの門のかたわらにある井戸の水をわたしに飲ませてくれるとよいのだが」と言った。
10689 13 11 18 そこでその三人はペリシテびとの陣を突き通って、ベツレヘムの門のかたわらにある井戸の水をくみ取って、ダビデのもとに携えて来た。しかしダビデはそれを飲もうとはせず、それを主の前に注いで、
10690 13 11 19 言った、「わが神よ、わたしは断じてこれをいたしません。命をかけて行ったこの人たちの血をどうしてわたしは飲むことができましょう。彼らは命をかけてこの水をとって来たのです」。それゆえ、ダビデはこの水を飲もうとはしなかった。三勇士はこのことをおこなった。
10691 13 11 20 ヨアブの兄弟アビシャイは三十人の長であった。彼はやりをふるって三百人に立ち向かい、これを殺して三人のほかに名を得た。
10692 13 11 21 彼は三十人のうち、最も尊ばれた者で、彼らのかしらとなった。しかし、かの三人には及ばなかった。
10693 13 11 22 エホヤダの子ベナヤは、カブジエル出身の勇士であって、多くのてがらを立てた。彼はモアブのアリエルのふたりの子を撃ち殺した。彼はまた雪の日に下っていって、穴の中でししを撃ち殺した。
10694 13 11 23 彼はまた身のたけ五キュビトばかりのエジプトびとを撃ち殺した。そのエジプトびとは手に機の巻棒ほどのやりを持っていたが、ベナヤはつえをとって彼の所へ下って行き、エジプトびとの手から、やりをもぎとり、そのやりをもって彼を殺した。
10695 13 11 24 エホヤダの子ベナヤは、これらの事を行って三勇士のほかに名を得た。
10696 13 11 25 彼は三十人のうちに有名であったが、かの三人には及ばなかった。ダビデは彼を侍衛の長とした。
10697 13 11 26 軍団のうちの勇士はヨアブの兄弟アサヘル。ベツレヘム出身のドドの子エルハナン。
10698 13 11 27 ハロデ出身のシャンマ。ペロンびとヘレヅ。
10699 13 11 28 テコア出身のイッケシの子イラ。アナトテ出身のアビエゼル。
10700 13 11 29 ホシャテびとシベカイ。アホアびとイライ。
10701 13 11 30 ネトパ出身のマハライ。ネトパ出身のバアナの子ヘレデ。
10702 13 11 31 ベニヤミンびとのギベアから出たリバイの子イタイ。ピラトンのベナヤ。
10703 13 11 32 ガアシの谷のホライ。アルバテびとアビエル。
10704 13 11 33 バハルム出身のアズマウテ。シャルボン出身のエリヤバ。
10705 13 11 34 ギゾンびとハセム。ハラルびとシャゲの子ヨナタン。
10706 13 11 35 ハラルびとサカルの子アヒアム。ウルの子エリパル。
10707 13 11 36 メケラテびとヘペル。ペロンびとアヒヤ。
10708 13 11 37 カルメル出身のヘズロ。エズバイの子ナアライ。
10709 13 11 38 ナタンの兄弟ヨエル。ハグリの子ミブハル。
10710 13 11 39 アンモンびとゼレク。ゼルヤの子ヨアブの武器を執るもの、ベエロテ出身のナハライ。
10711 13 11 40 イテルびとイラ。イテルびとガレブ。
10712 13 11 41 ヘテびとウリヤ。アハライの子ザバデ。
10713 13 11 42 ルベンびとシザの子アデナ。彼はルベンびとの長であって、三十人を率いた。
10714 13 11 43 またマアカの子ハナン。ミテニびとヨシャパテ。
10715 13 11 44 アシテラテびとウジヤ。アロエルびとホタムの子らシャマとエイエル。
10716 13 11 45 テジびとシムリの子エデアエルおよびその兄弟ヨハ。
10717 13 11 46 マハブびとエリエル。エルナアムの子らエリバイおよびヨシャビヤ。モアブびとイテマ。
10718 13 11 47 エリエル、オベデおよびメゾバびとヤシエルである。
10719 13 12 1 ダビデがキシの子サウルにしりぞけられて、なおチクラグにいた時、次の人々が彼のもとに来た。彼らはダビデを助けて戦った勇士たちのうちにあり、
10720 13 12 2 弓をよくする者、左右いずれの手をもってもよく矢を射、石を投げる者で、ともにベニヤミンびとで、サウルの同族である。
10721 13 12 3 そのかしらはアヒエゼル、次はヨアシで、ともにギベア出身のシマアの子たちである。またエジエルとペレテで、ともにアズマウテの子たちである。またベラカおよびアナトテ出身のエヒウ。
10722 13 12 4 またギベオン出身のイシマヤ、彼は三十人のうちの勇士で、その三十人の長である。またエレミヤ、ヤハジエル、ヨハナン、ゲデラ出身のヨザバデ、
10723 13 12 5 エルザイ、エリモテ、ベアリヤ、シマリヤ、ハリフびとシパテヤ、
10724 13 12 6 エルカナ、イシア、アザリエル、ヨエゼル、ヤショベアムで、これらはコラびとである。
10725 13 12 7 またゲドルのエロハムの子たちであるヨエラおよびゼバデヤである。
10726 13 12 8 ガドびとのうちから荒野の要害に来て、ダビデについた者は皆勇士で、よく戦う軍人、よく盾とやりをつかう者、その顔はししの顔のようで、その速いことは山にいるしかのようであった。
10727 13 12 9 彼らのかしらはエゼル、次はオバデヤ、第三はエリアブ、
10728 13 12 10 第四はミシマンナ、第五はエレミヤ、
10729 13 12 11 第六はアッタイ、第七はエリエル、
10730 13 12 12 第八はヨナハン、第九はエルザバデ、
10731 13 12 13 第十はエレミヤ、第十一はマクバナイである。
10732 13 12 14 これらはガドの子孫で軍勢の長たる者、その最も小さい者でも百人に当り、その最も大いなる者は千人に当った。
10733 13 12 15 正月、ヨルダンがその全岸にあふれたとき、彼らはこれを渡って、谷々にいる者をことごとく東に西に逃げ走らせた。
10734 13 12 16 ベニヤミンとユダの子孫のうちの人々が要害に来て、ダビデについた。
10735 13 12 17 ダビデは出て彼らを迎えて言った、「あなたがたが好意をもって、わたしを助けるために来たのならば、わたしの心もあなたがたと、ひとつになりましょう。しかし、わたしの手になんの悪事もないのに、もしあなたがたが、わたしを欺いて、敵に渡すためであるならば、われわれの先祖の神がどうぞみそなわして、あなたがたを責められますように」。
10736 13 12 18 時に霊が三十人の長アマサイに臨み、アマサイは言った、「ダビデよ、われわれはあなたのもの。エッサイの子よ、われわれはあなたと共にある。平安あれ、あなたに平安あれ。あなたを助ける者に平安あれ。あなたの神があなたを助けられる」。そこでダビデは彼らを受けいれて部隊の長とした。
10737 13 12 19 さきにダビデがペリシテびとと共にサウルと戦おうと攻めて来たとき、マナセびと数人がダビデについた。(ただしダビデはついにペリシテびとを助けなかった。それはペリシテびとの君たちが相はかって、「彼はわれわれの首をとって、その主君サウルのもとに帰るであろう」と言って、彼を去らせたからである。)
10738 13 12 20 ダビデがチクラグへ行ったとき、マナセびとアデナ、ヨザバデ、エデアエル、ミカエル、ヨザバデ、エリウ、ヂルタイが彼についた。皆マナセびとの千人の長であった。
10739 13 12 21 彼らはダビデを助けて敵軍に当った。彼らは皆大勇士で軍勢の長であった。
10740 13 12 22 ダビデを助ける者が日に日に加わって、ついに大軍となり、神の軍勢のようになった。
10741 13 12 23 主の言葉に従い、サウルの国をダビデに与えようとして、ヘブロンにいるダビデのもとに来た武装した軍隊の数は、次のとおりである。
10742 13 12 24 ユダの子孫で盾とやりをとり、武装した者六千八百人、
10743 13 12 25 シメオンの子孫で、よく戦う勇士七千百人、
10744 13 12 26 レビの子孫からは四千六百人。
10745 13 12 27 エホヤダはアロンの家のつかさで、彼に属する者は三千七百人。
10746 13 12 28 ザドクは年若い勇士で、彼の氏族から出た将軍は二十二人。
10747 13 12 29 サウルの同族、ベニヤミンの子孫からは三千人、ベニヤミンびとの多くはなおサウルの家に忠義をつくしていた。
10748 13 12 30 エフライムの子孫からは二万八百人、皆勇士で、その氏族の名ある人々であった。
10749 13 12 31 マナセの半部族からは一万八千人、皆ダビデを王に立てようとして上って来て、名をつらねた者である。
10750 13 12 32 イッサカルの子孫からはよく時勢に通じ、イスラエルのなすべきことをわきまえた人々が来た。その長たる者が二百人あって、その兄弟たちは皆その指揮に従った。
10751 13 12 33 ゼブルンからは五万人、皆訓練を経た軍隊で、もろもろの武具で身をよろい、一心にダビデを助けた者である。
10752 13 12 34 ナフタリからは将たる者一千人および盾とやりをとってこれに従う者三万七千人。
10753 13 12 35 ダンびとからは武装した者二万八千六百人。
10754 13 12 36 アセルからは戦いの備えをした熟練の者四万人。
10755 13 12 37 またヨルダンのかなたルベンびと、ガドびと、マナセの半部族からはもろもろの武具で身をよろった者十二万人であった。
10756 13 12 38 すべてこれらの戦いの備えをしたいくさびとらは真心をもってヘブロンに来て、ダビデを全イスラエルの王にしようとした。このほかのイスラエルびともまた、心をひとつにしてダビデを王にしようとした。
10757 13 12 39 彼らはヘブロンにダビデとともに三日いて、食い飲みした。その兄弟たちは彼らのために備えをしたからである。
10758 13 12 40 また彼らに近い人々はイッサカル、ゼブルン、ナフタリなどの遠い所の者まで、ろば、らくだ、騾馬、牛などに食物を負わせて来た。すなわち麦粉の食物、干いちじく、干ぶどう、ぶどう酒、油、牛、羊などを多く携えて来た。これはイスラエルに喜びがあったからである。
10759 13 13 1 ここにダビデは千人の長、百人の長などの諸将と相はかり、
10760 13 13 2 そしてダビデはイスラエルの全会衆に言った、「もし、このことをあなたがたがよしとし、われわれの神、主がこれを許されるならば、われわれは、イスラエルの各地に残っているわれわれの兄弟ならびに、放牧地の付いている町々にいる祭司とレビびとに、使をつかわし、われわれの所に呼び集めましょう。
10761 13 13 3 また神の箱をわれわれの所に移しましょう。われわれはサウルの世にはこれをおろそかにしたからです」。
10762 13 13 4 会衆は一同「そうしましょう」と言った。このことがすべての民の目に正しかったからである。
10763 13 13 5 そこでダビデはキリアテ・ヤリムから神の箱を運んでくるため、エジプトのシホルからハマテの入口までのイスラエルをことごとく呼び集めた。
10764 13 13 6 そしてダビデとすべてのイスラエルはバアラすなわちユダのキリアテ・ヤリムに上り、ケルビムの上に座しておられる主の名をもって呼ばれている神の箱をそこからかき上ろうと、
10765 13 13 7 神の箱を新しい車にのせて、アビナダブの家からひきだし、ウザとアヒヨがその車を御した。
10766 13 13 8 ダビデおよびすべてのイスラエルは歌と琴と立琴と、手鼓と、シンバルと、ラッパをもって、力をきわめて神の前に踊った。
10767 13 13 9 彼らがキドンの打ち場に来た時、ウザは手を伸べて箱を押えた。牛がつまずいたからである。
10768 13 13 10 ウザが手を箱につけたことによって、主は彼に向かって怒りを発し、彼を撃たれたので、彼はその所で神の前に死んだ。
10769 13 13 11 主がウザを撃たれたので、ダビデは怒った。その所は今日までペレヅ・ウザと呼ばれている。
10770 13 13 12 その日ダビデは神を恐れて言った、「どうして神の箱を、わたしの所へかいて行けようか」。
10771 13 13 13 それでダビデはその箱を自分の所ダビデの町へは移さず、これを転じてガテびとオベデ・エドムの家に運ばせた。
10772 13 13 14 神の箱は三か月の間、オベデ・エドムの家に、その家族とともにとどまった。主はオベデ・エドムの家族とそのすべての持ち物を祝福された。
10773 13 14 1 ツロの王ヒラムはダビデに使者をつかわし、彼のために家を建てさせようと香柏および石工と木工を送った。
10774 13 14 2 ダビデは主が自分を堅く立ててイスラエルの王とされたことと、その民イスラエルのために彼の国を大いに興されたことを悟った。
10775 13 14 3 ダビデはエルサレムでまた妻たちをめとった。そしてダビデにまたむすこ、娘が生れた。
10776 13 14 4 彼がエルサレムで得た子たちの名は次のとおりである。すなわちシャンマ、ショバブ、、ナタン、ソロモン、
10777 13 14 5 イブハル、エリシュア、エルペレテ、
10778 13 14 6 ノガ、ネペグ、ヤピア、
10779 13 14 7 エリシャマ、ベエリアダ、エリペレテである。
10780 13 14 8 さてペリシテびとはダビデが油を注がれて全イスラエルの王になったことを聞いたので、ペリシテびとはみな上ってきてダビデを捜した。ダビデはこれを聞いてこれに当ろうと出ていったが、
10781 13 14 9 ペリシテびとはすでに来て、レパイムの谷を侵した。
10782 13 14 10 ダビデは神に問うて言った、「ペリシテびとに向かって上るべきでしょうか。あなたは彼らをわたしの手にわたされるでしょうか」。主はダビデに言われた、「上りなさい。わたしは彼らをあなたの手にわたそう」。
10783 13 14 11 そこで彼はバアル・ペラジムへ上っていった。その所でダビデは彼らを打ち敗り、そして言った、「神は破り出る水のように、わたしの手で敵を破られた」。それゆえ、その所の名はバアル・ペラジムと呼ばれている。
10784 13 14 12 彼らが自分たちの神をそこに残して退いたので、ダビデは命じてこれを火で焼かせた。
10785 13 14 13 ペリシテびとは再び谷を侵した。
10786 13 14 14 ダビデが再び神に問うたので神は言われた、「あなたは彼らを追って上ってはならない。遠回りしてバルサムの木の前から彼らを襲いなさい。
10787 13 14 15 バルサムの木の上に行進の音が聞えたならば、あなたは行って戦いなさい。神があなたの前に出てペリシテびとの軍勢を撃たれるからです」。
10788 13 14 16 ダビデは神が命じられたようにして、ペリシテびとの軍勢を撃ち破り、ギベオンからゲゼルに及んだ。
10789 13 14 17 そこでダビデの名はすべての国々に聞えわたり、主はすべての国びとに彼を恐れさせられた。
10790 13 15 1 ダビデはダビデの町のうちに自分のために家を建て、また神の箱のために所を備え、これがために幕屋を張った。
10791 13 15 2 ダビデは言った、「神の箱をかくべき者はただレビびとのみである。主が主の箱をかかせ、また主に長く仕えさせるために彼らを選ばれたからである」。
10792 13 15 3 ダビデは主の箱をこれがために備えた所にかき上るため、イスラエルをことごとくエルサレムに集めた。
10793 13 15 4 ダビデはまたアロンの子孫とレビびとを集めた。
10794 13 15 5 すなわち、コハテの子孫のうちからはウリエルを長としてその兄弟百二十人、
10795 13 15 6 メラリの子孫のうちからはアサヤを長としてその兄弟二百二十人、
10796 13 15 7 ゲルショムの子孫のうちからはヨエルを長としてその兄弟百三十人、
10797 13 15 8 エリザパンの子孫のうちからはシマヤを長としてその兄弟二百人、
10798 13 15 9 ヘブロンの子孫のうちからはエリエルを長としてその兄弟八十人、
10799 13 15 10 ウジエルの子孫のうちからはアミナダブを長としてその兄弟百十二人である。
10800 13 15 11 ダビデは祭司ザドクとアビヤタル、およびレビびとウリエル、アサヤ、ヨエル、シマヤ、エリエル、アミナダブを召し、
10801 13 15 12 彼らに言った、「あなたがたはレビびとの氏族の長である。あなたがたとあなたがたの兄弟はともに身を清め、イスラエルの神、主の箱をわたしがそのために備えた所にかき上りなさい。
10802 13 15 13 さきにこれをかいた者があなたがたでなかったので、われわれの神、主はわれわれを撃たれました。これはわれわれがその定めにしたがってそれを扱わなかったからです」。
10803 13 15 14 そこで祭司たちとレビびとたちはイスラエルの神、主の箱をかき上るために身を清め、
10804 13 15 15 レビびとたちはモーセが主の言葉にしたがって命じたように、神の箱をさおをもって肩にになった。
10805 13 15 16 ダビデはまたレビびとの長たちに、その兄弟たちを選んで歌うたう者となし、立琴と琴とシンバルなどの楽器を打ちはやし、喜びの声をあげることを命じた。
10806 13 15 17 そこでレビびとはヨエルの子ヘマンと、その兄弟ベレキヤの子アサフおよびメラリの子孫である彼らの兄弟クシャヤの子エタンを選んだ。
10807 13 15 18 またこれに次ぐその兄弟たちがこれと共にいた。すなわちゼカリヤ、ヤジエル、セミラモテ、エイエル、ウンニ、エリアブ、ベナヤ、マアセヤ、マッタテヤ、エリペレホ、ミクネヤおよび門を守る者オベデ・エドムとエイエル。
10808 13 15 19 歌うたう者ヘマン、アサフおよびエタンは青銅のシンバルを打ちはやす者であった。
10809 13 15 20 ゼカリヤ、アジエル、セミラモテ、エイエル、ウンニ、エリアブ、マアセヤ、ベナヤはアラモテにしたがって立琴を奏する者であった。
10810 13 15 21 しかしマッタテヤ、エリペレホ、ミクネヤ、オベデ・エドム、エイエル、アザジヤはセミニテにしたがって琴をもって指揮する者であった。
10811 13 15 22 ケナニヤはレビびとの楽長で、音楽に通じていたので、これを指揮した。
10812 13 15 23 ベレキヤとエルカナは箱のために門を守る者であった。
10813 13 15 24 祭司シバニヤ、ヨシャパテ、ネタネル、アマサイ、ゼカリヤ、ベナヤ、エリエゼルらは神の箱の前でラッパを吹き、オベデ・エドムとエヒアは箱のために門を守る者であった。
10814 13 15 25 ダビデとイスラエルの長老たちおよび千人の長たちは行って、オベデ・エドムの家から主の契約の箱を喜び勇んでかき上った。
10815 13 15 26 神が主の契約の箱をかくレビびとを助けられたので、彼らは雄牛七頭、雄羊七頭をささげた。
10816 13 15 27 ダビデは亜麻布の衣服を着ていた。箱をかくすべてのレビびとは、歌うたう者、音楽をつかさどるケナニヤも同様である。ダビデはまた亜麻布のエポデを着ていた。
10817 13 15 28 こうしてイスラエルは皆、声をあげ、角笛を吹きならし、ラッパと、シンバルと、立琴と琴をもって打ちはやして主の契約の箱をかき上った。
10818 13 15 29 主の契約の箱がダビデの町にはいったとき、サウルの娘ミカルが窓からながめ、ダビデ王の舞い踊るのを見て、心のうちに彼をいやしめた。
10819 13 16 1 人々は神の箱をかき入れて、ダビデがそのために張った幕屋のうちに置き、そして燔祭と酬恩祭を神の前にささげた。
10820 13 16 2 ダビデは燔祭と酬恩祭をささげ終えたとき、主の名をもって民を祝福し、
10821 13 16 3 イスラエルの人々に男にも女にもおのおのパン一つ、肉一切れ、干ぶどう一かたまりを分け与えた。
10822 13 16 4 ダビデはまたレビびとのうちから主の箱の前に仕える者を立てて、イスラエルの神、主をあがめ、感謝し、ほめたたえさせた。
10823 13 16 5 楽長はアサフ、その次はゼカリヤ、エイエル、セミラモテ、エヒエル、マッタテヤ、エリアブ、ベナヤ、オベデ・エドム、エイエルで、彼らは立琴と琴を弾じ、アサフはシンバルを打ち鳴らし、
10824 13 16 6 祭司ベナヤとヤハジエルは神の契約の箱の前でつねにラッパを吹いた。
10825 13 16 7 その日ダビデは初めてアサフと彼の兄弟たちを立てて、主に感謝をささげさせた。
10826 13 16 8 主に感謝し、そのみ名を呼び、そのみわざをもろもろの民の中に知らせよ。
10827 13 16 9 主にむかって歌え、主をほめ歌え。そのもろもろのくすしきみわざを語れ。
10828 13 16 10 その聖なるみ名を誇れ。どうか主を求める者の心が喜ぶように。
10829 13 16 11 主とそのみ力とを求めよ。つねにそのみ顔をたずねよ。
10830 13 16 14 彼はわれわれの神、主にいます。そのさばきは全地にある。
10831 13 16 15 主はとこしえにその契約をみこころにとめられる。これはよろずよに命じられたみ言葉であって、
10832 13 16 16 アブラハムと結ばれた契約、イサクに誓われた約束である。
10833 13 16 17 主はこれを堅く立ててヤコブのために定めとし、イスラエルのためにとこしえの契約として、
10834 13 16 18 言われた、「あなたにカナンの地を与えて、あなたがたの受ける嗣業の分け前とする」と。
10835 13 16 19 その時、彼らの数は少なくて、数えるに足らず、かの国で旅びととなり、
10836 13 16 20 国から国へ行き、この国からほかの民へ行った。
10837 13 16 21 主は人の彼らをしえたげるのをゆるされず、彼らのために王たちを懲しめて、
10838 13 16 22 言われた、「わが油そそがれた者たちにさわってはならない。わが預言者たちに害を加えてはならない」と。
10839 13 16 23 全地よ、主に向かって歌え。日ごとにその救を宣べ伝えよ。
10840 13 16 24 もろもろの国の中にその栄光をあらわし、もろもろの民の中にくすしきみわざをあらわせ。
10841 13 16 25 主は大いなるかたにいまして、いとほめたたうべき者、もろもろの神にまさって、恐るべき者だからである。
10842 13 16 26 もろもろの民のすべての神はむなしい。しかし主は天を造られた。
10843 13 16 27 誉と威厳とはそのみ前にあり、力と喜びとはその聖所にある。
10844 13 16 28 もろもろの民のやからよ、主に帰せよ、栄光と力とを主に帰せよ。
10845 13 16 29 そのみ名にふさわしい栄光を主に帰せよ。供え物を携えて主のみ前にきたれ。聖なる装いをして主を拝め。
10846 13 16 30 全地よ、そのみ前におののけ。世界は堅く立って、動かされることはない。
10847 13 16 31 天は喜び、地はたのしみ、もろもろの国民の中に言え、「主は王であられる」と。
10848 13 16 32 海とその中に満つるものとは鳴りどよめき、田畑とその中のすべての物は喜べ。
10849 13 16 33 そのとき林のもろもろの木も主のみ前に喜び歌う。主は地をさばくためにこられるからである。
10850 13 16 34 主に感謝せよ、主は恵みふかく、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
10851 13 16 35 また言え、「われわれの救の神よ、われわれを救い、もろもろの国民の中からわれわれを集めてお救いください。そうすればあなたの聖なるみ名に感謝し、あなたの誉を誇るでしょう。
10852 13 16 36 イスラエルの神、主は、とこしえからとこしえまでほむべきかな」と。その時すべての民は「アァメン」と言って主をほめたたえた。
10853 13 16 37 ダビデはアサフとその兄弟たちを主の契約の箱の前にとめおいて、常に箱の前に仕え、日々のわざを行わせた。
10854 13 16 38 オベデ・エドムとその兄弟たちは合わせて六十八人である。またエドトンの子オベデ・エドムおよびホサは門守であった。
10855 13 16 39 祭司ザドクとその兄弟である祭司たちはギベオンにある高き所で主の幕屋の前に仕え、
10856 13 16 40 主がイスラエルに命じられた律法にしるされたすべてのことにしたがって燔祭の壇の上に朝夕たえず燔祭を主にささげた。
10857 13 16 41 また彼らとともにヘマン、エドトンおよびほかの選ばれて名をしるされた者どもがいて、主のいつくしみの世々限りなきことについて主に感謝した。
10858 13 16 42 すなわちヘマンおよびエドトンは彼らとともにいて、ラッパ、シンバルおよびその他の聖歌のための楽器をとって音楽を奏し、エドトンの子らは門を守った。
10859 13 16 43 こうして民は皆おのおの家に帰り、ダビデはその家族を祝福するために帰って行った。
10860 13 17 1 さてダビデは自分の家に住むようになったとき、預言者ナタンに言った、「見よ、わたしは香柏の家に住んでいるが、主の契約の箱は天幕のうちにある」。
10861 13 17 2 ナタンはダビデに言った、「神があなたとともにおられるから、すべてあなたの心にあるところを行いなさい」。
10862 13 17 3 その夜、神の言葉がナタンに臨んで言った、
10863 13 17 4 「行ってわたしのしもべダビデに告げよ、『主はこう言われる、わたしの住む家を建ててはならない。
10864 13 17 5 わたしはイスラエルを導き上った日から今日まで、家に住まわず、天幕から天幕に、幕屋から幕屋に移ったのである。
10865 13 17 6 わたしがすべてのイスラエルと共に歩んだすべての所で、わたしの民を牧することを命じたイスラエルのさばきづかさのひとりに、ひと言でも、「どうしてあなたがたは、わたしのために香柏の家を建てないのか」と言ったことがあるだろうか』と。
10866 13 17 7 それゆえ今あなたは、わたしのしもべダビデにこう言いなさい、『万軍の主はこう仰せられる、「わたしはあなたを牧場から、羊に従っている所から取って、わたしの民イスラエルの君とし、
10867 13 17 8 あなたがどこへ行くにもあなたと共におり、あなたのすべての敵をあなたの前から断ち去った。わたしはまた地の上の大いなる者の名のような名をあなたに得させよう。
10868 13 17 9 そしてわたしはわが民イスラエルのために一つの所を定めて、彼らを植えつけ、彼らを自分の所に住ませ、重ねて動くことのないようにしよう。
10869 13 17 10 また前のように、すなわちわたしがわが民イスラエルの上にさばきづかさを立てた時からこのかたのように、悪い人が重ねてこれを荒すことはないであろう。わたしはまたあなたのもろもろの敵を征服する。かつわたしは主があなたのために家を建てられることを告げる。
10870 13 17 11 あなたの日が満ち、あなたの先祖たちの所へ行かねばならぬとき、わたしはあなたの子、すなわちあなたの子らのひとりを、あなたのあとに立てて、その王国を堅くする。
10871 13 17 12 彼はわたしのために家を建てるであろう。わたしは長く彼の位を堅くする。
10872 13 17 13 わたしは彼の父となり、彼はわたしの子となる。わたしは、わたしのいつくしみを、あなたのさきにあった者から取り去ったように、彼からは取り去らない。
10873 13 17 14 かえって、わたしは彼を長くわたしの家に、わたしの王国にすえおく。彼の位はとこしえに堅く立つであろう』」。
10874 13 17 15 ナタンはすべてこれらの言葉のように、またすべてこの幻のようにダビデに語った。
10875 13 17 16 そこで、ダビデ王は、はいって主の前に座して言った、「主なる神よ、わたしがだれ、わたしの家がなんであるので、あなたはこれまでわたしを導かれたのですか。
10876 13 17 17 神よ、これはあなたの目には小さな事です。主なる神よ、あなたはしもべの家について、はるか後の事を語って、きたるべき代々のことを示されました。
10877 13 17 18 しもべの名誉については、ダビデはこの上あなたに何を申しあげることができましょう。あなたはしもべを知っておられるからです。
10878 13 17 19 主よ、あなたはしもべのために、またあなたの心にしたがって、このもろもろの大いなる事をなし、すべての大いなる事を知らされました。
10879 13 17 20 主よ、われわれがすべて耳に聞いた所によれば、あなたのようなものはなく、またあなたのほかに神はありません。
10880 13 17 21 また地上のどの国民が、あなたの民イスラエルのようでありましょうか。これは神が行って、自分のためにあがなって民とし、エジプトからあなたがあがない出されたあなたの民の前から国々の民を追い払い、大いなる恐るべき事を行って、名を得られたものではありませんか。
10881 13 17 22 あなたはあなたの民イスラエルを長くあなたの民とされました。主よ、あなたは彼らの神となられたのです。
10882 13 17 23 それゆえ主よ、あなたがしもべと、しもべの家について語られた言葉を長く堅くして、あなたの言われたとおりにしてください。
10883 13 17 24 そうすればあなたの名はとこしえに堅くされ、あがめられて、『イスラエルの神、万軍の主はイスラエルの神である』と言われ、またあなたのしもべダビデの家はあなたの前に堅く立つことができるでしょう。
10884 13 17 25 わが神よ、あなたは彼のために家を建てると、しもべに示されました。それゆえ、しもべはあなたの前に祈る勇気を得ました。
10885 13 17 26 主よ、あなたは神にいまし、この良き事をしもべに約束されました。
10886 13 17 27 それゆえどうぞいま、しもべの家を祝福し、あなたの前に長く続かせてくださるように。主よ、あなたの祝福されるものは長く祝福を受けるからです」。
10887 13 18 1 この後ダビデはペリシテびとを撃ってこれを征服し、ペリシテびとの手からガテとその村々を取った。
10888 13 18 2 彼はまたモアブを撃った。モアブびとはダビデのしもべとなって、みつぎを納めた。
10889 13 18 3 ダビデはまた、ハマテのゾバの王ハダデゼルがユフラテ川のほとりに、その記念碑を建てようとして行ったとき彼を撃った。
10890 13 18 4 そしてダビデは彼から戦車一千、騎兵七千人、歩兵二万人を取った。ダビデは一百の戦車の馬を残して、そのほかの戦車の馬はみなその足の筋を切った。
10891 13 18 5 その時ダマスコのスリヤびとがゾバの王ハダデゼルを助けるために来たので、ダビデはそのスリヤびと二万二千人を殺した。
10892 13 18 6 そしてダビデはダマスコのスリヤに守備隊を置いた。スリヤびとはみつぎを納めてダビデのしもべとなった。主はダビデにすべてその行く所で勝利を与えられた。
10893 13 18 7 ダビデはハダデゼルのしもべらが持っていた金の盾を奪って、エルサレムに持ってきた。
10894 13 18 8 またハダデゼルの町テブハテとクンからダビデは非常に多くの青銅を取った。ソロモンはそれを用いて青銅の海、柱および青銅の器を造った。
10895 13 18 9 時にハマテの王トイはダビデがゾバの王ハダデゼルのすべての軍勢を撃ち破ったことを聞き、
10896 13 18 10 その子ハドラムをダビデ王につかわして、彼にあいさつさせ、かつ祝を述べさせた。ハダデゼルはかつてしばしばトイと戦いを交えたが、ダビデはハダデゼルと戦って、これを撃ち破ったからである。ハドラムは金、銀および青銅のさまざまの器を贈ったので、
10897 13 18 11 ダビデ王はこれをエドム、モアブ、アンモンの人々、ペリシテびと、アマクレなどの諸国民のうちから取ってきた金銀とともに、主にささげた。
10898 13 18 12 ゼルヤの子アビシャイは塩の谷で、エドムびと一万八千を撃ち殺した。
10899 13 18 13 ダビデはエドムに守備隊を置き、エドムびとは皆ダビデのしもべとなった。主はダビデにすべてその行く所で勝利を与えられた。
10900 13 18 14 こうしてダビデはイスラエルの全地を治め、そのすべての民に公道と正義を行った。
10901 13 18 15 ゼルヤの子ヨアブは軍の長、アヒルデの子ヨシャパテは史官、
10902 13 18 16 アヒトブの子ザドクとアビヤタルの子アビメレクは祭司、シャウシャは書記官、
10903 13 18 17 エホヤダの子ベナヤはケレテびととペレテびとの長、ダビデの子たちは王のかたわらにはべる大臣であった。
10904 13 19 1 この後アンモンの人々の王ナハシが死んで、その子がこれに代って王となった。
10905 13 19 2 そのときダビデは言った、「わたしはナハシの子ハヌンに、彼の父がわたしに恵みを施したように、恵みを施そう」。そしてダビデは彼をその父のゆえに慰めようとして使者をつかわした。ダビデのしもべたちはハヌンを慰めるためアンモンの人々の地に来たが、
10906 13 19 3 アンモンの人々のつかさたちはハヌンに言った、「ダビデが慰める者をあなたのもとにつかわしたことによって、あなたは彼があなたの父を尊ぶのだと思われますか。彼のしもべたちが来たのは、この国をうかがい、探って滅ぼすためではありませんか」。
10907 13 19 4 そこでハヌンはダビデのしもべたちを捕えて、そのひげをそり落し、その着物を中ほどから断ち切って腰の所までにして彼らを帰してやった。
10908 13 19 5 ある人々が来て、この人たちのされたことをダビデに告げたので、彼は人をつかわして、彼らを迎えさせた。その人々が非常に恥じたからである。そこで王は言った、「ひげがのびるまでエリコにとどまって、その後帰りなさい」。
10909 13 19 6 アンモンの人々は自分たちがダビデに憎まれることをしたとわかったので、ハヌンおよびアンモンの人々は銀千タラントを送ってメソポタミヤとアラム・マアカ、およびゾバから戦車と騎兵を雇い入れた。
10910 13 19 7 すなわち戦車三万二千およびマアカの王とその軍隊を雇い入れたので、彼らは来てメデバの前に陣を張った。そこでアンモンの人々は町々から寄り集まって、戦いに出動した。
10911 13 19 8 ダビデはこれを聞いてヨアブと勇士の全軍をつかわしたので、
10912 13 19 9 アンモンの人々は出て来て町の入口に戦いの備えをした。また助けに来た王たちは別に野にいた。
10913 13 19 10 時にヨアブは戦いが前後から自分に向かっているのを見て、イスラエルのえり抜きの兵士のうちから選んで、これをスリヤびとに対して備え、
10914 13 19 11 そのほかの民を自分の兄弟アビシャイの手にわたして、アンモンの人々に対して備えさせ、
10915 13 19 12 そして言った、「もしスリヤびとがわたしに手ごわいときは、わたしを助けてください。もしアンモンの人々があなたに手ごわいときは、あなたを助けましょう。
10916 13 19 13 勇ましくしてください。われわれの民のためと、われわれの神の町々のために、勇ましくしましょう。どうか、主が良いと思われることをされるように」。
10917 13 19 14 こうしてヨアブが自分と一緒にいる民と共にスリヤびとに向かって戦おうとして近づいたとき、スリヤびとは彼の前から逃げた。
10918 13 19 15 アンモンの人々はスリヤびとの逃げるのを見て、彼らもまたヨアブの兄弟アビシャイの前から逃げて町にはいった。そこでヨアブはエルサレムに帰った。
10919 13 19 16 しかしスリヤびとは自分たちがイスラエルの前に打ち敗られたのを見て、使者をつかわし、ハダデゼルの軍の長ショパクの率いるユフラテ川の向こう側にいるスリヤびとを引き出した。
10920 13 19 17 この事がダビデに聞えたので、彼はイスラエルをことごとく集め、ヨルダンを渡り、彼らの所に来て、これに向かって戦いの備えをした。ダビデがこのようにスリヤびとに対して戦いの備えをしたとき、彼はダビデと戦った。
10921 13 19 18 しかしスリヤびとがイスラエルの前から逃げたので、ダビデはスリヤびとの戦車の兵七千、歩兵四万を殺し、また軍の長ショパクをも殺した。
10922 13 19 19 ハダデゼルのしもべたちは味方の者がイスラエルに打ち敗られたのを見て、ダビデと和を講じ、彼に仕えた。スリヤびとは再びアンモンびとを助けることをしなかった。
10923 13 20 1 春になって、王たちが戦いに出るに及んで、ヨアブは軍勢を率いてアンモンびとの地を荒し、行ってラバを包囲した。しかしダビデはエルサレムにとどまった。ヨアブはラバを撃って、これを滅ぼした。
10924 13 20 2 そしてダビデは彼らの王の冠をその頭から取りはなした。その金の重さを量ってみると一タラント、またその中に宝石があった。これをダビデの頭に置いた。ダビデはまたその町のぶんどり物を非常に多く持ち出した。
10925 13 20 3 また彼はそのうちの民を引き出して、これをのこぎりと、鉄のつるはしと、おのを使う仕事につかせた。ダビデはアンモンびとのすべての町々にこのように行った。そしてダビデと民とは皆エルサレムに帰った。
10926 13 20 4 この後ゲゼルでペリシテびとと戦いが起った。その時ホシャびとシベカイが巨人の子孫のひとりシパイを殺した。かれらはついに征服された。
10927 13 20 5 ここにまたペリシテびとと戦いがあったが、ヤイルの子エルハナンはガテびとゴリアテの兄弟ラミを殺した。そのやりの柄は機の巻棒のようであった。
10928 13 20 6 またガテに戦いがあったが、そこにひとりの背の高い人がいた。その手の指と足の指は六本ずつで、合わせて二十四本あった。彼もまた巨人から生れた者であった。
10929 13 20 7 彼はイスラエルをののしったので、ダビデの兄弟シメアの子ヨナタンがこれを殺した。
10930 13 20 8 これらはガテで巨人から生れた者であったが、ダビデの手とその家来たちの手に倒れた。
10931 13 21 1 時にサタンが起ってイスラエルに敵し、ダビデを動かしてイスラエルを数えさせようとした。
10932 13 21 2 ダビデはヨアブと軍の将校たちに言った、「あなたがたは行って、ベエルシバからダンまでのイスラエルを数え、その数を調べてわたしに知らせなさい」。
10933 13 21 3 ヨアブは言った、「それがどのくらいあっても、どうか主がその民を百倍に増されるように。しかし王わが主よ、彼らは皆あなたのしもべではありませんか。どうしてわが主はこの事を求められるのですか。どうしてイスラエルに罪を得させられるのですか」。
10934 13 21 4 しかし王の言葉がヨアブに勝ったので、ヨアブは出て行って、イスラエルをあまねく行き巡り、エルサレムに帰って来た。
10935 13 21 5 そしてヨアブは民の総数をダビデに告げた。すなわちイスラエルにはつるぎを抜く者が百十万人、ユダにはつるぎを抜く者が四十七万人あった。
10936 13 21 6 しかしヨアブは王の命令を快しとしなかったので、レビとベニヤミンとはその中に数えなかった。
10937 13 21 7 この事が神の目に悪かったので、神はイスラエルを撃たれた。
10938 13 21 8 そこでダビデは神に言った、「わたしはこの事を行って大いに罪を犯しました。しかし今どうか、しもべの罪を除いてください。わたしは非常に愚かなことをいたしました」。
10939 13 21 9 主はダビデの先見者ガデに告げて言われた、
10940 13 21 10 「行ってダビデに言いなさい、『主はこう仰せられる、わたしは三つの事を示す。あなたはその一つを選びなさい。わたしはそれをあなたに行おう』と」。
10941 13 21 11 ガデはダビデのもとに来て言った、「主はこう仰せられます、『あなたは選びなさい。
10942 13 21 12 すなわち三年のききんか、あるいは三月の間、あなたのあだの前に敗れて、敵のつるぎに追いつかれるか、あるいは三日の間、主のつるぎすなわち疫病がこの国にあって、主の使がイスラエルの全領域にわたって滅ぼすことをするか』。いま、わたしがどういう答をわたしをつかわしたものになすべきか決めなさい」。
10943 13 21 13 ダビデはガデに言った、「わたしは非常に悩んでいるが、主のあわれみは大きいゆえ、わたしを主の手に陥らせてください。しかしわたしを人の手に陥らせないでください」。
10944 13 21 14 そこで主はイスラエルに疫病を下されたので、イスラエルびとのうち七万人が倒れた。
10945 13 21 15 神はまたみ使をエルサレムにつかわして、これを滅ぼそうとされたが、み使がまさに滅ぼそうとしたとき、主は見られて、この災を悔い、その滅ぼすみ使に言われた、「もうじゅうぶんだ。今あなたの手をとどめよ」。そのとき主の使はエブスびとオルナンの打ち場のかたわらに立っていた。
10946 13 21 16 ダビデが目をあげて見ると、主の使が地と天の間に立って、手に抜いたつるぎをもち、エルサレムの上にさし伸べていたので、ダビデと長老たちは荒布を着て、ひれ伏した。
10947 13 21 17 そしてダビデは神に言った、「民を数えよと命じたのはわたしではありませんか。罪を犯し、悪い事をしたのはわたしです。しかしこれらの羊は何をしましたか。わが神、主よ、どうぞあなたの手をわたしと、わたしの父の家にむけてください。しかし災をあなたの民に下さないでください」。
10948 13 21 18 時に主の使はガデに命じ、ダビデが上って行って、エブスびとオルナンの打ち場で主のために一つの祭壇を築くように告げさせた。
10949 13 21 19 そこでダビデはガデが主の名をもって告げた言葉に従って上って行った。
10950 13 21 20 そのときオルナンは麦を打っていたが、ふりかえってみ使を見たので、ともにいた彼の四人の子は身をかくした。
10951 13 21 21 ダビデがオルナンに近づくと、オルナンは目を上げてダビデを見、打ち場から出て来て地にひれ伏してダビデを拝した。
10952 13 21 22 ダビデはオルナンに言った、「この打ち場の所をわたしに与えなさい。わたしは災が民に下るのをとどめるため、そこに主のために一つの祭壇を築きます。あなたは、そのじゅうぶんな価をとってこれをわたしに与えなさい」。
10953 13 21 23 オルナンはダビデに言った、「どうぞこれをお取りなさい。そして王わが主の良しと見られるところを行いなさい。わたしは牛を燔祭のために、打穀機をたきぎのために、麦を素祭のためにささげます。わたしは皆これをささげます」。
10954 13 21 24 ダビデ王はオルナンに言った、「いいえ、わたしはじゅうぶんな代価を払ってこれを買います。わたしは主のためにあなたのものを取ることをしません。また、費えなしに燔祭をささげることをいたしません」。
10955 13 21 25 それでダビデはその所のために金六百シケルをはかって、オルナンに払った。
10956 13 21 26 こうしてダビデは主のために、その所に一つの祭壇を築き、燔祭と酬恩祭をささげて、主を呼んだ。主は燔祭の祭壇の上に天から火を下して答えられた。
10957 13 21 27 また主がみ使に命じられたので、彼はつるぎをさやにおさめた。
10958 13 21 28 その時ダビデは主がエブスびとオルナンの打ち場で自分に答えられたのを見たので、その所で犠牲をささげた。
10959 13 21 29 モーセが荒野で造った主の幕屋と燔祭の祭壇とは、その時ギベオンの高き所にあったからである。
10960 13 21 30 しかしダビデはその前へ行って神に求めることができなかった。彼が主の使のつるぎを恐れたからである。
10961 13 22 1 それでダビデは言った、「主なる神の家はこれである、イスラエルのための燔祭の祭壇はこれである」と。
10962 13 22 2 ダビデは命じてイスラエルの地にいる他国人を集めさせ、また神の家を建てるのに用いる石を切るために石工を定めた。
10963 13 22 3 ダビデはまた門のとびらのくぎ、およびかすがいに用いる鉄をおびただしく備えた。また青銅を量ることもできないほどおびただしく備えた。
10964 13 22 4 また香柏を数えきれぬほど備えた。これはシドンびととツロの人々がおびただしく香柏をダビデの所に持って来たからである。
10965 13 22 5 ダビデは言った、「わが子ソロモンは若く、かつ経験がない。また主のために建てる家はきわめて壮大で、万国に名を得、栄えを得るものでなければならない。それゆえ、わたしはその準備をしておこう」と。こうしてダビデは死ぬ前に多くの物資を準備した。
10966 13 22 6 そして彼はその子ソロモンを召して、イスラエルの神、主のために家を建てることを命じた。
10967 13 22 7 すなわちダビデはソロモンに言った、「わが子よ、わたしはわが神、主の名のために家を建てようと志していた。
10968 13 22 8 ところが主の言葉がわたしに臨んで言われた、『おまえは多くの血を流し、大いなる戦争をした。おまえはわたしの前で多くの血を地に流したから、わが名のために家を建ててはならない。
10969 13 22 9 見よ、男の子がおまえに生れる。彼は平和の人である。わたしは彼に平安を与えて、周囲のもろもろの敵に煩わされないようにしよう。彼の名はソロモンと呼ばれ、彼の世にわたしはイスラエルに平安と静穏とを与える。
10970 13 22 10 彼はわが名のために家を建てるであろう。彼はわが子となり、わたしは彼の父となる。わたしは彼の王位をながくイスラエルの上に堅くするであろう』。
10971 13 22 11 それでわが子よ、どうか主があなたと共にいまし、あなたを栄えさせて、主があなたについて言われたように、あなたの神、主の家を建てさせてくださるように。
10972 13 22 12 ただ、どうか主があなたに分別と知恵を賜い、あなたをイスラエルの上に立たせられるとき、あなたの神、主の律法を、あなたに守らせてくださるように。
10973 13 22 13 あなたがもし、主がイスラエルについてモーセに命じられた定めとおきてとを慎んで守るならば、あなたは栄えるであろう。心を強くし、勇め。恐れてはならない、おののいてはならない。
10974 13 22 14 見よ、わたしは苦難のうちにあって主の家のために金十万タラント、銀百万タラントを備え、また青銅と鉄を量ることもできないほどおびただしく備えた。また材木と石をも備えた。あなたはまたこれに加えなければならない。
10975 13 22 15 あなたにはまた多数の職人、すなわち石や木を切り刻む者、工作に巧みな各種の者がある。
10976 13 22 16 金、銀、青銅、鉄もおびただしくある。たって行いなさい。どうか主があなたと共におられるように」。
10977 13 22 17 ダビデはまたイスラエルのすべてのつかさたちにその子ソロモンを助けるように命じて言った、
10978 13 22 18 「あなたがたの神、主はあなたがたとともにおられるではないか。四方に泰平を賜わったではないか。主はこの地の民をわたしの手にわたされたので、この地は主の前とその民の前に服している。
10979 13 22 19 それであなたがたは心をつくし、精神をつくしてあなたがたの神、主を求めなさい。たって主なる神の聖所を建て、主の名のために建てるその家に、主の契約の箱と神の聖なるもろもろの器を携え入れなさい」。
10980 13 23 1 ダビデは老い、その日が満ちたので、その子ソロモンをイスラエルの王とした。
10981 13 23 2 ダビデはイスラエルのすべてのつかさおよび祭司とレビびとを集めた。
10982 13 23 3 レビびとの三十歳以上のものを数えると、その男の数が三万八千人あった。
10983 13 23 4 ダビデは言った、「そのうち二万四千人は主の家の仕事をつかさどり、六千人はつかさびと、およびさばきびととなり、
10984 13 23 5 四千人は門を守る者となり、また四千人はさんびのためにわたしの造った楽器で主をたたえよ」。
10985 13 23 6 そしてダビデは彼らをレビの子らにしたがってゲルション、コハテ、メラリの組に分けた。
10986 13 23 7 ゲルションの子らはラダンとシメイ。
10987 13 23 8 ラダンの子らは、かしらのエヒエルとゼタムとヨエルの三人。
10988 13 23 9 シメイの子らはシロミテ、ハジエル、ハランの三人。これらはラダンの氏族の長であった。
10989 13 23 10 シメイの子らはヤハテ、ジナ、エウシ、ベリアの四人。皆シメイの子で、
10990 13 23 11 ヤハテはかしら、ジザはその次、エウシとベリアは子が多くなかったので、ともに数えられて一つの氏族となった。
10991 13 23 12 コハテの子らはアムラム、イヅハル、ヘブロン、ウジエルの四人。
10992 13 23 13 アムラムの子らはアロンとモーセである。アロンはその子らとともに、ながくいと聖なるものを聖別するために分かたれて、主の前に香をたき、主に仕え、常に主の名をもって祝福することをなした。
10993 13 23 14 神の人モーセの子らはレビの部族のうちに数えられた。
10994 13 23 15 モーセの子らはゲルションとエリエゼル。
10995 13 23 16 ゲルションの子らは、かしらはシブエル。
10996 13 23 17 エリエゼルの子らは、かしらはレハビヤ。エリエゼルにはこのほかに子がなかった。しかしレハビヤの子らは非常に多かった。
10997 13 23 18 イヅハルの子らは、かしらはシロミテ。
10998 13 23 19 ヘブロンの子らは長子はエリヤ、次はアマリヤ、第三はヤハジエル、第四はエカメアム。
10999 13 23 20 ウジエルの子らは、かしらはミカ、次はイシアである。
11000 13 23 21 メラリの子らはマヘリとムシ。マヘリの子らはエレアザルとキシ。
11001 13 23 22 エレアザルは男の子がなくて死に、ただ娘たちだけであったが、キシの子であるその身内の男たちが彼女たちをめとった。
11002 13 23 23 ムシの子らはマヘリ、エデル、エレモテの三人である。
11003 13 23 24 これらはその氏族によるレビの子孫であって、その人数が数えられ、その名がしるされて、主の家の務をなした二十歳以上の者で、氏族の長であった。
11004 13 23 25 ダビデは言った、「イスラエルの神、主はその民に平安を与え、ながくエルサレムに住まわれる。
11005 13 23 26 レビびとは重ねて幕屋およびその勤めの器物をかつぐことはない。
11006 13 23 27 ――ダビデの最後の言葉によって、レビびとは二十歳以上の者が数えられた――
11007 13 23 28 彼らの務はアロンの子孫を助けて主の家の働きをし、庭とへやの仕事およびすべての聖なるものを清めること、そのほか、すべて神の家の働きをすることである。
11008 13 23 29 また供えのパン、素祭の麦粉、種入れぬ菓子、焼いた供え物、油をまぜた供え物をつかさどり、またすべて分量および大きさを量ることをつかさどり、
11009 13 23 30 また朝ごとに立って主に感謝し、さんびし、夕にもまたそのようにし、
11010 13 23 31 また安息日と新月と祭日に、主にもろもろの燔祭をささげるときは、絶えず主の前にその命じられた数にしたがってささげなければならない。
11011 13 23 32 このようにして彼らは会見の幕屋と聖所の務を守り、主の家の働きのためにその兄弟であるアロンの子らに仕えなければならない」。
11012 13 24 1 アロンの子孫の組は次のとおりである。すなわちアロンの子らはナダブ、アビウ、エレアザル、イタマル。
11013 13 24 2 ナダブとアビウはその父に先だって死に、子がなかったので、エレアザルとイタマルが祭司となった。
11014 13 24 3 ダビデはエレアザルの子孫ザドクとイタマルの子孫アヒメレクの助けによって彼らを分けて、それぞれの勤めにつけた。
11015 13 24 4 エレアザルの子孫のうちにはイタマルの子孫のうちよりも長たる人々が多かった。それでエレアザルの子孫で氏族の長である十六人と、イタマルの子孫で氏族の長である者八人にこれを分けた。
11016 13 24 5 このように彼らは皆ひとしく、くじによって分けられた。聖所のつかさ、および神のつかさは、ともにエレアザルの子孫とイタマルの子孫から出たからである。
11017 13 24 6 レビびとネタネルの子である書記シマヤは、王とつかさたちと祭司ザドクとアビヤタルの子アヒメレクと祭司およびレビびとの氏族の長たちの前で、これを書きしるした。すなわちエレアザルのために氏族一つを取れば、イタマルのためにも一つを取った。
11018 13 24 7 第一のくじはヨアリブに当り、第二はエダヤに当り、
11019 13 24 8 第三はハリムに、第四はセオリムに、
11020 13 24 9 第五はマルキヤに、第六はミヤミンに、
11021 13 24 10 第七はハッコヅに、第八はアビヤに、
11022 13 24 11 第九はエシュアに、第十はシカニヤに、
11023 13 24 12 第十一はエリアシブに、第十二はヤキムに、
11024 13 24 13 第十三はホッパに、第十四はエシバブに、
11025 13 24 14 第十五はビルガに、第十六はインメルに、
11026 13 24 15 第十七はヘジルに、第十八はハピセツに、
11027 13 24 16 第十九はペタヒヤに、第二十はエゼキエルに、
11028 13 24 17 第二十一はヤキンに、第二十二はガムルに、
11029 13 24 18 第二十三はデラヤに、第二十四はマアジヤに当った。
11030 13 24 19 これは、彼らの先祖アロンによって設けられた定めにしたがい、主の家にはいって務をなす順序であって、イスラエルの神、主の彼に命じられたとおりである。
11031 13 24 20 このほかのレビの子孫は次のとおりである。すなわちアムラムの子らのうちではシュバエル。シュバエルの子らのうちではエデヤ。
11032 13 24 21 レハビヤについては、レハビヤの子らのうちでは長子イシア。
11033 13 24 22 イヅハリびとのうちではシロミテ。シロミテの子らのうちではヤハテ。
11034 13 24 23 ヘブロンの子らは長子はエリヤ、次はアマリヤ、第三はヤハジエル、第四はエカメアム。
11035 13 24 24 ウジエルの子らのうちではミカ。ミカの子らのうちではシャミル。
11036 13 24 25 ミカの兄弟はイシア。イシアの子らのうちではゼカリヤ。
11037 13 24 26 メラリの子らはマヘリとムシ。ヤジアの子らはベノ。
11038 13 24 27 メラリの子孫のヤジアから出た者はベノ、ショハム、ザックル、イブリ。
11039 13 24 28 マヘリからエレアザルが出た。彼には子がなかった。
11040 13 24 29 キシについては、キシの子はエラメル。
11041 13 24 30 ムシの子らはマヘリ、エデル、エリモテ。これらはレビびとの子孫で、その氏族によっていった者である。
11042 13 24 31 これらの者もまた氏族の兄もその弟も同様に、ダビデ王と、ザドクと、アヒメレクと、祭司およびレビびとの氏族の長たちの前で、アロンの子孫であるその兄弟たちのようにくじを引いた。
11043 13 25 1 ダビデと軍の長たちはまたアサフ、ヘマンおよびエドトンの子らを勤めのために分かち、琴と、立琴と、シンバルをもって預言する者にした。その勤めをなした人々の数は次のとおりである。
11044 13 25 2 アサフの子たちはザックル、ヨセフ、ネタニヤ、アサレラであって、アサフの指揮のもとに王の命によって預言した者である。
11045 13 25 3 エドトンについては、エドトンの子たちはゲダリヤ、ゼリ、エサヤ、ハシャビヤ、マッタテヤの六人で、琴をもって主に感謝し、かつほめたたえて預言したその父エドトンの指揮の下にあった。
11046 13 25 4 ヘマンについては、ヘマンの子たちはブッキヤ、マッタニヤ、ウジエル、シブエル、エレモテ、ハナニヤ、ハナニ、エリアタ、ギダルテ、ロマムテ・エゼル、ヨシベカシャ、マロテ、ホテル、マハジオテである。
11047 13 25 5 これらは皆、神がご自身の約束にしたがって高くされた王の先見者ヘマンの子たちであった。神はヘマンに男の子十四人、女の子三人を与えられた。
11048 13 25 6 これらの者は皆その父の指揮の下にあって、主の宮で歌をうたい、シンバルと立琴と琴をもって神の宮の務をした。アサフ、エドトンおよびヘマンは王の命の下にあった。
11049 13 25 7 彼らおよび主に歌をうたうことのために訓練され、すべて熟練した兄弟たちの数は二百八十八人であった。
11050 13 25 8 彼らは小なる者も、大なる者も、教師も生徒も皆ひとしくその務のためにくじを引いた。
11051 13 25 9 第一のくじはアサフのためにヨセフに当り、第二はゲダリヤに当った。彼とその兄弟たちおよびその子たち、合わせて十二人。
11052 13 25 10 第三はザックルに当った。その子たちおよびその兄弟たち、合わせて十二人。
11053 13 25 11 第四はイヅリに当った。その子たちおよびその兄弟たち、合わせて十二人。
11054 13 25 12 第五はネタニヤに当った。その子たちおよびその兄弟たち、合わせて十二人。
11055 13 25 13 第六はブッキヤに当った。その子たちおよびその兄弟たち、合わせて十二人。
11056 13 25 14 第七はアサレラに当った。その子たちおよびその兄弟たち、合わせて十二人。
11057 13 25 15 第八はエサヤに当った。その子たちおよびその兄弟たち、合わせて十二人。
11058 13 25 16 第九はマッタニヤに当った。その子たちおよびその兄弟たち、合わせて十二人。
11059 13 25 17 第十はシメイに当った。その子たちおよびその兄弟たち、合わせて十二人。
11060 13 25 18 第十一はアザリエルに当った。その子たちおよびその兄弟たち、合わせて十二人。
11061 13 25 19 第十二はハシャビヤに当った。その子たちおよびその兄弟たち、合わせて十二人。
11062 13 25 20 第十三はシュバエルに当った。その子たちおよびその兄弟たち、合わせて十二人。
11063 13 25 21 第十四はマッタテヤに当った。その子たちおよびその兄弟たち、合わせて十二人。
11064 13 25 22 第十五はエレモテに当った。その子たちおよびその兄弟たち、合わせて十二人。
11065 13 25 23 第十六はハナニヤに当った。その子たちおよびその兄弟たち、合わせて十二人。
11066 13 25 24 第十七はヨシベカシャに当った。その子たちおよびその兄弟たち、合わせて十二人。
11067 13 25 25 第十八はハナニに当った。その子たちおよびその兄弟たち、合わせて十二人。
11068 13 25 26 第十九はマロテに当った。その子たちおよびその兄弟たち、合わせて十二人。
11069 13 25 27 第二十はエリアタに当った。その子たちおよびその兄弟たち、合わせて十二人。
11070 13 25 28 第二十一はホテルに当った。その子たちおよびその兄弟たち、合わせて十二人。
11071 13 25 29 第二十二はギダルテに当った。その子たちおよびその兄弟たち、合わせて十二人。
11072 13 25 30 第二十三はマハジオテに当った。その子たちおよびその兄弟たち、合わせて十二人。
11073 13 25 31 第二十四はロマムテ・エゼルに当った。その子たちおよびその兄弟たち、合わせて十二人であった。
11074 13 26 1 門を守る者の組は次のとおりである。すなわちコラびとのうちでは、アサフの子孫のうちのコレの子メシレミヤ。
11075 13 26 2 メシレミヤの子たちは、長子はゼカリヤ、次はエデアエル、第三はゼバデヤ、第四はヤテニエル、
11076 13 26 3 第五はエラム、第六はヨハナン、第七はエリヨエナイである。
11077 13 26 4 オベデ・エドムの子たちは、長子はシマヤ、次はヨザバデ、第三はヨア、第四はサカル、第五はネタネル、
11078 13 26 5 第六はアンミエル、第七はイッサカル、第八はピウレタイである。神が彼を祝福されたからである。
11079 13 26 6 彼の子シマヤにも数人の子が生れ、有能な人々であったので、その父の家を治める者となった。
11080 13 26 7 すなわちシマヤの子たちはオテニ、レパエル、オベデ、エルザバデで、エルザバデの兄弟エリウとセマキヤは力ある人々であった。
11081 13 26 8 これらは皆オベデ・エドムの子孫である。彼らはその子たちおよびその兄弟たちと共にその勤めに適した力ある人々で、合わせて六十二人、みなオベデ・エドムに属する者である。
11082 13 26 9 メシレミヤにも子たちと兄弟たち合わせて十八人あって、皆力ある人々であった。
11083 13 26 10 メラリの子孫ホサにも子たちがあった。そのかしらはシムリ、これは長子ではなかったが、父はこれをかしらにしたのであった。
11084 13 26 11 次はヒルキヤ、第三はテバリヤ、第四はゼカリヤである。ホサの子たちと兄弟たちは合わせて十三人である。
11085 13 26 12 これらは門を守る者の組の長たる人々であって、その兄弟たちと同様に務をなして、主の宮に仕えた。
11086 13 26 13 彼らはそれぞれ門のために小なる者も、大なる者も等しく、その氏族にしたがってくじを引いた。
11087 13 26 14 東の門のくじはシレミヤに当った。また彼の子で思慮深い議士ゼカリヤのためにくじを引いたが、北の門のくじがこれに当った。
11088 13 26 15 オベデ・エドムには南の門のくじ、その子たちには倉のくじ、
11089 13 26 16 シュパムとホサには西の門のくじが当った。これは坂の大路にあるシャレケテの門のかたわらにあった。守る者と守る者とが相対していた。
11090 13 26 17 東の方には毎日六人、北の方には毎日四人、南の方には毎日四人、倉には二人と二人、
11091 13 26 18 西の方パルバルには大路に四人、パルバルに二人。
11092 13 26 19 門を守る者の組は以上のとおりで、コラの子孫とメラリの子孫であった。
11093 13 26 20 レビびとのうちアヒヤは神の宮の倉および聖なる物の倉をつかさどった。
11094 13 26 21 ラダンの子孫すなわちラダンから出たゲルションびとの子孫で、ゲルションびとの氏族の長はエヒエリである。
11095 13 26 22 エヒエリ、ゼタムおよびその兄弟ヨエルの子たちは主の宮の倉をつかさどった。
11096 13 26 23 アムラムびと、イヅハルびと、ヘブロンびと、ウジエルびとのうちでは次のとおりであった。
11097 13 26 24 すなわちモーセの子ゲルショムの子シブエルは倉のつかさであった。
11098 13 26 25 その兄弟でエリエゼルから出た者は、その子はレハビヤ、その子はエサヤ、その子はヨラム、その子はジクリ、その子はシロミテである。
11099 13 26 26 このシロミテとその兄弟たちはすべての聖なる物の倉をつかさどった。これはダビデ王と、氏族の長と、千人の長と、百人の長と、軍の長たちのささげたものである。
11100 13 26 27 すなわち彼らが戦いで獲たぶんどり物のうちから主の宮の修繕のためにささげたものである。
11101 13 26 28 またすべて先見者サムエル、キシの子サウル、ネルの子アブネル、ゼルヤの子ヨアブなどがささげた物。すべてこれらのささげ物はシロミテとその兄弟たちが管理した。
11102 13 26 29 イヅハルびとのうちでは、ケナニヤとその子たちが、つかさおよびさばきびととしてイスラエルの外事のために選ばれた。
11103 13 26 30 ヘブロンびとのうちでは、ハシャビヤおよびその兄弟など勇士千七百人があって、ヨルダンのこなた、すなわち西の方でイスラエルの監督となり、主のすべての事を行い、王に奉仕した。
11104 13 26 31 ヘブロンびとのうちでは、系図と氏族によってエリヤがヘブロンびとの長であったが、ダビデの治世の第四十年に彼らを尋ね求め、ギレアデのヤゼルで彼らのうちから大勇士を得た。
11105 13 26 32 ダビデ王は彼とその兄弟など氏族の長たち二千七百人の勇士をルベンびと、ガドびと、マナセびとの半部族の監督となし、すべて神につける事と王の事とをつかさどらせた。
11106 13 27 1 イスラエルの子孫のうちで氏族の長、千人の長、百人の長、およびつかさたちは年のすべての月の間、月ごとに交替して組のすべての事をなして王に仕えたが、その数にしたがえば各組二万四千人あった。
11107 13 27 2 まず第一の組すなわち正月の分はザブデエルの子ヤショベアムがこれを率いた。その組には二万四千人あった。
11108 13 27 3 彼はペレヅの子孫で、正月の軍団のすべての将たちのかしらであった。
11109 13 27 4 二月の組はアホアびとドダイがこれを率いた。その組には二万四千人あった。
11110 13 27 5 三月の第三の将は祭司エホヤダの子ベナヤが長であって、その組には二万四千人あった。
11111 13 27 6 このベナヤはかの三十人のうちの勇士であって三十人を率い、その子アミザバデがその組にあった。
11112 13 27 7 四月の第四の将はヨアブの兄弟アサヘルであって、その子ゼバデヤがこれに次いだ。その組には二万四千人あった。
11113 13 27 8 五月の第五の将はイズラヒびとシャンモテであって、その組には二万四千人あった。
11114 13 27 9 六月の第六の将はテコアびとイッケシの子イラであって、その組には二万四千人あった。
11115 13 27 10 七月の第七の将はエフライムの子孫であるペロンびとヘレヅであって、その組には二万四千人あった。
11116 13 27 11 八月の第八の将はゼラびとの子孫であるホシャびとシベカイであって、その組には二万四千人あった。
11117 13 27 12 九月の第九の将はベニヤミンの子孫であるアナトテびとアビエゼルであって、その組には二万四千人あった。
11118 13 27 13 十月の第十の将はゼラびとの子孫であるネトパびとマハライであって、その組には二万四千人あった。
11119 13 27 14 十一月の第十一の将はエフライムの子孫であるピラトンびとベナヤであって、その組には二万四千人あった。
11120 13 27 15 十二月の第十二の将はオテニエルの子孫であるネトパびとヘルダイであって、その組には二万四千人あった。
11121 13 27 16 なおイスラエルの部族を治める者たちは次のとおりである。ルベンびとのつかさはヂクリの子エリエゼル。シメオンびとのつかさはマアカの子シパテヤ。
11122 13 27 17 レビびとのつかさはケムエルの子ハシャビヤ。アロンびとのつかさはザドク。
11123 13 27 18 ユダのつかさはダビデの兄弟のひとりエリウ。イッサカルのつかさはミカエルの子オムリ。
11124 13 27 19 ゼブルンのつかさはオバデヤの子イシマヤ。ナフタリのつかさはアズリエルの子エレモテ。
11125 13 27 20 エフライムの子孫のつかさはアザジヤの子ホセア。マナセの半部族のつかさはペダヤの子ヨエル。
11126 13 27 21 ギレアデにあるマナセの半部族のつかさはゼカリヤの子イド。ベニヤミンのつかさはアブネルの子ヤシエル。
11127 13 27 22 ダンのつかさはエロハムの子アザリエル。これらはイスラエルの部族のつかさたちであった。
11128 13 27 23 しかしダビデは二十歳以下の者は数えなかった。主がかつてイスラエルを天の星のように多くすると言われたからである。
11129 13 27 24 ゼルヤの子ヨアブは数え始めたが、これをなし終えなかった。その数えることによって怒りがイスラエルの上に臨んだ。またその数はダビデ王の歴代志に載せなかった。
11130 13 27 25 アデエルの子アズマウテは王の倉をつかさどり、ウジヤの子ヨナタンは田野、町々、村々、もろもろの塔にある倉をつかさどり、
11131 13 27 26 ケルブの子エズリは地を耕す農夫をつかさどり、
11132 13 27 27 ラマテびとシメイはぶどう畑をつかさどり、シプミびとザブデはぶどう畑から取ったぶどう酒の倉をつかさどり、
11133 13 27 28 ゲデルびとバアル・ハナンは平野のオリブの木といちじく桑の木をつかさどり、ヨアシは油の倉をつかさどり、
11134 13 27 29 シャロンびとシテライはシャロンで飼う牛の群れをつかさどり、アデライの子シャパテはもろもろの谷におる牛の群れをつかさどり、
11135 13 27 30 イシマエルびとオビルはらくだをつかさどり、メロノテびとエデヤはろばをつかさどり、
11136 13 27 31 ハガルびとヤジズは羊の群れをつかさどった。彼らは皆ダビデ王の財産のつかさであった。
11137 13 27 32 またダビデのおじヨナタンは議官で、知恵ある人であり、学者であった。また彼とハクモニの子エヒエルは王の子たちの補佐であった。
11138 13 27 33 アヒトペルは王の議官。アルキびとホシャイは王の友であった。
11139 13 27 34 アヒトペルに次ぐ者はベナヤの子エホヤダおよびアビヤタル。王の軍の長はヨアブであった。
11140 13 28 1 ダビデはイスラエルのすべての長官、すなわち部族の長、王に仕えた組の長、千人の長、百人の長、王とその子たちのすべての財産および家畜のつかさ、宦官、有力者、勇士などをことごとくエルサレムに召し集めた。
11141 13 28 2 そしてダビデ王はその足で立ち上がって言った、「わが兄弟たち、わが民よ、わたしに聞きなさい。わたしは主の契約の箱のため、われわれの神の足台のために安住の家を建てようとの志をもち、すでにこれを建てる準備をした。
11142 13 28 3 しかし神はわたしに言われた、『おまえはわが名のために家を建ててはならない。おまえは軍人であって、多くの血を流したからである』と。
11143 13 28 4 それにもかかわらず、イスラエルの神、主はわたしの父の全家のうちからわたしを選んで長くイスラエルの王とせられた。すなわちユダを選んでかしらとし、ユダの家のうちで、わたしの父の家を選び、わたしの父の子らのうちで、わたしを喜び、全イスラエルの王とせられた。
11144 13 28 5 そして主はわたしに多くの子を賜わり、そのすべての子らのうちからわが子ソロモンを選び、これを主の国の位にすわらせて、イスラエルを治めさせようとせられた。
11145 13 28 6 主はまたわたしに言われた、『おまえの子ソロモンがわが家およびわが庭を造るであろう。わたしは彼を選んでわが子となしたからである。わたしは彼の父となる。
11146 13 28 7 彼がもし今日のように、わが戒めとわがおきてを固く守って行うならば、わたしはその国をいつまでも堅くするであろう』と。
11147 13 28 8 それゆえいま、主の会衆なる全イスラエルの目の前およびわれわれの神の聞かれる所であなたがたに勧める。あなたがたはその神、主のすべての戒めを守り、これを求めなさい。そうすればあなたがたはこの良き地を所有し、これをあなたがたの後の子孫に長く嗣業として伝えることができる。
11148 13 28 9 わが子ソロモンよ、あなたの父の神を知り、全き心をもって喜び勇んで彼に仕えなさい。主はすべての心を探り、すべての思いを悟られるからである。あなたがもし彼を求めるならば会うことができる。しかしあなたがもしかれを捨てるならば彼は長くあなたを捨てられるであろう。
11149 13 28 10 それであなたは慎みなさい。主はあなたを選んで聖所とすべき家を建てさせようとされるのだから心を強くしてこれを行いなさい」。
11150 13 28 11 こうしてダビデは神殿の廊およびその家、その倉、その上の室、その内の室、贖罪所の室などの計画をその子ソロモンに授け、
11151 13 28 12 またその心にあったすべてのもの、すなわち主の宮の庭、周囲のすべての室、神の家の倉、ささげ物の倉などの計画を授け、
11152 13 28 13 また祭司およびレビびとの組と、主の宮のもろもろの務の仕事と、主の宮のもろもろの勤めの器物について授け、
11153 13 28 14 またもろもろの勤めに用いるすべての金の器を造る金の目方、およびもろもろの勤めに用いる銀の器の目方を定めた。
11154 13 28 15 すなわち金の燭台と、そのともしび皿の目方、おのおのの燭台と、そのともしび皿の金の目方を定め、また銀の燭台についてもおのおのの燭台の用法にしたがって燭台と、そのともしび皿の銀の目方を定めた。
11155 13 28 16 また供えのパンの机については、そのおのおのの机のために金の目方を定め、また銀の机のためにも銀を定め、
11156 13 28 17 また肉さし、鉢、かめに用いる純金の目方を定め、金の大杯についてもおのおのの目方を定め、銀の大杯についてもおのおのの目方を定め、
11157 13 28 18 また香の祭壇のために精金の目方を定め、また翼を伸べて主の契約の箱をおおっているケルビムの金の車のひな型の金を定めた。
11158 13 28 19 ダビデはすべての工作が計画にしたがってなされるため、これについて主の手によって書かれたものにより、これをことごとく明らかにした。
11159 13 28 20 ダビデはその子ソロモンに言った、「あなたは心を強くし、勇んでこれを行いなさい。恐れてはならない。おののいてはならない。主なる神、わたしの神があなたとともにおられるからである。主はあなたを離れず、あなたを捨てず、ついに主の宮の務のすべての工事をなし終えさせられるでしょう。
11160 13 28 21 見よ、神の宮のすべての務のためには祭司とレビびとの組がある。またもろもろの勤めのためにすべての仕事を喜んでする巧みな者が皆あなたと共にある。またつかさたちおよびすべての民もあなたの命じるところをことごとく行うでしょう」。
11161 13 29 1 ダビデ王はまた全会衆に言った、「わが子ソロモンは神がただひとりを選ばれた者であるが、まだ若くて経験がなく、この事業は大きい。この宮は人のためではなく、主なる神のためだからである。
11162 13 29 2 そこでわたしは力をつくして神の宮のために備えた。すなわち金の物を造るために金、銀の物のために銀、青銅の物のために青銅、鉄の物のために鉄、木の物のために木を備えた。その他縞めのう、はめ石、アンチモニイ、色のついた石、さまざまの宝石、大理石などおびただしい。
11163 13 29 3 なおわたしはわが神の宮に熱心なるがゆえに、聖なる家のために備えたすべての物に加えて、わたしの持っている金銀の財宝をわが神の宮にささげる。
11164 13 29 4 すなわちオフルの金三千タラント、精銀七千タラントをそのもろもろの建物の壁をおおうためにささげる。
11165 13 29 5 金は金の物のために、銀は銀の物のために、すべて工人によって造られるもののために用いる。だれかきょう、主にその身をささげる者のように喜んでささげ物をするだろうか」。
11166 13 29 6 そこで氏族の長たち、イスラエルの部族のつかさたち、千人の長、百人の長および王の工事をつかさどる者たちは喜んでささげ物をした。
11167 13 29 7 こうして彼らは神の宮の務のために金五千タラント一万ダリク、銀一万タラント、青銅一万八千タラント、鉄十万タラントをささげた。
11168 13 29 8 宝石を持っている者はそれをゲルションびとエヒエルの手によって神の宮の倉に納めた。
11169 13 29 9 彼らがこのように真心からみずから進んで主にささげたので、民はそのみずから進んでささげたのを喜んだ。ダビデ王もまた大いに喜んだ。
11170 13 29 10 そこでダビデは全会衆の前で主をほめたたえた。ダビデは言った、「われわれの先祖イスラエルの神、主よ、あなたはとこしえにほむべきかたです。
11171 13 29 11 主よ、大いなることと、力と、栄光と、勝利と、威光とはあなたのものです。天にあるもの、地にあるものも皆あなたのものです。主よ、国もまたあなたのものです。あなたは万有のかしらとして、あがめられます。
11172 13 29 12 富と誉とはあなたから出ます。あなたは万有をつかさどられます。あなたの手には勢いと力があります。あなたの手はすべてのものを大いならしめ、強くされます。
11173 13 29 13 われわれの神よ、われわれは、いま、あなたに感謝し、あなたの光栄ある名をたたえます。
11174 13 29 14 しかしわれわれがこのように喜んでささげることができても、わたしは何者でしょう。わたしの民は何でしょう。すべての物はあなたから出ます。われわれはあなたから受けて、あなたにささげたのです。
11175 13 29 15 われわれはあなたの前ではすべての先祖たちのように、旅びとです、寄留者です。われわれの世にある日は影のようで、長くとどまることはできません。
11176 13 29 16 われわれの神、主よ、あなたの聖なる名のために、あなたに家を建てようとしてわれわれが備えたこの多くの物は皆あなたの手から出たもの、また皆あなたのものです。
11177 13 29 17 わが神よ、あなたは心をためし、また正直を喜ばれることを、わたしは知っています。わたしは正しい心で、このすべての物を喜んでささげました。今わたしはまた、ここにおるあなたの民が喜んで、みずから進んであなたにささげ物をするのを見ました。
11178 13 29 18 われわれの先祖アブラハム、イサク、イスラエルの神、主よ、あなたの民の心にこの意志と精神とをいつまでも保たせ、その心をあなたに向けさせてください。
11179 13 29 19 またわが子ソロモンに心をつくしてあなたの命令と、あなたのあかしと、あなたのさだめとを守らせて、これをことごとく行わせ、わたしが備えをした宮を建てさせてください」。
11180 13 29 20 そしてダビデが全会衆にむかって、「あなたがたの神、主をほめたたえよ」と言ったので、全会衆は先祖たちの神、主をほめたたえ、伏して主を拝し、王に敬礼した。
11181 13 29 21 そしてその翌日彼らは全イスラエルのために主に犠牲をささげた。すなわち燔祭として雄牛一千、雄羊一千、小羊一千をその灌祭と共に主にささげ、おびただしい犠牲をささげた。
11182 13 29 22 そしてその日、彼らは大いなる喜びをもって主の前に食い飲みした。
11183 13 29 23 こうしてソロモンはその父ダビデに代り、王として主の位に座した。彼は栄え、イスラエルは皆彼に従った。
11184 13 29 24 またすべてのつかさたち、勇士たち、およびダビデ王の王子たちも皆ソロモン王に忠誠を誓った。
11185 13 29 25 主は全イスラエルの目の前でソロモンを非常に大いならしめ、彼より前のイスラエルのどの王も得たことのない王威を彼に与えられた。
11186 13 29 26 このようにエッサイの子ダビデは全イスラエルを治めた。
11187 13 29 27 彼がイスラエルを治めた期間は四十年であった。すなわちヘブロンで七年世を治め、エルサレムで三十三年世を治めた。
11188 13 29 28 彼は高齢に達し、年も富も誉も満ち足りて死んだ。その子ソロモンが彼に代って王となった。
11189 13 29 29 ダビデ王の始終の行為は、先見者サムエルの書、預言者ナタンの書および先見者ガドの書にしるされている。
11190 13 29 30 そのうちには彼のすべての政と、その力および彼とイスラエルと他のすべての国々に臨んだ事どもをしるしている。
11191 14 1 1 ダビデの子ソロモンはその国に自分の地位を確立した。その神、主が共にいまして彼を非常に大いなる者にされた。
11192 14 1 2 ソロモンはすべてのイスラエルびと、すなわち千人の長、百人の長、さばきびとおよびイスラエルの全地のすべてのつかさ、氏族のかしらたちに告げた。
11193 14 1 3 そしてソロモンとイスラエルの全会衆はともにギベオンにある高き所へ行った。主のしもべモーセが荒野で造った神の会見の幕屋がそこにあったからである。
11194 14 1 4 (しかし神の箱はダビデがすでにキリアテ・ヤリムから、これのために備えた所に運び上らせてあった。ダビデはさきに、エルサレムでこれのために天幕を張って置いたからである。)
11195 14 1 5 またホルの子であるウリの子ベザレルが造った青銅の祭壇がその所の主の幕屋の前にあり、ソロモンおよび会衆は主に求めた。
11196 14 1 6 ソロモンはそこに上って行って、会見の幕屋のうちにある主の前の青銅の祭壇に燔祭一千をささげた。
11197 14 1 7 その夜、神はソロモンに現れて言われた、「あなたに何を与えようか、求めなさい」。
11198 14 1 8 ソロモンは神に言った、「あなたはわたしの父ダビデに大いなるいつくしみを示し、またわたしを彼に代って王とされました。
11199 14 1 9 主なる神よ、どうぞわが父ダビデに約束された事を果してください。あなたは地のちりのような多くの民の上にわたしを立てて王とされたからです。
11200 14 1 10 この民の前に出入りすることのできるように今わたしに知恵と知識とを与えてください。だれがこのような大いなるあなたの民をさばくことができましょうか」。
11201 14 1 11 神はソロモンに言われた、「この事があなたの心にあって、富をも、宝をも、誉をも、またあなたを憎む者の命をも求めず、また長命をも求めず、ただわたしがあなたを立てて王としたわたしの民をさばくために知恵と知識とを自分のために求めたので、
11202 14 1 12 知恵と知識とはあなたに与えられている。わたしはまたあなたの前の王たちの、まだ得たことのないほどの富と宝と誉とをあなたに与えよう。あなたの後の者も、このようなものを得ないでしょう」。
11203 14 1 13 それからソロモンはギベオンの高き所を去り、会見の幕屋の前を去って、エルサレムに帰り、イスラエルを治めた。
11204 14 1 14 ソロモンは戦車と騎兵とを集めたが、戦車一千四百両、騎兵一万二千人あった。ソロモンはこれを戦車の町々と、エルサレムの王のもととに置いた。
11205 14 1 15 王は銀と金を石のようにエルサレムに多くし、香柏を平野のいちじく桑のように多くした。
11206 14 1 16 ソロモンが馬を輸入したのはエジプトとクエからであった。すなわち王の貿易商人がクエから代価を払って受け取って来た。
11207 14 1 17 彼らはエジプトから戦車一両を銀六百シケルで輸入し、馬一頭を銀百五十で輸入した。同じようにこれらのものが彼らによってヘテびとのすべての王たち、およびスリヤの王たちにも輸出された。
11208 14 2 1 さてソロモンは主の名のために一つの宮を建て、また自分のために一つの王宮を建てようと思った。
11209 14 2 2 そしてソロモンは荷を負う者七万人、山で石を切り出す者八万人、これらを監督する者三千六百人を数え出した。
11210 14 2 3 ソロモンはまずツロのヒラムに人をつかわして言わせた、「あなたはわたしの父ダビデに、その住むべき家を建てるために香柏を送られました。どうぞ彼にされたように、わたしにもして下さい。
11211 14 2 4 見よ、わたしはわが神、主の名のために一つの家を建て、これを聖別して彼にささげ、彼の前にこうばしい香をたき、常供のパンを供え、また燔祭を安息日、新月、およびわれらの神、主の定めの祭に朝夕ささげ、これをイスラエルのながく守るべき定めにしようとしています。
11212 14 2 5 またわたしの建てる家は大きな家です。われらの神はすべての神よりも大いなる神だからです。
11213 14 2 6 しかし、天も、諸天の天も彼を入れることができないのに、だれが彼のために家を建てることができましょうか。わたしは何者ですか、彼のために家を建てるというのも、ただ彼の前に香をたく所に、ほかならないのです。
11214 14 2 7 それで、どうぞ金、銀、青銅、鉄の細工および紫糸、緋糸、青糸の織物にくわしく、また彫刻の術に巧みな工人ひとりをわたしに送って、父ダビデが備えておいたユダとエルサレムのわたしの工人たちと一緒に働かせてください。
11215 14 2 8 またどうぞレバノンから香柏、いとすぎ、びゃくだんを送ってください。わたしはあなたのしもべたちがレバノンで木を切ることをよくわきまえているのを知っています。わたしのしもべたちも、あなたのしもべたちと一緒に働かせ、
11216 14 2 9 わたしのためにたくさんの材木を備えさせてください。わたしの建てる家は非常に広大なものですから。
11217 14 2 10 わたしは木を切るあなたのしもべたちに砕いた小麦二万コル、大麦二万コル、ぶどう酒二万バテ、油二万バテを与えます」。
11218 14 2 11 そこでツロの王ヒラムは手紙をソロモンに送って答えた、「主はその民を愛するゆえに、あなたを彼らの王とされました」。
11219 14 2 12 ヒラムはまた言った、「天地を造られたイスラエルの神、主はほむべきかな。彼はダビデ王に賢い子を与え、これに分別と知恵を授けて、主のために宮を建て、また自分のために、王宮を建てることをさせられた。
11220 14 2 13 いまわたしは達人ヒラムという知恵のある工人をつかわします。
11221 14 2 14 彼はダンの子孫である女を母とし、ツロの人を父とし、金銀、青銅、鉄、石、木の細工および紫糸、青糸、亜麻糸、緋糸の織物にくわしく、またよくもろもろの彫刻をし、意匠を凝らしてもろもろの工作をします。彼を用いてあなたの工人およびあなたの父、わが主ダビデの工人と一緒に働かせなさい。
11222 14 2 15 それでいまわが主の言われた小麦、大麦、油およびぶどう酒をそのしもべどもに送ってください。
11223 14 2 16 あなたの求められる材木はレバノンから切りだし、いかだに組んで、海からヨッパに送ります。あなたはそれをエルサレムに運び上げなさい」。
11224 14 2 17 そこでソロモンはその父ダビデが数えたようにイスラエルの国にいるすべての他国人を数えたが、合わせて十五万三千六百人あった。
11225 14 2 18 彼はその七万人を荷を負う者とし、八万人を山で木や石を切る者とし、三千六百人を民を働かせる監督者とした。
11226 14 3 1 ソロモンはエルサレムのモリアの山に主の宮を建てることを始めた。そこは父ダビデに主が現れられた所、すなわちエブスびとオルナンの打ち場にダビデが備えた所である。
11227 14 3 2 ソロモンが宮を建て始めたのは、その治世の四年の二月であった。
11228 14 3 3 ソロモンの建てた神の宮の基の寸法は次のとおりである。すなわち昔の尺度によれば長さ六十キュビト、幅二十キュビト、
11229 14 3 4 宮の前の廊は宮の幅に従って長さ二十キュビト高さ百二十キュビトで、その内部は純金でおおった。
11230 14 3 5 またその拝殿はいとすぎの板で張り、精金をもってこれをおおい、その上にしゅろと鎖の形を施した。
11231 14 3 6 また宝石をはめ込んで宮を飾った。その金はパルワイムの金であった。
11232 14 3 7 彼はまた金をもってその宮、すなわち、梁、敷居、壁および戸をおおい、壁の上にケルビムを彫りつけた。
11233 14 3 8 彼はまた至聖所を造った。その長さは宮の長さにしたがって二十キュビト、幅も二十キュビトである。彼は精金六百タラントをもってこれをおおった。
11234 14 3 9 その釘の金の重さは五十シケルであった。彼はまた階上の室も金でおおった。
11235 14 3 10 彼は至聖所に木を刻んだケルビムの像を二つ造り、これを金でおおった。
11236 14 3 11 ケルビムの翼の長さは合わせて二十キュビトあった。すなわち一つのケルブの一つの翼は五キュビトで、宮の壁に届き、ほかの翼も五キュビトで、他のケルブの翼に届き、
11237 14 3 12 他のケルブの一つの翼も五キュビトで、宮の壁に届き、ほかの翼も五キュビトで、先のケルブの翼に接していた。
11238 14 3 13 これらのケルビムの翼は広げると二十キュビトあった。かれらは共に足で立ち、その顔は拝殿に向かっていた。
11239 14 3 14 ソロモンはまた青糸、紫糸、緋糸および亜麻糸で垂幕を造り、その上にケルビムの縫い取りを施した。
11240 14 3 15 彼は宮の前に柱を二本造った。その高さは三十五キュビト、おのおのの柱の頂に五キュビトの柱頭を造った。
11241 14 3 16 彼は首飾のような鎖を造って、柱の頂につけ、ざくろ百を造ってその鎖の上につけた。
11242 14 3 17 彼はこの柱を神殿の前に、一本を南の方に、一本を北の方に立て、南の方のをヤキンと名づけ、北の方のをボアズと名づけた。
11243 14 4 1 ソロモンはまた青銅の祭壇を造った。その長さ二十キュビト、幅二十キュビト、高さ十キュビトである。
11244 14 4 2 彼はまた海を鋳て造った。縁から縁まで十キュビトであって、周囲は円形をなし、高さ五キュビトで、その周囲は綱をもって測ると三十キュビトあった。
11245 14 4 3 海の下には三十キュビトの周囲をめぐるひさごの形があって、海の周囲を囲んでいた。そのひさごは二並びで、海を鋳る時に鋳たものである。
11246 14 4 4 その海は十二の牛の上に置かれ、その三つは北に向かい、三つは西に向かい、三つは南に向かい、三つは東に向かっていた。海はその上に置かれ、牛のうしろはみな内に向かっていた。
11247 14 4 5 海の厚さは手の幅で、その縁は杯の縁のように、ゆりの花に似せて造られた。海には水を三千バテ入れることができた。
11248 14 4 6 彼はまた物を洗うために洗盤十個を造って、五個を南側に、五個を北側に置いた。その中で燔祭に用いるものを洗った。しかし海は祭司がその中で身を洗うためであった。
11249 14 4 7 彼はまた金の燭台十個をその定めに従って造り、拝殿の中の南側に五個、北側に五個を置き、
11250 14 4 8 また机十個を造り、神殿の中の南側に五個、北側に五個を置き、また金の鉢百を造った。
11251 14 4 9 彼はまた祭司の庭と大庭および庭の戸を造り、その戸を青銅でおおった。
11252 14 4 10 彼は海を宮の東南のすみにすえた。
11253 14 4 11 ヒラムはまたつぼと十能と鉢とを造った。こうしてヒラムはソロモン王のため、神の宮の工事を終えた。
11254 14 4 12 すなわち二本の柱と玉と、柱の頂にある二つの柱頭と、柱の頂にある柱頭の二つの玉をおおう二つの網細工と、
11255 14 4 13 その二つの網細工のためのざくろ四百、このざくろはおのおの網細工に二並びにつけて、柱の頂にある柱頭の二つの玉を巻いていた。
11256 14 4 14 彼はまた台と台の上の洗盤と、
11257 14 4 15 一つの海とその下の十二の牛を造った。
11258 14 4 16 つぼ、十能、肉さしなどすべてこれらの器物を、達人ヒラムはソロモン王のため、主の宮のために、光のある青銅で造った。
11259 14 4 17 王はヨルダンの低地で、スコテとゼレダの間の粘土の地でこれを鋳た。
11260 14 4 18 このようにソロモンはこれらのすべての器物を非常に多く造ったので、その青銅の重量は、量ることができなかった。
11261 14 4 19 こうしてソロモンは神の宮のすべての器物を造った。すなわち金の祭壇と、供えのパンを載せる机、
11262 14 4 20 また定めのように本殿の前で火をともす純金の燭台と、そのともしび皿を造った。
11263 14 4 21 その花、ともしび皿、心かきは精金であった。
11264 14 4 22 また心切りばさみ、鉢、香の杯、心取り皿は純金であった。また宮の戸、すなわち至聖所の内部の戸および拝殿の戸のひじつぼは金であった。
11265 14 5 1 こうしてソロモンは主の宮のためにしたすべての工事を終った。そしてソロモンは父ダビデがささげた物、すなわち金銀およびもろもろの器物を携えて行って神の宮の宝蔵に納めた。
11266 14 5 2 ソロモンは主の契約の箱をダビデの町シオンからかつぎ上ろうとして、イスラエルの長老たちと、すべての部族のかしらたちと、イスラエルの人々の氏族の長たちをエルサレムに召し集めた。
11267 14 5 3 イスラエルの人々は皆七月の祭に王のもとに集まった。
11268 14 5 4 イスラエルの長老たちが皆きたので、レビびとたちは箱を取り上げた。
11269 14 5 5 彼らは箱と、会見の幕屋と、幕屋にあるすべて聖なる器をかつぎ上った。すなわち祭司とレビびとがこれらの物をかつぎ上った。
11270 14 5 6 ソロモン王および彼のもとに集まったイスラエルの会衆は皆箱の前で羊と牛をささげたが、その数が多くて、調べることも数えることもできなかった。
11271 14 5 7 こうして祭司たちは主の契約の箱をその場所にかつぎ入れ、宮の本殿である至聖所のうちのケルビムの翼の下に置いた。
11272 14 5 8 ケルビムは翼を箱の所の上に伸べていたので、ケルビムは上から箱とそのさおをおおった。
11273 14 5 9 さおは長かったので、さおの端が本殿の前の聖所から見えた。しかし外部には見えなかった。さおは今日までそこにある。
11274 14 5 10 箱の内には二枚の板のほか何もなかった。これはイスラエルの人々がエジプトから出て来たとき、主が彼らと契約を結ばれ、モーセがホレブでそれを納めたものである。
11275 14 5 11 そして祭司たちが聖所から出たとき(ここにいた祭司たちは皆、その組の順にかかわらず身を清めた。
11276 14 5 12 またレビびとの歌うたう者、すなわちアサフ、ヘマン、エドトンおよび彼らの子たちと兄弟たちはみな亜麻布を着、シンバルと、立琴と、琴をとって祭壇の東に立ち、百二十人の祭司は彼らと一緒に立ってラッパを吹いた。
11277 14 5 13 ラッパ吹く者と歌うたう者とは、ひとりのように声を合わせて主をほめ、感謝した)、そして彼らがラッパと、シンバルとその他の楽器をもって声をふりあげ、主をほめて「主は恵みあり、そのあわれみはとこしえに絶えることがない」と言ったとき、雲はその宮すなわち主の宮に満ちた。
11278 14 5 14 祭司たちは雲のゆえに立って勤めをすることができなかった。主の栄光が神の宮に満ちたからである。
11279 14 6 1 そこでソロモンは言った、「主はみずから濃き雲の中に住まおうと言われた。
11280 14 6 2 しかしわたしはあなたのために高き家、とこしえのみすまいを建てた」。
11281 14 6 3 そして王は顔をふり向けてイスラエルの全会衆を祝福した。その時イスラエルの全会衆は立っていた。
11282 14 6 4 彼は言った、「イスラエルの神、主はほむべきかな。主は口をもってわが父ダビデに約束されたことを、その手をもってなし遂げられた。すなわち主は言われた、
11283 14 6 5 『わが民をエジプトの地から導き出した日から、わたしはわが名を置くべき家を建てるために、イスラエルのもろもろの部族のうちから、どの町をも選んだことがなく、また他のだれをもわが民イスラエルの君として選んだことがない。
11284 14 6 6 わが名を置くために、ただエルサレムだけを選び、またわが民イスラエルを治めさせるために、ただダビデだけを選んだ』。
11285 14 6 7 イスラエルの神、主の名のために家を建てることは、父ダビデの心にあった。
11286 14 6 8 しかし主は父ダビデに言われた、『わたしの名のために家を建てることはあなたの心にあった。あなたの心にこの事のあったのは結構である。
11287 14 6 9 しかしあなたはその家を建ててはならない。あなたの腰から出るあなたの子がわたしの名のために家を建てるであろう』。
11288 14 6 10 そして主はそう言われた言葉を行われた。すなわちわたしは父ダビデに代って立ち、主が言われたように、イスラエルの位に座し、イスラエルの神、主の名のために家を建てた。
11289 14 6 11 わたしはまた、主がイスラエルの人々と結ばれた主の契約を入れた箱をそこに納めた」。
11290 14 6 12 ソロモンはイスラエルの全会衆の前、主の祭壇の前に立って、手を伸べた。
11291 14 6 13 ソロモンはさきに長さ五キュビト、幅五キュビト、高さ三キュビトの青銅の台を造って、庭のまん中にすえて置いたので、彼はその上に立ち、イスラエルの全会衆の前でひざをかがめ、その手を天に伸べて、
11292 14 6 14 言った、「イスラエルの神、主よ、天にも地にも、あなたのような神はありません。あなたは契約を守られ、心をつくしてあなたの前に歩むあなたのしもべらに、いつくしみを施し、
11293 14 6 15 あなたのしもべ、わたしの父ダビデに約束されたことを守られました。あなたが口をもって約束されたことを、手をもってなし遂げられたことは、今日見るとおりであります。
11294 14 6 16 それゆえ、イスラエルの神、主よ、あなたのしもべ、わたしの父ダビデに、あなたが約束して、『おまえがわたしの前に歩んだように、おまえの子孫がその道を慎んで、わたしのおきてに歩むならば、おまえにはイスラエルの位に座する人がわたしの前に欠けることはない』と言われたことを、ダビデのためにお守りください。
11295 14 6 17 それゆえ、イスラエルの神、主よ、どうぞ、あなたのしもべダビデに言われた言葉を確認してください。
11296 14 6 18 しかし神は、はたして人と共に地上に住まわれるでしょうか。見よ、天も、いと高き天もあなたをいれることはできません。わたしの建てたこの家などなおさらです。
11297 14 6 19 しかしわが神、主よ、しもべの祈と願いを顧みて、しもべがあなたの前にささげる叫びと祈をお聞きください。
11298 14 6 20 どうぞ、あなたの目を昼も夜もこの家に、すなわち、あなたの名をそこに置くと言われた所に向かってお開きください。どうぞ、しもべがこの所に向かってささげる祈をお聞きください。
11299 14 6 21 どうぞ、しもべと、あなたの民イスラエルがこの所に向かって祈る時に、その願いをお聞きください。あなたのすみかである天から聞き、聞いておゆるしください。
11300 14 6 22 もし人がその隣り人に対して罪を犯し、誓いをすることを求められるとき、来てこの宮で、あなたの祭壇の前に誓うならば、
11301 14 6 23 あなたは天から聞いて、行い、あなたのしもべらをさばき、悪人に報いをなして、その行いの報いをそのこうべに帰し、義人を義として、その義にしたがってその人に報いてください。
11302 14 6 24 もしあなたの民イスラエルが、あなたに対して罪を犯したために、敵の前に敗れた時、あなたに立ち返って、あなたの名をあがめ、この宮であなたの前に祈り願うならば、
11303 14 6 25 あなたは天から聞き、あなたの民イスラエルの罪をゆるして、あなたが彼らとその先祖に与えられた地に彼らを帰らせてください。
11304 14 6 26 もし彼らがあなたに罪を犯したために、天が閉ざされて、雨がなく、あなたが彼らを苦しめられるとき、彼らがこの所に向かって祈り、あなたの名をあがめ、その罪を離れるならば、
11305 14 6 27 あなたは天にあって聞き、あなたのしもべ、あなたの民イスラエルの罪をゆるして、彼らに歩むべき良い道を教え、あなたの民に嗣業として賜わった地に雨を降らせてください。
11306 14 6 28 もし国にききんがあるか、もしくは疫病、立ち枯れ、腐り穂、いなご、青虫があるか、または敵のために町の門の中に攻め囲まれることがあるか、どんな災害、どんな病気があっても、
11307 14 6 29 もし、ひとりか、あるいはあなたの民イスラエルが皆おのおのその心の悩みを知って、この宮に向かい、手を伸べるならば、どんな祈、どんな願いでも、
11308 14 6 30 あなたはそのすみかである天から聞いてゆるし、おのおのの人に、その心を知っておられるゆえ、そのすべての道にしたがって報いてください。ただあなただけがすべての人の心を知っておられるからです。
11309 14 6 31 あなたがわれわれの先祖たちに賜わった地に、彼らの生きながらえる日の間、常にあなたを恐れさせ、あなたの道に歩ませてください。
11310 14 6 32 またあなたの民イスラエルの者でなく、他国人で、あなたの大いなる名と、強い手と、伸べた腕のために遠い国から来て、この宮に向かって祈るならば、
11311 14 6 33 あなたは、あなたのすみかである天から聞き、すべて他国人があなたに呼び求めるようにしてください。そうすれば地のすべての民はあなたの民イスラエルのように、あなたの名を知り、あなたを恐れ、またわたしが建てたこの宮が、あなたの名によって呼ばれることを知るにいたるでしょう。
11312 14 6 34 あなたの民が敵と戦うために、あなたがつかわされる道によって出るとき、もし彼らがあなたの選ばれたこの町と、わたしがあなたの名のために建てたこの宮に向かってあなたに祈るならば、
11313 14 6 35 あなたは天から彼らの祈と願いとを聞いて彼らをお助けください。
11314 14 6 36 彼らがあなたに対して罪を犯すことがあって、――罪を犯さない人はないゆえ、――あなたが彼らを怒って、敵にわたし、敵が彼らを捕虜として遠い地あるいは近い地に引いて行くとき、
11315 14 6 37 もし、彼らが捕われて行った地で、みずから省みて悔い、その捕われの地であなたに願い、『われわれは罪を犯し、よこしまな事をし、悪を行いました』と言い、
11316 14 6 38 その捕われの地で心をつくし、精神をつくしてあなたに立ち返り、あなたが彼らの先祖に与えられた地、あなたが選ばれた町、わたしがあなたの名のために建てたこの宮に向かって祈るならば、
11317 14 6 39 あなたのすみかである天から、彼らの祈と願いとを聞いて彼らを助け、あなたに向かって罪を犯したあなたの民をおゆるしください。
11318 14 6 40 わが神よ、どうぞ、この所でささげる祈にあなたの目を開き、あなたの耳を傾けてください。
11319 14 6 41 主なる神よ、今あなたと、あなたの力の箱が立って、あなたの安息所におはいりください。主なる神よ、どうぞあなたの祭司たちに救の衣を着せ、あなたの聖徒たちに恵みを喜ばせてください。
11320 14 6 42 主なる神よ、どうぞあなたの油そそがれた者の顔を退けないでください。あなたのしもべダビデに示されたいつくしみを覚えて下さい」。
11321 14 7 1 ソロモンが祈り終ったとき、天から火が下って燔祭と犠牲を焼き、主の栄光が宮に満ちた。
11322 14 7 2 主の栄光が主の宮に満ちたので、祭司たちは主の宮に、はいることができなかった。
11323 14 7 3 イスラエルの人々はみな火が下ったのを見、また主の栄光が宮に臨んだのを見て、敷石の上で地にひれ伏して拝し、主に感謝して言った、「主は恵みふかく、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない」。
11324 14 7 4 そして王と民は皆主の前に犠牲をささげた。
11325 14 7 5 ソロモン王のささげた犠牲は、牛二万二千頭、羊十二万頭であった。こうして王と民は皆神の宮をささげた。
11326 14 7 6 祭司はその持ち場に立ち、レビびとも主の楽器をとって立った。その楽器はダビデ王が主に感謝するために造ったもので、ダビデが彼らの手によってさんびをささげるとき、「そのいつくしみは、とこしえに絶えることがない」ととなえさせたものである。祭司は彼らの前でラッパを吹き、すべてのイスラエルびとは立っていた。
11327 14 7 7 ソロモンはまた主の宮の前にある庭の中を聖別し、その所で、燔祭と酬恩祭のあぶらをささげた。これはソロモンが造った青銅の祭壇が、その燔祭と素祭とあぶらとを載せるに足りなかったからである。
11328 14 7 8 その時ソロモンは七日の間祭を行った。ハマテの入口からエジプトの川に至るまでのすべてのイスラエルびとが彼と共にあり、非常に大きな会衆であった。
11329 14 7 9 そして八日目に聖会を開いた。彼らは七日の間、祭壇奉献の礼を行い、七日の間祭を行ったが、
11330 14 7 10 七月二十三日に至ってソロモンは民をその天幕に帰らせた。皆主がダビデ、ソロモンおよびその民イスラエルに施された恵みのために喜び、かつ心に楽しんで去った。
11331 14 7 11 こうしてソロモンは主の家と王の家とを造り終えた。すなわち彼は主の家と自分の家について、しようと計画したすべての事を首尾よくなし遂げた。
11332 14 7 12 時に主は夜ソロモンに現れて言われた、「わたしはあなたの祈を聞き、この所をわたしのために選んで、犠牲をささげる家とした。
11333 14 7 13 わたしが天を閉じて雨をなくし、またはわたしがいなごに命じて地の物を食わせ、または疫病を民の中に送るとき、
11334 14 7 14 わたしの名をもってとなえられるわたしの民が、もしへりくだり、祈って、わたしの顔を求め、その悪い道を離れるならば、わたしは天から聞いて、その罪をゆるし、その地をいやす。
11335 14 7 15 今この所にささげられる祈にわたしの目を開き、耳を傾ける。
11336 14 7 16 今わたしはわたしの名をながくここにとどめるために、この宮を選び、かつ聖別した。わたしの目とわたしの心は常にここにある。
11337 14 7 17 あなたがもし父ダビデの歩んだようにわたしの前に歩み、わたしが命じたとおりにすべて行って、わたしの定めとおきてとを守るならば、
11338 14 7 18 わたしはあなたの父ダビデに契約して『イスラエルを治める人はあなたに欠けることがない』と言ったとおりに、あなたの王の位を堅くする。
11339 14 7 19 しかし、あなたがたがもし翻って、わたしがあなたがたの前に置いた定めと戒めとを捨て、行って他の神々に仕え、それを拝むならば、
11340 14 7 20 わたしはあなたがたをわたしの与えた地から抜き去り、またわたしの名のために聖別したこの宮をわたしの前から投げ捨てて、もろもろの民のうちにことわざとし、笑い草とする。
11341 14 7 21 またこの宮は高いけれども、ついには、そのかたわらを過ぎる者は皆驚いて、『何ゆえ主はこの地と、この宮とにこのようにされたのか』と言うであろう。
11342 14 7 22 その時、人々は答えて『彼らはその先祖たちをエジプトの地から導き出した彼らの神、主を捨てて、他の神々につき従い、それを拝み、それに仕えたために、主はこのすべての災を彼らの上に下したのである』と言うであろう」。
11343 14 8 1 ソロモンは二十年を経て、主の家と自分の家とを建て終った。
11344 14 8 2 またソロモンはヒラムから送られた町々を建て直して、そこにイスラエルの人々を住ませた。
11345 14 8 3 ソロモンはまたハマテ・ゾバを攻めて、これを取った。
11346 14 8 4 彼はまた荒野にタデモルを建て、もろもろの倉の町をハマテに建てた。
11347 14 8 5 また城壁、門、貫の木のある堅固な町、上ベテホロンと下ベテホロンを建てた。
11348 14 8 6 ソロモンはまたバアラテと自分のもっていたすべての倉の町と、すべての戦車の町と、騎兵の町、ならびにエルサレム、レバノンおよび自分の治める全地方に建てようと望んだものを、ことごとく建てた。
11349 14 8 7 すべてイスラエルの子孫でないヘテびと、アモリびと、ペリジびと、ヒビびと、エブスびとの残った民、
11350 14 8 8 その地にあって彼らのあとに残ったその子孫、すなわちイスラエルの子孫が滅ぼし尽さなかった民に、ソロモンは強制徴募をおこなって今日に及んでいる。
11351 14 8 9 しかし、イスラエルの人々をソロモンはその工事のためには、ひとりも奴隷としなかった。彼らは兵士となり、将校となり、戦車と、騎兵の長となった。
11352 14 8 10 これらはソロモン王のおもな官吏で、二百五十人あり、民を治めた。
11353 14 8 11 ソロモンはパロの娘をダビデの町から連れ上って、彼女のために建てた家に入れて言った、「主の箱を迎えた所は神聖であるから、わたしの妻はイスラエルの王ダビデの家に住んではならない」。
11354 14 8 12 ソロモンは廊の前に築いておいた主の祭壇の上で主に燔祭をささげた。
11355 14 8 13 すなわちモーセの命令に従って、毎日定めのようにささげ、安息日、新月および年に三度の祭、すなわち種入れぬパンの祭、七週の祭、仮庵の祭にこれをささげた。
11356 14 8 14 ソロモンは、その父ダビデのおきてに従って、祭司の組を定めてその職に任じ、またレビびとをその勤めに任じて、毎日定めのように祭司の前でさんびと奉仕をさせ、また門を守る者に、その組にしたがって、もろもろの門を守らせた。これは神の人ダビデがこのように命じたからである。
11357 14 8 15 祭司とレビびとはすべての事につき、また倉の事について、王の命令にそむかなかった。
11358 14 8 16 このようにソロモンは、主の宮の基をすえた日からこれをなし終えたときまで、その工事の準備をことごとくなしたので、主の宮は完成した。
11359 14 8 17 それからソロモンはエドムの地の海べにあるエジオン・ゲベルおよびエロテへ行った。
11360 14 8 18 時にヒラムはそのしもべどもの手によって船団を彼に送り、また海の事になれたしもべどもをつかわしたので、彼らはソロモンのしもべらと共にオフルへ行き、そこから金四百五十タラントを取って、これをソロモン王のもとに携えてきた。
11361 14 9 1 シバの女王はソロモンの名声を聞いたので、難問をもってソロモンを試みようと、非常に多くの従者を連れ、香料と非常にたくさんの金と宝石とをらくだに負わせて、エルサレムのソロモンのもとに来て、その心にあることをことごとく彼に告げた。
11362 14 9 2 ソロモンは彼女のすべての問に答えた。ソロモンが知らないで彼女に説明のできないことは一つもなかった。
11363 14 9 3 シバの女王はソロモンの知恵と、彼が建てた家を見、
11364 14 9 4 またその食卓の食物と、列座の家来たちと、その侍臣たちの伺候振りと彼らの服装、および彼の給仕たちとその服装、ならびに彼が主の宮でささげる燔祭を見て、全く気を奪われてしまった。
11365 14 9 5 彼女は王に言った、「わたしが国であなたの事と、あなたの知恵について聞いたうわさは真実でした。
11366 14 9 6 しかしわたしは来て目に見るまでは、そのうわさを信じませんでしたが、今見ると、あなたの知恵の大いなることはその半分もわたしに知らされませんでした。あなたはわたしの聞いたうわさにまさっています。
11367 14 9 7 あなたの奥方たちはさいわいです。常にあなたの前に立って、あなたの知恵を聞くこのあなたの家来たちはさいわいです。
11368 14 9 8 あなたの神、主はほむべきかな。主はあなたを喜び、あなたをその位につかせ、あなたの神、主のために王とされました。あなたの神はイスラエルを愛して、とこしえにこれを堅くするために、あなたをその王とされ、公道と正義を行われるのです」。
11369 14 9 9 そして彼女は金百二十タラント、および非常に多くの香料と宝石とを王に贈った。シバの女王がソロモンに贈ったような香料は、いまだかつてなかった。
11370 14 9 10 オフルから金を携えて来たヒラムのしもべたちとソロモンのしもべたちはまた、びゃくだんの木と宝石をも携えて来た。
11371 14 9 11 王はそのびゃくだんの木で、主の宮と王の家とに階段を造り、また歌うたう者のために琴と立琴を造った。このようなものはかつてユダの地で見たことがなかった。
11372 14 9 12 ソロモン王は、シバの女王が贈った物に報いたほかに、彼女の望みにまかせて、すべてその求めるものを贈った。そして彼女はその家来たちと共に自分の国へ帰って行った。
11373 14 9 13 さて一年の間にソロモンの所にはいって来た金の目方は六百六十六タラントであった。
11374 14 9 14 このほかに貿易商および商人の携えて来たものがあった。またアラビヤのすべての王たちおよび国の代官たちも金銀をソロモンに携えてきた。
11375 14 9 15 ソロモン王は延金の大盾二百を造った。その大盾にはおのおの六百シケルの延金を用いた。
11376 14 9 16 また延金の小盾三百を造った。小盾にはおのおの三百シケルの金を用いた。王はこれらをレバノンの森の家に置いた。
11377 14 9 17 王はまた大きな象牙の玉座を造り、純金でこれをおおった。
11378 14 9 18 その玉座には六つの段があり、また金の足台があって共に玉座につらなり、その座する所の両方に、ひじかけがあって、ひじかけのわきに二つのししが立っていた。
11379 14 9 19 また十二のししが六つの段のおのおのの両側に立っていた。このような物はどこの国でも造られたことがなかった。
11380 14 9 20 ソロモン王が飲むときに用いた器はみな金であった。またレバノンの森の家の器もみな純金であって、銀はソロモンの世には尊ばれなかった。
11381 14 9 21 これは王の船がヒラムのしもべたちを乗せてタルシシへ行き、三年ごとに一度、そのタルシシの船が金、銀、象牙、さる、くじゃくを載せて来たからである。
11382 14 9 22 このようにソロモン王は富と知恵において、地のすべての王にまさっていたので、
11383 14 9 23 地のすべての王は神がソロモンの心に授けられた知恵を聞こうとしてソロモンに謁見を求めた。
11384 14 9 24 人々はおのおの贈り物を携えてきた。すなわち銀の器、金の器、衣服、没薬、香料、馬、騾馬など年々定まっていた。
11385 14 9 25 ソロモンは馬と戦車のために馬屋四千と騎兵一万二千を持ち、これを戦車の町に置き、またエルサレムの王のもとに置いた。
11386 14 9 26 彼はユフラテ川からペリシテびとの地と、エジプトの境に至るまでのすべての王を治めた。
11387 14 9 27 王はまた銀を石のようにエルサレムに多くし、香柏を平野のいちじく桑のように多くした。
11388 14 9 28 また人々はエジプトおよび諸国から馬をソロモンのために輸入した。
11389 14 9 29 ソロモンのそのほかの始終の行為は、預言者ナタンの書と、シロびとアヒヤの預言と、先見者イドがネバテの子ヤラベアムについて述べた黙示のなかに、しるされているではないか。
11390 14 9 30 ソロモンはエルサレムで四十年の間イスラエルの全地を治めた。
11391 14 9 31 ソロモンはその先祖たちと共に眠って、父ダビデの町に葬られ、その子レハベアムが代って王となった。
11392 14 10 1 レハベアムはシケムへ行った。すべてのイスラエルびとが彼を王にしようとシケムへ行ったからである。
11393 14 10 2 ネバテの子ヤラベアムは、ソロモンを避けてエジプトにのがれていたが、これを聞いてエジプトから帰ったので、
11394 14 10 3 人々は人をつかわして彼を招いた。そこでヤラベアムとすべてのイスラエルは来て、レハベアムに言った、
11395 14 10 4 「あなたの父は、われわれのくびきを重くしましたが、今あなたの父のきびしい使役と、あなたの父が、われわれに負わせた重いくびきを軽くしてください。そうすればわたしたちはあなたに仕えましょう」。
11396 14 10 5 レハベアムは彼らに答えた、「三日の後、またわたしの所に来なさい」。それで民は去った。
11397 14 10 6 レハベアム王は父ソロモンの存命中ソロモンに仕えた長老たちに相談して言った、「あなたがたはこの民にどう返答すればよいと思いますか」。
11398 14 10 7 彼らはレハベアムに言った、「あなたがもしこの民を親切にあつかい、彼らを喜ばせ、ねんごろに語られるならば彼らは長くあなたのしもべとなるでしょう」。
11399 14 10 8 しかし彼は長老たちが与えた勧めをすてて、自分と一緒に大きくなって自分に仕えている若者たちに相談して、
11400 14 10 9 彼らに言った、「あなたがたは、この民がわたしに向かって、『あなたの父上が、われわれに負わせたくびきを軽くしてください』と言うのに、われわれはなんと返答すればよいと思いますか」。
11401 14 10 10 彼と一緒に大きくなった若者たちは彼に言った、「あなたに向かって、『あなたの父は、われわれのくびきを重くしたが、あなたは、それをわれわれのために軽くしてください』と言ったこの民に、こう言いなさい、『わたしの小指は父の腰よりも太い、
11402 14 10 11 父はあなたがたに重いくびきを負わせたが、わたしはさらに、あなたがたのくびきを重くしよう。父はむちであなたがたを懲らしたが、わたしはさそりであなたがたを懲らそう』」。
11403 14 10 12 さてヤラベアムと民は皆、王が「三日目にわたしのところに来なさい」と言ったとおりに、三日目にレハベアムのところへ行った。
11404 14 10 13 王は荒々しく彼らに答えた。すなわちレハベアム王は長老たちの勧めをすて、
11405 14 10 14 若者たちの勧めに従い、彼らに告げて言った、「父はあなたがたのくびきを重くしたが、わたしは更にこれを重くしよう。父はむちであなたがたを懲らしたが、わたしはさそりであなたがたを懲らそう」。
11406 14 10 15 このように王は民の言うことを聞きいれなかった。これは主が、かつてシロびとアヒヤによって、ネバテの子ヤラベアムに言われた言葉を成就するために、神がなされたのであった。
11407 14 10 16 イスラエルの人々は皆、王が自分たちの言うことを聞きいれないのを見たので、民は王に答えて言った、「われわれはダビデのうちに何の分があろうか。われわれはエッサイの子のうちに嗣業がない。イスラエルよ、めいめいの天幕に帰れ。ダビデよ、今あなたの家を見よ」。そしてイスラエルは皆彼らの天幕へ去って行った。
11408 14 10 17 しかしレハベアムはユダの町々に住んでいるイスラエルの人々を治めた。
11409 14 10 18 レハベアム王は徴募人の監督であったアドラムをつかわしたが、イスラエルの人々が石で彼を撃ち殺したので、レハベアム王は急いで車に乗り、エルサレムに逃げた。
11410 14 10 19 こうしてイスラエルはダビデの家にそむいて今日に至った。
11411 14 11 1 レハベアムはエルサレムに来て、ユダとベニヤミンの家の者、すなわち、えり抜きの軍人十八万人を集め、国を取りもどすためにイスラエルと戦おうとしたが、
11412 14 11 2 主の言葉が神の人シマヤに臨んで言った、
11413 14 11 3 「ソロモンの子、ユダの王レハベアムおよびユダとベニヤミンにいるすべてのイスラエルの人々に言いなさい、
11414 14 11 4 『主はこう仰せられる、あなたがたは上ってはならない。あなたがたの兄弟と戦ってはならない。おのおの自分の家に帰りなさい。この事はわたしから出たのである』」。それで人々は主の言葉を聞き、ヤラベアムを攻めに行くのをやめて帰った。
11415 14 11 5 レハベアムはエルサレムに住んで、ユダに防衛の町々を建てた。
11416 14 11 6 すなわちベツレヘム、エタム、テコア、
11417 14 11 7 ベテズル、ソコ、アドラム、
11418 14 11 8 ガテ、マレシャ、ジフ、
11419 14 11 9 アドライム、ラキシ、アゼカ、
11420 14 11 10 ゾラ、アヤロン、およびヘブロン。これらはユダとベニヤミンにあって要害の町々である。
11421 14 11 11 彼はその要害を堅固にし、これに軍長を置き、糧食と油とぶどう酒をたくわえ、
11422 14 11 12 またそのすべての町に盾とやりを備えて、これを非常に強化し、そしてユダとベニヤミンを確保した。
11423 14 11 13 イスラエルの全地の祭司とレビびとは四方の境から来てレハベアムに身を寄せた。
11424 14 11 14 すなわちレビびとは自分の放牧地と領地を離れてユダとエルサレムに来た。これはヤラベアムとその子らが彼らを排斥して、主の前に祭司の務をさせなかったためである。
11425 14 11 15 ヤラベアムは高き所と、みだらな神と、自分で造った子牛のために自分の祭司を立てた。
11426 14 11 16 またイスラエルのすべての部族のうちで、すべてその心を傾けて、イスラエルの神、主を求める者は先祖の神、主に犠牲をささげるために、レビびとに従ってエルサレムに来た。
11427 14 11 17 このように彼らはユダの国を堅くし、ソロモンの子レハベアムを三年の間強くした。彼らは三年の間ダビデとソロモンの道に歩んだからである。
11428 14 11 18 レハベアムはダビデの子エレモテの娘マハラテを妻にめとった。マハラテはエッサイの子エリアブの娘アビハイルが産んだ者である。
11429 14 11 19 彼女はエウシ、シマリヤおよびザハムの三子を産んだ。
11430 14 11 20 彼はまた彼女の後にアブサロムの娘マアカをめとった。マアカはアビヤ、アッタイ、ジザおよびシロミテを産んだ。
11431 14 11 21 レハベアムはアブサロムの娘マアカをすべての妻とそばめにまさって愛した。彼は妻十八人、そばめ六十人をめとって、男の子二十八人と女の子六十人をもうけた。
11432 14 11 22 レハベアムはマアカの子アビヤを立ててかしらとし、その兄弟の長とした。彼はアビヤを王にしようと思ったからである。
11433 14 11 23 それで王は賢くとり行い、そのむすこたちをことごとく、ユダとベニヤミンの全地方にあるすべての要害の町に散在させ、彼らに糧食を多く与え、また多くの妻を得させた。
11434 14 12 1 レハベアムはその国が堅く立ち、強くなるに及んで、主のおきてを捨てた。イスラエルも皆彼にならった。
11435 14 12 2 彼らがこのように主に向かって罪を犯したので、レハベアム王の五年にエジプトの王シシャクがエルサレムに攻め上ってきた。
11436 14 12 3 その戦車は一千二百、騎兵は六万、また彼に従ってエジプトから来た民、すなわちリビアびと、スキびと、エチオピヤびとは無数であった。
11437 14 12 4 シシャクはユダの要害の町々を取り、エルサレムに迫って来た。
11438 14 12 5 そこで預言者シマヤは、レハベアムおよびシシャクのゆえに、エルサレムに集まったユダのつかさたちのもとにきて言った、「主はこう仰せられる、『あなたがたはわたしを捨てたので、わたしもあなたがたを捨ててシシャクにわたした』と」。
11439 14 12 6 そこでイスラエルのつかさたち、および王はへりくだって、「主は正しい」と言った。
11440 14 12 7 主は彼らのへりくだるのを見られたので、主の言葉がシマヤにのぞんで言った、「彼らがへりくだったから、わたしは彼らを滅ぼさないで、間もなく救を施す。わたしはシシャクの手によって、怒りをエルサレムに注ぐことをしない。
11441 14 12 8 しかし彼らはシシャクのしもべになる。これは彼らがわたしに仕えることと、国々の王たちに仕えることとの相違を知るためである」。
11442 14 12 9 エジプトの王シシャクはエルサレムに攻めのぼって、主の宮の宝物と、王の家の宝物とを奪い去った。すなわちそれらをことごとく奪い去り、またソロモンの造った金の盾をも奪い去った。
11443 14 12 10 それでレハベアム王は、その代りに青銅の盾を造って、王の家の門を守る侍衛長たちの手に渡した。
11444 14 12 11 王が主の宮にはいるごとに侍衛は来て、これを負い、またこれを侍衛のへやへ持って帰った。
11445 14 12 12 レハベアムがへりくだったので主の怒りは彼を離れ、彼をことごとく滅ぼそうとはされなかった。またユダの事情もよくなった。
11446 14 12 13 レハベアム王はエルサレムで自分の地位を確立し、世を治めた。すなわちレハベアムは四十一歳のとき位につき、十七年の間エルサレムで世を治めた。エルサレムは主がその名を置くためにイスラエルのすべての部族のうちから選ばれた町である。彼の母はアンモンの女で、名をナアマといった。
11447 14 12 14 レハベアムは主を求めることに心を傾けないで、悪い事を行った。
11448 14 12 15 レハベアムの始終の行為は、預言者シマヤおよび先見者イドの書にしるされているではないか。レハベアムとヤラベアムとの間には絶えず戦争があった。
11449 14 12 16 レハベアムはその先祖たちと共に眠って、ダビデの町に葬られ、その子アビヤが彼に代って王となった。
11450 14 13 1 ヤラベアム王の第十八年にアビヤがユダの王となった。
11451 14 13 2 彼は三年の間エルサレムで世を治めた。彼の母はギベアのウリエルの娘で、名をミカヤといった。
11452 14 13 3 ここにアビヤとヤラベアムとの間に戦争が起り、アビヤは四十万の精兵から成る勇敢な軍勢をもって戦いにいで、ヤラベアムも大勇士から成る八十万の精兵をもって、これに向かって戦いの備えをした。
11453 14 13 4 時にアビヤはエフライムの山地にあるゼマライム山の上に立って言った、「ヤラベアムおよびイスラエルの人々よ皆聞け。
11454 14 13 5 あなたがたはイスラエルの神、主が塩の契約をもってイスラエルの国をながくダビデとその子孫に賜わったことを知らないのか。
11455 14 13 6 ところがダビデの子ソロモンの家来であるネバテの子ヤラベアムが起って、その主君にそむき、
11456 14 13 7 また卑しい無頼のともがらが集まって彼にくみし、ソロモンの子レハベアムに敵したが、レハベアムは若く、かつ意志が弱くてこれに当ることができなかった。
11457 14 13 8 今また、あなたがたは大軍をたのみ、またヤラベアムが造って、あなたがたの神とした金の子牛をたのんで、ダビデの子孫の手にある主の国に敵対しようとしている。
11458 14 13 9 またあなたがたはアロンの子孫である主の祭司とレビびととを追いだして、他の国々の民がするように祭司を立てたではないか。すなわちだれでも若い雄牛一頭、雄羊七頭を携えてきて、自分を聖別する者は皆あの神でない者の祭司とすることができた。
11459 14 13 10 しかしわれわれにおいては、主がわれわれの神であって、われわれは彼を捨てない。また主に仕える祭司はアロンの子孫であり、働きをなす者はレビびとである。
11460 14 13 11 彼らは朝ごと夕ごとに主に燔祭と、こうばしい香をささげ、供えのパンを純金の机の上に供え、また金の燭台とそのともしび皿を整えて、夕ごとにともすのである。このようにわれわれはわれわれの神、主の務を守っているが、あなたがたは彼を捨てた。
11461 14 13 12 見よ、神はみずからわれわれと共におられて、われわれのかしらとなられ、また、その祭司たちはラッパを吹きならして、あなたがたを攻める。イスラエルの人々よ、あなたがたの先祖の神、主に敵して戦ってはならない。あなたがたは成功しない」。
11462 14 13 13 ヤラベアムは伏兵を彼らのうしろに回らせたので、彼の軍隊はユダの前にあり、伏兵は彼らのうしろにあった。
11463 14 13 14 ユダはうしろを見ると、敵が前とうしろとにあったので、主に向かって呼ばわり、祭司たちはラッパを吹いた。
11464 14 13 15 そこでユダの人々はときの声をあげた。ユダの人々がときの声をあげると、神はヤラベアムとイスラエルの人々をアビヤとユダの前に打ち敗られたので、
11465 14 13 16 イスラエルの人々はユダの前から逃げた。神が彼らをユダの手に渡されたので、
11466 14 13 17 アビヤとその民は、彼らをおびただしく撃ち殺した。イスラエルの殺されて倒れた者は五十万人、皆精兵であった。
11467 14 13 18 このように、この時イスラエルの人々は打ち負かされ、ユダの人々は勝を得た。彼らがその先祖の神、主を頼んだからである。
11468 14 13 19 アビヤはヤラベアムを追撃して数個の町を彼から取った。すなわちベテルとその村里、エシャナとその村里、エフロンとその村里である。
11469 14 13 20 ヤラベアムは、アビヤの世には再び力を得ることができず、主に撃たれて死んだ。
11470 14 13 21 しかしアビヤは強くなり、妻十四人をめとり、むすこ二十二人、むすめ十六人をもうけた。
11471 14 13 22 アビヤのその他の行為すなわちその行動と言葉は、預言者イドの注釈にしるされている。
11472 14 14 1 アビヤはその先祖たちと共に眠って、ダビデの町に葬られ、その子アサが代って王となった。アサの治世に国は十年の間、穏やかであった。
11473 14 14 2 アサはその神、主の目に良しと見え、また正しと見えることを行った。
11474 14 14 3 彼は異なる祭壇と、もろもろの高き所を取り除き、石柱をこわし、アシラ像を切り倒し、
11475 14 14 4 ユダに命じてその先祖たちの神、主を求めさせ、おきてと戒めとを行わせ、
11476 14 14 5 ユダのすべての町々から、高き所と香の祭壇とを取り除いた。そして国は彼のもとに穏やかであった。
11477 14 14 6 彼は国が穏やかであったので、要害の町数個をユダに建てた。また主が彼に平安を賜わったので、この年ごろ戦争がなかった。
11478 14 14 7 彼はユダに言った、「われわれはこれらの町を建て、その周囲に石がきを築き、やぐらを建て、門と貫の木を設けよう。われわれがわれわれの神、主を求めたので、この国はなおわれわれのものであり、われわれが彼を求めたので、四方において、われわれに平安を賜わった」。こうして彼らは滞りなく建て終った。
11479 14 14 8 アサの軍隊はユダから出た者三十万人あって、盾とやりをとり、ベニヤミンから出た者二十八万人あって、小盾をとり、弓を引いた。これはみな大勇士であった。
11480 14 14 9 エチオピヤびとゼラが、百万の軍隊と三百の戦車を率いて、マレシャまで攻めてきた。
11481 14 14 10 アサは出て、これを迎え、マレシャのゼパタの谷に戦いの備えをした。
11482 14 14 11 時にアサはその神、主に向かって呼ばわって言った、「主よ、力のある者を助けることも、力のない者を助けることも、あなたにおいては異なることはありません。われわれの神、主よ、われわれをお助けください。われわれはあなたに寄り頼み、あなたの名によってこの大軍に当ります。主よ、あなたはわれわれの神です。どうぞ人をあなたに勝たせないでください」。
11483 14 14 12 そこで主はアサの前とユダの前でエチオピヤびとを撃ち敗られたので、エチオピヤびとは逃げ去った。
11484 14 14 13 アサと彼に従う民は彼らをゲラルまで追撃したので、エチオピヤびとは倒れて、生き残った者はひとりもなかった。主と主の軍勢の前に撃ち破られたからである。ユダの人々の得たぶんどり物は非常に多かった。
11485 14 14 14 彼らはまた、ゲラルの周囲の町々をことごとく撃ち破った。主の恐れが彼らの上に臨んだからである。そして彼らはそのすべての町をかすめ奪った。その内に多くの物があったからである。
11486 14 14 15 また家畜をもっている者の天幕を襲い、多くの羊とらくだを奪い取って、エルサレムに帰った。
11487 14 15 1 時に神の霊がオデデの子アザリヤに臨んだので、
11488 14 15 2 彼は出ていってアサを迎え、これに言った、「アサおよびユダとベニヤミンの人々よ、わたしに聞きなさい。あなたがたが主と共におる間は、主もあなたがたと共におられます。あなたがたが、もし彼を求めるならば、彼に会うでしょう。しかし、彼を捨てるならば、彼もあなたがたを捨てられるでしょう。
11489 14 15 3 そもそも、イスラエルには長い間、まことの神がなく、教をなす祭司もなく、律法もなかった。
11490 14 15 4 しかし、悩みの時、彼らがイスラエルの神、主に立ち返り、彼を求めたので彼に会った。
11491 14 15 5 そのころは、出る者にも入る者にも、平安がなく、大いなる騒乱が国々のすべての住民を悩ました。
11492 14 15 6 国は国に、町は町に撃ち砕かれた。神がもろもろの悩みをもって彼らを苦しめられたからです。
11493 14 15 7 しかしあなたがたは勇気を出しなさい。手を弱くしてはならない。あなたがたのわざには報いがあるからです」。
11494 14 15 8 アサはこれらの言葉すなわちオデデの子アザリヤの預言を聞いて勇気を得、憎むべき偶像をユダとベニヤミンの全地から除き、また彼がエフライムの山地で得た町々から除き、主の宮の廊の前にあった主の祭壇を再興した。
11495 14 15 9 彼はまたユダとベニヤミンの人々およびエフライム、マナセ、シメオンから来て、彼らの間に寄留していた者を集めた。その神、主がアサと共におられるのを見て、イスラエルからアサのもとに下った者が多くあったからである。
11496 14 15 10 彼らはアサの治世の十五年の三月にエルサレムに集まり、
11497 14 15 11 携えてきたぶんどり物のうちから牛七百頭、羊七千頭をその日主にささげた。
11498 14 15 12 そして彼らは契約を結び、心をつくし、精神をつくして先祖の神、主を求めることと、
11499 14 15 13 すべてイスラエルの神、主を求めない者は老幼男女の別なく殺さるべきことを約した。
11500 14 15 14 そして彼らは大声をあげて叫び、ラッパを吹き、角笛を鳴らして、主に誓いを立てた。
11501 14 15 15 ユダは皆その誓いを喜んだ。彼らは心をつくして誓いを立て、精神をつくして主を求めたので、主は彼らに会い、四方で彼らに安息を賜わった。
11502 14 15 16 アサ王の母マアカがアシラのために憎むべき像を造ったので、アサは彼女をおとして太后とせず、その憎むべき像を切り倒して粉々に砕き、キデロン川でそれを焼いた。
11503 14 15 17 ただし高き所はイスラエルから除かなかったが、アサの心は一生の間、正しかった。
11504 14 15 18 彼はまた、その父のささげた物および自分のささげた物、すなわち銀、金並びに器物などを主の宮に携え入れた。
11505 14 15 19 そしてアサの治世の三十五年までは再び戦争がなかった。
11506 14 16 1 アサの治世の三十六年にイスラエルの王バアシャはユダに攻め上り、ユダの王アサの所にだれをも出入りさせないためにラマを築いた。
11507 14 16 2 そこでアサは主の宮と王の家の宝蔵から金銀を取り出し、ダマスコに住んでいるスリヤの王ベネハダデに贈って言った、
11508 14 16 3 「わたしの父とあなたの父の間のように、わたしとあなたの間に同盟を結びましょう。わたしはあなたに金銀を贈ります。行って、あなたとイスラエルの王バアシャとの同盟を破り、彼をわたしから撤退させてください」。
11509 14 16 4 ベネハダデはアサ王の言うことを聞き、自分の軍勢の長たちをつかわしてイスラエルの町々を攻め、イヨンとダンとアベル・マイムおよびナフタリのすべての倉の町を撃った。
11510 14 16 5 バアシャはこれを聞いて、ラマを築くことをやめ、その工事を廃した。
11511 14 16 6 そこでアサ王はユダの全国の人々を引き連れ、バアシャがラマを建てるために用いた石と木材を運んでこさせ、それをもってゲバとミヅパを建てた。
11512 14 16 7 そのころ先見者ハナニがユダの王アサのもとに来て言った、「あなたがスリヤの王に寄り頼んで、あなたの神、主に寄り頼まなかったので、スリヤ王の軍勢はあなたの手からのがれてしまった。
11513 14 16 8 かのエチオピヤびとと、リビアびとは大軍で、その戦車と騎兵は、はなはだ多かったではないか。しかしあなたが主に寄り頼んだので、主は彼らをあなたの手に渡された。
11514 14 16 9 主の目はあまねく全地を行きめぐり、自分に向かって心を全うする者のために力をあらわされる。今度の事では、あなたは愚かな事をした。ゆえにこの後、あなたに戦争が臨むであろう」。
11515 14 16 10 するとアサはその先見者を怒って、獄屋に入れた。この事のために激しく彼を怒ったからである。アサはまたそのころ民のある者をしえたげた。
11516 14 16 11 見よ、アサの始終の行為は、ユダとイスラエルの列王の書にしるされている。
11517 14 16 12 アサはその治世の三十九年に足を病み、その病は激しくなったが、その病の時にも、主を求めないで医者を求めた。
11518 14 16 13 アサは先祖たちと共に眠り、その治世の四十一年に死んだ。
11519 14 16 14 人々は彼が自分のためにダビデの町に掘っておいた墓に葬り、製香の術をもって造った様々の香料を満たした床に横たえ、彼のためにおびただしく香をたいた。
11520 14 17 1 アサの子ヨシャパテがアサに代って王となり、イスラエルに向かって自分を強くし、
11521 14 17 2 ユダのすべての堅固な町々に軍隊を置き、またユダの地およびその父アサが取ったエフライムの町々に守備隊を置いた。
11522 14 17 3 主はヨシャパテと共におられた。彼がその父ダビデの最初の道に歩んで、バアルに求めず、
11523 14 17 4 その父の神に求めて、その戒めに歩み、イスラエルの行いにならわなかったからである。
11524 14 17 5 それゆえ、主は国を彼の手に堅く立てられ、またユダの人々は皆ヨシャパテに贈り物を持ってきた。彼は大いなる富と誉とを得た。
11525 14 17 6 そこで彼は主の道に心を励まし、さらに高き所とアシラ像とをユダから除いた。
11526 14 17 7 彼はまたその治世の三年に、つかさたちベネハイル、オバデヤ、ゼカリヤ、ネタンエルおよびミカヤをつかわしてユダの町々で教えさせ、
11527 14 17 8 また彼らと共にレビびとのうちからシマヤ、ネタニヤ、ゼバデヤ、アサヘル、セミラモテ、ヨナタン、アドニヤ、トビヤ、トバドニヤをつかわし、またこれらのレビびとと共に祭司エリシャマとヨラムをもつかわした。
11528 14 17 9 彼らは主の律法の書を携えて、ユダで教をなし、またユダの町々をことごとく巡回して、民の間に教をなした。
11529 14 17 10 そこでユダの周囲の国々は皆主を恐れ、ヨシャパテと戦うことをしなかった。
11530 14 17 11 また、ペリシテびとのうちで贈り物や、みつぎの銀をヨシャパテの所に持ってくる者があり、またアラビヤびとは雄羊七千七百頭、雄やぎ七千七百頭を彼に持ってきた。
11531 14 17 12 こうしてヨシャパテはますます大いになり、ユダに要害および倉の町を建て、
11532 14 17 13 ユダの町々に多くの軍需品を持ち、またエルサレムに大勇士である軍人たちを持っていた。
11533 14 17 14 彼らをその氏族によって数えれば次のとおりである。すなわちユダから出た千人の長のうちでは、アデナという軍長と彼に従う大勇士三十万人、
11534 14 17 15 その次は軍長ヨハナンと彼に従う者二十八万人、
11535 14 17 16 その次は喜んでその身を主にささげた者ジクリの子アマジヤと彼に従う大勇士二十万人。
11536 14 17 17 ベニヤミンから出た者のうちでは、エリアダという大勇士と彼に従う弓および盾を持つ者二十万人、
11537 14 17 18 その次はヨザバデと彼に従う戦いの備えある者十八万人である。
11538 14 17 19 これらは皆王に仕える者たちで、このほかにまたユダ全国の堅固な町々に、王が駐在させた者があった。
11539 14 18 1 ヨシャパテは大いなる富と誉とをもち、アハブと縁を結んだ。
11540 14 18 2 彼は数年の後、サマリヤに下って、アハブをおとずれた。アハブは彼と彼に従ってきた民のために羊と牛を多くほふり、ラモテ・ギレアデに一緒に攻め上ることを彼にすすめた。
11541 14 18 3 イスラエルの王アハブはユダの王ヨシャパテに言った、「あなたはわたしと一緒にラモテ・ギレアデに攻めて行きますか」。ヨシャパテは答えた、「わたしはあなたと一つです、わたしの民はあなたの民と一つです。わたしはあなたと一緒に戦いに臨みましょう」。
11542 14 18 4 ヨシャパテはまたイスラエルの王に言った、「まず主の言葉を求めなさい」。
11543 14 18 5 そこでイスラエルの王は預言者四百人を集めて彼らに言った、「われわれはラモテ・ギレアデに、戦いに行くべきか、あるいは控えるべきか」。彼らは言った、「上って行きなさい。神はそれを王の手にわたされるでしょう」。
11544 14 18 6 ヨシャパテは言った、「ほかにわれわれが問うべき主の預言者はここにいませんか」。
11545 14 18 7 イスラエルの王はヨシャパテに言った、「ほかになおひとりいます。われわれはこの人によって主に問うことができますが、彼はわたしについて良い事を預言したことがなく、常に悪いことだけを預言するので、わたしは彼を憎みます。その者はイムラの子ミカヤです」。ヨシャパテは言った、「王よ、そうは言わないでください」。
11546 14 18 8 そこでイスラエルの王はひとりの役人を呼んで、「イムラの子ミカヤを急いで連れてきなさい」と言った。
11547 14 18 9 さてイスラエルの王およびユダの王ヨシャパテは王の衣を着て、サマリヤの門の入口の広場におのおのその玉座に座し、預言者たちは皆その前で預言していた。
11548 14 18 10 ケナアナの子ゼデキヤは鉄の角を造って言った、「主はこう仰せられます、『あなたはこれらの角をもってスリヤびとを突いて滅ぼし尽しなさい』」。
11549 14 18 11 預言者たちは皆そのように預言して言った、「ラモテ・ギレアデに上っていって勝利を得なさい。主はそれを王の手にわたされるでしょう」。
11550 14 18 12 さてミカヤを呼びに行った使者は彼に言った、「預言者たちは一致して王に良い事を言いました。どうぞ、あなたの言葉も、彼らのひとりの言葉のようにし、良い事を言ってください」。
11551 14 18 13 ミカヤは言った、「主は生きておられる。わが神の言われることをわたしは申します」。
11552 14 18 14 彼が王の所へ行くと、王は彼に言った、「ミカヤよ、われわれはラモテ・ギレアデに戦いに行くべきか、あるいは控えるべきか」。彼は言った、「上って行って勝利を得なさい。彼らはあなたの手にわたされるでしょう」。
11553 14 18 15 しかし王は彼に言った、「幾たびあなたを誓わせたら、あなたは主の名をもって、ただ真実のみをわたしに告げるだろうか」。
11554 14 18 16 彼は言った、「わたしはイスラエルが皆牧者のない羊のように山に散っているのを見ました。すると主は『これらの者は主人をもっていない。彼らをそれぞれ安らかに、その家に帰らせよ』と言われました」。
11555 14 18 17 イスラエルの王はヨシャパテに言った、「わたしはあなたに、彼はわたしについて良い事を預言せず、ただ悪い事だけを預言すると告げたではありませんか」。
11556 14 18 18 ミカヤは言った、「それだから主の言葉を聞きなさい。わたしは主がその玉座に座し、天の万軍がその右左に立っているのを見たが、
11557 14 18 19 主は、『だれがイスラエルの王アハブをいざなって、ラモテ・ギレアデに上らせ、彼を倒れさせるであろうか』と言われた。するとひとりは、こうしようと言い、ひとりは、ああしようと言った。
11558 14 18 20 その時一つの霊が進み出て、主の前に立ち、『わたしが彼をいざないましょう』と言ったので、主は彼に『何をもってするか』と言われた。
11559 14 18 21 彼は『わたしが出て行って、偽りを言う霊となって、すべての預言者の口に宿りましょう』と言った。そこで主は『おまえは彼をいざなって、それをなし遂げるであろう。出て行って、そうしなさい』と言われた。
11560 14 18 22 それゆえ、主は偽りを言う霊をこの預言者たちの口に入れ、また主はあなたについて災を告げられたのです」。
11561 14 18 23 するとケナアナの子ゼデキヤが近寄ってミカヤのほおを打って言った、「主の霊がどの道からわたしを離れて行って、あなたに語りましたか」。
11562 14 18 24 ミカヤは言った、「あなたが奥の間にはいって身を隠す日に見るでしょう」。
11563 14 18 25 イスラエルの王は言った、「ミカヤを捕え、町のつかさアモンと王の子ヨアシの所へ引いて行って、
11564 14 18 26 言いなさい、『王はこう言う、この者を獄屋に入れ、少しばかりのパンと水をもって彼を養い、わたしが勝利を得て帰ってくるのを待て』と」。
11565 14 18 27 ミカヤは言った、「あなたがもし勝利を得て帰るならば、主はわたしによって語られなかったのです」。また彼は言った、「あなたがたすべての民よ、聞きなさい」。
11566 14 18 28 こうしてイスラエルの王とユダの王ヨシャパテは、ラモテ・ギレアデに上った。
11567 14 18 29 イスラエルの王はヨシャパテに言った、「わたしは姿を変えて戦いに行きましょう。しかしあなたは王の衣を着けなさい」。イスラエルの王は姿を変えて戦いに行った。
11568 14 18 30 さて、スリヤの王は、その戦車隊長たちに命じて言った、「あなたがたは小さい者とも、大きい者とも戦ってはならない。ただイスラエルの王とのみ戦いなさい」。
11569 14 18 31 戦車隊長らはヨシャパテを見たとき、これはきっとイスラエルの王だと思ったので、身を巡らしてこれと戦おうとした。しかしヨシャパテが呼ばわったので、主はこれを助けられた。すなわち神は敵を彼から離れさせられた。
11570 14 18 32 戦車隊長らは彼がイスラエルの王でないのを見たので、彼を追うことをやめて引き返した。
11571 14 18 33 しかし、ひとりの人が、なにごころなく弓を引いて、イスラエルの王の胸当と、くさずりの間を射たので、彼はその車の御者に言った、「わたしは傷を受けたから、車をめぐらして、わたしを軍中から運び出せ」。
11572 14 18 34 その日戦いは激しくなった。イスラエルの王は車の中に自分をささえて立ち、夕暮までスリヤびとに向かっていたが、日の入るころになって死んだ。
11573 14 19 1 ユダの王ヨシャパテは、つつがなくエルサレムの自分の家に帰った。
11574 14 19 2 そのとき、先見者ハナニの子エヒウが出てヨシャパテを迎えて言った、「あなたは悪人を助け、主を憎む者を愛してよいのですか。それゆえ怒りが主の前から出て、あなたの上に臨みます。
11575 14 19 3 しかしあなたには、なお良い事もあります。あなたはアシラ像を国の中から除き、心を傾けて神を求められました」。
11576 14 19 4 ヨシャパテはエルサレムに住んでいたが、また出て、ベエルシバからエフライムの山地まで民の中を巡り、先祖たちの神、主に彼らを導き返した。
11577 14 19 5 彼はまたユダの国中、すべての堅固な町ごとに裁判人を置いた。
11578 14 19 6 そして裁判人たちに言った、「あなたがたは自分のする事に気をつけなさい。あなたがたは人のために裁判するのではなく、主のためにするのです。あなたがたが裁判する時には、主はあなたがたと共におられます。
11579 14 19 7 だからあなたがたは主を恐れ、慎んで行いなさい。われわれの神、主には不義がなく、人をかたより見ることなく、まいないを取ることもないからです」。
11580 14 19 8 ヨシャパテはまたレビびと、祭司、およびイスラエルの氏族の長たちを選んでエルサレムに置き、主のために裁判を行い、争議の解決に当らせた。彼らはエルサレムに居住した。
11581 14 19 9 ヨシャパテは彼らに命じて言った、「あなたがたは主を恐れ、真実と真心とをもって行わなければならない。
11582 14 19 10 すべてその町々に住んでいるあなたがたの兄弟たちから、血を流した事または律法と戒め、定めとおきてなどの事について訴えてきたならば、彼らをさとして、主の前に罪を犯させず、怒りがあなたがたと、あなたがたの兄弟たちに臨まないようにしなさい。そのようにすれば、あなたがたは罪を犯すことがないでしょう。
11583 14 19 11 見よ、祭司長アマリヤは、あなたがたの上にいて、主の事をすべてつかさどり、イシマエルの子、ユダの家のつかさゼバデヤは王の事をすべてつかさどり、またレビびとはあなたがたの前にあって役人となります。雄々しく行動しなさい。主は正直な人と共におられます」。
11584 14 20 1 この後モアブびと、アンモンびとおよびメウニびとらがヨシャパテと戦おうと攻めてきた。
11585 14 20 2 その時ある人がきて、ヨシャパテに告げて言った、「海のかなたのエドムから大軍があなたに攻めて来ます。見よ、彼らはハザゾン・タマル(すなわちエンゲデ)にいます」。
11586 14 20 3 そこでヨシャパテは恐れ、主に顔を向けて助けを求め、ユダ全国に断食をふれさせた。
11587 14 20 4 それでユダはこぞって集まり、主の助けを求めた。すなわちユダのすべての町から人々が来て主を求めた。
11588 14 20 5 そこでヨシャパテは主の宮の新しい庭の前で、ユダとエルサレムの会衆の中に立って、
11589 14 20 6 言った、「われわれの先祖の神、主よ、あなたは天にいます神ではありませんか。異邦人のすべての国を治められるではありませんか。あなたの手には力があり、勢いがあって、あなたに逆らいうる者はありません。
11590 14 20 7 われわれの神よ、あなたはこの国の民をあなたの民イスラエルの前から追い払って、あなたの友アブラハムの子孫に、これを永遠に与えられたではありませんか。
11591 14 20 8 彼らはここに住み、あなたの名のためにここに聖所を建てて言いました、
11592 14 20 9 『つるぎ、審判、疫病、ききんなどの災がわれわれに臨む時、われわれはこの宮の前に立って、あなたの前におり、その悩みの中であなたに呼ばわります。すると、あなたは聞いて助けられます。あなたの名はこの宮にあるからです』と。
11593 14 20 10 今アンモン、モアブ、およびセイル山の人々をごらんなさい。昔イスラエルがエジプトの国から出てきた時、あなたはイスラエルに彼らを侵すことをゆるされなかったので、イスラエルは彼らを離れて、滅ぼしませんでした。
11594 14 20 11 彼らがわれわれに報いるところをごらんください。彼らは来て、あなたがわれわれに賜わったあなたの領地からわれわれを追い払おうとしています。
11595 14 20 12 われわれの神よ、あなたは彼らをさばかれないのですか。われわれはこのように攻めて来る大軍に当る力がなく、またいかになすべきかを知りません。ただ、あなたを仰ぎ望むのみです」。
11596 14 20 13 ユダの人々はその幼な子、その妻、および子供たちと共に皆主の前に立っていた。
11597 14 20 14 その時主の霊が会衆の中でアサフの子孫であるレビびとヤハジエルに臨んだ。ヤハジエルはゼカリヤの子、ゼカリヤはベナヤの子、ベナヤはエイエルの子、エイエルはマッタニヤの子である。
11598 14 20 15 ヤハジエルは言った、「ユダの人々、エルサレムの住民、およびヨシャパテ王よ、聞きなさい。主はあなたがたにこう仰せられる、『この大軍のために恐れてはならない。おののいてはならない。これはあなたがたの戦いではなく、主の戦いだからである。
11599 14 20 16 あす、彼らの所へ攻め下りなさい。見よ、彼らはヂヅの坂から上って来る。あなたがたはエルエルの野の東、谷の端でこれに会うであろう。
11600 14 20 17 この戦いには、あなたがたは戦うに及ばない。ユダおよびエルサレムよ、あなたがたは進み出て立ち、あなたがたと共におられる主の勝利を見なさい。恐れてはならない。おののいてはならない。あす、彼らの所に攻めて行きなさい。主はあなたがたと共におられるからである』」。
11601 14 20 18 ヨシャパテは地にひれ伏した。ユダの人々およびエルサレムの民も主の前に伏して、主を拝した。
11602 14 20 19 その時コハテびとの子孫、およびコラびとの子孫であるレビびとが立ち上がり、大声をあげてイスラエルの神、主をさんびした。
11603 14 20 20 彼らは朝早く起きてテコアの野に出て行った。その出て行くとき、ヨシャパテは立って言った、「ユダの人々およびエルサレムの民よ、わたしに聞きなさい。あなたがたの神、主を信じなさい。そうすればあなたがたは堅く立つことができる。主の預言者を信じなさい。そうすればあなたがたは成功するでしょう」。
11604 14 20 21 彼はまた民と相談して人々を任命し、聖なる飾りを着けて軍勢の前に進ませ、主に向かって歌をうたい、かつさんびさせ、「主に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない」と言わせた。
11605 14 20 22 そして彼らが歌をうたい、さんびし始めた時、主は伏兵を設け、かのユダに攻めてきたアンモン、モアブ、セイル山の人々に向かわせられたので、彼らは打ち敗られた。
11606 14 20 23 すなわちアンモンとモアブの人々は立ち上がって、セイル山の民に敵し、彼らを殺して全く滅ぼしたが、セイルの民を殺し尽すに及んで、彼らもおのおの互に助けて滅ぼしあった。
11607 14 20 24 ユダの人々は野の物見やぐらへ行って、かの群衆を見たが、地に倒れた死体だけであって、ひとりものがれた者はなかった。
11608 14 20 25 それでヨシャパテとその民は彼らの物を奪うために来て見ると、多数の家畜、財宝、衣服および宝石などおびただしくあったので、おのおのそれをはぎ取ったが、運びきれないほどたくさんで、かすめ取るに三日もかかった。それほど物が多かったのである。
11609 14 20 26 四日目に彼らはベラカの谷に集まり、その所で主を祝福した。それでその所の名を今日までベラカの谷と呼んでいる。
11610 14 20 27 そしてユダとエルサレムの人々は皆ヨシャパテを先に立て、喜んでエルサレムに帰ってきた。主が彼らにその敵のことによって喜びを与えられたからである。
11611 14 20 28 すなわち彼らは立琴、琴およびラッパをもってエルサレムの主の宮に来た。
11612 14 20 29 そしてもろもろの国の民は主がイスラエルの敵と戦われたことを聞いて神を恐れた。
11613 14 20 30 こうして神が四方に安息を賜わったので、ヨシャパテの国は穏やかであった。
11614 14 20 31 このようにヨシャパテはユダを治めた。彼は三十五歳の時、王となり、二十五年の間エルサレムで世を治めた。彼の母の名はアズバといってシルヒの娘である。
11615 14 20 32 ヨシャパテは父アサの道を歩んでそれを離れず、主の目に正しいと見られることを行った。
11616 14 20 33 しかし高き所は除かず、また民はその先祖の神に心を傾けなかった。
11617 14 20 34 ヨシャパテのその他の始終の行為は、ハナニの子エヒウの書にしるされ、イスラエルの列王の書に載せられてある。
11618 14 20 35 この後ユダの王ヨシャパテはイスラエルの王アハジヤと相結んだ。アハジヤは悪を行った。
11619 14 20 36 ヨシャパテはタルシシへ行く船を造るためにアハジヤと相結び、エジオン・ゲベルで一緒に船数隻を造った。
11620 14 20 37 その時マレシャのドダワの子エリエゼルはヨシャパテに向かって預言し、「あなたはアハジヤと相結んだので、主はあなたの造った物をこわされます」と言ったが、その船は難破して、タルシシへ行くことができなかった。
11621 14 21 1 ヨシャパテは先祖たちと共に眠り、先祖たちと共にダビデの町に葬られ、その子ヨラムが代って王となった。
11622 14 21 2 ヨシャパテの子であるその兄弟たちはアザリヤ、エヒエル、ゼカリヤ、アザリヤ、ミカエルおよびシパテヤで、皆ユダの王ヨシャパテの子たちであった。
11623 14 21 3 その父は彼らに金、銀、宝物の賜物を多く与え、またユダの要害の町々を与えたが、ヨラムは長子なので、国はヨラムに与えた。
11624 14 21 4 ヨラムはその父の位に登って強くなった時、その兄弟たちをことごとくつるぎにかけて殺し、またユダのつかさたち数人を殺した。
11625 14 21 5 ヨラムは位についた時三十二歳で、エルサレムで八年の間世を治めた。
11626 14 21 6 彼はアハブの家がしたようにイスラエルの王たちの道に歩んだ。アハブの娘を妻としたからである。このように彼は主の目の前に悪をおこなったが、
11627 14 21 7 主はさきにダビデと結ばれた契約のゆえに、また彼とその子孫とにながく、ともしびを与えると約束されたことによって、ダビデの家を滅ぼすことを好まれなかった。
11628 14 21 8 ヨラムの世にエドムがそむいて、ユダの支配を脱し、みずから王を立てたので、
11629 14 21 9 ヨラムはその将校たち、およびすべての戦車を従えて渡って行き、夜のうちに立ち上がって、自分を包囲しているエドムびととその戦車の隊長たちを撃った。
11630 14 21 10 エドムはこのようにそむいてユダの支配を脱し、今日に至っている。そのころリブナもまたそむいてユダの支配を脱した。ヨラムが先祖たちの神、主を捨てたからである。
11631 14 21 11 彼はまたユダの山地に高き所を造って、エルサレムの民に姦淫を行わせ、ユダを惑わした。
11632 14 21 12 その時預言者エリヤから次のような一通の手紙がヨラムのもとに来た、「あなたの先祖ダビデの神、主はこう仰せられる、『あなたは父ヨシャパテの道に歩まず、またユダの王アサの道に歩まないで、
11633 14 21 13 イスラエルの王たちの道に歩み、ユダとエルサレムの民に、かのアハブの家がイスラエルに姦淫を行わせたように、姦淫を行わせ、またあなたの父の家の者で、あなたにまさっているあなたの兄弟たちを殺したゆえ、
11634 14 21 14 主は大いなる災をもってあなたの民と子供と妻たちと、すべての所有を撃たれる。
11635 14 21 15 あなたはまた内臓の病気にかかって大病になり、それが日に日に重くなって、ついに内臓が出るようになる』」。
11636 14 21 16 その時、主はヨラムに対してエチオピヤびとの近くに住んでいるペリシテびととアラビヤびとの霊を振り起されたので、
11637 14 21 17 彼らはユダに攻め上って、これを侵し、王の家にある貨財をことごとく奪い去り、またヨラムの子供と妻たちをも奪い去ったので、末の子エホアハズのほかには、ひとりも残った者がなかった。
11638 14 21 18 このもろもろの事の後、主は彼を撃って内臓にいえがたい病気を起させられた。
11639 14 21 19 時がたって、二年の終りになり、その内臓が病気のために出て、重い病苦によって死んだ。民は彼の先祖のために香をたいたように、彼のために香をたかなかった。
11640 14 21 20 ヨラムはその位についた時三十二歳で、八年の間エルサレムで世を治め、ついに死んだ。ひとりも彼を惜しむ者がなかった。人々は彼をダビデの町に葬ったが、王たちの墓にではなかった。
11641 14 22 1 エルサレムの民はヨラムの末の子アハジヤを彼の代りに王とした。かつてアラビヤびとと一緒に陣営に攻めてきた一隊の者が上の子たちをことごとく殺したので、ユダの王ヨラムの子アハジヤが王となったのである。
11642 14 22 2 アハジヤは王となった時四十二歳で、エルサレムで一年の間世を治めた。その母はオムリの娘で名をアタリヤといった。
11643 14 22 3 アハジヤもまたアハブの家の道に歩んだ。その母が彼の相談相手となって悪を行わせたからである。
11644 14 22 4 彼はまたアハブの家がしたように主の目の前に悪を行った。すなわちその父が死んだ後、アハブの家の者がその相談役となったので、彼はついに自分を滅ぼすに至った。
11645 14 22 5 アハジヤはまた彼らの勧めに従って、イスラエルの王アハブの子ヨラムと共にラモテ・ギレアデへ行き、スリヤの王ハザエルと戦ったが、スリヤびとはヨラムに傷を負わせた。
11646 14 22 6 そこでヨラムはスリヤの王ハザエルと戦った時、ラマで負ったその傷をいやすためにエズレルに帰った。ユダの王ヨラムの子アハジヤはアハブの子ヨラムが病気なのでエズレルに下ってこれを見舞った。
11647 14 22 7 アハジヤがヨラムを見舞に行ったことによって滅びに至ったのは神によって定められたことである。すなわち彼がそこに着いた時、ヨラムと一緒に出て、ニムシの子エヒウを迎えた。エヒウは主がアハブの家を断ち滅ぼすために油を注がれた者である。
11648 14 22 8 エヒウはアハブの家を罰するにあたって、ユダのつかさたち、およびアハジヤの兄弟たちの子らがアハジヤに仕えているのを見たので、彼らをも殺した。
11649 14 22 9 アハジヤはサマリヤに隠れていたが、エヒウが彼を捜し求めたので、人々は彼を捕え、エヒウのもとに引いてきて、彼を殺した。ただし「彼は心をつくして主を求めたヨシャパテの子である」と人々は言ったのでこれを葬った。こうしてアハジヤの家には国を統べ治めうる者がなくなった。
11650 14 22 10 アハジヤの母アタリヤは自分の子の死んだのを見て、立ってユダの家の王子をことごとく滅ぼしたが、
11651 14 22 11 王の娘エホシバはアハジヤの子ヨアシを王の子たちの殺される者のうちから盗み取り、彼とそのうばを寝室においた。こうしてエホシバがヨアシをアタリヤから隠したので、アタリヤはヨアシを殺さなかった。エホシバはヨラム王の娘、またアハジヤの妹で、祭司エホヤダの妻である。
11652 14 22 12 こうしてヨアシは神の宮に隠れて彼らと共におること六年、その間アタリヤが国を治めた。
11653 14 23 1 第七年になって、エホヤダは勇気をだしてエロハムの子アザリヤ、ヨハナンの子イシマエル、オベデの子アザリヤ、アダヤの子マアセヤ、ジクリの子エリシャパテなどの百人の長たちを招いて契約を結ばせた。
11654 14 23 2 そこで彼らはユダを行きめぐって、ユダのすべての町からレビびとを集め、またイスラエルの氏族の長たちを集めて、エルサレムに来た。
11655 14 23 3 そしてその会衆は皆神の宮で王と契約を結んだ。その時エホヤダは彼らに言った、「主がダビデの子孫のことについて言われたように、王の子が位につくべきです。
11656 14 23 4 あなたがたのなすべき事はこれです。すなわちあなたがた祭司およびレビびとの安息日にはいって来る者の、三分の一は門を守る者となり、
11657 14 23 5 三分の一は王の家におり、三分の一は礎の門におり、民は皆、主の宮の庭にいなさい。
11658 14 23 6 祭司と、勤めをするレビびとのほかは、だれも主の宮に、はいってはならない。彼らは聖なる者であるから、はいることができる。民は皆、主の命令を守らなければならない。
11659 14 23 7 レビびとはめいめい手に武器をとって王のまわりに立たなければならない。宮にはいる者をすべて殺しなさい。あなたがたは王がはいる時にも出る時にも、王と共にいなさい」。
11660 14 23 8 そこでレビびとおよびユダの人々は、祭司エホヤダがすべて命じたように行い、めいめいその組の者で、安息日にはいって来るべき者と、安息日に出て行くべき者を率いていた。祭司エホヤダが組の者を去らせなかったからである。
11661 14 23 9 また祭司エホヤダは、神の宮にあるダビデ王のやりおよび大盾、小盾を百人の長たちに渡し、
11662 14 23 10 また王を守るために、すべての民にめいめい手に武器をとらせ、宮の南側から北側にわたって、祭壇と宮に沿って立たせた。
11663 14 23 11 こうして王の子を連れ出して、これに冠をいただかせ、あかしの書を渡して王となし、エホヤダおよびその子たちが彼に油を注いだ。そして「王万歳」と言った。
11664 14 23 12 アタリヤは民の走りながら王をほめる声を聞いたので、主の宮に入り、民の所へ行って、
11665 14 23 13 見ると、王は入口で柱のかたわらに立ち、王のかたわらには将軍たちとラッパ手が立っており、また国の民は皆喜んでラッパを吹き、歌をうたう者は楽器をもってさんびしていたので、アタリヤは衣を裂いて「反逆だ、反逆だ」と叫んだ。
11666 14 23 14 その時エホヤダは軍勢を統率する百人の長たちを呼び出し、「列の間から彼女を連れ出せ、彼女に従う者をつるぎで殺せ」と言った。祭司が彼女を主の宮で殺してはならないと言ったからである。
11667 14 23 15 そこで人々は彼女に手をかけ、王の家の馬の門の入口まで連れて行き、その所で彼女を殺した。
11668 14 23 16 エホヤダは自分とすべての民と王との間に、彼らは皆、主の民となるとの契約を結んだ。
11669 14 23 17 そこですべての民はバアルの家に行って、それをこわし、その祭壇とその像とを打ち砕き、バアルの祭司マッタンを祭壇の前で殺した。
11670 14 23 18 エホヤダはまた主の宮の守衛を、祭司とレビびとの指揮のもとに置いた。このレビびとは昔ダビデがモーセの律法にしるされているように、喜びと歌とをもって主に燔祭をささげるために、主の宮に配置したものであって、今そのダビデの例にならったものである。
11671 14 23 19 彼はまた主の宮のもろもろの門に門衛を置き、汚れた者は何によって汚れた者でも、はいらせないようにした。
11672 14 23 20 こうしてエホヤダは百人の長たち、貴族たち、民のつかさたちおよび国のすべての民を率いて、主の宮から王を連れ下り、上の門から王の家に進み、王を国の位につかせた。
11673 14 23 21 国の民は皆喜んだ。町はアタリヤがつるぎで殺された後、穏やかであった。
11674 14 24 1 ヨアシは位についた時七歳で、エルサレムで四十年の間、世を治めた。彼の母はベエルシバから出た者で名をヂビアといった。
11675 14 24 2 ヨアシは祭司エホヤダの世にある日の間は常に主の良しと見られることを行った。
11676 14 24 3 エホヤダは彼のためにふたりの妻をめとり、彼に男子と女子が生れた。
11677 14 24 4 この後ヨアシは主の宮を修繕しようと志して、
11678 14 24 5 祭司とレビびとを集めて言った、「ユダの町々へ行って、あなたがたの神の宮を年々修繕する資金をすべてのイスラエルびとから集めなさい。その事を急いでしなさい」。ところがレビびとはこれを急いでしなかった。
11679 14 24 6 それで王はかしらであるエホヤダを召して言った、「あなたはなぜレビびとに求めて、主のしもべモーセがあかしの幕屋のためにイスラエルの会衆に課した税金をユダとエルサレムから取り立てさせないのか」。
11680 14 24 7 かの悪い女アタリヤの子らが神の宮に侵入して主の宮のもろもろの奉納物をとり、バアルのために用いたからである。
11681 14 24 8 そこで王は命じて一個の箱を造らせ、これを主の宮の門の外に置き、
11682 14 24 9 ユダとエルサレムにふれて、神のしもべモーセが荒野でイスラエルに課した税金を主のために持ってこさせた。
11683 14 24 10 すべてのつかさたちおよびすべての民は皆喜んでその税金を持って来て、その箱に投げ入れたので、ついに箱はいっぱいになった。
11684 14 24 11 レビびとはその箱に金が多くあるのを見て、王の役人の所へ持って行くと、王の書記と祭司長の下役とが来て、その箱を傾け、これを取ってもとの所に返した。彼らは日々このようにして金をおびただしく集めた。
11685 14 24 12 王とエホヤダはこれを主の宮の工事をなす者に渡し、石工および木工を雇って、主の宮を修繕させ、また鉄工および青銅工を雇って、主の宮を修復させた。
11686 14 24 13 工人たちは働いたので、修復の工事は彼らの手によってはかどり、神の宮を、もとの状態に復し、これを堅固にした。
11687 14 24 14 それをなし終ったとき、余った金を王とエホヤダの前に持って来たので、それをもって主の宮のために器物を造った。すなわち勤めの器、燔祭の器、香の皿、および金銀の器を造った。エホヤダの世にある日の間は、絶えず主の宮で燔祭をささげた。
11688 14 24 15 しかしエホヤダは年老い、日が満ちて死んだ。その死んだ時は百三十歳であった。
11689 14 24 16 人々は彼をダビデの町で王たちの中に葬った。彼はイスラエルにおいて神とその宮とに良い事を行ったからである。
11690 14 24 17 エホヤダの死んだ後、ユダのつかさたちが来て、うやうやしく王に敬意を表した。王は彼らに聞き従った。
11691 14 24 18 彼らはその先祖の神、主の宮を捨てて、アシラ像および偶像に仕えたので、そのとがのために、怒りがユダとエルサレムに臨んだ。
11692 14 24 19 主は彼らをご自分に引き返そうとして、預言者たちをつかわし、彼らにむかってあかしをさせられたが、耳を傾けなかった。
11693 14 24 20 そこで神の霊が祭司エホヤダの子ゼカリヤに臨んだので、彼は民の前に立ち上がって言った、「神はこう仰せられる、『あなたがたが主の戒めを犯して、災を招くのはどういうわけであるか。あなたがたが主を捨てたために、主もあなたがたを捨てられたのである』」。
11694 14 24 21 しかし人々は彼を害しようと計り、王の命によって、石をもって彼を主の宮の庭で撃ち殺した。
11695 14 24 22 このようにヨアシ王はゼカリヤの父エホヤダが自分に施した恵みを思わず、その子を殺した。ゼカリヤは死ぬ時、「どうぞ主がこれをみそなわして罰せられるように」と言った。
11696 14 24 23 年の終りになって、スリヤの軍勢はヨアシにむかって攻め上り、ユダとエルサレムに来て、民のつかさたちをことごとく民のうちから滅ぼし、そのぶんどり物を皆ダマスコの王に送った。
11697 14 24 24 この時スリヤの軍勢は少数で来たのであるが、主は大軍を彼らの手に渡された。これは彼らがその先祖の神、主を捨てたためである。このように彼らはヨアシを罰した。
11698 14 24 25 スリヤ軍はヨアシに大傷を負わせて捨て去ったが、ヨアシの家来たちは祭司エホヤダの子の血のために、党を結んで彼にそむき、彼を床の上に殺して、死なせた。人々は彼をダビデの町に葬ったが、王の墓には葬らなかった。
11699 14 24 26 党を結んで彼にそむいた者は、アンモンの女シメアテの子ザバデおよびモアブの女シムリテの子ヨザバデであった。
11700 14 24 27 ヨアシの子らのこと、ヨアシに対する多くの預言および神の宮の修理の事などは、列王の書の注釈にしるされている。ヨアシの子アマジヤが彼に代って王となった。
11701 14 25 1 アマジヤは王となった時二十五歳で、二十九年の間エルサレムで世を治めた。その母はエルサレムの者で、名をエホアダンといった。
11702 14 25 2 アマジヤは主の良しと見られることを行ったが、全き心をもってではなかった。
11703 14 25 3 彼は、国が彼の手のうちに強くなったとき、父ヨアシ王を殺害した家来たちを殺した。
11704 14 25 4 しかしその子供たちは殺さなかった。これはモーセの律法の書にしるされている所に従ったのであって、そこに主は命じて、「父は子のゆえに殺されるべきではない。子は父のゆえに殺されるべきではない。おのおの自分の罪のゆえに殺されるべきである」と言われている。
11705 14 25 5 アマジヤはユダの人々を集め、その氏族に従って、千人の長に付属させ、または百人の長に付属させた。ユダとベニヤミンのすべてに行った。そして二十歳以上の者を数えたところ、やりと盾をとって戦いに臨みうる精兵三十万人を得た。
11706 14 25 6 彼はまた銀百タラントをもってイスラエルから大勇士十万人を雇った。
11707 14 25 7 その時、神の人が彼の所に来て言った、「王よ、イスラエルの軍勢をあなたと共に行かせてはいけません。主はイスラエルびと、すなわちエフライムのすべての人々とは共におられないからです。
11708 14 25 8 もしあなたがこのような方法で戦いに強くなろうと思うならば、神はあなたを敵の前に倒されるでしょう。神には助ける力があり、また倒す力があるからです」。
11709 14 25 9 アマジヤは神の人に言った、「それではわたしがイスラエルの軍隊に与えた百タラントをどうしましょうか」。神の人は答えた、「主はそれよりも多いものをあなたにお与えになることができます」。
11710 14 25 10 そこでアマジヤはエフライムから来て自分に加わった軍隊を分離して帰らせたので、彼らはユダに対して激しい怒りを発し、火のように怒って自分の所に帰った。
11711 14 25 11 しかしアマジヤは勇気を出し、その民を率いて塩の谷へ行き、セイルびと一万人を撃ち殺した。
11712 14 25 12 またユダの人々はこのほかに一万人をいけどり、岩の頂に引いて行って岩の頂から彼らを投げ落したので、皆こなごなに砕けた。
11713 14 25 13 ところがアマジヤが自分と共に戦いに行かせないで帰してやった兵卒らが、サマリヤからベテホロンまでの、ユダの町々を襲って三千人を殺し、多くの物を奪い取った。
11714 14 25 14 アマジヤはエドムびとを殺して帰った時、セイルびとの神々を携えてきて、これを安置して自分の神とし、これを礼拝し、これにささげ物をなした。
11715 14 25 15 それゆえ、主はアマジヤに向かって怒りを発し、預言者を彼につかわして言わせられた、「かの民の神々は自分の民をあなたの手から救うことができなかったのに、あなたはどうしてそれを求めたのか」。
11716 14 25 16 彼がこう王に語ると、王は彼に、「われわれはあなたを王の顧問にしたのですか。やめなさい。あなたはどうして殺されようとするのですか」と言ったので、預言者はやめて言った、「あなたはこの事を行って、わたしのいさめを聞きいれないゆえ、神はあなたを滅ぼそうと定められたことをわたしは知っています」。
11717 14 25 17 そこでユダの王アマジヤは協議の結果、人をエヒウの子エホアハズの子であるイスラエルの王ヨアシにつかわし、「さあ、われわれは互に顔をあわせよう」と言わせたところ、
11718 14 25 18 イスラエルの王ヨアシはユダの王アマジヤに言い送った、「レバノンのいばらが、かつてレバノンの香柏に、『あなたの娘をわたしのむすこの妻に与えよ』と言い送ったところが、レバノンの野獣が通りかかって、そのいばらを踏み倒した。
11719 14 25 19 あなたは『見よ、わたしはエドムを撃ち破った』と言って心に誇り高ぶっている。しかしあなたは自分の家にとどまっていなさい。どうしてあなたは災を引き起して、自分もユダも共に滅びようとするのか」。
11720 14 25 20 しかしアマジヤは聞きいれなかった。これは神から出たのであって、彼らがエドムの神々を求めたので神は彼らを敵の手に渡されるためである。
11721 14 25 21 そこでイスラエルの王ヨアシは上って来て、ユダのベテシメシでユダの王アマジヤと顔を合わせたが、
11722 14 25 22 ユダはイスラエルに撃ち破られ、おのおのその天幕に逃げ帰った。
11723 14 25 23 その時イスラエルの王ヨアシはエホアハズの子ヨアシの子であるユダの王アマジヤをベテシメシで捕えて、エルサレムに引いて行き、エルサレムの城壁をエフライム門から、隅の門まで四百キュビトほどをこわし、
11724 14 25 24 また神の宮のうちで、オベデエドムが守っていたすべての金銀およびもろもろの器物ならびに王の家の財宝を奪い、また人質をとって、サマリヤに帰った。
11725 14 25 25 ユダの王ヨアシの子アマジヤはイスラエルの王エホアハズの子ヨアシが死んで後なお十五年生きながらえた。
11726 14 25 26 アマジヤのその他の始終の行為は、ユダとイスラエルの列王の書にしるされているではないか。
11727 14 25 27 アマジヤがそむいて、主に従わなくなった時から、人々はエルサレムにおいて党を結び、彼に敵したので、彼はラキシに逃げて行ったが、その人々はラキシに人をやって、彼をその所で殺させた。
11728 14 25 28 人々はこれを馬に負わせて持ってきて、ユダの町でその先祖たちと共にこれを葬った。
11729 14 26 1 そこでユダの民は皆ウジヤをとって王となし、その父アマジヤに代らせた。時に十六歳であった。
11730 14 26 2 彼はエラテを建てて、これをふたたびユダのものにした。これはかの王がその先祖たちと共に眠った後であった。
11731 14 26 3 ウジヤは王となった時十六歳で、エルサレムで五十二年の間世を治めた。その母はエルサレムの者で名をエコリヤといった。
11732 14 26 4 ウジヤは父アマジヤがしたように、すべて主の良しと見られることを行った。
11733 14 26 5 彼は神を恐れることを自分に教えたゼカリヤの世にある日の間、神を求めることに努めた。彼が主を求めた間、神は彼を栄えさせられた。
11734 14 26 6 彼は出てペリシテびとと戦い、ガテの城壁、ヤブネの城壁およびアシドドの城壁をくずし、アシドドの地とペリシテびとのなかに町を建てた。
11735 14 26 7 神は彼を助けてペリシテびとと、グルバアルに住むアラビヤびとおよびメウニびとを攻め撃たせられた。
11736 14 26 8 アンモンびとはウジヤにみつぎを納めた。ウジヤは非常に強くなったので、その名はエジプトの入口までも広まった。
11737 14 26 9 ウジヤはまたエルサレムの隅の門、谷の門および城壁の曲りかどにやぐらを建てて、これを堅固にした。
11738 14 26 10 彼はまた荒野にやぐらを建て、また多くの水ためを掘った。彼は平野にも平地にもたくさんの家畜をもっていたからである。彼はまた農事を好んだので、山々および肥えた畑には農夫とぶどうをつくる者をもっていた。
11739 14 26 11 ウジヤはまたよく戦う一軍団を持っていた。彼らは書記エイエルと、つかさマアセヤによって調べた数に従って組々に分れ、皆王の軍長のひとりハナニヤの指揮下にあった。
11740 14 26 12 その氏族の長である大勇士の数は合わせて二千六百人であった。
11741 14 26 13 その指揮下にある軍勢は三十万七千五百人で、皆大いなる力をもって戦い、王を助けて敵に当った。
11742 14 26 14 ウジヤはその全軍のために盾、やり、かぶと、よろい、弓および石投げの石を備えた。
11743 14 26 15 彼はまたエルサレムで技術者の考案した機械を造って、これをやぐらおよび城壁のすみずみにすえ、これをもって矢および大石を射出した。こうして彼の名声は遠くまで広まった。彼が驚くほど神の助けを得て強くなったからである。
11744 14 26 16 ところが彼は強くなるに及んで、その心に高ぶり、ついに自分を滅ぼすに至った。すなわち彼はその神、主にむかって罪を犯し、主の宮にはいって香の祭壇の上に香をたこうとした。
11745 14 26 17 その時、祭司アザリヤは主の祭司である勇士八十人を率いて、彼のあとに従ってはいり、
11746 14 26 18 ウジヤ王を引き止めて言った、「ウジヤよ、主に香をたくことはあなたのなすべきことではなく、ただアロンの子孫で、香をたくために清められた祭司たちのすることです。すぐ聖所から出なさい。あなたは罪を犯しました。あなたは主なる神から栄えを得ることはできません」。
11747 14 26 19 するとウジヤは怒りを発し、香炉を手にとって香をたこうとしたが、彼が祭司に向かって怒りを発している間に、らい病がその額に起った。時に彼は主の宮で祭司たちの前、香の祭壇のかたわらにいた。
11748 14 26 20 祭司の長アザリヤおよびすべての祭司たちが彼を見ると、彼の額にらい病が生じていたので、急いで彼をそこから追い出した。彼自身もまた主に撃たれたことを知って、急いで出て行った。
11749 14 26 21 ウジヤ王は、死ぬ日までらい病人であった。彼はらい病人であったので、離れ殿に住んだ。主の宮から断たれたからである。その子ヨタムが王の家をつかさどり、国の民を治めた。
11750 14 26 22 ウジヤのその他の始終の行為は、アモツの子預言者イザヤがこれを書きしるした。
11751 14 26 23 ウジヤは先祖たちと共に眠ったので、人々は「彼はらい病人である」と言って、王たちの墓に連なる墓地に、その先祖たちと共に葬った。その子ヨタムが彼に代って王となった。
11752 14 27 1 ヨタムは王となった時二十五歳で、十六年の間エルサレムで世を治めた。その母はザドクの娘で名をエルシャといった。
11753 14 27 2 ヨタムはその父ウジヤがしたように主の良しと見られることをした。しかし主の宮には、はいらなかった。民はなお悪を行った。
11754 14 27 3 彼は主の宮の上の門を建て、オペルの石がきを多く築き増し、
11755 14 27 4 またユダの山地に数個の町を建て、林の間に城とやぐらを築いた。
11756 14 27 5 彼はアンモンびとの王と戦ってこれに勝った。その年アンモンの人々は銀百タラント、小麦一万コル、大麦一万コルを彼に贈った。アンモンの人々は第二年にも第三年にも同じように彼に納めた。
11757 14 27 6 ヨタムはその神、主の前にその行いを堅くしたので力ある者となった。
11758 14 27 7 ヨタムのその他の行為、そのすべての戦いおよびその行いなどは、イスラエルとユダの列王の書にしるされている。
11759 14 27 8 彼は王となった時、二十五歳で、十六年の間エルサレムで世を治めた。
11760 14 27 9 ヨタムはその先祖と共に眠ったので、ダビデの町に葬られ、その子アハズが彼に代って王となった。
11761 14 28 1 アハズは王となった時二十歳で、十六年の間エルサレムで世を治めたが、その父ダビデとは違って、主の良しと見られることを行わず、
11762 14 28 2 イスラエルの王たちの道に歩み、またもろもろのバアルのために鋳た像を造り、
11763 14 28 3 ベンヒンノムの谷で香をたき、その子らを火に焼いて供え物とするなど、主がイスラエルの人々の前から追い払われた異邦人の憎むべき行いにならい、
11764 14 28 4 また高き所の上、丘の上、すべての青木の下で犠牲をささげ、香をたいた。
11765 14 28 5 それゆえ、その神、主は彼をスリヤの王の手に渡されたので、スリヤびとは彼を撃ち破り、その民を多く捕虜として、ダマスコに引いて行った。彼はまたイスラエルの王の手にも渡されたので、イスラエルの王も彼を撃ち破って大いに殺した。
11766 14 28 6 すなわちレマリヤの子ペカはユダで一日のうちに十二万人を殺した。皆勇士であった。これは彼らがその先祖の神、主を捨てたためである。
11767 14 28 7 その時、エフライムの勇士ジクリという者が王の子マアセヤ、宮内大臣アズリカムおよび王に次ぐ人エルカナを殺した。
11768 14 28 8 イスラエルの人々はついにその兄弟のうちから婦人ならびに男子、女子など二十万人を捕虜にし、また多くのぶんどり物をとり、そのぶんどり物をサマリヤに持って行った。
11769 14 28 9 その時そこに名をオデデという主の預言者があって、サマリヤに帰って来た軍勢の前に進み出て言った、「見よ、あなたがたの先祖の神、主はユダを怒って、これをあなたがたの手に渡されたが、あなたがたは天に達するほどの怒りをもってこれを殺した。
11770 14 28 10 そればかりでなく、あなたがたは今、ユダとエルサレムの人々を従わせて、自分の男女の奴隷にしようと思っている。しかしあなたがた自身もまた、あなたがたの神、主に罪を犯しているではないか。
11771 14 28 11 いまわたしに聞き、あなたがたがその兄弟のうちから捕えて来た捕虜を放ち帰らせなさい。主の激しい怒りがあなたがたの上に臨んでいるからです」。
11772 14 28 12 そこでエフライムびとのおもなる人々、すなわちヨハナンの子アザリヤ、メシレモテの子ベレキヤ、シャルムの子ヒゼキヤ、ハデライの子アマサらもまた、戦争から帰った者どもに向かって立ちあがり、
11773 14 28 13 彼らに言った、「捕虜をここに引き入れてはならない。あなたがたはわたしどもに主に対するとがを得させて、さらにわれわれの罪とがを増し加えようとしている。われわれのとがは大きく、激しい怒りがイスラエルの上に臨んでいるからです」。
11774 14 28 14 そこで兵卒どもがその捕虜とぶんどり物をつかさたちと全会衆の前に捨てておいたので、
11775 14 28 15 前に名をあげた人々が立って捕虜を受け取り、ぶんどり物のうちから衣服をとって、裸の者に着せ、また、くつをはかせ、食い飲みさせ、油を注ぎなどし、その弱い者を皆ろばに乗せ、こうして彼らをしゅろの町エリコに連れて行って、その兄弟たちに渡し、そしてサマリヤに帰って来た。
11776 14 28 16 その時アハズ王は人をアッスリヤの王につかわして助けを求めさせた。
11777 14 28 17 エドムびとが再び侵入してユダを撃ち、民を捕え去ったからである。
11778 14 28 18 ペリシテびともまた平野の町々およびユダのネゲブの町々を侵して、ベテシメシ、アヤロン、ゲデロテおよびソコとその村里、テムナとその村里、ギムゾとその村里を取って、そこに住んだ。
11779 14 28 19 これはイスラエルの王アハズのゆえに、主がユダを低くされたのであって、彼がユダのうちにみだらなことを行い、主に向かって大いに罪を犯したからである。
11780 14 28 20 アッスリヤの王テルガデ・ピルネセルは彼の所に来たが、彼に力を添えないで、かえって彼を悩ました。
11781 14 28 21 アハズは主の宮と王の家、およびつかさたちの家の物を取ってアッスリヤの王に与えたが、それはアハズの助けにはならなかった。
11782 14 28 22 このアハズ王はその悩みの時にあたって、ますます主に罪を犯した。
11783 14 28 23 すなわち、彼は自分を撃ったダマスコの神々に、犠牲をささげて言った、「スリヤの王たちの神々はその王たちを助けるから、わたしもそれに犠牲をささげよう。そうすれば彼らはわたしを助けるであろう」と。しかし、彼らはかえってアハズとイスラエル全国とを倒す者となった。
11784 14 28 24 アハズは神の宮の器物を集めて、神の宮の器物を切り破り、主の宮の戸を閉じ、エルサレムのすべてのすみずみに祭壇を造り、
11785 14 28 25 ユダのすべての町々に高き所を造って、他の神々に香をたきなどして、先祖の神、主の怒りを引き起した。
11786 14 28 26 アハズのその他の始終の行為およびそのすべての行動は、ユダとイスラエルの列王の書にしるされている。
11787 14 28 27 アハズはその先祖たちと共に眠ったので、エルサレムの町にこれを葬った。しかし、イスラエルの王たちの墓には持って行かなかった。その子ヒゼキヤが彼に代って王となった。
11788 14 29 1 ヒゼキヤは王となった時二十五歳で、二十九年の間エルサレムで世を治めた。その母はアビヤと言って、ゼカリヤの娘である。
11789 14 29 2 ヒゼキヤは父ダビデがすべてなしたように主の良しと見られることをした。
11790 14 29 3 彼はその治世の第一年の一月に主の宮の戸を開き、かつこれを繕った。
11791 14 29 4 彼は祭司とレビびとを連れていって、東の広場に集め、
11792 14 29 5 彼らに言った、「レビびとよ、聞きなさい。あなたがたは今、身を清めて、あなたがたの先祖の神、主の宮を清め、聖所から汚れを除き去りなさい。
11793 14 29 6 われわれの先祖は罪を犯し、われわれの神、主の悪と見られることを行って、主を捨て、主のすまいに顔をそむけ、うしろを向けた。
11794 14 29 7 また廊の戸を閉じ、ともしびを消し、聖所でイスラエルの神に香をたかず、燔祭をささげなかった。
11795 14 29 8 それゆえ、主の怒りはユダとエルサレムに臨み、あなたがたが目に見るように、主は彼らを恐れと驚きと物笑いにされた。
11796 14 29 9 見よ、われわれの父たちはつるぎにたおれ、われわれのむすこたち、むすめたち、妻たちはこれがために捕虜となった。
11797 14 29 10 今わたしは、イスラエルの神、主と契約を結ぶ志をもっている。そうすればその激しい怒りは、われわれを離れるであろう。
11798 14 29 11 わが子らよ、今は怠ってはならない。主はあなたがたを選んで、主の前に立って仕えさせ、ご自分に仕える者となし、また香をたく者とされたからである」。
11799 14 29 12 そこでレビびとは立ち上がった。すなわちコハテびとの子孫のうちでは、アマサイの子マハテおよびアザリヤの子ヨエル。メラリの子孫では、アブデの子キシおよびエハレレルの子アザリヤ。ゲルションびとのうちでは、ジンマの子ヨアおよびヨアの子エデン。
11800 14 29 13 エリザパンの子孫のうちでは、シムリとエイエル。アサフの子孫のうちでは、ゼカリヤとマッタニヤ。
11801 14 29 14 ヘマンの子孫のうちでは、エヒエルとシメイ。エドトンの子孫のうちでは、シマヤとウジエルである。
11802 14 29 15 彼らはその兄弟たちを集めて身を清め、主の言葉による王の命令に従って、主の宮を清めるためにはいって来た。
11803 14 29 16 祭司たちが主の宮の奥にはいってこれを清め、主の宮にあった汚れた物をことごとく主の宮の庭に運び出すと、レビびとはそれを受けて外に出し、キデロン川に持って行った。
11804 14 29 17 彼らは正月の元日に清めることを始めて、その月の八日に主の宮の廊に達した。それから主の宮を清めるのに八日を費し、正月の十六日にこれを終った。
11805 14 29 18 そこで彼らはヒゼキヤ王の所へ行って言った、「われわれは主の宮をことごとく清め、また燔祭の壇とそのすべての器物、および供えのパンの机とそのすべての器物とを清めました。
11806 14 29 19 またアハズ王がその治世に罪を犯して捨てたすべての器物をも整えて清めました。それらは主の祭壇の前にあります」。
11807 14 29 20 そこでヒゼキヤ王は朝早く起きいで、町のつかさたちを集めて、主の宮に上って行き、
11808 14 29 21 雄牛七頭、雄羊七頭、小羊七頭、雄やぎ七頭を引いてこさせ、国と聖所とユダのためにこれを罪祭とし、アロンの子孫である祭司たちに命じてこれを主の祭壇の上にささげさせた。
11809 14 29 22 すなわち、雄牛をほふると、祭司たちはその血を受けて祭壇にふりかけ、また雄羊をほふると、その血を祭壇にふりかけ、また小羊をほふると、その血を祭壇にふりかけた。
11810 14 29 23 そして罪祭の雄やぎを王と会衆の前に引いて来たので、彼らはその上に手を置いた。
11811 14 29 24 そして祭司たちはこれをほふり、その血を罪祭として祭壇の上にささげてイスラエル全国のためにあがないをした。これは王がイスラエル全国のために燔祭および罪祭をささげることを命じたためである。
11812 14 29 25 王はまたレビびとを主の宮に置き、ダビデおよび王の先見者ガドと預言者ナタンの命令に従って、これにシンバル、立琴および琴をとらせた。これは主がその預言者によって命じられたところである。
11813 14 29 26 こうしてレビびとはダビデの楽器をとり、祭司はラッパをとって立った。
11814 14 29 27 そこでヒゼキヤは燔祭を祭壇の上にささげることを命じた。燔祭をささげ始めた時、主の歌をうたい、ラッパを吹き、イスラエルの王ダビデの楽器をならし始めた。
11815 14 29 28 そして会衆は皆礼拝し、歌うたう者は歌をうたい、ラッパ手はラッパを吹き鳴らし、燔祭が終るまですべてこのようであったが、
11816 14 29 29 ささげる事が終ると、王および彼と共にいた者はみな身をかがめて礼拝した。
11817 14 29 30 またヒゼキヤ王およびつかさたちはレビびとに命じて、ダビデと先見者アサフの言葉をもって主をさんびさせた。彼らは喜んでさんびし、頭をさげて礼拝した。
11818 14 29 31 その時、ヒゼキヤは言った、「あなたがたはすでに主に仕えるために身を清めたのであるから、進みよって、主の宮に犠牲と感謝の供え物を携えて来なさい」と。そこで会衆は犠牲と感謝の供え物を携えて来た。また志ある者は皆燔祭を携えて来た。
11819 14 29 32 会衆の携えて来た燔祭の数は雄牛七十頭、雄羊百頭、小羊二百頭、これらは皆主に燔祭としてささげるものであった。
11820 14 29 33 また奉納物は牛六百頭、小羊三千頭であった。
11821 14 29 34 ところが祭司が少なくてその燔祭の物の皮を、はぎつくすことができなかったので、その兄弟であるレビびとがこれを助けて、そのわざをなし終え、その間に他の祭司たちは身を清めた。これはレビびとが祭司たちよりも、身を清めることに、きちょうめんであったからである。
11822 14 29 35 このほかおびただしい燔祭があり、また、酬恩祭の脂肪および燔祭の灌祭もあった。こうして、主の宮の勤めは回復された。
11823 14 29 36 この事は、にわかになされたけれども、神がこのように民のために備えをされたので、ヒゼキヤおよびすべての民は喜んだ。
11824 14 30 1 ヒゼキヤはイスラエルとユダにあまねく人をつかわし、また手紙をエフライムとマナセに書き送り、エルサレムにある主の宮に来て、イスラエルの神、主に過越の祭を行うように勧めた。
11825 14 30 2 王はすでにつかさたちおよびエルサレムにおる全会衆に計って、二月に過越の祭を行うことを定めた。
11826 14 30 3 ――これは身を清めた祭司の数が足らず、民もまた、エルサレムに集まらなかったので、正月にこれを行うことができなかったからである――
11827 14 30 4 この事が、王にも全会衆にも良かったので、
11828 14 30 5 この事を定めて、ベエルシバからダンまでイスラエルにあまねくふれ示し、エルサレムに来て、イスラエルの神、主に過越の祭を行うことを勧めた。これはしるされているように、これを行う者が多くなかったゆえである。
11829 14 30 6 そこで飛脚たちは、王とそのつかさたちから受けた手紙をもって、イスラエルとユダをあまねく行き巡り、王の命を伝えて言った、「イスラエルの人々よ、あなたがたはアブラハム、イサク、イスラエルの神、主に立ち返りなさい。そうすれば主は、アッスリヤの王たちの手からのがれた残りのあなたがたに、帰られるでしょう。
11830 14 30 7 あなたがたの父たちおよび兄弟たちのようになってはならない。彼らはその先祖たちの神、主にむかって罪を犯したので、あなたがたの見るように主は彼らを滅びに渡されたのです。
11831 14 30 8 あなたがたの父たちのように強情にならないで、主に帰服し、主がとこしえに聖別された聖所に入り、あなたがたの神、主に仕えなさい。そうすれば、その激しい怒りがあなたがたを離れるでしょう。
11832 14 30 9 もしあなたがたが主に立ち返るならば、あなたがたの兄弟および子供は、これを捕えていった者の前にあわれみを得て、この国に帰ることができるでしょう。あなたがたの神、主は恵みあり、あわれみある方であられるゆえ、あなたがたが彼に立ち返るならば、顔をあなたがたにそむけられることはありません」。
11833 14 30 10 このように飛脚たちは、エフライムとマナセの国にはいって、町から町に行き巡り、ついに、ゼブルンまで行ったが、人々はこれをあざけり笑った。
11834 14 30 11 ただしアセル、マナセ、ゼブルンのうちには身を低くして、エルサレムにきた人々もあった。
11835 14 30 12 またユダにおいては神の手が人々に一つ心を与えて、王とつかさたちが主の言葉によって命じたことを行わせた。
11836 14 30 13 こうして二月になって、多くの民は、種入れぬパンの祭を行うためエルサレムに集まったが、非常に大きな会衆であった。
11837 14 30 14 彼らは立ってエルサレムにあるもろもろの祭壇を取り除き、またすべての香をたく祭壇を取り除いてキデロン川に投げすて、
11838 14 30 15 二月の十四日に過越の小羊をほふった。そこで祭司たちおよびレビびとはみずから恥じ、身を清めて主の宮に燔祭を携えて来た。
11839 14 30 16 彼らは神の人モーセの律法に従い、いつものようにその所に立ち、祭司たちは、レビびとの手から血を受けて注いだ。
11840 14 30 17 時に、会衆のうちにまだ身を清めていない者が多かったので、レビびとはその清くないすべての人々に代って過越の小羊をほふり、主に清めてささげた。
11841 14 30 18 多くの民すなわちエフライム、マナセ、イッサカル、ゼブルンからきた多くの者はまだ身を清めていないのに、書きしるされたとおりにしないで過越の物を食べた。それでヒゼキヤは、彼らのために祈って言った、「恵みふかき主よ、彼らをゆるしてください。
11842 14 30 19 彼らは聖所の清めの規定どおりにしなかったけれども、その心を傾けて神を求め、その先祖の神、主を求めたのです」。
11843 14 30 20 主はヒゼキヤに聞いて、民をいやされた。
11844 14 30 21 そこでエルサレムに来ていたイスラエルの人々は大いなる喜びをいだいて、七日のあいだ種入れぬパンの祭を行った。またレビびとと祭司たちは日々に主をさんびし、力をつくして主をたたえた。
11845 14 30 22 そしてヒゼキヤは主の勤めによく通じているすべてのレビびとを深くねぎらった。こうして人々は酬恩祭の犠牲をささげ、その先祖の神、主に感謝して、七日のあいだ祭の供え物を食べた。
11846 14 30 23 なお全会衆は相はかって、さらに七日のあいだ祭を守ることを定め、喜びをもってまた七日のあいだ守った。
11847 14 30 24 時にユダの王ヒゼキヤは雄牛一千頭、羊七千頭を会衆に贈り、また、つかさたちは雄牛一千頭、羊一万頭を会衆に贈った。祭司もまた多く身を清めた。
11848 14 30 25 ユダの全会衆および祭司、レビびと、ならびにイスラエルからきた全会衆、およびイスラエルの地からきた他国人と、ユダに住む他国人は皆喜んだ。
11849 14 30 26 このようにエルサレムに大いなる喜びがあった。イスラエルの王ダビデの子ソロモンの時からこのかた、このような事はエルサレムになかった。
11850 14 30 27 このとき祭司たちとレビびとは立って、民を祝福したが、その声は聞かれ、その祈は主の聖なるすみかである天に達した。
11851 14 31 1 この事がすべて終った時、そこにいたイスラエルびとは皆、ユダの町々に出て行って、石柱を砕き、アシラ像を切り倒し、ユダとベニヤミンの全地、およびエフライムとマナセにある高き所と祭壇とを取りこわし、ついにこれをことごとく破壊した。そしてイスラエルの人々はおのおのその町々、その所領に帰った。
11852 14 31 2 ヒゼキヤは祭司およびレビびとの班を定め、班ごとにおのおのその勤めに従って、祭司とレビびとに燔祭と酬恩祭をささげさせ、主の営の門で勤めをし、感謝をし、さんびをさせた。
11853 14 31 3 また燔祭のために自分の財産のうちから王の分を出した。すなわち朝夕の燔祭および安息日、新月、定めの祭などの燔祭のために出して、主の律法にしるされているとおりにした。
11854 14 31 4 またエルサレムに住む民に、祭司とレビびとにその分を与えることを命じた。これは彼らをして主の律法に身をゆだねさせるためである。
11855 14 31 5 その命令が伝わるやいなや、イスラエルの人々は穀物、酒、油、蜜ならびに畑のもろもろの産物の初物を多くささげ、またすべての物の十分の一をおびただしく携えて来た。
11856 14 31 6 ユダの町々に住んでいたイスラエルとユダの人々もまた牛、羊の十分の一ならびにその神、主にささげられた奉納物を携えて来て、これを積み重ねた。
11857 14 31 7 三月にこれを積み重ねることを始め、七月にこれを終った。
11858 14 31 8 ヒゼキヤおよびつかさたちは来て、その積み重ねた物を見、主とその民イスラエルを祝福した。
11859 14 31 9 そしてヒゼキヤがその積み重ねた物について祭司およびレビびとに問い尋ねた時、
11860 14 31 10 ザドクの家から出た祭司の長アザリヤは彼に答えて言った、「民が主の宮に供え物を携えて来ることを始めてからこのかた、われわれは飽きるほど食べたが、たくさん残りました。主がその民を恵まれたからです。それでわれわれは、このように多くの残った物をもっているのです」。
11861 14 31 11 そこでヒゼキヤは主の宮のうちに室を設けることを命じたので、彼らはこれを設け、
11862 14 31 12 その供え物の十分の一および奉納物を忠実に携え入れた。これをつかさどる者のかしらはレビびとコナニヤで、その兄弟シメイは彼に次ぐ者となり、
11863 14 31 13 エヒエル、アザジヤ、ナハテ、アサヘル、エレモテ、ヨザバデ、エリエル、イスマキヤ、マハテ、ベナヤらは、ヒゼキヤ王および神の宮のつかさアザリヤの任命によって、コナニヤおよびその兄弟シメイを助けて、その監督者となった。
11864 14 31 14 東の門を守る者レビびとイムナの子コレは、神にささげる自発のささげ物をつかさどり、主の供え物および最も聖なる物を分配した。
11865 14 31 15 彼を助ける者はエデン、ミニヤミン、エシュア、シマヤ、アマリヤおよびシカニヤで、皆祭司の町々でその兄弟たちに、班によって、老若ひとしく忠実に分配した。
11866 14 31 16 ただしすべて登録された三歳以上の男子で主の宮に入り、その班に従って日々の職分をつくし、その受持の勤めをなす者は除かれた。
11867 14 31 17 祭司の登録はその氏族によってなされ、二十歳以上のレビびとの登録はその班により、その受持にしたがってなされた。
11868 14 31 18 また祭司はその幼な子、その妻、そのむすこ、その娘、全会衆と共に登録した。彼らは忠実に身を聖なる事にささげたからである。
11869 14 31 19 また町々の放牧地におるアロンの子孫である祭司たちのためには、町ごとに人を名ざし選んで、祭司のうちのすべての男およびレビびとのうちの登録されたすべての者に、その分を与えさせた。
11870 14 31 20 ヒゼキヤはユダ全国にこのようにし、良い事、正しい事、忠実な事をその神、主の前に行った。
11871 14 31 21 彼がその神を求めるために神の宮の務につき、律法につき、戒めについて始めたわざは、ことごとく心をつくして行い、これをなし遂げた。
11872 14 32 1 ヒゼキヤがこれらの事を忠実に行った後、アッスリヤの王セナケリブが来てユダに侵入し、堅固な町々に向かって陣を張り、これを攻め取ろうとした。
11873 14 32 2 ヒゼキヤはセナケリブが来て、エルサレムを攻めようとするのを見たので、
11874 14 32 3 そのつかさたちおよび勇士たちと相談して、町の外にある泉の水を、ふさごうとした。彼らはこれを助けた。
11875 14 32 4 多くの民は集まって、すべての泉および国の中を流れる谷川をふさいで言った、「アッスリヤの王たちがきて、多くの水を得られるようなことをしておいていいだろうか」。
11876 14 32 5 ヒゼキヤはまた勇気を出して、破れた城壁をことごとく築き直して、その上にやぐらを建て、その外にまた城壁を巡らし、ダビデの町のミロを堅固にし、武器および盾を多く造り、
11877 14 32 6 軍長を民の上に置き、町の門の広場に民を集めて、これを励まして言った、
11878 14 32 7 「心を強くし、勇みたちなさい。アッスリヤの王をも、彼と共にいるすべての群衆をも恐れてはならない。おののいてはならない。われわれと共におる者は彼らと共におる者よりも大いなる者だからである。
11879 14 32 8 彼と共におる者は肉の腕である。しかしわれわれと共におる者はわれわれの神、主であって、われわれを助け、われわれに代って戦われる」。民はユダの王ヒゼキヤの言葉に安心した。
11880 14 32 9 この後アッスリヤの王セナケリブはその全軍をもってラキシを囲んでいたが、その家来をエルサレムにつかわして、ユダの王ヒゼキヤおよびエルサレムにいるすべてのユダの人に告げさせて言った、
11881 14 32 10 「アッスリヤの王セナケリブはこう言います、『あなたがたは何を頼んでエルサレムにこもっているのか。
11882 14 32 11 ヒゼキヤは「われわれの神、主がアッスリヤの王の手から、われわれを救ってくださる」と言って、あなたがたをそそのかし、飢えと、かわきをもって、あなたがたを死なせようとしているのではないか。
11883 14 32 12 このヒゼキヤは主のもろもろの高き所と祭壇を取り除き、ユダとエルサレムに命じて、「あなたがたはただ一つの祭壇の前で礼拝し、その上に犠牲をささげなければならない」と言った者ではないか。
11884 14 32 13 あなたがたは、わたしおよびわたしの先祖たちが、他の国々のすべての民にしたことを知らないのか。それらの国々の民の神々は、少しでもその国を、わたしの手から救い出すことができたか。
11885 14 32 14 わたしの先祖たちが滅ぼし尽したそれらの国民のもろもろの神のうち、だれか自分の民をわたしの手から救い出すことのできたものがあるか。それで、どうしてあなたがたの神が、あなたがたをわたしの手から救い出すことができよう。
11886 14 32 15 それゆえ、あなたがたはヒゼキヤに欺かれてはならない。そそのかされてはならない。また彼を信じてはならない。いずれの民、いずれの国の神もその民をわたしの手、または、わたしの先祖の手から救いだすことができなかったのだから、ましてあなたがたの神が、どうしてわたしの手からあなたがたを救いだすことができようか』」。
11887 14 32 16 セナケリブの家来は、このほかにも多く主なる神、およびそのしもべヒゼキヤをそしった。
11888 14 32 17 セナケリブはまた手紙を書き送って、イスラエルの神、主をあざけり、かつそしって言った、「諸国の民の神々が、その民をわたしの手から救い出さなかったように、ヒゼキヤの神も、その民をわたしの手から救い出さないであろう」と。
11889 14 32 18 そして彼らは大声をあげ、ユダヤの言葉をもって、城壁の上にいるエルサレムの民に向かって叫び、これをおどし、かつおびやかした。彼らは町を取るためである。
11890 14 32 19 このように彼らがエルサレムの神について語ること、人の手のわざである地上の民の神々について語るようであった。
11891 14 32 20 そこでヒゼキヤ王およびアモツの子預言者イザヤは共に祈って、天に呼ばわったので、
11892 14 32 21 主はひとりのみ使をつかわして、アッスリヤ王の陣営にいるすべての大勇士と将官、軍長らを滅ぼされた。それで王は赤面して自分の国に帰ったが、その神の家にはいった時、その子のひとりが、つるぎをもって彼をその所で殺した。
11893 14 32 22 このように主は、ヒゼキヤとエルサレムの住民をアッスリヤの王セナケリブの手およびすべての敵の手から救い出し、いたる所で彼らを守られた。
11894 14 32 23 そこで多くの人々はささげ物をエルサレムに携えてきて主にささげ、また宝物をユダの王ヒゼキヤに贈った。この後ヒゼキヤは万国の民に尊ばれた。
11895 14 32 24 そのころ、ヒゼキヤは病んで死ぬばかりであったが、主に祈ったので、主はこれに答えて、しるしを賜わった。
11896 14 32 25 しかしヒゼキヤはその受けた恵みに報いることをせず、その心が高ぶったので、怒りが彼とユダおよびエルサレムに臨もうとしたが、
11897 14 32 26 ヒゼキヤはその心の高ぶりを悔いてへりくだり、またエルサレムの住民も同様にしたので、主の怒りは、ヒゼキヤの世には彼らに臨まなかった。
11898 14 32 27 ヒゼキヤは富と栄誉をきわめ、宝蔵を造って、金、銀、宝石、香料、盾および各種の尊い器物をおさめ、
11899 14 32 28 また倉庫を造って穀物、酒、油などの産物をおさめ、小屋を造って種々の家畜を置き、おりを造って羊の群れを置き、
11900 14 32 29 また多数の町を設け、かつ羊と牛をおびただしく所有した。神が非常に多くの貨財を彼に賜わったからである。
11901 14 32 30 このヒゼキヤはまたギホンの水の上の源をふさいで、これをダビデの町の西の方にまっすぐに引き下した。このようにヒゼキヤはそのすべてのわざをなし遂げた。
11902 14 32 31 しかしバビロンの君たちが使者をつかわして、この国にあった、しるしについて尋ねさせた時には、神は彼を試みて、彼の心にあることを、ことごとく知るために彼を捨て置かれた。
11903 14 32 32 ヒゼキヤのその他の行為およびその徳行は、アモツの子預言者イザヤの黙示とユダとイスラエルの列王の書にしるされている。
11904 14 32 33 ヒゼキヤはその先祖たちと共に眠ったので、ダビデの子孫の墓のうちの高い所に葬られた。ユダの人々およびエルサレムの住民は皆その死に当って彼に敬意を表した。その子マナセが彼に代って王となった。
11905 14 33 1 マナセは十二歳で王となり、五十五年の間エルサレムで世を治めた。
11906 14 33 2 彼は主がイスラエルの人々の前から追い払われた国々の民の憎むべき行いに見ならって、主の目の前に悪を行った。
11907 14 33 3 すなわち、その父ヒゼキヤがこわした高き所を再び築き、またもろもろのバアルのために祭壇を設け、アシラ像を造り、天の万象を拝んで、これに仕え、
11908 14 33 4 また主が「わが名は永遠にエルサレムにある」と言われた主の宮のうちに数個の祭壇を築き、
11909 14 33 5 主の宮の二つの庭に天の万象のために祭壇を築いた。
11910 14 33 6 彼はまたベンヒンノムの谷でその子供を火に焼いて供え物とし、占いをし、魔法をつかい、まじないを行い、口寄せと、占い師を任用するなど、主の前に多くの悪を行って、その怒りをひき起した。
11911 14 33 7 彼はまた刻んだ偶像を造って神の宮に安置した。神はこの宮についてダビデとその子ソロモンに言われたことがある、「わたしはこの宮と、わたしがイスラエルのすべての部族のうちから選んだエルサレムとに、わたしの名を永遠に置く。
11912 14 33 8 彼らがもし、わたしがすべて命じた事、すなわち、モーセが伝えたすべての律法と定めとおきてとを慎んで行うならば、わたしがあなたがたの先祖のために定めた地から、重ねてイスラエルの足を移すことをしない」と。
11913 14 33 9 マナセはこのようにユダとエルサレムの住民を迷わせ、主がイスラエルの人々の前に滅ぼされた国々の民にもまさって悪を行わせた。
11914 14 33 10 主はマナセおよびその民に告げられたが、彼らは心に留めなかった。
11915 14 33 11 それゆえ、主はアッスリヤの王の軍勢の諸将をこれに攻めこさせられたので、彼らはマナセをかぎで捕え、青銅のかせにつないで、バビロンに引いて行った。
11916 14 33 12 彼は悩みにあうに及んで、その神、主に願い求め、その先祖の神の前に大いに身を低くして、
11917 14 33 13 神に祈ったので、神はその祈を受けいれ、その願いを聞き、彼をエルサレムに連れ帰って、再び国に臨ませられた。これによってマナセは主こそ、まことに神にいますことを知った。
11918 14 33 14 この後、彼はダビデの町の外の石がきをギホンの西の方の谷のうちに築き、魚の門の入口にまで及ぼし、またオペルに石がきをめぐらして、非常に高くこれを築き上げ、ユダのすべての堅固な町に軍長を置き、
11919 14 33 15 また主の宮から、異邦の神々および偶像を取り除き、主の宮の山とエルサレムに自分で築いたすべての祭壇を取り除いて、町の外に投げ捨て、
11920 14 33 16 主の祭壇を築き直して、酬恩祭および感謝の犠牲を、その上にささげ、ユダに命じてイスラエルの神、主に仕えさせた。
11921 14 33 17 しかし民は、なお高き所で犠牲をささげた。ただしその神、主にのみささげた。
11922 14 33 18 マナセのそのほかの行為、その神にささげた祈、およびイスラエルの神、主の名をもって彼に告げた先見者たちの言葉は、イスラエルの列王の記録のうちにしるされている。
11923 14 33 19 またその祈と、祈の聞かれた事、そのもろもろの罪と、とが、その身を低くする前に高き所を築いて、アシラ像および刻んだ像を立てた場所などは、先見者の記録のうちにしるされている。
11924 14 33 20 マナセはその先祖たちと共に眠ったので、その家に葬られた。その子アモンが彼に代って王となった。
11925 14 33 21 アモンは王となった時二十二歳で、二年の間エルサレムで世を治めた。
11926 14 33 22 彼はその父マナセのしたように主の前に悪を行った。すなわちアモンはその父マナセが造ったもろもろの刻んだ像に犠牲をささげて、これに仕え、
11927 14 33 23 その父マナセが身を低くしたように主の前に身を低くしなかった。かえってこのアモンは、いよいよそのとがを増した。
11928 14 33 24 その家来たちは党を結んで彼にそむき、彼をその家で殺した。
11929 14 33 25 しかし国の民は、党を結んでアモン王にそむいた者どもをことごとく撃ち殺した。そして国の民はその子ヨシヤを王となして、そのあとを継がせた。
11930 14 34 1 ヨシヤは八歳のとき王となり、エルサレムで三十一年の間世を治めた。
11931 14 34 2 彼は主の良しと見られることをなし、その父ダビデの道を歩んで、右にも左にも曲らなかった。
11932 14 34 3 彼はまだ若かったが、その治世の第八年に父ダビデの神を求めることを始め、その十二年には高き所、アシラ像、刻んだ像、鋳た像などを除いて、ユダとエルサレムを清めることを始め、
11933 14 34 4 もろもろのバアルの祭壇を、自分の前で打ちこわさせ、その上に立っていた香の祭壇を切り倒し、アシラ像、刻んだ像、鋳た像を打ち砕いて粉々にし、これらの像に犠牲をささげた者どもの墓の上にそれをまき散らし、
11934 14 34 5 祭司らの骨をそのもろもろの祭壇の上で焼き、こうしてユダとエルサレムを清めた。
11935 14 34 6 またマナセ、エフライム、シメオンおよびナフタリの荒れた町々にもこのようにし、
11936 14 34 7 もろもろの祭壇をこわし、アシラ像およびもろもろの刻んだ像を粉々に打ち砕き、イスラエル全国の香の祭壇をことごとく切り倒して、エルサレムに帰った。
11937 14 34 8 ヨシヤはその治世の十八年に、国と宮とを清めた時、その神、主の宮を繕わせようと、アザリヤの子シャパン、町のつかさマアセヤおよびヨアハズの子史官ヨアをつかわした。
11938 14 34 9 彼らは大祭司ヒルキヤのもとへ行って、神の宮にはいった金を渡した。これは門を守るレビびとがマナセ、エフライムおよびその他のすべてのイスラエル、ならびにユダとベニヤミンのすべての人、およびエルサレムの住民の手から集めたものである。
11939 14 34 10 彼らはこれを主の宮を監督する職工らの手に渡したので、主の宮で働く職工らは、これを宮を繕い直すために支払った。
11940 14 34 11 すなわち、大工および建築者にこれを渡して、ユダの王たちが破った建物のために、切り石および骨組の材木を買わせ、梁材を整えさせた。
11941 14 34 12 その人々は忠実に仕事をした。その監督者はメラリの子孫であるレビびとヤハテとオバデヤ、およびコハテびとの子孫であるゼカリヤとメシュラムであって、工事をつかさどった。また楽器に巧みなレビびとがこれに伴った。
11942 14 34 13 彼らはまた荷を負う者を監督し、様々の仕事に働くすべての者をつかさどった。また他のレビびとは書記となり、役人となり、また門衛となった。
11943 14 34 14 さて彼らが主の宮にはいった金を取りだした時、祭司ヒルキヤはモーセの伝えた主の律法の書を発見した。
11944 14 34 15 そこでヒルキヤは書記官シャパンに言った、「わたしは主の宮で律法の書を発見しました」と。そしてヒルキヤはその書をシャパンに渡した。
11945 14 34 16 シャパンはその書を王のもとに持って行き、さらに王に復命して言った、「しもべらはゆだねられた事をことごとくなし、
11946 14 34 17 主の宮にあった金をあけて、監督者の手および職工の手に渡しました」。
11947 14 34 18 書記官シャパンはまた王に告げて、「祭司ヒルキヤはわたしに一つの書物を渡しました」と言い、シャパンはそれを王の前で読んだ。
11948 14 34 19 王はその律法の言葉を聞いて衣を裂いた。
11949 14 34 20 そして王はヒルキヤおよびシャパンの子アヒカムとミカの子アブドンと書記官シャパンと王の家来アサヤとに命じて言った、
11950 14 34 21 「あなたがたは行って、この発見された書物の言葉についてわたしのために、またイスラエルとユダの残りの者のために主に問いなさい。われわれの先祖たちが主の言葉を守らず、すべてこの書物にしるされていることを行わなかったので、主はわれわれに大いなる怒りを注がれるからです」。
11951 14 34 22 そこでヒルキヤおよび王のつかわした人々は、シャルムの妻である女預言者ホルダのもとへ行った。シャルムはハスラの子であるトクハテの子で、衣装を守る者である。時にホルダは、エルサレムの第二区に住んでいた。彼らはホルダにその趣意を語ったので、
11952 14 34 23 ホルダは彼らに言った、「イスラエルの神、主はこう仰せられます、『あなたがたをわたしにつかわした人に告げなさい。
11953 14 34 24 主はこう仰せられます。見よ、わたしはユダの王の前で読んだ書物にしるされているもろもろののろい、すなわち災をこの所と、ここに住む者に下す。
11954 14 34 25 彼らはわたしを捨てて、他の神々に香をたき、自分の手で造ったもろもろの物をもって、わたしの怒りを引き起そうとしたからである。それゆえ、わたしの怒りは、この所に注がれて消えない。
11955 14 34 26 しかしあなたがたをつかわして、主に問わせるユダの王にはこう言いなさい。イスラエルの神、主はこう仰せられる。あなたが聞いた言葉については、
11956 14 34 27 この所と、ここに住む者を責める神の言葉を、あなたが聞いた時、心に悔い、神の前に身をひくくし、わたしの前にへりくだり、衣を裂いて、わたしの前に泣いたので、わたしもまた、あなたに聞いた、と主は言われる。
11957 14 34 28 見よ、わたしはあなたを先祖たちのもとに集める。あなたは安らかにあなたの墓に集められる。あなたはわたしがこの所と、ここに住む者に下すもろもろの災を目に見ることがない』と」。彼らは王に復命した。
11958 14 34 29 そこで王は人をつかわしてユダとエルサレムの長老をことごとく集め、
11959 14 34 30 そして王は主の宮に上って行った。ユダのすべての人々、エルサレムの住民、祭司、レビびと、およびすべての民は、老いた者も若い者もことごとく彼に従った。そこで王は主の宮で発見した契約の書の言葉を、ことごとく彼らの耳に読み聞かせ、
11960 14 34 31 そして王は自分の所に立って、主の前に契約を立て、主に従って歩み、心をつくし、精神をつくして、その戒めと、あかしと定めとをまもり、この書にしるされた契約の言葉を行おうと言い、
11961 14 34 32 エルサレムおよびベニヤミンの人々を皆これに加わらせた。エルサレムの住民は先祖の神であるその神の契約にしたがって行った。
11962 14 34 33 ヨシヤはイスラエルの人々に属するすべての地から、憎むべきものをことごとく取り除き、イスラエルにいるすべての人をその神、主に仕えさせた。ヨシヤが世にある日の間は、彼らは先祖の神、主に従って離れなかった。
11963 14 35 1 ヨシヤはエルサレムで主に過越の祭を行った。すなわち正月の十四日に過越の小羊をほふらせ、
11964 14 35 2 祭司にその職務をとり行わせ、彼らを励まして主の宮の務をさせ、
11965 14 35 3 また主の聖なる者となってすべてのイスラエルびとを教えるレビびとに言った、「あなたがたはイスラエルの王ダビデの子ソロモンの建てた宮に、聖なる箱を置きなさい。再びこれを肩にになうに及ばない。あなたがたの神、主およびその民イスラエルに仕えなさい。
11966 14 35 4 あなたがたはイスラエルの王ダビデの書、およびその子ソロモンの書に基いて氏族にしたがい、その班によって、みずから備えをなし、
11967 14 35 5 あなたがたの兄弟である民の人々の氏族の区分にしたがって聖所に立ち、このためにレビびとの氏族の分が欠けることのないようにしなさい。
11968 14 35 6 あなたがたは過越の小羊をほふり、身を清め、あなたがたの兄弟のために備えをし、モーセが伝えた主の言葉にしたがって行いなさい」。
11969 14 35 7 ヨシヤは、小羊および子やぎを民の人々に贈った。これは皆その所にいるすべての人のための過越の供え物であって、その数三万、また雄牛三千を贈った。それらは王の所有から出したのである。
11970 14 35 8 そのつかさたちも民と祭司とレビびとに真心から贈った。また神の宮のつかさたちヒルキヤ、ゼカリヤ、エヒエルも小羊と子やぎ二千六百頭、牛三百頭を祭司に与えて過越の供え物とした。
11971 14 35 9 またレビびとの長である人々すなわちコナニヤおよびその兄弟シマヤ、ネタンエルならびにハシャビヤ、エイエル、ヨザバデなども小羊と子やぎ五千頭、牛五百頭をレビびとに贈って過越の供え物とした。
11972 14 35 10 このように勤めのことが備わったので、王の命に従って祭司たちはその持ち場に立ち、レビびとはその班に従って仕え、
11973 14 35 11 やがて過越の小羊がほふられたので、祭司はその血を受け取って注いだ。レビびとはその皮をはいだ。
11974 14 35 12 それから燔祭の物をとり分け、それを民の人々の氏族の区分に従って渡し、主にささげさせた。これはモーセの書にしるされたとおりである。また牛をもこのようにした。
11975 14 35 13 そして定めに従って過越の小羊を火であぶり、その他の聖なる供え物を深なべ、かま、浅なべなどに煮て、急いですべての民の人々にくばった。
11976 14 35 14 その後、彼らは自分のためと、祭司たちのために備えをした。アロンの子孫である祭司たちは、燔祭と脂肪をささげるのに忙しくて、夜になったからである。それでレビびとは自分たちのためと、アロンの子孫である祭司たちのために備えたのである。
11977 14 35 15 アサフの子孫である歌うたう者たちは、ダビデ、アサフ、ヘマンおよび王の先見者エドトンの命に従ってその持ち場におり、門衛たちはおのおの門にいて、その職務を離れるに及ばなかった。兄弟であるレビびとが彼らのために備えたからである。
11978 14 35 16 このようにその日、主の勤めの事がことごとく備わったので、ヨシヤ王の命に従って過越の祭を行い、主の祭壇に燔祭をささげた。
11979 14 35 17 ここに来ていたイスラエルの人々は、そのとき過越の祭を行い、また七日の間、種入れぬパンの祭を行った。
11980 14 35 18 預言者サムエルの日からこのかた、イスラエルでこのような過越の祭を行ったことはなかった。またイスラエルの諸王のうちには、ヨシヤが、祭司、レビびと、ならびにそこに来たユダとイスラエルのすべての人々、およびエルサレムの住民と共に行ったような過越の祭を行った者はひとりもなかった。
11981 14 35 19 この過越の祭はヨシヤの治世の第十八年に行われた。
11982 14 35 20 このようにヨシヤが宮を整えた後、エジプトの王ネコはユフラテ川のほとりにあるカルケミシで戦うために上ってきたので、ヨシヤはこれを防ごうと出て行った。
11983 14 35 21 しかしネコは彼に使者をつかわして言った、「ユダの王よ、われわれはお互に何のあずかるところがありますか。わたしはきょう、あなたを攻めようとして来たのではありません。わたしの敵の家を攻めようとして来たのです。神がわたしに命じて急がせています。わたしと共におられる神に逆らうことをやめなさい。そうしないと、神はあなたを滅ぼされるでしょう」。
11984 14 35 22 しかしヨシヤは引き返すことを好まず、かえって彼と戦うために、姿を変え、神の口から出たネコの言葉を聞きいれず、行ってメギドの谷で戦ったが、
11985 14 35 23 射手の者どもがヨシヤを射あてたので、王はその家来たちに、「わたしを助け出せ。わたしはひどく傷ついた」と言った。
11986 14 35 24 そこで家来たちは彼を車から助け出し、王のもっていた第二の車に乗せてエルサレムにつれて行ったが、ついに死んだので、その先祖の墓にこれを葬った。そしてユダとエルサレムは皆ヨシヤのために悲しんだ。
11987 14 35 25 時にエレミヤはヨシヤのために哀歌を作った。歌うたう男、歌うたう女は今日に至るまで、その哀歌のうちにヨシヤのことを述べ、イスラエルのうちにこれを例とした。これは哀歌のうちにしるされている。
11988 14 35 26 ヨシヤのその他の行為、主の律法にしるされた所に従って行った徳行、
11989 14 35 27 およびその始終の行いなどは、イスラエルとユダの列王の書にしるされている。
11990 14 36 1 国の民はヨシヤの子エホアハズを立て、エルサレムでその父に代って王とならせた。
11991 14 36 2 エホアハズは王となった時二十三歳で、エルサレムで三月の間、世を治めたが、
11992 14 36 3 エジプトの王はエルサレムで彼を廃し、かつ銀百タラント、金一タラントの罰金を国に課した。
11993 14 36 4 そしてエジプト王は彼の兄弟エリアキムをユダとエルサレムの王とし、その名をエホヤキムと改め、その兄弟エホアハズを捕えてエジプトへ引いて行った。
11994 14 36 5 エホヤキムは王となった時二十五歳で、十一年の間エルサレムで世を治めた。彼はその神、主の前に悪を行った。
11995 14 36 6 時に、バビロンの王ネブカデネザルが彼の所に攻め上り、彼をバビロンに引いて行こうとして、かせにつないだ。
11996 14 36 7 ネブカデネザルはまた主の宮の器物をバビロンに運んで行って、バビロンにあるその宮殿にそれをおさめた。
11997 14 36 8 エホヤキムのその他の行為、その行った憎むべき事および彼がひそかに行った事などは、イスラエルとユダの列王の書にしるされている。その子エホヤキンが彼に代って王となった。
11998 14 36 9 エホヤキンは王となった時八歳で、エルサレムで三月と十日の間、世を治め、主の前に悪を行った。
11999 14 36 10 年が改まり春になって、ネブカデネザル王は人をつかわして、彼を主の宮の尊い器物と共にバビロンに連れて行かせ、その兄弟ゼデキヤをユダとエルサレムの王とした。
12000 14 36 11 ゼデキヤは王となった時二十一歳で、十一年の間エルサレムで世を治めた。
12001 14 36 12 彼はその神、主の前に悪を行い、主の言葉を伝える預言者エレミヤの前に、身をひくくしなかった。
12002 14 36 13 彼はまた、彼に神をさして誓わせたネブカデネザル王にもそむいた。彼は強情で、その心をかたくなにして、イスラエルの神、主に立ち返らなかった。
12003 14 36 14 祭司のかしらたちおよび民らもまた、すべて異邦人のもろもろの憎むべき行為にならって、はなはだしく罪を犯し、主がエルサレムに聖別しておかれた主の宮を汚した。
12004 14 36 15 その先祖の神、主はその民と、すみかをあわれむがゆえに、しきりに、その使者を彼らにつかわされたが、
12005 14 36 16 彼らが神の使者たちをあざけり、その言葉を軽んじ、その預言者たちをののしったので、主の怒りがその民に向かって起り、ついに救うことができないようになった。
12006 14 36 17 そこで主はカルデヤびとの王を彼らに攻めこさせられたので、彼はその聖所の家でつるぎをもって若者たちを殺し、若者をも、処女をも、老人をも、しらがの者をもあわれまなかった。主は彼らをことごとく彼の手に渡された。
12007 14 36 18 彼は神の宮のもろもろの大小の器物、主の宮の貨財、王とそのつかさたちの貨財など、すべてこれをバビロンに携えて行き、
12008 14 36 19 神の宮を焼き、エルサレムの城壁をくずし、そのうちの宮殿をことごとく火で焼き、そのうちの尊い器物をことごとくこわした。
12009 14 36 20 彼はまたつるぎをのがれた者どもを、バビロンに捕えて行って、彼とその子らの家来となし、ペルシャの国の興るまで、そうして置いた。
12010 14 36 21 これはエレミヤの口によって伝えられた主の言葉の成就するためであった。こうして国はついにその安息をうけた。すなわちこれはその荒れている間、安息して、ついに七十年が満ちた。
12011 14 36 22 ペルシャ王クロスの元年に当り、主はエレミヤの口によって伝えた主の言葉を成就するため、ペルシャ王クロスの霊を感動されたので、王はあまねく国中にふれ示し、またそれを書き示して言った、
12012 14 36 23 「ペルシャの王クロスはこう言う、『天の神、主は地上の国々をことごとくわたしに賜わって、主の宮をユダにあるエルサレムに建てることをわたしに命じられた。あなたがたのうち、その民である者は皆、その神、主の助けを得て上って行きなさい』」。
12013 15 1 1 ペルシャ王クロスの元年に、主はさきにエレミヤの口によって伝えられた主の言葉を成就するため、ペルシャ王クロスの心を感動されたので、王は全国に布告を発し、また詔書をもって告げて言った、
12014 15 1 2 「ペルシャ王クロスはこのように言う、天の神、主は地上の国々をことごとくわたしに下さって、主の宮をユダにあるエルサレムに建てることをわたしに命じられた。
12015 15 1 3 あなたがたのうち、その民である者は皆その神の助けを得て、ユダにあるエルサレムに上って行き、イスラエルの神、主の宮を復興せよ。彼はエルサレムにいます神である。
12016 15 1 4 すべて生き残って、どこに宿っている者でも、その所の人々は金、銀、貨財、家畜をもって助け、そのほかにまたエルサレムにある神の宮のために真心よりの供え物をささげよ」。
12017 15 1 5 そこでユダとベニヤミンの氏族の長、祭司およびレビびとなど、すべて神にその心を感動された者は、エルサレムにある主の宮を復興するために上って行こうと立ち上がった。
12018 15 1 6 その周囲の人々は皆、銀の器、金、貨財、家畜および宝物を与えて彼らを力づけ、そのほかにまた、もろもろの物を惜しげなくささげた。
12019 15 1 7 クロス王はまたネブカデネザルが、さきにエルサレムから携え出して自分の神の宮に納めた主の宮の器を取り出した。
12020 15 1 8 すなわちペルシャ王クロスは倉づかさミテレダテの手によってこれを取り出して、ユダのつかさセシバザルに数え渡した。
12021 15 1 9 その数は次のとおりである。金のたらい一千、銀のたらい一千、香炉二十九、
12022 15 1 10 金の鉢三十、銀の鉢二千四百十、その他の器一千、
12023 15 1 11 金銀の器は合わせて五千四百六十九あったが、セシバザルは捕囚を連れてバビロンからエルサレムに上った時、これらのものをことごとく携えて上った。
12024 15 2 1 バビロンの王ネブカデネザルに捕えられて、バビロンに移された者のうち、捕囚をゆるされてエルサレムおよびユダに上って、おのおの自分の町に帰ったこの州の人々は次のとおりである。
12025 15 2 2 彼らはゼルバベル、エシュア、ネヘミヤ、セラヤ、レエラヤ、モルデカイ、ビルシャン、ミスパル、ビグワイ、レホム、バアナと共に帰ってきた。
12026 15 2 3 パロシの子孫は二千百七十二人、
12027 15 2 4 シパテヤの子孫は三百七十二人、
12028 15 2 5 アラの子孫は七百七十五人、
12029 15 2 6 パハテ・モアブの子孫すなわちエシュアとヨアブの子孫は二千八百十二人、
12030 15 2 7 エラムの子孫は一千二百五十四人、
12031 15 2 8 ザットの子孫は九百四十五人、
12032 15 2 9 ザッカイの子孫は七百六十人、
12033 15 2 10 バニの子孫は六百四十二人、
12034 15 2 11 ベバイの子孫は六百二十三人、
12035 15 2 12 アズガデの子孫は一千二百二十二人、
12036 15 2 13 アドニカムの子孫は六百六十六人、
12037 15 2 14 ビグワイの子孫は二千五十六人、
12038 15 2 15 アデンの子孫は四百五十四人、
12039 15 2 16 アテルの子孫すなわちヒゼキヤの子孫は九十八人、
12040 15 2 17 ベザイの子孫は三百二十三人、
12041 15 2 18 ヨラの子孫は百十二人、
12042 15 2 19 ハシュムの子孫は二百二十三人、
12043 15 2 20 ギバルの子孫は九十五人、
12044 15 2 21 ベツレヘムの子孫は百二十三人、
12045 15 2 22 ネトパの人々は五十六人、
12046 15 2 23 アナトテの人々は百二十八人、
12047 15 2 24 アズマウテの子孫は四十二人、
12048 15 2 25 キリアテ・ヤリム、ケピラおよびベエロテの子孫は七百四十三人、
12049 15 2 26 ラマおよびゲバの子孫は六百二十一人、
12050 15 2 27 ミクマシの人々は百二十二人、
12051 15 2 28 ベテルおよびアイの人々は二百二十三人、
12052 15 2 29 ネボの子孫は五十二人、
12053 15 2 30 マグビシの子孫は百五十六人、
12054 15 2 31 他のエラムの子孫は一千二百五十四人、
12055 15 2 32 ハリムの子孫は三百二十人、
12056 15 2 33 ロド、ハデデおよびオノの子孫は七百二十五人、
12057 15 2 34 エリコの子孫は三百四十五人、
12058 15 2 35 セナアの子孫は三千六百三十人。
12059 15 2 36 祭司は、エシュアの家のエダヤの子孫九百七十三人、
12060 15 2 37 インメルの子孫一千五十二人、
12061 15 2 38 パシュルの子孫一千二百四十七人、
12062 15 2 39 ハリムの子孫一千十七人。
12063 15 2 40 レビびとは、ホダヤの子孫すなわちエシュアとカデミエルの子孫七十四人。
12064 15 2 41 歌うたう者は、アサフの子孫百二十八人。
12065 15 2 42 門衛の子孫は、シャルムの子孫、アテルの子孫、タルモンの子孫、アックブの子孫、ハテタの子孫、ショバイの子孫合わせて百三十九人。
12066 15 2 43 宮に仕えるしもべたちは、ヂハの子孫、ハスパの子孫、タバオテの子孫、
12067 15 2 44 ケロスの子孫、シアハの子孫、パドンの子孫、
12068 15 2 45 レバナの子孫、ハガバの子孫、アックブの子孫、
12069 15 2 46 ハガブの子孫、シャルマイの子孫、ハナンの子孫、
12070 15 2 47 ギデルの子孫、ガハルの子孫、レアヤの子孫、
12071 15 2 48 レヂンの子孫、ネコダの子孫、ガザムの子孫、
12072 15 2 49 ウザの子孫、パセアの子孫、ベサイの子孫、
12073 15 2 50 アスナの子孫、メウニムの子孫、ネフシムの子孫、
12074 15 2 51 バクブクの子孫、ハクパの子孫、ハルホルの子孫、
12075 15 2 52 バヅリテの子孫、メヒダの子孫、ハルシャの子孫、
12076 15 2 53 バルコスの子孫、シセラの子孫、テマの子孫、
12077 15 2 54 ネヂアの子孫、ハテパの子孫である。
12078 15 2 55 ソロモンのしもべたちの子孫は、ソタイの子孫、ハッソペレテの子孫、ペリダの子孫、
12079 15 2 56 ヤアラの子孫、ダルコンの子孫、ギデルの子孫、
12080 15 2 57 シパテヤの子孫、ハッテルの子孫、ポケレテ・ハッゼバイムの子孫、アミの子孫。
12081 15 2 58 宮に仕えるしもべたちとソロモンのしもべたちの子孫とは合わせて三百九十二人。
12082 15 2 59 次にあげる人々はテル・メラ、テル・ハレサ、ケルブ、アダンおよびインメルから上って来た者であったが、彼らはその氏族とその血統とを示して、そのイスラエルの者であることを明らかにすることができなかった。
12083 15 2 60 すなわちデラヤの子孫、トビヤの子孫、ネコダの子孫で合わせて六百五十二人。
12084 15 2 61 祭司の子孫のうちにはハバヤの子孫、ハッコヅの子孫、バルジライの子孫があった。バルジライはギレアデびとバルジライの娘たちのうちから妻をめとったので、その名で呼ばれることになった。
12085 15 2 62 これらの者は系譜に載った者たちのうちに自分の名を尋ねたが見いだされなかったので、汚れた者として、祭司の職から除かれた。
12086 15 2 63 総督は彼らに告げて、ウリムとトンミムを身につける祭司の興るまでは、いと聖なる物を食べてはならないと言った。
12087 15 2 64 会衆は合わせて四万二千三百六十人であった。
12088 15 2 65 このほかに、しもべおよびはしため合わせて七千三百三十七人、また歌うたう男女二百人あった。
12089 15 2 66 その馬は七百三十六頭、その騾馬は二百四十五頭、
12090 15 2 67 そのらくだは四百三十五頭、そのろばは六千七百二十頭あった。
12091 15 2 68 氏族の長数人はエルサレムにある主の宮の所にきた時、神の宮をもとの所に建てるために真心よりの供え物をささげた。
12092 15 2 69 すなわち、その力に従って工事のために倉に納めたものは、金六万一千ダリク、銀五千ミナ、祭司の衣服百かさねであった。
12093 15 2 70 祭司、レビびと、および民のある者はエルサレムおよびその近郊に住み、歌うたう者、門衛および宮に仕えるしもべたちはその町々に住み、一般のイスラエルびとは自分たちの町々に住んだ。
12094 15 3 1 こうしてイスラエルの人々はその町々に住んでいたが、七月になって、民はひとりのようにエルサレムに集まった。
12095 15 3 2 そこでヨザダクの子エシュアとその仲間の祭司たち、およびシャルテルの子ゼルバベルとその兄弟たちは立って、イスラエルの神の祭壇を築いた。これは神の人モーセの律法にしるされたところに従って、その上に燔祭をささげるためであった。
12096 15 3 3 彼らは国々の民を恐れていたので、祭壇をもとの所に設けた。そしてその上で燔祭を主にささげ、朝夕それをささげた。
12097 15 3 4 また、しるされたところに従って仮庵の祭を行い、おきてに従って、毎日ささぐべき数のとおりに、日々の燔祭をささげた。
12098 15 3 5 そしてその後は常燔祭、新月と主のすべて定められた祭とにささげる供え物および各自が主にささげる真心よりの供え物をささげた。
12099 15 3 6 すなわち七月一日から燔祭を主にささげることを始めたが、主の宮の基礎はまだすえられてなかった。
12100 15 3 7 そこで石工と木工に金を渡し、またシドンとツロの人々に食い物、飲み物および油を与えて、ペルシャ王クロスから得た許可に従って、レバノンからヨッパの海に香柏を運ばせた。
12101 15 3 8 さてエルサレムの神の宮に帰った次の年の二月に、シャルテルの子ゼルバベルとヨザダクの子エシュアはその兄弟である他の祭司、レビびとおよび捕囚からエルサレムに帰って来たすべての人々と共に工事を始め、二十歳以上のレビびとを立てて、主の宮の工事を監督させた。
12102 15 3 9 そこでユダの子孫であるエシュアとその子らおよびその兄弟、カデミエルとその子らは共に立って、神の宮で工事をなす者を監督した。ヘナダデの子らおよびレビびとの子らと、その兄弟たちもまた一緒であった。
12103 15 3 10 こうして建築者が主の宮の基礎をすえた時、祭司たちは礼服をつけてラッパをとり、アサフの子らであるレビびとはシンバルをとり、イスラエルの王ダビデの指令に従って主をさんびした。
12104 15 3 11 彼らは互に歌いあって主をほめ、かつ感謝し、「主はめぐみ深く、そのいつくしみはとこしえにイスラエルに絶えることがない」と言った。そして民はみな主をさんびするとき、大声をあげて叫んだ。主の宮の基礎がすえられたからである。
12105 15 3 12 しかし祭司、レビびと、氏族の長である多くの人々のうちに、もとの宮を見た老人たちがあったが、今この宮の基礎のすえられるのを見た時、大声をあげて泣いた。また喜びのために声をあげて叫ぶ者も多かった。
12106 15 3 13 それで、人々は民の喜び叫ぶ声と、民の泣く声とを聞きわけることができなかった。民が大声に叫んだので、その声が遠くまで聞えたからである。
12107 15 4 1 ユダとベニヤミンの敵である者たちは捕囚から帰ってきた人々が、イスラエルの神、主のために神殿を建てていることを聞き、
12108 15 4 2 ゼルバベルと氏族の長たちのもとに来て言った、「われわれも、あなたがたと一緒にこれを建てさせてください。われわれはあなたがたと同じく、あなたがたの神を礼拝します。アッスリヤの王エサル・ハドンがわれわれをここにつれて来た日からこのかた、われわれは彼に犠牲をささげてきました」。
12109 15 4 3 しかしゼルバベル、エシュアおよびその他のイスラエルの氏族の長たちは、彼らに言った、「あなたがたは、われわれの神に宮を建てることにあずかってはなりません。ペルシャの王クロス王がわれわれに命じたように、われわれだけで、イスラエルの神、主のために建てるのです」。
12110 15 4 4 そこでその地の民はユダの民の手を弱らせて、その建築を妨げ、
12111 15 4 5 その企てを破るために役人を買収して彼らに敵せしめ、ペルシャ王クロスの代からペルシャ王ダリヨスの治世にまで及んだ。
12112 15 4 6 アハスエロスの治世、すなわちその治世の初めに、彼らはユダとエルサレムの住民を訴える告訴状を書いた。
12113 15 4 7 またアルタシャスタの世にビシラム、ミテレダテ、タビエルおよびその他の同僚も、ペルシャ王アルタシャスタに手紙を書いた。その手紙の文はアラム語で書かれて訳されていた。
12114 15 4 8 長官レホムと書記官シムシャイはアルタシャスタ王にエルサレムを訴えて次のような手紙をしたためた。
12115 15 4 9 すなわち長官レホムと書記官シムシャイおよびその他の同僚、すなわち裁判官、知事、役人、ペルシャ人、エレクの人々、バビロン人、スサの人々すなわちエラムびと、
12116 15 4 10 およびその他の民すなわち大いなる尊いオスナパルが、移してサマリヤの町々および川向こうのその他の地に住ませた者どもが、
12117 15 4 11 送った手紙の写しはこれである。――「アルタシャスタ王へ、川向こうのあなたのしもべども、あいさつを申し上げます。
12118 15 4 12 王よ、ご承知ください。あなたのもとから、わたしたちの所に上って来たユダヤ人らはエルサレムに来て、かのそむいた悪い町を建て直し、その城壁を築きあげ、その基礎をつくろっています。
12119 15 4 13 王よ、いまご承知ください。もしこの町を建て、城壁を築きあげるならば、彼らはみつぎ、関税、税金を納めなくなります。そうすれば王の収入が減るでしょう。
12120 15 4 14 われわれは王宮の塩をはむ者ですから、王の不名誉を見るに忍びないので、人をつかわして王にお聞かせするのです。
12121 15 4 15 歴代の記録をお調べください。その記録の書において、この町はそむいた町で、諸王と諸州に害を及ぼしたものであることを見、その中に古来、むほんの行われたことを知られるでしょう。この町が滅ぼされたのはこれがためなのです。
12122 15 4 16 われわれは王にお知らせいたします。もしこの町が建てられ、城壁が築きあげられたなら、王は川向こうの領地を失うに至るでしょう」。
12123 15 4 17 王は返書を送って言った、「長官レホム、書記官シムシャイ、その他サマリヤおよび川向こうのほかの所に住んでいる同僚に、あいさつをする。いま、
12124 15 4 18 あなたがたがわれわれに送った手紙を、わたしの前に明らかに読ませた。
12125 15 4 19 わたしは命令を下して調査させたところ、この町は古来、諸王にそむいた事、その中に反乱、むほんのあったことを見いだした。
12126 15 4 20 またエルサレムには大いなる王たちがあって、川向こうの地をことごとく治め、みつぎ、関税、税金を納めさせたこともあった。
12127 15 4 21 それであなたがたは命令を伝えて、その人々をとどめ、わたしの命令の下るまで、この町を建てさせてはならない。
12128 15 4 22 あなたがたは慎んでこのことについて怠ることのないようにしなさい。どうして損害を増して、王に害を及ぼしてよかろうか」。
12129 15 4 23 アルタシャスタ王の手紙の写しがレホムおよび書記官シムシャイとその同僚の前に読み上げられたので、彼らは急いでエルサレムのユダヤ人のもとにおもむき、腕力と権力とをもって彼らをやめさせた。
12130 15 4 24 それでエルサレムにある神の宮の工事は中止された。すなわちペルシャ王ダリヨスの治世の二年まで中止された。
12131 15 5 1 さて預言者ハガイおよびイドの子ゼカリヤのふたりの預言者は、ユダとエルサレムにいるユダヤ人に向かって、彼らの上にいますイスラエルの神の名によって預言した。
12132 15 5 2 そこでシャルテルの子ゼルバベルおよびヨザダクの子エシュアは立ちあがって、エルサレムにある神の宮を建て始めた。神の預言者たちも、彼らと共にいて彼らを助けた。
12133 15 5 3 その時、川向こうの州の知事タテナイおよびセタル・ボズナイとその同僚は彼らの所に来てこう言った、「だれがあなたがたにこの宮を建て、この城壁を築きあげることを命じたのか」。
12134 15 5 4 また「この建物を建てている人々の名はなんというのか」と尋ねた。
12135 15 5 5 しかしユダヤ人の長老たちの上には、神の目が注がれていたので、彼らはこれをやめさせることができず、その事をダリヨスに奏して、その返答の来るのを待った。
12136 15 5 6 川向こうの州の知事タテナイおよびセタル・ボズナイとその同僚である川向こうの州の知事たちが、ダリヨス王に送った手紙の写しは次のとおりである。
12137 15 5 7 すなわち、彼らが王に送った手紙には、次のようにしるされてあった。「願わくはダリヨス王に全き平安があるように。
12138 15 5 8 王に次のことをお知らせいたします。すなわち、われわれがユダヤ州へ行き、かの大いなる神の宮へ行って見たところ、それは大きな石をもって建てられ、材木を組んで壁をつくり、その工事は勤勉に行われ、彼らの手によって大いにはかどっています。
12139 15 5 9 そこでわれわれはその長老たちに尋ねてこう言いました、『だれがあなたがたにこの宮を建て、この城壁を築きあげることを命じたのか』と。
12140 15 5 10 われわれはまた彼らのかしらたる人々の名を書きしるして、あなたにお知らせするために、その名を尋ねました。
12141 15 5 11 すると、彼らはわれわれに答えてこう言いました、『われわれは天地の神のしもべであって、年久しい昔に建てられた宮を、再び建てるのです。これはもと、イスラエルの大いなる王の建てあげたものですが、
12142 15 5 12 われわれの先祖たちが、天の神の怒りを引き起したため、神は彼らを、カルデヤびとバビロンの王ネブカデネザルの手に渡されたので、彼はこの宮をこわし、民をバビロンに捕えて行きました。
12143 15 5 13 ところがバビロンの王クロスの元年に、クロス王は神のこの宮を再び建てることの命令を下されました。
12144 15 5 14 またクロス王は先にネブカデネザルが、エルサレムの宮からバビロンの神殿に移した神の宮の金銀の器を、バビロンの神殿から取り出して、彼が総督に任じたセシバザルという名の者に渡して、
12145 15 5 15 彼に言われました、「これらの器を携えて行って、エルサレムにある宮に納め、神の宮をもとの所に建てよ」と。
12146 15 5 16 そこでこのセシバザルは来てエルサレムにある神の宮の基礎をすえました。その時から今に至るまで、建築を続けていますが、まだ完成しないのです』と。
12147 15 5 17 それで今、もし王がよしと見られるならば、バビロンにある王の宝庫を調べて、エルサレムの神のこの宮を建てることの命令が、はたしてクロス王から出ているかどうかを確かめ、この事についての王のお考えをわれわれに伝えてください」。
12148 15 6 1 そこでダリヨス王は命を下して、バビロンのうちで、古文書をおさめてある書庫を調べさせたところ、
12149 15 6 2 メデヤ州の都エクバタナで、一つの巻物を見いだした。そのうちにこうしるされてある。
12150 15 6 3 クロス王の元年にクロス王は命を下した、『エルサレムにある神の宮については、犠牲をささげ、燔祭を供える所の宮を建て、その宮の高さを六十キュビトにし、その幅を六十キュビトにせよ。
12151 15 6 4 大いなる石の層を三段にし、木の層を一段にせよ。その費用は王の家から与えられる。
12152 15 6 5 またネブカデネザルが、エルサレムの宮からバビロンに移した神の宮の金銀の器物は、これをかえして、エルサレムにある宮のもとの所に持って行き、これを神の宮に納めよ』」。
12153 15 6 6 「それで川向こうの州の知事タテナイおよびセタル・ボズナイとその同僚である川向こうの州の知事たちよ、あなたがたはこれに遠ざかり、
12154 15 6 7 神のこの宮の工事を彼らに任せ、ユダヤ人の知事とユダヤ人の長老たちに、神のこの宮をもとの所に建てさせよ。
12155 15 6 8 わたしはまた命を下し、神のこの宮を建てることについて、あなたがたがこれらのユダヤ人の長老たちになすべき事を示す。王の財産、すなわち川向こうの州から納めるみつぎの中から、その費用をじゅうぶんそれらの人々に与えて、その工事を滞らないようにせよ。
12156 15 6 9 またその必要とするもの、すなわち天の神にささげる燔祭の子牛、雄羊および小羊ならびに麦、塩、酒、油などエルサレムにいる祭司たちの求めにしたがって、日々怠りなく彼らに与え、
12157 15 6 10 彼らにこうばしい犠牲を天の神にささげさせ、王と王子たちの長寿を祈らせよ。
12158 15 6 11 わたしはまた命を下す。だれでもこの命ずる所を改める者があるならば、その家の梁は抜き取られ、彼はその上にくぎづけにされ、その家はまた、これがために汚物の山とされるであろう。
12159 15 6 12 これを改めようとする者、あるいはエルサレムにある神のこの宮を滅ぼそうとして手を出す王あるいは民は、かしこにその名をとどめられる神よ、願わくはこれを倒されるように。われダリヨスは命を下す。心してこれを行え」。
12160 15 6 13 ダリヨス王がこう言い送ったので、川向こうの州の知事タテナイおよびセタル・ボズナイとその同僚たちは心してこれを行った。
12161 15 6 14 そしてユダヤ人の長老たちは、預言者ハガイおよびイドの子ゼカリヤの預言によって建て、これをなし遂げた。彼らはイスラエルの神の命令により、またクロス、ダリヨスおよびペルシャ王アルタシャスタの命によって、これを建て終った。
12162 15 6 15 この宮はダリヨス王の治世の六年アダルの月の三日に完成した。
12163 15 6 16 そこでイスラエルの人々、祭司たち、レビびとおよびその他の捕囚から帰った人々は、喜んで神のこの宮の奉献式を行った。
12164 15 6 17 すなわち神のこの宮の奉献式において、雄牛一百頭、雄羊二百頭、小羊四百頭をささげ、またイスラエルの部族の数にしたがって、雄やぎ十二頭をささげて、すべてのイスラエルびとのための罪祭とした。
12165 15 6 18 またモーセの書にしるされてあるように祭司を組別により、レビびとを班別によって立て、エルサレムで神に仕えさせた。
12166 15 6 19 こうして捕囚から帰って来た人々は、正月の十四日に過越の祭を行った。
12167 15 6 20 すなわち祭司、レビびとたちは共に身を清めて皆清くなり、すべて捕囚から帰って来た人々のため、その兄弟である祭司たちのため、また彼ら自身のために過越の小羊をほふった。
12168 15 6 21 そして捕囚から帰って来たイスラエルの人々、およびその地の異邦人の汚れを捨てて彼らに連なり、イスラエルの神、主を拝しようとする者はすべてこれを食べ、
12169 15 6 22 喜んで七日の間、種入れぬパンの祭を行った。これは主が彼らを喜ばせ、またアッスリヤの王の心を彼らに向かわせ、彼にイスラエルの神にいます神の宮の工事を助けさせられたからである。
12170 15 7 1 これらの事の後ペルシャ王アルタシャスタの治世にエズラという者があった。エズラはセラヤの子、セラヤはアザリヤの子、アザリヤはヒルキヤの子、
12171 15 7 2 ヒルキヤはシャルムの子、シャルムはザドクの子、ザドクはアヒトブの子、
12172 15 7 3 アヒトブはアマリヤの子、アマリヤはアザリヤの子、アザリヤはメラヨテの子、
12173 15 7 4 メラヨテはゼラヒヤの子、ゼラヒヤはウジの子、ウジはブッキの子、
12174 15 7 5 ブッキはアビシュアの子、アビシュアはピネハスの子、ピネハスはエレアザルの子、エレアザルは祭司長アロンの子である。
12175 15 7 6 このエズラはバビロンから上って来た。彼はイスラエルの神、主がお授けになったモーセの律法に精通した学者であった。その神、主の手が彼の上にあったので、その求めることを王はことごとく許した。
12176 15 7 7 アルタシャスタ王の七年にまたイスラエルの人々および祭司、レビびと、歌うたう者、門衛、宮に仕えるしもべなどエルサレムに上った。
12177 15 7 8 そして王の七年の五月にエズラはエルサレムに来た。
12178 15 7 9 すなわち正月の一日にバビロンを出立して、五月一日にエルサレムに着いた。その神の恵みの手が彼の上にあったからである。
12179 15 7 10 エズラは心をこめて主の律法を調べ、これを行い、かつイスラエルのうちに定めとおきてとを教えた。
12180 15 7 11 主の戒めの言葉、およびイスラエルに賜わった定めに通じた学者で、祭司であるエズラにアルタシャスタ王の与えた手紙の写しは、次のとおりである。
12181 15 7 12 「諸王の王アルタシャスタ、天の神の律法の学者である祭司エズラに送る。今、
12182 15 7 13 わたしは命を下す。わが国のうちにいるイスラエルの民およびその祭司、レビびとのうち、すべてエルサレムへ行こうと望む者は皆、あなたと共に行くことができる。
12183 15 7 14 あなたは、自分の手にあるあなたの神の律法に照して、ユダとエルサレムの事情を調べるために、王および七人の議官によってつかわされるのである。
12184 15 7 15 かつあなたは王およびその議官らが、エルサレムにいますイスラエルの神に真心からささげる銀と金を携え、
12185 15 7 16 またバビロン全州であなたが獲るすべての金銀、および民と祭司とが、エルサレムにあるその神の宮のために、真心からささげた供え物を携えて行く。
12186 15 7 17 それであなたはその金をもって雄牛、雄羊、小羊およびその素祭と灌祭の品々を気をつけて買い、エルサレムにあるあなたがたの神の宮の祭壇の上に、これをささげなければならない。
12187 15 7 18 また、あなたとあなたの兄弟たちが、その余った金銀でしようと思うよい事があるならば、あなたがたの神のみ旨に従ってそれを行え。
12188 15 7 19 またあなたの神の宮の勤め事のためにあなたが与えられた器は、エルサレムの神の前に納めよ。
12189 15 7 20 そのほかあなたの神の宮のために用うべき必要なものがあれば、それを王の倉から出して用いよ。
12190 15 7 21 われ、アルタシャスタ王は川向こうの州のすべての倉づかさに命を下して言う、『天の神の律法の学者である祭司エズラがあなたがたに求める事は、すべてこれを心して行え。
12191 15 7 22 すなわち銀は百タラントまで、小麦は百コルまで、ぶどう酒は百バテまで、油は百バテまで、塩は制限なく与えよ。
12192 15 7 23 天の神の宮のために、天の神の命じるところは、すべて正しくこれを行え。そうしないと神の怒りが、王と王の子らの国に臨むであろう』。
12193 15 7 24 われわれは、またあなたがたに告げる、『祭司、レビびと、歌うたう者、門衛、宮に仕えるしもべ、および神のこの宮の仕えびとたちには、みつぎ、租税、税金を課してはならぬ』。
12194 15 7 25 エズラよ、あなたはあなたの手にある神の知恵によって、つかさおよび裁判人を立て、川向こうの州のすべての民、すなわちあなたの神の律法を知っている者たちを、ことごとくさばかせよ。あなたがたはまたこれを知らない者を教えよ。
12195 15 7 26 あなたの神の律法および王の律法を守らない者を、きびしくその罪に定めて、あるいは死刑に、あるいは追放に、あるいは財産没収に、あるいは投獄に処せよ」。
12196 15 7 27 われわれの先祖の神、主はほむべきかな。主はこのように、王の心に、エルサレムにある主の宮を飾る心を起させ、
12197 15 7 28 また王の前と、その議官の前と王の大臣の前で、わたしに恵みを得させられた。わたしはわが神、主の手がわたしの上にあるので力を得、イスラエルのうちから首領たる人々を集めて、わたしと共に上らせた。
12198 15 8 1 アルタシャスタ王の治世に、バビロンからわたしと一緒に上って来た者の氏族の長、およびその系譜は次のとおりである。
12199 15 8 2 ピネハスの子孫のうちではゲルショム。イタマルの子孫のうちではダニエル。ダビデの子孫のうちではシカニヤの子ハットシ。
12200 15 8 3 パロシの子孫のうちではゼカリヤおよび彼と共に系譜に載せられた男百五十人。
12201 15 8 4 パハテ・モアブの子孫のうちではゼラヒヤの子エリヨエナイおよび彼と共にある男二百人。
12202 15 8 5 ザッツの子孫のうちではヤハジエルの子シカニヤおよび彼と共にある男三百人。
12203 15 8 6 アデンの子孫のうちではヨナタンの子エベデおよび彼と共にある男五十人。
12204 15 8 7 エラムの子孫のうちではアタリヤの子エサヤおよび彼と共にある男七十人。
12205 15 8 8 シパテヤの子孫のうちではミカエルの子ゼバデヤおよび彼と共にある男八十人。
12206 15 8 9 ヨアブの子孫のうちではエヒエルの子オバデヤおよび彼と共にある男二百十八人。
12207 15 8 10 バニの子孫のうちではヨシピアの子シロミテおよび彼と共にある男百六十人。
12208 15 8 11 ベバイの子孫のうちではベバイの子ゼカリヤおよび彼と共にある男二十八人。
12209 15 8 12 アズガデの子孫のうちではハッカタンの子ヨハナンおよび彼と共にある男百十人。
12210 15 8 13 アドニカムの子孫のうちでは後に来た者どもで、その名はエリペレテ、ユエル、シマヤおよび彼らと共にある男六十人。
12211 15 8 14 ビグワイの子孫のうちではウタイとザックルおよび彼らと共にある男七十人である。
12212 15 8 15 わたしは彼らをアハワに流れる川のほとりに集めて、そこに三日のあいだ露営した。わたしは民と祭司とを調べたが、そこにはレビの子孫はひとりもいなかったので、
12213 15 8 16 人をつかわしてエリエゼル、アリエル、シマヤ、エルナタン、ヤリブ、エルナタン、ナタン、ゼカリヤ、メシュラムという首長たる人々を招き、またヨヤリブ、およびエルナタンのような見識のある人々を招いた。
12214 15 8 17 そしてわたしはカシピアという所の首長イドのもとに彼らをつかわし、カシピアという所にいるイドと、その兄弟である宮に仕えるしもべたちに告ぐべき言葉を、彼らに授け、われわれの神の宮のために、仕え人をわれわれに連れて来いと言った。
12215 15 8 18 われわれの神がよくわれわれを助けられたので、彼らはイスラエルの子、レビの子、マヘリの子孫のうちの思慮深い人、すなわちセレビヤおよびその子らとその兄弟たち十八人を、われわれに連れて来、
12216 15 8 19 またハシャビヤおよび彼と共に、メラリの子孫のエサヤとその兄弟およびその子ら二十人、
12217 15 8 20 および宮に仕えるしもべ、すなわちダビデとそのつかさたちが、レビびとに仕えさせるために選んだ宮に仕えるしもべ二百二十人を連れてきた。これらの者は皆その名を言って記録された。
12218 15 8 21 そこでわたしは、かしこのアハワ川のほとりで断食を布告し、われわれの神の前で身をひくくし、われわれと、われわれの幼き者と、われわれのすべての貨財のために、正しい道を示されるように神に求めた。
12219 15 8 22 これは、われわれがさきに王に告げて、「われわれの神の手は、神を求めるすべての者の上にやさしく下り、その威力と怒りとはすべて神を捨てる者の上に下る」と言ったので、わたしは道中の敵に対して、われわれを守るべき歩兵と騎兵とを、王に頼むことを恥じたからである。
12220 15 8 23 そこでわれわれは断食して、このことをわれわれの神に求めたところ、神はその願いを聞きいれられた。
12221 15 8 24 わたしはおもだった祭司十二人すなわちセレビヤ、ハシャビヤおよびその兄弟十人を選び、
12222 15 8 25 金銀および器物、すなわち王と、その議官と、その諸侯およびすべて在留のイスラエルびとが、われわれの神の宮のためにささげた奉納物を量って彼らに渡した。
12223 15 8 26 わたしが量って彼らの手に渡したものは、銀六百五十タラント、銀の器百タラント、金百タラントであった。
12224 15 8 27 また金の大杯が二十あって、一千ダリクに当る。また光り輝く青銅の器二個あって、その尊いこと金のようである。
12225 15 8 28 そしてわたしは彼らに言った、「あなたがたは主に聖別された者である。この器物も聖である。またこの金銀は、あなたがたの先祖の神、主にささげた真心よりの供え物である。
12226 15 8 29 あなたがたはエルサレムで、主の宮のへやの中で、祭司長、レビびとおよびイスラエルの氏族のかしらたちの前で、これを量るまで、見張り、かつ守りなさい」。
12227 15 8 30 そこで祭司およびレビびとたちは、その金銀および器物を、エルサレムにあるわれわれの神の宮に携えて行くため、その重さのものを受け取った。
12228 15 8 31 われわれは正月の十二日に、アハワ川を出立してエルサレムに向かったが、われわれの神の手は、われわれの上にあって、敵の手および道に待ち伏せする者の手から、われわれを救われた。
12229 15 8 32 われわれはエルサレムに着いて、三日そこにいたが、
12230 15 8 33 四日目にわれわれの神の宮の内で、その金銀および器物を、ウリヤの子祭司メレモテの手に量って渡した。ピネハスの子エレアザルが彼と共にいた。またエシュアの子ヨザバデ、およびビンヌイの子ノアデヤのふたりのレビびとも、彼らと共にいた。
12231 15 8 34 すなわちそのすべての数と重さとを調べ、その重さは皆書きとめられた。
12232 15 8 35 そのとき捕囚の人々で捕囚から帰って来た者は、イスラエルの神に燔祭をささげた。すなわちイスラエル全体のために雄牛十二頭、雄羊九十六頭、小羊七十七頭をささげ、また罪祭として雄やぎ十二頭をささげた。これらはみな、主にささげた燔祭である。
12233 15 8 36 彼らはまた王の命令書を、王の総督たち、および川向こうの州の知事たちに渡したので、彼らは民と神の宮とを援助した。
12234 15 9 1 これらの事がなされた後、つかさたちは、わたしのもとに来て言った、「イスラエルの民、祭司およびレビびとは諸国の民と離れないで、カナンびと、ヘテびと、ペリジびと、エブスびと、アンモンびと、モアブびと、エジプトびと、アモリびとなどの憎むべき事を行いました。
12235 15 9 2 すなわち、彼らの娘たちをみずからめとり、またそのむすこたちにめとったので、聖なる種が諸国の民とまじりました。そしてつかさたる者、長たる者が先だって、このとがを犯しました」。
12236 15 9 3 わたしはこの事を聞いた時、着物と上着とを裂き、髪の毛とひげを抜き、驚きあきれてすわった。
12237 15 9 4 イスラエルの神の言葉におののく者は皆、捕囚から帰って来た人々のとがのゆえに、わたしのもとに集まったが、わたしは夕の供え物の時まで、驚きあきれてすわった。
12238 15 9 5 夕の供え物の時になって、わたしは断食から立ちあがり、着物と上着を裂いたまま、ひざをかがめて、わが神、主にむかって手をさし伸べて、
12239 15 9 6 言った、
12240 15 9 7 われわれの先祖の日から今日まで、われわれは大いなるとがを負い、われわれの不義によって、われわれとわれわれの王たち、および祭司たちは国々の王たちの手にわたされ、つるぎにかけられ、捕え行かれ、かすめられ、恥をこうむりました。今日のとおりです。
12241 15 9 8 ところがいま、われわれの神、主は、しばし恵みを施して、のがれ残るべき者をわれわれのうちにおき、その聖所のうちに確かなよりどころを与え、こうしてわれわれの神はわれわれの目を明らかにし、われわれをその奴隷のうちにあって、少しく生き返らせられました。
12242 15 9 9 われわれは奴隷の身でありますが、その奴隷たる時にも神はわれわれを見捨てられず、かえってペルシャ王たちの目の前でいつくしみを施して、われわれを生き返らせ、われわれの神の宮を建てさせ、その破壊をつくろわせ、ユダとエルサレムでわれわれに保護を与えられました。
12243 15 9 10 われわれの神よ、この後、何を言うことができましょう。われわれは、あなたの戒めを捨てたからです。
12244 15 9 11 あなたはかつて、あなたのしもべである預言者たちによって命じて仰せられました、『おまえたちが行って獲ようとする地は、各地の民の汚れにより、その憎むべきわざによって汚れた地で、この果から、かの果まで、その汚れに満ちている。
12245 15 9 12 それでおまえたちの娘を、彼らのむすこに与えてはならない。彼らの娘を、おまえたちのむすこにめとってはならない。また永久に彼らの平安をも福祉をも求めてはならない。そうすればおまえたちは強くなり、その地の良き物を食べ、これを永久におまえたちの子孫に伝えて嗣業とさせることができる』と。
12246 15 9 13 われわれの悪い行いにより、大いなるとがによって、これらすべてのことが、すでにわれわれに臨みましたが、われわれの神なるあなたは、われわれの不義よりも軽い罰をくだして、このように残りの者を与えてくださったのを見ながら、
12247 15 9 14 われわれは再びあなたの命令を破って、これらの憎むべきわざを行う民と縁を結んでよいでしょうか。あなたはわれわれを怒って、ついに滅ぼし尽し、残る者も、のがれる者もないようにされるのではないでしょうか。
12248 15 9 15 ああ、イスラエルの神、主よ、あなたは正しくいらせられます。われわれはのがれて残ること今日のとおりです。われわれは、とがをもってあなたの前にあります。それゆえだれもあなたの前に立つことはできません」。
12249 15 10 1 エズラが神の宮の前に泣き伏して祈り、かつざんげしていた時、男、女および子供の大いなる群集がイスラエルのうちから彼のもとに集まってきた。民はいたく泣き悲しんだ。
12250 15 10 2 時にエラムの子孫のうちのエヒエルの子シカニヤが、エズラに告げて言った、「われわれは神にむかって罪を犯し、この地の民から異邦の女をめとりました。しかし、このことについてはイスラエルに、今なお望みがあります。
12251 15 10 3 それでわれわれはわが主の教と、われわれの神の命令におののく人々の教とに従って、これらの妻ならびにその子供たちを、ことごとく追い出すという契約を、われわれの神に立てましょう。そして律法に従ってこれを行いましょう。
12252 15 10 4 立ちあがってください、この事はあなたの仕事です。われわれはあなたを助けます。心を強くしてこれを行いなさい」。
12253 15 10 5 エズラは立って、おもだった祭司、レビびとおよびすべてのイスラエルびとに、この言葉のように行うことを誓わせたので、彼らは誓った。
12254 15 10 6 エズラは神の宮の前から出て、エリアシブの子ヨハナンのへやにはいったが、そこへ行っても彼はパンも食べず、水も飲まずに夜を過ごした。これは彼が、捕囚から帰った人々のとがを嘆いたからである。
12255 15 10 7 そしてユダおよびエルサレムにあまねく布告を出し、捕囚から帰ったすべての者に告げて、エルサレムに集まるべき事と、
12256 15 10 8 つかさおよび長老たちのさとしに従って、三日のうちにこない者はだれでもその財産はことごとく没収され、その人自身は捕われ人の会から破門されると言った。
12257 15 10 9 そこでユダとベニヤミンの人々は皆三日のうちにエルサレムに集まった。これは九月の二十日であった。すべての民は神の宮の前の広場に座して、このことのため、また大雨のために震えおののいていた。
12258 15 10 10 時に祭司エズラは立って彼らに言った、「あなたがたは罪を犯し、異邦の女をめとって、イスラエルのとがを増した。
12259 15 10 11 それで今、あなたがたの先祖の神、主にざんげして、そのみ旨を行いなさい。あなたがたはこの地の民および異邦の女と離れなさい」。
12260 15 10 12 すると会衆は皆大声をあげて答えた、「あなたの言われたとおり、われわれは必ず行います。
12261 15 10 13 しかし民は多く、また大雨の季節ですから、外に立っていることはできません。またこれは一日やふつかの仕事ではありません。われわれはこの事について大いに罪を犯したからです。
12262 15 10 14 それでどうぞ、われわれのつかさたちは全会衆のために立ってください。われわれの町の内に、もし異邦の女をめとった者があるならば、みな定めの時にこさせなさい。またおのおのの町の長老および裁判人も、それと一緒にこさせなさい。そうすればこの事によるわれわれの神の激しい怒りは、ついにわれわれを離れるでしょう」。
12263 15 10 15 ところがアサヘルの子ヨナタンおよびテクワの子ヤハジアはこれに反対した。そしてメシュラムおよびレビびとシャベタイは彼らを支持した。
12264 15 10 16 そこで捕囚から帰って来た人々はこのように行った。すなわち祭司エズラは、氏族の長たちをその氏族にしたがい、おのおのその名をさして選んだ。彼らは十月の一日から座してこの事を調べ、
12265 15 10 17 正月の一日になって、異邦の女をめとった人々をことごとく調べ終った。
12266 15 10 18 祭司の子孫のうちで異邦の女をめとった事のあらわれた者は、ヨザダクの子エシュアの子ら、およびその兄弟たちのうちではマアセヤ、エリエゼル、ヤリブ、ゲダリヤであった。
12267 15 10 19 彼らはその妻を離縁しようという誓いをなし、すでに罪を犯したというので、そのとがのために雄羊一頭をささげた。
12268 15 10 20 インメルの子らのうちではハナニおよびゼバデヤ。
12269 15 10 21 ハリムの子らのうちではマアセヤ、エリヤ、シマヤ、エヒエル、ウジヤ。
12270 15 10 22 パシュルの子らのうちではエリオエナイ、マアセヤ、イシマエル、ネタンエル、ヨザバデ、エラサ。
12271 15 10 23 レビびとのうちではヨザバテ、シメイ、ケラヤ(すなわちケリタ)、ペタヒヤ、ユダ、エリエゼル。
12272 15 10 24 歌うたう者のうちではエリアシブ。門衛のうちではシャルム、テレム、ウリ。
12273 15 10 25 イスラエルのうち、パロシの子らのうちではラミヤ、エジア、マルキヤ、ミヤミン、エレアザル、ハシャビヤ、ベナヤ。
12274 15 10 26 エラムの子らのうちではマッタニヤ、ゼカリヤ、エヒエル、アブデ、エレモテ、エリヤ。
12275 15 10 27 ザットの子らのうちではエリオエナイ、エリアシブ、マッタニヤ、エレモテ、ザバデ、アジザ。
12276 15 10 28 ベバイの子らのうちではヨハナン、ハナニヤ、ザバイ、アテライ。
12277 15 10 29 バニの子らのうちではメシュラム、マルク、アダヤ、ヤシュブ、シヤル、エレモテ。
12278 15 10 30 パハテ・モアブの子らのうちではアデナ、ケラル、ベナヤ、マアセヤ、マッタニヤ、ベザレル、ビンヌイ、マナセ。
12279 15 10 31 ハリムの子らのうちではエリエゼル、イシヤ、マルキヤ、シマヤ、シメオン、
12280 15 10 32 ベニヤミン、マルク、シマリヤ。
12281 15 10 33 ハシュムの子らのうちではマッテナイ、マッタタ、ザバデ、エリパレテ、エレマイ、マナセ、シメイ。
12282 15 10 34 バニの子らのうちではマアダイ、アムラム、ウエル、
12283 15 10 35 ベナヤ、ベデヤ、ケルヒ、
12284 15 10 36 ワニア、メレモテ、エリアシブ、
12285 15 10 37 マッタニヤ、マッテナイ、ヤアス。
12286 15 10 38 ビンヌイの子らのうちではシメイ、
12287 15 10 39 シレミヤ、ナタン、アダヤ、
12288 15 10 40 マクナデバイ、シャシャイ、シャライ、
12289 15 10 41 アザリエル、シレミヤ、シマリヤ、
12290 15 10 42 シャルム、アマリヤ、ヨセフ。
12291 15 10 43 ネボの子らではエイエル、マッタテヤ、ザバデ、ゼビナ、ヤッダイ、ヨエル、ベナヤ。
12292 15 10 44 これらの者は皆異邦の女をめとった者である。彼らはその女たちをその子供と共に離縁した。
12293 16 1 1 ハカリヤの子ネヘミヤの言葉。
12294 16 1 2 わたしの兄弟のひとりハナニが数人の者と共にユダから来たので、わたしは捕囚を免れて生き残ったユダヤ人の事およびエルサレムの事を尋ねた。
12295 16 1 3 彼らはわたしに言った、「かの州で捕囚を免れて生き残った者は大いなる悩みと、はずかしめのうちにあり、エルサレムの城壁はくずされ、その門は火で焼かれたままであります」と。
12296 16 1 4 わたしはこれらの言葉を聞いた時、すわって泣き、数日のあいだ嘆き悲しみ、断食して天の神の前に祈って、
12297 16 1 5 言った、「天の神、主、おのれを愛し、その戒めを守る者には契約を守り、いつくしみを施される大いなる恐るべき神よ、
12298 16 1 6 どうぞ耳を傾け、目を開いてしもべの祈を聞いてください。わたしは今、あなたのしもべであるイスラエルの子孫のために、昼も夜もみ前に祈り、われわれイスラエルの子孫が、あなたに対して犯した罪をざんげいたします。まことにわたしも、わたしの父の家も罪を犯しました。
12299 16 1 7 われわれはあなたに対して大いに悪い事を行い、あなたのしもべモーセに命じられた戒めをも、定めをも、おきてをも守りませんでした。
12300 16 1 8 どうぞ、あなたのしもべモーセに命じられた言葉を、思い起してください。すなわちあなたは言われました、『もしあなたがたが罪を犯すならば、わたしはあなたがたを、もろもろの民の間に散らす。
12301 16 1 9 しかし、あなたがたがわたしに立ち返り、わたしの戒めを守って、これを行うならば、たといあなたがたのうちの散らされた者が、天の果にいても、わたしはそこから彼らを集め、わたしの名を住まわせるために選んだ所に連れて来る』と。
12302 16 1 10 彼らは、あなたが大いなる力と強い手をもって、あがなわれたあなたのしもべ、あなたの民です。
12303 16 1 11 主よ、どうぞしもべの祈と、あなたの名を恐れることを喜ぶあなたのしもべらの祈に耳を傾けてください。どうぞ、きょう、しもべを恵み、この人の目の前であわれみを得させてください」。この時、わたしは王の給仕役であった。
12304 16 2 1 アルタシャスタ王の第二十年、ニサンの月に、王の前に酒が出た時、わたしは酒をついで王にささげた。これまでわたしは王の前で悲しげな顔をしていたことはなかった。
12305 16 2 2 王はわたしに言われた、「あなたは病気でもないのにどうして悲しげな顔をしているのか。何か心に悲しみをもっているにちがいない」。そこでわたしは大いに恐れて、
12306 16 2 3 王に申しあげた、「どうぞ王よ、長生きされますように。わたしの先祖の墳墓の地であるあの町は荒廃し、その門が火で焼かれたままであるのに、どうしてわたしは悲しげな顔をしないでいられましょうか」。
12307 16 2 4 王はわたしにむかって、「それでは、あなたは何を願うのか」と言われたので、わたしは天の神に祈って、
12308 16 2 5 王に申しあげた、「もし王がよしとされ、しもべがあなたの前に恵みを得ますならば、どうかわたしを、ユダにあるわたしの先祖の墳墓の町につかわして、それを再建させてください」。
12309 16 2 6 時に王妃もかたわらに座していたが、王はわたしに言われた、「あなたの旅の期間はどれほどですか。いつごろ帰ってきますか」。こうして王がわたしをつかわすことをよしとされたので、わたしは期間を定めて王に申しあげた。
12310 16 2 7 わたしはまた王に申しあげた、「もし王がよしとされるならば、川向こうの州の知事たちに与える手紙をわたしに賜わり、わたしがユダに行きつくまで、彼らがわたしを通過させるようにしてください。
12311 16 2 8 また王の山林を管理するアサフに与える手紙をも賜わり、神殿に属する城の門を建てるため、また町の石がき、およびわたしの住むべき家を建てるために用いる材木をわたしに与えるようにしてください」。わたしの神がよくわたしを助けられたので、王はわたしの願いを許された。
12312 16 2 9 そこでわたしは川向こうの州の知事たちの所へ行って、王の手紙を渡した。なお王は軍の長および騎兵をわたしと共につかわした。
12313 16 2 10 ところがホロニびとサンバラテおよびアンモンびと奴隷トビヤはこれを聞き、イスラエルの子孫の福祉を求める人が来たというので、大いに感情を害した。
12314 16 2 11 わたしはエルサレムに着いて、そこに三日滞在した後、
12315 16 2 12 夜中に起き出た。数人の者がわたしに伴ったが、わたしは、神がエルサレムのためになそうとして、わたしの心に入れられたことを、だれにも告げ知らせず、またわたしが乗った獣のほかには、獣をつれて行かなかった。
12316 16 2 13 わたしは夜中に出て谷の門を通り、龍の井戸および糞の門に行って、エルサレムのくずれた城壁や、火に焼かれた門を調査し、
12317 16 2 14 また泉の門および王の池に行ったが、わたしの乗っている獣の通るべき所もなかった。
12318 16 2 15 わたしはまたその夜のうちに谷に沿って上り、城壁を調査したうえ、身をめぐらして、谷の門を通って帰った。
12319 16 2 16 つかさたちは、わたしがどこへ行ったか、何をしたかを知らなかった。わたしはまたユダヤ人にも、祭司たちにも、尊い人たちにも、つかさたちにも、その他工事をする人々にもまだ知らせなかった。
12320 16 2 17 しかしわたしはついに彼らに言った、「あなたがたの見るとおり、われわれは難局にある。エルサレムは荒廃し、その門は火に焼かれた。さあ、われわれは再び世のはずかしめをうけることのないように、エルサレムの城壁を築こう」。
12321 16 2 18 そして、わたしの神がよくわたしを助けられたことを彼らに告げ、また王がわたしに語られた言葉をも告げたので、彼らは「さあ、立ち上がって築こう」と言い、奮い立って、この良きわざに着手しようとした。
12322 16 2 19 ところがホロニびとサンバラテ、アンモンびと奴隷トビヤおよびアラビヤびとガシムがこれを聞いて、われわれをあざけり、われわれを侮って言った、「あなたがたは何をするのか、王に反逆しようとするのか」。
12323 16 2 20 わたしは彼らに答えて言った、「天の神がわれわれを恵まれるので、そのしもべであるわれわれは奮い立って築くのである。しかしあなたがたはエルサレムに何の分もなく、権利もなく、記念もない」。
12324 16 3 1 かくて大祭司エリアシブは、その兄弟である祭司たちと共に立って羊の門を建て、これを聖別してそのとびらを設け、さらにこれを聖別して、ハンメアの望楼に及ぼし、またハナネルの望楼にまで及ぼした。
12325 16 3 2 彼の次にはエリコの人々が建て、その次にはイムリの子ザックルが建てた。
12326 16 3 3 魚の門はハッセナアの子らが建て、その梁を置き、そのとびらと横木と貫の木とを設けた。
12327 16 3 4 その次にハッコヅの子ウリヤの子メレモテが修理し、その次にメシザベルの子ベレキヤの子メシュラムが修理し、その次にバアナの子ザドクが修理した。
12328 16 3 5 その次にテコアびとらが修理したが、その貴人たちはその主の工事に服さなかった。
12329 16 3 6 古い門はパセアの子ヨイアダおよびベソデヤの子メシュラムがこれを修理し、その梁を置き、そのとびらと横木と貫の木とを設けた。
12330 16 3 7 その次にギベオンびとメラテヤ、メロノテびとヤドン、および川向こうの州の知事の行政下にあるギベオンとミヅパの人々が修理した。
12331 16 3 8 その次にハルハヤの子ウジエルなどの金細工人が修理し、その次に製香者のひとりハナニヤが修理した。こうして彼らはエルサレムを城壁の広い所まで復旧した。
12332 16 3 9 その次にエルサレムの半区域の知事ホルの子レパヤが修理し、
12333 16 3 10 その次にハルマフの子エダヤが自分の家と向かい合っている所を修理し、その次にはハシャブニヤの子ハットシが修理した。
12334 16 3 11 ハリムの子マルキヤおよびバハテ・モアブの子ハシュブも他の部分および炉の望楼を修理した。
12335 16 3 12 その次にエルサレムの他の半区域の知事ハロヘシの子シャルムがその娘たちと共に修理した。
12336 16 3 13 谷の門はハヌンがザノアの民と共にこれを修理し、これを建て直して、そのとびらと横木と貫の木とを設け、また糞の門まで城壁一千キュビトを修理した。
12337 16 3 14 糞の門はベテ・ハケレムの区域の知事レカブの子マルキヤがこれを修理し、これを建て直して、そのとびらと横木と貫の木とを設けた。
12338 16 3 15 泉の門はミヅパの区域の知事コロホゼの子シャルンがこれを修理し、これを建て直して、おおいを施し、そのとびらと横木と貫の木とを設けた。彼はまた王の園のほとりのシラの池に沿った石がきを修理して、ダビデの町から下る階段にまで及んだ。
12339 16 3 16 その後にベテズルの半区域の知事アズブクの子ネヘミヤが修理して、ダビデの墓と向かい合った所に及び、掘池と勇士の宅にまで及んだ。
12340 16 3 17 その後にバニの子レホムなどのレビびとが修理し、その次にケイラの半区域の知事ハシャビヤがその区域のために修理した。
12341 16 3 18 その後にケイラの半区域の知事ヘナダデの子バワイなどその兄弟たちが修理し、
12342 16 3 19 その次にエシュアの子でミヅパの知事であるエゼルが、城壁の曲りかどにある武器倉に上る所と向かい合った他の部分を修理し、
12343 16 3 20 その後にザバイの子バルクが、力をつくして城壁の曲りかどから大祭司エリアシブの家の門までの他の部分を修理し、
12344 16 3 21 その後にハッコヅの子ウリヤの子メレモテが、エリアシブの家の門からエリアシブの家の端までの他の部分を修理し、
12345 16 3 22 彼の後に低地の人々である祭司たちが修理し、
12346 16 3 23 その後にベニヤミンおよびハシュブが、自分たちの家と向かい合っている所を修理し、その後にアナニヤの子マアセヤの子アザリヤが、自分の家の附近を修理し、
12347 16 3 24 その後にヘナダデの子ビンヌイが、アザリヤの家から城壁の曲りかど、およびすみまでの他の部分を修理した。
12348 16 3 25 ウザイの子パラルは、城壁の曲りかどと向かい合っている所、および監視の庭に近い王の上の家から突き出ている望楼と向かい合っている所を修理した。その後にパロシの子ペダヤ、
12349 16 3 26 およびオペルに住んでいる宮に仕えるしもべたちが、東の方の水の門と向かい合っている所、および突き出ている望楼と向かい合っている所まで修理した。
12350 16 3 27 その後にテコアびとが、突き出ている大望楼と向かい合っている他の部分を修理し、オペルの城壁にまで及んだ。
12351 16 3 28 馬の門から上の方は祭司たちが、おのおの自分の家と向かい合っている所を修理した。
12352 16 3 29 その後にインメルの子ザドクが、自分の家と向かい合っている所を修理し、その後にシカニヤの子シマヤという東の門を守る者が修理し、
12353 16 3 30 その後にシレミヤの子ハナニヤおよびザラフの第六の子ハヌンが他の部分を修理し、その後にベレキヤの子メシュラムが、自分のへやと向かい合っている所を修理した。
12354 16 3 31 その後に金細工人のひとりマルキヤという者が、召集の門と向かい合っている所を修理して、すみの二階のへやに至り、宮に仕えるしもべたちおよび商人の家にまで及んだ。
12355 16 3 32 またすみの二階のへやと羊の門の間は金細工人と商人たちがこれを修理した。
12356 16 4 1 サンバラテはわれわれが城壁を築くのを聞いて怒り、大いに憤ってユダヤ人をあざけった。
12357 16 4 2 彼はその兄弟たちおよびサマリヤの兵隊の前で語って言った、「この弱々しいユダヤ人は何をしているのか。自分で再興しようとするのか。犠牲をささげようとするのか。一日で事を終えようとするのか。塵塚の中の石はすでに焼けているのに、これを取りだして生かそうとするのか」。
12358 16 4 3 またアンモンびとトビヤは、彼のかたわらにいて言った、「そうだ、彼らの築いている城壁は、きつね一匹が上ってもくずれるであろう」と。
12359 16 4 4 「われわれの神よ、聞いてください。われわれは侮られています。彼らのはずかしめを彼らのこうべに返し、彼らを捕囚の地でぶんどり物にしてください。
12360 16 4 5 彼らのとがをおおわず、彼らの罪をみ前から消し去らないでください。彼らは築き建てる者の前であなたを怒らせたからです」。
12361 16 4 6 こうしてわれわれは城壁を築いたが、石がきはみな相連なって、その高さの半ばにまで達した。民が心をこめて働いたからである。
12362 16 4 7 ところがサンバラテ、トビヤ、アラビヤびと、アンモンびと、アシドドびとらは、エルサレムの城壁の修理が進展し、その破れ目もふさがり始めたと聞いて大いに怒り、
12363 16 4 8 皆共に相はかり、エルサレムを攻めて、その中に混乱を起そうとした。
12364 16 4 9 そこでわれわれは神に祈り、また日夜見張りを置いて彼らに備えた。
12365 16 4 10 その時、ユダびとは言った、「荷を負う者の力は衰え、そのうえ、灰土がおびただしいので、われわれは城壁を築くことができない」。
12366 16 4 11 またわれわれの敵は言った、「彼らの知らないうちに、また見ないうちに、彼らの中にはいりこんで彼らを殺し、その工事をやめさせよう」。
12367 16 4 12 また彼らの近くに住んでいるユダヤ人たちはきて、十度もわれわれに言った、「彼らはその住んでいるすべての所からわれわれに攻め上るでしょう」と。
12368 16 4 13 そこでわたしは民につるぎ、やりおよび弓を持たせ、城壁の後の低い所、すなわち空地にその家族にしたがって立たせた。
12369 16 4 14 わたしは見めぐり、立って尊い人々、つかさたち、およびその他の民らに言った、「あなたがたは彼らを恐れてはならない。大いなる恐るべき主を覚え、あなたがたの兄弟、むすこ、娘、妻および家のために戦いなさい」。
12370 16 4 15 われわれの敵は自分たちの事が、われわれに悟られたことを聞き、また神が彼らの計りごとを破られたことを聞いたので、われわれはみな城壁に帰り、おのおのその工事を続けた。
12371 16 4 16 その日から後は、わたしのしもべの半数は工事に働き、半数はやり、盾、弓、よろいをもって武装した。そしてつかさたちは城壁を築いているユダの全家の後に立った。
12372 16 4 17 荷を負い運ぶ者はおのおの片手で工事をなし、片手に武器を執った。
12373 16 4 18 築き建てる者はおのおのその腰につるぎを帯びて築き建て、ラッパを吹く者はわたしのかたわらにいた。
12374 16 4 19 わたしは尊い人々、つかさたち、およびその他の民に言った、「工事は大きくかつ広がっているので、われわれは城壁の上で互に遠く離れている。
12375 16 4 20 どこででもラッパの音を聞いたなら、そこにいるわれわれの所に集まってほしい。われわれの神はわれわれのために戦われます」。
12376 16 4 21 このようにして、われわれは工事を進めたが、半数の者は夜明けから星の出る時まで、やりを執っていた。
12377 16 4 22 その時わたしはまた民に告げて、「おのおのそのしもべと共にエルサレムの内に宿り、夜はわれわれの護衛者となり、昼は工事をするように」と言った。
12378 16 4 23 そして、わたしも、わたしの兄弟たちも、わたしのしもべたちも、わたしを護衛する人々も、われわれのうちひとりも、その衣を脱がず、おのおの手に武器を執っていた。
12379 16 5 1 さて、ここに民がその妻と共に、その兄弟であるユダヤ人に向かって大いに叫び訴えることがあった。
12380 16 5 2 すなわち、ある人々は言った、「われわれはむすこ娘と共に大ぜいです。われわれは穀物を得て、食べて生きていかなければなりません」。
12381 16 5 3 またある人々は言った、「われわれは飢えのために、穀物を得ようと田畑も、ぶどう畑も、家も抵当に入れています」。
12382 16 5 4 ある人々は言った、「われわれは王の税金のために、われわれの田畑およびぶどう畑をもって金を借りました。
12383 16 5 5 現にわれわれの肉はわれわれの兄弟の肉に等しく、われわれの子供も彼らの子供に等しいのに、見よ、われわれはむすこ娘を人の奴隷とするようにしいられています。われわれの娘のうちには、すでに人の奴隷になった者もありますが、われわれの田畑も、ぶどう畑も他人のものになっているので、われわれにはどうする力もありません」。
12384 16 5 6 わたしは彼らの叫びと、これらの言葉を聞いて大いに怒った。
12385 16 5 7 わたしはみずから考えたすえ、尊い人々およびつかさたちを責めて言った、「あなたがたはめいめいその兄弟から利息をとっている」。そしてわたしは彼らの事について大会を開き、
12386 16 5 8 彼らに言った、「われわれは異邦人に売られたわれわれの兄弟ユダヤ人を、われわれの力にしたがってあがなった。しかるにあなたがたは自分の兄弟を売ろうとするのか。彼らはわれわれに売られるのか」。彼らは黙してひと言もいわなかった。
12387 16 5 9 わたしはまた言った、「あなたがたのする事はよくない。あなたがたは、われわれの敵である異邦人のそしりをやめさせるために、われわれの神を恐れつつ事をなすべきではないか。
12388 16 5 10 わたしもわたしの兄弟たちも、わたしのしもべたちも同じく金と穀物とを貸しているが、われわれはこの利息をやめよう。
12389 16 5 11 どうぞ、あなたがたは、きょうにも彼らの田畑、ぶどう畑、オリブ畑および家屋を彼らに返し、またあなたがたが彼らから取っていた金銭、穀物、ぶどう酒、油などの百分の一を返しなさい」。
12390 16 5 12 すると彼らは「われわれはそれを返します。彼らから何をも要求しません。あなたの言うようにします」と言った。そこでわたしは祭司たちを呼び、彼らにこの言葉のとおりに行うという誓いを立てさせた。
12391 16 5 13 わたしはまたわたしのふところを打ち払って言った、「この約束を実行しない者を、どうぞ神がこのように打ち払って、その家およびその仕事を離れさせられるように。その人はこのように打ち払われてむなしくなるように」。会衆はみな「アァメン」と言って、主をさんびした。そして民はこの約束のとおりに行った。
12392 16 5 14 またわたしは、ユダの地の総督に任ぜられた時から、すなわちアルタシャスタ王の第二十年から第三十二年まで、十二年の間、わたしもわたしの兄弟たちも、総督としての手当てを受けなかった。
12393 16 5 15 わたしより以前の総督らは民に重荷を負わせ、彼らから銀四十シケルのほかにパンとぶどう酒を取り、また彼らのしもべたちも民を圧迫した。しかしわたしは神を恐れるので、そのようなことはしなかった。
12394 16 5 16 わたしはかえって、この城壁の工事に身をゆだね、どんな土地をも買ったことはない。わたしのしもべたちは皆そこに集まって工事をした。
12395 16 5 17 またわたしの食卓にはユダヤ人と、つかさたち百五十人もあり、そのほかに、われわれの周囲の異邦人のうちからきた人々もあった。
12396 16 5 18 これがために一日に牛一頭、肥えた羊六頭を備え、また鶏をもわたしのために備え、十日ごとにたくさんのぶどう酒を備えたが、わたしはこの民の労役が重かったので、総督としての手当てを求めなかった。
12397 16 5 19 わが神よ、わたしがこの民のためにしたすべての事を覚えて、わたしをお恵みください。
12398 16 6 1 サンバラテ、トビヤ、アラビヤびとガシムおよびその他のわれわれの敵は、わたしが城壁を築き終って、一つの破れも残らないと聞いた。(しかしその時にはまだ門のとびらをつけていなかったのである。)
12399 16 6 2 そこでサンバラテとガシムはわたしに使者をつかわして言った、「さあ、われわれはオノの平野にある一つの村で会見しよう」と。彼らはわたしに危害を加えようと考えていたのである。
12400 16 6 3 それでわたしは彼らに使者をつかわして言わせた、「わたしは大いなる工事をしているから下って行くことはできない。どうしてこの工事をさしおいて、あなたがたの所へ下って行き、その間、工事をやめることができようか」。
12401 16 6 4 彼らは四度までこのようにわたしに人をつかわしたが、わたしは同じように彼らに答えた。
12402 16 6 5 ところが、サンバラテは五度目にそのしもべを前のようにわたしにつかわした。その手には開封の手紙を携えていた。
12403 16 6 6 その中に次のようにしるしてあった、「諸国民の間に言い伝えられ、またガシムも言っているが、あなたはユダヤ人と共に反乱を企て、これがために城壁を築いている。またその言うところによれば、あなたは彼らの王になろうとしている。
12404 16 6 7 またあなたは預言者を立てて、あなたのことをエルサレムにのべ伝えさせ、『ユダに王がある』と言わせているが、そのことはこの言葉のとおり王に聞えるでしょう。それゆえ、今おいでなさい。われわれは共に相談しましょう」。
12405 16 6 8 そこでわたしは彼に人をつかわして言わせた、「あなたの言うようなことはしていません。あなたはそれを自分の心から造り出したのです」と。
12406 16 6 9 彼らはみな「彼らの手が弱って工事をやめるようになれば、工事は成就しないだろう」と考えて、われわれをおどそうとしたのである。しかし神よ、どうぞいまわたしの手を強めてください。
12407 16 6 10 さてわたしはメヘタベルの子デラヤの子シマヤの家に行ったところ、彼は閉じこもっていて言った、「われわれは神の宮すなわち神殿の中で会合し、神殿の戸を閉じておきましょう。彼らはあなたを殺そうとして来るからです。きっと夜のうちにあなたを殺そうとして来るでしょう」。
12408 16 6 11 わたしは言った、「わたしのような者がどうして逃げられよう。わたしのような者でだれが神殿にはいって命を全うすることができよう。わたしははいらない」。
12409 16 6 12 わたしは悟った。神が彼をつかわされたのではない。彼がわたしにむかってこの預言を伝えたのは、トビヤとサンバラテが彼を買収したためである。
12410 16 6 13 彼が買収されたのはこの事のためである。すなわちわたしを恐れさせ、わたしにこのようにさせて、罪を犯させ、わたしに悪名をきせて侮辱するためであった。
12411 16 6 14 わが神よ、トビヤ、サンバラテおよび女預言者ノアデヤならびにその他の預言者など、すべてわたしを恐れさせようとする者たちをおぼえて、彼らが行ったこれらのわざに報いてください。
12412 16 6 15 こうして城壁は五十二日を経て、エルルの月の二十五日に完成した。
12413 16 6 16 われわれの敵が皆これを聞いた時、われわれの周囲の異邦人はみな恐れ、大いに面目を失った。彼らはこの工事が、われわれの神の助けによって成就したことを悟ったからである。
12414 16 6 17 またそのころ、ユダの尊い人々は多くの手紙をトビヤに送った。トビヤの手紙もまた彼らにきた。
12415 16 6 18 トビヤはアラの子シカニヤの婿であったので、ユダのうちの多くの者が彼と誓いを立てていたからである。トビヤの子ヨハナンもベレキヤの子メシュラムの娘を妻にめとった。
12416 16 6 19 彼らはまたトビヤの善行をわたしの前に語り、またわたしの言葉を彼に伝えた。トビヤはたびたび手紙を送って、わたしを恐れさせようとした。
12417 16 7 1 城壁が築かれて、とびらを設け、さらに門衛、歌うたう者およびレビびとを任命したので、
12418 16 7 2 わたしは、わたしの兄弟ハナニと、城のつかさハナニヤに命じて、エルサレムを治めさせた。彼は多くの者にまさって忠信な、神を恐れる者であったからである。
12419 16 7 3 わたしは彼らに言った、「日の暑くなるまではエルサレムのもろもろの門を開いてはならない。人々が立って守っている間に門を閉じさせ、貫の木を差せ。またエルサレムの住民の中から番兵を立てて、おのおのにその所を守らせ、またおのおのの家と向かい合う所を守らせよ」。
12420 16 7 4 町は広くて大きかったが、その内の民は少なく、家々はまだ建てられていなかった。
12421 16 7 5 時に神はわたしの心に、尊い人々、つかさおよび民を集めて、家系によってその名簿をしらべようとの思いを起された。わたしは最初に上って来た人々の系図を発見し、その中にこのようにしるしてあるのを見いだした。
12422 16 7 6 バビロンの王ネブカデネザルが捕え移した捕囚のうち、ゆるされてエルサレムおよびユダに上り、おのおの自分の町に帰ったこの州の人々は次のとおりである。
12423 16 7 7 彼らはゼルバベル、エシュア、ネヘミヤ、アザリヤ、ラアミヤ、ナハマニ、モルデカイ、ビルシャン、ミスペレテ、ビグワイ、ネホム、バアナと一緒に帰ってきた者たちである。
12424 16 7 8 パロシの子孫は二千百七十二人。
12425 16 7 9 シパテヤの子孫は三百七十二人。
12426 16 7 10 アラの子孫は六百五十二人。
12427 16 7 11 パハテ・モアブの子孫すなわちエシュアとヨアブの子孫は二千八百十八人。
12428 16 7 12 エラムの子孫は一千二百五十四人。
12429 16 7 13 ザットの子孫は八百四十五人。
12430 16 7 14 ザッカイの子孫は七百六十人。
12431 16 7 15 ビンヌイの子孫は六百四十八人。
12432 16 7 16 ベバイの子孫は六百二十八人。
12433 16 7 17 アズガデの子孫は二千三百二十二人。
12434 16 7 18 アドニカムの子孫は六百六十七人。
12435 16 7 19 ビグワイの子孫は二千六十七人。
12436 16 7 20 アデンの子孫は六百五十五人。
12437 16 7 21 ヒゼキヤの家のアテルの子孫は九十八人。
12438 16 7 22 ハシュムの子孫は三百二十八人。
12439 16 7 23 ベザイの子孫は三百二十四人。
12440 16 7 24 ハリフの子孫は百十二人。
12441 16 7 25 ギベオンの子孫は九十五人。
12442 16 7 26 ベツレヘムおよびネトパの人々は百八十八人。
12443 16 7 27 アナトテの人々は百二十八人。
12444 16 7 28 ベテ・アズマウテの人々は四十二人。
12445 16 7 29 キリアテ・ヤリム、ケピラおよびベエロテの人々は七百四十三人。
12446 16 7 30 ラマおよびゲバの人々は六百二十一人。
12447 16 7 31 ミクマシの人々は百二十二人。
12448 16 7 32 ベテルおよびアイの人々は百二十三人。
12449 16 7 33 ほかのネボの人々は五十二人。
12450 16 7 34 ほかのエラムの子孫は一千二百五十四人。
12451 16 7 35 ハリムの子孫は三百二十人。
12452 16 7 36 エリコの人々は三百四十五人。
12453 16 7 37 ロド、ハデデおよびオノの人々は七百二十一人。
12454 16 7 38 セナアの子孫は三千九百三十人。
12455 16 7 39 祭司では、エシュアの家のエダヤの子孫が九百七十三人。
12456 16 7 40 インメルの子孫が一千五十二人。
12457 16 7 41 パシュルの子孫が一千二百四十七人。
12458 16 7 42 ハリムの子孫が一千十七人。
12459 16 7 43 レビびとでは、エシュアの子孫すなわちホデワの子孫のうちのカデミエルの子孫が七十四人。
12460 16 7 44 歌うたう者では、アサフの子孫が百四十八人。
12461 16 7 45 門衛では、シャルムの子孫、アテルの子孫、タルモンの子孫、アックブの子孫、ハテタの子孫およびショバイの子孫合わせて百三十八人。
12462 16 7 46 宮に仕えるしもべでは、ジハの子孫、ハスパの子孫、タバオテの子孫、
12463 16 7 47 ケロスの子孫、シアの子孫、パドンの子孫、
12464 16 7 48 レバナの子孫、ハガバの子孫、サルマイの子孫、
12465 16 7 49 ハナンの子孫、ギデルの子孫、ガハルの子孫、
12466 16 7 50 レアヤの子孫、レヂンの子孫、ネコダの子孫、
12467 16 7 51 ガザムの子孫、ウザの子孫、パセアの子孫、
12468 16 7 52 ベサイの子孫、メウニムの子孫、ネフセシムの子孫、
12469 16 7 53 バクブクの子孫、ハクパの子孫、ハルホルの子孫、
12470 16 7 54 バヅリテの子孫、メヒダの子孫、ハルシャの子孫、
12471 16 7 55 バルコスの子孫、シセラの子孫、テマの子孫、
12472 16 7 56 ネヂアの子孫およびハテパの子孫。
12473 16 7 57 ソロモンのしもべであった者たちの子孫では、ソタイの子孫、ソペレテの子孫、ペリダの子孫、
12474 16 7 58 ヤアラの子孫、ダルコンの子孫、ギデルの子孫、
12475 16 7 59 シパテヤの子孫、ハッテルの子孫、ポケレテ・ハッゼバイムの子孫、アモンの子孫。
12476 16 7 60 宮に仕えるしもべたちとソロモンのしもべであった者たちの子孫とは合わせて三百九十二人。
12477 16 7 61 テルメラ、テルハレサ、ケルブ、アドンおよびインメルから上って来た者があったが、その氏族と、血統とを示して、イスラエルの者であることを明らかにすることができなかった。その人々は次のとおりである。
12478 16 7 62 すなわちデラヤの子孫、トビヤの子孫、ネコダの子孫であって、合わせて六百四十二人。
12479 16 7 63 また祭司のうちにホバヤの子孫、ハッコヅの子孫、バルジライの子孫がある。バルジライはギレアデびとバルジライの娘たちのうちから妻をめとったので、その名で呼ばれた。
12480 16 7 64 これらの者はこの系図に載った者のうちに、自分の籍をたずねたが、なかったので、汚れた者として祭司の職から除かれた。
12481 16 7 65 総督は彼らに告げて、ウリムとトンミムを帯びる祭司の起るまでは、いと聖なる物を食べてはならぬと言った。
12482 16 7 66 会衆は合わせて四万二千三百六十人であった。
12483 16 7 67 このほかに男女の奴隷が七千三百三十七人、歌うたう者が男女合わせて二百四十五人あった。
12484 16 7 68 その馬は七百三十六頭、その騾馬は二百四十五頭、
12485 16 7 69 そのらくだは四百三十五頭、そのろばは六千七百二十頭であった。
12486 16 7 70 氏族の長のうち工事のためにささげ物をした人々があった。総督は金一千ダリク、鉢五十、祭司の衣服五百三十かさねを倉に納めた。
12487 16 7 71 また氏族の長のうちのある人々は金二万ダリク、銀二千二百ミナを工事のために倉に納めた。
12488 16 7 72 その他の民の納めたものは金二万ダリク、銀二千ミナ、祭司の衣服六十七かさねであった。
12489 16 7 73 こうして祭司、レビびと、門衛、歌うたう者、民のうちのある人々、宮に仕えるしもべたち、およびイスラエルびとは皆その町々に住んだ。
12490 16 8 1 その時民は皆ひとりのようになって水の門の前の広場に集まり、主がイスラエルに与えられたモーセの律法の書を持って来るように、学者エズラに求めた。
12491 16 8 2 祭司エズラは七月の一日に律法を携えて来て、男女の会衆およびすべて聞いて悟ることのできる人々の前にあらわれ、
12492 16 8 3 水の門の前にある広場で、あけぼのから正午まで、男女および悟ることのできる人々の前でこれを読んだ。民はみな律法の書に耳を傾けた。
12493 16 8 4 学者エズラはこの事のために、かねて設けた木の台の上に立ったが、彼のかたわらには右の方にマッタテヤ、シマ、アナヤ、ウリヤ、ヒルキヤおよびマアセヤが立ち、左の方にはペダヤ、ミサエル、マルキヤ、ハシュム、ハシバダナ、ゼカリヤおよびメシュラムが立った。
12494 16 8 5 エズラはすべての民の前にその書を開いた。彼はすべての民よりも高い所にいたからである。彼が書を開くと、すべての民は起立した。
12495 16 8 6 エズラは大いなる神、主をほめ、民は皆その手をあげて、「アァメン、アァメン」と言って答え、こうべをたれ、地にひれ伏して主を拝した。
12496 16 8 7 エシュア、バニ、セレビヤ、ヤミン、アックブ、シャベタイ、ホデヤ、マアセヤ、ケリタ、アザリヤ、ヨザバデ、ハナン、ペラヤおよびレビびとたちは民に律法を悟らせた。民はその所に立っていた。
12497 16 8 8 彼らはその書、すなわち神の律法をめいりょうに読み、その意味を解き明かしてその読むところを悟らせた。
12498 16 8 9 総督であるネヘミヤと、祭司であり、学者であるエズラと、民を教えるレビびとたちはすべての民に向かって「この日はあなたがたの神、主の聖なる日です。嘆いたり、泣いたりしてはならない」と言った。すべての民が律法の言葉を聞いて泣いたからである。
12499 16 8 10 そして彼らに言った、「あなたがたは去って、肥えたものを食べ、甘いものを飲みなさい。その備えのないものには分けてやりなさい。この日はわれわれの主の聖なる日です。憂えてはならない。主を喜ぶことはあなたがたの力です」。
12500 16 8 11 レビびともまたすべての民を静めて、「泣くことをやめなさい。この日は聖なる日です。憂えてはならない」と言った。
12501 16 8 12 すべての民は去って食い飲みし、また分け与えて、大いに喜んだ。これは彼らが読み聞かされた言葉を悟ったからである。
12502 16 8 13 次の日、すべての民の氏族の長たち、祭司、レビびとらは律法の言葉を学ぶために学者エズラのもとに集まってきて、
12503 16 8 14 律法のうちに主がモーセに命じられたこと、すなわちイスラエルの人々は七月の祭の間、仮庵の中に住むべきことがしるされているのを見いだした。
12504 16 8 15 またすべての町々およびエルサレムにのべ伝えて、「あなたがたは山に出て行って、オリブと野生のオリブ、ミルトス、なつめやし、および茂った木の枝を取ってきて、しるされてあるとおり、仮庵を造れ」と言ってあるのを見いだした。
12505 16 8 16 それで民は出て行って、それを持って帰り、おのおのその家の屋根の上、その庭、神の宮の庭、水の門の広場、エフライムの門の広場などに仮庵を造った。
12506 16 8 17 捕囚から帰って来た会衆は皆仮庵を造って、仮庵に住んだ。ヌンの子ヨシュアの日からこの日まで、イスラエルの人々はこのように行ったことがなかった。それでその喜びは非常に大きかった。
12507 16 8 18 エズラは初めの日から終りの日まで、毎日神の律法の書を読んだ。人々は七日の間、祭を行い、八日目になって、おきてにしたがって聖会を開いた。
12508 16 9 1 その月の二十四日にイスラエルの人々は集まって断食し、荒布をまとい、土をかぶった。
12509 16 9 2 そしてイスラエルの子孫は、すべての異邦人を離れ、立って自分の罪と先祖の不義とをざんげした。
12510 16 9 3 彼らはその所に立って、その日の四分の一をもってその神、主の律法の書を読み、他の四分の一をもってざんげをなし、その神、主を拝した。
12511 16 9 4 その時エシュア、バニ、カデミエル、シバニヤ、ブンニ、セレビヤ、バニ、ケナニらはレビびとの台の上に立ち、大声をあげて、その神、主に呼ばわった。
12512 16 9 5 それからまたエシュア、カデミエル、バニ、ハシャブニヤ、セレビヤ、ホデヤ、セバニヤ、ペタヒヤなどのレビびとは言った、「立ちあがって永遠から永遠にいますあなたがたの神、主をほめなさい。あなたの尊いみ名はほむべきかな。これはすべての祝福とさんびを越えるものです」。
12513 16 9 6 またエズラは言った、「あなたは、ただあなたのみ、主でいらせられます。あなたは天と諸天の天と、その万象、地とその上のすべてのもの、海とその中のすべてのものを造り、これをことごとく保たれます。天の万軍はあなたを拝します。
12514 16 9 7 あなたは主、神でいらせられます。あなたは昔アブラムを選んでカルデヤのウルから導き出し、彼にアブラハムという名を与え、
12515 16 9 8 彼の心があなたの前に忠信なのを見られて、彼と契約を結び、その子孫にカナンびと、ヘテびと、アモリびと、ペリジびと、エブスびとおよびギルガシびとの地を与えると言われたが、ついにあなたはその約束を成就されました。あなたは正しくいらせられるからです。
12516 16 9 9 あなたはわれわれの先祖がエジプトで苦難を受けるのを顧みられ、また紅海のほとりで呼ばわり叫ぶのを聞きいれられ、
12517 16 9 10 しるしと不思議とをあらわしてパロと、そのすべての家来と、その国のすべての民を攻められました。彼らがわれわれの先祖に対して、ごうまんにふるまったことを知られたからです。そしてあなたが名をあげられたこと今日のようです。
12518 16 9 11 あなたはまた彼らの前で海を分け、彼らに、かわいた地を踏んで海の中を通らせ、彼らを追う者を、石を大水に投げ入れるように淵に投げ入れ、
12519 16 9 12 昼は雲の柱をもって彼らを導き、夜は火の柱をもってその行くべき道を照されました。
12520 16 9 13 あなたはまたシナイ山の上に下り、天から彼らと語り、正しいおきてと、まことの律法および良きさだめと戒めとを授け、
12521 16 9 14 あなたの聖なる安息日を彼らに示し、あなたのしもべモーセによって戒めと、さだめと、律法とを彼らに命じ、
12522 16 9 15 天から食物を与えてその飢えをとどめ、岩から水を出してそのかわきを潤し、また、彼らに与えると誓われたその国にはいって、これを獲るように彼らに命じられました。
12523 16 9 16 しかし彼ら、すなわちわれわれの先祖はごうまんにふるまい、かたくなで、あなたの戒めに従わず、
12524 16 9 17 従うことを拒み、あなたが彼らの中で行われた奇跡を心にとめず、かえってかたくなになり、みずからひとりのかしらを立てて、エジプトの奴隷の生活に帰ろうとしました。しかしあなたは罪をゆるす神、恵みあり、あわれみあり、怒ることおそく、いつくしみ豊かにましまして、彼らを捨てられませんでした。
12525 16 9 18 また彼らがみずから一つの鋳物の子牛を造って、『これはあなたがたをエジプトから導き上ったあなたがたの神である』と言って、大いに汚し事を行った時にも、
12526 16 9 19 あなたは大いなるあわれみをもって彼らを荒野に見捨てられず、昼は雲の柱を彼らの上から離さないで道々彼らを導き、夜は火の柱をもって彼らの行くべき道を照されました。
12527 16 9 20 またあなたは良きみたまを賜わって彼らを教え、あなたのマナを常に彼らの口に与え、また水を彼らに与えて、かわきをとどめ、
12528 16 9 21 四十年の間彼らを荒野で養われたので、彼らはなんの欠けるところもなく、その衣服も古びず、その足もはれませんでした。
12529 16 9 22 そしてあなたは彼らに諸国、諸民を与えて、これをすべて分かち取らせられました。彼らはヘシボンの王シホンの領地、およびバシャンの王オグの領地を獲ました。
12530 16 9 23 また彼らの子孫を増して空の星のようにし、彼らの先祖たちに、はいって獲よと言われた地に彼らを導き入れられたので、
12531 16 9 24 その子孫は、はいってこの地を獲ました。あなたはまた、この地に住むカナンびとを彼らの前に征服し、その王たちおよびその地の民を彼らの手に渡して、意のままに扱わせられました。
12532 16 9 25 それで彼らは堅固な町々および肥えた地を取り、もろもろの良い物の満ちた家、掘池、ぶどう畑、オリブ畑および多くの果樹を獲、食べて飽き、肥え太り、あなたの大いなる恵みによって楽しみました。
12533 16 9 26 それにもかかわらず彼らは不従順で、あなたにそむき、あなたの律法を後に投げ捨て、彼らを戒めて、あなたに立ち返らせようとした預言者たちを殺し、大いに汚し事を行いました。
12534 16 9 27 そこであなたは彼らを敵の手に渡して苦しめられましたが、彼らがその苦難の時にあなたに呼ばわったので、あなたは天からこれを聞かれ、大いなるあわれみをもって彼らに救う者を与え、敵の手から救わせられました。
12535 16 9 28 ところが彼らは安息を得るやいなや、またあなたの前に悪事を行ったので、あなたは彼らを敵の手に捨て置いて、これに治めさせられましたが、彼らがまた立ち返ってあなたに呼ばわったので、あなたは天からこれを聞き、あわれみをもってしばしば彼らを救い出し、
12536 16 9 29 彼らを戒めて、あなたの律法に引きもどそうとされました。けれども彼らはごうまんにふるまい、あなたの戒めに従わず、人がこれを行うならば、これによって生きるというあなたのおきてを破って罪を犯し、肩をそびやかし、かたくなになって、聞き従おうとはしませんでした。
12537 16 9 30 それでもあなたは年久しく彼らを忍び、あなたの預言者たちにより、あなたのみたまをもって彼らを戒められましたが、彼らは耳を傾けなかったので、彼らを国々の民の手に渡されました。
12538 16 9 31 しかしあなたは大いなるあわれみによって彼らを絶やさず、また彼らを捨てられませんでした。あなたは恵みあり、あわれみある神でいらせられるからです。
12539 16 9 32 それゆえ、われわれの神、契約を保ち、いつくしみを施される大いにして力強く、恐るべき神よ、アッスリヤの王たちの時から今日まで、われわれとわれわれの王たち、つかさたち、祭司たち、預言者たち、先祖たち、およびあなたのすべての民に臨んだもろもろの苦難を小さい事と見ないでください。
12540 16 9 33 われわれに臨んだすべての事について、あなたは正しいのです。あなたは誠実をもって行われたのに、われわれは悪を行ったのです。
12541 16 9 34 われわれの王たち、つかさたち、祭司たち、先祖たちはあなたの律法を行わず、あなたがお与えになった命令と戒めとに聞き従いませんでした。
12542 16 9 35 すなわち彼らはおのれの国におり、あなたが下さった大きな恵みのうちにおり、またあなたがお与えになった広い肥えた地におりながら、あなたに仕えず、また自分の悪いわざをやめることをしませんでした。
12543 16 9 36 われわれは今日奴隷です。あなたがわれわれの先祖に与えて、その実とその良き物とを食べさせようとされた地で、われわれは奴隷となっているのです。
12544 16 9 37 そしてこの地はわれわれの罪のゆえに、あなたがわれわれの上に立てられた王たちのために多くの産物を出しています。かつ彼らはわれわれの身をも、われわれの家畜をも意のままに左右することができるので、われわれは大いなる苦難のうちにあるのです」。
12545 16 9 38 このもろもろの事のためにわれわれは堅い契約を結んで、これを記録し、われわれのつかさたち、レビびとたち祭司たちはこれに印を押した。
12546 16 10 1 印を押した者はハカリヤの子である総督ネヘミヤ、およびゼデキヤ、
12547 16 10 2 セラヤ、アザリヤ、エレミヤ、
12548 16 10 3 パシュル、アマリヤ、マルキヤ、
12549 16 10 4 ハットシ、シバニヤ、マルク、
12550 16 10 5 ハリム、メレモテ、オバデヤ、
12551 16 10 6 ダニエル、ギンネトン、バルク、
12552 16 10 7 メシュラム、アビヤ、ミヤミン、
12553 16 10 8 マアジヤ、ビルガイ、シマヤで、これらは祭司である。
12554 16 10 9 レビびとではアザニヤの子エシュア、ヘナダデの子らのうちのビンヌイ、カデミエル、
12555 16 10 10 およびその兄弟シバニヤ、ホデヤ、ケリタ、ペラヤ、ハナン、
12556 16 10 11 ミカ、レホブ、ハシャビヤ、
12557 16 10 12 ザックル、セレビヤ、シバニヤ、
12558 16 10 13 ホデヤ、バニ、ベニヌである。
12559 16 10 14 民のかしらではパロシ、パハテ・モアブ、エラム、ザット、バニ、
12560 16 10 15 ブンニ、アズガデ、ベバイ、
12561 16 10 16 アドニヤ、ビグワイ、アデン、
12562 16 10 17 アテル、ヒゼキヤ、アズル、
12563 16 10 18 ホデヤ、ハシュム、ベザイ、
12564 16 10 19 ハリフ、アナトテ、ノバイ、
12565 16 10 20 マグピアシ、メシュラム、ヘジル、
12566 16 10 21 メシザベル、ザドク、ヤドア、
12567 16 10 22 ペラテヤ、ハナン、アナニヤ、
12568 16 10 23 ホセア、ハナニヤ、ハシュブ、
12569 16 10 24 ハロヘシ、ピルハ、ショベク、
12570 16 10 25 レホム、ハシャブナ、マアセヤ、
12571 16 10 26 アヒヤ、ハナン、アナン、
12572 16 10 27 マルク、ハリム、バアナである。
12573 16 10 28 その他の民、祭司、レビびと、門を守る者、歌うたう者、宮に仕えるしもべ、ならびにすべて国々の民と離れて神の律法に従った者およびその妻、むすこ、娘などすべて知識と悟りのある者は、
12574 16 10 29 その兄弟である尊い人々につき従い、神のしもべモーセによって授けられた神の律法に歩み、われわれの主、主のすべての戒めと、おきてと、定めとを守り行うために、のろいと誓いとに加わった。
12575 16 10 30 われわれはこの地の民らにわれわれの娘を与えず、われわれのむすこに彼らの娘をめとらない。
12576 16 10 31 またこの地の民らがたとい品物または穀物を安息日に携えて来て売ろうとしても、われわれは安息日または聖日にはそれを買わない。また七年ごとに耕作をやめ、すべての負債をゆるす。
12577 16 10 32 われわれはまたみずから規定を設けて、われわれの神の宮の用のために年々シケルの三分の一を出し、
12578 16 10 33 供えのパン、常素祭、常燔祭のため、安息日、新月および定めの祭の供え物のため、聖なる物のため、イスラエルのあがないをなす罪祭、およびわれわれの神の宮のもろもろのわざのために用いることにした。
12579 16 10 34 またわれわれ祭司、レビびとおよび民はくじを引いて、律法にしるされてあるようにわれわれの神、主の祭壇の上にたくべきたきぎの供え物を、年々定められた時に氏族にしたがって、われわれの神の宮に納める者を定めた。
12580 16 10 35 またわれわれの土地の初なり、および各種の木の実の初なりを、年々主の宮に携えてくることを誓い、
12581 16 10 36 また律法にしるしてあるように、われわれの子どもおよび家畜のういご、およびわれわれの牛や羊のういごを、われわれの神の宮に携えてきて、われわれの神の宮に仕える祭司に渡し、
12582 16 10 37 われわれの麦粉の初物、われわれの供え物、各種の木の実、ぶどう酒および油を祭司のもとに携えて行って、われわれの神の宮のへやに納め、またわれわれの土地の産物の十分の一をレビびとに与えることにした。レビびとはわれわれのすべての農作をなす町において、その十分の一を受くべき者だからである。
12583 16 10 38 レビびとが十分の一を受ける時には、アロンの子孫である祭司が、そのレビびとと共にいなければならない。そしてまたレビびとはその十分の一の十分の一を、われわれの神の宮に携え上って、へやまたは倉に納めなければならない。
12584 16 10 39 すなわちイスラエルの人々およびレビの子孫は穀物、ぶどう酒、および油の供え物を携えて行って、聖所の器物および勤めをする祭司、門衛、歌うたう者たちのいるへやにこれを納めなければならない。こうしてわれわれは、われわれの神の宮をなおざりにしない。
12585 16 11 1 民のつかさたちはエルサレムに住み、その他の民はくじを引いて、十人のうちからひとりずつを、聖都エルサレムに来て住ませ、九人を他の町々に住ませた。
12586 16 11 2 またすべてみずから進みでてエルサレムに住むことを申し出た人々は、民はこれを祝福した。
12587 16 11 3 さてエルサレムに住んだこの州の長たちは次のとおりである。ただしユダの町々ではおのおのその町々にある自分の所有地に住んだ。すなわちイスラエルびと、祭司、レビびと、宮に仕えるしもべ、およびソロモンのしもべであった者たちの子孫である。
12588 16 11 4 そしてエルサレムにはユダの子孫およびベニヤミンの子孫のうちのある者たちが住んだ。すなわちユダの子孫ではウジヤの子アタヤで、ウジヤはゼカリヤの子、ゼカリヤはアマリヤの子、アマリヤはシパテヤの子、シパテヤはマハラレルの子、マハラレルはペレヅの子孫である。
12589 16 11 5 またバルクの子マアセヤで、バルクはコロホゼの子、コロホゼはハザヤの子、ハザヤはアダヤの子、アダヤはヨヤリブの子、ヨヤリブはゼカリヤの子、ゼカリヤはシロニびとの子である。
12590 16 11 6 ペレヅの子孫でエルサレムに住んだ者は合わせて四百六十八人で、みな勇敢な人々である。
12591 16 11 7 ベニヤミンの子孫では次のとおりである。すなわちメシュラムの子サルで、メシュラムはヨエデの子、ヨエデはペダヤの子、ペダヤはコラヤの子、コラヤはマアセヤの子、マアセヤはイテエルの子、イテエルはエサヤの子である。
12592 16 11 8 その次はガバイおよびサライなどで合わせて九百二十八人。
12593 16 11 9 ジクリの子ヨエルが彼らの監督である。ハッセヌアの子ユダがその副官として町を治めた。
12594 16 11 10 祭司ではヨヤリブの子エダヤ、ヤキン、
12595 16 11 11 および神の宮のつかさセラヤで、セラヤはヒルキヤの子、ヒルキヤはメシュラムの子、メシュラムはザドクの子、ザドクはメラヨテの子、メラヨテはアヒトブの子である。
12596 16 11 12 宮の務をするその兄弟は八百二十二人あり、また、エロハムの子アダヤがある。エロハムはペラリヤの子、ペラリヤはアムジの子、アムジはゼカリヤの子、ゼカリヤはパシホルの子、パシホルはマルキヤの子である。
12597 16 11 13 アダヤの兄弟で、氏族の長たる者は二百四十二人あり、またアザリエルの子アマシサイがある。アザリエルはアハザイの子、アハザイはメシレモテの子、メシレモテはインメルの子である。
12598 16 11 14 その兄弟である勇士は百二十八人あり、その監督はハッゲドリムの子ザブデエルである。
12599 16 11 15 レビびとではハシュブの子シマヤで、ハシュブはアズリカムの子、アズリカムはハシャビヤの子、ハシャビヤはブンニの子である。
12600 16 11 16 またシャベタイおよびヨザバデがある。これらはレビびとのかしらであって、神の宮の外のわざをつかさどった。
12601 16 11 17 またミカの子マッタニヤがある。ミカはザブデの子、ザブデはアサフの子である。マッタニヤは祈の時に感謝の言葉を唱え始める者である。その兄弟のうちのバクブキヤは彼に次ぐ者であった。またシャンマの子アブダがある。シャンマはガラルの子、ガラルはエドトンの子である。
12602 16 11 18 聖都におるレビびとは合わせて二百八十四人であった。
12603 16 11 19 門衛では門を守るアックブ、タルモンおよびその兄弟たち合わせて百七十二人である。
12604 16 11 20 その他のイスラエルびと、祭司、レビびとたちは皆ユダのすべての町々にあって、おのおの自分の嗣業にとどまった。
12605 16 11 21 ただし宮に仕えるしもべたちはオペルに住み、ヂハおよびギシパが宮に仕えるしもべたちを監督していた。
12606 16 11 22 エルサレムにおるレビびとの監督はウジである。ウジはバニの子、バニはハシャビヤの子、ハシャビヤはマッタニヤの子、マッタニヤはミカの子である。ミカは歌うたう者なるアサフの子孫である。ウジは神の宮のわざを監督した。
12607 16 11 23 彼らについては王からの命令があって、歌うたう者に日々の定まった分を与えさせた。
12608 16 11 24 またユダの子ゼラの子孫であるメシザベルの子ペタヒヤは王の手に属して民に関するすべての事を取り扱った。
12609 16 11 25 また村々とその田畑については、ユダの子孫の者はキリアテ・アルバとその村々、デボンとその村々、エカブジエルとその村々に住み、
12610 16 11 26 エシュア、モラダおよびベテペレテに住み、
12611 16 11 27 ハザル・シュアルおよびベエルシバとその村々に住み、
12612 16 11 28 チクラグおよびメコナとその村々に住み、
12613 16 11 29 エンリンモン、ザレア、ヤルムテに住み、
12614 16 11 30 ザノア、アドラムおよびそれらの村々、ラキシとその田野、アゼカとその村々に住んだ。こうして彼らはベエルシバからヒンノムの谷にまで宿営した。
12615 16 11 31 ベニヤミンの子孫はまたゲバからミクマシ、アヤおよびベテルとその村々に住み、
12616 16 11 32 アナトテ、ノブ、アナニヤ、
12617 16 11 33 ハゾル、ラマ、ギッタイム、
12618 16 11 34 ハデデ、ゼボイム、ネバラテ、
12619 16 11 35 ロド、オノ、工人の谷に住んだ。
12620 16 11 36 レビびとの組のユダにあるもののうちベニヤミンに合したものもあった。
12621 16 12 1 シャルテルの子ゼルバベルおよびエシュアと一緒に上ってきた祭司とレビびとは次のとおりである。すなわちセラヤ、エレミヤ、エズラ、
12622 16 12 2 アマリヤ、マルク、ハットシ、
12623 16 12 3 シカニヤ、レホム、メレモテ、
12624 16 12 4 イド、ギンネトイ、アビヤ、
12625 16 12 5 ミヤミン、マアデヤ、ビルガ、
12626 16 12 6 シマヤ、ヨヤリブ、エダヤ、
12627 16 12 7 サライ、アモク、ヒルキヤ、エダヤで、これらの者はエシュアの時代に祭司およびその兄弟らのかしらであった。
12628 16 12 8 レビびとではエシュア、ビンヌイ、カデミエル、セレビヤ、ユダ、マッタニヤで、マッタニヤはその兄弟らと共に感謝のことをつかさどった。
12629 16 12 9 また彼らの兄弟であるバグブキヤおよびウンノは彼らの向かいに立って勤めをした。
12630 16 12 10 エシュアの子はヨアキム、ヨアキムの子はエリアシブ、エリアシブの子はヨイアダ、
12631 16 12 11 ヨイアダの子はヨナタン、ヨナタンの子はヤドアである。
12632 16 12 12 ヨアキムの時代に祭司で氏族の長であった者はセラヤの氏族ではメラヤ、エレミヤの氏族ではハナニヤ、
12633 16 12 13 エズラの氏族ではメシュラム、アマリヤの氏族ではヨハナン、
12634 16 12 14 マルキの氏族ではヨナタン、シバニヤの氏族ではヨセフ、
12635 16 12 15 ハリムの氏族ではアデナ、メラヨテの氏族ではヘルカイ、
12636 16 12 16 イドの氏族ではゼカリヤ、ギンネトンの氏族ではメシュラム、
12637 16 12 17 アビヤの氏族ではジクリ、ミニヤミンの氏族、モアデヤの氏族ではピルタイ、
12638 16 12 18 ビルガの氏族ではシャンマ、シマヤの氏族ではヨナタン、
12639 16 12 19 ヨヤリブの氏族ではマッテナイ、エダヤの氏族ではウジ、
12640 16 12 20 サライの氏族ではカライ、アモクの氏族ではエベル、
12641 16 12 21 ヒルキヤの氏族ではハシャビヤ、エダヤの氏族ではネタンエルである。
12642 16 12 22 レビびとについては、エリアシブ、ヨイアダ、ヨハナンおよびヤドアの時代に、その氏族の長たちが登録された。また祭司たちもペルシャ王ダリヨスの治世まで登録された。
12643 16 12 23 レビの子孫で氏族の長たる者は、エリアシブの子ヨハナンの世まで歴代志の書にしるされている。
12644 16 12 24 レビびとのかしらはハシャビヤ、セレビヤおよびカデミエルの子エシュアであって、その兄弟たち相向かい合い、組と組と対応して神の人ダビデの命令に従い、さんびと感謝をささげた。
12645 16 12 25 マツタニヤ、バクブキヤ、オバデヤ、メシュラム、タルモンおよびアックブは門を守る者で門の内の倉を監督した。
12646 16 12 26 これらはヨザダクの子エシュアの子ヨアキムの時代、また総督ネヘミヤおよび学者である祭司エズラの時代にいた人々である。
12647 16 12 27 さてエルサレムの城壁の落成式に当って、レビびとを、そのすべての所から招いてエルサレムにこさせ、感謝と、歌と、シンバルと、立琴と、琴とをもって喜んで落成式を行おうとした。
12648 16 12 28 そこで、歌うたう人々はエルサレムの周囲の地方、ネトパびとの村々から集まってきた。
12649 16 12 29 またベテギルガルおよびゲバとアズマウテの地方からも集まってきた。この歌うたう者たちはエルサレムの周囲に自分の村々を建てていたからである。
12650 16 12 30 そして祭司とレビびとたちは身を清め、また民およびもろもろの門と城壁とを清めた。
12651 16 12 31 そこでわたしはユダのつかさたちを城壁の上にのぼらせ、また感謝する者の二つの大きな組を作って、行進させた。その一つは城壁の上を右に糞の門をさして進んだ。
12652 16 12 32 そのあとに従って進んだ者はホシャヤ、およびユダのつかさたちの半ば、
12653 16 12 33 ならびにアザリヤ、エズラ、メシュラム、
12654 16 12 34 ユダ、ベニヤミン、シマヤ、エレミヤであった。
12655 16 12 35 また数人の祭司がラッパをもって従った。すなわちヨナタンの子ゼカリヤ。ヨナタンはシマヤの子、シマヤはマッタニヤの子、マッタニヤはミカヤの子、ミカヤはザックルの子、ザックルはアサフの子である。
12656 16 12 36 またゼカリヤの兄弟たちシマヤ、アザリエル、ミラライ、ギラライ、マアイ、ネタンエル、ユダ、ハナニなどであって、神の人ダビデの楽器を持って従った。そして学者エズラは彼らの先に進んだ。
12657 16 12 37 彼らは泉の門を経て、まっすぐに進み、城壁の上り口で、ダビデの町の階段から上り、ダビデの家の上を過ぎて東の方、水の門に至った。
12658 16 12 38 他の一組の感謝する者は左に進んだ。わたしは民の半ばと共に彼らのあとに従った。そして城壁の上を行き、炉の望楼の上を過ぎて、城壁の広い所に至り、
12659 16 12 39 エフライムの門の上を通り、古い門を過ぎ、魚の門およびハナネルの望楼とハンメアの望楼を過ぎて、羊の門に至り、近衛の門に立ち止まった。
12660 16 12 40 こうして二組の感謝する者は神の宮にはいって立った。わたしもそこに立ち、つかさたちの半ばもわたしと共に立った。
12661 16 12 41 また祭司エリアキム、マアセヤ、ミニヤミン、ミカヤ、エリオエナイ、ゼカリヤ、ハナニヤらはラッパを持ち、
12662 16 12 42 マアセヤ、シマヤ、エレアザル、ウジ、ヨハナン、マルキヤ、エラムおよびエゼルも共にいた。そして歌うたう者たちは声高く歌った。エズラヒヤはその監督であった。
12663 16 12 43 こうして彼らはその日、大いなる犠牲をささげて喜んだ。神が彼らを大いに喜び楽しませられたからである。女子供までも喜んだ。それでエルサレムの喜びの声は遠くまで聞えた。
12664 16 12 44 その日、倉のもろもろのへやをつかさどる人々を選び、ささげ物、初物、十分の一など律法の定めるところの祭司およびレビびとの分を町々の田畑にしたがって取り集めて、へやに入れることをつかさどらせた。これは祭司およびレビびとの仕えるのを、ユダびとが喜んだからである。
12665 16 12 45 彼らはダビデおよびその子ソロモンの命令に従って、神の勤めおよび清め事の勤めをした。歌うたう者および門を守る者もそのように行った。
12666 16 12 46 昔ダビデおよびアサフの日には、歌うたう者のかしらがひとりいて、神にさんびと感謝をささげる事があった。
12667 16 12 47 またゼルバベルの日およびネヘミヤの日には、イスラエルびとはみな歌うたう者と門を守る者に日々の分を与え、またレビびとに物を聖別して与え、レビびとはまたこれを聖別してアロンの子孫に与えた。
12668 16 13 1 その日モーセの書を読んで民に聞かせたが、その中にアンモンびと、およびモアブびとは、いつまでも神の会に、はいってはならないとしるされているのを見いだした。
12669 16 13 2 これは彼らがかつて、パンと水をもってイスラエルの人々を迎えず、かえってこれをのろわせるためにバラムを雇ったからである。しかしわれわれの神はそののろいを変えて祝福とされた。
12670 16 13 3 人々はこの律法を聞いた時、混血の民をことごとくイスラエルから分け離した。
12671 16 13 4 これより先、われわれの神の宮のへやをつかさどっていた祭司エリアシブは、トビヤと縁組したので、
12672 16 13 5 トビヤのために大きなへやを備えた。そのへやはもと、素祭の物、乳香、器物および規定によってレビびと、歌うたう者および門を守る者たちに与える穀物、ぶどう酒、油の十分の一、ならびに祭司のためのささげ物を置いた所である。
12673 16 13 6 その当時、わたしはエルサレムにいなかった。わたしはバビロンの王アルタシャスタの三十二年に王の所へ行ったが、しばらくたって王にいとまを請い、
12674 16 13 7 エルサレムに来て、エリアシブがトビヤのためにした悪事、すなわち彼のために神の宮の庭に一つのへやを備えたことを発見した。
12675 16 13 8 わたしは非常に怒り、トビヤの家の器物をことごとくそのへやから投げだし、
12676 16 13 9 命じて、すべてのへやを清めさせ、そして神の宮の器物および素祭、乳香などを再びそこに携え入れた。
12677 16 13 10 わたしはまたレビびとがその受くべき分を与えられていなかったことを知った。これがためにその務をなすレビびとおよび歌うたう者たちは、おのおの自分の畑に逃げ帰った。
12678 16 13 11 それでわたしはつかさたちを責めて言った、「なぜ神の宮を捨てさせたのか」。そしてレビびとを招き集めて、その持ち場に復帰させた。
12679 16 13 12 そこでユダの人々は皆、穀物、ぶどう酒、油の十分の一を倉に携えてきた。
12680 16 13 13 わたしは祭司シレミヤ、学者ザドクおよびレビびとペダヤを倉のつかさとし、またマッタニヤの子ザックルの子ハナンをその助手として倉をつかさどらせた。彼らは忠実な者と思われたからである。彼らの任務は兄弟たちに分配する事であった。
12681 16 13 14 わが神よ、この事のためにわたしを覚えてください。わが神の宮とその勤めのためにわたしが行った良きわざをぬぐい去らないでください。
12682 16 13 15 そのころわたしはユダのうちで安息日に酒ぶねを踏む者、麦束を持ってきて、ろばに負わす者、またぶどう酒、ぶどう、いちじくおよびさまざまの荷を安息日にエルサレムに運び入れる者を見たので、わたしは彼らが食物を売っていたその日に彼らを戒めた。
12683 16 13 16 そこに住んでいたツロの人々もまた魚およびさまざまの品物を持ってきて、安息日にユダの人々に売り、エルサレムで商売した。
12684 16 13 17 そこでわたしはユダの尊い人々を責めて言った、「あなたがたはなぜこの悪事を行って、安息日を汚すのか。
12685 16 13 18 あなたがたの先祖も、このように行ったので、われわれの神はこのすべての災を、われわれとこの町に下されたではないか。ところがあなたがたは安息日を汚して、さらに大いなる怒りをイスラエルの上に招くのである」。
12686 16 13 19 そこで安息日の前に、エルサレムのもろもろの門が暗くなり始めた時、わたしは命じてそのとびらを閉じさせ、安息日が終るまでこれを開いてはならないと命じ、わたしのしもべ数人を門に置いて、安息日に荷を携え入れさせないようにした。
12687 16 13 20 これがために、商人およびさまざまの品物を売る者どもは一、二回エルサレムの外に宿った。
12688 16 13 21 わたしは彼らを戒めて言った、「あなたがたはなぜ城壁の前に宿るのか。もしあなたがたが重ねてそのようなことをするならば、わたしはあなたがたを処罰する」と。そのとき以来、彼らは安息日にはこなかった。
12689 16 13 22 わたしはまたレビびとに命じて、その身を清めさせ、来て門を守らせて、安息日を聖別した。わが神よ、わたしのためにまた、このことを覚え、あなたの大いなるいつくしみをもって、わたしをあわれんでください。
12690 16 13 23 そのころまた、わたしはアシドド、アンモン、モアブの女をめとったユダヤ人を見た。
12691 16 13 24 彼らの子供の半分はアシドドの言葉を語って、ユダヤの言葉を語ることができず、おのおのその母親の出た民の言葉を語った。
12692 16 13 25 わたしは彼らを責め、またののしり、そのうちの数人を撃って、その毛を抜き、神の名をさして誓わせて言った、「あなたがたは彼らのむすこに自分の娘を与えてはならない。またあなたがたのむすこ、またはあなたがた自身のために彼らの娘をめとってはならない。
12693 16 13 26 イスラエルの王ソロモンはこれらのことによって罪を犯したではないか。彼のような王は多くの国民のうちにもなく、神に愛せられた者である。神は彼をイスラエル全国の王とせられた。ところが異邦の女たちは彼に罪を犯させた。
12694 16 13 27 それゆえあなたがたが異邦の女をめとり、このすべての大いなる悪を行って、われわれの神に罪を犯すのを、われわれは聞き流しにしておけようか」。
12695 16 13 28 大祭司エリアシブの子ヨイアダのひとりの子はホロニびとサンバラテの婿であったので、わたしは彼をわたしのところから追い出した。
12696 16 13 29 わが神よ、彼らのことを覚えてください。彼らは祭司の職を汚し、また祭司およびレビびとの契約を汚しました。
12697 16 13 30 このように、わたしは彼らを清めて、異邦のものをことごとく捨てさせ、祭司およびレビびとの務を定めて、おのおのそのわざにつかせた。
12698 16 13 31 また定められた時に、たきぎの供え物をささげさせ、また初物をささげさせた。わが神よ、わたしを覚え、わたしをお恵みください。
12699 17 1 1 アハシュエロスすなわちインドからエチオピヤまで百二十七州を治めたアハシュエロスの世、
12700 17 1 2 アハシュエロス王が首都スサで、その国の位に座していたころ、
12701 17 1 3 その治世の第三年に、彼はその大臣および侍臣たちのために酒宴を設けた。ペルシャとメデアの将軍および貴族ならびに諸州の大臣たちがその前にいた。
12702 17 1 4 その時、王はその盛んな国の富と、その王威の輝きと、はなやかさを示して多くの日を重ね、百八十日に及んだ。
12703 17 1 5 これらの日が終った時、王は王の宮殿の園の庭で、首都スサにいる大小のすべての民のために七日の間、酒宴を設けた。
12704 17 1 6 そこには白綿布の垂幕と青色のとばりとがあって、紫色の細布のひもで銀の輪および大理石の柱につながれていた。また長いすは金銀で作られ、石膏と大理石と真珠貝および宝石の切りはめ細工の床の上に置かれていた。
12705 17 1 7 酒は金の杯で賜わり、その杯はそれぞれ違ったもので、王の大きな度量にふさわしく、王の用いる酒を惜しみなく賜わった。
12706 17 1 8 その飲むことは法にかない、だれもしいられることはなかった。これは王が人々におのおの自分の好むようにさせよと宮廷のすべての役人に命じておいたからである。
12707 17 1 9 王妃ワシテもまたアハシュエロス王に属する王宮の内で女たちのために酒宴を設けた。
12708 17 1 10 七日目にアハシュエロス王は酒のために心が楽しくなり、王の前に仕える七人の侍従メホマン、ビズタ、ハルボナ、ビグタ、アバグタ、ゼタルおよびカルカスに命じて、
12709 17 1 11 王妃ワシテに王妃の冠をかぶらせて王の前にこさせよと言った。これは彼女が美しかったので、その美しさを民らと大臣たちに見せるためであった。
12710 17 1 12 ところが、王妃ワシテは侍従が伝えた王の命令に従って来ることを拒んだので、王は大いに憤り、その怒りが彼の内に燃えた。
12711 17 1 13 そこで王は時を知っている知者に言った、――王はすべて法律と審判に通じている者に相談するのを常とした。
12712 17 1 14 時に王の次にいた人々はペルシャおよびメデアの七人の大臣カルシナ、セタル、アデマタ、タルシシ、メレス、マルセナ、メムカンであった。彼らは皆王の顔を見る者で、国の首位に座する人々であった――
12713 17 1 15 「王妃ワシテは、アハシュエロス王が侍従をもって伝えた命令を行わないゆえ、法律に従って彼女にどうしたらよかろうか」。
12714 17 1 16 メムカンは王と大臣たちの前で言った、「王妃ワシテはただ王にむかって悪い事をしたばかりでなく、すべての大臣およびアハシュエロス王の各州のすべての民にむかってもしたのです。
12715 17 1 17 王妃のこの行いはあまねくすべての女たちに聞えて、彼らはついにその目に夫を卑しめ、『アハシュエロス王は王妃ワシテに、彼の前に来るように命じたがこなかった』と言うでしょう。
12716 17 1 18 王妃のこの行いを聞いたペルシャとメデアの大臣の夫人たちもまた、今日、王のすべての大臣たちにこのように言うでしょう。そうすれば必ず卑しめと怒りが多く起ります。
12717 17 1 19 もし王がよしとされるならば、ワシテはこの後、再びアハシュエロス王の前にきてはならないという王の命令を下し、これをペルシャとメデアの法律の中に書きいれて変ることのないようにし、そして王妃の位を彼女にまさる他の者に与えなさい。
12718 17 1 20 王の下される詔がこの大きな国にあまねく告げ示されるとき、妻たる者はことごとく、その夫を高下の別なく共に敬うようになるでしょう」。
12719 17 1 21 王と大臣たちはこの言葉をよしとしたので、王はメムカンの言葉のとおりに行った。
12720 17 1 22 王は王の諸州にあまねく書を送り、各州にはその文字にしたがい、各民族にはその言語にしたがって書き送り、すべて男子たる者はその家の主となるべきこと、また自分の民の言語を用いて語るべきことをさとした。
12721 17 2 1 これらのことの後、アハシュエロス王の怒りがとけ、王はワシテおよび彼女のしたこと、また彼女に対して定めたことを思い起した。
12722 17 2 2 時に王に仕える侍臣たちは言った、「美しい若い処女たちを王のために尋ね求めましょう。
12723 17 2 3 どうぞ王はこの国の各州において役人を選び、美しい若い処女をことごとく首都スサにある婦人の居室に集めさせ、婦人をつかさどる王の侍従ヘガイの管理のもとにおいて、化粧のための品々を彼らに与えてください。
12724 17 2 4 こうして御意にかなうおとめをとって、ワシテの代りに王妃としてください」。王はこの事をよしとし、そのように行った。
12725 17 2 5 さて首都スサにひとりのユダヤ人がいた。名をモルデカイといい、キシのひこ、シメイの孫、ヤイルの子で、ベニヤミンびとであった。
12726 17 2 6 彼はバビロンの王ネブカデネザルが捕えていったユダの王エコニヤと共に捕えられていった捕虜のひとりで、エルサレムから捕え移された者である。
12727 17 2 7 彼はそのおじの娘ハダッサすなわちエステルを養い育てた。彼女には父も母もなかったからである。このおとめは美しく、かわいらしかったが、その父母の死後、モルデカイは彼女を引きとって自分の娘としたのである。
12728 17 2 8 王の命令と詔が伝えられ、多くのおとめが首都スサに集められて、ヘガイの管理のもとにおかれたとき、エステルもまた王宮に携え行かれ、婦人をつかさどるヘガイの管理のもとにおかれた。
12729 17 2 9 このおとめはヘガイの心にかなって、そのいつくしみを得た。すなわちヘガイはすみやかに彼女に化粧の品々および食物の分け前を与え、また宮中から七人のすぐれた侍女を選んで彼女に付き添わせ、彼女とその侍女たちを婦人の居室のうちの最も良い所に移した。
12730 17 2 10 エステルは自分の民のことをも、自分の同族のことをも人に知らせなかった。モルデカイがこれを知らすなと彼女に命じたからである。
12731 17 2 11 モルデカイはエステルの様子および彼女がどうしているかを知ろうと、毎日婦人の居室の庭の前を歩いた。
12732 17 2 12 おとめたちはおのおの婦人のための規定にしたがって十二か月を経て後、順番にアハシュエロス王の所へ行くのであった。これは彼らの化粧の期間として、没薬の油を用いること六か月、香料および婦人の化粧に使う品々を用いること六か月が定められていたからである。
12733 17 2 13 こうしておとめは王の所へ行くのであった。そしておとめが婦人の居室を出て王宮へ行く時には、すべてその望む物が与えられた。
12734 17 2 14 そして夕方行って、あくる朝第二の婦人の居室に帰り、そばめたちをつかさどる王の侍従シャシガズの管理に移された。王がその女を喜び、名ざして召すのでなければ、再び王の所へ行くことはなかった。
12735 17 2 15 さてモルデカイのおじアビハイルの娘、すなわちモルデカイが引きとって自分の娘としたエステルが王の所へ行く順番となったが、彼女は婦人をつかさどる王の侍従ヘガイが勧めた物のほか何をも求めなかった。エステルはすべて彼女を見る者に喜ばれた。
12736 17 2 16 エステルがアハシュエロス王に召されて王宮へ行ったのは、その治世の第七年の十月、すなわちテベテの月であった。
12737 17 2 17 王はすべての婦人にまさってエステルを愛したので、彼女はすべての処女にまさって王の前に恵みといつくしみとを得た。王はついに王妃の冠を彼女の頭にいただかせ、ワシテに代って王妃とした。
12738 17 2 18 そして王は大いなる酒宴を催して、すべての大臣と侍臣をもてなした。エステルの酒宴がこれである。また諸州に免税を行い、王の大きな度量にしたがって贈り物を与えた。
12739 17 2 19 二度目に処女たちが集められたとき、モルデカイは王の門にすわっていた。
12740 17 2 20 エステルはモルデカイが命じたように、まだ自分の同族のことをも自分の民のことをも人に知らせなかった。エステルはモルデカイの言葉に従うこと、彼に養い育てられた時と少しも変らなかった。
12741 17 2 21 そのころ、モルデカイが王の門にすわっていた時、王の侍従で、王のへやの戸を守る者のうちのビグタンとテレシのふたりが怒りのあまりアハシュエロス王を殺そうとねらっていたが、
12742 17 2 22 その事がモルデカイに知れたので、彼はこれを王妃エステルに告げ、エステルはこれをモルデカイの名をもって王に告げた。
12743 17 2 23 その事が調べられて、それに相違ないことがあらわれたので、彼らふたりは木にかけられた。この事は王の前で日誌の書にかきしるされた。
12744 17 3 1 これらの事の後、アハシュエロス王はアガグびとハンメダタの子ハマンを重んじ、これを昇進させて、自分と共にいるすべての大臣たちの上にその席を定めさせた。
12745 17 3 2 王の門の内にいる王の侍臣たちは皆ひざまずいてハマンに敬礼した。これは王が彼についてこうすることを命じたからである。しかしモルデカイはひざまずかず、また敬礼しなかった。
12746 17 3 3 そこで王の門にいる王の侍臣たちはモルデカイにむかって、「あなたはどうして王の命令にそむくのか」と言った。
12747 17 3 4 彼らは毎日モルデカイにこう言うけれども聞きいれなかったので、その事がゆるされるかどうかを見ようと、これをハマンに告げた。なぜならモルデカイはすでに自分のユダヤ人であることを彼らに語ったからである。
12748 17 3 5 ハマンはモルデカイのひざまずかず、また自分に敬礼しないのを見て怒りに満たされたが、
12749 17 3 6 ただモルデカイだけを殺すことを潔しとしなかった。彼らがモルデカイの属する民をハマンに知らせたので、ハマンはアハシュエロスの国のうちにいるすべてのユダヤ人、すなわちモルデカイの属する民をことごとく滅ぼそうと図った。
12750 17 3 7 アハシュエロス王の第十二年の正月すなわちニサンの月に、ハマンの前で、十二月すなわちアダルの月まで、一日一日のため、一月一月のために、プルすなわちくじを投げさせた。
12751 17 3 8 そしてハマンはアハシュエロス王に言った、「お国の各州にいる諸民のうちに、散らされて、別れ別れになっている一つの民がいます。その法律は他のすべての民のものと異なり、また彼らは王の法律を守りません。それゆえ彼らを許しておくことは王のためになりません。
12752 17 3 9 もし王がよしとされるならば、彼らを滅ぼせと詔をお書きください。そうすればわたしは王の事をつかさどる者たちの手に銀一万タラントを量りわたして、王の金庫に入れさせましょう」。
12753 17 3 10 そこで王は手から指輪をはずし、アガグびとハンメダタの子で、ユダヤ人の敵であるハマンにわたした。
12754 17 3 11 そして王はハマンに言った、「その銀はあなたに与える。その民もまたあなたに与えるから、よいと思うようにしなさい」。
12755 17 3 12 そこで正月の十三日に王の書記官が召し集められ、王の総督、各州の知事および諸民のつかさたちにハマンが命じたことをことごとく書きしるした。すなわち各州に送るものにはその文字を用い、諸民に送るものにはその言語を用い、おのおのアハシュエロス王の名をもってそれを書き、王の指輪をもってそれに印を押した。
12756 17 3 13 そして急使をもってその書を王の諸州に送り、十二月すなわちアダルの月の十三日に、一日のうちにすべてのユダヤ人を、若い者、老いた者、子供、女の別なく、ことごとく滅ぼし、殺し、絶やし、かつその貨財を奪い取れと命じた。
12757 17 3 14 この文書の写しを詔として各州に伝え、すべての民に公示して、その日のために備えさせようとした。
12758 17 3 15 急使は王の命令により急いで出ていった。この詔は首都スサで発布された。時に王とハマンは座して酒を飲んでいたが、スサの都はあわて惑った。
12759 17 4 1 モルデカイはすべてこのなされたことを知ったとき、その衣を裂き、荒布をまとい、灰をかぶり、町の中へ行って大声をあげ、激しく叫んで、
12760 17 4 2 王の門の入口まで行った。荒布をまとっては王の門の内にはいることができないからである。
12761 17 4 3 すべて王の命令と詔をうけ取った各州ではユダヤ人のうちに大いなる悲しみがあり、断食、嘆き、叫びが起り、また荒布をまとい、灰の上に座する者が多かった。
12762 17 4 4 エステルの侍女たちおよび侍従たちがきて、この事を告げたので、王妃は非常に悲しみ、モルデカイに着物を贈り、それを着せて、荒布を脱がせようとしたが受けなかった。
12763 17 4 5 そこでエステルは王の侍従のひとりで、王が自分にはべらせたハタクを召し、モルデカイのもとへ行って、それは何事であるか、何ゆえであるかを尋ねて来るようにと命じた。
12764 17 4 6 ハタクは出て、王の門の前にある町の広場にいるモルデカイのもとへ行くと、
12765 17 4 7 モルデカイは自分の身に起ったすべての事を彼に告げ、かつハマンがユダヤ人を滅ぼすことのために王の金庫に量り入れると約束した銀の正確な額を告げた。
12766 17 4 8 また彼らを滅ぼさせるために、スサで発布された詔書の写しを彼にわたし、それをエステルに見せ、かつ説きあかし、彼女が王のもとへ行ってその民のために王のあわれみを請い、王の前に願い求めるように彼女に言い伝えよと言った。
12767 17 4 9 ハタクが帰ってきてモルデカイの言葉をエステルに告げたので、
12768 17 4 10 エステルはハタクに命じ、モルデカイに言葉を伝えさせて言った、
12769 17 4 11 「王の侍臣および王の諸州の民は皆、男でも女でも、すべて召されないのに内庭にはいって王のもとへ行く者は、必ず殺されなければならないという一つの法律のあることを知っています。ただし王がその者に金の笏を伸べれば生きることができるのです。しかしわたしはこの三十日の間、王のもとへ行くべき召をこうむらないのです」。
12770 17 4 12 エステルの言葉をモルデカイに告げたので、
12771 17 4 13 モルデカイは命じてエステルに答えさせて言った、「あなたは王宮にいるゆえ、すべてのユダヤ人と異なり、難を免れるだろうと思ってはならない。
12772 17 4 14 あなたがもし、このような時に黙っているならば、ほかの所から、助けと救がユダヤ人のために起るでしょう。しかし、あなたとあなたの父の家とは滅びるでしょう。あなたがこの国に迎えられたのは、このような時のためでなかったとだれが知りましょう」。
12773 17 4 15 そこでエステルは命じてモルデカイに答えさせた、
12774 17 4 16 「あなたは行ってスサにいるすべてのユダヤ人を集め、わたしのために断食してください。三日のあいだ夜も昼も食い飲みしてはなりません。わたしとわたしの侍女たちも同様に断食しましょう。そしてわたしは法律にそむくことですが王のもとへ行きます。わたしがもし死なねばならないのなら、死にます」。
12775 17 4 17 モルデカイは行って、エステルがすべて自分に命じたとおりに行った。
12776 17 5 1 三日目にエステルは王妃の服を着、王宮の内庭に入り、王の広間にむかって立った。王は王宮の玉座に座して王宮の入口にむかっていたが、
12777 17 5 2 王妃エステルが庭に立っているのを見て彼女に恵みを示し、その手にある金の笏をエステルの方に伸ばしたので、エステルは進みよってその笏の頭にさわった。
12778 17 5 3 王は彼女に言った、「王妃エステルよ、何を求めるのか。あなたの願いは何か。国の半ばでもあなたに与えよう」。
12779 17 5 4 エステルは言った、「もし王がよしとされるならば、きょうわたしが王のために設けた酒宴に、ハマンとご一緒にお臨みください」。
12780 17 5 5 そこで王は「ハマンを速く連れてきて、エステルの言うようにせよ」と言い、やがて王とハマンはエステルの設けた酒宴に臨んだ。
12781 17 5 6 酒宴の時、王はエステルに言った、「あなたの求めることは何か。必ず聞かれる。あなたの願いは何か。国の半ばでも聞きとどけられる」。
12782 17 5 7 エステルは答えて言った、「わたしの求め、わたしの願いはこれです。
12783 17 5 8 もしわたしが王の目の前に恵みを得、また王がもしわたしの求めを許し、わたしの願いを聞きとどけるのをよしとされるならば、ハマンとご一緒に、あすまた、わたしが設けようとする酒宴に、お臨みください。わたしはあす王のお言葉どおりにいたしましょう」。
12784 17 5 9 こうしてハマンはその日、心に喜び楽しんで出てきたが、ハマンはモルデカイが王の門にいて、自分にむかって立ちあがりもせず、また身動きもしないのを見たので、モルデカイに対し怒りに満たされた。
12785 17 5 10 しかしハマンは耐え忍んで家に帰り、人をやってその友だちおよび妻ゼレシを呼んでこさせ、
12786 17 5 11 そしてハマンはその富の栄華と、そのむすこたちの多いことと、すべて王が自分を重んじられたこと、また王の大臣および侍臣たちにまさって自分を昇進させられたことを彼らに語った。
12787 17 5 12 ハマンはまた言った、「王妃エステルは酒宴を設けたが、わたしのほかはだれも王と共にこれに臨ませなかった。あすもまたわたしは王と共に王妃に招かれている。
12788 17 5 13 しかしユダヤ人モルデカイが王の門に座しているのを見る間は、これらの事もわたしには楽しくない」。
12789 17 5 14 その時、妻ゼレシとすべての友は彼に言った、「高さ五十キュビトの木を立てさせ、あすの朝、モルデカイをその上に掛けるように王に申し上げなさい。そして王と一緒に楽しんでその酒宴においでなさい」。ハマンはこの事をよしとして、その木を立てさせた。
12790 17 6 1 その夜、王は眠ることができなかったので、命じて日々の事をしるした記録の書を持ってこさせ、王の前で読ませたが、
12791 17 6 2 その中に、モルデカイがかつて王の侍従で、王のへやの戸を守る者のうちのビグタナとテレシのふたりが、アハシュエロス王を殺そうとねらっていることを告げた、としるされているのを見いだした。
12792 17 6 3 そこで王は言った、「この事のために、どんな栄誉と爵位をモルデカイに与えたか」。王に仕える侍臣たちは言った、「何も彼に与えていません」。
12793 17 6 4 王は言った、「庭にいるのはだれか」。この時ハマンはモルデカイのために設けた木にモルデカイを掛けることを王に申し上げようと王宮の外庭にはいってきていた。
12794 17 6 5 王の侍臣たちが「ハマンが庭に立っています」と王に言ったので、王は「ここへ、はいらせよ」と言った。
12795 17 6 6 やがてハマンがはいって来ると王は言った、「王が栄誉を与えようと思う人にはどうしたらよかろうか」。ハマンは心のうちに言った、「王はわたし以外にだれに栄誉を与えようと思われるだろうか」。
12796 17 6 7 ハマンは王に言った、「王が栄誉を与えようと思われる人のためには、
12797 17 6 8 王の着られた衣服を持ってこさせ、また王の乗られた馬、すなわちその頭に王冠をいただいた馬をひいてこさせ、
12798 17 6 9 その衣服と馬とを王の最も尊い大臣のひとりの手にわたして、王が栄誉を与えようと思われる人にその衣服を着させ、またその人を馬に乗せ、町の広場を導いて通らせ、『王が栄誉を与えようと思う人にはこうするのだ』とその前に呼ばわらせなさい」。
12799 17 6 10 それで王はハマンに言った、「急いであなたが言ったように、その衣服と馬とを取り寄せ、王の門に座しているユダヤ人モルデカイにそうしなさい。あなたが言ったことを一つも欠いてはならない」。
12800 17 6 11 そこでハマンは衣服と馬とを取り寄せ、モルデカイにその衣服を着せ、彼を馬に乗せて町の広場を通らせ、その前に呼ばわって、「王が栄誉を与えようと思う人にはこうするのだ」と言った。
12801 17 6 12 こうしてモルデカイは王の門に帰ってきたが、ハマンは憂え悩み、頭をおおって急いで家に帰った。
12802 17 6 13 そしてハマンは自分の身に起った事をことごとくその妻ゼレシと友だちに告げた。するとその知者たちおよび妻ゼレシは彼に言った、「あのモルデカイ、すなわちあなたがその人の前に敗れ始めた者が、もしユダヤ人の子孫であるならば、あなたは彼に勝つことはできない。必ず彼の前に敗れるでしょう」。
12803 17 6 14 彼らがなおハマンと話している時、王の侍従たちがきてハマンを促し、エステルが設けた酒宴に臨ませた。
12804 17 7 1 王とハマンは王妃エステルの酒宴に臨んだ。
12805 17 7 2 このふつか目の酒宴に王はまたエステルに言った、「王妃エステルよ、あなたの求めることは何か。必ず聞かれる。あなたの願いは何か。国の半ばでも聞きとどけられる」。
12806 17 7 3 王妃エステルは答えて言った、「王よ、もしわたしが王の目の前に恵みを得、また王がもしよしとされるならば、わたしの求めにしたがってわたしの命をわたしに与え、またわたしの願いにしたがってわたしの民をわたしに与えてください。
12807 17 7 4 わたしとわたしの民は売られて滅ぼされ、殺され、絶やされようとしています。もしわたしたちが男女の奴隷として売られただけなら、わたしは黙っていたでしょう。わたしたちの難儀は王の損失とは比較にならないからです」。
12808 17 7 5 アハシュエロス王は王妃エステルに言った、「そんな事をしようと心にたくらんでいる者はだれか。またどこにいるのか」。
12809 17 7 6 エステルは言った、「そのあだ、その敵はこの悪いハマンです」。そこでハマンは王と王妃の前に恐れおののいた。
12810 17 7 7 王は怒って酒宴の席を立ち、宮殿の園へ行ったが、ハマンは残って王妃エステルに命ごいをした。彼は王が自分に害を加えようと定めたのを見たからである。
12811 17 7 8 王が宮殿の園から酒宴の場所に帰ってみると、エステルのいた長いすの上にハマンが伏していたので、王は言った、「彼はまたわたしの家で、しかもわたしの前で王妃をはずかしめようとするのか」。この言葉が王の口から出たとき、人々は、ハマンの顔をおおった。
12812 17 7 9 その時、王に付き添っていたひとりの侍従ハルボナが「王のためによい事を告げたあのモルデカイのためにハマンが用意した高さ五十キュビトの木がハマンの家に立っています」と言ったので、王は「彼をそれに掛けよ」と言った。
12813 17 7 10 そこで人々はハマンをモルデカイのために備えてあったその木に掛けた。こうして王の怒りは和らいだ。
12814 17 8 1 その日アハシュエロス王は、ユダヤ人の敵ハマンの家を王妃エステルに与えた。モルデカイは王の前にきた。これはエステルが自分とモルデカイがどんな関係の者であるかを告げたからである。
12815 17 8 2 王はハマンから取り返した自分の指輪をはずして、モルデカイに与えた。エステルはモルデカイにハマンの家を管理させた。
12816 17 8 3 エステルは再び王の前に奏し、その足もとにひれ伏して、アガグびとハマンの陰謀すなわち彼がユダヤ人に対して企てたその計画を除くことを涙ながらに請い求めた。
12817 17 8 4 王はエステルにむかって金の笏を伸べたので、エステルは身を起して王の前に立ち、
12818 17 8 5 そして言った、「もし王がよしとされ、わたしが王の前に恵みを得、またこの事が王の前に正しいと見え、かつわたしが王の目にかなうならば、アガグびとハンメダタの子ハマンが王の諸州にいるユダヤ人を滅ぼそうとはかって書き送った書を取り消す旨を書かせてください。
12819 17 8 6 どうしてわたしは、わたしの民に臨もうとする災を、だまって見ていることができましょうか。どうしてわたしの同族の滅びるのを、だまって見ていることができましょうか」。
12820 17 8 7 アハシュエロス王は王妃エステルとユダヤ人モルデカイに言った、「ハマンがユダヤ人を殺そうとしたので、わたしはハマンの家をエステルに与え、またハマンを木に掛けさせた。
12821 17 8 8 あなたがたは自分たちの思うままに王の名をもってユダヤ人についての書をつくり、王の指輪をもってそれに印を押すがよい。王の名をもって書き、王の指輪をもって印を押した書はだれも取り消すことができない」。
12822 17 8 9 その時王の書記官が召し集められた。それは三月すなわちシワンの月の二十三日であった。そしてインドからエチオピヤまでの百二十七州にいる総督、諸州の知事および大臣たちに、モルデカイがユダヤ人について命じたとおりに書き送った。すなわち各州にはその文字を用い、各民族にはその言語を用いて書き送り、ユダヤ人に送るものにはその文字と言語とを用いた。
12823 17 8 10 その書はアハシュエロス王の名をもって書かれ、王の指輪をもって印を押し、王の御用馬として、そのうまやに育った早馬に乗る急使によって送られた。
12824 17 8 11 その中で、王はすべての町にいるユダヤ人に、彼らが相集まって自分たちの生命を保護し、自分たちを襲おうとする諸国、諸州のすべての武装した民を、その妻子もろともに滅ぼし、殺し、絶やし、かつその貨財を奪い取ることを許した。
12825 17 8 12 ただしこの事をアハシュエロス王の諸州において、十二月すなわちアダルの月の十三日に、一日のうちに行うことを命じた。
12826 17 8 13 この書いた物の写しを詔として各州に伝え、すべての民に公示して、ユダヤ人に、その日のために備えして、その敵にあだをかえさせようとした。
12827 17 8 14 王の御用馬である早馬に乗った急使は、王の命によって急がされ、せきたてられて出て行った。この詔は首都スサで出された。
12828 17 8 15 モルデカイは青と白の朝服を着、大きな金の冠をいただき、紫色の細布の上着をまとって王の前から出て行った。スサの町中、声をあげて喜んだ。
12829 17 8 16 ユダヤ人には光と喜びと楽しみと誉があった。
12830 17 8 17 いずれの州でも、いずれの町でも、すべて王の命令と詔の伝達された所では、ユダヤ人は喜び楽しみ、酒宴を開いてこの日を祝日とした。そしてこの国の民のうち多くの者がユダヤ人となった。これはユダヤ人を恐れる心が彼らのうちに起ったからである。
12831 17 9 1 十二月すなわちアダルの月の十三日、王の命令と詔の行われる時が近づいたとき、すなわちユダヤ人の敵が、ユダヤ人を打ち伏せようと望んでいたのに、かえってユダヤ人が自分たちを憎む者を打ち伏せることとなったその日に、
12832 17 9 2 ユダヤ人はアハシュエロス王の各州にある自分たちの町々に集まり、自分たちに害を加えようとする者を殺そうとしたが、だれもユダヤ人に逆らうことのできるものはなかった。すべての民がユダヤ人を恐れたからである。
12833 17 9 3 諸州の大臣、総督、知事および王の事をつかさどる者は皆ユダヤ人を助けた。彼らはモルデカイを恐れたからである。
12834 17 9 4 モルデカイは王の家で大いなる者となり、その名声は各州に聞えわたった。この人モルデカイがますます勢力ある者となったからである。
12835 17 9 5 そこでユダヤ人はつるぎをもってすべての敵を撃って殺し、滅ぼし、自分たちを憎む者に対し心のままに行った。
12836 17 9 6 ユダヤ人はまた首都スサにおいても五百人を殺し、滅ぼした。
12837 17 9 7 またパルシャンダタ、ダルポン、アスパタ、
12838 17 9 8 ポラタ、アダリヤ、アリダタ、
12839 17 9 9 パルマシタ、アリサイ、アリダイ、ワエザタ、
12840 17 9 10 すなわちハンメダタの子で、ユダヤ人の敵であるハマンの十人の子をも殺した。しかし、そのぶんどり物には手をかけなかった。
12841 17 9 11 その日、首都スサで殺された者の数が王に報告されると、
12842 17 9 12 王は王妃エステルに言った、「ユダヤ人は首都スサで五百人を殺し、またハマンの十人の子を殺した。王のその他の諸州ではどんなに彼らは殺したことであろう。さてあなたの求めることは何か。必ず聞かれる。更にあなたの願いは何か。必ず聞きとどけられる」。
12843 17 9 13 エステルは言った、「もし王がよしとされるならば、どうぞスサにいるユダヤ人にあすも、きょうの詔のように行うことをゆるしてください。かつハマンの十人の子を木に掛けさせてください」。
12844 17 9 14 王はそうせよと命じたので、スサにおいて詔が出て、ハマンの十人の子は木に掛けられた。
12845 17 9 15 アダルの月の十四日にまたスサにいるユダヤ人が集まり、スサで三百人を殺した。しかし、そのぶんどり物には手をかけなかった。
12846 17 9 16 王の諸州にいる他のユダヤ人もまた集まって、自分たちの生命を保護し、その敵に勝って平安を得、自分たちを憎む者七万五千人を殺した。しかし、そのぶんどり物には手をかけなかった。
12847 17 9 17 これはアダルの月の十三日であって、その十四日に休んで、その日を酒宴と喜びの日とした。
12848 17 9 18 しかしスサにいるユダヤ人は十三日と十四日に集まり、十五日に休んで、その日を酒宴と喜びの日とした。
12849 17 9 19 それゆえ村々のユダヤ人すなわち城壁のない町々に住む者はアダルの月の十四日を喜びの日、酒宴の日、祝日とし、互に食べ物を贈る日とした。
12850 17 9 20 モルデカイはこれらのことを書きしるしてアハシュエロス王の諸州にいるすべてのユダヤ人に、近い者にも遠い者にも書を送り、
12851 17 9 21 アダルの月の十四日と十五日とを年々祝うことを命じた。
12852 17 9 22 すなわちこの両日にユダヤ人がその敵に勝って平安を得、またこの月は彼らのために憂いから喜びに変り、悲しみから祝日に変ったので、これらを酒宴と喜びの日として、互に食べ物を贈り、貧しい者に施しをする日とせよとさとした。
12853 17 9 23 そこでユダヤ人は彼らがすでに始めたように、またモルデカイが彼らに書き送ったように、行うことを約束した。
12854 17 9 24 これはアガグびとハンメダタの子ハマン、すなわちすべてのユダヤ人の敵がユダヤ人を滅ぼそうとはかり、プルすなわちくじを投げて彼らを絶やし、滅ぼそうとしたが、
12855 17 9 25 エステルが王の前にきたとき、王は書を送って命じ、ハマンがユダヤ人に対して企てたその悪い計画をハマンの頭上に臨ませ、彼とその子らを木に掛けさせたからである。
12856 17 9 26 このゆえに、この両日をプルの名にしたがってプリムと名づけた。そしてこの書のすべての言葉により、またこの事について見たところ、自分たちの会ったところによって、
12857 17 9 27 ユダヤ人は相定め、年々その書かれているところにしたがい、その定められた時にしたがって、この両日を守り、自分たちと、その子孫およびすべて自分たちにつらなる者はこれを行い続けて廃することなく、
12858 17 9 28 この両日を、代々、家々、州々、町々において必ず覚えて守るべきものとし、これらのプリムの日がユダヤ人のうちに廃せられることのないようにし、またこの記念がその子孫の中に絶えることのないようにした。
12859 17 9 29 さらにアビハイルの娘である王妃エステルとユダヤ人モルデカイは、権威をもってこのプリムの第二の書を書き、それを確かめた。
12860 17 9 30 そしてアハシュエロスの国の百二十七州にいるすべてのユダヤ人に、平和と真実の言葉をもって書を送り、
12861 17 9 31 断食と悲しみのことについて、ユダヤ人モルデカイと王妃エステルが、かつてユダヤ人に命じたように、またユダヤ人たちが、かつて自分たちとその子孫のために定めたように、プリムのこれらの日をその定めた時に守らせた。
12862 17 9 32 エステルの命令はプリムに関するこれらの事を確定した。またこれは書にしるされた。
12863 17 10 1 アハシュエロス王はその国および海に沿った国々にみつぎを課した。
12864 17 10 2 彼の権力と勢力によるすべての事業、および王がモルデカイを高い地位にのぼらせた事の詳しい話はメデアとペルシャの王たちの日誌の書にしるされているではないか。
12865 17 10 3 ユダヤ人モルデカイはアハシュエロス王に次ぐ者となり、ユダヤ人の中にあって大いなる者となり、その多くの兄弟に喜ばれた。彼はその民の幸福を求め、すべての国民に平和を述べたからである。
12866 18 1 1 ウヅの地にヨブという名の人があった。そのひととなりは全く、かつ正しく、神を恐れ、悪に遠ざかった。
12867 18 1 2 彼に男の子七人と女の子三人があり、
12868 18 1 3 その家畜は羊七千頭、らくだ三千頭、牛五百くびき、雌ろば五百頭で、しもべも非常に多く、この人は東の人々のうちで最も大いなる者であった。
12869 18 1 4 そのむすこたちは、めいめい自分の日に、自分の家でふるまいを設け、その三人の姉妹をも招いて一緒に食い飲みするのを常とした。
12870 18 1 5 そのふるまいの日がひとめぐり終るごとに、ヨブは彼らを呼び寄せて聖別し、朝早く起きて、彼らすべての数にしたがって燔祭をささげた。これはヨブが「わたしのむすこたちは、ことによったら罪を犯し、その心に神をのろったかもしれない」と思ったからである。ヨブはいつも、このように行った。
12871 18 1 6 ある日、神の子たちが来て、主の前に立った。サタンも来てその中にいた。
12872 18 1 7 主は言われた、「あなたはどこから来たか」。サタンは主に答えて言った、「地を行きめぐり、あちらこちら歩いてきました」。
12873 18 1 8 主はサタンに言われた、「あなたはわたしのしもべヨブのように全く、かつ正しく、神を恐れ、悪に遠ざかる者の世にないことを気づいたか」。
12874 18 1 9 サタンは主に答えて言った、「ヨブはいたずらに神を恐れましょうか。
12875 18 1 10 あなたは彼とその家およびすべての所有物のまわりにくまなく、まがきを設けられたではありませんか。あなたは彼の勤労を祝福されたので、その家畜は地にふえたのです。
12876 18 1 11 しかし今あなたの手を伸べて、彼のすべての所有物を撃ってごらんなさい。彼は必ずあなたの顔に向かって、あなたをのろうでしょう」。
12877 18 1 12 主はサタンに言われた、「見よ、彼のすべての所有物をあなたの手にまかせる。ただ彼の身に手をつけてはならない」。サタンは主の前から出て行った。
12878 18 1 13 ある日ヨブのむすこ、娘たちが第一の兄の家で食事をし、酒を飲んでいたとき、
12879 18 1 14 使者がヨブのもとに来て言った、「牛が耕し、ろばがそのかたわらで草を食っていると、
12880 18 1 15 シバびとが襲ってきて、これを奪い、つるぎをもってしもべたちを打ち殺しました。わたしはただひとりのがれて、あなたに告げるために来ました」。
12881 18 1 16 彼がなお語っているうちに、またひとりが来て言った、「神の火が天から下って、羊およびしもべたちを焼き滅ぼしました。わたしはただひとりのがれて、あなたに告げるために来ました」。
12882 18 1 17 彼がなお語っているうちに、またひとりが来て言った、「カルデヤびとが三組に分れて来て、らくだを襲ってこれを奪い、つるぎをもってしもべたちを打ち殺しました。わたしはただひとりのがれて、あなたに告げるために来ました」。
12883 18 1 18 彼がなお語っているうちに、またひとりが来て言った、「あなたのむすこ、娘たちが第一の兄の家で食事をし、酒を飲んでいると、
12884 18 1 19 荒野の方から大風が吹いてきて、家の四すみを撃ったので、あの若い人たちの上につぶれ落ちて、皆死にました。わたしはただひとりのがれて、あなたに告げるために来ました」。
12885 18 1 20 このときヨブは起き上がり、上着を裂き、頭をそり、地に伏して拝し、
12886 18 1 21 そして言った、「わたしは裸で母の胎を出た。また裸でかしこに帰ろう。主が与え、主が取られたのだ。主のみ名はほむべきかな」。
12887 18 1 22 すべてこの事においてヨブは罪を犯さず、また神に向かって愚かなことを言わなかった。
12888 18 2 1 ある日、また神の子たちが来て、主の前に立った。サタンもまたその中に来て、主の前に立った。
12889 18 2 2 主はサタンに言われた、「あなたはどこから来たか」。サタンは主に答えて言った、「地を行きめぐり、あちらこちら歩いてきました」。
12890 18 2 3 主はサタンに言われた、「あなたは、わたしのしもべヨブのように全く、かつ正しく、神を恐れ、悪に遠ざかる者の世にないことを気づいたか。あなたは、わたしを勧めて、ゆえなく彼を滅ぼそうとしたが、彼はなお堅く保って、おのれを全うした」。
12891 18 2 4 サタンは主に答えて言った、「皮には皮をもってします。人は自分の命のために、その持っているすべての物をも与えます。
12892 18 2 5 しかしいま、あなたの手を伸べて、彼の骨と肉とを撃ってごらんなさい。彼は必ずあなたの顔に向かって、あなたをのろうでしょう」。
12893 18 2 6 主はサタンに言われた、「見よ、彼はあなたの手にある。ただ彼の命を助けよ」。
12894 18 2 7 サタンは主の前から出て行って、ヨブを撃ち、その足の裏から頭の頂まで、いやな腫物をもって彼を悩ました。
12895 18 2 8 ヨブは陶器の破片を取り、それで自分の身をかき、灰の中にすわった。
12896 18 2 9 時にその妻は彼に言った、「あなたはなおも堅く保って、自分を全うするのですか。神をのろって死になさい」。
12897 18 2 10 しかしヨブは彼女に言った、「あなたの語ることは愚かな女の語るのと同じだ。われわれは神から幸をうけるのだから、災をも、うけるべきではないか」。すべてこの事においてヨブはそのくちびるをもって罪を犯さなかった。
12898 18 2 11 時に、ヨブの三人の友がこのすべての災のヨブに臨んだのを聞いて、めいめい自分の所から尋ねて来た。すなわちテマンびとエリパズ、シュヒびとビルダデ、ナアマびとゾパルである。彼らはヨブをいたわり、慰めようとして、たがいに約束してきたのである。
12899 18 2 12 彼らは目をあげて遠方から見たが、彼のヨブであることを認めがたいほどであったので、声をあげて泣き、めいめい自分の上着を裂き、天に向かって、ちりをうちあげ、自分たちの頭の上にまき散らした。
12900 18 2 13 こうして七日七夜、彼と共に地に座していて、ひと言も彼に話しかける者がなかった。彼の苦しみの非常に大きいのを見たからである。
12901 18 3 1 この後、ヨブは口を開いて、自分の生れた日をのろった。
12902 18 3 2 すなわちヨブは言った、
12903 18 3 3 「わたしの生れた日は滅びうせよ。『男の子が、胎にやどった』と言った夜もそのようになれ。
12904 18 3 4 その日は暗くなるように。神が上からこれを顧みられないように。光がこれを照さないように。
12905 18 3 5 やみと暗黒がこれを取りもどすように。雲が、その上にとどまるように。日を暗くする者が、これを脅かすように。
12906 18 3 6 その夜は、暗やみが、これを捕えるように。年の日のうちに加わらないように。月の数にもはいらないように。
12907 18 3 7 また、その夜は、はらむことのないように。喜びの声がそのうちに聞かれないように。
12908 18 3 8 日をのろう者が、これをのろうように。レビヤタンを奮い起すに巧みな者が、これをのろうように。
12909 18 3 9 その明けの星は暗くなるように。光を望んでも、得られないように。また、あけぼののまぶたを見ることのないように。
12910 18 3 10 これは、わたしの母の胎の戸を閉じず、また悩みをわたしの目に隠さなかったからである。
12911 18 3 11 なにゆえ、わたしは胎から出て、死ななかったのか。腹から出たとき息が絶えなかったのか。
12912 18 3 12 なにゆえ、ひざが、わたしを受けたのか。なにゆえ、乳ぶさがあって、わたしはそれを吸ったのか。
12913 18 3 13 そうしなかったならば、わたしは伏して休み、眠ったであろう。そうすればわたしは安んじており、
12914 18 3 14 自分のために荒れ跡を築き直した地の王たち、参議たち、
12915 18 3 15 あるいは、こがねを持ち、しろがねを家に満たした君たちと一緒にいたであろう。
12916 18 3 16 なにゆえ、わたしは人知れずおりる胎児のごとく、光を見ないみどりごのようでなかったのか。
12917 18 3 17 かしこでは悪人も、あばれることをやめ、うみ疲れた者も、休みを得、
12918 18 3 18 捕われ人も共に安らかにおり、追い使う者の声を聞かない。
12919 18 3 19 小さい者も大きい者もそこにおり、奴隷も、その主人から解き放される。
12920 18 3 20 なにゆえ、悩む者に光を賜い、心の苦しむ者に命を賜わったのか。
12921 18 3 21 このような人は死を望んでも来ない、これを求めることは隠れた宝を掘るよりも、はなはだしい。
12922 18 3 22 彼らは墓を見いだすとき、非常に喜び楽しむのだ。
12923 18 3 23 なにゆえ、その道の隠された人に、神が、まがきをめぐらされた人に、光を賜わるのか。
12924 18 3 24 わたしの嘆きはわが食物に代って来り、わたしのうめきは水のように流れ出る。
12925 18 3 25 わたしの恐れるものが、わたしに臨み、わたしの恐れおののくものが、わが身に及ぶ。
12926 18 3 26 わたしは安らかでなく、またおだやかでない。わたしは休みを得ない、ただ悩みのみが来る」。
12927 18 4 1 その時、テマンびとエリパズが答えて言った、
12928 18 4 2 「もし人があなたにむかって意見を述べるならば、あなたは腹を立てるでしょうか。しかしだれが黙っておれましょう。
12929 18 4 3 見よ、あなたは多くの人を教えさとし、衰えた手を強くした。
12930 18 4 4 あなたの言葉はつまずく者をたすけ起し、かよわいひざを強くした。
12931 18 4 5 ところが今、この事があなたに臨むと、あなたは耐え得ない。この事があなたに触れると、あなたはおじ惑う。
12932 18 4 6 あなたが神を恐れていることは、あなたのよりどころではないか。あなたの道の全きことは、あなたの望みではないか。
12933 18 4 7 考えてみよ、だれが罪のないのに、滅ぼされた者があるか。どこに正しい者で、断ち滅ぼされた者があるか。
12934 18 4 8 わたしの見た所によれば、不義を耕し、害悪をまく者は、それを刈り取っている。
12935 18 4 9 彼らは神のいぶきによって滅び、その怒りの息によって消えうせる。
12936 18 4 10 ししのほえる声、たけきししの声はともにやみ、若きししのきばは折られ、
12937 18 4 11 雄じしは獲物を得ずに滅び、雌じしの子は散らされる。
12938 18 4 12 さて、わたしに、言葉がひそかに臨んだ、わたしの耳はそのささやきを聞いた。
12939 18 4 13 すなわち人の熟睡するころ、夜の幻によって思い乱れている時、
12940 18 4 14 恐れがわたしに臨んだので、おののき、わたしの骨はことごとく震えた。
12941 18 4 15 時に、霊があって、わたしの顔の前を過ぎたので、わたしの身の毛はよだった。
12942 18 4 16 そのものは立ちどまったが、わたしはその姿を見わけることができなかった。一つのかたちが、わたしの目の前にあった。わたしは静かな声を聞いた、
12943 18 4 17 『人は神の前に正しくありえようか。人はその造り主の前に清くありえようか。
12944 18 4 18 見よ、彼はそのしもべをさえ頼みとせず、その天使をも誤れる者とみなされる。
12945 18 4 19 まして、泥の家に住む者、ちりをその基とする者、しみのようにつぶされる者。
12946 18 4 20 彼らは朝から夕までの間に打ち砕かれ、顧みる者もなく、永遠に滅びる。
12947 18 4 21 もしその天幕の綱が彼らのうちに取り去られるなら、ついに悟ることもなく、死にうせるではないか』。
12948 18 5 1 試みに呼んでみよ、だれかあなたに答える者があるか。どの聖者にあなたは頼もうとするのか。
12949 18 5 2 確かに、憤りは愚かな者を殺し、ねたみはあさはかな者を死なせる。
12950 18 5 3 わたしは愚かな者の根を張るのを見た、しかしわたしは、にわかにそのすみかをのろった。
12951 18 5 4 その子らは安きを得ず、町の門でしえたげられても、これを救う者がない。
12952 18 5 5 その収穫は飢えた人が食べ、いばらの中からさえ、これを奪う。また、かわいた者はその財産をあえぎ求める。
12953 18 5 6 苦しみは、ちりから起るものでなく、悩みは土から生じるものでない。
12954 18 5 7 人が生れて悩みを受けるのは、火の子が上に飛ぶにひとしい。
12955 18 5 8 しかし、わたしであるならば、神に求め、神に、わたしの事をまかせる。
12956 18 5 9 彼は大いなる事をされるかたで、測り知れない、その不思議なみわざは数えがたい。
12957 18 5 10 彼は地に雨を降らせ、野に水を送られる。
12958 18 5 11 彼は低い者を高くあげ、悲しむ者を引き上げて、安全にされる。
12959 18 5 12 彼は悪賢い者の計りごとを敗られる。それで何事もその手になし遂げることはできない。
12960 18 5 13 彼は賢い者を、彼ら自身の悪巧みによって捕え、曲った者の計りごとをくつがえされる。
12961 18 5 14 彼らは昼も、やみに会い、真昼にも、夜のように手探りする。
12962 18 5 15 彼は貧しい者を彼らの口のつるぎから救い、また強い者の手から救われる。
12963 18 5 16 それゆえ乏しい者に望みがあり、不義はその口を閉じる。
12964 18 5 17 見よ、神に戒められる人はさいわいだ。それゆえ全能者の懲しめを軽んじてはならない。
12965 18 5 18 彼は傷つけ、また包み、撃ち、またその手をもっていやされる。
12966 18 5 19 彼はあなたを六つの悩みから救い、七つのうちでも、災はあなたに触れることがない。
12967 18 5 20 ききんの時には、あなたをあがなって、死を免れさせ、いくさの時には、つるぎの力を免れさせられる。
12968 18 5 21 あなたは舌をもってむち打たれる時にも、おおい隠され、滅びが来る時でも、恐れることはない。
12969 18 5 22 あなたは滅びと、ききんとを笑い、地の獣をも恐れることはない。
12970 18 5 23 あなたは野の石と契約を結び、野の獣はあなたと和らぐからである。
12971 18 5 24 あなたは自分の天幕の安全なことを知り、自分の家畜のおりを見回っても、欠けた物がなく、
12972 18 5 25 また、あなたの子孫の多くなり、そのすえが地の草のようになるのを知るであろう。
12973 18 5 26 あなたは高齢に達して墓に入る、あたかも麦束をその季節になって打ち場に運びあげるようになるであろう。
12974 18 5 27 見よ、われわれの尋ねきわめた所はこのとおりだ。あなたはこれを聞いて、みずから知るがよい」。
12975 18 6 1 ヨブは答えて言った、
12976 18 6 2 「どうかわたしの憤りが正しく量られ、同時にわたしの災も、はかりにかけられるように。
12977 18 6 3 そうすれば、これは海の砂よりも重いに相違ない。それゆえ、わたしの言葉が軽率であったのだ。
12978 18 6 4 全能者の矢が、わたしのうちにあり、わたしの霊はその毒を飲み、神の恐るべき軍勢が、わたしを襲い攻めている。
12979 18 6 5 野ろばは、青草のあるのに鳴くであろうか。牛は飼葉の上でうなるであろうか。
12980 18 6 6 味のない物は塩がなくて食べられようか。すべりひゆのしるは味があろうか。
12981 18 6 7 わたしの食欲はこれに触れることを拒む。これは、わたしのきらう食物のようだ。
12982 18 6 8 どうかわたしの求めるものが獲られるように。どうか神がわたしの望むものをくださるように。
12983 18 6 9 どうか神がわたしを打ち滅ぼすことをよしとし、み手を伸べてわたしを断たれるように。
12984 18 6 10 そうすれば、わたしはなお慰めを得、激しい苦しみの中にあっても喜ぶであろう。わたしは聖なる者の言葉を否んだことがないからだ。
12985 18 6 11 わたしにどんな力があって、なお待たねばならないのか。わたしにどんな終りがあるので、なお耐え忍ばねばならないのか。
12986 18 6 12 わたしの力は石の力のようであるのか。わたしの肉は青銅のようであるのか。
12987 18 6 13 まことに、わたしのうちに助けはなく、救われる望みは、わたしから追いやられた。
12988 18 6 14 その友に対するいつくしみをさし控える者は、全能者を恐れることをすてる。
12989 18 6 15 わが兄弟たちは谷川のように、過ぎ去る出水のように欺く。
12990 18 6 16 これは氷のために黒くなり、そのうちに雪が隠れる。
12991 18 6 17 これは暖かになると消え去り、暑くなるとその所からなくなる。
12992 18 6 18 隊商はその道を転じ、むなしい所へ行って滅びる。
12993 18 6 19 テマの隊商はこれを望み、シバの旅びとはこれを慕う。
12994 18 6 20 彼らはこれにたよったために失望し、そこに来てみて、あわてる。
12995 18 6 21 あなたがたは今わたしにはこのような者となった。あなたがたはわたしの災難を見て恐れた。
12996 18 6 22 わたしは言ったことがあるか、『わたしに与えよ』と、あるいは『あなたがたの財産のうちからわたしのために、まいないを贈れ』と、
12997 18 6 23 あるいは『あだの手からわたしを救い出せ』と、あるいは『しえたげる者の手からわたしをあがなえ』と。
12998 18 6 24 わたしに教えよ、そうすればわたしは黙るであろう。わたしの誤っている所をわたしに悟らせよ。
12999 18 6 25 正しい言葉はいかに力のあるものか。しかしあなたがたの戒めは何を戒めるのか。
13000 18 6 26 あなたがたは言葉を戒めうると思うのか。望みの絶えた者の語ることは風のようなものだ。
13001 18 6 27 あなたがたは、みなしごのためにくじをひき、あなたがたの友をさえ売り買いするであろう。
13002 18 6 28 今、どうぞわたしを見られよ、わたしはあなたがたの顔に向かって偽らない。
13003 18 6 29 どうぞ、思いなおせ、まちがってはならない。さらに思いなおせ、わたしの義は、なおわたしのうちにある。
13004 18 6 30 わたしの舌に不義があるか。わたしの口は災をわきまえることができぬであろうか。
13005 18 7 1 地上の人には、激しい労務があるではないか。またその日は雇人の日のようではないか。
13006 18 7 2 奴隷が夕暮を慕うように、雇人がその賃銀を望むように、
13007 18 7 3 わたしは、むなしい月を持たせられ、悩みの夜を与えられる。
13008 18 7 4 わたしは寝るときに言う、『いつ起きるだろうか』と。しかし夜は長く、暁までころびまわる。
13009 18 7 5 わたしの肉はうじと土くれとをまとい、わたしの皮は固まっては、またくずれる。
13010 18 7 6 わたしの日は機のひよりも速く、望みをもたずに消え去る。
13011 18 7 7 記憶せよ、わたしの命は息にすぎないことを。わたしの目は再び幸を見ることがない。
13012 18 7 8 わたしを見る者の目は、かさねてわたしを見ることがなく、あなたがわたしに目を向けられても、わたしはいない。
13013 18 7 9 雲が消えて、なくなるように、陰府に下る者は上がって来ることがない。
13014 18 7 10 彼は再びその家に帰らず、彼の所も、もはや彼を認めない。
13015 18 7 11 それゆえ、わたしはわが口をおさえず、わたしの霊のもだえによって語り、わたしの魂の苦しさによって嘆く。
13016 18 7 12 わたしは海であるのか、龍であるのか、あなたはわたしの上に見張りを置かれる。
13017 18 7 13 『わたしの床はわたしを慰め、わたしの寝床はわが嘆きを軽くする』とわたしが言うとき、
13018 18 7 14 あなたは夢をもってわたしを驚かし、幻をもってわたしを恐れさせられる。
13019 18 7 15 それゆえ、わたしは息の止まることを願い、わが骨よりもむしろ死を選ぶ。
13020 18 7 16 わたしは命をいとう。わたしは長く生きることを望まない。わたしに構わないでください。わたしの日は息にすぎないのだから。
13021 18 7 17 人は何者なので、あなたはこれを大きなものとし、これにみ心をとめ、
13022 18 7 18 朝ごとに、これを尋ね、絶え間なく、これを試みられるのか。
13023 18 7 19 いつまで、あなたはわたしに目を離さず、つばをのむまも、わたしを捨てておかれないのか。
13024 18 7 20 人を監視される者よ、わたしが罪を犯したとて、あなたに何をなしえようか。なにゆえ、わたしをあなたの的とし、わたしをあなたの重荷とされるのか。
13025 18 7 21 なにゆえ、わたしのとがをゆるさず、わたしの不義を除かれないのか。わたしはいま土の中に横たわる。あなたがわたしを尋ねられても、わたしはいないでしょう」。
13026 18 8 1 時にシュヒびとビルダデが答えて言った、
13027 18 8 2 「いつまであなたは、そのような事を言うのか。あなたの口の言葉は荒い風ではないか。
13028 18 8 3 神は公義を曲げられるであろうか。全能者は正義を曲げられるであろうか。
13029 18 8 4 あなたの子たちが彼に罪を犯したので、彼らをそのとがの手に渡されたのだ。
13030 18 8 5 あなたがもし神に求め、全能者に祈るならば、
13031 18 8 6 あなたがもし清く、正しくあるならば、彼は必ずあなたのために立って、あなたの正しいすみかを栄えさせられる。
13032 18 8 7 あなたの初めは小さくあっても、あなたの終りは非常に大きくなるであろう。
13033 18 8 8 先の代の人に問うてみよ、先祖たちの尋ねきわめた事を学べ。
13034 18 8 9 われわれはただ、きのうからあった者で、何も知らない、われわれの世にある日は、影のようなものである。
13035 18 8 10 彼らはあなたに教え、あなたに語り、その悟りから言葉を出さないであろうか。
13036 18 8 11 紙草は泥のない所に生長することができようか。葦は水のない所におい茂ることができようか。
13037 18 8 12 これはなお青くて、まだ刈られないのに、すべての草に先だって枯れる。
13038 18 8 13 すべて神を忘れる者の道はこのとおりだ。神を信じない者の望みは滅びる。
13039 18 8 14 その頼むところは断たれ、その寄るところは、くもの巣のようだ。
13040 18 8 15 その家によりかかろうとすれば、家は立たず、それにすがろうとしても、それは耐えない。
13041 18 8 16 彼は日の前に青々と茂り、その若枝を園にはびこらせ、
13042 18 8 17 その根を石塚にからませ、岩の間に生きていても、
13043 18 8 18 もしその所から取り除かれれば、その所は彼を拒んで言うであろう、『わたしはあなたを見たことがない』と。
13044 18 8 19 見よ、これこそ彼の道の喜びである、そしてほかの者が地から生じるであろう。
13045 18 8 20 見よ、神は全き人を捨てられない。また悪を行う者の手を支持されない。
13046 18 8 21 彼は笑いをもってあなたの口を満たし、喜びの声をもってあなたのくちびるを満たされる。
13047 18 8 22 あなたを憎む者は恥を着せられ、悪しき者の天幕はなくなる」。
13048 18 9 1 ヨブは答えて言った、
13049 18 9 2 「まことにわたしは、その事のそのとおりであることを知っている。しかし人はどうして神の前に正しくありえようか。
13050 18 9 3 よし彼と争おうとしても、千に一つも答えることができない。
13051 18 9 4 彼は心賢く、力強くあられる。だれが彼にむかい、おのれをかたくなにして、栄えた者があるか。
13052 18 9 5 彼は、山を移されるが、山は知らない。彼は怒りをもって、これらをくつがえされる。
13053 18 9 6 彼が、地を震い動かしてその所を離れさせられると、その柱はゆらぐ。
13054 18 9 7 彼が日に命じられると、日は出ない。彼はまた星を閉じこめられる。
13055 18 9 8 彼はただひとり天を張り、海の波を踏まれた。
13056 18 9 9 彼は北斗、オリオン、プレアデスおよび南の密室を造られた。
13057 18 9 10 彼が大いなる事をされることは測りがたく、不思議な事をされることは数知れない。
13058 18 9 11 見よ、彼がわたしのかたわらを通られても、わたしは彼を見ない。彼は進み行かれるが、わたしは彼を認めない。
13059 18 9 12 見よ、彼が奪い去られるのに、だれが彼をはばむことができるか。だれが彼にむかって『あなたは何をするのか』と言うことができるか。
13060 18 9 13 神はその怒りをやめられない。ラハブを助ける者どもは彼のもとにかがんだ。
13061 18 9 14 どうしてわたしは彼に答え、言葉を選んで、彼と議論することができよう。
13062 18 9 15 たといわたしは正しくても答えることができない。わたしを責められる者にあわれみを請わなければならない。
13063 18 9 16 たといわたしが呼ばわり、彼がわたしに答えられても、わたしの声に耳を傾けられたとは信じない。
13064 18 9 17 彼は大風をもってわたしを撃ち砕き、ゆえなく、わたしに多くの傷を負わせ、
13065 18 9 18 わたしに息をつかせず、苦い物をもってわたしを満たされる。
13066 18 9 19 力の争いであるならば、彼を見よ、さばきの事であるならば、だれが彼を呼び出すことができよう。
13067 18 9 20 たといわたしは正しくても、わたしの口はわたしを罪ある者とする。たといわたしは罪がなくても、彼はわたしを曲った者とする。
13068 18 9 21 わたしは罪がない、しかしわたしは自分を知らない。わたしは自分の命をいとう。
13069 18 9 22 皆同一である。それゆえ、わたしは言う、『彼は罪のない者と、悪しき者とを共に滅ぼされるのだ』と。
13070 18 9 23 災がにわかに人を殺すような事があると、彼は罪のない者の苦難をあざ笑われる。
13071 18 9 24 世は悪人の手に渡されてある。彼はその裁判人の顔をおおわれる。もし彼でなければ、これはだれのしわざか。
13072 18 9 25 わたしの日は飛脚よりも速く、飛び去って幸を見ない。
13073 18 9 26 これは走ること葦舟のごとく、えじきに襲いかかる、わしのようだ。
13074 18 9 27 たといわたしは『わが嘆きを忘れ、憂い顔をかえて元気よくなろう』と言っても、
13075 18 9 28 わたしはわがもろもろの苦しみを恐れる。あなたがわたしを罪なき者とされないことをわたしは知っているからだ。
13076 18 9 29 わたしは罪ある者とされている。どうして、いたずらに労する必要があるか。
13077 18 9 30 たといわたしは雪で身を洗い、灰汁で手を清めても、
13078 18 9 31 あなたはわたしを、みぞの中に投げ込まれるので、わたしの着物も、わたしをいとうようになる。
13079 18 9 32 神はわたしのように人ではないゆえ、わたしは彼に答えることができない。われわれは共にさばきに臨むことができない。
13080 18 9 33 われわれの間には、われわれふたりの上に手を置くべき仲裁者がない。
13081 18 9 34 どうか彼がそのつえをわたしから取り離し、その怒りをもって、わたしを恐れさせられないように。
13082 18 9 35 そうすれば、わたしは語って、彼を恐れることはない。わたしはみずからそのような者ではないからだ。
13083 18 10 1 わたしは自分の命をいとう。わたしは自分の嘆きを包まず言いあらわし、わが魂の苦しみによって語ろう。
13084 18 10 2 わたしは神に申そう、わたしを罪ある者とされないように。なぜわたしと争われるかを知らせてほしい。
13085 18 10 3 あなたはしえたげをなし、み手のわざを捨て、悪人の計画を照すことを良しとされるのか。
13086 18 10 4 あなたの持っておられるのは肉の目か、あなたは人が見るように見られるのか。
13087 18 10 5 あなたの日は人の日のごとく、あなたの年は人の年のようであるのか。
13088 18 10 6 あなたはなにゆえわたしのとがを尋ね、わたしの罪を調べられるのか。
13089 18 10 7 あなたはわたしの罪のないことを知っておられる。またあなたの手から救い出しうる者はない。
13090 18 10 8 あなたの手はわたしをかたどり、わたしを作った。ところが今あなたはかえって、わたしを滅ぼされる。
13091 18 10 9 どうぞ覚えてください、あなたは土くれをもってわたしを作られた事を。ところが、わたしをちりに返そうとされるのか。
13092 18 10 10 あなたはわたしを乳のように注ぎ、乾酪のように凝り固まらせたではないか。
13093 18 10 11 あなたは肉と皮とをわたしに着せ、骨と筋とをもってわたしを編み、
13094 18 10 12 命といつくしみとをわたしに授け、わたしを顧みてわが霊を守られた。
13095 18 10 13 しかしあなたはこれらの事をみ心に秘めおかれた。この事があなたの心のうちにあった事をわたしは知っている。
13096 18 10 14 わたしがもし罪を犯せば、あなたはわたしに目をつけて、わたしを罪から解き放されない。
13097 18 10 15 わたしがもし悪ければわたしはわざわいだ。たといわたしが正しくても、わたしは頭を上げることができない。わたしは恥に満ち、悩みを見ているからだ。
13098 18 10 16 もし頭をあげれば、あなたは、ししのようにわたしを追い、わたしにむかって再びくすしき力をあらわされる。
13099 18 10 17 あなたは証人を入れ替えてわたしを攻め、わたしにむかってあなたの怒りを増し、新たに軍勢を出してわたしを攻められる。
13100 18 10 18 なにゆえあなたはわたしを胎から出されたか、わたしは息絶えて目に見られることなく、
13101 18 10 19 胎から墓に運ばれて、初めからなかった者のようであったなら、よかったのに。
13102 18 10 20 わたしの命の日はいくばくもないではないか。どうぞ、しばしわたしを離れて、少しく慰めを得させられるように。
13103 18 10 21 わたしが行って、帰ることのないその前に、これを得させられるように。わたしは暗き地、暗黒の地へ行く。
13104 18 10 22 これは暗き地で、やみにひとしく、暗黒で秩序なく、光もやみのようだ」。
13105 18 11 1 そこでナアマびとゾパルは答えて言った、
13106 18 11 2 「言葉が多ければ、答なしにすまされるだろうか。口の達者な人は義とされるだろうか。
13107 18 11 3 あなたのむなしい言葉は人を沈黙させるだろうか。あなたがあざけるとき、人はあなたを恥じさせないだろうか。
13108 18 11 4 あなたは言う、『わたしの教は正しい、わたしは神の目に潔い』と。
13109 18 11 5 どうぞ神が言葉を出し、あなたにむかってくちびるを開き、
13110 18 11 6 知恵の秘密をあなたに示されるように。神はさまざまの知識をもたれるからである。それであなたは知るがよい、神はあなたの罪よりも軽くあなたを罰せられることを。
13111 18 11 7 あなたは神の深い事を窮めることができるか。全能者の限界を窮めることができるか。
13112 18 11 8 それは天よりも高い、あなたは何をなしうるか。それは陰府よりも深い、あなたは何を知りうるか。
13113 18 11 9 その量は地よりも長く、海よりも広い。
13114 18 11 10 彼がもし行きめぐって人を捕え、さばきに召し集められるとき、だれが彼をはばむことができよう。
13115 18 11 11 彼は卑しい人間を知っておられるからだ。彼は不義を見る時、これに心をとめられぬであろうか。
13116 18 11 12 しかし野ろばの子が人として生れるとき、愚かな者も悟りを得るであろう。
13117 18 11 13 もしあなたが心を正しくするならば、神に向かって手を伸べるであろう。
13118 18 11 14 もしあなたの手に不義があるなら、それを遠く去れ、あなたの天幕に悪を住まわせてはならない。
13119 18 11 15 そうすれば、あなたは恥じることなく顔をあげることができ、堅く立って、恐れることはない。
13120 18 11 16 あなたは苦しみを忘れ、あなたのこれを覚えることは、流れ去った水のようになる。
13121 18 11 17 そしてあなたの命は真昼よりも光り輝き、たとい暗くても朝のようになる。
13122 18 11 18 あなたは望みがあるゆえに安んじ、保護されて安らかにいこうことができる。
13123 18 11 19 あなたは伏してやすみ、あなたを恐れさせるものはない。多くの者はあなたの好意を求めるであろう。
13124 18 11 20 しかし悪しき者の目は衰える。彼らは逃げ場を失い、その望みは息の絶えるにひとしい」。
13125 18 12 1 そこでヨブは答えて言った、
13126 18 12 2 「まことに、あなたがたのみ、人である、知恵はあなたがたと共に死ぬであろう。
13127 18 12 3 しかしわたしも、あなたがたと同様に悟りをもつ。わたしはあなたがたに劣らない。だれがこのような事を知らないだろうか。
13128 18 12 4 わたしは神に呼ばわって、聞かれた者であるのに、その友の物笑いとなっている。正しく全き人は物笑いとなる。
13129 18 12 5 安らかな者の思いには、不幸な者に対する侮りがあって、足のすべる者を待っている。
13130 18 12 6 かすめ奪う者の天幕は栄え、神を怒らす者は安らかである。自分の手に神を携えている者も同様だ。
13131 18 12 7 しかし獣に問うてみよ、それはあなたに教える。空の鳥に問うてみよ、それはあなたに告げる。
13132 18 12 8 あるいは地の草や木に問うてみよ、彼らはあなたに教える。海の魚もまたあなたに示す。
13133 18 12 9 これらすべてのもののうち、いずれか主の手がこれをなしたことを知らぬ者があろうか。
13134 18 12 10 すべての生き物の命、およびすべての人の息は彼の手のうちにある。
13135 18 12 11 口が食物を味わうように、耳は言葉をわきまえないであろうか。
13136 18 12 12 老いた者には知恵があり、命の長い者には悟りがある。
13137 18 12 13 知恵と力は神と共にあり、深慮と悟りも彼のものである。
13138 18 12 14 彼が破壊すれば、再び建てることができない。彼が人を閉じ込めれば、開き出すことができない。
13139 18 12 15 彼が水を止めれば、それはかれ、彼が水を出せば、地をくつがえす。
13140 18 12 16 力と深き知恵は彼と共にあり、惑わされる者も惑わす者も彼のものである。
13141 18 12 17 彼は議士たちを裸にして連れ行き、さばきびとらを愚かにし、
13142 18 12 18 王たちのきずなを解き、彼らの腰に腰帯を巻き、
13143 18 12 19 祭司たちを裸にして連れ行き、力ある者を滅ぼし、
13144 18 12 20 みずから頼む者たちの言葉を奪い、長老たちの分別を取り去り、
13145 18 12 21 君たちの上に侮りを注ぎ、強い者たちの帯を解き、
13146 18 12 22 暗やみの中から隠れた事どもをあらわし、暗黒を光に引き出し、
13147 18 12 23 国々を大きくし、またこれを滅ぼし、国々を広くし、また捕え行き、
13148 18 12 24 地の民の長たちの悟りを奪い、彼らを道なき荒野にさまよわせ、
13149 18 12 25 光なき暗やみに手探りさせ、酔うた者のようによろめかせる。
13150 18 13 1 見よ、わたしの目は、これをことごとく見た。わたしの耳はこれを聞いて悟った。
13151 18 13 2 あなたがたの知っている事は、わたしも知っている。わたしはあなたがたに劣らない。
13152 18 13 3 しかしわたしは全能者に物を言おう、わたしは神と論ずることを望む。
13153 18 13 4 あなたがたは偽りをもってうわべを繕う者、皆、無用の医師だ。
13154 18 13 5 どうか、あなたがたは全く沈黙するように。これがあなたがたの知恵であろう。
13155 18 13 6 今、わたしの論ずることを聞くがよい。わたしの口で言い争うことに耳を傾けるがよい。
13156 18 13 7 あなたがたは神のために不義を言おうとするのか。また彼のために偽りを述べるのか。
13157 18 13 8 あなたがたは彼にひいきしようとするのか。神のために争おうとするのか。
13158 18 13 9 神があなたがたを調べられるとき、あなたがたは無事だろうか。あなたがたは人を欺くように彼を欺くことができるか。
13159 18 13 10 あなたがたがもし、ひそかにひいきするならば、彼は必ずあなたがたを責められる。
13160 18 13 11 その威厳はあなたがたを恐れさせないであろうか。彼をおそれる恐れがあなたがたに臨まないであろうか。
13161 18 13 12 あなたがたの格言は灰のことわざだ。あなたがたの盾は土の盾だ。
13162 18 13 13 黙して、わたしにかかわるな、わたしは話そう。何事でもわたしに来るなら、来るがよい。
13163 18 13 14 わたしはわが肉をわが歯に取り、わが命をわが手のうちに置く。
13164 18 13 15 見よ、彼はわたしを殺すであろう。わたしは絶望だ。しかしなおわたしはわたしの道を彼の前に守り抜こう。
13165 18 13 16 これこそわたしの救となる。神を信じない者は、神の前に出ることができないからだ。
13166 18 13 17 あなたがたはよくわたしの言葉を聞き、わたしの述べる所を耳に入れよ。
13167 18 13 18 見よ、わたしはすでにわたしの立ち場を言い並べた。わたしは義とされることをみずから知っている。
13168 18 13 19 だれかわたしと言い争う事のできる者があろうか。もしあるならば、わたしは黙して死ぬであろう。
13169 18 13 20 ただわたしに二つの事を許してください。そうすれば、わたしはあなたの顔をさけて隠れることはないでしょう。
13170 18 13 21 あなたの手をわたしから離してください。あなたの恐るべき事をもってわたしを恐れさせないでください。
13171 18 13 22 そしてお呼びください、わたしは答えます。わたしに物を言わせて、あなたご自身、わたしにお答えください。
13172 18 13 23 わたしのよこしまと、わたしの罪がどれほどあるか。わたしのとがと罪とをわたしに知らせてください。
13173 18 13 24 なにゆえ、あなたはみ顔をかくし、わたしをあなたの敵とされるのか。
13174 18 13 25 あなたは吹き回される木の葉をおどし、干あがったもみがらを追われるのか。
13175 18 13 26 あなたはわたしについて苦き事どもを書きしるし、わたしに若い時の罪を継がせ、
13176 18 13 27 わたしの足を足かせにはめ、わたしのすべての道をうかがい、わたしの足の周囲に限りをつけられる。
13177 18 13 28 このような人は腐れた物のように朽ち果て、虫に食われた衣服のようにすたれる。
13178 18 14 1 女から生れる人は日が短く、悩みに満ちている。
13179 18 14 2 彼は花のように咲き出て枯れ、影のように飛び去って、とどまらない。
13180 18 14 3 あなたはこのような者にさえ目を開き、あなたの前に引き出して、さばかれるであろうか。
13181 18 14 4 だれが汚れたもののうちから清いものを出すことができようか、ひとりもない。
13182 18 14 5 その日は定められ、その月の数もあなたと共にあり、あなたがその限りを定めて、越えることのできないようにされたのだから、
13183 18 14 6 彼から目をはなし、手をひいてください。そうすれば彼は雇人のように、その日を楽しむことができるでしょう。
13184 18 14 7 木には望みがある。たとい切られてもまた芽をだし、その若枝は絶えることがない。
13185 18 14 8 たといその根が地の中に老い、その幹が土の中に枯れても、
13186 18 14 9 なお水の潤いにあえば芽をふき、若木のように枝を出す。
13187 18 14 10 しかし人は死ねば消えうせる。息が絶えれば、どこにおるか。
13188 18 14 11 水が湖から消え、川がかれて、かわくように、
13189 18 14 12 人は伏して寝、また起きず、天のつきるまで、目ざめず、その眠りからさまされない。
13190 18 14 13 どうぞ、わたしを陰府にかくし、あなたの怒りのやむまで、潜ませ、わたしのために時を定めて、わたしを覚えてください。
13191 18 14 14 人がもし死ねば、また生きるでしょうか。わたしはわが服役の諸日の間、わが解放の来るまで待つでしょう。
13192 18 14 15 あなたがお呼びになるとき、わたしは答えるでしょう。あなたはみ手のわざを顧みられるでしょう。
13193 18 14 16 その時あなたはわたしの歩みを数え、わたしの罪を見のがされるでしょう。
13194 18 14 17 わたしのとがは袋の中に封じられ、あなたはわたしの罪を塗りかくされるでしょう。
13195 18 14 18 しかし山は倒れてくずれ、岩もその所から移される。
13196 18 14 19 水は石をうがち、大水は地のちりを洗い去る。このようにあなたは人の望みを断たれる。
13197 18 14 20 あなたはながく彼に勝って、彼を去り行かせ、彼の顔かたちを変らせて追いやられる。
13198 18 14 21 彼の子らは尊くなっても、彼はそれを知らない、卑しくなっても、それを悟らない。
13199 18 14 22 ただおのが身に痛みを覚え、おのれのために嘆くのみである」。
13200 18 15 1 そこでテマンびとエリパズは答えて言った、
13201 18 15 2 「知者はむなしき知識をもって答えるであろうか。東風をもってその腹を満たすであろうか。
13202 18 15 3 役に立たない談話をもって論じるであろうか。無益な言葉をもって争うであろうか。
13203 18 15 4 ところがあなたは神を恐れることを捨て、神の前に祈る事をやめている。
13204 18 15 5 あなたの罪はあなたの口を教え、あなたは悪賢い人の舌を選び用いる。
13205 18 15 6 あなたの口みずからあなたの罪を定める、わたしではない。あなたのくちびるがあなたに逆らって証明する。
13206 18 15 7 あなたは最初に生れた人であるのか。山よりも先に生れたのか。
13207 18 15 8 あなたは神の会議にあずかったのか。あなたは知恵を独占しているのか。
13208 18 15 9 あなたが知るものはわれわれも知るではないか。あなたが悟るものはわれわれも悟るではないか。
13209 18 15 10 われわれの中にはしらがの人も、年老いた人もあって、あなたの父よりも年上だ。
13210 18 15 11 神の慰めおよびあなたに対するやさしい言葉も、あなたにとって、あまりに小さいというのか。
13211 18 15 12 どうしてあなたの心は狂うのか。どうしてあなたの目はしばたたくのか。
13212 18 15 13 あなたが神にむかって気をいらだて、このような言葉をあなたの口から出すのはなぜか。
13213 18 15 14 人はいかなる者か、どうしてこれは清くありえよう。女から生れた者は、どうして正しくありえよう。
13214 18 15 15 見よ、神はその聖なる者にすら信を置かれない、もろもろの天も彼の目には清くない。
13215 18 15 16 まして憎むべき汚れた者、また不義を水のように飲む人においては。
13216 18 15 17 わたしはあなたに語ろう、聞くがよい。わたしは自分の見た事を述べよう。
13217 18 15 18 これは知者たちがその先祖からうけて、隠す所なく語り伝えたものである。
13218 18 15 19 彼らにのみこの地は授けられて、他国人はその中に行き来したことがなかった。
13219 18 15 20 悪しき人は一生の間、もだえ苦しむ。残酷な人には年の数が定められている。
13220 18 15 21 その耳には恐ろしい音が聞え、繁栄の時にも滅ぼす者が彼に臨む。
13221 18 15 22 彼は、暗やみから帰りうるとは信ぜず、つるぎにねらわれる。
13222 18 15 23 彼は食物はどこにあるかと言いつつさまよい、暗き日が手近に備えられてあるのを知る。
13223 18 15 24 悩みと苦しみとが彼を恐れさせ、戦いの備えをした王のように彼に打ち勝つ。
13224 18 15 25 これは彼が神に逆らってその手を伸べ、全能者に逆らって高慢にふるまい、
13225 18 15 26 盾の厚い面をもって強情に、彼にはせ向かうからだ。
13226 18 15 27 また彼は脂肪をもってその顔をおおい、その腰には脂肪の肉を集め、
13227 18 15 28 滅ぼされた町々に住み、人の住まない家、荒塚となる所におるからだ。
13228 18 15 29 彼は富める者とならず、その富はながく続かない、また地に根を張ることはない。
13229 18 15 30 彼は暗やみからのがれることができない。炎はその若枝を枯らし、その花は風に吹き去られる。
13230 18 15 31 彼をしてみずから欺いて、むなしい事にたよらせてはならない。その報いはむなしいからだ。
13231 18 15 32 彼の時のこない前にその事がなし遂げられ、彼の枝は緑とならないであろう。
13232 18 15 33 彼はぶどうの木のように、その熟さない実をふり落すであろう。またオリブの木のように、その花を落すであろう。
13233 18 15 34 神を信じない者のやからは子なく、まいないによる天幕は火で焼き滅ぼされるからだ。
13234 18 15 35 彼らは害悪をはらみ、不義を生み、その腹は偽りをつくる」。
13235 18 16 1 そこでヨブは答えて言った、
13236 18 16 2 「わたしはこのような事を数多く聞いた。あなたがたは皆人を慰めようとして、かえって人を煩わす者だ。
13237 18 16 3 むなしき言葉に、はてしがあろうか。あなたは何に激して答をするのか。
13238 18 16 4 わたしもあなたがたのように語ることができる。もしあなたがたがわたしと代ったならば、わたしは言葉を練って、あなたがたを攻め、あなたがたに向かって頭を振ることができる。
13239 18 16 5 また口をもって、あなたがたを強くし、くちびるの慰めをもって、あなたがたの苦しみを和らげることができる。
13240 18 16 6 たといわたしは語っても、わたしの苦しみは和らげられない。たといわたしは忍んでも、どれほどそれがわたしを去るであろうか。
13241 18 16 7 まことに神は今わたしを疲れさせた。彼はわたしのやからをことごとく荒した。
13242 18 16 8 彼はわたしを、しわ寄らせた。これがわたしに対する証拠である。またわたしのやせ衰えた姿が立って、わたしを攻め、わたしの顔にむかって証明する。
13243 18 16 9 彼は怒ってわたしをかき裂き、わたしを憎み、わたしに向かって歯をかみ鳴らした。わたしの敵は目を鋭くして、わたしを攻める。
13244 18 16 10 人々はわたしに向かって口を張り、侮ってわたしのほおを打ち、ともに集まってわたしを攻める。
13245 18 16 11 神はわたしをよこしまな者に渡し、悪人の手に投げいれられる。
13246 18 16 12 わたしは安らかであったのに、彼はわたしを切り裂き、首を捕えて、わたしを打ち砕き、わたしを立てて的とされた。
13247 18 16 13 その射手はわたしを囲む。彼は無慈悲にもわたしの腰を射通し、わたしの肝を地に流れ出させられる。
13248 18 16 14 彼はわたしを打ち破って、破れに破れを加え、勇士のようにわたしに、はせかかられる。
13249 18 16 15 わたしは荒布を膚に縫いつけ、わたしの角をちりに伏せた。
13250 18 16 16 わたしの顔は泣いて赤くなり、わたしのまぶたには深いやみがある。
13251 18 16 17 しかし、わたしの手には暴虐がなく、わたしの祈は清い。
13252 18 16 18 地よ、わたしの血をおおってくれるな。わたしの叫びに、休む所を得させるな。
13253 18 16 19 見よ、今でもわたしの証人は天にある。わたしのために保証してくれる者は高い所にある。
13254 18 16 20 わたしの友はわたしをあざける、しかしわたしの目は神に向かって涙を注ぐ。
13255 18 16 21 どうか彼が人のために神と弁論し、人とその友との間をさばいてくれるように。
13256 18 16 22 数年過ぎ去れば、わたしは帰らぬ旅路に行くであろう。
13257 18 17 1 わが霊は破れ、わが日は尽き、墓はわたしを待っている。
13258 18 17 2 まことにあざける者どもはわたしのまわりにあり、わが目は常に彼らの侮りを見る。
13259 18 17 3 どうか、あなた自ら保証となられるように。ほかにだれがわたしのために保証となってくれる者があろうか。
13260 18 17 4 あなたは彼らの心を閉じて、悟ることのないようにされた。それゆえ、彼らに勝利を得させられるはずはない。
13261 18 17 5 分け前を得るために友を訴えるものは、その子らの目がつぶれるであろう。
13262 18 17 6 彼はわたしを民の笑い草とされた。わたしは顔につばきされる者となる。
13263 18 17 7 わが目は憂いによってかすみ、わがからだはすべて影のようだ。
13264 18 17 8 正しい者はこれに驚き、罪なき者は神を信ぜぬ者に対して憤る。
13265 18 17 9 それでもなお正しい者はその道を堅く保ち、潔い手をもつ者はますます力を得る。
13266 18 17 10 しかし、あなたがたは皆再び来るがよい、わたしはあなたがたのうちに賢い者を見ないのだ。
13267 18 17 11 わが日は過ぎ去り、わが計りごとは敗れ、わが心の願いも敗れた。
13268 18 17 12 彼らは夜を昼に変える。彼らは言う、『光が暗やみに近づいている』と。
13269 18 17 13 わたしがもし陰府をわたしの家として望み、暗やみに寝床をのべ、
13270 18 17 14 穴に向かって『あなたはわたしの父である』と言い、うじに向かって『あなたはわたしの母、わたしの姉妹である』と言うならば、
13271 18 17 15 わたしの望みはどこにあるか、だれがわたしの望みを見ることができようか。
13272 18 17 16 これは下って陰府の関門にいたり、われわれは共にちりに下るであろうか」。
13273 18 18 1 そこでシュヒびとビルダデは答えて言った、
13274 18 18 2 「あなたはいつまで言葉にわなを設けるのか。あなたはまず悟るがよい、それからわれわれは論じよう。
13275 18 18 3 なぜ、われわれは獣のように思われるのか。なぜ、あなたの目に愚かな者と見えるのか。
13276 18 18 4 怒っておのが身を裂く者よ、あなたのために地は捨てられるだろうか。岩はその所から移されるだろうか。
13277 18 18 5 悪しき者の光は消え、その火の炎は光を放たず、
13278 18 18 6 その天幕のうちの光は暗く、彼の上のともしびは消える。
13279 18 18 7 その力ある歩みはせばめられ、その計りごとは彼を倒す。
13280 18 18 8 彼は自分の足で網にかかり、また落し穴の上を歩む。
13281 18 18 9 わなは彼のかかとを捕え、網わなは彼を捕える。
13282 18 18 10 輪なわは彼を捕えるために地に隠され、張り網は彼を捕えるために道に設けられる。
13283 18 18 11 恐ろしい事が四方にあって彼を恐れさせ、その歩みにしたがって彼を追う。
13284 18 18 12 その力は飢え、災は彼をつまずかすために備わっている。
13285 18 18 13 その皮膚は病によって食いつくされ、死のういごは彼の手足を食いつくす。
13286 18 18 14 彼はその頼む所の天幕から引き離されて、恐れの王のもとに追いやられる。
13287 18 18 15 彼に属さない者が彼の天幕に住み、硫黄が彼のすまいの上にまき散らされる。
13288 18 18 16 下ではその根が枯れ、上ではその枝が切られる。
13289 18 18 17 彼の形見は地から滅び、彼の名はちまたに消える。
13290 18 18 18 彼は光からやみに追いやられ、世の中から追い出される。
13291 18 18 19 彼はその民の中に子もなく、孫もなく、彼のすみかには、ひとりも生き残る者はない。
13292 18 18 20 西の者は彼の日について驚き、東の者はおじ恐れる。
13293 18 18 21 まことに、悪しき者のすまいはこのようであり、神を知らない者の所はこのようである」。
13294 18 19 1 そこでヨブは答えて言った、
13295 18 19 2 「あなたがたはいつまでわたしを悩まし、言葉をもってわたしを打ち砕くのか。
13296 18 19 3 あなたがたはすでに十度もわたしをはずかしめ、わたしを悪くあしらってもなお恥じないのか。
13297 18 19 4 たといわたしが、まことにあやまったとしても、そのあやまちは、わたし自身にとどまる。
13298 18 19 5 もしあなたがたが、まことにわたしに向かって高ぶり、わたしの恥を論じるならば、
13299 18 19 6 『神がわたしをしえたげ、その網でわたしを囲まれたのだ』と知るべきだ。
13300 18 19 7 見よ、わたしが『暴虐』と叫んでも答えられず、助けを呼び求めても、さばきはない。
13301 18 19 8 彼はわたしの道にかきをめぐらして、越えることのできないようにし、わたしの行く道に暗やみを置かれた。
13302 18 19 9 彼はわたしの栄えをわたしからはぎ取り、わたしのこうべから冠を奪い、
13303 18 19 10 四方からわたしを取りこわして、うせさせ、わたしの望みを木のように抜き去り、
13304 18 19 11 わたしに向かって怒りを燃やし、わたしを敵のひとりのように思われた。
13305 18 19 13 彼はわたしの兄弟たちをわたしから遠く離れさせられた。わたしを知る人々は全くわたしに疎遠になった。
13306 18 19 14 わたしの親類および親しい友はわたしを見捨て、
13307 18 19 15 わたしの家に宿る者はわたしを忘れ、わたしのはしためらはわたしを他人のように思い、わたしは彼らの目に他国人となった。
13308 18 19 16 わたしがしもべを呼んでも、彼は答えず、わたしは口をもって彼に請わなければならない。
13309 18 19 17 わたしの息はわが妻にいとわれ、わたしは同じ腹の子たちにきらわれる。
13310 18 19 18 わらべたちさえもわたしを侮り、わたしが起き上がれば、わたしをあざける。
13311 18 19 19 親しい人々は皆わたしをいみきらい、わたしの愛した人々はわたしにそむいた。
13312 18 19 20 わたしの骨は皮と肉につき、わたしはわずかに歯の皮をもってのがれた。
13313 18 19 21 わが友よ、わたしをあわれめ、わたしをあわれめ、神のみ手がわたしを打ったからである。
13314 18 19 22 あなたがたは、なにゆえ神のようにわたしを責め、わたしの肉をもって満足しないのか。
13315 18 19 23 どうか、わたしの言葉が、書きとめられるように。どうか、わたしの言葉が、書物にしるされるように。
13316 18 19 24 鉄の筆と鉛とをもって、ながく岩に刻みつけられるように。
13317 18 19 25 わたしは知る、わたしをあがなう者は生きておられる、後の日に彼は必ず地の上に立たれる。
13318 18 19 26 わたしの皮がこのように滅ぼされたのち、わたしは肉を離れて神を見るであろう。
13319 18 19 27 しかもわたしの味方として見るであろう。わたしの見る者はこれ以外のものではない。わたしの心はこれを望んでこがれる。
13320 18 19 28 あなたがたがもし『われわれはどうして彼を責めようか』と言い、また『事の根源は彼のうちに見いだされる』と言うならば、
13321 18 19 29 つるぎを恐れよ、怒りはつるぎの罰をきたらすからだ。これによって、あなたがたは、さばきのあることを知るであろう」。
13322 18 20 1 そこでナアマびとゾパルは答えて言った、
13323 18 20 2 「これによって、わたしは答えようとの思いを起し、これがために心中しきりに騒ぎ立つ。
13324 18 20 3 わたしはわたしをはずかしめる非難を聞く、しかし、わたしの悟りの霊がわたしに答えさせる。
13325 18 20 4 あなたはこの事を知らないのか、昔から地の上に人の置かれてよりこのかた、
13326 18 20 5 悪しき人の勝ち誇はしばらくであって、神を信じない者の楽しみはただつかのまであることを。
13327 18 20 6 たといその高さが天に達し、その頭が雲におよんでも、
13328 18 20 7 彼はおのれの糞のように、とこしえに滅び、彼を見た者は言うであろう、『彼はどこにおるか』と。
13329 18 20 8 彼は夢のように飛び去って、再び見ることはない。彼は夜の幻のように追い払われるであろう。
13330 18 20 9 彼を見た目はかさねて彼を見ることがなく、彼のいた所も再び彼を見ることがなかろう。
13331 18 20 10 その子らは貧しい者に恵みを求め、その手は彼の貨財を償うであろう。
13332 18 20 11 その骨には若い力が満ちている、しかしそれは彼と共にちりに伏すであろう。
13333 18 20 12 たとい悪は彼の口に甘く、これを舌の裏にかくし、
13334 18 20 13 これを惜しんで捨てることなく、口の中に含んでいても、
13335 18 20 14 その食物は彼の腹の中で変り、彼の内で毒蛇の毒となる。
13336 18 20 15 彼は貨財をのんでも、またそれを吐き出す、神がそれを彼の腹から押し出されるからだ。
13337 18 20 16 彼は毒蛇の毒を吸い、まむしの舌は彼を殺すであろう。
13338 18 20 17 彼は蜜と凝乳の流れる川々を見ることができない。
13339 18 20 18 彼はほねおって獲たものを返して、それを食うことができない。その商いによって得た利益をもって楽しむことができない。
13340 18 20 19 彼が貧しい者をしえたげ、これを捨てたからだ。彼は家を奪い取っても、それを建てることができない。
13341 18 20 20 彼の欲張りは足ることを知らぬゆえ、その楽しむ何物をも救うことができないであろう。
13342 18 20 21 彼が残して食べなかった物とては一つもない。それゆえ、その繁栄はながく続かないであろう。
13343 18 20 22 その力の満ちている時、彼は窮境に陥り、悩みの手がことごとく彼の上に臨むであろう。
13344 18 20 23 彼がその腹を満たそうとすれば、神はその激しい怒りを送って、それを彼の上に降り注ぎ、彼の食物とされる。
13345 18 20 24 彼は鉄の武器を免れても、青銅の矢は彼を射通すであろう。
13346 18 20 25 彼がこれをその身から引き抜けば、きらめく矢じりがその肝から出てきて、恐れが彼の上に臨む。
13347 18 20 26 もろもろの暗黒が彼の宝物のためにたくわえられ、人が吹き起したものでない火が彼を焼きつくし、その天幕に残っている者を滅ぼすであろう。
13348 18 20 27 天は彼の罪をあらわし、地は起って彼を攻めるであろう。
13349 18 20 28 その家の財産は奪い去られ、神の怒りの日に消えうせるであろう。
13350 18 20 29 これが悪しき人の神から受ける分、神によって定められた嗣業である」。
13351 18 21 1 そこでヨブは答えて言った、
13352 18 21 2 「あなたがたはとくと、わたしの言葉を聞き、これをもって、あなたがたの慰めとするがよい。
13353 18 21 3 まずわたしをゆるして語らせなさい。わたしが語ったのち、あざけるのもよかろう。
13354 18 21 4 わたしのつぶやきは人に対してであろうか。わたしはどうして、いらだたないでいられようか。
13355 18 21 5 あなたがたはわたしを見て、驚き、手を口にあてるがよい。
13356 18 21 6 わたしはこれを思うと恐ろしくなって、からだがしきりに震えわななく。
13357 18 21 7 なにゆえ悪しき人が生きながらえ、老齢に達し、かつ力強くなるのか。
13358 18 21 8 その子らは彼らの前に堅く立ち、その子孫もその目の前に堅く立つ。
13359 18 21 9 その家は安らかで、恐れがなく、神のつえは彼らの上に臨むことがない。
13360 18 21 10 その雄牛は種を与えて、誤ることなく、その雌牛は子を産んで、そこなうことがない。
13361 18 21 11 彼らはその小さい者どもを群れのように連れ出し、その子らは舞い踊る。
13362 18 21 12 彼らは手鼓と琴に合わせて歌い、笛の音によって楽しみ、
13363 18 21 13 その日をさいわいに過ごし、安らかに陰府にくだる。
13364 18 21 14 彼らは神に言う、『われわれを離れよ、われわれはあなたの道を知ることを好まない。
13365 18 21 15 全能者は何者なので、われわれはこれに仕えねばならないのか。われわれはこれに祈っても、なんの益があるか』と。
13366 18 21 16 見よ、彼らの繁栄は彼らの手にあるではないか。悪人の計りごとは、わたしの遠く及ぶ所でない。
13367 18 21 17 悪人のともしびの消されること、幾たびあるか。その災の彼らの上に臨むこと、神がその怒りをもって苦しみを与えられること、幾たびあるか。
13368 18 21 18 彼らが風の前のわらのようになること、あらしに吹き去られるもみがらのようになること、幾たびあるか。
13369 18 21 19 あなたがたは言う、『神は彼らの罪を積みたくわえて、その子らに報いられるのだ』と。どうかそれを彼ら自身に報いて、彼らにその罪を知らせられるように。
13370 18 21 20 すなわち彼ら自身の目にその滅びを見させ、全能者の怒りを彼らに飲ませられるように。
13371 18 21 21 その月の数のつきるとき、彼らはその後の家になんのかかわる所があろうか。
13372 18 21 22 神は天にある者たちをさえ、さばかれるのに、だれが神に知識を教えることができようか。
13373 18 21 23 ある者は繁栄をきわめ、全く安らかに、かつおだやかに死に、
13374 18 21 24 そのからだには脂肪が満ち、その骨の髄は潤っている。
13375 18 21 25 ある者は心を苦しめて死に、なんの幸をも味わうことがない。
13376 18 21 26 彼らはひとしくちりに伏し、うじにおおわれる。
13377 18 21 27 見よ、わたしはあなたがたの思いを知り、わたしを害しようとするたくらみを知る。
13378 18 21 28 あなたがたは言う、『王侯の家はどこにあるか、悪人の住む天幕はどこにあるか』と。
13379 18 21 29 あなたがたは道行く人々に問わなかったか、彼らの証言を受け入れないのか。
13380 18 21 30 すなわち、災の日に悪人は免れ、激しい怒りの日に彼は救い出される。
13381 18 21 31 だれが彼に向かって、その道を告げ知らせる者があるか、だれが彼のした事を彼に報いる者があるか。
13382 18 21 32 彼はかかれて墓に行き、塚の上で見張りされ、
13383 18 21 33 谷の土くれも彼には快く、すべての人はそのあとに従う。彼の前に行った者も数えきれない。
13384 18 21 34 それで、あなたがたはどうしてむなしい事をもって、わたしを慰めようとするのか。あなたがたの答は偽り以外の何ものでもない」。
13385 18 22 1 そこでテマンびとエリパズは答えて言った、
13386 18 22 2 「人は神を益することができるであろうか。賢い人も、ただ自身を益するのみである。
13387 18 22 3 あなたが正しくても、全能者になんの喜びがあろう。あなたが自分の道を全うしても、彼になんの利益があろう。
13388 18 22 4 神はあなたが神を恐れることのゆえに、あなたを責め、あなたをさばかれるであろうか。
13389 18 22 5 あなたの悪は大きいではないか。あなたの罪は、はてしがない。
13390 18 22 6 あなたはゆえなく兄弟のものを質にとり、裸な者の着物をはぎ取り、
13391 18 22 7 疲れた者に水を飲ませず、飢えた者に食物を与えなかった。
13392 18 22 8 力ある人は土地を得、名ある人はそのうちに住んだ。
13393 18 22 9 あなたは、やもめをむなしく去らせた。みなしごの腕は折られた。
13394 18 22 10 それゆえ、わなはあなたをめぐり、恐怖は、にわかにあなたを驚かす。
13395 18 22 11 あなたの光は暗くされ、あなたは見ることができない。大水はあなたをおおうであろう。
13396 18 22 12 神は天に高くおられるではないか。見よ、いと高き星を。いかに高いことよ。
13397 18 22 13 それであなたは言う、『神は何を知っておられるか。彼は黒雲を通して、さばくことができるのか。
13398 18 22 14 濃い雲が彼をおおい隠すと、彼は見ることができない。彼は天の大空を歩まれるのだ』と。
13399 18 22 15 あなたは悪しき人々が踏んだいにしえの道を守ろうとするのか。
13400 18 22 16 彼らは時がこないうちに取り去られ、その基は川のように押し流された。
13401 18 22 17 彼らは神に言った、『われわれを離れてください』と、また『全能者はわれわれに何をなしえようか』と。
13402 18 22 18 しかし神は彼らの家を良い物で満たされた。ただし悪人の計りごとはわたしのくみする所ではない。
13403 18 22 19 正しい者はこれを見て喜び、罪なき者は彼らをあざ笑って言う、
13404 18 22 20 『まことにわれわれのあだは滅ぼされ、その残した物は火で焼き滅ぼされた』と。
13405 18 22 21 あなたは神と和らいで、平安を得るがよい。そうすれば幸福があなたに来るでしょう。
13406 18 22 22 どうか、彼の口から教を受け、その言葉をあなたの心におさめるように。
13407 18 22 23 あなたがもし全能者に立ち返って、おのれを低くし、あなたの天幕から不義を除き去り、
13408 18 22 24 こがねをちりの中に置き、オフルのこがねを谷川の石の中に置き、
13409 18 22 25 全能者があなたのこがねとなり、あなたの貴重なしろがねとなるならば、
13410 18 22 26 その時、あなたは全能者を喜び、神に向かって顔をあげることができる。
13411 18 22 27 あなたが彼に祈るならば、彼はあなたに聞かれる。そしてあなたは自分の誓いを果す。
13412 18 22 28 あなたが事をなそうと定めるならば、あなたはその事を成就し、あなたの道には光が輝く。
13413 18 22 29 彼は高ぶる者を低くされるが、へりくだる者を救われるからだ。
13414 18 22 30 彼は罪のない者を救われる。あなたはその手の潔いことによって、救われるであろう」。
13415 18 23 1 そこでヨブは答えて言った、
13416 18 23 2 「きょうもまた、わたしのつぶやきは激しく、彼の手はわたしの嘆きにかかわらず、重い。
13417 18 23 3 どうか、彼を尋ねてどこで会えるかを知り、そのみ座に至ることができるように。
13418 18 23 4 わたしは彼の前にわたしの訴えをならべ、口をきわめて論議するであろう。
13419 18 23 5 わたしは、わたしに答えられるみ言葉を知り、わたしに言われる所を悟ろう。
13420 18 23 6 彼は大いなる力をもって、わたしと争われるであろうか、いな、かえってわたしを顧みられるであろう。
13421 18 23 7 かしこでは正しい人は彼と言い争うことができる。そうすれば、わたしはわたしをさばく者から永久に救われるであろう。
13422 18 23 8 見よ、わたしが進んでも、彼を見ない。退いても、彼を認めることができない。
13423 18 23 9 左の方に尋ねても、会うことができない。右の方に向かっても、見ることができない。
13424 18 23 10 しかし彼はわたしの歩む道を知っておられる。彼がわたしを試みられるとき、わたしは金のように出て来るであろう。
13425 18 23 11 わたしの足は彼の歩みに堅く従った。わたしは彼の道を守って離れなかった。
13426 18 23 12 わたしは彼のくちびるの命令にそむかず、その口の言葉をわたしの胸にたくわえた。
13427 18 23 13 しかし彼は変ることはない。だれが彼をひるがえすことができようか。彼はその心の欲するところを行われるのだ。
13428 18 23 14 彼はわたしのために定めた事をなし遂げられる。そしてこのような事が多く彼の心にある。
13429 18 23 15 それゆえ、わたしは彼の前におののく。わたしは考えるとき、彼を恐れる。
13430 18 23 16 神はわたしの心を弱くされた。全能者はわたしを恐れさせられた。
13431 18 23 17 わたしは、やみによって閉じこめられ、暗黒がわたしの顔をおおっている。
13432 18 24 1 なにゆえ、全能者はさばきの時を定めておかれないのか。なにゆえ、彼を知る者がその日を見ないのか。
13433 18 24 2 世には地境を移す者、群れを奪ってそれを飼う者、
13434 18 24 3 みなしごのろばを追いやる者、やもめの牛を質に取る者、
13435 18 24 4 貧しい者を道から押しのける者がある。世の弱い者は皆彼らをさけて身をかくす。
13436 18 24 5 見よ、彼らは荒野におる野ろばのように出て働き、野で獲物を求めて、その子らの食物とする。
13437 18 24 6 彼らは畑でそのまぐさを刈り、また悪人のぶどう畑で拾い集める。
13438 18 24 7 彼らは着る物がなく、裸で夜を過ごし、寒さに身をおおうべき物もない。
13439 18 24 8 彼らは山の雨にぬれ、しのぎ場もなく岩にすがる。
13440 18 24 9 (みなしごをその母のふところから奪い、貧しい者の幼な子を質にとる者がある。)
13441 18 24 10 彼らは着る物がなく、裸で歩き、飢えつつ麦束を運び、
13442 18 24 11 悪人のオリブ並み木の中で油をしぼり、酒ぶねを踏んでも、かわきを覚える。
13443 18 24 12 町の中から死のうめきが起り、傷ついた者の魂が助けを呼び求める。しかし神は彼らの祈を顧みられない。
13444 18 24 13 光にそむく者たちがある。彼らは光の道を知らず、光の道にとどまらない。
13445 18 24 14 人を殺す者は暗いうちに起き出て弱い者と貧しい者を殺し、夜は盗びととなる。
13446 18 24 15 姦淫する者の目はたそがれを待って、『だれもわたしを見ていないだろう』と言い、顔におおう物を当てる。
13447 18 24 16 彼らは暗やみで家をうがち、昼は閉じこもって光を知らない。
13448 18 24 17 彼らには暗黒は朝である。彼らは暗黒の恐れを友とするからだ。
13449 18 24 18 あなたがたは言う、『彼らは水のおもてにすみやかに流れ去り、その受ける分は地でのろわれ、酒ぶねを踏む者はだれも彼らのぶどう畑の道に行かない。
13450 18 24 19 ひでりと熱さは雪水を奪い去る、陰府が罪を犯した者に対するも、これと同様だ。
13451 18 24 20 町の広場は彼らを忘れ、彼らの名は覚えられることなく、不義は木の折られるように折られる』と。
13452 18 24 21 彼らは子を産まぬうまずめをくらい、やもめをあわれむことをしない。
13453 18 24 22 しかし神はその力をもって、強い人々を生きながらえさせられる。彼らは生きる望みのない時にも起きあがる。
13454 18 24 23 神が彼らに安全を与えられるので、彼らは安らかである。神の目は彼らの道の上にある。
13455 18 24 24 彼らはしばし高められて、いなくなり、ぜにあおいのように枯れて消えうせ、麦の穂先のように切り取られる。
13456 18 24 25 もし、そうでないなら、だれがわたしにその偽りを証明し、わが言葉のむなしいことを示しうるだろうか」。
13457 18 25 1 そこでシュヒびとビルダデは答えて言った、
13458 18 25 2 「大権と恐れとは神と共にある。彼は高き所で平和を施される。
13459 18 25 3 その軍勢は数えることができるか。何物かその光に浴さないものがあるか。
13460 18 25 4 それで人はどうして神の前に正しくありえようか。女から生れた者がどうして清くありえようか。
13461 18 25 5 見よ、月さえも輝かず、星も彼の目には清くない。
13462 18 25 6 うじのような人、虫のような人の子はなおさらである」。
13463 18 26 1 そこでヨブは答えて言った、
13464 18 26 2 「あなたは力のない者をどれほど助けたかしれない。気力のない腕をどれほど救ったかしれない。
13465 18 26 3 知恵のない者をどれほど教えたかしれない。悟りをどれほど多く示したかしれない。
13466 18 26 4 あなたはだれの助けによって言葉をだしたのか。あなたから出たのはだれの霊なのか。
13467 18 26 5 亡霊は水およびその中に住むものの下に震う。
13468 18 26 6 神の前では陰府も裸である。滅びの穴もおおい隠すものはない。
13469 18 26 7 彼は北の天を空間に張り、地を何もない所に掛けられる。
13470 18 26 8 彼は水を濃い雲の中に包まれるが、その下の雲は裂けない。
13471 18 26 9 彼は月のおもてをおおい隠して、雲をその上にのべ、
13472 18 26 10 水のおもてに円を描いて、光とやみとの境とされた。
13473 18 26 11 彼が戒めると、天の柱は震い、かつ驚く。
13474 18 26 12 彼はその力をもって海を静め、その知恵をもってラハブを打ち砕き、
13475 18 26 13 その息をもって天を晴れわたらせ、その手をもって逃げるへびを突き通される。
13476 18 26 14 見よ、これらはただ彼の道の端にすぎない。われわれが彼について聞く所はいかにかすかなささやきであろう。しかし、その力のとどろきに至っては、だれが悟ることができるか」。
13477 18 27 1 ヨブはまた言葉をついで言った、
13478 18 27 2 「神は生きておられる。彼はわたしの義を奪い去られた。全能者はわたしの魂を悩まされた。
13479 18 27 3 わたしの息がわたしのうちにあり、神の息がわたしの鼻にある間、
13480 18 27 4 わたしのくちびるは不義を言わない、わたしの舌は偽りを語らない。
13481 18 27 5 わたしは断じて、あなたがたを正しいとは認めない。わたしは死ぬまで、潔白を主張してやめない。
13482 18 27 6 わたしは堅くわが義を保って捨てない。わたしは今まで一日も心に責められた事がない。
13483 18 27 7 どうか、わたしの敵は悪人のようになり、わたしに逆らう者は不義なる者のようになるように。
13484 18 27 8 神が彼を断ち、その魂を抜きとられるとき、神を信じない者になんの望みがあろう。
13485 18 27 9 災が彼に臨むとき、神はその叫びを聞かれるであろうか。
13486 18 27 10 彼は全能者を喜ぶであろうか、常に神を呼ぶであろうか。
13487 18 27 11 わたしは神のみ手についてあなたがたに教え、全能者と共にあるものを隠すことをしない。
13488 18 27 12 見よ、あなたがたは皆みずからこれを見た、それなのに、どうしてむなしい者となったのか。
13489 18 27 13 これは悪人の神から受ける分、圧制者の全能者から受ける嗣業である。
13490 18 27 14 その子らがふえればつるぎに渡され、その子孫は食物に飽きることがない。
13491 18 27 15 その生き残った者は疫病で死んで埋められ、そのやもめらは泣き悲しむことをしない。
13492 18 27 16 たとい彼は銀をちりのように積み、衣服を土のように備えても、
13493 18 27 17 その備えるものは正しい人がこれを着、その銀は罪なき者が分かち取るであろう。
13494 18 27 18 彼の建てる家は、くもの巣のようであり、番人の造る小屋のようである。
13495 18 27 19 彼は富める身で寝ても、再び富むことがなく、目を開けばその富はない。
13496 18 27 20 恐ろしい事が大水のように彼を襲い、夜はつむじ風が彼を奪い去る。
13497 18 27 21 東風が彼を揚げると、彼は去り、彼をその所から吹き払う。
13498 18 27 22 それは彼を投げつけて、あわれむことなく、彼はその力からのがれようと、もがく。
13499 18 27 23 それは彼に向かって手を鳴らし、あざけり笑って、その所から出て行かせる。
13500 18 28 1 しろがねには掘り出す穴があり、精錬するこがねには出どころがある。
13501 18 28 2 くろがねは土から取り、あかがねは石から溶かして取る。
13502 18 28 3 人は暗やみを破り、いやはてまでも尋ねきわめて、暗やみおよび暗黒の中から鉱石を取る。
13503 18 28 4 彼らは人の住む所を離れて縦穴をうがち、道行く人に忘れられ、人を離れて身をつりさげ、揺れ動く。
13504 18 28 5 地はそこから食物を出す。その下は火でくつがえされるようにくつがえる。
13505 18 28 6 その石はサファイヤのある所、そこにはまた金塊がある。
13506 18 28 7 その道は猛禽も知らず、たかの目もこれを見ず、
13507 18 28 8 猛獣もこれを踏まず、ししもこれを通らなかった。
13508 18 28 9 人は堅い岩に手をくだして、山を根元からくつがえす。
13509 18 28 10 彼は岩に坑道を掘り、その目はもろもろの尊い物を見る。
13510 18 28 11 彼は水路をふさいで、漏れないようにし、隠れた物を光に取り出す。
13511 18 28 12 しかし知恵はどこに見いだされるか。悟りのある所はどこか。
13512 18 28 13 人はそこに至る道を知らない、また生ける者の地でそれを獲ることができない。
13513 18 28 14 淵は言う、『それはわたしのうちにない』と。また海は言う、『わたしのもとにない』と。
13514 18 28 15 精金もこれと換えることはできない。銀も量ってその価とすることはできない。
13515 18 28 16 オフルの金をもってしても、その価を量ることはできない。尊い縞めのうも、サファイヤも同様である。
13516 18 28 17 こがねも、玻璃もこれに並ぶことができない。また精金の器物もこれと換えることができない。
13517 18 28 18 さんごも水晶も言うに足りない。知恵を得るのは真珠を得るのにまさる。
13518 18 28 19 エチオピヤのトパズもこれに並ぶことができない。純金をもってしても、その価を量ることはできない。
13519 18 28 20 それでは知恵はどこから来るか。悟りのある所はどこか。
13520 18 28 21 これはすべての生き物の目に隠され、空の鳥にも隠されている。
13521 18 28 22 滅びも死も言う、『われわれはそのうわさを耳に聞いただけだ』。
13522 18 28 23 神はこれに至る道を悟っておられる、彼はそのある所を知っておられる。
13523 18 28 24 彼は地の果までもみそなわし、天が下を見きわめられるからだ。
13524 18 28 25 彼が風に重さを与え、水をますで量られたとき、
13525 18 28 26 彼が雨のために規定を設け、雷のひらめきのために道を設けられたとき、
13526 18 28 27 彼は知恵を見て、これをあらわし、これを確かめ、これをきわめられた。
13527 18 28 28 そして人に言われた、『見よ、主を恐れることは知恵である、悪を離れることは悟りである』と」。
13528 18 29 1 ヨブはまた言葉をついで言った、
13529 18 29 2 「ああ過ぎた年月のようであったらよいのだが、神がわたしを守ってくださった日のようであったらよいのだが。
13530 18 29 3 あの時には、彼のともしびがわたしの頭の上に輝き、彼の光によってわたしは暗やみを歩んだ。
13531 18 29 4 わたしの盛んな時のようであったならよいのだが。あの時には、神の親しみがわたしの天幕の上にあった。
13532 18 29 5 あの時には、全能者がなおわたしと共にいまし、わたしの子供たちもわたしの周囲にいた。
13533 18 29 6 あの時、わたしの足跡は乳で洗われ、岩もわたしのために油の流れを注ぎだした。
13534 18 29 7 あの時には、わたしは町の門に出て行き、わたしの座を広場に設けた。
13535 18 29 8 若い者はわたしを見てしりぞき、老いた者は身をおこして立ち、
13536 18 29 9 君たる者も物言うことをやめて、その口に手を当て、
13537 18 29 10 尊い者も声をおさめて、その舌を上あごにつけた。
13538 18 29 11 耳に聞いた者はわたしを祝福された者となし、目に見た者はこれをあかしした。
13539 18 29 12 これは助けを求める貧しい者を救い、また、みなしごおよび助ける人のない者を救ったからである。
13540 18 29 13 今にも滅びようとした者の祝福がわたしに来た。わたしはまたやもめの心をして喜び歌わせた。
13541 18 29 14 わたしは正義を着、正義はわたしをおおった。わたしの公義は上着のごとく、また冠のようであった。
13542 18 29 15 わたしは目しいの目となり、足なえの足となり、
13543 18 29 16 貧しい者の父となり、知らない人の訴えの理由を調べてやった。
13544 18 29 17 わたしはまた悪しき者のきばを折り、その歯の間から獲物を引き出した。
13545 18 29 18 その時、わたしは言った、『わたしは自分の巣の中で死に、わたしの日は砂のように多くなるであろう。
13546 18 29 19 わたしの根は水のほとりにはびこり、露は夜もすがらわたしの枝におくであろう。
13547 18 29 20 わたしの栄えはわたしと共に新しく、わたしの弓はわたしの手にいつも強い』と。
13548 18 29 21 人々はわたしに聞いて待ち、黙して、わたしの教に従った。
13549 18 29 22 わたしが言った後は彼らは再び言わなかった。わたしの言葉は彼らの上に雨のように降りそそいだ。
13550 18 29 23 彼らは雨を待つように、わたしを待ち望み、春の雨を仰ぐように口を開いて仰いだ。
13551 18 29 24 彼らが希望を失った時にも、わたしは彼らにむかってほほえんだ。彼らはわたしの顔の光を除くことができなかった。
13552 18 29 25 わたしは彼らのために道を選び、そのかしらとして座し、軍中の王のようにしており、嘆く者を慰める人のようであった。
13553 18 30 1 しかし今はわたしよりも年若い者が、かえってわたしをあざ笑う。彼らの父はわたしが卑しめて、群れの犬と一緒にさえしなかった者だ。
13554 18 30 2 彼らの手の力からわたしは何を得るであろうか、彼らはその気力がすでに衰えた人々だ。
13555 18 30 3 彼らは乏しさと激しい飢えとによって、かわいた荒れ地をかむ。
13556 18 30 4 彼らは、ぜにあおいおよび灌木の葉を摘み、れだまの根をもって身を暖める。
13557 18 30 5 彼らは人々の中から追いだされ、盗びとを追うように、人々は彼らを追い呼ばわる。
13558 18 30 6 彼らは急流の谷間に住み、土の穴または岩の穴におり、
13559 18 30 7 灌木の中にいななき、いらくさの下に押し合う。
13560 18 30 8 彼らは愚かな者の子、また卑しい者の子であって、国から追いだされた者だ。
13561 18 30 9 それなのに、わたしは今彼らの歌となり、彼らの笑い草となった。
13562 18 30 10 彼らはわたしをいとい、遠くわたしをはなれ、わたしの顔につばきすることも、ためらわない。
13563 18 30 11 神がわたしの綱を解いて、わたしを卑しめられたので、彼らもわたしの前に慎みを捨てた。
13564 18 30 12 このともがらはわたしの右に立ち上がり、わたしを追いのけ、わたしにむかって滅びの道を築く。
13565 18 30 13 彼らはわたしの道をこわし、わたしの災を促す。これをさし止める者はない。
13566 18 30 14 彼らは広い破れ口からはいるように進みきたり、破壊の中をおし寄せる。
13567 18 30 15 恐ろしい事はわたしに臨み、わたしの誉は風のように吹き払われ、わたしの繁栄は雲のように消えうせた。
13568 18 30 16 今は、わたしの魂はわたしの内にとけて流れ、悩みの日はわたしを捕えた。
13569 18 30 17 夜はわたしの骨を激しく悩まし、わたしをかむ苦しみは、やむことがない。
13570 18 30 18 それは暴力をもって、わたしの着物を捕え、はだ着のえりのように、わたしをしめつける。
13571 18 30 19 神がわたしを泥の中に投げ入れられたので、わたしはちり灰のようになった。
13572 18 30 20 わたしがあなたにむかって呼ばわっても、あなたは答えられない。わたしが立っていても、あなたは顧みられない。
13573 18 30 21 あなたは変って、わたしに無情な者となり、み手の力をもってわたしを攻め悩まされる。
13574 18 30 22 あなたはわたしを揚げて風の上に乗せ、大風のうなり声の中に、もませられる。
13575 18 30 23 わたしは知っている、あなたはわたしを死に帰らせ、すべての生き物の集まる家に帰らせられることを。
13576 18 30 24 さりながら荒塚の中にある者は、手を伸べないであろうか、災の中にある者は助けを呼び求めないであろうか。
13577 18 30 25 わたしは苦しい日を送る者のために泣かなかったか。わたしの魂は貧しい人のために悲しまなかったか。
13578 18 30 26 しかしわたしが幸を望んだのに災が来た。光を待ち望んだのにやみが来た。
13579 18 30 27 わたしのはらわたは沸きかえって、静まらない。悩みの日がわたしに近づいた。
13580 18 30 28 わたしは日の光によらずに黒くなって歩き、公会の中に立って助けを呼び求める。
13581 18 30 29 わたしは山犬の兄弟となり、だちょうの友となった。
13582 18 30 30 わたしの皮膚は黒くなって、はげ落ち、わたしの骨は熱さによって燃え、
13583 18 30 31 わたしの琴は悲しみの音となり、わたしの笛は泣く者の声となった。
13584 18 31 1 わたしは、わたしの目と契約を結んだ、どうして、おとめを慕うことができようか。
13585 18 31 2 もしそうすれば上から神の下される分はどんなであろうか。高き所から全能者の与えられる嗣業はどんなであろうか。
13586 18 31 3 不義なる者には災が下らないであろうか。悪をなす者には災難が臨まないであろうか。
13587 18 31 4 彼はわたしの道をみそなわし、わたしの歩みをことごとく数えられぬであろうか。
13588 18 31 5 もし、わたしがうそと共に歩み、わたしの足が偽りにむかって急いだことがあるなら、
13589 18 31 6 (正しいはかりをもってわたしを量れ、そうすれば神はわたしの潔白を知られるであろう。)
13590 18 31 7 もしわたしの歩みが、道をはなれ、わたしの心がわたしの目にしたがって歩み、わたしの手に汚れがついていたなら、
13591 18 31 8 わたしのまいたのを他の人が食べ、わたしのために成長するものが、抜き取られてもかまわない。
13592 18 31 9 もし、わたしの心が、女に迷ったことがあるか、またわたしが隣り人の門で待ち伏せしたことがあるなら、
13593 18 31 10 わたしの妻が他の人のためにうすをひき、他の人が彼女の上に寝てもかまわない。
13594 18 31 11 これは重い罪であって、さばきびとに罰せられるべき悪事だからである。
13595 18 31 12 これは滅びに至るまでも焼きつくす火であって、わたしのすべての産業を根こそぎ焼くであろう。
13596 18 31 13 わたしのしもべ、また、はしためがわたしと言い争ったときに、わたしがもしその言い分を退けたことがあるなら、
13597 18 31 14 神が立ち上がられるとき、わたしはどうしようか、神が尋ねられるとき、なんとお答えしようか。
13598 18 31 15 わたしを胎内に造られた者は、彼をも造られたのではないか。われわれを腹の内に形造られた者は、ただひとりではないか。
13599 18 31 16 わたしがもし貧しい者の願いを退け、やもめの目を衰えさせ、
13600 18 31 17 あるいはわたしひとりで食物を食べて、みなしごに食べさせなかったことがあるなら、
13601 18 31 18 (わたしは彼の幼い時から父のように彼を育て、またその母の胎を出たときから彼を導いた。)
13602 18 31 19 もし着物がないために死のうとする者や、身をおおう物のない貧しい人をわたしが見た時に、
13603 18 31 20 その腰がわたしを祝福せず、また彼がわたしの羊の毛で暖まらなかったことがあるなら、
13604 18 31 21 もしわたしを助ける者が門におるのを見て、みなしごにむかってわたしの手を振り上げたことがあるなら、
13605 18 31 22 わたしの肩骨が、肩から落ち、わたしの腕が、つけ根から折れてもかまわない。
13606 18 31 23 わたしは神から出る災を恐れる、その威光の前には何事もなすことはできない。
13607 18 31 24 わたしがもし金をわが望みとし、精金をわが頼みと言ったことがあるなら、
13608 18 31 25 わたしがもしわが富の大いなる事と、わたしの手に多くの物を獲た事とを喜んだことがあるなら、
13609 18 31 26 わたしがもし日の輝くのを見、または月の照りわたって動くのを見た時、
13610 18 31 27 心ひそかに迷って、手に口づけしたことがあるなら、
13611 18 31 28 これもまたさばきびとに罰せらるべき悪事だ。わたしは上なる神を欺いたからである。
13612 18 31 29 わたしがもしわたしを憎む者の滅びるのを喜び、または災が彼に臨んだとき、勝ち誇ったことがあるなら、
13613 18 31 30 (わたしはわが口に罪を犯させず、のろいをもって彼の命を求めたことはなかった。)
13614 18 31 31 もし、わたしの天幕の人々で、『だれか彼の肉に飽きなかった者があるか』と、言わなかったことがあるなら、
13615 18 31 32 (他国人はちまたに宿らず、わたしはわが門を旅びとに開いた。)
13616 18 31 33 わたしがもし人々の前にわたしのとがをおおい、わたしの悪事を胸の中に隠したことがあるなら、
13617 18 31 34 わたしが大衆を恐れ、宗族の侮りにおぢて、口を閉じ、門を出なかったことがあるなら、
13618 18 31 35 ああ、わたしに聞いてくれる者があればよいのだが、(わたしのかきはんがここにある。どうか、全能者がわたしに答えられるように。)ああ、わたしの敵の書いた告訴状があればよいのだが。
13619 18 31 36 わたしは必ずこれを肩に負い、冠のようにこれをわが身に結び、
13620 18 31 37 わが歩みの数を彼に述べ、君たる者のようにして、彼に近づくであろう。
13621 18 31 38 もしわが田畑がわたしに向かって呼ばわり、そのうねみぞが共に泣き叫んだことがあるなら、
13622 18 31 39 もしわたしが金を払わないでその産物を食べ、その持ち主を死なせたことがあるなら、
13623 18 31 40 小麦の代りに、いばらがはえ、大麦の代りに雑草がはえてもかまわない」。ヨブの言葉は終った。
13624 18 32 1 このようにヨブが自分の正しいことを主張したので、これら三人の者はヨブに答えるのをやめた。
13625 18 32 2 その時ラム族のブズびとバラケルの子エリフは怒りを起した。すなわちヨブが神よりも自分の正しいことを主張するので、彼はヨブに向かって怒りを起した。
13626 18 32 3 またヨブの三人の友がヨブを罪ありとしながら、答える言葉がなかったので、エリフは彼らにむかっても怒りを起した。
13627 18 32 4 エリフは彼らが皆、自分よりも年長者であったので、ヨブに物言うことをひかえて待っていたが、
13628 18 32 5 ここにエリフは三人の口に答える言葉のないのを見て怒りを起した。
13629 18 32 6 ブズびとバラケルの子エリフは答えて言った、「わたしは年若く、あなたがたは年老いている。それゆえ、わたしははばかって、わたしの意見を述べることをあえてしなかった。
13630 18 32 7 わたしは思った、『日を重ねた者が語るべきだ、年を積んだ者が知恵を教えるべきだ』と。
13631 18 32 8 しかし人のうちには霊があり、全能者の息が人に悟りを与える。
13632 18 32 9 老いた者、必ずしも知恵があるのではなく、年とった者、必ずしも道理をわきまえるのではない。
13633 18 32 10 ゆえにわたしは言う、『わたしに聞け、わたしもまたわが意見を述べよう』。
13634 18 32 11 見よ、わたしはあなたがたの言葉に期待し、その知恵ある言葉に耳を傾け、あなたがたが言うべき言葉を捜し出すのを待っていた。
13635 18 32 12 わたしはあなたがたに心をとめたが、あなたがたのうちにヨブを言いふせる者はひとりもなく、また彼の言葉に答える者はひとりもなかった。
13636 18 32 13 おそらくあなたがたは言うだろう、『われわれは知恵を見いだした、彼に勝つことのできるのは神だけで、人にはできない』と。
13637 18 32 14 彼はその言葉をわたしに向けて言わなかった。わたしはあなたがたの言葉をもって彼に答えることはしない。
13638 18 32 15 彼らは驚いて、もはや答えることをせず、彼らには、もはや言うべき言葉がない。
13639 18 32 16 彼らは物言わず、立ちとどまって、もはや答えるところがないので、わたしはこれ以上待つ必要があろうか。
13640 18 32 17 わたしもまたわたしの分を答え、わたしの意見を述べよう。
13641 18 32 18 わたしには言葉が満ち、わたしのうちの霊がわたしに迫るからだ。
13642 18 32 19 見よ、わたしの心は口を開かないぶどう酒のように、新しいぶどう酒の皮袋のように、今にも張りさけようとしている。
13643 18 32 20 わたしは語って、気を晴らし、くちびるを開いて答えよう。
13644 18 32 21 わたしはだれをもかたより見ることなく、また何人とにもへつらうことをしない。
13645 18 32 22 わたしはへつらうことを知らないからだ。もしへつらうならば、わたしの造り主は直ちにわたしを滅ぼされるであろう。
13646 18 33 1 だから、ヨブよ、今わたしの言うことを聞け、わたしのすべての言葉に耳を傾けよ。
13647 18 33 2 見よ、わたしは口を開き、口の中の舌は物言う。
13648 18 33 3 わたしの言葉はわが心の正しきを語り、わたしのくちびるは真実をもってその知識を語る。
13649 18 33 4 神の霊はわたしを造り、全能者の息はわたしを生かす。
13650 18 33 5 あなたがもしできるなら、わたしに答えよ、わたしの前に言葉を整えて、立て。
13651 18 33 6 見よ、神に対しては、わたしもあなたと同様であり、わたしもまた土から取って造られた者だ。
13652 18 33 7 見よ、わたしの威厳はあなたを恐れさせない、わたしの勢いはあなたを圧しない。
13653 18 33 8 確かに、あなたはわたしの聞くところで言った、わたしはあなたの言葉の声を聞いた。
13654 18 33 9 あなたは言う、『わたしはいさぎよく、とがはない。わたしは清く、不義はない。
13655 18 33 10 見よ、彼はわたしを攻める口実を見つけ、わたしを自分の敵とみなし、
13656 18 33 11 わたしの足をかせにはめ、わたしのすべての行いに目をとめられる』と。
13657 18 33 12 見よ、わたしはあなたに答える、あなたはこの事において正しくない。神は人よりも大いなる者だ。
13658 18 33 13 あなたが『彼はわたしの言葉に少しも答えられない』といって、彼に向かって言い争うのは、どういうわけであるか。
13659 18 33 14 神は一つの方法によって語られ、また二つの方法によって語られるのだが、人はそれを悟らないのだ。
13660 18 33 15 人々が熟睡するとき、または床にまどろむとき、夢あるいは夜の幻のうちで、
13661 18 33 16 彼は人々の耳を開き、警告をもって彼らを恐れさせ、
13662 18 33 17 こうして人にその悪しきわざを離れさせ、高ぶりを人から除き、
13663 18 33 18 その魂を守って、墓に至らせず、その命を守って、つるぎに滅びないようにされる。
13664 18 33 19 人はまたその床の上で痛みによって懲らされ、その骨に戦いが絶えることなく、
13665 18 33 20 その命は、食物をいとい、その食欲は、おいしい食物をきらう。
13666 18 33 21 その肉はやせ落ちて見えず、その骨は見えなかったものまでもあらわになり、
13667 18 33 22 その魂は墓に近づき、その命は滅ぼす者に近づく。
13668 18 33 23 もしそこに彼のためにひとりの天使があり、千のうちのひとりであって、仲保となり、人にその正しい道を示すならば、
13669 18 33 24 神は彼をあわれんで言われる、『彼を救って、墓に下ることを免れさせよ、わたしはすでにあがないしろを得た。
13670 18 33 25 彼の肉を幼な子の肉よりもみずみずしくならせ、彼を若い時の元気に帰らせよ』と。
13671 18 33 26 その時、彼が神に祈るならば、神は彼を顧み、喜びをもって、み前にいたらせ、その救を人に告げ知らせられる。
13672 18 33 27 彼は人々の前に歌って言う、『わたしは罪を犯し、正しい事を曲げた。しかしわたしに報復がなかった。
13673 18 33 28 彼はわたしの魂をあがなって、墓に下らせられなかった。わたしの命は光を見ることができる』と。
13674 18 33 29 見よ、神はこれらすべての事をふたたび、みたび人に行い、
13675 18 33 30 その魂を墓から引き返し、彼に命の光を見させられる。
13676 18 33 31 ヨブよ、耳を傾けてわたしに聞け、黙せよ、わたしは語ろう。
13677 18 33 32 あなたがもし言うべきことがあるなら、わたしに答えよ、語れ、わたしはあなたを正しい者にしようと望むからだ。
13678 18 33 33 もし語ることがないなら、わたしに聞け、黙せよ、わたしはあなたに知恵を教えよう」。
13679 18 34 1 エリフはまた答えて言った、
13680 18 34 2 「あなたがた知恵ある人々よ、わたしの言葉を聞け、あなたがた知識ある人々よ、わたしに耳を傾けよ。
13681 18 34 3 口が食物を味わうように、耳は言葉をわきまえるからだ。
13682 18 34 4 われわれは正しい事を選び、われわれの間に良い事の何であるかを明らかにしよう。
13683 18 34 5 ヨブは言った、『わたしは正しい、神はわたしの公義を奪われた。
13684 18 34 6 わたしは正しいにもかかわらず、偽る者とされた。わたしにはとががないけれども、わたしの矢傷はいえない』と。
13685 18 34 7 だれかヨブのような人があろう。彼はあざけりを水のように飲み、
13686 18 34 8 悪をなす者どもと交わり、悪人と共に歩む。
13687 18 34 9 彼は言った、『人は神と親しんでも、なんの益もない』と。
13688 18 34 10 それであなたがた理解ある人々よ、わたしに聞け、神は断じて悪を行うことなく、全能者は断じて不義を行うことはない。
13689 18 34 11 神は人のわざにしたがってその身に報い、おのおのの道にしたがって、その身に振りかからせられる。
13690 18 34 12 まことに神は悪しき事を行われない。全能者はさばきをまげられない。
13691 18 34 13 だれかこの地を彼にゆだねた者があるか。だれか全世界を彼に負わせた者があるか。
13692 18 34 14 神がもしその霊をご自分に取りもどし、その息をご自分に取りあつめられるならば、
13693 18 34 15 すべての肉は共に滅び、人はちりに帰るであろう。
13694 18 34 16 もし、あなたに悟りがあるならば、これを聞け、わたしの言うところに耳を傾けよ。
13695 18 34 17 公義を憎む者は世を治めることができようか。正しく力ある者を、あなたは非難するであろうか。
13696 18 34 18 王たる者に向かって『よこしまな者』と言い、つかさたる者に向かって、『悪しき者』と言うことができるであろうか。
13697 18 34 19 神は君たる者をもかたより見られることなく、富める者を貧しき者にまさって顧みられることはない。彼らは皆み手のわざだからである。
13698 18 34 20 彼らはまたたく間に死に、民は夜の間に振われて、消えうせ、力ある者も人手によらずに除かれる。
13699 18 34 21 神の目が人の道の上にあって、そのすべての歩みを見られるからだ。
13700 18 34 22 悪を行う者には身を隠すべき暗やみもなく、暗黒もない。
13701 18 34 23 人がさばきのために神の前に出るとき、神は人のために時を定めておかれない。
13702 18 34 24 彼は力ある者をも調べることなく打ち滅ぼし、他の人々を立てて、これに替えられる。
13703 18 34 25 このように、神は彼らのわざを知り、夜の間に彼らをくつがえされるので、彼らはやがて滅びる。
13704 18 34 26 彼は人々の見る所で、彼らをその悪のために撃たれる。
13705 18 34 27 これは彼らがそむいて彼に従わず、その道を全く顧みないからだ。
13706 18 34 28 こうして彼らは貧しき者の叫びを彼のもとにいたらせ、悩める者の叫びを彼に聞かせる。
13707 18 34 29 彼が黙っておられるとき、だれが非難することができようか。彼が顔を隠されるとき、だれが彼を見ることができようか。一国の上にも、一人の上にも同様だ。
13708 18 34 30 これは神を信じない者が世を治めることがなく、民をわなにかける事のないようにするためである。
13709 18 34 31 だれが神に向かって言ったか、『わたしは罪を犯さないのに、懲しめられた。
13710 18 34 32 わたしの見ないものをわたしに教えられたい。もしわたしが悪い事をしたなら、重ねてこれをしない』と。
13711 18 34 33 あなたが拒むゆえに、彼はあなたの好むように報いをされるであろうか。あなたみずから選ぶがよい、わたしはしない。あなたの知るところを言いなさい。
13712 18 34 34 悟りある人々はわたしに言うだろう、わたしに聞くところの知恵ある人は言うだろう、
13713 18 34 35 『ヨブの言うところは知識がなく、その言葉は悟りがない』と。
13714 18 34 36 どうかヨブが終りまで試みられるように、彼は悪人のように答えるからである。
13715 18 34 37 彼は自分の罪に、とがを加え、われわれの中にあって手をうち、神に逆らって、その言葉をしげくする」。
13716 18 35 1 エリフはまた答えて言った、
13717 18 35 2 「あなたはこれを正しいと思うのか、あなたは『神の前に自分は正しい』と言うのか。
13718 18 35 3 あなたは言う、『これはわたしになんの益があるか、罪を犯したのとくらべてなんのまさるところがあるか』と。
13719 18 35 4 わたしはあなたおよび、あなたと共にいるあなたの友人たちに答えよう。
13720 18 35 5 天を仰ぎ見よ、あなたの上なる高き空を望み見よ。
13721 18 35 6 あなたが罪を犯しても、彼になんのさしさわりがあるか。あなたのとがが多くても、彼に何をなし得ようか。
13722 18 35 7 またあなたは正しくても、彼に何を与え得ようか。彼はあなたの手から何を受けられるであろうか。
13723 18 35 8 あなたの悪はただあなたのような人にかかわり、あなたの義はただ人の子にかかわるのみだ。
13724 18 35 9 しえたげの多いために叫び、力ある者の腕のゆえに呼ばわる人々がある。
13725 18 35 10 しかし、ひとりとして言う者はない、『わが造り主なる神はどこにおられるか、彼は夜の間に歌を与え、
13726 18 35 11 地の獣よりも多く、われわれを教え、空の鳥よりも、われわれを賢くされる方である』と。
13727 18 35 12 彼らが叫んでも答えられないのは、悪しき者の高ぶりによる。
13728 18 35 13 まことに神はむなしい叫びを聞かれない。また全能者はこれを顧みられない。
13729 18 35 14 あなたが彼を見ないと言う時はなおさらだ。さばきは神の前にある。あなたは彼を待つべきである。
13730 18 35 15 今彼が怒りをもって罰せず、罪とがを深く心にとめられないゆえに
13731 18 35 16 ヨブは口を開いてむなしい事を述べ、無知の言葉をしげくする」。
13732 18 36 1 エリフは重ねて言った、
13733 18 36 2 「しばらく待て、わたしはあなたに示すことがある。なお神のために言うべき事がある。
13734 18 36 3 わたしは遠くからわが知識を取り、わが造り主に正義を帰する。
13735 18 36 4 まことにわたしの言葉は偽らない。知識の全き者があなたと共にいる。
13736 18 36 5 見よ、神は力ある者であるが、何をも卑しめられない、その悟りの力は大きい。
13737 18 36 6 彼は悪しき者を生かしておかれない、苦しむ者のためにさばきを行われる。
13738 18 36 7 彼は正しい者から目を離さず、位にある王たちと共に、とこしえに、彼らをすわらせて、尊くされる。
13739 18 36 8 もし彼らが足かせにつながれ、悩みのなわに捕えられる時は、
13740 18 36 9 彼らの行いと、とがと、その高ぶったふるまいを彼らに示し、
13741 18 36 10 彼らの耳を開いて、教を聞かせ、悪を離れて帰ることを命じられる。
13742 18 36 11 もし彼らが聞いて彼に仕えるならば、彼らはその日を幸福に過ごし、その年を楽しく送るであろう。
13743 18 36 12 しかし彼らが聞かないならば、つるぎによって滅び、知識を得ないで死ぬであろう。
13744 18 36 13 心に神を信じない者どもは怒りをたくわえ、神に縛られる時も、助けを呼び求めることをしない。
13745 18 36 14 彼らは年若くして死に、その命は恥のうちに終る。
13746 18 36 15 神は苦しむ者をその苦しみによって救い、彼らの耳を逆境によって開かれる。
13747 18 36 16 神はまたあなたを悩みから、束縛のない広い所に誘い出された。そしてあなたの食卓に置かれた物はすべて肥えた物であった。
13748 18 36 17 しかしあなたは悪人のうくべきさばきをおのれに満たし、さばきと公義はあなたを捕えている。
13749 18 36 18 あなたは怒りに誘われて、あざけりに陥らぬように心せよ。あがないしろの大いなるがために、おのれを誤るな。
13750 18 36 19 あなたの叫びはあなたを守って、悩みを免れさせるであろうか、いかに力をつくしても役に立たない。
13751 18 36 20 人々がその所から断たれるその夜を慕ってはならない。
13752 18 36 21 慎んで悪に傾いてはならない。あなたは悩みよりもむしろこれを選んだからだ。
13753 18 36 22 見よ、神はその力をもってあがめられる。だれか彼のように教える者があるか。
13754 18 36 23 だれか彼のためにその道を定めた者があるか。だれか『あなたは悪い事をした』と言いうる者があるか。
13755 18 36 24 神のみわざをほめたたえる事を忘れてはならない。これは人々の歌いあがめるところである。
13756 18 36 25 すべての人はこれを仰ぎ見る。人は遠くからこれを見るにすぎない。
13757 18 36 26 見よ、神は大いなる者にいまして、われわれは彼を知らない。その年の数も計り知ることができない。
13758 18 36 27 彼は水のしたたりを引きあげ、その霧をしたたらせて雨とされる。
13759 18 36 28 空はこれを降らせて、人の上に豊かに注ぐ。
13760 18 36 29 だれか雲の広がるわけと、その幕屋のとどろくわけとを悟ることができようか。
13761 18 36 30 見よ、彼はその光をおのれのまわりにひろげ、また海の底をおおわれる。
13762 18 36 31 彼はこれらをもって民をさばき、食物を豊かに賜い、
13763 18 36 32 いなずまをもってもろ手を包み、これに命じて敵を打たせられる。
13764 18 36 33 そのとどろきは、悪にむかって怒りに燃える彼を現す。
13765 18 37 1 これがためにわが心もまたわななき、その所からとび離れる。
13766 18 37 2 聞け、神の声のとどろきを、またその口から出るささやきを。
13767 18 37 3 彼はこれを天が下に放ち、その光を地のすみずみまで至らせられる。
13768 18 37 4 その後、声とどろき、彼はそのいかめしい声をもって鳴り渡られる。その声の聞える時、彼はいなずまを引きとめられない。
13769 18 37 5 神はその驚くべき声をもって鳴り渡り、われわれの悟りえない大いなる事を行われる。
13770 18 37 6 彼は雪に向かって『地に降れ』と命じ、夕立および雨に向かって『強く降れ』と命じられる。
13771 18 37 7 彼はすべての人の手を封じられる。これはすべての人にみわざを知らせるためである。
13772 18 37 8 その時、獣は穴に入り、そのほらにとどまる。
13773 18 37 9 つむじ風はそのへやから、寒さは北風から来る。
13774 18 37 10 神のいぶきによって氷が張り、広々とした水は凍る。
13775 18 37 11 彼は濃い雲に水気を負わせ、雲はそのいなずまを散らす。
13776 18 37 12 これは彼の導きによってめぐる。彼の命じるところをことごとく世界のおもてに行うためである。
13777 18 37 13 神がこれらをこさせるのは、懲しめのため、あるいはその地のため、あるいはいつくしみのためである。
13778 18 37 14 ヨブよ、これを聞け、立って神のくすしきみわざを考えよ。
13779 18 37 15 あなたは知っているか、神がいかにこれらに命じて、その雲の光を輝かされるかを。
13780 18 37 16 あなたは知っているか、雲のつりあいと、知識の全き者のくすしきみわざを。
13781 18 37 17 南風によって地が穏やかになる時、あなたの着物が熱くなることを。
13782 18 37 18 あなたは鋳た鏡のように堅い大空を、彼のように張ることができるか。
13783 18 37 19 われわれが彼に言うべき事をわれわれに教えよ、われわれは暗くて、言葉をつらねることはできない。
13784 18 37 20 わたしは語ることがあると彼に告げることができようか、人は滅ぼされることを望むであろうか。
13785 18 37 21 光が空に輝いているとき、風過ぎて空を清めると、人々はその光を見ることができない。
13786 18 37 22 北から黄金のような輝きがでてくる。神には恐るべき威光がある。
13787 18 37 23 全能者は――われわれはこれを見いだすことができない。彼は力と公義とにすぐれ、正義に満ちて、これを曲げることはない。
13788 18 37 24 それゆえ、人々は彼を恐れる。彼はみずから賢いと思う者を顧みられない」。
13789 18 38 1 この時、主はつむじ風の中からヨブに答えられた、
13790 18 38 2 「無知の言葉をもって、神の計りごとを暗くするこの者はだれか。
13791 18 38 3 あなたは腰に帯して、男らしくせよ。わたしはあなたに尋ねる、わたしに答えよ。
13792 18 38 4 わたしが地の基をすえた時、どこにいたか。もしあなたが知っているなら言え。
13793 18 38 5 あなたがもし知っているなら、だれがその度量を定めたか。だれが測りなわを地の上に張ったか。
13794 18 38 6 その土台は何の上に置かれたか。その隅の石はだれがすえたか。
13795 18 38 7 かの時には明けの星は相共に歌い、神の子たちはみな喜び呼ばわった。
13796 18 38 8 海の水が流れいで、胎内からわき出たとき、だれが戸をもって、これを閉じこめたか。
13797 18 38 9 あの時、わたしは雲をもって衣とし、黒雲をもってむつきとし、
13798 18 38 10 これがために境を定め、関および戸を設けて、
13799 18 38 11 言った、『ここまで来てもよい、越えてはならぬ、おまえの高波はここにとどまるのだ』と。
13800 18 38 12 あなたは生れた日からこのかた朝に命じ、夜明けにその所を知らせ、
13801 18 38 13 これに地の縁をとらえさせ、悪人をその上から振り落させたことがあるか。
13802 18 38 14 地は印せられた土のように変り、衣のようにいろどられる。
13803 18 38 15 悪人はその光を奪われ、その高くあげた腕は折られる。
13804 18 38 16 あなたは海の源に行ったことがあるか。淵の底を歩いたことがあるか。
13805 18 38 17 死の門はあなたのために開かれたか。あなたは暗黒の門を見たことがあるか。
13806 18 38 18 あなたは地の広さを見きわめたか。もしこれをことごとく知っているならば言え。
13807 18 38 19 光のある所に至る道はいずれか。暗やみのある所はどこか。
13808 18 38 20 あなたはこれをその境に導くことができるか。その家路を知っているか。
13809 18 38 21 あなたは知っているだろう、あなたはかの時すでに生れており、またあなたの日数も多いのだから。
13810 18 38 22 あなたは雪の倉にはいったことがあるか。ひょうの倉を見たことがあるか。
13811 18 38 23 これらは悩みの時のため、いくさと戦いの日のため、わたしがたくわえて置いたものだ。
13812 18 38 24 光の広がる道はどこか。東風の地に吹き渡る道はどこか。
13813 18 38 25 だれが大雨のために水路を切り開き、いかずちの光のために道を開き、
13814 18 38 26 人なき地にも、人なき荒野にも雨を降らせ、
13815 18 38 27 荒れすたれた地をあき足らせ、これに若草をはえさせるか。
13816 18 38 28 雨に父があるか。露の玉はだれが生んだか。
13817 18 38 29 氷はだれの胎から出たか。空の霜はだれが生んだか。
13818 18 38 30 水は固まって石のようになり、淵のおもては凍る。
13819 18 38 31 あなたはプレアデスの鎖を結ぶことができるか。オリオンの綱を解くことができるか。
13820 18 38 32 あなたは十二宮をその時にしたがって引き出すことができるか。北斗とその子星を導くことができるか。
13821 18 38 33 あなたは天の法則を知っているか、そのおきてを地に施すことができるか。
13822 18 38 34 あなたは声を雲にあげ、多くの水にあなたをおおわせることができるか。
13823 18 38 35 あなたはいなずまをつかわして行かせ、『われわれはここにいる』と、あなたに言わせることができるか。
13824 18 38 36 雲に知恵を置き、霧に悟りを与えたのはだれか。
13825 18 38 37 だれが知恵をもって雲を数えることができるか。だれが天の皮袋を傾けて、
13826 18 38 38 ちりを一つに流れ合わさせ、土くれを固まらせることができるか。
13827 18 38 39 あなたはししのために食物を狩り、子じしの食欲を満たすことができるか。
13828 18 38 40 彼らがほら穴に伏し、林のなかに待ち伏せする時、あなたはこの事をなすことができるか。
13829 18 38 41 からすの子が神に向かって呼ばわり、食物がなくて、さまようとき、からすにえさを与える者はだれか。
13830 18 39 1 あなたは岩間のやぎが子を産むときを知っているか。あなたは雌じかが子を産むのを見たことがあるか。
13831 18 39 2 これらの妊娠の月を数えることができるか。これらが産む時を知っているか。
13832 18 39 3 これらは身をかがめて子を産み、そのはらみ子を産みいだす。
13833 18 39 4 その子は強くなって、野に育ち、出て行って、その親のもとに帰らない。
13834 18 39 5 だれが野ろばを放って、自由にしたか。だれが野ろばのつなぎを解いたか。
13835 18 39 6 わたしは荒野をその家として与え、荒れ地をそのすみかとして与えた。
13836 18 39 7 これは町の騒ぎをいやしめ、御者の呼ぶ声を聞きいれず、
13837 18 39 8 山を牧場としてはせまわり、もろもろの青物を尋ね求める。
13838 18 39 9 野牛は快くあなたに仕え、あなたの飼葉おけのかたわらにとどまるだろうか。
13839 18 39 10 あなたは野牛に手綱をつけてうねを歩かせることができるか、これはあなたに従って谷を耕すであろうか。
13840 18 39 11 その力が強いからとて、あなたはこれに頼むであろうか。またあなたの仕事をこれに任せるであろうか。
13841 18 39 12 あなたはこれにたよって、あなたの穀物を打ち場に運び帰らせるであろうか。
13842 18 39 13 だちょうは威勢よくその翼をふるう。しかしこれにはきれいな羽と羽毛があるか。
13843 18 39 14 これはその卵を土の中に捨て置き、これを砂のなかで暖め、
13844 18 39 15 足でつぶされることも、野の獣に踏まれることも忘れている。
13845 18 39 16 これはその子に無情であって、あたかも自分の子でないようにし、その苦労のむなしくなるをも恐れない。
13846 18 39 17 これは神がこれに知恵を授けず、悟りを与えなかったゆえである。
13847 18 39 18 これがその身を起して走る時には、馬をも、その乗り手をもあざける。
13848 18 39 19 あなたは馬にその力を与えることができるか。力をもってその首を装うことができるか。
13849 18 39 20 あなたはこれをいなごのように、とばせることができるか。その鼻あらしの威力は恐ろしい。
13850 18 39 21 これは谷であがき、その力に誇り、みずから出ていって武器に向かう。
13851 18 39 22 これは恐れをあざ笑って、驚くことなく、つるぎをさけて退くことがない。
13852 18 39 23 矢筒はその上に鳴り、やりと投げやりと、あいきらめく。
13853 18 39 24 これはたけりつ、狂いつ、地をひとのみにし、ラッパの音が鳴り渡っても、立ちどまることがない。
13854 18 39 25 これはラッパの鳴るごとにハアハアと言い、遠くから戦いをかぎつけ、隊長の大声およびときの声を聞き知る。
13855 18 39 26 たかが舞いあがり、その翼をのべて南に向かうのは、あなたの知恵によるのか、
13856 18 39 27 わしがかけのぼり、その巣を高い所につくるのは、あなたの命令によるのか。
13857 18 39 28 これは岩の上にすみかを構え、岩のとがり、または険しい所におり、
13858 18 39 29 そこから獲物をうかがう。その目の及ぶところは遠い。
13859 18 39 30 そのひなもまた血を吸う。おおよそ殺された者のある所には、これもそこにいる」。
13860 18 40 1 主はまたヨブに答えて言われた、
13861 18 40 2 「非難する者が全能者と争おうとするのか、神と論ずる者はこれに答えよ」。
13862 18 40 3 そこで、ヨブは主に答えて言った、
13863 18 40 4 「見よ、わたしはまことに卑しい者です、なんとあなたに答えましょうか。ただ手を口に当てるのみです。
13864 18 40 5 わたしはすでに一度言いました、また言いません、すでに二度言いました、重ねて申しません」。
13865 18 40 6 主はまたつむじ風の中からヨブに答えられた、
13866 18 40 7 「あなたは腰に帯して、男らしくせよ。わたしはあなたに尋ねる、わたしに答えよ。
13867 18 40 8 あなたはなお、わたしに責任を負わそうとするのか。あなたはわたしを非とし、自分を是としようとするのか。
13868 18 40 9 あなたは神のような腕を持っているのか、神のような声でとどろきわたることができるか。
13869 18 40 10 あなたは威光と尊厳とをもってその身を飾り、栄光と華麗とをもってその身を装ってみよ。
13870 18 40 11 あなたのあふるる怒りを漏らし、すべての高ぶる者を見て、これを低くせよ。
13871 18 40 12 すべての高ぶる者を見て、これをかがませ、また悪人をその所で踏みつけ、
13872 18 40 13 彼らをともにちりの中にうずめ、その顔を隠れた所に閉じこめよ。
13873 18 40 14 そうすれば、わたしもまた、あなたをほめて、あなたの右の手はあなたを救うことができるとしよう。
13874 18 40 15 河馬を見よ、これはあなたと同様にわたしが造ったもので、牛のように草を食う。
13875 18 40 16 見よ、その力は腰にあり、その勢いは腹の筋にある。
13876 18 40 17 これはその尾を香柏のように動かし、そのももの筋は互にからみ合う。
13877 18 40 18 その骨は青銅の管のようで、その肋骨は鉄の棒のようだ。
13878 18 40 19 これは神のわざの第一のものであって、これを造った者がこれにつるぎを授けた。
13879 18 40 20 山もこれがために食物をいだし、もろもろの野の獣もそこに遊ぶ。
13880 18 40 21 これは酸棗の木の下に伏し、葦の茂み、または沼に隠れている。
13881 18 40 22 酸棗の木はその陰でこれをおおい、川の柳はこれをめぐり囲む。
13882 18 40 23 見よ、たとい川が荒れても、これは驚かない。ヨルダンがその口に注ぎかかっても、これはあわてない。
13883 18 40 24 だれが、かぎでこれを捕えることができるか。だれが、わなでその鼻を貫くことができるか。
13884 18 41 1 あなたはつり針でわにをつり出すことができるか。糸でその舌を押えることができるか。
13885 18 41 2 あなたは葦のなわをその鼻に通すことができるか。つり針でそのあごを突き通すことができるか。
13886 18 41 3 これはしきりに、あなたに願い求めるであろうか。柔らかな言葉をあなたに語るであろうか。
13887 18 41 4 これはあなたと契約を結ぶであろうか。あなたはこれを取って、ながくあなたのしもべとすることができるであろうか。
13888 18 41 5 あなたは鳥と戯れるようにこれと戯れ、またあなたのおとめたちのために、これをつないでおくことができるであろうか。
13889 18 41 6 商人の仲間はこれを商品として、小売商人の間に分けるであろうか。
13890 18 41 7 あなたは、もりでその皮を満たし、やすでその頭を突き通すことができるか。
13891 18 41 8 あなたの手をこれの上に置け、あなたは戦いを思い出して、再びこれをしないであろう。
13892 18 41 9 見よ、その望みはむなしくなり、これを見てすら倒れる。
13893 18 41 10 あえてこれを激する勇気のある者はひとりもない。それで、だれがわたしの前に立つことができるか。
13894 18 41 11 だれが先にわたしに与えたので、わたしはこれに報いるのか。天が下にあるものは、ことごとくわたしのものだ。
13895 18 41 12 わたしはこれが全身と、その著しい力と、その美しい構造について黙っていることはできない。
13896 18 41 13 だれがその上着をはぐことができるか。だれがその二重のよろいの間にはいることができるか。
13897 18 41 14 だれがその顔の戸を開くことができるか。そのまわりの歯は恐ろしい。
13898 18 41 15 その背は盾の列でできていて、その堅く閉じたさまは密封したように、
13899 18 41 16 相互に密接して、風もその間に、はいることができず、
13900 18 41 17 互に相連なり、固く着いて離すことができない。
13901 18 41 18 これが、くしゃみすれば光を発し、その目はあけぼののまぶたに似ている。
13902 18 41 19 その口からは、たいまつが燃えいで、火花をいだす。
13903 18 41 20 その鼻の穴からは煙が出てきて、さながら煮え立つなべの水煙のごとく、燃える葦の煙のようだ。
13904 18 41 21 その息は炭火をおこし、その口からは炎が出る。
13905 18 41 22 その首には力が宿っていて、恐ろしさが、その前に踊っている。
13906 18 41 23 その肉片は密接に相連なり、固く身に着いて動かすことができない。
13907 18 41 24 その心臓は石のように堅く、うすの下石のように堅い。
13908 18 41 25 その身を起すときは勇士も恐れ、その衝撃によってあわて惑う。
13909 18 41 26 つるぎがこれを撃っても、きかない、やりも、矢も、もりも用をなさない。
13910 18 41 27 これは鉄を見ること、わらのように、青銅を見ること朽ち木のようである。
13911 18 41 28 弓矢もこれを逃がすことができない。石投げの石もこれには、わらくずとなる。
13912 18 41 29 こん棒もわらくずのようにみなされ、投げやりの響きを、これはあざ笑う。
13913 18 41 30 その下腹は鋭いかわらのかけらのようで、麦こき板のようにその身を泥の上に伸ばす。
13914 18 41 31 これは淵をかなえのように沸きかえらせ、海を香油のなべのようにする。
13915 18 41 32 これは自分のあとに光る道を残し、淵をしらがのように思わせる。
13916 18 41 33 地の上にはこれと並ぶものなく、これは恐れのない者に造られた。
13917 18 41 34 これはすべての高き者をさげすみ、すべての誇り高ぶる者の王である」。
13918 18 42 1 そこでヨブは主に答えて言った、
13919 18 42 2 「わたしは知ります、あなたはすべての事をなすことができ、またいかなるおぼしめしでも、あなたにできないことはないことを。
13920 18 42 3 『無知をもって神の計りごとをおおうこの者はだれか』。それゆえ、わたしはみずから悟らない事を言い、みずから知らない、測り難い事を述べました。
13921 18 42 4 『聞け、わたしは語ろう、わたしはあなたに尋ねる、わたしに答えよ』。
13922 18 42 5 わたしはあなたの事を耳で聞いていましたが、今はわたしの目であなたを拝見いたします。
13923 18 42 6 それでわたしはみずから恨み、ちり灰の中で悔います」。
13924 18 42 7 主はこれらの言葉をヨブに語られて後、テマンびとエリパズに言われた、
13925 18 42 8 それで今、あなたがたは雄牛七頭、雄羊七頭を取って、わたしのしもべヨブの所へ行き、あなたがたのために燔祭をささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈るであろう。わたしは彼の祈を受けいれるによって、あなたがたの愚かを罰することをしない。あなたがたはわたしのしもべヨブのように正しい事をわたしについて述べなかったからである」。
13926 18 42 9 そこでテマンびとエリパズ、シュヒびとビルダデ、ナアマびとゾパルは行って、主が彼らに命じられたようにしたので、主はヨブの祈を受けいれられた。
13927 18 42 10 ヨブがその友人たちのために祈ったとき、主はヨブの繁栄をもとにかえし、そして主はヨブのすべての財産を二倍に増された。
13928 18 42 11 そこで彼のすべての兄弟、すべての姉妹、および彼の旧知の者どもことごとく彼のもとに来て、彼と共にその家で飲み食いし、かつ主が彼にくだされたすべての災について彼をいたわり、慰め、おのおの銀一ケシタと金の輪一つを彼に贈った。
13929 18 42 12 主はヨブの終りを初めよりも多く恵まれた。彼は羊一万四千頭、らくだ六千頭、牛一千くびき、雌ろば一千頭をもった。
13930 18 42 13 また彼は男の子七人、女の子三人をもった。
13931 18 42 14 彼はその第一の娘をエミマと名づけ、第二をケジアと名づけ、第三をケレン・ハップクと名づけた。
13932 18 42 15 全国のうちでヨブの娘たちほど美しい女はなかった。父はその兄弟たちと同様に嗣業を彼らにも与えた。
13933 18 42 16 この後、ヨブは百四十年生きながらえて、その子とその孫と四代までを見た。
13934 18 42 17 ヨブは年老い、日満ちて死んだ。
13935 19 1 1 悪しき者のはかりごとに歩まず、罪びとの道に立たず、あざける者の座にすわらぬ人はさいわいである。
13936 19 1 2 このような人は主のおきてをよろこび、昼も夜もそのおきてを思う。
13937 19 1 3 このような人は流れのほとりに植えられた木の時が来ると実を結び、その葉もしぼまないように、そのなすところは皆栄える。
13938 19 1 4 悪しき者はそうでない、風の吹き去るもみがらのようだ。
13939 19 1 5 それゆえ、悪しき者はさばきに耐えない。罪びとは正しい者のつどいに立つことができない。
13940 19 1 6 主は正しい者の道を知られる。しかし、悪しき者の道は滅びる。
13941 19 2 1 なにゆえ、もろもろの国びとは騒ぎたち、もろもろの民はむなしい事をたくらむのか。
13942 19 2 2 地のもろもろの王は立ち構え、もろもろのつかさはともに、はかり、主とその油そそがれた者とに逆らって言う、
13943 19 2 3 「われらは彼らのかせをこわし、彼らのきずなを解き捨てるであろう」と。
13944 19 2 4 天に座する者は笑い、主は彼らをあざけられるであろう。
13945 19 2 5 そして主は憤りをもって彼らに語り、激しい怒りをもって彼らを恐れ惑わせて言われる、
13946 19 2 6 「わたしはわが王を聖なる山シオンに立てた」と。
13947 19 2 7 わたしは主の詔をのべよう。主はわたしに言われた、「おまえはわたしの子だ。きょう、わたしはおまえを生んだ。
13948 19 2 8 わたしに求めよ、わたしはもろもろの国を嗣業としておまえに与え、地のはてまでもおまえの所有として与える。
13949 19 2 9 おまえは鉄のつえをもって彼らを打ち破り、陶工の作る器物のように彼らを打ち砕くであろう」と。
13950 19 2 10 それゆえ、もろもろの王よ、賢くあれ、地のつかさらよ、戒めをうけよ。
13951 19 2 11 恐れをもって主に仕え、おののきをもって
13952 19 2 12 その足に口づけせよ。さもないと主は怒って、あなたがたを道で滅ぼされるであろう、その憤りがすみやかに燃えるからである。すべて主に寄り頼む者はさいわいである。
13953 19 3 1 主よ、わたしに敵する者のいかに多いことでしょう。わたしに逆らって立つ者が多く、
13954 19 3 2 「彼には神の助けがない」と、わたしについて言う者が多いのです。〔セラ
13955 19 3 3 しかし主よ、あなたはわたしを囲む盾、わが栄え、わたしの頭を、もたげてくださるかたです。
13956 19 3 4 わたしが声をあげて主を呼ばわると、主は聖なる山からわたしに答えられる。〔セラ
13957 19 3 5 わたしはふして眠り、また目をさます。主がわたしをささえられるからだ。
13958 19 3 6 わたしを囲んで立ち構えるちよろずの民をもわたしは恐れない。
13959 19 3 7 主よ、お立ちください。わが神よ、わたしをお救いください。あなたはわたしのすべての敵のほおを打ち、悪しき者の歯を折られるのです。
13960 19 3 8 救は主のものです。どうかあなたの祝福があなたの民の上にありますように。〔セラ
13961 19 4 1 わたしの義を助け守られる神よ、わたしが呼ばわる時、お答えください。あなたはわたしが悩んでいた時、わたしをくつろがせてくださいました。わたしをあわれみ、わたしの祈をお聞きください。
13962 19 4 2 人の子らよ、いつまでわたしの誉をはずかしめるのか。いつまでむなしい言葉を愛し、偽りを慕い求めるのか。〔セラ
13963 19 4 3 しかしあなたがたは知るがよい、主は神を敬う人をご自分のために聖別されたことを。主はわたしが呼ばわる時におききくださる。
13964 19 4 4 あなたがたは怒っても、罪を犯してはならない。床の上で静かに自分の心に語りなさい。〔セラ
13965 19 4 5 義のいけにえをささげて主に寄り頼みなさい。
13966 19 4 6 多くの人は言う、「どうか、わたしたちに良い事が見られるように。主よ、どうか、み顔の光をわたしたちの上に照されるように」と。
13967 19 4 7 あなたがわたしの心にお与えになった喜びは、穀物と、ぶどう酒の豊かな時の喜びにまさるものでした。
13968 19 4 8 わたしは安らかに伏し、また眠ります。主よ、わたしを安らかにおらせてくださるのは、ただあなただけです。
13969 19 5 1 主よ、わたしの言葉に耳を傾け、わたしの嘆きに、み心をとめてください。
13970 19 5 2 わが王、わが神よ、わたしの叫びの声をお聞きください。わたしはあなたに祈っています。
13971 19 5 3 主よ、朝ごとにあなたはわたしの声を聞かれます。わたしは朝ごとにあなたのためにいけにえを備えて待ち望みます。
13972 19 5 4 あなたは悪しき事を喜ばれる神ではない。悪人はあなたのもとに身を寄せることはできない。
13973 19 5 5 高ぶる者はあなたの目の前に立つことはできない。あなたはすべて悪を行う者を憎まれる。
13974 19 5 6 あなたは偽りを言う者を滅ぼされる。主は血を流す者と、人をだます者を忌みきらわれる。
13975 19 5 7 しかし、わたしはあなたの豊かないつくしみによって、あなたの家に入り、聖なる宮にむかって、かしこみ伏し拝みます。
13976 19 5 8 主よ、わたしのあだのゆえに、あなたの義をもってわたしを導き、わたしの前にあなたの道をまっすぐにしてください。
13977 19 5 9 彼らの口には真実がなく、彼らの心には滅びがあり、そののどは開いた墓、その舌はへつらいを言うのです。
13978 19 5 10 神よ、どうか彼らにその罪を負わせ、そのはかりごとによって、みずから倒れさせ、その多くのとがのゆえに彼らを追いだしてください。彼らはあなたにそむいたからです。
13979 19 5 11 しかし、すべてあなたに寄り頼む者を喜ばせ、とこしえに喜び呼ばわらせてください。また、み名を愛する者があなたによって喜びを得るように、彼らをお守りください。
13980 19 5 12 主よ、あなたは正しい者を祝福し、盾をもってするように、恵みをもってこれをおおい守られます。
13981 19 6 1 主よ、あなたの怒りをもって、わたしを責めず、あなたの激しい怒りをもって、わたしを懲しめないでください。
13982 19 6 2 主よ、わたしをあわれんでください。わたしは弱り衰えています。主よ、わたしをいやしてください。わたしの骨は悩み苦しんでいます。
13983 19 6 3 わたしの魂もまたいたく悩み苦しんでいます。主よ、あなたはいつまでお怒りになるのですか。
13984 19 6 4 主よ、かえりみて、わたしの命をお救いください。あなたのいつくしみにより、わたしをお助けください。
13985 19 6 5 死においては、あなたを覚えるものはなく、陰府においては、だれがあなたをほめたたえることができましょうか。
13986 19 6 6 わたしは嘆きによって疲れ、夜ごとに涙をもって、わたしのふしどをただよわせ、わたしのしとねをぬらした。
13987 19 6 7 わたしの目は憂いによって衰え、もろもろのあだのゆえに弱くなった。
13988 19 6 8 すべて悪を行う者よ、わたしを離れ去れ。主はわたしの泣く声を聞かれた。
13989 19 6 9 主はわたしの願いを聞かれた。主はわたしの祈をうけられる。
13990 19 6 10 わたしの敵は恥じて、いたく悩み苦しみ、彼らは退いて、たちどころに恥をうけるであろう。
13991 19 7 1 わが神、主よ、わたしはあなたに寄り頼みます。どうかすべての追い迫る者からわたしを救い、わたしをお助けください。
13992 19 7 2 さもないと彼らは、ししのように、わたしをかき裂き、助ける者の来ないうちに、引いて行くでしょう。
13993 19 7 3 わが神、主よ、もしわたしがこの事を行ったならば、もしわたしの手によこしまな事があるならば、
13994 19 7 4 もしわたしの友に悪をもって報いたことがあり、ゆえなく、敵のものを略奪したことがあるならば、
13995 19 7 5 敵にわたしを追い捕えさせ、わたしの命を地に踏みにじらせ、わたしの魂をちりにゆだねさせてください。〔セラ
13996 19 7 6 主よ、怒りをもって立ち、わたしの敵の憤りにむかって立ちあがり、わたしのために目をさましてください。あなたはさばきを命じられました。
13997 19 7 7 もろもろの民をあなたのまわりにつどわせ、その上なる高みくらにおすわりください。
13998 19 7 8 主はもろもろの民をさばかれます。主よ、わたしの義と、わたしにある誠実とに従って、わたしをさばいてください。
13999 19 7 9 どうか悪しき者の悪を断ち、正しき者を堅く立たせてください。義なる神よ、あなたは人の心と思いとを調べられます。
14000 19 7 10 わたしを守る盾は神である。神は心の直き者を救われる。
14001 19 7 11 神は義なるさばきびと、日ごとに憤りを起される神である。
14002 19 7 12 もし人が悔い改めないならば、神はそのつるぎをとぎ、その弓を張って構え、
14003 19 7 13 また死に至らせる武器を備え、その矢を火矢とされる。
14004 19 7 14 見よ、悪しき者は邪悪をはらみ、害毒をやどし、偽りを生む。
14005 19 7 15 彼は穴を掘って、それを深くし、みずから作った穴に陥る。
14006 19 7 16 その害毒は自分のかしらに帰り、その強暴は自分のこうべに下る。
14007 19 7 17 わたしは主にむかって、その義にふさわしい感謝をささげ、いと高き者なる主の名をほめ歌うであろう。
14008 19 8 1 主、われらの主よ、あなたの名は地にあまねく、いかに尊いことでしょう。あなたの栄光は天の上にあり、
14009 19 8 2 みどりごと、ちのみごとの口によって、ほめたたえられています。あなたは敵と恨みを晴らす者とを静めるため、あだに備えて、とりでを設けられました。
14010 19 8 3 わたしは、あなたの指のわざなる天を見、あなたが設けられた月と星とを見て思います。
14011 19 8 4 人は何者なので、これをみ心にとめられるのですか、人の子は何者なので、これを顧みられるのですか。
14012 19 8 5 ただ少しく人を神よりも低く造って、栄えと誉とをこうむらせ、
14013 19 8 6 これにみ手のわざを治めさせ、よろずの物をその足の下におかれました。
14014 19 8 7 すべての羊と牛、また野の獣、
14015 19 8 8 空の鳥と海の魚、海路を通うものまでも。
14016 19 8 9 主、われらの主よ、あなたの名は地にあまねく、いかに尊いことでしょう。
14017 19 9 1 わたしは心をつくして主に感謝し、あなたのくすしきみわざをことごとく宣べ伝えます。
14018 19 9 2 いと高き者よ、あなたによってわたしは喜びかつ楽しみ、あなたの名をほめ歌います。
14019 19 9 3 わたしの敵は退くとき、つまずき倒れてあなたの前に滅びました。
14020 19 9 4 あなたがわたしの正しい訴えを助け守られたからです。あなたはみくらに座して、正しいさばきをされました。
14021 19 9 5 あなたはもろもろの国民を責め、悪しき者を滅ぼし、永久に彼らの名を消し去られました。
14022 19 9 6 敵は絶えはてて、とこしえに滅び、あなたが滅ぼされたもろもろの町はその記憶さえ消えうせました。
14023 19 9 7 しかし主はとこしえに、み位に座し、さばきのために、みくらを設けられました。
14024 19 9 8 主は正義をもって世界をさばき、公平をもってもろもろの民をさばかれます。
14025 19 9 9 主はしえたげられる者のとりで、なやみの時のとりでです。
14026 19 9 10 み名を知る者はあなたに寄り頼みます。主よ、あなたを尋ね求める者をあなたは捨てられたことがないからです。
14027 19 9 11 シオンに住まわれる主にむかってほめうたい、そのみわざをもろもろの民のなかに宣べ伝えよ。
14028 19 9 12 血を流す者にあだを報いられる主は彼らを心にとめ、苦しむ者の叫びをお忘れにならないからです。
14029 19 9 13 主よ、わたしをあわれんでください。死の門からわたしを引きあげられる主よ、あだする者のわたしを悩ますのをみそなわしてください。
14030 19 9 14 そうすれば、わたしはあなたのすべての誉を述べ、シオンの娘の門で、あなたの救を喜ぶことができましょう。
14031 19 9 15 もろもろの国民は自分の作った穴に陥り、隠し設けた網に自分の足を捕えられる。
14032 19 9 16 主はみずからを知らせ、さばきを行われた。悪しき者は自分の手で作ったわなに捕えられる。〔ヒガヨン、セラ
14033 19 9 17 悪しき者、また神を忘れるもろもろの国民は陰府へ去って行く。
14034 19 9 18 貧しい者は常に忘れられるのではない。苦しむ者の望みはとこしえに滅びるのではない。
14035 19 9 19 主よ、立ちあがってください。人に勝利を得させず、もろもろの国民に、み前でさばきを受けさせてください。
14036 19 9 20 主よ、彼らに恐れを起させ、もろもろの国民に自分がただ、人であることを知らせてください。〔セラ
14037 19 10 1 主よ、なにゆえ遠く離れて立たれるのですか。なにゆえ悩みの時に身を隠されるのですか。
14038 19 10 2 悪しき者は高ぶって貧しい者を激しく責めます。どうぞ彼らがその企てたはかりごとにみずから捕えられますように。
14039 19 10 3 悪しき者は自分の心の願いを誇り、むさぼる者は主をのろい、かつ捨てる。
14040 19 10 4 悪しき者は誇り顔をして、神を求めない。その思いに、すべて「神はない」という。
14041 19 10 5 彼の道は常に栄え、あなたのさばきは彼を離れて高く、彼はそのすべてのあだを口先で吹く。
14042 19 10 6 彼は心の内に言う、「わたしは動かされることはなく、世々わざわいにあうことがない」と。
14043 19 10 7 その口はのろいと、欺きと、しえたげとに満ち、その舌の下には害毒と不正とがある。
14044 19 10 8 彼は村里の隠れ場におり、忍びやかな所で罪のない者を殺す。その目は寄るべなき者をうかがい、
14045 19 10 9 隠れ場にひそむししのように、ひそかに待ち伏せする。彼は貧しい者を捕えようと待ち伏せし、貧しい者を網にひきいれて捕える。
14046 19 10 10 寄るべなき者は彼の力によって打ちくじかれ、衰え、倒れる。
14047 19 10 11 彼は心のうちに言う、「神は忘れた、神はその顔を隠した、神は絶えて見ることはなかろう」と。
14048 19 10 12 主よ、立ちあがってください。神よ、み手をあげてください。苦しむ者を忘れないでください。
14049 19 10 13 なにゆえ、悪しき者は神を侮り、心のうちに「あなたはとがめることをしない」と言うのですか。
14050 19 10 14 あなたはみそなわし、悩みと苦しみとを見て、それをみ手に取られます。寄るべなき者はあなたに身をゆだねるのです。あなたはいつもみなしごを助けられました。
14051 19 10 15 悪しき者と悪を行う者の腕を折り、その悪を一つも残さないまでに探り出してください。
14052 19 10 16 主はとこしえに王でいらせられる。もろもろの国民は滅びて主の国から跡を断つでしょう。
14053 19 10 17 主よ、あなたは柔和な者の願いを聞き、その心を強くし、耳を傾けて、
14054 19 10 18 みなしごと、しえたげられる者とのためにさばきを行われます。地に属する人は再び人を脅かすことはないでしょう。
14055 19 11 1 わたしは主に寄り頼む。なにゆえ、あなたがたはわたしにむかって言うのか、「鳥のように山にのがれよ。
14056 19 11 2 見よ、悪しき者は、暗やみで、心の直き者を射ようと弓を張り、弦に矢をつがえている。
14057 19 11 3 基が取りこわされるならば、正しい者は何をなし得ようか」と。
14058 19 11 4 主はその聖なる宮にいまし、主のみくらは天にあり、その目は人の子らをみそなわし、そのまぶたは人の子らを調べられる。
14059 19 11 5 主は正しき者をも、悪しき者をも調べ、そのみ心は乱暴を好む者を憎まれる。
14060 19 11 6 主は悪しき者の上に炭火と硫黄とを降らせられる。燃える風は彼らがその杯にうくべきものである。
14061 19 11 7 主は正しくいまして、正しい事を愛されるからである。直き者は主のみ顔を仰ぎ見るであろう。
14062 19 12 1 主よ、お助けください。神を敬う人は絶え、忠信な者は人の子らのなかから消えうせました。
14063 19 12 2 人はみなその隣り人に偽りを語り、へつらいのくちびると、ふたごころとをもって語る。
14064 19 12 3 主はすべてのへつらいのくちびると、大きな事を語る舌とを断たれるように。
14065 19 12 4 彼らは言う、「わたしたちは舌をもって勝を得よう、わたしたちのくちびるはわたしたちのものだ、だれがわたしたちの主人であるか」と。
14066 19 12 5 主は言われる、「貧しい者がかすめられ、乏しい者が嘆くゆえに、わたしはいま立ちあがって、彼らをその慕い求める安全な所に置こう」と。
14067 19 12 6 主のことばは清き言葉である。地に設けた炉で練り、七たびきよめた銀のようである。
14068 19 12 7 主よ、われらを保ち、とこしえにこの人々から免れさせてください。
14069 19 12 8 卑しい事が人の子のなかにあがめられている時、悪しき者はいたる所でほしいままに歩いています。
14070 19 13 1 主よ、いつまでなのですか。とこしえにわたしをお忘れになるのですか。いつまで、み顔をわたしに隠されるのですか。
14071 19 13 2 いつまで、わたしは魂に痛みを負い、ひねもす心に悲しみをいだかなければならないのですか。いつまで敵はわたしの上にあがめられるのですか。
14072 19 13 3 わが神、主よ、みそなわして、わたしに答え、わたしの目を明らかにしてください。さもないと、わたしは死の眠りに陥り、
14073 19 13 4 わたしの敵は「わたしは敵に勝った」と言い、わたしのあだは、わたしの動かされることによって喜ぶでしょう。
14074 19 13 5 しかしわたしはあなたのいつくしみに信頼し、わたしの心はあなたの救を喜びます。
14075 19 13 6 主は豊かにわたしをあしらわれたゆえ、わたしは主にむかって歌います。
14076 19 14 1 愚かな者は心のうちに「神はない」と言う。彼らは腐れはて、憎むべき事をなし、善を行う者はない。
14077 19 14 2 主は天から人の子らを見おろして、賢い者、神をたずね求める者があるかないかを見られた。
14078 19 14 3 彼らはみな迷い、みなひとしく腐れた。善を行う者はない、ひとりもない。
14079 19 14 4 すべて悪を行う者は悟りがないのか。彼らは物食うようにわが民をくらい、また主を呼ぶことをしない。
14080 19 14 5 その時、彼らは大いに恐れた。神は正しい者のやからと共におられるからである。
14081 19 14 6 あなたがたは貧しい者の計画をはずかしめようとする。しかし主は彼の避け所である。
14082 19 14 7 どうか、シオンからイスラエルの救が出るように。主がその民の繁栄を回復されるとき、ヤコブは喜び、イスラエルは楽しむであろう。
14083 19 15 1 主よ、あなたの幕屋にやどるべき者はだれですか、あなたの聖なる山に住むべき者はだれですか。
14084 19 15 2 直く歩み、義を行い、心から真実を語る者、
14085 19 15 3 その舌をもってそしらず、その友に悪をなさず、隣り人に対するそしりを取りあげず、
14086 19 15 4 その目は神に捨てられた者を卑しめ、主を恐れる者を尊び、誓った事は自分の損害になっても変えることなく、
14087 19 15 5 利息をとって金銭を貸すことなく、まいないを取って罪のない者の不利をはかることをしない人である。これらの事を行う者はとこしえに動かされることはない。
14088 19 16 1 神よ、わたしをお守りください。わたしはあなたに寄り頼みます。
14089 19 16 2 わたしは主に言う、「あなたはわたしの主、あなたのほかにわたしの幸はない」と。
14090 19 16 3 地にある聖徒は、すべてわたしの喜ぶすぐれた人々である。
14091 19 16 4 おおよそ、ほかの神を選ぶ者は悲しみを増す。わたしは彼らのささげる血の灌祭を注がず、その名を口にとなえることをしない。
14092 19 16 5 主はわたしの嗣業、またわたしの杯にうくべきもの。あなたはわたしの分け前を守られる。
14093 19 16 6 測りなわは、わたしのために好ましい所に落ちた。まことにわたしは良い嗣業を得た。
14094 19 16 7 わたしにさとしをさずけられる主をほめまつる。夜はまた、わたしの心がわたしを教える。
14095 19 16 8 わたしは常に主をわたしの前に置く。主がわたしの右にいますゆえ、わたしは動かされることはない。
14096 19 16 9 このゆえに、わたしの心は楽しみ、わたしの魂は喜ぶ。わたしの身もまた安らかである。
14097 19 16 10 あなたはわたしを陰府に捨ておかれず、あなたの聖者に墓を見させられないからである。
14098 19 16 11 あなたはいのちの道をわたしに示される。あなたの前には満ちあふれる喜びがあり、あなたの右には、とこしえにもろもろの楽しみがある。
14099 19 17 1 主よ、正しい訴えを聞き、わたしの叫びにみ心をとめ、偽りのないくちびるから出るわたしの祈に耳を傾けてください。
14100 19 17 2 どうかわたしについての宣告がみ前から出て、あなたの目が公平をみられるように。
14101 19 17 3 あなたがわたしの心をためし、夜、わたしに臨み、わたしを試みられても、わたしのうちになんの悪い思いをも見いだされないでしょう。わたしの口も罪を犯しません。
14102 19 17 4 人のおこないの事をいえば、あなたのくちびるの言葉によって、わたしは不法な者の道を避けました。
14103 19 17 5 わたしの歩みはあなたの道に堅く立ち、わたしの足はすべることがなかったのです。
14104 19 17 6 神よ、わたしはあなたに呼ばわります。あなたはわたしに答えられます。どうか耳を傾けて、わたしの述べることをお聞きください。
14105 19 17 7 寄り頼む者をそのあだから右の手で救われる者よ、あなたのいつくしみを驚くばかりにあらわし、
14106 19 17 8 ひとみのようにわたしを守り、みつばさの陰にわたしを隠し、
14107 19 17 9 わたしをしえたげる悪しき者から、わたしを囲む恐ろしい敵から、のがれさせてください。
14108 19 17 10 彼らはその心を閉じて、あわれむことなく、その口をもって高ぶって語るのです。
14109 19 17 11 彼らはわたしを追いつめ、わたしを囲み、わたしを地に投げ倒さんと、その目をそそぎます。
14110 19 17 12 彼らはかき裂かんと、いらだつししのごとく、隠れた所にひそみ待つ子じしのようです。
14111 19 17 13 主よ、立ちあがって、彼らに立ちむかい、彼らを倒してください。つるぎをもって悪しき者からわたしのいのちをお救いください。
14112 19 17 14 主よ、み手をもって人々からわたしをお救いください。すなわち自分の分け前をこの世で受け、あなたの宝をもってその腹を満たされる世の人々からわたしをお救いください。彼らは多くの子に飽き足り、その富を幼な子に残すのです。
14113 19 17 15 しかしわたしは義にあって、み顔を見、目ざめる時、みかたちを見て、満ち足りるでしょう。
14114 19 18 1 わが力なる主よ、わたしはあなたを愛します。
14115 19 18 2 主はわが岩、わが城、わたしを救う者、わが神、わが寄り頼む岩、わが盾、わが救の角、わが高きやぐらです。
14116 19 18 3 わたしはほめまつるべき主に呼ばわって、わたしの敵から救われるのです。
14117 19 18 4 死の綱は、わたしを取り巻き、滅びの大水は、わたしを襲いました。
14118 19 18 5 陰府の綱は、わたしを囲み、死のわなは、わたしに立ちむかいました。
14119 19 18 6 わたしは悩みのうちに主に呼ばわり、わが神に叫び求めました。主はその宮からわたしの声を聞かれ、主にさけぶわたしの叫びがその耳に達しました。
14120 19 18 7 そのとき地は揺れ動き、山々の基は震い動きました。主がお怒りになったからです。
14121 19 18 8 煙はその鼻から立ちのぼり、火はその口から出て焼きつくし、炭はそれによって燃えあがりました。
14122 19 18 9 主は天をたれて下られ、暗やみがその足の下にありました。
14123 19 18 10 主はケルブに乗って飛び、風の翼をもってかけり、
14124 19 18 11 やみをおおいとして、自分のまわりに置き、水を含んだ暗い濃き雲をその幕屋とされました。
14125 19 18 12 そのみ前の輝きから濃き雲を破って、ひょうと燃える炭とが降ってきました。
14126 19 18 13 主はまた天に雷をとどろかせ、いと高き者がみ声を出されると、ひょうと燃える炭とが降ってきました。
14127 19 18 14 主は矢を放って彼らを散らし、いなずまをひらめかして彼らを打ち敗られました。
14128 19 18 15 主よ、そのとき、あなたのとがめと、あなたの鼻のいぶきとによって、海の底はあらわれ、地の基があらわになったのです。
14129 19 18 16 主は高い所からみ手を伸べて、わたしを捕え、大水からわたしを引きあげ、
14130 19 18 17 わたしの強い敵と、わたしを憎む者とからわたしを助け出されました。彼らはわたしにまさって強かったからです。
14131 19 18 18 彼らはわたしの災の日にわたしを襲いました。しかし主はわたしのささえとなられました。
14132 19 18 19 主はわたしを広い所につれ出し、わたしを喜ばれるがゆえに、わたしを助けられました。
14133 19 18 20 主はわたしの義にしたがってわたしに報い、わたしの手の清きにしたがってわたしに報いかえされました。
14134 19 18 21 わたしは主の道を守り、悪意をもって、わが神を離れたことがなかったのです、
14135 19 18 22 そのすべてのおきてはわたしの前にあって、わたしはその定めを捨てたことがなかったのです。
14136 19 18 23 わたしは主の前に欠けたところがなく、自分を守って罪を犯しませんでした。
14137 19 18 24 このゆえに主はわたしの義にしたがい、その目の前にわたしの手の清きにしたがってわたしに報いられました。
14138 19 18 25 あなたはいつくしみある者には、いつくしみある者となり、欠けたところのない者には、欠けたところのない者となり、
14139 19 18 26 清い者には、清い者となり、ひがんだ者には、ひがんだ者となられます。
14140 19 18 27 あなたは苦しんでいる民を救われますが、高ぶる目をひくくされるのです。
14141 19 18 28 あなたはわたしのともしびをともし、わが神、主はわたしのやみを照されます。
14142 19 18 29 まことに、わたしはあなたによって敵軍を打ち破り、わが神によって城壁をとび越えることができます。
14143 19 18 30 この神こそ、その道は完全であり、主の言葉は真実です。主はすべて寄り頼む者の盾です。
14144 19 18 31 主のほかに、だれが神でしょうか。われらの神のほかに、だれが岩でしょうか。
14145 19 18 32 神はわたしに力を帯びさせ、わたしの道を安全にされました。
14146 19 18 33 神はわたしの足をめじかの足のようにされ、わたしを高い所に安全に立たせ、
14147 19 18 34 わたしの手を戦いに慣らされたので、わたしの腕は青銅の弓をもひくことができます。
14148 19 18 35 あなたはその救の盾をわたしに与え、あなたの右の手はわたしをささえ、あなたの助けはわたしを大いなる者とされました。
14149 19 18 36 あなたがわたしの歩む所を広くされたので、わたしの足はすべらなかったのです。
14150 19 18 37 わたしは敵を追って、これに追いつき、これを滅ぼしつくすまでは帰らなかったのです。
14151 19 18 38 わたしが彼らを突き通したので、彼らは立ちあがることができず、わたしの足もとに倒れました。
14152 19 18 39 あなたは戦いのためにわたしに力を帯びさせ、わたしに立ち向かう者らをわたしのもとに、かがませられました。
14153 19 18 40 あなたは敵にその後をわたしに向けさせられたので、わたしは自分を憎む者を滅ぼしました。
14154 19 18 41 彼らは助けを叫び求めたが、救う者はなく、主にむかって叫んだけれども、彼らに答えられなかったのです。
14155 19 18 42 わたしは彼らを風の前のちりのように細かに砕き、ちまたの泥のように打ち捨てました。
14156 19 18 43 あなたは民の争いからわたしを救い、わたしをもろもろの国民のかしらとされました。わたしの知らなかった民がわたしに仕えました。
14157 19 18 44 彼らはわたしの事を聞くと、ただちにわたしに従い、異邦の人々はきて、わたしにへつらいました。
14158 19 18 45 異邦の人々は打ちしおれて、その城から震えながら出てきました。
14159 19 18 46 主は生きておられます。わが岩はほむべきかな。わが救の神はあがむべきかな。
14160 19 18 47 神はわたしにあだを報いさせ、もろもろの民をわたしのもとに従わせ、
14161 19 18 48 わたしの敵からわたしを救い出されました。まことに、あなたはわたしに逆らって起りたつ者の上にわたしをあげ、不法の人からわたしを救い出されました。
14162 19 18 49 このゆえに主よ、わたしはもろもろの国民のなかであなたをたたえ、あなたのみ名をほめ歌います。
14163 19 18 50 主はその王に大いなる勝利を与え、その油そそがれた者に、ダビデとその子孫とに、とこしえにいつくしみを加えられるでしょう。
14164 19 19 1 もろもろの天は神の栄光をあらわし、大空はみ手のわざをしめす。
14165 19 19 2 この日は言葉をかの日につたえ、この夜は知識をかの夜につげる。
14166 19 19 3 話すことなく、語ることなく、その声も聞えないのに、
14167 19 19 4 その響きは全地にあまねく、その言葉は世界のはてにまで及ぶ。神は日のために幕屋を天に設けられた。
14168 19 19 5 日は花婿がその祝のへやから出てくるように、また勇士が競い走るように、その道を喜び走る。
14169 19 19 6 それは天のはてからのぼって、天のはてにまで、めぐって行く。その暖まりをこうむらないものはない。
14170 19 19 7 主のおきては完全であって、魂を生きかえらせ、主のあかしは確かであって、無学な者を賢くする。
14171 19 19 8 主のさとしは正しくて、心を喜ばせ、主の戒めはまじりなくて、眼を明らかにする。
14172 19 19 9 主を恐れる道は清らかで、とこしえに絶えることがなく、主のさばきは真実であって、ことごとく正しい。
14173 19 19 10 これらは金よりも、多くの純金よりも慕わしく、また蜜よりも、蜂の巣のしたたりよりも甘い。
14174 19 19 11 あなたのしもべは、これらによって戒めをうける。これらを守れば、大いなる報いがある。
14175 19 19 12 だれが自分のあやまちを知ることができましようか。どうか、わたしを隠れたとがから解き放ってください。
14176 19 19 13 また、あなたのしもべを引きとめて、故意の罪を犯させず、これに支配されることのないようにしてください。そうすれば、わたしはあやまちのない者となって、大いなるとがを免れることができるでしょう。
14177 19 19 14 わが岩、わがあがないぬしなる主よ、どうか、わたしの口の言葉と、心の思いがあなたの前に喜ばれますように。
14178 19 20 1 主が悩みの日にあなたに答え、ヤコブの神のみ名があなたを守られるように。
14179 19 20 2 主が聖所から助けをあなたにおくり、シオンからあなたをささえ、
14180 19 20 3 あなたのもろもろの供え物をみ心にとめ、あなたの燔祭をうけられるように。〔セラ
14181 19 20 4 主があなたの心の願いをゆるし、あなたのはかりごとをことごとく遂げさせられるように。
14182 19 20 5 われらがあなたの勝利を喜びうたい、われらの神のみ名によって旗を揚げるように。主があなたの求めをすべて遂げさせられるように。
14183 19 20 6 今わたしは知る、主はその油そそがれた者を助けられることを。主はその右の手による大いなる勝利をもってその聖なる天から彼に答えられるであろう。
14184 19 20 7 ある者は戦車を誇り、ある者は馬を誇る。しかしわれらは、われらの神、主のみ名を誇る。
14185 19 20 8 彼らはかがみ、また倒れる。しかしわれらは起きて、まっすぐに立つ。
14186 19 20 9 主よ、王に勝利をおさずけください。われらが呼ばわる時、われらにお答えください。
14187 19 21 1 主よ、王はあなたの力によって喜び、あなたの助けによって、いかに大きな喜びをもつことでしょう。
14188 19 21 2 あなたは彼の心の願いをゆるし、そのくちびるの求めをいなまれなかった。〔セラ
14189 19 21 3 あなたは大いなる恵みをもって彼を迎え、そのかしらに純金の冠をいただかせられる。
14190 19 21 4 彼がいのちを求めると、あなたはそれを彼にさずけ、世々限りなくそのよわいを長くされた。
14191 19 21 5 あなたの助けによって彼の栄光は大きい。あなたは誉と威厳とを彼に与えられる。
14192 19 21 6 まことに、あなたは彼をとこしえに恵まれた者とし、み前に喜びをもって楽しませられる。
14193 19 21 7 王は主に信頼するゆえ、いと高き者のいつくしみをこうむって、動かされることはない。
14194 19 21 8 あなたの手はもろもろの敵を尋ね出し、あなたの右の手はあなたを憎む者を尋ね出すであろう。
14195 19 21 9 あなたが怒る時、彼らを燃える炉のようにするであろう。主はみ怒りによって彼らをのみつくされる。火は彼らを食いつくすであろう。
14196 19 21 10 あなたは彼らのすえを地から断ち、彼らの種を人の子らの中から滅ぼすであろう。
14197 19 21 11 たとい彼らがあなたにむかって悪い事を企て、悪いはかりごとを思いめぐらしても、なし遂げることはできない。
14198 19 21 12 あなたは彼らを逃げ走らせ、あなたの弓弦を張って、彼らの顔をねらうであろう。
14199 19 21 13 主よ、力をあらわして、みずからを高くしてください。われらはあなたの大能をうたい、かつほめたたえるでしょう。
14200 19 22 1 わが神、わが神、なにゆえわたしを捨てられるのですか。なにゆえ遠く離れてわたしを助けず、わたしの嘆きの言葉を聞かれないのですか。
14201 19 22 2 わが神よ、わたしが昼よばわっても、あなたは答えられず、夜よばわっても平安を得ません。
14202 19 22 3 しかしイスラエルのさんびの上に座しておられるあなたは聖なるおかたです。
14203 19 22 4 われらの先祖たちはあなたに信頼しました。彼らが信頼したので、あなたは彼らを助けられました。
14204 19 22 5 彼らはあなたに呼ばわって救われ、あなたに信頼して恥をうけなかったのです。
14205 19 22 6 しかし、わたしは虫であって、人ではない。人にそしられ、民に侮られる。
14206 19 22 7 すべてわたしを見る者は、わたしをあざ笑い、くちびるを突き出し、かしらを振り動かして言う、
14207 19 22 8 「彼は主に身をゆだねた、主に彼を助けさせよ。主は彼を喜ばれるゆえ、主に彼を救わせよ」と。
14208 19 22 9 しかし、あなたはわたしを生れさせ、母のふところにわたしを安らかに守られた方です。
14209 19 22 10 わたしは生れた時から、あなたにゆだねられました。母の胎を出てからこのかた、あなたはわたしの神でいらせられました。
14210 19 22 11 わたしを遠く離れないでください。悩みが近づき、助ける者がないのです。
14211 19 22 12 多くの雄牛はわたしを取り巻き、バシャンの強い雄牛はわたしを囲み、
14212 19 22 13 かき裂き、ほえたけるししのように、わたしにむかって口を開く。
14213 19 22 14 わたしは水のように注ぎ出され、わたしの骨はことごとくはずれ、わたしの心臓は、ろうのように、胸のうちで溶けた。
14214 19 22 15 わたしの力は陶器の破片のようにかわき、わたしの舌はあごにつく。あなたはわたしを死のちりに伏させられる。
14215 19 22 16 まことに、犬はわたしをめぐり、悪を行う者の群れがわたしを囲んで、わたしの手と足を刺し貫いた。
14216 19 22 17 わたしは自分の骨をことごとく数えることができる。彼らは目をとめて、わたしを見る。
14217 19 22 18 彼らは互にわたしの衣服を分け、わたしの着物をくじ引にする。
14218 19 22 19 しかし主よ、遠く離れないでください。わが力よ、速く来てわたしをお助けください。
14219 19 22 20 わたしの魂をつるぎから、わたしのいのちを犬の力から助け出してください。
14220 19 22 21 わたしをししの口から、苦しむわが魂を野牛の角から救い出してください。
14221 19 22 22 わたしはあなたのみ名を兄弟たちに告げ、会衆の中であなたをほめたたえるでしょう。
14222 19 22 23 主を恐れる者よ、主をほめたたえよ。ヤコブのもろもろのすえよ、主をあがめよ。イスラエルのもろもろのすえよ、主をおじおそれよ。
14223 19 22 24 主が苦しむ者の苦しみをかろんじ、いとわれず、またこれにみ顔を隠すことなく、その叫ぶときに聞かれたからである。
14224 19 22 25 大いなる会衆の中で、わたしのさんびはあなたから出るのです。わたしは主を恐れる者の前で、わたしの誓いを果します。
14225 19 22 26 貧しい者は食べて飽くことができ、主を尋ね求める者は主をほめたたえるでしょう。どうか、あなたがたの心がとこしえに生きるように。
14226 19 22 27 地のはての者はみな思い出して、主に帰り、もろもろの国のやからはみな、み前に伏し拝むでしょう。
14227 19 22 28 国は主のものであって、主はもろもろの国民を統べ治められます。
14228 19 22 29 地の誇り高ぶる者はみな主を拝み、ちりに下る者も、おのれを生きながらえさせえない者も、みなそのみ前にひざまずくでしょう。
14229 19 22 30 子々孫々、主に仕え、人々は主のことをきたるべき代まで語り伝え、
14230 19 22 31 主がなされたその救を後に生れる民にのべ伝えるでしょう。
14231 19 23 1 主はわたしの牧者であって、わたしには乏しいことがない。
14232 19 23 2 主はわたしを緑の牧場に伏させ、いこいのみぎわに伴われる。
14233 19 23 3 主はわたしの魂をいきかえらせ、み名のためにわたしを正しい道に導かれる。
14234 19 23 4 たといわたしは死の陰の谷を歩むとも、わざわいを恐れません。あなたがわたしと共におられるからです。あなたのむちと、あなたのつえはわたしを慰めます。
14235 19 23 5 あなたはわたしの敵の前で、わたしの前に宴を設け、わたしのこうべに油をそそがれる。わたしの杯はあふれます。
14236 19 23 6 わたしの生きているかぎりは必ず恵みといつくしみとが伴うでしょう。わたしはとこしえに主の宮に住むでしょう。
14237 19 24 1 地と、それに満ちるもの、世界と、そのなかに住む者とは主のものである。
14238 19 24 2 主はその基を大海のうえにすえ、大川のうえに定められた。
14239 19 24 3 主の山に登るべき者はだれか。その聖所に立つべき者はだれか。
14240 19 24 4 手が清く、心のいさぎよい者、その魂がむなしい事に望みをかけない者、偽って誓わない者こそ、その人である。
14241 19 24 5 このような人は主から祝福をうけ、その救の神から義をうける。
14242 19 24 6 これこそ主を慕う者のやから、ヤコブの神の、み顔を求める者のやからである。〔セラ
14243 19 24 7 門よ、こうべをあげよ。とこしえの戸よ、あがれ。栄光の王がはいられる。
14244 19 24 8 栄光の王とはだれか。強く勇ましい主、戦いに勇ましい主である。
14245 19 24 9 門よ、こうべをあげよ。とこしえの戸よ、あがれ。栄光の王がはいられる。
14246 19 24 10 この栄光の王とはだれか。万軍の主、これこそ栄光の王である。〔セラ
14247 19 25 1 主よ、わが魂はあなたを仰ぎ望みます。
14248 19 25 2 わが神よ、わたしはあなたに信頼します。どうか、わたしをはずかしめず、わたしの敵を勝ち誇らせないでください。
14249 19 25 3 すべてあなたを待ち望む者をはずかしめず、みだりに信義にそむく者をはずかしめてください。
14250 19 25 4 主よ、あなたの大路をわたしに知らせ、あなたの道をわたしに教えてください。
14251 19 25 5 あなたのまことをもって、わたしを導き、わたしを教えてください。あなたはわが救の神です。わたしはひねもすあなたを待ち望みます。
14252 19 25 6 主よ、あなたのあわれみと、いつくしみとを思い出してください。これはいにしえから絶えることがなかったのです。
14253 19 25 7 わたしの若き時の罪と、とがとを思い出さないでください。主よ、あなたの恵みのゆえに、あなたのいつくしみにしたがって、わたしを思い出してください。
14254 19 25 8 主は恵みふかく、かつ正しくいらせられる。それゆえ、主は道を罪びとに教え、
14255 19 25 9 へりくだる者を公義に導き、へりくだる者にその道を教えられる。
14256 19 25 10 主のすべての道はその契約とあかしとを守る者にはいつくしみであり、まことである。
14257 19 25 11 主よ、み名のために、わたしの罪をおゆるしください。わたしの罪は大きいのです。
14258 19 25 12 主を恐れる人はだれか。主はその選ぶべき道をその人に教えられる。
14259 19 25 13 彼はみずからさいわいに住まい、そのすえは地を継ぐであろう。
14260 19 25 14 主の親しみは主をおそれる者のためにあり、主はその契約を彼らに知らせられる。
14261 19 25 15 わたしの目は常に主に向かっている。主はわたしの足を網から取り出されるからである。
14262 19 25 16 わたしをかえりみ、わたしをあわれんでください。わたしはひとりわびしく苦しんでいるのです。
14263 19 25 17 わたしの心の悩みをゆるめ、わたしを苦しみから引き出してください。
14264 19 25 18 わたしの苦しみ悩みをかえりみ、わたしのすべての罪をおゆるしください。
14265 19 25 19 わたしの敵がいかに多く、かつ激しい憎しみをもってわたしを憎んでいるかをごらんください。
14266 19 25 20 わたしの魂を守り、わたしをお助けください。わたしをはずかしめないでください。わたしはあなたに寄り頼んでいます。
14267 19 25 21 どうか、誠実と潔白とが、わたしを守ってくれるように。わたしはあなたを待ち望んでいます。
14268 19 25 22 神よ、イスラエルをあがない、すべての悩みから救いだしてください。
14269 19 26 1 主よ、わたしをさばいてください。わたしは誠実に歩み、迷うことなく主に信頼しています。
14270 19 26 2 主よ、わたしをためし、わたしを試み、わたしの心と思いとを練りきよめてください。
14271 19 26 3 あなたのいつくしみはわたしの目の前にあり、わたしはあなたのまことによって歩みました。
14272 19 26 4 わたしは偽る人々と共にすわらず、偽善者と交わらず、
14273 19 26 5 悪を行う者のつどいを憎み、悪しき者と共にすわることをしません。
14274 19 26 6 主よ、わたしは手を洗って、罪のないことを示し、あなたの祭壇をめぐって、
14275 19 26 7 感謝の歌を声高くうたい、あなたのくすしきみわざをことごとくのべ伝えます。
14276 19 26 8 主よ、わたしはあなたの住まわれる家と、あなたの栄光のとどまる所とを愛します。
14277 19 26 9 どうか、わたしを罪びとと共に、わたしのいのちを、血を流す人々と共に、取り去らないでください。
14278 19 26 10 彼らの手には悪い企てがあり、彼らの右の手は、まいないで満ちています。
14279 19 26 11 しかしわたしは誠実に歩みます。わたしをあがない、わたしをあわれんでください。
14280 19 26 12 わたしの足は平らかな所に立っています。わたしは会衆のなかで主をたたえましょう。
14281 19 27 1 主はわたしの光、わたしの救だ、わたしはだれを恐れよう。主はわたしの命のとりでだ。わたしはだれをおじ恐れよう。
14282 19 27 2 わたしのあだ、わたしの敵である悪を行う者どもが、襲ってきて、わたしをそしり、わたしを攻めるとき、彼らはつまずき倒れるであろう。
14283 19 27 3 たとい軍勢が陣営を張って、わたしを攻めても、わたしの心は恐れない。たといいくさが起って、わたしを攻めても、なおわたしはみずから頼むところがある。
14284 19 27 4 わたしは一つの事を主に願った、わたしはそれを求める。わたしの生きるかぎり、主の家に住んで、主のうるわしきを見、その宮で尋ねきわめることを。
14285 19 27 5 それは主が悩みの日に、その仮屋のうちにわたしを潜ませ、その幕屋の奥にわたしを隠し、岩の上にわたしを高く置かれるからである。
14286 19 27 6 今わたしのこうべはわたしをめぐる敵の上に高くあげられる。それゆえ、わたしは主の幕屋で喜びの声をあげて、いけにえをささげ、歌って、主をほめたたえるであろう。
14287 19 27 7 主よ、わたしが声をあげて呼ばわるとき、聞いて、わたしをあわれみ、わたしに答えてください。
14288 19 27 8 あなたは仰せられました、「わが顔をたずね求めよ」と。あなたにむかって、わたしの心は言います、「主よ、わたしはみ顔をたずね求めます」と。
14289 19 27 9 み顔をわたしに隠さないでください。怒ってあなたのしもべを退けないでください。あなたはわたしの助けです。わが救の神よ、わたしを追い出し、わたしを捨てないでください。
14290 19 27 10 たとい父母がわたしを捨てても、主がわたしを迎えられるでしょう。
14291 19 27 11 主よ、あなたの道をわたしに教え、わたしのあだのゆえに、わたしを平らかな道に導いてください。
14292 19 27 12 わたしのあだの望むがままに、わたしを引き渡さないでください。偽りのあかしをする者がわたしに逆らって起り、暴言を吐くからです。
14293 19 27 13 わたしは信じます、生ける者の地でわたしは主の恵みを見ることを。
14294 19 27 14 主を待ち望め、強く、かつ雄々しくあれ。主を待ち望め。
14295 19 28 1 主よ、わたしはあなたにむかって呼ばわります。わが岩よ、わたしにむかって耳しいとならないでください。もしあなたが黙っておられるならば、おそらく、わたしは墓に下る者と等しくなるでしょう。
14296 19 28 2 わたしがあなたにむかって助けを求め、あなたの至聖所にむかって手をあげるとき、わたしの願いの声を聞いてください。
14297 19 28 3 悪しき者および悪を行う者らと共にわたしを引き行かないでください。彼らはその隣り人とむつまじく語るけれども、その心には害悪をいだく者です。
14298 19 28 4 どうぞ、そのわざにしたがい、その悪しき行いにしたがって彼らに報い、その手のわざにしたがって彼らに報い、その受くべき罰を彼らに与えてください。
14299 19 28 5 彼らは主のもろもろのみわざと、み手のわざとを顧みないゆえに、主は彼らを倒して、再び建てられることはない。
14300 19 28 6 主はほむべきかな。主はわたしの願いの声を聞かれた。
14301 19 28 7 主はわが力、わが盾。わたしの心は主に寄り頼む。わたしは助けを得たので、わたしの心は大いに喜び、歌をもって主をほめたたえる。
14302 19 28 8 主はその民の力、その油そそがれた者の救のとりでである。
14303 19 28 9 どうぞ、あなたの民を救い、あなたの嗣業を恵み、彼らの牧者となって、とこしえに彼らをいだき導いてください。
14304 19 29 1 神の子らよ、主に帰せよ、栄光と力とを主に帰せよ。
14305 19 29 2 み名の栄光を主に帰せよ、聖なる装いをもって主を拝め。
14306 19 29 3 主のみ声は水の上にあり、栄光の神は雷をとどろかせ、主は大水の上におられる。
14307 19 29 4 主のみ声は力があり、主のみ声は威厳がある。
14308 19 29 5 主のみ声は香柏を折り砕き、主はレバノンの香柏を折り砕かれる。
14309 19 29 6 主はレバノンを子牛のように踊らせ、シリオンを若い野牛のように踊らされる。
14310 19 29 7 主のみ声は炎をひらめかす。
14311 19 29 8 主のみ声は荒野を震わせ、主はカデシの荒野を震わされる。
14312 19 29 9 主のみ声はかしの木を巻きあげ、また林を裸にする。その宮で、すべてのものは呼ばわって言う、「栄光」と。
14313 19 29 10 主は洪水の上に座し、主はみくらに座して、とこしえに王であらせられる。
14314 19 29 11 主はその民に力を与え、平安をもってその民を祝福されるであろう。
14315 19 30 1 主よ、わたしはあなたをあがめます。あなたはわたしを引きあげ、敵がわたしの事によって喜ぶのを、ゆるされなかったからです。
14316 19 30 2 わが神、主よ、わたしがあなたにむかって助けを叫び求めると、あなたはわたしをいやしてくださいました。
14317 19 30 3 主よ、あなたはわたしの魂を陰府からひきあげ、墓に下る者のうちから、わたしを生き返らせてくださいました。
14318 19 30 4 主の聖徒よ、主をほめうたい、その聖なるみ名に感謝せよ。
14319 19 30 5 その怒りはただつかのまで、その恵みはいのちのかぎり長いからである。夜はよもすがら泣きかなしんでも、朝と共に喜びが来る。
14320 19 30 6 わたしは安らかな時に言った、「わたしは決して動かされることはない」と。
14321 19 30 7 主よ、あなた恵みをもって、わたしをゆるがない山のように堅くされました。あなたがみ顔をかくされたので、わたしはおじ惑いました。
14322 19 30 8 主よ、わたしはあなたに呼ばわりました。ひたすら主に請い願いました、
14323 19 30 9 「わたしが墓に下るならば、わたしの死になんの益があるでしょうか。ちりはあなたをほめたたえるでしょうか。あなたのまことをのべ伝えるでしょうか。
14324 19 30 10 主よ、聞いてください、わたしをあわれんでください。主よ、わたしの助けとなってください」と。
14325 19 30 11 あなたはわたしのために、嘆きを踊りにかえ、荒布を解き、喜びをわたしの帯とされました。
14326 19 30 12 これはわたしの魂があなたをほめたたえて、口をつぐむことのないためです。わが神、主よ、わたしはとこしえにあなたに感謝します。
14327 19 31 1 主よ、わたしはあなたに寄り頼みます。とこしえにわたしをはずかしめず、あなたの義をもってわたしをお助けください。
14328 19 31 2 あなたの耳をわたしに傾けて、すみやかにわたしをお救いください。わたしのためにのがれの岩となり、わたしを救う堅固な城となってください。
14329 19 31 3 まことに、あなたはわたしの岩、わたしの城です。み名のためにわたしを引き、わたしを導き、
14330 19 31 4 わたしのためにひそかに設けた網からわたしを取り出してください。あなたはわたしの避け所です。
14331 19 31 5 わたしは、わが魂をみ手にゆだねます。主、まことの神よ、あなたはわたしをあがなわれました。
14332 19 31 6 あなたはむなしい偶像に心を寄せる者を憎まれます。しかしわたしは主に信頼し、
14333 19 31 7 あなたのいつくしみを喜び楽しみます。あなたがわたしの苦しみをかえりみ、わたしの悩みにみこころをとめ、
14334 19 31 8 わたしを敵の手にわたさず、わたしの足を広い所に立たせられたからです。
14335 19 31 9 主よ、わたしをあわれんでください。わたしは悩み苦しんでいます。わたしの目は憂いによって衰え、わたしの魂も、からだもまた衰えました。
14336 19 31 10 わたしのいのちは悲しみによって消えゆき、わたしの年は嘆きによって消えさり、わたしの力は苦しみによって尽き、わたしの骨は枯れはてました。
14337 19 31 11 わたしはすべてのあだにそしられる者となり、隣り人には恐れられ、知り人には恐るべき者となり、ちまたでわたしを見る者は避けて逃げます。
14338 19 31 12 わたしは死んだ者のように人の心に忘れられ、破れた器のようになりました。
14339 19 31 13 まことに、わたしは多くの人のささやくのを聞きます、「至る所に恐るべきことがある」と。彼らはわたしに逆らってともに計り、わたしのいのちを取ろうと、たくらむのです。
14340 19 31 14 しかし、主よ、わたしはあなたに信頼して、言います、「あなたはわたしの神である」と。
14341 19 31 15 わたしの時はあなたのみ手にあります。わたしをわたしの敵の手と、わたしを責め立てる者から救い出してください。
14342 19 31 16 み顔をしもべの上に輝かせ、いつくしみをもってわたしをお救いください。
14343 19 31 17 主よ、わたしはあなたに呼ばわります、わたしをはずかしめないでください。悪しき者に恥をうけさせ、彼らに声をあげさせずに陰府に行かせてください。
14344 19 31 18 高ぶりと侮りとをもって正しい者をみだりにそしる偽りのくちびるをつぐませてください。
14345 19 31 19 あなたを恐れる者のためにたくわえ、あなたに寄り頼む者のために人の子らの前に施されたあなたの恵みはいかに大いなるものでしょう。
14346 19 31 20 あなたは彼らをみ前のひそかな所に隠して人々のはかりごとを免れさせ、また仮屋のうちに潜ませて舌の争いを避けさせられます。
14347 19 31 21 主はほむべきかな、包囲された町のようにわたしが囲まれたとき、主は驚くばかりに、いつくしみをわたしに示された。
14348 19 31 22 わたしは驚きあわてて言った、「わたしはあなたの目の前から断たれた」と。しかしわたしがあなたに助けを呼び求めたとき、わたしの願いを聞きいれられた。
14349 19 31 23 すべての聖徒よ、主を愛せよ。主は真実な者を守られるが、おごりふるまう者にはしたたかに報いられる。
14350 19 31 24 すべて主を待ち望む者よ、強くあれ、心を雄々しくせよ。
14351 19 32 1 そのとががゆるされ、その罪がおおい消される者はさいわいである。
14352 19 32 2 主によって不義を負わされず、その霊に偽りのない人はさいわいである。
14353 19 32 3 わたしが自分の罪を言いあらわさなかった時は、ひねもす苦しみうめいたので、わたしの骨はふるび衰えた。
14354 19 32 4 あなたのみ手が昼も夜も、わたしの上に重かったからである。わたしの力は、夏のひでりによってかれるように、かれ果てた。〔セラ
14355 19 32 5 わたしは自分の罪をあなたに知らせ、自分の不義を隠さなかった。わたしは言った、「わたしのとがを主に告白しよう」と。その時あなたはわたしの犯した罪をゆるされた。〔セラ
14356 19 32 6 このゆえに、すべて神を敬う者はあなたに祈る。大水の押し寄せる悩みの時にもその身に及ぶことはない。
14357 19 32 7 あなたはわたしの隠れ場であって、わたしを守って悩みを免れさせ、救をもってわたしを囲まれる。〔セラ
14358 19 32 8 わたしはあなたを教え、あなたの行くべき道を示し、わたしの目をあなたにとめて、さとすであろう。
14359 19 32 9 あなたはさとりのない馬のようであってはならない。また騾馬のようであってはならない。彼らはくつわ、たづなをもっておさえられなければ、あなたに従わないであろう。
14360 19 32 10 悪しき者は悲しみが多い。しかし主に信頼する者はいつくしみで囲まれる。
14361 19 32 11 正しき者よ、主によって喜び楽しめ、すべて心の直き者よ、喜びの声を高くあげよ。
14362 19 33 1 正しき者よ、主によって喜べ、さんびは直き者にふさわしい。
14363 19 33 2 琴をもって主をさんびせよ、十弦の立琴をもって主をほめたたえよ。
14364 19 33 3 新しい歌を主にむかって歌い、喜びの声をあげて巧みに琴をかきならせ。
14365 19 33 4 主のみことばは直く、そのすべてのみわざは真実だからである。
14366 19 33 5 主は正義と公平とを愛される。地は主のいつくしみで満ちている。
14367 19 33 6 もろもろの天は主のみことばによって造られ、天の万軍は主の口の息によって造られた。
14368 19 33 7 主は海の水を水がめの中に集めるように集め、深い淵を倉におさめられた。
14369 19 33 8 全地は主を恐れ、世に住むすべての者は主を恐れかしこめ。
14370 19 33 9 主が仰せられると、そのようになり、命じられると、堅く立ったからである。
14371 19 33 10 主はもろもろの国のはかりごとをむなしくし、もろもろの民の企てをくじかれる。
14372 19 33 11 主のはかりごとはとこしえに立ち、そのみこころの思いは世々に立つ。
14373 19 33 12 主をおのが神とする国はさいわいである。主がその嗣業として選ばれた民はさいわいである。
14374 19 33 13 主は天から見おろされ、すべての人の子らを見、
14375 19 33 14 そのおられる所から地に住むすべての人をながめられる。
14376 19 33 15 主はすべて彼らの心を造り、そのすべてのわざに心をとめられる。
14377 19 33 16 王はその軍勢の多きによって救を得ない。勇士はその力の大いなるによって助けを得ない。
14378 19 33 17 馬は勝利に頼みとならない。その大いなる力も人を助けることはできない。
14379 19 33 18 見よ、主の目は主を恐れる者の上にあり、そのいつくしみを望む者の上にある。
14380 19 33 19 これは主が彼らの魂を死から救い、ききんの時にも生きながらえさせるためである。
14381 19 33 20 われらの魂は主を待ち望む。主はわれらの助け、われらの盾である。
14382 19 33 21 われらは主の聖なるみ名に信頼するがゆえに、われらの心は主にあって喜ぶ。
14383 19 33 22 主よ、われらが待ち望むように、あなたのいつくしみをわれらの上にたれてください。
14384 19 34 1 わたしは常に主をほめまつる。そのさんびはわたしの口に絶えない。
14385 19 34 2 わが魂は主によって誇る。苦しむ者はこれを聞いて喜ぶであろう。
14386 19 34 3 わたしと共に主をあがめよ、われらは共にみ名をほめたたえよう。
14387 19 34 4 わたしが主に求めたとき、主はわたしに答え、すべての恐れからわたしを助け出された。
14388 19 34 5 主を仰ぎ見て、光を得よ、そうすれば、あなたがたは、恥じて顔を赤くすることはない。
14389 19 34 6 この苦しむ者が呼ばわったとき、主は聞いて、すべての悩みから救い出された。
14390 19 34 7 主の使は主を恐れる者のまわりに陣をしいて彼らを助けられる。
14391 19 34 8 主の恵みふかきことを味わい知れ、主に寄り頼む人はさいわいである。
14392 19 34 9 主の聖徒よ、主を恐れよ、主を恐れる者には乏しいことがないからである。
14393 19 34 10 若きししは乏しくなって飢えることがある。しかし主を求める者は良き物に欠けることはない。
14394 19 34 11 子らよ、来てわたしに聞け、わたしは主を恐るべきことをあなたがたに教えよう。
14395 19 34 12 さいわいを見ようとして、いのちを慕い、ながらえることを好む人はだれか。
14396 19 34 13 あなたの舌をおさえて悪を言わせず、あなたのくちびるをおさえて偽りを言わすな。
14397 19 34 14 悪を離れて善をおこない、やわらぎを求めて、これを努めよ。
14398 19 34 15 主の目は正しい人をかえりみ、その耳は彼らの叫びに傾く。
14399 19 34 16 主のみ顔は悪を行う者にむかい、その記憶を地から断ち滅ぼされる。
14400 19 34 17 正しい者が助けを叫び求めるとき、主は聞いて、彼らをそのすべての悩みから助け出される。
14401 19 34 18 主は心の砕けた者に近く、たましいの悔いくずおれた者を救われる。
14402 19 34 19 正しい者には災が多い。しかし、主はすべてその中から彼を助け出される。
14403 19 34 20 主は彼の骨をことごとく守られる。その一つだに折られることはない。
14404 19 34 21 悪は悪しき者を殺す。正しい者を憎む者は罪に定められる。
14405 19 34 22 主はそのしもべらの命をあがなわれる。主に寄り頼む者はひとりだに罪に定められることはない。
14406 19 35 1 主よ、わたしと争う者とあらそい、わたしと戦う者と戦ってください。
14407 19 35 2 盾と大盾とを執って、わたしを助けるために立ちあがってください。
14408 19 35 3 やりと投げやりとを抜いて、わたしに追い迫る者に立ちむかい、「わたしはおまえの救である」と、わたしに言ってください。
14409 19 35 4 どうか、わたしの命を求める者をはずかしめ、いやしめ、わたしにむかって悪をたくらむ者を退け、あわてふためかせてください。
14410 19 35 5 彼らを風の前のもみがらのようにし、主の使に彼らを追いやらせてください。
14411 19 35 6 彼らの道を暗く、なめらかにし、主の使に彼らを追い行かせてください。
14412 19 35 7 彼らはゆえなくわたしのために網を隠し、ゆえなくわたしのために穴を掘ったからです。
14413 19 35 8 不意に滅びを彼らに臨ませ、みずから隠した網にとらえられ、彼らを滅びに陥らせてください。
14414 19 35 9 そのときわが魂は主によって喜び、その救をもって楽しむでしょう。
14415 19 35 10 わたしの骨はことごとく言うでしょう、「主よ、だれかあなたにたぐうべき者がありましょう。あなたは弱い者を強い者から助け出し、弱い者と貧しい者を、かすめ奪う者から助け出される方です」と。
14416 19 35 11 悪意のある証人が起って、わたしの知らない事をわたしに尋ねる。
14417 19 35 12 彼らは悪をもってわたしの善に報い、わが魂を寄るべなき者とした。
14418 19 35 13 しかし、わたしは彼らが病んだとき、荒布をまとい、断食してわが身を苦しめた。わたしは胸にこうべをたれて祈った、
14419 19 35 14 ちょうど、わが友、わが兄弟のために悲しんだかのように。わたしは母をいたむ者のように悲しみうなだれて歩きまわった。
14420 19 35 15 しかし彼らはわたしのつまずくとき、喜びつどい、ともに集まってわたしを責めた。わたしの知らない他国の者はわたしをののしってやめなかった。
14421 19 35 16 彼らはますます、けがす言葉をもってあざけり、わたしにむかって歯をかみならした。
14422 19 35 17 主よ、いつまであなたはながめておられますか、わたしを彼らの破壊から、わたしのいのちを若きししから救い出してください。
14423 19 35 18 わたしは大いなるつどいの中で、あなたに感謝し、多くの民の中で、あなたをほめたたえるでしょう。
14424 19 35 19 偽ってわたしの敵となった者どものわたしについて喜ぶことを許さないでください。ゆえなく、わたしを憎む者どものたがいに目くばせすることを許さないでください。
14425 19 35 20 彼らは平和を語らず、国のうちに穏やかに住む者にむかって欺きの言葉をたくらむからです。
14426 19 35 21 彼らはわたしにむかって口をあけひろげ、「あはぁ、あはぁ、われらの目はそれを見た」と言います。
14427 19 35 22 主よ、あなたはこれを見られました。もださないでください。主よ、わたしに遠ざからないでください。
14428 19 35 23 わが神、わが主よ、わがさばきのため、わが訴えのために奮いたち、目をさましてください。
14429 19 35 24 わが神、主よ、あなたの義にしたがってわたしをさばき、わたしの事について彼らを喜ばせないでください。
14430 19 35 25 彼らにその心のうちで、「あはぁ、われらの願ったことが達せられた」と言わせないでください。また彼らに「われらは彼を滅ぼしつくした」と言わせないでください。
14431 19 35 26 わたしの災を喜ぶ者どもをともに恥じ、あわてふためかせてください。わたしにむかって誇りたかぶる者どもに恥と、はずかしめとを着せてください。
14432 19 35 27 わたしの義を喜ぶ者をば喜びの声をあげて喜ばせ、「そのしもべの幸福を喜ばれる主は大いなるかな」とつねに言わせてください。
14433 19 35 28 わたしの舌はひねもすあなたの義と、あなたの誉とを語るでしょう。
14434 19 36 1 とがは悪しき者にむかい、その心のうちに言う。その目の前に神を恐れる恐れはない。
14435 19 36 2 彼は自分の不義があらわされないため、また憎まれないために、みずからその目でおもねる。
14436 19 36 3 その口の言葉はよこしまと欺きである。彼は知恵を得ることと、善を行う事とをやめた。
14437 19 36 4 彼はその床の上でよこしまな事をたくらみ、よからぬ道に身をおいて、悪をきらわない。
14438 19 36 5 主よ、あなたのいつくしみは天にまで及び、あなたのまことは雲にまで及ぶ。
14439 19 36 6 あなたの義は神の山のごとく、あなたのさばきは大きな淵のようだ。主よ、あなたは人と獣とを救われる。
14440 19 36 7 神よ、あなたのいつくしみはいかに尊いことでしょう。人の子らはあなたの翼のかげに避け所を得、
14441 19 36 8 あなたの家の豊かなのによって飽き足りる。あなたはその楽しみの川の水を彼らに飲ませられる。
14442 19 36 9 いのちの泉はあなたのもとにあり、われらはあなたの光によって光を見る。
14443 19 36 10 どうか、あなたを知る者に絶えずいつくしみを施し、心の直き者に絶えず救を施してください。
14444 19 36 11 高ぶる者の足がわたしを踏み、悪しき者の手がわたしを追い出すことをゆるさないでください。
14445 19 36 12 悪を行う者はそこに倒れ、彼らは打ち伏せられて、起きあがることはできない。
14446 19 37 1 悪をなす者のゆえに、心を悩ますな。不義を行う者のゆえに、ねたみを起すな。
14447 19 37 2 彼らはやがて草のように衰え、青菜のようにしおれるからである。
14448 19 37 3 主に信頼して善を行え。そうすればあなたはこの国に住んで、安きを得る。
14449 19 37 4 主によって喜びをなせ。主はあなたの心の願いをかなえられる。
14450 19 37 5 あなたの道を主にゆだねよ。主に信頼せよ、主はそれをなしとげ、
14451 19 37 6 あなたの義を光のように明らかにし、あなたの正しいことを真昼のように明らかにされる。
14452 19 37 7 主の前にもだし、耐え忍びて主を待ち望め。おのが道を歩んで栄える者のゆえに、悪いはかりごとを遂げる人のゆえに、心を悩ますな。
14453 19 37 8 怒りをやめ、憤りを捨てよ。心を悩ますな、これはただ悪を行うに至るのみだ。
14454 19 37 9 悪を行う者は断ち滅ぼされ、主を待ち望む者は国を継ぐからである。
14455 19 37 10 悪しき者はただしばらくで、うせ去る。あなたは彼の所をつぶさに尋ねても彼はいない。
14456 19 37 11 しかし柔和な者は国を継ぎ、豊かな繁栄をたのしむことができる。
14457 19 37 12 悪しき者は正しい者にむかってはかりごとをめぐらし、これにむかって歯がみする。
14458 19 37 13 しかし主は悪しき者を笑われる、彼の日の来るのを見られるからである。
14459 19 37 14 悪しき者はつるぎを抜き、弓を張って、貧しい者と乏しい者とを倒し、直く歩む者を殺そうとする。
14460 19 37 15 しかしそのつるぎはおのが胸を刺し、その弓は折られる。
14461 19 37 16 正しい人の持ち物の少ないのは、多くの悪しきの者の豊かなのにまさる。
14462 19 37 17 悪しき者の腕は折られるが、主は正しい者を助けささえられるからである。
14463 19 37 18 主は全き者のもろもろの日を知られる。彼らの嗣業はとこしえに続く。
14464 19 37 19 彼らは災の時にも恥をこうむらず、ききんの日にも飽き足りる。
14465 19 37 20 しかし、悪しき者は滅び、主の敵は牧場の栄えの枯れるように消え、煙のように消えうせる。
14466 19 37 21 悪しき者は物を借りて返すことをしない。しかし正しい人は寛大で、施し与える。
14467 19 37 22 主に祝福された者は国を継ぎ、主にのろわれた者は断ち滅ぼされる。
14468 19 37 23 人の歩みは主によって定められる。主はその行く道を喜ばれる。
14469 19 37 24 たといその人が倒れても、全く打ち伏せられることはない、主がその手を助けささえられるからである。
14470 19 37 25 わたしは、むかし年若かった時も、年老いた今も、正しい人が捨てられ、あるいはその子孫が食物を請いあるくのを見たことがない。
14471 19 37 26 正しい人は常に寛大で、物を貸し与え、その子孫は祝福を得る。
14472 19 37 27 悪をさけて、善を行え。そうすれば、あなたはとこしえに住むことができる。
14473 19 37 28 主は公義を愛し、その聖徒を見捨てられないからである。正しい者はとこしえに助け守られる。しかし、悪しき者の子孫は断ち滅ぼされる。
14474 19 37 29 正しい者は国を継ぎ、とこしえにその中に住むことができる。
14475 19 37 30 正しい者の口は知恵を語り、その舌は公義を述べる。
14476 19 37 31 その心には神のおきてがあり、その歩みはすべることがない。
14477 19 37 32 悪しき者は正しい人をうかがい、これを殺そうとはかる。
14478 19 37 33 主は正しい人を悪しき者の手にゆだねられない、またさばかれる時、これを罪に定められることはない。
14479 19 37 34 主を待ち望め、その道を守れ。そうすれば、主はあなたを上げて、国を継がせられる。あなたは悪しき者の断ち滅ぼされるのを見るであろう。
14480 19 37 35 わたしは悪しき者が勝ち誇って、レバノンの香柏のようにそびえたつのを見た。
14481 19 37 36 しかし、わたしが通り過ぎると、見よ、彼はいなかった。わたしは彼を尋ねたけれども見つからなかった。
14482 19 37 37 全き人に目をそそぎ、直き人を見よ。おだやかな人には子孫がある。
14483 19 37 38 しかし罪を犯す者どもは共に滅ぼされ、悪しき者の子孫は断たれる。
14484 19 37 39 正しい人の救は主から出る。主は彼らの悩みの時の避け所である。
14485 19 37 40 主は彼らを助け、彼らを解き放ち、彼らを悪しき者どもから解き放って救われる。彼らは主に寄り頼むからである。
14486 19 38 1 主よ、あなたの憤りをもってわたしを責めず、激しい怒りをもってわたしを懲らさないでください。
14487 19 38 2 あなたの矢がわたしに突き刺さり、あなたの手がわたしの上にくだりました。
14488 19 38 3 あなたの怒りによって、わたしの肉には全きところなく、わたしの罪によって、わたしの骨には健やかなところはありません。
14489 19 38 4 わたしの不義はわたしの頭を越え、重荷のように重くて負うことができません。
14490 19 38 5 わたしの愚かによって、わたしの傷は悪臭を放ち、腐れただれました。
14491 19 38 6 わたしは折れかがんで、いたくうなだれ、ひねもす悲しんで歩くのです。
14492 19 38 7 わたしの腰はことごとく焼け、わたしの肉には全きところがありません。
14493 19 38 8 わたしは衰えはて、いたく打ちひしがれ、わたしの心の激しい騒ぎによってうめき叫びます。
14494 19 38 9 主よ、わたしのすべての願いはあなたに知られ、わたしの嘆きはあなたに隠れることはありません。
14495 19 38 10 わたしの胸は激しく打ち、わたしの力は衰え、わたしの目の光もまた、わたしを離れ去りました。
14496 19 38 11 わが友、わがともがらはわたしの災を見て離れて立ち、わが親族もまた遠く離れて立っています。
14497 19 38 12 わたしのいのちを求める者はわなを設け、わたしをそこなおうとする者は滅ぼすことを語り、ひねもす欺くことをはかるのです。
14498 19 38 13 しかしわたしは耳しいのように聞かず、おしのように口を開きません。
14499 19 38 14 まことに、わたしは聞かない人のごとく、議論を口にしない人のようです。
14500 19 38 15 しかし、主よ、わたしはあなたを待ち望みます。わが神、主よ、あなたこそわたしに答えられるのです。
14501 19 38 16 わたしは祈ります、「わが足のすべるとき、わたしにむかって高ぶる彼らにわたしのことによって喜ぶことをゆるさないでください」と。
14502 19 38 17 わたしは倒れるばかりになり、わたしの苦しみは常にわたしと共にあります。
14503 19 38 18 わたしは、みずから不義を言いあらわし、わが罪のために悲しみます。
14504 19 38 19 ゆえなく、わたしに敵する者は強く、偽ってわたしを憎む者は多いのです。
14505 19 38 20 悪をもって善に報いる者は、わたしがよい事に従うがゆえに、わがあだとなります。
14506 19 38 21 主よ、わたしを捨てないでください。わが神よ、わたしに遠ざからないでください。
14507 19 38 22 主、わが救よ、すみやかにわたしをお助けください。
14508 19 39 1 わたしは言った、「舌をもって罪を犯さないために、わたしの道を慎み、悪しき者のわたしの前にある間はわたしの口にくつわをかけよう」と。
14509 19 39 2 わたしは黙して物言わず、むなしく沈黙を守った。しかし、わたしの悩みはさらにひどくなり、
14510 19 39 3 わたしの心はわたしのうちに熱し、思いつづけるほどに火が燃えたので、わたしは舌をもって語った。
14511 19 39 4 「主よ、わが終りと、わが日の数のどれほどであるかをわたしに知らせ、わが命のいかにはかないかを知らせてください。
14512 19 39 5 見よ、あなたはわたしの日をつかのまとされました。わたしの一生はあなたの前では無にひとしいのです。まことに、すべての人はその盛んな時でも息にすぎません。〔セラ
14513 19 39 6 まことに人は影のように、さまよいます。まことに彼らはむなしい事のために騒ぎまわるのです。彼は積みたくわえるけれども、だれがそれを収めるかを知りません。
14514 19 39 7 主よ、今わたしは何を待ち望みましょう。わたしの望みはあなたにあります。
14515 19 39 8 わたしをすべてのとがから助け出し、愚かな者にわたしをあざけらせないでください。
14516 19 39 9 わたしは黙して口を開きません。あなたがそれをなされたからです。
14517 19 39 10 あなたが下された災をわたしから取り去ってください。わたしはあなたのみ手に打ち懲らされることにより滅びるばかりです。
14518 19 39 11 あなたは罪を責めて人を懲らされるとき、その慕い喜ぶものを、しみが食うように、消し滅ぼされるのです。まことにすべての人は息にすぎません。〔セラ
14519 19 39 12 主よ、わたしの祈を聞き、わたしの叫びに耳を傾け、わたしの涙を見て、もださないでください。わたしはあなたに身を寄せる旅びと、わがすべての先祖たちのように寄留者です。
14520 19 39 13 わたしが去って、うせない前に、み顔をそむけて、わたしを喜ばせてください」。
14521 19 40 1 わたしは耐え忍んで主を待ち望んだ。主は耳を傾けて、わたしの叫びを聞かれた。
14522 19 40 2 主はわたしを滅びの穴から、泥の沼から引きあげて、わたしの足を岩の上におき、わたしの歩みをたしかにされた。
14523 19 40 3 主は新しい歌をわたしの口に授け、われらの神にささげるさんびの歌をわたしの口に授けられた。多くの人はこれを見て恐れ、かつ主に信頼するであろう。
14524 19 40 4 主をおのが頼みとする人、高ぶる者にたよらず、偽りの神に迷う者にたよらない人はさいわいである。
14525 19 40 5 わが神、主よ、あなたのくすしきみわざと、われらを思うみおもいとは多くて、くらべうるものはない。わたしはこれを語り述べようとしても多くて数えることはできない。
14526 19 40 6 あなたはいけにえと供え物とを喜ばれない。あなたはわたしの耳を開かれた。あなたは燔祭と罪祭とを求められない。
14527 19 40 7 その時わたしは言った、「見よ、わたしはまいります。書の巻に、わたしのためにしるされています。
14528 19 40 8 わが神よ、わたしはみこころを行うことを喜びます。あなたのおきてはわたしの心のうちにあります」と。
14529 19 40 9 わたしは大いなる集会で、救についての喜びのおとずれを告げ示しました。見よ、わたしはくちびるを閉じませんでした。主よ、あなたはこれをご存じです。
14530 19 40 10 わたしはあなたの救を心のうちに隠しおかず、あなたのまことと救とを告げ示しました。わたしはあなたのいつくしみとまこととを大いなる集会に隠しませんでした。
14531 19 40 11 主よ、あなたのあわれみをわたしに惜しまず、あなたのいつくしみとまこととをもって常にわたしをお守りください。
14532 19 40 12 数えがたい災がわたしを囲み、わたしの不義がわたしに追い迫って、物見ることができないまでになりました。それはわたしの頭の毛よりも多く、わたしの心は消えうせるばかりになりました。
14533 19 40 13 主よ、みこころならばわたしをお救いください。主よ、すみやかにわたしをお助けください。
14534 19 40 14 わたしのいのちを奪おうと尋ね求める者どもをことごとく恥じあわてさせてください。わたしのそこなわれることを願う者どもをうしろに退かせ、恥を負わせてください。
14535 19 40 15 わたしにむかって「あはぁ、あはぁ」と言う者どもを自分の恥によって恐れおののかせてください。
14536 19 40 16 しかし、すべてあなたを尋ね求める者はあなたによって喜び楽しむように。あなたの救を愛する者は常に「主は大いなるかな」ととなえるように。
14537 19 40 17 わたしは貧しく、かつ乏しい。しかし主はわたしをかえりみられます。あなたはわが助け、わが救主です。わが神よ、ためらわないでください。
14538 19 41 1 貧しい者をかえりみる人はさいわいである。主はそのような人を悩みの日に救い出される。
14539 19 41 2 主は彼を守って、生きながらえさせられる。彼はこの地にあって、さいわいな者と呼ばれる。あなたは彼をその敵の欲望にわたされない。
14540 19 41 3 主は彼をその病の床でささえられる。あなたは彼の病む時、その病をことごとくいやされる。
14541 19 41 4 わたしは言った、「主よ、わたしをあわれみ、わたしをいやしてください。わたしはあなたにむかって罪を犯しました」と。
14542 19 41 5 わたしの敵はわたしをそしって言う、「いつ彼は死に、その名がほろびるであろうか」と。
14543 19 41 6 そのひとりがわたしを見ようとして来るとき、彼は偽りを語り、その心によこしまを集め、外に出てはそれを言いふらす。
14544 19 41 7 すべてわたしを憎む者はわたしについて共にささやき、わたしのために災を思いめぐらす。
14545 19 41 8 彼らは言う、「彼に一つのたたりがつきまとったから、倒れ伏して再び起きあがらないであろう」と。
14546 19 41 9 わたしの信頼した親しい友、わたしのパンを食べた親しい友さえもわたしにそむいてくびすをあげた。
14547 19 41 10 しかし主よ、わたしをあわれみ、わたしを助け起してください。そうすればわたしは彼らに報い返すことができます。
14548 19 41 11 わたしの敵がわたしに打ち勝てないことによって、あなたがわたしを喜ばれることをわたしは知ります。
14549 19 41 12 あなたはわたしの全きによって、わたしをささえ、とこしえにみ前に置かれます。
14550 19 41 13 イスラエルの神、主はとこしえからとこしえまでほむべきかな。アァメン、アァメン。
14551 19 42 1 神よ、しかが谷川を慕いあえぐように、わが魂もあなたを慕いあえぐ。
14552 19 42 2 わが魂はかわいているように神を慕い、いける神を慕う。いつ、わたしは行って神のみ顔を見ることができるだろうか。
14553 19 42 3 人々がひねもすわたしにむかって「おまえの神はどこにいるのか」と言いつづける間はわたしの涙は昼も夜もわたしの食物であった。
14554 19 42 4 わたしはかつて祭を守る多くの人と共に群れをなして行き、喜びと感謝の歌をもって彼らを神の家に導いた。今これらの事を思い起して、わが魂をそそぎ出すのである。
14555 19 42 5 わが魂よ、何ゆえうなだれるのか。何ゆえわたしのうちに思いみだれるのか。神を待ち望め。わたしはなおわが助け、わが神なる主をほめたたえるであろう。
14556 19 42 6 わが魂はわたしのうちにうなだれる。それで、わたしはヨルダンの地から、またヘルモンから、ミザルの山からあなたを思い起す。
14557 19 42 7 あなたの大滝の響きによって淵々呼びこたえ、あなたの波、あなたの大波はことごとくわたしの上を越えていった。
14558 19 42 8 昼には、主はそのいつくしみをほどこし、夜には、その歌すなわちわがいのちの神にささげる祈がわたしと共にある。
14559 19 42 9 わたしはわが岩なる神に言う、「何ゆえわたしをお忘れになりましたか。何ゆえわたしは敵のしえたげによって悲しみ歩くのですか」と。
14560 19 42 10 わたしのあだは骨も砕けるばかりにわたしをののしり、ひねもすわたしにむかって「おまえの神はどこにいるのか」と言う。
14561 19 42 11 わが魂よ、何ゆえうなだれるのか。何ゆえわたしのうちに思いみだれるのか。神を待ち望め。わたしはなおわが助け、わが神なる主をほめたたえるであろう。
14562 19 43 1 神よ、わたしをさばき、神を恐れない民にむかって、わたしの訴えをあげつらい、たばかりをなすよこしまな人からわたしを助け出してください。
14563 19 43 2 あなたはわたしの寄り頼む神です。なぜわたしを捨てられたのですか。なぜわたしは敵のしえたげによって悲しみ歩くのですか。
14564 19 43 3 あなたの光とまこととを送ってわたしを導き、あなたの聖なる山と、あなたの住まわれる所にわたしをいたらせてください。
14565 19 43 4 その時わたしは神の祭壇へ行き、わたしの大きな喜びである神へ行きます。神よ、わが神よ、わたしは琴をもってあなたをほめたたえます。
14566 19 43 5 わが魂よ、何ゆえうなだれるのか。何ゆえわたしのうちに思いみだれるのか。神を待ち望め。わたしはなおわが助け、わが神なる主をほめたたえるであろう。
14567 19 44 1 神よ、いにしえ、われらの先祖たちの日に、あなたがなされたみわざを彼らがわれらに語ったのを耳で聞きました。
14568 19 44 2 すなわちあなたはみ手をもって、もろもろの国民を追い払ってわれらの先祖たちを植え、またもろもろの民を悩まして、われらの先祖たちをふえ広がらせられました。
14569 19 44 3 彼らは自分のつるぎによって国を獲たのでなく、また自分の腕によって勝利を得たのでもありません。ただあなたの右の手、あなたの腕、あなたのみ顔の光によるのでした。あなたが彼らを恵まれたからです。
14570 19 44 4 あなたはわが王、わが神、ヤコブのために勝利を定められる方です。
14571 19 44 5 われらはあなたによって、あだを押し倒し、われらに立ちむかう者を、み名によって踏みにじるのです。
14572 19 44 6 わたしは自分の弓を頼まず、わたしのつるぎもまた、わたしを救うことができないからです。
14573 19 44 7 しかしあなたはわれらをあだから救い、われらを憎む者をはずかしめられました。
14574 19 44 8 われらは常に神によって誇り、とこしえにあなたのみ名に感謝するでしょう。〔セラ
14575 19 44 9 ところがあなたはわれらを捨てて恥を負わせ、われらの軍勢と共に出て行かれませんでした。
14576 19 44 10 あなたがわれらをあだの前から退かせられたので、われらの敵は心のままにかすめ奪いました。
14577 19 44 11 あなたはわれらをほふられる羊のようにし、またもろもろの国民のなかに散らされました。
14578 19 44 12 あなたはわずかの金であなたの民を売り、彼らのために高い価を求められませんでした。
14579 19 44 13 あなたはわれらを隣り人にそしらせ、われらをめぐる者どもに侮らせ、あざけらせられました。
14580 19 44 14 またもろもろの国民のなかにわれらを笑い草とし、もろもろの民のなかに笑い者とされました。
14581 19 44 15 わがはずかしめはひねもすわたしの前にあり、恥はわたしの顔をおおいました。
14582 19 44 16 これはそしる者と、ののしる者の言葉により、敵と、恨みを報いる者のゆえによるのです。
14583 19 44 17 これらの事が皆われらに臨みましたが、われらはあなたを忘れず、あなたの契約にそむくことがありませんでした。
14584 19 44 18 われらの心はたじろがず、またわれらの歩みはあなたの道を離れませんでした。
14585 19 44 19 それでもあなたは山犬の住む所でわれらを砕き、暗やみをもってわれらをおおわれました。
14586 19 44 20 われらがもしわれらの神の名を忘れ、ほかの神に手を伸べたことがあったならば、
14587 19 44 21 神はこれを見あらわされないでしょうか。神は心の秘密をも知っておられるからです。
14588 19 44 22 ところがわれらはあなたのためにひねもす殺されて、ほふられる羊のようにみなされました。
14589 19 44 23 主よ、起きてください。なぜ眠っておられるのですか。目をさましてください。われらをとこしえに捨てないでください。
14590 19 44 24 なぜあなたはみ顔を隠されるのですか。なぜわれらの悩みと、しえたげをお忘れになるのですか。
14591 19 44 25 まことにわれらの魂はかがんで、ちりに伏し、われらのからだは土につきました。
14592 19 44 26 起きて、われらをお助けください。あなたのいつくしみのゆえに、われらをあがなってください。
14593 19 45 1 わたしの心はうるわしい言葉であふれる。わたしは王についてよんだわたしの詩を語る。わたしの舌はすみやかに物書く人の筆のようだ。
14594 19 45 2 あなたは人の子らにまさって麗しく、気品がそのくちびるに注がれている。このゆえに神はとこしえにあなたを祝福された。
14595 19 45 3 ますらおよ、光栄と威厳とをもって、つるぎを腰に帯びよ。
14596 19 45 4 真理のため、また正義を守るために威厳をもって、勝利を得て乗り進め。あなたの右の手はあなたに恐るべきわざを教えるであろう。
14597 19 45 5 あなたの矢は鋭くて、王の敵の胸をつらぬき、もろもろの民はあなたのもとに倒れる。
14598 19 45 6 神から賜わったあなたの位は永遠にかぎりなく続き、あなたの王のつえは公平のつえである。
14599 19 45 7 あなたは義を愛し、悪を憎む。このゆえに神、あなたの神は喜びの油をあなたのともがらにまさって、あなたに注がれた。
14600 19 45 8 あなたの衣はみな没薬、芦薈、肉桂で、よいかおりを放っている。琴の音は象牙の殿から出て、あなたを喜ばせる。
14601 19 45 9 あなたの愛する女たちのうちには王の娘たちがあり、王妃はオフルの金を飾って、あなたの右に立つ。
14602 19 45 10 娘よ、聞け、かえりみて耳を傾けよ。あなたの民と、あなたの父の家とを忘れよ。
14603 19 45 11 王はあなたのうるわしさを慕うであろう。彼はあなたの主であるから、彼を伏しおがめ。
14604 19 45 12 ツロの民は贈り物をもちきたり、民のうちの富める者もあなたの好意を請い求める。
14605 19 45 13 王の娘は殿のうちで栄えをきわめ、こがねを織り込んだ衣を着飾っている。
14606 19 45 14 彼女は縫い取りした衣を着て王のもとに導かれ、その供びとなるおとめらは彼女に従ってその行列にある。
14607 19 45 15 彼らは喜びと楽しみとをもって導かれ行き、王の宮殿にはいる。
14608 19 45 16 あなたの子らは父祖に代って立ち、あなたは彼らを全地に君とするであろう。
14609 19 45 17 わたしはあなたの名をよろず代におぼえさせる。このゆえにもろもろの民は世々かぎりなくあなたをほめたたえるであろう。
14610 19 46 1 神はわれらの避け所また力である。悩める時のいと近き助けである。
14611 19 46 2 このゆえに、たとい地は変り、山は海の真中に移るとも、われらは恐れない。
14612 19 46 3 たといその水は鳴りとどろき、あわだつとも、そのさわぎによって山は震え動くとも、われらは恐れない。〔セラ
14613 19 46 4 一つの川がある。その流れは神の都を喜ばせ、いと高き者の聖なるすまいを喜ばせる。
14614 19 46 5 神がその中におられるので、都はゆるがない。神は朝はやく、これを助けられる。
14615 19 46 6 もろもろの民は騒ぎたち、もろもろの国は揺れ動く、神がその声を出されると地は溶ける。
14616 19 46 7 万軍の主はわれらと共におられる、ヤコブの神はわれらの避け所である。〔セラ
14617 19 46 8 来て、主のみわざを見よ、主は驚くべきことを地に行われた。
14618 19 46 9 主は地のはてまでも戦いをやめさせ、弓を折り、やりを断ち、戦車を火で焼かれる。
14619 19 46 10 「静まって、わたしこそ神であることを知れ。わたしはもろもろの国民のうちにあがめられ、全地にあがめられる」。
14620 19 46 11 万軍の主はわれらと共におられる、ヤコブの神はわれらの避け所である。〔セラ
14621 19 47 1 もろもろの民よ、手をうち、喜びの声をあげ、神にむかって叫べ。
14622 19 47 2 いと高き主は恐るべく、全地をしろしめす大いなる王だからである。
14623 19 47 3 主はもろもろの民をわれらに従わせ、もろもろの国をわれらの足の下に従わせられた。
14624 19 47 4 主はその愛されたヤコブの誇をわれらの嗣業として、われらのために選ばれた。〔セラ
14625 19 47 5 神は喜び叫ぶ声と共にのぼり、主はラッパの声と共にのぼられた。
14626 19 47 6 神をほめうたえよ、ほめうたえよ、われらの王をほめうたえよ、ほめうたえよ。
14627 19 47 7 神は全地の王である。巧みな歌をもってほめうたえよ。
14628 19 47 8 神はもろもろの国民を統べ治められる。神はその聖なるみくらに座せられる。
14629 19 47 9 もろもろの民の君たちはつどい来て、アブラハムの神の民となる。
14630 19 47 10 地のもろもろの盾は神のものである。神は大いにあがめられる。
14631 19 48 1 主は大いなる神であって、われらの神の都、その聖なる山で、大いにほめたたえらるべき方である。
14632 19 48 2 シオンの山は北の端が高くて、うるわしく、全地の喜びであり、大いなる王の都である。
14633 19 48 3 そのもろもろの殿のうちに神はみずからを高きやぐらとして現された。
14634 19 48 4 見よ、王らは相会して共に進んできたが、
14635 19 48 5 彼らは都を見るや驚き、あわてふためき、急ぎ逃げ去った。
14636 19 48 6 おののきは彼らに臨み、その苦しみは産みの苦しみをする女のようであった。
14637 19 48 7 あなたは東風を起してタルシシの舟を破られた。
14638 19 48 8 さきにわれらが聞いたように、今われらは万軍の主の都、われらの神の都でこれを見ることができた。神はとこしえにこの都を堅くされる。〔セラ
14639 19 48 9 神よ、われらはあなたの宮のうちであなたのいつくしみを思いました。
14640 19 48 10 神よ、あなたの誉は、あなたのみ名のように、地のはてにまで及びます。あなたの右の手は勝利で満ちています。
14641 19 48 11 あなたのさばきのゆえに、シオンの山を喜ばせ、ユダの娘を楽しませてください。
14642 19 48 12 シオンのまわりを歩き、あまねくめぐって、そのやぐらを数え、
14643 19 48 13 その城壁に心をとめ、そのもろもろの殿をしらべよ。これはあなたがたが後の代に語り伝えるためである。
14644 19 48 14 これこそ神であり、世々かぎりなくわれらの神であって、とこしえにわれらを導かれるであろう。
14645 19 49 1 もろもろの民よ、これを聞け、すべて世に住む者よ、耳を傾けよ。
14646 19 49 2 低きも高きも、富めるも貧しきも、共に耳を傾けよ。
14647 19 49 3 わが口は知恵を語り、わが心は知識を思う。
14648 19 49 4 わたしは耳をたとえに傾け、琴を鳴らして、わたしのなぞを解き明かそう。
14649 19 49 5 わたしをしえたげる者の不義がわたしを取り囲む悩みの日に、どうして恐れなければならないのか。
14650 19 49 6 彼らはおのが富をたのみ、そのたからの多いのを誇る人々である。
14651 19 49 7 まことに人はだれも自分をあがなうことはできない。そのいのちの価を神に払うことはできない。
14652 19 49 10 まことに賢い人も死に、愚かな者も、獣のような者も、ひとしく滅んで、その富を他人に残すことは人の見るところである。
14653 19 49 11 たとい彼らはその地を自分の名をもって呼んでも、墓こそ彼らのとこしえのすまい、世々彼らのすみかである。
14654 19 49 12 人は栄華のうちに長くとどまることはできない、滅びうせる獣にひとしい。
14655 19 49 13 これぞ自分をたのむ愚かな者どもの成りゆき、自分の分け前を喜ぶ者どもの果である。〔セラ
14656 19 49 14 彼らは陰府に定められた羊のように死が彼らを牧するであろう。彼らはまっすぐに墓に下り、そのかたちは消えうせ、陰府が彼らのすまいとなるであろう。
14657 19 49 15 しかし神はわたしを受けられるゆえ、わたしの魂を陰府の力からあがなわれる。〔セラ
14658 19 49 16 人が富を得るときも、その家の栄えが増し加わるときも、恐れてはならない。
14659 19 49 17 彼が死ぬときは何ひとつ携え行くことができず、その栄えも彼に従って下って行くことはないからである。
14660 19 49 18 たとい彼が生きながらえる間、自分を幸福と思っても、またみずから幸な時に、人々から称賛されても、
14661 19 49 19 彼はついにおのれの先祖の仲間に連なる。彼らは絶えて光を見ることがない。
14662 19 49 20 人は栄華のうちに長くとどまることはできない。滅びうせる獣にひとしい。
14663 19 50 1 全能者なる神、主は詔して、日の出るところから日の入るところまであまねく地に住む者を召し集められる。
14664 19 50 2 神は麗しさのきわみであるシオンから光を放たれる。
14665 19 50 3 われらの神は来て、もだされない。み前には焼きつくす火があり、そのまわりには、はげしい暴風がある。
14666 19 50 4 神はその民をさばくために、上なる天および地に呼ばわれる、
14667 19 50 5 「いけにえをもってわたしと契約を結んだわが聖徒をわたしのもとに集めよ」と。
14668 19 50 6 天は神の義をあらわす、神はみずから、さばきぬしだからである。〔セラ
14669 19 50 7 「わが民よ、聞け、わたしは言う。イスラエルよ、わたしはあなたにむかってあかしをなす。わたしは神、あなたの神である。
14670 19 50 8 わたしがあなたを責めるのは、あなたのいけにえのゆえではない。あなたの燔祭はいつもわたしの前にある。
14671 19 50 9 わたしはあなたの家から雄牛を取らない。またあなたのおりから雄やぎを取らない。
14672 19 50 10 林のすべての獣はわたしのもの、丘の上の千々の家畜もわたしのものである。
14673 19 50 11 わたしは空の鳥をことごとく知っている。野に動くすべてのものはわたしのものである。
14674 19 50 12 たといわたしは飢えても、あなたに告げない、世界とその中に満ちるものとはわたしのものだからである。
14675 19 50 13 わたしは雄牛の肉を食べ、雄やぎの血を飲むだろうか。
14676 19 50 14 感謝のいけにえを神にささげよ。あなたの誓いをいと高き者に果せ。
14677 19 50 15 悩みの日にわたしを呼べ、わたしはあなたを助け、あなたはわたしをあがめるであろう」。
14678 19 50 16 しかし神は悪しき者に言われる、「あなたはなんの権利があってわたしの定めを述べ、わたしの契約を口にするのか。
14679 19 50 17 あなたは教を憎み、わたしの言葉を捨て去った。
14680 19 50 18 あなたは盗びとを見ればこれとむつみ、姦淫を行う者と交わる。
14681 19 50 19 あなたはその口を悪にわたし、あなたの舌はたばかりを仕組む。
14682 19 50 20 あなたは座してその兄弟をそしり、自分の母の子をののしる。
14683 19 50 21 あなたがこれらの事をしたのを、わたしが黙っていたので、あなたはわたしを全く自分とひとしい者と思った。しかしわたしはあなたを責め、あなたの目の前にその罪をならべる。
14684 19 50 22 神を忘れる者よ、このことを思え。さもないとわたしはあなたをかき裂く。そのときだれも助ける者はないであろう。
14685 19 50 23 感謝のいけにえをささげる者はわたしをあがめる。自分のおこないを慎む者にはわたしは神の救を示す」。
14686 19 51 1 神よ、あなたのいつくしみによって、わたしをあわれみ、あなたの豊かなあわれみによって、わたしのもろもろのとがをぬぐい去ってください。
14687 19 51 2 わたしの不義をことごとく洗い去り、わたしの罪からわたしを清めてください。
14688 19 51 3 わたしは自分のとがを知っています。わたしの罪はいつもわたしの前にあります。
14689 19 51 4 わたしはあなたにむかい、ただあなたに罪を犯し、あなたの前に悪い事を行いました。それゆえ、あなたが宣告をお与えになるときは正しく、あなたが人をさばかれるときは誤りがありません。
14690 19 51 5 見よ、わたしは不義のなかに生れました。わたしの母は罪のうちにわたしをみごもりました。
14691 19 51 6 見よ、あなたは真実を心のうちに求められます。それゆえ、わたしの隠れた心に知恵を教えてください。
14692 19 51 7 ヒソプをもって、わたしを清めてください、わたしは清くなるでしょう。わたしを洗ってください、わたしは雪よりも白くなるでしょう。
14693 19 51 8 わたしに喜びと楽しみとを満たし、あなたが砕いた骨を喜ばせてください。
14694 19 51 9 み顔をわたしの罪から隠し、わたしの不義をことごとくぬぐい去ってください。
14695 19 51 10 神よ、わたしのために清い心をつくり、わたしのうちに新しい、正しい霊を与えてください。
14696 19 51 11 わたしをみ前から捨てないでください。あなたの聖なる霊をわたしから取らないでください。
14697 19 51 12 あなたの救の喜びをわたしに返し、自由の霊をもって、わたしをささえてください。
14698 19 51 13 そうすればわたしは、とがを犯した者にあなたの道を教え、罪びとはあなたに帰ってくるでしょう。
14699 19 51 14 神よ、わが救の神よ、血を流した罪からわたしを助け出してください。わたしの舌は声高らかにあなたの義を歌うでしょう。
14700 19 51 15 主よ、わたしのくちびるを開いてください。わたしの口はあなたの誉をあらわすでしょう。
14701 19 51 16 あなたはいけにえを好まれません。たといわたしが燔祭をささげてもあなたは喜ばれないでしょう。
14702 19 51 17 神の受けられるいけにえは砕けた魂です。神よ、あなたは砕けた悔いた心をかろしめられません。
14703 19 51 18 あなたのみこころにしたがってシオンに恵みを施し、エルサレムの城壁を築きなおしてください。
14704 19 51 19 その時あなたは義のいけにえと燔祭と、全き燔祭とを喜ばれるでしょう。その時あなたの祭壇に雄牛がささげられるでしょう。
14705 19 52 1 力ある者よ、何ゆえあなたは神を敬う人に与えた災について誇るのか。あなたはひねもす人を滅ぼすことをたくらむ。
14706 19 52 2 虚偽を行う者よ、あなたの舌は鋭いかみそりのようだ。
14707 19 52 3 あなたは善よりも悪を好み、まことを語るよりも偽りを語ることを好む。〔セラ
14708 19 52 4 欺きの舌よ、あなたはすべての滅ぼす言葉を好む。
14709 19 52 5 しかし神はとこしえにあなたを砕き、あなたを捕えて、その天幕から引き離し、生ける者の地から、あなたの根を絶やされる。〔セラ
14710 19 52 6 正しい者はこれを見て恐れ、彼を笑って言うであろう、
14711 19 52 7 「神をおのが避け所とせず、その富の豊かなるを頼み、その宝に寄り頼む人を見よ」と。
14712 19 52 8 しかし、わたしは神の家にある緑のオリブの木のようだ。わたしは世々かぎりなく神のいつくしみを頼む。
14713 19 52 9 あなたがこの事をなされたので、わたしはとこしえに、あなたに感謝し、聖徒の前であなたのみ名をふれ示そう。これはよいことだからである。
14714 19 53 1 愚かな者は心のうちに「神はない」と言う。彼らは腐れはて、憎むべき不義をおこなった。善を行う者はない。
14715 19 53 2 神は天から人の子を見おろして、賢い者、神を尋ね求める者があるかないかを見られた。
14716 19 53 3 彼らは皆そむき、みなひとしく堕落した。善を行う者はない、ひとりもない。
14717 19 53 4 悪を行う者は悟りがないのか。彼らは物食うようにわが民を食らい、また神を呼ぶことをしない。
14718 19 53 5 彼らは恐るべきことのない時に大いに恐れた。神はよこしまな者の骨を散らされるからである。神が彼らを捨てられるので、彼らは恥をこうむるであろう。
14719 19 53 6 どうか、シオンからイスラエルの救が出るように。神がその民の繁栄を回復される時、ヤコブは喜び、イスラエルは楽しむであろう。
14720 19 54 1 神よ、み名によってわたしを救い、み力によってわたしをさばいてください。
14721 19 54 2 神よ、わたしの祈をきき、わが口の言葉に耳を傾けてください。
14722 19 54 3 高ぶる者がわたしに逆らって起り、あらぶる者がわたしのいのちを求めています。彼らは神をおのが前に置くことをしません。〔セラ
14723 19 54 4 見よ、神はわが助けぬし、主はわがいのちを守られるかたです。
14724 19 54 5 神はわたしのあだに災をもって報いられるでしょう。あなたのまことをもって彼らを滅ぼしてください。
14725 19 54 6 わたしは喜んであなたにいけにえをささげます。主よ、わたしはみ名に感謝します。これはよい事だからです。
14726 19 54 7 あなたはすべての悩みからわたしを救い、わたしの目に敵の敗北を見させられたからです。
14727 19 55 1 神よ、わたしの祈に耳を傾けてください。わたしの願いを避けて身を隠さないでください。
14728 19 55 2 わたしにみこころをとめ、わたしに答えてください。わたしは悩みによって弱りはて、
14729 19 55 3 敵の声と、悪しき者のしえたげとによって気が狂いそうです。彼らはわたしに悩みを臨ませ、怒ってわたしを苦しめるからです。
14730 19 55 4 わたしの心はわがうちにもだえ苦しみ、死の恐れがわたしの上に落ちました。
14731 19 55 5 恐れとおののきがわたしに臨み、はなはだしい恐れがわたしをおおいました。
14732 19 55 6 わたしは言います、「どうか、はとのように翼をもちたいものだ。そうすればわたしは飛び去って安きを得るであろう。
14733 19 55 7 わたしは遠くのがれ去って、野に宿ろう。〔セラ
14734 19 55 8 わたしは急ぎ避難して、はやてとあらしをのがれよう」と。
14735 19 55 9 主よ、彼らのはかりごとを打ち破ってください。彼らの舌を混乱させてください。わたしは町のうちに暴力と争いとを見るからです。
14736 19 55 10 彼らは昼も夜も町の城壁の上を歩きめぐり、町のうちには害悪と悩みとがあります。
14737 19 55 11 また滅ぼす事が町のうちにあり、しえたげと欺きとはその市場を離れることがありません。
14738 19 55 12 わたしをののしる者は敵ではありません。もしそうであるならば忍ぶことができます。わたしにむかって高ぶる者はあだではありません。もしそうであるならば身を隠して彼を避けることができます。
14739 19 55 13 しかしそれはあなたです、わたしと同じ者、わたしの同僚、わたしの親しい友です。
14740 19 55 14 われらはたがいに楽しく語らい、つれだって神の宮に上りました。
14741 19 55 15 どうぞ、死を彼らに臨ませ、生きたままで陰府に下らせ、恐れをもって彼らを墓に去らせてください。
14742 19 55 16 しかしわたしが神に呼ばわれば、主はわたしを救われます。
14743 19 55 17 夕べに、あしたに、真昼にわたしが嘆きうめけば、主はわたしの声を聞かれます。
14744 19 55 18 たといわたしを攻める者が多くとも、主はわたしがたたかう戦いからわたしを安らかに救い出されます。
14745 19 55 19 昔からみくらに座しておられる神は聞いて彼らを悩まされるでしょう。〔セラ彼らはおきてを守らず、神を恐れないからです。
14746 19 55 20 わたしの友はその親しき者に手を伸ばして、その契約を破った。
14747 19 55 21 その口は牛酪よりもなめらかだが、その心には戦いがある。その言葉は油よりもやわらかだが、それは抜いたつるぎである。
14748 19 55 22 あなたの荷を主にゆだねよ。主はあなたをささえられる。主は正しい人の動かされるのを決してゆるされない。
14749 19 55 23 しかし主よ、あなたは彼らを滅びの穴に投げ入れられます。血を流す者と欺く者とはおのが日の半ばも生きながらえることはできません。しかしわたしはあなたに寄り頼みます。
14750 19 56 1 神よ、どうかわたしをあわれんでください。人々がわたしを踏みつけ、あだする人々がひねもすわたしをしえたげます。
14751 19 56 2 わたしの敵はひねもすわたしを踏みつけ、誇りたかぶって、わたしと戦う者が多いのです。
14752 19 56 3 わたしが恐れるときは、あなたに寄り頼みます。
14753 19 56 4 わたしは神によって、そのみ言葉をほめたたえます。わたしは神に信頼するゆえ、恐れることはありません。肉なる者はわたしに何をなし得ましょうか。
14754 19 56 5 彼らはひねもすわたしの事を妨害し、その思いはことごとくわたしにわざわいします。
14755 19 56 6 彼らは共に集まって身をひそめ、わたしの歩みに目をとめ、わたしのいのちをうかがい求めます。
14756 19 56 7 神よ、彼らにその罪を報い、憤りをもってもろもろの民を倒してください。
14757 19 56 8 あなたはわたしのさすらいを数えられました。わたしの涙をあなたの皮袋にたくわえてください。これは皆あなたの書にしるされているではありませんか。
14758 19 56 9 わたしが呼び求める日に、わたしの敵は退きます。これによって神がわたしを守られることを知ります。
14759 19 56 10 わたしは神によってそのみ言葉をほめたたえ、主によってそのみ言葉をほめたたえます。
14760 19 56 11 わたしは神に信頼するゆえ、恐れることはありません。人はわたしに何をなし得ましょうか。
14761 19 56 12 神よ、わたしがあなたに立てた誓いは果さなければなりません。わたしは感謝の供え物をあなたにささげます。
14762 19 56 13 あなたはわたしの魂を死から救い、わたしの足を守って倒れることなく、いのちの光のうちで神の前にわたしを歩ませられたからです。
14763 19 57 1 神よ、わたしをあわれんでください。わたしをあわれんでください。わたしの魂はあなたに寄り頼みます。滅びのあらしの過ぎ去るまではあなたの翼の陰をわたしの避け所とします。
14764 19 57 2 わたしはいと高き神に呼ばわります。わたしのためにすべての事をなしとげられる神に呼ばわります。
14765 19 57 3 神は天から送ってわたしを救い、わたしを踏みつける者をはずかしめられます。〔セラすなわち神はそのいつくしみとまこととを送られるのです。
14766 19 57 4 わたしは人の子らをむさぼり食らうししの中に横たわっています。彼らの歯はほこ、また矢、彼らの舌は鋭いつるぎです。
14767 19 57 5 神よ、みずからを天よりも高くし、みさかえを全地の上にあげてください。
14768 19 57 6 彼らはわたしの足を捕えようと網を設けました。わたしの魂はうなだれました。彼らはわたしの前に穴を掘りました。しかし彼らはみずからその中に陥ったのです。〔セラ
14769 19 57 7 神よ、わたしの心は定まりました。わたしの心は定まりました。わたしは歌い、かつほめたたえます。
14770 19 57 8 わが魂よ、さめよ。立琴よ、琴よ、さめよ。わたしはしののめを呼びさまします。
14771 19 57 9 主よ、わたしはもろもろの民の中であなたに感謝し、もろもろの国の中であなたをほめたたえます。
14772 19 57 10 あなたのいつくしみは大きく、天にまで及び、あなたのまことは雲にまで及びます。
14773 19 57 11 神よ、みずからを天よりも高くし、みさかえを全地の上にあげてください。
14774 19 58 1 あなたがた力ある者よ、まことにあなたがたは正しい事を語り、公平をもって人の子らをさばくのか。
14775 19 58 2 否、あなたがたは心のうちに悪い事をたくらみ、その手は地に暴虐を行う。
14776 19 58 3 悪しき者は胎を出た時から、そむき去り、生れ出た時から、あやまちを犯し、偽りを語る。
14777 19 58 6 神よ、彼らの口の歯を折ってください。主よ、若いししのきばを抜き砕いてください。
14778 19 58 7 彼らを流れゆく水のように消え去らせ、踏み倒される若草のように衰えさせてください。
14779 19 58 8 また溶けてどろどろになるかたつむりのように、時ならず生れた日を見ぬ子のようにしてください。
14780 19 58 9 あなたがたの釜がまだいばらの熱を感じない前に青いのも、燃えているのも共につむじ風に吹き払われるように彼らを吹き払ってください。
14781 19 58 10 正しい者は復讐を見て喜び、その足を悪しき者の血で洗うであろう。
14782 19 58 11 そして人々は言うであろう、「まことに正しい者には報いがある。まことに地にさばきを行われる神がある」と。
14783 19 59 1 わが神よ、どうかわたしをわが敵から助け出し、わたしに逆らって起りたつ者からお守りください。
14784 19 59 2 悪を行う者からわたしを助け出し、血を流す人からわたしをお救いください。
14785 19 59 3 見よ、彼らはひそみかくれて、わたしの命をうかがい、力ある人々が共に集まってわたしを攻めます。主よ、わたしにとがも罪もなく、
14786 19 59 4 わたしにあやまちもないのに、彼らは走りまわって備えをします。わたしを助けるために目をさまして、ごらんください。
14787 19 59 5 万軍の神、主よ、あなたはイスラエルの神です。目をさまして、もろもろの国民を罰し、悪をたくらむ者どもに、あわれみを施さないでください。〔セラ
14788 19 59 6 彼らは夕ごとに帰ってきて、犬のようにほえて町をあさりまわる。
14789 19 59 7 見よ、彼らはその口をもってほえ叫び、そのくちびるをもってうなり、「だれが聞くものか」と言う。
14790 19 59 8 しかし、主よ、あなたは彼らを笑い、もろもろの国民をあざけり笑われる。
14791 19 59 9 わが力よ、わたしはあなたにむかってほめ歌います。神よ、あなたはわたしの高きやぐらです。
14792 19 59 10 わが神はそのいつくしみをもってわたしを迎えられる。わが神はわたしに敵の敗北を見させられる。
14793 19 59 11 どうぞ、わが民の忘れることのないために、彼らを殺さないでください。主、われらの盾よ、み力をもって彼らをよろめかせ、彼らを倒れさせないでください。
14794 19 59 12 彼らの口の罪、そのくちびるの言葉のために彼らをその高ぶりに捕われさせてください。彼らが語るのろいと偽りのために
14795 19 59 13 憤りをもって彼らを滅ぼし、もはやながらえることのないまでに、彼らを滅ぼしてください。そうすれば地のはてまで、人々は神がヤコブを治められることを知るに至るでしょう。〔セラ
14796 19 59 14 彼らは夕ごとに帰ってきて、犬のようにほえて町をあさりまわる。
14797 19 59 15 彼らは食い物のためにあるきまわり、飽くことを得なければ怒りうなる。
14798 19 59 16 しかし、わたしはあなたのみ力をうたい、朝には声をあげてみいつくしみを歌います。あなたはわたしの悩みの日にわが高きやぐらとなり、わたしの避け所となられたからです。
14799 19 59 17 わが力よ、わたしはあなたにむかってほめうたいます。神よ、あなたはわが高きやぐら、わたしにいつくしみを賜わる神であられるからです。
14800 19 60 1 神よ、あなたはわれらを捨て、われらを打ち破られました。あなたは憤られました。再びわれらをかえしてください。
14801 19 60 2 あなたは国を震わせ、これを裂かれました。その破れをいやしてください。国が揺れ動くのです。
14802 19 60 3 あなたはその民に耐えがたい事をさせ、人をよろめかす酒をわれらに飲ませられました。
14803 19 60 4 あなたは弓の前からのがれた者を再び集めようとあなたを恐れる者のために一つの旗を立てられました。〔セラ
14804 19 60 5 あなたの愛される者が助けを得るために、右の手をもって勝利を与え、われらに答えてください。
14805 19 60 6 神はその聖所で言われた、「わたしは大いなる喜びをもってシケムを分かち、スコテの谷を分かち与えよう。
14806 19 60 7 ギレアデはわたしのもの、マナセもわたしのものである。エフライムはわたしのかぶと、ユダはわたしのつえである。
14807 19 60 8 モアブはわたしの足だらい、エドムにはわたしのくつを投げる。ペリシテについては、かちどきをあげる」と。
14808 19 60 9 だれがわたしを堅固な町に至らせるでしょうか。だれがわたしをエドムに導くでしょうか。
14809 19 60 10 神よ、あなたはわれらを捨てられたではありませんか。神よ、あなたはわれらの軍勢と共に出て行かれません。
14810 19 60 11 われらに助けを与えて、あだにむかわせてください。人の助けはむなしいのです。
14811 19 60 12 われらは神によって勇ましく働きます。われらのあだを踏みにじる者は神だからです。
14812 19 61 1 神よ、わたしの叫びを聞いてください。わたしの祈に耳を傾けてください。
14813 19 61 2 わが心のくずおれるとき、わたしは地のはてからあなたに呼ばわります。わたしを導いてわたしの及びがたいほどの高い岩にのぼらせてください。
14814 19 61 3 あなたはわたしの避け所、敵に対する堅固なやぐらです。
14815 19 61 4 わたしをとこしえにあなたの幕屋に住まわせ、あなたの翼の陰にのがれさせてください。〔セラ
14816 19 61 5 神よ、あなたはわたしのもろもろの誓いを聞き、み名を恐れる者に賜わる嗣業をわたしに与えられました。
14817 19 61 6 どうか王のいのちを延ばし、そのよわいをよろずよに至らせてください。
14818 19 61 7 彼をとこしえに神の前に王たらしめ、いつくしみとまこととに命じて彼を守らせてください。
14819 19 61 8 そうすればわたしはとこしえにみ名をほめうたい、日ごとにわたしのもろもろの誓いを果すでしょう。
14820 19 62 1 わが魂はもだしてただ神をまつ。わが救は神から来る。
14821 19 62 2 神こそわが岩、わが救、わが高きやぐらである。わたしはいたく動かされることはない。
14822 19 62 3 あなたがたは、いつまで人に押し迫るのか。あなたがたは皆、傾いた石がきのように、揺り動くまがきのように人を倒そうとするのか。
14823 19 62 4 彼らは人を尊い地位から落そうとのみはかり、偽りを喜び、その口では祝福し、心のうちではのろうのである。〔セラ
14824 19 62 5 わが魂はもだしてただ神をまつ。わが望みは神から来るからである。
14825 19 62 6 神こそわが岩、わが救、わが高きやぐらである。わたしは動かされることはない。
14826 19 62 7 わが救とわが誉とは神にある。神はわが力の岩、わが避け所である。
14827 19 62 8 民よ、いかなる時にも神に信頼せよ。そのみ前にあなたがたの心を注ぎ出せ。神はわれらの避け所である。〔セラ
14828 19 62 9 低い人はむなしく、高い人は偽りである。彼らをはかりにおけば、彼らは共に息よりも軽い。
14829 19 62 10 あなたがたは、しえたげにたよってはならない。かすめ奪うことに、むなしい望みをおいてはならない。富の増し加わるとき、これに心をかけてはならない。
14830 19 62 11 神はひとたび言われた、わたしはふたたびこれを聞いた、力は神に属することを。
14831 19 62 12 主よ、いつくしみもまたあなたに属することを。あなたは人おのおののわざにしたがって報いられるからである。
14832 19 63 1 神よ、あなたはわたしの神、わたしは切にあなたをたずね求め、わが魂はあなたをかわき望む。水なき、かわき衰えた地にあるように、わが肉体はあなたを慕いこがれる。
14833 19 63 2 それでわたしはあなたの力と栄えとを見ようと、聖所にあって目をあなたに注いだ。
14834 19 63 3 あなたのいつくしみは、いのちにもまさるゆえ、わがくちびるはあなたをほめたたえる。
14835 19 63 4 わたしは生きながらえる間、あなたをほめ、手をあげて、み名を呼びまつる。
14836 19 63 7 あなたはわたしの助けとなられたゆえ、わたしはあなたの翼の陰で喜び歌う。
14837 19 63 8 わたしの魂はあなたにすがりつき、あなたの右の手はわたしをささえられる。
14838 19 63 9 しかしわたしの魂を滅ぼそうとたずね求める者は地の深き所に行き、
14839 19 63 10 つるぎの力にわたされ、山犬のえじきとなる。
14840 19 63 11 しかし王は神にあって喜び、神によって誓う者はみな誇ることができる。偽りを言う者の口はふさがれるからである。
14841 19 64 1 神よ、わたしが嘆き訴えるとき、わたしの声をお聞きください。敵の恐れからわたしの命をお守りください。
14842 19 64 2 わたしを隠して、悪を行う者のひそかなはかりごとから免れさせ、不義を行う者のはかりごとから免れさせてください。
14843 19 64 3 彼らはその舌をつるぎのようにとぎ、苦い言葉を矢のように放ち、
14844 19 64 4 隠れた所から罪なき者を射ようとする。にわかに彼を射て恐れることがない。
14845 19 64 5 彼らは悪い企てを固くたもち、共にはかり、ひそかにわなをかけて言う、「だれがわれらを見破ることができるか。
14846 19 64 6 だれがわれらの罪をたずね出すことができるか。われらは巧みに、はかりごとを考えめぐらしたのだ」と。人の内なる思いと心とは深い。
14847 19 64 7 しかし神は矢をもって彼らを射られる。彼らはにわかに傷をうけるであろう。
14848 19 64 8 神は彼らの舌のゆえに彼らを滅ぼされる。彼らを見る者は皆そのこうべを振るであろう。
14849 19 64 9 その時すべての人は恐れ、神のみわざを宣べ伝え、そのなされた事を考えるであろう。
14850 19 64 10 正しい人は主にあって喜び、かつ主に寄り頼む。すべて心の直き者は誇ることができる。
14851 19 65 1 神よ、シオンにて、あなたをほめたたえることはふさわしいことである。人はあなたに誓いを果すであろう。
14852 19 65 4 あなたに選ばれ、あなたに近づけられて、あなたの大庭に住む人はさいわいである。われらはあなたの家、あなたの聖なる宮の恵みによって飽くことができる。
14853 19 65 5 われらの救の神よ、地のもろもろのはてと、遠き海の望みであるあなたは恐るべきわざにより、救をもってわれらに答えられる。
14854 19 65 6 あなたは大能を帯び、そのみ力によって、もろもろの山を堅く立たせられる。
14855 19 65 7 あなたは海の響き、大波の響き、もろもろの民の騒ぎを静められる。
14856 19 65 8 それゆえ、地のはてに住む人々も、あなたのもろもろのしるしを見て恐れる。あなたは朝と夕の出る所をして喜び歌わせられる。
14857 19 65 9 あなたは地に臨んで、これに水をそそぎ、これを大いに豊かにされる。神の川は水で満ちている。あなたはそのように備えして彼らに穀物を与えられる。
14858 19 65 10 あなたはその田みぞを豊かにうるおし、そのうねを整え、夕立ちをもってそれを柔らかにし、そのもえ出るのを祝福し、
14859 19 65 11 またその恵みをもって年の冠とされる。あなたの道にはあぶらがしたたる。
14860 19 65 12 野の牧場はしたたり、小山は喜びをまとい、
14861 19 65 13 牧場は羊の群れを着、もろもろの谷は穀物をもっておおわれ、彼らは喜び呼ばわって共に歌う。
14862 19 66 1 全地よ、神にむかって喜び呼ばわれ。
14863 19 66 2 そのみ名の栄光を歌え。栄えあるさんびをささげよ。
14864 19 66 3 神に告げよ。「あなたのもろもろのみわざは恐るべきかな。大いなるみ力によって、あなたの敵はみ前に屈服し、
14865 19 66 4 全地はあなたを拝み、あなたをほめうたい、み名をほめうたうであろう」と。〔セラ
14866 19 66 5 来て、神のみわざを見よ。人の子らにむかってなされることは恐るべきかな。
14867 19 66 6 神は海を変えて、かわいた地とされた。人々は徒歩で川を渡った。その所でわれらは神を喜んだ。
14868 19 66 7 神は大能をもって、とこしえに統べ治め、その目はもろもろの国民を監視される。そむく者はみずからを高くしてはならない。〔セラ
14869 19 66 8 もろもろの民よ、われらの神をほめよ。神をほめたたえる声を聞えさせよ。
14870 19 66 9 神はわれらを生きながらえさせ、われらの足のすべるのをゆるされない。
14871 19 66 10 神よ、あなたはわれらを試み、しろがねを練るように、われらを練られた。
14872 19 66 11 あなたはわれらを網にひきいれ、われらの腰に重き荷を置き、
14873 19 66 12 人々にわれらの頭の上を乗り越えさせられた。われらは火の中、水の中を通った。しかしあなたはわれらを広い所に導き出された。
14874 19 66 13 わたしは燔祭をもってあなたの家に行き、わたしの誓いをあなたに果します。
14875 19 66 14 これはわたしが悩みにあったとき、わたしのくちびるの言い出したもの、わたしの口が約束したものです。
14876 19 66 15 わたしは肥えたものの燔祭を雄羊のいけにえの煙と共にあなたにささげ、雄牛と雄やぎとをささげます。〔セラ
14877 19 66 16 すべて神を恐れる者よ、来て聞け。神がわたしのためになされたことを告げよう。
14878 19 66 17 わたしは声をあげて神に呼ばわり、わが舌をもって神をあがめた。
14879 19 66 18 もしわたしが心に不義をいだいていたならば、主はお聞きにならないであろう。
14880 19 66 19 しかし、まことに神はお聞きになり、わが祈の声にみこころをとめられた。
14881 19 66 20 神はほむべきかな。神はわが祈をしりぞけず、そのいつくしみをわたしから取り去られなかった。
14882 19 67 1 どうか、神がわれらをあわれみ、われらを祝福し、そのみ顔をわれらの上に照されるように。〔セラ
14883 19 67 2 これはあなたの道があまねく地に知られ、あなたの救の力がもろもろの国民のうちに知られるためです。
14884 19 67 3 神よ、民らにあなたをほめたたえさせ、もろもろの民にあなたをほめたたえさせてください。
14885 19 67 4 もろもろの国民を楽しませ、また喜び歌わせてください。あなたは公平をもってもろもろの民をさばき、地の上なるもろもろの国民を導かれるからです。〔セラ
14886 19 67 5 神よ、民らにあなたをほめたたえさせ、もろもろの民にあなたをほめたたえさせてください。
14887 19 67 6 地はその産物を出しました。神、われらの神はわれらを祝福されました。
14888 19 67 7 神はわれらを祝福されました。地のもろもろのはてにことごとく神を恐れさせてください。
14889 19 68 1 神よ、立ちあがって、その敵を散らし、神を憎む者をみ前から逃げ去らせてください。
14890 19 68 2 煙の追いやられるように彼らを追いやり、ろうの火の前に溶けるように悪しき者を神の前に滅ぼしてください。
14891 19 68 3 しかし正しい者を喜ばせ、神の前に喜び踊らせ、喜び楽しませてください。
14892 19 68 4 神にむかって歌え、そのみ名をほめうたえ。雲に乗られる者にむかって歌声をあげよ。その名は主、そのみ前に喜び踊れ。
14893 19 68 5 その聖なるすまいにおられる神はみなしごの父、やもめの保護者である。
14894 19 68 6 神は寄るべなき者に住むべき家を与え、めしゅうどを解いて幸福に導かれる。しかしそむく者はかわいた地に住む。
14895 19 68 7 神よ、あなたが民に先だち出て、荒野を進み行かれたとき、〔セラ
14896 19 68 8 シナイの主なる神の前に、イスラエルの神なる神の前に、地は震い、天は雨を降らせました。
14897 19 68 9 神よ、あなたは豊かな雨を降らせて、疲れ衰えたあなたの嗣業の地を回復され、
14898 19 68 10 あなたの群れは、そのうちにすまいを得ました。神よ、あなたは恵みをもって貧しい者のために備えられました。
14899 19 68 11 主は命令を下される。おとずれを携えた女たちの大いなる群れは言う、
14900 19 68 12 「もろもろの軍勢の王たちは逃げ去り、逃げ去った」と。家にとどまる女たちは獲物を分ける、
14901 19 68 13 たとい彼らは羊のおりの中にとどまるとも。はとの翼は、しろがねをもっておおわれ、その羽はきらめくこがねをもっておおわれる。
14902 19 68 14 全能者がかしこで王たちを散らされたとき、ザルモンに雪が降った。
14903 19 68 15 神の山、バシャンの山、峰かさなる山、バシャンの山よ。
14904 19 68 16 峰かさなるもろもろの山よ、何ゆえ神がすまいにと望まれた山をねたみ見るのか。まことに主はとこしえにそこに住まわれる。
14905 19 68 17 主は神のいくさ車幾千万をもって、シナイから聖所に来られた。
14906 19 68 18 あなたはとりこを率い、人々のうちから、またそむく者のうちから贈り物をうけて、高い山に登られた。主なる神がそこに住まわれるためである。
14907 19 68 19 日々にわれらの荷を負われる主はほむべきかな。神はわれらの救である。〔セラ
14908 19 68 20 われらの神は救の神である。死からのがれ得るのは主なる神による。
14909 19 68 21 神はその敵のこうべを打ち砕き、おのがとがの中に歩む者の毛深い頭のいただきを打ち砕かれる。
14910 19 68 22 主は言われた、「わたしはバシャンから彼らを携え帰り、海の深い所から彼らを携え帰る。
14911 19 68 23 あなたはその足を彼らの血に浸し、あなたの犬の舌はその分け前を敵から得るであろう」と。
14912 19 68 24 神よ、人々はあなたのこうごうしい行列を見た。わが神、わが王の、聖所に進み行かれるのを見た。
14913 19 68 25 歌う者は前に行き、琴をひく者はあとになり、おとめらはその間にあって手鼓を打って言う、
14914 19 68 26 「大いなる集会で神をほめよ。イスラエルの源から出た者よ、主をほめまつれ」と。
14915 19 68 27 そこに彼らを導く年若いベニヤミンがおり、その群れの中にユダの君たちがおり、ゼブルンの君たち、ナフタリの君たちがいる。
14916 19 68 28 神よ、あなたの大能を奮い起してください。われらのために事をなされた神よ、あなたの力をお示しください。
14917 19 68 29 エルサレムにあるあなたの宮のために、王たちはあなたに贈り物をささげるでしょう。
14918 19 68 30 葦の中に住む獣、もろもろの民の子牛を率いる雄牛の群れをいましめてください。みつぎ物をむさぼる者たちを足の下に踏みつけ、戦いを好むもろもろの民を散らしてください。
14919 19 68 31 青銅をエジプトから持ちきたらせ、エチオピヤには急いでその手を神に伸べさせてください。
14920 19 68 32 地のもろもろの国よ、神にむかって歌え、主をほめうたえ。〔セラ
14921 19 68 33 いにしえからの天の天に乗られる主にむかってほめうたえ。見よ、主はみ声を出し、力あるみ声を出される。
14922 19 68 34 力を神に帰せよ。その威光はイスラエルの上にあり、その力は雲の中にある。
14923 19 68 35 神はその聖所で恐るべく、イスラエルの神はその民に力と勢いとを与えられる。神はほむべきかな。
14924 19 69 1 神よ、わたしをお救いください。大水が流れ来て、わたしの首にまで達しました。
14925 19 69 2 わたしは足がかりもない深い泥の中に沈みました。わたしは深い水に陥り、大水がわたしの上を流れ過ぎました。
14926 19 69 3 わたしは叫びによって疲れ、わたしののどはかわき、わたしの目は神を待ちわびて衰えました。
14927 19 69 4 ゆえなく、わたしを憎む者はわたしの頭の毛よりも多く、偽ってわたしの敵となり、わたしを滅ぼそうとする者は強いのです。わたしは盗まなかった物をも償わなければならないのですか。
14928 19 69 5 神よ、あなたはわたしの愚かなことを知っておられます。わたしのもろもろのとがはあなたに隠れることはありません。
14929 19 69 6 万軍の神、主よ、あなたを待ち望む者がわたしの事によって、はずかしめられることのないようにしてください。イスラエルの神よ、あなたを求める者がわたしの事によって、恥を負わせられることのないようにしてください。
14930 19 69 7 わたしはあなたのためにそしりを負い、恥がわたしの顔をおおったのです。
14931 19 69 8 わたしはわが兄弟には、知らぬ者となり、わが母の子らには、のけ者となりました。
14932 19 69 9 あなたの家を思う熱心がわたしを食いつくし、あなたをそしる者のそしりがわたしに及んだからです。
14933 19 69 10 わたしが断食をもってわたしの魂を悩ませば、かえってそれによってそしりをうけました。
14934 19 69 11 わたしが荒布を衣とすれば、かえって彼らのことわざとなりました。
14935 19 69 12 わたしは門に座する者の話題となり、酔いどれの歌となりました。
14936 19 69 13 しかし主よ、わたしはあなたに祈ります。神よ、恵みの時に、あなたのいつくしみの豊かなるにより、わたしにお答えください。
14937 19 69 14 あなたのまことの救により、わたしを泥の中に沈まぬよう助け出してください。わたしを憎む者から、また深い水からわたしを助け出してください。
14938 19 69 15 大水がわたしの上を流れ過ぎることなく、淵がわたしをのむことなく、穴がその口をわたしの上に閉じることのないようにしてください。
14939 19 69 16 主よ、あなたのいつくしみの深きにより、わたしにお答えください。あなたのあわれみの豊かなるにより、わたしを顧みてください。
14940 19 69 17 あなたの顔をしもべに隠さないでください。わたしは悩んでいるのです。すみやかにわたしにお答えください。
14941 19 69 18 わたしに近く寄って、わたしをあがない、わが敵のゆえにわたしをお救いください。
14942 19 69 19 あなたはわたしの受けるそしりと、恥と、はずかしめとを知っておられます。わたしのあだは皆あなたの前にあります。
14943 19 69 20 そしりがわたしの心を砕いたので、わたしは望みを失いました。わたしは同情する者を求めたけれども、ひとりもなく、慰める者を求めたけれども、ひとりも見ませんでした。
14944 19 69 21 彼らはわたしの食物に毒を入れ、わたしのかわいた時に酢を飲ませました。
14945 19 69 22 彼らの前の食卓を網とし、彼らが犠牲をささげる祭を、わなとしてください。
14946 19 69 23 彼らの目を暗くして見えなくし、彼らの腰を常に震わせ、
14947 19 69 24 あなたの憤りを彼らの上にそそぎ、あなたの激しい怒りを彼らに追いつかせてください。
14948 19 69 25 彼らの宿営を荒し、ひとりもその天幕に住まわせないでください。
14949 19 69 26 彼らはあなたが撃たれた者を迫害し、あなたが傷つけられた者をさらに苦しめるからです。
14950 19 69 27 彼らに、罰に罰を加え、あなたの赦免にあずからせないでください。
14951 19 69 28 彼らをいのちの書から消し去って、義人のうちに記録されることのないようにしてください。
14952 19 69 29 しかしわたしは悩み苦しんでいます。神よ、あなたの救がわたしを高い所に置かれますように。
14953 19 69 30 わたしは歌をもって神の名をほめたたえ、感謝をもって神をあがめます。
14954 19 69 31 これは雄牛または角とひずめのある雄牛にまさって主を喜ばせるでしょう。
14955 19 69 32 へりくだる者は、これを見て喜べ。神を求める者よ、あなたがたの心を生きかえらせよ。
14956 19 69 33 主は乏しい者に聞き、その捕われ人をかろしめられないからである。
14957 19 69 34 天と地は主をほめたたえ、海とその中に動くあらゆるものは主をほめたたえよ。
14958 19 69 35 神はシオンを救い、ユダの町々を建て直されるからである。そのしもべらはそこに住んでこれを所有し、
14959 19 69 36 そのしもべらの子孫はこれを継ぎ、み名を愛する者はその中に住むであろう。
14960 19 70 1 神よ、みこころならばわたしをお救いください。主よ、すみやかにわたしをお助けください。
14961 19 70 2 わたしのいのちをたずね求める者どもを恥じあわてさせてください。わたしのそこなわれることを願う者どもをうしろに退かせ、恥を負わせてください。
14962 19 70 3 「あはぁ、あはぁ」と言う者どもを自分の恥によって恐れおののかせてください。
14963 19 70 4 すべてあなたを尋ね求める者はあなたによって喜び楽しむように。あなたの救を愛する者はつねに「神は大いなるかな」ととなえるように。
14964 19 70 5 しかし、わたしは貧しく、かつ乏しい。神よ、急いでわたしに来てください。あなたはわが助け、わが救主です。主よ、ためらわないでください。
14965 19 71 1 主よ、わたしはあなたに寄り頼む。とこしえにわたしをはずかしめないでください。
14966 19 71 2 あなたの義をもってわたしを助け、わたしを救い出してください。あなたの耳を傾けて、わたしをお救いください。
14967 19 71 3 わたしのためにのがれの岩となり、わたしを救う堅固な城となってください。あなたはわが岩、わが城だからです。
14968 19 71 4 わが神よ、悪しき者の手からわたしを救い、不義、残忍な人の支配から、わたしを救い出してください。
14969 19 71 5 主なる神よ、あなたはわたしの若い時からのわたしの望み、わたしの頼みです。
14970 19 71 6 わたしは生れるときからあなたに寄り頼みました。あなたはわたしを母の胎から取り出されたかたです。わたしは常にあなたをほめたたえます。
14971 19 71 7 わたしは多くの人に怪しまれるような者となりました。しかしあなたはわたしの堅固な避け所です。
14972 19 71 8 わたしの口はひねもす、あなたをたたえるさんびと、頌栄とをもって満たされています。
14973 19 71 9 わたしが年老いた時、わたしを見離さないでください。わたしが力衰えた時、わたしを見捨てないでください。
14974 19 71 10 わたしの敵はわたしについて語り、わたしのいのちをうかがう者は共にはかって、
14975 19 71 11 「神は彼を見捨てた。彼を助ける者がないから彼を追って捕えよ」と言います。
14976 19 71 12 神よ、わたしに遠ざからないでください。わが神よ、すみやかに来てわたしを助けてください。
14977 19 71 13 わたしにあだする者を恥じさせ、滅ぼしてください。わたしをそこなわんとする者を、そしりと、はずかしめとをもっておおってください。
14978 19 71 14 しかしわたしは絶えず望みをいだいて、いよいよあなたをほめたたえるでしょう。
14979 19 71 15 わたしの口はひねもすあなたの義と、あなたの救とを語るでしょう。わたしはその数を知らないからです。
14980 19 71 16 わたしは主なる神の大能のみわざを携えゆき、ただあなたの義のみを、ほめたたえるでしょう。
14981 19 71 17 神よ、あなたはわたしを若い時から教えられました。わたしはなお、あなたのくすしきみわざを宣べ伝えます。
14982 19 71 18 神よ、わたしが年老いて、しらがとなるとも、あなたの力をきたらんとするすべての代に宣べ伝えるまで、わたしを見捨てないでください。
14983 19 71 19 神よ、あなたの大能と義とは高い天にまで及ぶ。あなたは大いなる事をなされました。神よ、だれかあなたに等しい者があるでしょうか。
14984 19 71 20 あなたはわたしを多くの重い悩みにあわされましたが、再びわたしを生かし、地の深い所から引きあげられるでしょう。
14985 19 71 21 あなたはわたしの誉を増し、再びわたしを慰められるでしょう。
14986 19 71 22 わが神よ、わたしはまた立琴をもってあなたと、あなたのまこととをほめたたえます。イスラエルの聖者よ、わたしは琴をもってあなたをほめ歌います。
14987 19 71 23 わたしがあなたにむかってほめ歌うとき、わがくちびるは喜び呼ばわり、あなたがあがなわれたわが魂もまた喜び呼ばわるでしょう。
14988 19 71 24 わたしの舌もまたひねもすあなたの義を語るでしょう。わたしをそこなわんとした者が恥じあわてたからです。
14989 19 72 1 神よ、あなたの公平を王に与え、あなたの義を王の子に与えてください。
14990 19 72 2 彼は義をもってあなたの民をさばき、公平をもってあなたの貧しい者をさばくように。
14991 19 72 3 もろもろの山と丘とは義によって民に平和を与えるように。
14992 19 72 4 彼は民の貧しい者の訴えを弁護し、乏しい者に救を与え、しえたげる者を打ち砕くように。
14993 19 72 5 彼は日と月とのあらんかぎり、世々生きながらえるように。
14994 19 72 6 彼は刈り取った牧草の上に降る雨のごとく、地を潤す夕立ちのごとく臨むように。
14995 19 72 7 彼の世に義は栄え、平和は月のなくなるまで豊かであるように。
14996 19 72 8 彼は海から海まで治め、川から地のはてまで治めるように。
14997 19 72 9 彼のあだは彼の前にかがみ、彼の敵はちりをなめるように。
14998 19 72 10 タルシシおよび島々の王たちはみつぎを納め、シバとセバの王たちは贈り物を携えて来るように。
14999 19 72 11 もろもろの王は彼の前にひれ伏し、もろもろの国民は彼に仕えるように。
15000 19 72 12 彼は乏しい者をその呼ばわる時に救い、貧しい者と、助けなき者とを救う。
15001 19 72 13 彼は弱い者と乏しい者とをあわれみ、乏しい者のいのちを救い、
15002 19 72 14 彼らのいのちを、しえたげと暴力とからあがなう。彼らの血は彼の目に尊い。
15003 19 72 15 彼は生きながらえ、シバの黄金が彼にささげられ、彼のために絶えず祈がささげられ、ひねもす彼のために祝福が求められるように。
15004 19 72 16 国のうちには穀物が豊かにみのり、その実はレバノンのように山々の頂に波打ち、人々は野の草のごとく町々に栄えるように。
15005 19 72 17 彼の名はとこしえに続き、その名声は日のあらん限り、絶えることのないように。人々は彼によって祝福を得、もろもろの国民は彼をさいわいなる者ととなえるように。
15006 19 72 18 イスラエルの神、主はほむべきかな。ただ主のみ、くすしきみわざをなされる。
15007 19 72 19 その光栄ある名はとこしえにほむべきかな。全地はその栄光をもって満たされるように。アァメン、アァメン。
15008 19 72 20 エッサイの子ダビデの祈は終った。
15009 19 73 1 神は正しい者にむかい、心の清い者にむかって、まことに恵みふかい。
15010 19 73 2 しかし、わたしは、わたしの足がつまずくばかり、わたしの歩みがすべるばかりであった。
15011 19 73 3 これはわたしが、悪しき者の栄えるのを見て、その高ぶる者をねたんだからである。
15012 19 73 4 彼らには苦しみがなく、その身はすこやかで、つやがあり、
15013 19 73 5 ほかの人々のように悩むことがなく、ほかの人々のように打たれることはない。
15014 19 73 6 それゆえ高慢は彼らの首飾となり、暴力は衣のように彼らをおおっている。
15015 19 73 7 彼らは肥え太って、その目はとびいで、その心は愚かな思いに満ちあふれている。
15016 19 73 8 彼らはあざけり、悪意をもって語り、高ぶって、しえたげを語る。
15017 19 73 9 彼らはその口を天にさからって置き、その舌は地をあるきまわる。
15018 19 73 10 それゆえ民は心を変えて彼らをほめたたえ、彼らのうちにあやまちを認めない。
15019 19 73 11 彼らは言う、「神はどうして知り得ようか、いと高き者に知識があろうか」と。
15020 19 73 12 見よ、これらは悪しき者であるのに、常に安らかで、その富が増し加わる。
15021 19 73 13 まことに、わたしはいたずらに心をきよめ、罪を犯すことなく手を洗った。
15022 19 73 14 わたしはひねもす打たれ、朝ごとに懲しめをうけた。
15023 19 73 15 もしわたしが「このような事を語ろう」と言ったなら、わたしはあなたの子らの代を誤らせたであろう。
15024 19 73 16 しかし、わたしがこれを知ろうと思いめぐらしたとき、これはわたしにめんどうな仕事のように思われた。
15025 19 73 17 わたしが神の聖所に行って、彼らの最後を悟り得たまではそうであった。
15026 19 73 18 まことにあなたは彼らをなめらかな所に置き、彼らを滅びに陥らせられる。
15027 19 73 19 なんと彼らはまたたくまに滅ぼされ、恐れをもって全く一掃されたことであろう。
15028 19 73 20 あなたが目をさまして彼らの影をかろしめられるとき、彼らは夢みた人の目をさました時のようである。
15029 19 73 21 わたしの魂が痛み、わたしの心が刺されたとき、
15030 19 73 22 わたしは愚かで悟りがなく、あなたに対しては獣のようであった。
15031 19 73 23 けれどもわたしは常にあなたと共にあり、あなたはわたしの右の手を保たれる。
15032 19 73 24 あなたはさとしをもってわたしを導き、その後わたしを受けて栄光にあずからせられる。
15033 19 73 25 わたしはあなたのほかに、だれを天にもち得よう。地にはあなたのほかに慕うものはない。
15034 19 73 26 わが身とわが心とは衰える。しかし神はとこしえにわが心の力、わが嗣業である。
15035 19 73 27 見よ、あなたに遠い者は滅びる。あなたは、あなたにそむく者を滅ぼされる。
15036 19 73 28 しかし神に近くあることはわたしに良いことである。わたしは主なる神をわが避け所として、あなたのもろもろのみわざを宣べ伝えるであろう。
15037 19 74 1 神よ、なぜ、われらをとこしえに捨てられるのですか。なぜ、あなたの牧の羊に怒りを燃やされるのですか。
15038 19 74 2 昔あなたが手に入れられたあなたの公会、すなわち、あなたの嗣業の部族となすためにあがなわれたものを思い出してください。あなたが住まわれたシオンの山を思い出してください。
15039 19 74 3 とこしえの滅びの跡に、あなたの足を向けてください。敵は聖所で、すべての物を破壊しました。
15040 19 74 4 あなたのあだは聖所の中でほえさけび、彼らのしるしを立てて、しるしとしました。
15041 19 74 5 彼らは上の入口では、おのをもって木の格子垣を切り倒しました。
15042 19 74 6 また彼らは手おのと鎚とをもって聖所の彫り物をことごとく打ち落しました。
15043 19 74 7 彼らはあなたの聖所に火をかけ、み名のすみかをけがして、地に倒しました。
15044 19 74 8 彼らは心のうちに言いました、「われらはことごとくこれを滅ぼそう」と。彼らは国のうちの神の会堂をことごとく焼きました。
15045 19 74 9 われらは自分たちのしるしを見ません。預言者も今はいません。そしていつまで続くのか、われらのうちには、知る者がありません。
15046 19 74 10 神よ、あだはいつまであざけるでしょうか。敵はとこしえにあなたの名をののしるでしょうか。
15047 19 74 11 なぜあなたは手を引かれるのですか。なぜあなたは右の手をふところに入れておかれるのですか。
15048 19 74 12 神はいにしえからわたしの王であって、救を世の中に行われた。
15049 19 74 13 あなたはみ力をもって海をわかち、水の上の龍の頭を砕かれた。
15050 19 74 14 あなたはレビヤタンの頭をくだき、これを野の獣に与えてえじきとされた。
15051 19 74 15 あなたは泉と流れとを開き、絶えず流れるもろもろの川をからされた。
15052 19 74 16 昼はあなたのもの、夜もまたあなたのもの。あなたは光と太陽とを設けられた。
15053 19 74 17 あなたは地のもろもろの境を定め、夏と冬とを造られた。
15054 19 74 18 主よ、敵はあなたをあざけり、愚かな民はあなたのみ名をののしります。この事を思い出してください。
15055 19 74 19 どうかあなたのはとの魂を野の獣にわたさないでください。貧しい者のいのちをとこしえに忘れないでください。
15056 19 74 20 あなたの契約をかえりみてください。地の暗い所は暴力のすまいで満ちています。
15057 19 74 21 しえたげられる者を恥じさせないでください。貧しい者と乏しい者とにみ名をほめたたえさせてください。
15058 19 74 22 神よ、起きてあなたの訴えをあげつらい、愚かな者のひねもすあなたをあざけるのをみこころにとめてください。
15059 19 74 23 あなたのあだの叫びを忘れないでください。あなたの敵の絶えずあげる騒ぎを忘れないでください。
15060 19 75 1 神よ、われらはあなたに感謝します。われらは感謝します。われらはあなたのみ名を呼び、あなたのくすしきみわざを語ります。
15061 19 75 2 定まった時が来れば、わたしは公平をもってさばく。
15062 19 75 3 地とすべてこれに住むものがよろめくとき、わたしはその柱を堅くする。〔セラ
15063 19 75 4 わたしは、誇る者には「誇るな」と言い、悪しき者には「角をあげるな、
15064 19 75 5 角を高くあげるな、高慢な態度をもって語るな」と言う。
15065 19 75 6 上げることは東からでなく、西からでなく、また荒野からでもない。
15066 19 75 7 それはさばきを行われる神であって、神はこれを下げ、かれを上げられる。
15067 19 75 8 主の手には杯があって、よく混ぜた酒があわだっている。主がこれを注ぎ出されると、地のすべての悪しき者はこれを一滴も残さずに飲みつくすであろう。
15068 19 75 9 しかしわたしはとこしえに喜び、ヤコブの神をほめうたいます。
15069 19 75 10 悪しき者の角はことごとく切り離されるが正しい者の角はあげられるであろう。
15070 19 76 1 神はユダに知られ、そのみ名はイスラエルにおいて偉大である。
15071 19 76 2 その幕屋はサレムにあり、そのすまいはシオンにある。
15072 19 76 3 かしこで神は弓の火矢を折り、盾とつるぎと戦いの武器をこわされた。〔セラ
15073 19 76 4 あなたは永久の山々にまさって光栄あり、威厳がある。
15074 19 76 5 雄々しい者はかすめられ、彼らは眠りに沈み、いくさびとは皆その手を施すことができなかった。
15075 19 76 6 ヤコブの神よ、あなたのとがめによって、乗り手と馬とは深い眠りに陥った。
15076 19 76 7 しかし、あなたこそは恐るべき方である。あなたが怒りを発せられるとき、だれがみ前に立つことができよう。
15077 19 76 10 まことに人の怒りはあなたをほめたたえる。怒りの余りをあなたは帯とされる。
15078 19 76 11 あなたがたの神、主に誓いを立てて、それを償え。その周囲のすべての者は恐るべき主に贈り物をささげよ。
15079 19 76 12 主はもろもろの君たちのいのちを断たれる。主は地の王たちの恐るべき者である。
15080 19 77 1 わたしは神にむかい声をあげて叫ぶ。わたしが神にむかって声をあげれば、神はわたしに聞かれる。
15081 19 77 2 わたしは悩みの日に主をたずね求め、夜はわが手を伸べてたゆむことなく、わが魂は慰められるのを拒む。
15082 19 77 3 わたしは神を思うとき、嘆き悲しみ、深く思うとき、わが魂は衰える。〔セラ
15083 19 77 4 あなたはわたしのまぶたをささえて閉じさせず、わたしは物言うこともできないほどに悩む。
15084 19 77 5 わたしは昔の日を思い、いにしえの年を思う。
15085 19 77 6 わたしは夜、わが心と親しく語り、深く思うてわが魂を探り、言う、
15086 19 77 7 「主はとこしえにわれらを捨てられるであろうか。ふたたび、めぐみを施されないであろうか。
15087 19 77 8 そのいつくしみはとこしえに絶え、その約束は世々ながくすたれるであろうか。
15088 19 77 9 神は恵みを施すことを忘れ、怒りをもってそのあわれみを閉じられたであろうか」と。〔セラ
15089 19 77 10 その時わたしは言う、「わたしの悲しみはいと高き者の右の手が変ったことである」と。
15090 19 77 11 わたしは主のみわざを思い起す。わたしは、いにしえからのあなたのくすしきみわざを思いいだす。
15091 19 77 12 わたしは、あなたのすべてのみわざを思い、あなたの力あるみわざを深く思う。
15092 19 77 13 神よ、あなたの道は聖である。われらの神のように大いなる神はだれか。
15093 19 77 14 あなたは、くすしきみわざを行われる神である。あなたは、もろもろの民の間に、その大能をあらわし、
15094 19 77 15 その腕をもっておのれの民をあがない、ヤコブとヨセフの子らをあがなわれた。〔セラ
15095 19 77 16 神よ、大水はあなたを見た。大水はあなたを見ておののき、淵もまた震えた。
15096 19 77 17 雲は水を注ぎいだし、空は雷をとどろかし、あなたの矢は四方にきらめいた。
15097 19 77 18 あなたの雷のとどろきは、つむじ風の中にあり、あなたのいなずまは世を照し、地は震い動いた。
15098 19 77 19 あなたの大路は海の中にあり、あなたの道は大水の中にあり、あなたの足跡はたずねえなかった。
15099 19 77 20 あなたは、その民をモーセとアロンの手によって羊の群れのように導かれた。
15100 19 78 1 わが民よ、わが教を聞き、わが口の言葉に耳を傾けよ。
15101 19 78 2 わたしは口を開いて、たとえを語り、いにしえからの、なぞを語ろう。
15102 19 78 3 これはわれらがさきに聞いて知ったこと、またわれらの先祖たちがわれらに語り伝えたことである。
15103 19 78 4 われらはこれを子孫に隠さず、主の光栄あるみわざと、その力と、主のなされたくすしきみわざとをきたるべき代に告げるであろう。
15104 19 78 5 主はあかしをヤコブのうちにたて、おきてをイスラエルのうちに定めて、その子孫に教うべきことをわれらの先祖たちに命じられた。
15105 19 78 6 これは次の代に生れる子孫がこれを知り、みずから起って、そのまた子孫にこれを伝え、
15106 19 78 7 彼らをして神に望みをおき、神のみわざを忘れず、その戒めを守らせるためである。
15107 19 78 8 またその先祖たちのようにかたくなで、そむく者のやからとなり、その心が定まりなく、その魂が神に忠実でないやからとならないためである。
15108 19 78 9 エフライムの人々は武装し、弓を携えたが、戦いの日に引き返した。
15109 19 78 10 彼らは神の契約を守らず、そのおきてにしたがって歩むことを拒み、
15110 19 78 11 神がなされた事と、彼らに示されたくすしきみわざとを忘れた。
15111 19 78 12 神はエジプトの地と、ゾアンの野でくすしきみわざを彼らの先祖たちの前に行われた。
15112 19 78 13 神は海を分けて彼らを通らせ、水を立たせて山のようにされた。
15113 19 78 14 昼は雲をもって彼らを導き、夜は、よもすがら火の光をもって彼らを導かれた。
15114 19 78 15 神は荒野で岩を裂き、淵から飲むように豊かに彼らに飲ませ、
15115 19 78 16 また岩から流れを引いて、川のように水を流れさせられた。
15116 19 78 17 ところが彼らはなお神にむかって罪をかさね、荒野でいと高き者にそむき、
15117 19 78 18 おのが欲のために食物を求めて、その心のうちに神を試みた。
15118 19 78 19 また彼らは神に逆らって言った、「神は荒野に宴を設けることができるだろうか。
15119 19 78 20 見よ、神が岩を打たれると、水はほとばしりいで、流れがあふれた。神はまたパンを与えることができるだろうか。民のために肉を備えることができるだろうか」と。
15120 19 78 21 それゆえ、主は聞いて憤られた。火はヤコブにむかって燃えあがり、怒りはイスラエルにむかって立ちのぼった。
15121 19 78 22 これは彼らが神を信ぜず、その救の力を信用しなかったからである。
15122 19 78 23 しかし神は上なる大空に命じて天の戸を開き、
15123 19 78 24 彼らの上にマナを降らせて食べさせ、天の穀物を彼らに与えられた。
15124 19 78 25 人は天使のパンを食べた。神は彼らに食物をおくって飽き足らせられた。
15125 19 78 26 神は天に東風を吹かせ、み力をもって南風を導かれた。
15126 19 78 27 神は彼らの上に肉をちりのように降らせ、翼ある鳥を海の砂のように降らせて、
15127 19 78 28 その宿営のなか、そのすまいのまわりに落された。
15128 19 78 29 こうして彼らは食べて、飽き足ることができた。神が彼らにその望んだものを与えられたからである。
15129 19 78 30 ところが彼らがまだその欲を離れず、食物がなお口の中にあるうちに、
15130 19 78 31 神の怒りが彼らにむかって立ちのぼり、彼らのうちの最も強い者を殺し、イスラエルのうちのえり抜きの者を打ち倒された。
15131 19 78 32 すべてこれらの事があったにもかかわらず、彼らはなお罪を犯し、そのくすしきみわざを信じなかった。
15132 19 78 33 それゆえ神は彼らの日を息のように消えさせ、彼らの年を恐れをもって過ごさせられた。
15133 19 78 34 神が彼らを殺されたとき、彼らは神をたずね、悔いて神を熱心に求めた。
15134 19 78 35 こうして彼らは、神は彼らの岩、いと高き神は彼らのあがないぬしであることを思い出した。
15135 19 78 36 しかし彼らはその口をもって神にへつらい、その舌をもって神に偽りを言った。
15136 19 78 37 彼らの心は神にむかって堅実でなく、神の契約に真実でなかった。
15137 19 78 38 しかし神はあわれみに富まれるので、彼らの不義をゆるして滅ぼさず、しばしばその怒りをおさえて、その憤りをことごとくふり起されなかった。
15138 19 78 39 また神は、彼らがただ肉であって、過ぎ去れば再び帰りこぬ風であることを思い出された。
15139 19 78 40 幾たび彼らは野で神にそむき、荒野で神を悲しませたことであろうか。
15140 19 78 41 彼らはかさねがさね神を試み、イスラエルの聖者を怒らせた。
15141 19 78 42 彼らは神の力をも、神が彼らをあだからあがなわれた日をも思い出さなかった。
15142 19 78 43 神はエジプトでもろもろのしるしをおこない、ゾアンの野でもろもろの奇跡をおこない、
15143 19 78 44 彼らの川を血に変らせて、その流れを飲むことができないようにされた。
15144 19 78 45 神ははえの群れを彼らのうちに送って彼らを食わせ、かえるを送って彼らを滅ぼされた。
15145 19 78 46 また神は彼らの作物を青虫にわたし、彼らの勤労の実をいなごにわたされた。
15146 19 78 47 神はひょうをもって彼らのぶどうの木を枯らし、霜をもって彼らのいちじく桑の木を枯らされた。
15147 19 78 48 神は彼らの家畜をひょうにわたし、彼らの群れを燃えるいなずまにわたされた。
15148 19 78 49 神は彼らの上に激しい怒りと、憤りと、恨みと、悩みと、滅ぼす天使の群れとを放たれた。
15149 19 78 50 神はその怒りのために道を設け、彼らの魂を死から免れさせず、そのいのちを疫病にわたされた。
15150 19 78 51 神はエジプトですべてのういごを撃ち、ハムの天幕で彼らの力の初めの子を撃たれた。
15151 19 78 52 こうして神はおのれの民を羊のように引き出し、彼らを荒野で羊の群れのように導き、
15152 19 78 53 彼らを安らかに導かれたので彼らは恐れることがなかった。しかし海は彼らの敵をのみつくした。
15153 19 78 54 神は彼らをその聖地に伴い、その右の手をもって獲たこの山に伴いこられた。
15154 19 78 55 神は彼らの前からもろもろの国民を追い出し、その地を分けて嗣業とし、イスラエルの諸族を彼らの天幕に住まわせられた。
15155 19 78 56 しかし彼らはいと高き神を試み、これにそむいて、そのもろもろのあかしを守らず、
15156 19 78 57 そむき去って、先祖たちのように真実を失い、狂った弓のようにねじれた。
15157 19 78 58 彼らは高き所を設けて神を怒らせ、刻んだ像をもって神のねたみを起した。
15158 19 78 59 神は聞いて大いに怒り、イスラエルを全くしりぞけられた。
15159 19 78 60 神は人々のなかに設けた幕屋なるシロのすまいを捨て、
15160 19 78 61 その力をとりことならせ、その栄光をあだの手にわたされた。
15161 19 78 62 神はその民をつるぎにわたし、その嗣業にむかって大いなる怒りをもらされた。
15162 19 78 63 火は彼らの若者たちを焼きつくし、彼らのおとめたちは婚姻の歌を失い、
15163 19 78 64 彼らの祭司たちはつるぎによって倒れ、彼らのやもめたちは嘆き悲しむことさえしなかった。
15164 19 78 65 そのとき主は眠った者のさめたように、勇士が酒によって叫ぶように目をさまして、
15165 19 78 66 そのあだを撃ち退け、とこしえの恥を彼らに負わせられた。
15166 19 78 67 神はヨセフの天幕をしりぞけ、エフライムの部族を選ばず、
15167 19 78 68 ユダの部族を選び、神の愛するシオンの山を選ばれた。
15168 19 78 69 神はその聖所を高い天のように建て、とこしえに基を定められた地のように建てられた。
15169 19 78 70 神はそのしもべダビデを選んで、羊のおりから取り、
15170 19 78 71 乳を与える雌羊の番をするところからつれて来て、その民ヤコブ、その嗣業イスラエルの牧者とされた。
15171 19 78 72 こうして彼は直き心をもって彼らを牧し、巧みな手をもって彼らを導いた。
15172 19 79 1 神よ、もろもろの異邦人はあなたの嗣業の地を侵し、あなたの聖なる宮をけがし、エルサレムを荒塚としました。
15173 19 79 2 彼らはあなたのしもべのしかばねを空の鳥に与えてえさとし、あなたの聖徒の肉を地の獣に与え、
15174 19 79 3 その血をエルサレムのまわりに水のように流し、これを葬る人がありませんでした。
15175 19 79 4 われらは隣り人にそしられ、まわりの人々に侮られ、あざけられる者となりました。
15176 19 79 5 主よ、いつまでなのですか。とこしえにお怒りになられるのですか。あなたのねたみは火のように燃えるのですか。
15177 19 79 6 どうか、あなたを知らない異邦人と、あなたの名を呼ばない国々の上にあなたの怒りを注いでください。
15178 19 79 7 彼らはヤコブを滅ぼし、そのすみかを荒したからです。
15179 19 79 8 われらの先祖たちの不義をみこころにとめられず、あわれみをもって、すみやかにわれらを迎えてください。われらは、はなはだしく低くされたからです。
15180 19 79 9 われらの救の神よ、み名の栄光のためにわれらを助け、み名のためにわれらを救い、われらの罪をおゆるしください。
15181 19 79 10 どうして異邦人は言うのでしょう、「彼らの神はどこにいるのか」と。あなたのしもべらの流された血の報いをわれらのまのあたりになして、異邦人に知らせてください。
15182 19 79 11 捕われ人の嘆きをあなたのみ前にいたらせ、あなたの大いなる力により、死に定められた者を守りながらえさせてください。
15183 19 79 12 主よ、われらの隣り人があなたをそしったそしりを七倍にして彼らのふところに報い返してください。
15184 19 79 13 そうすれば、あなたの民、あなたの牧の羊は、とこしえにあなたに感謝し、世々あなたをほめたたえるでしょう。
15185 19 80 1 イスラエルの牧者よ、羊の群れのようにヨセフを導かれる者よ、耳を傾けてください。ケルビムの上に座せられる者よ、光を放ってください。
15186 19 80 2 エフライム、ベニヤミン、マナセの前にあなたの力を振り起し、来て、われらをお救いください。
15187 19 80 3 神よ、われらをもとに返し、み顔の光を照してください。そうすればわれらは救をえるでしょう。
15188 19 80 4 万軍の神、主よ、いつまで、その民の祈にむかってお怒りになるのですか。
15189 19 80 5 あなたは涙のパンを彼らに食わせ、多くの涙を彼らに飲ませられました。
15190 19 80 6 あなたはわれらを隣り人のあざけりとし、われらの敵はたがいにあざわらいました。
15191 19 80 7 万軍の神よ、われらをもとに返し、われらの救われるため、み顔の光を照してください。
15192 19 80 8 あなたは、ぶどうの木をエジプトから携え出し、もろもろの国民を追い出して、これを植えられました。
15193 19 80 9 あなたはこれがために地を開かれたので、深く根ざして、国にはびこりました。
15194 19 80 10 山々はその影でおおわれ、神の香柏はその枝でおおわれました。
15195 19 80 11 これはその枝を海にまでのべ、その若枝を大川にまでのべました。
15196 19 80 12 あなたは何ゆえ、そのかきをくずして道ゆくすべての人にその実を摘み取らせられるのですか。
15197 19 80 13 林のいのししはこれを荒し、野のすべての獣はこれを食べます。
15198 19 80 14 万軍の神よ、再び天から見おろして、このぶどうの木をかえりみてください。
15199 19 80 15 あなたの右の手の植えられた幹と、みずからのために強くされた枝とをかえりみてください。
15200 19 80 16 彼らは火をもってこれを焼き、これを切り倒しました。彼らをみ顔のとがめによって滅ぼしてください。
15201 19 80 17 しかしあなたの手をその右の手の人の上におき、みずからのために強くされた人の子の上においてください。
15202 19 80 18 そうすれば、われらはあなたを離れ退くことはありません。われらを生かしてください。われらはあなたのみ名を呼びます。
15203 19 80 19 万軍の神、主よ、われらをもとに返し、み顔の光を照してください。そうすればわれらは救をえるでしょう。
15204 19 81 1 われらの力なる神にむかって高らかに歌え。ヤコブの神にむかって喜びの声をあげよ。
15205 19 81 2 歌をうたい、鼓を打て。良い音の琴と立琴とをかきならせ。
15206 19 81 3 新月と満月とわれらの祭の日とにラッパを吹きならせ。
15207 19 81 4 これはイスラエルの定め、ヤコブの神のおきてである。
15208 19 81 5 神が出てエジプトの国を攻められたとき、ヨセフのなかにこれを立てて、あかしとされた。わたしはかしこでまだ知らなかった言葉を聞いた、
15209 19 81 6 「わたしはあなたの肩から重荷をのぞき、あなたの手をかごから免れさせた。
15210 19 81 7 あなたが悩んだとき、呼ばわったのでわたしはあなたを救った。わたしは雷の隠れた所で、あなたに答え、メリバの水のほとりで、あなたを試みた。〔セラ
15211 19 81 8 わが民よ、聞け、わたしはあなたに勧告する。イスラエルよ、あなたがわたしに聞き従うことを望む。
15212 19 81 9 あなたのうちに他の神があってはならない。あなたは外国の神を拝んではならない。
15213 19 81 10 わたしはエジプトの国から、あなたをつれ出したあなたの神、主である。あなたの口を広くあけよ、わたしはそれを満たそう。
15214 19 81 11 しかしわが民はわたしの声に聞き従わず、イスラエルはわたしを好まなかった。
15215 19 81 12 それゆえ、わたしは彼らをそのかたくなな心にまかせ、その思いのままに行くにまかせた。
15216 19 81 13 わたしはわが民のわたしに聞き従い、イスラエルのわが道に歩むことを欲する。
15217 19 81 14 わたしはすみやかに彼らの敵を従え、わが手を彼らのあだに向けよう。
15218 19 81 15 主を憎む者も彼らに恐れ従い、彼らの時はとこしえに続くであろう。
15219 19 81 16 わたしは麦の最も良いものをもってあなたを養い、岩から出た蜜をもってあなたを飽かせるであろう」。
15220 19 82 1 神は神の会議のなかに立たれる。神は神々のなかで、さばきを行われる。
15221 19 82 2 「あなたがたはいつまで不正なさばきをなし、悪しき者に好意を示すのか。〔セラ
15222 19 82 3 弱い者と、みなしごとを公平に扱い、苦しむ者と乏しい者の権利を擁護せよ。
15223 19 82 4 弱い者と貧しい者を救い、彼らを悪しき者の手から助け出せ」。
15224 19 82 5 彼らは知ることなく、悟ることもなくて、暗き中をさまよう。地のもろもろの基はゆり動いた。
15225 19 82 6 わたしは言う、「あなたがたは神だ、あなたがたは皆いと高き者の子だ。
15226 19 82 7 しかし、あなたがたは人のように死に、もろもろの君のひとりのように倒れるであろう」。
15227 19 82 8 神よ、起きて、地をさばいてください。すべての国民はあなたのものだからです。
15228 19 83 1 神よ、沈黙を守らないでください。神よ、何も言わずに、黙っていないでください。
15229 19 83 2 見よ、あなたの敵は騒ぎたち、あなたを憎む者は頭をあげました。
15230 19 83 3 彼らはあなたの民にむかって巧みなはかりごとをめぐらし、あなたの保護される者にむかって相ともに計ります。
15231 19 83 4 彼らは言います、「さあ、彼らを断ち滅ぼして国を立てさせず、イスラエルの名をふたたび思い出させないようにしよう」。
15232 19 83 5 彼らは心をひとつにして共にはかり、あなたに逆らって契約を結びます。
15233 19 83 6 すなわちエドムの天幕に住む者とイシマエルびと、モアブとハガルびと、
15234 19 83 7 ゲバルとアンモンとアマレク、ペリシテとツロの住民などです。
15235 19 83 8 アッスリヤもまた彼らにくみしました。彼らはロトの子孫を助けました。〔セラ
15236 19 83 9 あなたがミデアンにされたように、キション川でシセラとヤビンにされたように、彼らにしてください。
15237 19 83 10 彼らはエンドルで滅ぼされ、地のために肥料となりました。
15238 19 83 11 彼らの貴人をオレブとゼエブのように、そのすべての君たちをゼバとザルムンナのようにしてください。
15239 19 83 12 彼らは言いました、「われらは神の牧場を獲て、われらの所有にしよう」と。
15240 19 83 13 わが神よ、彼らを巻きあげられるちりのように、風の前のもみがらのようにしてください。
15241 19 83 14 林を焼く火のように、山を燃やす炎のように、
15242 19 83 15 あなたのはやてをもって彼らを追い、つむじかぜをもって彼らを恐れさせてください。
15243 19 83 16 彼らの顔に恥を満たしてください。主よ、そうすれば彼らはあなたの名を求めるでしょう。
15244 19 83 17 彼らをとこしえに恥じ恐れさせ、あわて惑って滅びうせさせてください。
15245 19 83 18 主という名をおもちになるあなたのみ、全地をしろしめすいと高き者であることを彼らに知らせてください。
15246 19 84 1 万軍の主よ、あなたのすまいはいかに麗しいことでしょう。
15247 19 84 2 わが魂は絶えいるばかりに主の大庭を慕い、わが心とわが身は生ける神にむかって喜び歌います。
15248 19 84 3 すずめがすみかを得、つばめがそのひなをいれる巣を得るように、万軍の主、わが王、わが神よ、あなたの祭壇のかたわらにわがすまいを得させてください。
15249 19 84 4 あなたの家に住み、常にあなたをほめたたえる人はさいわいです。〔セラ
15250 19 84 5 その力があなたにあり、その心がシオンの大路にある人はさいわいです。
15251 19 84 6 彼らはバカの谷を通っても、そこを泉のある所とします。また前の雨は池をもってそこをおおいます。
15252 19 84 7 彼らは力から力に進み、シオンにおいて神々の神にまみえるでしょう。
15253 19 84 8 万軍の神、主よ、わが祈をおききください。ヤコブの神よ、耳を傾けてください。〔セラ
15254 19 84 9 神よ、われらの盾をみそなわし、あなたの油そそがれた者の顔をかえりみてください。
15255 19 84 10 あなたの大庭にいる一日は、よそにいる千日にもまさるのです。わたしは悪の天幕にいるよりは、むしろ、わが神の家の門守となることを願います。
15256 19 84 11 主なる神は日です、盾です。主は恵みと誉とを与え、直く歩む者に良い物を拒まれることはありません。
15257 19 84 12 万軍の主よ、あなたに信頼する人はさいわいです。
15258 19 85 1 主よ、あなたはみ国にめぐみを示し、ヤコブの繁栄を回復されました。
15259 19 85 2 あなたはその民の不義をゆるし、彼らの罪をことごとくおおわれました。〔セラ
15260 19 85 3 あなたはすべての怒りを捨て、激しい憤りを遠ざけられました。
15261 19 85 4 われらの救の神よ、われらを回復し、われらに対するあなたの憤りをおやめください。
15262 19 85 5 あなたはとこしえにわれらを怒り、よろずよまで、あなたの怒りを延ばされるのですか。
15263 19 85 6 あなたの民が、あなたによって喜びを得るため、われらを再び生かされないのですか。
15264 19 85 7 主よ、あなたのいつくしみをわれらに示し、あなたの救をわれらに与えてください。
15265 19 85 8 わたしは主なる神の語られることを聞きましょう。主はその民、その聖徒、ならびにその心を主に向ける者に、平和を語られるからです。
15266 19 85 9 まことに、その救は神を恐れる者に近く、その栄光はわれらの国にとどまるでしょう。
15267 19 85 10 いつくしみと、まこととは共に会い、義と平和とは互に口づけし、
15268 19 85 11 まことは地からはえ、義は天から見おろすでしょう。
15269 19 85 12 主が良い物を与えられるので、われらの国はその産物を出し、
15270 19 85 13 義は主のみ前に行き、その足跡を道とするでしょう。
15271 19 86 1 主よ、あなたの耳を傾けて、わたしにお答えください。わたしは苦しみかつ乏しいからです。
15272 19 86 2 わたしのいのちをお守りください。わたしは神を敬う者だからです。あなたに信頼するあなたのしもべをお救いください。あなたはわたしの神です。
15273 19 86 3 主よ、わたしをあわれんでください。わたしはひねもすあなたに呼ばわります。
15274 19 86 4 あなたのしもべの魂を喜ばせてください。主よ、わが魂はあなたを仰ぎ望みます。
15275 19 86 5 主よ、あなたは恵みふかく、寛容であって、あなたに呼ばわるすべての者にいつくしみを豊かに施されます。
15276 19 86 6 主よ、わたしの祈に耳を傾け、わたしの願いの声をお聞きください。
15277 19 86 7 わたしの悩みの日にわたしはあなたに呼ばわります。あなたはわたしに答えられるからです。
15278 19 86 8 主よ、もろもろの神のうちにあなたに等しい者はなく、また、あなたのみわざに等しいものはありません。
15279 19 86 9 主よ、あなたが造られたすべての国民はあなたの前に来て、伏し拝み、み名をあがめるでしょう。
15280 19 86 10 あなたは大いなる神で、くすしきみわざをなされます。ただあなたのみ、神でいらせられます。
15281 19 86 11 主よ、あなたの道をわたしに教えてください。わたしはあなたの真理に歩みます。心をひとつにしてみ名を恐れさせてください。
15282 19 86 12 わが神、主よ、わたしは心をつくしてあなたに感謝し、とこしえに、み名をあがめるでしょう。
15283 19 86 13 わたしに示されたあなたのいつくしみは大きく、わが魂を陰府の深い所から助け出されたからです。
15284 19 86 14 神よ、高ぶる者はわたしに逆らって起り、荒ぶる者の群れはわたしのいのちを求め、彼らは自分の前にあなたを置くことをしません。
15285 19 86 15 しかし主よ、あなたはあわれみと恵みに富み、怒りをおそくし、いつくしみと、まこととに豊かな神でいらせられます。
15286 19 86 16 わたしをかえりみ、わたしをあわれみ、あなたのしもべにみ力を与え、あなたのはしための子をお救いください。
15287 19 86 17 わたしに、あなたの恵みのしるしをあらわしてください。そうすれば、わたしを憎む者どもはわたしを見て恥じるでしょう。主よ、あなたはわたしを助け、わたしを慰められたからです。
15288 19 87 1 主が基をすえられた都は聖なる山の上に立つ。
15289 19 87 2 主はヤコブのすべてのすまいにまさって、シオンのもろもろの門を愛される。
15290 19 87 3 神の都よ、あなたについて、もろもろの栄光ある事が語られる。〔セラ
15291 19 87 4 わたしはラハブとバビロンをわたしを知る者のうちに挙げる。ペリシテ、ツロ、またエチオピヤを見よ。「この者はかしこに生れた」と言われる。
15292 19 87 5 しかしシオンについては「この者も、かの者もその中に生れた」と言われる。いと高き者みずからシオンを堅く立てられるからである。
15293 19 87 6 主がもろもろの民を登録されるとき、「この者はかしこに生れた」としるされる。〔セラ
15294 19 87 7 歌う者と踊る者はみな言う、「わがもろもろの泉はあなたのうちにある」と。
15295 19 88 1 わが神、主よ、わたしは昼、助けを呼び求め、夜、み前に叫び求めます。
15296 19 88 2 わたしの祈をみ前にいたらせ、わたしの叫びに耳を傾けてください。
15297 19 88 3 わたしの魂は悩みに満ち、わたしのいのちは陰府に近づきます。
15298 19 88 4 わたしは穴に下る者のうちに数えられ、力のない人のようになりました。
15299 19 88 5 すなわち死人のうちに捨てられた者のように、墓に横たわる殺された者のように、あなたが再び心にとめられない者のようになりました。彼らはあなたのみ手から断ち滅ぼされた者です。
15300 19 88 6 あなたはわたしを深い穴、暗い所、深い淵に置かれました。
15301 19 88 7 あなたの怒りはわたしの上に重く、あなたはもろもろの波をもってわたしを苦しめられました。〔セラ
15302 19 88 8 あなたはわが知り人をわたしから遠ざけ、わたしを彼らの忌みきらう者とされました。わたしは閉じこめられて、のがれることはできません。
15303 19 88 9 わたしの目は悲しみによって衰えました。主よ、わたしは日ごとにあなたを呼び、あなたにむかってわが両手を伸べました。
15304 19 88 10 あなたは死んだ者のために奇跡を行われるでしょうか。なき人のたましいは起きあがってあなたをほめたたえるでしょうか。〔セラ
15305 19 88 11 あなたのいつくしみは墓のなかに、あなたのまことは滅びのなかに、宣べ伝えられるでしょうか。
15306 19 88 12 あなたの奇跡は暗やみに、あなたの義は忘れの国に知られるでしょうか。
15307 19 88 13 しかし主よ、わたしはあなたに呼ばわります。あしたに、わが祈をあなたのみ前にささげます。
15308 19 88 14 主よ、なぜ、あなたはわたしを捨てられるのですか。なぜ、わたしにみ顔を隠されるのですか。
15309 19 88 15 わたしは若い時から苦しんで死ぬばかりです。あなたの脅しにあって衰えはてました。
15310 19 88 16 あなたの激しい怒りがわたしを襲い、あなたの恐ろしい脅しがわたしを滅ぼしました。
15311 19 88 17 これらの事がひねもす大水のようにわたしをめぐり、わたしを全く取り巻きました。
15312 19 88 18 あなたは愛する者と友とをわたしから遠ざけ、わたしの知り人を暗やみにおかれました。
15313 19 89 1 主よ、わたしはとこしえにあなたのいつくしみを歌い、わたしの口をもってあなたのまことをよろずよに告げ知らせます。
15314 19 89 2 あなたのいつくしみはとこしえに堅く立ち、あなたのまことは天のようにゆるぐことはありません。
15315 19 89 3 あなたは言われました、「わたしはわたしの選んだ者と契約を結び、わたしのしもべダビデに誓った、
15316 19 89 4 『わたしはあなたの子孫をとこしえに堅くし、あなたの王座を建てて、よろずよに至らせる』」。〔セラ
15317 19 89 5 主よ、もろもろの天にあなたのくすしきみわざをほめたたえさせ、聖なる者のつどいで、あなたのまことをほめたたえさせてください。
15318 19 89 6 大空のうちに、だれか主と並ぶものがあるでしょうか。神の子らのうちに、だれか主のような者があるでしょうか。
15319 19 89 7 主は聖なる者の会議において恐るべき神、そのまわりにあるすべての者にまさって大いなる恐るべき者です。
15320 19 89 8 万軍の神、主よ、主よ、だれかあなたのように大能のある者があるでしょうか。あなたのまことは、あなたをめぐっています。
15321 19 89 9 あなたは海の荒れるのを治め、その波の起るとき、これを静められます。
15322 19 89 10 あなたはラハブを、殺された者のように打ち砕き、あなたの敵を力ある腕をもって散らされました。
15323 19 89 11 もろもろの天はあなたのもの、地もまたあなたのもの、世界とその中にあるものとはあなたがその基をおかれたものです。
15324 19 89 12 北と南はあなたがこれを造られました。タボルとヘルモンは、み名を喜び歌います。
15325 19 89 13 あなたは大能の腕をもたれます。あなたの手は強く、あなたの右の手は高く、
15326 19 89 14 義と公平はあなたのみくらの基、いつくしみと、まことはあなたの前に行きます。
15327 19 89 15 祭の日の喜びの声を知る民はさいわいです。主よ、彼らはみ顔の光のなかを歩み、
15328 19 89 16 ひねもす、み名によって喜び、あなたの義をほめたたえます。
15329 19 89 17 あなたは彼らの力の栄光だからです。われらの角はあなたの恵みによって高くあげられるでしょう。
15330 19 89 18 われらの盾は主に属し、われらの王はイスラエルの聖者に属します。
15331 19 89 19 昔あなたは幻をもってあなたの聖徒に告げて言われました、「わたしは勇士に栄冠を授け、民の中から選ばれた者を高くあげた。
15332 19 89 20 わたしはわがしもべダビデを得て、これにわが聖なる油をそそいだ。
15333 19 89 21 わが手は常に彼と共にあり、わが腕はまた彼を強くする。
15334 19 89 22 敵は彼をだますことなく、悪しき者は彼を卑しめることはない。
15335 19 89 23 わたしは彼の前にもろもろのあだを打ち滅ぼし、彼を憎む者どもを打ち倒す。
15336 19 89 24 わがまことと、わがいつくしみは彼と共にあり、わが名によって彼の角は高くあげられる。
15337 19 89 25 わたしは彼の手を海の上におき、彼の右の手を川の上におく。
15338 19 89 26 彼はわたしにむかい『あなたはわが父、わが神、わが救の岩』と呼ぶであろう。
15339 19 89 27 わたしはまた彼をわがういごとし、地の王たちのうちの最も高い者とする。
15340 19 89 28 わたしはとこしえに、わがいつくしみを彼のために保ち、わが契約は彼のために堅く立つ。
15341 19 89 29 わたしは彼の家系をとこしえに堅く定め、その位を天の日数のようにながらえさせる。
15342 19 89 30 もしその子孫がわがおきてを捨て、わがさばきに従って歩まないならば、
15343 19 89 31 もし彼らがわが定めを犯し、わが戒めを守らないならば、
15344 19 89 32 わたしはつえをもって彼らのとがを罰し、むちをもって彼らの不義を罰する。
15345 19 89 33 しかし、わたしはわがいつくしみを彼から取り去ることなく、わがまことにそむくことはない。
15346 19 89 34 わたしはわが契約を破ることなく、わがくちびるから出た言葉を変えることはない。
15347 19 89 35 わたしはひとたびわが聖によって誓った。わたしはダビデに偽りを言わない。
15348 19 89 36 彼の家系はとこしえに続き、彼の位は太陽のように常にわたしの前にある。
15349 19 89 37 また月のようにとこしえに堅く定められ、大空の続くかぎり堅く立つ」。〔セラ
15350 19 89 38 しかしあなたは、あなたの油そそがれた者を捨ててしりぞけ、彼に対して激しく怒られました。
15351 19 89 39 あなたはそのしもべとの契約を廃棄し、彼の冠を地になげうって、けがされました。
15352 19 89 40 あなたはその城壁をことごとくこわし、そのとりでを荒れすたれさせられました。
15353 19 89 41 そこを通り過ぎる者は皆彼をかすめ、彼はその隣り人のあざけりとなりました。
15354 19 89 42 あなたは彼のあだの右の手を高くあげ、そのもろもろの敵を喜ばせられました。
15355 19 89 43 まことに、あなたは彼のつるぎの刃をかえして、彼を戦いに立たせられなかったのです。
15356 19 89 44 あなたは彼の手から王のつえを取り去り、その王座を地に投げすてられました。
15357 19 89 45 あなたは彼の若き日をちぢめ、恥をもって彼をおおわれました。〔セラ
15358 19 89 46 主よ、いつまでなのですか。とこしえにお隠れになるのですか。あなたの怒りはいつまで火のように燃えるのですか。
15359 19 89 47 主よ、人のいのちの、いかに短く、すべての人の子を、いかにはかなく造られたかを、みこころにとめてください。
15360 19 89 48 だれか生きて死を見ず、その魂を陰府の力から救いうるものがあるでしょうか。〔セラ
15361 19 89 49 主よ、あなたがまことをもってダビデに誓われた昔のいつくしみはどこにありますか。
15362 19 89 52 主はとこしえにほむべきかな。アァメン、アァメン。
15363 19 90 1 主よ、あなたは世々われらのすみかでいらせられる。
15364 19 90 2 山がまだ生れず、あなたがまだ地と世界とを造られなかったとき、とこしえからとこしえまで、あなたは神でいらせられる。
15365 19 90 3 あなたは人をちりに帰らせて言われます、「人の子よ、帰れ」と。
15366 19 90 4 あなたの目の前には千年も過ぎ去ればきのうのごとく、夜の間のひと時のようです。
15367 19 90 5 あなたは人を大水のように流れ去らせられます。彼らはひと夜の夢のごとく、あしたにもえでる青草のようです。
15368 19 90 6 あしたにもえでて、栄えるが、夕べには、しおれて枯れるのです。
15369 19 90 7 われらはあなたの怒りによって消えうせ、あなたの憤りによって滅び去るのです。
15370 19 90 8 あなたはわれらの不義をみ前におき、われらの隠れた罪をみ顔の光のなかにおかれました。
15371 19 90 9 われらのすべての日は、あなたの怒りによって過ぎ去り、われらの年の尽きるのは、ひと息のようです。
15372 19 90 10 われらのよわいは七十年にすぎません。あるいは健やかであっても八十年でしょう。しかしその一生はただ、ほねおりと悩みであって、その過ぎゆくことは速く、われらは飛び去るのです。
15373 19 90 11 だれがあなたの怒りの力を知るでしょうか。だれがあなたをおそれる恐れにしたがってあなたの憤りを知るでしょうか。
15374 19 90 12 われらにおのが日を数えることを教えて、知恵の心を得させてください。
15375 19 90 13 主よ、み心を変えてください。いつまでお怒りになるのですか。あなたのしもべをあわれんでください。
15376 19 90 14 あしたに、あなたのいつくしみをもってわれらを飽き足らせ、世を終るまで喜び楽しませてください。
15377 19 90 15 あなたがわれらを苦しめられた多くの日と、われらが災にあった多くの年とに比べて、われらを楽しませてください。
15378 19 90 16 あなたのみわざを、あなたのしもべらに、あなたの栄光を、その子らにあらわしてください。
15379 19 90 17 われらの神、主の恵みを、われらの上にくだし、われらの手のわざを、われらの上に栄えさせてください。われらの手のわざを栄えさせてください。
15380 19 91 1 いと高き者のもとにある隠れ場に住む人、全能者の陰にやどる人は
15381 19 91 2 主に言うであろう、「わが避け所、わが城、わが信頼しまつるわが神」と。
15382 19 91 3 主はあなたをかりゅうどのわなと、恐ろしい疫病から助け出されるからである。
15383 19 91 4 主はその羽をもって、あなたをおおわれる。あなたはその翼の下に避け所を得るであろう。そのまことは大盾、また小盾である。
15384 19 91 5 あなたは夜の恐ろしい物をも、昼に飛んでくる矢をも恐れることはない。
15385 19 91 6 また暗やみに歩きまわる疫病をも、真昼に荒す滅びをも恐れることはない。
15386 19 91 7 たとい千人はあなたのかたわらに倒れ、万人はあなたの右に倒れても、その災はあなたに近づくことはない。
15387 19 91 8 あなたはただ、その目をもって見、悪しき者の報いを見るだけである。
15388 19 91 9 あなたは主を避け所とし、いと高き者をすまいとしたので、
15389 19 91 10 災はあなたに臨まず、悩みはあなたの天幕に近づくことはない。
15390 19 91 11 これは主があなたのために天使たちに命じて、あなたの歩むすべての道であなたを守らせられるからである。
15391 19 91 12 彼らはその手で、あなたをささえ、石に足を打ちつけることのないようにする。
15392 19 91 13 あなたはししと、まむしとを踏み、若いししと、へびとを足の下に踏みにじるであろう。
15393 19 91 14 彼はわたしを愛して離れないゆえに、わたしは彼を助けよう。彼はわが名を知るゆえに、わたしは彼を守る。
15394 19 91 15 彼がわたしを呼ぶとき、わたしは彼に答える。わたしは彼の悩みのときに、共にいて、彼を救い、彼に光栄を与えよう。
15395 19 91 16 わたしは長寿をもって彼を満ち足らせ、わが救を彼に示すであろう。
15396 19 92 1 いと高き者よ、主に感謝し、み名をほめたたえるのは、よいことです。
15397 19 92 2 あしたに、あなたのいつくしみをあらわし、夜な夜な、あなたのまことをあらわすために、
15398 19 92 3 十弦の楽器と立琴を用い、琴のたえなる調べを用いるのは、よいことです。
15399 19 92 4 主よ、あなたはみわざをもってわたしを楽しませられました。わたしはあなたのみ手のわざを喜び歌います。
15400 19 92 5 主よ、あなたのみわざはいかに大いなることでしょう。あなたのもろもろの思いは、いとも深く、
15401 19 92 6 鈍い者は知ることができず、愚かな者はこれを悟ることができません。
15402 19 92 7 たとい、悪しき者は草のようにもえいで、不義を行う者はことごとく栄えても、彼らはとこしえに滅びに定められているのです。
15403 19 92 8 しかし、主よ、あなたはとこしえに高き所にいらせられます。
15404 19 92 9 主よ、あなたの敵、あなたの敵は滅び、不義を行う者はことごとく散らされるでしょう。
15405 19 92 10 しかし、あなたはわたしの角を野牛の角のように高くあげ、新しい油をわたしに注がれました。
15406 19 92 11 わたしの目はわが敵の没落を見、わたしの耳はわたしを攻める悪者どもの破滅を聞きました。
15407 19 92 12 正しい者はなつめやしの木のように栄え、レバノンの香柏のように育ちます。
15408 19 92 13 彼らは主の家に植えられ、われらの神の大庭に栄えます。
15409 19 92 14 彼らは年老いてなお実を結び、いつも生気に満ち、青々として、
15410 19 92 15 主の正しいことを示すでしょう。主はわが岩です。主には少しの不義もありません。
15411 19 93 1 主は王となり、威光の衣をまとわれます。主は衣をまとい、力をもって帯とされます。まことに、世界は堅く立って、動かされることはありません。
15412 19 93 2 あなたの位はいにしえより堅く立ち、あなたはとこしえよりいらせられます。
15413 19 93 3 主よ、大水は声をあげました。大水はその声をあげました。大水はそのとどろく声をあげます。
15414 19 93 4 主は高き所にいらせられて、その勢いは多くの水のとどろきにまさり、海の大波にまさって盛んです。
15415 19 93 5 あなたのあかしはいとも確かです。主よ、聖なることはとこしえまでもあなたの家にふさわしいのです。
15416 19 94 1 あだを報いられる神、主よ、あだを報いられる神よ、光を放ってください。
15417 19 94 2 地をさばかれる者よ、立って高ぶる者にその受くべき罰をお与えください。
15418 19 94 3 主よ、悪しき者はいつまで、悪しき者はいつまで勝ち誇るでしょうか。
15419 19 94 4 彼らは高慢な言葉を吐き散らし、すべて不義を行う者はみずから高ぶります。
15420 19 94 5 主よ、彼らはあなたの民を打ち砕き、あなたの嗣業を苦しめます。
15421 19 94 6 彼らはやもめと旅びとのいのちをうばい、みなしごを殺します。
15422 19 94 7 彼らは言います、「主は見ない、ヤコブの神は悟らない」と。
15423 19 94 8 民のうちの鈍き者よ、悟れ。愚かな者よ、いつ賢くなるだろうか。
15424 19 94 9 耳を植えた者は聞くことをしないだろうか、目を造った者は見ることをしないだろうか。
15425 19 94 10 もろもろの国民を懲らす者は罰することをしないだろうか、人を教える者は知識をもたないだろうか。
15426 19 94 11 主は人の思いの、むなしいことを知られる。
15427 19 94 12 主よ、あなたによって懲らされる人、あなたのおきてを教えられる人はさいわいです。
15428 19 94 13 あなたはその人を災の日からのがれさせ、悪しき者のために穴が掘られるまでその人に平安を与えられます。
15429 19 94 14 主はその民を捨てず、その嗣業を見捨てられないからです。
15430 19 94 15 さばきは正義に帰り、すべて心の正しい者はそれに従うでしょう。
15431 19 94 16 だれがわたしのために立ちあがって、悪しき者を責めるだろうか。だれがわたしのために立って、不義を行う者を責めるだろうか。
15432 19 94 17 もしも主がわたしを助けられなかったならば、わが魂はとくに音なき所に住んだであろう。
15433 19 94 18 しかし「わたしの足がすべる」と思ったとき、主よ、あなたのいつくしみはわたしをささえられました。
15434 19 94 19 わたしのうちに思い煩いの満ちるとき、あなたの慰めはわが魂を喜ばせます。
15435 19 94 20 定めをもって危害をたくらむ悪しき支配者はあなたと親しむことができるでしょうか。
15436 19 94 21 彼らは相結んで正しい人の魂を責め、罪のない者に死を宣告します。
15437 19 94 22 しかし主はわが高きやぐらとなり、わが神はわが避け所の岩となられました。
15438 19 94 23 主は彼らの不義を彼らに報い、彼らをその悪のゆえに滅ぼされます。われらの神、主は彼らを滅ぼされます。
15439 19 95 1 さあ、われらは主にむかって歌い、われらの救の岩にむかって喜ばしい声をあげよう。
15440 19 95 2 われらは感謝をもって、み前に行き、主にむかい、さんびの歌をもって、喜ばしい声をあげよう。
15441 19 95 3 主は大いなる神、すべての神にまさって大いなる王だからである。
15442 19 95 4 地の深い所は主のみ手にあり、山々の頂もまた主のものである。
15443 19 95 5 海は主のもの、主はこれを造られた。またそのみ手はかわいた地を造られた。
15444 19 95 6 さあ、われらは拝み、ひれ伏し、われらの造り主、主のみ前にひざまずこう。
15445 19 95 7 主はわれらの神であり、われらはその牧の民、そのみ手の羊である。どうか、あなたがたは、きょう、そのみ声を聞くように。
15446 19 95 8 あなたがたは、メリバにいた時のように、また荒野のマッサにいた日のように、心をかたくなにしてはならない。
15447 19 95 9 あの時、あなたがたの先祖たちはわたしのわざを見たにもかかわらず、わたしを試み、わたしをためした。
15448 19 95 10 わたしは四十年の間、その代をきらって言った、「彼らは心の誤っている民であって、わたしの道を知らない」と。
15449 19 95 11 それゆえ、わたしは憤って、彼らはわが安息に入ることができないと誓った。
15450 19 96 1 新しい歌を主にむかってうたえ。全地よ、主にむかってうたえ。
15451 19 96 2 主にむかって歌い、そのみ名をほめよ。日ごとにその救を宣べ伝えよ。
15452 19 96 3 もろもろの国の中にその栄光をあらわし、もろもろの民の中にそのくすしきみわざをあらわせ。
15453 19 96 4 主は大いなる神であって、いともほめたたうべきもの、もろもろの神にまさって恐るべき者である。
15454 19 96 5 もろもろの民のすべての神はむなしい。しかし主はもろもろの天を造られた。
15455 19 96 6 誉と、威厳とはそのみ前にあり、力と、うるわしさとはその聖所にある。
15456 19 96 7 もろもろの民のやからよ、主に帰せよ、栄光と力とを主に帰せよ。
15457 19 96 8 そのみ名にふさわしい栄光を主に帰せよ。供え物を携えてその大庭にきたれ。
15458 19 96 9 聖なる装いをして主を拝め、全地よ、そのみ前におののけ。
15459 19 96 10 もろもろの国民の中に言え、「主は王となられた。世界は堅く立って、動かされることはない。主は公平をもってもろもろの民をさばかれる」と。
15460 19 96 11 天は喜び、地は楽しみ、海とその中に満ちるものとは鳴りどよめき、
15461 19 96 12 田畑とその中のすべての物は大いに喜べ。そのとき、林のもろもろの木も主のみ前に喜び歌うであろう。
15462 19 96 13 主は来られる、地をさばくために来られる。主は義をもって世界をさばき、まことをもってもろもろの民をさばかれる。
15463 19 97 1 主は王となられた。地は楽しみ、海に沿った多くの国々は喜べ。
15464 19 97 2 雲と暗やみとはそのまわりにあり、義と正とはそのみくらの基である。
15465 19 97 3 火はそのみ前に行き、そのまわりのあだを焼きつくす。
15466 19 97 4 主のいなずまは世界を照し、地は見ておののく。
15467 19 97 5 もろもろの山は主のみ前に、全地の主のみ前に、ろうのように溶けた。
15468 19 97 6 もろもろの天はその義をあらわし、よろずの民はその栄光を見た。
15469 19 97 7 すべて刻んだ像を拝む者、むなしい偶像をもってみずから誇る者ははずかしめをうける。もろもろの神は主のみ前にひれ伏す。
15470 19 97 8 主よ、あなたのさばきのゆえに、シオンは聞いて喜び、ユダの娘たちは楽しむ。
15471 19 97 9 主よ、あなたは全地の上にいまして、いと高く、もろもろの神にまさって大いにあがめられます。
15472 19 97 10 主は悪を憎む者を愛し、その聖徒のいのちを守り、これを悪しき者の手から助け出される。
15473 19 97 11 光は正しい人のために現れ、喜びは心の正しい者のためにあらわれる。
15474 19 97 12 正しき人よ、主によって喜べ、その聖なるみ名に感謝せよ。
15475 19 98 1 新しき歌を主にむかってうたえ。主はくすしきみわざをなされたからである。その右の手と聖なる腕とは、おのれのために勝利を得られた。
15476 19 98 2 主はその勝利を知らせ、その義をもろもろの国民の前にあらわされた。
15477 19 98 3 主はそのいつくしみと、まこととをイスラエルの家にむかって覚えられた。地のもろもろのはては、われらの神の勝利を見た。
15478 19 98 4 全地よ、主にむかって喜ばしき声をあげよ。声を放って喜び歌え、ほめうたえ。
15479 19 98 5 琴をもって主をほめうたえ。琴と歌の声をもってほめうたえ。
15480 19 98 6 ラッパと角笛の音をもって王なる主の前に喜ばしき声をあげよ。
15481 19 98 7 海とその中に満ちるもの、世界とそのうちに住む者とは鳴りどよめけ。
15482 19 98 8 大水はその手を打ち、もろもろの山は共に主のみ前に喜び歌え。
15483 19 98 9 主は地をさばくために来られるからである。主は義をもって世界をさばき、公平をもってもろもろの民をさばかれる。
15484 19 99 1 主は王となられた。もろもろの民はおののけ。主はケルビムの上に座せられる。地は震えよ。
15485 19 99 2 主はシオンにおられて大いなる神、主はもろもろの民の上に高くいらせられる。
15486 19 99 3 彼らはあなたの大いなる恐るべきみ名をほめたたえるであろう。主は聖でいらせられる。
15487 19 99 4 大能の王であり、公義を愛する者であるあなたは堅く公平を立て、ヤコブの中に正と義とを行われた。
15488 19 99 5 われらの神、主をあがめ、その足台のもとで拝みまつれ。主は聖でいらせられる。
15489 19 99 6 その祭司の中にモーセとアロンとがあった。そのみ名を呼ぶ者の中にサムエルもあった。彼らが主に呼ばわると、主は答えられた。
15490 19 99 7 主は雲の柱のうちで彼らに語られた。彼らはそのあかしと、彼らに賜わった定めとを守った。
15491 19 99 8 われらの神、主よ、あなたは彼らに答えられた。あなたは彼らにゆるしを与えられた神であったが、悪を行う者には報復された。
15492 19 99 9 われらの神、主をあがめ、その聖なる山で拝みまつれ。われらの神、主は聖でいらせられるからである。
15493 19 100 1 全地よ、主にむかって喜ばしき声をあげよ。
15494 19 100 2 喜びをもって主に仕えよ。歌いつつ、そのみ前にきたれ。
15495 19 100 3 主こそ神であることを知れ。われらを造られたものは主であって、われらは主のものである。われらはその民、その牧の羊である。
15496 19 100 4 感謝しつつ、その門に入り、ほめたたえつつ、その大庭に入れ。主に感謝し、そのみ名をほめまつれ。
15497 19 100 5 主は恵みふかく、そのいつくしみはかぎりなく、そのまことはよろず代に及ぶからである。
15498 19 101 1 わたしはいつくしみと公義について歌います。主よ、わたしはあなたにむかって歌います。
15499 19 101 2 わたしは全き道に心をとめます。あなたはいつ、わたしに来られるでしょうか。わたしは直き心をもって、わが家のうちを歩みます。
15500 19 101 3 わたしは目の前に卑しい事を置きません。わたしはそむく者の行いを憎みます。それはわたしに付きまといません。
15501 19 101 4 ひがんだ心はわたしを離れるでしょう。わたしは悪い事を知りません。
15502 19 101 5 ひそかに、その隣り人をそしる者をわたしは滅ぼします。高ぶる目と高慢な心の人を耐え忍ぶ事はできません。
15503 19 101 6 わたしは国のうちの忠信な者に好意を寄せ、わたしと共に住まわせます。全き道を歩む者はわたしに仕えるでしょう。
15504 19 101 7 欺くことをする者はわが家のうちに住むことができません。偽りを言う者はわが目の前に立つことができません。
15505 19 101 8 わたしは朝ごとに国の悪しき者をことごとく滅ぼし、不義を行う者をことごとく主の都から断ち除きます。
15506 19 102 1 主よ、わたしの祈をお聞きください。わたしの叫びをみ前に至らせてください。
15507 19 102 2 わたしの悩みの日にみ顔を隠すことなく、あなたの耳をわたしに傾け、わが呼ばわる日に、すみやかにお答えください。
15508 19 102 3 わたしの日は煙のように消え、わたしの骨は炉のように燃えるからです。
15509 19 102 4 わたしの心は草のように撃たれて、しおれました。わたしはパンを食べることを忘れました。
15510 19 102 5 わが嘆きの声によってわたしの骨はわたしの肉に着きます。
15511 19 102 6 わたしは荒野のはげたかのごとく、荒れた跡のふくろうのようです。
15512 19 102 7 わたしは眠らずに屋根にひとりいるすずめのようです。
15513 19 102 8 わたしの敵はひねもす、わたしをそしり、わたしをあざける者はわが名によってのろいます。
15514 19 102 9 わたしは灰をパンのように食べ、わたしの飲み物に涙を交えました。
15515 19 102 10 これはあなたの憤りと怒りのゆえです。あなたはわたしをもたげて投げすてられました。
15516 19 102 11 わたしのよわいは夕暮の日影のようです。わたしは草のようにしおれました。
15517 19 102 12 しかし主よ、あなたはとこしえにみくらに座し、そのみ名はよろず代に及びます。
15518 19 102 13 あなたは立ってシオンをあわれまれるでしょう。これはシオンを恵まれる時であり、定まった時が来たからです。
15519 19 102 14 あなたのしもべはシオンの石をも喜び、そのちりをさえあわれむのです。
15520 19 102 15 もろもろの国民は主のみ名を恐れ、地のもろもろの王はあなたの栄光を恐れるでしょう。
15521 19 102 16 主はシオンを築き、その栄光をもって現れ、
15522 19 102 17 乏しい者の祈をかえりみ、彼らの願いをかろしめられないからです。
15523 19 102 18 きたるべき代のために、この事を書きしるしましょう。そうすれば新しく造られる民は、主をほめたたえるでしょう。
15524 19 102 19 主はその聖なる高き所から見おろし、天から地を見られた。
15525 19 102 20 これは捕われ人の嘆きを聞き、死に定められた者を解き放ち、
15526 19 102 21 人々がシオンで主のみ名をあらわし、エルサレムでその誉をあらわすためです。
15527 19 102 22 その時もろもろの民、もろもろの国はともに集まって、主に仕えるでしょう。
15528 19 102 23 主はわたしの力を中途でくじき、わたしのよわいを短くされました。
15529 19 102 24 わたしは言いました、「わが神よ、どうか、わたしのよわいの半ばでわたしを取り去らないでください。あなたのよわいはよろず代に及びます」と。
15530 19 102 25 あなたはいにしえ、地の基をすえられました。天もまたあなたのみ手のわざです。
15531 19 102 26 これらは滅びるでしょう。しかしあなたは長らえられます。これらはみな衣のように古びるでしょう。あなたがこれらを上着のように替えられると、これらは過ぎ去ります。
15532 19 102 27 しかしあなたは変ることなく、あなたのよわいは終ることがありません。
15533 19 102 28 あなたのしもべの子らは安らかに住み、その子孫はあなたの前に堅く立てられるでしょう。
15534 19 103 1 わがたましいよ、主をほめよ。わがうちなるすべてのものよ、その聖なるみ名をほめよ。
15535 19 103 2 わがたましいよ、主をほめよ。そのすべてのめぐみを心にとめよ。
15536 19 103 3 主はあなたのすべての不義をゆるし、あなたのすべての病をいやし、
15537 19 103 4 あなたのいのちを墓からあがないいだし、いつくしみと、あわれみとをあなたにこうむらせ、
15538 19 103 5 あなたの生きながらえるかぎり、良き物をもってあなたを飽き足らせられる。こうしてあなたは若返って、わしのように新たになる。
15539 19 103 6 主はすべてしえたげられる者のために正義と公正とを行われる。
15540 19 103 7 主はおのれの道をモーセに知らせ、おのれのしわざをイスラエルの人々に知らせられた。
15541 19 103 8 主はあわれみに富み、めぐみふかく、怒ること遅く、いつくしみ豊かでいらせられる。
15542 19 103 9 主は常に責めることをせず、また、とこしえに怒りをいだかれない。
15543 19 103 10 主はわれらの罪にしたがってわれらをあしらわず、われらの不義にしたがって報いられない。
15544 19 103 11 天が地よりも高いように、主がおのれを恐れる者に賜わるいつくしみは大きい、
15545 19 103 12 東が西から遠いように、主はわれらのとがをわれらから遠ざけられる。
15546 19 103 13 父がその子供をあわれむように、主はおのれを恐れる者をあわれまれる。
15547 19 103 14 主はわれらの造られたさまを知り、われらのちりであることを覚えていられるからである。
15548 19 103 15 人は、そのよわいは草のごとく、その栄えは野の花にひとしい。
15549 19 103 16 風がその上を過ぎると、うせて跡なく、その場所にきいても、もはやそれを知らない。
15550 19 103 17 しかし主のいつくしみは、とこしえからとこしえまで、主を恐れる者の上にあり、その義は子らの子に及び、
15551 19 103 18 その契約を守り、その命令を心にとめて行う者にまで及ぶ。
15552 19 103 19 主はその玉座を天に堅くすえられ、そのまつりごとはすべての物を統べ治める。
15553 19 103 20 主の使たちよ、そのみ言葉の声を聞いて、これを行う勇士たちよ、主をほめまつれ。
15554 19 103 21 そのすべての万軍よ、そのみこころを行うしもべたちよ、主をほめよ。
15555 19 103 22 主が造られたすべての物よ、そのまつりごとの下にあるすべての所で、主をほめよ。わがたましいよ、主をほめよ。
15556 19 104 1 わがたましいよ、主をほめよ。わが神、主よ、あなたはいとも大いにして誉と威厳とを着、
15557 19 104 2 光を衣のようにまとい、天を幕のように張り、
15558 19 104 3 水の上におのが高殿のうつばりをおき、雲をおのれのいくさ車とし、風の翼に乗りあるき、
15559 19 104 4 風をおのれの使者とし、火と炎をおのれのしもべとされる。
15560 19 104 5 あなたは地をその基の上にすえて、とこしえに動くことのないようにされた。
15561 19 104 6 あなたはこれを衣でおおうように大水でおおわれた。水はたたえて山々の上を越えた。
15562 19 104 7 あなたのとがめによって水は退き、あなたの雷の声によって水は逃げ去った。
15563 19 104 8 山は立ちあがり、谷はあなたが定められた所に沈んだ。
15564 19 104 9 あなたは水に境を定めて、これを越えさせず、再び地をおおうことのないようにされた。
15565 19 104 10 あなたは泉を谷にわき出させ、それを山々の間に流れさせ、
15566 19 104 11 野のもろもろの獣に飲ませられる。野のろばもそのかわきをいやす。
15567 19 104 12 空の鳥もそのほとりに住み、こずえの間にさえずり歌う。
15568 19 104 13 あなたはその高殿からもろもろの山に水を注がれる。地はあなたのみわざの実をもって満たされる。
15569 19 104 14 あなたは家畜のために草をはえさせ、また人のためにその栽培する植物を与えて、地から食物を出させられる。
15570 19 104 15 すなわち人の心を喜ばすぶどう酒、その顔をつややかにする油、人の心を強くするパンなどである。
15571 19 104 16 主の木と、主がお植えになったレバノンの香柏とは豊かに潤され、
15572 19 104 17 鳥はその中に巣をつくり、こうのとりはもみの木をそのすまいとする。
15573 19 104 18 高き山はやぎのすまい、岩は岩だぬきの隠れる所である。
15574 19 104 19 あなたは月を造って季節を定められた。日はその入る時を知っている。
15575 19 104 20 あなたは暗やみを造って夜とされた。その時、林の獣は皆忍び出る。
15576 19 104 21 若きししはほえてえさを求め、神に食物を求める。
15577 19 104 22 日が出ると退いて、その穴に寝る。
15578 19 104 23 人は出てわざにつき、その勤労は夕べに及ぶ。
15579 19 104 24 主よ、あなたのみわざはいかに多いことであろう。あなたはこれらをみな知恵をもって造られた。地はあなたの造られたもので満ちている。
15580 19 104 25 かしこに大いなる広い海がある。その中に無数のもの、大小の生き物が満ちている。
15581 19 104 26 そこに舟が走り、あなたが造られたレビヤタンはその中に戯れる。
15582 19 104 27 彼らは皆あなたが時にしたがって食物をお与えになるのを期待している。
15583 19 104 28 あなたがお与えになると、彼らはそれを集める。あなたが手を開かれると、彼らは良い物で満たされる。
15584 19 104 29 あなたがみ顔を隠されると、彼らはあわてふためく。あなたが彼らの息を取り去られると、彼らは死んでちりに帰る。
15585 19 104 30 あなたが霊を送られると、彼らは造られる。あなたは地のおもてを新たにされる。
15586 19 104 31 どうか、主の栄光がとこしえにあるように。主がそのみわざを喜ばれるように。
15587 19 104 32 主が地を見られると、地は震い、山に触れられると、煙をいだす。
15588 19 104 33 わたしは生きるかぎり、主にむかって歌い、ながらえる間はわが神をほめ歌おう。
15589 19 104 34 どうか、わたしの思いが主に喜ばれるように。わたしは主によって喜ぶ。
15590 19 104 35 どうか、罪びとが地から断ち滅ぼされ、悪しき者が、もはや、いなくなるように。わがたましいよ、主をほめよ。主をほめたたえよ。
15591 19 105 1 主に感謝し、そのみ名を呼び、そのみわざをもろもろの民のなかに知らせよ。
15592 19 105 2 主にむかって歌え、主をほめうたえ、そのすべてのくすしきみわざを語れ。
15593 19 105 3 その聖なるみ名を誇れ。主を尋ね求める者の心を喜ばせよ。
15594 19 105 4 主とそのみ力とを求めよ、つねにそのみ顔を尋ねよ。
15595 19 105 7 彼はわれらの神、主でいらせられる。そのさばきは全地にある。
15596 19 105 8 主はとこしえに、その契約をみこころにとめられる。これはよろず代に命じられたみ言葉であって、
15597 19 105 9 アブラハムと結ばれた契約、イサクに誓われた約束である。
15598 19 105 10 主はこれを堅く立てて、ヤコブのために定めとし、イスラエルのために、とこしえの契約として
15599 19 105 11 言われた、「わたしはあなたにカナンの地を与えて、あなたがたの受ける嗣業の分け前とする」と。
15600 19 105 12 このとき彼らの数は少なくて、数えるに足らず、その所で旅びととなり、
15601 19 105 13 この国からかの国へ行き、この国から他の民へ行った。
15602 19 105 14 主は人の彼らをしえたげるのをゆるさず、彼らのために王たちを懲しめて、
15603 19 105 15 言われた、「わが油そそがれた者たちにさわってはならない、わが預言者たちに害を加えてはならない」と。
15604 19 105 16 主はききんを地に招き、人のつえとするパンをことごとく砕かれた。
15605 19 105 17 また彼らの前にひとりをつかわされた。すなわち売られて奴隷となったヨセフである。
15606 19 105 18 彼の足は足かせをもって痛められ、彼の首は鉄の首輪にはめられ、
15607 19 105 19 彼の言葉の成る時まで、主のみ言葉が彼を試みた。
15608 19 105 20 王は人をつかわして彼を解き放ち、民のつかさは彼に自由を与えた。
15609 19 105 21 王はその家のつかさとしてその所有をことごとくつかさどらせ、
15610 19 105 22 その心のままに君たちを教えさせ、長老たちに知恵を授けさせた。
15611 19 105 23 その時イスラエルはエジプトにきたり、ヤコブはハムの地に寄留した。
15612 19 105 24 主はその民を大いに増し加え、これをそのあだよりも強くされた。
15613 19 105 25 主は人々の心をかえて、その民を憎ませ、そのしもべたちを悪賢く扱わせられた。
15614 19 105 26 主はそのしもべモーセと、そのお選びになったアロンとをつかわされた。
15615 19 105 27 彼らはハムの地で主のしるしと、奇跡とを彼らのうちにおこなった。
15616 19 105 28 主は暗やみをつかわして地を暗くされた。しかし彼らはそのみ言葉に従わなかった。
15617 19 105 29 主は彼らの水を血に変らせて、その魚を殺された。
15618 19 105 30 彼らの国には、かえるが群がり、王の寝間にまではいった。
15619 19 105 31 主が言われると、はえの群れがきたり、ぶよが国じゅうにあった。
15620 19 105 32 主は雨にかえて、ひょうを彼らに与え、きらめくいなずまを彼らの国に放たれた。
15621 19 105 33 主は彼らのぶどうの木と、いちじくの木とを撃ち、彼らの国のもろもろの木を折り砕かれた。
15622 19 105 34 主が言われると、いなごがきたり、無数の若いいなごが来て、
15623 19 105 35 彼らの国のすべての青物を食いつくし、その地の実を食いつくした。
15624 19 105 36 主は彼らの国のすべてのういごを撃ち、彼らのすべての力の初めを撃たれた。
15625 19 105 37 そして金銀を携えてイスラエルを出て行かせられた。その部族のうちに、ひとりの倒れる者もなかった。
15626 19 105 38 エジプトは彼らの去るのを喜んだ。彼らに対する恐れが彼らに臨んだからである。
15627 19 105 39 主は雲をひろげておおいとし、夜は火をもって照された。
15628 19 105 40 また彼らの求めによって、うずらを飛びきたらせ、天から、かてを豊かに彼らに与えられた。
15629 19 105 41 主が岩を開かれると、水がほとばしり出て、かわいた地に川のように流れた。
15630 19 105 42 これは主がその聖なる約束と、そのしもべアブラハムを覚えられたからである。
15631 19 105 43 こうして主はその民を導いて喜びつつ出て行かせ、その選ばれた民を導いて歌いつつ出て行かせられた。
15632 19 105 44 主はもろもろの国びとの地を彼らに与えられたので、彼らはもろもろの民の勤労の実を自分のものとした。
15633 19 105 45 これは彼らが主の定めを守り、そのおきてを行うためである。主をほめたたえよ。
15634 19 106 1 主をほめたたえよ。主に感謝せよ、主は恵みふかく、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
15635 19 106 2 だれが主の大能のみわざを語り、その誉をことごとく言いあらわすことができようか。
15636 19 106 3 公正を守る人々、常に正義を行う人はさいわいである。
15637 19 106 4 主よ、あなたがその民を恵まれるとき、わたしを覚えてください。あなたが彼らを救われるとき、わたしを助けてください。
15638 19 106 5 そうすれば、わたしはあなたの選ばれた者の繁栄を見、あなたの国民の喜びをよろこび、あなたの嗣業と共に誇ることができるでしょう。
15639 19 106 6 われらは先祖たちと同じく罪を犯した。われらは不義をなし、悪しきことを行った。
15640 19 106 7 われらの先祖たちはエジプトにいたとき、あなたのくすしきみわざに心を留めず、あなたのいつくしみの豊かなのを思わず、紅海で、いと高き神にそむいた。
15641 19 106 8 けれども主はその大能を知らせようと、み名のために彼らを救われた。
15642 19 106 9 主は紅海をしかって、それをかわかし、彼らを導いて荒野を行くように、淵を通らせられた。
15643 19 106 10 こうして主は彼らをあだの手から救い、敵の力からあがなわれた。
15644 19 106 11 水が彼らのあだをおおったので、そのうち、ひとりも生き残った者はなかった。
15645 19 106 12 このとき彼らはそのみ言葉を信じ、その誉を歌った。
15646 19 106 13 しかし彼らはまもなくそのみわざを忘れ、その勧めを待たず、
15647 19 106 14 野でわがままな欲望を起し、荒野で神を試みた。
15648 19 106 15 主は彼らにその求めるものを与えられたが、彼らのうちに病気を送って、やせ衰えさせられた。
15649 19 106 16 人々が宿営のうちでモーセをねたみ、主の聖者アロンをねたんだとき、
15650 19 106 17 地が開けてダタンを飲み、アビラムの仲間をおおった。
15651 19 106 18 火はまたこの仲間のうちに燃え起り、炎は悪しき者を焼きつくした。
15652 19 106 19 彼らはホレブで子牛を造り、鋳物の像を拝んだ。
15653 19 106 20 彼らは神の栄光を草を食う牛の像と取り替えた。
15654 19 106 23 それゆえ、主は彼らを滅ぼそうと言われた。しかし主のお選びになったモーセは破れ口で主のみ前に立ち、み怒りを引きかえして、滅びを免れさせた。
15655 19 106 24 彼らは麗しい地を侮り、主の約束を信ぜず、
15656 19 106 25 またその天幕でつぶやき、主のみ声に聞き従わなかった。
15657 19 106 26 それゆえ、主はみ手をあげて、彼らに誓い、彼らを荒野で倒れさせ、
15658 19 106 27 またその子孫を、もろもろの国民のうちに追い散らし、もろもろの地に彼らをまき散らそうとされた。
15659 19 106 28 また彼らはペオルのバアルを慕って、死んだ者にささげた、いけにえを食べた。
15660 19 106 29 彼らはそのおこないをもって主を怒らせたので、彼らのうちに疫病が起った。
15661 19 106 30 その時ピネハスが立って仲裁にはいったので、疫病はやんだ。
15662 19 106 31 これによってピネハスはよろず代まで、とこしえに義とされた。
15663 19 106 32 彼らはまたメリバの水のほとりで主を怒らせたので、モーセは彼らのために災にあった。
15664 19 106 33 これは彼らが神の霊にそむいたとき、彼がそのくちびるで軽率なことを言ったからである。
15665 19 106 34 彼らは主が命じられたもろもろの民を滅ぼさず、
15666 19 106 35 かえってもろもろの国民とまじってそのわざにならい、
15667 19 106 36 自分たちのわなとなった偶像に仕えた。
15668 19 106 37 彼らはそのむすこ、娘たちを悪霊にささげ、
15669 19 106 38 罪のない血、すなわちカナンの偶像にささげたそのむすこ、娘たちの血を流した。こうして国は血で汚された。
15670 19 106 39 このように彼らはそのわざによっておのれを汚し、そのおこないによって姦淫をなした。
15671 19 106 40 それゆえ、主の怒りがその民にむかって燃え、その嗣業を憎んで、
15672 19 106 41 彼らをもろもろの国民の手にわたされた。彼らはおのれを憎む者に治められ、
15673 19 106 42 その敵にしえたげられ、その力の下に征服された。
15674 19 106 43 主はしばしば彼らを助けられたが、彼らははかりごとを設けてそむき、その不義によって低くされた。
15675 19 106 44 それにもかかわらず、主は彼らの叫びを聞かれたとき、その悩みをかえりみ、
15676 19 106 45 その契約を彼らのために思い出し、そのいつくしみの豊かなるにより、みこころを変えられ、
15677 19 106 46 彼らをとりこにした者どもによって、あわれまれるようにされた。
15678 19 106 47 われらの神、主よ、われらを救って、もろもろの国民のなかから集めてください。われらはあなたの聖なるみ名に感謝し、あなたの誉を誇るでしょう。
15679 19 106 48 イスラエルの神、主はとこしえからとこしえまでほむべきかな。すべての民は「アァメン」ととなえよ。主をほめたたえよ。
15680 19 107 1 「主に感謝せよ、主は恵みふかく、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない」と、
15681 19 107 2 主にあがなわれた者は言え。主は彼らを悩みからあがない、
15682 19 107 3 もろもろの国から、東、西、北、南から彼らを集められた。
15683 19 107 4 彼らは人なき荒野にさまよい、住むべき町にいたる道を見いださなかった。
15684 19 107 5 彼らは飢え、またかわき、その魂は彼らのうちに衰えた。
15685 19 107 6 彼らはその悩みのうちに主に呼ばわったので、主は彼らをその悩みから助け出し、
15686 19 107 7 住むべき町に行き着くまで、まっすぐな道に導かれた。
15687 19 107 8 どうか、彼らが主のいつくしみと、人の子らになされたくすしきみわざとのために、主に感謝するように。
15688 19 107 9 主はかわいた魂を満ち足らせ、飢えた魂を良き物で満たされるからである。
15689 19 107 10 暗黒と深いやみの中にいる者、苦しみと、くろがねに縛られた者、
15690 19 107 11 彼らは神の言葉にそむき、いと高き者の勧めを軽んじたので、
15691 19 107 12 主は重い労働をもって彼らの心を低くされた。彼らはつまずき倒れても、助ける者がなかった。
15692 19 107 13 彼らはその悩みのうちに主に呼ばわったので、主は彼らをその悩みから救い、
15693 19 107 14 暗黒と深いやみから彼らを導き出して、そのかせをこわされた。
15694 19 107 15 どうか、彼らが主のいつくしみと、人の子らになされたくすしきみわざとのために、主に感謝するように。
15695 19 107 16 主は青銅のとびらをこわし、鉄の貫の木を断ち切られたからである。
15696 19 107 17 ある者はその罪に汚れた行いによって病み、その不義のゆえに悩んだ。
15697 19 107 18 彼らはすべての食物をきらって、死の門に近づいた。
15698 19 107 19 彼らはその悩みのうちに主に呼ばわったので、主は彼らをその悩みから救い、
15699 19 107 20 そのみ言葉をつかわして、彼らをいやし、彼らを滅びから助け出された。
15700 19 107 21 どうか、彼らが主のいつくしみと、人の子らになされたくすしきみわざとのために、主に感謝するように。
15701 19 107 22 彼らが感謝のいけにえをささげ、喜びの歌をもって、そのみわざを言いあらわすように。
15702 19 107 23 舟で海にくだり、大海で商売をする者は、
15703 19 107 24 主のみわざを見、また深い所でそのくすしきみわざを見た。
15704 19 107 25 主が命じられると暴風が起って、海の波をあげた。
15705 19 107 26 彼らは天にのぼり、淵にくだり、悩みによってその勇気は溶け去り、
15706 19 107 27 酔った人のようによろめき、よろめいて途方にくれる。
15707 19 107 28 彼らはその悩みのうちに主に呼ばわったので、主は彼らをその悩みから救い出された。
15708 19 107 29 主があらしを静められると、海の波は穏やかになった。
15709 19 107 30 こうして彼らは波の静まったのを喜び、主は彼らをその望む港へ導かれた。
15710 19 107 31 どうか、彼らが主のいつくしみと、人の子らになされたくすしきみわざとのために、主に感謝するように。
15711 19 107 32 彼らが民の集会で主をあがめ、長老の会合で主をほめたたえるように。
15712 19 107 33 主は川を野に変らせ、泉をかわいた地に変らせ、
15713 19 107 34 肥えた地をそれに住む者の悪のゆえに塩地に変らせられる。
15714 19 107 35 主は野を池に変らせ、かわいた地を泉に変らせ、
15715 19 107 36 飢えた者をそこに住まわせられる。こうして彼らはその住むべき町を建て、
15716 19 107 37 畑に種をまき、ぶどう畑を設けて多くの収穫を得た。
15717 19 107 38 主が彼らを祝福されたので彼らは大いにふえ、その家畜の減るのをゆるされなかった。
15718 19 107 39 彼らがしえたげと、悩みと、悲しみとによって減り、かつ卑しめられたとき、
15719 19 107 40 主はもろもろの君に侮りをそそぎ、道なき荒れ地にさまよわせられた。
15720 19 107 41 しかし主は貧しい者を悩みのうちからあげて、その家族を羊の群れのようにされた。
15721 19 107 42 正しい者はこれを見て喜び、もろもろの不義はその口を閉じた。
15722 19 107 43 すべて賢い者はこれらの事に心をよせ、主のいつくしみをさとるようにせよ。
15723 19 108 1 神よ、わが心は定まりました。わが心は定まりました。わたしは歌い、かつほめたたえます。わが魂よ、さめよ。
15724 19 108 2 立琴よ、琴よ、さめよ。わたしはしののめを呼びさまします。
15725 19 108 3 主よ、わたしはもろもろの民の中であなたに感謝し、もろもろの国の中であなたをほめたたえます。
15726 19 108 4 あなたのいつくしみは大きく、天にまでおよびあなたのまことは雲にまで及ぶ。
15727 19 108 5 神よ、みずからを天よりも高くし、みさかえを全地の上にあげてください。
15728 19 108 6 あなたの愛される者が助けを得るために、右のみ手をもって救をほどこし、わたしに答えてください。
15729 19 108 7 神はその聖所で言われた、「わたしは大いなる喜びをもってシケムを分かち、スコテの谷を分かち与えよう。
15730 19 108 8 ギレアデはわたしのもの、マナセもわたしのものである。エフライムはわたしのかぶと、ユダはわたしのつえである。
15731 19 108 9 モアブはわたしの足だらい、エドムにはわたしのくつを投げる。ペリシテについては、かちどきをあげる」。
15732 19 108 10 だれがわたしを堅固な町に至らせるであろうか。だれがわたしをエドムに導くであろうか。
15733 19 108 11 神よ、あなたはわれらを捨てられたではありませんか。神よ、あなたはわれらの軍勢と共に出て行かれません。
15734 19 108 12 われらに助けを与えて、あだにむかわせてください。人の助けはむなしいからです。
15735 19 108 13 われらは神によって勇ましく働きます。われらのあだを踏みにじる者は神だからです。
15736 19 109 1 わたしのほめたたえる神よ、もださないでください。
15737 19 109 2 彼らは悪しき口と欺きの口をあけて、わたしにむかい、偽りの舌をもってわたしに語り、
15738 19 109 3 恨みの言葉をもってわたしを囲み、ゆえなくわたしを攻めるのです。
15739 19 109 4 彼らはわが愛にむくいて、わたしを非難します。しかしわたしは彼らのために祈ります。
15740 19 109 5 彼らは悪をもってわが善に報い、恨みをもってわが愛に報いるのです。
15741 19 109 6 彼の上に悪しき人を立て、訴える者に彼を訴えさせてください。
15742 19 109 7 彼がさばかれるとき、彼を罪ある者とし、その祈を罪に変えてください。
15743 19 109 9 その子らをみなしごにし、その妻をやもめにしてください。
15744 19 109 10 その子らを放浪者として施しをこわせ、その荒れたすまいから追い出させてください。
15745 19 109 11 彼が持っているすべての物を債主に奪わせ、その勤労の実をほかの人にかすめさせてください。
15746 19 109 12 彼にいつくしみを施す者はひとりもなく、またそのみなしごをあわれむ者もなく、
15747 19 109 13 その子孫を絶えさせ、その名を次の代に消し去ってください。
15748 19 109 14 その父たちの不義は主のみ前に覚えられ、その母の罪を消し去らないでください。
15749 19 109 15 それらを常に主のみ前に置き、彼の記憶を地から断ってください。
15750 19 109 16 これは彼がいつくしみを施すことを思わず、かえって貧しい者、乏しい者を責め、心の痛める者を殺そうとしたからです。
15751 19 109 17 彼はのろうことを好んだ。のろいを彼に臨ませてください。彼は恵むことを喜ばなかった。恵みを彼から遠ざけてください。
15752 19 109 18 彼はのろいを衣のように着た。のろいを水のようにその身にしみこませ、油のようにその骨にしみこませてください。
15753 19 109 19 またそれを自分の着る着物のようにならせ、常に締める帯のようにならせてください。
15754 19 109 20 これがわたしを非難する者と、わたしに逆らって悪いことを言う者の主からうける報いとしてください。
15755 19 109 21 しかし、わが主なる神よ、あなたはみ名のために、わたしを顧みてください。あなたのいつくしみの深きにより、わたしをお助けください。
15756 19 109 22 わたしは貧しく、かつ乏しいのです。わたしの心はわがうちに傷ついています。
15757 19 109 23 わたしは夕日の影のように去りゆき、いなごのように追い払われます。
15758 19 109 24 わたしのひざは断食によってよろめき、わたしの肉はやせ衰え、
15759 19 109 25 わたしは彼らにそしられる者となりました。彼らはわたしを見ると、頭を振ります。
15760 19 109 26 わが神、主よ、わたしをお助けください。あなたのいつくしみにしたがって、わたしをお救いください。
15761 19 109 27 主よ、これがあなたのみ手のわざであること、あなたがそれをなされたことを、彼らに知らせてください。
15762 19 109 28 彼らはのろうけれども、あなたは祝福されます。わたしを攻める者をはずかしめ、あなたのしもべを喜ばせてください。
15763 19 109 29 わたしを非難する者にはずかしめを着せ、おのが恥を上着のようにまとわせてください。
15764 19 109 30 わたしはわが口をもって大いに主に感謝し、多くの人のなかで主をほめたたえます。
15765 19 109 31 主は貧しい者の右に立って、死罪にさだめようとする者から彼を救われるからです。
15766 19 110 1 主はわが主に言われる、「わたしがあなたのもろもろの敵をあなたの足台とするまで、わたしの右に座せよ」と。
15767 19 110 2 主はあなたの力あるつえをシオンから出される。あなたはもろもろの敵のなかで治めよ。
15768 19 110 3 あなたの民は、あなたがその軍勢を聖なる山々に導く日に心から喜んでおのれをささげるであろう。あなたの若者は朝の胎から出る露のようにあなたに来るであろう。
15769 19 110 4 主は誓いを立てて、み心を変えられることはない、「あなたはメルキゼデクの位にしたがってとこしえに祭司である」。
15770 19 110 5 主はあなたの右におられて、その怒りの日に王たちを打ち破られる。
15771 19 110 6 主はもろもろの国のなかでさばきを行い、しかばねをもって満たし、広い地を治める首領たちを打ち破られる。
15772 19 110 7 彼は道のほとりの川からくんで飲み、それによって、そのこうべをあげるであろう。
15773 19 111 1 主をほめたたえよ。わたしは正しい者のつどい、および公会で、心をつくして主に感謝する。
15774 19 111 2 主のみわざは偉大である。すべてそのみわざを喜ぶ者によって尋ね窮められる。
15775 19 111 3 そのみわざは栄光と威厳とに満ち、その義はとこしえに、うせることがない。
15776 19 111 4 主はそのくすしきみわざを記念させられた。主は恵みふかく、あわれみに満ちていられる。
15777 19 111 5 主はおのれを恐れる者に食物を与え、その契約をとこしえに心にとめられる。
15778 19 111 6 主はもろもろの国民の所領をその民に与えて、みわざの力をこれにあらわされた。
15779 19 111 7 そのみ手のわざは真実かつ公正であり、すべてのさとしは確かである。
15780 19 111 8 これらは世々かぎりなく堅く立ち、真実と正直とをもってなされた。
15781 19 111 9 主はその民にあがないを施し、その契約をとこしえに立てられた。そのみ名は聖にして、おそれおおい。
15782 19 111 10 主を恐れることは知恵のはじめである。これを行う者はみな良き悟りを得る。主の誉は、とこしえに、うせることはない。
15783 19 112 1 主をほめたたえよ。主をおそれて、そのもろもろの戒めを大いに喜ぶ人はさいわいである。
15784 19 112 2 その子孫は地において強くなり、正しい者のやからは祝福を得る。
15785 19 112 3 繁栄と富とはその家にあり、その義はとこしえに、うせることはない。
15786 19 112 4 光は正しい者のために暗黒の中にもあらわれる。主は恵み深く、あわれみに満ち、正しくいらせられる。
15787 19 112 5 恵みを施し、貸すことをなし、その事を正しく行う人はさいわいである。
15788 19 112 6 正しい人は決して動かされることなく、とこしえに覚えられる。
15789 19 112 7 彼は悪いおとずれを恐れず、その心は主に信頼してゆるがない。
15790 19 112 8 その心は落ち着いて恐れることなく、ついにそのあだについての願いを見る。
15791 19 112 9 彼は惜しげなく施し、貧しい者に与えた。その義はとこしえに、うせることはない。その角は誉を得てあげられる。
15792 19 112 10 悪しき者はこれを見て怒り、歯をかみならして溶け去る。悪しき者の願いは滅びる。
15793 19 113 1 主をほめたたえよ。主のしもべたちよ、ほめたたえよ。主のみ名をほめたたえよ。
15794 19 113 2 今より、とこしえに至るまで主のみ名はほむべきかな。
15795 19 113 3 日のいずるところから日の入るところまで、主のみ名はほめたたえられる。
15796 19 113 4 主はもろもろの国民の上に高くいらせられ、その栄光は天よりも高い。
15797 19 113 5 われらの神、主にくらぶべき者はだれか。主は高き所に座し、
15798 19 113 6 遠く天と地とを見おろされる。
15799 19 113 7 主は貧しい者をちりからあげ、乏しい者をあくたからあげて、
15800 19 113 8 もろもろの君たちと共にすわらせ、その民の君たちと共にすわらせられる。
15801 19 113 9 また子を産まぬ女に家庭を与え、多くの子供たちの喜ばしい母とされる。主をほめたたえよ。
15802 19 114 1 イスラエルがエジプトをいで、ヤコブの家が異言の民を離れたとき、
15803 19 114 2 ユダは主の聖所となり、イスラエルは主の所領となった。
15804 19 114 3 海はこれを見て逃げ、ヨルダンはうしろに退き、
15805 19 114 4 山は雄羊のように踊り、小山は小羊のように踊った。
15806 19 114 5 海よ、おまえはどうして逃げるのか、ヨルダンよ、おまえはどうしてうしろに退くのか。
15807 19 114 6 山よ、おまえたちはどうして雄羊のように踊るのか、小山よ、おまえたちはどうして小羊のように踊るのか。
15808 19 114 7 地よ、主のみ前におののけ、ヤコブの神のみ前におののけ。
15809 19 114 8 主は岩を池に変らせ、石を泉に変らせられた。
15810 19 115 1 主よ、栄光をわれらにではなく、われらにではなく、あなたのいつくしみと、まこととのゆえに、ただ、み名にのみ帰してください。
15811 19 115 2 なにゆえ、もろもろの国民は言うのでしょう、「彼らの神はどこにいるのか」と。
15812 19 115 3 われらの神は天にいらせられる。神はみこころにかなうすべての事を行われる。
15813 19 115 4 彼らの偶像はしろがねと、こがねで、人の手のわざである。
15814 19 115 5 それは口があっても語ることができない。目があっても見ることができない。
15815 19 115 6 耳があっても聞くことができない。鼻があってもかぐことができない。
15816 19 115 7 手があっても取ることができない。足があっても歩くことができない。また、のどから声を出すこともできない。
15817 19 115 8 これを造る者と、これに信頼する者とはみな、これと等しい者になる。
15818 19 115 9 イスラエルよ、主に信頼せよ。主は彼らの助け、また彼らの盾である。
15819 19 115 10 アロンの家よ、主に信頼せよ。主は彼らの助け、また彼らの盾である。
15820 19 115 11 主を恐れる者よ、主に信頼せよ。主は彼らの助け、また彼らの盾である。
15821 19 115 12 主はわれらをみこころにとめられた。主はわれらを恵み、イスラエルの家を恵み、アロンの家を恵み、
15822 19 115 13 また、小さい者も、大いなる者も、主を恐れる者を恵まれる。
15823 19 115 14 どうか、主があなたがたを増し加え、あなたがたと、あなたがたの子孫とを増し加えられるように。
15824 19 115 15 天地を造られた主によってあなたがたが恵まれるように。
15825 19 115 16 天は主の天である。しかし地は人の子らに与えられた。
15826 19 115 17 死んだ者も、音なき所に下る者も、主をほめたたえることはない。
15827 19 115 18 しかし、われらは今より、とこしえに至るまで、主をほめまつるであろう。主をほめたたえよ。
15828 19 116 1 わたしは主を愛する。主はわが声と、わが願いとを聞かれたからである。
15829 19 116 2 主はわたしに耳を傾けられたので、わたしは生きるかぎり主を呼びまつるであろう。
15830 19 116 3 死の綱がわたしを取り巻き、陰府の苦しみがわたしを捕えた。わたしは悩みと悲しみにあった。
15831 19 116 4 その時わたしは主のみ名を呼んだ。「主よ、どうぞわたしをお救いください」と。
15832 19 116 5 主は恵みふかく、正しくいらせられ、われらの神はあわれみに富まれる。
15833 19 116 6 主は無学な者を守られる。わたしが低くされたとき、主はわたしを救われた。
15834 19 116 7 わが魂よ、おまえの平安に帰るがよい。主は豊かにおまえをあしらわれたからである。
15835 19 116 8 あなたはわたしの魂を死から、わたしの目を涙から、わたしの足をつまずきから助け出されました。
15836 19 116 9 わたしは生ける者の地で、主のみ前に歩みます。
15837 19 116 10 「わたしは大いに悩んだ」と言った時にもなお信じた。
15838 19 116 11 わたしは驚きあわてたときに言った、「すべての人は当にならぬ者である」と。
15839 19 116 12 わたしに賜わったもろもろの恵みについて、どうして主に報いることができようか。
15840 19 116 13 わたしは救の杯をあげて、主のみ名を呼ぶ。
15841 19 116 14 わたしはすべての民の前で、主にわが誓いをつぐなおう。
15842 19 116 15 主の聖徒の死はそのみ前において尊い。
15843 19 116 16 主よ、わたしはあなたのしもべです。わたしはあなたのしもべ、あなたのはしための子です。あなたはわたしのなわめを解かれました。
15844 19 116 17 わたしは感謝のいけにえをあなたにささげて、主のみ名を呼びます。
15845 19 116 18 わたしはすべての民の前で主にわが誓いをつぐないます。
15846 19 116 19 エルサレムよ、あなたの中で、主の家の大庭の中で、これをつぐないます。主をほめたたえよ。
15847 19 117 1 もろもろの国よ、主をほめたたえよ。もろもろの民よ、主をたたえまつれ。
15848 19 117 2 われらに賜わるそのいつくしみは大きいからである。主のまことはとこしえに絶えることがない。主をほめたたえよ。
15849 19 118 1 主に感謝せよ、主は恵みふかく、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
15850 19 118 2 イスラエルは言え、「そのいつくしみはとこしえに絶えることがない」と。
15851 19 118 3 アロンの家は言え、「そのいつくしみはとこしえに絶えることがない」と。
15852 19 118 4 主をおそれる者は言え、「そのいつくしみはとこしえに絶えることがない」と。
15853 19 118 5 わたしが悩みのなかから主を呼ぶと、主は答えて、わたしを広い所に置かれた。
15854 19 118 6 主がわたしに味方されるので、恐れることはない。人はわたしに何をなし得ようか。
15855 19 118 7 主はわたしに味方し、わたしを助けられるので、わたしを憎む者についての願いを見るであろう。
15856 19 118 8 主に寄り頼むは人にたよるよりも良い。
15857 19 118 9 主に寄り頼むはもろもろの君にたよるよりも良い。
15858 19 118 10 もろもろの国民はわたしを囲んだ。わたしは主のみ名によって彼らを滅ぼす。
15859 19 118 11 彼らはわたしを囲んだ、わたしを囲んだ。わたしは主のみ名によって彼らを滅ぼす。
15860 19 118 12 彼らは蜂のようにわたしを囲み、いばらの火のように燃えたった。わたしは主のみ名によって彼らを滅ぼす。
15861 19 118 13 わたしはひどく押されて倒れようとしたが、主はわたしを助けられた。
15862 19 118 14 主はわが力、わが歌であって、わが救となられた。
15863 19 118 15 聞け、勝利の喜ばしい歌が正しい者の天幕にある。「主の右の手は勇ましいはたらきをなし、
15864 19 118 16 主の右の手は高くあがり、主の右の手は勇ましいはたらきをなす」。
15865 19 118 17 わたしは死ぬことなく、生きながらえて、主のみわざを物語るであろう。
15866 19 118 18 主はいたくわたしを懲らされたが、死にはわたされなかった。
15867 19 118 19 わたしのために義の門を開け、わたしはその内にはいって、主に感謝しよう。
15868 19 118 20 これは主の門である。正しい者はその内にはいるであろう。
15869 19 118 21 わたしはあなたに感謝します。あなたがわたしに答えて、わが救となられたことを。
15870 19 118 22 家造りらの捨てた石は隅のかしら石となった。
15871 19 118 23 これは主のなされた事でわれらの目には驚くべき事である。
15872 19 118 24 これは主が設けられた日であって、われらはこの日に喜び楽しむであろう。
15873 19 118 25 主よ、どうぞわれらをお救いください。主よ、どうぞわれらを栄えさせてください。
15874 19 118 26 主のみ名によってはいる者はさいわいである。われらは主の家からあなたをたたえます。
15875 19 118 27 主は神であって、われらを照された。枝を携えて祭の行列を祭壇の角にまで進ませよ。
15876 19 118 28 あなたはわが神、わたしはあなたに感謝します。あなたはわが神、わたしはあなたをあがめます。
15877 19 118 29 主に感謝せよ、主は恵みふかく、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
15878 19 119 1 おのが道を全くして、主のおきてに歩む者はさいわいです。
15879 19 119 2 主のもろもろのあかしを守り心をつくして主を尋ね求め、
15880 19 119 3 また悪を行わず、主の道に歩む者はさいわいです。
15881 19 119 4 あなたはさとしを命じて、ねんごろに守らせられます。
15882 19 119 5 どうかわたしの道を堅くして、あなたの定めを守らせてください。
15883 19 119 6 わたしは、あなたのもろもろの戒めに目をとめる時、恥じることはありません。
15884 19 119 7 わたしは、あなたの正しいおきてを学ぶとき、正しい心をもってあなたに感謝します。
15885 19 119 8 わたしはあなたの定めを守ります。わたしを全くお捨てにならないでください。
15886 19 119 9 若い人はどうしておのが道を清く保つことができるでしょうか。み言葉にしたがって、それを守るよりほかにありません。
15887 19 119 10 わたしは心をつくしてあなたを尋ね求めます。わたしをあなたの戒めから迷い出させないでください。
15888 19 119 11 わたしはあなたにむかって罪を犯すことのないように、心のうちにみ言葉をたくわえました。
15889 19 119 12 あなたはほむべきかな、主よ、あなたの定めをわたしに教えてください。
15890 19 119 13 わたしはくちびるをもって、あなたの口から出るもろもろのおきてを言いあらわします。
15891 19 119 14 わたしは、もろもろのたからを喜ぶように、あなたのあかしの道を喜びます。
15892 19 119 15 わたしは、あなたのさとしを思い、あなたの道に目をとめます。
15893 19 119 16 わたしはあなたの定めを喜び、あなたのみ言葉を忘れません。
15894 19 119 17 あなたのしもべを豊かにあしらって、生きながらえさせ、み言葉を守らせてください。
15895 19 119 18 わたしの目を開いて、あなたのおきてのうちのくすしき事を見させてください。
15896 19 119 19 わたしはこの地にあっては寄留者です。あなたの戒めをわたしに隠さないでください。
15897 19 119 20 わが魂はつねにあなたのおきてを慕って、絶えいるばかりです。
15898 19 119 21 あなたは、あなたの戒めから迷い出る高ぶる者、のろわれた者を責められます。
15899 19 119 22 わたしはあなたのあかしを守りました。彼らのそしりと侮りとをわたしから取り去ってください。
15900 19 119 23 たといもろもろの君が座して、わたしをそこなおうと図っても、あなたのしもべは、あなたの定めを深く思います。
15901 19 119 24 あなたのあかしは、わたしを喜ばせ、わたしを教えさとすものです。
15902 19 119 25 わが魂はちりについています。み言葉に従って、わたしを生き返らせてください。
15903 19 119 26 わたしが自分の歩んだ道を語ったとき、あなたはわたしに答えられました。あなたの定めをわたしに教えてください。
15904 19 119 27 あなたのさとしの道をわたしにわきまえさせてください。わたしはあなたのくすしきみわざを深く思います。
15905 19 119 28 わが魂は悲しみによって溶け去ります。み言葉に従って、わたしを強くしてください。
15906 19 119 29 偽りの道をわたしから遠ざけ、あなたのおきてをねんごろに教えてください。
15907 19 119 30 わたしは真実の道を選び、あなたのおきてをわたしの前に置きました。
15908 19 119 31 主よ、わたしはあなたのあかしに堅く従っています。願わくは、わたしをはずかしめないでください。
15909 19 119 32 あなたがわたしの心を広くされるとき、わたしはあなたの戒めの道を走ります。
15910 19 119 33 主よ、あなたの定めの道をわたしに教えてください。わたしは終りまでこれを守ります。
15911 19 119 34 わたしに知恵を与えてください。わたしはあなたのおきてを守り、心をつくしてこれに従います。
15912 19 119 35 わたしをあなたの戒めの道に導いてください。わたしはそれを喜ぶからです。
15913 19 119 36 わたしの心をあなたのあかしに傾けさせ、不正な利得に傾けさせないでください。
15914 19 119 37 わたしの目をほかにむけて、むなしいものを見させず、あなたの道をもって、わたしを生かしてください。
15915 19 119 38 あなたを恐れる者にかかわる約束をあなたのしもべに堅くしてください。
15916 19 119 39 わたしの恐れるそしりを除いてください。あなたのおきては正しいからです。
15917 19 119 40 見よ、わたしはあなたのさとしを慕います。あなたの義をもって、わたしを生かしてください。
15918 19 119 41 主よ、あなたの約束にしたがって、あなたのいつくしみと、あなたの救をわたしに臨ませてください。
15919 19 119 42 そうすれば、わたしをそしる者に、答えることができます。わたしはあなたのみ言葉に信頼するからです。
15920 19 119 43 またわたしの口から真理の言葉をことごとく除かないでください。わたしの望みはあなたのおきてにあるからです。
15921 19 119 44 わたしは絶えず、とこしえに、あなたのおきてを守ります。
15922 19 119 45 わたしはあなたのさとしを求めたので、自由に歩むことができます。
15923 19 119 46 わたしはまた王たちの前にあなたのあかしを語って恥じることはありません。
15924 19 119 47 わたしは、わたしの愛するあなたの戒めに自分の喜びを見いだすからです。
15925 19 119 48 わたしは、わたしの愛するあなたの戒めを尊び、あなたの定めを深く思います。
15926 19 119 49 どうか、あなたのしもべに言われたみ言葉を思い出してください。あなたはわたしにそれを望ませられました。
15927 19 119 50 あなたの約束はわたしを生かすので、わが悩みの時の慰めです。
15928 19 119 51 高ぶる者は大いにわたしをあざ笑います。しかしわたしはあなたのおきてを離れません。
15929 19 119 52 主よ、わたしはあなたの昔からのおきてを思い出して、みずから慰めます。
15930 19 119 53 あなたのおきてを捨てる悪しき者のゆえに、わたしは激しい憤りを起します。
15931 19 119 54 あなたの定めはわが旅の家で、わたしの歌となりました。
15932 19 119 55 主よ、わたしは夜の間にあなたのみ名を思い出して、あなたのおきてを守ります。
15933 19 119 56 わたしはあなたのさとしを守ったことによって、この祝福がわたしに臨みました。
15934 19 119 57 主はわたしの受くべき分です。わたしはあなたのみ言葉を守ることを約束します。
15935 19 119 58 わたしは心をつくして、あなたの恵みを請い求めます。あなたの約束にしたがって、わたしをお恵みください。
15936 19 119 59 わたしは、あなたの道を思うとき、足をかえして、あなたのあかしに向かいます。
15937 19 119 60 わたしはあなたの戒めを守るのに、すみやかで、ためらいません。
15938 19 119 61 たとい、悪しき者のなわがわたしを捕えても、わたしはあなたのおきてを忘れません。
15939 19 119 62 わたしはあなたの正しいおきてのゆえに夜半に起きて、あなたに感謝します。
15940 19 119 63 わたしは、すべてあなたを恐れる者、またあなたのさとしを守る者の仲間です。
15941 19 119 64 主よ、地はあなたのいつくしみで満ちています。あなたの定めをわたしに教えてください。
15942 19 119 65 主よ、あなたはみ言葉にしたがってしもべをよくあしらわれました。
15943 19 119 66 わたしに良い判断と知識とを教えてください。わたしはあなたの戒めを信じるからです。
15944 19 119 67 わたしは苦しまない前には迷いました。しかし今はみ言葉を守ります。
15945 19 119 68 あなたは善にして善を行われます。あなたの定めをわたしに教えてください。
15946 19 119 69 高ぶる者は偽りをもってわたしをことごとくおおいます。しかしわたしは心をつくしてあなたのさとしを守ります。
15947 19 119 70 彼らの心は肥え太って脂肪のようです。しかしわたしはあなたのおきてを喜びます。
15948 19 119 71 苦しみにあったことは、わたしに良い事です。これによってわたしはあなたのおきてを学ぶことができました。
15949 19 119 72 あなたの口のおきては、わたしのためには幾千の金銀貨幣にもまさるのです。
15950 19 119 73 あなたのみ手はわたしを造り、わたしを形造りました。わたしに知恵を与えて、あなたの戒めを学ばせてください。
15951 19 119 74 あなたを恐れる者はわたしを見て喜ぶでしょう。わたしはみ言葉によって望みをいだいたからです。
15952 19 119 75 主よ、わたしはあなたのさばきの正しく、また、あなたが真実をもってわたしを苦しめられたことを知っています。
15953 19 119 76 あなたがしもべに告げられた約束にしたがって、あなたのいつくしみをわが慰めとしてください。
15954 19 119 77 あなたのあわれみをわたしに臨ませ、わたしを生かしてください。あなたのおきてはわが喜びだからです。
15955 19 119 78 高ぶる者に恥をこうむらせてください。彼らは偽りをもって、わたしをくつがえしたからです。しかしわたしはあなたのさとしを深く思います。
15956 19 119 79 あなたをおそれる者と、あなたのあかしを知る者とをわたしに帰らせてください。
15957 19 119 80 わたしの心を全くして、あなたの定めを守らせてください。そうすればわたしは恥をこうむることがありません。
15958 19 119 81 わが魂はあなたの救を慕って絶えいるばかりです。わたしはみ言葉によって望みをいだきます。
15959 19 119 82 わたしの目はあなたの約束を待つによって衰え、「いつ、あなたはわたしを慰められるのですか」と尋ねます。
15960 19 119 83 わたしは煙の中の皮袋のようになりましたが、なお、あなたの定めを忘れませんでした。
15961 19 119 84 あなたのしもべの日はどれほど続くでしょうか。いつあなたは、わたしを迫害する者をさばかれるでしょうか。
15962 19 119 85 高ぶる者はわたしをおとしいれようと穴を掘りました。彼らはあなたのおきてに従わない人々です。
15963 19 119 86 あなたの戒めはみな真実です。彼らは偽りをもってわたしを迫害します。わたしをお助けください。
15964 19 119 87 彼らはこの地において、ほとんどわたしを滅ぼしました。しかし、わたしはあなたのさとしを捨てませんでした。
15965 19 119 88 あなたのいつくしみにしたがってわたしを生かしてください。そうすればわたしはあなたの口から出るあかしを守ります。
15966 19 119 89 主よ、あなたのみ言葉は天においてとこしえに堅く定まり、
15967 19 119 90 あなたのまことはよろずよに及びます。あなたが地を定められたので、地は堅く立っています。
15968 19 119 91 これらのものはあなたの仰せにより、堅く立って今日に至っています。よろずのものは皆あなたのしもべだからです。
15969 19 119 92 あなたのおきてがわが喜びとならなかったならば、わたしはついに悩みのうちに滅びたでしょう。
15970 19 119 93 わたしは常にあなたのさとしを忘れません。あなたはこれをもって、わたしを生かされたからです。
15971 19 119 94 わたしはあなたのものです。わたしをお救いください。わたしはあなたのさとしを求めました。
15972 19 119 95 悪しき者はわたしを滅ぼそうと待ち伏せています。しかし、わたしはあなたのあかしを思います。
15973 19 119 96 わたしはすべての全きことに限りあることを見ました。しかしあなたの戒めは限りなく広いのです。
15974 19 119 97 いかにわたしはあなたのおきてを愛することでしょう。わたしはひねもすこれを深く思います。
15975 19 119 98 あなたの戒めは常にわたしと共にあるので、わたしをわが敵にまさって賢くします。
15976 19 119 99 わたしはあなたのあかしを深く思うので、わがすべての師にまさって知恵があります。
15977 19 119 100 わたしはあなたのさとしを守るので、老いた者にまさって事をわきまえます。
15978 19 119 101 わたしはみ言葉を守るために、わが足をとどめて、すべての悪い道に行かせません。
15979 19 119 102 あなたがわたしを教えられたので、わたしはあなたのおきてを離れません。
15980 19 119 103 あなたのみ言葉はいかにわがあごに甘いことでしょう。蜜にまさってわが口に甘いのです。
15981 19 119 104 わたしはあなたのさとしによって知恵を得ました。それゆえ、わたしは偽りのすべての道を憎みます。
15982 19 119 105 あなたのみ言葉はわが足のともしび、わが道の光です。
15983 19 119 106 わたしはあなたの正しいおきてを守ることを誓い、かつこれを実行しました。
15984 19 119 107 わたしはいたく苦しみました。主よ、み言葉に従って、わたしを生かしてください。
15985 19 119 108 主よ、わがさんびの供え物をうけて、あなたのおきてを教えてください。
15986 19 119 109 わたしのいのちは常に危険にさらされています。しかし、わたしはあなたのおきてを忘れません。
15987 19 119 110 悪しき者はわたしのためにわなを設けました。しかし、わたしはあなたのさとしから迷い出ません。
15988 19 119 111 あなたのあかしはとこしえにわが嗣業です。まことに、そのあかしはわが心の喜びです。
15989 19 119 112 わたしはあなたの定めを終りまで、とこしえに守ろうと心を傾けます。
15990 19 119 113 わたしは二心の者を憎みます。しかしあなたのおきてを愛します。
15991 19 119 114 あなたはわが隠れ場、わが盾です。わたしはみ言葉によって望みをいだきます。
15992 19 119 115 悪をなす者よ、わたしを離れ去れ、わたしはわが神の戒めを守るのです。
15993 19 119 116 あなたの約束にしたがって、わたしをささえて、ながらえさせ、わが望みについて恥じることのないようにしてください。
15994 19 119 117 わたしをささえてください。そうすれば、わたしは安らかで、常にあなたの定めに心をそそぎます。
15995 19 119 118 すべてあなたの定めから迷い出る者をあなたは、かろしめられます。まことに、彼らの欺きはむなしいのです。
15996 19 119 119 あなたは地のすべての悪しき者を、金かすのようにみなされます。それゆえ、わたしはあなたのあかしを愛します。
15997 19 119 120 わが肉はあなたを恐れるので震えます。わたしはあなたのさばきを恐れます。
15998 19 119 121 わたしは正しく義にかなったことを行いました。わたしを捨てて、しえたげる者にゆだねないでください。
15999 19 119 122 しもべのために保証人となって、高ぶる者にわたしを、しえたげさせないでください。
16000 19 119 123 わが目はあなたの救と、あなたの正しい約束とを待ち望んで衰えます。
16001 19 119 124 あなたのいつくしみにしたがって、しもべをあしらい、あなたの定めを教えてください。
16002 19 119 125 わたしはあなたのしもべです。わたしに知恵を与えて、あなたのあかしを知らせてください。
16003 19 119 126 彼らはあなたのおきてを破りました。今は主のはたらかれる時です。
16004 19 119 127 それゆえ、わたしは金よりも、純金よりもまさってあなたの戒めを愛します。
16005 19 119 128 それゆえ、わたしは、あなたのもろもろのさとしにしたがって、正しき道に歩み、すべての偽りの道を憎みます。
16006 19 119 129 あなたのあかしは驚くべきものです。それゆえ、わが魂はこれを守ります。
16007 19 119 130 み言葉が開けると光を放って、無学な者に知恵を与えます。
16008 19 119 131 わたしはあなたの戒めを慕うゆえに、口を広くあけてあえぎ求めました。
16009 19 119 132 み名を愛する者に常にされるように、わたしをかえりみ、わたしをあわれんでください。
16010 19 119 133 あなたの約束にしたがって、わが歩みを確かにし、すべての不義に支配されないようにしてください。
16011 19 119 134 わたしを人のしえたげからあがなってください。そうすればわたしは、あなたのさとしを守ります。
16012 19 119 135 み顔をしもべの上に照し、あなたの定めを教えてください。
16013 19 119 136 人々があなたのおきてを守らないので、わが目の涙は川のように流れます。
16014 19 119 137 主よ、あなたは正しく、あなたのさばきは正しいのです。
16015 19 119 138 あなたの正義と、この上ない真実とをもってあなたのあかしを命じられました。
16016 19 119 139 わたしのあだが、あなたのみ言葉を忘れるので、わが熱心はわたしを滅ぼすのです。
16017 19 119 140 あなたの約束はまことに確かです。あなたのしもべはこれを愛します。
16018 19 119 141 わたしは取るにたらない者で、人に侮られるけれども、なお、あなたのさとしを忘れません。
16019 19 119 142 あなたの義はとこしえに正しく、あなたのおきてはまことです。
16020 19 119 143 悩みと苦しみがわたしに臨みました。しかしあなたの戒めはわたしの喜びです。
16021 19 119 144 あなたのあかしはとこしえに正しいのです。わたしに知恵を与えて、生きながらえさせてください。
16022 19 119 145 わたしは心をつくして呼ばわります。主よ、お答えください。わたしはあなたの定めを守ります。
16023 19 119 146 わたしはあなたに呼ばわります。わたしをお救いください。わたしはあなたのあかしを守ります。
16024 19 119 147 わたしは朝早く起き出て呼ばわります。わたしはみ言葉によって望みをいだくのです。
16025 19 119 148 わが目は夜警の交代する時に先だってさめ、あなたの約束を深く思います。
16026 19 119 149 あなたのいつくしみにしたがって、わが声を聞いてください。主よ、あなたの公義にしたがって、わたしを生かしてください。
16027 19 119 150 わたしをしえたげる者が悪いたくらみをもって近づいています。彼らはあなたのおきてを遠くはなれているのです。
16028 19 119 151 しかし主よ、あなたは近くいらせられます。あなたのもろもろの戒めはまことです。
16029 19 119 152 わたしは早くからあなたのあかしによって、あなたがこれをとこしえに立てられたことを知りました。
16030 19 119 153 わが悩みを見て、わたしをお救いください。わたしはあなたのおきてを忘れないからです。
16031 19 119 154 わが訴えを弁護して、わたしをあがない、あなたの約束にしたがって、わたしを生かしてください。
16032 19 119 155 救は悪しき者を遠く離れている。彼らはあなたの定めを求めないからです。
16033 19 119 156 主よ、あなたのあわれみは大きい。あなたの公義に従って、わたしを生かしてください。
16034 19 119 157 わたしをしえたげる者、わたしをあだする者は多い。しかしわたしは、あなたのあかしを離れません。
16035 19 119 158 不信仰な者があなたのみ言葉を守らないので、わたしは彼らを見て、いとわしく思います。
16036 19 119 159 わたしがいかにあなたのさとしを愛するかをお察しください。主よ、あなたのいつくしみにしたがって、わたしを生かしてください。
16037 19 119 160 あなたのみ言葉の全体は真理です。あなたの正しいおきてのすべてはとこしえに絶えることはありません。
16038 19 119 161 もろもろの君はゆえなくわたしをしえたげます。しかしわが心はみ言葉をおそれます。
16039 19 119 162 わたしは大いなる獲物を得た者のようにあなたのみ言葉を喜びます。
16040 19 119 163 わたしは偽りを憎み、忌みきらいます。しかしあなたのおきてを愛します。
16041 19 119 164 わたしはあなたの正しいおきてのゆえに、一日に七たびあなたをほめたたえます。
16042 19 119 165 あなたのおきてを愛する者には大いなる平安があり、何ものも彼らをつまずかすことはできません。
16043 19 119 166 主よ、わたしはあなたの救を望み、あなたの戒めをおこないます。
16044 19 119 167 わが魂は、あなたのあかしを守ります。わたしはいたくこれを愛します。
16045 19 119 168 わがすべての道があなたのみ前にあるので、わたしはあなたのさとしと、あかしとを守ります。
16046 19 119 169 主よ、どうか、わが叫びをみ前にいたらせ、み言葉に従って、わたしに知恵をお与えください。
16047 19 119 170 わが願いをみ前にいたらせ、み言葉にしたがって、わたしをお助けください。
16048 19 119 171 あなたの定めをわたしに教えられるので、わがくちびるはさんびを唱えます。
16049 19 119 172 あなたのすべての戒めは正しいので、わが舌はみ言葉を歌います。
16050 19 119 173 わたしはあなたのさとしを選びました。あなたのみ手を、常にわが助けとしてください。
16051 19 119 174 主よ、わたしはあなたの救を慕います。あなたのおきてはわたしの喜びです。
16052 19 119 175 わたしを生かして、あなたをほめたたえさせ、あなたのおきてを、わが助けとしてください。
16053 19 119 176 わたしは失われた羊のように迷い出ました。あなたのしもべを捜し出してください。わたしはあなたの戒めを忘れないからです。
16054 19 120 1 わたしが悩みのうちに、主に呼ばわると、主はわたしに答えられる。
16055 19 120 2 「主よ、偽りのくちびるから、欺きの舌から、わたしを助け出してください」。
16056 19 120 3 欺きの舌よ、おまえに何が与えられ、何が加えられるであろうか。
16057 19 120 4 ますらおの鋭い矢と、えにしだの熱い炭とである。
16058 19 120 5 わざわいなるかな、わたしはメセクにやどり、ケダルの天幕のなかに住んでいる。
16059 19 120 6 わたしは久しく平安を憎む者のなかに住んでいた。
16060 19 120 7 わたしは平安を願う、しかし、わたしが物言うとき、彼らは戦いを好む。
16061 19 121 1 わたしは山にむかって目をあげる。わが助けは、どこから来るであろうか。
16062 19 121 2 わが助けは、天と地を造られた主から来る。
16063 19 121 3 主はあなたの足の動かされるのをゆるされない。あなたを守る者はまどろむことがない。
16064 19 121 4 見よ、イスラエルを守る者はまどろむこともなく、眠ることもない。
16065 19 121 5 主はあなたを守る者、主はあなたの右の手をおおう陰である。
16066 19 121 6 昼は太陽があなたを撃つことなく、夜は月があなたを撃つことはない。
16067 19 121 7 主はあなたを守って、すべての災を免れさせ、またあなたの命を守られる。
16068 19 121 8 主は今からとこしえに至るまで、あなたの出ると入るとを守られるであろう。
16069 19 122 1 人々がわたしにむかって「われらは主の家に行こう」と言ったとき、わたしは喜んだ。
16070 19 122 2 エルサレムよ、われらの足はあなたの門のうちに立っている。
16071 19 122 3 しげくつらなった町のように建てられているエルサレムよ、
16072 19 122 4 もろもろの部族すなわち主の部族が、そこに上って来て主のみ名に感謝することは、イスラエルのおきてである。
16073 19 122 5 そこにさばきの座、ダビデの家の王座が設けられてあった。
16074 19 122 6 エルサレムのために平安を祈れ、「エルサレムを愛する者は栄え、
16075 19 122 7 その城壁のうちに平安があり、もろもろの殿のうちに安全があるように」と。
16076 19 122 8 わが兄弟および友のために、わたしは「エルサレムのうちに平安があるように」と言い、
16077 19 122 9 われらの神、主の家のために、わたしはエルサレムのさいわいを求めるであろう。
16078 19 123 1 天に座しておられる者よ、わたしはあなたにむかって目をあげます。
16079 19 123 2 見よ、しもべがその主人の手に目をそそぎ、はしためがその主婦の手に目をそそぐように、われらはわれらの神、主に目をそそいで、われらをあわれまれるのを待ちます。
16080 19 123 3 主よ、われらをあわれんでください。われらをあわれんでください。われらに侮りが満ちあふれています。
16081 19 123 4 思い煩いのない者のあざけりと、高ぶる者の侮りとは、われらの魂に満ちあふれています。
16082 19 124 1 今、イスラエルは言え、主がもしわれらの方におられなかったならば、
16083 19 124 2 人々がわれらに逆らって立ちあがったとき、主がもしわれらの方におられなかったならば、
16084 19 124 3 彼らの怒りがわれらにむかって燃えたったとき、彼らはわれらを生きているままで、のんだであろう。
16085 19 124 4 また大水はわれらを押し流し、激流はわれらの上を越え、
16086 19 124 5 さか巻く水はわれらの上を越えたであろう。
16087 19 124 6 主はほむべきかな。主はわれらをえじきとして彼らの歯にわたされなかった。
16088 19 124 7 われらは野鳥を捕えるわなをのがれる鳥のようにのがれた。わなは破れてわれらはのがれた。
16089 19 124 8 われらの助けは天地を造られた主のみ名にある。
16090 19 125 1 主に信頼する者は、動かされることなくて、とこしえにあるシオンの山のようである。
16091 19 125 2 山々がエルサレムを囲んでいるように、主は今からとこしえにその民を囲まれる。
16092 19 125 3 これは悪しき者のつえが正しい者の所領にとどまることなく、正しい者がその手を不義に伸べることのないためである。
16093 19 125 4 主よ、善良な人と、心の正しい人とに、さいわいを施してください。
16094 19 125 5 しかし転じて自分の曲った道に入る者を主は、悪を行う者と共に去らせられる。イスラエルの上に平安があるように。
16095 19 126 1 主がシオンの繁栄を回復されたとき、われらは夢みる者のようであった。
16096 19 126 2 その時われらの口は笑いで満たされ、われらの舌は喜びの声で満たされた。その時「主は彼らのために大いなる事をなされた」と言った者が、もろもろの国民の中にあった。
16097 19 126 3 主はわれらのために大いなる事をなされたので、われらは喜んだ。
16098 19 126 4 主よ、どうか、われらの繁栄を、ネゲブの川のように回復してください。
16099 19 126 5 涙をもって種まく者は、喜びの声をもって刈り取る。
16100 19 126 6 種を携え、涙を流して出て行く者は、束を携え、喜びの声をあげて帰ってくるであろう。
16101 19 127 1 主が家を建てられるのでなければ、建てる者の勤労はむなしい。主が町を守られるのでなければ、守る者のさめているのはむなしい。
16102 19 127 2 あなたがたが早く起き、おそく休み、辛苦のかてを食べることは、むなしいことである。主はその愛する者に、眠っている時にも、なくてならぬものを与えられるからである。
16103 19 127 3 見よ、子供たちは神から賜わった嗣業であり、胎の実は報いの賜物である。
16104 19 127 4 壮年の時の子供は勇士の手にある矢のようだ。
16105 19 127 5 矢の満ちた矢筒を持つ人はさいわいである。彼は門で敵と物言うとき恥じることはない。
16106 19 128 1 すべて主をおそれ、主の道に歩む者はさいわいである。
16107 19 128 2 あなたは自分の手の勤労の実を食べ、幸福で、かつ安らかであろう。
16108 19 128 3 あなたの妻は家の奥にいて多くの実を結ぶぶどうの木のようであり、あなたの子供たちは食卓を囲んでオリブの若木のようである。
16109 19 128 4 見よ、主をおそれる人は、このように祝福を得る。
16110 19 128 5 主はシオンからあなたを祝福されるように。あなたは世にあるかぎりエルサレムの繁栄を見、
16111 19 128 6 またあなたの子らの子を見るであろう。どうぞ、イスラエルの上に平安があるように。
16112 19 129 1 今イスラエルは言え、「彼らはわたしの若い時から、ひどくわたしを悩ました。
16113 19 129 2 彼らはわたしの若い時から、ひどくわたしを悩ました。しかしわたしに勝つことができなかった。
16114 19 129 3 耕す者はわたしの背の上をたがやして、そのうねみぞを長くした」と。
16115 19 129 4 主は正しくいらせられ、悪しき者のなわを断ち切られた。
16116 19 129 5 シオンを憎む者はみな、恥を得て、退くように。
16117 19 129 6 彼らを、育たないさきに枯れる屋根の草のようにしてください。
16118 19 129 7 これを刈る者はその手に満たず、これをたばねる者はそのふところに満たない。
16119 19 129 8 かたわらを過ぎる者は、「主の恵みがあなたの上にあるように。われらは主のみ名によってあなたがたを祝福する」と言わない。
16120 19 130 1 主よ、わたしは深い淵からあなたに呼ばわる。
16121 19 130 2 主よ、どうか、わが声を聞き、あなたの耳をわが願いの声に傾けてください。
16122 19 130 3 主よ、あなたがもし、もろもろの不義に目をとめられるならば、主よ、だれが立つことができましょうか。
16123 19 130 4 しかしあなたには、ゆるしがあるので、人に恐れかしこまれるでしょう。
16124 19 130 5 わたしは主を待ち望みます、わが魂は待ち望みます。そのみ言葉によって、わたしは望みをいだきます。
16125 19 130 6 わが魂は夜回りが暁を待つにまさり、夜回りが暁を待つにまさって主を待ち望みます。
16126 19 130 7 イスラエルよ、主によって望みをいだけ。主には、いつくしみがあり、また豊かなあがないがあるからです。
16127 19 130 8 主はイスラエルをそのもろもろの不義からあがなわれます。
16128 19 131 1 主よ、わが心はおごらず、わが目は高ぶらず、わたしはわが力の及ばない大いなる事とくすしきわざとに関係いたしません。
16129 19 131 2 かえって、乳離れしたみどりごが、その母のふところに安らかにあるように、わたしはわが魂を静め、かつ安らかにしました。わが魂は乳離れしたみどりごのように、安らかです。
16130 19 131 3 イスラエルよ、今からとこしえに主によって望みをいだけ。
16131 19 132 1 主よ、ダビデのために、そのもろもろの辛苦をみこころにとめてください。
16132 19 132 2 ダビデは主に誓い、ヤコブの全能者に誓いを立てて言いました、
16133 19 132 6 見よ、われらはエフラタでそれを聞き、ヤアルの野でそれを見とめた。
16134 19 132 7 「われらはそのすまいへ行って、その足台のもとにひれ伏そう」。
16135 19 132 8 主よ、起きて、あなたの力のはこと共に、あなたの安息所におはいりください。
16136 19 132 9 あなたの祭司たちに義をまとわせ、あなたの聖徒たちに喜び呼ばわらせてください。
16137 19 132 10 あなたのしもべダビデのために、あなたの油そそがれた者の顔を、しりぞけないでください。
16138 19 132 11 主はまことをもってダビデに誓われたので、それにそむくことはない。すなわち言われた、「わたしはあなたの身から出た子のひとりを、あなたの位につかせる。
16139 19 132 12 もしあなたの子らがわたしの教える契約と、あかしとを守るならば、その子らもまた、とこしえにあなたの位に座するであろう」。
16140 19 132 13 主はシオンを選び、それをご自分のすみかにしようと望んで言われた、
16141 19 132 14 「これはとこしえにわが安息所である。わたしはこれを望んだゆえ、ここに住む。
16142 19 132 15 わたしはシオンの糧食を豊かに祝福し、食物をもってその貧しい者を飽かせる。
16143 19 132 16 またわたしはその祭司たちに救を着せる。その聖徒たちは声高らかに喜び呼ばわるであろう。
16144 19 132 17 わたしはダビデのためにそこに一つの角をはえさせる。わたしはわが油そそがれた者のために一つのともしびを備えた。
16145 19 132 18 わたしは彼の敵に恥を着せる。しかし彼の上にはその冠が輝くであろう」。
16146 19 133 1 見よ、兄弟が和合して共におるのはいかに麗しく楽しいことであろう。
16147 19 133 2 それはこうべに注がれた尊い油がひげに流れ、アロンのひげに流れ、その衣のえりにまで流れくだるようだ。
16148 19 133 3 またヘルモンの露がシオンの山に下るようだ。これは主がかしこに祝福を命じ、とこしえに命を与えられたからである。
16149 19 134 1 見よ、夜、主の家に立って主に仕えるすべてのしもべよ、主をほめよ。
16150 19 134 2 聖所にむかってあなたがたの手をあげ、主をほめよ。
16151 19 134 3 どうぞ主、天と地を造られた者、シオンからあなたを祝福されるように。
16152 19 135 1 主をほめたたえよ、主のみ名をほめたたえよ。主のしもべたちよ、ほめたたえよ。
16153 19 135 2 主の家に立つ者、われらの神の家の大庭に立つ者よ、ほめたたえよ。
16154 19 135 3 主は恵みふかい、主をほめたたえよ。主は情ぶかい、そのみ名をほめ歌え。
16155 19 135 4 主はおのがためにヤコブを選び、イスラエルを選んで、おのれの所有とされた。
16156 19 135 5 わたしは主の大いなることと、われらの主のすべての神にまさることとを知っている。
16157 19 135 6 主はそのみこころにかなう事を、天にも地にも、海にもすべての淵にも行われる。
16158 19 135 7 主は地のはてから雲をのぼらせ、雨のためにいなずまを造り、その倉から風を出される。
16159 19 135 8 主は人から獣にいたるまで、エジプトのういごを撃たれた。
16160 19 135 9 エジプトよ、主はおまえの中に、しるしと不思議とを送って、パロとそのすべてのしもべとに臨まれた。
16161 19 135 10 主は多くの国民を撃ち、力ある王たちを殺された。
16162 19 135 11 すなわちアモリびとの王シホン、バシャンの王オグ、ならびにカナンのすべての国々である。
16163 19 135 12 主は彼らの地を嗣業とし、その民イスラエルに嗣業として与えられた。
16164 19 135 13 主よ、あなたのみ名はとこしえに絶えることがない。主よ、あなたの名声はよろずよに及ぶ。
16165 19 135 14 主はその民をさばき、そのしもべらにあわれみをかけられるからである。
16166 19 135 15 もろもろの国民の偶像はしろがねと、こがねで、人の手のわざである。
16167 19 135 16 それは口があっても語ることができない。目があっても見ることができない。
16168 19 135 17 耳があっても聞くことができない。またその口には息がない。
16169 19 135 18 これを造る者と、これに信頼する者とはみな、これと等しい者になる。
16170 19 135 19 イスラエルの家よ、主をほめよ。アロンの家よ、主をほめよ。
16171 19 135 20 レビの家よ、主をほめよ。主を恐れる者よ、主をほめまつれ。
16172 19 135 21 エルサレムに住まわれる主は、シオンからほめたたえらるべきである。主をほめたたえよ。
16173 19 136 1 主に感謝せよ、主は恵みふかく、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16174 19 136 2 もろもろの神の神に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16175 19 136 3 もろもろの主の主に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16176 19 136 4 ただひとり大いなるくすしきみわざをなされる者に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16177 19 136 5 知恵をもって天を造られた者に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16178 19 136 6 地を水の上に敷かれた者に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16179 19 136 7 大いなる光を造られた者に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16180 19 136 8 昼をつかさどらすために日を造られた者に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16181 19 136 9 夜をつかさどらすために月と、もろもろの星とを造られた者に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16182 19 136 10 エジプトのういごを撃たれた者に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16183 19 136 11 イスラエルをエジプトびとの中から導き出された者に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16184 19 136 12 強い手と伸ばした腕とをもって、これを救い出された者に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16185 19 136 13 紅海を二つに分けられた者に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16186 19 136 14 イスラエルにその中を通らせられた者に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16187 19 136 15 パロとその軍勢とを紅海で打ち敗られた者に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16188 19 136 16 その民を導いて荒野を通らせられた者に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16189 19 136 17 大いなる王たちを撃たれた者に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16190 19 136 18 名ある王たちを殺された者に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16191 19 136 19 アモリびとの王シホンを殺された者に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16192 19 136 20 バシャンの王オグを殺された者に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16193 19 136 21 彼らの地を嗣業として与えられた者に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16194 19 136 22 そのしもべイスラエルに嗣業としてこれを与えられた者に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16195 19 136 23 われらが卑しかった時にわれらをみこころにとめられた者に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16196 19 136 24 われらのあだからわれらを助け出された者に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16197 19 136 25 すべての肉なる者に食物を与えられる者に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16198 19 136 26 天の神に感謝せよ、そのいつくしみはとこしえに絶えることがない。
16199 19 137 1 われらはバビロンの川のほとりにすわり、シオンを思い出して涙を流した。
16200 19 137 2 われらはその中のやなぎにわれらの琴をかけた。
16201 19 137 3 われらをとりこにした者が、われらに歌を求めたからである。われらを苦しめる者が楽しみにしようと、「われらにシオンの歌を一つうたえ」と言った。
16202 19 137 4 われらは外国にあって、どうして主の歌をうたえようか。
16203 19 137 5 エルサレムよ、もしわたしがあなたを忘れるならば、わが右の手を衰えさせてください。
16204 19 137 6 もしわたしがあなたを思い出さないならば、もしわたしがエルサレムをわが最高の喜びとしないならば、わが舌をあごにつかせてください。
16205 19 137 7 主よ、エドムの人々がエルサレムの日に、「これを破壊せよ、これを破壊せよ、その基までも破壊せよ」と言ったことを覚えてください。
16206 19 137 8 破壊者であるバビロンの娘よ、あなたがわれらにしたことを、あなたに仕返しする人はさいわいである。
16207 19 137 9 あなたのみどりごを取って岩になげうつ者はさいわいである。
16208 19 138 1 主よ、わたしは心をつくしてあなたに感謝し、もろもろの神の前であなたをほめ歌います。
16209 19 138 2 わたしはあなたの聖なる宮にむかって伏し拝み、あなたのいつくしみと、まこととのゆえに、み名に感謝します。あなたはそのみ名と、み言葉をすべてのものにまさって高くされたからです。
16210 19 138 3 あなたはわたしが呼ばわった日にわたしに答え、わが魂の力を増し加えられました。
16211 19 138 4 主よ、地のすべての王はあなたに感謝するでしょう。彼らはあなたの口のもろもろの言葉を聞いたからです。
16212 19 138 5 彼らは主のもろもろの道について歌うでしょう。主の栄光は大きいからです。
16213 19 138 6 主は高くいらせられるが低い者をかえりみられる。しかし高ぶる者を遠くから知られる。
16214 19 138 7 たといわたしが悩みのなかを歩いても、あなたはわたしを生かし、み手を伸ばしてわが敵の怒りを防ぎ、あなたの右の手はわたしを救われます。
16215 19 138 8 主はわたしのために、みこころをなしとげられる。主よ、あなたのいつくしみはとこしえに絶えることはありません。あなたのみ手のわざを捨てないでください。
16216 19 139 1 主よ、あなたはわたしを探り、わたしを知りつくされました。
16217 19 139 2 あなたはわがすわるをも、立つをも知り、遠くからわが思いをわきまえられます。
16218 19 139 3 あなたはわが歩むをも、伏すをも探り出し、わがもろもろの道をことごとく知っておられます。
16219 19 139 4 わたしの舌に一言もないのに、主よ、あなたはことごとくそれを知られます。
16220 19 139 5 あなたは後から、前からわたしを囲み、わたしの上にみ手をおかれます。
16221 19 139 6 このような知識はあまりに不思議で、わたしには思いも及びません。これは高くて達することはできません。
16222 19 139 7 わたしはどこへ行って、あなたのみたまを離れましょうか。わたしはどこへ行って、あなたのみ前をのがれましょうか。
16223 19 139 8 わたしが天にのぼっても、あなたはそこにおられます。わたしが陰府に床を設けても、あなたはそこにおられます。
16224 19 139 9 わたしがあけぼのの翼をかって海のはてに住んでも、
16225 19 139 10 あなたのみ手はその所でわたしを導き、あなたの右のみ手はわたしをささえられます。
16226 19 139 11 「やみはわたしをおおい、わたしを囲む光は夜となれ」とわたしが言っても、
16227 19 139 12 あなたには、やみも暗くはなく、夜も昼のように輝きます。あなたには、やみも光も異なることはありません。
16228 19 139 13 あなたはわが内臓をつくり、わが母の胎内でわたしを組み立てられました。
16229 19 139 14 わたしはあなたをほめたたえます。あなたは恐るべく、くすしき方だからです。あなたのみわざはくすしく、あなたは最もよくわたしを知っておられます。
16230 19 139 15 わたしが隠れた所で造られ、地の深い所でつづり合されたとき、わたしの骨はあなたに隠れることがなかった。
16231 19 139 16 あなたの目は、まだできあがらないわたしのからだを見られた。わたしのためにつくられたわがよわいの日のまだ一日もなかったとき、その日はことごとくあなたの書にしるされた。
16232 19 139 17 神よ、あなたのもろもろのみ思いは、なんとわたしに尊いことでしょう。その全体はなんと広大なことでしょう。
16233 19 139 18 わたしがこれを数えようとすれば、その数は砂よりも多い。わたしが目ざめるとき、わたしはなおあなたと共にいます。
16234 19 139 19 神よ、どうか悪しき者を殺してください。血を流す者をわたしから離れ去らせてください。
16235 19 139 20 彼らは敵意をもってあなたをあなどり、あなたに逆らって高ぶり、悪を行う人々です。
16236 19 139 21 主よ、わたしはあなたを憎む者を憎み、あなたに逆らって起り立つ者をいとうではありませんか。
16237 19 139 22 わたしは全く彼らを憎み、彼らをわたしの敵と思います。
16238 19 139 23 神よ、どうか、わたしを探って、わが心を知り、わたしを試みて、わがもろもろの思いを知ってください。
16239 19 139 24 わたしに悪しき道のあるかないかを見て、わたしをとこしえの道に導いてください。
16240 19 140 1 主よ、悪しき人々からわたしを助け出し、わたしを守って、乱暴な人々からのがれさせてください。
16241 19 140 2 彼らは心のうちに悪い事をはかり、絶えず戦いを起します。
16242 19 140 3 彼らはへびのようにおのが舌を鋭くし、そのくちびるの下にはまむしの毒があります。〔セラ
16243 19 140 4 主よ、わたしを保って、悪しき人の手からのがれさせ、わたしを守って、わが足をつまずかせようとする乱暴な人々からのがれさせてください。
16244 19 140 5 高ぶる者はわたしのためにわなを伏せ、綱をもって網を張り、道のほとりにわなを設けました。〔セラ
16245 19 140 6 わたしは主に言います、「あなたはわが神です。主よ、わが願いの声に耳を傾けてください。
16246 19 140 7 わが救の力、主なる神よ、あなたは戦いの日に、わがこうべをおおわれました。
16247 19 140 8 主よ、悪しき人の願いをゆるさないでください。その悪しき計画をとげさせないでください。〔セラ
16248 19 140 9 わたしを囲む者がそのこうべをあげるとき、そのくちびるの害悪で彼らをおおってください。
16249 19 140 10 燃える炭を彼らの上に落してください。彼らを穴に投げ入れ、再び上がることのできないようにしてください。
16250 19 140 11 悪口を言う者を世に立たせないでください。乱暴な人をすみやかに災に追い捕えさせてください」。
16251 19 140 12 わたしは主が苦しむ者の訴えをたすけ、貧しい者のために正しいさばきを行われることを知っています。
16252 19 140 13 正しい人は必ずみ名に感謝し、直き人はみ前に住むでしょう。
16253 19 141 1 主よ、わたしはあなたに呼ばわります。すみやかにわたしをお助けください。わたしがあなたに呼ばわるとき、わが声に耳を傾けてください。
16254 19 141 2 わたしの祈を、み前にささげる薫香のようにみなし、わたしのあげる手を、夕べの供え物のようにみなしてください。
16255 19 141 3 主よ、わが口に門守を置いて、わがくちびるの戸を守ってください。
16256 19 141 4 悪しき事にわが心を傾けさせず、不義を行う人々と共に悪しきわざにあずからせないでください。また彼らのうまき物を食べさせないでください。
16257 19 141 5 正しい者にいつくしみをもってわたしを打たせ、わたしを責めさせてください。しかし悪しき者の油をわがこうべにそそがせないでください。わが祈は絶えず彼らの悪しきわざに敵しているからです。
16258 19 141 6 彼らはおのれを罪に定める者にわたされるとき、主のみ言葉のまことなることを学ぶでしょう。
16259 19 141 7 人が岩を裂いて地の上に打ち砕くように、彼らの骨は陰府の口にまき散らされるでしょう。
16260 19 141 8 しかし主なる神よ、わが目はあなたに向かっています。わたしはあなたに寄り頼みます。わたしを助けるものもないままに捨ておかないでください。
16261 19 141 9 わたしを守って、彼らがわたしのために設けたわなと、悪を行う者のわなとをのがれさせてください。
16262 19 141 10 わたしがのがれると同時に、悪しき者をおのれの網に陥らせてください。
16263 19 142 1 わたしは声を出して主に呼ばわり、声を出して主に願い求めます。
16264 19 142 2 わたしはみ前にわが嘆きを注ぎ出し、み前にわが悩みをあらわします。
16265 19 142 3 わが霊のわがうちに消えうせようとする時も、あなたはわが道を知られます。彼らはわたしを捕えようとわたしの行く道にわなを隠しました。
16266 19 142 4 わたしは右の方に目を注いで見回したが、わたしに心をとめる者はひとりもありません。わたしには避け所がなく、わたしをかえりみる人はありません。
16267 19 142 5 主よ、わたしはあなたに呼ばわります。わたしは言います、「あなたはわが避け所、生ける者の地でわたしの受くべき分です。
16268 19 142 6 どうか、わが叫びにみこころをとめてください。わたしは、はなはだしく低くされています。わたしを責める者から助け出してください。彼らはわたしにまさって強いのです。
16269 19 142 7 わたしをひとやから出し、み名に感謝させてください。あなたが豊かにわたしをあしらわれるので、正しい人々はわたしのまわりに集まるでしょう」。
16270 19 143 1 主よ、わが祈を聞き、わが願いに耳を傾けてください。あなたの真実と、あなたの正義とをもって、わたしにお答えください。
16271 19 143 2 あなたのしもべのさばきにたずさわらないでください。生ける者はひとりもみ前に義とされないからです。
16272 19 143 3 敵はわたしをせめ、わがいのちを地に踏みにじり、死んで久しく時を経た者のようにわたしを暗い所に住まわせました。
16273 19 143 4 それゆえ、わが霊はわがうちに消えうせようとし、わが心はわがうちに荒れさびれています。
16274 19 143 5 わたしはいにしえの日を思い出し、あなたが行われたすべての事を考え、あなたのみ手のわざを思います。
16275 19 143 6 わたしはあなたにむかって手を伸べ、わが魂は、かわききった地のようにあなたを慕います。〔セラ
16276 19 143 7 主よ、すみやかにわたしにお答えください。わが霊は衰えます。わたしにみ顔を隠さないでください。さもないと、わたしは穴にくだる者のようになるでしょう。
16277 19 143 8 あしたに、あなたのいつくしみを聞かせてください。わたしはあなたに信頼します。わが歩むべき道を教えてください。わが魂はあなたを仰ぎ望みます。
16278 19 143 9 主よ、わたしをわが敵から助け出してください。わたしは避け所を得るためにあなたのもとにのがれました。
16279 19 143 10 あなたのみむねを行うことを教えてください。あなたはわが神です。恵みふかい、みたまをもってわたしを平らかな道に導いてください。
16280 19 143 11 主よ、み名のために、わたしを生かし、あなたの義によって、わたしを悩みから救い出してください。
16281 19 143 12 また、あなたのいつくしみによって、わが敵を断ち、わがあだをことごとく滅ぼしてください。わたしはあなたのしもべです。
16282 19 144 1 わが岩なる主はほむべきかな。主は、いくさすることをわが手に教え、戦うことをわが指に教えられます。
16283 19 144 2 主はわが岩、わが城、わが高きやぐら、わが救主、わが盾、わが寄り頼む者です。主はもろもろの民をおのれに従わせられます。
16284 19 144 3 主よ、人は何ものなので、あなたはこれをかえりみ、人の子は何ものなので、これをみこころに、とめられるのですか。
16285 19 144 4 人は息にひとしく、その日は過ぎゆく影にひとしいのです。
16286 19 144 5 主よ、あなたの天を垂れてくだり、山に触れて煙を出させてください。
16287 19 144 6 いなずまを放って彼らを散らし、矢を放って彼らを打ち敗ってください。
16288 19 144 7 高い所からみ手を伸べて、わたしを救い、大水から、異邦人の手からわたしを助け出してください。
16289 19 144 8 彼らの口は偽りを言い、その右の手は偽りの右の手です。
16290 19 144 9 神よ、わたしは新しい歌をあなたにむかって歌い、十弦の立琴にあわせてあなたをほめ歌います。
16291 19 144 10 あなたは王たちに勝利を与え、そのしもべダビデを救われます。
16292 19 144 11 わたしを残忍なつるぎから救い、異邦人の手から助け出してください。彼らの口は偽りを言い、その右の手は偽りの右の手です。
16293 19 144 12 われらのむすこたちはその若い時、よく育った草木のようです。われらの娘たちは宮の建物のために刻まれたすみの柱のようです。
16294 19 144 13 われらの倉は満ちて様々の物を備え、われらの羊は野でちよろずの子を産み、
16295 19 144 14 われらの家畜はみごもって子を産むに誤ることなく、われらのちまたには悩みの叫びがありません。
16296 19 144 15 このような祝福をもつ民はさいわいです。主をおのが神とする民はさいわいです。
16297 19 145 1 わが神、王よ、わたしはあなたをあがめ、世々かぎりなくみ名をほめまつります。
16298 19 145 2 わたしは日ごとにあなたをほめ、世々かぎりなくみ名をほめたたえます。
16299 19 145 3 主は大いなる神で、大いにほめたたえらるべきです。その大いなることは測り知ることができません。
16300 19 145 4 この代はかの代にむかってあなたのみわざをほめたたえ、あなたの大能のはたらきを宣べ伝えるでしょう。
16301 19 145 5 わたしはあなたの威厳の光栄ある輝きと、あなたのくすしきみわざとを深く思います。
16302 19 145 6 人々はあなたの恐るべきはたらきの勢いを語り、わたしはあなたの大いなることを宣べ伝えます。
16303 19 145 7 彼らはあなたの豊かな恵みの思い出を言いあらわし、あなたの義を喜び歌うでしょう。
16304 19 145 8 主は恵みふかく、あわれみに満ち、怒ることおそく、いつくしみ豊かです。
16305 19 145 9 主はすべてのものに恵みがあり、そのあわれみはすべてのみわざの上にあります。
16306 19 145 10 主よ、あなたのすべてのみわざはあなたに感謝し、あなたの聖徒はあなたをほめまつるでしょう。
16307 19 145 11 彼らはみ国の栄光を語り、あなたのみ力を宣べ、
16308 19 145 12 あなたの大能のはたらきと、み国の光栄ある輝きとを人の子に知らせるでしょう。
16309 19 145 13 あなたの国はとこしえの国です。あなたのまつりごとはよろずよに絶えることはありません。
16310 19 145 14 主はすべて倒れんとする者をささえ、すべてかがむ者を立たせられます。
16311 19 145 15 よろずのものの目はあなたを待ち望んでいます。あなたは時にしたがって彼らに食物を与えられます。
16312 19 145 16 あなたはみ手を開いて、すべての生けるものの願いを飽かせられます。
16313 19 145 17 主はそのすべての道に正しく、そのすべてのみわざに恵みふかく、
16314 19 145 18 すべて主を呼ぶ者、誠をもって主を呼ぶ者に主は近いのです。
16315 19 145 19 主はおのれを恐れる者の願いを満たし、またその叫びを聞いてこれを救われます。
16316 19 145 20 主はおのれを愛する者をすべて守られるが、悪しき者をことごとく滅ぼされます。
16317 19 145 21 わが口は主の誉を語り、すべての肉なる者は世々かぎりなくその聖なるみ名をほめまつるでしょう。
16318 19 146 1 主をほめたたえよ。わが魂よ、主をほめたたえよ。
16319 19 146 2 わたしは生けるかぎりは主をほめたたえ、ながらえる間は、わが神をほめうたおう。
16320 19 146 3 もろもろの君に信頼してはならない。人の子に信頼してはならない。彼らには助けがない。
16321 19 146 4 その息が出ていけば彼は土に帰る。その日には彼のもろもろの計画は滅びる。
16322 19 146 5 ヤコブの神をおのが助けとし、その望みをおのが神、主におく人はさいわいである。
16323 19 146 6 主は天と地と、海と、その中にあるあらゆるものを造り、とこしえに真実を守り、
16324 19 146 7 しえたげられる者のためにさばきをおこない、飢えた者に食物を与えられる。主は捕われ人を解き放たれる。
16325 19 146 8 主は盲人の目を開かれる。主はかがむ者を立たせられる。主は正しい者を愛される。
16326 19 146 9 主は寄留の他国人を守り、みなしごと、やもめとをささえられる。しかし、悪しき者の道を滅びに至らせられる。
16327 19 146 10 主はとこしえに統べ治められる。シオンよ、あなたの神はよろず代まで統べ治められる。主をほめたたえよ。
16328 19 147 1 主をほめたたえよ。われらの神をほめうたうことはよいことである。主は恵みふかい。さんびはふさわしいことである。
16329 19 147 2 主はエルサレムを築き、イスラエルの追いやられた者を集められる。
16330 19 147 3 主は心の打ち砕かれた者をいやし、その傷を包まれる。
16331 19 147 4 主はもろもろの星の数を定め、すべてそれに名を与えられる。
16332 19 147 5 われらの主は大いなる神、力も豊かであって、その知恵ははかりがたい。
16333 19 147 6 主はしえたげられた者をささえ、悪しき者を地に投げ捨てられる。
16334 19 147 7 主に感謝して歌え、琴にあわせてわれらの神をほめうたえ。
16335 19 147 8 主は雲をもって天をおおい、地のために雨を備え、もろもろの山に草をはえさせ、
16336 19 147 9 食物を獣に与え、また鳴く小がらすに与えられる。
16337 19 147 10 主は馬の力を喜ばれず、人の足をよみせられない。
16338 19 147 11 主はおのれを恐れる者とそのいつくしみを望む者とをよみせられる。
16339 19 147 12 エルサレムよ、主をほめたたえよ。シオンよ、あなたの神をほめたたえよ。
16340 19 147 13 主はあなたの門の貫の木を堅くし、あなたのうちにいる子らを祝福されるからである。
16341 19 147 14 主はあなたの国境を安らかにし、最も良い麦をもってあなたを飽かせられる。
16342 19 147 15 主はその戒めを地に下される。そのみ言葉はすみやかに走る。
16343 19 147 16 主は雪を羊の毛のように降らせ、霜を灰のようにまかれる。
16344 19 147 17 主は氷をパンくずのように投げうたれる。だれがその寒さに耐えることができましょうか。
16345 19 147 18 主はみ言葉を下してこれを溶かし、その風を吹かせられると、もろもろの水は流れる。
16346 19 147 19 主はそのみ言葉をヤコブに示し、そのもろもろの定めと、おきてとをイスラエルに示される。
16347 19 147 20 主はいずれの国民をも、このようにはあしらわれなかった。彼らは主のもろもろのおきてを知らない。主をほめたたえよ。
16348 19 148 1 主をほめたたえよ。もろもろの天から主をほめたたえよ。もろもろの高き所で主をほめたたえよ。
16349 19 148 2 その天使よ、みな主をほめたたえよ。その万軍よ、みな主をほめたたえよ。
16350 19 148 3 日よ、月よ、主をほめたたえよ。輝く星よ、みな主をほめたたえよ。
16351 19 148 4 いと高き天よ、天の上にある水よ、主をほめたたえよ。
16352 19 148 5 これらのものに主のみ名をほめたたえさせよ、これらは主が命じられると造られたからである。
16353 19 148 6 主はこれらをとこしえに堅く定め、越えることのできないその境を定められた。
16354 19 148 7 海の獣よ、すべての淵よ、地から主をほめたたえよ。
16355 19 148 8 火よ、あられよ、雪よ、霜よ、み言葉を行うあらしよ、
16356 19 148 9 もろもろの山、すべての丘、実を結ぶ木、すべての香柏よ、
16357 19 148 10 野の獣、すべての家畜、這うもの、翼ある鳥よ、
16358 19 148 11 地の王たち、すべての民、君たち、地のすべてのつかさよ、
16359 19 148 12 若い男子、若い女子、老いた人と幼い者よ、
16360 19 148 13 彼らをして主のみ名をほめたたえさせよ。そのみ名は高く、たぐいなく、その栄光は地と天の上にあるからである。
16361 19 148 14 主はその民のために一つの角をあげられた。これはすべての聖徒のほめたたえるもの、主に近いイスラエルの人々のほめたたえるものである。主をほめたたえよ。
16362 19 149 1 主をほめたたえよ。主にむかって新しい歌をうたえ。聖徒のつどいで、主の誉を歌え。
16363 19 149 2 イスラエルにその造り主を喜ばせ、シオンの子らにその王を喜ばせよ。
16364 19 149 3 彼らに踊りをもって主のみ名をほめたたえさせ、鼓と琴とをもって主をほめ歌わせよ。
16365 19 149 4 主はおのが民を喜び、へりくだる者を勝利をもって飾られるからである。
16366 19 149 5 聖徒を栄光によって喜ばせ、その床の上で喜び歌わせよ。
16367 19 149 6 そののどには神をあがめる歌があり、その手にはもろ刃のつるぎがある。
16368 19 149 7 これはもろもろの国にあだを返し、もろもろの民を懲らし、
16369 19 149 8 彼らの王たちを鎖で縛り、彼らの貴人たちを鉄のかせで縛りつけ、
16370 19 149 9 しるされたさばきを彼らに行うためである。これはそのすべての聖徒に与えられる誉である。主をほめたたえよ。
16371 19 150 1 主をほめたたえよ。その聖所で神をほめたたえよ。その力のあらわれる大空で主をほめたたえよ。
16372 19 150 2 その大能のはたらきのゆえに主をほめたたえよ。そのすぐれて大いなることのゆえに主をほめたたえよ。
16373 19 150 3 ラッパの声をもって主をほめたたえよ。立琴と琴とをもって主をほめたたえよ。
16374 19 150 4 鼓と踊りとをもって主をほめたたえよ。緒琴と笛とをもって主をほめたたえよ。
16375 19 150 5 音の高いシンバルをもって主をほめたたえよ。鳴りひびくシンバルをもって主をほめたたえよ。
16376 19 150 6 息のあるすべてのものに主をほめたたえさせよ。主をほめたたえよ。
16377 20 1 1 ダビデの子、イスラエルの王ソロモンの箴言。
16378 20 1 2 これは人に知恵と教訓とを知らせ、悟りの言葉をさとらせ、
16379 20 1 3 賢い行いと、正義と公正と公平の教訓をうけさせ、
16380 20 1 4 思慮のない者に悟りを与え、若い者に知識と慎みを得させるためである。
16381 20 1 5 賢い者はこれを聞いて学に進み、さとい者は指導を得る。
16382 20 1 6 人はこれによって箴言と、たとえと、賢い者の言葉と、そのなぞとを悟る。
16383 20 1 7 主を恐れることは知識のはじめである、愚かな者は知恵と教訓を軽んじる。
16384 20 1 8 わが子よ、あなたは父の教訓を聞き、母の教を捨ててはならない。
16385 20 1 9 それらは、あなたの頭の麗しい冠となり、あなたの首の飾りとなるからである。
16386 20 1 10 わが子よ、悪者があなたを誘っても、それに従ってはならない。
16387 20 1 11 彼らがあなたに向かって、「一緒に来なさい。われわれは待ち伏せして、人の血を流し、罪のない者を、ゆえなく伏してねらい、
16388 20 1 12 陰府のように、彼らを生きたままで、のみ尽し、健やかな者を、墓に下る者のようにしよう。
16389 20 1 13 われわれは、さまざまの尊い貨財を得、奪い取った物で、われわれの家を満たそう。
16390 20 1 14 あなたもわれわれの仲間に加わりなさい、われわれは共に一つの金袋を持とう」と言っても、
16391 20 1 15 わが子よ、彼らの仲間になってはならない、あなたの足をとどめて、彼らの道に行ってはならない。
16392 20 1 16 彼らの足は悪に走り、血を流すことに速いからだ。
16393 20 1 17 すべて鳥の目の前で網を張るのは、むだである。
16394 20 1 18 彼らは自分の血を待ち伏せし、自分の命を伏してねらうのだ。
16395 20 1 19 すべて利をむさぼる者の道はこのようなものである。これはその持ち主の命を取り去るのだ。
16396 20 1 20 知恵は、ちまたに呼ばわり、市場にその声をあげ、
16397 20 1 21 城壁の頂で叫び、町の門の入口で語る。
16398 20 1 22 「思慮のない者たちよ、あなたがたは、いつまで思慮のないことを好むのか。あざける者は、いつまで、あざけり楽しみ、愚かな者は、いつまで、知識を憎むのか。
16399 20 1 23 わたしの戒めに心をとめよ、見よ、わたしは自分の思いを、あなたがたに告げ、わたしの言葉を、あなたがたに知らせる。
16400 20 1 24 わたしは呼んだが、あなたがたは聞くことを拒み、手を伸べたが、顧みる者はなく、
16401 20 1 25 かえって、あなたがたはわたしのすべての勧めを捨て、わたしの戒めを受けなかったので、
16402 20 1 26 わたしもまた、あなたがたが災にあう時に、笑い、あなたがたが恐慌にあう時、あざけるであろう。
16403 20 1 27 これは恐慌が、あらしのようにあなたがたに臨み、災が、つむじ風のように臨み、悩みと悲しみとが、あなたがたに臨む時である。
16404 20 1 28 その時、彼らはわたしを呼ぶであろう、しかし、わたしは答えない。ひたすら、わたしを求めるであろう、しかし、わたしに会えない。
16405 20 1 29 彼らは知識を憎み、主を恐れることを選ばず、
16406 20 1 30 わたしの勧めに従わず、すべての戒めを軽んじたゆえ、
16407 20 1 31 自分の行いの実を食らい、自分の計りごとに飽きる。
16408 20 1 32 思慮のない者の不従順はおのれを殺し、愚かな者の安楽はおのれを滅ぼす。
16409 20 1 33 しかし、わたしに聞き従う者は安らかに住まい、災に会う恐れもなく、安全である」。
16410 20 2 1 わが子よ、もしあなたがわたしの言葉を受け、わたしの戒めを、あなたの心におさめ、
16411 20 2 2 あなたの耳を知恵に傾け、あなたの心を悟りに向け、
16412 20 2 3 しかも、もし知識を呼び求め、悟りを得ようと、あなたの声をあげ、
16413 20 2 4 銀を求めるように、これを求め、かくれた宝を尋ねるように、これを尋ねるならば、
16414 20 2 5 あなたは、主を恐れることを悟り、神を知ることができるようになる。
16415 20 2 6 これは、主が知恵を与え、知識と悟りとは、み口から出るからである。
16416 20 2 7 彼は正しい人のために、確かな知恵をたくわえ、誠実に歩む者の盾となって、
16417 20 2 8 公正の道を保ち、その聖徒たちの道筋を守られる。
16418 20 2 9 そのとき、あなたは、ついに正義と公正、公平とすべての良い道を悟る。
16419 20 2 10 これは知恵が、あなたの心にはいり、知識があなたの魂に楽しみとなるからである。
16420 20 2 11 慎みはあなたを守り、悟りはあなたを保って、
16421 20 2 12 悪の道からあなたを救い、偽りをいう者から救う。
16422 20 2 13 彼らは正しい道を離れて、暗い道に歩み、
16423 20 2 14 悪を行うことを楽しみ、悪人の偽りを喜び、
16424 20 2 15 その道は曲り、その行いは、よこしまである。
16425 20 2 16 慎みと悟りはまたあなたを遊女から救い、言葉の巧みな、みだらな女から救う。
16426 20 2 17 彼女は若い時の友を捨て、その神に契約したことを忘れている。
16427 20 2 18 その家は死に下り、その道は陰府におもむく。
16428 20 2 19 すべて彼女のもとへ行く者は、帰らない、また命の道にいたらない。
16429 20 2 20 こうして、あなたは善良な人々の道に歩み、正しい人々の道を守ることができる。
16430 20 2 21 正しい人は地にながらえ、誠実な人は地にとどまる。
16431 20 2 22 しかし悪しき者は地から断ち滅ぼされ、不信実な者は地から抜き捨てられる。
16432 20 3 1 わが子よ、わたしの教を忘れず、わたしの戒めを心にとめよ。
16433 20 3 2 そうすれば、これはあなたの日を長くし、命の年を延べ、あなたに平安を増し加える。
16434 20 3 3 いつくしみと、まこととを捨ててはならない、それをあなたの首に結び、心の碑にしるせ。
16435 20 3 4 そうすれば、あなたは神と人との前に恵みと、誉とを得る。
16436 20 3 5 心をつくして主に信頼せよ、自分の知識にたよってはならない。
16437 20 3 6 すべての道で主を認めよ、そうすれば、主はあなたの道をまっすぐにされる。
16438 20 3 7 自分を見て賢いと思ってはならない、主を恐れて、悪を離れよ。
16439 20 3 8 そうすれば、あなたの身を健やかにし、あなたの骨に元気を与える。
16440 20 3 9 あなたの財産と、すべての産物の初なりをもって主をあがめよ。
16441 20 3 10 そうすれば、あなたの倉は満ちて余り、あなたの酒ぶねは新しい酒であふれる。
16442 20 3 11 わが子よ、主の懲しめを軽んじてはならない、その戒めをきらってはならない。
16443 20 3 12 主は、愛する者を、戒められるからである、あたかも父がその愛する子を戒めるように。
16444 20 3 13 知恵を求めて得る人、悟りを得る人はさいわいである。
16445 20 3 14 知恵によって得るものは、銀によって得るものにまさり、その利益は精金よりも良いからである。
16446 20 3 15 知恵は宝石よりも尊く、あなたの望む何物も、これと比べるに足りない。
16447 20 3 16 その右の手には長寿があり、左の手には富と、誉がある。
16448 20 3 17 その道は楽しい道であり、その道筋はみな平安である。
16449 20 3 18 知恵は、これを捕える者には命の木である、これをしっかり捕える人はさいわいである。
16450 20 3 19 主は知恵をもって地の基をすえ、悟りをもって天を定められた。
16451 20 3 20 その知識によって海はわきいで、雲は露をそそぐ。
16452 20 3 21 わが子よ、確かな知恵と、慎みとを守って、それをあなたの目から離してはならない。
16453 20 3 22 それはあなたの魂の命となりあなたの首の飾りとなる。
16454 20 3 23 こうして、あなたは安らかに自分の道を行き、あなたの足はつまずくことがない。
16455 20 3 24 あなたは座しているとき、恐れることはなく、伏すとき、あなたの眠りはここちよい。
16456 20 3 25 あなたはにわかに起る恐怖を恐れることなく、悪しき者の滅びが来ても、それを恐れることはない。
16457 20 3 26 これは、主があなたの信頼する者であり、あなたの足を守って、わなに捕われさせられないからである。
16458 20 3 27 あなたの手に善をなす力があるならば、これをなすべき人になすことをさし控えてはならない。
16459 20 3 28 あなたが物を持っている時、その隣り人に向かい、「去って、また来なさい。あす、それをあげよう」と言ってはならない。
16460 20 3 29 あなたの隣り人がかたわらに安らかに住んでいる時、これに向かって、悪を計ってはならない。
16461 20 3 30 もし人があなたに悪を行ったのでなければ、ゆえなく、これと争ってはならない。
16462 20 3 31 暴虐な人を、うらやんではならない、そのすべての道を選んではならない。
16463 20 3 32 よこしまな者は主に憎まれるからである、しかし、正しい者は主に信任される。
16464 20 3 33 主の、のろいは悪しき者の家にある、しかし、正しい人のすまいは主に恵まれる。
16465 20 3 34 彼はあざける者をあざけり、へりくだる者に恵みを与えられる。
16466 20 3 35 知恵ある者は、誉を得る、しかし、愚かな者ははずかしめを得る。
16467 20 4 1 子供らよ、父の教を聞き、悟りを得るために耳を傾けよ。
16468 20 4 2 わたしは、良い教訓を、あなたがたにさずける。わたしの教を捨ててはならない。
16469 20 4 3 わたしもわが父には子であり、わが母の目には、ひとりのいとし子であった。
16470 20 4 4 父はわたしを教えて言った、「わたしの言葉を、心に留め、わたしの戒めを守って、命を得よ。
16471 20 4 5 それを忘れることなく、またわが口の言葉にそむいてはならない、知恵を得よ、悟りを得よ。
16472 20 4 6 知恵を捨てるな、それはあなたを守る。それを愛せよ、それはあなたを保つ。
16473 20 4 7 知恵の初めはこれである、知恵を得よ、あなたが何を得るにしても、悟りを得よ。
16474 20 4 8 それを尊べ、そうすれば、それはあなたを高くあげる、もしそれをいだくならば、それはあなたを尊くする。
16475 20 4 9 それはあなたの頭に麗しい飾りを置き、栄えの冠をあなたに与える」。
16476 20 4 10 わが子よ、聞け、わたしの言葉をうけいれよ、そうすれば、あなたの命の年は多くなる。
16477 20 4 11 わたしは知恵の道をあなたに教え、正しい道筋にあなたを導いた。
16478 20 4 12 あなたが歩くとき、その歩みは妨げられず、走る時にも、つまずくことはない。
16479 20 4 13 教訓をかたくとらえて、離してはならない、それを守れ、それはあなたの命である。
16480 20 4 14 よこしまな者の道に、はいってはならない、悪しき者の道を歩んではならない。
16481 20 4 15 それを避けよ、通ってはならない、それを離れて進め。
16482 20 4 16 彼らは悪を行わなければ眠ることができず、人をつまずかせなければ、寝ることができず、
16483 20 4 17 不正のパンを食らい、暴虐の酒を飲むからである。
16484 20 4 18 正しい者の道は、夜明けの光のようだ、いよいよ輝きを増して真昼となる。
16485 20 4 19 悪しき人の道は暗やみのようだ、彼らは何につまずくかを知らない。
16486 20 4 20 わが子よ、わたしの言葉に心をとめ、わたしの語ることに耳を傾けよ。
16487 20 4 21 それを、あなたの目から離さず、あなたの心のうちに守れ。
16488 20 4 22 それは、これを得る者の命であり、またその全身を健やかにするからである。
16489 20 4 23 油断することなく、あなたの心を守れ、命の泉は、これから流れ出るからである。
16490 20 4 24 曲った言葉をあなたから捨てさり、よこしまな談話をあなたから遠ざけよ。
16491 20 4 25 あなたの目は、まっすぐに正面を見、あなたのまぶたはあなたの前を、まっすぐに見よ。
16492 20 4 26 あなたの足の道に気をつけよ、そうすれば、あなたのすべての道は安全である。
16493 20 4 27 右にも左にも迷い出てはならない、あなたの足を悪から離れさせよ。
16494 20 5 1 わが子よ、わたしの知恵に心をとめ、わたしの悟りに耳をかたむけよ。
16495 20 5 2 これは、あなたが慎みを守り、あなたのくちびるに知識を保つためである。
16496 20 5 3 遊女のくちびるは蜜をしたたらせ、その言葉は油よりもなめらかである。
16497 20 5 4 しかしついには、彼女はにがよもぎのように苦く、もろ刃のつるぎのように鋭くなる。
16498 20 5 5 その足は死に下り、その歩みは陰府の道におもむく。
16499 20 5 6 彼女はいのちの道に心をとめず、その道は人を迷わすが、彼女はそれを知らない。
16500 20 5 7 子供らよ、今わたしの言うことを聞け、わたしの口の言葉から、離れ去ってはならない。
16501 20 5 8 あなたの道を彼女から遠く離し、その家の門に近づいてはならない。
16502 20 5 9 おそらくはあなたの誉を他人にわたし、あなたの年を無慈悲な者にわたすに至る。
16503 20 5 10 おそらくは他人があなたの資産によって満たされ、あなたの労苦は他人の家に行く。
16504 20 5 11 そしてあなたの終りが来て、あなたの身と、からだが滅びるとき、泣き悲しんで、
16505 20 5 12 言うであろう、「わたしは教訓をいとい、心に戒めを軽んじ、
16506 20 5 13 教師の声に聞き従わず、わたしを教える者に耳を傾けず、
16507 20 5 14 集まりの中、会衆のうちにあって、わたしは、破滅に陥りかけた」と。
16508 20 5 15 あなたは自分の水ためから水を飲み、自分の井戸から、わき出す水を飲むがよい。
16509 20 5 16 あなたの泉を、外にまきちらし、水の流れを、ちまたに流してよかろうか。
16510 20 5 17 それを自分だけのものとし、他人を共にあずからせてはならない。
16511 20 5 18 あなたの泉に祝福を受けさせ、あなたの若い時の妻を楽しめ。
16512 20 5 19 彼女は愛らしい雌じか、美しいしかのようだ。いつも、その乳ぶさをもって満足し、その愛をもって常に喜べ。
16513 20 5 20 わが子よ、どうして遊女に迷い、みだらな女の胸をいだくのか。
16514 20 5 21 人の道は主の目の前にあり、主はすべて、その行いを見守られる。
16515 20 5 22 悪しき者は自分のとがに捕えられ、自分の罪のなわにつながれる。
16516 20 5 23 彼は、教訓がないために死に、その愚かさの大きいことによって滅びる。
16517 20 6 1 わが子よ、あなたがもし隣り人のために保証人となり、他人のために手をうって誓ったならば、
16518 20 6 2 もしあなたのくちびるの言葉によって、わなにかかり、あなたの口の言葉によって捕えられたならば、
16519 20 6 3 わが子よ、その時はこうして、おのれを救え、あなたは隣り人の手に陥ったのだから。急いで行って、隣り人にひたすら求めよ。
16520 20 6 4 あなたの目を眠らせず、あなたのまぶたを、まどろませず、
16521 20 6 5 かもしかが、かりゅうどの手からのがれるように、鳥が鳥を取る者の手からのがれるように、おのれを救え。
16522 20 6 6 なまけ者よ、ありのところへ行き、そのすることを見て、知恵を得よ。
16523 20 6 7 ありは、かしらなく、つかさなく、王もないが、
16524 20 6 8 夏のうちに食物をそなえ、刈入れの時に、かてを集める。
16525 20 6 9 なまけ者よ、いつまで寝ているのか、いつ目をさまして起きるのか。
16526 20 6 10 しばらく眠り、しばらくまどろみ、手をこまぬいて、またしばらく休む。
16527 20 6 11 それゆえ、貧しさは盗びとのようにあなたに来り、乏しさは、つわもののようにあなたに来る。
16528 20 6 12 よこしまな人、悪しき人は偽りの言葉をもって行きめぐり、
16529 20 6 13 目でめくばせし、足で踏み鳴らし、指で示し、
16530 20 6 14 よこしまな心をもって悪を計り、絶えず争いをおこす。
16531 20 6 15 それゆえ、災は、にわかに彼に臨み、たちまちにして打ち敗られ、助かることはない。
16532 20 6 16 主の憎まれるものが六つある、否、その心に、忌みきらわれるものが七つある。
16533 20 6 17 すなわち、高ぶる目、偽りを言う舌、罪なき人の血を流す手、
16534 20 6 18 悪しき計りごとをめぐらす心、すみやかに悪に走る足、
16535 20 6 19 偽りをのべる証人、また兄弟のうちに争いをおこす人がこれである。
16536 20 6 20 わが子よ、あなたの父の戒めを守り、あなたの母の教を捨てるな。
16537 20 6 21 つねに、これをあなたの心に結び、あなたの首のまわりにつけよ。
16538 20 6 22 これは、あなたが歩くとき、あなたを導き、あなたが寝るとき、あなたを守り、あなたが目ざめるとき、あなたと語る。
16539 20 6 23 戒めはともしびである、教は光である、教訓の懲しめは命の道である。
16540 20 6 24 これは、あなたを守って、悪い女に近づかせず、みだらな女の、巧みな舌に惑わされぬようにする。
16541 20 6 25 彼女の麗しさを心に慕ってはならない、そのまぶたに捕えられてはならない。
16542 20 6 26 遊女は一塊のパンのために雇われる、しかし、みだらな女は人の尊い命を求める。
16543 20 6 27 人は火を、そのふところにいだいてその着物が焼かれないであろうか。
16544 20 6 28 また人は、熱い火を踏んで、その足が、焼かれないであろうか。
16545 20 6 29 その隣の妻と不義を行う者も、それと同じだ。すべて彼女に触れる者は罰を免れることはできない。
16546 20 6 30 盗びとが飢えたとき、その飢えを満たすために盗むならば、人は彼を軽んじないであろうか。
16547 20 6 31 もし捕えられたなら、その七倍を償い、その家の貨財を、ことごとく出さなければならない。
16548 20 6 32 女と姦淫を行う者は思慮がない。これを行う者はおのれを滅ぼし、
16549 20 6 33 傷と、はずかしめとを受けて、その恥をすすぐことができない。
16550 20 6 34 ねたみは、その夫を激しく怒らせるゆえ、恨みを報いるとき、容赦することはない。
16551 20 6 35 どのようなあがない物をも顧みず、多くの贈り物をしても、和らがない。
16552 20 7 1 わが子よ、わたしの言葉を守り、わたしの戒めをあなたの心にたくわえよ。
16553 20 7 2 わたしの戒めを守って命を得よ、わたしの教を守ること、ひとみを守るようにせよ。
16554 20 7 3 これをあなたの指にむすび、これをあなたの心の碑にしるせ。
16555 20 7 4 知恵に向かって、「あなたはわが姉妹だ」と言い、悟りに向かっては、あなたの友と呼べ。
16556 20 7 5 そうすれば、これはあなたを守って遊女に迷わせず、言葉巧みな、みだらな女に近づかせない。
16557 20 7 6 わたしはわが家の窓により、格子窓から外をのぞいて、
16558 20 7 7 思慮のない者のうちに、若い者のうちに、ひとりの知恵のない若者のいるのを見た。
16559 20 7 8 彼はちまたを過ぎ、女の家に行く曲りかどに近づき、その家に行く道を、
16560 20 7 9 たそがれに、よいに、また夜中に、また暗やみに歩いていった。
16561 20 7 10 見よ、遊女の装いをした陰険な女が彼に会う。
16562 20 7 11 この女は、騒がしくて、慎みなく、その足は自分の家にとどまらず、
16563 20 7 12 ある時はちまたにあり、ある時は市場にあり、すみずみに立って人をうかがう。
16564 20 7 13 この女は彼を捕えて口づけし、恥しらぬ顔で彼に言う、
16565 20 7 14 「わたしは酬恩祭をささげなければならなかったが、きょう、その誓いを果しました。
16566 20 7 15 それでわたしはあなたを迎えようと出て、あなたを尋ね、あなたに会いました。
16567 20 7 16 わたしは床に美しい、しとねと、エジプトのあや布を敷き、
16568 20 7 17 没薬、ろかい、桂皮をもってわたしの床をにおわせました。
16569 20 7 18 さあ、わたしたちは夜が明けるまで、情をつくし、愛をかわして楽しみましょう。
16570 20 7 19 夫は家にいません、遠くへ旅立ち、
16571 20 7 20 手に金袋を持って出ました。満月になるまでは帰りません」と。
16572 20 7 21 女が多くの、なまめかしい言葉をもって彼を惑わし、巧みなくちびるをもって、いざなうと、
16573 20 7 22 若い人は直ちに女に従った、あたかも牛が、ほふり場に行くように、雄じかが、すみやかに捕えられ、
16574 20 7 23 ついに、矢がその内臓を突き刺すように、鳥がすみやかに網にかかるように、彼は自分が命を失うようになることを知らない。
16575 20 7 24 子供らよ、今わたしの言うことを聞き、わが口の言葉に耳を傾けよ。
16576 20 7 25 あなたの心を彼女の道に傾けてはならない、またその道に迷ってはならない。
16577 20 7 26 彼女は多くの人を傷つけて倒した、まことに、彼女に殺された者は多い。
16578 20 7 27 その家は陰府へ行く道であって、死のへやへ下って行く。
16579 20 8 1 知恵は呼ばわらないのか、悟りは声をあげないのか。
16580 20 8 2 これは道のほとりの高い所の頂、また、ちまたの中に立ち、
16581 20 8 3 町の入口にあるもろもろの門のかたわら、正門の入口で呼ばわって言う、
16582 20 8 4 「人々よ、わたしはあなたがたに呼ばわり、声をあげて人の子らを呼ぶ。
16583 20 8 5 思慮のない者よ、悟りを得よ、愚かな者よ、知恵を得よ。
16584 20 8 6 聞け、わたしは高貴な事を語り、わがくちびるは正しい事を語り出す。
16585 20 8 7 わが口は真実を述べ、わがくちびるは悪しき事を憎む。
16586 20 8 8 わが口の言葉はみな正しい、そのうちに偽りと、よこしまはない。
16587 20 8 9 これはみな、さとき者の明らかにするところ、知識を得る者の正しとするところである。
16588 20 8 10 あなたがたは銀を受けるよりも、わたしの教を受けよ、精金よりも、むしろ知識を得よ。
16589 20 8 11 知恵は宝石にまさり、あなたがたの望むすべての物は、これと比べるにたりない。
16590 20 8 12 知恵であるわたしは悟りをすみかとし、知識と慎みとをもつ。
16591 20 8 13 主を恐れるとは悪を憎むことである。わたしは高ぶりと、おごりと、悪しき道と、偽りの言葉とを憎む。
16592 20 8 14 計りごとと、確かな知恵とは、わたしにある、わたしには悟りがあり、わたしには力がある。
16593 20 8 15 わたしによって、王たる者は世を治め、君たる者は正しい定めを立てる。
16594 20 8 16 わたしによって、主たる者は支配し、つかさたる者は地を治める。
16595 20 8 17 わたしは、わたしを愛する者を愛する、わたしをせつに求める者は、わたしに出会う。
16596 20 8 18 富と誉とはわたしにあり、すぐれた宝と繁栄もまたそうである。
16597 20 8 19 わたしの実は金よりも精金よりも良く、わたしの産物は精銀にまさる。
16598 20 8 20 わたしは正義の道、公正な道筋の中を歩み、
16599 20 8 21 わたしを愛する者に宝を得させ、またその倉を満ちさせる。
16600 20 8 22 主が昔そのわざをなし始められるとき、そのわざの初めとして、わたしを造られた。
16601 20 8 23 いにしえ、地のなかった時、初めに、わたしは立てられた。
16602 20 8 24 まだ海もなく、また大いなる水の泉もなかった時、わたしはすでに生れ、
16603 20 8 25 山もまだ定められず、丘もまだなかった時、わたしはすでに生れた。
16604 20 8 26 すなわち神がまだ地をも野をも、地のちりのもとをも造られなかった時である。
16605 20 8 27 彼が天を造り、海のおもてに、大空を張られたとき、わたしはそこにあった。
16606 20 8 28 彼が上に空を堅く立たせ、淵の泉をつよく定め、
16607 20 8 29 海にその限界をたて、水にその岸を越えないようにし、また地の基を定められたとき、
16608 20 8 30 わたしは、そのかたわらにあって、名匠となり、日々に喜び、常にその前に楽しみ、
16609 20 8 31 その地で楽しみ、また世の人を喜んだ。
16610 20 8 32 それゆえ、子供らよ、今わたしの言うことを聞け、わたしの道を守る者はさいわいである。
16611 20 8 33 教訓を聞いて、知恵を得よ、これを捨ててはならない。
16612 20 8 34 わたしの言うことを聞き、日々わたしの門のかたわらでうかがい、わたしの戸口の柱のわきで待つ人はさいわいである。
16613 20 8 35 それは、わたしを得る者は命を得、主から恵みを得るからである。
16614 20 8 36 わたしを失う者は自分の命をそこなう、すべてわたしを憎む者は死を愛する者である」。
16615 20 9 1 知恵は自分の家を建て、その七つの柱を立て、
16616 20 9 2 獣をほふり、酒を混ぜ合わせて、ふるまいを備え、
16617 20 9 3 はしためをつかわして、町の高い所で呼ばわり言わせた、
16618 20 9 4 「思慮のない者よ、ここに来れ」と。また、知恵のない者に言う、
16619 20 9 5 「来て、わたしのパンを食べ、わたしの混ぜ合わせた酒をのみ、
16620 20 9 6 思慮のないわざを捨てて命を得、悟りの道を歩め」と。
16621 20 9 7 あざける者を戒める者は、自ら恥を得、悪しき者を責める者は自ら傷を受ける。
16622 20 9 8 あざける者を責めるな、おそらく彼はあなたを憎むであろう。知恵ある者を責めよ、彼はあなたを愛する。
16623 20 9 9 知恵ある者に教訓を授けよ、彼はますます知恵を得る。正しい者を教えよ、彼は学に進む。
16624 20 9 10 主を恐れることは知恵のもとである、聖なる者を知ることは、悟りである。
16625 20 9 11 わたしによって、あなたの日は多くなり、あなたの命の年は増す。
16626 20 9 12 もしあなたに知恵があるならば、あなた自身のために知恵があるのである。もしあなたがあざけるならば、あなたひとりがその責めを負うことになる。
16627 20 9 13 愚かな女は、騒がしく、みだらで、恥を知らない。
16628 20 9 14 彼女はその家の戸口に座し、町の高い所にある座にすわり、
16629 20 9 15 道を急ぐ行き来の人を招いて言う、
16630 20 9 16 「思慮のない者よ、ここに来れ」と。また知恵のない人に向かってこれに言う、
16631 20 9 17 「盗んだ水は甘く、ひそかに食べるパンはうまい」と。
16632 20 9 18 しかしその人は、死の影がそこにあることを知らず、彼女の客は陰府の深みにおることを知らない。
16633 20 10 1 ソロモンの箴言。知恵ある子は父を喜ばせ、愚かな子は母の悲しみとなる。
16634 20 10 2 不義の宝は益なく、正義は人を救い出して、死を免れさせる。
16635 20 10 3 主は正しい人を飢えさせず、悪しき者の欲望をくじかれる。
16636 20 10 4 手を動かすことを怠る者は貧しくなり、勤め働く者の手は富を得る。
16637 20 10 5 夏のうちに集める者は賢い子であり、刈入れの時に眠る者は恥をきたらせる子である。
16638 20 10 6 正しい者のこうべには祝福があり、悪しき者の口は暴虐を隠す。
16639 20 10 7 正しい者の名はほめられ、悪しき者の名は朽ちる。
16640 20 10 8 心のさとき者は戒めを受ける、むだ口をたたく愚かな者は滅ぼされる。
16641 20 10 9 まっすぐに歩む者の歩みは安全である、しかし、その道を曲げる者は災にあう。
16642 20 10 10 目で、めくばせする者は憂いをおこし、あからさまに、戒める者は平和をきたらせる。
16643 20 10 11 正しい者の口は命の泉である、悪しき者の口は暴虐を隠す。
16644 20 10 12 憎しみは、争いを起し、愛はすべてのとがをおおう。
16645 20 10 13 さとき者のくちびるには知恵があり、知恵のない者の背にはむちがある。
16646 20 10 14 知恵ある者は知識をたくわえる、愚かな者のむだ口は、今にも滅びをきたらせる。
16647 20 10 15 富める者の宝は、その堅き城であり、貧しい者の乏しきは、その滅びである。
16648 20 10 16 正しい者の受ける賃銀は命に導き、悪しき者の利得は罪に至る。
16649 20 10 17 教訓を守る者は命の道にあり、懲しめを捨てる者は道をふみ迷う。
16650 20 10 18 憎しみを隠す者には偽りのくちびるがあり、そしりを口に出す者は愚かな者である。
16651 20 10 19 言葉が多ければ、とがを免れない、自分のくちびるを制する者は知恵がある。
16652 20 10 20 正しい者の舌は精銀である、悪しき者の心は価値が少ない。
16653 20 10 21 正しい者のくちびるは多くの人を養い、愚かな者は知恵がなくて死ぬ。
16654 20 10 22 主の祝福は人を富ませる、主はこれになんの悲しみをも加えない。
16655 20 10 23 愚かな者は、戯れ事のように悪を行う、さとき人には賢い行いが楽しみである。
16656 20 10 24 悪しき者の恐れることは自分に来り、正しい者の願うことは与えられる。
16657 20 10 25 あらしが通りすぎる時、悪しき者は、もはや、いなくなり、正しい者は永久に堅く立てられる。
16658 20 10 26 なまけ者は、これをつかわす者にとっては、酢が歯をいため、煙が目を悩ますようなものだ。
16659 20 10 27 主を恐れることは人の命の日を多くする、悪しき者の年は縮められる。
16660 20 10 28 正しい者の望みは喜びに終り、悪しき者の望みは絶える。
16661 20 10 29 主は、まっすぐに歩む者には城であり、悪を行う者には滅びである。
16662 20 10 30 正しい者はいつまでも動かされることはない、悪しき者は、地に住むことができない。
16663 20 10 31 正しい者の口は知恵をいだし、偽りの舌は抜かれる。
16664 20 10 32 正しい者のくちびるは喜ばるべきことをわきまえ、悪しき者の口は偽りを語る。
16665 20 11 1 偽りのはかりは主に憎まれ、正しいふんどうは彼に喜ばれる。
16666 20 11 2 高ぶりが来れば、恥もまた来る、へりくだる者には知恵がある。
16667 20 11 3 正しい者の誠実はその人を導き、不信実な者のよこしまはその人を滅ぼす。
16668 20 11 4 宝は怒りの日に益なく、正義は人を救い出して、死を免れさせる。
16669 20 11 5 誠実な者は、その正義によって、その道をまっすぐにせられ、悪しき者は、その悪によって倒れる。
16670 20 11 6 正しい者はその正義によって救われ、不信実な者は自分の欲によって捕えられる。
16671 20 11 7 悪しき者は死ぬとき、その望みは絶え、不信心な者の望みもまた絶える。
16672 20 11 8 正しい者は、悩みから救われ、悪しき者は代ってそれに陥る。
16673 20 11 9 不信心な者はその口をもって隣り人を滅ぼす、正しい者は知識によって救われる。
16674 20 11 10 正しい者が、しあわせになれば、その町は喜び、悪しき者が滅びると、喜びの声がおこる。
16675 20 11 11 町は正しい者の祝福によって、高くあげられ、悪しき者の口によって、滅ぼされる。
16676 20 11 12 隣り人を侮る者は知恵がない、さとき人は口をつぐむ。
16677 20 11 13 人のよしあしを言いあるく者は秘密をもらす、心の忠信なる者は事を隠す。
16678 20 11 14 指導者がなければ民は倒れ、助言者が多ければ安全である。
16679 20 11 15 他人のために保証をする者は苦しみをうけ、保証をきらう者は安全である。
16680 20 11 16 しとやかな女は、誉を得、強暴な男は富を得る。
16681 20 11 17 いつくしみある者はおのれ自身に益を得、残忍な者はおのれの身をそこなう。
16682 20 11 18 悪しき者の得る報いはむなしく、正義を播く者は確かな報いを得る。
16683 20 11 19 正義を堅く保つ者は命に至り、悪を追い求める者は死を招く。
16684 20 11 20 心のねじけた者は主に憎まれ、まっすぐに道を歩む者は彼に喜ばれる。
16685 20 11 21 確かに、悪人は罰を免れない、しかし正しい人は救を得る。
16686 20 11 22 美しい女の慎みがないのは、金の輪の、ぶたの鼻にあるようだ。
16687 20 11 23 正しい者の願いは、すべて良い結果を得、悪しき者の望みは怒りに至る。
16688 20 11 24 施し散らして、なお富を増す人があり、与えるべきものを惜しんで、かえって貧しくなる者がある。
16689 20 11 25 物惜しみしない者は富み、人を潤す者は自分も潤される。
16690 20 11 26 穀物を、しまい込んで売らない者は民にのろわれる、それを売る者のこうべには祝福がある。
16691 20 11 27 善を求める者は恵みを得る、悪を求める者には悪が来る。
16692 20 11 28 自分の富を頼む者は衰える、正しい者は木の青葉のように栄える。
16693 20 11 29 自分の家族を苦しめる者は風を所有とする、愚かな者は心のさとき者のしもべとなる。
16694 20 11 30 正しい者の結ぶ実は命の木である、不法な者は人の命をとる。
16695 20 11 31 もし正しい者がこの世で罰せられるならば、悪しき者と罪びととは、なおさらである。
16696 20 12 1 戒めを愛する人は知識を愛する、懲しめを憎む者は愚かである。
16697 20 12 2 善人は主の恵みをうけ、悪い計りごとを設ける人は主に罰せられる。
16698 20 12 3 人は悪をもって堅く立つことはできない、正しい人の根は動くことはない。
16699 20 12 4 賢い妻はその夫の冠である、恥をこうむらせる妻は夫の骨に生じた腐れのようなものである。
16700 20 12 5 正しい人の考えは公正である、悪しき者の計ることは偽りである。
16701 20 12 6 悪しき者の言葉は、人の血を流そうとうかがう、正しい人の口は人を救う。
16702 20 12 7 悪しき者は倒されて、うせ去る、正しい人の家は堅く立つ。
16703 20 12 8 人はその悟りにしたがって、ほめられ、心のねじけた者は、卑しめられる。
16704 20 12 9 身分の低い人でも自分で働く者は、みずから高ぶって食に乏しい者にまさる。
16705 20 12 10 正しい人はその家畜の命を顧みる、悪しき者は残忍をもって、あわれみとする。
16706 20 12 11 自分の田地を耕す者は食糧に飽きる、無益な事に従う者は知恵がない。
16707 20 12 12 悪しき者の堅固なやぐらは崩壊する、正しい人の根は堅く立つ。
16708 20 12 13 悪人はくちびるのとがによって、わなに陥る、しかし正しい人は悩みをのがれる。
16709 20 12 14 人はその口の実によって、幸福に満ち足り、人の手のわざは、その人の身に帰る。
16710 20 12 15 愚かな人の道は、自分の目に正しく見える、しかし知恵ある者は勧めをいれる。
16711 20 12 16 愚かな人は、すぐに怒りをあらわす、しかし賢い人は、はずかしめをも気にとめない。
16712 20 12 17 真実を語る人は正しい証言をなし、偽りの証人は偽りを言う。
16713 20 12 18 つるぎをもって刺すように、みだりに言葉を出す者がある、しかし知恵ある人の舌は人をいやす。
16714 20 12 19 真実を言うくちびるは、いつまでも保つ、偽りを言う舌は、ただ、まばたきの間だけである。
16715 20 12 20 悪をたくらむ者の心には欺きがあり、善をはかる人には喜びがある。
16716 20 12 21 正しい人にはなんの害悪も生じない、しかし悪しき者は災をもって満たされる。
16717 20 12 22 偽りを言うくちびるは主に憎まれ、真実を行う者は彼に喜ばれる。
16718 20 12 23 さとき人は知識をかくす、しかし愚かな者は自分の愚かなことをあらわす。
16719 20 12 24 勤め働く者の手はついに人を治める、怠る者は人に仕えるようになる。
16720 20 12 25 心に憂いがあればその人をかがませる、しかし親切な言葉はその人を喜ばせる。
16721 20 12 26 正しい人は悪を離れ去る、しかし悪しき者は自ら道に迷う。
16722 20 12 27 怠る者は自分の獲物を捕えない、しかし勤め働く人は尊い宝を獲る。
16723 20 12 28 正義の道には命がある、しかし誤りの道は死に至る。
16724 20 13 1 知恵ある子は父の教訓をきく、あざける者は、懲しめをきかない。
16725 20 13 2 善良な人はその口の実によって、幸福を得る、不信実な者の願いは、暴虐である。
16726 20 13 3 口を守る者はその命を守る、くちびるを大きく開く者には滅びが来る。
16727 20 13 4 なまけ者の心は、願い求めても、何も得ない、しかし勤め働く者の心は豊かに満たされる。
16728 20 13 5 正しい人は偽りを憎む、しかし悪しき人は恥ずべく、忌まわしくふるまう。
16729 20 13 6 正義は道をまっすぐ歩む者を守り、罪は悪しき者を倒す。
16730 20 13 7 富んでいると偽って、何も持たない者がいる、貧しいと偽って、多くの富を持つ者がいる。
16731 20 13 8 人の富はその命をあがなう、しかし貧しい者にはあがなうべき富がない。
16732 20 13 9 正しい者の光は輝き、悪しき者のともしびは消される。
16733 20 13 10 高ぶりはただ争いを生じる、勧告をきく者は知恵がある。
16734 20 13 11 急いで得た富は減る、少しずつたくわえる者はそれを増すことができる。
16735 20 13 12 望みを得ることが長びくときは、心を悩ます、願いがかなうときは、命の木を得たようだ。
16736 20 13 13 み言葉を軽んじる者は滅ぼされ、戒めを重んじる者は報いを得る。
16737 20 13 14 知恵ある人の教は命の泉である、これによって死のわなをのがれることができる。
16738 20 13 15 善良な賢い者は恵みを得る、しかし、不信実な者の道は滅びである。
16739 20 13 16 おおよそ、さとき者は知識によって事をおこない、愚かな者は自分の愚を見せびらかす。
16740 20 13 17 悪しき使者は人を災におとしいれる、しかし忠実な使者は人を救う。
16741 20 13 18 貧乏と、はずかしめとは教訓を捨てる者に来る、しかし戒めを守る者は尊ばれる。
16742 20 13 19 願いがかなえば、心は楽しい、愚かな者は悪を捨てることをきらう。
16743 20 13 20 知恵ある者とともに歩む者は知恵を得る。愚かな者の友となる者は害をうける。
16744 20 13 21 災は罪びとを追い、正しい者は良い報いを受ける。
16745 20 13 22 善良な人はその嗣業を子孫にのこす、しかし罪びとの富は正しい人のためにたくわえられる。
16746 20 13 23 貧しい人の新田は多くの食糧を産する、しかし不正によれば押し流される。
16747 20 13 24 むちを加えない者はその子を憎むのである、子を愛する者は、つとめてこれを懲らしめる。
16748 20 13 25 正しい者は食べてその食欲を満たす、しかし悪しき者の腹は満たされない。
16749 20 14 1 知恵はその家を建て、愚かさは自分の手でそれをこわす。
16750 20 14 2 まっすぐに歩む者は主を恐れる、曲って歩む者は主を侮る。
16751 20 14 3 愚かな者の言葉は自分の背にむちを当てる、知恵ある者のくちびるはその身を守る。
16752 20 14 4 牛がなければ穀物はない、牛の力によって農作物は多くなる。
16753 20 14 5 真実な証人はうそをいわない、偽りの証人はうそをつく。
16754 20 14 6 あざける者は知恵を求めても得られない、さとき者は知識を得ることがたやすい。
16755 20 14 7 愚かな者の前を離れ去れ、そこには知識の言葉がないからである。
16756 20 14 8 さとき者の知恵は自分の道をわきまえることにあり、愚かな者の愚かは、欺くことにある。
16757 20 14 9 神は悪しき者をあざけられる、正しい者は、その恵みを受ける。
16758 20 14 10 心の苦しみは心みずからが知る、その喜びには他人はあずからない。
16759 20 14 11 悪しき者の家は滅ぼされ、正しい者の幕屋は栄える。
16760 20 14 12 人が見て自ら正しいとする道でも、その終りはついに死に至る道となるものがある。
16761 20 14 13 笑う時にも心に悲しみがあり、喜びのはてに憂いがある。
16762 20 14 14 心のもとれる者はそのしわざの実を刈り取り、善良な人もまたその行いの実を刈り取る。
16763 20 14 15 思慮のない者はすべてのことを信じる、さとき者は自分の歩みを慎む。
16764 20 14 16 知恵ある者は用心ぶかく、悪を離れる、愚かな者は高ぶって用心しない。
16765 20 14 17 怒りやすい者は愚かなことを行い、賢い者は忍耐強い。
16766 20 14 18 思慮のない者は愚かなことを自分のものとする、さとき者は知識をもって冠とする。
16767 20 14 19 悪人は善人の前にひれ伏し、悪しき者は正しい者の門にひれ伏す。
16768 20 14 20 貧しい者はその隣にさえも憎まれる、しかし富める者は多くの友をもつ。
16769 20 14 21 隣り人を卑しめる者は罪びとである、貧しい人をあわれむ者はさいわいである。
16770 20 14 22 悪を計る者はおのれを誤るではないか、善を計る者にはいつくしみと、まこととがある。
16771 20 14 23 すべての勤労には利益がある、しかし口先だけの言葉は貧乏をきたらせるだけだ。
16772 20 14 24 知恵ある者の冠はその知恵である、愚かな者の花の冠はただ愚かさである。
16773 20 14 25 まことの証人は人の命を救う、偽りを吐く者は裏切者である。
16774 20 14 26 主を恐れることによって人は安心を得、その子らはのがれ場を得る。
16775 20 14 27 主を恐れることは命の泉である、人を死のわなからのがれさせる。
16776 20 14 28 王の栄えは民の多いことにあり、君の滅びは民を失うことにある。
16777 20 14 29 怒りをおそくする者は大いなる悟りがあり、気の短い者は愚かさをあらわす。
16778 20 14 30 穏やかな心は身の命である、しかし興奮は骨を腐らせる。
16779 20 14 31 貧しい者をしえたげる者はその造り主を侮る、乏しい者をあわれむ者は、主をうやまう。
16780 20 14 32 悪しき者はその悪しき行いによって滅ぼされ、正しい者はその正しきによって、のがれ場を得る。
16781 20 14 33 知恵はさとき者の心にとどまり、愚かな者の心に知られない。
16782 20 14 34 正義は国を高くし、罪は民をはずかしめる。
16783 20 14 35 賢いしもべは王の恵みをうけ、恥をきたらす者はその怒りにあう。
16784 20 15 1 柔かい答は憤りをとどめ、激しい言葉は怒りをひきおこす。
16785 20 15 2 知恵ある者の舌は知識をわかち与え、愚かな者の口は愚かを吐き出す。
16786 20 15 3 主の目はどこにでもあって、悪人と善人とを見張っている。
16787 20 15 4 優しい舌は命の木である、乱暴な言葉は魂を傷つける。
16788 20 15 5 愚かな者は父の教訓を軽んじる、戒めを守る者は賢い者である。
16789 20 15 6 正しい者の家には多くの宝がある、悪しき者の所得には煩いがある。
16790 20 15 7 知恵ある者のくちびるは知識をひろめる、愚かな者の心はそうでない。
16791 20 15 8 悪しき者の供え物は主に憎まれ、正しい者の祈は彼に喜ばれる。
16792 20 15 9 悪しき者の道は主に憎まれ、正義を求める者は彼に愛せられる。
16793 20 15 10 道を捨てる者には、きびしい懲しめがあり、戒めを憎む者は死に至る。
16794 20 15 11 陰府と滅びとは主の目の前にあり、人の心はなおさらである。
16795 20 15 12 あざける者は戒められることを好まない、また知恵ある者に近づかない。
16796 20 15 13 心に楽しみがあれば顔色も喜ばしい、心に憂いがあれば気はふさぐ。
16797 20 15 14 さとき者の心は知識をたずね、愚かな者の口は愚かさを食物とする。
16798 20 15 15 悩んでいる者の日々はことごとくつらく、心の楽しい人は常に宴会をもつ。
16799 20 15 16 少しの物を所有して主を恐れるのは、多くの宝をもって苦労するのにまさる。
16800 20 15 17 野菜を食べて互に愛するのは、肥えた牛を食べて互に憎むのにまさる。
16801 20 15 18 憤りやすい者は争いをおこし、怒りをおそくする者は争いをとどめる。
16802 20 15 19 なまけ者の道には、いばらがはえしげり、正しい者の道は平らかである。
16803 20 15 20 知恵ある子は父を喜ばせる、愚かな人はその母を軽んじる。
16804 20 15 21 無知な者は愚かなことを喜び、さとき者はまっすぐに歩む。
16805 20 15 22 相はかることがなければ、計画は破れる、はかる者が多ければ、それは必ず成る。
16806 20 15 23 人は口から出る好ましい答によって喜びを得る、時にかなった言葉は、いかにも良いものだ。
16807 20 15 24 知恵ある人の道は上って命に至る、こうしてその人は下にある陰府を離れる。
16808 20 15 25 主は高ぶる者の家を滅ぼし、やもめの地境を定められる。
16809 20 15 26 悪人の計りごとは主に憎まれ、潔白な人の言葉は彼に喜ばれる。
16810 20 15 27 不正な利をむさぼる者はその家を煩らわせる、まいないを憎む者は生きながらえる。
16811 20 15 28 正しい者の心は答えるべきことを考える、悪しき者の口は悪を吐き出す。
16812 20 15 29 主は悪しき者に遠ざかり、正しい者の祈を聞かれる。
16813 20 15 30 目の光は心を喜ばせ、よい知らせは骨を潤す。
16814 20 15 31 ためになる戒めを聞く耳をもつ者は、知恵ある者の中にとどまる。
16815 20 15 32 教訓を捨てる者はおのれの命を軽んじ、戒めを重んじる者は悟りを得る。
16816 20 15 33 主を恐れることは知恵の教訓である、謙遜は、栄誉に先だつ。
16817 20 16 1 心にはかることは人に属し、舌の答は主から出る。
16818 20 16 2 人の道は自分の目にことごとく潔しと見える、しかし主は人の魂をはかられる。
16819 20 16 3 あなたのなすべき事を主にゆだねよ、そうすれば、あなたの計るところは必ず成る。
16820 20 16 4 主はすべての物をおのおのその用のために造り、悪しき人をも災の日のために造られた。
16821 20 16 5 すべて心に高ぶる者は主に憎まれる、確かに、彼は罰を免れない。
16822 20 16 6 いつくしみとまことによって、とがはあがなわれる、主を恐れることによって、人は悪を免れる。
16823 20 16 7 人の道が主を喜ばせる時、主はその人の敵をもその人と和らがせられる。
16824 20 16 8 正義によって得たわずかなものは、不義によって得た多くの宝にまさる。
16825 20 16 9 人は心に自分の道を考え計る、しかし、その歩みを導く者は主である。
16826 20 16 10 王のくちびるには神の決定がある、さばきをするとき、その口に誤りがない。
16827 20 16 11 正しいはかりと天びんとは主のものである、袋にあるふんどうもすべて彼の造られたものである。
16828 20 16 12 悪を行うことは王の憎むところである、その位が正義によって堅く立っているからである。
16829 20 16 13 正しいくちびるは王に喜ばれる、彼は正しい事を言う者を愛する。
16830 20 16 14 王の怒りは死の使者である、知恵ある人はこれをなだめる。
16831 20 16 15 王の顔の光には命がある、彼の恵みは春雨をもたらす雲のようだ。
16832 20 16 16 知恵を得るのは金を得るのにまさる、悟りを得るのは銀を得るよりも望ましい。
16833 20 16 17 悪を離れることは正しい人の道である、自分の道を守る者はその魂を守る。
16834 20 16 18 高ぶりは滅びにさきだち、誇る心は倒れにさきだつ。
16835 20 16 19 へりくだって貧しい人々と共におるのは、高ぶる者と共にいて、獲物を分けるにまさる。
16836 20 16 20 慎んで、み言葉をおこなう者は栄える、主に寄り頼む者はさいわいである。
16837 20 16 21 心に知恵ある者はさとき者ととなえられる、くちびるが甘ければ、その教に人を説きつける力を増す。
16838 20 16 22 知恵はこれを持つ者に命の泉となる、しかし、愚かさは愚かな者の受ける懲しめである。
16839 20 16 23 知恵ある者の心はその言うところを賢くし、またそのくちびるに人を説きつける力を増す。
16840 20 16 24 ここちよい言葉は蜂蜜のように、魂に甘く、からだを健やかにする。
16841 20 16 25 人が見て自分で正しいとする道があり、その終りはついに死にいたる道となるものがある。
16842 20 16 26 ほねおる者は飲食のためにほねおる、その口が自分に迫るからである。
16843 20 16 27 よこしまな人は悪を企てる、そのくちびるには激しい火のようなものがある。
16844 20 16 28 偽る者は争いを起し、つげ口する者は親しい友を離れさせる。
16845 20 16 29 しえたげる者はその隣り人をいざない、これを良くない道に導く。
16846 20 16 30 めくばせする者は悪を計り、くちびるを縮める者は悪事をなし遂げる。
16847 20 16 31 しらがは栄えの冠である、正しく生きることによってそれが得られる。
16848 20 16 32 怒りをおそくする者は勇士にまさり、自分の心を治める者は城を攻め取る者にまさる。
16849 20 16 33 人はくじをひく、しかし事を定めるのは全く主のことである。
16850 20 17 1 平穏であって、ひとかたまりのかわいたパンのあるのは、争いがあって、食物の豊かな家にまさる。
16851 20 17 2 賢いしもべは身持の悪いむすこを治め、かつ、その兄弟たちの中にあって、資産の分け前を獲る。
16852 20 17 3 銀を試みるものはるつぼ、金を試みるものは炉、人の心を試みるものは主である。
16853 20 17 4 悪を行う者は偽りのくちびるに聞き、偽りをいう者は悪しき舌に耳を傾ける。
16854 20 17 5 貧しい者をあざける者はその造り主を侮る、人の災を喜ぶ者は罰を免れない。
16855 20 17 6 孫は老人の冠である、父は子の栄えである。
16856 20 17 7 すぐれた言葉は愚かな者には似合わない、まして偽りを言うくちびるは君たる者には似合わない。
16857 20 17 8 まいないはこれを贈る人の目には幸運の玉のようだ、その向かう所、どこでも彼は栄える。
16858 20 17 9 愛を追い求める人は人のあやまちをゆるす、人のことを言いふらす者は友を離れさせる。
16859 20 17 10 一度の戒めがさとき人に徹するのは、百度の懲しめが愚かな人に徹するよりも深い。
16860 20 17 11 悪しき者はただ、そむく事のみを求める、それゆえ、彼に向かっては残忍な使者がつかわされる。
16861 20 17 12 愚かな者が愚かな事をするのに会うよりは、子をとられた雌ぐまに会うほうがよい。
16862 20 17 13 悪をもて善に報いる者は、悪がその家を離れることがない。
16863 20 17 14 争いの初めは水がもれるのに似ている、それゆえ、けんかの起らないうちにそれをやめよ。
16864 20 17 15 悪しき者を正しいとする者、正しい者を悪いとする者、この二つの者はともに主に憎まれる。
16865 20 17 16 愚かな者はすでに心がないのに、どうして知恵を買おうとして手にその代金を持っているのか。
16866 20 17 17 友はいずれの時にも愛する、兄弟はなやみの時のために生れる。
16867 20 17 18 知恵のない人は手をうって、その隣り人の前で保証をする。
16868 20 17 19 争いを好む者は罪を好む、その門を高くする者は滅びを求める。
16869 20 17 20 曲った心の者はさいわいを得ない、みだりに舌をもって語る者は災に陥る。
16870 20 17 21 愚かな子を生む者は嘆きを得る、愚か者の父は喜びを得ない。
16871 20 17 22 心の楽しみは良い薬である、たましいの憂いは骨を枯らす。
16872 20 17 23 悪しき者は人のふところからまいないを受けて、さばきの道をまげる。
16873 20 17 24 さとき者はその顔を知恵にむける、しかし、愚かな者は目を地の果にそそぐ。
16874 20 17 25 愚かな子はその父の憂いである、またこれを産んだ母の痛みである。
16875 20 17 26 正しい人を罰するのはよくない、尊い人を打つのは悪い。
16876 20 17 27 言葉を少なくする者は知識のある者、心の冷静な人はさとき人である。
16877 20 17 28 愚かな者も黙っているときは、知恵ある者と思われ、そのくちびるを閉じている時は、さとき者と思われる。
16878 20 18 1 人と交わりをしない者は口実を捜し、すべてのよい考えに激しく反対する。
16879 20 18 2 愚かな者は悟ることを喜ばず、ただ自分の意見を言い表わすことを喜ぶ。
16880 20 18 3 悪しき者が来ると、卑しめもまた来る、不名誉が来ると、はずかしめも共にくる。
16881 20 18 4 人の口の言葉は深い水のようだ、知恵の泉は、わいて流れる川である。
16882 20 18 5 悪しき者をえこひいきすることは良くない、正しい者をさばいて、悪しき者とすることも良くない。
16883 20 18 6 愚かな者のくちびるは争いを起し、その口はむち打たれることを招く。
16884 20 18 7 愚かな者の口は自分の滅びとなり、そのくちびるは自分を捕えるわなとなる。
16885 20 18 8 人のよしあしをいう者の言葉はおいしい食物のようで、腹の奥にしみこむ。
16886 20 18 9 その仕事を怠る者は、滅ぼす者の兄弟である。
16887 20 18 10 主の名は堅固なやぐらのようだ、正しい者はその中に走りこんで救を得る。
16888 20 18 11 富める者の富はその堅き城である、それは高き城壁のように彼を守る。
16889 20 18 12 人の心の高ぶりは滅びにさきだち、謙遜は栄誉にさきだつ。
16890 20 18 13 事をよく聞かないで答える者は、愚かであって恥をこうむる。
16891 20 18 14 人の心は病苦をも忍ぶ、しかし心の痛むときは、だれがそれに耐えようか。
16892 20 18 15 さとき者の心は知識を得、知恵ある者の耳は知識を求める。
16893 20 18 16 人の贈り物は、その人のために道をひらき、また尊い人の前に彼を導く。
16894 20 18 17 先に訴え出る者は正しいように見える、しかしその訴えられた人が来て、それを調べて、事は明らかになる。
16895 20 18 18 くじは争いをとどめ、かつ強い争い相手の間を決定する。
16896 20 18 19 助けあう兄弟は堅固な城のようだ、しかし争いは、やぐらの貫の木のようだ。
16897 20 18 20 人は自分の言葉の結ぶ実によって、満ち足り、そのくちびるの産物によって自ら飽きる。
16898 20 18 21 死と生とは舌に支配される、これを愛する者はその実を食べる。
16899 20 18 22 妻を得る者は、良き物を得る、かつ主から恵みを与えられる。
16900 20 18 23 貧しい者は、あわれみを請い、富める者は、はげしい答をする。
16901 20 18 24 世には友らしい見せかけの友がある、しかし兄弟よりもたのもしい友もある。
16902 20 19 1 正しく歩む貧しい者は、曲ったことを言う愚かな者にまさる。
16903 20 19 2 人が知識のないのは良くない、足で急ぐ者は道に迷う。
16904 20 19 3 人は自分の愚かさによって道につまずき、かえって心のうちに主をうらむ。
16905 20 19 4 富は多くの新しい友を作る、しかし貧しい人はその友に捨てられる。
16906 20 19 5 偽りの証人は罰を免れない、偽りをいう者はのがれることができない。
16907 20 19 6 気前のよい人にこびる者は多い、人はみな贈り物をする人の友となる。
16908 20 19 7 貧しい者はその兄弟すらもみなこれを憎む、ましてその友はこれに遠ざからないであろうか。言葉をかけてこれを呼んでも、去って帰らないのである。
16909 20 19 8 知恵を得る者は自分の魂を愛し、悟りを保つ者は幸を得る。
16910 20 19 9 偽りの証人は罰を免れない、偽りをいう者は滅びる。
16911 20 19 10 愚かな者が、ぜいたくな暮しをするのは、ふさわしいことではない、しもべたる者が、君たる者を治めるなどは、なおさらである。
16912 20 19 11 悟りは人に怒りを忍ばせる、あやまちをゆるすのは人の誉である。
16913 20 19 12 王の怒りは、ししのほえるようであり、その恵みは草の上におく露のようである。
16914 20 19 13 愚かな子はその父の災である、妻の争うのは、雨漏りの絶えないのとひとしい。
16915 20 19 14 家と富とは先祖からうけつぐもの、賢い妻は主から賜わるものである。
16916 20 19 15 怠りは人を熟睡させる、なまけ者は飢える。
16917 20 19 16 戒めを守る者は自分の魂を守る、み言葉を軽んじる者は死ぬ。
16918 20 19 17 貧しい者をあわれむ者は主に貸すのだ、その施しは主が償われる。
16919 20 19 18 望みのあるうちに、自分の子を懲らせ、これを滅ぼす心を起してはならない。
16920 20 19 19 怒ることの激しい者は罰をうける、たとい彼を救ってやっても、さらにくり返さねばならない。
16921 20 19 20 勧めを聞き、教訓をうけよ、そうすれば、ついには知恵ある者となる。
16922 20 19 21 人の心には多くの計画がある、しかしただ主の、み旨だけが堅く立つ。
16923 20 19 22 人に望ましいのは、いつくしみ深いことである、貧しい人は偽りをいう人にまさる。
16924 20 19 23 主を恐れることは人を命に至らせ、常に飽き足りて、災にあうことはない。
16925 20 19 24 なまけ者は、手を皿に入れても、それを口に持ってゆくことをしない。
16926 20 19 25 あざける者を打て、そうすれば思慮のない者も慎む。さとき者を戒めよ、そうすれば彼は知識を得る。
16927 20 19 26 父に乱暴をはたらき、母を追い出す者は、恥をきたらし、はずかしめをまねく子である。
16928 20 19 27 わが子よ、知識の言葉をはなれて人を迷わせる教訓を聞くことをやめよ。
16929 20 19 28 悪い証人はさばきをあざけり、悪しき者の口は悪をむさぼり食う。
16930 20 19 29 さばきはあざける者のために備えられ、むちは愚かな者の背のために備えられる。
16931 20 20 1 酒は人をあざける者とし、濃い酒は人をあばれ者とする、これに迷わされる者は無知である。
16932 20 20 2 王の怒りは、ししがほえるようだ、彼を怒らせる者は自分の命をそこなう。
16933 20 20 3 争いに関係しないことは人の誉である、すべて愚かな者は怒り争う。
16934 20 20 4 なまけ者は寒いときに耕さない、それゆえ刈入れのときになって、求めても何もない。
16935 20 20 5 人の心にある計りごとは深い井戸の水のようだ、しかし、さとき人はこれをくみ出す。
16936 20 20 6 自分は真実だという人が多い、しかし、だれが忠信な人に会うであろうか。
16937 20 20 7 欠けた所なく、正しく歩む人――その後の子孫はさいわいである。
16938 20 20 8 さばきの座にすわる王はその目をもって、すべての悪をふるいわける。
16939 20 20 9 だれが「わたしは自分の心を清めた、わたしの罪は清められた」ということができようか。
16940 20 20 10 互に違った二種のはかり、二種のますは、ひとしく主に憎まれる。
16941 20 20 11 幼な子でさえも、その行いによって自らを示し、そのすることの清いか正しいかを現す。
16942 20 20 12 聞く耳と、見る目とは、ともに主が造られたものである。
16943 20 20 13 眠りを愛してはならない、そうすれば貧しくなる、目を開け、そうすればパンに飽くことができる。
16944 20 20 14 買う者は、「悪い、悪い」という、しかし去って後、彼は自ら誇る。
16945 20 20 15 金もあり、価の高い宝石も多くあるが、尊い器は知識のくちびるである。
16946 20 20 16 人のために保証する者からは、まずその着物を取れ、他人のために保証する者をば抵当に取れ。
16947 20 20 17 欺き取ったパンはおいしい、しかし後にはその口は砂利で満たされる。
16948 20 20 18 計りごとは共に議することによって成る、戦おうとするならば、まずよく議しなければならない。
16949 20 20 19 歩きまわって人のよしあしをいう者は秘密をもらす、くちびるを開いて歩く者と交わってはならない。
16950 20 20 20 自分の父母をののしる者は、そのともしびは暗やみの中に消える。
16951 20 20 21 初めに急いで得た資産は、その終りがさいわいでない。
16952 20 20 22 「わたしが悪に報いる」と言ってはならない、主を待ち望め、主はあなたを助けられる。
16953 20 20 23 互に違った二種のふんどうは主に憎まれる、偽りのはかりは良くない。
16954 20 20 24 人の歩みは主によって定められる、人はどうして自らその道を、明らかにすることができようか。
16955 20 20 25 軽々しく「これは聖なるささげ物だ」と言い、また誓いを立てて後に考えることは、その人のわなとなる。
16956 20 20 26 知恵ある王は、箕をもってあおぎ分けるように悪人を散らし、車をもって脱穀するように、これを罰する。
16957 20 20 27 人の魂は主のともしびであり、人の心の奥を探る。
16958 20 20 28 いつくしみと、まこととは王を守る、その位もまた正義によって保たれる。
16959 20 20 29 若い人の栄えはその力、老人の美しさはそのしらがである。
16960 20 20 30 傷つくまでに打てば悪い所は清くなり、むちで打てば心の底までも清まる。
16961 20 21 1 王の心は、主の手のうちにあって、水の流れのようだ、主はみこころのままにこれを導かれる。
16962 20 21 2 人の道は自分の目には正しく見える、しかし主は人の心をはかられる。
16963 20 21 3 正義と公平を行うことは、犠牲にもまさって主に喜ばれる。
16964 20 21 4 高ぶる目とおごる心とは、悪しき人のともしびであって、罪である。
16965 20 21 5 勤勉な人の計画は、ついにその人を豊かにする、すべて怠るものは貧しくなる。
16966 20 21 6 偽りの舌をもって宝を得るのは、吹きはらわれる煙、死のわなである。
16967 20 21 7 悪しき者の暴虐はその身を滅ぼす、彼らは公平を行うことを好まないからである。
16968 20 21 8 罪びとの道は曲っている、潔白な人の行いはまっすぐである。
16969 20 21 9 争いを好む女と一緒に家におるよりは屋根のすみにおるほうがよい。
16970 20 21 10 悪しき者の魂は悪を行うことを願う、その隣り人にも好意をもって見られない。
16971 20 21 11 あざけるものが罰をうけるならば、思慮のない者は知恵を得る。知恵ある者が教をうけるならば知識を得る。
16972 20 21 12 正しい神は、悪しき者の家をみとめて、悪しき者を滅びに投げいれられる。
16973 20 21 13 耳を閉じて貧しい者の呼ぶ声を聞かない者は、自分が呼ぶときに、聞かれない。
16974 20 21 14 ひそかな贈り物は憤りをなだめる、ふところのまいないは激しい怒りを和らげる。
16975 20 21 15 公義を行うことは、正しい者には喜びであるが、悪を行う者には滅びである。
16976 20 21 16 悟りの道を離れる人は、死人の集会の中におる。
16977 20 21 17 快楽を好む者は貧しい人となり、酒と油とを好む者は富むことがない。
16978 20 21 18 悪しき者は正しい者のあがないとなり、不信実な者は正しい人に代る。
16979 20 21 19 争い怒る女と共におるよりは、荒野に住むほうがましだ。
16980 20 21 20 知恵ある者の家には尊い宝があり、愚かな人はこれを、のみ尽す。
16981 20 21 21 正義といつくしみとを追い求める者は、命と誉とを得る。
16982 20 21 22 知恵ある者は強い者の城にのぼって、その頼みとするとりでをくずす。
16983 20 21 23 口と舌とを守る者はその魂を守って、悩みにあわせない。
16984 20 21 24 高ぶりおごる者を「あざける者」となづける、彼は高慢無礼な行いをするものである。
16985 20 21 25 なまけ者の欲望は自分の身を殺す、これはその手を働かせないからである。
16986 20 21 26 悪しき者はひねもす人の物をむさぼる、正しい者は与えて惜しまない。
16987 20 21 27 悪しき者の供え物は憎まれる、悪意をもってささげる時はなおさらである。
16988 20 21 28 偽りの証人は滅ぼされる、よく聞く人の言葉はすたることがない。
16989 20 21 29 悪しき者はあつかましくし、正しい人はその道をつつしむ。
16990 20 21 30 主に向かっては知恵も悟りも、計りごとも、なんの役にも立たない。
16991 20 21 31 戦いの日のために馬を備える、しかし勝利は主による。
16992 20 22 1 令名は大いなる富にまさり、恩恵は銀や金よりも良い。
16993 20 22 2 富める者と貧しい者とは共に世におる、すべてこれを造られたのは主である。
16994 20 22 3 賢い者は災を見て自ら避け、思慮のない者は進んでいって、罰をうける。
16995 20 22 4 謙遜と主を恐れることとの報いは、富と誉と命とである。
16996 20 22 5 よこしまな者の道にはいばらとわながあり、たましいを守る者は遠くこれを離れる。
16997 20 22 6 子をその行くべき道に従って教えよ、そうすれば年老いても、それを離れることがない。
16998 20 22 7 富める者は貧しき者を治め、借りる者は貸す人の奴隷となる。
16999 20 22 8 悪をまく者は災を刈り、その怒りのつえはすたれる。
17000 20 22 9 人を見て恵む者はめぐまれる、自分のパンを貧しい人に与えるからである。
17001 20 22 10 あざける者を追放すれば争いもまた去り、かつ、いさかいも、はずかしめもなくなる。
17002 20 22 11 心の潔白を愛する者、その言葉の上品な者は、王がその友となる。
17003 20 22 12 主の目は知識ある者を守る、しかし主は不信実な者の言葉を敗られる。
17004 20 22 13 なまけ者は言う、「ししがそとにいる、わたしは、ちまたで殺される」と。
17005 20 22 14 遊女の口は深い落し穴である、主に憎まれる者はその中に陥る。
17006 20 22 15 愚かなことが子供の心の中につながれている、懲しめのむちは、これを遠く追いだす。
17007 20 22 16 貧しい者をしえたげて自分の富を増そうとする者と、富める者に与える者とは、ついに必ず貧しくなる。
17008 20 22 17 あなたの耳を傾けて知恵ある者の言葉を聞き、かつ、わたしの知識にあなたの心を用いよ。
17009 20 22 18 これをあなたのうちに保ち、ことごとく、あなたのくちびるに備えておくなら、楽しいことである。
17010 20 22 19 あなたが主に、寄り頼むことのできるように、わたしはきょう、これをあなたにも教える。
17011 20 22 20 わたしは、勧めと知識との三十の言葉をあなたのためにしるしたではないか。
17012 20 22 21 それは正しいこと、真実なことをあなたに示し、あなたをつかわした者に真実の答をさせるためであった。
17013 20 22 22 貧しい者を、貧しいゆえに、かすめてはならない、悩む者を、町の門でおさえつけてはならない。
17014 20 22 23 それは主が彼らの訴えをただし、かつ彼らをそこなう者の命を、そこなわれるからである。
17015 20 22 24 怒る者と交わるな、憤る人と共に行くな。
17016 20 22 25 それはあなたがその道にならって、みずから、わなに陥ることのないためである。
17017 20 22 26 あなたは人と手を打つ者となってはならない、人の負債の保証をしてはならない。
17018 20 22 27 あなたが償うものがないとき、あなたの寝ている寝床までも、人が奪い取ってよかろうか。
17019 20 22 28 あなたの先祖が立てた古い地境を移してはならない。
17020 20 22 29 あなたはそのわざに巧みな人を見るか、そのような人は王の前に立つが、卑しい人々の前には立たない。
17021 20 23 1 治める人と共に座して食事するとき、あなたの前にあるものを、よくわきまえ、
17022 20 23 2 あなたがもし食をたしなむ者であるならば、あなたののどに刀をあてよ。
17023 20 23 3 そのごちそうをむさぼり食べてはならない、これは人を欺く食物だからである。
17024 20 23 4 富を得ようと苦労してはならない、かしこく思いとどまるがよい。
17025 20 23 5 あなたの目をそれにとめると、それはない、富はたちまち自ら翼を生じて、わしのように天に飛び去るからだ。
17026 20 23 6 物惜しみする人のパンを食べてはならない、そのごちそうをむさぼり願ってはならない。
17027 20 23 7 彼は心のうちで勘定する人のように、「食え、飲め」とあなたに言うけれども、その心はあなたに真実ではない。
17028 20 23 8 あなたはついにその食べた物を吐き出すようになり、あなたのねんごろな言葉もむだになる。
17029 20 23 9 愚かな者の耳に語ってはならない、彼はあなたの言葉が示す知恵をいやしめるからだ。
17030 20 23 10 古い地境を移してはならない、みなしごの畑を侵してはならない。
17031 20 23 11 彼らのあがない主は強くいらせられ、あなたに逆らって彼らの訴えを弁護されるからだ。
17032 20 23 12 あなたの心を教訓に用い、あなたの耳を知識の言葉に傾けよ。
17033 20 23 13 子を懲らすことを、さし控えてはならない、むちで彼を打っても死ぬことはない。
17034 20 23 14 もし、むちで彼を打つならば、その命を陰府から救うことができる。
17035 20 23 15 わが子よ、もしあなたの心が賢くあれば、わたしの心もまた喜び、
17036 20 23 16 もしあなたのくちびるが正しい事を言うならば、わたしの心も喜ぶ。
17037 20 23 17 心に罪びとをうらやんではならない、ただ、ひねもす主を恐れよ。
17038 20 23 18 かならず後のよい報いがあって、あなたの望みは、すたらない。
17039 20 23 19 わが子よ、よく聞いて、知恵を得よ、かつ、あなたの心を道に向けよ。
17040 20 23 20 酒にふけり、肉をたしなむ者と交わってはならない。
17041 20 23 21 酒にふける者と、肉をたしなむ者とは貧しくなり、眠りをむさぼる者は、ぼろを身にまとうようになる。
17042 20 23 22 あなたを生んだ父のいうことを聞き、年老いた母を軽んじてはならない。
17043 20 23 23 真理を買え、これを売ってはならない、知恵と教訓と悟りをも買え。
17044 20 23 24 正しい人の父は大いによろこび、知恵ある子を生む者は子のために楽しむ。
17045 20 23 25 あなたの父母を楽しませ、あなたを産んだ母を喜ばせよ。
17046 20 23 26 わが子よ、あなたの心をわたしに与え、あなたの目をわたしの道に注げ。
17047 20 23 27 遊女は深い穴のごとく、みだらな女は狭い井戸のようだ。
17048 20 23 28 彼女は盗びとのように人をうかがい、かつ世の人のうちに、不信実な者を多くする。
17049 20 23 29 災ある者はだれか、憂いある者はだれか、争いをする者はだれか、煩いある者はだれか、ゆえなく傷をうける者はだれか、赤い目をしている者はだれか。
17050 20 23 30 酒に夜をふかす者、行って、混ぜ合わせた酒を味わう者である。
17051 20 23 31 酒はあかく、杯の中にあわだち、なめらかにくだる、あなたはこれを見てはならない。
17052 20 23 32 これはついに、へびのようにかみ、まむしのように刺す。
17053 20 23 33 あなたの目は怪しいものを見、あなたの心は偽りを言う。
17054 20 23 34 あなたは海の中に寝ている人のように、帆柱の上に寝ている人のようになる。
17055 20 23 35 あなたは言う、「人がわたしを撃ったが、わたしは痛くはなかった。わたしを、たたいたが、わたしは何も覚えはない。いつわたしはさめるのか、また酒を求めよう」と。
17056 20 24 1 悪を行う人をうらやんではならない、また彼らと共におることを願ってはならない。
17057 20 24 2 彼らはその心に強奪を計り、そのくちびるに人をそこなうことを語るからである。
17058 20 24 3 家は知恵によって建てられ、悟りによって堅くせられ、
17059 20 24 4 また、へやは知識によってさまざまの尊く、麗しい宝で満たされる。
17060 20 24 5 知恵ある者は強い人よりも強く、知識ある人は力ある人よりも強い。
17061 20 24 6 良い指揮によって戦いをすることができ、勝利は多くの議する者がいるからである。
17062 20 24 7 知恵は高くて愚かな者の及ぶところではない、愚かな者は門で口を開くことができない。
17063 20 24 8 悪を行うことを計る者を人はいたずら者ととなえる。
17064 20 24 9 愚かな者の計るところは罪であり、あざける者は人に憎まれる。
17065 20 24 10 もしあなたが悩みの日に気をくじくならば、あなたの力は弱い。
17066 20 24 11 死地にひかれゆく者を助け出せ、滅びによろめきゆく者を救え。
17067 20 24 12 あなたが、われわれはこれを知らなかったといっても、心をはかる者はそれを悟らないであろうか。あなたの魂を守る者はそれを知らないであろうか。彼はおのおのの行いにより、人に報いないであろうか。
17068 20 24 13 わが子よ、蜜を食べよ、これは良いものである、また、蜂の巣のしたたりはあなたの口に甘い。
17069 20 24 14 知恵もあなたの魂にはそのようであることを知れ。それを得るならば、かならず報いがあって、あなたの望みは、すたらない。
17070 20 24 15 悪しき者がするように、正しい者の家をうかがってはならない、その住む所に乱暴をしてはならない。
17071 20 24 16 正しい者は七たび倒れても、また起きあがる、しかし、悪しき者は災によって滅びる。
17072 20 24 17 あなたのあだが倒れるとき楽しんではならない、彼のつまずくとき心に喜んではならない。
17073 20 24 18 主はそれを見て悪いこととし、その怒りを彼から転じられる。
17074 20 24 19 悪を行う者のゆえに心を悩ましてはならない、よこしまな者をうらやんではならない。
17075 20 24 20 悪しき者には後の良い報いはない、よこしまな者のともしびは消される。
17076 20 24 21 わが子よ、主と王とを恐れよ、そのいずれにも不従順であってはならない。
17077 20 24 22 その災はたちまち起るからである。この二つの者からくる滅びをだれが知り得ようか。
17078 20 24 23 これらもまた知恵ある者の箴言である。
17079 20 24 24 悪しき者に向かって、「あなたは正しい」という者を、人々はのろい、諸民は憎む。
17080 20 24 25 悪しき者をせめる者は恵みを得る、また幸福が与えられる。
17081 20 24 26 正しい答をする者は、くちびるに、口づけするのである。
17082 20 24 27 外で、あなたの仕事を整え、畑で、すべての物をおのれのために備え、その後あなたの家を建てるがよい。
17083 20 24 28 ゆえなく隣り人に敵して、証言をしてはならない、くちびるをもって欺いてはならない。
17084 20 24 29 「彼がわたしにしたように、わたしも彼にしよう、わたしは人がしたところにしたがって、その人に報いよう」と言ってはならない。
17085 20 24 30 わたしはなまけ者の畑のそばと、知恵のない人のぶどう畑のそばを通ってみたが、
17086 20 24 31 いばらが一面に生え、あざみがその地面をおおい、その石がきはくずれていた。
17087 20 24 32 わたしはこれをみて心をとどめ、これを見て教訓を得た。
17088 20 24 33 「しばらく眠り、しばらくまどろみ、手をこまぬいて、またしばらく休む」。
17089 20 24 34 それゆえ、貧しさは盗びとのように、あなたに来、乏しさは、つわもののように、あなたに来る。
17090 20 25 1 これらもまたソロモンの箴言であり、ユダの王ヒゼキヤに属する人々がこれを書き写した。
17091 20 25 2 事を隠すのは神の誉であり、事を窮めるのは王の誉である。
17092 20 25 3 天の高さと地の深さと、王たる者の心とは測ることができない。
17093 20 25 4 銀から、かなくそを除け、そうすれば、銀細工人が器を造る材料となる。
17094 20 25 5 王の前から悪しき者を除け、そうすれば、その位は正義によって堅く立つ。
17095 20 25 6 王の前で自ら高ぶってはならない、偉い人の場に立ってはならない。
17096 20 25 7 尊い人の前で下にさげられるよりは、「ここに上がれ」といわれるほうがましだ。
17097 20 25 8 あなたが目に見たことを、軽々しく法廷に出してはならない。あとになり、あなたが隣り人にはずかしめられるとき、あなたはどうしようとするのか。
17098 20 25 9 隣り人と争うことがあるならば、ただその人と争え、他人の秘密をもらしてはならない。
17099 20 25 10 そうでないと、聞く者があなたをいやしめ、あなたは、いつまでもそしられる。
17100 20 25 11 おりにかなって語る言葉は、銀の彫り物に金のりんごをはめたようだ。
17101 20 25 12 知恵をもって戒める者は、これをきく者の耳にとって、金の耳輪、精金の飾りのようだ。
17102 20 25 13 忠実な使者はこれをつかわす者にとって、刈入れの日に冷やかな雪があるようだ、よくその主人の心を喜ばせる。
17103 20 25 14 贈り物をすると偽って誇る人は、雨のない雲と風のようだ。
17104 20 25 15 忍耐をもって説けば君も言葉をいれる、柔らかな舌は骨を砕く。
17105 20 25 16 蜜を得たならば、ただ足るほどにこれを食べよ、おそらくは食べすごして、それを吐き出すであろう。
17106 20 25 17 隣り人の家に足をしげくしてはならない、おそらくは彼は煩わしくなって、あなたを憎むようになろう。
17107 20 25 18 隣り人に敵して偽りのあかしを立てる人は、こん棒、つるぎ、または鋭い矢のようだ。
17108 20 25 19 悩みに会うとき不信実な者を頼みにするのは、悪い歯、またはなえた足を頼みとするようなものだ。
17109 20 25 20 心の痛める人の前で歌をうたうのは、寒い日に着物を脱ぐようであり、また傷の上に酢をそそぐようだ。
17110 20 25 21 もしあなたのあだが飢えているならば、パンを与えて食べさせ、もしかわいているならば水を与えて飲ませよ。
17111 20 25 22 こうするのは、火を彼のこうべに積むのである、主はあなたに報いられる。
17112 20 25 23 北風は雨を起し、陰言をいう舌は人の顔を怒らす。
17113 20 25 24 争いを好む女と一緒に家におるよりは、屋根のすみにおるほうがよい。
17114 20 25 25 遠い国から来るよい消息は、かわいている人が飲む冷やかな水のようだ。
17115 20 25 26 正しい者が悪い者の前に屈服するのは、井戸が濁ったよう、また泉がよごれたようなものだ。
17116 20 25 27 蜜を多く食べるのはよくない、ほめる言葉は控え目にするがよい。
17117 20 25 28 自分の心を制しない人は、城壁のない破れた城のようだ。
17118 20 26 1 誉が愚かな者にふさわしくないのは、夏に雪が降り、刈入れの時に雨が降るようなものだ。
17119 20 26 2 いわれのないのろいは、飛びまわるすずめや、飛びかけるつばめのようなもので、止まらない。
17120 20 26 3 馬のためにはむちがあり、ろばのためにはくつわがあり、愚かな者の背のためにはつえがある。
17121 20 26 4 愚かな者にその愚かさにしたがって答をするな、自分も彼と同じようにならないためだ。
17122 20 26 5 愚かな者にその愚かさにしたがって答をせよ、彼が自分の目に自らを知恵ある者と見ないためだ。
17123 20 26 6 愚かな者に託して事を言い送る者は、自分の足を切り去り、身に害をうける。
17124 20 26 7 あしなえの足は用がない、愚かな者の口には箴言もそれにひとしい。
17125 20 26 8 誉を愚かな者に与えるのは、石を石投げにつなぐようだ。
17126 20 26 9 愚かな者の口に箴言があるのは、酔った者が、とげのあるつえを手で振り上げるようだ。
17127 20 26 10 通りがかりの愚か者や、酔った者を雇う者は、すべての人を傷つける射手のようだ。
17128 20 26 11 犬が帰って来てその吐いた物を食べるように、愚かな者はその愚かさをくり返す。
17129 20 26 12 自分の目に自らを知恵ある者とする人を、あなたは見るか、彼よりもかえって愚かな人に望みがある。
17130 20 26 13 なまけ者は、「道にししがいる、ちまたにししがいる」という。
17131 20 26 14 戸がちょうつがいによって回るように、なまけ者はその寝床で寝返りをする。
17132 20 26 15 なまけ者は手を皿に入れても、それを口に持ってゆくことをいとう。
17133 20 26 16 なまけ者は自分の目に、良く答えることのできる七人の者よりも、自らを知恵ありとする。
17134 20 26 17 自分に関係のない争いにたずさわる者は、通りすぎる犬の耳をとらえる者のようだ。
17135 20 26 20 たきぎがなければ火は消え、人のよしあしを言う者がなければ争いはやむ。
17136 20 26 21 おき火に炭をつぎ、火にたきぎをくべるように、争いを好む人は争いの火をおこす。
17137 20 26 22 人のよしあしをいう者の言葉はおいしい食物のようで、腹の奥にしみこむ。
17138 20 26 23 くちびるはなめらかであっても、心の悪いのは上ぐすりをかけた土の器のようだ。
17139 20 26 24 憎む者はくちびるをもって自ら飾るけれども、心のうちには偽りをいだく。
17140 20 26 25 彼が声をやわらげて語っても、信じてはならない。その心に七つの憎むべきものがあるからだ。
17141 20 26 26 たとい偽りをもってその憎しみをかくしても、彼の悪は会衆の中に現れる。
17142 20 26 27 穴を掘る者は自らその中に陥る、石をまろばしあげる者の上に、その石はまろびかえる。
17143 20 26 28 偽りの舌は自分が傷つけた者を憎み、へつらう口は滅びをきたらせる。
17144 20 27 1 あすのことを誇ってはならない、一日のうちに何がおこるかを知ることができないからだ。
17145 20 27 2 自分の口をもって自らをほめることなく、他人にほめさせよ。自分のくちびるをもってせず、ほかの人にあなたをほめさせよ。
17146 20 27 3 石は重く、砂も軽くはない、しかし愚かな者の怒りはこの二つよりも重い。
17147 20 27 4 憤りはむごく、怒りははげしい、しかしねたみの前には、だれが立ちえよう。
17148 20 27 5 あからさまに戒めるのは、ひそかに愛するのにまさる。
17149 20 27 6 愛する者が傷つけるのは、まことからであり、あだの口づけするのは偽りからである。
17150 20 27 7 飽いている者は蜂蜜をも踏みつける、しかし飢えた者には苦い物でさえ、みな甘い。
17151 20 27 8 その家を離れてさまよう人は、巣を離れてさまよう鳥のようだ。
17152 20 27 9 油と香とは人の心を喜ばせる、しかし魂は悩みによって裂かれる。
17153 20 27 10 あなたの友、あなたの父の友を捨てるな、あなたが悩みにあう日には兄弟の家に行くな、近い隣り人は遠くにいる兄弟にまさる。
17154 20 27 11 わが子よ、知恵を得て、わたしの心を喜ばせよ、そうすればわたしをそしる者に答えることができる。
17155 20 27 12 賢い者は災を見て自ら避け、思慮のない者は進んでいって、罰をうける。
17156 20 27 13 人のために保証する者からは、まずその着物をとれ、他人のために保証をする者をば抵当に取れ。
17157 20 27 14 朝はやく起きて大声にその隣り人を祝すれば、かえってのろいと見なされよう。
17158 20 27 15 雨の降る日に雨漏りの絶えないのと、争い好きな女とは同じだ。
17159 20 27 16 この女を制するのは風を制するのとおなじく、右の手に油をつかむのとおなじだ。
17160 20 27 17 鉄は鉄をとぐ、そのように人はその友の顔をとぐ。
17161 20 27 18 いちじくの木を守る者はその実を食べる、主人を尊ぶ者は誉を得る。
17162 20 27 19 水にうつせば顔と顔とが応じるように、人の心はその人をうつす。
17163 20 27 20 陰府と滅びとは飽くことなく、人の目もまた飽くことがない。
17164 20 27 21 るつぼによって銀をためし、炉によって金をためす、人はその称賛によってためされる。
17165 20 27 22 愚かな者をうすに入れ、きねをもって、麦と共にこれをついても、その愚かさは去ることがない。
17166 20 27 23 あなたの羊の状態をよく知り、あなたの群れに心をとめよ。
17167 20 27 24 富はいつまでも続くものではない、どうして位が末代までも保つであろうか。
17168 20 27 25 草が刈り取られ、新しい芽がのび、山の牧草も集められると、
17169 20 27 26 小羊はあなたの衣料を出し、やぎは畑を買う価となり、
17170 20 27 27 やぎの乳は多くて、あなたと、あなたの家のものの食物となり、おとめらを養うのにじゅうぶんである。
17171 20 28 1 悪しき者は追う人もないのに逃げる、正しい人はししのように勇ましい。
17172 20 28 2 国の罪によって、治める者は多くなり、さとく、また知識ある人によって、国はながく保つ。
17173 20 28 3 貧しい者をしえたげる貧しい人は、糧食を残さない激しい雨のようだ。
17174 20 28 4 律法を捨てる者は悪しき者をほめる、律法を守る者はこれに敵対する。
17175 20 28 5 悪人は正しいことを悟らない、主を求める者はこれをことごとく悟る。
17176 20 28 6 正しく歩む貧しい者は、曲った道を歩む富める者にまさる。
17177 20 28 7 律法を守る者は賢い子である、不品行な者と交わるものは、父をはずかしめる。
17178 20 28 8 利息と高利とによってその富をます者は、貧しい者を恵む者のために、それをたくわえる。
17179 20 28 9 耳をそむけて律法を聞かない者は、その祈でさえも憎まれる。
17180 20 28 10 正しい者を悪い道に惑わす者は、みずから自分の穴に陥る、しかし誠実な人は幸福を継ぐ。
17181 20 28 11 富める人は自分の目に自らを知恵ある者と見る、しかし悟りのある貧しい者は彼を見やぶる。
17182 20 28 12 正しい者が勝つときは、大いなる栄えがある、悪しき者が起るときは、民は身をかくす。
17183 20 28 13 その罪を隠す者は栄えることがない、言い表わしてこれを離れる者は、あわれみをうける。
17184 20 28 14 常に主を恐れる人はさいわいである、心をかたくなにする者は災に陥る。
17185 20 28 15 貧しい民を治める悪いつかさは、ほえるしし、または飢えたくまのようだ。
17186 20 28 16 悟りのないつかさは残忍な圧制者である、不正の利を憎む者は長命を得る。
17187 20 28 17 人を殺してその血を身に負う者は死ぬまで、のがれびとである、だれもこれを助けてはならない。
17188 20 28 18 正しく歩む者は救を得、曲った道に歩む者は穴に陥る。
17189 20 28 19 自分の田地を耕す者は食糧に飽き、無益な事に従う者は貧乏に飽きる。
17190 20 28 20 忠実な人は多くの祝福を得る、急いで富を得ようとする者は罰を免れない。
17191 20 28 21 人を片寄り見ることは良くない、人は一切れのパンのために、とがを犯すことがある。
17192 20 28 22 欲の深い人は急いで富を得ようとする、かえって欠乏が自分の所に来ることを知らない。
17193 20 28 23 人を戒める者は舌をもってへつらう者よりも、大いなる感謝をうける。
17194 20 28 24 父や母の物を盗んで「これは罪ではない」と言う者は、滅ぼす者の友である。
17195 20 28 25 むさぼる者は争いを起し、主に信頼する者は豊かになる。
17196 20 28 26 自分の心を頼む者は愚かである、知恵をもって歩む者は救を得る。
17197 20 28 27 貧しい者に施す者は物に不足しない、目をおおって見ない人は多くののろいをうける。
17198 20 28 28 悪しき者が起るときは、民は身をかくす、その滅びるときは、正しい人が増す。
17199 20 29 1 しばしばしかられても、なおかたくなな者は、たちまち打ち敗られて助かることはない。
17200 20 29 2 正しい者が権力を得れば民は喜び、悪しき者が治めるとき、民はうめき苦しむ。
17201 20 29 3 知恵を愛する人はその父を喜ばせ、遊女に交わる者はその資産を浪費する。
17202 20 29 4 王は公儀をもって国を堅くする、しかし、重税を取り立てる者はこれを滅ぼす。
17203 20 29 5 その隣り人にへつらう者は、彼の足の前に網を張る。
17204 20 29 6 悪人は自分の罪のわなに陥る、しかし正しい人は喜び楽しむ。
17205 20 29 7 正しい人は貧しい者の訴えをかえりみる、悪しき人はそれを知ろうとはしない。
17206 20 29 8 あざける人は町を乱し、知恵ある者は怒りを静める。
17207 20 29 9 知恵ある人が愚かな人と争うと、愚かな者はただ怒り、あるいは笑って、休むことがない。
17208 20 29 10 血に飢えている人は罪のない者を憎む、悪しき者は彼の命を求める。
17209 20 29 11 愚かな者は怒りをことごとく表わし、知恵ある者は静かにこれをおさえる。
17210 20 29 12 もし治める者が偽りの言葉に聞くならば、その役人らはみな悪くなる。
17211 20 29 13 貧しい者と、しえたげる者とは共に世におる、主は彼ら両者の目に光を与えられる。
17212 20 29 14 もし王が貧しい者を公平にさばくならば、その位はいつまでも堅く立つ。
17213 20 29 15 むちと戒めとは知恵を与える、わがままにさせた子はその母に恥をもたらす。
17214 20 29 16 悪しき者が権力を得ると罪も増す、正しい者は彼らの倒れるのを見る。
17215 20 29 17 あなたの子を懲しめよ、そうすれば彼はあなたを安らかにし、またあなたの心に喜びを与える。
17216 20 29 18 預言がなければ民はわがままにふるまう、しかし律法を守る者はさいわいである。
17217 20 29 19 しもべは言葉だけで訓練することはできない、彼は聞いて知っても、心にとめないからである。
17218 20 29 20 言葉の軽率な人を見るか、彼よりもかえって愚かな者のほうに望みがある。
17219 20 29 21 しもべをその幼い時からわがままに育てる人は、ついにはそれを自分のあとつぎにする。
17220 20 29 22 怒る人は争いを起し、憤る人は多くの罪を犯す。
17221 20 29 23 人の高ぶりはその人を低くし、心にへりくだる者は誉を得る。
17222 20 29 24 盗びとにくみする者は自分の魂を憎む、彼はのろいを聞いても何事をも口外しない。
17223 20 29 25 人を恐れると、わなに陥る、主に信頼する者は安らかである。
17224 20 29 26 治める者の歓心を得ようとする人は多い、しかし人の事を定めるのは主による。
17225 20 29 27 正しい人は不正を行う人を憎み、悪しき者は正しく歩む人を憎む。
17226 20 30 1 マッサの人ヤケの子アグルの言葉。その人はイテエルに向かって言った、すなわちイテエルと、ウカルとに向かって言った、
17227 20 30 2 わたしは確かに人よりも愚かであり、わたしには人の悟りがない。
17228 20 30 3 わたしはまだ知恵をならうことができず、また、聖なる者を悟ることもできない。
17229 20 30 4 天にのぼったり、下ったりしたのはだれか、風をこぶしの中に集めたのはだれか、水を着物に包んだのはだれか、地のすべての限界を定めた者はだれか、その名は何か、その子の名は何か、あなたは確かにそれを知っている。
17230 20 30 5 神の言葉はみな真実である、神は彼に寄り頼む者の盾である。
17231 20 30 6 その言葉に付け加えてはならない、彼があなたを責め、あなたを偽り者とされないためだ。
17232 20 30 7 わたしは二つのことをあなたに求めます、わたしの死なないうちに、これをかなえてください。
17233 20 30 8 うそ、偽りをわたしから遠ざけ、貧しくもなく、また富みもせず、ただなくてならぬ食物でわたしを養ってください。
17234 20 30 9 飽き足りて、あなたを知らないといい、「主とはだれか」と言うことのないため、また貧しくて盗みをし、わたしの神の名を汚すことのないためです。
17235 20 30 10 あなたは、しもべのことをその主人に、あしざまにいってはならない、そうでないと彼はあなたをのろい、あなたは罪をきせられる。
17236 20 30 11 世には父をのろったり、母を祝福しない者がある。
17237 20 30 12 世には自分の目にみずからを清い者として、なおその汚れを洗われないものがある。
17238 20 30 13 世にはまた、このような人がある――ああ、その目のいかに高きことよ、またそのまぶたのいかにつりあがっていることよ。
17239 20 30 14 世にはまたつるぎのような歯をもち、刀のようなきばをもって、貧しい者を地の上から、乏しい者を人の中から食い滅ぼすものがある。
17240 20 30 15 蛭にふたりの娘があって、「与えよ、与えよ」という。飽くことを知らないものが三つある、いや、四つあって、皆「もう、たくさんです」と言わない。
17241 20 30 16 すなわち陰府、不妊の胎、水にかわく地、「もう、たくさんだ」といわない火がそれである。
17242 20 30 17 自分の父をあざけり、母に従うのを卑しいこととする目は、谷のからすがこれをつつき出し、はげたかがこれを食べる。
17243 20 30 18 わたしにとって不思議にたえないことが三つある、いや、四つあって、わたしには悟ることができない。
17244 20 30 19 すなわち空を飛ぶはげたかの道、岩の上を這うへびの道、海をはしる舟の道、男の女にあう道がそれである。
17245 20 30 20 遊女の道もまたそうだ、彼女は食べて、その口をぬぐって、「わたしは何もわるいことはしない」と言う。
17246 20 30 21 地は三つのことによって震う、いや、四つのことによって、耐えることができない。
17247 20 30 22 すなわち奴隷たる者が王となり、愚かな者が食物に飽き、
17248 20 30 23 忌みきらわれた女が嫁に行き、はしためが女主人のあとにすわることである。
17249 20 30 24 この地上に、小さいけれども、非常に賢いものが四つある。
17250 20 30 25 ありは力のない種類だが、その食糧を夏のうちに備える。
17251 20 30 26 岩だぬきは強くない種類だが、その家を岩につくる。
17252 20 30 27 いなごは王がないけれども、みな隊を組んでいで立つ。
17253 20 30 28 やもりは手でつかまえられるが、王の宮殿におる。
17254 20 30 29 歩きぶりの堂々たる者が三つある、いや、四つあって、みな堂々と歩く。
17255 20 30 30 すなわち獣のうちでもっとも強く、何ものの前にも退かない、しし、
17256 20 30 31 尾を立てて歩くおんどり、雄やぎ、その民の前をいばって歩く王がそれである。
17257 20 30 32 あなたがもし愚かであって自ら高ぶり、あるいは悪事を計ったならば、あなたの手を口に当てるがよい。
17258 20 30 33 乳をしめれば凝乳が出る、鼻をしめれば血がでる、怒りをしめれば争いが起る。
17259 20 31 1 マッサの王レムエルの言葉、すなわちその母が彼に教えたものである。
17260 20 31 2 わが子よ、何を言おうか。わが胎の子よ、何を言おうか。わたしが願をかけて得た子よ、何をいおうか。
17261 20 31 3 あなたの力を女についやすな、王をも滅ぼすものに、あなたの道を任せるな。
17262 20 31 4 レムエルよ、酒を飲むのは、王のすることではない、王のすることではない、濃い酒を求めるのは君たる者のすることではない。
17263 20 31 5 彼らは酒を飲んで、おきてを忘れ、すべて悩む者のさばきを曲げる。
17264 20 31 6 濃い酒を滅びようとしている者に与え、酒を心の苦しむ人に与えよ。
17265 20 31 7 彼らは飲んで自分の貧乏を忘れ、その悩みをもはや思い出さない。
17266 20 31 8 あなたは黙っている人のために、すべてのみなしごの訴えのために、口を開くがよい。
17267 20 31 9 口を開いて、正しいさばきを行い、貧しい者と乏しい者の訴えをただせ。
17268 20 31 10 だれが賢い妻を見つけることができるか、彼女は宝石よりもすぐれて尊い。
17269 20 31 11 その夫の心は彼女を信頼して、収益に欠けることはない。
17270 20 31 12 彼女は生きながらえている間、その夫のために良いことをして、悪いことをしない。
17271 20 31 13 彼女は羊の毛や亜麻を求めて、手ずから望みのように、それを仕上げる。
17272 20 31 14 また商人の舟のように、遠い国から食糧を運んでくる。
17273 20 31 15 彼女はまだ夜のあけぬうちに起きて、その家の者の食べ物を備え、その女たちに日用の分を与える。
17274 20 31 16 彼女は畑をよく考えてそれを買い、その手の働きの実をもって、ぶどう畑をつくり、
17275 20 31 17 力をもって腰に帯し、その腕を強くする。
17276 20 31 18 彼女はその商品のもうけのあるのを知っている、そのともしびは終夜消えることがない。
17277 20 31 19 彼女は手を糸取り棒にのべ、その手に、つむを持ち、
17278 20 31 20 手を貧しい者に開き、乏しい人に手をさしのべる。
17279 20 31 21 彼女はその家の者のために雪を恐れない、その家の者はみな紅の着物を着ているからである。
17280 20 31 22 彼女は自分のために美しいしとねを作り、亜麻布と紫布とをもってその着物とする。
17281 20 31 23 その夫はその地の長老たちと共に、町の門に座するので、人に知られている。
17282 20 31 24 彼女は亜麻布の着物をつくって、それを売り、帯をつくって商人に渡す。
17283 20 31 25 力と気品とは彼女の着物である、そして後の日を笑っている。
17284 20 31 26 彼女は口を開いて知恵を語る、その舌にはいつくしみの教がある。
17285 20 31 27 彼女は家の事をよくかえりみ、怠りのかてを食べることをしない。
17286 20 31 28 その子らは立ち上がって彼女を祝し、その夫もまた彼女をほめたたえて言う、
17287 20 31 29 「りっぱに事をなし遂げる女は多いけれども、あなたはそのすべてにまさっている」と。
17288 20 31 30 あでやかさは偽りであり、美しさはつかのまである、しかし主を恐れる女はほめたたえられる。
17289 20 31 31 その手の働きの実を彼女に与え、その行いのために彼女を町の門でほめたたえよ。
17290 21 1 1 ダビデの子、エルサレムの王である伝道者の言葉。
17291 21 1 2 伝道者は言う、空の空、空の空、いっさいは空である。
17292 21 1 3 日の下で人が労するすべての労苦は、その身になんの益があるか。
17293 21 1 4 世は去り、世はきたる。しかし地は永遠に変らない。
17294 21 1 5 日はいで、日は没し、その出た所に急ぎ行く。
17295 21 1 6 風は南に吹き、また転じて、北に向かい、めぐりにめぐって、またそのめぐる所に帰る。
17296 21 1 7 川はみな、海に流れ入る、しかし海は満ちることがない。川はその出てきた所にまた帰って行く。
17297 21 1 8 すべての事は人をうみ疲れさせる、人はこれを言いつくすことができない。目は見ることに飽きることがなく、耳は聞くことに満足することがない。
17298 21 1 9 先にあったことは、また後にもある、先になされた事は、また後にもなされる。日の下には新しいものはない。
17299 21 1 10 「見よ、これは新しいものだ」と言われるものがあるか、それはわれわれの前にあった世々に、すでにあったものである。
17300 21 1 11 前の者のことは覚えられることがない、また、きたるべき後の者のことも、後に起る者はこれを覚えることがない。
17301 21 1 12 伝道者であるわたしはエルサレムで、イスラエルの王であった。
17302 21 1 13 わたしは心をつくし、知恵を用いて、天が下に行われるすべてのことを尋ね、また調べた。これは神が、人の子らに与えて、ほねおらせられる苦しい仕事である。
17303 21 1 14 わたしは日の下で人が行うすべてのわざを見たが、みな空であって風を捕えるようである。
17304 21 1 15 曲ったものは、まっすぐにすることができない、欠けたものは数えることができない。
17305 21 1 16 わたしは心の中に語って言った、「わたしは、わたしより先にエルサレムを治めたすべての者にまさって、多くの知恵を得た。わたしの心は知恵と知識を多く得た」。
17306 21 1 17 わたしは心をつくして知恵を知り、また狂気と愚痴とを知ろうとしたが、これもまた風を捕えるようなものであると悟った。
17307 21 1 18 それは知恵が多ければ悩みが多く、知識を増す者は憂いを増すからである。
17308 21 2 1 わたしは自分の心に言った、「さあ、快楽をもって、おまえを試みよう。おまえは愉快に過ごすがよい」と。しかし、これもまた空であった。
17309 21 2 2 わたしは笑いについて言った、「これは狂気である」と。また快楽について言った、「これは何をするのか」と。
17310 21 2 3 わたしの心は知恵をもってわたしを導いているが、わたしは酒をもって自分の肉体を元気づけようと試みた。また、人の子は天が下でその短い一生の間、どんな事をしたら良いかを、見きわめるまでは、愚かな事をしようと試みた。
17311 21 2 4 わたしは大きな事業をした。わたしは自分のために家を建て、ぶどう畑を設け、
17312 21 2 5 園と庭をつくり、またすべて実のなる木をそこに植え、
17313 21 2 6 池をつくって、木のおい茂る林に、そこから水を注がせた。
17314 21 2 7 わたしは男女の奴隷を買った。またわたしの家で生れた奴隷を持っていた。わたしはまた、わたしより先にエルサレムにいただれよりも多くの牛や羊の財産を持っていた。
17315 21 2 8 わたしはまた銀と金を集め、王たちと国々の財宝を集めた。またわたしは歌うたう男、歌うたう女を得た。また人の子の楽しみとするそばめを多く得た。
17316 21 2 9 こうして、わたしは大いなる者となり、わたしより先にエルサレムにいたすべての者よりも、大いなる者となった。わたしの知恵もまた、わたしを離れなかった。
17317 21 2 10 なんでもわたしの目の好むものは遠慮せず、わたしの心の喜ぶものは拒まなかった。わたしの心がわたしのすべての労苦によって、快楽を得たからである。そしてこれはわたしのすべての労苦によって得た報いであった。
17318 21 2 11 そこで、わたしはわが手のなしたすべての事、およびそれをなすに要した労苦を顧みたとき、見よ、皆、空であって、風を捕えるようなものであった。日の下には益となるものはないのである。
17319 21 2 12 わたしはまた、身をめぐらして、知恵と、狂気と、愚痴とを見た。そもそも、王の後に来る人は何をなし得ようか。すでに彼がなした事にすぎないのだ。
17320 21 2 13 光が暗きにまさるように、知恵が愚痴にまさるのを、わたしは見た。
17321 21 2 14 知者の目は、その頭にある。しかし愚者は暗やみを歩む。けれどもわたしはなお同一の運命が彼らのすべてに臨むことを知っている。
17322 21 2 15 わたしは心に言った、「愚者に臨む事はわたしにも臨むのだ。それでどうしてわたしは賢いことがあろう」。わたしはまた心に言った、「これもまた空である」と。
17323 21 2 16 そもそも、知者も愚者も同様に長く覚えられるものではない。きたるべき日には皆忘れられてしまうのである。知者が愚者と同じように死ぬのは、どうしたことであろう。
17324 21 2 17 そこで、わたしは生きることをいとった。日の下に行われるわざは、わたしに悪しく見えたからである。皆空であって、風を捕えるようである。
17325 21 2 18 わたしは日の下で労したすべての労苦を憎んだ。わたしの後に来る人にこれを残さなければならないからである。
17326 21 2 19 そして、その人が知者であるか、または愚者であるかは、だれが知り得よう。そうであるのに、その人が、日の下でわたしが労し、かつ知恵を働かしてなしたすべての労苦をつかさどることになるのだ。これもまた空である。
17327 21 2 20 それでわたしはふり返ってみて、日の下でわたしが労したすべての労苦について、望みを失った。
17328 21 2 21 今ここに人があって、知恵と知識と才能をもって労しても、これがために労しない人に、すべてを残して、その所有とさせなければならないのだ。これもまた空であって、大いに悪い。
17329 21 2 22 そもそも、人は日の下で労するすべての労苦と、その心づかいによってなんの得るところがあるか。
17330 21 2 23 そのすべての日はただ憂いのみであって、そのわざは苦しく、その心は夜の間も休まることがない。これもまた空である。
17331 21 2 24 人は食い飲みし、その労苦によって得たもので心を楽しませるより良い事はない。これもまた神の手から出ることを、わたしは見た。
17332 21 2 25 だれが神を離れて、食い、かつ楽しむことのできる者があろう。
17333 21 2 26 神は、その心にかなう人に、知恵と知識と喜びとをくださる。しかし罪びとには仕事を与えて集めることと、積むことをさせられる。これは神の心にかなう者にそれを賜わるためである。これもまた空であって、風を捕えるようである。
17334 21 3 1 天が下のすべての事には季節があり、すべてのわざには時がある。
17335 21 3 2 生るるに時があり、死ぬるに時があり、植えるに時があり、植えたものを抜くに時があり、
17336 21 3 3 殺すに時があり、いやすに時があり、こわすに時があり、建てるに時があり、
17337 21 3 4 泣くに時があり、笑うに時があり、悲しむに時があり、踊るに時があり、
17338 21 3 5 石を投げるに時があり、石を集めるに時があり、抱くに時があり、抱くことをやめるに時があり、
17339 21 3 6 捜すに時があり、失うに時があり、保つに時があり、捨てるに時があり、
17340 21 3 7 裂くに時があり、縫うに時があり、黙るに時があり、語るに時があり、
17341 21 3 8 愛するに時があり、憎むに時があり、戦うに時があり、和らぐに時がある。
17342 21 3 9 働く者はその労することにより、なんの益を得るか。
17343 21 3 10 わたしは神が人の子らに与えて、ほねおらせられる仕事を見た。
17344 21 3 11 神のなされることは皆その時にかなって美しい。神はまた人の心に永遠を思う思いを授けられた。それでもなお、人は神のなされるわざを初めから終りまで見きわめることはできない。
17345 21 3 12 わたしは知っている。人にはその生きながらえている間、楽しく愉快に過ごすよりほかに良い事はない。
17346 21 3 13 またすべての人が食い飲みし、そのすべての労苦によって楽しみを得ることは神の賜物である。
17347 21 3 14 わたしは知っている。すべて神がなさる事は永遠に変ることがなく、これに加えることも、これから取ることもできない。神がこのようにされるのは、人々が神の前に恐れをもつようになるためである。
17348 21 3 15 今あるものは、すでにあったものである。後にあるものも、すでにあったものである。神は追いやられたものを尋ね求められる。
17349 21 3 16 わたしはまた、日の下を見たが、さばきを行う所にも不正があり、公義を行う所にも不正がある。
17350 21 3 17 わたしは心に言った、「神は正しい者と悪い者とをさばかれる。神はすべての事と、すべてのわざに、時を定められたからである」と。
17351 21 3 18 わたしはまた、人の子らについて心に言った、「神は彼らをためして、彼らに自分たちが獣にすぎないことを悟らせられるのである」と。
17352 21 3 19 人の子らに臨むところは獣にも臨むからである。すなわち一様に彼らに臨み、これの死ぬように、彼も死ぬのである。彼らはみな同様の息をもっている。人は獣にまさるところがない。すべてのものは空だからである。
17353 21 3 20 みな一つ所に行く。皆ちりから出て、皆ちりに帰る。
17354 21 3 21 だれが知るか、人の子らの霊は上にのぼり、獣の霊は地にくだるかを。
17355 21 3 22 それで、わたしは見た、人はその働きによって楽しむにこした事はない。これが彼の分だからである。だれが彼をつれていって、その後の、どうなるかを見させることができようか。
17356 21 4 1 わたしはまた、日の下に行われるすべてのしえたげを見た。見よ、しえたげられる者の涙を。彼らを慰める者はない。しえたげる者の手には権力がある。しかし彼らを慰める者はいない。
17357 21 4 2 それで、わたしはなお生きている生存者よりも、すでに死んだ死者を、さいわいな者と思った。
17358 21 4 3 しかし、この両者よりもさいわいなのは、まだ生れない者で、日の下に行われる悪しきわざを見ない者である。
17359 21 4 4 また、わたしはすべての労苦と、すべての巧みなわざを見たが、これは人が互にねたみあってなすものである。これもまた空であって、風を捕えるようである。
17360 21 4 5 愚かなる者は手をつかねて、自分の肉を食う。
17361 21 4 6 片手に物を満たして平穏であるのは、両手に物を満たして労苦し、風を捕えるのにまさる。
17362 21 4 7 わたしはまた、日の下に空なる事のあるのを見た。
17363 21 4 8 ここに人がある。ひとりであって、仲間もなく、子もなく、兄弟もない。それでも彼の労苦は窮まりなく、その目は富に飽くことがない。また彼は言わない、「わたしはだれのために労するのか、どうして自分を楽しませないのか」と。これもまた空であって、苦しいわざである。
17364 21 4 9 ふたりはひとりにまさる。彼らはその労苦によって良い報いを得るからである。
17365 21 4 10 すなわち彼らが倒れる時には、そのひとりがその友を助け起す。しかしひとりであって、その倒れる時、これを助け起す者のない者はわざわいである。
17366 21 4 11 またふたりが一緒に寝れば暖かである。ひとりだけで、どうして暖かになり得ようか。
17367 21 4 12 人がもし、そのひとりを攻め撃ったなら、ふたりで、それに当るであろう。三つよりの綱はたやすくは切れない。
17368 21 4 13 貧しくて賢いわらべは、老いて愚かで、もはや、いさめをいれることを知らない王にまさる。
17369 21 4 14 たとい、その王が獄屋から出て、王位についた者であっても、また自分の国に貧しく生れて王位についた者であっても、そうである。
17370 21 4 15 わたしは日の下に歩むすべての民が、かのわらべのように王に代って立つのを見た。
17371 21 4 16 すべての民は果てしがない。彼はそのすべての民を導いた。しかし後に来る者は彼を喜ばない。たしかに、これもまた空であって、風を捕えるようである。
17372 21 5 1 神の宮に行く時には、その足を慎むがよい。近よって聞くのは愚かな者の犠牲をささげるのにまさる。彼らは悪を行っていることを知らないからである。
17373 21 5 2 神の前で軽々しく口をひらき、また言葉を出そうと、心にあせってはならない。神は天にいまし、あなたは地におるからである。それゆえ、あなたは言葉を少なくせよ。
17374 21 5 3 夢は仕事の多いことによってきたり、愚かなる者の声は言葉の多いことによって知られる。
17375 21 5 4 あなたは神に誓いをなすとき、それを果すことを延ばしてはならない。神は愚かな者を喜ばれないからである。あなたの誓ったことを必ず果せ。
17376 21 5 5 あなたが誓いをして、それを果さないよりは、むしろ誓いをしないほうがよい。
17377 21 5 6 あなたの口が、あなたに罪を犯させないようにせよ。また使者の前にそれは誤りであったと言ってはならない。どうして、神があなたの言葉を怒り、あなたの手のわざを滅ぼしてよかろうか。
17378 21 5 7 夢が多ければ空なる言葉も多い。しかし、あなたは神を恐れよ。
17379 21 5 8 あなたは国のうちに貧しい者をしえたげ、公道と正義を曲げることのあるのを見ても、その事を怪しんではならない。それは位の高い人よりも、さらに高い者があって、その人をうかがうからである。そしてそれらよりもなお高い者がある。
17380 21 5 9 しかし、要するに耕作した田畑をもつ国には王は利益である。
17381 21 5 10 金銭を好む者は金銭をもって満足しない。富を好む者は富を得て満足しない。これもまた空である。
17382 21 5 11 財産が増せば、これを食う者も増す。その持ち主は目にそれを見るだけで、なんの益があるか。
17383 21 5 12 働く者は食べることが少なくても多くても、快く眠る。しかし飽き足りるほどの富は、彼に眠ることをゆるさない。
17384 21 5 13 わたしは日の下に悲しむべき悪のあるのを見た。すなわち、富はこれをたくわえるその持ち主に害を及ぼすことである。
17385 21 5 14 またその富は不幸な出来事によってうせ行くことである。それで、その人が子をもうけても、彼の手には何も残らない。
17386 21 5 15 彼は母の胎から出てきたように、すなわち裸で出てきたように帰って行く。彼はその労苦によって得た何物をもその手に携え行くことができない。
17387 21 5 16 人は全くその来たように、また去って行かなければならない。これもまた悲しむべき悪である。風のために労する者になんの益があるか。
17388 21 5 17 人は一生、暗やみと、悲しみと、多くの悩みと、病と、憤りの中にある。
17389 21 5 18 見よ、わたしが見たところの善かつ美なる事は、神から賜わった短い一生の間、食い、飲み、かつ日の下で労するすべての労苦によって、楽しみを得る事である。これがその分だからである。
17390 21 5 19 また神はすべての人に富と宝と、それを楽しむ力を与え、またその分を取らせ、その労苦によって楽しみを得させられる。これが神の賜物である。
17391 21 5 20 このような人は自分の生きる日のことを多く思わない。神は喜びをもって彼の心を満たされるからである。
17392 21 6 1 わたしは日の下に一つの悪のあるのを見た。これは人々の上に重い。
17393 21 6 2 すなわち神は富と、財産と、誉とを人に与えて、その心に慕うものを、一つも欠けることのないようにされる。しかし神は、その人にこれを持つことを許されないで、他人がこれを持つようになる。これは空である。悪しき病である。
17394 21 6 3 たとい人は百人の子をもうけ、また命長く、そのよわいの日が多くても、その心が幸福に満足せず、また葬られることがなければ、わたしは言う、流産の子はその人にまさると。
17395 21 6 4 これはむなしく来て、暗やみの中に去って行き、その名は暗やみにおおわれる。
17396 21 6 5 またこれは日を見ず、物を知らない。けれどもこれは彼よりも安らかである。
17397 21 6 6 たとい彼は千年に倍するほど生きても幸福を見ない。みな一つ所に行くのではないか。
17398 21 6 7 人の労苦は皆、その口のためである。しかしその食欲は満たされない。
17399 21 6 8 賢い者は愚かな者になんのまさるところがあるか。また生ける者の前に歩むことを知る貧しい者もなんのまさるところがあるか。
17400 21 6 9 目に見る事は欲望のさまよい歩くにまさる。これもまた空であって、風を捕えるようなものである。
17401 21 6 10 今あるものは、すでにその名がつけられた。そして人はいかなる者であるかは知られた。それで人は自分よりも力強い者と争うことはできない。
17402 21 6 11 言葉が多ければむなしい事も多い。人になんの益があるか。
17403 21 6 12 人はその短く、むなしい命の日を影のように送るのに、何が人のために善であるかを知ることができよう。だれがその身の後に、日の下に何があるであろうかを人に告げることができるか。
17404 21 7 1 良き名は良き油にまさり、死ぬる日は生るる日にまさる。
17405 21 7 2 悲しみの家にはいるのは、宴会の家にはいるのにまさる。死はすべての人の終りだからである。生きている者は、これを心にとめる。
17406 21 7 3 悲しみは笑いにまさる。顔に憂いをもつことによって、心は良くなるからである。
17407 21 7 4 賢い者の心は悲しみの家にあり、愚かな者の心は楽しみの家にある。
17408 21 7 5 賢い者の戒めを聞くのは、愚かな者の歌を聞くのにまさる。
17409 21 7 6 愚かな者の笑いはかまの下に燃えるいばらの音のようである。これもまた空である。
17410 21 7 7 たしかに、しえたげは賢い人を愚かにし、まいないは人の心をそこなう。
17411 21 7 8 事の終りはその初めよりも良い。耐え忍ぶ心は、おごり高ぶる心にまさる。
17412 21 7 9 気をせきたてて怒るな。怒りは愚かな者の胸に宿るからである。
17413 21 7 10 「昔が今よりもよかったのはなぜか」と言うな。あなたがこれを問うのは知恵から出るのではない。
17414 21 7 11 知恵に財産が伴うのは良い。それは日を見る者どもに益がある。
17415 21 7 12 知恵が身を守るのは、金銭が身を守るようである。しかし、知恵はこれを持つ者に生命を保たせる。これが知識のすぐれた所である。
17416 21 7 13 神のみわざを考えみよ。神の曲げられたものを、だれがまっすぐにすることができるか。
17417 21 7 14 順境の日には楽しめ、逆境の日には考えよ。神は人に将来どういう事があるかを、知らせないために、彼とこれとを等しく造られたのである。
17418 21 7 15 わたしはこのむなしい人生において、もろもろの事を見た。そこには義人がその義によって滅びることがあり、悪人がその悪によって長生きすることがある。
17419 21 7 16 あなたは義に過ぎてはならない。また賢きに過ぎてはならない。あなたはどうして自分を滅ぼしてよかろうか。
17420 21 7 17 悪に過ぎてはならない。また愚かであってはならない。あなたはどうして、自分の時のこないのに、死んでよかろうか。
17421 21 7 18 あなたがこれを執るのはよい、また彼から手を引いてはならない。神をかしこむ者は、このすべてからのがれ出るのである。
17422 21 7 19 知恵が知者を強くするのは、十人のつかさが町におるのにまさる。
17423 21 7 20 善を行い、罪を犯さない正しい人は世にいない。
17424 21 7 21 人の語るすべての事に心をとめてはならない。これはあなたが、自分のしもべのあなたをのろう言葉を聞かないためである。
17425 21 7 22 あなたもまた、しばしば他人をのろったのを自分の心に知っているからである。
17426 21 7 23 わたしは知恵をもってこのすべての事を試みて、「わたしは知者となろう」と言ったが、遠く及ばなかった。
17427 21 7 24 物事の理は遠く、また、はなはだ深い。だれがこれを見いだすことができよう。
17428 21 7 25 わたしは、心を転じて、物を知り、事を探り、知恵と道理を求めようとし、また悪の愚かなこと、愚痴の狂気であることを知ろうとした。
17429 21 7 26 わたしは、その心が、わなと網のような女、その手が、かせのような女は、死よりも苦い者であることを見いだした。神を喜ばす者は彼女からのがれる。しかし罪びとは彼女に捕えられる。
17430 21 7 27 伝道者は言う、見よ、その数を知ろうとして、いちいち数えて、わたしが得たものはこれである。
17431 21 7 28 わたしはなおこれを求めたけれども、得なかった。わたしは千人のうちにひとりの男子を得たけれども、そのすべてのうちに、ひとりの女子をも得なかった。
17432 21 7 29 見よ、わたしが得た事は、ただこれだけである。すなわち、神は人を正しい者に造られたけれども、人は多くの計略を考え出した事である。
17433 21 8 1 だれが知者のようになり得よう。だれが事の意義を知り得よう。人の知恵はその人の顔を輝かせ、またその粗暴な顔を変える。
17434 21 8 2 王の命を守れ。すでに神をさして誓ったことゆえ、驚くな。
17435 21 8 3 事が悪い時は、王の前を去れ、ためらうな。彼はすべてその好むところをなすからである。
17436 21 8 4 王の言葉は決定的である。だれが彼に「あなたは何をするのか」と言うことができようか。
17437 21 8 5 命令を守る者は災にあわない。知者の心は時と方法をわきまえている。
17438 21 8 6 人の悪が彼の上に重くても、すべてのわざには時と方法がある。
17439 21 8 7 後に起る事を知る者はない。どんな事が起るかをだれが彼に告げ得よう。
17440 21 8 8 風をとどめる力をもつ人はない。また死の日をつかさどるものはない。戦いには免除はない。また悪はこれを行う者を救うことができない。
17441 21 8 9 わたしはこのすべての事を見た。また日の下に行われるもろもろのわざに心を用いた。時としてはこの人が、かの人を治めて、これに害をこうむらせることがある。
17442 21 8 10 またわたしは悪人の葬られるのを見た。彼らはいつも聖所に出入りし、それを行ったその町でほめられた。これもまた空である。
17443 21 8 11 悪しきわざに対する判決がすみやかに行われないために、人の子らの心はもっぱら悪を行うことに傾いている。
17444 21 8 12 罪びとで百度悪をなして、なお長生きするものがあるけれども、神をかしこみ、み前に恐れをいだく者には幸福があることを、わたしは知っている。
17445 21 8 13 しかし悪人には幸福がない。またその命は影のようであって長くは続かない。彼は神の前に恐れをいだかないからである。
17446 21 8 14 地の上に空な事が行われている。すなわち、義人であって、悪人に臨むべき事が、その身に臨む者がある。また、悪人であって、義人に臨むべき事が、その身に臨む者がある。わたしは言った、これもまた空であると。
17447 21 8 15 そこで、わたしは歓楽をたたえる。それは日の下では、人にとって、食い、飲み、楽しむよりほかに良い事はないからである。これこそは日の下で、神が賜わった命の日の間、その勤労によってその身に伴うものである。
17448 21 8 16 わたしは心をつくして知恵を知ろうとし、また地上に行われるわざを昼も夜も眠らずに窮めようとしたとき、
17449 21 8 17 わたしは神のもろもろのわざを見たが、人は日の下に行われるわざを窮めることはできない。人はこれを尋ねようと労しても、これを窮めることはできない。また、たとい知者があって、これを知ろうと思っても、これを窮めることはできないのである。
17450 21 9 1 わたしはこのすべての事に心を用いて、このすべての事を明らかにしようとした。すなわち正しい者と賢い者、および彼らのわざが、神の手にあることを明らかにしようとした。愛するか憎むかは人にはわからない。彼らの前にあるすべてのことは空である。
17451 21 9 2 すべての人に臨むところは、みな同様である。正しい者にも正しくない者にも、善良な者にも悪い者にも、清い者にも汚れた者にも、犠牲をささげる者にも、犠牲をささげない者にも、その臨むところは同様である。善良な人も罪びとも異なることはない。誓いをなす者も、誓いをなすことを恐れる者も異なることはない。
17452 21 9 3 すべての人に同一に臨むのは、日の下に行われるすべての事のうちの悪事である。また人の心は悪に満ち、その生きている間は、狂気がその心のうちにあり、その後は死者のもとに行くのである。
17453 21 9 4 すべて生ける者に連なる者には望みがある。生ける犬は、死せるししにまさるからである。
17454 21 9 5 生きている者は死ぬべき事を知っている。しかし死者は何事をも知らない、また、もはや報いを受けることもない。その記憶に残る事がらさえも、ついに忘れられる。
17455 21 9 6 その愛も、憎しみも、ねたみも、すでに消えうせて、彼らはもはや日の下に行われるすべての事に、永久にかかわることがない。
17456 21 9 7 あなたは行って、喜びをもってあなたのパンを食べ、楽しい心をもってあなたの酒を飲むがよい。神はすでに、あなたのわざをよみせられたからである。
17457 21 9 8 あなたの衣を常に白くせよ。あなたの頭に油を絶やすな。
17458 21 9 9 日の下で神から賜わったあなたの空なる命の日の間、あなたはその愛する妻と共に楽しく暮すがよい。これはあなたが世にあってうける分、あなたが日の下で労する労苦によって得るものだからである。
17459 21 9 10 すべてあなたの手のなしうる事は、力をつくしてなせ。あなたの行く陰府には、わざも、計略も、知識も、知恵もないからである。
17460 21 9 11 わたしはまた日の下を見たが、必ずしも速い者が競走に勝つのではなく、強い者が戦いに勝つのでもない。また賢い者がパンを得るのでもなく、さとき者が富を得るのでもない。また知識ある者が恵みを得るのでもない。しかし時と災難はすべての人に臨む。
17461 21 9 12 人はその時を知らない。魚がわざわいの網にかかり、鳥がわなにかかるように、人の子らもわざわいの時が突然彼らに臨む時、それにかかるのである。
17462 21 9 13 またわたしは日の下にこのような知恵の例を見た。これはわたしにとって大きな事である。
17463 21 9 14 ここに一つの小さい町があって、そこに住む人は少なかったが、大いなる王が攻めて来て、これを囲み、これに向かって大きな雲梯を建てた。
17464 21 9 15 しかし、町のうちにひとりの貧しい知恵のある人がいて、その知恵をもって町を救った。ところがだれひとり、その貧しい人を記憶する者がなかった。
17465 21 9 16 そこでわたしは言う、「知恵は力にまさる。しかしかの貧しい人の知恵は軽んぜられ、その言葉は聞かれなかった」。
17466 21 9 17 静かに聞かれる知者の言葉は、愚かな者の中のつかさたる者の叫びにまさる。
17467 21 9 18 知恵は戦いの武器にまさる。しかし、ひとりの罪びとは多くの良きわざを滅ぼす。
17468 21 10 1 死んだはえは、香料を造る者のあぶらを臭くし、少しの愚痴は知恵と誉よりも重い。
17469 21 10 2 知者の心は彼を右に向けさせ、愚者の心は左に向けさせる。
17470 21 10 3 愚者は道を行く時、思慮が足りない、自分の愚かなことをすべての人に告げる。
17471 21 10 4 つかさたる者があなたに向かって立腹しても、あなたの所を離れてはならない。温順は大いなるとがを和らげるからである。
17472 21 10 5 わたしは日の下に一つの悪のあるのを見た。それはつかさたる者から出るあやまちに似ている。
17473 21 10 6 すなわち愚かなる者が高い地位に置かれ、富める者が卑しい所に座している。
17474 21 10 7 わたしはしもべたる者が馬に乗り、君たる者が奴隷のように徒歩であるくのを見た。
17475 21 10 8 穴を掘る者はみずからこれに陥り、石がきをこわす者は、へびにかまれる。
17476 21 10 9 石を切り出す者はそれがために傷をうけ、木を割る者はそれがために危険にさらされる。
17477 21 10 10 鉄が鈍くなったとき、人がその刃をみがかなければ、力を多くこれに用いねばならない。しかし、知恵は人を助けてなし遂げさせる。
17478 21 10 11 へびがもし呪文をかけられる前に、かみつけば、へび使は益がない。
17479 21 10 12 知者の口の言葉は恵みがある、しかし愚者のくちびるはその身を滅ぼす。
17480 21 10 13 愚者の口の言葉の初めは愚痴である、またその言葉の終りは悪い狂気である。
17481 21 10 14 愚者は言葉を多くする、しかし人はだれも後に起ることを知らない。だれがその身の後に起る事を告げることができようか。
17482 21 10 15 愚者の労苦はその身を疲れさせる、彼は町にはいる道をさえ知らない。
17483 21 10 16 あなたの王はわらべであって、その君たちが朝から、ごちそうを食べる国よ、あなたはわざわいだ。
17484 21 10 17 あなたの王は自主の子であって、その君たちが酔うためでなく、力を得るために、適当な時にごちそうを食べる国よ、あなたはさいわいだ。
17485 21 10 18 怠惰によって屋根は落ち、無精によって家は漏る。
17486 21 10 19 食事は笑いのためになされ、酒は命を楽しませる。金銭はすべての事に応じる。
17487 21 10 20 あなたは心のうちでも王をのろってはならない、また寝室でも富める者をのろってはならない。空の鳥はあなたの声を伝え、翼のあるものは事を告げるからである。
17488 21 11 1 あなたのパンを水の上に投げよ、多くの日の後、あなたはそれを得るからである。
17489 21 11 2 あなたは一つの分を七つまた八つに分けよ、あなたは、どんな災が地に起るかを知らないからだ。
17490 21 11 3 雲がもし雨で満ちるならば、地にそれを注ぐ、また木がもし南か北に倒れるならば、その木は倒れた所に横たわる。
17491 21 11 4 風を警戒する者は種をまかない、雲を観測する者は刈ることをしない。
17492 21 11 5 あなたは、身ごもった女の胎の中で、どうして霊が骨にはいるかを知らない。そのようにあなたは、すべての事をなされる神のわざを知らない。
17493 21 11 6 朝のうちに種をまけ、夕まで手を休めてはならない。実るのは、これであるか、あれであるか、あるいは二つともに良いのであるか、あなたは知らないからである。
17494 21 11 7 光は快いものである。目に太陽を見るのは楽しいことである。
17495 21 11 8 人が多くの年、生きながらえ、そのすべてにおいて自分を楽しませても、暗い日の多くあるべきことを忘れてはならない。すべて、きたらんとする事は皆空である。
17496 21 11 9 若い者よ、あなたの若い時に楽しめ。あなたの若い日にあなたの心を喜ばせよ。あなたの心の道に歩み、あなたの目の見るところに歩め。ただし、そのすべての事のために、神はあなたをさばかれることを知れ。
17497 21 11 10 あなたの心から悩みを去り、あなたのからだから痛みを除け。若い時と盛んな時はともに空だからである。
17498 21 12 1 あなたの若い日に、あなたの造り主を覚えよ。悪しき日がきたり、年が寄って、「わたしにはなんの楽しみもない」と言うようにならない前に、
17499 21 12 2 また日や光や、月や星の暗くならない前に、雨の後にまた雲が帰らないうちに、そのようにせよ。
17500 21 12 3 その日になると、家を守る者は震え、力ある人はかがみ、ひきこなす女は少ないために休み、窓からのぞく者の目はかすみ、
17501 21 12 4 町の門は閉ざされる。その時ひきこなす音は低くなり、人は鳥の声によって起きあがり、歌の娘たちは皆、低くされる。
17502 21 12 5 彼らはまた高いものを恐れる。恐ろしいものが道にあり、あめんどうは花咲き、いなごはその身をひきずり歩き、その欲望は衰え、人が永遠の家に行こうとするので、泣く人が、ちまたを歩きまわる。
17503 21 12 6 その後、銀のひもは切れ、金の皿は砕け、水がめは泉のかたわらで破れ、車は井戸のかたわらで砕ける。
17504 21 12 7 ちりは、もとのように土に帰り、霊はこれを授けた神に帰る。
17505 21 12 8 伝道者は言う、「空の空、いっさいは空である」と。
17506 21 12 9 さらに伝道者は知恵があるゆえに、知識を民に教えた。彼はよく考え、尋ねきわめ、あまたの箴言をまとめた。
17507 21 12 10 伝道者は麗しい言葉を得ようとつとめた。また彼は真実の言葉を正しく書きしるした。
17508 21 12 11 知者の言葉は突き棒のようであり、またよく打った釘のようなものであって、ひとりの牧者から出た言葉が集められたものである。
17509 21 12 12 わが子よ、これら以外の事にも心を用いよ。多くの書を作れば際限がない。多く学べばからだが疲れる。
17510 21 12 13 事の帰する所は、すべて言われた。すなわち、神を恐れ、その命令を守れ。これはすべての人の本分である。
17511 21 12 14 神はすべてのわざ、ならびにすべての隠れた事を善悪ともにさばかれるからである。
17512 22 1 1 ソロモンの雅歌
17513 22 1 2 どうか、あなたの口の口づけをもって、わたしに口づけしてください。あなたの愛はぶどう酒にまさり、
17514 22 1 3 あなたのにおい油はかんばしく、あなたの名は注がれたにおい油のようです。それゆえ、おとめたちはあなたを愛するのです。
17515 22 1 4 あなたのあとについて、行かせてください。わたしたちは急いでまいりましょう。王はわたしをそのへやに連れて行かれた。わたしたちは、あなたによって喜び楽しみ、ぶどう酒にまさって、あなたの愛をほめたたえます。おとめたちは真心をもってあなたを愛します。
17516 22 1 5 エルサレムの娘たちよ、わたしは黒いけれども美しい。ケダルの天幕のように、ソロモンのとばりのように。
17517 22 1 6 わたしが日に焼けているがために、日がわたしを焼いたがために、わたしを見つめてはならない。わが母の子らは怒って、わたしにぶどう園を守らせた。しかし、わたしは自分のぶどう園を守らなかった。
17518 22 1 7 わが魂の愛する者よ、あなたはどこで、あなたの群れを養い、昼の時にどこで、それを休ませるのか、わたしに告げてください。どうして、わたしはさまよう者のように、あなたの仲間の群れのかたわらに、いなければならないのですか。
17519 22 1 8 女のうちの最も美しい者よ、あなたが知らないなら、群れの足跡に従っていって、羊飼たちの天幕のかたわらで、あなたの子やぎを飼いなさい。
17520 22 1 9 わが愛する者よ、わたしはあなたをパロの車の雌馬になぞらえる。
17521 22 1 10 あなたのほおは美しく飾られ、あなたの首は宝石をつらねた首飾で美しい。
17522 22 1 11 われわれは銀を散らした金の飾り物を、あなたのために造ろう。
17523 22 1 12 王がその席に着かれたとき、わたしのナルドはそのかおりを放った。
17524 22 1 13 わが愛する者は、わたしにとっては、わたしの乳ぶさの間にある没薬の袋のようです。
17525 22 1 14 わが愛する者は、わたしにとっては、エンゲデのぶどう園にあるヘンナ樹の花ぶさのようです。
17526 22 1 15 わが愛する者よ、見よ、あなたは美しい、見よ、あなたは美しい、あなたの目ははとのようだ。
17527 22 1 16 わが愛する者よ、見よ、あなたは美しく、まことにりっぱです。わたしたちの床は緑、
17528 22 1 17 わたしたちの家の梁は香柏、そのたるきはいとすぎです。
17529 22 2 1 わたしはシャロンのばら、谷のゆりです。
17530 22 2 2 おとめたちのうちにわが愛する者のあるのは、いばらの中にゆりの花があるようだ。
17531 22 2 3 わが愛する者の若人たちの中にあるのは、林の木の中にりんごの木があるようです。わたしは大きな喜びをもって、彼の陰にすわった。彼の与える実はわたしの口に甘かった。
17532 22 2 4 彼はわたしを酒宴の家に連れて行った。わたしの上にひるがえる彼の旗は愛であった。
17533 22 2 5 干ぶどうをもって、わたしに力をつけ、りんごをもって、わたしに元気をつけてください。わたしは愛のために病みわずらっているのです。
17534 22 2 6 どうか、彼の左の手がわたしの頭の下にあり、右の手がわたしを抱いてくれるように。
17535 22 2 7 エルサレムの娘たちよ、わたしは、かもしかと野の雌じかをさして、あなたがたに誓い、お願いする、愛のおのずから起るときまでは、ことさらに呼び起すことも、さますこともしないように。
17536 22 2 8 わが愛する者の声が聞える。見よ、彼は山をとび、丘をおどり越えて来る。
17537 22 2 9 わが愛する者はかもしかのごとく、若い雄じかのようです。見よ、彼はわたしたちの壁のうしろに立ち、窓からのぞき、格子からうかがっている。
17538 22 2 10 わが愛する者はわたしに語って言う、「わが愛する者よ、わが麗しき者よ、立って、出てきなさい。
17539 22 2 11 見よ、冬は過ぎ、雨もやんで、すでに去り、
17540 22 2 12 もろもろの花は地にあらわれ、鳥のさえずる時がきた。山ばとの声がわれわれの地に聞える。
17541 22 2 13 いちじくの木はその実を結び、ぶどうの木は花咲いて、かんばしいにおいを放つ。わが愛する者よ、わが麗しき者よ、立って、出てきなさい。
17542 22 2 14 岩の裂け目、がけの隠れ場におるわがはとよ、あなたの顔を見せなさい。あなたの声を聞かせなさい。あなたの声は愛らしく、あなたの顔は美しい。
17543 22 2 15 われわれのためにきつねを捕えよ、ぶどう園を荒す小ぎつねを捕えよ、われわれのぶどう園は花盛りだから」と。
17544 22 2 16 わが愛する者はわたしのもの、わたしは彼のもの。彼はゆりの花の中で、その群れを養っている。
17545 22 2 17 わが愛する者よ、日の涼しくなるまで、影の消えるまで、身をかえして出ていって、険しい山々の上で、かもしかのように、若い雄じかのようになってください。
17546 22 3 1 わたしは夜、床の上で、わが魂の愛する者をたずねた。わたしは彼をたずねたが、見つからなかった。わたしは彼を呼んだが、答がなかった。
17547 22 3 2 「わたしは今起きて、町をまわり歩き、街路や広場で、わが魂の愛する者をたずねよう」と、彼をたずねたが、見つからなかった。
17548 22 3 3 町をまわり歩く夜回りたちに出会ったので、「あなたがたは、わが魂の愛する者を見ましたか」と尋ねた。
17549 22 3 4 わたしが彼らと別れて行くとすぐ、わが魂の愛する者に出会った。わたしは彼を引き留めて行かせず、ついにわが母の家につれて行き、わたしを産んだ者のへやにはいった。
17550 22 3 5 エルサレムの娘たちよ、わたしは、かもしかと野の雌じかをさして、あなたがたに誓い、お願いする、愛のおのずから起るときまでは、ことさらに呼び起すことも、さますこともしないように。
17551 22 3 6 没薬、乳香など、商人のもろもろの香料をもって、かおりを放ち、煙の柱のように、荒野から上って来るものは何か。
17552 22 3 7 見よ、あれはソロモンの乗物で、六十人の勇士がそのまわりにいる。イスラエルの勇士で、
17553 22 3 8 皆、つるぎをとり、戦いをよくし、おのおの腰に剣を帯びて、夜の危険に備えている。
17554 22 3 9 ソロモン王はレバノンの木をもって、自分のために輿をつくった。
17555 22 3 10 その柱は銀、そのうしろは金、その座は紫の布でつくった。その内部にはエルサレムの娘たちが、愛情をこめてつくった物を張りつけた。
17556 22 3 11 シオンの娘たちよ、出てきてソロモン王を見よ。彼は婚姻の日、心の喜びの日に、その母の彼にかぶらせた冠をいただいている。
17557 22 4 1 わが愛する者よ、見よ、あなたは美しい、見よ、あなたは美しい。あなたの目は、顔おおいのうしろにあって、はとのようだ。あなたの髪はギレアデの山を下るやぎの群れのようだ。
17558 22 4 2 あなたの歯は洗い場から上ってきた毛を切られた雌羊の群れのようだ。みな二子を産んで、一匹も子のないものはない。
17559 22 4 3 あなたのくちびるは紅の糸のようで、その口は愛らしい。あなたのほおは顔おおいのうしろにあって、ざくろの片われのようだ。
17560 22 4 4 あなたの首は武器倉のために建てたダビデのやぐらのようだ。その上には一千の盾を掛けつらね、みな勇士の大盾である。
17561 22 4 5 あなたの両乳ぶさは、かもしかの二子である二匹の子じかが、ゆりの花の中に草を食べているようだ。
17562 22 4 6 日の涼しくなるまで、影の消えるまで、わたしは没薬の山および乳香の丘へ急ぎ行こう。
17563 22 4 7 わが愛する者よ、あなたはことごとく美しく、少しのきずもない。
17564 22 4 8 わが花嫁よ、レバノンからわたしと一緒にきなさい、レバノンからわたしと一緒にきなさい。アマナの頂を去り、セニルおよびヘルモンの頂を去り、ししの穴、ひょうの山を去りなさい。
17565 22 4 9 わが妹、わが花嫁よ、あなたはわたしの心を奪った。あなたはただひと目で、あなたの首飾のひと玉で、わたしの心を奪った。
17566 22 4 10 わが妹、わが花嫁よ、あなたの愛は、なんと麗しいことであろう。あなたの愛はぶどう酒よりも、あなたの香油のかおりはすべての香料よりも、いかにすぐれていることであろう。
17567 22 4 11 わが花嫁よ、あなたのくちびるは甘露をしたたらせ、あなたの舌の下には、蜜と乳とがある。あなたの衣のかおりはレバノンのかおりのようだ。
17568 22 4 12 わが妹、わが花嫁は閉じた園、閉じた園、封じた泉のようだ。
17569 22 4 13 あなたの産み出す物は、もろもろの良き実をもつざくろの園、ヘンナおよびナルド、
17570 22 4 14 ナルド、さふらん、しょうぶ、肉桂、さまざまの乳香の木、没薬、ろかい、およびすべての尊い香料である。
17571 22 4 15 あなたは園の泉、生ける水の井、またレバノンから流れ出る川である。
17572 22 4 16 北風よ、起れ、南風よ、きたれ。わが園を吹いて、そのかおりを広く散らせ。わが愛する者がその園にはいってきて、その良い実を食べるように。
17573 22 5 1 わが妹、わが花嫁よ、わたしはわが園にはいって、わが没薬と香料とを集め、わが蜜蜂の巣と、蜜とを食べ、わがぶどう酒と乳とを飲む。
17574 22 5 2 わたしは眠っていたが、心はさめていた。聞きなさい、わが愛する者が戸をたたいている。「わが妹、わが愛する者、わがはと、わが全き者よ、あけてください。わたしの頭は露でぬれ、わたしの髪の毛は夜露でぬれている」と言う。
17575 22 5 3 わたしはすでに着物を脱いだ、どうしてまた着られようか。すでに足を洗った、どうしてまた、よごせようか。
17576 22 5 4 わが愛する者が掛けがねに手をかけたので、わが心は内におどった。
17577 22 5 5 わたしが起きて、わが愛する者のためにあけようとしたとき、わたしの手から没薬がしたたり、わたしの指から没薬の液が流れて、貫の木の取手の上に落ちた。
17578 22 5 6 わたしはわが愛する者のために開いたが、わが愛する者はすでに帰り去った。彼が帰り去ったとき、わが心は力を失った。わたしは尋ねたけれども見つからず、呼んだけれども答がなかった。
17579 22 5 7 町をまわり歩く夜回りらはわたしを見ると、撃って傷つけ、城壁を守る者らは、わたしの上着をはぎ取った。
17580 22 5 8 エルサレムの娘たちよ、わたしはあなたがたに誓って、お願いする。もしわが愛する者を見たなら、わたしが愛のために病みわずらっていると、彼に告げてください。
17581 22 5 9 女のうちの最も美しい者よ、あなたの愛する者は、ほかの人の愛する者に、なんのまさるところがあるか。あなたの愛する者は、ほかの人の愛する者に、なんのまさるところがあって、そのように、わたしたちに誓い、願うのか。
17582 22 5 10 わが愛する者は白く輝き、かつ赤く、万人にぬきんで、
17583 22 5 11 その頭は純金のように、その髪の毛はうねっていて、からすのように黒い。
17584 22 5 12 その目は泉のほとりのはとのように、乳で洗われて、良く落ち着いている。
17585 22 5 13 そのほおは、かんばしい花の床のように、かおりを放ち、そのくちびるは、ゆりの花のようで、没薬の液をしたたらす。
17586 22 5 14 その手は宝石をはめた金の円筒のごとく、そのからだはサファイヤをもっておおった象牙の細工のごとく、
17587 22 5 15 その足のすねは金の台の上にすえた大理石の柱のごとく、その姿はレバノンのごとく、香柏のようで、美しい。
17588 22 5 16 その言葉は、はなはだ美しく、彼はことごとく麗しい。エルサレムの娘たちよ、これがわが愛する者、これがわが友なのです。
17589 22 6 1 女のうちの最も美しい者よ、あなたの愛する者はどこへ行ったか。あなたの愛する者はどこへおもむいたか。わたしたちはあなたと一緒にたずねよう。
17590 22 6 2 わが愛する者は園の中で、群れを飼い、またゆりの花を取るために自分の園に下り、かんばしい花の床へ行きました。
17591 22 6 3 わたしはわが愛する人のもの、わが愛する者はわたしのものです。彼はゆりの花の中で、その群れを飼っています。
17592 22 6 4 わが愛する者よ、あなたは美しいことテルザのごとく、麗しいことエルサレムのごとく、恐るべきこと旗を立てた軍勢のようだ。
17593 22 6 5 あなたの目はわたしを恐れさせるゆえ、わたしからそむけてください。あなたの髪はギレアデの山を下るやぎの群れのようだ。
17594 22 6 6 あなたの歯は洗い場から上ってきた雌羊の群れのようだ。みな二子を産んで、一匹も子のないものはない。
17595 22 6 7 あなたのほおは顔おおいのうしろにあって、ざくろの片われのようだ。
17596 22 6 8 王妃は六十人、そばめは八十人、また数しれぬおとめがいる。
17597 22 6 9 わがはと、わが全き者はただひとり、彼女は母のひとり子、彼女を産んだ者の最愛の者だ。おとめたちは彼女を見て、さいわいな者ととなえ、王妃たち、そばめたちもまた、彼女を見て、ほめた。
17598 22 6 10 「このしののめのように見え、月のように美しく、太陽のように輝き、恐るべき事、旗を立てた軍勢のような者はだれか」。
17599 22 6 11 わたしは谷の花を見、ぶどうが芽ざしたか、ざくろの花が咲いたかを見ようと、くるみの園へ下っていった。
17600 22 6 12 わたしの知らないうちに、わたしの思いは、わたしを車の中のわが君のかたわらにおらせた。
17601 22 6 13 帰れ、帰れ、シュラムの女よ、帰れ、帰れ、わたしたちはあなたを見たいものだ。
17602 22 7 1 女王のような娘よ、あなたの足は、くつの中にあって、なんと麗しいことであろう。あなたのももは、まろやかで、玉のごとく、名人の手のわざのようだ。
17603 22 7 2 あなたのほぞは、混ぜたぶどう酒を欠くことのない丸い杯のごとく、あなたの腹は、ゆりの花で囲まれた山盛りの麦のようだ。
17604 22 7 3 あなたの両乳ぶさは、かもしかの二子である二匹の子じかのようだ。
17605 22 7 4 あなたの首は象牙のやぐらのごとく、あなたの目は、バテラビムの門のほとりにあるヘシボンの池のごとく、あなたの鼻は、ダマスコを見おろすレバノンのやぐらのようだ。
17606 22 7 5 あなたの頭は、カルメルのようにあなたを飾り、髪の毛は紫色のようで、王はそのたれ髪に捕われた。
17607 22 7 6 愛する者よ、快活なおとめよ、あなたはなんと美しく愛すべき者であろう。
17608 22 7 7 あなたはなつめやしの木のように威厳があり、あなたの乳ぶさはそのふさのようだ。
17609 22 7 8 わたしは言う、「このなつめやしの木にのぼり、その枝に取りつこう。どうか、あなたの乳ぶさが、ぶどうのふさのごとく、あなたの息のにおいがりんごのごとく、
17610 22 7 9 あなたの口づけが、なめらかに流れ下る良きぶどう酒のごとく、くちびると歯の上をすべるように」と。
17611 22 7 10 わたしはわが愛する人のもの、彼はわたしを恋い慕う。
17612 22 7 11 わが愛する者よ、さあ、わたしたちはいなかへ出ていって、村里に宿りましょう。
17613 22 7 12 わたしたちは早く起き、ぶどう園へ行って、ぶどうの木が芽ざしたか、ぶどうの花が咲いたか、ざくろが花咲いたかを見ましょう。その所で、わたしはわが愛をあなたに与えます。
17614 22 7 13 恋なすは、かおりを放ち、もろもろの良きくだものは、新しいのも古いのも共にわたしたちの戸の上にある。わが愛する者よ、わたしはこれをあなたのためにたくわえました。
17615 22 8 1 どうか、あなたは、わが母の乳ぶさを吸ったわが兄弟のようになってください。わたしがそとであなたに会うとき、あなたに口づけしても、だれもわたしをいやしめないでしょう。
17616 22 8 2 わたしはあなたを導いて、わが母の家に行き、わたしを産んだ者のへやにはいり、香料のはいったぶどう酒、ざくろの液を、あなたに飲ませましょう。
17617 22 8 3 どうか、彼の左の手がわたしの頭の下にあり、右の手がわたしを抱いてくれるように。
17618 22 8 4 エルサレムの娘たちよ、わたしはあなたがたに誓い、お願いする、愛のおのずから起るときまでは、ことさらに呼び起すことも、さますこともしないように。
17619 22 8 5 自分の愛する者によりかかって、荒野から上って来る者はだれですか。
17620 22 8 6 わたしをあなたの心に置いて印のようにし、あなたの腕に置いて印のようにしてください。愛は死のように強く、ねたみは墓のように残酷だからです。そのきらめきは火のきらめき、最もはげしい炎です。
17621 22 8 7 愛は大水も消すことができない、洪水もおぼれさせることができない。もし人がその家の財産をことごとく与えて、愛に換えようとするならば、いたくいやしめられるでしょう。
17622 22 8 8 わたしたちに小さい妹がある、まだ乳ぶさがない。わたしたちの妹に縁談のある日には、彼女のために何をしてやろうか。
17623 22 8 9 彼女が城壁であるなら、その上に銀の塔を建てよう。彼女が戸であるなら、香柏の板でそれを囲もう。
17624 22 8 10 わたしは城壁、わたしの乳ぶさは、やぐらのようでありました。それでわたしは彼の目には、平和をもたらす者のようでありました。
17625 22 8 11 ソロモンはバアルハモンにぶどう園をもっていた。彼はぶどう園を、守る者どもにあずけて、おのおのその実のために銀一千を納めさせた。
17626 22 8 12 わたしのものであるぶどう園は、わたしの前にある。ソロモンよ、あなたは一千を獲るでしょう、その実を守る者どもは二百を獲るでしょう。
17627 22 8 13 園の中に住む者よ、わたしの友だちはあなたの声に耳を傾けます、どうぞ、それをわたしに聞かせてください。
17628 22 8 14 わが愛する者よ、急いでください。かんばしい山々の上で、かもしかのように、また若い雄じかのようになってください。
17629 23 1 1 アモツの子イザヤがユダの王ウジヤ、ヨタム、アハズ、ヒゼキヤの世にユダとエルサレムについて見た幻。
17630 23 1 2 天よ、聞け、地よ、耳を傾けよ、主が次のように語られたから、「わたしは子を養い育てた、しかし彼らはわたしにそむいた。
17631 23 1 3 牛はその飼主を知り、ろばはその主人のまぐさおけを知る。しかしイスラエルは知らず、わが民は悟らない」。
17632 23 1 4 ああ、罪深い国びと、不義を負う民、悪をなす者のすえ、堕落せる子らよ。彼らは主を捨て、イスラエルの聖者をあなどり、これをうとんじ遠ざかった。
17633 23 1 5 あなたがたは、どうして重ね重ねそむいて、なおも打たれようとするのか。その頭はことごとく病み、その心は全く弱りはてている。
17634 23 1 6 足のうらから頭まで、完全なところがなく、傷と打ち傷と生傷ばかりだ。これを絞り出すものなく、包むものなく、油をもってやわらげるものもない。
17635 23 1 7 あなたがたの国は荒れすたれ、町々は火で焼かれ、田畑のものはあなたがたの前で外国人に食われ、滅ぼされたソドムのように荒れすたれた。
17636 23 1 8 シオンの娘はぶどう畑の仮小屋のように、きゅうり畑の番小屋のように、包囲された町のように、ただひとり残った。
17637 23 1 9 もし万軍の主が、われわれに少しの生存者を残されなかったなら、われわれはソドムのようになり、またゴモラと同じようになったであろう。
17638 23 1 10 あなたがたソドムのつかさたちよ、主の言葉を聞け。あなたがたゴモラの民よ、われわれの神の教に耳を傾けよ。
17639 23 1 11 主は言われる、「あなたがたがささげる多くの犠牲は、わたしになんの益があるか。わたしは雄羊の燔祭と、肥えた獣の脂肪とに飽いている。わたしは雄牛あるいは小羊、あるいは雄やぎの血を喜ばない。
17640 23 1 12 あなたがたは、わたしにまみえようとして来るが、だれが、わたしの庭を踏み荒すことを求めたか。
17641 23 1 13 あなたがたは、もはや、むなしい供え物を携えてきてはならない。薫香は、わたしの忌みきらうものだ。新月、安息日、また会衆を呼び集めること――わたしは不義と聖会とに耐えられない。
17642 23 1 14 あなたがたの新月と定めの祭とは、わが魂の憎むもの、それはわたしの重荷となり、わたしは、それを負うのに疲れた。
17643 23 1 15 あなたがたが手を伸べるとき、わたしは目をおおって、あなたがたを見ない。たとい多くの祈をささげても、わたしは聞かない。あなたがたの手は血まみれである。
17644 23 1 16 あなたがたは身を洗って、清くなり、わたしの目の前からあなたがたの悪い行いを除き、悪を行うことをやめ、
17645 23 1 17 善を行うことをならい、公平を求め、しえたげる者を戒め、みなしごを正しく守り、寡婦の訴えを弁護せよ。
17646 23 1 18 主は言われる、さあ、われわれは互に論じよう。たといあなたがたの罪は緋のようであっても、雪のように白くなるのだ。紅のように赤くても、羊の毛のようになるのだ。
17647 23 1 19 もし、あなたがたが快く従うなら、地の良き物を食べることができる。
17648 23 1 20 しかし、あなたがたが拒みそむくならば、つるぎで滅ぼされる」。これは主がその口で語られたことである。
17649 23 1 21 かつては忠信であった町、どうして遊女となったのか。昔は公平で満ち、正義がそのうちにやどっていたのに、今は人を殺す者ばかりとなってしまった。
17650 23 1 22 あなたの銀はかすとなり、あなたのぶどう酒は水をまじえ、
17651 23 1 23 あなたのつかさたちはそむいて、盗びとの仲間となり、みな、まいないを好み、贈り物を追い求め、みなしごを正しく守らず、寡婦の訴えは彼らに届かない。
17652 23 1 24 このゆえに、主、万軍の主、イスラエルの全能者は言われる、「ああ、わたしはわが敵にむかって憤りをもらし、わがあだにむかって恨みをはらす。
17653 23 1 25 わたしはまた、わが手をあなたに向け、あなたのかすを灰汁で溶かすように溶かし去り、あなたの混ざり物をすべて取り除く。
17654 23 1 26 こうして、あなたのさばきびとをもとのとおりに、あなたの議官を初めのとおりに回復する。その後あなたは正義の都、忠信の町ととなえられる」。
17655 23 1 27 シオンは公平をもってあがなわれ、そのうちの悔い改める者は、正義をもってあがなわれる。
17656 23 1 28 しかし、そむく者と罪びととは共に滅ぼされ、主を捨てる者は滅びうせる。
17657 23 1 29 あなたがたは、みずから喜んだかしの木によって、はずかしめを受け、みずから選んだ園によって、恥じ赤らむ。
17658 23 1 30 あなたがたは葉の枯れるかしの木のように、水のない園のようになり、
17659 23 1 31 強い者も麻くずのように、そのわざは火花のようになり、その二つのものは共に燃えて、それを消す者はない。
17660 23 2 1 アモツの子イザヤがユダとエルサレムについて示された言葉。
17661 23 2 2 終りの日に次のことが起る。主の家の山は、もろもろの山のかしらとして堅く立ち、もろもろの峰よりも高くそびえ、すべて国はこれに流れてき、
17662 23 2 3 多くの民は来て言う、「さあ、われわれは主の山に登り、ヤコブの神の家へ行こう。彼はその道をわれわれに教えられる、われわれはその道に歩もう」と。律法はシオンから出、主の言葉はエルサレムから出るからである。
17663 23 2 4 彼はもろもろの国のあいだにさばきを行い、多くの民のために仲裁に立たれる。こうして彼らはそのつるぎを打ちかえて、すきとし、そのやりを打ちかえて、かまとし、国は国にむかって、つるぎをあげず、彼らはもはや戦いのことを学ばない。
17664 23 2 5 ヤコブの家よ、さあ、われわれは主の光に歩もう。
17665 23 2 6 あなたはあなたの民ヤコブの家を捨てられた。これは彼らが東の国からの占い師をもって満たし、ペリシテびとのように占い者となり、外国人と同盟を結んだからである。
17666 23 2 7 彼らの国には金銀が満ち、その財宝は限りない。また彼らの国には馬が満ち、その戦車も限りない。
17667 23 2 8 また彼らの国には偶像が満ち、彼らはその手のわざを拝み、その指で作ったものを拝む。
17668 23 2 9 こうして人はかがめられ、人々は低くされる。どうか彼らをおゆるしにならぬように。
17669 23 2 10 あなたは岩の間にはいり、ちりの中にかくれて、主の恐るべきみ前と、その威光の輝きとを避けよ。
17670 23 2 11 その日には目をあげて高ぶる者は低くせられ、おごる人はかがめられ、主のみ高くあげられる。
17671 23 2 12 これは、万軍の主の一日があって、すべて誇る者と高ぶる者、すべておのれを高くする者と得意な者とに臨むからである。
17672 23 2 13 またレバノンの高くそびえるすべての香柏、バシャンのすべてのかしの木、
17673 23 2 14 またすべての高い山々、すべてのそびえ立つ峰々、
17674 23 2 15 すべての高きやぐら、すべての堅固な城壁、
17675 23 2 16 タルシシのすべての船、すべての麗しい船舶に臨む。
17676 23 2 17 その日には高ぶる者はかがめられ、おごる人は低くせられ、主のみ高くあげられる。
17677 23 2 18 こうして偶像はことごとく滅びうせる。
17678 23 2 19 主が立って地を脅かされるとき、人々は岩のほら穴にはいり、また地の穴にはいって、主の恐るべきみ前と、その威光の輝きとを避ける。
17679 23 2 20 その日、人々は拝むためにみずから造ったしろがねの偶像と、こがねの偶像とを、もぐらもちと、こうもりに投げ与え、
17680 23 2 21 岩のほら穴や、がけの裂け目にはいり、主が立って地を脅かされるとき、主の恐るべきみ前と、その威光の輝きとを避ける。
17681 23 2 22 あなたがたは鼻から息の出入りする人に、たよることをやめよ、このような者はなんの価値があろうか。
17682 23 3 1 見よ、主、万軍の主はエルサレムとユダからささえとなり、頼みとなるもの――すべてささえとなるパン、すべてささえとなる水――を取り去られる。
17683 23 3 2 すなわち勇士と軍人、裁判官と預言者、占い師と長老、
17684 23 3 3 五十人の長と身分の高い人、議官と巧みな魔術師、老練なまじない師を取り去られる。
17685 23 3 4 わたしはわらべを立てて彼らの君とし、みどりごに彼らを治めさせる。
17686 23 3 5 民は互に相しえたげ、人はおのおのその隣をしえたげ、若い者は老いたる者にむかって高ぶり、卑しい者は尊い者にむかって高ぶる。
17687 23 3 6 その時、人はその父の家で、兄弟をつかまえて言う、「あなたは外套を持っている、わたしたちのつかさびとになって、この荒れ跡をあなたの手で治めてください」と。
17688 23 3 7 その日、彼は声をあげて言う、「わたしはいやす者となることはできません、わたしの家にはパンもなく、外套もありません、わたしを立てて、民のつかさびとにしないでください」。
17689 23 3 8 これは彼らの言葉と行いとが主にそむき、その栄光の目をおかしたので、エルサレムはつまずき、ユダは倒れたからである。
17690 23 3 9 彼らの不公平は彼らにむかって不利なあかしをし、ソドムのようにその罪をあらわして隠さない。わざわいなるかな、彼らはみずから悪の報いをうけた。
17691 23 3 10 正しい人に言え、彼らはさいわいであると。彼らはその行いの実を食べるからである。
17692 23 3 11 悪しき者はわざわいだ、彼は災をうける。その手のなした事が彼に報いられるからである。
17693 23 3 12 わが民は幼な子にしえたげられ、女たちに治められる。ああ、わが民よ、あなたを導く者はかえって、あなたを迷わせ、あなたの行くべき道を混乱させる。
17694 23 3 13 主は言い争うために立ちあがり、その民をさばくために立たれる。
17695 23 3 14 主はその民の長老と君たちとをさばいて、「あなたがたは、ぶどう畑を食い荒した。貧しい者からかすめとった物は、あなたがたの家にある。
17696 23 3 15 なぜ、あなたがたはわが民を踏みにじり、貧しい者の顔をすり砕くのか」と万軍の神、主は言われる。
17697 23 3 16 主は言われた、シオンの娘らは高ぶり、首をのばしてあるき、目でこびをおくり、その行くとき気どって歩き、その足でりんりんと鳴り響かす。
17698 23 3 17 それゆえ、主はシオンの娘らの頭を撃って、かさぶたでおおい、彼らの隠れた所をあらわされる。
17699 23 3 18 その日、主は彼らの美しい装身具と服装すなわち、くるぶし輪、髪ひも、月形の飾り、
17700 23 3 19 耳輪、腕輪、顔おおい、
17701 23 3 20 頭飾り、すね飾り、飾り帯、香箱、守り袋、
17702 23 3 21 指輪、鼻輪、
17703 23 3 22 礼服、外套、肩掛、手さげ袋、
17704 23 3 23 薄織の上着、亜麻布の着物、帽子、被衣などを取り除かれる。
17705 23 3 24 芳香はかわって、悪臭となり、帯はかわって、なわとなり、よく編んだ髪はかわって、かぶろとなり、はなやかな衣はかわって、荒布の衣となり、美しい顔はかわって、焼き印された顔となる。
17706 23 3 25 あなたの男たちはつるぎに倒れ、あなたの勇士たちは戦いに倒れる。
17707 23 3 26 シオンの門は嘆き悲しみ、シオンは荒れすたれて、地に座する。
17708 23 4 1 その日、七人の女がひとりの男にすがって、「わたしたちは自分のパンをたべ、自分の着物を着ます。ただ、あなたの名によって呼ばれることを許して、わたしたちの恥を取り除いてください」と言う。
17709 23 4 2 その日、主の枝は麗しく栄え、地の産物はイスラエルの生き残った者の誇、また光栄となる。
17710 23 4 5 その時、主はシオンの山のすべての場所と、そのもろもろの集会との上に、昼は雲をつくり、夜は煙と燃える火の輝きとをつくられる。これはすべての栄光の上にある天蓋であり、あずまやであって、
17711 23 4 6 昼は暑さをふせぐ陰となり、また暴風と雨を避けて隠れる所となる。
17712 23 5 1 わたしはわが愛する者のために、そのぶどう畑についてのわが愛の歌をうたおう。わが愛する者は土肥えた小山の上に、一つのぶどう畑をもっていた。
17713 23 5 2 彼はそれを掘りおこし、石を除き、それに良いぶどうを植え、その中に物見やぐらを建て、またその中に酒ぶねを掘り、良いぶどうの結ぶのを待ち望んだ。ところが結んだものは野ぶどうであった。
17714 23 5 3 それで、エルサレムに住む者とユダの人々よ、どうか、わたしとぶどう畑との間をさばけ。
17715 23 5 4 わたしが、ぶどう畑になした事のほかに、何かなすべきことがあるか。わたしは良いぶどうの結ぶのを待ち望んだのに、どうして野ぶどうを結んだのか。
17716 23 5 5 それで、わたしが、ぶどう畑になそうとすることを、あなたがたに告げる。わたしはそのまがきを取り去って、食い荒されるにまかせ、そのかきをとりこわして、踏み荒されるにまかせる。
17717 23 5 6 わたしはこれを荒して、刈り込むことも、耕すこともせず、おどろと、いばらとを生えさせ、また雲に命じて、その上に雨を降らさない。
17718 23 5 7 万軍の主のぶどう畑はイスラエルの家であり、主が喜んでそこに植えられた物は、ユダの人々である。主はこれに公平を望まれたのに、見よ、流血。正義を望まれたのに、見よ、叫び。
17719 23 5 8 わざわいなるかな、彼らは家に家を建て連ね、田畑に田畑をまし加えて、余地をあまさず、自分ひとり、国のうちに住まおうとする。
17720 23 5 9 万軍の主はわたしの耳に誓って言われた、「必ずや多くの家は荒れすたれ、大きな麗しい家も住む者がないようになる。
17721 23 5 10 十反のぶどう畑もわずかに一バテの実を結び、一ホメルの種もわずかに一エパの実を結ぶ」。
17722 23 5 11 わざわいなるかな、彼らは朝早く起きて、濃き酒をおい求め、夜のふけるまで飲みつづけて、酒にその身を焼かれている。
17723 23 5 12 彼らの酒宴には琴あり、立琴あり、鼓あり笛あり、ぶどう酒がある。しかし彼らは主のみわざを顧みず、み手のなされる事に目をとめない。
17724 23 5 13 それゆえ、わが民は無知のために、とりこにせられ、その尊き者は飢えて死に、そのもろもろの民は、かわきによって衰えはてる。
17725 23 5 14 また陰府はその欲望を大きくし、その口を限りなく開き、エルサレムの貴族、そのもろもろの民、その群集およびそのうちの喜びたのしめる者はみなその中に落ちこむ。
17726 23 5 15 人はかがめられ、人々は低くせられ、高ぶる者の目は低くされる。
17727 23 5 16 しかし万軍の主は公平によってあがめられ、聖なる神は正義によって、おのれを聖なる者として示される。
17728 23 5 17 こうして小羊は自分の牧場におるように草をはみ、肥えた家畜および子やぎは荒れ跡の中で食を得る。
17729 23 5 18 わざわいなるかな、彼らは偽りのなわをもって悪を引きよせ、車の綱をもってするように罪を引きよせる。
17730 23 5 19 彼らは言う、「彼を急がせ、そのわざをすみやかにさせよ、それを見せてもらおう。イスラエルの聖者の定める事を近づききたらせよ、それを見せてもらおう」と。
17731 23 5 20 わざわいなるかな、彼らは悪を呼んで善といい、善を呼んで悪といい、暗きを光とし、光を暗しとし、苦きを甘しとし、甘きを苦しとする。
17732 23 5 21 わざわいなるかな、彼らはおのれを見て、賢しとし、みずから顧みて、さとしとする。
17733 23 5 22 わざわいなるかな、彼らはぶどう酒を飲むことの英雄であり、濃き酒をまぜ合わせることの勇士である。
17734 23 5 23 彼らはまいないによって悪しき者を義とし、義人からその義を奪う。
17735 23 5 24 それゆえ、火の舌が刈り株を食い尽すように、枯れ草が炎の中に消えうせるように、彼らの根は朽ちたものとなり、彼らの花はちりのように飛び去る。彼らは万軍の主の律法を捨て、イスラエルの聖者の言葉を侮ったからである。
17736 23 5 25 それゆえ、主はその民にむかって怒りを発し、み手を伸べて彼らを撃たれた。山は震い動き、彼らのしかばねは、ちまたの中で、あくたのようになった。それにもかかわらず、み怒りはやまず、なお、み手を伸ばされる。
17737 23 5 26 主は旗をあげて遠くから一つの国民を招き、地の果から彼らを呼ばれる。見よ、彼らは走って、すみやかに来る。
17738 23 5 27 その中には疲れる者も、つまずく者もなく、まどろむ者も、眠る者もない。その腰の帯はとけず、そのくつのひもは切れていない。
17739 23 5 28 その矢は鋭く、その弓はことごとく張り、その馬のひずめは火打石のように、その車の輪はつむじ風のように思われる。
17740 23 5 29 そのほえることは、ししのように、若いししのようにほえ、うなって獲物を捕え、かすめ去っても救う者がない。
17741 23 5 30 その日、その鳴りどよめくことは、海の鳴りどよめくようだ。もし地をのぞむならば、見よ、暗きと悩みとがあり、光は雲によって暗くなる。
17742 23 6 1 ウジヤ王の死んだ年、わたしは主が高くあげられたみくらに座し、その衣のすそが神殿に満ちているのを見た。
17743 23 6 2 その上にセラピムが立ち、おのおの六つの翼をもっていた。その二つをもって顔をおおい、二つをもって足をおおい、二つをもって飛びかけり、
17744 23 6 3 互に呼びかわして言った。「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、万軍の主、その栄光は全地に満つ」。
17745 23 6 4 その呼ばわっている者の声によって敷居の基が震い動き、神殿の中に煙が満ちた。
17746 23 6 5 その時わたしは言った、「わざわいなるかな、わたしは滅びるばかりだ。わたしは汚れたくちびるの者で、汚れたくちびるの民の中に住む者であるのに、わたしの目が万軍の主なる王を見たのだから」。
17747 23 6 6 この時セラピムのひとりが火ばしをもって、祭壇の上から取った燃えている炭を手に携え、わたしのところに飛んできて、
17748 23 6 7 わたしの口に触れて言った、「見よ、これがあなたのくちびるに触れたので、あなたの悪は除かれ、あなたの罪はゆるされた」。
17749 23 6 8 わたしはまた主の言われる声を聞いた、「わたしはだれをつかわそうか。だれがわれわれのために行くだろうか」。その時わたしは言った、「ここにわたしがおります。わたしをおつかわしください」。
17750 23 6 9 主は言われた、「あなたは行って、この民にこう言いなさい、『あなたがたはくりかえし聞くがよい、しかし悟ってはならない。あなたがたはくりかえし見るがよい、しかしわかってはならない』と。
17751 23 6 10 あなたはこの民の心を鈍くし、その耳を聞えにくくし、その目を閉ざしなさい。これは彼らがその目で見、その耳で聞き、その心で悟り、悔い改めていやされることのないためである」。
17752 23 6 11 そこで、わたしは言った、「主よ、いつまでですか」。主は言われた、「町々は荒れすたれて、住む者もなく、家には人かげもなく、国は全く荒れ地となり、
17753 23 6 12 人々は主によって遠くへ移され、荒れはてた所が国の中に多くなる時まで、こうなっている。
17754 23 6 13 その中に十分の一の残る者があっても、これもまた焼き滅ぼされる。テレビンの木またはかしの木が切り倒されるとき、その切り株が残るように」。聖なる種族はその切り株である。
17755 23 7 1 ユダの王、ウジヤの子ヨタム、その子アハズの時、スリヤの王レヂンとレマリヤの子であるイスラエルの王ペカとが上ってきて、エルサレムを攻めたが勝つことができなかった。
17756 23 7 2 時に「スリヤがエフライムと同盟している」とダビデの家に告げる者があったので、王の心と民の心とは風に動かされる林の木のように動揺した。
17757 23 7 3 その時、主はイザヤに言われた、「今、あなたとあなたの子シャル・ヤシュブと共に出て行って、布さらしの野へ行く大路に沿う上の池の水道の端でアハズに会い、
17758 23 7 4 彼に言いなさい、『気をつけて、静かにし、恐れてはならない。レヂンとスリヤおよびレマリヤの子が激しく怒っても、これら二つの燃え残りのくすぶっている切り株のゆえに心を弱くしてはならない。
17759 23 7 5 スリヤはエフライムおよびレマリヤの子と共にあなたにむかって悪い事を企てて言う、
17760 23 7 6 「われわれはユダに攻め上って、これを脅し、われわれのためにこれを破り取り、タビエルの子をそこの王にしよう」と。
17761 23 7 7 主なる神はこう言われる、この事は決して行われない、また起ることはない。
17762 23 7 8 スリヤのかしらはダマスコ、ダマスコのかしらはレヂンである。(六十五年のうちにエフライムは敗れて、国をなさないようになる。)
17763 23 7 9 エフライムのかしらはサマリヤ、サマリヤのかしらはレマリヤの子である。もしあなたがたが信じないならば、立つことはできない』」。
17764 23 7 10 主は再びアハズに告げて言われた、
17765 23 7 11 「あなたの神、主に一つのしるしを求めよ、陰府のように深い所に、あるいは天のように高い所に求めよ」。
17766 23 7 12 しかしアハズは言った、「わたしはそれを求めて、主を試みることをいたしません」。
17767 23 7 13 そこでイザヤは言った、「ダビデの家よ、聞け。あなたがたは人を煩わすことを小さい事とし、またわが神をも煩わそうとするのか。
17768 23 7 14 それゆえ、主はみずから一つのしるしをあなたがたに与えられる。見よ、おとめがみごもって男の子を産む。その名はインマヌエルととなえられる。
17769 23 7 15 その子が悪を捨て、善を選ぶことを知るころになって、凝乳と、蜂蜜とを食べる。
17770 23 7 16 それはこの子が悪を捨て、善を選ぶことを知る前に、あなたが恐れているふたりの王の地は捨てられるからである。
17771 23 7 17 主はエフライムがユダから分れた時からこのかた、臨んだことのないような日をあなたと、あなたの民と、あなたの父の家とに臨ませられる。それはアッスリヤの王である」。
17772 23 7 18 その日、主はエジプトの川々の源にいる、はえを招き、アッスリヤの地にいる蜂を呼ばれる。
17773 23 7 19 彼らはみな来て、険しい谷、岩の裂け目、すべてのいばら、すべての牧場の上にとどまる。
17774 23 7 20 その日、主は大川の向こうから雇ったかみそり、すなわちアッスリヤの王をもって、頭と足の毛とをそり、また、ひげをも除き去られる。
17775 23 7 21 その日、人は若い雌牛一頭と羊二頭を飼い、
17776 23 7 22 それから出る乳が多いので、凝乳を食べることができ、すべて国のうちに残された者は凝乳と、蜂蜜とを食べることができる。
17777 23 7 23 その日、銀一千シケルの価ある千株のぶどうの木のあった所も、ことごとくいばらと、おどろの生える所となり、
17778 23 7 24 いばらと、おどろとが地にはびこるために、人々は弓と矢をもってそこへ行く。
17779 23 7 25 くわをもって掘り耕したすべての山々にも、あなたは、いばらと、おどろとを恐れて、そこへ行くことができない。その地はただ牛を放ち、羊の踏むところとなる。
17780 23 8 1 主はわたしに言われた、「一枚の大きな札を取って、その上に普通の文字で、『マヘル・シャラル・ハシ・バズ』と書きなさい」。
17781 23 8 2 そこで、わたしは確かな証人として、祭司ウリヤおよびエベレキヤの子ゼカリヤを立てた。
17782 23 8 3 わたしが預言者の妻に近づくと、彼女はみごもって男の子を産んだ。その時、主はわたしに言われた、「その名をマヘル・シャラル・ハシ・バズと呼びなさい。
17783 23 8 4 それはこの子がまだ『おとうさん、おかあさん』と呼ぶことを知らないうちに、ダマスコの富と、サマリヤのぶんどり品とが、アッスリヤ王の前に奪い去られるからである」。
17784 23 8 5 主はまた重ねてわたしに言われた、
17785 23 8 6 「この民はゆるやかに流れるシロアの水を捨てて、レヂンとレマリヤの子の前に恐れくじける。
17786 23 8 7 それゆえ見よ、主は勢いたけく、みなぎりわたる大川の水を彼らにむかってせき入れられる。これはアッスリヤの王と、そのもろもろの威勢とであって、そのすべての支流にはびこり、すべての岸を越え、
17787 23 8 8 ユダに流れ入り、あふれみなぎって、首にまで及ぶ。インマヌエルよ、その広げた翼はあまねく、あなたの国に満ちわたる」。
17788 23 8 9 もろもろの民よ、打ち破られて、驚きあわてよ。遠き国々のものよ、耳を傾けよ。腰に帯して、驚きあわてよ。腰に帯して、驚きあわてよ。
17789 23 8 10 ともに計れ、しかし、成らない。言葉を出せ、しかし、行われない。神がわれわれと共におられるからである。
17790 23 8 11 主は強いみ手をもって、わたしを捕え、わたしに語り、この民の道に歩まないように、さとして言われた、
17791 23 8 12 「この民がすべて陰謀ととなえるものを陰謀ととなえてはならない。彼らの恐れるものを恐れてはならない。またおののいてはならない。
17792 23 8 13 あなたがたは、ただ万軍の主を聖として、彼をかしこみ、彼を恐れなければならない。
17793 23 8 14 主はイスラエルの二つの家には聖所となり、またさまたげの石、つまずきの岩となり、エルサレムの住民には網となり、わなとなる。
17794 23 8 15 多くの者はこれにつまずき、かつ倒れ、破られ、わなにかけられ、捕えられる」。
17795 23 8 16 わたしは、あかしを一つにまとめ、教をわが弟子たちのうちに封じておこう。
17796 23 8 17 主はいま、ヤコブの家に、み顔をかくしておられるとはいえ、わたしはその主を待ち、主を望みまつる。
17797 23 8 18 見よ、わたしと、主のわたしに賜わった子たちとは、シオンの山にいます万軍の主から与えられたイスラエルのしるしであり、前ぶれである。
17798 23 8 19 人々があなたがたにむかって「さえずるように、ささやくように語る巫子および魔術者に求めよ」という時、民は自分たちの神に求むべきではないか。生ける者のために死んだ者に求めるであろうか。
17799 23 8 20 ただ教とあかしとに求めよ。まことに彼らはこの言葉によって語るが、そこには夜明けがない。
17800 23 8 21 彼らはしえたげられ、飢えて国の中を経あるく。その飢えるとき怒りを放ち、自分たちの王、自分たちの神をのろい、かつその顔を天に向ける。
17801 23 8 22 また地を見ると、見よ、悩みと暗きと、苦しみのやみとがあり、彼らは暗黒に追いやられる。
17802 23 9 1 しかし、苦しみにあった地にも、やみがなくなる。さきにはゼブルンの地、ナフタリの地にはずかしめを与えられたが、後には海に至る道、ヨルダンの向こうの地、異邦人のガリラヤに光栄を与えられる。
17803 23 9 2 暗やみの中に歩んでいた民は大いなる光を見た。暗黒の地に住んでいた人々の上に光が照った。
17804 23 9 3 あなたが国民を増し、その喜びを大きくされたので、彼らは刈入れ時に喜ぶように、獲物を分かつ時に楽しむように、あなたの前に喜んだ。
17805 23 9 4 これはあなたが彼らの負っているくびきと、その肩のつえと、しえたげる者のむちとを、ミデアンの日になされたように折られたからだ。
17806 23 9 5 すべて戦場で、歩兵のはいたくつと、血にまみれた衣とは、火の燃えくさとなって焼かれる。
17807 23 9 6 ひとりのみどりごがわれわれのために生れた、ひとりの男の子がわれわれに与えられた。まつりごとはその肩にあり、その名は、「霊妙なる議士、大能の神、とこしえの父、平和の君」ととなえられる。
17808 23 9 7 そのまつりごとと平和とは、増し加わって限りなく、ダビデの位に座して、その国を治め、今より後、とこしえに公平と正義とをもってこれを立て、これを保たれる。万軍の主の熱心がこれをなされるのである。
17809 23 9 8 主はひと言をヤコブにおくり、これをイスラエルの上にくだされる。
17810 23 9 9 すべてこの民、エフライムとサマリヤに住む者とは知るであろう。彼らは高ぶり、心おごって言う、
17811 23 9 10 「かわらがくずれても、われわれは切り石をもって建てよう。くわの木が切り倒されても、われわれは香柏をもってこれにかえよう」と。
17812 23 9 11 それゆえ、主は敵を起して彼らを攻めさせ、そのあだを奮い立たせられる。
17813 23 9 12 東にスリヤびとあり、西にペリシテびとあり、彼らは大口をあけてイスラエルを食い尽す。それでも主の怒りはやまず、なおも、そのみ手を伸ばされる。
17814 23 9 13 しかもなお、この民は自分たちを撃った者に帰らず、万軍の主を求めない。
17815 23 9 14 それゆえ、主はイスラエルから頭と尾と、しゅろの枝と葦とを一日のうちに断ち切られる。
17816 23 9 15 その頭とは、長老と尊き人、その尾とは、偽りを教える預言者である。
17817 23 9 16 この民を導く者は、これを迷わせ、彼らに導かれる者は、のみ尽される。
17818 23 9 17 それゆえ、主はその若き人々を喜ばれず、そのみなしごと寡婦とをあわれまれない。彼らはみな、不信仰であって、悪を行う者、すべての口は愚かな事を語るからである。それでも主の怒りはやまず、なおも、そのみ手を伸ばされる。
17819 23 9 18 悪は火のように燃え、いばらと、おどろとを食い尽し、茂りあう林を焼き、煙の柱となって巻きあがる。
17820 23 9 19 万軍の主の怒りによって地は焼け、その民は火の燃えくさのようになり、だれもその兄弟をあわれむ者がない。
17821 23 9 20 彼らは右手につかんでも、なお飢え、左手で食べても飽くことがない。おのおのその隣り人の肉を食う。
17822 23 9 21 マナセはエフライムを、エフライムはマナセを食い、彼らは共にユダを攻める。それでも主の怒りはやまず、なおも、そのみ手を伸ばされる。
17823 23 10 1 わざわいなるかな、不義の判決を下す者、暴虐の宣告を書きしるす者。
17824 23 10 2 彼らは乏しい者の訴えを引き受けず、わが民のうちの貧しい者の権利をはぎ、寡婦の資産を奪い、みなしごのものをかすめる。
17825 23 10 3 あなたがたは刑罰の日がきたなら、何をしようとするのか。大風が遠くから来るとき、何をしようとするのか。あなたがたはのがれていって、だれに助けを求めようとするのか。また、どこにあなたがたの富を残そうとするのか。
17826 23 10 4 ただ捕われた者の中にかがみ、殺された者の中に伏し倒れるのみだ。それでも主の怒りはやまず、なおも、そのみ手を伸ばされる。
17827 23 10 5 ああ、アッスリヤはわが怒りのつえ、わが憤りのむちだ。
17828 23 10 6 わたしは彼をつかわして不信の国を攻め、彼に命じてわが怒りの民を攻め、かすめ奪わせ、彼らをちまたの泥のように踏みにじらせる。
17829 23 10 7 しかし彼はそのようには思わず、その心もそのようには考えず、かえってその心は滅ぼすことを思い、あまたの国々を倒そうとする。
17830 23 10 8 彼は言う、「わが諸侯はみな王ではないか。
17831 23 10 9 カルノはカルケミシのようではないか。ハマテはアルパデのようではないか。サマリヤはダマスコのようではないか。
17832 23 10 10 わが手は偶像に仕える国々に伸びた。その彫った像はエルサレムおよびサマリヤのものにまさっていた。
17833 23 10 11 わたしはサマリヤとその偶像に行ったように、エルサレムとその偶像に行わぬであろうか」。
17834 23 10 12 主がシオンの山とエルサレムとになそうとすることを、ことごとくなし遂げられた時、主はアッスリヤ王の無礼な言葉と、その高ぶりとを罰せられる。
17835 23 10 13 彼は言う、「わが手の力により、またわが知恵によって、わたしはこれをなした。わたしは賢いからである。わたしはもろもろの民の境を除き、その財宝を奪った。またわたしは雄牛のように、位に座する者を引きおろした。
17836 23 10 14 わが手は巣を取るように、もろもろの民の富を得た。またわたしは人々が捨てられた卵を集めるように、全地を取り集めた。あるいは翼を動かし、あるいは口を開き、あるいはぺちゃくちゃ言う者もなかった」。
17837 23 10 15 おのは、それを用いて切る者にむかって、自分を誇ることができようか。のこぎりは、それを動かす者にむかって、みずから高ぶることができようか。これはあたかも、むちが自分をあげる者を動かし、つえが木でない者をあげようとするのに等しい。
17838 23 10 16 それゆえ、主、万軍の主は、その肥えた勇士の中に病気を送って衰えさせ、その栄光の下に火の燃えるような炎を燃やされる。
17839 23 10 17 イスラエルの光は火となり、その聖者は炎となり、そのいばらと、おどろとを一日のうちに焼き滅ぼす。
17840 23 10 18 また、その林と土肥えた田畑の栄えを、魂も、からだも二つながら滅ぼし、病める者のやせ衰える時のようにされる。
17841 23 10 19 その林の木の残りのものはわずかであって、わらべもそれを書きとめることができる。
17842 23 10 20 その日にはイスラエルの残りの者と、ヤコブの家の生き残った者とは、もはや自分たちを撃った者にたよらず、真心をもってイスラエルの聖者、主にたより、
17843 23 10 21 残りの者、すなわちヤコブの残りの者は大能の神に帰る。
17844 23 10 22 あなたの民イスラエルは海の砂のようであっても、そのうちの残りの者だけが帰って来る。滅びはすでに定まり、義であふれている。
17845 23 10 23 主、万軍の主は定められた滅びを全地に行われる。
17846 23 10 24 それゆえ、主、万軍の主はこう言われる、「シオンに住むわが民よ、アッスリヤびとが、エジプトびとがしたように、むちをもってあなたを打ち、つえをあげてあなたをせめても、彼らを恐れてはならない。
17847 23 10 25 ただしばらくして、わが憤りはやみ、わが怒りは彼らを滅ぼすからである。
17848 23 10 26 万軍の主は、むかしミデアンびとをオレブの岩で撃たれた時のように、彼らにむかって、むちをふるわれる。またそのつえを海の上にのばし、エジプトでなされたように、それをあげられる。
17849 23 10 27 その日には、彼の重荷はあなたの肩からおり、彼のくびきはあなたの首から離れる」。彼はリンモンから上り、
17850 23 10 28 アイアテにきたり、ミグロンを過ぎ、ミクマシでその行李をとどめ、
17851 23 10 29 渡しを過ぎて、ゲバに宿る。ラマはおののき、サウルのギベアは逃げ去った。
17852 23 10 30 ガリムの娘よ、声をあげて叫べ。ライシよ、耳を傾けよ。アナトテよ、彼に答えよ。
17853 23 10 31 マデメナは逃げ去り、ゲビムの民は隠れ場を求めた。
17854 23 10 32 この日彼はノブに立ちとどまり、シオンの娘の山、エルサレムの丘にむかって、その手を振る。
17855 23 10 33 見よ、主、万軍の主は、恐ろしい力をもって枝を切りおろされる。たけの高いものも切り落され、そびえ立つものは低くされる。
17856 23 10 34 主はおのをもって茂りあう林を切られる。みごとな木の茂るレバノンも倒される。
17857 23 11 1 エッサイの株から一つの芽が出、その根から一つの若枝が生えて実を結び、
17858 23 11 2 その上に主の霊がとどまる。これは知恵と悟りの霊、深慮と才能の霊、主を知る知識と主を恐れる霊である。
17859 23 11 3 彼は主を恐れることを楽しみとし、その目の見るところによって、さばきをなさず、その耳の聞くところによって、定めをなさず、
17860 23 11 4 正義をもって貧しい者をさばき、公平をもって国のうちの柔和な者のために定めをなし、その口のむちをもって国を撃ち、そのくちびるの息をもって悪しき者を殺す。
17861 23 11 5 正義はその腰の帯となり、忠信はその身の帯となる。
17862 23 11 6 おおかみは小羊と共にやどり、ひょうは子やぎと共に伏し、子牛、若じし、肥えたる家畜は共にいて、小さいわらべに導かれ、
17863 23 11 7 雌牛と熊とは食い物を共にし、牛の子と熊の子と共に伏し、ししは牛のようにわらを食い、
17864 23 11 8 乳のみ子は毒蛇のほらに戯れ、乳離れの子は手をまむしの穴に入れる。
17865 23 11 9 彼らはわが聖なる山のどこにおいても、そこなうことなく、やぶることがない。水が海をおおっているように、主を知る知識が地に満ちるからである。
17866 23 11 10 その日、エッサイの根が立って、もろもろの民の旗となり、もろもろの国びとはこれに尋ね求め、その置かれる所に栄光がある。
17867 23 11 11 その日、主は再び手を伸べて、その民の残れる者をアッスリヤ、エジプト、パテロス、エチオピヤ、エラム、シナル、ハマテおよび海沿いの国々からあがなわれる。
17868 23 11 12 主は国々のために旗をあげて、イスラエルの追いやられた者を集め、ユダの散らされた者を地の四方から集められる。
17869 23 11 13 エフライムのねたみはうせ、ユダを悩ます者は断たれ、エフライムはユダをねたまず、ユダはエフライムを悩ますことはない。
17870 23 11 14 しかし彼らは西の方ペリシテびとの肩に襲いかかり、相共に東の民をかすめ、その手をエドムおよびモアブに伸べ、アンモンの人々をおのれに従わせる。
17871 23 11 15 主はエジプトの海の舌をからし、川の上に手を振って熱い風を吹かせ、その川を打って七つの川となし、くつをぬらさないで渡らせられる。
17872 23 11 16 その民の残れる者のためにアッスリヤからの大路があり、昔イスラエルがエジプトの国から上ってきた時にあったようになる。
17873 23 12 1 その日あなたは言う、「主よ、わたしはあなたに感謝します。あなたは、さきにわたしにむかって怒られたが、その怒りはやんで、わたしを慰められたからです。
17874 23 12 2 見よ、神はわが救である。わたしは信頼して恐れることはない。主なる神はわが力、わが歌であり、わが救となられたからである」。
17875 23 12 3 あなたがたは喜びをもって、救の井戸から水をくむ。
17876 23 12 4 その日、あなたがたは言う、「主に感謝せよ。そのみ名を呼べ。そのみわざをもろもろの民の中につたえよ。そのみ名のあがむべきことを語りつげよ。
17877 23 12 5 主をほめうたえ。主はそのみわざを、みごとになし遂げられたから。これを全地に宣べ伝えよ。
17878 23 12 6 シオンに住む者よ、声をあげて、喜びうたえ。イスラエルの聖者はあなたがたのうちで大いなる者だから」。
17879 23 13 1 アモツの子イザヤに示されたバビロンについての託宣。
17880 23 13 2 あなたがたは木のない山に旗を立て、声をあげて彼らを招き、手を振って彼らを貴族の門に、はいらせよ。
17881 23 13 3 わたしはわが怒りのさばきを行うために聖別した者どもに命じ、わが勇士、わが勝ち誇る者どもを招いた。
17882 23 13 4 聞け、多くの民のような騒ぎ声が山々に聞える。聞け、もろもろの国々、寄りつどえるもろもろの国民のざわめく声が聞える。これは万軍の主が戦いのために軍勢を集められるのだ。
17883 23 13 5 彼らは遠い国から、天の果から来る。これは、主とその憤りの器で、全地を滅ぼすために来るのだ。
17884 23 13 6 あなたがたは泣き叫べ。主の日が近づき、滅びが全能者から来るからだ。
17885 23 13 7 それゆえ、すべての手は弱り、すべての人の心は溶け去る。
17886 23 13 8 彼らは恐れおののき、苦しみと悩みに捕えられ、子を産まんとする女のようにもだえ苦しみ、互に驚き、顔を見あわせ、その顔は炎のようになる。
17887 23 13 9 見よ、主の日が来る。残忍で、憤りと激しい怒りとをもってこの地を荒し、その中から罪びとを断ち滅ぼすために来る。
17888 23 13 10 天の星とその星座とはその光を放たず、太陽は出ても暗く、月はその光を輝かさない。
17889 23 13 11 わたしはその悪のために世を罰し、その不義のために悪い者を罰し、高ぶる者の誇をとどめ、あらぶる者の高慢を低くする。
17890 23 13 12 わたしは人を精金よりも、オフルのこがねよりも少なくする。
17891 23 13 13 それゆえ、万軍の主の憤りにより、その激しい怒りの日に、天は震い、地は揺り動いて、その所をはなれる。
17892 23 13 14 彼らは追われた、かもしかのように、あるいは集める者のない羊のようになって、おのおの自分の民に帰り、自分の国に逃げて行く。
17893 23 13 15 すべて見いだされる者は刺され、すべて捕えられる者はつるぎによって倒され、
17894 23 13 16 彼らのみどりごはその目の前で投げ砕かれ、その家はかすめ奪われ、その妻は汚される。
17895 23 13 17 見よ、わたしは、しろがねをも顧みず、こがねをも喜ばないメデアびとを起して、彼らにむかわせる。
17896 23 13 18 彼らの弓は若い者を射殺し、腹の実をあわれむことなく、幼な子を見て、惜しむことがない。
17897 23 13 19 国々の誉であり、カルデヤびとの誇である麗しいバビロンは、神に滅ぼされたソドム、ゴモラのようになる。
17898 23 13 20 ここにはながく住む者が絶え、世々にいたるまで住みつく者がなく、アラビヤびともそこに天幕を張らず、羊飼もそこに群れを伏させることがない。
17899 23 13 21 ただ、野の獣がそこに伏し、ほえる獣がその家に満ち、だちょうがそこに住み、鬼神がそこに踊る。
17900 23 13 22 ハイエナはその城の中で鳴き、山犬は楽しい宮殿でほえる。その時の来るのは近い、その日は延びることがない。
17901 23 14 1 主はヤコブをあわれみ、イスラエルを再び選んで、これをおのれの地に置かれる。異邦人はこれに加わって、ヤコブの家に結びつらなり、
17902 23 14 2 もろもろの民は彼らを連れてその所に導いて来る。そしてイスラエルの家は、主の地で彼らを男女の奴隷とし、さきに自分たちを捕虜にした者を捕虜にし、自分たちをしえたげた者を治める。
17903 23 14 3 主があなたの苦労と不安とを除き、またあなたが服した苦役を除いて、安息をお与えになるとき、
17904 23 14 4 あなたはこのあざけりの歌をとなえ、バビロンの王をののしって言う、「あの、しえたげる者は全く絶えてしまった。あの、おごる者は全く絶えてしまった。
17905 23 14 5 主は悪い者のつえと、つかさびとの笏を折られた。
17906 23 14 6 彼らは憤りをもってもろもろの民を絶えず撃っては打ち、怒りをもってもろもろの国を治めても、そのしえたげをとどめる者がなかった。
17907 23 14 7 全地はやすみを得、穏やかになり、ことごとく声をあげて歌う。
17908 23 14 8 いとすぎおよびレバノンの香柏でさえもあなたのゆえに喜んで言う、『あなたはすでに倒れたので、もはや、きこりが上ってきて、われわれを攻めることはない』。
17909 23 14 9 下の陰府はあなたのために動いて、あなたの来るのを迎え、地のもろもろの指導者たちの亡霊をあなたのために起し、国々のもろもろの王をその王座から立ちあがらせる。
17910 23 14 10 彼らは皆あなたに告げて言う、『あなたもまたわれわれのように弱くなった、あなたもわれわれと同じようになった』。
17911 23 14 11 あなたの栄華とあなたの琴の音は陰府に落ちてしまった。うじはあなたの下に敷かれ、みみずはあなたをおおっている。
17912 23 14 12 黎明の子、明けの明星よ、あなたは天から落ちてしまった。もろもろの国を倒した者よ、あなたは切られて地に倒れてしまった。
17913 23 14 13 あなたはさきに心のうちに言った、『わたしは天にのぼり、わたしの王座を高く神の星の上におき、北の果なる集会の山に座し、
17914 23 14 14 雲のいただきにのぼり、いと高き者のようになろう』。
17915 23 14 15 しかしあなたは陰府に落され、穴の奥底に入れられる。
17916 23 14 16 あなたを見る者はつくづくあなたを見、あなたに目をとめて言う、『この人は地を震わせ、国々を動かし、
17917 23 14 17 世界を荒野のようにし、その都市をこわし、捕えた者をその家に解き帰さなかった者であるのか』。
17918 23 14 18 もろもろの国の王たちは皆尊いさまで、自分の墓に眠る。
17919 23 14 19 しかしあなたは忌みきらわれる月足らぬ子のように墓のそとに捨てられ、つるぎで刺し殺された者でおおわれ、踏みつけられる死体のように穴の石に下る。
17920 23 14 20 あなたは自分の国を滅ぼし、自分の民を殺したために、彼らと共に葬られることはない。どうか、悪を行う者の子孫はとこしえに名を呼ばれることのないように。
17921 23 14 21 先祖のよこしまのゆえに、その子孫のためにほふり場を備えよ。これは彼らが起って地を取り、世界のおもてに町々を満たすことのないためである」。
17922 23 14 22 万軍の主は言われる、「わたしは立って彼らを攻め、バビロンからその名と、残れる者、その子と孫とを断ち滅ぼす、と主は言う。
17923 23 14 23 わたしはこれをはりねずみのすみかとし、水の池とし、滅びのほうきをもって、これを払い除く、と万軍の主は言う」。
17924 23 14 24 万軍の主は誓って言われる、「わたしが思ったように必ず成り、わたしが定めたように必ず立つ。
17925 23 14 25 わたしはアッスリヤびとをわが地で打ち破り、わが山々で彼を踏みにじる。こうして彼が置いたくびきはイスラエルびとから離れ、彼が負わせた重荷はイスラエルびとの肩から離れる」。
17926 23 14 26 これは全地について定められた計画である。これは国々の上に伸ばされた手である。
17927 23 14 27 万軍の主が定められるとき、だれがそれを取り消すことができるのか。その手を伸ばされるとき、だれがそれを引きもどすことができるのか。
17928 23 14 28 アハズ王の死んだ年にこの託宣があった、
17929 23 14 29 「ペリシテの全地よ、あなたを打ったむちが折られたことを喜んではならない。へびの根からまむしが出、その実は飛びかけるへびとなるからだ。
17930 23 14 30 いと貧しい者は食を得、乏しい者は安らかに伏す。しかし、わたしはききんをもってあなたの子孫を殺し、あなたの残れる者を滅ぼす。
17931 23 14 31 門よ、泣きわめけ。町よ、叫べ。ペリシテの全地よ、恐れのあまり消えうせよ、北から煙が来るからだ。その隊列からは、ひとりも脱落する者はない」。
17932 23 14 32 その国の使者たちになんと答えようか。「主はシオンの基をおかれた、その民の苦しむ者はこの中に避け所を得る」と答えよ。
17933 23 15 1 モアブについての託宣。アルは一夜のうちに荒されて、モアブは滅びうせ、キルは一夜のうちに荒されて、モアブは滅びうせた。
17934 23 15 2 デボンの娘は高き所にのぼって泣き、モアブはネボとメデバの上で嘆き叫ぶ。おのおのその頭をかぶろにし、そのひげをことごとくそった。
17935 23 15 3 彼らはそのちまたで荒布をまとい、その屋根または広場で、みな泣き叫び、涙に浸る。
17936 23 15 4 ヘシボンとエレアレとは叫び、その声はヤハズまで聞える。それゆえ、モアブの兵士は声をあげ、その魂はおののく。
17937 23 15 5 わが心はモアブのために叫び呼ばわる。その落人はゾアルおよびエグラテ・シリシヤにのがれ、泣きながらルヒテの坂をのぼり、ホロナイムの道で滅びの叫びをあげる。
17938 23 15 6 ニムリムの水はかわき、草は枯れ、苗は消えて、青い物はない。
17939 23 15 7 それゆえ、彼らはその得た富と、そのたくわえた物とを携えて、柳の川をわたる。
17940 23 15 8 その叫びの声はモアブの境をめぐり、その嘆きの声はエグライムにいたり、またその嘆きの声はベエル・エリムにいたる。
17941 23 15 9 デボンの水は血で満ちる。わたしはデボンの上にさらに災を加え、モアブののがれた者とこの地の残った者とに、ししを送る。
17942 23 16 1 彼らはセラから荒野の道によって小羊をシオンの娘の山に送り、国のつかさに納めた。
17943 23 16 2 モアブの娘らはアルノンの渡しで、さまよう鳥のように、巣を追われたひなのようである。
17944 23 16 3 「相はかって、事を定めよ。真昼の中でも、あなたの陰を夜のようにし、さすらい人を隠し、のがれて来た者をわたさず、
17945 23 16 4 モアブのさすらい人を、あなたのうちにやどらせ、彼らの避け所となって、滅ぼす者からのがれさせよ。しえたげる者がなくなり、滅ぼす者が絶え、踏みにじる者が地から断たれたとき、
17946 23 16 5 一つの玉座がいつくしみによって堅く立てられ、ダビデの幕屋にあって、さばきをなし、公平を求め、正義を行うに、すみやかなる者が真実をもってその上に座する」。
17947 23 16 6 われわれはモアブの高ぶりのことを聞いた、その高ぶることは、はなはだしい。われわれはその誇と、高ぶりと、そのおごりとのことを聞いた、その自慢は偽りである。
17948 23 16 7 それゆえ、モアブは泣き叫べ、民はみなモアブのために泣き叫べ。全く撃ちのめされて、キルハレセテの干ぶどうのために嘆け。
17949 23 16 8 ヘシボンの畑と、シブマのぶどうの木とは、しぼみ衰えた。国々のもろもろの主が、その枝を打ち落したからである。その枝はさきにはヤゼルまでいたり、荒野にまではびこり、そのつるは広がって海を越えた。
17950 23 16 9 それゆえ、わたしはヤゼルと共に、シブマのぶどうの木のために泣く。ヘシボンよ、エレアレよ、わたしは涙をもってあなたを浸す。ときの声が、あなたの果実と、あなたの収穫の上にふりかかってきたからである。
17951 23 16 10 喜びと楽しみとは土肥えた畑から取り去られ、ぶどう畑には歌うことなく、喜び呼ばわることなく、酒ぶねを踏んで酒を絞る者なく、ぶどうの収穫を喜ぶ声はやんだ。
17952 23 16 11 それゆえ、わが魂はモアブのために、わが心はキルハレスのために、琴のように鳴りひびく。
17953 23 16 12 モアブが高き所に出て、おのれを疲れさせ、またその聖所にきて祈っても、効果はない。
17954 23 16 13 これは主がさきにモアブについて語られたみ言葉である。
17955 23 16 14 しかし今、主は語って言われる、「モアブの栄えはその大いなる群衆にもかかわらず、雇人の年期とひとしく三年のうちに、はずかしめを受け、残れる者はまことに少なく、力がない」。
17956 23 17 1 ダマスコについての託宣。見よ、ダマスコは町の姿を失って、荒塚となる。
17957 23 17 2 その町々はとこしえに捨てられ、家畜の群れの住む所となって、伏しやすむが、これを脅かす者はない。
17958 23 17 3 エフライムのとりではすたり、ダマスコの主権はやみ、スリヤの残れる者は、イスラエルの子らの栄光のように消えうせると万軍の主は言われる。
17959 23 17 4 その日、ヤコブの栄えは衰え、その肥えたる肉はやせ、
17960 23 17 5 あたかも刈入れ人がまだ刈らない麦を集め、かいなをもって穂を刈り取ったあとのように、レパイムの谷で穂を拾い集めたあとのようになる。
17961 23 17 6 オリブの木を打つとき、二つ三つの実をこずえに残し、あるいは四つ五つをみのり多き木の枝に残すように、とり残されるものがあるとイスラエルの神、主は言われる。
17962 23 17 7 その日、人々はその造り主を仰ぎのぞみ、イスラエルの聖者に目をとめ、
17963 23 17 8 おのれの手のわざである祭壇を仰ぎのぞまず、おのれの指が造ったアシラ像と香の祭壇とに目をとめない。
17964 23 17 9 その日、彼らの堅固な町々は昔イスラエルの子らのゆえに捨て去られたヒビびとおよびアモリびとの荒れ跡のように荒れ地になる。
17965 23 17 10 これはあなたがたが自分の救の神を忘れ、自分の避け所なる岩を心にとめなかったからだ。それゆえ、あなたがたは美しい植物を植え、異なる神の切り枝をさし、
17966 23 17 11 その植えた日にこれを成長させ、そのまいた朝にこれを花咲かせても、その収穫は悲しみと、いやしがたい苦しみの日にとび去る。
17967 23 17 12 ああ、多くの民はなりどよめく、海のなりどよめくように、彼らはなりどよめく。ああ、もろもろの国はなりとどろく、大水のなりとどろくように、彼らはなりとどろく。
17968 23 17 13 もろもろの国は多くの水のなりとどろくように、なりとどろく。しかし、神は彼らを懲しめられる。彼らは遠くのがれて、風に吹き去られる山の上のもみがらのように、また暴風にうず巻くちりのように追いやられる。
17969 23 17 14 夕暮には、見よ、恐れがある。まだ夜の明けないうちに彼らはうせた。これはわれわれをかすめる者の受くべき分、われわれを奪う者の引くべきくじである。
17970 23 18 1 ああ、エチオピヤの川々のかなたなるぶんぶんと羽音のする国、
17971 23 18 2 この国は葦の船を水にうかべ、ナイル川によって使者をつかわす。とく走る使者よ、行け。川々の分れる国の、たけ高く、膚のなめらかな民、遠近に恐れられる民、力強く、戦いに勝つ民へ行け。
17972 23 18 3 すべて世におるもの、地に住むものよ、山の上に旗の立つときは見よ、ラッパの鳴りひびくときは聞け。
17973 23 18 4 主はわたしにこう言われた、「晴れわたった日光の熱のように、刈入れの熱むして露の多い雲のように、わたしは静かにわたしのすまいから、ながめよう」。
17974 23 18 5 刈入れの前、花は過ぎてその花がぶどうとなって熟すとき、彼はかまをもって、つるを刈り、枝を切り去る。
17975 23 18 6 彼らはみな山の猛禽と、地の獣とに捨て置かれる。猛禽はその上で夏を過ごし、地の獣はみなその上で冬を過ごす。
17976 23 18 7 その時、川々の分れる国のたけ高く、膚のなめらかな民、遠くの者にも近くの者にも恐れられる民、力強く、戦いに勝つ民から万軍の主にささげる贈り物を携えて、万軍の主のみ名のある所、シオンの山に来る。
17977 23 19 1 エジプトについての託宣。見よ、主は速い雲に乗って、エジプトに来られる。エジプトのもろもろの偶像は、み前に震えおののき、エジプトびとの心は彼らのうちに溶け去る。
17978 23 19 2 わたしはエジプトびとを奮いたたせて、エジプトびとに逆らわせる。彼らはおのおのその兄弟に敵して戦い、おのおのその隣に敵し、町は町を攻め、国は国を攻める。
17979 23 19 3 エジプトびとの魂は、彼らのうちにうせて、むなしくなる。わたしはその計りごとを破る。彼らは偶像および魔術師、巫子および魔法使に尋ね求める。
17980 23 19 4 わたしはエジプトびとをきびしい主人の手に渡す、荒々しい王が彼らを治めると、主、万軍の主は言われる。
17981 23 19 5 ナイルの水はつき、川はかれてかわく。
17982 23 19 6 またその運河は臭いにおいを放ち、エジプトのナイルの支流はややに減ってかわき、葦とよしとは枯れはてる。
17983 23 19 7 ナイルのほとり、ナイルの岸には裸の所があり、ナイルのほとりにまいた物はことごとく枯れ、散らされて、うせ去る。
17984 23 19 8 漁夫は嘆き、すべてナイルにつりをたれる者は悲しみ、網を水のおもてにうつ者は衰える。
17985 23 19 9 練った麻で物を造る者と、白布を織る者は恥じる。
17986 23 19 10 国の柱たる者は砕かれ、すべて雇われて働く者は嘆き悲しむ。
17987 23 19 11 ゾアンの君たちは全く愚かであり、パロの賢い議官らは愚かな計りごとをなす。あなたがたはどうしてパロにむかって「わたしは賢い者の子、いにしえの王の子です」と言うことができようか。
17988 23 19 12 あなたの賢い者はどこにおるか。彼らをして、万軍の主がエジプトについて定められたことをあなたに告げ知らしめよ。
17989 23 19 13 ゾアンの君たちは愚かとなり、メンピスの君たちは欺かれ、エジプトのもろもろの部族の隅の石たる彼らは、かえってエジプトを迷わせた。
17990 23 19 14 主は曲った心を彼らのうちに混ぜられた。彼らはエジプトをして、すべてその行うことに迷わせ、あたかも酔った人の物吐くときによろめくようにさせた。
17991 23 19 15 エジプトに対しては、頭あるいは尾、しゅろの枝あるいは葦が共になしうるわざはない。
17992 23 19 16 その日、エジプトびとは女のようになり、万軍の主の彼らの上に振り動かされるみ手の前に恐れおののく。
17993 23 19 17 ユダの地は、エジプトびとに恐れられ、ユダについて語り告げることを聞くエジプトびとはみな、万軍の主がエジプトびとにむかって定められた計りごとのゆえに恐れる。
17994 23 19 18 その日、エジプトの地にカナンの国ことばを語り、また万軍の主に誓いを立てる五つの町があり、その中の一つは太陽の町ととなえられる。
17995 23 19 19 その日、エジプトの国の中に主をまつる一つの祭壇があり、その境に主をまつる一つの柱がある。
17996 23 19 20 これはエジプトの国で万軍の主に、しるしとなり、あかしとなる。彼らがしえたげる者のゆえに、主に叫び求めるとき、主は救う者をつかわして、彼らを守り助けられる。
17997 23 19 21 主はご自分をエジプトびとに知らせられる。その日、エジプトびとは主を知り、犠牲と供え物とをもって主に仕え、主に誓願をたててこれを果す。
17998 23 19 22 主はエジプトを撃たれる。主はこれを撃たれるが、またいやされる。それゆえ彼らは主に帰る。主は彼らの願いをいれて、彼らをいやされる。
17999 23 19 23 その日、エジプトからアッスリヤに通う大路があって、アッスリヤびとはエジプトに、エジプトびとはアッスリヤに行き、エジプトびとはアッスリヤびとと共に主に仕える。
18000 23 19 24 その日、イスラエルはエジプトとアッスリヤと共に三つ相並び、全地のうちで祝福をうけるものとなる。
18001 23 19 25 万軍の主は、これを祝福して言われる、「さいわいなるかな、わが民なるエジプト、わが手のわざなるアッスリヤ、わが嗣業なるイスラエル」と。
18002 23 20 1 アッスリヤの王サルゴンからつかわされた最高司令官がアシドドに来て、これを攻め、これを取った年、――
18003 23 20 2 その時に主はアモツの子イザヤによって語って言われた、「さあ、あなたの腰から荒布を解き、足からくつを脱ぎなさい」。そこでイザヤはそのようにし、裸、はだしで歩いた。――
18004 23 20 3 主は言われた、「わがしもべイザヤは三年の間、裸、はだしで歩き、エジプトとエチオピヤに対するしるしとなり、前ぶれとなったが、
18005 23 20 4 このようにエジプトびとのとりことエチオピヤびとの捕われ人とは、アッスリヤの王に引き行かれて、その若い者も老いた者もみな裸、はだしで、しりをあらわし、エジプトの恥を示す。
18006 23 20 5 彼らはその頼みとしたエチオピヤのゆえに、その誇としたエジプトのゆえに恐れ、かつ恥じる。
18007 23 20 6 その日には、この海べに住む民は言う、『見よ、われわれが頼みとした国、すなわちわれわれがのがれて行って助けを求め、アッスリヤ王から救い出されようとした国はすでにこのとおりである。われわれはどうしてのがれることができようか』と。」
18008 23 21 1 海の荒野についての託宣。つむじ風がネゲブを吹き過ぎるように、荒野から、恐るべき地から、来るものがある。
18009 23 21 2 わたしは一つのきびしい幻を示された。かすめ奪う者はかすめ奪い、滅ぼす者は滅ぼす。エラムよ、のぼれ、メデアよ、囲め。わたしはすべての嘆きをやめさせる。
18010 23 21 3 それゆえ、わが腰は激しい痛みに満たされ、出産に臨む女の苦しみのような苦しみがわたしを捕えた。わたしは、かがんで聞くことができず、恐れおののいて見ることができない。
18011 23 21 4 わが心はみだれ惑い、わななき恐れること、はなはだしく、わたしのあこがれたたそがれは変っておののきとなった。
18012 23 21 5 彼らは食卓を設け、じゅうたんを敷いて食い飲みする。もろもろの君よ、立って、盾に油をぬれ。
18013 23 21 6 主はわたしにこう言われた、「行って、見張びとをおき、その見るところを告げさせよ。
18014 23 21 7 馬に乗って二列に並んだ者と、ろばに乗った者と、らくだに乗った者とを彼が見るならば、耳を傾けてつまびらかに聞かせよ」。
18015 23 21 8 その時、見張びとは呼ばわって言った、「主よ、わたしがひねもすやぐらに立ち、夜もすがらわが見張所に立っていると、
18016 23 21 9 見よ、馬に乗って二列に並んだ者がここに来ます」。彼は答えて言った、「倒れた、バビロンは倒れた、その神々の像はことごとく打ち砕かれて地に伏した」。
18017 23 21 10 ああ、踏みにじられたわが民、わが打ち場の子よ、イスラエルの神、万軍の主からわたしが聞いたところのものをあなたがたに告げる。
18018 23 21 11 ドマについての託宣。セイルからわたしに呼ばわる者がある、「夜回りよ、今は夜のなんどきですか、夜回りよ、今は夜のなんどきですか」。
18019 23 21 12 夜回りは言う、「朝がきます、夜もまたきます。もしあなたがたが聞こうと思うならば聞きなさい、また来なさい」。
18020 23 21 13 アラビヤについての託宣。デダンびとの隊商よ、あなたがたはアラビヤの林にやどる。
18021 23 21 14 テマの地に住む民よ、水を携えて、かわいた者を迎え、パンをもって、逃げのがれた者を迎えよ。
18022 23 21 15 彼らはつるぎを避け、抜いたつるぎを避け、張った弓を避け、また激しい戦いを避けて、逃げてきたからである。
18023 23 21 16 主はわたしにこう言われた、「雇人の年期のように一年以内にケダルのすべての栄華はつきはてる。
18024 23 21 17 ケダルの子らの勇士で、射手の残る者は少ない」。これはイスラエルの神、主が語られたのである。
18025 23 22 1 幻の谷についての託宣。あなたがたはなぜ、みな屋根にのぼったのか。
18026 23 22 2 叫び声で満ちている者、騒がしい都、喜びに酔っている町よ。あなたのうちの殺された者はつるぎで殺されたのではなく、また戦いに倒れたのでもない。
18027 23 22 3 あなたのつかさたちは皆共にのがれて行ったが、弓を捨てて捕えられた。彼らは遠く逃げて行ったが、あなたのうちの見つかった者はみな捕えられた。
18028 23 22 4 それゆえ、わたしは言った、「わたしを顧みてくれるな、わたしはいたく泣き悲しむ。わが民の娘の滅びのために、わたしを慰めようと努めてはならない」。
18029 23 22 5 万軍の神、主は幻の谷に騒ぎと、踏みにじりと、混乱の日をこさせられる。城壁はくずれ落ち、叫び声は山に聞える。
18030 23 22 6 エラムは箙を負い、戦車と騎兵とをもってきたり、キルは盾をあらわした。
18031 23 22 7 あなたの最も美しい谷は戦車で満ち、騎兵はもろもろの門にむかって立った。
18032 23 22 8 ユダを守るおおいは取り除かれた。
18033 23 22 9 またあなたがたはダビデの町の破れの多いのを見、下の池の水を集め、
18034 23 22 10 エルサレムの家を数え、またその家をこわして城壁を築き、
18035 23 22 11 一つの貯水池を二つの城壁の間に造って古池の水をひいた。しかしあなたがたはこの事をなされた者を仰ぎ望まず、この事を昔から計画された者を顧みなかった。
18036 23 22 12 その日、万軍の神、主は泣き悲しみ、頭をかぶろにし、荒布をまとうことを命じられたが、
18037 23 22 13 見よ、あなたがたは喜び楽しみ、牛をほふり、羊を殺し、肉を食い、酒を飲んで言う、「われわれは食い、かつ飲もう、明日は死ぬのだから」。
18038 23 22 14 万軍の主はみずからわたしの耳に示された、「まことに、この不義はあなたがたが死ぬまで、ゆるされることはない」と万軍の神、主は言われる。
18039 23 22 15 万軍の神、主はこう言われる、「さあ、王の家をつかさどるこの執事セブナに行って言いなさい、
18040 23 22 16 『あなたはここになんの係わりがありますか。あなたはだれの縁故でここに自分のために墓を掘ったのですか。あなたは高い所に墓を掘り、岩をうがって自分のためにすみかを造った。
18041 23 22 17 強い人よ、見よ、主はあなたを激しくなげ倒される。主はあなたを堅くつかまえ、
18042 23 22 18 ぐるぐるまわして、まりのように広々した地に投げられる。主人の家の恥となる者よ、あなたはそこで死に、あなたの華麗な車はそこに残る。
18043 23 22 19 わたしは、あなたをその職から追い、その地位から引きおろす。
18044 23 22 20 その日、わたしは、わがしもべヒルキヤの子エリアキムを呼んで、
18045 23 22 21 あなたの衣を着せ、あなたの帯をしめさせ、あなたの権力を彼の手にゆだねる。彼はエルサレムの民とユダの家との父となる。
18046 23 22 22 わたしはまたダビデの家のかぎを彼の肩に置く。彼が開けば閉じる者なく、彼が閉じれば開く者はない。
18047 23 22 23 わたしは彼を堅い所に打ったくぎのようにする。そして彼はその父の家の誉の座となり、
18048 23 22 24 その父の家のすべての重さは彼の上にかかる。すなわちその子、その孫およびすべての小さい器、鉢からすべてのびんにいたるまでみな、彼の上にかかる』」。
18049 23 22 25 万軍の主は言われる、「その日、堅い所に打ったくぎは抜け、切られて落ちる。その上にかかっている荷もまた取り去られる」と主は語られた。
18050 23 23 1 ツロについての託宣。タルシシのもろもろの船よ、泣き叫べ、ツロは荒れすたれて、家なく、船泊まりする港もないからだ。この事はクプロの地から彼らに告げ知らせられる。
18051 23 23 2 海べに住む民よ、シドンの商人よ、もだせ、あなたがたの使者は海を渡り、大いなる水の上にあった。
18052 23 23 3 ツロの収入はシホルの穀物、ナイル川の収穫であった。ツロはもろもろの国びとの商人であった。
18053 23 23 4 シドンよ、恥じよ、海は言った、海の城は言う、「わたしは苦しまず、また産まなかった。わたしは若い男子を養わず、また処女を育てなかった」。
18054 23 23 5 この報道がエジプトに達するとき、彼らはツロについての報道によって、いたく苦しむ。
18055 23 23 6 タルシシに渡れ、海べに住む民よ、泣き叫べ。
18056 23 23 7 これがその起源も古い町、自分の足で移り、遠くにまで移住した町、あなたがたの喜び誇る町なのか。
18057 23 23 8 ツロにむかってこれを定めたのはだれか。ツロは冠を授けた町、その商人は君たち、その貿易業者は地の尊い人々であった。
18058 23 23 9 万軍の主はすべての栄光の誇を汚し、地のすべての尊い者をはずかしめるためにこれを定められたのだ。
18059 23 23 10 タルシシの娘よ、ナイル川のようにおのが地にあふれよ。もはや束縛するものはない。
18060 23 23 11 主はその手を海の上に伸べて国々を震い動かされた。主はカナンについて詔を出し、そのとりでをこわされた。
18061 23 23 12 主は言われた、「しえたげられた処女シドンの娘よ、あなたはもはや喜ぶことはない。立って、クプロに渡れ、そこでもあなたは安息を得ることはない」。
18062 23 23 13 カルデヤびとの国を見よ、アッスリヤではなく、この民がツロを野の獣のすみかに定めた。彼らはやぐらを建て、もろもろの宮殿をこわして荒塚とした。
18063 23 23 14 タルシシのもろもろの船よ、泣き叫べ、あなたがたのとりでは荒れすたれたから。
18064 23 23 15 その日、ツロはひとりの王のながらえる日と同じく七十年の間忘れられ、七十年終って後、ツロは遊女の歌のようになる、
18065 23 23 16 「忘れられた遊女よ、琴を執って町を経めぐり、巧みに弾じ、多くの歌をうたって、人に思い出されよ」。
18066 23 23 17 七十年終って後、主はツロを顧みられる。ツロは再び淫行の価を得て、地のおもてにある世のすべての国々と姦淫を行い、
18067 23 23 18 その商品とその価とは主にささげられる。これはたくわえられることなく、積まれることなく、その商品は主の前に住む者のために豊かな食物となり、みごとな衣服となる。
18068 23 24 1 見よ、主はこの地をむなしくし、これを荒れすたれさせ、これをくつがえして、その民を散らされる。
18069 23 24 2 そして、その民も祭司もひとしく、しもべも主人もひとしく、はしためも主婦もひとしく、買う者も売る者もひとしく、貸す者も借りる者もひとしく、債権者も債務者もひとしく、この事にあう。
18070 23 24 3 地は全くむなしくされ、全くかすめられる。主がこの言葉を告げられたからである。
18071 23 24 4 地は悲しみ、衰え、世はしおれ、衰え、天も地と共にしおれはてる。
18072 23 24 5 地はその住む民の下に汚された。これは彼らが律法にそむき、定めを犯し、とこしえの契約を破ったからだ。
18073 23 24 6 それゆえ、のろいは地をのみつくし、そこに住む者はその罪に苦しみ、また地の民は焼かれて、わずかの者が残される。
18074 23 24 7 新しいぶどう酒は悲しみ、ぶどうはしおれ、心の楽しい者もみな嘆く。
18075 23 24 8 鼓の音は静まり、喜ぶ者の騒ぎはやみ、琴の音もまた静まった。
18076 23 24 9 彼らはもはや歌をうたって酒を飲まず、濃き酒はこれを飲む者に苦くなる。
18077 23 24 10 混乱せる町は破られ、すべての家は閉ざされて、はいることができない。
18078 23 24 11 ちまたには酒の不足のために叫ぶ声があり、すべての喜びは暗くなり、地の楽しみは追いやられた。
18079 23 24 12 町には荒れすたれた所のみ残り、その門もこわされて破れた。
18080 23 24 13 地のうちで、もろもろの民のなかで残るものは、オリブの木の打たれた後の実のように、ぶどうの収穫の終った後にその採り残りを集めるときのようになる。
18081 23 24 14 彼らは声をあげて喜び歌う。主の威光のゆえに、西から喜び呼ばわる。
18082 23 24 15 それゆえ、東で主をあがめ、海沿いの国々でイスラエルの神、主の名をあがめよ。
18083 23 24 16 われわれは地の果から、さんびの歌を聞いた、「栄光は正しい者にある」と。しかし、わたしは言う、「わたしはやせ衰える、わたしはやせ衰える、わたしはわざわいだ。欺く者はあざむき、欺く者は、はなはだしくあざむく」。
18084 23 24 17 地に住む者よ、恐れと、落し穴と、わなとはあなたの上にある。
18085 23 24 18 恐れの声をのがれる者は落し穴に陥り、落し穴から出る者はわなに捕えられる。天の窓は開け、地の基が震い動くからである。
18086 23 24 19 地は全く砕け、地は裂け、地は激しく震い、
18087 23 24 20 地は酔いどれのようによろめき、仮小屋のようにゆり動く。そのとがはその上に重く、ついに倒れて再び起きあがることはない。
18088 23 24 21 その日、主は天において、天の軍勢を罰し、地の上で、地のもろもろの王を罰せられる。
18089 23 24 22 彼らは囚人が土ろうの中に集められるように集められて、獄屋の中に閉ざされ、多くの日を経て後、罰せられる。
18090 23 24 23 こうして万軍の主がシオンの山およびエルサレムで統べ治め、かつその長老たちの前にその栄光をあらわされるので、月はあわて、日は恥じる。
18091 23 25 1 主よ、あなたはわが神、わたしはあなたをあがめ、み名をほめたたえる。あなたはさきに驚くべきみわざを行い、いにしえから定めた計画を真実をもって行われたから。
18092 23 25 2 あなたは町を石塚とし、堅固な町を荒塚とされた。外国人のやかたは、もはや町ではなく、とこしえに建てられることはない。
18093 23 25 3 それゆえ、強い民はあなたを尊び、あらぶる国々の町はあなたを恐れる。
18094 23 25 4 あなたは貧しい者のとりでとなり、乏しい者の悩みのときのとりでとなり、あらしをさける避け所となり、熱さをさける陰となられた。あらぶる者の及ぼす害は、石がきを打つあらしのごとく、
18095 23 25 5 かわいた地の熱さのようだからである。あなたは外国人の騒ぎをおさえ、雲が陰をもって熱をとどめるようにあらぶる者の歌をとどめられる。
18096 23 25 6 万軍の主はこの山で、すべての民のために肥えたものをもって祝宴を設け、久しくたくわえたぶどう酒をもって祝宴を設けられる。すなわち髄の多い肥えたものと、よく澄んだ長くたくわえたぶどう酒をもって祝宴を設けられる。
18097 23 25 7 また主はこの山で、すべての民のかぶっている顔おおいと、すべての国のおおっているおおい物とを破られる。
18098 23 25 8 主はとこしえに死を滅ぼし、主なる神はすべての顔から涙をぬぐい、その民のはずかしめを全地の上から除かれる。これは主の語られたことである。
18099 23 25 9 その日、人は言う、「見よ、これはわれわれの神である。わたしたちは彼を待ち望んだ。彼はわたしたちを救われる。これは主である。わたしたちは彼を待ち望んだ。わたしたちはその救を喜び楽しもう」と。
18100 23 25 10 主の手はこの山にとどまり、モアブは肥だめの中に踏まれるわらのように、おのれの所で踏みにじられる。
18101 23 25 11 彼はその中で泳ぐ物が泳ごうとして手を伸ばすように、その手を伸ばす。しかし主はその高ぶりを、その手の巧みなわざと共に低くされる。
18102 23 25 12 その石がきの高い城郭を主は傾け倒し、地に投げうって、ちりにかえされる。
18103 23 26 1 その日ユダの国で、この歌をうたう、「われわれは堅固な町をもつ。主は救をその石がきとし、またとりでとされる。
18104 23 26 2 門を開いて、信仰を守る正しい国民を入れよ。
18105 23 26 3 あなたは全き平安をもってこころざしの堅固なものを守られる。彼はあなたに信頼しているからである。
18106 23 26 4 とこしえに主に信頼せよ、主なる神はとこしえの岩だからである。
18107 23 26 5 主は高き所、そびえたつ町に住む者をひきおろし、これを伏させ、これを地に伏させて、ちりにかえされる。
18108 23 26 6 こうして足で踏まれ、貧しい者の足で踏まれ、乏しい者はその上を歩む」。
18109 23 26 7 正しい者の道は平らである。あなたは正しい者の道をなめらかにされる。
18110 23 26 8 主よ、あなたがさばきをなさる道で、われわれはあなたを待ち望む。われわれの魂の慕うものは、あなたの記念の名である。
18111 23 26 9 わが魂は夜あなたを慕い、わがうちなる霊は、せつにあなたを求める。あなたのさばきが地に行われるとき、世に住む者は正義を学ぶからである。
18112 23 26 10 悪しき者は恵まれても、なお正義を学ばず、正しい地にあっても不義を行い、主の威光を仰ぐことをしない。
18113 23 26 11 主よ、あなたのみ手が高くあがるけれども、彼らはそれを顧みない。どうか、あなたの、おのが民を救われる熱心を彼らに見させて、大いに恥じさせ、火をもってあなたの敵を焼き滅ぼしてください。
18114 23 26 12 主よ、あなたはわれわれのために平和を設けられる。あなたはわれわれのためにわれわれのすべてのわざをなし遂げられた。
18115 23 26 13 われわれの神、主よ、あなた以外のもろもろの主がわれわれを治めた。しかし、われわれはただ、あなたの名のみをあがめる。
18116 23 26 14 死んだ者はまた生きない。亡霊は生き返らない。それで、あなたは彼らを罰して滅ぼし、彼らの思い出をことごとく消し去られた。
18117 23 26 15 主よ、あなたはこの国民を増し加えられた。あなたはこの国民を増し加えられた。あなたは栄光をあらわされた。あなたは地の境を四方に広げられた。
18118 23 26 16 主よ、彼らは悩みのとき、あなたに求めた。彼らがあなたの懲しめにあったとき、祈をささげた。
18119 23 26 17 主よ、はらめる女の産むときが近づいて苦しみ、その痛みによって叫ぶように、われわれはあなたのゆえに、そのようであった。
18120 23 26 18 われわれは、はらみ、苦しんだ。しかしわれわれの産んだものは風にすぎなかった。われわれは救を地に施すこともせず、また世に住む者を滅ぼすこともしなかった。
18121 23 26 19 あなたの死者は生き、彼らのなきがらは起きる。ちりに伏す者よ、さめて喜びうたえ。あなたの露は光の露であって、それを亡霊の国の上に降らされるからである。
18122 23 26 20 さあ、わが民よ、あなたのへやにはいり、あなたのうしろの戸を閉じて、憤りの過ぎ去るまで、しばらく隠れよ。
18123 23 26 21 見よ、主はそのおられる所を出て、地に住む者の不義を罰せられる。地はその上に流された血をあらわして、殺された者を、もはやおおうことがない。
18124 23 27 1 その日、主は堅く大いなる強いつるぎで逃げるへびレビヤタン、曲りくねるへびレビヤタンを罰し、また海におる龍を殺される。
18125 23 27 2 その日「麗しきぶどう畑よ、このことを歌え。
18126 23 27 3 主なるわたしはこれを守り、常に水をそそぎ、夜も昼も守って、そこなう者のないようにする。
18127 23 27 4 わたしは憤らない。いばら、おどろがわたしと戦うなら、わたしは進んでこれを攻め、皆もろともに焼きつくす。
18128 23 27 5 それを望まないなら、わたしの保護にたよって、わたしと和らぎをなせ、わたしと和らぎをなせ」。
18129 23 27 6 後になれば、ヤコブは根をはり、イスラエルは芽を出して花咲き、その実を全世界に満たす。
18130 23 27 7 主は彼らを撃った者を撃たれたように彼らを撃たれたか。あるいは彼らを殺した者が殺されたように彼らは殺されたか。
18131 23 27 8 あなたは彼らと争って、彼らを追放された。主は東風の日に、その激しい風をもって彼らを移しやられた。
18132 23 27 9 それゆえ、ヤコブの不義はこれによって、あがなわれる。これによって結ぶ実は彼の罪を除く。すなわち彼が祭壇のすべての石を砕けた白堊のようにし、アシラ像と香の祭壇とを再び建てないことである。
18133 23 27 10 堅固な町は荒れてさびしく、捨て去られたすまいは荒野のようだ。子牛はそこに草を食い、そこに伏して、その木の枝を裸にする。
18134 23 27 11 その枝が枯れると、折り取られ、女が来てそれを燃やす。これは無知の民だからである。それゆえ、彼らを造られた主は彼らをあわれまれない。彼らを形造られた主は、彼らを恵まれない。
18135 23 27 12 イスラエルの人々よ、その日、主はユフラテ川からエジプトの川にいたるまで穀物の穂を打ち落される。そしてあなたがたは、ひとりびとり集められる。
18136 23 27 13 その日大いなるラッパが鳴りひびき、アッスリヤの地にある失われた者と、エジプトの地に追いやられた者とがきて、エルサレムの聖山で主を拝む。
18137 23 28 1 エフライムの酔いどれの誇る冠と、酒におぼれた者の肥えた谷のかしらにあるしぼみゆく花の美しい飾りは、わざわいだ。
18138 23 28 2 見よ、主はひとりの力ある強い者を持っておられる。これはひょうをまじえた暴風のように、破り、そこなう暴風雨のように、大水のあふれみなぎる暴風のように、それを激しく地に投げうつ。
18139 23 28 3 エフライムの酔いどれの誇る冠は足で踏みにじられる。
18140 23 28 4 肥えた谷のかしらにあるしぼみゆく花の美しい飾りは、夏前に熟した初なりのいちじくのようだ。人がこれを見ると、取るやいなや、食べてしまう。
18141 23 28 5 その日、万軍の主はその民の残った者のために、栄えの冠となり、麗しい冠となられる。
18142 23 28 6 また、さばきの席に座する者にはさばきの霊となり、戦いを門まで追い返す者には力となられる。
18143 23 28 7 しかし、これらもまた酒のゆえによろめき、濃き酒のゆえによろける。祭司と預言者とは濃き酒のゆえによろめき、酒のゆえに心みだれ、濃き酒のゆえによろける。彼らは幻を見るときに誤り、さばきを行うときにつまづく。
18144 23 28 8 すべての食卓は吐いた物で満ち、清い所はない。
18145 23 28 9 「彼はだれに知識を教えようとするのか。だれにおとずれを説きあかそうとするのか。乳をやめ、乳ぶさを離れた者にするのだろうか。
18146 23 28 10 それは教訓に教訓、教訓に教訓、規則に規則、規則に規則。ここにも少し、そこにも少し教えるのだ」。
18147 23 28 11 否、むしろ主は異国のくちびると、異国の舌とをもってこの民に語られる。
18148 23 28 12 主はさきに彼らに言われた、「これが安息だ、疲れた者に安息を与えよ。これが休息だ」と。しかし彼らは聞こうとはしなかった。
18149 23 28 13 それゆえ、主の言葉は彼らに、教訓に教訓、教訓に教訓、規則に規則、規則に規則、ここにも少し、そこにも少しとなる。これは彼らが行って、うしろに倒れ、破られ、わなにかけられ、捕えられるためである。
18150 23 28 14 それゆえ、エルサレムにあるこの民を治めるあざける人々よ、主の言葉を聞け。
18151 23 28 15 あなたがたは言った、「われわれは死と契約をなし、陰府と協定を結んだ。みなぎりあふれる災の過ぎる時にも、それはわれわれに来ない。われわれはうそを避け所となし、偽りをもって身をかくしたからである」。
18152 23 28 16 それゆえ、主なる神はこう言われる、「見よ、わたしはシオンに一つの石をすえて基とした。これは試みを経た石、堅くすえた尊い隅の石である。『信ずる者はあわてることはない』。
18153 23 28 17 わたしは公平を、測りなわとし、正義を、下げ振りとする。ひょうは偽りの避け所を滅ぼし、水は隠れ場を押し倒す」。
18154 23 28 18 その時あなたがたが死とたてた契約は取り消され、陰府と結んだ協定は行われない。みなぎりあふれる災の過ぎるとき、あなたがたはこれによって打ち倒される。
18155 23 28 19 それが過ぎるごとに、あなたがたを捕える。それは朝な朝な過ぎ、昼も夜も過ぎるからだ。このおとずれを聞きわきまえることは、全くの恐れである。
18156 23 28 20 床が短くて身を伸べることができず、かける夜具が狭くて身をおおうことができないからだ。
18157 23 28 21 主はペラジム山で立たれたように立ちあがり、ギベオンの谷で憤られたように憤られて、その行いをなされる。その行いは類のないものである。またそのわざをなされる。そのわざは異なったものである。
18158 23 28 22 それゆえ、あなたがたはあざけってはならない。さもないと、あなたがたのなわめは、きびしくなる。わたしは主なる万軍の神から全地の上に臨む滅びの宣言を聞いたからである。
18159 23 28 23 あなたがたは耳を傾けて、わが声を聞くがよい。心してわが言葉を聞くがよい。
18160 23 28 24 種をまくために耕す者は絶えず耕すだろうか。彼は絶えずその地をひらき、まぐわをもって土をならすだろうか。
18161 23 28 25 地のおもてを平らにしたならば、いのんどをまき、クミンをまき、小麦をうねに植え、大麦を定めた所に植え、スペルト麦をその境に植えないだろうか。
18162 23 28 26 これは彼の神が正しく、彼を導き教えられるからである。
18163 23 28 27 いのんどは麦こき板でこかない、クミンはその上に車輪をころがさない。いのんどを打つには棒を用い、クミンを打つにはさおを用いる。
18164 23 28 28 人はパン用の麦を打つとき砕くだろうか、否、それが砕けるまでいつまでも打つことをしない。馬をもってその上に車輪を引かせるとき、それを砕くことをしない。
18165 23 28 29 これもまた万軍の主から出ることである。その計りごとは驚くべく、その知恵はすぐれている。
18166 23 29 1 ああ、アリエルよ、アリエルよ、ダビデが営をかまえた町よ、年に年を加え、祭をめぐりこさせよ。
18167 23 29 2 その時わたしはアリエルを悩ます。そこには悲しみと嘆きとがあって、アリエルのようなものとなる。
18168 23 29 3 わたしはあなたのまわりに営を構え、やぐらをもってあなたを囲み、塁を築いてあなたを攻める。
18169 23 29 4 その時あなたは深い地の中から物言い、低いちりの中から言葉を出す。あなたの声は亡霊の声のように地から出、あなたの言葉はちりの中から、さえずるようである。
18170 23 29 5 しかしあなたのあだの群れは細かなちりのようになり、あらぶる者の群れは吹き去られるもみがらのようになる。また、にわかに、またたくまに、この事がある。
18171 23 29 6 すなわち万軍の主は雷、地震、大いなる叫び、つむじ風、暴風および焼きつくす火の炎をもって臨まれる。
18172 23 29 7 そしてアリエルを攻めて戦う国々の群れ、すなわちアリエルとその城を攻めて戦い、これを悩ます者はみな夢のように、夜の幻のようになる。
18173 23 29 8 飢えた者が食べることを夢みても、さめると、その飢えがいえないように、あるいは、かわいた者が飲むことを夢みても、さめると、疲れてそのかわきがとまらないように、シオンの山を攻めて戦う国々の群れもそのようになる。
18174 23 29 9 あなたがたは知覚を失って気が遠くなれ、目がくらんで盲となれ。あなたがたは酔っていよ、しかし酒のゆえではない、よろめけ、しかし濃き酒のゆえではない。
18175 23 29 10 主が深い眠りの霊をあなたがたの上にそそぎ、あなたがたの目である預言者を閉じこめ、あなたがたの頭である先見者をおおわれたからである。
18176 23 29 11 それゆえ、このすべての幻は、あなたがたには封じた書物の言葉のようになり、人々はこれを読むことのできる者にわたして、「これを読んでください」と言えば、「これは封じてあるから読むことができない」と彼は言う。
18177 23 29 12 またその書物を読むことのできない者にわたして、「これを読んでください」と言えば、「読むことはできない」と彼は言う。
18178 23 29 13 主は言われた、「この民は口をもってわたしに近づき、くちびるをもってわたしを敬うけれども、その心はわたしから遠く離れ、彼らのわたしをかしこみ恐れるのは、そらで覚えた人の戒めによるのである。
18179 23 29 14 それゆえ、見よ、わたしはこの民に、再び驚くべきわざを行う、それは不思議な驚くべきわざである。彼らのうちの賢い人の知恵は滅び、さとい人の知識は隠される」。
18180 23 29 15 わざわいなるかな、おのが計りごとを主に深く隠す者。彼らは暗い中でわざを行い、「だれがわれわれを見るか、だれがわれわれのことを知るか」と言う。
18181 23 29 16 あなたがたは転倒して考えている。陶器師は粘土と同じものに思われるだろうか。造られた物はそれを造った者について、「彼はわたしを造らなかった」と言い、形造られた物は形造った者について、「彼は知恵がない」と言うことができようか。
18182 23 29 17 しばらくしてレバノンは変って肥えた畑となり、肥えた畑は林のように思われる時が来るではないか。
18183 23 29 18 その日、耳しいは書物の言葉を聞き、目しいの目はその暗やみから、見ることができる。
18184 23 29 19 柔和な者は主によって新たなる喜びを得、人のなかの貧しい者はイスラエルの聖者によって楽しみを得る。
18185 23 29 20 あらぶる者は絶え、あざける者はうせ、悪を行おうと、おりをうかがう者は、ことごとく断ち滅ぼされるからである。
18186 23 29 21 彼らは言葉によって人を罪に定め、町の門でいさめる者をわなにおとしいれ、むなしい言葉をかまえて正しい者をしりぞける。
18187 23 29 22 それゆえ、昔アブラハムをあがなわれた主は、ヤコブの家についてこう言われる、「ヤコブは、もはやはずかしめを受けず、その顔は、もはや色を失うことはない。
18188 23 29 23 彼の子孫が、その中にわが手のわざを見るとき、彼らはわが名を聖とし、ヤコブの聖者を聖として、イスラエルの神を恐れる。
18189 23 29 24 心のあやまれる者も、悟りを得、つぶやく者も教をうける」。
18190 23 30 1 主は言われる、「そむける子らはわざわいだ、彼らは計りごとを行うけれども、わたしによってではない。彼らは同盟を結ぶけれども、わが霊によってではない、罪に罪を加えるためだ。
18191 23 30 2 彼らはわが言葉を求めず、エジプトへ下っていって、パロの保護にたより、エジプトの陰に隠れようとする。
18192 23 30 3 それゆえ、パロの保護はかえってあなたがたの恥となり、エジプトの陰に隠れることはあなたがたのはずかしめとなる。
18193 23 30 4 たとい、彼の君たちがゾアンにあり、彼の使者たちがハネスに来ても、
18194 23 30 5 彼らは皆おのれを益することのできない民により、すなわち助けとならず、益とならず、かえって恥となり、はずかしめとなる民によって、恥をかくからである」。
18195 23 30 6 ネゲブの獣についての託宣。彼らはその富を若いろばの背に負わせ、その宝をらくだの背に負わせて、雌じし、雄じし、まむしおよび飛びかけるへびの出る悩みと苦しみの国を通って、おのれを益することのできない民に行く。
18196 23 30 7 そのエジプトの助けは無益であって、むなしい。それゆえ、わたしはこれを「休んでいるラハブ」と呼んだ。
18197 23 30 8 いま行って、これを彼らの前で札にしるし、書物に載せ、後の世に伝えて、とこしえにあかしとせよ。
18198 23 30 9 彼らはそむける民、偽りを言う子ら、主の教を聞こうとしない子らだ。
18199 23 30 10 彼らは先見者にむかって「見るな」と言い、預言者にむかっては「正しい事をわれわれに預言するな、耳に聞きよいことを語れ、迷わしごとを預言せよ。
18200 23 30 11 大路を去り、小路をはなれ、イスラエルの聖者について語り聞かすな」と言う。
18201 23 30 12 それゆえ、イスラエルの聖者はこう言われる、「あなたがたはこの言葉を侮り、しえたげと、よこしまとを頼み、これにたよるがゆえに、
18202 23 30 13 この不義はあなたがたには突き出て、くずれ落ちようとする高い石がきの破れのようであって、その倒壊はにわかに、またたくまに来る。
18203 23 30 14 その破れることは陶器師の器を破るように惜しむことなく打ち砕き、その砕けのなかには、炉から火を取り、池から水をくめるほどの、ひとかけらさえ見いだされない」。
18204 23 30 15 主なる神、イスラエルの聖者はこう言われた、「あなたがたは立ち返って、落ち着いているならば救われ、穏やかにして信頼しているならば力を得る」。しかし、あなたがたはこの事を好まなかった。
18205 23 30 16 かえって、あなたがたは言った、「否、われわれは馬に乗って、とんで行こう」と。それゆえ、あなたがたはとんで帰る。また言った、「われらは速い馬に乗ろう」と。それゆえ、あなたがたを追う者は速い。
18206 23 30 17 ひとりの威嚇によって千人は逃げ、五人の威嚇によってあなたがたは逃げて、その残る者はわずかに山の頂にある旗ざおのように、丘の上にある旗のようになる。
18207 23 30 18 それゆえ、主は待っていて、あなたがたに恵を施される。それゆえ、主は立ちあがって、あなたがたをあわれまれる。主は公平の神でいらせられる。すべて主を待ち望む者はさいわいである。
18208 23 30 19 シオンにおり、エルサレムに住む民よ、あなたはもはや泣くことはない。主はあなたの呼ばわる声に応じて、必ずあなたに恵みを施される。主がそれを聞かれるとき、直ちに答えられる。
18209 23 30 20 たとい主はあなたがたに悩みのパンと苦しみの水を与えられても、あなたの師は再び隠れることはなく、あなたの目はあなたの師を見る。
18210 23 30 21 また、あなたが右に行き、あるいは左に行く時、そのうしろで「これは道だ、これに歩め」と言う言葉を耳に聞く。
18211 23 30 22 その時、あなたがたはしろがねをおおった刻んだ像と、こがねを張った鋳た像とを汚し、これをきたない物のようにまき散らして、これに「去れ」と言う。
18212 23 30 23 主はあなたが地にまく種に雨を与え、地の産物なる穀物をくださる。それはおびただしく、かつ豊かである。その日あなたの家畜は広い牧場で草を食べ、
18213 23 30 24 地を耕す牛と、ろばは、シャベルと、くまででより分けて塩を加えた飼料を食べる。
18214 23 30 25 大いなる虐殺の日、やぐらの倒れる時、すべてのそびえたつ山と、すべての高い丘に水の流れる川がある。
18215 23 30 26 さらに主がその民の傷を包み、その打たれた傷をいやされる日には、月の光は日の光のようになり、日の光は七倍となり、七つの日の光のようにになる。
18216 23 30 27 見よ、主の名は遠い所から燃える怒りと、立ちあがる濃い煙をもって来る。そのくちびるは憤りで満ち、その舌は焼きつくす火のごとく、
18217 23 30 28 その息はあふれて首にまで達する流れのようであって、滅びのふるいをもってもろもろの国をふるい、また惑わす手綱をもろもろの民のあごにつけるために来る。
18218 23 30 29 あなたがたは、聖なる祭を守る夜のように歌をうたう。また笛をならして主の山にきたり、イスラエルの岩なる主にまみえる時のように心に喜ぶ。
18219 23 30 30 主はその威厳ある声を聞かせ、激しい怒りと、焼きつくす火の炎と、豪雨と、暴風と、ひょうとをもってその腕の下ることを示される。
18220 23 30 31 主がそのむちをもって打たれる時、アッスリヤの人々は主の声によって恐れおののく。
18221 23 30 32 主が懲しめのつえを彼らの上に加えられるごとに鼓を鳴らし、琴をひく。主は腕を振りかざして、彼らと戦われる。
18222 23 30 33 焼き場はすでに設けられた。しかも王のために深く広く備えられ、火と多くのたきぎが積まれてある。主の息はこれを硫黄の流れのように燃やす。
18223 23 31 1 助けを得るためにエジプトに下り、馬にたよる者はわざわいだ。彼らは戦車が多いので、これに信頼し、騎兵がはなはだ強いので、これに信頼する。しかしイスラエルの聖者を仰がず、また主にはかることをしない。
18224 23 31 2 それにもかかわらず、主もまた賢くいらせられ、必ず災をくだし、その言葉を取り消すことなく、立って悪をなす者の家を攻め、また不義を行う者を助ける者を攻められる。
18225 23 31 3 かのエジプトびとは人であって、神ではない。その馬は肉であって、霊ではない。主がみ手を伸ばされるとき、助ける者はつまずき、助けられる者も倒れて、皆ともに滅びる。
18226 23 31 4 主はわたしにこう言われた、「ししまたは若いししが獲物をつかんで、ほえたけるとき、あまたの羊飼が呼び出されて、これにむかっても、その声によって驚かず、その叫びによって恐れないように、万軍の主は下ってきて、シオンの山およびその丘で戦われる。
18227 23 31 5 鳥がひなを守るように、万軍の主はエルサレムを守り、これを守って救い、これを惜しんで助けられる」。
18228 23 31 6 イスラエルの人々よ、主に帰れ。あなたがたは、はなはだしく主にそむいた。
18229 23 31 7 その日、あなたがたは自分の手で造って罪を犯したしろがねの偶像と、こがねの偶像をめいめい投げすてる。
18230 23 31 8 「アッスリヤびとはつるぎによって倒れる、人のつるぎではない。つるぎが彼らを滅ぼす、人のつるぎではない。彼らはつるぎの前から逃げ去り、その若い者は奴隷の働きをしいられる。
18231 23 31 9 彼らの岩は恐れによって過ぎ去り、その君たちはあわて、旗をすてて逃げ去る」。これは主の言葉である。主の火はシオンにあり、その炉はエルサレムにある。
18232 23 32 1 見よ、ひとりの王が正義をもって統べ治め、君たちは公平をもってつかさどり、
18233 23 32 2 おのおの風をさける所、暴風雨をのがれる所のようになり、かわいた所にある水の流れのように、疲れた地にある大きな岩の陰のようになる。
18234 23 32 3 こうして、見る者の目は開かれ、聞く者の耳はよく聞き、
18235 23 32 4 気短な者の心は悟る知識を得、どもりの舌はたやすく、あざやかに語ることができる。
18236 23 32 5 愚かな者は、もはや尊い人と呼ばれることなく、悪人はもはや、りっぱな人と言われることはない。
18237 23 32 6 それは愚かな者は愚かなことを語り、その心は不義をたくらみ、よこしまを行い、主について誤ったことを語り、飢えた者の望みを満たさず、かわいた者の飲み物を奪い取るからである。
18238 23 32 7 悪人の行いは悪い。彼は悪い計りごとをめぐらし、偽りの言葉をもって貧しい者をおとしいれ、乏しい者が正しいことを語っても、なお、これをおとしいれる。
18239 23 32 8 しかし尊い人は尊いことを語り、つねに尊いことを行う。
18240 23 32 9 安んじている女たちよ、起きて、わが声を聞け。思い煩いなき娘たちよ、わが言葉に耳を傾けよ。
18241 23 32 10 思い煩いなき女たちよ、一年あまりの日をすぎて、あなたがたは震えおののく。ぶどうの収穫がむなしく、実を取り入れる時が来ないからだ。
18242 23 32 11 安んじている女たちよ、震え恐れよ。思い煩いなき女たちよ、震えおののけ。衣を脱ぎ、裸になって腰に荒布をまとえ。
18243 23 32 12 良き畑のため、実り豊かなぶどうの木のために胸を打て。
18244 23 32 13 いばら、おどろの生えているわが民の地のため、喜びに満ちている町にあるすべての喜びの家のために胸を打て。
18245 23 32 14 宮殿は捨てられ、にぎわった町は荒れすたれ、丘と、やぐらとは、とこしえにほら穴となり、野のろばの楽しむ所、羊の群れの牧場となるからである。
18246 23 32 15 しかし、ついには霊が上からわれわれの上にそそがれて、荒野は良き畑となり、良き畑は林のごとく見られるようになる。
18247 23 32 16 その時、公平は荒野に住み、正義は良き畑にやどる。
18248 23 32 17 正義は平和を生じ、正義の結ぶ実はとこしえの平安と信頼である。
18249 23 32 18 わが民は平和の家におり、安らかなすみかにおり、静かな休み所におる。
18250 23 32 19 しかし林はことごとく切り倒され、町もことごとく倒される。
18251 23 32 20 すべての水のほとりに種をまき、牛およびろばを自由に放ちおくあなたがたは、さいわいである。
18252 23 33 1 わざわいなるかな、おのれ自ら滅ぼされないのに、人を滅ぼし、だれも欺かないのに人を欺く者よ。あなたが滅ぼすことをやめたとき、あなたは滅ぼされ、あなたが欺くことを終えたとき、あなたは欺かれる。
18253 23 33 2 主よ、われわれをお恵みください、われわれはあなたを待ち望む。朝ごとに、われわれの腕となり、悩みの時に、救となってください。
18254 23 33 3 鳴りとどろく声によって、もろもろの民は逃げ去り、あなたが立ちあがられると、もろもろの国は散らされる。
18255 23 33 4 青虫が物を集めるようにぶんどり品は集められ、いなごのとびつどうように、人々はその上にとびつどう。
18256 23 33 5 主は高くいらせられ、高い所に住まわれる。主はシオンに公平と正義とを満たされる。
18257 23 33 6 また主は救と知恵と知識を豊かにして、あなたの代を堅く立てられる。主を恐れることはその宝である。
18258 23 33 7 見よ、勇士たちは外にあって叫び、平和の使者はいたく嘆く。
18259 23 33 8 大路は荒れすたれて、旅びとは絶え、契約は破られ、証人は軽んぜられ、人を顧みることがない。
18260 23 33 9 地は嘆き衰え、レバノンは恥じて枯れ、シャロンは荒野のようになり、バシャンとカルメルはその葉を落す。
18261 23 33 10 主は言われる、「今わたしは起きよう、いま立ちあがろう、いま自らを高くしよう。
18262 23 33 11 あなたがたは、もみがらをはらみ、わらを産む。あなたがたの息は火となって、あなたがたを食いつくす。
18263 23 33 12 もろもろの民は焼かれて石灰のようになり、いばらが切られて火に燃やされたようになる」。
18264 23 33 13 あなたがた遠くにいる者よ、わたしがおこなったことを聞け。あなたがた近くにいる者よ、わが大能を知れ。
18265 23 33 14 シオンの罪びとは恐れに満たされ、おののきは神を恐れない者を捕えた。「われわれのうち、だれが焼きつくす火の中におることができよう。われわれのうち、だれがとこしえの燃える火の中におることができよう」。
18266 23 33 15 正しく歩む者、正直に語る者、しえたげて得た利をいやしめる者、手を振って、まいないを取らない者、耳をふさいで血を流す謀略を聞かない者、目を閉じて悪を見ない者、
18267 23 33 16 このような人は高い所に住み、堅い岩はそのとりでとなり、そのパンは与えられ、その水は絶えることがない。
18268 23 33 17 あなたの目は麗しく飾った王を見、遠く広い国を見る。
18269 23 33 18 あなたの心はかの恐ろしかった事を思い出す。「数を調べた者はどこにいるか。みつぎを量った者はどこにいるか。やぐらを数えた者はどこにいるか」。
18270 23 33 19 あなたはもはや高慢な民を見ない。かの民の言葉はあいまいで、聞きとりがたく、その舌はどもって、悟りがたい。
18271 23 33 20 定めの祭の町シオンを見よ。あなたの目は平和なすまい、移されることのない幕屋エルサレムを見る。その杭はとこしえに抜かれず、その綱は、ひとすじも断たれることはない。
18272 23 33 21 主は威厳をもってかしこにいまし、われわれのために広い川と流れのある所となり、その中には、こぐ舟も入らず、大きな船も過ぎることはない。
18273 23 33 22 主はわれわれのさばき主、主はわれわれのつかさ、主はわれわれの王であって、われわれを救われる。
18274 23 33 23 あなたの船綱は解けて、帆柱のもとを結びかためることができず、帆を張ることもできない。その時多くの獲物とぶんどり品は分けられ、足なえまでも獲物を取る。
18275 23 33 24 そこに住む者のうちには、「わたしは病気だ」と言う者はなく、そこに住む民はその罪がゆるされる。
18276 23 34 1 もろもろの国よ、近づいて聞け。もろもろの民よ、耳を傾けよ。地とそれに満ちるもの、世界とそれから出るすべてのものよ、聞け。
18277 23 34 2 主はすべての国にむかって怒り、そのすべての軍勢にむかって憤り、彼らをことごとく滅ぼし、彼らをわたして、ほふらせられた。
18278 23 34 3 彼らは殺されて投げすてられ、その死体の悪臭は立ちのぼり、山々はその血で溶けて流れる。
18279 23 34 4 天の万象は衰え、もろもろの天は巻物のように巻かれ、その万象はぶどうの木から葉の落ちるように、いちじくの木から葉の落ちるように落ちる。
18280 23 34 5 わたしのつるぎは天において憤りをもって酔った。見よ、これはエドムの上にくだり、わたしが滅びに定めた民の上にくだって、これをさばく。
18281 23 34 6 主のつるぎは血で満ち、脂肪で肥え、小羊とやぎの血、雄羊の腎臓の脂肪で肥えている。主がボズラで犠牲の獣をほふり、エドムの地で大いに殺されたからである。
18282 23 34 7 野牛は彼らと共にほふり場にくだり、子牛は力ある雄牛と共にくだる。その国は血で酔い、その土は脂肪で肥やされる。
18283 23 34 8 主はあだをかえす日をもち、シオンの訴えのために報いられる年をもたれるからである。
18284 23 34 9 エドムのもろもろの川は変って樹脂となり、その土は変って硫黄となり、その地は変って燃える樹脂となって、
18285 23 34 10 夜も昼も消えず、その煙は、とこしえに立ちのぼる。これは世々荒れすたれて、とこしえまでもそこを通る者はない。
18286 23 34 11 たかと、やまあらしとがそこをすみかとし、ふくろうと、からすがそこに住む。主はその上に荒廃をきたらせる測りなわを張り、尊い人々の上に混乱を起す下げ振りをさげられる。
18287 23 34 12 人々はこれを名づけて「国なき所」といい、その君たちは皆うせてなくなる。
18288 23 34 13 そのとりでの上には、いばらが生え、その城には、いらくさと、あざみとが生え、山犬のすみか、だちょうのおる所となる。
18289 23 34 14 野の獣はハイエナと出会い、鬼神はその友を呼び、夜の魔女もそこに降りてきて、休み所を得る。
18290 23 34 15 ふくろうはそこに巣をつくって卵を産み、それをかえして、そのひなを翼の陰に集める。とびもまた、おのおのその連れ合いと共に、そこに集まる。
18291 23 34 16 あなたがたは主の書をつまびらかにたずねて、これを読め。これらのものは一つも欠けることなく、また一つもその連れ合いを欠くものはない。これは主の口がこれを命じ、その霊が彼らを集められたからである。
18292 23 34 17 主は彼らのためにくじを引き、手ずから測りなわをもって、この地を分け与え、長く彼らに所有させ、世々ここに住まわせられる。
18293 23 35 1 荒野と、かわいた地とは楽しみ、さばくは喜びて花咲き、さふらんのように、
18294 23 35 2 さかんに花咲き、かつ喜び楽しみ、かつ歌う。これにレバノンの栄えが与えられ、カルメルおよびシャロンの麗しさが与えられる。彼らは主の栄光を見、われわれの神の麗しさを見る。
18295 23 35 3 あなたがたは弱った手を強くし、よろめくひざを健やかにせよ。
18296 23 35 4 心おののく者に言え、「強くあれ、恐れてはならない。見よ、あなたがたの神は報復をもって臨み、神の報いをもってこられる。神は来て、あなたがたを救われる」と。
18297 23 35 5 その時、目しいの目は開かれ、耳しいの耳はあけられる。
18298 23 35 6 その時、足なえは、しかのように飛び走り、おしの舌は喜び歌う。それは荒野に水がわきいで、さばくに川が流れるからである。
18299 23 35 7 焼けた砂は池となり、かわいた地は水の源となり、山犬の伏したすみかは、葦、よしの茂りあう所となる。
18300 23 35 8 そこに大路があり、その道は聖なる道ととなえられる。汚れた者はこれを通り過ぎることはできない、愚かなる者はそこに迷い入ることはない。
18301 23 35 9 そこには、ししはおらず、飢えた獣も、その道にのぼることはなく、その所でこれに会うことはない。ただ、あがなわれた者のみ、そこを歩む。
18302 23 35 10 主にあがなわれた者は帰ってきて、その頭に、とこしえの喜びをいただき、歌うたいつつ、シオンに来る。彼らは楽しみと喜びとを得、悲しみと嘆きとは逃げ去る。
18303 23 36 1 ヒゼキヤ王の第十四年に、アッスリヤの王セナケリブが上ってきて、ユダのすべての堅固な町々を攻め取った。
18304 23 36 2 アッスリヤの王はラキシからラブシャケをエルサレムにつかわし、大軍を率いてヒゼキヤ王のもとへ行かせた。ラブシャケは布さらしの野へ行く大路に沿う、上の池の水道のかたわらに立った。
18305 23 36 3 この時ヒルキヤの子である宮内卿エリアキム、書記官セブナおよびアサフの子である史官ヨアが彼の所に出てきた。
18306 23 36 4 ラブシャケは彼らに言った、「ヒゼキヤに言いなさい、『大王アッスリヤの王はこう仰せられる、あなたが頼みとする者は何か。
18307 23 36 5 口先だけの言葉が戦争をする計略と力だと考えるのか。あなたは今だれを頼んで、わたしにそむいたのか。
18308 23 36 6 見よ、あなたはかの折れかけている葦のつえエジプトを頼みとしているが、それは人が寄りかかるとき、その人の手を刺し通す。エジプトの王パロはすべて寄り頼む者にそのようにするのだ。
18309 23 36 7 しかし、あなたがもし「われわれはわれわれの神、主を頼む」とわたしに言うならば、ヒゼキヤがユダとエルサレムに告げて、「あなたがたはこの祭壇の前で礼拝しなければならない」と言って除いたのは、その神の高き所と祭壇ではなかったのか。
18310 23 36 8 さあ、今わたしの主君アッスリヤの王とかけをせよ。もしあなたの方に乗る人があるならば、わたしは馬二千頭を与えよう。
18311 23 36 9 あなたはエジプトを頼み、戦車と騎兵を請い求めているが、わたしの主君の家来のうちの最も小さい一隊長でさえ、どうして撃退することができようか。
18312 23 36 10 わたしがこの国を滅ぼすために上ってきたのは、主の許しなしでしたことであろうか。主はわたしに、この国へ攻め上って、これを滅ぼせと言われたのだ』」。
18313 23 36 11 その時、エリアキム、セブナおよびヨアはラブシャケに言った、「どうぞ、アラム語でしもべたちに話してください。わたしたちはそれがわかるからです。城壁の上にいる民の聞いているところで、わたしたちにユダヤの言葉で話さないでください」。
18314 23 36 12 しかしラブシャケは言った、「わたしの主君は、あなたの主君とあなたにだけでなく、城壁の上に座している人々にも、この言葉を告げるために、わたしをつかわされたのではないか。彼らをも、あなたがたと共に自分の糞尿を食い飲みするに至らせるためではないか」。
18315 23 36 13 そしてラブシャケは立ちあがり、ユダヤの言葉で大声に呼ばわって言った、「大王、アッスリヤの王の言葉を聞け。
18316 23 36 14 王はこう仰せられる、『あなたがたはヒゼキヤに欺かれてはならない。彼はあなたがたを救い出すことはできない。
18317 23 36 15 ヒゼキヤが、主は必ずわれわれを救い出される。この町はアッスリヤの王の手に陥ることはない、と言っても、あなたがたは主を頼みとしてはならない』。
18318 23 36 16 あなたがたはヒゼキヤの言葉を聞いてはならない。アッスリヤの王はこう仰せられる、『あなたがたは、わたしと和ぼくして、わたしに降服せよ。そうすれば、あなたがたはめいめい自分のぶどうの実を食べ、めいめい自分のいちじくの実を食べ、めいめい自分の井戸の水を飲むことができる。
18319 23 36 17 やがて、わたしが来て、あなたがたを一つの国へ連れて行く。それは、あなたがたの国のように穀物とぶどう酒の多い地、パンとぶどう畑の多い地だ。
18320 23 36 18 ヒゼキヤが、主はわれわれを救われる、と言って、あなたがたを惑わすことのないように気をつけよ。もろもろの国の神々のうち、どの神がその国をアッスリヤの王の手から救ったか。
18321 23 36 19 ハマテやアルパデの神々はどこにいるか。セパルワイムの神々はどこにいるか。彼らはサマリヤをわたしの手から救い出したか。
18322 23 36 20 これらの国々のすべての神々のうちに、だれかその国をわたしの手から救い出した者があるか。主がどうしてエルサレムをわたしの手から救い出すことができよう』」。
18323 23 36 21 しかし民は黙ってひと言も答えなかった。王が命じて、「彼に答えてはならない」と言っておいたからである。
18324 23 36 22 その時ヒルキヤの子である宮内卿エリアキム、書記官セブナおよびアサフの子である史官ヨアは衣を裂き、ヒゼキヤのもとに来て、ラブシャケの言葉を彼に告げた。
18325 23 37 1 ヒゼキヤ王はこれを聞いて、衣を裂き、荒布を身にまとって主の宮に入り、
18326 23 37 2 宮内卿エリアキムと書記官セブナおよび祭司のうちの年長者たちに荒布をまとわせて、アモツの子預言者イザヤのもとへつかわした。
18327 23 37 3 彼らはイザヤに言った、「ヒゼキヤはこう言います、『きょうは悩みと責めと、はずかしめの日です。胎児がまさに生れようとして、これを産み出す力がないのです。
18328 23 37 4 あなたの神、主は、あるいはラブシャケのもろもろの言葉を聞かれたかもしれません。彼はその主君アッスリヤの王につかわされて、生ける神をそしりました。あなたの神、主はその言葉を聞いて、あるいは責められるかもしれません。それゆえ、この残っている者のために祈をささげてください』」。
18329 23 37 5 ヒゼキヤ王の家来たちがイザヤのもとに来たとき、
18330 23 37 6 イザヤは彼らに言った、「あなたがたの主君にこう言いなさい、『主はこう仰せられる、アッスリヤの王のしもべらが、わたしをそしった言葉を聞いて恐れるには及ばない。
18331 23 37 7 見よ、わたしは一つの霊を彼のうちに送って、一つのうわさを聞かせ、彼を自分の国へ帰らせて、その国でつるぎに倒れさせる』」。
18332 23 37 8 ラブシャケは引き返して、アッスリヤの王がリブナを攻めているところへ行った。彼は王がラキシを去ったことを聞いたからである。
18333 23 37 9 この時、アッスリヤの王はエチオピヤの王テルハカについて、「彼はあなたと戦うために出てきた」と人々が言うのを聞いた。彼はこのことを聞いて、使者をヒゼキヤにつかわそうとして言った、
18334 23 37 10 「ユダの王ヒゼキヤにこう言いなさい、『あなたは、エルサレムはアッスリヤの王の手に陥ることはない、と言うあなたの信頼する神に欺かれてはならない。
18335 23 37 11 あなたはアッスリヤの王たちが、国々にしたこと、彼らを全く滅ぼしたことを聞いている。どうしてあなたは救われることができようか。
18336 23 37 12 わたしの先祖たちはゴザン、ハラン、レゼフおよびテラサルにいたエデンの人々を滅ぼしたが、その国々の神々は彼らを救ったか。
18337 23 37 13 ハマテの王、アルパデの王、セパルワイムの町の王、ヘナの王およびイワの王はどこにいるか』」。
18338 23 37 14 ヒゼキヤは使者の手から手紙を受け取ってそれを読み、主の宮にのぼっていって、主の前にそれをひろげ、
18339 23 37 15 主に祈って言った、
18340 23 37 16 「ケルビムの上に座しておられるイスラエルの神、万軍の主よ、地のすべての国のうちで、ただあなただけが神でいらせられます。あなたは天と地を造られました。
18341 23 37 17 主よ、耳を傾けて聞いてください。主よ、目を開いて見てください。セナケリブが生ける神をそしるために書き送った言葉を聞いてください。
18342 23 37 18 主よ、まことにアッスリヤの王たちは、もろもろの民とその国々を滅ぼし、
18343 23 37 19 またその神々を火に投げ入れました。それらは神ではなく、人の手の造ったもので、木や石だから滅ぼされたのです。
18344 23 37 20 今われわれの神、主よ、どうぞ、われわれを彼の手から救い出してください。そうすれば地の国々は皆あなただけが主でいらせられることを知るようになるでしょう」。
18345 23 37 21 その時アモツの子イザヤは人をつかわしてヒゼキヤに言った、「イスラエルの神、主はこう言われる、あなたはアッスリヤの王セナケリブについてわたしに祈ったゆえ、
18346 23 37 22 主が彼について語られた言葉はこうである、『処女であるシオンの娘はあなたを侮り、あなたをあざける。エルサレムの娘は、あなたのうしろで頭を振る。
18347 23 37 23 あなたはだれをそしり、だれをののしったのか。あなたはだれにむかって声をあげ、目を高くあげたのか。イスラエルの聖者にむかってだ。
18348 23 37 24 あなたは、そのしもべらによって主をそしって言った、「わたしは多くの戦車を率いて山々の頂にのぼり、レバノンの奥へ行き、たけの高い香柏と、最も良いいとすぎを切り倒し、またその果の高地へ行き、その密林にはいった。
18349 23 37 25 わたしは井戸を掘って水を飲んだ。わたしは足の裏でエジプトのすべての川を踏みからした」。
18350 23 37 26 あなたは聞かなかったか、昔わたしがそれを定めたことを。堅固な町々を、あなたがこわして荒塚とすることも、いにしえの日から、わたしが計画して今それをきたらせたのだ。
18351 23 37 27 そのうちに住む民は力弱く、おののき恥をいだいて、野の草のように、青菜のようになり、育たずに枯れる屋根の草のようになった。
18352 23 37 28 わたしは、あなたの座すること、出入りすること、また、わたしにむかって怒り叫んだことをも知っている。
18353 23 37 29 あなたが、わたしにむかって怒り叫んだことと、あなたの高慢な言葉とがわたしの耳にはいったゆえ、わたしは、あなたの鼻に輪をつけ、あなたの口にくつわをはめて、あなたを、もと来た道へ引きもどす』。
18354 23 37 30 あなたに与えるしるしはこれである。すなわち、ことしは落ち穂から生えた物を食べ、二年目には、またその落ち穂から生えた物を食べ、三年目には種をまき、刈り入れ、ぶどう畑を作ってその実を食べる。
18355 23 37 31 ユダの家の、のがれて残る者は再び下に根を張り、上に実を結ぶ。
18356 23 37 32 すなわち残る者はエルサレムから出、のがれる物はシオンの山から出る。万軍の主の熱心がこれをなし遂げられる。
18357 23 37 33 それゆえ、主はアッスリヤの王について、こう仰せられる、『彼はこの町にこない。またここに矢を放たない。また盾をもって、その前にこない。また塁を築いて、これを攻めることはない。
18358 23 37 34 彼は来た道から帰って、この町に、はいることはない、と主は言う。
18359 23 37 35 わたしは自分のため、また、わたしのしもべダビデのために町を守って、これを救おう』」。
18360 23 37 36 主の使が出て、アッスリヤびとの陣営で十八万五千人を撃ち殺した。人々が朝早く起きて見ると、彼らは皆死体となっていた。
18361 23 37 37 アッスリヤの王セナケリブは立ち去り、帰っていってニネベにいたが、
18362 23 37 38 その神ニスロクの神殿で礼拝していた時、その子らのアデラン・メレクとシャレゼルがつるぎをもって彼を殺し、ともにアララテの地へ逃げていった。それで、その子エサルハドンが代って王となった。
18363 23 38 1 そのころヒゼキヤは病気になって死にかかっていた。アモツの子預言者イザヤは彼のところに来て言った、「主はこう仰せられます、あなたの家を整えておきなさい。あなたは死にます、生きながらえることはできません」。
18364 23 38 2 そこでヒゼキヤは顔を壁に向けて主に祈って言った、
18365 23 38 3 「ああ主よ、願わくは、わたしが真実と真心とをもって、み前に歩み、あなたの目にかなう事を行ったのを覚えてください」。そしてヒゼキヤはひどく泣いた。
18366 23 38 4 その時主の言葉がイザヤに臨んで言った、
18367 23 38 5 「行って、ヒゼキヤに言いなさい、『あなたの父ダビデの神、主はこう仰せられます、「わたしはあなたの祈を聞いた。あなたの涙を見た。見よ、わたしはあなたのよわいを十五年増そう。
18368 23 38 6 わたしはあなたと、この町とをアッスリヤの王の手から救い、この町を守ろう」。
18369 23 38 7 主が約束されたことを行われることについては、あなたは主からこのしるしを得る。
18370 23 38 8 見よ、わたしはアハズの日時計の上に進んだ日影を十度退かせよう』」。すると日時計の上に進んだ日影が十度退いた。
18371 23 38 9 次の言葉はユダの王ヒゼキヤが病気になって、その病気が直った後、書きしるしたものである。
18372 23 38 10 わたしは言った、わたしはわが一生のまっ盛りに、去らなければならない。わたしは陰府の門に閉ざされて、わが残りの年を失わなければならない。
18373 23 38 11 わたしは言った、わたしは生ける者の地で、主を見ることなく、世におる人々のうちに、再び人を見ることがない。
18374 23 38 12 わがすまいは抜き去られて羊飼の天幕のようにわたしを離れる。わたしは、わが命を機織りのように巻いた。彼はわたしを機から切り離す。あなたは朝から夕までの間に、わたしを滅ぼされる。
18375 23 38 13 わたしは朝まで叫んだ。主はししのようにわが骨をことごとく砕かれる。あなたは朝から夕までの間に、わたしを滅ぼされる。
18376 23 38 14 わたしは、つばめのように、つるのように鳴き、はとのようにうめき、わが目は上を見て衰える。主よ、わたしは、しえたげられています。どうか、わたしの保証人となってください。
18377 23 38 15 しかし、わたしは何を言うことができましょう。主はわたしに言われ、かつ、自らそれをなされたからである。わが魂の苦しみによって、わが眠りはことごとく逃げ去った。
18378 23 38 16 主よ、これらの事によって人は生きる。わが霊の命もすべてこれらの事による。どうか、わたしをいやし、わたしを生かしてください。
18379 23 38 17 見よ、わたしが大いなる苦しみにあったのは、わが幸福のためであった。あなたはわが命を引きとめて、滅びの穴をまぬかれさせられた。これは、あなたがわが罪をことごとく、あなたの後に捨てられたからである。
18380 23 38 18 陰府は、あなたに感謝することはできない。死はあなたをさんびすることはできない。墓にくだる者は、あなたのまことを望むことはできない。
18381 23 38 19 ただ生ける者、生ける者のみ、きょう、わたしがするように、あなたに感謝する。父はあなたのまことを、その子らに知らせる。
18382 23 38 20 主はわたしを救われる。われわれは世にあるかぎり、主の家で琴にあわせて、歌をうたおう。
18383 23 38 21 イザヤは言った、「干いちじくのひとかたまりを持ってこさせ、それを腫物につけなさい。そうすれば直るでしょう」。
18384 23 38 22 ヒゼキヤはまた言った、「わたしが主の家に上ることについて、どんなしるしがありましょうか」。
18385 23 39 1 そのころ、バラダンの子であるバビロンの王メロダク・バラダンは手紙と贈り物を持たせて使節をヒゼキヤにつかわした。これはヒゼキヤが病気であったが、直ったことを聞いたからである。
18386 23 39 2 ヒゼキヤは彼らを喜び迎えて、宝物の蔵、金銀、香料、貴重な油および武器倉、ならびにその倉庫にあるすべての物を彼らに見せた。家にある物も、国にある物も、ヒゼキヤが彼らに見せない物は一つもなかった。
18387 23 39 3 時に預言者イザヤはヒゼキヤ王のもとに来て言った、「あの人々は何を言いましたか。どこから来たのですか」。ヒゼキヤは言った、「彼らは遠い国から、すなわちバビロンから来たのです」。
18388 23 39 4 イザヤは言った、「彼らは、あなたの家で何を見ましたか」。ヒゼキヤは答えて言った、「彼らは、わたしの家にある物を皆見ました。倉庫のうちには、彼らに見せなかった物は一つもありません」。
18389 23 39 5 そこでイザヤはヒゼキヤに言った、「万軍の主の言葉を聞きなさい。
18390 23 39 6 見よ、すべてあなたの家にある物およびあなたの先祖たちが今日までに積みたくわえた物がバビロンに運び去られる日が来る。何も残るものはない、と主が言われます。
18391 23 39 7 また、あなたの身から出るあなたの子たちも連れ去られて、バビロンの王の宮殿において宦官となるでしょう」。
18392 23 39 8 ヒゼキヤはイザヤに言った、「あなたが言われた主の言葉は結構です」。彼は「少なくとも自分が世にある間は太平と安全があるだろう」と思ったからである。
18393 23 40 1 あなたがたの神は言われる、「慰めよ、わが民を慰めよ、
18394 23 40 2 ねんごろにエルサレムに語り、これに呼ばわれ、その服役の期は終り、そのとがはすでにゆるされ、そのもろもろの罪のために二倍の刑罰を主の手から受けた」。
18395 23 40 3 呼ばわる者の声がする、「荒野に主の道を備え、さばくに、われわれの神のために、大路をまっすぐにせよ。
18396 23 40 4 もろもろの谷は高くせられ、もろもろの山と丘とは低くせられ、高底のある地は平らになり、険しい所は平地となる。
18397 23 40 5 こうして主の栄光があらわれ、人は皆ともにこれを見る。これは主の口が語られたのである」。
18398 23 40 6 声が聞える、「呼ばわれ」。わたしは言った、「なんと呼ばわりましょうか」。「人はみな草だ。その麗しさは、すべて野の花のようだ。
18399 23 40 7 主の息がその上に吹けば、草は枯れ、花はしぼむ。たしかに人は草だ。
18400 23 40 8 草は枯れ、花はしぼむ。しかし、われわれの神の言葉はとこしえに変ることはない」。
18401 23 40 9 よきおとずれをシオンに伝える者よ、高い山にのぼれ。よきおとずれをエルサレムに伝える者よ、強く声をあげよ、声をあげて恐れるな。ユダのもろもろの町に言え、「あなたがたの神を見よ」と。
18402 23 40 10 見よ、主なる神は大能をもってこられ、その腕は世を治める。見よ、その報いは主と共にあり、そのはたらきの報いは、そのみ前にある。
18403 23 40 11 主は牧者のようにその群れを養い、そのかいなに小羊をいだき、そのふところに入れて携えゆき、乳を飲ませているものをやさしく導かれる。
18404 23 40 12 だれが、たなごころをもって海をはかり、指を伸ばして天をはかり、地のちりを枡に盛り、てんびんをもって、もろもろの山をはかり、はかりをもって、もろもろの丘をはかったか。
18405 23 40 13 だれが、主の霊を導き、その相談役となって主を教えたか。
18406 23 40 14 主はだれと相談して悟りを得たか。だれが主に公義の道を教え、知識を教え、悟りの道を示したか。
18407 23 40 15 見よ、もろもろの国民は、おけの一しずくのように、はかりの上のちりのように思われる。見よ、主は島々を、ほこりのようにあげられる。
18408 23 40 16 レバノンは、たきぎに足りない、またその獣は、燔祭に足りない。
18409 23 40 17 主のみ前には、もろもろの国民は無きにひとしい。彼らは主によって、無きもののように、むなしいもののように思われる。
18410 23 40 18 それで、あなたがたは神をだれとくらべ、どんな像と比較しようとするのか。
18411 23 40 19 偶像は細工人が鋳て造り、鍛冶が、金をもって、それをおおい、また、これがために銀の鎖を造る。
18412 23 40 20 貧しい者は、ささげ物として朽ちることのない木を選び、巧みな細工人を求めて、動くことのない像を立たせる。
18413 23 40 21 あなたがたは知らなかったか。あなたがたは聞かなかったか。初めから、あなたがたに伝えられなかったか。地の基をおいた時から、あなたがたは悟らなかったか。
18414 23 40 22 主は地球のはるか上に座して、地に住む者をいなごのように見られる。主は天を幕のようにひろげ、これを住むべき天幕のように張り、
18415 23 40 23 また、もろもろの君を無きものとせられ、地のつかさたちを、むなしくされる。
18416 23 40 24 彼らは、かろうじて植えられ、かろうじてまかれ、その幹がかろうじて地に根をおろしたとき、神がその上を吹かれると、彼らは枯れて、わらのように、つむじ風にまき去られる。
18417 23 40 25 聖者は言われる、「それで、あなたがたは、わたしをだれにくらべ、わたしは、だれにひとしいというのか」。
18418 23 40 26 目を高くあげて、だれが、これらのものを創造したかを見よ。主は数をしらべて万軍をひきいだし、おのおのをその名で呼ばれる。その勢いの大いなるにより、またその力の強きがゆえに、一つも欠けることはない。
18419 23 40 27 ヤコブよ、何ゆえあなたは、「わが道は主に隠れている」と言うか。イスラエルよ、何ゆえあなたは、「わが訴えはわが神に顧みられない」と言うか。
18420 23 40 28 あなたは知らなかったか、あなたは聞かなかったか。主はとこしえの神、地の果の創造者であって、弱ることなく、また疲れることなく、その知恵ははかりがたい。
18421 23 40 29 弱った者には力を与え、勢いのない者には強さを増し加えられる。
18422 23 40 30 年若い者も弱り、かつ疲れ、壮年の者も疲れはてて倒れる。
18423 23 40 31 しかし主を待ち望む者は新たなる力を得、わしのように翼をはって、のぼることができる。走っても疲れることなく、歩いても弱ることはない。
18424 23 41 1 海沿いの国々よ、静かにして、わたしに聞け。もろもろの民よ、力を新たにし、近づいて語れ。われわれは共にさばきの座に近づこう。
18425 23 41 2 だれが東から人を起したか。彼はその行く所で勝利をもって迎えられ、もろもろの国を征服し、もろもろの王を足の下に踏みつけ、そのつるぎをもって彼らをちりのようにし、その弓をもって吹き去られる、わらのようにする。
18426 23 41 3 彼はこれらの者を追ってその足のまだ踏んだことのない道を、安らかに過ぎて行く。
18427 23 41 4 だれがこの事を行ったか、なしたか。だれが初めから世々の人々を呼び出したか。主なるわたしは初めであって、また終りと共にあり、わたしがそれだ。
18428 23 41 5 海沿いの国々は見て恐れ、地の果は、おののき、近づいて来た。
18429 23 41 6 彼らはおのおのその隣を助け、その兄弟たちに言う、「勇気を出せよ」と。
18430 23 41 7 細工人は鍛冶を励まし、鎚をもって平らかにする者は金敷きを打つ者に、はんだづけについて言う、「それは良い」と。また、くぎをもってそれを堅くし、動くことのないようにする。
18431 23 41 8 しかし、わがしもべイスラエルよ、わたしの選んだヤコブ、わが友アブラハムの子孫よ、
18432 23 41 9 わたしは地の果から、あなたを連れてき、地のすみずみから、あなたを召して、あなたに言った、「あなたは、わたしのしもべ、わたしは、あなたを選んで捨てなかった」と。
18433 23 41 10 恐れてはならない、わたしはあなたと共にいる。驚いてはならない、わたしはあなたの神である。わたしはあなたを強くし、あなたを助け、わが勝利の右の手をもって、あなたをささえる。
18434 23 41 11 見よ、あなたにむかって怒る者はみな、はじて、あわてふためき、あなたと争う者は滅びて無に帰する。
18435 23 41 12 あなたは、あなたと争う者を尋ねても見いださず、あなたと戦う者は全く消えうせる。
18436 23 41 13 あなたの神、主なるわたしはあなたの右の手をとってあなたに言う、「恐れてはならない、わたしはあなたを助ける」。
18437 23 41 14 主は言われる、「虫にひとしいヤコブよ、イスラエルの人々よ、恐れてはならない。わたしはあなたを助ける。あなたをあがなう者はイスラエルの聖者である。
18438 23 41 15 見よ、わたしはあなたを鋭い歯のある新しい打穀機とする。あなたは山を打って、これを粉々にし、丘をもみがらのようにする。
18439 23 41 16 あなたがあおげば風はこれを巻き去り、つむじ風がこれを吹き散らす。あなたは主によって喜びイスラエルの聖者によって誇る。
18440 23 41 17 貧しい者と乏しい者とは水を求めても、水がなく、その舌がかわいて焼けているとき、主なるわたしは彼らに答える、イスラエルの神なるわたしは彼らを捨てることがない。
18441 23 41 18 わたしは裸の山に川を開き、谷の中に泉をいだし、荒野を池となし、かわいた地を水の源とする。
18442 23 41 19 わたしは荒野に香柏、アカシヤ、ミルトスおよびオリブの木を植え、さばくに、いとすぎ、すずかけ、からまつをともに置く。
18443 23 41 20 人々はこれを見て、主のみ手がこれをなし、イスラエルの聖者がこれを創造されたことを知り、かつ、よく考えて共に悟る」。
18444 23 41 21 主は言われる、「あなたがたの訴えを出せ」と。ヤコブの王は言われる、「あなたがたの証拠を持ってこい。
18445 23 41 22 それを持ってきて、起るべき事をわれわれに告げよ。さきの事どもの何であるかを告げよ。われわれはよく考えて、その結末を知ろう。あるいはきたるべき事をわれわれに聞かせよ。
18446 23 41 23 この後きたるべき事をわれわれに告げよ。われわれはあなたがたが神であることを知るであろう。幸をくだし、あるいは災をくだせ。われわれは驚いて肝をつぶすであろう。
18447 23 41 24 見よ、あなたがたは無きものである。あなたがたのわざはむなしい。あなたがたを選ぶ者は憎むべき者である」。
18448 23 41 25 わたしはひとりを起して北からこさせ、わが名を呼ぶ者を東からこさせる。彼はもろもろのつかさを踏みつけてしっくいのようにし、陶器師が粘土を踏むようにする。
18449 23 41 26 だれか、初めからこの事をわれわれに告げ知らせたか。だれか、あらかじめわれわれに告げて、「彼は正しい」と言わせたか。ひとりもこの事を告げた者はない。ひとりも聞かせた者はない。ひとりもあなたがたの言葉を聞いた者はない。
18450 23 41 27 わたしははじめてこれをシオンに告げた。わたしは、よきおとずれを伝える者をエルサレムに与える。
18451 23 41 28 しかし、わたしが見ると、ひとりもない。彼らのなかには、わたしが尋ねても答えうる助言者はひとりもない。
18452 23 41 29 見よ、彼らはみな人を惑わす者であって、そのわざは無きもの、その鋳た像はむなしき風である。
18453 23 42 1 わたしの支持するわがしもべ、わたしの喜ぶわが選び人を見よ。わたしはわが霊を彼に与えた。彼はもろもろの国びとに道をしめす。
18454 23 42 2 彼は叫ぶことなく、声をあげることなく、その声をちまたに聞えさせず、
18455 23 42 3 また傷ついた葦を折ることなく、ほのぐらい灯心を消すことなく、真実をもって道をしめす。
18456 23 42 4 彼は衰えず、落胆せず、ついに道を地に確立する。海沿いの国々はその教を待ち望む。
18457 23 42 5 天を創造してこれをのべ、地とそれに生ずるものをひらき、その上の民に息を与え、その中を歩む者に霊を与えられる主なる神はこう言われる、
18458 23 42 6 「主なるわたしは正義をもってあなたを召した。わたしはあなたの手をとり、あなたを守った。わたしはあなたを民の契約とし、もろもろの国びとの光として与え、
18459 23 42 7 盲人の目を開き、囚人を地下の獄屋から出し、暗きに座する者を獄屋から出させる。
18460 23 42 8 わたしは主である、これがわたしの名である。わたしはわが栄光をほかの者に与えない。また、わが誉を刻んだ像に与えない。
18461 23 42 9 見よ、さきに預言した事は起った。わたしは新しい事を告げよう。その事がまだ起らない前に、わたしはまず、あなたがたに知らせよう」。
18462 23 42 10 主にむかって新しき歌をうたえ。地の果から主をほめたたえよ。海とその中に満ちるもの、海沿いの国々とそれに住む者とは鳴りどよめ。
18463 23 42 11 荒野とその中のもろもろの町と、ケダルびとの住むもろもろの村里は声をあげよ。セラの民は喜びうたえ。山の頂から呼ばわり叫べ。
18464 23 42 12 栄光を主に帰し、その誉を海沿いの国々で語り告げよ。
18465 23 42 13 主は勇士のように出て行き、いくさ人のように熱心を起し、ときの声をあげて呼ばわり、その敵にむかって大能をあらわされる。
18466 23 42 14 わたしは久しく声を出さず、黙して、おのれをおさえていた。今わたしは子を産もうとする女のように叫ぶ。わたしの息は切れ、かつあえぐ。
18467 23 42 15 わたしは山と丘とを荒し、すべての草を枯らし、もろもろの川を島とし、もろもろの池をからす。
18468 23 42 16 わたしは目しいを彼らのまだ知らない大路に行かせ、まだ知らない道に導き、暗きをその前に光とし、高低のある所を平らにする。わたしはこれらの事をおこなって彼らを捨てない。
18469 23 42 17 刻んだ偶像に頼み、鋳た偶像にむかって「あなたがたは、われわれの神である」と言う者は退けられて、大いに恥をかく。
18470 23 42 18 耳しいよ、聞け。目しいよ、目を注いで見よ。
18471 23 42 19 だれか、わがしもべのほかに目しいがあるか。だれか、わがつかわす使者のような耳しいがあるか。だれか、わが献身者のような目しいがあるか。だれか、主のしもべのような目しいがあるか。
18472 23 42 20 彼は多くの事を見ても認めず、耳を開いても聞かない。
18473 23 42 21 主はおのれの義のために、その教を大いなるものとし、かつ光栄あるものとすることを喜ばれた。
18474 23 42 22 ところが、この民はかすめられ、奪われて、みな穴の中に捕われ、獄屋の中に閉じこめられた。彼らはかすめられても助ける者がなく、物を奪われても「もどせ」と言う者もない。
18475 23 42 23 あなたがたのうち、だれがこの事に耳を傾けるだろうか、だれが心をもちいて後のためにこれを聞くだろうか。
18476 23 42 24 ヤコブを奪わせた者はだれか。かすめる者にイスラエルをわたした者はだれか。これは主ではないか。われわれは主にむかって罪を犯し、その道に歩むことを好まず、またその教に従うことを好まなかった。
18477 23 42 25 それゆえ、主は激しい怒りと、猛烈な戦いを彼らに臨ませられた。それが火のように周囲に燃えても、彼らは悟らず、彼らを焼いても、心にとめなかった。
18478 23 43 1 ヤコブよ、あなたを創造された主はこう言われる。イスラエルよ、あなたを造られた主はいまこう言われる、「恐れるな、わたしはあなたをあがなった。わたしはあなたの名を呼んだ、あなたはわたしのものだ。
18479 23 43 2 あなたが水の中を過ぎるとき、わたしはあなたと共におる。川の中を過ぎるとき、水はあなたの上にあふれることがない。あなたが火の中を行くとき、焼かれることもなく、炎もあなたに燃えつくことがない。
18480 23 43 3 わたしはあなたの神、主である、イスラエルの聖者、あなたの救主である。わたしはエジプトを与えてあなたのあがないしろとし、エチオピヤとセバとをあなたの代りとする。
18481 23 43 4 あなたはわが目に尊く、重んぜられるもの、わたしはあなたを愛するがゆえに、あなたの代りに人を与え、あなたの命の代りに民を与える。
18482 23 43 5 恐れるな、わたしはあなたと共におる。わたしは、あなたの子孫を東からこさせ、西からあなたを集める。
18483 23 43 6 わたしは北にむかって『ゆるせ』と言い、南にむかって『留めるな』と言う。わが子らを遠くからこさせ、わが娘らを地の果からこさせよ。
18484 23 43 7 すべてわが名をもってとなえられる者をこさせよ。わたしは彼らをわが栄光のために創造し、これを造り、これを仕立てた」。
18485 23 43 8 目があっても目しいのような民、耳があっても耳しいのような民を連れ出せ。
18486 23 43 9 国々はみな相つどい、もろもろの民は集まれ。彼らのうち、だれがこの事を告げ、さきの事どもを、われわれに聞かせることができるか。その証人を出して、おのれの正しい事を証明させ、それを聞いて「これは真実だ」と言わせよ。
18487 23 43 10 主は言われる、「あなたがたはわが証人、わたしが選んだわがしもべである。それゆえ、あなたがたは知って、わたしを信じ、わたしが主であることを悟ることができる。わたしより前に造られた神はなく、わたしより後にもない。
18488 23 43 11 ただわたしのみ主である。わたしのほかに救う者はいない。
18489 23 43 12 わたしはさきに告げ、かつ救い、かつ聞かせた。あなたがたのうちには、ほかの神はなかった。あなたがたはわが証人である」と主は言われる。
18490 23 43 13 「わたしは神である、今より後もわたしは主である。わが手から救い出しうる者はない。わたしがおこなえば、だれが、これをとどめることができよう」。
18491 23 43 14 あなたがたをあがなう者、イスラエルの聖者、主はこう言われる、「あなたがたのために、わたしは人をバビロンにつかわし、すべての貫の木をこわし、カルデヤびとの喜びの声を嘆きに変らせる。
18492 23 43 15 わたしは主、あなたがたの聖者、イスラエルの創造者、あなたがたの王である」。
18493 23 43 16 海のなかに大路を設け、大いなる水の中に道をつくり、
18494 23 43 17 戦車および馬、軍勢および兵士を出てこさせ、これを倒して起きることができないようにし、絶え滅ぼして、灯心の消えうせるようにされる主はこう言われる、
18495 23 43 18 「あなたがたは、さきの事を思い出してはならない、また、いにしえのことを考えてはならない。
18496 23 43 19 見よ、わたしは新しい事をなす。やがてそれは起る、あなたがたはそれを知らないのか。わたしは荒野に道を設け、さばくに川を流れさせる。
18497 23 43 20 野の獣はわたしをあがめ、山犬および、だちょうもわたしをあがめる。わたしが荒野に水をいだし、さばくに川を流れさせて、わたしの選んだ民に飲ませるからだ。
18498 23 43 21 この民は、わが誉を述べさせるためにわたしが自分のために造ったものである。
18499 23 43 22 ところがヤコブよ、あなたはわたしを呼ばなかった。イスラエルよ、あなたはわたしをうとんじた。
18500 23 43 23 あなたは燔祭の羊をわたしに持ってこなかった。また犠牲をもってわたしをあがめなかった。わたしは供え物の重荷をあなたに負わせなかった。また乳香をもってあなたを煩わさなかった。
18501 23 43 24 あなたは金を出して、わたしのために菖蒲を買わず、犠牲の脂肪を供えて、わたしを飽かせず、かえって、あなたの罪の重荷をわたしに負わせ、あなたの不義をもって、わたしを煩わせた。
18502 23 43 25 わたしこそ、わたし自身のためにあなたのとがを消す者である。わたしは、あなたの罪を心にとめない。
18503 23 43 26 あなたは、自分の正しいことを証明するために自分のことを述べて、わたしに思い出させよ。われわれは共に論じよう。
18504 23 43 27 あなたの遠い先祖は罪を犯し、あなたの仲保者らはわたしにそむいた。
18505 23 43 28 それゆえ、わたしは聖所の君たちを汚し、ヤコブを全き滅びにわたし、イスラエルをののしらしめた。
18506 23 44 1 しかし、わがしもべヤコブよ、わたしが選んだイスラエルよ、いま聞け。
18507 23 44 2 あなたを造り、あなたを胎内に形造り、あなたを助ける主はこう言われる、『わがしもべヤコブよ、わたしが選んだエシュルンよ、恐れるな。
18508 23 44 3 わたしは、かわいた地に水を注ぎ、干からびた地に流れをそそぎ、わが霊をあなたの子らにそそぎ、わが恵みをあなたの子孫に与えるからである。
18509 23 44 4 こうして、彼らは水の中の草のように、流れのほとりの柳のように、生え育つ。
18510 23 44 5 ある人は「わたしは主のものである」と言い、ある人はヤコブの名をもって自分を呼び、またある人は「主のものである」と手にしるして、イスラエルの名をもって自分を呼ぶ』」。
18511 23 44 6 主、イスラエルの王、イスラエルをあがなう者、万軍の主はこう言われる、「わたしは初めであり、わたしは終りである。わたしのほかに神はない。
18512 23 44 7 だれかわたしに等しい者があるか。その者はそれを示し、またそれを告げ、わが前に言いつらねよ。だれが、昔から、きたるべき事を聞かせたか。その者はやがて成るべき事をわれわれに告げよ。
18513 23 44 8 恐れてはならない、またおののいてはならない。わたしはこの事を昔から、あなたがたに聞かせなかったか、また告げなかったか。あなたがたはわが証人である。わたしのほかに神があるか。わたしのほかに岩はない。わたしはそのあることを知らない」。
18514 23 44 9 偶像を造る者は皆むなしく、彼らの喜ぶところのものは、なんの役にも立たない。その信者は見ることもなく、また知ることもない。ゆえに彼らは恥を受ける。
18515 23 44 10 だれが神を造り、またなんの役にも立たない偶像を鋳たか。
18516 23 44 11 見よ、その仲間は皆恥を受ける。その細工人らは人間にすぎない。彼らが皆集まって立つとき、恐れて共に恥じる。
18517 23 44 12 鉄の細工人はこれを造るのに炭の火をもって細工し、鎚をもってこれを造り、強い腕をもってこれを鍛える。彼が飢えれば力は衰え、水を飲まなければ疲れはてる。
18518 23 44 13 木の細工人は線を引き、鉛筆でえがき、かんなで削り、コンパスでえがき、それを人の美しい姿にしたがって人の形に造り、家の中に安置する。
18519 23 44 14 彼は香柏を切り倒し、あるいはかしの木、あるいはかしわの木を選んで、それを林の木の中で強く育てる。あるいは香柏を植え、雨にそれを育てさせる。
18520 23 44 15 こうして人はその一部をとって、たきぎとし、これをもって身を暖め、またこれを燃やしてパンを焼き、また他の一部を神に造って拝み、刻んだ像に造ってその前にひれ伏す。
18521 23 44 16 その半ばは火に燃やし、その半ばで肉を煮て食べ、あるいは肉をあぶって食べ飽き、また身を暖めて言う、「ああ、暖まった、熱くなった」と。
18522 23 44 17 そしてその余りをもって神を造って偶像とし、その前にひれ伏して拝み、これに祈って、「あなたはわが神だ、わたしを救え」と言う。
18523 23 44 18 これらの人は知ることがなく、また悟ることがない。その目はふさがれて見ることができず、その心は鈍くなって悟ることができない。
18524 23 44 19 その心のうちに思うことをせず、また知識がなく、悟りがないために、「わたしはその半ばを火に燃やし、またその炭火の上でパンを焼き、肉をあぶって食べ、その残りの木をもって憎むべきものを造るのか。木のはしくれの前にひれ伏すのか」と言う者もない。
18525 23 44 20 彼は灰を食い、迷った心に惑わされて、おのれを救うことができず、また「わが右の手に偽りがあるではないか」と言わない。
18526 23 44 21 ヤコブよ、イスラエルよ、これらの事を心にとめよ。あなたはわがしもべだから。わたしはあなたを造った、あなたはわがしもべだ。イスラエルよ、わたしはあなたを忘れない。
18527 23 44 22 わたしはあなたのとがを雲のように吹き払い、あなたの罪を霧のように消した。わたしに立ち返れ、わたしはあなたをあがなったから。
18528 23 44 23 天よ、歌え、主がこの事をなされたから。地の深き所よ、呼ばわれ。もろもろの山よ、林およびその中のもろもろの木よ、声を放って歌え。主はヤコブをあがない、イスラエルのうちに栄光をあらわされたから。
18529 23 44 24 あなたをあがない、あなたを胎内に造られた主はこう言われる、「わたしは主である。わたしはよろずの物を造り、ただわたしだけが天をのべ、地をひらき、――だれがわたしと共にいたか――
18530 23 44 25 偽る物のしるしをむなしくし、占う者を狂わせ、賢い者をうしろに退けて、その知識を愚かにする。
18531 23 44 26 わたしは、わがしもべの言葉を遂げさせ、わが使の計りごとを成らせ、エルサレムについては、『これは民の住む所となる』と言い、ユダのもろもろの町については、『ふたたび建てられる、わたしはその荒れ跡を興そう』と言い、
18532 23 44 27 また淵については、『かわけ、わたしはあなたのもろもろの川を干す』と言い、
18533 23 44 28 またクロスについては、『彼はわが牧者、わが目的をことごとくなし遂げる』と言い、エルサレムについては、『ふたたび建てられる』と言い、神殿については、『あなたの基がすえられる』と言う」。
18534 23 45 1 わたしはわが受膏者クロスの右の手をとって、もろもろの国をその前に従わせ、もろもろの王の腰を解き、とびらをその前に開かせて、門を閉じさせない、と言われる主はその受膏者クロスにこう言われる、
18535 23 45 2 「わたしはあなたの前に行って、もろもろの山を平らにし、青銅のとびらをこわし、鉄の貫の木を断ち切り、
18536 23 45 3 あなたに、暗い所にある財宝と、ひそかな所に隠した宝物とを与えて、わたしは主、あなたの名を呼んだイスラエルの神であることをあなたに知らせよう。
18537 23 45 4 わがしもべヤコブのために、わたしの選んだイスラエルのために、わたしはあなたの名を呼んだ。あなたがわたしを知らなくても、わたしはあなたに名を与えた。
18538 23 45 5 わたしは主である。わたしのほかに神はない、ひとりもない。あなたがわたしを知らなくても、わたしはあなたを強くする。
18539 23 45 6 これは日の出る方から、また西の方から、人々がわたしのほかに神のないことを知るようになるためである。わたしは主である、わたしのほかに神はない。
18540 23 45 7 わたしは光をつくり、また暗きを創造し、繁栄をつくり、またわざわいを創造する。わたしは主である、すべてこれらの事をなす者である。
18541 23 45 8 天よ、上より水を注げ、雲は義を降らせよ。地は開けて救を生じ、また義をも、生えさせよ。主なるわたしはこれを創造した。
18542 23 45 9 陶器が陶器師と争うように、おのれを造った者と争う者はわざわいだ。粘土は陶器師にむかって『あなたは何を造るか』と言い、あるいは『あなたの造った物には手がない』と言うだろうか。
18543 23 45 10 父にむかって『あなたは、なぜ子をもうけるのか』と言い、あるいは女にむかって『あなたは、なぜ産みの苦しみをするのか』と言う者はわざわいだ」。
18544 23 45 11 イスラエルの聖者、イスラエルを造られた主はこう言われる、「あなたがたは、わが子らについてわたしに問い、またわが手のわざについてわたしに命ずるのか。
18545 23 45 12 わたしは地を造って、その上に人を創造した。わたしは手をもって天をのべ、その万軍を指揮した。
18546 23 45 13 わたしは義をもってクロスを起した。わたしは彼のすべての道をまっすぐにしよう。彼はわが町を建て、わが捕囚を価のためでなく、また報いのためでもなく解き放つ」と万軍の主は言われる。
18547 23 45 14 主はこう言われる、「エジプトの富と、エチオピヤの商品と、たけの高いセバびととはあなたに来て、あなたのものとなり、あなたに従い、彼らは鎖につながれて来て、あなたの前にひれ伏し、あなたに願って言う、『神はただあなたと共にいまし、このほかに神はなく、ひとりもない』」。
18548 23 45 15 イスラエルの神、救主よ、まことに、あなたはご自分を隠しておられる神である。
18549 23 45 16 偶像を造る者は皆恥を負い、はずかしめを受け、ともに、あわてふためいて退く。
18550 23 45 17 しかし、イスラエルは主に救われて、とこしえの救を得る。あなたがたは世々かぎりなく、恥を負わず、はずかしめを受けない。
18551 23 45 18 天を創造された主、すなわち神であってまた地をも造り成し、これを堅くし、いたずらにこれを創造されず、これを人のすみかに造られた主はこう言われる、「わたしは主である、わたしのほかに神はない。
18552 23 45 19 わたしは隠れたところ、地の暗い所で語らず、ヤコブの子孫に『わたしを尋ねるのはむだだ』と言わなかった。主なるわたしは正しい事を語り、まっすぐな事を告げる。
18553 23 45 20 もろもろの国からのがれてきた者よ、集まってきて、共に近寄れ。木像をにない、救うことのできない神に祈る者は無知である。
18554 23 45 21 あなたがたの言い分を持ってきて述べよ。また共に相談せよ。この事をだれがいにしえから示したか。だれが昔から告げたか。わたし、すなわち主ではなかったか。わたしのほかに神はない。わたしは義なる神、救主であって、わたしのほかに神はない。
18555 23 45 22 地の果なるもろもろの人よ、わたしを仰ぎのぞめ、そうすれば救われる。わたしは神であって、ほかに神はないからだ。
18556 23 45 23 わたしは自分をさして誓った、わたしの口から出た正しい言葉は帰ることがない、『すべてのひざはわが前にかがみ、すべての舌は誓いをたてる』。
18557 23 45 24 人はわたしについて言う、『正義と力とは主にのみある』と。人々は主にきたり、主にむかって怒る者は皆恥を受ける。
18558 23 45 25 しかしイスラエルの子孫は皆主によって勝ち誇ることができる」。
18559 23 46 1 ベルは伏し、ネボはかがみ、彼らの像は獣と家畜との上にある。あなたがたが持ち歩いたものは荷となり、疲れた獣の重荷となった。
18560 23 46 2 彼らはかがみ、彼らは共に伏し、重荷となった者を救うことができずかえって、自分は捕われて行く。
18561 23 46 3 「ヤコブの家よ、イスラエルの家の残ったすべての者よ、生れ出た時から、わたしに負われ、胎を出た時から、わたしに持ち運ばれた者よ、わたしに聞け。
18562 23 46 4 わたしはあなたがたの年老いるまで変らず、白髪となるまで、あなたがたを持ち運ぶ。わたしは造ったゆえ、必ず負い、持ち運び、かつ救う。
18563 23 46 5 あなたがたは、わたしをだれにたぐい、だれと等しくし、だれにくらべ、かつなぞらえようとするのか。
18564 23 46 6 彼らは袋からこがねを注ぎ出し、はかりをもって、しろがねをはかり、金細工人を雇って、それを神に造らせ、これにひれ伏して拝む。
18565 23 46 7 彼らはこれをもたげて肩に載せ、持って行って、その所に置き、そこに立たせる。これはその所から動くことができない。人がこれに呼ばわっても答えることができない。また彼をその悩みから救うことができない。
18566 23 46 8 あなたがたはこの事をおぼえ、よく考えよ。そむける者よ、この事を心にとめよ、
18567 23 46 9 いにしえよりこのかたの事をおぼえよ。わたしは神である、わたしのほかに神はない。わたしは神である、わたしと等しい者はない。
18568 23 46 10 わたしは終りの事を初めから告げ、まだなされない事を昔から告げて言う、『わたしの計りごとは必ず成り、わが目的をことごとくなし遂げる』と。
18569 23 46 11 わたしは東から猛禽を招き、遠い国からわが計りごとを行う人を招く。わたしはこの事を語ったゆえ、必ずこさせる。わたしはこの事をはかったゆえ、必ず行う。
18570 23 46 12 心をかたくなにして、救に遠い者よ、わたしに聞け。
18571 23 46 13 わたしはわが救を近づかせるゆえ、その来ることは遠くない。わが救はおそくない。わたしは救をシオンに与え、わが栄光をイスラエルに与える」。
18572 23 47 1 処女なるバビロンの娘よ、下って、ちりの中にすわれ。カルデヤびとの娘よ、王座のない地にすわれ。あなたはもはや、やさしく、たおやかな女ととなえられることはない。
18573 23 47 2 石うすをとって粉をひけ、顔おおいを取り去り、うちぎを脱ぎ、すねをあらわして川を渡れ。
18574 23 47 3 あなたの裸はあらわれ、あなたの恥は見られる。わたしはあだを報いて、何人とをも助けない。
18575 23 47 4 われわれをあがなう者はその名を万軍の主といい、イスラエルの聖者である。
18576 23 47 5 カルデヤびとの娘よ、黙してすわれ、また暗い所にはいれ。あなたはもはや、もろもろの国の女王ととなえられることはない。
18577 23 47 6 わたしはわが民を憤り、わが嗣業を汚して、これをあなたの手に渡した。あなたはこれに、あわれみを施さず、年老いた者の上に、はなはだ重いくびきを負わせた。
18578 23 47 7 あなたは言った、「わたしは、とこしえに女王となる」と。そして、あなたはこれらの事を心にとめず、またその終りを思わなかった。
18579 23 47 8 楽しみにふけり、安らかにおり、心のうちに「ただわたしだけで、わたしのほかにだれもなく、わたしは寡婦となることはない、また子を失うことはない」と言う者よ、今この事を聞け。
18580 23 47 9 これらの二つの事は一日のうちに、またたくまにあなたに臨む。すなわち子を失い、寡婦となる事はたといあなたが多くの魔術を行い、魔法の大いなる力をもってしてもことごとくあなたに臨む。
18581 23 47 10 あなたは自分の悪に寄り頼んで言う、「わたしを見る者はない」と。あなたの知恵と、あなたの知識とはあなたを惑わした。あなたは心のうちに言った、「ただわたしだけで、わたしのほかにだれもない」と。
18582 23 47 11 しかし、わざわいが、あなたに臨む、あなたは、それをあがなうことができない。なやみが、あなたを襲う、あなたは、それをつぐなうことができない。滅びが、にわかにあなたに臨む、あなたは、それについて何も知らない。
18583 23 47 12 あなたが若い時から勤め行ったあなたの魔法と、多くの魔術とをもって立ちむかってみよ、あるいは成功するかもしれない、あるいは敵を恐れさせるかもしれない。
18584 23 47 13 あなたは多くの計りごとによってうみ疲れた。かの天を分かつ者、星を見る者、新月によって、あなたに臨む事を告げる者を立ちあがらせて、あなたを救わせてみよ。
18585 23 47 14 見よ、彼らはわらのようになって、火に焼き滅ぼされ、自分の身を炎の勢いから、救い出すことができない。その火は身を暖める炭火ではない、またその前にすわるべき火でもない。
18586 23 47 15 あなたが勤めて行ったものと、あなたの若い時からあなたと売り買いした者とは、ついにこのようになる。彼らはめいめい自分の方向にさすらいゆき、ひとりもあなたを救う者はない。
18587 23 48 1 ヤコブの家よ、これを聞け。あなたがたはイスラエルの名をもってとなえられ、ユダの腰から出、主の名によって誓い、イスラエルの神をとなえるけれども、真実をもってせず、正義をもってしない。
18588 23 48 2 彼らはみずから聖なる都のものととなえ、イスラエルの神に寄り頼む。その名は万軍の主という。
18589 23 48 3 「わたしはさきに成った事を、いにしえから告げた。わたしは口から出して彼らに知らせた。わたしは、にわかにこの事を行い、そして成った。
18590 23 48 4 わたしはあなたが、かたくなで、その首は鉄の筋、その額は青銅であることを知るゆえに、
18591 23 48 5 いにしえから、かの事をあなたに告げ、その成らないさきに、これをあなたに聞かせた。そうでなければ、あなたは言うだろう、『わが偶像がこれをしたのだ、わが刻んだ像と、鋳た像がこれを命じたのだ』と。
18592 23 48 6 あなたはすでに聞いた、すべてこれが成ったことを見よ。あなたがたはこれを宣べ伝えないのか。わたしは今から新しい事、あなたがまだ知らない隠れた事をあなたに聞かせよう。
18593 23 48 7 これらの事はいま創造されたので、いにしえからあったのではない。この日以前には、あなたはこれを聞かなかった。そうでなければ、あなたは言うだろう、『見よ、わたしはこれを知っていた』と。
18594 23 48 8 あなたはこれを聞くこともなく、知ることもなく、あなたの耳は、いにしえから開かれなかった。わたしはあなたが全く不信実で、生れながら反逆者ととなえられたことを知っていたからである。
18595 23 48 9 わが名のために、わたしは怒りをおそくする。わが誉のために、わたしはこれをおさえて、あなたを断ち滅ぼすことをしない。
18596 23 48 10 見よ、わたしはあなたを練った。しかし銀のようにではなくて、苦しみの炉をもってあなたを試みた。
18597 23 48 11 わたしは自分のために、自分のためにこれを行う。どうしてわが名を汚させることができよう。わたしはわが栄光をほかの者に与えることをしない。
18598 23 48 12 ヤコブよ、わたしの召したイスラエルよ、わたしに聞け。わたしはそれだ、わたしは初めであり、わたしはまた終りである。
18599 23 48 13 わが手は地の基をすえ、わが右の手は天をのべた。わたしが呼ぶと、彼らはもろともに立つ。
18600 23 48 14 あなたがたは皆集まって聞け。彼らのうち、だれがこれらの事を告げたか。主の愛せられる彼は主のみこころをバビロンに行い、その腕はカルデヤびとの上に臨む。
18601 23 48 15 語ったのは、ただわたしであって、わたしは彼を召した。わたしは彼をこさせた。彼はその道に栄える。
18602 23 48 16 あなたがたはわたしに近寄って、これを聞け。わたしは初めから、ひそかに語らなかった。それが成った時から、わたしはそこにいたのだ」。いま主なる神は、わたしとその霊とをつかわされた。
18603 23 48 17 あなたのあがない主、イスラエルの聖者、主はこう言われる、「わたしはあなたの神、主である。わたしは、あなたの利益のために、あなたを教え、あなたを導いて、その行くべき道に行かせる。
18604 23 48 18 どうか、あなたはわたしの戒めに聞き従うように。そうすれば、あなたの平安は川のように、あなたの義は海の波のようになり、
18605 23 48 19 あなたのすえは砂のように、あなたの子孫は砂粒のようになって、その名はわが前から断たれることなく、滅ぼされることはない」。
18606 23 48 20 あなたがたはバビロンから出、カルデヤからのがれよ。喜びの声をもってこれをのべ聞かせ、地の果にまで語り伝え、「主はそのしもべヤコブをあがなわれた」と言え。
18607 23 48 21 主が彼らを導いて、さばくを通らせられたとき、彼らは、かわいたことがなかった。主は彼らのために岩から水を流れさせ、また岩を裂かれると、水がほとばしり出た。
18608 23 48 22 主は言われた、「悪い者には平安がない」と。
18609 23 49 1 海沿いの国々よ、わたしに聞け。遠いところのもろもろの民よ、耳を傾けよ。主はわたしを生れ出た時から召し、母の胎を出た時からわが名を語り告げられた。
18610 23 49 2 主はわが口を鋭利なつるぎとなし、わたしをみ手の陰にかくし、とぎすました矢となして、箙にわたしを隠された。
18611 23 49 3 また、わたしに言われた、「あなたはわがしもべ、わが栄光をあらわすべきイスラエルである」と。
18612 23 49 4 しかし、わたしは言った、「わたしはいたずらに働き、益なく、むなしく力を費した。しかもなお、まことにわが正しきは主と共にあり、わが報いはわが神と共にある」と。
18613 23 49 5 ヤコブをおのれに帰らせ、イスラエルをおのれのもとに集めるために、わたしを腹の中からつくってそのしもべとされた主は言われる。(わたしは主の前に尊ばれ、わが神はわが力となられた)
18614 23 49 6 主は言われる、「あなたがわがしもべとなって、ヤコブのもろもろの部族をおこし、イスラエルのうちの残った者を帰らせることは、いとも軽い事である。わたしはあなたを、もろもろの国びとの光となして、わが救を地の果にまでいたらせよう」と。
18615 23 49 7 イスラエルのあがない主、イスラエルの聖者なる主は、人に侮られる者、民に忌みきらわれる者、つかさたちのしもべにむかってこう言われる、「もろもろの王は見て、立ちあがり、もろもろの君は立って、拝する。これは真実なる主、イスラエルの聖者が、あなたを選ばれたゆえである」。
18616 23 49 8 主はこう言われる、「わたしは恵みの時に、あなたに答え、救の日にあなたを助けた。わたしはあなたを守り、あなたを与えて民の契約とし、国を興し、荒れすたれた地を嗣業として継がせる。
18617 23 49 9 わたしは捕えられた人に『出よ』と言い、暗きにおる者に『あらわれよ』と言う。彼らは道すがら食べることができ、すべての裸の山にも牧草を得る。
18618 23 49 10 彼らは飢えることがなく、かわくこともない。また熱い風も、太陽も彼らを撃つことはない。彼らをあわれむ者が彼らを導き、泉のほとりに彼らを導かれるからだ。
18619 23 49 11 わたしは、わがもろもろの山を道とし、わが大路を高くする。
18620 23 49 12 見よ、人々は遠くから来る。見よ、人々は北から西から、またスエネの地から来る」。
18621 23 49 13 天よ、歌え、地よ、喜べ。もろもろの山よ、声を放って歌え。主はその民を慰め、その苦しむ者をあわれまれるからだ。
18622 23 49 14 しかしシオンは言った、「主はわたしを捨て、主はわたしを忘れられた」と。
18623 23 49 15 「女がその乳のみ子を忘れて、その腹の子を、あわれまないようなことがあろうか。たとい彼らが忘れるようなことがあっても、わたしは、あなたを忘れることはない。
18624 23 49 16 見よ、わたしは、たなごころにあなたを彫り刻んだ。あなたの石がきは常にわが前にある。
18625 23 49 17 あなたを建てる者は、あなたをこわす者を追い越し、あなたを荒した者は、あなたから出て行く。
18626 23 49 18 あなたの目をあげて見まわせ。彼らは皆集まって、あなたのもとに来る。主は言われる、わたしは生きている、あなたは彼らを皆、飾りとして身につけ、花嫁の帯のようにこれを結ぶ。
18627 23 49 19 あなたの荒れ、かつすたれた所、こわされた地は、住む人の多いために狭くなり、あなたを、のみつくした者は、はるかに離れ去る。
18628 23 49 20 あなたが子を失った後に生れた子らは、なおあなたの耳に言う、『この所はわたしには狭すぎる、わたしのために住むべき所を得させよ』と。
18629 23 49 21 その時あなたは心のうちに言う、『だれがわたしのためにこれらの者を産んだのか。わたしは子を失って、子をもたない。わたしは捕われ、かつ追いやられた。だれがこれらの者を育てたのか。見よ、わたしはひとり残された。これらの者はどこから来たのか』と」。
18630 23 49 22 主なる神はこう言われる、「見よ、わたしは手をもろもろの国にむかってあげ、旗をもろもろの民にむかって立てる。彼らはそのふところにあなたの子らを携え、その肩にあなたの娘たちを載せて来る。
18631 23 49 23 もろもろの王は、あなたの養父となり、その王妃たちは、あなたの乳母となり、彼らはその顔を地につけて、あなたにひれ伏し、あなたの足のちりをなめる。こうして、あなたはわたしが主であることを知る。わたしを待ち望む者は恥をこうむることがない」。
18632 23 49 24 勇士が奪った獲物をどうして取り返すことができようか。暴君がかすめた捕虜をどうして救い出すことができようか。
18633 23 49 25 しかし主はこう言われる、「勇士がかすめた捕虜も取り返され、暴君が奪った獲物も救い出される。わたしはあなたと争う者と争い、あなたの子らを救うからである。
18634 23 49 26 わたしはあなたをしえたげる者にその肉を食わせ、その血を新しい酒のように飲ませて酔わせる。こうして、すべての人はわたしが主であって、あなたの救主、またあなたのあがない主、ヤコブの全能者であることを知るようになる」。
18635 23 50 1 主はこう言われる、「わたしがあなたがたの母を去らせたその離縁状は、どこにあるか。わたしはどの債主にあなたがたを売りわたしたか。見よ、あなたがたは、その不義のために売られ、あなたがたの母は、あなたがたのとがのために出されたのだ。
18636 23 50 2 わたしが来たとき、なぜひとりもいなかったか。わたしが呼んだとき、なぜひとりも答える者がなかったか。わたしの手が短くて、あがなうことができないのか。わたしは救う力を持たないのか。見よ、わたしが、しかると海はかれ、川は荒野となり、その中の魚は水がないために、かわき死んで悪臭を放つ。
18637 23 50 3 わたしは黒い衣を天に着せ、荒布をもってそのおおいとする」。
18638 23 50 4 主なる神は教をうけた者の舌をわたしに与えて、疲れた者を言葉をもって助けることを知らせ、また朝ごとにさまし、わたしの耳をさまして、教をうけた者のように聞かせられる。
18639 23 50 5 主なる神はわたしの耳を開かれた。わたしは、そむくことをせず、退くことをしなかった。
18640 23 50 6 わたしを打つ者に、わたしの背をまかせ、わたしのひげを抜く者に、わたしのほおをまかせ、恥とつばきとを避けるために、顔をかくさなかった。
18641 23 50 7 しかし主なる神はわたしを助けられる。それゆえ、わたしは恥じることがなかった。それゆえ、わたしは顔を火打石のようにした。わたしは決してはずかしめられないことを知る。
18642 23 50 8 わたしを義とする者が近くおられる。だれがわたしと争うだろうか、われわれは共に立とう。わたしのあだはだれか、わたしの所へ近くこさせよ。
18643 23 50 9 見よ、主なる神はわたしを助けられる。だれがわたしを罪に定めるだろうか。見よ、彼らは皆衣のようにふるび、しみのために食いつくされる。
18644 23 50 10 あなたがたのうち主を恐れ、そのしもべの声に聞き従い、暗い中を歩いて光を得なくても、なお主の名を頼み、おのれの神にたよる者はだれか。
18645 23 50 11 見よ、火を燃やし、たいまつをともす者よ、皆その火の炎の中を歩め、またその燃やした、たいまつの中を歩め。あなたがたは、これをわたしの手から受けて、苦しみのうちに伏し倒れる。
18646 23 51 1 「義を追い求め、主を尋ね求める者よ、わたしに聞け。あなたがたの切り出された岩と、あなたがたの掘り出された穴とを思いみよ。
18647 23 51 2 あなたがたの父アブラハムと、あなたがたを産んだサラとを思いみよ。わたしは彼をただひとりであったときに召し、彼を祝福して、その子孫を増し加えた。
18648 23 51 3 主はシオンを慰め、またそのすべて荒れた所を慰めて、その荒野をエデンのように、そのさばくを主の園のようにされる。こうして、その中に喜びと楽しみとがあり、感謝と歌の声とがある。
18649 23 51 4 わが民よ、わたしに聞け、わが国びとよ、わたしに耳を傾けよ。律法はわたしから出、わが道はもろもろの民の光となる。
18650 23 51 5 わが義はすみやかに近づき、わが救は出て行った。わが腕はもろもろの民を治める。海沿いの国々はわたしを待ち望み、わが腕に寄り頼む。
18651 23 51 6 目をあげて天を見、また下なる地を見よ。天は煙のように消え、地は衣のようにふるび、その中に住む者は、ぶよのように死ぬ。しかし、わが救はとこしえにながらえ、わが義はくじけることがない。
18652 23 51 7 義を知る者よ、心のうちにわが律法をたもつ者よ、わたしに聞け。人のそしりを恐れてはならない、彼らのののしりに驚いてはならない。
18653 23 51 8 彼らは衣のように、しみに食われ、羊の毛のように虫に食われるからだ。しかし、わが義はとこしえにながらえ、わが救はよろず代に及ぶ」。
18654 23 51 9 主のかいなよ、さめよ、さめよ、力を着よ。さめて、いにしえの日、昔の代にあったようになれ。ラハブを切り殺し、龍を刺し貫いたのは、あなたではなかったか。
18655 23 51 10 海をかわかし、大いなる淵の水をかわかし、また海の深き所を、あがなわれた者の過ぎる道とされたのは、あなたではなかったか。
18656 23 51 11 主にあがなわれた者は、歌うたいつつ、シオンに帰ってきて、そのこうべに、とこしえの喜びをいただき、彼らは喜びと楽しみとを得、悲しみと嘆きとは逃げ去る。
18657 23 51 12 「わたしこそあなたを慰める者だ。あなたは何者なれば、死ぬべき人を恐れ、草のようになるべき人の子を恐れるのか。
18658 23 51 13 天をのべ、地の基をすえられたあなたの造り主、主を忘れて、なぜ、しえたげる者が滅ぼそうと備えをするとき、その憤りのゆえに常にひねもす恐れるのか。しえたげる者の憤りはどこにあるか。
18659 23 51 14 身をかがめている捕われ人は、すみやかに解かれて、死ぬことなく、穴にくだることなく、その食物はつきることがない。
18660 23 51 15 わたしは海をふるわせ、その波をなりどよめかすあなたの神、主である。その名を万軍の主という。
18661 23 51 16 わたしはわが言葉をあなたの口におき、わが手の陰にあなたを隠した。こうして、わたしは天をのべ、地の基をすえ、シオンにむかって、あなたはわが民であると言う」。
18662 23 51 17 エルサレムよ、起きよ、起きよ、立て。あなたはさきに主の手から憤りの杯をうけて飲み、よろめかす大杯を、滓までも飲みほした。
18663 23 51 18 その産んだもろもろの子のなかに、自分を導く者なく、その育てたもろもろの子のなかに、自分の手をとる者がない。
18664 23 51 19 これら二つの事があなたに臨んだ――だれがあなたと共に嘆くだろうか――荒廃と滅亡、ききんとつるぎ。だれがあなたを慰めるだろうか。
18665 23 51 20 あなたの子らは息絶えだえになり、網にかかった、かもしかのように、すべてのちまたのすみに横たわり、主の憤りと、あなたの神の責めとは、彼らに満ちている。
18666 23 51 21 それゆえ、苦しめる者、酒にではなく酔っている者よ、これを聞け。
18667 23 51 22 あなたの主、おのが民の訴えを弁護されるあなたの神、主はこう言われる、「見よ、わたしはよろめかす杯をあなたの手から取り除き、わが憤りの大杯を取り除いた。あなたは再びこれを飲むことはない。
18668 23 51 23 わたしはこれをあなたを悩ます者の手におく。彼らはさきにあなたにむかって言った、『身をかがめよ、われわれは越えていこう』と。そしてあなたはその背を地のようにし、ちまたのようにして、彼らの越えていくにまかせた」。
18669 23 52 1 シオンよ、さめよ、さめよ、力を着よ。聖なる都エルサレムよ、美しい衣を着よ。割礼を受けない者および汚れた者は、もはやあなたのところに、はいることがないからだ。
18670 23 52 2 捕われたエルサレムよ、あなたの身からちりを振り落せ、起きよ。捕われたシオンの娘よ、あなたの首のなわを解きすてよ。
18671 23 52 3 主はこう言われる、「あなたがたは、ただで売られた。金を出さずにあがなわれる」。
18672 23 52 4 主なる神はこう言われる、「わが民はさきにエジプトへ下って行って、かしこに寄留した。またアッスリヤびとはゆえなく彼らをしえたげた。
18673 23 52 5 それゆえ、今わたしはここに何をしようか。わが民はゆえなく捕われた」と主は言われる。主は言われる、「彼らをつかさどる者はわめき、わが名は常にひねもす侮られる。
18674 23 52 6 それゆえ、わが民はわが名を知るにいたる。その日には彼らはこの言葉を語る者がわたしであることを知る。わたしはここにおる」。
18675 23 52 7 よきおとずれを伝え、平和を告げ、よきおとずれを伝え、救を告げ、シオンにむかって「あなたの神は王となられた」と言う者の足は山の上にあって、なんと麗しいことだろう。
18676 23 52 8 聞けよ、あなたの見張びとは声をあげて、共に喜び歌っている。彼らは目と目と相合わせて、主がシオンに帰られるのを見るからだ。
18677 23 52 9 エルサレムの荒れすたれた所よ、声を放って共に歌え。主はその民を慰め、エルサレムをあがなわれたからだ。
18678 23 52 10 主はその聖なるかいなを、もろもろの国びとの前にあらわされた。地のすべての果は、われわれの神の救を見る。
18679 23 52 11 去れよ、去れよ、そこを出て、汚れた物にさわるな。その中を出よ、主の器をになう者よ、おのれを清く保て。
18680 23 52 12 あなたがたは急いで出るに及ばない、また、とんで行くにも及ばない。主はあなたがたの前に行き、イスラエルの神はあなたがたのしんがりとなられるからだ。
18681 23 52 13 見よ、わがしもべは栄える。彼は高められ、あげられ、ひじょうに高くなる。
18682 23 52 14 多くの人が彼に驚いたように――彼の顔だちは、そこなわれて人と異なり、その姿は人の子と異なっていたからである――
18683 23 52 15 彼は多くの国民を驚かす。王たちは彼のゆえに口をつむぐ。それは彼らがまだ伝えられなかったことを見、まだ聞かなかったことを悟るからだ。
18684 23 53 1 だれがわれわれの聞いたことを信じ得たか。主の腕は、だれにあらわれたか。
18685 23 53 2 彼は主の前に若木のように、かわいた土から出る根のように育った。彼にはわれわれの見るべき姿がなく、威厳もなく、われわれの慕うべき美しさもない。
18686 23 53 3 彼は侮られて人に捨てられ、悲しみの人で、病を知っていた。また顔をおおって忌みきらわれる者のように、彼は侮られた。われわれも彼を尊ばなかった。
18687 23 53 4 まことに彼はわれわれの病を負い、われわれの悲しみをになった。しかるに、われわれは思った、彼は打たれ、神にたたかれ、苦しめられたのだと。
18688 23 53 5 しかし彼はわれわれのとがのために傷つけられ、われわれの不義のために砕かれたのだ。彼はみずから懲しめをうけて、われわれに平安を与え、その打たれた傷によって、われわれはいやされたのだ。
18689 23 53 6 われわれはみな羊のように迷って、おのおの自分の道に向かって行った。主はわれわれすべての者の不義を、彼の上におかれた。
18690 23 53 7 彼はしえたげられ、苦しめられたけれども、口を開かなかった。ほふり場にひかれて行く小羊のように、また毛を切る者の前に黙っている羊のように、口を開かなかった。
18691 23 53 8 彼は暴虐なさばきによって取り去られた。その代の人のうち、だれが思ったであろうか、彼はわが民のとがのために打たれて、生けるものの地から断たれたのだと。
18692 23 53 9 彼は暴虐を行わず、その口には偽りがなかったけれども、その墓は悪しき者と共に設けられ、その塚は悪をなす者と共にあった。
18693 23 53 10 しかも彼を砕くことは主のみ旨であり、主は彼を悩まされた。彼が自分を、とがの供え物となすとき、その子孫を見ることができ、その命をながくすることができる。かつ主のみ旨が彼の手によって栄える。
18694 23 53 11 彼は自分の魂の苦しみにより光を見て満足する。義なるわがしもべはその知識によって、多くの人を義とし、また彼らの不義を負う。
18695 23 53 12 それゆえ、わたしは彼に大いなる者と共に物を分かち取らせる。彼は強い者と共に獲物を分かち取る。これは彼が死にいたるまで、自分の魂をそそぎだし、とがある者と共に数えられたからである。しかも彼は多くの人の罪を負い、とがある者のためにとりなしをした。
18696 23 54 1 「子を産まなかったうまずめよ、歌え。産みの苦しみをしなかった者よ、声を放って歌いよばわれ。夫のない者の子は、とついだ者の子よりも多い」と主は言われる。
18697 23 54 2 「あなたの天幕の場所を広くし、あなたのすまいの幕を張りひろげ、惜しむことなく、あなたの綱を長くし、あなたの杭を強固にせよ。
18698 23 54 3 あなたは右に左にひろがり、あなたの子孫はもろもろの国を獲、荒れすたれた町々をも住民で満たすからだ。
18699 23 54 4 恐れてはならない。あなたは恥じることがない。あわてふためいてはならない。あなたは、はずかしめられることがない。あなたは若い時の恥を忘れ、寡婦であった時のはずかしめを、再び思い出すことがない。
18700 23 54 5 あなたを造られた者はあなたの夫であって、その名は万軍の主。あなたをあがなわれる者は、イスラエルの聖者であって、全地の神ととなえられる。
18701 23 54 6 捨てられて心悲しむ妻、また若い時にとついで出された妻を招くように主はあなたを招かれた」とあなたの神は言われる。
18702 23 54 7 「わたしはしばしばあなたを捨てたけれども、大いなるあわれみをもってあなたを集める。
18703 23 54 8 あふれる憤りをもって、しばしわが顔を隠したけれども、とこしえのいつくしみをもって、あなたをあわれむ」とあなたをあがなわれる主は言われる。
18704 23 54 9 「このことはわたしにはノアの時のようだ。わたしはノアの洪水を、再び地にあふれさせないと誓ったが、そのように、わたしは再びあなたを怒らない、再びあなたを責めないと誓った。
18705 23 54 10 山は移り、丘は動いても、わがいつくしみはあなたから移ることなく、平安を与えるわが契約は動くことがない」とあなたをあわれまれる主は言われる。
18706 23 54 11 「苦しみをうけ、あらしにもてあそばれ、慰めを得ない者よ、見よ、わたしはアンチモニーであなたの石をすえ、サファイヤであなたの基をおき、
18707 23 54 12 めのうであなたの尖塔を造り、紅玉であなたの門を造り、あなたの城壁をことごとく宝石で造る。
18708 23 54 13 あなたの子らはみな主に教をうけ、あなたの子らは大いに栄える。
18709 23 54 14 あなたは義をもって堅く立ち、しえたげから遠ざかって恐れることはない。また恐怖から遠ざかる、それはあなたに近づくことがないからである。
18710 23 54 15 たとい争いを起す者があってもわたしによるのではない。すべてあなたと争う者は、あなたのゆえに倒れる。
18711 23 54 16 見よ、炭火を吹きおこして、その目的にかなう武器を造り出す鍛冶は、わたしが創造した者、また荒し滅ぼす者も、わたしが創造した者である。
18712 23 54 17 すべてあなたを攻めるために造られる武器は、その目的を達しない。すべてあなたに逆らい立って、争い訴える舌は、あなたに説き破られる。これが主のしもべらの受ける嗣業であり、また彼らがわたしから受ける義である」と主は言われる。
18713 23 55 1 「さあ、かわいている者はみな水にきたれ。金のない者もきたれ。来て買い求めて食べよ。あなたがたは来て、金を出さずに、ただでぶどう酒と乳とを買い求めよ。
18714 23 55 2 なぜ、あなたがたは、かてにもならぬもののために金を費し、飽きることもできぬもののために労するのか。わたしによく聞き従え。そうすれば、良い物を食べることができ、最も豊かな食物で、自分を楽しませることができる。
18715 23 55 3 耳を傾け、わたしにきて聞け。そうすれば、あなたがたは生きることができる。わたしは、あなたがたと、とこしえの契約を立てて、ダビデに約束した変らない確かな恵みを与える。
18716 23 55 4 見よ、わたしは彼を立てて、もろもろの民への証人とし、また、もろもろの民の君とし、命令する者とした。
18717 23 55 5 見よ、あなたは知らない国民を招く、あなたを知らない国民はあなたのもとに走ってくる。これはあなたの神、主、イスラエルの聖者のゆえであり、主があなたに光栄を与えられたからである。
18718 23 55 6 あなたがたは主にお会いすることのできるうちに、主を尋ねよ。近くおられるうちに呼び求めよ。
18719 23 55 7 悪しき者はその道を捨て、正らぬ人はその思いを捨てて、主に帰れ。そうすれば、主は彼にあわれみを施される。われわれの神に帰れ、主は豊かにゆるしを与えられる。
18720 23 55 8 わが思いは、あなたがたの思いとは異なり、わが道は、あなたがたの道とは異なっていると主は言われる。
18721 23 55 9 天が地よりも高いように、わが道は、あなたがたの道よりも高く、わが思いは、あなたがたの思いよりも高い。
18722 23 55 10 天から雨が降り、雪が落ちてまた帰らず、地を潤して物を生えさせ、芽を出させて、種まく者に種を与え、食べる者にかてを与える。
18723 23 55 11 このように、わが口から出る言葉も、むなしくわたしに帰らない。わたしの喜ぶところのことをなし、わたしが命じ送った事を果す。
18724 23 55 12 あなたがたは喜びをもって出てきて、安らかに導かれて行く。山と丘とはあなたの前に声を放って喜び歌い、野にある木はみな手を打つ。
18725 23 55 13 いとすぎは、いばらに代って生え、ミルトスの木は、おどろに代って生える。これは主の記念となり、また、とこしえのしるしとなって、絶えることはない」。
18726 23 56 1 主はこう言われる、「あなたがたは公平を守って正義を行え。わが救の来るのは近く、わが助けのあらわれるのが近いからだ。
18727 23 56 2 安息日を守って、これを汚さず、その手をおさえて、悪しき事をせず、このように行う人、これを堅く守る人の子はさいわいである」。
18728 23 56 3 主に連なっている異邦人は言ってはならない、「主は必ずわたしをその民から分かたれる」と。宦官もまた言ってはならない、「見よ、わたしは枯れ木だ」と。
18729 23 56 4 主はこう言われる、「わが安息日を守り、わが喜ぶことを選んで、わが契約を堅く守る宦官には、
18730 23 56 5 わが家のうちで、わが垣のうちで、むすこにも娘にもまさる記念のしるしと名を与え、絶えることのない、とこしえの名を与える。
18731 23 56 6 また主に連なり、主に仕え、主の名を愛し、そのしもべとなり、すべて安息日を守って、これを汚さず、わが契約を堅く守る異邦人は――
18732 23 56 7 わたしはこれをわが聖なる山にこさせ、わが祈の家のうちで楽しませる、彼らの燔祭と犠牲とは、わが祭壇の上に受けいれられる。わが家はすべての民の祈の家ととなえられるからである」。
18733 23 56 8 イスラエルの追いやられた者を集められる主なる神はこう言われる、「わたしはさらに人を集めて、すでに集められた者に加えよう」と。
18734 23 56 9 野のすべての獣よ、林におるすべての獣よ、来て食らえ。
18735 23 56 10 見張人らはみな目しいで、知ることがなく、みな、おしの犬で、ほえることができない。みな夢みる者、伏している者、まどろむことを好む者だ。
18736 23 56 11 この犬どもは強欲で、飽くことを知らない。彼らはまた悟ることのできない牧者で、皆おのが道にむかいゆき、おのおのみな、おのれの利を求める。
18737 23 56 12 彼らは互に言う、「さあ、われわれは酒を手に入れ、濃い酒をあびるほど飲もう。あすも、きょうのようであるだろう、すばらしい日だ」と。
18738 23 57 1 正しい者が滅びても、心にとめる人がなく、神を敬う人々が取り去られても、悟る者はない。正しい者は災の前に取り去られて、
18739 23 57 2 平安に入るからである。すべて正直に歩む者は、その床に休むことができる。
18740 23 57 3 しかし、あなたがた女魔法使の子よ、姦夫と遊女のすえよ、こちらへ近寄れ。
18741 23 57 4 あなたがたは、だれにむかって戯れをなすのか。だれにむかって口を開き、舌を出すのか。あなたがたは背信の子ら、偽りのすえではないか。
18742 23 57 5 あなたがたは、かしの木の間、すべての青木の下で心をこがし、谷の中、岩のはざまで子どもを殺した。
18743 23 57 6 あなたは谷のなめらかな石を自分の嗣業とし、これを自分の分け前とし、これに灌祭をそそぎ、供え物をささげた。わたしはこれらの物によってなだめられようか。
18744 23 57 7 あなたは高くそびえた山の上に自分の床を設け、またそこに登って行って犠牲をささげた。
18745 23 57 8 また戸および柱のうしろに、あなたのしるしを置いた。あなたはわたしを離れて自分の床をあらわし、それにのぼって、その床をひろくした。また彼らと契約をなし、彼らの床を愛し、その裸を見た。
18746 23 57 9 あなたは、におい油を携えてモレクに行き、多くのかおり物をささげた。またあなたの使者を遠くにつかわし、陰府の深い所にまでつかわした。
18747 23 57 10 あなたは道の長いのに疲れても、なお「望みがない」とは言わなかった。あなたはおのが力の回復を得たので、衰えることがなかった。
18748 23 57 11 あなたはだれをおじ恐れて、偽りを言い、わたしを覚えず、また心におかなかったのか。わたしが久しく黙っていたために、あなたはわたしを恐れなかったのではなかったか。
18749 23 57 12 わたしはあなたの義と、あなたのわざを告げ示そう、しかしこれらはあなたを益しない。
18750 23 57 13 あなたが呼ばわる時、あなたが集めておいた偶像にあなたを救わせよ。風は彼らを運び去り、息は彼らを取り去る。しかしわたしに寄り頼む者は地を継ぎ、わが聖なる山をまもる。
18751 23 57 14 主は言われる、「土を盛り、土を盛って道を備えよ、わが民の道から、つまずく物を取り去れ」と。
18752 23 57 15 いと高く、いと上なる者、とこしえに住む者、その名を聖ととなえられる者がこう言われる、「わたしは高く、聖なる所に住み、また心砕けて、へりくだる者と共に住み、へりくだる者の霊をいかし、砕ける者の心をいかす。
18753 23 57 16 わたしはかぎりなく争わない、また絶えず怒らない。霊はわたしから出、いのちの息はわたしがつくったからだ。
18754 23 57 17 彼のむさぼりの罪のゆえに、わたしは怒って彼を打ち、わが顔をかくして怒った。しかし彼はなおそむいて、おのが心の道へ行った。
18755 23 57 18 わたしは彼の道を見た。わたしは彼をいやし、また彼を導き、慰めをもって彼に報い、悲しめる者のために、くちびるの実を造ろう。
18756 23 57 19 遠い者にも近い者にも平安あれ、平安あれ、わたしは彼をいやそう」と主は言われる。
18757 23 57 20 しかし悪しき者は波の荒い海のようだ。静まることができないで、その水はついに泥と汚物とを出す。
18758 23 57 21 わが神は言われる、「よこしまな者には平安がない」と。
18759 23 58 1 「大いに呼ばわって声を惜しむな。あなたの声をラッパのようにあげ、わが民にそのとがを告げ、ヤコブの家にその罪を告げ示せ。
18760 23 58 2 彼らは日々わたしを尋ね求め、義を行い、神のおきてを捨てない国民のように、わが道を知ることを喜ぶ。彼らは正しいさばきをわたしに求め、神に近づくことを喜ぶ。
18761 23 58 3 彼らは言う、『われわれが断食したのに、なぜ、ごらんにならないのか。われわれがおのれを苦しめたのに、なぜ、ごぞんじないのか』と。見よ、あなたがたの断食の日には、おのが楽しみを求め、その働き人をことごとくしえたげる。
18762 23 58 4 見よ、あなたがたの断食するのは、ただ争いと、いさかいのため、また悪のこぶしをもって人を打つためだ。きょう、あなたがたのなす断食は、その声を上に聞えさせるものではない。
18763 23 58 5 このようなものは、わたしの選ぶ断食であろうか。人がおのれを苦しめる日であろうか。そのこうべを葦のように伏せ、荒布と灰とをその下に敷くことであろうか。あなたは、これを断食ととなえ、主に受けいれられる日と、となえるであろうか。
18764 23 58 6 わたしが選ぶところの断食は、悪のなわをほどき、くびきのひもを解き、しえたげられる者を放ち去らせ、すべてのくびきを折るなどの事ではないか。
18765 23 58 7 また飢えた者に、あなたのパンを分け与え、さすらえる貧しい者を、あなたの家に入れ、裸の者を見て、これを着せ、自分の骨肉に身を隠さないなどの事ではないか。
18766 23 58 8 そうすれば、あなたの光が暁のようにあらわれ出て、あなたは、すみやかにいやされ、あなたの義はあなたの前に行き、主の栄光はあなたのしんがりとなる。
18767 23 58 9 また、あなたが呼ぶとき、主は答えられ、あなたが叫ぶとき、『わたしはここにおる』と言われる。もし、あなたの中からくびきを除き、指をさすこと、悪い事を語ることを除き、
18768 23 58 10 飢えた者にあなたのパンを施し、苦しむ者の願いを満ち足らせるならば、あなたの光は暗きに輝き、あなたのやみは真昼のようになる。
18769 23 58 11 主は常にあなたを導き、良き物をもってあなたの願いを満ち足らせ、あなたの骨を強くされる。あなたは潤った園のように、水の絶えない泉のようになる。
18770 23 58 12 あなたの子らは久しく荒れすたれたる所を興し、あなたは代々やぶれた基を立て、人はあなたを『破れを繕う者』と呼び、『市街を繕って住むべき所となす者』と呼ぶようになる。
18771 23 58 13 もし安息日にあなたの足をとどめ、わが聖日にあなたの楽しみをなさず、安息日を喜びの日と呼び、主の聖日を尊ぶべき日ととなえ、これを尊んで、おのが道を行わず、おのが楽しみを求めず、むなしい言葉を語らないならば、
18772 23 58 14 その時あなたは主によって喜びを得、わたしは、あなたに地の高い所を乗り通らせ、あなたの先祖ヤコブの嗣業をもって、あなたを養う」。これは主の口から語られたものである。
18773 23 59 1 見よ、主の手が短くて、救い得ないのではない。その耳が鈍くて聞き得ないのでもない。
18774 23 59 2 ただ、あなたがたの不義があなたがたと、あなたがたの神との間を隔てたのだ。またあなたがたの罪が主の顔をおおったために、お聞きにならないのだ。
18775 23 59 3 あなたがたの手は血で汚れ、あなたがたの指は不義で汚れ、あなたがたのくちびるは偽りを語り、あなたがたの舌は悪をささやき、
18776 23 59 4 ひとりも正義をもって訴え、真実をもって論争する者がない。彼らはむなしきことを頼み、偽りを語り、害悪をはらみ、不義を産む。
18777 23 59 5 彼らはまむしの卵をかえし、くもの巣を織る。その卵を食べる者は死ぬ。卵が踏まれると破れて毒蛇を出す。
18778 23 59 6 その織る物は着物とならない。その造る物をもって身をおおうことができない。彼のわざは不義のわざであり、彼らの手には暴虐の行いがある。
18779 23 59 7 彼らの足は悪に走り、罪のない血を流すことに速い。彼らの思いは不義の思いであり、荒廃と滅亡とがその道にある。
18780 23 59 8 彼らは平和の道を知らず、その行く道には公平がない。彼らはその道を曲げた。すべてこれを歩む者は平和を知らない。
18781 23 59 9 それゆえ、公平は遠くわれわれを離れ、正義はわれわれに追いつかない。われわれは光を望んでも、暗きを見、輝きを望んでも、やみを行く。
18782 23 59 10 われわれは盲人のように、かきを手さぐりゆき、目のない者のように手さぐりゆき、真昼でも、たそがれのようにつまずき、強壮な者の中にあっても死人のようだ。
18783 23 59 11 われわれは皆くまのようにほえ、はとのようにいたくうめき、公平を望んでも、きたらず、救を望んでも、遠くわれわれを離れ去る。
18784 23 59 12 われわれのとがは、あなたの前に多く、罪は、われわれを訴えて、あかしをなし、とがは、われわれと共にあり、不義は、われわれがこれを知る。
18785 23 59 13 われわれは、そむいて主をいなみ、退いて、われわれの神に従わず、しえたげと、そむきとを語り、偽りの言葉を心にはらんで、それを言いあらわす。
18786 23 59 14 公平はうしろに退けられ、正義ははるかに立つ。それは、真実は広場に倒れ、正直は、はいることができないからである。
18787 23 59 15 真実は欠けてなく、悪を離れる者はかすめ奪われる。
18788 23 59 16 主は人のないのを見られ、仲に立つ者のないのをあやしまれた。それゆえ、ご自分のかいなをもって、勝利を得、その義をもって、おのれをささえられた。
18789 23 59 17 主は義を胸当としてまとい、救のかぶとをその頭にいただき、報復の衣をまとって着物とし、熱心を外套として身を包まれた。
18790 23 59 18 主は彼らの行いにしたがって報いをなし、あだにむかって怒り、敵にむかって報いをなし、海沿いの国々にむかって報いをされる。
18791 23 59 19 こうして、人々は西の方から主の名を恐れ、日の出る方からその栄光を恐れる。主は、せき止めた川を、そのいぶきで押し流すように、こられるからである。
18792 23 59 20 主は言われる、「主は、あがなう者としてシオンにきたり、ヤコブのうちの、とがを離れる者に至る」と。
18793 23 59 21 主は言われる、「わたしが彼らと立てる契約はこれである。あなたの上にあるわが霊、あなたの口においたわが言葉は、今から後とこしえに、あなたの口から、あなたの子らの口から、あなたの子らの子の口から離れることはない」と。
18794 23 60 1 起きよ、光を放て。あなたの光が臨み、主の栄光があなたの上にのぼったから。
18795 23 60 2 見よ、暗きは地をおおい、やみはもろもろの民をおおう。しかし、あなたの上には主が朝日のごとくのぼられ、主の栄光があなたの上にあらわれる。
18796 23 60 3 もろもろの国は、あなたの光に来、もろもろの王は、のぼるあなたの輝きに来る。
18797 23 60 4 あなたの目をあげて見まわせ、彼らはみな集まってあなたに来る。あなたの子らは遠くから来、あなたの娘らは、かいなにいだかれて来る。
18798 23 60 5 その時あなたは見て、喜びに輝き、あなたの心はどよめき、かつ喜ぶ。海の富が移ってあなたに来、もろもろの国の宝が、あなたに来るからである。
18799 23 60 6 多くのらくだ、ミデアンおよびエパの若きらくだはあなたをおおい、シバの人々はみな黄金、乳香を携えてきて、主の誉を宣べ伝える。
18800 23 60 7 ケダルの羊の群れはみなあなたに集まって来、ネバヨテの雄羊はあなたに仕え、わが祭壇の上にのぼって受けいれられる。こうして、わたしはわが栄光の家を輝かす。
18801 23 60 8 雲のように飛び、はとがその小屋に飛び帰るようにして来る者はだれか。
18802 23 60 9 海沿いの国々はわたしを待ち望み、タルシシの船はいや先にあなたの子らを遠くから載せて来、また彼らの金銀を共に載せて来て、あなたの神、主の名にささげ、イスラエルの聖者にささげる。主があなたを輝かされたからである。
18803 23 60 10 異邦人はあなたの城壁を築き、彼らの王たちはあなたに仕える。わたしは怒りをもってあなたを打ったけれども、また恵みをもってあなたをあわれんだからである。
18804 23 60 11 あなたの門は常に開いて、昼も夜も閉ざすことはない。これは人々が国々の宝をあなたに携えて来、その王たちを率いて来るためである。
18805 23 60 12 あなたに仕えない国と民とは滅び、その国々は全く荒れすたれる。
18806 23 60 13 レバノンの栄えはあなたに来、いとすぎ、すずかけ、まつは皆共に来て、わが聖所をかざる。またわたしはわが足をおく所を尊くする。
18807 23 60 14 あなたを苦しめた者の子らは、かがんで、あなたのもとに来、あなたをさげすんだ者は、ことごとくあなたの足もとに伏し、あなたを主の都、イスラエルの聖者のシオンととなえる。
18808 23 60 15 あなたは捨てられ、憎まれて、その中を過ぎる者もなかったが、わたしはあなたを、とこしえの誇、世々の喜びとする。
18809 23 60 16 あなたはまた、もろもろの国の乳を吸い、王たちの乳ぶさを吸い、そして主なるわたしが、あなたの救主、また、あなたのあがない主、ヤコブの全能者であることを知るにいたる。
18810 23 60 17 わたしは青銅の代りに黄金を携え、くろがねの代りにしろがねを携え、木の代りに青銅を、石の代りに鉄を携えてきて、あなたのまつりごとを平和にし、あなたのつかさびとを正しくする。
18811 23 60 18 暴虐は、もはやあなたの地に聞かれず、荒廃と滅亡は、もはやあなたの境のうちに聞かれず、あなたはその城壁を「救」ととなえ、その門を「誉」ととなえる。
18812 23 60 19 昼は、もはや太陽があなたの光とならず、夜も月が輝いてあなたを照さず、主はとこしえにあなたの光となり、あなたの神はあなたの栄えとなられる。
18813 23 60 20 あなたの太陽は再び没せず、あなたの月はかけることがない。主がとこしえにあなたの光となり、あなたの悲しみの日が終るからである。
18814 23 60 21 あなたの民はことごとく正しい者となって、とこしえに地を所有する。彼らはわたしの植えた若枝、わが手のわざ、わが栄光をあらわすものとなる。
18815 23 60 22 その最も小さい者は氏族となり、その最も弱い者は強い国となる。わたしは主である。その時がくるならば、すみやかにこの事をなす。
18816 23 61 1 主なる神の霊がわたしに臨んだ。これは主がわたしに油を注いで、貧しい者に福音を宣べ伝えることをゆだね、わたしをつかわして心のいためる者をいやし、捕われ人に放免を告げ、縛られている者に解放を告げ、
18817 23 61 2 主の恵みの年とわれわれの神の報復の日とを告げさせ、また、すべての悲しむ者を慰め、
18818 23 61 3 シオンの中の悲しむ者に喜びを与え、灰にかえて冠を与え、悲しみにかえて喜びの油を与え、憂いの心にかえて、さんびの衣を与えさせるためである。こうして、彼らは義のかしの木ととなえられ、主がその栄光をあらわすために植えられた者ととなえられる。
18819 23 61 4 彼らはいにしえの荒れた所を建てなおし、さきに荒れすたれた所を興し、荒れた町々を新たにし、世々すたれた所を再び建てる。
18820 23 61 5 外国人は立ってあなたがたの群れを飼い、異邦人はあなたがたの畑を耕す者となり、ぶどうを作る者となる。
18821 23 61 6 しかし、あなたがたは主の祭司ととなえられ、われわれの神の役者と呼ばれ、もろもろの国の富を食べ、彼らの宝を得て喜ぶ。
18822 23 61 7 あなたがたは、さきに受けた恥にかえて、二倍の賜物を受け、はずかしめにかえて、その嗣業を得て楽しむ。それゆえ、あなたがたはその地にあって、二倍の賜物を獲、とこしえの喜びを得る。
18823 23 61 8 主なるわたしは公平を愛し、強奪と邪悪を憎み、真実をもって彼らに報いを与え、彼らと、とこしえの契約を結ぶからである。
18824 23 61 9 彼らの子孫は、もろもろの国の中で知られ、彼らの子らは、もろもろの民の中に知られる。すべてこれを見る者はこれが主の祝福された民であることを認める。
18825 23 61 10 わたしは主を大いに喜び、わが魂はわが神を楽しむ。主がわたしに救の衣を着せ、義の上衣をまとわせて、花婿が冠をいただき、花嫁が宝玉をもって飾るようにされたからである。
18826 23 61 11 地が芽をいだし、園がまいたものを生やすように、主なる神は義と誉とを、もろもろの国の前に、生やされる。
18827 23 62 1 シオンの義が朝日の輝きのようにあらわれいで、エルサレムの救が燃えるたいまつの様になるまで、わたしはシオンのために黙せず、エルサレムのために休まない。
18828 23 62 2 もろもろの国はあなたの義を見、もろもろの王は皆あなたの栄えを見る。そして、あなたは主の口が定められる新しい名をもってとなえられる。
18829 23 62 3 また、あなたは主の手にある麗しい冠となり、あなたの神の手にある王の冠となる。
18830 23 62 4 あなたはもはや「捨てられた者」と言われず、あなたの地はもはや「荒れた者」と言われず、あなたは「わが喜びは彼女にある」ととなえられ、あなたの地は「配偶ある者」ととなえられる。主はあなたを喜ばれ、あなたの地は配偶を得るからである。
18831 23 62 5 若い者が処女をめとるようにあなたの子らはあなたをめとり、花婿が花嫁を喜ぶようにあなたの神はあなたを喜ばれる。
18832 23 62 6 エルサレムよ、わたしはあなたの城壁の上に見張人をおいて、昼も夜もたえず、もだすことのないようにしよう。主に思い出されることを求める者よ、みずから休んではならない。
18833 23 62 7 主がエルサレムを堅く立てて、全地に誉を得させられるまで、お休みにならぬようにせよ。
18834 23 62 8 主はその右の手をさし、大能のかいなをさして誓われた、「わたしは再びあなたの穀物をあなたの敵に与えて食べさせない。また、あなたが労して得たぶどう酒を異邦人に与えて飲ませない。
18835 23 62 9 しかし、穀物を刈り入れた者はこれを食べて主をほめたたえ、ぶどうを集めた者はわが聖所の庭でこれを飲む」。
18836 23 62 10 門を通って行け、通って行け。民の道を備えよ。土を盛り、土を盛って大路を設けよ。石を取りのけ。もろもろの民の上に旗をあげよ。
18837 23 62 11 見よ、主は地の果にまで告げて言われた、「シオンの娘に言え、『見よ、あなたの救は来る。見よ、その報いは主と共にあり、その働きの報いは、その前にある』と。
18838 23 62 12 彼らは『聖なる民、主にあがなわれた者』ととなえられ、あなたは『人に尋ね求められる者、捨てられない町』ととなえられる」。
18839 23 63 1 「このエドムから来る者、深紅の衣を着て、ボズラから来る者はだれか。その装いは、はなやかに、大いなる力をもって進み来る者はだれか」。「義をもって語り、救を施す力あるわたしがそれだ」。
18840 23 63 2 「何ゆえあなたの装いは赤く、あなたの衣は酒ぶねを踏む者のように赤いのか」。
18841 23 63 3 「わたしはひとりで酒ぶねを踏んだ。もろもろの民のなかに、わたしと事を共にする者はなかった。わたしは怒りによって彼らを踏み、憤りによって彼らを踏みにじったので、彼らの血がわが衣にふりかかり、わが装いをことごとく汚した。
18842 23 63 4 報復の日がわが心のうちにあり、わがあがないの年が来たからである。
18843 23 63 5 わたしは見たけれども、助ける者はなく、怪しんだけれども、ささえる者はなかった。それゆえ、わがかいながわたしを勝たせ、わが憤りがわたしをささえた。
18844 23 63 6 わたしは怒りによって、もろもろの民を踏みにじり、憤りによって彼らを酔わせ、彼らの血を、地に流れさせた」。
18845 23 63 7 わたしは主がわれわれになされたすべてのことによって、主のいつくしみと、主の誉とを語り告げ、また、そのあわれみにより、その多くのいつくしみによって、イスラエルの家に施されたその大いなる恵みを語り告げよう。
18846 23 63 8 主は言われた、「まことに彼らはわが民、偽りのない子らである」と。そして主は彼らの救主となられた。
18847 23 63 9 彼らのすべての悩みのとき、主も悩まれて、そのみ前の使をもって彼らを救い、その愛とあわれみとによって彼らをあがない、いにしえの日、つねに彼らをもたげ、彼らを携えられた。
18848 23 63 10 ところが彼らはそむいてその聖なる霊を憂えさせたので、主はひるがえって彼らの敵となり、みずから彼らと戦われた。
18849 23 63 11 その時、民はいにしえのモーセの日を思い出して言った、「その群れの牧者を、海から携えあげた者はどこにいるか。彼らの中に聖なる霊をおいた者はどこにいるか。
18850 23 63 12 栄光のかいなをモーセの右に行かせ、彼らの前に水を二つに分けて、みずから、とこしえの名をつくり、
18851 23 63 13 彼らを導いて、馬が野を走るように、つまずくことなく淵を通らせた者はどこにいるか。
18852 23 63 14 谷にくだる家畜のように、主の霊は彼らをいこわせられた。このように、あなたはおのれの民を導いてみずから栄光の名をつくられた」。
18853 23 63 15 どうか、天から見おろし、その聖なる栄光あるすみかからごらんください。あなたの熱心と、大能とはどこにありますか。あなたのせつなる同情とあわれみとはおさえられて、わたしにあらわれません。
18854 23 63 16 たといアブラハムがわれわれを知らず、イスラエルがわれわれを認めなくても、あなたはわれわれの父です。主よ、あなたはわれわれの父、いにしえからあなたの名はわれわれのあながい主です。
18855 23 63 17 主よ、なぜ、われわれをあなたの道から離れ迷わせ、われわれの心をかたくなにして、あなたを恐れないようにされるのですか。どうぞ、あなたのしもべらのために、あなたの嗣業である部族らのために、お帰りください。
18856 23 63 18 あなたの聖なる民が、あなたの聖所を獲て間もないのに、われわれのあだは、それを踏みにじりました。
18857 23 63 19 われわれはあなたによって、いにしえから治められない者のようになり、あなたの名をもって、となえられない者のようになりました。
18858 23 64 1 どうか、あなたが天を裂いて下り、あなたの前に山々が震い動くように。
18859 23 64 2 火が柴木を燃やし、火が水を沸かすときのごとく下られるように。そして、み名をあなたのあだにあらわし、もろもろの国をあなたの前に震えおののかせられるように。
18860 23 64 3 あなたは、われわれが期待しなかった恐るべき事をなされた時に下られたので、山々は震い動いた。
18861 23 64 4 いにしえからこのかた、あなたのほか神を待ち望む者に、このような事を行われた神を聞いたことはなく、耳に入れたこともなく、目に見たこともない。
18862 23 64 5 あなたは喜んで義を行い、あなたの道にあって、あなたを記念する者を迎えられる。見よ、あなたは怒られた、われわれは罪を犯した。われわれは久しく罪のうちにあった。われわれは救われるであろうか。
18863 23 64 6 われわれはみな汚れた人のようになり、われわれの正しい行いは、ことごとく汚れた衣のようである。われわれはみな木の葉のように枯れ、われわれの不義は風のようにわれわれを吹き去る。
18864 23 64 7 あなたの名を呼ぶ者はなく、みずから励んで、あなたによりすがる者はない。あなたはみ顔を隠して、われわれを顧みられず、われわれをおのれの不義の手に渡された。
18865 23 64 8 されど主よ、あなたはわれわれの父です。われわれは粘土であって、あなたは陶器師です。われわれはみな、み手のわざです。
18866 23 64 9 主よ、ひどくお怒りにならぬように、いつまでも不義をみこころにとめられぬように。どうぞ、われわれを顧みてください。われわれはみな、あなたの民です。
18867 23 64 10 あなたの聖なる町々は荒野となり、シオンは荒野となり、エルサレムは荒れすたれた。
18868 23 64 11 われわれの先祖があなたをほめたたえた聖なる麗しいわれわれの宮は火で焼かれ、われわれが慕った所はことごとく荒れはてた。
18869 23 64 12 主よ、これらの事があってもなお、あなたはみずからをおさえ、黙して、われわれをいたく苦しめられるのですか。
18870 23 65 1 わたしはわたしを求めなかった者に問われることを喜び、わたしを尋ねなかった者に見いだされることを喜んだ。わたしはわが名を呼ばなかった国民に言った、「わたしはここにいる、わたしはここにいる」と。
18871 23 65 2 よからぬ道に歩み、自分の思いに従うそむける民に、わたしはひねもす手を伸べて招いた。
18872 23 65 3 この民はまのあたり常にわたしを怒らせ、園の中で犠牲をささげ、かわらの上で香をたき、
18873 23 65 4 墓場にすわり、ひそかな所にやどり、豚の肉を食らい、憎むべき物の、あつものをその器に盛って、
18874 23 65 5 言う、「あなたはそこに立って、わたしに近づいてはならない。わたしはあなたと区別されたものだから」と。これらはわが鼻の煙、ひねもす燃える火である。
18875 23 65 6 見よ、この事はわが前にしるされた、「わたしは黙っていないで報い返す。そうだ、わたしは彼らのふところに、
18876 23 65 7 彼らの不義と、彼らの先祖たちの不義とを共に報い返す。彼らが山の上で香をたき、丘の上でわたしをそしったゆえ、わたしは彼らのさきのわざを量って、そのふところに返す」と主は言われる。
18877 23 65 8 主はこう言われる、「人がぶどうのふさの中に、ぶどうのしるのあるのを見るならば、『それを破るな、その中に祝福があるから』と言う。そのようにわたしは、わがしもべらのために行って、ことごとくは滅ぼさない。
18878 23 65 9 わたしはヤコブから子孫をいだし、ユダからわが山々を受けつぐべき者をいだす。わたしが選んだ者はこれを受けつぎ、わがしもべらはそこに住む。
18879 23 65 10 シャロンは羊の群れの牧場となり、アコルの谷は牛の群れの伏す所となって、わたしを尋ね求めたわが民のものとなる。
18880 23 65 11 しかし主を捨て、わが聖なる山を忘れ、机を禍福の神に供え、混ぜ合わせた酒を盛って運命の神にささげるあなたがたよ、
18881 23 65 12 わたしは、あなたがたをつるぎに渡すことに定めた。あなたがたは皆かがんでほふられる。あなたがたはわたしが呼んだときに答えず、わたしが語ったときに聞かず、わたしの目に悪い事をおこない、わたしの好まなかった事を選んだからだ」。
18882 23 65 13 それゆえ、主なる神はこう言われる、「見よ、わがしもべたちは食べる、しかし、あなたがたは飢える。見よ、わがしもべたちは飲む、しかし、あなたがたはかわく。見よ、わがしもべたちは喜ぶ、しかし、あなたがたは恥じる。
18883 23 65 14 見よ、わがしもべたちは心の楽しみによって歌う、しかし、あなたがたは心の苦しみによって叫び、たましいの悩みによって泣き叫ぶ。
18884 23 65 15 あなたがたの残す名はわが選んだ者には、のろいの文句となり、主なる神はあなたがたを殺される。しかし、おのれのしもべたちを、ほかの名をもって呼ばれる。
18885 23 65 16 それゆえ、地にあっておのれのために祝福を求める者は、真実の神によっておのれの祝福を求め、地にあって誓う者は、真実の神をさして誓う。さきの悩みは忘れられて、とわが目から隠れうせるからである。
18886 23 65 17 見よ、わたしは新しい天と、新しい地とを創造する。さきの事はおぼえられることなく、心に思い起すことはない。
18887 23 65 18 しかし、あなたがたはわたしの創造するものにより、とこしえに楽しみ、喜びを得よ。見よ、わたしはエルサレムを造って喜びとし、その民を楽しみとする。
18888 23 65 19 わたしはエルサレムを喜び、わが民を楽しむ。泣く声と叫ぶ声は再びその中に聞えることはない。
18889 23 65 20 わずか数日で死ぬみどりごと、おのが命の日を満たさない老人とは、もはやその中にいない。百歳で死ぬ者も、なお若い者とせられ、百歳で死ぬ者は、のろわれた罪びととされる。
18890 23 65 21 彼らは家を建てて、それに住み、ぶどう畑を作って、その実を食べる。
18891 23 65 22 彼らが建てる所に、ほかの人は住まず、彼らが植えるものは、ほかの人が食べない。わが民の命は、木の命のようになり、わが選んだ者は、その手のわざをながく楽しむからである。
18892 23 65 23 彼らの勤労はむだでなく、その生むところの子らは災にかからない。彼らは主に祝福された者のすえであって、その子らも彼らと共におるからである。
18893 23 65 24 彼らが呼ばないさきに、わたしは答え、彼らがなお語っているときに、わたしは聞く。
18894 23 65 25 おおかみと小羊とは共に食らい、ししは牛のようにわらを食らい、へびはちりを食物とする。彼らはわが聖なる山のどこでもそこなうことなく、やぶることはない」と主は言われる。
18895 23 66 1 主はこう言われる、「天はわが位、地はわが足台である。あなたがたはわたしのためにどんな家を建てようとするのか。またどんな所がわが休み所となるのか」。
18896 23 66 2 主は言われる、「わが手はすべてこれらの物を造った。これらの物はことごとくわたしのものである。しかし、わたしが顧みる人はこれである。すなわち、へりくだって心悔い、わが言葉に恐れおののく者である。
18897 23 66 3 牛をほふる者は、また人を殺す者、小羊を犠牲とする者は、また犬をくびり殺す者、供え物をささげる者は、また豚の血をささげる者、乳香を記念としてささげる者は、また偶像をほめる者である。これはおのが道を選び、その心は憎むべきものを楽しむ。
18898 23 66 4 わたしもまた彼らのために悩みを選び、彼らの恐れるところのものを彼らに臨ませる。これは、わたしが呼んだときに答える者なく、わたしが語ったときに聞くことをせず、わたしの目に悪い事を行い、わたしの好まなかった事を選んだからである」。
18899 23 66 5 あなたがた、主の言葉に恐れおののく者よ、主の言葉を聞け、「あなたがたの兄弟たちはあなたがたを憎み、あなたがたをわが名のために追い出して言った、『願わくは主がその栄光をあらわしてわれわれにあなたがたの喜びを見させよ』と。しかし彼らは恥を受ける。
18900 23 66 6 聞けよ、町から起る騒ぎを。宮から聞える声を。主がその敵に報復される声を。
18901 23 66 7 シオンは産みの苦しみをなす前に産み、その苦しみの来ない前に男子を産んだ。
18902 23 66 8 だれがこのような事を聞いたか、だれがこのような事どもを見たか。一つの国は一日の苦しみで生れるだろうか。一つの国民はひと時に生れるだろうか。しかし、シオンは産みの苦しみをするやいなやその子らを産んだ。
18903 23 66 9 わたしが出産に臨ませて産ませないことがあろうか」と主は言われる。「わたしは産ませる者なのに胎をとざすであろうか」とあなたの神は言われる。
18904 23 66 10 「すべてエルサレムを愛する者よ、彼女と共に喜べ、彼女のゆえに楽しめ。すべて彼女のために悲しむ者よ、彼女と共に喜び楽しめ。
18905 23 66 11 あなたがたは慰めを与えるエルサレムの乳ぶさから乳を吸って飽くことができ、またその豊かな栄えから飲んで楽しむことができるからだ」。
18906 23 66 12 主はこう言われる、「見よ、わたしは川のように彼女に繁栄を与え、みなぎる流れのように、もろもろの国の富を与える。あなたがたは乳を飲み、腰に負われ、ひざの上であやされる。
18907 23 66 13 母のその子を慰めるように、わたしもあなたがたを慰める。あなたがたはエルサレムで慰めを得る。
18908 23 66 14 あなたがたは見て、心喜び、あなたがたの骨は若草のように栄える。主の手はそのしもべらと共にあり、その憤りはその敵にむかっていることを知る。
18909 23 66 15 見よ、主は火の中にあらわれて来られる。その車はつむじ風のようだ。激しい怒りをもってその憤りをもらし、火の炎をもって責められる。
18910 23 66 16 主は火をもって、またつるぎをもって、すべての人にさばきを行われる。主に殺される者は多い」。
18911 23 66 17 「みずからを聖別し、みずからを清めて園に行き、その中にあるものに従い、豚の肉、憎むべき物およびねずみを食う者はみな共に絶えうせる」と主は言われる。
18912 23 66 18 「わたしは彼らのわざと、彼らの思いとを知っている。わたしは来て、すべての国民と、もろもろのやからとを集める。彼らは来て、わが栄光を見る。
18913 23 66 19 わたしは彼らの中に一つのしるしを立てて、のがれた者をもろもろの国、すなわちタルシシ、よく弓をひくプトおよびルデ、トバル、ヤワン、またわが名声を聞かず、わが栄光を見ない遠くの海沿いの国々につかわす。彼らはわが栄光をもろもろの国民の中に伝える。
18914 23 66 20 彼らはイスラエルの子らが清い器に供え物を盛って主の宮に携えて来るように、あなたがたの兄弟をことごとくもろもろの国の中から馬、車、かご、騾馬、らくだに乗せて、わが聖なる山エルサレムにこさせ、主の供え物とする」と主は言われる。
18915 23 66 21 「わたしはまた彼らの中から人を選んで祭司とし、レビびととする」と主は言われる。
18916 23 66 22 「わたしが造ろうとする新しい天と、新しい地がわたしの前にながくとどまるように、あなたの子孫と、あなたの名はながくとどまる」と主は言われる。
18917 23 66 23 「新月ごとに、安息日ごとに、すべての人はわが前に来て礼拝する」と主は言われる。
18918 23 66 24 「彼らは出て、わたしにそむいた人々のしかばねを見る。そのうじは死なず、その火は消えることがない。彼らはすべての人に忌みきらわれる」。
18919 24 1 1 ベニヤミンの地アナトテの祭司のひとりである、ヒルキヤの子エレミヤの言葉。
18920 24 1 2 アモンの子、ユダの王ヨシヤの時、すなわちその治世の十三年に、主の言葉がエレミヤに臨んだ。
18921 24 1 3 その言葉はまたヨシヤの子、ユダの王エホヤキムの時にも臨んで、ヨシヤの子、ユダの王ゼデキヤの十一年の終り、すなわちその年の五月にエルサレムの民が捕え移された時にまで及んだ。
18922 24 1 4 主の言葉がわたしに臨んで言う、
18923 24 1 5 「わたしはあなたをまだ母の胎につくらないさきに、あなたを知り、あなたがまだ生れないさきに、あなたを聖別し、あなたを立てて万国の預言者とした」。
18924 24 1 6 その時わたしは言った、「ああ、主なる神よ、わたしはただ若者にすぎず、どのように語ってよいか知りません」。
18925 24 1 7 しかし主はわたしに言われた、「あなたはただ若者にすぎないと言ってはならない。だれにでも、すべてわたしがつかわす人へ行き、あなたに命じることをみな語らなければならない。
18926 24 1 8 彼らを恐れてはならない、わたしがあなたと共にいて、あなたを救うからである」と主は仰せられる。
18927 24 1 9 そして主はみ手を伸べて、わたしの口につけ、主はわたしに言われた、「見よ、わたしの言葉をあなたの口に入れた。
18928 24 1 10 見よ、わたしはきょう、あなたを万民の上と、万国の上に立て、あなたに、あるいは抜き、あるいはこわし、あるいは滅ぼし、あるいは倒し、あるいは建て、あるいは植えさせる」。
18929 24 1 11 主の言葉がまたわたしに臨んで言う、「エレミヤよ、あなたは何を見るか」。わたしは答えた、「あめんどうの枝を見ます」。
18930 24 1 12 主はわたしに言われた、「あなたの見たとおりだ。わたしは自分の言葉を行おうとして見張っているのだ」。
18931 24 1 13 主の言葉がふたたびわたしに臨んで言う、「あなたは何を見るか」。わたしは答えた、「煮え立っているなべを見ます。北からこちらに向かっています」。
18932 24 1 14 主はわたしに言われた、「災が北から起って、この地に住むすべての者の上に臨む」。
18933 24 1 15 主は言われる、「見よ、わたしは北の国々のすべての民を呼ぶ。彼らは来て、エルサレムの門の入口と、周囲のすべての城壁、およびユダのすべての町々に向かって、おのおのその座を設ける。
18934 24 1 16 わたしは、彼らがわたしを捨てて、すべての悪事を行ったゆえに、わたしのさばきを彼らに告げる。彼らは他の神々に香をたき、自分の手で作った物を拝したのである。
18935 24 1 17 しかしあなたは腰に帯して立ち、わたしが命じるすべての事を彼らに告げよ。彼らを恐れてはならない。さもないと、わたしは彼らの前であなたをあわてさせる。
18936 24 1 18 見よ、わたしはきょう、この全国と、ユダの王と、そのつかさと、その祭司と、その地の民の前に、あなたを堅き城、鉄の柱、青銅の城壁とする。
18937 24 1 19 彼らはあなたと戦うが、あなたに勝つことはできない。わたしがあなたと共にいて、あなたを救うからである」と主は言われる。
18938 24 2 1 主の言葉がわたしに臨んで言う、
18939 24 2 2 「行って、エルサレムに住む者の耳に告げよ、主はこう言われる、わたしはあなたの若い時の純情、花嫁の時の愛、荒野なる、種まかぬ地でわたしに従ったことを覚えている。
18940 24 2 3 イスラエルは主のために聖別されたもの、その刈入れの初穂である。すべてこれを食べる者は罪せられ、災にあう」と主は言われる。
18941 24 2 4 ヤコブの家とイスラエルの家のすべてのやからよ、主の言葉を聞け。
18942 24 2 5 主はこう言われる、「あなたがたの先祖は、わたしになんの悪い事があるのを見て、わたしから遠ざかり、むなしいものに従って、むなしくなったのか。
18943 24 2 6 彼らは言わなかった、『われわれをエジプトの地より導き出し、荒野なる、穴の多い荒れた地、かわいた濃い暗黒の地、人の通らない、人の住まない地を通らせた主はどこにおられるか』と。
18944 24 2 7 わたしはあなたがたを導いて豊かな地に入れ、その実と良い物を食べさせた。しかしあなたがたはここにはいって、わたしの地を汚し、わたしの嗣業を憎むべきものとした。
18945 24 2 8 祭司たちは、『主はどこにおられるか』と言わなかった。律法を扱う者たちはわたしを知らず、つかさたちはわたしにそむき、預言者たちはバアルによって預言し、益なき者に従って行った。
18946 24 2 9 それゆえ、わたしはなお、あなたがたと争う、またあなたがたの子孫と争う」と主は言われる。
18947 24 2 10 「あなたがたはクプロの島々に渡ってみよ、また人をケダルにつかわして、このようなことがかつてあったかをつまびらかに、しらべてみよ。
18948 24 2 11 その神を神ではない者に取り替えた国があろうか。ところが、わたしの民はその栄光を益なきものと取り替えた。
18949 24 2 12 天よ、この事を知って驚け、おののけ、いたく恐れよ」と主は言われる。
18950 24 2 13 「それは、わたしの民が二つの悪しき事を行ったからである。すなわち生ける水の源であるわたしを捨てて、自分で水ためを掘った。それは、こわれた水ためで、水を入れておくことのできないものだ。
18951 24 2 14 イスラエルは奴隷であるか、家に生れたしもべであるか。それならなぜ捕われの身となったのか。
18952 24 2 15 ししは彼に向かってほえ、その声を高くあげて、彼の地を荒した。その町々は滅びて住む人もない。
18953 24 2 16 メンピスとタパネスの人々もまた、あなたのかしらの冠を砕いた。
18954 24 2 17 あなたの神、主があなたを道に導かれた時、あなたは主を捨てたので、この事があなたに及んだのではないか。
18955 24 2 18 あなたがナイルの水を飲もうとして、エジプトへ行くのは何のためか。またユフラテの水を飲もうとして、アッスリヤへ行くのは何のためか。
18956 24 2 19 あなたの悪事はあなたを懲しめ、あなたの背信はあなたを責める。あなたが、あなたの神、主を捨てることの悪しくかつ苦いことであるのを見て知るがよい。わたしを恐れることがあなたのうちにないのだ」と万軍の神、主は言われる。
18957 24 2 20 「あなたは久しい以前に自分のくびきを折り、自分のなわめを断ち切って、『わたしは仕えることをしない』と言った。そして、すべての高い丘の上と、すべての青木の下で、遊女のように身をかがめた。
18958 24 2 21 わたしはあなたを、まったく良い種のすぐれたぶどうの木として植えたのに、どうしてあなたは変って、悪い野ぶどうの木となったのか。
18959 24 2 22 たといソーダをもって自ら洗い、また多くの灰汁を用いても、あなたの悪の汚れは、なおわたしの前にある」と主なる神は言われる。
18960 24 2 23 「どうしてあなたは、『わたしは汚れていない、バアルに従わなかった』と言うことができようか。谷の中でのあなたの行いを見るがよい。あなたのしたことを知るがよい。あなたは御しがたい若いらくだであって、その道を行きつもどりつする。
18961 24 2 24 あなたは荒野に慣れた野の雌ろばである、その欲情のために風にあえぐ。その欲情をだれがとどめることができようか。すべてこれを尋ねる者は苦労するにおよばない、その月であればこれに会うことができる。
18962 24 2 25 あなたの足が、はだしにならないように、のどが、かわかないようにせよ。ところが、あなたは言った、『それはだめだ、わたしは異なる国の者を愛して、それに従って行こう』と。
18963 24 2 26 盗びとが捕えられて、はずかしめを受けるように、イスラエルの家は、はずかしめを受ける。彼らはその王も、そのつかさも、その祭司も、その預言者もみなそのとおりである。
18964 24 2 27 彼らは木に向かって、『あなたはわたしの父です』と言い、また石に向かって、『あなたはわたしを生んでくださった』と言う。彼らは背をわたしに向けて、その顔をわたしに向けない。しかし彼らが災にあう時は、『立って、われわれを救いたまえ』と言う。
18965 24 2 28 あなたが自分のために造った神々はどこにいるのか。あなたが災にあう時、もし彼らがあなたを救えるなら、立ってもらうがよい。ユダよ、あなたの神々は、あなたの町の数ほど多いからである。
18966 24 2 29 あなたがたは、なぜわたしと争うのか。あなたがたは皆わたしにそむいている」と主は言われる。
18967 24 2 30 「わたしがあなたがたの子どもたちを打ったのはむだであった。彼らは戒めを受けず、あなたがたのつるぎは、たけりたつししのように、預言者たちを滅ぼした。
18968 24 2 31 あなたがたこの世代の人よ、主の言葉を聞け。わたしはイスラエルにとって、荒野であったであろうか。暗黒の地であったであろうか。それならなぜ、わたしの民は『われわれは自由だ、もはやあなたのところへは行かない』と言うのか。
18969 24 2 32 おとめはその飾り物を忘れることができようか。花嫁はその帯を忘れることができようか。ところが、わたしの民の、わたしを忘れた日は数えがたい。
18970 24 2 33 あなたは恋人を尋ねて、いかにも巧みにその方に足を向ける。それゆえ悪い女さえ、あなたの道を学んだ。
18971 24 2 34 また、あなたの着物のすそには罪のない貧しい人の命の血がついている。あなたは彼らが押し入るのを見たのではない。しかも、すべてこれらの事にもかかわらず、
18972 24 2 35 あなたは言う、『わたしは罪がない。彼の怒りは、決してわたしに臨むことがない』と。あなたが『わたしは罪を犯さなかった』と言うことによって、わたしはあなたをさばく。
18973 24 2 36 あなたはなぜ軽々しくさまよって、その道を変えようとするのか。あなたはアッスリヤに、はずかしめを受けたように、エジプトにもまた、はずかしめを受ける。
18974 24 2 37 あなたはまた両手を頭に置いて、そこから出て来る。主があなたの頼みとする者どもを捨てられたので、あなたは彼らによって栄えることがないからだ。
18975 24 3 1 もし人がその妻を離婚し、女が彼のもとを去って、他人の妻となるなら、その人はふたたび彼女に帰るであろうか。その地は大いに汚れないであろうか。あなたは多くの恋人と姦淫を行った。しかもわたしに帰ろうというのか」と主は言われる。
18976 24 3 2 「目をあげてもろもろの裸の山を見よ、姦淫を行わなかった所がどこにあるか。荒野にいるアラビヤびとがするように、あなたは道のかたわらに座して恋人を待った。あなたは姦淫の悪事をもって、この地を汚した。
18977 24 3 3 それゆえ雨はとどめられ、春の雨は降らなかった。しかもあなたには遊女の額があり、少しも恥じようとはしない。
18978 24 3 4 今あなたは、わたしを呼んで言ったではないか、『わが父よ、あなたはわたしの若い時の友です。
18979 24 3 5 永久に怒られるのですか、終りまで憤られるのですか』と。見よ、あなたはこう言ったけれども、なしうるかぎりのもろもろの悪を行った」。
18980 24 3 6 ヨシヤ王の時、主はまたわたしに言われた、「あなたは、かの背信のイスラエルがしたことを見たか。彼女はすべての高い丘にのぼり、すべての青木の下に行って、そこで姦淫を行った。
18981 24 3 7 わたしは、彼女がこのすべてを行った後、わたしの所に帰るであろうと思ったが、帰ってこなかった。その不信の姉妹ユダはこれを見た。
18982 24 3 8 わたしが背信のイスラエルを、そのすべての姦淫のゆえに、離縁状を与えて出したのをユダは見た。しかもその不信の姉妹ユダは恐れず、自分も行って姦淫を行った。
18983 24 3 9 彼女にとって姦淫は軽いことであったので、石と木とに姦淫を行って、この地を汚した。
18984 24 3 10 このすべての事があっても、なおその不信の姉妹ユダは真心をもってわたしに帰らない、ただ偽っているだけだ」と主は言われる。
18985 24 3 11 主はまたわたしに言われた、「背信のイスラエルは不信のユダよりも自分の罪の少ないことを示した。
18986 24 3 12 あなたは行って北にむかい、この言葉をのべて言うがよい、『主は言われる、背信のイスラエルよ、帰れ。わたしは怒りの顔をあなたがたに向けない、わたしはいつくしみ深い者である。いつまでも怒ることはしないと、主は言われる。
18987 24 3 13 ただあなたは自分の罪を認め、あなたの神、主にそむいてすべての青木の下で異なる神々にあなたの愛を惜しまず与えたこと、わたしの声に聞き従わなかったことを言いあらわせと、主は言われる。
18988 24 3 14 主は言われる、背信の子らよ、帰れ。わたしはあなたがたの夫だからである。町からひとり、氏族からふたりを取って、あなたがたをシオンへ連れて行こう。
18989 24 3 15 わたしは自分の心にかなう牧者たちをあなたがたに与える。彼らは知識と悟りとをもってあなたがたを養う。
18990 24 3 16 主は言われる、あなたがたが地に増して多くなるとき、その日には、人々はかさねて「主の契約の箱」と言わず、これを思い出さず、これを覚えず、これを尋ねず、これを作らない。
18991 24 3 17 そのときエルサレムは主のみ位ととなえられ、万国の民はここに集まる。すなわち主の名のもとにエルサレムに集まり、かさねて、かたくなに自分の悪い心に従うことはしない。
18992 24 3 18 その日には、ユダの家はイスラエルの家と一緒になり、北の地から出て、わたしがあなたがたの先祖たちに嗣業として与えた地に共に来る。
18993 24 3 19 どのようにして、あなたをわたしの子どもたちのうちに置き、万国のうちで最も美しい嗣業である良い地をあなたに与えようかと、わたしは思っていた。わたしはまた、あなたがわたしを「わが父」と呼び、わたしに従って離れることはないと思っていた。
18994 24 3 20 イスラエルの家よ、背信の妻が夫のもとを去るように、たしかに、あなたがたはわたしにそむいた』と主は言われる」。
18995 24 3 21 裸の山の上に声が聞える、イスラエルの民が悲しみ祈るのである。彼らが曲った道に歩み、その神、主を忘れたからだ。
18996 24 3 22 「背信の子どもたちよ、帰れ。わたしはあなたがたの背信をいやす」。
18997 24 3 23 まことに、もろもろの丘は迷いであり、山の上の騒ぎも同じです。まことに、イスラエルの救はわれわれの神、主にあるのです。
18998 24 3 24 しかし、われわれの幼少の時から、恥ずべきことが、われわれの先祖のほねおって得たもの、すなわちその羊、その牛、およびそのむすこ、娘たちをことごとくのみ尽しました。
18999 24 3 25 われわれは恥の中に伏し、はずかしめにおおわれています。それはわれわれと先祖とが、われわれの幼少の時から今日まで、われわれの神、主に罪を犯し、われわれの神、主の声に従わなかったからです」。
19000 24 4 1 主は言われる、「イスラエルよ、もし、あなたが帰るならば、わたしのもとに帰らなければならない。もし、あなたが憎むべき者をわたしの前から取り除いて、ためらうことなく、
19001 24 4 2 また真実と正義と正直とをもって、『主は生きておられる』と誓うならば、万国の民は彼によって祝福を受け、彼によって誇る」。
19002 24 4 3 主はユダの人々とエルサレムに住む人々にこう言われる、「あなたがたの新田を耕せ、いばらの中に種をまくな。
19003 24 4 4 ユダの人々とエルサレムに住む人々よ、あなたがたは自ら割礼を行って、主に属するものとなり、自分の心の前の皮を取り去れ。さもないと、あなたがたの悪しき行いのためにわたしの怒りが火のように発して燃え、これを消す者はない」。
19004 24 4 5 ユダに告げ、エルサレムに示して言え、「国中にラッパを吹き、大声に呼ばわって言え、『集まれ、われわれは堅固な町々へ行こう』と。
19005 24 4 6 シオンの方を示す旗を立てよ。避難せよ、とどまってはならない、わたしが北から災と大いなる破滅をこさせるからだ。
19006 24 4 7 ししはその森から出てのぼり、国々を滅ぼす者は進んできた。彼はあなたの国を荒そうとして、すでにその所から出てきた。あなたの町々は滅ぼされて、住む者もなくなる。
19007 24 4 8 このために、あなたがたは荒布を身にまとって、悲しみ嘆け。主の激しい怒りが、まだわれわれを離れないからだ」。
19008 24 4 9 主は言われる、「その日、王と君たちとはその心を失い、祭司は驚き、預言者は怪しむ」。
19009 24 4 10 そこでわたしは言った、「ああ主なる神よ、まことにあなたはこの民とエルサレムとをまったく欺かれました。『あなたがたは安らかになる』と言われましたが、つるぎが命にまでも及びました」。
19010 24 4 11 その時この民とエルサレムとはこう告げられる、「熱い風が荒野の裸の山からわたしの民の娘のほうに吹いてくる。これはあおぎ分けるためではなく、清めるためでもない。
19011 24 4 12 これよりもなお激しい風がわたしのために吹く。いまわたしは彼らにさばきを告げる」。
19012 24 4 13 見よ、彼は雲のように上ってくる。その戦車はつむじ風のよう、その馬はわしの飛ぶよりも速い。ああ、われわれはわざわいだ、われわれは滅ぼされる。
19013 24 4 14 エルサレムよ、あなたの心の悪を洗い清めよ、そうするならば救われる。悪しき思いはいつまであなたのうちにとどまるのか。
19014 24 4 15 ダンから告げる声がある、エフライムの山から災を知らせている。
19015 24 4 16 国々の民に彼の来ることを告げ、またエルサレムに知らせよ。「攻めかこむ者が遠くの国から来て、ユダの町々にむかってその声をあげる。
19016 24 4 17 彼らは畑を守る者のようにこれを攻めかこむ。それはわたしにそむいたからだと、主は言われる。
19017 24 4 18 あなたの道とその行いとが、あなたの身にこれを招いたのだ。これはあなたの悪の結果で、まことに苦く、あなたの心をつらぬく」。
19018 24 4 19 ああ、わがはらわたよ、わがはらわたよ、わたしは苦しみにもだえる。ああ、わが心臓の壁よ、わたしの心臓は、はげしく鼓動する。わたしは沈黙を守ることができない、ラッパの声と、戦いの叫びを聞くからである。
19019 24 4 20 破壊に次ぐに破壊があり、全地は荒され、わたしの天幕はにわかに破られ、わたしの幕はたちまち破られた。
19020 24 4 21 いつまでわたしは旗を見、またラッパの声を聞かなければならないのか。
19021 24 4 22 「わたしの民は愚かであって、わたしを知らない。彼らは愚鈍な子どもらで、悟ることがない。彼らは悪を行うのにさといけれども、善を行うことを知らない」。
19022 24 4 23 わたしは地を見たが、それは形がなく、またむなしかった。天をあおいだが、そこには光がなかった。
19023 24 4 24 わたしは山を見たが、みな震え、もろもろの丘は動いていた。
19024 24 4 25 わたしは見たが、人はひとりもおらず、空の鳥はみな飛び去っていた。
19025 24 4 26 わたしは見たが、豊かな地は荒れ地となり、そのすべての町は、主の前に、その激しい怒りの前に、破壊されていた。
19026 24 4 27 それは主がこう言われたからだ、「全地は荒れ地となる。しかしわたしはことごとくはこれを滅ぼさない。
19027 24 4 28 このために地は悲しみ、上なる天は暗くなる。わたしがすでにこれを言い、これを定めたからだ。わたしは悔いない、またそれをする事をやめない」。
19028 24 4 29 どの町の人も、騎兵と射手の叫びのために逃げて森に入り、岩に上る。町はみな捨てられ、そこに住む人はない。
19029 24 4 30 ああ、荒された女よ、あなたが紅の着物をき、金の飾りで身をよそおい、目を塗って大きくするのは、なんのためか。あなたが美しくしても、むだである。あなたの恋人らはあなたを卑しめ、あなたの命を求めている。
19030 24 4 31 わたしは子を産む女のような声、ういごを産む女の苦しむような声を聞いた。シオンの娘のあえぐ叫びである。両手を伸べて彼女は言う、「わたしはわざわいだ、わたしを殺す者らの前にわたしは気が遠くなる」と。
19031 24 5 1 エルサレムのちまたを行きめぐり、見て、知るがよい。その広場を尋ねて、公平を行い、真実を求める者が、ひとりでもあるか捜してみよ。あれば、わたしはエルサレムをゆるす。
19032 24 5 2 彼らは、「主は生きておられる」と言うけれども、実は、偽って誓うのだ。
19033 24 5 3 主よ、あなたの目は、真実を顧みられるではありませんか。あなたが彼らを打たれても、痛みを覚えず、彼らを滅ぼされても、懲しめを受けることを拒み、その顔を岩よりも堅くして、悔い改めることを拒みました。
19034 24 5 4 それで、わたしは言った、「これらはただ貧しい愚かな人々で、主の道と、神のおきてを知りません。
19035 24 5 5 わたしは偉い人たちの所へ行って、彼らに語ります。彼らは主の道を知り、神のおきてを知っています」。ところが、彼らも皆おなじように、くびきを折り、なわめを断っていた。
19036 24 5 6 それゆえ林から、ししが出てきて彼らを殺し、荒野から、おおかみが出てきて彼らを滅ぼす。ひょうは彼らの町々をねらっている。そこから出る者はみな裂かれる。彼らの罪が多く、その背信がはなはだしいからである。
19037 24 5 7 「わたしはどうしてあなたを、ゆるすことができようか。あなたの子どもらは、わたしを捨てさり、神でもないものをさして誓った。わたしが彼らを満ち足らせた時、彼らは姦淫を行い、遊女の家に群れ集まった。
19038 24 5 8 彼らは肥え太った丈夫な雄馬のように、おのおの、いなないて隣の妻を慕う。
19039 24 5 9 わたしはこれらの事のために彼らを罰しないでいられようか。このような国民にあだを返さないであろうか」と主は言われる。
19040 24 5 10 「あなたがたはユダのぶどうの並み木の間を、のぼって行って、滅ぼせ、ただ、ことごとく滅ぼしてはならない。その枝を切り除け、主のものではないからである。
19041 24 5 11 イスラエルの家とユダの家とはわたしにまったく不信であった」と主は言われる。
19042 24 5 12 「彼らは主について偽り語って言った、『主は何事もなされない、災はわれわれに来ない、またつるぎや、ききんを見ることはない。
19043 24 5 13 預言者らは風となり、彼らのうちに言葉はない。彼らはこのようになる』と」。
19044 24 5 14 それゆえ万軍の神、主はこう言われる、「彼らがこの言葉を語ったので、見よ、わたしはあなたの口にあるわたしの言葉を火とし、この民をたきぎとする。火は彼らを焼き尽す」。
19045 24 5 15 主は言われる、「イスラエルの家よ、見よ、わたしは遠い国の民をあなたがたのところに攻めこさせる。その国は長く続く国、古い国で、あなたがたはその国の言葉を知らず、人々の語るのを悟ることもできない。
19046 24 5 16 その箙は開いた墓のようであり、彼らはみな勇士である。
19047 24 5 17 彼らはあなたが刈り入れた物と、あなたの糧食とを食い尽し、あなたのむすこ娘を食い尽し、あなたの羊と牛を食い尽し、あなたのぶどうの木といちじくの木を食い尽し、またつるぎをもって、あなたが頼みとする堅固な町々を滅ぼす」。
19048 24 5 18 主は言われる、「しかしその時でも、わたしはことごとくはあなたを滅ぼさない。
19049 24 5 19 あなたの民が、『どうしてわれわれの神、主はこれらのすべての事をわれわれになされたのか』と言うならば、あなたは彼らに答えなければならない、『あなたがたがわたしを捨てて、自分の地で異なる神々に仕えたように、あなたがたは自分のものでない地で異邦の人に仕えるようになる』と」。
19050 24 5 20 これをヤコブの家にのべ、またユダに示して言え、
19051 24 5 21 「愚かで、悟りもなく、目があっても見えず、耳があっても聞えない民よ、これを聞け。
19052 24 5 22 主は言われる、あなたがたはわたしを恐れないのか、わたしの前におののかないのか。わたしは砂を置いて海の境とし、これを永遠の限界として、越えることができないようにした。波はさかまいても、勝つことはできない、鳴りわたっても、これを越えることはできない。
19053 24 5 23 ところが、この民には強情な、そむく心があり、彼らはわき道にそれて、去ってしまった。
19054 24 5 24 彼らは『われわれに雨を与え、秋の雨と春の雨を時にしたがって降らせ、われわれのために刈入れの時を定められたわれわれの神、主を恐れよう』とその心のうちに言わないのだ。
19055 24 5 25 あなたがたのとがは、これらの事をしりぞけ、あなたがたの罪は、良い物があなたがたに来るのをさまたげた。
19056 24 5 26 わが民のうちには悪い者があって、鳥をとる人のように身をかがめてうかがい、わなを置いて人を捕える。
19057 24 5 27 かごに鳥が満ちているように、彼らの家は不義の宝で満ちている。それゆえ、彼らは大いなる者、裕福な者となり、
19058 24 5 28 肥えて、つやがあり、その悪しき行いには際限がない。彼らは公正に、みなしごの訴えをさばいて、それを助けようとはせず、また貧しい人の訴えをさばかない。
19059 24 5 29 主は言われる、わたしはこのような事のために、彼らを罰しないであろうか。わたしはこのような民に、あだを返さないであろうか」。
19060 24 5 30 驚くべきこと、恐るべきことがこの地に起っている。
19061 24 5 31 預言者は偽って預言し、祭司は自分の手によって治め、わが民はこのようにすることを愛している。しかしあなたがたはその終りにはどうするつもりか。
19062 24 6 1 ベニヤミンの人々よ、エルサレムの中から避難せよ。テコアでラッパを吹き、ベテハケレムに合図の火をあげよ。北から災が臨み、大いなる滅びが来るからである。
19063 24 6 2 わたしは美しい、たおやかなシオンの娘を滅ぼす。
19064 24 6 3 牧者たちは、その群れをひきいて来て、彼女を攻め、彼女の周囲に天幕を張る。群れはおのおのその所で草を食う。
19065 24 6 4 「戦いを始め、彼女を攻めよ。立て、われわれは真昼に攻撃しよう」。「わざわいなるかな、日ははや傾き、夕日の影は長くなった」。
19066 24 6 5 「立て、われわれは夜の間に攻撃しよう、そして彼女のもろもろの宮殿を破壊しよう」。
19067 24 6 6 万軍の主はこう言われる、「あなたがたは彼女の木を切り倒し、エルサレムにむかって塁を築け。これは罰すべき町である、そのうちにはただ圧制だけがある。
19068 24 6 7 井戸に新しい水がわくように彼女はその悪を常にあらたに流す。そのうちには暴虐と破滅とが聞える。わたしの前に病と傷とが絶えない。
19069 24 6 8 エルサレムよ、戒めを受けいれよ。さもないと、わたしはあなたから離れ、あなたを荒れ地とし、住む人のない地とする」。
19070 24 6 9 万軍の主はこう言われる、「ぶどうの残りを摘みとるように、イスラエルの残りの民をのこらず摘み取れ。ぶどうを摘みとる人のように、あなたの手をふたたびその枝に伸ばせ」。
19071 24 6 10 わたしはだれに語り、だれを戒めて、聞かせようか。見よ、彼らの耳は閉ざされて、聞くことができない。見よ、彼らは主の言葉をあざけり、それを喜ばない。
19072 24 6 11 それゆえ、わたしの身には主の怒りが満ち、それを忍ぶのに、うみつかれている。「それをちまたにいる子供らと、集まっている若い人々とに漏らせ。夫も妻も、老いた人も、年のひじょうに進んだ人も捕えられ、
19073 24 6 12 彼らの家と畑と妻とは共に他人に渡る。わたしが手を伸ばして、この地に住む者を撃つからである」と主は言われる。
19074 24 6 13 「それは彼らが、小さい者から大きい者まで、みな不正な利をむさぼり、また預言者から祭司にいたるまで、みな偽りを行っているからだ。
19075 24 6 14 彼らは、手軽にわたしの民の傷をいやし、平安がないのに『平安、平安』と言っている。
19076 24 6 15 彼らは憎むべきことをして、恥じたであろうか。すこしも恥ずかしいとは思わず、また恥じることを知らなかった。それゆえ彼らは倒れる者と共に倒れる。わたしが彼らを罰するとき、彼らは倒れる」と主は言われる。
19077 24 6 16 主はこう言われる、「あなたがたはわかれ道に立って、よく見、いにしえの道につき、良い道がどれかを尋ねて、その道に歩み、そしてあなたがたの魂のために、安息を得よ。しかし彼らは答えて、『われわれはその道に歩まない』と言った。
19078 24 6 17 わたしはあなたがたの上に見張びとを立て、『ラッパの音に気をつけよ』と言った。しかし彼らは答えて、『われわれは気をつけることはしない』と言った。
19079 24 6 18 それゆえ国々の民よ、聞け。会衆よ、彼らにどのようなことが起るかを知れ。
19080 24 6 19 地よ、聞け。見よ、わたしはこの民に災をくだす。それは彼らのたくらみの実である。彼らがわたしの言葉に気をつけず、わたしのおきてを捨てたからである。
19081 24 6 20 シバから、わたしの所に乳香が来、遠い国から、菖蒲が来るのはなんのためか。あなたがたの燔祭はわたしには喜ばしくなく、あなたがたの犠牲もうれしくはない。
19082 24 6 21 それゆえ主はこう言われる、『見よ、わたしはこの民の前につまずく石を置く、人々は父も子も共にそれにつまずき、隣り人もその友も滅びる』」。
19083 24 6 22 主はこう言われる、「見よ、民が北の国から来る、大いなる国民が地の果から興る。
19084 24 6 23 彼らは弓とやりをとる。彼らは残忍で、あわれみがなく、海のような響きを立てる。シオンの娘よ、彼らは馬に乗り、いくさ人のように身をよろって、あなたを攻める」。
19085 24 6 24 われわれはそのうわさを聞いて、手は弱り、子を産む女に臨むような悩みと苦しみとに捕えられた。
19086 24 6 25 畑に出てはならない、また道を歩いてはならない。敵はつるぎを持ち、恐れが四方にあるからだ。
19087 24 6 26 わが民の娘よ、荒布を身にまとい、灰の中にまろび、ひとり子を失った時のように、悲しみ、いたく嘆け。滅ぼす者が、にわかにわれわれを襲うからだ。
19088 24 6 27 「わたしはあなたを民のうちに立てて、ためす者、試みる者とした。あなたが彼らの道を知り、それをためすことができるようにするためである。
19089 24 6 28 彼らはみな、強情な反逆者であって、歩きまわって人をそしる。彼らは青銅や鉄であって、みな卑しいことを行う。
19090 24 6 29 ふいごは激しく吹き、鉛は火にとけて尽き、精錬はいたずらに進む。悪しき者がまだ除かれないからである。
19091 24 6 30 主が彼らを捨てられたので、彼らは捨てられた銀と呼ばれる」。
19092 24 7 1 主からエレミヤに臨んだ言葉はこうである。
19093 24 7 2 「主の家の門に立ち、その所で、この言葉をのべて言え、主を拝むために、この門をはいるユダのすべての人よ、主の言葉を聞け。
19094 24 7 3 万軍の主、イスラエルの神はこう言われる、あなたがたの道とあなたがたの行いを改めるならば、わたしはあなたがたをこの所に住まわせる。
19095 24 7 4 あなたがたは、『これは主の神殿だ、主の神殿だ、主の神殿だ』という偽りの言葉を頼みとしてはならない。
19096 24 7 5 もしあなたがたが、まことに、その道と行いを改めて、互に公正を行い、
19097 24 7 6 寄留の他国人と、みなしごと、やもめをしえたげることなく、罪のない人の血をこの所に流すことなく、また、ほかの神々に従って自ら害をまねくことをしないならば、
19098 24 7 7 わたしはあなたがたを、わたしが昔あなたがたの先祖に与えたこの地に永遠に住まわせる。
19099 24 7 8 見よ、あなたがたは偽りの言葉を頼みとしているが、それはむだである。
19100 24 7 9 あなたがたは盗み、殺し、姦淫し、偽って誓い、バアルに香をたき、あなたがたが以前には知らなかった他の神々に従いながら、
19101 24 7 10 わたしの名をもって、となえられるこの家に来てわたしの前に立ち、『われわれは救われた』と言い、しかもすべてこれら憎むべきことを行うのは、どうしたことか。
19102 24 7 11 わたしの名をもって、となえられるこの家が、あなたがたの目には盗賊の巣と見えるのか。わたし自身、そう見たと主は言われる。
19103 24 7 12 わたしが初めにわたしの名を置いた場所シロへ行き、わが民イスラエルの悪のために、わたしがその場所に対して行ったことを見よ。
19104 24 7 13 主は言われる、今あなたがたはこれらのすべてのことを行っている。またわたしはあなたがたに、しきりに語ったけれども、あなたがたは聞かず、あなたがたを呼んだけれども答えなかった。
19105 24 7 14 それゆえわたしはシロに対して行ったように、わたしの名をもって、となえられるこの家にも行う。すなわちあなたがたが頼みとする所、わたしがあなたがたと、あなたがたの先祖に与えたこの所に行う。
19106 24 7 15 そしてわたしは、あなたがたのすべての兄弟、すなわちエフライムのすべての子孫を捨てたように、わたしの前からあなたがたをも捨てる。
19107 24 7 16 あなたはこの民のために祈ってはならない。彼らのために嘆き、祈ってはならない。またわたしに、とりなしをしてはならない。わたしはあなたの求めを聞かない。
19108 24 7 17 あなたは彼らがユダの町々と、エルサレムのちまたでしていることを見ないのか。
19109 24 7 18 子どもらは、たきぎを集め、父たちは火をたき、女は粉をこね、パンを造ってこれを天后に供える。また彼らは他の神々の前に酒を注いで、わたしを怒らせる。
19110 24 7 19 主は言われる、彼らが怒らせるのはわたしなのか。自分たち自身ではないのか。そして自らうろたえている。
19111 24 7 20 それゆえ主なる神はこう言われる、見よ、わたしの怒りと憤りを、この所と、人と獣と、畑の木と、地の産物とに注ぐ。怒りは燃えて消えることがない」。
19112 24 7 21 万軍の主、イスラエルの神はこう言われる、「あなたがたの犠牲に燔祭の物を合わせて肉を食べるがよい。
19113 24 7 22 それはあなたがたの先祖をエジプトの地から導き出した日に、わたしは燔祭と犠牲とについて彼らに語ったこともなく、また命じたこともないからである。
19114 24 7 23 ただわたしはこの戒めを彼らに与えて言った、『わたしの声に聞きしたがいなさい。そうすれば、わたしはあなたがたの神となり、あなたがたはわたしの民となる。わたしがあなたがたに命じるすべての道を歩んで幸を得なさい』と。
19115 24 7 24 しかし彼らは聞き従わず、耳を傾けず、自分の悪い心の計りごとと強情にしたがって歩み、悪くなるばかりで、よくはならなかった。
19116 24 7 25 あなたがたの先祖がエジプトの地を出た日から今日まで、わたしはわたしのしもべである預言者たちを日々彼らにつかわした。
19117 24 7 26 しかし彼らはわたしに聞かず、耳を傾けないで強情になり、先祖たちにもまさって悪を行った。
19118 24 7 27 たといあなたが彼らにこのすべての言葉を語っても彼らは聞かない。また彼らを呼んでもあなたに答えない。
19119 24 7 28 それゆえ、あなたはこう彼らに言わなければならない、『これはその神、主の声に聞き従わず、その戒めを受けいれなかった国民である。真実はうせ、彼らの口から絶えた。
19120 24 7 29 あなたの髪の毛を切って捨てよ、裸の山の上に嘆きの声をあげよ。主が、お怒りになっている世の人を退け捨てられたからだ』。
19121 24 7 30 主は言われる、ユダの民はわたしの前に悪を行い、わたしの名をもってとなえられる家に、憎むべき者を置いてそこを汚した。
19122 24 7 31 またベンヒンノムの谷にあるトペテの高き所を築いて、むすこ娘を火に焼いた。わたしはそれを命じたことはなく、またそのようなことを考えたこともなかった。
19123 24 7 32 主は言われる、それゆえに見よ、その所をトペテ、またはベンヒンノムの谷と呼ばないで、ほふりの谷と呼ぶ日が来る。それはほかに場所がないので、トペテに葬るからである。
19124 24 7 33 この民の死体は空の鳥と地の獣の食物となり、これを追い払う者もない。
19125 24 7 34 そのときわたしはユダの町々とエルサレムのちまたに、喜びの声、楽しみの声、花婿の声、花嫁の声を絶やす。この地は荒れ果てるからである。
19126 24 8 1 主は言われる、その時ユダの王たちの骨と、そのつかさたちの骨と、祭司たちの骨と、預言者たちの骨と、エルサレムに住む人々の骨は墓より掘り出されて、
19127 24 8 2 彼らの愛し、仕え、従い、求め、また拝んだ、日と月と天の衆群の前にさらされる。その骨は集める者も葬る者もなく、地のおもてに糞土のようになる。
19128 24 8 3 この悪しき民のうちの残っている残りの者はみな、わたしが追いやった場所で、生きることよりも死ぬことを願うようになると、万軍の主は言われる。
19129 24 8 4 あなたは彼らに言わなければならない。主はこう仰せられる、人は倒れたならば、また起きあがらないであろうか。離れていったならば、帰ってこないであろうか。
19130 24 8 5 それにどうしてこの民は、常にそむいて離れていくのか。彼らは偽りを固くとらえて、帰ってくることを拒んでいる。
19131 24 8 6 わたしは気をつけて聞いたが、彼らは正しくは語らなかった。その悪を悔いて、『わたしのした事は何か』という者はひとりもない。彼らはみな戦場に、はせ入る馬のように、自分のすきな道に向かう。
19132 24 8 7 空のこうのとりでもその時を知り、山ばとと、つばめと、つるはその来る時を守る。しかしわが民は主のおきてを知らない。
19133 24 8 8 どうしてあなたがたは、『われわれには知恵がある、主のおきてがある』と言うことができようか。見よ、まことに書記の偽りの筆がこれを偽りにしたのだ。
19134 24 8 9 知恵ある者は、はずかしめられ、あわてふためき、捕えられる。見よ、彼らは主の言葉を捨てた、彼らになんの知恵があろうか。
19135 24 8 10 それゆえ、わたしは彼らの妻を他人に与え、その畑を征服者に与える。それは彼らが小さい者から大きい者にいたるまで、みな不正な利をむさぼり、預言者から祭司にいたるまで、みな偽りを行っているからである。
19136 24 8 11 彼らは手軽に、わたしの民の傷をいやし、平安がないのに、『平安、平安』と言っている。
19137 24 8 12 彼らは憎むべきことをして、恥じたであろうか。すこしも恥ずかしいとは思わず、また恥じることを知らなかった。それゆえ彼らは倒れる者と共に倒れる。わたしが彼らを罰するとき、彼らは倒れると、主は言われる。
19138 24 8 13 主は言われる、わたしが集めようと思うとき、ぶどうの木にぶどうはなく、いちじくの木に、いちじくはなく、葉さえ、しぼんでいる。わたしが彼らに与えたものも、彼らを離れて、うせ去った」。
19139 24 8 14 どうしてわれわれはなす事もなく座しているのか。集まって、堅固な町にはいり、そこでわれわれは滅びよう。われわれが主に罪を犯したので、われわれの神、主がわれわれを滅ぼそうとして、毒の水を飲ませられるのだ。
19140 24 8 15 われわれは平安を望んだが、良い事はこなかった。いやされる時を望んだが、かえって恐怖が来た。
19141 24 8 16 「彼らの馬のいななきはダンから聞えてくる。彼らの強い馬の声によって全地は震う。彼らは来て、この地と、ここにあるすべてのもの、町と、そのうちに住む者とを食い滅ぼす。
19142 24 8 17 見よ、魔法をもってならすことのできない、へびや、まむしをあなたがたのうちにつかわす。それはあなたがたをかむ」と主は言われる。
19143 24 8 18 わが嘆きはいやしがたく、わが心はうちに悩む。
19144 24 8 19 聞け、地の全面から、わが民の娘の声があがるのを。「主はシオンにおられないのか、シオンの王はそのうちにおられないのか」。「なぜ彼らはその彫像と、異邦の偶像とをもって、わたしを怒らせたのか」。
19145 24 8 20 「刈入れの時は過ぎ、夏もはや終った、しかしわれわれはまだ救われない」。
19146 24 8 21 わが民の娘の傷によって、わが心は痛む。わたしは嘆き、うろたえる。
19147 24 8 22 ギレアデに乳香があるではないか。その所に医者がいるではないか。それにどうしてわが民の娘はいやされることがないのか。
19148 24 9 1 ああ、わたしの頭が水となり、わたしの目が涙の泉となればよいのに。そうすれば、わたしは民の娘の殺された者のために昼も夜も嘆くことができる。
19149 24 9 2 ああ、わたしが荒野に、隊商の宿を得ることができればよいのに。そうすれば、わたしは民を離れて去って行くことができる。彼らはみな姦淫する者、不信のともがらだからである。
19150 24 9 3 彼らは弓をひくように、その舌を曲げる。真実ではなく、偽りがこの地に強くなった。彼らは悪より悪に進み、またわたしを知らないと、主は言われる。
19151 24 9 4 あなたがたはおのおの隣り人に気をつけよ。どの兄弟をも信じてはならない。兄弟はみな、押しのける者であり、隣り人はみな、ののしって歩く者だからである。
19152 24 9 5 人はみな、その隣り人を欺き、真実を言う者はない。彼らは自分の舌に偽りを言うことを教え、悪を行い、疲れて悔い改めるいとまもなく、
19153 24 9 6 しえたげに、しえたげを積み重ね、偽りに偽りを積み重ね、わたしを知ることを拒んでいると、主は言われる。
19154 24 9 7 それゆえ万軍の主はこう言われる、「見よ、わたしは彼らを溶かし、試みる。このほか、わが民をどうすることができよう。
19155 24 9 8 彼らの舌は殺す矢のようだ、それは偽りを言う。その口ではおのおの隣り人におだやかに語るが、その心では彼を待ち伏せる計りごとを立てる。
19156 24 9 9 主は言われる、これらのことのために、わたしが彼らを罰しないだろうか。わたしがこのような民にあだを返さないだろうか。
19157 24 9 10 山のために泣き叫び、野の牧場のために悲しめ。これらは荒れすたれて、通り過ぎる人もない。ここには牛、羊の鳴く声も聞えず、空の鳥も獣も皆逃げ去った。
19158 24 9 11 わたしはエルサレムを荒塚とし、山犬の巣とする。またユダの町々を荒して、住む人もない所とする」。
19159 24 9 12 知恵があって、これを悟ることのできる人はだれか。主の口の言葉をうけて、それを示す人はだれか。この地が滅ぼされて荒野のようになり、通り過ぎる人もなくなったのはどういうわけか。
19160 24 9 13 主は言われる、「それは彼らの前にわたしが立てたおきてを彼らが捨てて、わたしの声に聞き従わず、そのとおりに歩かなかったからである。
19161 24 9 14 彼らは強情に自分の心に従い、また先祖の教えたようにバアルに従った。
19162 24 9 15 それゆえ万軍の主、イスラエルの神はこう言われる、見よ、わたしはこの民に、にがよもぎを食べさせ、毒の水を飲ませ、
19163 24 9 16 彼らも、その先祖たちも知らなかった国びとのうちに彼らを散らし、また彼らを滅ぼし尽すまで、そのうしろに、つるぎをつかわす」。
19164 24 9 17 万軍の主はこう言われる、「よく考えて、泣き女を呼べ。また人をつかわして巧みな女を招け。
19165 24 9 18 彼らに急いでこさせ、われわれのために泣き悲しませて、われわれの目に涙をこぼさせ、まぶたから水をあふれさせよ。
19166 24 9 19 シオンから悲しみの声が聞える。それは言う、『ああ、われわれは滅ぼされ、いたく、はずかしめられている。われわれはその地を去り、彼らがわれわれのすみかをこわしたからだ』」。
19167 24 9 20 女たちよ、主の言葉を聞け。あなたがたの耳に、その口の言葉をいれよ。あなたがたの娘に悲しみの歌を教え、おのおのその隣り人に哀悼の歌を教えよ。
19168 24 9 21 死がわれわれの窓に上って来、われわれの邸宅の中にはいり、ちまたにいる子どもらを絶やし、広場にいる若い人たちを殺そうとしているからだ。
19169 24 9 22 あなたはこう言いなさい、「主は言われる、『人の死体が糞土のように、野に倒れているようになり、また刈入れする人のうしろに残って、だれも集めることをしない束のようになる』」。
19170 24 9 23 主はこう言われる、「知恵ある人はその知恵を誇ってはならない。力ある人はその力を誇ってはならない。富める者はその富を誇ってはならない。
19171 24 9 24 誇る者はこれを誇とせよ。すなわち、さとくあって、わたしを知っていること、わたしが主であって、地に、いつくしみと公平と正義を行っている者であることを知ることがそれである。わたしはこれらの事を喜ぶと、主は言われる」。
19172 24 9 25 主は言われる、「見よ、このような日が来る。その日には、割礼をうけても、心に割礼をうけていないすべての人をわたしは罰する。
19173 24 9 26 エジプト、ユダ、エドム、アンモンの人々、モアブ、および野にいて、髪の毛のすみずみをそる人々はそれである。これらの国びとはみな割礼をうけていない者であり、イスラエルの全家もみな心に割礼をうけていない者である」。
19174 24 10 1 イスラエルの家よ、主のあなたがたに語られる言葉を聞け。
19175 24 10 2 主はこう言われる、「異邦の人の道に習ってはならない。また異邦の人が天に現れるしるしを恐れても、あなたがたはそれを恐れてはならない。
19176 24 10 3 異邦の民のならわしはむなしいからだ。彼らの崇拝するものは、林から切りだした木で、木工の手で、おのをもって造ったものだ。
19177 24 10 4 人々は銀や金をもって、それを飾り、くぎと鎚をもって動かないようにそれをとめる。
19178 24 10 5 その偶像は、きゅうり畑のかかしのようで、ものを言うことができない。歩くこともできないから、人に運んでもらわなければならない。それを恐れるに及ばない。それは災をくだすことができず、また幸をくだす力もないからだ」。
19179 24 10 6 主よ、あなたに並びうる者はありません。あなたは大いなる者であり、あなたの名もその力のために大いなるものであります。
19180 24 10 7 万国の王であるあなたを、恐れない者がありましょうか。あなたを恐れるのは当然のことであります。万国のすべての知恵ある者のうちにも、その国々のうちにも、あなたに並びうる者はありません。
19181 24 10 8 彼らは皆、愚かで鈍く、偶像の教は、ただ木にすぎない。
19182 24 10 9 銀ぱくはタルシシから渡来し、金はウパズから携えてくる。これらは工人と金細工人の工作である。彼らの着物はすみれ色と紫色である。これらはみな巧みな細工人の作った物である。
19183 24 10 10 しかし主はまことの神である。生きた神であり、永遠の王である。その怒りによって地は震いうごき、万国はその憤りに当ることができない。
19184 24 10 11 あなたがたは彼らに、こう言わなければならない、「天地を造らなかった神々は地の上、天の下から滅び去る」と。
19185 24 10 12 主はその力をもって地を造り、その知恵をもって世界を建て、その悟りをもって天をのべられた。
19186 24 10 13 彼が声を出されると、天に多くの水のざわめきがあり、また地の果から霧を立ちあがらせられる。彼は雨のために、いなびかりをおこし、その倉から風を取り出される。
19187 24 10 14 すべての人は愚かで知恵がなく、すべての金細工人はその造った偶像のために恥をこうむる。その偶像は偽り物で、そのうちに息がないからだ。
19188 24 10 15 これらは、むなしいもので、迷いのわざである。罰せられる時に滅びるものである。
19189 24 10 16 ヤコブの分である彼はこのようなものではない。彼は万物の造り主だからである。イスラエルは彼の嗣業としての部族である。彼の名を万軍の主という。
19190 24 10 17 囲みの中におる者よ、あなたの包を地から取り上げよ。
19191 24 10 18 主がこう言われるからだ、「見よ、わたしはこのたび、この地に住む者を投げ捨てる。かつ彼らをせめなやまして、思い知らせる」。
19192 24 10 19 わたしはいたでをうけた、ああ、わざわいなるかな、わたしの傷は重い。しかしわたしは言った、「まことに、これは悩みである。わたしはこれを忍ばなければならない」と。
19193 24 10 20 わたしの天幕は破れ、綱はことごとく切れ、子どもたちはわたしを捨てて行って、いなくなった。もはやわたしの天幕を張る者はなく、幕を掛ける者もない。
19194 24 10 21 牧者は愚かであって、主に問うことをしないからである。それゆえ彼らは栄えることもなく、その群れはみな散り去っている。
19195 24 10 22 聞けよ、うわさのあるのを。見よ、北の国から大いなる騒ぎが来る。これはユダの町々を荒して山犬の巣とする。
19196 24 10 23 主よ、わたしは知っています、人の道は自身によるのではなく、歩む人が、その歩みを自分で決めることのできないことを。
19197 24 10 24 主よ、わたしを懲らしてください。正しい道にしたがって、怒らずに懲らしてください。さもないと、わたしは無に帰してしまうでしょう。
19198 24 10 25 あなたを知らない国民と、あなたの名をとなえない人々にあなたの怒りを注いでください。彼らはヤコブを食い尽しこれを食い尽して滅ぼし、そのすみかを荒したからです。
19199 24 11 1 主からエレミヤに臨んだ言葉は言う、
19200 24 11 2 「この契約の言葉を聞き、ユダの人々とエルサレムに住む者に告げよ。
19201 24 11 3 彼らに言え、イスラエルの神、主はこう仰せられる、この契約の言葉に従わない人は、のろわれる。
19202 24 11 4 この契約は、わたしがあなたがたの先祖をエジプトの地、鉄のかまどの中から導き出した時に、彼らに命じたところのものである。すなわち、その時わたしは彼らに言った、わたしの声を聞き、あなたがたに命じるすべてのことを行うならば、あなたがたはわたしの民となり、わたしはあなたがたの神となる。
19203 24 11 5 そして、わたしがあなたがたの先祖に、乳と蜜との流れる地を与えると誓ったことを、なし遂げると。すなわち今日のとおりである」。その時わたしは、「主よ、仰せのとおりです」と答えた。
19204 24 11 6 主はわたしに言われた、「このすべての言葉を、ユダの町々と、エルサレムのちまたに告げ示し、この契約の言葉を聞き、これを行え、と言いなさい。
19205 24 11 7 わたしは、あなたがたの先祖をエジプトの地から導き出した時から今日にいたるまで、おごそかに彼らを戒め、絶えず戒めて、わたしの声に聞き従うようにと言った。
19206 24 11 8 しかし彼らは従わず、その耳を傾けず、おのおの自分の悪い強情な心に従って歩んだ。それゆえ、わたしはこの契約の言葉をもって彼らを責めた。これはわたしが彼らに行えと命じたが、行わなかったものである」。
19207 24 11 9 主はまたわたしに言われた、「ユダの人々とエルサレムに住む者のうちに反逆の事がある。
19208 24 11 10 彼らは、わたしの言葉を聞くことを拒んだその先祖たちの罪に立ち返り、またほかの神々に従ってそれに仕えた。イスラエルの家とユダの家とは、わたしがその先祖たちと結んだ契約を破った。
19209 24 11 11 それゆえ主はこう言われる、見よ、わたしは災を彼らの上に下す。彼らはそれを免れることはできない。彼らがわたしを呼んでも、わたしは聞かない。
19210 24 11 12 ユダの町々とエルサレムに住む者は、行って、自分たちがそれに香をたいている神々に呼び求めるが、これらは、彼らの災の時にも決して彼らを救うことはできない。
19211 24 11 13 ユダよ、あなたの神々は、あなたの町の数ほど多くなった。またあなたがたはエルサレムのちまたの数ほどの祭壇を恥ずべき者のために立てた。すなわちバアルに香をたくための祭壇である。
19212 24 11 14 それゆえ、この民のために祈ってはならない。また彼らのために泣き、あるいは祈り求めてはならない。彼らがその災の時に、わたしに呼ばわっても、わたしは彼らに聞くことをしないからだ。
19213 24 11 15 わが愛する者は、わたしの家で何をするのか。すでにこれは悪事を行った。誓願と犠牲の肉とがあなたに災を免れさせることができるであろうか。それであなたは喜ぶことができるであろうか。
19214 24 11 16 主はあなたを、かつては『良い実のなる美しい青々としたオリブの木』と呼ばれたが、激しい暴風のとどろきと共に、主はそれに火をかけ、その枝を焼き払われるのである。
19215 24 11 17 あなたを植えた万軍の主は、あなたに向かって災を言い渡された。これはイスラエルの家とユダの家とが悪を行い、バアルに香をたいて、わたしを怒らせたからである」。
19216 24 11 18 主が知らせてくださったので、わたしはそれを知った。その時、あなたは彼らの悪しきわざをわたしに示された。
19217 24 11 19 しかしわたしは、ほふられに行く、おとなしい小羊のようで、彼らがわたしを害しようと、計りごとをめぐらしているのを知らなかった。彼らは言う、「さあ、木とその実を共に滅ぼそう。生ける者の地から彼を絶って、その名を人に忘れさせよう」。
19218 24 11 20 正しいさばきをし、人の心と思いを探られる万軍の主よ、わたしは自分の訴えをあなたにお任せしました。あなたが彼らにあだをかえされるのを見させてください。
19219 24 11 21 それゆえ主はアナトテの人々についてこう言われる、彼らはあなたの命を取ろうと求めて言う、「主の名によって預言してはならない。それをするならば、あなたはわれわれの手にかかって死ぬであろう」。
19220 24 11 22 それで万軍の主はこう言われる、「見よ、わたしは彼らを罰する。若い人はつるぎで死に、彼らのむすこ娘は、ききんで死に、
19221 24 11 23 だれも残る者はない。わたしがアナトテの人々に災を下し、彼らを罰する年をこさせるからである」。
19222 24 12 1 主よ、わたしがあなたと論じ争う時、あなたは常に正しい。しかしなお、わたしはあなたの前に、さばきのことを論じてみたい。悪人の道がさかえ、不信実な者がみな繁栄するのはなにゆえですか。
19223 24 12 2 あなたが彼らを植えられたので、彼らは根づき、育って、実を結びます。彼らは口ではあなたに近づきますが、心はあなたから遠ざかっています。
19224 24 12 3 主よ、あなたはわたしを知り、わたしを見、わたしの心があなたに対していかにあるかを試みられます。ほふるために羊を引き出すように、彼らを引き出し、殺す日にそなえて、彼らを残しておいてください。
19225 24 12 4 いつまで、この地は嘆き、どの畑の野菜も枯れていてよいでしょうか。この地に住む者の悪によって、獣と鳥は滅びうせます。人々は言いました、「彼はわれわれの終りを見ることはない」と。
19226 24 12 5 「もしあなたが、徒歩の人と競争して疲れるなら、どうして騎馬の人と競うことができようか。もし安全な地で、あなたが倒れるなら、ヨルダンの密林では、どうするつもりか。
19227 24 12 6 あなたの兄弟たち、あなたの父の家のものさえ、あなたを欺き、大声をあげて、あなたを追っている。彼らが親しげにあなたに語ることがあっても、彼らを信じてはならない」。
19228 24 12 7 「わたしはわが家を離れ、わが嗣業を捨て、わが魂の愛する者を敵の手に渡した。
19229 24 12 8 わたしの嗣業は、わたしにとって林の中のししのようになった。これはわたしに向かってその声をあげる。それゆえわたしはこれを憎む。
19230 24 12 9 わたしの嗣業は、わたしにとって、斑点のある猛禽のようではないか。他の猛禽がこれを囲んでいるではないか。行って、野の獣をみな集め、連れてきてこれを食べさせよ。
19231 24 12 10 多くの牧者たちはわたしのぶどう畑を滅ぼし、わたしの地を踏み荒した。わたしの麗しい地を荒れた野にした。
19232 24 12 11 彼らはこれを荒れ地としてしまった。その荒れ地がわたしに向かって嘆くのだ。全地は荒れ地にされた。しかし、ひとりもこれを心に留める者はない。
19233 24 12 12 滅ぼす者どもが荒野のすべての、はげ山の上にきた。主のつるぎが、地の、この果から、かの果までを滅ぼすのだ。命あるものは安らかであることができない。
19234 24 12 13 彼らは麦をまいて、いばらを刈り取る。苦労してもなんの利益もない。彼らはその収穫を恥じるようになる。主の激しい怒りによってである」。
19235 24 12 14 わたしがわが民イスラエルにつがせた嗣業に手を触れるすべての悪い隣り人について、主はこう言われる、「見よ、わたしは彼らをその地から抜き出し、ユダの家を彼らのうちから抜き出す。
19236 24 12 15 わたしは、彼らを抜き出したのちに、また彼らをあわれんで、それぞれその嗣業に導き返し、おのおのを、その地に帰らせる。
19237 24 12 16 もし彼らがわたしの民の道を学び、わたしの名によって、『主は生きておられる』と言って誓うことが、かつて彼らがわたしの民に教えてバアルをさして誓わせたようになるならば、彼らはわたしの民のうちに建てられる。
19238 24 12 17 しかし耳をかさない民があるときは、わたしはその民を抜き出して滅ぼすと、主は言われる」。
19239 24 13 1 主はわたしにこう言われた、「行って、亜麻布の帯を買い、腰に結べ。水につけてはならない」。
19240 24 13 2 そこで、わたしは主の言葉に従い、帯を買って腰に結んだ。
19241 24 13 3 主の言葉は、再びわたしに臨んで言った、
19242 24 13 4 「あなたが買って腰に結んでいる帯を手に取り、立ってユフラテの川へ行き、その所の岩の裂け目にこれを隠せ」。
19243 24 13 5 わたしは主が命じられたように、行って、これをユフラテの川のほとりに隠した。
19244 24 13 6 多くの日を経てのち、主はわたしに言われた、「立って、ユフラテの川へ行き、あなたに命じて、そこに隠させた帯をその所から取ってきなさい」。
19245 24 13 7 そこでわたしはユフラテの川へ行き、地を掘って、隠した所から帯を取り出したが、その帯はそこなわれて、役に立たなくなっていた。
19246 24 13 8 その時、主の言葉がわたしに臨んだ、
19247 24 13 9 「主はこう仰せられる、これと同じように、わたしはユダの高ぶりとエルサレムの大いなる高ぶりを、破るのである。
19248 24 13 10 この悪しき民はわたしの言葉を聞くことを拒み、自分の心を強情にして歩み、また他の神々に従ってこれに仕え、これを拝んでいる。彼らはこの帯のように、なんの役にも立たなくなる」。
19249 24 13 11 主は言われる、「帯が人の腰に着くように、イスラエルのすべての家とユダのすべての家とをわたしに着かせ、これをわたしの民とし、名とし、誉とし、栄えとしようとした。しかし彼らは聞き従おうともしなかった」。
19250 24 13 12 「あなたはこの言葉を彼らに語らなければならない、『イスラエルの神はこう言われる、酒つぼには、みな酒が満ちる』と。彼らはあなたに言うであろう、『酒つぼに、みな酒が満ちることをわれわれが知らないことがあろうか』と。
19251 24 13 13 その時、あなたは彼らに言わなければならない、『主はこう言われる、見よ、わたしはこの地に住むすべての者と、ダビデの位に座す王たちと、祭司と預言者およびエルサレムに住むすべての者に酔いを満たし、
19252 24 13 14 彼らを互に打ち当てて砕く。父と子をもそのようにすると、主は言われる。わたしは彼らをあわれまず、惜しまず、かわいそうとも思わずに滅ぼす』と」。
19253 24 13 15 耳を傾けて聞け、高ぶってはならない、主がお語りになるからである。
19254 24 13 16 主がまだやみを起されないうちに、またあなたがたの足が薄暗がりの山につまずかないうちに、あなたがたの神、主に栄光を帰せよ。さもないと、あなたがたが光を望んでいる間に、主はそれを暗黒に変え、それを暗やみとされるからである。
19255 24 13 17 もしあなたがたが聞かないならば、わたしの魂はひそかな所で、あなたがたの高ぶりのために悲しむ。また主の群れが、かすめられたために、わたしの目はいたく泣いて、涙を流すのである。
19256 24 13 18 王と太后とに告げよ、「あなたがたは低い座にすわりなさい。麗しい冠はすでにあなたがたの頭から落ちてしまったからです」。
19257 24 13 19 ネゲブの町々は閉ざされて、これを開く人がない。ユダはみな捕え移される、ことごとく捕え移される。
19258 24 13 20 「目をあげて、北の方からくる者を見よ、あなたに賜わった群れ、あなたの麗しい群れはどこにいるのか。
19259 24 13 21 彼らがあなたの親しみ慣れた人たちを、あなたの上に立ててかしらとするとき、あなたは何を言おうとするのか。あなたの苦しみは、子を産む女の苦しみのようでないであろうか。
19260 24 13 22 あなたが心のうちに、『どうしてこのようなことがわたしに起ったのか』というならば、あなたの罪が重いゆえに、あなたの着物のすそはあげられ、はずかしめを受けるのだ。
19261 24 13 23 エチオピヤびとはその皮膚を変えることができようか。ひょうはその斑点を変えることができようか。もしそれができるならば、悪に慣れたあなたがたも、善を行うことができる。
19262 24 13 24 わたしはあなたがたを散らし、野の風に吹き散らされるもみがらのようにする。
19263 24 13 25 主は言われる、これがあなたに授けられた定め、わたしが量ってあなたに与える分である。あなたがわたしを忘れて、偽りを頼みとしたからだ。
19264 24 13 26 わたしはまたあなたの着物のすそを顔まであげて、あなたの恥をあらわす。
19265 24 13 27 わたしはあなたの憎むべき行い、あなたの姦淫と、いななき、野の丘の上で行ったあなたのみだらな行いを見た。エルサレムよ、あなたはわざわいだ、あなたの清められるのはいつのことであろうか」。
19266 24 14 1 ひでりの事についてエレミヤに臨んだ主の言葉。
19267 24 14 2 「ユダは悲しみ、その町々の門は傾き、民は地に座して嘆き、エルサレムの叫びはあがる。
19268 24 14 3 その君たちは、しもべをつかわして水をくませる。彼らが井戸の所にきても、水は見つからず、むなしい器をもって帰り、恥じ、かつ当惑して、その頭をおおう。
19269 24 14 4 地に雨が降らず、土が、かわいて割れたため、農夫は恥じて、その頭をおおう。
19270 24 14 5 野にいる雌じかでさえも子を産んで、これを捨てる。草がないからである。
19271 24 14 6 野ろばは、はげ山の上に立って、山犬のようにあえぎ、草のないために、その目はくらむ。
19272 24 14 7 主よ、われわれの罪がわれわれを訴えて不利な証言をしても、あなたの名のために、事をなしてください。われわれの背信の数は多く、あなたに向かって罪を犯しました。
19273 24 14 8 イスラエルの望みなる主よ、悩みの時の救主よ、なぜ、あなたはこの地に住む異邦の人のようにし、また一夜の宿りのために立ち寄る旅びとのようになさらねばならないのですか。
19274 24 14 9 なぜ、あなたは、うろたえている人のようにし、また人を救いえない勇士のようになさらねばならないのですか。主よ、あなたはわれわれのうちにいらせられます。われわれは、み名によって呼ばれている者です。われわれを見捨てないでください」。
19275 24 14 10 この民について主はこう言われる、「彼らはこのように好んで、さまよい、その足をとどめることをしなかったので、主は彼らを喜ばず、いまそのとがを覚え、その罪を罰するのだ」。
19276 24 14 11 主はわたしに言われた、「この民のために恵みを祈ってはならない。
19277 24 14 12 彼らが断食しても、わたしは彼らの呼ぶのを聞かない。燔祭と素祭をささげても、わたしはそれを受けない。かえって、つるぎと、ききん、および疫病をもって、彼らを滅ぼしてしまう」。
19278 24 14 13 わたしは言った、「ああ、主なる神よ、預言者たちはこの民に向かい、『あなたがたは、つるぎを見ることはない。ききんもこない。わたしはこの所に確かな平安をあなたがたに与える』と言っています」。
19279 24 14 14 主はわたしに言われた、「預言者らはわたしの名によって偽りの預言をしている。わたしは彼らをつかわさなかった。また彼らに命じたこともなく、話したこともない。彼らは偽りの黙示と、役に立たない占い、および自分の心でつくりあげた欺きをあなたがたに預言しているのだ。
19280 24 14 15 それゆえ、わたしがつかわさないのに、わたしの名によって預言して、『つるぎとききんは、この地にこない』と言っているあの預言者について、主はこう仰せられる、この預言者らは、つるぎとききんに滅ぼされる。
19281 24 14 16 また彼らの預言を聞く民は、ききんとつるぎとによって、エルサレムのちまたに投げ捨てられる。だれもこれを葬る者はない。彼らとその妻、およびそのむすこ娘も同様である。わたしが彼らの悪をその上に注ぐからである。
19282 24 14 17 この言葉を彼らに語れ、『わたしの目は夜も昼も絶えず涙を流す。わが民の娘であるおとめが大きな傷と重い打撃によって滅ぼされるからである。
19283 24 14 18 わたしが出て畑に行くと、つるぎで殺された者がある。町にはいると、ききんで病んでいる者がある。預言者も祭司も共にその地にさまよって、知るところがない』」。
19284 24 14 19 あなたはまったくユダを捨てられたのですか。あなたの心はシオンをきらわれるのですか。あなたはわれわれを撃ったのに、どうしていやしてはくださらないのですか。われわれは平安を望んだが、良い事はこなかった。いやされる時を望んだが、かえって恐怖が来た。
19285 24 14 20 主よ、われわれは自分の悪と、先祖のとがとを認めています。われわれはあなたに罪を犯しました。
19286 24 14 21 み名のために、われわれを捨てないでください。あなたの栄えあるみ位をはずかしめないでください。あなたがわれわれにお立てになった契約を覚えて、それを破らないでください。
19287 24 14 22 異邦の偽りの神々のうちに、雨を降らせうる者があるであろうか。天が自分で夕立ちを降らすことができようか。われわれの神、主よ、あなたこそ、これをなさる方ではありませんか。われわれの待ち望むのはあなたです。あなたがこれらすべてのことをなさるからです。
19288 24 15 1 主はわたしに言われた、「たといモーセとサムエルとがわたしの前に立っても、わたしの心はこの民を顧みない。彼らをわたしの前から追い出し、ここを去らせよ。
19289 24 15 2 もし彼らが、『われわれはどこに行けばよいのか』とあなたに尋ねるならば、彼らに言いなさい、『主はこう仰せられる、疫病に定められた者は疫病に、つるぎに定められた者はつるぎに、ききんに定められた者はききんに、とりこに定められた者はとりこに行く』。
19290 24 15 3 主は仰せられる、わたしは四つの物をもって彼らを罰する。すなわち、つるぎをもって殺し、犬をもってかませ、空の鳥と地の獣をもって食い滅ぼさせる。
19291 24 15 4 またユダの王ヒゼキヤの子マナセが、エルサレムでした行いのゆえに、わたしは彼らを地のすべての国が見て恐れおののくものとする。
19292 24 15 5 エルサレムよ、だれがあなたをあわれむであろうか。だれがあなたのために嘆くであろうか。だれがふり返って、あなたの安否を問うであろうか。
19293 24 15 6 主は言われる、あなたはわたしを捨てた。そしてますます退いて行く。それゆえ、わたしは手を伸べてあなたを滅ぼした。わたしはあわれむことには飽きた。
19294 24 15 7 わたしはこの地の門で、箕で彼らをあおぎ分けた。彼らがその道を離れなかったので、わたしは彼らの子を奪い、わが民を滅ぼした。
19295 24 15 8 わたしは彼らの寡婦の数を浜べの砂よりも多くした。わたしは真昼に、滅ぼす者を連れてきて、若者らの母たちをせめ、驚きと恐れを、にわかに母たちにおこした。
19296 24 15 9 七人の子を産んだ女は、弱り衰えて、息絶え、まだ昼であったが、彼女の日は没した。彼女は恥じ、うろたえた。その残りの者は、これを敵のつるぎに渡すと主は言われる」。
19297 24 15 10 ああ、わたしはわざわいだ。わが母よ、あなたは、なぜ、わたしを産んだのか。全国の人はわたしと争い、わたしを攻める。わたしは人に貸したこともなく、人に借りたこともないのに、皆わたしをのろう。
19298 24 15 11 主よ、もしわたしが彼らの幸福をあなたに祈り求めず、また敵のため、その悩みのときと、災のときに、わたしがあなたにとりなしをしなかったのであれば、彼らののろいも、やむをえないでしょう。
19299 24 15 12 人は鉄を、北からくる鉄や青銅を砕くことができましょうか。
19300 24 15 13 「わたしはあなたの富と宝を、ぶんどり物として他に与える。代価を受けることはできない。それはあなたのすべての罪によるので、領域内のいたる所にこのことが起る。
19301 24 15 14 わたしはあなたの知らない地で、あなたの敵に仕えさせる。わたしの怒りによって火は点じられ、いつまでも燃え続けるからである」。
19302 24 15 15 主よ、あなたは知っておられます。わたしを覚え、わたしを顧みてください。わたしを迫害する者に、あだを返し、あなたの寛容によって、わたしを取り去らないでください。わたしがあなたのために、はずかしめを受けるのを知ってください。
19303 24 15 16 わたしはみ言葉を与えられて、それを食べました。み言葉は、わたしに喜びとなり、心の楽しみとなりました。万軍の神、主よ、わたしは、あなたの名をもってとなえられている者です。
19304 24 15 17 わたしは笑いさざめく人のつどいにすわることなく、また喜ぶことをせず、ただひとりですわっていました。あなたの手がわたしの上にあり、あなたが憤りをもってわたしを満たされたからです。
19305 24 15 18 どうしてわたしの痛みは止まらず、傷は重くて、なおらないのですか。あなたはわたしにとって、水がなくて人を欺く谷川のようになられるのですか。
19306 24 15 19 それゆえ主はこう仰せられる、「もしあなたが帰ってくるならば、もとのようにして、わたしの前に立たせよう。もしあなたが、つまらないことを言うのをやめて、貴重なことを言うならば、わたしの口のようになる。彼らはあなたの所に帰ってくる。しかしあなたが彼らの所に帰るのではない。
19307 24 15 20 わたしはあなたをこの民の前に、堅固な青銅の城壁にする。彼らがあなたを攻めても、あなたに勝つことはできない。わたしがあなたと共にいて、あなたを助け、あなたを救うからであると、主は言われる。
19308 24 15 21 わたしはあなたを悪人の手から救い、無慈悲な人の手からあがなう」。
19309 24 16 1 主の言葉はまたわたしに臨んだ、
19310 24 16 2 「あなたはこの所で妻をめとってはならない。またむすこ娘を持ってはならない。
19311 24 16 3 この所で生れるむすこ娘と、この地でこれを産む母たちと、これを生む父たちとについて主はこう言われる、
19312 24 16 4 彼らは死の病にかかって死に、哀悼する者もなく、埋葬する者もなく、地のおもてに、糞土のようになる。またつるぎと、ききんに滅ぼされて、その死体は空の鳥と地の獣の食い物となる。
19313 24 16 5 主はこう言われる、喪のある家に、はいってはならない。また行って、それを悲しみ嘆いてはならない。わたしがこの民からわたしの平安と、いつくしみと、あわれみとを取り去ったからであると、主は言われる。
19314 24 16 6 大いなる者も小さき者も、この地に死ぬ。彼らは葬られず、また彼らのために悲しむ者もなく、自分の身を傷つける者もなく、髪をそる者もない。
19315 24 16 7 悲しむ者のためにパンをさいて、死者のためにこれを慰める者はなく、また父あるいは母のために慰めの杯をこれに与えて飲ませる者もない。
19316 24 16 8 またあなたは宴会をする家にはいって、人々と共にすわって食い飲みしてはならない。
19317 24 16 9 万軍の主、イスラエルの神はこう言われる、見よ、あなたの目の前で、あなたのなおこの世にいる間に、わたしは喜びの声と楽しみの声、花婿の声と花嫁の声とをこの所に絶やしてしまう。
19318 24 16 10 あなたがこのすべての言葉をこの民に告げるとき、彼らがあなたに尋ねて、『主がわれわれにこの大きな災を宣告されるのはどうしてですか。われわれにどんな悪い所があるのですか。われわれの神、主にそむいて、われわれが犯した罪とはなんですか』と言うならば、
19319 24 16 11 あなたは彼らに答えなければならない、『主は仰せられる、それはあなたがたの先祖がわたしを捨てて他の神々に従い、これに仕え、これを拝し、またわたしを捨て、わたしの律法を守らなかったからである。
19320 24 16 12 あなたがたは、あなたがたの先祖よりも、いっそう悪いことをした。見よ、あなたがたはおのおの自分の悪い強情な心に従い、わたしに聞き従うことはしない。
19321 24 16 13 それゆえ、わたしはあなたがたをこの地より追い出し、あなたがたも、あなたがたの先祖も知らない地に行かせる。その所であなたがたは昼夜、ほかの神々に仕えるようになる。これはわたしがあなたがたにあわれみを示さないからである』と。
19322 24 16 14 主は言われる、それゆえ、見よ、こののち『イスラエルの民をエジプトの地から導き出した主は生きておられる』とは言わないで、
19323 24 16 15 『イスラエルの民を北の国と、そのすべて追いやられた国々から導き出した主は生きておられる』という日がくる。わたしが彼らを、その先祖に与えた彼らの地に導きかえすからである。
19324 24 16 16 主は言われる、見よ、わたしは多くの漁夫を呼んできて、彼らをすなどらせ、また、そののち多くの猟師を呼んできて、もろもろの山、もろもろの丘、および岩の裂け目から彼らをかり出させる。
19325 24 16 17 わたしの目は彼らのすべての道を見ているからである。みなわたしに隠れてはいない。またその悪はわたしの目に隠れることはない。
19326 24 16 18 わたしはその悪とその罪の報いを二倍にする。彼らがその忌むべき偶像の死体をもって、わたしの地を汚し、その憎むべきものをもって、わたしの嗣業を満たしたからである」。
19327 24 16 19 主、わが力、わが城、悩みの時の、のがれ場よ、万国の民は地の果からあなたのもとにきて申します、「われわれの先祖が受け嗣いだのは、ただ偽りと、役に立たないつまらない事ばかりです。
19328 24 16 20 人が自分で神々を造ることができましょうか。そういうものは神ではありません」。
19329 24 16 21 「それゆえ、見よ、わたしは彼らに知らせよう。すなわち、この際わたしの力と、わたしの勢いとを知らせよう。彼らはわたしの名が、主であることを知るようになる」。
19330 24 17 1 「ユダの罪は、鉄の筆、金剛石のとがりをもってしるされ、彼らの心の碑と、祭壇の角に彫りつけられている。
19331 24 17 2 彼らの子供たちは青木の下と、高い丘の上、野の山の上にある祭壇とアシラのことを覚えている。
19332 24 17 3 わたしはあなたの富とすべての宝とを、あなたの全領域の内で犯した罪の代価として、ぶんどり物とならせる。
19333 24 17 4 わたしがあなたに与えた嗣業からあなたは手をはなすようになる。またわたしは、あなたの知らない地で、あなたの敵に仕えさせる。わたしの怒りによって、火は点じられ、いつまでも燃え続けるからである」。
19334 24 17 5 主はこう言われる、「おおよそ人を頼みとし肉なる者を自分の腕とし、その心が主を離れている人は、のろわれる。
19335 24 17 6 彼は荒野に育つ小さい木のように、何も良いことの来るのを見ない。荒野の、干上がった所に住み、人の住まない塩地にいる。
19336 24 17 7 おおよそ主にたより、主を頼みとする人はさいわいである。
19337 24 17 8 彼は水のほとりに植えた木のようで、その根を川にのばし、暑さにあっても恐れることはない。その葉は常に青く、ひでりの年にも憂えることなく、絶えず実を結ぶ」。
19338 24 17 9 心はよろずの物よりも偽るもので、はなはだしく悪に染まっている。だれがこれを、よく知ることができようか。
19339 24 17 10 「主であるわたしは心を探り、思いを試みる。おのおのに、その道にしたがい、その行いの実によって報いをするためである」。
19340 24 17 11 しゃこが自分が産んだのではない卵を抱くように、不正な財産を得る者がある。その人は一生の半ばにそれから離れて、その終りには愚かな者となる。
19341 24 17 12 初めから高くあげられた栄えあるみ座は、われわれの聖所のある所である。
19342 24 17 13 またイスラエルの望みである主よ、あなたを捨てる者はみな恥をかき、あなたを離れる者は土に名をしるされます。それは生ける水の源である主を捨てたからです。
19343 24 17 14 主よ、わたしをいやしてください、そうすれば、わたしはいえます。わたしをお救いください、そうすれば、わたしは救われます。あなたはわたしのほめたたえる者だからです。
19344 24 17 15 彼らはわたしに言います、「主の言葉はどこにあるのか。今、それを出して見せよ」と。
19345 24 17 16 悪をつかわされるようにとは、わたしはたって求めませんでした。また災の日を願わなかったのを、あなたはごぞんじです。わたしのくちびるから出たことは、み前にあります。
19346 24 17 17 どうか、わたしを恐れさせないでください。災のときに、あなたはわたしののがれ場です。
19347 24 17 18 わたしを攻め悩ます者をはずかしめてください。しかしわたしをはずかしめないでください。彼らを恐れさせてください。しかしわたしを恐れさせないでください。災の日を彼らにきたらせ、滅びを倍にして彼らを滅ぼしてください。
19348 24 17 19 主はわたしにこう言われた、「行って、ユダの王たちの出入りするベニヤミンの門、およびエルサレムのすべての門に立って、
19349 24 17 20 言いなさい、『これらの門からはいるユダの王たち、およびユダのすべての民とエルサレムに住むすべての者よ、主の言葉を聞きなさい。
19350 24 17 21 主はこう言われる、命が惜しいならば気をつけるがよい。安息日に荷をたずさえ、またはそれを持ってエルサレムの門にはいってはならない。
19351 24 17 22 また安息日にあなたがたの家から荷を運び出してはならない。なんのわざをもしてはならない。わたしがあなたがたの先祖に命じたように安息日を聖別して守りなさい。
19352 24 17 23 しかし彼らは従わず耳を傾けず、聞くことも、戒めをうけることをも強情に拒んだ。
19353 24 17 24 主は言われる、もしあなたがたがわたしに聞き従い、安息日に荷をたずさえてこの町の門にはいらず、安息日を聖別して、なんのわざをもしないならば、
19354 24 17 25 ダビデの位に座する王たち、つかさたち、ユダの人々、エルサレムに住む者は、車と馬に乗ってこの町の門からはいることができる。そしてこの町には長く人が住むようになる。
19355 24 17 26 また人々はユダの町々やエルサレムの周囲、ベニヤミンの地、平地と山地およびネゲブから来て燔祭、犠牲、素祭、乳香、感謝祭をたずさえて主の家にはいる。
19356 24 17 27 しかし、もしあなたがたがわたしに聞き従わないで、安息日を聖別して守ることをせず、安息日に荷をたずさえてエルサレムの門にはいるならば、わたしは火をその門の中に燃やして、エルサレムのもろもろの宮殿を焼き滅ぼす。その火は消えることがない』」。
19357 24 18 1 主からエレミヤに臨んだ言葉。
19358 24 18 2 「立って、陶器師の家に下って行きなさい。その所でわたしはあなたにわたしの言葉を聞かせよう」。
19359 24 18 3 わたしは陶器師の家へ下って行った。見ると彼は、ろくろで仕事をしていたが、
19360 24 18 4 粘土で造っていた器が、その人の手の中で仕損じたので、彼は自分の意のままに、それをもってほかの器を造った。
19361 24 18 5 その時、主の言葉がわたしに臨んだ、
19362 24 18 6 「主は仰せられる、イスラエルの家よ、この陶器師がしたように、わたしもあなたがたにできないのだろうか。イスラエルの家よ、陶器師の手に粘土があるように、あなたがたはわたしの手のうちにある。
19363 24 18 7 ある時には、わたしが民または国を抜く、破る、滅ぼすということがあるが、
19364 24 18 8 もしわたしの言った国がその悪を離れるならば、わたしはこれに災を下そうとしたことを思いかえす。
19365 24 18 9 またある時には、わたしが民または国を建てる、植えるということがあるが、
19366 24 18 10 もしその国がわたしの目に悪と見えることを行い、わたしの声に聞き従わないなら、わたしはこれに幸を与えようとしたことを思いかえす。
19367 24 18 11 それゆえ、ユダの人々とエルサレムに住む者に言いなさい、『主はこう仰せられる、見よ、わたしはあなたがたに災を下そうと工夫し、あなたがたを攻める計りごとを立てている。あなたがたはおのおのその悪しき道を離れ、その道と行いを改めなさい』と。
19368 24 18 12 しかし彼らは言う、『それはむだです。われわれは自分の図るところに従い、おのおのその悪い強情な心にしたがって行動します』と。
19369 24 18 13 それゆえ主はこう言われる、異邦の民のうちのある者に尋ねてみよ、このような事を聞いた者があろうか。おとめイスラエルは恐ろしい事をした。
19370 24 18 14 レバノンの雪が、どうしてシリオンの岩を離れようか。山の水、冷たい川の流れが、どうしてかわいてしまおうか。
19371 24 18 15 それなのにわが民はわたしを忘れて、偽りの神々に香をたいている。彼らはその道、古い道につまずき、また小道に入り、大路からはなれた。
19372 24 18 16 自分の地を荒れすたれさせて、いつまでも人に舌打ちされるものとした。そこを通る人はみな身震いして、首を振る。
19373 24 18 17 わたしは東風のように、彼らをその敵の前に散らす。その滅びの日には、わたしは彼らに背を向け、顔を向けない」。
19374 24 18 18 彼らは言った、「さあ、計略をめぐらして、エレミヤを倒そう。祭司には律法があり、知恵ある者には計りごとがあり、預言者には言葉があって、これらのものが滅びてしまうことはない。さあ、われわれは舌をもって彼を撃とう。彼のすべての言葉に、心を留めないことにしよう」。
19375 24 18 19 主よ、どうぞわたしにみ心を留め、わたしの訴えをお聞きください。
19376 24 18 20 悪をもって善に報いるべきでしょうか。しかもなお彼らはわたしの命を取ろうとして穴を掘りました。わたしがあなたの前に立って、彼らのことを良く言い、あなたの憤りを止めようとしたのを覚えてください。
19377 24 18 21 それゆえ、彼らの子どもたちをききんに渡し、彼らをつるぎの刃に渡してください。彼らの妻は子を失い、また寡婦となり、男は疫病にかかって死に、若い者は、戦争でつるぎに殺されますように。
19378 24 18 22 あなたが敵をにわかに彼らに臨ませられるとき、彼らの家から叫び声が聞えますように。彼らは穴を掘って、わたしを捕えようとし、わなをつくって、わたしの足を捕えようとしたからです。
19379 24 18 23 主よ、あなたは彼らがわたしを殺すためにめぐらしている計略を皆ごぞんじです。その悪をゆるすことなく、その罪をあなたの前から消し去らないでください。彼らをあなたの前に倒れさせてください。あなたのお怒りになる時に彼らを罰してください。
19380 24 19 1 主はこう言われる、「行って、陶器師のびんを買い、民の長老と年長の祭司のうちの数人を伴って、
19381 24 19 2 瀬戸かけの門の入口にあるベンヒンノムの谷へ行き、その所で、わたしがあなたに語る言葉をのべて、
19382 24 19 3 言いなさい、『ユダの王たち、およびエルサレムに住む者よ、主の言葉を聞きなさい。万軍の主、イスラエルの神はこう仰せられる、見よ、わたしは災をこの所に下す。おおよそ、その災のことを聞くものの耳は両方とも鳴る。
19383 24 19 4 彼らがわたしを捨て、この所を汚し、この所で、自分も先祖たちもユダの王たちも知らなかった他の神々に香をたき、かつ罪のない者の血を、この所に満たしたからである。
19384 24 19 5 また彼らはバアルのために高き所を築き、火をもって自分の子どもたちを焼き、燔祭としてバアルにささげた。これはわたしの命じたことではなく、定めたことでもなく、また思いもしなかったことである。
19385 24 19 6 主は言われる、それゆえ、見よ、この所をトペテまたはベンヒンノムの谷と呼ばないで、虐殺の谷と呼ぶ日がくる。
19386 24 19 7 またわたしはこの所でユダとエルサレムの計りごとを打ち破り、つるぎをもって、彼らをその敵の前と、そのいのちを求める者の手に倒れさせ、またその死体を空の鳥と地の獣の食い物とし、
19387 24 19 8 かつ、この町を荒れすたれさせて、人に舌打ちされるものとする。そこを通る人は皆そのもろもろの災を見て身震いし、舌打ちする。
19388 24 19 9 また彼らがその敵とその命を求める者とに囲まれて苦しみ悩む時、わたしは彼らに自分のむすこの肉、娘の肉を食べさせる。彼らはまた互にその友の肉を食べるようになる』。
19389 24 19 10 そこで、あなたは、一緒に行く人々の目の前で、そのびんを砕き、
19390 24 19 11 そして彼らに言いなさい、『万軍の主はこう仰せられる、陶器師の器をひとたび砕くならば、もはやもとのようにすることはできない。このようにわたしはこの民とこの町とを砕く。人々はほかに葬るべき場所がないために、トペテに葬るであろう。
19391 24 19 12 主は仰せられる、わたしはこの所と、ここに住む者とにこのようにし、この町をトペテのようにする。
19392 24 19 13 エルサレムの家とユダの王たちの家、すなわち彼らがその屋上で天の衆群に香をたき、ほかの神々に酒を注いだ家は、皆トペテの所のように汚される』」。
19393 24 19 14 エレミヤは主が彼をつかわして預言させられたトペテから帰ってきて、主の家の庭に立ち、すべての民に言った、
19394 24 19 15 「万軍の主、イスラエルの神はこう仰せられる、見よ、わたしは、この町とそのすべての村々に、わたしの言ったもろもろの災を下す。彼らが強情で、わたしの言葉に聞き従おうとしないからである」。
19395 24 20 1 さて祭司インメルの子で、主の宮のつかさの長であったパシュルは、エレミヤがこれらの事を預言するのを聞いた。
19396 24 20 2 そしてパシュルは預言者エレミヤを打ち、主の宮にある上のベニヤミンの門の足かせにつないだ。
19397 24 20 3 その翌日パシュルがエレミヤを足かせから解き放した時、エレミヤは彼に言った、「主はあなたの名をパシュルとは呼ばないで、『恐れが周囲にある』と呼ばれる。
19398 24 20 4 主はこう仰せられる、見よ、わたしはあなたを、あなた自身とあなたのすべての友だちに恐れを起させる者とする。彼らはあなたが見ている目の前で敵のつるぎに倒れる。わたしはまたユダのすべての民をバビロン王の手に渡す。彼は彼らを捕えてバビロンに移し、つるぎをもって殺す。
19399 24 20 5 わたしはまたこの町のすべての富と、その獲たすべての物と、そのすべての貴重な物と、ユダの王たちのすべての宝物をその敵の手に渡す。彼らはこれをかすめ、民を捕えてバビロンに移す。
19400 24 20 6 パシュルよ、あなたと、あなたの家に住む者とはみな捕え移される。あなたはバビロンに行って、その所で死に、その所に葬られる。あなたも、あなたが偽って預言した言葉に聞き従った友もみなそのようになる」。
19401 24 20 7 主よ、あなたがわたしを欺かれたので、わたしはその欺きに従いました。あなたはわたしよりも強いので、わたしを説き伏せられたのです。わたしは一日中、物笑いとなり、人はみなわたしをあざけります。
19402 24 20 8 それは、わたしが語り、呼ばわるごとに、「暴虐、滅亡」と叫ぶからです。主の言葉が一日中、わが身のはずかしめと、あざけりになるからです。
19403 24 20 9 もしわたしが、「主のことは、重ねて言わない、このうえその名によって語る事はしない」と言えば、主の言葉がわたしの心にあって、燃える火のわが骨のうちに閉じこめられているようで、それを押えるのに疲れはてて、耐えることができません。
19404 24 20 10 多くの人のささやくのを聞くからです。恐れが四方にあります。「告発せよ。さあ、彼を告発しよう」と言って、わが親しい友は皆わたしのつまずくのを、うかがっています。また、「彼は欺かれるだろう。そのとき、われわれは彼に勝って、あだを返すことができる」と言います。
19405 24 20 11 しかし主は強い勇士のようにわたしと共におられる。それゆえ、わたしに迫りくる者はつまずき、わたしに打ち勝つことはできない。彼らは、なし遂げることができなくて、大いに恥をかく。その恥は、いつまでも忘れられることはない。
19406 24 20 12 正しき者を試み、人の心と思いを見られる万軍の主よ、あなたが彼らに、あだを返されるのを見せてください。わたしはあなたに、わたしの訴えをお任せしたからです。
19407 24 20 13 主に向かって歌い、主をほめたたえよ。主は貧しい者の命を、悪人の手から救われたからである。
19408 24 20 14 わたしの生れた日はのろわれよ。母がわたしを産んだ日は祝福を受けるな。
19409 24 20 15 わたしの父に「男の子が、生れました」と告げて、彼を大いに喜ばせた人は、のろわれよ。
19410 24 20 16 その人は、主のあわれみを受けることなく、滅ぼされた町のようになれ。朝には、彼に叫びを聞かせ、昼には戦いの声を聞かせよ。
19411 24 20 17 彼がわたしを胎内で殺さず、わが母をわたしの墓場となさず、その胎をいつまでも大きくしなかったからである。
19412 24 20 18 なにゆえにわたしは胎内を出てきて、悩みと悲しみに会い、恥を受けて一生を過ごすのか。
19413 24 21 1 ゼデキヤ王は、マルキヤの子パシュルと祭司マアセヤの子ゼパニヤを、エレミヤのもとにつかわし、
19414 24 21 2 「バビロンの王ネブカデレザルがわれわれを攻めようとしているゆえ、われわれのために主に尋ねてほしい。主はそのもろもろの不思議なわざをもって、われわれを助け、バビロンの王をわれわれから退かせられるかも知れない」と言わせた。その時、主の言葉がエレミヤに臨んだ。
19415 24 21 3 エレミヤは彼らに答えて言った、「あなたがたはゼデキヤにこのように言いなさい、
19416 24 21 4 『イスラエルの神、主はこう仰せられる、見よ、あなたがたが、この城壁の外にあって、あなたがたを攻め囲むバビロンの王およびカルデヤびとと戦うとき、わたしはあなたがたの手に持っている武器をとりあげ、これを町の中に集めさせる。
19417 24 21 5 わたしは手を伸べ、強い腕をもって、怒り、憤り、激しく怒って、あなたがたを攻める。
19418 24 21 6 わたしはまたこの町に住む人と獣とを撃つ。彼らはみな重い疫病にかかって死ぬ。
19419 24 21 7 主は言われる、この後、わたしはユダの王ゼデキヤとその家来たち、および疫病と、つるぎと、ききんを免れて、この町に残っている民を、バビロンの王ネブカデレザルの手と、その敵の手、およびその命を求める者の手に渡す。バビロンの王はつるぎの刃にかけて彼らを撃ち、彼らを惜しまず、顧みず、またあわれむこともしない』。
19420 24 21 8 あなたはまたこの民に言いなさい、『主はこう仰せられる、見よ、わたしは命の道と死の道とをあなたがたの前に置く。
19421 24 21 9 この町にとどまる者は、つるぎと、ききんと、疫病とで死ぬ。しかし、出て行って、あなたがたを攻め囲んでいるカルデヤびとに降伏する者は死を免れ、その命は自分のぶんどり物となる。
19422 24 21 10 主は言われる、わたしがこの町に顔を向けたのは幸を与えるためではなく、災を与えるためである。この町はバビロンの王の手に渡される。彼は火をもって、これを焼き払う』。
19423 24 21 11 またユダの王の家に言いなさい、『主の言葉を聞きなさい。
19424 24 21 12 ダビデの家よ、主はこう仰せられる、朝ごとに、正しいさばきを行い、物を奪われた人をしえたげる者の手から救え。そうしないと、あなたがたの悪い行いのために、わたしの怒りは火のように燃えて、それを消すことはできない』」。
19425 24 21 13 「主は言われる、谷に住む者よ、平原の岩よ、見よ、わたしはあなたに敵する。あなたがたは言う、『だれが下ってきて、われわれを攻めるものか、だれがわれわれのいる所に、はいるものか』と。
19426 24 21 14 わたしはあなたがたを、その行いの実によって罰する。またその林に火をつけて、その周囲のものをみな焼き尽すと、主は言われる」。
19427 24 22 1 主はこう言われる、「ユダの王の家に下り、その所にこの言葉をのべて、
19428 24 22 2 言いなさい、『ダビデの位にすわるユダの王よ、あなたと、あなたの家臣、および、この門からはいるあなたの民は主の言葉を聞きなさい。
19429 24 22 3 主はこう言われる、公平と正義を行い、物を奪われた人を、しえたげる者の手から救い、異邦の人、孤児、寡婦を悩まし、しえたげてはならない。またこの所に、罪なき者の血を流してはならない。
19430 24 22 4 もしあなたがたがこの言葉を真実に行うならば、ダビデの位にすわる王とその家臣、およびその民は、車と馬に乗って、この家の門にはいることができる。
19431 24 22 5 しかしあなたがたがこの言葉を聞かないならば、わたしは自身をさして誓うが、この家は荒れ地となると、主は言われる。
19432 24 22 6 主はユダの王の家についてこう言われる、あなたはわたしに対してギレアデのようであり、レバノンの頂のようである。しかし、わたしは必ずあなたを荒れ地にし、人の住まない町にする。
19433 24 22 7 わたしは滅ぼす者を設けて、あなたを攻めさせる、彼らはおのおのその武器をとり、あなたの麗しい香柏を切り倒し、火に投げ入れる。
19434 24 22 8 多くの国の人はこの町を過ぎ、互に語って、「なぜ主はこの大いなる町をこのようにされたのか」と言うとき、
19435 24 22 9 人は答えて、「これは彼らがその神、主の契約を捨てて他の神々を拝し、これに仕えたからである」と言うであろう』」。
19436 24 22 10 死んだ者のために泣くことなく、またそのために嘆いてはならない。捕え移されてゆく者のために、激しく泣け。彼はふたたび帰ってきて、その故郷を見ることがないからである。
19437 24 22 11 ユダの王ヨシヤの子シャルムは父ヨシヤについで王となったが、ついにこの所から出て行った。主は彼についてこう言われる、「彼は再びここに帰らない。
19438 24 22 12 彼はその捕え行かれた所で死に、再びこの地を見ない」。
19439 24 22 13 「不義をもってその家を建て、不法をもってその高殿を造り、隣り人を雇って何をも与えず、その賃金を払わない者はわざわいである。
19440 24 22 14 彼は言う、『わたしは自分のために大きな家を建て、広い高殿を造ろう』と。そしてこれがために窓を造り、香柏の鏡板でおおい、それを朱で塗る。
19441 24 22 15 あなたは競って香柏を用いることによって、王であると思うのか。あなたの父は食い飲みし、公平と正義を行って、幸を得たのではないか。
19442 24 22 16 彼は貧しい人と乏しい人の訴えをただして、さいわいを得た。こうすることがわたしを知ることではないかと主は言われる。
19443 24 22 17 しかし、あなたは目も心も、不正な利益のためにのみ用い、罪なき者の血を流そうとし、圧制と暴虐を行おうとする」。
19444 24 22 18 それゆえ、主はユダの王ヨシヤの子エホヤキムについてこう言われる、「人々は『悲しいかな、わが兄』、『悲しいかな、わが姉』と言って、彼のために嘆かない。また『悲しいかな、主君よ』、『悲しいかな、陛下よ』と言って嘆かない。
19445 24 22 19 ろばが埋められるように、彼は葬られる。引かれて行って、エルサレムの門の外に投げ捨てられる」。
19446 24 22 20 「レバノンに登って呼ばわり、バシャンにあなたの声をあげ、アバリムから呼ばわれ。あなたの愛する者がみな滅ぼされるからだ。
19447 24 22 21 あなたの栄えていた時、わたしはあなたに語ったが『聞きたくはない』と言った。あなたがわたしの声に聞き従わないことは、あなたの幼い時からの、ならわしであった。
19448 24 22 22 あなたの牧者はみな、風に追い立てられ、あなたの愛する者は捕え移される。その時、あなたは自分のもろもろの悪のために、恥じ、うろたえる。
19449 24 22 23 レバノンに住み、香柏の中に巣をつくっている者よ、子を産む女に臨む苦しみのような苦痛があなたに臨むとき、あなたはどんなに嘆くことであろうか」。
19450 24 22 24 「主は言われる、わたしは生きている。ユダの王エホヤキムの子コニヤが、わたしの右手の指輪であっても、わたしはあなたを抜き取る。
19451 24 22 25 あなたの命を求める者の手、あなたがその顔を恐れる者の手、すなわちバビロンの王ネブカデレザルの手と、カルデヤびとの手にあなたを渡す。
19452 24 22 26 わたしは、あなたと、あなたを産んだ母を、あなたがたの生れた国でない他の国に追いやる。あなたがたはそこで死ぬ。
19453 24 22 27 彼らが帰りたいとせつに願う国に、彼らは再び帰ることができない」。
19454 24 22 28 この人コニヤは卑しむべき、こわれたつぼであろうか、だれも心に留めない器であろうか。なぜ彼とその子孫は追いやられて、知らない地に投げやられるのか。
19455 24 22 29 ああ、地よ、地よ、地よ、主の言葉を聞けよ。
19456 24 22 30 主はこう言われる、「この人を、子なき人として、またその一生のうち、栄えることのない人として記録せよ。その子孫のうち、ひとりも栄えて、ダビデの位にすわり、ユダを治めるものが再び起らないからである」。
19457 24 23 1 主は言われる、「わが牧場の羊を滅ぼし散らす牧者はわざわいである」。
19458 24 23 2 それゆえイスラエルの神、主はわが民を養う牧者についてこう言われる、「あなたがたはわたしの群れを散らし、これを追いやって顧みなかった。見よ、わたしはあなたがたの悪しき行いによってあなたがたに報いると、主は言われる。
19459 24 23 3 わたしの群れの残った者を、追いやったすべての地から集め、再びこれをそのおりに帰らせよう。彼らは子を産んでその数が多くなる。
19460 24 23 4 わたしはこれを養う牧者をその上に立てる、彼らは再び恐れることなく、またおののくことなく、いなくなることもないと、主は言われる。
19461 24 23 5 主は仰せられる、見よ、わたしがダビデのために一つの正しい枝を起す日がくる。彼は王となって世を治め、栄えて、公平と正義を世に行う。
19462 24 23 6 その日ユダは救を得、イスラエルは安らかにおる。その名は『主はわれわれの正義』ととなえられる。
19463 24 23 7 主は言われる、それゆえ見よ、人々は『イスラエルの民をエジプトの地から導き出された主は生きておられる』とまた言わないで、
19464 24 23 8 『イスラエルの家の子孫を北の地と、そのすべて追いやられた地から導き出された神は生きておられる』という日がくる。その時、彼らは自分の地に住んでいる」。
19465 24 23 9 預言者たちについて。わが心はわたしのうちに破れ、わが骨はみな震う。主とその聖なる言葉のために、わたしは酔っている人のよう、酒に打ち負かされた人のようである。
19466 24 23 10 この地に姦淫を行うものが満ちているからだ。のろいによって地は嘆き、荒野の牧場はかわく。彼らの道は悪く、その力は正しくない。
19467 24 23 11 「預言者と祭司とは共に神を汚す者である。わたしの家においてすら彼らの悪を見たと、主は言われる。
19468 24 23 12 それゆえ、彼らの道は、おのずから暗黒の中にあるなめらかな道のようになり、彼らは押されてその道に倒れる。わたしが彼らの罰せられる年に、災をその上に臨ませるからであると、主は言われる。
19469 24 23 13 わたしはサマリヤの預言者のうちに不快な事のあるのを見た。彼らはバアルによって預言し、わが民イスラエルを惑わした。
19470 24 23 14 しかしエルサレムの預言者のうちには、恐ろしい事のあるのを見た。彼らは姦淫を行い、偽りに歩み、悪人の手を強くし、人をその悪から離れさせない。彼らはみなわたしにはソドムのようであり、その民はゴモラのようである」。
19471 24 23 15 それゆえ万軍の主は預言者についてこう言われる、「見よ、わたしは彼らに、にがよもぎを食べさせ、毒の水を飲ませる。神を汚すことがエルサレムの預言者から出て、全地に及んでいるからである」。
19472 24 23 16 万軍の主はこう言われる、「あなたがたに預言する預言者の言葉を聞いてはならない。彼らはあなたがたに、むなしい望みをいだかせ、主の口から出たのでない、自分の心の黙示を語るのである。
19473 24 23 17 彼らは主の言葉を軽んじる者に向かって絶えず、『あなたがたは平安を得る』と言い、また自分の強情な心にしたがって歩むすべての人に向かって、『あなたがたに災はこない』と言う」。
19474 24 23 18 彼らのうちだれか主の議会に立って、その言葉を見聞きした者があろうか。だれか耳を傾けてその言葉を聞いた者があろうか。
19475 24 23 19 見よ、主の暴風がくる。憤りと、つむじ風が出て、悪人のこうべをうつ。
19476 24 23 20 主の怒りは、み心に思い定められたことをなし遂げられるまで退くことはない。末の日にあなたがたはそれを明らかに悟る。
19477 24 23 21 預言者たちはわたしがつかわさなかったのに、彼らは走った。わたしが、彼らに告げなかったのに、彼らは預言した。
19478 24 23 22 もし彼らがわたしの議会に立ったのであれば、わたしの民にわが言葉を告げ示して、その悪い道と悪い行いから、離れさせたであろうに。
19479 24 23 23 「主は言われる、わたしはただ近くの神であって、遠くの神ではないのであるか。
19480 24 23 24 主は言われる、人は、ひそかな所に身を隠して、わたしに見られないようにすることができようか。主は言われる、わたしは天と地とに満ちているではないか。
19481 24 23 25 わが名によって偽りを預言する預言者たちが、『わたしは夢を見た、わたしは夢を見た』と言うのを聞いた。
19482 24 23 26 偽りを預言する預言者たちの心に、いつまで偽りがあるのであるか。彼らはその心の欺きを預言する。
19483 24 23 27 彼らはその先祖がバアルに従ってわが名を忘れたように、互に夢を語って、わたしの民にわが名を忘れさせようとする。
19484 24 23 28 夢をみた預言者は夢を語るがよい。しかし、わたしの言葉を受けた者は誠実にわたしの言葉を語らなければならない。わらと麦とをくらべることができようかと、主は言われる。
19485 24 23 29 主は仰せられる、わたしの言葉は火のようではないか。また岩を打ち砕く鎚のようではないか。
19486 24 23 30 それゆえ見よ、わたしはわたしの言葉を互に盗む預言者の敵となると、主は言われる。
19487 24 23 31 見よ、わたしは、『主は言いたもう』と舌をもって語る預言者の敵となると、主は言われる。
19488 24 23 32 主は仰せられる、見よ、わたしは偽りの夢を預言する者の敵となる。彼らはそれを語り、またその偽りと大言をもってわたしの民を惑わす。わたしが彼らをつかわしたのではなく、また彼らに命じたのでもない。それで彼らはこの民にすこしも益にならないと、主は言われる。
19489 24 23 33 この民のひとり、または預言者、または祭司があなたに、『主の重荷はなんですか』と問うならば、彼らに答えなさい、『あなたがたがその重荷です。そして主は、あなたがたを捨てると言っておられます』と。
19490 24 23 34 そして、『主の重荷』と言うその預言者、祭司、または民のひとりを、その家族と共にわたしは罰する。
19491 24 23 35 あなたがたは、みな互に、隣り人に、また兄弟に、こう言わなければならない、『主はなんと答えられましたか』、『主はなんと言われましたか』と。
19492 24 23 36 しかし重ねて『主の重荷』と言ってはならない。重荷は人おのおのの自分の言葉だからである。あなたがたは生ける神、万軍の主なるわれわれの神の言葉を曲げる者である。
19493 24 23 37 あなたは預言者にこう言わなければならない、『主はあなたになんと答えられましたか』、『主はなんと言われましたか』と。
19494 24 23 38 もしあなたがたが『主の重荷』と言うならば、主はこう仰せられる、『わたしが人をあなたがたにつかわして、あなたがたは「主の重荷」と言ってはならないと言わせたのに、あなたがたは「主の重荷」という言葉を言ったので、
19495 24 23 39 わたしは必ずあなたがたを捕え移させ、あなたがたとあなたがたの先祖とに与えたこの町と、あなたがたとを、わたしの前から捨て去る。
19496 24 23 40 そして、忘れられることのない永遠のはずかしめと永遠の恥を、あなたがたにこうむらせる』」。
19497 24 24 1 バビロンの王ネブカデレザルがユダの王エホヤキムの子エコニヤおよびユダの君たちと工匠と鍛冶をエルサレムからバビロンに移して後、主はわたしにこの幻をお示しになった。見よ、主の宮の前に置かれているいちじくを盛った二つのかごがあった。
19498 24 24 2 その一つのかごには、はじめて熟したような非常に良いいちじくがあり、ほかのかごには非常に悪くて食べられないほどの悪いいちじくが入れてあった。
19499 24 24 3 主はわたしに、「エレミヤよ、何を見るか」と言われた。わたしは、「いちじくです。その良いいちじくは非常によく、悪いほうのいちじくは非常に悪くて、食べられません」と答えた。
19500 24 24 4 主の言葉がまたわたしに臨んだ、
19501 24 24 5 「イスラエルの神、主はこう仰せられる、この所からカルデヤびとの地に追いやったユダの捕われ人を、わたしはこの良いいちじくのように顧みて恵もう。
19502 24 24 6 わたしは彼らに目をかけてこれを恵み、彼らをこの地に返し、彼らを建てて倒さず、植えて抜かない。
19503 24 24 7 わたしは彼らにわたしが主であることを知る心を与えよう。彼らはわたしの民となり、わたしは彼らの神となる。彼らは一心にわたしのもとに帰ってくる。
19504 24 24 8 主はこう仰せられる、わたしはユダの王ゼデキヤとそのつかさたち、およびエルサレムの人の残ってこの地にいる者、ならびにエジプトの地に住んでいる者を、この悪くて食べられない悪いいちじくのようにしよう。
19505 24 24 9 わたしは彼らを地のもろもろの国で、忌みきらわれるものとし、またわたしの追いやるすべての所で、はずかしめに会わせ、ことわざとなり、あざけりと、のろいに会わせる。
19506 24 24 10 わたしはつるぎと、ききんと、疫病を彼らのうちに送って、ついに彼らをわたしが彼らとその先祖とに与えた地から絶えさせる」。
19507 24 25 1 ユダの王ヨシヤの子エホヤキムの四年(バビロンの王ネブカデレザルの元年)にユダのすべての民についての言葉がエレミヤに臨んだ。
19508 24 25 2 預言者エレミヤはこの言葉をユダのすべての民とエルサレムに住むすべての人に告げて言った、
19509 24 25 3 「ユダの王アモンの子ヨシヤの十三年から今日にいたるまで二十三年の間、主の言葉がわたしに臨んだ。わたしはたゆまずにそれをあなたがたに語ってきたが、あなたがたは聞かなかった。
19510 24 25 4 主はたゆまず、そのしもべである預言者を、あなたがたにつかわされたが、あなたがたは聞かずまた耳を傾けて聞こうともしなかった。
19511 24 25 5 彼らは言った、『あなたがたはおのおの今その悪の道と悪い行いを捨てなさい。そうすれば主が昔からあなたがたと先祖たちとに与えられた地に永遠に住むことができる。
19512 24 25 6 あなたがたは、ほかの神に従って、それに仕え、それを拝んではならない。あなたがたの手で作ったものをもって、わたしを怒らせてはならない。このようなことをしないなら、わたしはあなたがたをそこなうことはない』と。
19513 24 25 7 しかしあなたがたはわたしに聞き従わず、あなたがたの手で作った物をもって、わたしを怒らせて自ら害を招いたと、主は言われる。
19514 24 25 8 それゆえ万軍の主はこう仰せられる、あなたがたがわたしの言葉に聞き従わないゆえ、
19515 24 25 9 見よ、わたしは北の方のすべての種族と、わたしのしもべであるバビロンの王ネブカデレザルを呼び寄せて、この地とその民と、そのまわりの国々を攻め滅ぼさせ、これを忌みきらわれるものとし、人の笑いものとし、永遠のはずかしめとすると、主は言われる。
19516 24 25 10 またわたしは喜びの声、楽しみの声、花婿の声、花嫁の声、ひきうすの音、ともしびの光を彼らの中に絶えさせる。
19517 24 25 11 この地はみな滅ぼされて荒れ地となる。そしてその国々は七十年の間バビロンの王に仕える。
19518 24 25 12 主は言われる、七十年の終った後に、わたしはバビロンの王と、その民と、カルデヤびとの地を、その罪のために罰し、永遠の荒れ地とする。
19519 24 25 13 わたしはあの地について、わたしが語ったすべての言葉をその上に臨ませる。これはエレミヤが、万国のことについて預言したものであって、みなこの書にしるされている。
19520 24 25 14 多くの国々と偉大な王たちとは、彼らをさえ奴隷として仕えさせる。わたしは彼らの行いと、その手のわざに従って報いる」。
19521 24 25 15 イスラエルの神、主はわたしにこう仰せられた、「わたしの手から、この怒りの杯を受けて、わたしがあなたをつかわす国々の民に飲ませなさい。
19522 24 25 16 彼らは飲んで、よろめき狂う。これはわたしが彼らのうちに、つるぎをつかわそうとしているからである」。
19523 24 25 17 こうしてわたしは主の手から杯を受け、主がわたしをつかわされた国々の民に飲ませた。
19524 24 25 18 すなわちエルサレムとユダのすべての町と、その王たちおよびそのつかさたちに飲ませて、それらを滅ぼし、荒れ地とし、人の笑いものとし、のろわれるものとした。今日のとおりである。
19525 24 25 19 またエジプトの王パロとその家来たち、その君たち、そのすべての民と、
19526 24 25 20 もろもろの寄留の異邦人、およびウズの地のすべての王たち、およびペリシテびとの地のすべての王たち、(アシケロン、ガザ、エクロン、アシドドの残りの者)、
19527 24 25 21 エドム、モアブ、アンモンの子孫、
19528 24 25 22 ツロのすべての王たち、シドンのすべての王たち、海のかなたの海沿いの地の王たち、
19529 24 25 23 デダン、テマ、ブズおよびすべて髪の毛のすみずみをそる者、
19530 24 25 24 アラビヤのすべての王たち、荒野の雑種の民のすべての王たち、
19531 24 25 25 ジムリのすべての王たち、エラムのすべての王たち、メデアのすべての王たち、
19532 24 25 26 北のすべての王たちの遠き者、近き者もつぎつぎに、またすべて地のおもてにある世の国々の王たちもこの杯を飲む。そして彼らの次にバビロンの王もこれを飲む。
19533 24 25 27 「それであなたは彼らに言いなさい、『万軍の主、イスラエルの神はこう仰せられる、飲め、酔って吐け、倒れて再び立つな、わたしがあなたがたのうちに、つるぎをつかわすからである』」。
19534 24 25 28 「もし彼らがあなたの手から杯を受けて飲むことをしないならば、あなたは彼らに言いなさい、『万軍の主はこう仰せられる、あなたがたは必ず飲まなければならない。
19535 24 25 29 見よ、わたしの名をもって呼ばれるこの町にさえ災を下すのだ。どうしてあなたがたが罰を免れることができようか。あなたがたは罰を免れることはできない。わたしがつるぎを呼び寄せて、地に住むすべての者を攻めるからであると、万軍の主は仰せられる』。
19536 24 25 30 それゆえ、あなたは彼らにこのすべての言葉を預言して言いなさい、『主は高い所から呼ばわり、その聖なるすまいから声を出し、自分のすみかに向かって大いに呼ばわり、地に住むすべての者に向かってぶどうを踏む者のように叫ばれる。
19537 24 25 31 叫びは地の果にまで響きわたる。主が国々と争い、すべての肉なる者をさばき、悪人をつるぎに渡すからであると、主は言われる』。
19538 24 25 32 万軍の主はこう仰せられる、見よ、国から国へ災が出て行く。大きなあらしが地の果からおこる。
19539 24 25 33 その日、主に殺される人々は、地のこの果から、かの果に及ぶ。彼らは悲しまれず、集められず、また葬られずに、地のおもてに糞土となる。
19540 24 25 34 牧者よ、嘆き叫べ、群れのかしらたちよ、灰の中にまろべ。あなたがたのほふられる日、散らされる日が来たからだ。あなたがたは選び分けられた雄羊のように倒れる。
19541 24 25 35 牧者には、のがれ場なく、群れのかしらたちは逃げる所がない。
19542 24 25 36 牧者の叫び声と、群れのかしらたちの嘆きの声が聞える。主が彼らの牧場を滅ぼしておられるからだ。
19543 24 25 37 主の激しい怒りによって、平和な牧場は荒れていく。
19544 24 25 38 ししのように彼はその巣を出た。主のつるぎと、その激しい怒りによって、彼らの地は荒れ地となった」。
19545 24 26 1 ユダの王ヨシヤの子エホヤキムが世を治めた初めのころ、主からこの言葉があった、
19546 24 26 2 「主はこう仰せられる、主の宮の庭に立ち、わたしがあなたに命じて言わせるすべての言葉を、主の宮で礼拝するために来ているユダの町々の人々に告げなさい。ひと言をも言い残しておいてはならない。
19547 24 26 3 彼らが聞いて、おのおのその悪い道を離れることがあるかも知れない。そのとき、わたしは彼らの行いの悪いために、災を彼らに下そうとしたのを思いなおす。
19548 24 26 4 あなたは彼らに言いなさい、『主はこう仰せられる、もしあなたがたがわたしに聞き従わず、わたしがあなたがたの前に定めおいた律法を行わず、
19549 24 26 5 わたしがあなたがたに、しきりにつかわすわたしのしもべである預言者の言葉に聞き従わないならば、(あなたがたは聞き従わなかったが、)
19550 24 26 6 わたしはこの宮をシロのようにし、またこの町を地の万国にのろわれるものとする』」。
19551 24 26 7 祭司と預言者およびすべての民は、エレミヤが主の宮でこれらの言葉を語るのを聞いた。
19552 24 26 8 エレミヤが主に命じられたすべての言葉を民に告げ終った時、祭司と預言者および民はみな彼を捕えて言った、「あなたは死ななければならない。
19553 24 26 9 なぜあなたは主の名によって預言し、この宮はシロのようになり、この町は荒されて住む人もなくなるであろうと言ったのか」と。民はみな主の宮に集まってエレミヤを取り囲んだ。
19554 24 26 10 ユダのつかさたちはこの事を聞いて王の宮殿を出て主の宮に上り、主の宮の「新しい門」の入口に座した。
19555 24 26 11 祭司と預言者らは、つかさたちとすべての民に訴えて言った、「この人は死刑に処すべき者です。あなたがたが自分の耳で聞かれたように、この町に逆らう預言をしたのです」。
19556 24 26 12 その時エレミヤは、つかさたちとすべての民に言った、「主はわたしをつかわし、この宮とこの町にむかって、預言をさせられたので、そのすべての言葉をあなたがたは聞いた。
19557 24 26 13 それで、あなたがたは今、あなたがたの道と行いを改め、あなたがたの神、主の声に聞き従いなさい。そうするならば主はあなたがたに災を下そうとしたことを思いなおされる。
19558 24 26 14 見よ、わたしはあなたがたの手の中にある。あなたがたの目に、良いと見え、正しいと思うことをわたしに行うがよい。
19559 24 26 15 ただ明らかにこのことを知っておきなさい。もしあなたがたがわたしを殺すならば、罪なき者の血はあなたがたの身と、この町と、その住民とに帰する。まことに主がわたしをつかわして、このすべての言葉をあなたがたの耳に、告げさせられたからである」。
19560 24 26 16 つかさたちと、すべての民とは、祭司と預言者に言った、「この人は死刑に処すべき者ではない。われわれの神、主の名によってわれわれに語ったのである」。
19561 24 26 17 その時この地の長老たち数人が立って、そこに集まっているすべての者に告げて言った、
19562 24 26 18 「ユダの王ヒゼキヤの世に、モレシテびとミカはユダのすべての民に預言して言った、『万軍の主はこう仰せられる、シオンは畑のように耕され、エルサレムは石塚となり、宮の山は木のおい茂る高い所となる』。
19563 24 26 19 ユダの王ヒゼキヤと、すべてのユダの人は彼を殺そうとしたことがあろうか。ヒゼキヤは主を恐れ、主の恵みを求めたので、主は彼らに災を下すとお告げになったのを思いなおされたではないか。しかし、われわれは、自分の身に大きな災を招こうとしている」。
19564 24 26 20 主の名によって預言した人がほかにもあった。すなわちキリアテ・ヤリムのシマヤの子ウリヤである。彼はエレミヤとおなじような言葉をもって、この町とこの地にむかって預言した。
19565 24 26 21 エホヤキム王と、そのすべての勇士と、すべてのつかさたちはその言葉を聞いた。そして王は彼を殺そうと思ったが、ウリヤはこれを聞いて恐れ、エジプトに逃げて行ったので、
19566 24 26 22 エホヤキム王は人をエジプトにつかわした。すなわちアクボルの子エルナタンと他の数名の人を、エジプトにつかわした。
19567 24 26 23 彼らはウリヤをエジプトから引き出し、エホヤキム王のもとに連れてきたので、王はつるぎをもって彼を殺し、その死体を共同墓地に捨てさせた。
19568 24 26 24 しかしシャパンの子アヒカムはエレミヤを助け、民の手に渡されて殺されることのないようにした。
19569 24 27 1 ユダの王ヨシヤの子ゼデキヤが世を治め始めたころ、この言葉が主からエレミヤに臨んだ。
19570 24 27 2 すなわち主はこうわたしに仰せられた、「綱と、くびきとを作って、それをあなたの首につけ、
19571 24 27 3 エルサレムにいるユダの王ゼデキヤの所に来た使者たちによって、エドムの王、モアブの王、アンモンびとの王、ツロの王、シドンの王に言いおくりなさい。
19572 24 27 4 彼らの主君にこの命を伝えさせなさい、『万軍の主、イスラエルの神はこう仰せられる、あなたがたは主君にこのように告げなければならない。
19573 24 27 5 わたしは大いなる力と伸べた腕とをもって、地と地の上にいる人と獣とをつくった者である。そして心のままに地を人に与える。
19574 24 27 6 いまわたしはこのすべての国を、わたしのしもべであるバビロンの王ネブカデネザルの手に与え、また野の獣をも彼に与えて彼に仕えさせた。
19575 24 27 7 彼の地に時がくるまで、万国民は彼とその子とその孫に仕える。その時がくるならば、多くの国と大いなる王たちとが彼を自分の奴隷にする。
19576 24 27 8 バビロンの王ネブカデネザルに仕えず、バビロンの王のくびきを自分の首に負わない民と国とは、わたしがつるぎと、ききんと、疫病をもって罰し、ついには彼の手によってことごとく滅ぼすと主は言われる。
19577 24 27 9 それで、あなたがたの預言者、占い師、夢みる者、法術師、魔法使が、「あなたがたはバビロンの王に仕えることはない」と言っても、聞いてはならない。
19578 24 27 10 彼らはあなたがたに偽りを預言して、あなたがたを自分の国から遠く離れさせ、わたしに、あなたがたを追い出してあなたがたを滅ぼさせるのである。
19579 24 27 11 しかしバビロンの王のくびきを首に負って、彼に仕える国民を、わたしはその故国に残らせ、それを耕して、そこに住まわせると主は言われる』」。
19580 24 27 12 わたしはユダの王ゼデキヤにも同じように言った、「あなたがたは、バビロンの王のくびきを自分の首に負って、彼とその民とに仕え、そして生きなさい。
19581 24 27 13 どうしてあなたと、あなたの民とが、主がバビロンの王に仕えない国民について言われたように、つるぎと、ききんと、疫病に死んでよかろうか。
19582 24 27 14 あなたがたはバビロンの王に仕えることはないとあなたがたに告げる預言者の言葉を聞いてはならない。彼らがあなたがたに預言していることは偽りであるからだ。
19583 24 27 15 主は言われる、わたしが彼らをつかわしたのではないのに、彼らはわたしの名によって偽って預言している。そのために、わたしはあなたがたを追い払い、あなたがたと、あなたがたに預言する預言者たちを滅ぼすようになるのだ」。
19584 24 27 16 わたしはまた祭司とこのすべての民とに語って言った、「主はこう仰せられる、『見よ、主の宮の器は今、すみやかに、バビロンから返されてくる』とあなたがたに預言する預言者の言葉を聞いてはならない。それは、彼らがあなたがたに預言していることは偽りであるからだ。
19585 24 27 17 彼らのいうことを聞いてはならない。バビロンの王に仕え、そして生きなさい。どうしてこの町が荒れ地となってよかろうか。
19586 24 27 18 もし彼らが預言者であって、主の言葉が彼らのうちにあるのであれば、主の宮とユダの王の宮殿とエルサレムとに残されている器が、バビロンに移されないように、万軍の主に、とりなしを願うべきだ。
19587 24 27 19 万軍の主は柱と海と台、その他この町に残っている器について、こう仰せられる。
19588 24 27 20 これはバビロンの王ネブカデネザルが、ユダの王エホヤキムの子エコニヤ、およびユダとエルサレムのすべての身分の尊い人々を捕えてエルサレムからバビロンに移したときに、持ち去らなかった器である。――
19589 24 27 21 すなわち万軍の主、イスラエルの神は、主の宮とユダの王の宮殿とエルサレムとに残されている器について、こう仰せられる。
19590 24 27 22 これらはバビロンに携え行かれ、わたしが顧みる日までそこにおかれている。その後、わたしはこれらのものを、この所に携え帰らせると主は言われる」。
19591 24 28 1 その年、すなわちユダの王ゼデキヤの治世の初め、その第四年の五月、ギベオン出身の預言者であって、アズルの子であるハナニヤは、主の宮で祭司とすべての民の前でわたしに語って言った、
19592 24 28 2 「万軍の主、イスラエルの神はこう仰せられる、わたしはバビロンの王のくびきを砕いた。
19593 24 28 3 二年の内に、バビロンの王ネブカデネザルが、この所から取ってバビロンに携えて行った主の宮の器を、皆この所に帰らせる。
19594 24 28 4 わたしはまたユダの王エホヤキムの子エコニヤと、バビロンに行ったユダのすべての捕われ人をこの所に帰らせる。それは、わたしがバビロンの王のくびきを、砕くからであると主は言われる」。
19595 24 28 5 そこで預言者エレミヤは主の宮のうちに立っている祭司とすべての民の前で、預言者ハナニヤに言った。
19596 24 28 6 すなわち預言者エレミヤは言った、「アァメン。どうか主がこのようにしてくださるように。どうかあなたの預言した言葉が成就して、バビロンに携えて行った主の宮の器とすべての捕われ人を、主がバビロンから再びこの所に帰らせてくださるように。
19597 24 28 7 ただし、今わたしがあなたとすべての民の聞いている所で語るこの言葉を聞きなさい。
19598 24 28 8 わたしと、あなたの先に出た預言者は、むかしから、多くの地と大きな国について、戦いと、ききんと、疫病の事を預言した。
19599 24 28 9 平和を預言する預言者は、その預言者の言葉が成就するとき、真実に主がその預言者をつかわされたのであることが知られるのだ」。
19600 24 28 10 そこで預言者ハナニヤは預言者エレミヤの首から、くびきを取って、それを砕いた。
19601 24 28 11 そしてハナニヤは、すべての民の前で語り、「主はこう仰せられる、『わたしは二年のうちに、このように、万国民の首からバビロンの王ネブカデネザルのくびきを離して砕く』」と言った。預言者エレミヤは去って行った。
19602 24 28 12 預言者ハナニヤが預言者エレミヤの首から、くびきを離して砕いた後、しばらくして主の言葉がエレミヤに臨んだ、
19603 24 28 13 「行って、ハナニヤに告げなさい、『主はこう仰せられる、あなたは木のくびきを砕いたが、わたしはそれに替えて鉄のくびきを作ろう。
19604 24 28 14 万軍の主、イスラエルの神はこう仰せられる、わたしは鉄のくびきをこの万国民の首に置いて、バビロンの王ネブカデネザルに仕えさせる。彼らはこれに仕える。わたしは野の獣をも彼に与えた』」。
19605 24 28 15 預言者エレミヤはまた預言者ハナニヤに言った、「ハナニヤよ、聞きなさい。主があなたをつかわされたのではない。あなたはこの民に偽りを信じさせた。
19606 24 28 16 それゆえ主は仰せられる、『わたしはあなたを地のおもてから除く。あなたは主に対する反逆を語ったので、今年のうちに死ぬのだ』と」。
19607 24 28 17 預言者ハナニヤはその年の七月に死んだ。
19608 24 29 1 これは預言者エレミヤがエルサレムから、かの捕え移された長老たち、およびネブカデネザルによってエルサレムからバビロンに捕え移された祭司と預言者ならびにすべての民に送った手紙に書きしるした言葉である。
19609 24 29 2 それはエコニヤ王と太后と宦官およびユダとエルサレムのつかさたち、および工匠と鍛冶とがエルサレムを去ってのちに書かれたものであって、
19610 24 29 3 エレミヤはその手紙をシャパンの子エラサおよびヒルキヤの子ゲマリヤの手によって送った。この人々はユダの王ゼデキヤがバビロンに行かせ、バビロンの王ネブカデネザルのもとにつかわしたものであった。その手紙には次のように書いてあった。
19611 24 29 4 「万軍の主、イスラエルの神は、すべて捕え移された者、すなわち、わたしがエルサレムから、バビロンに捕え移させた者に、こう言う、
19612 24 29 5 あなたがたは家を建てて、それに住み、畑を作ってその産物を食べよ。
19613 24 29 6 妻をめとって、むすこ娘を産み、また、そのむすこに嫁をめとり、娘をとつがせて、むすこ娘を産むようにせよ。その所であなたがたの数を増し、減ってはならない。
19614 24 29 7 わたしがあなたがたを捕え移させたところの町の平安を求め、そのために主に祈るがよい。その町が平安であれば、あなたがたも平安を得るからである。
19615 24 29 8 万軍の主、イスラエルの神はこう言われる、あなたがたのうちにいる預言者と占い師に惑わされてはならない。また彼らの見る夢に聞き従ってはならない。
19616 24 29 9 それは、彼らがわたしの名によってあなたがたに偽りを預言しているからである。わたしが彼らをつかわしたのではないと主は言われる。
19617 24 29 10 主はこう言われる、バビロンで七十年が満ちるならば、わたしはあなたがたを顧み、わたしの約束を果し、あなたがたをこの所に導き帰る。
19618 24 29 11 主は言われる、わたしがあなたがたに対していだいている計画はわたしが知っている。それは災を与えようというのではなく、平安を与えようとするものであり、あなたがたに将来を与え、希望を与えようとするものである。
19619 24 29 12 その時、あなたがたはわたしに呼ばわり、来て、わたしに祈る。わたしはあなたがたの祈を聞く。
19620 24 29 13 あなたがたはわたしを尋ね求めて、わたしに会う。もしあなたがたが一心にわたしを尋ね求めるならば、
19621 24 29 14 わたしはあなたがたに会うと主は言われる。わたしはあなたがたの繁栄を回復し、あなたがたを万国から、すべてわたしがあなたがたを追いやった所から集め、かつ、わたしがあなたがたを捕われ離れさせたそのもとの所に、あなたがたを導き帰ろうと主は言われる。
19622 24 29 15 あなたがたは、『主はバビロンでわれわれのために預言者たちを起された』と言ったが、――
19623 24 29 16 主はダビデの位に座している王と、この町に住むすべての民で、あなたがたと共に捕え移されなかった兄弟たちについて、こう言われる、
19624 24 29 17 『万軍の主はこう言われる、見よ、わたしは、つるぎと、ききんと、疫病を彼らに送り、彼らを悪くて食べられない腐ったいちじくのようにしてしまう。
19625 24 29 18 わたしはつるぎと、ききんと、疫病をもって彼らのあとを追い、また彼らを地の万国に忌みきらわれるものとなし、わたしが彼らを追いやる国々で、のろいとなり、恐れとなり、物笑いとなり、はずかしめとならせる。
19626 24 29 19 それは彼らがわたしの言葉に聞き従わなかったからであると主は言われる。わたしはこの言葉を、わたしのしもべである預言者たちによって、しきりに送ったが、あなたがたは聞こうともしなかったと主は言われる』。――
19627 24 29 20 わたしがエルサレムからバビロンに送ったあなたがたすべての捕われ人よ、主の言葉を聞きなさい、
19628 24 29 21 『わたしの名によって、あなたがたに偽りを預言しているコラヤの子アハブと、マアセヤの子ゼデキヤについて万軍の主、イスラエルの神はこう仰せられる、見よ、わたしは彼らをバビロンの王ネブカデレザルの手に渡す。王はあなたがたの目の前で彼らを殺す。
19629 24 29 22 バビロンにいるユダの捕われ人は皆、彼らの名を、のろいの言葉に用いて、「主があなたをバビロンの王が火で焼いたゼデキヤとアハブのようにされるように」という。
19630 24 29 23 それは、彼らがイスラエルのうちで愚かな事をし、隣の妻と不義を行い、わたしが命じたのでない偽りの言葉を、わたしの名によって語ったことによるのである。わたしはそれを知っており、またその証人であると主は言われる』」。
19631 24 29 24 ネヘラムびとシマヤにあなたは言いなさい、
19632 24 29 25 「万軍の主、イスラエルの神はこう仰せられる、あなたは自分の名でエルサレムにいるすべての民と、マアセヤの子祭司ゼパニヤおよびすべての祭司に手紙を送って言う、
19633 24 29 26 『主は祭司エホヤダに代ってあなたを祭司とし、主の宮をつかさどらせ、すべて狂い、かつ預言する者を足かせと首かせにつながせられる。
19634 24 29 27 そうであるのに、どうしてあなたは、あなたがたに預言しているアナトテのエレミヤを戒めないのか。
19635 24 29 28 彼はバビロンにいるわれわれの所に手紙を送って、捕われの時はなお長いゆえ、あなたがたは家を建ててそこに住み、畑を作ってその産物を食べよと言ってきた』」。
19636 24 29 29 祭司ゼパニヤはこの手紙を預言者エレミヤに読み聞かせた。
19637 24 29 30 その時、主の言葉がエレミヤに臨んだ、
19638 24 29 31 「すべての捕われ人に書き送って言いなさい、ネヘラムびとシマヤの事について主はこう仰せられる、わたしはシマヤをつかわさなかったのに、彼があなたがたに預言して偽りを信じさせたので、
19639 24 29 32 主はこう仰せられる、見よ、わたしはネヘラムびとシマヤとその子孫を罰する。彼は主に対する反逆を語ったゆえ、彼に属する者で、この民のうちに住み、わたしが自分の民に行おうとしている良い事を見るものはひとりもいない」。
19640 24 30 1 主からエレミヤに臨んだ言葉。
19641 24 30 2 「イスラエルの神、主はこう仰せられる、わたしがあなたに語った言葉を、ことごとく書物にしるしなさい。
19642 24 30 3 主は言われる、見よ、わたしがわが民イスラエルとユダの繁栄を回復する日が来る。主がこれを言われる。わたしは彼らを、その先祖に与えた地に帰らせ、彼らにこれを保たせる」。
19643 24 30 4 これは主がイスラエルとユダについて言われた言葉である。
19644 24 30 5 「主はこう仰せられる、われわれはおののきの声を聞いた。恐れがあり、平安はない。
19645 24 30 6 子を産む男があるか、尋ねてみよ。どうして男がみな子を産む女のように手を腰におくのをわたしは見るのか。なぜ、どの人の顔色も青く変っているのか。
19646 24 30 7 悲しいかな、その日は大いなる日であって、それに比べるべき日はない。それはヤコブの悩みの時である。しかし彼はそれから救い出される。
19647 24 30 8 万軍の主は仰せられる、その日わたしは彼らの首からそのくびきを砕き離し、彼らの束縛を解く。異邦の人はもはや、彼らを使役することをしない。
19648 24 30 9 彼らはその神、主と、わたしが彼らのために立てるその王ダビデに仕える。
19649 24 30 10 主は仰せられる、わがしもべヤコブよ、恐れることはない、イスラエルよ、驚くことはない。見よ、わたしがあなたを救って、遠くからかえし、あなたの子孫を救って、その捕え移された地からかえすからだ。ヤコブは帰ってきて、穏やかに安らかにおり、彼を恐れさせる者はない。
19650 24 30 11 主は言われる、わたしはあなたと共にいて、あなたを救う。わたしはあなたを散らした国々をことごとく滅ぼし尽す。しかし、あなたを滅ぼし尽すことはしない。わたしは正しい道に従ってあなたを懲らしめる。決して罰しないではおかない。
19651 24 30 12 主はこう仰せられる、あなたの痛みはいえず、あなたの傷は重い。
19652 24 30 13 あなたの訴えを支持する者はなく、あなたの傷をつつむ薬はなく、あなたをいやすものもない。
19653 24 30 14 あなたの愛する者は皆あなたを忘れてあなたの事を心に留めない。それは、あなたのとがが多く、あなたの罪がはなはだしいので、わたしがあだを撃つようにあなたを撃ち、残忍な敵のように懲らしたからだ。
19654 24 30 15 なぜ、あなたの傷のために叫ぶのか、あなたの悩みはいえることはない。あなたのとがが多く、あなたの罪がはなはだしいので、これらの事をわたしはあなたにしたのである。
19655 24 30 16 しかし、すべてあなたを食い滅ぼす者は食い滅ぼされ、あなたをしえたげる者は、ひとり残らず、捕え移され、あなたをかすめる者は、かすめられ、すべてあなたの物を奪う者は奪われる者となる。
19656 24 30 17 主は言われる、わたしはあなたの健康を回復させ、あなたの傷をいやす。それは、人があなたを捨てられた者とよび、『だれも心に留めないシオン』というからである。
19657 24 30 18 主はこう仰せられる、見よ、わたしはヤコブの天幕を再び栄えさせ、そのすまいにあわれみを施す。町は、その丘に建てなおされ、宮殿はもと立っていた所に立つ。
19658 24 30 19 感謝の歌と喜ぶ者の声とが、その中から出る。わたしが彼らを増すゆえ、彼らは少なくはなく、また彼らを尊ばれしめるゆえ、卑しめられることはない。
19659 24 30 20 その子らは、いにしえのようになり、その会衆はわたしの前に堅く立つ。すべて彼らをしえたげる者をわたしは罰する。
19660 24 30 21 その君は彼ら自身のうちのひとりであり、そのつかさは、そのうちから出る。わたしは彼をわたしに近づけ、彼はわたしに近づく。だれか自分の命をかけてわたしに近づく者があろうかと主は言われる。
19661 24 30 22 あなたがたは、わたしの民となり、わたしはあなたがたの神となる」。
19662 24 30 23 見よ、主の暴風がくる。憤りと、つむじ風が出て、悪人のこうべをうつ。
19663 24 30 24 主の激しい怒りは、み心に思い定められたことを行って、これを遂げるまで、退くことはない。末の日にあなたがたはこれを悟るのである。
19664 24 31 1 「主は言われる、その時わたしはイスラエルの全部族の神となり、彼らはわたしの民となる」。
19665 24 31 2 主はこう言われる、「つるぎをのがれて生き残った民は、荒野で恵みを得た。イスラエルが安息を求めた時、
19666 24 31 3 主は遠くから彼に現れた。わたしは限りなき愛をもってあなたを愛している。それゆえ、わたしは絶えずあなたに真実をつくしてきた。
19667 24 31 4 イスラエルのおとめよ、再びわたしはあなたを建てる、あなたは建てられる。あなたは再び鼓をもって身を飾り、出て行って、喜び楽しむ者と共に踊る。
19668 24 31 5 またあなたはぶどうの木をサマリヤの山に植える。植える者は、植えてその実を食べることができる。
19669 24 31 6 見守る者がエフライムの山の上に立って呼ばわる日が来る。『立って、シオンに上り、われわれの神、主に、もうでよう』と」。
19670 24 31 7 主はこう仰せられる、「ヤコブのために喜んで声高く歌い、万国のかしらのために叫び声をあげよ。告げ示し、ほめたたえて言え、『主はその民イスラエルの残りの者を救われた』と。
19671 24 31 8 見よ、わたしは彼らを北の国から連れ帰り、彼らを地の果から集める。彼らのうちには、盲人やあしなえ、妊婦、産婦も共にいる。彼らは大きな群れとなって、ここに帰ってくる。
19672 24 31 9 彼らは泣き悲しんで帰ってくる。わたしは慰めながら彼らを導き帰る。彼らがつまずかないように、まっすぐな道により、水の流れのそばを通らせる。それは、わたしがイスラエルの父であり、エフライムはわたしの長子だからである。
19673 24 31 10 万国の民よ、あなたがたは主の言葉を聞き、これを遠い、海沿いの地に示して言いなさい、『イスラエルを散らした者がこれを集められる。牧者がその群れを守るようにこれを守られる』と。
19674 24 31 11 すなわち主はヤコブをあがない、彼らよりも強い者の手から彼を救いだされた。
19675 24 31 12 彼らは来てシオンの山で声高く歌い、主から賜わった良い物のために、穀物と酒と油および若き羊と牛のために、喜びに輝く。その魂は潤う園のようになり、彼らは重ねて憂えることがない。
19676 24 31 13 その時おとめたちは舞って楽しみ、若い者も老いた者も共に楽しむ。わたしは彼らの悲しみを喜びにかえ、彼らを慰め、憂いの代りに喜びを与える。
19677 24 31 14 わたしは多くのささげ物で、祭司の心を飽かせ、わたしの良き物で、わたしの民を満ち足らせると主は言われる」。
19678 24 31 15 主はこう仰せられる、「嘆き悲しみ、いたく泣く声がラマで聞える。ラケルがその子らのために嘆くのである。子らがもはやいないので、彼女はその子らのことで慰められるのを願わない」。
19679 24 31 16 主はこう仰せられる、「あなたは泣く声をとどめ、目から涙をながすことをやめよ。あなたのわざに報いがある。彼らは敵の地から帰ってくると主は言われる。
19680 24 31 17 あなたの将来には希望があり、あなたの子供たちは自分の国に帰ってくると主は言われる。
19681 24 31 18 わたしは確かに、エフライムがこう言って嘆くの聞いた、『あなたはわたしを懲しめられた、わたしはくびきに慣れない子牛のように懲しめをうけた。主よ、あなたはわたしの神、主でいらせられる、わたしを連れ帰って、もとにかえしてください。
19682 24 31 19 わたしはそむき去った後、悔い、教をうけた後、ももを打った。若い時のはずかしめが身にあるので、わたしは恥じ、うろたえた』。
19683 24 31 20 主は言われる、エフライムはわたしの愛する子、わたしの喜ぶ子であろうか。わたしは彼について語るごとに、なお彼を忘れることができない。それゆえ、わたしの心は彼をしたっている。わたしは必ず彼をあわれむ。
19684 24 31 21 みずからのために道しるべを置き、みずからのために標柱を立てよ。大路に、あなたの通って行った道に心を留めよ。イスラエルのおとめよ、帰れ、これらの、あなたの町々に帰れ。
19685 24 31 22 不信の娘よ、いつまでさまようのか。主は地の上に新しい事を創造されたのだ、女が男を保護する事である」。
19686 24 31 23 万軍の主、イスラエルの神はこう言われる、「わたしが彼らを再び栄えさせる時、人々はまたユダの地とその町々でこの言葉を言う、『正義のすみかよ、聖なる山よ、どうか主がおまえを祝福してくださるように』。
19687 24 31 24 ユダとそのすべての町の人、および農夫と群れを飼って歩き回る者は共にそこに住む。
19688 24 31 25 わたしが疲れた魂を飽き足らせ、すべて悩んでいる魂を慰めるからである」。
19689 24 31 26 ここでわたしは目をさましたが、わたしの眠りは、ここちよかった。
19690 24 31 27 「主は言われる、見よ、わたしが人の種と獣の種とをイスラエルの家とユダの家とにまく日が来る。
19691 24 31 28 わたしは彼らを抜き、砕き、倒し、滅ぼし、悩まそうと待ちかまえていたように、また彼らを建て、植えようと待ちかまえていると主は言われる。
19692 24 31 29 その時、彼らはもはや、『父がすっぱいぶどうを食べたので、子どもの歯がうく』とは言わない。
19693 24 31 30 人はめいめい自分の罪によって死ぬ。すっぱいぶどうを食べる人はみな、その歯がうく。
19694 24 31 31 主は言われる、見よ、わたしがイスラエルの家とユダの家とに新しい契約を立てる日が来る。
19695 24 31 32 この契約はわたしが彼らの先祖をその手をとってエジプトの地から導き出した日に立てたようなものではない。わたしは彼らの夫であったのだが、彼らはそのわたしの契約を破ったと主は言われる。
19696 24 31 33 しかし、それらの日の後にわたしがイスラエルの家に立てる契約はこれである。すなわちわたしは、わたしの律法を彼らのうちに置き、その心にしるす。わたしは彼らの神となり、彼らはわたしの民となると主は言われる。
19697 24 31 34 人はもはや、おのおのその隣とその兄弟に教えて、『あなたは主を知りなさい』とは言わない。それは、彼らが小より大に至るまで皆、わたしを知るようになるからであると主は言われる。わたしは彼らの不義をゆるし、もはやその罪を思わない」。
19698 24 31 35 主はこう言われる、すなわち太陽を与えて昼の光とし、月と星とを定めて夜の光とし、海をかき立てて、その波を鳴りとどろかせる者――その名は万軍の主という。
19699 24 31 36 主は言われる、「もしこの定めがわたしの前ですたれてしまうなら、イスラエルの子孫もすたって、永久にわたしの前で民であることはできない」。
19700 24 31 37 主はこう言われる、「もし上の天を量ることができ、下の地の基を探ることができるなら、そのとき、わたしはイスラエルのすべての子孫をそのもろもろの行いのために捨て去ると主は言われる」。
19701 24 31 38 主は言われる、「見よ、この町が、ハナネルの塔から隅の門まで、主のために再建される時が来る。
19702 24 31 39 測りなわはそれよりも遠くまっすぐに延びて、ガレブの丘に達し、ゴアのほうに向かう。
19703 24 31 40 死体と灰との谷の全部、またキデロンの谷に行くまでと、東のほうの馬の門のすみに行くまでとのすべての畑はみな主の聖なる所となり、永遠にわたって、ふたたび抜かれ、また倒されることはない」。
19704 24 32 1 ユダの王ゼデキヤの十年、すなわちネブカデレザルの十八年に、主の言葉がエレミヤに臨んだ。
19705 24 32 2 その時、バビロンの王の軍勢がエルサレムを攻め囲んでいて、預言者エレミヤはユダの王の宮殿にある監視の庭のうちに監禁されていた。
19706 24 32 3 ユダの王ゼデキヤが彼を閉じ込めたのであるが、王は言った、「なぜあなたは預言して言うのか、『主はこう仰せられる、見よ、わたしはこの町をバビロンの王の手に渡し、彼はこれを取る。
19707 24 32 4 またユダの王ゼデキヤはカルデヤびとの手をのがれることなく、かならずバビロンの王の手に渡され、顔と顔を合わせて彼と語り、目と目は相まみえる。
19708 24 32 5 そして彼はゼデキヤをバビロンに引いていき、ゼデキヤは、わたしが彼を顧みる時まで、そこにいると主は言われる。あなたがたは、カルデヤびとと戦っても勝つことはできない』と」。
19709 24 32 6 エレミヤは言った、「主の言葉がわたしに臨んで言われる、
19710 24 32 7 『見よ、あなたのおじシャルムの子ハナメルがあなたの所に来て言う、「アナトテにあるわたしの畑を買いなさい。それは、これを買い取り、あがなう権利があなたにあるから」と』。
19711 24 32 8 はたして主の言葉のように、わたしのいとこであるハナメルが監視の庭のうちにいるわたしの所に来て言った、『ベニヤミンの地のアナトテにあるわたしの畑を買ってください。所有するのも、あがなうのも、あなたの権利なのです。買い取ってあなたの物にしてください。これが主の言葉であるのをわたしは知っていました』。
19712 24 32 9 そこでわたしは、いとこのハナメルからアナトテにある畑を買い取り、銀十七シケルを量って彼に支払った。
19713 24 32 10 すなわち、わたしはその証書をつくって、これに記名し、それを封印し、証人を立て、はかりをもって銀を量って与えた。
19714 24 32 11 そしてわたしはその約定をしるして封印した買収証書と、封印のない写しとを取り、
19715 24 32 12 いとこのハナメルと、買収証書に記名した証人たち、および監視の庭にすわっているすべてのユダヤ人の前で、その証書をマアセヤの子であるネリヤの子バルクに与え、
19716 24 32 13 彼らの前で、わたしはバルクに命じて言った、
19717 24 32 14 『万軍の主、イスラエルの神はこう仰せられる、これらの証書すなわち、この買収証書の封印したものと、封印のない写しとを取り、これらを土の器に入れて、長く保存せよ。
19718 24 32 15 万軍の主、イスラエルの神がこう言われるからである、「この地で人々はまた家と畑とぶどう畑を買うようになる」と』。
19719 24 32 16 わたしは買収証書をネリヤの子バルクに渡したあとで主に祈って言った、
19720 24 32 17 『ああ主なる神よ、あなたは大いなる力と、伸べた腕をもって天と地をお造りになったのです。あなたのできないことは、ひとつもありません。
19721 24 32 18 あなたはいつくしみを千万人に施し、また父の罪をそののちの子孫に報いられるのです。あなたは大いなる全能の神でいらせられ、その名は万軍の主と申されます。
19722 24 32 19 あなたの計りごとは大きく、また、事を行うのに力があり、あなたの目は人々の歩むすべての道を見て、おのおのの道にしたがい、その行いの実によってこれに報いられます。
19723 24 32 20 あなたは、しるしと、不思議なわざとをエジプトの地に行い、また今日に至るまでイスラエルと全人類のうちに行い、そして今日のように名をあげられました。
19724 24 32 21 あなたは、しるしと、不思議なわざと、強い手と、伸べた腕と、大いなる恐るべき事をもって、あなたの民イスラエルをエジプトの地から導き出し、
19725 24 32 22 この地を彼らに賜わりました。これはあなたが彼らの先祖たちに与えようと誓われた乳と蜜の流れる地です。
19726 24 32 23 こうして彼らは、はいってこれを獲たのですが、あなたの声に聞き従わず、あなたの律法を行わず、すべてあなたがせよと命じられたことをしなかったので、あなたはこの災を彼らの上にお下しになりました。
19727 24 32 24 見よ、塁が築きあげられたのは、この町を取るためです。つるぎと、ききんと、疫病のために、町はこれを攻めているカルデヤびとの手に渡されます。あなたの言われたようになりましたのは、ごらんのとおりであります。
19728 24 32 25 主なる神よ、あなたはわたしに言われました、「銀をもって畑を買い、証人を立てよ」と。そうであるのに、町はカルデヤびとの手に渡されています』」。
19729 24 32 26 主の言葉がエレミヤに臨んだ、
19730 24 32 27 「見よ、わたしは主である、すべて命ある者の神である。わたしにできない事があろうか。
19731 24 32 28 それゆえ、主はこう言われる、見よ、わたしはこの町をカルデヤびとと、バビロンの王ネブカデレザルの手に渡す。彼はこれを取る。
19732 24 32 29 この町を攻めているカルデヤびとがきて、この町に火をつけて焼き払う。屋根の上で人々が、バアルに香をたき、ほかの神々に酒をそそいで、わたしを怒らせたその家をも彼らは焼く。
19733 24 32 30 それは、イスラエルの人々とユダの人々とは、その若い時から、わたしの前に悪いことのみを行い、またイスラエルの民はその手のわざをもって、わたしを怒らせることばかりをしたからであると主は言われる。
19734 24 32 31 この町はそれが建った日からきょうまで、わたしの怒りと憤りとをひき起してきたので、わたしの前からこれを除き去るのである。
19735 24 32 32 それは、イスラエルの民とユダの民とが、もろもろの悪を行って、わたしを怒らせたことによるのである。――彼らの王たちと、そのつかさたち、祭司たち、預言者たち、またユダの人々とエルサレムの住民たちが皆そうである。
19736 24 32 33 彼らはその背中をわたしに向けて顔をわたしに向けず、わたしがたゆまず教えたにもかかわらず、彼らは教を聞かず、またうけないのである。
19737 24 32 34 彼らは憎むべき物を、わが名をもって呼ばれている家にすえつけて、そこを汚し、
19738 24 32 35 またベンヒンノムの谷にバアルの高き所を築いて、むすこ娘をモレクにささげた。わたしは彼らにこのようなことを命じたことはなく、また彼らがこの憎むべきことを行って、ユダに罪を犯させようとは考えもしなかった。
19739 24 32 36 それゆえ今イスラエルの神、主は、この町、すなわちあなたがたが、『つるぎと、ききんと、疫病のためにバビロンの王の手に渡される』といっている町についてこう仰せられる、
19740 24 32 37 見よ、わたしは、わたしの怒りと憤りと大いなる怒りをもって、彼らを追いやったもろもろの国から彼らを集め、この所へ導きかえって、安らかに住まわせる。
19741 24 32 38 そして彼らはわたしの民となり、わたしは彼らの神となる。
19742 24 32 39 わたしは彼らに一つの心と一つの道を与えて常にわたしを恐れさせる。これは彼らが彼ら自身とその後の子孫の幸を得るためである。
19743 24 32 40 わたしは彼らと永遠の契約を立てて、彼らを見捨てずに恵みを施すことを誓い、またわたしを恐れる恐れを彼らの心に置いて、わたしを離れることのないようにしよう。
19744 24 32 41 わたしは彼らに恵みを施すことを喜びとし、心をつくし、精神をつくし、真実をもって彼らをこの地に植える。
19745 24 32 42 主はこう仰せられる、わたしがこのもろもろの大きな災をこの民に下したように、わたしが彼らに約束するもろもろの幸を彼らの上に下す。
19746 24 32 43 人々はこの地に畑を買うようになる。あなたがたが、『それは荒れて人も獣もいなくなり、カルデヤびとの手に渡されてしまう』といっている地である。
19747 24 32 44 人々はベニヤミンの地と、エルサレムの周囲と、ユダの町々と、山地の町々と、平地の町々と、ネゲブの町々で、銀をもって畑を買い、証書をつくって、これに記名し封印し、また証人を立てる。それは、わたしが彼らを再び栄えさせるからであると主は言われる」。
19748 24 33 1 エレミヤがなお監視の庭に閉じ込められている時、主の言葉はふたたび彼に臨んだ、
19749 24 33 2 「地を造られた主、それを形造って堅く立たせられた主、その名を主と名のっておられる者がこう仰せられる、
19750 24 33 3 わたしに呼び求めよ、そうすれば、わたしはあなたに答える。そしてあなたの知らない大きな隠されている事を、あなたに示す。
19751 24 33 4 イスラエルの神、主は塁と、つるぎとを防ぐために破壊されたこの町の家と、ユダの王の家についてこう言われる、
19752 24 33 5 カルデヤびとは来て戦い、わたしが怒りと憤りをもって殺す人々の死体を、それに満たす。わたしは人々のもろもろの悪のために、この町にわたしの顔をおおい隠した。
19753 24 33 6 見よ、わたしは健康と、いやしとを、ここにもたらして人々をいやし、豊かな繁栄と安全とを彼らに示す。
19754 24 33 7 わたしはユダとイスラエルを再び栄えさせ、彼らを建てて、もとのようにする。
19755 24 33 8 わたしは彼らがわたしに向かって犯した罪のすべてのとがを清め、彼らがわたしに向かって犯した罪と反逆のすべてのとがをゆるす。
19756 24 33 9 この町は地のもろもろの民の前に、わたしのために喜びの名となり、誉となり、栄えとなる。彼らはわたしがわたしの民に施すもろもろの恵みのことを聞く。そして、わたしがこの町に施すもろもろの恵みと、もろもろの繁栄のために恐れて身をふるわす。
19757 24 33 10 主はこう言われる、あなたがたが、『それは荒れて、人もおらず獣もいない』というこの所、すなわち、荒れて、人もおらず住む者もなく、獣もいないユダの町とエルサレムのちまたに、
19758 24 33 11 再び喜びの声、楽しみの声、花婿の声、花嫁の声、および『万軍の主に感謝せよ、主は恵みふかく、そのいつくしみは、いつまでも絶えることがない』といって、感謝の供え物を主の宮に携えてくる者の声が聞える。それは、わたしがこの地を再び栄えさせて初めのようにするからであると主は言われる。
19759 24 33 12 万軍の主はこう言われる、荒れて、人もおらず獣もいないこの所と、そのすべての町々に再びその群れを伏させる牧者のすまいがあるようになる。
19760 24 33 13 山地の町々と、平地の町々と、ネゲブの町々と、ベニヤミンの地、エルサレムの周囲と、ユダの町々で、群れは再びそれを数える者の手の下を通りすぎると主は言われる。
19761 24 33 14 主は言われる、見よ、わたしがイスラエルの家とユダの家に約束したことをなし遂げる日が来る。
19762 24 33 15 その日、その時になるならば、わたしはダビデのために一つの正しい枝を生じさせよう。彼は公平と正義を地に行う。
19763 24 33 16 その日、ユダは救を得、エルサレムは安らかにおる。その名は『主はわれわれの正義』ととなえられる。
19764 24 33 17 主はこう仰せられる、イスラエルの家の位に座する人がダビデの子孫のうちに欠けることはない。
19765 24 33 18 またわたしの前に燔祭をささげ、素祭を焼き、つねに犠牲をささげる人が、レビびとである祭司のうちに絶えることはない」。
19766 24 33 19 主の言葉はエレミヤに臨んだ、
19767 24 33 20 「主はこう仰せられる、もしあなたがたが、昼と結んだわたしの契約を破り、また夜と結んだわたしの契約を破り、昼と夜が定められた時に来ないようにすることができるならば、
19768 24 33 21 しもべダビデとわたしが結んだ契約もまた破れ、彼はその位に座して王となる子を与えられない。またわたしがわたしに仕えるレビびとである祭司に立てた契約も破れる。
19769 24 33 22 天の星は数えることができず、浜の砂は量ることができない。そのようにわたしは、しもべダビデの子孫と、わたしに仕えるレビびとである祭司の数を増そう」。
19770 24 33 23 主の言葉はエレミヤに臨んだ、
19771 24 33 24 「あなたはこの民が、『主は自ら選んだ二つのやからを捨てた』といっているのを聞かないか。彼らはこのようにわたしの民を侮って、これを国とみなさないのである。
19772 24 33 25 主はこう言われる、もしわたしが昼と夜とに契約を立てず、また天地のおきてを定めなかったのであれば、
19773 24 33 26 わたしは、ヤコブとわたしのしもべダビデとの子孫を捨てて、再び彼の子孫のうちからアブラハム、イサク、ヤコブの子孫を治める者を選ばない。わたしは彼らを再び栄えさせ、彼らにあわれみをたれよう」。
19774 24 34 1 バビロンの王ネブカデレザルがその全軍と、彼に従っている地のすべての国の人々、およびもろもろの民を率いて、エルサレムとその町々を攻めて戦っていた時に、主からエレミヤに臨んだ言葉、
19775 24 34 2 「イスラエルの神、主はこう言われる、行ってユダの王ゼデキヤに告げて言いなさい、『主はこう言われる、見よ、わたしはこの町をバビロンの王の手に渡す。彼は火でこれを焼く。
19776 24 34 3 あなたはその手をのがれることはできない、必ず捕えられてその手に渡される。あなたはまのあたりバビロンの王を見、顔と顔を合わせて彼と語る。それからバビロンへ行く』。
19777 24 34 4 しかしユダの王ゼデキヤよ、主の言葉を聞きなさい。主はあなたの事についてこう言われる、『あなたはつるぎで死ぬことはない。
19778 24 34 5 あなたは安らかに死ぬ。民はあなたの先祖であるあなたの先の王たちのために香をたいたように、あなたのためにも香をたき、またあなたのために嘆いて「ああ、主君よ」と言う』。わたしがこの言葉をいうのであると主は言われる」。
19779 24 34 6 そこで預言者エレミヤはこの言葉をことごとくエルサレムでユダの王ゼデキヤに告げた。
19780 24 34 7 その時バビロンの王の軍勢はエルサレム、および残っているユダのすべての町、すなわちラキシとアゼカを攻めて戦っていた。それはユダの町々のうちに、これらの堅固な町がなお残っていたからである。
19781 24 34 8 ゼデキヤ王がエルサレムにいるすべての民と契約を立てて、彼らに釈放のことを告げ示した後に、主からエレミヤに臨んだ言葉。
19782 24 34 9 その契約はすなわち人がおのおのそのヘブルびとである男女の奴隷を解放し、その兄弟であるユダヤ人を奴隷としないことを定めたものであった。
19783 24 34 10 この契約をしたつかさたちと、すべての民は人がおのおのその男女の奴隷を解放し、再びこれを奴隷としないということに聞き従って、これを解放したが、
19784 24 34 11 後に心を翻し、解放した男女の奴隷をひきかえさせ、再びこれを従わせて奴隷とした。
19785 24 34 12 そこで主の言葉が主からエレミヤに臨んだ、
19786 24 34 13 「イスラエルの神、主はこう言われる、わたしはあなたがたの先祖をエジプトの地、その奴隷であった家から導き出した時、彼らと契約を立てて言った、
19787 24 34 14 『あなたがたの兄弟であるヘブルびとで、あなたがたに身を売り、六年の間あなたがたに仕えた者は、六年の終りに、あなたがたおのおのがこれを解放しなければならない。あなたがたは彼を解放して、あなたがたに仕えることをやめさせなければならない』。ところがあなたがたの先祖たちはわたしに聞き従わず、またその耳を傾けなかった。
19788 24 34 15 しかしあなたがたは今日、心を改め、おのおのその隣り人に釈放のことを告げ示して、わたしの見て正しいとすることを行い、かつわたしの名をもってとなえられる家で、わたしの前に契約を立てた。
19789 24 34 16 ところがあなたがたは再び心を翻して、わたしの名を汚し、おのおの男女の奴隷をその願いのままに解放したのをひきかえさせ、再びこれを従わせて、あなたがたの奴隷とした。
19790 24 34 17 それゆえに、主はこう仰せられる、あなたがたがわたしに聞き従わず、おのおのその兄弟とその隣に釈放のことを告げ示さなかったので、見よ、わたしはあなたがたのために釈放を告げ示して、あなたがたをつるぎと、疫病と、ききんとに渡すと主は言われる。わたしはあなたがたを地のもろもろの国に忌みきらわれるものとする。
19791 24 34 18 わたしの契約を破り、わたしの前に立てた契約の定めに従わない人々を、わたしは彼らが二つに裂いて、その二つの間を通った子牛のようにする。――
19792 24 34 19 すなわち二つに分けた子牛の間を通ったユダのつかさたち、エルサレムのつかさたちと宦官と祭司と、この地のすべての民を、
19793 24 34 20 わたしはその敵の手と、その命を求める者の手に渡す。その死体は空の鳥と野の獣の食物となる。
19794 24 34 21 わたしはまたユダの王ゼデキヤと、そのつかさたちをその敵の手、その命を求める者の手、あなたがたを離れて去ったバビロンの王の軍勢の手に渡す。
19795 24 34 22 主は言われる、見よ、わたしは彼らに命じて、この町に引きかえしてこさせる。彼らはこの町を攻めて戦い、これを取り、火を放って焼き払う。わたしはユダの町々を住む人のない荒れ地とする」。
19796 24 35 1 ユダの王ヨシヤの子エホヤキムの時、主からエレミヤに臨んだ言葉。
19797 24 35 2 「レカブびとの家に行って、彼らと語り、彼らを主の宮の一室に連れてきて、酒を飲ませなさい」。
19798 24 35 3 そこでわたしはハバジニヤの子エレミヤの子であるヤザニヤと、その兄弟と、そのむすこたち、およびレカブびとの全家を連れ、
19799 24 35 4 これを主の宮にあるハナンの子たちの室に連れてきた。ハナンはイグダリヤの子であって神の人であった。その室は、つかさたちの室の次にあって、門を守るシャルムの子マアセヤの室の上にあった。
19800 24 35 5 わたしはレカブびとの前に酒を満たしたつぼと杯を置き、彼らに、「酒を飲みなさい」と言ったが、
19801 24 35 6 彼らは答えた、「われわれは酒を飲みません。それは、レカブの子であるわれわれの先祖ヨナダブがわれわれに命じて、『あなたがたとあなたがたの子孫はいつまでも酒を飲んではならない。
19802 24 35 7 また家を建てず、種をまかず、またぶどう畑を植えてはならない。またこれを所有してはならない。あなたがたは生きながらえる間は幕屋に住んでいなさい。そうするならば、あなたがたはその宿っている地に長く生きることができると言ったからです』。
19803 24 35 8 こうしてわれわれは、レカブの子であるわれわれの先祖ヨナダブがすべて命じた言葉に従って、われわれも、妻も、むすこ娘も生きながらえる間、酒を飲まず、
19804 24 35 9 住む家を建てず、ぶどう畑も畑も種も持たないで、
19805 24 35 10 幕屋に住み、すべてわれわれの先祖ヨナダブがわれわれに命じたところに従い、そのように行いました。
19806 24 35 11 しかしバビロンの王ネブカデレザルがこの地に上ってきた時、われわれは言いました、『さあ、われわれはエルサレムへ行こう。カルデヤびとの軍勢とスリヤびとの軍勢が恐ろしい』と。こうしてわれわれはエルサレムに住んでいるのです」。
19807 24 35 12 その時、主の言葉がエレミヤに臨んだ、
19808 24 35 13 「万軍の主、イスラエルの神はこう言われる、行って、ユダの人々とエルサレムに住む者とに告げよ。主は仰せられる、あなたがたはわたしの言葉を聞いて教を受けないのか。
19809 24 35 14 レカブの子ヨナダブがその子孫に酒を飲むなと命じた言葉は守られてきた。彼らは今日に至るまで酒を飲まず、その先祖の命に従ってきた。ところがあなたがたはわたしがしきりに語ったけれども、わたしに聞き従わなかった。
19810 24 35 15 わたしはまた、わたしのしもべである預言者たちを、しきりにあなたがたにつかわして言わせた、『あなたがたは今おのおのその悪い道を離れ、その行いを改めなさい。ほかの神々に従い仕えてはならない。そうすれば、あなたがたはわたしがあなたがたと、あなたがたの先祖に与えたこの地に住むことができる』と。しかしあなたがたは耳を傾けず、わたしに聞かなかった。
19811 24 35 16 レカブの子ヨナダブの子孫は、その先祖が彼らに命じた命令を守っているのである。しかしこの民はわたしに従わなかった。
19812 24 35 17 それゆえ万軍の神、主、イスラエルの神はこう仰せられる、見よ、わたしはユダとエルサレムに住む者とに、わたしが彼らの上に宣告した災を下す。わたしが彼らに語っても聞かず、彼らを呼んでも答えなかったからである」。
19813 24 35 18 ところでエレミヤはレカブびとの家の人々に言った、「万軍の主、イスラエルの神はこう仰せられる、あなたがたは先祖ヨナダブの命に従い、そのすべての戒めを守り、彼があなたがたに命じた事を行った。
19814 24 35 19 それゆえ、万軍の主、イスラエルの神はこう言われる、レカブの子ヨナダブには、わたしの前に立つ人がいつまでも欠けることはない」。
19815 24 36 1 ユダの王ヨシヤの子エホヤキムの四年に主からこの言葉がエレミヤに臨んだ、
19816 24 36 2 「あなたは巻物を取り、わたしがあなたに語った日、すなわちヨシヤの日から今日に至るまで、イスラエルとユダと万国とに関してあなたに語ったすべての言葉を、それにしるしなさい。
19817 24 36 3 ユダの家がわたしの下そうとしているすべての災を聞いて、おのおのその悪い道を離れて帰ることもあろう。そうすれば、わたしはそのとがとその罪をゆるすかも知れない」。
19818 24 36 4 そこでエレミヤはネリヤの子バルクを呼んだ。バルクはエレミヤの口述にしたがって、主が彼にお告げになった言葉をことごとく巻物に書きしるした。
19819 24 36 5 そしてエレミヤはバルクに命じて言った、「わたしは主の宮に行くことを妨げられている。
19820 24 36 6 それで、あなたが行って、断食の日に主の宮で、すべての民が聞いているところで、あなたがわたしの口述にしたがって、巻物に筆記した主の言葉を読みなさい。またユダの人々がその町々から来て聞いているところで、それを読みなさい。
19821 24 36 7 彼らは主の前に祈願をささげ、おのおのその悪い道を離れて帰ることもあろう。主がこの民に対して宣告された怒りと憤りは大きいからである」。
19822 24 36 8 こうしてネリヤの子バルクはすべて預言者エレミヤが自分に命じたように、主の宮で、その巻物に書かれた主の言葉を読んだ。
19823 24 36 9 ユダの王ヨシヤの子エホヤキムの五年九月、エルサレムのすべての民と、ユダの町々からエルサレムに来たすべての民とは、主の前に断食を行うべきことを告げ示された。
19824 24 36 10 バルクは主の宮の上の庭で、主の宮の新しい門の入口のかたわらにある書記シャパンの子であるゲマリヤのへやで、巻物に書かれたエレミヤの言葉をすべての民に読み聞かせた。
19825 24 36 11 シャパンの子であるゲマリヤの子ミカヤはその巻物にある主の言葉をことごとく聞いて、
19826 24 36 12 王の家にある書記のへやに下って行くと、もろもろのつかさたち、すなわち書記エリシャマ、シマヤの子デラヤ、アカボルの子エルナタン、シャパンの子ゲマリヤ、ハナニヤの子ゼデキヤおよびすべてのつかさたちがそこに座していた。
19827 24 36 13 ミカヤはバルクが民に巻物を読んで聞かせたとき、自分の聞いたすべての言葉を彼らに告げたので、
19828 24 36 14 つかさたちはクシの子セレミヤの子であるネタニヤの子エホデをバルクのもとにつかわして言わせた、「あなたが民に読み聞かせたその巻物を手に取って、来てください」。そこでネリヤの子バルクは巻物を手に取って、彼らのもとに来たので、
19829 24 36 15 彼らはバルクに言った、「座してそれを読んでください」。バルクはそれを彼らに読みきかせた。
19830 24 36 16 彼らはそのすべての言葉を聞き、恐れて互に見かわし、バルクに言った、「われわれはこのすべての言葉を、王に報告しなければならない」。
19831 24 36 17 そしてバルクに尋ねて言った、「このすべての言葉を、あなたがどのようにして書いたのか話してください。彼の口述によるのですか」。
19832 24 36 18 バルクは彼らに答えた、「彼がわたしにこのすべての言葉を口述したので、わたしはそれを墨汁で巻物に書いたのです」。
19833 24 36 19 つかさたちはバルクに言った、「行って、エレミヤと一緒に身を隠しなさい。人に所在を知られてはなりません」。
19834 24 36 20 そこで彼らは巻物を書記エリシャマのへやに置いて庭にはいり、王のもとへ行って、このすべての言葉を王に告げたので、
19835 24 36 21 王はその巻物を持ってこさせるためにエホデをつかわした。エホデは書記エリシャマのへやから巻物を取ってきて、それを王と王のかたわらに立っているすべてのつかさたちに読みきかせた。
19836 24 36 22 時は九月であって、王は冬の家に座していた。その前に炉があって火が燃えていた。
19837 24 36 23 エホデが三段か四段を読むと、王は小刀をもってそれを切り取り、炉の火に投げいれ、ついに巻物全部を炉の火で焼きつくした。
19838 24 36 24 王とその家来たちはこのすべての言葉を聞いても恐れず、またその着物を裂くこともしなかった。
19839 24 36 25 エルナタン、デラヤおよびゲマリヤが王にその巻物を焼かないようにと願ったときにも彼は聞きいれなかった。
19840 24 36 26 そして王は王子エラメルとアヅリエルの子セラヤとアブデルの子セレミヤに、書記バルクと預言者エレミヤを捕えるようにと命じたが、主は彼らを隠された。
19841 24 36 27 バルクがエレミヤの口述にしたがって筆記した言葉を載せた巻物を王が焼いた後、主の言葉がエレミヤに臨んだ、
19842 24 36 28 「他の巻物を取り、ユダの王エホヤキムが焼いた、前の巻物のうちにある言葉を皆それに書きしるしなさい。
19843 24 36 29 またユダの王エホヤキムについて言いなさい、『主はこう仰せられる、あなたはこの巻物を焼いて言った、「どうしてあなたはこの巻物に、バビロンの王が必ず来てこの地を滅ぼし、ここから人と獣とを絶やす、と書いたのか」と。
19844 24 36 30 それゆえ主はユダの王エホヤキムについてこう言われる、彼の子孫にはダビデの位にすわる者がなくなる。また彼の死体は捨てられて昼は暑さにあい、夜は霜にあう。
19845 24 36 31 わたしはまた彼とその子孫とその家来たちをその罪のために罰する。また彼らとエルサレムの民とユダの人々には災を下す。この災のことについては、すでに語ったけれども、彼らは聞くことをしなかった』」。
19846 24 36 32 そこでエレミヤは他の巻物を取り、ネリヤの子書記バルクに与えたので、バルクはユダの王エホヤキムが火にくべて焼いた巻物のすべての言葉を、エレミヤの口述にしたがってそれに書きしるし、また同じような言葉を多くそれに加えた。
19847 24 37 1 ヨシヤの子ゼデキヤはエホヤキムの子コニヤに代って王となった。バビロンの王ネブカデレザルが彼をユダの地の王としたのである。
19848 24 37 2 彼もその家来たちも、その地の人々も、主が預言者エレミヤによって語られた言葉に聞き従わなかった。
19849 24 37 3 ゼデキヤ王はセレミヤの子ユカルと、マアセヤの子祭司ゼパニヤを預言者エレミヤにつかわして、「われわれのために、われわれの神、主に祈ってください」と言わせた。
19850 24 37 4 エレミヤは民の中に出入りしていた。まだ獄屋に入れられなかったからである。
19851 24 37 5 パロの軍勢がエジプトから出て来たので、エルサレムを攻め囲んでいたカルデヤびとはその情報を聞いてエルサレムを退いた。
19852 24 37 6 その時、主の言葉は預言者エレミヤに臨んだ、
19853 24 37 7 「イスラエルの神、主はこう言われる、あなたがたをつかわしてわたしに求めたユダの王にこう言いなさい、『あなたがたを救うために出てきたパロの軍勢はその国エジプトに帰ろうとしている。
19854 24 37 8 カルデヤびとが再び来てこの町を攻めて戦い、これを取って火で焼き滅ぼす。
19855 24 37 9 主はこう言われる、あなたがたは、「カルデヤびとはきっとわれわれを離れ去る」といって自分を欺いてはならない。彼らは去ることはない。
19856 24 37 10 たといあなたがたが自分を攻めて戦うカルデヤびとの全軍を撃ち破って、その天幕のうちに負傷者のみを残しても、彼らは立ち上がって火でこの町を焼き滅ぼす』」。
19857 24 37 11 さてカルデヤびとの軍勢がパロの軍勢の来るのを聞いてエルサレムを退いたとき、
19858 24 37 12 エレミヤは、ベニヤミンの地で民のうちに自分の分け前を受け取るため、エルサレムを立ってその地へ行こうと、
19859 24 37 13 ベニヤミンの門に着いたとき、そこにハナニヤの子セレミヤの子でイリヤという名の番兵がいて、預言者エレミヤを捕え、「あなたはカルデヤびとの側に脱走しようとしている」と言った。
19860 24 37 14 エレミヤは言った、「それはまちがいだ。わたしはカルデヤびとの側に脱走しようとしていない」。しかしイリヤは聞かず、エレミヤを捕えて、つかさたちのもとへ引いて行った。
19861 24 37 15 つかさたちは怒って、エレミヤを打ちたたき、書記ヨナタンの家の獄屋にいれた。この家が獄屋になっていたからである。
19862 24 37 16 エレミヤが地下の獄屋にはいって、そこに多くの日を送ってのち、
19863 24 37 17 ゼデキヤ王は人をつかわし、彼を連れてこさせた。王は自分の家でひそかに彼に尋ねて言った、「主から何かお言葉があったか」。エレミヤはあったと答えた。そして言った、「あなたはバビロンの王の手に引き渡されます」。
19864 24 37 18 エレミヤはまたゼデキヤ王に言った、「わたしが獄屋にいれられたのは、あなたに、またはあなたの家来に、あるいはこの民に、どのような罪を犯したからなのですか。
19865 24 37 19 あなたがたに預言して、『バビロンの王はあなたがたをも、この地をも攻めにこない』と言っていたあなたがたの預言者は今どこにいるのですか。
19866 24 37 20 王なるわが君よ、どうぞ今お聞きください。わたしの願いをお聞きとどけください。わたしを書記ヨナタンの家へ帰らせないでください。そうでないと、わたしはそこで殺されるでしょう」。
19867 24 37 21 そこでゼデキヤ王は命を下し、エレミヤを監視の庭に入れさせ、かつ、パンを造る者の町から毎日パン一個を彼に与えさせた。これは町にパンがなくなるまで続いた。こうしてエレミヤは監視の庭にいた。
19868 24 38 1 マッタンの子シパテヤ、パシュルの子ゲダリヤ、セレミヤの子ユカル、マルキヤの子パシュルはエレミヤがすべての民に告げていたその言葉を聞いた。
19869 24 38 2 彼は言った、「主はこう言われる、この町にとどまる者は、つるぎや、ききんや、疫病で死ぬ。しかし出てカルデヤびとにくだる者は死を免れる。すなわちその命を自分のぶんどり物として生きることができる。
19870 24 38 3 主はこう言われる、この町は必ずバビロンの王の軍勢の手に渡される。彼はこれを取る」。
19871 24 38 4 すると、つかさたちは王に言った、「この人を殺してください。このような言葉をのべて、この町に残っている兵士の手と、すべての民の手を弱くしているからです。この人は民の安泰を求めないで、その災を求めているのです」。
19872 24 38 5 ゼデキヤ王は言った、「見よ、彼はあなたがたの手にある。王はあなたがたに逆らって何事をもなし得ない」。
19873 24 38 6 そこで彼らはエレミヤを捕え、監視の庭にある王子マルキヤの穴に投げ入れた。すなわち、綱をもってエレミヤをつり降ろしたが、その穴には水がなく、泥だけであったので、エレミヤは泥の中に沈んだ。
19874 24 38 7 王の家の宦官エチオピヤびとエベデメレクは、彼らがエレミヤを穴に投げ入れたことを聞いた。その時、王はベニヤミンの門に座していたので、
19875 24 38 8 エベデメレクは王の家から出て行って王に言った、
19876 24 38 9 「王なるわが君よ、この人々が預言者エレミヤにしたことはみな良いことではありません。彼を穴に投げ入れました。町に食物がなくなりましたから、彼はそこで餓死するでしょう」。
19877 24 38 10 王はエチオピヤびとエベデメレクに命じて言った、「ここから三人のひとを連れて行って、預言者エレミヤを、死なないうちに穴から引き上げなさい」。
19878 24 38 11 そこでエベデメレクはその人々を連れて王の家の倉の衣服室に行き、そこから古い布切れや、着ふるした着物を取り、これを穴の中にいるエレミヤのところへ、綱をもってつり降ろした。
19879 24 38 12 そしてエチオピヤびとエベデメレクは、「この布切れや着物を、あなたのわきの下にはさんで、綱に当てなさい」とエレミヤに言った。エレミヤはそのようにした。
19880 24 38 13 すると彼らは綱をもってエレミヤを穴から引き上げた。そしてエレミヤは監視の庭にとどまった。
19881 24 38 14 ゼデキヤ王は人をつかわして預言者エレミヤを主の宮の第三の門に連れてこさせ、王はエレミヤに言った、「あなたに尋ねたいことがある。何事もわたしに隠してはならない」。
19882 24 38 15 エレミヤはゼデキヤに言った、「もしわたしがお話するなら、あなたは必ずわたしを殺されるではありませんか。たといわたしが忠告をしても、あなたはお聞きにならないでしょう」。
19883 24 38 16 その時ゼデキヤ王は、ひそかにエレミヤに誓って言った、「われわれの魂を造られた主は生きておられる。わたしはあなたを殺さない、またあなたの命を求める者の手に、あなたを渡すこともしない」。
19884 24 38 17 そこでエレミヤはゼデキヤに言った、「万軍の神、イスラエルの神、主はこう仰せられる、もしあなたがバビロンの王のつかさたちに降伏するならば、あなたの命は助かり、またこの町は火で焼かれることなく、あなたも、あなたの家の者も生きながらえることができる。
19885 24 38 18 しかし、もしあなたが出てバビロンの王のつかさたちに降伏しないならば、この町はカルデヤびとの手に渡される。彼らは火でこれを焼く。あなたはその手をのがれることができない」。
19886 24 38 19 ゼデキヤ王はエレミヤに言った、「わたしはカルデヤびとに脱走したユダヤ人を恐れている。カルデヤびとはわたしを彼らの手に渡し、彼らはわたしをはずかしめる」。
19887 24 38 20 エレミヤは言った、「彼らはあなたを渡さないでしょう。どうか、わたしがあなたに告げた主の声に聞き従ってください。そうすれば幸を得、また命が助かります。
19888 24 38 21 しかし降伏することを拒むならば、主がわたしに示された幻を申しましょう。
19889 24 38 22 すなわち、ユダの王の家に残っている女たちは、みなバビロンの王のつかさたちの所へ引いて行かれます。その女たちは言うのです、『あなたの親しい友だちがあなたを欺いた、そしてあなたに勝った。今あなたの足は泥に沈んでいるので、彼らはあなたを捨てて去る』。
19890 24 38 23 あなたの妻たちと子供たちは皆カルデヤびとの所へひき出される。あなた自身もその手をのがれることができず、バビロンの王に捕えられる。そしてこの町は火で焼かれるでしょう」。
19891 24 38 24 ゼデキヤはエレミヤに言った、「これらの言葉を人に知らせてはならない。そうすればあなたは殺されることはない。
19892 24 38 25 わたしがあなたと話をしたことを、つかさたちが聞いて、彼らがあなたの所に来て、『あなたが王に話したこと、王があなたに話したことをわれわれに告げなさい。何事も隠してはならない。われわれはあなたを殺しはしない』と言うならば、
19893 24 38 26 あなたは彼らに、『わたしは王に願って、わたしをヨナタンの家に送り返さず、そこで死ぬことのないようにしてくださいと言った』と答えなさい」。
19894 24 38 27 さて、つかさたちは皆エレミヤのところへ来て尋ねたが、王が彼に教えたように彼らに答えたので、彼らは彼と話すことをやめた。その会話を聞いた者がなかったからである。
19895 24 38 28 エレミヤはエルサレムの取られる日まで監視の庭にとどまっていた。
19896 24 39 1 ユダの王ゼデキヤの九年十月、バビロンの王ネブカデレザルはその全軍を率い、エルサレムに来てこれを攻め囲んだが、
19897 24 39 2 ゼデキヤの十一年四月九日になって町の一角が破れた。
19898 24 39 3 エルサレムが取られたので、バビロンの王のつかさたち、すなわちネルガル・シャレゼル、サムガル・ネボ、ラブサリスのサルセキム、ラブマグのネルガル・シャレゼルおよびバビロンの王のその他のつかさたちは皆ともに来て中の門に座した。
19899 24 39 4 ユダの王ゼデキヤとすべての兵士たちはこれを見て逃げ、夜のうちに、王の庭園の道を通って、二つの城壁の間の門から町を出て、アラバの方へ行ったが、
19900 24 39 5 カルデヤびとの軍勢はこれを追って、エリコの平地でゼデキヤに追いつき、これを捕えて、ハマテの地リブラにいるバビロンの王ネブカデレザルのもとに引いて行ったので、王はそこで彼の罪をさだめた。
19901 24 39 6 バビロンの王はリブラで、ゼデキヤの子たちを彼の目の前で殺した。バビロンの王はまたユダのすべての貴族たちを殺した。
19902 24 39 7 王はまたゼデキヤの目をつぶさせ、彼をバビロンに引いて行くために、鎖につないだ。
19903 24 39 8 またカルデヤびとは王宮と民家を火で焼き、エルサレムの城壁を破壊した。
19904 24 39 9 そして侍衛の長ネブザラダンは町のうちに残っている民と、自分に降伏した者、およびその他の残っている民をバビロンに捕え移した。
19905 24 39 10 しかし侍衛の長ネブザラダンは、民の貧しい無産者をユダの地に残し、同時にぶどう畑と田地をこれに与えた。
19906 24 39 11 さてバビロンの王ネブカデレザルはエレミヤの事について侍衛の長ネブザラダンに命じて言った、
19907 24 39 12 「彼をとり、よく世話をせよ。害を加えることなく、彼があなたに言うようにしてやりなさい」。
19908 24 39 13 そこで侍衛の長ネブザラダン、ラブサリスのネブシャズバン、ラブマグのネルガル・シャレゼル、およびバビロンの王のつかさたちは、
19909 24 39 14 人をつかわして、エレミヤを監視の庭から連れてこさせ、シャパンの子アヒカムの子であるゲダリヤに託して、家につれて行かせた。こうして彼は民のうちにいた。
19910 24 39 15 エレミヤが監視の庭に閉じこめられていた時、主の言葉が彼に臨んだ、
19911 24 39 16 「行って、エチオピヤびとエベデメレクに告げなさい、『万軍の主、イスラエルの神はこう言われる、わたしの言った災をわたしはこの町に下す、幸をこれに下すのではない。その日、この事があなたの目の前で成就する。
19912 24 39 18 わたしが必ずあなたを救い、つるぎに倒れることのないようにするからである。あなたの命はあなたのぶんどり物となる。あなたがわたしに寄り頼んだからであると主は言われる』」。
19913 24 40 1 侍衛の長ネブザラダンは、バビロンに移されるエルサレムとユダの人々のうちにエレミヤを鎖につないでおいて、これを捕えて行ったが、ついにラマで彼を釈放した。その後、主の言葉がエレミヤに臨んだ。
19914 24 40 2 侍衛の長はエレミヤを召して彼に言った、「あなたの神、主はこの所にこの災を下すと告げ示された。
19915 24 40 3 主はこれを下し、自ら言われたとおりに行われた。あなたがたが主に対して罪を犯し、み声に従わなかったから、この事があなたがたの上に臨んだのだ。
19916 24 40 4 見よ、わたしはきょう、あなたの手の鎖を解いてあなたを釈放する。もしあなたがわたしと一緒にバビロンへ行くのが良いと思われるなら、おいでなさい。わたしは、じゅうぶんあなたの世話をします。もしあなたがわたしと一緒にバビロンには行きたくないなら、行かなくてもよろしい。見よ、この地はみなあなたの前にあります、あなたが良いと思い、正しいと思う所に行きなさい。
19917 24 40 5 あなたがとどまるならば、バビロンの王がユダの町々の総督として立てたシャパンの子アヒカムの子であるゲダリヤの所へ帰り、彼と共に民のうちに住みなさい。あるいはまたあなたが正しいと思う所へ行きなさい」。こうして侍衛の長は彼に糧食と贈り物を与えて去らせた。
19918 24 40 6 そこでエレミヤはミヅパへ行き、アヒカムの子ゲダリヤの所へ行って、彼と共にその地に残っている民のうちに住んだ。
19919 24 40 7 さて野外にいた軍勢の長たちと、その配下の人々は、バビロンの王がアヒカムの子ゲダリヤを立てて、その地の総督とし、男、女、子供、および国のうちのバビロンに移されない貧しい者を彼に委託した事を聞いたので、
19920 24 40 8 ネタニヤの子イシマエルと、カレヤの子ヨハナンおよびタンホメテの子セラヤと、ネトパびとであるエパイの子たちと、マアカびとの子ヤザニヤおよびその配下の人々は、ミヅパにいるゲダリヤのもとへ行った。
19921 24 40 9 シャパンの子であるアヒカムの子ゲダリヤは、彼らとその配下の人々に誓って言った、「カルデヤびとに仕えることを恐れるに及ばない。この地に住んでバビロンの王に仕えるならば、あなたがたは幸福になる。
19922 24 40 10 わたしはミヅパにいて、われわれの所に来るカルデヤびとの前に、あなたがたのために立ちましょう。あなたがたは、ぶどう酒や夏のくだもの、油を集めて、それを器にたくわえ、あなたがたの獲た町々に住みなさい」。
19923 24 40 11 同じように、モアブとアンモンびとのうち、またエドムおよび他の国々にいるユダヤ人は、バビロンの王がユダに人を残したことと、シャパンの子であるアヒカムの子ゲダリヤを立ててその総督としたこととを聞いた。
19924 24 40 12 そこでそのユダヤ人らはみなその追いやられたもろもろの所から帰ってきて、ユダの地のミヅパにいるゲダリヤのもとにきた。そして多くのぶどう酒と夏のくだものを集めた。
19925 24 40 13 またカレヤの子ヨハナンと、野外にいた軍勢の長たちはみなミヅパにいるゲダリヤのもとにきて、
19926 24 40 14 彼に言った、「アンモンびとの王バアリスがあなたを殺すためにネタニヤの子イシマエルをつかわしたことを知っていますか」。しかしアヒカムの子ゲダリヤは彼らの言うことを信じなかったので、
19927 24 40 15 カレヤの子ヨハナンはミヅパでひそかにゲダリヤに言った、「わたしが行って、人に知れないように、ネタニヤの子イシマエルを殺しましょう。どうして彼があなたを殺して、あなたの周囲に集まっているユダヤ人を散らし、ユダの残った者を滅ぼしてよいでしょう」。
19928 24 40 16 しかしアヒカムの子ゲダリヤはカレヤの子ヨハナンに言った、「この事をしてはならない。あなたはイシマエルについて偽りを言っているのです」。
19929 24 41 1 七月のころ、王家のもので、エリシャマの子ネタニヤの子であり、また王の高官のひとりであるイシマエルは、王の十人のつかさたちと共にミヅパにいたアヒカムの子ゲダリヤのもとにきて、ミヅパで食を共にしたが、
19930 24 41 2 ネタニヤの子イシマエルおよび共にいた十人の者は立ち上がって、バビロンの王がこの地の総督としたシャパンの子アヒカムの子であるゲダリヤを刀で殺し、
19931 24 41 3 イシマエルはまたミヅパでゲダリヤと共にいたすべてのユダヤ人と、たまたまそこにいたカルデヤびとの兵士たちを殺した。
19932 24 41 4 ゲダリヤが殺された次の日、まだだれもその事を知らないうちに、
19933 24 41 5 八十人の人々がそのひげをそり、衣服をさき、身に傷をつけ、手には素祭のささげ物と香を携え、シケム、シロ、サマリヤからきて、主の宮にささげようとした。
19934 24 41 6 ネタニヤの子イシマエルはミヅパから泣きながら出てきて彼らを迎え、彼らに会って、「アヒカムの子ゲダリヤのもとにおいでなさい」と言った。
19935 24 41 7 そして彼らが町の中にはいったとき、ネタニヤの子イシマエルは自分と一緒にいた人々と共に彼らを殺して、その死体を穴に投げ入れた。
19936 24 41 8 しかしそのうちの十人はイシマエルに向かい、「わたしたちは畑に小麦、大麦、油、および蜜を隠しています、わたしたちを殺さないでください」と言ったので、彼らをその仲間と共に殺さないでしまった。
19937 24 41 9 イシマエルが自分の殺した人々の死体を投げ入れた穴は、アサ王がイスラエルの王バアシャを恐れて掘った穴であった。ネタニヤの子イシマエルは殺した人々をこれに満たした。
19938 24 41 10 次いでイシマエルはミヅパに残っているすべての民、すなわち王の娘たちと侍衛の長ネブザラダンがアヒカムの子ゲダリヤに託したミヅパに残っているすべての民とを捕虜とした。ネタニヤの子イシマエルは彼らを捕虜とし、アンモンびとのもとに渡り行こうとして立ち去った。
19939 24 41 11 カレヤの子ヨハナンおよび彼と共にいる軍勢の長たちはネタニヤの子イシマエルの行った悪事をみな聞き、
19940 24 41 12 その兵士たちを率いて、ネタニヤの子イシマエルと戦うために出て行き、ギベオンの大池のほとりで彼に会った。
19941 24 41 13 イシマエルと共にいる人々は、カレヤの子ヨハナンおよび彼と共にいる軍勢の長たちを見て喜んだ。
19942 24 41 14 そしてイシマエルがミヅパから捕虜にしてきた人々は身をめぐらしてカレヤの子ヨハナンのもとへ行った。
19943 24 41 15 ネタニヤの子イシマエルは八人の者と共にヨハナンを避けて逃げ、アンモンびとの所へ行った。
19944 24 41 16 そこでカレヤの子ヨハナンおよび彼と共にいる軍勢の長たちはネタニヤの子イシマエルがアヒカムの子ゲダリヤを殺して、ミヅパから捕虜として連れてきた、あの残っていた民、すなわち兵士や女、子供、宦官をギベオンから連れ帰ったが、
19945 24 41 17 彼らはエジプトへ行こうとしてベツレヘムの近くにあるゲルテ・キムハムへ行って、そこにとどまった。
19946 24 41 18 これは、ネタニヤの子イシマエルが、バビロンの王によってこの地の総督に任じられたアヒカムの子ゲダリヤを殺したことにより、カルデヤびとを恐れたからである。
19947 24 42 1 そのとき軍勢の長たち、およびカレヤの子ヨハナンと、ホシャヤの子アザリヤ、ならびに民の最も小さい者から最も大いなる者にいたるまで、
19948 24 42 2 みな預言者エレミヤの所に来て言った、「どうかあなたの前にわれわれの求めが受けいれられますように。われわれのため、この残っている者すべてのために、あなたの神、主に祈ってください、(今ごらんのとおり、われわれは多くのうち、わずかに残っている者です)
19949 24 42 3 そうすれば、あなたの神、主は、われわれの行くべき道と、なすべき事をお示しになるでしょう」。
19950 24 42 4 預言者エレミヤは彼らに言った、「よくわかりました。あなたがたの求めにしたがって、あなたがたの神、主に祈りましょう。主があなたがたに答えられることを、何事も隠さないであなたがたに言いましょう」。
19951 24 42 5 彼らはエレミヤに言った、「もし、あなたの神、主があなたをつかわしてお告げになるすべての言葉を、われわれが行わないときは、どうか主がわれわれに対してまことの真実な証人となられるように。
19952 24 42 6 われわれは良くても悪くても、われわれがあなたをつかわそうとするわれわれの神、主の声に従います。われわれの神、主の声に従うとき、われわれは幸を得るでしょう」。
19953 24 42 7 十日の後、主の言葉がエレミヤに臨んだ。
19954 24 42 8 エレミヤはカレヤの子ヨハナンおよび彼と共にいる軍勢の長たち、ならびに民の最も小さい者から最も大いなる者までことごとく招いて、
19955 24 42 9 彼らに言った、「あなたがたがわたしをつかわして、あなたの祈願をその前にのべさせたイスラエルの神、主はこう言われます、
19956 24 42 10 もしあなたがたがこの地にとどまるならば、わたしはあなたがたを建てて倒すことなく、あなたがたを植えて抜くことはしない。わたしはあなたがたに災を下したことを悔いているからである。
19957 24 42 11 主は言われる、あなたが恐れているバビロンの王を恐れてはならない。彼を恐れてはならない、わたしが共にいて、あなたがたを救い、彼の手から助け出すからである。
19958 24 42 12 わたしはあなたがたをあわれみ、また彼にあなたがたをあわれませ、あなたがたを自分の地にとどまらせる。
19959 24 42 13 しかし、もしあなたがたが、『われわれはこの地にとどまらない』といって、あなたがたの神、主の声にしたがわず、
19960 24 42 14 また、『いいえ、われわれはあの戦争を見ず、ラッパの声を聞かず、食物も乏しくないエジプトの地へ行って、あそこに住まおう』と言うならば、
19961 24 42 15 あなたがた、ユダの残っている者たちよ、主の言葉を聞きなさい。万軍の主、イスラエルの神はこう言われる、もしあなたがたがむりにエジプトへ行ってそこに住むならば、
19962 24 42 16 あなたがたの恐れているつるぎはエジプトの地であなたがたに追いつき、あなたがたの恐れているききんは、すぐあとを追ってエジプトまで行き、その所であなたがたは死ぬ。
19963 24 42 17 すべてむりにエジプトへ行ってそこに住む者は、つるぎと、ききんと、疫病で死ぬ。わたしが彼らに下そうとしている災をのがれて残る者はそのうちにない。
19964 24 42 18 万軍の主、イスラエルの神はこう言われる、わたしの怒りと憤りとをエルサレムの住民の上に注いだように、わたしの憤りは、あなたがたがエジプトへ行くとき、あなたがたの上に注ぐ。あなたがたは、のろいとなり、恐怖となり、ののしりとなり、はずかしめとなる。あなたがたは再びこの所を見ることができない。
19965 24 42 19 ユダの残っている者たちよ、『エジプトへ行ってはならない』と主はあなたがたに言われた。わたしがきょう警告したことを、あなたがたは確かに知らなければならない。
19966 24 42 20 あなたがたはみずからそむき去って、命を失った。なぜなら、あなたがたがわたしをあなたがたの神、主につかわし、『われわれの神、主に祈り、われわれの神、主の言われることをことごとく示してください。われわれはそれを行います』と言ったので、
19967 24 42 21 わたしはきょうそれを示したが、あなたがたはあなたがたの神、主の声を聞かず、主がわたしをつかわして命じさせられた事には、すこしも従わなかったからである。
19968 24 42 22 それゆえ、あなたがたが行って住まうことを願っているその所で、あなたがたはつるぎと、ききんと、疫病で死ぬことを確かに知らなければならない」。
19969 24 43 1 エレミヤがすべての民にむかって、彼らの神、主の言葉をことごとく語り、彼らの神、主が自分をつかわして言わせられるその言葉をみな告げ終った時、
19970 24 43 2 ホシャヤの子アザリヤと、カレヤの子ヨハナンおよび高慢な人々はみなエレミヤに言った、「あなたは偽りを言っている。われわれの神、主が、『エジプトへ行ってそこに住むな』と言わせるためにあなたをつかわされたのではない。
19971 24 43 3 ネリヤの子バルクがあなたをそそのかして、われわれに逆らわせ、われわれをカルデヤびとの手に渡して殺すか、あるいはバビロンに捕え移させるのだ」。
19972 24 43 4 こうしてカレヤの子ヨハナンと軍勢の長たちおよび民らは皆、主の声にしたがわず、ユダの地にとどまろうとしなかった。
19973 24 43 5 そしてカレヤの子ヨハナンと軍勢の長たちは、ユダに残っている者すなわち追いやられた国々からユダの地に住むために帰ってきた者、――
19974 24 43 6 男、女、子供、王の娘たち、およびすべて侍衛の長ネブザラダンがシャパンの子であるアヒカムの子ゲダリヤに渡しておいた者、ならびに預言者エレミヤとネリヤの子バルクをつれて、
19975 24 43 7 エジプトの地へ行った。彼らは主の声にしたがわなかったのである。そして彼らはついにタパネスに行った。
19976 24 43 8 主の言葉はタパネスでエレミヤに臨んだ、
19977 24 43 9 「大きな石を手に取り、ユダの人々の目の前で、これをタパネスにあるパロの宮殿の入口の敷石のしっくいの中に隠して、
19978 24 43 10 彼らに言いなさい、『万軍の主、イスラエルの神はこう言われる、見よ、わたしは使者をつかわして、わたしのしもべであるバビロンの王ネブカデレザルを招く。彼はその位をこの隠した石の上にすえ、その上に王の天蓋を張る。
19979 24 43 11 彼は来てエジプトの地を撃ち、疫病に定まっている者を疫病に渡し、とりこに定まっている者をとりこにし、つるぎに定まっている者をつるぎにかける。
19980 24 43 12 彼はエジプトの神々の宮に火をつけてこれを焼き、彼らをとりこにする。そして羊を飼う者が着物の虫をはらいきよめるように、エジプトの地をきよめる。彼は安らかにそこを去る。
19981 24 43 13 彼はエジプトの地にあるヘリオポリスのオベリスクをこわし、エジプトの神々の宮を火で焼く』」。
19982 24 44 1 エジプトの地に住んでいるユダヤ人すなわちミグドル、タパネス、メンピス、パテロスの地に住む者の事についてエレミヤに臨んだ言葉、
19983 24 44 2 「万軍の主、イスラエルの神はこう言われる、あなたがたはわたしがエルサレムとユダの町々に下した災を見た。見よ、これらは今日、すでに荒れ地となって住む人もない。
19984 24 44 3 これは彼らが悪を行って、わたしを怒らせたことによるのである。すなわち彼らは自分も、あなたがたも、あなたがたの先祖たちも知らなかった、ほかの神々に行って、香をたき、これに仕えた。
19985 24 44 4 わたしは自分のしもべであるすべての預言者たちを、しきりにあなたがたにつかわして、『どうか、わたしの忌みきらうこの憎むべき事をしないように』と言わせたけれども、
19986 24 44 5 彼らは聞かず、耳を傾けず、ほかの神々に香をたいて、その悪を離れなかった。
19987 24 44 6 それゆえ、わたしは怒りと憤りをユダの町々とエルサレムのちまたに注ぎ、それを焼いたので、それらは今日のように荒れ、滅びてしまった。
19988 24 44 7 万軍の神、イスラエルの神、主は今こう言われる、あなたがたはなぜ大いなる悪を行って自分自身を害し、ユダのうちから、あなたがたの男と女と、子供と乳のみ子を断って、ひとりも残らないようにしようとするのか。
19989 24 44 8 なぜあなたがたはその手のわざをもってわたしを怒らせ、あなたがたが行って住まうエジプトの地で、ほかの神々に香をたいて自分の身を滅ぼし、地の万国のうちに、のろいとなり、はずかしめとなろうとするのか。
19990 24 44 9 ユダの地とエルサレムのちまたで行ったあなたがたの先祖たちの悪、ユダの王たちの悪、その妻たちの悪、およびあなたがた自身の悪、あなたがたの妻たちの悪をあなたがたは忘れたのか。
19991 24 44 10 彼らは今日に至るまで悔いず、また恐れず、あなたがたとあなたがたの先祖たちの前に立てた、わたしの律法とわたしの定めとに従って歩まないのである。
19992 24 44 11 それゆえ万軍の主、イスラエルの神はこう言われる、見よ、わたしは顔をあなたがたに向けて災を下し、ユダの人々をことごとく断つ。
19993 24 44 12 またわたしは、エジプトの地に住むために、むりに行ったあのユダの残りの者を取り除く。彼らはみな滅ぼされてエジプトの地に倒れる。彼らは、つるぎとききんに滅ぼされ、最も小さい者から最も大いなる者まで、つるぎとききんによって死ぬ。そして、のろいとなり、恐怖となり、ののしりとなり、はずかしめとなる。
19994 24 44 13 わたしはエルサレムを罰したように、つるぎと、ききんと、疫病をもってエジプトに住んでいる者を罰する。
19995 24 44 14 それゆえ、エジプトの地へ行ってそこに住んでいるユダの残りの者のうち、のがれ、または残って、帰り住まおうと願うユダの地へ帰る者はひとりもない。少数ののがれる者のほかには、帰ってくる者はない」。
19996 24 44 15 その時、自分の妻がほかの神々に香をたいたことを知っている人々、およびその所に立っている女たちの大いなる群衆、ならびにエジプトの地のパテロスに住んでいる民はエレミヤに答えて言った、
19997 24 44 16 「あなたが主の名によってわたしたちに述べられた言葉は、わたしたちは聞くことができません。
19998 24 44 17 わたしたちは誓ったことをみな行い、わたしたちが、もと行っていたように香を天后にたき、また酒をその前に注ぎます。すなわち、ユダの町々とエルサレムのちまたで、わたしたちとわたしたちの先祖たちおよびわたしたちの王たちと、わたしたちのつかさたちが行ったようにいたします。その時には、わたしたちは糧食には飽き、しあわせで、災に会いませんでした。
19999 24 44 18 ところが、わたしたちが、天后に香をたくことをやめ、酒をその前に注がなくなった時から、すべての物に乏しくなり、つるぎとききんに滅ぼされました」。
20000 24 44 19 また女たちは言った、「わたしたちが天后に香をたき、酒をその前に注ぐに当って、これにかたどってパンを造り、酒を注いだのは、わたしたちの夫が許したことではありませんか」。
20001 24 44 20 そこでエレミヤは男女のすべての人、およびこの答をしたすべての民に言った、
20002 24 44 21 「ユダの町々とエルサレムのちまたで、あなたがたとあなたがたの先祖たち、およびあなたがたの王たちとあなたがたのつかさたち、およびその地の民が香をたいたことは、主がこれを忘れず、また、心にとどめておられることではないか。
20003 24 44 22 主はあなたがたの悪しきわざのため、あなたがたの憎むべき行いのために、もはや忍ぶことができなくなられた。それゆえ、あなたがたの地は今日のごとく荒れ地となり、驚きとなり、のろいとなり、住む人のない地となった。
20004 24 44 23 あなたがたが香をたき、主に罪を犯し、主の声に聞き従わず、その律法と、定めと、あかしに従って歩まなかったので、今日のようにこの災があなたがたに臨んだのである」。
20005 24 44 24 エレミヤはまたすべての民と女たちに言った、「あなたがたすべてエジプトの地にいるユダの人々よ、主の言葉を聞きなさい。
20006 24 44 25 万軍の主、イスラエルの神はこう言われる、あなたがたとあなたがたの妻たちは口で言い、手で行い、『わたしたちは天后に香をたき、酒を注いで立てた誓いを必ずなし遂げる』と言う。それならば、あなたがたの誓いをかため、あなたがたの誓いをなし遂げなさい。
20007 24 44 26 それゆえ、あなたがたすべてエジプトの地にいるユダの人々よ、主の言葉を聞きなさい。主は言われる、わたしは自分の大いなる名をさして誓う、すなわちエジプトの全地に、ユダの人々で、その口に、『主なる神は生きておられる』と言って、わたしの名をとなえるものは、もはやひとりもないようになる。
20008 24 44 27 見よ、わたしは彼らを見守っている、それは幸を与えるためではなく、災を下すためである。エジプトの地にいるユダの人々は、つるぎとききんによって滅び絶える。
20009 24 44 28 しかし、つるぎをのがれるわずかの者はエジプトの地を出てユダの地に帰る。そしてユダの残っている民でエジプトに来て住んだ者は、わたしの言葉が立つか、彼らの言葉が立つか、いずれであるかを知るようになる。
20010 24 44 29 主は言われる、わたしがこの所であなたがたを罰するしるしはこれである。わたしはこのようにしてわたしがあなたがたに災を下そうと言った事の必ず立つことを知らせよう。
20011 24 44 30 すなわち主はこう言われる、見よ、わたしはユダの王ゼデキヤを、その命を求める敵であるバビロンの王ネブカデレザルの手に渡したように、エジプトの王パロ・ホフラをその敵の手、その命を求める者の手に渡す」。
20012 24 45 1 ユダの王ヨシヤの子エホヤキムの四年に、ネリヤの子バルクがこれらの言葉をエレミヤの口述にしたがって書にしるした時、預言者エレミヤが彼に語った言葉、
20013 24 45 2 「バルクよ、イスラエルの神、主はあなたについてこう言われる、
20014 24 45 3 あなたはかつて、『ああ、わたしはわざわいだ、主がわたしの苦しみに悲しみをお加えになった。わたしは嘆き疲れて、安息が得られない』と言った。
20015 24 45 4 あなたはこう彼に言いなさい、主はこう言われる、見よ、わたしは自分で建てたものをこわし、自分で植えたものを抜いている――それは、この全地である。
20016 24 45 5 あなたは自分のために大いなる事を求めるのか、これを求めてはならない。見よ、わたしはすべての人に災を下そうとしている。しかしあなたの命はあなたの行くすべての所で、ぶんどり物としてあなたに与えると主は言われる」。
20017 24 46 1 もろもろの国の事について預言者エレミヤに臨んだ主の言葉。
20018 24 46 2 エジプトの事、すなわちユフラテ川のほとりにあるカルケミシの近くにいるエジプトの王パロ・ネコの軍勢の事について。これはユダの王ヨシヤの子エホヤキムの四年に、バビロンの王ネブカデレザルが撃ち破ったものである。その言葉は次のとおりである、
20019 24 46 3 「大盾と小盾とを備え、進んで戦え。
20020 24 46 4 騎兵よ、馬を戦車につなぎ、馬に乗れ。かぶとをかぶって立て。ほこをみがき、よろいを着よ。
20021 24 46 5 わたしは見たが、何ゆえか彼らは恐れて退き、その勇士たちは打ち敗られ、あわてて逃げて、うしろをふり向くこともしない、――恐れが彼らの周囲にあると主は言われる。
20022 24 46 6 足早き者も逃げることができず、勇士ものがれることができない。北の方、ユフラテ川のほとりで彼らはつまずき倒れた。
20023 24 46 7 あのナイル川のようにわきあがり、川々のように、その水のさかまく者はだれか。
20024 24 46 8 エジプトはナイル川のようにわきあがり、その水は川々のようにさかまく。そしてこれは言う、わたしは上って、地をおおい、町々とそのうちに住む者を滅ぼそう。
20025 24 46 9 馬よ、進め、車よ、激しく走れ。勇士よ、盾を取るエチオピヤびとと、プテびとよ、弓を巧みに引くルデびとよ、進み出よ。
20026 24 46 10 その日は万軍の神、主の日であって、主があだを報いられる日、その敵にあだをかえされる日だ。つるぎは食べて飽き、彼らの血に酔う。万軍の神、主が、北の地で、ユフラテ川のほとりで、ほふることをなされるからだ。
20027 24 46 11 おとめなるエジプトの娘よ、ギレアデに上って乳香を取れ。あなたは多くの薬を用いても、むだだ。あなたは、いやされることはない。
20028 24 46 12 あなたの恥は国々に聞えている、あなたの叫びは地に満ちている。勇士が勇士につまずいて、共に倒れたからである」。
20029 24 46 13 バビロンの王ネブカデレザルが来て、エジプトの地を撃とうとする事について、主が預言者エレミヤにお告げになった言葉、
20030 24 46 14 「エジプトで宣べ、ミグドルで告げ示し、またメンピスとタパネスに告げ示して言え、『堅く立って、備えせよ、つるぎがあなたの周囲を、滅ぼし尽すからだ』。
20031 24 46 15 なぜ、アピスはのがれたのか。あなたの雄牛は、なぜ立たなかったのか。それは主がこれを倒されたからだ。
20032 24 46 16 あなたに属する多くの兵は、つまずいて倒れた。そして互に言った、『立てよ、われわれは、しえたげる者のつるぎを避けて、われわれの民に帰り、故郷の地へ行こう』と。
20033 24 46 17 エジプトの王パロの名を、『好機を逸する騒がしい者』と呼べ。
20034 24 46 18 万軍の主という名の王は言われる、わたしは生きている、彼は山々のうちのタボルのように、海のほとりのカルメルのように来り臨む。
20035 24 46 19 エジプトに住む民よ、捕われのために荷物を備えよ。メンピスは荒れ地となり、廃虚となって住む人もなくなる。
20036 24 46 20 エジプトは美しい雌の子牛だ、しかし北から、牛ばえが来て、それにとまった。
20037 24 46 21 そのうちにいる雇兵でさえ、肥えた子牛のようだ。彼らはふり返って共に逃げ、立つことをしなかった。彼らの災難の日、その罰せられる時が来たからだ。
20038 24 46 22 彼は逃げ去るへびのような音をたてる。その敵が軍勢を率いて彼に臨み、きこりのように、おのをもって来るからだ。
20039 24 46 23 彼らは彼の林がいかに入り込みがたくとも、それを切り倒す。彼らはいなごよりも多く、数えがたいからであると、主は言われる。
20040 24 46 24 エジプトの娘ははずかしめを受け、北からくる民の手に渡される」。
20041 24 46 25 万軍の主、イスラエルの神は言われた、「見よ、わたしはテーベのアモンと、パロと、エジプトとその神々とその王たち、すなわちパロと彼を頼む者とを罰する。
20042 24 46 26 わたしは彼らを、その命を求める者の手と、バビロンの王ネブカデレザルの手と、その家来たちの手に渡す。その後、エジプトは昔のように人の住む所となると、主は言われる。
20043 24 46 27 わたしのしもべヤコブよ、恐れることはない、イスラエルよ、驚くことはない。見よ、わたしがあなたを遠くから救い、あなたの子孫をその捕え移された地から救うからだ。ヤコブは帰ってきて、おだやかに、安らかになり、彼を恐れさせる者はない。
20044 24 46 28 主は言われる、わたしのしもべヤコブよ、恐れることはない、わたしが共にいるからだ。わたしはあなたを追いやった国々をことごとく滅ぼし尽す。しかしあなたを滅ぼし尽すことはしない。わたしは正しい道に従って、あなたを懲らしめる、決して罰しないではおかない」。
20045 24 47 1 パロがまだガザを撃たなかったころ、ペリシテびとの事について預言者エレミヤに臨んだ主の言葉。
20046 24 47 2 「主はこう言われる、見よ、水は北から起り、あふれ流れて、この地と、そこにあるすべての物、その町と、その中に住む者とにあふれかかる。その時、人々は叫び、この地に住む者はみな嘆く。
20047 24 47 3 そのたくましい馬のひずめの踏み鳴らす音のため、その戦車の響きのため、その車輪のとどろきのために、父はその手が弱くなって、自分の子をも顧みない。
20048 24 47 4 これは、ペリシテびとを滅ぼし尽し、ツロとシドンに残って助けをなす者をことごとく絶やす日が来るからである。主はカフトルの海岸に残っているペリシテびとを滅ぼされる。
20049 24 47 5 ガザには髪をそることが始まっている。アシケロンは滅びた。アナクびとの残りの民よ、いつまで自分の身に傷つけるのか。
20050 24 47 6 主のつるぎよ、おまえはいつになれば静かになるのか。おまえのさやに帰り、休んで静かにしておれ。
20051 24 47 7 主がこれに命を下されたのだ、どうして静かにしておれようか。アシケロンと海岸の地を攻めることを定められたのだ」。
20052 24 48 1 モアブの事について、万軍の主、イスラエルの神はこう言われる、「ああ、ネボはわざわいだ、これは滅ぼされた。キリヤタイムははずかしめられて取られ、とりでは、はずかしめられてこわされた。
20053 24 48 2 モアブの誉は、消え去った。ヘシボンで人々はモアブの害を図り、『さあ、この国を断ち滅ぼそう』という。マデメンよ、おまえもまた滅ぼされる、つるぎがおまえを追う。
20054 24 48 3 ホロナイムから叫び声が聞える、『荒廃と大いなる滅亡だ』という。
20055 24 48 4 モアブは滅ぼされ、叫びはゾアルにまで聞える。
20056 24 48 5 彼らは泣きながらルヒテの坂を登る。彼らはホロナイムの下り坂で、『滅亡』の叫びを聞いたからだ。
20057 24 48 6 逃げて、自分の身を救え、荒野の野ろばのようになれ。
20058 24 48 7 おまえが、とりでと財宝とを頼みにしたので、おまえも捕えられるからだ。またケモシは、その祭司とつかさたちと共に、捕えられて行く。
20059 24 48 8 滅ぼす者はすべての町に来る、一つの町ものがれることができない。谷は滅び、平地は荒される、主の言われたとおりである。
20060 24 48 9 モアブに翼を与えて、飛び去らせよ。その町々は荒れて、住む者はなくなる。
20061 24 48 10 主のわざを行うことを怠る者はのろわれる。またそのつるぎを押えて血を流さない者はのろわれる。
20062 24 48 11 モアブはその幼い時から安らかで、酒が、沈んだおりの上にとどまって、器から器に、くみ移されなかったように、捕え移されなかったので、その味はなお存し、その香気も変ることがない。
20063 24 48 12 主は言われる、それゆえ見よ、わたしがこれを傾ける者どもをつかわす日が来る。彼らはこれを傾け、その器をあけ、そのかめを砕く。
20064 24 48 13 その時モアブはケモシのために恥をかく。ちょうどイスラエルの家がその頼みとしたベテルのために恥をかいたようになる。
20065 24 48 14 あなたがたはどうして『われわれは勇士だ。強い戦士だ』というのか。
20066 24 48 15 モアブとその町々を滅ぼす者は上って来、モアブのえり抜きの若者たちは下って殺されたと万軍の主と名のる王が言われる。
20067 24 48 16 モアブの災難は近づいている、その苦難はすみやかに来る。
20068 24 48 17 すべてその周囲にある者よ、またその名を知る者よ、彼のために嘆いて、『ああ、強き笏、麗しきつえは、ついに折れた』と言え。
20069 24 48 18 デボンに住む者よ、ああなたの栄えを離れて下り、かわいた地に座せよ。モアブを滅ぼす者があなたに攻めのぼって来て、あなたの城を滅ぼしたからだ。
20070 24 48 19 アロエルに住む者よ、道のかたわらに立って見張りし、逃げてくる男、のがれてくる女に尋ねて、『何が起ったのか』と言え。
20071 24 48 20 モアブは敗れて、恥をこうむっている。嘆き呼ばわれ。アルノン川のほとりで、モアブは滅ぼされたと告げよ。
20072 24 48 21 さばきは高原の地に臨み、ホロン、ヤハズ、メパアテ、
20073 24 48 22 デボン、ネボ、ベテ・デブラタイム、
20074 24 48 23 キリヤタイム、ベテ・ガムル、ベテ・メオン、
20075 24 48 24 ケリオテ、ボズラなどモアブの地のすべての町の、遠いものにも近いものにも、臨んだ。
20076 24 48 25 モアブの角は砕け、その腕は折れたと主は言われる。
20077 24 48 26 モアブを酔わせよ、彼が主に敵して自ら高ぶったからである。モアブは自分の吐いた物の中にころがって、笑い草となる。
20078 24 48 27 イスラエルはあなたの笑い草ではなかったか。あなたが、彼のことを語るごとに首を振ったのは、彼が盗賊の中にいたとでもいうのか。
20079 24 48 28 モアブに住む者よ、町を去って岩の間に住め。谷の入口のかたわらに巣を作る山ばとのようにせよ。
20080 24 48 29 われわれはモアブの高慢な事を聞いた、その高慢は、はなはだしい。すなわち、その尊大、高慢、横柄、およびその心の高ぶりのことを聞いた。
20081 24 48 30 主は言われる、わたしは彼の横着なのを知る、彼の自慢は偽りで、その行いも偽りである。
20082 24 48 31 それゆえ、わたしはモアブのために嘆き、モアブの全地のために呼ばわる。キルヘレスの人々のためにわたしは悲しむ。
20083 24 48 32 シブマのぶどうの木よ、わたしはヤゼルのために泣くのにまさっておまえのために泣く。おまえのつるは延びて海を越え、ヤゼルに及んだ。おまえの夏の実と、その収穫を滅ぼす者が襲ってきた。
20084 24 48 33 喜びと楽しみは、実り多いモアブの地を去った。わたしは、ぶどうをしぼる所にも酒をなくした。楽しく呼ばわって、ぶどうを踏む者もなくなった。呼ばわっても、喜んで呼ばわる声ではない。
20085 24 48 34 ヘシボンとエレアレは叫ぶ。ヤハヅに至るまで、ゾアルからホロナイムとエグラテ・シリシヤに至るまで、彼らはその声をあげる。ニムリムの水も絶えたからである。
20086 24 48 35 主は言われる、わたしは犠牲を高き所にささげ、香をその神にたく者をモアブのうちに滅ぼす。
20087 24 48 36 それゆえ、わたしの心はモアブのために笛のように嘆き、わたしの心はキルヘレスの人々のために笛のように嘆く。彼らの獲た富が消えうせたからである。
20088 24 48 37 人はみな髪をそり、皆ひげをそり、みな手に傷をつけ、腰に荒布を着ける。
20089 24 48 38 モアブではどこの屋根の上も、広場も、ただ悲しみに包まれている。これは、わたしが、だれもほしがらない器のようにモアブを砕いたからであると主は言われる。
20090 24 48 39 ああ、モアブはついに滅びた。人々は嘆く。ああ、モアブは恥じて顔をそむけた。モアブはその周囲のすべての者の笑い草となり恐れとなった」。
20091 24 48 40 主はこう言われる、「見よ、敵はわしのように速く飛んできて、モアブに向かって翼をのべる。
20092 24 48 41 町々は取られ、城は奪われる。その日モアブの勇士の心は子を産む女の心のようになる。
20093 24 48 42 モアブは滅ぼされて、国を成さないようになる。主に敵して自ら誇ったからである。
20094 24 48 43 主は言われる、モアブに住む者よ、恐れと、穴と、わなとがあなたに臨んでいる。
20095 24 48 44 恐れをさけて逃げる者は穴におちいり、穴をよじ上って出る者は、わなに捕えられる。わたしがモアブに、その罰せられる年に、これらのものを臨ませるからであると主は言われる。
20096 24 48 45 逃げた者はヘシボンの陰に、力なく立ちどまる。ヘシボンから火が出、シホンの家から炎が出て、モアブの額、騒ぐ人々の頭の頂を焼いたからだ。
20097 24 48 46 モアブよ、おまえはわざわいだ。ケモシの民は滅びた。おまえのむすこらは捕え移され、おまえの娘らも捕え行かれたからである。
20098 24 48 47 しかし末の日にわたしは再びモアブを栄えさせると主は言われる」。ここまではモアブのさばきの事をいったのである。
20099 24 49 1 アンモンびとについて、主はこう言われる、「イスラエルには子がないのか、世継ぎがないのか。どうしてミルコムがガドを追い出して、その民がその町々に住んでいるのか。
20100 24 49 2 主は言われる、それゆえ、見よ、アンモンびとのラバを攻める戦いの叫びを、わたしが聞えさせる日が来る。ラバは荒塚となり、その村々は火で焼かれる。そのときイスラエルは自分を追い出した者どもを追い出すと主は言われる。
20101 24 49 3 ヘシボンよ嘆け、アイは滅ぼされた。ラバの娘たちよ呼ばわれ。荒布を身にまとい、悲しんで、まがきのうちを走りまわれ。ミルコムとその祭司およびつかさが共に捕え移されるからだ。
20102 24 49 4 不信の娘よ、あなたはなぜ自分の谷の事を誇るのか。あなたは自分の富に寄り頼んで、『だれがわたしに攻めてくるものか』と言う。
20103 24 49 5 主なる万軍の神は言われる、見よ、わたしはあなたの上に恐れを臨ませる、それはあなたの周囲の者から来る。あなたは追われて、おのおの直ちに他人に続き、逃げる者を集める人もない。
20104 24 49 6 しかし、のちになって、わたしはアンモンびとを再び栄えさせると、主は言われる」。
20105 24 49 7 エドムの事について、万軍の主はこう言われる、「テマンには、もはや知恵がないのか。さとい者には計りごとがなくなったのか。その知恵は消えうせたのか。
20106 24 49 8 デダンに住む者よ、逃げよ、のがれよ、深い所に隠れよ。わたしがエサウの災難を彼の上に臨ませ、彼を罰する時をこさせるからだ。
20107 24 49 9 ぶどうを集める者があなたの所に来たならば、すこしの実をも残さないであろうか。夜、盗びとが来たならば、自分たちの満足するだけ滅ぼさないであろうか。
20108 24 49 10 しかしわたしはエサウを裸にし、その隠れる所を現したので、彼はその身を隠すことができない。その子どもたちも、兄弟も、隣り人も滅ぼされる。そして彼は、いなくなる。
20109 24 49 11 あなたのみなしごを残せ、わたしがそれを生きながらえさせる。あなたのやもめには、わたしに寄り頼ませよ」。
20110 24 49 12 主はこう言われる、「もし、杯を飲むべきでない者もそれを飲まなければならなかったとすれば、あなたは罰を免れることができようか。あなたは罰を免れない。それを飲まなければならない。
20111 24 49 13 主は言われる、わたしは自分をさして誓った、ボズラは驚きとなり、ののしりとなり、荒れ地となり、のろいとなる。その町々は長く荒れ地となる」。
20112 24 49 14 わたしは主からのおとずれを聞いた。ひとりの使者がつかわされて万国に行き、そして言った、「あなたがたは集まり、行って彼を攻め、立って戦え。
20113 24 49 15 見よ、わたしはあなたを万国のうちに小さい者とし、人々のうちに卑しめられる者とする。
20114 24 49 16 岩の割れ目に住み、山の高みを占める者よ、あなたの恐ろしい事と、あなたの心の高ぶりが、あなたを欺いた。あなたは、わたしのように巣を高い所に作っているが、わたしはその所からあなたを取りおろすと主は言われる。
20115 24 49 17 エドムは恐れとなる。そのかたわらを通り過ぎる者はみな恐れ、その災のために、舌打ちする。
20116 24 49 18 主は言われる、ソドムとゴモラとその隣の町々がくつがえされた時のように、そこに住む人はなく、そこに宿る人もなくなる。
20117 24 49 19 見よ、ししがヨルダンの密林から上ってきて、じょうぶな羊のおりを襲うように、わたしは、たちまち彼らをそこから逃げ走らせ、わたしの選ぶ者をその上に立てる。だれかわたしのような者があるであろうか。だれがわたしを呼びつけることができようか。どの牧者がわたしの前に立つことができようか。
20118 24 49 20 それゆえ、エドムに対して主が立てた計りごとと、テマンに住む者に対してしようとする事を聞くがよい。彼らの群れのうちの小さいものまでも皆、引かれて行く。彼らのおりのものもその終りを見て恐れる。
20119 24 49 21 その倒れる音を聞いて、地は震い、彼らの叫び声は紅海にも聞える。
20120 24 49 22 見よ、敵はわしのように上り、すみやかに飛びかけり、その翼をボズラの上に張り広げる。その日エドムの勇士の心は子を産む女の心のようになる」。
20121 24 49 23 ダマスコの事について、「ハマテとアルパデは、うろたえている、彼らは悪いおとずれを聞いたからだ。彼らは勇気を失い、穏やかになることのできない海のように悩む。
20122 24 49 24 ダマスコは弱り、身をめぐらして逃げた、恐怖に襲われている。子を産む女に臨むように痛みと悲しみと彼に臨む。
20123 24 49 25 ああ、名ある町、楽しい町は捨てられる。
20124 24 49 26 それゆえ、その日に、若い者は、広場に倒れ、兵士はことごとく滅ぼされると万軍の主は言われる。
20125 24 49 27 わたしはダマスコの城壁の上に火を燃やし、ベネハダデの宮殿を焼き尽す」。
20126 24 49 28 バビロンの王ネブカデレザルが攻め撃ったケダルとハゾルの諸国の事について、主はこう言われる、「立って、ケダルに向かって進み、東の人々を滅ぼせ。
20127 24 49 29 彼らの天幕と、その羊の群れとは取られ、その垂幕とそのもろもろの器と、らくだとは彼らの所から運び去られ、人々は彼らに向かって叫ぶ、『恐ろしいことが四方にある』と。
20128 24 49 30 主は言われる、ハゾルに住む者よ、逃げよ、遠くさまよい行き、深い所に隠れよ。バビロンの王ネブカデレザルがあなたがたを攻める計りごとをめぐらし、あなたがたを攻める、てだてを設けたからだ。
20129 24 49 31 主は言われる、立って進み、安全な所に住むきらくな民を攻めよ、彼らは門もなく、貫の木もなく、ひとり離れて住む。
20130 24 49 32 彼らのらくだは、ぶんどり物となり、家畜の群れは奪われる。わたしは、かの髪の毛のすみずみを切る者を四方に散らし、その災難を八方からこさせると主は言われる。
20131 24 49 33 ハゾルは山犬のすまいとなり、いつまでも荒れ地となっている。だれもそこに住む人はなく、そこに宿る人もない」。
20132 24 49 34 ユダの王ゼデキヤの治世の初めのころに、エラムの事について預言者エレミヤに臨んだ主の言葉。
20133 24 49 35 万軍の主はこう言われる、「見よ、わたしはエラムが力として頼んでいる弓を折る。
20134 24 49 36 わたしは天の四方から、四方の風をエラムにこさせ、彼らを四方の風に散らす。エラムから追い出される者の行かない国はない。
20135 24 49 37 主は言われる、わたしはエラムをしてその敵の前、またその命を求める者の前に恐れさせる。わたしは災をくだし、激しい怒りをその上にくだす。彼らのうしろに、つるぎを送って滅ぼし尽す。
20136 24 49 38 そしてわたしの位をエラムにすえ、王とつかさたちとを滅ぼすと主は言われる。
20137 24 49 39 しかし末の日に、わたしはエラムを再び栄えさせると、主は言われる」。
20138 24 50 1 主が預言者エレミヤによって語られたバビロンとカルデヤびとの地の事についての言葉。
20139 24 50 2 「国々のうちに告げ、また触れ示せよ、旗を立てて、隠すことなく触れ示して言え、『バビロンは取られ、ベルははずかしめられ、メロダクは砕かれ、その像ははずかしめられ、その偶像は砕かれる』と。
20140 24 50 3 それは、北の方から一つの国民がきて、これを攻め、その地を荒して、住む人もないようにするからである。人も獣もみな逃げ去ってしまう。
20141 24 50 4 主は言われる、その日その時、イスラエルの民とユダの民は共に帰ってくる。彼らは嘆きながら帰ってくる。そしてその神、主を求める。
20142 24 50 5 彼らは顔をシオンに向けて、その道を問い、『さあ、われわれは、永遠に忘れられることのない契約を結んで主に連なろう』と言う。
20143 24 50 6 わたしの民は迷える羊の群れである、その牧者がこれをいざなって、山に踏み迷わせたので、山から丘へと行きめぐり、その休む所を忘れた。
20144 24 50 7 これに会う者はみなこれを食べた。その敵は言った、『われわれに罪はない。彼らがそのまことのすみかである主、先祖たちの希望であった主に対して罪を犯したのだ』と。
20145 24 50 8 バビロンのうちから逃げよ。カルデヤびとの地から出よ。群れの前に行く雄やぎのようにせよ。
20146 24 50 9 見よ、わたしは大きい国々を起し集めて、北の地からバビロンに攻めこさせる。彼らはこれに向かって勢ぞろいをし、これをその所から取る。彼らの矢はむなしく帰らない老練な勇士のようである。
20147 24 50 10 カルデヤは人にかすめられる。これをかすめる者はみな飽くことができると、主は言われる。
20148 24 50 11 わたしの嗣業をかすめる者どもよ、あなたがたは喜び楽しみ、雌の子牛のように草に戯れ、雄馬のように、いなないているが、
20149 24 50 12 あなたがたの母はいたくはずかしめられ、あなたがたを産んだ者は恥をこうむる。見よ、彼女は国々のうちの最もあとなるものとなり、かわいた砂原の荒野となる。
20150 24 50 13 主の怒りによって、ここに住む者はなく、完全に荒れ地となる。バビロンのかたわらを通る者は、みなその傷を見て驚き、かつあざ笑う。
20151 24 50 14 あなたがたすべて弓を張る者よ、バビロンの周囲に勢ぞろいして、これを攻め、矢を惜しまずに、これを射よ、彼女が主に罪を犯したからだ。
20152 24 50 15 その周囲に叫び声をあげよ、彼女は降伏した。そのとりでは倒れ、その城壁はくずれた、主があだをかえされたからだ。彼女に報復せよ、彼女がおこなったように、これに行え。
20153 24 50 16 種まく者と、刈入れどきに、かまを取る者をバビロンに絶やせ。滅ぼす者のつるぎを恐れて、人はおのおの自分の民の所に帰り、そのふるさとに逃げて行く。
20154 24 50 17 イスラエルは、ししに追われて散った羊である。初めにアッスリヤの王がこれを食い、そして今はついにバビロンの王ネブカデレザルがその骨をかじった。
20155 24 50 18 それゆえ万軍の主、イスラエルの神は、こう言われる、見よ、わたしはアッスリヤの王を罰したように、バビロンの王とその国に罰を下す。
20156 24 50 19 わたしはイスラエルを再びその牧場に帰らせる。彼はカルメルとバシャンで草を食べる。またエフライムの山とギレアデでその望みが満たされる。
20157 24 50 20 主は言われる、その日その時には、イスラエルのとがを探しても見当らず、ユダの罪を探してもない。それはわたしが残しておく人々を、ゆるすからである。
20158 24 50 21 主は言われる、上って行って、メラタイムの地を攻め、ペコデの民を攻め、彼らを殺して全く滅ぼし、わたしがあなたがたに命じたことを皆、行いなさい。
20159 24 50 22 その地に、いくさの叫びと、大いなる滅びがある。
20160 24 50 23 ああ、全地を砕いた鎚はついに折れ砕ける。ああ、バビロンはついに国々のうちの恐るべき見ものとなる。
20161 24 50 24 バビロンよ、わたしは、おまえを捕えるためにわなをかけたが、おまえはそれにかかった。そしておまえはそれを知らなかった。おまえは主に敵したので、尋ね出され、捕えられた。
20162 24 50 25 主は武器の倉を開いてその怒りの武器を取り出された。主なる万軍の神が、カルデヤびとの地に事を行われるからである。
20163 24 50 26 あらゆる方面からきて、これを攻め、その穀倉を開き、これを穀物の山のように積み上げ、完全に滅ぼし尽し、そこに残る者のないようにせよ。
20164 24 50 27 その雄牛をことごとく殺せ、それを、ほふり場に下らせよ。それらのものはわざわいだ、その日、その罰を受ける時がきたからだ。
20165 24 50 28 聞けよ、バビロンの地から逃げ、のがれてきた者の声がする。われわれの神、主の報復、その宮の報復の事をシオンに告げ示す。
20166 24 50 29 弓を張る射手をことごとく呼び集めて、バビロンを攻めよ。その周囲に陣を敷け。ひとりも逃がすな。そのしわざにしたがってバビロンに報い、これがおこなった所にしたがってこれに行え。彼がイスラエルの聖者である主に向かって高慢にふるまったからだ。
20167 24 50 30 それゆえ、その日、若い者は、広場に倒れ、兵士はみな絶やされると主は言われる。
20168 24 50 31 主なる万軍の神は言われる、高ぶる者よ、見よ、わたしはおまえの敵となる、あなたの日、わたしがおまえを罰する時が来た。
20169 24 50 32 高ぶる者はつまずき倒れる、これを助け起すものはない。わたしはその町々に火を燃やして、その周囲の者をことごとく焼き尽す。
20170 24 50 33 万軍の主はこう言われる、イスラエルの民とユダの民は共にしえたげられている。彼らをとりこにした者はみな彼らを固く守って釈放することを拒む。
20171 24 50 34 彼らをあがなう者は強く、その名は万軍の主といわれる。彼は必ず彼らの訴えをただし、この地に安きを与えるが、バビロンに住む者には不安を与えられる。
20172 24 50 35 主は言われる、カルデヤびとの上とバビロンに住む者の上、そのつかさたち、その知者たちの上につるぎが臨む。
20173 24 50 36 占い師の上につるぎが臨み、彼らは愚か者となる。その勇士の上につるぎが臨み、彼らは滅ぼされる。
20174 24 50 37 その馬の上と、その車の上につるぎが臨み、またそのうちにあるすべての雇兵の上に臨み、彼らは女のようになる。その財宝の上につるぎが臨み、それはかすめられる。
20175 24 50 38 その水の上に、ひでりが来て、それはかわく。それは、この地が偶像の地であって、人々が偶像に心が狂っているからだ。
20176 24 50 39 それゆえ、野の獣と山犬とは共にバビロンにおり、だちょうもそこに住む。しかし、いつまでもその地に住む人はなく、世々ここに住む人はない。
20177 24 50 40 主は言われる、神がソドムとゴモラと、その隣の町々を滅ぼされたように、そこに住む人はなく、そこに宿る人の子はない。
20178 24 50 41 見よ、一つの民が北の方から来る。大いなる国と多くの王が地の果から立ち上がっている。
20179 24 50 42 彼らは弓と、やりを取る。残忍で、あわれみがなく、その響きは海の鳴りとどろくようである。バビロンの娘よ、彼らは馬に乗り、いくさびとのように身をよろって、あなたを攻める。
20180 24 50 43 バビロンの王はそのうわさを聞いて、その手は弱り、子を産む女に臨むような痛みと苦しみに迫られた。
20181 24 50 44 見よ、ししがヨルダンの密林から上ってきて、じょうぶな羊のおりを襲うように、わたしは、たちまち彼らをそこから逃げ去らせる。そしてわたしの選ぶ者をその上に立てる。だれかわたしのような者があるであろうか。だれがわたしを呼びつけることができようか。どの牧者がわたしの前に立つことができようか。
20182 24 50 45 それゆえ、バビロンに対して主が立てた計りごとと、カルデヤびとの地に対してしようとする事を聞くがよい。彼らの群れのうちの小さい者は、かならず引かれて行く。彼らのおりのものも必ずその終りを見て恐れる。
20183 24 50 46 バビロンが取られたとの声によって地は震い、その叫びは国々のうちに聞える」。
20184 24 51 1 主はこう言われる、「見よ、わたしは、滅ぼす者の心を奮い起して、バビロンを攻め、カルデヤに住む者を攻めさせる。
20185 24 51 2 わたしはバビロンに、あおぎ分ける者をつかわす。彼らは、その災の日に、四方からこれを攻め、それをあおぎ分けて、その地をむなしくする。
20186 24 51 3 射手にはその弓を張らせることなく、よろいを着て立ち上がらせるな。その若き者をあわれむことなく、その軍勢をことごとく滅ぼせ。
20187 24 51 4 彼らはカルデヤびとの地に殺されて倒れ、そのちまたに傷ついて倒れる。
20188 24 51 5 イスラエルとユダはその神、万軍の主に捨てられてはいないが、しかしカルデヤびとの地にはイスラエルの聖者に向かって犯した罪が満ちている。
20189 24 51 6 バビロンのうちからのがれ出て、おのおのその命を救え。その罰にまきこまれて断ち滅ぼされてはならない。今は主があだを返される時だから、それに報復をされるのである。
20190 24 51 7 バビロンは主の手のうちにある金の杯であって、すべての地を酔わせた。国々はその酒を飲んだので、国々は狂った。
20191 24 51 8 バビロンはたちまち倒れて破れた。これがために嘆け。その傷のために乳香を取れ。あるいは、いえるかも知れない。
20192 24 51 9 われわれはバビロンをいやそうとしたが、これはいえなかった。われわれはこれを捨てて、おのおの自分の国に帰ろう。その罰が天に達し、雲にまで及んでいるからだ。
20193 24 51 10 主はわれわれの正しいことを明らかにされた。さあ、われわれはシオンで、われわれの神、主のみわざを告げ示そう。
20194 24 51 11 矢をとぎ、
20195 24 51 12 バビロンの城壁に向かって旗を立て、見張りを強固にし、番兵を置き、伏兵を備えよ。主がバビロンに住む者を攻めようと図り、その言われたことを、いま行われるからだ。
20196 24 51 13 多くの水のほとりに住み、多くの財宝を持つ者よ、あなたの終りが来て、その命の糸は断たれる。
20197 24 51 14 万軍の主はみずからをさして誓い、言われる、わたしは必ずあなたのうちに、人をいなごのように満たす。彼らはあなたに向かって、かちどきの声をあげる。
20198 24 51 15 主はその力をもって地を造り、その知恵をもって世界を建て、その悟りをもって天をのべられた。
20199 24 51 16 彼が声を出されると、天に多くの水のざわめきがあり、また地の果から霧を立ちあがらせられる。彼は雨のためにいなびかりをおこし、その倉から風を取り出される。
20200 24 51 17 すべての人は愚かで知恵がなく、すべての金細工人はその造った偶像のために恥をこうむる。その偶像は偽り物で、そのうちに息がないからだ。
20201 24 51 18 それらは、むなしいもの、迷いのわざである。罰せられる時になれば滅びるものである。
20202 24 51 19 ヤコブの分である彼はこのようなものではない、彼は万物の造り主だからである。イスラエルは彼の嗣業としての部族である。彼の名は万軍の主という。
20203 24 51 20 おまえはわたしの鎚であり、戦いの武器である。わたしはおまえをもってすべての国を砕き、おまえをもって万国を滅ぼす。
20204 24 51 21 おまえをもってわたしは馬と、その騎手とを砕き、おまえをもって戦車とそれに乗る者とを砕く。
20205 24 51 22 わたしはおまえをもって男と女とを砕き、おまえをもって老いた者と幼い者とを砕き、おまえをもって若い者と、おとめとを砕く。
20206 24 51 23 わたしはおまえをもって、羊飼と、その群れとを砕き、おまえをもって農夫と、くびきを負う家畜とを砕き、おまえをもっておさたちと、つかさたちとを砕く。
20207 24 51 24 わたしはバビロンとカルデヤに住むすべての者とに、彼らがシオンで行ったもろもろの悪しき事のために、あなたがたの目の前で報いをすると、主は言われる。
20208 24 51 25 主は言われる、全地を滅ぼし尽す滅ぼしの山よ、見よ、わたしはおまえの敵となる、わたしは手をおまえの上に伸べて、おまえを岩からころばし、おまえを焼け山にする。
20209 24 51 26 主は言われる、人がおまえから石を取って、隅の石とすることなく、また礎とすることもない。おまえはいつまでも荒れ地となっている。
20210 24 51 27 地に旗を立て、国々のうちにラッパを吹き、国々の民を集めてそれを攻め、アララテ、ミンニ、アシケナズの国々をまねいてそれを攻め、軍の長を立ててそれを攻め、群がるいなごのように馬を上り行かせよ。
20211 24 51 28 国々の民を集めてそれを攻め、メデアびとの王たちと、そのおさたち、つかさたち、およびすべての領地の人々を集めてこれを攻めよ。
20212 24 51 29 その地は震い、かつもだえ苦しむ、主がその思い図ることをバビロンにおこない、バビロンの地を、住む人なき荒れ地とされるからだ。
20213 24 51 30 バビロンの勇士たちは戦いをやめて、その城にこもり、力はうせて、女のようになる。その家は焼け、その貫の木は砕かれる。
20214 24 51 31 飛脚は走って飛脚に会い、使者は走って使者に会い、バビロンの王に告げて、町はことごとく取られ、
20215 24 51 32 渡し場は奪われ、とりでは火で焼かれ、兵士はおびえていると言う。
20216 24 51 33 万軍の主、イスラエルの神はこう言われる、バビロンの娘は、打ち場のようだ、その踏まれる時が来たのだ。しばらくしてその刈り取られる時が来る」。
20217 24 51 34 「バビロンの王ネブカデレザルはわたしを食い尽し、わたしを滅ぼし、わたしを、からの器のようにし、龍のようにわたしを飲み、わたしのうまい物でその腹を満たし、わたしを洗いざらいにした。
20218 24 51 35 わたしとわたしの肉親におこなった暴虐は、バビロンにふりかかる」とシオンに住む者は言わなければならない。「わたしの血はカルデヤに住む者にふりかかる」とエルサレムは言わなければならない。
20219 24 51 36 それゆえ主はこう言われる、「見よ、わたしはあなたの訴えをただし、あなたのためにあだを返す。わたしはバビロンの海をかわかし、その泉をかわかす。
20220 24 51 37 バビロンは荒塚となり、山犬のすまいとなり、驚きとなり、笑いとなり、住む人のない所となる。
20221 24 51 38 彼らはししのように共にほえ、若いししのようにほえる。
20222 24 51 39 彼らの欲の燃えている時、わたしは宴を設けて彼らを酔わせ、彼らがついに気を失って、ながい眠りにいり、もはや目をさますことのないようにしようと主は言われる。
20223 24 51 40 わたしは彼らを小羊のように、また雄羊や雄やぎのように、ほふり場に下らせよう。
20224 24 51 41 ああ、バビロンはついに取られた、全地の人の、ほめたたえた者は捕えられた。ああ、バビロンはついに国々のうちに驚きとなった。
20225 24 51 42 海はバビロンにあふれかかり、どよめく波におおわれた。
20226 24 51 43 その町々は荒れて、かわいた地となり、砂原となり、住む人のない地となる。人の子はひとりとしてそこを過ぎることはない。
20227 24 51 44 わたしはバビロンでベルを罰し、そののみこんだものを口から取り出す。国々が川のように彼に流れ入ることはなくなる。バビロンの城壁は倒れた。
20228 24 51 45 わが民よ、あなたがたはその中から出て、おのおの主の激しい怒りを免れ、その命を救え。
20229 24 51 46 心を弱くしてはならない、この地で聞くうわさを恐れてはならない。うわさはこの年にもくれば、また次の年にもくる。この地に暴虐があり、つかさとつかさとが攻めあうことがある。
20230 24 51 47 それゆえ見よ、わたしがバビロンの偶像を罰する日が来る。その全地ははずかしめられ、その殺される者はみなその中に倒れる。
20231 24 51 48 天と地とそのうちにあるすべてのものはバビロンの事で喜び歌う。滅ぼす者が北の方からここに来るからであると主は言われる。
20232 24 51 49 イスラエルの殺された者たちのために、バビロンは倒れなければならない、バビロンのために全地の殺された者は倒れたのだ。
20233 24 51 50 つるぎをのがれてきたあなたがたは、行け、立ちとどまってはならない。遠くから主を覚え、エルサレムを心にとめよ。
20234 24 51 51 『われわれはののしりを聞いたので、恥じている。異邦人が主の宮の聖所にはいったので、恥がわれわれの顔をおおった』。
20235 24 51 52 主は言われる、それゆえ見よ、わたしがその偶像を罰する日が来る、傷つけられた者が、その全国にうめくようになる。
20236 24 51 53 たといバビロンが天に上っても、その城を高くして固めても、滅ぼす者はわたしから出て、これに臨むと主は言われる。
20237 24 51 54 聞け、バビロンの叫びを、カルデヤびとの地に起る大いなる滅びの騒ぎ声を。
20238 24 51 55 主がバビロンを滅ぼし、その大いなる声を絶やされるのだ。その波は大水のように鳴りとどろき、その声はひびき渡る。
20239 24 51 56 滅ぼす者がこれに臨み、バビロンに来た。その勇士たちは捕えられ、その弓は折られる。主は報いをする神であるから必ず報いられるのだ。
20240 24 51 57 わたしはその君たちと知者たち、おさたち、つかさたち、および勇士たちを酔わせる。彼らは、ながい眠りにいり、目をさますことはない。万軍の主と呼ばれる王がこれを言わせる。
20241 24 51 58 万軍の主はこう言われる、バビロンの広い城壁は地にくずされ、その高い門は火に焼かれる。こうして民の労苦はむなしくなり、国民はただ火のために疲れる」。
20242 24 51 59 マアセヤの子であるネリヤの子セラヤが、ユダの王ゼデキヤと共に、その治世の四年にバビロンへ行くとき、預言者エレミヤがセラヤに命じた言葉。セラヤは宿営の長であった。
20243 24 51 60 エレミヤはバビロンに臨もうとするすべての災を巻物にしるした。これはすなわちバビロンの事についてしるしたすべての言葉である。
20244 24 51 61 エレミヤはセラヤに言った、「あなたはバビロンへ行ったならば、忘れることなくこのすべての言葉を読み、
20245 24 51 62 そして言いなさい、『主よ、あなたはこの所を滅ぼし、人と獣とを問わず、すべてここに住む者のないようにし、永久にここを荒れ地としようと、この所について語られました』と。
20246 24 51 63 あなたがこの巻物を読み終ったならば、これに石をむすびつけてユフラテ川の中に投げこみ、
20247 24 51 64 そして言いなさい、『バビロンはこのように沈んで、二度と上がってこない。わたしがこれに災を下すからである』と」。ここまではエレミヤの言葉である。
20248 24 52 1 ゼデキヤは王となったとき二十一歳であったが、エルサレムで十一年世を治めた。母の名はハムタルといい、リブナのエレミヤの娘である。
20249 24 52 2 ゼデキヤはエホヤキムがすべて行ったように、主の目の前に悪事を行った。
20250 24 52 3 たしかに、主の怒りによって、エルサレムとユダとは、そのみ前から捨て去られるようなことになった。
20251 24 52 4 そこで彼の治世の九年十月十日に、バビロンの王ネブカデレザルはその軍勢を率い、エルサレムにきて、これを包囲し、周囲に塁を築いてこれを攻めた。
20252 24 52 5 こうしてこの町は攻め囲まれて、ゼデキヤ王の十一年にまで及んだが、
20253 24 52 6 その四月九日になって、町の中の食糧は、はなはだしく欠乏し、その地の民は食物を得ることができなくなった。
20254 24 52 7 そして町の城壁はついに打ち破られたので、兵士たちはみな逃げ、夜のうちに、王の園の近くの、二つの城壁の間の門から町をのがれ出て、カルデヤびとが、町を攻め囲んでいるうちに、アラバの方へ落ちて行った。
20255 24 52 8 しかしカルデヤびとの軍勢は王を追って行って、エリコの平地でゼデキヤに追いついたが、彼の軍勢がみな散って彼のそばを離れたので、
20256 24 52 9 カルデヤびとは王を捕え、ハマテの地のリブラにいるバビロンの王のもとに引いていったので、王は彼の罪を定めた。
20257 24 52 10 すなわちバビロンの王はゼデキヤの子たちをその目の前で殺させ、ユダのつかさたちをことごとくリブラで殺させ、
20258 24 52 11 またゼデキヤの目をつぶさせた。そしてバビロンの王は彼を鎖につないでバビロンへ連れて行き、その死ぬ日まで獄屋に入れて置いた。
20259 24 52 12 五月十日に、――それはバビロンの王ネブカデレザルの世の十九年であった――バビロンの王に仕える侍衛の長ネブザラダンはエルサレムに、はいって、
20260 24 52 13 主の宮と王の宮殿を焼き、エルサレムのすべての家を焼いた。彼は大きな家をみな焼きはらった。
20261 24 52 14 また侍衛の長と共にいたカルデヤびとの軍勢は、エルサレムの周囲の城壁をみな取りこわした。
20262 24 52 15 そして侍衛の長ネブザラダンは民のうちの最も貧しい者若干、そのほか町のうちに残った者、およびバビロンの王にくだった人、その他工匠たちを捕え移した。
20263 24 52 16 しかし侍衛の長ネブザラダンはその地の最も貧しい者若干を残して、ぶどうを作る者とし、農夫とした。
20264 24 52 17 カルデヤびとはまた主の宮の青銅の柱と、洗盤の台と、青銅の海を砕いて、その青銅をことごとくバビロンへ運び、
20265 24 52 18 また、つぼと、十能と、心切りばさみと、鉢と、香を盛る皿および宮の勤めに用いる青銅の器をことごとく取って行った。
20266 24 52 19 また彼らは小鉢と、心取り皿と、鉢と、つぼと、燭台と、香を盛る皿と、灌祭の鉢を取った。金で作った物は金として、銀で作った物は銀として、侍衛の長は運び去った。
20267 24 52 20 ソロモン王が主の宮に造った二本の柱と、一つの海と、海の下の十二の青銅の牛と、台など、このすべての物の青銅の重さは量ることもできなかった。
20268 24 52 21 この一本の柱の高さは十八キュビト、周囲は十二キュビトで、指四本の厚さがあり、中は、うつろであった。
20269 24 52 22 その上に青銅の柱頭があり、柱頭の高さは五キュビト、柱頭の周囲は網細工と、ざくろとで飾り、これらもみな青銅であった。他の柱もそのざくろも、これと同じであった。
20270 24 52 23 その四方に九十六個のざくろがあり、周囲の網細工の上にあるざくろの数は百個であった。
20271 24 52 24 侍衛の長は祭司長セラヤと次席の祭司ゼパニヤと三人の門を守る者を捕え、
20272 24 52 25 また兵士をつかさどるひとりの役人と、町にいた王の側近の者七人と、その地の民を募る軍勢の長の書記官と、町の中にいた六十人の者を町から捕え去った。
20273 24 52 26 侍衛の長ネブザラダンは、これらの人を捕えて、リブラにいるバビロンの王のもとに連れて行った。
20274 24 52 27 バビロンの王は、ハマテの地のリブラで彼らを撃ち殺した。こうして、ユダは自分の地から捕え移された。
20275 24 52 28 ネブカデレザルが捕え移した民の数は次のとおりである。第七年にはユダヤ人三千二十三人。
20276 24 52 29 またネブカデレザルはその第十八年にエルサレムから八百三十二人を捕え移した。
20277 24 52 30 ネブカデレザルの二十三年に侍衛の長ネブザラダンは、ユダヤ人七百四十五人を捕え移した。この総数は四千六百人であった。
20278 24 52 31 ユダの王エホヤキンが捕え移されて後三十七年の十二月二十五日に、バビロンの王エビルメロダクはその即位の年に、ユダの王エホヤキンを獄屋から出し、そのこうべを挙げさせ、
20279 24 52 32 親切に彼を慰め、その位を、バビロンで共にいる王たちの位よりも高くした。
20280 24 52 33 こうしてエホヤキンは獄屋の服を脱いだ。そして生きている間は毎日王の食卓で食事し、
20281 24 52 34 彼の給与としては、その死ぬ日まで一生の間、たえず日々の必要にしたがって、バビロンの王から給与を賜わった。
20282 25 1 1 ああ、むかしは、民の満ちみちていたこの都、国々の民のうちで大いなる者であったこの町、今は寂しいさまで座し、やもめのようになった。もろもろの町のうちで女王であった者、今は奴隷となった。
20283 25 1 2 これは夜もすがらいたく泣き悲しみ、そのほおには涙が流れている。そのすべての愛する者のうちには、これを慰める者はひとりもなく、そのすべての友はこれにそむいて、その敵となった。
20284 25 1 3 ユダは悩みのゆえに、また激しい苦役のゆえに、のがれて行って、もろもろの国民のうちに住んでいるが、安息を得ず、これを追う者がみな追いついてみると、悩みのうちにあった。
20285 25 1 4 シオンの道は祭に上ってくる者のないために悲しみ、その門はことごとく荒れ、その祭司たちは嘆き、そのおとめたちは引かれて行き、シオンはみずからいたく苦しむ。
20286 25 1 5 そのあだはかしらとなり、その敵は栄えている。そのとがが多いので、主がこれを悩まされたからである。その幼な子たちは捕われて、あだの前に行った。
20287 25 1 6 シオンの娘の栄華はことごとく彼女を離れ去り、その君たちは牧草を得ない、しかのようになり、自分を追う者の前に力なく逃げ去った。
20288 25 1 7 エルサレムはその悩みと苦しみの日に、昔から持っていたもろもろの宝を思い出す。その民があだの手に陥り、だれもこれを助ける者のない時、あだはこれを見て、その滅びをあざ笑った。
20289 25 1 8 エルサレムは、はなはだしく罪を犯したので、汚れたものとなった。これを尊んだ者も皆その裸を見たので、これを卑しめる。これもまたみずから嘆き、顔をそむける。
20290 25 1 9 その汚れはその衣のすそにあり、これはその終りを思わなかった。それゆえ、これは驚くばかりに落ちぶれ、これを慰める者はひとりもない。「主よ、わが悩みを顧みてください、敵は勝ち誇っていますから」。
20291 25 1 10 敵は手を伸べて、その財宝をことごとく奪った。あなたがさきに異邦人らはあなたの公会に、はいってはならないと命じられたのに、彼らがその聖所にはいるのをシオンは見た。
20292 25 1 11 その民はみな嘆いて食物を求め、その命をささえるために、財宝を食物にかえた。「主よ、みそなわして、わたしの卑しめられるのを顧みてください」。
20293 25 1 12 「すべて道行く人よ、あなたがたはなんとも思わないのか。主がその激しい怒りの日にわたしを悩まして、わたしにくだされた苦しみのような苦しみが、また世にあるだろうか、尋ねて見よ。
20294 25 1 13 主は上から火を送り、それをわが骨にくだし、網を張ってわが足を捕え、わたしを引き返させ、ひねもす心わびしく、かつ病み衰えさせられた。
20295 25 1 14 わたしのとがは、つかねられて、一つのくびきとせられ、主のみ手により固く締められて、わたしの首におかれ、わたしの力を衰えさせられた。主はわたしを、立ちむかい得ざる者の手に渡された。
20296 25 1 15 主はわたしのうちにあるすべての勇士を無視し、聖会を召集して、わたしを攻め、わが若き人々を打ち滅ぼされた。主は酒ぶねを踏むように、ユダの娘なるおとめを踏みつけられた。
20297 25 1 16 このために、わたしは泣き悲しみ、わたしの目は涙であふれる。わたしを慰める者、わたしを勇気づける者がわたしから遠く離れたからである。わが子らは敵が勝ったために、わびしい者となった」。
20298 25 1 17 シオンは手を伸ばしても、これを慰める者はひとりもない。ヤコブについては、主は命じて、その周囲の者を、これがあだとせられた。エルサレムは彼らの中にあって、汚れた物のようになった。
20299 25 1 18 「主は正しい、わたしは、み言葉にそむいた。すべての民よ、聞け、わが苦しみを顧みよ。わがおとめらも、わが若人らも捕われて行った。
20300 25 1 19 わたしはわが愛する者を呼んだが、彼らはわたしを欺いた。わが祭司および長老たちは、その命をささえようと、食物を求めている間に、町のうちで息絶えた。
20301 25 1 20 主よ、顧みてください、わたしは悩み、わがはらわたはわきかえり、わが心臓はわたしの内に転倒しています。わたしは、はなはだしくそむいたからです。外にはつるぎがあって、わが子を奪い、家の内には死のようなものがある。
20302 25 1 21 わたしがどんなに嘆くかを聞いてください。わたしを慰める者はひとりもなく、敵はみなわたしの悩みを聞いて、あなたがこれをなされたのを喜んだ。あなたがさきに告げ知らせたその日をきたらせ、彼らをも、わたしのようにしてください。
20303 25 1 22 彼らの悪をことごとくあなたの前にあらわし、さきにわがもろもろのとがのために、わたしに行われたように、彼らにも行ってください。わが嘆きは多く、わが心は弱りはてているからです」。
20304 25 2 1 ああ、主は怒りを起し、黒雲をもってシオンの娘をおおわれた。主はイスラエルの栄光を天から地に投げ落し、その怒りの日に、おのれの足台を心にとめられなかった。
20305 25 2 2 主はヤコブのすべてのすまいを滅ぼして、あわれまず、その怒りによって、ユダの娘のとりでをこわし、これを地に倒して、その国とそのつかさたちをはずかしめられた。
20306 25 2 3 主は激しい怒りをもって、イスラエルのすべての力を断ち、敵の前で、おのれの右の手を引きもどし、周囲を焼きつくす燃える火のように、ヤコブを焼かれた。
20307 25 2 4 主は敵のように弓を張り、あだのように右の手を伸べて立ち、シオンの娘の天幕におるわれわれの目に誇る者を、ことごとく殺し、火のようにその怒りを注がれた。
20308 25 2 5 主は敵のようになって、イスラエルを滅ぼし、そのすべての宮殿を滅ぼし、そのとりでをこわし、ユダの娘の上に憂いと悲しみとを増し加えられた。
20309 25 2 6 主は園の小屋のようにおのれの幕屋を倒し、その祭の場所をこわされた。主は祭と安息日とをシオンに忘れさせ、激しい怒りによって、王と祭司とを捨てられた。
20310 25 2 7 主はその祭壇を忌み、その聖所をきらって、もろもろの宮殿の石がきを敵の手に渡された。彼らは祭の日のように、主の宮で声をあげた。
20311 25 2 8 主はシオンの娘の城壁を破壊しようと思い定めて、なわを張り、打ちこわして、その手をひかず、城壁と石がきとを悲しませられた。これらは共に衰える。
20312 25 2 9 その門は地にうずもれ、主はその貫の木をこわし砕かれた。その王と君たちはもろもろの国民の中におり、もはや律法はなく、またその預言者は主から幻を得ない。
20313 25 2 10 シオンの娘の長老たちは地に座して黙し、頭にちりをかぶり、身に荒布をまとった。エルサレムのおとめたちはこうべを地にたれた。
20314 25 2 11 わが目は涙のためにつぶれ、わがはらわたはわきかえり、わが肝はわが民の娘の滅びのために、地に注ぎ出される。幼な子や乳のみ子が町のちまたに息も絶えようとしているからである。
20315 25 2 12 彼らが、傷ついた者のように町のちまたで息も絶えようとするとき、その母のふところにその命を注ぎ出そうとするとき、母にむかって、「パンとぶどう酒とはどこにありますか」と叫ぶ。
20316 25 2 13 エルサレムの娘よ、わたしは何をあなたに言い、何にあなたを比べることができようか。シオンの娘なるおとめよ、わたしは何をもってあなたになぞらえて、あなたを慰めることができようか。あなたの破れは海のように大きい、だれがあなたをいやすことができようか。
20317 25 2 14 あなたの預言者たちはあなたのために人を欺く偽りの幻を見た。彼らはあなたの不義をあらわして捕われを免れさせようとはせず、あなたのために人を迷わす偽りの託宣を見た。
20318 25 2 15 すべて道行く人は、あなたにむかって手を打ち、エルサレムの娘にむかって、あざ笑い、かつ頭を振って言う、「麗しさのきわみ、全地の喜びととなえられた町はこれなのか」と。
20319 25 2 16 あなたのもろもろの敵は、あなたをののしり、あざ笑い、歯がみして言う、「われわれはこれを滅ぼした、ああ、これはわれわれが望んだ日だ、今われわれはこれにあい、これを見た」と。
20320 25 2 17 主はその計画されたことを行い、警告されたことをなし遂げ、いにしえから命じておかれたように、滅ぼして、あわれむことをせず、あなたについて敵を喜ばせ、あなたのあだの力を高められた。
20321 25 2 18 シオンの娘よ、声高らかに主に呼ばわれ、夜も昼も川のように涙を流せ。みずから安んじることをせず、あなたのひとみを休ませるな。
20322 25 2 19 夜、初更に起きて叫べ。主の前にあなたの心を水のように注ぎ出せ。町のかどで、飢えて息も絶えようとする幼な子の命のために、主にむかって両手をあげよ。
20323 25 2 20 主よ、みそなわして、顧みてください。あなたはだれにむかってこのように行われたのですか。女は自分の産んだ子、その大事に育てた幼な子を食べるでしょうか。祭司と預言者が主の聖所で殺されていいでしょうか。
20324 25 2 21 老いも若きも、ちまたのちりに伏し、わがおとめも、若人も、つるぎで倒されてしまった。あなたは、その怒りの日にこれを殺し、これをほふって、あわれむことをされなかった。
20325 25 2 22 あなたは、わたしの恐れるものを、祭の日のように四方から呼び集められた。主の怒りの日には、のがれた者も残った者もなかった。わたしが、いだき育てた者をわたしの敵は滅ぼし尽した。
20326 25 3 1 わたしは彼の怒りのむちによって、悩みにあった人である。
20327 25 3 2 彼はわたしをかり立てて、光のない暗い中を歩かせ、
20328 25 3 3 まことにその手をしばしばかえて、ひねもすわたしを攻められた。
20329 25 3 4 彼はわが肉と皮を衰えさせ、わが骨を砕き、
20330 25 3 5 苦しみと悩みをもって、わたしを囲み、わたしを閉じこめ、
20331 25 3 6 遠い昔に死んだ者のように、暗い所に住まわせられた。
20332 25 3 7 彼はわたしのまわりに、かきをめぐらして、出ることのできないようにし、重い鎖でわたしをつながれた。
20333 25 3 8 わたしは叫んで助けを求めたが、彼はわたしの祈をしりぞけ、
20334 25 3 9 切り石をもって、わたしの行く道をふさぎ、わたしの道筋を曲げられた。
20335 25 3 10 彼はわたしに対して待ち伏せするくまのように、潜み隠れるししのように、
20336 25 3 11 わが道を離れさせ、わたしを引き裂いて、見るかげもないみじめな者とし、
20337 25 3 12 その弓を張って、わたしを矢の的のようにされた。
20338 25 3 13 彼はその箙の矢をわたしの心臓に打ち込まれた。
20339 25 3 14 わたしはすべての民の物笑いとなり、ひねもす彼らの歌となった。
20340 25 3 15 彼はわたしを苦い物で飽かせ、にがよもぎをわたしに飲ませられた。
20341 25 3 16 彼は小石をもって、わたしの歯を砕き、灰の中にわたしをころがされた。
20342 25 3 17 わが魂は平和を失い、わたしは幸福を忘れた。
20343 25 3 18 そこでわたしは言った、「わが栄えはうせ去り、わたしが主に望むところのものもうせ去った」と。
20344 25 3 19 どうか、わが悩みと苦しみ、にがよもぎと胆汁とを心に留めてください。
20345 25 3 20 わが魂は絶えずこれを思って、わがうちにうなだれる。
20346 25 3 21 しかし、わたしはこの事を心に思い起す。それゆえ、わたしは望みをいだく。
20347 25 3 22 主のいつくしみは絶えることがなく、そのあわれみは尽きることがない。
20348 25 3 23 これは朝ごとに新しく、あなたの真実は大きい。
20349 25 3 24 わが魂は言う、「主はわたしの受くべき分である、それゆえ、わたしは彼を待ち望む」と。
20350 25 3 25 主はおのれを待ち望む者と、おのれを尋ね求める者にむかって恵みふかい。
20351 25 3 26 主の救を静かに待ち望むことは、良いことである。
20352 25 3 27 人が若い時にくびきを負うことは、良いことである。
20353 25 3 28 主がこれを負わせられるとき、ひとりすわって黙しているがよい。
20354 25 3 29 口をちりにつけよ、あるいはなお望みがあるであろう。
20355 25 3 30 おのれを撃つ者にほおを向け、満ち足りるまでに、はずかしめを受けよ。
20356 25 3 31 主はとこしえにこのような人を捨てられないからである。
20357 25 3 32 彼は悩みを与えられるが、そのいつくしみが豊かなので、またあわれみをたれられる。
20358 25 3 33 彼は心から人の子を苦しめ悩ますことをされないからである。
20359 25 3 34 地のすべての捕われ人を足の下に踏みにじり、
20360 25 3 35 いと高き者の前に人の公義をまげ、
20361 25 3 36 人の訴えをくつがえすことは、主のよみせられないことである。
20362 25 3 37 主が命じられたのでなければ、だれが命じて、その事の成ったことがあるか。
20363 25 3 38 災もさいわいも、いと高き者の口から出るではないか。
20364 25 3 39 生ける人はどうしてつぶやかねばならないのか、人は自分の罪の罰せられるのを、つぶやくことができようか。
20365 25 3 40 われわれは、自分の行いを調べ、かつ省みて、主に帰ろう。
20366 25 3 41 われわれは天にいます神にむかって、手と共に心をもあげよう。
20367 25 3 42 「わたしたちは罪を犯し、そむきました、あなたはおゆるしになりませんでした。
20368 25 3 43 あなたは怒りをもってご自分をおおい、わたしたちを追い攻め、殺して、あわれまず、
20369 25 3 44 また雲をもってご自分をおおい、祈を通じないようにし、
20370 25 3 45 もろもろの民の中に、わたしたちをちりあくたとなさいました。
20371 25 3 46 敵はみなわたしたちをののしり、
20372 25 3 47 恐れと落し穴と、荒廃と滅亡とが、わたしたちに臨みました。
20373 25 3 48 わが民の娘の滅びによって、わたしの目には涙の川が流れています。
20374 25 3 49 わが目は絶えず涙を注ぎ出して、やむことなく、
20375 25 3 50 主が天から見おろして、顧みられる時にまで及ぶでしょう。
20376 25 3 51 わが目はわが町のすべての娘の最期のゆえに、わたしを痛ませます。
20377 25 3 52 ゆえなくわたしに敵する者どもによって、わたしは鳥のように追われました。
20378 25 3 53 彼らは生きているわたしを穴の中に投げ入れ、わたしの上に石を投げつけました。
20379 25 3 54 水はわたしの頭の上にあふれ、わたしは『断ち滅ぼされた』と言いました。
20380 25 3 55 主よ、わたしは深い穴からみ名を呼びました。
20381 25 3 56 あなたはわが声を聞かれました、『わが嘆きと叫びに耳をふさがないでください』。
20382 25 3 57 わたしがあなたに呼ばわったとき、あなたは近寄って、『恐れるな』と言われました。
20383 25 3 58 主よ、あなたはわが訴えを取りあげて、わたしの命をあがなわれました。
20384 25 3 59 主よ、あなたはわたしがこうむった不義をごらんになりました。わたしの訴えをおさばきください。
20385 25 3 60 あなたはわたしに対する彼らの報復と、陰謀とを、ことごとくごらんになりました。
20386 25 3 61 主よ、あなたはわたしに対する彼らのそしりと、陰謀とを、ことごとく聞かれました。
20387 25 3 62 立ってわたしに逆らう者どものくちびると、その思いは、ひねもすわたしを攻めています。
20388 25 3 63 どうか、彼らのすわるをも、立つをも、みそなわしてください。わたしは彼らの歌となっています。
20389 25 3 64 主よ、彼らの手のわざにしたがって、彼らに報い、
20390 25 3 65 彼らの心をかたくなにし、あなたののろいを彼らに注いでください。
20391 25 3 66 主よ、怒りをもって彼らを追い、天が下から彼らを滅ぼしてください」。
20392 25 4 1 ああ、黄金は光を失い、純金は色を変じ、聖所の石はすべてのちまたのかどに投げ捨てられた。
20393 25 4 2 ああ、精金にも比すべきシオンのいとし子らは、陶器師の手のわざである土の器のようにみなされる。
20394 25 4 3 山犬さえも乳ぶさをたれて、その子に乳を飲ませる。ところが、わが民の娘は、荒野のだちょうのように無慈悲になった。
20395 25 4 4 乳のみ子の舌はかわいて、上あごに、ひたとつき、幼な子らはパンを求めても、これに与える者がない。
20396 25 4 5 うまい物を食べていた者は、落ちぶれて、ちまたにおり、紫の着物で育てられた者も、今は灰だまりの上に伏している。
20397 25 4 6 わが民の娘のうけた懲しめは、ソドムの罰よりも大きかった。ソドムは昔、人の手によらないで、またたくまに滅ぼされたのだ。
20398 25 4 7 わが民の君たちは雪よりも清らかに、乳よりも白く、そのからだは、さんごよりも赤く、その姿の美しさはサファイヤのようであった。
20399 25 4 8 今はその顔はすすよりも黒く、町の中にいても人に知られず、その皮膚は縮んで骨につき、かわいて枯れ木のようになった。
20400 25 4 9 つるぎで殺される者は、飢えて死ぬ者よりもさいわいである。彼らは田畑の産物の欠乏によって、刺された者のように衰え行くからである。
20401 25 4 10 わが民の娘の滅びる時には情深い女たちさえも、手ずから自分の子どもを煮て、それを食物とした。
20402 25 4 11 主はその憤りをことごとく漏らし、激しい怒りをそそぎ、シオンに火を燃やして、その礎までも焼き払われた。
20403 25 4 12 地の王たちも、世の民らもみな、エルサレムの門に、あだや敵が、討ち入ろうとは信じなかった。
20404 25 4 13 これはその預言者たちの罪のため、その祭司たちの不義のためであった。彼らは義人の血をその町の中に流した者である。
20405 25 4 14 彼らは盲人のように、ちまたにさまよい、血で汚れている。だれもその衣にさわることができない。
20406 25 4 15 人々は彼らにむかって、「去れよ、けがらわしい」、「去れよ、去れよ、さわるな」と叫んだので、彼らは逃げ去って放浪者となったが、異邦人の中でも人々は「もうわれわれのうちに宿ってはならない」と言った。
20407 25 4 16 主はみずから彼らを散らして、再び彼らを顧みず、祭司を尊ばず、長老をいたわられなかった。
20408 25 4 17 われわれの目は、むなしく助けを待ち望んで疲れ衰えた。われわれは待ち望んだが、救を与え得ない国びとを待ち望んだ。
20409 25 4 18 人々がわれわれの歩みをうかがうので、われわれは自分の町の中をも、歩くことができなかった。われわれの終りは近づいた、日は尽きた。われわれの終りが来たからである。
20410 25 4 19 われわれを追う者は空のはげたかよりも速く、彼らは山でわれわれを追い立て、野でわれわれを待ち伏せる。
20411 25 4 20 われわれが鼻の息とたのんだ者、主に油そそがれた者は、彼らの落し穴で捕えられた。彼はわれわれが「異邦人の中でもその陰に生きるであろう」と思った者である。
20412 25 4 21 ウズの地に住むエドムの娘よ、喜び楽しめ、あなたにもまた杯がめぐって行く、あなたも酔って裸になる。
20413 25 4 22 シオンの娘よ、あなたの不義の罰は終った。主は重ねてあなたを捕え移されない。エドムの娘よ、主はあなたの不義を罰し、あなたの罪をあらわされる。
20414 25 5 1 主よ、われわれに臨んだ事を覚えてください。われわれのはずかしめを顧みてください。
20415 25 5 2 われわれの嗣業は他国の人に移り、家は異邦人のものとなった。
20416 25 5 3 われわれはみなしごとなって父はなく、母はやもめにひとしい。
20417 25 5 4 われわれは金を出して水を飲み、価を払って、たきぎを獲なければならない。
20418 25 5 5 われわれは首にくびきをかけられて追い使われ、疲れても休むことができない。
20419 25 5 6 われわれは足りるだけの食物を獲るために、エジプトおよびアッスリヤに手をさし伸べた。
20420 25 5 7 われわれの先祖は罪を犯して、すでに世になく、われわれはその不義の責めを負っている。
20421 25 5 8 奴隷であった者がわれわれを治めるが、われわれをその手から救い出す者がない。
20422 25 5 9 われわれは荒野のつるぎのゆえに、おのが命をかけて食物を獲る。
20423 25 5 10 われわれの皮膚は飢餓の激しい熱のために、炉のように熱い。
20424 25 5 11 女たちはシオンで犯され、おとめたちはユダの町々で汚された。
20425 25 5 12 君たる者も彼らの手でつるされ、長老たちも尊ばれず、
20426 25 5 13 若者たちは、ひきうすをになわせられ、わらべたちは、たきぎを負って、よろめき、
20427 25 5 14 長老たちは門に集まることをやめ、若者たちはその音楽を廃した。
20428 25 5 15 われわれの心の喜びはやみ、踊りは悲しみに変り、
20429 25 5 16 われわれの冠はこうべから落ちた。わざわいなるかな、われわれは罪を犯したからである。
20430 25 5 17 このために、われわれの心は衰え、これらの事のために、われわれの目はくらくなった。
20431 25 5 18 シオンの山は荒れはて、山犬がその上を歩いているからである。
20432 25 5 19 しかし主よ、あなたはとこしえに統べ治められる。あなたの、み位は世々絶えることがない。
20433 25 5 20 なぜ、あなたはわれわれをながく忘れ、われわれを久しく捨ておかれるのですか。
20434 25 5 21 主よ、あなたに帰らせてください、われわれは帰ります。われわれの日を新たにして、いにしえの日のようにしてください。
20435 25 5 22 あなたは全くわれわれを捨てられたのですか、はなはだしく怒っていられるのですか。
20436 26 1 1 第三十年四月五日に、わたしがケバル川のほとりで、捕囚の人々のうちにいた時、天が開けて、神の幻を見た。
20437 26 1 2 これはエホヤキン王の捕え移された第五年であって、その月の五日に、
20438 26 1 3 主の言葉がケバル川のほとり、カルデヤびとの地でブジの子祭司エゼキエルに臨み、主の手がその所で彼の上にあった。
20439 26 1 4 わたしが見ていると、見よ、激しい風と大いなる雲が北から来て、その周囲に輝きがあり、たえず火を吹き出していた。その火の中に青銅のように輝くものがあった。
20440 26 1 5 またその中から四つの生きものの形が出てきた。その様子はこうである。彼らは人の姿をもっていた。
20441 26 1 6 おのおの四つの顔をもち、またそのおのおのに四つの翼があった。
20442 26 1 7 その足はまっすぐで、足のうらは子牛の足のうらのようであり、みがいた青銅のように光っていた。
20443 26 1 8 その四方に、そのおのおのの翼の下に人の手があった。この四つの者はみな顔と翼をもち、
20444 26 1 9 翼は互に連なり、行く時は回らずに、おのおの顔の向かうところにまっすぐに進んだ。
20445 26 1 10 顔の形は、おのおのその前方に人の顔をもっていた。四つの者は右の方に、ししの顔をもち、四つの者は左の方に牛の顔をもち、また四つの者は後ろの方に、わしの顔をもっていた。
20446 26 1 11 彼らの顔はこのようであった。その翼は高く伸ばされ、その二つは互に連なり、他の二つをもってからだをおおっていた。
20447 26 1 12 彼らはおのおのその顔の向かうところへまっすぐに行き、霊の行くところへ彼らも行き、その行く時は回らない。
20448 26 1 13 この生きもののうちには燃える炭の火のようなものがあり、たいまつのように、生きものの中を行き来している。火は輝いて、その火から、いなずまが出ていた。
20449 26 1 14 生きものは、いなずまのひらめきのように速く行き来していた。
20450 26 1 15 わたしが生きものを見ていると、生きもののかたわら、地の上に輪があった。四つの生きものおのおのに、一つずつの輪である。
20451 26 1 16 もろもろの輪の形と作りは、光る貴かんらん石のようである。四つのものは同じ形で、その作りは、あたかも、輪の中に輪があるようである。
20452 26 1 17 その行く時、彼らは四方のいずれかに行き、行く時は回らない。
20453 26 1 18 四つの輪には輪縁と輻とがあり、その輪縁の周囲は目をもって満たされていた。
20454 26 1 19 生きものが行く時には、輪もそのかたわらに行き、生きものが地からあがる時は、輪もあがる。
20455 26 1 20 霊の行く所には彼らも行き、輪は彼らに伴ってあがる。生きものの霊が輪の中にあるからである。
20456 26 1 21 彼らが行く時は、これらも行き、彼らがとどまる時は、これらもとどまり、彼らが地からあがる時は、輪もまたこれらと共にあがる。生きものの霊が輪の中にあるからである。
20457 26 1 22 生きものの頭の上に水晶のように輝く大空の形があって、彼らの頭の上に広がっている。、
20458 26 1 23 大空の下にはまっすぐに伸ばした翼があり、たがいに相連なり、生きものはおのおの二つの翼をもって、からだをおおっている。
20459 26 1 24 その行く時、わたしは大水の声、全能者の声のような翼の声を聞いた。その声の響きは大軍の声のようで、そのとどまる時は翼をたれる。
20460 26 1 25 また彼らの頭の上の大空から声があった。彼らが立ちとどまる時は翼をおろした。
20461 26 1 26 彼らの頭の上の大空の上に、サファイヤのような位の形があった。またその位の形の上に、人の姿のような形があった。
20462 26 1 27 そしてその腰とみえる所の上の方に、火の形のような光る青銅の色のものが、これを囲んでいるのを見た。わたしはその腰とみえる所の下の方に、火のようなものを見た。そして彼のまわりに輝きがあった。
20463 26 1 28 そのまわりにある輝きのさまは、雨の日に雲に起るにじのようであった。
20464 26 2 1 彼はわたしに言われた、「人の子よ、立ちあがれ、わたしはあなたに語ろう」。
20465 26 2 2 そして彼がわたしに語られた時、霊がわたしのうちに入り、わたしを立ちあがらせた。そして彼のわたしに語られるのを聞いた。
20466 26 2 3 彼はわたしに言われた、「人の子よ、わたしはあなたをイスラエルの民、すなわちわたしにそむいた反逆の民につかわす。彼らもその先祖も、わたしにそむいて今日に及んでいる。
20467 26 2 4 彼らは厚顔で強情な者たちである。わたしはあなたを彼らにつかわす。あなたは彼らに『主なる神はこう言われる』と言いなさい。
20468 26 2 5 彼らは聞いても、拒んでも、(彼らは反逆の家だから)彼らの中に預言者がいたことを知るだろう。
20469 26 2 6 人の子よ、彼らを恐れてはならない。彼らの言葉をも恐れてはならない。たといあざみといばらがあなたと一緒にあっても、またあなたが、さそりの中に住んでも、彼らの言葉を恐れてはならない。彼らの顔をはばかってはならない。彼らは反逆の家である。
20470 26 2 7 彼らが聞いても、拒んでも、あなたはただわたしの言葉を彼らに語らなければならない。彼らは反逆の家だから。
20471 26 2 8 人の子よ、わたしがあなたに語るところを聞きなさい。反逆の家のようにそむいてはならない。あなたの口を開いて、わたしが与えるものを食べなさい」。
20472 26 2 9 この時わたしが見ると、見よ、わたしの方に伸べた手があった。また見よ、手の中に巻物があった。
20473 26 2 10 彼がわたしの前にこれを開くと、その表にも裏にも文字が書いてあった。その書かれていることは悲しみと、嘆きと、災の言葉であった。
20474 26 3 1 彼はわたしに言われた。「人の子よ、あなたに与えられたものを食べなさい。この巻物を食べ、行ってイスラエルの家に語りなさい」。
20475 26 3 2 そこでわたしが口を開くと、彼はわたしにその巻物を食べさせた。
20476 26 3 3 そして彼はわたしに言われた、「人の子よ、わたしがあなたに与えるこの巻物を食べ、これであなたの腹を満たしなさい」。わたしがそれを食べると、それはわたしの口に甘いこと蜜のようであった。
20477 26 3 4 彼はまたわたしに言われた、「人の子よ、イスラエルの家に行って、わたしの言葉を語りなさい。
20478 26 3 5 わたしはあなたを、異国語を用い、舌の重い民につかわすのでなく、イスラエルの家につかわすのである。
20479 26 3 6 すなわちあなたがその言葉を知らない、異国語の舌の重い多くの民につかわすのではない。もしわたしがあなたをそのような民につかわしたら、彼らはあなたに聞いたであろう。
20480 26 3 7 しかしイスラエルの家はあなたに聞くのを好まない。彼らはわたしに聞くのを好まないからである。イスラエルの家はすべて厚顔でまた強情である。
20481 26 3 8 見よ、わたしはあなたの顔を彼らの顔に向かって堅くし、あなたの額を彼らの額に向かって堅くした。
20482 26 3 9 わたしはあなたの額を岩よりも堅いダイヤモンドのようにした。ゆえに彼らを恐れてはならない。彼らの顔をはばかってはならない。彼らは反逆の家である」。
20483 26 3 10 また彼はわたしに言われた、「人の子よ、わたしがあなたに語るすべての言葉をあなたの心におさめ、あなたの耳に聞きなさい。
20484 26 3 11 そして捕囚の人々、あなたの民の人々の所へ行って、彼らが聞いても、彼らが拒んでも、『主なる神はこう言われる』と彼らに言いなさい」。
20485 26 3 12 時に霊がわたしをもたげた。そして主の栄光がその所からのぼった時、わたしの後に大いなる地震の響きを聞いた。
20486 26 3 13 それは互に相触れる生きものの翼の音と、そのかたわらの輪の音で、大いなる地震のように響いた。
20487 26 3 14 霊はわたしをもたげ、わたしを取り去ったので、わたしは心を熱くし、苦々しい思いで出て行った。主の手が強くわたしの上にあった。
20488 26 3 15 そしてわたしはケバル川のほとりのテルアビブにいる捕囚の人々のもとへ行き、七日の間、驚きあきれて彼らの中に座した。
20489 26 3 16 七日過ぎて後、主の言葉がわたしに臨んだ、
20490 26 3 17 「人の子よ、わたしはあなたをイスラエルの家のために見守る者とした。あなたはわたしの口から言葉を聞くたびに、わたしに代って彼らを戒めなさい。
20491 26 3 18 わたしが悪人に『あなたは必ず死ぬ』と言うとき、あなたは彼の命を救うために彼を戒めず、また悪人を戒めて、その悪い道から離れるように語らないなら、その悪人は自分の悪のために死ぬ。しかしその血をわたしはあなたの手から求める。
20492 26 3 19 しかし、もしあなたが悪人を戒めても、彼がその悪をも、またその悪い道をも離れないなら、彼はその悪のために死ぬ。しかしあなたは自分の命を救う。
20493 26 3 20 また義人がその義にそむき、不義を行うなら、わたしは彼の前に、つまずきを置き、彼は死ぬ。あなたが彼を戒めなかったゆえ、彼はその罪のために死に、その行った義は覚えられない。しかしその血をわたしはあなたの手から求める。
20494 26 3 21 けれども、もしあなたが義人を戒めて、罪を犯さないように語り、そして彼が罪を犯さないなら、彼は戒めを受けいれたゆえに、その命を保ち、あなたは自分の命を救う」。
20495 26 3 22 その所で主の手がわたしの上に臨み、彼はわたしに言われた、「立って、平野に出て行きなさい。その所でわたしはあなたに語ろう」。
20496 26 3 23 そこで、わたしは立って平野に出て行った。見よ、主の栄光が、かつてわたしがケバル川のほとりで見た栄光のように、その所に立ち現れたので、わたしはひれ伏した。
20497 26 3 24 しかし霊がわたしのうちにはいって、わたしを立ちあがらせ、わたしに語って言った、「行って、あなたの家にこもっていなさい。
20498 26 3 25 人の子よ、見よ、彼らはあなたの上になわをかけ、それであなたを縛り、あなたを民の中に行かせないようにする。
20499 26 3 26 わたしはあなたの舌を上あごにつかせ、あなたをおしにして、彼らを戒めることができないようにする。彼らは反逆の家だからである。
20500 26 3 27 しかし、わたしがあなたと語るときは、あなたの口を開く。あなたは彼らに『主なる神はこう言われる』と言わなければならない。聞く者は聞くがよい、拒む者は拒むがよい。彼らは反逆の家だからである。
20501 26 4 1 人の子よ、一枚のかわらを取って、あなたの前に置き、その上にエルサレムの町を描きなさい。
20502 26 4 2 そしてこれを取り囲み、これにむかって雲梯を設け、塁を築き、陣を張り、その回りに城くずしを備えてこれを攻めなさい。
20503 26 4 3 また鉄の板をとり、それをあなたと町の間に置いて鉄の壁となし、あなたの顔をこれに向けなさい。町をこのように囲んで、その包囲を押し進めなさい。これがイスラエルの家のしるしである。
20504 26 4 4 あなたはまた自分の左脇を下にして寝なさい。わたしはあなたの上にイスラエルの家の罰を置く。あなたはこのようにして寝ている日の間、彼らの罰を負わなければならない。
20505 26 4 5 わたしは彼らの罰の年数に等しいその日数、すなわち三百九十日をあなたのために定める。その間あなたはイスラエルの家の罰を負わなければならない。
20506 26 4 6 あなたはその期間を終ったなら、また右脇を下にして寝て、ユダの家の罰を負わなければならない。わたしは一日を一年として四十日をあなたのために定める。
20507 26 4 7 あなたは自分の顔をエルサレムの包囲の方に向け、腕をあらわし、町に向かって預言しなければならない。
20508 26 4 8 見よ、わたしはあなたに、なわをかけて、あなたの包囲の期間の終るまで、左右に動くことができないようにする。
20509 26 4 9 あなたはまた小麦、大麦、豆、レンズ豆、あわ、はだか麦を取って、一つの器に入れ、これでパンを造り、あなたが横になって寝る日の数、すなわち三百九十日の間これを食べなければならない。
20510 26 4 10 あなたが食べる食物は量って一日に二十シケルである。あなたは一日に一度これを食べなければならない。
20511 26 4 11 また水を量って一ヒンの六分の一を一日に一度飲まなければならない。
20512 26 4 12 あなたは大麦の菓子のようにしてこれを食べなさい。すなわち彼らの目の前でこれを人の糞で焼かなければならない」。
20513 26 4 13 そして主は言われた、「このようにイスラエルの民はわたしが追いやろうとする国々の中で汚れたパンを食べなければならない」。
20514 26 4 14 そこでわたしは言った、「ああ、主なる神よ、わたしは自分を汚したことはありません。わたしは幼い時から今日まで、自然に死んだものや、野獣に裂き殺されたものを食べたことはありません。また汚れた肉がわたしの口にはいったことはありません」。
20515 26 4 15 すると彼はわたしに言われた、「見よ、わたしは牛の糞をもって人の糞に換えることをあなたにゆるす。あなたはそれで自分のパンを整えなさい」。
20516 26 4 16 またわたしに言われた、「人の子よ、見よ、わたしはエルサレムで人のつえとするパンを打ち砕く。彼らはパンを量って、恐れながら食べ、また水を量って驚きながら飲む。
20517 26 4 17 これは彼らをパンと水とに乏しくし、互に驚いて顔を見合わせ、その罰のために衰えさせるためである。
20518 26 5 1 人の子よ、鋭いつるぎを取り、それを理髪師のかみそりとして、あなたの頭と、ひげとをそり、はかりで量って、その毛を分けなさい。
20519 26 5 2 その三分の一は包囲の期間の終る時、町の中で火で焼き、また三分の一を取り、つるぎで町のまわりでこれを打ち、さらに三分の一を風に散らしなさい。わたしはつるぎを抜いて、彼らのあとを追う。
20520 26 5 3 あなたはその毛を少し取って、衣のすそに包み、
20521 26 5 4 またそのうちから少しを取って火の中に投げ入れ、火でこれを焼きなさい。火はその中から出て、イスラエルの全家に及ぶ。
20522 26 5 5 主なる神はこう言われる、わたしはこのエルサレムを万国の中に置き、国々をそのまわりに置いた。
20523 26 5 6 エルサレムは他の国々よりも悪しく、わたしのおきてにそむき、そのまわりの国々よりもわたしの定めにそむいた。すなわち彼らはわたしのおきてを捨て、わたしの定めに歩まなかった。
20524 26 5 7 それゆえ主はこう言われる、あなたがたはそのまわりにいる異邦人よりも狂暴であって、わたしの定めに歩まず、わたしのおきてを行わず、むしろ、あなたがたの回りにいる異邦人のおきてを守っていた。
20525 26 5 8 それゆえ主なる神はこう言われる、見よ、わたしはあなたを攻め、異邦人の目の前で、あなたの中にさばきを行う。
20526 26 5 9 あなたのもろもろの憎むべき事のために、わたしがまだした事のないような事、またこの後ふたたびしないような事をあなたに対してする。
20527 26 5 10 それゆえ、あなたのうちで父はその子を食い、子はその父を食う。わたしはあなたに対してさばきを行い、あなたのうちの残りの者をことごとく四方の風に散らす。
20528 26 5 11 それゆえ、主なる神は言われる、わたしは生きている。あなたはその忌むべき物と、その憎むべき事とをもって、わたしの聖所を汚したので、わたしは必ずあなたの数を減らす。わたしの目はあなたを惜しみ見ず、またわたしはあなたをあわれまない。
20529 26 5 12 あなたの三分の一はあなたの中で疫病で死に、ききんで滅び、三分の一はあなたのまわりでつるぎに倒れ、三分の一は四方の風に散らされる。わたしはつるぎを抜いてそのあとを追う。
20530 26 5 13 こうしてわたしは怒りを漏らし尽し、憤りを彼らの上に漏らして、満足する。こうして、わたしの憤りを彼らの上に漏らし尽した時、彼らは主であるわたしが熱心に語ったことを知るであろう。
20531 26 5 14 わたしはまわりにある国々の中と、すべてそばを通る者の目の前であなたを滅亡とあざけりに渡す。
20532 26 5 15 わたしが怒りと、憤りと、重い懲罰とをもって、あなたに対してさばきを行う時、あなたはそのまわりにある国々のあざけりとなり、そしりとなり、戒めとなり、驚きとなる。これは主であるわたしが語るのである。
20533 26 5 16 すなわち、わたしがあなたを滅ぼすききんの矢、滅亡の矢をあなたに放つ時、わたしはあなたを滅ぼすために放つのだ。わたしはあなたの上にききんを増し加え、あなたがつえとするパンを打ち砕く。
20534 26 5 17 わたしはあなたにききんと野獣を送って、あなたの子を奪い取り、また疫病と流血にあなたの中を通らせ、またつるぎをあなたに送る。主であるわたしがこれを言う」。
20535 26 6 1 主の言葉が、わたしに臨んで言った、
20536 26 6 2 「人の子よ、あなたの顔をイスラエルの山々に向け、預言して、
20537 26 6 3 言え。イスラエルの山々よ、主なる神の言葉を聞け。主なる神は山と丘と、谷と川に向かって、こう言われる、見よ、わたしはつるぎをあなたがたに送り、あなたがたの高き所を滅ぼす。
20538 26 6 4 あなたがたの祭壇は荒され、あなたがたの香の祭壇はこわされる。わたしはあなたがたの偶像の前に、あなたがたの殺された者を投げ出す。
20539 26 6 5 わたしはイスラエルの民の死体を彼らの偶像の前に置き、骨をあなたがたの祭壇のまわりに散らす。
20540 26 6 6 すべてあなたがたの住む所で町々は滅ぼされ、高き所は荒される。こうしてあなたがたの祭壇はこわし荒され、あなたがたの偶像は砕かれて滅び、あなたがたの香の祭壇は倒され、あなたがたのわざは消し去られる。
20541 26 6 7 また殺された者はあなたがたのうちに倒れる。これによって、あなたがたはわたしが主であることを知るようになる。
20542 26 6 8 わたしは、あなたがたのある者を生かしておく。あなたがたが、つるぎをのがれて国々の中におり、国々に散らされる時、
20543 26 6 9 あなたがたのうちののがれた者は、その捕え移された国々の中でわたしを思い出す。これはわたしが、彼らのわたしを離れた姦淫の心と、偶像を慕って姦淫を行う目をくじくからである。そして彼らはそのもろもろの憎むべきことと、その犯した悪のために、みずからをいとうようになる。
20544 26 6 10 そして彼らはわたしが主であることを知る。この災を彼らに対して下すと、わたしが言ったのは決してむなしい事ではない」。
20545 26 6 11 主なる神はこう言われる、「あなたは手を打ち、足を踏みならして言え。ああ、イスラエルの家のすべての悪しき憎むべき者はわざわいだ。彼らはつるぎと、ききんと、疫病に倒れるからである。
20546 26 6 12 遠くにいる者は疫病で死に、近くにいる者はつるぎに倒れる。生き残って身を全うする者はききんによって死ぬ。このようにわたしはわが憤りを彼らの上に漏らし尽す。
20547 26 6 13 彼らの殺される者がその偶像の中にあり、その祭壇のまわりにあり、すべての高き丘の上にあり、すべての山の頂にあり、すべての青木の下にあり、すべての茂ったかしの木の下にあり、彼らがこうばしいかおりを、すべての偶像にささげた所にある時、あなたがたはわたしが主であることを知るのである。
20548 26 6 14 わたしはまた手を彼らの上に伸べて、その地を荒し、すべて彼らの住む所を、荒野からリブラまで荒れ地とする。これによって彼らはわたしが主であることを知るようになる」。
20549 26 7 1 主の言葉がまたわたしに臨んだ、
20550 26 7 2 「人の子よ、イスラエルの地の終りについて主はこう言われる、この国の四方の境に終りが来た。
20551 26 7 3 いま、あなたの終りが来た。わたしはわが怒りをあなたに漏らし、あなたの行いに従って、あなたをさばき、あなたのもろもろの憎むべき物のためにあなたを罰する。
20552 26 7 4 わたしの目はあなたを惜しみ見ず、またあなたをあわれまない。わたしはあなたの行いのためにあなたを罰する。あなたの憎むべき事があなたのうちにある。これによって、あなたがたはわたしが主であることを知るようになる。
20553 26 7 5 主なる神はこう言われる、災が引き続いて起る。見よ、災が来る。
20554 26 7 6 終りが来る。その終りが来る。それが起って、あなたに臨む。見よ、それが来る。
20555 26 7 7 この地に住む者よ、あなたの最後の運命があなたに来た。時は来た。日が近づいた。混乱の日で、山々に聞える喜びの日ではない。
20556 26 7 8 今わたしは、すみやかにわたしの憤りをあなたの上に注ぎ、わたしの怒りをあなたに漏らし尽し、あなたの行いに従ってあなたをさばき、あなたのもろもろの憎むべき事のためにあなたを罰する。
20557 26 7 9 わたしの目はあなたを惜しみ見ず、またあなたをあわれまない。わたしはあなたの行いのためにあなたを罰する。あなたの憎むべき事があなたのうちにある。これによって、あなたがたは、主であるわたしがあなたを撃つことを知るようになる。
20558 26 7 10 見よ、その日を。また見よ、かの日が来た。あなたの最後の運命が来た。不義は花咲き、高ぶりは芽を出した。
20559 26 7 11 暴虐はつのって悪のつえとなった。彼らもその群衆も、その富も消え、また彼らの名声も消えて何も残らなくなる。
20560 26 7 12 時は来た。日は近づいた。買う者は喜ぶな。売る者は悲しむな。怒りがすべての群衆の上に臨むからだ。
20561 26 7 13 売る者はたとい生きていても、その売ったものに帰ることはない。怒りがそのすべての民衆の上にあるからだ。それはもとに帰らない。その不義のために、だれも命を全うすることはできない。
20562 26 7 14 人々がラッパを吹いて備えをしても戦いに出る者はない。それはわたしの怒りがそのすべての群衆の上にあるからだ。
20563 26 7 15 外にはつるぎがあり、内には疫病とききんがある。畑にいる者はつるぎに死に、町にいる者はききんと疫病に滅ぼされる。
20564 26 7 16 そのうちの、のがれる者は谷間のはとのように山々に行って、おのおの皆その罪のために悲しむ。
20565 26 7 17 両手とも弱くなり、両ひざとも水のように弱くなる。
20566 26 7 18 彼らは荒布を身にまとい、恐れが彼らをおおい、すべての顔には恥があらわれ、すべての頭は髪をそり落す。
20567 26 7 19 彼らはその銀をちまたに捨て、その金はあくたのようになる。主の怒りの日には金銀も彼らを救うことはできない。それらは彼らの飢えを満足させることができない、またその腹を満たすことができない。それは彼らの不義のつまずきであったからだ。
20568 26 7 20 彼らはその美しい飾り物を高ぶりのために用い、またこれをもってその憎むべき偶像と忌むべき物を造った。それゆえわたしはこれを彼らに対して汚れたものとする。
20569 26 7 21 わたしはこれを外国人の手に渡して奪わせ、地の悪人に渡してかすめさせる。彼らはこれを汚す。
20570 26 7 22 わたしは彼らから顔をそむけて、彼らにわたしの聖所を汚させる。強盗がこれにはいって汚し、
20571 26 7 23 また荒れ地とする。
20572 26 7 24 わたしは国々のうちの悪い者どもを招いて、彼らの家をかすめさせる。わたしは強い者の高ぶりをやめさせる。また彼らの聖所は汚される。
20573 26 7 25 滅びが来るとき、彼らは平安を求めても得られない。
20574 26 7 26 災に災が重なりきたり、知らせに知らせが相つぐ。その時、彼らは預言者に幻を求める。しかし律法は祭司のうちに絶え、計りごとは長老のうちに絶える。
20575 26 7 27 王は悲しみ、つかさは望みを失い、その地の民の手はおののきによってこわばる。わたしは彼らの行いに従って彼らをあつかい、そのさばきに従って彼らをさばく。そして彼らはわたしが主であることを知るようになる」。
20576 26 8 1 第六年の六月五日にわたしがわたしの家に座し、ユダの長老たちがわたしの前に座していたとき、主なる神の手がわたしの上に下った。
20577 26 8 2 わたしは見ていると、見よ、人のような形があって、その腰とみられる所から下は火のように見え、腰から上は光る青銅のように輝いて見えた。
20578 26 8 3 彼は手のようなものを伸べて、わたしの髪の毛をつかんだ。そして霊がわたしを天と地の間に引きあげ、神の幻のうちにわたしをエルサレムに携えて行き、北に向かった内庭の門の入口に至らせた。そこには、ねたみをひき起すねたみの偶像があった。
20579 26 8 4 見よ、そこに、わたしがかの平野で見た幻のようなイスラエルの神の栄光があらわれた。
20580 26 8 5 時に彼はわたしに言われた、「人の子よ、目をあげて北の方をのぞめ」。そこでわたしが目をあげて北の方をのぞむと、見よ、祭壇の門の北にあたって、その入口に、このねたみの偶像があった。
20581 26 8 6 彼はまたわたしに言われた、「人の子よ、あなたは彼らのしていること、すなわちイスラエルの家がここでしている大いなる憎むべきことを見るか。これはわたしを聖所から遠ざけるものである。しかしあなたは、さらに大いなる憎むべきことを見るだろう」。
20582 26 8 7 そして彼はわたしを庭の門に行かせた。わたしが見ると、見よ、壁に一つの穴があった。
20583 26 8 8 彼はわたしに言われた、「人の子よ、壁に穴をあけよ」。そこでわたしが壁に穴をあけると、見よ、一つの戸があった。
20584 26 8 9 彼はわたしに言われた、「はいって、彼らがここでなす所の悪しき憎むべきことを見よ」。
20585 26 8 10 そこでわたしがはいって見ると、もろもろの這うものと、憎むべき獣の形、およびイスラエルの家のもろもろの偶像が、まわりの壁に描いてあった。
20586 26 8 11 またイスラエルの家の長老七十人が、その前に立っていた。シャパンの子ヤザニヤも、彼らの中に立っていた。おのおの手に香炉を持ち、そしてその香の煙が雲のようにのぼった。
20587 26 8 12 時に彼はわたしに言われた、「人の子よ、イスラエルの家の長老たちが暗い所で行う事、すなわちおのおのその偶像の室で行う事を見るか。彼らは言う、『主はわれわれを見られない。主はこの地を捨てられた』と」。
20588 26 8 13 またわたしに言われた、「あなたはさらに彼らがなす大いなる憎むべきことを見る」。
20589 26 8 14 そして彼はわたしを連れて主の家の北の門の入口に行った。見よ、そこに女たちがすわって、タンムズのために泣いていた。
20590 26 8 15 その時、彼はわたしに言われた、「人の子よ、あなたはこれを見たか。これよりもさらに大いなる憎むべきことを見るだろう」。
20591 26 8 16 彼はまたわたしを連れて、主の家の内庭にはいった。見よ、主の宮の入口に、廊と祭壇との間に二十五人ばかりの人が、主の宮にその背中を向け、顔を東に向け、東に向かって太陽を拝んでいた。
20592 26 8 17 時に彼はわたしに言われた、「人の子よ、あなたはこれを見たか。ユダの家にとって、彼らがここでしているこれらの憎むべきわざは軽いことであるか。彼らはこの地を暴虐で満たし、さらにわたしを怒らせる。見よ、彼らはその鼻に木の枝を置く。
20593 26 8 18 それゆえ、わたしも憤って事を行う。わたしの目は彼らを惜しみ見ず、またあわれまない。たとい彼らがわたしの耳に大声で呼ばわっても、わたしは彼らの言うことを聞かない」。
20594 26 9 1 時に彼はわたしの耳に大声に呼ばわって言われた、「町を罰する者たちよ、おのおの滅ぼす武器をその手に持って近よれ」と。
20595 26 9 2 見よ、北に向かう上の門の道から出て来る六人の者があった。おのおのその手に滅ぼす武器を持ち、彼らの中のひとりは亜麻布を着、その腰に物を書く墨つぼをつけていた。彼らははいって来て、青銅の祭壇のかたわらに立った。
20596 26 9 3 ここにイスラエルの神の栄光がその座しているケルビムから立ちあがって、宮の敷居にまで至った。そして主は、亜麻布を着て、その腰に物を書く墨つぼをつけている者を呼び、
20597 26 9 4 彼に言われた、「町の中、エルサレムの中をめぐり、その中で行われているすべての憎むべきことに対して嘆き悲しむ人々の額にしるしをつけよ」。
20598 26 9 5 またわたしの聞いている所で他の者に言われた、「彼のあとに従い町をめぐって、撃て。あなたの目は惜しみ見るな。またあわれむな。
20599 26 9 6 老若男女をことごとく殺せ。しかし身にしるしのある者には触れるな。まずわたしの聖所から始めよ」。そこで、彼らは宮の前にいた老人から始めた。
20600 26 9 7 この時、主は彼らに言われた、「宮を汚し、死人で庭を満たせ。行け」。そこで彼らは出て行って、町の中で撃った。
20601 26 9 8 さて彼らが人々を打ち殺していた時、わたしひとりだけが残されたので、ひれ伏して、叫んで言った、「ああ主なる神よ、あなたがエルサレムの上に怒りを注がれるとき、イスラエルの残りの者を、ことごとく滅ぼされるのですか」。
20602 26 9 9 主はわたしに言われた、「イスラエルとユダの家の罪は非常に大きい。国は血で満ち、町は不義で満ちている。彼らは言う、『主はこの地を捨てられた。主は顧みられない』。
20603 26 9 10 それゆえ、わたしの目は彼らを惜しみ見ず、またあわれまない。彼らの行うところを、彼らのこうべに報いる」。
20604 26 9 11 時に、かの亜麻布を着、物を書く墨つぼを腰につけていた人が報告して言った、「わたしはあなたがお命じになったように行いました」。
20605 26 10 1 時にわたしは見ていたが、見よ、ケルビムの頭の上の大空に、サファイヤのようなものが王座の形をして、その上に現れた。
20606 26 10 2 彼は亜麻布を着たその人に言われた、「ケルビムの下の回る車の間にはいり、ケルビムの間から炭火をとってあなたの手に満たし、これを町中にまき散らせ」。
20607 26 10 3 この人がはいった時、ケルビムは宮の南側に立っていた。また雲はその内庭を満たしていた。
20608 26 10 4 主の栄光はケルビムの上から宮の敷居の上にあがり、宮は雲で満ち、庭は主の栄光の輝きで満たされた。
20609 26 10 5 時にケルビムの翼の音が大能の神が語られる声のように外庭にまで聞えた。
20610 26 10 6 彼が亜麻布を着ている人に、「回る車の間、ケルビムの間から火を取れ」。と命じた時、その人ははいって、輪のかたわらに立った。
20611 26 10 7 ひとりのケルブはその手をケルビムの間から伸べて、ケルビムの間にある火を取り、亜麻布を着た人の手に置いた。すると彼はこれを取って出て行った。
20612 26 10 8 ケルビムはその翼の下に人の手のような形のものを持っているように見えた。
20613 26 10 9 わたしが見ていると、見よ、ケルビムのかたわらに四つの輪があり、一つの輪はひとりのケルブのかたわらに、他の輪は他のケルブのかたわらにあった。輪のさまは、光る貴かんらん石のようであった。
20614 26 10 10 そのさまは四つとも同じ形で、あたかも輪の中に輪があるようであった。
20615 26 10 11 その行く時は四方のどこへでも行く。その行く時は回らない。ただ先頭の輪の向くところに従い、その行く時は回ることをしない。
20616 26 10 12 その輪縁、その輻、および輪には、まわりに目が満ちていた。―その輪は四つともこれを持っていた。
20617 26 10 13 その輪はわたしの聞いている所で、「回る輪」と呼ばれた。
20618 26 10 14 そのおのおのには四つの顔があった。第一の顔はケルブの顔、第二の顔は人の顔、第三はししの顔、第四はわしの顔であった。
20619 26 10 15 その時ケルビムはのぼった。これがケバル川でわたしが見た生きものである。
20620 26 10 16 ケルビムの行く時、輪もそのかたわらに行き、ケルビムが翼をあげて地から飛びあがる時は、輪もそのかたわらを離れない。
20621 26 10 17 その立ちどまる時は、輪も立ちどまり、そののぼる時は、輪も共にのぼる。生きものの霊がその中にあるからである。
20622 26 10 18 時に主の栄光が宮の敷居から出て行って、ケルビムの上に立った。
20623 26 10 19 するとケルビムは翼をあげて、わたしの目の前で、地からのぼった。その出て行く時、輪もまたこれと共にあり、主の宮の東の門の入口の所へ行って止まった。イスラエルの神の栄光がその上にあった。
20624 26 10 20 これがすなわちわたしがケバル川のほとりで、イスラエルの神の下に見たかの生きものである。わたしはそれがケルビムであることを知っていた。
20625 26 10 21 これにはおのおの四つの顔があり、おのおの四つの翼があり、また人の手のようなものがその翼の下にあった。
20626 26 10 22 その顔の形は、ケバル川のほとりでわたしが見たそのままの顔である。おのおのその前の方にまっすぐに行った。
20627 26 11 1 時に霊はわたしをあげて、東に向かう主の宮の東の門に連れて行った。見よ、その門の入口に二十五人の者がいた。わたしはその中にアズルの子ヤザニヤと、ベナヤの子ペラテヤを見た。共に民のつかさであった。
20628 26 11 2 すると彼はわたしに言われた、「人の子よ、これらの者はこの町の中で悪い事を考え、悪い計りごとをめぐらす人々である。
20629 26 11 3 彼らは言う、『家を建てる時は近くはない。この町はなべであり、われわれは肉である』と。
20630 26 11 4 それゆえ、彼らに向かって預言せよ。人の子よ、預言せよ」。
20631 26 11 5 時に、主の霊がわたしに下って、わたしに言われた、「主はこう言われると言え、イスラエルの家よ、考えてみよ。わたしはあなたがたの心にある事どもを知っている。
20632 26 11 6 あなたがたはこの町に殺される者を増し、殺された者をもってちまたを満たした。
20633 26 11 7 それゆえ、主なる神はこう言われる、町の中にあなたがたが置く殺された者は肉である。この町はなべである。しかし、あなたがたはその中から取り出される。
20634 26 11 8 あなたがたはつるぎを恐れた。わたしはあなたがたにつるぎを臨ませると、主は言われる。
20635 26 11 9 またわたしはあなたがたをその中から引き出して、他国人の手に渡し、あなたがたをさばく。
20636 26 11 10 あなたがたはつるぎに倒れる。わたしはあなたがたをイスラエルの境でさばく。これによってあなたがたはわたしが主であることを知るようになる。
20637 26 11 11 この町はあなたがたに対してなべとはならず、あなたがたはその肉とはならない。わたしはイスラエルの境であなたがたをさばく。
20638 26 11 12 これによって、あなたがたはわたしが主であることを知るようになる。あなたがたはわたしの定めに歩まず、またわたしのおきてを行わず、かえってその周囲の他国人のおきてに従って行っているからである」。
20639 26 11 13 このようにわたしが預言していた時、ベナヤの子ペラテヤが死んだので、わたしは打ち伏して、大声で叫んで言った、「ああ主なる神よ、あなたはイスラエルの残りの者をことごとく滅ぼそうとされるのですか」。
20640 26 11 14 時に主の言葉がわたしに臨んで言った、
20641 26 11 15 「人の子よ、あなたの兄弟、あなたの友、あなたの兄弟である捕われ人、イスラエルの全家、エルサレムの住民は言った、『彼らが主から遠く離れた。この地はわれわれの所有として与えられているのだ』と。
20642 26 11 16 それゆえ、言え、『主なる神はこう言われる、たといわたしは彼らを遠く他国人の中に移し、国々の中に散らしても、彼らの行った国々で、わたしはしばらく彼らのために聖所となる』と。
20643 26 11 17 それゆえ、言え、『主はこう言われる、わたしはあなたがたをもろもろの民の中から集め、その散らされた国々から集めて、イスラエルの地をあなたがたに与える』と。
20644 26 11 18 彼らはその所に来る時、そのもろもろのいとうべきものと、もろもろの憎むべきものとをその所から取り除く。
20645 26 11 19 そしてわたしは彼らに一つの心を与え、彼らのうちに新しい霊を授け、彼らの肉から石の心を取り去って、肉の心を与える。
20646 26 11 20 これは彼らがわたしの定めに歩み、わたしのおきてを守って行い、そして彼らがわたしの民となり、わたしが彼らの神となるためである。
20647 26 11 21 しかしいとうべきもの、憎むべきものをその心に慕って歩む者には、彼らの行いに従ってそのこうべに報いると、主なる神は言われる」。
20648 26 11 22 時にケルビムはその翼をあげた。輪がそのかたわらにあり、イスラエルの神の栄光がその上にあった。
20649 26 11 23 主の栄光が町の中からのぼって、町の東にある山の上に立ちどまった。
20650 26 11 24 その時、霊はわたしをあげ、神の霊によって、幻のうちにわたしをカルデヤの捕われ人の所へ携えて行った。そしてわたしが見た幻はわたしを離れてのぼった。
20651 26 11 25 そこでわたしは主がわたしに示された事をことごとくかの捕われ人に告げた。
20652 26 12 1 主の言葉がわたしに臨んだ、
20653 26 12 2 「人の子よ、あなたは反逆の家の中にいる。彼らは見る目があるが見ず、聞く耳があるが聞かず、彼らは反逆の家である。
20654 26 12 3 それゆえ、人の子よ、捕囚の荷物を整え、彼らの目の前で昼のうちに移れ、彼らの目の前であなたの所から他の所に移れ。彼らは反逆の家であるが、あるいは彼らは顧みるところがあろう。
20655 26 12 4 あなたは、捕囚の荷物のようなあなたの荷物を、彼らの目の前で昼のうちに持ち出せ。そして捕囚に行くべき人々のように、彼らの目の前で夕べのうちに出て行け。
20656 26 12 5 すなわち彼らの目の前で壁に穴をあけ、そこから出て行け。
20657 26 12 6 あなたは彼らの目の前でその荷物を肩に負い、やみのうちにそれを運び出せ。あなたの顔をおおって地を見るな。わたしはあなたをしるしとなして、イスラエルの家に示すのだ」。
20658 26 12 7 そこでわたしは命じられたようにし、捕囚の荷物のような荷物を昼のうちに持ち出し、夕べにはわたしの手で壁に穴をあけ、やみのうちに彼らの目の前で、これを肩に負って運び出した。
20659 26 12 8 次の朝、主の言葉がわたしに臨んだ、
20660 26 12 9 「人の子よ、反逆の家であるイスラエルの家は、あなたに向かって、『何をしているのか』と言わなかったか。
20661 26 12 10 あなたは彼らに言いなさい、『主なる神はこう言われる、この託宣はエルサレムの君、およびその中にあるイスラエルの全家にかかわるものである』と。
20662 26 12 11 また言いなさい、『わたしはあなたがたのしるしである。わたしがしたとおりに彼らもされる。彼らはとりこにされて移される』と。
20663 26 12 12 彼らのうちの君は、やみのうちにその荷物を肩に載せて出て行く。彼は壁に穴をあけて、そこから出て行く。彼は顔をおおって、自分の目でこの地を見ない。
20664 26 12 13 わたしはわたしの網を彼の上に打ちかける。彼はわたしのわなにかかる。わたしは彼をカルデヤびとの地のバビロンに引いて行く。しかし彼はそれを見ないで、そこで死ぬであろう。
20665 26 12 14 またすべて彼の周囲にいて彼を助ける者および彼の軍隊を、わたしは四方に散らし、つるぎを抜いてそのあとを追う。
20666 26 12 15 わたしが彼らを諸国民の中に散らし、国々にまき散らすとき、彼らはわたしが主であることを知る。
20667 26 12 16 ただし、わたしは彼らのうちに、わずかの者を残して、つるぎと、ききんと、疫病を免れさせ、彼らがおこなったもろもろの憎むべきことを、彼らが行く国びとの中に告白させよう。そして彼らはわたしが主であることを知るようになる」。
20668 26 12 17 主の言葉がまたわたしに臨んだ、
20669 26 12 18 「人の子よ、震えてあなたのパンを食べ、おののきと恐れとをもって水を飲め。
20670 26 12 19 そしてこの地の民について言え、主なる神はイスラエルの地のエルサレムの民についてこう言われる、彼らは恐れをもってそのパンを食べ、驚きをもってその水を飲むようになる。これはその地が、すべてその中に住む者の暴虐のために衰え、荒れ地となるからである。
20671 26 12 20 人の住んでいた町々は荒れはて、地は荒塚となる。そしてあなたがたは、わたしが主であることを知るようになる」。
20672 26 12 21 主の言葉がわたしに臨んだ、
20673 26 12 22 「人の子よ、イスラエルの地について、あなたがたが『日は延び、すべての幻はむなしくなった』という、このことわざはなんであるか。
20674 26 12 23 それゆえ、彼らに言え、『主なる神はこう言われる、わたしはこのことわざをやめさせ、彼らが再びイスラエルで、これをことわざとしないようにする』と。しかし、あなたは彼らに言え、『日とすべての幻の実現とは近づいた』と。
20675 26 12 24 イスラエルの家のうちには、もはやむなしい幻も、偽りの占いもなくなる。
20676 26 12 25 しかし主なるわたしは、わが語るべきことを語り、それは必ず成就する。決して延びることはない。ああ、反逆の家よ、あなたの日にわたしはこれを語り、これを成就すると、主なる神は言われる」。
20677 26 12 26 主の言葉がまたわたしに臨んだ、
20678 26 12 27 「人の子よ、見よ、イスラエルの家は言う、『彼の見る幻は、なお多くの日の後の事である。彼が預言することは遠い後の時のことである』と。
20679 26 12 28 それゆえ、彼らに言え、主なる神はこう言われる、わたしの言葉はもはや延びない。わたしの語る言葉は成就すると、主なる神は言われる」。
20680 26 13 1 主の言葉がわたしに臨んだ、
20681 26 13 2 「人の子よ、イスラエルの預言者たちに向かって預言せよ。すなわち自分の心のままに預言する人々に向かって、預言して言え、『あなたがたは主の言葉を聞け』。
20682 26 13 3 主なる神はこう言われる、なにも見ないで、自分の霊に従う愚かな預言者たちはわざわいだ。
20683 26 13 4 イスラエルよ、あなたの預言者たちは、荒れ跡にいるきつねのようだ。
20684 26 13 5 あなたがたは主の日に戦いに立つため、破れ口にのぼらず、またイスラエルの家のために石がきを築こうともしない。
20685 26 13 6 彼らは虚偽を言い、偽りを占った。彼らは主が彼らをつかわさないのに『主が言われる』と言い、なおその言葉の成就することを期待する。
20686 26 13 7 あなたがたはむなしい幻を見、偽りの占いを語り、わたしが言わないのに『主が言われる』と言ったではないか」。
20687 26 13 8 それゆえ、主なる神はこう言われる、「あなたがたはむなしいことを語り、偽りの物を見るゆえ、わたしはあなたがたを罰すると主なる神は言われる。
20688 26 13 9 わたしの手は、むなしい幻を見、偽りの占いを言う預言者に敵対する。彼らはわが民の会に臨まず、イスラエルの家の籍にしるされず、イスラエルの地に、はいることができない。そしてあなたがたはわたしが主なる神であることを知るようになる。
20689 26 13 10 彼らはわが民を惑わし、平和がないのに『平和』と言い、また民が塀を築く時、これらの預言者たちは水しっくいをもってこれを塗る。
20690 26 13 11 それゆえ、水しっくいを塗る者どもに『これはかならずくずれる』と言え。これに大雨が注ぎ、ひょうが降り、あらしが吹く。
20691 26 13 12 そして塀がくずれる時、人々はあなたがたに向かって、『あなたがたが塗った水しっくいはどこにあるか』と言わないであろうか。
20692 26 13 13 それゆえ、主なる神はこう言われる、わたしはわが憤りをもって大風を起し、わが怒りをもって大雨を注がせ、憤りをもってひょうを降らせて、これを滅ぼす。
20693 26 13 14 またわたしはあなたがたが水しっくいをもって塗った塀をこわして、これを地に倒し、その基をあらわす。これが倒れる時、あなたがたはその中に滅びる。そしてあなたがたは、わたしが主であることを知るようになる。
20694 26 13 15 こうしてわたしが、その塀と、これを水しっくいで塗った者との上に、わたしの憤りを漏らし尽して、あなたがたに言う、塀はなくなり、これを塗った者もなくなる。
20695 26 13 16 これがすなわち平和がないのに平和の幻を見、エルサレムについて預言したイスラエルの預言者であると、主なる神は言われる。
20696 26 13 17 人の子よ、心のままに預言するあなたの民の娘たちに対して、あなたの顔を向け、彼らに向かって預言して、
20697 26 13 18 言え、主なる神はこう言われる、手の節々に占いひもを縫いつけ、もろもろの大きさの人の頭に、かぶり物を作りかぶせて、魂をかり取ろうとする女はわざわいだ。あなたがたは、わが民の魂をかり取って、あなたがたの利益のために、他の魂を生かしおこうとするのか。
20698 26 13 19 あなたがたは少しばかりの大麦のため、少しばかりのパンのために、わが民のうちに、わたしを汚し、かの偽りを聞きいれるわが民に偽りを述べて、死んではならない者を死なせ、生きていてはならない者を生かす。
20699 26 13 20 それゆえ、主なる神はこう言われる、見よ、わたしはあなたがたが用いて、魂をかり取るところの占いひもを奪い、あなたがたの腕から占いひもを裂き取って、あなたがたがかり取るところの魂を、鳥のように放ちやる。
20700 26 13 21 わたしはまたあなたがたの、かぶり物を裂き、わが民をあなたがたの手から救う。彼らは再びあなたがたの獲物とはならない。そしてあなたがたはわたしが主であることを知るようになる。
20701 26 13 22 あなたがたは偽りをもって正しい者の心を悩ました。わたしはこれを悩まさなかった。またあなたがたは悪人が、その命を救うために、その悪しき道から離れようとする時、それをしないように勧める。
20702 26 13 23 それゆえ、あなたがたは重ねてむなしい幻を見ることができず、占いをすることができないようになる。わたしはわが民を、あなたがたの手から救い出す。そのとき、あなたがたはわたしが主であることを知るようになる」。
20703 26 14 1 ここにイスラエルの長老のうちのある人々が、わたしの所に来て、わたしの前に座した。
20704 26 14 2 時に主の言葉が、わたしに臨んだ、
20705 26 14 3 「人の子よ、これらの人々は、その偶像を心の中に持ち、罪に落しいれるところのつまずきを、その顔の前に置いている。わたしはどうして彼らの願いをいれることができようか。
20706 26 14 4 それゆえ彼らに告げて言え、主なる神は、こう言われる、イスラエルの家の人々で、その偶像を心の中に持ち、その顔の前に罪に落しいれるところのつまずくものを置きながら、預言者のもとに来る者には、その多くの偶像のゆえに、主なるわたしは、みずからこれに答をする。
20707 26 14 5 これはその偶像のために、すべてわたしを離れたイスラエルの家の心を、わたしが捕えるためである。
20708 26 14 6 それゆえイスラエルの家に言え、主なる神はこう言われる、あなたがたは悔いて、あなたがたの偶像を捨てよ。あなたがたの顔を、そのすべての憎むべきものからそむけよ。
20709 26 14 7 イスラエルの家の者およびイスラエルに宿る外国人のだれでも、わたしから離れ、その心に偶像を持ち、その顔の前に罪に落しいれるところのつまずきを置きながら、預言者に来て、心のままにわたしに求めるときは、主であるわたしは、みずからこれに答をする。
20710 26 14 8 わたしはわたしの顔を、その人に向け、彼を、しるし、およびことわざとなし、これをわが民のうちから断ち滅ぼす。その時、あなたがたはわたしが主であることを知るようになる。
20711 26 14 9 もし預言者が欺かれて言葉を出すことがあれば、それは主であるわたしが、その預言者を欺いたのである。わたしは手を彼の上に伸べ、わが民イスラエルのうちから彼を滅ぼす。
20712 26 14 10 彼らはその罰を負う。その預言者の罰は、問い求める者の罰と同様である。
20713 26 14 11 これはイスラエルの家が、重ねてわたしを離れて迷わず、重ねてそのもろもろのとがによって、おのれを汚さないため、また彼らがわが民となり、わたしが彼らの神となるためであると、主なる神は言われる」。
20714 26 14 12 主の言葉が、またわたしに臨んだ、
20715 26 14 13 「人の子よ、もし国がわたしに、もとりそむいて罪を犯し、わたしがその上に手を伸べて、そのつえとたのむパンを砕き、これにききんを送り、人と獣とをそのうちから断つ時、
20716 26 14 14 たといそこにノア、ダニエル、ヨブの三人がいても、彼らはその義によって、ただ自分の命を救いうるのみであると、主なる神は言われる。
20717 26 14 15 もしわたしが野の獣にこの地を通らせ、これを荒させ、これを荒れ地となし、その獣のためにそこを通る者がないようにしたなら、
20718 26 14 16 主なる神は言われる、わたしは生きている、たといこれら三人の者がその中にいても、そのむすこ娘を救うことはできない。ただ自分自身を救いうるのみで、その地は荒れ地となる。
20719 26 14 17 あるいは、わたしがもし、つるぎをその地に臨ませ、つるぎよ、この地を行きめぐれと言って、人と獣とをそこから断つならば、
20720 26 14 18 主なる神は言われる、わたしは生きている、たといこれら三人の者がその中にいても、そのむすこ娘を救うことはできない。ただ自分自身を救いうるのみである。
20721 26 14 19 あるいは、わたしがもし、この地に疫病を送り、血をもってわが憤りをその上に注ぎ、人と獣とをそこから断つならば、
20722 26 14 20 主なる神は言われる、わたしは生きている、たといノア、ダニエル、ヨブがそこにいても、彼らはそのむすこ娘を救うことができない。ただその義によって自分の命を救いうるのみである。
20723 26 14 21 主なる神はこう言われる、わたしが人と獣とを地から断つために、つるぎと、ききんと、悪しき獣と、疫病との四つのきびしい罰をエルサレムに送る時はどうであろうか。
20724 26 14 22 しかし、もしそれがあなたがたに来るとき、むすこ娘たちを助け出す者が、その中に残っていて、あなたがたがその行いと、わざとを見るならば、わたしがエルサレムの上に与えたすべての災について慰められるであろう。
20725 26 14 23 すなわち、あなたがたが、その行いと、わざとを見る時、彼らはあなたがたを慰め、あなたがたはわたしがこれに行った事は、すべてゆえなくしたのではないことを知るようになると、主なる神は言われる」。
20726 26 15 1 主の言葉がわたしに臨んだ、
20727 26 15 2 「人の子よ、ぶどうの木、森の木のうちにあるぶどうの枝は、ほかの木になんのまさる所があるか。
20728 26 15 3 その木は何かを造るために用いられるか。また人はこれを用いて、器物を掛ける木釘を造るだろうか。
20729 26 15 4 見よ、これは火に投げ入れられて燃える。火がその両端を焼いたとき、またその中ほどがこげたとき、それはなんの役に立つだろうか。
20730 26 15 5 見よ、これは完全な時でも、なんの用をもなさない。まして火がこれを焼き、これをこがした時には、なんの役に立つだろうか。
20731 26 15 6 それゆえ主なる神はこう言われる、わたしが森の木の中のぶどうの木を、火に投げ入れて焼くように、エルサレムの住民をそのようにする。
20732 26 15 7 わたしはわたしの顔を彼らに向けて攻める。彼らがその火からのがれても、火は彼らを焼き尽す。わたしが顔を彼らに向けて攻める時、あなたがたはわたしが主であることを知る。
20733 26 15 8 彼らが、もとりそむいたゆえに、わたしはこの地を荒れ地とすると、主なる神は言われる」。
20734 26 16 1 主の言葉が再びわたしに臨んだ、
20735 26 16 2 「人の子よ、エルサレムにその憎むべき事どもを示して、
20736 26 16 3 言え。主なる神はエルサレムにこう言われる、あなたの起り、あなたの生れはカナンびとの地である。あなたの父はアモリびと、あなたの母はヘテびとである。
20737 26 16 4 あなたの生れについていえば、その生れた日に、へその緒は切られず、水で洗い清められず、塩でこすられず、また布で包まれなかった。
20738 26 16 5 ひとりもあなたをあわれみ見る者なく、情をもってこれらのことの一つをも、あなたにしてやる者もなく、あなたの生れた日に、あなたはきらわれて、野原に捨てられた。
20739 26 16 6 わたしはあなたのかたわらを通り、あなたが血の中にころがりまわっているのを見た時、わたしは血の中にいるあなたに言った、『生きよ、
20740 26 16 7 野の木のように育て』と。すなわちあなたは成長して大きくなり、一人前の女になり、その乳ぶさは形が整い、髪は長くなったが、着物がなく、裸であった。
20741 26 16 8 わたしは再びあなたのかたわらをとおって、あなたを見たが、見よ、あなたは愛せられる年齢に達していたので、わたしは着物のすそであなたをおおい、あなたの裸をかくし、そしてあなたに誓い、あなたと契約を結んだ。そしてあなたはわたしのものとなったと、主なる神は言われる。
20742 26 16 9 そこでわたしは水であなたを洗い、あなたの血を洗い落して油を塗り、
20743 26 16 10 縫い取りした着物を着せ、皮のくつをはかせ、細布をかぶらせ、絹のきれであなたをおおった。
20744 26 16 11 また飾り物であなたを飾り、腕輪をあなたの手にはめ、鎖をあなたの首にかけ、
20745 26 16 12 鼻には鼻輪、耳には耳輪、頭には美しい冠を与えた。
20746 26 16 13 このようにあなたは金銀で飾られ、細布、絹、縫い取りの服をあなたの衣とし、麦粉と、蜜と、油とを食べた。あなたは非常に美しくなって王の地位に進み、
20747 26 16 14 あなたの美しさのために、あなたの名声は国々に広まった。これはわたしが、あなたに施した飾りによって全うされたからであると、主なる神は言われる。
20748 26 16 15 ところが、あなたは自分の美しさをたのみ、自分の名声によって姦淫を行い、すべてかたわらを通る者と、ほしいままに姦淫を行った。
20749 26 16 16 あなたは自分の衣をとって、自分のために、はなやかに色どった聖所を造り、その上で姦淫を行っている。こんなことはかつてなかったこと、またあってはならないことである。
20750 26 16 17 あなたはわたしが与えた金銀の美しい飾りの品をとり、自分のために男の像を造って、これと姦淫を行った。
20751 26 16 18 また縫い取りのある自分の衣をとって彼らに着せ、わたしの油と香とをその前に供え、
20752 26 16 19 またわたしがあなたに与えたパン、わたしがあなたを養うための麦粉、油および蜜を、こうばしきかおりとして彼らの前に供えたと、主なる神は言われる。
20753 26 16 20 あなたはまた、あなたがわたしに産んだむすこ、娘たちをとって、その像に供え、彼らに食わせた。このようなあなたの姦淫は小さい事であろうか。
20754 26 16 21 あなたはわたしの子どもを殺し、火の中を通らせて彼らにささげた。
20755 26 16 22 あなたがそのすべての憎むべきことや姦淫を行うに当って、あなたが衣もなく、裸で、血の中にころがりまわっていた自分の若き日のことを思わなかった。
20756 26 16 23 あなたがもろもろの悪を行った後、(あなたはわざわいだ、わざわいだと、主なる神は言われる)
20757 26 16 24 あなたは自分のために高楼を建て、広場、広場に台を造り、
20758 26 16 25 ちまた、ちまたのつじに台を造って、あなたの美しさを汚し、すべてかたわらを通る者に身をまかせて、大いに姦淫を行っている。
20759 26 16 26 あなたはまた、かの肉欲的な隣りエジプトの人々と姦淫を行い、大いに姦淫を行って、わたしを怒らせた。
20760 26 16 27 それゆえ、わたしはわたしの手をあなたの上に伸べて、あなたの賜わる分を減らし、あなたの敵、すなわち、あなたのみだらな行為を恥じるペリシテびとの娘らの欲のままに、あなたを渡した。
20761 26 16 28 あなたは飽くことがないので、またアッスリヤの人々と姦淫を行ったが、彼らと姦淫を行っても、なお飽くことがなかった。
20762 26 16 29 あなたはまたカルデヤの商業地と大いに姦淫を行ったが、これと姦淫を行っても、なお飽くことがなかった。
20763 26 16 30 主なる神は言われる、あなたの心はどんなに恋いわずらうのか。あなたは、これらすべての事を行った。これはあつかましい姦淫のわざである。
20764 26 16 31 あなたは、ちまた、ちまたのつじに高楼を建て、広場、広場に台を設けたが、価をもらうことをあざけったので、遊女のようではなかった。
20765 26 16 32 自分の夫に替えて他人と通じる姦婦よ。
20766 26 16 33 人はすべての遊女に物を与える。しかしあなたはすべての恋人に物を与え、彼らにまいないして、あなたと姦淫するために、四方からあなたの所にこさせる。
20767 26 16 34 このようにあなたは姦淫を行うに当って、他の女と違っている。すなわち、だれもあなたに姦淫をさせたのではない。あなたはかえって価を払い、相手はあなたに払わない。これがあなたの違うところである。
20768 26 16 35 それで遊女よ、主の言葉を聞け。
20769 26 16 36 主なる神はこう言われる、あなたがその恋人と姦淫して、あなたの恥じる所をあらわし、あなたの裸をあらわし、またすべての偶像と、あなたが彼らにささげたあなたの子どもらの血のゆえに、
20770 26 16 37 見よ、わたしはあなたと遊んだあなたのすべての恋人、およびすべてあなたが恋した者と、すべてあなたが憎んだ者とを集め、四方から彼らをあなたの所に集めて、あなたの裸を彼らにあらわす。彼らはあなたの裸を、ことごとく見る。
20771 26 16 38 わたしは姦淫を行った女と、血を流した女がさばかれるように、あなたをさばき、憤りと、ねたみの血とを、あなたに注ぐ。
20772 26 16 39 わたしはあなたを恋人の手に渡す。彼らはあなたの高楼を倒し、台をこわし、あなたの衣をはぎ取り、あなたの美しい飾りの品を奪い、あなたを衣服のない裸者にする。
20773 26 16 40 彼らは民衆をかり立ててあなたを攻め、石であなたを撃ち、つるぎであなたを切り、
20774 26 16 41 火であなたの家を焼き、多くの女たちの前で、あなたにさばきを行う。こうしてわたしはあなたに淫行をやめさせ、重ねて価を払わせないようにする。
20775 26 16 42 そしてあなたに対するわが憤りをしずめ、わがねたみをあなたから離し、わたしは心を安んじて、再び怒ることをしない。
20776 26 16 43 またあなたはその若き日の事を覚えず、すべてこれらの事をもって、わたしを怒らせたから、見よ、わたしもあなたの行うところをあなたのこうべに報いると、主なる神は言われる。
20777 26 16 44 見よ、すべてことわざを用いる者は、あなたについて、『この母にしてこの娘あり』という、ことわざを用いる。
20778 26 16 45 あなたは、その夫と子どもとを捨てたあなたの母の娘、またその夫と子どもとを捨てた姉妹を持っている。あなたの母はヘテびと、あなたの父はアモリびと、
20779 26 16 46 あなたの姉はサマリヤ、サマリヤはその娘たちと共に、あなたの北に住み、あなたの妹はソドムで、その娘たちと共に、あなたの南に住んでいる。
20780 26 16 47 あなたは彼らの道を歩まず、彼らの憎むべき事に従っていないが、しばらくすると、あなたのおこないは、彼らよりもさらに悪くなる。
20781 26 16 48 主なる神は言われる、わたしは生きている。あなたの妹ソドムとその娘たちは、あなたとあなたの娘たちがしたほどのことはしなかった。
20782 26 16 49 見よ、あなたの妹ソドムの罪はこれである。すなわち彼女と、その娘たちは高ぶり、食物に飽き、安泰に暮していたが、彼らは、乏しい者と貧しい者を助けなかった。
20783 26 16 50 彼らは高ぶり、わたしの前に憎むべき事をおこなったので、わたしはそれを見た時、彼らを除いた。
20784 26 16 51 サマリヤはあなたの半分も罪を犯さなかった。あなたは彼らよりも多く憎むべき事をおこない、あなたのおこなったもろもろの憎むべき事によって、あなたの姉妹を義と見せかけた。
20785 26 16 52 あなたはその姉妹を有利にさばいたことによって、あなたもまた自分のはずかしめを負わなければならない。それはあなたが彼らよりも、さらに憎むべきことをした罪によって、彼らはあなたよりも義とされるからである。それであなたも恥を受け、はずかしめを負わなければならない。それはあなたがその姉妹を義と見せかけたからである。
20786 26 16 53 わたしは彼らの幸福をもとに返す。すなわちソドムとその娘たちの幸福、サマリヤとその娘たちの幸福、また彼らの中にいるあなたの幸福をもとに返す。
20787 26 16 54 これはあなたに自分のはずかしめを負わせるため、またすべてあなたのなした事を恥じさせるためである。こうしてあなたは彼らの慰めとなる。
20788 26 16 55 あなたの姉妹ソドムと、その娘たちとは、そのもとの所に帰り、サマリヤと、その娘たちとは、そのもとの所に帰り、あなたと、あなたの娘たちとは、そのもとの所に帰る。
20789 26 16 56 あなたの高ぶりの日に、あなたの姉妹ソドムは、あなたの口に、ことわざとなったではなかったか。
20790 26 16 57 すなわちあなたの悪があらわされた時まで、そうではなかったか。しかし今はあなたも彼女と同様に、エドムの娘たちと、すべてその周囲の者、および四方からあなたをあざけるペリシテの娘たちのそしりとなった。
20791 26 16 58 あなたはあなたのみだらな行為と、あなたの憎むべき事のとがとを、身に負っていると主は言われる。
20792 26 16 59 主なる神はこう言われる、誓いを軽んじ、契約を破ったあなたには、あなたがしたように、わたしもあなたにする。
20793 26 16 60 しかしわたしはあなたの若き日に、あなたと結んだ契約を覚え、永遠の契約をあなたと立てる。
20794 26 16 61 わたしがあなたの姉および妹を受け、またあなたとの契約によらずに、娘として彼らをあなたに与える時、あなたは自分のおこないを思い出して恥じる。
20795 26 16 62 わたしはあなたと契約を立て、あなたはわたしが主であることを知るようになる。
20796 26 16 63 こうしてすべてあなたの行ったことにつき、わたしがあなたをゆるす時、あなたはそれを思い出して恥じ、その恥のゆえに重ねて口を開くことがないと、主なる神は言われる」。
20797 26 17 1 時に主の言葉がわたしに臨んだ、
20798 26 17 2 「人の子よ、イスラエルの家になぞをかけ、たとえを語って、
20799 26 17 3 言え。主なる神がこう言われる、さまざまの色の羽毛を多く持ち、大きな翼と、長い羽根とを持つ大わしがレバノンに来て、香柏のこずえにとまり、
20800 26 17 4 その若枝の頂を摘み切り、これを商業の地に運び、商人の町に置いた。
20801 26 17 5 またその地の種をとって、これを肥えた土に植えた。すなわち水の多い所にもって行って、柳を植えるようにこれを植えた。
20802 26 17 6 これが成長して、たけ低く、はびこるぶどうの木となり、枝はわしに向かい、根はわしの下にあり、こうしてついにぶどうの木となり、枝を伸ばし、葉を出した。
20803 26 17 7 ここにまた大きな翼と、羽毛の多いほかの一羽の大わしがあった。見よ、このぶどうの木は、潤いを得るために、その根をわしに向かってまげ、その枝をわしに向かって伸ばした。
20804 26 17 8 これが枝を出し、実を結び、みごとなぶどうの木となるために、わしはこれを植えた苗床から水の多い良い地に移し植えた。
20805 26 17 9 あなたは、主なる神がこう言われると言え、これは栄えるであろうか。わしはその根を抜き、その枝を切り、その若葉を皆枯らさないであろうか。これをその根からあげるには、強い腕や多くの民を必要としない。
20806 26 17 10 見よ、それが移し植えられたら、また栄えるであろうか。東風がこれを打つ時、それは枯れてしまわないであろうか。その育った苗床で枯れないであろうか」。
20807 26 17 11 主の言葉がまたわたしに臨んだ、
20808 26 17 12 「反逆の家に言え。これらがなんであるかをあなたがたは知らないのか。彼らに言え、見よ、バビロンの王がエルサレムにきて、その王とつかさとを捕え、これをバビロンに引いて行った。
20809 26 17 13 また王の子孫のひとりを捕えて、これと契約を結び、誓いを立てさせ、また国のおもだった人々を捕えて行った。
20810 26 17 14 これはこの国を卑しくして、みずから立つことができないようにし、その契約を守ることによって立たせるためである。
20811 26 17 15 しかし彼はバビロンの王にそむき、使者をエジプトに送って、馬と多くの兵とをそこから獲ようとした。彼は成功するだろうか。このようなことをなす者は、のがれることができようか。
20812 26 17 16 契約を破ってなおのがれることができようか。主なる神は言われる、わたしは生きている、必ず彼は自分を王となした王の住む所、彼が立てた誓いを軽んじ、その契約を破った相手の王のいるバビロンで彼は死ぬ。
20813 26 17 17 多くの命を断つために塁を築き、雲梯を建てるとき、パロは決して大いなる軍勢と、多くの人とをもって、彼を助けて戦いをしない。
20814 26 17 18 彼は誓いを軽んじ、契約を破り、その手を与えて誓いながら、なおこれらの事をしたゆえ、のがれることはできない。
20815 26 17 19 それゆえ、主なる神はこう言われる、わたしは生きている、彼がわたしの誓いを軽んじ、わたしの契約を破ったことを、必ず彼のこうべに報いる。
20816 26 17 20 わたしはわが網を彼の上に打ちかけ、彼をわがわなに捕えて、バビロンに引いて行き、彼がわたしにむかって犯した反逆のために、その所で彼をさばく。
20817 26 17 21 彼のすべての軍隊のえり抜きの兵士は皆つるぎに倒れ、生き残った者は八方に散らされる。そしてあなたがたは主なるわたしが、これを語ったことを知るようになる」。
20818 26 17 22 主なる神はこう言われる、「わたしはまた香柏の高いこずえから小枝をとって、これを植え、その若芽の頂から柔かい芽を摘みとり、これを高いすぐれた山に植える。
20819 26 17 23 わたしはイスラエルの高い山にこれを植える。これは枝を出し、実を結び、みごとな香柏となり、その下にもろもろの種類の獣が住み、その枝の陰に各種の鳥が巣をつくる。
20820 26 17 24 そして野のすべての木は、主なるわたしが高い木を低くし、低い木を高くし、緑の木を枯らし、枯れ木を緑にすることを知るようになる。主であるわたしはこれを語り、これをするのである」。
20821 26 18 1 主の言葉がわたしに臨んだ、
20822 26 18 2 「あなたがたがイスラエルの地について、このことわざを用い、『父たちが、酢いぶどうを食べたので子供たちの歯がうく』というのはどんなわけか。
20823 26 18 3 主なる神は言われる、わたしは生きている、あなたがたは再びイスラエルでこのことわざを用いることはない。
20824 26 18 4 見よ、すべての魂はわたしのものである。父の魂も子の魂もわたしのものである。罪を犯した魂は必ず死ぬ。
20825 26 18 5 人がもし正しくあって、公道と正義とを行い、
20826 26 18 6 山の上で食事をせず、また目をあげてイスラエルの家の偶像を仰がず、隣り人の妻を犯さず、汚れの時にある女に近づかず、
20827 26 18 7 だれをもしえたげず、質物を返し、決して奪わず、食物を飢えた者に与え、裸の者に衣服を着せ、
20828 26 18 8 利息や高利をとって貸さず、手をひいて悪を行わず、人と人との間に真実のさばきを行い、
20829 26 18 9 わたしの定めに歩み、わたしのおきてを忠実に守るならば、彼は正しい人である。彼は必ず生きることができると、主なる神は言われる。
20830 26 18 10 しかし彼が子を生み、その子が荒い者で、人の血を流し、これらの義務の一つをも行わず、
20831 26 18 11 かえって山の上で食事をし、隣り人の妻を犯し、
20832 26 18 12 乏しい者や貧しい者をしえたげ、物を奪い、質物を返さず、目をあげて偶像を仰ぎ、憎むべき事をおこない、
20833 26 18 13 利息や高利をとって貸すならば、その子は生きるであろうか。彼は生きることはできない。彼はこれらの憎むべき事をしたので、必ず死に、その血は彼自身に帰する。
20834 26 18 14 しかし彼が子を生み、その子が父の行ったすべての罪を見て、恐れ、そのようなことを行わず、
20835 26 18 15 山の上で食事せず、目をあげてイスラエルの家の偶像を仰がず、隣り人の妻を犯さず、
20836 26 18 16 だれをもしえたげず、質物をひき留めず、物を奪わず、かえって自分の食物を飢えた者に与え、裸の者に衣服を着せ、
20837 26 18 17 その手をひいて悪を行わず、利息や高利をとらず、わたしのおきてを行い、わたしの定めに歩むならば、彼はその父の悪のために死なず、必ず生きる。
20838 26 18 18 しかしその父は人をかすめ、その兄弟の物を奪い、その民の中で良くない事を行ったゆえ、見よ、彼はその悪のために死ぬ。
20839 26 18 19 しかしあなたがたは、『なぜ、子は父の悪を負わないのか』と言う。子は公道と正義とを行い、わたしのすべての定めを守っておこなったので、必ず生きるのである。
20840 26 18 20 罪を犯す魂は死ぬ。子は父の悪を負わない。父は子の悪を負わない。義人の義はその人に帰し、悪人の悪はその人に帰する。
20841 26 18 21 しかし、悪人がもしその行ったもろもろの罪を離れ、わたしのすべての定めを守り、公道と正義とを行うならば、彼は必ず生きる。死ぬことはない。
20842 26 18 22 その犯したもろもろのとがは、彼に対して覚えられない。彼はそのなした正しい事のために生きる。
20843 26 18 23 主なる神は言われる、わたしは悪人の死を好むであろうか。むしろ彼がそのおこないを離れて生きることを好んでいるではないか。
20844 26 18 24 しかし義人がもしその義を離れて悪を行い、悪人のなすもろもろの憎むべき事を行うならば、生きるであろうか。彼が行ったもろもろの正しい事は覚えられない。彼はその犯したとがと、その犯した罪とのために死ぬ。
20845 26 18 25 しかしあなたがたは、『主のおこないは正しくない』と言う。イスラエルの家よ、聞け。わたしのおこないは正しくないのか。正しくないのは、あなたがたのおこないではないか。
20846 26 18 26 義人がその義を離れて悪を行い、そのために死ぬならば、彼は自分の行った悪のために死ぬのである。
20847 26 18 27 しかし悪人がその行った悪を離れて、公道と正義とを行うならば、彼は自分の命を救うことができる。
20848 26 18 28 彼は省みて、その犯したすべてのとがを離れたのだから必ず生きる。死ぬことはない。
20849 26 18 29 しかしイスラエルの家は『主のおこないは正しくない』と言う。イスラエルの家よ、わたしのおこないは、はたして正しくないのか。正しくないのは、あなたがたのおこないではないか。
20850 26 18 30 それゆえ、イスラエルの家よ、わたしはあなたがたを、おのおのそのおこないに従ってさばくと、主なる神は言われる。悔い改めて、あなたがたのすべてのとがを離れよ。さもないと悪はあなたがたを滅ぼす。
20851 26 18 31 あなたがたがわたしに対しておこなったすべてのとがを捨て去り、新しい心と、新しい霊とを得よ。イスラエルの家よ、あなたがたはどうして死んでよかろうか。
20852 26 18 32 わたしは何人との死をも喜ばないのであると、主なる神は言われる。それゆえ、あなたがたは翻って生きよ」。
20853 26 19 1 あなたはイスラエルの君たちのために悲しみの歌をのべて
20854 26 19 2 言え、あなたの母はししのうちにあって、どんな雌じしであったろう。彼女は若いししのうちに伏して子じしを養った。
20855 26 19 3 彼女は子じしの一つを育てたが、それは若いししとなって、獲物をとることを学び、人を食べた。
20856 26 19 4 国々の人は彼に対して叫び声をあげ、落し穴でこれを捕え、かぎでこれをエジプトの地に引いて行った。
20857 26 19 5 雌じしは自分の思いが破れ、その望みを失ったのを見たので、ほかの子じしをとって、これを若い子じしとした。
20858 26 19 6 彼はししのうちに行き来し、若いししとなって、獲物をとることを学び、人を食べた。
20859 26 19 7 彼はその要害を荒し、その町々を滅ぼした。そのほえる声によって、その地とその中に満ちるものとは皆恐れた。
20860 26 19 8 そこで国々の人は彼に対して四方にわなを設け、彼に網を打ちかけ、落し穴で彼を捕えた。
20861 26 19 9 彼らはかぎをもって、これをかごに入れ、これをバビロンの王のもとに連れて行き、これをおりの中に入れて、再びその声をイスラエルの山々に聞えさせないようにした。
20862 26 19 10 あなたの母は水のほとりに移し植えられたぶどう畑のぶどうの木のようで、水が多いために実りがよく、枝がはびこった。
20863 26 19 11 その強い幹は君たる者のつえとなった。それは茂みの中に高くそびえ、多くの枝をつけて高く見えた。
20864 26 19 12 しかしこのぶどうの木は憤りによって抜かれ、地に投げうたれ、東風がそれを枯らし、その実はもぎ取られ、その強い幹は枯れて、火に焼き滅ぼされた。
20865 26 19 13 今これは荒野に、かわいた、水のない地に移し植えられ、
20866 26 19 14 火がその幹から出て、その枝と実とを滅ぼしたので、強い幹で、君たる者のつえとなるべきものはそこにない。これが悲しみの言葉、また悲しみの歌となった。
20867 26 20 1 第七年の五月十日に、イスラエルの長老たちのある人々が、主に尋ねるためにきて、わたしの前に座した。
20868 26 20 2 時に主の言葉がわたしに臨んだ、
20869 26 20 3 「人の子よ、イスラエルの長老たちに告げて言え。主なる神はこう言われる、あなたがたがわたしのもとに来たのは、わたしに何か尋ねるためであるか。主なる神は言われる、わたしは生きている、わたしはあなたがたの尋ねに答えない。
20870 26 20 4 あなたは彼らをさばこうとするのか。人の子よ、あなたは彼らをさばこうとするのか。それなら彼らの先祖たちのした憎むべき事を彼らに知らせ、
20871 26 20 5 かつ彼らに言え。主なる神はこう言われる、わたしがイスラエルを選び、ヤコブの家の子孫に誓い、エジプトの地でわたし自身を彼らに知らせ彼らに誓って、わたしはあなたがたの神、主であると言った日、
20872 26 20 6 その日にわたしは彼らに誓って、エジプトの地から彼らを導き出し、わたしが彼らのために探り求めた乳と蜜との流れる地、全地の中で最もすばらしい所へ行かせると言った。
20873 26 20 7 わたしは彼らに言った、あなたがたは、おのおのその目を楽しませる憎むべきものを捨てよ。エジプトの偶像をもって、その身を汚すな。わたしはあなたがたの神、主であると。
20874 26 20 8 ところが彼らはわたしにそむき、わたしの言うことを聞こうともしなかった。彼らは、おのおのその目を楽しませた憎むべきものを捨てず、またエジプトの偶像を捨てなかった。
20875 26 20 9 しかしわたしはわたしの名のために行動した。それはエジプトの地から彼らを導き出して、周囲に住んでいた異邦人たちに、わたしのことを知らせ、わたしの名が彼らの目の前に、はずかしめられないためである。
20876 26 20 10 すなわち、わたしはエジプトの地から彼らを導き出して、荒野に連れて行き、
20877 26 20 11 わたしの定めを彼らに授け、わたしのおきてを彼らに示した。これは人がこれを行うことによって生きるものである。
20878 26 20 12 わたしはまた彼らに安息日を与えて、わたしと彼らとの間のしるしとした。これは主なるわたしが彼らを聖別したことを、彼らに知らせるためである。
20879 26 20 13 しかしイスラエルの家は荒野でわたしにそむき、わたしの定めに歩まず、人がそれを行うことによって、生きることのできるわたしのおきてを捨て、大いにわたしの安息日を汚した。
20880 26 20 14 わたしはわたしの名のために行動した。それはわたしが彼らを導き出して見せた異邦人の前に、わたしの名が汚されないためである。
20881 26 20 15 ただし、わたしは荒野で彼らに誓い、わたしが彼らに与えた乳と蜜との流れる地、全地の最もすばらしい地に、彼らを導かないと言った。
20882 26 20 16 これは彼らがその心に偶像を慕って、わがおきてを捨て、わが定めに歩まず、わが安息日を汚したからである。
20883 26 20 17 けれどもわたしは彼らを惜しみ見て、彼らを滅ぼさず、荒野で彼らを絶やさなかった。
20884 26 20 18 わたしはまた荒野で彼らの子どもたちに言った、あなたがたの先祖の定めに歩んではならない。そのおきてを守ってはならない。その偶像をもって、あなたがたの身を汚してはならない。
20885 26 20 19 主なるわたしはあなたがたの神である。わが定めに歩み、わがおきてを守ってこれを行い、
20886 26 20 20 わが安息日を聖別せよ。これはわたしとあなたがたとの間のしるしとなって、主なるわたしがあなたがたの神であることを、あなたがたに知らせるためである。
20887 26 20 21 しかしその子どもたちはわたしにそむき、わが定めに歩まず、人がこれを行うことによって、生きることのできるわたしのおきてを守り行わず、わが安息日を汚した。
20888 26 20 22 しかしわたしはわが手を翻して、わが名のために行動した。それはわたしが彼らを導き出して見せた異邦人の前に、わたしの名が汚されないためである。
20889 26 20 23 ただしわたしは荒野で彼らに誓い、わたしは異邦人の間に彼らを散らし、国々の中に彼らをふりまくと言った。
20890 26 20 24 これは彼らがわがおきてを行わず、わが定めを捨て、わが安息日を汚し、彼らの目にその先祖の偶像を慕ったからである。
20891 26 20 25 またわたしは彼らに良くない定めと、それによって生きることのできないおきてとを与え、
20892 26 20 26 そして、彼らのういごに火の中を通らせるその供え物によって、彼らを汚し、彼らを恐れさせた。わたしがこれを行ったのは、わたしが主であることを、彼らに知らせるためである。
20893 26 20 27 それゆえ人の子よ、イスラエルの家に告げて言え。主なる神はこう言われる、あなたがたの先祖はまた、不信の罪を犯してわたしを汚した。
20894 26 20 28 わたしが彼らに与えようと誓った地に、彼らを導き入れた時、彼らはすべての高い丘と、すべての茂った木とを見て、その所で犠牲をささげ、忌むべき供え物をささげ、またこうばしいかおりをその所に上らせ、その所に灌祭を注いだ。
20895 26 20 29 (わたしは彼らに言った、あなたがたが通うその高き所はなんであるか。それでその名は今日までバマととなえられている。)
20896 26 20 30 それゆえ、イスラエルの家に言え。主なる神はこう言われる、あなたがたは、その先祖のおこないに従って、その身を汚し、その憎むべきものを慕うのか。
20897 26 20 31 あなたがたは、その供え物をささげ、その子供に火の中を通らせて、今日まですべての偶像をもって、その身を汚すのである。イスラエルの家よ、わたしは、なおあなたがたに尋ねられるべきであろうか。わたしは生きている。わたしは決してあなたがたに尋ねられるはずはないと、主なる神は言われる。
20898 26 20 32 あなたがたの心にあること、すなわち『われわれは異邦人のようになり、国々のもろもろのやからのようになって、木や石を拝もう』との考えは決して成就しない。
20899 26 20 33 主なる神は言われる、わたしは生きている、わたしは必ず強い手と伸べた腕と注がれた憤りとをもって、あなたがたを治める。
20900 26 20 34 わたしはわが強い手と伸べた腕と注がれた憤りとをもって、あなたがたをもろもろの民の中から導き出し、その散らされた国々から集め、
20901 26 20 35 もろもろの民の荒野に導き入れ、その所で顔と顔とを合わせて、あなたがたをさばく。
20902 26 20 36 すなわち、エジプトの地の荒野で、あなたがたの先祖をさばいたように、わたしはあなたがたをさばくと、主なる神は言われる。
20903 26 20 37 わたしはあなたがたに、むちの下を通らせ、数えてはいらせ、
20904 26 20 38 あなたがたのうちから、従わぬ者と、わたしにそむいた者とを分かち、その寄留した地から、彼らを導き出す。しかし彼らはイスラエルの地に入ることはできない。こうしてあなたがたはわたしが主であることを知るようになる。
20905 26 20 39 それで、イスラエルの家よ、主なる神はこう言われる、あなたがたはわたしに聞かないなら、今も後も、おのおのその偶像に行って仕えるがよい。しかし再び供え物と偶像とをもって、わたしの聖なる名を汚してはならない。
20906 26 20 40 主なる神は言われる、わたしの聖なる山、イスラエルの高い山の上で、イスラエルの全家はその地で、ことごとくわたしに仕える。その所でわたしは喜んで彼らを受けいれ、あなたがたのささげ物と最上の供え物とを、その聖なるささげ物と共に求める。
20907 26 20 41 わたしがあなたがたをもろもろの民の中から導き出し、かつてあなたがたを散らした国々から集める時、こうばしいかおりとして、あなたがたを喜んで受けいれる。そしてわたしは異邦人の前で、あなたがたの中に、わたしの聖なることをあらわす。
20908 26 20 42 こうしてわたしがあなたがたを、イスラエルの地、すなわちあなたがたの先祖たちに与えると誓った地に、はいらせる時、あなたがたはわたしが主であることを知るようになる。
20909 26 20 43 またその所であなたがたは、その身を汚したあなたがたのおこないと、すべてのわざとを思い出し、みずから行ったすべての悪事のために、自分を忌みきらうようになる。
20910 26 20 44 イスラエルの家よ、わたしがあなたがたの悪しきおこないによらず、またその腐れたわざによらず、わたしの名のために、あなたがたを扱う時、あなたがたはわたしが主であることを知るのであると、主なる神は言われる」。
20911 26 20 45 主の言葉がまたわたしに臨んだ、
20912 26 20 46 「人の子よ、顔を南に向け、南に向かって語り、ネゲブの森の地に対して預言せよ。
20913 26 20 47 すなわちネゲブの森に言え、主の言葉を聞け、主なる神はこう言われる、見よ、わたしはあなたのうちに火を燃やす。その火はあなたのうちのすべての青木と、すべての枯れ木を焼き滅ぼし、その燃える炎は消されることがなく、南から北まで、すべての地のおもては、これがために焼ける。
20914 26 20 48 すべて肉なる者は、主なるわたしがこれを焼いたことを見る。その火は消されない」。
20915 26 20 49 そこでわたしは言った、「ああ主なる神よ、彼らはわたしについてこう語っています、『彼はたとえをもって語る者ではないか』と」。
20916 26 21 1 主の言葉がわたしに臨んだ、
20917 26 21 2 「人の子よ、あなたの顔をエルサレムに向け、あなたの言葉を聖所に向けてのべ、イスラエルの地に向かって預言し、
20918 26 21 3 イスラエルの地に言え。主はこう言われる、見よ、わたしはあなたを攻め、わたしのつるぎをさやから抜き、あなたのうちから、正しい者も悪しき者をも断ってしまう。
20919 26 21 4 わたしがあなたのうちから、正しい者も悪しき者をも断つゆえに、わたしのつるぎはさやから抜け出て、南から北までのすべての肉なる者を攻める。
20920 26 21 5 すべて肉なる者は、主なるわたしが、そのつるぎをさやから抜き放ったことを知る。このつるぎは再びさやに納められない。
20921 26 21 6 それゆえ、人の子よ、嘆け、心砕けるまでに嘆き、彼らの目の前でいたく嘆け。
20922 26 21 7 人があなたに向かって、『なぜ嘆くのか』と言うなら、『この知らせのためである。それが来れば人の心はみな溶け、手はみななえ、霊はみな弱り、ひざはみな水のようになる。見よ、それは来る、必ず成就する』と言え」と主なる神は言われる。
20923 26 21 8 主の言葉がわたしに臨んだ、
20924 26 21 9 「人の子よ、預言して言え、主はこう言われる、つるぎがある、とぎ、かつ、みがいたつるぎがある。
20925 26 21 10 殺すためにといであり、いなずまのようにきらめくためにみがいてある。わたしたちは喜ぶことができるか。わが子よ、あなたはつえと、すべて木で作ったものとを軽んじた。
20926 26 21 11 このつるぎは手にとるために、とがれ、殺す者の手に渡すために、とがれみがかれるのである。
20927 26 21 12 人の子よ、叫び嘆け、このことはわが民に臨み、イスラエルのすべての君たちに臨むからである。彼らはわが民と共につるぎにわたされる。それゆえ、あなたのももを打て。
20928 26 21 13 これはためしにすることではない。もしあなたが、つえをあざけったら、どういうことになろうか」と主なる神は言われる。
20929 26 21 14 「それゆえ、人の子よ、あなたは預言し、手を打ちならせ。つるぎを二度も三度も臨ませよ。これは人を殺すつるぎ、大いに殺すつるぎであって、彼らを囲むものである。
20930 26 21 15 これがために彼らの心は溶け、多くの者がすべての門に倒れる。わたしはひらめくつるぎを彼らに送る。ああ、これはいなずまのようになり、人を殺すためにみがかれている。
20931 26 21 16 あなたの刃の向かうところで、右に左になぎ倒せ。
20932 26 21 17 わたしもまた、わたしの手を打ちならし、わたしの怒りをしずめると、主なるわたしは言った」。
20933 26 21 18 主の言葉がまたわたしに臨んだ、
20934 26 21 19 「人の子よ、バビロンの王のつるぎが来るために、二つの道を備えよ。この二つの道は一つの国から出ている。あなたは道しるべを作り、これを町に向かう道のはじめに置け。
20935 26 21 20 あなたはまたアンモンの人々のラバと、ユダと、堅固な城の町エルサレムとにつるぎの来る道を設けよ。
20936 26 21 21 バビロンの王は道の分れ目、二つの道のはじめに立って占いをし、矢をふり、テラピムに問い、肝を見る。
20937 26 21 22 彼の右にエルサレムのために占いが出る。すなわち口を開いて叫び、声をあげ、ときを作り、門に向かって城くずしを設け、塁を築き、雲悌を建てよと言う。
20938 26 21 23 しかしこれは彼らの目には偽りの占いと思われ、彼らは堅き誓いをなした。しかし彼は、彼らを捕えることによって、罪を思い出させる。
20939 26 21 24 それゆえ、主なる神はこう言われる、あなたがたの罪は覚えられ、その反逆は現れ、その罪はすべてのわざに現れる。このようにあなたがたは、すでに覚えられているから、彼らの手に捕えられる。
20940 26 21 25 汚れた悪人であるイスラエルの君よ、あなたの終りの刑罰の時であるその日が来る。
20941 26 21 26 主なる神はこう言われる、かぶり物を脱ぎ、冠を取り離せ。すべてのものは、そのままには残らない。卑しい者は高くされ、高い者は卑しくされる。
20942 26 21 27 ああ破滅、破滅、破滅、わたしはこれをこさせる。わたしが与える権威をもつ者が来る時まで、その跡形さえも残らない。
20943 26 21 28 人の子よ、預言して言え。主なる神はアンモンの人々と、そのあざけりについて、こう言われる、つるぎがある。このつるぎは殺すために抜かれ、いなずまのようにひかりきらめくようにとがれている。
20944 26 21 29 彼らがあなたに偽りの幻を示し、偽りを占ったゆえ、これは殺さるべき悪しき者の首の上に置かれる。彼らの終りの刑罰の時であるその日がきている。
20945 26 21 30 これをさやに納めよ、わたしはあなたの造られた所、あなたの生れた地であなたをさばく。
20946 26 21 31 わたしの怒りをあなたに注ぎ、わたしの憤りの火をあなたに向けて燃やし、滅ぼすことに巧みな残忍な人の手にあなたを渡す。
20947 26 21 32 あなたは火のための、たきぎとなり、あなたの血は国の中に流され、覚えられることはない、主なるわたしが言う」。
20948 26 22 1 また主の言葉がわたしに臨んで言った、
20949 26 22 2 「人の子よ、あなたはさばくのか。血を流すこの町をさばくのか。それならこの町にそのもろもろの憎むべき事を示して、
20950 26 22 3 言え。主なる神はこう言われる、自分のうちに血を流して、その刑罰の時をまねき、偶像を造ってその身を汚す町よ、
20951 26 22 4 あなたはその流した血によって罪を得、その造った偶像によって汚れ、あなたの日を近づかせ、あなたの年の定めの時はきた。それゆえわたしはあなたをもろもろの国民のあざけりとなし、万国の物笑いとする。
20952 26 22 5 あなたに近い者も、遠い者も、汚れと、混乱に満ちているあなたをあざける。
20953 26 22 6 見よ、あなたのうちのイスラエルの君たちは、おのおのその力にしたがって、血を流そうとしている。
20954 26 22 7 父母はあなたのうちで卑しめられ、寄留者はあなたのうちで虐待をうけ、みなしごと、やもめとはあなたのうちで悩まされている。
20955 26 22 8 あなたはわたしの聖なるものを卑しめ、わたしの安息日を汚した。
20956 26 22 9 人をののしって血を流そうとする者は、あなたのうちにおり、人々はあなたのうちで、山の上で食事をし、あなたのうちで、みだらなおこないをし、
20957 26 22 10 あなたのうちで、父の裸を現し、あなたのうちで、汚れのうちにある女を犯す。
20958 26 22 11 またあなたのうちに、その隣の妻と憎むべき事を行う者があり、淫行をもって、その嫁を汚す者があり、自分の父の娘である自分の姉妹を犯す者があり、
20959 26 22 12 また血を流そうとして、あなたのうちで、まいないを取る者がある。あなたは利息と高利とを取り、しえたげによって、あなたの隣り人のものをかすめ、そしてわたしを忘れてしまったと、主なる神は言われる。
20960 26 22 13 それゆえ見よ、あなたが得た不正の利の事、およびあなたのうちにある流血の事に対して、わたしは手を打ちならす。
20961 26 22 14 わたしがあなたを攻める日には、あなたの勇気は、これに耐え得ようか。またあなたの手は強くあり得ようか。主なるわたしはこれを宣言し、これをなす。
20962 26 22 15 わたしはあなたを、もろもろの国民のうちに散らし、国々の間にまき、そしてあなたから汚れを除く。
20963 26 22 16 わたしはあなたによって、もろもろの国民の前に汚される。そしてあなたはわたしが主であることを知る」。
20964 26 22 17 主の言葉がまたわたしに臨んだ、
20965 26 22 18 「人の子よ、イスラエルの家はわたしに対して、かなかすとなった。彼らはすべて炉の中の銀、青銅、すず、鉄、鉛のかなかすとなった。
20966 26 22 19 それゆえ、主なる神はこう言われる、あなたがたは皆かなかすとなったゆえ、見よ、わたしはあなたがたをエルサレムの中に集める。
20967 26 22 20 人が銀、青銅、鉄、鉛、すずなどを炉の中に集め、これに火を吹きかけて溶かすように、わたしは怒りと憤りとをもって、あなたがたを集め入れて溶かす。
20968 26 22 21 すなわち、わたしはあなたがたを集め、わたしの怒りの火を、あなたがたに吹きかける。あなたがたはその中で溶ける。
20969 26 22 22 銀が炉の中で溶けるように、あなたがたもその中で溶ける。そしてあなたがたは主なるわたしが、あなたがたの上に、わたしの怒りを注いだことを知るようになる」。
20970 26 22 23 主の言葉がまたわたしに臨んだ、
20971 26 22 24 「人の子よ、これに言え、あなたは怒りの日に清められず、また雨の降らない地である。
20972 26 22 25 その中の君たちは、獲物を裂くほえるししのような者で、彼らは人々を滅ぼし、宝と尊い物とを取り、そのうちに、やもめの数をふやす。
20973 26 22 26 その祭司たちはわが律法を犯し、聖なる物を汚した。彼らは聖なる物と汚れた物とを区別せず、清くない物と清い物との違いを教えず、わが安息日を無視し、こうしてわたしは彼らの間に汚されている。
20974 26 22 27 その中にいる君たちは、獲物を裂くおおかみのようで、血を流し、不正の利を得るために人々を滅ぼす。
20975 26 22 28 その預言者たちは、水しっくいでこれを塗り、偽りの幻を見、彼らに偽りを占い、主が語らないのに『主なる神はこう言われる』と言う。
20976 26 22 29 国の民はしえたげを行い、奪うことをなし、乏しい者と貧しい者とをかすめ、不法に他国人をしえたぐ。
20977 26 22 30 わたしは、国のために石がきを築き、わたしの前にあって、破れ口に立ち、わたしにこれを滅ぼさせないようにする者を、彼らのうちに尋ねたが得られなかった。
20978 26 22 31 それゆえ、わたしはわが怒りを彼らの上に注ぎ、わが憤りの火をもって彼らを滅ぼし、彼らのおこないを、そのこうべに報いたと、主なる神は言われる」。
20979 26 23 1 主の言葉がわたしに臨んだ、
20980 26 23 2 「人の子よ、ここにふたりの女があった。ひとりの母の娘である。
20981 26 23 3 彼らはエジプトで淫行をした。彼らは若い時に淫行をした。すなわちその所で彼らの胸は押され、その処女の乳ぶさはいじられた。
20982 26 23 4 彼らの名は姉はアホラ、妹はアホリバである。彼らはわたしのものとなって、むすこ娘たちを産んだ。その本名はアホラはサマリヤ、アホリバはエルサレムである。
20983 26 23 5 アホラはわたしのものである間に淫行をなし、その恋人なるアッスリヤびとにこがれた。
20984 26 23 6 すなわち紫の衣をきた軍人、長官、司令官、すべて好ましい若者、馬に乗る者たちである。
20985 26 23 7 彼女は彼らに淫行を供えた。彼らはすべてアッスリヤのえり抜きの人々である。彼女はまた、そのこがれたすべての者のもろもろの偶像をもって、おのれを汚した。
20986 26 23 8 彼女はエジプトの日からおこなっていた、その淫行を捨てなかった。それは彼女の若い時に、彼らが彼女と寝、その処女の乳ぶさをいじり、その情欲を彼女の上に注いだからである。
20987 26 23 9 それゆえ、わたしは彼女をその恋人の手に渡し、そのこがれたアッスリヤの人々の手に渡した。
20988 26 23 10 彼らは彼女の裸を現し、そのむすこ娘たちを奪い、つるぎをもって彼女を殺した。こうして彼女に対するさばきが行われたとき、彼女は女たちの間の語り草となった。
20989 26 23 11 その妹アホリバはこれを見て、姉よりも情欲をほしいままにし、姉の淫行よりも多く淫行をなし、
20990 26 23 12 アッスリヤの人々に恋こがれた。長官、司令官、盛装した軍人、馬に乗る者たちで、すべて好ましい若者たちである。
20991 26 23 13 わたしは彼女が身を汚したのを見た。彼らは共に一つの道をたどったが、
20992 26 23 14 彼女はさらにその淫行を続け、壁に描いた人々を見た。すなわち朱で描いたカルデヤびとの像で、
20993 26 23 15 腰には帯を結び、頭にはたれさがったずきんをいただいていた。これらはみな官吏のような姿で、その生れた国カルデヤのバビロン人に似ていた。
20994 26 23 16 彼女はこれらを見て、これに恋こがれ、使者をカルデヤの彼らのもとに送った。
20995 26 23 17 そこでバビロンの人々は彼女のもとに来て、恋の床につき、情欲をもって彼女を汚したが、彼女は彼らに汚されるにおよんで、その心は彼らから離れた。
20996 26 23 18 彼女がその淫行を公然と続け、その裸をさらしたので、わたしの心は彼女から離れた。これはあたかもわたしの心が、彼女の姉から離れたと同様である。
20997 26 23 19 しかし彼女はなおエジプトの地で姦淫をしたその若き日を覚えて、その淫行を続け、
20998 26 23 20 その情夫たちに恋こがれた。その人の肉は、ろばの肉のごとく、その精は馬の精のようであった。
20999 26 23 21 このようにあなたは、かのエジプトびとが、あなたの胸に手をつけ、あなたの若い乳ぶさをおさえた時の、若い時の淫行を慕っている」。
21000 26 23 22 それゆえ、アホリバよ、主なる神はこう言われる、「見よ、わたしは、あなたの心がすでに離れたあなたの恋人らを起して、あなたを攻めさせ、彼らに四方から来てあなたを攻めさせる。
21001 26 23 23 すなわちバビロンの人々およびカルデヤのすべての人々、ペコデ、ショア、コア、アッスリヤのすべての人々、好ましい若者、長官、司令官、官吏、軍人など、すべて馬に乗る者たちである。
21002 26 23 24 彼らは戦車、貨車、および多くの民を率いて、北からあなたに攻めて来る。大盾、小盾、かぶとを備えて、四方からあなたに攻めかかる。わたしが彼らにさばきをゆだねるゆえ、彼らは、そのおきてに従って、あなたをさばく。
21003 26 23 25 わたしはあなたに向かってわたしの憤りを起すゆえ、彼らは怒りをもってあなたを扱い、あなたの鼻と耳とを切り落し、そして残りの者はつるぎに倒れる。彼らはあなたのむすこ娘たちを奪い、生き残った者を火で焼く。
21004 26 23 26 彼らはまたあなたの衣服をはぎ取り、あなたの美しい飾りを取り去る。
21005 26 23 27 こうしてわたしはあなたの淫乱と、エジプトの地から持って来た淫行とを取り除き、重ねてあなたの目を、エジプトびとに向けて上げさせず、彼らの事を思わないようにする。
21006 26 23 28 主なる神はこう言われる、見よ、わたしはあなたの憎む者の手、あなたの心の離れた者の手にあなたを渡す。
21007 26 23 29 彼らは憎しみをもってあなたを扱い、あなたの所得をことごとく取り去り、あなたを赤はだかにし、あなたの淫行の裸を現す。あなたの淫乱と淫行とのゆえに、
21008 26 23 30 すなわち、あなたが異邦人を慕って姦淫を行い、彼らの偶像をもって身を汚したゆえに、これらのことがあなたに臨むのだ。
21009 26 23 31 あなたはその姉の道を歩んだので、わたしも彼女の杯をあなたにわたす。
21010 26 23 32 主なる神はこう言われる、あなたは姉の深い、大きな杯を飲み、笑い物となり、あざけりとなる、この杯にはそれらが多くこもっている。
21011 26 23 33 あなたは酔いと憂いとに満たされる。驚きと滅びの杯、これがあなたの姉サマリヤの杯である。
21012 26 23 34 あなたはこれを飲みこれをかたむけ、あなたの髪の毛をひきむしり、あなたの乳ぶさをかきさく。わたしがこれを言うと、主なる神は言われる。
21013 26 23 35 それゆえ、主なる神はこう言われる、あなたはわたしを忘れ、わたしをあなたのうしろに捨て去ったゆえ、あなたは自分の淫乱と淫行との罪を負わねばならぬ」。
21014 26 23 36 主はわたしに言われた、「人の子よ、あなたはアホラとアホリバをさばくのか。それならば彼らにその憎むべき事を告げよ。
21015 26 23 37 彼らは姦淫を行い、血が彼らの手の上にある。彼らはその偶像と姦淫を行い、またわたしに産んだ子らを、食物のために彼らにささげた。
21016 26 23 38 さらに彼らは、わたしに対してこのようにした。すなわち、彼らは同じ日にわたしの聖所を汚し、わたしの安息日を犯した。
21017 26 23 39 彼らはその子らを、偶像にささげるためにほふった同じ日に、わたしの聖所にきて、これを汚した。見よ、彼らがわたしの家の中でしたことはこれである。
21018 26 23 40 さらに彼らは使者をやって、遠くから来るように人々を招いた。見よ、彼らはきた。あなたは、この人々のために身を洗い、目を描き、飾り物を身につけ、
21019 26 23 41 尊い床に座し、食卓をその前に設け、わたしの香と、わたしの油とを、その上に供えた。
21020 26 23 42 こうして、のんきな群衆の声は彼女と共にあり、また、荒野から連れて来た通りがかりの酔いどれも、彼らと共にいた。彼らは女たちの手に腕輪をはめさせ、頭に美しい冠をいただかせた。
21021 26 23 43 そこでわたしは言った、彼女と姦淫を行う時、人々は姦淫を犯さないであろうか。
21022 26 23 44 人が遊女の所にはいるように、彼らは彼女の所にはいった。こうして彼らは姦淫を行うために、アホラおよびアホリバの所にはいった。
21023 26 23 45 しかし正しい人々は淫婦のさばきと、血を流した女のさばきとをもって、彼らをさばく。それは彼らが淫婦であって、その手に血があるからである」。
21024 26 23 46 主なる神はこう言われる、「わたしは軍隊を彼らに向かって攻め上らせ、彼らを恐れと略奪とに渡す。
21025 26 23 47 軍隊は彼らを石で打ち、つるぎで切り、そのむすこ娘たちを殺し、火でその家を焼く。
21026 26 23 48 こうしてわたしはこの地に淫乱を絶やす。すべての女はみずからいましめて、あなたがたがしたような淫乱を行わない。
21027 26 23 49 あなたがたの淫乱の報いは、あなたがたの上にくだり、あなたがたはその偶像礼拝の罪を負い、そしてわたしが主なる神であることを知るようになる」。
21028 26 24 1 第九年の十月十日に、主の言葉がわたしに臨んだ、
21029 26 24 2 「人の子よ、あなたはこの日すなわち今日の名を書きしるせ。バビロンの王は、この日エルサレムを包囲した。
21030 26 24 3 あなたはこの反逆の家にたとえを語って言え。主なる神はこう言われる、かますをすえ、これをすえて、水をくみ入れよ。
21031 26 24 4 その中に肉の切れを入れよ、すべて良い肉の切れ、すなわち、ももと肩の肉をこれに入れよ。良い骨をこれに満たせ。
21032 26 24 5 羊の最も良いものを取れ。かまの下にまきを積み、その肉を煮たぎらせ、またその中の骨を煮よ。
21033 26 24 6 それゆえ、主なる神はこう言われる、わざわいなるかな、流血の町、さびているかま。そのさびはこれを離れない。肉をひとつびとつ無差別に取り出せ。
21034 26 24 7 その流した血はまだその中にある。彼女はこれを裸岩の上に流し、土でこれをおおうために、地面には注がなかった。
21035 26 24 8 これは、わたしの怒りをつのらせ、あだを返すために、その流した血がおおわれないように、裸岩の上に流したのである。
21036 26 24 9 それゆえ、主なる神はこう言われる、わざわいなるかな、流血の町。わたしもまた、まきをさらに積み重ねる。
21037 26 24 10 まきを積み重ね、火を燃やし、肉をよく煮て、煮つくし、骨を焼け。
21038 26 24 11 そしてかまを熱くするため、それをからにして炭火の上に置き、その銅を焼いて、汚れをその中に溶かし、そのさびを去れ。
21039 26 24 12 しかしわたしのほねおりは、むだであった。その多くのさびは火によって消えない。
21040 26 24 13 そのさびとは、あなたの不潔な淫行である。わたしはあなたを清めようとしたが、あなたはあなたの不潔から清められようとしないから、わたしの怒りをあなたに漏らし尽すまでは、あなたは汚れから清まることはない。
21041 26 24 14 主なるわたしはこれを言った。そしてこれは必ず成る。わたしはこれをなす。わたしはやめない、惜しまない、悔いない。あなたのおこないにより、あなたのわざによって、あなたをさばくと、主なる神は言われる」。
21042 26 24 15 また主の言葉がわたしに臨んだ、
21043 26 24 16 「人の子よ、見よ、わたしは、にわかにあなたの目の喜ぶ者を取り去る。嘆いてはならない。泣いてはならない。涙を流してはならない。
21044 26 24 17 声をたてずに嘆け。死人のために嘆き悲しむな。ずきんをかぶり、足にくつをはけ。口をおおうな。嘆きのパンを食べるな」。
21045 26 24 18 朝のうちに、わたしは人々に語ったが、夕べには、わたしの妻は死んだ。翌朝わたしは命じられたようにした。
21046 26 24 19 人々はわたしに言った、「あなたがするこの事は、われわれになんの関係があるのか、それをわれわれに告げてはくれまいか」。
21047 26 24 20 わたしは彼らに言った、「主の言葉がわたしに臨んだ、
21048 26 24 21 『イスラエルの家に言え、主なる神はこう言われる、見よ、わたしはあなたがたの力の誇、目の喜び、心の望みであるわが聖所を汚す。あなたがたが残すむすこ娘たちは、つるぎに倒れる。
21049 26 24 22 あなたがたもわたしがしたようにし、口をおおわず、嘆きのパンを食べず、
21050 26 24 23 頭にずきんをかぶり、足にくつをはき、嘆かず、泣かず、その罪の中にやせ衰えて、互にうめくようになる。
21051 26 24 24 このようにエゼキエルはあなたがたのためにしるしとなる。彼がしたようにあなたがたもせよ。この事が成る時、あなたがたはわたしが主なる神であることを知るようになる』。
21052 26 24 25 人の子よ、わたしが、彼らのとりで、彼らの喜びと栄え、彼らの目の喜びであり、その心の望みであるもの、また彼らのむすこ娘たちを取り去る日、
21053 26 24 26 その日に難をのがれて来る者が、あなたのもとにきて、あなたに事を告げる。
21054 26 24 27 その日あなたは、そののがれてきた者に向かって口を開き、語り、もはや沈黙しない。こうしてあなたは彼らのためにしるしとなり、彼らはわたしが主であることを知る」。
21055 26 25 1 主の言葉がわたしに臨んだ、
21056 26 25 2 「人の子よ、あなたの顔をアンモンの人々に向け、これに向かって預言し、
21057 26 25 3 アンモンの人々に言え。主なる神の言葉を聞け。主なる神はこう言われる、あなたはわが聖所の汚された時、またイスラエルの地の荒された時、またユダの家が捕え移された時、ああ、それはよい気味であると言った。
21058 26 25 4 それゆえ、わたしはあなたを、東の人々に渡して彼らの所有とする。彼らはあなたのうちに陣営を設け、あなたのうちに住居を造り、あなたのくだものを食べ、あなたの乳を飲む。
21059 26 25 5 わたしはラバを、らくだを飼う所とし、アンモンびとの町々を、羊の伏す所とする。そしてあなたがたは、わたしが主であることを知るようになる。
21060 26 25 6 主なる神はこう言われる、あなたはイスラエルの地に向かって手をうち、足を踏み、心に悪意を満たして喜んだ。
21061 26 25 7 それゆえ、見よ、わたしはわが手をあなたに向けて伸べ、あなたを、もろもろの国民に渡して略奪にあわせ、あなたを、もろもろの民の中から断ち、諸国の中から滅ぼし絶やす。そしてあなたは、わたしが主であることを知るようになる。
21062 26 25 8 主なる神はわたしにこう言われる、モアブは言った、見よ、ユダの家は、他のすべての国民と同様であると。
21063 26 25 9 それゆえ、わたしはモアブの境界の町々、すなわち国の栄えであるベテエシモテ、バアルメオン、キリアタイムの横腹を開き、
21064 26 25 10 これをアンモンの人々と共に、東方の人々に与えて、その所有とし、モアブの人々をもろもろの国民の中に記憶させない。
21065 26 25 11 わたしはモアブの上にさばきを行う。そのとき、彼らはわたしが主であることを知る。
21066 26 25 12 主なる神はこう言われる、エドムは恨みをふくんでユダの家に敵対し、これに恨みを返して、はなはだしく罪を犯した。
21067 26 25 13 それゆえ、主なる神はこう言われる、わたしはエドムの上に手を伸べて、その中から人と獣とを断ち、これを荒れ地とする。テマンからデダンまで人々はつるぎに倒れる。
21068 26 25 14 わたしはわが民イスラエルの手をもって、エドムにわがあだを報いる。彼らがわが怒り、わが憤りに従ってエドムに行う時、エドムの人々は、わたしがあだを返すことを知るようになると、主なる神は言われる。
21069 26 25 15 主なる神はこう言われる、ペリシテびとは恨みをふくんで行動し、心に悪意をもってあだを返し、深い敵意をもって、滅ぼすことをした。
21070 26 25 16 それゆえ、主なる神はこう言われる、見よ、わたしは手をペリシテびとの上に伸べ、ケレテびとを断ち、海べの残りの者を滅ぼす。
21071 26 25 17 わたしは怒りに満ちた懲罰をもって、大いなる復讐を彼らになす。わたしが彼らにあだを返す時、彼らはわたしが主であることを知るようになる」。
21072 26 26 1 第十一年の第一日に主の言葉がわたしに臨んだ、
21073 26 26 2 「人の子よ、ツロはエルサレムについて言った、『ああ、それはよい気味である。もろもろの民の門は破れて、わたしに開かれた。わたしは豊かになり、彼は破れはてた』と。
21074 26 26 3 それゆえ、主なる神はこう言われる、ツロよ、わたしはあなたを攻め、海がその波を起すように、わたしは多くの国民を、あなたに攻めこさせる。
21075 26 26 4 彼らはツロの城壁をこわし、そのやぐらを倒す。わたしはその土を払い去って、裸の岩にする。
21076 26 26 5 ツロは海の中にあって、網をはる場所になる。これはわたしが言ったのであると、主なる神は言われる。ツロは、もろもろの民にかすめられ、
21077 26 26 6 その本土におる娘たちは、つるぎで殺される。そして彼らは、わたしが主であることを知るようになる。
21078 26 26 7 主なる神はこう言われる、見よ、わたしは王の王なるバビロンの王ネブカデレザルに、馬、戦車、騎兵、および多くの軍勢をひきいて、北からツロに攻めこさせる。
21079 26 26 8 彼は本土におるあなたの娘たちを、つるぎで殺し、あなたに向かって雲悌を建て、塁を築き、盾を備え、
21080 26 26 9 城くずしをあなたの城壁に向け、おのであなたのやぐらを打ち砕く。
21081 26 26 10 その多くの馬の土煙は、あなたをおおう。人が破れた町にはいるように、彼があなたの門にはいる時、騎兵と貨車と戦車の響きによって、あなたの石がきはゆるぐ。
21082 26 26 11 彼はその馬のひずめで、あなたのすべてのちまたを踏みあらし、つるぎであなたの民を殺す。あなたの力強い柱は地に倒れる。
21083 26 26 12 彼らはあなたの財宝を奪い、商品をかすめ、城壁をくずし、楽しい家をこわし、石と木と土とを水の中に投げ込む。
21084 26 26 13 わたしはあなたの歌の声をとどめる。琴の音はもはや聞えなくなる。
21085 26 26 14 わたしはあなたを裸の岩にする。あなたは網を張る場所となり、再び建てられることはない。主なるわたしがこれを言ったと、主なる神は言われる。
21086 26 26 15 主なる神はツロにこう言われる、海沿いの国々はあなたの倒れる響き、手負いのうめき、あなたのうちの殺人のゆえに、身震いしないであろうか。
21087 26 26 16 その時、海の君たちは皆その位からおり、朝服を脱ぎ、縫い取りの衣服を取り去り、恐れを身にまとい、地に座して、いたく恐れ、あなたの事を驚き、
21088 26 26 17 あなたのために悲しみの歌をのべて言う、『あなたは海にあって、強い誉ある町、本土に恐れを与えていたあなたも、その住民も、海から消え去った。
21089 26 26 18 島々はあなたの倒れる日に身震いする。海の島々はあなたの去り行くことを見て驚く』。
21090 26 26 19 主なる神はこう言われる、わたしはあなたを、荒れた町となし、住む者のない町のようにし、淵をあなたに向かってわきあがらせ、大水にあなたをおおわせる時、
21091 26 26 20 あなたを穴に下る者どもと共に、昔の民の所に下し、穴に下る者と共に下の国に、昔のままの荒れ跡の中に、あなたを住ませる。それゆえ、あなたは人の住む所とならず、また生ある者の地に所を得ない。
21092 26 26 21 わたしはあなたの終りを、恐るべきものとする。あなたは無に帰する。あなたを尋ねる人があっても、永久に見いださないと、主なる神は言われる」。
21093 26 27 1 主の言葉がわたしに臨んだ、
21094 26 27 2 「人の子よ、ツロのために悲しみの歌をのべ、
21095 26 27 3 海の入口に住んで、多くの海沿いの国々の民の商人であるツロに対して言え、主なる神はこう言われる、ツロよ、あなたは言った、『わたしの美は完全である』と。
21096 26 27 4 あなたの境は海の中にあり、あなたの建設者はあなたの美を完全にした。
21097 26 27 5 人々はセニルのもみの木であなたのために船板を造り、レバノンから香柏をとって、あなたのために帆柱を造り、
21098 26 27 6 バシャンのかしの木で、あなたのためにかいを造り、クプロの島から来る松の木に象牙をはめて、あなたのために甲板を造った。
21099 26 27 7 あなたの帆はエジプトから来るあや布であって、あなたの旗に用いられ、あなたのおおいはエリシャの海岸から来る青と紫の布である。
21100 26 27 8 あなたのこぎ手は、シドンとアルワデの住民、あなたのかじとりは、あなたのうちにいる熟練なゼメルの人々である。
21101 26 27 9 ゲバルの老人たち、およびその熟練な人々は、あなたのうちにいて漏りを繕い、海のすべての船およびその船員らはあなたのうちにいて、あなたの商品を交易する。
21102 26 27 10 ペルシャ人、ルデびと、プテびとはあなたの軍に加わって、あなたの戦士となる。彼らはあなたのうちに、盾とかぶとを掛け、あなたに輝きをそえた。
21103 26 27 11 アルワデとヘレクの人々は、あなたの周囲の城壁の上にあり、ガマデの人々は、あなたのやぐらの中にあり、彼らは、あなたの周囲の城壁にその盾を掛けて、あなたの美観を全うした。
21104 26 27 12 あなたはそのすべての貨物に富むゆえに、タルシシはあなたと交易をなし、銀、鉄、すず、鉛をあなたの商品と交換した。
21105 26 27 13 ヤワン、トバル、およびメセクはあなたと取引し、彼らは人身と青銅の器とを、あなたの商品と交換した。
21106 26 27 14 ベテ・トガルマは馬、軍馬、および騾馬をあなたの商品と交換した。
21107 26 27 15 ローヅ島の人々はあなたと取引し、多くの海沿いの国々は、あなたの市場となり、象牙と黒たんとを、みつぎとしてあなたに持ってきた。
21108 26 27 16 あなたの製品が多いので、エドムはあなたと商売し、彼らは赤玉、紫、縫い取りの布、細布、さんご、めのうをもって、あなたの商品と交換した。
21109 26 27 17 ユダとイスラエルの地は、あなたと取引し、麦、オリブ、いちじく、蜜、油、および乳香をもって、あなたの商品と交換した。
21110 26 27 18 あなたの製品が多く、あなたの富が多いので、ダマスコはあなたと取引し、ヘルボンの酒と、さらした羊毛と、
21111 26 27 19 ウザルの酒をもって、あなたの商品と交換し、銑鉄、肉桂、菖蒲をもって、あなたの商品と交易した。
21112 26 27 20 デダンは乗物の鞍敷をもって、あなたと取引した。
21113 26 27 21 アラビヤびと、およびケダルのすべての君たちは小羊、雄羊、やぎをもって、あなたと取引し、これらの物をあなたと交易した。
21114 26 27 22 シバとラアマの商人は、あなたと取引し、もろもろの尊い香料と、もろもろの宝石と金とをもって、あなたの商品と交換した。
21115 26 27 23 ハラン、カンネ、エデン、アッスリヤ、キルマデはあなたと取引した。
21116 26 27 24 彼らは、はなやかな衣服と、青く縫い取りした布と、ひもで結んで、じょうぶにした敷物などをもって、あなたと取引した。
21117 26 27 25 タルシシの船はあなたの商品を運んでまわった。あなたは海の中にいて満ち足り、いたく栄えた。
21118 26 27 26 あなたのこぎ手らはあなたを大海の中に進め、海の中で東風があなたの船を破った。
21119 26 27 27 あなたの財宝、あなたの貨物、あなたの商品、あなたの船員、あなたのかじ取り、あなたの漏りを繕う者、あなたの商品を商う者、あなたの中にいるすべての軍人、あなたの中にいるすべての仲間は皆、あなたの破滅の日に海の中に沈む。
21120 26 27 28 あなたのかじ取りの叫び声に、近郷は震い、
21121 26 27 29 すべてかいをとる者は船からくだる。船員および海のすべてのかじ取りは海べに立ち、
21122 26 27 30 あなたのために声をあげて泣き、はげしく叫び、ちりをこうべにかぶり、灰の中にまろび、
21123 26 27 31 あなたのために髪をそり、荒布をまとい、あなたのために心を痛めて泣き、はげしく嘆く。
21124 26 27 32 彼らは悲しんで、あなたのために悲しみの歌をのべ、あなたを弔って言う、『だれかツロのように海の中で滅びたものがあるか。
21125 26 27 33 あなたの商品が海を越えてきた時、あなたは多くの民を飽かせ、あなたの多くの財宝と商品とをもって、地の王たちを富ませた。
21126 26 27 34 今あなたは海で破船し、深い水に沈み、あなたの商品と、あなたのすべての船員とは、あなたと共に沈んだ。
21127 26 27 35 海沿いの国々に住む者は皆あなたについて驚き、その王たちは大いに恐れてその顔を震わす。
21128 26 27 36 もろもろの民の中の商人らはあなたをあざける。あなたは恐るべき終りを遂げ、永遠にうせはてる』」。
21129 26 28 1 主の言葉がわたしに臨んだ、
21130 26 28 2 「人の子よ、ツロの君に言え、主なる神はこう言われる、あなたは心に高ぶって言う、『わたしは神である、神々の座にすわって、海の中にいる』と。しかし、あなたは自分を神のように賢いと思っても、人であって、神ではない。
21131 26 28 3 見よ、あなたはダニエルよりも賢く、すべての秘密もあなたには隠れていない。
21132 26 28 4 あなたは知恵と悟りとによって富を得、金銀を倉にたくわえた。
21133 26 28 5 あなたは大いなる貿易の知恵によってあなたの富を増し、その富によってあなたの心は高ぶった。
21134 26 28 6 それゆえ、主なる神はこう言われる、あなたは自分を神のように賢いと思っているゆえ、
21135 26 28 7 見よ、わたしは、もろもろの国民の最も恐れている異邦人をあなたに攻めこさせる。彼らはつるぎを抜いて、あなたが知恵をもって得た麗しいものに向かい、あなたの輝きを汚し、
21136 26 28 8 あなたを穴に投げ入れる。あなたは海の中で殺された者のような死を遂げる。
21137 26 28 9 それでもなおあなたは、『自分は神である』と、あなたを殺す人々の前で言うことができるか。あなたは自分を傷つける者の手にかかっては、人であって、神ではないではないか。
21138 26 28 10 あなたは異邦人の手によって割礼を受けない者の死を遂げる。これはわたしが言うのであると、主なる神は言われる」。
21139 26 28 11 また主の言葉がわたしに臨んだ、
21140 26 28 12 「人の子よ、ツロの王のために悲しみの歌をのべて、これに言え。主なる神はこう言われる、あなたは知恵に満ち、美のきわみである完全な印である。
21141 26 28 13 あなたは神の園エデンにあって、もろもろの宝石が、あなたをおおっていた。すなわち赤めのう、黄玉、青玉、貴かんらん石、緑柱石、縞めのう、サファイヤ、ざくろ石、エメラルド。そしてあなたの象眼も彫刻も金でなされた。これらはあなたの造られた日に、あなたのために備えられた。
21142 26 28 14 わたしはあなたを油そそがれた守護のケルブと一緒に置いた。あなたは神の聖なる山にいて、火の石の間を歩いた。
21143 26 28 15 あなたは造られた日から、あなたの中に悪が見いだされた日まではそのおこないが完全であった。
21144 26 28 16 あなたの商売が盛んになると、あなたの中に暴虐が満ちて、あなたは罪を犯した。それゆえ、わたしはあなたを神の山から汚れたものとして投げ出し、守護のケルブはあなたを火の石の間から追い出した。
21145 26 28 17 あなたは自分の美しさのために心高ぶり、その輝きのために自分の知恵を汚したゆえに、わたしはあなたを地に投げうち、王たちの前に置いて見せ物とした。
21146 26 28 18 あなたは不正な交易をして犯した多くの罪によってあなたの聖所を汚したゆえ、わたしはあなたの中から火を出してあなたを焼き、あなたを見るすべての者の前であなたを地の上の灰とした。
21147 26 28 19 もろもろの民のうちであなたを知る者は皆あなたについて驚く。あなたは恐るべき終りを遂げ、永遠にうせはてる」。
21148 26 28 20 主の言葉がわたしに臨んだ、
21149 26 28 21 「人の子よ、あなたの顔をシドンに向け、これに向かって預言して、
21150 26 28 22 言え。主なる神はこう言われる、シドンよ、見よ、わたしはあなたの敵となる、わたしはあなたのうちで栄えをあらわす。わたしがシドンのうちにさばきをおこない、そのうちにわたしの聖なることをあらわす時、彼らはわたしが主であることを知る。
21151 26 28 23 わたしは疫病をこれに送り、そのちまたに流血を送る。その四方からこれに臨むつるぎによって殺される者がその中に倒れる時、彼らはわたしが主であることを知る。
21152 26 28 24 イスラエルの家には、もはや刺すいばらはなく、これを卑しめたその周囲の人々のうちには、苦しめるとげもなくなる。こうして彼らはわたしが主であることを知るようになる。
21153 26 28 25 主なる神はこう言われる、わたしがイスラエルの家の者を、その散らされたもろもろの民の中から集め、もろもろの国民の目の前で、彼らにわたしの聖なることをあらわす時、彼らはわたしが、わがしもべヤコブに与えた地に住むようになる。
21154 26 28 26 彼らはそこに安らかに住み、家を建て、またぶどう畑を作る。かつて彼らを卑しめたすべての隣り人たちに対して、わたしがさばきを行う時、彼らは安らかに住む。こうして彼らは、わたしが彼らの神、主であることを知る」。
21155 26 29 1 第十年の十月十二日に、主の言葉がわたしに臨んだ、
21156 26 29 2 「人の子よ、あなたの顔をエジプトの王パロに向け、彼とエジプト全国に対して預言し、
21157 26 29 3 語って言え。主なる神はこう言われる、エジプトの王パロよ、見よ、わたしはあなたの敵となる。あなたはその川の中に伏す大いなる龍で、『ナイル川はわたしのもの、わたしがこれを造った』と言う。
21158 26 29 4 わたしは、かぎをあなたのあごにかけ、あなたの川の魚を、あなたのうろこにつかせ、あなたと、あなたのうろこについているもろもろの魚を、あなたの川から引きあげ、
21159 26 29 5 あなたとあなたの川のもろもろの魚を、荒野に投げ捨てる。あなたは野の面に倒れ、あなたを取り集める者も、葬る者もない。わたしはあなたを地の獣と空の鳥のえじきとして与える。
21160 26 29 6 そしてエジプトのすべての住民はわたしが主であることを知る。あなたはイスラエルの家に対して葦のつえであった。
21161 26 29 7 彼らがあなたを手にとる時、あなたは折れ、彼らの肩はことごとく裂ける。彼らがまたあなたに寄りかかる時、あなたは破れ、彼らの腰をことごとく震えさせる。
21162 26 29 8 それゆえ、主なる神はこう言われる、見よ、わたしはつるぎをあなたに持ってきて、人と獣とをあなたのうちから断つ。
21163 26 29 9 エジプトの地は荒れて、むなしくなる。そして彼はわたしが主であることを知る。
21164 26 29 10 見よ、わたしはあなたとあなたの川々の敵となって、エジプトの地をミグドルからスエネまで、エチオピヤの境に至るまで、ことごとく荒し、むなしくする。
21165 26 29 11 人の足はこれを渡らず、獣の足もこれを渡らない。四十年の間、ここに住む者はない。
21166 26 29 12 わたしはエジプトの地を荒して、荒れた国々の中に置き、その町々は荒れて、四十年のあいだ荒れた町々の中にある。わたしはエジプトびとを、もろもろの国民の中に散らし、もろもろの国の中に散らす。
21167 26 29 13 主なる神はこう言われる、四十年の後、わたしはエジプトびとを、その散らされたもろもろの民の中から集める。
21168 26 29 14 すなわちエジプトの運命をもとに返し、彼らをその生れた地であるパテロスの地に帰らせる。その所で彼らは卑しい国となる。
21169 26 29 15 これはもろもろの国よりも卑しくなり、再びもろもろの国民の上に出ることができない。わたしは彼らを小さくするゆえ、再びもろもろの国民を治めることはない。
21170 26 29 16 これはイスラエルが助けを求める時、その罪を思い出して、再びイスラエルの家の頼みとはならない。こうして彼らは、わたしが主なる神であることを知る」。
21171 26 29 17 第二十七年の一月一日に、主の言葉がわたしに臨んだ、
21172 26 29 18 「人の子よ、バビロンの王ネブカデレザルは、その軍勢をツロに対して大いに働かせた。頭は皆はげ、肩はみな破れた。しかし彼もその軍勢も、ツロに対してなしたその働きのために、なんの報いをも得なかった。
21173 26 29 19 それゆえ、主なる神はこう言われる、見よ、わたしはバビロンの王ネブカデレザルに、エジプトの地を与える。彼はその財宝を取り、物をかすめ、物を奪い、それをその軍勢に与えて報いとする。
21174 26 29 20 彼の働いた報酬として、わたしはエジプトの地を彼に与える。彼らはわたしのために、これをしたからであると、主なる神は言われる。
21175 26 29 21 その日、わたしはイスラエルの家に、一つの角を生じさせ、あなたの口を彼らのうちに開かせる。そして彼らはわたしが主であることを知る」。
21176 26 30 1 主の言葉がわたしに臨んだ、
21177 26 30 2 「人の子よ、預言して言え、主なる神はこう言われる、嘆け、その日はわざわいだ。
21178 26 30 3 その日は近い、主の日は近い。これは雲の日、異邦人の滅びの時である。
21179 26 30 4 つるぎがエジプトに臨む。エジプトで殺される者の倒れる時、エチオピヤには苦しみがあり、その財宝は奪い去られ、その基は破られる。
21180 26 30 5 エチオピヤ、プテ、ルデ、アラビヤ、リビヤおよび同盟国の人々は、彼らと共につるぎに倒れる。
21181 26 30 6 主はこう言われる、エジプトを助ける者は倒れ、その誇る力はうせる。ミグドルからスエネまで、人々はつるぎによってそのうちに倒れると主なる神が言われる。
21182 26 30 7 それは荒れて、荒れはてた国々のうちにあり、その町々は荒れた町々のうちにある。
21183 26 30 8 わたしがエジプトに火を送り、これを助ける者が皆滅びる時、彼らはわたしが主であることを知る。
21184 26 30 9 その日、早足の使者がわたしから出て、何事も知らぬエチオピヤびとを恐れさせる。そしてかのエジプトの滅びの日に、彼らに苦しみが来る。見よ、これはかならず来る。
21185 26 30 10 主なる神はこう言われる、わたしはバビロンの王ネブカデレザルの手によってエジプトの富を滅ぼす。
21186 26 30 11 彼と彼に従うその民、すなわち国民のうちの最も恐るべき者がきて、その地を滅ぼす。彼らはつるぎを抜いて、エジプトを攻め、殺した者を国に満たす。
21187 26 30 12 わたしはナイル川をからし、その国を悪しき者の手に売り、異邦人の手によって国とその中のものとを荒す。主なるわたしはこれを言った。
21188 26 30 13 主なる神はこう言われる、わたしは偶像をこわし、メンピスで偶像を滅ぼす。エジプトの国には、もはや君たる者がなくなる。わたしはエジプトの国に恐れを与える。
21189 26 30 14 わたしはパテロスを荒し、ゾアンに火を放ち、テーベにさばきをおこない、
21190 26 30 15 わたしの怒りを、エジプトの要害であるペルシゥムに注ぎ、テーベの群衆を断ち、
21191 26 30 16 エジプトに火を下す。ペルシゥムはいたく苦しみ、テーベは打ち破られ、その城壁は破壊され、
21192 26 30 17 オンとピベセテの若者はつるぎに倒れ、女たちは捕え移される。
21193 26 30 18 わたしがエジプトの支配を砕く時、テパネスでは日は暗くなり、その誇る力は絶え、雲はこれをおおい、その娘たちは捕え移される。
21194 26 30 19 このようにわたしはエジプトにさばきを行う。そのとき彼らはわたしが主であることを知る」。
21195 26 30 20 第十一年の一月七日に主の言葉がわたしに臨んだ、
21196 26 30 21 「人の子よ、わたしはエジプトの王パロの腕を折った。見よ、これは包まれず、いやされず、ほうたいをも施されない。それは強くなって、つるぎを執ることができない。
21197 26 30 22 それゆえ、主なる神はこう言われる、見よ、わたしはエジプトの王パロを攻め、その強い腕と、折れた腕とを共に折り、その手からつるぎを落させる。
21198 26 30 23 わたしはエジプトびとを、もろもろの国民の中に散らし、国々に散らす。
21199 26 30 24 わたしはバビロンの王の腕を強くし、わたしのつるぎを、その手に与える。しかしわたしはパロの腕を折るゆえ、彼は深手を負った者のように、彼の前にうめく。
21200 26 30 25 わたしがバビロンの王の腕を強くし、パロの腕がたれる時、彼らはわたしが主であることを知る。わたしがわたしのつるぎを、バビロンの王に授け、これをエジプトの国に向かって伸べさせ、
21201 26 30 26 わたしがエジプトびとを、もろもろの国民の中に散らし、国々に散らす時、彼らはわたしが主であることを知る」。
21202 26 31 1 第十一年の三月一日に主の言葉がわたしに臨んだ、
21203 26 31 2 「人の子よ、エジプトの王パロと、その民衆とに言え、あなたはその大いなること、だれに似ているか。
21204 26 31 3 見よ、わたしはあなたをレバノンの香柏のようにする。麗しき枝と森の陰があり、たけが高く、その頂は雲の中にある。
21205 26 31 4 水はこれを育て、大水がこれを高くする。その川々はその植えた所をめぐって流れ、その流れを野のすべての木に送る。
21206 26 31 5 これによってそのたけは、野のすべての木よりも高くなり、その育つとき多くの水のために枝葉は茂り、枝は伸び、
21207 26 31 6 その枝葉に空のすべての鳥が、巣をつくり、その枝の下に野のすべての獣は子を生み、その陰にもろもろの国民は住む。
21208 26 31 7 これはその大きなことと、その枝の長いことによって美しかった。その根を多くの水に、おろしていたからである。
21209 26 31 8 神の園の香柏も、これと競うことはできない。もみの木もその枝葉に及ばない。けやきもその枝と比べられない。神の園のすべての木も、その麗しきこと、これに比すべきものはない。
21210 26 31 9 わたしはその枝を多くして、これを美しくした。神の園にあるエデンの木は皆これをうらやんだ。
21211 26 31 10 それゆえ、主なる神はこう言われる、これは、たけが高くなり、その頂を雲の中におき、その心が高ぶりおごるゆえ、
21212 26 31 11 わたしはこれを、もろもろの国民の力ある者の手に渡す。彼はこれに対してその悪のために正しい処置をとる。わたしはこれを追い出した。
21213 26 31 12 もろもろの国民の最も恐れている異邦人はこれを切り倒して捨てる。その枝はもろもろの山と、すべての谷とに落ち、その枝葉は砕けて、地のすべての流れにあり、地のすべての民は、その陰を離れて、これを捨てる。
21214 26 31 13 その倒れた所に、空のもろもろの鳥は住み、その枝の上に、野のもろもろの獣はいる。
21215 26 31 14 これは水のほとりのすべての木が、その高さのために誇ることなく、その頂を雲の中におくことなく、水に潤う木が、みずから高ぶり立つことのないためである。これらは皆、死に渡され、下の国に入り、穴に下る者と共に他の人々のうちにいる。
21216 26 31 15 主なる神はこう言われる、これが陰府に下る日にわたしが淵をこれがために悲しませ、その川々をせきとめるので、大水はとどまる。わたしはレバノンを、これがために嘆かせ、野のすべての木を、これがために衰えさせる。
21217 26 31 16 わたしがこれを穴に下る者と共に陰府に落す時、もろもろの国民をその落ちる響きのために、打ち震えさせる。そしてエデンのすべての木、レバノンのすぐれて美しいもの、すべて水に潤うものは、下の国で慰められる。
21218 26 31 17 彼らもこれと共に陰府に下り、つるぎで殺された者のところに至る。まことにもろもろの国民のうちで、その陰に住んだ者も滅びる。
21219 26 31 18 エデンの木のうちで、その栄えと大いなることで、あなたはどれに似ているのか。あなたはこのように、エデンの木と共に、下の国に落され、つるぎで殺された者と共に、割礼を受けない者のうちに住む。
21220 26 32 1 第十二年の十二月一日に、主の言葉がわたしに臨んだ、
21221 26 32 2 「人の子よ、エジプトの王パロのために、悲しみの歌をのべて、これに言え、あなたは自分をもろもろの国民のうちのししであると考えているが、あなたは海の中の龍のような者である。あなたは川の中に、はね起き、足で水をかきまぜ、川を濁す。
21222 26 32 3 主なる神はこう言われる、わたしは多くの民の集団をもって、わたしの網をあなたに投げかけ、あなたを網で引きあげる。
21223 26 32 4 わたしはあなたを地に投げ捨て、野の面に投げうち、空のすべての鳥をあなたの上にとまらせ、全地の獣にあなたを与えて飽かせる。
21224 26 32 5 わたしはあなたの肉を山々に捨て、あなたの死体で谷を満たす。
21225 26 32 6 わたしはあなたの流れる血で、地を潤し、山々にまで及ぼす。谷川はあなたの死体で満ちる。
21226 26 32 7 わたしはあなたを滅ぼす時、空をおおい、星を暗くし、雲で日をおおい、月に光を放たせない。
21227 26 32 8 わたしは空の輝く光を、ことごとくあなたの上に暗くし、あなたの国をやみとすると主なる神は言う。
21228 26 32 9 わたしはもろもろの国民、あなたの知らない国々の中に、あなたを捕え移す時、多くの民の心を痛ませる。
21229 26 32 10 わたしはあなたについて、多くの民を驚かせる。その王たちは、わたしがわたしのつるぎを、彼らの前に振るう時、あなたの事でおののく。あなたの倒れる日には、彼らはおのおの自分の命を思って、絶えず打ち震える。
21230 26 32 11 主なる神はこう言われる、バビロンの王のつるぎはあなたに臨む。
21231 26 32 12 わたしはあなたの民衆を勇士のつるぎに倒れさせる。彼らは皆、もろもろの国民の中で、最も恐れられている者たちである。彼らはエジプトの誇を断つ、エジプトの民衆は皆滅ぼされる。
21232 26 32 13 わたしはその家畜をことごとく、多くの水のかたわらから滅ぼす。人の足は再びこれを濁さず、家畜のひずめもこれを乱さない。
21233 26 32 14 その時わたしはその水を清くし、その川々を油のように流れさせると、主なる神は言う。
21234 26 32 15 わたしはエジプトの国を荒し、その国に満ちるものが、ことごとく取り去られる時、わたしがその中に住む者をことごとく撃つ時、彼らはわたしが主であることを知る。
21235 26 32 16 これは悲しみの歌である。人々はこれを歌い、もろもろの国の娘たちはこれを歌う。すなわちエジプトと、そのすべての民衆とのために、これを歌うのであると、主なる神は言われる」。
21236 26 32 17 第十二年の一月十五日に、主の言葉がわたしに臨んだ、
21237 26 32 18 「人の子よ、エジプトの民衆のために嘆き、これと大いなる国々の娘らとを、下の国に投げ下し、穴に下った者のところに至らせよ。
21238 26 32 19 『あなたの美はだれにまさっているか。下って、割礼を受けない者と共に伏せよ』。
21239 26 32 20 彼らはつるぎに殺される者のうちに倒れる。その民衆はこれと共に伏せる。
21240 26 32 21 勇士の首領はその助け手と共に、陰府の中から彼らに言う、『割礼を受けない者、つるぎに殺された者は下って伏している』と。
21241 26 32 22 アッスリヤとその仲間とはその所におり、その墓はこれを囲む。彼らはみな殺された者、またつるぎに倒れた者である。
21242 26 32 23 彼らの墓は穴の奥に設けられ、その仲間はその墓の周囲にあり、これはみな殺された者、つるぎに倒れた者、生ける者の地に恐れを起した者である。
21243 26 32 24 その所にエラムがおり、その民衆は皆、その墓の周囲におる。彼らはみな殺された者、つるぎに倒れた者、割礼を受けないで、下の国に下った者、生ける者の地に、恐れを起した者で、穴に下る者と共に、恥を負うのである。
21244 26 32 25 彼らはそのすべての民衆と共に、殺された者の中に床を置き、その墓はこれを囲む。これは皆、割礼を受けない者、つるぎに殺された者、生ける者の地に恐れを起した者で、穴に下る者と共に恥を負う。彼らは殺された者の中に置かれている。
21245 26 32 26 その所にメセクとトバル、およびすべての民衆がおる。その墓はこれを囲む。彼らは皆、割礼を受けない者で、つるぎで殺された者である。生ける者の地に恐れを起したからである。
21246 26 32 27 彼らは昔の倒れた勇士と共に伏さない。これらの勇士は、武具を持って陰府に下り、つるぎをまくらとし、その盾は骨の上にある。これは勇士の恐れが、生ける者の地にあったからである。
21247 26 32 28 あなたは割礼を受けない者のうちに、つるぎで殺された者と共に横たわる。
21248 26 32 29 その所にエドムとその王たちと、そのすべての君たちがおる。彼らはその力を持つにもかかわらず、かのつるぎで殺された者と共に横たえられ、割礼を受けない者および穴に下る者と共に伏している。
21249 26 32 30 その所に北の君たち、およびシドンびとが皆おる。彼らは自分の力によって恐れを起したので、殺された者と共に恥を受けて、下って行った者である。彼らはつるぎで殺された者と共に、割礼を受けずに伏し、穴に下る者と共に恥を負う。
21250 26 32 31 パロは彼らを見る時、そのすべての民衆について慰められる。パロとそのすべての軍勢とは、つるぎで殺されると、主なる神は言われる。
21251 26 32 32 彼は生ける者の国に恐れを広げた。それゆえ、パロとすべての民衆とは、割礼を受けない者のうちにあって、つるぎで殺された者と共に伏すと、主なる神は言われる」。
21252 26 33 1 主の言葉がわたしに臨んだ、
21253 26 33 2 「人の子よ、あなたの民の人々に語って言え、わたしがつるぎを一つの国に臨ませる時、その国の民が彼らのうちからひとりを選んで、これを自分たちの見守る者とする。
21254 26 33 3 彼は国につるぎが臨むのを見て、ラッパを吹き、民を戒める。
21255 26 33 4 しかし人がラッパの音を聞いても、みずから警戒せず、ついにつるぎが来て、その人を殺したなら、その血は彼のこうべに帰する。
21256 26 33 5 彼はラッパの音を聞いて、みずから警戒しなかったのであるから、その血は彼自身に帰する。しかしその人が、みずから警戒したなら、その命は救われる。
21257 26 33 6 しかし見守る者が、つるぎの臨むのを見ても、ラッパを吹かず、そのため民が、みずから警戒しないでいるうちに、つるぎが臨み、彼らの中のひとりを失うならば、その人は、自分の罪のために殺されるが、わたしはその血の責任を、見守る者の手に求める。
21258 26 33 7 それゆえ、人の子よ、わたしはあなたを立てて、イスラエルの家を見守る者とする。あなたはわたしの口から言葉を聞き、わたしに代って彼らを戒めよ。
21259 26 33 8 わたしが悪人に向かって、悪人よ、あなたは必ず死ぬと言う時、あなたが悪人を戒めて、その道から離れさせるように語らなかったら、悪人は自分の罪によって死ぬ。しかしわたしはその血を、あなたの手に求める。
21260 26 33 9 しかしあなたが悪人に、その道を離れるように戒めても、その悪人がその道を離れないなら、彼は自分の罪によって死ぬ。しかしあなたの命は救われる。
21261 26 33 10 それゆえ、人の子よ、イスラエルの家に言え、あなたがたはこう言った、『われわれのとがと、罪はわれわれの上にある。われわれはその中にあって衰えはてる。どうして生きることができようか』と。
21262 26 33 11 あなたは彼らに言え、主なる神は言われる、わたしは生きている。わたしは悪人の死を喜ばない。むしろ悪人が、その道を離れて生きるのを喜ぶ。あなたがたは心を翻せ、心を翻してその悪しき道を離れよ。イスラエルの家よ、あなたはどうして死んでよかろうか。
21263 26 33 12 人の子よ、あなたの民の人々に言え、義人の義は、彼が罪を犯す時には、彼を救わない。悪人の悪は、彼がその悪を離れる時、その悪のために倒れることはない。義人は彼が罪を犯す時、その義のために生きることはできない。
21264 26 33 13 わたしが義人に、彼は必ず生きると言っても、もし彼が自分の義をたのんで、罪を犯すなら、彼のすべての義は覚えられない。彼はみずから犯した罪のために死ぬ。
21265 26 33 14 また、わたしが悪人に『あなたは必ず死ぬ』と言っても、もし彼がその罪を離れ、公道と正義とを行うならば、
21266 26 33 15 すなわちその悪人が質物を返し、奪った物をもどし、命の定めに歩み、悪を行わないならば、彼は必ず生きる。決して死なない。
21267 26 33 16 彼の犯したすべての罪は彼に対して覚えられない。彼は公道と正義とを行ったのであるから、必ず生きる。
21268 26 33 17 あなたの民の人々は『主の道は公平でない』と言う。しかし彼らの道こそ公平でないのである。
21269 26 33 18 義人がその義を離れて、罪を犯すならば、彼はこれがために死ぬ。
21270 26 33 19 悪人がその悪を離れて、公道と正義とを行うならば、彼はこれによって生きる。
21271 26 33 20 それであるのに、あなたがたは『主の道は公平でない』と言う。イスラエルの家よ、わたしは各自のおこないにしたがって、あなたがたをさばく」。
21272 26 33 21 わたしたちが捕え移された後、すなわち第十二年の十月五日に、エルサレムからのがれて来た者が、わたしのもとに来て言った、「町は打ち破られた」と。
21273 26 33 22 その者が来た前の夜、主の手がわたしに臨んだ。次の朝、その人がわたしのもとに来たころ、主はわたしの口を開かれた。わたしの口が開けたので、もはやわたしは沈黙しなかった。
21274 26 33 23 主の言葉がわたしに臨んだ、
21275 26 33 24 「人の子よ、イスラエルの地の、かの荒れ跡の住民らは、語り続けて言う、『アブラハムはただひとりで、なおこの地を所有した。しかしわたしたちの数は多い。この地はわれわれの所有として与えられている』と。
21276 26 33 25 それゆえ、あなたは彼らに言え、主なる神はこう言われる、あなたがたは肉を血のついたままで食べ、おのが偶像を仰ぎ、血を流していて、なおこの地を所有することができるか。
21277 26 33 26 あなたがたはつるぎをたのみ、憎むべき事をおこない、おのおの隣り人の妻を汚して、なおこの地を所有することができるか。
21278 26 33 27 あなたは彼らに言いなさい。主なる神はこう言われる、わたしは生きている。かの荒れ跡にいる者は必ずつるぎに倒れる。わたしは野の面にいる者を、獣に与えて食わせ、要害とほら穴とにいる者は疫病で死ぬ。
21279 26 33 28 わたしはこの国を全く荒す。彼の誇る力はうせ、イスラエルの山々は荒れて通る者もなくなる。
21280 26 33 29 彼らがおこなったすべての憎むべきことのために、わたしがこの国を全く荒す時、彼らはわたしが主であることを悟る。
21281 26 33 30 人の子よ、あなたの民の人々は、かきのかたわら、家の入口で、あなたの事を論じ、たがいに語りあって言う、『さあ、われわれは、どんな言葉が主から出るかを聞こう』と。
21282 26 33 31 彼らは民が来るようにあなたの所に来、わたしの民のようにあなたの前に座して、あなたの言葉を聞く。しかし彼らはそれを行わない。彼等は口先では多くの愛を現すが、その心は利におもむいている。
21283 26 33 32 見よ、あなたは彼らには、美しい声で愛の歌をうたう者のように、また楽器をよく奏する者のように思われる。彼らはあなたの言葉は聞くが、それを行おうとはしない。
21284 26 33 33 この事が起る時――これは必ず起る――そのとき彼らの中にひとりの預言者がいたことを彼らは悟る」。
21285 26 34 1 主の言葉がわたしに臨んだ、
21286 26 34 2 「人の子よ、イスラエルの牧者たちに向かって預言せよ。預言して彼ら牧者に言え、主なる神はこう言われる、わざわいなるかな、自分自身を養うイスラエルの牧者。牧者は群れを養うべき者ではないか。
21287 26 34 3 ところが、あなたがたは脂肪を食べ、毛織物をまとい、肥えたものをほふるが、群れを養わない。
21288 26 34 4 あなたがたは弱った者を強くせず、病んでいる者をいやさず、傷ついた者をつつまず、迷い出た者を引き返らせず、うせた者を尋ねず、彼らを手荒く、きびしく治めている。
21289 26 34 5 彼らは牧者がないために散り、野のもろもろの獣のえじきになる。
21290 26 34 6 わが羊は散らされている。彼らはもろもろの山と、もろもろの高き丘にさまよい、わが羊は地の全面に散らされているが、これを捜す者もなく、尋ねる者もない。
21291 26 34 7 それゆえ、牧者よ、主の言葉を聞け。
21292 26 34 8 主なる神は言われる、わたしは生きている。わが羊はかすめられ、わが羊は野のもろもろの獣のえじきとなっているが、その牧者はいない。わが牧者はわが羊を尋ねない。牧者は自身を養うが、わが羊を養わない。
21293 26 34 9 それゆえ牧者らよ、主の言葉を聞け。
21294 26 34 10 主なる神はこう言われる、見よ、わたしは牧者らの敵となり、わたしの羊を彼らの手に求め、彼らにわたしの群れを養うことをやめさせ、再び牧者自身を養わせない。またわが羊を彼らの口から救って、彼らの食物にさせない。
21295 26 34 11 主なる神はこう言われる、見よ、わたしは、わたしみずからわが羊を尋ねて、これを捜し出す。
21296 26 34 12 牧者がその羊の散り去った時、その羊の群れを捜し出すように、わたしはわが羊を捜し出し、雲と暗やみの日に散った、すべての所からこれを救う。
21297 26 34 13 わたしは彼らをもろもろの民の中から導き出し、もろもろの国から集めて、彼らの国に携え入れ、イスラエルの山の上、泉のほとり、また国のうちの人の住むすべての所でこれを養う。
21298 26 34 14 わたしは良き牧場で彼らを養う。その牧場はイスラエルの高い山にあり、その所で彼らは良い羊のおりに伏し、イスラエルの山々の上で肥えた牧場で草を食う。
21299 26 34 15 わたしはみずからわが羊を飼い、これを伏させると主なる神は言われる。
21300 26 34 16 わたしは、うせたものを尋ね、迷い出たものを引き返し、傷ついたものを包み、弱ったものを強くし、肥えたものと強いものとは、これを監督する。わたしは公平をもって彼らを養う。
21301 26 34 17 主なる神はこう言われる、あなたがた、わが群れよ、見よ、わたしは羊と羊との間、雄羊と雄やぎとの間をさばく。
21302 26 34 18 あなたがたは良き牧場で草を食い、その草の残りを足で踏み、また澄んだ水を飲み、その残りを足で濁すが、これは、あまりのことではないか。
21303 26 34 19 わが羊はあなたがたが、足で踏んだものを食い、あなたがたの足で濁したものを、飲まなければならないのか。
21304 26 34 20 それゆえ、主なる神はこう彼らに言われる、見よ、わたしは肥えた羊と、やせた羊との間をさばく。
21305 26 34 21 あなたがたは、わきと肩とをもって押し、角をもって、すべて弱い者を突き、ついに彼らを外に追い散らした。
21306 26 34 22 それゆえ、わたしはわが群れを助けて、再びかすめさせず、羊と羊との間をさばく。
21307 26 34 23 わたしは彼らの上にひとりの牧者を立てる。すなわちわがしもべダビデである。彼は彼らを養う。彼は彼らを養い、彼らの牧者となる。
21308 26 34 24 主なるわたしは彼らの神となり、わがしもべダビデは彼らのうちにあって君となる。主なるわたしはこれを言う。
21309 26 34 25 わたしは彼らと平和の契約を結び、国の内から野獣を追い払う。彼らは心を安んじて荒野に住み、森の中に眠る。
21310 26 34 26 わたしは彼らおよびわが山の周囲の所々を祝福し、季節にしたがって雨を降らす。これは祝福の雨となる。
21311 26 34 27 野の木は実を結び、地は産物を出す。彼らは心を安んじてその国におり、わたしが彼らのくびきの棒を砕き、彼らを奴隷とした者の手から救い出す時、彼らはわたしが主であることを悟る。
21312 26 34 28 彼らは重ねて、もろもろの国民にかすめられることなく、地の獣も彼らを食うことはない。彼らは心を安んじて住み、彼らを恐れさせる者はない。
21313 26 34 29 わたしは彼らのために、良い栽培所を与える。彼らは重ねて、国のききんに滅びることなく重ねて諸国民のはずかしめを受けることはない。
21314 26 34 30 彼らはその神、主なるわたしが彼らと共におり、彼らイスラエルの家が、わが民であることを悟ると、主なる神は言われる。
21315 26 34 31 あなたがたはわが羊、わが牧場の羊である。わたしはあなたがたの神であると、主なる神は言われる」。
21316 26 35 1 主の言葉がわたしに臨んだ、
21317 26 35 2 「人の子よ、あなたの顔をセイル山に向け、これに対して預言し、
21318 26 35 3 これに言え。主なる神はこう言われる、セイル山よ、見よ、わたしはあなたを敵とし、わたしの手をあなたに向かって伸べ、あなたを全く荒し、
21319 26 35 4 あなたの町々を滅ぼす。あなたは荒れはてる。そしてわたしが主であることを悟る。
21320 26 35 5 あなたは限りない敵意をいだいて、イスラエルの人々をその災の時、終りの刑罰の時に、つるぎの手に渡した。
21321 26 35 6 それゆえ、主なる神は言われる、わたしは生きている。わたしはあなたを血にわたす。血はあなたを追いかける。あなたには血のとががあるゆえ、血はあなたを追いかける
21322 26 35 7 わたしはセイル山を全く荒し、そこに行き来する者を断ち、
21323 26 35 8 その山々を殺された者で満たす。つるぎで殺された者が、あなたのもろもろの丘、もろもろの谷、もろもろのくぼ地に倒れる。
21324 26 35 9 わたしはあなたを、永遠の荒れ地とし、あなたの町々には住む者がなくなる。そしてあなたがたは、わたしが主であることを悟る。
21325 26 35 10 あなたは言う、『これら二つの国民、二つの国はわたしのもの、われわれはこれを獲よう』と。しかし主はそこにおられる。
21326 26 35 11 それゆえ、主なる神は言われる、わたしは生きている。あなたが彼らを憎んで、彼らに示した怒りと、ねたみにしたがって、わたしはあなたを扱う。わたしがあなたをさばく時、わたし自身をあなたに示す。
21327 26 35 12 あなたがイスラエルの山々に向かって、『これは荒れはてて、われわれの食となる』と言ったもろもろのそしりを、主なるわたしが聞いたことをあなたは悟る。
21328 26 35 13 あなたがたは、わたしに対して口をもって誇り、またわたしに対して、あなたがたの言葉を多くした。わたしはそれを聞いた。
21329 26 35 14 主なる神はこう言われる、全地の喜びのために、わたしはあなたを荒れ地とする。
21330 26 35 15 あなたが、イスラエルの家の嗣業の荒れるのを喜んだように、わたしはあなたに、そのようにする。セイル山よ、あなたは荒れ地となる。エドムもすべてそのようになる。そのとき彼らは、わたしが主であることを悟るようになる。
21331 26 36 1 人の子よ、イスラエルの山々に預言して言え。イスラエルの山々よ、主の言葉を聞け。
21332 26 36 2 主なる神はこう言われる、敵はあなたがたについて言う、『ああ、昔の高き所が、われわれのものとなった』と。
21333 26 36 3 それゆえ、あなたは預言して言え。主なる神はこう言われる、彼らはあなたがたを荒し、四方からあなたがたを打ち滅ぼしたので、あなたがたは他の国民の所有となり、また民の悪いうわさとなった。
21334 26 36 4 それゆえ、イスラエルの山々よ、主なる神の言葉を聞け。主なる神は、山と、丘と、くぼ地と、谷と、滅びた荒れ跡と、人の捨てた町々、すなわちその周囲にある諸国民の残った者にかすめられ、あざけられるようになったものに、こう言われる。
21335 26 36 5 主なる神はこう言われる、わたしはねたみの炎をもって、他の国民とエドム全国とに対して言う、彼らは心ゆくまで喜び、心に誇ってわが地を自分の所有とし、これを奪い、かすめた者である。
21336 26 36 6 それゆえ、あなたはイスラエルの地の事を預言し、山と、丘と、くぼ地と、谷とに言え。主なる神はこう言われる、見よ、あなたがたは諸国民のはずかしめを受けたので、わたしはねたみと怒りとをもって語る。
21337 26 36 7 それゆえ、主なる神はこう言われる、わたしは誓って言う、あなたがたの周囲の諸国民は必ずはずかしめを受ける。
21338 26 36 8 しかしイスラエルの山々よ、あなたがたは枝を出し、わが民イスラエルのために実を結ぶ。この事の成るのは近い。
21339 26 36 9 見よ、わたしはあなたがたに臨み、あなたがたを顧みる。あなたがたは耕され、種をまかれる。
21340 26 36 10 わたしはあなたがたの上に人をふやす。これはことごとくイスラエルの家の者となり、町々には人が住み、荒れ跡は建て直される。
21341 26 36 11 わたしはあなたがたの上に人と獣とをふやす。彼らはふえて、子を生む。わたしはあなたがたの上に、昔のように人を住ませ、初めの時よりも、まさる恵みをあなたがたに施す。その時あなたがたは、わたしが主であることを悟る。
21342 26 36 12 わたしはわが民イスラエルの人々をあなたがたの上に歩ませる。彼らはあなたがたを所有し、あなたがたはその嗣業となり、あなたがたは重ねて彼らに子のない嘆きをさせない。
21343 26 36 13 主なる神はこう言われる、彼らはあなたがたに向かって、『あなたは人を食い、あなたの民に子のない嘆きをさせる』と言う。
21344 26 36 14 あなたはもはや人を食わない。あなたの民に重ねて子のない嘆きをさせることはないと、主なる神は言われる。
21345 26 36 15 わたしは重ねて諸国民のはずかしめをあなたに聞かせない。あなたは重ねて、もろもろの民のはずかしめを受けることはなく、あなたの民を重ねてつまずかせることはないと、主なる神は言われる」。
21346 26 36 16 主の言葉がわたしに臨んだ、
21347 26 36 17 「人の子よ、昔、イスラエルの家が、自分の国に住んだとき、彼らはおのれのおこないとわざとをもって、これを汚した。そのおこないは、わたしの前には、汚れにある女の汚れのようであった。
21348 26 36 18 彼らが国に血を流し、またその偶像をもって、国を汚したため、わたしはわが怒りを彼らの上に注ぎ、
21349 26 36 19 彼らを諸国民の中に散らしたので、彼らは国々の中に散った。わたしは彼らのおこないと、わざとにしたがって、彼らをさばいた。
21350 26 36 20 彼らがその行くところの国々へ行ったとき、わが聖なる名を汚した。これは人々が彼らについて『これは主の民であるが、その国から出た者である』と言ったからである。
21351 26 36 21 しかしわたしはイスラエルの家が、その行くところの諸国民の中で汚したわが聖なる名を惜しんだ。
21352 26 36 22 それゆえ、あなたはイスラエルの家に言え。主なる神はこう言われる、イスラエルの家よ、わたしがすることはあなたがたのためではない。それはあなたがたが行った諸国民の中で汚した、わが聖なる名のためである。
21353 26 36 23 わたしは諸国民の中で汚されたもの、すなわち、あなたがたが彼らの中で汚した、わが大いなる名の聖なることを示す。わたしがあなたがたによって、彼らの目の前に、わたしの聖なることを示す時、諸国民はわたしが主であることを悟ると、主なる神は言われる。
21354 26 36 24 わたしはあなたがたを諸国民の中から導き出し、万国から集めて、あなたがたの国に行かせる。
21355 26 36 25 わたしは清い水をあなたがたに注いで、すべての汚れから清め、またあなたがたを、すべての偶像から清める。
21356 26 36 26 わたしは新しい心をあなたがたに与え、新しい霊をあなたがたの内に授け、あなたがたの肉から、石の心を除いて、肉の心を与える。
21357 26 36 27 わたしはまたわが霊をあなたがたのうちに置いて、わが定めに歩ませ、わがおきてを守ってこれを行わせる。
21358 26 36 28 あなたがたは、わたしがあなたがたの先祖に与えた地に住んで、わが民となり、わたしはあなたがたの神となる。
21359 26 36 29 わたしはあなたがたをそのすべての汚れから救い、穀物を呼びよせてこれを増し、ききんをあなたがたに臨ませない。
21360 26 36 30 またわたしは木の実と、田畑の作物とを多くする。あなたがたは重ねて諸国民の間に、ききんのはずかしめを受けることがない。
21361 26 36 31 その時あなたがたは自身の悪しきおこないと、良からぬわざとを覚えて、その罪と、その憎むべきこととのために、みずから恨む。
21362 26 36 32 わたしがなすことはあなたがたのためではないと、主なる神は言われる。あなたがたはこれを知れ。イスラエルの家よ、あなたがたは自分のおこないを恥じて悔やむべきである。
21363 26 36 33 主なる神はこう言われる、わたしは、あなたがたのすべての罪を清める日に、町々に人を住ませ、その荒れ跡を建て直す。
21364 26 36 34 荒れた地は、行き来の人々の目に荒れ地と見えたのに引きかえて耕される。
21365 26 36 35 そこで人々は言う、『この荒れた地は、エデンの園のようになった。荒れ、滅び、くずれた町々は、堅固になり、人の住む所となった』と。
21366 26 36 36 あなたがたの周囲に残った諸国民は主なるわたしがくずれた所を建て直し、荒れた所にものを植えたということを悟るようになる。主なるわたしがこれを言い、これをなすのである。
21367 26 36 37 主なる神はこう言われる、イスラエルの家は、わたしが次のことを彼らのためにするように、わたしに求めるべきである。すなわち人を群れのようにふやすこと、
21368 26 36 38 すなわち犠牲のための群れのように、エルサレムの祝い日の群れのようにすることである。こうして荒れた町々は人の群れで満ちる。その時人々は、わたしが主であることを悟るようになる」。
21369 26 37 1 主の手がわたしに臨み、主はわたしを主の霊に満たして出て行かせ、谷の中にわたしを置かれた。そこには骨が満ちていた。
21370 26 37 2 彼はわたしに谷の周囲を行きめぐらせた。見よ、谷の面には、はなはだ多くの骨があり、皆いたく枯れていた。
21371 26 37 3 彼はわたしに言われた、「人の子よ、これらの骨は、生き返ることができるのか」。わたしは答えた、「主なる神よ、あなたはご存じです」。
21372 26 37 4 彼はまたわたしに言われた、「これらの骨に預言して、言え。枯れた骨よ、主の言葉を聞け。
21373 26 37 5 主なる神はこれらの骨にこう言われる、見よ、わたしはあなたがたのうちに息を入れて、あなたがたを生かす。
21374 26 37 6 わたしはあなたがたの上に筋を与え、肉を生じさせ、皮でおおい、あなたがたのうちに息を与えて生かす。そこであなたがたはわたしが主であることを悟る」。
21375 26 37 7 わたしは命じられたように預言したが、わたしが預言した時、声があった。見よ、動く音があり、骨と骨が集まって相つらなった。
21376 26 37 8 わたしが見ていると、その上に筋ができ、肉が生じ、皮がこれをおおったが、息はその中になかった。
21377 26 37 9 時に彼はわたしに言われた、「人の子よ、息に預言せよ、息に預言して言え。主なる神はこう言われる、息よ、四方から吹いて来て、この殺された者たちの上に吹き、彼らを生かせ」。
21378 26 37 10 そこでわたしが命じられたように預言すると、息はこれにはいった。すると彼らは生き、その足で立ち、はなはだ大いなる群衆となった。
21379 26 37 11 そこで彼はわたしに言われた、「人の子よ、これらの骨はイスラエルの全家である。見よ、彼らは言う、『われわれの骨は枯れ、われわれの望みは尽き、われわれは絶え果てる』と。
21380 26 37 12 それゆえ彼らに預言して言え。主なる神はこう言われる、わが民よ、見よ、わたしはあなたがたの墓を開き、あなたがたを墓からとりあげて、イスラエルの地にはいらせる。
21381 26 37 13 わが民よ、わたしがあなたがたの墓を開き、あなたがたをその墓からとりあげる時、あなたがたは、わたしが主であることを悟る。
21382 26 37 14 わたしがわが霊を、あなたがたのうちに置いて、あなたがたを生かし、あなたがたをその地に安住させる時、あなたがたは、主なるわたしがこれを言い、これをおこなったことを悟ると、主は言われる」。
21383 26 37 15 主の言葉がわたしに臨んだ、
21384 26 37 16 「人の子よ、あなたは一本の木を取り、その上に『ユダおよびその友であるイスラエルの子孫のために』と書き、また一本の木を取って、その上に『ヨセフおよびその友であるイスラエルの全家のために』と書け。これはエフライムの木である。
21385 26 37 17 あなたはこれらを合わせて、一つの木となせ。これらはあなたの手で一つになる。
21386 26 37 18 あなたの民の人々があなたに向かって、『これはなんのことであるか、われわれに示してくれないか』と言う時は、
21387 26 37 19 これに言え、主なる神はこう言われる、見よ、わたしはエフライムの手にあるヨセフと、その友であるイスラエルの部族の木を取り、これをユダの木に合わせて、一つの木となす。これらはわたしの手で一つとなる。
21388 26 37 20 あなたが文字を書いた木が、彼らの目の前で、あなたの手にあるとき、
21389 26 37 21 あなたは彼らに言え。主なる神は、こう言われる、見よ、わたしはイスラエルの人々を、その行った国々から取り出し、四方から彼らを集めて、その地にみちびき、
21390 26 37 22 その地で彼らを一つの民となしてイスラエルの山々におらせ、ひとりの王が彼ら全体の王となり、彼らは重ねて二つの国民とならず、再び二つの国に分れない。
21391 26 37 23 彼らはまた、その偶像と、その憎むべきことどもと、もろもろのとがとをもって、身を汚すことはない。わたしは彼らを、その犯したすべての背信から救い出して、これを清める。そして彼らはわが民となり、わたしは彼らの神となる。
21392 26 37 24 わがしもべダビデは彼らの王となる。彼らすべての者のために、ひとりの牧者が立つ。彼らはわがおきてに歩み、わが定めを守って行う。
21393 26 37 25 彼らはわがしもべヤコブに、わたしが与えた地に住む。これはあなたがたの先祖の住んだ所である。そこに彼らと、その子らと、その子孫とが永遠に住み、わがしもべダビデが、永遠に彼らの君となる。
21394 26 37 26 わたしは彼らと平和の契約を結ぶ。これは彼らの永遠の契約となる。わたしは彼らを祝福し、彼らをふやし、わが聖所を永遠に彼らの中に置く。
21395 26 37 27 わがすみかは彼らと共にあり、わたしは彼らの神となり、彼らはわが民となる。
21396 26 37 28 そしてわが聖所が永遠に、彼らのうちにあるようになるとき、諸国民は主なるわたしが、イスラエルを聖別する者であることを悟る」。
21397 26 38 1 主の言葉がわたしに臨んだ、
21398 26 38 2 「人の子よ、メセクとトバルの大君であるマゴグの地のゴグに、あなたの顔を向け、これに対して預言して、
21399 26 38 3 言え。主なる神はこう言われる、メセクとトバルの大君であるゴグよ、見よ、わたしはあなたの敵となる。
21400 26 38 4 わたしはあなたを引きもどし、あなたのあごにかぎをかけて、あなたと、あなたのすべての軍勢と、馬と、騎兵とを引き出す。彼らはみな武具をつけ、大盾、小盾を持ち、すべてつるぎをとる者で大軍である。
21401 26 38 5 ペルシャ、エチオピヤ、プテは彼らと共におり、みな盾とかぶとを持つ。
21402 26 38 6 ゴメルとそのすべての軍隊、北の果のベテ・トガルマと、そのすべての軍隊など、多くの民もあなたと共におる。
21403 26 38 7 あなたは備えをなせ。あなたとあなたの所に集まった軍隊は、みな備えをなせ。そしてあなたは彼らの保護者となれ。
21404 26 38 8 多くの日の後、あなたは集められ、終りの年にあなたは戦いから回復された地、すなわち多くの民の中から、人々が集められた地に向かい、久しく荒れすたれたイスラエルの山々に向かって進む。その人々は国々から導き出されて、みな安らかに住んでいる。
21405 26 38 9 あなたはそのすべての軍隊および多くの民を率いて上り、暴風のように進み、雲のように地をおおう。
21406 26 38 10 主なる神はこう言われる、その日に、あなたの心に思いが起り、悪い計りごとを企てて、
21407 26 38 11 言う、『わたしは無防備の村々の地に上り、穏やかにして安らかに住む民、すべて石がきもなく、貫の木も門もない地に住む者どもを攻めよう』と。
21408 26 38 12 そしてあなたは物を奪い、物をかすめ、いま人の住むようになっている荒れ跡を攻め、また国々から集まってきて、地の中央に住み、家畜と貨財とを持つ民を攻めようとする。
21409 26 38 13 シバ、デダン、タルシシの商人、およびそのもろもろの村々はあなたに言う、『あなたは物を奪うために来たのか。物をかすめるために軍隊を集めたのか。あなたは金銀を持ち去り、家畜と貨財とを取りあげ、大いに物を奪おうとするのか』と。
21410 26 38 14 それゆえ、人の子よ、ゴグに預言して言え。主なる神はこう言われる、わが民イスラエルの安らかに住むその日に、あなたは立ちあがり、
21411 26 38 15 北の果のあなたの所から来る。多くの民はあなたと共におり、みな馬に乗り、その軍隊は大きく、その兵士は強い。
21412 26 38 16 あなたはわが民イスラエルに攻めのぼり、雲のように地をおおう。ゴグよ、終りの日にわたしはあなたを、わが国に攻めきたらせ、あなたをとおして、わたしの聖なることを諸国民の目の前にあらわして、彼らにわたしを知らせる。
21413 26 38 17 主なる神はこう言われる、わたしが昔、わがしもべイスラエルの預言者たちによって語ったのは、あなたのことではないか。すなわち彼らは、そのころ年久しく預言して、わたしはあなたを送って、彼らを攻めさせると言ったではないか。
21414 26 38 18 しかし主なる神は言われる、その日、すなわちゴグがイスラエルの地に攻め入る日に、わが怒りは現れる。
21415 26 38 19 わたしは、わがねたみと、燃えたつ怒りとをもって言う。その日には必ずイスラエルの地に、大いなる震動があり、
21416 26 38 20 海の魚、空の鳥、野の獣、すべての地に這うもの、地のおもてにあるすべての人は、わが前に打ち震える。また山々はくずれ、がけは落ち、すべての石がきは地に倒れる。
21417 26 38 21 主なる神は言われる、わたしはゴグに対し、すべての恐れを呼びよせる。すべての人のつるぎは、その兄弟に向けられる。
21418 26 38 22 わたしは疫病と流血とをもって彼をさばく。わたしはみなぎる雨と、ひょうと、火と、硫黄とを、彼とその軍隊および彼と共におる多くの民の上に降らせる。
21419 26 38 23 そしてわたしはわたしの大いなることと、わたしの聖なることとを、多くの国民の目に示す。そして彼らはわたしが主であることを悟る。
21420 26 39 1 人の子よ、ゴグに向かって預言して言え。主なる神はこう言われる、メセクとトバルの大君であるゴグよ、見よ、わたしはあなたの敵となる。
21421 26 39 2 わたしはあなたを引きもどし、あなたを押しやり、北の果から上らせ、イスラエルの山々に導き、
21422 26 39 3 あなたの左の手から弓を打ち落し、右の手から矢を落させる。
21423 26 39 4 あなたとあなたのすべての軍隊およびあなたと共にいる民たちは、イスラエルの山々に倒れる。わたしはあなたを、諸種の猛禽と野獣とに与えて食わせる。
21424 26 39 5 あなたは野の面に倒れる。わたしがこれを言ったからであると、主なる神は言われる。
21425 26 39 6 わたしはゴグと、海沿いの国々に安らかに住む者に対して火を送り、彼らにわたしが主であることを悟らせる。
21426 26 39 7 わたしはわが聖なる名を、わが民イスラエルのうちに知らせ、重ねてわが聖なる名を汚させない。諸国民はわたしが主、イスラエルの聖者であることを悟る。
21427 26 39 8 主なる神は言われる、見よ、これは来る、必ず成就する。これはわたしが言った日である。
21428 26 39 9 イスラエルの町々に住む者は出て来て、武器すなわち大盾、小盾、弓、矢、手やり、およびやりなどを燃やし、焼き、七年の間これを火に燃やす。
21429 26 39 10 彼らは野から木を取らず、森から木を切らず、武器で火を燃やし、自分をかすめた者をかすめ、自分の物を奪った者を奪うと、主なる神は言われる。
21430 26 39 11 その日、わたしはイスラエルのうちに、墓地をゴグに与える。これは旅びとの谷にあって海の東にある。これは旅びとを妨げる。そこにゴグとその民衆を埋めるからである。これをハモン・ゴグの谷と名づける。
21431 26 39 12 イスラエルの家はこれを埋めて、地を清めるために七か月を費す。
21432 26 39 13 国のすべての民はこれを埋め、これによって名を高める。これはわが栄えを現す日であると、主なる神は言われる。
21433 26 39 14 彼らは人々を選んで、絶えず国の中を行きめぐらせ、地のおもてに残っている者を埋めて、これを清めさせる。七か月の終りに彼らは尋ねる。
21434 26 39 15 国を行きめぐる者が行きめぐって、人の骨を見る時、死人を埋める者が、これをハモン・ゴグの谷に埋めるまで、そのかたわらに、標を建てて置く。
21435 26 39 16 (ハモナの町もそこにある。)こうして彼らはその国を清める。
21436 26 39 17 主なる神はこう言われる、人の子よ、諸種の鳥と野の獣とに言え、みな集まってこい。わたしがおまえたちのために供えた犠牲、すなわちイスラエルの山々の上にある、大いなる犠牲に、四方から集まり、その肉を食い、その血を飲め。
21437 26 39 18 おまえたちは勇士の肉を食い、地の君たちの血を飲め。雄羊、小羊、雄やぎ、雄牛などすべてバシャンの肥えた獣を食え。
21438 26 39 19 わたしがおまえたちのために供えた犠牲は、飽きるまでその脂肪を食べ、酔うまで血を飲め。
21439 26 39 20 おまえたちはわが食卓について馬と、騎手と、勇士と、もろもろの戦士とを飽きるほど食べると、主なる神は言われる。
21440 26 39 21 わたしはわが栄光を諸国民に示す。すべての国民はわたしが行ったさばきと、わたしが彼らの上に加えた手とを見る。
21441 26 39 22 この日から後、イスラエルの家はわたしが彼らの神、主であることを悟るようになる。
21442 26 39 23 また諸国民はイスラエルの家が、その悪によって捕え移されたことを悟る。彼らがわたしにそむいたので、わたしはわが顔を彼らに隠し、彼らをその敵の手に渡した。それで彼らは皆つるぎに倒れた。
21443 26 39 24 わたしは彼らの汚れと、とがとに従って、彼らを扱い、わたしの顔を彼らに隠した。
21444 26 39 25 それゆえ、主なる神はこう言われる、いまわたしはヤコブの幸福をもとに返し、イスラエルの全家をあわれみ、わが聖なる名のために、ねたみを起す。
21445 26 39 26 彼らは、その国に安らかに住み、だれもこれを恐れさせる者がないようになった時、自分の恥と、わたしに向かってなした反逆とを忘れる。
21446 26 39 27 わたしが彼らを諸国民の中から帰らせ、その敵の国から呼び集め、彼らによって、わたしの聖なることを、多くの国民の前に示す時、
21447 26 39 28 彼らは、わたしが彼らの神、主であることを悟る。これはわたしが彼らを諸国民のうちに移し、またこれをその国に呼び集めたからである。わたしはそのひとりをも、国々のうちに残すことをしない。
21448 26 39 29 わたしは、わが霊をイスラエルの家に注ぐ時、重ねてわが顔を彼らに隠さないと、主なる神は言われる」。
21449 26 40 1 われわれが捕え移されてから二十五年、都が打ち破られて後十四年、その年の初めの月の十日、その日に主の手がわたしに臨み、わたしをかの所に携えて行った。
21450 26 40 2 すなわち神は幻のうちに、わたしをイスラエルの地に携えて行って、非常に高い山の上におろされた。その山の上に、わたしと相対して、一つの町のような建物があった。
21451 26 40 3 神がわたしをそこに携えて行かれると、見よ、ひとりの人がいた。その姿は青銅の形のようで、手に麻のなわと、測りざおとを持って門に立っていた。
21452 26 40 4 その人はわたしに言った、「人の子よ、目で見、耳で聞き、わたしがあなたに示す、すべての事を心にとめよ。あなたをここに携えて来たのは、これをあなたに示すためである。あなたの見ることを、ことごとくイスラエルの家に告げよ」。
21453 26 40 5 見よ、宮の外の周囲に、かきがあり、その人の手に六キュビトの測りざおがあった。そのキュビトは、おのおの一キュビトと一手幅とである。彼が、そのかきの厚さを測ると、一さおあり、高さも一さおあった。
21454 26 40 6 彼が東向きの門に行き、その階段を上って、門の敷居を測ると、その厚さは一さおあり、
21455 26 40 7 その詰め所は長さ一さお、幅一さお、詰め所と、詰め所との間は五キュビトあり、内の門の廊のかたわらの門の敷居は一さおあった。
21456 26 40 8 門の廊を測ると八キュビトあり、
21457 26 40 9 その脇柱は二キュビト、門の廊は内側にあった。
21458 26 40 10 東向きの門の詰め所は、こなたに三つ、かなたに三つあり、三つとも同じ寸法である。脇柱もまた、こなたかなたともに同じ寸法である。
21459 26 40 11 門の入口の広さを測ると十キュビトあり、門の長さは十三キュビトあった。
21460 26 40 12 詰め所の前の境は一キュビト、かなたの境も一キュビトで、詰め所は、こなたかなたともに六キュビトあった。
21461 26 40 13 彼がまたこの詰め所の裏から、かの詰め所の裏まで、門を測ると、入口から入口まで二十五キュビトあった。
21462 26 40 14 彼がまた廊を測ると二十キュビトあり、門の廊の周囲は、すべて庭である。
21463 26 40 15 入口の門の前から内の門の廊の前まで五十キュビトあり、
21464 26 40 16 詰め所と、門の内側の周囲の脇柱とに窓があり、廊の内側の周囲にも、同様に窓があり、脇柱には、しゅろがあった。
21465 26 40 17 彼がまたわたしを外庭に携え入れると、見よ、庭の周囲に設けた室と、敷石とがあり、敷石の上に三十の室があった。
21466 26 40 18 敷石は門のわきにあり、門と同じ長さで、これは下の敷石である。
21467 26 40 19 彼が下の門の内の前から、内庭の外の前までの距離を測ると、百キュビトあった。
21468 26 40 20 また彼はわたしに先だって北へ行った。見よ、そこに外庭に属する北向きの門があった。彼はその長さと幅とを測った。
21469 26 40 21 その詰め所が、こなたに三つ、かなたに三つあり、また脇柱と廊とがあった。これらは初めの門と同じ寸法で、長さは五十キュビト、幅は二十五キュビトである。
21470 26 40 22 その窓と、廊と、しゅろとは、東向きの門にあるものと同じ寸法である。そして七段の階段を経て、それに上ると、廊は内側にあった。
21471 26 40 23 内庭の門は北と東の門に向かっていた。彼が門から門までを測ると、百キュビトあった。
21472 26 40 24 彼がまたわたしを南へ行かせると、見よ、南向きの門があった。その脇柱と廊を測ると、他と同じ寸法であった。
21473 26 40 25 これと、その廊の周囲とに、他の窓のような窓があって、その長さは五十キュビト、幅は二十五キュビトあった。
21474 26 40 26 これを上るのに七段の階段があり、その廊は内側にあった。その脇柱の上には、こなたに一つ、かなたに一つのしゅろがあった。
21475 26 40 27 内庭には南向きの門があり、門から門まで南の方へ測ると、百キュビトあった。
21476 26 40 28 彼がわたしを南の門から内庭にはいらせ、南の門を測ると、さきのものと、同じ寸法であった。
21477 26 40 29 その詰め所と、脇柱と、廊とは、他のものと同じ寸法で、その門と、廊の周囲とには窓があり、門の長さは五十キュビト、幅は二十五キュビトであった。
21478 26 40 30 周囲に廊があって、その長さは二十五キュビト、幅は五キュビトである。
21479 26 40 31 その廊は外庭に面して、脇柱の上にしゅろがあり、その階段は八段であった。
21480 26 40 32 彼はまたわたしを内庭の東の方に携えて行って、門を測った。それは他と同じ寸法であった。
21481 26 40 33 その詰め所と、脇柱と、廊とは、他と同じ寸法で、その門と、その廊の周囲とに窓があり、門の長さは五十キュビト、幅は二十五キュビトである。
21482 26 40 34 その廊は外庭に面し、その脇柱の上には、こなたかなたに、しゅろがあり、その階段は八段であった。
21483 26 40 35 彼がまたわたしを北の門に携えて行って、これを測ると、それは他と同じ寸法であった。
21484 26 40 36 その詰め所と、脇柱と、廊とは、他と同じ寸法で、その周囲に窓があり、門の長さは五十キュビト、幅は二十五キュビトである。
21485 26 40 37 その廊は外庭に面し、その脇柱の上には、こなたかなたに、しゅろがあり、その階段は八段であった。
21486 26 40 38 門の廊に戸のある室があって、そこは燔祭の物を洗う所である。
21487 26 40 39 門の廊に、こなたに二つの台、かなたに二つの台があり、その上で、燔祭、罪祭、愆祭の物をほふるのであった。
21488 26 40 40 北の門の入口にある廊の外の片側に、二つの台があり、門の廊の他の側にも、二つの台があり、
21489 26 40 41 門のかたわら、内側に四つの台、外側に四つの台があって、合わせて八つの台である。その上で、犠牲の物をほふるのである。
21490 26 40 42 そこにまた燔祭のために四つの切り石の台があり、その長さは一キュビト半、幅は一キュビト半、高さは一キュビト、その上に燔祭および犠牲をほふる器を置くのである。
21491 26 40 43 内の周囲に、一手幅の折り釘が打ちつけてあって、供え物の肉は、台の上に置かれるのである。
21492 26 40 44 彼はまたわたしを、外から内庭に連れてはいった。見よ、内庭に二つの室があり、一つは北の門のかたわらにあって南に向かい、一つは南の門のかたわらにあって、北に向かっていた。
21493 26 40 45 彼はわたしに言った、この南向きの室は、宮を守る祭司のためのもの、
21494 26 40 46 また北向きの室は、祭壇を守る祭司のためのものである。その人たちは、レビの子孫のうちのザドクの子孫であって、主に近く仕える者たちである。
21495 26 40 47 そして彼が庭を測ると、その長さは百キュビト、幅も百キュビトで四角である。宮の前には祭壇があった。
21496 26 40 48 彼がわたしを宮の廊に連れて行って、廊の脇柱を測ると、こなたも五キュビト、かなたも五キュビトであり、門の幅は十四キュビトである。門の壁は、こなたも三キュビト、かなたも三キュビトである。
21497 26 40 49 廊の長さは二十キュビト、幅は十二キュビトであり、十の階段によって上るのである。脇柱に沿って、こなたに一つ、かなたに一つの柱があった。
21498 26 41 1 彼がわたしを拝殿に連れて行って、脇柱を測ると、こなたの幅も六キュビト、かなたの幅も六キュビトあった。
21499 26 41 2 その戸の幅は十キュビト、戸のわきの壁は、こなたも五キュビト、かなたも五キュビトあった。彼はまた拝殿の長さを測ると四十キュビト、その幅は二十キュビトあった。
21500 26 41 3 彼がまた内にはいって、戸の脇柱を測ると、それは二キュビトあり、戸の幅は六キュビト、戸のわきの壁は七キュビトあった。
21501 26 41 4 彼はまた拝殿の奥の室の長さを測ると二十キュビト、幅も二十キュビトあった。そして彼はわたしに、これは至聖所であると言った。
21502 26 41 5 彼が宮の壁を測ると、その厚さは六キュビトあり、宮の周囲の脇間の広さは、四方おのおの四キュビトあり、
21503 26 41 6 脇間は、室の上に室があって三階になり、各階に三十の室がある。宮の周囲の壁には、脇間をささえる突起があった。これは脇間が、宮の壁そのものによってささえられないためである。
21504 26 41 7 脇間は、宮の周囲の各階にある突起につれて、階を重ねて上にいくにしたがって広くなり、宮の外部の階段が上に通じ、一階から三階へは、二階をとおって上るのである。
21505 26 41 8 わたしはまた宮の周囲に高い所のあるのを見た。脇間の基を測ると、六キュビトの一さおあった。
21506 26 41 9 脇間の外の壁の厚さは五キュビト、あき地になっている高い所は五キュビトあった。宮の高い所と、
21507 26 41 10 庭の室の間には、宮の周囲に、広さ二十キュビトの所があった。
21508 26 41 11 脇間の戸は、あき地になっている高い所に向かって開け、一つの戸は北に向かい、一つの戸は南に向かっていた。そのあき地になっている所の幅は、周囲五キュビトであった。
21509 26 41 12 西の方の宮の庭に面した建物は、幅七十キュビト、その建物の周囲の壁の厚さは五キュビト、長さは九十キュビトであった。
21510 26 41 13 彼が宮を測ると、その長さは百キュビトあり、その庭と建物と、その壁は長さ百キュビト、
21511 26 41 14 また宮の東に面した所と庭との幅は百キュビトであった。
21512 26 41 15 彼が西の方の庭に面した建物と、その壁の長さを測ると、かなた、こなたともに百キュビトであった。宮の拝殿と、内部の室と、外の廊とには、羽目板があった。
21513 26 41 16 これらの三つのものの周囲には、すべて引込み枠の窓があり、宮の敷居に面して、宮の周囲は、床から窓まで、羽目板であって、窓には、おおいがあった。
21514 26 41 17 戸の上の空所、内室、外室ともに、羽目板であった。内室および拝殿の周囲のすべての壁には、同じように彫刻してあった。
21515 26 41 18 すなわちケルビムと、しゅろとが彫刻してあった。ケルブとケルブとの間に、しゅろがあり、おのおののケルブには、二つの顔があり、
21516 26 41 19 こなたには、しゅろに向かって、人の顔があり、かなたには、しゅろに向かって、若じしの顔があり、宮の周囲は、すべてこのように彫刻してあった。
21517 26 41 20 床から戸の上まで、ケルビムと、しゅろとが、壁に彫刻してあった。
21518 26 41 21 拝殿の柱は四角であった。聖所の前には、木の祭壇に似たものがあった。
21519 26 41 22 その高さは三キュビト、長さは二キュビト、幅は二キュビトで、すみと、台と、壁とは、ともに木である。彼はわたしに言った、「これは主の前にある机である」
21520 26 41 23 拝殿と聖所とには、二つの戸があり、
21521 26 41 24 その戸には、二つのとびらがあった。すなわち二つの開き戸である。
21522 26 41 25 拝殿の戸には、おのおのにケルビムと、しゅろとが、彫刻してあって、それは壁に彫刻したものと同じである。また外の廊に面して、木の天蓋があり、
21523 26 41 26 廊の壁には、こなたかなたに引込み窓と、しゅろとがあった。
21524 26 42 1 彼はわたしを北の方の内庭に連れ出し、庭に向かった北の方の建物に対する室に導いた。
21525 26 42 2 北側にある建物の長さは百キュビト、幅は五十キュビトである。
21526 26 42 3 二十キュビトの内庭に続いて、外庭の敷石に面し、三階になった廊下があった。
21527 26 42 4 また室の前に幅十キュビト、長さ百キュビトの通路があった。その戸は北に向かっていた。
21528 26 42 5 その建物の上の室は、下の室と中の室よりも狭かった。それは廊下のために、場所を取ったためである。
21529 26 42 6 これらは三階であって、外庭の柱のような柱は持たなかった。それで上の室は、下および中の室よりも狭いのである。
21530 26 42 7 室の外に沿ってかきがあり、それは他の室に向かって外庭に至る。その長さは五十キュビト、
21531 26 42 8 外庭の室の長さも五十キュビトあった。宮に面する所は百キュビトであった。
21532 26 42 9 これらの室の下に外庭からこれにはいるように、東側に入口があった。
21533 26 42 10 外側のかきは、外庭に始まっている。
21534 26 42 11 北向きの室と同様に、その前に通路があり、その長さも幅も同様で、その出口もその配置もその戸も同様である。
21535 26 42 12 南の室の下に、人々が通路にはいる東の入口があり、これに対して隔てのかきがあった。
21536 26 42 13 時に彼はわたしに言った、「庭に面した北の室と、南の室とは、聖なる室であって、主に近く仕える祭司たちが、最も聖なるものを食べる場所である。その場所に彼らは、最も聖なるもの、すなわち素祭、罪祭、愆祭のものを置かなければならない。その場所は聖だからである。
21537 26 42 14 祭司たちが、聖所にはいった時は、そこから外庭に出てはならない。彼らは勤めを行う衣服を、その所に置かなければならない。これは聖だからである。彼らは民衆に属する場所に近づく前に、他の衣服を着けなければならない」。
21538 26 42 15 彼らは宮の庭の内部を測り終えると、東向きの門の道から、わたしを連れ出して、宮の周囲を測った。
21539 26 42 16 彼が測りざおで、東側を測ると、測りざおで五百キュビトあり、
21540 26 42 17 また転じて、北側を測ると、測りざおで五百キュビトあり、
21541 26 42 18 また転じて、南側を測ると、測りざおで五百キュビトあり、
21542 26 42 19 また転じて、西側を測ると、測りざおで五百キュビトあった。
21543 26 42 20 このように、四方を測ったが、その周囲に、長さ五百キュビト、幅五百キュビトのかきがあって、聖所と、俗の所との隔てをなしていた。
21544 26 43 1 その後、彼はわたしを門に導いた。門は東に面していた。
21545 26 43 2 その時、見よ、イスラエルの神の栄光が、東の方から来たが、その来る響きは、大水の響きのようで、地はその栄光で輝いた。
21546 26 43 3 わたしが見た幻の様は、彼がこの町を滅ぼしに来た時に、わたしが見た幻と同様で、これはまたわたしがケバル川のほとりで見た幻のようであった。それでわたしは顔を伏せた。
21547 26 43 4 主の栄光が、東の方に面した門の道から宮にはいった時、
21548 26 43 5 霊がわたしを引き上げて、内庭に導き入れると、見よ、主の栄光が宮に満ちた。
21549 26 43 6 その人がわたしのかたわらに立った時、わたしはひとりの人が、宮の中からわたしに語るのを聞いた。
21550 26 43 7 彼はわたしに言った、「人の子よ、これはわたしの位のある所、わたしの足の裏の踏む所、わたしが永久にイスラエルの人々の中に住む所である。またイスラエルの家は、民もその王たちも、再び姦淫と、王たちの死体とをもって、わが聖なる名を汚さない。
21551 26 43 8 彼らはその敷居を、わが敷居のかたわらに設け、その門柱を、わが門柱のかたわらに設けたので、わたしと彼らとの間には、わずかに壁があるのみである。そして彼らは、その犯した憎むべき事をもって、わが聖なる名を汚したので、わたしは怒りをもって、これを滅ぼした。
21552 26 43 9 今彼らに命じて姦淫と、その王たちの死体を、わたしから遠く取り除かせよ。そうしたら、わたしは永久に彼らの中に住む。
21553 26 43 10 人の子よ、宮と、その外形と、設計とをイスラエルの家に示せ。彼らはその悪を恥じるであろう。
21554 26 43 11 彼らがその犯したすべての事を恥じたら、彼らに、この宮の建て方、設備、出口、入口、すべての形式、すべてのおきて、すべての規定を示せ。これを彼らの目の前に書き、彼らにそのすべての規定と、おきてとを守り行わせよ。
21555 26 43 12 宮の規定はこれである。山の頂の四方の地域はみな最も聖である。見よ、これは宮の規定である。
21556 26 43 13 祭壇の寸法はキュビトですれば、次のようである。(そのキュビトは一キュビトと一手幅である。)土台は高さ一キュビト、幅一キュビト、その周囲の縁は半キュビトである。
21557 26 43 14 祭壇の高さは、次のとおりである。地面の土台から下のかさねまで二キュビト、幅は一キュビト、また小さいかさねから大きいかさねまで四キュビト、その幅は一キュビトである。
21558 26 43 15 祭壇の炉は四キュビトで、祭壇の炉から高さ一キュビトの角が四本出ていた。
21559 26 43 16 炉は長さ十二キュビト、幅十二キュビトの四角形である。
21560 26 43 17 そのかさねは四方とも長さ十四キュビト、幅十四キュビトの四角形、その周囲の縁は幅半キュビト、その台は四方一キュビト、その階段は東に面する」。
21561 26 43 18 彼はわたしに言った、「人の子よ、主なる神はこう言われる、祭壇を建て、その上に燔祭をささげ、これに血を注ぐ日には、次のことを祭壇の定めとせよ。
21562 26 43 19 すなわち主なる神は言われる、ザドクの子孫で、わたしに近く仕えるレビびとである祭司には、罪祭のために雄牛の子を与えよ。
21563 26 43 20 またその血をとって、これを祭壇の四つの角と、かさねの四すみと、周囲の縁に塗って、祭壇を清め、これをあがなえ。
21564 26 43 21 あなたはまた罪祭の牛をとって、これを聖所の外、宮のうちの定められた所で焼け。
21565 26 43 22 第二日に、あなたは無傷の雄やぎを、罪祭としてささげよ。すなわち雄牛で清めたように、これで祭壇を清めよ。
21566 26 43 23 清めごとを終えたなら、無傷の雄牛の子と、群れの中の無傷の雄羊とをささげよ。
21567 26 43 24 これを主の前に持ってきて、祭司らはその上に塩をまき、これらを燔祭として主にささげよ。
21568 26 43 25 七日の間、あなたは日々雄やぎを罪祭とせよ。また雄牛の子と、群れの中の雄羊との無傷のものをととのえ、
21569 26 43 26 七日の間、彼らは祭壇をあがない、これを清め、これを聖別しなければならない。
21570 26 43 27 彼らがこれらの日を満たしたとき、八日目から後は、祭司たちは、あなたがたの燔祭と、酬恩祭とを祭壇の上に供える。そうすれば、わたしは、あなたがたを受けいれると、主なる神は言われる」。
21571 26 44 1 こうして、彼はわたしを連れて、聖所の東に向いている外の門に帰ると、門は閉じてあった。
21572 26 44 2 彼はわたしに言った、「この門は閉じたままにしておけ、開いてはならない。ここからだれもはいってはならない。イスラエルの神、主が、ここからはいったのだから、これは閉じたままにしておけ。
21573 26 44 3 ただ君たる者だけが、この内に座し、主の前でパンを食し、門の廊を通ってはいり、またそこから外に出よ」。
21574 26 44 4 彼はまたわたしを連れて、北の門の道から宮の前に行った。わたしが見ていると、見よ、主の栄光が主の宮に満ちた。わたしがひれ伏すと、
21575 26 44 5 主はわたしに言われた、「人の子よ、主の宮のすべてのおきてと、そのすべての規定とについて、わたしがあなたに告げるすべての事に心をとめ、目を注ぎ、耳を傾けよ。また宮にはいることを許されている者と、聖所にはいることのできない者とに心せよ。
21576 26 44 6 また反逆の家であるイスラエルの家に言え。主なる神は、こう言われる、イスラエルの家よ、その憎むべきことをやめよ。
21577 26 44 7 すなわちあなたがたは、わたしの食物である脂肪と血とがささげられる時、心にも肉にも、割礼を受けない異邦人を入れて、わが聖所におらせ、これを汚した。また、もろもろの憎むべきものをもって、わが契約を破った。
21578 26 44 8 あなたがたは、わが聖なる物を守る務を怠り、かえって異邦人を立てて、わが聖所の務を守らせた。
21579 26 44 9 それゆえ、主なる神は、こう言われる、イスラエルの人々のうちにいるすべての異邦人のうち、心と肉とに割礼を受けないすべての者は、わが聖所にはいってはならない。
21580 26 44 10 またレビ人であって、イスラエルが迷った時、偶像を慕い、わたしから迷い出て、遠く離れた者は、その罪を負わなければならない。
21581 26 44 11 すなわち彼らはわが聖所で、仕え人となり、宮の門を守る者となり、宮に仕えるしもべとなり、民のために、燔祭および犠牲のものを殺し、彼らの前に立って仕えなければならない。
21582 26 44 12 彼らはその偶像の前で民に仕え、イスラエルの家にとって、罪のつまずきとなったゆえ、主なる神は言われる、わたしは彼らについて誓った。彼らはその罪を負わなければならない。
21583 26 44 13 彼らはわたしに近づき、祭司として、わたしに仕えることはできない。またわたしの聖なる物、および最も聖なる物に、近づいてはならない。彼らはそのおこなった憎むべきことのため、恥を負わなければならない。
21584 26 44 14 しかし彼らには、宮を守る務をさせ、そのもろもろの務と、宮でなすべきすべての事とに当らせる。
21585 26 44 15 しかしザドクの子孫であるレビの祭司たち、すなわちイスラエルの人々が、わたしを捨てて迷った時に、わが聖所の務を守った者どもは、わたしに仕えるために近づき、脂肪と血とをわたしにささげるために、わたしの前に立てと、主なる神は言われる。
21586 26 44 16 すなわち彼らはわが聖所に入り、わが台に近づいてわたしに仕え、わたしの務を守る。
21587 26 44 17 彼らが内庭の門にはいる時は、麻の衣服を着なければならない。内庭の門および宮の内で、務をなす時は、毛織物を身につけてはならない。
21588 26 44 18 また頭には亜麻布の冠をつけ、腰には亜麻布の袴をつけなければならない。ただし汗の出るような衣を身につけてはならない。
21589 26 44 19 彼らは外庭に出る時、すなわち外庭に出て民に接する時は、務をなす時の衣服は脱いで聖なる室に置き、ほかの衣服を着なければならない。これはその衣服をもって、その聖なることを民にうつさないためである。
21590 26 44 20 彼らはまた頭をそってはならない。また髪を長くのばしてはならない。その頭の髪は切らなければならない。
21591 26 44 21 祭司はすべて内庭にはいる時は、酒を飲んではならない。
21592 26 44 22 また寡婦、および出された女をめとってはならない。ただイスラエルの家の血統の処女、あるいは祭司の妻で、やもめになったものをめとらなければならない。
21593 26 44 23 彼らはわが民に、聖と俗との区別を教え、汚れたものと、清いものとの区別を示さなければならない。
21594 26 44 24 争いのある時は、さばきのために立ち、わがおきてにしたがってさばき、また、わたしのもろもろの祭の時は、彼らはわが律法と定めを守り、わが安息日を、聖別しなければならない。
21595 26 44 25 死人に近づいて、身を汚してはならない。ただ父のため、母のため、むすこのため、娘のため、兄弟のため、夫をもたない姉妹のためには、近よって身を汚すことも許される。
21596 26 44 26 このような人は、汚れた後、自身のために、七日の期間を数えよ。そうすれば清まる。
21597 26 44 27 彼は聖所に入り、内庭に行き、聖所で務に当る日には、罪祭をささげなければならないと、主なる神は言われる。
21598 26 44 28 彼らには嗣業はない。わたしがその嗣業である。あなたがたはイスラエルの中で、彼らに所有を与えてはならない。わたしが彼らの所有である。
21599 26 44 29 彼らは素祭、罪祭、愆祭の物を食べる。すべてイスラエルのうちのささげられた物は彼らの物となる。
21600 26 44 30 すべての物の初なりの初物、およびすべてあなたがたのささげるもろもろのささげ物は、みな祭司のものとなる。またあなたがたの麦粉の初物は祭司に与えよ。これはあなたがたの家が、祝福されるためである。
21601 26 44 31 祭司は、鳥でも獣でも、すべて自然に死んだもの、または裂き殺されたものを食べてはならない。
21602 26 45 1 あなたがたは、くじを引き、地を分けて、それを所有するときには、地の一部を聖なる地所として主にささげよ。その長さは二万五千キュビト、幅は二万キュビトで、その区域はすべて聖なる地である。
21603 26 45 2 そのうち聖所に属するものは縦横五百キュビトずつであって、それは四角である。また五十キュビトの空地をその周囲につくれ。
21604 26 45 3 あなたはこの聖なる地所から長さ二万五千キュビト、幅一万キュビトを測り取り、その中に聖所と至聖所とを設けよ。
21605 26 45 4 これは国の中で聖なる所であって、主に近く仕える聖所の仕え人である祭司に帰属する。これは彼らのためには家を建てる所、聖所のためには聖地となる。
21606 26 45 5 また長さ二万五千キュビト、幅一万キュビトの別の地所は、宮に仕えるレビびとに帰属し、彼らの住む町のための所有とする。
21607 26 45 6 聖地として区別した部分に沿い、幅五千キュビト、長さ二万五千キュビトは、町の所有とせよ。これはイスラエル全家のものとなる。
21608 26 45 7 また君たる者の分は、かの聖地と町の所有地との、こなたかなたにある。すなわち聖地と町の所有地に沿い、西と東に向かい、部族の分の一つに応じて、地所の西から東の境に至り、
21609 26 45 8 その所有の地所はイスラエルの中にある。わたしの君たちは、重ねてわたしの民をしえたげず、部族にしたがってイスラエルの家に土地を与える。
21610 26 45 9 主なる神は、こう言われる、イスラエルの君たちよ、暴虐と略奪とをやめ、公道と正義を行え。わが民を追いたてることをやめよと、主なる神は言われる。
21611 26 45 10 あなたがたは正しいはかり、正しいエパ、正しいバテを用いよ。
21612 26 45 11 エパとバテとは同量にせよ。すなわちバテをホメルの十分の一とし、エパもホメルの十分の一とし、すべてホメルによって量を定めよ。
21613 26 45 12 一シケルは二十ゲラである。五シケルは五シケル、十シケルは十シケルとせよ。一ミナは五十シケルとせよ。
21614 26 45 13 あなたがたがささげるささげ物はこれである。すなわち、一ホメルの小麦のうちから六分の一エパをささげ、大麦一ホメルのうちから六分の一エパをささげよ。
21615 26 45 14 油は一コルのうちから十分の一バテをささげよ。コルはホメルと同じく十バテに当る。
21616 26 45 15 またイスラエルの氏族から、家畜の群れ二百につき一頭の羊を出して、素祭、燔祭、酬恩祭とし、彼らのために、あがないをなせと主なる神は言われる。
21617 26 45 16 国の民は皆これをイスラエルの君にささげ物とせよ。
21618 26 45 17 また祭日、ついたち、安息日、すなわちイスラエルの家のすべての祝い日に、燔祭、素祭、灌祭を供えるのは、君たる者の務である。すなわち彼はイスラエルの家のあがないのために、罪祭、素祭、燔祭、酬恩祭をささげなければならない。
21619 26 45 18 主なる神は、こう言われる、正月の元日に、あなたは無傷の雄牛の子を取って聖所を清めよ。
21620 26 45 19 祭司は罪祭の獣の血を取って、宮の柱と祭壇のかさねの四すみ、および内庭の門の柱に塗れ。
21621 26 45 20 月の七日に、あなたがたは、過失や無知のために罪を犯した者のために、このように行って宮のためにあがないをなせ。
21622 26 45 21 正月の十四日に、あなたがたは過越の祭を祝え。七日の間、種を入れぬパンを食べよ。
21623 26 45 22 その日に君たる者は、自身のため、また国のすべての民のため、雄牛をささげて罪祭とし、
21624 26 45 23 祝い日である七日の間は、七頭の雄牛と、七頭の雄羊の無傷のものを、七日の間毎日、燔祭として主に供えよ。また、雄やぎを罪祭として日々ささげよ。
21625 26 45 24 また素祭として麦粉一エパを各雄牛のため、一エパを各雄羊のためにととのえ、油一ヒンを各エパに加えよ。
21626 26 45 25 七月十五日の祝い日に、彼は七日の間、罪祭、燔祭、素祭および油を、このように供えなければならない。
21627 26 46 1 主なる神は、こう言われる、内庭にある東向きの門は、働きをする六日の間は閉じ、安息日にはこれを開き、またついたちにはこれを開け。
21628 26 46 2 君たる者は、外から門の廊をとおってはいり、門の柱のかたわらに立て。そのとき祭司たちは、燔祭と酬恩祭とをささげ、彼は門の敷居で、礼拝して出て行くのである。しかし門は夕暮まで閉じてはならない。
21629 26 46 3 国の民は安息日と、ついたちとに、その門の入口で主の前に礼拝をせよ。
21630 26 46 4 君たる者が、安息日に主にささげる燔祭は、六頭の無傷の小羊と、一頭の無傷の雄羊とである。
21631 26 46 5 また素祭は雄羊のために麦粉一エパ、小羊のための素祭は、その人のささげうる程度とし、麦粉一エパに油一ヒンを加えよ。
21632 26 46 6 ついたちには無傷の雄牛の子一頭、六頭の小羊および一頭の雄羊をささげよ。これらはすべて無傷のものでなければならない。
21633 26 46 7 素祭は雄牛のために麦粉一エパ、雄羊のために麦粉一エパ、小羊のためには、その人のささげうる程度のものを供えよ。また麦粉一エパに油一ヒンを加えよ。
21634 26 46 8 君たる者がはいる時は門の廊の道からはいり、またその道から出よ。
21635 26 46 9 国の民が、祝い日に主の前に出る時、礼拝のため、北の門の道からはいる者は、南の門の道から出て行き、南の門の道からはいる者は、北の門の道から出て行け。そのはいった門の道からは、帰ってはならない。まっすぐに進んで、出て行かなければならない。
21636 26 46 10 彼らがはいる時、君たる者は、彼らと共にはいり、彼らが出る時、彼も出なければならない。
21637 26 46 11 祭日と祝い日には、素祭として、若い雄牛のために麦粉一エパ、雄羊のために麦粉一エパ、小羊のためには、その人のささげうる程度のものを供え、麦粉一エパには油一ヒンを加えよ。
21638 26 46 12 また君たる者が、心からの供え物として、燔祭または酬恩祭を主にささげる時は、彼のために東に面した門を開け。彼は安息日に行うように、その燔祭と酬恩祭を供え、そして退出する。その退出の後、門は閉ざされる。
21639 26 46 13 彼は日ごとに一歳の無傷の小羊を燔祭として、主にささげなければならない。すなわち朝ごとに、これをささげなければならない。
21640 26 46 14 彼は朝ごとに、素祭をこれに添えてささげなければならない。すなわち麦粉一エパの六分の一に、これを潤す油一ヒンの三分の一を、素祭として主にささげなければならない。これは常燔祭のおきてである。
21641 26 46 15 すなわち朝ごとに常燔祭として、小羊と素祭と油とをささげなければならない。
21642 26 46 16 主なる神は、こう言われる、君たる者が、もしその嗣業から、その子のひとりに財産を与える時は、それはその子らの嗣業の所有となる。
21643 26 46 17 しかし彼がその奴隷のひとりに、嗣業の一部分を与える時は、それは彼の解放の年まで、その人に属していて、その後は君たる人に帰る。彼の嗣業は、ただその子らにだけ伝わるべきである。
21644 26 46 18 君たる者はその民の嗣業を取って、その財産を継がせないようにしてはならない。彼はただ、自分の財産のうちから、その子らにその嗣業を、与えなければならない。これはわが民のひとりでも、その財産を失わないためである」。
21645 26 46 19 こうして彼はわたしを連れて、門のかたわらの入口から、北向きの祭司の聖なる室に、はいらせた。見ると、西の奥の方に一つの場所があった。
21646 26 46 20 彼はわたしに言った、「これは祭司たちが愆祭および罪祭のものを煮、素祭のものを焼く所である。これは外庭にそれらを携え出て、聖なるべきことを、民にうつさないためである」。
21647 26 46 21 彼はまたわたしを外庭に連れ出し、庭の四すみを通らせた。見よ、庭のこのすみにも庭があり、また庭のかのすみにも庭があった。
21648 26 46 22 すなわち庭の四すみに小さい庭があり、長さ四十キュビト、幅三十キュビトで、四つとも同じ大きさである。
21649 26 46 23 その四つの小さい庭の内部の四方には、石の壁があり、周囲の壁の下に、物を煮る所が設けてあった。
21650 26 46 24 彼はわたしに言った、「これらは宮の仕え人たちが、民のささげる犠牲のものを煮る台所である」。
21651 26 47 1 そして彼はわたしを宮の戸口に帰らせた。見よ、水の宮の敷居の下から、東の方へ流れていた。宮は東に面し、その水は、下から出て、祭壇の南にある宮の敷居の南の端から、流れ下っていた。
21652 26 47 2 彼は北の門の道から、わたしを連れ出し、外をまわって、東に向かう外の門に行かせた。見よ、水は南の方から流れ出ていた。
21653 26 47 3 その人は東に進み、手に測りなわをもって一千キュビトを測り、わたしを渡らせた。すると水はくるぶしに達した。
21654 26 47 4 彼がまた一千キュビトを測って、わたしを渡らせると、水はひざに達した。彼がまた一千キュビトを測って、わたしを渡らせると、水は腰に達した。
21655 26 47 5 彼がまた一千キュビトを測ると、渡り得ないほどの川になり、水は深くなって、泳げるほどの水、越え得ないほどの川になった。
21656 26 47 6 彼はわたしに「人の子よ、あなたはこれを見るか」と言った。
21657 26 47 7 わたしが帰ってくると、見よ、川の岸のこなたかなたに、はなはだ多くの木があった。
21658 26 47 8 彼はわたしに言った、「この水は東の境に流れて行き、アラバに落ち下り、その水が、よどんだ海にはいると、それは清くなる。
21659 26 47 9 おおよそこの川の流れる所では、もろもろの動く生き物が皆生き、また、はなはだ多くの魚がいる。これはその水がはいると、海の水を清くするためである。この川の流れる所では、すべてのものが生きている。
21660 26 47 10 すなどる者が、海のかたわらに立ち、エンゲデからエン・エグライムまで、網を張る所となる。その魚は、大海の魚のように、その種類がはなはだ多い。
21661 26 47 11 ただし、その沢と沼とは清められないで、塩地のままで残る。
21662 26 47 12 川のかたわら、その岸のこなたかなたに、食物となる各種の木が育つ。その葉は枯れず、その実は絶えず、月ごとに新しい実がなる。これはその水が聖所から流れ出るからである。その実は食用に供せられ、その葉は薬となる」。
21663 26 47 13 主なる神は、こう言われる、「あなたがたがイスラエルの十二の部族に、嗣業として土地を分け与えるには、その境を次のように定めなければならない。ヨセフには二つの分を与えよ。
21664 26 47 14 あなたがたは、これを公平に分けよ。これはわたしが、あなたがたの先祖に与えると誓ったもので、これは嗣業として、あなたがたに属するものである。
21665 26 47 15 その地の境はこのとおりである。北は大海からヘテロンの道を経て、ハマテの入口およびゼダデに至り、
21666 26 47 16 またベロテおよびダマスコとハマテの境にあるシブライムに至り、ハウランの境にあるハザル・ハテコンに及ぶ。
21667 26 47 17 その境は海からダマスコの北の境にあるハザル・エノンにおよび、北の方はハマテがその境である。これが北の方である。
21668 26 47 18 東の方は、ハウランとダマスコの間のハザル・エノンから、ギレアデとイスラエルの地との間の、ヨルダンに沿い、東の海に至り、タマルに及ぶ。これが東の方である。
21669 26 47 19 南の方はタマルからメリボテ・カデシの川に及び、そこからエジプトの川に沿って大海に至る。これが南の方である。
21670 26 47 20 西の方はハマテの入口に至る大海を境とする。これが西の方である。
21671 26 47 21 あなたがたはこのように、イスラエルの部族に従って、この地をあなたがたの間に分割せよ。
21672 26 47 22 あなたがたは、くじをもって、これをあなたがたのうちに分け、またあなたがたのうちにいて、あなたがたのうちに、子を生んだ寄留の他国人のうちに分けて、嗣業とせよ。彼らは、あなたがたには、イスラエルの人々のうちの本国人と同様である。彼らもあなたがたと一緒にくじを引いて、イスラエルの部族のうちに嗣業を得るべきである。
21673 26 47 23 他国人には、その住んでいる部族のうちで、その嗣業をこれに与えなければならないと、主なる神は言われる。
21674 26 48 1 イスラエルの部族の名は次のとおりである。北の果からヘテロンの道を経て、ハマテの入口に至り、ハマテに相対するダマスコの北の境にあるハザル・エノンに及び、東の方から西の方へのびる地方、これがダンの分である。
21675 26 48 2 ダンの領地に沿って、東の方から西の方へのびる地方、これがアセルの分である。
21676 26 48 3 アセルの領地に沿って、東の方から西の方へのびる地方、これがナフタリの分である。
21677 26 48 4 ナフタリの領地に沿って、東の方から西の方へのびる地方、これがマナセの分である。
21678 26 48 5 マナセの領地に沿って、東の方から西の方へのびる地方、これがエフライムの分である。
21679 26 48 6 エフライムの領地に沿って、東の方から西の方へのびる地方、これがルベンの分である。
21680 26 48 7 ルベンの領地に沿って、東の方から西の方へのびる地方、これがユダの分である。
21681 26 48 8 ユダの領地に沿って、東の方から西の方へのびる地方は、あなたがたのささげる献納地とせよ。その幅は二万五千キュビト、その東の方から西の方へのびる長さは、部族の一つの分に同じで、聖所はその中にある。
21682 26 48 9 すなわちあなたがたの主にささげる献納地は長さ二万五千キュビト、幅二万キュビトとである。
21683 26 48 10 これが祭司への聖なる献納地である。すなわち祭司の分は、北は二万五千キュビト、西は幅一万キュビト、東は幅一万キュビト、南は長さ二万五千キュビトである。主の聖所はその中にある。
21684 26 48 11 これはイスラエルの人々が迷い出た時、レビびとが迷ったように迷ったことはなく、わが務を守り通したザドクの子孫のうちから、聖別された祭司に属する。
21685 26 48 12 このようにレビびとの境に沿って、いと聖なる地、すなわち聖なる献納地が、特別な分として彼らに帰属する。
21686 26 48 13 レビびとの分は祭司の所有地の境に沿って、長さ二万五千キュビト、幅一万キュビト、すなわち、そのすべての長さ二万五千キュビト、幅二万キュビトである。
21687 26 48 14 彼らはこれを売ってはならない、また交換してはならない、またその大事な分を手ばなしてはならない。これは主に属する聖なる物だからである。
21688 26 48 15 その残りの地すなわち幅五千キュビト、長さ二万五千キュビトは町のため、すみかのため、また郊外のための一般人の地所とせよ。町はその中に置け。
21689 26 48 16 一般人の地所の広さは次のとおりである。すなわち北の方四千五百キュビト、南の方四千五百キュビト、東の方四千五百キュビト、西の方四千五百キュビトである。
21690 26 48 17 町は郊外を含む。郊外は北二百五十キュビト、南二百五十キュビト、東二百五十キュビト、西二百五十キュビトである。
21691 26 48 18 聖なる献納地に沿っている残りの地の長さは東へ一万キュビト、西へ一万キュビトである。これは聖なる献納地に沿っており、その産物は町の働き人の食物となる。
21692 26 48 19 町の働き人は、イスラエルのすべての部族から出て、これを耕作するのである。
21693 26 48 20 あなたがたがささげる献納地の全体は二万五千キュビト四方である。これは町の所有地と共に聖なる献納地である。
21694 26 48 21 聖なる献納地と町の所有地との、こなたかなたの残りの地は、君たる者に属する。これは聖なる献納地の二万五千キュビトに面して東の境に至り、西はその二万五千キュビトに面して西の境に至り、部族の分に沿うもので、君たる者に属する。聖なる献納地と、宮の聖所とは、その中にある。
21695 26 48 22 町の所有地は、君たる者に属する部分の中にあり、そして君たる者の分は、ユダの領地と、ベニヤミンの領地との間にある。
21696 26 48 23 なお残りの部族では東の方から西の方に至る地方、これがベニヤミンの分である。
21697 26 48 24 ベニヤミンの領地に沿って、東の方から西の方に至る地方、これがシメオンの分である。
21698 26 48 25 シメオンの領地に沿って、東の方から西の方に至る地方、これがイッサカルの分である。
21699 26 48 26 イッサカルの領地に沿って、東の方から西の方に至る地方、これがゼブルンの分である。
21700 26 48 27 ゼブルンの領地に沿って、東の方から西の方に至る地方、これがガドの分である。
21701 26 48 28 南の方はガドの領地に沿って、タマルからメリボテ・カデシの水に至り、そこからエジプトの川に沿って大海に至る。
21702 26 48 29 これはあなたがたが、くじをもってイスラエルの部族のうちに分けて、嗣業とすべき地である。これが彼らの分であると、主なる神は言われる。
21703 26 48 30 町の出口は次のとおりである。北の方の長さは四千五百キュビトである。
21704 26 48 31 町の門はイスラエルの部族の名にしたがい、三つの門になっている。すなわちルベンの門、ユダの門、レビの門である。
21705 26 48 32 東の方は四千五百キュビトであって、三つの門がある。すなわちヨセフの門、ベニヤミンの門、ダンの門である。
21706 26 48 33 南の方は四千五百キュビトであって、三つの門がある。すなわちシメオンの門、イッサカルの門、ゼブルンの門である。
21707 26 48 34 西の方は四千五百キュビトであって、三つの門がある。すなわちガドの門、アセルの門、ナフタリの門である。
21708 26 48 35 町の周囲は一万八千キュビトあり、この日から後、この町の名は『主そこにいます』と呼ばれる」。
21709 27 1 1 ユダの王エホヤキムの治世の第三年にバビロンの王ネブカデネザルはエルサレムにきて、これを攻め囲んだ。
21710 27 1 2 主はユダの王エホヤキムと、神の宮の器具の一部とを、彼の手にわたされたので、彼はこれをシナルの地の自分の神の宮に携えゆき、その器具を自分の神の蔵に納めた。
21711 27 1 3 時に王は宦官の長アシペナズに、イスラエルの人々の中から、王の血統の者と、貴族たる者数人とを、連れて来るように命じた。
21712 27 1 4 すなわち身に傷がなく、容姿が美しく、すべての知恵にさとく、知識があって、思慮深く、王の宮に仕えるに足る若者を連れてこさせ、これにカルデヤびとの文学と言語とを学ばせようとした。
21713 27 1 5 そして王は王の食べる食物と、王の飲む酒の中から、日々の分を彼らに与えて、三年のあいだ彼らを養い育て、その後、彼らをして王の前に、はべらせようとした。
21714 27 1 6 彼らのうちに、ユダの部族のダニエル、ハナニヤ、ミシャエル、アザリヤがあった。
21715 27 1 7 宦官の長は彼らに名を与えて、ダニエルをベルテシャザルと名づけ、ハナニヤをシャデラクと名づけ、ミシャエルをメシャクと名づけ、アザリヤをアベデネゴと名づけた。
21716 27 1 8 ダニエルは王の食物と、王の飲む酒とをもって、自分を汚すまいと、心に思い定めたので、自分を汚させることのないように、宦官の長に求めた。
21717 27 1 9 神はダニエルをして、宦官の長の前に、恵みとあわれみとを得させられたので、
21718 27 1 10 宦官の長はダニエルに言った、「わが主なる王は、あなたがたの食べ物と、飲み物とを定められたので、わたしはあなたがたの健康の状態が、同年輩の若者たちよりも悪いと、王が見られることを恐れるのです。そうすればあなたがたのために、わたしのこうべが、王の前に危くなるでしょう」。
21719 27 1 11 そこでダニエルは宦官の長がダニエル、ハナニヤ、ミシャエルおよびアザリヤの上に立てた家令に言った、
21720 27 1 12 「どうぞ、しもべらを十日の間ためしてください。わたしたちにただ野菜を与えて食べさせ、水を飲ませ、
21721 27 1 13 そしてわたしたちの顔色と、王の食物を食べる若者の顔色とをくらべて見て、あなたの見るところにしたがって、しもべらを扱ってください」。
21722 27 1 14 家令はこの事について彼らの言うところを聞きいれ、十日の間、彼らをためした。
21723 27 1 15 十日の終りになってみると、彼らの顔色は王の食物を食べたすべての若者よりも美しく、また肉も肥え太っていた。
21724 27 1 16 それで家令は彼らの食物と、彼らの飲むべき酒とを除いて、彼らに野菜を与えた。
21725 27 1 17 この四人の者には、神は知識を与え、すべての文学と知恵にさとい者とされた。ダニエルはまたすべての幻と夢とを理解した。
21726 27 1 18 さて、王が命じたところの若者を召し入れるまでの日数が過ぎたので、宦官の町は彼らをネブカデネザルの前に連れていった。
21727 27 1 19 王が彼らと語ってみると、彼らすべての中にはダニエル、ハナニヤ、ミシャエル、アザリヤにならぶ者がなかったので、彼らは王の前にはべることとなった。
21728 27 1 20 王が彼らにさまざまの事を尋ねてみると、彼らは知恵と理解において、全国の博士、法術士にまさること十倍であった。
21729 27 1 21 ダニエルはクロス王の元年まで仕えていた。
21730 27 2 1 ネブカデネザルの治世の第二年に、ネブカデネザルは夢を見、そのために心に思い悩んで眠ることができなかった。
21731 27 2 2 そこで王は命じて王のためにその夢を解かせようと、博士、法術士、魔術士、カルデヤびとを召させたので、彼らはきて王の前に立った。
21732 27 2 3 王は彼らにむかって、「わたしは夢を見たが、その夢を知ろうと心に思い悩んでいる」と言ったので、
21733 27 2 4 カルデヤびとらはアラム語で王に言った、「王よ、とこしえに生きながらえられますように。どうぞしもべらにその夢をお話しください。わたしたちはその解き明かしを申しあげましょう」。
21734 27 2 5 王は答えてカルデヤびとに言った、「わたしの言うことは必ず行う。あなたがたがもしその夢と、その解き明かしを、わたしに示さないならば、あなたがたの身は切り裂かれ、あなたがたの家は滅ぼされる。
21735 27 2 6 しかし、その夢とその解き明かしとを示すならば、贈り物と報酬と大いなる栄誉とを、わたしから受けるだろう。それゆえその夢とその解き明かしとを、わたしに示しなさい」。
21736 27 2 7 彼らは再び答えて言った、「王よ、しもべらにその夢をお話しください。そうすればわたしたちはその解き明かしを示しましょう」。
21737 27 2 8 王は答えて言った、「あなたがたはわたしが言ったことは、必ず行うことを承知しているので、時を延ばそうとしているのを、わたしは確かに知っている。
21738 27 2 9 もしその夢をわたしに示さないならば、あなたがたの受ける刑罰はただ一つあるのみだ。あなたがたは一致して、偽りと、欺きの言葉をわたしの前に述べて、時の変るのを待とうとしているのだ。まずその夢をわたしに示しなさい。そうすれば、わたしはあなたがたがその解き明かしをも、示しうることを知るだろう」。
21739 27 2 10 カルデヤびとらは王の前に答えて言った、「世の中には王のその要求に応じうる者はひとりもありません。どんな大いなる力ある王でも、このような事を、博士、法術士、カルデヤびとに尋ねた者はありませんでした。
21740 27 2 11 王の尋ねられる事はむずかしい事であって、肉なる者と共におられない神々を除いては、王の前にこれを示しうる者はないでしょう」。
21741 27 2 12 これによって王は怒り、かつ大いに憤り、バビロンの知者をすべて滅ぼせと命じた。
21742 27 2 13 この命令が発せられたので、知者らは殺されることになった。またダニエルとその同僚をも殺そうと求めた。
21743 27 2 14 そして王の侍衛の長アリオクが、バビロンの知者らを殺そうと出てきたので、ダニエルは思慮と知恵とをもってこれに応答した。
21744 27 2 15 すなわち王の高官アリオクに「どうして王はそんなにきびしい命令を出されたのですか」と言った。アリオクがその事をダニエルに告げ知らせると、
21745 27 2 16 ダニエルは王のところへはいっていって、その解き明かしを示すために、しばらくの時を与えられるよう王に願った。
21746 27 2 17 それからダニエルは家に帰り、同僚のハナニヤ、ミシャエルおよびアザリヤにこの事を告げ知らせ、
21747 27 2 18 共にこの秘密について天の神のあわれみを請い、ダニエルとその同僚とが、他のバビロンの知者と共に滅ぼされることのないように求めた。
21748 27 2 19 ついに夜の幻のうちにこの秘密がダニエルに示されたので、ダニエルは天の神をほめたたえた。
21749 27 2 20 ダニエルは言った、「神のみ名は永遠より永遠に至るまでほむべきかな、知恵と権能とは神のものである。
21750 27 2 21 神は時と季節とを変じ、王を廃し、王を立て、知者に知恵を与え、賢者に知識を授けられる。
21751 27 2 22 神は深妙、秘密の事をあらわし、暗黒にあるものを知り、光をご自身のうちに宿す。
21752 27 2 23 わが先祖たちの神よ、あなたはわたしに知恵と力とを賜い、今われわれがあなたに請い求めたところのものをわたしに示し、王の求めたことをわれわれに示されたので、わたしはあなたに感謝し、あなたをさんびします」。
21753 27 2 24 そこでダニエルは、王がバビロンの知者たちを滅ぼすことを命じておいたアリオクのもとへ行って、彼にこう言った、「バビロンの知者たちを滅ぼしてはなりません。わたしを王の前に連れて行ってください。わたしはその解き明かしを王に示します」。
21754 27 2 25 アリオクは急いでダニエルを王の前に連れて行き、王にこう言った、「ユダから捕え移した者の中に、その解き明かしを王にお知らせすることのできる、ひとりの人を見つけました」。
21755 27 2 26 王は答えて、ベルテシャザルという名のダニエルに言った、「あなたはわたしが見た夢と、その解き明かしとをわたしに知らせることができるのか」。
21756 27 2 27 ダニエルは王に答えて言った、「王が求められる秘密は、知者、法術士、博士、占い師など、これを王に示すことはできません。
21757 27 2 28 しかし秘密をあらわすひとりの神が天におられます。彼は後の日に起るべき事を、ネブカデネザル王に知らされたのです。あなたの夢と、あなたが床にあって見た脳中の幻はこれです。
21758 27 2 29 王よ、あなたが床におられたとき、この後どんな事があろうかと、思いまわされたが、秘密をあらわされるかたが、将来どんな事が起るかを、あなたに知らされたのです。
21759 27 2 30 この秘密をわたしにあらわされたのは、すべての生ける者にまさって、わたしに知恵があるためではなく、ただその解き明かしを、王にお知らせすることによって、あなたが心に思われたことを、お知りになるためです。
21760 27 2 31 王よ、あなたは一つの大いなる像が、あなたの前に立っているのを見られました。その像は大きく、非常に光り輝いて、恐ろしい外観をもっていました。
21761 27 2 32 その像の頭は純金、胸と両腕とは銀、腹と、ももとは青銅、
21762 27 2 33 すねは鉄、足の一部は鉄、一部は粘土です。
21763 27 2 34 あなたが見ておられたとき、一つの石が人手によらずに切り出されて、その像の鉄と粘土との足を撃ち、これを砕きました。
21764 27 2 35 こうして鉄と、粘土と、青銅と、銀と、金とはみな共に砕けて、夏の打ち場のもみがらのようになり、風に吹き払われて、あとかたもなくなりました。ところがその像を撃った石は、大きな山となって全地に満ちました。
21765 27 2 36 これがその夢です。今わたしたちはその解き明かしを、王の前に申しあげましょう。
21766 27 2 37 王よ、あなたは諸王の王であって、天の神はあなたに国と力と勢いと栄えとを賜い、
21767 27 2 38 また人の子ら、野の獣、空の鳥はどこにいるものでも、皆これをあなたの手に与えて、ことごとく治めさせられました。あなたはあの金の頭です。
21768 27 2 39 あなたの後にあなたに劣る一つの国が起ります。また第三に青銅の国が起って、全世界を治めるようになります。
21769 27 2 40 第四の国は鉄のように強いでしょう。鉄はよくすべての物をこわし砕くからです。鉄がこれらをことごとく打ち砕くように、その国はこわし砕くでしょう。
21770 27 2 41 あなたはその足と足の指を見られましたが、その一部は陶器師の粘土、一部は鉄であったので、それは分裂した国をさします。しかしあなたが鉄と粘土との混じったのを見られたように、その国には鉄の強さがあるでしょう。
21771 27 2 42 その足の指の一部は鉄、一部は粘土であったように、その国は一部は強く、一部はもろいでしょう。
21772 27 2 43 あなたが鉄と粘土との混じったのを見られたように、それらは婚姻によって、互に混ざるでしょう。しかし鉄と粘土とは相混じらないように、かれとこれと相合することはありません。
21773 27 2 44 それらの王たちの世に、天の神は一つの国を立てられます。これはいつまでも滅びることがなく、その主権は他の民にわたされず、かえってこれらのもろもろの国を打ち破って滅ぼすでしょう。そしてこの国は立って永遠に至るのです。
21774 27 2 45 一つの石が人手によらずに山から切り出され、その石が鉄と、青銅と、粘土と、銀と、金とを打ち砕いたのを、あなたが見られたのはこの事です。大いなる神がこの後に起るべきことを、王に知らされたのです。その夢はまことであって、この解き明かしは確かです」。
21775 27 2 46 そこでネブカデネザル王はひれ伏して、ダニエルを拝し、供え物と薫香とを、彼にささげることを命じた。
21776 27 2 47 そして王はダニエルに答えて言った、「あなたがこの秘密をあらわすことができたのを見ると、まことに、あなたがたの神は神々の神、王たちの主であって、秘密をあらわされるかただ」。
21777 27 2 48 こうして王はダニエルに高い位を授け、多くの大いなる贈り物を与えて、彼をバビロン全州の総督とし、またバビロンの知者たちを統轄する者の長とした。
21778 27 2 49 王はまたダニエルの願いによって、シャデラクとメシャクとアベデネゴを任命して、バビロン州の事務をつかさどらせた。ただしダニエルは王の宮にとどまっていた。
21779 27 3 1 ネブカデネザル王は一つの金の像を造った。その高さは六十キュビト、その幅は六キュビトで、彼はこれをバビロン州のドラの平野に立てた。
21780 27 3 2 そしてネブカデネザル王は、総督、長官、知事、参議、庫官、法官、高僧および諸州の官吏たちを召し集め、ネブカデネザル王の立てたこの像の落成式に臨ませようとした。
21781 27 3 3 そこで、総督、長官、知事、参議、庫官、法官、高僧および諸州の官吏たちは、ネブカデネザル王の立てた像の落成式に臨み、そのネブカデネザルの立てた像の前に立った。
21782 27 3 4 時に伝令者は大声に呼ばわって言った、「諸民、諸族、諸国語の者よ、あなたがたにこう命じられる。
21783 27 3 5 角笛、横笛、琴、三角琴、立琴、風笛などの、もろもろの楽器の音を聞く時は、ひれ伏してネブカデネザル王の立てた金の像を拝まなければならない。
21784 27 3 6 だれでもひれ伏して拝まない者は、ただちに火の燃える炉の中に投げ込まれる」と。
21785 27 3 7 そこで民らはみな、角笛、横笛、琴、三角琴、立琴、風笛などの、もろもろの楽器の音を聞くや、諸民、諸族、諸国語の者たちはみな、ひれ伏して、ネブカデネザル王の立てた金の像を拝んだ。
21786 27 3 8 その時、あるカルデヤびとらが進みきて、ユダヤ人をあしざまに訴えた。
21787 27 3 9 すなわち彼らはネブカデネザル王に言った、「王よ、とこしえに生きながらえられますように。
21788 27 3 10 王よ、あなたは命令を出して仰せられました。すべて、角笛、横笛、琴、三角琴、立琴、風笛などの、もろもろの楽器の音を聞く者は皆、ひれ伏して金の像を拝まなければならない。
21789 27 3 11 また、だれでもひれ伏して拝まない者はみな、火の燃える炉の中に投げ込まれると。
21790 27 3 12 ここにあなたが任命して、バビロン州の事務をつかさどらせられているユダヤ人シャデラク、メシャクおよびアベデネゴがおります。王よ、この人々はあなたを尊ばず、あなたの神々にも仕えず、あなたの立てられた金の像をも拝もうとしません」。
21791 27 3 13 そこでネブカデネザルは怒りかつ憤って、シャデラク、メシャクおよびアベデネゴを連れてこいと命じたので、この人々を王の前に連れてきた。
21792 27 3 14 ネブカデネザルは彼らに言った、「シャデラク、メシャク、アベデネゴよ、あなたがたがわが神々に仕えず、またわたしの立てた金の像を拝まないとは、ほんとうなのか。
21793 27 3 15 あなたがたがもし、角笛、横笛、琴、三角琴、立琴、風笛などの、もろもろの楽器の音を聞くときにひれ伏して、わたしが立てた像を、ただちに拝むならば、それでよろしい。しかし、拝むことをしないならば、ただちに火の燃える炉の中に投げ込まれる。いったい、どの神が、わたしの手からあなたがたを救うことができようか」。
21794 27 3 16 シャデラク、メシャクおよびアベデネゴは王に答えて言った、「ネブカデネザルよ、この事について、お答えする必要はありません。
21795 27 3 17 もしそんなことになれば、わたしたちの仕えている神は、その火の燃える炉から、わたしたちを救い出すことができます。また王よ、あなたの手から、わたしたちを救い出されます。
21796 27 3 18 たといそうでなくても、王よ、ご承知ください。わたしたちはあなたの神々に仕えず、またあなたの立てた金の像を拝みません」。
21797 27 3 19 そこでネブカデネザルは怒りに満ち、シャデラク、メシャクおよびアベデネゴにむかって、顔色を変え、炉を平常よりも七倍熱くせよと命じた。
21798 27 3 20 またその軍勢の中の力の強い人々を呼んで、シャデラク、メシャクおよびアベデネゴを縛って、彼らを火の燃える炉の中に投げ込めと命じた。
21799 27 3 21 そこでこの人々は、外套、下着、帽子、その他の衣服のまま縛られて、火の燃える炉の中に投げ込まれた。
21800 27 3 22 王の命令はきびしく、かつ炉は、はなはだしく熱していたので、シャデラク、メシャクおよびアベデネゴを引きつれていった人々は、その火炎に焼き殺された。
21801 27 3 23 シャデラク、メシャク、アベデネゴの三人は縛られたままで、火の燃える炉の中に落ち込んだ。
21802 27 3 24 その時、ネブカデネザル王は驚いて急ぎ立ちあがり、大臣たちに言った、「われわれはあの三人を縛って、火の中に投げ入れたではないか」。彼らは王に答えて言った、「王よ、そのとおりです」。
21803 27 3 25 王は答えて言った、「しかし、わたしの見るのに四人の者がなわめなしに、火の中を歩いているが、なんの害をも受けていない。その第四の者の様子は神の子のようだ」。
21804 27 3 26 そこでネブカデネザルは、その火の燃える炉の入口に近寄って、「いと高き神のしもべシャデラク、メシャク、アベデネゴよ、出てきなさい」と言ったので、シャデラク、メシャク、アベデネゴはその火の中から出てきた。
21805 27 3 27 総督、長官、知事および王の大臣たちも集まってきて、この人々を見たが、火は彼らの身にはなんの力もなく、その頭の毛は焼けず、その外套はそこなわれず、火のにおいもこれに付かなかった。
21806 27 3 28 ネブカデネザルは言った、「シャデラク、メシャク、アベデネゴの神はほむべきかな。神はその使者をつかわして、自分に寄り頼むしもべらを救った。また彼らは自分の神以外の神に仕え、拝むよりも、むしろ王の命令を無視し、自分の身をも捨てようとしたのだ。
21807 27 3 29 それでわたしはいま命令を下す。諸民、諸族、諸国語の者のうちだれでも、シャデラク、メシャク、アベデネゴの神をののしる者があるならば、その身は切り裂かれ、その家は滅ぼされなければならない。このように救を施すことのできる神は、ほかにないからだ」。
21808 27 3 30 こうして、王はシャデラク、メシャクおよびアベデネゴの位を進めて、バビロン州におらせた。
21809 27 4 1 ネブカデネザル王は全世界に住む諸民、諸族、諸国語の者に告げる。どうか、あなたがたに平安が増すように。
21810 27 4 2 いと高き神はわたしにしるしと奇跡とを行われた。わたしはこれを知らせたいと思う。
21811 27 4 3 ああ、そのしるしの大いなること、ああ、その奇跡のすばらしいこと、その国は永遠の国、その主権は世々に及ぶ。
21812 27 4 4 われネブカデネザルはわが家に安らかにおり、わが宮にあって栄えていたが、
21813 27 4 5 わたしは一つの夢を見て、そのために恐れた。すなわち床にあって、その事を思いめぐらし、わが脳中の幻のために心を悩ました。
21814 27 4 6 そこでわたしは命令を下し、バビロンの知者をことごとくわが前に召し寄せて、その夢の解き明かしを示させようとした。
21815 27 4 7 すると、博士、法術士、カルデヤびと、占い師たちがきたので、わたしはその夢を彼らに語ったが、彼らはその解き明かしを示すことができなかった。
21816 27 4 8 最後にダニエルがわたしの前にきた、――彼の名はわが神の名にちなんで、ベルテシャザルととなえられ、彼のうちには聖なる神の霊がやどっていた――わたしは彼にその夢を語って言った、
21817 27 4 9 「博士の長ベルテシャザルよ、わたしは知っている。聖なる神の霊があなたのうちにやどっているから、どんな秘密もあなたにはむずかしいことはない。ここにわたしが見た夢がある。その解き明かしをわたしに告げなさい。
21818 27 4 10 わたしが床にあって見た脳中の幻はこれである。わたしが見たのに、地の中央に一本の木があって、そのたけが高かったが、
21819 27 4 11 その木は成長して強くなり、天に達するほどの高さになって、地の果までも見えわたり、
21820 27 4 12 その葉は美しく、その実は豊かで、すべての者がその中から食物を獲、また野の獣はその陰にやどり、空の鳥はその枝にすみ、すべての肉なる者はこれによって養われた。
21821 27 4 13 わたしが床にあって見た脳中の幻の中に、ひとりの警護者、ひとりの聖者の天から下るのを見たが、
21822 27 4 14 彼は声高く呼ばわって、こう言った、『この木を切り倒し、その枝を切りはらい、その葉をゆり落し、その実を打ち散らし、獣をその下から逃げ去らせ、鳥をその枝から飛び去らせよ。
21823 27 4 15 ただしその根の切り株を地に残し、それに鉄と青銅のなわをかけて、野の若草の中におき、天からくだる露にぬれさせ、また地の草の中で、獣と共にその分にあずからせよ。
21824 27 4 16 またその心は変って人間の心のようでなく、獣の心が与えられて、七つの時を過ごさせよ。
21825 27 4 17 この宣言は警護者たちの命令によるもの、この決定は聖者たちの言葉によるもので、いと高き者が、人間の国を治めて、自分の意のままにこれを人に与え、また人のうちの最も卑しい者を、その上に立てられるという事を、すべての者に知らせるためである』と。
21826 27 4 18 われネブカデネザル王はこの夢を見た。ベルテシャザルよ、あなたはその解き明かしをわたしに告げなさい。わが国の知者たちは、いずれもその解き明かしを、わたしに示すことができなかったけれども、あなたにはそれができる。あなたのうちには、聖なる神の霊がやどっているからだ」。
21827 27 4 19 その時、その名をベルテシャザルととなえるダニエルは、しばらくのあいだ驚き、思い悩んだので、王は彼に告げて言った、「ベルテシャザルよ、あなたはこの夢と、その解き明かしのために、悩むには及ばない」。ベルテシャザルは答えて言った、「わが主よ、どうか、この夢は、あなたを憎む者にかかわるように。この解き明かしは、あなたの敵に臨むように。
21828 27 4 20 あなたが見られた木、すなわちその成長して強くなり、天に達するほどの高さになって、地の果までも見えわたり、
21829 27 4 21 その葉は美しく、その実は豊かで、すべての者がその中から食物を獲、また野の獣がその陰にやどり、空の鳥がその枝に住んだ木、
21830 27 4 22 王よ、それはすなわちあなたです。あなたは成長して強くなり、天に達するほどに大きくなり、あなたの主権は地の果にまで及びました。
21831 27 4 23 ところが、王はひとりの警護者、ひとりの聖者が、天から下って、こう言うのを見られました、『この木を切り倒して、これを滅ぼせ。ただしその根の切り株を地に残し、それに鉄と青銅のなわをかけて、野の若草の中におき、天からくだる露にぬれさせ、また野の獣と共にその分にあずからせて、七つの時を過ごさせよ』と。
21832 27 4 24 王よ、その解き明かしはこうです。すなわちこれはいと高き者の命令であって、わが主なる王に臨まんとするものです。
21833 27 4 25 すなわちあなたは追われて世の人を離れ、野の獣と共におり、牛のように草を食い、天からくだる露にぬれるでしょう。こうして七つの時が過ぎて、ついにあなたは、いと高き者が人間の国を治めて、自分の意のままに、これを人に与えられることを知るに至るでしょう。
21834 27 4 26 また彼らはその木の根の切り株を残しおけと命じたので、あなたが、天はまことの支配者であるということを知った後、あなたの国はあなたに確保されるでしょう。
21835 27 4 27 それゆえ王よ、あなたはわたしの勧告をいれ、義を行って罪を離れ、しえたげられる者をあわれんで、不義を離れなさい。そうすれば、あるいはあなたの繁栄が、長く続くかもしれません」。
21836 27 4 28 この事は皆ネブカデネザル王に臨んだ。
21837 27 4 29 十二か月を経て後、王がバビロンの王宮の屋上を歩いていたとき、
21838 27 4 30 王は自ら言った、「この大いなるバビロンは、わたしの大いなる力をもって建てた王城であって、わが威光を輝かすものではないか」。
21839 27 4 31 その言葉がなお王の口にあるうちに、天から声がくだって言った、「ネブカデネザル王よ、あなたに告げる。国はあなたを離れ去った。
21840 27 4 32 あなたは、追われて世の人を離れ、野の獣と共におり、牛のように草を食い、こうして七つの時を経て、ついにあなたは、いと高き者が人間の国を治めて、自分の意のままに、これを人に与えられることを知るに至るだろう」。
21841 27 4 33 この言葉は、ただちにネブカデネザルに成就した。彼は追われて世の人を離れ、牛のように草を食い、その身は天からくだる露にぬれ、ついにその毛は、わしの羽のようになり、そのつめは鳥のつめのようになった。
21842 27 4 34 こうしてその期間が満ちた後、われネブカデネザルは、目をあげて天を仰ぎ見ると、わたしの理性が自分に帰ったので、わたしはいと高き者をほめ、その永遠に生ける者をさんびし、かつあがめた。その主権は永遠の主権、その国は世々かぎりなく、
21843 27 4 35 地に住む民はすべて無き者のように思われ、天の衆群にも、地に住む民にも、彼はその意のままに事を行われる。だれも彼の手をおさえて「あなたは何をするのか」と言いうる者はない。
21844 27 4 36 この時わたしの理性は自分に帰り、またわが国の光栄のために、わが尊厳と光輝とが、わたしに帰った。わが大臣、わが貴族らもきて、わたしに求め、わたしは国の上に堅く立って、前にもまさって大いなる者となった。
21845 27 4 37 そこでわれネブカデネザルは今、天の王をほめたたえ、かつあがめたてまつる。そのみわざはことごとく真実で、その道は正しく、高ぶり歩む者を低くされる。
21846 27 5 1 ベルシャザル王は、その大臣一千人のために、盛んな酒宴を設け、その一千人の前で酒を飲んでいた。
21847 27 5 2 酒が進んだとき、ベルシャザルは、その父ネブカデネザルがエルサレムの神殿から取ってきた金銀の器を持ってこいと命じた。王とその大臣たち、および王の妻とそばめらが、これをもって酒を飲むためであった。
21848 27 5 3 そこで人々はそのエルサレムの神の宮すなわち神殿から取ってきた金銀の器を持ってきたので、王とその大臣たち、および王の妻とそばめらは、これをもって飲んだ。
21849 27 5 4 すなわち彼らは酒を飲んで、金、銀、青銅、鉄、木、石などの神々をほめたたえた。
21850 27 5 5 すると突然人の手の指があらわれて、燭台と相対する王の宮殿の塗り壁に物を書いた。王はその物を書いた手の先を見た。
21851 27 5 6 そのために王の顔色は変り、その心は思い悩んで乱れ、その腰のつがいはゆるみ、ひざは震えて互に打ちあった。
21852 27 5 7 王は大声に呼ばわって、法術士、カルデヤびと、占い師らを召してこさせた。王はバビロンの知者たちに告げて言った、「この文字を読み、その解き明かしをわたしに示す者には紫の衣を着せ、首に金の鎖をかけさせて、国の第三のつかさとしよう」と。
21853 27 5 8 王の知者たちは皆はいってきた。しかしその文字を読むことができず、またその解き明かしを王に示すことができなかったので、
21854 27 5 9 ベルシャザル王は大いに思い悩んで、その顔色は変り、王の大臣たちも当惑した。
21855 27 5 10 時に王妃は王と大臣たちの言葉を聞いて、その宴会場にはいってきた。そして王妃は言った、「王よ、どうか、とこしえに生きながらえられますように。あなたは心に思い悩んではなりません。また顔色を変えるには及びません。
21856 27 5 11 あなたの国には、聖なる神の霊のやどっているひとりの人がおります。あなたの父の代に、彼は、明知、分別および神のような知恵のあることをあらわしました。あなたの父ネブカデネザル王は、彼を立てて、博士、法術士、カルデヤびと、占い師らの長とされました。
21857 27 5 12 彼は、王がベルテシャザルという名を与えたダニエルという者ですが、このダニエルには、すぐれた霊、知識、分別があって、夢を解き、なぞを解き、難問を解くことができます。ゆえにダニエルを召しなさい。彼はその解き明かしを示すでしょう」。
21858 27 5 13 そこでダニエルは王の前に召された。王はダニエルに言った、「あなたは、わが父の王が、ユダからひきつれてきたユダの捕囚のひとりなのか。
21859 27 5 14 聞くところによると、あなたのうちには、聖なる神の霊がやどっていて、明知、分別および非凡な知恵があるそうだ。
21860 27 5 15 わたしは、知者、法術士らを、わが前に召しよせて、この文字を読ませ、その解き明かしを示させようとしたが、彼らは、この事の解き明かしを示すことができなかった。
21861 27 5 16 しかしまた聞くところによると、あなたは解き明かしをなし、かつ難問を解くことができるそうだ。それで、あなたがもし、この文字を読み、その解き明かしをわたしに示すことができたなら、あなたに紫の衣を着せ、金の鎖を首にかけさせて、この国の第三のつかさとしよう」。
21862 27 5 17 ダニエルは王の前に答えて言った、「あなたの賜物は、あなたご自身にとっておき、あなたの贈り物は、他人にお与えください。それでも、わたしは王のためにその文字を読み、その解き明かしをお知らせいたしましょう。
21863 27 5 18 王よ、いと高き神はあなたの父ネブカデネザルに国と権勢と、光栄と尊厳とを賜いました。
21864 27 5 19 彼に権勢を賜わったことによって、諸民、諸族、諸国語の者はみな、彼の前におののき恐れました。彼は自分の欲する者を殺し、自分の欲する者を生かし、自分の欲する者を上げ、自分の欲する者を下しました。
21865 27 5 20 しかし彼は心に高ぶり、かたくなになり、ごうまんにふるまったので、王位からしりぞけられ、その光栄を奪われ、
21866 27 5 21 追われて世の人と離れ、その思いは獣のようになり、そのすまいは野ろばと共にあり、牛のように草を食い、その身は天からくだる露にぬれ、こうしてついに彼は、いと高き神が人間の国を治めて、自分の意のままに人を立てられるということを、知るようになりました。
21867 27 5 22 ベルシャザルよ、あなたは彼の子であって、この事をことごとく知っていながら、なお心を低くせず、
21868 27 5 23 かえって天の主にむかって、みずから高ぶり、その宮の器物をあなたの前に持ってこさせ、あなたとあなたの大臣たちと、あなたの妻とそばめたちは、それをもって酒を飲み、そしてあなたは見ることも、聞くことも、物を知ることもできない金、銀、青銅、鉄、木、石の神々をほめたたえたが、あなたの命をその手ににぎり、あなたのすべての道をつかさどられる神をあがめようとはしなかった。
21869 27 5 24 それゆえ、彼の前からこの手が出てきて、この文字が書きしるされたのです。
21870 27 5 25 そのしるされた文字はこうです。メネ、メネ、テケル、ウパルシン。
21871 27 5 26 その事の解き明かしはこうです、メネは神があなたの治世を数えて、これをその終りに至らせたことをいうのです。
21872 27 5 27 テケルは、あなたがはかりで量られて、その量の足りないことがあらわれたことをいうのです。
21873 27 5 28 ペレスは、あなたの国が分かたれて、メデアとペルシャの人々に与えられることをいうのです」。
21874 27 5 29 そこでベルシャザルは命じて、ダニエルに紫の衣を着せ、金の鎖をその首にかけさせ、彼について布告を発して、彼は国の第三のつかさであると言わせた。
21875 27 5 30 カルデヤびとの王ベルシャザルは、その夜のうちに殺され、
21876 27 5 31 メデアびとダリヨスが、その国を受けた。この時ダリヨスは、おおよそ六十二歳であった。
21877 27 6 1 ダリヨスは全国を治めるために、その国に百二十人の総督を立てることをよしとし、
21878 27 6 2 また彼らの上に三人の総監を立てた。ダニエルはそのひとりであった。これは総督たちをして、この三人の前に、その職務に関する報告をさせて、王に損失の及ぶことのないようにするためであった。
21879 27 6 3 ダニエルは彼のうちにあるすぐれた霊のゆえに、他のすべての総監および総督たちにまさっていたので、王は彼を立てて全国を治めさせようとした。
21880 27 6 4 そこで総監および総督らは、国事についてダニエルを訴えるべき口実を得ようとしたが、訴えるべきなんの口実も、なんのとがをも見いだすことができなかった。それは彼が忠信な人であって、その身になんのあやまちも、とがも見いだされなかったからである。
21881 27 6 5 そこでその人々は言った、「われわれはダニエルの神の律法に関して、彼を訴える口実を得るのでなければ、ついに彼を訴えることはできまい」と。
21882 27 6 6 こうして総監と総督らは、王のもとに集まってきて、王に言った、「ダリヨス王よ、どうかとこしえに生きながらえられますように。
21883 27 6 7 国の総監、長官および総督、参議および知事らは、相はかって、王が一つのおきてを立て、一つの禁令を定められるよう求めることになりました。王よ、それはこうです。すなわち今から三十日の間は、ただあなたにのみ願い事をさせ、もしあなたをおいて、神または人にこれをなす者があれば、すべてその者を、ししの穴に投げ入れるというのです。
21884 27 6 8 それで王よ、その禁令を定め、その文書に署名して、メデアとペルシャの変ることのない法律のごとく、これを変えることのできないようにしてください」。
21885 27 6 9 そこでダリヨス王は、その禁令の文書に署名した。
21886 27 6 10 ダニエルは、その文書の署名されたことを知って家に帰り、二階のへやの、エルサレムに向かって窓の開かれた所で、以前からおこなっていたように、一日に三度ずつ、ひざをかがめて神の前に祈り、かつ感謝した。
21887 27 6 11 そこでその人々は集まってきて、ダニエルがその神の前に祈り、かつ求めていることを見たので、
21888 27 6 12 彼らは王の前にきて、王の禁令について奏上して言った、「王よ、あなたは禁令に署名して、今から三十日の間は、ただあなたにのみ願い事をさせ、もしあなたをおいて、神または人に、これをなす者があれば、すべてその者を、ししの穴に投げ入れると、定められたではありませんか」。王は答えて言った、「その事は確かであって、メデアとペルシャの法律のごとく、変えることのできないものだ」。
21889 27 6 13 彼らは王の前に答えて言った、「王よ、ユダから引いてきた捕囚のひとりである、かのダニエルは、あなたをも、あなたの署名された禁令をも顧みず、一日に三度ずつ、祈をささげています」。
21890 27 6 14 王はこの言葉を聞いて大いに憂え、ダニエルを救おうと心を用い、日の入るまで、彼を救い出すことに努めた。
21891 27 6 15 時にその人々は、また王のもとに集まってきて、王に言った、「王よ、メデアとペルシャの法律によれば、王の立てた禁令、または、おきては変えることのできないものであることを、ご承知ください」。
21892 27 6 16 そこで王は命令を下したので、ダニエルは引き出されて、ししの穴に投げ入れられた。王はダニエルに言った、「どうか、あなたの常に仕える神が、あなたを救われるように」。
21893 27 6 17 そして一つの石を持ってきて、穴の口をふさいだので、王は自分の印と、大臣らの印をもって、これに封印した。これはダニエルの処置を変えることのないようにするためであった。
21894 27 6 18 こうして王はその宮殿に帰ったが、その夜は食をとらず、また、そばめたちを召し寄せず、全く眠ることもしなかった。
21895 27 6 19 こうして王は朝まだき起きて、ししの穴へ急いで行ったが、
21896 27 6 20 ダニエルのいる穴に近づいたとき、悲しげな声をあげて呼ばわり、ダニエルに言った、「生ける神のしもべダニエルよ、あなたが常に仕えている神はあなたを救って、ししの害を免れさせることができたか」。
21897 27 6 21 ダニエルは王に言った、「王よ、どうか、とこしえに生きながらえられますように。
21898 27 6 22 わたしの神はその使をおくって、ししの口を閉ざされたので、ししはわたしを害しませんでした。これはわたしに罪のないことが、神の前に認められたからです。王よ、わたしはあなたの前にも、何も悪い事をしなかったのです」。
21899 27 6 23 そこで王は大いに喜び、ダニエルを穴の中から出せと命じたので、ダニエルは穴の中から出されたが、その身になんの害をも受けていなかった。これは彼が自分の神を頼みとしていたからである。
21900 27 6 24 王はまた命令を下して、ダニエルをあしざまに訴えた人々を引いてこさせ、彼らをその妻子と共に、ししの穴に投げ入れさせた。彼らが穴の底に達しないうちに、ししは彼らにとびかかって、その骨までもかみ砕いた。
21901 27 6 25 そこでダリヨス王は全世界に住む諸民、諸族、諸国語の者に詔を書きおくって言った、「どうか、あなたがたに平安が増すように。
21902 27 6 26 わたしは命令を出す。わが国のすべての州の人は、皆ダニエルの神を、おののき恐れなければならない。彼は生ける神であって、とこしえに変ることなく、その国は滅びず、その主権は終りまで続く。
21903 27 6 27 彼は救を施し、助けをなし、天においても、地においても、しるしと奇跡とをおこない、ダニエルを救って、ししの力をのがれさせたかたである」。
21904 27 6 28 こうして、このダニエルはダリヨスの世と、ペルシャ人クロスの世において栄えた。
21905 27 7 1 バビロンの王ベルシャザルの元年に、ダニエルは床にあって夢を見、また脳中に幻を得たので、彼はその夢をしるして、その事の大意を述べた。
21906 27 7 2 ダニエルは述べて言った、「わたしは夜の幻のうちに見た。見よ、天の四方からの風が大海をかきたてると、
21907 27 7 3 四つの大きな獣が海からあがってきた。その形は、おのおの異なり、
21908 27 7 4 第一のものは、ししのようで、わしの翼をもっていたが、わたしが見ていると、その翼は抜きとられ、また地から起されて、人のように二本の足で立たせられ、かつ人の心が与えられた。
21909 27 7 5 見よ、第二の獣は熊のようであった。これはそのからだの一方をあげ、その口の歯の間に、三本の肋骨をくわえていたが、これに向かって『起きあがって、多くの肉を食らえ』と言う声があった。
21910 27 7 6 その後わたしが見たのは、ひょうのような獣で、その背には鳥の翼が四つあった。またこの獣には四つの頭があり、主権が与えられた。
21911 27 7 7 その後わたしが夜の幻のうちに見た第四の獣は、恐ろしい、ものすごい、非常に強いもので、大きな鉄の歯があり、食らい、かつ、かみ砕いて、その残りを足で踏みつけた。これは、その前に出たすべての獣と違って、十の角を持っていた。
21912 27 7 8 わたしが、その角を注意して見ていると、その中に、また一つの小さい角が出てきたが、この小さい角のために、さきの角のうち三つがその根から抜け落ちた。見よ、この小さい角には、人の目のような目があり、また大きな事を語る口があった。
21913 27 7 9 わたしが見ていると、もろもろのみ座が設けられて、日の老いたる者が座しておられた。その衣は雪のように白く、頭の毛は混じりもののない羊の毛のようであった。そのみ座は火の炎であり、その車輪は燃える火であった。
21914 27 7 10 彼の前から、ひと筋の火の流れが出てきた。彼に仕える者は千々、彼の前にはべる者は万々、審判を行う者はその席に着き、かずかずの書き物が開かれた。
21915 27 7 11 わたしは、その角の語る大いなる言葉の声がするので見ていたが、わたしが見ている間にその獣は殺され、そのからだはそこなわれて、燃える火に投げ入れられた。
21916 27 7 12 その他の獣はその主権を奪われたが、その命は、時と季節の来るまで延ばされた。
21917 27 7 13 わたしはまた夜の幻のうちに見ていると、見よ、人の子のような者が、天の雲に乗ってきて、日の老いたる者のもとに来ると、その前に導かれた。
21918 27 7 14 彼に主権と光栄と国とを賜い、諸民、諸族、諸国語の者を彼に仕えさせた。その主権は永遠の主権であって、なくなることがなく、その国は滅びることがない。
21919 27 7 15 そこで、われダニエル、わがうちなる霊は憂え、わが脳中の幻は、わたしを悩ましたので、
21920 27 7 16 わたしは、そこに立っている者のひとりに近寄って、このすべての事の真意を尋ねた。するとその者は、わたしにこの事の解き明かしを告げ知らせた。
21921 27 7 17 『この四つの大きな獣は、地に起らんとする四人の王である。
21922 27 7 18 しかしついには、いと高き者の聖徒が国を受け、永遠にその国を保って、世々かぎりなく続く』。
21923 27 7 19 そこでわたしは、さらに第四の獣の真意を知ろうとした。その獣は他の獣と異なって、はなはだ恐ろしく、その歯は鉄、そのつめは青銅であって、食らい、かつ、かみ砕いて、その残りを足で踏みつけた。
21924 27 7 20 この獣の頭には、十の角があったが、そのほかに一つの角が出てきたので、この角のために、三つの角が抜け落ちた。この角には目があり、また大きな事を語る口があって、その形は、その同類のものよりも大きく見えた。
21925 27 7 21 わたしが見ていると、この角は聖徒と戦って、彼らに勝ったが、
21926 27 7 22 ついに日の老いたる者がきて、いと高き者の聖徒のために審判をおこなった。そしてその時がきて、この聖徒たちは国を受けた。
21927 27 7 23 彼はこう言った、『第四の獣は地上の第四の国である。これはすべての国と異なって、全世界を併合し、これを踏みつけ、かつ打ち砕く。
21928 27 7 24 十の角はこの国から起る十人の王である。その後にまたひとりの王が起る。彼は先の者と異なり、かつ、その三人の王を倒す。
21929 27 7 25 彼は、いと高き者に敵して言葉を出し、かつ、いと高き者の聖徒を悩ます。彼はまた時と律法とを変えようと望む。聖徒はひと時と、ふた時と、半時の間、彼の手にわたされる。
21930 27 7 26 しかし審判が行われ、彼の主権は奪われて、永遠に滅び絶やされ、
21931 27 7 27 国と主権と全天下の国々の権威とは、いと高き者の聖徒たる民に与えられる。彼らの国は永遠の国であって、諸国の者はみな彼らに仕え、かつ従う』。
21932 27 7 28 その事はここで終った。われダニエルは、これを思いまわして、非常に悩み、顔色も変った。しかし、わたしはこの事を心に留めた」。
21933 27 8 1 われダニエルは先に幻を見たが、後またベルシャザル王の治世の第三年に、一つの幻がわたしに示された。
21934 27 8 2 その幻を見たのは、エラム州の首都スサにいた時であって、ウライ川のほとりにおいてであった。
21935 27 8 3 わたしが目をあげて見ると、川の岸に一匹の雄羊が立っていた。これに二つの角があって、その角は共に長かったが、一つの角は他の角よりも長かった。その長いのは後に伸びたのである。
21936 27 8 4 わたしが見ていると、その雄羊は、西、北、南にむかって突撃したが、これに当ることのできる獣は一匹もなく、またその手から救い出すことのできるものもなかった。これはその心のままにふるまい、みずから高ぶっていた。
21937 27 8 5 わたしがこれを考え、見ていると、一匹の雄やぎが、全地のおもてを飛びわたって西からきたが、その足は土を踏まなかった。このやぎには、目の間に著しい一つの角があった。
21938 27 8 6 この者は、さきにわたしが川の岸に立っているのを見た、あの二つの角のある雄羊にむかってきて、激しく怒ってこれに走り寄った。
21939 27 8 7 わたしが見ていると、それが雄羊に近寄るや、これにむかって怒りを発し、雄羊を撃って、その二つの角を砕いた。雄羊には、これに当る力がなかったので、やぎは雄羊を地に打ち倒して踏みつけた。また、その雄羊を、やぎの力から救いうる者がなかった。
21940 27 8 8 こうして、その雄やぎは、はなはだしく高ぶったが、その盛んになった時、あの大きな角が折れて、その代りに四つの著しい角が生じ、天の四方に向かった。
21941 27 8 9 その角の一つから、一つの小さい角が出て、南に向かい、東に向かい、麗しい地に向かって、はなはだしく大きくなり、
21942 27 8 10 天の衆群に及ぶまでに大きくなり、星の衆群のうちの数個を地に投げ下して、これを踏みつけ、
21943 27 8 11 またみずから高ぶって、その衆群の主に敵し、その常供の燔祭を取り除き、かつその聖所を倒した。
21944 27 8 12 そしてその衆群は、罪によって、常供の燔祭と共に、これにわたされた。その角はまた真理を地に投げうち、ほしいままにふるまって、みずから栄えた。
21945 27 8 13 それから、わたしはひとりの聖者の語っているのを聞いた。またひとりの聖者があって、その語っている聖者にむかって言った、「常供の燔祭と、荒すことをなす罪と、聖所とその衆群がわたされて、足の下に踏みつけられることについて、幻にあらわれたことは、いつまでだろうか」と。
21946 27 8 14 彼は言った、「二千三百の夕と朝の間である。そして聖所は清められてその正しい状態に復する」。
21947 27 8 15 われダニエルはこの幻を見て、その意味を知ろうと求めていた時、見よ、人のように見える者が、わたしの前に立った。
21948 27 8 16 わたしはウライ川の両岸の間から人の声が出て、呼ばわるのを聞いた、「ガブリエルよ、この幻をその人に悟らせよ」。
21949 27 8 17 すると彼はわたしの立っている所にきた。彼がきたとき、わたしは恐れて、ひれ伏した。しかし、彼はわたしに言った、「人の子よ、悟りなさい。この幻は終りの時にかかわるものです」。
21950 27 8 18 彼がわたしに語っていた時、わたしは地にひれ伏して、深い眠りに陥ったが、彼はわたしに手を触れ、わたしを立たせて、
21951 27 8 19 言った、「見よ、わたしは憤りの終りの時に起るべきことを、あなたに知らせよう。それは定められた終りの時にかかわるものであるから。
21952 27 8 20 あなたが見た、あの二つの角のある雄羊は、メデアとペルシャの王です。
21953 27 8 21 また、かの雄やぎはギリシヤの王です、その目の間の大きな角は、その第一の王です。
21954 27 8 22 またその角が折れて、その代りに四つの角が生じたのは、その民から四つの国が起るのです。しかし、第一の王のような勢力はない。
21955 27 8 23 彼らの国の終りの時になり、罪びとの罪が満ちるに及んで、ひとりの王が起るでしょう。その顔は猛悪で、彼はなぞを解き、
21956 27 8 24 その勢力は盛んであって、恐ろしい破壊をなし、そのなすところ成功して、有力な人々と、聖徒である民を滅ぼすでしょう。
21957 27 8 25 彼は悪知恵をもって、偽りをその手におこない遂げ、みずから心に高ぶり、不意に多くの人を打ち滅ぼし、また君の君たる者に敵するでしょう。しかし、ついに彼は人手によらずに滅ぼされるでしょう。
21958 27 8 26 先に示された朝夕の幻は真実です。しかし、あなたはその幻を秘密にしておかなければならない。これは多くの日の後にかかわる事だから」。
21959 27 8 27 われダニエルは疲れはてて、数日の間病みわずらったが、後起きて、王の事務を執った。しかし、わたしはこの幻の事を思って驚いた。またこれを悟ることができなかった。
21960 27 9 1 メデアびとアハシュエロスの子ダリヨスが、カルデヤびとの王となったその元年、
21961 27 9 2 すなわちその治世の第一年に、われダニエルは主が預言者エレミヤに臨んで告げられたその言葉により、エルサレムの荒廃の終るまでに経ねばならぬ年の数は七十年であることを、文書によって悟った。
21962 27 9 3 それでわたしは、わが顔を主なる神に向け、断食をなし、荒布を着、灰をかぶって祈り、かつ願い求めた。
21963 27 9 4 すなわちわたしは、わが神、主に祈り、ざんげして言った、「ああ、大いなる恐るべき神、主、おのれを愛し、おのれの戒めを守る者のために契約を保ち、いつくしみを施される者よ、
21964 27 9 5 われわれは罪を犯し、悪をおこない、よこしまなふるまいをなし、そむいて、あなたの戒めと、おきてを離れました。
21965 27 9 6 われわれはまた、あなたのしもべなる預言者たちが、あなたの名をもって、われわれの王たち、君たち、先祖たち、および国のすべての民に告げた言葉に聞き従いませんでした。
21966 27 9 7 主よ、正義はあなたのものですが、恥はわれわれに加えられて、今日のような有様です。すなわちユダの人々、エルサレムの住民および全イスラエルの者は、近き者も、遠き者もみな、あなたが追いやられたすべての国々で恥をこうむりました。これは彼らがあなたにそむいて犯した罪によるのです。
21967 27 9 8 主よ、恥はわれわれのもの、われわれの王たち、君たちおよび先祖たちのものです。これはわれわれがあなたにむかって罪を犯したからです。
21968 27 9 9 あわれみと、ゆるしはわれわれの神、主のものです。これはわれわれが彼にそむいたからです。
21969 27 9 10 またわれわれの神、主のみ声に聞き従わず、主がそのしもべ預言者たちによって、われわれの前に賜わった律法を行わなかったからです。
21970 27 9 11 まことにイスラエルの人々は皆あなたの律法を犯し、離れ去って、あなたのみ声に聞き従わなかったので、神のしもべモーセの律法にしるされたのろいと誓いが、われわれの上に注ぎかかりました。これはわれわれが神にむかって罪を犯したからです。
21971 27 9 12 すなわち神は大いなる災をわれわれの上にくだして、さきにわれわれと、われわれを治めたつかさたちにむかって告げられた言葉を実行されたのです。あのエルサレムに臨んだような事は、全天下にいまだかつてなかった事です。
21972 27 9 13 モーセの律法にしるされたように、この災はすべてわれわれに臨みましたが、なおわれわれの神、主の恵みを請い求めることをせず、その不義を離れて、あなたの真理を悟ることをもしませんでした。
21973 27 9 14 それゆえ、主はこれを心に留めて、災をわれわれに下されたのです。われわれの神、主は、何事をされるにも、正しくあらせられます。ところが、われわれはそのみ声に聞き従わなかったのです。
21974 27 9 15 われわれの神、主よ、あなたは強きみ手をもって、あなたの民をエジプトの地から導き出して、今日のように、み名をあげられました。われわれは罪を犯し、よこしまなふるまいをしました。
21975 27 9 16 主よ、どうぞあなたが、これまで正しいみわざをなされたように、あなたの町エルサレム、あなたの聖なる山から、あなたの怒りと憤りとを取り去ってください。これはわれわれの罪と、われわれの先祖の不義のために、エルサレムと、あなたの民が、われわれの周囲の者の物笑いとなったからです。
21976 27 9 17 それゆえ、われわれの神よ、しもべの祈と願いを聞いてください。主よ、あなたご自身のために、あの荒れたあなたの聖所に、あなたのみ顔を輝かせてください。
21977 27 9 18 わが神よ、耳を傾けて聞いてください。目を開いて、われわれの荒れたさまを見、み名をもってとなえられる町をごらんください。われわれがあなたの前に祈をささげるのは、われわれの義によるのではなく、ただあなたの大いなるあわれみによるのです。
21978 27 9 19 主よ、聞いてください。主よ、ゆるしてください。主よ、み心に留めて、おこなってください。わが神よ、あなたご自身のために、これを延ばさないでください。あなたの町と、あなたの民は、み名をもってとなえられているからです」。
21979 27 9 20 わたしがこう言って祈り、かつわが罪とわが民イスラエルの罪をざんげし、わが神の聖なる山のために、わが神、主の前に願いをしていたとき、
21980 27 9 21 すなわちわたしが祈の言葉を述べていたとき、わたしが初めに幻のうちに見た、かの人ガブリエルは、すみやかに飛んできて、夕の供え物をささげるころ、わたしに近づき、
21981 27 9 22 わたしに告げて言った、「ダニエルよ、わたしは今あなたに、知恵と悟りを与えるためにきました。
21982 27 9 23 あなたが祈を始めたとき、み言葉が出たので、それをあなたに告げるためにきたのです。あなたは大いに愛せられている者です。ゆえに、このみ言葉を考えて、この幻を悟りなさい。
21983 27 9 24 あなたの民と、あなたの聖なる町については、七十週が定められています。これはとがを終らせ、罪に終りを告げ、不義をあがない、永遠の義をもたらし、幻と預言者を封じ、いと聖なる者に油を注ぐためです。
21984 27 9 25 それゆえ、エルサレムを建て直せという命令が出てから、メシヤなるひとりの君が来るまで、七週と六十二週あることを知り、かつ悟りなさい。その間に、しかも不安な時代に、エルサレムは広場と街路とをもって、建て直されるでしょう。
21985 27 9 26 その六十二週の後にメシヤは断たれるでしょう。ただし自分のためにではありません。またきたるべき君の民は、町と聖所とを滅ぼすでしょう。その終りは洪水のように臨むでしょう。そしてその終りまで戦争が続き、荒廃は定められています。
21986 27 9 27 彼は一週の間多くの者と、堅く契約を結ぶでしょう。そして彼はその週の半ばに、犠牲と供え物とを廃するでしょう。また荒す者が憎むべき者の翼に乗って来るでしょう。こうしてついにその定まった終りが、その荒す者の上に注がれるのです」。
21987 27 10 1 ペルシャの王クロスの第三年に、ベルテシャザルと名づけられたダニエルに、一つの言葉が啓示されたが、その言葉は真実であり、大いなる戦いを意味するものであった。彼はその言葉に心を留め、その幻を悟った。
21988 27 10 2 そのころ、われダニエルは三週の間、悲しんでいた。
21989 27 10 3 すなわち三週間の全く満ちるまでは、うまい物を食べず、肉と酒とを口にせず、また身に油を塗らなかった。
21990 27 10 4 正月の二十四日に、わたしがチグリスという大川の岸に立っていたとき、
21991 27 10 5 目をあげて望み見ると、ひとりの人がいて、亜麻布の衣を着、ウパズの金の帯を腰にしめていた。
21992 27 10 6 そのからだは緑柱石のごとく、その顔は電光のごとく、その目は燃えるたいまつのごとく、その腕と足は、みがいた青銅のように輝き、その言葉の声は、群衆の声のようであった。
21993 27 10 7 この幻を見た者は、われダニエルのみであって、わたしと共にいた人々は、この幻を見なかったが、彼らは大いにおののいて、逃げかくれた。
21994 27 10 8 それでわたしひとり残って、この大いなる幻を見たので、力が抜け去り、わが顔の輝きは恐ろしく変って、全く力がなくなった。
21995 27 10 9 わたしはその言葉の声を聞いたが、その言葉の声を聞いたとき、顔を伏せ、地にひれ伏して、深い眠りに陥った。
21996 27 10 10 見よ、一つの手があって、わたしに触れたので、わたしは震えながらひざまずき、手をつくと、
21997 27 10 11 彼はわたしに言った、「大いに愛せられる人ダニエルよ、わたしがあなたに告げる言葉に心を留め、立ちあがりなさい。わたしは今あなたのもとにつかわされたのです」。彼がこの言葉をわたしに告げているとき、わたしは震えながら立ちあがった。
21998 27 10 12 すると彼はわたしに言った、「ダニエルよ、恐れるに及ばない。あなたが悟ろうと心をこめ、あなたの神の前に身を悩ましたその初めの日から、あなたの言葉は、すでに聞かれたので、わたしは、あなたの言葉のゆえにきたのです。
21999 27 10 13 ペルシャの国の君が、二十一日の間わたしの前に立ちふさがったが、天使の長のひとりであるミカエルがきて、わたしを助けたので、わたしは、彼をペルシャの国の君と共に、そこに残しておき、
22000 27 10 14 末の日に、あなたの民に臨まんとする事を、あなたに悟らせるためにきたのです。この幻は、なおきたるべき日にかかわるものです」。
22001 27 10 15 彼がこれらの言葉を、わたしに述べていたとき、わたしは、地にひれ伏して黙っていたが、
22002 27 10 16 見よ、人の子のような者が、わたしのくちびるにさわったので、わたしは口を開き、わが前に立っている者に語って言った、「わが主よ、この幻によって、苦しみがわたしに臨み、全く力を失いました。
22003 27 10 17 わが主のしもべは、どうしてわが主と語ることができましょう。わたしは全く力を失い、息も止まるばかりです」。
22004 27 10 18 人の形をした者は、再びわたしにさわり、わたしを力づけて、
22005 27 10 19 言った、「大いに愛せられる人よ、恐れるには及ばない。安心しなさい。心を強くし、勇気を出しなさい」。彼がこう言ったとき、わたしは力づいて言った、「わが主よ、語ってください。あなたは、わたしに力をつけてくださったから」。
22006 27 10 20 そこで彼は言った、「あなたは、わたしがなんのためにきたかを知っていますか。わたしは、今帰っていって、ペルシャの君と戦おうとしているのです。彼との戦いがすむと、ギリシヤの君があらわれるでしょう。
22007 27 10 21 しかしわたしは、まず真理の書にしるされている事を、あなたに告げよう。わたしを助けて、彼らと戦う者は、あなたがたの君ミカエルのほかにはありません。
22008 27 11 1 わたしはまたメデアびとダリヨスの元年に立って彼を強め、彼を力づけたことがあります。
22009 27 11 2 わたしは今あなたに真理を示そう。見よ、ペルシャになお三人の王が起るでしょう。その第四の者は、他のすべての者にまさって富み、その富によって強くなったとき、彼はすべてのものを動員して、ギリシヤの国を攻めます。
22010 27 11 3 またひとりの勇ましい王が起り、大いなる権力をもって世を治め、その意のままに事をなすでしょう。
22011 27 11 4 彼が強くなった時、その国は破られ、天の四方に分かたれます。それは彼の子孫に帰せず、また彼が治めたほどの権力もなく、彼の国は抜き取られて、これら以外の者どもに帰するでしょう。
22012 27 11 5 南の王は強くなります。しかしその将軍のひとりが、彼にまさって強くなり、権力をふるいます。その権力は、大いなる権力です。
22013 27 11 6 年を経て後、彼らは縁組をなし、南の王の娘が、北の王にきて、和親をはかります。しかしその女は、その腕の力を保つことができず、またその王も、その子も立つことができません。その女と、その従者と、その子およびその女を獲た者とは、わたされるでしょう。
22014 27 11 7 そのころ、この女の根から、一つの芽が起って彼に代り、北の王の軍勢にむかってきて、その城に討ち入り、これを攻めて勝つでしょう。
22015 27 11 8 彼はまた彼らの神々、鋳像および金銀の貴重な器物を、エジプトに携え去り、そして数年の間、北の王を討つことを控えます。
22016 27 11 9 その後、北の王は、南の王の国に討ち入るが、自分の国に帰るでしょう。
22017 27 11 10 その子らはまた憤激して、あまたの大軍を集め、進んで行って、みなぎりあふれ、通り過ぎるが、また行って、その城にまで攻め寄せるでしょう。
22018 27 11 11 そこで南の王は、大いに怒り、出てきて北の王と戦います。彼は大軍を起すけれども、その軍は相手の手にわたされるでしょう。
22019 27 11 12 彼がその軍を打ち破ったとき、その心は高ぶり、数万人を倒します。しかし、勝つことはありません。
22020 27 11 13 それは北の王がまた初めよりも大いなる軍を起し、数年の後、大いなる軍勢と多くの軍需品とをもって、攻めて来るからです。
22021 27 11 14 そのころ多くの者が起って、南の王に敵します。またあなたの民のうちのあらくれ者が、みずから高ぶって事をなし、幻を成就しようとするが失敗するでしょう。
22022 27 11 15 こうして北の王がきて、塁を築き、堅固な町を取るが、南の王の力は、これに立ち向かうことができず、またそのえり抜きの民も、これに立ち向かう力がありません。
22023 27 11 16 これに攻めて来る者は、その心のままに事をなし、その前に立ち向かうことのできる者はなく、彼は麗しい地に立ち、その地は全く彼のために荒されます。
22024 27 11 17 彼は全国の力をもって討ち入ろうと、その顔を向けるが、相手と仲直りをし、その娘を与えて、その国を取ろうとします。しかし、その事は成らず、また彼の利益にはならないでしょう。
22025 27 11 18 その後、彼は顔を海沿いの国々に向けて、その多くのものを取ります。しかし、ひとりの大将があって、彼が与えた恥辱をそそぎ、その恥辱を彼の上に返します。
22026 27 11 19 こうして彼は、その顔を自分の国の要害に向けるが、彼はつまずき倒れて消えうせるでしょう。
22027 27 11 20 彼に代って起る者は、栄光の国に人をつかわして、租税を取り立てさせるでしょう。しかし彼は、怒りにも戦いにもよらず、数日のうちに滅ぼされます。
22028 27 11 21 彼に代って起る者は、卑しむべき者であって、彼には、王の尊厳が与えられず、彼は不意にきて、巧言をもって国を獲るでしょう。
22029 27 11 22 洪水のような軍勢は、彼の前に押し流されて敗られ、契約の君たる者もまた敗られるでしょう。
22030 27 11 23 彼は、これと同盟を結んで後、偽りのおこないをなし、わずかな民をもって強くなり、
22031 27 11 24 不意にその州の最も肥えた所に攻め入り、その父も、その父の父もしなかった事をおこない、その奪った物、かすめた物および財宝を、人々の中に散らすでしょう。彼はまた計略をめぐらして、堅固な城を攻めるが、ただし、それは時の至るまでです。
22032 27 11 25 彼はその勢力と勇気とを奮い起し、大軍を率いて南の王を攻めます。南の王もまたみずから奮い、はなはだ大いなる強力な軍勢をもって戦います。しかし、彼に対して、陰謀をめぐらす者があるので、これに立ち向かうことができません。
22033 27 11 26 すなわち彼の食物を食べる者たちが、彼を滅ぼします。そして、その軍勢は押し流されて、多くの者が倒れ死ぬでしょう。
22034 27 11 27 このふたりの王は、害を与えようと心にはかり、ひとつ食卓に共に食して、偽りを語るが、それは成功しません。終りはなお定まった時の来るまでこないからです。
22035 27 11 28 彼は大いなる財宝をもって、自分の国に帰るでしょう。しかし、彼の心は聖なる契約にそむき、ほしいままに事をなして、自分の国に帰ります。
22036 27 11 29 定まった時になって、彼はまた南に討ち入ります。しかし、この時は前の時のようではありません。
22037 27 11 30 それはキッテムの船が、彼に立ち向かって来るので、彼は脅かされて帰り、聖なる契約に対して憤り、事を行うでしょう。彼は帰っていって、聖なる契約を捨てる者を顧み用いるでしょう。
22038 27 11 31 彼から軍勢が起って、神殿と城郭を汚し、常供の燔祭を取り除き、荒す憎むべきものを立てるでしょう。
22039 27 11 32 彼は契約を破る者どもを、巧言をもってそそのかし、そむかせるが、自分の神を知る民は、堅く立って事を行います。
22040 27 11 33 民のうちの賢い人々は、多くの人を悟りに至らせます。それでも、彼らはしばらくの間、やいばにかかり、火に焼かれ、捕われ、かすめられなどして倒れます。
22041 27 11 34 その倒れるとき、彼らは少しの助けを獲ます。また多くの人が、巧言をもって彼らにくみするでしょう。
22042 27 11 35 また賢い者のうちのある者は、終りの時まで、自分を練り、清め、白くするために倒れるでしょう。終りはなお定まった時の来るまでこないからです。
22043 27 11 36 この王は、その心のままに事をおこない、すべての神を越えて、自分を高くし、自分を大いにし、神々の神たる者にむかって、驚くべき事を語り、憤りのやむ時まで栄えるでしょう。これは定められた事が成就するからです。
22044 27 11 37 彼はその先祖の神々を顧みず、また婦人の好む者も、いかなる神をも顧みないでしょう。彼はすべてにまさって、自分を大いなる者とするからです。
22045 27 11 38 彼はこれらの者の代りに、要害の神をあがめ、金、銀、宝石、および宝物をもって、その先祖たちの知らなかった神をあがめ、
22046 27 11 39 異邦の神の助けによって、最も強固な城にむかって、事をなすでしょう。そして彼を認める者には、栄誉を増し与え、これに多くの人を治めさせ、賞与として土地を分け与えるでしょう。
22047 27 11 40 終りの時になって、南の王は彼と戦います。北の王は、戦車と騎兵と、多くの船をもって、つむじ風のように彼を攻め、国々にはいっていって、みなぎりあふれ、通り過ぎるでしょう。
22048 27 11 41 彼はまた麗しい国にはいります。また彼によって、多くの者が滅ぼされます。しかし、エドム、モアブ、アンモンびとらのうちのおもな者は、彼の手から救われましょう。
22049 27 11 42 彼は国々にその手を伸ばし、エジプトの地も免れません。
22050 27 11 43 彼は金銀の財宝と、エジプトのすべての宝物を支配し、リビヤびと、エチオピヤびとは、彼のあとに従います。
22051 27 11 44 しかし東と北からの知らせが彼を驚かし、彼は多くの人を滅ぼし絶やそうと、大いなる怒りをもって出て行きます。
22052 27 11 45 彼は海と麗しい聖山との間に、天幕の宮殿を設けるでしょう。しかし、彼はついにその終りにいたり、彼を助ける者はないでしょう。
22053 27 12 1 その時あなたの民を守っている大いなる君ミカエルが立ちあがります。また国が始まってから、その時にいたるまで、かつてなかったほどの悩みの時があるでしょう。しかし、その時あなたの民は救われます。すなわちあの書に名をしるされた者は皆救われます。
22054 27 12 2 また地のちりの中に眠っている者のうち、多くの者は目をさますでしょう。そのうち永遠の生命にいたる者もあり、また恥と、限りなき恥辱をうける者もあるでしょう。
22055 27 12 3 賢い者は、大空の輝きのように輝き、また多くの人を義に導く者は、星のようになって永遠にいたるでしょう。
22056 27 12 4 ダニエルよ、あなたは終りの時までこの言葉を秘し、この書を封じておきなさい。多くの者は、あちこちと探り調べ、そして知識が増すでしょう」。
22057 27 12 5 そこで、われダニエルが見ていると、ほかにまたふたりの者があって、ひとりは川のこなたの岸に、ひとりは川のかなたの岸に立っていた。
22058 27 12 6 わたしは、かの亜麻布を着て川の水の上にいる人にむかって言った、「この異常なできごとは、いつになって終るでしょうか」と。
22059 27 12 7 かの亜麻布を着て、川の水の上にいた人が、天に向かって、その右の手と左の手をあげ、永遠に生ける者をさして誓い、それは、ひと時とふた時と半時である。聖なる民を打ち砕く力が消え去る時に、これらの事はみな成就するだろうと言うのを、わたしは聞いた。
22060 27 12 8 わたしはこれを聞いたけれども悟れなかった。わたしは言った、「わが主よ、これらの事の結末はどんなでしょうか」。
22061 27 12 9 彼は言った、「ダニエルよ、あなたの道を行きなさい。この言葉は終りの時まで秘し、かつ封じておかれます。
22062 27 12 10 多くの者は、自分を清め、自分を白くし、かつ練られるでしょう。しかし、悪い者は悪い事をおこない、ひとりも悟ることはないが、賢い者は悟るでしょう。
22063 27 12 11 常供の燔祭が取り除かれ、荒す憎むべきものが立てられる時から、千二百九十日が定められている。
22064 27 12 12 待っていて千三百三十五日に至る者はさいわいです。
22065 27 12 13 しかし、終りまであなたの道を行きなさい。あなたは休みに入り、定められた日の終りに立って、あなたの分を受けるでしょう」。
22066 28 1 1 ユダヤの王ウジヤ、ヨタム、アハズ、ヒゼキヤの世、イスラエルの王ヨアシの子ヤラベアムの世に、ベエリの子ホセアに臨んだ主の言葉。
22067 28 1 2 主が最初ホセアによって語られた時、主はホセアに言われた、「行って、淫行の妻と、淫行によって生れた子らを受けいれよ。この国は主にそむいて、はなはだしい淫行をなしているからである」。
22068 28 1 3 そこで彼は行ってデブライムの娘ゴメルをめとった。彼女はみごもって男の子を産んだ。
22069 28 1 4 主はまた彼に言われた、「あなたはその子の名をエズレルと名づけよ。しばらくしてわたしはエズレルの血のためにエヒウの家を罰し、イスラエルの家の国を滅ぼすからである。
22070 28 1 5 その日、わたしはエズレルの谷でイスラエルの弓を折る」と。
22071 28 1 6 ゴメルはまたみごもって女の子を産んだ。主はホセアに言われた、「あなたはその名をロルハマと名づけよ。わたしはもはやイスラエルの家をあわれまず、決してこれをゆるさないからである。
22072 28 1 7 しかし、わたしはユダの家をあわれみ、その神、主によってこれを救う。わたしは弓、つるぎ、戦争、馬および騎兵によって救うのではない」と。
22073 28 1 8 ゴメルはロルハマを乳離れさせたとき、またみごもって男の子を産んだ。
22074 28 1 9 主は言われた、「その子の名をロアンミと名づけよ。あなたがたは、わたしの民ではなく、わたしは、あなたがたの神ではないからである」。
22075 28 1 10 しかしイスラエルの人々の数は海の砂のように量ることも、数えることもできないほどになって、さきに彼らが「あなたがたは、わたしの民ではない」と言われたその所で、「あなたがたは生ける神の子である」と言われるようになる。
22076 28 1 11 そしてユダの人々とイスラエルの人々は共に集まり、ひとりの長を立てて、その地からのぼって来る。エズレルの日は大いなるものとなる。
22077 28 2 1 あなたがたの兄弟に向かっては「アンミ(わが民)」と言い、あなたがたの姉妹に向かっては「ルハマ(あわれまれる者)」と言え。
22078 28 2 2 「あなたがたの母とあげつらえ、あげつらえ――彼女はわたしの妻ではない、わたしは彼女の夫ではない――そして彼女にその顔から淫行を除かせ、その乳ぶさの間から姦淫を除かせよ。
22079 28 2 3 そうでなければ、わたしは彼女の着物をはいで裸にし、その生れ出た日のようにし、また荒野のようにし、かわききった地のようにし、かわきによって彼女を殺す。
22080 28 2 4 わたしはその子らをあわれまない、彼らは淫行の子らだからである。
22081 28 2 5 彼らの母は淫行をなし、彼らをはらんだ彼女は恥ずべきことを行った。彼女は言った、『わたしはわが恋人たちについて行こう。彼らはパンと水と羊の毛と麻と油と飲み物とを、わたしに与える者である』と。
22082 28 2 6 それゆえ、わたしはいばらで彼女の道をふさぎ、かきをたてて、彼女にはその道がわからないようにする。
22083 28 2 7 彼女はその恋人たちのあとを慕って行く、しかし彼らに追いつくことはない。彼らを尋ねる、しかし見いだすことはない。そこで彼女は言う、『わたしは行って、さきの夫に帰ろう。あの時は今よりもわたしによかったから』と。
22084 28 2 8 彼女に穀物と酒と油とを与えた者、またバアルのために用いた銀と金とを多く彼女に与えた者は、わたしであったことを彼女は知らなかった。
22085 28 2 9 それゆえ、わたしは穀物をその時になって奪い、ぶどう酒をその季節になって奪い、また彼女の裸をおおうために用いる羊の毛と麻とを奪い取る。
22086 28 2 10 わたしは今、彼女のみだらなことをその恋人たちの目の前にあらわす。だれも彼女をわたしの手から救う者はない。
22087 28 2 11 わたしは彼女のすべての楽しみ、すなわち祝、新月、安息日、すべての祭をやめさせる。
22088 28 2 12 わたしはまた彼女が先に『これはわたしの恋人らが、わたしに与えた報酬だ』と言った彼女のぶどうの木と、いちじくの木とを荒し、これを林とし、野の獣にこれを食わせる。
22089 28 2 13 また彼女が耳輪と宝石で身を飾り、その恋人たちを慕って行って、わたしを忘れ、香をたいて仕えたバアルの祭の日のために、わたしは彼女を罰すると主は言われる。
22090 28 2 14 それゆえ、見よ、わたしは彼女をいざなって、荒野に導いて行き、ねんごろに彼女に語ろう。
22091 28 2 15 その所でわたしは彼女にそのぶどう畑を与え、アコルの谷を望みの門として与える。その所で彼女は若かった日のように、エジプトの国からのぼって来た時のように、答えるであろう。
22092 28 2 16 主は言われる、その日には、あなたはわたしを『わが夫』と呼び、もはや『わがバアル』とは呼ばない。
22093 28 2 17 わたしはもろもろのバアルの名を彼女の口から取り除き、重ねてその名をとなえることのないようにする。
22094 28 2 18 その日には、わたしはまたあなたのために野の獣、空の鳥および地の這うものと契約を結び、また弓と、つるぎと、戦争とを地から断って、あなたを安らかに伏させる。
22095 28 2 19 またわたしは永遠にあなたとちぎりを結ぶ。すなわち正義と、公平と、いつくしみと、あわれみとをもってちぎりを結ぶ。
22096 28 2 20 わたしは真実をもって、あなたとちぎりを結ぶ。そしてあなたは主を知るであろう。
22097 28 2 21 主は言われる、その日わたしは天に答え、天は地に答える。
22098 28 2 22 地は穀物と酒と油とに答え、またこれらのものはエズレルに答える。
22099 28 2 23 わたしはわたしのために彼を地にまき、あわれまれぬ者をあわれみ、わたしの民でない者に向かって、『あなたはわたしの民である』と言い、彼は『あなたはわたしの神である』と言う」。
22100 28 3 1 主はわたしに言われた、「あなたは再び行って、イスラエルの人々が他の神々に転じて、干ぶどうの菓子を愛するにもかかわらず、主がこれを愛せられるように、姦夫に愛せられる女、姦淫を行う女を愛せよ」と。
22101 28 3 2 そこでわたしは銀十五シケルと大麦一ホメル半とをもって彼女を買い取った。
22102 28 3 3 わたしは彼女に言った、「あなたは長くわたしの所にとどまって、淫行をなさず、また他の人のものとなってはならない。わたしもまた、あなたにそうしよう」と。
22103 28 3 4 イスラエルの子らは多くの日の間、王なく、君なく、犠牲なく、柱なく、エポデおよびテラピムもなく過ごす。
22104 28 3 5 そしてその後イスラエルの子らは帰って来て、その神、主と、その王ダビデとをたずね求め、終りの日におののいて、主とその恵みに向かって来る。
22105 28 4 1 イスラエルの人々よ、主の言葉を聞け。主はこの地に住む者と争われる。この地には真実がなく、愛情がなく、また神を知ることもないからである。
22106 28 4 2 ただのろいと、偽りと、人殺しと、盗みと、姦淫することのみで、人々は皆荒れ狂い、殺害に殺害が続いている。
22107 28 4 3 それゆえ、この地は嘆き、これに住む者はみな、野の獣も空の鳥も共に衰え、海の魚さえも絶えはてる。
22108 28 4 4 しかし、だれも争ってはならない、責めてはならない。祭司よ。わたしの争うのは、あなたと争うのだ。
22109 28 4 5 あなたは昼つまずき、預言者もまたあなたと共に夜つまずく。わたしはあなたの母を滅ぼす。
22110 28 4 6 わたしの民は知識がないために滅ぼされる。あなたは知識を捨てたゆえに、わたしもあなたを捨てて、わたしの祭司としない。あなたはあなたの神の律法を忘れたゆえに、わたしもまたあなたの子らを忘れる。
22111 28 4 7 彼らは大きくなるにしたがって、ますますわたしに罪を犯したゆえ、わたしは彼らの栄えを恥に変える。
22112 28 4 8 彼らはわが民の罪を食いものにし、その罪を犯すことをせつに願っている。
22113 28 4 9 それゆえ祭司も民と同じようになる。わたしはそのわざのために彼らを罰し、そのおこないのために彼らに報いる。
22114 28 4 10 彼らは食べても飽くことなく、淫行をなしてもその数を増すことがない。彼らは主を捨てて、淫行を愛したからである。
22115 28 4 11 酒と新しい酒とは思慮を奪う。
22116 28 4 12 わが民は木に向かって事を尋ねる。またそのつえは彼らに事を示す。これは淫行の霊が彼らを迷わしたからである。彼らはその神を捨てて淫行をなした。
22117 28 4 13 彼らは山々の頂で犠牲をささげ、丘の上、かしの木、柳の木、テレビンの木の下で供え物をささげる。これはその木陰がここちよいためである。それゆえ、あなたがたの娘は淫行をなし、あなたがたの嫁は姦淫を行う。
22118 28 4 14 わたしはあなたがたの娘が淫行をしても罰しない。またあなたがたの嫁が姦淫を行っても罰しない。男たちみずから遊女と共に離れ去り、宮の遊女と共に犠牲をささげているからである。悟りのない民は滅びる。
22119 28 4 15 イスラエルよ、あなたは淫行をなしても、ユダに罪を犯させてはならない。ギルガルへ行ってはならない。ベテアベンにのぼってはならない。また「主は生きておられる」と言って誓ってはならない。
22120 28 4 16 イスラエルは強情な雌牛のように強情である。今、主は小羊を広い野に放つようにして、彼らを養うことができようか。
22121 28 4 17 エフライムは偶像に結びつらなった。そのなすにまかせよ。
22122 28 4 18 彼らは酒宴のとりことなり、淫行にふけっている。彼らはその光栄よりも恥を愛する。
22123 28 4 19 風はその翼に彼らを包んだ。彼らはその祭壇のゆえに恥を受ける。
22124 28 5 1 祭司たちよ、これを聞け、イスラエルの家よ、心をとめよ、王の家よ、耳を傾けよ、さばきはあなたがたに臨む。あなたがたはミヅパにわなを設け、タボルの上に網を張ったからだ。
22125 28 5 2 彼らはシッテムの穴を深くしたが、わたしは彼らをことごとく懲らしめる。
22126 28 5 3 わたしはエフライムを知っている。イスラエルはわたしに隠れることがない。エフライムよ、あなたは今淫行をなし、イスラエルは汚された。
22127 28 5 4 彼らのおこないは彼らを神に帰らせない。それは淫行の霊が彼らのうちにあって、主を知ることができないからだ。
22128 28 5 5 イスラエルの誇はその顔に向かって証言している。エフライムはその不義によってつまずき、ユダもまた彼らと共につまずく。
22129 28 5 6 彼らは羊の群れ、牛の群れを携えて行って、主を求めても、主に会うことはない。主は彼らから離れ去られた。
22130 28 5 7 彼らは主にむかって貞操を守らず、ほかの者の子を産んだ。新月は彼らをその田畑と共に滅ぼす。
22131 28 5 8 ギベアで角笛を吹き、ラマでラッパを鳴らし、ベテアベンで呼ばわり叫べ。ベニヤミンよ、おののけ。
22132 28 5 9 エフライムは刑罰の日に荒れすたれる。わたしはイスラエルの部族のうちに、必ず起るべき事を知らせる。
22133 28 5 10 ユダの君たちは境を移す者のようになった。わたしはわが怒りを水のように彼らの上に注ぐ。
22134 28 5 11 エフライムは甘んじて、むなしいものに従って歩んだゆえ、さばきを受けて、しえたげられ、打ちひしがれる。
22135 28 5 12 それゆえ、わたしはエフライムには、しみのように、ユダの家には腐れのようになる。
22136 28 5 13 エフライムはおのれの病を見、ユダはおのれの傷を見たとき、エフライムはアッスリヤに行き、大王に人をつかわした。しかし彼はあなたがたをいやすことができない。また、あなたがたの傷をなおすことができない。
22137 28 5 14 わたしはエフライムに対しては、ししのようになり、ユダの家に対しては若きししのようになる。わたしは、わたしこそ、かき裂いて去り、かすめて行くが、だれも救う者はない。
22138 28 5 15 わたしは彼らがその罪を認めて、わが顔をたずね求めるまで、わたしの所に帰っていよう。彼らは悩みによって、わたしを尋ね求めて言う、
22139 28 6 1 「さあ、わたしたちは主に帰ろう。主はわたしたちをかき裂かれたが、またいやし、わたしたちを打たれたが、また包んでくださるからだ。
22140 28 6 2 主は、ふつかの後、わたしたちを生かし、三日目にわたしたちを立たせられる。わたしたちはみ前で生きる。
22141 28 6 3 わたしたちは主を知ろう、せつに主を知ることを求めよう。主はあしたの光のように必ず現れいで、冬の雨のように、わたしたちに臨み、春の雨のように地を潤される」。
22142 28 6 4 エフライムよ、わたしはあなたに何をしようか。ユダよ、わたしはあなたに何をしようか。あなたがたの愛はあしたの雲のごとく、また、たちまち消える露のようなものである。
22143 28 6 5 それゆえ、わたしは預言者たちによって彼らを切り倒し、わが口の言葉をもって彼らを殺した。わがさばきは現れ出る光のようだ。
22144 28 6 6 わたしはいつくしみを喜び、犠牲を喜ばない。燔祭よりもむしろ神を知ることを喜ぶ。
22145 28 6 7 ところが彼らはアダムで契約を破り、かしこでわたしにそむいた。
22146 28 6 8 ギレアデは悪を行う者の町で、血の足跡で満たされている。
22147 28 6 9 盗賊が人を待ち伏せするように、祭司たちは党を組み、シケムへ行く道で人を殺す。このように彼らは悪しき事を行う。
22148 28 6 10 わたしはイスラエルの家に恐るべき事を見た。かしこでエフライムは淫行をなし、イスラエルは汚された。
22149 28 6 11 ユダよ、あなたのためにも刈入れが定められている。
22150 28 7 1 わたしがイスラエルをいやすとき、エフライムの不義と、サマリヤの悪しきわざとは現れる。彼らは偽りをおこない、内では盗びとが押し入り、外では山賊の群れが襲いきたる。
22151 28 7 2 しかし、彼らはわたしが彼らのすべての悪を覚えていることを悟らない。今、そのわざは彼らを囲んで、わたしの顔の前にある。
22152 28 7 3 彼らはその悪をもって王を喜ばせ、その偽りをもって君たちを喜ばせる。
22153 28 7 4 彼らはみな姦淫を行う者で、パンを焼く者が熱くする炉のようだ。パンを焼く者は、ねり粉をこねてから、それがふくれるまで、しばらく、火をおこす事をしないだけだ。
22154 28 7 5 われわれの王の日に、つかさたちは酒の熱によって病みわずらい、王はあざける者と共に手を伸べた。
22155 28 7 6 彼らは陰謀をもってその心を炉のように燃やす。その怒りは夜通しくすぶり、朝になると炎のように燃える。
22156 28 7 7 彼らは皆、炉のように熱くなって、そのさばきびとを焼き滅ぼす。そのもろもろの王は皆たおれる。彼らの中にはわたしを呼ぶ者がひとりもない。
22157 28 7 8 エフライムはもろもろの民の中に入り混じる。エフライムは火にかけて、かえさない菓子である。
22158 28 7 9 他国人らは彼の力を食い尽すが、彼はそれを知らない。しらがが混じってはえても、それを悟らない。
22159 28 7 10 イスラエルの誇は自らに向かって証言している、彼らはこのもろもろの事があっても、なおその神、主に帰らず、また主を求めない。
22160 28 7 11 エフライムは知恵のない愚かな、はとのようだ。彼らはエジプトに向かって呼び求め、またアッスリヤへ行く。
22161 28 7 12 彼らが行くとき、わたしは彼らの上に網を張って、空の鳥のように引き落し、その悪しきおこないのゆえに、彼らを懲らしめる。
22162 28 7 13 わざわいなるかな、彼らはわたしを離れて迷い出た。滅びは彼らに臨む。彼らがわたしに向かって罪を犯したからだ。わたしは彼らをあがなおうと思うが、彼らはわたしに逆らって偽りを言う。
22163 28 7 14 彼らは真心をもってわたしを呼ばず、ただ床の上で悲しみ叫ぶ。彼らは穀物と酒のためには集まるが、わたしに逆らう。
22164 28 7 15 わたしは彼らを教え、その腕を強くしたが、彼らはわたしに逆らって、悪しき事をはかる。
22165 28 7 16 彼らはバアルに帰る。彼らはあざむく弓のようだ。彼らの君たちはその舌の高ぶりのために、つるぎに倒れる。これはエジプトの国で人々のあざけりとなる。
22166 28 8 1 ラッパをあなたの口にあてよ、はげたかは主の家に臨む。彼らがわたしの契約を破り、わたしの律法を犯したからだ。
22167 28 8 2 彼らはわたしに向かって叫ぶ、「わが神よ、われわれイスラエルはあなたを知る」と。
22168 28 8 3 イスラエルは善はしりぞけた。敵はこれを追うであろう。
22169 28 8 4 彼らは王を立てた、しかし、わたしによって立てたのではない。彼らは君を立てた、しかし、わたしはこれを知らない。彼らは銀と金をもって、自分たちの滅びのために偶像を造った。
22170 28 8 5 サマリヤよ、わたしはあなたの子牛を忌みきらう。わたしの怒りは彼らに向かって燃える。彼らはいつになればイスラエルで罪なき者となるであろうか。
22171 28 8 6 これは工人の作ったもので、神ではない。サマリヤの子牛は砕けて粉となる。
22172 28 8 7 彼らは風をまいて、つむじ風を刈り取る。立っている穀物は穂を持たず、また実らない。たとい実っても、他国人がこれを食い尽す。
22173 28 8 8 イスラエルはのまれた。彼らは諸国民の間にあって、すでに無用な器のようになった。
22174 28 8 9 彼らはひとりさまよう野のろばのように、アッスリヤにのぼって行った。エフライムは物を贈って恋人を得た。
22175 28 8 10 たとい彼らが国々に物を贈って同盟者を得ても、わたしはまもなく彼らを集める。彼らはしばらくにして、王や君たちに油をそそぐことをやめる。
22176 28 8 11 エフライムは多くの祭壇を造って罪を犯したゆえ、これは彼には罪を犯すための祭壇となった。
22177 28 8 12 わたしは彼のために、あまたの律法を書きしるしたが、これはかえって怪しい物のように思われた。
22178 28 8 13 彼らは犠牲を好み、肉をささげてこれを食べる。しかし主はこれを喜ばれない。今、彼らの不義を覚え、彼らの罪を罰せられる。彼らはエジプトに帰る。
22179 28 8 14 イスラエルは自分の造り主を忘れて、もろもろの宮殿を建てた。ユダは堅固な町々を多く増し加えた。しかしわたしは火をその町々に送って、もろもろの城を焼き滅ぼす。
22180 28 9 1 イスラエルよ、もろもろの民のように喜びおどるな。あなたは淫行をなして、あなたの神を離れ、すべての穀物の打ち場で受ける淫行の価を愛した。
22181 28 9 2 打ち場と酒ぶねとは彼らを養わない。また新しい酒もむなしくなる。
22182 28 9 3 彼らは主の地に住むことなく、エフライムはエジプトに帰り、アッスリヤで汚れた物を食べる。
22183 28 9 4 彼らは主に向かって酒を注がず、また犠牲をもって主を喜ばせず、彼らのパンは喪におる者のパンのようで、すべてこれを食べる者は汚される。彼らのパンはただ自分の飢えを満たすためで、主の家に、はいることはできない。
22184 28 9 5 あなたがたは祝の日と、主の祭の日に、何をしようとするのか。
22185 28 9 6 見よ、彼らはアッスリヤへ行く。エジプトは彼らを集め、メンピスは彼らを葬る。あざみは彼らの銀の宝物を所有し、いばらは彼らの天幕にはびこる。
22186 28 9 7 刑罰の日は来た。報いの日は来た。イスラエルはこれを知る。預言者は愚かな者、霊に感じた人は狂った者だ。これはあなたがたの不義が多く、恨みが大きいためである。
22187 28 9 8 預言者はわが神の民エフライムの見張人である。しかし預言者のすべての道には鳥をとる者のわながあり、恨みはその神の家にある。
22188 28 9 9 彼らはギベアの日のように、深くおのれを腐らせた。主はその不義を覚え、その罪を罰せられる。
22189 28 9 10 わたしはイスラエルを荒野のぶどうのように見、あなたがたの先祖たちを、いちじくの木の初めに結んだ初なりのように見た。ところが彼らはバアル・ペオルへ行き、身をバアルにゆだね、彼らが愛した物と同じように憎むべき者となった。
22190 28 9 11 エフライムの栄光は、鳥のようにとび去る。すなわち産むことも、はらむことも、みごもることもなくなる。
22191 28 9 12 たとい彼らが子を育てても、わたしはその子を奪って、残る者のないようにする。わたしが彼らを離れるとき、彼らはわざわいだ。
22192 28 9 13 わたしが見たように、エフライムの子らはえじきに定められた。エフライムはその子らを、人を殺す者に渡さなければならない。
22193 28 9 14 主よ、彼らに与えてください。あなたは何を与えられますか。流産の胎と、かわいた乳ぶさを彼らに与えてください。
22194 28 9 15 彼らのすべての悪はギルガルにある。わたしはかしこで彼らを憎んだ。彼らのおこないの悪しきがゆえに、彼らをわが家から追いだし、重ねて愛することをしない。その君たちはみな、反逆者である。
22195 28 9 16 エフライムは撃たれ、その根は枯れて、実を結ばない。たとい彼らが子を産んでも、わたしはそのいつくしむ子らを殺す。
22196 28 9 17 彼らは聞き従わないので、わが神はこれを捨てられる。彼らはもろもろの国民のうちに、さすらい人となる。
22197 28 10 1 イスラエルは実を結ぶ茂ったぶどうの木である。その実を多く結ぶにしたがって、祭壇を増し、その地の豊かなるにしたがって、柱の像を麗しくした。
22198 28 10 2 彼らの心は偽りである。今、彼らはその罪を負わなければならない。主はその祭壇をこわし、その柱の像を砕かれる。
22199 28 10 3 今、彼らは言う、「われわれは主を恐れないので、われわれには王がない。王はわれわれのために何をなしえようか」と。
22200 28 10 4 彼らはむなしき言葉をいだし、偽りの誓いをもって契約を結ぶ。それゆえ、さばきは畑のうねの毒草のように現れる。
22201 28 10 5 サマリヤの住民は、ベテアベンの子牛のためにおののき、その民はこれがために嘆き、その偶像に仕える祭司たちは、その栄光のうせたるがために泣き悲しむ。
22202 28 10 6 その子牛はアッスリヤに携えられ、礼物として大王にささげられ、エフライムは恥をうけ、イスラエルはおのれの偶像を恥じる。
22203 28 10 7 サマリヤの王は、水のおもての木切れのように滅ぼされる。
22204 28 10 8 イスラエルの罪であるアベンの高き所も滅び、いばらとあざみがその祭壇の上にはえ茂る。その時彼らは山に向かって、「われわれをおおえ」と言い、丘に向かって「われわれの上に倒れよ」と言う。
22205 28 10 9 イスラエルよ、あなたはギベアの日からこのかた罪を犯した。彼らはその所に立っていた。戦いはギベアにおる彼らに及ばないであろうか。
22206 28 10 10 わたしは来てよこしまな民を攻め、これを懲らしめる。彼らがその二つの罪のために懲しめられるとき、もろもろの民は集まって彼らを攻める。
22207 28 10 11 エフライムはならされた若い雌牛であって、穀物を踏むことを好む。わたしはその麗しい首を惜しんだ。しかし、わたしはエフライムにくびきをかける。ユダは耕し、ヤコブは自分のために、まぐわをひかねばならない。
22208 28 10 12 あなたがたは自分のために正義をまき、いつくしみの実を刈り取り、あなたがたの新田を耕せ。今は主を求むべき時である。主は来て救いを雨のように、あなたがたに降りそそがれる。
22209 28 10 13 あなたがたは悪を耕し、不義を刈りおさめ、偽りの実を食べた。これはあなたがたが自分の戦車を頼み、勇士の多いことを頼んだためである。
22210 28 10 14 それゆえ、あなたがたの民の中にいくさの騒ぎが起り、シャルマンが戦いの日にベテ・アルベルを打ち破ったように、あなたがたの城はことごとく打ち破られる。母らはその子らと共に打ち砕かれた。
22211 28 10 15 イスラエルの家よ、あなたがたの大いなる悪のゆえに、このように、あなたがたにも行われ、イスラエルの王は、あらしの中に全く滅ぼされる。
22212 28 11 1 わたしはイスラエルの幼い時、これを愛した。わたしはわが子をエジプトから呼び出した。
22213 28 11 2 わたしが呼ばわるにしたがって、彼らはいよいよわたしから遠ざかり、もろもろのバアルに犠牲をささげ、刻んだ像に香をたいた。
22214 28 11 3 わたしはエフライムに歩むことを教え、彼らをわたしの腕にいだいた。しかし彼らはわたしにいやされた事を知らなかった。
22215 28 11 4 わたしはあわれみの綱、すなわち愛のひもで彼らを導いた。わたしは彼らに対しては、あごから、くびきをはずす者のようになり、かがんで彼らに食物を与えた。
22216 28 11 5 彼らはエジプトの地に帰り、アッスリヤびとが彼らの王となる。彼らがわたしに帰ることを拒んだからである。
22217 28 11 6 つるぎは、そのもろもろの町にあれ狂い、その門の貫の木を砕き、その城の中に彼らを滅ぼす。
22218 28 11 7 わが民はわたしからそむき去ろうとしている。それゆえ、彼らはくびきをかけられ、これを除きうる者はひとりもいない。
22219 28 11 8 エフライムよ、どうして、あなたを捨てることができようか。イスラエルよ、どうしてあなたを渡すことができようか。どうしてあなたをアデマのようにすることができようか。どうしてあなたをゼボイムのように扱うことができようか。わたしの心は、わたしのうちに変り、わたしのあわれみは、ことごとくもえ起っている。
22220 28 11 9 わたしはわたしの激しい怒りをあらわさない。わたしは再びエフライムを滅ぼさない。わたしは神であって、人ではなく、あなたのうちにいる聖なる者だからである。わたしは滅ぼすために臨むことをしない。
22221 28 11 10 彼らは主に従って歩む。主はししのほえるように声を出される。主が声を出されると、子らはおののきつつ西から来る。
22222 28 11 11 彼らはエジプトから鳥のように、アッスリヤの地から、はとのように急いで来る。わたしは彼らをその家に帰らせると主は言われる。
22223 28 11 12 エフライムは偽りをもって、わたしを囲み、イスラエルの家は欺きをもって、わたしを囲んだ。しかしユダはなお神に知られ、聖なる者に向かって真実である。
22224 28 12 1 エフライムはひねもす風を牧し、東風を追い、偽りと暴虐とを増し加え、アッスリヤと取引をなし、油をエジプトに送った。
22225 28 12 2 主はユダと争い、ヤコブをそのしわざにしたがって罰し、そのおこないにしたがって報いられる。
22226 28 12 3 ヤコブは胎にいたとき、その兄弟のかかとを捕え、成人したとき神と争った。
22227 28 12 4 彼は天の使と争って勝ち、泣いてこれにあわれみを求めた。彼はベテルで神に出会い、その所で神は彼と語られた。
22228 28 12 5 主は万軍の神、その名は主である。
22229 28 12 6 それゆえ、あなたはあなたの神に帰り、いつくしみと正しきとを守り、つねにあなたの神を待ち望め。
22230 28 12 7 商人はその手に偽りのはかりを持ち、しえたげることを好む。
22231 28 12 8 エフライムは言った、「まことにわたしは富める者となった。わたしは自分ために財宝を得た」と。しかし彼のすべての富もその犯した罪をつぐなうことはできない。
22232 28 12 9 わたしはエジプトの国を出たときから、あなたの神、主である。わたしは祭の日のように、再びあなたを天幕に住まわせよう。
22233 28 12 10 わたしは預言者たちに語った。幻を多く示したのはわたしである。わたしは預言者たちによってたとえを語った。
22234 28 12 11 もしギレアデに不義があるなら、彼らは必ずむなしき者となる。もし彼らがギルガルで雄牛を犠牲にささげるなら、彼らの祭壇は畑のうねに積んだ石塚のようになる。
22235 28 12 12 (ヤコブはアラムの地に逃げっていった。イスラエルは妻をめとるために人に仕えた。彼は妻をめとるために羊を飼った。)
22236 28 12 13 主はひとりの預言者によって、イスラエルをエジプトから導き出し、ひとりの預言者によってこれを守られた。
22237 28 12 14 エフライムはいたく主を怒らせた。それゆえ主はその血のとがを彼の上にのこし、そのはずかしめを彼に返される。
22238 28 13 1 エフライムが物言えば、人々はおののいた。彼はイスラエルの中に自分を高くした。しかし彼はバアルによって罪を犯して死んだ。
22239 28 13 2 そして彼らは今もなおますます罪を犯し、その銀をもって自分のために像を鋳、巧みに偶像を造る。これは皆工人のわざである。彼らは言う、これに犠牲をささげよ、人々は子牛に口づけせよと。
22240 28 13 3 それゆえ彼らは朝の霧のように、すみやかに消えうせる露のように、打ち場から風に吹き去られるもみがらのように、また窓から出て行く煙のようになる。
22241 28 13 4 わたしはエジプトの国を出てからこのかた、あなたの神、主である。あなたはわたしのほかに神を知らない。わたしのほかに救う者はない。
22242 28 13 5 わたしは荒野で、またかわいた地で、あなたを知った。
22243 28 13 6 しかし彼らは食べて飽き、飽きて、その心が高ぶり、わたしを忘れた。
22244 28 13 7 それゆえ、わたしは彼らに向かって、ししのようになり、ひょうのように道のかたわらに潜んでうかがう。
22245 28 13 8 わたしは子を取られた熊のように彼らに出会って、その胸をかきさき、その所で、ししのようにこれを食い尽し、野の獣のようにこれをかき破る。
22246 28 13 9 イスラエルよ、わたしはあなたを滅ぼす。だれがあなたを助けることができよう。
22247 28 13 10 あなたを助けるあなたの王は今、どこにいるのか。あなたがかつて「わたしに王と君たちとを与えよ」と言ったあなたを保護すべき、すべてのつかさたちは今、どこにいるのか。
22248 28 13 11 わたしは怒りをもってあなたに王を与えた、また憤りをもってこれを奪い取った。
22249 28 13 12 エフライムの不義は包みおかれ、その罪は積みたくわえられてある。
22250 28 13 13 子を産む女の苦しみが彼に臨む。彼は知恵のない子である。生れる時が来ても彼は産門にあらわれない。
22251 28 13 14 わたしは彼らを陰府の力から、あがなうことがあろうか。彼らを死から、あがなうことがあろうか。死よ、おまえの災はどこにあるのか。陰府よ、おまえの滅びはどこにあるのか。あわれみは、わたしの目から隠されている。
22252 28 13 15 たとい彼は葦のように栄えても、東風が吹いて来る。主の風が荒野から吹き起る。これがためにその源はかれ、その泉はかわく。それはすべての尊い物の宝庫をかすめ奪う。
22253 28 13 16 サマリヤはその神にそむいたので、その罪を負い、つるぎに倒れ、その幼な子は投げ砕かれ、そのはらめる女は引き裂かれる。
22254 28 14 1 イスラエルよ、あなたの神、主に帰れ。あなたは自分の不義によって、つまずいたからだ。
22255 28 14 2 あなたがたは言葉を携えて、主に帰って言え、「不義はことごとくゆるして、よきものを受けいれてください。わたしたちは自分のくちびるの実をささげます。
22256 28 14 3 アッスリヤはわたしたちを助けず、わたしたちは馬に乗りません。わたしたちはもはや自分たちの手のわざに向かって『われわれの神』とは言いません。みなしごはあなたによって、あわれみを得るでしょう」。
22257 28 14 4 わたしは彼らのそむきをいやし、喜んでこれを愛する。わたしの怒りは彼らを離れ去ったからである。
22258 28 14 5 わたしはイスラエルに対しては露のようになる。彼はゆりのように花咲き、ポプラのように根を張り、
22259 28 14 6 その枝は茂りひろがり、その麗しさはオリブの木のように、そのかんばしさはレバノンのようになる。
22260 28 14 7 彼らは帰って来て、わが陰に住み、園のように栄え、ぶどうの木のように花咲き、そのかんばしさはレバノンの酒のようになる。
22261 28 14 8 エフライムよ、わたしは偶像となんの係わりがあろうか。あなたに答え、あなたを顧みる者はわたしである。わたしは緑のいとすぎのようだ。あなたはわたしから実を得る。
22262 28 14 9 知恵のある者はだれか。その人にこれらのことを悟らせよ。悟りある者はだれか。その人にこれらのことを知らせよ。主の道は直く、正しき者はこれを歩む。しかし罪びとはこれにつまずく。
22263 29 1 1 ペトエルの子ヨエルに臨んだ主の言葉。
22264 29 1 2 老人たちよ、これを聞け。すべてこの地に住む者よ、耳を傾けよ。あなたがたの世、またはあなたがたの先祖の世にこのような事があったか。
22265 29 1 3 これをあなたがたの子たちに語り、子たちはまたその子たちに語り、その子たちはまたこれを後の代に語り伝えよ。
22266 29 1 4 かみ食らういなごの残したものは、群がるいなごがこれを食い、群がるいなごの残したものは、とびいなごがこれを食い、とびいなごの残したものは、滅ぼすいなごがこれを食った。
22267 29 1 5 酔える者よ、目をさまして泣け。すべて酒を飲む者よ、うまい酒のゆえに泣き叫べ。うまい酒はあなたがたの口から断たれるからだ。
22268 29 1 6 一つの国民がわたしの国に攻めのぼってきた。その勢いは強く、その数は計られず、その歯はししの歯のようで、雌じしのきばをもっている。
22269 29 1 7 彼らはわがぶどうの木を荒し、わがいちじくの木を折り、その皮をはだかにして捨てた。その枝は白くなった。
22270 29 1 8 あなたがたは若い時の夫のために荒布を腰にまとったおとめのように泣き悲しめ。
22271 29 1 9 素祭と灌祭とは主の家に絶え、主に仕える祭司たちは嘆き悲しむ。
22272 29 1 10 畑は荒れ、地は悲しむ。これは穀物が荒れはて、新しい酒は尽き、油も絶えるためである。
22273 29 1 11 小麦および大麦のために、農夫たちよ、恥じよ、ぶどう作りたちよ、泣け。畑の収穫がうせ去ったからである。
22274 29 1 12 ぶどうの木は枯れ、いちじくの木はしおれ、ざくろ、やし、りんご、野のすべての木はしぼんだ。それゆえ楽しみは人の子らからかれうせた。
22275 29 1 13 祭司たちよ、荒布を腰にまとい、泣き悲しめ。祭壇に仕える者たちよ、泣け。神に仕える者たちよ、来て、荒布をまとい、夜を過ごせ。素祭も灌祭もあなたがたの神の家から退けられたからである。
22276 29 1 14 あなたがたは断食を聖別し、聖会を召集し、長老たちを集め、国の民をことごとくあなたがたの神、主の家に集め、主に向かって叫べ。
22277 29 1 15 ああ、その日はわざわいだ。主の日は近く、全能者からの滅びのように来るからである。
22278 29 1 16 われわれの目の前に食物は絶え、われわれの神の家から喜びと楽しみが絶えたではないか。
22279 29 1 17 種は土の下に朽ち、倉は荒れ、穀物がつきたので、穀倉はこわされる。
22280 29 1 18 いかに家畜はうめき鳴くか。牛の群れはさまよう。彼らには牧草がないからだ。羊の群れも滅びうせる。
22281 29 1 19 主よ、わたしはあなたに向かって呼ばわる。火が荒野の牧草を焼き滅ぼし、炎が野のすべての木を焼き尽したからである。
22282 29 1 20 野の獣もまたあなたに向かって呼ばわる。水の流れがかれはて、火が荒野の牧草を焼き滅ぼしたからである
22283 29 2 1 あなたがたはシオンでラッパを吹け。わが聖なる山で警報を吹きならせ。国の民はみな、ふるいわななけ。主の日が来るからである。それは近い。
22284 29 2 2 これは暗く、薄暗い日、雲の群がるまっくらな日である。多くの強い民が暗やみのようにもろもろの山をおおう。このようなことは昔からあったことがなく、後の代々の年にも再び起ることがないであろう。
22285 29 2 3 火は彼らの前を焼き、炎は彼らの後に燃える。彼らのこない前には、地はエデンの園のようであるが、その去った後は荒れ果てた野のようになる。これをのがれうるものは一つもない。
22286 29 2 4 そのかたちは馬のかたちのようであり、その走ることは軍馬のようである。
22287 29 2 5 山の頂でとびおどる音は、戦車のとどろくようである。また刈り株を焼く火の炎の音のようであり、戦いの備えをした強い軍隊のようである。
22288 29 2 6 その前にもろもろの民はなやみ、すべての顔は色を失う。
22289 29 2 7 彼らは勇士のように走り、兵士のように城壁によじ登る。彼らはおのおの自分の道を進んで行って、その道を踏みはずさない。
22290 29 2 8 彼らは互におしあわず、おのおのその道を進み行く。彼らは武器の中にとびこんでも、身をそこなわない。
22291 29 2 9 彼らは町にとび入り、城壁の上を走り、家々によじ登り、盗びとのように窓からはいる。
22292 29 2 10 地は彼らの前におののき、天はふるい、日も月も暗くなり、星はその光を失う。
22293 29 2 11 主はその軍勢の前で声をあげられる。その軍隊は非常に多いからである。そのみ言葉をなし遂げる者は強い。主の日は大いにして、はなはだ恐ろしいゆえ、だれがこれに耐えることができよう。
22294 29 2 12 主は言われる、「今からでも、あなたがたは心をつくし、断食と嘆きと、悲しみとをもってわたしに帰れ。
22295 29 2 13 あなたがたは衣服ではなく、心を裂け」。あなたがたの神、主に帰れ。主は恵みあり、あわれみあり、怒ることがおそく、いつくしみが豊かで、災を思いかえされるからである。
22296 29 2 14 神があるいは立ち返り、思いかえして祝福をその後に残し、素祭と灌祭とをあなたがたの神、主にささげさせられる事はないとだれが知るだろうか。
22297 29 2 15 シオンでラッパを吹きならせ。断食を聖別し、聖会を召集し、
22298 29 2 16 民を集め、会衆を聖別し、老人たちを集め、幼な子、乳のみ子を集め、花婿をその家から呼びだし、花嫁をそのへやから呼びだせ。
22299 29 2 17 主に仕える祭司たちは、廊と祭壇との間で泣いて言え、「主よ、あなたの民をゆるし、あなたの嗣業をもろもろの国民のうちに、そしりと笑い草にさせないでください。どうしてもろもろの国民に、『彼らの神はどこにいるのか』と言わせてよいでしょうか」。
22300 29 2 18 その時主は自分の地のために、ねたみを起し、その民をあわれまれた。
22301 29 2 19 主は答えて、その民に言われた、「見よ、わたしは穀物と新しい酒と油とをあなたがたに送る。あなたがたはこれを食べて飽きるであろう。わたしは重ねてあなたがたにもろもろの国民のうちでそしりを受けさせない。
22302 29 2 20 わたしは北から来る者をあなたがたから遠ざけ、これをかわいた荒れ地に追いやり、その前の者を東の海に、その後の者を西の海に追いやる。その臭いにおいは起り、その悪しきにおいは上る。これは大いなる事をしたからである。
22303 29 2 21 地よ恐るな、喜び楽しめ、主は大いなる事を行われたからである。
22304 29 2 22 野のもろもろの獣よ、恐るな。荒野の牧草はもえいで、木はその実を結び、いちじくの木とぶどうの木とは豊かに実る。
22305 29 2 23 シオンの子らよ、あなたがたの神、主によって喜び楽しめ。主はあなたがたを義とするために秋の雨を賜い、またあなたがたのために豊かに雨を降らせ、前のように、秋の雨と春の雨とを降らせられる。
22306 29 2 24 打ち場は穀物で満ち、石がめは新しい酒と油とであふれる。
22307 29 2 25 わたしがあなたがたに送った大軍、すなわち群がるいなご、とびいなご、滅ぼすいなご、かみ食らういなごの食った年をわたしはあなたがたに償う。
22308 29 2 26 あなたがたは、じゅうぶん食べて飽き、あなたがたに不思議なわざをなされたあなたがたの神、主のみ名をほめたたえる。わが民は永遠にはずかしめられることがない。
22309 29 2 27 あなたがたはイスラエルのうちにわたしのいることを知り、主なるわたしがあなたがたの神であって、ほかにないことを知る。わが民は永遠にはずかしめられることがない。
22310 29 2 28 その後わたしはわが霊をすべての肉なる者に注ぐ。あなたがたのむすこ、娘は預言をし、あなたがたの老人たちは夢を見、あなたがたの若者たちは幻を見る。
22311 29 2 29 その日わたしはまたわが霊をしもべ、はしために注ぐ。
22312 29 2 30 わたしはまた、天と地とにしるしを示す。すなわち血と、火と、煙の柱とがあるであろう。
22313 29 2 31 主の大いなる恐るべき日が来る前に、日は暗く、月は血に変る。
22314 29 2 32 すべて主の名を呼ぶ者は救われる。それは主が言われたように、シオンの山とエルサレムとに、のがれる者があるからである。その残った者のうちに、主のお召しになる者がある。
22315 29 3 1 見よ、わたしがユダとエルサレムとの幸福をもとに返すその日、その時、
22316 29 3 2 わたしは万国の民を集めて、これをヨシャパテの谷に携えくだり、その所でわが民、わが嗣業であるイスラエルのために彼らをさばく。彼らがわが民を諸国民のうちに散らして、わたしの地を分かち取ったからである。
22317 29 3 3 彼らはわが民をくじ引きにし、遊女のために少年をわたし、酒のために少女を売って飲んだ。
22318 29 3 4 ツロとシドンよ、ペリシテのすべての地方よ、おまえたちは、わたしとなんのかかわりがあるか。おまえたちはわたしに報復をしようとするのか。もしおまえたちがわたしに報復しようとするなら、わたしは時をうつさず、すみやかに、おまえたちのおこないの報復をおまえたちの頭上にこさせる。
22319 29 3 5 これはおまえたちがわたしの銀と金とをとり、わたしの貴重な宝をおまえたちの宮に携え行き、
22320 29 3 6 またユダの人々とエルサレムの人々とをギリシヤびとに売って、その本国から遠く離れさせたからである。
22321 29 3 7 見よ、わたしはおまえたちが売ったその所から彼らを起して、おまえたちのおこないの報復をおまえたちの頭上にこさせる。
22322 29 3 8 わたしはおまえたちのむすこ娘たちをユダの人々の手に売る。彼らはこれを遠い国びとであるシバびとに売ると、主は言われる」。
22323 29 3 9 もろもろの国民の中に宣べ伝えよ。戦いの備えをなし、勇士をふるい立たせ、兵士をことごとく近づかせ、のぼらせよ。
22324 29 3 10 あなたがたのすきを、つるぎに、あなたがたのかまを、やりに打ちかえよ。弱い者に「わたしは勇士である」と言わせよ。
22325 29 3 11 周囲のすべての国民よ、急ぎ来て、集まれ。主よ、あなたの勇士をかしこにお下しください。
22326 29 3 12 もろもろの国民をふるい立たせ、ヨシャパテの谷にのぼらせよ。わたしはそこに座して、周囲のすべての国民をさばく。
22327 29 3 13 かまを入れよ、作物は熟した。来て踏め、酒ぶねは満ち、石がめはあふれている。彼らの悪が大きいからだ。
22328 29 3 14 群衆また群衆は、さばきの谷におる。主の日がさばきの谷に近いからである。
22329 29 3 15 日も月も暗くなり、星もその光を失う。
22330 29 3 16 主はシオンから大声で叫び、エルサレムから声を出される。天も地もふるい動く。しかし主はその民の避け所、イスラエルの人々のとりでである。
22331 29 3 17 「そこであなたがたは知るであろう、わたしはあなたがたの神、主であって、わが聖なる山シオンに住むことを。エルサレムは聖所となり、他国人は重ねてその中を通ることがない。
22332 29 3 18 その日もろもろの山にうまい酒がしたたり、もろもろの丘は乳を流し、ユダのすべての川は水を流す。泉は主の家から出て、シッテムの谷を潤す。
22333 29 3 19 エジプトは荒れ地となり、エドムは荒野となる。彼らはその国でユダの人々をしえたげ、罪なき者の血を流したからである。
22334 29 3 20 しかしユダは永遠に人の住む所となり、エルサレムは世々に保つ。
22335 29 3 21 わたしは彼らに血の報復をなし、とがある者をゆるさない。主はシオンに住まわれる」。
22336 30 1 1 テコアの牧者のひとりであるアモスの言葉。これはユダの王ウジヤの世、イスラエルの王ヨアシの子ヤラベアムの世、地震の二年前に、彼がイスラエルについて示されたものである。
22337 30 1 2 彼は言った、「主はシオンからほえ、エルサレムから声を出される。牧者の牧場は嘆き、カルメルの頂は枯れる」。
22338 30 1 3 主はこう言われる、「ダマスコの三つのとが、四つのとがのために、わたしはこれを罰してゆるさない。これは彼らが鉄のすり板で、ギレアデを踏みにじったからである。
22339 30 1 4 わたしはハザエルの家に火を送り、ベネハダデのもろもろの宮殿を焼き滅ぼす。
22340 30 1 5 わたしはダマスコの貫の木を砕き、アベンの谷から住民を断ち、ベテエデンから王のつえをとる者を断つ。スリヤの民はキルに捕えられて行く」と主は言われる。
22341 30 1 6 主はこう言われる、「ガザの三つのとが、四つのとがのために、わたしはこれを罰してゆるさない。これは彼らが人々をことごとく捕えて行って、エドムに渡したからである。
22342 30 1 7 わたしはガザの石がきに火を送り、そのもろもろの宮殿を焼き滅ぼす。
22343 30 1 8 わたしはアシドドから住民を断ち、アシケロンから王のつえをとる者を断つ。わたしはまた手をかえしてエクロンを撃つ。そして残ったペリシテびとも滅びる」と主なる神は言われる。
22344 30 1 9 主はこう言われる、「ツロの三つのとが、四つのとがのために、わたしはこれを罰してゆるさない。これは彼らが人々をことごとくエドムに渡し、また兄弟の契約を心に留めなかったからである。
22345 30 1 10 それゆえ、わたしはツロの石がきに火を送り、そのもろもろの宮殿を焼き滅ぼす」。
22346 30 1 11 主はこう言われる、「エドムの三つのとが、四つのとがのために、わたしはこれを罰してゆるさない。これは彼がつるぎをもってその兄弟を追い、全くあわれみの情を断ち、常に怒って、人をかき裂き、ながくその憤りを保ったからである。
22347 30 1 12 それゆえ、わたしはテマンに火を送り、ボズラのもろもろの宮殿を焼き滅ぼす」。
22348 30 1 13 主はこう言われる、「アンモンの人々の三つのとが、四つのとがのために、わたしはこれを罰してゆるさない。これは彼らがその国境を広げるために、ギレアデのはらんでいる女をひき裂いたからである。
22349 30 1 14 それゆえ、わたしはラバの石がきに火をはなち、そのもろもろの宮殿を焼き滅ぼす。これは戦いの日に、ときの声をもってせられ、つむじ風の日に、暴風をもってせられる。
22350 30 1 15 彼らの王はそのつかさたちと共に捕えられて行く」と主は言われる。
22351 30 2 1 主はこう言われる、「モアブの三つのとが、四つのとがのために、わたしはこれを罰してゆるさない。これは彼がエドムの王の骨を焼いて灰にしたからである。
22352 30 2 2 それゆえ、わたしはモアブに火を送り、ケリオテのもろもろの宮殿を焼き滅ぼす。モアブは騒ぎと、ときの声と、ラッパの音の中に死ぬ。
22353 30 2 3 わたしはそのうちから、支配者を断ち、そのすべてのつかさを彼と共に殺す」と主は言われる。
22354 30 2 4 主はこう言われる、「ユダの三つのとが、四つのとがのために、わたしはこれを罰してゆるさない。これは彼らが主の律法を捨て、その定めを守らず、その先祖たちが従い歩いた偽りの物に惑わされたからである。
22355 30 2 5 それゆえ、わたしはユダに火を送り、エルサレムのもろもろの宮殿を焼き滅ぼす」。
22356 30 2 6 主はこう言われる、「イスラエルの三つのとが、四つのとがのために、わたしはこれを罰してゆるさない。これは彼らが正しい者を金のために売り、貧しい者をくつ一足のために売るからである。
22357 30 2 7 彼らは弱い者の頭を地のちりに踏みつけ、苦しむ者の道をまげ、また父子ともにひとりの女のところへ行って、わが聖なる名を汚す。
22358 30 2 8 彼らはすべての祭壇のかたわらに質に取った衣服を敷いて、その上に伏し、罰金をもって得た酒を、その神の家で飲む。
22359 30 2 9 さきにわたしはアモリびとを彼らの前から滅ぼした。これはその高きこと、香柏のごとく、その強きこと、かしの木のようであったが、わたしはその上の実と、下の根とを滅ぼした。
22360 30 2 10 わたしはまた、あなたがたをエジプトの地から連れ上り、四十年のあいだ荒野で、あなたがたを導き、アモリびとの地を獲させた。
22361 30 2 11 わたしはあなたがたの子らのうちから預言者を起し、あなたがたの若者のうちからナジルびとを起した。イスラエルの人々よ、そうではないか」と主は言われる。
22362 30 2 12 「ところがあなたがたはナジルびとに酒を飲ませ、預言者に命じて『預言するな』と言う。
22363 30 2 13 見よ、わたしは麦束をいっぱい積んだ車が物を圧するように、あなたがたをその所で圧する。
22364 30 2 14 速く走る者も逃げ場を失い、強い者もその力をふるうことができず、勇士もその命を救うことができない。
22365 30 2 15 弓をとる者も立つことができず、足早の者も自分を救うことができず、馬に乗る者もその命を救うことができない。
22366 30 2 16 勇士のうちの雄々しい心の者もその日には裸で逃げる」と主は言われる。
22367 30 3 1 イスラエルの人々よ、主があなたがたに向かって言われたこと、わたしがエジプトの地から導き上った全家に向かって言ったこの言葉を聞け。
22368 30 3 2 「地のもろもろのやからのうちで、わたしはただ、あなたがただけを知った。それゆえ、わたしはあなたがたのもろもろの罪のため、あなたがたを罰する。
22369 30 3 3 ふたりの者がもし約束しなかったなら、一緒に歩くだろうか。
22370 30 3 4 ししがもし獲物がなかったなら、林の中でほえるだろうか。若いししがもし物をつかまなかったなら、その穴から声を出すだろうか。
22371 30 3 5 もしわながなかったなら、鳥は地に張った網にかかるだろうか。網にもし何もかからなかったなら、地からとびあがるだろうか。
22372 30 3 6 町でラッパが鳴ったなら、民は驚かないだろうか。主がなされるのでなければ、町に災が起るだろうか。
22373 30 3 7 まことに主なる神はそのしもべである預言者にその隠れた事を示さないでは、何事をもなされない。
22374 30 3 8 ししがほえる、だれが恐れないでいられよう。主なる神が語られる、だれが預言しないでいられよう」。
22375 30 3 9 アッスリヤにあるもろもろの宮殿、エジプトの地にあるもろもろの宮殿に宣べて言え、「サマリヤの山々に集まり、そのうちにある大いなる騒ぎと、その中で行われる暴虐とを見よ」と。
22376 30 3 10 主は言われる、「彼らは正義を行うことを知らず、しえたげ取った物と奪い取った物とをそのもろもろの宮殿にたくわえている」。
22377 30 3 11 それゆえ主なる神はこう言われる、「敵がきて、この国を囲み、あなたの防備をあなたから取り除き、あなたのもろもろの宮殿はかすめられる」。
22378 30 3 12 主はこう言われる、「羊飼がししの口から、羊の両足、あるいは片耳を取り返すように、サマリヤに住むイスラエルの人々も、長いすのすみや、寝台の一部を携えて救われるであろう」。
22379 30 3 13 万軍の神、主なる神は言われる、「聞け、そしてヤコブの家に証言せよ。
22380 30 3 14 わたしはイスラエルのもろもろのとがを罰する日にベテルの祭壇を罰する。その祭壇の角は折れて、地に落ちる。
22381 30 3 15 わたしはまた冬の家と夏の家とを撃つ、象牙の家は滅び、大いなる家は消えうせる」と主は言われる。
22382 30 4 1 「バシャンの雌牛どもよ、この言葉を聞け。あなたがたはサマリヤの山におり、弱い者をしえたげ、貧しい者を圧迫し、またその主人に向かって、『持ってきて、わたしたちに飲ませよ』と言う。
22383 30 4 2 主なる神はご自分の聖なることによって誓われた、見よ、あなたがたの上にこのような時が来る。その時、人々はあなたがたをつり針にかけ、あなたがたの残りの者を魚つり針にかけて引いて行く。
22384 30 4 3 あなたがたはおのおのまっすぐに石がきの破れた所を出て、ハルモンに追いやられる」と主は言われる。
22385 30 4 4 「あなたがたはベテルへ行って罪を犯し、ギルガルへ行って、とがを増し加えよ。朝ごとに、あなたがたの犠牲を携えて行け、三日ごとに、あなたがたの十分の一を携えて行け。
22386 30 4 5 種を入れたパンの感謝祭をささげ、心よりの供え物をふれ示せ。イスラエルの人々よ、あなたがたはこのようにするのを好んでいる」と主なる神は言われる。
22387 30 4 6 「わたしはまた、あなたがたのすべての町であなたがたの歯を清くし、あなたがたのすべての所でパンを乏しくした。それでも、あなたがたはわたしに帰らなかった」と主は言われる。
22388 30 4 7 「わたしはまた、刈入れまでなお三月あるのに雨をとどめて、あなたがたの上にくださず、この町には雨を降らし、かの町には雨を降らさず、この畑は雨をえ、かの畑は雨をえないで枯れた。
22389 30 4 8 そこで二つ三つの町が一つの町によろめいて行って、水を飲んでも、飽くことができなかった。それでも、あなたがたはわたしに帰らなかった」と主は言われる。
22390 30 4 9 「わたしは立ち枯れと腐り穂とをもってあなたがたを撃ち、あなたがたの園と、ぶどう畑とを荒した。いちじくの木とオリブの木とは、いなごが食った。それでも、あなたがたはわたしに帰らなかった」と主は言われる。
22391 30 4 10 「わたしはエジプトにしたようにあなたがたのうちに疫病を送り、つるぎをもってあなたがたの若者を殺し、あなたがたの馬を奪い去り、あなたがたの宿営の臭気を上らせて、あなたがたの鼻をつかせた。それでも、あなたがたはわたしに帰らなかった」と主は言われる。
22392 30 4 11 「わたしはあなたがたのうちの町を神がソドムとゴモラを滅ぼされた時のように滅ぼしたので、あなたがたは炎の中から取り出された燃えさしのようであった。それでも、あなたがたはわたしに帰らなかった」と主は言われる。
22393 30 4 12 「それゆえイスラエルよ、わたしはこのようにあなたに行う。わたしはこれを行うゆえ、イスラエルよ、あなたの神に会う備えをせよ」。
22394 30 4 13 見よ、彼は山を造り、風を創造し、人にその思いのいかなるかを示し、また、あけぼのを変えて暗やみとなし、地の高い所を踏まれる者、その名を万軍の神、主と言う。
22395 30 5 1 イスラエルの家よ、わたしが悲しみの歌をもって、あなたがたについて宣べるこの言葉を聞け、
22396 30 5 2 「おとめイスラエルは倒れて、また起き上がらず、彼女はおのれの地に投げ倒されてこれを起す者がない」。
22397 30 5 3 主なる神はこう言われる、「イスラエルの家では、千人出た町は百人残り、百人出た町は十人残る」。
22398 30 5 4 主はイスラエルの家にこう言われる、「あなたがたはわたしを求めよ、そして生きよ。
22399 30 5 5 ベテルを求めるな、ギルガルに行くな。ベエルシバにおもむくな。ギルガルは必ず捕えられて行き、ベテルは無に帰するからである」。
22400 30 5 6 あなたがたは主を求めよ、そして生きよ。さもないと主は火のようにヨセフの家に落ち下られる。火はこれを焼くが、ベテルのためにこれを消す者はひとりもない。
22401 30 5 7 あなたがた、公道をにがよもぎに変え、正義を地に投げ捨てる者よ。
22402 30 5 8 プレアデスおよびオリオンを造り、暗黒を朝に変じ、昼を暗くして夜となし、海の水を呼んで、地のおもてに注がれる者、その名は主という。
22403 30 5 9 主は滅びをたちまち強い者に臨ませられるので、滅びはついに城に臨む。
22404 30 5 10 彼らは門にいて戒める者を憎み、真実を語る者を忌みきらう。
22405 30 5 11 あなたがたは貧しい者を踏みつけ、彼から麦の贈り物をとるゆえ、あなたがたは切り石の家を建てても、その中に住むことはできない。美しいぶどう畑を作っても、その酒を飲むことはできない。
22406 30 5 12 わたしは知る、あなたがたのとがは多く、あなたがたの罪は大きいからである。あなたがたは正しい者をしえたげ、まいないを取り、門で貧しい者を退ける。
22407 30 5 13 それゆえ、このような時には賢い者は沈黙する、これは悪い時だからである。
22408 30 5 14 善を求めよ、悪を求めるな。そうすればあなたがたは生きることができる。またあなたがたが言うように、万軍の神、主はあなたがたと共におられる。
22409 30 5 15 悪を憎み、善を愛し、門で公義を立てよ。万軍の神、主は、あるいはヨセフの残りの者をあわれまれるであろう。
22410 30 5 16 それゆえ、主なる万軍の神、主はこう言われる、「すべての広場で泣くことがあろう。すべてのちまたで人々は『悲しいかな、悲しいかな』と言う。また彼らは農夫を呼んできて嘆かせ、巧みな泣き女を招いて泣かせ、
22411 30 5 17 またすべてのぶどう畑にも泣くことがあろう。それはわたしがあなたがたの中を通るからである」と主は言われる。
22412 30 5 18 わざわいなるかな、主の日を望む者よ、あなたがたは何ゆえ主の日を望むのか。これは暗くて光がない。
22413 30 5 19 人がししの前を逃れてもくまに出会い、また家にはいって、手を壁につけると、へびにかまれるようなものである。
22414 30 5 20 主の日は暗くて、光がなく、薄暗くて輝きがないではないか。
22415 30 5 21 わたしはあなたがたの祭を憎み、かつ卑しめる。わたしはまた、あなたがたの聖会を喜ばない。
22416 30 5 22 たといあなたがたは燔祭や素祭をささげても、わたしはこれを受けいれない。あなたがたの肥えた獣の酬恩祭はわたしはこれを顧みない。
22417 30 5 23 あなたがたの歌の騒がしい音をわたしの前から断て。あなたがたの琴の音は、わたしはこれを聞かない。
22418 30 5 24 公道を水のように、正義をつきない川のように流れさせよ。
22419 30 5 25 「イスラエルの家よ、あなたがたは四十年の間、荒野でわたしに犠牲と供え物をささげたか。
22420 30 5 26 かえってあなたがたの王シクテをにない、あなたがたが自分で作ったあなたがたの偶像、星の神、キウンをになった。
22421 30 5 27 それゆえわたしはあなたがたをダマスコのかなたに捕え移す」と、その名を万軍の神ととなえられる主は言われる。
22422 30 6 1 「わざわいなるかな、安らかにシオンにいる者、また安心してサマリヤの山にいる者、諸国民のかしらのうちの著名な人々で、イスラエルの家がきて従う者よ。
22423 30 6 2 カルネに渡って見よ。そこから大ハマテに行き、またペリシテびとのガテに下って見よ。彼らはこれらの国にまさっているか。彼らの土地はあなたがたの土地よりも大きいか。
22424 30 6 3 あなたがたは災の日を遠ざけ、強暴の座を近づけている。
22425 30 6 4 わざわいなるかな、みずから象牙の寝台に伏し、長いすの上に身を伸ばし、群れのうちから小羊を取り、牛舎のうちから子牛を取って食べ、
22426 30 6 5 琴の音に合わせて歌い騒ぎ、ダビデのように楽器を造り出し、
22427 30 6 6 鉢をもって酒を飲み、いとも尊い油を身にぬり、ヨセフの破滅を悲しまない者たちよ。
22428 30 6 7 それゆえ今、彼らは捕われて、捕われ人のまっ先に立って行く。そしてかの身を伸ばした者どもの騒ぎはやむであろう」。
22429 30 6 8 主なる神はおのれによって誓われた、(万軍の神、主は言われる、)「わたしはヤコブの誇を忌みきらい、そのもろもろの宮殿を憎む。わたしはこの町とすべてその中にいる者を渡す」。
22430 30 6 9 一つの家に十人の者が残っていても、彼らは死に、
22431 30 6 10 そしてその親戚、すなわちこれを焼く者は、骨を家から運びだすために、これを取り上げ、またその家の奥にいる者に向かって、「まだあなたと共にいる者があるか」と言い、「ない」との答がある時、かの人はまた「声を出すな、主の名をとなえるな」と言うであろう。
22432 30 6 11 見よ、主は命じて、大きな家を撃って、みじんとなし、小さな家を撃って、切れ切れとされる。
22433 30 6 12 馬は岩の上を走るだろうか。人は牛で海を耕すだろうか。ところがあなたがたは公道を毒に変じ、正義の実をにがよもぎに変じた。
22434 30 6 13 あなたがたはロデバルを喜び、「われわれは自分の力でカルナイムを得たではないか」と言う。
22435 30 6 14 それゆえ、万軍の神、主は言われる、「イスラエルの家よ、見よ、わたしは一つの国民を起して、あなたがたに敵対させる。彼らはハマテの入口からアラバの川まであなたがたを悩ます」。
22436 30 7 1 主なる神はこのようにわたしに示された。見よ、二番草のはえ出る初めに主は、いなごを造られた。見よ、その二番草は王の刈った後に、はえたものである。
22437 30 7 2 そのいなごが地の青草を食い尽した時、わたしは言った、「主なる神よ、どうぞ、ゆるしてください。ヤコブは小さい者です、どうして立つことができましょう」。
22438 30 7 3 主はこのことについて思いかえされ、「このことは起さない」と主は言われた。
22439 30 7 4 主なる神はこのようにわたしに示された。見よ、主なる神はさばきのために火を呼ばれた。火は大淵を焼き、また地を焼こうとした。
22440 30 7 5 その時わたしは言った、「主なる神よ、どうぞ、やめてください。ヤコブは小さい者です、どうして立つことができましょう」。
22441 30 7 6 主はこのことについて思いかえされ、「このこともまた起さない」と主なる神は言われた。
22442 30 7 7 また主はわたしに示された。見よ、主は測りなわをもって築いた石がきの上に立ち、その手に測りなわをもっておられた。
22443 30 7 8 そして主はわたしに言われた、「アモスよ、あなたは何を見るか」。「測りなわ」とわたしが答えると、主はまた言われた、「見よ、わたしは測りなわをわが民イスラエルの中に置く。わたしはもはや彼らを見過しにしない。
22444 30 7 9 イサクの高き所は荒され、イスラエルの聖所は荒れはてる。わたしはつるぎをもってヤラベアムの家に立ち向かう」。
22445 30 7 10 時にベテルの祭司アマジヤは、イスラエルの王ヤラベアムに人をつかわして言う、「イスラエルの家のただ中で、アモスはあなたにそむきました。この地は彼のもろもろの言葉に耐えることができません。
22446 30 7 11 アモスはこのように言っています、『ヤラベアムはつるぎによって死ぬ、イスラエルは必ず捕えられて行って、その国を離れる』と」。
22447 30 7 12 それからアマジヤはアモスに言った、「先見者よ、行ってユダの地にのがれ、かの地でパンを食べ、かの地で預言せよ。
22448 30 7 13 しかしベテルでは二度と預言してはならない。ここは王の聖所、国の宮だから」。
22449 30 7 14 アモスはアマジヤに答えた、「わたしは預言者でもなく、また預言者の子でもない。わたしは牧者である。わたしはいちじく桑の木を作る者である。
22450 30 7 15 ところが主は群れに従っている所からわたしを取り、『行って、わが民イスラエルに預言せよ』と、主はわたしに言われた。
22451 30 7 16 それゆえ今、主の言葉を聞け。あなたは言う、『イスラエルに向かって預言するな、イサクの家に向かって語るな』と。
22452 30 7 17 それゆえ、主はこう言われる、『あなたの妻は町で遊女となり、あなたのむすこ、娘たちはつるぎに倒れ、あなたの地は測りなわで分かたれる。そしてあなたは汚れた地で死に、イスラエルは必ず捕えられて行って、その国を離れる』」。
22453 30 8 1 主なる神は、このようにわたしに示された。見よ、ひとかごの夏のくだものがある。
22454 30 8 2 主は言われた、「アモスよ、あなたは何を見るか」。わたしは「ひとかごの夏のくだもの」と答えた。すると主はわたしに言われた、「わが民イスラエルの終りがきた。わたしは再び彼らを見過しにしない。
22455 30 8 3 その日には宮の歌は嘆きに変り、しかばねがおびただしく、人々は無言でこれを至る所に投げ捨てる」と主なる神は言われる。
22456 30 8 4 あなたがた、貧しい者を踏みつけ、また国の乏しい者を滅ぼす者よ、これを聞け。
22457 30 8 5 あなたがたは言う、「新月はいつ過ぎ去るだろう、そうしたら、われわれは穀物を売ろう。安息日はいつ過ぎ去るだろう、そうしたら、われわれは麦を売り出そう。われわれはエパを小さくし、シケルを大きくし、偽りのはかりをもって欺き、
22458 30 8 6 乏しい者を金で買い、貧しい者をくつ一足で買いとり、また、くず麦を売ろう」。
22459 30 8 7 主はヤコブの誇をさして誓われた、「わたしは必ず彼らのすべてのわざをいつまでも忘れない。
22460 30 8 8 これがために地は震わないであろうか。地に住む者はみな嘆かないであろうか。地はみなナイル川のようにわきあがり、エジプトのナイル川のようにみなぎって、また沈まないであろうか」。
22461 30 8 9 主なる神は言われる、「その日には、わたしは真昼に太陽を沈ませ、白昼に地を暗くし、
22462 30 8 10 あなたがたの祭を嘆きに変らせ、あなたがたの歌をことごとく悲しみの歌に変らせ、すべての人に荒布を腰にまとわせ、すべての人に髪をそり落させ、その日を、ひとり子を失った喪中のようにし、その終りを、苦い日のようにする」。
22463 30 8 11 主なる神は言われる、「見よ、わたしがききんをこの国に送る日が来る、それはパンのききんではない、水にかわくのでもない、主の言葉を聞くことのききんである。
22464 30 8 12 彼らは海から海へさまよい歩き、主の言葉を求めて、こなたかなたへはせまわる、しかしこれを得ないであろう。
22465 30 8 13 その日には美しいおとめも、若い男もかわきのために気を失う。
22466 30 8 14 かのサマリヤのアシマをさして誓い、『ダンよ、あなたの神は生きている』と言い、また『ベエルシバの道は生きている』と言う者どもは必ず倒れる。再び起きあがることはない」。
22467 30 9 1 わたしは祭壇のかたわらに立っておられる主を見た。主は言われた、「柱の頭を打って、敷居を震わせ、これを打ち砕いて、すべての民の頭の上に落ちかからせよ。その残った者を、わたしはつるぎで殺し、そのひとりも逃げおおす者はなく、のがれうる者はない。
22468 30 9 2 たとい彼らは陰府に掘り下っても、わたしの手はこれをそこから引き出す。たとい彼らは天によじのぼっても、わたしはそこからこれを引きおろす。
22469 30 9 3 たとい彼らはカルメルの頂に隠れても、わたしはこれを捜して、そこから引き出す。たとい彼らはわたしの目をのがれて、海の底に隠れても、わたしはへびに命じて、その所でこれをかませる。
22470 30 9 4 たとい彼らは捕われて、その敵の前に行っても、わたしはその所でつるぎに命じて、これを殺させる。わたしは彼らの上にわたしの目を注ぐ、それは災のためであって、幸のためではない」。
22471 30 9 5 万軍の神、主が地に触れられると、地は溶け、その中に住む者はみな嘆き、地はみなナイル川のようにわきあがり、エジプトのナイル川のようにまた沈む。
22472 30 9 6 主はご自分の高殿を天に築き、大空の基を地の上にすえ、海の水を呼んで、地のおもてに注がれる。その名は主ととなえられる。
22473 30 9 7 主は言われる、「イスラエルの子らよ、あなたがたはわたしにとってエチオピヤびとのようではないか。わたしはイスラエルをエジプトの国から、ペリシテびとをカフトルから、スリヤびとをキルから導き上ったではないか。
22474 30 9 8 見よ、主なる神の目はこの罪を犯した国の上に注がれている。わたしはこれを地のおもてから断ち滅ぼす。しかし、わたしはヤコブの家をことごとくは滅ぼさない」と主は言われる。
22475 30 9 9 「見よ、わたしは命じて、人がふるいで物をふるうように、わたしはイスラエルの家を万国民のうちでふるう。ひと粒も地に落ちることはない。
22476 30 9 10 わが民の罪びと、すなわち『災はわれわれに近づかない、われわれに臨まない』と言う者どもはみな、つるぎで殺される。
22477 30 9 11 その日には、わたしはダビデの倒れた幕屋を興し、その破損を繕い、そのくずれた所を興し、これを昔の時のように建てる。
22478 30 9 12 これは彼らがエドムの残った者、およびわが名をもって呼ばれるすべての国民を所有するためである」とこの事をなされる主は言われる。
22479 30 9 13 主は言われる、「見よ、このような時が来る。その時には、耕す者は刈る者に相継ぎ、ぶどうを踏む者は種まく者に相継ぐ。もろもろの山にはうまい酒がしたたり、もろもろの丘は溶けて流れる。
22480 30 9 14 わたしはわが民イスラエルの幸福をもとに返す。彼らは荒れた町々を建てて住み、ぶどう畑を作ってその酒を飲み、園を作ってその実を食べる。
22481 30 9 15 わたしは彼らをその地に植えつける。彼らはわたしが与えた地から再び抜きとられることはない」とあなたの神、主は言われる。
22482 31 1 1 オバデヤの幻。主なる神はエドムについてこう言われる、われわれは主から出たおとずれを聞いた。ひとりの使者が諸国民のうちにつかわされて言う、「立てよ、われわれは立ってエドムと戦おう」。
22483 31 1 2 見よ、わたしはあなたを国々のうちで小さい者とする。あなたはひどく卑しめられる。
22484 31 1 3 岩のはざまにおり、高い所に住む者よ、あなたの心の高ぶりは、あなたを欺いた。あなたは心のうちに言う、「だれがわたしを地に引き下らせる事ができるか」。
22485 31 1 4 たといあなたは、わしのように高くあがり、星の間に巣を設けても、わたしはそこからあなたを引きおろすと主は言われる。
22486 31 1 5 もし盗びとがあなたの所に来、強盗が夜きても、彼らは、ほしいだけ盗むではないか。ああ、あなたは全く滅ぼされてしまう。もしぶどうを集める者があなたの所に来たなら、彼らはなお余りの実を残さないであろうか。
22487 31 1 6 ああ、エサウはかすめられ、その隠しておいた宝は探り出される。
22488 31 1 7 あなたと契約を結んだ人々はみな、あなたを欺き、あなたを国境に追いやった。あなたと同盟を結んだ人々はあなたに勝った。あなたの信頼する友はあなたの下にわなを設けた、しかしその事を悟らない。
22489 31 1 8 主は言われる、その日には、わたしはエドムから知者を滅ぼし、エサウの山から悟りを断ち除かないだろうか。
22490 31 1 9 テマンよ、あなたの勇士は驚き恐れる。人はみな殺されてエサウの山から断ち除かれる。
22491 31 1 10 あなたはその兄弟ヤコブに暴虐を行ったので、恥はあなたをおおい、あなたは永遠に断たれる。
22492 31 1 11 あなたが離れて立っていた日、すなわち異邦人がその財宝を持ち去り、外国人がその門におし入り、エルサレムをくじ引きにした日、あなたも彼らのひとりのようであった。
22493 31 1 12 しかしあなたは自分の兄弟の日、すなわちその災の日をながめていてはならなかった。あなたはユダの人々の滅びの日に、これを喜んではならず、その悩みの日に誇ってはならなかった。
22494 31 1 13 あなたはわが民の災の日に、その門にはいってはならず、その災の日にその苦しみをながめてはならなかった。またその災の日に、その財宝に手をかけてはならなかった。
22495 31 1 14 あなたは分れ道に立って、そののがれる者を切ってはならなかった。あなたは悩みの日にその残った者を敵にわたしてはならなかった。
22496 31 1 15 主の日が万国の民に臨むのは近い。あなたがしたようにあなたもされる。あなたの報いはあなたのこうべに帰する。
22497 31 1 16 あなたがたがわが聖なる山で飲んだように、周囲のもろもろの民も飲む。すなわち彼らは飲んでよろめき、かつてなかったようになる。
22498 31 1 17 しかしシオンの山には、のがれる者がいて、聖なる所となる。またヤコブの家はその領地を獲る。
22499 31 1 18 ヤコブの家は火となり、ヨセフの家は炎となり、エサウの家はわらとなる。彼らはその中に燃えて、これを焼く。エサウの家には残る者がないようになると主は言われた。
22500 31 1 19 ネゲブの人々はエサウの山を獲、セフェラの人々はペリシテびとを獲る。また彼らはエフライムの地、およびサマリヤの地を獲、ベニヤミンはギレアデを獲る。
22501 31 1 20 ハラにいるイスラエルの人々の捕われ人は、フェニキヤをザレパテまで取り、セパラデにいるエルサレムの捕われ人は、ネゲブの町々を獲る。
22502 31 1 21 こうして救う者はシオンの山に上って、エサウの山を治める。そして王国は主のものとなる。
22503 32 1 1 主の言葉がアミッタイの子ヨナに臨んで言った、
22504 32 1 2 「立って、あの大きな町ニネベに行き、これに向かって呼ばわれ。彼らの悪がわたしの前に上ってきたからである」。
22505 32 1 3 しかしヨナは主の前を離れてタルシシへのがれようと、立ってヨッパに下って行った。ところがちょうど、タルシシへ行く船があったので、船賃を払い、主の前を離れて、人々と共にタルシシへ行こうと船に乗った。
22506 32 1 4 時に、主は大風を海の上に起されたので、船が破れるほどの激しい暴風が海の上にあった。
22507 32 1 5 それで水夫たちは恐れて、めいめい自分の神を呼び求め、また船を軽くするため、その中の積み荷を海に投げ捨てた。しかし、ヨナは船の奥に下り、伏して熟睡していた。
22508 32 1 6 そこで船長は来て、彼に言った、「あなたはどうして眠っているのか。起きて、あなたの神に呼ばわりなさい。神があるいは、われわれを顧みて、助けてくださるだろう」。
22509 32 1 7 やがて人々は互に言った、「この災がわれわれに臨んだのは、だれのせいか知るために、さあ、くじを引いてみよう」。そして彼らが、くじを引いたところ、くじはヨナに当った。
22510 32 1 8 そこで人々はヨナに言った、「この災がだれのせいで、われわれに臨んだのか、われわれに告げなさい。あなたの職業は何か。あなたはどこから来たのか。あなたの国はどこか。あなたはどこの民か」。
22511 32 1 9 ヨナは彼らに言った、「わたしはヘブルびとです。わたしは海と陸とをお造りになった天の神、主を恐れる者です」。
22512 32 1 10 そこで人々ははなはだしく恐れて、彼に言った、「あなたはなんたる事をしてくれたのか」。人々は彼がさきに彼らに告げた事によって、彼が主の前を離れて、のがれようとしていた事を知っていたからである。
22513 32 1 11 人々は彼に言った、「われわれのために海が静まるには、あなたをどうしたらよかろうか」。それは海がますます荒れてきたからである。
22514 32 1 12 ヨナは彼らに言った、「わたしを取って海に投げ入れなさい。そうしたら海は、あなたがたのために静まるでしょう。わたしにはよくわかっています。この激しい暴風があなたがたに臨んだのは、わたしのせいです」。
22515 32 1 13 しかし人々は船を陸にこぎもどそうとつとめたが、成功しなかった。それは海が彼らに逆らって、いよいよ荒れたからである。
22516 32 1 14 そこで人々は主に呼ばわって言った、「主よ、どうぞ、この人の生命のために、われわれを滅ぼさないでください。また罪なき血を、われわれに帰しないでください。主よ、これはみ心に従って、なされた事だからです」。
22517 32 1 15 そして彼らはヨナを取って海に投げ入れた。すると海の荒れるのがやんだ。
22518 32 1 16 そこで人々は大いに主を恐れ、犠牲を主にささげて、誓願を立てた。
22519 32 1 17 主は大いなる魚を備えて、ヨナをのませられた。ヨナは三日三夜その魚の腹の中にいた。
22520 32 2 1 ヨナは魚の腹の中からその神、主に祈って、
22521 32 2 2 言った、「わたしは悩みのうちから主に呼ばわると、主はわたしに答えられた。わたしが陰府の腹の中から叫ぶと、あなたはわたしの声を聞かれた。
22522 32 2 3 あなたはわたしを淵の中、海のまん中に投げ入れられた。大水はわたしをめぐり、あなたの波と大波は皆、わたしの上を越えて行った。
22523 32 2 4 わたしは言った、『わたしはあなたの前から追われてしまった、どうして再びあなたの聖なる宮を望みえようか』。
22524 32 2 5 水がわたしをめぐって魂にまでおよび、淵はわたしを取り囲み、海草は山の根元でわたしの頭にまといついた。
22525 32 2 6 わたしは地に下り、地の貫の木はいつもわたしの上にあった。しかしわが神、主よ、あなたはわが命を穴から救いあげられた。
22526 32 2 7 わが魂がわたしのうちに弱っているとき、わたしは主をおぼえ、わたしの祈はあなたに至り、あなたの聖なる宮に達した。
22527 32 2 8 むなしい偶像に心を寄せる者は、そのまことの忠節を捨てる。
22528 32 2 9 しかしわたしは感謝の声をもって、あなたに犠牲をささげ、わたしの誓いをはたす。救は主にある」。
22529 32 2 10 主は魚にお命じになったので、魚はヨナを陸に吐き出した。
22530 32 3 1 時に主の言葉は再びヨナに臨んで言った、
22531 32 3 2 「立って、あの大きな町ニネベに行き、あなたに命じる言葉をこれに伝えよ」。
22532 32 3 3 そこでヨナは主の言葉に従い、立って、ニネベに行った。ニネベは非常に大きな町であって、これを行きめぐるには、三日を要するほどであった。
22533 32 3 4 ヨナはその町にはいり、初め一日路を行きめぐって呼ばわり、「四十日を経たらニネベは滅びる」と言った。
22534 32 3 5 そこでニネベの人々は神を信じ、断食をふれ、大きい者から小さい者まで荒布を着た。
22535 32 3 6 このうわさがニネベの王に達すると、彼はその王座から立ち上がり、朝服を脱ぎ、荒布をまとい、灰の中に座した。
22536 32 3 7 また王とその大臣の布告をもって、ニネベ中にふれさせて言った、「人も獣も牛も羊もみな、何をも味わってはならない。物を食い、水を飲んではならない。
22537 32 3 8 人も獣も荒布をまとい、ひたすら神に呼ばわり、おのおのその悪い道およびその手にある強暴を離れよ。
22538 32 3 9 あるいは神はみ心をかえ、その激しい怒りをやめて、われわれを滅ぼされないかもしれない。だれがそれを知るだろう」。
22539 32 3 10 神は彼らのなすところ、その悪い道を離れたのを見られ、彼らの上に下そうと言われた災を思いかえして、これをおやめになった。
22540 32 4 1 ところがヨナはこれを非常に不快として、激しく怒り、
22541 32 4 2 主に祈って言った、「主よ、わたしがなお国におりました時、この事を申したではありませんか。それでこそわたしは、急いでタルシシにのがれようとしたのです。なぜなら、わたしはあなたが恵み深い神、あわれみあり、怒ることおそく、いつくしみ豊かで、災を思いかえされることを、知っていたからです。
22542 32 4 3 それで主よ、どうぞ今わたしの命をとってください。わたしにとっては、生きるよりも死ぬ方がましだからです」。
22543 32 4 4 主は言われた、「あなたの怒るのは、よいことであろうか」。
22544 32 4 5 そこでヨナは町から出て、町の東の方に座し、そこに自分のために一つの小屋を造り、町のなりゆきを見きわめようと、その下の日陰にすわっていた。
22545 32 4 6 時に主なる神は、ヨナを暑さの苦痛から救うために、とうごまを備えて、それを育て、ヨナの頭の上に日陰を設けた。ヨナはこのとうごまを非常に喜んだ。
22546 32 4 7 ところが神は翌日の夜明けに虫を備えて、そのとうごまをかませられたので、それは枯れた。
22547 32 4 8 やがて太陽が出たとき、神が暑い東風を備え、また太陽がヨナの頭を照したので、ヨナは弱りはて、死ぬことを願って言った、「生きるよりも死ぬ方がわたしにはましだ」。
22548 32 4 9 しかし神はヨナに言われた、「とうごまのためにあなたの怒るのはよくない」。ヨナは言った、「わたしは怒りのあまり狂い死にそうです」。
22549 32 4 10 主は言われた、「あなたは労せず、育てず、一夜に生じて、一夜に滅びたこのとうごまをさえ、惜しんでいる。
22550 32 4 11 ましてわたしは十二万あまりの、右左をわきまえない人々と、あまたの家畜とのいるこの大きな町ニネベを、惜しまないでいられようか」。
22551 33 1 1 ユダの王ヨタム、アハズおよびヒゼキヤの世に、モレシテびとミカが、サマリヤとエルサレムについて示された主の言葉。
22552 33 1 2 あなたがたすべての民よ、聞け。地とその中に満てる者よ、耳を傾けよ。主なる神はあなたがたにむかって証言し、主はその聖なる宮から証言される。
22553 33 1 3 見よ、主はそのご座所から出てこられ、下ってきて地の高い所を踏まれる。
22554 33 1 4 山は彼の下に溶け、谷は裂け、火の前のろうのごとく、坂に流れる水のようだ。
22555 33 1 5 これはみなヤコブのとがのゆえ、イスラエルの家の罪のゆえである。ヤコブのとがとは何か、サマリヤではないか。ユダの家の罪とは何か、エルサレムではないか。
22556 33 1 6 このゆえにわたしはサマリヤを野の石塚となし、ぶどうを植える所となし、またその石を谷に投げ落し、その基をあらわにする。
22557 33 1 7 その彫像はみな砕かれ、その獲た価はみな火で焼かれる。わたしはその偶像をことごとくこわす。これは遊女の価から集めたのだから、遊女の価に帰る。
22558 33 1 8 わたしはこれがために嘆き悲しみ、はだしと裸で歩きまわり、山犬のように嘆き、だちょうのように悲しみ鳴く。
22559 33 1 9 サマリヤの傷はいやすことのできないもので、ユダまでひろがり、わが民の門、エルサレムまで及んでいる。
22560 33 1 10 ガテに告げるな、泣き叫ぶな。ベテレアフラで、ちりの中にころがれ。
22561 33 1 11 サピルに住む者よ、裸になり、恥をこうむって進み行け。ザアナンに住む者は出てこない。ベテエゼルの嘆きはあなたがたからその跡を断つ。
22562 33 1 12 マロテに住む者は気づかわしそうに幸を待つ。災が主から出て、エルサレムの門に臨んだからである。
22563 33 1 13 ラキシに住む者よ、戦車に早馬をつなげ。ラキシはシオンの娘にとって罪の初めであった。イスラエルのとがが、あなたがたのうちに見られたからである。
22564 33 1 14 それゆえ、あなたはモレセテ・ガテに別れの贈り物を与える。アクジブの家々はイスラエルの王たちにとって、人を欺くものとなる。
22565 33 1 15 マレシャに住む者よ、わたしはまた侵略者をあなたの所に連れて行く。イスラエルの栄光はアドラムに去るであろう。
22566 33 1 16 あなたの喜ぶ子らのために、あなたの髪をそり落せ。そのそった所をはげたかのように大きくせよ。彼らは捕えられてあなたを離れるからである。
22567 33 2 1 その床の上で不義を計り、悪を行う者はわざわいである。彼らはその手に力あるゆえ、夜が明けるとこれを行う。
22568 33 2 2 彼らは田畑をむさぼってこれを奪い、家をむさぼってこれを取る。彼らは人をしえたげてその家を奪い、人をしえたげてその嗣業を奪う。
22569 33 2 3 それゆえ、主はこう言われる、見よ、わたしはこのやからにむかって災を下そうと計る。あなたがたはその首をこれから、はずすことはできない。また、まっすぐに立って歩くことはできない。これは災の時だからである。
22570 33 2 4 その日、人々は歌を作ってあなたがたをののしり、悲しみの歌をもって嘆き悲しみ、「われわれはことごとく滅ぼされる、わが民の分は人に与えられる。どうしてこれはわたしから離れるのであろう。われわれの田畑はわれわれを捕えた者の間に分け与えられる」と言う。
22571 33 2 5 それゆえ、主の会衆のうちにはくじによって測りなわを張る者はひとりもなくなる。
22572 33 2 6 彼らは言う、「あなたがたは説教してはならない。そのような事について説教してはならない。そうすればわれわれは恥をこうむることがない」と。
22573 33 2 7 ヤコブの家よ、そんなことは言えるのだろうか。主は気短な方であろうか。これらは主のみわざなのであろうか。わが言葉は正しく歩む者に、益とならないのであろうか。
22574 33 2 8 ところが、あなたがたは立ってわが民の敵となり、いくさのことを知らずに、安らかに過ぎゆく者から、平和な者から、上着をはぎ取り、
22575 33 2 9 わが民の女たちをその楽しい家から追い出し、その子どもから、わが栄えをとこしえに奪う。
22576 33 2 10 立って去れ、これはあなたがたの休み場所ではない。これは汚れのゆえに滅びる。その滅びは悲惨な滅びだ。
22577 33 2 11 もし人が風に歩み、偽りを言い、「わたしはぶどう酒と濃き酒とについて、あなたに説教しよう」と言うならば、その人はこの民の説教者となるであろう。
22578 33 2 12 ヤコブよ、わたしは必ずあなたをことごとく集め、イスラエルの残れる者を集める。わたしはこれをおりの羊のように、牧場の中の群れのように共におく。これは人の多きによって騒がしくなる。
22579 33 2 13 打ち破る者は彼らに先だって登りゆき、彼らは門を打ち破り、これをとおって外に出て行く。彼らの王はその前に進み、主はその先頭に立たれる。
22580 33 3 1 わたしは言った、ヤコブのかしらたちよ、イスラエルの家のつかさたちよ、聞け、公義はあなたがたの知っておるべきことではないか。
22581 33 3 2 あなたがたは善を憎み、悪を愛し、わが民の身から皮をはぎ、その骨から肉をそぎ、
22582 33 3 3 またわが民の肉を食らい、その皮をはぎ、その骨を砕き、これを切りきざんで、なべに入れる食物のようにし、大なべに入れる肉のようにする。
22583 33 3 4 こうして彼らが主に呼ばわっても、主はお答えにならない。かえってその時には、み顔を彼らに隠される。彼らのおこないが悪いからである。
22584 33 3 5 わが民を惑わす預言者について主はこう言われる、彼らは食べ物のある時には、「平安」を叫ぶけれども、その口に何も与えない者にむかっては、宣戦を布告する。
22585 33 3 6 それゆえ、あなたがたには夜があっても幻がなく、暗やみがあっても占いがない。太陽はその預言者たちに没し、昼も彼らの上に暗くなる。
22586 33 3 7 先見者は恥をかき、占い師は顔をあからめ、彼らは皆そのくちびるをおおう。神の答がないからである。
22587 33 3 8 しかしわたしは主のみたまによって力に満ち、公義と勇気とに満たされ、ヤコブにそのとがを示し、イスラエルにその罪を示すことができる。
22588 33 3 9 ヤコブの家のかしらたち、イスラエルの家のつかさたちよ、すなわち公義を憎み、すべての正しい事を曲げる者よ、これを聞け。
22589 33 3 10 あなたがたは血をもってシオンを建て、不義をもってエルサレムを建てた。
22590 33 3 11 そのかしらたちは、まいないをとってさばき、その祭司たちは価をとって教え、その預言者たちは金をとって占う。しかもなお彼らは主に寄り頼んで、「主はわれわれの中におられるではないか、だから災はわれわれに臨むことがない」と言う。
22591 33 3 12 それゆえ、シオンはあなたがたのゆえに田畑となって耕され、エルサレムは石塚となり、宮の山は木のおい茂る高い所となる。
22592 33 4 1 末の日になって、主の家の山はもろもろの山のかしらとして堅く立てられ、もろもろの峰よりも高くあげられ、もろもろの民はこれに流れくる。
22593 33 4 2 多くの国民は来て言う、「さあ、われわれは主の山に登り、ヤコブの神の家に行こう。彼はその道をわれわれに教え、われわれはその道に歩もう」と。律法はシオンから出、主の言葉はエルサレムから出るからである。
22594 33 4 3 彼は多くの民の間をさばき、遠い所まで強い国々のために仲裁される。そこで彼らはつるぎを打ちかえて、すきとし、そのやりを打ちかえて、かまとし、国は国にむかってつるぎをあげず、再び戦いのことを学ばない。
22595 33 4 4 彼らは皆そのぶどうの木の下に座し、そのいちじくの木の下にいる。彼らを恐れさせる者はない。これは万軍の主がその口で語られたことである。
22596 33 4 5 すべての民はおのおのその神の名によって歩む。しかしわれわれはわれわれの神、主の名によって、とこしえに歩む。
22597 33 4 6 主は言われる、その日には、わたしはかの足のなえた者を集め、またかの追いやられた者およびわたしが苦しめた者を集め、
22598 33 4 7 その足のなえた者を残れる民とし、遠く追いやられた者を強い国民とする。主はシオンの山で、今よりとこしえに彼らを治められる。
22599 33 4 8 羊の群れのやぐら、シオンの娘の山よ、以前の主権はあなたに帰ってくる。すなわちエルサレムの娘の国はあなたに帰ってくる。
22600 33 4 9 今あなたは何ゆえわめき叫ぶのか、あなたのうちに王がないのか。あなたの相談相手は絶えはて、産婦のように激しい痛みがあなたを捕えたのか。
22601 33 4 10 シオンの娘よ、産婦のように苦しんでうめけ。あなたは今、町を出て野にやどり、バビロンに行かなければならない。その所であなたは救われる。主はその所であなたを敵の手からあがなわれる。
22602 33 4 11 いま多くの国民はあなたに逆らい、集まって言う、「どうかシオンが汚されるように、われわれの目がシオンを見てあざ笑うように」と。
22603 33 4 12 しかし彼らは主の思いを知らず、またその計画を悟らない。すなわち主が麦束を打ち場に集めるように、彼らを集められることを悟らない。
22604 33 4 13 シオンの娘よ、立って打ちこなせ。わたしはあなたの角を鉄となし、あなたのひずめを青銅としよう。あなたは多くの民を打ち砕き、彼らのぶんどり物を主にささげ、彼らの富を全地の主にささげる。
22605 33 5 1 今あなたは壁でとりまかれている。敵はわれわれを攻め囲み、つえをもってイスラエルのつかさのほおを撃つ。
22606 33 5 2 しかしベツレヘム・エフラタよ、あなたはユダの氏族のうちで小さい者だが、イスラエルを治める者があなたのうちからわたしのために出る。その出るのは昔から、いにしえの日からである。
22607 33 5 3 それゆえ、産婦の産みおとす時まで、主は彼らを渡しおかれる。その後その兄弟たちの残れる者はイスラエルの子らのもとに帰る。
22608 33 5 4 彼は主の力により、その神、主の名の威光により、立ってその群れを養い、彼らを安らかにおらせる。今、彼は大いなる者となって、地の果にまで及ぶからである。
22609 33 5 5 これは平和である。アッスリヤびとがわれわれの国に来て、われわれの土地を踏むとき、七人の牧者を起し、八人の君を起してこれに当らせる。
22610 33 5 6 彼らはつるぎをもってアッスリヤの地を治め、ぬきみのつるぎをもってニムロデの地を治める。アッスリヤびとがわれわれの地に来て、われわれの境を踏み荒すとき、彼らはアッスリヤびとから、われわれを救う。
22611 33 5 7 その時ヤコブの残れる者は多くの民の中にあること、人によらず、また人の子らを待たずに主からくだる露のごとく、青草の上に降る夕立ちのようである。
22612 33 5 8 またヤコブの残れる者が国々の中におり、多くの民の中にいること、林の獣の中のししのごとく、羊の群れの中の若いししのようである。それが過ぎるときは踏み、かつ裂いて救う者はない。
22613 33 5 9 あなたの手はもろもろのあだの上にあげられ、あなたの敵はことごとく断たれる。
22614 33 5 10 主は言われる、その日には、わたしはあなたのうちから馬を絶やし、戦車をこわし、
22615 33 5 11 あなたの国の町々を絶やし、あなたの城をことごとくくつがえす。
22616 33 5 12 またあなたの手から魔術を絶やす。あなたのうちには占い師がないようになる。
22617 33 5 13 またあなたのうちから彫像および石の柱を絶やす。あなたは重ねて手で作った物を拝むことはない。
22618 33 5 14 またあなたのうちからアシラ像を抜き倒し、あなたの町々を滅ぼす。
22619 33 5 15 そしてわたしは怒りと憤りとをもってその聞き従わないもろもろの国民に復讐する。
22620 33 6 1 あなたがたは主の言われることを聞き、立ちあがって、もろもろの山の前に訴えをのべ、もろもろの丘にあなたの声を聞かせよ。
22621 33 6 2 もろもろの山よ、地の変ることなき基よ、主の言い争いを聞け。主はその民と言い争い、イスラエルと論争されるからである。
22622 33 6 3 「わが民よ、わたしはあなたに何をなしたか、何によってあなたを疲れさせたか、わたしに答えよ。
22623 33 6 4 わたしはエジプトの国からあなたを導きのぼり、奴隷の家からあなたをあがない出し、モーセ、アロンおよびミリアムをつかわして、あなたに先だたせた。
22624 33 6 5 わが民よ、モアブの王バラクがたくらんだ事、ベオルの子バラムが彼に答えた事、シッテムからギルガルに至るまでに起った事どもを思い起せ。そうすれば、あなたは主の正義のみわざを知るであろう」。
22625 33 6 6 「わたしは何をもって主のみ前に行き、高き神を拝すべきか。燔祭および当歳の子牛をもってそのみ前に行くべきか。
22626 33 6 7 主は数千の雄羊、万流の油を喜ばれるだろうか。わがとがのためにわが長子をささぐべきか。わが魂の罪のためにわが身の子をささぐべきか」。
22627 33 6 8 人よ、彼はさきによい事のなんであるかをあなたに告げられた。主のあなたに求められることは、ただ公義をおこない、いつくしみを愛し、へりくだってあなたの神と共に歩むことではないか。
22628 33 6 9 主の声が町にむかって呼ばわる――全き知恵はあなたの名を恐れることである――「部族および町の会衆よ、聞け。
22629 33 6 10 わたしは悪人の家にある不義の財宝、のろうべき不正な枡を忘れ得ようか。
22630 33 6 11 不正なはかりを用い、偽りのおもしを入れた袋を用いる人をわたしは罪なしとするだろうか。
22631 33 6 12 あなたのうちの富める人は暴虐で満ち、あなたの住民は偽りを言い、その舌は口で欺くことをなす。
22632 33 6 13 それゆえ、わたしはあなたを撃ち、あなたをその罪のために滅ぼすことを始めた。
22633 33 6 14 あなたは食べても、飽くことがなく、あなたの腹はいつもひもじい。あなたは移しても、救うことができない。あなたが救う者を、わたしはつるぎにわたす。
22634 33 6 15 あなたは種をまいても、刈ることがなく、オリブの実を踏んでも、その身に油を塗ることがなく、ぶどうを踏んでも、その酒を飲むことがない。
22635 33 6 16 あなたはオムリの定めを守り、アハブの家のすべてのわざをおこない、彼らの計りごとに従って歩んだ。これはわたしがあなたを荒し、その住民を笑い物とするためである。あなたがたは民のはずかしめを負わねばならぬ」。
22636 33 7 1 わざわいなるかな、わたしは夏のくだものを集める時のように、ぶどうの収穫の残りを集める時のようになった。食らうべきぶどうはなく、わが心の好む初なりのいちじくもない。
22637 33 7 2 神を敬う人は地に絶え、人のうちに正しい者はない。みな血を流そうと待ち伏せし、おのおの網をもってその兄弟を捕える。
22638 33 7 3 両手は悪い事をしようと努めてやまない。つかさと裁判官はまいないを求め、大いなる人はその心の悪い欲望を言いあらわし、こうして彼らはその悪を仕組む。
22639 33 7 4 彼らの最もよい者もいばらのごとく、最も正しい者もいばらのいけがきのようだ。彼らの見張びとの日、すなわち彼らの刑罰の日が来る。いまや彼らの混乱が近い。
22640 33 7 5 あなたがたは隣り人を信じてはならない。友人をたのんではならない。あなたのふところに寝る者にも、あなたの口の戸を守れ。
22641 33 7 6 むすこは父をいやしめ、娘はその母にそむき、嫁はそのしゅうとめにそむく。人の敵はその家の者である。
22642 33 7 7 しかし、わたしは主を仰ぎ見、わが救の神を待つ。わが神はわたしの願いを聞かれる。
22643 33 7 8 わが敵よ、わたしについて喜ぶな。たといわたしが倒れるとも起きあがる。たといわたしが暗やみの中にすわるとも、主はわが光となられる。
22644 33 7 9 主はわが訴えを取りあげ、わたしのためにさばきを行われるまで、わたしは主の怒りを負わなければならない。主に対して罪を犯したからである。主はわたしを光に導き出してくださる。わたしは主の正義を見るであろう。
22645 33 7 10 その時「あなたの神、主はどこにいるか」とわたしに言ったわが敵は、これを見て恥をこうむり、わが目は彼を見てあざ笑う。彼は街路の泥のように踏みつけられる。
22646 33 7 11 あなたの城壁を築く日が来る。その日には国境が遠く広がる。
22647 33 7 12 その日にはアッスリヤからエジプトまで、エジプトからユフラテ川まで、海から海まで、山から山まで、人々はあなたに来る。
22648 33 7 13 しかしかの地はその住民のゆえに、そのおこないの実によって荒れはてる。
22649 33 7 14 どうか、あなたのつえをもってあなたの民、すなわち園の中の林にひとりおるあなたの嗣業の羊を牧し、いにしえの日のようにバシャンとギレアデで、彼らを養ってください。
22650 33 7 15 あなたがエジプトの国を出た時のように、わたしはもろもろの不思議な事を彼らに示す。
22651 33 7 16 国々の民は見て、そのすべての力を恥じ、その手を口にあて、その耳は聞えぬ耳となる。
22652 33 7 17 彼らはへびのように、地に這うもののようにちりをなめ、震えながらその城から出、おののきつつ、われわれの神、主に近づいてきて、あなたのために恐れる。
22653 33 7 18 だれかあなたのように不義をゆるし、その嗣業の残れる者のためにとがを見過ごされる神があろうか。神はいつくしみを喜ばれるので、その怒りをながく保たず、
22654 33 7 19 再びわれわれをあわれみ、われわれの不義を足で踏みつけられる。あなたはわれわれのもろもろの罪を海の深みに投げ入れ、
22655 33 7 20 昔からわれわれの先祖たちに誓われたように、真実をヤコブに示し、いつくしみをアブラハムに示される。
22656 34 1 1 ニネベについての託宣。エルコシびとナホムの幻の書。
22657 34 1 2 主はねたみ、かつあだを報いる神、主はあだを報いる者、また憤る者、主はおのがあだに報復し、おのが敵に対して憤りをいだく。
22658 34 1 3 主は怒ることおそく、力強き者、主は罰すべき者を決してゆるされない者、主の道はつむじ風と大風の中にあり、雲はその足のちりである。
22659 34 1 4 彼は海を戒めて、これをかわかし、すべての川をかれさせる。バシャンとカルメルはしおれ、レバノンの花はしぼむ。
22660 34 1 5 もろもろの山は彼の前に震い、もろもろの丘は溶け、地は彼の前にむなしくなり、世界とその中に住む者も皆、むなしくなる。
22661 34 1 6 だれが彼の憤りの前に立つことができよう。だれが彼の燃える怒りに耐えることができよう。その憤りは火のように注がれ、岩も彼によって裂かれる。
22662 34 1 7 主は恵み深く、なやみの日の要害である。彼はご自分を避け所とする者を知っておられる。
22663 34 1 8 しかし、彼はみなぎる洪水であだを全く滅ぼし、おのが敵を暗やみに追いやられる。
22664 34 1 9 あなたがたは主に対して何を計るか。彼はその敵に二度としかえしをする必要がないように敵を全く滅ぼされる。
22665 34 1 10 彼らは結びからまったいばらのように、かわいた刈り株のように、焼き尽される。
22666 34 1 11 主に対して悪事を計り、よこしまな事を勧める者があなたのうちから出たではないか。
22667 34 1 12 主はこう言われる、「たとい彼らは強く、かつ多くあっても、切り倒されて絶えはてる。わたしはあなたを苦しめたが、重ねてあなたを苦しめない。
22668 34 1 13 今わたしは彼のくびきを砕いて、あなたからとり除き、あなたのなわめを切りはなす」。
22669 34 1 14 主はあなたについてお命じになった、「あなたの名は長く続かない。わたしはあなたの神々の家から、彫像および鋳造を除き去る。あなたは罪深い者だから、わたしはあなたの墓を設ける」。
22670 34 1 15 見よ、良きおとずれを伝える者の足は山の上にある。彼は平安を宣べている。ユダよ、あなたの祭を行い、あなたの誓願をはたせ。よこしまな者は重ねて、あなたに向かって攻めてこないからである。彼は全く断たれる。
22671 34 2 1 撃ち破る者があなたに向かって上って来る。城を守れ、道をうかがえ。腰に帯せよ、大いに力を強くせよ。
22672 34 2 2 主はヤコブの栄えを回復して、イスラエルの栄えのようにされる。かすめる者が彼らをかすめ、そのぶどうづるを、そこなったからである。
22673 34 2 3 その勇士の盾は赤くいろどられ、その兵士は紅に身をよろう。戦車はその備えの日に、火のように輝き、軍馬はおどる。
22674 34 2 4 戦車はちまたに狂い走り、大路に飛びかける。彼らはたいまつのように輝き、いなずまのように飛びかける。
22675 34 2 5 将士らは召集され、彼らはその道でつまずき倒れ、城壁に向かって急いで行って大盾を備える。
22676 34 2 6 川々の門は開け、宮殿はあわてふためく。
22677 34 2 7 その王妃は裸にされて、捕われゆき、その侍女たちは悲しみ、胸を打って、はとのようにうめく。
22678 34 2 8 ニネベは池のようであったが、その水は注ぎ出された。「立ち止まれ、立ち止まれ」と呼んでも、ふりかえるものもない。
22679 34 2 9 銀を奪え、金を奪え。その宝は限りなく、もろもろの尊い物はおびただしい。
22680 34 2 10 消えうせ、むなしくなり、荒れはてた。心は消え、ひざは震え、すべての腰には痛みがあり、すべての顔は色を失った。
22681 34 2 11 ししのすみかはどこであるか。若いししの穴はどこであるか。そこに雄じしはその獲物を携え行き、その子じしと共にいても、これを恐れさせる者はない。
22682 34 2 12 雄じしはその子じしのために引き裂き、雌じしのために獲物を絞め殺し、獲物をもってその穴を満たし、引き裂いた肉をもってそのすみかを満たした。
22683 34 2 13 万軍の主は言われる、見よ、わたしはあなたに臨む。わたしはあなたの戦車を焼いて煙にする。つるぎはあなたの若いししを滅ぼす。わたしはまた、あなたの獲物を地から断つ。あなたの使者の声は重ねて聞かれない。
22684 34 3 1 わざわいなるかな、血を流す町。その中には偽りと、ぶんどり物が満ち、略奪はやまない。
22685 34 3 2 むちの音がする。車輪のとどろく音が聞える。かける馬があり、走る戦車がある。
22686 34 3 3 騎兵は突撃し、つるぎがきらめき、やりがひらめく。殺される者はおびただしく、しかばねは山をなす。死体は数限りなく、人々はその死体につまずく。
22687 34 3 4 これは皆あでやかな遊女の恐るべき魔力と、多くの淫行のためであって、その淫行をもって諸国民を売り、その魔力をもって諸族を売り渡したものである。
22688 34 3 5 万軍の主は言われる、見よ、わたしはあなたに臨む、わたしはあなたのすそを顔の上まであげ、あなたの裸を諸民に見せ、あなたの恥じる所を諸国に見せる。
22689 34 3 6 わたしは汚らわしい物を、あなたの上に投げかけて、あなたをはずかしめ、あなたを見ものとする。
22690 34 3 7 すべてあなたを見るものは、あなたを避けて逃げ去って言う、「ニネベは滅びた」と。だれがこのために嘆こう。わたしはどこから彼女を慰める者を、尋ね出し得よう。
22691 34 3 8 あなたはテーベにまさっているか。これはナイル川のかたわらに座し、水をその周囲にめぐらし、海をとりでとなし、水をその垣としている。
22692 34 3 9 その力はエチオピヤ、またエジプトであって、限りがない。プトびと、リビヤびともその助け手であった。
22693 34 3 10 しかし、これもとりことなって捕えられて行き、その子供もすべてのちまたのかどで打ち砕かれ、その尊い人々はくじで分けられ、その大いなる人々は皆、鎖につながれた。
22694 34 3 11 あなたもまた酔わされて気を失い、あなたは敵を避けて逃げ場を求める。
22695 34 3 12 あなたのとりでは皆初なりの実をもつ、いちじくの木のようだ。これをゆすぶればその実は落ちて、食べようとする者の口にはいる。
22696 34 3 13 見よ、あなたのうちにいる兵士は女のようだ。あなたの国の門はあなたの敵の前に広く開かれ、火はあなたの貫の木を焼いた。
22697 34 3 14 籠城のために水をくめ。あなたのとりでを堅めよ。粘土の中にはいって、しっくいを踏み、れんがの型をとれ。
22698 34 3 15 その所で火はあなたを焼き、つるぎはあなたを切る。それはいなごのようにあなたを食い滅ぼす。
22699 34 3 16 あなたは自分の商人を天の星よりも多くした。いなごは羽をはって飛び去る。
22700 34 3 17 あなたの君たちは、ばったのように、あなたの学者たちは、いなごのように、寒い日には垣にとまり、日が出て来ると飛び去る。そのありかはだれも知らない。
22701 34 3 18 アッスリヤの王よ、あなたの牧者は眠り、あなたの貴族はまどろむ。あなたの民は山の上に散らされ、これを集める者はない。
22702 34 3 19 あなたの破れは、いえることがなく、あなたの傷は重い。あなたのうわさを聞く者は皆、あなたの事について手を打つ。あなたの悪を常に身に受けなかったような者が、だれひとりあるか。
22703 35 1 1 預言者ハバククが見た神の託宣。
22704 35 1 2 主よ、わたしが呼んでいるのに、いつまであなたは聞きいれて下さらないのか。わたしはあなたに「暴虐がある」と訴えたが、あなたは助けて下さらないのか。
22705 35 1 3 あなたは何ゆえ、わたしによこしまを見せ、何ゆえ、わたしに災を見せられるのか。略奪と暴虐がわたしの前にあり、また論争があり、闘争も起っている。
22706 35 1 4 それゆえ、律法はゆるみ、公義は行われず、悪人は義人を囲み、公義は曲げて行われている。
22707 35 1 5 諸国民のうちを望み見て、驚け、そして怪しめ。わたしはあなたがたの日に一つの事をする。人がこの事を知らせても、あなたがたはとうてい信じまい。
22708 35 1 6 見よ、わたしはカルデヤびとを興す。これはたけく、激しい国民であって、地を縦横に行きめぐり、自分たちのものでないすみかを奪う。
22709 35 1 7 これはきびしく、恐ろしく、そのさばきと威厳とは彼ら自身から出る。
22710 35 1 8 その馬はひょうよりも速く、夜のおおかみよりも荒い。その騎兵は威勢よく進む。すなわち、その騎兵は遠い所から来る。彼らは物を食おうと急ぐわしのように飛ぶ。
22711 35 1 9 彼らはみな暴虐のために来る。彼らを恐れる恐れが彼らの前を行く。彼らはとりこを砂のように集める。
22712 35 1 10 彼らは王たちを侮り、つかさたちをあざける。彼らはすべての城をあざ笑い、土を積み上げてこれを奪う。
22713 35 1 11 こうして、彼らは風のようになぎ倒して行き過ぎる。彼らは罪深い者で、おのれの力を神となす。
22714 35 1 12 わが神、主、わが聖者よ。あなたは永遠からいますかたではありませんか。わたしたちは死んではならない。主よ、あなたは彼らをさばきのために備えられた。岩よ、あなたは彼らを懲しめのために立てられた。
22715 35 1 13 あなたは目が清く、悪を見られない者、また不義を見られない者であるのに、何ゆえ不真実な者に目をとめていられるのですか。悪しき者が自分よりも正しい者を、のみ食らうのに、何ゆえ黙っていられるのですか。
22716 35 1 14 あなたは人を海の魚のようにし、治める者のない這う虫のようにされる。
22717 35 1 15 彼はつり針でこれをことごとくつり上げ、網でこれを捕え、引き網でこれを集め、こうして彼は喜び楽しむ。
22718 35 1 16 それゆえ、彼はその網に犠牲をささげ、その引き網に香をたく。これによって彼はぜいたくに暮し、その食物も豊かになるからである。
22719 35 1 17 それで、彼はいつまでもその網の獲物を取り入れて、無情にも諸国民を殺すのであろうか。
22720 35 2 1 わたしはわたしの見張所に立ち、物見やぐらに身を置き、望み見て、彼がわたしになんと語られるかを見、またわたしの訴えについてわたし自らなんと答えたらよかろうかを見よう。
22721 35 2 2 主はわたしに答えて言われた、「この幻を書き、これを板の上に明らかにしるし、走りながらも、これを読みうるようにせよ。
22722 35 2 3 この幻はなお定められたときを待ち、終りをさして急いでいる。それは偽りではない。もしおそければ待っておれ。それは必ず臨む。滞りはしない。
22723 35 2 4 見よ、その魂の正しくない者は衰える。しかし義人はその信仰によって生きる。
22724 35 2 5 また、酒は欺くものだ。高ぶる者は定まりがない。彼の欲は陰府のように広い。彼は死のようであって、飽くことなく、万国をおのれに集め、万民をおのれのものとしてつどわせる」。
22725 35 2 6 これらは皆ことわざをもって彼をあざけり、あざけりのなぞをもって彼をあざ笑わないだろうか。すなわち言う、「わざわいなるかな、おのれに属さないものを増し加える者よ。いつまでこのようであろうか。質物でおのれを重くする者よ」。
22726 35 2 7 あなたの負債者は、にわかに興らないであろうか。あなたを激しくゆすぶる者は目ざめないであろうか。その時あなたは彼らにかすめられる。
22727 35 2 8 あなたは多くの国民をかすめたゆえ、そのもろもろの民の残れる者は皆あなたをかすめる。これは人の血を流し、国と町と、その中に住むすべての者に暴虐を行ったからである。
22728 35 2 9 わざわいなるかな、災の手を免れるために高い所に巣を構えようと、おのが家のために不義の利を取る者よ。
22729 35 2 10 あなたは事をはかって自分の家に恥を招き、多くの民を滅ぼして、自分の生命を失った。
22730 35 2 11 石は石がきから叫び、梁は建物からこれに答えるからである。
22731 35 2 12 わざわいなるかな、血をもって町を建て、悪をもって町を築く者よ。
22732 35 2 13 見よ、もろもろの民は火のために労し、もろもろの国びとはむなしい事のために疲れる。これは万軍の主から出る言葉ではないか。
22733 35 2 14 海が水でおおわれているように、地は主の栄光の知識で満たされるからである。
22734 35 2 15 わざわいなるかな、その隣り人に怒りの杯を飲ませて、これを酔わせ、彼らの隠し所を見ようとする者よ。
22735 35 2 16 あなたは誉の代りに恥に飽き、あなたもまた飲んでよろめけ。主の右の手の杯は、あなたに巡り来る。恥はあなたの誉に代る。
22736 35 2 17 あなたがレバノンになした暴虐は、あなたを倒し、獣のような滅亡は、あなたを恐れさせる。これは人の血を流し、国と町と、町の中に住むすべての者に、暴虐を行ったからである。
22737 35 2 18 刻める像、鋳像および偽りを教える者は、その作者がこれを刻んだとてなんの益があろうか。その作者が物言わぬ偶像を造って、その造ったものに頼んでみても、なんの益があろうか。
22738 35 2 19 わざわいなるかな、木に向かって、さめよと言い、物言わぬ石に向かって、起きよと言う者よ。これは黙示を与え得ようか。見よ、これは金銀をきせたもので、その中には命の息は少しもない。
22739 35 2 20 しかし、主はその聖なる宮にいます、全地はそのみ前に沈黙せよ。
22740 35 3 1 シギヨノテの調べによる、預言者ハバククの祈。
22741 35 3 2 主よ、わたしはあなたのことを聞きました。主よ、わたしはあなたのみわざを見て恐れます。この年のうちにこれを新たにし、この年のうちにこれを知らせてください。怒る時にもあわれみを思いおこしてください。
22742 35 3 3 神はテマンからこられ、聖者はパランの山からこられた。その栄光は天をおおい、そのさんびは地に満ちた。〔セラ
22743 35 3 4 その輝きは光のようであり、その光は彼の手からほとばしる。かしこにその力を隠す。
22744 35 3 5 疫病はその前に行き、熱病はその後に従う。
22745 35 3 6 彼は立って、地をはかり、彼は見て、諸国民をおののかせられる。とこしえの山は散らされ、永遠の丘は沈む。彼の道は昔のとおりである。
22746 35 3 7 わたしが見ると、クシャンの天幕に悩みがあり、ミデアンの国の幕は震う。
22747 35 3 8 主よ、あなたが馬に乗り、勝利の戦車に乗られる時、あなたは川に向かって怒られるのか。川に向かって憤られるのか。あるいは海に向かって立腹されるのか。
22748 35 3 9 あなたの弓は取り出された。矢は、弦につがえられた。〔セラあなたは川をもって地を裂かれた。
22749 35 3 10 山々はあなたを見て震い、荒れ狂う水は流れいで、淵は声を出して、その手を高くあげた。
22750 35 3 11 飛び行くあなたの矢の光のために、電光のようにきらめく、あなたのやりのために、日も月もそのすみかに立ち止まった。
22751 35 3 12 あなたは憤って地を行きめぐり、怒って諸国民を踏みつけられた。
22752 35 3 13 あなたはあなたの民を救うため、あなたの油そそいだ者を救うために出て行かれた。あなたは悪しき者の頭を砕き、彼を腰から首まで裸にされた。〔セラ
22753 35 3 14 あなたはあなたのやりで将軍の首を刺しとおされた。彼らはわたしを散らそうとして、つむじ風のように来、貧しい者をひそかに、のみ滅ぼすことを楽しみとした。
22754 35 3 15 あなたはあなたの馬を使って、海と大水のさかまくところを踏みつけられた。
22755 35 3 16 わたしは聞いて、わたしのからだはわななき、わたしのくちびるはその声を聞いて震える。腐れはわたしの骨に入り、わたしの歩みは、わたしの下によろめく。わたしはわれわれに攻め寄せる民の上に悩みの日の臨むのを静かに待とう。
22756 35 3 17 いちじくの木は花咲かず、ぶどうの木は実らず、オリブの木の産はむなしくなり、田畑は食物を生ぜず、おりには羊が絶え、牛舎には牛がいなくなる。
22757 35 3 18 しかし、わたしは主によって楽しみ、わが救の神によって喜ぶ。
22758 35 3 19 主なる神はわたしの力であって、わたしの足を雌じかの足のようにし、わたしに高い所を歩ませられる。
22759 36 1 1 ユダの王アモンの子ヨシヤの世に、ゼパニヤに臨んだ主の言葉。ゼパニヤはクシの子、クシはゲダリヤの子、ゲダリヤはアマリヤの子、アマリヤはヒゼキヤの子である。
22760 36 1 2 主は言われる、「わたしは地のおもてからすべてのものを一掃する」。
22761 36 1 3 主は言われる、「わたしは人も獣も一掃し、空の鳥、海の魚をも一掃する。わたしは悪人を倒す。わたしは地のおもてから人を絶ち滅ぼす」。
22762 36 1 4 「わたしはユダとエルサレムのすべての住民との上に手を伸べる。わたしはこの所からバアルの残党と、偶像の祭司の名とを断つ。
22763 36 1 5 また屋上で天の万象を拝む者、主に誓いを立てて拝みながら、またミルコムをさして誓う者、
22764 36 1 6 主にそむいて従わない者、主を求めず、主を尋ねない者を断つ」。
22765 36 1 7 主なる神の前に沈黙せよ。主の日は近づき、主はすでに犠牲を備え、その招いた者を聖別されたからである。
22766 36 1 8 主の犠牲をささげる日に、「わたしはつかさたちと王の子たち、およびすべて異邦の衣服を着る者を罰する。
22767 36 1 9 その日にわたしはまた、すべて敷居をとび越え、暴虐と欺きとを自分の主君の家に満たす者を罰する」。
22768 36 1 10 主は言われる、「その日には魚の門から叫び声がおこり、第二の町からうめき声がおこり、もろもろの丘からすさまじい響きがおこる。
22769 36 1 11 しっくいの家の住民よ、泣き叫べ。あきないする民は皆滅ぼされ、銀を量る者は皆断たれるからである。
22770 36 1 12 その時、わたしはともしびをもって、エルサレムを尋ねる。そして滓の上に凝り固まり、その心の中で『主は良いことも、悪いこともしない』と言う人々をわたしは罰する。
22771 36 1 13 彼らの財宝はかすめられ、彼らの家は荒れはてる。彼らは家を建てても、それに住むことができない、ぶどう畑を作っても、そのぶどう酒を飲むことができない」。
22772 36 1 14 主の大いなる日は近い、近づいて、すみやかに来る。主の日の声は耳にいたい。そこに、勇士もいたく叫ぶ。
22773 36 1 15 その日は怒りの日、なやみと苦しみの日、荒れ、また滅びる日、暗く、薄暗い日、雲と黒雲の日、
22774 36 1 16 ラッパとときの声の日、堅固な町と高いやぐらを攻める日である。
22775 36 1 17 わたしは人々になやみを下して、盲人のように歩かせる。彼らが主に対して罪を犯したからである。彼らの血はちりのように流され、彼らの肉は糞土のように捨てられる。
22776 36 1 18 彼らの銀も金も、主の怒りの日には彼らを救うことができない。全地は主のねたみの火にのまれる。主は地に住む人々をたちまち滅ぼし尽される。
22777 36 2 1 あなたがた、恥を知らぬ民よ、共につどい、集まれ。
22778 36 2 2 すなわち、もみがらのように追いやられる前に、主の激しい怒りがまだあなたがたに臨まない前に、主の憤りの日がまだあなたがたに来ない前に。
22779 36 2 3 すべて主の命令を行うこの地のへりくだる者よ、主を求めよ。正義を求めよ。謙遜を求めよ。そうすればあなたがたは主の怒りの日に、あるいは隠されることがあろう。
22780 36 2 4 ともあれ、ガザは捨てられ、アシケロンは荒れはて、アシドドは真昼に追い払われ、エクロンは抜き去られる。
22781 36 2 5 わざわいなるかな、海べに住む者、ケレテの国民。ペリシテびとの地、カナンよ、主の言葉があなたがたに臨む。わたしはあなたを滅ぼして、住む者がないようにする。
22782 36 2 6 海べよ、あなたは牧場となり、羊飼の牧草地となり、また羊のおりとなる。
22783 36 2 7 海べはユダの家の残りの者に帰する。彼らはその所で群れを養い、夕暮にはアシケロンの家に伏す。彼らの神、主が彼らを顧み、その幸福を回復されるからである。
22784 36 2 8 「わたしはモアブのあざけりと、アンモンの人々の、ののしりを聞いた。彼らはわが民をあざけり、自ら誇って彼らの国境を侵した。
22785 36 2 9 それゆえ、万軍の主、イスラエルの神は言われる、わたしは生きている。モアブは必ずソドムのようになる。アンモンの人々はゴモラのようになる。いらくさと塩穴とがここを占領して、永遠に荒れ地となる。わが民の残りの者は彼らをかすめ、わが国民の残りの者はこれを所有する」。
22786 36 2 10 この事の彼らに臨むのはその高ぶりによるのだ。彼らが万軍の主の民をあざけり、みずから誇ったからである。
22787 36 2 11 主は彼らに対して恐るべき者となられる。主は地のすべての神々を飢えさせられる。もろもろの国の民は、おのおの自分の所から出て主を拝む。
22788 36 2 12 エチオピヤびとよ、あなたがたもまたわがつるぎによって殺される。
22789 36 2 13 主はまた北に向かって手を伸べ、アッスリヤを滅ぼし、ニネベを荒して、荒野のような、かわいた地とされる。
22790 36 2 14 家畜の群れ、もろもろの野の獣はその中に伏し、はげたかや、やまあらしはその柱の頂に住み、ふくろうは、その窓のうちになき、からすは、その敷居の上に鳴く。その香柏の細工が裸にされるからである。
22791 36 2 15 この町は勝ち誇って、安らかに落ち着き、その心の中で、「ただわたしだけだ、わたしの外にはだれもない」と言った町であるが、このように荒れはてて、獣の伏す所になってしまった。ここを通り過ぎる者は皆あざけって、手を振る。
22792 36 3 1 わざわいなるかな、このそむき汚れた暴虐の町。
22793 36 3 2 これはだれの声にも耳を傾けず、懲しめを受けいれず、主に寄り頼まず、おのれの神に近よらない。
22794 36 3 3 その中にいるつかさたちは、ほえるしし、そのさばきびとたちは、夜のおおかみで、彼らは朝まで何一つ残さない。
22795 36 3 4 その預言者たちは、放縦で偽りびと、その祭司たちは聖なる物を汚し、律法を破る。
22796 36 3 5 その中にいます主は義であって、不義を行われない。朝ごとにその公義を現して、誤ることがない。しかし不義な者は恥を知らない。
22797 36 3 6 「わたしは諸国民を滅ぼした。そのやぐらは荒れはてた。わたしはそのちまたを荒したので、ちまたを行き来する者もない。その町々は荒れすたれて、人の姿もなく、住む者もない。
22798 36 3 7 わたしは言った、『これは必ずわたしを恐れ、懲しめを受ける。これはわたしが命じたすべての事を見失わない』と。しかし彼らはしきりに自分の行状を乱した」。
22799 36 3 8 主は言われる、「それゆえ、あなたがたは、わたしが立って、証言する日を待て。わたしの決意は諸国民をよせ集め、もろもろの国を集めて、わが憤り、わが激しい怒りをことごとくその上に注ぐことであって、全地は、ねたむわたしの怒りの火に焼き滅ぼされるからである。
22800 36 3 9 その時わたしはもろもろの民に清きくちびるを与え、すべて彼らに主の名を呼ばせ、心を一つにして主に仕えさせる。
22801 36 3 10 わたしを拝む者、わたしが散らした者の娘はエチオピヤの川々の向こうから来て、わたしに供え物をささげる。
22802 36 3 11 その日には、あなたはわたしにそむいたすべてのわざのゆえに、はずかしめられることはない。その時わたしはあなたのうちから、高ぶって誇る者どもを除くゆえ、あなたは重ねてわが聖なる山で、高ぶることはない。
22803 36 3 12 わたしは柔和にしてへりくだる民を、あなたのうちに残す。彼らは主の名を避け所とする。
22804 36 3 13 イスラエルの残りの者は不義を行わず、偽りを言わず、その口には欺きの舌を見ない。それゆえ、彼らは食を得て伏し、彼らをおびやかす者はいない」。
22805 36 3 14 シオンの娘よ、喜び歌え。イスラエルよ、喜び呼ばわれ。エルサレムの娘よ、心のかぎり喜び楽しめ。
22806 36 3 15 主はあなたを訴える者を取り去り、あなたの敵を追い払われた。イスラエルの王なる主はあなたのうちにいます。あなたはもはや災を恐れることはない。
22807 36 3 16 その日、人々はエルサレムに向かって言う、「シオンよ、恐れるな。あなたの手を弱々しくたれるな。
22808 36 3 17 あなたの神、主はあなたのうちにいまし、勇士であって、勝利を与えられる。彼はあなたのために喜び楽しみ、その愛によってあなたを新にし、祭の日のようにあなたのために喜び呼ばわられる」。
22809 36 3 18 「わたしはあなたから悩みを取り去る。あなたは恥を受けることはない。
22810 36 3 19 見よ、その時あなたをしえたげる者をわたしはことごとく処分し、足なえを救い、追いやられた者を集め、彼らの恥を誉にかえ、全地にほめられるようにする。
22811 36 3 20 その時、わたしはあなたがたを連れかえる。わたしがあなたがたを集めるとき、わたしがあなたがたの目の前に、あなたがたの幸福を回復するとき、地のすべての民の中で、あなたがたに名を得させ、誉を得させる」と主は言われる。
22812 37 1 1 ダリヨス王の二年六月、その月の一日に、主の言葉が預言者ハガイによって、シャルテルの子、ユダの総督ゼルバベル、およびヨザダクの子、大祭司ヨシュアに臨んだ、
22813 37 1 2 「万軍の主はこう言われる、この民は、主の家を再び建てる時は、まだこないと言っている」。
22814 37 1 3 そこで、主の言葉はまた預言者ハガイに臨んだ、
22815 37 1 4 「主の家はこのように荒れはてているのに、あなたがたは、みずから板で張った家に住んでいる時であろうか。
22816 37 1 5 それで今、万軍の主はこう言われる、あなたがたは自分のなすべきことをよく考えるがよい。
22817 37 1 6 あなたがたは多くまいても、取入れは少なく、食べても、飽きることはない。飲んでも、満たされない。着ても、暖まらない。賃銀を得ても、これを破れた袋に入れているようなものである。
22818 37 1 7 万軍の主はこう言われる、あなたがたは、自分のなすべきことを考えるがよい。
22819 37 1 8 山に登り、木を持ってきて主の家を建てよ。そうすればわたしはこれを喜び、かつ栄光のうちに現れると主は言われる。
22820 37 1 9 あなたがたは多くを望んだが、見よ、それは少なかった。あなたがたが家に持ってきたとき、わたしはそれを吹き払った。これは何ゆえであるかと、万軍の主は言われる。これはわたしの家が荒れはてているのに、あなたがたは、おのおの自分の家の事だけに、忙しくしている。
22821 37 1 10 それゆえ、あなたがたの上の天は露をさし止め、地はその産物をさし止めた。
22822 37 1 11 また、わたしは地にも、山にも、穀物にも、新しい酒にも、油にも、地に生じるものにも、人間にも、家畜にも、手で作るすべての作物にも、ひでりを呼び寄せた」。
22823 37 1 12 そこで、シャルテルの子ゼルバベルとヨザダクの子、大祭司ヨシュアおよび残りのすべての民は、その神、主の声と、その神、主のつかわされた預言者ハガイの言葉とに聞きしたがい、そして民は、主の前に恐れかしこんだ。
22824 37 1 13 時に、主の使者ハガイは主の命令により、民に告げて言った、「わたしはあなたがたと共にいると主は言われる」。
22825 37 1 14 そして主は、シャルテルの子、ユダの総督ゼルバベルの心と、ヨザダクの子、大祭司ヨシュアの心、および残りのすべての民の心を、振り動かされたので、彼らは来て、その神、万軍の主の家の作業にとりかかった。
22826 37 1 15 これは六月二十四日のことであった。
22827 37 2 1 ダリヨス王の二年の七月二十一日に、主の言葉が預言者ハガイに臨んだ、
22828 37 2 2 「シャルテルの子、ユダの総督ゼルバベルと、ヨザダクの子、大祭司ヨシュア、および残りのすべての民に告げて言え、
22829 37 2 3 『あなたがた残りの者のうち、以前の栄光に輝く主の家を見た者はだれか。あなたがたは今、この状態をどう思うか。これはあなたがたの目には、無にひとしいではないか。
22830 37 2 4 主は言われる、ゼルバベルよ、勇気を出せ。ヨザダクの子、大祭司ヨシュアよ、勇気を出せ。主は言われる。この地のすべての民よ、勇気を出せ。働け。わたしはあなたがたと共にいると、万軍の主は言われる。
22831 37 2 5 これはあなたがたがエジプトから出た時、わたしがあなたがたに、約束した言葉である。わたしの霊が、あなたがたのうちに宿っている。恐れるな。
22832 37 2 6 万軍の主はこう言われる、しばらくして、いま一度、わたしは天と、地と、海と、かわいた地とを震う。
22833 37 2 7 わたしはまた万国民を震う。万国民の財宝は、はいって来て、わたしは栄光をこの家に満たすと、万軍の主は言われる。
22834 37 2 8 銀はわたしのもの、金もわたしのものであると、万軍の主は言われる。
22835 37 2 9 主の家の後の栄光は、前の栄光よりも大きいと、万軍の主は言われる。わたしはこの所に繁栄を与えると、万軍の主は言われる』」。
22836 37 2 10 ダリヨスの二年の九月二十四日に、主の言葉が預言者ハガイに臨んだ、
22837 37 2 11 「万軍の主はこう言われる、律法について祭司たちに尋ねて言え、
22838 37 2 12 『人がその衣服のすそで聖なる肉を運んで行き、そのすそがもし、パンまたはあつもの、または酒、または油、またはどんな食物にでもさわったなら、それらは聖なるものとなるか』と」。祭司たちは「ならない」と答えた。
22839 37 2 13 ハガイはまた言った、「もし、死体によって汚れた人が、これらの一つにさわったなら、それは汚れるか」。祭司たちは「汚れる」と答えた。
22840 37 2 14 そこで、ハガイは言った、「主は言われる、この民も、この国も、わたしの前では、そのようである。またその手のわざもそのようである。その所で彼らのささげるものは、汚れたものである。
22841 37 2 15 今、あなたがたはこの日から、後の事を思うがよい。主の宮で石の上に石が積まれなかった前、あなたがたは、どんなであったか。
22842 37 2 16 あの時には、二十枡の麦の積まれる所に行ったが、わずかに十枡を得、また五十桶をくもうとして、酒ぶねに行ったが、二十桶を得たのみであった。
22843 37 2 17 わたしは立ち枯れと、腐り穂と、ひょうをもってあなたがたと、あなたがたのすべての手のわざを撃った。しかし、あなたがたは、わたしに帰らなかったと主は言われる。
22844 37 2 18 あなたがたはこの日より後、すなわち、九月二十四日よりの事を思うがよい。また主の宮の基をすえた日から後の事を心にとめるがよい。
22845 37 2 19 種はなお、納屋にあるか。ぶどうの木、いちじくの木、ざくろの木、オリブの木もまだ実を結ばない。しかし、わたしはこの日から、あなたがたに恵みを与える」。
22846 37 2 20 この月の二十四日に、主の言葉がふたたびハガイに臨んだ、
22847 37 2 21 「ユダの総督ゼルバベルに告げて言え、わたしは天と地を震う。
22848 37 2 22 わたしは国々の王位を倒し、異邦の国々の力を滅ぼし、また戦車、およびこれに乗る者を倒す。馬およびこれに乗る者は、たがいにその仲間のつるぎによって倒れる。
22849 37 2 23 万軍の主は言われる、シャルテルの子、わがしもべゼルバベルよ、主は言われる、その日、わたしはあなたを立て、あなたを印章のようにする。わたしはあなたを選んだからであると、万軍の主は言われる」。
22850 38 1 1 ダリヨスの第二年の八月に、主の言葉がイドの子ベレキヤの子である預言者ゼカリヤに臨んだ、
22851 38 1 2 「主はあなたがたの先祖たちに対して、いたくお怒りになった。
22852 38 1 3 それゆえ、万軍の主はこう仰せられると、彼らに告げよ。万軍の主は仰せられる、わたしに帰れ、そうすれば、わたしもあなたがたに帰ろうと、万軍の主は仰せられる。
22853 38 1 4 あなたがたの先祖たちのようであってはならない。先の預言者たちは、彼らにむかって叫んで言った、『万軍の主はこう仰せられる、悪い道を離れ、悪いおこないを捨てて帰れ』と。しかし彼らは聞きいれず、耳をわたしに傾けなかったと主は言われる。
22854 38 1 5 あなたがたの先祖たち、彼らはどこにいるか。預言者たち、彼らは永遠に生きているのか。
22855 38 1 6 しかしわたしのしもべである預言者たちに命じたわが言葉と、わが定めとは、あなたがたの先祖たちに及んだではないか。それで彼らは立ち返って言った、『万軍の主がわれわれの道にしたがい、おこないに従って、われわれに、なそうと思い定められたように、そのとおりされたのだ』と」。
22856 38 1 7 ダリヨスの第二年の十一月、すなわちセバテという月の二十四日に、主の言葉がイドの子ベレキヤの子である預言者ゼカリヤに臨んだ。そしてゼカリヤは言った、
22857 38 1 8 「わたしは夜、見ていると、ひとりの人が赤馬に乗って、谷間にあるミルトスの木の中に立ち、その後に赤馬、栗毛の馬、白馬がいた。
22858 38 1 9 その時わたしが『わが主よ、これらはなんですか』と尋ねると、わたしと語る天の使は言った、『これがなんであるか、あなたに示しましょう』。
22859 38 1 10 すると、ミルトスの木の中に立っている人が答えて、『これらは地を見回らせるために、主がつかわされた者です』と言うと、
22860 38 1 11 彼らは答えて、ミルトスの中に立っている主の使に言った、『われわれは地を見回ったが、全地はすべて平穏です』。
22861 38 1 12 すると主の使は言った、『万軍の主よ、あなたは、いつまでエルサレムとユダの町々とを、あわれんで下さらないのですか。あなたはお怒りになって、すでに七十年になりました』。
22862 38 1 13 主はわたしと語る天の使に、ねんごろな慰めの言葉をもって答えられた。
22863 38 1 14 そこで、わたしと語る天の使は言った、『あなたは呼ばわって言いなさい。万軍の主はこう仰せられます、わたしはエルサレムのため、シオンのために、大いなるねたみを起し、
22864 38 1 15 安らかにいる国々の民に対して、大いに怒る。なぜなら、わたしが少しばかり怒ったのに、彼らは、大いにこれを悩ましたからであると。
22865 38 1 16 それゆえ、主はこう仰せられます、わたしはあわれみをもってエルサレムに帰る。わたしの家はその中に建てられ、測りなわはエルサレムに張られると、万軍の主は仰せられます。
22866 38 1 17 あなたはまた呼ばわって言いなさい。万軍の主はこう仰せられます、わが町々は再び良い物で満ちあふれ、主は再びシオンを慰め、再びエルサレムを選ぶ』と」。
22867 38 1 18 わたしが目をあげて見ていると、見よ、四つの角があった。
22868 38 1 19 わたしと語る天の使に「これらはなんですか」と言うと、彼は答えて言った、「これらはユダ、イスラエルおよびエルサレムを散らした角です」。
22869 38 1 20 その時、主は四人の鍛冶をわたしに示された。
22870 38 1 21 わたしが「これらは何をするために来たのですか」と言うと、彼は答えた、「これらの角はユダを散らして、人にその頭をあげさせなかったものですが、この四人の者が来たのは彼らをおどし、かのユダの地にむかって角をあげ、これを散らした国々の民の角を投げうつためです」。
22871 38 2 1 またわたしが目をあげて見ていると、見よ、ひとりの人が、測りなわを手に持っているので、
22872 38 2 2 「あなたはどこへ行くのですか」と尋ねると、その人はわたしに言った、「エルサレムを測って、その広さと、長さを見ようとするのです」。
22873 38 2 3 すると見よ、わたしと語る天の使が出て行くと、またひとりの天の使が出てきて、これに出会って、
22874 38 2 4 言った、「走って行って、あの若い人に言いなさい、『エルサレムはその中に、人と家畜が多くなるので、城壁のない村里のように、人の住む所となるでしょう。
22875 38 2 5 主は仰せられます、わたしはその周囲で火の城壁となり、その中で栄光となる』と」。
22876 38 2 6 主は仰せられる、さあ、北の地から逃げて来なさい。わたしはあなたがたを、天の四方の風のように散らしたからである。
22877 38 2 7 さあ、バビロンの娘と共にいる者よ、シオンにのがれなさい。
22878 38 2 8 あなたがたにさわる者は、彼の目の玉にさわるのであるから、あなたがたを捕えていった国々の民に、その栄光にしたがって、わたしをつかわされた万軍の主は、こう仰せられる、
22879 38 2 9 「見よ、わたしは彼らの上に手を振る。彼らは自分に仕えた者のとりことなる。その時あなたがたは万軍の主が、わたしをつかわされたことを知る。
22880 38 2 10 主は言われる、シオンの娘よ、喜び歌え。わたしが来て、あなたの中に住むからである。
22881 38 2 11 その日には、多くの国民が主に連なって、わたしの民となる。わたしはあなたの中に住む。
22882 38 2 12 あなたは万軍の主が、わたしをあなたにつかわされたことを知る。主は聖地で、ユダを自分の分として取り、エルサレムを再び選ばれるであろう」。
22883 38 2 13 すべて肉なる者よ、主の前に静まれ。主はその聖なるすみかから立ちあがられたからである。
22884 38 3 1 時に主は大祭司ヨシュアが、主の使の前に立ち、サタンがその右に立って、これを訴えているのをわたしに示された。
22885 38 3 2 主はサタンに言われた、「サタンよ、主はあなたを責めるのだ。すなわちエルサレムを選んだ主はあなたを責めるのだ。これは火の中から取り出した燃えさしではないか」。
22886 38 3 3 ヨシュアは汚れた衣を着て、み使の前に立っていたが、
22887 38 3 4 み使は自分の前に立っている者どもに言った、「彼の汚れた衣を脱がせなさい」。またヨシュアに向かって言った、「見よ、わたしはあなたの罪を取り除いた。あなたに祭服を着せよう」。
22888 38 3 5 わたしは言った、「清い帽子を頭にかぶらせなさい」。そこで清い帽子を頭にかぶらせ、衣を彼に着せた。主の使はかたわらに立っていた。
22889 38 3 6 主の使は、ヨシュアを戒めて言った、
22890 38 3 7 「万軍の主は、こう仰せられる、あなたがもし、わたしの道に歩み、わたしの務を守るならば、わたしの家をつかさどり、わたしの庭を守ることができる。わたしはまた、ここに立っている者どもの中に行き来することを得させる。
22891 38 3 8 大祭司ヨシュアよ、あなたも、あなたの前にすわっている同僚たちも聞きなさい。彼らはよいしるしとなるべき人々だからである。見よ、わたしはわたしのしもべなる枝を生じさせよう。
22892 38 3 9 万軍の主は言われる、見よ、ヨシュアの前にわたしが置いた石の上に、すなわち七つの目をもっているこの一つの石の上に、わたしはみずから文字を彫刻する。そしてわたしはこの地の罪を、一日の内に取り除く。
22893 38 3 10 万軍の主は言われる、その日には、あなたがたはめいめいその隣り人を招いて、ぶどうの木の下、いちじくの木の下に座すのである」。
22894 38 4 1 わたしと語った天の使がまた来て、わたしを呼びさました。わたしは眠りから呼びさまされた人のようであった。
22895 38 4 2 彼がわたしに向かって「何を見るか」と言ったので、わたしは言った、「わたしが見ていると、すべて金で造られた燭台が一つあって、その上に油を入れる器があり、また燭台の上に七つのともしび皿があり、そのともしび皿は燭台の上にあって、これにおのおの七本ずつの管があります。
22896 38 4 3 また燭台のかたわらに、オリブの木が二本あって、一本は油をいれる器の右にあり、一本はその左にあります」。
22897 38 4 4 わたしはまたわたしと語る天の使に言った、「わが主よ、これらはなんですか」。
22898 38 4 5 わたしと語る天の使は答えて、「あなたはそれがなんであるか知らないのですか」と言ったので、わたしは「わが主よ、知りません」と言った。
22899 38 4 6 すると彼はわたしに言った、「ゼルバベルに、主がお告げになる言葉はこれです。万軍の主は仰せられる、これは権勢によらず、能力によらず、わたしの霊によるのである。
22900 38 4 7 大いなる山よ、おまえは何者か。おまえはゼルバベルの前に平地となる。彼は『恵みあれ、これに恵みあれ』と呼ばわりながら、かしら石を引き出すであろう」。
22901 38 4 8 主の言葉がわたしに臨んで言うには、
22902 38 4 9 「ゼルバベルの手はこの宮の礎をすえた。彼の手はこれを完成する。その時あなたがたは万軍の主が、わたしをあなたがたにつかわされたことを知る。
22903 38 4 10 だれでも小さい事の日をいやしめた者は、ゼルバベルの手に、下げ振りのあるのを見て、喜ぶ。
22904 38 4 11 わたしはまた彼に尋ねて、「燭台の左右にある、この二本のオリブの木はなんですか」と言い、
22905 38 4 12 重ねてまた「この二本の金の管によって、油をそれから注ぎ出すオリブの二枝はなんですか」と言うと、
22906 38 4 13 彼はわたしに答えて、「あなたはそれがなんであるか知らないのですか」と言ったので、「わが主よ、知りません」と言った。
22907 38 4 14 すると彼は言った、「これらはふたりの油そそがれた者で、全地の主のかたわらに立つ者です」。
22908 38 5 1 わたしがまた目をあげて見ていると、飛んでいる巻物を見た。
22909 38 5 2 彼がわたしに「何を見るか」と言ったので、「飛んでいる巻物を見ます。その長さは二十キュビト、その幅は十キュビトです」と答えた。
22910 38 5 3 すると彼はまた、わたしに言った、「これは全地のおもてに出て行く、のろいの言葉です。すべて盗む者はこれに照して除き去られ、すべて偽り誓う者は、これに照して除き去られるのです。
22911 38 5 4 万軍の主は仰せられます、わたしはこれを出て行かせる。これは盗む者の家に入り、またわたしの名をさして偽り誓う者の家に入り、その家の中に宿って、これをその木と石と共に滅ぼすと」。
22912 38 5 5 わたしと語る天の使は進んで来て、わたしに「目をあげて、この出てきた物が、なんであるかを見なさい」と言った。
22913 38 5 6 わたしが「これはなんですか」と言うと、彼は「この出てきた物は、エパ枡です」と言い、また「これは全地の罪です」と言った。
22914 38 5 7 そして見よ、鉛のふたを取りあげると、そのエパ枡の中にひとりの女がすわっていた。
22915 38 5 8 すると彼は「これは罪悪である」と言って、その女をエパ枡の中に押し入れ、鉛の重しを、その枡の口に投げかぶせた。
22916 38 5 9 それからわたしが目をあげて見ていると、ふたりの女が出てきた。これに、こうのとりの翼のような翼があり、その翼に風をはらんで、エパ枡を天と地との間に持ちあげた。
22917 38 5 10 わたしは、わたしと語る天の使に言った、「彼らはエパ枡を、どこへ持って行くのですか」。
22918 38 5 11 彼はわたしに言った、「シナルの地で、女たちのために家を建てるのです。それが建てられると、彼らはエパ枡をそこにすえ、それの土台の上に置くのです」。
22919 38 6 1 わたしがまた目をあげて見ていると、四両の戦車が二つの山の間から出てきた。その山は青銅の山であった。
22920 38 6 2 第一の戦車には赤馬を着け、第二の戦車には黒馬を着け、
22921 38 6 3 第三の戦車には白馬を着け、第四の戦車には、まだらのねずみ色の馬を着けていた。
22922 38 6 4 わたしは、わたしと語るみ使に尋ねた、「わが主よ、これらはなんですか」。
22923 38 6 5 天の使は答えて、わたしに言った、「これらは全地の主の前に現れて後、天の四方に出て行くものです。
22924 38 6 6 黒馬を着けた戦車は、北の国をさして出て行き、白馬は西の国をさして出て行き、まだらの馬は南の国をさして出て行くのです」。
22925 38 6 7 馬が出てくると、彼らは、地をあまねくめぐるために、しきりに出たがるのであった。それで彼が「行って、地をあまねくめぐれ」と言うと、彼らは地を行きめぐった。
22926 38 6 8 すると彼はわたしを呼んで、「北の国をさして行く者どもは、北の国でわたしの心を静まらせてくれた」と言った。
22927 38 6 9 主の言葉がまたわたしに臨んだ、
22928 38 6 10 「バビロンから帰ってきたかの捕囚の中から、ヘルダイ、トビヤおよびエダヤを連れて、その日にゼパニヤの子ヨシヤの家に行き、
22929 38 6 11 彼らから金銀を受け取って、一つの冠を造り、それをヨザダクの子である大祭司ヨシュアの頭にかぶらせて、
22930 38 6 12 彼に言いなさい、『万軍の主は、こう仰せられる、見よ、その名を枝という人がある。彼は自分の場所で成長して、主の宮を建てる。
22931 38 6 13 すなわち彼は主の宮を建て、王としての光栄を帯び、その位に座して治める。その位のかたわらに、ひとりの祭司がいて、このふたりの間に平和の一致がある』。
22932 38 6 14 またその冠はヘルダイ、トビヤ、エダヤおよびゼパニヤの子ヨシヤの記念として、主の宮に納められる。
22933 38 6 15 また遠い所の者どもが来て、主の宮を建てることを助ける。そしてあなたがたは万軍の主が、わたしをつかわされたことを知るようになる。あなたがたがもし励んで、あなたがたの神、主の声に聞き従うならば、このようになる」。
22934 38 7 1 ダリヨス王の第四年の九月、すなわちキスリウという月の四日に、主の言葉がゼカリヤに臨んだ。
22935 38 7 2 その時ベテルの人々は、シャレゼル、レゲン・メレクおよびその従者をつかわして、主の恵みを請い、
22936 38 7 3 かつ万軍の主の宮にいる祭司に問わせ、かつ預言者に問わせて言った、「わたしは今まで、多年おこなってきたように、五月に泣き悲しみ、かつ断食すべきでしょうか」。
22937 38 7 4 この時、万軍の主の言葉がわたしに臨んだ、
22938 38 7 5 「地のすべての民、および祭司に告げて言いなさい、あなたがたが七十年の間、五月と七月とに断食し、かつ泣き悲しんだ時、はたして、わたしのために断食したか。
22939 38 7 6 あなたがたが食い飲みする時、それは全く自分のために食い、自分のために飲むのではないか。
22940 38 7 7 昔エルサレムがその周囲の町々と共に、人が住み、栄えていた時、また南の地および平野にも、人が住んでいた時に、さきの預言者たちによって、主がお告げになった言葉は、これらの事ではなかったか」。
22941 38 7 8 主の言葉が、またゼカリヤに臨んだ、
22942 38 7 9 「万軍の主はこう仰せられる、真実のさばきを行い、互に相いつくしみ、相あわれみ、
22943 38 7 10 やもめ、みなしご、寄留の他国人および貧しい人を、しえたげてはならない。互に人を害することを、心に図ってはならない」。
22944 38 7 11 ところが、彼らは聞くことを拒み、肩をそびやかし、耳を鈍くして聞きいれず、
22945 38 7 12 その心を金剛石のようにして、万軍の主がそのみたまにより、さきの預言者によって伝えられた、律法と言葉とに聞き従わなかった。それゆえ、大いなる怒りが、万軍の主から出て、彼らに臨んだのである。
22946 38 7 13 「わたしが呼ばわったけれども、彼らは聞こうとしなかった。そのとおりに、彼らが呼ばわっても、わたしは聞かない」と万軍の主は仰せられる。
22947 38 7 14 「わたしは、つむじ風をもって、彼らを未知のもろもろの国民の中に散らした。こうして彼らが去った後、この地は荒れて行き来する者もなく、この麗しい地は荒れ地となったのである」。
22948 38 8 1 万軍の主の言葉がわたしに臨んだ、
22949 38 8 2 「万軍の主は、こう仰せられる、『わたしはシオンのために、大いなるねたみを起し、またこれがために、大いなる憤りをもってねたむ』。
22950 38 8 3 主はこう仰せられる、『わたしはシオンに帰って、エルサレムの中に住む。エルサレムは忠信な町ととなえられ、万軍の主の山は聖なる山と、となえられる』。
22951 38 8 4 万軍の主は、こう仰せられる、『エルサレムの街路には再び老いた男、老いた女が座するようになる。みな年寄の人々で、おのおのつえを手に持つ。
22952 38 8 5 またその町の街路には、男の子、女の子が満ちて、街路に遊び戯れる』。
22953 38 8 6 万軍の主は、こう仰せられる、『その日には、たとい、この民の残れる者の目に、不思議な事であっても、それはわたしの目にも、不思議な事であろうか』と万軍の主は言われる。
22954 38 8 7 万軍の主は、こう仰せられる、『見よ、わが民を東の国から、また西の国から救い出し、
22955 38 8 8 彼らを連れてきて、エルサレムに住まわせ、彼らはわが民となり、わたしは彼らの神となって、共に真実と正義とをもって立つ』」。
22956 38 8 9 万軍の主は、こう仰せられる、「万軍の主の家である宮を建てるために、その礎をすえた日からこのかた、預言者たちの口から出たこれらの言葉を、きょう聞く者よ、あなたがたの手を強くせよ。
22957 38 8 10 この日の以前には、人も働きの価を得ず、獣も働きの価を得ず、また出る者もはいる者も、あだのために安全ではなかった。わたしはまた人々を相たがいにそむかせた。
22958 38 8 11 しかし今は、わたしのこの民の残れる者に対することは、さきの日のようではないと、万軍の主は言われる。
22959 38 8 12 そこには、平和と繁栄との種がまかれるからである。すなわちぶどうの木は実を結び、地は産物を出し、天は露を与える。わたしはこの民の残れる者に、これをことごとく与える。
22960 38 8 13 ユダの家およびイスラエルの家よ、あなたがたが、国々の民の中に、のろいとなっていたように、わたしはあなたがたを救って祝福とする。恐れてはならない。あなたがたの手を強くせよ」。
22961 38 8 14 万軍の主は、こう仰せられる、「あなたがたの先祖が、わたしを怒らせた時に、災を下そうと思って、これをやめなかったように、――万軍の主は言われる――
22962 38 8 15 そのように、わたしはまた今日、エルサレムとユダの家に恵みを与えよう。恐れてはならない。
22963 38 8 16 あなたがたのなすべき事はこれである。あなたがたは互に真実を語り、またあなたがたの門で、真実と平和のさばきとを、行わなければならない。
22964 38 8 17 あなたがたは、互に人を害することを、心に図ってはならない。偽りの誓いを好んではならない。わたしはこれらの事を憎むからであると、主は言われる」。
22965 38 8 18 万軍の主の言葉がわたしに臨んだ、
22966 38 8 19 「万軍の主は、こう仰せられる、四月の断食と、五月の断食と、七月の断食と、十月の断食とは、ユダの家の喜び楽しみの時となり、よき祝の時となる。ゆえにあなたがたは、真実と平和とを愛せよ。
22967 38 8 20 万軍の主は、こう仰せられる、もろもろの民および多くの町の住民、すなわち、一つの町の住民は、他の町の人々のところに行き、
22968 38 8 21 『われわれは、ただちに行って、主の恵みを請い、万軍の主に呼び求めよう』と言うと、『わたしも行こう』と言う。
22969 38 8 22 多くの民および強い国民はエルサレムに来て、万軍の主を求め、主の恵みを請う。
22970 38 8 23 万軍の主は、こう仰せられる、その日には、もろもろの国ことばの民の中から十人の者が、ひとりのユダヤ人の衣のすそをつかまえて、『あなたがたと一緒に行こう。神があなたがたと共にいますことを聞いたから』と言う」。
22971 38 9 1 託宣主の言葉はハデラクの地に臨み、ダマスコの上にとどまる。アラムの町々はイスラエルのすべての部族のように主に属するからである。
22972 38 9 2 これに境するハマテもまたそのとおりだ。非常に賢いが、ツロとシドンもまた同様である。
22973 38 9 3 ツロは自分のために、とりでを築き、銀をちりのように積み、金を道ばたの泥のように積んだ。
22974 38 9 4 しかし見よ、主はこれを攻め取り、その富を海の中に投げ入れられる。これは火で焼き滅ぼされる。
22975 38 9 5 アシケロンはこれを見て恐れ、ガザもまた見てもだえ苦しみ、エクロンもまたその望む所のものがはずかしめられて苦しむ。ガザには王が絶え、アシケロンには住む者がなくなり、
22976 38 9 6 アシドドには混血の民が住む。わたしはペリシテびとの誇を断つ。
22977 38 9 7 またその口から血を取り除き、その歯の間から憎むべき物を取り除く。これもまた残ってわれわれの神に帰し、ユダの一民族のようになる。またエクロンはエブスびとのようになる。
22978 38 9 8 その時わたしは、わが家のために営を張って、見張りをし、行き来する者のないようにする。しえたげる者は、かさねて通ることがない。わたしが今、自分の目で見ているからである。
22979 38 9 9 シオンの娘よ、大いに喜べ、エルサレムの娘よ、呼ばわれ。見よ、あなたの王はあなたの所に来る。彼は義なる者であって勝利を得、柔和であって、ろばに乗る。すなわち、ろばの子である子馬に乗る。
22980 38 9 10 わたしはエフライムから戦車を断ち、エルサレムから軍馬を断つ。また、いくさ弓も断たれる。彼は国々の民に平和を告げ、その政治は海から海に及び、大川から地の果にまで及ぶ。
22981 38 9 11 あなたについてはまた、あなたとの契約の血のゆえに、わたしはかの水のない穴から、あなたの捕われ人を解き放す。
22982 38 9 12 望みをいだく捕われ人よ、あなたの城に帰れ。わたしはきょうもなお告げて言う、必ず倍して、あなたをもとに返すことを。
22983 38 9 13 わたしはユダを張って、わが弓となし、エフライムをその矢とした。シオンよ、わたしはあなたの子らを呼び起して、ギリシヤの人々を攻めさせ、あなたを勇士のつるぎのようにさせる。
22984 38 9 14 その時、主は彼らの上に現れて、その矢をいなずまのように射られる。主なる神はラッパを吹きならし、南のつむじ風に乗って出てこられる。
22985 38 9 15 万軍の主は彼らを守られるので、彼らは石投げどもを食い尽し、踏みつける。彼らはまたぶどう酒のように彼らの血を飲み、鉢のようにそれで満たされ、祭壇のすみのように浸される。
22986 38 9 16 その日、彼らの神、主は、彼らを救い、その民を羊のように養われる。彼らは冠の玉のように、その地に輝く。
22987 38 9 17 そのさいわい、その麗しさは、いかばかりであろう。穀物は若者を栄えさせ、新しいぶどう酒は、おとめを栄えさせる。
22988 38 10 1 あなたがたは春の雨の時に、雨を主に請い求めよ。主はいなずまを造り、大雨を人々に賜い、野の青草をおのおのに賜わる。
22989 38 10 2 テラピムは、たわごとを言い、占い師は偽りを見、夢見る者は偽りの夢を語り、むなしい慰めを与える。このゆえに、民は羊のようにさまよい、牧者がないために悩む。
22990 38 10 3 「わが怒りは牧者にむかって燃え、わたしは雄やぎを罰する。万軍の主が、その群れの羊であるユダの家を顧み、これをみごとな軍馬のようにされるからである。
22991 38 10 4 隅石は彼らから出、天幕の杭も彼らから出、いくさ弓も彼らから出、支配者も皆彼らの中から出る。
22992 38 10 5 彼らが戦う時は勇士のようになって、道ばたの泥の中に敵を踏みにじる。主が彼らと共におられるゆえに彼らは戦い、馬に乗る者どもを困らせる。
22993 38 10 6 わたしはユダの家を強くし、ヨセフの家を救う。わたしは彼らをあわれんで、彼らを連れ帰る。彼らはわたしに捨てられたことのないようになる。わたしは彼らの神、主であって、彼らに答えるからである。
22994 38 10 7 エフライムびとは勇士のようになり、その心は酒を飲んだように喜ぶ。その子供らはこれを見て喜び、その心は主によって楽しむ。
22995 38 10 8 わたしは彼らに向かい、口笛を吹いて彼らを集める、わたしが彼らをあがなったからである。彼らは昔のように数多くなる。
22996 38 10 9 わたしは彼らを国々の民の中に散らした。しかし彼らは遠い国々でわたしを覚え、その子供らと共に生きながらえて帰ってくる。
22997 38 10 10 わたしは彼らをエジプトの国から連れ帰り、アッスリヤから彼らを集める。わたしはギレアデの地およびレバノンに彼らを連れて行く。彼らはいる所もないほどに多くなる。
22998 38 10 11 彼らはエジプトの海を通る。海の波は撃たれ、ナイルの淵はことごとくかれた。アッスリヤの高ぶりは低くされ、エジプトのつえは移り去る。
22999 38 10 12 わたしは彼らを主によって強くする。彼らは主の名を誇る」と主は言われる。
23000 38 11 1 レバノンよ、おまえの門を開き、おまえの香柏を火に焼き滅ぼさせよ。
23001 38 11 2 いとすぎよ、泣き叫べ。香柏は倒れ、みごとな木は、そこなわれたからである。バシャンのかしよ、泣き叫べ。茂った林は倒れたからである。
23002 38 11 3 聞け、牧者の泣き叫ぶ声を。彼らの栄えが消え去ったからである。聞け、ししのほえる声を。ヨルダンの草むらが荒れ果てたからである。
23003 38 11 4 わが神、主はこう仰せられた、「ほふらるべき羊の群れの牧者となれ。
23004 38 11 5 これを買う者は、これをほふっても罰せられない。これを売る者は言う、『主はほむべきかな、わたしは富んだ』と。そしてその牧者は、これをあわれまない。
23005 38 11 6 わたしは、もはやこの地の住民をあわれまないと、主は言われる。見よ、わたしは人をおのおのその牧者の手に渡し、おのおのその王の手に渡す。彼らは地を荒す。わたしは彼らの手からこれを救い出さない」。
23006 38 11 7 わたしは羊の商人のために、ほふらるべき羊の群れの牧者となった。わたしは二本のつえを取り、その一本を恵みと名づけ、一本を結びと名づけて、その羊を牧した。
23007 38 11 8 わたしは一か月に牧者三人を滅ぼした。わたしは彼らに、がまんしきれなくなったが、彼らもまた、わたしを忌みきらった。
23008 38 11 9 それでわたしは言った、「わたしはあなたがたの牧者とならない。死ぬ者は死に、滅びる者は滅び、残った者はたがいにその肉を食いあうがよい」。
23009 38 11 10 わたしは恵みというつえを取って、これを折った。これはわたしがもろもろの民と結んだ契約を、廃するためであった。
23010 38 11 11 そしてこれは、その日に廃された。そこで、わたしに目を注いでいた羊の商人らは、これが主の言葉であったことを知った。
23011 38 11 12 わたしは彼らに向かって、「あなたがたがもし、よいと思うならば、わたしに賃銀を払いなさい。もし、いけなければやめなさい」と言ったので、彼らはわたしの賃銀として、銀三十シケルを量った。
23012 38 11 13 主はわたしに言われた、「彼らによって、わたしが値積られたその尊い価を、宮のさいせん箱に投げ入れよ」。わたしは銀三十シケルを取って、これを主の宮のさいせん箱に投げ入れた。
23013 38 11 14 そしてわたしは結びという第二のつえを折った。これはユダとイスラエルの間の、兄弟関係を廃するためであった。
23014 38 11 15 主はわたしに言われた、「おまえはまた愚かな牧者の器を取れ。
23015 38 11 16 見よ、わたしは地にひとりの牧者を起す。彼は滅ぼされる者を顧みず、迷える者を尋ねず、傷ついた者をいやさず、健やかな者を養わず、肥えた者の肉を食らい、そのひずめをさえ裂く者である。
23016 38 11 17 その羊の群れを捨てる愚かな牧者はわざわいだ。どうか、つるぎがその腕を撃ち、その右の目を撃つように。その腕は全く衰え、その右の目は全く見えなくなるように」。
23017 38 12 1 託宣
23018 38 12 2 「見よ、わたしはエルサレムを、その周囲にあるすべての民をよろめかす杯にしようとしている。これはエルサレムの攻め囲まれる時、ユダにも及ぶ。
23019 38 12 3 その日には、わたしはエルサレムをすべての民に対して重い石とする。これを持ちあげる者はみな大傷を受ける。地の国々の民は皆集まって、これを攻める。
23020 38 12 4 主は言われる、その日には、わたしはすべての馬を撃って驚かせ、その乗り手を撃って狂わせる。しかし、もろもろの民の馬を、ことごとく撃って、めくらとするとき、ユダの家に対しては、わたしの目を開く。
23021 38 12 5 その時ユダの諸族は、その心の中に『エルサレムの住民は、その神、万軍の主によって力強くなった』と言う。
23022 38 12 6 その日には、わたしはユダの諸族を、たきぎの中の火皿のようにし、麦束の中のたいまつのようにする。彼らは右に左に、その周囲にあるすべての民を、焼き滅ぼす。しかしエルサレムはなお、そのもとの所、すなわちエルサレムで、人の住む所となる。
23023 38 12 7 主はまずユダの幕屋を救われる。これはダビデの家の光栄と、エルサレムの住民の光栄とが、ユダの光栄にまさることのないようにするためである。
23024 38 12 8 その日、主はエルサレムの住民を守られる。彼らの中の弱い者も、その日には、ダビデのようになる。またダビデの家は神のように、彼らに先だつ主の使のようになる。
23025 38 12 9 その日には、わたしはエルサレムに攻めて来る国民を、ことごとく滅ぼそうと努める。
23026 38 12 10 わたしはダビデの家およびエルサレムの住民に、恵みと祈の霊とを注ぐ。彼らはその刺した者を見る時、ひとり子のために嘆くように彼のために嘆き、ういごのために悲しむように、彼のためにいたく悲しむ。
23027 38 12 11 その日には、エルサレムの嘆きは、メギドの平野にあったハダデ・リンモンのための嘆きのように大きい。
23028 38 12 12 国じゅう、氏族おのおの別れて嘆く。すなわちダビデの家の氏族は別れて嘆き、その妻たちも別れて嘆く。ナタンの家の氏族は別れて嘆き、その妻たちも別れて嘆く。
23029 38 12 13 レビの家の氏族は別れて嘆き、その妻たちも別れて嘆く。シメイの氏族は別れて嘆き、その妻たちも別れて嘆く。
23030 38 12 14 その他の氏族も皆別れて嘆き、その妻たちも別れて嘆くのである。
23031 38 13 1 その日には、罪と汚れとを清める一つの泉が、ダビデの家とエルサレムの住民とのために開かれる。
23032 38 13 2 万軍の主は言われる、その日には、わたしは地から偶像の名を取り除き、重ねて人に覚えられることのないようにする。わたしはまた預言者および汚れの霊を、地から去らせる。
23033 38 13 3 もし、人が今後預言するならば、その産みの父母はこれにむかって、『あなたは主の名をもって偽りを語るゆえ、生きていることができない』と言い、その産みの父母は彼が預言している時、彼を刺すであろう。
23034 38 13 4 その日には、預言者たちは皆預言する時、その幻を恥じる。また人を欺くための毛の上着を着ない。
23035 38 13 5 そして『わたしは預言者ではない、わたしは土地を耕す者だ。若い時から土地を持っている』と言う。
23036 38 13 6 もし、人が彼に『あなたの背中の傷は何か』と尋ねるならば、『これはわたしの友だちの家で受けた傷だ』と、彼は言うであろう」。
23037 38 13 7 万軍の主は言われる、「つるぎよ、立ち上がってわが牧者を攻めよ。わたしの次に立つ人を攻めよ。牧者を撃て、その羊は散る。わたしは手をかえして、小さい者どもを攻める。
23038 38 13 8 主は言われる、全地の人の三分の二は断たれて死に、三分の一は生き残る。
23039 38 13 9 わたしはこの三分の一を火の中に入れ、銀をふき分けるように、これをふき分け、金を精錬するように、これを精錬する。彼らはわたしの名を呼び、わたしは彼らに答える。わたしは『彼らはわが民である』と言い、彼らは『主はわが神である』と言う」。
23040 38 14 1 見よ、主の日が来る。その時あなたの奪われた物は、あなたの中で分かたれる。
23041 38 14 2 わたしは万国の民を集めて、エルサレムを攻め撃たせる。町は取られ、家はかすめられ、女は犯され、町の半ばは捕えられて行く。しかし残りの民は町から断たれることはない。
23042 38 14 3 その時、主は出てきて、いくさの日にみずから戦われる時のように、それらの国びとと戦われる。
23043 38 14 4 その日には彼の足が、東の方エルサレムの前にあるオリブ山の上に立つ。そしてオリブ山は、非常に広い一つの谷によって、東から西に二つに裂け、その山の半ばは北に、半ばは南に移り、
23044 38 14 5 わが山の谷はふさがれる。裂けた山の谷が、そのかたわらに接触するからである。そして、あなたがたはユダの王ウジヤの世に、地震を避けて逃げたように逃げる。こうして、あなたがたの神、主はこられる、もろもろの聖者と共にこられる。
23045 38 14 6 その日には、寒さも霜もない。
23046 38 14 7 そこには長い連続した日がある(主はこれを知られる)。これには昼もなく、夜もない。夕暮になっても、光があるからである。
23047 38 14 8 その日には、生ける水がエルサレムから流れ出て、その半ばは東の海に、その半ばは西の海に流れ、夏も冬もやむことがない。
23048 38 14 9 主は全地の王となられる。その日には、主ひとり、その名一つのみとなる。
23049 38 14 10 全地はゲバからエルサレムの南リンモンまで、平地のように変る。しかしエルサレムは高くなって、そのもとの所にとどまり、ベニヤミンの門から、先にあった門の所に及び、隅の門に至り、ハナネルのやぐらから、王の酒ぶねにまで及ぶ。
23050 38 14 11 その中には人が住み、もはやのろいはなく、エルサレムは安らかに立つ。
23051 38 14 12 エルサレムを攻撃したもろもろの民を、主は災をもって撃たれる。すなわち彼らはなお足で立っているうちに、その肉は腐れ、目はその穴の中で腐れ、舌はその口の中で腐れる。
23052 38 14 13 その日には、主は彼らを大いにあわてさせられるので、彼らはおのおのその隣り人を捕え、手をあげてその隣り人を攻める。
23053 38 14 14 ユダもまた、エルサレムに敵して戦う。その周囲のすべての国びとの財宝、すなわち金銀、衣服などが、はなはだ多く集められる。
23054 38 14 15 また馬、騾、らくだ、ろば、およびその陣営にあるすべての家畜にも、この災のような災が臨む。
23055 38 14 16 エルサレムに攻めて来たもろもろの国びとの残った者は、皆年々上って来て、王なる万軍の主を拝み、仮庵の祭を守るようになる。
23056 38 14 17 地の諸族のうち、王なる万軍の主を拝むために、エルサレムに上らない者の上には、雨が降らない。
23057 38 14 18 エジプトの人々が、もし上ってこない時には、主が仮庵の祭を守るために、上ってこないすべての国びとを撃たれるその災が、彼らの上に臨む。
23058 38 14 19 これが、エジプトびとの受ける罰、およびすべて仮庵の祭を守るために上ってこない国びとの受ける罰である。
23059 38 14 20 その日には、馬の鈴の上に「主に聖なる者」と、しるすのである。また主の宮のなべは、祭壇の前の鉢のように、聖なる物となる。
23060 38 14 21 エルサレムおよびユダのすべてのなべは、万軍の主に対して聖なる物となり、すべて犠牲をささげる者は来てこれを取り、その中で犠牲の肉を煮ることができる。その日には、万軍の主の宮に、もはや商人はいない。
23061 39 1 1 マラキによってイスラエルに臨んだ主の言葉の託宣。
23062 39 1 2 主は言われる、「わたしはあなたがたを愛した」と。ところがあなたがたは言う、「あなたはどんなふうに、われわれを愛されたか」。主は言われる、「エサウはヤコブの兄ではないか。しかしわたしはヤコブを愛し、
23063 39 1 3 エサウを憎んだ。かつ、わたしは彼の山地を荒し、その嗣業を荒野の山犬に与えた」。
23064 39 1 4 もしエドムが「われわれは滅ぼされたけれども、荒れた所を再び建てる」と言うならば、万軍の主は「彼らは建てるかもしれない。しかしわたしはそれを倒す。人々は、彼らを悪しき国ととなえ、とこしえに主の怒りをうける民ととなえる」と言われる。
23065 39 1 5 あなたがたの目はこれを見て、「主はイスラエルの境を越えて大いなる神である」と言うであろう。
23066 39 1 6 「子はその父を敬い、しもべはその主人を敬う。それでわたしがもし父であるならば、あなたがたのわたしを敬う事実が、どこにあるか。わたしがもし主人であるならば、わたしを恐れる事実が、どこにあるか。わたしの名を侮る祭司たちよ、と万軍の主はあなたがたに言われる。ところがあなたがたは『われわれはどんなふうにあなたの名を侮ったか』と言い、
23067 39 1 7 汚れた食物をわたしの祭壇の上にささげる。またあなたがたは、主の台は卑しむべき物であると考えて、『われわれはどんなふうに、それを汚したか』と言う。
23068 39 1 8 あなたがたが盲目の獣を、犠牲にささげるのは悪い事ではないか。また足のなえたもの、病めるものをささげるのは悪い事ではないか。今これをあなたのつかさにささげてみよ。彼はあなたを喜び、あなたを受けいれるであろうかと、万軍の主は言われる。
23069 39 1 9 あなたがたは、神がわれわれをあわれまれるように、神の恵みを求めてみよ。このようなあなたがたの手のささげ物をもって、彼はあなたがたを受けいれられるであろうかと、万軍の主は言われる。
23070 39 1 10 あなたがたがわが祭壇の上にいたずらに、火をたくことのないように戸を閉じる者があなたがたのうちに、ひとりあったらいいのだが。わたしはあなたがたを喜ばない、またあなたがたの手からささげ物を受けないと、万軍の主は言われる。
23071 39 1 11 日の出る所から没する所まで、国々のうちにわが名はあがめられている。また、どこでも香と清いささげ物が、わが名のためにささげられる。これはわが名が国々のうちにあがめられているからであると、万軍の主は言われる。
23072 39 1 12 ところがあなたがたは、主の台は汚れている、またこの食物は卑しむべき物であると言って、これを汚した。
23073 39 1 13 あなたがたはまた『これはなんと煩わしい事か』と言って、わたしを鼻であしらうと、万軍の主は言われる。あなたがたはまた奪った物、足なえのもの、病めるものを、ささげ物として携えて来る。わたしはそれを、あなたがたの手から、受けるであろうかと主は言われる。
23074 39 1 14 群れのうちに雄の獣があり、それをささげると誓いを立てているのに、傷のあるものを、主にささげる偽り者はのろわれる。わたしは大いなる王で、わが名は国々のうちに恐れられるべきであると、万軍の主は言われる。
23075 39 2 1 祭司たちよ、今この命令があなたがたに与えられる。
23076 39 2 2 万軍の主は言われる、あなたがたがもし聞き従わず、またこれを心に留めず、わが名に栄光を帰さないならば、わたしはあなたがたの上に、のろいを送り、またあなたがたの祝福をのろいに変える。あなたがたは、これを心に留めないので、わたしはすでにこれをのろった。
23077 39 2 3 見よ、わたしはあなたがたの子孫を責める。またあなたがたの犠牲の糞を、あなたがたの顔の上にまき散らし、あなたがたをわたしの前から退ける。
23078 39 2 4 こうしてわたしが、この命令をあなたがたに与えたのは、レビと結んだわが契約が、保たれるためであることを、あなたがたが知るためであると、万軍の主は言われる。
23079 39 2 5 彼と結んだわが契約は、生命と平安との契約であって、わたしがこれを彼に与えたのは、彼にわたしを恐れさせるためである。彼はすでにわたしを恐れ、わが名の前におののいた。
23080 39 2 6 彼の口には、まことの律法があり、そのくちびるには、不義が見られなかった。彼は平安と公義とをもって、わたしと共に歩み、また多くの人を不義から立ち返らせた。
23081 39 2 7 祭司のくちびるは知識を保ち、人々が彼の口から律法を尋ねるのが当然である。彼は万軍の主の使者だからだ。
23082 39 2 8 ところが、あなたがたは道を離れ、多くの人を教えてつまずかせ、レビの契約を破ったと、万軍の主は言われる。
23083 39 2 9 あなたがたはわたしの道を守らず、律法を教えるに当って、人にかたよったがために、あなたがたをすべての民の前に侮られ、卑しめられるようにする」。
23084 39 2 10 われわれの父は皆一つではないか。われわれを造った神は一つではないか。なにゆえ、われわれは先祖たちの契約を破って、おのおのその兄弟に偽りを行うのか。
23085 39 2 11 ユダは偽りを行い、イスラエルおよびエルサレムの中には憎むべき事が行われた。すなわちユダは主が愛しておられる聖所を汚して、他の神に仕える女をめとった。
23086 39 2 12 どうか、主がこうした事を行う人をば、証言する者も、答弁する者も、また万軍の主にささげ物をする者をも、ヤコブの幕屋から断たれるように。
23087 39 2 13 あなたがたはまたこのような事をする。すなわち神がもはやささげ物をかえりみず、またこれをあなたがたの手から、喜んで受けられないために、あなたがたは涙と、泣くことと、嘆きとをもって、主の祭壇をおおい、
23088 39 2 14 「なぜ神は受けられないのか」と尋ねる。これは主があなたと、あなたの若い時の妻との間の、契約の証人だったからである。彼女は、あなたの連れ合い、契約によるあなたの妻であるのに、あなたは彼女を裏切った。
23089 39 2 15 一つ神は、われわれのために命の霊を造り、これをささえられたではないか。彼は何を望まれるか。神を敬う子孫であるゆえ、あなたがたはみずから慎んで、その若い時の妻を裏切ってはならない。
23090 39 2 16 イスラエルの神、主は言われる、「わたしは離縁する者を憎み、また、しえたげをもってその衣をおおう人を憎むと、万軍の主は言われる。ゆえにみずから慎んで、裏切ることをしてはならない」。
23091 39 2 17 あなたがたは言葉をもって主を煩わした。しかしあなたがたは言う、「われわれはどんなふうに、彼を煩わしたか」。それはあなたがたが「すべて悪を行う者は主の目に良く見え、かつ彼に喜ばれる」と言い、また「さばきを行う神はどこにあるか」と言うからである。
23092 39 3 1 「見よ、わたしはわが使者をつかわす。彼はわたしの前に道を備える。またあなたがたが求める所の主は、たちまちその宮に来る。見よ、あなたがたの喜ぶ契約の使者が来ると、万軍の主が言われる。
23093 39 3 2 その来る日には、だれが耐え得よう。そのあらわれる時には、だれが立ち得よう。
23094 39 3 3 彼は銀をふきわけて清める者のように座して、レビの子孫を清め、金銀のように彼らを清める。そして彼らは義をもって、ささげ物を主にささげる。
23095 39 3 4 その時ユダとエルサレムとのささげ物は、昔の日のように、また先の年のように主に喜ばれる。
23096 39 3 5 そしてわたしはあなたがたに近づいて、さばきをなし、占い者、姦淫を行う者、偽りの誓いをなす者にむかい、雇人の賃銀をかすめ、やもめと、みなしごとをしえたげ、寄留の他国人を押しのけ、わたしを恐れない者どもにむかって、すみやかにあかしを立てると、万軍の主は言われる。
23097 39 3 6 主なるわたしは変ることがない。それゆえ、ヤコブの子らよ、あなたがたは滅ぼされない。
23098 39 3 7 あなたがたは、その先祖の日から、わが定めを離れて、これを守らなかった。わたしに帰れ、わたしはあなたがたに帰ろうと、万軍の主は言われる。ところが、あなたがたは『われわれはどうして帰ろうか』と尋ねる。
23099 39 3 8 人は神の物を盗むことをするだろうか。しかしあなたがたは、わたしの物を盗んでいる。あなたがたはまた『どうしてわれわれは、あなたの物を盗んでいるのか』と言う。十分の一と、ささげ物をもってである。
23100 39 3 9 あなたがたは、のろいをもって、のろわれる。あなたがたすべての国民は、わたしの物を盗んでいるからである。
23101 39 3 10 わたしの宮に食物のあるように、十分の一全部をわたしの倉に携えてきなさい。これをもってわたしを試み、わたしが天の窓を開いて、あふるる恵みを、あなたがたに注ぐか否かを見なさいと、万軍の主は言われる。
23102 39 3 11 わたしは食い滅ぼす者を、あなたがたのためにおさえて、あなたがたの地の産物を、滅ぼさないようにしよう。また、あなたがたのぶどうの木が、その熟する前に、その実を畑に落すことのないようにしようと、万軍の主は言われる。
23103 39 3 12 こうして万国の人は、あなたがたを祝福された者ととなえるであろう。あなたがたは楽しい地となるからであると、万軍の主は言われる。
23104 39 3 13 主は言われる、あなたがたは言葉を激しくして、わたしに逆らった。しかもあなたがたは『われわれはあなたに逆らって、どんな事を言ったか』と言う。
23105 39 3 14 あなたがたは言った、『神に仕える事はつまらない。われわれがその命令を守り、かつ万軍の主の前に、悲しんで歩いたからといって、なんの益があるか。
23106 39 3 15 今われわれは高ぶる者を、祝福された者と思う。悪を行う者は栄えるばかりでなく、神を試みても罰せられない』」。
23107 39 3 16 そのとき、主を恐れる者は互に語った。主は耳を傾けてこれを聞かれた。そして主を恐れる者、およびその名を心に留めている者のために、主の前に一つの覚え書がしるされた。
23108 39 3 17 「万軍の主は言われる、彼らはわたしが手を下して事を行う日に、わたしの者となり、わたしの宝となる。また人が自分に仕える子をあわれむように、わたしは彼らをあわれむ。
23109 39 3 18 その時あなたがたは、再び義人と悪人、神に仕える者と、仕えない者との区別を知るようになる。
23110 39 4 1 万軍の主は言われる、見よ、炉のように燃える日が来る。その時すべて高ぶる者と、悪を行う者とは、わらのようになる。その来る日は、彼らを焼き尽して、根も枝も残さない。
23111 39 4 2 しかしわが名を恐れるあなたがたには、義の太陽がのぼり、その翼には、いやす力を備えている。あなたがたは牛舎から出る子牛のように外に出て、とびはねる。
23112 39 4 3 また、あなたがたは悪人を踏みつけ、わたしが事を行う日に、彼らはあなたがたの足の裏の下にあって、灰のようになると、万軍の主は言われる。
23113 39 4 4 あなたがたは、わがしもべモーセの律法、すなわちわたしがホレブで、イスラエル全体のために、彼に命じた定めとおきてとを覚えよ。
23114 39 4 5 見よ、主の大いなる恐るべき日が来る前に、わたしは預言者エリヤをあなたがたにつかわす。
23115 39 4 6 彼は父の心をその子供たちに向けさせ、子供たちの心をその父に向けさせる。これはわたしが来て、のろいをもってこの国を撃つことのないようにするためである」。
23116 40 1 1 アブラハムの子であるダビデの子、イエス・キリストの系図。
23117 40 1 2 アブラハムはイサクの父であり、イサクはヤコブの父、ヤコブはユダとその兄弟たちとの父、
23118 40 1 3 ユダはタマルによるパレスとザラとの父、パレスはエスロンの父、エスロンはアラムの父、
23119 40 1 4 アラムはアミナダブの父、アミナダブはナアソンの父、ナアソンはサルモンの父、
23120 40 1 5 サルモンはラハブによるボアズの父、ボアズはルツによるオベデの父、オベデはエッサイの父、
23121 40 1 6 エッサイはダビデ王の父であった。
23122 40 1 7 ソロモンはレハベアムの父、レハベアムはアビヤの父、アビヤはアサの父、
23123 40 1 8 アサはヨサパテの父、ヨサパテはヨラムの父、ヨラムはウジヤの父、
23124 40 1 9 ウジヤはヨタムの父、ヨタムはアハズの父、アハズはヒゼキヤの父、
23125 40 1 10 ヒゼキヤはマナセの父、マナセはアモンの父、アモンはヨシヤの父、
23126 40 1 11 ヨシヤはバビロンへ移されたころ、エコニヤとその兄弟たちとの父となった。
23127 40 1 12 バビロンへ移されたのち、エコニヤはサラテルの父となった。サラテルはゾロバベルの父、
23128 40 1 13 ゾロバベルはアビウデの父、アビウデはエリヤキムの父、エリヤキムはアゾルの父、
23129 40 1 14 アゾルはサドクの父、サドクはアキムの父、アキムはエリウデの父、
23130 40 1 15 エリウデはエレアザルの父、エレアザルはマタンの父、マタンはヤコブの父、
23131 40 1 16 ヤコブはマリヤの夫ヨセフの父であった。このマリヤからキリストといわれるイエスがお生れになった。
23132 40 1 17 だから、アブラハムからダビデまでの代は合わせて十四代、ダビデからバビロンへ移されるまでは十四代、そして、バビロンへ移されてからキリストまでは十四代である。
23133 40 1 18 イエス・キリストの誕生の次第はこうであった。母マリヤはヨセフと婚約していたが、まだ一緒にならない前に、聖霊によって身重になった。
23134 40 1 19 夫ヨセフは正しい人であったので、彼女のことが公けになることを好まず、ひそかに離縁しようと決心した。
23135 40 1 20 彼がこのことを思いめぐらしていたとき、主の使が夢に現れて言った、「ダビデの子ヨセフよ、心配しないでマリヤを妻として迎えるがよい。その胎内に宿っているものは聖霊によるのである。
23136 40 1 21 彼女は男の子を産むであろう。その名をイエスと名づけなさい。彼は、おのれの民をそのもろもろの罪から救う者となるからである」。
23137 40 1 22 すべてこれらのことが起ったのは、主が預言者によって言われたことの成就するためである。すなわち、
23138 40 1 23 「見よ、おとめがみごもって男の子を産むであろう。その名はインマヌエルと呼ばれるであろう」。
23139 40 1 24 ヨセフは眠りからさめた後に、主の使が命じたとおりに、マリヤを妻に迎えた。
23140 40 1 25 しかし、子が生れるまでは、彼女を知ることはなかった。そして、その子をイエスと名づけた。
23141 40 2 1 イエスがヘロデ王の代に、ユダヤのベツレヘムでお生れになったとき、見よ、東からきた博士たちがエルサレムに着いて言った、
23142 40 2 2 「ユダヤ人の王としてお生れになったかたは、どこにおられますか。わたしたちは東の方でその星を見たので、そのかたを拝みにきました」。
23143 40 2 3 ヘロデ王はこのことを聞いて不安を感じた。エルサレムの人々もみな、同様であった。
23144 40 2 4 そこで王は祭司長たちと民の律法学者たちとを全部集めて、キリストはどこに生れるのかと、彼らに問いただした。
23145 40 2 5 彼らは王に言った、「それはユダヤのベツレヘムです。預言者がこうしるしています、
23146 40 2 6 『ユダの地、ベツレヘムよ、おまえはユダの君たちの中で、決して最も小さいものではない。おまえの中からひとりの君が出て、わが民イスラエルの牧者となるであろう』」。
23147 40 2 7 そこで、ヘロデはひそかに博士たちを呼んで、星の現れた時について詳しく聞き、
23148 40 2 8 彼らをベツレヘムにつかわして言った、「行って、その幼な子のことを詳しく調べ、見つかったらわたしに知らせてくれ。わたしも拝みに行くから」。
23149 40 2 9 彼らは王の言うことを聞いて出かけると、見よ、彼らが東方で見た星が、彼らより先に進んで、幼な子のいる所まで行き、その上にとどまった。
23150 40 2 10 彼らはその星を見て、非常な喜びにあふれた。
23151 40 2 11 そして、家にはいって、母マリヤのそばにいる幼な子に会い、ひれ伏して拝み、また、宝の箱をあけて、黄金・乳香・没薬などの贈り物をささげた。
23152 40 2 12 そして、夢でヘロデのところに帰るなとのみ告げを受けたので、他の道をとおって自分の国へ帰って行った。
23153 40 2 13 彼らが帰って行ったのち、見よ、主の使が夢でヨセフに現れて言った、「立って、幼な子とその母を連れて、エジプトに逃げなさい。そして、あなたに知らせるまで、そこにとどまっていなさい。ヘロデが幼な子を捜し出して、殺そうとしている」。
23154 40 2 14 そこで、ヨセフは立って、夜の間に幼な子とその母とを連れてエジプトへ行き、
23155 40 2 15 ヘロデが死ぬまでそこにとどまっていた。それは、主が預言者によって「エジプトからわが子を呼び出した」と言われたことが、成就するためである。
23156 40 2 16 さて、ヘロデは博士たちにだまされたと知って、非常に立腹した。そして人々をつかわし、博士たちから確かめた時に基いて、ベツレヘムとその附近の地方とにいる二歳以下の男の子を、ことごとく殺した。
23157 40 2 17 こうして、預言者エレミヤによって言われたことが、成就したのである。
23158 40 2 18 「叫び泣く大いなる悲しみの声がラマで聞えた。ラケルはその子らのためになげいた。子らがもはやいないので、慰められることさえ願わなかった」。
23159 40 2 19 さて、ヘロデが死んだのち、見よ、主の使がエジプトにいるヨセフに夢で現れて言った、
23160 40 2 20 「立って、幼な子とその母を連れて、イスラエルの地に行け。幼な子の命をねらっていた人々は、死んでしまった」。
23161 40 2 21 そこでヨセフは立って、幼な子とその母とを連れて、イスラエルの地に帰った。
23162 40 2 22 しかし、アケラオがその父ヘロデに代ってユダヤを治めていると聞いたので、そこへ行くことを恐れた。そして夢でみ告げを受けたので、ガリラヤの地方に退き、
23163 40 2 23 ナザレという町に行って住んだ。これは預言者たちによって、「彼はナザレ人と呼ばれるであろう」と言われたことが、成就するためである。
23164 40 3 1 そのころ、バプテスマのヨハネが現れ、ユダヤの荒野で教を宣べて言った、
23165 40 3 2 「悔い改めよ、天国は近づいた」。
23166 40 3 3 預言者イザヤによって、「荒野で呼ばわる者の声がする、『主の道を備えよ、その道筋をまっすぐにせよ』」
23167 40 3 4 このヨハネは、らくだの毛ごろもを着物にし、腰に皮の帯をしめ、いなごと野蜜とを食物としていた。
23168 40 3 5 すると、エルサレムとユダヤ全土とヨルダン附近一帯の人々が、ぞくぞくとヨハネのところに出てきて、
23169 40 3 6 自分の罪を告白し、ヨルダン川でヨハネからバプテスマを受けた。
23170 40 3 7 ヨハネは、パリサイ人やサドカイ人が大ぜいバプテスマを受けようとしてきたのを見て、彼らに言った、「まむしの子らよ、迫ってきている神の怒りから、おまえたちはのがれられると、だれが教えたのか。
23171 40 3 8 だから、悔改めにふさわしい実を結べ。
23172 40 3 9 自分たちの父にはアブラハムがあるなどと、心の中で思ってもみるな。おまえたちに言っておく、神はこれらの石ころからでも、アブラハムの子を起すことができるのだ。
23173 40 3 10 斧がすでに木の根もとに置かれている。だから、良い実を結ばない木はことごとく切られて、火の中に投げ込まれるのだ。
23174 40 3 11 わたしは悔改めのために、水でおまえたちにバプテスマを授けている。しかし、わたしのあとから来る人はわたしよりも力のあるかたで、わたしはそのくつをぬがせてあげる値うちもない。このかたは、聖霊と火とによっておまえたちにバプテスマをお授けになるであろう。
23175 40 3 12 また、箕を手に持って、打ち場の麦をふるい分け、麦は倉に納め、からは消えない火で焼き捨てるであろう」。
23176 40 3 13 そのときイエスは、ガリラヤを出てヨルダン川に現れ、ヨハネのところにきて、バプテスマを受けようとされた。
23177 40 3 14 ところがヨハネは、それを思いとどまらせようとして言った、「わたしこそあなたからバプテスマを受けるはずですのに、あなたがわたしのところにおいでになるのですか」。
23178 40 3 15 しかし、イエスは答えて言われた、「今は受けさせてもらいたい。このように、すべての正しいことを成就するのは、われわれにふさわしいことである」。そこでヨハネはイエスの言われるとおりにした。
23179 40 3 16 イエスはバプテスマを受けるとすぐ、水から上がられた。すると、見よ、天が開け、神の御霊がはとのように自分の上に下ってくるのを、ごらんになった。
23180 40 3 17 また天から声があって言った、「これはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である」。
23181 40 4 1 さて、イエスは御霊によって荒野に導かれた。悪魔に試みられるためである。
23182 40 4 2 そして、四十日四十夜、断食をし、そののち空腹になられた。
23183 40 4 3 すると試みる者がきて言った、「もしあなたが神の子であるなら、これらの石がパンになるように命じてごらんなさい」。
23184 40 4 4 イエスは答えて言われた、「『人はパンだけで生きるものではなく、神の口から出る一つ一つの言で生きるものである』と書いてある」。
23185 40 4 5 それから悪魔は、イエスを聖なる都に連れて行き、宮の頂上に立たせて
23186 40 4 6 言った、「もしあなたが神の子であるなら、下へ飛びおりてごらんなさい。『神はあなたのために御使たちにお命じになると、あなたの足が石に打ちつけられないように、彼らはあなたを手でささえるであろう』
23187 40 4 7 イエスは彼に言われた、「『主なるあなたの神を試みてはならない』とまた書いてある」。
23188 40 4 8 次に悪魔は、イエスを非常に高い山に連れて行き、この世のすべての国々とその栄華とを見せて
23189 40 4 9 言った、「もしあなたが、ひれ伏してわたしを拝むなら、これらのものを皆あなたにあげましょう」。
23190 40 4 10 するとイエスは彼に言われた、「サタンよ、退け。『主なるあなたの神を拝し、ただ神にのみ仕えよ』と書いてある」。
23191 40 4 11 そこで、悪魔はイエスを離れ去り、そして、御使たちがみもとにきて仕えた。
23192 40 4 12 さて、イエスはヨハネが捕えられたと聞いて、ガリラヤへ退かれた。
23193 40 4 13 そしてナザレを去り、ゼブルンとナフタリとの地方にある海べの町カペナウムに行って住まわれた。
23194 40 4 14 これは預言者イザヤによって言われた言が、成就するためである。
23195 40 4 15 「ゼブルンの地、ナフタリの地、海に沿う地方、ヨルダンの向こうの地、異邦人のガリラヤ、
23196 40 4 16 暗黒の中に住んでいる民は大いなる光を見、死の地、死の陰に住んでいる人々に、光がのぼった」。
23197 40 4 17 この時からイエスは教を宣べはじめて言われた、「悔い改めよ、天国は近づいた」。
23198 40 4 18 さて、イエスがガリラヤの海べを歩いておられると、ふたりの兄弟、すなわち、ペテロと呼ばれたシモンとその兄弟アンデレとが、海に網を打っているのをごらんになった。彼らは漁師であった。
23199 40 4 19 イエスは彼らに言われた、「わたしについてきなさい。あなたがたを、人間をとる漁師にしてあげよう」。
23200 40 4 20 すると、彼らはすぐに網を捨てて、イエスに従った。
23201 40 4 21 そこから進んで行かれると、ほかのふたりの兄弟、すなわち、ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネとが、父ゼベダイと一緒に、舟の中で網を繕っているのをごらんになった。そこで彼らをお招きになると、
23202 40 4 22 すぐ舟と父とをおいて、イエスに従って行った。
23203 40 4 23 イエスはガリラヤの全地を巡り歩いて、諸会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え、民の中のあらゆる病気、あらゆるわずらいをおいやしになった。
23204 40 4 24 そこで、その評判はシリヤ全地にひろまり、人々があらゆる病にかかっている者、すなわち、いろいろの病気と苦しみとに悩んでいる者、悪霊につかれている者、てんかん、中風の者などをイエスのところに連れてきたので、これらの人々をおいやしになった。
23205 40 4 25 こうして、ガリラヤ、デカポリス、エルサレム、ユダヤ及びヨルダンの向こうから、おびただしい群衆がきてイエスに従った。
23206 40 5 1 イエスはこの群衆を見て、山に登り、座につかれると、弟子たちがみもとに近寄ってきた。
23207 40 5 2 そこで、イエスは口を開き、彼らに教えて言われた。
23208 40 5 3 「こころの貧しい人たちは、さいわいである、天国は彼らのものである。
23209 40 5 4 悲しんでいる人たちは、さいわいである、彼らは慰められるであろう。
23210 40 5 5 柔和な人たちは、さいわいである、彼らは地を受けつぐであろう。
23211 40 5 6 義に飢えかわいている人たちは、さいわいである、彼らは飽き足りるようになるであろう。
23212 40 5 7 あわれみ深い人たちは、さいわいである、彼らはあわれみを受けるであろう。
23213 40 5 8 心の清い人たちは、さいわいである、彼らは神を見るであろう。
23214 40 5 9 平和をつくり出す人たちは、さいわいである、彼らは神の子と呼ばれるであろう。
23215 40 5 10 義のために迫害されてきた人たちは、さいわいである、天国は彼らのものである。
23216 40 5 11 わたしのために人々があなたがたをののしり、また迫害し、あなたがたに対し偽って様々の悪口を言う時には、あなたがたは、さいわいである。
23217 40 5 12 喜び、よろこべ、天においてあなたがたの受ける報いは大きい。あなたがたより前の預言者たちも、同じように迫害されたのである。
23218 40 5 13 あなたがたは、地の塩である。もし塩のききめがなくなったら、何によってその味が取りもどされようか。もはや、なんの役にも立たず、ただ外に捨てられて、人々にふみつけられるだけである。
23219 40 5 14 あなたがたは、世の光である。山の上にある町は隠れることができない。
23220 40 5 15 また、あかりをつけて、それを枡の下におく者はいない。むしろ燭台の上において、家の中のすべてのものを照させるのである。
23221 40 5 16 そのように、あなたがたの光を人々の前に輝かし、そして、人々があなたがたのよいおこないを見て、天にいますあなたがたの父をあがめるようにしなさい。
23222 40 5 17 わたしが律法や預言者を廃するためにきた、と思ってはならない。廃するためではなく、成就するためにきたのである。
23223 40 5 18 よく言っておく。天地が滅び行くまでは、律法の一点、一画もすたることはなく、ことごとく全うされるのである。
23224 40 5 19 それだから、これらの最も小さいいましめの一つでも破り、またそうするように人に教えたりする者は、天国で最も小さい者と呼ばれるであろう。しかし、これをおこないまたそう教える者は、天国で大いなる者と呼ばれるであろう。
23225 40 5 20 わたしは言っておく。あなたがたの義が律法学者やパリサイ人の義にまさっていなければ、決して天国に、はいることはできない。
23226 40 5 21 昔の人々に『殺すな。殺す者は裁判を受けねばならない』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。
23227 40 5 22 しかし、わたしはあなたがたに言う。兄弟に対して怒る者は、だれでも裁判を受けねばならない。兄弟にむかって愚か者と言う者は、議会に引きわたされるであろう。また、ばか者と言う者は、地獄の火に投げ込まれるであろう。
23228 40 5 23 だから、祭壇に供え物をささげようとする場合、兄弟が自分に対して何かうらみをいだいていることを、そこで思い出したなら、
23229 40 5 24 その供え物を祭壇の前に残しておき、まず行ってその兄弟と和解し、それから帰ってきて、供え物をささげることにしなさい。
23230 40 5 25 あなたを訴える者と一緒に道を行く時には、その途中で早く仲直りをしなさい。そうしないと、その訴える者はあなたを裁判官にわたし、裁判官は下役にわたし、そして、あなたは獄に入れられるであろう。
23231 40 5 26 よくあなたに言っておく。最後の一コドラントを支払ってしまうまでは、決してそこから出てくることはできない。
23232 40 5 27 『姦淫するな』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。
23233 40 5 28 しかし、わたしはあなたがたに言う。だれでも、情欲をいだいて女を見る者は、心の中ですでに姦淫をしたのである。
23234 40 5 29 もしあなたの右の目が罪を犯させるなら、それを抜き出して捨てなさい。五体の一部を失っても、全身が地獄に投げ入れられない方が、あなたにとって益である。
23235 40 5 30 もしあなたの右の手が罪を犯させるなら、それを切って捨てなさい。五体の一部を失っても、全身が地獄に落ち込まない方が、あなたにとって益である。
23236 40 5 31 また『妻を出す者は離縁状を渡せ』と言われている。
23237 40 5 32 しかし、わたしはあなたがたに言う。だれでも、不品行以外の理由で自分の妻を出す者は、姦淫を行わせるのである。また出された女をめとる者も、姦淫を行うのである。
23238 40 5 33 また昔の人々に『いつわり誓うな、誓ったことは、すべて主に対して果せ』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。
23239 40 5 34 しかし、わたしはあなたがたに言う。いっさい誓ってはならない。天をさして誓うな。そこは神の御座であるから。
23240 40 5 35 また地をさして誓うな。そこは神の足台であるから。またエルサレムをさして誓うな。それは『大王の都』であるから。
23241 40 5 36 また、自分の頭をさして誓うな。あなたは髪の毛一すじさえ、白くも黒くもすることができない。
23242 40 5 37 あなたがたの言葉は、ただ、しかり、しかり、否、否、であるべきだ。それ以上に出ることは、悪から来るのである。
23243 40 5 38 『目には目を、歯には歯を』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。
23244 40 5 39 しかし、わたしはあなたがたに言う。悪人に手向かうな。もし、だれかがあなたの右の頬を打つなら、ほかの頬をも向けてやりなさい。
23245 40 5 40 あなたを訴えて、下着を取ろうとする者には、上着をも与えなさい。
23246 40 5 41 もし、だれかが、あなたをしいて一マイル行かせようとするなら、その人と共に二マイル行きなさい。
23247 40 5 42 求める者には与え、借りようとする者を断るな。
23248 40 5 43 『隣り人を愛し、敵を憎め』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。
23249 40 5 44 しかし、わたしはあなたがたに言う。敵を愛し、迫害する者のために祈れ。
23250 40 5 45 こうして、天にいますあなたがたの父の子となるためである。天の父は、悪い者の上にも良い者の上にも、太陽をのぼらせ、正しい者にも正しくない者にも、雨を降らして下さるからである。
23251 40 5 46 あなたがたが自分を愛する者を愛したからとて、なんの報いがあろうか。そのようなことは取税人でもするではないか。
23252 40 5 47 兄弟だけにあいさつをしたからとて、なんのすぐれた事をしているだろうか。そのようなことは異邦人でもしているではないか。
23253 40 5 48 それだから、あなたがたの天の父が完全であられるように、あなたがたも完全な者となりなさい。
23254 40 6 1 自分の義を、見られるために人の前で行わないように、注意しなさい。もし、そうしないと、天にいますあなたがたの父から報いを受けることがないであろう。
23255 40 6 2 だから、施しをする時には、偽善者たちが人にほめられるため会堂や町の中でするように、自分の前でラッパを吹きならすな。よく言っておくが、彼らはその報いを受けてしまっている。
23256 40 6 3 あなたは施しをする場合、右の手のしていることを左の手に知らせるな。
23257 40 6 4 それは、あなたのする施しが隠れているためである。すると、隠れた事を見ておられるあなたの父は、報いてくださるであろう。
23258 40 6 5 また祈る時には、偽善者たちのようにするな。彼らは人に見せようとして、会堂や大通りのつじに立って祈ることを好む。よく言っておくが、彼らはその報いを受けてしまっている。
23259 40 6 6 あなたは祈る時、自分のへやにはいり、戸を閉じて、隠れた所においでになるあなたの父に祈りなさい。すると、隠れた事を見ておられるあなたの父は、報いてくださるであろう。
23260 40 6 7 また、祈る場合、異邦人のように、くどくどと祈るな。彼らは言葉かずが多ければ、聞きいれられるものと思っている。
23261 40 6 8 だから、彼らのまねをするな。あなたがたの父なる神は、求めない先から、あなたがたに必要なものはご存じなのである。
23262 40 6 9 だから、あなたがたはこう祈りなさい、天にいますわれらの父よ、御名があがめられますように。
23263 40 6 10 御国がきますように。みこころが天に行われるとおり、地にも行われますように。
23264 40 6 11 わたしたちの日ごとの食物を、きょうもお与えください。
23265 40 6 12 わたしたちに負債のある者をゆるしましたように、わたしたちの負債をもおゆるしください。
23266 40 6 13 わたしたちを試みに会わせないで、悪しき者からお救いください。
23267 40 6 14 もしも、あなたがたが、人々のあやまちをゆるすならば、あなたがたの天の父も、あなたがたをゆるして下さるであろう。
23268 40 6 15 もし人をゆるさないならば、あなたがたの父も、あなたがたのあやまちをゆるして下さらないであろう。
23269 40 6 16 また断食をする時には、偽善者がするように、陰気な顔つきをするな。彼らは断食をしていることを人に見せようとして、自分の顔を見苦しくするのである。よく言っておくが、彼らはその報いを受けてしまっている。
23270 40 6 17 あなたがたは断食をする時には、自分の頭に油を塗り、顔を洗いなさい。
23271 40 6 18 それは断食をしていることが人に知れないで、隠れた所においでになるあなたの父に知られるためである。すると、隠れた事を見ておられるあなたの父は、報いて下さるであろう。
23272 40 6 19 あなたがたは自分のために、虫が食い、さびがつき、また、盗人らが押し入って盗み出すような地上に、宝をたくわえてはならない。
23273 40 6 20 むしろ自分のため、虫も食わず、さびもつかず、また、盗人らが押し入って盗み出すこともない天に、宝をたくわえなさい。
23274 40 6 21 あなたの宝のある所には、心もあるからである。
23275 40 6 22 目はからだのあかりである。だから、あなたの目が澄んでおれば、全身も明るいだろう。
23276 40 6 23 しかし、あなたの目が悪ければ、全身も暗いだろう。だから、もしあなたの内なる光が暗ければ、その暗さは、どんなであろう。
23277 40 6 24 だれも、ふたりの主人に兼ね仕えることはできない。一方を憎んで他方を愛し、あるいは、一方に親しんで他方をうとんじるからである。あなたがたは、神と富とに兼ね仕えることはできない。
23278 40 6 25 それだから、あなたがたに言っておく。何を食べようか、何を飲もうかと、自分の命のことで思いわずらい、何を着ようかと自分のからだのことで思いわずらうな。命は食物にまさり、からだは着物にまさるではないか。
23279 40 6 26 空の鳥を見るがよい。まくことも、刈ることもせず、倉に取りいれることもしない。それだのに、あなたがたの天の父は彼らを養っていて下さる。あなたがたは彼らよりも、はるかにすぐれた者ではないか。
23280 40 6 27 あなたがたのうち、だれが思いわずらったからとて、自分の寿命をわずかでも延ばすことができようか。
23281 40 6 28 また、なぜ、着物のことで思いわずらうのか。野の花がどうして育っているか、考えて見るがよい。働きもせず、紡ぎもしない。
23282 40 6 29 しかし、あなたがたに言うが、栄華をきわめた時のソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。
23283 40 6 30 きょうは生えていて、あすは炉に投げ入れられる野の草でさえ、神はこのように装って下さるのなら、あなたがたに、それ以上よくしてくださらないはずがあろうか。ああ、信仰の薄い者たちよ。
23284 40 6 31 だから、何を食べようか、何を飲もうか、あるいは何を着ようかと言って思いわずらうな。
23285 40 6 32 これらのものはみな、異邦人が切に求めているものである。あなたがたの天の父は、これらのものが、ことごとくあなたがたに必要であることをご存じである。
23286 40 6 33 まず神の国と神の義とを求めなさい。そうすれば、これらのものは、すべて添えて与えられるであろう。
23287 40 6 34 だから、あすのことを思いわずらうな。あすのことは、あす自身が思いわずらうであろう。一日の苦労は、その日一日だけで十分である。
23288 40 7 1 人をさばくな。自分がさばかれないためである。
23289 40 7 2 あなたがたがさばくそのさばきで、自分もさばかれ、あなたがたの量るそのはかりで、自分にも量り与えられるであろう。
23290 40 7 3 なぜ、兄弟の目にあるちりを見ながら、自分の目にある梁を認めないのか。
23291 40 7 4 自分の目には梁があるのに、どうして兄弟にむかって、あなたの目からちりを取らせてください、と言えようか。
23292 40 7 5 偽善者よ、まず自分の目から梁を取りのけるがよい。そうすれば、はっきり見えるようになって、兄弟の目からちりを取りのけることができるだろう。
23293 40 7 6 聖なるものを犬にやるな。また真珠を豚に投げてやるな。恐らく彼らはそれらを足で踏みつけ、向きなおってあなたがたにかみついてくるであろう。
23294 40 7 7 求めよ、そうすれば、与えられるであろう。捜せ、そうすれば、見いだすであろう。門をたたけ、そうすれば、あけてもらえるであろう。
23295 40 7 8 すべて求める者は得、捜す者は見いだし、門をたたく者はあけてもらえるからである。
23296 40 7 9 あなたがたのうちで、自分の子がパンを求めるのに、石を与える者があろうか。
23297 40 7 10 魚を求めるのに、へびを与える者があろうか。
23298 40 7 11 このように、あなたがたは悪い者であっても、自分の子供には、良い贈り物をすることを知っているとすれば、天にいますあなたがたの父はなおさら、求めてくる者に良いものを下さらないことがあろうか。
23299 40 7 12 だから、何事でも人々からしてほしいと望むことは、人々にもそのとおりにせよ。これが律法であり預言者である。
23300 40 7 13 狭い門からはいれ。滅びにいたる門は大きく、その道は広い。そして、そこからはいって行く者が多い。
23301 40 7 14 命にいたる門は狭く、その道は細い。そして、それを見いだす者が少ない。
23302 40 7 15 にせ預言者を警戒せよ。彼らは、羊の衣を着てあなたがたのところに来るが、その内側は強欲なおおかみである。
23303 40 7 16 あなたがたは、その実によって彼らを見わけるであろう。茨からぶどうを、あざみからいちじくを集める者があろうか。
23304 40 7 17 そのように、すべて良い木は良い実を結び、悪い木は悪い実を結ぶ。
23305 40 7 18 良い木が悪い実をならせることはないし、悪い木が良い実をならせることはできない。
23306 40 7 19 良い実を結ばない木はことごとく切られて、火の中に投げ込まれる。
23307 40 7 20 このように、あなたがたはその実によって彼らを見わけるのである。
23308 40 7 21 わたしにむかって『主よ、主よ』と言う者が、みな天国にはいるのではなく、ただ、天にいますわが父の御旨を行う者だけが、はいるのである。
23309 40 7 22 その日には、多くの者が、わたしにむかって『主よ、主よ、わたしたちはあなたの名によって預言したではありませんか。また、あなたの名によって悪霊を追い出し、あなたの名によって多くの力あるわざを行ったではありませんか』と言うであろう。
23310 40 7 23 そのとき、わたしは彼らにはっきり、こう言おう、『あなたがたを全く知らない。不法を働く者どもよ、行ってしまえ』。
23311 40 7 24 それで、わたしのこれらの言葉を聞いて行うものを、岩の上に自分の家を建てた賢い人に比べることができよう。
23312 40 7 25 雨が降り、洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ちつけても、倒れることはない。岩を土台としているからである。
23313 40 7 26 また、わたしのこれらの言葉を聞いても行わない者を、砂の上に自分の家を建てた愚かな人に比べることができよう。
23314 40 7 27 雨が降り、洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ちつけると、倒れてしまう。そしてその倒れ方はひどいのである」。
23315 40 7 28 イエスがこれらの言を語り終えられると、群衆はその教にひどく驚いた。
23316 40 7 29 それは律法学者たちのようにではなく、権威ある者のように、教えられたからである。
23317 40 8 1 イエスが山をお降りになると、おびただしい群衆がついてきた。
23318 40 8 2 すると、そのとき、ひとりのらい病人がイエスのところにきて、ひれ伏して言った、「主よ、みこころでしたら、きよめていただけるのですが」。
23319 40 8 3 イエスは手を伸ばして、彼にさわり、「そうしてあげよう、きよくなれ」と言われた。すると、らい病は直ちにきよめられた。
23320 40 8 4 イエスは彼に言われた、「だれにも話さないように、注意しなさい。ただ行って、自分のからだを祭司に見せ、それから、モーセが命じた供え物をささげて、人々に証明しなさい」。
23321 40 8 5 さて、イエスがカペナウムに帰ってこられたとき、ある百卒長がみもとにきて訴えて言った、
23322 40 8 6 「主よ、わたしの僕が中風でひどく苦しんで、家に寝ています」。
23323 40 8 7 イエスは彼に、「わたしが行ってなおしてあげよう」と言われた。
23324 40 8 8 そこで百卒長は答えて言った、「主よ、わたしの屋根の下にあなたをお入れする資格は、わたしにはございません。ただ、お言葉を下さい。そうすれば僕はなおります。
23325 40 8 9 わたしも権威の下にある者ですが、わたしの下にも兵卒がいまして、ひとりの者に『行け』と言えば行き、ほかの者に『こい』と言えばきますし、また、僕に『これをせよ』と言えば、してくれるのです」。
23326 40 8 10 イエスはこれを聞いて非常に感心され、ついてきた人々に言われた、「よく聞きなさい。イスラエル人の中にも、これほどの信仰を見たことがない。
23327 40 8 11 なお、あなたがたに言うが、多くの人が東から西からきて、天国で、アブラハム、イサク、ヤコブと共に宴会の席につくが、
23328 40 8 12 この国の子らは外のやみに追い出され、そこで泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう」。
23329 40 8 13 それからイエスは百卒長に「行け、あなたの信じたとおりになるように」と言われた。すると、ちょうどその時に、僕はいやされた。
23330 40 8 14 それから、イエスはペテロの家にはいって行かれ、そのしゅうとめが熱病で、床についているのをごらんになった。
23331 40 8 15 そこで、その手にさわられると、熱が引いた。そして女は起きあがってイエスをもてなした。
23332 40 8 16 夕暮になると、人々は悪霊につかれた者を大ぜい、みもとに連れてきたので、イエスはみ言葉をもって霊どもを追い出し、病人をことごとくおいやしになった。
23333 40 8 17 これは、預言者イザヤによって「彼は、わたしたちのわずらいを身に受け、わたしたちの病を負うた」と言われた言葉が成就するためである。
23334 40 8 18 イエスは、群衆が自分のまわりに群がっているのを見て、向こう岸に行くようにと弟子たちにお命じになった。
23335 40 8 19 するとひとりの律法学者が近づいてきて言った、「先生、あなたがおいでになる所なら、どこへでも従ってまいります」。
23336 40 8 20 イエスはその人に言われた、「きつねには穴があり、空の鳥には巣がある。しかし、人の子にはまくらする所がない」。
23337 40 8 21 また弟子のひとりが言った、「主よ、まず、父を葬りに行かせて下さい」。
23338 40 8 22 イエスは彼に言われた、「わたしに従ってきなさい。そして、その死人を葬ることは、死人に任せておくがよい」。
23339 40 8 23 それから、イエスが舟に乗り込まれると、弟子たちも従った。
23340 40 8 24 すると突然、海上に激しい暴風が起って、舟は波にのまれそうになった。ところが、イエスは眠っておられた。
23341 40 8 25 そこで弟子たちはみそばに寄ってきてイエスを起し、「主よ、お助けください、わたしたちは死にそうです」と言った。
23342 40 8 26 するとイエスは彼らに言われた、「なぜこわがるのか、信仰の薄い者たちよ」。それから起きあがって、風と海とをおしかりになると、大なぎになった。
23343 40 8 27 彼らは驚いて言った、「このかたはどういう人なのだろう。風も海も従わせるとは」。
23344 40 8 28 それから、向こう岸、ガダラ人の地に着かれると、悪霊につかれたふたりの者が、墓場から出てきてイエスに出会った。彼らは手に負えない乱暴者で、だれもその辺の道を通ることができないほどであった。
23345 40 8 29 すると突然、彼らは叫んで言った、「神の子よ、あなたはわたしどもとなんの係わりがあるのです。まだその時ではないのに、ここにきて、わたしどもを苦しめるのですか」。
23346 40 8 30 さて、そこからはるか離れた所に、おびただしい豚の群れが飼ってあった。
23347 40 8 31 悪霊どもはイエスに願って言った、「もしわたしどもを追い出されるのなら、あの豚の群れの中につかわして下さい」。
23348 40 8 32 そこで、イエスが「行け」と言われると、彼らは出て行って、豚の中へはいり込んだ。すると、その群れ全体が、がけから海へなだれを打って駆け下り、水の中で死んでしまった。
23349 40 8 33 飼う者たちは逃げて町に行き、悪霊につかれた者たちのことなど、いっさいを知らせた。
23350 40 8 34 すると、町中の者がイエスに会いに出てきた。そして、イエスに会うと、この地方から去ってくださるようにと頼んだ。
23351 40 9 1 さて、イエスは舟に乗って海を渡り、自分の町に帰られた。
23352 40 9 2 すると、人々が中風の者を床の上に寝かせたままでみもとに運んできた。イエスは彼らの信仰を見て、中風の者に、「子よ、しっかりしなさい。あなたの罪はゆるされたのだ」と言われた。
23353 40 9 3 すると、ある律法学者たちが心の中で言った、「この人は神を汚している」。
23354 40 9 4 イエスは彼らの考えを見抜いて、「なぜ、あなたがたは心の中で悪いことを考えているのか。
23355 40 9 5 あなたの罪はゆるされた、と言うのと、起きて歩け、と言うのと、どちらがたやすいか。
23356 40 9 6 しかし、人の子は地上で罪をゆるす権威をもっていることが、あなたがたにわかるために」と言い、中風の者にむかって、「起きよ、床を取りあげて家に帰れ」と言われた。
23357 40 9 7 すると彼は起きあがり、家に帰って行った。
23358 40 9 8 群衆はそれを見て恐れ、こんな大きな権威を人にお与えになった神をあがめた。
23359 40 9 9 さてイエスはそこから進んで行かれ、マタイという人が収税所にすわっているのを見て、「わたしに従ってきなさい」と言われた。すると彼は立ちあがって、イエスに従った。
23360 40 9 10 それから、イエスが家で食事の席についておられた時のことである。多くの取税人や罪人たちがきて、イエスや弟子たちと共にその席に着いていた。
23361 40 9 11 パリサイ人たちはこれを見て、弟子たちに言った、「なぜ、あなたがたの先生は、取税人や罪人などと食事を共にするのか」。
23362 40 9 12 イエスはこれを聞いて言われた、「丈夫な人には医者はいらない。いるのは病人である。
23363 40 9 13 『わたしが好むのは、あわれみであって、いけにえではない』とはどういう意味か、学んできなさい。わたしがきたのは、義人を招くためではなく、罪人を招くためである」。
23364 40 9 14 そのとき、ヨハネの弟子たちがイエスのところにきて言った、「わたしたちとパリサイ人たちとが断食をしているのに、あなたの弟子たちは、なぜ断食をしないのですか」。
23365 40 9 15 するとイエスは言われた、「婚礼の客は、花婿が一緒にいる間は、悲しんでおられようか。しかし、花婿が奪い去られる日が来る。その時には断食をするであろう。
23366 40 9 16 だれも、真新しい布ぎれで、古い着物につぎを当てはしない。そのつぎきれは着物を引き破り、そして、破れがもっとひどくなるから。
23367 40 9 17 だれも、新しいぶどう酒を古い皮袋に入れはしない。もしそんなことをしたら、その皮袋は張り裂け、酒は流れ出るし、皮袋もむだになる。だから、新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れるべきである。そうすれば両方とも長もちがするであろう」。
23368 40 9 18 これらのことを彼らに話しておられると、そこにひとりの会堂司がきて、イエスを拝して言った、「わたしの娘がただ今死にました。しかしおいでになって手をその上においてやって下さい。そうしたら、娘は生き返るでしょう」。
23369 40 9 19 そこで、イエスが立って彼について行かれると、弟子たちも一緒に行った。
23370 40 9 20 するとそのとき、十二年間も長血をわずらっている女が近寄ってきて、イエスのうしろからみ衣のふさにさわった。
23371 40 9 21 み衣にさわりさえすれば、なおしていただけるだろう、と心の中で思っていたからである。
23372 40 9 22 イエスは振り向いて、この女を見て言われた、「娘よ、しっかりしなさい。あなたの信仰があなたを救ったのです」。するとこの女はその時に、いやされた。
23373 40 9 23 それからイエスは司の家に着き、笛吹きどもや騒いでいる群衆を見て言われた。
23374 40 9 24 「あちらへ行っていなさい。少女は死んだのではない。眠っているだけである」。すると人々はイエスをあざ笑った。
23375 40 9 25 しかし、群衆を外へ出したのち、イエスは内へはいって、少女の手をお取りになると、少女は起きあがった。
23376 40 9 26 そして、そのうわさがこの地方全体にひろまった。
23377 40 9 27 そこから進んで行かれると、ふたりの盲人が、「ダビデの子よ、わたしたちをあわれんで下さい」と叫びながら、イエスについてきた。
23378 40 9 28 そしてイエスが家にはいられると、盲人たちがみもとにきたので、彼らに「わたしにそれができると信じるか」と言われた。彼らは言った、「主よ、信じます」。
23379 40 9 29 そこで、イエスは彼らの目にさわって言われた、「あなたがたの信仰どおり、あなたがたの身になるように」。
23380 40 9 30 すると彼らの目が開かれた。イエスは彼らをきびしく戒めて言われた、「だれにも知れないように気をつけなさい」。
23381 40 9 31 しかし、彼らは出て行って、その地方全体にイエスのことを言いひろめた。
23382 40 9 32 彼らが出て行くと、人々は悪霊につかれたおしをイエスのところに連れてきた。
23383 40 9 33 すると、悪霊は追い出されて、おしが物を言うようになった。群衆は驚いて、「このようなことがイスラエルの中で見られたことは、これまで一度もなかった」と言った。
23384 40 9 34 しかし、パリサイ人たちは言った、「彼は、悪霊どものかしらによって悪霊どもを追い出しているのだ」。
23385 40 9 35 イエスは、すべての町々村々を巡り歩いて、諸会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え、あらゆる病気、あらゆるわずらいをおいやしになった。
23386 40 9 36 また群衆が飼う者のない羊のように弱り果てて、倒れているのをごらんになって、彼らを深くあわれまれた。
23387 40 9 37 そして弟子たちに言われた、「収穫は多いが、働き人が少ない。
23388 40 9 38 だから、収穫の主に願って、その収穫のために働き人を送り出すようにしてもらいなさい」。
23389 40 10 1 そこで、イエスは十二弟子を呼び寄せて、汚れた霊を追い出し、あらゆる病気、あらゆるわずらいをいやす権威をお授けになった。
23390 40 10 2 十二使徒の名は、次のとおりである。まずペテロと呼ばれたシモンとその兄弟アンデレ、それからゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネ、
23391 40 10 3 ピリポとバルトロマイ、トマスと取税人マタイ、アルパヨの子ヤコブとタダイ、
23392 40 10 4 熱心党のシモンとイスカリオテのユダ。このユダはイエスを裏切った者である。
23393 40 10 5 イエスはこの十二人をつかわすに当り、彼らに命じて言われた、「異邦人の道に行くな。またサマリヤ人の町にはいるな。
23394 40 10 6 むしろ、イスラエルの家の失われた羊のところに行け。
23395 40 10 7 行って、『天国が近づいた』と宣べ伝えよ。
23396 40 10 8 病人をいやし、死人をよみがえらせ、らい病人をきよめ、悪霊を追い出せ。ただで受けたのだから、ただで与えるがよい。
23397 40 10 9 財布の中に金、銀または銭を入れて行くな。
23398 40 10 10 旅行のための袋も、二枚の下着も、くつも、つえも持って行くな。働き人がその食物を得るのは当然である。
23399 40 10 11 どの町、どの村にはいっても、その中でだれがふさわしい人か、たずね出して、立ち去るまではその人のところにとどまっておれ。
23400 40 10 12 その家にはいったなら、平安を祈ってあげなさい。
23401 40 10 13 もし平安を受けるにふさわしい家であれば、あなたがたの祈る平安はその家に来るであろう。もしふさわしくなければ、その平安はあなたがたに帰って来るであろう。
23402 40 10 14 もしあなたがたを迎えもせず、またあなたがたの言葉を聞きもしない人があれば、その家や町を立ち去る時に、足のちりを払い落しなさい。
23403 40 10 15 あなたがたによく言っておく。さばきの日には、ソドム、ゴモラの地の方が、その町よりは耐えやすいであろう。
23404 40 10 16 わたしがあなたがたをつかわすのは、羊をおおかみの中に送るようなものである。だから、へびのように賢く、はとのように素直であれ。
23405 40 10 17 人々に注意しなさい。彼らはあなたがたを衆議所に引き渡し、会堂でむち打つであろう。
23406 40 10 18 またあなたがたは、わたしのために長官たちや王たちの前に引き出されるであろう。それは、彼らと異邦人とに対してあかしをするためである。
23407 40 10 19 彼らがあなたがたを引き渡したとき、何をどう言おうかと心配しないがよい。言うべきことは、その時に授けられるからである。
23408 40 10 20 語る者は、あなたがたではなく、あなたがたの中にあって語る父の霊である。
23409 40 10 21 兄弟は兄弟を、父は子を殺すために渡し、また子は親に逆らって立ち、彼らを殺させるであろう。
23410 40 10 22 またあなたがたは、わたしの名のゆえにすべての人に憎まれるであろう。しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われる。
23411 40 10 23 一つの町で迫害されたなら、他の町へ逃げなさい。よく言っておく。あなたがたがイスラエルの町々を回り終らないうちに、人の子は来るであろう。
23412 40 10 24 弟子はその師以上のものではなく、僕はその主人以上の者ではない。
23413 40 10 25 弟子がその師のようであり、僕がその主人のようであれば、それで十分である。もし家の主人がベルゼブルと言われるならば、その家の者どもはなおさら、どんなにか悪く言われることであろう。
23414 40 10 26 だから彼らを恐れるな。おおわれたもので、現れてこないものはなく、隠れているもので、知られてこないものはない。
23415 40 10 27 わたしが暗やみであなたがたに話すことを、明るみで言え。耳にささやかれたことを、屋根の上で言いひろめよ。
23416 40 10 28 また、からだを殺しても、魂を殺すことのできない者どもを恐れるな。むしろ、からだも魂も地獄で滅ぼす力のあるかたを恐れなさい。
23417 40 10 29 二羽のすずめは一アサリオンで売られているではないか。しかもあなたがたの父の許しがなければ、その一羽も地に落ちることはない。
23418 40 10 30 またあなたがたの頭の毛までも、みな数えられている。
23419 40 10 31 それだから、恐れることはない。あなたがたは多くのすずめよりも、まさった者である。
23420 40 10 32 だから人の前でわたしを受けいれる者を、わたしもまた、天にいますわたしの父の前で受けいれるであろう。
23421 40 10 33 しかし、人の前でわたしを拒む者を、わたしも天にいますわたしの父の前で拒むであろう。
23422 40 10 34 地上に平和をもたらすために、わたしがきたと思うな。平和ではなく、つるぎを投げ込むためにきたのである。
23423 40 10 35 わたしがきたのは、人をその父と、娘をその母と、嫁をそのしゅうとめと仲たがいさせるためである。
23424 40 10 36 そして家の者が、その人の敵となるであろう。
23425 40 10 37 わたしよりも父または母を愛する者は、わたしにふさわしくない。わたしよりもむすこや娘を愛する者は、わたしにふさわしくない。
23426 40 10 38 また自分の十字架をとってわたしに従ってこない者はわたしにふさわしくない。
23427 40 10 39 自分の命を得ている者はそれを失い、わたしのために自分の命を失っている者は、それを得るであろう。
23428 40 10 40 あなたがたを受けいれる者は、わたしを受けいれるのである。わたしを受けいれる者は、わたしをおつかわしになったかたを受けいれるのである。
23429 40 10 41 預言者の名のゆえに預言者を受けいれる者は、預言者の報いを受け、義人の名のゆえに義人を受けいれる者は、義人の報いを受けるであろう。
23430 40 10 42 わたしの弟子であるという名のゆえに、この小さい者のひとりに冷たい水一杯でも飲ませてくれる者は、よく言っておくが、決してその報いからもれることはない」。
23431 40 11 1 イエスは十二弟子にこのように命じ終えてから、町々で教えまた宣べ伝えるために、そこを立ち去られた。
23432 40 11 2 さて、ヨハネは獄中でキリストのみわざについて伝え聞き、自分の弟子たちをつかわして、
23433 40 11 3 イエスに言わせた、「『きたるべきかた』はあなたなのですか。それとも、ほかにだれかを待つべきでしょうか」。
23434 40 11 4 イエスは答えて言われた、「行って、あなたがたが見聞きしていることをヨハネに報告しなさい。
23435 40 11 5 盲人は見え、足なえは歩き、らい病人はきよまり、耳しいは聞え、死人は生きかえり、貧しい人々は福音を聞かされている。
23436 40 11 6 わたしにつまずかない者は、さいわいである」。
23437 40 11 7 彼らが帰ってしまうと、イエスはヨハネのことを群衆に語りはじめられた、「あなたがたは、何を見に荒野に出てきたのか。風に揺らぐ葦であるか。
23438 40 11 8 では、何を見に出てきたのか。柔らかい着物をまとった人か。柔らかい着物をまとった人々なら、王の家にいる。
23439 40 11 9 では、なんのために出てきたのか。預言者を見るためか。そうだ、あなたがたに言うが、預言者以上の者である。
23440 40 11 10 『見よ、わたしは使をあなたの先につかわし、あなたの前に、道を整えさせるであろう』
23441 40 11 11 あなたがたによく言っておく。女の産んだ者の中で、バプテスマのヨハネより大きい人物は起らなかった。しかし、天国で最も小さい者も、彼よりは大きい。
23442 40 11 12 バプテスマのヨハネの時から今に至るまで、天国は激しく襲われている。そして激しく襲う者たちがそれを奪い取っている。
23443 40 11 13 すべての預言者と律法とが預言したのは、ヨハネの時までである。
23444 40 11 14 そして、もしあなたがたが受けいれることを望めば、この人こそは、きたるべきエリヤなのである。
23445 40 11 15 耳のある者は聞くがよい。
23446 40 11 16 今の時代を何に比べようか。それは子供たちが広場にすわって、ほかの子供たちに呼びかけ、
23447 40 11 17 『わたしたちが笛を吹いたのに、あなたたちは踊ってくれなかった。弔いの歌を歌ったのに、胸を打ってくれなかった』
23448 40 11 18 なぜなら、ヨハネがきて、食べることも、飲むこともしないと、あれは悪霊につかれているのだ、と言い、
23449 40 11 19 また人の子がきて、食べたり飲んだりしていると、見よ、あれは食をむさぼる者、大酒を飲む者、また取税人、罪人の仲間だ、と言う。しかし、知恵の正しいことは、その働きが証明する」。
23450 40 11 20 それからイエスは、数々の力あるわざがなされたのに、悔い改めることをしなかった町々を、責めはじめられた。
23451 40 11 21 「わざわいだ、コラジンよ。わざわいだ、ベツサイダよ。おまえたちのうちでなされた力あるわざが、もしツロとシドンでなされたなら、彼らはとうの昔に、荒布をまとい灰をかぶって、悔い改めたであろう。
23452 40 11 22 しかし、おまえたちに言っておく。さばきの日には、ツロとシドンの方がおまえたちよりも、耐えやすいであろう。
23453 40 11 23 ああ、カペナウムよ、おまえは天にまで上げられようとでもいうのか。黄泉にまで落されるであろう。おまえの中でなされた力あるわざが、もしソドムでなされたなら、その町は今日までも残っていたであろう。
23454 40 11 24 しかし、あなたがたに言う。さばきの日には、ソドムの地の方がおまえよりは耐えやすいであろう」。
23455 40 11 25 そのときイエスは声をあげて言われた、「天地の主なる父よ。あなたをほめたたえます。これらの事を知恵のある者や賢い者に隠して、幼な子にあらわしてくださいました。
23456 40 11 26 父よ、これはまことにみこころにかなった事でした。
23457 40 11 27 すべての事は父からわたしに任せられています。そして、子を知る者は父のほかにはなく、父を知る者は、子と、父をあらわそうとして子が選んだ者とのほかに、だれもありません。
23458 40 11 28 すべて重荷を負うて苦労している者は、わたしのもとにきなさい。あなたがたを休ませてあげよう。
23459 40 11 29 わたしは柔和で心のへりくだった者であるから、わたしのくびきを負うて、わたしに学びなさい。そうすれば、あなたがたの魂に休みが与えられるであろう。
23460 40 11 30 わたしのくびきは負いやすく、わたしの荷は軽いからである」。
23461 40 12 1 そのころ、ある安息日に、イエスは麦畑の中を通られた。すると弟子たちは、空腹であったので、穂を摘んで食べはじめた。
23462 40 12 2 パリサイ人たちがこれを見て、イエスに言った、「ごらんなさい、あなたの弟子たちが、安息日にしてはならないことをしています」。
23463 40 12 3 そこでイエスは彼らに言われた、「あなたがたは、ダビデとその供の者たちとが飢えたとき、ダビデが何をしたか読んだことがないのか。
23464 40 12 4 すなわち、神の家にはいって、祭司たちのほか、自分も供の者たちも食べてはならぬ供えのパンを食べたのである。
23465 40 12 5 また、安息日に宮仕えをしている祭司たちは安息日を破っても罪にはならないことを、律法で読んだことがないのか。
23466 40 12 6 あなたがたに言っておく。宮よりも大いなる者がここにいる。
23467 40 12 7 『わたしが好むのは、あわれみであって、いけにえではない』とはどういう意味か知っていたなら、あなたがたは罪のない者をとがめなかったであろう。
23468 40 12 8 人の子は安息日の主である」。
23469 40 12 9 イエスはそこを去って、彼らの会堂にはいられた。
23470 40 12 10 すると、そのとき、片手のなえた人がいた。人々はイエスを訴えようと思って、「安息日に人をいやしても、さしつかえないか」と尋ねた。
23471 40 12 11 イエスは彼らに言われた、「あなたがたのうちに、一匹の羊を持っている人があるとして、もしそれが安息日に穴に落ちこんだなら、手をかけて引き上げてやらないだろうか。
23472 40 12 12 人は羊よりも、はるかにすぐれているではないか。だから、安息日に良いことをするのは、正しいことである」。
23473 40 12 13 そしてイエスはその人に、「手を伸ばしなさい」と言われた。そこで手を伸ばすと、ほかの手のように良くなった。
23474 40 12 14 パリサイ人たちは出て行って、なんとかしてイエスを殺そうと相談した。
23475 40 12 15 イエスはこれを知って、そこを去って行かれた。ところが多くの人々がついてきたので、彼らを皆いやし、
23476 40 12 16 そして自分のことを人々にあらわさないようにと、彼らを戒められた。
23477 40 12 17 これは預言者イザヤの言った言葉が、成就するためである、
23478 40 12 18 「見よ、わたしが選んだ僕、わたしの心にかなう、愛する者。わたしは彼にわたしの霊を授け、そして彼は正義を異邦人に宣べ伝えるであろう。
23479 40 12 19 彼は争わず、叫ばず、またその声を大路で聞く者はない。
23480 40 12 20 彼が正義に勝ちを得させる時まで、いためられた葦を折ることがなく、煙っている燈心を消すこともない。
23481 40 12 21 異邦人は彼の名に望みを置くであろう」。
23482 40 12 22 そのとき、人々が悪霊につかれた盲人のおしを連れてきたので、イエスは彼をいやして、物を言い、また目が見えるようにされた。
23483 40 12 23 すると群衆はみな驚いて言った、「この人が、あるいはダビデの子ではあるまいか」。
23484 40 12 24 しかし、パリサイ人たちは、これを聞いて言った、「この人が悪霊を追い出しているのは、まったく悪霊のかしらベルゼブルによるのだ」。
23485 40 12 25 イエスは彼らの思いを見抜いて言われた、「おおよそ、内部で分れ争う国は自滅し、内わで分れ争う町や家は立ち行かない。
23486 40 12 26 もしサタンがサタンを追い出すならば、それは内わで分れ争うことになる。それでは、その国はどうして立ち行けよう。
23487 40 12 27 もしわたしがベルゼブルによって悪霊を追い出すとすれば、あなたがたの仲間はだれによって追い出すのであろうか。だから、彼らがあなたがたをさばく者となるであろう。
23488 40 12 28 しかし、わたしが神の霊によって悪霊を追い出しているのなら、神の国はすでにあなたがたのところにきたのである。
23489 40 12 29 まただれでも、まず強い人を縛りあげなければ、どうして、その人の家に押し入って家財を奪い取ることができようか。縛ってから、はじめてその家を掠奪することができる。
23490 40 12 30 わたしの味方でない者は、わたしに反対するものであり、わたしと共に集めない者は、散らすものである。
23491 40 12 31 だから、あなたがたに言っておく。人には、その犯すすべての罪も神を汚す言葉も、ゆるされる。しかし、聖霊を汚す言葉は、ゆるされることはない。
23492 40 12 32 また人の子に対して言い逆らう者は、ゆるされるであろう。しかし、聖霊に対して言い逆らう者は、この世でも、きたるべき世でも、ゆるされることはない。
23493 40 12 33 木が良ければ、その実も良いとし、木が悪ければ、その実も悪いとせよ。木はその実でわかるからである。
23494 40 12 34 まむしの子らよ。あなたがたは悪い者であるのに、どうして良いことを語ることができようか。おおよそ、心からあふれることを、口が語るものである。
23495 40 12 35 善人はよい倉から良い物を取り出し、悪人は悪い倉から悪い物を取り出す。
23496 40 12 36 あなたがたに言うが、審判の日には、人はその語る無益な言葉に対して、言い開きをしなければならないであろう。
23497 40 12 37 あなたは、自分の言葉によって正しいとされ、また自分の言葉によって罪ありとされるからである」。
23498 40 12 38 そのとき、律法学者、パリサイ人のうちのある人々がイエスにむかって言った、「先生、わたしたちはあなたから、しるしを見せていただきとうございます」。
23499 40 12 39 すると、彼らに答えて言われた、「邪悪で不義な時代は、しるしを求める。しかし、預言者ヨナのしるしのほかには、なんのしるしも与えられないであろう。
23500 40 12 40 すなわち、ヨナが三日三晩、大魚の腹の中にいたように、人の子も三日三晩、地の中にいるであろう。
23501 40 12 41 ニネベの人々が、今の時代の人々と共にさばきの場に立って、彼らを罪に定めるであろう。なぜなら、ニネベの人々はヨナの宣教によって悔い改めたからである。しかし見よ、ヨナにまさる者がここにいる。
23502 40 12 42 南の女王が、今の時代の人々と共にさばきの場に立って、彼らを罪に定めるであろう。なぜなら、彼女はソロモンの知恵を聞くために地の果から、はるばるきたからである。しかし見よ、ソロモンにまさる者がここにいる。
23503 40 12 43 汚れた霊が人から出ると、休み場を求めて水の無い所を歩きまわるが、見つからない。
23504 40 12 44 そこで、出てきた元の家に帰ろうと言って帰って見ると、その家はあいていて、そうじがしてある上、飾りつけがしてあった。
23505 40 12 45 そこでまた出て行って、自分以上に悪い他の七つの霊を一緒に引き連れてきて中にはいり、そこに住み込む。そうすると、その人ののちの状態は初めよりももっと悪くなるのである。よこしまな今の時代も、このようになるであろう」。
23506 40 12 46 イエスがまだ群衆に話しておられるとき、その母と兄弟たちとが、イエスに話そうと思って外に立っていた。
23507 40 12 47 それで、ある人がイエスに言った、「ごらんなさい。あなたの母上と兄弟がたが、あなたに話そうと思って、外に立っておられます」。
23508 40 12 48 イエスは知らせてくれた者に答えて言われた、「わたしの母とは、だれのことか。わたしの兄弟とは、だれのことか」。
23509 40 12 49 そして、弟子たちの方に手をさし伸べて言われた、「ごらんなさい。ここにわたしの母、わたしの兄弟がいる。
23510 40 12 50 天にいますわたしの父のみこころを行う者はだれでも、わたしの兄弟、また姉妹、また母なのである」。
23511 40 13 1 その日、イエスは家を出て、海べにすわっておられた。
23512 40 13 2 ところが、大ぜいの群衆がみもとに集まったので、イエスは舟に乗ってすわられ、群衆はみな岸に立っていた。
23513 40 13 3 イエスは譬で多くの事を語り、こう言われた、「見よ、種まきが種をまきに出て行った。
23514 40 13 4 まいているうちに、道ばたに落ちた種があった。すると、鳥がきて食べてしまった。
23515 40 13 5 ほかの種は土の薄い石地に落ちた。そこは土が深くないので、すぐ芽を出したが、
23516 40 13 6 日が上ると焼けて、根がないために枯れてしまった。
23517 40 13 7 ほかの種はいばらの地に落ちた。すると、いばらが伸びて、ふさいでしまった。
23518 40 13 8 ほかの種は良い地に落ちて実を結び、あるものは百倍、あるものは六十倍、あるものは三十倍にもなった。
23519 40 13 9 耳のある者は聞くがよい」。
23520 40 13 10 それから、弟子たちがイエスに近寄ってきて言った、「なぜ、彼らに譬でお話しになるのですか」。
23521 40 13 11 そこでイエスは答えて言われた、「あなたがたには、天国の奥義を知ることが許されているが、彼らには許されていない。
23522 40 13 12 おおよそ、持っている人は与えられて、いよいよ豊かになるが、持っていない人は、持っているものまでも取り上げられるであろう。
23523 40 13 13 だから、彼らには譬で語るのである。それは彼らが、見ても見ず、聞いても聞かず、また悟らないからである。
23524 40 13 14 こうしてイザヤの言った預言が、彼らの上に成就したのである。『あなたがたは聞くには聞くが、決して悟らない。見るには見るが、決して認めない。
23525 40 13 15 この民の心は鈍くなり、その耳は聞えにくく、その目は閉じている。それは、彼らが目で見ず、耳で聞かず、心で悟らず、悔い改めていやされることがないためである』。
23526 40 13 16 しかし、あなたがたの目は見ており、耳は聞いているから、さいわいである。
23527 40 13 17 あなたがたによく言っておく。多くの預言者や義人は、あなたがたの見ていることを見ようと熱心に願ったが、見ることができず、またあなたがたの聞いていることを聞こうとしたが、聞けなかったのである。
23528 40 13 18 そこで、種まきの譬を聞きなさい。
23529 40 13 19 だれでも御国の言を聞いて悟らないならば、悪い者がきて、その人の心にまかれたものを奪いとって行く。道ばたにまかれたものというのは、そういう人のことである。
23530 40 13 20 石地にまかれたものというのは、御言を聞くと、すぐに喜んで受ける人のことである。
23531 40 13 21 その中に根がないので、しばらく続くだけであって、御言のために困難や迫害が起ってくると、すぐつまずいてしまう。
23532 40 13 22 また、いばらの中にまかれたものとは、御言を聞くが、世の心づかいと富の惑わしとが御言をふさぐので、実を結ばなくなる人のことである。
23533 40 13 23 また、良い地にまかれたものとは、御言を聞いて悟る人のことであって、そういう人が実を結び、百倍、あるいは六十倍、あるいは三十倍にもなるのである」。
23534 40 13 24 また、ほかの譬を彼らに示して言われた、「天国は、良い種を自分の畑にまいておいた人のようなものである。
23535 40 13 25 人々が眠っている間に敵がきて、麦の中に毒麦をまいて立ち去った。
23536 40 13 26 芽がはえ出て実を結ぶと、同時に毒麦もあらわれてきた。
23537 40 13 27 僕たちがきて、家の主人に言った、『ご主人様、畑におまきになったのは、良い種ではありませんでしたか。どうして毒麦がはえてきたのですか』。
23538 40 13 28 主人は言った、『それは敵のしわざだ』。すると僕たちが言った『では行って、それを抜き集めましょうか』。
23539 40 13 29 彼は言った、『いや、毒麦を集めようとして、麦も一緒に抜くかも知れない。
23540 40 13 30 収穫まで、両方とも育つままにしておけ。収穫の時になったら、刈る者に、まず毒麦を集めて束にして焼き、麦の方は集めて倉に入れてくれ、と言いつけよう』」。
23541 40 13 31 また、ほかの譬を彼らに示して言われた、「天国は、一粒のからし種のようなものである。ある人がそれをとって畑にまくと、
23542 40 13 32 それはどんな種よりも小さいが、成長すると、野菜の中でいちばん大きくなり、空の鳥がきて、その枝に宿るほどの木になる」。
23543 40 13 33 またほかの譬を彼らに語られた、「天国は、パン種のようなものである。女がそれを取って三斗の粉の中に混ぜると、全体がふくらんでくる」。
23544 40 13 34 イエスはこれらのことをすべて、譬で群衆に語られた。譬によらないでは何事も彼らに語られなかった。
23545 40 13 35 これは預言者によって言われたことが、成就するためである、「わたしは口を開いて譬を語り、世の初めから隠されていることを語り出そう」。
23546 40 13 36 それからイエスは、群衆をあとに残して家にはいられた。すると弟子たちは、みもとにきて言った、「畑の毒麦の譬を説明してください」。
23547 40 13 37 イエスは答えて言われた、「良い種をまく者は、人の子である。
23548 40 13 38 畑は世界である。良い種と言うのは御国の子たちで、毒麦は悪い者の子たちである。
23549 40 13 39 それをまいた敵は悪魔である。収穫とは世の終りのことで、刈る者は御使たちである。
23550 40 13 40 だから、毒麦が集められて火で焼かれるように、世の終りにもそのとおりになるであろう。
23551 40 13 41 人の子はその使たちをつかわし、つまずきとなるものと不法を行う者とを、ことごとく御国からとり集めて、
23552 40 13 42 炉の火に投げ入れさせるであろう。そこでは泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう。
23553 40 13 43 そのとき、義人たちは彼らの父の御国で、太陽のように輝きわたるであろう。耳のある者は聞くがよい。
23554 40 13 44 天国は、畑に隠してある宝のようなものである。人がそれを見つけると隠しておき、喜びのあまり、行って持ち物をみな売りはらい、そしてその畑を買うのである。
23555 40 13 45 また天国は、良い真珠を捜している商人のようなものである。
23556 40 13 46 高価な真珠一個を見いだすと、行って持ち物をみな売りはらい、そしてこれを買うのである。
23557 40 13 47 また天国は、海におろして、あらゆる種類の魚を囲みいれる網のようなものである。
23558 40 13 48 それがいっぱいになると岸に引き上げ、そしてすわって、良いのを器に入れ、悪いのを外へ捨てるのである。
23559 40 13 49 世の終りにも、そのとおりになるであろう。すなわち、御使たちがきて、義人のうちから悪人をえり分け、
23560 40 13 50 そして炉の火に投げこむであろう。そこでは泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう。
23561 40 13 51 あなたがたは、これらのことが皆わかったか」。彼らは「わかりました」と答えた。
23562 40 13 52 そこで、イエスは彼らに言われた、「それだから、天国のことを学んだ学者は、新しいものと古いものとを、その倉から取り出す一家の主人のようなものである」。
23563 40 13 53 イエスはこれらの譬を語り終えてから、そこを立ち去られた。
23564 40 13 54 そして郷里に行き、会堂で人々を教えられたところ、彼らは驚いて言った、「この人は、この知恵とこれらの力あるわざとを、どこで習ってきたのか。
23565 40 13 55 この人は大工の子ではないか。母はマリヤといい、兄弟たちは、ヤコブ、ヨセフ、シモン、ユダではないか。
23566 40 13 56 またその姉妹たちもみな、わたしたちと一緒にいるではないか。こんな数々のことを、いったい、どこで習ってきたのか」。
23567 40 13 57 こうして人々はイエスにつまずいた。しかし、イエスは言われた、「預言者は、自分の郷里や自分の家以外では、どこででも敬われないことはない」。
23568 40 13 58 そして彼らの不信仰のゆえに、そこでは力あるわざを、あまりなさらなかった。
23569 40 14 1 そのころ、領主ヘロデはイエスのうわさを聞いて、
23570 40 14 2 家来に言った、「あれはバプテスマのヨハネだ。死人の中からよみがえったのだ。それで、あのような力が彼のうちに働いているのだ」。
23571 40 14 3 というのは、ヘロデは先に、自分の兄弟ピリポの妻ヘロデヤのことで、ヨハネを捕えて縛り、獄に入れていた。
23572 40 14 4 すなわち、ヨハネはヘロデに、「その女をめとるのは、よろしくない」と言ったからである。
23573 40 14 5 そこでヘロデはヨハネを殺そうと思ったが、群衆を恐れた。彼らがヨハネを預言者と認めていたからである。
23574 40 14 6 さてヘロデの誕生日の祝に、ヘロデヤの娘がその席上で舞をまい、ヘロデを喜ばせたので、
23575 40 14 7 彼女の願うものは、なんでも与えようと、彼は誓って約束までした。
23576 40 14 8 すると彼女は母にそそのかされて、「バプテスマのヨハネの首を盆に載せて、ここに持ってきていただきとうございます」と言った。
23577 40 14 9 王は困ったが、いったん誓ったのと、また列座の人たちの手前、それを与えるように命じ、
23578 40 14 10 人をつかわして、獄中でヨハネの首を切らせた。
23579 40 14 11 その首は盆に載せて運ばれ、少女にわたされ、少女はそれを母のところに持って行った。
23580 40 14 12 それから、ヨハネの弟子たちがきて、死体を引き取って葬った。そして、イエスのところに行って報告した。
23581 40 14 13 イエスはこのことを聞くと、舟に乗ってそこを去り、自分ひとりで寂しい所へ行かれた。しかし、群衆はそれと聞いて、町々から徒歩であとを追ってきた。
23582 40 14 14 イエスは舟から上がって、大ぜいの群衆をごらんになり、彼らを深くあわれんで、そのうちの病人たちをおいやしになった。
23583 40 14 15 夕方になったので、弟子たちがイエスのもとにきて言った、「ここは寂しい所でもあり、もう時もおそくなりました。群衆を解散させ、めいめいで食物を買いに、村々へ行かせてください」。
23584 40 14 16 するとイエスは言われた、「彼らが出かけて行くには及ばない。あなたがたの手で食物をやりなさい」。
23585 40 14 17 弟子たちは言った、「わたしたちはここに、パン五つと魚二ひきしか持っていません」。
23586 40 14 18 イエスは言われた、「それをここに持ってきなさい」。
23587 40 14 19 そして群衆に命じて、草の上にすわらせ、五つのパンと二ひきの魚とを手に取り、天を仰いでそれを祝福し、パンをさいて弟子たちに渡された。弟子たちはそれを群衆に与えた。
23588 40 14 20 みんなの者は食べて満腹した。パンくずの残りを集めると、十二のかごにいっぱいになった。
23589 40 14 21 食べた者は、女と子供とを除いて、おおよそ五千人であった。
23590 40 14 22 それからすぐ、イエスは群衆を解散させておられる間に、しいて弟子たちを舟に乗り込ませ、向こう岸へ先におやりになった。
23591 40 14 23 そして群衆を解散させてから、祈るためひそかに山へ登られた。夕方になっても、ただひとりそこにおられた。
23592 40 14 24 ところが舟は、もうすでに陸から数丁も離れており、逆風が吹いていたために、波に悩まされていた。
23593 40 14 25 イエスは夜明けの四時ごろ、海の上を歩いて彼らの方へ行かれた。
23594 40 14 26 弟子たちは、イエスが海の上を歩いておられるのを見て、幽霊だと言っておじ惑い、恐怖のあまり叫び声をあげた。
23595 40 14 27 しかし、イエスはすぐに彼らに声をかけて、「しっかりするのだ、わたしである。恐れることはない」と言われた。
23596 40 14 28 するとペテロが答えて言った、「主よ、あなたでしたか。では、わたしに命じて、水の上を渡ってみもとに行かせてください」。
23597 40 14 29 イエスは、「おいでなさい」と言われたので、ペテロは舟からおり、水の上を歩いてイエスのところへ行った。
23598 40 14 30 しかし、風を見て恐ろしくなり、そしておぼれかけたので、彼は叫んで、「主よ、お助けください」と言った。
23599 40 14 31 イエスはすぐに手を伸ばし、彼をつかまえて言われた、「信仰の薄い者よ、なぜ疑ったのか」。
23600 40 14 32 ふたりが舟に乗り込むと、風はやんでしまった。
23601 40 14 33 舟の中にいた者たちはイエスを拝して、「ほんとうに、あなたは神の子です」と言った。
23602 40 14 34 それから、彼らは海を渡ってゲネサレの地に着いた。
23603 40 14 35 するとその土地の人々はイエスと知って、その附近全体に人をつかわし、イエスのところに病人をみな連れてこさせた。
23604 40 14 36 そして彼らにイエスの上着のふさにでも、さわらせてやっていただきたいとお願いした。そしてさわった者は皆いやされた。
23605 40 15 1 ときに、パリサイ人と律法学者たちとが、エルサレムからイエスのもとにきて言った、
23606 40 15 2 「あなたの弟子たちは、なぜ昔の人々の言伝えを破るのですか。彼らは食事の時に手を洗っていません」。
23607 40 15 3 イエスは答えて言われた、「なぜ、あなたがたも自分たちの言伝えによって、神のいましめを破っているのか。
23608 40 15 4 神は言われた、『父と母とを敬え』、また『父または母をののしる者は、必ず死に定められる』と。
23609 40 15 5 それだのに、あなたがたは『だれでも父または母にむかって、あなたにさしあげるはずのこのものは供え物です、と言えば、
23610 40 15 6 父または母を敬わなくてもよろしい』と言っている。こうしてあなたがたは自分たちの言伝えによって、神の言を無にしている。
23611 40 15 7 偽善者たちよ、イザヤがあなたがたについて、こういう適切な預言をしている、
23612 40 15 8 『この民は、口さきではわたしを敬うが、その心はわたしから遠く離れている。
23613 40 15 9 人間のいましめを教として教え、無意味にわたしを拝んでいる』」。
23614 40 15 10 それからイエスは群衆を呼び寄せて言われた、「聞いて悟るがよい。
23615 40 15 11 口にはいるものは人を汚すことはない。かえって、口から出るものが人を汚すのである」。
23616 40 15 12 そのとき、弟子たちが近寄ってきてイエスに言った、「パリサイ人たちが御言を聞いてつまずいたことを、ご存じですか」。
23617 40 15 13 イエスは答えて言われた、「わたしの天の父がお植えにならなかったものは、みな抜き取られるであろう。
23618 40 15 14 彼らをそのままにしておけ。彼らは盲人を手引きする盲人である。もし盲人が盲人を手引きするなら、ふたりとも穴に落ち込むであろう」。
23619 40 15 15 ペテロが答えて言った、「その譬を説明してください」。
23620 40 15 16 イエスは言われた、「あなたがたも、まだわからないのか。
23621 40 15 17 口にはいってくるものは、みな腹の中にはいり、そして、外に出て行くことを知らないのか。
23622 40 15 18 しかし、口から出て行くものは、心の中から出てくるのであって、それが人を汚すのである。
23623 40 15 19 というのは、悪い思い、すなわち、殺人、姦淫、不品行、盗み、偽証、誹りは、心の中から出てくるのであって、
23624 40 15 20 これらのものが人を汚すのである。しかし、洗わない手で食事することは、人を汚すのではない」。
23625 40 15 21 さて、イエスはそこを出て、ツロとシドンとの地方へ行かれた。
23626 40 15 22 すると、そこへ、その地方出のカナンの女が出てきて、「主よ、ダビデの子よ、わたしをあわれんでください。娘が悪霊にとりつかれて苦しんでいます」と言って叫びつづけた。
23627 40 15 23 しかし、イエスはひと言もお答えにならなかった。そこで弟子たちがみもとにきて願って言った、「この女を追い払ってください。叫びながらついてきていますから」。
23628 40 15 24 するとイエスは答えて言われた、「わたしは、イスラエルの家の失われた羊以外の者には、つかわされていない」。
23629 40 15 25 しかし、女は近寄りイエスを拝して言った、「主よ、わたしをお助けください」。
23630 40 15 26 イエスは答えて言われた、「子供たちのパンを取って小犬に投げてやるのは、よろしくない」。
23631 40 15 27 すると女は言った、「主よ、お言葉どおりです。でも、小犬もその主人の食卓から落ちるパンくずは、いただきます」。
23632 40 15 28 そこでイエスは答えて言われた、「女よ、あなたの信仰は見あげたものである。あなたの願いどおりになるように」。その時に、娘はいやされた。
23633 40 15 29 イエスはそこを去って、ガリラヤの海べに行き、それから山に登ってそこにすわられた。
23634 40 15 30 すると大ぜいの群衆が、足なえ、不具者、盲人、おし、そのほか多くの人々を連れてきて、イエスの足もとに置いたので、彼らをおいやしになった。
23635 40 15 31 群衆は、おしが物を言い、不具者が直り、足なえが歩き、盲人が見えるようになったのを見て驚き、そしてイスラエルの神をほめたたえた。
23636 40 15 32 イエスは弟子たちを呼び寄せて言われた、「この群衆がかわいそうである。もう三日間もわたしと一緒にいるのに、何も食べるものがない。しかし、彼らを空腹のままで帰らせたくはない。恐らく途中で弱り切ってしまうであろう」。
23637 40 15 33 弟子たちは言った、「荒野の中で、こんなに大ぜいの群衆にじゅうぶん食べさせるほどたくさんのパンを、どこで手に入れましょうか」。
23638 40 15 34 イエスは弟子たちに「パンはいくつあるか」と尋ねられると、「七つあります。また小さい魚が少しあります」と答えた。
23639 40 15 35 そこでイエスは群衆に、地にすわるようにと命じ、
23640 40 15 36 七つのパンと魚とを取り、感謝してこれをさき、弟子たちにわたされ、弟子たちはこれを群衆にわけた。
23641 40 15 37 一同の者は食べて満腹した。そして残ったパンくずを集めると、七つのかごにいっぱいになった。
23642 40 15 38 食べた者は、女と子供とを除いて四千人であった。
23643 40 15 39 そこでイエスは群衆を解散させ、舟に乗ってマガダンの地方へ行かれた。
23644 40 16 1 パリサイ人とサドカイ人とが近寄ってきて、イエスを試み、天からのしるしを見せてもらいたいと言った。
23645 40 16 2 イエスは彼らに言われた、「あなたがたは夕方になると、『空がまっかだから、晴だ』と言い、
23646 40 16 3 また明け方には『空が曇ってまっかだから、きょうは荒れだ』と言う。あなたがたは空の模様を見分けることを知りながら、時のしるしを見分けることができないのか。
23647 40 16 4 邪悪で不義な時代は、しるしを求める。しかし、ヨナのしるしのほかには、なんのしるしも与えられないであろう」。そして、イエスは彼らをあとに残して立ち去られた。
23648 40 16 5 弟子たちは向こう岸に行ったが、パンを持って来るのを忘れていた。
23649 40 16 6 そこでイエスは言われた、「パリサイ人とサドカイ人とのパン種を、よくよく警戒せよ」。
23650 40 16 7 弟子たちは、これは自分たちがパンを持ってこなかったためであろうと言って、互に論じ合った。
23651 40 16 8 イエスはそれと知って言われた、「信仰の薄い者たちよ、なぜパンがないからだと互に論じ合っているのか。
23652 40 16 9 まだわからないのか。覚えていないのか。五つのパンを五千人に分けたとき、幾かご拾ったか。
23653 40 16 10 また、七つのパンを四千人に分けたとき、幾かご拾ったか。
23654 40 16 11 わたしが言ったのは、パンについてではないことを、どうして悟らないのか。ただ、パリサイ人とサドカイ人とのパン種を警戒しなさい」。
23655 40 16 12 そのとき彼らは、イエスが警戒せよと言われたのは、パン種のことではなく、パリサイ人とサドカイ人との教のことであると悟った。
23656 40 16 13 イエスがピリポ・カイザリヤの地方に行かれたとき、弟子たちに尋ねて言われた、「人々は人の子をだれと言っているか」。
23657 40 16 14 彼らは言った、「ある人々はバプテスマのヨハネだと言っています。しかし、ほかの人たちは、エリヤだと言い、また、エレミヤあるいは預言者のひとりだ、と言っている者もあります」。
23658 40 16 15 そこでイエスは彼らに言われた、「それでは、あなたがたはわたしをだれと言うか」。
23659 40 16 16 シモン・ペテロが答えて言った、「あなたこそ、生ける神の子キリストです」。
23660 40 16 17 すると、イエスは彼にむかって言われた、「バルヨナ・シモン、あなたはさいわいである。あなたにこの事をあらわしたのは、血肉ではなく、天にいますわたしの父である。
23661 40 16 18 そこで、わたしもあなたに言う。あなたはペテロである。そして、わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てよう。黄泉の力もそれに打ち勝つことはない。
23662 40 16 19 わたしは、あなたに天国のかぎを授けよう。そして、あなたが地上でつなぐことは、天でもつながれ、あなたが地上で解くことは天でも解かれるであろう」。
23663 40 16 20 そのとき、イエスは、自分がキリストであることをだれにも言ってはいけないと、弟子たちを戒められた。
23664 40 16 21 この時から、イエス・キリストは、自分が必ずエルサレムに行き、長老、祭司長、律法学者たちから多くの苦しみを受け、殺され、そして三日目によみがえるべきことを、弟子たちに示しはじめられた。
23665 40 16 22 すると、ペテロはイエスをわきへ引き寄せて、いさめはじめ、「主よ、とんでもないことです。そんなことがあるはずはございません」と言った。
23666 40 16 23 イエスは振り向いて、ペテロに言われた、「サタンよ、引きさがれ。わたしの邪魔をする者だ。あなたは神のことを思わないで、人のことを思っている」。
23667 40 16 24 それからイエスは弟子たちに言われた、「だれでもわたしについてきたいと思うなら、自分を捨て、自分の十字架を負うて、わたしに従ってきなさい。
23668 40 16 25 自分の命を救おうと思う者はそれを失い、わたしのために自分の命を失う者は、それを見いだすであろう。
23669 40 16 26 たとい人が全世界をもうけても、自分の命を損したら、なんの得になろうか。また、人はどんな代価を払って、その命を買いもどすことができようか。
23670 40 16 27 人の子は父の栄光のうちに、御使たちを従えて来るが、その時には、実際のおこないに応じて、それぞれに報いるであろう。
23671 40 16 28 よく聞いておくがよい、人の子が御国の力をもって来るのを見るまでは、死を味わわない者が、ここに立っている者の中にいる」。
23672 40 17 1 六日ののち、イエスはペテロ、ヤコブ、ヤコブの兄弟ヨハネだけを連れて、高い山に登られた。
23673 40 17 2 ところが、彼らの目の前でイエスの姿が変り、その顔は日のように輝き、その衣は光のように白くなった。
23674 40 17 3 すると、見よ、モーセとエリヤが彼らに現れて、イエスと語り合っていた。
23675 40 17 4 ペテロはイエスにむかって言った、「主よ、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。もし、おさしつかえなければ、わたしはここに小屋を三つ建てましょう。一つはあなたのために、一つはモーセのために、一つはエリヤのために」。
23676 40 17 5 彼がまだ話し終えないうちに、たちまち、輝く雲が彼らをおおい、そして雲の中から声がした、「これはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である。これに聞け」。
23677 40 17 6 弟子たちはこれを聞いて非常に恐れ、顔を地に伏せた。
23678 40 17 7 イエスは近づいてきて、手を彼らにおいて言われた、「起きなさい、恐れることはない」。
23679 40 17 8 彼らが目をあげると、イエスのほかには、だれも見えなかった。
23680 40 17 9 一同が山を下って来るとき、イエスは「人の子が死人の中からよみがえるまでは、いま見たことをだれにも話してはならない」と、彼らに命じられた。
23681 40 17 10 弟子たちはイエスにお尋ねして言った、「いったい、律法学者たちは、なぜ、エリヤが先に来るはずだと言っているのですか」。
23682 40 17 11 答えて言われた、「確かに、エリヤがきて、万事を元どおりに改めるであろう。
23683 40 17 12 しかし、あなたがたに言っておく。エリヤはすでにきたのだ。しかし人々は彼を認めず、自分かってに彼をあしらった。人の子もまた、そのように彼らから苦しみを受けることになろう」。
23684 40 17 13 そのとき、弟子たちは、イエスがバプテスマのヨハネのことを言われたのだと悟った。
23685 40 17 14 さて彼らが群衆のところに帰ると、ひとりの人がイエスに近寄ってきて、ひざまずいて、言った、
23686 40 17 15 「主よ、わたしの子をあわれんでください。てんかんで苦しんでおります。何度も何度も火の中や水の中に倒れるのです。
23687 40 17 16 それで、その子をお弟子たちのところに連れてきましたが、なおしていただけませんでした」。
23688 40 17 17 イエスは答えて言われた、「ああ、なんという不信仰な、曲った時代であろう。いつまで、わたしはあなたがたと一緒におられようか。いつまであなたがたに我慢ができようか。その子をここに、わたしのところに連れてきなさい」。
23689 40 17 18 イエスがおしかりになると、悪霊はその子から出て行った。そして子はその時いやされた。
23690 40 17 19 それから、弟子たちがひそかにイエスのもとにきて言った、「わたしたちは、どうして霊を追い出せなかったのですか」。
23691 40 17 20 するとイエスは言われた、「あなたがたの信仰が足りないからである。よく言い聞かせておくが、もし、からし種一粒ほどの信仰があるなら、この山にむかって『ここからあそこに移れ』と言えば、移るであろう。このように、あなたがたにできない事は、何もないであろう。〔
23692 40 17 21 しかし、このたぐいは、祈と断食とによらなければ、追い出すことはできない〕」。
23693 40 17 22 彼らがガリラヤで集まっていた時、イエスは言われた、「人の子は人々の手にわたされ、
23694 40 17 23 彼らに殺され、そして三日目によみがえるであろう」。弟子たちは非常に心をいためた。
23695 40 17 24 彼らがカペナウムにきたとき、宮の納入金を集める人たちがペテロのところにきて言った、「あなたがたの先生は宮の納入金を納めないのか」。
23696 40 17 25 ペテロは「納めておられます」と言った。そして彼が家にはいると、イエスから先に話しかけて言われた、「シモン、あなたはどう思うか。この世の王たちは税や貢をだれから取るのか。自分の子からか、それとも、ほかの人たちからか」。
23697 40 17 26 ペテロが「ほかの人たちからです」と答えると、イエスは言われた、「それでは、子は納めなくてもよいわけである。
23698 40 17 27 しかし、彼らをつまずかせないために、海に行って、つり針をたれなさい。そして最初につれた魚をとって、その口をあけると、銀貨一枚が見つかるであろう。それをとり出して、わたしとあなたのために納めなさい」。
23699 40 18 1 そのとき、弟子たちがイエスのもとにきて言った、「いったい、天国ではだれがいちばん偉いのですか」。
23700 40 18 2 すると、イエスは幼な子を呼び寄せ、彼らのまん中に立たせて言われた、
23701 40 18 3 「よく聞きなさい。心をいれかえて幼な子のようにならなければ、天国にはいることはできないであろう。
23702 40 18 4 この幼な子のように自分を低くする者が、天国でいちばん偉いのである。
23703 40 18 5 また、だれでも、このようなひとりの幼な子を、わたしの名のゆえに受けいれる者は、わたしを受けいれるのである。
23704 40 18 6 しかし、わたしを信ずるこれらの小さい者のひとりをつまずかせる者は、大きなひきうすを首にかけられて海の深みに沈められる方が、その人の益になる。
23705 40 18 7 この世は、罪の誘惑があるから、わざわいである。罪の誘惑は必ず来る。しかし、それをきたらせる人は、わざわいである。
23706 40 18 8 もしあなたの片手または片足が、罪を犯させるなら、それを切って捨てなさい。両手、両足がそろったままで、永遠の火に投げ込まれるよりは、片手、片足になって命に入る方がよい。
23707 40 18 9 もしあなたの片目が罪を犯させるなら、それを抜き出して捨てなさい。両眼がそろったままで地獄の火に投げ入れられるよりは、片目になって命に入る方がよい。
23708 40 18 10 あなたがたは、これらの小さい者のひとりをも軽んじないように、気をつけなさい。あなたがたに言うが、彼らの御使たちは天にあって、天にいますわたしの父のみ顔をいつも仰いでいるのである。〔
23709 40 18 11 人の子は、滅びる者を救うためにきたのである。〕
23710 40 18 12 あなたがたはどう思うか。ある人に百匹の羊があり、その中の一匹が迷い出たとすれば、九十九匹を山に残しておいて、その迷い出ている羊を捜しに出かけないであろうか。
23711 40 18 13 もしそれを見つけたなら、よく聞きなさい、迷わないでいる九十九匹のためよりも、むしろその一匹のために喜ぶであろう。
23712 40 18 14 そのように、これらの小さい者のひとりが滅びることは、天にいますあなたがたの父のみこころではない。
23713 40 18 15 もしあなたの兄弟が罪を犯すなら、行って、彼とふたりだけの所で忠告しなさい。もし聞いてくれたら、あなたの兄弟を得たことになる。
23714 40 18 16 もし聞いてくれないなら、ほかにひとりふたりを、一緒に連れて行きなさい。それは、ふたりまたは三人の証人の口によって、すべてのことがらが確かめられるためである。
23715 40 18 17 もし彼らの言うことを聞かないなら、教会に申し出なさい。もし教会の言うことも聞かないなら、その人を異邦人または取税人同様に扱いなさい。
23716 40 18 18 よく言っておく。あなたがたが地上でつなぐことは、天でも皆つながれ、あなたがたが地上で解くことは、天でもみな解かれるであろう。
23717 40 18 19 また、よく言っておく。もしあなたがたのうちのふたりが、どんな願い事についても地上で心を合わせるなら、天にいますわたしの父はそれをかなえて下さるであろう。
23718 40 18 20 ふたりまたは三人が、わたしの名によって集まっている所には、わたしもその中にいるのである」。
23719 40 18 21 そのとき、ペテロがイエスのもとにきて言った、「主よ、兄弟がわたしに対して罪を犯した場合、幾たびゆるさねばなりませんか。七たびまでですか」。
23720 40 18 22 イエスは彼に言われた、「わたしは七たびまでとは言わない。七たびを七十倍するまでにしなさい。
23721 40 18 23 それだから、天国は王が僕たちと決算をするようなものだ。
23722 40 18 24 決算が始まると、一万タラントの負債のある者が、王のところに連れられてきた。
23723 40 18 25 しかし、返せなかったので、主人は、その人自身とその妻子と持ち物全部とを売って返すように命じた。
23724 40 18 26 そこで、この僕はひれ伏して哀願した、『どうぞお待ちください。全部お返しいたしますから』。
23725 40 18 27 僕の主人はあわれに思って、彼をゆるし、その負債を免じてやった。
23726 40 18 28 その僕が出て行くと、百デナリを貸しているひとりの仲間に出会い、彼をつかまえ、首をしめて『借金を返せ』と言った。
23727 40 18 29 そこでこの仲間はひれ伏し、『どうか待ってくれ。返すから』と言って頼んだ。
23728 40 18 30 しかし承知せずに、その人をひっぱって行って、借金を返すまで獄に入れた。
23729 40 18 31 その人の仲間たちは、この様子を見て、非常に心をいため、行ってそのことをのこらず主人に話した。
23730 40 18 32 そこでこの主人は彼を呼びつけて言った、『悪い僕、わたしに願ったからこそ、あの負債を全部ゆるしてやったのだ。
23731 40 18 33 わたしがあわれんでやったように、あの仲間をあわれんでやるべきではなかったか』。
23732 40 18 34 そして主人は立腹して、負債全部を返してしまうまで、彼を獄吏に引きわたした。
23733 40 18 35 あなたがためいめいも、もし心から兄弟をゆるさないならば、わたしの天の父もまたあなたがたに対して、そのようになさるであろう」。
23734 40 19 1 イエスはこれらのことを語り終えられてから、ガリラヤを去ってヨルダンの向こうのユダヤの地方へ行かれた。
23735 40 19 2 すると大ぜいの群衆がついてきたので、彼らをそこでおいやしになった。
23736 40 19 3 さてパリサイ人たちが近づいてきて、イエスを試みようとして言った、「何かの理由で、夫がその妻を出すのは、さしつかえないでしょうか」。
23737 40 19 4 イエスは答えて言われた、「あなたがたはまだ読んだことがないのか。『創造者は初めから人を男と女とに造られ、
23738 40 19 5 そして言われた、それゆえに、人は父母を離れ、その妻と結ばれ、ふたりの者は一体となるべきである』。
23739 40 19 6 彼らはもはや、ふたりではなく一体である。だから、神が合わせられたものを、人は離してはならない」。
23740 40 19 7 彼らはイエスに言った、「それでは、なぜモーセは、妻を出す場合には離縁状を渡せ、と定めたのですか」。
23741 40 19 8 イエスが言われた、「モーセはあなたがたの心が、かたくななので、妻を出すことを許したのだが、初めからそうではなかった。
23742 40 19 9 そこでわたしはあなたがたに言う。不品行のゆえでなくて、自分の妻を出して他の女をめとる者は、姦淫を行うのである」。
23743 40 19 10 弟子たちは言った、「もし妻に対する夫の立場がそうだとすれば、結婚しない方がましです」。
23744 40 19 11 するとイエスは彼らに言われた、「その言葉を受けいれることができるのはすべての人ではなく、ただそれを授けられている人々だけである。
23745 40 19 12 というのは、母の胎内から独身者に生れついているものがあり、また他から独身者にされたものもあり、また天国のために、みずから進んで独身者となったものもある。この言葉を受けられる者は、受けいれるがよい」。
23746 40 19 13 そのとき、イエスに手をおいて祈っていただくために、人々が幼な子らをみもとに連れてきた。ところが、弟子たちは彼らをたしなめた。
23747 40 19 14 するとイエスは言われた、「幼な子らをそのままにしておきなさい。わたしのところに来るのをとめてはならない。天国はこのような者の国である」。
23748 40 19 15 そして手を彼らの上においてから、そこを去って行かれた。
23749 40 19 16 すると、ひとりの人がイエスに近寄ってきて言った、「先生、永遠の生命を得るためには、どんなよいことをしたらいいでしょうか」。
23750 40 19 17 イエスは言われた、「なぜよい事についてわたしに尋ねるのか。よいかたはただひとりだけである。もし命に入りたいと思うなら、いましめを守りなさい」。
23751 40 19 18 彼は言った、「どのいましめですか」。イエスは言われた、「『殺すな、姦淫するな、盗むな、偽証を立てるな。
23752 40 19 19 父と母とを敬え』。また『自分を愛するように、あなたの隣り人を愛せよ』」。
23753 40 19 20 この青年はイエスに言った、「それはみな守ってきました。ほかに何が足りないのでしょう」。
23754 40 19 21 イエスは彼に言われた、「もしあなたが完全になりたいと思うなら、帰ってあなたの持ち物を売り払い、貧しい人々に施しなさい。そうすれば、天に宝を持つようになろう。そして、わたしに従ってきなさい」。
23755 40 19 22 この言葉を聞いて、青年は悲しみながら立ち去った。たくさんの資産を持っていたからである。
23756 40 19 23 それからイエスは弟子たちに言われた、「よく聞きなさい。富んでいる者が天国にはいるのは、むずかしいものである。
23757 40 19 24 また、あなたがたに言うが、富んでいる者が神の国にはいるよりは、らくだが針の穴を通る方が、もっとやさしい」。
23758 40 19 25 弟子たちはこれを聞いて非常に驚いて言った、「では、だれが救われることができるのだろう」。
23759 40 19 26 イエスは彼らを見つめて言われた、「人にはそれはできないが、神にはなんでもできない事はない」。
23760 40 19 27 そのとき、ペテロがイエスに答えて言った、「ごらんなさい、わたしたちはいっさいを捨てて、あなたに従いました。ついては、何がいただけるでしょうか」。
23761 40 19 28 イエスは彼らに言われた、「よく聞いておくがよい。世が改まって、人の子がその栄光の座につく時には、わたしに従ってきたあなたがたもまた、十二の位に座してイスラエルの十二の部族をさばくであろう。
23762 40 19 29 おおよそ、わたしの名のために、家、兄弟、姉妹、父、母、子、もしくは畑を捨てた者は、その幾倍もを受け、また永遠の生命を受けつぐであろう。
23763 40 19 30 しかし、多くの先の者はあとになり、あとの者は先になるであろう。
23764 40 20 1 天国は、ある家の主人が、自分のぶどう園に労働者を雇うために、夜が明けると同時に、出かけて行くようなものである。
23765 40 20 2 彼は労働者たちと、一日一デナリの約束をして、彼らをぶどう園に送った。
23766 40 20 3 それから九時ごろに出て行って、他の人々が市場で何もせずに立っているのを見た。
23767 40 20 4 そして、その人たちに言った、『あなたがたも、ぶどう園に行きなさい。相当な賃銀を払うから』。
23768 40 20 5 そこで、彼らは出かけて行った。主人はまた、十二時ごろと三時ごろとに出て行って、同じようにした。
23769 40 20 6 五時ごろまた出て行くと、まだ立っている人々を見たので、彼らに言った、『なぜ、何もしないで、一日中ここに立っていたのか』。
23770 40 20 7 彼らが『だれもわたしたちを雇ってくれませんから』と答えたので、その人々に言った、『あなたがたも、ぶどう園に行きなさい』。
23771 40 20 8 さて、夕方になって、ぶどう園の主人は管理人に言った、『労働者たちを呼びなさい。そして、最後にきた人々からはじめて順々に最初にきた人々にわたるように、賃銀を払ってやりなさい』。
23772 40 20 9 そこで、五時ごろに雇われた人々がきて、それぞれ一デナリずつもらった。
23773 40 20 10 ところが、最初の人々がきて、もっと多くもらえるだろうと思っていたのに、彼らも一デナリずつもらっただけであった。
23774 40 20 11 もらったとき、家の主人にむかって不平をもらして
23775 40 20 12 言った、『この最後の者たちは一時間しか働かなかったのに、あなたは一日じゅう、労苦と暑さを辛抱したわたしたちと同じ扱いをなさいました』。
23776 40 20 13 そこで彼はそのひとりに答えて言った、『友よ、わたしはあなたに対して不正をしてはいない。あなたはわたしと一デナリの約束をしたではないか。
23777 40 20 14 自分の賃銀をもらって行きなさい。わたしは、この最後の者にもあなたと同様に払ってやりたいのだ。
23778 40 20 15 自分の物を自分がしたいようにするのは、当りまえではないか。それともわたしが気前よくしているので、ねたましく思うのか』。
23779 40 20 16 このように、あとの者は先になり、先の者はあとになるであろう」。
23780 40 20 17 さて、イエスはエルサレムへ上るとき、十二弟子をひそかに呼びよせ、その途中で彼らに言われた、
23781 40 20 18 「見よ、わたしたちはエルサレムへ上って行くが、人の子は祭司長、律法学者たちの手に渡されるであろう。彼らは彼に死刑を宣告し、
23782 40 20 19 そして彼をあざけり、むち打ち、十字架につけさせるために、異邦人に引きわたすであろう。そして彼は三日目によみがえるであろう」。
23783 40 20 20 そのとき、ゼベダイの子らの母が、その子らと一緒にイエスのもとにきてひざまずき、何事かをお願いした。
23784 40 20 21 そこでイエスは彼女に言われた、「何をしてほしいのか」。彼女は言った、「わたしのこのふたりのむすこが、あなたの御国で、ひとりはあなたの右に、ひとりは左にすわれるように、お言葉をください」。
23785 40 20 22 イエスは答えて言われた、「あなたがたは、自分が何を求めているのか、わかっていない。わたしの飲もうとしている杯を飲むことができるか」。彼らは「できます」と答えた。
23786 40 20 23 イエスは彼らに言われた、「確かに、あなたがたはわたしの杯を飲むことになろう。しかし、わたしの右、左にすわらせることは、わたしのすることではなく、わたしの父によって備えられている人々だけに許されることである」。
23787 40 20 24 十人の者はこれを聞いて、このふたりの兄弟たちのことで憤慨した。
23788 40 20 25 そこで、イエスは彼らを呼び寄せて言われた、「あなたがたの知っているとおり、異邦人の支配者たちはその民を治め、また偉い人たちは、その民の上に権力をふるっている。
23789 40 20 26 あなたがたの間ではそうであってはならない。かえって、あなたがたの間で偉くなりたいと思う者は、仕える人となり、
23790 40 20 27 あなたがたの間でかしらになりたいと思う者は、僕とならねばならない。
23791 40 20 28 それは、人の子がきたのも、仕えられるためではなく、仕えるためであり、また多くの人のあがないとして、自分の命を与えるためであるのと、ちょうど同じである」。
23792 40 20 29 それから、彼らがエリコを出て行ったとき、大ぜいの群衆がイエスに従ってきた。
23793 40 20 30 すると、ふたりの盲人が道ばたにすわっていたが、イエスがとおって行かれると聞いて、叫んで言った、「主よ、ダビデの子よ、わたしたちをあわれんで下さい」。
23794 40 20 31 群衆は彼らをしかって黙らせようとしたが、彼らはますます叫びつづけて言った、「主よ、ダビデの子よ、わたしたちをあわれんで下さい」。
23795 40 20 32 イエスは立ちどまり、彼らを呼んで言われた、「わたしに何をしてほしいのか」。
23796 40 20 33 彼らは言った、「主よ、目をあけていただくことです」。
23797 40 20 34 イエスは深くあわれんで、彼らの目にさわられた。すると彼らは、たちまち見えるようになり、イエスに従って行った。
23798 40 21 1 さて、彼らがエルサレムに近づき、オリブ山沿いのベテパゲに着いたとき、イエスはふたりの弟子をつかわして言われた、
23799 40 21 2 「向こうの村へ行きなさい。するとすぐ、ろばがつながれていて、子ろばがそばにいるのを見るであろう。それを解いてわたしのところに引いてきなさい。
23800 40 21 3 もしだれかが、あなたがたに何か言ったなら、主がお入り用なのです、と言いなさい。そう言えば、すぐ渡してくれるであろう」。
23801 40 21 4 こうしたのは、預言者によって言われたことが、成就するためである。
23802 40 21 5 すなわち、「シオンの娘に告げよ、見よ、あなたの王がおいでになる、柔和なおかたで、ろばに乗って、くびきを負うろばの子に乗って」。
23803 40 21 6 弟子たちは出て行って、イエスがお命じになったとおりにし、
23804 40 21 7 ろばと子ろばとを引いてきた。そしてその上に自分たちの上着をかけると、イエスはそれにお乗りになった。
23805 40 21 8 群衆のうち多くの者は自分たちの上着を道に敷き、また、ほかの者たちは木の枝を切ってきて道に敷いた。
23806 40 21 9 そして群衆は、前に行く者も、あとに従う者も、共に叫びつづけた、「ダビデの子に、ホサナ。主の御名によってきたる者に、祝福あれ。いと高き所に、ホサナ」。
23807 40 21 10 イエスがエルサレムにはいって行かれたとき、町中がこぞって騒ぎ立ち、「これは、いったい、どなただろう」と言った。
23808 40 21 11 そこで群衆は、「この人はガリラヤのナザレから出た預言者イエスである」と言った。
23809 40 21 12 それから、イエスは宮にはいられた。そして、宮の庭で売り買いしていた人々をみな追い出し、また両替人の台や、はとを売る者の腰掛をくつがえされた。
23810 40 21 13 そして彼らに言われた、「『わたしの家は、祈の家ととなえらるべきである』と書いてある。それだのに、あなたがたはそれを強盗の巣にしている」。
23811 40 21 14 そのとき宮の庭で、盲人や足なえがみもとにきたので、彼らをおいやしになった。
23812 40 21 15 しかし、祭司長、律法学者たちは、イエスがなされた不思議なわざを見、また宮の庭で「ダビデの子に、ホサナ」と叫んでいる子供たちを見て立腹し、
23813 40 21 16 イエスに言った、「あの子たちが何を言っているのか、お聞きですか」。イエスは彼らに言われた、「そうだ、聞いている。あなたがたは『幼な子、乳のみ子たちの口にさんびを備えられた』とあるのを読んだことがないのか」。
23814 40 21 17 それから、イエスは彼らをあとに残し、都を出てベタニヤに行き、そこで夜を過ごされた。
23815 40 21 18 朝はやく都に帰るとき、イエスは空腹をおぼえられた。
23816 40 21 19 そして、道のかたわらに一本のいちじくの木があるのを見て、そこに行かれたが、ただ葉のほかは何も見当らなかった。そこでその木にむかって、「今から後いつまでも、おまえには実がならないように」と言われた。すると、いちじくの木はたちまち枯れた。
23817 40 21 20 弟子たちはこれを見て、驚いて言った、「いちじくがどうして、こうすぐに枯れたのでしょう」。
23818 40 21 21 イエスは答えて言われた、「よく聞いておくがよい。もしあなたがたが信じて疑わないならば、このいちじくにあったようなことが、できるばかりでなく、この山にむかって、動き出して海の中にはいれと言っても、そのとおりになるであろう。
23819 40 21 22 また、祈のとき、信じて求めるものは、みな与えられるであろう」。
23820 40 21 23 イエスが宮にはいられたとき、祭司長たちや民の長老たちが、その教えておられる所にきて言った、「何の権威によって、これらの事をするのですか。だれが、そうする権威を授けたのですか」。
23821 40 21 24 そこでイエスは彼らに言われた、「わたしも一つだけ尋ねよう。あなたがたがそれに答えてくれたなら、わたしも、何の権威によってこれらの事をするのか、あなたがたに言おう。
23822 40 21 25 ヨハネのバプテスマはどこからきたのであったか。天からであったか、人からであったか」。すると、彼らは互に論じて言った、「もし天からだと言えば、では、なぜ彼を信じなかったのか、とイエスは言うだろう。
23823 40 21 26 しかし、もし人からだと言えば、群衆が恐ろしい。人々がみなヨハネを預言者と思っているのだから」。
23824 40 21 27 そこで彼らは、「わたしたちにはわかりません」と答えた。すると、イエスが言われた、「わたしも何の権威によってこれらの事をするのか、あなたがたに言うまい。
23825 40 21 28 あなたがたはどう思うか。ある人にふたりの子があったが、兄のところに行って言った、『子よ、きょう、ぶどう園へ行って働いてくれ』。
23826 40 21 29 すると彼は『おとうさん、参ります』と答えたが、行かなかった。
23827 40 21 30 また弟のところにきて同じように言った。彼は『いやです』と答えたが、あとから心を変えて、出かけた。
23828 40 21 31 このふたりのうち、どちらが父の望みどおりにしたのか」。彼らは言った、「あとの者です」。イエスは言われた、「よく聞きなさい。取税人や遊女は、あなたがたより先に神の国にはいる。
23829 40 21 32 というのは、ヨハネがあなたがたのところにきて、義の道を説いたのに、あなたがたは彼を信じなかった。ところが、取税人や遊女は彼を信じた。あなたがたはそれを見たのに、あとになっても、心をいれ変えて彼を信じようとしなかった。
23830 40 21 33 もう一つの譬を聞きなさい。ある所に、ひとりの家の主人がいたが、ぶどう園を造り、かきをめぐらし、その中に酒ぶねの穴を掘り、やぐらを立て、それを農夫たちに貸して、旅に出かけた。
23831 40 21 34 収穫の季節がきたので、その分け前を受け取ろうとして、僕たちを農夫のところへ送った。
23832 40 21 35 すると、農夫たちは、その僕たちをつかまえて、ひとりを袋だたきにし、ひとりを殺し、もうひとりを石で打ち殺した。
23833 40 21 36 また別に、前よりも多くの僕たちを送ったが、彼らをも同じようにあしらった。
23834 40 21 37 しかし、最後に、わたしの子は敬ってくれるだろうと思って、主人はその子を彼らの所につかわした。
23835 40 21 38 すると農夫たちは、その子を見て互に言った、『あれはあと取りだ。さあ、これを殺して、その財産を手に入れよう』。
23836 40 21 39 そして彼をつかまえて、ぶどう園の外に引き出して殺した。
23837 40 21 40 このぶどう園の主人が帰ってきたら、この農夫たちをどうするだろうか」。
23838 40 21 41 彼らはイエスに言った、「悪人どもを、皆殺しにして、季節ごとに収穫を納めるほかの農夫たちに、そのぶどう園を貸し与えるでしょう」。
23839 40 21 42 イエスは彼らに言われた、「あなたがたは、聖書でまだ読んだことがないのか、『家造りらの捨てた石が隅のかしら石になった。これは主がなされたことで、わたしたちの目には不思議に見える』。
23840 40 21 43 それだから、あなたがたに言うが、神の国はあなたがたから取り上げられて、御国にふさわしい実を結ぶような異邦人に与えられるであろう。
23841 40 21 44 またその石の上に落ちる者は打ち砕かれ、それがだれかの上に落ちかかるなら、その人はこなみじんにされるであろう」。
23842 40 21 45 祭司長たちやパリサイ人たちがこの譬を聞いたとき、自分たちのことをさして言っておられることを悟ったので、
23843 40 21 46 イエスを捕えようとしたが、群衆を恐れた。群衆はイエスを預言者だと思っていたからである。
23844 40 22 1 イエスはまた、譬で彼らに語って言われた、
23845 40 22 2 「天国は、ひとりの王がその王子のために、婚宴を催すようなものである。
23846 40 22 3 王はその僕たちをつかわして、この婚宴に招かれていた人たちを呼ばせたが、その人たちはこようとはしなかった。
23847 40 22 4 そこでまた、ほかの僕たちをつかわして言った、『招かれた人たちに言いなさい。食事の用意ができました。牛も肥えた獣もほふられて、すべての用意ができました。さあ、婚宴においでください』。
23848 40 22 5 しかし、彼らは知らぬ顔をして、ひとりは自分の畑に、ひとりは自分の商売に出て行き、
23849 40 22 6 またほかの人々は、この僕たちをつかまえて侮辱を加えた上、殺してしまった。
23850 40 22 7 そこで王は立腹し、軍隊を送ってそれらの人殺しどもを滅ぼし、その町を焼き払った。
23851 40 22 8 それから僕たちに言った、『婚宴の用意はできているが、招かれていたのは、ふさわしくない人々であった。
23852 40 22 9 だから、町の大通りに出て行って、出会った人はだれでも婚宴に連れてきなさい』。
23853 40 22 10 そこで、僕たちは道に出て行って、出会う人は、悪人でも善人でもみな集めてきたので、婚宴の席は客でいっぱいになった。
23854 40 22 11 王は客を迎えようとしてはいってきたが、そこに礼服をつけていないひとりの人を見て、
23855 40 22 12 彼に言った、『友よ、どうしてあなたは礼服をつけないで、ここにはいってきたのですか』。しかし、彼は黙っていた。
23856 40 22 13 そこで、王はそばの者たちに言った、『この者の手足をしばって、外の暗やみにほうり出せ。そこで泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう』。
23857 40 22 14 招かれる者は多いが、選ばれる者は少ない」。
23858 40 22 15 そのときパリサイ人たちがきて、どうかしてイエスを言葉のわなにかけようと、相談をした。
23859 40 22 16 そして、彼らの弟子を、ヘロデ党の者たちと共に、イエスのもとにつかわして言わせた、「先生、わたしたちはあなたが真実なかたであって、真理に基いて神の道を教え、また、人に分け隔てをしないで、だれをもはばかられないことを知っています。
23860 40 22 17 それで、あなたはどう思われますか、答えてください。カイザルに税金を納めてよいでしょうか、いけないでしょうか」。
23861 40 22 18 イエスは彼らの悪意を知って言われた、「偽善者たちよ、なぜわたしをためそうとするのか。
23862 40 22 19 税に納める貨幣を見せなさい」。彼らはデナリ一つを持ってきた。
23863 40 22 20 そこでイエスは言われた、「これは、だれの肖像、だれの記号か」。
23864 40 22 21 彼らは「カイザルのです」と答えた。するとイエスは言われた、「それでは、カイザルのものはカイザルに、神のものは神に返しなさい」。
23865 40 22 22 彼らはこれを聞いて驚嘆し、イエスを残して立ち去った。
23866 40 22 23 復活ということはないと主張していたサドカイ人たちが、その日、イエスのもとにきて質問した、
23867 40 22 24 「先生、モーセはこう言っています、『もし、ある人が子がなくて死んだなら、その弟は兄の妻をめとって、兄のために子をもうけねばならない』。
23868 40 22 25 さて、わたしたちのところに七人の兄弟がありました。長男は妻をめとったが死んでしまい、そして子がなかったので、その妻を弟に残しました。
23869 40 22 26 次男も三男も、ついに七人とも同じことになりました。
23870 40 22 27 最後に、その女も死にました。
23871 40 22 28 すると復活の時には、この女は、七人のうちだれの妻なのでしょうか。みんながこの女を妻にしたのですが」。
23872 40 22 29 イエスは答えて言われた、「あなたがたは聖書も神の力も知らないから、思い違いをしている。
23873 40 22 30 復活の時には、彼らはめとったり、とついだりすることはない。彼らは天にいる御使のようなものである。
23874 40 22 31 また、死人の復活については、神があなたがたに言われた言葉を読んだことがないのか。
23875 40 22 32 『わたしはアブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である』と書いてある。神は死んだ者の神ではなく、生きている者の神である」。
23876 40 22 33 群衆はこれを聞いて、イエスの教に驚いた。
23877 40 22 34 さて、パリサイ人たちは、イエスがサドカイ人たちを言いこめられたと聞いて、一緒に集まった。
23878 40 22 35 そして彼らの中のひとりの律法学者が、イエスをためそうとして質問した、
23879 40 22 36 「先生、律法の中で、どのいましめがいちばん大切なのですか」。
23880 40 22 37 イエスは言われた、「『心をつくし、精神をつくし、思いをつくして、主なるあなたの神を愛せよ』。
23881 40 22 38 これがいちばん大切な、第一のいましめである。
23882 40 22 39 第二もこれと同様である、『自分を愛するようにあなたの隣り人を愛せよ』。
23883 40 22 40 これらの二つのいましめに、律法全体と預言者とが、かかっている」。
23884 40 22 41 パリサイ人たちが集まっていたとき、イエスは彼らにお尋ねになった、
23885 40 22 42 「あなたがたはキリストをどう思うか。だれの子なのか」。彼らは「ダビデの子です」と答えた。
23886 40 22 43 イエスは言われた、「それではどうして、ダビデが御霊に感じてキリストを主と呼んでいるのか。
23887 40 22 44 すなわち『主はわが主に仰せになった、あなたの敵をあなたの足もとに置くときまでは、わたしの右に座していなさい』。
23888 40 22 45 このように、ダビデ自身がキリストを主と呼んでいるなら、キリストはどうしてダビデの子であろうか」。
23889 40 22 46 イエスにひと言でも答えうる者は、なかったし、その日からもはや、進んでイエスに質問する者も、いなくなった。
23890 40 23 1 そのときイエスは、群衆と弟子たちとに語って言われた、
23891 40 23 2 「律法学者とパリサイ人とは、モーセの座にすわっている。
23892 40 23 3 だから、彼らがあなたがたに言うことは、みな守って実行しなさい。しかし、彼らのすることには、ならうな。彼らは言うだけで、実行しないから。
23893 40 23 4 また、重い荷物をくくって人々の肩にのせるが、それを動かすために、自分では指一本も貸そうとはしない。
23894 40 23 5 そのすることは、すべて人に見せるためである。すなわち、彼らは経札を幅広くつくり、その衣のふさを大きくし、
23895 40 23 6 また、宴会の上座、会堂の上席を好み、
23896 40 23 7 広場であいさつされることや、人々から先生と呼ばれることを好んでいる。
23897 40 23 8 しかし、あなたがたは先生と呼ばれてはならない。あなたがたの先生は、ただひとりであって、あなたがたはみな兄弟なのだから。
23898 40 23 9 また、地上のだれをも、父と呼んではならない。あなたがたの父はただひとり、すなわち、天にいます父である。
23899 40 23 10 また、あなたがたは教師と呼ばれてはならない。あなたがたの教師はただひとり、すなわち、キリストである。
23900 40 23 11 そこで、あなたがたのうちでいちばん偉い者は、仕える人でなければならない。
23901 40 23 12 だれでも自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされるであろう。
23902 40 23 13 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは、天国を閉ざして人々をはいらせない。自分もはいらないし、はいろうとする人をはいらせもしない。〔
23903 40 23 14 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは、やもめたちの家を食い倒し、見えのために長い祈をする。だから、もっときびしいさばきを受けるに違いない。〕
23904 40 23 15 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたはひとりの改宗者をつくるために、海と陸とを巡り歩く。そして、つくったなら、彼を自分より倍もひどい地獄の子にする。
23905 40 23 16 盲目な案内者たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは言う、『神殿をさして誓うなら、そのままでよいが、神殿の黄金をさして誓うなら、果す責任がある』と。
23906 40 23 17 愚かな盲目な人たちよ。黄金と、黄金を神聖にする神殿と、どちらが大事なのか。
23907 40 23 18 また、あなたがたは言う、『祭壇をさして誓うなら、そのままでよいが、その上の供え物をさして誓うなら、果す責任がある』と。
23908 40 23 19 盲目な人たちよ。供え物と供え物を神聖にする祭壇とどちらが大事なのか。
23909 40 23 20 祭壇をさして誓う者は、祭壇と、その上にあるすべての物とをさして誓うのである。
23910 40 23 21 神殿をさして誓う者は、神殿とその中に住んでおられるかたとをさして誓うのである。
23911 40 23 22 また、天をさして誓う者は、神の御座とその上にすわっておられるかたとをさして誓うのである。
23912 40 23 23 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。はっか、いのんど、クミンなどの薬味の十分の一を宮に納めておりながら、律法の中でもっと重要な、公平とあわれみと忠実とを見のがしている。それもしなければならないが、これも見のがしてはならない。
23913 40 23 24 盲目な案内者たちよ。あなたがたは、ぶよはこしているが、らくだはのみこんでいる。
23914 40 23 25 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。杯と皿との外側はきよめるが、内側は貪欲と放縦とで満ちている。
23915 40 23 26 盲目なパリサイ人よ。まず、杯の内側をきよめるがよい。そうすれば、外側も清くなるであろう。
23916 40 23 27 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは白く塗った墓に似ている。外側は美しく見えるが、内側は死人の骨や、あらゆる不潔なものでいっぱいである。
23917 40 23 28 このようにあなたがたも、外側は人に正しく見えるが、内側は偽善と不法とでいっぱいである。
23918 40 23 29 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは預言者の墓を建て、義人の碑を飾り立てて、こう言っている、
23919 40 23 30 『もしわたしたちが先祖の時代に生きていたなら、預言者の血を流すことに加わってはいなかっただろう』と。
23920 40 23 31 このようにして、あなたがたは預言者を殺した者の子孫であることを、自分で証明している。
23921 40 23 32 あなたがたもまた先祖たちがした悪の枡目を満たすがよい。
23922 40 23 33 へびよ、まむしの子らよ、どうして地獄の刑罰をのがれることができようか。
23923 40 23 34 それだから、わたしは、預言者、知者、律法学者たちをあなたがたにつかわすが、そのうちのある者を殺し、また十字架につけ、そのある者を会堂でむち打ち、また町から町へと迫害して行くであろう。
23924 40 23 35 こうして義人アベルの血から、聖所と祭壇との間であなたがたが殺したバラキヤの子ザカリヤの血に至るまで、地上に流された義人の血の報いが、ことごとくあなたがたに及ぶであろう。
23925 40 23 36 よく言っておく。これらのことの報いは、みな今の時代に及ぶであろう。
23926 40 23 37 ああ、エルサレム、エルサレム、預言者たちを殺し、おまえにつかわされた人たちを石で打ち殺す者よ。ちょうど、めんどりが翼の下にそのひなを集めるように、わたしはおまえの子らを幾たび集めようとしたことであろう。それだのに、おまえたちは応じようとしなかった。
23927 40 23 38 見よ、おまえたちの家は見捨てられてしまう。
23928 40 23 39 わたしは言っておく、『主の御名によってきたる者に、祝福あれ』
23929 40 24 1 イエスが宮から出て行こうとしておられると、弟子たちは近寄ってきて、宮の建物にイエスの注意を促した。
23930 40 24 2 そこでイエスは彼らにむかって言われた、「あなたがたは、これらすべてのものを見ないか。よく言っておく。その石一つでもくずされずに、そこに他の石の上に残ることもなくなるであろう」。
23931 40 24 3 またオリブ山ですわっておられると、弟子たちが、ひそかにみもとにきて言った、「どうぞお話しください。いつ、そんなことが起るのでしょうか。あなたがまたおいでになる時や、世の終りには、どんな前兆がありますか」。
23932 40 24 4 そこでイエスは答えて言われた、「人に惑わされないように気をつけなさい。
23933 40 24 5 多くの者がわたしの名を名のって現れ、自分がキリストだと言って、多くの人を惑わすであろう。
23934 40 24 6 また、戦争と戦争のうわさとを聞くであろう。注意していなさい、あわててはいけない。それは起らねばならないが、まだ終りではない。
23935 40 24 7 民は民に、国は国に敵対して立ち上がるであろう。またあちこちに、ききんが起り、また地震があるであろう。
23936 40 24 8 しかし、すべてこれらは産みの苦しみの初めである。
23937 40 24 9 そのとき人々は、あなたがたを苦しみにあわせ、また殺すであろう。またあなたがたは、わたしの名のゆえにすべての民に憎まれるであろう。
23938 40 24 10 そのとき、多くの人がつまずき、また互に裏切り、憎み合うであろう。
23939 40 24 11 また多くのにせ預言者が起って、多くの人を惑わすであろう。
23940 40 24 12 また不法がはびこるので、多くの人の愛が冷えるであろう。
23941 40 24 13 しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われる。
23942 40 24 14 そしてこの御国の福音は、すべての民に対してあかしをするために、全世界に宣べ伝えられるであろう。そしてそれから最後が来るのである。
23943 40 24 15 預言者ダニエルによって言われた荒らす憎むべき者が、聖なる場所に立つのを見たならば(読者よ、悟れ)、
23944 40 24 16 そのとき、ユダヤにいる人々は山へ逃げよ。
23945 40 24 17 屋上にいる者は、家からものを取り出そうとして下におりるな。
23946 40 24 18 畑にいる者は、上着を取りにあとへもどるな。
23947 40 24 19 その日には、身重の女と乳飲み子をもつ女とは、不幸である。
23948 40 24 20 あなたがたの逃げるのが、冬または安息日にならないように祈れ。
23949 40 24 21 その時には、世の初めから現在に至るまで、かつてなく今後もないような大きな患難が起るからである。
23950 40 24 22 もしその期間が縮められないなら、救われる者はひとりもないであろう。しかし、選民のためには、その期間が縮められるであろう。
23951 40 24 23 そのとき、だれかがあなたがたに『見よ、ここにキリストがいる』、また、『あそこにいる』と言っても、それを信じるな。
23952 40 24 24 にせキリストたちや、にせ預言者たちが起って、大いなるしるしと奇跡とを行い、できれば、選民をも惑わそうとするであろう。
23953 40 24 25 見よ、あなたがたに前もって言っておく。
23954 40 24 26 だから、人々が『見よ、彼は荒野にいる』と言っても、出て行くな。また『見よ、へやの中にいる』と言っても、信じるな。
23955 40 24 27 ちょうど、いなずまが東から西にひらめき渡るように、人の子も現れるであろう。
23956 40 24 28 死体のあるところには、はげたかが集まるものである。
23957 40 24 29 しかし、その時に起る患難の後、たちまち日は暗くなり、月はその光を放つことをやめ、星は空から落ち、天体は揺り動かされるであろう。
23958 40 24 30 そのとき、人の子のしるしが天に現れるであろう。またそのとき、地のすべての民族は嘆き、そして力と大いなる栄光とをもって、人の子が天の雲に乗って来るのを、人々は見るであろう。
23959 40 24 31 また、彼は大いなるラッパの音と共に御使たちをつかわして、天のはてからはてに至るまで、四方からその選民を呼び集めるであろう。
23960 40 24 32 いちじくの木からこの譬を学びなさい。その枝が柔らかになり、葉が出るようになると、夏の近いことがわかる。
23961 40 24 33 そのように、すべてこれらのことを見たならば、人の子が戸口まで近づいていると知りなさい。
23962 40 24 34 よく聞いておきなさい。これらの事が、ことごとく起るまでは、この時代は滅びることがない。
23963 40 24 35 天地は滅びるであろう。しかしわたしの言葉は滅びることがない。
23964 40 24 36 その日、その時は、だれも知らない。天の御使たちも、また子も知らない、ただ父だけが知っておられる。
23965 40 24 37 人の子の現れるのも、ちょうどノアの時のようであろう。
23966 40 24 38 すなわち、洪水の出る前、ノアが箱舟にはいる日まで、人々は食い、飲み、めとり、とつぎなどしていた。
23967 40 24 39 そして洪水が襲ってきて、いっさいのものをさらって行くまで、彼らは気がつかなかった。人の子の現れるのも、そのようであろう。
23968 40 24 40 そのとき、ふたりの者が畑にいると、ひとりは取り去られ、ひとりは取り残されるであろう。
23969 40 24 41 ふたりの女がうすをひいていると、ひとりは取り去られ、ひとりは残されるであろう。
23970 40 24 42 だから、目をさましていなさい。いつの日にあなたがたの主がこられるのか、あなたがたには、わからないからである。
23971 40 24 43 このことをわきまえているがよい。家の主人は、盗賊がいつごろ来るかわかっているなら、目をさましていて、自分の家に押し入ることを許さないであろう。
23972 40 24 44 だから、あなたがたも用意をしていなさい。思いがけない時に人の子が来るからである。
23973 40 24 45 主人がその家の僕たちの上に立てて、時に応じて食物をそなえさせる忠実な思慮深い僕は、いったい、だれであろう。
23974 40 24 46 主人が帰ってきたとき、そのようにつとめているのを見られる僕は、さいわいである。
23975 40 24 47 よく言っておくが、主人は彼を立てて自分の全財産を管理させるであろう。
23976 40 24 48 もしそれが悪い僕であって、自分の主人は帰りがおそいと心の中で思い、
23977 40 24 49 その僕仲間をたたきはじめ、また酒飲み仲間と一緒に食べたり飲んだりしているなら、
23978 40 24 50 その僕の主人は思いがけない日、気がつかない時に帰ってきて、
23979 40 24 51 彼を厳罰に処し、偽善者たちと同じ目にあわせるであろう。彼はそこで泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう。
23980 40 25 1 そこで天国は、十人のおとめがそれぞれあかりを手にして、花婿を迎えに出て行くのに似ている。
23981 40 25 2 その中の五人は思慮が浅く、五人は思慮深い者であった。
23982 40 25 3 思慮の浅い者たちは、あかりは持っていたが、油を用意していなかった。
23983 40 25 4 しかし、思慮深い者たちは、自分たちのあかりと一緒に、入れものの中に油を用意していた。
23984 40 25 5 花婿の来るのがおくれたので、彼らはみな居眠りをして、寝てしまった。
23985 40 25 6 夜中に、『さあ、花婿だ、迎えに出なさい』と呼ぶ声がした。
23986 40 25 7 そのとき、おとめたちはみな起きて、それぞれあかりを整えた。
23987 40 25 8 ところが、思慮の浅い女たちが、思慮深い女たちに言った、『あなたがたの油をわたしたちにわけてください。わたしたちのあかりが消えかかっていますから』。
23988 40 25 9 すると、思慮深い女たちは答えて言った、『わたしたちとあなたがたとに足りるだけは、多分ないでしょう。店に行って、あなたがたの分をお買いになる方がよいでしょう』。
23989 40 25 10 彼らが買いに出ているうちに、花婿が着いた。そこで、用意のできていた女たちは、花婿と一緒に婚宴のへやにはいり、そして戸がしめられた。
23990 40 25 11 そのあとで、ほかのおとめたちもきて、『ご主人様、ご主人様、どうぞ、あけてください』と言った。
23991 40 25 12 しかし彼は答えて、『はっきり言うが、わたしはあなたがたを知らない』と言った。
23992 40 25 13 だから、目をさましていなさい。その日その時が、あなたがたにはわからないからである。
23993 40 25 14 また天国は、ある人が旅に出るとき、その僕どもを呼んで、自分の財産を預けるようなものである。
23994 40 25 15 すなわち、それぞれの能力に応じて、ある者には五タラント、ある者には二タラント、ある者には一タラントを与えて、旅に出た。
23995 40 25 16 五タラントを渡された者は、すぐに行って、それで商売をして、ほかに五タラントをもうけた。
23996 40 25 17 二タラントの者も同様にして、ほかに二タラントをもうけた。
23997 40 25 18 しかし、一タラントを渡された者は、行って地を掘り、主人の金を隠しておいた。
23998 40 25 19 だいぶ時がたってから、これらの僕の主人が帰ってきて、彼らと計算をしはじめた。
23999 40 25 20 すると五タラントを渡された者が進み出て、ほかの五タラントをさし出して言った、『ご主人様、あなたはわたしに五タラントをお預けになりましたが、ごらんのとおり、ほかに五タラントをもうけました』。
24000 40 25 21 主人は彼に言った、『良い忠実な僕よ、よくやった。あなたはわずかなものに忠実であったから、多くのものを管理させよう。主人と一緒に喜んでくれ』。
24001 40 25 22 二タラントの者も進み出て言った、『ご主人様、あなたはわたしに二タラントをお預けになりましたが、ごらんのとおり、ほかに二タラントをもうけました』。
24002 40 25 23 主人は彼に言った、『良い忠実な僕よ、よくやった。あなたはわずかなものに忠実であったから、多くのものを管理させよう。主人と一緒に喜んでくれ』。
24003 40 25 24 一タラントを渡された者も進み出て言った、『ご主人様、わたしはあなたが、まかない所から刈り、散らさない所から集める酷な人であることを承知していました。
24004 40 25 25 そこで恐ろしさのあまり、行って、あなたのタラントを地の中に隠しておきました。ごらんください。ここにあなたのお金がございます』。
24005 40 25 26 すると、主人は彼に答えて言った、『悪い怠惰な僕よ、あなたはわたしが、まかない所から刈り、散らさない所から集めることを知っているのか。
24006 40 25 27 それなら、わたしの金を銀行に預けておくべきであった。そうしたら、わたしは帰ってきて、利子と一緒にわたしの金を返してもらえたであろうに。
24007 40 25 28 さあ、そのタラントをこの者から取りあげて、十タラントを持っている者にやりなさい。
24008 40 25 29 おおよそ、持っている人は与えられて、いよいよ豊かになるが、持っていない人は、持っているものまでも取り上げられるであろう。
24009 40 25 30 この役に立たない僕を外の暗い所に追い出すがよい。彼は、そこで泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう』。
24010 40 25 31 人の子が栄光の中にすべての御使たちを従えて来るとき、彼はその栄光の座につくであろう。
24011 40 25 32 そして、すべての国民をその前に集めて、羊飼が羊とやぎとを分けるように、彼らをより分け、
24012 40 25 33 羊を右に、やぎを左におくであろう。
24013 40 25 34 そのとき、王は右にいる人々に言うであろう、『わたしの父に祝福された人たちよ、さあ、世の初めからあなたがたのために用意されている御国を受けつぎなさい。
24014 40 25 35 あなたがたは、わたしが空腹のときに食べさせ、かわいていたときに飲ませ、旅人であったときに宿を貸し、
24015 40 25 36 裸であったときに着せ、病気のときに見舞い、獄にいたときに尋ねてくれたからである』。
24016 40 25 37 そのとき、正しい者たちは答えて言うであろう、『主よ、いつ、わたしたちは、あなたが空腹であるのを見て食物をめぐみ、かわいているのを見て飲ませましたか。
24017 40 25 38 いつあなたが旅人であるのを見て宿を貸し、裸なのを見て着せましたか。
24018 40 25 39 また、いつあなたが病気をし、獄にいるのを見て、あなたの所に参りましたか』。
24019 40 25 40 すると、王は答えて言うであろう、『あなたがたによく言っておく。わたしの兄弟であるこれらの最も小さい者のひとりにしたのは、すなわち、わたしにしたのである』。
24020 40 25 41 それから、左にいる人々にも言うであろう、『のろわれた者どもよ、わたしを離れて、悪魔とその使たちとのために用意されている永遠の火にはいってしまえ。
24021 40 25 42 あなたがたは、わたしが空腹のときに食べさせず、かわいていたときに飲ませず、
24022 40 25 43 旅人であったときに宿を貸さず、裸であったときに着せず、また病気のときや、獄にいたときに、わたしを尋ねてくれなかったからである』。
24023 40 25 44 そのとき、彼らもまた答えて言うであろう、『主よ、いつ、あなたが空腹であり、かわいておられ、旅人であり、裸であり、病気であり、獄におられたのを見て、わたしたちはお世話をしませんでしたか』。
24024 40 25 45 そのとき、彼は答えて言うであろう、『あなたがたによく言っておく。これらの最も小さい者のひとりにしなかったのは、すなわち、わたしにしなかったのである』。
24025 40 25 46 そして彼らは永遠の刑罰を受け、正しい者は永遠の生命に入るであろう」。
24026 40 26 1 イエスはこれらの言葉をすべて語り終えてから、弟子たちに言われた。
24027 40 26 2 「あなたがたが知っているとおり、ふつかの後には過越の祭になるが、人の子は十字架につけられるために引き渡される」。
24028 40 26 3 そのとき、祭司長たちや民の長老たちが、カヤパという大祭司の中庭に集まり、
24029 40 26 4 策略をもってイエスを捕えて殺そうと相談した。
24030 40 26 5 しかし彼らは言った、「祭の間はいけない。民衆の中に騒ぎが起るかも知れない」。
24031 40 26 6 さて、イエスがベタニヤで、らい病人シモンの家におられたとき、
24032 40 26 7 ひとりの女が、高価な香油が入れてある石膏のつぼを持ってきて、イエスに近寄り、食事の席についておられたイエスの頭に香油を注ぎかけた。
24033 40 26 8 すると、弟子たちはこれを見て憤って言った、「なんのためにこんなむだ使をするのか。
24034 40 26 9 それを高く売って、貧しい人たちに施すことができたのに」。
24035 40 26 10 イエスはそれを聞いて彼らに言われた、「なぜ、女を困らせるのか。わたしによい事をしてくれたのだ。
24036 40 26 11 貧しい人たちはいつもあなたがたと一緒にいるが、わたしはいつも一緒にいるわけではない。
24037 40 26 12 この女がわたしのからだにこの香油を注いだのは、わたしの葬りの用意をするためである。
24038 40 26 13 よく聞きなさい。全世界のどこででも、この福音が宣べ伝えられる所では、この女のした事も記念として語られるであろう」。
24039 40 26 14 時に、十二弟子のひとりイスカリオテのユダという者が、祭司長たちのところに行って
24040 40 26 15 言った、「彼をあなたがたに引き渡せば、いくらくださいますか」。すると、彼らは銀貨三十枚を彼に支払った。
24041 40 26 16 その時から、ユダはイエスを引きわたそうと、機会をねらっていた。
24042 40 26 17 さて、除酵祭の第一日に、弟子たちはイエスのもとにきて言った、「過越の食事をなさるために、わたしたちはどこに用意をしたらよいでしょうか」。
24043 40 26 18 イエスは言われた、「市内にはいり、かねて話してある人の所に行って言いなさい、『先生が、わたしの時が近づいた、あなたの家で弟子たちと一緒に過越を守ろうと、言っておられます』」。
24044 40 26 19 弟子たちはイエスが命じられたとおりにして、過越の用意をした。
24045 40 26 20 夕方になって、イエスは十二弟子と一緒に食事の席につかれた。
24046 40 26 21 そして、一同が食事をしているとき言われた、「特にあなたがたに言っておくが、あなたがたのうちのひとりが、わたしを裏切ろうとしている」。
24047 40 26 22 弟子たちは非常に心配して、つぎつぎに「主よ、まさか、わたしではないでしょう」と言い出した。
24048 40 26 23 イエスは答えて言われた、「わたしと一緒に同じ鉢に手を入れている者が、わたしを裏切ろうとしている。
24049 40 26 24 たしかに人の子は、自分について書いてあるとおりに去って行く。しかし、人の子を裏切るその人は、わざわいである。その人は生れなかった方が、彼のためによかったであろう」。
24050 40 26 25 イエスを裏切ったユダが答えて言った、「先生、まさか、わたしではないでしょう」。イエスは言われた、「いや、あなただ」。
24051 40 26 26 一同が食事をしているとき、イエスはパンを取り、祝福してこれをさき、弟子たちに与えて言われた、「取って食べよ、これはわたしのからだである」。
24052 40 26 27 また杯を取り、感謝して彼らに与えて言われた、「みな、この杯から飲め。
24053 40 26 28 これは、罪のゆるしを得させるようにと、多くの人のために流すわたしの契約の血である。
24054 40 26 29 あなたがたに言っておく。わたしの父の国であなたがたと共に、新しく飲むその日までは、わたしは今後決して、ぶどうの実から造ったものを飲むことをしない」。
24055 40 26 30 彼らは、さんびを歌った後、オリブ山へ出かけて行った。
24056 40 26 31 そのとき、イエスは弟子たちに言われた、「今夜、あなたがたは皆わたしにつまずくであろう。『わたしは羊飼を打つ。そして、羊の群れは散らされるであろう』と、書いてあるからである。
24057 40 26 32 しかしわたしは、よみがえってから、あなたがたより先にガリラヤへ行くであろう」。
24058 40 26 33 するとペテロはイエスに答えて言った、「たとい、みんなの者があなたにつまずいても、わたしは決してつまずきません」。
24059 40 26 34 イエスは言われた、「よくあなたに言っておく。今夜、鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言うだろう」。
24060 40 26 35 ペテロは言った、「たといあなたと一緒に死なねばならなくなっても、あなたを知らないなどとは、決して申しません」。弟子たちもみな同じように言った。
24061 40 26 36 それから、イエスは彼らと一緒に、ゲツセマネという所へ行かれた。そして弟子たちに言われた、「わたしが向こうへ行って祈っている間、ここにすわっていなさい」。
24062 40 26 37 そしてペテロとゼベダイの子ふたりとを連れて行かれたが、悲しみを催しまた悩みはじめられた。
24063 40 26 38 そのとき、彼らに言われた、「わたしは悲しみのあまり死ぬほどである。ここに待っていて、わたしと一緒に目をさましていなさい」。
24064 40 26 39 そして少し進んで行き、うつぶしになり、祈って言われた、「わが父よ、もしできることでしたらどうか、この杯をわたしから過ぎ去らせてください。しかし、わたしの思いのままにではなく、みこころのままになさって下さい」。
24065 40 26 40 それから、弟子たちの所にきてごらんになると、彼らが眠っていたので、ペテロに言われた、「あなたがたはそんなに、ひと時もわたしと一緒に目をさましていることが、できなかったのか。
24066 40 26 41 誘惑に陥らないように、目をさまして祈っていなさい。心は熱しているが、肉体が弱いのである」。
24067 40 26 42 また二度目に行って、祈って言われた、「わが父よ、この杯を飲むほかに道がないのでしたら、どうか、みこころが行われますように」。
24068 40 26 43 またきてごらんになると、彼らはまた眠っていた。その目が重くなっていたのである。
24069 40 26 44 それで彼らをそのままにして、また行って、三度目に同じ言葉で祈られた。
24070 40 26 45 それから弟子たちの所に帰ってきて、言われた、「まだ眠っているのか、休んでいるのか。見よ、時が迫った。人の子は罪人らの手に渡されるのだ。
24071 40 26 46 立て、さあ行こう。見よ、わたしを裏切る者が近づいてきた」。
24072 40 26 47 そして、イエスがまだ話しておられるうちに、そこに、十二弟子のひとりのユダがきた。また祭司長、民の長老たちから送られた大ぜいの群衆も、剣と棒とを持って彼についてきた。
24073 40 26 48 イエスを裏切った者が、あらかじめ彼らに、「わたしの接吻する者が、その人だ。その人をつかまえろ」と合図をしておいた。
24074 40 26 49 彼はすぐイエスに近寄り、「先生、いかがですか」と言って、イエスに接吻した。
24075 40 26 50 しかし、イエスは彼に言われた、「友よ、なんのためにきたのか」。このとき、人々が進み寄って、イエスに手をかけてつかまえた。
24076 40 26 51 すると、イエスと一緒にいた者のひとりが、手を伸ばして剣を抜き、そして大祭司の僕に切りかかって、その片耳を切り落した。
24077 40 26 52 そこで、イエスは彼に言われた、「あなたの剣をもとの所におさめなさい。剣をとる者はみな、剣で滅びる。
24078 40 26 53 それとも、わたしが父に願って、天の使たちを十二軍団以上も、今つかわしていただくことができないと、あなたは思うのか。
24079 40 26 54 しかし、それでは、こうならねばならないと書いてある聖書の言葉は、どうして成就されようか」。
24080 40 26 55 そのとき、イエスは群衆に言われた、「あなたがたは強盗にむかうように、剣や棒を持ってわたしを捕えにきたのか。わたしは毎日、宮ですわって教えていたのに、わたしをつかまえはしなかった。
24081 40 26 56 しかし、すべてこうなったのは、預言者たちの書いたことが、成就するためである」。そのとき、弟子たちは皆イエスを見捨てて逃げ去った。
24082 40 26 57 さて、イエスをつかまえた人たちは、大祭司カヤパのところにイエスを連れて行った。そこには律法学者、長老たちが集まっていた。
24083 40 26 58 ペテロは遠くからイエスについて、大祭司の中庭まで行き、そのなりゆきを見とどけるために、中にはいって下役どもと一緒にすわっていた。
24084 40 26 59 さて、祭司長たちと全議会とは、イエスを死刑にするため、イエスに不利な偽証を求めようとしていた。
24085 40 26 60 そこで多くの偽証者が出てきたが、証拠があがらなかった。しかし、最後にふたりの者が出てきて
24086 40 26 61 言った、「この人は、わたしは神の宮を打ちこわし、三日の後に建てることができる、と言いました」。
24087 40 26 62 すると、大祭司が立ち上がってイエスに言った、「何も答えないのか。これらの人々があなたに対して不利な証言を申し立てているが、どうなのか」。
24088 40 26 63 しかし、イエスは黙っておられた。そこで大祭司は言った、「あなたは神の子キリストなのかどうか、生ける神に誓ってわれわれに答えよ」。
24089 40 26 64 イエスは彼に言われた、「あなたの言うとおりである。しかし、わたしは言っておく。あなたがたは、間もなく、人の子が力ある者の右に座し、天の雲に乗って来るのを見るであろう」。
24090 40 26 65 すると、大祭司はその衣を引き裂いて言った、「彼は神を汚した。どうしてこれ以上、証人の必要があろう。あなたがたは今このけがし言を聞いた。
24091 40 26 66 あなたがたの意見はどうか」。すると、彼らは答えて言った、「彼は死に当るものだ」。
24092 40 26 67 それから、彼らはイエスの顔につばきをかけて、こぶしで打ち、またある人は手のひらでたたいて言った、
24093 40 26 68 「キリストよ、言いあててみよ、打ったのはだれか」。
24094 40 26 69 ペテロは外で中庭にすわっていた。するとひとりの女中が彼のところにきて、「あなたもあのガリラヤ人イエスと一緒だった」と言った。
24095 40 26 70 するとペテロは、みんなの前でそれを打ち消して言った、「あなたが何を言っているのか、わからない」。
24096 40 26 71 そう言って入口の方に出て行くと、ほかの女中が彼を見て、そこにいる人々にむかって、「この人はナザレ人イエスと一緒だった」と言った。
24097 40 26 72 そこで彼は再びそれを打ち消して、「そんな人は知らない」と誓って言った。
24098 40 26 73 しばらくして、そこに立っていた人々が近寄ってきて、ペテロに言った、「確かにあなたも彼らの仲間だ。言葉づかいであなたのことがわかる」。
24099 40 26 74 彼は「その人のことは何も知らない」と言って、激しく誓いはじめた。するとすぐ鶏が鳴いた。
24100 40 26 75 ペテロは「鶏が鳴く前に、三度わたしを知らないと言うであろう」と言われたイエスの言葉を思い出し、外に出て激しく泣いた。
24101 40 27 1 夜が明けると、祭司長たち、民の長老たち一同は、イエスを殺そうとして協議をこらした上、
24102 40 27 2 イエスを縛って引き出し、総督ピラトに渡した。
24103 40 27 3 そのとき、イエスを裏切ったユダは、イエスが罪に定められたのを見て後悔し、銀貨三十枚を祭司長、長老たちに返して
24104 40 27 4 言った、「わたしは罪のない人の血を売るようなことをして、罪を犯しました」。しかし彼らは言った、「それは、われわれの知ったことか。自分で始末するがよい」。
24105 40 27 5 そこで、彼は銀貨を聖所に投げ込んで出て行き、首をつって死んだ。
24106 40 27 6 祭司長たちは、その銀貨を拾いあげて言った、「これは血の代価だから、宮の金庫に入れるのはよくない」。
24107 40 27 7 そこで彼らは協議の上、外国人の墓地にするために、その金で陶器師の畑を買った。
24108 40 27 8 そのために、この畑は今日まで血の畑と呼ばれている。
24109 40 27 9 こうして預言者エレミヤによって言われた言葉が、成就したのである。すなわち、「彼らは、値をつけられたもの、すなわち、イスラエルの子らが値をつけたものの代価、銀貨三十を取って、
24110 40 27 10 主がお命じになったように、陶器師の畑の代価として、その金を与えた」。
24111 40 27 11 さて、イエスは総督の前に立たれた。すると総督はイエスに尋ねて言った、「あなたがユダヤ人の王であるか」。イエスは「そのとおりである」と言われた。
24112 40 27 12 しかし、祭司長、長老たちが訴えている間、イエスはひと言もお答えにならなかった。
24113 40 27 13 するとピラトは言った、「あんなにまで次々に、あなたに不利な証言を立てているのが、あなたには聞えないのか」。
24114 40 27 14 しかし、総督が非常に不思議に思ったほどに、イエスは何を言われても、ひと言もお答えにならなかった。
24115 40 27 15 さて、祭のたびごとに、総督は群衆が願い出る囚人ひとりを、ゆるしてやる慣例になっていた。
24116 40 27 16 ときに、バラバという評判の囚人がいた。
24117 40 27 17 それで、彼らが集まったとき、ピラトは言った、「おまえたちは、だれをゆるしてほしいのか。バラバか、それとも、キリストといわれるイエスか」。
24118 40 27 18 彼らがイエスを引きわたしたのは、ねたみのためであることが、ピラトにはよくわかっていたからである。
24119 40 27 19 また、ピラトが裁判の席についていたとき、その妻が人を彼のもとにつかわして、「あの義人には関係しないでください。わたしはきょう夢で、あの人のためにさんざん苦しみましたから」と言わせた。
24120 40 27 20 しかし、祭司長、長老たちは、バラバをゆるして、イエスを殺してもらうようにと、群衆を説き伏せた。
24121 40 27 21 総督は彼らにむかって言った、「ふたりのうち、どちらをゆるしてほしいのか」。彼らは「バラバの方を」と言った。
24122 40 27 22 ピラトは言った、「それではキリストといわれるイエスは、どうしたらよいか」。彼らはいっせいに「十字架につけよ」と言った。
24123 40 27 23 しかし、ピラトは言った、「あの人は、いったい、どんな悪事をしたのか」。すると彼らはいっそう激しく叫んで、「十字架につけよ」と言った。
24124 40 27 24 ピラトは手のつけようがなく、かえって暴動になりそうなのを見て、水を取り、群衆の前で手を洗って言った、「この人の血について、わたしには責任がない。おまえたちが自分で始末をするがよい」。
24125 40 27 25 すると、民衆全体が答えて言った、「その血の責任は、われわれとわれわれの子孫の上にかかってもよい」。
24126 40 27 26 そこで、ピラトはバラバをゆるしてやり、イエスをむち打ったのち、十字架につけるために引きわたした。
24127 40 27 27 それから総督の兵士たちは、イエスを官邸に連れて行って、全部隊をイエスのまわりに集めた。
24128 40 27 28 そしてその上着をぬがせて、赤い外套を着せ、
24129 40 27 29 また、いばらで冠を編んでその頭にかぶらせ、右の手には葦の棒を持たせ、それからその前にひざまずき、嘲弄して、「ユダヤ人の王、ばんざい」と言った。
24130 40 27 30 また、イエスにつばきをかけ、葦の棒を取りあげてその頭をたたいた。
24131 40 27 31 こうしてイエスを嘲弄したあげく、外套をはぎ取って元の上着を着せ、それから十字架につけるために引き出した。
24132 40 27 32 彼らが出て行くと、シモンという名のクレネ人に出会ったので、イエスの十字架を無理に負わせた。
24133 40 27 33 そして、ゴルゴタ、すなわち、されこうべの場、という所にきたとき、
24134 40 27 34 彼らはにがみをまぜたぶどう酒を飲ませようとしたが、イエスはそれをなめただけで、飲もうとされなかった。
24135 40 27 35 彼らはイエスを十字架につけてから、くじを引いて、その着物を分け、
24136 40 27 36 そこにすわってイエスの番をしていた。
24137 40 27 37 そしてその頭の上の方に、「これはユダヤ人の王イエス」と書いた罪状書きをかかげた。
24138 40 27 38 同時に、ふたりの強盗がイエスと一緒に、ひとりは右に、ひとりは左に、十字架につけられた。
24139 40 27 39 そこを通りかかった者たちは、頭を振りながら、イエスをののしって
24140 40 27 40 言った、「神殿を打ちこわして三日のうちに建てる者よ。もし神の子なら、自分を救え。そして十字架からおりてこい」。
24141 40 27 41 祭司長たちも同じように、律法学者、長老たちと一緒になって、嘲弄して言った、
24142 40 27 42 「他人を救ったが、自分自身を救うことができない。あれがイスラエルの王なのだ。いま十字架からおりてみよ。そうしたら信じよう。
24143 40 27 43 彼は神にたよっているが、神のおぼしめしがあれば、今、救ってもらうがよい。自分は神の子だと言っていたのだから」。
24144 40 27 44 一緒に十字架につけられた強盗どもまでも、同じようにイエスをののしった。
24145 40 27 45 さて、昼の十二時から地上の全面が暗くなって、三時に及んだ。
24146 40 27 46 そして三時ごろに、イエスは大声で叫んで、「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」と言われた。それは「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」という意味である。
24147 40 27 47 すると、そこに立っていたある人々が、これを聞いて言った、「あれはエリヤを呼んでいるのだ」。
24148 40 27 48 するとすぐ、彼らのうちのひとりが走り寄って、海綿を取り、それに酢いぶどう酒を含ませて葦の棒につけ、イエスに飲ませようとした。
24149 40 27 49 ほかの人々は言った、「待て、エリヤが彼を救いに来るかどうか、見ていよう」。
24150 40 27 50 イエスはもう一度大声で叫んで、ついに息をひきとられた。
24151 40 27 51 すると見よ、神殿の幕が上から下まで真二つに裂けた。また地震があり、岩が裂け、
24152 40 27 52 また墓が開け、眠っている多くの聖徒たちの死体が生き返った。
24153 40 27 53 そしてイエスの復活ののち、墓から出てきて、聖なる都にはいり、多くの人に現れた。
24154 40 27 54 百卒長、および彼と一緒にイエスの番をしていた人々は、地震や、いろいろのできごとを見て非常に恐れ、「まことに、この人は神の子であった」と言った。
24155 40 27 55 また、そこには遠くの方から見ている女たちも多くいた。彼らはイエスに仕えて、ガリラヤから従ってきた人たちであった。
24156 40 27 56 その中には、マグダラのマリヤ、ヤコブとヨセフとの母マリヤ、またゼベダイの子たちの母がいた。
24157 40 27 57 夕方になってから、アリマタヤの金持で、ヨセフという名の人がきた。彼もまたイエスの弟子であった。
24158 40 27 58 この人がピラトの所へ行って、イエスのからだの引取りかたを願った。そこで、ピラトはそれを渡すように命じた。
24159 40 27 59 ヨセフは死体を受け取って、きれいな亜麻布に包み、
24160 40 27 60 岩を掘って造った彼の新しい墓に納め、そして墓の入口に大きい石をころがしておいて、帰った。
24161 40 27 61 マグダラのマリヤとほかのマリヤとが、墓にむかってそこにすわっていた。
24162 40 27 62 あくる日は準備の日の翌日であったが、その日に、祭司長、パリサイ人たちは、ピラトのもとに集まって言った、
24163 40 27 63 「長官、あの偽り者がまだ生きていたとき、『三日の後に自分はよみがえる』と言ったのを、思い出しました。
24164 40 27 64 ですから、三日目まで墓の番をするように、さしずをして下さい。そうしないと、弟子たちがきて彼を盗み出し、『イエスは死人の中から、よみがえった』と、民衆に言いふらすかも知れません。そうなると、みんなが前よりも、もっとひどくだまされることになりましょう」。
24165 40 27 65 ピラトは彼らに言った、「番人がいるから、行ってできる限り、番をさせるがよい」。
24166 40 27 66 そこで、彼らは行って石に封印をし、番人を置いて墓の番をさせた。
24167 40 28 1 さて、安息日が終って、週の初めの日の明け方に、マグダラのマリヤとほかのマリヤとが、墓を見にきた。
24168 40 28 2 すると、大きな地震が起った。それは主の使が天から下って、そこにきて石をわきへころがし、その上にすわったからである。
24169 40 28 3 その姿はいなずまのように輝き、その衣は雪のように真白であった。
24170 40 28 4 見張りをしていた人たちは、恐ろしさの余り震えあがって、死人のようになった。
24171 40 28 5 この御使は女たちにむかって言った、「恐れることはない。あなたがたが十字架におかかりになったイエスを捜していることは、わたしにわかっているが、
24172 40 28 6 もうここにはおられない。かねて言われたとおりに、よみがえられたのである。さあ、イエスが納められていた場所をごらんなさい。
24173 40 28 7 そして、急いで行って、弟子たちにこう伝えなさい、『イエスは死人の中からよみがえられた。見よ、あなたがたより先にガリラヤへ行かれる。そこでお会いできるであろう』。あなたがたに、これだけ言っておく」。
24174 40 28 8 そこで女たちは恐れながらも大喜びで、急いで墓を立ち去り、弟子たちに知らせるために走って行った。
24175 40 28 9 すると、イエスは彼らに出会って、「平安あれ」と言われたので、彼らは近寄りイエスのみ足をいだいて拝した。
24176 40 28 10 そのとき、イエスは彼らに言われた、「恐れることはない。行って兄弟たちに、ガリラヤに行け、そこでわたしに会えるであろう、と告げなさい」。
24177 40 28 11 女たちが行っている間に、番人のうちのある人々が都に帰って、いっさいの出来事を祭司長たちに話した。
24178 40 28 12 祭司長たちは長老たちと集まって協議をこらし、兵卒たちにたくさんの金を与えて言った、
24179 40 28 13 「『弟子たちが夜中にきて、われわれの寝ている間に彼を盗んだ』と言え。
24180 40 28 14 万一このことが総督の耳にはいっても、われわれが総督に説いて、あなたがたに迷惑が掛からないようにしよう」。
24181 40 28 15 そこで、彼らは金を受け取って、教えられたとおりにした。そしてこの話は、今日に至るまでユダヤ人の間にひろまっている。
24182 40 28 16 さて、十一人の弟子たちはガリラヤに行って、イエスが彼らに行くように命じられた山に登った。
24183 40 28 17 そして、イエスに会って拝した。しかし、疑う者もいた。
24184 40 28 18 イエスは彼らに近づいてきて言われた、「わたしは、天においても地においても、いっさいの権威を授けられた。
24185 40 28 19 それゆえに、あなたがたは行って、すべての国民を弟子として、父と子と聖霊との名によって、彼らにバプテスマを施し、
24186 40 28 20 あなたがたに命じておいたいっさいのことを守るように教えよ。見よ、わたしは世の終りまで、いつもあなたがたと共にいるのである」。
24187 41 1 1 神の子イエス・キリストの福音のはじめ。
24188 41 1 2 預言者イザヤの書に、「見よ、わたしは使をあなたの先につかわし、あなたの道を整えさせるであろう。
24189 41 1 3 荒野で呼ばわる者の声がする、『主の道を備えよ、その道筋をまっすぐにせよ』」
24190 41 1 4 バプテスマのヨハネが荒野に現れて、罪のゆるしを得させる悔改めのバプテスマを宣べ伝えていた。
24191 41 1 5 そこで、ユダヤ全土とエルサレムの全住民とが、彼のもとにぞくぞくと出て行って、自分の罪を告白し、ヨルダン川でヨハネからバプテスマを受けた。
24192 41 1 6 このヨハネは、らくだの毛ごろもを身にまとい、腰に皮の帯をしめ、いなごと野蜜とを食物としていた。
24193 41 1 7 彼は宣べ伝えて言った、「わたしよりも力のあるかたが、あとからおいでになる。わたしはかがんで、そのくつのひもを解く値うちもない。
24194 41 1 8 わたしは水でバプテスマを授けたが、このかたは、聖霊によってバプテスマをお授けになるであろう」。
24195 41 1 9 そのころ、イエスはガリラヤのナザレから出てきて、ヨルダン川で、ヨハネからバプテスマをお受けになった。
24196 41 1 10 そして、水の中から上がられるとすぐ、天が裂けて、聖霊がはとのように自分に下って来るのを、ごらんになった。
24197 41 1 11 すると天から声があった、「あなたはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である」。
24198 41 1 12 それからすぐに、御霊がイエスを荒野に追いやった。
24199 41 1 13 イエスは四十日のあいだ荒野にいて、サタンの試みにあわれた。そして獣もそこにいたが、御使たちはイエスに仕えていた。
24200 41 1 14 ヨハネが捕えられた後、イエスはガリラヤに行き、神の福音を宣べ伝えて言われた、
24201 41 1 15 「時は満ちた、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信ぜよ」。
24202 41 1 16 さて、イエスはガリラヤの海べを歩いて行かれ、シモンとシモンの兄弟アンデレとが、海で網を打っているのをごらんになった。彼らは漁師であった。
24203 41 1 17 イエスは彼らに言われた、「わたしについてきなさい。あなたがたを、人間をとる漁師にしてあげよう」。
24204 41 1 18 すると、彼らはすぐに網を捨てて、イエスに従った。
24205 41 1 19 また少し進んで行かれると、ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネとが、舟の中で網を繕っているのをごらんになった。
24206 41 1 20 そこで、すぐ彼らをお招きになると、父ゼベダイを雇人たちと一緒に舟において、イエスのあとについて行った。
24207 41 1 21 それから、彼らはカペナウムに行った。そして安息日にすぐ、イエスは会堂にはいって教えられた。
24208 41 1 22 人々は、その教に驚いた。律法学者たちのようにではなく、権威ある者のように、教えられたからである。
24209 41 1 23 ちょうどその時、けがれた霊につかれた者が会堂にいて、叫んで言った、
24210 41 1 24 「ナザレのイエスよ、あなたはわたしたちとなんの係わりがあるのです。わたしたちを滅ぼしにこられたのですか。あなたがどなたであるか、わかっています。神の聖者です」。
24211 41 1 25 イエスはこれをしかって、「黙れ、この人から出て行け」と言われた。
24212 41 1 26 すると、けがれた霊は彼をひきつけさせ、大声をあげて、その人から出て行った。
24213 41 1 27 人々はみな驚きのあまり、互に論じて言った、「これは、いったい何事か。権威ある新しい教だ。けがれた霊にさえ命じられると、彼らは従うのだ」。
24214 41 1 28 こうしてイエスのうわさは、たちまちガリラヤの全地方、いたる所にひろまった。
24215 41 1 29 それから会堂を出るとすぐ、ヤコブとヨハネとを連れて、シモンとアンデレとの家にはいって行かれた。
24216 41 1 30 ところが、シモンのしゅうとめが熱病で床についていたので、人々はさっそく、そのことをイエスに知らせた。
24217 41 1 31 イエスは近寄り、その手をとって起されると、熱が引き、女は彼らをもてなした。
24218 41 1 32 夕暮になり日が沈むと、人々は病人や悪霊につかれた者をみな、イエスのところに連れてきた。
24219 41 1 33 こうして、町中の者が戸口に集まった。
24220 41 1 34 イエスは、さまざまの病をわずらっている多くの人々をいやし、また多くの悪霊を追い出された。また、悪霊どもに、物言うことをお許しにならなかった。彼らがイエスを知っていたからである。
24221 41 1 35 朝はやく、夜の明けるよほど前に、イエスは起きて寂しい所へ出て行き、そこで祈っておられた。
24222 41 1 36 すると、シモンとその仲間とが、あとを追ってきた。
24223 41 1 37 そしてイエスを見つけて、「みんなが、あなたを捜しています」と言った。
24224 41 1 38 イエスは彼らに言われた、「ほかの、附近の町々にみんなで行って、そこでも教を宣べ伝えよう。わたしはこのために出てきたのだから」。
24225 41 1 39 そして、ガリラヤ全地を巡りあるいて、諸会堂で教を宣べ伝え、また悪霊を追い出された。
24226 41 1 40 ひとりのらい病人が、イエスのところに願いにきて、ひざまずいて言った、「みこころでしたら、きよめていただけるのですが」。
24227 41 1 41 イエスは深くあわれみ、手を伸ばして彼にさわり、「そうしてあげよう、きよくなれ」と言われた。
24228 41 1 42 すると、らい病が直ちに去って、その人はきよくなった。
24229 41 1 43 イエスは彼をきびしく戒めて、すぐにそこを去らせ、こう言い聞かせられた、
24230 41 1 44 「何も人に話さないように、注意しなさい。ただ行って、自分のからだを祭司に見せ、それから、モーセが命じた物をあなたのきよめのためにささげて、人々に証明しなさい」。
24231 41 1 45 しかし、彼は出て行って、自分の身に起ったことを盛んに語り、また言いひろめはじめたので、イエスはもはや表立っては町に、はいることができなくなり、外の寂しい所にとどまっておられた。しかし、人々は方々から、イエスのところにぞくぞくと集まってきた。
24232 41 2 1 幾日かたって、イエスがまたカペナウムにお帰りになったとき、家におられるといううわさが立ったので、
24233 41 2 2 多くの人々が集まってきて、もはや戸口のあたりまでも、すきまが無いほどになった。そして、イエスは御言を彼らに語っておられた。
24234 41 2 3 すると、人々がひとりの中風の者を四人の人に運ばせて、イエスのところに連れてきた。
24235 41 2 4 ところが、群衆のために近寄ることができないので、イエスのおられるあたりの屋根をはぎ、穴をあけて、中風の者を寝かせたまま、床をつりおろした。
24236 41 2 5 イエスは彼らの信仰を見て、中風の者に、「子よ、あなたの罪はゆるされた」と言われた。
24237 41 2 6 ところが、そこに幾人かの律法学者がすわっていて、心の中で論じた、
24238 41 2 7 「この人は、なぜあんなことを言うのか。それは神をけがすことだ。神ひとりのほかに、だれが罪をゆるすことができるか」。
24239 41 2 8 イエスは、彼らが内心このように論じているのを、自分の心ですぐ見ぬいて、「なぜ、あなたがたは心の中でそんなことを論じているのか。
24240 41 2 9 中風の者に、あなたの罪はゆるされた、と言うのと、起きよ、床を取りあげて歩け、と言うのと、どちらがたやすいか。
24241 41 2 10 しかし、人の子は地上で罪をゆるす権威をもっていることが、あなたがたにわかるために」と彼らに言い、中風の者にむかって、
24242 41 2 11 「あなたに命じる。起きよ、床を取りあげて家に帰れ」と言われた。
24243 41 2 12 すると彼は起きあがり、すぐに床を取りあげて、みんなの前を出て行ったので、一同は大いに驚き、神をあがめて、「こんな事は、まだ一度も見たことがない」と言った。
24244 41 2 13 イエスはまた海べに出て行かれると、多くの人々がみもとに集まってきたので、彼らを教えられた。
24245 41 2 14 また途中で、アルパヨの子レビが収税所にすわっているのをごらんになって、「わたしに従ってきなさい」と言われた。すると彼は立ちあがって、イエスに従った。
24246 41 2 15 それから彼の家で、食事の席についておられたときのことである。多くの取税人や罪人たちも、イエスや弟子たちと共にその席に着いていた。こんな人たちが大ぜいいて、イエスに従ってきたのである。
24247 41 2 16 パリサイ派の律法学者たちは、イエスが罪人や取税人たちと食事を共にしておられるのを見て、弟子たちに言った、「なぜ、彼は取税人や罪人などと食事を共にするのか」。
24248 41 2 17 イエスはこれを聞いて言われた、「丈夫な人には医者はいらない。いるのは病人である。わたしがきたのは、義人を招くためではなく、罪人を招くためである」。
24249 41 2 18 ヨハネの弟子とパリサイ人とは、断食をしていた。そこで人々がきて、イエスに言った、「ヨハネの弟子たちとパリサイ人の弟子たちとが断食をしているのに、あなたの弟子たちは、なぜ断食をしないのですか」。
24250 41 2 19 するとイエスは言われた、「婚礼の客は、花婿が一緒にいるのに、断食ができるであろうか。花婿と一緒にいる間は、断食はできない。
24251 41 2 20 しかし、花婿が奪い去られる日が来る。その日には断食をするであろう。
24252 41 2 21 だれも、真新しい布ぎれを、古い着物に縫いつけはしない。もしそうすれば、新しいつぎは古い着物を引き破り、そして、破れがもっとひどくなる。
24253 41 2 22 まただれも、新しいぶどう酒を古い皮袋に入れはしない。もしそうすれば、ぶどう酒は皮袋をはり裂き、そして、ぶどう酒も皮袋もむだになってしまう。〔だから、新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れるべきである〕」。
24254 41 2 23 ある安息日に、イエスは麦畑の中をとおって行かれた。そのとき弟子たちが、歩きながら穂をつみはじめた。
24255 41 2 24 すると、パリサイ人たちがイエスに言った、「いったい、彼らはなぜ、安息日にしてはならぬことをするのですか」。
24256 41 2 25 そこで彼らに言われた、「あなたがたは、ダビデとその供の者たちとが食物がなくて飢えたとき、ダビデが何をしたか、まだ読んだことがないのか。
24257 41 2 26 すなわち、大祭司アビアタルの時、神の家にはいって、祭司たちのほか食べてはならぬ供えのパンを、自分も食べ、また供の者たちにも与えたではないか」。
24258 41 2 27 また彼らに言われた、「安息日は人のためにあるもので、人が安息日のためにあるのではない。
24259 41 2 28 それだから、人の子は、安息日にもまた主なのである」。
24260 41 3 1 イエスがまた会堂にはいられると、そこに片手のなえた人がいた。
24261 41 3 2 人々はイエスを訴えようと思って、安息日にその人をいやされるかどうかをうかがっていた。
24262 41 3 3 すると、イエスは片手のなえたその人に、「立って、中へ出てきなさい」と言い、
24263 41 3 4 人々にむかって、「安息日に善を行うのと悪を行うのと、命を救うのと殺すのと、どちらがよいか」と言われた。彼らは黙っていた。
24264 41 3 5 イエスは怒りを含んで彼らを見まわし、その心のかたくななのを嘆いて、その人に「手を伸ばしなさい」と言われた。そこで手を伸ばすと、その手は元どおりになった。
24265 41 3 6 パリサイ人たちは出て行って、すぐにヘロデ党の者たちと、なんとかしてイエスを殺そうと相談しはじめた。
24266 41 3 7 それから、イエスは弟子たちと共に海べに退かれたが、ガリラヤからきたおびただしい群衆がついて行った。またユダヤから、
24267 41 3 8 エルサレムから、イドマヤから、更にヨルダンの向こうから、ツロ、シドンのあたりからも、おびただしい群衆が、そのなさっていることを聞いて、みもとにきた。
24268 41 3 9 イエスは群衆が自分に押し迫るのを避けるために、小舟を用意しておけと、弟子たちに命じられた。
24269 41 3 10 それは、多くの人をいやされたので、病苦に悩む者は皆イエスにさわろうとして、押し寄せてきたからである。
24270 41 3 11 また、けがれた霊どもはイエスを見るごとに、みまえにひれ伏し、叫んで、「あなたこそ神の子です」と言った。
24271 41 3 12 イエスは御自身のことを人にあらわさないようにと、彼らをきびしく戒められた。
24272 41 3 13 さてイエスは山に登り、みこころにかなった者たちを呼び寄せられたので、彼らはみもとにきた。
24273 41 3 14 そこで十二人をお立てになった。彼らを自分のそばに置くためであり、さらに宣教につかわし、
24274 41 3 15 また悪霊を追い出す権威を持たせるためであった。
24275 41 3 16 こうして、この十二人をお立てになった。そしてシモンにペテロという名をつけ、
24276 41 3 17 またゼベダイの子ヤコブと、ヤコブの兄弟ヨハネ、彼らにはボアネルゲ、すなわち、雷の子という名をつけられた。
24277 41 3 18 つぎにアンデレ、ピリポ、バルトロマイ、マタイ、トマス、アルパヨの子ヤコブ、タダイ、熱心党のシモン、
24278 41 3 19 それからイスカリオテのユダ。このユダがイエスを裏切ったのである。
24279 41 3 20 群衆がまた集まってきたので、一同は食事をする暇もないほどであった。
24280 41 3 21 身内の者たちはこの事を聞いて、イエスを取押えに出てきた。気が狂ったと思ったからである。
24281 41 3 22 また、エルサレムから下ってきた律法学者たちも、「彼はベルゼブルにとりつかれている」と言い、「悪霊どものかしらによって、悪霊どもを追い出しているのだ」とも言った。
24282 41 3 23 そこでイエスは彼らを呼び寄せ、譬をもって言われた、「どうして、サタンがサタンを追い出すことができようか。
24283 41 3 24 もし国が内部で分れ争うなら、その国は立ち行かない。
24284 41 3 25 また、もし家が内わで分れ争うなら、その家は立ち行かないであろう。
24285 41 3 26 もしサタンが内部で対立し分争するなら、彼は立ち行けず、滅んでしまう。
24286 41 3 27 だれでも、まず強い人を縛りあげなければ、その人の家に押し入って家財を奪い取ることはできない。縛ってからはじめて、その家を略奪することができる。
24287 41 3 28 よく言い聞かせておくが、人の子らには、その犯すすべての罪も神をけがす言葉も、ゆるされる。
24288 41 3 29 しかし、聖霊をけがす者は、いつまでもゆるされず、永遠の罪に定められる」。
24289 41 3 30 そう言われたのは、彼らが「イエスはけがれた霊につかれている」と言っていたからである。
24290 41 3 31 さて、イエスの母と兄弟たちとがきて、外に立ち、人をやってイエスを呼ばせた。
24291 41 3 32 ときに、群衆はイエスを囲んですわっていたが、「ごらんなさい。あなたの母上と兄弟、姉妹たちが、外であなたを尋ねておられます」と言った。
24292 41 3 33 すると、イエスは彼らに答えて言われた、「わたしの母、わたしの兄弟とは、だれのことか」。
24293 41 3 34 そして、自分をとりかこんで、すわっている人々を見まわして、言われた、「ごらんなさい、ここにわたしの母、わたしの兄弟がいる。
24294 41 3 35 神のみこころを行う者はだれでも、わたしの兄弟、また姉妹、また母なのである」。
24295 41 4 1 イエスはまたも、海べで教えはじめられた。おびただしい群衆がみもとに集まったので、イエスは舟に乗ってすわったまま、海上におられ、群衆はみな海に沿って陸地にいた。
24296 41 4 2 イエスは譬で多くの事を教えられたが、その教の中で彼らにこう言われた、
24297 41 4 3 「聞きなさい、種まきが種をまきに出て行った。
24298 41 4 4 まいているうちに、道ばたに落ちた種があった。すると、鳥がきて食べてしまった。
24299 41 4 5 ほかの種は土の薄い石地に落ちた。そこは土が深くないので、すぐ芽を出したが、
24300 41 4 6 日が上ると焼けて、根がないために枯れてしまった。
24301 41 4 7 ほかの種はいばらの中に落ちた。すると、いばらが伸びて、ふさいでしまったので、実を結ばなかった。
24302 41 4 8 ほかの種は良い地に落ちた。そしてはえて、育って、ますます実を結び、三十倍、六十倍、百倍にもなった」。
24303 41 4 9 そして言われた、「聞く耳のある者は聞くがよい」。
24304 41 4 10 イエスがひとりになられた時、そばにいた者たちが、十二弟子と共に、これらの譬について尋ねた。
24305 41 4 11 そこでイエスは言われた、「あなたがたには神の国の奥義が授けられているが、ほかの者たちには、すべてが譬で語られる。
24306 41 4 12 それは『彼らは見るには見るが、認めず、聞くには聞くが、悟らず、悔い改めてゆるされることがない』ためである」。
24307 41 4 13 また彼らに言われた、「あなたがたはこの譬がわからないのか。それでは、どうしてすべての譬がわかるだろうか。
24308 41 4 14 種まきは御言をまくのである。
24309 41 4 15 道ばたに御言がまかれたとは、こういう人たちのことである。すなわち、御言を聞くと、すぐにサタンがきて、彼らの中にまかれた御言を、奪って行くのである。
24310 41 4 16 同じように、石地にまかれたものとは、こういう人たちのことである。御言を聞くと、すぐに喜んで受けるが、
24311 41 4 17 自分の中に根がないので、しばらく続くだけである。そののち、御言のために困難や迫害が起ってくると、すぐつまずいてしまう。
24312 41 4 18 また、いばらの中にまかれたものとは、こういう人たちのことである。御言を聞くが、
24313 41 4 19 世の心づかいと、富の惑わしと、その他いろいろな欲とがはいってきて、御言をふさぐので、実を結ばなくなる。
24314 41 4 20 また、良い地にまかれたものとは、こういう人たちのことである。御言を聞いて受けいれ、三十倍、六十倍、百倍の実を結ぶのである」。
24315 41 4 21 また彼らに言われた、「ますの下や寝台の下に置くために、あかりを持ってくることがあろうか。燭台の上に置くためではないか。
24316 41 4 22 なんでも、隠されているもので、現れないものはなく、秘密にされているもので、明るみに出ないものはない。
24317 41 4 23 聞く耳のある者は聞くがよい」。
24318 41 4 24 また彼らに言われた、「聞くことがらに注意しなさい。あなたがたの量るそのはかりで、自分にも量り与えられ、その上になお増し加えられるであろう。
24319 41 4 25 だれでも、持っている人は更に与えられ、持っていない人は、持っているものまでも取り上げられるであろう」。
24320 41 4 26 また言われた、「神の国は、ある人が地に種をまくようなものである。
24321 41 4 27 夜昼、寝起きしている間に、種は芽を出して育って行くが、どうしてそうなるのか、その人は知らない。
24322 41 4 28 地はおのずから実を結ばせるもので、初めに芽、つぎに穂、つぎに穂の中に豊かな実ができる。
24323 41 4 29 実がいると、すぐにかまを入れる。刈入れ時がきたからである」。
24324 41 4 30 また言われた、「神の国を何に比べようか。また、どんな譬で言いあらわそうか。
24325 41 4 31 それは一粒のからし種のようなものである。地にまかれる時には、地上のどんな種よりも小さいが、
24326 41 4 32 まかれると、成長してどんな野菜よりも大きくなり、大きな枝を張り、その陰に空の鳥が宿るほどになる」。
24327 41 4 33 イエスはこのような多くの譬で、人々の聞く力にしたがって、御言を語られた。
24328 41 4 34 譬によらないでは語られなかったが、自分の弟子たちには、ひそかにすべてのことを解き明かされた。
24329 41 4 35 さてその日、夕方になると、イエスは弟子たちに、「向こう岸へ渡ろう」と言われた。
24330 41 4 36 そこで、彼らは群衆をあとに残し、イエスが舟に乗っておられるまま、乗り出した。ほかの舟も一緒に行った。
24331 41 4 37 すると、激しい突風が起り、波が舟の中に打ち込んできて、舟に満ちそうになった。
24332 41 4 38 ところがイエス自身は、舳の方でまくらをして、眠っておられた。そこで、弟子たちはイエスをおこして、「先生、わたしどもがおぼれ死んでも、おかまいにならないのですか」と言った。
24333 41 4 39 イエスは起きあがって風をしかり、海にむかって、「静まれ、黙れ」と言われると、風はやんで、大なぎになった。
24334 41 4 40 イエスは彼らに言われた、「なぜ、そんなにこわがるのか。どうして信仰がないのか」。
24335 41 4 41 彼らは恐れおののいて、互に言った、「いったい、この方はだれだろう。風も海も従わせるとは」。
24336 41 5 1 こうして彼らは海の向こう岸、ゲラサ人の地に着いた。
24337 41 5 2 それから、イエスが舟からあがられるとすぐに、けがれた霊につかれた人が墓場から出てきて、イエスに出会った。
24338 41 5 3 この人は墓場をすみかとしており、もはやだれも、鎖でさえも彼をつなぎとめて置けなかった。
24339 41 5 4 彼はたびたび足かせや鎖でつながれたが、鎖を引きちぎり、足かせを砕くので、だれも彼を押えつけることができなかったからである。
24340 41 5 5 そして、夜昼たえまなく墓場や山で叫びつづけて、石で自分のからだを傷つけていた。
24341 41 5 6 ところが、この人がイエスを遠くから見て、走り寄って拝し、
24342 41 5 7 大声で叫んで言った、「いと高き神の子イエスよ、あなたはわたしとなんの係わりがあるのです。神に誓ってお願いします。どうぞ、わたしを苦しめないでください」。
24343 41 5 8 それは、イエスが、「けがれた霊よ、この人から出て行け」と言われたからである。
24344 41 5 9 また彼に、「なんという名前か」と尋ねられると、「レギオンと言います。大ぜいなのですから」と答えた。
24345 41 5 10 そして、自分たちをこの土地から追い出さないようにと、しきりに願いつづけた。
24346 41 5 11 さて、そこの山の中腹に、豚の大群が飼ってあった。
24347 41 5 12 霊はイエスに願って言った、「わたしどもを、豚にはいらせてください。その中へ送ってください」。
24348 41 5 13 イエスがお許しになったので、けがれた霊どもは出て行って、豚の中へはいり込んだ。すると、その群れは二千匹ばかりであったが、がけから海へなだれを打って駆け下り、海の中でおぼれ死んでしまった。
24349 41 5 14 豚を飼う者たちが逃げ出して、町や村にふれまわったので、人々は何事が起ったのかと見にきた。
24350 41 5 15 そして、イエスのところにきて、悪霊につかれた人が着物を着て、正気になってすわっており、それがレギオンを宿していた者であるのを見て、恐れた。
24351 41 5 16 また、それを見た人たちは、悪霊につかれた人の身に起った事と豚のこととを、彼らに話して聞かせた。
24352 41 5 17 そこで、人々はイエスに、この地方から出て行っていただきたいと、頼みはじめた。
24353 41 5 18 イエスが舟に乗ろうとされると、悪霊につかれていた人がお供をしたいと願い出た。
24354 41 5 19 しかし、イエスはお許しにならないで、彼に言われた、「あなたの家族のもとに帰って、主がどんなに大きなことをしてくださったか、またどんなにあわれんでくださったか、それを知らせなさい」。
24355 41 5 20 そこで、彼は立ち去り、そして自分にイエスがしてくださったことを、ことごとくデカポリスの地方に言いひろめ出したので、人々はみな驚き怪しんだ。
24356 41 5 21 イエスがまた舟で向こう岸へ渡られると、大ぜいの群衆がみもとに集まってきた。イエスは海べにおられた。
24357 41 5 22 そこへ、会堂司のひとりであるヤイロという者がきて、イエスを見かけるとその足もとにひれ伏し、
24358 41 5 23 しきりに願って言った、「わたしの幼い娘が死にかかっています。どうぞ、その子がなおって助かりますように、おいでになって、手をおいてやってください」。
24359 41 5 24 そこで、イエスは彼と一緒に出かけられた。大ぜいの群衆もイエスに押し迫りながら、ついて行った。
24360 41 5 25 さてここに、十二年間も長血をわずらっている女がいた。
24361 41 5 26 多くの医者にかかって、さんざん苦しめられ、その持ち物をみな費してしまったが、なんのかいもないばかりか、かえってますます悪くなる一方であった。
24362 41 5 27 この女がイエスのことを聞いて、群衆の中にまぎれ込み、うしろから、み衣にさわった。
24363 41 5 28 それは、せめて、み衣にでもさわれば、なおしていただけるだろうと、思っていたからである。
24364 41 5 29 すると、血の元がすぐにかわき、女は病気がなおったことを、その身に感じた。
24365 41 5 30 イエスはすぐ、自分の内から力が出て行ったことに気づかれて、群衆の中で振り向き、「わたしの着物にさわったのはだれか」と言われた。
24366 41 5 31 そこで弟子たちが言った、「ごらんのとおり、群衆があなたに押し迫っていますのに、だれがさわったかと、おっしゃるのですか」。
24367 41 5 32 しかし、イエスはさわった者を見つけようとして、見まわしておられた。
24368 41 5 33 その女は自分の身に起ったことを知って、恐れおののきながら進み出て、みまえにひれ伏して、すべてありのままを申し上げた。
24369 41 5 34 イエスはその女に言われた、「娘よ、あなたの信仰があなたを救ったのです。安心して行きなさい。すっかりなおって、達者でいなさい」。
24370 41 5 35 イエスが、まだ話しておられるうちに、会堂司の家から人々がきて言った、「あなたの娘はなくなりました。このうえ、先生を煩わすには及びますまい」。
24371 41 5 36 イエスはその話している言葉を聞き流して、会堂司に言われた、「恐れることはない。ただ信じなさい」。
24372 41 5 37 そしてペテロ、ヤコブ、ヤコブの兄弟ヨハネのほかは、ついて来ることを、だれにもお許しにならなかった。
24373 41 5 38 彼らが会堂司の家に着くと、イエスは人々が大声で泣いたり、叫んだりして、騒いでいるのをごらんになり、
24374 41 5 39 内にはいって、彼らに言われた、「なぜ泣き騒いでいるのか。子供は死んだのではない。眠っているだけである」。
24375 41 5 40 人々はイエスをあざ笑った。しかし、イエスはみんなの者を外に出し、子供の父母と供の者たちだけを連れて、子供のいる所にはいって行かれた。
24376 41 5 41 そして子供の手を取って、「タリタ、クミ」と言われた。それは、「少女よ、さあ、起きなさい」という意味である。
24377 41 5 42 すると、少女はすぐに起き上がって、歩き出した。十二歳にもなっていたからである。彼らはたちまち非常な驚きに打たれた。
24378 41 5 43 イエスは、だれにもこの事を知らすなと、きびしく彼らに命じ、また、少女に食物を与えるようにと言われた。
24379 41 6 1 イエスはそこを去って、郷里に行かれたが、弟子たちも従って行った。
24380 41 6 2 そして、安息日になったので、会堂で教えはじめられた。それを聞いた多くの人々は、驚いて言った、「この人は、これらのことをどこで習ってきたのか。また、この人の授かった知恵はどうだろう。このような力あるわざがその手で行われているのは、どうしてか。
24381 41 6 3 この人は大工ではないか。マリヤのむすこで、ヤコブ、ヨセ、ユダ、シモンの兄弟ではないか。またその姉妹たちも、ここにわたしたちと一緒にいるではないか」。こうして彼らはイエスにつまずいた。
24382 41 6 4 イエスは言われた、「預言者は、自分の郷里、親族、家以外では、どこででも敬われないことはない」。
24383 41 6 5 そして、そこでは力あるわざを一つもすることができず、ただ少数の病人に手をおいていやされただけであった。
24384 41 6 6 そして、彼らの不信仰を驚き怪しまれた。
24385 41 6 7 また十二弟子を呼び寄せ、ふたりずつつかわすことにして、彼らにけがれた霊を制する権威を与え、
24386 41 6 8 また旅のために、つえ一本のほかには何も持たないように、パンも、袋も、帯の中に銭も持たず、
24387 41 6 9 ただわらじをはくだけで、下着も二枚は着ないように命じられた。
24388 41 6 10 そして彼らに言われた、「どこへ行っても、家にはいったなら、その土地を去るまでは、そこにとどまっていなさい。
24389 41 6 11 また、あなたがたを迎えず、あなたがたの話を聞きもしない所があったなら、そこから出て行くとき、彼らに対する抗議のしるしに、足の裏のちりを払い落しなさい」。
24390 41 6 12 そこで、彼らは出て行って、悔改めを宣べ伝え、
24391 41 6 13 多くの悪霊を追い出し、大ぜいの病人に油をぬっていやした。
24392 41 6 14 さて、イエスの名が知れわたって、ヘロデ王の耳にはいった。ある人々は「バプテスマのヨハネが、死人の中からよみがえってきたのだ。それで、あのような力が彼のうちに働いているのだ」と言い、
24393 41 6 15 他の人々は「彼はエリヤだ」と言い、また他の人々は「昔の預言者のような預言者だ」と言った。
24394 41 6 16 ところが、ヘロデはこれを聞いて、「わたしが首を切ったあのヨハネがよみがえったのだ」と言った。
24395 41 6 17 このヘロデは、自分の兄弟ピリポの妻ヘロデヤをめとったが、そのことで、人をつかわし、ヨハネを捕えて獄につないだ。
24396 41 6 18 それは、ヨハネがヘロデに、「兄弟の妻をめとるのは、よろしくない」と言ったからである。
24397 41 6 19 そこで、ヘロデヤはヨハネを恨み、彼を殺そうと思っていたが、できないでいた。
24398 41 6 20 それはヘロデが、ヨハネは正しくて聖なる人であることを知って、彼を恐れ、彼に保護を加え、またその教を聞いて非常に悩みながらも、なお喜んで聞いていたからである。
24399 41 6 21 ところが、よい機会がきた。ヘロデは自分の誕生日の祝に、高官や将校やガリラヤの重立った人たちを招いて宴会を催したが、
24400 41 6 22 そこへ、このヘロデヤの娘がはいってきて舞をまい、ヘロデをはじめ列座の人たちを喜ばせた。そこで王はこの少女に「ほしいものはなんでも言いなさい。あなたにあげるから」と言い、
24401 41 6 23 さらに「ほしければ、この国の半分でもあげよう」と誓って言った。
24402 41 6 24 そこで少女は座をはずして、母に「何をお願いしましょうか」と尋ねると、母は「バプテスマのヨハネの首を」と答えた。
24403 41 6 25 するとすぐ、少女は急いで王のところに行って願った、「今すぐに、バプテスマのヨハネの首を盆にのせて、それをいただきとうございます」。
24404 41 6 26 王は非常に困ったが、いったん誓ったのと、また列座の人たちの手前、少女の願いを退けることを好まなかった。
24405 41 6 27 そこで、王はすぐに衛兵をつかわし、ヨハネの首を持って来るように命じた。衛兵は出て行き、獄中でヨハネの首を切り、
24406 41 6 28 盆にのせて持ってきて少女に与え、少女はそれを母にわたした。
24407 41 6 29 ヨハネの弟子たちはこのことを聞き、その死体を引き取りにきて、墓に納めた。
24408 41 6 30 さて、使徒たちはイエスのもとに集まってきて、自分たちがしたことや教えたことを、みな報告した。
24409 41 6 31 するとイエスは彼らに言われた、「さあ、あなたがたは、人を避けて寂しい所へ行って、しばらく休むがよい」。それは、出入りする人が多くて、食事をする暇もなかったからである。
24410 41 6 32 そこで彼らは人を避け、舟に乗って寂しい所へ行った。
24411 41 6 33 ところが、多くの人々は彼らが出かけて行くのを見、それと気づいて、方々の町々からそこへ、一せいに駆けつけ、彼らより先に着いた。
24412 41 6 34 イエスは舟から上がって大ぜいの群衆をごらんになり、飼う者のない羊のようなその有様を深くあわれんで、いろいろと教えはじめられた。
24413 41 6 35 ところが、はや時もおそくなったので、弟子たちはイエスのもとにきて言った、「ここは寂しい所でもあり、もう時もおそくなりました。
24414 41 6 36 みんなを解散させ、めいめいで何か食べる物を買いに、まわりの部落や村々へ行かせてください」。
24415 41 6 37 イエスは答えて言われた、「あなたがたの手で食物をやりなさい」。弟子たちは言った、「わたしたちが二百デナリものパンを買ってきて、みんなに食べさせるのですか」。
24416 41 6 38 するとイエスは言われた、「パンは幾つあるか。見てきなさい」。彼らは確かめてきて、「五つあります。それに魚が二ひき」と言った。
24417 41 6 39 そこでイエスは、みんなを組々に分けて、青草の上にすわらせるように命じられた。
24418 41 6 40 人々は、あるいは百人ずつ、あるいは五十人ずつ、列をつくってすわった。
24419 41 6 41 それから、イエスは五つのパンと二ひきの魚とを手に取り、天を仰いでそれを祝福し、パンをさき、弟子たちにわたして配らせ、また、二ひきの魚もみんなにお分けになった。
24420 41 6 42 みんなの者は食べて満腹した。
24421 41 6 43 そこで、パンくずや魚の残りを集めると、十二のかごにいっぱいになった。
24422 41 6 44 パンを食べた者は男五千人であった。
24423 41 6 45 それからすぐ、イエスは自分で群衆を解散させておられる間に、しいて弟子たちを舟に乗り込ませ、向こう岸のベツサイダへ先におやりになった。
24424 41 6 46 そして群衆に別れてから、祈るために山へ退かれた。
24425 41 6 47 夕方になったとき、舟は海のまん中に出ており、イエスだけが陸地におられた。
24426 41 6 48 ところが逆風が吹いていたために、弟子たちがこぎ悩んでいるのをごらんになって、夜明けの四時ごろ、海の上を歩いて彼らに近づき、そのそばを通り過ぎようとされた。
24427 41 6 49 彼らはイエスが海の上を歩いておられるのを見て、幽霊だと思い、大声で叫んだ。
24428 41 6 50 みんなの者がそれを見て、おじ恐れたからである。しかし、イエスはすぐ彼らに声をかけ、「しっかりするのだ。わたしである。恐れることはない」と言われた。
24429 41 6 51 そして、彼らの舟に乗り込まれると、風はやんだ。彼らは心の中で、非常に驚いた。
24430 41 6 52 先のパンのことを悟らず、その心が鈍くなっていたからである。
24431 41 6 53 彼らは海を渡り、ゲネサレの地に着いて舟をつないだ。
24432 41 6 54 そして舟からあがると、人々はすぐイエスと知って、
24433 41 6 55 その地方をあまねく駆けめぐり、イエスがおられると聞けば、どこへでも病人を床にのせて運びはじめた。
24434 41 6 56 そして、村でも町でも部落でも、イエスがはいって行かれる所では、病人たちをその広場におき、せめてその上着のふさにでも、さわらせてやっていただきたいと、お願いした。そしてさわった者は皆いやされた。
24435 41 7 1 さて、パリサイ人と、ある律法学者たちとが、エルサレムからきて、イエスのもとに集まった。
24436 41 7 2 そして弟子たちのうちに、不浄な手、すなわち洗わない手で、パンを食べている者があるのを見た。
24437 41 7 3 もともと、パリサイ人をはじめユダヤ人はみな、昔の人の言伝えをかたく守って、念入りに手を洗ってからでないと、食事をしない。
24438 41 7 4 また市場から帰ったときには、身を清めてからでないと、食事をせず、なおそのほかにも、杯、鉢、銅器を洗うことなど、昔から受けついでかたく守っている事が、たくさんあった。
24439 41 7 5 そこで、パリサイ人と律法学者たちとは、イエスに尋ねた、「なぜ、あなたの弟子たちは、昔の人の言伝えに従って歩まないで、不浄な手でパンを食べるのですか」。
24440 41 7 6 イエスは言われた、「イザヤは、あなたがた偽善者について、こう書いているが、それは適切な預言である、『この民は、口さきではわたしを敬うが、その心はわたしから遠く離れている。
24441 41 7 7 人間のいましめを教として教え、無意味にわたしを拝んでいる』。
24442 41 7 8 あなたがたは、神のいましめをさしおいて、人間の言伝えを固執している」。
24443 41 7 9 また、言われた、「あなたがたは、自分たちの言伝えを守るために、よくも神のいましめを捨てたものだ。
24444 41 7 10 モーセは言ったではないか、『父と母とを敬え』、また『父または母をののしる者は、必ず死に定められる』と。
24445 41 7 11 それだのに、あなたがたは、もし人が父または母にむかって、あなたに差上げるはずのこのものはコルバン、すなわち、供え物ですと言えば、それでよいとして、
24446 41 7 12 その人は父母に対して、もう何もしないで済むのだと言っている。
24447 41 7 13 こうしてあなたがたは、自分たちが受けついだ言伝えによって、神の言を無にしている。また、このような事をしばしばおこなっている」。
24448 41 7 14 それから、イエスは再び群衆を呼び寄せて言われた、「あなたがたはみんな、わたしの言うことを聞いて悟るがよい。
24449 41 7 15 すべて外から人の中にはいって、人をけがしうるものはない。かえって、人の中から出てくるものが、人をけがすのである。〔
24450 41 7 16 聞く耳のある者は聞くがよい〕」。
24451 41 7 17 イエスが群衆を離れて家にはいられると、弟子たちはこの譬について尋ねた。
24452 41 7 18 すると、言われた、「あなたがたも、そんなに鈍いのか。すべて、外から人の中にはいって来るものは、人を汚し得ないことが、わからないのか。
24453 41 7 19 それは人の心の中にはいるのではなく、腹の中にはいり、そして、外に出て行くだけである」。イエスはこのように、どんな食物でもきよいものとされた。
24454 41 7 20 さらに言われた、「人から出て来るもの、それが人をけがすのである。
24455 41 7 21 すなわち内部から、人の心の中から、悪い思いが出て来る。不品行、盗み、殺人、
24456 41 7 22 姦淫、貪欲、邪悪、欺き、好色、妬み、誹り、高慢、愚痴。
24457 41 7 23 これらの悪はすべて内部から出てきて、人をけがすのである」。
24458 41 7 24 さて、イエスは、そこを立ち去って、ツロの地方に行かれた。そして、だれにも知れないように、家の中にはいられたが、隠れていることができなかった。
24459 41 7 25 そして、けがれた霊につかれた幼い娘をもつ女が、イエスのことをすぐ聞きつけてきて、その足もとにひれ伏した。
24460 41 7 26 この女はギリシヤ人で、スロ・フェニキヤの生れであった。そして、娘から悪霊を追い出してくださいとお願いした。
24461 41 7 27 イエスは女に言われた、「まず子供たちに十分食べさすべきである。子供たちのパンを取って小犬に投げてやるのは、よろしくない」。
24462 41 7 28 すると、女は答えて言った、「主よ、お言葉どおりです。でも、食卓の下にいる小犬も、子供たちのパンくずは、いただきます」。
24463 41 7 29 そこでイエスは言われた、「その言葉で、じゅうぶんである。お帰りなさい。悪霊は娘から出てしまった」。
24464 41 7 30 そこで、女が家に帰ってみると、その子は床の上に寝ており、悪霊は出てしまっていた。
24465 41 7 31 それから、イエスはまたツロの地方を去り、シドンを経てデカポリス地方を通りぬけ、ガリラヤの海べにこられた。
24466 41 7 32 すると人々は、耳が聞えず口のきけない人を、みもとに連れてきて、手を置いてやっていただきたいとお願いした。
24467 41 7 33 そこで、イエスは彼ひとりを群衆の中から連れ出し、その両耳に指をさし入れ、それから、つばきでその舌を潤し、
24468 41 7 34 天を仰いでため息をつき、その人に「エパタ」と言われた。これは「開けよ」という意味である。
24469 41 7 35 すると彼の耳が開け、その舌のもつれもすぐ解けて、はっきりと話すようになった。
24470 41 7 36 イエスは、この事をだれにも言ってはならぬと、人々に口止めをされたが、口止めをすればするほど、かえって、ますます言いひろめた。
24471 41 7 37 彼らは、ひとかたならず驚いて言った、「このかたのなさった事は、何もかも、すばらしい。耳の聞えない者を聞えるようにしてやり、口のきけない者をきけるようにしておやりになった」。
24472 41 8 1 そのころ、また大ぜいの群衆が集まっていたが、何も食べるものがなかったので、イエスは弟子たちを呼び寄せて言われた、
24473 41 8 2 「この群衆がかわいそうである。もう三日間もわたしと一緒にいるのに、何も食べるものがない。
24474 41 8 3 もし、彼らを空腹のまま家に帰らせるなら、途中で弱り切ってしまうであろう。それに、なかには遠くからきている者もある」。
24475 41 8 4 弟子たちは答えた、「こんな荒野で、どこからパンを手に入れて、これらの人々にじゅうぶん食べさせることができましょうか」。
24476 41 8 5 イエスが弟子たちに、「パンはいくつあるか」と尋ねられると、「七つあります」と答えた。
24477 41 8 6 そこでイエスは群衆に地にすわるように命じられた。そして七つのパンを取り、感謝してこれをさき、人々に配るように弟子たちに渡されると、弟子たちはそれを群衆に配った。
24478 41 8 7 また小さい魚が少しばかりあったので、祝福して、それをも人々に配るようにと言われた。
24479 41 8 8 彼らは食べて満腹した。そして残ったパンくずを集めると、七かごになった。
24480 41 8 9 人々の数はおよそ四千人であった。それからイエスは彼らを解散させ、
24481 41 8 10 すぐ弟子たちと共に舟に乗って、ダルマヌタの地方へ行かれた。
24482 41 8 11 パリサイ人たちが出てきて、イエスを試みようとして議論をしかけ、天からのしるしを求めた。
24483 41 8 12 イエスは、心の中で深く嘆息して言われた、「なぜ、今の時代はしるしを求めるのだろう。よく言い聞かせておくが、しるしは今の時代には決して与えられない」。
24484 41 8 13 そして、イエスは彼らをあとに残し、また舟に乗って向こう岸へ行かれた。
24485 41 8 14 弟子たちはパンを持って来るのを忘れていたので、舟の中にはパン一つしか持ち合わせがなかった。
24486 41 8 15 そのとき、イエスは彼らを戒めて、「パリサイ人のパン種とヘロデのパン種とを、よくよく警戒せよ」と言われた。
24487 41 8 16 弟子たちは、これは自分たちがパンを持っていないためであろうと、互に論じ合った。
24488 41 8 17 イエスはそれと知って、彼らに言われた、「なぜ、パンがないからだと論じ合っているのか。まだわからないのか、悟らないのか。あなたがたの心は鈍くなっているのか。
24489 41 8 18 目があっても見えないのか。耳があっても聞えないのか。まだ思い出さないのか。
24490 41 8 19 五つのパンをさいて五千人に分けたとき、拾い集めたパンくずは、幾つのかごになったか」。弟子たちは答えた、「十二かごです」。
24491 41 8 20 「七つのパンを四千人に分けたときには、パンくずを幾つのかごに拾い集めたか」。「七かごです」と答えた。
24492 41 8 21 そこでイエスは彼らに言われた、「まだ悟らないのか」。
24493 41 8 22 そのうちに、彼らはベツサイダに着いた。すると人々が、ひとりの盲人を連れてきて、さわってやっていただきたいとお願いした。
24494 41 8 23 イエスはこの盲人の手をとって、村の外に連れ出し、その両方の目につばきをつけ、両手を彼に当てて、「何か見えるか」と尋ねられた。
24495 41 8 24 すると彼は顔を上げて言った、「人が見えます。木のように見えます。歩いているようです」。
24496 41 8 25 それから、イエスが再び目の上に両手を当てられると、盲人は見つめているうちに、なおってきて、すべてのものがはっきりと見えだした。
24497 41 8 26 そこでイエスは、「村にはいってはいけない」と言って、彼を家に帰された。
24498 41 8 27 さて、イエスは弟子たちとピリポ・カイザリヤの村々へ出かけられたが、その途中で、弟子たちに尋ねて言われた、「人々は、わたしをだれと言っているか」。
24499 41 8 28 彼らは答えて言った、「バプテスマのヨハネだと、言っています。また、エリヤだと言い、また、預言者のひとりだと言っている者もあります」。
24500 41 8 29 そこでイエスは彼らに尋ねられた、「それでは、あなたがたはわたしをだれと言うか」。ペテロが答えて言った、「あなたこそキリストです」。
24501 41 8 30 するとイエスは、自分のことをだれにも言ってはいけないと、彼らを戒められた。
24502 41 8 31 それから、人の子は必ず多くの苦しみを受け、長老、祭司長、律法学者たちに捨てられ、また殺され、そして三日の後によみがえるべきことを、彼らに教えはじめ、
24503 41 8 32 しかもあからさまに、この事を話された。すると、ペテロはイエスをわきへ引き寄せて、いさめはじめたので、
24504 41 8 33 イエスは振り返って、弟子たちを見ながら、ペテロをしかって言われた、「サタンよ、引きさがれ。あなたは神のことを思わないで、人のことを思っている」。
24505 41 8 34 それから群衆を弟子たちと一緒に呼び寄せて、彼らに言われた、「だれでもわたしについてきたいと思うなら、自分を捨て、自分の十字架を負うて、わたしに従ってきなさい。
24506 41 8 35 自分の命を救おうと思う者はそれを失い、わたしのため、また福音のために、自分の命を失う者は、それを救うであろう。
24507 41 8 36 人が全世界をもうけても、自分の命を損したら、なんの得になろうか。
24508 41 8 37 また、人はどんな代価を払って、その命を買いもどすことができようか。
24509 41 8 38 邪悪で罪深いこの時代にあって、わたしとわたしの言葉とを恥じる者に対しては、人の子もまた、父の栄光のうちに聖なる御使たちと共に来るときに、その者を恥じるであろう」。
24510 41 9 1 また、彼らに言われた、「よく聞いておくがよい。神の国が力をもって来るのを見るまでは、決して死を味わわない者が、ここに立っている者の中にいる」。
24511 41 9 2 六日の後、イエスは、ただペテロ、ヤコブ、ヨハネだけを連れて、高い山に登られた。ところが、彼らの目の前でイエスの姿が変り、
24512 41 9 3 その衣は真白く輝き、どんな布さらしでも、それほどに白くすることはできないくらいになった。
24513 41 9 4 すると、エリヤがモーセと共に彼らに現れて、イエスと語り合っていた。
24514 41 9 5 ペテロはイエスにむかって言った、「先生、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。それで、わたしたちは小屋を三つ建てましょう。一つはあなたのために、一つはモーセのために、一つはエリヤのために」。
24515 41 9 6 そう言ったのは、みんなの者が非常に恐れていたので、ペテロは何を言ってよいか、わからなかったからである。
24516 41 9 7 すると、雲がわき起って彼らをおおった。そして、その雲の中から声があった、「これはわたしの愛する子である。これに聞け」。
24517 41 9 8 彼らは急いで見まわしたが、もはやだれも見えず、ただイエスだけが、自分たちと一緒におられた。
24518 41 9 9 一同が山を下って来るとき、イエスは「人の子が死人の中からよみがえるまでは、いま見たことをだれにも話してはならない」と、彼らに命じられた。
24519 41 9 10 彼らはこの言葉を心にとめ、死人の中からよみがえるとはどういうことかと、互に論じ合った。
24520 41 9 11 そしてイエスに尋ねた、「なぜ、律法学者たちは、エリヤが先に来るはずだと言っているのですか」。
24521 41 9 12 イエスは言われた、「確かに、エリヤが先にきて、万事を元どおりに改める。しかし、人の子について、彼が多くの苦しみを受け、かつ恥ずかしめられると、書いてあるのはなぜか。
24522 41 9 13 しかしあなたがたに言っておく、エリヤはすでにきたのだ。そして彼について書いてあるように、人々は自分かってに彼をあしらった」。
24523 41 9 14 さて、彼らがほかの弟子たちの所にきて見ると、大ぜいの群衆が弟子たちを取り囲み、そして律法学者たちが彼らと論じ合っていた。
24524 41 9 15 群衆はみな、すぐイエスを見つけて、非常に驚き、駆け寄ってきて、あいさつをした。
24525 41 9 16 イエスが彼らに、「あなたがたは彼らと何を論じているのか」と尋ねられると、
24526 41 9 17 群衆のひとりが答えた、「先生、おしの霊につかれているわたしのむすこを、こちらに連れて参りました。
24527 41 9 18 霊がこのむすこにとりつきますと、どこででも彼を引き倒し、それから彼はあわを吹き、歯をくいしばり、からだをこわばらせてしまいます。それでお弟子たちに、この霊を追い出してくださるように願いましたが、できませんでした」。
24528 41 9 19 イエスは答えて言われた、「ああ、なんという不信仰な時代であろう。いつまで、わたしはあなたがたと一緒におられようか。いつまで、あなたがたに我慢ができようか。その子をわたしの所に連れてきなさい」。
24529 41 9 20 そこで人々は、その子をみもとに連れてきた。霊がイエスを見るや否や、その子をひきつけさせたので、子は地に倒れ、あわを吹きながらころげまわった。
24530 41 9 21 そこで、イエスが父親に「いつごろから、こんなになったのか」と尋ねられると、父親は答えた、「幼い時からです。
24531 41 9 22 霊はたびたび、この子を火の中、水の中に投げ入れて、殺そうとしました。しかしできますれば、わたしどもをあわれんでお助けください」。
24532 41 9 23 イエスは彼に言われた、「もしできれば、と言うのか。信ずる者には、どんな事でもできる」。
24533 41 9 24 その子の父親はすぐ叫んで言った、「信じます。不信仰なわたしを、お助けください」。
24534 41 9 25 イエスは群衆が駆け寄って来るのをごらんになって、けがれた霊をしかって言われた、「おしとつんぼの霊よ、わたしがおまえに命じる。この子から出て行け。二度と、はいって来るな」。
24535 41 9 26 すると霊は叫び声をあげ、激しく引きつけさせて出て行った。その子は死人のようになったので、多くの人は、死んだのだと言った。
24536 41 9 27 しかし、イエスが手を取って起されると、その子は立ち上がった。
24537 41 9 28 家にはいられたとき、弟子たちはひそかにお尋ねした、「わたしたちは、どうして霊を追い出せなかったのですか」。
24538 41 9 29 すると、イエスは言われた、「このたぐいは、祈によらなければ、どうしても追い出すことはできない」。
24539 41 9 30 それから彼らはそこを立ち去り、ガリラヤをとおって行ったが、イエスは人に気づかれるのを好まれなかった。
24540 41 9 31 それは、イエスが弟子たちに教えて、「人の子は人々の手にわたされ、彼らに殺され、殺されてから三日の後によみがえるであろう」と言っておられたからである。
24541 41 9 32 しかし、彼らはイエスの言われたことを悟らず、また尋ねるのを恐れていた。
24542 41 9 33 それから彼らはカペナウムにきた。そして家におられるとき、イエスは弟子たちに尋ねられた、「あなたがたは途中で何を論じていたのか」。
24543 41 9 34 彼らは黙っていた。それは途中で、だれが一ばん偉いかと、互に論じ合っていたからである。
24544 41 9 35 そこで、イエスはすわって十二弟子を呼び、そして言われた、「だれでも一ばん先になろうと思うならば、一ばんあとになり、みんなに仕える者とならねばならない」。
24545 41 9 36 そして、ひとりの幼な子をとりあげて、彼らのまん中に立たせ、それを抱いて言われた。
24546 41 9 37 「だれでも、このような幼な子のひとりを、わたしの名のゆえに受けいれる者は、わたしを受けいれるのである。そして、わたしを受けいれる者は、わたしを受けいれるのではなく、わたしをおつかわしになったかたを受けいれるのである」。
24547 41 9 38 ヨハネがイエスに言った、「先生、わたしたちについてこない者が、あなたの名を使って悪霊を追い出しているのを見ましたが、その人はわたしたちについてこなかったので、やめさせました」。
24548 41 9 39 イエスは言われた、「やめさせないがよい。だれでもわたしの名で力あるわざを行いながら、すぐそのあとで、わたしをそしることはできない。
24549 41 9 40 わたしたちに反対しない者は、わたしたちの味方である。
24550 41 9 41 だれでも、キリストについている者だというので、あなたがたに水一杯でも飲ませてくれるものは、よく言っておくが、決してその報いからもれることはないであろう。
24551 41 9 42 また、わたしを信じるこれらの小さい者のひとりをつまずかせる者は、大きなひきうすを首にかけられて海に投げ込まれた方が、はるかによい。
24552 41 9 43 もし、あなたの片手が罪を犯させるなら、それを切り捨てなさい。両手がそろったままで地獄の消えない火の中に落ち込むよりは、かたわになって命に入る方がよい。〔
24553 41 9 44 地獄では、うじがつきず、火も消えることがない。〕
24554 41 9 45 もし、あなたの片足が罪を犯させるなら、それを切り捨てなさい。両足がそろったままで地獄に投げ入れられるよりは、片足で命に入る方がよい。〔
24555 41 9 46 地獄では、うじがつきず、火も消えることがない。〕
24556 41 9 47 もし、あなたの片目が罪を犯させるなら、それを抜き出しなさい。両眼がそろったままで地獄に投げ入れられるよりは、片目になって神の国に入る方がよい。
24557 41 9 48 地獄では、うじがつきず、火も消えることがない。
24558 41 9 49 人はすべて火で塩づけられねばならない。
24559 41 9 50 塩はよいものである。しかし、もしその塩の味がぬけたら、何によってその味が取りもどされようか。あなたがた自身の内に塩を持ちなさい。そして、互に和らぎなさい」。
24560 41 10 1 それから、イエスはそこを去って、ユダヤの地方とヨルダンの向こう側へ行かれたが、群衆がまた寄り集まったので、いつものように、また教えておられた。
24561 41 10 2 そのとき、パリサイ人たちが近づいてきて、イエスを試みようとして質問した、「夫はその妻を出しても差しつかえないでしょうか」。
24562 41 10 3 イエスは答えて言われた、「モーセはあなたがたになんと命じたか」。
24563 41 10 4 彼らは言った、「モーセは、離縁状を書いて妻を出すことを許しました」。
24564 41 10 5 そこでイエスは言われた、「モーセはあなたがたの心が、かたくななので、あなたがたのためにこの定めを書いたのである。
24565 41 10 6 しかし、天地創造の初めから、『神は人を男と女とに造られた。
24566 41 10 7 それゆえに、人はその父母を離れ、
24567 41 10 8 ふたりの者は一体となるべきである』。彼らはもはや、ふたりではなく一体である。
24568 41 10 9 だから、神が合わせられたものを、人は離してはならない」。
24569 41 10 10 家にはいってから、弟子たちはまたこのことについて尋ねた。
24570 41 10 11 そこで、イエスは言われた、「だれでも、自分の妻を出して他の女をめとる者は、その妻に対して姦淫を行うのである。
24571 41 10 12 また妻が、その夫と別れて他の男にとつぐならば、姦淫を行うのである」。
24572 41 10 13 イエスにさわっていただくために、人々が幼な子らをみもとに連れてきた。ところが、弟子たちは彼らをたしなめた。
24573 41 10 14 それを見てイエスは憤り、彼らに言われた、「幼な子らをわたしの所に来るままにしておきなさい。止めてはならない。神の国はこのような者の国である。
24574 41 10 15 よく聞いておくがよい。だれでも幼な子のように神の国を受けいれる者でなければ、そこにはいることは決してできない」。
24575 41 10 16 そして彼らを抱き、手をその上において祝福された。
24576 41 10 17 イエスが道に出て行かれると、ひとりの人が走り寄り、みまえにひざまずいて尋ねた、「よき師よ、永遠の生命を受けるために、何をしたらよいでしょうか」。
24577 41 10 18 イエスは言われた、「なぜわたしをよき者と言うのか。神ひとりのほかによい者はいない。
24578 41 10 19 いましめはあなたの知っているとおりである。『殺すな、姦淫するな、盗むな、偽証を立てるな。欺き取るな。父と母とを敬え』」。
24579 41 10 20 すると、彼は言った、「先生、それらの事はみな、小さい時から守っております」。
24580 41 10 21 イエスは彼に目をとめ、いつくしんで言われた、「あなたに足りないことが一つある。帰って、持っているものをみな売り払って、貧しい人々に施しなさい。そうすれば、天に宝を持つようになろう。そして、わたしに従ってきなさい」。
24581 41 10 22 すると、彼はこの言葉を聞いて、顔を曇らせ、悲しみながら立ち去った。たくさんの資産を持っていたからである。
24582 41 10 23 それから、イエスは見まわして、弟子たちに言われた、「財産のある者が神の国にはいるのは、なんとむずかしいことであろう」。
24583 41 10 24 弟子たちはこの言葉に驚き怪しんだ。イエスは更に言われた、「子たちよ、神の国にはいるのは、なんとむずかしいことであろう。
24584 41 10 25 富んでいる者が神の国にはいるよりは、らくだが針の穴を通る方が、もっとやさしい」。
24585 41 10 26 すると彼らはますます驚いて、互に言った、「それでは、だれが救われることができるのだろう」。
24586 41 10 27 イエスは彼らを見つめて言われた、「人にはできないが、神にはできる。神はなんでもできるからである」。
24587 41 10 28 ペテロがイエスに言い出した、「ごらんなさい、わたしたちはいっさいを捨てて、あなたに従って参りました」。
24588 41 10 29 イエスは言われた、「よく聞いておくがよい。だれでもわたしのために、また福音のために、家、兄弟、姉妹、母、父、子、もしくは畑を捨てた者は、
24589 41 10 30 必ずその百倍を受ける。すなわち、今この時代では家、兄弟、姉妹、母、子および畑を迫害と共に受け、また、きたるべき世では永遠の生命を受ける。
24590 41 10 31 しかし、多くの先の者はあとになり、あとの者は先になるであろう」。
24591 41 10 32 さて、一同はエルサレムへ上る途上にあったが、イエスが先頭に立って行かれたので、彼らは驚き怪しみ、従う者たちは恐れた。するとイエスはまた十二弟子を呼び寄せて、自分の身に起ろうとすることについて語りはじめられた、
24592 41 10 33 「見よ、わたしたちはエルサレムへ上って行くが、人の子は祭司長、律法学者たちの手に引きわたされる。そして彼らは死刑を宣告した上、彼を異邦人に引きわたすであろう。
24593 41 10 34 また彼をあざけり、つばきをかけ、むち打ち、ついに殺してしまう。そして彼は三日の後によみがえるであろう」。
24594 41 10 35 さて、ゼベダイの子のヤコブとヨハネとがイエスのもとにきて言った、「先生、わたしたちがお頼みすることは、なんでもかなえてくださるようにお願いします」。
24595 41 10 36 イエスは彼らに「何をしてほしいと、願うのか」と言われた。
24596 41 10 37 すると彼らは言った、「栄光をお受けになるとき、ひとりをあなたの右に、ひとりを左にすわるようにしてください」。
24597 41 10 38 イエスは言われた、「あなたがたは自分が何を求めているのか、わかっていない。あなたがたは、わたしが飲む杯を飲み、わたしが受けるバプテスマを受けることができるか」。
24598 41 10 39 彼らは「できます」と答えた。するとイエスは言われた、「あなたがたは、わたしが飲む杯を飲み、わたしが受けるバプテスマを受けるであろう。
24599 41 10 40 しかし、わたしの右、左にすわらせることは、わたしのすることではなく、ただ備えられている人々だけに許されることである」。
24600 41 10 41 十人の者はこれを聞いて、ヤコブとヨハネとのことで憤慨し出した。
24601 41 10 42 そこで、イエスは彼らを呼び寄せて言われた、「あなたがたの知っているとおり、異邦人の支配者と見られている人々は、その民を治め、また偉い人たちは、その民の上に権力をふるっている。
24602 41 10 43 しかし、あなたがたの間では、そうであってはならない。かえって、あなたがたの間で偉くなりたいと思う者は、仕える人となり、
24603 41 10 44 あなたがたの間でかしらになりたいと思う者は、すべての人の僕とならねばならない。
24604 41 10 45 人の子がきたのも、仕えられるためではなく、仕えるためであり、また多くの人のあがないとして、自分の命を与えるためである」。
24605 41 10 46 それから、彼らはエリコにきた。そして、イエスが弟子たちや大ぜいの群衆と共にエリコから出かけられたとき、テマイの子、バルテマイという盲人のこじきが、道ばたにすわっていた。
24606 41 10 47 ところが、ナザレのイエスだと聞いて、彼は「ダビデの子イエスよ、わたしをあわれんでください」と叫び出した。
24607 41 10 48 多くの人々は彼をしかって黙らせようとしたが、彼はますます激しく叫びつづけた、「ダビデの子イエスよ、わたしをあわれんでください」。
24608 41 10 49 イエスは立ちどまって「彼を呼べ」と命じられた。そこで、人々はその盲人を呼んで言った、「喜べ、立て、おまえを呼んでおられる」。
24609 41 10 50 そこで彼は上着を脱ぎ捨て、踊りあがってイエスのもとにきた。
24610 41 10 51 イエスは彼にむかって言われた、「わたしに何をしてほしいのか」。その盲人は言った、「先生、見えるようになることです」。
24611 41 10 52 そこでイエスは言われた、「行け、あなたの信仰があなたを救った」。すると彼は、たちまち見えるようになり、イエスに従って行った。
24612 41 11 1 さて、彼らがエルサレムに近づき、オリブの山に沿ったベテパゲ、ベタニヤの附近にきた時、イエスはふたりの弟子をつかわして言われた、
24613 41 11 2 「むこうの村へ行きなさい。そこにはいるとすぐ、まだだれも乗ったことのないろばの子が、つないであるのを見るであろう。それを解いて引いてきなさい。
24614 41 11 3 もし、だれかがあなたがたに、なぜそんな事をするのかと言ったなら、主がお入り用なのです。またすぐ、ここへ返してくださいますと、言いなさい」。
24615 41 11 4 そこで、彼らは出かけて行き、そして表通りの戸口に、ろばの子がつないであるのを見たので、それを解いた。
24616 41 11 5 すると、そこに立っていた人々が言った、「そのろばの子を解いて、どうするのか」。
24617 41 11 6 弟子たちは、イエスが言われたとおり彼らに話したので、ゆるしてくれた。
24618 41 11 7 そこで、弟子たちは、そのろばの子をイエスのところに引いてきて、自分たちの上着をそれに投げかけると、イエスはその上にお乗りになった。
24619 41 11 8 すると多くの人々は自分たちの上着を道に敷き、また他の人々は葉のついた枝を野原から切ってきて敷いた。
24620 41 11 9 そして、前に行く者も、あとに従う者も共に叫びつづけた、「ホサナ、主の御名によってきたる者に、祝福あれ。
24621 41 11 10 今きたる、われらの父ダビデの国に、祝福あれ。いと高き所に、ホサナ」。
24622 41 11 11 こうしてイエスはエルサレムに着き、宮にはいられた。そして、すべてのものを見まわった後、もはや時もおそくなっていたので、十二弟子と共にベタニヤに出て行かれた。
24623 41 11 12 翌日、彼らがベタニヤから出かけてきたとき、イエスは空腹をおぼえられた。
24624 41 11 13 そして、葉の茂ったいちじくの木を遠くからごらんになって、その木に何かありはしないかと近寄られたが、葉のほかは何も見当らなかった。いちじくの季節でなかったからである。
24625 41 11 14 そこで、イエスはその木にむかって、「今から後いつまでも、おまえの実を食べる者がないように」と言われた。弟子たちはこれを聞いていた。
24626 41 11 15 それから、彼らはエルサレムにきた。イエスは宮に入り、宮の庭で売り買いしていた人々を追い出しはじめ、両替人の台や、はとを売る者の腰掛をくつがえし、
24627 41 11 16 また器ものを持って宮の庭を通り抜けるのをお許しにならなかった。
24628 41 11 17 そして、彼らに教えて言われた、「『わたしの家は、すべての国民の祈の家ととなえらるべきである』と書いてあるではないか。それだのに、あなたがたはそれを強盗の巣にしてしまった」。
24629 41 11 18 祭司長、律法学者たちはこれを聞いて、どうかしてイエスを殺そうと計った。彼らは、群衆がみなその教に感動していたので、イエスを恐れていたからである。
24630 41 11 19 夕方になると、イエスと弟子たちとは、いつものように都の外に出て行った。
24631 41 11 20 朝はやく道をとおっていると、彼らは先のいちじくが根元から枯れているのを見た。
24632 41 11 21 そこで、ペテロは思い出してイエスに言った、「先生、ごらんなさい。あなたがのろわれたいちじくが、枯れています」。
24633 41 11 22 イエスは答えて言われた、「神を信じなさい。
24634 41 11 23 よく聞いておくがよい。だれでもこの山に、動き出して、海の中にはいれと言い、その言ったことは必ず成ると、心に疑わないで信じるなら、そのとおりに成るであろう。
24635 41 11 24 そこで、あなたがたに言うが、なんでも祈り求めることは、すでにかなえられたと信じなさい。そうすれば、そのとおりになるであろう。
24636 41 11 25 また立って祈るとき、だれかに対して、何か恨み事があるならば、ゆるしてやりなさい。そうすれば、天にいますあなたがたの父も、あなたがたのあやまちを、ゆるしてくださるであろう。〔
24637 41 11 26 もしゆるさないならば、天にいますあなたがたの父も、あなたがたのあやまちを、ゆるしてくださらないであろう〕」。
24638 41 11 27 彼らはまたエルサレムにきた。そして、イエスが宮の内を歩いておられると、祭司長、律法学者、長老たちが、みもとにきて言った、
24639 41 11 28 「何の権威によってこれらの事をするのですか。だれが、そうする権威を授けたのですか」。
24640 41 11 29 そこで、イエスは彼らに言われた、「一つだけ尋ねよう。それに答えてほしい。そうしたら、何の権威によって、わたしがこれらの事をするのか、あなたがたに言おう。
24641 41 11 30 ヨハネのバプテスマは天からであったか、人からであったか、答えなさい」。
24642 41 11 31 すると、彼らは互に論じて言った、「もし天からだと言えば、では、なぜ彼を信じなかったのか、とイエスは言うだろう。
24643 41 11 32 しかし、人からだと言えば……」。彼らは群衆を恐れていた。人々が皆、ヨハネを預言者だとほんとうに思っていたからである。
24644 41 11 33 それで彼らは「わたしたちにはわかりません」と答えた。するとイエスは言われた、「わたしも何の権威によってこれらの事をするのか、あなたがたに言うまい」。
24645 41 12 1 そこでイエスは譬で彼らに語り出された、「ある人がぶどう園を造り、垣をめぐらし、また酒ぶねの穴を掘り、やぐらを立て、それを農夫たちに貸して、旅に出かけた。
24646 41 12 2 季節になったので、農夫たちのところへ、ひとりの僕を送って、ぶどう園の収穫の分け前を取り立てさせようとした。
24647 41 12 3 すると、彼らはその僕をつかまえて、袋だたきにし、から手で帰らせた。
24648 41 12 4 また他の僕を送ったが、その頭をなぐって侮辱した。
24649 41 12 5 そこでまた他の者を送ったが、今度はそれを殺してしまった。そのほか、なお大ぜいの者を送ったが、彼らを打ったり、殺したりした。
24650 41 12 6 ここに、もうひとりの者がいた。それは彼の愛子であった。自分の子は敬ってくれるだろうと思って、最後に彼をつかわした。
24651 41 12 7 すると、農夫たちは『あれはあと取りだ。さあ、これを殺してしまおう。そうしたら、その財産はわれわれのものになるのだ』と話し合い、
24652 41 12 8 彼をつかまえて殺し、ぶどう園の外に投げ捨てた。
24653 41 12 9 このぶどう園の主人は、どうするだろうか。彼は出てきて、農夫たちを殺し、ぶどう園を他の人々に与えるであろう。
24654 41 12 10 あなたがたは、この聖書の句を読んだことがないのか。『家造りらの捨てた石が隅のかしら石になった。
24655 41 12 11 これは主がなされたことで、わたしたちの目には不思議に見える』」。
24656 41 12 12 彼らはいまの譬が、自分たちに当てて語られたことを悟ったので、イエスを捕えようとしたが、群衆を恐れた。そしてイエスをそこに残して立ち去った。
24657 41 12 13 さて、人々はパリサイ人やヘロデ党の者を数人、イエスのもとにつかわして、その言葉じりを捕えようとした。
24658 41 12 14 彼らはきてイエスに言った、「先生、わたしたちはあなたが真実なかたで、だれをも、はばかられないことを知っています。あなたは人に分け隔てをなさらないで、真理に基いて神の道を教えてくださいます。ところで、カイザルに税金を納めてよいでしょうか、いけないでしょうか。納めるべきでしょうか、納めてはならないのでしょうか」。
24659 41 12 15 イエスは彼らの偽善を見抜いて言われた、「なぜわたしをためそうとするのか。デナリを持ってきて見せなさい」。
24660 41 12 16 彼らはそれを持ってきた。そこでイエスは言われた、「これは、だれの肖像、だれの記号か」。彼らは「カイザルのです」と答えた。
24661 41 12 17 するとイエスは言われた、「カイザルのものはカイザルに、神のものは神に返しなさい」。彼らはイエスに驚嘆した。
24662 41 12 18 復活ということはないと主張していたサドカイ人たちが、イエスのもとにきて質問した、
24663 41 12 19 「先生、モーセは、わたしたちのためにこう書いています、『もし、ある人の兄が死んで、その残された妻に、子がない場合には、弟はこの女をめとって、兄のために子をもうけねばならない』。
24664 41 12 20 ここに、七人の兄弟がいました。長男は妻をめとりましたが、子がなくて死に、
24665 41 12 21 次男がその女をめとって、また子をもうけずに死に、三男も同様でした。
24666 41 12 22 こうして、七人ともみな子孫を残しませんでした。最後にその女も死にました。
24667 41 12 23 復活のとき、彼らが皆よみがえった場合、この女はだれの妻なのでしょうか。七人とも彼女を妻にしたのですが」。
24668 41 12 24 イエスは言われた、「あなたがたがそんな思い違いをしているのは、聖書も神の力も知らないからではないか。
24669 41 12 25 彼らが死人の中からよみがえるときには、めとったり、とついだりすることはない。彼らは天にいる御使のようなものである。
24670 41 12 26 死人がよみがえることについては、モーセの書の柴の篇で、神がモーセに仰せられた言葉を読んだことがないのか。『わたしはアブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である』とあるではないか。
24671 41 12 27 神は死んだ者の神ではなく、生きている者の神である。あなたがたは非常な思い違いをしている」。
24672 41 12 28 ひとりの律法学者がきて、彼らが互に論じ合っているのを聞き、またイエスが巧みに答えられたのを認めて、イエスに質問した、「すべてのいましめの中で、どれが第一のものですか」。
24673 41 12 29 イエスは答えられた、「第一のいましめはこれである、『イスラエルよ、聞け。主なるわたしたちの神は、ただひとりの主である。
24674 41 12 30 心をつくし、精神をつくし、思いをつくし、力をつくして、主なるあなたの神を愛せよ』。
24675 41 12 31 第二はこれである、『自分を愛するようにあなたの隣り人を愛せよ』。これより大事ないましめは、ほかにない」。
24676 41 12 32 そこで、この律法学者はイエスに言った、「先生、仰せのとおりです、『神はひとりであって、そのほかに神はない』と言われたのは、ほんとうです。
24677 41 12 33 また『心をつくし、知恵をつくし、力をつくして神を愛し、また自分を愛するように隣り人を愛する』ということは、すべての燔祭や犠牲よりも、はるかに大事なことです」。
24678 41 12 34 イエスは、彼が適切な答をしたのを見て言われた、「あなたは神の国から遠くない」。それから後は、イエスにあえて問う者はなかった。
24679 41 12 35 イエスが宮で教えておられたとき、こう言われた、「律法学者たちは、どうしてキリストをダビデの子だと言うのか。
24680 41 12 36 ダビデ自身が聖霊に感じて言った、『主はわが主に仰せになった、あなたの敵をあなたの足もとに置くときまでは、わたしの右に座していなさい』。
24681 41 12 37 このように、ダビデ自身がキリストを主と呼んでいる。それなら、どうしてキリストはダビデの子であろうか」。
24682 41 12 38 イエスはその教の中で言われた、「律法学者に気をつけなさい。彼らは長い衣を着て歩くことや、広場であいさつされることや、
24683 41 12 39 また会堂の上席、宴会の上座を好んでいる。
24684 41 12 40 また、やもめたちの家を食い倒し、見えのために長い祈をする。彼らはもっときびしいさばきを受けるであろう」。
24685 41 12 41 イエスは、さいせん箱にむかってすわり、群衆がその箱に金を投げ入れる様子を見ておられた。多くの金持は、たくさんの金を投げ入れていた。
24686 41 12 42 ところが、ひとりの貧しいやもめがきて、レプタ二つを入れた。それは一コドラントに当る。
24687 41 12 43 そこで、イエスは弟子たちを呼び寄せて言われた、「よく聞きなさい。あの貧しいやもめは、さいせん箱に投げ入れている人たちの中で、だれよりもたくさん入れたのだ。
24688 41 12 44 みんなの者はありあまる中から投げ入れたが、あの婦人はその乏しい中から、あらゆる持ち物、その生活費全部を入れたからである」。
24689 41 13 1 イエスが宮から出て行かれるとき、弟子のひとりが言った、「先生、ごらんなさい。なんという見事な石、なんという立派な建物でしょう」。
24690 41 13 2 イエスは言われた、「あなたは、これらの大きな建物をながめているのか。その石一つでもくずされないままで、他の石の上に残ることもなくなるであろう」。
24691 41 13 3 またオリブ山で、宮にむかってすわっておられると、ペテロ、ヤコブ、ヨハネ、アンデレが、ひそかにお尋ねした。
24692 41 13 4 「わたしたちにお話しください。いつ、そんなことが起るのでしょうか。またそんなことがことごとく成就するような場合には、どんな前兆がありますか」。
24693 41 13 5 そこで、イエスは話しはじめられた、「人に惑わされないように気をつけなさい。
24694 41 13 6 多くの者がわたしの名を名のって現れ、自分がそれだと言って、多くの人を惑わすであろう。
24695 41 13 7 また、戦争と戦争のうわさとを聞くときにも、あわてるな。それは起らねばならないが、まだ終りではない。
24696 41 13 8 民は民に、国は国に敵対して立ち上がるであろう。またあちこちに地震があり、またききんが起るであろう。これらは産みの苦しみの初めである。
24697 41 13 9 あなたがたは自分で気をつけていなさい。あなたがたは、わたしのために、衆議所に引きわたされ、会堂で打たれ、長官たちや王たちの前に立たされ、彼らに対してあかしをさせられるであろう。
24698 41 13 10 こうして、福音はまずすべての民に宣べ伝えられねばならない。
24699 41 13 11 そして、人々があなたがたを連れて行って引きわたすとき、何を言おうかと、前もって心配するな。その場合、自分に示されることを語るがよい。語る者はあなたがた自身ではなくて、聖霊である。
24700 41 13 12 また兄弟は兄弟を、父は子を殺すために渡し、子は両親に逆らって立ち、彼らを殺させるであろう。
24701 41 13 13 また、あなたがたはわたしの名のゆえに、すべての人に憎まれるであろう。しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われる。
24702 41 13 14 荒らす憎むべきものが、立ってはならぬ所に立つのを見たならば(読者よ、悟れ)、そのとき、ユダヤにいる人々は山へ逃げよ。
24703 41 13 15 屋上にいる者は、下におりるな。また家から物を取り出そうとして内にはいるな。
24704 41 13 16 畑にいる者は、上着を取りにあとへもどるな。
24705 41 13 17 その日には、身重の女と乳飲み子をもつ女とは、不幸である。
24706 41 13 18 この事が冬おこらぬように祈れ。
24707 41 13 19 その日には、神が万物を造られた創造の初めから現在に至るまで、かつてなく今後もないような患難が起るからである。
24708 41 13 20 もし主がその期間を縮めてくださらないなら、救われる者はひとりもないであろう。しかし、選ばれた選民のために、その期間を縮めてくださったのである。
24709 41 13 21 そのとき、だれかがあなたがたに『見よ、ここにキリストがいる』、『見よ、あそこにいる』と言っても、それを信じるな。
24710 41 13 22 にせキリストたちや、にせ預言者たちが起って、しるしと奇跡とを行い、できれば、選民をも惑わそうとするであろう。
24711 41 13 23 だから、気をつけていなさい。いっさいの事を、あなたがたに前もって言っておく。
24712 41 13 24 その日には、この患難の後、日は暗くなり、月はその光を放つことをやめ、
24713 41 13 25 星は空から落ち、天体は揺り動かされるであろう。
24714 41 13 26 そのとき、大いなる力と栄光とをもって、人の子が雲に乗って来るのを、人々は見るであろう。
24715 41 13 27 そのとき、彼は御使たちをつかわして、地のはてから天のはてまで、四方からその選民を呼び集めるであろう。
24716 41 13 28 いちじくの木からこの譬を学びなさい。その枝が柔らかになり、葉が出るようになると、夏の近いことがわかる。
24717 41 13 29 そのように、これらの事が起るのを見たならば、人の子が戸口まで近づいていると知りなさい。
24718 41 13 30 よく聞いておきなさい。これらの事が、ことごとく起るまでは、この時代は滅びることがない。
24719 41 13 31 天地は滅びるであろう。しかしわたしの言葉は滅びることがない。
24720 41 13 32 その日、その時は、だれも知らない。天にいる御使たちも、また子も知らない、ただ父だけが知っておられる。
24721 41 13 33 気をつけて、目をさましていなさい。その時がいつであるか、あなたがたにはわからないからである。
24722 41 13 34 それはちょうど、旅に立つ人が家を出るに当り、その僕たちに、それぞれ仕事を割り当てて責任をもたせ、門番には目をさましておれと、命じるようなものである。
24723 41 13 35 だから、目をさましていなさい。いつ、家の主人が帰って来るのか、夕方か、夜中か、にわとりの鳴くころか、明け方か、わからないからである。
24724 41 13 36 あるいは急に帰ってきて、あなたがたの眠っているところを見つけるかも知れない。
24725 41 13 37 目をさましていなさい。わたしがあなたがたに言うこの言葉は、すべての人々に言うのである」。
24726 41 14 1 さて、過越と除酵との祭の二日前になった。祭司長たちや律法学者たちは、策略をもってイエスを捕えたうえ、なんとかして殺そうと計っていた。
24727 41 14 2 彼らは、「祭の間はいけない。民衆が騒ぎを起すかも知れない」と言っていた。
24728 41 14 3 イエスがベタニヤで、らい病人シモンの家にいて、食卓についておられたとき、ひとりの女が、非常に高価で純粋なナルドの香油が入れてある石膏のつぼを持ってきて、それをこわし、香油をイエスの頭に注ぎかけた。
24729 41 14 4 すると、ある人々が憤って互に言った、「なんのために香油をこんなにむだにするのか。
24730 41 14 5 この香油を三百デナリ以上にでも売って、貧しい人たちに施すことができたのに」。そして女をきびしくとがめた。
24731 41 14 6 するとイエスは言われた、「するままにさせておきなさい。なぜ女を困らせるのか。わたしによい事をしてくれたのだ。
24732 41 14 7 貧しい人たちはいつもあなたがたと一緒にいるから、したいときにはいつでも、よい事をしてやれる。しかし、わたしはあなたがたといつも一緒にいるわけではない。
24733 41 14 8 この女はできる限りの事をしたのだ。すなわち、わたしのからだに油を注いで、あらかじめ葬りの用意をしてくれたのである。
24734 41 14 9 よく聞きなさい。全世界のどこででも、福音が宣べ伝えられる所では、この女のした事も記念として語られるであろう」。
24735 41 14 10 ときに、十二弟子のひとりイスカリオテのユダは、イエスを祭司長たちに引きわたそうとして、彼らの所へ行った。
24736 41 14 11 彼らはこれを聞いて喜び、金を与えることを約束した。そこでユダは、どうかしてイエスを引きわたそうと、機会をねらっていた。
24737 41 14 12 除酵祭の第一日、すなわち過越の小羊をほふる日に、弟子たちがイエスに尋ねた、「わたしたちは、過越の食事をなさる用意を、どこへ行ってしたらよいでしょうか」。
24738 41 14 13 そこで、イエスはふたりの弟子を使いに出して言われた、「市内に行くと、水がめを持っている男に出会うであろう。その人について行きなさい。
24739 41 14 14 そして、その人がはいって行く家の主人に言いなさい、『弟子たちと一緒に過越の食事をする座敷はどこか、と先生が言っておられます』。
24740 41 14 15 するとその主人は、席を整えて用意された二階の広間を見せてくれるから、そこにわたしたちのために用意をしなさい」。
24741 41 14 16 弟子たちは出かけて市内に行って見ると、イエスが言われたとおりであったので、過越の食事の用意をした。
24742 41 14 17 夕方になって、イエスは十二弟子と一緒にそこに行かれた。
24743 41 14 18 そして、一同が席について食事をしているとき言われた、「特にあなたがたに言っておくが、あなたがたの中のひとりで、わたしと一緒に食事をしている者が、わたしを裏切ろうとしている」。
24744 41 14 19 弟子たちは心配して、ひとりびとり「まさか、わたしではないでしょう」と言い出した。
24745 41 14 20 イエスは言われた、「十二人の中のひとりで、わたしと一緒に同じ鉢にパンをひたしている者が、それである。
24746 41 14 21 たしかに人の子は、自分について書いてあるとおりに去って行く。しかし、人の子を裏切るその人は、わざわいである。その人は生れなかった方が、彼のためによかったであろう」。
24747 41 14 22 一同が食事をしているとき、イエスはパンを取り、祝福してこれをさき、弟子たちに与えて言われた、「取れ、これはわたしのからだである」。
24748 41 14 23 また杯を取り、感謝して彼らに与えられると、一同はその杯から飲んだ。
24749 41 14 24 イエスはまた言われた、「これは、多くの人のために流すわたしの契約の血である。
24750 41 14 25 あなたがたによく言っておく。神の国で新しく飲むその日までは、わたしは決して二度と、ぶどうの実から造ったものを飲むことをしない」。
24751 41 14 26 彼らは、さんびを歌った後、オリブ山へ出かけて行った。
24752 41 14 27 そのとき、イエスは弟子たちに言われた、「あなたがたは皆、わたしにつまずくであろう。『わたしは羊飼を打つ。そして、羊は散らされるであろう』と書いてあるからである。
24753 41 14 28 しかしわたしは、よみがえってから、あなたがたより先にガリラヤへ行くであろう」。
24754 41 14 29 するとペテロはイエスに言った、「たとい、みんなの者がつまずいても、わたしはつまずきません」。
24755 41 14 30 イエスは言われた、「あなたによく言っておく。きょう、今夜、にわとりが二度鳴く前に、そう言うあなたが、三度わたしを知らないと言うだろう」。
24756 41 14 31 ペテロは力をこめて言った、「たといあなたと一緒に死なねばならなくなっても、あなたを知らないなどとは、決して申しません」。みんなの者もまた、同じようなことを言った。
24757 41 14 32 さて、一同はゲツセマネという所にきた。そしてイエスは弟子たちに言われた、「わたしが祈っている間、ここにすわっていなさい」。
24758 41 14 33 そしてペテロ、ヤコブ、ヨハネを一緒に連れて行かれたが、恐れおののき、また悩みはじめて、彼らに言われた、
24759 41 14 34 「わたしは悲しみのあまり死ぬほどである。ここに待っていて、目をさましていなさい」。
24760 41 14 35 そして少し進んで行き、地にひれ伏し、もしできることなら、この時を過ぎ去らせてくださるようにと祈りつづけ、そして言われた、
24761 41 14 36 「アバ、父よ、あなたには、できないことはありません。どうか、この杯をわたしから取りのけてください。しかし、わたしの思いではなく、みこころのままになさってください」。
24762 41 14 37 それから、きてごらんになると、弟子たちが眠っていたので、ペテロに言われた、「シモンよ、眠っているのか、ひと時も目をさましていることができなかったのか。
24763 41 14 38 誘惑に陥らないように、目をさまして祈っていなさい。心は熱しているが、肉体が弱いのである」。
24764 41 14 39 また離れて行って同じ言葉で祈られた。
24765 41 14 40 またきてごらんになると、彼らはまだ眠っていた。その目が重くなっていたのである。そして、彼らはどうお答えしてよいか、わからなかった。
24766 41 14 41 三度目にきて言われた、「まだ眠っているのか、休んでいるのか。もうそれでよかろう。時がきた。見よ、人の子は罪人らの手に渡されるのだ。
24767 41 14 42 立て、さあ行こう。見よ、わたしを裏切る者が近づいてきた」。
24768 41 14 43 そしてすぐ、イエスがまだ話しておられるうちに、十二弟子のひとりのユダが進みよってきた。また祭司長、律法学者、長老たちから送られた群衆も、剣と棒とを持って彼についてきた。
24769 41 14 44 イエスを裏切る者は、あらかじめ彼らに合図をしておいた、「わたしの接吻する者が、その人だ。その人をつかまえて、まちがいなく引ひっぱって行け」。
24770 41 14 45 彼は来るとすぐ、イエスに近寄り、「先生」と言って接吻した。
24771 41 14 46 人々はイエスに手をかけてつかまえた。
24772 41 14 47 すると、イエスのそばに立っていた者のひとりが、剣を抜いて大祭司の僕に切りかかり、その片耳を切り落した。
24773 41 14 48 イエスは彼らにむかって言われた、「あなたがたは強盗にむかうように、剣や棒を持ってわたしを捕えにきたのか。
24774 41 14 49 わたしは毎日あなたがたと一緒に宮にいて教えていたのに、わたしをつかまえはしなかった。しかし聖書の言葉は成就されねばならない」。
24775 41 14 50 弟子たちは皆イエスを見捨てて逃げ去った。
24776 41 14 51 ときに、ある若者が身に亜麻布をまとって、イエスのあとについて行ったが、人々が彼をつかまえようとしたので、
24777 41 14 52 その亜麻布を捨てて、裸で逃げて行った。
24778 41 14 53 それから、イエスを大祭司のところに連れて行くと、祭司長、長老、律法学者たちがみな集まってきた。
24779 41 14 54 ペテロは遠くからイエスについて行って、大祭司の中庭まではいり込み、その下役どもにまじってすわり、火にあたっていた。
24780 41 14 55 さて、祭司長たちと全議会とは、イエスを死刑にするために、イエスに不利な証拠を見つけようとしたが、得られなかった。
24781 41 14 56 多くの者がイエスに対して偽証を立てたが、その証言が合わなかったからである。
24782 41 14 57 ついに、ある人々が立ちあがり、イエスに対して偽証を立てて言った、
24783 41 14 58 「わたしたちはこの人が『わたしは手で造ったこの神殿を打ちこわし、三日の後に手で造られない別の神殿を建てるのだ』と言うのを聞きました」。
24784 41 14 59 しかし、このような証言も互に合わなかった。
24785 41 14 60 そこで大祭司が立ちあがって、まん中に進み、イエスに聞きただして言った、「何も答えないのか。これらの人々があなたに対して不利な証言を申し立てているが、どうなのか」。
24786 41 14 61 しかし、イエスは黙っていて、何もお答えにならなかった。大祭司は再び聞きただして言った、「あなたは、ほむべき者の子、キリストであるか」。
24787 41 14 62 イエスは言われた、「わたしがそれである。あなたがたは人の子が力ある者の右に座し、天の雲に乗って来るのを見るであろう」。
24788 41 14 63 すると、大祭司はその衣を引き裂いて言った、「どうして、これ以上、証人の必要があろう。
24789 41 14 64 あなたがたはこのけがし言を聞いた。あなたがたの意見はどうか」。すると、彼らは皆、イエスを死に当るものと断定した。
24790 41 14 65 そして、ある者はイエスにつばきをかけ、目隠しをし、こぶしでたたいて、「言いあててみよ」と言いはじめた。また下役どもはイエスを引きとって、手のひらでたたいた。
24791 41 14 66 ペテロは下で中庭にいたが、大祭司の女中のひとりがきて、
24792 41 14 67 ペテロが火にあたっているのを見ると、彼を見つめて、「あなたもあのナザレ人イエスと一緒だった」と言った。
24793 41 14 68 するとペテロはそれを打ち消して、「わたしは知らない。あなたの言うことがなんの事か、わからない」と言って、庭口の方に出て行った。
24794 41 14 69 ところが、先の女中が彼を見て、そばに立っていた人々に、またもや「この人はあの仲間のひとりです」と言いだした。
24795 41 14 70 ペテロは再びそれを打ち消した。しばらくして、そばに立っていた人たちがまたペテロに言った、「確かにあなたは彼らの仲間だ。あなたもガリラヤ人だから」。
24796 41 14 71 しかし、彼は、「あなたがたの話しているその人のことは何も知らない」と言い張って、激しく誓いはじめた。
24797 41 14 72 するとすぐ、にわとりが二度目に鳴いた。ペテロは、「にわとりが二度鳴く前に、三度わたしを知らないと言うであろう」と言われたイエスの言葉を思い出し、そして思いかえして泣きつづけた。
24798 41 15 1 夜が明けるとすぐ、祭司長たちは長老、律法学者たち、および全議会と協議をこらした末、イエスを縛って引き出し、ピラトに渡した。
24799 41 15 2 ピラトはイエスに尋ねた、「あなたがユダヤ人の王であるか」。イエスは、「そのとおりである」とお答えになった。
24800 41 15 3 そこで祭司長たちは、イエスのことをいろいろと訴えた。
24801 41 15 4 ピラトはもう一度イエスに尋ねた、「何も答えないのか。見よ、あなたに対してあんなにまで次々に訴えているではないか」。
24802 41 15 5 しかし、イエスはピラトが不思議に思うほどに、もう何もお答えにならなかった。
24803 41 15 6 さて、祭のたびごとに、ピラトは人々が願い出る囚人ひとりを、ゆるしてやることにしていた。
24804 41 15 7 ここに、暴動を起し人殺しをしてつながれていた暴徒の中に、バラバという者がいた。
24805 41 15 8 群衆が押しかけてきて、いつものとおりにしてほしいと要求しはじめたので、
24806 41 15 9 ピラトは彼らにむかって、「おまえたちはユダヤ人の王をゆるしてもらいたいのか」と言った。
24807 41 15 10 それは、祭司長たちがイエスを引きわたしたのは、ねたみのためであることが、ピラトにわかっていたからである。
24808 41 15 11 しかし祭司長たちは、バラバの方をゆるしてもらうように、群衆を煽動した。
24809 41 15 12 そこでピラトはまた彼らに言った、「それでは、おまえたちがユダヤ人の王と呼んでいるあの人は、どうしたらよいか」。
24810 41 15 13 彼らは、また叫んだ、「十字架につけよ」。
24811 41 15 14 ピラトは言った、「あの人は、いったい、どんな悪事をしたのか」。すると、彼らは一そう激しく叫んで、「十字架につけよ」と言った。
24812 41 15 15 それで、ピラトは群衆を満足させようと思って、バラバをゆるしてやり、イエスをむち打ったのち、十字架につけるために引きわたした。
24813 41 15 16 兵士たちはイエスを、邸宅、すなわち総督官邸の内に連れて行き、全部隊を呼び集めた。
24814 41 15 17 そしてイエスに紫の衣を着せ、いばらの冠を編んでかぶらせ、
24815 41 15 18 「ユダヤ人の王、ばんざい」と言って敬礼をしはじめた。
24816 41 15 19 また、葦の棒でその頭をたたき、つばきをかけ、ひざまずいて拝んだりした。
24817 41 15 20 こうして、イエスを嘲弄したあげく、紫の衣をはぎとり、元の上着を着せた。それから、彼らはイエスを十字架につけるために引き出した。
24818 41 15 21 そこへ、アレキサンデルとルポスとの父シモンというクレネ人が、郊外からきて通りかかったので、人々はイエスの十字架を無理に負わせた。
24819 41 15 22 そしてイエスをゴルゴタ、その意味は、されこうべ、という所に連れて行った。
24820 41 15 23 そしてイエスに、没薬をまぜたぶどう酒をさし出したが、お受けにならなかった。
24821 41 15 24 それから、イエスを十字架につけた。そしてくじを引いて、だれが何を取るかを定めたうえ、イエスの着物を分けた。
24822 41 15 25 イエスを十字架につけたのは、朝の九時ごろであった。
24823 41 15 26 イエスの罪状書きには「ユダヤ人の王」と、しるしてあった。
24824 41 15 27 また、イエスと共にふたりの強盗を、ひとりを右に、ひとりを左に、十字架につけた。〔
24825 41 15 28 こうして「彼は罪人たちのひとりに数えられた」と書いてある言葉が成就したのである。〕
24826 41 15 29 そこを通りかかった者たちは、頭を振りながら、イエスをののしって言った、「ああ、神殿を打ちこわして三日のうちに建てる者よ、
24827 41 15 30 十字架からおりてきて自分を救え」。
24828 41 15 31 祭司長たちも同じように、律法学者たちと一緒になって、かわるがわる嘲弄して言った、「他人を救ったが、自分自身を救うことができない。
24829 41 15 32 イスラエルの王キリスト、いま十字架からおりてみるがよい。それを見たら信じよう」。また、一緒に十字架につけられた者たちも、イエスをののしった。
24830 41 15 33 昼の十二時になると、全地は暗くなって、三時に及んだ。
24831 41 15 34 そして三時に、イエスは大声で、「エロイ、エロイ、ラマ、サバクタニ」と叫ばれた。それは「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」という意味である。
24832 41 15 35 すると、そばに立っていたある人々が、これを聞いて言った、「そら、エリヤを呼んでいる」。
24833 41 15 36 ひとりの人が走って行き、海綿に酢いぶどう酒を含ませて葦の棒につけ、イエスに飲ませようとして言った、「待て、エリヤが彼をおろしに来るかどうか、見ていよう」。
24834 41 15 37 イエスは声高く叫んで、ついに息をひきとられた。
24835 41 15 38 そのとき、神殿の幕が上から下まで真二つに裂けた。
24836 41 15 39 イエスにむかって立っていた百卒長は、このようにして息をひきとられたのを見て言った、「まことに、この人は神の子であった」。
24837 41 15 40 また、遠くの方から見ている女たちもいた。その中には、マグダラのマリヤ、小ヤコブとヨセとの母マリヤ、またサロメがいた。
24838 41 15 41 彼らはイエスがガリラヤにおられたとき、そのあとに従って仕えた女たちであった。なおそのほか、イエスと共にエルサレムに上ってきた多くの女たちもいた。
24839 41 15 42 さて、すでに夕がたになったが、その日は準備の日、すなわち安息日の前日であったので、
24840 41 15 43 アリマタヤのヨセフが大胆にもピラトの所へ行き、イエスのからだの引取りかたを願った。彼は地位の高い議員であって、彼自身、神の国を待ち望んでいる人であった。
24841 41 15 44 ピラトは、イエスがもはや死んでしまったのかと不審に思い、百卒長を呼んで、もう死んだのかと尋ねた。
24842 41 15 45 そして、百卒長から確かめた上、死体をヨセフに渡した。
24843 41 15 46 そこで、ヨセフは亜麻布を買い求め、イエスをとりおろして、その亜麻布に包み、岩を掘って造った墓に納め、墓の入口に石をころがしておいた。
24844 41 15 47 マグダラのマリヤとヨセの母マリヤとは、イエスが納められた場所を見とどけた。
24845 41 16 1 さて、安息日が終ったので、マグダラのマリヤとヤコブの母マリヤとサロメとが、行ってイエスに塗るために、香料を買い求めた。
24846 41 16 2 そして週の初めの日に、早朝、日の出のころ墓に行った。
24847 41 16 3 そして、彼らは「だれが、わたしたちのために、墓の入口から石をころがしてくれるのでしょうか」と話し合っていた。
24848 41 16 4 ところが、目をあげて見ると、石はすでにころがしてあった。この石は非常に大きかった。
24849 41 16 5 墓の中にはいると、右手に真白な長い衣を着た若者がすわっているのを見て、非常に驚いた。
24850 41 16 6 するとこの若者は言った、「驚くことはない。あなたがたは十字架につけられたナザレ人イエスを捜しているのであろうが、イエスはよみがえって、ここにはおられない。ごらんなさい、ここがお納めした場所である。
24851 41 16 7 今から弟子たちとペテロとの所へ行って、こう伝えなさい。イエスはあなたがたより先にガリラヤへ行かれる。かねて、あなたがたに言われたとおり、そこでお会いできるであろう、と」。
24852 41 16 8 女たちはおののき恐れながら、墓から出て逃げ去った。そして、人には何も言わなかった。恐ろしかったからである。
24853 41 16 9 週の初めの日の朝早く、イエスはよみがえって、まずマグダラのマリヤに御自身をあらわされた。イエスは以前に、この女から七つの悪霊を追い出されたことがある。
24854 41 16 10 マリヤは、イエスと一緒にいた人々が泣き悲しんでいる所に行って、それを知らせた。
24855 41 16 11 彼らは、イエスが生きておられる事と、彼女に御自身をあらわされた事とを聞いたが、信じなかった。
24856 41 16 12 この後、そのうちのふたりが、いなかの方へ歩いていると、イエスはちがった姿で御自身をあらわされた。
24857 41 16 13 このふたりも、ほかの人々の所に行って話したが、彼らはその話を信じなかった。
24858 41 16 14 その後、イエスは十一弟子が食卓についているところに現れ、彼らの不信仰と、心のかたくななことをお責めになった。彼らは、よみがえられたイエスを見た人々の言うことを、信じなかったからである。
24859 41 16 15 そして彼らに言われた、「全世界に出て行って、すべての造られたものに福音を宣べ伝えよ。
24860 41 16 16 信じてバプテスマを受ける者は救われる。しかし、不信仰の者は罪に定められる。
24861 41 16 17 信じる者には、このようなしるしが伴う。すなわち、彼らはわたしの名で悪霊を追い出し、新しい言葉を語り、
24862 41 16 18 へびをつかむであろう。また、毒を飲んでも、決して害を受けない。病人に手をおけば、いやされる」。
24863 41 16 19 主イエスは彼らに語り終ってから、天にあげられ、神の右にすわられた。
24864 41 16 20 弟子たちは出て行って、至る所で福音を宣べ伝えた。主も彼らと共に働き、御言に伴うしるしをもって、その確かなことをお示しになった。〕
24865 42 1 1 わたしたちの間に成就された出来事を、最初から親しく見た人々であって、
24866 42 1 2 御言に仕えた人々が伝えたとおり物語に書き連ねようと、多くの人が手を着けましたが、
24867 42 1 3 テオピロ閣下よ、わたしもすべての事を初めから詳しく調べていますので、ここに、それを順序正しく書きつづって、閣下に献じることにしました。
24868 42 1 4 すでにお聞きになっている事が確実であることを、これによって十分に知っていただきたいためであります。
24869 42 1 5 ユダヤの王ヘロデの世に、アビヤの組の祭司で名をザカリヤという者がいた。その妻はアロン家の娘のひとりで、名をエリサベツといった。
24870 42 1 6 ふたりとも神のみまえに正しい人であって、主の戒めと定めとを、みな落度なく行っていた。
24871 42 1 7 ところが、エリサベツは不妊の女であったため、彼らには子がなく、そしてふたりともすでに年老いていた。
24872 42 1 8 さてザカリヤは、その組が当番になり神のみまえに祭司の務をしていたとき、
24873 42 1 9 祭司職の慣例に従ってくじを引いたところ、主の聖所にはいって香をたくことになった。
24874 42 1 10 香をたいている間、多くの民衆はみな外で祈っていた。
24875 42 1 11 すると主の御使が現れて、香壇の右に立った。
24876 42 1 12 ザカリヤはこれを見て、おじ惑い、恐怖の念に襲われた。
24877 42 1 13 そこで御使が彼に言った、「恐れるな、ザカリヤよ、あなたの祈が聞きいれられたのだ。あなたの妻エリサベツは男の子を産むであろう。その子をヨハネと名づけなさい。
24878 42 1 14 彼はあなたに喜びと楽しみとをもたらし、多くの人々もその誕生を喜ぶであろう。
24879 42 1 15 彼は主のみまえに大いなる者となり、ぶどう酒や強い酒をいっさい飲まず、母の胎内にいる時からすでに聖霊に満たされており、
24880 42 1 16 そして、イスラエルの多くの子らを、主なる彼らの神に立ち帰らせるであろう。
24881 42 1 17 彼はエリヤの霊と力とをもって、みまえに先立って行き、父の心を子に向けさせ、逆らう者に義人の思いを持たせて、整えられた民を主に備えるであろう」。
24882 42 1 18 するとザカリヤは御使に言った、「どうしてそんな事が、わたしにわかるでしょうか。わたしは老人ですし、妻も年をとっています」。
24883 42 1 19 御使が答えて言った、「わたしは神のみまえに立つガブリエルであって、この喜ばしい知らせをあなたに語り伝えるために、つかわされたものである。
24884 42 1 20 時が来れば成就するわたしの言葉を信じなかったから、あなたはおしになり、この事の起る日まで、ものが言えなくなる」。
24885 42 1 21 民衆はザカリヤを待っていたので、彼が聖所内で暇どっているのを不思議に思っていた。
24886 42 1 22 ついに彼は出てきたが、物が言えなかったので、人々は彼が聖所内でまぼろしを見たのだと悟った。彼は彼らに合図をするだけで、引きつづき、おしのままでいた。
24887 42 1 23 それから務の期日が終ったので、家に帰った。
24888 42 1 24 そののち、妻エリサベツはみごもり、五か月のあいだ引きこもっていたが、
24889 42 1 25 「主は、今わたしを心にかけてくださって、人々の間からわたしの恥を取り除くために、こうしてくださいました」と言った。
24890 42 1 26 六か月目に、御使ガブリエルが、神からつかわされて、ナザレというガリラヤの町の一処女のもとにきた。
24891 42 1 27 この処女はダビデ家の出であるヨセフという人のいいなづけになっていて、名をマリヤといった。
24892 42 1 28 御使がマリヤのところにきて言った、「恵まれた女よ、おめでとう、主があなたと共におられます」。
24893 42 1 29 この言葉にマリヤはひどく胸騒ぎがして、このあいさつはなんの事であろうかと、思いめぐらしていた。
24894 42 1 30 すると御使が言った、「恐れるな、マリヤよ、あなたは神から恵みをいただいているのです。
24895 42 1 31 見よ、あなたはみごもって男の子を産むでしょう。その子をイエスと名づけなさい。
24896 42 1 32 彼は大いなる者となり、いと高き者の子と、となえられるでしょう。そして、主なる神は彼に父ダビデの王座をお与えになり、
24897 42 1 33 彼はとこしえにヤコブの家を支配し、その支配は限りなく続くでしょう」。
24898 42 1 34 そこでマリヤは御使に言った、「どうして、そんな事があり得ましょうか。わたしにはまだ夫がありませんのに」。
24899 42 1 35 御使が答えて言った、「聖霊があなたに臨み、いと高き者の力があなたをおおうでしょう。それゆえに、生れ出る子は聖なるものであり、神の子と、となえられるでしょう。
24900 42 1 36 あなたの親族エリサベツも老年ながら子を宿しています。不妊の女といわれていたのに、はや六か月になっています。
24901 42 1 37 神には、なんでもできないことはありません」。
24902 42 1 38 そこでマリヤが言った、「わたしは主のはしためです。お言葉どおりこの身に成りますように」。そして御使は彼女から離れて行った。
24903 42 1 39 そのころ、マリヤは立って、大急ぎで山里へむかいユダの町に行き、
24904 42 1 40 ザカリヤの家にはいってエリサベツにあいさつした。
24905 42 1 41 エリサベツがマリヤのあいさつを聞いたとき、その子が胎内でおどった。エリサベツは聖霊に満たされ、
24906 42 1 42 声高く叫んで言った、「あなたは女の中で祝福されたかた、あなたの胎の実も祝福されています。
24907 42 1 43 主の母上がわたしのところにきてくださるとは、なんという光栄でしょう。
24908 42 1 44 ごらんなさい。あなたのあいさつの声がわたしの耳にはいったとき、子供が胎内で喜びおどりました。
24909 42 1 45 主のお語りになったことが必ず成就すると信じた女は、なんとさいわいなことでしょう」。
24910 42 1 46 するとマリヤは言った、「わたしの魂は主をあがめ、
24911 42 1 47 わたしの霊は救主なる神をたたえます。
24912 42 1 48 この卑しい女をさえ、心にかけてくださいました。今からのち代々の人々は、わたしをさいわいな女と言うでしょう、
24913 42 1 49 力あるかたが、わたしに大きな事をしてくださったからです。そのみ名はきよく、
24914 42 1 50 そのあわれみは、代々限りなく主をかしこみ恐れる者に及びます。
24915 42 1 51 主はみ腕をもって力をふるい、心の思いのおごり高ぶる者を追い散らし、
24916 42 1 52 権力ある者を王座から引きおろし、卑しい者を引き上げ、
24917 42 1 53 飢えている者を良いもので飽かせ、富んでいる者を空腹のまま帰らせなさいます。
24918 42 1 54 主は、あわれみをお忘れにならず、その僕イスラエルを助けてくださいました、
24919 42 1 55 わたしたちの父祖アブラハムとその子孫とをとこしえにあわれむと約束なさったとおりに」。
24920 42 1 56 マリヤは、エリサベツのところに三か月ほど滞在してから、家に帰った。
24921 42 1 57 さてエリサベツは月が満ちて、男の子を産んだ。
24922 42 1 58 近所の人々や親族は、主が大きなあわれみを彼女におかけになったことを聞いて、共どもに喜んだ。
24923 42 1 59 八日目になったので、幼な子に割礼をするために人々がきて、父の名にちなんでザカリヤという名にしようとした。
24924 42 1 60 ところが、母親は、「いいえ、ヨハネという名にしなくてはいけません」と言った。
24925 42 1 61 人々は、「あなたの親族の中には、そういう名のついた者は、ひとりもいません」と彼女に言った。
24926 42 1 62 そして父親に、どんな名にしたいのですかと、合図で尋ねた。
24927 42 1 63 ザカリヤは書板を持ってこさせて、それに「その名はヨハネ」と書いたので、みんなの者は不思議に思った。
24928 42 1 64 すると、立ちどころにザカリヤの口が開けて舌がゆるみ、語り出して神をほめたたえた。
24929 42 1 65 近所の人々はみな恐れをいだき、またユダヤの山里の至るところに、これらの事がことごとく語り伝えられたので、
24930 42 1 66 聞く者たちは皆それを心に留めて、「この子は、いったい、どんな者になるだろう」と語り合った。主のみ手が彼と共にあった。
24931 42 1 67 父ザカリヤは聖霊に満たされ、預言して言った、
24932 42 1 68 「主なるイスラエルの神は、ほむべきかな。神はその民を顧みてこれをあがない、
24933 42 1 69 わたしたちのために救の角を僕ダビデの家にお立てになった。
24934 42 1 70 古くから、聖なる預言者たちの口によってお語りになったように、
24935 42 1 71 わたしたちを敵から、またすべてわたしたちを憎む者の手から、救い出すためである。
24936 42 1 72 こうして、神はわたしたちの父祖たちにあわれみをかけ、その聖なる契約、
24937 42 1 73 すなわち、父祖アブラハムにお立てになった誓いをおぼえて、
24938 42 1 74 わたしたちを敵の手から救い出し、
24939 42 1 75 生きている限り、きよく正しく、みまえに恐れなく仕えさせてくださるのである。
24940 42 1 76 幼な子よ、あなたは、いと高き者の預言者と呼ばれるであろう。主のみまえに先立って行き、その道を備え、
24941 42 1 77 罪のゆるしによる救をその民に知らせるのであるから。
24942 42 1 78 これはわたしたちの神のあわれみ深いみこころによる。また、そのあわれみによって、日の光が上からわたしたちに臨み、
24943 42 1 79 暗黒と死の陰とに住む者を照し、わたしたちの足を平和の道へ導くであろう」。
24944 42 1 80 幼な子は成長し、その霊も強くなり、そしてイスラエルに現れる日まで、荒野にいた。
24945 42 2 1 そのころ、全世界の人口調査をせよとの勅令が、皇帝アウグストから出た。
24946 42 2 2 これは、クレニオがシリヤの総督であった時に行われた最初の人口調査であった。
24947 42 2 3 人々はみな登録をするために、それぞれ自分の町へ帰って行った。
24948 42 2 4 ヨセフもダビデの家系であり、またその血統であったので、ガリラヤの町ナザレを出て、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上って行った。
24949 42 2 5 それは、すでに身重になっていたいいなづけの妻マリヤと共に、登録をするためであった。
24950 42 2 6 ところが、彼らがベツレヘムに滞在している間に、マリヤは月が満ちて、
24951 42 2 7 初子を産み、布にくるんで、飼葉おけの中に寝かせた。客間には彼らのいる余地がなかったからである。
24952 42 2 8 さて、この地方で羊飼たちが夜、野宿しながら羊の群れの番をしていた。
24953 42 2 9 すると主の御使が現れ、主の栄光が彼らをめぐり照したので、彼らは非常に恐れた。
24954 42 2 10 御使は言った、「恐れるな。見よ、すべての民に与えられる大きな喜びを、あなたがたに伝える。
24955 42 2 11 きょうダビデの町に、あなたがたのために救主がお生れになった。このかたこそ主なるキリストである。
24956 42 2 12 あなたがたは、幼な子が布にくるまって飼葉おけの中に寝かしてあるのを見るであろう。それが、あなたがたに与えられるしるしである」。
24957 42 2 13 するとたちまち、おびただしい天の軍勢が現れ、御使と一緒になって神をさんびして言った、
24958 42 2 14 「いと高きところでは、神に栄光があるように、地の上では、み心にかなう人々に平和があるように」。
24959 42 2 15 御使たちが彼らを離れて天に帰ったとき、羊飼たちは「さあ、ベツレヘムへ行って、主がお知らせ下さったその出来事を見てこようではないか」と、互に語り合った。
24960 42 2 16 そして急いで行って、マリヤとヨセフ、また飼葉おけに寝かしてある幼な子を捜しあてた。
24961 42 2 17 彼らに会った上で、この子について自分たちに告げ知らされた事を、人々に伝えた。
24962 42 2 18 人々はみな、羊飼たちが話してくれたことを聞いて、不思議に思った。
24963 42 2 19 しかし、マリヤはこれらの事をことごとく心に留めて、思いめぐらしていた。
24964 42 2 20 羊飼たちは、見聞きしたことが何もかも自分たちに語られたとおりであったので、神をあがめ、またさんびしながら帰って行った。
24965 42 2 21 八日が過ぎ、割礼をほどこす時となったので、受胎のまえに御使が告げたとおり、幼な子をイエスと名づけた。
24966 42 2 22 それから、モーセの律法による彼らのきよめの期間が過ぎたとき、両親は幼な子を連れてエルサレムへ上った。
24967 42 2 23 それは主の律法に「母の胎を初めて開く男の子はみな、主に聖別された者と、となえられねばならない」と書いてあるとおり、幼な子を主にささげるためであり、
24968 42 2 24 また同じ主の律法に、「山ばと一つがい、または、家ばとのひな二羽」と定めてあるのに従って、犠牲をささげるためであった。
24969 42 2 25 その時、エルサレムにシメオンという名の人がいた。この人は正しい信仰深い人で、イスラエルの慰められるのを待ち望んでいた。また聖霊が彼に宿っていた。
24970 42 2 26 そして主のつかわす救主に会うまでは死ぬことはないと、聖霊の示しを受けていた。
24971 42 2 27 この人が御霊に感じて宮にはいった。すると律法に定めてあることを行うため、両親もその子イエスを連れてはいってきたので、
24972 42 2 28 シメオンは幼な子を腕に抱き、神をほめたたえて言った、
24973 42 2 29 「主よ、今こそ、あなたはみ言葉のとおりにこの僕を安らかに去らせてくださいます、
24974 42 2 30 わたしの目が今あなたの救を見たのですから。
24975 42 2 31 この救はあなたが万民のまえにお備えになったもので、
24976 42 2 32 異邦人を照す啓示の光、み民イスラエルの栄光であります」。
24977 42 2 33 父と母とは幼な子についてこのように語られたことを、不思議に思った。
24978 42 2 34 するとシメオンは彼らを祝し、そして母マリヤに言った、「ごらんなさい、この幼な子は、イスラエルの多くの人を倒れさせたり立ちあがらせたりするために、また反対を受けるしるしとして、定められています。――
24979 42 2 35 そして、あなた自身もつるぎで胸を刺し貫かれるでしょう。――それは多くの人の心にある思いが、現れるようになるためです」。
24980 42 2 36 また、アセル族のパヌエルの娘で、アンナという女預言者がいた。彼女は非常に年をとっていた。むすめ時代にとついで、七年間だけ夫と共に住み、
24981 42 2 37 その後やもめぐらしをし、八十四歳になっていた。そして宮を離れずに夜も昼も断食と祈とをもって神に仕えていた。
24982 42 2 38 この老女も、ちょうどそのとき近寄ってきて、神に感謝をささげ、そしてこの幼な子のことを、エルサレムの救を待ち望んでいるすべての人々に語りきかせた。
24983 42 2 39 両親は主の律法どおりすべての事をすませたので、ガリラヤへむかい、自分の町ナザレに帰った。
24984 42 2 40 幼な子は、ますます成長して強くなり、知恵に満ち、そして神の恵みがその上にあった。
24985 42 2 41 さて、イエスの両親は、過越の祭には毎年エルサレムへ上っていた。
24986 42 2 42 イエスが十二歳になった時も、慣例に従って祭のために上京した。
24987 42 2 43 ところが、祭が終って帰るとき、少年イエスはエルサレムに居残っておられたが、両親はそれに気づかなかった。
24988 42 2 44 そして道連れの中にいることと思いこんで、一日路を行ってしまい、それから、親族や知人の中を捜しはじめたが、
24989 42 2 45 見つからないので、捜しまわりながらエルサレムへ引返した。
24990 42 2 46 そして三日の後に、イエスが宮の中で教師たちのまん中にすわって、彼らの話を聞いたり質問したりしておられるのを見つけた。
24991 42 2 47 聞く人々はみな、イエスの賢さやその答に驚嘆していた。
24992 42 2 48 両親はこれを見て驚き、そして母が彼に言った、「どうしてこんな事をしてくれたのです。ごらんなさい、おとう様もわたしも心配して、あなたを捜していたのです」。
24993 42 2 49 するとイエスは言われた、「どうしてお捜しになったのですか。わたしが自分の父の家にいるはずのことを、ご存じなかったのですか」。
24994 42 2 50 しかし、両親はその語られた言葉を悟ることができなかった。
24995 42 2 51 それからイエスは両親と一緒にナザレに下って行き、彼らにお仕えになった。母はこれらの事をみな心に留めていた。
24996 42 2 52 イエスはますます知恵が加わり、背たけも伸び、そして神と人から愛された。
24997 42 3 1 皇帝テベリオ在位の第十五年、ポンテオ・ピラトがユダヤの総督、ヘロデがガリラヤの領主、その兄弟ピリポがイツリヤ・テラコニテ地方の領主、ルサニヤがアビレネの領主、
24998 42 3 2 アンナスとカヤパとが大祭司であったとき、神の言が荒野でザカリヤの子ヨハネに臨んだ。
24999 42 3 3 彼はヨルダンのほとりの全地方に行って、罪のゆるしを得させる悔改めのバプテスマを宣べ伝えた。
25000 42 3 4 それは、預言者イザヤの言葉の書に書いてあるとおりである。すなわち「荒野で呼ばわる者の声がする、『主の道を備えよ、その道筋をまっすぐにせよ』。
25001 42 3 5 すべての谷は埋められ、すべての山と丘とは、平らにされ、曲ったところはまっすぐに、わるい道はならされ、
25002 42 3 6 人はみな神の救を見るであろう」。
25003 42 3 7 さて、ヨハネは、彼からバプテスマを受けようとして出てきた群衆にむかって言った、「まむしの子らよ、迫ってきている神の怒りから、のがれられると、おまえたちにだれが教えたのか。
25004 42 3 8 だから、悔改めにふさわしい実を結べ。自分たちの父にはアブラハムがあるなどと、心の中で思ってもみるな。おまえたちに言っておく。神はこれらの石ころからでも、アブラハムの子を起すことができるのだ。
25005 42 3 9 斧がすでに木の根もとに置かれている。だから、良い実を結ばない木はことごとく切られて、火の中に投げ込まれるのだ」。
25006 42 3 10 そこで群衆が彼に、「それでは、わたしたちは何をすればよいのですか」と尋ねた。
25007 42 3 11 彼は答えて言った、「下着を二枚もっている者は、持たない者に分けてやりなさい。食物を持っている者も同様にしなさい」。
25008 42 3 12 取税人もバプテスマを受けにきて、彼に言った、「先生、わたしたちは何をすればよいのですか」。
25009 42 3 13 彼らに言った、「きまっているもの以上に取り立ててはいけない」。
25010 42 3 14 兵卒たちもたずねて言った、「では、わたしたちは何をすればよいのですか」。彼は言った、「人をおどかしたり、だまし取ったりしてはいけない。自分の給与で満足していなさい」。
25011 42 3 15 民衆は救主を待ち望んでいたので、みな心の中でヨハネのことを、もしかしたらこの人がそれではなかろうかと考えていた。
25012 42 3 16 そこでヨハネはみんなの者にむかって言った、「わたしは水でおまえたちにバプテスマを授けるが、わたしよりも力のあるかたが、おいでになる。わたしには、そのくつのひもを解く値うちもない。このかたは、聖霊と火とによっておまえたちにバプテスマをお授けになるであろう。
25013 42 3 17 また、箕を手に持って、打ち場の麦をふるい分け、麦は倉に納め、からは消えない火で焼き捨てるであろう」。
25014 42 3 18 こうしてヨハネはほかにもなお、さまざまの勧めをして、民衆に教を説いた。
25015 42 3 19 ところが領主ヘロデは、兄弟の妻ヘロデヤのことで、また自分がしたあらゆる悪事について、ヨハネから非難されていたので、
25016 42 3 20 彼を獄に閉じ込めて、いろいろな悪事の上に、もう一つこの悪事を重ねた。
25017 42 3 21 さて、民衆がみなバプテスマを受けたとき、イエスもバプテスマを受けて祈っておられると、天が開けて、
25018 42 3 22 聖霊がはとのような姿をとってイエスの上に下り、そして天から声がした、「あなたはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である」。
25019 42 3 23 イエスが宣教をはじめられたのは、年およそ三十歳の時であって、人々の考えによれば、ヨセフの子であった。ヨセフはヘリの子、
25020 42 3 24 それから、さかのぼって、マタテ、レビ、メルキ、ヤンナイ、ヨセフ、
25021 42 3 25 マタテヤ、アモス、ナホム、エスリ、ナンガイ、
25022 42 3 26 マハテ、マタテヤ、シメイ、ヨセク、ヨダ、
25023 42 3 27 ヨハナン、レサ、ゾロバベル、サラテル、ネリ、
25024 42 3 28 メルキ、アデイ、コサム、エルマダム、エル、
25025 42 3 29 ヨシュア、エリエゼル、ヨリム、マタテ、レビ、
25026 42 3 30 シメオン、ユダ、ヨセフ、ヨナム、エリヤキム、
25027 42 3 31 メレヤ、メナ、マタタ、ナタン、ダビデ、
25028 42 3 32 エッサイ、オベデ、ボアズ、サラ、ナアソン、
25029 42 3 33 アミナダブ、アデミン、アルニ、エスロン、パレス、ユダ、
25030 42 3 34 ヤコブ、イサク、アブラハム、テラ、ナホル、
25031 42 3 35 セルグ、レウ、ペレグ、エベル、サラ、
25032 42 3 36 カイナン、アルパクサデ、セム、ノア、ラメク、
25033 42 3 37 メトセラ、エノク、ヤレデ、マハラレル、カイナン、
25034 42 3 38 エノス、セツ、アダム、そして神にいたる。
25035 42 4 1 さて、イエスは聖霊に満ちてヨルダン川から帰り、
25036 42 4 2 荒野を四十日のあいだ御霊にひきまわされて、悪魔の試みにあわれた。そのあいだ何も食べず、その日数がつきると、空腹になられた。
25037 42 4 3 そこで悪魔が言った、「もしあなたが神の子であるなら、この石に、パンになれと命じてごらんなさい」。
25038 42 4 4 イエスは答えて言われた、「『人はパンだけで生きるものではない』と書いてある」。
25039 42 4 5 それから、悪魔はイエスを高い所へ連れて行き、またたくまに世界のすべての国々を見せて
25040 42 4 6 言った、「これらの国々の権威と栄華とをみんな、あなたにあげましょう。それらはわたしに任せられていて、だれでも好きな人にあげてよいのですから。
25041 42 4 7 それで、もしあなたがわたしの前にひざまずくなら、これを全部あなたのものにしてあげましょう」。
25042 42 4 8 イエスは答えて言われた、「『主なるあなたの神を拝し、ただ神にのみ仕えよ』と書いてある」。
25043 42 4 9 それから悪魔はイエスをエルサレムに連れて行き、宮の頂上に立たせて言った、「もしあなたが神の子であるなら、ここから下へ飛びおりてごらんなさい。
25044 42 4 10 『神はあなたのために、御使たちに命じてあなたを守らせるであろう』とあり、
25045 42 4 11 また、『あなたの足が石に打ちつけられないように、彼らはあなたを手でささえるであろう』とも書いてあります」。
25046 42 4 12 イエスは答えて言われた、「『主なるあなたの神を試みてはならない』と言われている」。
25047 42 4 13 悪魔はあらゆる試みをしつくして、一時イエスを離れた。
25048 42 4 14 それからイエスは御霊の力に満ちあふれてガリラヤへ帰られると、そのうわさがその地方全体にひろまった。
25049 42 4 15 イエスは諸会堂で教え、みんなの者から尊敬をお受けになった。
25050 42 4 16 それからお育ちになったナザレに行き、安息日にいつものように会堂にはいり、聖書を朗読しようとして立たれた。
25051 42 4 17 すると預言者イザヤの書が手渡されたので、その書を開いて、こう書いてある所を出された、
25052 42 4 18 「主の御霊がわたしに宿っている。貧しい人々に福音を宣べ伝えさせるために、わたしを聖別してくださったからである。主はわたしをつかわして、囚人が解放され、盲人の目が開かれることを告げ知らせ、打ちひしがれている者に自由を得させ、
25053 42 4 19 主のめぐみの年を告げ知らせるのである」。
25054 42 4 20 イエスは聖書を巻いて係りの者に返し、席に着かれると、会堂にいるみんなの者の目がイエスに注がれた。
25055 42 4 21 そこでイエスは、「この聖句は、あなたがたが耳にしたこの日に成就した」と説きはじめられた。
25056 42 4 22 すると、彼らはみなイエスをほめ、またその口から出て来るめぐみの言葉に感嘆して言った、「この人はヨセフの子ではないか」。
25057 42 4 23 そこで彼らに言われた、「あなたがたは、きっと『医者よ、自分自身をいやせ』ということわざを引いて、カペナウムで行われたと聞いていた事を、あなたの郷里のこの地でもしてくれ、と言うであろう」。
25058 42 4 24 それから言われた、「よく言っておく。預言者は、自分の郷里では歓迎されないものである。
25059 42 4 25 よく聞いておきなさい。エリヤの時代に、三年六か月にわたって天が閉じ、イスラエル全土に大ききんがあった際、そこには多くのやもめがいたのに、
25060 42 4 26 エリヤはそのうちのだれにもつかわされないで、ただシドンのサレプタにいるひとりのやもめにだけつかわされた。
25061 42 4 27 また預言者エリシャの時代に、イスラエルには多くのらい病人がいたのに、そのうちのひとりもきよめられないで、ただシリヤのナアマンだけがきよめられた」。
25062 42 4 28 会堂にいた者たちはこれを聞いて、みな憤りに満ち、
25063 42 4 29 立ち上がってイエスを町の外へ追い出し、その町が建っている丘のがけまでひっぱって行って、突き落そうとした。
25064 42 4 30 しかし、イエスは彼らのまん中を通り抜けて、去って行かれた。
25065 42 4 31 それから、イエスはガリラヤの町カペナウムに下って行かれた。そして安息日になると、人々をお教えになったが、
25066 42 4 32 その言葉に権威があったので、彼らはその教に驚いた。
25067 42 4 33 すると、汚れた悪霊につかれた人が会堂にいて、大声で叫び出した、
25068 42 4 34 「ああ、ナザレのイエスよ、あなたはわたしたちとなんの係わりがあるのです。わたしたちを滅ぼしにこられたのですか。あなたがどなたであるか、わかっています。神の聖者です」。
25069 42 4 35 イエスはこれをしかって、「黙れ、この人から出て行け」と言われた。すると悪霊は彼を人なかに投げ倒し、傷は負わせずに、その人から出て行った。
25070 42 4 36 みんなの者は驚いて、互に語り合って言った、「これは、いったい、なんという言葉だろう。権威と力とをもって汚れた霊に命じられると、彼らは出て行くのだ」。
25071 42 4 37 こうしてイエスの評判が、その地方のいたる所にひろまっていった。
25072 42 4 38 イエスは会堂を出てシモンの家におはいりになった。ところがシモンのしゅうとめが高い熱を病んでいたので、人々は彼女のためにイエスにお願いした。
25073 42 4 39 そこで、イエスはそのまくらもとに立って、熱が引くように命じられると、熱は引き、女はすぐに起き上がって、彼らをもてなした。
25074 42 4 40 日が暮れると、いろいろな病気になやむ者をかかえている人々が、皆それをイエスのところに連れてきたので、そのひとりびとりに手を置いて、おいやしになった。
25075 42 4 41 悪霊も「あなたこそ神の子です」と叫びながら多くの人々から出ていった。しかし、イエスは彼らを戒めて、物を言うことをお許しにならなかった。彼らがイエスはキリストだと知っていたからである。
25076 42 4 42 夜が明けると、イエスは寂しい所へ出て行かれたが、群衆が捜しまわって、みもとに集まり、自分たちから離れて行かれないようにと、引き止めた。
25077 42 4 43 しかしイエスは、「わたしは、ほかの町々にも神の国の福音を宣べ伝えねばならない。自分はそのためにつかわされたのである」と言われた。
25078 42 4 44 そして、ユダヤの諸会堂で教を説かれた。
25079 42 5 1 さて、群衆が神の言を聞こうとして押し寄せてきたとき、イエスはゲネサレ湖畔に立っておられたが、
25080 42 5 2 そこに二そうの小舟が寄せてあるのをごらんになった。漁師たちは、舟からおりて網を洗っていた。
25081 42 5 3 その一そうはシモンの舟であったが、イエスはそれに乗り込み、シモンに頼んで岸から少しこぎ出させ、そしてすわって、舟の中から群衆にお教えになった。
25082 42 5 4 話がすむと、シモンに「沖へこぎ出し、網をおろして漁をしてみなさい」と言われた。
25083 42 5 5 シモンは答えて言った、「先生、わたしたちは夜通し働きましたが、何も取れませんでした。しかし、お言葉ですから、網をおろしてみましょう」。
25084 42 5 6 そしてそのとおりにしたところ、おびただしい魚の群れがはいって、網が破れそうになった。
25085 42 5 7 そこで、もう一そうの舟にいた仲間に、加勢に来るよう合図をしたので、彼らがきて魚を両方の舟いっぱいに入れた。そのために、舟が沈みそうになった。
25086 42 5 8 これを見てシモン・ペテロは、イエスのひざもとにひれ伏して言った、「主よ、わたしから離れてください。わたしは罪深い者です」。
25087 42 5 9 彼も一緒にいた者たちもみな、取れた魚がおびただしいのに驚いたからである。
25088 42 5 10 シモンの仲間であったゼベダイの子ヤコブとヨハネも、同様であった。すると、イエスがシモンに言われた、「恐れることはない。今からあなたは人間をとる漁師になるのだ」。
25089 42 5 11 そこで彼らは舟を陸に引き上げ、いっさいを捨ててイエスに従った。
25090 42 5 12 イエスがある町におられた時、全身らい病になっている人がそこにいた。イエスを見ると、顔を地に伏せて願って言った、「主よ、みこころでしたら、きよめていただけるのですが」。
25091 42 5 13 イエスは手を伸ばして彼にさわり、「そうしてあげよう、きよくなれ」と言われた。すると、らい病がただちに去ってしまった。
25092 42 5 14 イエスは、だれにも話さないようにと彼に言い聞かせ、「ただ行って自分のからだを祭司に見せ、それからあなたのきよめのため、モーセが命じたとおりのささげ物をして、人々に証明しなさい」とお命じになった。
25093 42 5 15 しかし、イエスの評判はますますひろまって行き、おびただしい群衆が、教を聞いたり、病気をなおしてもらったりするために、集まってきた。
25094 42 5 16 しかしイエスは、寂しい所に退いて祈っておられた。
25095 42 5 17 ある日のこと、イエスが教えておられると、ガリラヤやユダヤの方々の村から、またエルサレムからきたパリサイ人や律法学者たちが、そこにすわっていた。主の力が働いて、イエスは人々をいやされた。
25096 42 5 18 その時、ある人々が、ひとりの中風をわずらっている人を床にのせたまま連れてきて、家の中に運び入れ、イエスの前に置こうとした。
25097 42 5 19 ところが、群衆のためにどうしても運び入れる方法がなかったので、屋根にのぼり、瓦をはいで、病人を床ごと群衆のまん中につりおろして、イエスの前においた。
25098 42 5 20 イエスは彼らの信仰を見て、「人よ、あなたの罪はゆるされた」と言われた。
25099 42 5 21 すると律法学者とパリサイ人たちとは、「神を汚すことを言うこの人は、いったい、何者だ。神おひとりのほかに、だれが罪をゆるすことができるか」と言って論じはじめた。
25100 42 5 22 イエスは彼らの論議を見ぬいて、「あなたがたは心の中で何を論じているのか。
25101 42 5 23 あなたの罪はゆるされたと言うのと、起きて歩けと言うのと、どちらがたやすいか。
25102 42 5 24 しかし、人の子は地上で罪をゆるす権威を持っていることが、あなたがたにわかるために」と彼らに対して言い、中風の者にむかって、「あなたに命じる。起きよ、床を取り上げて家に帰れ」と言われた。
25103 42 5 25 すると病人は即座にみんなの前で起きあがり、寝ていた床を取りあげて、神をあがめながら家に帰って行った。
25104 42 5 26 みんなの者は驚嘆してしまった。そして神をあがめ、おそれに満たされて、「きょうは驚くべきことを見た」と言った。
25105 42 5 27 そののち、イエスが出て行かれると、レビという名の取税人が収税所にすわっているのを見て、「わたしに従ってきなさい」と言われた。
25106 42 5 28 すると、彼はいっさいを捨てて立ちあがり、イエスに従ってきた。
25107 42 5 29 それから、レビは自分の家で、イエスのために盛大な宴会を催したが、取税人やそのほか大ぜいの人々が、共に食卓に着いていた。
25108 42 5 30 ところが、パリサイ人やその律法学者たちが、イエスの弟子たちに対してつぶやいて言った、「どうしてあなたがたは、取税人や罪人などと飲食を共にするのか」。
25109 42 5 31 イエスは答えて言われた、「健康な人には医者はいらない。いるのは病人である。
25110 42 5 32 わたしがきたのは、義人を招くためではなく、罪人を招いて悔い改めさせるためである」。
25111 42 5 33 また彼らはイエスに言った、「ヨハネの弟子たちは、しばしば断食をし、また祈をしており、パリサイ人の弟子たちもそうしているのに、あなたの弟子たちは食べたり飲んだりしています」。
25112 42 5 34 するとイエスは言われた、「あなたがたは、花婿が一緒にいるのに、婚礼の客に断食をさせることができるであろうか。
25113 42 5 35 しかし、花婿が奪い去られる日が来る。その日には断食をするであろう」。
25114 42 5 36 それからイエスはまた一つの譬を語られた、「だれも、新しい着物から布ぎれを切り取って、古い着物につぎを当てるものはない。もしそんなことをしたら、新しい着物を裂くことになるし、新しいのから取った布ぎれも古いのに合わないであろう。
25115 42 5 37 まただれも、新しいぶどう酒を古い皮袋に入れはしない。もしそんなことをしたら、新しいぶどう酒は皮袋をはり裂き、そしてぶどう酒は流れ出るし、皮袋もむだになるであろう。
25116 42 5 38 新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れるべきである。
25117 42 5 39 まただれも、古い酒を飲んでから、新しいのをほしがりはしない。『古いのが良い』と考えているからである」。
25118 42 6 1 ある安息日にイエスが麦畑の中をとおって行かれたとき、弟子たちが穂をつみ、手でもみながら食べていた。
25119 42 6 2 すると、あるパリサイ人たちが言った、「あなたがたはなぜ、安息日にしてはならぬことをするのか」。
25120 42 6 3 そこでイエスが答えて言われた、「あなたがたは、ダビデとその供の者たちとが飢えていたとき、ダビデのしたことについて、読んだことがないのか。
25121 42 6 4 すなわち、神の家にはいって、祭司たちのほかだれも食べてはならぬ供えのパンを取って食べ、また供の者たちにも与えたではないか」。
25122 42 6 5 また彼らに言われた、「人の子は安息日の主である」。
25123 42 6 6 また、ほかの安息日に会堂にはいって教えておられたところ、そこに右手のなえた人がいた。
25124 42 6 7 律法学者やパリサイ人たちは、イエスを訴える口実を見付けようと思って、安息日にいやされるかどうかをうかがっていた。
25125 42 6 8 イエスは彼らの思っていることを知って、その手のなえた人に、「起きて、まん中に立ちなさい」と言われると、起き上がって立った。
25126 42 6 9 そこでイエスは彼らにむかって言われた、「あなたがたに聞くが、安息日に善を行うのと悪を行うのと、命を救うのと殺すのと、どちらがよいか」。
25127 42 6 10 そして彼ら一同を見まわして、その人に「手を伸ばしなさい」と言われた。そのとおりにすると、その手は元どおりになった。
25128 42 6 11 そこで彼らは激しく怒って、イエスをどうかしてやろうと、互に話合いをはじめた。
25129 42 6 12 このころ、イエスは祈るために山へ行き、夜を徹して神に祈られた。
25130 42 6 13 夜が明けると、弟子たちを呼び寄せ、その中から十二人を選び出し、これに使徒という名をお与えになった。
25131 42 6 14 すなわち、ペテロとも呼ばれたシモンとその兄弟アンデレ、ヤコブとヨハネ、ピリポとバルトロマイ、
25132 42 6 15 マタイとトマス、アルパヨの子ヤコブと、熱心党と呼ばれたシモン、
25133 42 6 16 ヤコブの子ユダ、それからイスカリオテのユダ。このユダが裏切者となったのである。
25134 42 6 17 そして、イエスは彼らと一緒に山を下って平地に立たれたが、大ぜいの弟子たちや、ユダヤ全土、エルサレム、ツロとシドンの海岸地方などからの大群衆が、
25135 42 6 18 教を聞こうとし、また病気をなおしてもらおうとして、そこにきていた。そして汚れた霊に悩まされている者たちも、いやされた。
25136 42 6 19 また群衆はイエスにさわろうと努めた。それは力がイエスの内から出て、みんなの者を次々にいやしたからである。
25137 42 6 20 そのとき、イエスは目をあげ、弟子たちを見て言われた、「あなたがた貧しい人たちは、さいわいだ。神の国はあなたがたのものである。
25138 42 6 21 あなたがたいま飢えている人たちは、さいわいだ。飽き足りるようになるからである。あなたがたいま泣いている人たちは、さいわいだ。笑うようになるからである。
25139 42 6 22 人々があなたがたを憎むとき、また人の子のためにあなたがたを排斥し、ののしり、汚名を着せるときは、あなたがたはさいわいだ。
25140 42 6 23 その日には喜びおどれ。見よ、天においてあなたがたの受ける報いは大きいのだから。彼らの祖先も、預言者たちに対して同じことをしたのである。
25141 42 6 24 しかしあなたがた富んでいる人たちは、わざわいだ。慰めを受けてしまっているからである。
25142 42 6 25 あなたがた今満腹している人たちは、わざわいだ。飢えるようになるからである。あなたがた今笑っている人たちは、わざわいだ。悲しみ泣くようになるからである。
25143 42 6 26 人が皆あなたがたをほめるときは、あなたがたはわざわいだ。彼らの祖先も、にせ預言者たちに対して同じことをしたのである。
25144 42 6 27 しかし、聞いているあなたがたに言う。敵を愛し、憎む者に親切にせよ。
25145 42 6 28 のろう者を祝福し、はずかしめる者のために祈れ。
25146 42 6 29 あなたの頬を打つ者にはほかの頬をも向けてやり、あなたの上着を奪い取る者には下着をも拒むな。
25147 42 6 30 あなたに求める者には与えてやり、あなたの持ち物を奪う者からは取りもどそうとするな。
25148 42 6 31 人々にしてほしいと、あなたがたの望むことを、人々にもそのとおりにせよ。
25149 42 6 32 自分を愛してくれる者を愛したからとて、どれほどの手柄になろうか。罪人でさえ、自分を愛してくれる者を愛している。
25150 42 6 33 自分によくしてくれる者によくしたとて、どれほどの手柄になろうか。罪人でさえ、それくらいの事はしている。
25151 42 6 34 また返してもらうつもりで貸したとて、どれほどの手柄になろうか。罪人でも、同じだけのものを返してもらおうとして、仲間に貸すのである。
25152 42 6 35 しかし、あなたがたは、敵を愛し、人によくしてやり、また何も当てにしないで貸してやれ。そうすれば受ける報いは大きく、あなたがたはいと高き者の子となるであろう。いと高き者は、恩を知らぬ者にも悪人にも、なさけ深いからである。
25153 42 6 36 あなたがたの父なる神が慈悲深いように、あなたがたも慈悲深い者となれ。
25154 42 6 37 人をさばくな。そうすれば、自分もさばかれることがないであろう。また人を罪に定めるな。そうすれば、自分も罪に定められることがないであろう。ゆるしてやれ。そうすれば、自分もゆるされるであろう。
25155 42 6 38 与えよ。そうすれば、自分にも与えられるであろう。人々はおし入れ、ゆすり入れ、あふれ出るまでに量をよくして、あなたがたのふところに入れてくれるであろう。あなたがたの量るその量りで、自分にも量りかえされるであろうから」。
25156 42 6 39 イエスはまた一つの譬を語られた、「盲人は盲人の手引ができようか。ふたりとも穴に落ち込まないだろうか。
25157 42 6 40 弟子はその師以上のものではないが、修業をつめば、みなその師のようになろう。
25158 42 6 41 なぜ、兄弟の目にあるちりを見ながら、自分の目にある梁を認めないのか。
25159 42 6 42 自分の目にある梁は見ないでいて、どうして兄弟にむかって、兄弟よ、あなたの目にあるちりを取らせてください、と言えようか。偽善者よ、まず自分の目から梁を取りのけるがよい、そうすれば、はっきり見えるようになって、兄弟の目にあるちりを取りのけることができるだろう。
25160 42 6 43 悪い実のなる良い木はないし、また良い実のなる悪い木もない。
25161 42 6 44 木はそれぞれ、その実でわかる。いばらからいちじくを取ることはないし、野ばらからぶどうを摘むこともない。
25162 42 6 45 善人は良い心の倉から良い物を取り出し、悪人は悪い倉から悪い物を取り出す。心からあふれ出ることを、口が語るものである。
25163 42 6 46 わたしを主よ、主よ、と呼びながら、なぜわたしの言うことを行わないのか。
25164 42 6 47 わたしのもとにきて、わたしの言葉を聞いて行う者が、何に似ているか、あなたがたに教えよう。
25165 42 6 48 それは、地を深く掘り、岩の上に土台をすえて家を建てる人に似ている。洪水が出て激流がその家に押し寄せてきても、それを揺り動かすことはできない。よく建ててあるからである。
25166 42 6 49 しかし聞いても行わない人は、土台なしで、土の上に家を建てた人に似ている。激流がその家に押し寄せてきたら、たちまち倒れてしまい、その被害は大きいのである」。
25167 42 7 1 イエスはこれらの言葉をことごとく人々に聞かせてしまったのち、カペナウムに帰ってこられた。
25168 42 7 2 ところが、ある百卒長の頼みにしていた僕が、病気になって死にかかっていた。
25169 42 7 3 この百卒長はイエスのことを聞いて、ユダヤ人の長老たちをイエスのところにつかわし、自分の僕を助けにきてくださるようにと、お願いした。
25170 42 7 4 彼らはイエスのところにきて、熱心に願って言った、「あの人はそうしていただくねうちがございます。
25171 42 7 5 わたしたちの国民を愛し、わたしたちのために会堂を建ててくれたのです」。
25172 42 7 6 そこで、イエスは彼らと連れだってお出かけになった。ところが、その家からほど遠くないあたりまでこられたとき、百卒長は友だちを送ってイエスに言わせた、「主よ、どうぞ、ご足労くださいませんように。わたしの屋根の下にあなたをお入れする資格は、わたしにはございません。
25173 42 7 7 それですから、自分でお迎えにあがるねうちさえないと思っていたのです。ただ、お言葉を下さい。そして、わたしの僕をなおしてください。
25174 42 7 8 わたしも権威の下に服している者ですが、わたしの下にも兵卒がいまして、ひとりの者に『行け』と言えば行き、ほかの者に『こい』と言えばきますし、また、僕に『これをせよ』と言えば、してくれるのです」。
25175 42 7 9 イエスはこれを聞いて非常に感心され、ついてきた群衆の方に振り向いて言われた、「あなたがたに言っておくが、これほどの信仰は、イスラエルの中でも見たことがない」。
25176 42 7 10 使にきた者たちが家に帰ってみると、僕は元気になっていた。
25177 42 7 11 そののち、間もなく、ナインという町へおいでになったが、弟子たちや大ぜいの群衆も一緒に行った。
25178 42 7 12 町の門に近づかれると、ちょうど、あるやもめにとってひとりむすこであった者が死んだので、葬りに出すところであった。大ぜいの町の人たちが、その母につきそっていた。
25179 42 7 13 主はこの婦人を見て深い同情を寄せられ、「泣かないでいなさい」と言われた。
25180 42 7 14 そして近寄って棺に手をかけられると、かついでいる者たちが立ち止まったので、「若者よ、さあ、起きなさい」と言われた。
25181 42 7 15 すると、死人が起き上がって物を言い出した。イエスは彼をその母にお渡しになった。
25182 42 7 16 人々はみな恐れをいだき、「大預言者がわたしたちの間に現れた」、また、「神はその民を顧みてくださった」と言って、神をほめたたえた。
25183 42 7 17 イエスについてのこの話は、ユダヤ全土およびその附近のいたる所にひろまった。
25184 42 7 18 ヨハネの弟子たちは、これらのことを全部彼に報告した。するとヨハネは弟子の中からふたりの者を呼んで、
25185 42 7 19 主のもとに送り、「『きたるべきかた』はあなたなのですか。それとも、ほかにだれかを待つべきでしょうか」と尋ねさせた。
25186 42 7 20 そこで、この人たちがイエスのもとにきて言った、「わたしたちはバプテスマのヨハネからの使ですが、『きたるべきかた』はあなたなのですか、それとも、ほかにだれかを待つべきでしょうか、とヨハネが尋ねています」。
25187 42 7 21 そのとき、イエスはさまざまの病苦と悪霊とに悩む人々をいやし、また多くの盲人を見えるようにしておられたが、
25188 42 7 22 答えて言われた、「行って、あなたがたが見聞きしたことを、ヨハネに報告しなさい。盲人は見え、足なえは歩き、らい病人はきよまり、耳しいは聞え、死人は生きかえり、貧しい人々は福音を聞かされている。
25189 42 7 23 わたしにつまずかない者は、さいわいである」。
25190 42 7 24 ヨハネの使が行ってしまうと、イエスはヨハネのことを群衆に語りはじめられた、「あなたがたは、何を見に荒野に出てきたのか。風に揺らぐ葦であるか。
25191 42 7 25 では、何を見に出てきたのか。柔らかい着物をまとった人か。きらびやかに着かざって、ぜいたくに暮している人々なら、宮殿にいる。
25192 42 7 26 では、何を見に出てきたのか。預言者か。そうだ、あなたがたに言うが、預言者以上の者である。
25193 42 7 27 『見よ、わたしは使をあなたの先につかわし、あなたの前に、道を整えさせるであろう』
25194 42 7 28 あなたがたに言っておく。女の産んだ者の中で、ヨハネより大きい人物はいない。しかし、神の国で最も小さい者も、彼よりは大きい。
25195 42 7 29 (これを聞いた民衆は皆、また取税人たちも、ヨハネのバプテスマを受けて神の正しいことを認めた。
25196 42 7 30 しかし、パリサイ人と律法学者たちとは彼からバプテスマを受けないで、自分たちに対する神のみこころを無にした。)
25197 42 7 31 だから今の時代の人々を何に比べようか。彼らは何に似ているか。
25198 42 7 32 それは子供たちが広場にすわって、互に呼びかけ、『わたしたちが笛を吹いたのに、あなたたちは踊ってくれなかった。弔いの歌を歌ったのに、泣いてくれなかった』
25199 42 7 33 なぜなら、バプテスマのヨハネがきて、パンを食べることも、ぶどう酒を飲むこともしないと、あなたがたは、あれは悪霊につかれているのだ、と言い、
25200 42 7 34 また人の子がきて食べたり飲んだりしていると、見よ、あれは食をむさぼる者、大酒を飲む者、また取税人、罪人の仲間だ、と言う。
25201 42 7 35 しかし、知恵の正しいことは、そのすべての子が証明する」。
25202 42 7 36 あるパリサイ人がイエスに、食事を共にしたいと申し出たので、そのパリサイ人の家にはいって食卓に着かれた。
25203 42 7 37 するとそのとき、その町で罪の女であったものが、パリサイ人の家で食卓に着いておられることを聞いて、香油が入れてある石膏のつぼを持ってきて、
25204 42 7 38 泣きながら、イエスのうしろでその足もとに寄り、まず涙でイエスの足をぬらし、自分の髪の毛でぬぐい、そして、その足に接吻して、香油を塗った。
25205 42 7 39 イエスを招いたパリサイ人がそれを見て、心の中で言った、「もしこの人が預言者であるなら、自分にさわっている女がだれだか、どんな女かわかるはずだ。それは罪の女なのだから」。
25206 42 7 40 そこでイエスは彼にむかって言われた、「シモン、あなたに言うことがある」。彼は「先生、おっしゃってください」と言った。
25207 42 7 41 イエスが言われた、「ある金貸しに金をかりた人がふたりいたが、ひとりは五百デナリ、もうひとりは五十デナリを借りていた。
25208 42 7 42 ところが、返すことができなかったので、彼はふたり共ゆるしてやった。このふたりのうちで、どちらが彼を多く愛するだろうか」。
25209 42 7 43 シモンが答えて言った、「多くゆるしてもらったほうだと思います」。イエスが言われた、「あなたの判断は正しい」。
25210 42 7 44 それから女の方に振り向いて、シモンに言われた、「この女を見ないか。わたしがあなたの家にはいってきた時に、あなたは足を洗う水をくれなかった。ところが、この女は涙でわたしの足をぬらし、髪の毛でふいてくれた。
25211 42 7 45 あなたはわたしに接吻をしてくれなかったが、彼女はわたしが家にはいった時から、わたしの足に接吻をしてやまなかった。
25212 42 7 46 あなたはわたしの頭に油を塗ってくれなかったが、彼女はわたしの足に香油を塗ってくれた。
25213 42 7 47 それであなたに言うが、この女は多く愛したから、その多くの罪はゆるされているのである。少しだけゆるされた者は、少しだけしか愛さない」。
25214 42 7 48 そして女に、「あなたの罪はゆるされた」と言われた。
25215 42 7 49 すると同席の者たちが心の中で言いはじめた、「罪をゆるすことさえするこの人は、いったい、何者だろう」。
25216 42 7 50 しかし、イエスは女にむかって言われた、「あなたの信仰があなたを救ったのです。安心して行きなさい」。
25217 42 8 1 そののちイエスは、神の国の福音を説きまた伝えながら、町々村々を巡回し続けられたが、十二弟子もお供をした。
25218 42 8 2 また悪霊を追い出され病気をいやされた数名の婦人たち、すなわち、七つの悪霊を追い出してもらったマグダラと呼ばれるマリヤ、
25219 42 8 3 ヘロデの家令クーザの妻ヨハンナ、スザンナ、そのほか多くの婦人たちも一緒にいて、自分たちの持ち物をもって一行に奉仕した。
25220 42 8 4 さて、大ぜいの群衆が集まり、その上、町々からの人たちがイエスのところに、ぞくぞくと押し寄せてきたので、一つの譬で話をされた、
25221 42 8 5 「種まきが種をまきに出て行った。まいているうちに、ある種は道ばたに落ち、踏みつけられ、そして空の鳥に食べられてしまった。
25222 42 8 6 ほかの種は岩の上に落ち、はえはしたが水気がないので枯れてしまった。
25223 42 8 7 ほかの種は、いばらの間に落ちたので、いばらも一緒に茂ってきて、それをふさいでしまった。
25224 42 8 8 ところが、ほかの種は良い地に落ちたので、はえ育って百倍もの実を結んだ」。こう語られたのち、声をあげて「聞く耳のある者は聞くがよい」と言われた。
25225 42 8 9 弟子たちは、この譬はどういう意味でしょうか、とイエスに質問した。
25226 42 8 10 そこで言われた、「あなたがたには、神の国の奥義を知ることが許されているが、ほかの人たちには、見ても見えず、聞いても悟られないために、譬で話すのである。
25227 42 8 11 この譬はこういう意味である。種は神の言である。
25228 42 8 12 道ばたに落ちたのは、聞いたのち、信じることも救われることもないように、悪魔によってその心から御言が奪い取られる人たちのことである。
25229 42 8 13 岩の上に落ちたのは、御言を聞いた時には喜んで受けいれるが、根が無いので、しばらくは信じていても、試錬の時が来ると、信仰を捨てる人たちのことである。
25230 42 8 14 いばらの中に落ちたのは、聞いてから日を過ごすうちに、生活の心づかいや富や快楽にふさがれて、実の熟するまでにならない人たちのことである。
25231 42 8 15 良い地に落ちたのは、御言を聞いたのち、これを正しい良い心でしっかりと守り、耐え忍んで実を結ぶに至る人たちのことである。
25232 42 8 16 だれもあかりをともして、それを何かの器でおおいかぶせたり、寝台の下に置いたりはしない。燭台の上に置いて、はいって来る人たちに光が見えるようにするのである。
25233 42 8 17 隠されているもので、あらわにならないものはなく、秘密にされているもので、ついには知られ、明るみに出されないものはない。
25234 42 8 18 だから、どう聞くかに注意するがよい。持っている人は更に与えられ、持っていない人は、持っていると思っているものまでも、取り上げられるであろう」。
25235 42 8 19 さて、イエスの母と兄弟たちとがイエスのところにきたが、群衆のためそば近くに行くことができなかった。
25236 42 8 20 それで、だれかが「あなたの母上と兄弟がたが、お目にかかろうと思って、外に立っておられます」と取次いだ。
25237 42 8 21 するとイエスは人々にむかって言われた、「神の御言を聞いて行う者こそ、わたしの母、わたしの兄弟なのである」。
25238 42 8 22 ある日のこと、イエスは弟子たちと舟に乗り込み、「湖の向こう岸へ渡ろう」と言われたので、一同が船出した。
25239 42 8 23 渡って行く間に、イエスは眠ってしまわれた。すると突風が湖に吹きおろしてきたので、彼らは水をかぶって危険になった。
25240 42 8 24 そこで、みそばに寄ってきてイエスを起し、「先生、先生、わたしたちは死にそうです」と言った。イエスは起き上がって、風と荒浪とをおしかりになると、止んでなぎになった。
25241 42 8 25 イエスは彼らに言われた、「あなたがたの信仰は、どこにあるのか」。彼らは恐れ驚いて互に言い合った、「いったい、このかたはだれだろう。お命じになると、風も水も従うとは」。
25242 42 8 26 それから、彼らはガリラヤの対岸、ゲラサ人の地に渡った。
25243 42 8 27 陸にあがられると、その町の人で、悪霊につかれて長いあいだ着物も着ず、家に居つかないで墓場にばかりいた人に、出会われた。
25244 42 8 28 この人がイエスを見て叫び出し、みまえにひれ伏して大声で言った、「いと高き神の子イエスよ、あなたはわたしとなんの係わりがあるのです。お願いです、わたしを苦しめないでください」。
25245 42 8 29 それは、イエスが汚れた霊に、その人から出て行け、とお命じになったからである。というのは、悪霊が何度も彼をひき捕えたので、彼は鎖と足かせとでつながれて看視されていたが、それを断ち切っては悪霊によって荒野へ追いやられていたのである。
25246 42 8 30 イエスは彼に「なんという名前か」とお尋ねになると、「レギオンと言います」と答えた。彼の中にたくさんの悪霊がはいり込んでいたからである。
25247 42 8 31 悪霊どもは、底知れぬ所に落ちて行くことを自分たちにお命じにならぬようにと、イエスに願いつづけた。
25248 42 8 32 ところが、そこの山べにおびただしい豚の群れが飼ってあったので、その豚の中へはいることを許していただきたいと、悪霊どもが願い出た。イエスはそれをお許しになった。
25249 42 8 33 そこで悪霊どもは、その人から出て豚の中へはいり込んだ。するとその群れは、がけから湖へなだれを打って駆け下り、おぼれ死んでしまった。
25250 42 8 34 飼う者たちは、この出来事を見て逃げ出して、町や村里にふれまわった。
25251 42 8 35 人々はこの出来事を見に出てきた。そして、イエスのところにきて、悪霊を追い出してもらった人が着物を着て、正気になってイエスの足もとにすわっているのを見て、恐れた。
25252 42 8 36 それを見た人たちは、この悪霊につかれていた者が救われた次第を、彼らに語り聞かせた。
25253 42 8 37 それから、ゲラサの地方の民衆はこぞって、自分たちの所から立ち去ってくださるようにとイエスに頼んだ。彼らが非常な恐怖に襲われていたからである。そこで、イエスは舟に乗って帰りかけられた。
25254 42 8 38 悪霊を追い出してもらった人は、お供をしたいと、しきりに願ったが、イエスはこう言って彼をお帰しになった。
25255 42 8 39 「家へ帰って、神があなたにどんなに大きなことをしてくださったか、語り聞かせなさい」。そこで彼は立ち去って、自分にイエスがして下さったことを、ことごとく町中に言いひろめた。
25256 42 8 40 イエスが帰ってこられると、群衆は喜び迎えた。みんながイエスを待ちうけていたのである。
25257 42 8 41 するとそこに、ヤイロという名の人がきた。この人は会堂司であった。イエスの足もとにひれ伏して、自分の家においでくださるようにと、しきりに願った。
25258 42 8 42 彼に十二歳ばかりになるひとり娘があったが、死にかけていた。ところが、イエスが出て行かれる途中、群衆が押し迫ってきた。
25259 42 8 43 ここに、十二年間も長血をわずらっていて、医者のために自分の身代をみな使い果してしまったが、だれにもなおしてもらえなかった女がいた。
25260 42 8 44 この女がうしろから近寄ってみ衣のふさにさわったところ、その長血がたちまち止まってしまった。
25261 42 8 45 イエスは言われた、「わたしにさわったのは、だれか」。人々はみな自分ではないと言ったので、ペテロが「先生、群衆があなたを取り囲んで、ひしめき合っているのです」と答えた。
25262 42 8 46 しかしイエスは言われた、「だれかがわたしにさわった。力がわたしから出て行ったのを感じたのだ」。
25263 42 8 47 女は隠しきれないのを知って、震えながら進み出て、みまえにひれ伏し、イエスにさわった訳と、さわるとたちまちなおったこととを、みんなの前で話した。
25264 42 8 48 そこでイエスが女に言われた、「娘よ、あなたの信仰があなたを救ったのです。安心して行きなさい」。
25265 42 8 49 イエスがまだ話しておられるうちに、会堂司の家から人がきて、「お嬢さんはなくなられました。この上、先生を煩わすには及びません」と言った。
25266 42 8 50 しかしイエスはこれを聞いて会堂司にむかって言われた、「恐れることはない。ただ信じなさい。娘は助かるのだ」。
25267 42 8 51 それから家にはいられるとき、ペテロ、ヨハネ、ヤコブおよびその子の父母のほかは、だれも一緒にはいって来ることをお許しにならなかった。
25268 42 8 52 人々はみな、娘のために泣き悲しんでいた。イエスは言われた、「泣くな、娘は死んだのではない。眠っているだけである」。
25269 42 8 53 人々は娘が死んだことを知っていたので、イエスをあざ笑った。
25270 42 8 54 イエスは娘の手を取って、呼びかけて言われた、「娘よ、起きなさい」。
25271 42 8 55 するとその霊がもどってきて、娘は即座に立ち上がった。イエスは何か食べ物を与えるように、さしずをされた。
25272 42 8 56 両親は驚いてしまった。イエスはこの出来事をだれにも話さないようにと、彼らに命じられた。
25273 42 9 1 それからイエスは十二弟子を呼び集めて、彼らにすべての悪霊を制し、病気をいやす力と権威とをお授けになった。
25274 42 9 2 また神の国を宣べ伝え、かつ病気をなおすためにつかわして
25275 42 9 3 言われた、「旅のために何も携えるな。つえも袋もパンも銭も持たず、また下着も二枚は持つな。
25276 42 9 4 また、どこかの家にはいったら、そこに留まっておれ。そしてそこから出かけることにしなさい。
25277 42 9 5 だれもあなたがたを迎えるものがいなかったら、その町を出て行くとき、彼らに対する抗議のしるしに、足からちりを払い落しなさい」。
25278 42 9 6 弟子たちは出て行って、村々を巡り歩き、いたる所で福音を宣べ伝え、また病気をいやした。
25279 42 9 7 さて、領主ヘロデはいろいろな出来事を耳にして、あわて惑っていた。それは、ある人たちは、ヨハネが死人の中からよみがえったと言い、
25280 42 9 8 またある人たちは、エリヤが現れたと言い、またほかの人たちは、昔の預言者のひとりが復活したのだと言っていたからである。
25281 42 9 9 そこでヘロデが言った、「ヨハネはわたしがすでに首を切ったのだが、こうしてうわさされているこの人は、いったい、だれなのだろう」。そしてイエスに会ってみようと思っていた。
25282 42 9 10 使徒たちは帰ってきて、自分たちのしたことをすべてイエスに話した。それからイエスは彼らを連れて、ベツサイダという町へひそかに退かれた。
25283 42 9 11 ところが群衆がそれと知って、ついてきたので、これを迎えて神の国のことを語り聞かせ、また治療を要する人たちをいやされた。
25284 42 9 12 それから日が傾きかけたので、十二弟子がイエスのもとにきて言った、「群衆を解散して、まわりの村々や部落へ行って宿を取り、食物を手にいれるようにさせてください。わたしたちはこんな寂しい所にきているのですから」。
25285 42 9 13 しかしイエスは言われた、「あなたがたの手で食物をやりなさい」。彼らは言った、「わたしたちにはパン五つと魚二ひきしかありません、この大ぜいの人のために食物を買いに行くかしなければ」。
25286 42 9 14 というのは、男が五千人ばかりもいたからである。しかしイエスは弟子たちに言われた、「人々をおおよそ五十人ずつの組にして、すわらせなさい」。
25287 42 9 15 彼らはそのとおりにして、みんなをすわらせた。
25288 42 9 16 イエスは五つのパンと二ひきの魚とを手に取り、天を仰いでそれを祝福してさき、弟子たちにわたして群衆に配らせた。
25289 42 9 17 みんなの者は食べて満腹した。そして、その余りくずを集めたら、十二かごあった。
25290 42 9 18 イエスがひとりで祈っておられたとき、弟子たちが近くにいたので、彼らに尋ねて言われた、「群衆はわたしをだれと言っているか」。
25291 42 9 19 彼らは答えて言った、「バプテスマのヨハネだと、言っています。しかしほかの人たちは、エリヤだと言い、また昔の預言者のひとりが復活したのだと、言っている者もあります」。
25292 42 9 20 彼らに言われた、「それでは、あなたがたはわたしをだれと言うか」。ペテロが答えて言った、「神のキリストです」。
25293 42 9 21 イエスは彼らを戒め、この事をだれにも言うなと命じ、そして言われた、
25294 42 9 22 「人の子は必ず多くの苦しみを受け、長老、祭司長、律法学者たちに捨てられ、また殺され、そして三日目によみがえる」。
25295 42 9 23 それから、みんなの者に言われた、「だれでもわたしについてきたいと思うなら、自分を捨て、日々自分の十字架を負うて、わたしに従ってきなさい。
25296 42 9 24 自分の命を救おうと思う者はそれを失い、わたしのために自分の命を失う者は、それを救うであろう。
25297 42 9 25 人が全世界をもうけても、自分自身を失いまたは損したら、なんの得になろうか。
25298 42 9 26 わたしとわたしの言葉とを恥じる者に対しては、人の子もまた、自分の栄光と、父と聖なる御使との栄光のうちに現れて来るとき、その者を恥じるであろう。
25299 42 9 27 よく聞いておくがよい、神の国を見るまでは、死を味わわない者が、ここに立っている者の中にいる」。
25300 42 9 28 これらのことを話された後、八日ほどたってから、イエスはペテロ、ヨハネ、ヤコブを連れて、祈るために山に登られた。
25301 42 9 29 祈っておられる間に、み顔の様が変り、み衣がまばゆいほどに白く輝いた。
25302 42 9 30 すると見よ、ふたりの人がイエスと語り合っていた。それはモーセとエリヤであったが、
25303 42 9 31 栄光の中に現れて、イエスがエルサレムで遂げようとする最後のことについて話していたのである。
25304 42 9 32 ペテロとその仲間の者たちとは熟睡していたが、目をさますと、イエスの栄光の姿と、共に立っているふたりの人とを見た。
25305 42 9 33 このふたりがイエスを離れ去ろうとしたとき、ペテロは自分が何を言っているのかわからないで、イエスに言った、「先生、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。それで、わたしたちは小屋を三つ建てましょう。一つはあなたのために、一つはモーセのために、一つはエリヤのために」。
25306 42 9 34 彼がこう言っている間に、雲がわき起って彼らをおおいはじめた。そしてその雲に囲まれたとき、彼らは恐れた。
25307 42 9 35 すると雲の中から声があった、「これはわたしの子、わたしの選んだ者である。これに聞け」。
25308 42 9 36 そして声が止んだとき、イエスがひとりだけになっておられた。弟子たちは沈黙を守って、自分たちが見たことについては、そのころだれにも話さなかった。
25309 42 9 37 翌日、一同が山を降りて来ると、大ぜいの群衆がイエスを出迎えた。
25310 42 9 38 すると突然、ある人が群衆の中から大声をあげて言った、「先生、お願いです。わたしのむすこを見てやってください。この子はわたしのひとりむすこですが、
25311 42 9 39 霊が取りつきますと、彼は急に叫び出すのです。それから、霊は彼をひきつけさせて、あわを吹かせ、彼を弱り果てさせて、なかなか出て行かないのです。
25312 42 9 40 それで、お弟子たちに、この霊を追い出してくださるように願いましたが、できませんでした」。
25313 42 9 41 イエスは答えて言われた、「ああ、なんという不信仰な、曲った時代であろう。いつまで、わたしはあなたがたと一緒におられようか、またあなたがたに我慢ができようか。あなたの子をここに連れてきなさい」。
25314 42 9 42 ところが、その子がイエスのところに来る時にも、悪霊が彼を引き倒して、引きつけさせた。イエスはこの汚れた霊をしかりつけ、その子供をいやして、父親にお渡しになった。
25315 42 9 43 人々はみな、神の偉大な力に非常に驚いた。
25316 42 9 44 「あなたがたはこの言葉を耳におさめて置きなさい。人の子は人々の手に渡されようとしている」。
25317 42 9 45 しかし、彼らはなんのことかわからなかった。それが彼らに隠されていて、悟ることができなかったのである。また彼らはそのことについて尋ねるのを恐れていた。
25318 42 9 46 弟子たちの間に、彼らのうちでだれがいちばん偉いだろうかということで、議論がはじまった。
25319 42 9 47 イエスは彼らの心の思いを見抜き、ひとりの幼な子を取りあげて自分のそばに立たせ、彼らに言われた、
25320 42 9 48 「だれでもこの幼な子をわたしの名のゆえに受けいれる者は、わたしを受けいれるのである。そしてわたしを受けいれる者は、わたしをおつかわしになったかたを受けいれるのである。あなたがたみんなの中でいちばん小さい者こそ、大きいのである」。
25321 42 9 49 するとヨハネが答えて言った、「先生、わたしたちはある人があなたの名を使って悪霊を追い出しているのを見ましたが、その人はわたしたちの仲間でないので、やめさせました」。
25322 42 9 50 イエスは彼に言われた、「やめさせないがよい。あなたがたに反対しない者は、あなたがたの味方なのである」。
25323 42 9 51 さて、イエスが天に上げられる日が近づいたので、エルサレムへ行こうと決意して、その方へ顔をむけられ、
25324 42 9 52 自分に先立って使者たちをおつかわしになった。そして彼らがサマリヤ人の村へはいって行き、イエスのために準備をしようとしたところ、
25325 42 9 53 村人は、エルサレムへむかって進んで行かれるというので、イエスを歓迎しようとはしなかった。
25326 42 9 54 弟子のヤコブとヨハネとはそれを見て言った、「主よ、いかがでしょう。彼らを焼き払ってしまうように、天から火をよび求めましょうか」。
25327 42 9 55 イエスは振りかえって、彼らをおしかりになった。
25328 42 9 56 そして一同はほかの村へ行った。
25329 42 9 57 道を進んで行くと、ある人がイエスに言った、「あなたがおいでになる所ならどこへでも従ってまいります」。
25330 42 9 58 イエスはその人に言われた、「きつねには穴があり、空の鳥には巣がある。しかし、人の子にはまくらする所がない」。
25331 42 9 59 またほかの人に、「わたしに従ってきなさい」と言われた。するとその人が言った、「まず、父を葬りに行かせてください」。
25332 42 9 60 彼に言われた、「その死人を葬ることは、死人に任せておくがよい。あなたは、出て行って神の国を告げひろめなさい」。
25333 42 9 61 またほかの人が言った、「主よ、従ってまいりますが、まず家の者に別れを言いに行かせてください」。
25334 42 9 62 イエスは言われた、「手をすきにかけてから、うしろを見る者は、神の国にふさわしくないものである」。
25335 42 10 1 その後、主は別に七十二人を選び、行こうとしておられたすべての町や村へ、ふたりずつ先におつかわしになった。
25336 42 10 2 そのとき、彼らに言われた、「収穫は多いが、働き人が少ない。だから、収穫の主に願って、その収穫のために働き人を送り出すようにしてもらいなさい。
25337 42 10 3 さあ、行きなさい。わたしがあなたがたをつかわすのは、小羊をおおかみの中に送るようなものである。
25338 42 10 4 財布も袋もくつも持って行くな。だれにも道であいさつするな。
25339 42 10 5 どこかの家にはいったら、まず『平安がこの家にあるように』と言いなさい。
25340 42 10 6 もし平安の子がそこにおれば、あなたがたの祈る平安はその人の上にとどまるであろう。もしそうでなかったら、それはあなたがたの上に帰って来るであろう。
25341 42 10 7 それで、その同じ家に留まっていて、家の人が出してくれるものを飲み食いしなさい。働き人がその報いを得るのは当然である。家から家へと渡り歩くな。
25342 42 10 8 どの町へはいっても、人々があなたがたを迎えてくれるなら、前に出されるものを食べなさい。
25343 42 10 9 そして、その町にいる病人をいやしてやり、『神の国はあなたがたに近づいた』と言いなさい。
25344 42 10 10 しかし、どの町へはいっても、人々があなたがたを迎えない場合には、大通りに出て行って言いなさい、
25345 42 10 11 『わたしたちの足についているこの町のちりも、ぬぐい捨てて行く。しかし、神の国が近づいたことは、承知しているがよい』。
25346 42 10 12 あなたがたに言っておく。その日には、この町よりもソドムの方が耐えやすいであろう。
25347 42 10 13 わざわいだ、コラジンよ。わざわいだ、ベツサイダよ。おまえたちの中でなされた力あるわざが、もしツロとシドンでなされたなら、彼らはとうの昔に、荒布をまとい灰の中にすわって、悔い改めたであろう。
25348 42 10 14 しかし、さばきの日には、ツロとシドンの方がおまえたちよりも、耐えやすいであろう。
25349 42 10 15 ああ、カペナウムよ、おまえは天にまで上げられようとでもいうのか。黄泉にまで落されるであろう。
25350 42 10 16 あなたがたに聞き従う者は、わたしに聞き従うのであり、あなたがたを拒む者は、わたしを拒むのである。そしてわたしを拒む者は、わたしをおつかわしになったかたを拒むのである」。
25351 42 10 17 七十二人が喜んで帰ってきて言った、「主よ、あなたの名によっていたしますと、悪霊までがわたしたちに服従します」。
25352 42 10 18 彼らに言われた、「わたしはサタンが電光のように天から落ちるのを見た。
25353 42 10 19 わたしはあなたがたに、へびやさそりを踏みつけ、敵のあらゆる力に打ち勝つ権威を授けた。だから、あなたがたに害をおよぼす者はまったく無いであろう。
25354 42 10 20 しかし、霊があなたがたに服従することを喜ぶな。むしろ、あなたがたの名が天にしるされていることを喜びなさい」。
25355 42 10 21 そのとき、イエスは聖霊によって喜びあふれて言われた、「天地の主なる父よ。あなたをほめたたえます。これらの事を知恵のある者や賢い者に隠して、幼な子にあらわしてくださいました。父よ、これはまことに、みこころにかなった事でした。
25356 42 10 22 すべての事は父からわたしに任せられています。そして、子がだれであるかは、父のほか知っている者はありません。また父がだれであるかは、子と、父をあらわそうとして子が選んだ者とのほか、だれも知っている者はいません」。
25357 42 10 23 それから弟子たちの方に振りむいて、ひそかに言われた、「あなたがたが見ていることを見る目は、さいわいである。
25358 42 10 24 あなたがたに言っておく。多くの預言者や王たちも、あなたがたの見ていることを見ようとしたが、見ることができず、あなたがたの聞いていることを聞こうとしたが、聞けなかったのである」。
25359 42 10 25 するとそこへ、ある律法学者が現れ、イエスを試みようとして言った、「先生、何をしたら永遠の生命が受けられましょうか」。
25360 42 10 26 彼に言われた、「律法にはなんと書いてあるか。あなたはどう読むか」。
25361 42 10 27 彼は答えて言った、「『心をつくし、精神をつくし、力をつくし、思いをつくして、主なるあなたの神を愛せよ』。また、『自分を愛するように、あなたの隣り人を愛せよ』とあります」。
25362 42 10 28 彼に言われた、「あなたの答は正しい。そのとおり行いなさい。そうすれば、いのちが得られる」。
25363 42 10 29 すると彼は自分の立場を弁護しようと思って、イエスに言った、「では、わたしの隣り人とはだれのことですか」。
25364 42 10 30 イエスが答えて言われた、「ある人がエルサレムからエリコに下って行く途中、強盗どもが彼を襲い、その着物をはぎ取り、傷を負わせ、半殺しにしたまま、逃げ去った。
25365 42 10 31 するとたまたま、ひとりの祭司がその道を下ってきたが、この人を見ると、向こう側を通って行った。
25366 42 10 32 同様に、レビ人もこの場所にさしかかってきたが、彼を見ると向こう側を通って行った。
25367 42 10 33 ところが、あるサマリヤ人が旅をしてこの人のところを通りかかり、彼を見て気の毒に思い、
25368 42 10 34 近寄ってきてその傷にオリブ油とぶどう酒とを注いでほうたいをしてやり、自分の家畜に乗せ、宿屋に連れて行って介抱した。
25369 42 10 35 翌日、デナリ二つを取り出して宿屋の主人に手渡し、『この人を見てやってください。費用がよけいにかかったら、帰りがけに、わたしが支払います』と言った。
25370 42 10 36 この三人のうち、だれが強盗に襲われた人の隣り人になったと思うか」。
25371 42 10 37 彼が言った、「その人に慈悲深い行いをした人です」。そこでイエスは言われた、「あなたも行って同じようにしなさい」。
25372 42 10 38 一同が旅を続けているうちに、イエスがある村へはいられた。するとマルタという名の女がイエスを家に迎え入れた。
25373 42 10 39 この女にマリヤという妹がいたが、主の足もとにすわって、御言に聞き入っていた。
25374 42 10 40 ところが、マルタは接待のことで忙がしくて心をとりみだし、イエスのところにきて言った、「主よ、妹がわたしだけに接待をさせているのを、なんともお思いになりませんか。わたしの手伝いをするように妹におっしゃってください」。
25375 42 10 41 主は答えて言われた、「マルタよ、マルタよ、あなたは多くのことに心を配って思いわずらっている。
25376 42 10 42 しかし、無くてならぬものは多くはない。いや、一つだけである。マリヤはその良い方を選んだのだ。そしてそれは、彼女から取り去ってはならないものである」。
25377 42 11 1 また、イエスはある所で祈っておられたが、それが終ったとき、弟子のひとりが言った、「主よ、ヨハネがその弟子たちに教えたように、わたしたちにも祈ることを教えてください」。
25378 42 11 2 そこで彼らに言われた、「祈るときには、こう言いなさい、『父よ、御名があがめられますように。御国がきますように。
25379 42 11 3 わたしたちの日ごとの食物を、日々お与えください。
25380 42 11 4 わたしたちに負債のある者を皆ゆるしますから、わたしたちの罪をもおゆるしください。わたしたちを試みに会わせないでください』」。
25381 42 11 5 そして彼らに言われた、「あなたがたのうちのだれかに、友人があるとして、その人のところへ真夜中に行き、『友よ、パンを三つ貸してください。
25382 42 11 6 友だちが旅先からわたしのところに着いたのですが、何も出すものがありませんから』と言った場合、
25383 42 11 7 彼は内から、『面倒をかけないでくれ。もう戸は締めてしまったし、子供たちもわたしと一緒に床にはいっているので、いま起きて何もあげるわけにはいかない』と言うであろう。
25384 42 11 8 しかし、よく聞きなさい、友人だからというのでは起きて与えないが、しきりに願うので、起き上がって必要なものを出してくれるであろう。
25385 42 11 9 そこでわたしはあなたがたに言う。求めよ、そうすれば、与えられるであろう。捜せ、そうすれば見いだすであろう。門をたたけ、そうすれば、あけてもらえるであろう。
25386 42 11 10 すべて求める者は得、捜す者は見いだし、門をたたく者はあけてもらえるからである。
25387 42 11 11 あなたがたのうちで、父であるものは、その子が魚を求めるのに、魚の代りにへびを与えるだろうか。
25388 42 11 12 卵を求めるのに、さそりを与えるだろうか。
25389 42 11 13 このように、あなたがたは悪い者であっても、自分の子供には、良い贈り物をすることを知っているとすれば、天の父はなおさら、求めて来る者に聖霊を下さらないことがあろうか」。
25390 42 11 14 さて、イエスが悪霊を追い出しておられた。それは、おしの霊であった。悪霊が出て行くと、おしが物を言うようになったので、群衆は不思議に思った。
25391 42 11 15 その中のある人々が、「彼は悪霊のかしらベルゼブルによって、悪霊どもを追い出しているのだ」と言い、
25392 42 11 16 またほかの人々は、イエスを試みようとして、天からのしるしを求めた。
25393 42 11 17 しかしイエスは、彼らの思いを見抜いて言われた、「おおよそ国が内部で分裂すれば自滅してしまい、また家が分れ争えば倒れてしまう。
25394 42 11 18 そこでサタンも内部で分裂すれば、その国はどうして立ち行けよう。あなたがたはわたしがベルゼブルによって悪霊を追い出していると言うが、
25395 42 11 19 もしわたしがベルゼブルによって悪霊を追い出すとすれば、あなたがたの仲間はだれによって追い出すのであろうか。だから、彼らがあなたがたをさばく者となるであろう。
25396 42 11 20 しかし、わたしが神の指によって悪霊を追い出しているのなら、神の国はすでにあなたがたのところにきたのである。
25397 42 11 21 強い人が十分に武装して自分の邸宅を守っている限り、その持ち物は安全である。
25398 42 11 22 しかし、もっと強い者が襲ってきて彼に打ち勝てば、その頼みにしていた武具を奪って、その分捕品を分けるのである。
25399 42 11 23 わたしの味方でない者は、わたしに反対するものであり、わたしと共に集めない者は、散らすものである。
25400 42 11 24 汚れた霊が人から出ると、休み場を求めて水の無い所を歩きまわるが、見つからないので、出てきた元の家に帰ろうと言って、
25401 42 11 25 帰って見ると、その家はそうじがしてある上、飾りつけがしてあった。
25402 42 11 26 そこでまた出て行って、自分以上に悪い他の七つの霊を引き連れてきて中にはいり、そこに住み込む。そうすると、その人の後の状態は初めよりももっと悪くなるのである」。
25403 42 11 27 イエスがこう話しておられるとき、群衆の中からひとりの女が声を張りあげて言った、「あなたを宿した胎、あなたが吸われた乳房は、なんとめぐまれていることでしょう」。
25404 42 11 28 しかしイエスは言われた、「いや、めぐまれているのは、むしろ、神の言を聞いてそれを守る人たちである」。
25405 42 11 29 さて群衆が群がり集まったので、イエスは語り出された、「この時代は邪悪な時代である。それはしるしを求めるが、ヨナのしるしのほかには、なんのしるしも与えられないであろう。
25406 42 11 30 というのは、ニネベの人々に対してヨナがしるしとなったように、人の子もこの時代に対してしるしとなるであろう。
25407 42 11 31 南の女王が、今の時代の人々と共にさばきの場に立って、彼らを罪に定めるであろう。なぜなら、彼女はソロモンの知恵を聞くために、地の果からはるばるきたからである。しかし見よ、ソロモンにまさる者がここにいる。
25408 42 11 32 ニネベの人々が、今の時代の人々と共にさばきの場に立って、彼らを罪に定めるであろう。なぜなら、ニネベの人々はヨナの宣教によって悔い改めたからである。しかし見よ、ヨナにまさる者がここにいる。
25409 42 11 33 だれもあかりをともして、それを穴倉の中や枡の下に置くことはしない。むしろはいって来る人たちに、そのあかりが見えるように、燭台の上におく。
25410 42 11 34 あなたの目は、からだのあかりである。あなたの目が澄んでおれば、全身も明るいが、目がわるければ、からだも暗い。
25411 42 11 35 だから、あなたの内なる光が暗くならないように注意しなさい。
25412 42 11 36 もし、あなたのからだ全体が明るくて、暗い部分が少しもなければ、ちょうど、あかりが輝いてあなたを照す時のように、全身が明るくなるであろう」。
25413 42 11 37 イエスが語っておられた時、あるパリサイ人が、自分の家で食事をしていただきたいと申し出たので、はいって食卓につかれた。
25414 42 11 38 ところが、食前にまず洗うことをなさらなかったのを見て、そのパリサイ人が不思議に思った。
25415 42 11 39 そこで主は彼に言われた、「いったい、あなたがたパリサイ人は、杯や盆の外側をきよめるが、あなたがたの内側は貪欲と邪悪とで満ちている。
25416 42 11 40 愚かな者たちよ、外側を造ったかたは、また内側も造られたではないか。
25417 42 11 41 ただ、内側にあるものをきよめなさい。そうすれば、いっさいがあなたがたにとって、清いものとなる。
25418 42 11 42 しかし、あなた方パリサイ人は、わざわいである。はっか、うん香、あらゆる野菜などの十分の一を宮に納めておりながら、義と神に対する愛とをなおざりにしている。それもなおざりにはできないが、これは行わねばならない。
25419 42 11 43 あなたがたパリサイ人は、わざわいである。会堂の上席や広場での敬礼を好んでいる。
25420 42 11 44 あなたがたは、わざわいである。人目につかない墓のようなものである。その上を歩いても人々は気づかないでいる」。
25421 42 11 45 ひとりの律法学者がイエスに答えて言った、「先生、そんなことを言われるのは、わたしたちまでも侮辱することです」。
25422 42 11 46 そこで言われた、「あなたがた律法学者も、わざわいである。負い切れない重荷を人に負わせながら、自分ではその荷に指一本でも触れようとしない。
25423 42 11 47 あなたがたは、わざわいである。預言者たちの碑を建てるが、しかし彼らを殺したのは、あなたがたの先祖であったのだ。
25424 42 11 48 だから、あなたがたは、自分の先祖のしわざに同意する証人なのだ。先祖が彼らを殺し、あなたがたがその碑を建てるのだから。
25425 42 11 49 それゆえに、『神の知恵』も言っている、『わたしは預言者と使徒とを彼らにつかわすが、彼らはそのうちのある者を殺したり、迫害したりするであろう』。
25426 42 11 50 それで、アベルの血から祭壇と神殿との間で殺されたザカリヤの血に至るまで、世の初めから流されてきたすべての預言者の血について、この時代がその責任を問われる。
25427 42 11 51 そうだ、あなたがたに言っておく、この時代がその責任を問われるであろう。
25428 42 11 52 あなたがた律法学者は、わざわいである。知識のかぎを取りあげて、自分がはいらないばかりか、はいろうとする人たちを妨げてきた」。
25429 42 11 53 イエスがそこを出て行かれると、律法学者やパリサイ人は、激しく詰め寄り、いろいろな事を問いかけて、
25430 42 11 54 イエスの口から何か言いがかりを得ようと、ねらいはじめた。
25431 42 12 1 その間に、おびただしい群衆が、互に踏み合うほどに群がってきたが、イエスはまず弟子たちに語りはじめられた、「パリサイ人のパン種、すなわち彼らの偽善に気をつけなさい。
25432 42 12 2 おおいかぶされたもので、現れてこないものはなく、隠れているもので、知られてこないものはない。
25433 42 12 3 だから、あなたがたが暗やみで言ったことは、なんでもみな明るみで聞かれ、密室で耳にささやいたことは、屋根の上で言いひろめられるであろう。
25434 42 12 4 そこでわたしの友であるあなたがたに言うが、からだを殺しても、そのあとでそれ以上なにもできない者どもを恐れるな。
25435 42 12 5 恐るべき者がだれであるか、教えてあげよう。殺したあとで、更に地獄に投げ込む権威のあるかたを恐れなさい。そうだ、あなたがたに言っておくが、そのかたを恐れなさい。
25436 42 12 6 五羽のすずめは二アサリオンで売られているではないか。しかも、その一羽も神のみまえで忘れられてはいない。
25437 42 12 7 その上、あなたがたの頭の毛までも、みな数えられている。恐れることはない。あなたがたは多くのすずめよりも、まさった者である。
25438 42 12 8 そこで、あなたがたに言う。だれでも人の前でわたしを受けいれる者を、人の子も神の使たちの前で受けいれるであろう。
25439 42 12 9 しかし、人の前でわたしを拒む者は、神の使たちの前で拒まれるであろう。
25440 42 12 10 また、人の子に言い逆らう者はゆるされるであろうが、聖霊をけがす者は、ゆるされることはない。
25441 42 12 11 あなたがたが会堂や役人や高官の前へひっぱられて行った場合には、何をどう弁明しようか、何を言おうかと心配しないがよい。
25442 42 12 12 言うべきことは、聖霊がその時に教えてくださるからである」。
25443 42 12 13 群衆の中のひとりがイエスに言った、「先生、わたしの兄弟に、遺産を分けてくれるようにおっしゃってください」。
25444 42 12 14 彼に言われた、「人よ、だれがわたしをあなたがたの裁判人または分配人に立てたのか」。
25445 42 12 15 それから人々にむかって言われた、「あらゆる貪欲に対してよくよく警戒しなさい。たといたくさんの物を持っていても、人のいのちは、持ち物にはよらないのである」。
25446 42 12 16 そこで一つの譬を語られた、「ある金持の畑が豊作であった。
25447 42 12 17 そこで彼は心の中で、『どうしようか、わたしの作物をしまっておく所がないのだが』と思いめぐらして
25448 42 12 18 言った、『こうしよう。わたしの倉を取りこわし、もっと大きいのを建てて、そこに穀物や食糧を全部しまい込もう。
25449 42 12 19 そして自分の魂に言おう。たましいよ、おまえには長年分の食糧がたくさんたくわえてある。さあ安心せよ、食え、飲め、楽しめ』。
25450 42 12 20 すると神が彼に言われた、『愚かな者よ、あなたの魂は今夜のうちにも取り去られるであろう。そしたら、あなたが用意した物は、だれのものになるのか』。
25451 42 12 21 自分のために宝を積んで神に対して富まない者は、これと同じである」。
25452 42 12 22 それから弟子たちに言われた、「それだから、あなたがたに言っておく。何を食べようかと、命のことで思いわずらい、何を着ようかとからだのことで思いわずらうな。
25453 42 12 23 命は食物にまさり、からだは着物にまさっている。
25454 42 12 24 からすのことを考えて見よ。まくことも、刈ることもせず、また、納屋もなく倉もない。それだのに、神は彼らを養っていて下さる。あなたがたは鳥よりも、はるかにすぐれているではないか。
25455 42 12 25 あなたがたのうち、だれが思いわずらったからとて、自分の寿命をわずかでも延ばすことができようか。
25456 42 12 26 そんな小さな事さえできないのに、どうしてほかのことを思いわずらうのか。
25457 42 12 27 野の花のことを考えて見るがよい。紡ぎもせず、織りもしない。しかし、あなたがたに言うが、栄華をきわめた時のソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。
25458 42 12 28 きょうは野にあって、あすは炉に投げ入れられる草でさえ、神はこのように装って下さるのなら、あなたがたに、それ以上よくしてくださらないはずがあろうか。ああ、信仰の薄い者たちよ。
25459 42 12 29 あなたがたも、何を食べ、何を飲もうかと、あくせくするな、また気を使うな。
25460 42 12 30 これらのものは皆、この世の異邦人が切に求めているものである。あなたがたの父は、これらのものがあなたがたに必要であることを、ご存じである。
25461 42 12 31 ただ、御国を求めなさい。そうすれば、これらのものは添えて与えられるであろう。
25462 42 12 32 恐れるな、小さい群れよ。御国を下さることは、あなたがたの父のみこころなのである。
25463 42 12 33 自分の持ち物を売って、施しなさい。自分のために古びることのない財布をつくり、盗人も近寄らず、虫も食い破らない天に、尽きることのない宝をたくわえなさい。
25464 42 12 34 あなたがたの宝のある所には、心もあるからである。
25465 42 12 35 腰に帯をしめ、あかりをともしていなさい。
25466 42 12 36 主人が婚宴から帰ってきて戸をたたくとき、すぐあけてあげようと待っている人のようにしていなさい。
25467 42 12 37 主人が帰ってきたとき、目を覚しているのを見られる僕たちは、さいわいである。よく言っておく。主人が帯をしめて僕たちを食卓につかせ、進み寄って給仕をしてくれるであろう。
25468 42 12 38 主人が夜中ごろ、あるいは夜明けごろに帰ってきても、そうしているのを見られるなら、その人たちはさいわいである。
25469 42 12 39 このことを、わきまえているがよい。家の主人は、盗賊がいつごろ来るかわかっているなら、自分の家に押し入らせはしないであろう。
25470 42 12 40 あなたがたも用意していなさい。思いがけない時に人の子が来るからである」。
25471 42 12 41 するとペテロが言った、「主よ、この譬を話しておられるのはわたしたちのためなのですか。それとも、みんなの者のためなのですか」。
25472 42 12 42 そこで主が言われた、「主人が、召使たちの上に立てて、時に応じて定めの食事をそなえさせる忠実な思慮深い家令は、いったいだれであろう。
25473 42 12 43 主人が帰ってきたとき、そのようにつとめているのを見られる僕は、さいわいである。
25474 42 12 44 よく言っておくが、主人はその僕を立てて自分の全財産を管理させるであろう。
25475 42 12 45 しかし、もしその僕が、主人の帰りがおそいと心の中で思い、男女の召使たちを打ちたたき、そして食べたり、飲んだりして酔いはじめるならば、
25476 42 12 46 その僕の主人は思いがけない日、気がつかない時に帰って来るであろう。そして、彼を厳罰に処して、不忠実なものたちと同じ目にあわせるであろう。
25477 42 12 47 主人のこころを知っていながら、それに従って用意もせず勤めもしなかった僕は、多くむち打たれるであろう。
25478 42 12 48 しかし、知らずに打たれるようなことをした者は、打たれ方が少ないだろう。多く与えられた者からは多く求められ、多く任せられた者からは更に多く要求されるのである。
25479 42 12 49 わたしは、火を地上に投じるためにきたのだ。火がすでに燃えていたならと、わたしはどんなに願っていることか。
25480 42 12 50 しかし、わたしには受けねばならないバプテスマがある。そして、それを受けてしまうまでは、わたしはどんなにか苦しい思いをすることであろう。
25481 42 12 51 あなたがたは、わたしが平和をこの地上にもたらすためにきたと思っているのか。あなたがたに言っておく。そうではない。むしろ分裂である。
25482 42 12 52 というのは、今から後は、一家の内で五人が相分れて、三人はふたりに、ふたりは三人に対立し、
25483 42 12 53 また父は子に、子は父に、母は娘に、娘は母に、しゅうとめは嫁に、嫁はしゅうとめに、対立するであろう」。
25484 42 12 54 イエスはまた群衆に対しても言われた、「あなたがたは、雲が西に起るのを見るとすぐ、にわか雨がやって来る、と言う。果してそのとおりになる。
25485 42 12 55 それから南風が吹くと、暑つくなるだろう、と言う。果してそのとおりになる。
25486 42 12 56 偽善者よ、あなたがたは天地の模様を見分けることを知りながら、どうして今の時代を見分けることができないのか。
25487 42 12 57 また、あなたがたは、なぜ正しいことを自分で判断しないのか。
25488 42 12 58 たとえば、あなたを訴える人と一緒に役人のところへ行くときには、途中でその人と和解するように努めるがよい。そうしないと、その人はあなたを裁判官のところへひっぱって行き、裁判官はあなたを獄吏に引き渡し、獄吏はあなたを獄に投げ込むであろう。
25489 42 12 59 わたしは言って置く、最後の一レプタまでも支払ってしまうまでは、決してそこから出て来ることはできない」。
25490 42 13 1 ちょうどその時、ある人々がきて、ピラトがガリラヤ人たちの血を流し、それを彼らの犠牲の血に混ぜたことを、イエスに知らせた。
25491 42 13 2 そこでイエスは答えて言われた、「それらのガリラヤ人が、そのような災難にあったからといって、他のすべてのガリラヤ人以上に罪が深かったと思うのか。
25492 42 13 3 あなたがたに言うが、そうではない。あなたがたも悔い改めなければ、みな同じように滅びるであろう。
25493 42 13 4 また、シロアムの塔が倒れたためにおし殺されたあの十八人は、エルサレムの他の全住民以上に罪の負債があったと思うか。
25494 42 13 5 あなたがたに言うが、そうではない。あなたがたも悔い改めなければ、みな同じように滅びるであろう」。
25495 42 13 6 それから、この譬を語られた、「ある人が自分のぶどう園にいちじくの木を植えて置いたので、実を捜しにきたが見つからなかった。
25496 42 13 7 そこで園丁に言った、『わたしは三年間も実を求めて、このいちじくの木のところにきたのだが、いまだに見あたらない。その木を切り倒してしまえ。なんのために、土地をむだにふさがせて置くのか』。
25497 42 13 8 すると園丁は答えて言った、『ご主人様、ことしも、そのままにして置いてください。そのまわりを掘って肥料をやって見ますから。
25498 42 13 9 それで来年実がなりましたら結構です。もしそれでもだめでしたら、切り倒してください』」。
25499 42 13 10 安息日に、ある会堂で教えておられると、
25500 42 13 11 そこに十八年間も病気の霊につかれ、かがんだままで、からだを伸ばすことの全くできない女がいた。
25501 42 13 12 イエスはこの女を見て、呼びよせ、「女よ、あなたの病気はなおった」と言って、
25502 42 13 13 手をその上に置かれた。すると立ちどころに、そのからだがまっすぐになり、そして神をたたえはじめた。
25503 42 13 14 ところが会堂司は、イエスが安息日に病気をいやされたことを憤り、群衆にむかって言った、「働くべき日は六日ある。その間に、なおしてもらいにきなさい。安息日にはいけない」。
25504 42 13 15 主はこれに答えて言われた、「偽善者たちよ、あなたがたはだれでも、安息日であっても、自分の牛やろばを家畜小屋から解いて、水を飲ませに引き出してやるではないか。
25505 42 13 16 それなら、十八年間もサタンに縛られていた、アブラハムの娘であるこの女を、安息日であっても、その束縛から解いてやるべきではなかったか」。
25506 42 13 17 こう言われたので、イエスに反対していた人たちはみな恥じ入った。そして群衆はこぞって、イエスがなされたすべてのすばらしいみわざを見て喜んだ。
25507 42 13 18 そこで言われた、「神の国は何に似ているか。またそれを何にたとえようか。
25508 42 13 19 一粒のからし種のようなものである。ある人がそれを取って庭にまくと、育って木となり、空の鳥もその枝に宿るようになる」。
25509 42 13 20 また言われた、「神の国を何にたとえようか。
25510 42 13 21 パン種のようなものである。女がそれを取って三斗の粉の中に混ぜると、全体がふくらんでくる」。
25511 42 13 22 さてイエスは教えながら町々村々を通り過ぎ、エルサレムへと旅を続けられた。
25512 42 13 23 すると、ある人がイエスに、「主よ、救われる人は少ないのですか」と尋ねた。
25513 42 13 24 そこでイエスは人々にむかって言われた、「狭い戸口からはいるように努めなさい。事実、はいろうとしても、はいれない人が多いのだから。
25514 42 13 25 家の主人が立って戸を閉じてしまってから、あなたがたが外に立ち戸をたたき始めて、『ご主人様、どうぞあけてください』と言っても、主人はそれに答えて、『あなたがたがどこからきた人なのか、わたしは知らない』と言うであろう。
25515 42 13 26 そのとき、『わたしたちはあなたとご一緒に飲み食いしました。また、あなたはわたしたちの大通りで教えてくださいました』と言い出しても、
25516 42 13 27 彼は、『あなたがたがどこからきた人なのか、わたしは知らない。悪事を働く者どもよ、みんな行ってしまえ』と言うであろう。
25517 42 13 28 あなたがたは、アブラハム、イサク、ヤコブやすべての預言者たちが、神の国にはいっているのに、自分たちは外に投げ出されることになれば、そこで泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう。
25518 42 13 29 それから人々が、東から西から、また南から北からきて、神の国で宴会の席につくであろう。
25519 42 13 30 こうしてあとのもので先になるものがあり、また、先のものであとになるものもある」。
25520 42 13 31 ちょうどその時、あるパリサイ人たちが、イエスに近寄ってきて言った、「ここから出て行きなさい。ヘロデがあなたを殺そうとしています」。
25521 42 13 32 そこで彼らに言われた、「あのきつねのところへ行ってこう言え、『見よ、わたしはきょうもあすも悪霊を追い出し、また、病気をいやし、そして三日目にわざを終えるであろう。
25522 42 13 33 しかし、きょうもあすも、またその次の日も、わたしは進んで行かねばならない。預言者がエルサレム以外の地で死ぬことは、あり得ないからである』。
25523 42 13 34 ああ、エルサレム、エルサレム、預言者たちを殺し、おまえにつかわされた人々を石で打ち殺す者よ。ちょうどめんどりが翼の下にひなを集めるように、わたしはおまえの子らを幾たび集めようとしたことであろう。それだのに、おまえたちは応じようとしなかった。
25524 42 13 35 見よ、おまえたちの家は見捨てられてしまう。わたしは言って置く、『主の名によってきたるものに、祝福あれ』
25525 42 14 1 ある安息日のこと、食事をするために、あるパリサイ派のかしらの家にはいって行かれたが、人々はイエスの様子をうかがっていた。
25526 42 14 2 するとそこに、水腫をわずらっている人が、みまえにいた。
25527 42 14 3 イエスは律法学者やパリサイ人たちにむかって言われた、「安息日に人をいやすのは、正しいことかどうか」。
25528 42 14 4 彼らは黙っていた。そこでイエスはその人に手を置いていやしてやり、そしてお帰しになった。
25529 42 14 5 それから彼らに言われた、「あなたがたのうちで、自分のむすこか牛が井戸に落ち込んだなら、安息日だからといって、すぐに引き上げてやらない者がいるだろうか」。
25530 42 14 6 彼らはこれに対して返す言葉がなかった。
25531 42 14 7 客に招かれた者たちが上座を選んでいる様子をごらんになって、彼らに一つの譬を語られた。
25532 42 14 8 「婚宴に招かれたときには、上座につくな。あるいは、あなたよりも身分の高い人が招かれているかも知れない。
25533 42 14 9 その場合、あなたとその人とを招いた者がきて、『このかたに座を譲ってください』と言うであろう。そのとき、あなたは恥じ入って末座につくことになるであろう。
25534 42 14 10 むしろ、招かれた場合には、末座に行ってすわりなさい。そうすれば、招いてくれた人がきて、『友よ、上座の方へお進みください』と言うであろう。そのとき、あなたは席を共にするみんなの前で、面目をほどこすことになるであろう。
25535 42 14 11 おおよそ、自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされるであろう」。
25536 42 14 12 また、イエスは自分を招いた人に言われた、「午餐または晩餐の席を設ける場合には、友人、兄弟、親族、金持の隣り人などは呼ばぬがよい。恐らく彼らもあなたを招きかえし、それであなたは返礼を受けることになるから。
25537 42 14 13 むしろ、宴会を催す場合には、貧乏人、不具者、足なえ、盲人などを招くがよい。
25538 42 14 14 そうすれば、彼らは返礼ができないから、あなたはさいわいになるであろう。正しい人々の復活の際には、あなたは報いられるであろう」。
25539 42 14 15 列席者のひとりがこれを聞いてイエスに「神の国で食事をする人は、さいわいです」と言った。
25540 42 14 16 そこでイエスが言われた、「ある人が盛大な晩餐会を催して、大ぜいの人を招いた。
25541 42 14 17 晩餐の時刻になったので、招いておいた人たちのもとに僕を送って、『さあ、おいでください。もう準備ができましたから』と言わせた。
25542 42 14 18 ところが、みんな一様に断りはじめた。最初の人は、『わたしは土地を買いましたので、行って見なければなりません。どうぞ、おゆるしください』と言った。
25543 42 14 19 ほかの人は、『わたしは五対の牛を買いましたので、それをしらべに行くところです。どうぞ、おゆるしください』、
25544 42 14 20 もうひとりの人は、『わたしは妻をめとりましたので、参ることができません』と言った。
25545 42 14 21 僕は帰ってきて、以上の事を主人に報告した。すると家の主人はおこって僕に言った、『いますぐに、町の大通りや小道へ行って、貧乏人、不具者、盲人、足なえなどを、ここへ連れてきなさい』。
25546 42 14 22 僕は言った、『ご主人様、仰せのとおりにいたしましたが、まだ席がございます』。
25547 42 14 23 主人が僕に言った、『道やかきねのあたりに出て行って、この家がいっぱいになるように、人々を無理やりにひっぱってきなさい。
25548 42 14 24 あなたがたに言って置くが、招かれた人で、わたしの晩餐にあずかる者はひとりもないであろう』」。
25549 42 14 25 大ぜいの群衆がついてきたので、イエスは彼らの方に向いて言われた、
25550 42 14 26 「だれでも、父、母、妻、子、兄弟、姉妹、さらに自分の命までも捨てて、わたしのもとに来るのでなければ、わたしの弟子となることはできない。
25551 42 14 27 自分の十字架を負うてわたしについて来るものでなければ、わたしの弟子となることはできない。
25552 42 14 28 あなたがたのうちで、だれかが邸宅を建てようと思うなら、それを仕上げるのに足りるだけの金を持っているかどうかを見るため、まず、すわってその費用を計算しないだろうか。
25553 42 14 29 そうしないと、土台をすえただけで完成することができず、見ているみんなの人が、
25554 42 14 30 『あの人は建てかけたが、仕上げができなかった』と言ってあざ笑うようになろう。
25555 42 14 31 また、どんな王でも、ほかの王と戦いを交えるために出て行く場合には、まず座して、こちらの一万人をもって、二万人を率いて向かって来る敵に対抗できるかどうか、考えて見ないだろうか。
25556 42 14 32 もし自分の力にあまれば、敵がまだ遠くにいるうちに、使者を送って、和を求めるであろう。
25557 42 14 33 それと同じように、あなたがたのうちで、自分の財産をことごとく捨て切るものでなくては、わたしの弟子となることはできない。
25558 42 14 34 塩は良いものだ。しかし、塩もききめがなくなったら、何によって塩味が取りもどされようか。
25559 42 14 35 土にも肥料にも役立たず、外に投げ捨てられてしまう。聞く耳のあるものは聞くがよい」。
25560 42 15 1 さて、取税人や罪人たちが皆、イエスの話を聞こうとして近寄ってきた。
25561 42 15 2 するとパリサイ人や律法学者たちがつぶやいて、「この人は罪人たちを迎えて一緒に食事をしている」と言った。
25562 42 15 3 そこでイエスは彼らに、この譬をお話しになった、
25563 42 15 4 「あなたがたのうちに、百匹の羊を持っている者がいたとする。その一匹がいなくなったら、九十九匹を野原に残しておいて、いなくなった一匹を見つけるまでは捜し歩かないであろうか。
25564 42 15 5 そして見つけたら、喜んでそれを自分の肩に乗せ、
25565 42 15 6 家に帰ってきて友人や隣り人を呼び集め、『わたしと一緒に喜んでください。いなくなった羊を見つけましたから』と言うであろう。
25566 42 15 7 よく聞きなさい。それと同じように、罪人がひとりでも悔い改めるなら、悔改めを必要としない九十九人の正しい人のためにもまさる大きいよろこびが、天にあるであろう。
25567 42 15 8 また、ある女が銀貨十枚を持っていて、もしその一枚をなくしたとすれば、彼女はあかりをつけて家中を掃き、それを見つけるまでは注意深く捜さないであろうか。
25568 42 15 9 そして、見つけたなら、女友だちや近所の女たちを呼び集めて、『わたしと一緒に喜んでください。なくした銀貨が見つかりましたから』と言うであろう。
25569 42 15 10 よく聞きなさい。それと同じように、罪人がひとりでも悔い改めるなら、神の御使たちの前でよろこびがあるであろう」。
25570 42 15 11 また言われた、「ある人に、ふたりのむすこがあった。
25571 42 15 12 ところが、弟が父親に言った、『父よ、あなたの財産のうちでわたしがいただく分をください』。そこで、父はその身代をふたりに分けてやった。
25572 42 15 13 それから幾日もたたないうちに、弟は自分のものを全部とりまとめて遠い所へ行き、そこで放蕩に身を持ちくずして財産を使い果した。
25573 42 15 14 何もかも浪費してしまったのち、その地方にひどいききんがあったので、彼は食べることにも窮しはじめた。
25574 42 15 15 そこで、その地方のある住民のところに行って身を寄せたところが、その人は彼を畑にやって豚を飼わせた。
25575 42 15 16 彼は、豚の食べるいなご豆で腹を満たしたいと思うほどであったが、何もくれる人はなかった。
25576 42 15 17 そこで彼は本心に立ちかえって言った、『父のところには食物のあり余っている雇人が大ぜいいるのに、わたしはここで飢えて死のうとしている。
25577 42 15 18 立って、父のところへ帰って、こう言おう、父よ、わたしは天に対しても、あなたにむかっても、罪を犯しました。
25578 42 15 19 もう、あなたのむすこと呼ばれる資格はありません。どうぞ、雇人のひとり同様にしてください』。
25579 42 15 20 そこで立って、父のところへ出かけた。まだ遠く離れていたのに、父は彼をみとめ、哀れに思って走り寄り、その首をだいて接吻した。
25580 42 15 21 むすこは父に言った、『父よ、わたしは天に対しても、あなたにむかっても、罪を犯しました。もうあなたのむすこと呼ばれる資格はありません』。
25581 42 15 22 しかし父は僕たちに言いつけた、『さあ、早く、最上の着物を出してきてこの子に着せ、指輪を手にはめ、はきものを足にはかせなさい。
25582 42 15 23 また、肥えた子牛を引いてきてほふりなさい。食べて楽しもうではないか。
25583 42 15 24 このむすこが死んでいたのに生き返り、いなくなっていたのに見つかったのだから』。それから祝宴がはじまった。
25584 42 15 25 ところが、兄は畑にいたが、帰ってきて家に近づくと、音楽や踊りの音が聞えたので、
25585 42 15 26 ひとりの僕を呼んで、『いったい、これは何事なのか』と尋ねた。
25586 42 15 27 僕は答えた、『あなたのご兄弟がお帰りになりました。無事に迎えたというので、父上が肥えた子牛をほふらせなさったのです』。
25587 42 15 28 兄はおこって家にはいろうとしなかったので、父が出てきてなだめると、
25588 42 15 29 兄は父にむかって言った、『わたしは何か年もあなたに仕えて、一度でもあなたの言いつけにそむいたことはなかったのに、友だちと楽しむために子やぎ一匹も下さったことはありません。
25589 42 15 30 それだのに、遊女どもと一緒になって、あなたの身代を食いつぶしたこのあなたの子が帰ってくると、そのために肥えた子牛をほふりなさいました』。
25590 42 15 31 すると父は言った、『子よ、あなたはいつもわたしと一緒にいるし、またわたしのものは全部あなたのものだ。
25591 42 15 32 しかし、このあなたの弟は、死んでいたのに生き返り、いなくなっていたのに見つかったのだから、喜び祝うのはあたりまえである』」。
25592 42 16 1 イエスはまた、弟子たちに言われた、「ある金持のところにひとりの家令がいたが、彼は主人の財産を浪費していると、告げ口をする者があった。
25593 42 16 2 そこで主人は彼を呼んで言った、『あなたについて聞いていることがあるが、あれはどうなのか。あなたの会計報告を出しなさい。もう家令をさせて置くわけにはいかないから』。
25594 42 16 3 この家令は心の中で思った、『どうしようか。主人がわたしの職を取り上げようとしている。土を掘るには力がないし、物ごいするのは恥ずかしい。
25595 42 16 4 そうだ、わかった。こうしておけば、職をやめさせられる場合、人々がわたしをその家に迎えてくれるだろう』。
25596 42 16 5 それから彼は、主人の負債者をひとりびとり呼び出して、初めの人に、『あなたは、わたしの主人にどれだけ負債がありますか』と尋ねた。
25597 42 16 6 『油百樽です』と答えた。そこで家令が言った、『ここにあなたの証書がある。すぐそこにすわって、五十樽と書き変えなさい』。
25598 42 16 7 次に、もうひとりに、『あなたの負債はどれだけですか』と尋ねると、『麦百石です』と答えた。これに対して、『ここに、あなたの証書があるが、八十石と書き変えなさい』と言った。
25599 42 16 8 ところが主人は、この不正な家令の利口なやり方をほめた。この世の子らはその時代に対しては、光の子らよりも利口である。
25600 42 16 9 またあなたがたに言うが、不正の富を用いてでも、自分のために友だちをつくるがよい。そうすれば、富が無くなった場合、あなたがたを永遠のすまいに迎えてくれるであろう。
25601 42 16 10 小事に忠実な人は、大事にも忠実である。そして、小事に不忠実な人は大事にも不忠実である。
25602 42 16 11 だから、もしあなたがたが不正の富について忠実でなかったら、だれが真の富を任せるだろうか。
25603 42 16 12 また、もしほかの人のものについて忠実でなかったら、だれがあなたがたのものを与えてくれようか。
25604 42 16 13 どの僕でも、ふたりの主人に兼ね仕えることはできない。一方を憎んで他方を愛し、あるいは、一方に親しんで他方をうとんじるからである。あなたがたは、神と富とに兼ね仕えることはできない」。
25605 42 16 14 欲の深いパリサイ人たちが、すべてこれらの言葉を聞いて、イエスをあざ笑った。
25606 42 16 15 そこで彼らにむかって言われた、「あなたがたは、人々の前で自分を正しいとする人たちである。しかし、神はあなたがたの心をご存じである。人々の間で尊ばれるものは、神のみまえでは忌みきらわれる。
25607 42 16 16 律法と預言者とはヨハネの時までのものである。それ以来、神の国が宣べ伝えられ、人々は皆これに突入している。
25608 42 16 17 しかし、律法の一画が落ちるよりは、天地の滅びる方が、もっとたやすい。
25609 42 16 18 すべて自分の妻を出して他の女をめとる者は、姦淫を行うものであり、また、夫から出された女をめとる者も、姦淫を行うものである。
25610 42 16 19 ある金持がいた。彼は紫の衣や細布を着て、毎日ぜいたくに遊び暮していた。
25611 42 16 20 ところが、ラザロという貧乏人が全身でき物でおおわれて、この金持の玄関の前にすわり、
25612 42 16 21 その食卓から落ちるもので飢えをしのごうと望んでいた。その上、犬がきて彼のでき物をなめていた。
25613 42 16 22 この貧乏人がついに死に、御使たちに連れられてアブラハムのふところに送られた。金持も死んで葬られた。
25614 42 16 23 そして黄泉にいて苦しみながら、目をあげると、アブラハムとそのふところにいるラザロとが、はるかに見えた。
25615 42 16 24 そこで声をあげて言った、『父、アブラハムよ、わたしをあわれんでください。ラザロをおつかわしになって、その指先を水でぬらし、わたしの舌を冷やさせてください。わたしはこの火炎の中で苦しみもだえています』。
25616 42 16 25 アブラハムが言った、『子よ、思い出すがよい。あなたは生前よいものを受け、ラザロの方は悪いものを受けた。しかし今ここでは、彼は慰められ、あなたは苦しみもだえている。
25617 42 16 26 そればかりか、わたしたちとあなたがたとの間には大きな淵がおいてあって、こちらからあなたがたの方へ渡ろうと思ってもできないし、そちらからわたしたちの方へ越えて来ることもできない』。
25618 42 16 27 そこで金持が言った、『父よ、ではお願いします。わたしの父の家へラザロをつかわしてください。
25619 42 16 28 わたしに五人の兄弟がいますので、こんな苦しい所へ来ることがないように、彼らに警告していただきたいのです』。
25620 42 16 29 アブラハムは言った、『彼らにはモーセと預言者とがある。それに聞くがよかろう』。
25621 42 16 30 金持が言った、『いえいえ、父アブラハムよ、もし死人の中からだれかが兄弟たちのところへ行ってくれましたら、彼らは悔い改めるでしょう』。
25622 42 16 31 アブラハムは言った、『もし彼らがモーセと預言者とに耳を傾けないなら、死人の中からよみがえってくる者があっても、彼らはその勧めを聞き入れはしないであろう』」。
25623 42 17 1 イエスは弟子たちに言われた、「罪の誘惑が来ることは避けられない。しかし、それをきたらせる者は、わざわいである。
25624 42 17 2 これらの小さい者のひとりを罪に誘惑するよりは、むしろ、ひきうすを首にかけられて海に投げ入れられた方が、ましである。
25625 42 17 3 あなたがたは、自分で注意していなさい。もしあなたの兄弟が罪を犯すなら、彼をいさめなさい。そして悔い改めたら、ゆるしてやりなさい。
25626 42 17 4 もしあなたに対して一日に七度罪を犯し、そして七度『悔い改めます』と言ってあなたのところへ帰ってくれば、ゆるしてやるがよい」。
25627 42 17 5 使徒たちは主に「わたしたちの信仰を増してください」と言った。
25628 42 17 6 そこで主が言われた、「もし、からし種一粒ほどの信仰があるなら、この桑の木に、『抜け出して海に植われ』と言ったとしても、その言葉どおりになるであろう。
25629 42 17 7 あなたがたのうちのだれかに、耕作か牧畜かをする僕があるとする。その僕が畑から帰って来たとき、彼に『すぐきて、食卓につきなさい』と言うだろうか。
25630 42 17 8 かえって、『夕食の用意をしてくれ。そしてわたしが飲み食いをするあいだ、帯をしめて給仕をしなさい。そのあとで、飲み食いをするがよい』と、言うではないか。
25631 42 17 9 僕が命じられたことをしたからといって、主人は彼に感謝するだろうか。
25632 42 17 10 同様にあなたがたも、命じられたことを皆してしまったとき、『わたしたちはふつつかな僕です。すべき事をしたに過ぎません』と言いなさい」。
25633 42 17 11 イエスはエルサレムへ行かれるとき、サマリヤとガリラヤとの間を通られた。
25634 42 17 12 そして、ある村にはいられると、十人のらい病人に出会われたが、彼らは遠くの方で立ちとどまり、
25635 42 17 13 声を張りあげて、「イエスさま、わたしたちをあわれんでください」と言った。
25636 42 17 14 イエスは彼らをごらんになって、「祭司たちのところに行って、からだを見せなさい」と言われた。そして、行く途中で彼らはきよめられた。
25637 42 17 15 そのうちのひとりは、自分がいやされたことを知り、大声で神をほめたたえながら帰ってきて、
25638 42 17 16 イエスの足もとにひれ伏して感謝した。これはサマリヤ人であった。
25639 42 17 17 イエスは彼にむかって言われた、「きよめられたのは、十人ではなかったか。ほかの九人は、どこにいるのか。
25640 42 17 18 神をほめたたえるために帰ってきたものは、この他国人のほかにはいないのか」。
25641 42 17 19 それから、その人に言われた、「立って行きなさい。あなたの信仰があなたを救ったのだ」。
25642 42 17 20 神の国はいつ来るのかと、パリサイ人が尋ねたので、イエスは答えて言われた、「神の国は、見られるかたちで来るものではない。
25643 42 17 21 また『見よ、ここにある』『あそこにある』などとも言えない。神の国は、実にあなたがたのただ中にあるのだ」。
25644 42 17 22 それから弟子たちに言われた、「あなたがたは、人の子の日を一日でも見たいと願っても見ることができない時が来るであろう。
25645 42 17 23 人々はあなたがたに、『見よ、あそこに』『見よ、ここに』と言うだろう。しかし、そちらへ行くな、彼らのあとを追うな。
25646 42 17 24 いなずまが天の端からひかり出て天の端へとひらめき渡るように、人の子もその日には同じようであるだろう。
25647 42 17 25 しかし、彼はまず多くの苦しみを受け、またこの時代の人々に捨てられねばならない。
25648 42 17 26 そして、ノアの時にあったように、人の子の時にも同様なことが起るであろう。
25649 42 17 27 ノアが箱舟にはいる日まで、人々は食い、飲み、めとり、とつぎなどしていたが、そこへ洪水が襲ってきて、彼らをことごとく滅ぼした。
25650 42 17 28 ロトの時にも同じようなことが起った。人々は食い、飲み、買い、売り、植え、建てなどしていたが、
25651 42 17 29 ロトがソドムから出て行った日に、天から火と硫黄とが降ってきて、彼らをことごとく滅ぼした。
25652 42 17 30 人の子が現れる日も、ちょうどそれと同様であろう。
25653 42 17 31 その日には、屋上にいる者は、自分の持ち物が家の中にあっても、取りにおりるな。畑にいる者も同じように、あとへもどるな。
25654 42 17 32 ロトの妻のことを思い出しなさい。
25655 42 17 33 自分の命を救おうとするものは、それを失い、それを失うものは、保つのである。
25656 42 17 34 あなたがたに言っておく。その夜、ふたりの男が一つ寝床にいるならば、ひとりは取り去られ、他のひとりは残されるであろう。
25657 42 17 35 ふたりの女が一緒にうすをひいているならば、ひとりは取り去られ、他のひとりは残されるであろう。〔
25658 42 17 36 ふたりの男が畑におれば、ひとりは取り去られ、他のひとりは残されるであろう〕」。
25659 42 17 37 弟子たちは「主よ、それはどこであるのですか」と尋ねた。するとイエスは言われた、「死体のある所には、またはげたかが集まるものである」。
25660 42 18 1 また、イエスは失望せずに常に祈るべきことを、人々に譬で教えられた。
25661 42 18 2 「ある町に、神を恐れず、人を人とも思わぬ裁判官がいた。
25662 42 18 3 ところが、その同じ町にひとりのやもめがいて、彼のもとにたびたびきて、『どうぞ、わたしを訴える者をさばいて、わたしを守ってください』と願いつづけた。
25663 42 18 4 彼はしばらくの間きき入れないでいたが、そののち、心のうちで考えた、『わたしは神をも恐れず、人を人とも思わないが、
25664 42 18 5 このやもめがわたしに面倒をかけるから、彼女のためになる裁判をしてやろう。そうしたら、絶えずやってきてわたしを悩ますことがなくなるだろう』」。
25665 42 18 6 そこで主は言われた、「この不義な裁判官の言っていることを聞いたか。
25666 42 18 7 まして神は、日夜叫び求める選民のために、正しいさばきをしてくださらずに長い間そのままにしておかれることがあろうか。
25667 42 18 8 あなたがたに言っておくが、神はすみやかにさばいてくださるであろう。しかし、人の子が来るとき、地上に信仰が見られるであろうか」。
25668 42 18 9 自分を義人だと自任して他人を見下げている人たちに対して、イエスはまたこの譬をお話しになった。
25669 42 18 10 「ふたりの人が祈るために宮に上った。そのひとりはパリサイ人であり、もうひとりは取税人であった。
25670 42 18 11 パリサイ人は立って、ひとりでこう祈った、『神よ、わたしはほかの人たちのような貪欲な者、不正な者、姦淫をする者ではなく、また、この取税人のような人間でもないことを感謝します。
25671 42 18 12 わたしは一週に二度断食しており、全収入の十分の一をささげています』。
25672 42 18 13 ところが、取税人は遠く離れて立ち、目を天にむけようともしないで、胸を打ちながら言った、『神様、罪人のわたしをおゆるしください』と。
25673 42 18 14 あなたがたに言っておく。神に義とされて自分の家に帰ったのは、この取税人であって、あのパリサイ人ではなかった。おおよそ、自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされるであろう」。
25674 42 18 15 イエスにさわっていただくために、人々が幼な子らをみもとに連れてきた。ところが、弟子たちはそれを見て、彼らをたしなめた。
25675 42 18 16 するとイエスは幼な子らを呼び寄せて言われた、「幼な子らをわたしのところに来るままにしておきなさい、止めてはならない。神の国はこのような者の国である。
25676 42 18 17 よく聞いておくがよい。だれでも幼な子のように神の国を受けいれる者でなければ、そこにはいることは決してできない」。
25677 42 18 18 また、ある役人がイエスに尋ねた、「よき師よ、何をしたら永遠の生命が受けられましょうか」。
25678 42 18 19 イエスは言われた、「なぜわたしをよき者と言うのか。神ひとりのほかによい者はいない。
25679 42 18 20 いましめはあなたの知っているとおりである、『姦淫するな、殺すな、盗むな、偽証を立てるな、父と母とを敬え』」。
25680 42 18 21 すると彼は言った、「それらのことはみな、小さい時から守っております」。
25681 42 18 22 イエスはこれを聞いて言われた、「あなたのする事がまだ一つ残っている。持っているものをみな売り払って、貧しい人々に分けてやりなさい。そうすれば、天に宝を持つようになろう。そして、わたしに従ってきなさい」。
25682 42 18 23 彼はこの言葉を聞いて非常に悲しんだ。大金持であったからである。
25683 42 18 24 イエスは彼の様子を見て言われた、「財産のある者が神の国にはいるのはなんとむずかしいことであろう。
25684 42 18 25 富んでいる者が神の国にはいるよりは、らくだが針の穴を通る方が、もっとやさしい」。
25685 42 18 26 これを聞いた人々が、「それでは、だれが救われることができるのですか」と尋ねると、
25686 42 18 27 イエスは言われた、「人にはできない事も、神にはできる」。
25687 42 18 28 ペテロが言った、「ごらんなさい、わたしたちは自分のものを捨てて、あなたに従いました」。
25688 42 18 29 イエスは言われた、「よく聞いておくがよい。だれでも神の国のために、家、妻、兄弟、両親、子を捨てた者は、
25689 42 18 30 必ずこの時代ではその幾倍もを受け、また、きたるべき世では永遠の生命を受けるのである」。
25690 42 18 31 イエスは十二弟子を呼び寄せて言われた、「見よ、わたしたちはエルサレムへ上って行くが、人の子について預言者たちがしるしたことは、すべて成就するであろう。
25691 42 18 32 人の子は異邦人に引きわたされ、あざけられ、はずかしめを受け、つばきをかけられ、
25692 42 18 33 また、むち打たれてから、ついに殺され、そして三日目によみがえるであろう」。
25693 42 18 34 弟子たちには、これらのことが何一つわからなかった。この言葉が彼らに隠されていたので、イエスの言われた事が理解できなかった。
25694 42 18 35 イエスがエリコに近づかれたとき、ある盲人が道ばたにすわって、物ごいをしていた。
25695 42 18 36 群衆が通り過ぎる音を耳にして、彼は何事があるのかと尋ねた。
25696 42 18 37 ところが、ナザレのイエスがお通りなのだと聞かされたので、
25697 42 18 38 声をあげて、「ダビデの子イエスよ、わたしをあわれんで下さい」と言った。
25698 42 18 39 先頭に立つ人々が彼をしかって黙らせようとしたが、彼はますます激しく叫びつづけた、「ダビデの子よ、わたしをあわれんで下さい」。
25699 42 18 40 そこでイエスは立ちどまって、その者を連れて来るように、とお命じになった。彼が近づいたとき、
25700 42 18 41 「わたしに何をしてほしいのか」とおたずねになると、「主よ、見えるようになることです」と答えた。
25701 42 18 42 そこでイエスは言われた、「見えるようになれ。あなたの信仰があなたを救った」。
25702 42 18 43 すると彼は、たちまち見えるようになった。そして神をあがめながらイエスに従って行った。これを見て、人々はみな神をさんびした。
25703 42 19 1 さて、イエスはエリコにはいって、その町をお通りになった。
25704 42 19 2 ところが、そこにザアカイという名の人がいた。この人は取税人のかしらで、金持であった。
25705 42 19 3 彼は、イエスがどんな人か見たいと思っていたが、背が低かったので、群衆にさえぎられて見ることができなかった。
25706 42 19 4 それでイエスを見るために、前の方に走って行って、いちじく桑の木に登った。そこを通られるところだったからである。
25707 42 19 5 イエスは、その場所にこられたとき、上を見あげて言われた、「ザアカイよ、急いで下りてきなさい。きょう、あなたの家に泊まることにしているから」。
25708 42 19 6 そこでザアカイは急いでおりてきて、よろこんでイエスを迎え入れた。
25709 42 19 7 人々はみな、これを見てつぶやき、「彼は罪人の家にはいって客となった」と言った。
25710 42 19 8 ザアカイは立って主に言った、「主よ、わたしは誓って自分の財産の半分を貧民に施します。また、もしだれかから不正な取立てをしていましたら、それを四倍にして返します」。
25711 42 19 9 イエスは彼に言われた、「きょう、救がこの家にきた。この人もアブラハムの子なのだから。
25712 42 19 10 人の子がきたのは、失われたものを尋ね出して救うためである」。
25713 42 19 11 人々がこれらの言葉を聞いているときに、イエスはなお一つの譬をお話しになった。それはエルサレムに近づいてこられたし、また人々が神の国はたちまち現れると思っていたためである。
25714 42 19 12 それで言われた、「ある身分の高い人が、王位を受けて帰ってくるために遠い所へ旅立つことになった。
25715 42 19 13 そこで十人の僕を呼び十ミナを渡して言った、『わたしが帰って来るまで、これで商売をしなさい』。
25716 42 19 14 ところが、本国の住民は彼を憎んでいたので、あとから使者をおくって、『この人が王になるのをわれわれは望んでいない』と言わせた。
25717 42 19 15 さて、彼が王位を受けて帰ってきたとき、だれがどんなもうけをしたかを知ろうとして、金を渡しておいた僕たちを呼んでこさせた。
25718 42 19 16 最初の者が進み出て言った、『ご主人様、あなたの一ミナで十ミナをもうけました』。
25719 42 19 17 主人は言った、『よい僕よ、うまくやった。あなたは小さい事に忠実であったから、十の町を支配させる』。
25720 42 19 18 次の者がきて言った、『ご主人様、あなたの一ミナで五ミナをつくりました』。
25721 42 19 19 そこでこの者にも、『では、あなたは五つの町のかしらになれ』と言った。
25722 42 19 20 それから、もうひとりの者がきて言った、『ご主人様、さあ、ここにあなたの一ミナがあります。わたしはそれをふくさに包んで、しまっておきました。
25723 42 19 21 あなたはきびしい方で、おあずけにならなかったものを取りたて、おまきにならなかったものを刈る人なので、おそろしかったのです』。
25724 42 19 22 彼に言った、『悪い僕よ、わたしはあなたの言ったその言葉であなたをさばこう。わたしがきびしくて、あずけなかったものを取りたて、まかなかったものを刈る人間だと、知っているのか。
25725 42 19 23 では、なぜわたしの金を銀行に入れなかったのか。そうすれば、わたしが帰ってきたとき、その金を利子と一緒に引き出したであろうに』。
25726 42 19 24 そして、そばに立っていた人々に、『その一ミナを彼から取り上げて、十ミナを持っている者に与えなさい』と言った。
25727 42 19 25 彼らは言った、『ご主人様、あの人は既に十ミナを持っています』。
25728 42 19 26 『あなたがたに言うが、おおよそ持っている人には、なお与えられ、持っていない人からは、持っているものまでも取り上げられるであろう。
25729 42 19 27 しかしわたしが王になることを好まなかったあの敵どもを、ここにひっぱってきて、わたしの前で打ち殺せ』」。
25730 42 19 28 イエスはこれらのことを言ったのち、先頭に立ち、エルサレムへ上って行かれた。
25731 42 19 29 そしてオリブという山に沿ったベテパゲとベタニヤに近づかれたとき、ふたりの弟子をつかわして言われた、
25732 42 19 30 「向こうの村へ行きなさい。そこにはいったら、まだだれも乗ったことのないろばの子がつないであるのを見るであろう。それを解いて、引いてきなさい。
25733 42 19 31 もしだれかが『なぜ解くのか』と問うたら、『主がお入り用なのです』と、そう言いなさい」。
25734 42 19 32 そこで、つかわされた者たちが行って見ると、果して、言われたとおりであった。
25735 42 19 33 彼らが、そのろばの子を解いていると、その持ち主たちが、「なぜろばの子を解くのか」と言ったので、
25736 42 19 34 「主がお入り用なのです」と答えた。
25737 42 19 35 そしてそれをイエスのところに引いてきて、その子ろばの上に自分たちの上着をかけてイエスをお乗せした。
25738 42 19 36 そして進んで行かれると、人々は自分たちの上着を道に敷いた。
25739 42 19 37 いよいよオリブ山の下り道あたりに近づかれると、大ぜいの弟子たちはみな喜んで、彼らが見たすべての力あるみわざについて、声高らかに神をさんびして言いはじめた、
25740 42 19 38 「主の御名によってきたる王に、祝福あれ。天には平和、いと高きところには栄光あれ」。
25741 42 19 39 ところが、群衆の中にいたあるパリサイ人たちがイエスに言った、「先生、あなたの弟子たちをおしかり下さい」。
25742 42 19 40 答えて言われた、「あなたがたに言うが、もしこの人たちが黙れば、石が叫ぶであろう」。
25743 42 19 41 いよいよ都の近くにきて、それが見えたとき、そのために泣いて言われた、
25744 42 19 42 「もしおまえも、この日に、平和をもたらす道を知ってさえいたら……しかし、それは今おまえの目に隠されている。
25745 42 19 43 いつかは、敵が周囲に塁を築き、おまえを取りかこんで、四方から押し迫り、
25746 42 19 44 おまえとその内にいる子らとを地に打ち倒し、城内の一つの石も他の石の上に残して置かない日が来るであろう。それは、おまえが神のおとずれの時を知らないでいたからである」。
25747 42 19 45 それから宮にはいり、商売人たちを追い出しはじめて、
25748 42 19 46 彼らに言われた、「『わが家は祈の家であるべきだ』と書いてあるのに、あなたがたはそれを盗賊の巣にしてしまった」。
25749 42 19 47 イエスは毎日、宮で教えておられた。祭司長、律法学者また民衆の重立った者たちはイエスを殺そうと思っていたが、
25750 42 19 48 民衆がみな熱心にイエスに耳を傾けていたので、手のくだしようがなかった。
25751 42 20 1 ある日、イエスが宮で人々に教え、福音を宣べておられると、祭司長や律法学者たちが、長老たちと共に近寄ってきて、
25752 42 20 2 イエスに言った、「何の権威によってこれらの事をするのですか。そうする権威をあなたに与えたのはだれですか、わたしたちに言ってください」。
25753 42 20 3 そこで、イエスは答えて言われた、「わたしも、ひと言たずねよう。それに答えてほしい。
25754 42 20 4 ヨハネのバプテスマは、天からであったか、人からであったか」。
25755 42 20 5 彼らは互に論じて言った、「もし天からだと言えば、では、なぜ彼を信じなかったのか、とイエスは言うだろう。
25756 42 20 6 しかし、もし人からだと言えば、民衆はみな、ヨハネを預言者だと信じているから、わたしたちを石で打つだろう」。
25757 42 20 7 それで彼らは「どこからか、知りません」と答えた。
25758 42 20 8 イエスはこれに対して言われた、「わたしも何の権威によってこれらの事をするのか、あなたがたに言うまい」。
25759 42 20 9 そこでイエスは次の譬を民衆に語り出された、「ある人がぶどう園を造って農夫たちに貸し、長い旅に出た。
25760 42 20 10 季節になったので、農夫たちのところへ、ひとりの僕を送って、ぶどう園の収穫の分け前を出させようとした。ところが、農夫たちは、その僕を袋だたきにし、から手で帰らせた。
25761 42 20 11 そこで彼はもうひとりの僕を送った。彼らはその僕も袋だたきにし、侮辱を加えて、から手で帰らせた。
25762 42 20 12 そこで更に三人目の者を送ったが、彼らはこの者も、傷を負わせて追い出した。
25763 42 20 13 ぶどう園の主人は言った、『どうしようか。そうだ、わたしの愛子をつかわそう。これなら、たぶん敬ってくれるだろう』。
25764 42 20 14 ところが、農夫たちは彼を見ると、『あれはあと取りだ。あれを殺してしまおう。そうしたら、その財産はわれわれのものになるのだ』と互に話し合い、
25765 42 20 15 彼をぶどう園の外に追い出して殺した。そのさい、ぶどう園の主人は、彼らをどうするだろうか。
25766 42 20 16 彼は出てきて、この農夫たちを殺し、ぶどう園を他の人々に与えるであろう」。人々はこれを聞いて、「そんなことがあってはなりません」と言った。
25767 42 20 17 そこで、イエスは彼らを見つめて言われた、「それでは、『家造りらの捨てた石が隅のかしら石になった』
25768 42 20 18 すべてその石の上に落ちる者は打ち砕かれ、それがだれかの上に落ちかかるなら、その人はこなみじんにされるであろう」。
25769 42 20 19 このとき、律法学者たちや祭司長たちはイエスに手をかけようと思ったが、民衆を恐れた。いまの譬が自分たちに当てて語られたのだと、悟ったからである。
25770 42 20 20 そこで、彼らは機会をうかがい、義人を装うまわし者どもを送って、イエスを総督の支配と権威とに引き渡すため、その言葉じりを捕えさせようとした。
25771 42 20 21 彼らは尋ねて言った、「先生、わたしたちは、あなたの語り教えられることが正しく、また、あなたは分け隔てをなさらず、真理に基いて神の道を教えておられることを、承知しています。
25772 42 20 22 ところで、カイザルに貢を納めてよいでしょうか、いけないでしょうか」。
25773 42 20 23 イエスは彼らの悪巧みを見破って言われた、
25774 42 20 24 「デナリを見せなさい。それにあるのは、だれの肖像、だれの記号なのか」。「カイザルのです」と、彼らが答えた。
25775 42 20 25 するとイエスは彼らに言われた、「それなら、カイザルのものはカイザルに、神のものは神に返しなさい」。
25776 42 20 26 そこで彼らは、民衆の前でイエスの言葉じりを捕えることができず、その答に驚嘆して、黙ってしまった。
25777 42 20 27 復活ということはないと言い張っていたサドカイ人のある者たちが、イエスに近寄ってきて質問した、
25778 42 20 28 「先生、モーセは、わたしたちのためにこう書いています、『もしある人の兄が妻をめとり、子がなくて死んだなら、弟はこの女をめとって、兄のために子をもうけねばならない』。
25779 42 20 29 ところで、ここに七人の兄弟がいました。長男は妻をめとりましたが、子がなくて死に、
25780 42 20 30 そして次男、三男と、次々に、その女をめとり、
25781 42 20 31 七人とも同様に、子をもうけずに死にました。
25782 42 20 32 のちに、その女も死にました。
25783 42 20 33 さて、復活の時には、この女は七人のうち、だれの妻になるのですか。七人とも彼女を妻にしたのですが」。
25784 42 20 34 イエスは彼らに言われた、「この世の子らは、めとったり、とついだりするが、
25785 42 20 35 かの世にはいって死人からの復活にあずかるにふさわしい者たちは、めとったり、とついだりすることはない。
25786 42 20 36 彼らは天使に等しいものであり、また復活にあずかるゆえに、神の子でもあるので、もう死ぬことはあり得ないからである。
25787 42 20 37 死人がよみがえることは、モーセも柴の篇で、主を『アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神』と呼んで、これを示した。
25788 42 20 38 神は死んだ者の神ではなく、生きている者の神である。人はみな神に生きるものだからである」。
25789 42 20 39 律法学者のうちのある人々が答えて言った、「先生、仰せのとおりです」。
25790 42 20 40 彼らはそれ以上何もあえて問いかけようとしなかった。
25791 42 20 41 イエスは彼らに言われた、「どうして人々はキリストをダビデの子だと言うのか。
25792 42 20 42 ダビデ自身が詩篇の中で言っている、『主はわが主に仰せになった、
25793 42 20 43 あなたの敵をあなたの足台とする時までは、わたしの右に座していなさい』。
25794 42 20 44 このように、ダビデはキリストを主と呼んでいる。それなら、どうしてキリストはダビデの子であろうか」。
25795 42 20 45 民衆がみな聞いているとき、イエスは弟子たちに言われた、
25796 42 20 46 「律法学者に気をつけなさい。彼らは長い衣を着て歩くのを好み、広場での敬礼や会堂の上席や宴会の上座をよろこび、
25797 42 20 47 やもめたちの家を食い倒し、見えのために長い祈をする。彼らはもっときびしいさばきを受けるであろう」。
25798 42 21 1 イエスは目をあげて、金持たちがさいせん箱に献金を投げ入れるのを見られ、
25799 42 21 2 また、ある貧しいやもめが、レプタ二つを入れるのを見て
25800 42 21 3 言われた、「よく聞きなさい。あの貧しいやもめはだれよりもたくさん入れたのだ。
25801 42 21 4 これらの人たちはみな、ありあまる中から献金を投げ入れたが、あの婦人は、その乏しい中から、持っている生活費全部を入れたからである」。
25802 42 21 5 ある人々が、見事な石と奉納物とで宮が飾られていることを話していたので、イエスは言われた、
25803 42 21 6 「あなたがたはこれらのものをながめているが、その石一つでもくずされずに、他の石の上に残ることもなくなる日が、来るであろう」。
25804 42 21 7 そこで彼らはたずねた、「先生、では、いつそんなことが起るのでしょうか。またそんなことが起るような場合には、どんな前兆がありますか」。
25805 42 21 8 イエスが言われた、「あなたがたは、惑わされないように気をつけなさい。多くの者がわたしの名を名のって現れ、自分がそれだとか、時が近づいたとか、言うであろう。彼らについて行くな。
25806 42 21 9 戦争と騒乱とのうわさを聞くときにも、おじ恐れるな。こうしたことはまず起らねばならないが、終りはすぐにはこない」。
25807 42 21 10 それから彼らに言われた、「民は民に、国は国に敵対して立ち上がるであろう。
25808 42 21 11 また大地震があり、あちこちに疫病やききんが起り、いろいろ恐ろしいことや天からの物すごい前兆があるであろう。
25809 42 21 12 しかし、これらのあらゆる出来事のある前に、人々はあなたがたに手をかけて迫害をし、会堂や獄に引き渡し、わたしの名のゆえに王や総督の前にひっぱって行くであろう。
25810 42 21 13 それは、あなたがたがあかしをする機会となるであろう。
25811 42 21 14 だから、どう答弁しようかと、前もって考えておかないことに心を決めなさい。
25812 42 21 15 あなたの反対者のだれもが抗弁も否定もできないような言葉と知恵とを、わたしが授けるから。
25813 42 21 16 しかし、あなたがたは両親、兄弟、親族、友人にさえ裏切られるであろう。また、あなたがたの中で殺されるものもあろう。
25814 42 21 17 また、わたしの名のゆえにすべての人に憎まれるであろう。
25815 42 21 18 しかし、あなたがたの髪の毛一すじでも失われることはない。
25816 42 21 19 あなたがたは耐え忍ぶことによって、自分の魂をかち取るであろう。
25817 42 21 20 エルサレムが軍隊に包囲されるのを見たならば、そのときは、その滅亡が近づいたとさとりなさい。
25818 42 21 21 そのとき、ユダヤにいる人々は山へ逃げよ。市中にいる者は、そこから出て行くがよい。また、いなかにいる者は市内にはいってはいけない。
25819 42 21 22 それは、聖書にしるされたすべての事が実現する刑罰の日であるからだ。
25820 42 21 23 その日には、身重の女と乳飲み子をもつ女とは、不幸である。地上には大きな苦難があり、この民にはみ怒りが臨み、
25821 42 21 24 彼らはつるぎの刃に倒れ、また捕えられて諸国へ引きゆかれるであろう。そしてエルサレムは、異邦人の時期が満ちるまで、彼らに踏みにじられているであろう。
25822 42 21 25 また日と月と星とに、しるしが現れるであろう。そして、地上では、諸国民が悩み、海と大波とのとどろきにおじ惑い、
25823 42 21 26 人々は世界に起ろうとする事を思い、恐怖と不安で気絶するであろう。もろもろの天体が揺り動かされるからである。
25824 42 21 27 そのとき、大いなる力と栄光とをもって、人の子が雲に乗って来るのを、人々は見るであろう。
25825 42 21 28 これらの事が起りはじめたら、身を起し頭をもたげなさい。あなたがたの救が近づいているのだから」。
25826 42 21 29 それから一つの譬を話された、「いちじくの木を、またすべての木を見なさい。
25827 42 21 30 はや芽を出せば、あなたがたはそれを見て、夏がすでに近いと、自分で気づくのである。
25828 42 21 31 このようにあなたがたも、これらの事が起るのを見たなら、神の国が近いのだとさとりなさい。
25829 42 21 32 よく聞いておきなさい。これらの事が、ことごとく起るまでは、この時代は滅びることがない。
25830 42 21 33 天地は滅びるであろう。しかしわたしの言葉は決して滅びることがない。
25831 42 21 34 あなたがたが放縦や、泥酔や、世の煩いのために心が鈍っているうちに、思いがけないとき、その日がわなのようにあなたがたを捕えることがないように、よく注意していなさい。
25832 42 21 35 その日は地の全面に住むすべての人に臨むのであるから。
25833 42 21 36 これらの起ろうとしているすべての事からのがれて、人の子の前に立つことができるように、絶えず目をさまして祈っていなさい」。
25834 42 21 37 イエスは昼のあいだは宮で教え、夜には出て行ってオリブという山で夜をすごしておられた。
25835 42 21 38 民衆はみな、み教を聞こうとして、いつも朝早く宮に行き、イエスのもとに集まった。
25836 42 22 1 さて、過越といわれている除酵祭が近づいた。
25837 42 22 2 祭司長たちや律法学者たちは、どうかしてイエスを殺そうと計っていた。民衆を恐れていたからである。
25838 42 22 3 そのとき、十二弟子のひとりで、イスカリオテと呼ばれていたユダに、サタンがはいった。
25839 42 22 4 すなわち、彼は祭司長たちや宮守がしらたちのところへ行って、どうしてイエスを彼らに渡そうかと、その方法について協議した。
25840 42 22 5 彼らは喜んで、ユダに金を与える取決めをした。
25841 42 22 6 ユダはそれを承諾した。そして、群衆のいないときにイエスを引き渡そうと、機会をねらっていた。
25842 42 22 7 さて、過越の小羊をほふるべき除酵祭の日がきたので、
25843 42 22 8 イエスはペテロとヨハネとを使いに出して言われた、「行って、過越の食事ができるように準備をしなさい」。
25844 42 22 9 彼らは言った、「どこに準備をしたらよいのですか」。
25845 42 22 10 イエスは言われた、「市内にはいったら、水がめを持っている男に出会うであろう。その人がはいる家までついて行って、
25846 42 22 11 その家の主人に言いなさい、『弟子たちと一緒に過越の食事をする座敷はどこか、と先生が言っておられます』。
25847 42 22 12 すると、その主人は席の整えられた二階の広間を見せてくれるから、そこに用意をしなさい」。
25848 42 22 13 弟子たちは出て行ってみると、イエスが言われたとおりであったので、過越の食事の用意をした。
25849 42 22 14 時間になったので、イエスは食卓につかれ、使徒たちも共に席についた。
25850 42 22 15 イエスは彼らに言われた、「わたしは苦しみを受ける前に、あなたがたとこの過越の食事をしようと、切に望んでいた。
25851 42 22 16 あなたがたに言って置くが、神の国で過越が成就する時までは、わたしは二度と、この過越の食事をすることはない」。
25852 42 22 17 そして杯を取り、感謝して言われた、「これを取って、互に分けて飲め。
25853 42 22 18 あなたがたに言っておくが、今からのち神の国が来るまでは、わたしはぶどうの実から造ったものを、いっさい飲まない」。
25854 42 22 19 またパンを取り、感謝してこれをさき、弟子たちに与えて言われた、「これは、あなたがたのために与えるわたしのからだである。わたしを記念するため、このように行いなさい」。
25855 42 22 20 食事ののち、杯も同じ様にして言われた、「この杯は、あなたがたのために流すわたしの血で立てられる新しい契約である。
25856 42 22 21 しかし、そこに、わたしを裏切る者が、わたしと一緒に食卓に手を置いている。
25857 42 22 22 人の子は定められたとおりに、去って行く。しかし人の子を裏切るその人は、わざわいである」。
25858 42 22 23 弟子たちは、自分たちのうちのだれが、そんな事をしようとしているのだろうと、互に論じはじめた。
25859 42 22 24 それから、自分たちの中でだれがいちばん偉いだろうかと言って、争論が彼らの間に、起った。
25860 42 22 25 そこでイエスが言われた、「異邦の王たちはその民の上に君臨し、また、権力をふるっている者たちは恩人と呼ばれる。
25861 42 22 26 しかし、あなたがたは、そうであってはならない。かえって、あなたがたの中でいちばん偉い人はいちばん若い者のように、指導する人は仕える者のようになるべきである。
25862 42 22 27 食卓につく人と給仕する者と、どちらが偉いのか。食卓につく人の方ではないか。しかし、わたしはあなたがたの中で、給仕をする者のようにしている。
25863 42 22 28 あなたがたは、わたしの試錬のあいだ、わたしと一緒に最後まで忍んでくれた人たちである。
25864 42 22 29 それで、わたしの父が国の支配をわたしにゆだねてくださったように、わたしもそれをあなたがたにゆだね、
25865 42 22 30 わたしの国で食卓について飲み食いをさせ、また位に座してイスラエルの十二の部族をさばかせるであろう。
25866 42 22 31 シモン、シモン、見よ、サタンはあなたがたを麦のようにふるいにかけることを願って許された。
25867 42 22 32 しかし、わたしはあなたの信仰がなくならないように、あなたのために祈った。それで、あなたが立ち直ったときには、兄弟たちを力づけてやりなさい」。
25868 42 22 33 シモンが言った、「主よ、わたしは獄にでも、また死に至るまでも、あなたとご一緒に行く覚悟です」。
25869 42 22 34 するとイエスが言われた、「ペテロよ、あなたに言っておく。きょう、鶏が鳴くまでに、あなたは三度わたしを知らないと言うだろう」。
25870 42 22 35 そして彼らに言われた、「わたしが財布も袋もくつも持たせずにあなたがたをつかわしたとき、何かこまったことがあったか」。彼らは、「いいえ、何もありませんでした」と答えた。
25871 42 22 36 そこで言われた、「しかし今は、財布のあるものは、それを持って行け。袋も同様に持って行け。また、つるぎのない者は、自分の上着を売って、それを買うがよい。
25872 42 22 37 あなたがたに言うが、『彼は罪人のひとりに数えられた』としるしてあることは、わたしの身に成しとげられねばならない。そうだ、わたしに係わることは成就している」。
25873 42 22 38 弟子たちが言った、「主よ、ごらんなさい、ここにつるぎが二振りございます」。イエスは言われた、「それでよい」。
25874 42 22 39 イエスは出て、いつものようにオリブ山に行かれると、弟子たちも従って行った。
25875 42 22 40 いつもの場所に着いてから、彼らに言われた、「誘惑に陥らないように祈りなさい」。
25876 42 22 41 そしてご自分は、石を投げてとどくほど離れたところへ退き、ひざまずいて、祈って言われた、
25877 42 22 42 「父よ、みこころならば、どうぞ、この杯をわたしから取りのけてください。しかし、わたしの思いではなく、みこころが成るようにしてください」。
25878 42 22 43 そのとき、御使が天からあらわれてイエスを力づけた。
25879 42 22 44 イエスは苦しみもだえて、ますます切に祈られた。そして、その汗が血のしたたりのように地に落ちた。
25880 42 22 45 祈を終えて立ちあがり、弟子たちのところへ行かれると、彼らが悲しみのはて寝入っているのをごらんになって
25881 42 22 46 言われた、「なぜ眠っているのか。誘惑に陥らないように、起きて祈っていなさい」。
25882 42 22 47 イエスがまだそう言っておられるうちに、そこに群衆が現れ、十二弟子のひとりでユダという者が先頭に立って、イエスに接吻しようとして近づいてきた。
25883 42 22 48 そこでイエスは言われた、「ユダ、あなたは接吻をもって人の子を裏切るのか」。
25884 42 22 49 イエスのそばにいた人たちは、事のなりゆきを見て、「主よ、つるぎで切りつけてやりましょうか」と言って、
25885 42 22 50 そのうちのひとりが、祭司長の僕に切りつけ、その右の耳を切り落した。
25886 42 22 51 イエスはこれに対して言われた、「それだけでやめなさい」。そして、その僕の耳に手を触て、おいやしになった。
25887 42 22 52 それから、自分にむかって来る祭司長、宮守がしら、長老たちに対して言われた、「あなたがたは、強盗にむかうように剣や棒を持って出てきたのか。
25888 42 22 53 毎日あなたがたと一緒に宮にいた時には、わたしに手をかけなかった。だが、今はあなたがたの時、また、やみの支配の時である」。
25889 42 22 54 それから人々はイエスを捕え、ひっぱって大祭司の邸宅へつれて行った。ペテロは遠くからついて行った。
25890 42 22 55 人々は中庭のまん中に火をたいて、一緒にすわっていたので、ペテロもその中にすわった。
25891 42 22 56 すると、ある女中が、彼が火のそばにすわっているのを見、彼を見つめて、「この人もイエスと一緒にいました」と言った。
25892 42 22 57 ペテロはそれを打ち消して、「わたしはその人を知らない」と言った。
25893 42 22 58 しばらくして、ほかの人がペテロを見て言った、「あなたもあの仲間のひとりだ」。するとペテロは言った、「いや、それはちがう」。
25894 42 22 59 約一時間たってから、またほかの者が言い張った、「たしかにこの人もイエスと一緒だった。この人もガリラヤ人なのだから」。
25895 42 22 60 ペテロは言った、「あなたの言っていることは、わたしにわからない」。すると、彼がまだ言い終らぬうちに、たちまち、鶏が鳴いた。
25896 42 22 61 主は振りむいてペテロを見つめられた。そのときペテロは、「きょう、鶏が鳴く前に、三度わたしを知らないと言うであろう」と言われた主のお言葉を思い出した。
25897 42 22 62 そして外へ出て、激しく泣いた。
25898 42 22 63 イエスを監視していた人たちは、イエスを嘲弄し、打ちたたき、
25899 42 22 64 目かくしをして、「言いあててみよ。打ったのは、だれか」ときいたりした。
25900 42 22 65 そのほか、いろいろな事を言って、イエスを愚弄した。
25901 42 22 66 夜が明けたとき、人民の長老、祭司長たち、律法学者たちが集まり、イエスを議会に引き出して言った、
25902 42 22 67 「あなたがキリストなら、そう言ってもらいたい」。イエスは言われた、「わたしが言っても、あなたがたは信じないだろう。
25903 42 22 68 また、わたしがたずねても、答えないだろう。
25904 42 22 69 しかし、人の子は今からのち、全能の神の右に座するであろう」。
25905 42 22 70 彼らは言った、「では、あなたは神の子なのか」。イエスは言われた、「あなたがたの言うとおりである」。
25906 42 22 71 すると彼らは言った、「これ以上、なんの証拠がいるか。われわれは直接彼の口から聞いたのだから」。
25907 42 23 1 群衆はみな立ちあがって、イエスをピラトのところへ連れて行った。
25908 42 23 2 そして訴え出て言った、「わたしたちは、この人が国民を惑わし、貢をカイザルに納めることを禁じ、また自分こそ王なるキリストだと、となえているところを目撃しました」。
25909 42 23 3 ピラトはイエスに尋ねた、「あなたがユダヤ人の王であるか」。イエスは「そのとおりである」とお答えになった。
25910 42 23 4 そこでピラトは祭司長たちと群衆とにむかって言った、「わたしはこの人になんの罪もみとめない」。
25911 42 23 5 ところが彼らは、ますます言いつのってやまなかった、「彼は、ガリラヤからはじめてこの所まで、ユダヤ全国にわたって教え、民衆を煽動しているのです」。
25912 42 23 6 ピラトはこれを聞いて、この人はガリラヤ人かと尋ね、
25913 42 23 7 そしてヘロデの支配下のものであることを確かめたので、ちょうどこのころ、ヘロデがエルサレムにいたのをさいわい、そちらへイエスを送りとどけた。
25914 42 23 8 ヘロデはイエスを見て非常に喜んだ。それは、かねてイエスのことを聞いていたので、会って見たいと長いあいだ思っていたし、またイエスが何か奇跡を行うのを見たいと望んでいたからである。
25915 42 23 9 それで、いろいろと質問を試みたが、イエスは何もお答えにならなかった。
25916 42 23 10 祭司長たちと律法学者たちとは立って、激しい語調でイエスを訴えた。
25917 42 23 11 またヘロデはその兵卒どもと一緒になって、イエスを侮辱したり嘲弄したりしたあげく、はなやかな着物を着せてピラトへ送りかえした。
25918 42 23 12 ヘロデとピラトとは以前は互に敵視していたが、この日に親しい仲になった。
25919 42 23 13 ピラトは、祭司長たちと役人たちと民衆とを、呼び集めて言った、
25920 42 23 14 「おまえたちは、この人を民衆を惑わすものとしてわたしのところに連れてきたので、おまえたちの面前でしらべたが、訴え出ているような罪は、この人に少しもみとめられなかった。
25921 42 23 15 ヘロデもまたみとめなかった。現に彼はイエスをわれわれに送りかえしてきた。この人はなんら死に当るようなことはしていないのである。
25922 42 23 16 だから、彼をむち打ってから、ゆるしてやることにしよう」。〔
25923 42 23 17 祭ごとにピラトがひとりの囚人をゆるしてやることになっていた。〕
25924 42 23 18 ところが、彼らはいっせいに叫んで言った、「その人を殺せ。バラバをゆるしてくれ」。
25925 42 23 19 このバラバは、都で起った暴動と殺人とのかどで、獄に投ぜられていた者である。
25926 42 23 20 ピラトはイエスをゆるしてやりたいと思って、もう一度かれらに呼びかけた。
25927 42 23 21 しかし彼らは、わめきたてて「十字架につけよ、彼を十字架につけよ」と言いつづけた。
25928 42 23 22 ピラトは三度目に彼らにむかって言った、「では、この人は、いったい、どんな悪事をしたのか。彼には死に当る罪は全くみとめられなかった。だから、むち打ってから彼をゆるしてやることにしよう」。
25929 42 23 23 ところが、彼らは大声をあげて詰め寄り、イエスを十字架につけるように要求した。そして、その声が勝った。
25930 42 23 24 ピラトはついに彼らの願いどおりにすることに決定した。
25931 42 23 25 そして、暴動と殺人とのかどで獄に投ぜられた者の方を、彼らの要求に応じてゆるしてやり、イエスの方は彼らに引き渡して、その意のままにまかせた。
25932 42 23 26 彼らがイエスをひいてゆく途中、シモンというクレネ人が郊外から出てきたのを捕えて十字架を負わせ、それをになってイエスのあとから行かせた。
25933 42 23 27 大ぜいの民衆と、悲しみ嘆いてやまない女たちの群れとが、イエスに従って行った。
25934 42 23 28 イエスは女たちの方に振りむいて言われた、「エルサレムの娘たちよ、わたしのために泣くな。むしろ、あなたがた自身のため、また自分の子供たちのために泣くがよい。
25935 42 23 29 『不妊の女と子を産まなかった胎と、ふくませなかった乳房とは、さいわいだ』と言う日が、いまに来る。
25936 42 23 30 そのとき、人々は山にむかって、われわれの上に倒れかかれと言い、また丘にむかって、われわれにおおいかぶされと言い出すであろう。
25937 42 23 31 もし、生木でさえもそうされるなら、枯木はどうされることであろう」。
25938 42 23 32 さて、イエスと共に刑を受けるために、ほかにふたりの犯罪人も引かれていった。
25939 42 23 33 されこうべと呼ばれている所に着くと、人々はそこでイエスを十字架につけ、犯罪人たちも、ひとりは右に、ひとりは左に、十字架につけた。
25940 42 23 34 そのとき、イエスは言われた、「父よ、彼らをおゆるしください。彼らは何をしているのか、わからずにいるのです」。人々はイエスの着物をくじ引きで分け合った。
25941 42 23 35 民衆は立って見ていた。役人たちもあざ笑って言った、「彼は他人を救った。もし彼が神のキリスト、選ばれた者であるなら、自分自身を救うがよい」。
25942 42 23 36 兵卒どももイエスをののしり、近寄ってきて酢いぶどう酒をさし出して言った、
25943 42 23 37 「あなたがユダヤ人の王なら、自分を救いなさい」。
25944 42 23 38 イエスの上には、「これはユダヤ人の王」と書いた札がかけてあった。
25945 42 23 39 十字架にかけられた犯罪人のひとりが、「あなたはキリストではないか。それなら、自分を救い、またわれわれも救ってみよ」と、イエスに悪口を言いつづけた。
25946 42 23 40 もうひとりは、それをたしなめて言った、「おまえは同じ刑を受けていながら、神を恐れないのか。
25947 42 23 41 お互は自分のやった事のむくいを受けているのだから、こうなったのは当然だ。しかし、このかたは何も悪いことをしたのではない」。
25948 42 23 42 そして言った、「イエスよ、あなたが御国の権威をもっておいでになる時には、わたしを思い出してください」。
25949 42 23 43 イエスは言われた、「よく言っておくが、あなたはきょう、わたしと一緒にパラダイスにいるであろう」。
25950 42 23 44 時はもう昼の十二時ごろであったが、太陽は光を失い、全地は暗くなって、三時に及んだ。
25951 42 23 45 そして聖所の幕がまん中から裂けた。
25952 42 23 46 そのとき、イエスは声高く叫んで言われた、「父よ、わたしの霊をみ手にゆだねます」。こう言ってついに息を引きとられた。
25953 42 23 47 百卒長はこの有様を見て、神をあがめ、「ほんとうに、この人は正しい人であった」と言った。
25954 42 23 48 この光景を見に集まってきた群衆も、これらの出来事を見て、みな胸を打ちながら帰って行った。
25955 42 23 49 すべてイエスを知っていた者や、ガリラヤから従ってきた女たちも、遠い所に立って、これらのことを見ていた。
25956 42 23 50 ここに、ヨセフという議員がいたが、善良で正しい人であった。
25957 42 23 51 この人はユダヤの町アリマタヤの出身で、神の国を待ち望んでいた。彼は議会の議決や行動には賛成していなかった。
25958 42 23 52 この人がピラトのところへ行って、イエスのからだの引取り方を願い出て、
25959 42 23 53 それを取りおろして亜麻布に包み、まだだれも葬ったことのない、岩を掘って造った墓に納めた。
25960 42 23 54 この日は準備の日であって、安息日が始まりかけていた。
25961 42 23 55 イエスと一緒にガリラヤからきた女たちは、あとについてきて、その墓を見、またイエスのからだが納められる様子を見とどけた。
25962 42 23 56 そして帰って、香料と香油とを用意した。
25963 42 24 1 週の初めの日、夜明け前に、女たちは用意しておいた香料を携えて、墓に行った。
25964 42 24 2 ところが、石が墓からころがしてあるので、
25965 42 24 3 中にはいってみると、主イエスのからだが見当らなかった。
25966 42 24 4 そのため途方にくれていると、見よ、輝いた衣を着たふたりの者が、彼らに現れた。
25967 42 24 5 女たちは驚き恐れて、顔を地に伏せていると、このふたりの者が言った、「あなたがたは、なぜ生きた方を死人の中にたずねているのか。
25968 42 24 6 そのかたは、ここにはおられない。よみがえられたのだ。まだガリラヤにおられたとき、あなたがたにお話しになったことを思い出しなさい。
25969 42 24 7 すなわち、人の子は必ず罪人らの手に渡され、十字架につけられ、そして三日目によみがえる、と仰せられたではないか」。
25970 42 24 8 そこで女たちはその言葉を思い出し、
25971 42 24 9 墓から帰って、これらいっさいのことを、十一弟子や、その他みんなの人に報告した。
25972 42 24 10 この女たちというのは、マグダラのマリヤ、ヨハンナ、およびヤコブの母マリヤであった。彼女たちと一緒にいたほかの女たちも、このことを使徒たちに話した。
25973 42 24 11 ところが、使徒たちには、それが愚かな話のように思われて、それを信じなかった。〔
25974 42 24 12 ペテロは立って墓へ走って行き、かがんで中を見ると、亜麻布だけがそこにあったので、事の次第を不思議に思いながら帰って行った。〕
25975 42 24 13 この日、ふたりの弟子が、エルサレムから七マイルばかり離れたエマオという村へ行きながら、
25976 42 24 14 このいっさいの出来事について互に語り合っていた。
25977 42 24 15 語り合い論じ合っていると、イエスご自身が近づいてきて、彼らと一緒に歩いて行かれた。
25978 42 24 16 しかし、彼らの目がさえぎられて、イエスを認めることができなかった。
25979 42 24 17 イエスは彼らに言われた、「歩きながら互に語り合っているその話は、なんのことなのか」。彼らは悲しそうな顔をして立ちどまった。
25980 42 24 18 そのひとりのクレオパという者が、答えて言った、「あなたはエルサレムに泊まっていながら、あなただけが、この都でこのごろ起ったことをご存じないのですか」。
25981 42 24 19 「それは、どんなことか」と言われると、彼らは言った、「ナザレのイエスのことです。あのかたは、神とすべての民衆との前で、わざにも言葉にも力ある預言者でしたが、
25982 42 24 20 祭司長たちや役人たちが、死刑に処するために引き渡し、十字架につけたのです。
25983 42 24 21 わたしたちは、イスラエルを救うのはこの人であろうと、望みをかけていました。しかもその上に、この事が起ってから、きょうが三日目なのです。
25984 42 24 22 ところが、わたしたちの仲間である数人の女が、わたしたちを驚かせました。というのは、彼らが朝早く墓に行きますと、
25985 42 24 23 イエスのからだが見当らないので、帰ってきましたが、そのとき御使が現れて、『イエスは生きておられる』と告げたと申すのです。
25986 42 24 24 それで、わたしたちの仲間が数人、墓に行って見ますと、果して女たちが言ったとおりで、イエスは見当りませんでした」。
25987 42 24 25 そこでイエスが言われた、「ああ、愚かで心のにぶいため、預言者たちが説いたすべての事を信じられない者たちよ。
25988 42 24 26 キリストは必ず、これらの苦難を受けて、その栄光に入るはずではなかったのか」。
25989 42 24 27 こう言って、モーセやすべての預言者からはじめて、聖書全体にわたり、ご自身についてしるしてある事どもを、説きあかされた。
25990 42 24 28 それから、彼らは行こうとしていた村に近づいたが、イエスがなお先へ進み行かれる様子であった。
25991 42 24 29 そこで、しいて引き止めて言った、「わたしたちと一緒にお泊まり下さい。もう夕暮になっており、日もはや傾いています」。イエスは、彼らと共に泊まるために、家にはいられた。
25992 42 24 30 一緒に食卓につかれたとき、パンを取り、祝福してさき、彼らに渡しておられるうちに、
25993 42 24 31 彼らの目が開けて、それがイエスであることがわかった。すると、み姿が見えなくなった。
25994 42 24 32 彼らは互に言った、「道々お話しになったとき、また聖書を説き明してくださったとき、お互の心が内に燃えたではないか」。
25995 42 24 33 そして、すぐに立ってエルサレムに帰って見ると、十一弟子とその仲間が集まっていて、
25996 42 24 34 「主は、ほんとうによみがえって、シモンに現れなさった」と言っていた。
25997 42 24 35 そこでふたりの者は、途中であったことや、パンをおさきになる様子でイエスだとわかったことなどを話した。
25998 42 24 36 こう話していると、イエスが彼らの中にお立ちになった。〔そして「やすかれ」と言われた。〕
25999 42 24 37 彼らは恐れ驚いて、霊を見ているのだと思った。
26000 42 24 38 そこでイエスが言われた、「なぜおじ惑っているのか。どうして心に疑いを起すのか。
26001 42 24 39 わたしの手や足を見なさい。まさしくわたしなのだ。さわって見なさい。霊には肉や骨はないが、あなたがたが見るとおり、わたしにはあるのだ」。〔
26002 42 24 40 こう言って、手と足とをお見せになった。〕
26003 42 24 41 彼らは喜びのあまり、まだ信じられないで不思議に思っていると、イエスが「ここに何か食物があるか」と言われた。
26004 42 24 42 彼らが焼いた魚の一きれをさしあげると、
26005 42 24 43 イエスはそれを取って、みんなの前で食べられた。
26006 42 24 44 それから彼らに対して言われた、「わたしが以前あなたがたと一緒にいた時分に話して聞かせた言葉は、こうであった。すなわち、モーセの律法と預言書と詩篇とに、わたしについて書いてあることは、必ずことごとく成就する」。
26007 42 24 45 そこでイエスは、聖書を悟らせるために彼らの心を開いて
26008 42 24 46 言われた、「こう、しるしてある。キリストは苦しみを受けて、三日目に死人の中からよみがえる。
26009 42 24 47 そして、その名によって罪のゆるしを得させる悔改めが、エルサレムからはじまって、もろもろの国民に宣べ伝えられる。
26010 42 24 48 あなたがたは、これらの事の証人である。
26011 42 24 49 見よ、わたしの父が約束されたものを、あなたがたに贈る。だから、上から力を授けられるまでは、あなたがたは都にとどまっていなさい」。
26012 42 24 50 それから、イエスは彼らをベタニヤの近くまで連れて行き、手をあげて彼らを祝福された。
26013 42 24 51 祝福しておられるうちに、彼らを離れて、〔天にあげられた。〕
26014 42 24 52 彼らは〔イエスを拝し、〕非常な喜びをもってエルサレムに帰り、
26015 42 24 53 絶えず宮にいて、神をほめたたえていた。
26016 43 1 1 初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった。
26017 43 1 2 この言は初めに神と共にあった。
26018 43 1 3 すべてのものは、これによってできた。できたもののうち、一つとしてこれによらないものはなかった。
26019 43 1 4 この言に命があった。そしてこの命は人の光であった。
26020 43 1 5 光はやみの中に輝いている。そして、やみはこれに勝たなかった。
26021 43 1 6 ここにひとりの人があって、神からつかわされていた。その名をヨハネと言った。
26022 43 1 7 この人はあかしのためにきた。光についてあかしをし、彼によってすべての人が信じるためである。
26023 43 1 8 彼は光ではなく、ただ、光についてあかしをするためにきたのである。
26024 43 1 9 すべての人を照すまことの光があって、世にきた。
26025 43 1 10 彼は世にいた。そして、世は彼によってできたのであるが、世は彼を知らずにいた。
26026 43 1 11 彼は自分のところにきたのに、自分の民は彼を受けいれなかった。
26027 43 1 12 しかし、彼を受けいれた者、すなわち、その名を信じた人々には、彼は神の子となる力を与えたのである。
26028 43 1 13 それらの人は、血すじによらず、肉の欲によらず、また、人の欲にもよらず、ただ神によって生れたのである。
26029 43 1 14 そして言は肉体となり、わたしたちのうちに宿った。わたしたちはその栄光を見た。それは父のひとり子としての栄光であって、めぐみとまこととに満ちていた。
26030 43 1 15 ヨハネは彼についてあかしをし、叫んで言った、「『わたしのあとに来るかたは、わたしよりもすぐれたかたである。わたしよりも先におられたからである』とわたしが言ったのは、この人のことである」。
26031 43 1 16 わたしたちすべての者は、その満ち満ちているものの中から受けて、めぐみにめぐみを加えられた。
26032 43 1 17 律法はモーセをとおして与えられ、めぐみとまこととは、イエス・キリストをとおしてきたのである。
26033 43 1 18 神を見た者はまだひとりもいない。ただ父のふところにいるひとり子なる神だけが、神をあらわしたのである。
26034 43 1 19 さて、ユダヤ人たちが、エルサレムから祭司たちやレビ人たちをヨハネのもとにつかわして、「あなたはどなたですか」と問わせたが、その時ヨハネが立てたあかしは、こうであった。
26035 43 1 20 すなわち、彼は告白して否まず、「わたしはキリストではない」と告白した。
26036 43 1 21 そこで、彼らは問うた、「それでは、どなたなのですか、あなたはエリヤですか」。彼は「いや、そうではない」と言った。「では、あの預言者ですか」。彼は「いいえ」と答えた。
26037 43 1 22 そこで、彼らは言った、「あなたはどなたですか。わたしたちをつかわした人々に、答を持って行けるようにしていただきたい。あなた自身をだれだと考えるのですか」。
26038 43 1 23 彼は言った、「わたしは、預言者イザヤが言ったように、『主の道をまっすぐにせよと荒野で呼ばわる者の声』である」。
26039 43 1 24 つかわされた人たちは、パリサイ人であった。
26040 43 1 25 彼らはヨハネに問うて言った、「では、あなたがキリストでもエリヤでもまたあの預言者でもないのなら、なぜバプテスマを授けるのですか」。
26041 43 1 26 ヨハネは彼らに答えて言った、「わたしは水でバプテスマを授けるが、あなたがたの知らないかたが、あなたがたの中に立っておられる。
26042 43 1 27 それがわたしのあとにあとにおいでになる方であって、わたしはその人のくつのひもを解く値うちもない」。
26043 43 1 28 これらのことは、ヨハネがバプテスマを授けていたヨルダンの向こうのベタニヤであったのである。
26044 43 1 29 その翌日、ヨハネはイエスが自分の方にこられるのを見て言った、「見よ、世の罪を取り除く神の小羊。
26045 43 1 30 『わたしのあとに来るかたは、わたしよりもすぐれたかたである。わたしよりも先におられたからである』とわたしが言ったのは、この人のことである。
26046 43 1 31 わたしはこのかたを知らなかった。しかし、このかたがイスラエルに現れてくださるそのことのために、わたしはきて、水でバプテスマを授けているのである」。
26047 43 1 32 ヨハネはまたあかしをして言った、「わたしは、御霊がはとのように天から下って、彼の上にとどまるのを見た。
26048 43 1 33 わたしはこの人を知らなかった。しかし、水でバプテスマを授けるようにと、わたしをおつかわしになったそのかたが、わたしに言われた、『ある人の上に、御霊が下ってとどまるのを見たら、その人こそは、御霊によってバプテスマを授けるかたである』。
26049 43 1 34 わたしはそれを見たので、このかたこそ神の子であると、あかしをしたのである」。
26050 43 1 35 その翌日、ヨハネはまたふたりの弟子たちと一緒に立っていたが、
26051 43 1 36 イエスが歩いておられるのに目をとめて言った、「見よ、神の小羊」。
26052 43 1 37 そのふたりの弟子は、ヨハネがそう言うのを聞いて、イエスについて行った。
26053 43 1 38 イエスはふり向き、彼らがついてくるのを見て言われた、「何か願いがあるのか」。彼らは言った、「ラビ(訳して言えば、先生)どこにおとまりなのですか」。
26054 43 1 39 イエスは彼らに言われた、「きてごらんなさい。そうしたらわかるだろう」。そこで彼らはついて行って、イエスの泊まっておられる所を見た。そして、その日はイエスのところに泊まった。時は午後四時ごろであった。
26055 43 1 40 ヨハネから聞いて、イエスについて行ったふたりのうちのひとりは、シモン・ペテロの兄弟アンデレであった。
26056 43 1 41 彼はまず自分の兄弟シモンに出会って言った、「わたしたちはメシヤ(訳せば、キリスト)にいま出会った」。
26057 43 1 42 そしてシモンをイエスのもとにつれてきた。イエスは彼に目をとめて言われた、「あなたはヨハネの子シモンである。あなたをケパ(訳せば、ペテロ)と呼ぶことにする」。
26058 43 1 43 その翌日、イエスはガリラヤに行こうとされたが、ピリポに出会って言われた、「わたしに従ってきなさい」。
26059 43 1 44 ピリポは、アンデレとペテロとの町ベツサイダの人であった。
26060 43 1 45 このピリポがナタナエルに出会って言った、「わたしたちは、モーセが律法の中にしるしており、預言者たちがしるしていた人、ヨセフの子、ナザレのイエスにいま出会った」。
26061 43 1 46 ナタナエルは彼に言った、「ナザレから、なんのよいものが出ようか」。ピリポは彼に言った、「きて見なさい」。
26062 43 1 47 イエスはナタナエルが自分の方に来るのを見て、彼について言われた、「見よ、あの人こそ、ほんとうのイスラエル人である。その心には偽りがない」。
26063 43 1 48 ナタナエルは言った、「どうしてわたしをご存じなのですか」。イエスは答えて言われた、「ピリポがあなたを呼ぶ前に、わたしはあなたが、いちじくの木の下にいるのを見た」。
26064 43 1 49 ナタナエルは答えた、「先生、あなたは神の子です。あなたはイスラエルの王です」。
26065 43 1 50 イエスは答えて言われた、「あなたが、いちじくの木の下にいるのを見たと、わたしが言ったので信じるのか。これよりも、もっと大きなことを、あなたは見るであろう」。
26066 43 1 51 また言われた、「よくよくあなたがたに言っておく。天が開けて、神の御使たちが人の子の上に上り下りするのを、あなたがたは見るであろう」。
26067 43 2 1 三日目にガリラヤのカナに婚礼があって、イエスの母がそこにいた。
26068 43 2 2 イエスも弟子たちも、その婚礼に招かれた。
26069 43 2 3 ぶどう酒がなくなったので、母はイエスに言った、「ぶどう酒がなくなってしまいました」。
26070 43 2 4 イエスは母に言われた、「婦人よ、あなたは、わたしと、なんの係わりがありますか。わたしの時は、まだきていません」。
26071 43 2 5 母は僕たちに言った、「このかたが、あなたがたに言いつけることは、なんでもして下さい」。
26072 43 2 6 そこには、ユダヤ人のきよめのならわしに従って、それぞれ四、五斗もはいる石の水がめが、六つ置いてあった。
26073 43 2 7 イエスは彼らに「かめに水をいっぱい入れなさい」と言われたので、彼らは口のところまでいっぱいに入れた。
26074 43 2 8 そこで彼らに言われた、「さあ、くんで、料理がしらのところに持って行きなさい」。すると、彼らは持って行った。
26075 43 2 9 料理がしらは、ぶどう酒になった水をなめてみたが、それがどこからきたのか知らなかったので、(水をくんだ僕たちは知っていた)花婿を呼んで
26076 43 2 10 言った、「どんな人でも、初めによいぶどう酒を出して、酔いがまわったころにわるいのを出すものだ。それだのに、あなたはよいぶどう酒を今までとっておかれました」。
26077 43 2 11 イエスは、この最初のしるしをガリラヤのカナで行い、その栄光を現された。そして弟子たちはイエスを信じた。
26078 43 2 12 そののち、イエスは、その母、兄弟たち、弟子たちと一緒に、カペナウムに下って、幾日かそこにとどまられた。
26079 43 2 13 さて、ユダヤ人の過越の祭が近づいたので、イエスはエルサレムに上られた。
26080 43 2 14 そして牛、羊、はとを売る者や両替する者などが宮の庭にすわり込んでいるのをごらんになって、
26081 43 2 15 なわでむちを造り、羊も牛もみな宮から追いだし、両替人の金を散らし、その台をひっくりかえし、
26082 43 2 16 はとを売る人々には「これらのものを持って、ここから出て行け。わたしの父の家を商売の家とするな」と言われた。
26083 43 2 17 弟子たちは、「あなたの家を思う熱心が、わたしを食いつくすであろう」と書いてあることを思い出した。
26084 43 2 18 そこで、ユダヤ人はイエスに言った、「こんなことをするからには、どんなしるしをわたしたちに見せてくれますか」。
26085 43 2 19 イエスは彼らに答えて言われた、「この神殿をこわしたら、わたしは三日のうちに、それを起すであろう」。
26086 43 2 20 そこで、ユダヤ人たちは言った、「この神殿を建てるのには、四十六年もかかっています。それだのに、あなたは三日のうちに、それを建てるのですか」。
26087 43 2 21 イエスは自分のからだである神殿のことを言われたのである。
26088 43 2 22 それで、イエスが死人の中からよみがえったとき、弟子たちはイエスがこう言われたことを思い出して、聖書とイエスのこの言葉とを信じた。
26089 43 2 23 過越の祭の間、イエスがエルサレムに滞在しておられたとき、多くの人々は、その行われたしるしを見て、イエスの名を信じた。
26090 43 2 24 しかしイエスご自身は、彼らに自分をお任せにならなかった。それは、すべての人を知っておられ、
26091 43 2 25 また人についてあかしする者を、必要とされなかったからである。それは、ご自身人の心の中にあることを知っておられたからである。
26092 43 3 1 パリサイ人のひとりで、その名をニコデモというユダヤ人の指導者があった。
26093 43 3 2 この人が夜イエスのもとにきて言った、「先生、わたしたちはあなたが神からこられた教師であることを知っています。神がご一緒でないなら、あなたがなさっておられるようなしるしは、だれにもできはしません」。
26094 43 3 3 イエスは答えて言われた、「よくよくあなたに言っておく。だれでも新しく生れなければ、神の国を見ることはできない」。
26095 43 3 4 ニコデモは言った、「人は年をとってから生れることが、どうしてできますか。もう一度、母の胎にはいって生れることができましょうか」。
26096 43 3 5 イエスは答えられた、「よくよくあなたに言っておく。だれでも、水と霊とから生れなければ、神の国にはいることはできない。
26097 43 3 6 肉から生れる者は肉であり、霊から生れる者は霊である。
26098 43 3 7 あなたがたは新しく生れなければならないと、わたしが言ったからとて、不思議に思うには及ばない。
26099 43 3 8 風は思いのままに吹く。あなたはその音を聞くが、それがどこからきて、どこへ行くかは知らない。霊から生れる者もみな、それと同じである」。
26100 43 3 9 ニコデモはイエスに答えて言った、「どうして、そんなことがあり得ましょうか」。
26101 43 3 10 イエスは彼に答えて言われた、「あなたはイスラエルの教師でありながら、これぐらいのことがわからないのか。
26102 43 3 11 よくよく言っておく。わたしたちは自分の知っていることを語り、また自分の見たことをあかししているのに、あなたがたはわたしたちのあかしを受けいれない。
26103 43 3 12 わたしが地上のことを語っているのに、あなたがたが信じないならば、天上のことを語った場合、どうしてそれを信じるだろうか。
26104 43 3 13 天から下ってきた者、すなわち人の子のほかには、だれも天に上った者はない。
26105 43 3 14 そして、ちょうどモーセが荒野でへびを上げたように、人の子もまた上げられなければならない。
26106 43 3 15 それは彼を信じる者が、すべて永遠の命を得るためである」。
26107 43 3 16 神はそのひとり子を賜わったほどに、この世を愛して下さった。それは御子を信じる者がひとりも滅びないで、永遠の命を得るためである。
26108 43 3 17 神が御子を世につかわされたのは、世をさばくためではなく、御子によって、この世が救われるためである。
26109 43 3 18 彼を信じる者は、さばかれない。信じない者は、すでにさばかれている。神のひとり子の名を信じることをしないからである。
26110 43 3 19 そのさばきというのは、光がこの世にきたのに、人々はそのおこないが悪いために、光よりもやみの方を愛したことである。
26111 43 3 20 悪を行っている者はみな光を憎む。そして、そのおこないが明るみに出されるのを恐れて、光にこようとはしない。
26112 43 3 21 しかし、真理を行っている者は光に来る。その人のおこないの、神にあってなされたということが、明らかにされるためである。
26113 43 3 22 こののち、イエスは弟子たちとユダヤの地に行き、彼らと一緒にそこに滞在して、バプテスマを授けておられた。
26114 43 3 23 ヨハネもサリムに近いアイノンで、バプテスマを授けていた。そこには水がたくさんあったからである。人々がぞくぞくとやってきてバプテスマを受けていた。
26115 43 3 24 そのとき、ヨハネはまだ獄に入れられてはいなかった。
26116 43 3 25 ところが、ヨハネの弟子たちとひとりのユダヤ人との間に、きよめのことで争論が起った。
26117 43 3 26 そこで彼らはヨハネのところにきて言った、「先生、ごらん下さい。ヨルダンの向こうであなたと一緒にいたことがあり、そして、あなたがあかしをしておられたあのかたが、バプテスマを授けており、皆の者が、そのかたのところへ出かけています」。
26118 43 3 27 ヨハネは答えて言った、「人は天から与えられなければ、何ものも受けることはできない。
26119 43 3 28 『わたしはキリストではなく、そのかたよりも先につかわされた者である』と言ったことをあかししてくれるのは、あなたがた自身である。
26120 43 3 29 花嫁をもつ者は花婿である。花婿の友人は立って彼の声を聞き、その声を聞いて大いに喜ぶ。こうして、この喜びはわたしに満ち足りている。
26121 43 3 30 彼は必ず栄え、わたしは衰える。
26122 43 3 31 上から来る者は、すべてのものの上にある。地から出る者は、地に属する者であって、地のことを語る。天から来る者は、すべてのものの上にある。
26123 43 3 32 彼はその見たところ、聞いたところをあかししているが、だれもそのあかしを受けいれない。
26124 43 3 33 しかし、そのあかしを受けいれる者は、神がまことであることを、たしかに認めたのである。
26125 43 3 34 神がおつかわしになったかたは、神の言葉を語る。神は聖霊を限りなく賜うからである。
26126 43 3 35 父は御子を愛して、万物をその手にお与えになった。
26127 43 3 36 御子を信じる者は永遠の命をもつ。御子に従わない者は、命にあずかることがないばかりか、神の怒りがその上にとどまるのである」。
26128 43 4 1 イエスが、ヨハネよりも多く弟子をつくり、またバプテスマを授けておられるということを、パリサイ人たちが聞き、それを主が知られたとき、
26129 43 4 2 (しかし、イエスみずからが、バプテスマをお授けになったのではなく、その弟子たちであった)
26130 43 4 3 ユダヤを去って、またガリラヤへ行かれた。
26131 43 4 4 しかし、イエスはサマリヤを通過しなければならなかった。
26132 43 4 5 そこで、イエスはサマリヤのスカルという町においでになった。この町は、ヤコブがその子ヨセフに与えた土地の近くにあったが、
26133 43 4 6 そこにヤコブの井戸があった。イエスは旅の疲れを覚えて、そのまま、この井戸のそばにすわっておられた。時は昼の十二時ごろであった。
26134 43 4 7 ひとりのサマリヤの女が水をくみにきたので、イエスはこの女に、「水を飲ませて下さい」と言われた。
26135 43 4 8 弟子たちは食物を買いに町に行っていたのである。
26136 43 4 9 すると、サマリヤの女はイエスに言った、「あなたはユダヤ人でありながら、どうしてサマリヤの女のわたしに、飲ませてくれとおっしゃるのですか」。これは、ユダヤ人はサマリヤ人と交際していなかったからである。
26137 43 4 10 イエスは答えて言われた、「もしあなたが神の賜物のことを知り、また、『水を飲ませてくれ』と言った者が、だれであるか知っていたならば、あなたの方から願い出て、その人から生ける水をもらったことであろう」。
26138 43 4 11 女はイエスに言った、「主よ、あなたは、くむ物をお持ちにならず、その上、井戸は深いのです。その生ける水を、どこから手に入れるのですか。
26139 43 4 12 あなたは、この井戸を下さったわたしたちの父ヤコブよりも、偉いかたなのですか。ヤコブ自身も飲み、その子らも、その家畜も、この井戸から飲んだのですが」。
26140 43 4 13 イエスは女に答えて言われた、「この水を飲む者はだれでも、またかわくであろう。
26141 43 4 14 しかし、わたしが与える水を飲む者は、いつまでも、かわくことがないばかりか、わたしが与える水は、その人のうちで泉となり、永遠の命に至る水が、わきあがるであろう」。
26142 43 4 15 女はイエスに言った、「主よ、わたしがかわくことがなく、また、ここにくみにこなくてもよいように、その水をわたしに下さい」。
26143 43 4 16 イエスは女に言われた、「あなたの夫を呼びに行って、ここに連れてきなさい」。
26144 43 4 17 女は答えて言った、「わたしには夫はありません」。イエスは女に言われた、「夫がないと言ったのは、もっともだ。
26145 43 4 18 あなたには五人の夫があったが、今のはあなたの夫ではない。あなたの言葉のとおりである」。
26146 43 4 19 女はイエスに言った、「主よ、わたしはあなたを預言者と見ます。
26147 43 4 20 わたしたちの先祖は、この山で礼拝をしたのですが、あなたがたは礼拝すべき場所は、エルサレムにあると言っています」。
26148 43 4 21 イエスは女に言われた、「女よ、わたしの言うことを信じなさい。あなたがたが、この山でも、またエルサレムでもない所で、父を礼拝する時が来る。
26149 43 4 22 あなたがたは自分の知らないものを拝んでいるが、わたしたちは知っているかたを礼拝している。救はユダヤ人から来るからである。
26150 43 4 23 しかし、まことの礼拝をする者たちが、霊とまこととをもって父を礼拝する時が来る。そうだ、今きている。父は、このような礼拝をする者たちを求めておられるからである。
26151 43 4 24 神は霊であるから、礼拝をする者も、霊とまこととをもって礼拝すべきである」。
26152 43 4 25 女はイエスに言った、「わたしは、キリストと呼ばれるメシヤがこられることを知っています。そのかたがこられたならば、わたしたちに、いっさいのことを知らせて下さるでしょう」。
26153 43 4 26 イエスは女に言われた、「あなたと話をしているこのわたしが、それである」。
26154 43 4 27 そのとき、弟子たちが帰って来て、イエスがひとりの女と話しておられるのを見て不思議に思ったが、しかし、「何を求めておられますか」とも、「何を彼女と話しておられるのですか」とも、尋ねる者はひとりもなかった。
26155 43 4 28 この女は水がめをそのままそこに置いて町に行き、人々に言った、
26156 43 4 29 「わたしのしたことを何もかも、言いあてた人がいます。さあ、見にきてごらんなさい。もしかしたら、この人がキリストかも知れません」。
26157 43 4 30 人々は町を出て、ぞくぞくとイエスのところへ行った。
26158 43 4 31 その間に弟子たちはイエスに、「先生、召しあがってください」とすすめた。
26159 43 4 32 ところが、イエスは言われた、「わたしには、あなたがたの知らない食物がある」。
26160 43 4 33 そこで、弟子たちが互に言った、「だれかが、何か食べるものを持ってきてさしあげたのであろうか」。
26161 43 4 34 イエスは彼らに言われた、「わたしの食物というのは、わたしをつかわされたかたのみこころを行い、そのみわざをなし遂げることである。
26162 43 4 35 あなたがたは、刈入れ時が来るまでには、まだ四か月あると、言っているではないか。しかし、わたしはあなたがたに言う。目をあげて畑を見なさい。はや色づいて刈入れを待っている。
26163 43 4 36 刈る者は報酬を受けて、永遠の命に至る実を集めている。まく者も刈る者も、共々に喜ぶためである。
26164 43 4 37 そこで、『ひとりがまき、ひとりが刈る』ということわざが、ほんとうのこととなる。
26165 43 4 38 わたしは、あなたがたをつかわして、あなたがたがそのために労苦しなかったものを刈りとらせた。ほかの人々が労苦し、あなたがたは、彼らの労苦の実にあずかっているのである」。
26166 43 4 39 さて、この町からきた多くのサマリヤ人は、「この人は、わたしのしたことを何もかも言いあてた」とあかしした女の言葉によって、イエスを信じた。
26167 43 4 40 そこで、サマリヤ人たちはイエスのもとにきて、自分たちのところに滞在していただきたいと願ったので、イエスはそこにふつか滞在された。
26168 43 4 41 そしてなお多くの人々が、イエスの言葉を聞いて信じた。
26169 43 4 42 彼らは女に言った、「わたしたちが信じるのは、もうあなたが話してくれたからではない。自分自身で親しく聞いて、この人こそまことに世の救主であることが、わかったからである」。
26170 43 4 43 ふつかの後に、イエスはここを去ってガリラヤへ行かれた。
26171 43 4 44 イエスはみずからはっきり、「預言者は自分の故郷では敬われないものだ」と言われたのである。
26172 43 4 45 ガリラヤに着かれると、ガリラヤの人たちはイエスを歓迎した。それは、彼らも祭に行っていたので、その祭の時、イエスがエルサレムでなされたことをことごとく見ていたからである。
26173 43 4 46 イエスは、またガリラヤのカナに行かれた。そこは、かつて水をぶどう酒にかえられた所である。ところが、病気をしているむすこを持つある役人がカペナウムにいた。
26174 43 4 47 この人が、ユダヤからガリラヤにイエスのきておられることを聞き、みもとにきて、カペナウムに下って、彼の子をなおしていただきたいと、願った。その子が死にかかっていたからである。
26175 43 4 48 そこで、イエスは彼に言われた、「あなたがたは、しるしと奇跡とを見ない限り、決して信じないだろう」。
26176 43 4 49 この役人はイエスに言った、「主よ、どうぞ、子供が死なないうちにきて下さい」。
26177 43 4 50 イエスは彼に言われた、「お帰りなさい。あなたのむすこは助かるのだ」。彼は自分に言われたイエスの言葉を信じて帰って行った。
26178 43 4 51 その下って行く途中、僕たちが彼に出会い、その子が助かったことを告げた。
26179 43 4 52 そこで、彼は僕たちに、そのなおりはじめた時刻を尋ねてみたら、「きのうの午後一時に熱が引きました」と答えた。
26180 43 4 53 それは、イエスが「あなたのむすこは助かるのだ」と言われたのと同じ時刻であったことを、この父は知って、彼自身もその家族一同も信じた。
26181 43 4 54 これは、イエスがユダヤからガリラヤにきてなされた第二のしるしである。
26182 43 5 1 こののち、ユダヤ人の祭があったので、イエスはエルサレムに上られた。
26183 43 5 2 エルサレムにある羊の門のそばに、ヘブル語でベテスダと呼ばれる池があった。そこには五つの廊があった。
26184 43 5 3 その廊の中には、病人、盲人、足なえ、やせ衰えた者などが、大ぜいからだを横たえていた。〔彼らは水の動くのを待っていたのである。
26185 43 5 4 それは、時々、主の御使がこの池に降りてきて水を動かすことがあるが、水が動いた時まっ先にはいる者は、どんな病気にかかっていても、いやされたからである。〕
26186 43 5 5 さて、そこに三十八年のあいだ、病気に悩んでいる人があった。
26187 43 5 6 イエスはその人が横になっているのを見、また長い間わずらっていたのを知って、その人に「なおりたいのか」と言われた。
26188 43 5 7 この病人はイエスに答えた、「主よ、水が動く時に、わたしを池の中に入れてくれる人がいません。わたしがはいりかけると、ほかの人が先に降りて行くのです」。
26189 43 5 8 イエスは彼に言われた、「起きて、あなたの床を取りあげ、そして歩きなさい」。
26190 43 5 9 すると、この人はすぐにいやされ、床をとりあげて歩いて行った。
26191 43 5 10 そこでユダヤ人たちは、そのいやされた人に言った、「きょうは安息日だ。床を取りあげるのは、よろしくない」。
26192 43 5 11 彼は答えた、「わたしをなおして下さったかたが、床を取りあげて歩けと、わたしに言われました」。
26193 43 5 12 彼らは尋ねた、「取りあげて歩けと言った人は、だれか」。
26194 43 5 13 しかし、このいやされた人は、それがだれであるか知らなかった。群衆がその場にいたので、イエスはそっと出て行かれたからである。
26195 43 5 14 そののち、イエスは宮でその人に出会ったので、彼に言われた、「ごらん、あなたはよくなった。もう罪を犯してはいけない。何かもっと悪いことが、あなたの身に起るかも知れないから」。
26196 43 5 15 彼は出て行って、自分をいやしたのはイエスであったと、ユダヤ人たちに告げた。
26197 43 5 16 そのためユダヤ人たちは、安息日にこのようなことをしたと言って、イエスを責めた。
26198 43 5 18 このためにユダヤ人たちは、ますますイエスを殺そうと計るようになった。それは、イエスが安息日を破られたばかりではなく、神を自分の父と呼んで、自分を神と等しいものとされたからである。
26199 43 5 19 さて、イエスは彼らに答えて言われた、「よくよくあなたがたに言っておく。子は父のなさることを見てする以外に、自分からは何事もすることができない。父のなさることであればすべて、子もそのとおりにするのである。
26200 43 5 20 なぜなら、父は子を愛して、みずからなさることは、すべて子にお示しになるからである。そして、それよりもなお大きなわざを、お示しになるであろう。あなたがたが、それによって不思議に思うためである。
26201 43 5 21 すなわち、父が死人を起して命をお与えになるように、子もまた、そのこころにかなう人々に命を与えるであろう。
26202 43 5 22 父はだれをもさばかない。さばきのことはすべて、子にゆだねられたからである。
26203 43 5 23 それは、すべての人が父を敬うと同様に、子を敬うためである。子を敬わない者は、子をつかわされた父をも敬わない。
26204 43 5 24 よくよくあなたがたに言っておく。わたしの言葉を聞いて、わたしをつかわされたかたを信じる者は、永遠の命を受け、またさばかれることがなく、死から命に移っているのである。
26205 43 5 25 よくよくあなたがたに言っておく。死んだ人たちが、神の子の声を聞く時が来る。今すでにきている。そして聞く人は生きるであろう。
26206 43 5 26 それは、父がご自分のうちに生命をお持ちになっていると同様に、子にもまた、自分のうちに生命を持つことをお許しになったからである。
26207 43 5 27 そして子は人の子であるから、子にさばきを行う権威をお与えになった。
26208 43 5 28 このことを驚くには及ばない。墓の中にいる者たちがみな神の子の声を聞き、
26209 43 5 29 善をおこなった人々は、生命を受けるためによみがえり、悪をおこなった人々は、さばきを受けるためによみがえって、それぞれ出てくる時が来るであろう。
26210 43 5 30 わたしは、自分からは何事もすることができない。ただ聞くままにさばくのである。そして、わたしのこのさばきは正しい。それは、わたし自身の考えでするのではなく、わたしをつかわされたかたの、み旨を求めているからである。
26211 43 5 31 もし、わたしが自分自身についてあかしをするならば、わたしのあかしはほんとうではない。
26212 43 5 32 わたしについてあかしをするかたはほかにあり、そして、その人がするあかしがほんとうであることを、わたしは知っている。
26213 43 5 33 あなたがたはヨハネのもとへ人をつかわしたが、そのとき彼は真理についてあかしをした。
26214 43 5 34 わたしは人からあかしを受けないが、このことを言うのは、あなたがたが救われるためである。
26215 43 5 35 ヨハネは燃えて輝くあかりであった。あなたがたは、しばらくの間その光を喜び楽しもうとした。
26216 43 5 36 しかし、わたしには、ヨハネのあかしよりも、もっと力あるあかしがある。父がわたしに成就させようとしてお与えになったわざ、すなわち、今わたしがしているこのわざが、父のわたしをつかわされたことをあかししている。
26217 43 5 37 また、わたしをつかわされた父も、ご自分でわたしについてあかしをされた。あなたがたは、まだそのみ声を聞いたこともなく、そのみ姿を見たこともない。
26218 43 5 38 また、神がつかわされた者を信じないから、神の御言はあなたがたのうちにとどまっていない。
26219 43 5 39 あなたがたは、聖書の中に永遠の命があると思って調べているが、この聖書は、わたしについてあかしをするものである。
26220 43 5 40 しかも、あなたがたは、命を得るためにわたしのもとにこようともしない。
26221 43 5 41 わたしは人からの誉を受けることはしない。
26222 43 5 42 しかし、あなたがたのうちには神を愛する愛がないことを知っている。
26223 43 5 43 わたしは父の名によってきたのに、あなたがたはわたしを受けいれない。もし、ほかの人が彼自身の名によって来るならば、その人を受けいれるのであろう。
26224 43 5 44 互に誉を受けながら、ただひとりの神からの誉を求めようとしないあなたがたは、どうして信じることができようか。
26225 43 5 45 わたしがあなたがたのことを父に訴えると、考えてはいけない。あなたがたを訴える者は、あなたがたが頼みとしているモーセその人である。
26226 43 5 46 もし、あなたがたがモーセを信じたならば、わたしをも信じたであろう。モーセは、わたしについて書いたのである。
26227 43 5 47 しかし、モーセの書いたものを信じないならば、どうしてわたしの言葉を信じるだろうか」。
26228 43 6 1 そののち、イエスはガリラヤの海、すなわち、テベリヤ湖の向こう岸へ渡られた。
26229 43 6 2 すると、大ぜいの群衆がイエスについてきた。病人たちになさっていたしるしを見たからである。
26230 43 6 3 イエスは山に登って、弟子たちと一緒にそこで座につかれた。
26231 43 6 4 時に、ユダヤ人の祭である過越が間近になっていた。
26232 43 6 5 イエスは目をあげ、大ぜいの群衆が自分の方に集まって来るのを見て、ピリポに言われた、「どこからパンを買ってきて、この人々に食べさせようか」。
26233 43 6 6 これはピリポをためそうとして言われたのであって、ご自分ではしようとすることを、よくご承知であった。
26234 43 6 7 すると、ピリポはイエスに答えた、「二百デナリのパンがあっても、めいめいが少しずついただくにも足りますまい」。
26235 43 6 8 弟子のひとり、シモン・ペテロの兄弟アンデレがイエスに言った、
26236 43 6 9 「ここに、大麦のパン五つと、さかな二ひきとを持っている子供がいます。しかし、こんなに大ぜいの人では、それが何になりましょう」。
26237 43 6 10 イエスは「人々をすわらせなさい」と言われた。その場所には草が多かった。そこにすわった男の数は五千人ほどであった。
26238 43 6 11 そこで、イエスはパンを取り、感謝してから、すわっている人々に分け与え、また、さかなをも同様にして、彼らの望むだけ分け与えられた。
26239 43 6 12 人々がじゅうぶんに食べたのち、イエスは弟子たちに言われた、「少しでもむだにならないように、パンくずのあまりを集めなさい」。
26240 43 6 13 そこで彼らが集めると、五つの大麦のパンを食べて残ったパンくずは、十二のかごにいっぱいになった。
26241 43 6 14 人々はイエスのなさったこのしるしを見て、「ほんとうに、この人こそ世にきたるべき預言者である」と言った。
26242 43 6 15 イエスは人々がきて、自分をとらえて王にしようとしていると知って、ただひとり、また山に退かれた。
26243 43 6 16 夕方になったとき、弟子たちは海べに下り、
26244 43 6 17 舟に乗って海を渡り、向こう岸のカペナウムに行きかけた。すでに暗くなっていたのに、イエスはまだ彼らのところにおいでにならなかった。
26245 43 6 18 その上、強い風が吹いてきて、海は荒れ出した。
26246 43 6 19 四、五十丁こぎ出したとき、イエスが海の上を歩いて舟に近づいてこられるのを見て、彼らは恐れた。
26247 43 6 20 すると、イエスは彼らに言われた、「わたしだ、恐れることはない」。
26248 43 6 21 そこで、彼らは喜んでイエスを舟に迎えようとした。すると舟は、すぐ、彼らが行こうとしていた地に着いた。
26249 43 6 22 その翌日、海の向こう岸に立っていた群衆は、そこに小舟が一そうしかなく、またイエスは弟子たちと一緒に小舟にお乗りにならず、ただ弟子たちだけが船出したのを見た。
26250 43 6 23 しかし、数そうの小舟がテベリヤからきて、主が感謝されたのちパンを人々に食べさせた場所に近づいた。
26251 43 6 24 群衆は、イエスも弟子たちもそこにいないと知って、それらの小舟に乗り、イエスをたずねてカペナウムに行った。
26252 43 6 25 そして、海の向こう岸でイエスに出会ったので言った、「先生、いつ、ここにおいでになったのですか」。
26253 43 6 26 イエスは答えて言われた、「よくよくあなたがたに言っておく。あなたがたがわたしを尋ねてきているのは、しるしを見たためではなく、パンを食べて満腹したからである。
26254 43 6 27 朽ちる食物のためではなく、永遠の命に至る朽ちない食物のために働くがよい。これは人の子があなたがたに与えるものである。父なる神は、人の子にそれをゆだねられたのである」。
26255 43 6 28 そこで、彼らはイエスに言った、「神のわざを行うために、わたしたちは何をしたらよいでしょうか」。
26256 43 6 29 イエスは彼らに答えて言われた、「神がつかわされた者を信じることが、神のわざである」。
26257 43 6 30 彼らはイエスに言った、「わたしたちが見てあなたを信じるために、どんなしるしを行って下さいますか。どんなことをして下さいますか。
26258 43 6 31 わたしたちの先祖は荒野でマナを食べました。それは『天よりのパンを彼らに与えて食べさせた』と書いてあるとおりです」。
26259 43 6 32 そこでイエスは彼らに言われた、「よくよく言っておく。天からのパンをあなたがたに与えたのは、モーセではない。天からのまことのパンをあなたがたに与えるのは、わたしの父なのである。
26260 43 6 33 神のパンは、天から下ってきて、この世に命を与えるものである」。
26261 43 6 34 彼らはイエスに言った、「主よ、そのパンをいつもわたしたちに下さい」。
26262 43 6 35 イエスは彼らに言われた、「わたしが命のパンである。わたしに来る者は決して飢えることがなく、わたしを信じる者は決してかわくことがない。
26263 43 6 36 しかし、あなたがたに言ったが、あなたがたはわたしを見たのに信じようとはしない。
26264 43 6 37 父がわたしに与えて下さる者は皆、わたしに来るであろう。そして、わたしに来る者を決して拒みはしない。
26265 43 6 38 わたしが天から下ってきたのは、自分のこころのままを行うためではなく、わたしをつかわされたかたのみこころを行うためである。
26266 43 6 39 わたしをつかわされたかたのみこころは、わたしに与えて下さった者を、わたしがひとりも失わずに、終りの日によみがえらせることである。
26267 43 6 40 わたしの父のみこころは、子を見て信じる者が、ことごとく永遠の命を得ることなのである。そして、わたしはその人々を終りの日によみがえらせるであろう」。
26268 43 6 41 ユダヤ人らは、イエスが「わたしは天から下ってきたパンである」と言われたので、イエスについてつぶやき始めた。
26269 43 6 42 そして言った、「これはヨセフの子イエスではないか。わたしたちはその父母を知っているではないか。わたしは天から下ってきたと、どうして今いうのか」。
26270 43 6 43 イエスは彼らに答えて言われた、「互につぶやいてはいけない。
26271 43 6 44 わたしをつかわされた父が引きよせて下さらなければ、だれもわたしに来ることはできない。わたしは、その人々を終りの日によみがえらせるであろう。
26272 43 6 45 預言者の書に、『彼らはみな神に教えられるであろう』と書いてある。父から聞いて学んだ者は、みなわたしに来るのである。
26273 43 6 46 神から出た者のほかに、だれかが父を見たのではない。その者だけが父を見たのである。
26274 43 6 47 よくよくあなたがたに言っておく。信じる者には永遠の命がある。
26275 43 6 48 わたしは命のパンである。
26276 43 6 49 あなたがたの先祖は荒野でマナを食べたが、死んでしまった。
26277 43 6 50 しかし、天から下ってきたパンを食べる人は、決して死ぬことはない。
26278 43 6 51 わたしは天から下ってきた生きたパンである。それを食べる者は、いつまでも生きるであろう。わたしが与えるパンは、世の命のために与えるわたしの肉である」。
26279 43 6 52 そこで、ユダヤ人らが互に論じて言った、「この人はどうして、自分の肉をわたしたちに与えて食べさせることができようか」。
26280 43 6 53 イエスは彼らに言われた、「よくよく言っておく。人の子の肉を食べず、また、その血を飲まなければ、あなたがたの内に命はない。
26281 43 6 54 わたしの肉を食べ、わたしの血を飲む者には、永遠の命があり、わたしはその人を終りの日によみがえらせるであろう。
26282 43 6 55 わたしの肉はまことの食物、わたしの血はまことの飲み物である。
26283 43 6 56 わたしの肉を食べ、わたしの血を飲む者はわたしにおり、わたしもまたその人におる。
26284 43 6 57 生ける父がわたしをつかわされ、また、わたしが父によって生きているように、わたしを食べる者もわたしによって生きるであろう。
26285 43 6 58 天から下ってきたパンは、先祖たちが食べたが死んでしまったようなものではない。このパンを食べる者は、いつまでも生きるであろう」。
26286 43 6 59 これらのことは、イエスがカペナウムの会堂で教えておられたときに言われたものである。
26287 43 6 60 弟子たちのうちの多くの者は、これを聞いて言った、「これは、ひどい言葉だ。だれがそんなことを聞いておられようか」。
26288 43 6 61 しかしイエスは、弟子たちがそのことでつぶやいているのを見破って、彼らに言われた、「このことがあなたがたのつまずきになるのか。
26289 43 6 62 それでは、もし人の子が前にいた所に上るのを見たら、どうなるのか。
26290 43 6 63 人を生かすものは霊であって、肉はなんの役にも立たない。わたしがあなたがたに話した言葉は霊であり、また命である。
26291 43 6 64 しかし、あなたがたの中には信じない者がいる」。イエスは、初めから、だれが信じないか、また、だれが彼を裏切るかを知っておられたのである。
26292 43 6 65 そしてイエスは言われた、「それだから、父が与えて下さった者でなければ、わたしに来ることはできないと、言ったのである」。
26293 43 6 66 それ以来、多くの弟子たちは去っていって、もはやイエスと行動を共にしなかった。
26294 43 6 67 そこでイエスは十二弟子に言われた、「あなたがたも去ろうとするのか」。
26295 43 6 68 シモン・ペテロが答えた、「主よ、わたしたちは、だれのところに行きましょう。永遠の命の言をもっているのはあなたです。
26296 43 6 69 わたしたちは、あなたが神の聖者であることを信じ、また知っています」。
26297 43 6 70 イエスは彼らに答えられた、「あなたがた十二人を選んだのは、わたしではなかったか。それだのに、あなたがたのうちのひとりは悪魔である」。
26298 43 6 71 これは、イスカリオテのシモンの子ユダをさして言われたのである。このユダは、十二弟子のひとりでありながら、イエスを裏切ろうとしていた。
26299 43 7 1 そののち、イエスはガリラヤを巡回しておられた。ユダヤ人たちが自分を殺そうとしていたので、ユダヤを巡回しようとはされなかった。
26300 43 7 2 時に、ユダヤ人の仮庵の祭が近づいていた。
26301 43 7 3 そこで、イエスの兄弟たちがイエスに言った、「あなたがしておられるわざを弟子たちにも見せるために、ここを去りユダヤに行ってはいかがです。
26302 43 7 4 自分を公けにあらわそうと思っている人で、隠れて仕事をするものはありません。あなたがこれらのことをするからには、自分をはっきりと世にあらわしなさい」。
26303 43 7 5 こう言ったのは、兄弟たちもイエスを信じていなかったからである。
26304 43 7 6 そこでイエスは彼らに言われた、「わたしの時はまだきていない。しかし、あなたがたの時はいつも備わっている。
26305 43 7 7 世はあなたがたを憎み得ないが、わたしを憎んでいる。わたしが世のおこないの悪いことを、あかししているからである。
26306 43 7 8 あなたがたこそ祭に行きなさい。わたしはこの祭には行かない。わたしの時はまだ満ちていないから」。
26307 43 7 9 彼らにこう言って、イエスはガリラヤにとどまっておられた。
26308 43 7 10 しかし、兄弟たちが祭に行ったあとで、イエスも人目にたたぬように、ひそかに行かれた。
26309 43 7 11 ユダヤ人らは祭の時に、「あの人はどこにいるのか」と言って、イエスを捜していた。
26310 43 7 12 群衆の中に、イエスについていろいろとうわさが立った。ある人々は、「あれはよい人だ」と言い、他の人々は、「いや、あれは群衆を惑わしている」と言った。
26311 43 7 13 しかし、ユダヤ人らを恐れて、イエスのことを公然と口にする者はいなかった。
26312 43 7 14 祭も半ばになってから、イエスは宮に上って教え始められた。
26313 43 7 15 すると、ユダヤ人たちは驚いて言った、「この人は学問をしたこともないのに、どうして律法の知識をもっているのだろう」。
26314 43 7 16 そこでイエスは彼らに答えて言われた、「わたしの教はわたし自身の教ではなく、わたしをつかわされたかたの教である。
26315 43 7 17 神のみこころを行おうと思う者であれば、だれでも、わたしの語っているこの教が神からのものか、それとも、わたし自身から出たものか、わかるであろう。
26316 43 7 18 自分から出たことを語る者は、自分の栄光を求めるが、自分をつかわされたかたの栄光を求める者は真実であって、その人の内には偽りがない。
26317 43 7 19 モーセはあなたがたに律法を与えたではないか。それだのに、あなたがたのうちには、その律法を行う者がひとりもない。あなたがたは、なぜわたしを殺そうと思っているのか」。
26318 43 7 20 群衆は答えた、「あなたは悪霊に取りつかれている。だれがあなたを殺そうと思っているものか」。
26319 43 7 21 イエスは彼らに答えて言われた、「わたしが一つのわざをしたところ、あなたがたは皆それを見て驚いている。
26320 43 7 22 モーセはあなたがたに割礼を命じたので、(これは、実は、モーセから始まったのではなく、先祖たちから始まったものである)あなたがたは安息日にも人に割礼を施している。
26321 43 7 23 もし、モーセの律法が破られないように、安息日であっても割礼を受けるのなら、安息日に人の全身を丈夫にしてやったからといって、どうして、そんなにおこるのか。
26322 43 7 24 うわべで人をさばかないで、正しいさばきをするがよい」。
26323 43 7 25 さて、エルサレムのある人たちが言った、「この人は人々が殺そうと思っている者ではないか。
26324 43 7 26 見よ、彼は公然と語っているのに、人々はこれに対して何も言わない。役人たちは、この人がキリストであることを、ほんとうに知っているのではなかろうか。
26325 43 7 27 わたしたちはこの人がどこからきたのか知っている。しかし、キリストが現れる時には、どこから来るのか知っている者は、ひとりもいない」。
26326 43 7 28 イエスは宮の内で教えながら、叫んで言われた、「あなたがたは、わたしを知っており、また、わたしがどこからきたかも知っている。しかし、わたしは自分からきたのではない。わたしをつかわされたかたは真実であるが、あなたがたは、そのかたを知らない。
26327 43 7 29 わたしは、そのかたを知っている。わたしはそのかたのもとからきた者で、そのかたがわたしをつかわされたのである」。
26328 43 7 30 そこで人々はイエスを捕えようと計ったが、だれひとり手をかける者はなかった。イエスの時が、まだきていなかったからである。
26329 43 7 31 しかし、群衆の中の多くの者が、イエスを信じて言った、「キリストがきても、この人が行ったよりも多くのしるしを行うだろうか」。
26330 43 7 32 群衆がイエスについてこのようなうわさをしているのを、パリサイ人たちは耳にした。そこで、祭司長たちやパリサイ人たちは、イエスを捕えようとして、下役どもをつかわした。
26331 43 7 33 イエスは言われた、「今しばらくの間、わたしはあなたがたと一緒にいて、それから、わたしをおつかわしになったかたのみもとに行く。
26332 43 7 34 あなたがたはわたしを捜すであろうが、見つけることはできない。そしてわたしのいる所に、あなたがたは来ることができない」。
26333 43 7 35 そこでユダヤ人たちは互に言った、「わたしたちが見つけることができないというのは、どこへ行こうとしているのだろう。ギリシヤ人の中に離散している人たちのところにでも行って、ギリシヤ人を教えようというのだろうか。
26334 43 7 36 また、『わたしを捜すが、見つけることはできない。そしてわたしのいる所には来ることができないだろう』と言ったその言葉は、どういう意味だろう」。
26335 43 7 37 祭の終りの大事な日に、イエスは立って、叫んで言われた、「だれでもかわく者は、わたしのところにきて飲むがよい。
26336 43 7 38 わたしを信じる者は、聖書に書いてあるとおり、その腹から生ける水が川となって流れ出るであろう」。
26337 43 7 39 これは、イエスを信じる人々が受けようとしている御霊をさして言われたのである。すなわち、イエスはまだ栄光を受けておられなかったので、御霊がまだ下っていなかったのである。
26338 43 7 40 群衆のある者がこれらの言葉を聞いて、「このかたは、ほんとうに、あの預言者である」と言い、
26339 43 7 41 ほかの人たちは「このかたはキリストである」と言い、また、ある人々は、「キリストはまさか、ガリラヤからは出てこないだろう。
26340 43 7 42 キリストは、ダビデの子孫から、またダビデのいたベツレヘムの村から出ると、聖書に書いてあるではないか」と言った。
26341 43 7 43 こうして、群衆の間にイエスのことで分争が生じた。
26342 43 7 44 彼らのうちのある人々は、イエスを捕えようと思ったが、だれひとり手をかける者はなかった。
26343 43 7 45 さて、下役どもが祭司長たちやパリサイ人たちのところに帰ってきたので、彼らはその下役どもに言った、「なぜ、あの人を連れてこなかったのか」。
26344 43 7 46 下役どもは答えた、「この人の語るように語った者は、これまでにありませんでした」。
26345 43 7 47 パリサイ人たちが彼らに答えた、「あなたがたまでが、だまされているのではないか。
26346 43 7 48 役人たちやパリサイ人たちの中で、ひとりでも彼を信じた者があっただろうか。
26347 43 7 49 律法をわきまえないこの群衆は、のろわれている」。
26348 43 7 50 彼らの中のひとりで、以前にイエスに会いにきたことのあるニコデモが、彼らに言った、
26349 43 7 51 「わたしたちの律法によれば、まずその人の言い分を聞き、その人のしたことを知った上でなければ、さばくことをしないのではないか」。
26350 43 7 52 彼らは答えて言った、「あなたもガリラヤ出なのか。よく調べてみなさい、ガリラヤからは預言者が出るものではないことが、わかるだろう」。
26351 43 7 53 そして、人々はおのおの家に帰って行った。
26352 43 8 1 イエスはオリブ山に行かれた。
26353 43 8 2 朝早くまた宮にはいられると、人々が皆みもとに集まってきたので、イエスはすわって彼らを教えておられた。
26354 43 8 3 すると、律法学者たちやパリサイ人たちが、姦淫をしている時につかまえられた女をひっぱってきて、中に立たせた上、イエスに言った、
26355 43 8 4 「先生、この女は姦淫の場でつかまえられました。
26356 43 8 5 モーセは律法の中で、こういう女を石で打ち殺せと命じましたが、あなたはどう思いますか」。
26357 43 8 6 彼らがそう言ったのは、イエスをためして、訴える口実を得るためであった。しかし、イエスは身をかがめて、指で地面に何か書いておられた。
26358 43 8 7 彼らが問い続けるので、イエスは身を起して彼らに言われた、「あなたがたの中で罪のない者が、まずこの女に石を投げつけるがよい」。
26359 43 8 8 そしてまた身をかがめて、地面に物を書きつづけられた。
26360 43 8 9 これを聞くと、彼らは年寄から始めて、ひとりびとり出て行き、ついに、イエスだけになり、女は中にいたまま残された。
26361 43 8 10 そこでイエスは身を起して女に言われた、「女よ、みんなはどこにいるか。あなたを罰する者はなかったのか」。
26362 43 8 11 女は言った、「主よ、だれもございません」。イエスは言われた、「わたしもあなたを罰しない。お帰りなさい。今後はもう罪を犯さないように」。〕
26363 43 8 12 イエスは、また人々に語ってこう言われた、「わたしは世の光である。わたしに従って来る者は、やみのうちを歩くことがなく、命の光をもつであろう」。
26364 43 8 13 するとパリサイ人たちがイエスに言った、「あなたは、自分のことをあかししている。あなたのあかしは真実ではない」。
26365 43 8 14 イエスは彼らに答えて言われた、「たとい、わたしが自分のことをあかししても、わたしのあかしは真実である。それは、わたしがどこからきたのか、また、どこへ行くのかを知っているからである。しかし、あなたがたは、わたしがどこからきて、どこへ行くのかを知らない。
26366 43 8 15 あなたがたは肉によって人をさばくが、わたしはだれもさばかない。
26367 43 8 16 しかし、もしわたしがさばくとすれば、わたしのさばきは正しい。なぜなら、わたしはひとりではなく、わたしをつかわされたかたが、わたしと一緒だからである。
26368 43 8 17 あなたがたの律法には、ふたりによる証言は真実だと、書いてある。
26369 43 8 18 わたし自身のことをあかしするのは、わたしであるし、わたしをつかわされた父も、わたしのことをあかしして下さるのである」。
26370 43 8 19 すると、彼らはイエスに言った、「あなたの父はどこにいるのか」。イエスは答えられた、「あなたがたは、わたしをもわたしの父をも知っていない。もし、あなたがたがわたしを知っていたなら、わたしの父をも知っていたであろう」。
26371 43 8 20 イエスが宮の内で教えていた時、これらの言葉をさいせん箱のそばで語られたのであるが、イエスの時がまだきていなかったので、だれも捕える者がなかった。
26372 43 8 21 さて、また彼らに言われた、「わたしは去って行く。あなたがたはわたしを捜し求めるであろう。そして自分の罪のうちに死ぬであろう。わたしの行く所には、あなたがたは来ることができない」。
26373 43 8 22 そこでユダヤ人たちは言った、「わたしの行く所に、あなたがたは来ることができないと、言ったのは、あるいは自殺でもしようとするつもりか」。
26374 43 8 23 イエスは彼らに言われた、「あなたがたは下から出た者だが、わたしは上からきた者である。あなたがたはこの世の者であるが、わたしはこの世の者ではない。
26375 43 8 24 だからわたしは、あなたがたは自分の罪のうちに死ぬであろうと、言ったのである。もしわたしがそういう者であることをあなたがたが信じなければ、罪のうちに死ぬことになるからである」。
26376 43 8 25 そこで彼らはイエスに言った、「あなたは、いったい、どういうかたですか」。イエスは彼らに言われた、「わたしがどういう者であるかは、初めからあなたがたに言っているではないか。
26377 43 8 26 あなたがたについて、わたしの言うべきこと、さばくべきことが、たくさんある。しかし、わたしをつかわされたかたは真実なかたである。わたしは、そのかたから聞いたままを世にむかって語るのである」。
26378 43 8 27 彼らは、イエスが父について話しておられたことを悟らなかった。
26379 43 8 28 そこでイエスは言われた、「あなたがたが人の子を上げてしまった後はじめて、わたしがそういう者であること、また、わたしは自分からは何もせず、ただ父が教えて下さったままを話していたことが、わかってくるであろう。
26380 43 8 29 わたしをつかわされたかたは、わたしと一緒におられる。わたしは、いつも神のみこころにかなうことをしているから、わたしをひとり置きざりになさることはない」。
26381 43 8 30 これらのことを語られたところ、多くの人々がイエスを信じた。
26382 43 8 31 イエスは自分を信じたユダヤ人たちに言われた、「もしわたしの言葉のうちにとどまっておるなら、あなたがたは、ほんとうにわたしの弟子なのである。
26383 43 8 32 また真理を知るであろう。そして真理は、あなたがたに自由を得させるであろう」。
26384 43 8 33 そこで、彼らはイエスに言った、「わたしたちはアブラハムの子孫であって、人の奴隷になったことなどは、一度もない。どうして、あなたがたに自由を得させるであろうと、言われるのか」。
26385 43 8 34 イエスは彼らに答えられた、「よくよくあなたがたに言っておく。すべて罪を犯す者は罪の奴隷である。
26386 43 8 35 そして、奴隷はいつまでも家にいる者ではない。しかし、子はいつまでもいる。
26387 43 8 36 だから、もし子があなたがたに自由を得させるならば、あなたがたは、ほんとうに自由な者となるのである。
26388 43 8 37 わたしは、あなたがたがアブラハムの子孫であることを知っている。それだのに、あなたがたはわたしを殺そうとしている。わたしの言葉が、あなたがたのうちに根をおろしていないからである。
26389 43 8 38 わたしはわたしの父のもとで見たことを語っているが、あなたがたは自分の父から聞いたことを行っている」。
26390 43 8 39 彼らはイエスに答えて言った、「わたしたちの父はアブラハムである」。イエスは彼らに言われた、「もしアブラハムの子であるなら、アブラハムのわざをするがよい。
26391 43 8 40 ところが今、神から聞いた真理をあなたがたに語ってきたこのわたしを、殺そうとしている。そんなことをアブラハムはしなかった。
26392 43 8 41 あなたがたは、あなたがたの父のわざを行っているのである」。彼らは言った、「わたしたちは、不品行の結果うまれた者ではない。わたしたちにはひとりの父がある。それは神である」。
26393 43 8 42 イエスは彼らに言われた、「神があなたがたの父であるならば、あなたがたはわたしを愛するはずである。わたしは神から出た者、また神からきている者であるからだ。わたしは自分からきたのではなく、神からつかわされたのである。
26394 43 8 43 どうしてあなたがたは、わたしの話すことがわからないのか。あなたがたが、わたしの言葉を悟ることができないからである。
26395 43 8 44 あなたがたは自分の父、すなわち、悪魔から出てきた者であって、その父の欲望どおりを行おうと思っている。彼は初めから、人殺しであって、真理に立つ者ではない。彼のうちには真理がないからである。彼が偽りを言うとき、いつも自分の本音をはいているのである。彼は偽り者であり、偽りの父であるからだ。
26396 43 8 45 しかし、わたしが真理を語っているので、あなたがたはわたしを信じようとしない。
26397 43 8 46 あなたがたのうち、だれがわたしに罪があると責めうるのか。わたしは真理を語っているのに、なぜあなたがたは、わたしを信じないのか。
26398 43 8 47 神からきた者は神の言葉に聞き従うが、あなたがたが聞き従わないのは、神からきた者でないからである」。
26399 43 8 48 ユダヤ人たちはイエスに答えて言った、「あなたはサマリヤ人で、悪霊に取りつかれていると、わたしたちが言うのは、当然ではないか」。
26400 43 8 49 イエスは答えられた、「わたしは、悪霊に取りつかれているのではなくて、わたしの父を重んじているのだが、あなたがたはわたしを軽んじている。
26401 43 8 50 わたしは自分の栄光を求めてはいない。それを求めるかたが別にある。そのかたは、またさばくかたである。
26402 43 8 51 よくよく言っておく。もし人がわたしの言葉を守るならば、その人はいつまでも死を見ることがないであろう」。
26403 43 8 52 ユダヤ人たちが言った、「あなたが悪霊に取りつかれていることが、今わかった。アブラハムは死に、預言者たちも死んでいる。それだのに、あなたは、わたしの言葉を守る者はいつまでも死を味わうことがないであろうと、言われる。
26404 43 8 53 あなたは、わたしたちの父アブラハムより偉いのだろうか。彼も死に、預言者たちも死んだではないか。あなたは、いったい、自分をだれと思っているのか」。
26405 43 8 54 イエスは答えられた、「わたしがもし自分に栄光を帰するなら、わたしの栄光は、むなしいものである。わたしに栄光を与えるかたは、わたしの父であって、あなたがたが自分の神だと言っているのは、そのかたのことである。
26406 43 8 55 あなたがたはその神を知っていないが、わたしは知っている。もしわたしが神を知らないと言うならば、あなたがたと同じような偽り者であろう。しかし、わたしはそのかたを知り、その御言を守っている。
26407 43 8 56 あなたがたの父アブラハムは、わたしのこの日を見ようとして楽しんでいた。そしてそれを見て喜んだ」。
26408 43 8 57 そこでユダヤ人たちはイエスに言った、「あなたはまだ五十にもならないのに、アブラハムを見たのか」。
26409 43 8 58 イエスは彼らに言われた、「よくよくあなたがたに言っておく。アブラハムの生れる前からわたしは、いるのである」。
26410 43 8 59 そこで彼らは石をとって、イエスに投げつけようとした。しかし、イエスは身を隠して、宮から出て行かれた。
26411 43 9 1 イエスが道をとおっておられるとき、生れつきの盲人を見られた。
26412 43 9 2 弟子たちはイエスに尋ねて言った、「先生、この人が生れつき盲人なのは、だれが罪を犯したためですか。本人ですか、それともその両親ですか」。
26413 43 9 3 イエスは答えられた、「本人が罪を犯したのでもなく、また、その両親が犯したのでもない。ただ神のみわざが、彼の上に現れるためである。
26414 43 9 4 わたしたちは、わたしをつかわされたかたのわざを、昼の間にしなければならない。夜が来る。すると、だれも働けなくなる。
26415 43 9 5 わたしは、この世にいる間は、世の光である」。
26416 43 9 6 イエスはそう言って、地につばきをし、そのつばきで、どろをつくり、そのどろを盲人の目に塗って言われた、
26417 43 9 7 「シロアム(つかわされた者、の意)の池に行って洗いなさい」。そこで彼は行って洗った。そして見えるようになって、帰って行った。
26418 43 9 8 近所の人々や、彼がもと、こじきであったのを見知っていた人々が言った、「この人は、すわってこじきをしていた者ではないか」。
26419 43 9 9 ある人々は「その人だ」と言い、他の人々は「いや、ただあの人に似ているだけだ」と言った。しかし、本人は「わたしがそれだ」と言った。
26420 43 9 10 そこで人々は彼に言った、「では、おまえの目はどうしてあいたのか」。
26421 43 9 11 彼は答えた、「イエスというかたが、どろをつくって、わたしの目に塗り、『シロアムに行って洗え』と言われました。それで、行って洗うと、見えるようになりました」。
26422 43 9 12 人々は彼に言った、「その人はどこにいるのか」。彼は「知りません」と答えた。
26423 43 9 13 人々は、もと盲人であったこの人を、パリサイ人たちのところにつれて行った。
26424 43 9 14 イエスがどろをつくって彼の目をあけたのは、安息日であった。
26425 43 9 15 パリサイ人たちもまた、「どうして見えるようになったのか」、と彼に尋ねた。彼は答えた、「あのかたがわたしの目にどろを塗り、わたしがそれを洗い、そして見えるようになりました」。
26426 43 9 16 そこで、あるパリサイ人たちが言った、「その人は神からきた人ではない。安息日を守っていないのだから」。しかし、ほかの人々は言った、「罪のある人が、どうしてそのようなしるしを行うことができようか」。そして彼らの間に分争が生じた。
26427 43 9 17 そこで彼らは、もう一度この盲人に聞いた、「おまえの目をあけてくれたその人を、どう思うか」。「預言者だと思います」と彼は言った。
26428 43 9 18 ユダヤ人たちは、彼がもと盲人であったが見えるようになったことを、まだ信じなかった。ついに彼らは、目が見えるようになったこの人の両親を呼んで、
26429 43 9 19 尋ねて言った、「これが、生れつき盲人であったと、おまえたちの言っているむすこか。それではどうして、いま目が見えるのか」。
26430 43 9 20 両親は答えて言った、「これがわたしどものむすこであること、また生れつき盲人であったことは存じています。
26431 43 9 21 しかし、どうしていま見えるようになったのか、それは知りません。また、だれがその目をあけて下さったのかも知りません。あれに聞いて下さい。あれはもうおとなですから、自分のことは自分で話せるでしょう」。
26432 43 9 22 両親はユダヤ人たちを恐れていたので、こう答えたのである。それは、もしイエスをキリストと告白する者があれば、会堂から追い出すことに、ユダヤ人たちが既に決めていたからである。
26433 43 9 23 彼の両親が「おとなですから、あれに聞いて下さい」と言ったのは、そのためであった。
26434 43 9 24 そこで彼らは、盲人であった人をもう一度呼んで言った、「神に栄光を帰するがよい。あの人が罪人であることは、わたしたちにはわかっている」。
26435 43 9 25 すると彼は言った、「あのかたが罪人であるかどうか、わたしは知りません。ただ一つのことだけ知っています。わたしは盲であったが、今は見えるということです」。
26436 43 9 26 そこで彼らは言った、「その人はおまえに何をしたのか。どんなにしておまえの目をあけたのか」。
26437 43 9 27 彼は答えた、「そのことはもう話してあげたのに、聞いてくれませんでした。なぜまた聞こうとするのですか。あなたがたも、あの人の弟子になりたいのですか」。
26438 43 9 28 そこで彼らは彼をののしって言った、「おまえはあれの弟子だが、わたしたちはモーセの弟子だ。
26439 43 9 29 モーセに神が語られたということは知っている。だが、あの人がどこからきた者か、わたしたちは知らぬ」。
26440 43 9 30 そこで彼が答えて言った、「わたしの目をあけて下さったのに、そのかたがどこからきたか、ご存じないとは、不思議千万です。
26441 43 9 31 わたしたちはこのことを知っています。神は罪人の言うことはお聞きいれになりませんが、神を敬い、そのみこころを行う人の言うことは、聞きいれて下さいます。
26442 43 9 32 生れつき盲であった者の目をあけた人があるということは、世界が始まって以来、聞いたことがありません。
26443 43 9 33 もしあのかたが神からきた人でなかったら、何一つできなかったはずです」。
26444 43 9 34 これを聞いて彼らは言った、「おまえは全く罪の中に生れていながら、わたしたちを教えようとするのか」。そして彼を外へ追い出した。
26445 43 9 35 イエスは、その人が外へ追い出されたことを聞かれた。そして彼に会って言われた、「あなたは人の子を信じるか」。
26446 43 9 36 彼は答えて言った、「主よ、それはどなたですか。そのかたを信じたいのですが」。
26447 43 9 37 イエスは彼に言われた、「あなたは、もうその人に会っている。今あなたと話しているのが、その人である」。
26448 43 9 38 すると彼は、「主よ、信じます」と言って、イエスを拝した。
26449 43 9 39 そこでイエスは言われた、「わたしがこの世にきたのは、さばくためである。すなわち、見えない人たちが見えるようになり、見える人たちが見えないようになるためである」。
26450 43 9 40 そこにイエスと一緒にいたあるパリサイ人たちが、それを聞いてイエスに言った、「それでは、わたしたちも盲なのでしょうか」。
26451 43 9 41 イエスは彼らに言われた、「もしあなたがたが盲人であったなら、罪はなかったであろう。しかし、今あなたがたが『見える』と言い張るところに、あなたがたの罪がある。
26452 43 10 1 よくよくあなたがたに言っておく。羊の囲いにはいるのに、門からでなく、ほかの所からのりこえて来る者は、盗人であり、強盗である。
26453 43 10 2 門からはいる者は、羊の羊飼である。
26454 43 10 3 門番は彼のために門を開き、羊は彼の声を聞く。そして彼は自分の羊の名をよんで連れ出す。
26455 43 10 4 自分の羊をみな出してしまうと、彼は羊の先頭に立って行く。羊はその声を知っているので、彼について行くのである。
26456 43 10 5 ほかの人には、ついて行かないで逃げ去る。その人の声を知らないからである」。
26457 43 10 6 イエスは彼らにこの比喩を話されたが、彼らは自分たちにお話しになっているのが何のことだか、わからなかった。
26458 43 10 7 そこで、イエスはまた言われた、「よくよくあなたがたに言っておく。わたしは羊の門である。
26459 43 10 8 わたしよりも前にきた人は、みな盗人であり、強盗である。羊は彼らに聞き従わなかった。
26460 43 10 9 わたしは門である。わたしをとおってはいる者は救われ、また出入りし、牧草にありつくであろう。
26461 43 10 10 盗人が来るのは、盗んだり、殺したり、滅ぼしたりするためにほかならない。わたしがきたのは、羊に命を得させ、豊かに得させるためである。
26462 43 10 11 わたしはよい羊飼である。よい羊飼は、羊のために命を捨てる。
26463 43 10 12 羊飼ではなく、羊が自分のものでもない雇人は、おおかみが来るのを見ると、羊をすてて逃げ去る。そして、おおかみは羊を奪い、また追い散らす。
26464 43 10 13 彼は雇人であって、羊のことを心にかけていないからである。
26465 43 10 14 わたしはよい羊飼であって、わたしの羊を知り、わたしの羊はまた、わたしを知っている。
26466 43 10 15 それはちょうど、父がわたしを知っておられ、わたしが父を知っているのと同じである。そして、わたしは羊のために命を捨てるのである。
26467 43 10 16 わたしにはまた、この囲いにいない他の羊がある。わたしは彼らをも導かねばならない。彼らも、わたしの声に聞き従うであろう。そして、ついに一つの群れ、ひとりの羊飼となるであろう。
26468 43 10 17 父は、わたしが自分の命を捨てるから、わたしを愛して下さるのである。命を捨てるのは、それを再び得るためである。
26469 43 10 18 だれかが、わたしからそれを取り去るのではない。わたしが、自分からそれを捨てるのである。わたしには、それを捨てる力があり、またそれを受ける力もある。これはわたしの父から授かった定めである」。
26470 43 10 19 これらの言葉を語られたため、ユダヤ人の間にまたも分争が生じた。
26471 43 10 20 そのうちの多くの者が言った、「彼は悪霊に取りつかれて、気が狂っている。どうして、あなたがたはその言うことを聞くのか」。
26472 43 10 21 他の人々は言った、「それは悪霊に取りつかれた者の言葉ではない。悪霊は盲人の目をあけることができようか」。
26473 43 10 22 そのころ、エルサレムで宮きよめの祭が行われた。時は冬であった。
26474 43 10 23 イエスは、宮の中にあるソロモンの廊を歩いておられた。
26475 43 10 24 するとユダヤ人たちが、イエスを取り囲んで言った、「いつまでわたしたちを不安のままにしておくのか。あなたがキリストであるなら、そうとはっきり言っていただきたい」。
26476 43 10 25 イエスは彼らに答えられた、「わたしは話したのだが、あなたがたは信じようとしない。わたしの父の名によってしているすべてのわざが、わたしのことをあかししている。
26477 43 10 26 あなたがたが信じないのは、わたしの羊でないからである。
26478 43 10 27 わたしの羊はわたしの声に聞き従う。わたしは彼らを知っており、彼らはわたしについて来る。
26479 43 10 28 わたしは、彼らに永遠の命を与える。だから、彼らはいつまでも滅びることがなく、また、彼らをわたしの手から奪い去る者はない。
26480 43 10 29 わたしの父がわたしに下さったものは、すべてにまさるものである。そしてだれも父のみ手から、それを奪い取ることはできない。
26481 43 10 30 わたしと父とは一つである」。
26482 43 10 31 そこでユダヤ人たちは、イエスを打ち殺そうとして、また石を取りあげた。
26483 43 10 32 するとイエスは彼らに答えられた、「わたしは、父による多くのよいわざを、あなたがたに示した。その中のどのわざのために、わたしを石で打ち殺そうとするのか」。
26484 43 10 33 ユダヤ人たちは答えた、「あなたを石で殺そうとするのは、よいわざをしたからではなく、神を汚したからである。また、あなたは人間であるのに、自分を神としているからである」。
26485 43 10 34 イエスは彼らに答えられた、「あなたがたの律法に、『わたしは言う、あなたがたは神々である』と書いてあるではないか。
26486 43 10 35 神の言を託された人々が、神々といわれておるとすれば、(そして聖書の言は、すたることがあり得ない)
26487 43 10 36 父が聖別して、世につかわされた者が、『わたしは神の子である』と言ったからとて、どうして『あなたは神を汚す者だ』と言うのか。
26488 43 10 37 もしわたしが父のわざを行わないとすれば、わたしを信じなくてもよい。
26489 43 10 38 しかし、もし行っているなら、たといわたしを信じなくても、わたしのわざを信じるがよい。そうすれば、父がわたしにおり、また、わたしが父におることを知って悟るであろう」。
26490 43 10 39 そこで、彼らはまたイエスを捕えようとしたが、イエスは彼らの手をのがれて、去って行かれた。
26491 43 10 40 さて、イエスはまたヨルダンの向こう岸、すなわち、ヨハネが初めにバプテスマを授けていた所に行き、そこに滞在しておられた。
26492 43 10 41 多くの人々がイエスのところにきて、互に言った、「ヨハネはなんのしるしも行わなかったが、ヨハネがこのかたについて言ったことは、皆ほんとうであった」。
26493 43 10 42 そして、そこで多くの者がイエスを信じた。
26494 43 11 1 さて、ひとりの病人がいた。ラザロといい、マリヤとその姉妹マルタの村ベタニヤの人であった。
26495 43 11 2 このマリヤは主に香油をぬり、自分の髪の毛で、主の足をふいた女であって、病気であったのは、彼女の兄弟ラザロであった。
26496 43 11 3 姉妹たちは人をイエスのもとにつかわして、「主よ、ただ今、あなたが愛しておられる者が病気をしています」と言わせた。
26497 43 11 4 イエスはそれを聞いて言われた、「この病気は死ぬほどのものではない。それは神の栄光のため、また、神の子がそれによって栄光を受けるためのものである」。
26498 43 11 5 イエスは、マルタとその姉妹とラザロとを愛しておられた。
26499 43 11 6 ラザロが病気であることを聞いてから、なおふつか、そのおられた所に滞在された。
26500 43 11 7 それから弟子たちに、「もう一度ユダヤに行こう」と言われた。
26501 43 11 8 弟子たちは言った、「先生、ユダヤ人らが、さきほどもあなたを石で殺そうとしていましたのに、またそこに行かれるのですか」。
26502 43 11 9 イエスは答えられた、「一日には十二時間あるではないか。昼間あるけば、人はつまずくことはない。この世の光を見ているからである。
26503 43 11 10 しかし、夜あるけば、つまずく。その人のうちに、光がないからである」。
26504 43 11 11 そう言われたが、それからまた、彼らに言われた、「わたしたちの友ラザロが眠っている。わたしは彼を起しに行く」。
26505 43 11 12 すると弟子たちは言った、「主よ、眠っているのでしたら、助かるでしょう」。
26506 43 11 13 イエスはラザロが死んだことを言われたのであるが、弟子たちは、眠って休んでいることをさして言われたのだと思った。
26507 43 11 14 するとイエスは、あからさまに彼らに言われた、「ラザロは死んだのだ。
26508 43 11 15 そして、わたしがそこにいあわせなかったことを、あなたがたのために喜ぶ。それは、あなたがたが信じるようになるためである。では、彼のところに行こう」。
26509 43 11 16 するとデドモと呼ばれているトマスが、仲間の弟子たちに言った、「わたしたちも行って、先生と一緒に死のうではないか」。
26510 43 11 17 さて、イエスが行ってごらんになると、ラザロはすでに四日間も墓の中に置かれていた。
26511 43 11 18 ベタニヤはエルサレムに近く、二十五丁ばかり離れたところにあった。
26512 43 11 19 大ぜいのユダヤ人が、その兄弟のことで、マルタとマリヤとを慰めようとしてきていた。
26513 43 11 20 マルタはイエスがこられたと聞いて、出迎えに行ったが、マリヤは家ですわっていた。
26514 43 11 21 マルタはイエスに言った、「主よ、もしあなたがここにいて下さったなら、わたしの兄弟は死ななかったでしょう。
26515 43 11 22 しかし、あなたがどんなことをお願いになっても、神はかなえて下さることを、わたしは今でも存じています」。
26516 43 11 23 イエスはマルタに言われた、「あなたの兄弟はよみがえるであろう」。
26517 43 11 24 マルタは言った、「終りの日のよみがえりの時よみがえることは、存じています」。
26518 43 11 25 イエスは彼女に言われた、「わたしはよみがえりであり、命である。わたしを信じる者は、たとい死んでも生きる。
26519 43 11 26 また、生きていて、わたしを信じる者は、いつまでも死なない。あなたはこれを信じるか」。
26520 43 11 27 マルタはイエスに言った、「主よ、信じます。あなたがこの世にきたるべきキリスト、神の御子であると信じております」。
26521 43 11 28 マルタはこう言ってから、帰って姉妹のマリヤを呼び、「先生がおいでになって、あなたを呼んでおられます」と小声で言った。
26522 43 11 29 これを聞いたマリヤはすぐ立ち上がって、イエスのもとに行った。
26523 43 11 30 イエスはまだ村に、はいってこられず、マルタがお迎えしたその場所におられた。
26524 43 11 31 マリヤと一緒に家にいて彼女を慰めていたユダヤ人たちは、マリヤが急いで立ち上がって出て行くのを見て、彼女は墓に泣きに行くのであろうと思い、そのあとからついて行った。
26525 43 11 32 マリヤは、イエスのおられる所に行ってお目にかかり、その足もとにひれ伏して言った、「主よ、もしあなたがここにいて下さったなら、わたしの兄弟は死ななかったでしょう」。
26526 43 11 33 イエスは、彼女が泣き、また、彼女と一緒にきたユダヤ人たちも泣いているのをごらんになり、激しく感動し、また心を騒がせ、そして言われた、
26527 43 11 34 「彼をどこに置いたのか」。彼らはイエスに言った、「主よ、きて、ごらん下さい」。
26528 43 11 35 イエスは涙を流された。
26529 43 11 36 するとユダヤ人たちは言った、「ああ、なんと彼を愛しておられたことか」。
26530 43 11 37 しかし、彼らのある人たちは言った、「あの盲人の目をあけたこの人でも、ラザロを死なせないようには、できなかったのか」。
26531 43 11 38 イエスはまた激しく感動して、墓にはいられた。それは洞穴であって、そこに石がはめてあった。
26532 43 11 39 イエスは言われた、「石を取りのけなさい」。死んだラザロの姉妹マルタが言った、「主よ、もう臭くなっております。四日もたっていますから」。
26533 43 11 40 イエスは彼女に言われた、「もし信じるなら神の栄光を見るであろうと、あなたに言ったではないか」。
26534 43 11 41 人々は石を取りのけた。すると、イエスは目を天にむけて言われた、「父よ、わたしの願いをお聞き下さったことを感謝します。
26535 43 11 42 あなたがいつでもわたしの願いを聞きいれて下さることを、よく知っています。しかし、こう申しますのは、そばに立っている人々に、あなたがわたしをつかわされたことを、信じさせるためであります」。
26536 43 11 43 こう言いながら、大声で「ラザロよ、出てきなさい」と呼ばわれた。
26537 43 11 44 すると、死人は手足を布でまかれ、顔も顔おおいで包まれたまま、出てきた。イエスは人々に言われた、「彼をほどいてやって、帰らせなさい」。
26538 43 11 45 マリヤのところにきて、イエスのなさったことを見た多くのユダヤ人たちは、イエスを信じた。
26539 43 11 46 しかし、そのうちの数人がパリサイ人たちのところに行って、イエスのされたことを告げた。
26540 43 11 47 そこで、祭司長たちとパリサイ人たちとは、議会を召集して言った、「この人が多くのしるしを行っているのに、お互は何をしているのだ。
26541 43 11 48 もしこのままにしておけば、みんなが彼を信じるようになるだろう。そのうえ、ローマ人がやってきて、わたしたちの土地も人民も奪ってしまうであろう」。
26542 43 11 49 彼らのうちのひとりで、その年の大祭司であったカヤパが、彼らに言った、「あなたがたは、何もわかっていないし、
26543 43 11 50 ひとりの人が人民に代って死んで、全国民が滅びないようになるのがわたしたちにとって得だということを、考えてもいない」。
26544 43 11 51 このことは彼が自分から言ったのではない。彼はこの年の大祭司であったので、預言をして、イエスが国民のために、
26545 43 11 52 ただ国民のためだけではなく、また散在している神の子らを一つに集めるために、死ぬことになっていると、言ったのである。
26546 43 11 53 彼らはこの日からイエスを殺そうと相談した。
26547 43 11 54 そのためイエスは、もはや公然とユダヤ人の間を歩かないで、そこを出て、荒野に近い地方のエフライムという町に行かれ、そこに弟子たちと一緒に滞在しておられた。
26548 43 11 55 さて、ユダヤ人の過越の祭が近づいたので、多くの人々は身をきよめるために、祭の前に、地方からエルサレムへ上った。
26549 43 11 56 人々はイエスを捜し求め、宮の庭に立って互に言った、「あなたがたはどう思うか。イエスはこの祭にこないのだろうか」。
26550 43 11 57 祭司長たちとパリサイ人たちとは、イエスを捕えようとして、そのいどころを知っている者があれば申し出よ、という指令を出していた。
26551 43 12 1 過越の祭の六日まえに、イエスはベタニヤに行かれた。そこは、イエスが死人の中からよみがえらせたラザロのいた所である。
26552 43 12 2 イエスのためにそこで夕食の用意がされ、マルタは給仕をしていた。イエスと一緒に食卓についていた者のうちに、ラザロも加わっていた。
26553 43 12 3 その時、マリヤは高価で純粋なナルドの香油一斤を持ってきて、イエスの足にぬり、自分の髪の毛でそれをふいた。すると、香油のかおりが家にいっぱいになった。
26554 43 12 4 弟子のひとりで、イエスを裏切ろうとしていたイスカリオテのユダが言った、
26555 43 12 5 「なぜこの香油を三百デナリに売って、貧しい人たちに、施さなかったのか」。
26556 43 12 6 彼がこう言ったのは、貧しい人たちに対する思いやりがあったからではなく、自分が盗人であり、財布を預かっていて、その中身をごまかしていたからであった。
26557 43 12 7 イエスは言われた、「この女のするままにさせておきなさい。わたしの葬りの日のために、それをとっておいたのだから。
26558 43 12 8 貧しい人たちはいつもあなたがたと共にいるが、わたしはいつも共にいるわけではない」。
26559 43 12 9 大ぜいのユダヤ人たちが、そこにイエスのおられるのを知って、押しよせてきた。それはイエスに会うためだけではなく、イエスが死人のなかから、よみがえらせたラザロを見るためでもあった。
26560 43 12 10 そこで祭司長たちは、ラザロも殺そうと相談した。
26561 43 12 11 それは、ラザロのことで、多くのユダヤ人が彼らを離れ去って、イエスを信じるに至ったからである。
26562 43 12 12 その翌日、祭にきていた大ぜいの群衆は、イエスがエルサレムにこられると聞いて、
26563 43 12 13 しゅろの枝を手にとり、迎えに出て行った。そして叫んだ、「ホサナ、主の御名によってきたる者に祝福あれ、イスラエルの王に」。
26564 43 12 14 イエスは、ろばの子を見つけて、その上に乗られた。それは
26565 43 12 15 「シオンの娘よ、恐れるな。見よ、あなたの王がろばの子に乗っておいでになる」
26566 43 12 16 弟子たちは初めにはこのことを悟らなかったが、イエスが栄光を受けられた時に、このことがイエスについて書かれてあり、またそのとおりに、人々がイエスに対してしたのだということを、思い起した。
26567 43 12 17 また、イエスがラザロを墓から呼び出して、死人の中からよみがえらせたとき、イエスと一緒にいた群衆が、そのあかしをした。
26568 43 12 18 群衆がイエスを迎えに出たのは、イエスがこのようなしるしを行われたことを、聞いていたからである。
26569 43 12 19 そこで、パリサイ人たちは互に言った、「何をしてもむだだった。世をあげて彼のあとを追って行ったではないか」。
26570 43 12 20 祭で礼拝するために上ってきた人々のうちに、数人のギリシヤ人がいた。
26571 43 12 21 彼らはガリラヤのベツサイダ出であるピリポのところにきて、「君よ、イエスにお目にかかりたいのですが」と言って頼んだ。
26572 43 12 22 ピリポはアンデレのところに行ってそのことを話し、アンデレとピリポは、イエスのもとに行って伝えた。
26573 43 12 23 すると、イエスは答えて言われた、「人の子が栄光を受ける時がきた。
26574 43 12 24 よくよくあなたがたに言っておく。一粒の麦が地に落ちて死ななければ、それはただ一粒のままである。しかし、もし死んだなら、豊かに実を結ぶようになる。
26575 43 12 25 自分の命を愛する者はそれを失い、この世で自分の命を憎む者は、それを保って永遠の命に至るであろう。
26576 43 12 26 もしわたしに仕えようとする人があれば、その人はわたしに従って来るがよい。そうすれば、わたしのおる所に、わたしに仕える者もまた、おるであろう。もしわたしに仕えようとする人があれば、その人を父は重んじて下さるであろう。
26577 43 12 27 今わたしは心が騒いでいる。わたしはなんと言おうか。父よ、この時からわたしをお救い下さい。しかし、わたしはこのために、この時に至ったのです。
26578 43 12 28 父よ、み名があがめられますように」。すると天から声があった、「わたしはすでに栄光をあらわした。そして、更にそれをあらわすであろう」。
26579 43 12 29 すると、そこに立っていた群衆がこれを聞いて、「雷がなったのだ」と言い、ほかの人たちは、「御使が彼に話しかけたのだ」と言った。
26580 43 12 30 イエスは答えて言われた、「この声があったのは、わたしのためではなく、あなたがたのためである。
26581 43 12 31 今はこの世がさばかれる時である。今こそこの世の君は追い出されるであろう。
26582 43 12 32 そして、わたしがこの地から上げられる時には、すべての人をわたしのところに引きよせるであろう」。
26583 43 12 33 イエスはこう言って、自分がどんな死に方で死のうとしていたかを、お示しになったのである。
26584 43 12 34 すると群衆はイエスにむかって言った、「わたしたちは律法によって、キリストはいつまでも生きておいでになるのだ、と聞いていました。それだのに、どうして人の子は上げられねばならないと、言われるのですか。その人の子とは、だれのことですか」。
26585 43 12 35 そこでイエスは彼らに言われた、「もうしばらくの間、光はあなたがたと一緒にここにある。光がある間に歩いて、やみに追いつかれないようにしなさい。やみの中を歩く者は、自分がどこへ行くのかわかっていない。
26586 43 12 36 光のある間に、光の子となるために、光を信じなさい」。
26587 43 12 37 このように多くのしるしを彼らの前でなさったが、彼らはイエスを信じなかった。
26588 43 12 38 それは、預言者イザヤの次の言葉が成就するためである、「主よ、わたしたちの説くところを、だれが信じたでしょうか。また、主のみ腕はだれに示されたでしょうか」。
26589 43 12 39 こういうわけで、彼らは信じることができなかった。イザヤはまた、こうも言った、
26590 43 12 40 「神は彼らの目をくらまし、心をかたくなになさった。それは、彼らが目で見ず、心で悟らず、悔い改めていやされることがないためである」。
26591 43 12 41 イザヤがこう言ったのは、イエスの栄光を見たからであって、イエスのことを語ったのである。
26592 43 12 42 しかし、役人たちの中にも、イエスを信じた者が多かったが、パリサイ人をはばかって、告白はしなかった。会堂から追い出されるのを恐れていたのである。
26593 43 12 43 彼らは神のほまれよりも、人のほまれを好んだからである。
26594 43 12 44 イエスは大声で言われた、「わたしを信じる者は、わたしを信じるのではなく、わたしをつかわされたかたを信じるのであり、
26595 43 12 45 また、わたしを見る者は、わたしをつかわされたかたを見るのである。
26596 43 12 46 わたしは光としてこの世にきた。それは、わたしを信じる者が、やみのうちにとどまらないようになるためである。
26597 43 12 47 たとい、わたしの言うことを聞いてそれを守らない人があっても、わたしはその人をさばかない。わたしがきたのは、この世をさばくためではなく、この世を救うためである。
26598 43 12 48 わたしを捨てて、わたしの言葉を受けいれない人には、その人をさばくものがある。わたしの語ったその言葉が、終りの日にその人をさばくであろう。
26599 43 12 49 わたしは自分から語ったのではなく、わたしをつかわされた父ご自身が、わたしの言うべきこと、語るべきことをお命じになったのである。
26600 43 12 50 わたしは、この命令が永遠の命であることを知っている。それゆえに、わたしが語っていることは、わたしの父がわたしに仰せになったことを、そのまま語っているのである」。
26601 43 13 1 過越の祭の前に、イエスは、この世を去って父のみもとに行くべき自分の時がきたことを知り、世にいる自分の者たちを愛して、彼らを最後まで愛し通された。
26602 43 13 2 夕食のとき、悪魔はすでにシモンの子イスカリオテのユダの心に、イエスを裏切ろうとする思いを入れていたが、
26603 43 13 3 イエスは、父がすべてのものを自分の手にお与えになったこと、また、自分は神から出てきて、神にかえろうとしていることを思い、
26604 43 13 4 夕食の席から立ち上がって、上着を脱ぎ、手ぬぐいをとって腰に巻き、
26605 43 13 5 それから水をたらいに入れて、弟子たちの足を洗い、腰に巻いた手ぬぐいでふき始められた。
26606 43 13 6 こうして、シモン・ペテロの番になった。すると彼はイエスに、「主よ、あなたがわたしの足をお洗いになるのですか」と言った。
26607 43 13 7 イエスは彼に答えて言われた、「わたしのしていることは今あなたにはわからないが、あとでわかるようになるだろう」。
26608 43 13 8 ペテロはイエスに言った、「わたしの足を決して洗わないで下さい」。イエスは彼に答えられた、「もしわたしがあなたの足を洗わないなら、あなたはわたしとなんの係わりもなくなる」。
26609 43 13 9 シモン・ペテロはイエスに言った、「主よ、では、足だけではなく、どうぞ、手も頭も」。
26610 43 13 10 イエスは彼に言われた、「すでにからだを洗った者は、足のほかは洗う必要がない。全身がきれいなのだから。あなたがたはきれいなのだ。しかし、みんながそうなのではない」。
26611 43 13 11 イエスは自分を裏切る者を知っておられた。それで、「みんながきれいなのではない」と言われたのである。
26612 43 13 12 こうして彼らの足を洗ってから、上着をつけ、ふたたび席にもどって、彼らに言われた、「わたしがあなたがたにしたことがわかるか。
26613 43 13 13 あなたがたはわたしを教師、また主と呼んでいる。そう言うのは正しい。わたしはそのとおりである。
26614 43 13 14 しかし、主であり、また教師であるわたしが、あなたがたの足を洗ったからには、あなたがたもまた、互に足を洗い合うべきである。
26615 43 13 15 わたしがあなたがたにしたとおりに、あなたがたもするように、わたしは手本を示したのだ。
26616 43 13 16 よくよくあなたがたに言っておく。僕はその主人にまさるものではなく、つかわされた者はつかわした者にまさるものではない。
26617 43 13 17 もしこれらのことがわかっていて、それを行うなら、あなたがたはさいわいである。
26618 43 13 18 あなたがた全部の者について、こう言っているのではない。わたしは自分が選んだ人たちを知っている。しかし、『わたしのパンを食べている者が、わたしにむかってそのかかとをあげた』とある聖書は成就されなければならない。
26619 43 13 19 そのことがまだ起らない今のうちに、あなたがたに言っておく。いよいよ事が起ったとき、わたしがそれであることを、あなたがたが信じるためである。
26620 43 13 20 よくよくあなたがたに言っておく。わたしがつかわす者を受けいれる者は、わたしを受けいれるのである。わたしを受けいれる者は、わたしをつかわされたかたを、受けいれるのである」。
26621 43 13 21 イエスがこれらのことを言われた後、その心が騒ぎ、おごそかに言われた、「よくよくあなたがたに言っておく。あなたがたのうちのひとりが、わたしを裏切ろうとしている」。
26622 43 13 22 弟子たちはだれのことを言われたのか察しかねて、互に顔を見合わせた。
26623 43 13 23 弟子たちのひとりで、イエスの愛しておられた者が、み胸に近く席についていた。
26624 43 13 24 そこで、シモン・ペテロは彼に合図をして言った、「だれのことをおっしゃったのか、知らせてくれ」。
26625 43 13 25 その弟子はそのままイエスの胸によりかかって、「主よ、だれのことですか」と尋ねると、
26626 43 13 26 イエスは答えられた、「わたしが一きれの食物をひたして与える者が、それである」。そして、一きれの食物をひたしてとり上げ、シモンの子イスカリオテのユダにお与えになった。
26627 43 13 27 この一きれの食物を受けるやいなや、サタンがユダにはいった。そこでイエスは彼に言われた、「しようとしていることを、今すぐするがよい」。
26628 43 13 28 席を共にしていた者のうち、なぜユダにこう言われたのか、わかっていた者はひとりもなかった。
26629 43 13 29 ある人々は、ユダが金入れをあずかっていたので、イエスが彼に、「祭のために必要なものを買え」と言われたか、あるいは、貧しい者に何か施させようとされたのだと思っていた。
26630 43 13 30 ユダは一きれの食物を受けると、すぐに出て行った。時は夜であった。
26631 43 13 31 さて、彼が出て行くと、イエスは言われた、「今や人の子は栄光を受けた。神もまた彼によって栄光をお受けになった。
26632 43 13 32 彼によって栄光をお受けになったのなら、神ご自身も彼に栄光をお授けになるであろう。すぐにもお授けになるであろう。
26633 43 13 33 子たちよ、わたしはまだしばらく、あなたがたと一緒にいる。あなたがたはわたしを捜すだろうが、すでにユダヤ人たちに言ったとおり、今あなたがたにも言う、『あなたがたはわたしの行く所に来ることはできない』。
26634 43 13 34 わたしは、新しいいましめをあなたがたに与える、互に愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互に愛し合いなさい。
26635 43 13 35 互に愛し合うならば、それによって、あなたがたがわたしの弟子であることを、すべての者が認めるであろう」。
26636 43 13 36 シモン・ペテロがイエスに言った、「主よ、どこへおいでになるのですか」。イエスは答えられた、「あなたはわたしの行くところに、今はついて来ることはできない。しかし、あとになってから、ついて来ることになろう」。
26637 43 13 37 ペテロはイエスに言った、「主よ、なぜ、今あなたについて行くことができないのですか。あなたのためには、命も捨てます」。
26638 43 13 38 イエスは答えられた、「わたしのために命を捨てると言うのか。よくよくあなたに言っておく。鶏が鳴く前に、あなたはわたしを三度知らないと言うであろう」。
26639 43 14 1 「あなたがたは、心を騒がせないがよい。神を信じ、またわたしを信じなさい。
26640 43 14 2 わたしの父の家には、すまいがたくさんある。もしなかったならば、わたしはそう言っておいたであろう。あなたがたのために、場所を用意しに行くのだから。
26641 43 14 3 そして、行って、場所の用意ができたならば、またきて、あなたがたをわたしのところに迎えよう。わたしのおる所にあなたがたもおらせるためである。
26642 43 14 4 わたしがどこへ行くのか、その道はあなたがたにわかっている」。
26643 43 14 5 トマスはイエスに言った、「主よ、どこへおいでになるのか、わたしたちにはわかりません。どうしてその道がわかるでしょう」。
26644 43 14 6 イエスは彼に言われた、「わたしは道であり、真理であり、命である。だれでもわたしによらないでは、父のみもとに行くことはできない。
26645 43 14 7 もしあなたがたがわたしを知っていたならば、わたしの父をも知ったであろう。しかし、今は父を知っており、またすでに父を見たのである」。
26646 43 14 8 ピリポはイエスに言った、「主よ、わたしたちに父を示して下さい。そうして下されば、わたしたちは満足します」。
26647 43 14 9 イエスは彼に言われた、「ピリポよ、こんなに長くあなたがたと一緒にいるのに、わたしがわかっていないのか。わたしを見た者は、父を見たのである。どうして、わたしたちに父を示してほしいと、言うのか。
26648 43 14 10 わたしが父におり、父がわたしにおられることをあなたは信じないのか。わたしがあなたがたに話している言葉は、自分から話しているのではない。父がわたしのうちにおられて、みわざをなさっているのである。
26649 43 14 11 わたしが父におり、父がわたしにおられることを信じなさい。もしそれが信じられないならば、わざそのものによって信じなさい。
26650 43 14 12 よくよくあなたがたに言っておく。わたしを信じる者は、またわたしのしているわざをするであろう。そればかりか、もっと大きいわざをするであろう。わたしが父のみもとに行くからである。
26651 43 14 13 わたしの名によって願うことは、なんでもかなえてあげよう。父が子によって栄光をお受けになるためである。
26652 43 14 14 何事でもわたしの名によって願うならば、わたしはそれをかなえてあげよう。
26653 43 14 15 もしあなたがたがわたしを愛するならば、わたしのいましめを守るべきである。
26654 43 14 16 わたしは父にお願いしよう。そうすれば、父は別に助け主を送って、いつまでもあなたがたと共におらせて下さるであろう。
26655 43 14 17 それは真理の御霊である。この世はそれを見ようともせず、知ろうともしないので、それを受けることができない。あなたがたはそれを知っている。なぜなら、それはあなたがたと共におり、またあなたがたのうちにいるからである。
26656 43 14 18 わたしはあなたがたを捨てて孤児とはしない。あなたがたのところに帰って来る。
26657 43 14 19 もうしばらくしたら、世はもはやわたしを見なくなるだろう。しかし、あなたがたはわたしを見る。わたしが生きるので、あなたがたも生きるからである。
26658 43 14 20 その日には、わたしはわたしの父におり、あなたがたはわたしにおり、また、わたしがあなたがたにおることが、わかるであろう。
26659 43 14 21 わたしのいましめを心にいだいてこれを守る者は、わたしを愛する者である。わたしを愛する者は、わたしの父に愛されるであろう。わたしもその人を愛し、その人にわたし自身をあらわすであろう」。
26660 43 14 22 イスカリオテでない方のユダがイエスに言った、「主よ、あなたご自身をわたしたちにあらわそうとして、世にはあらわそうとされないのはなぜですか」。
26661 43 14 23 イエスは彼に答えて言われた、「もしだれでもわたしを愛するならば、わたしの言葉を守るであろう。そして、わたしの父はその人を愛し、また、わたしたちはその人のところに行って、その人と一緒に住むであろう。
26662 43 14 24 わたしを愛さない者はわたしの言葉を守らない。あなたがたが聞いている言葉は、わたしの言葉ではなく、わたしをつかわされた父の言葉である。
26663 43 14 25 これらのことは、あなたがたと一緒にいた時、すでに語ったことである。
26664 43 14 26 しかし、助け主、すなわち、父がわたしの名によってつかわされる聖霊は、あなたがたにすべてのことを教え、またわたしが話しておいたことを、ことごとく思い起させるであろう。
26665 43 14 27 わたしは平安をあなたがたに残して行く。わたしの平安をあなたがたに与える。わたしが与えるのは、世が与えるようなものとは異なる。あなたがたは心を騒がせるな、またおじけるな。
26666 43 14 28 『わたしは去って行くが、またあなたがたのところに帰って来る』と、わたしが言ったのを、あなたがたは聞いている。もしわたしを愛しているなら、わたしが父のもとに行くのを喜んでくれるであろう。父がわたしより大きいかたであるからである。
26667 43 14 29 今わたしは、そのことが起らない先にあなたがたに語った。それは、事が起った時にあなたがたが信じるためである。
26668 43 14 30 わたしはもはや、あなたがたに、多くを語るまい。この世の君が来るからである。だが、彼はわたしに対して、なんの力もない。
26669 43 14 31 しかし、わたしが父を愛していることを世が知るように、わたしは父がお命じになったとおりのことを行うのである。立て。さあ、ここから出かけて行こう。
26670 43 15 1 わたしはまことのぶどうの木、わたしの父は農夫である。
26671 43 15 2 わたしにつながっている枝で実を結ばないものは、父がすべてこれをとりのぞき、実を結ぶものは、もっと豊かに実らせるために、手入れしてこれをきれいになさるのである。
26672 43 15 3 あなたがたは、わたしが語った言葉によって既にきよくされている。
26673 43 15 4 わたしにつながっていなさい。そうすれば、わたしはあなたがたとつながっていよう。枝がぶどうの木につながっていなければ、自分だけでは実を結ぶことができないように、あなたがたもわたしにつながっていなければ実を結ぶことができない。
26674 43 15 5 わたしはぶどうの木、あなたがたはその枝である。もし人がわたしにつながっており、またわたしがその人とつながっておれば、その人は実を豊かに結ぶようになる。わたしから離れては、あなたがたは何一つできないからである。
26675 43 15 6 人がわたしにつながっていないならば、枝のように外に投げすてられて枯れる。人々はそれをかき集め、火に投げ入れて、焼いてしまうのである。
26676 43 15 7 あなたがたがわたしにつながっており、わたしの言葉があなたがたにとどまっているならば、なんでも望むものを求めるがよい。そうすれば、与えられるであろう。
26677 43 15 8 あなたがたが実を豊かに結び、そしてわたしの弟子となるならば、それによって、わたしの父は栄光をお受けになるであろう。
26678 43 15 9 父がわたしを愛されたように、わたしもあなたがたを愛したのである。わたしの愛のうちにいなさい。
26679 43 15 10 もしわたしのいましめを守るならば、あなたがたはわたしの愛のうちにおるのである。それはわたしがわたしの父のいましめを守ったので、その愛のうちにおるのと同じである。
26680 43 15 11 わたしがこれらのことを話したのは、わたしの喜びがあなたがたのうちにも宿るため、また、あなたがたの喜びが満ちあふれるためである。
26681 43 15 12 わたしのいましめは、これである。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互に愛し合いなさい。
26682 43 15 13 人がその友のために自分の命を捨てること、これよりも大きな愛はない。
26683 43 15 14 あなたがたにわたしが命じることを行うならば、あなたがたはわたしの友である。
26684 43 15 15 わたしはもう、あなたがたを僕とは呼ばない。僕は主人のしていることを知らないからである。わたしはあなたがたを友と呼んだ。わたしの父から聞いたことを皆、あなたがたに知らせたからである。
26685 43 15 16 あなたがたがわたしを選んだのではない。わたしがあなたがたを選んだのである。そして、あなたがたを立てた。それは、あなたがたが行って実をむすび、その実がいつまでも残るためであり、また、あなたがたがわたしの名によって父に求めるものはなんでも、父が与えて下さるためである。
26686 43 15 17 これらのことを命じるのは、あなたがたが互に愛し合うためである。
26687 43 15 18 もしこの世があなたがたを憎むならば、あなたがたよりも先にわたしを憎んだことを、知っておくがよい。
26688 43 15 19 もしあなたがたがこの世から出たものであったなら、この世は、あなたがたを自分のものとして愛したであろう。しかし、あなたがたはこの世のものではない。かえって、わたしがあなたがたをこの世から選び出したのである。だから、この世はあなたがたを憎むのである。
26689 43 15 20 わたしがあなたがたに『僕はその主人にまさるものではない』と言ったことを、おぼえていなさい。もし人々がわたしを迫害したなら、あなたがたをも迫害するであろう。また、もし彼らがわたしの言葉を守っていたなら、あなたがたの言葉をも守るであろう。
26690 43 15 21 彼らはわたしの名のゆえに、あなたがたに対してすべてそれらのことをするであろう。それは、わたしをつかわされたかたを彼らが知らないからである。
26691 43 15 22 もしわたしがきて彼らに語らなかったならば、彼らは罪を犯さないですんだであろう。しかし今となっては、彼らには、その罪について言いのがれる道がない。
26692 43 15 23 わたしを憎む者は、わたしの父をも憎む。
26693 43 15 24 もし、ほかのだれもがしなかったようなわざを、わたしが彼らの間でしなかったならば、彼らは罪を犯さないですんだであろう。しかし事実、彼らはわたしとわたしの父とを見て、憎んだのである。
26694 43 15 25 それは、『彼らは理由なしにわたしを憎んだ』と書いてある彼らの律法の言葉が成就するためである。
26695 43 15 26 わたしが父のみもとからあなたがたにつかわそうとしている助け主、すなわち、父のみもとから来る真理の御霊が下る時、それはわたしについてあかしをするであろう。
26696 43 15 27 あなたがたも、初めからわたしと一緒にいたのであるから、あかしをするのである。
26697 43 16 1 わたしがこれらのことを語ったのは、あなたがたがつまずくことのないためである。
26698 43 16 2 人々はあなたがたを会堂から追い出すであろう。更にあなたがたを殺す者がみな、それによって自分たちは神に仕えているのだと思う時が来るであろう。
26699 43 16 3 彼らがそのようなことをするのは、父をもわたしをも知らないからである。
26700 43 16 4 わたしがあなたがたにこれらのことを言ったのは、彼らの時がきた場合、わたしが彼らについて言ったことを、思い起させるためである。これらのことを初めから言わなかったのは、わたしがあなたがたと一緒にいたからである。
26701 43 16 5 けれども今わたしは、わたしをつかわされたかたのところに行こうとしている。しかし、あなたがたのうち、だれも『どこへ行くのか』と尋ねる者はない。
26702 43 16 6 かえって、わたしがこれらのことを言ったために、あなたがたの心は憂いで満たされている。
26703 43 16 7 しかし、わたしはほんとうのことをあなたがたに言うが、わたしが去って行くことは、あなたがたの益になるのだ。わたしが去って行かなければ、あなたがたのところに助け主はこないであろう。もし行けば、それをあなたがたにつかわそう。
26704 43 16 8 それがきたら、罪と義とさばきとについて、世の人の目を開くであろう。
26705 43 16 9 罪についてと言ったのは、彼らがわたしを信じないからである。
26706 43 16 10 義についてと言ったのは、わたしが父のみもとに行き、あなたがたは、もはやわたしを見なくなるからである。
26707 43 16 11 さばきについてと言ったのは、この世の君がさばかれるからである。
26708 43 16 12 わたしには、あなたがたに言うべきことがまだ多くあるが、あなたがたは今はそれに堪えられない。
26709 43 16 13 けれども真理の御霊が来る時には、あなたがたをあらゆる真理に導いてくれるであろう。それは自分から語るのではなく、その聞くところを語り、きたるべき事をあなたがたに知らせるであろう。
26710 43 16 14 御霊はわたしに栄光を得させるであろう。わたしのものを受けて、それをあなたがたに知らせるからである。
26711 43 16 15 父がお持ちになっているものはみな、わたしのものである。御霊はわたしのものを受けて、それをあなたがたに知らせるのだと、わたしが言ったのは、そのためである。
26712 43 16 16 しばらくすれば、あなたがたはもうわたしを見なくなる。しかし、またしばらくすれば、わたしに会えるであろう」。
26713 43 16 17 そこで、弟子たちのうちのある者は互に言い合った、「『しばらくすれば、わたしを見なくなる。またしばらくすれば、わたしに会えるであろう』と言われ、『わたしの父のところに行く』と言われたのは、いったい、どういうことなのであろう」。
26714 43 16 18 彼らはまた言った、「『しばらくすれば』と言われるのは、どういうことか。わたしたちには、その言葉の意味がわからない」。
26715 43 16 19 イエスは、彼らが尋ねたがっていることに気がついて、彼らに言われた、「しばらくすればわたしを見なくなる、またしばらくすればわたしに会えるであろうと、わたしが言ったことで、互に論じ合っているのか。
26716 43 16 20 よくよくあなたがたに言っておく。あなたがたは泣き悲しむが、この世は喜ぶであろう。あなたがたは憂えているが、その憂いは喜びに変るであろう。
26717 43 16 21 女が子を産む場合には、その時がきたというので、不安を感じる。しかし、子を産んでしまえば、もはやその苦しみをおぼえてはいない。ひとりの人がこの世に生れた、という喜びがあるためである。
26718 43 16 22 このように、あなたがたにも今は不安がある。しかし、わたしは再びあなたがたと会うであろう。そして、あなたがたの心は喜びに満たされるであろう。その喜びをあなたがたから取り去る者はいない。
26719 43 16 23 その日には、あなたがたがわたしに問うことは、何もないであろう。よくよくあなたがたに言っておく。あなたがたが父に求めるものはなんでも、わたしの名によって下さるであろう。
26720 43 16 24 今までは、あなたがたはわたしの名によって求めたことはなかった。求めなさい、そうすれば、与えられるであろう。そして、あなたがたの喜びが満ちあふれるであろう。
26721 43 16 25 わたしはこれらのことを比喩で話したが、もはや比喩では話さないで、あからさまに、父のことをあなたがたに話してきかせる時が来るであろう。
26722 43 16 26 その日には、あなたがたは、わたしの名によって求めるであろう。わたしは、あなたがたのために父に願ってあげようとは言うまい。
26723 43 16 27 父ご自身があなたがたを愛しておいでになるからである。それは、あなたがたがわたしを愛したため、また、わたしが神のみもとからきたことを信じたためである。
26724 43 16 28 わたしは父から出てこの世にきたが、またこの世を去って、父のみもとに行くのである」。
26725 43 16 29 弟子たちは言った、「今はあからさまにお話しになって、少しも比喩ではお話しになりません。
26726 43 16 30 あなたはすべてのことをご存じであり、だれもあなたにお尋ねする必要のないことが、今わかりました。このことによって、わたしたちはあなたが神からこられたかたであると信じます」。
26727 43 16 31 イエスは答えられた、「あなたがたは今信じているのか。
26728 43 16 32 見よ、あなたがたは散らされて、それぞれ自分の家に帰り、わたしをひとりだけ残す時が来るであろう。いや、すでにきている。しかし、わたしはひとりでいるのではない。父がわたしと一緒におられるのである。
26729 43 16 33 これらのことをあなたがたに話したのは、わたしにあって平安を得るためである。あなたがたは、この世ではなやみがある。しかし、勇気を出しなさい。わたしはすでに世に勝っている」。
26730 43 17 1 これらのことを語り終えると、イエスは天を見あげて言われた、「父よ、時がきました。あなたの子があなたの栄光をあらわすように、子の栄光をあらわして下さい。
26731 43 17 2 あなたは、子に賜わったすべての者に、永遠の命を授けさせるため、万民を支配する権威を子にお与えになったのですから。
26732 43 17 3 永遠の命とは、唯一の、まことの神でいますあなたと、また、あなたがつかわされたイエス・キリストとを知ることであります。
26733 43 17 4 わたしは、わたしにさせるためにお授けになったわざをなし遂げて、地上であなたの栄光をあらわしました。
26734 43 17 5 父よ、世が造られる前に、わたしがみそばで持っていた栄光で、今み前にわたしを輝かせて下さい。
26735 43 17 6 わたしは、あなたが世から選んでわたしに賜わった人々に、み名をあらわしました。彼らはあなたのものでありましたが、わたしに下さいました。そして、彼らはあなたの言葉を守りました。
26736 43 17 7 いま彼らは、わたしに賜わったものはすべて、あなたから出たものであることを知りました。
26737 43 17 8 なぜなら、わたしはあなたからいただいた言葉を彼らに与え、そして彼らはそれを受け、わたしがあなたから出たものであることをほんとうに知り、また、あなたがわたしをつかわされたことを信じるに至ったからです。
26738 43 17 9 わたしは彼らのためにお願いします。わたしがお願いするのは、この世のためにではなく、あなたがわたしに賜わった者たちのためです。彼らはあなたのものなのです。
26739 43 17 10 わたしのものは皆あなたのもの、あなたのものはわたしのものです。そして、わたしは彼らによって栄光を受けました。
26740 43 17 11 わたしはもうこの世にはいなくなりますが、彼らはこの世に残っており、わたしはみもとに参ります。聖なる父よ、わたしに賜わった御名によって彼らを守って下さい。それはわたしたちが一つであるように、彼らも一つになるためであります。
26741 43 17 12 わたしが彼らと一緒にいた間は、あなたからいただいた御名によって彼らを守り、また保護してまいりました。彼らのうち、だれも滅びず、ただ滅びの子だけが滅びました。それは聖書が成就するためでした。
26742 43 17 13 今わたしはみもとに参ります。そして世にいる間にこれらのことを語るのは、わたしの喜びが彼らのうちに満ちあふれるためであります。
26743 43 17 14 わたしは彼らに御言を与えましたが、世は彼らを憎みました。わたしが世のものでないように、彼らも世のものではないからです。
26744 43 17 15 わたしがお願いするのは、彼らを世から取り去ることではなく、彼らを悪しき者から守って下さることであります。
26745 43 17 16 わたしが世のものでないように、彼らも世のものではありません。
26746 43 17 17 真理によって彼らを聖別して下さい。あなたの御言は真理であります。
26747 43 17 18 あなたがわたしを世につかわされたように、わたしも彼らを世につかわしました。
26748 43 17 19 また彼らが真理によって聖別されるように、彼らのためわたし自身を聖別いたします。
26749 43 17 20 わたしは彼らのためばかりではなく、彼らの言葉を聞いてわたしを信じている人々のためにも、お願いいたします。
26750 43 17 21 父よ、それは、あなたがわたしのうちにおられ、わたしがあなたのうちにいるように、みんなの者が一つとなるためであります。すなわち、彼らをもわたしたちのうちにおらせるためであり、それによって、あなたがわたしをおつかわしになったことを、世が信じるようになるためであります。
26751 43 17 22 わたしは、あなたからいただいた栄光を彼らにも与えました。それは、わたしたちが一つであるように、彼らも一つになるためであります。
26752 43 17 23 わたしが彼らにおり、あなたがわたしにいますのは、彼らが完全に一つとなるためであり、また、あなたがわたしをつかわし、わたしを愛されたように、彼らをお愛しになったことを、世が知るためであります。
26753 43 17 24 父よ、あなたがわたしに賜わった人々が、わたしのいる所に一緒にいるようにして下さい。天地が造られる前からわたしを愛して下さって、わたしに賜わった栄光を、彼らに見させて下さい。
26754 43 17 25 正しい父よ、この世はあなたを知っていません。しかし、わたしはあなたを知り、また彼らも、あなたがわたしをおつかわしになったことを知っています。
26755 43 17 26 そしてわたしは彼らに御名を知らせました。またこれからも知らせましょう。それは、あなたがわたしを愛して下さったその愛が彼らのうちにあり、またわたしも彼らのうちにおるためであります」。
26756 43 18 1 イエスはこれらのことを語り終えて、弟子たちと一緒にケデロンの谷の向こうへ行かれた。そこには園があって、イエスは弟子たちと一緒にその中にはいられた。
26757 43 18 2 イエスを裏切ったユダは、その所をよく知っていた。イエスと弟子たちとがたびたびそこで集まったことがあるからである。
26758 43 18 3 さてユダは、一隊の兵卒と祭司長やパリサイ人たちの送った下役どもを引き連れ、たいまつやあかりや武器を持って、そこへやってきた。
26759 43 18 4 しかしイエスは、自分の身に起ろうとすることをことごとく承知しておられ、進み出て彼らに言われた、「だれを捜しているのか」。
26760 43 18 5 彼らは「ナザレのイエスを」と答えた。イエスは彼らに言われた、「わたしが、それである」。イエスを裏切ったユダも、彼らと一緒に立っていた。
26761 43 18 6 イエスが彼らに「わたしが、それである」と言われたとき、彼らはうしろに引きさがって地に倒れた。
26762 43 18 7 そこでまた彼らに、「だれを捜しているのか」とお尋ねになると、彼らは「ナザレのイエスを」と言った。
26763 43 18 8 イエスは答えられた、「わたしがそれであると、言ったではないか。わたしを捜しているのなら、この人たちを去らせてもらいたい」。
26764 43 18 9 それは、「あなたが与えて下さった人たちの中のひとりも、わたしは失わなかった」とイエスの言われた言葉が、成就するためである。
26765 43 18 10 シモン・ペテロは剣を持っていたが、それを抜いて、大祭司の僕に切りかかり、その右の耳を切り落した。その僕の名はマルコスであった。
26766 43 18 11 すると、イエスはペテロに言われた、「剣をさやに納めなさい。父がわたしに下さった杯は、飲むべきではないか」。
26767 43 18 12 それから一隊の兵卒やその千卒長やユダヤ人の下役どもが、イエスを捕え、縛りあげて、
26768 43 18 13 まずアンナスのところに引き連れて行った。彼はその年の大祭司カヤパのしゅうとであった。
26769 43 18 14 カヤパは前に、ひとりの人が民のために死ぬのはよいことだと、ユダヤ人に助言した者であった。
26770 43 18 15 シモン・ペテロともうひとりの弟子とが、イエスについて行った。この弟子は大祭司の知り合いであったので、イエスと一緒に大祭司の中庭にはいった。
26771 43 18 16 しかし、ペテロは外で戸口に立っていた。すると大祭司の知り合いであるその弟子が、外に出て行って門番の女に話し、ペテロを内に入れてやった。
26772 43 18 17 すると、この門番の女がペテロに言った、「あなたも、あの人の弟子のひとりではありませんか」。ペテロは「いや、そうではない」と答えた。
26773 43 18 18 僕や下役どもは、寒い時であったので、炭火をおこし、そこに立ってあたっていた。ペテロもまた彼らに交じり、立ってあたっていた。
26774 43 18 19 大祭司はイエスに、弟子たちのことやイエスの教のことを尋ねた。
26775 43 18 20 イエスは答えられた、「わたしはこの世に対して公然と語ってきた。すべてのユダヤ人が集まる会堂や宮で、いつも教えていた。何事も隠れて語ったことはない。
26776 43 18 21 なぜ、わたしに尋ねるのか。わたしが彼らに語ったことは、それを聞いた人々に尋ねるがよい。わたしの言ったことは、彼らが知っているのだから」。
26777 43 18 22 イエスがこう言われると、そこに立っていた下役のひとりが、「大祭司にむかって、そのような答をするのか」と言って、平手でイエスを打った。
26778 43 18 23 イエスは答えられた、「もしわたしが何か悪いことを言ったのなら、その悪い理由を言いなさい。しかし、正しいことを言ったのなら、なぜわたしを打つのか」。
26779 43 18 24 それからアンナスは、イエスを縛ったまま大祭司カヤパのところへ送った。
26780 43 18 25 シモン・ペテロは、立って火にあたっていた。すると人々が彼に言った、「あなたも、あの人の弟子のひとりではないか」。彼はそれをうち消して、「いや、そうではない」と言った。
26781 43 18 26 大祭司の僕のひとりで、ペテロに耳を切りおとされた人の親族の者が言った、「あなたが園であの人と一緒にいるのを、わたしは見たではないか」。
26782 43 18 27 ペテロはまたそれを打ち消した。するとすぐに、鶏が鳴いた。
26783 43 18 28 それから人々は、イエスをカヤパのところから官邸につれて行った。時は夜明けであった。彼らは、けがれを受けないで過越の食事ができるように、官邸にはいらなかった。
26784 43 18 29 そこで、ピラトは彼らのところに出てきて言った、「あなたがたは、この人に対してどんな訴えを起すのか」。
26785 43 18 30 彼らはピラトに答えて言った、「もしこの人が悪事をはたらかなかったなら、あなたに引き渡すようなことはしなかったでしょう」。
26786 43 18 31 そこでピラトは彼らに言った、「あなたがたは彼を引き取って、自分たちの律法でさばくがよい」。ユダヤ人らは彼に言った、「わたしたちには、人を死刑にする権限がありません」。
26787 43 18 32 これは、ご自身がどんな死にかたをしようとしているかを示すために言われたイエスの言葉が、成就するためである。
26788 43 18 33 さて、ピラトはまた官邸にはいり、イエスを呼び出して言った、「あなたは、ユダヤ人の王であるか」。
26789 43 18 34 イエスは答えられた、「あなたがそう言うのは、自分の考えからか。それともほかの人々が、わたしのことをあなたにそう言ったのか」。
26790 43 18 35 ピラトは答えた、「わたしはユダヤ人なのか。あなたの同族や祭司長たちが、あなたをわたしに引き渡したのだ。あなたは、いったい、何をしたのか」。
26791 43 18 36 イエスは答えられた、「わたしの国はこの世のものではない。もしわたしの国がこの世のものであれば、わたしに従っている者たちは、わたしをユダヤ人に渡さないように戦ったであろう。しかし事実、わたしの国はこの世のものではない」。
26792 43 18 37 そこでピラトはイエスに言った、「それでは、あなたは王なのだな」。イエスは答えられた、「あなたの言うとおり、わたしは王である。わたしは真理についてあかしをするために生れ、また、そのためにこの世にきたのである。だれでも真理につく者は、わたしの声に耳を傾ける」。
26793 43 18 38 ピラトはイエスに言った、「真理とは何か」。こう言って、彼はまたユダヤ人の所に出て行き、彼らに言った、「わたしには、この人になんの罪も見いだせない。
26794 43 18 39 過越の時には、わたしがあなたがたのために、ひとりの人を許してやるのが、あなたがたのしきたりになっている。ついては、あなたがたは、このユダヤ人の王を許してもらいたいのか」。
26795 43 18 40 すると彼らは、また叫んで「その人ではなく、バラバを」と言った。このバラバは強盗であった。
26796 43 19 1 そこでピラトは、イエスを捕え、むちで打たせた。
26797 43 19 2 兵卒たちは、いばらで冠をあんで、イエスの頭にかぶらせ、紫の上着を着せ、
26798 43 19 3 それから、その前に進み出て、「ユダヤ人の王、ばんざい」と言った。そして平手でイエスを打ちつづけた。
26799 43 19 4 するとピラトは、また出て行ってユダヤ人たちに言った、「見よ、わたしはこの人をあなたがたの前に引き出すが、それはこの人になんの罪も見いだせないことを、あなたがたに知ってもらうためである」。
26800 43 19 5 イエスはいばらの冠をかぶり、紫の上着を着たままで外へ出られると、ピラトは彼らに言った、「見よ、この人だ」。
26801 43 19 6 祭司長たちや下役どもはイエスを見ると、叫んで「十字架につけよ、十字架につけよ」と言った。ピラトは彼らに言った、「あなたがたが、この人を引き取って十字架につけるがよい。わたしは、彼にはなんの罪も見いだせない」。
26802 43 19 7 ユダヤ人たちは彼に答えた、「わたしたちには律法があります。その律法によれば、彼は自分を神の子としたのだから、死罪に当る者です」。
26803 43 19 8 ピラトがこの言葉を聞いたとき、ますますおそれ、
26804 43 19 9 もう一度官邸にはいってイエスに言った、「あなたは、もともと、どこからきたのか」。しかし、イエスはなんの答もなさらなかった。
26805 43 19 10 そこでピラトは言った、「何も答えないのか。わたしには、あなたを許す権威があり、また十字架につける権威があることを、知らないのか」。
26806 43 19 11 イエスは答えられた、「あなたは、上から賜わるのでなければ、わたしに対してなんの権威もない。だから、わたしをあなたに引き渡した者の罪は、もっと大きい」。
26807 43 19 12 これを聞いて、ピラトはイエスを許そうと努めた。しかしユダヤ人たちが叫んで言った、「もしこの人を許したなら、あなたはカイザルの味方ではありません。自分を王とするものはすべて、カイザルにそむく者です」。
26808 43 19 13 ピラトはこれらの言葉を聞いて、イエスを外へ引き出して行き、敷石(ヘブル語ではガバタ)という場所で裁判の席についた。
26809 43 19 14 その日は過越の準備の日であって、時は昼の十二時ころであった。ピラトはユダヤ人らに言った、「見よ、これがあなたがたの王だ」。
26810 43 19 15 すると彼らは叫んだ、「殺せ、殺せ、彼を十字架につけよ」。ピラトは彼らに言った、「あなたがたの王を、わたしが十字架につけるのか」。祭司長たちは答えた、「わたしたちには、カイザル以外に王はありません」。
26811 43 19 16 そこでピラトは、十字架につけさせるために、イエスを彼らに引き渡した。
26812 43 19 17 イエスはみずから十字架を背負って、されこうべ(ヘブル語ではゴルゴダ)という場所に出て行かれた。
26813 43 19 18 彼らはそこで、イエスを十字架につけた。イエスをまん中にして、ほかのふたりの者を両側に、イエスと一緒に十字架につけた。
26814 43 19 19 ピラトは罪状書きを書いて、十字架の上にかけさせた。それには「ユダヤ人の王、ナザレのイエス」と書いてあった。
26815 43 19 20 イエスが十字架につけられた場所は都に近かったので、多くのユダヤ人がこの罪状書きを読んだ。それはヘブル、ローマ、ギリシヤの国語で書いてあった。
26816 43 19 21 ユダヤ人の祭司長たちがピラトに言った、「『ユダヤ人の王』と書かずに、『この人はユダヤ人の王と自称していた』と書いてほしい」。
26817 43 19 22 ピラトは答えた、「わたしが書いたことは、書いたままにしておけ」。
26818 43 19 23 さて、兵卒たちはイエスを十字架につけてから、その上着をとって四つに分け、おのおの、その一つを取った。また下着を手に取ってみたが、それには縫い目がなく、上の方から全部一つに織ったものであった。
26819 43 19 24 そこで彼らは互に言った、「それを裂かないで、だれのものになるか、くじを引こう」。これは、「彼らは互にわたしの上着を分け合い、わたしの衣をくじ引にした」という聖書が成就するためで、兵卒たちはそのようにしたのである。
26820 43 19 25 さて、イエスの十字架のそばには、イエスの母と、母の姉妹と、クロパの妻マリヤと、マグダラのマリヤとが、たたずんでいた。
26821 43 19 26 イエスは、その母と愛弟子とがそばに立っているのをごらんになって、母にいわれた、「婦人よ、ごらんなさい。これはあなたの子です」。
26822 43 19 27 それからこの弟子に言われた、「ごらんなさい。これはあなたの母です」。そのとき以来、この弟子はイエスの母を自分の家に引きとった。
26823 43 19 28 そののち、イエスは今や万事が終ったことを知って、「わたしは、かわく」と言われた。それは、聖書が全うされるためであった。
26824 43 19 29 そこに、酢いぶどう酒がいっぱい入れてある器がおいてあったので、人々は、このぶどう酒を含ませた海綿をヒソプの茎に結びつけて、イエスの口もとにさし出した。
26825 43 19 30 すると、イエスはそのぶどう酒を受けて、「すべてが終った」と言われ、首をたれて息をひきとられた。
26826 43 19 31 さてユダヤ人たちは、その日が準備の日であったので、安息日に死体を十字架の上に残しておくまいと、(特にその安息日は大事な日であったから)、ピラトに願って、足を折った上で、死体を取りおろすことにした。
26827 43 19 32 そこで兵卒らがきて、イエスと一緒に十字架につけられた初めの者と、もうひとりの者との足を折った。
26828 43 19 33 しかし、彼らがイエスのところにきた時、イエスはもう死んでおられたのを見て、その足を折ることはしなかった。
26829 43 19 34 しかし、ひとりの兵卒がやりでそのわきを突きさすと、すぐ血と水とが流れ出た。
26830 43 19 35 それを見た者があかしをした。そして、そのあかしは真実である。その人は、自分が真実を語っていることを知っている。それは、あなたがたも信ずるようになるためである。
26831 43 19 36 これらのことが起ったのは、「その骨はくだかれないであろう」との聖書の言葉が、成就するためである。
26832 43 19 37 また聖書のほかのところに、「彼らは自分が刺し通した者を見るであろう」とある。
26833 43 19 38 そののち、ユダヤ人をはばかって、ひそかにイエスの弟子となったアリマタヤのヨセフという人が、イエスの死体を取りおろしたいと、ピラトに願い出た。ピラトはそれを許したので、彼はイエスの死体を取りおろしに行った。
26834 43 19 39 また、前に、夜、イエスのみもとに行ったニコデモも、没薬と沈香とをまぜたものを百斤ほど持ってきた。
26835 43 19 40 彼らは、イエスの死体を取りおろし、ユダヤ人の埋葬の習慣にしたがって、香料を入れて亜麻布で巻いた。
26836 43 19 41 イエスが十字架にかけられた所には、一つの園があり、そこにはまだだれも葬られたことのない新しい墓があった。
26837 43 19 42 その日はユダヤ人の準備の日であったので、その墓が近くにあったため、イエスをそこに納めた。
26838 43 20 1 さて、一週の初めの日に、朝早くまだ暗いうちに、マグダラのマリヤが墓に行くと、墓から石がとりのけてあるのを見た。
26839 43 20 2 そこで走って、シモン・ペテロとイエスが愛しておられた、もうひとりの弟子のところへ行って、彼らに言った、「だれかが、主を墓から取り去りました。どこへ置いたのか、わかりません」。
26840 43 20 3 そこでペテロともうひとりの弟子は出かけて、墓へむかって行った。
26841 43 20 4 ふたりは一緒に走り出したが、そのもうひとりの弟子の方が、ペテロよりも早く走って先に墓に着き、
26842 43 20 5 そして身をかがめてみると、亜麻布がそこに置いてあるのを見たが、中へははいらなかった。
26843 43 20 6 シモン・ペテロも続いてきて、墓の中にはいった。彼は亜麻布がそこに置いてあるのを見たが、
26844 43 20 7 イエスの頭に巻いてあった布は亜麻布のそばにはなくて、はなれた別の場所にくるめてあった。
26845 43 20 8 すると、先に墓に着いたもうひとりの弟子もはいってきて、これを見て信じた。
26846 43 20 9 しかし、彼らは死人のうちからイエスがよみがえるべきことをしるした聖句を、まだ悟っていなかった。
26847 43 20 10 それから、ふたりの弟子たちは自分の家に帰って行った。
26848 43 20 11 しかし、マリヤは墓の外に立って泣いていた。そして泣きながら、身をかがめて墓の中をのぞくと、
26849 43 20 12 白い衣を着たふたりの御使が、イエスの死体のおかれていた場所に、ひとりは頭の方に、ひとりは足の方に、すわっているのを見た。
26850 43 20 13 すると、彼らはマリヤに、「女よ、なぜ泣いているのか」と言った。マリヤは彼らに言った、「だれかが、わたしの主を取り去りました。そして、どこに置いたのか、わからないのです」。
26851 43 20 14 そう言って、うしろをふり向くと、そこにイエスが立っておられるのを見た。しかし、それがイエスであることに気がつかなかった。
26852 43 20 15 イエスは女に言われた、「女よ、なぜ泣いているのか。だれを捜しているのか」。マリヤは、その人が園の番人だと思って言った、「もしあなたが、あのかたを移したのでしたら、どこへ置いたのか、どうぞ、おっしゃって下さい。わたしがそのかたを引き取ります」。
26853 43 20 16 イエスは彼女に「マリヤよ」と言われた。マリヤはふり返って、イエスにむかってヘブル語で「ラボニ」と言った。それは、先生という意味である。
26854 43 20 17 イエスは彼女に言われた、「わたしにさわってはいけない。わたしは、まだ父のみもとに上っていないのだから。ただ、わたしの兄弟たちの所に行って、『わたしは、わたしの父またあなたがたの父であって、わたしの神またあなたがたの神であられるかたのみもとへ上って行く』と、彼らに伝えなさい」。
26855 43 20 18 マグダラのマリヤは弟子たちのところに行って、自分が主に会ったこと、またイエスがこれこれのことを自分に仰せになったことを、報告した。
26856 43 20 19 その日、すなわち、一週の初めの日の夕方、弟子たちはユダヤ人をおそれて、自分たちのおる所の戸をみなしめていると、イエスがはいってきて、彼らの中に立ち、「安かれ」と言われた。
26857 43 20 20 そう言って、手とわきとを、彼らにお見せになった。弟子たちは主を見て喜んだ。
26858 43 20 21 イエスはまた彼らに言われた、「安かれ。父がわたしをおつかわしになったように、わたしもまたあなたがたをつかわす」。
26859 43 20 22 そう言って、彼らに息を吹きかけて仰せになった、「聖霊を受けよ。
26860 43 20 23 あなたがたがゆるす罪は、だれの罪でもゆるされ、あなたがたがゆるさずにおく罪は、そのまま残るであろう」。
26861 43 20 24 十二弟子のひとりで、デドモと呼ばれているトマスは、イエスがこられたとき、彼らと一緒にいなかった。
26862 43 20 25 ほかの弟子たちが、彼に「わたしたちは主にお目にかかった」と言うと、トマスは彼らに言った、「わたしは、その手に釘あとを見、わたしの指をその釘あとにさし入れ、また、わたしの手をそのわきにさし入れてみなければ、決して信じない」。
26863 43 20 26 八日ののち、イエスの弟子たちはまた家の内におり、トマスも一緒にいた。戸はみな閉ざされていたが、イエスがはいってこられ、中に立って「安かれ」と言われた。
26864 43 20 27 それからトマスに言われた、「あなたの指をここにつけて、わたしの手を見なさい。手をのばしてわたしのわきにさし入れてみなさい。信じない者にならないで、信じる者になりなさい」。
26865 43 20 28 トマスはイエスに答えて言った、「わが主よ、わが神よ」。
26866 43 20 29 イエスは彼に言われた、「あなたはわたしを見たので信じたのか。見ないで信ずる者は、さいわいである」。
26867 43 20 30 イエスは、この書に書かれていないしるしを、ほかにも多く、弟子たちの前で行われた。
26868 43 20 31 しかし、これらのことを書いたのは、あなたがたがイエスは神の子キリストであると信じるためであり、また、そう信じて、イエスの名によって命を得るためである。
26869 43 21 1 そののち、イエスはテベリヤの海べで、ご自身をまた弟子たちにあらわされた。そのあらわされた次第は、こうである。
26870 43 21 2 シモン・ペテロが、デドモと呼ばれているトマス、ガリラヤのカナのナタナエル、ゼベダイの子らや、ほかのふたりの弟子たちと一緒にいた時のことである。
26871 43 21 3 シモン・ペテロは彼らに「わたしは漁に行くのだ」と言うと、彼らは「わたしたちも一緒に行こう」と言った。彼らは出て行って舟に乗った。しかし、その夜はなんの獲物もなかった。
26872 43 21 4 夜が明けたころ、イエスが岸に立っておられた。しかし弟子たちはそれがイエスだとは知らなかった。
26873 43 21 5 イエスは彼らに言われた、「子たちよ、何か食べるものがあるか」。彼らは「ありません」と答えた。
26874 43 21 6 すると、イエスは彼らに言われた、「舟の右の方に網をおろして見なさい。そうすれば、何かとれるだろう」。彼らは網をおろすと、魚が多くとれたので、それを引き上げることができなかった。
26875 43 21 7 イエスの愛しておられた弟子が、ペテロに「あれは主だ」と言った。シモン・ペテロは主であると聞いて、裸になっていたため、上着をまとって海にとびこんだ。
26876 43 21 8 しかし、ほかの弟子たちは舟に乗ったまま、魚のはいっている網を引きながら帰って行った。陸からはあまり遠くない五十間ほどの所にいたからである。
26877 43 21 9 彼らが陸に上って見ると、炭火がおこしてあって、その上に魚がのせてあり、またそこにパンがあった。
26878 43 21 10 イエスは彼らに言われた、「今とった魚を少し持ってきなさい」。
26879 43 21 11 シモン・ペテロが行って、網を陸へ引き上げると、百五十三びきの大きな魚でいっぱいになっていた。そんなに多かったが、網はさけないでいた。
26880 43 21 12 イエスは彼らに言われた、「さあ、朝の食事をしなさい」。弟子たちは、主であることがわかっていたので、だれも「あなたはどなたですか」と進んで尋ねる者がなかった。
26881 43 21 13 イエスはそこにきて、パンをとり彼らに与え、また魚も同じようにされた。
26882 43 21 14 イエスが死人の中からよみがえったのち、弟子たちにあらわれたのは、これで既に三度目である。
26883 43 21 15 彼らが食事をすませると、イエスはシモン・ペテロに言われた、「ヨハネの子シモンよ、あなたはこの人たちが愛する以上に、わたしを愛するか」。ペテロは言った、「主よ、そうです。わたしがあなたを愛することは、あなたがご存じです」。イエスは彼に「わたしの小羊を養いなさい」と言われた。
26884 43 21 16 またもう一度彼に言われた、「ヨハネの子シモンよ、わたしを愛するか」。彼はイエスに言った、「主よ、そうです。わたしがあなたを愛することは、あなたがご存じです」。イエスは彼に言われた、「わたしの羊を飼いなさい」。
26885 43 21 17 イエスは三度目に言われた、「ヨハネの子シモンよ、わたしを愛するか」。ペテロは「わたしを愛するか」とイエスが三度も言われたので、心をいためてイエスに言った、「主よ、あなたはすべてをご存じです。わたしがあなたを愛していることは、おわかりになっています」。イエスは彼に言われた、「わたしの羊を養いなさい。
26886 43 21 18 よくよくあなたに言っておく。あなたが若かった時には、自分で帯をしめて、思いのままに歩きまわっていた。しかし年をとってからは、自分の手をのばすことになろう。そして、ほかの人があなたに帯を結びつけ、行きたくない所へ連れて行くであろう」。
26887 43 21 19 これは、ペテロがどんな死に方で、神の栄光をあらわすかを示すために、お話しになったのである。こう話してから、「わたしに従ってきなさい」と言われた。
26888 43 21 20 ペテロはふり返ると、イエスの愛しておられた弟子がついて来るのを見た。この弟子は、あの夕食のときイエスの胸近くに寄りかかって、「主よ、あなたを裏切る者は、だれなのですか」と尋ねた人である。
26889 43 21 21 ペテロはこの弟子を見て、イエスに言った、「主よ、この人はどうなのですか」。
26890 43 21 22 イエスは彼に言われた、「たとい、わたしの来る時まで彼が生き残っていることを、わたしが望んだとしても、あなたにはなんの係わりがあるか。あなたは、わたしに従ってきなさい」。
26891 43 21 23 こういうわけで、この弟子は死ぬことがないといううわさが、兄弟たちの間にひろまった。しかし、イエスは彼が死ぬことはないと言われたのではなく、ただ「たとい、わたしの来る時まで彼が生き残っていることを、わたしが望んだとしても、あなたにはなんの係わりがあるか」と言われただけである。
26892 43 21 24 これらの事についてあかしをし、またこれらの事を書いたのは、この弟子である。そして彼のあかしが真実であることを、わたしたちは知っている。
26893 43 21 25 イエスのなさったことは、このほかにまだ数多くある。もしいちいち書きつけるならば、世界もその書かれた文書を収めきれないであろうと思う。
26894 44 1 1 テオピロよ、わたしは先に第一巻を著わして、イエスが行い、また教えはじめてから、
26895 44 1 2 お選びになった使徒たちに、聖霊によって命じたのち、天に上げられた日までのことを、ことごとくしるした。
26896 44 1 3 イエスは苦難を受けたのち、自分の生きていることを数々の確かな証拠によって示し、四十日にわたってたびたび彼らに現れて、神の国のことを語られた。
26897 44 1 4 そして食事を共にしているとき、彼らにお命じになった、「エルサレムから離れないで、かねてわたしから聞いていた父の約束を待っているがよい。
26898 44 1 5 すなわち、ヨハネは水でバプテスマを授けたが、あなたがたは間もなく聖霊によって、バプテスマを授けられるであろう」。
26899 44 1 6 さて、弟子たちが一緒に集まったとき、イエスに問うて言った、「主よ、イスラエルのために国を復興なさるのは、この時なのですか」。
26900 44 1 7 彼らに言われた、「時期や場合は、父がご自分の権威によって定めておられるのであって、あなたがたの知る限りではない。
26901 44 1 8 ただ、聖霊があなたがたにくだる時、あなたがたは力を受けて、エルサレム、ユダヤとサマリヤの全土、さらに地のはてまで、わたしの証人となるであろう」。
26902 44 1 9 こう言い終ると、イエスは彼らの見ている前で天に上げられ、雲に迎えられて、その姿が見えなくなった。
26903 44 1 10 イエスの上って行かれるとき、彼らが天を見つめていると、見よ、白い衣を着たふたりの人が、彼らのそばに立っていて
26904 44 1 11 言った、「ガリラヤの人たちよ、なぜ天を仰いで立っているのか。あなたがたを離れて天に上げられたこのイエスは、天に上って行かれるのをあなたがたが見たのと同じ有様で、またおいでになるであろう」。
26905 44 1 12 それから彼らは、オリブという山を下ってエルサレムに帰った。この山はエルサレムに近く、安息日に許されている距離のところにある。
26906 44 1 13 彼らは、市内に行って、その泊まっていた屋上の間にあがった。その人たちは、ペテロ、ヨハネ、ヤコブ、アンデレ、ピリポとトマス、バルトロマイとマタイ、アルパヨの子ヤコブと熱心党のシモンとヤコブの子ユダとであった。
26907 44 1 14 彼らはみな、婦人たち、特にイエスの母マリヤ、およびイエスの兄弟たちと共に、心を合わせて、ひたすら祈をしていた。
26908 44 1 15 そのころ、百二十名ばかりの人々が、一団となって集まっていたが、ペテロはこれらの兄弟たちの中に立って言った、
26909 44 1 16 「兄弟たちよ、イエスを捕えた者たちの手びきになったユダについては、聖霊がダビデの口をとおして預言したその言葉は、成就しなければならなかった。
26910 44 1 17 彼はわたしたちの仲間に加えられ、この務を授かっていた者であった。(
26911 44 1 18 彼は不義の報酬で、ある地所を手に入れたが、そこへまっさかさまに落ちて、腹がまん中から引き裂け、はらわたがみな流れ出てしまった。
26912 44 1 19 そして、この事はエルサレムの全住民に知れわたり、そこで、この地所が彼らの国語でアケルダマと呼ばれるようになった。「血の地所」との意である。)
26913 44 1 20 詩篇に、『その屋敷は荒れ果てよ、そこにはひとりも住む者がいなくなれ』
26914 44 1 21 そういうわけで、主イエスがわたしたちの間にゆききされた期間中、
26915 44 1 22 すなわち、ヨハネのバプテスマの時から始まって、わたしたちを離れて天に上げられた日に至るまで、始終わたしたちと行動を共にした人たちのうち、だれかひとりが、わたしたちに加わって主の復活の証人にならねばならない」。
26916 44 1 23 そこで一同は、バルサバと呼ばれ、またの名をユストというヨセフと、マッテヤとのふたりを立て、
26917 44 1 24 祈って言った、「すべての人の心をご存じである主よ。このふたりのうちのどちらを選んで、
26918 44 1 25 ユダがこの使徒の職務から落ちて、自分の行くべきところへ行ったそのあとを継がせなさいますか、お示し下さい」。
26919 44 1 26 それから、ふたりのためにくじを引いたところ、マッテヤに当ったので、この人が十一人の使徒たちに加えられることになった。
26920 44 2 1 五旬節の日がきて、みんなの者が一緒に集まっていると、
26921 44 2 2 突然、激しい風が吹いてきたような音が天から起ってきて、一同がすわっていた家いっぱいに響きわたった。
26922 44 2 3 また、舌のようなものが、炎のように分れて現れ、ひとりびとりの上にとどまった。
26923 44 2 4 すると、一同は聖霊に満たされ、御霊が語らせるままに、いろいろの他国の言葉で語り出した。
26924 44 2 5 さて、エルサレムには、天下のあらゆる国々から、信仰深いユダヤ人たちがきて住んでいたが、
26925 44 2 6 この物音に大ぜいの人が集まってきて、彼らの生れ故郷の国語で、使徒たちが話しているのを、だれもかれも聞いてあっけに取られた。
26926 44 2 7 そして驚き怪しんで言った、「見よ、いま話しているこの人たちは、皆ガリラヤ人ではないか。
26927 44 2 8 それだのに、わたしたちがそれぞれ、生れ故郷の国語を彼らから聞かされるとは、いったい、どうしたことか。
26928 44 2 9 わたしたちの中には、パルテヤ人、メジヤ人、エラム人もおれば、メソポタミヤ、ユダヤ、カパドキヤ、ポントとアジヤ、
26929 44 2 10 フルギヤとパンフリヤ、エジプトとクレネに近いリビヤ地方などに住む者もいるし、またローマ人で旅にきている者、
26930 44 2 11 ユダヤ人と改宗者、クレテ人とアラビヤ人もいるのだが、あの人々がわたしたちの国語で、神の大きな働きを述べるのを聞くとは、どうしたことか」。
26931 44 2 12 みんなの者は驚き惑って、互に言い合った、「これは、いったい、どういうわけなのだろう」。
26932 44 2 13 しかし、ほかの人たちはあざ笑って、「あの人たちは新しい酒で酔っているのだ」と言った。
26933 44 2 14 そこで、ペテロが十一人の者と共に立ちあがり、声をあげて人々に語りかけた。
26934 44 2 15 今は朝の九時であるから、この人たちは、あなたがたが思っているように、酒に酔っているのではない。
26935 44 2 16 そうではなく、これは預言者ヨエルが預言していたことに外ならないのである。すなわち、
26936 44 2 17 『神がこう仰せになる。終りの時には、わたしの霊をすべての人に注ごう。そして、あなたがたのむすこ娘は預言をし、若者たちは幻を見、老人たちは夢を見るであろう。
26937 44 2 18 その時には、わたしの男女の僕たちにもわたしの霊を注ごう。そして彼らも預言をするであろう。
26938 44 2 19 また、上では、天に奇跡を見せ、下では、地にしるしを、すなわち、血と火と立ちこめる煙とを、見せるであろう。
26939 44 2 20 主の大いなる輝かしい日が来る前に、日はやみに月は血に変るであろう。
26940 44 2 21 そのとき、主の名を呼び求める者は、みな救われるであろう』。
26941 44 2 22 イスラエルの人たちよ、今わたしの語ることを聞きなさい。あなたがたがよく知っているとおり、ナザレ人イエスは、神が彼をとおして、あなたがたの中で行われた数々の力あるわざと奇跡としるしとにより、神からつかわされた者であることを、あなたがたに示されたかたであった。
26942 44 2 23 このイエスが渡されたのは神の定めた計画と予知とによるのであるが、あなたがたは彼を不法の人々の手で十字架につけて殺した。
26943 44 2 24 神はこのイエスを死の苦しみから解き放って、よみがえらせたのである。イエスが死に支配されているはずはなかったからである。
26944 44 2 25 ダビデはイエスについてこう言っている、『わたしは常に目の前に主を見た。主は、わたしが動かされないため、わたしの右にいて下さるからである。
26945 44 2 26 それゆえ、わたしの心は楽しみ、わたしの舌はよろこび歌った。わたしの肉体もまた、望みに生きるであろう。
26946 44 2 27 あなたは、わたしの魂を黄泉に捨ておくことをせず、あなたの聖者が朽ち果てるのを、お許しにならないであろう。
26947 44 2 28 あなたは、いのちの道をわたしに示し、み前にあって、わたしを喜びで満たして下さるであろう』。
26948 44 2 29 兄弟たちよ、族長ダビデについては、わたしはあなたがたにむかって大胆に言うことができる。彼は死んで葬られ、現にその墓が今日に至るまで、わたしたちの間に残っている。
26949 44 2 30 彼は預言者であって、『その子孫のひとりを王位につかせよう』と、神が堅く彼に誓われたことを認めていたので、
26950 44 2 31 キリストの復活をあらかじめ知って、『彼は黄泉に捨ておかれることがなく、またその肉体が朽ち果てることもない』と語ったのである。
26951 44 2 32 このイエスを、神はよみがえらせた。そして、わたしたちは皆その証人なのである。
26952 44 2 33 それで、イエスは神の右に上げられ、父から約束の聖霊を受けて、それをわたしたちに注がれたのである。このことは、あなたがたが現に見聞きしているとおりである。
26953 44 2 34 ダビデが天に上ったのではない。彼自身こう言っている、『主はわが主に仰せになった、
26954 44 2 35 あなたの敵をあなたの足台にするまでは、わたしの右に座していなさい』。
26955 44 2 36 だから、イスラエルの全家は、この事をしかと知っておくがよい。あなたがたが十字架につけたこのイエスを、神は、主またキリストとしてお立てになったのである」。
26956 44 2 37 人々はこれを聞いて、強く心を刺され、ペテロやほかの使徒たちに、「兄弟たちよ、わたしたちは、どうしたらよいのでしょうか」と言った。
26957 44 2 38 すると、ペテロが答えた、「悔い改めなさい。そして、あなたがたひとりびとりが罪のゆるしを得るために、イエス・キリストの名によって、バプテスマを受けなさい。そうすれば、あなたがたは聖霊の賜物を受けるであろう。
26958 44 2 39 この約束は、われらの主なる神の召しにあずかるすべての者、すなわちあなたがたと、あなたがたの子らと、遠くの者一同とに、与えられているものである」。
26959 44 2 40 ペテロは、ほかになお多くの言葉であかしをなし、人々に「この曲った時代から救われよ」と言って勧めた。
26960 44 2 41 そこで、彼の勧めの言葉を受けいれた者たちは、バプテスマを受けたが、その日、仲間に加わったものが三千人ほどあった。
26961 44 2 42 そして一同はひたすら、使徒たちの教を守り、信徒の交わりをなし、共にパンをさき、祈をしていた。
26962 44 2 43 みんなの者におそれの念が生じ、多くの奇跡としるしとが、使徒たちによって、次々に行われた。
26963 44 2 44 信者たちはみな一緒にいて、いっさいの物を共有にし、
26964 44 2 45 資産や持ち物を売っては、必要に応じてみんなの者に分け与えた。
26965 44 2 46 そして日々心を一つにして、絶えず宮もうでをなし、家ではパンをさき、よろこびと、まごころとをもって、食事を共にし、
26966 44 2 47 神をさんびし、すべての人に好意を持たれていた。そして主は、救われる者を日々仲間に加えて下さったのである。
26967 44 3 1 さて、ペテロとヨハネとが、午後三時の祈のときに宮に上ろうとしていると、
26968 44 3 2 生れながら足のきかない男が、かかえられてきた。この男は、宮もうでに来る人々に施しをこうため、毎日、「美しの門」と呼ばれる宮の門のところに、置かれていた者である。
26969 44 3 3 彼は、ペテロとヨハネとが、宮にはいって行こうとしているのを見て、施しをこうた。
26970 44 3 4 ペテロとヨハネとは彼をじっと見て、「わたしたちを見なさい」と言った。
26971 44 3 5 彼は何かもらえるのだろうと期待して、ふたりに注目していると、
26972 44 3 6 ペテロが言った、「金銀はわたしには無い。しかし、わたしにあるものをあげよう。ナザレ人イエス・キリストの名によって歩きなさい」。
26973 44 3 7 こう言って彼の右手を取って起してやると、足と、くるぶしとが、立ちどころに強くなって、
26974 44 3 8 踊りあがって立ち、歩き出した。そして、歩き回ったり踊ったりして神をさんびしながら、彼らと共に宮にはいって行った。
26975 44 3 9 民衆はみな、彼が歩き回り、また神をさんびしているのを見、
26976 44 3 10 これが宮の「美しの門」のそばにすわって、施しをこうていた者であると知り、彼の身に起ったことについて、驚き怪しんだ。
26977 44 3 11 彼がなおもペテロとヨハネとにつきまとっているとき、人々は皆ひどく驚いて、「ソロモンの廊」と呼ばれる柱廊にいた彼らのところに駆け集まってきた。
26978 44 3 12 ペテロはこれを見て、人々にむかって言った、「イスラエルの人たちよ、なぜこの事を不思議に思うのか。また、わたしたちが自分の力や信心で、あの人を歩かせたかのように、なぜわたしたちを見つめているのか。
26979 44 3 13 アブラハム、イサク、ヤコブの神、わたしたちの先祖の神は、その僕イエスに栄光を賜わったのであるが、あなたがたは、このイエスを引き渡し、ピラトがゆるすことに決めていたのに、それを彼の面前で拒んだ。
26980 44 3 14 あなたがたは、この聖なる正しいかたを拒んで、人殺しの男をゆるすように要求し、
26981 44 3 15 いのちの君を殺してしまった。しかし、神はこのイエスを死人の中から、よみがえらせた。わたしたちは、その事の証人である。
26982 44 3 16 そして、イエスの名が、それを信じる信仰のゆえに、あなたがたのいま見て知っているこの人を、強くしたのであり、イエスによる信仰が、彼をあなたがた一同の前で、このとおり完全にいやしたのである。
26983 44 3 17 さて、兄弟たちよ、あなたがたは知らずにあのような事をしたのであり、あなたがたの指導者たちとても同様であったことは、わたしにわかっている。
26984 44 3 18 神はあらゆる預言者の口をとおして、キリストの受難を予告しておられたが、それをこのように成就なさったのである。
26985 44 3 19 だから、自分の罪をぬぐい去っていただくために、悔い改めて本心に立ちかえりなさい。
26986 44 3 20 それは、主のみ前から慰めの時がきて、あなたがたのためにあらかじめ定めてあったキリストなるイエスを、神がつかわして下さるためである。
26987 44 3 21 このイエスは、神が聖なる預言者たちの口をとおして、昔から預言しておられた万物更新の時まで、天にとどめておかれねばならなかった。
26988 44 3 22 モーセは言った、『主なる神は、わたしをお立てになったように、あなたがたの兄弟の中から、ひとりの預言者をお立てになるであろう。その預言者があなたがたに語ることには、ことごとく聞きしたがいなさい。
26989 44 3 23 彼に聞きしたがわない者は、みな民の中から滅ぼし去られるであろう』。
26990 44 3 24 サムエルをはじめ、その後つづいて語ったほどの預言者はみな、この時のことを予告した。
26991 44 3 25 あなたがたは預言者の子であり、神があなたがたの先祖たちと結ばれた契約の子である。神はアブラハムに対して、『地上の諸民族は、あなたの子孫によって祝福を受けるであろう』と仰せられた。
26992 44 3 26 神がまずあなたがたのために、その僕を立てて、おつかわしになったのは、あなたがたひとりびとりを、悪から立ちかえらせて、祝福にあずからせるためなのである」。
26993 44 4 1 彼らが人々にこのように語っているあいだに、祭司たち、宮守がしら、サドカイ人たちが近寄ってきて、
26994 44 4 2 彼らが人々に教を説き、イエス自身に起った死人の復活を宣伝しているのに気をいら立て、
26995 44 4 3 彼らに手をかけて捕え、はや日が暮れていたので、翌朝まで留置しておいた。
26996 44 4 4 しかし、彼らの話を聞いた多くの人たちは信じた。そして、その男の数が五千人ほどになった。
26997 44 4 5 明くる日、役人、長老、律法学者たちが、エルサレムに召集された。
26998 44 4 6 大祭司アンナスをはじめ、カヤパ、ヨハネ、アレキサンデル、そのほか大祭司の一族もみな集まった。
26999 44 4 7 そして、そのまん中に使徒たちを立たせて尋問した、「あなたがたは、いったい、なんの権威、また、だれの名によって、このことをしたのか」。
27000 44 4 8 その時、ペテロが聖霊に満たされて言った、「民の役人たち、ならびに長老たちよ、
27001 44 4 9 わたしたちが、きょう、取調べを受けているのは、病人に対してした良いわざについてであり、この人がどうしていやされたかについてであるなら、
27002 44 4 10 あなたがたご一同も、またイスラエルの人々全体も、知っていてもらいたい。この人が元気になってみんなの前に立っているのは、ひとえに、あなたがたが十字架につけて殺したのを、神が死人の中からよみがえらせたナザレ人イエス・キリストの御名によるのである。
27003 44 4 11 このイエスこそは『あなたがた家造りらに捨てられたが、隅のかしら石となった石』なのである。
27004 44 4 12 この人による以外に救はない。わたしたちを救いうる名は、これを別にしては、天下のだれにも与えられていないからである」。
27005 44 4 13 人々はペテロとヨハネとの大胆な話しぶりを見、また同時に、ふたりが無学な、ただの人たちであることを知って、不思議に思った。そして彼らがイエスと共にいた者であることを認め、
27006 44 4 14 かつ、彼らにいやされた者がそのそばに立っているのを見ては、まったく返す言葉がなかった。
27007 44 4 15 そこで、ふたりに議会から退場するように命じてから、互に協議をつづけて
27008 44 4 16 言った、「あの人たちを、どうしたらよかろうか。彼らによって著しいしるしが行われたことは、エルサレムの住民全体に知れわたっているので、否定しようもない。
27009 44 4 17 ただ、これ以上このことが民衆の間にひろまらないように、今後はこの名によって、いっさいだれにも語ってはいけないと、おどしてやろうではないか」。
27010 44 4 18 そこで、ふたりを呼び入れて、イエスの名によって語ることも説くことも、いっさい相成らぬと言いわたした。
27011 44 4 19 ペテロとヨハネとは、これに対して言った、「神に聞き従うよりも、あなたがたに聞き従う方が、神の前に正しいかどうか、判断してもらいたい。
27012 44 4 20 わたしたちとしては、自分の見たこと聞いたことを、語らないわけにはいかない」。
27013 44 4 21 そこで、彼らはふたりを更におどしたうえ、ゆるしてやった。みんなの者が、この出来事のために、神をあがめていたので、その人々の手前、ふたりを罰するすべがなかったからである。
27014 44 4 22 そのしるしによっていやされたのは、四十歳あまりの人であった。
27015 44 4 23 ふたりはゆるされてから、仲間の者たちのところに帰って、祭司長たちや長老たちが言ったいっさいのことを報告した。
27016 44 4 24 一同はこれを聞くと、口をそろえて、神にむかい声をあげて言った、「天と地と海と、その中のすべてのものとの造りぬしなる主よ。
27017 44 4 25 あなたは、わたしたちの先祖、あなたの僕ダビデの口をとおして、聖霊によって、こう仰せになりました、『なぜ、異邦人らは、騒ぎ立ち、もろもろの民は、むなしいことを図り、
27018 44 4 26 地上の王たちは、立ちかまえ、支配者たちは、党を組んで、主とそのキリストとに逆らったのか』。
27019 44 4 27 まことに、ヘロデとポンテオ・ピラトとは、異邦人らやイスラエルの民と一緒になって、この都に集まり、あなたから油を注がれた聖なる僕イエスに逆らい、
27020 44 4 28 み手とみ旨とによって、あらかじめ定められていたことを、なし遂げたのです。
27021 44 4 29 主よ、いま、彼らの脅迫に目をとめ、僕たちに、思い切って大胆に御言葉を語らせて下さい。
27022 44 4 30 そしてみ手を伸ばしていやしをなし、聖なる僕イエスの名によって、しるしと奇跡とを行わせて下さい」。
27023 44 4 31 彼らが祈り終えると、その集まっていた場所が揺れ動き、一同は聖霊に満たされて、大胆に神の言を語り出した。
27024 44 4 32 信じた者の群れは、心を一つにし思いを一つにして、だれひとりその持ち物を自分のものだと主張する者がなく、いっさいの物を共有にしていた。
27025 44 4 33 使徒たちは主イエスの復活について、非常に力強くあかしをした。そして大きなめぐみが、彼ら一同に注がれた。
27026 44 4 34 彼らの中に乏しい者は、ひとりもいなかった。地所や家屋を持っている人たちは、それを売り、売った物の代金をもってきて、
27027 44 4 35 使徒たちの足もとに置いた。そしてそれぞれの必要に応じて、だれにでも分け与えられた。
27028 44 4 36 クプロ生れのレビ人で、使徒たちにバルナバ(「慰めの子」との意)と呼ばれていたヨセフは、
27029 44 4 37 自分の所有する畑を売り、その代金をもってきて、使徒たちの足もとに置いた。
27030 44 5 1 ところが、アナニヤという人とその妻サッピラとは共に資産を売ったが、
27031 44 5 2 共謀して、その代金をごまかし、一部だけを持ってきて、使徒たちの足もとに置いた。
27032 44 5 3 そこで、ペテロが言った、「アナニヤよ、どうしてあなたは、自分の心をサタンに奪われて、聖霊を欺き、地所の代金をごまかしたのか。
27033 44 5 4 売らずに残しておけば、あなたのものであり、売ってしまっても、あなたの自由になったはずではないか。どうして、こんなことをする気になったのか。あなたは人を欺いたのではなくて、神を欺いたのだ」。
27034 44 5 5 アナニヤはこの言葉を聞いているうちに、倒れて息が絶えた。このことを伝え聞いた人々は、みな非常なおそれを感じた。
27035 44 5 6 それから、若者たちが立って、その死体を包み、運び出して葬った。
27036 44 5 7 三時間ばかりたってから、たまたま彼の妻が、この出来事を知らずに、はいってきた。
27037 44 5 8 そこで、ペテロが彼女にむかって言った、「あの地所は、これこれの値段で売ったのか。そのとおりか」。彼女は「そうです、その値段です」と答えた。
27038 44 5 9 ペテロは言った、「あなたがたふたりが、心を合わせて主の御霊を試みるとは、何事であるか。見よ、あなたの夫を葬った人たちの足が、そこの門口にきている。あなたも運び出されるであろう」。
27039 44 5 10 すると女は、たちまち彼の足もとに倒れて、息が絶えた。そこに若者たちがはいってきて、女が死んでしまっているのを見、それを運び出してその夫のそばに葬った。
27040 44 5 11 教会全体ならびにこれを伝え聞いた人たちは、みな非常なおそれを感じた。
27041 44 5 12 そのころ、多くのしるしと奇跡とが、次々に使徒たちの手により人々の中で行われた。そして、一同は心を一つにして、ソロモンの廊に集まっていた。
27042 44 5 13 ほかの者たちは、だれひとり、その交わりに入ろうとはしなかったが、民衆は彼らを尊敬していた。
27043 44 5 14 しかし、主を信じて仲間に加わる者が、男女とも、ますます多くなってきた。
27044 44 5 15 ついには、病人を大通りに運び出し、寝台や寝床の上に置いて、ペテロが通るとき、彼の影なりと、そのうちのだれかにかかるようにしたほどであった。
27045 44 5 16 またエルサレム附近の町々からも、大ぜいの人が、病人や汚れた霊に苦しめられている人たちを引き連れて、集まってきたが、その全部の者が、ひとり残らずいやされた。
27046 44 5 17 そこで、大祭司とその仲間の者、すなわち、サドカイ派の人たちが、みな嫉妬の念に満たされて立ちあがり、
27047 44 5 18 使徒たちに手をかけて捕え、公共の留置場に入れた。
27048 44 5 19 ところが夜、主の使が獄の戸を開き、彼らを連れ出して言った、
27049 44 5 20 「さあ行きなさい。そして、宮の庭に立ち、この命の言葉を漏れなく、人々に語りなさい」。
27050 44 5 21 彼らはこれを聞き、夜明けごろ宮にはいって教えはじめた。
27051 44 5 22 そこで、下役どもが行って見ると、使徒たちが獄にいないので、引き返して報告した、
27052 44 5 23 「獄には、しっかりと錠がかけてあり、戸口には、番人が立っていました。ところが、あけて見たら、中にはだれもいませんでした」。
27053 44 5 24 宮守がしらと祭司長たちとは、この報告を聞いて、これは、いったい、どんな事になるのだろうと、あわて惑っていた。
27054 44 5 25 そこへ、ある人がきて知らせた、「行ってごらんなさい。あなたがたが獄に入れたあの人たちが、宮の庭に立って、民衆を教えています」。
27055 44 5 26 そこで宮守がしらが、下役どもと一緒に出かけて行って、使徒たちを連れてきた。しかし、人々に石で打ち殺されるのを恐れて、手荒なことはせず、
27056 44 5 27 彼らを連れてきて、議会の中に立たせた。すると、大祭司が問うて
27057 44 5 28 言った、「あの名を使って教えてはならないと、きびしく命じておいたではないか。それだのに、なんという事だ。エルサレム中にあなたがたの教を、はんらんさせている。あなたがたは確かに、あの人の血の責任をわたしたちに負わせようと、たくらんでいるのだ」。
27058 44 5 29 これに対して、ペテロをはじめ使徒たちは言った、「人間に従うよりは、神に従うべきである。
27059 44 5 30 わたしたちの先祖の神は、あなたがたが木にかけて殺したイエスをよみがえらせ、
27060 44 5 31 そして、イスラエルを悔い改めさせてこれに罪のゆるしを与えるために、このイエスを導き手とし救主として、ご自身の右に上げられたのである。
27061 44 5 32 わたしたちはこれらの事の証人である。神がご自身に従う者に賜わった聖霊もまた、その証人である」。
27062 44 5 33 これを聞いた者たちは、激しい怒りのあまり、使徒たちを殺そうと思った。
27063 44 5 34 ところが、国民全体に尊敬されていた律法学者ガマリエルというパリサイ人が、議会で立って、使徒たちをしばらくのあいだ外に出すように要求してから、
27064 44 5 35 一同にむかって言った、「イスラエルの諸君、あの人たちをどう扱うか、よく気をつけるがよい。
27065 44 5 36 先ごろ、チゥダが起って、自分を何か偉い者のように言いふらしたため、彼に従った男の数が、四百人ほどもあったが、結局、彼は殺されてしまい、従った者もみな四散して、全く跡方もなくなっている。
27066 44 5 37 そののち、人口調査の時に、ガリラヤ人ユダが民衆を率いて反乱を起したが、この人も滅び、従った者もみな散らされてしまった。
27067 44 5 38 そこで、この際、諸君に申し上げる。あの人たちから手を引いて、そのなすままにしておきなさい。その企てや、しわざが、人間から出たものなら、自滅するだろう。
27068 44 5 39 しかし、もし神から出たものなら、あの人たちを滅ぼすことはできまい。まかり違えば、諸君は神を敵にまわすことになるかも知れない」。そこで彼らはその勧告にしたがい、
27069 44 5 40 使徒たちを呼び入れて、むち打ったのち、今後イエスの名によって語ることは相成らぬと言いわたして、ゆるしてやった。
27070 44 5 41 使徒たちは、御名のために恥を加えられるに足る者とされたことを喜びながら、議会から出てきた。
27071 44 5 42 そして、毎日、宮や家で、イエスがキリストであることを、引きつづき教えたり宣べ伝えたりした。
27072 44 6 1 そのころ、弟子の数がふえてくるにつれて、ギリシヤ語を使うユダヤ人たちから、ヘブル語を使うユダヤ人たちに対して、自分たちのやもめらが、日々の配給で、おろそかにされがちだと、苦情を申し立てた。
27073 44 6 2 そこで、十二使徒は弟子全体を呼び集めて言った、「わたしたちが神の言をさしおいて、食卓のことに携わるのはおもしろくない。
27074 44 6 3 そこで、兄弟たちよ、あなたがたの中から、御霊と知恵とに満ちた、評判のよい人たち七人を捜し出してほしい。その人たちにこの仕事をまかせ、
27075 44 6 4 わたしたちは、もっぱら祈と御言のご用に当ることにしよう」。
27076 44 6 5 この提案は会衆一同の賛成するところとなった。そして信仰と聖霊とに満ちた人ステパノ、それからピリポ、プロコロ、ニカノル、テモン、パルメナ、およびアンテオケの改宗者ニコラオを選び出して、
27077 44 6 6 使徒たちの前に立たせた。すると、使徒たちは祈って手を彼らの上においた。
27078 44 6 7 こうして神の言は、ますますひろまり、エルサレムにおける弟子の数が、非常にふえていき、祭司たちも多数、信仰を受けいれるようになった。
27079 44 6 8 さて、ステパノは恵みと力とに満ちて、民衆の中で、めざましい奇跡としるしとを行っていた。
27080 44 6 9 すると、いわゆる「リベルテン」の会堂に属する人々、クレネ人、アレキサンドリヤ人、キリキヤやアジヤからきた人々などが立って、ステパノと議論したが、
27081 44 6 10 彼は知恵と御霊とで語っていたので、それに対抗できなかった。
27082 44 6 11 そこで、彼らは人々をそそのかして、「わたしたちは、彼がモーセと神とを汚す言葉を吐くのを聞いた」と言わせた。
27083 44 6 12 その上、民衆や長老たちや律法学者たちを煽動し、彼を襲って捕えさせ、議会にひっぱってこさせた。
27084 44 6 13 それから、偽りの証人たちを立てて言わせた、「この人は、この聖所と律法とに逆らう言葉を吐いて、どうしても、やめようとはしません。
27085 44 6 14 『あのナザレ人イエスは、この聖所を打ちこわし、モーセがわたしたちに伝えた慣例を変えてしまうだろう』などと、彼が言うのを、わたしたちは聞きました」。
27086 44 6 15 議会で席についていた人たちは皆、ステパノに目を注いだが、彼の顔は、ちょうど天使の顔のように見えた。
27087 44 7 1 大祭司は「そのとおりか」と尋ねた。
27088 44 7 2 そこで、ステパノが言った、
27089 44 7 3 仰せになった、『あなたの土地と親族から離れて、あなたにさし示す地に行きなさい』。
27090 44 7 4 そこで、アブラハムはカルデヤ人の地を出て、カランに住んだ。そして、彼の父が死んだのち、神は彼をそこから、今あなたがたの住んでいるこの地に移住させたが、
27091 44 7 5 そこでは、遺産となるものは何一つ、一歩の幅の土地すらも、与えられなかった。ただ、その地を所領として授けようとの約束を、彼と、そして彼にはまだ子がなかったのに、その子孫とに与えられたのである。
27092 44 7 6 神はこう仰せになった、『彼の子孫は他国に身を寄せるであろう。そして、そこで四百年のあいだ、奴隷にされて虐待を受けるであろう』。
27093 44 7 7 それから、さらに仰せになった、『彼らを奴隷にする国民を、わたしはさばくであろう。その後、彼らはそこからのがれ出て、この場所でわたしを礼拝するであろう』。
27094 44 7 8 そして、神はアブラハムに、割礼の契約をお与えになった。こうして、彼はイサクの父となり、これに八日目に割礼を施し、それから、イサクはヤコブの父となり、ヤコブは十二人の族長たちの父となった。
27095 44 7 9 族長たちは、ヨセフをねたんで、エジプトに売りとばした。しかし、神は彼と共にいまして、
27096 44 7 10 あらゆる苦難から彼を救い出し、エジプト王パロの前で恵みを与え、知恵をあらわさせた。そこで、パロは彼を宰相の任につかせ、エジプトならびに王家全体の支配に当らせた。
27097 44 7 11 時に、エジプトとカナンとの全土にわたって、ききんが起り、大きな苦難が襲ってきて、わたしたちの先祖たちは、食物が得られなくなった。
27098 44 7 12 ヤコブは、エジプトには食糧があると聞いて、初めに先祖たちをつかわしたが、
27099 44 7 13 二回目の時に、ヨセフが兄弟たちに、自分の身の上を打ち明けたので、彼の親族関係がパロに知れてきた。
27100 44 7 14 ヨセフは使をやって、父ヤコブと七十五人にのぼる親族一同とを招いた。
27101 44 7 15 こうして、ヤコブはエジプトに下り、彼自身も先祖たちもそこで死に、
27102 44 7 16 それから彼らは、シケムに移されて、かねてアブラハムがいくらかの金を出してこの地のハモルの子らから買っておいた墓に、葬られた。
27103 44 7 17 神がアブラハムに対して立てられた約束の時期が近づくにつれ、民はふえてエジプト全土にひろがった。
27104 44 7 18 やがて、ヨセフのことを知らない別な王が、エジプトに起った。
27105 44 7 19 この王は、わたしたちの同族に対し策略をめぐらして、先祖たちを虐待し、その幼な子らを生かしておかないように捨てさせた。
27106 44 7 20 モーセが生れたのは、ちょうどこのころのことである。彼はまれに見る美しい子であった。三か月の間は、父の家で育てられたが、
27107 44 7 21 そののち捨てられたのを、パロの娘が拾いあげて、自分の子として育てた。
27108 44 7 22 モーセはエジプト人のあらゆる学問を教え込まれ、言葉にもわざにも、力があった。
27109 44 7 23 四十歳になった時、モーセは自分の兄弟であるイスラエル人たちのために尽すことを、思い立った。
27110 44 7 24 ところが、そのひとりがいじめられているのを見て、これをかばい、虐待されているその人のために、相手のエジプト人を撃って仕返しをした。
27111 44 7 25 彼は、自分の手によって神が兄弟たちを救って下さることを、みんなが悟るものと思っていたが、実際はそれを悟らなかったのである。
27112 44 7 26 翌日モーセは、彼らが争い合っているところに現れ、仲裁しようとして言った、『まて、君たちは兄弟同志ではないか。どうして互に傷つけ合っているのか』。
27113 44 7 27 すると、仲間をいじめていた者が、モーセを突き飛ばして言った、『だれが、君をわれわれの支配者や裁判人にしたのか。
27114 44 7 28 君は、きのう、エジプト人を殺したように、わたしも殺そうと思っているのか』。
27115 44 7 29 モーセは、この言葉を聞いて逃げ、ミデアンの地に身を寄せ、そこで男の子ふたりをもうけた。
27116 44 7 30 四十年たった時、シナイ山の荒野において、御使が柴の燃える炎の中でモーセに現れた。
27117 44 7 31 彼はこの光景を見て不思議に思い、それを見きわめるために近寄ったところ、主の声が聞えてきた、
27118 44 7 32 『わたしは、あなたの先祖たちの神、アブラハム、イサク、ヤコブの神である』。モーセは恐れおののいて、もうそれを見る勇気もなくなった。
27119 44 7 33 すると、主が彼に言われた、『あなたの足から、くつを脱ぎなさい。あなたの立っているこの場所は、聖なる地である。
27120 44 7 34 わたしは、エジプトにいるわたしの民が虐待されている有様を確かに見とどけ、その苦悩のうめき声を聞いたので、彼らを救い出すために下ってきたのである。さあ、今あなたをエジプトにつかわそう』。
27121 44 7 35 こうして、『だれが、君を支配者や裁判人にしたのか』と言って排斥されたこのモーセを、神は、柴の中で彼に現れた御使の手によって、支配者、解放者として、おつかわしになったのである。
27122 44 7 36 この人が、人々を導き出して、エジプトの地においても、紅海においても、また四十年のあいだ荒野においても、奇跡としるしとを行ったのである。
27123 44 7 37 この人が、イスラエル人たちに、『神はわたしをお立てになったように、あなたがたの兄弟たちの中から、ひとりの預言者をお立てになるであろう』と言ったモーセである。
27124 44 7 38 この人が、シナイ山で、彼に語りかけた御使や先祖たちと共に、荒野における集会にいて、生ける御言葉を授かり、それをあなたがたに伝えたのである。
27125 44 7 39 ところが、先祖たちは彼に従おうとはせず、かえって彼を退け、心の中でエジプトにあこがれて、
27126 44 7 40 『わたしたちを導いてくれる神々を造って下さい。わたしたちをエジプトの地から導いてきたあのモーセがどうなったのか、わかりませんから』とアロンに言った。
27127 44 7 41 そのころ、彼らは子牛の像を造り、その偶像に供え物をささげ、自分たちの手で造ったものを祭ってうち興じていた。
27128 44 7 42 そこで、神は顔をそむけ、彼らを天の星を拝むままに任せられた。預言者の書にこう書いてあるとおりである、『イスラエルの家よ、四十年のあいだ荒野にいた時に、いけにえと供え物とを、わたしにささげたことがあったか。
27129 44 7 43 あなたがたは、モロクの幕屋やロンパの星の神を、かつぎ回った。それらは、拝むために自分で造った偶像に過ぎぬ。だからわたしは、あなたがたをバビロンのかなたへ、移してしまうであろう』。
27130 44 7 44 わたしたちの先祖には、荒野にあかしの幕屋があった。それは、見たままの型にしたがって造るようにと、モーセに語ったかたのご命令どおりに造ったものである。
27131 44 7 45 この幕屋は、わたしたちの先祖が、ヨシュアに率いられ、神によって諸民族を彼らの前から追い払い、その所領をのり取ったときに、そこに持ち込まれ、次々に受け継がれて、ダビデの時代に及んだものである。
27132 44 7 46 ダビデは、神の恵みをこうむり、そして、ヤコブの神のために宮を造営したいと願った。
27133 44 7 47 けれども、じっさいにその宮を建てたのは、ソロモンであった。
27134 44 7 48 しかし、いと高き者は、手で造った家の内にはお住みにならない。預言者が言っているとおりである、
27135 44 7 49 『主が仰せられる、どんな家をわたしのために建てるのか。わたしのいこいの場所は、どれか。天はわたしの王座、地はわたしの足台である。
27136 44 7 50 これは皆わたしの手が造ったものではないか』。
27137 44 7 51 ああ、強情で、心にも耳にも割礼のない人たちよ。あなたがたは、いつも聖霊に逆らっている。それは、あなたがたの先祖たちと同じである。
27138 44 7 52 いったい、あなたがたの先祖が迫害しなかった預言者が、ひとりでもいたか。彼らは正しいかたの来ることを予告した人たちを殺し、今やあなたがたは、その正しいかたを裏切る者、また殺す者となった。
27139 44 7 53 あなたがたは、御使たちによって伝えられた律法を受けたのに、それを守ることをしなかった」。
27140 44 7 54 人々はこれを聞いて、心の底から激しく怒り、ステパノにむかって、歯ぎしりをした。
27141 44 7 55 しかし、彼は聖霊に満たされて、天を見つめていると、神の栄光が現れ、イエスが神の右に立っておられるのが見えた。
27142 44 7 56 そこで、彼は「ああ、天が開けて、人の子が神の右に立っておいでになるのが見える」と言った。
27143 44 7 57 人々は大声で叫びながら、耳をおおい、ステパノを目がけて、いっせいに殺到し、
27144 44 7 58 彼を市外に引き出して、石で打った。これに立ち合った人たちは、自分の上着を脱いで、サウロという若者の足もとに置いた。
27145 44 7 59 こうして、彼らがステパノに石を投げつけている間、ステパノは祈りつづけて言った、「主イエスよ、わたしの霊をお受け下さい」。
27146 44 7 60 そして、ひざまずいて、大声で叫んだ、「主よ、どうぞ、この罪を彼らに負わせないで下さい」。こう言って、彼は眠りについた。
27147 44 8 1 サウロは、ステパノを殺すことに賛成していた。
27148 44 8 2 信仰深い人たちはステパノを葬り、彼のために胸を打って、非常に悲しんだ。
27149 44 8 3 ところが、サウロは家々に押し入って、男や女を引きずり出し、次々に獄に渡して、教会を荒し回った。
27150 44 8 4 さて、散らされて行った人たちは、御言を宣べ伝えながら、めぐり歩いた。
27151 44 8 5 ピリポはサマリヤの町に下って行き、人々にキリストを宣べはじめた。
27152 44 8 6 群衆はピリポの話を聞き、その行っていたしるしを見て、こぞって彼の語ることに耳を傾けた。
27153 44 8 7 汚れた霊につかれた多くの人々からは、その霊が大声でわめきながら出て行くし、また、多くの中風をわずらっている者や、足のきかない者がいやされたからである。
27154 44 8 8 それで、この町では人々が、大変なよろこびかたであった。
27155 44 8 9 さて、この町に以前からシモンという人がいた。彼は魔術を行ってサマリヤの人たちを驚かし、自分をさも偉い者のように言いふらしていた。
27156 44 8 10 それで、小さい者から大きい者にいたるまで皆、彼について行き、「この人こそは『大能』と呼ばれる神の力である」と言っていた。
27157 44 8 11 彼らがこの人について行ったのは、ながい間その魔術に驚かされていたためであった。
27158 44 8 12 ところが、ピリポが神の国とイエス・キリストの名について宣べ伝えるに及んで、男も女も信じて、ぞくぞくとバプテスマを受けた。
27159 44 8 13 シモン自身も信じて、バプテスマを受け、それから、引きつづきピリポについて行った。そして、数々のしるしやめざましい奇跡が行われるのを見て、驚いていた。
27160 44 8 14 エルサレムにいる使徒たちは、サマリヤの人々が、神の言を受け入れたと聞いて、ペテロとヨハネとを、そこにつかわした。
27161 44 8 15 ふたりはサマリヤに下って行って、みんなが聖霊を受けるようにと、彼らのために祈った。
27162 44 8 16 それは、彼らはただ主イエスの名によってバプテスマを受けていただけで、聖霊はまだだれにも下っていなかったからである。
27163 44 8 17 そこで、ふたりが手を彼らの上においたところ、彼らは聖霊を受けた。
27164 44 8 18 シモンは、使徒たちが手をおいたために、御霊が人々に授けられたのを見て、金をさし出し、
27165 44 8 19 「わたしが手をおけばだれにでも聖霊が授けられるように、その力をわたしにも下さい」と言った。
27166 44 8 20 そこで、ペテロが彼に言った、「おまえの金は、おまえもろとも、うせてしまえ。神の賜物が、金で得られるなどと思っているのか。
27167 44 8 21 おまえの心が神の前に正しくないから、おまえは、とうてい、この事にあずかることができない。
27168 44 8 22 だから、この悪事を悔いて、主に祈れ。そうすればあるいはそんな思いを心にいだいたことが、ゆるされるかも知れない。
27169 44 8 23 おまえには、まだ苦い胆汁があり、不義のなわ目がからみついている。それが、わたしにわかっている」。
27170 44 8 24 シモンはこれを聞いて言った、「仰せのような事が、わたしの身に起らないように、どうぞ、わたしのために主に祈って下さい」。
27171 44 8 25 使徒たちは力強くあかしをなし、また主の言を語った後、サマリヤ人の多くの村々に福音を宣べ伝えて、エルサレムに帰った。
27172 44 8 26 しかし、主の使がピリポにむかって言った、「立って南方に行き、エルサレムからガザへ下る道に出なさい」(このガザは、今は荒れはてている)。
27173 44 8 27 そこで、彼は立って出かけた。すると、ちょうど、エチオピヤ人の女王カンダケの高官で、女王の財宝全部を管理していた宦官であるエチオピヤ人が、礼拝のためエルサレムに上り、
27174 44 8 28 その帰途についていたところであった。彼は自分の馬車に乗って、預言者イザヤの書を読んでいた。
27175 44 8 29 御霊がピリポに「進み寄って、あの馬車に並んで行きなさい」と言った。
27176 44 8 30 そこでピリポが駆けて行くと、預言者イザヤの書を読んでいるその人の声が聞えたので、「あなたは、読んでいることが、おわかりですか」と尋ねた。
27177 44 8 31 彼は「だれかが、手びきをしてくれなければ、どうしてわかりましょう」と答えた。そして、馬車に乗って一緒にすわるようにと、ピリポにすすめた。
27178 44 8 32 彼が読んでいた聖書の箇所は、これであった、「彼は、ほふり場に引かれて行く羊のように、また、黙々として、毛を刈る者の前に立つ小羊のように、口を開かない。
27179 44 8 33 彼は、いやしめられて、そのさばきも行われなかった。だれが、彼の子孫のことを語ることができようか、彼の命が地上から取り去られているからには」。
27180 44 8 34 宦官はピリポにむかって言った、「お尋ねしますが、ここで預言者はだれのことを言っているのですか。自分のことですか、それとも、だれかほかの人のことですか」。
27181 44 8 35 そこでピリポは口を開き、この聖句から説き起して、イエスのことを宣べ伝えた。
27182 44 8 36 道を進んで行くうちに、水のある所にきたので、宦官が言った、「ここに水があります。わたしがバプテスマを受けるのに、なんのさしつかえがありますか」。〔
27183 44 8 37 これに対して、ピリポは、「あなたがまごころから信じるなら、受けてさしつかえはありません」と言った。すると、彼は「わたしは、イエス・キリストを神の子と信じます」と答えた。〕
27184 44 8 38 そこで車をとめさせ、ピリポと宦官と、ふたりとも、水の中に降りて行き、ピリポが宦官にバプテスマを授けた。
27185 44 8 39 ふたりが水から上がると、主の霊がピリポをさらって行ったので、宦官はもう彼を見ることができなかった。宦官はよろこびながら旅をつづけた。
27186 44 8 40 その後、ピリポはアゾトに姿をあらわして、町々をめぐり歩き、いたるところで福音を宣べ伝えて、ついにカイザリヤに着いた。
27187 44 9 1 さてサウロは、なおも主の弟子たちに対する脅迫、殺害の息をはずませながら、大祭司のところに行って、
27188 44 9 2 ダマスコの諸会堂あての添書を求めた。それは、この道の者を見つけ次第、男女の別なく縛りあげて、エルサレムにひっぱって来るためであった。
27189 44 9 3 ところが、道を急いでダマスコの近くにきたとき、突然、天から光がさして、彼をめぐり照した。
27190 44 9 4 彼は地に倒れたが、その時「サウロ、サウロ、なぜわたしを迫害するのか」と呼びかける声を聞いた。
27191 44 9 5 そこで彼は「主よ、あなたは、どなたですか」と尋ねた。すると答があった、「わたしは、あなたが迫害しているイエスである。
27192 44 9 6 さあ立って、町にはいって行きなさい。そうすれば、そこであなたのなすべき事が告げられるであろう」。
27193 44 9 7 サウロの同行者たちは物も言えずに立っていて、声だけは聞えたが、だれも見えなかった。
27194 44 9 8 サウロは地から起き上がって目を開いてみたが、何も見えなかった。そこで人々は、彼の手を引いてダマスコへ連れて行った。
27195 44 9 9 彼は三日間、目が見えず、また食べることも飲むこともしなかった。
27196 44 9 10 さて、ダマスコにアナニヤというひとりの弟子がいた。この人に主が幻の中に現れて、「アナニヤよ」とお呼びになった。彼は「主よ、わたしでございます」と答えた。
27197 44 9 11 そこで主が彼に言われた、「立って、『真すぐ』という名の路地に行き、ユダの家でサウロというタルソ人を尋ねなさい。彼はいま祈っている。
27198 44 9 12 彼はアナニヤという人がはいってきて、手を自分の上において再び見えるようにしてくれるのを、幻で見たのである」。
27199 44 9 13 アナニヤは答えた、「主よ、あの人がエルサレムで、どんなにひどい事をあなたの聖徒たちにしたかについては、多くの人たちから聞いています。
27200 44 9 14 そして彼はここでも、御名をとなえる者たちをみな捕縛する権を、祭司長たちから得てきているのです」。
27201 44 9 15 しかし、主は仰せになった、「さあ、行きなさい。あの人は、異邦人たち、王たち、またイスラエルの子らにも、わたしの名を伝える器として、わたしが選んだ者である。
27202 44 9 16 わたしの名のために彼がどんなに苦しまなければならないかを、彼に知らせよう」。
27203 44 9 17 そこでアナニヤは、出かけて行ってその家にはいり、手をサウロの上において言った、「兄弟サウロよ、あなたが来る途中で現れた主イエスは、あなたが再び見えるようになるため、そして聖霊に満たされるために、わたしをここにおつかわしになったのです」。
27204 44 9 18 するとたちどころに、サウロの目から、うろこのようなものが落ちて、元どおり見えるようになった。そこで彼は立ってバプテスマを受け、
27205 44 9 19 また食事をとって元気を取りもどした。
27206 44 9 20 ただちに諸会堂でイエスのことを宣べ伝え、このイエスこそ神の子であると説きはじめた。
27207 44 9 21 これを聞いた人たちはみな非常に驚いて言った、「あれは、エルサレムでこの名をとなえる者たちを苦しめた男ではないか。その上ここにやってきたのも、彼らを縛りあげて、祭司長たちのところへひっぱって行くためではなかったか」。
27208 44 9 22 しかし、サウロはますます力が加わり、このイエスがキリストであることを論証して、ダマスコに住むユダヤ人たちを言い伏せた。
27209 44 9 23 相当の日数がたったころ、ユダヤ人たちはサウロを殺す相談をした。
27210 44 9 24 ところが、その陰謀が彼の知るところとなった。彼らはサウロを殺そうとして、夜昼、町の門を見守っていたのである。
27211 44 9 25 そこで彼の弟子たちが、夜の間に彼をかごに乗せて、町の城壁づたいにつりおろした。
27212 44 9 26 サウロはエルサレムに着いて、弟子たちの仲間に加わろうと努めたが、みんなの者は彼を弟子だとは信じないで、恐れていた。
27213 44 9 27 ところが、バルナバは彼の世話をして使徒たちのところへ連れて行き、途中で主が彼に現れて語りかけたことや、彼がダマスコでイエスの名で大胆に宣べ伝えた次第を、彼らに説明して聞かせた。
27214 44 9 28 それ以来、彼は使徒たちの仲間に加わり、エルサレムに出入りし、主の名によって大胆に語り、
27215 44 9 29 ギリシヤ語を使うユダヤ人たちとしばしば語り合い、また論じ合った。しかし、彼らは彼を殺そうとねらっていた。
27216 44 9 30 兄弟たちはそれと知って、彼をカイザリヤに連れてくだり、タルソへ送り出した。
27217 44 9 31 こうして教会は、ユダヤ、ガリラヤ、サマリヤ全地方にわたって平安を保ち、基礎がかたまり、主をおそれ聖霊にはげまされて歩み、次第に信徒の数を増して行った。
27218 44 9 32 ペテロは方々をめぐり歩いたが、ルダに住む聖徒たちのところへも下って行った。
27219 44 9 33 そして、そこで、八年間も床についているアイネヤという人に会った。この人は中風であった。
27220 44 9 34 ペテロが彼に言った、「アイネヤよ、イエス・キリストがあなたをいやして下さるのだ。起きなさい。そして床を取りあげなさい」。すると、彼はただちに起きあがった。
27221 44 9 35 ルダとサロンに住む人たちは、みなそれを見て、主に帰依した。
27222 44 9 36 ヨッパにタビタ(これを訳すと、ドルカス、すなわち、かもしか)という女弟子がいた。数々のよい働きや施しをしていた婦人であった。
27223 44 9 37 ところが、そのころ病気になって死んだので、人々はそのからだを洗って、屋上の間に安置した。
27224 44 9 38 ルダはヨッパに近かったので、弟子たちはペテロがルダにきていると聞き、ふたりの者を彼のもとにやって、「どうぞ、早くこちらにおいで下さい」と頼んだ。
27225 44 9 39 そこでペテロは立って、ふたりの者に連れられてきた。彼が着くとすぐ、屋上の間に案内された。すると、やもめたちがみんな彼のそばに寄ってきて、ドルカスが生前つくった下着や上着の数々を、泣きながら見せるのであった。
27226 44 9 40 ペテロはみんなの者を外に出し、ひざまずいて祈った。それから死体の方に向いて、「タビタよ、起きなさい」と言った。すると彼女は目をあけ、ペテロを見て起きなおった。
27227 44 9 41 ペテロは彼女に手をかして立たせた。それから、聖徒たちや、やもめたちを呼び入れて、彼女が生きかえっているのを見せた。
27228 44 9 42 このことがヨッパ中に知れわたり、多くの人々が主を信じた。
27229 44 9 43 ペテロは、皮なめしシモンという人の家に泊まり、しばらくの間ヨッパに滞在した。
27230 44 10 1 さて、カイザリヤにコルネリオという名の人がいた。イタリヤ隊と呼ばれた部隊の百卒長で、
27231 44 10 2 信心深く、家族一同と共に神を敬い、民に数々の施しをなし、絶えず神に祈をしていた。
27232 44 10 3 ある日の午後三時ごろ、神の使が彼のところにきて、「コルネリオよ」と呼ぶのを、幻ではっきり見た。
27233 44 10 4 彼は御使を見つめていたが、恐ろしくなって、「主よ、なんでございますか」と言った。すると御使が言った、「あなたの祈や施しは神のみ前にとどいて、おぼえられている。
27234 44 10 5 ついては今、ヨッパに人をやって、ペテロと呼ばれるシモンという人を招きなさい。
27235 44 10 6 この人は、海べに家をもつ皮なめしシモンという者の客となっている」。
27236 44 10 7 このお告げをした御使が立ち去ったのち、コルネリオは、僕ふたりと、部下の中で信心深い兵卒ひとりとを呼び、
27237 44 10 8 いっさいの事を説明して聞かせ、ヨッパへ送り出した。
27238 44 10 9 翌日、この三人が旅をつづけて町の近くにきたころ、ペテロは祈をするため屋上にのぼった。時は昼の十二時ごろであった。
27239 44 10 10 彼は空腹をおぼえて、何か食べたいと思った。そして、人々が食事の用意をしている間に、夢心地になった。
27240 44 10 11 すると、天が開け、大きな布のような入れ物が、四すみをつるされて、地上に降りて来るのを見た。
27241 44 10 12 その中には、地上の四つ足や這うもの、また空の鳥など、各種の生きものがはいっていた。
27242 44 10 13 そして声が彼に聞えてきた、「ペテロよ。立って、それらをほふって食べなさい」。
27243 44 10 14 ペテロは言った、「主よ、それはできません。わたしは今までに、清くないもの、汚れたものは、何一つ食べたことがありません」。
27244 44 10 15 すると、声が二度目にかかってきた、「神がきよめたものを、清くないなどと言ってはならない」。
27245 44 10 16 こんなことが三度もあってから、その入れ物はすぐ天に引き上げられた。
27246 44 10 17 ペテロが、いま見た幻はなんの事だろうかと、ひとり思案にくれていると、ちょうどその時、コルネリオから送られた人たちが、シモンの家を尋ね当てて、その門口に立っていた。
27247 44 10 18 そして声をかけて、「ペテロと呼ばれるシモンというかたが、こちらにお泊まりではございませんか」と尋ねた。
27248 44 10 19 ペテロはなおも幻について、思いめぐらしていると、御霊が言った、「ごらんなさい、三人の人たちが、あなたを尋ねてきている。
27249 44 10 20 さあ、立って下に降り、ためらわないで、彼らと一緒に出かけるがよい。わたしが彼らをよこしたのである」。
27250 44 10 21 そこでペテロは、その人たちのところに降りて行って言った、「わたしがお尋ねのペテロです。どんなご用でおいでになったのですか」。
27251 44 10 22 彼らは答えた、「正しい人で、神を敬い、ユダヤの全国民に好感を持たれている百卒長コルネリオが、あなたを家に招いてお話を伺うようにとのお告げを、聖なる御使から受けましたので、参りました」。
27252 44 10 23 そこで、ペテロは、彼らを迎えて泊まらせた。
27253 44 10 24 その次の日に、一行はカイザリヤに着いた。コルネリオは親族や親しい友人たちを呼び集めて、待っていた。
27254 44 10 25 ペテロがいよいよ到着すると、コルネリオは出迎えて、彼の足もとにひれ伏して拝した。
27255 44 10 26 するとペテロは、彼を引き起して言った、「お立ちなさい。わたしも同じ人間です」。
27256 44 10 27 それから共に話しながら、へやにはいって行くと、そこには、すでに大ぜいの人が集まっていた。
27257 44 10 28 ペテロは彼らに言った、「あなたがたが知っているとおり、ユダヤ人が他国の人と交際したり、出入りしたりすることは、禁じられています。ところが、神は、どんな人間をも清くないとか、汚れているとか言ってはならないと、わたしにお示しになりました。
27258 44 10 29 お招きにあずかった時、少しもためらわずに参ったのは、そのためなのです。そこで伺いますが、どういうわけで、わたしを招いてくださったのですか」。
27259 44 10 30 これに対してコルネリオが答えた、「四日前、ちょうどこの時刻に、わたしが自宅で午後三時の祈をしていますと、突然、輝いた衣を着た人が、前に立って申しました、
27260 44 10 31 『コルネリオよ、あなたの祈は聞きいれられ、あなたの施しは神のみ前におぼえられている。
27261 44 10 32 そこでヨッパに人を送ってペテロと呼ばれるシモンを招きなさい。その人は皮なめしシモンの海沿いの家に泊まっている』。
27262 44 10 33 それで、早速あなたをお呼びしたのです。ようこそおいで下さいました。今わたしたちは、主があなたにお告げになったことを残らず伺おうとして、みな神のみ前にまかり出ているのです」。
27263 44 10 34 そこでペテロは口を開いて言った、「神は人をかたよりみないかたで、
27264 44 10 35 神を敬い義を行う者はどの国民でも受けいれて下さることが、ほんとうによくわかってきました。
27265 44 10 36 あなたがたは、神がすべての者の主なるイエス・キリストによって平和の福音を宣べ伝えて、イスラエルの子らにお送り下さった御言をご存じでしょう。
27266 44 10 37 それは、ヨハネがバプテスマを説いた後、ガリラヤから始まってユダヤ全土にひろまった福音を述べたものです。
27267 44 10 38 神はナザレのイエスに聖霊と力とを注がれました。このイエスは、神が共におられるので、よい働きをしながら、また悪魔に押えつけられている人々をことごとくいやしながら、巡回されました。
27268 44 10 39 わたしたちは、イエスがこうしてユダヤ人の地やエルサレムでなさったすべてのことの証人であります。人々はこのイエスを木にかけて殺したのです。
27269 44 10 40 しかし神はイエスを三日目によみがえらせ、
27270 44 10 41 全部の人々にではなかったが、わたしたち証人としてあらかじめ選ばれた者たちに現れるようにして下さいました。わたしたちは、イエスが死人の中から復活された後、共に飲食しました。
27271 44 10 42 それから、イエスご自身が生者と死者との審判者として神に定められたかたであることを、人々に宣べ伝え、またあかしするようにと、神はわたしたちにお命じになったのです。
27272 44 10 43 預言者たちもみな、イエスを信じる者はことごとく、その名によって罪のゆるしが受けられると、あかしをしています」。
27273 44 10 44 ペテロがこれらの言葉をまだ語り終えないうちに、それを聞いていたみんなの人たちに、聖霊がくだった。
27274 44 10 45 割礼を受けている信者で、ペテロについてきた人たちは、異邦人たちにも聖霊の賜物が注がれたのを見て、驚いた。
27275 44 10 46 それは、彼らが異言を語って神をさんびしているのを聞いたからである。そこで、ペテロが言い出した、
27276 44 10 47 「この人たちがわたしたちと同じように聖霊を受けたからには、彼らに水でバプテスマを授けるのを、だれがこばみ得ようか」。
27277 44 10 48 こう言って、ペテロはその人々に命じて、イエス・キリストの名によってバプテスマを受けさせた。それから、彼らはペテロに願って、なお数日のあいだ滞在してもらった。
27278 44 11 1 さて、異邦人たちも神の言を受けいれたということが、使徒たちやユダヤにいる兄弟たちに聞えてきた。
27279 44 11 2 そこでペテロがエルサレムに上ったとき、割礼を重んじる者たちが彼をとがめて言った、
27280 44 11 3 「あなたは、割礼のない人たちのところに行って、食事を共にしたということだが」。
27281 44 11 4 そこでペテロは口を開いて、順序正しく説明して言った、
27282 44 11 5 「わたしがヨッパの町で祈っていると、夢心地になって幻を見た。大きな布のような入れ物が、四すみをつるされて、天から降りてきて、わたしのところにとどいた。
27283 44 11 6 注意して見つめていると、地上の四つ足、野の獣、這うもの、空の鳥などが、はいっていた。
27284 44 11 7 それから声がして、『ペテロよ、立って、それらをほふって食べなさい』と、わたしに言うのが聞えた。
27285 44 11 8 わたしは言った、『主よ、それはできません。わたしは今までに、清くないものや汚れたものを口に入れたことが一度もございません』。
27286 44 11 9 すると、二度目に天から声がかかってきた、『神がきよめたものを、清くないなどと言ってはならない』。
27287 44 11 10 こんなことが三度もあってから、全部のものがまた天に引き上げられてしまった。
27288 44 11 11 ちょうどその時、カイザリヤからつかわされてきた三人の人が、わたしたちの泊まっていた家に着いた。
27289 44 11 12 御霊がわたしに、ためらわずに彼らと共に行けと言ったので、ここにいる六人の兄弟たちも、わたしと一緒に出かけて行き、一同がその人の家にはいった。
27290 44 11 13 すると彼はわたしたちに、御使が彼の家に現れて、『ヨッパに人をやって、ペテロと呼ばれるシモンを招きなさい。
27291 44 11 14 この人は、あなたとあなたの全家族とが救われる言葉を語って下さるであろう』と告げた次第を、話してくれた。
27292 44 11 15 そこでわたしが語り出したところ、聖霊が、ちょうど最初わたしたちの上にくだったと同じように、彼らの上にくだった。
27293 44 11 16 その時わたしは、主が『ヨハネは水でバプテスマを授けたが、あなたがたは聖霊によってバプテスマを受けるであろう』と仰せになった言葉を思い出した。
27294 44 11 17 このように、わたしたちが主イエス・キリストを信じた時に下さったのと同じ賜物を、神が彼らにもお与えになったとすれば、わたしのような者が、どうして神を妨げることができようか」。
27295 44 11 18 人々はこれを聞いて黙ってしまった。それから神をさんびして、「それでは神は、異邦人にも命にいたる悔改めをお与えになったのだ」と言った。
27296 44 11 19 さて、ステパノのことで起った迫害のために散らされた人々は、ピニケ、クプロ、アンテオケまでも進んで行ったが、ユダヤ人以外の者には、だれにも御言を語っていなかった。
27297 44 11 20 ところが、その中に数人のクプロ人とクレネ人がいて、アンテオケに行ってからギリシヤ人にも呼びかけ、主イエスを宣べ伝えていた。
27298 44 11 21 そして、主のみ手が彼らと共にあったため、信じて主に帰依するものの数が多かった。
27299 44 11 22 このうわさがエルサレムにある教会に伝わってきたので、教会はバルナバをアンテオケにつかわした。
27300 44 11 23 彼は、そこに着いて、神のめぐみを見てよろこび、主に対する信仰を揺るがない心で持ちつづけるようにと、みんなの者を励ました。
27301 44 11 24 彼は聖霊と信仰とに満ちた立派な人であったからである。こうして主に加わる人々が、大ぜいになった。
27302 44 11 25 そこでバルナバはサウロを捜しにタルソへ出かけて行き、
27303 44 11 26 彼を見つけたうえ、アンテオケに連れて帰った。ふたりは、まる一年、ともどもに教会で集まりをし、大ぜいの人々を教えた。このアンテオケで初めて、弟子たちがクリスチャンと呼ばれるようになった。
27304 44 11 27 そのころ、預言者たちがエルサレムからアンテオケにくだってきた。
27305 44 11 28 その中のひとりであるアガボという者が立って、世界中に大ききんが起るだろうと、御霊によって預言したところ、果してそれがクラウデオ帝の時に起った。
27306 44 11 29 そこで弟子たちは、それぞれの力に応じて、ユダヤに住んでいる兄弟たちに援助を送ることに決めた。
27307 44 11 30 そして、それをバルナバとサウロとの手に託して、長老たちに送りとどけた。
27308 44 12 1 そのころ、ヘロデ王は教会のある者たちに圧迫の手をのばし、
27309 44 12 2 ヨハネの兄弟ヤコブをつるぎで切り殺した。
27310 44 12 3 そして、それがユダヤ人たちの意にかなったのを見て、さらにペテロをも捕えにかかった。それは除酵祭の時のことであった。
27311 44 12 4 ヘロデはペテロを捕えて獄に投じ、四人一組の兵卒四組に引き渡して、見張りをさせておいた。過越の祭のあとで、彼を民衆の前に引き出すつもりであったのである。
27312 44 12 5 こうして、ペテロは獄に入れられていた。教会では、彼のために熱心な祈が神にささげられた。
27313 44 12 6 ヘロデが彼を引き出そうとしていたその夜、ペテロは二重の鎖につながれ、ふたりの兵卒の間に置かれて眠っていた。番兵たちは戸口で獄を見張っていた。
27314 44 12 7 すると、突然、主の使がそばに立ち、光が獄内を照した。そして御使はペテロのわき腹をつついて起し、「早く起きあがりなさい」と言った。すると鎖が彼の両手から、はずれ落ちた。
27315 44 12 8 御使が「帯をしめ、くつをはきなさい」と言ったので、彼はそのとおりにした。それから「上着を着て、ついてきなさい」と言われたので、
27316 44 12 9 ペテロはついて出て行った。彼には御使のしわざが現実のこととは考えられず、ただ幻を見ているように思われた。
27317 44 12 10 彼らは第一、第二の衛所を通りすぎて、町に抜ける鉄門のところに来ると、それがひとりでに開いたので、そこを出て一つの通路に進んだとたんに、御使は彼を離れ去った。
27318 44 12 11 その時ペテロはわれにかえって言った、「今はじめて、ほんとうのことがわかった。主が御使をつかわして、ヘロデの手から、またユダヤ人たちの待ちもうけていたあらゆる災から、わたしを救い出して下さったのだ」。
27319 44 12 12 ペテロはこうとわかってから、マルコと呼ばれているヨハネの母マリヤの家に行った。その家には大ぜいの人が集まって祈っていた。
27320 44 12 13 彼が門の戸をたたいたところ、ロダという女中が取次ぎに出てきたが、
27321 44 12 14 ペテロの声だとわかると、喜びのあまり、門をあけもしないで家に駆け込み、ペテロが門口に立っていると報告した。
27322 44 12 15 人々は「あなたは気が狂っている」と言ったが、彼女は自分の言うことに間違いはないと、言い張った。そこで彼らは「それでは、ペテロの御使だろう」と言った。
27323 44 12 16 しかし、ペテロが門をたたきつづけるので、彼らがあけると、そこにペテロがいたのを見て驚いた。
27324 44 12 17 ペテロは手を振って彼らを静め、主が獄から彼を連れ出して下さった次第を説明し、「このことを、ヤコブやほかの兄弟たちに伝えて下さい」と言い残して、どこかほかの所へ出て行った。
27325 44 12 18 夜が明けると、兵卒たちの間に、ペテロはいったいどうなったのだろうと、大へんな騒ぎが起った。
27326 44 12 19 ヘロデはペテロを捜しても見つからないので、番兵たちを取り調べたうえ、彼らを死刑に処するように命じ、そして、ユダヤからカイザリヤにくだって行って、そこに滞在した。
27327 44 12 20 さて、ツロとシドンとの人々は、ヘロデの怒りに触ていたので、一同うちそろって王をおとずれ、王の侍従官ブラストに取りいって、和解かたを依頼した。彼らの地方が、王の国から食糧を得ていたからである。
27328 44 12 21 定められた日に、ヘロデは王服をまとって王座にすわり、彼らにむかって演説をした。
27329 44 12 22 集まった人々は、「これは神の声だ、人間の声ではない」と叫びつづけた。
27330 44 12 23 するとたちまち、主の使が彼を打った。神に栄光を帰することをしなかったからである。彼は虫にかまれて息が絶えてしまった。
27331 44 12 24 こうして、主の言はますます盛んにひろまって行った。
27332 44 12 25 バルナバとサウロとは、その任務を果したのち、マルコと呼ばれていたヨハネを連れて、エルサレムから帰ってきた。
27333 44 13 1 さて、アンテオケにある教会には、バルナバ、ニゲルと呼ばれるシメオン、クレネ人ルキオ、領主ヘロデの乳兄弟マナエン、およびサウロなどの預言者や教師がいた。
27334 44 13 2 一同が主に礼拝をささげ、断食をしていると、聖霊が「さあ、バルナバとサウロとを、わたしのために聖別して、彼らに授けておいた仕事に当らせなさい」と告げた。
27335 44 13 3 そこで一同は、断食と祈とをして、手をふたりの上においた後、出発させた。
27336 44 13 4 ふたりは聖霊に送り出されて、セルキヤにくだり、そこから舟でクプロに渡った。
27337 44 13 5 そしてサラミスに着くと、ユダヤ人の諸会堂で神の言を宣べはじめた。彼らはヨハネを助け手として連れていた。
27338 44 13 6 島全体を巡回して、パポスまで行ったところ、そこでユダヤ人の魔術師、バルイエスというにせ預言者に出会った。
27339 44 13 7 彼は地方総督セルギオ・パウロのところに出入りをしていた。この総督は賢明な人であって、バルナバとサウロとを招いて、神の言を聞こうとした。
27340 44 13 8 ところが魔術師エルマ(彼の名は「魔術師」との意)は、総督を信仰からそらそうとして、しきりにふたりの邪魔をした。
27341 44 13 9 サウロ、またの名はパウロ、は聖霊に満たされ、彼をにらみつけて
27342 44 13 10 言った、「ああ、あらゆる偽りと邪悪とでかたまっている悪魔の子よ、すべて正しいものの敵よ。主のまっすぐな道を曲げることを止めないのか。
27343 44 13 11 見よ、主のみ手がおまえの上に及んでいる。おまえは盲になって、当分、日の光が見えなくなるのだ」。たちまち、かすみとやみとが彼にかかったため、彼は手さぐりしながら、手を引いてくれる人を捜しまわった。
27344 44 13 12 総督はこの出来事を見て、主の教にすっかり驚き、そして信じた。
27345 44 13 13 パウロとその一行は、パポスから船出して、パンフリヤのペルガに渡った。ここでヨハネは一行から身を引いて、エルサレムに帰ってしまった。
27346 44 13 14 しかしふたりは、ペルガからさらに進んで、ピシデヤのアンテオケに行き、安息日に会堂にはいって席に着いた。
27347 44 13 15 律法と預言書の朗読があったのち、会堂司たちが彼らのところに人をつかわして、「兄弟たちよ、もしあなたがたのうち、どなたか、この人々に何か奨励の言葉がありましたら、どうぞお話し下さい」と言わせた。
27348 44 13 16 そこでパウロが立ちあがり、手を振りながら言った。
27349 44 13 17 この民イスラエルの神は、わたしたちの先祖を選び、エジプトの地に滞在中、この民を大いなるものとし、み腕を高くさし上げて、彼らをその地から導き出された。
27350 44 13 18 そして約四十年にわたって、荒野で彼らをはぐくみ、
27351 44 13 19 カナンの地では七つの異民族を打ち滅ぼし、その地を彼らに譲り与えられた。
27352 44 13 20 それらのことが約四百五十年の年月にわたった。その後、神はさばき人たちをおつかわしになり、預言者サムエルの時に及んだ。
27353 44 13 21 その時、人々が王を要求したので、神はベニヤミン族の人、キスの子サウロを四十年間、彼らにおつかわしになった。
27354 44 13 22 それから神はサウロを退け、ダビデを立てて王とされたが、彼についてあかしをして、『わたしはエッサイの子ダビデを見つけた。彼はわたしの心にかなった人で、わたしの思うところを、ことごとく実行してくれるであろう』と言われた。
27355 44 13 23 神は約束にしたがって、このダビデの子孫の中から救主イエスをイスラエルに送られたが、
27356 44 13 24 そのこられる前に、ヨハネがイスラエルのすべての民に悔改めのバプテスマを、あらかじめ宣べ伝えていた。
27357 44 13 25 ヨハネはその一生の行程を終ろうとするに当って言った、『わたしは、あなたがたが考えているような者ではない。しかし、わたしのあとから来るかたがいる。わたしはそのくつを脱がせてあげる値うちもない』。
27358 44 13 26 兄弟たち、アブラハムの子孫のかたがた、ならびに皆さんの中の神を敬う人たちよ。この救の言葉はわたしたちに送られたのである。
27359 44 13 27 エルサレムに住む人々やその指導者たちは、イエスを認めずに刑に処し、それによって、安息日ごとに読む預言者の言葉が成就した。
27360 44 13 28 また、なんら死に当る理由が見いだせなかったのに、ピラトに強要してイエスを殺してしまった。
27361 44 13 29 そして、イエスについて書いてあることを、皆なし遂げてから、人々はイエスを木から取りおろして墓に葬った。
27362 44 13 30 しかし、神はイエスを死人の中から、よみがえらせたのである。
27363 44 13 31 イエスは、ガリラヤからエルサレムへ一緒に上った人たちに、幾日ものあいだ現れ、そして、彼らは今や、人々に対してイエスの証人となっている。
27364 44 13 32 わたしたちは、神が先祖たちに対してなされた約束を、ここに宣べ伝えているのである。
27365 44 13 33 神は、イエスをよみがえらせて、わたしたち子孫にこの約束を、お果しになった。それは詩篇の第二篇にも、『あなたこそは、わたしの子。きょう、わたしはあなたを生んだ』と書いてあるとおりである。
27366 44 13 34 また、神がイエスを死人の中からよみがえらせて、いつまでも朽ち果てることのないものとされたことについては、『わたしは、ダビデに約束した確かな聖なる祝福を、あなたがたに授けよう』と言われた。
27367 44 13 35 だから、ほかの箇所でもこう言っておられる、『あなたの聖者が朽ち果てるようなことは、お許しにならないであろう』。
27368 44 13 36 事実、ダビデは、その時代の人々に神のみ旨にしたがって仕えたが、やがて眠りにつき、先祖たちの中に加えられて、ついに朽ち果ててしまった。
27369 44 13 37 しかし、神がよみがえらせたかたは、朽ち果てることがなかったのである。
27370 44 13 38 だから、兄弟たちよ、この事を承知しておくがよい。すなわち、このイエスによる罪のゆるしの福音が、今やあなたがたに宣べ伝えられている。そして、モーセの律法では義とされることができなかったすべての事についても、
27371 44 13 39 信じる者はもれなく、イエスによって義とされるのである。
27372 44 13 40 だから預言者たちの書にかいてある次のようなことが、あなたがたの身に起らないように気をつけなさい。
27373 44 13 41 『見よ、侮る者たちよ。驚け、そして滅び去れ。わたしは、あなたがたの時代に一つの事をする。それは、人がどんなに説明して聞かせても、あなたがたのとうてい信じないような事なのである』」。
27374 44 13 42 ふたりが会堂を出る時、人々は次の安息日にも、これと同じ話をしてくれるようにと、しきりに願った。
27375 44 13 43 そして集会が終ってからも、大ぜいのユダヤ人や信心深い改宗者たちが、パウロとバルナバとについてきたので、ふたりは、彼らが引きつづき神のめぐみにとどまっているようにと、説きすすめた。
27376 44 13 44 次の安息日には、ほとんど全市をあげて、神の言を聞きに集まってきた。
27377 44 13 45 するとユダヤ人たちは、その群衆を見てねたましく思い、パウロの語ることに口ぎたなく反対した。
27378 44 13 46 パウロとバルナバとは大胆に語った、「神の言は、まず、あなたがたに語り伝えられなければならなかった。しかし、あなたがたはそれを退け、自分自身を永遠の命にふさわしからぬ者にしてしまったから、さあ、わたしたちはこれから方向をかえて、異邦人たちの方に行くのだ。
27379 44 13 47 主はわたしたちに、こう命じておられる、『わたしは、あなたを立てて異邦人の光とした。あなたが地の果までも救をもたらすためである』」。
27380 44 13 48 異邦人たちはこれを聞いてよろこび、主の御言をほめたたえてやまなかった。そして、永遠の命にあずかるように定められていた者は、みな信じた。
27381 44 13 49 こうして、主の御言はこの地方全体にひろまって行った。
27382 44 13 50 ところが、ユダヤ人たちは、信心深い貴婦人たちや町の有力者たちを煽動して、パウロとバルナバを迫害させ、ふたりをその地方から追い出させた。
27383 44 13 51 ふたりは、彼らに向けて足のちりを払い落して、イコニオムへ行った。
27384 44 13 52 弟子たちは、ますます喜びと聖霊とに満たされていた。
27385 44 14 1 ふたりは、イコニオムでも同じようにユダヤ人の会堂にはいって語った結果、ユダヤ人やギリシヤ人が大ぜい信じた。
27386 44 14 2 ところが、信じなかったユダヤ人たちは異邦人たちをそそのかして、兄弟たちに対して悪意をいだかせた。
27387 44 14 3 それにもかかわらず、ふたりは長い期間をそこで過ごして、大胆に主のことを語った。主は、彼らの手によってしるしと奇跡とを行わせ、そのめぐみの言葉をあかしされた。
27388 44 14 4 そこで町の人々が二派に分れ、ある人たちはユダヤ人の側につき、ある人たちは使徒の側についた。
27389 44 14 5 その時、異邦人やユダヤ人が役人たちと一緒になって反対運動を起し、使徒たちをはずかしめ、石で打とうとしたので、
27390 44 14 6 ふたりはそれと気づいて、ルカオニヤの町々、ルステラ、デルベおよびその附近の地へのがれ、
27391 44 14 7 そこで引きつづき福音を伝えた。
27392 44 14 8 ところが、ルステラに足のきかない人が、すわっていた。彼は生れながらの足なえで、歩いた経験が全くなかった。
27393 44 14 9 この人がパウロの語るのを聞いていたが、パウロは彼をじっと見て、いやされるほどの信仰が彼にあるのを認め、
27394 44 14 10 大声で「自分の足で、まっすぐに立ちなさい」と言った。すると彼は踊り上がって歩き出した。
27395 44 14 11 群衆はパウロのしたことを見て、声を張りあげ、ルカオニヤの地方語で、「神々が人間の姿をとって、わたしたちのところにお下りになったのだ」と叫んだ。
27396 44 14 12 彼らはバルナバをゼウスと呼び、パウロはおもに語る人なので、彼をヘルメスと呼んだ。
27397 44 14 13 そして、郊外にあるゼウス神殿の祭司が、群衆と共に、ふたりに犠牲をささげようと思って、雄牛数頭と花輪とを門前に持ってきた。
27398 44 14 14 ふたりの使徒バルナバとパウロとは、これを聞いて自分の上着を引き裂き、群衆の中に飛び込んで行き、叫んで
27399 44 14 15 言った、「皆さん、なぜこんな事をするのか。わたしたちとても、あなたがたと同じような人間である。そして、あなたがたがこのような愚にもつかぬものを捨てて、天と地と海と、その中のすべてのものをお造りになった生ける神に立ち帰るようにと、福音を説いているものである。
27400 44 14 16 神は過ぎ去った時代には、すべての国々の人が、それぞれの道を行くままにしておかれたが、
27401 44 14 17 それでも、ご自分のことをあかししないでおられたわけではない。すなわち、あなたがたのために天から雨を降らせ、実りの季節を与え、食物と喜びとで、あなたがたの心を満たすなど、いろいろのめぐみをお与えになっているのである」。
27402 44 14 18 こう言って、ふたりは、やっとのことで、群衆が自分たちに犠牲をささげるのを、思い止まらせた。
27403 44 14 19 ところが、あるユダヤ人たちはアンテオケやイコニオムから押しかけてきて、群衆を仲間に引き入れたうえ、パウロを石で打ち、死んでしまったと思って、彼を町の外に引きずり出した。
27404 44 14 20 しかし、弟子たちがパウロを取り囲んでいる間に、彼は起きあがって町にはいって行った。そして翌日には、バルナバと一緒にデルベにむかって出かけた。
27405 44 14 21 その町で福音を伝えて、大ぜいの人を弟子とした後、ルステラ、イコニオム、アンテオケの町々に帰って行き、
27406 44 14 22 弟子たちを力づけ、信仰を持ちつづけるようにと奨励し、「わたしたちが神の国にはいるのには、多くの苦難を経なければならない」と語った。
27407 44 14 23 また教会ごとに彼らのために長老たちを任命し、断食をして祈り、彼らをその信じている主にゆだねた。
27408 44 14 24 それから、ふたりはピシデヤを通過してパンフリヤにきたが、
27409 44 14 25 ペルガで御言を語った後、アタリヤにくだり、
27410 44 14 26 そこから舟でアンテオケに帰った。彼らが今なし終った働きのために、神の祝福を受けて送り出されたのは、このアンテオケからであった。
27411 44 14 27 彼らは到着早々、教会の人々を呼び集めて、神が彼らと共にいてして下さった数々のこと、また信仰の門を異邦人に開いて下さったことなどを、報告した。
27412 44 14 28 そして、ふたりはしばらくの間、弟子たちと一緒に過ごした。
27413 44 15 1 さて、ある人たちがユダヤから下ってきて、兄弟たちに「あなたがたも、モーセの慣例にしたがって割礼を受けなければ、救われない」と、説いていた。
27414 44 15 2 そこで、パウロやバルナバと彼らとの間に、少なからぬ紛糾と争論とが生じたので、パウロ、バルナバそのほか数人の者がエルサレムに上り、使徒たちや長老たちと、この問題について協議することになった。
27415 44 15 3 彼らは教会の人々に見送られ、ピニケ、サマリヤをとおって、道すがら、異邦人たちの改宗の模様をくわしく説明し、すべての兄弟たちを大いに喜ばせた。
27416 44 15 4 エルサレムに着くと、彼らは教会と使徒たち、長老たちに迎えられて、神が彼らと共にいてなされたことを、ことごとく報告した。
27417 44 15 5 ところが、パリサイ派から信仰にはいってきた人たちが立って、「異邦人にも割礼を施し、またモーセの律法を守らせるべきである」と主張した。
27418 44 15 6 そこで、使徒たちや長老たちが、この問題について審議するために集まった。
27419 44 15 7 激しい争論があった後、ペテロが立って言った、「兄弟たちよ、ご承知のとおり、異邦人がわたしの口から福音の言葉を聞いて信じるようにと、神は初めのころに、諸君の中からわたしをお選びになったのである。
27420 44 15 8 そして、人の心をご存じである神は、聖霊をわれわれに賜わったと同様に彼らにも賜わって、彼らに対してあかしをなし、
27421 44 15 9 また、その信仰によって彼らの心をきよめ、われわれと彼らとの間に、なんの分けへだてもなさらなかった。
27422 44 15 10 しかるに、諸君はなぜ、今われわれの先祖もわれわれ自身も、負いきれなかったくびきをあの弟子たちの首にかけて、神を試みるのか。
27423 44 15 11 確かに、主イエスのめぐみによって、われわれは救われるのだと信じるが、彼らとても同様である」。
27424 44 15 12 すると、全会衆は黙ってしまった。それから、バルナバとパウロとが、彼らをとおして異邦人の間に神が行われた数々のしるしと奇跡のことを、説明するのを聞いた。
27425 44 15 13 ふたりが語り終えた後、ヤコブはそれに応じて述べた、「兄弟たちよ、わたしの意見を聞いていただきたい。
27426 44 15 14 神が初めに異邦人たちを顧みて、その中から御名を負う民を選び出された次第は、シメオンがすでに説明した。
27427 44 15 15 預言者たちの言葉も、それと一致している。すなわち、こう書いてある、
27428 44 15 16 『その後、わたしは帰ってきて、倒れたダビデの幕屋を建てかえ、くずれた箇所を修理し、それを立て直そう。
27429 44 15 17 残っている人々も、わたしの名を唱えているすべての異邦人も、主を尋ね求めるようになるためである。
27430 44 15 18 世の初めからこれらの事を知らせておられる主が、こう仰せになった』。
27431 44 15 19 そこで、わたしの意見では、異邦人の中から神に帰依している人たちに、わずらいをかけてはいけない。
27432 44 15 20 ただ、偶像に供えて汚れた物と、不品行と、絞め殺したものと、血とを、避けるようにと、彼らに書き送ることにしたい。
27433 44 15 21 古い時代から、どの町にもモーセの律法を宣べ伝える者がいて、安息日ごとにそれを諸会堂で朗読するならわしであるから」。
27434 44 15 22 そこで、使徒たちや長老たちは、全教会と協議した末、お互の中から人々を選んで、パウロやバルナバと共に、アンテオケに派遣することに決めた。選ばれたのは、バルサバというユダとシラスとであったが、いずれも兄弟たちの間で重んじられていた人たちであった。
27435 44 15 23 この人たちに託された書面はこうである。
27436 44 15 24 こちらから行ったある者たちが、わたしたちからの指示もないのに、いろいろなことを言って、あなたがたを騒がせ、あなたがたの心を乱したと伝え聞いた。
27437 44 15 25 そこで、わたしたちは人々を選んで、愛するバルナバおよびパウロと共に、あなたがたのもとに派遣することに、衆議一決した。
27438 44 15 26 このふたりは、われらの主イエス・キリストの名のために、その命を投げ出した人々であるが、
27439 44 15 27 彼らと共に、ユダとシラスとを派遣する次第である。この人たちは、あなたがたに、同じ趣旨のことを、口頭でも伝えるであろう。
27440 44 15 28 すなわち、聖霊とわたしたちとは、次の必要事項のほかは、どんな負担をも、あなたがたに負わせないことに決めた。
27441 44 15 29 それは、偶像に供えたものと、血と、絞め殺したものと、不品行とを、避けるということである。これらのものから遠ざかっておれば、それでよろしい。以上」。
27442 44 15 30 さて、一行は人々に見送られて、アンテオケに下って行き、会衆を集めて、その書面を手渡した。
27443 44 15 31 人々はそれを読んで、その勧めの言葉をよろこんだ。
27444 44 15 32 ユダとシラスとは共に預言者であったので、多くの言葉をもって兄弟たちを励まし、また力づけた。
27445 44 15 33 ふたりは、しばらくの時を、そこで過ごした後、兄弟たちから、旅の平安を祈られて、見送りを受け、自分らを派遣した人々のところに帰って行った。〔
27446 44 15 34 しかし、シラスだけは、引きつづきとどまることにした。〕
27447 44 15 35 パウロとバルナバとはアンテオケに滞在をつづけて、ほかの多くの人たちと共に、主の言葉を教えかつ宣べ伝えた。
27448 44 15 36 幾日かの後、パウロはバルナバに言った、「さあ、前に主の言葉を伝えたすべての町々にいる兄弟たちを、また訪問して、みんながどうしているかを見てこようではないか」。
27449 44 15 37 そこで、バルナバはマルコというヨハネも一緒に連れて行くつもりでいた。
27450 44 15 38 しかし、パウロは、前にパンフリヤで一行から離れて、働きを共にしなかったような者は、連れて行かないがよいと考えた。
27451 44 15 39 こうして激論が起り、その結果ふたりは互に別れ別れになり、バルナバはマルコを連れてクプロに渡って行き、
27452 44 15 40 パウロはシラスを選び、兄弟たちから主の恵みにゆだねられて、出発した。
27453 44 15 41 そしてパウロは、シリヤ、キリキヤの地方をとおって、諸教会を力づけた。
27454 44 16 1 それから、彼はデルベに行き、次にルステラに行った。そこにテモテという名の弟子がいた。信者のユダヤ婦人を母とし、ギリシヤ人を父としており、
27455 44 16 2 ルステラとイコニオムの兄弟たちの間で、評判のよい人物であった。
27456 44 16 3 パウロはこのテモテを連れて行きたかったので、その地方にいるユダヤ人の手前、まず彼に割礼を受けさせた。彼の父がギリシヤ人であることは、みんな知っていたからである。
27457 44 16 4 それから彼らは通る町々で、エルサレムの使徒たちや長老たちの取り決めた事項を守るようにと、人々にそれを渡した。
27458 44 16 5 こうして、諸教会はその信仰を強められ、日ごとに数を増していった。
27459 44 16 6 それから彼らは、アジヤで御言を語ることを聖霊に禁じられたので、フルギヤ・ガラテヤ地方をとおって行った。
27460 44 16 7 そして、ムシヤのあたりにきてから、ビテニヤに進んで行こうとしたところ、イエスの御霊がこれを許さなかった。
27461 44 16 8 それで、ムシヤを通過して、トロアスに下って行った。
27462 44 16 9 ここで夜、パウロは一つの幻を見た。ひとりのマケドニヤ人が立って、「マケドニヤに渡ってきて、わたしたちを助けて下さい」と、彼に懇願するのであった。
27463 44 16 10 パウロがこの幻を見た時、これは彼らに福音を伝えるために、神がわたしたちをお招きになったのだと確信して、わたしたちは、ただちにマケドニヤに渡って行くことにした。
27464 44 16 11 そこで、わたしたちはトロアスから船出して、サモトラケに直航し、翌日ネアポリスに着いた。
27465 44 16 12 そこからピリピへ行った。これはマケドニヤのこの地方第一の町で、植民都市であった。わたしたちは、この町に数日間滞在した。
27466 44 16 13 ある安息日に、わたしたちは町の門を出て、祈り場があると思って、川のほとりに行った。そして、そこにすわり、集まってきた婦人たちに話をした。
27467 44 16 14 ところが、テアテラ市の紫布の商人で、神を敬うルデヤという婦人が聞いていた。主は彼女の心を開いて、パウロの語ることに耳を傾けさせた。
27468 44 16 15 そして、この婦人もその家族も、共にバプテスマを受けたが、その時、彼女は「もし、わたしを主を信じる者とお思いでしたら、どうぞ、わたしの家にきて泊まって下さい」と懇望し、しいてわたしたちをつれて行った。
27469 44 16 16 ある時、わたしたちが、祈り場に行く途中、占いの霊につかれた女奴隷に出会った。彼女は占いをして、その主人たちに多くの利益を得させていた者である。
27470 44 16 17 この女が、パウロやわたしたちのあとを追ってきては、「この人たちは、いと高き神の僕たちで、あなたがたに救の道を伝えるかただ」と、叫び出すのであった。
27471 44 16 18 そして、そんなことを幾日間もつづけていた。パウロは困りはてて、その霊にむかい「イエス・キリストの名によって命じる。その女から出て行け」と言った。すると、その瞬間に霊が女から出て行った。
27472 44 16 19 彼女の主人たちは、自分らの利益を得る望みが絶えたのを見て、パウロとシラスとを捕え、役人に引き渡すため広場に引きずって行った。
27473 44 16 20 それから、ふたりを長官たちの前に引き出して訴えた、「この人たちはユダヤ人でありまして、わたしたちの町をかき乱し、
27474 44 16 21 わたしたちローマ人が、採用も実行もしてはならない風習を宣伝しているのです」。
27475 44 16 22 群衆もいっせいに立って、ふたりを責めたてたので、長官たちはふたりの上着をはぎ取り、むちで打つことを命じた。
27476 44 16 23 それで、ふたりに何度もむちを加えさせたのち、獄に入れ、獄吏にしっかり番をするようにと命じた。
27477 44 16 24 獄吏はこの厳命を受けたので、ふたりを奥の獄屋に入れ、その足に足かせをしっかとかけておいた。
27478 44 16 25 真夜中ごろ、パウロとシラスとは、神に祈り、さんびを歌いつづけたが、囚人たちは耳をすまして聞きいっていた。
27479 44 16 26 ところが突然、大地震が起って、獄の土台が揺れ動き、戸は全部たちまち開いて、みんなの者の鎖が解けてしまった。
27480 44 16 27 獄吏は目をさまし、獄の戸が開いてしまっているのを見て、囚人たちが逃げ出したものと思い、つるぎを抜いて自殺しかけた。
27481 44 16 28 そこでパウロは大声をあげて言った、「自害してはいけない。われわれは皆ひとり残らず、ここにいる」。
27482 44 16 29 すると、獄吏は、あかりを手に入れた上、獄に駆け込んできて、おののきながらパウロとシラスの前にひれ伏した。
27483 44 16 30 それから、ふたりを外に連れ出して言った、「先生がた、わたしは救われるために、何をすべきでしょうか」。
27484 44 16 31 ふたりが言った、「主イエスを信じなさい。そうしたら、あなたもあなたの家族も救われます」。
27485 44 16 32 それから、彼とその家族一同とに、神の言を語って聞かせた。
27486 44 16 33 彼は真夜中にもかかわらず、ふたりを引き取って、その打ち傷を洗ってやった。そして、その場で自分も家族も、ひとり残らずバプテスマを受け、
27487 44 16 34 さらに、ふたりを自分の家に案内して食事のもてなしをし、神を信じる者となったことを、全家族と共に心から喜んだ。
27488 44 16 35 夜が明けると、長官たちは警吏らをつかわして、「あの人たちを釈放せよ」と言わせた。
27489 44 16 36 そこで、獄吏はこの言葉をパウロに伝えて言った、「長官たちが、あなたがたを釈放させるようにと、使をよこしました。さあ、出てきて、無事にお帰りなさい」。
27490 44 16 37 ところが、パウロは警吏らに言った、「彼らは、ローマ人であるわれわれを、裁判にかけもせずに、公衆の前でむち打ったあげく、獄に入れてしまった。しかるに今になって、ひそかに、われわれを出そうとするのか。それは、いけない。彼ら自身がここにきて、われわれを連れ出すべきである」。
27491 44 16 38 警吏らはこの言葉を長官たちに報告した。すると長官たちは、ふたりがローマ人だと聞いて恐れ、
27492 44 16 39 自分でやってきてわびた上、ふたりを獄から連れ出し、町から立ち去るようにと頼んだ。
27493 44 16 40 ふたりは獄を出て、ルデヤの家に行った。そして、兄弟たちに会って勧めをなし、それから出かけた。
27494 44 17 1 一行は、アムピポリスとアポロニヤとをとおって、テサロニケに行った。ここにはユダヤ人の会堂があった。
27495 44 17 2 パウロは例によって、その会堂にはいって行って、三つの安息日にわたり、聖書に基いて彼らと論じ、
27496 44 17 3 キリストは必ず苦難を受け、そして死人の中からよみがえるべきこと、また「わたしがあなたがたに伝えているこのイエスこそは、キリストである」とのことを、説明もし論証もした。
27497 44 17 4 ある人たちは納得がいって、パウロとシラスにしたがった。その中には、信心深いギリシヤ人が多数あり、貴婦人たちも少なくなかった。
27498 44 17 5 ところが、ユダヤ人たちは、それをねたんで、町をぶらついているならず者らを集めて暴動を起し、町を騒がせた。それからヤソンの家を襲い、ふたりを民衆の前にひっぱり出そうと、しきりに捜した。
27499 44 17 6 しかし、ふたりが見つからないので、ヤソンと兄弟たち数人を、市の当局者のところに引きずって行き、叫んで言った、「天下をかき回してきたこの人たちが、ここにもはいり込んでいます。
27500 44 17 7 その人たちをヤソンが自分の家に迎え入れました。この連中は、みなカイザルの詔勅にそむいて行動し、イエスという別の王がいるなどと言っています」。
27501 44 17 8 これを聞いて、群衆と市の当局者は不安に感じた。
27502 44 17 9 そして、ヤソンやほかの者たちから、保証金を取った上、彼らを釈放した。
27503 44 17 10 そこで、兄弟たちはただちに、パウロとシラスとを、夜の間にベレヤへ送り出した。ふたりはベレヤに到着すると、ユダヤ人の会堂に行った。
27504 44 17 11 ここにいるユダヤ人はテサロニケの者たちよりも素直であって、心から教を受けいれ、果してそのとおりかどうかを知ろうとして、日々聖書を調べていた。
27505 44 17 12 そういうわけで、彼らのうちの多くの者が信者になった。また、ギリシヤの貴婦人や男子で信じた者も、少なくなかった。
27506 44 17 13 テサロニケのユダヤ人たちは、パウロがベレヤでも神の言を伝えていることを知り、そこにも押しかけてきて、群衆を煽動して騒がせた。
27507 44 17 14 そこで、兄弟たちは、ただちにパウロを送り出して、海べまで行かせ、シラスとテモテとはベレヤに居残った。
27508 44 17 15 パウロを案内した人たちは、彼をアテネまで連れて行き、テモテとシラスとになるべく早く来るようにとのパウロの伝言を受けて、帰った。
27509 44 17 16 さて、パウロはアテネで彼らを待っている間に、市内に偶像がおびただしくあるのを見て、心に憤りを感じた。
27510 44 17 17 そこで彼は、会堂ではユダヤ人や信心深い人たちと論じ、広場では毎日そこで出会う人々を相手に論じた。
27511 44 17 18 また、エピクロス派やストア派の哲学者数人も、パウロと議論を戦わせていたが、その中のある者たちが言った、「このおしゃべりは、いったい、何を言おうとしているのか」。また、ほかの者たちは、「あれは、異国の神々を伝えようとしているらしい」と言った。パウロが、イエスと復活とを、宣べ伝えていたからであった。
27512 44 17 19 そこで、彼らはパウロをアレオパゴスの評議所に連れて行って、「君の語っている新しい教がどんなものか、知らせてもらえまいか。
27513 44 17 20 君がなんだか珍らしいことをわれわれに聞かせているので、それがなんの事なのか知りたいと思うのだ」と言った。
27514 44 17 21 いったい、アテネ人もそこに滞在している外国人もみな、何か耳新しいことを話したり聞いたりすることのみに、時を過ごしていたのである。
27515 44 17 22 そこでパウロは、アレオパゴスの評議所のまん中に立って言った。
27516 44 17 23 実は、わたしが道を通りながら、あなたがたの拝むいろいろなものを、よく見ているうちに、『知られない神に』と刻まれた祭壇もあるのに気がついた。そこで、あなたがたが知らずに拝んでいるものを、いま知らせてあげよう。
27517 44 17 24 この世界と、その中にある万物とを造った神は、天地の主であるのだから、手で造った宮などにはお住みにならない。
27518 44 17 25 また、何か不足でもしておるかのように、人の手によって仕えられる必要もない。神は、すべての人々に命と息と万物とを与え、
27519 44 17 26 また、ひとりの人から、あらゆる民族を造り出して、地の全面に住まわせ、それぞれに時代を区分し、国土の境界を定めて下さったのである。
27520 44 17 27 こうして、人々が熱心に追い求めて捜しさえすれば、神を見いだせるようにして下さった。事実、神はわれわれひとりびとりから遠く離れておいでになるのではない。
27521 44 17 28 われわれは神のうちに生き、動き、存在しているからである。あなたがたのある詩人たちも言ったように、『われわれも、確かにその子孫である』。
27522 44 17 29 このように、われわれは神の子孫なのであるから、神たる者を、人間の技巧や空想で金や銀や石などに彫り付けたものと同じと、見なすべきではない。
27523 44 17 30 神は、このような無知の時代を、これまでは見過ごしにされていたが、今はどこにおる人でも、みな悔い改めなければならないことを命じておられる。
27524 44 17 31 神は、義をもってこの世界をさばくためその日を定め、お選びになったかたによってそれをなし遂げようとされている。すなわち、このかたを死人の中からよみがえらせ、その確証をすべての人に示されたのである」。
27525 44 17 32 死人のよみがえりのことを聞くと、ある者たちはあざ笑い、またある者たちは、「この事については、いずれまた聞くことにする」と言った。
27526 44 17 33 こうして、パウロは彼らの中から出て行った。
27527 44 17 34 しかし、彼にしたがって信じた者も、幾人かあった。その中には、アレオパゴスの裁判人デオヌシオとダマリスという女、また、その他の人々もいた。
27528 44 18 1 その後、パウロはアテネを去ってコリントへ行った。
27529 44 18 2 そこで、アクラというポント生れのユダヤ人と、その妻プリスキラとに出会った。クラウデオ帝が、すべてのユダヤ人をローマから退去させるようにと、命令したため、彼らは近ごろイタリヤから出てきたのである。
27530 44 18 3 パウロは彼らのところに行ったが、互に同業であったので、その家に住み込んで、一緒に仕事をした。天幕造りがその職業であった。
27531 44 18 4 パウロは安息日ごとに会堂で論じては、ユダヤ人やギリシヤ人の説得に努めた。
27532 44 18 5 シラスとテモテが、マケドニヤから下ってきてからは、パウロは御言を伝えることに専念し、イエスがキリストであることを、ユダヤ人たちに力強くあかしした。
27533 44 18 6 しかし、彼らがこれに反抗してののしり続けたので、パウロは自分の上着を振りはらって、彼らに言った、「あなたがたの血は、あなたがた自身にかえれ。わたしには責任がない。今からわたしは異邦人の方に行く」。
27534 44 18 7 こう言って、彼はそこを去り、テテオ・ユストという神を敬う人の家に行った。その家は会堂と隣り合っていた。
27535 44 18 8 会堂司クリスポは、その家族一同と共に主を信じた。また多くのコリント人も、パウロの話を聞いて信じ、ぞくぞくとバプテスマを受けた。
27536 44 18 9 すると、ある夜、幻のうちに主がパウロに言われた、「恐れるな。語りつづけよ、黙っているな。
27537 44 18 10 あなたには、わたしがついている。だれもあなたを襲って、危害を加えるようなことはない。この町には、わたしの民が大ぜいいる」。
27538 44 18 11 パウロは一年六か月の間ここに腰をすえて、神の言を彼らの間に教えつづけた。
27539 44 18 12 ところが、ガリオがアカヤの総督であった時、ユダヤ人たちは一緒になってパウロを襲い、彼を法廷にひっぱって行って訴えた、
27540 44 18 13 「この人は、律法にそむいて神を拝むように、人々をそそのかしています」。
27541 44 18 14 パウロが口を開こうとすると、ガリオはユダヤ人たちに言った、「ユダヤ人諸君、何か不法行為とか、悪質の犯罪とかのことなら、わたしは当然、諸君の訴えを取り上げもしようが、
27542 44 18 15 これは諸君の言葉や名称や律法に関する問題なのだから、諸君みずから始末するがよかろう。わたしはそんな事の裁判人にはなりたくない」。
27543 44 18 16 こう言って、彼らを法廷から追いはらった。
27544 44 18 17 そこで、みんなの者は、会堂司ソステネを引き捕え、法廷の前で打ちたたいた。ガリオはそれに対して、そ知らぬ顔をしていた。
27545 44 18 18 さてパウロは、なお幾日ものあいだ滞在した後、兄弟たちに別れを告げて、シリヤへ向け出帆した。プリスキラとアクラも同行した。パウロは、かねてから、ある誓願を立てていたので、ケンクレヤで頭をそった。
27546 44 18 19 一行がエペソに着くと、パウロはふたりをそこに残しておき、自分だけ会堂にはいって、ユダヤ人たちと論じた。
27547 44 18 20 人々は、パウロにもっと長いあいだ滞在するように願ったが、彼は聞きいれないで、
27548 44 18 21 「神のみこころなら、またあなたがたのところに帰ってこよう」と言って、別れを告げ、エペソから船出した。
27549 44 18 22 それから、カイザリヤで上陸してエルサレムに上り、教会にあいさつしてから、アンテオケに下って行った。
27550 44 18 23 そこにしばらくいてから、彼はまた出かけ、ガラテヤおよびフルギヤの地方を歴訪して、すべての弟子たちを力づけた。
27551 44 18 24 さて、アレキサンデリヤ生れで、聖書に精通し、しかも、雄弁なアポロというユダヤ人が、エペソにきた。
27552 44 18 25 この人は主の道に通じており、また、霊に燃えてイエスのことを詳しく語ったり教えたりしていたが、ただヨハネのバプテスマしか知っていなかった。
27553 44 18 26 彼は会堂で大胆に語り始めた。それをプリスキラとアクラとが聞いて、彼を招きいれ、さらに詳しく神の道を解き聞かせた。
27554 44 18 27 それから、アポロがアカヤに渡りたいと思っていたので、兄弟たちは彼を励まし、先方の弟子たちに、彼をよく迎えるようにと、手紙を書き送った。彼は到着して、すでにめぐみによって信者になっていた人たちに、大いに力になった。
27555 44 18 28 彼はイエスがキリストであることを、聖書に基いて示し、公然と、ユダヤ人たちを激しい語調で論破したからである。
27556 44 19 1 アポロがコリントにいた時、パウロは奥地をとおってエペソにきた。そして、ある弟子たちに出会って、
27557 44 19 2 彼らに「あなたがたは、信仰にはいった時に、聖霊を受けたのか」と尋ねたところ、「いいえ、聖霊なるものがあることさえ、聞いたことがありません」と答えた。
27558 44 19 3 「では、だれの名によってバプテスマを受けたのか」と彼がきくと、彼らは「ヨハネの名によるバプテスマを受けました」と答えた。
27559 44 19 4 そこで、パウロが言った、「ヨハネは悔改めのバプテスマを授けたが、それによって、自分のあとに来るかた、すなわち、イエスを信じるように、人々に勧めたのである」。
27560 44 19 5 人々はこれを聞いて、主イエスの名によるバプテスマを受けた。
27561 44 19 6 そして、パウロが彼らの上に手をおくと、聖霊が彼らにくだり、それから彼らは異言を語ったり、預言をしたりし出した。
27562 44 19 7 その人たちはみんなで十二人ほどであった。
27563 44 19 8 それから、パウロは会堂にはいって、三か月のあいだ、大胆に神の国について論じ、また勧めをした。
27564 44 19 9 ところが、ある人たちは心をかたくなにして、信じようとせず、会衆の前でこの道をあしざまに言ったので、彼は弟子たちを引き連れて、その人たちから離れ、ツラノの講堂で毎日論じた。
27565 44 19 10 それが二年間も続いたので、アジヤに住んでいる者は、ユダヤ人もギリシヤ人も皆、主の言を聞いた。
27566 44 19 11 神は、パウロの手によって、異常な力あるわざを次々になされた。
27567 44 19 12 たとえば、人々が、彼の身につけている手ぬぐいや前掛けを取って病人にあてると、その病気が除かれ、悪霊が出て行くのであった。
27568 44 19 13 そこで、ユダヤ人のまじない師で、遍歴している者たちが、悪霊につかれている者にむかって、主イエスの名をとなえ、「パウロの宣べ伝えているイエスによって命じる。出て行け」と、ためしに言ってみた。
27569 44 19 14 ユダヤの祭司長スケワという者の七人のむすこたちも、そんなことをしていた。
27570 44 19 15 すると悪霊がこれに対して言った、「イエスなら自分は知っている。パウロもわかっている。だが、おまえたちは、いったい何者だ」。
27571 44 19 16 そして、悪霊につかれている人が、彼らに飛びかかり、みんなを押えつけて負かしたので、彼らは傷を負ったまま裸になって、その家を逃げ出した。
27572 44 19 17 このことがエペソに住むすべてのユダヤ人やギリシヤ人に知れわたって、みんな恐怖に襲われ、そして、主イエスの名があがめられた。
27573 44 19 18 また信者になった者が大ぜいきて、自分の行為を打ちあけて告白した。
27574 44 19 19 それから、魔術を行っていた多くの者が、魔術の本を持ち出してきては、みんなの前で焼き捨てた。その値段を総計したところ、銀五万にも上ることがわかった。
27575 44 19 20 このようにして、主の言はますます盛んにひろまり、また力を増し加えていった。
27576 44 19 21 これらの事があった後、パウロは御霊に感じて、マケドニヤ、アカヤをとおって、エルサレムへ行く決心をした。そして言った、「わたしは、そこに行ったのち、ぜひローマをも見なければならない」。
27577 44 19 22 そこで、自分に仕えている者の中から、テモテとエラストとのふたりを、まずマケドニヤに送り出し、パウロ自身は、なおしばらくアジヤにとどまった。
27578 44 19 23 そのころ、この道について容易ならぬ騒動が起った。
27579 44 19 24 そのいきさつは、こうである。デメテリオという銀細工人が、銀でアルテミス神殿の模型を造って、職人たちに少なからぬ利益を得させていた。
27580 44 19 25 この男がその職人たちや、同類の仕事をしていた者たちを集めて言った、「諸君、われわれがこの仕事で、金もうけをしていることは、ご承知のとおりだ。
27581 44 19 26 しかるに、諸君の見聞きしているように、あのパウロが、手で造られたものは神様ではないなどと言って、エペソばかりか、ほとんどアジヤ全体にわたって、大ぜいの人々を説きつけて誤らせた。
27582 44 19 27 これでは、お互の仕事に悪評が立つおそれがあるばかりか、大女神アルテミスの宮も軽んじられ、ひいては全アジヤ、いや全世界が拝んでいるこの大女神のご威光さえも、消えてしまいそうである」。
27583 44 19 28 これを聞くと、人々は怒りに燃え、大声で「大いなるかな、エペソ人のアルテミス」と叫びつづけた。
27584 44 19 29 そして、町中が大混乱に陥り、人々はパウロの道連れであるマケドニヤ人ガイオとアリスタルコとを捕えて、いっせいに劇場へなだれ込んだ。
27585 44 19 30 パウロは群衆の中にはいって行こうとしたが、弟子たちがそれをさせなかった。
27586 44 19 31 アジヤ州の議員で、パウロの友人であった人たちも、彼に使をよこして、劇場にはいって行かないようにと、しきりに頼んだ。
27587 44 19 32 中では、集会が混乱に陥ってしまって、ある者はこのことを、ほかの者はあのことを、どなりつづけていたので、大多数の者は、なんのために集まったのかも、わからないでいた。
27588 44 19 33 そこで、ユダヤ人たちが、前に押し出したアレキサンデルなる者を、群衆の中のある人たちが促したため、彼は手を振って、人々に弁明を試みようとした。
27589 44 19 34 ところが、彼がユダヤ人だとわかると、みんなの者がいっせいに「大いなるかな、エペソ人のアルテミス」と二時間ばかりも叫びつづけた。
27590 44 19 35 ついに、市の書記役が群衆を押し静めて言った、「エペソの諸君、エペソ市が大女神アルテミスと、天くだったご神体との守護役であることを知らない者が、ひとりでもいるだろうか。
27591 44 19 36 これは否定のできない事実であるから、諸君はよろしく静かにしているべきで、乱暴な行動は、いっさいしてはならない。
27592 44 19 37 諸君はこの人たちをここにひっぱってきたが、彼らは宮を荒す者でも、われわれの女神をそしる者でもない。
27593 44 19 38 だから、もしデメテリオなりその職人仲間なりが、だれかに対して訴え事があるなら、裁判の日はあるし、総督もいるのだから、それぞれ訴え出るがよい。
27594 44 19 39 しかし、何かもっと要求したい事があれば、それは正式の議会で解決してもらうべきだ。
27595 44 19 40 きょうの事件については、この騒ぎを弁護できるような理由が全くないのだから、われわれは治安をみだす罪に問われるおそれがある」。
27596 44 19 41 こう言って、彼はこの集会を解散させた。
27597 44 20 1 騒ぎがやんだ後、パウロは弟子たちを呼び集めて激励を与えた上、別れのあいさつを述べ、マケドニヤへ向かって出発した。
27598 44 20 2 そして、その地方をとおり、多くの言葉で人々を励ましたのち、ギリシヤにきた。
27599 44 20 3 彼はそこで三か月を過ごした。それからシリヤへ向かって、船出しようとしていた矢先、彼に対するユダヤ人の陰謀が起ったので、マケドニヤを経由して帰ることに決した。
27600 44 20 4 プロの子であるエペソ人ソパテロ、テサロニケ人アリスタルコとセクンド、デルベ人ガイオ、それからテモテ、またアジヤ人テキコとトロピモがパウロの同行者であった。
27601 44 20 5 この人たちは先発して、トロアスでわたしたちを待っていた。
27602 44 20 6 わたしたちは、除酵祭が終ったのちに、ピリピから出帆し、五日かかってトロアスに到着して、彼らと落ち合い、そこに七日間滞在した。
27603 44 20 7 週の初めの日に、わたしたちがパンをさくために集まった時、パウロは翌日出発することにしていたので、しきりに人々と語り合い、夜中まで語りつづけた。
27604 44 20 8 わたしたちが集まっていた屋上の間には、あかりがたくさんともしてあった。
27605 44 20 9 ユテコという若者が窓に腰をかけていたところ、パウロの話がながながと続くので、ひどく眠けがさしてきて、とうとうぐっすり寝入ってしまい、三階から下に落ちた。抱き起してみたら、もう死んでいた。
27606 44 20 10 そこでパウロは降りてきて、若者の上に身をかがめ、彼を抱きあげて、「騒ぐことはない。まだ命がある」と言った。
27607 44 20 11 そして、また上がって行って、パンをさいて食べてから、明けがたまで長いあいだ人々と語り合って、ついに出発した。
27608 44 20 12 人々は生きかえった若者を連れかえり、ひとかたならず慰められた。
27609 44 20 13 さて、わたしたちは先に舟に乗り込み、アソスへ向かって出帆した。そこからパウロを舟に乗せて行くことにしていた。彼だけは陸路をとることに決めていたからである。
27610 44 20 14 パウロがアソスで、わたしたちと落ち合った時、わたしたちは彼を舟に乗せてミテレネに行った。
27611 44 20 15 そこから出帆して、翌日キヨスの沖合にいたり、次の日にサモスに寄り、その翌日ミレトに着いた。
27612 44 20 16 それは、パウロがアジヤで時間をとられないため、エペソには寄らないで続航することに決めていたからである。彼は、できればペンテコステの日には、エルサレムに着いていたかったので、旅を急いだわけである。
27613 44 20 17 そこでパウロは、ミレトからエペソに使をやって、教会の長老たちを呼び寄せた。
27614 44 20 18 そして、彼のところに寄り集まってきた時、彼らに言った。
27615 44 20 19 すなわち、謙遜の限りをつくし、涙を流し、ユダヤ人の陰謀によってわたしの身に及んだ数々の試練の中にあって、主に仕えてきた。
27616 44 20 20 また、あなたがたの益になることは、公衆の前でも、また家々でも、すべてあますところなく話して聞かせ、また教え、
27617 44 20 21 ユダヤ人にもギリシヤ人にも、神に対する悔改めと、わたしたちの主イエスに対する信仰とを、強く勧めてきたのである。
27618 44 20 22 今や、わたしは御霊に迫られてエルサレムへ行く。あの都で、どんな事がわたしの身にふりかかって来るか、わたしにはわからない。
27619 44 20 23 ただ、聖霊が至るところの町々で、わたしにはっきり告げているのは、投獄と患難とが、わたしを待ちうけているということだ。
27620 44 20 24 しかし、わたしは自分の行程を走り終え、主イエスから賜わった、神のめぐみの福音をあかしする任務を果し得さえしたら、このいのちは自分にとって、少しも惜しいとは思わない。
27621 44 20 25 わたしはいま信じている、あなたがたの間を歩き回って御国を宣べ伝えたこのわたしの顔を、みんなが今後二度と見ることはあるまい。
27622 44 20 26 だから、きょう、この日にあなたがたに断言しておく。わたしは、すべての人の血について、なんら責任がない。
27623 44 20 27 神のみ旨を皆あますところなく、あなたがたに伝えておいたからである。
27624 44 20 28 どうか、あなたがた自身に気をつけ、また、すべての群れに気をくばっていただきたい。聖霊は、神が御子の血であがない取られた神の教会を牧させるために、あなたがたをその群れの監督者にお立てになったのである。
27625 44 20 29 わたしが去った後、狂暴なおおかみが、あなたがたの中にはいり込んできて、容赦なく群れを荒すようになることを、わたしは知っている。
27626 44 20 30 また、あなたがた自身の中からも、いろいろ曲ったことを言って、弟子たちを自分の方に、ひっぱり込もうとする者らが起るであろう。
27627 44 20 31 だから、目をさましていなさい。そして、わたしが三年の間、夜も昼も涙をもって、あなたがたひとりびとりを絶えずさとしてきたことを、忘れないでほしい。
27628 44 20 32 今わたしは、主とその恵みの言とに、あなたがたをゆだねる。御言には、あなたがたの徳をたて、聖別されたすべての人々と共に、御国をつがせる力がある。
27629 44 20 33 わたしは、人の金や銀や衣服をほしがったことはない。
27630 44 20 34 あなたがた自身が知っているとおり、わたしのこの両手は、自分の生活のためにも、また一緒にいた人たちのためにも、働いてきたのだ。
27631 44 20 35 わたしは、あなたがたもこのように働いて、弱い者を助けなければならないこと、また『受けるよりは与える方が、さいわいである』と言われた主イエスの言葉を記憶しているべきことを、万事について教え示したのである」。
27632 44 20 36 こう言って、パウロは一同と共にひざまずいて祈った。
27633 44 20 37 みんなの者は、はげしく泣き悲しみ、パウロの首を抱いて、幾度も接吻し、
27634 44 20 38 もう二度と自分の顔を見ることはあるまいと彼が言ったので、特に心を痛めた。それから彼を舟まで見送った。
27635 44 21 1 さて、わたしたちは人々と別れて船出してから、コスに直航し、次の日はロドスに、そこからパタラに着いた。
27636 44 21 2 ここでピニケ行きの舟を見つけたので、それに乗り込んで出帆した。
27637 44 21 3 やがてクプロが見えてきたが、それを左手にして通りすぎ、シリヤへ航行をつづけ、ツロに入港した。ここで積荷が陸上げされることになっていたからである。
27638 44 21 4 わたしたちは、弟子たちを捜し出して、そこに七日間泊まった。ところが彼らは、御霊の示しを受けて、エルサレムには上って行かないようにと、しきりにパウロに注意した。
27639 44 21 5 しかし、滞在期間が終った時、わたしたちはまた旅立つことにしたので、みんなの者は、妻や子供を引き連れて、町はずれまで、わたしたちを見送りにきてくれた。そこで、共に海岸にひざまずいて祈り、
27640 44 21 6 互に別れを告げた。それから、わたしたちは舟に乗り込み、彼らはそれぞれ自分の家に帰った。
27641 44 21 7 わたしたちは、ツロからの航行を終ってトレマイに着き、そこの兄弟たちにあいさつをし、彼らのところに一日滞在した。
27642 44 21 8 翌日そこをたって、カイザリヤに着き、かの七人のひとりである伝道者ピリポの家に行き、そこに泊まった。
27643 44 21 9 この人に四人の娘があったが、いずれも処女であって、預言をしていた。
27644 44 21 10 幾日か滞在している間に、アガボという預言者がユダヤから下ってきた。
27645 44 21 11 そして、わたしたちのところにきて、パウロの帯を取り、それで自分の手足を縛って言った、「聖霊がこうお告げになっている、『この帯の持ち主を、ユダヤ人たちがエルサレムでこのように縛って、異邦人の手に渡すであろう』」。
27646 44 21 12 わたしたちはこれを聞いて、土地の人たちと一緒になって、エルサレムには上って行かないようにと、パウロに願い続けた。
27647 44 21 13 その時パウロは答えた、「あなたがたは、泣いたり、わたしの心をくじいたりして、いったい、どうしようとするのか。わたしは、主イエスの名のためなら、エルサレムで縛られるだけでなく、死ぬことをも覚悟しているのだ」。
27648 44 21 14 こうして、パウロが勧告を聞きいれてくれないので、わたしたちは「主のみこころが行われますように」と言っただけで、それ以上、何も言わなかった。
27649 44 21 15 数日後、わたしたちは旅装を整えてエルサレムへ上って行った。
27650 44 21 16 カイザリヤの弟子たちも数人、わたしたちと同行して、古くからの弟子であるクプロ人マナソンの家に案内してくれた。わたしたちはその家に泊まることになっていたのである。
27651 44 21 17 わたしたちがエルサレムに到着すると、兄弟たちは喜んで迎えてくれた。
27652 44 21 18 翌日パウロはわたしたちを連れて、ヤコブを訪問しに行った。そこに長老たちがみな集まっていた。
27653 44 21 19 パウロは彼らにあいさつをした後、神が自分の働きをとおして、異邦人の間になさった事どもを一々説明した。
27654 44 21 20 一同はこれを聞いて神をほめたたえ、そして彼に言った、「兄弟よ、ご承知のように、ユダヤ人の中で信者になった者が、数万にものぼっているが、みんな律法に熱心な人たちである。
27655 44 21 21 ところが、彼らが伝え聞いているところによれば、あなたは異邦人の中にいるユダヤ人一同に対して、子供に割礼を施すな、またユダヤの慣例にしたがうなと言って、モーセにそむくことを教えている、ということである。
27656 44 21 22 どうしたらよいか。あなたがここにきていることは、彼らもきっと聞き込むに違いない。
27657 44 21 23 ついては、今わたしたちが言うとおりのことをしなさい。わたしたちの中に、誓願を立てている者が四人いる。
27658 44 21 24 この人たちを連れて行って、彼らと共にきよめを行い、また彼らの頭をそる費用を引き受けてやりなさい。そうすれば、あなたについて、うわさされていることは、根も葉もないことで、あなたは律法を守って、正しい生活をしていることが、みんなにわかるであろう。
27659 44 21 25 異邦人で信者になった人たちには、すでに手紙で、偶像に供えたものと、血と、絞め殺したものと、不品行とを、慎むようにとの決議が、わたしたちから知らせてある」。
27660 44 21 26 そこでパウロは、その次の日に四人の者を連れて、彼らと共にきよめを受けてから宮にはいった。そしてきよめの期間が終って、ひとりびとりのために供え物をささげる時を報告しておいた。
27661 44 21 27 七日の期間が終ろうとしていた時、アジヤからきたユダヤ人たちが、宮の内でパウロを見かけて、群衆全体を煽動しはじめ、パウロに手をかけて叫び立てた、
27662 44 21 28 「イスラエルの人々よ、加勢にきてくれ。この人は、いたるところで民と律法とこの場所にそむくことを、みんなに教えている。その上に、ギリシヤ人を宮の内に連れ込んで、この神聖な場所を汚したのだ」。
27663 44 21 29 彼らは、前にエペソ人トロピモが、パウロと一緒に町を歩いていたのを見かけて、その人をパウロが宮の内に連れ込んだのだと思ったのである。
27664 44 21 30 そこで、市全体が騒ぎ出し、民衆が駆け集まってきて、パウロを捕え、宮の外に引きずり出した。そして、すぐそのあとに宮の門が閉ざされた。
27665 44 21 31 彼らがパウロを殺そうとしていた時に、エルサレム全体が混乱状態に陥っているとの情報が、守備隊の千卒長にとどいた。
27666 44 21 32 そこで、彼はさっそく、兵卒や百卒長たちを率いて、その場に駆けつけた。人々は千卒長や兵卒たちを見て、パウロを打ちたたくのをやめた。
27667 44 21 33 千卒長は近寄ってきてパウロを捕え、彼を二重の鎖で縛っておくように命じた上、パウロは何者か、また何をしたのか、と尋ねた。
27668 44 21 34 しかし、群衆がそれぞれ違ったことを叫びつづけるため、騒がしくて、確かなことがわからないので、彼はパウロを兵営に連れて行くように命じた。
27669 44 21 35 パウロが階段にさしかかった時には、群衆の暴行を避けるため、兵卒たちにかつがれて行くという始末であった。
27670 44 21 36 大ぜいの民衆が「あれをやっつけてしまえ」と叫びながら、ついてきたからである。
27671 44 21 37 パウロが兵営の中に連れて行かれようとした時、千卒長に、「ひと言あなたにお話してもよろしいですか」と尋ねると、千卒長が言った、「おまえはギリシヤ語が話せるのか。
27672 44 21 38 では、もしかおまえは、先ごろ反乱を起した後、四千人の刺客を引き連れて荒野へ逃げて行ったあのエジプト人ではないのか」。
27673 44 21 39 パウロは答えた、「わたしはタルソ生れのユダヤ人で、キリキヤのれっきとした都市の市民です。お願いですが、民衆に話をさせて下さい」。
27674 44 21 40 千卒長が許してくれたので、パウロは階段の上に立ち、民衆にむかって手を振った。すると、一同がすっかり静粛になったので、パウロはヘブル語で話し出した。
27675 44 22 1 「兄弟たち、父たちよ、いま申し上げるわたしの弁明を聞いていただきたい」。
27676 44 22 2 パウロが、ヘブル語でこう語りかけるのを聞いて、人々はますます静粛になった。
27677 44 22 3 そこで彼は言葉をついで言った、「わたしはキリキヤのタルソで生れたユダヤ人であるが、この都で育てられ、ガマリエルのひざもとで先祖伝来の律法について、きびしい薫陶を受け、今日の皆さんと同じく神に対して熱心な者であった。
27678 44 22 4 そして、この道を迫害し、男であれ女であれ、縛りあげて獄に投じ、彼らを死に至らせた。
27679 44 22 5 このことは、大祭司も長老たち一同も、証明するところである。さらにわたしは、この人たちからダマスコの同志たちへあてた手紙をもらって、その地にいる者たちを縛りあげ、エルサレムにひっぱってきて、処罰するため、出かけて行った。
27680 44 22 6 旅をつづけてダマスコの近くにきた時に、真昼ごろ、突然、つよい光が天からわたしをめぐり照した。
27681 44 22 7 わたしは地に倒れた。そして、『サウロ、サウロ、なぜわたしを迫害するのか』と、呼びかける声を聞いた。
27682 44 22 8 これに対してわたしは、『主よ、あなたはどなたですか』と言った。すると、その声が、『わたしは、あなたが迫害しているナザレ人イエスである』と答えた。
27683 44 22 9 わたしと一緒にいた者たちは、その光は見たが、わたしに語りかけたかたの声は聞かなかった。
27684 44 22 10 わたしが『主よ、わたしは何をしたらよいでしょうか』と尋ねたところ、主は言われた、『起きあがってダマスコに行きなさい。そうすれば、あなたがするように決めてある事が、すべてそこで告げられるであろう』。
27685 44 22 11 わたしは、光の輝きで目がくらみ、何も見えなくなっていたので、連れの者たちに手を引かれながら、ダマスコに行った。
27686 44 22 12 すると、律法に忠実で、ダマスコ在住のユダヤ人全体に評判のよいアナニヤという人が、
27687 44 22 13 わたしのところにきて、そばに立ち、『兄弟サウロよ、見えるようになりなさい』と言った。するとその瞬間に、わたしの目が開いて、彼の姿が見えた。
27688 44 22 14 彼は言った、『わたしたちの先祖の神が、あなたを選んでみ旨を知らせ、かの義人を見させ、その口から声をお聞かせになった。
27689 44 22 15 それはあなたが、その見聞きした事につき、すべての人に対して、彼の証人になるためである。
27690 44 22 16 そこで今、なんのためらうことがあろうか。すぐ立って、み名をとなえてバプテスマを受け、あなたの罪を洗い落しなさい』。
27691 44 22 17 それからわたしは、エルサレムに帰って宮で祈っているうちに、夢うつつになり、
27692 44 22 18 主にまみえたが、主は言われた、『急いで、すぐにエルサレムを出て行きなさい。わたしについてのあなたのあかしを、人々が受けいれないから』。
27693 44 22 19 そこで、わたしが言った、『主よ、彼らは、わたしがいたるところの会堂で、あなたを信じる人々を獄に投じたり、むち打ったりしていたことを、知っています。
27694 44 22 20 また、あなたの証人ステパノの血が流された時も、わたしは立ち合っていてそれに賛成し、また彼を殺した人たちの上着の番をしていたのです』。
27695 44 22 21 すると、主がわたしに言われた、『行きなさい。わたしが、あなたを遠く異邦の民へつかわすのだ』」。
27696 44 22 22 彼の言葉をここまで聞いていた人々は、このとき、声を張りあげて言った、「こんな男は地上から取り除いてしまえ。生かしおくべきではない」。
27697 44 22 23 人々がこうわめき立てて、空中に上着を投げ、ちりをまき散らす始末であったので、
27698 44 22 24 千卒長はパウロを兵営に引き入れるように命じ、どういうわけで、彼に対してこんなにわめき立てているのかを確かめるため、彼をむちの拷問にかけて、取り調べるように言いわたした。
27699 44 22 25 彼らがむちを当てるため、彼を縛りつけていた時、パウロはそばに立っている百卒長に言った、「ローマの市民たる者を、裁判にかけもしないで、むち打ってよいのか」。
27700 44 22 26 百卒長はこれを聞き、千卒長のところに行って報告し、そして言った、「どうなさいますか。あの人はローマの市民なのです」。
27701 44 22 27 そこで、千卒長がパウロのところにきて言った、「わたしに言ってくれ。あなたはローマの市民なのか」。パウロは「そうです」と言った。
27702 44 22 28 これに対して千卒長が言った、「わたしはこの市民権を、多額の金で買い取ったのだ」。するとパウロは言った、「わたしは生れながらの市民です」。
27703 44 22 29 そこで、パウロを取り調べようとしていた人たちは、ただちに彼から身を引いた。千卒長も、パウロがローマの市民であること、また、そういう人を縛っていたことがわかって、恐れた。
27704 44 22 30 翌日、彼は、ユダヤ人がなぜパウロを訴え出たのか、その真相を知ろうと思って彼を解いてやり、同時に祭司長たちと全議会とを召集させ、そこに彼を引き出して、彼らの前に立たせた。
27705 44 23 1 パウロは議会を見つめて言った、「兄弟たちよ、わたしは今日まで、神の前に、ひたすら明らかな良心にしたがって行動してきた」。
27706 44 23 2 すると、大祭司アナニヤが、パウロのそばに立っている者たちに、彼の口を打てと命じた。
27707 44 23 3 そのとき、パウロはアナニヤにむかって言った、「白く塗られた壁よ、神があなたを打つであろう。あなたは、律法にしたがって、わたしをさばくために座についているのに、律法にそむいて、わたしを打つことを命じるのか」。
27708 44 23 4 すると、そばに立っている者たちが言った、「神の大祭司に対して無礼なことを言うのか」。
27709 44 23 5 パウロは言った、「兄弟たちよ、彼が大祭司だとは知らなかった。聖書に『民のかしらを悪く言ってはいけない』と、書いてあるのだった」。
27710 44 23 6 パウロは、議員の一部がサドカイ人であり、一部はパリサイ人であるのを見て、議会の中で声を高めて言った、「兄弟たちよ、わたしはパリサイ人であり、パリサイ人の子である。わたしは、死人の復活の望みをいだいていることで、裁判を受けているのである」。
27711 44 23 7 彼がこう言ったところ、パリサイ人とサドカイ人との間に争論が生じ、会衆が相分れた。
27712 44 23 8 元来、サドカイ人は、復活とか天使とか霊とかは、いっさい存在しないと言い、パリサイ人は、それらは、みな存在すると主張している。
27713 44 23 9 そこで、大騒ぎとなった。パリサイ派のある律法学者たちが立って、強く主張して言った、「われわれは、この人には何も悪いことがないと思う。あるいは、霊か天使かが、彼に告げたのかも知れない」。
27714 44 23 10 こうして、争論が激しくなったので、千卒長は、パウロが彼らに引き裂かれるのを気づかって、兵卒どもに、降りて行ってパウロを彼らの中から力づくで引き出し、兵営に連れて来るように、命じた。
27715 44 23 11 その夜、主がパウロに臨んで言われた、「しっかりせよ。あなたは、エルサレムでわたしのことをあかししたように、ローマでもあかしをしなくてはならない」。
27716 44 23 12 夜が明けると、ユダヤ人らは申し合わせをして、パウロを殺すまでは飲食をいっさい断つと、誓い合った。
27717 44 23 13 この陰謀に加わった者は、四十人あまりであった。
27718 44 23 14 彼らは、祭司長たちや長老たちのところに行って、こう言った。「われわれは、パウロを殺すまでは何も食べないと、堅く誓い合いました。
27719 44 23 15 ついては、あなたがたは議会と組んで、彼のことでなお詳しく取調べをするように見せかけ、パウロをあなたがたのところに連れ出すように、千卒長に頼んで下さい。われわれとしては、パウロがそこにこないうちに殺してしまう手はずをしています」。
27720 44 23 16 ところが、パウロの姉妹の子が、この待伏せのことを耳にし、兵営にはいって行って、パウロにそれを知らせた。
27721 44 23 17 そこでパウロは、百卒長のひとりを呼んで言った、「この若者を千卒長のところに連れて行ってください。何か報告することがあるようですから」。
27722 44 23 18 この百卒長は若者を連れて行き、千卒長に引きあわせて言った、「囚人のパウロが、この若者があなたに話したいことがあるので、あなたのところに連れて行ってくれるようにと、わたしを呼んで頼みました」。
27723 44 23 19 そこで千卒長は、若者の手を取り、人のいないところへ連れて行って尋ねた、「わたしに話したいことというのは、何か」。
27724 44 23 20 若者が言った、「ユダヤ人たちが、パウロのことをもっと詳しく取調べをすると見せかけて、あす議会に彼を連れ出すように、あなたに頼むことに決めています。
27725 44 23 21 どうぞ、彼らの頼みを取り上げないで下さい。四十人あまりの者が、パウロを待伏せしているのです。彼らは、パウロを殺すまでは飲食をいっさい断つと、堅く誓い合っています。そして、いま手はずをととのえて、あなたの許可を待っているところなのです」。
27726 44 23 22 そこで千卒長は、「このことをわたしに知らせたことは、だれにも口外するな」と命じて、若者を帰した。
27727 44 23 23 それから彼は、百卒長ふたりを呼んで言った、「歩兵二百名、騎兵七十名、槍兵二百名を、カイザリヤに向け出発できるように、今夜九時までに用意せよ。
27728 44 23 24 また、パウロを乗せるために馬を用意して、彼を総督ペリクスのもとへ無事に連れて行け」。
27729 44 23 25 さらに彼は、次のような文面の手紙を書いた。
27730 44 23 26 「クラウデオ・ルシヤ、つつしんで総督ペリクス閣下の平安を祈ります。
27731 44 23 27 本人のパウロが、ユダヤ人らに捕えられ、まさに殺されようとしていたのを、彼のローマ市民であることを知ったので、わたしは兵卒たちを率いて行って、彼を救い出しました。
27732 44 23 28 それから、彼が訴えられた理由を知ろうと思い、彼を議会に連れて行きました。
27733 44 23 29 ところが、彼はユダヤ人の律法の問題で訴えられたものであり、なんら死刑または投獄に当る罪のないことがわかりました。
27734 44 23 30 しかし、この人に対して陰謀がめぐらされているとの報告がありましたので、わたしは取りあえず、彼を閣下のもとにお送りすることにし、訴える者たちには、閣下の前で、彼に対する申立てをするようにと、命じておきました」。
27735 44 23 31 そこで歩兵たちは、命じられたとおりパウロを引き取って、夜の間にアンテパトリスまで連れて行き、
27736 44 23 32 翌日は、騎兵たちにパウロを護送させることにして、兵営に帰って行った。
27737 44 23 33 騎兵たちは、カイザリヤに着くと、手紙を総督に手渡し、さらにパウロを彼に引きあわせた。
27738 44 23 34 総督は手紙を読んでから、パウロに、どの州の者かと尋ね、キリキヤの出だと知って、
27739 44 23 35 「訴え人たちがきた時に、おまえを調べることにする」と言った。そして、ヘロデの官邸に彼を守っておくように命じた。
27740 44 24 1 五日の後、大祭司アナニヤは、長老数名と、テルトロという弁護人とを連れて下り、総督にパウロを訴え出た。
27741 44 24 2 パウロが呼び出されたので、テルトロは論告を始めた。
27742 44 24 3 あらゆる方面に、またいたるところで改善されていることは、わたしたちの感謝してやまないところであります。
27743 44 24 4 しかし、ご迷惑をかけないように、くどくどと述べずに、手短かに申し上げますから、どうぞ、忍んでお聞き取りのほど、お願いいたします。
27744 44 24 5 さて、この男は、疫病のような人間で、世界中のすべてのユダヤ人の中に騒ぎを起している者であり、また、ナザレ人らの異端のかしらであります。
27745 44 24 6 この者が宮までも汚そうとしていたので、わたしたちは彼を捕縛したのです。〔そして、律法にしたがって、さばこうとしていたところ、
27746 44 24 7 千卒長ルシヤが干渉して、彼を無理にわたしたちの手から引き離してしまい、
27747 44 24 8 彼を訴えた人たちには、閣下のところに来るようにと命じました。〕それで、閣下ご自身でお調べになれば、わたしたちが彼を訴え出た理由が、全部おわかりになるでしょう」。
27748 44 24 9 ユダヤ人たちも、この訴えに同調して、全くそのとおりだと言った。
27749 44 24 10 そこで、総督が合図をして発言を促したので、パウロは答弁して言った。
27750 44 24 11 お調べになればわかるはずですが、わたしが礼拝をしにエルサレムに上ってから、まだ十二日そこそこにしかなりません。
27751 44 24 12 そして、宮の内でも、会堂内でも、あるいは市内でも、わたしがだれかと争論したり、群衆を煽動したりするのを見たものはありませんし、
27752 44 24 13 今わたしを訴え出ていることについて、閣下の前に、その証拠をあげうるものはありません。
27753 44 24 14 ただ、わたしはこの事は認めます。わたしは、彼らが異端だとしている道にしたがって、わたしたちの先祖の神に仕え、律法の教えるところ、また預言者の書に書いてあることを、ことごとく信じ、
27754 44 24 15 また、正しい者も正しくない者も、やがてよみがえるとの希望を、神を仰いでいだいているものです。この希望は、彼ら自身も持っているのです。
27755 44 24 16 わたしはまた、神に対しまた人に対して、良心に責められることのないように、常に努めています。
27756 44 24 17 さてわたしは、幾年ぶりかに帰ってきて、同胞に施しをし、また、供え物をしていました。
27757 44 24 18 そのとき、彼らはわたしが宮できよめを行っているのを見ただけであって、群衆もいず、騒動もなかったのです。
27758 44 24 19 ところが、アジヤからきた数人のユダヤ人が――彼らが、わたしに対して、何かとがめ立てをすることがあったなら、よろしく閣下の前にきて、訴えるべきでした。
27759 44 24 20 あるいは、何かわたしに不正なことがあったなら、わたしが議会の前に立っていた時、彼らみずから、それを指摘すべきでした。
27760 44 24 21 ただ、わたしは、彼らの中に立って、『わたしは、死人のよみがえりのことで、きょう、あなたがたの前でさばきを受けているのだ』と叫んだだけのことです」。
27761 44 24 22 ここでペリクスは、この道のことを相当わきまえていたので、「千卒長ルシヤが下って来るのを待って、おまえたちの事件を判決することにする」と言って、裁判を延期した。
27762 44 24 23 そして百卒長に、パウロを監禁するように、しかし彼を寛大に取り扱い、友人らが世話をするのを止めないようにと、命じた。
27763 44 24 24 数日たってから、ペリクスは、ユダヤ人である妻ドルシラと一緒にきて、パウロを呼び出し、キリスト・イエスに対する信仰のことを、彼から聞いた。
27764 44 24 25 そこで、パウロが、正義、節制、未来の審判などについて論じていると、ペリクスは不安を感じてきて、言った、「きょうはこれで帰るがよい。また、よい機会を得たら、呼び出すことにする」。
27765 44 24 26 彼は、それと同時に、パウロから金をもらいたい下ごころがあったので、たびたびパウロを呼び出しては語り合った。
27766 44 24 27 さて、二か年たった時、ポルキオ・フェストが、ペリクスと交代して任についた。ペリクスは、ユダヤ人の歓心を買おうと思って、パウロを監禁したままにしておいた。
27767 44 25 1 さて、フェストは、任地に着いてから三日の後、カイザリヤからエルサレムに上ったところ、
27768 44 25 2 祭司長たちやユダヤ人の重立った者たちが、パウロを訴え出て、
27769 44 25 3 彼をエルサレムに呼び出すよう取り計らっていただきたいと、しきりに願った。彼らは途中で待ち伏せして、彼を殺す考えであった。
27770 44 25 4 ところがフェストは、パウロがカイザリヤに監禁してあり、自分もすぐそこへ帰ることになっていると答え、
27771 44 25 5 そして言った、「では、もしあの男に何か不都合なことがあるなら、おまえたちのうちの有力者らが、わたしと一緒に下って行って、訴えるがよかろう」。
27772 44 25 6 フェストは、彼らのあいだに八日か十日ほど滞在した後、カイザリヤに下って行き、その翌日、裁判の席について、パウロを引き出すように命じた。
27773 44 25 7 パウロが姿をあらわすと、エルサレムから下ってきたユダヤ人たちが、彼を取りかこみ、彼に対してさまざまの重い罪状を申し立てたが、いずれもその証拠をあげることはできなかった。
27774 44 25 8 パウロは「わたしは、ユダヤ人の律法に対しても、宮に対しても、またカイザルに対しても、なんら罪を犯したことはない」と弁明した。
27775 44 25 9 ところが、フェストはユダヤ人の歓心を買おうと思って、パウロにむかって言った、「おまえはエルサレムに上り、この事件に関し、わたしからそこで裁判を受けることを承知するか」。
27776 44 25 10 パウロは言った、「わたしは今、カイザルの法廷に立っています。わたしはこの法廷で裁判されるべきです。よくご承知のとおり、わたしはユダヤ人たちに、何も悪いことをしてはいません。
27777 44 25 11 もしわたしが悪いことをし、死に当るようなことをしているのなら、死を免れようとはしません。しかし、もし彼らの訴えることに、なんの根拠もないとすれば、だれもわたしを彼らに引き渡す権利はありません。わたしはカイザルに上訴します」。
27778 44 25 12 そこでフェストは、陪席の者たちと協議したうえ答えた、「おまえはカイザルに上訴を申し出た。カイザルのところに行くがよい」。
27779 44 25 13 数日たった後、アグリッパ王とベルニケとが、フェストに敬意を表するため、カイザリヤにきた。
27780 44 25 14 ふたりは、そこに何日間も滞在していたので、フェストは、パウロのことを王に話して言った、「ここに、ペリクスが囚人として残して行ったひとりの男がいる。
27781 44 25 15 わたしがエルサレムに行った時、この男のことを、祭司長たちやユダヤ人の長老たちが、わたしに報告し、彼を罪に定めるようにと要求した。
27782 44 25 16 そこでわたしは、彼らに答えた、『訴えられた者が、訴えた者の前に立って、告訴に対し弁明する機会を与えられない前に、その人を見放してしまうのは、ローマ人の慣例にはないことである』。
27783 44 25 17 それで、彼らがここに集まってきた時、わたしは時をうつさず、次の日に裁判の席について、その男を引き出させた。
27784 44 25 18 訴えた者たちは立ち上がったが、わたしが推測していたような悪事は、彼について何一つ申し立てはしなかった。
27785 44 25 19 ただ、彼と争い合っているのは、彼ら自身の宗教に関し、また、死んでしまったのに生きているとパウロが主張しているイエスなる者に関する問題に過ぎない。
27786 44 25 20 これらの問題を、どう取り扱ってよいかわからなかったので、わたしは彼に、『エルサレムに行って、これらの問題について、そこでさばいてもらいたくはないか』と尋ねてみた。
27787 44 25 21 ところがパウロは、皇帝の判決を受ける時まで、このまま自分をとどめておいてほしいと言うので、カイザルに彼を送りとどける時までとどめておくようにと、命じておいた」。
27788 44 25 22 そこで、アグリッパがフェストに「わたしも、その人の言い分を聞いて見たい」と言ったので、フェストは、「では、あす彼から聞きとるようにしてあげよう」と答えた。
27789 44 25 23 翌日、アグリッパとベルニケとは、大いに威儀をととのえて、千卒長たちや市の重立った人たちと共に、引見所にはいってきた。すると、フェストの命によって、パウロがそこに引き出された。
27790 44 25 24 そこで、フェストが言った、「アグリッパ王、ならびにご臨席の諸君。ごらんになっているこの人物は、ユダヤ人たちがこぞって、エルサレムにおいても、また、この地においても、これ以上、生かしておくべきでないと叫んで、わたしに訴え出ている者である。
27791 44 25 25 しかし、彼は死に当ることは何もしていないと、わたしは見ているのだが、彼自身が皇帝に上訴すると言い出したので、彼をそちらへ送ることに決めた。
27792 44 25 26 ところが、彼について、主君に書きおくる確かなものが何もないので、わたしは、彼を諸君の前に、特に、アグリッパ王よ、あなたの前に引き出して、取調べをしたのち、上書すべき材料を得ようと思う。
27793 44 25 27 囚人を送るのに、その告訴の理由を示さないということは、不合理だと思えるからである」。
27794 44 26 1 アグリッパはパウロに、「おまえ自身のことを話してもよい」と言った。そこでパウロは、手をさし伸べて、弁明をし始めた。
27795 44 26 2 「アグリッパ王よ、ユダヤ人たちから訴えられているすべての事に関して、きょう、あなたの前で弁明することになったのは、わたしのしあわせに思うところであります。
27796 44 26 3 あなたは、ユダヤ人のあらゆる慣例や問題を、よく知り抜いておられるかたですから、わたしの申すことを、寛大なお心で聞いていただきたいのです。
27797 44 26 4 さて、わたしは若い時代には、初めから自国民の中で、またエルサレムで過ごしたのですが、そのころのわたしの生活ぶりは、ユダヤ人がみんなよく知っているところです。
27798 44 26 5 彼らはわたしを初めから知っているので、証言しようと思えばできるのですが、わたしは、わたしたちの宗教の最も厳格な派にしたがって、パリサイ人としての生活をしていたのです。
27799 44 26 6 今わたしは、神がわたしたちの先祖に約束なさった希望をいだいているために、裁判を受けているのであります。
27800 44 26 7 わたしたちの十二の部族は、夜昼、熱心に神に仕えて、その約束を得ようと望んでいるのです。王よ、この希望のために、わたしはユダヤ人から訴えられています。
27801 44 26 8 神が死人をよみがえらせるということが、あなたがたには、どうして信じられないことと思えるのでしょうか。
27802 44 26 9 わたし自身も、以前には、ナザレ人イエスの名に逆らって反対の行動をすべきだと、思っていました。
27803 44 26 10 そしてわたしは、それをエルサレムで敢行し、祭司長たちから権限を与えられて、多くの聖徒たちを獄に閉じ込め、彼らが殺される時には、それに賛成の意を表しました。
27804 44 26 11 それから、いたるところの会堂で、しばしば彼らを罰して、無理やりに神をけがす言葉を言わせようとし、彼らに対してひどく荒れ狂い、ついに外国の町々にまで、迫害の手をのばすに至りました。
27805 44 26 12 こうして、わたしは、祭司長たちから権限と委任とを受けて、ダマスコに行ったのですが、
27806 44 26 13 王よ、その途中、真昼に、光が天からさして来るのを見ました。それは、太陽よりも、もっと光り輝いて、わたしと同行者たちとをめぐり照しました。
27807 44 26 14 わたしたちはみな地に倒れましたが、その時ヘブル語でわたしにこう呼びかける声を聞きました、『サウロ、サウロ、なぜわたしを迫害するのか。とげのあるむちをければ、傷を負うだけである』。
27808 44 26 15 そこで、わたしが『主よ、あなたはどなたですか』と尋ねると、主は言われた、『わたしは、あなたが迫害しているイエスである。
27809 44 26 16 さあ、起きあがって、自分の足で立ちなさい。わたしがあなたに現れたのは、あなたがわたしに会った事と、あなたに現れて示そうとしている事とをあかしし、これを伝える務に、あなたを任じるためである。
27810 44 26 17 わたしは、この国民と異邦人との中から、あなたを救い出し、あらためてあなたを彼らにつかわすが、
27811 44 26 18 それは、彼らの目を開き、彼らをやみから光へ、悪魔の支配から神のみもとへ帰らせ、また、彼らが罪のゆるしを得、わたしを信じる信仰によって、聖別された人々に加わるためである』。
27812 44 26 19 それですから、アグリッパ王よ、わたしは天よりの啓示にそむかず、
27813 44 26 20 まず初めにダマスコにいる人々に、それからエルサレムにいる人々、さらにユダヤ全土、ならびに異邦人たちに、悔い改めて神に立ち帰り、悔改めにふさわしいわざを行うようにと、説き勧めました。
27814 44 26 21 そのために、ユダヤ人は、わたしを宮で引き捕えて殺そうとしたのです。
27815 44 26 22 しかし、わたしは今日に至るまで神の加護を受け、このように立って、小さい者にも大きい者にもあかしをなし、預言者たちやモーセが、今後起るべきだと語ったことを、そのまま述べてきました。
27816 44 26 23 すなわち、キリストが苦難を受けること、また、死人の中から最初によみがえって、この国民と異邦人とに、光を宣べ伝えるに至ることを、あかししたのです」。
27817 44 26 24 パウロがこのように弁明をしていると、フェストは大声で言った、「パウロよ、おまえは気が狂っている。博学が、おまえを狂わせている」。
27818 44 26 25 パウロが言った、「フェスト閣下よ、わたしは気が狂ってはいません。わたしは、まじめな真実の言葉を語っているだけです。
27819 44 26 26 王はこれらのことをよく知っておられるので、王に対しても、率直に申し上げているのです。それは、片すみで行われたのではないのですから、一つとして、王が見のがされたことはないと信じます。
27820 44 26 27 アグリッパ王よ、あなたは預言者を信じますか。信じておられると思います」。
27821 44 26 28 アグリッパがパウロに言った、「おまえは少し説いただけで、わたしをクリスチャンにしようとしている」。
27822 44 26 29 パウロが言った、「説くことが少しであろうと、多くであろうと、わたしが神に祈るのは、ただあなただけでなく、きょう、わたしの言葉を聞いた人もみな、わたしのようになって下さることです。このような鎖は別ですが」。
27823 44 26 30 それから、王も総督もベルニケも、また列席の人々も、みな立ちあがった。
27824 44 26 31 退場してから、互に語り合って言った、「あの人は、死や投獄に当るようなことをしてはいない」。
27825 44 26 32 そして、アグリッパがフェストに言った、「あの人は、カイザルに上訴していなかったら、ゆるされたであろうに」。
27826 44 27 1 さて、わたしたちが、舟でイタリヤに行くことが決まった時、パウロとそのほか数人の囚人とは、近衛隊の百卒長ユリアスに託された。
27827 44 27 2 そしてわたしたちは、アジヤ沿岸の各所に寄港することになっているアドラミテオの舟に乗り込んで、出帆した。テサロニケのマケドニヤ人アリスタルコも同行した。
27828 44 27 3 次の日、シドンに入港したが、ユリアスは、パウロを親切に取り扱い、友人をおとずれてかんたいを受けることを、許した。
27829 44 27 4 それからわたしたちは、ここから船出したが、逆風にあったので、クプロの島かげを航行し、
27830 44 27 5 キリキヤとパンフリヤの沖を過ぎて、ルキヤのミラに入港した。
27831 44 27 6 そこに、イタリヤ行きのアレキサンドリヤの舟があったので、百卒長は、わたしたちをその舟に乗り込ませた。
27832 44 27 7 幾日ものあいだ、舟の進みがおそくて、わたしたちは、かろうじてクニドの沖合にきたが、風がわたしたちの行く手をはばむので、サルモネの沖、クレテの島かげを航行し、
27833 44 27 8 その岸に沿って進み、かろうじて「良き港」と呼ばれる所に着いた。その近くにラサヤの町があった。
27834 44 27 9 長い時が経過し、断食期も過ぎてしまい、すでに航海が危険な季節になったので、パウロは人々に警告して言った、
27835 44 27 10 「皆さん、わたしの見るところでは、この航海では、積荷や船体ばかりでなく、われわれの生命にも、危害と大きな損失が及ぶであろう」。
27836 44 27 11 しかし百卒長は、パウロの意見よりも、船長や船主の方を信頼した。
27837 44 27 12 なお、この港は冬を過ごすのに適しないので、大多数の者は、ここから出て、できればなんとかして、南西と北西とに面しているクレテのピニクス港に行って、そこで冬を過ごしたいと主張した。
27838 44 27 13 時に、南風が静かに吹いてきたので、彼らは、この時とばかりにいかりを上げて、クレテの岸に沿って航行した。
27839 44 27 14 すると間もなく、ユーラクロンと呼ばれる暴風が、島から吹きおろしてきた。
27840 44 27 15 そのために、舟が流されて風に逆らうことができないので、わたしたちは吹き流されるままに任せた。
27841 44 27 16 それから、クラウダという小島の陰に、はいり込んだので、わたしたちは、やっとのことで小舟を処置することができ、
27842 44 27 17 それを舟に引き上げてから、綱で船体を巻きつけた。また、スルテスの洲に乗り上げるのを恐れ、帆をおろして流れるままにした。
27843 44 27 18 わたしたちは、暴風にひどく悩まされつづけたので、次の日に、人々は積荷を捨てはじめ、
27844 44 27 19 三日目には、船具までも、てずから投げすてた。
27845 44 27 20 幾日ものあいだ、太陽も星も見えず、暴風は激しく吹きすさぶので、わたしたちの助かる最後の望みもなくなった。
27846 44 27 21 みんなの者は、長いあいだ食事もしないでいたが、その時、パウロが彼らの中に立って言った、「皆さん、あなたがたが、わたしの忠告を聞きいれて、クレテから出なかったら、このような危害や損失を被らなくてすんだはずであった。
27847 44 27 22 だが、この際、お勧めする。元気を出しなさい。舟が失われるだけで、あなたがたの中で生命を失うものは、ひとりもいないであろう。
27848 44 27 23 昨夜、わたしが仕え、また拝んでいる神からの御使が、わたしのそばに立って言った、
27849 44 27 24 『パウロよ、恐れるな。あなたは必ずカイザルの前に立たなければならない。たしかに神は、あなたと同船の者を、ことごとくあなたに賜わっている』。
27850 44 27 25 だから、皆さん、元気を出しなさい。万事はわたしに告げられたとおりに成って行くと、わたしは、神かけて信じている。
27851 44 27 26 われわれは、どこかの島に打ちあげられるに相違ない」。
27852 44 27 27 わたしたちがアドリヤ海に漂ってから十四日目の夜になった時、真夜中ごろ、水夫らはどこかの陸地に近づいたように感じた。
27853 44 27 28 そこで、水の深さを測ってみたところ、二十ひろであることがわかった。それから少し進んで、もう一度測ってみたら、十五ひろであった。
27854 44 27 29 わたしたちが、万一暗礁に乗り上げては大変だと、人々は気づかって、ともから四つのいかりを投げおろし、夜の明けるのを待ちわびていた。
27855 44 27 30 その時、水夫らが舟から逃げ出そうと思って、へさきからいかりを投げおろすと見せかけ、小舟を海におろしていたので、
27856 44 27 31 パウロは、百卒長や兵卒たちに言った、「あの人たちが、舟に残っていなければ、あなたがたは助からない」。
27857 44 27 32 そこで兵卒たちは、小舟の綱を断ち切って、その流れて行くままに任せた。
27858 44 27 33 夜が明けかけたころ、パウロは一同の者に、食事をするように勧めて言った、「あなたがたが食事もせずに、見張りを続けてから、何も食べないで、きょうが十四日目に当る。
27859 44 27 34 だから、いま食事を取ることをお勧めする。それが、あなたがたを救うことになるのだから。たしかに髪の毛ひとすじでも、あなたがたの頭から失われることはないであろう」。
27860 44 27 35 彼はこう言って、パンを取り、みんなの前で神に感謝し、それをさいて食べはじめた。
27861 44 27 36 そこで、みんなの者も元気づいて食事をした。
27862 44 27 37 舟にいたわたしたちは、合わせて二百七十六人であった。
27863 44 27 38 みんなの者は、じゅうぶんに食事をした後、穀物を海に投げすてて舟を軽くした。
27864 44 27 39 夜が明けて、どこの土地かよくわからなかったが、砂浜のある入江が見えたので、できれば、それに舟を乗り入れようということになった。
27865 44 27 40 そこで、いかりを切り離して海に捨て、同時にかじの綱をゆるめ、風に前の帆をあげて、砂浜にむかって進んだ。
27866 44 27 41 ところが、潮流の流れ合う所に突き進んだため、舟を浅瀬に乗りあげてしまって、へさきがめり込んで動かなくなり、ともの方は激浪のためにこわされた。
27867 44 27 42 兵卒たちは、囚人らが泳いで逃げるおそれがあるので、殺してしまおうと図ったが、
27868 44 27 43 百卒長は、パウロを救いたいと思うところから、その意図をしりぞけ、泳げる者はまず海に飛び込んで陸に行き、
27869 44 27 44 その他の者は、板や舟の破片に乗って行くように命じた。こうして、全部の者が上陸して救われたのであった。
27870 44 28 1 わたしたちが、こうして救われてからわかったが、これはマルタと呼ばれる島であった。
27871 44 28 2 土地の人々は、わたしたちに並々ならぬ親切をあらわしてくれた。すなわち、降りしきる雨や寒さをしのぐために、火をたいてわたしたち一同をねぎらってくれたのである。
27872 44 28 3 そのとき、パウロはひとかかえの柴をたばねて火にくべたところ、熱気のためにまむしが出てきて、彼の手にかみついた。
27873 44 28 4 土地の人々は、この生きものがパウロの手からぶら下がっているのを見て、互に言った、「この人は、きっと人殺しに違いない。海からはのがれたが、ディケーの神様が彼を生かしてはおかないのだ」。
27874 44 28 5 ところがパウロは、まむしを火の中に振り落して、なんの害も被らなかった。
27875 44 28 6 彼らは、彼が間もなくはれ上がるか、あるいは、たちまち倒れて死ぬだろうと、様子をうかがっていた。しかし、長い間うかがっていても、彼の身になんの変ったことも起らないのを見て、彼らは考えを変えて、「この人は神様だ」と言い出した。
27876 44 28 7 さて、その場所の近くに、島の首長、ポプリオという人の所有地があった。彼は、そこにわたしたちを招待して、三日のあいだ親切にもてなしてくれた。
27877 44 28 8 たまたま、ポプリオの父が赤痢をわずらい、高熱で床についていた。そこでパウロは、その人のところにはいって行って祈り、手を彼の上においていやしてやった。
27878 44 28 9 このことがあってから、ほかに病気をしている島の人たちが、ぞくぞくとやってきて、みないやされた。
27879 44 28 10 彼らはわたしたちを非常に尊敬し、出帆の時には、必要な品々を持ってきてくれた。
27880 44 28 11 三か月たった後、わたしたちは、この島に冬ごもりをしていたデオスクリの船飾りのあるアレキサンドリヤの舟で、出帆した。
27881 44 28 12 そして、シラクサに寄港して三日のあいだ停泊し、
27882 44 28 13 そこから進んでレギオンに行った。それから一日おいて、南風が吹いてきたのに乗じ、ふつか目にポテオリに着いた。
27883 44 28 14 そこで兄弟たちに会い、勧められるまま、彼らのところに七日間も滞在した。それからわたしたちは、ついにローマに到着した。
27884 44 28 15 ところが、兄弟たちは、わたしたちのことを聞いて、アピオ・ポロおよびトレス・タベルネまで出迎えてくれた。パウロは彼らに会って、神に感謝し勇み立った。
27885 44 28 16 わたしたちがローマに着いた後、パウロは、ひとりの番兵をつけられ、ひとりで住むことを許された。
27886 44 28 17 三日たってから、パウロは、重立ったユダヤ人たちを招いた。みんなの者が集まったとき、彼らに言った、「兄弟たちよ、わたしは、わが国民に対しても、あるいは先祖伝来の慣例に対しても、何一つそむく行為がなかったのに、エルサレムで囚人としてローマ人たちの手に引き渡された。
27887 44 28 18 彼らはわたしを取り調べた結果、なんら死に当る罪状もないので、わたしを釈放しようと思ったのであるが、
27888 44 28 19 ユダヤ人たちがこれに反対したため、わたしはやむを得ず、カイザルに上訴するに至ったのである。しかしわたしは、わが同胞を訴えようなどとしているのではない。
27889 44 28 20 こういうわけで、あなたがたに会って語り合いたいと願っていた。事実、わたしは、イスラエルのいだいている希望のゆえに、この鎖につながれているのである」。
27890 44 28 21 そこで彼らは、パウロに言った、「わたしたちは、ユダヤ人たちから、あなたについて、なんの文書も受け取っていないし、また、兄弟たちの中からここにきて、あなたについて不利な報告をしたり、悪口を言ったりした者もなかった。
27891 44 28 22 わたしたちは、あなたの考えていることを、直接あなたから聞くのが、正しいことだと思っている。実は、この宗派については、いたるところで反対のあることが、わたしたちの耳にもはいっている」。
27892 44 28 23 そこで、日を定めて、大ぜいの人が、パウロの宿につめかけてきたので、朝から晩まで、パウロは語り続け、神の国のことをあかしし、またモーセの律法や預言者の書を引いて、イエスについて彼らの説得につとめた。
27893 44 28 24 ある者はパウロの言うことを受けいれ、ある者は信じようともしなかった。
27894 44 28 25 互に意見が合わなくて、みんなの者が帰ろうとしていた時、パウロはひとこと述べて言った、「聖霊はよくも預言者イザヤによって、あなたがたの先祖に語ったものである。
27895 44 28 26 『この民に行って言え、あなたがたは聞くには聞くが、決して悟らない。見るには見るが、決して認めない。
27896 44 28 27 この民の心は鈍くなり、その耳は聞えにくく、その目は閉じている。それは、彼らが目で見ず、耳で聞かず、心で悟らず、悔い改めていやされることがないためである』。
27897 44 28 28 そこで、あなたがたは知っておくがよい。神のこの救の言葉は、異邦人に送られたのだ。彼らは、これに聞きしたがうであろう」。〔
27898 44 28 29 パウロがこれらのことを述べ終ると、ユダヤ人らは、互に論じ合いながら帰って行った。〕
27899 44 28 30 パウロは、自分の借りた家に満二年のあいだ住んで、たずねて来る人々をみな迎え入れ、
27900 44 28 31 はばからず、また妨げられることもなく、神の国を宣べ伝え、主イエス・キリストのことを教えつづけた。
27901 45 1 1 キリスト・イエスの僕、神の福音のために選び別たれ、召されて使徒となったパウロから――
27902 45 1 2 この福音は、神が、預言者たちにより、聖書の中で、あらかじめ約束されたものであって、
27903 45 1 3 御子に関するものである。御子は、肉によればダビデの子孫から生れ、
27904 45 1 4 聖なる霊によれば、死人からの復活により、御力をもって神の御子と定められた。これがわたしたちの主イエス・キリストである。
27905 45 1 5 わたしたちは、その御名のために、すべての異邦人を信仰の従順に至らせるようにと、彼によって恵みと使徒の務とを受けたのであり、
27906 45 1 6 あなたがたもまた、彼らの中にあって、召されてイエス・キリストに属する者となったのである――
27907 45 1 7 ローマにいる、神に愛され、召された聖徒一同へ。
27908 45 1 8 まず第一に、わたしは、あなたがたの信仰が全世界に言い伝えられていることを、イエス・キリストによって、あなたがた一同のために、わたしの神に感謝する。
27909 45 1 11 わたしは、あなたがたに会うことを熱望している。あなたがたに霊の賜物を幾分でも分け与えて、力づけたいからである。
27910 45 1 12 それは、あなたがたの中にいて、あなたがたとわたしとのお互の信仰によって、共に励まし合うためにほかならない。
27911 45 1 13 兄弟たちよ。このことを知らずにいてもらいたくない。わたしはほかの異邦人の間で得たように、あなたがたの間でも幾分かの実を得るために、あなたがたの所に行こうとしばしば企てたが、今まで妨げられてきた。
27912 45 1 14 わたしには、ギリシヤ人にも未開の人にも、賢い者にも無知な者にも、果すべき責任がある。
27913 45 1 15 そこで、わたしとしての切なる願いは、ローマにいるあなたがたにも、福音を宣べ伝えることなのである。
27914 45 1 16 わたしは福音を恥としない。それは、ユダヤ人をはじめ、ギリシヤ人にも、すべて信じる者に、救を得させる神の力である。
27915 45 1 17 神の義は、その福音の中に啓示され、信仰に始まり信仰に至らせる。これは、「信仰による義人は生きる」と書いてあるとおりである。
27916 45 1 18 神の怒りは、不義をもって真理をはばもうとする人間のあらゆる不信心と不義とに対して、天から啓示される。
27917 45 1 19 なぜなら、神について知りうる事がらは、彼らには明らかであり、神がそれを彼らに明らかにされたのである。
27918 45 1 20 神の見えない性質、すなわち、神の永遠の力と神性とは、天地創造このかた、被造物において知られていて、明らかに認められるからである。したがって、彼らには弁解の余地がない。
27919 45 1 21 なぜなら、彼らは神を知っていながら、神としてあがめず、感謝もせず、かえってその思いはむなしくなり、その無知な心は暗くなったからである。
27920 45 1 22 彼らは自ら知者と称しながら、愚かになり、
27921 45 1 23 不朽の神の栄光を変えて、朽ちる人間や鳥や獣や這うものの像に似せたのである。
27922 45 1 24 ゆえに、神は、彼らが心の欲情にかられ、自分のからだを互にはずかしめて、汚すままに任せられた。
27923 45 1 25 彼らは神の真理を変えて虚偽とし、創造者の代りに被造物を拝み、これに仕えたのである。創造者こそ永遠にほむべきものである、アァメン。
27924 45 1 26 それゆえ、神は彼らを恥ずべき情欲に任せられた。すなわち、彼らの中の女は、その自然の関係を不自然なものに代え、
27925 45 1 27 男もまた同じように女との自然の関係を捨てて、互にその情欲の炎を燃やし、男は男に対して恥ずべきことをなし、そしてその乱行の当然の報いを、身に受けたのである。
27926 45 1 28 そして、彼らは神を認めることを正しいとしなかったので、神は彼らを正しからぬ思いにわたし、なすべからざる事をなすに任せられた。
27927 45 1 29 すなわち、彼らは、あらゆる不義と悪と貪欲と悪意とにあふれ、ねたみと殺意と争いと詐欺と悪念とに満ち、また、ざん言する者、
27928 45 1 30 そしる者、神を憎む者、不遜な者、高慢な者、大言壮語する者、悪事をたくらむ者、親に逆らう者となり、
27929 45 1 31 無知、不誠実、無情、無慈悲な者となっている。
27930 45 1 32 彼らは、こうした事を行う者どもが死に価するという神の定めをよく知りながら、自らそれを行うばかりではなく、それを行う者どもを是認さえしている。
27931 45 2 1 だから、ああ、すべて人をさばく者よ。あなたには弁解の余地がない。あなたは、他人をさばくことによって、自分自身を罪に定めている。さばくあなたも、同じことを行っているからである。
27932 45 2 2 わたしたちは、神のさばきが、このような事を行う者どもの上に正しく下ることを、知っている。
27933 45 2 3 ああ、このような事を行う者どもをさばきながら、しかも自ら同じことを行う人よ。あなたは、神のさばきをのがれうると思うのか。
27934 45 2 4 それとも、神の慈愛があなたを悔改めに導くことも知らないで、その慈愛と忍耐と寛容との富を軽んじるのか。
27935 45 2 5 あなたのかたくなな、悔改めのない心のゆえに、あなたは、神の正しいさばきの現れる怒りの日のために神の怒りを、自分の身に積んでいるのである。
27936 45 2 6 神は、おのおのに、そのわざにしたがって報いられる。
27937 45 2 7 すなわち、一方では、耐え忍んで善を行って、光栄とほまれと朽ちぬものとを求める人に、永遠のいのちが与えられ、
27938 45 2 8 他方では、党派心をいだき、真理に従わないで不義に従う人に、怒りと激しい憤りとが加えられる。
27939 45 2 9 悪を行うすべての人には、ユダヤ人をはじめギリシヤ人にも、患難と苦悩とが与えられ、
27940 45 2 10 善を行うすべての人には、ユダヤ人をはじめギリシヤ人にも、光栄とほまれと平安とが与えられる。
27941 45 2 11 なぜなら、神には、かたより見ることがないからである。
27942 45 2 12 そのわけは、律法なしに罪を犯した者は、また律法なしに滅び、律法のもとで罪を犯した者は、律法によってさばかれる。
27943 45 2 13 なぜなら、律法を聞く者が、神の前に義なるものではなく、律法を行う者が、義とされるからである。
27944 45 2 14 すなわち、律法を持たない異邦人が、自然のままで、律法の命じる事を行うなら、たとい律法を持たなくても、彼らにとっては自分自身が律法なのである。
27945 45 2 15 彼らは律法の要求がその心にしるされていることを現し、そのことを彼らの良心も共にあかしをして、その判断が互にあるいは訴え、あるいは弁明し合うのである。
27946 45 2 16 そして、これらのことは、わたしの福音によれば、神がキリスト・イエスによって人々の隠れた事がらをさばかれるその日に、明らかにされるであろう。
27947 45 2 17 もしあなたが、自らユダヤ人と称し、律法に安んじ、神を誇とし、
27948 45 2 18 御旨を知り、律法に教えられて、なすべきことをわきまえており、
27949 45 2 21 なぜ、人を教えて自分を教えないのか。盗むなと人に説いて、自らは盗むのか。
27950 45 2 22 姦淫するなと言って、自らは姦淫するのか。偶像を忌みきらいながら、自らは宮の物をかすめるのか。
27951 45 2 23 律法を誇としながら、自らは律法に違反して、神を侮っているのか。
27952 45 2 24 聖書に書いてあるとおり、「神の御名は、あなたがたのゆえに、異邦人の間で汚されている」。
27953 45 2 25 もし、あなたが律法を行うなら、なるほど、割礼は役に立とう。しかし、もし律法を犯すなら、あなたの割礼は無割礼となってしまう。
27954 45 2 26 だから、もし無割礼の者が律法の規定を守るなら、その無割礼は割礼と見なされるではないか。
27955 45 2 27 かつ、生れながら無割礼の者であって律法を全うする者は、律法の文字と割礼とを持ちながら律法を犯しているあなたを、さばくのである。
27956 45 2 28 というのは、外見上のユダヤ人がユダヤ人ではなく、また、外見上の肉における割礼が割礼でもない。
27957 45 2 29 かえって、隠れたユダヤ人がユダヤ人であり、また、文字によらず霊による心の割礼こそ割礼であって、そのほまれは人からではなく、神から来るのである。
27958 45 3 1 では、ユダヤ人のすぐれている点は何か。また割礼の益は何か。
27959 45 3 2 それは、いろいろの点で数多くある。まず第一に、神の言が彼らにゆだねられたことである。
27960 45 3 3 すると、どうなるのか。もし、彼らのうちに不真実の者があったとしたら、その不真実によって、神の真実は無になるであろうか。
27961 45 3 4 断じてそうではない。あらゆる人を偽り者としても、神を真実なものとすべきである。それは、「あなたが言葉を述べるときは、義とせられ、あなたがさばきを受けるとき、勝利を得るため」
27962 45 3 5 しかし、もしわたしたちの不義が、神の義を明らかにするとしたら、なんと言うべきか。怒りを下す神は、不義であると言うのか(これは人間的な言い方ではある)。
27963 45 3 6 断じてそうではない。もしそうであったら、神はこの世を、どうさばかれるだろうか。
27964 45 3 7 しかし、もし神の真実が、わたしの偽りによりいっそう明らかにされて、神の栄光となるなら、どうして、わたしはなおも罪人としてさばかれるのだろうか。
27965 45 3 8 むしろ、「善をきたらせるために、わたしたちは悪をしようではないか」(わたしたちがそう言っていると、ある人々はそしっている)。彼らが罰せられるのは当然である。
27966 45 3 9 すると、どうなるのか。わたしたちには何かまさったところがあるのか。絶対にない。ユダヤ人もギリシヤ人も、ことごとく罪の下にあることを、わたしたちはすでに指摘した。
27967 45 3 10 次のように書いてある、「義人はいない、ひとりもいない。
27968 45 3 11 悟りのある人はいない、神を求める人はいない。
27969 45 3 12 すべての人は迷い出て、ことごとく無益なものになっている。善を行う者はいない、ひとりもいない。
27970 45 3 13 彼らののどは、開いた墓であり、彼らは、その舌で人を欺き、彼らのくちびるには、まむしの毒があり、
27971 45 3 14 彼らの口は、のろいと苦い言葉とで満ちている。
27972 45 3 15 彼らの足は、血を流すのに速く、
27973 45 3 16 彼らの道には、破壊と悲惨とがある。
27974 45 3 17 そして、彼らは平和の道を知らない。
27975 45 3 18 彼らの目の前には、神に対する恐れがない」。
27976 45 3 19 さて、わたしたちが知っているように、すべて律法の言うところは、律法のもとにある者たちに対して語られている。それは、すべての口がふさがれ、全世界が神のさばきに服するためである。
27977 45 3 20 なぜなら、律法を行うことによっては、すべての人間は神の前に義とせられないからである。律法によっては、罪の自覚が生じるのみである。
27978 45 3 21 しかし今や、神の義が、律法とは別に、しかも律法と預言者とによってあかしされて、現された。
27979 45 3 22 それは、イエス・キリストを信じる信仰による神の義であって、すべて信じる人に与えられるものである。そこにはなんらの差別もない。
27980 45 3 23 すなわち、すべての人は罪を犯したため、神の栄光を受けられなくなっており、
27981 45 3 24 彼らは、価なしに、神の恵みにより、キリスト・イエスによるあがないによって義とされるのである。
27982 45 3 25 神はこのキリストを立てて、その血による、信仰をもって受くべきあがないの供え物とされた。それは神の義を示すためであった。すなわち、今までに犯された罪を、神は忍耐をもって見のがしておられたが、
27983 45 3 26 それは、今の時に、神の義を示すためであった。こうして、神みずからが義となり、さらに、イエスを信じる者を義とされるのである。
27984 45 3 27 すると、どこにわたしたちの誇があるのか。全くない。なんの法則によってか。行いの法則によってか。そうではなく、信仰の法則によってである。
27985 45 3 28 わたしたちは、こう思う。人が義とされるのは、律法の行いによるのではなく、信仰によるのである。
27986 45 3 29 それとも、神はユダヤ人だけの神であろうか。また、異邦人の神であるのではないか。確かに、異邦人の神でもある。
27987 45 3 30 まことに、神は唯一であって、割礼のある者を信仰によって義とし、また、無割礼の者をも信仰のゆえに義とされるのである。
27988 45 3 31 すると、信仰のゆえに、わたしたちは律法を無効にするのであるか。断じてそうではない。かえって、それによって律法を確立するのである。
27989 45 4 1 それでは、肉によるわたしたちの先祖アブラハムの場合については、なんと言ったらよいか。
27990 45 4 2 もしアブラハムが、その行いによって義とされたのであれば、彼は誇ることができよう。しかし、神のみまえでは、できない。
27991 45 4 3 なぜなら、聖書はなんと言っているか、「アブラハムは神を信じた。それによって、彼は義と認められた」とある。
27992 45 4 4 いったい、働く人に対する報酬は、恩恵としてではなく、当然の支払いとして認められる。
27993 45 4 5 しかし、働きはなくても、不信心な者を義とするかたを信じる人は、その信仰が義と認められるのである。
27994 45 4 6 ダビデもまた、行いがなくても神に義と認められた人の幸福について、次のように言っている、
27995 45 4 7 「不法をゆるされ、罪をおおわれた人たちは、さいわいである。
27996 45 4 8 罪を主に認められない人は、さいわいである」。
27997 45 4 9 さて、この幸福は、割礼の者だけが受けるのか。それとも、無割礼の者にも及ぶのか。わたしたちは言う、「アブラハムには、その信仰が義と認められた」のである。
27998 45 4 10 それでは、どういう場合にそう認められたのか。割礼を受けてからか、それとも受ける前か。割礼を受けてからではなく、無割礼の時であった。
27999 45 4 11 そして、アブラハムは割礼というしるしを受けたが、それは、無割礼のままで信仰によって受けた義の証印であって、彼が、無割礼のままで信じて義とされるに至るすべての人の父となり、
28000 45 4 12 かつ、割礼の者の父となるためなのである。割礼の者というのは、割礼を受けた者ばかりではなく、われらの父アブラハムが無割礼の時に持っていた信仰の足跡を踏む人々をもさすのである。
28001 45 4 13 なぜなら、世界を相続させるとの約束が、アブラハムとその子孫とに対してなされたのは、律法によるのではなく、信仰の義によるからである。
28002 45 4 14 もし、律法に立つ人々が相続人であるとすれば、信仰はむなしくなり、約束もまた無効になってしまう。
28003 45 4 15 いったい、律法は怒りを招くものであって、律法のないところには違反なるものはない。
28004 45 4 16 このようなわけで、すべては信仰によるのである。それは恵みによるのであって、すべての子孫に、すなわち、律法に立つ者だけにではなく、アブラハムの信仰に従う者にも、この約束が保証されるのである。アブラハムは、神の前で、わたしたちすべての者の父であって、
28005 45 4 17 「わたしは、あなたを立てて多くの国民の父とした」と書いてあるとおりである。彼はこの神、すなわち、死人を生かし、無から有を呼び出される神を信じたのである。
28006 45 4 18 彼は望み得ないのに、なおも望みつつ信じた。そのために、「あなたの子孫はこうなるであろう」と言われているとおり、多くの国民の父となったのである。
28007 45 4 19 すなわち、およそ百歳となって、彼自身のからだが死んだ状態であり、また、サラの胎が不妊であるのを認めながらも、なお彼の信仰は弱らなかった。
28008 45 4 20 彼は、神の約束を不信仰のゆえに疑うようなことはせず、かえって信仰によって強められ、栄光を神に帰し、
28009 45 4 21 神はその約束されたことを、また成就することができると確信した。
28010 45 4 22 だから、彼は義と認められたのである。
28011 45 4 23 しかし「義と認められた」と書いてあるのは、アブラハムのためだけではなく、
28012 45 4 24 わたしたちのためでもあって、わたしたちの主イエスを死人の中からよみがえらせたかたを信じるわたしたちも、義と認められるのである。
28013 45 4 25 主は、わたしたちの罪過のために死に渡され、わたしたちが義とされるために、よみがえらされたのである。
28014 45 5 1 このように、わたしたちは、信仰によって義とされたのだから、わたしたちの主イエス・キリストにより、神に対して平和を得ている。
28015 45 5 2 わたしたちは、さらに彼により、いま立っているこの恵みに信仰によって導き入れられ、そして、神の栄光にあずかる希望をもって喜んでいる。
28016 45 5 3 それだけではなく、患難をも喜んでいる。なぜなら、患難は忍耐を生み出し、
28017 45 5 4 忍耐は錬達を生み出し、錬達は希望を生み出すことを、知っているからである。
28018 45 5 5 そして、希望は失望に終ることはない。なぜなら、わたしたちに賜わっている聖霊によって、神の愛がわたしたちの心に注がれているからである。
28019 45 5 6 わたしたちがまだ弱かったころ、キリストは、時いたって、不信心な者たちのために死んで下さったのである。
28020 45 5 7 正しい人のために死ぬ者は、ほとんどいないであろう。善人のためには、進んで死ぬ者もあるいはいるであろう。
28021 45 5 8 しかし、まだ罪人であった時、わたしたちのためにキリストが死んで下さったことによって、神はわたしたちに対する愛を示されたのである。
28022 45 5 9 わたしたちは、キリストの血によって今は義とされているのだから、なおさら、彼によって神の怒りから救われるであろう。
28023 45 5 10 もし、わたしたちが敵であった時でさえ、御子の死によって神との和解を受けたとすれば、和解を受けている今は、なおさら、彼のいのちによって救われるであろう。
28024 45 5 11 そればかりではなく、わたしたちは、今や和解を得させて下さったわたしたちの主イエス・キリストによって、神を喜ぶのである。
28025 45 5 12 このようなわけで、ひとりの人によって、罪がこの世にはいり、また罪によって死がはいってきたように、こうして、すべての人が罪を犯したので、死が全人類にはいり込んだのである。
28026 45 5 13 というのは、律法以前にも罪は世にあったが、律法がなければ、罪は罪として認められないのである。
28027 45 5 14 しかし、アダムからモーセまでの間においても、アダムの違反と同じような罪を犯さなかった者も、死の支配を免れなかった。このアダムは、きたるべき者の型である。
28028 45 5 15 しかし、恵みの賜物は罪過の場合とは異なっている。すなわち、もしひとりの罪過のために多くの人が死んだとすれば、まして、神の恵みと、ひとりの人イエス・キリストの恵みによる賜物とは、さらに豊かに多くの人々に満ちあふれたはずではないか。
28029 45 5 16 かつ、この賜物は、ひとりの犯した罪の結果とは異なっている。なぜなら、さばきの場合は、ひとりの罪過から、罪に定めることになったが、恵みの場合には、多くの人の罪過から、義とする結果になるからである。
28030 45 5 17 もし、ひとりの罪過によって、そのひとりをとおして死が支配するに至ったとすれば、まして、あふれるばかりの恵みと義の賜物とを受けている者たちは、ひとりのイエス・キリストをとおし、いのちにあって、さらに力強く支配するはずではないか。
28031 45 5 18 このようなわけで、ひとりの罪過によってすべての人が罪に定められたように、ひとりの義なる行為によって、いのちを得させる義がすべての人に及ぶのである。
28032 45 5 19 すなわち、ひとりの人の不従順によって、多くの人が罪人とされたと同じように、ひとりの従順によって、多くの人が義人とされるのである。
28033 45 5 20 律法がはいり込んできたのは、罪過の増し加わるためである。しかし、罪の増し加わったところには、恵みもますます満ちあふれた。
28034 45 5 21 それは、罪が死によって支配するに至ったように、恵みもまた義によって支配し、わたしたちの主イエス・キリストにより、永遠のいのちを得させるためである。
28035 45 6 1 では、わたしたちは、なんと言おうか。恵みが増し加わるために、罪にとどまるべきであろうか。
28036 45 6 2 断じてそうではない。罪に対して死んだわたしたちが、どうして、なお、その中に生きておれるだろうか。
28037 45 6 3 それとも、あなたがたは知らないのか。キリスト・イエスにあずかるバプテスマを受けたわたしたちは、彼の死にあずかるバプテスマを受けたのである。
28038 45 6 4 すなわち、わたしたちは、その死にあずかるバプテスマによって、彼と共に葬られたのである。それは、キリストが父の栄光によって、死人の中からよみがえらされたように、わたしたちもまた、新しいいのちに生きるためである。
28039 45 6 5 もしわたしたちが、彼に結びついてその死の様にひとしくなるなら、さらに、彼の復活の様にもひとしくなるであろう。
28040 45 6 6 わたしたちは、この事を知っている。わたしたちの内の古き人はキリストと共に十字架につけられた。それは、この罪のからだが滅び、わたしたちがもはや、罪の奴隷となることがないためである。
28041 45 6 7 それは、すでに死んだ者は、罪から解放されているからである。
28042 45 6 8 もしわたしたちが、キリストと共に死んだなら、また彼と共に生きることを信じる。
28043 45 6 9 キリストは死人の中からよみがえらされて、もはや死ぬことがなく、死はもはや彼を支配しないことを、知っているからである。
28044 45 6 10 なぜなら、キリストが死んだのは、ただ一度罪に対して死んだのであり、キリストが生きるのは、神に生きるのだからである。
28045 45 6 11 このように、あなたがた自身も、罪に対して死んだ者であり、キリスト・イエスにあって神に生きている者であることを、認むべきである。
28046 45 6 12 だから、あなたがたの死ぬべきからだを罪の支配にゆだねて、その情欲に従わせることをせず、
28047 45 6 13 また、あなたがたの肢体を不義の武器として罪にささげてはならない。むしろ、死人の中から生かされた者として、自分自身を神にささげ、自分の肢体を義の武器として神にささげるがよい。
28048 45 6 14 なぜなら、あなたがたは律法の下にあるのではなく、恵みの下にあるので、罪に支配されることはないからである。
28049 45 6 15 それでは、どうなのか。律法の下にではなく、恵みの下にあるからといって、わたしたちは罪を犯すべきであろうか。断じてそうではない。
28050 45 6 16 あなたがたは知らないのか。あなたがた自身が、だれかの僕になって服従するなら、あなたがたは自分の服従するその者の僕であって、死に至る罪の僕ともなり、あるいは、義にいたる従順の僕ともなるのである。
28051 45 6 17 しかし、神は感謝すべきかな。あなたがたは罪の僕であったが、伝えられた教の基準に心から服従して、
28052 45 6 18 罪から解放され、義の僕となった。
28053 45 6 19 わたしは人間的な言い方をするが、それは、あなたがたの肉の弱さのゆえである。あなたがたは、かつて自分の肢体を汚れと不法との僕としてささげて不法に陥ったように、今や自分の肢体を義の僕としてささげて、きよくならねばならない。
28054 45 6 20 あなたがたが罪の僕であった時は、義とは縁のない者であった。
28055 45 6 21 その時あなたがたは、どんな実を結んだのか。それは、今では恥とするようなものであった。それらのものの終極は、死である。
28056 45 6 22 しかし今や、あなたがたは罪から解放されて神に仕え、きよきに至る実を結んでいる。その終極は永遠のいのちである。
28057 45 6 23 罪の支払う報酬は死である。しかし神の賜物は、わたしたちの主キリスト・イエスにおける永遠のいのちである。
28058 45 7 1 それとも、兄弟たちよ。あなたがたは知らないのか。わたしは律法を知っている人々に語るのであるが、律法は人をその生きている期間だけ支配するものである。
28059 45 7 2 すなわち、夫のある女は、夫が生きている間は、律法によって彼につながれている。しかし、夫が死ねば、夫の律法から解放される。
28060 45 7 3 であるから、夫の生存中に他の男に行けば、その女は淫婦と呼ばれるが、もし夫が死ねば、その律法から解かれるので、他の男に行っても、淫婦とはならない。
28061 45 7 4 わたしの兄弟たちよ。このように、あなたがたも、キリストのからだをとおして、律法に対して死んだのである。それは、あなたがたが他の人、すなわち、死人の中からよみがえられたかたのものとなり、こうして、わたしたちが神のために実を結ぶに至るためなのである。
28062 45 7 5 というのは、わたしたちが肉にあった時には、律法による罪の欲情が、死のために実を結ばせようとして、わたしたちの肢体のうちに働いていた。
28063 45 7 6 しかし今は、わたしたちをつないでいたものに対して死んだので、わたしたちは律法から解放され、その結果、古い文字によってではなく、新しい霊によって仕えているのである。
28064 45 7 7 それでは、わたしたちは、なんと言おうか。律法は罪なのか。断じてそうではない。しかし、律法によらなければ、わたしは罪を知らなかったであろう。すなわち、もし律法が「むさぼるな」と言わなかったら、わたしはむさぼりなるものを知らなかったであろう。
28065 45 7 8 しかるに、罪は戒めによって機会を捕え、わたしの内に働いて、あらゆるむさぼりを起させた。すなわち、律法がなかったら、罪は死んでいるのである。
28066 45 7 9 わたしはかつては、律法なしに生きていたが、戒めが来るに及んで、罪は生き返り、
28067 45 7 10 わたしは死んだ。そして、いのちに導くべき戒めそのものが、かえってわたしを死に導いて行くことがわかった。
28068 45 7 11 なぜなら、罪は戒めによって機会を捕え、わたしを欺き、戒めによってわたしを殺したからである。
28069 45 7 12 このようなわけで、律法そのものは聖なるものであり、戒めも聖であって、正しく、かつ善なるものである。
28070 45 7 13 では、善なるものが、わたしにとって死となったのか。断じてそうではない。それはむしろ、罪の罪たることが現れるための、罪のしわざである。すなわち、罪は、戒めによって、はなはだしく悪性なものとなるために、善なるものによってわたしを死に至らせたのである。
28071 45 7 14 わたしたちは、律法は霊的なものであると知っている。しかし、わたしは肉につける者であって、罪の下に売られているのである。
28072 45 7 15 わたしは自分のしていることが、わからない。なぜなら、わたしは自分の欲する事は行わず、かえって自分の憎む事をしているからである。
28073 45 7 16 もし、自分の欲しない事をしているとすれば、わたしは律法が良いものであることを承認していることになる。
28074 45 7 17 そこで、この事をしているのは、もはやわたしではなく、わたしの内に宿っている罪である。
28075 45 7 18 わたしの内に、すなわち、わたしの肉の内には、善なるものが宿っていないことを、わたしは知っている。なぜなら、善をしようとする意志は、自分にあるが、それをする力がないからである。
28076 45 7 19 すなわち、わたしの欲している善はしないで、欲していない悪は、これを行っている。
28077 45 7 20 もし、欲しないことをしているとすれば、それをしているのは、もはやわたしではなく、わたしの内に宿っている罪である。
28078 45 7 21 そこで、善をしようと欲しているわたしに、悪がはいり込んでいるという法則があるのを見る。
28079 45 7 22 すなわち、わたしは、内なる人としては神の律法を喜んでいるが、
28080 45 7 23 わたしの肢体には別の律法があって、わたしの心の法則に対して戦いをいどみ、そして、肢体に存在する罪の法則の中に、わたしをとりこにしているのを見る。
28081 45 7 24 わたしは、なんというみじめな人間なのだろう。だれが、この死のからだから、わたしを救ってくれるだろうか。
28082 45 7 25 わたしたちの主イエス・キリストによって、神は感謝すべきかな。このようにして、わたし自身は、心では神の律法に仕えているが、肉では罪の律法に仕えているのである。
28083 45 8 1 こういうわけで、今やキリスト・イエスにある者は罪に定められることがない。
28084 45 8 2 なぜなら、キリスト・イエスにあるいのちの御霊の法則は、罪と死との法則からあなたを解放したからである。
28085 45 8 3 律法が肉により無力になっているためになし得なかった事を、神はなし遂げて下さった。すなわち、御子を、罪の肉の様で罪のためにつかわし、肉において罪を罰せられたのである。
28086 45 8 4 これは律法の要求が、肉によらず霊によって歩くわたしたちにおいて、満たされるためである。
28087 45 8 5 なぜなら、肉に従う者は肉のことを思い、霊に従う者は霊のことを思うからである。
28088 45 8 6 肉の思いは死であるが、霊の思いは、いのちと平安とである。
28089 45 8 7 なぜなら、肉の思いは神に敵するからである。すなわち、それは神の律法に従わず、否、従い得ないのである。
28090 45 8 8 また、肉にある者は、神を喜ばせることができない。
28091 45 8 9 しかし、神の御霊があなたがたの内に宿っているなら、あなたがたは肉におるのではなく、霊におるのである。もし、キリストの霊を持たない人がいるなら、その人はキリストのものではない。
28092 45 8 10 もし、キリストがあなたがたの内におられるなら、からだは罪のゆえに死んでいても、霊は義のゆえに生きているのである。
28093 45 8 11 もし、イエスを死人の中からよみがえらせたかたの御霊が、あなたがたの内に宿っているなら、キリスト・イエスを死人の中からよみがえらせたかたは、あなたがたの内に宿っている御霊によって、あなたがたの死ぬべきからだをも、生かしてくださるであろう。
28094 45 8 12 それゆえに、兄弟たちよ。わたしたちは、果すべき責任を負っている者であるが、肉に従って生きる責任を肉に対して負っているのではない。
28095 45 8 13 なぜなら、もし、肉に従って生きるなら、あなたがたは死ぬ外はないからである。しかし、霊によってからだの働きを殺すなら、あなたがたは生きるであろう。
28096 45 8 14 すべて神の御霊に導かれている者は、すなわち、神の子である。
28097 45 8 15 あなたがたは再び恐れをいだかせる奴隷の霊を受けたのではなく、子たる身分を授ける霊を受けたのである。その霊によって、わたしたちは「アバ、父よ」と呼ぶのである。
28098 45 8 16 御霊みずから、わたしたちの霊と共に、わたしたちが神の子であることをあかしして下さる。
28099 45 8 17 もし子であれば、相続人でもある。神の相続人であって、キリストと栄光を共にするために苦難をも共にしている以上、キリストと共同の相続人なのである。
28100 45 8 18 わたしは思う。今のこの時の苦しみは、やがてわたしたちに現されようとする栄光に比べると、言うに足りない。
28101 45 8 19 被造物は、実に、切なる思いで神の子たちの出現を待ち望んでいる。
28102 45 8 20 なぜなら、被造物が虚無に服したのは、自分の意志によるのではなく、服従させたかたによるのであり、
28103 45 8 21 かつ、被造物自身にも、滅びのなわめから解放されて、神の子たちの栄光の自由に入る望みが残されているからである。
28104 45 8 22 実に、被造物全体が、今に至るまで、共にうめき共に産みの苦しみを続けていることを、わたしたちは知っている。
28105 45 8 23 それだけではなく、御霊の最初の実を持っているわたしたち自身も、心の内でうめきながら、子たる身分を授けられること、すなわち、からだのあがなわれることを待ち望んでいる。
28106 45 8 24 わたしたちは、この望みによって救われているのである。しかし、目に見える望みは望みではない。なぜなら、現に見ている事を、どうして、なお望む人があろうか。
28107 45 8 25 もし、わたしたちが見ないことを望むなら、わたしたちは忍耐して、それを待ち望むのである。
28108 45 8 26 御霊もまた同じように、弱いわたしたちを助けて下さる。なぜなら、わたしたちはどう祈ったらよいかわからないが、御霊みずから、言葉にあらわせない切なるうめきをもって、わたしたちのためにとりなして下さるからである。
28109 45 8 27 そして、人の心を探り知るかたは、御霊の思うところがなんであるかを知っておられる。なぜなら、御霊は、聖徒のために、神の御旨にかなうとりなしをして下さるからである。
28110 45 8 28 神は、神を愛する者たち、すなわち、ご計画に従って召された者たちと共に働いて、万事を益となるようにして下さることを、わたしたちは知っている。
28111 45 8 29 神はあらかじめ知っておられる者たちを、更に御子のかたちに似たものとしようとして、あらかじめ定めて下さった。それは、御子を多くの兄弟の中で長子とならせるためであった。
28112 45 8 30 そして、あらかじめ定めた者たちを更に召し、召した者たちを更に義とし、義とした者たちには、更に栄光を与えて下さったのである。
28113 45 8 31 それでは、これらの事について、なんと言おうか。もし、神がわたしたちの味方であるなら、だれがわたしたちに敵し得ようか。
28114 45 8 32 ご自身の御子をさえ惜しまないで、わたしたちすべての者のために死に渡されたかたが、どうして、御子のみならず万物をも賜わらないことがあろうか。
28115 45 8 33 だれが、神の選ばれた者たちを訴えるのか。神は彼らを義とされるのである。
28116 45 8 34 だれが、わたしたちを罪に定めるのか。キリスト・イエスは、死んで、否、よみがえって、神の右に座し、また、わたしたちのためにとりなして下さるのである。
28117 45 8 35 だれが、キリストの愛からわたしたちを離れさせるのか。患難か、苦悩か、迫害か、飢えか、裸か、危難か、剣か。
28118 45 8 36 「わたしたちはあなたのために終日、死に定められており、ほふられる羊のように見られている」
28119 45 8 37 しかし、わたしたちを愛して下さったかたによって、わたしたちは、これらすべての事において勝ち得て余りがある。
28120 45 8 38 わたしは確信する。死も生も、天使も支配者も、現在のものも将来のものも、力あるものも、
28121 45 8 39 高いものも深いものも、その他どんな被造物も、わたしたちの主キリスト・イエスにおける神の愛から、わたしたちを引き離すことはできないのである。
28122 45 9 1 わたしはキリストにあって真実を語る。偽りは言わない。わたしの良心も聖霊によって、わたしにこうあかしをしている。
28123 45 9 2 すなわち、わたしに大きな悲しみがあり、わたしの心に絶えざる痛みがある。
28124 45 9 3 実際、わたしの兄弟、肉による同族のためなら、わたしのこの身がのろわれて、キリストから離されてもいとわない。
28125 45 9 4 彼らはイスラエル人であって、子たる身分を授けられることも、栄光も、もろもろの契約も、律法を授けられることも、礼拝も、数々の約束も彼らのもの、
28126 45 9 5 また父祖たちも彼らのものであり、肉によればキリストもまた彼らから出られたのである。万物の上にいます神は、永遠にほむべきかな、アァメン。
28127 45 9 6 しかし、神の言が無効になったというわけではない。なぜなら、イスラエルから出た者が全部イスラエルなのではなく、
28128 45 9 7 また、アブラハムの子孫だからといって、その全部が子であるのではないからである。かえって「イサクから出る者が、あなたの子孫と呼ばれるであろう」。
28129 45 9 8 すなわち、肉の子がそのまま神の子なのではなく、むしろ約束の子が子孫として認められるのである。
28130 45 9 9 約束の言葉はこうである。「来年の今ごろ、わたしはまた来る。そして、サラに男子が与えられるであろう」。
28131 45 9 10 そればかりではなく、ひとりの人、すなわち、わたしたちの父祖イサクによって受胎したリベカの場合も、また同様である。
28132 45 9 11 まだ子供らが生れもせず、善も悪もしない先に、神の選びの計画が、
28133 45 9 12 わざによらず、召したかたによって行われるために、「兄は弟に仕えるであろう」と、彼女に仰せられたのである。
28134 45 9 13 「わたしはヤコブを愛しエサウを憎んだ」と書いてあるとおりである。
28135 45 9 14 では、わたしたちはなんと言おうか。神の側に不正があるのか。断じてそうではない。
28136 45 9 15 神はモーセに言われた、「わたしは自分のあわれもうとする者をあわれみ、いつくしもうとする者を、いつくしむ」。
28137 45 9 16 ゆえに、それは人間の意志や努力によるのではなく、ただ神のあわれみによるのである。
28138 45 9 17 聖書はパロにこう言っている、「わたしがあなたを立てたのは、この事のためである。すなわち、あなたによってわたしの力をあらわし、また、わたしの名が全世界に言いひろめられるためである」。
28139 45 9 18 だから、神はそのあわれもうと思う者をあわれみ、かたくなにしようと思う者を、かたくなになさるのである。
28140 45 9 19 そこで、あなたは言うであろう、「なぜ神は、なおも人を責められるのか。だれが、神の意図に逆らい得ようか」。
28141 45 9 20 ああ人よ。あなたは、神に言い逆らうとは、いったい、何者なのか。造られたものが造った者に向かって、「なぜ、わたしをこのように造ったのか」と言うことがあろうか。
28142 45 9 21 陶器を造る者は、同じ土くれから、一つを尊い器に、他を卑しい器に造りあげる権能がないのであろうか。
28143 45 9 22 もし、神が怒りをあらわし、かつ、ご自身の力を知らせようと思われつつも、滅びることになっている怒りの器を、大いなる寛容をもって忍ばれたとすれば、
28144 45 9 23 かつ、栄光にあずからせるために、あらかじめ用意されたあわれみの器にご自身の栄光の富を知らせようとされたとすれば、どうであろうか。
28145 45 9 24 神は、このあわれみの器として、またわたしたちをも、ユダヤ人の中からだけではなく、異邦人の中からも召されたのである。
28146 45 9 25 それは、ホセアの書でも言われているとおりである、「わたしは、わたしの民でない者を、わたしの民と呼び、愛されなかった者を、愛される者と呼ぶであろう。
28147 45 9 26 あなたがたはわたしの民ではないと、彼らに言ったその場所で、彼らは生ける神の子らであると、呼ばれるであろう」。
28148 45 9 27 また、イザヤはイスラエルについて叫んでいる、「たとい、イスラエルの子らの数は、浜の砂のようであっても、救われるのは、残された者だけであろう。
28149 45 9 28 主は、御言をきびしくまたすみやかに、地上になしとげられるであろう」。
28150 45 9 29 さらに、イザヤは預言した、「もし、万軍の主がわたしたちに子孫を残されなかったなら、わたしたちはソドムのようになり、ゴモラと同じようになったであろう」。
28151 45 9 30 では、わたしたちはなんと言おうか。義を追い求めなかった異邦人は、義、すなわち、信仰による義を得た。
28152 45 9 31 しかし、義の律法を追い求めていたイスラエルは、その律法に達しなかった。
28153 45 9 32 なぜであるか。信仰によらないで、行いによって得られるかのように、追い求めたからである。彼らは、つまずきの石につまずいたのである。
28154 45 9 33 「見よ、わたしはシオンに、つまずきの石、さまたげの岩を置く。それにより頼む者は、失望に終ることがない」
28155 45 10 1 兄弟たちよ。わたしの心の願い、彼らのために神にささげる祈は、彼らが救われることである。
28156 45 10 2 わたしは、彼らが神に対して熱心であることはあかしするが、その熱心は深い知識によるものではない。
28157 45 10 3 なぜなら、彼らは神の義を知らないで、自分の義を立てようと努め、神の義に従わなかったからである。
28158 45 10 4 キリストは、すべて信じる者に義を得させるために、律法の終りとなられたのである。
28159 45 10 5 モーセは、律法による義を行う人は、その義によって生きる、と書いている。
28160 45 10 6 しかし、信仰による義は、こう言っている、「あなたは心のうちで、だれが天に上るであろうかと言うな」。それは、キリストを引き降ろすことである。
28161 45 10 7 また、「だれが底知れぬ所に下るであろうかと言うな」。それは、キリストを死人の中から引き上げることである。
28162 45 10 8 では、なんと言っているか。「言葉はあなたの近くにある。あなたの口にあり、心にある」。この言葉とは、わたしたちが宣べ伝えている信仰の言葉である。
28163 45 10 9 すなわち、自分の口で、イエスは主であると告白し、自分の心で、神が死人の中からイエスをよみがえらせたと信じるなら、あなたは救われる。
28164 45 10 10 なぜなら、人は心に信じて義とされ、口で告白して救われるからである。
28165 45 10 11 聖書は、「すべて彼を信じる者は、失望に終ることがない」と言っている。
28166 45 10 12 ユダヤ人とギリシヤ人との差別はない。同一の主が万民の主であって、彼を呼び求めるすべての人を豊かに恵んで下さるからである。
28167 45 10 13 なぜなら、「主の御名を呼び求める者は、すべて救われる」とあるからである。
28168 45 10 14 しかし、信じたことのない者を、どうして呼び求めることがあろうか。聞いたことのない者を、どうして信じることがあろうか。宣べ伝える者がいなくては、どうして聞くことがあろうか。
28169 45 10 15 つかわされなくては、どうして宣べ伝えることがあろうか。「ああ、麗しいかな、良きおとずれを告げる者の足は」と書いてあるとおりである。
28170 45 10 16 しかし、すべての人が福音に聞き従ったのではない。イザヤは、「主よ、だれがわたしたちから聞いたことを信じましたか」と言っている。
28171 45 10 17 したがって、信仰は聞くことによるのであり、聞くことはキリストの言葉から来るのである。
28172 45 10 18 しかしわたしは言う、彼らには聞えなかったのであろうか。否、むしろ「その声は全地にひびきわたり、その言葉は世界のはてにまで及んだ」。
28173 45 10 19 なお、わたしは言う、イスラエルは知らなかったのであろうか。まずモーセは言っている、「わたしはあなたがたに、国民でない者に対してねたみを起させ、無知な国民に対して、怒りをいだかせるであろう」。
28174 45 10 20 イザヤも大胆に言っている、「わたしは、わたしを求めない者たちに見いだされ、わたしを尋ねない者に、自分を現した」。
28175 45 10 21 そして、イスラエルについては、「わたしは服従せずに反抗する民に、終日わたしの手をさし伸べていた」
28176 45 11 1 そこで、わたしは問う、「神はその民を捨てたのであろうか」。断じてそうではない。わたしもイスラエル人であり、アブラハムの子孫、ベニヤミン族の者である。
28177 45 11 2 神は、あらかじめ知っておられたその民を、捨てることはされなかった。聖書がエリヤについてなんと言っているか、あなたがたは知らないのか。すなわち、彼はイスラエルを神に訴えてこう言った。
28178 45 11 3 「主よ、彼らはあなたの預言者たちを殺し、あなたの祭壇をこぼち、そして、わたしひとりが取り残されたのに、彼らはわたしのいのちをも求めています」。
28179 45 11 4 しかし、彼に対する御告げはなんであったか、「バアルにひざをかがめなかった七千人を、わたしのために残しておいた」。
28180 45 11 5 それと同じように、今の時にも、恵みの選びによって残された者がいる。
28181 45 11 6 しかし、恵みによるのであれば、もはや行いによるのではない。そうでないと、恵みはもはや恵みでなくなるからである。
28182 45 11 7 では、どうなるのか。イスラエルはその追い求めているものを得ないで、ただ選ばれた者が、それを得た。そして、他の者たちはかたくなになった。
28183 45 11 8 「神は、彼らに鈍い心と、見えない目と、聞えない耳とを与えて、きょう、この日に及んでいる」
28184 45 11 9 ダビデもまた言っている、「彼らの食卓は、彼らのわなとなれ、網となれ、つまずきとなれ、報復となれ。
28185 45 11 10 彼らの目は、くらんで見えなくなれ、彼らの背は、いつまでも曲っておれ」。
28186 45 11 11 そこで、わたしは問う、「彼らがつまずいたのは、倒れるためであったのか」。断じてそうではない。かえって、彼らの罪過によって、救が異邦人に及び、それによってイスラエルを奮起させるためである。
28187 45 11 12 しかし、もし、彼らの罪過が世の富となり、彼らの失敗が異邦人の富となったとすれば、まして彼らが全部救われたなら、どんなにかすばらしいことであろう。
28188 45 11 13 そこでわたしは、あなたがた異邦人に言う。わたし自身は異邦人の使徒なのであるから、わたしの務を光栄とし、
28189 45 11 14 どうにかしてわたしの骨肉を奮起させ、彼らの幾人かを救おうと願っている。
28190 45 11 15 もし彼らの捨てられたことが世の和解となったとすれば、彼らの受けいれられることは、死人の中から生き返ることではないか。
28191 45 11 16 もし、麦粉の初穂がきよければ、そのかたまりもきよい。もし根がきよければ、その枝もきよい。
28192 45 11 17 しかし、もしある枝が切り去られて、野生のオリブであるあなたがそれにつがれ、オリブの根の豊かな養分にあずかっているとすれば、
28193 45 11 18 あなたはその枝に対して誇ってはならない。たとえ誇るとしても、あなたが根をささえているのではなく、根があなたをささえているのである。
28194 45 11 19 すると、あなたは、「枝が切り去られたのは、わたしがつがれるためであった」と言うであろう。
28195 45 11 20 まさに、そのとおりである。彼らは不信仰のゆえに切り去られ、あなたは信仰のゆえに立っているのである。高ぶった思いをいだかないで、むしろ恐れなさい。
28196 45 11 21 もし神が元木の枝を惜しまなかったとすれば、あなたを惜しむようなことはないであろう。
28197 45 11 22 神の慈愛と峻厳とを見よ。神の峻厳は倒れた者たちに向けられ、神の慈愛は、もしあなたがその慈愛にとどまっているなら、あなたに向けられる。そうでないと、あなたも切り取られるであろう。
28198 45 11 23 しかし彼らも、不信仰を続けなければ、つがれるであろう。神には彼らを再びつぐ力がある。
28199 45 11 24 なぜなら、もしあなたが自然のままの野生のオリブから切り取られ、自然の性質に反して良いオリブにつがれたとすれば、まして、これら自然のままの良い枝は、もっとたやすく、元のオリブにつがれないであろうか。
28200 45 11 25 兄弟たちよ。あなたがたが知者だと自負することのないために、この奥義を知らないでいてもらいたくない。一部のイスラエル人がかたくなになったのは、異邦人が全部救われるに至る時までのことであって、
28201 45 11 26 こうして、イスラエル人は、すべて救われるであろう。すなわち、次のように書いてある、「救う者がシオンからきて、ヤコブから不信心を追い払うであろう。
28202 45 11 27 そして、これが、彼らの罪を除き去る時に、彼らに対して立てるわたしの契約である」。
28203 45 11 28 福音について言えば、彼らは、あなたがたのゆえに、神の敵とされているが、選びについて言えば、父祖たちのゆえに、神に愛せられる者である。
28204 45 11 29 神の賜物と召しとは、変えられることがない。
28205 45 11 30 あなたがたが、かつては神に不従順であったが、今は彼らの不従順によってあわれみを受けたように、
28206 45 11 31 彼らも今は不従順になっているが、それは、あなたがたの受けたあわれみによって、彼ら自身も今あわれみを受けるためなのである。
28207 45 11 32 すなわち、神はすべての人をあわれむために、すべての人を不従順のなかに閉じ込めたのである。
28208 45 11 33 ああ深いかな、神の知恵と知識との富は。そのさばきは窮めがたく、その道は測りがたい。
28209 45 11 34 「だれが、主の心を知っていたか。だれが、主の計画にあずかったか。
28210 45 11 35 また、だれが、まず主に与えて、その報いを受けるであろうか」。
28211 45 11 36 万物は、神からいで、神によって成り、神に帰するのである。栄光がとこしえに神にあるように、アァメン。
28212 45 12 1 兄弟たちよ。そういうわけで、神のあわれみによってあなたがたに勧める。あなたがたのからだを、神に喜ばれる、生きた、聖なる供え物としてささげなさい。それが、あなたがたのなすべき霊的な礼拝である。
28213 45 12 2 あなたがたは、この世と妥協してはならない。むしろ、心を新たにすることによって、造りかえられ、何が神の御旨であるか、何が善であって、神に喜ばれ、かつ全きことであるかを、わきまえ知るべきである。
28214 45 12 3 わたしは、自分に与えられた恵みによって、あなたがたひとりびとりに言う。思うべき限度を越えて思いあがることなく、むしろ、神が各自に分け与えられた信仰の量りにしたがって、慎み深く思うべきである。
28215 45 12 4 なぜなら、一つのからだにたくさんの肢体があるが、それらの肢体がみな同じ働きをしてはいないように、
28216 45 12 5 わたしたちも数は多いが、キリストにあって一つのからだであり、また各自は互に肢体だからである。
28217 45 12 6 このように、わたしたちは与えられた恵みによって、それぞれ異なった賜物を持っているので、もし、それが預言であれば、信仰の程度に応じて預言をし、
28218 45 12 7 奉仕であれば奉仕をし、また教える者であれば教え、
28219 45 12 8 勧めをする者であれば勧め、寄附する者は惜しみなく寄附し、指導する者は熱心に指導し、慈善をする者は快く慈善をすべきである。
28220 45 12 9 愛には偽りがあってはならない。悪は憎み退け、善には親しみ結び、
28221 45 12 10 兄弟の愛をもって互にいつくしみ、進んで互に尊敬し合いなさい。
28222 45 12 11 熱心で、うむことなく、霊に燃え、主に仕え、
28223 45 12 12 望みをいだいて喜び、患難に耐え、常に祈りなさい。
28224 45 12 13 貧しい聖徒を助け、努めて旅人をもてなしなさい。
28225 45 12 14 あなたがたを迫害する者を祝福しなさい。祝福して、のろってはならない。
28226 45 12 15 喜ぶ者と共に喜び、泣く者と共に泣きなさい。
28227 45 12 16 互に思うことをひとつにし、高ぶった思いをいだかず、かえって低い者たちと交わるがよい。自分が知者だと思いあがってはならない。
28228 45 12 17 だれに対しても悪をもって悪に報いず、すべての人に対して善を図りなさい。
28229 45 12 18 あなたがたは、できる限りすべての人と平和に過ごしなさい。
28230 45 12 19 愛する者たちよ。自分で復讐をしないで、むしろ、神の怒りに任せなさい。なぜなら、「主が言われる。復讐はわたしのすることである。わたし自身が報復する」と書いてあるからである。
28231 45 12 20 むしろ、「もしあなたの敵が飢えるなら、彼に食わせ、かわくなら、彼に飲ませなさい。そうすることによって、あなたは彼の頭に燃えさかる炭火を積むことになるのである」。
28232 45 12 21 悪に負けてはいけない。かえって、善をもって悪に勝ちなさい。
28233 45 13 1 すべての人は、上に立つ権威に従うべきである。なぜなら、神によらない権威はなく、おおよそ存在している権威は、すべて神によって立てられたものだからである。
28234 45 13 2 したがって、権威に逆らう者は、神の定めにそむく者である。そむく者は、自分の身にさばきを招くことになる。
28235 45 13 3 いったい、支配者たちは、善事をする者には恐怖でなく、悪事をする者にこそ恐怖である。あなたは権威を恐れないことを願うのか。それでは、善事をするがよい。そうすれば、彼からほめられるであろう。
28236 45 13 4 彼は、あなたに益を与えるための神の僕なのである。しかし、もしあなたが悪事をすれば、恐れなければならない。彼はいたずらに剣を帯びているのではない。彼は神の僕であって、悪事を行う者に対しては、怒りをもって報いるからである。
28237 45 13 5 だから、ただ怒りをのがれるためだけではなく、良心のためにも従うべきである。
28238 45 13 6 あなたがたが貢を納めるのも、また同じ理由からである。彼らは神に仕える者として、もっぱらこの務に携わっているのである。
28239 45 13 7 あなたがたは、彼らすべてに対して、義務を果しなさい。すなわち、貢を納むべき者には貢を納め、税を納むべき者には税を納め、恐るべき者は恐れ、敬うべき者は敬いなさい。
28240 45 13 8 互に愛し合うことの外は、何人にも借りがあってはならない。人を愛する者は、律法を全うするのである。
28241 45 13 9 「姦淫するな、殺すな、盗むな、むさぼるな」など、そのほかに、どんな戒めがあっても、結局「自分を愛するようにあなたの隣り人を愛せよ」というこの言葉に帰する。
28242 45 13 10 愛は隣り人に害を加えることはない。だから、愛は律法を完成するものである。
28243 45 13 11 なお、あなたがたは時を知っているのだから、特に、この事を励まねばならない。すなわち、あなたがたの眠りからさめるべき時が、すでにきている。なぜなら今は、わたしたちの救が、初め信じた時よりも、もっと近づいているからである。
28244 45 13 12 夜はふけ、日が近づいている。それだから、わたしたちは、やみのわざを捨てて、光の武具を着けようではないか。
28245 45 13 13 そして、宴楽と泥酔、淫乱と好色、争いとねたみを捨てて、昼歩くように、つつましく歩こうではないか。
28246 45 13 14 あなたがたは、主イエス・キリストを着なさい。肉の欲を満たすことに心を向けてはならない。
28247 45 14 1 信仰の弱い者を受けいれなさい。ただ、意見を批評するためであってはならない。
28248 45 14 2 ある人は、何を食べてもさしつかえないと信じているが、弱い人は野菜だけを食べる。
28249 45 14 3 食べる者は食べない者を軽んじてはならず、食べない者も食べる者をさばいてはならない。神は彼を受けいれて下さったのであるから。
28250 45 14 4 他人の僕をさばくあなたは、いったい、何者であるか。彼が立つのも倒れるのも、その主人によるのである。しかし、彼は立つようになる。主は彼を立たせることができるからである。
28251 45 14 5 また、ある人は、この日がかの日よりも大事であると考え、ほかの人はどの日も同じだと考える。各自はそれぞれ心の中で、確信を持っておるべきである。
28252 45 14 6 日を重んじる者は、主のために重んじる。また食べる者も主のために食べる。神に感謝して食べるからである。食べない者も主のために食べない。そして、神に感謝する。
28253 45 14 7 すなわち、わたしたちのうち、だれひとり自分のために生きる者はなく、だれひとり自分のために死ぬ者はない。
28254 45 14 8 わたしたちは、生きるのも主のために生き、死ぬのも主のために死ぬ。だから、生きるにしても死ぬにしても、わたしたちは主のものなのである。
28255 45 14 9 なぜなら、キリストは、死者と生者との主となるために、死んで生き返られたからである。
28256 45 14 10 それだのに、あなたは、なぜ兄弟をさばくのか。あなたは、なぜ兄弟を軽んじるのか。わたしたちはみな、神のさばきの座の前に立つのである。
28257 45 14 11 すなわち、「主が言われる。わたしは生きている。すべてのひざは、わたしに対してかがみ、すべての舌は、神にさんびをささげるであろう」
28258 45 14 12 だから、わたしたちひとりびとりは、神に対して自分の言いひらきをすべきである。
28259 45 14 13 それゆえ、今後わたしたちは、互にさばき合うことをやめよう。むしろ、あなたがたは、妨げとなる物や、つまずきとなる物を兄弟の前に置かないことに、決めるがよい。
28260 45 14 14 わたしは、主イエスにあって知りかつ確信している。それ自体、汚れているものは一つもない。ただ、それが汚れていると考える人にだけ、汚れているのである。
28261 45 14 15 もし食物のゆえに兄弟を苦しめるなら、あなたは、もはや愛によって歩いているのではない。あなたの食物によって、兄弟を滅ぼしてはならない。キリストは彼のためにも、死なれたのである。
28262 45 14 16 それだから、あなたがたにとって良い事が、そしりの種にならぬようにしなさい。
28263 45 14 17 神の国は飲食ではなく、義と、平和と、聖霊における喜びとである。
28264 45 14 18 こうしてキリストに仕える者は、神に喜ばれ、かつ、人にも受けいれられるのである。
28265 45 14 19 こういうわけで、平和に役立つことや、互の徳を高めることを、追い求めようではないか。
28266 45 14 20 食物のことで、神のみわざを破壊してはならない。すべての物はきよい。ただ、それを食べて人をつまずかせる者には、悪となる。
28267 45 14 21 肉を食わず、酒を飲まず、そのほか兄弟をつまずかせないのは、良いことである。
28268 45 14 22 あなたの持っている信仰を、神のみまえに、自分自身に持っていなさい。自ら良いと定めたことについて、やましいと思わない人は、さいわいである。
28269 45 14 23 しかし、疑いながら食べる者は、信仰によらないから、罪に定められる。すべて信仰によらないことは、罪である。
28270 45 15 1 わたしたち強い者は、強くない者たちの弱さをになうべきであって、自分だけを喜ばせることをしてはならない。
28271 45 15 2 わたしたちひとりびとりは、隣り人の徳を高めるために、その益を図って彼らを喜ばすべきである。
28272 45 15 3 キリストさえ、ご自身を喜ばせることはなさらなかった。むしろ「あなたをそしる者のそしりが、わたしに降りかかった」と書いてあるとおりであった。
28273 45 15 4 これまでに書かれた事がらは、すべてわたしたちの教のために書かれたのであって、それは聖書の与える忍耐と慰めとによって、望みをいだかせるためである。
28274 45 15 5 どうか、忍耐と慰めとの神が、あなたがたに、キリスト・イエスにならって互に同じ思いをいだかせ、
28275 45 15 6 こうして、心を一つにし、声を合わせて、わたしたちの主イエス・キリストの父なる神をあがめさせて下さるように。
28276 45 15 7 こういうわけで、キリストもわたしたちを受けいれて下さったように、あなたがたも互に受けいれて、神の栄光をあらわすべきである。
28277 45 15 8 わたしは言う、キリストは神の真実を明らかにするために、割礼のある者の僕となられた。それは父祖たちの受けた約束を保証すると共に、
28278 45 15 9 異邦人もあわれみを受けて神をあがめるようになるためである、「それゆえ、わたしは、異邦人の中であなたにさんびをささげ、また、御名をほめ歌う」
28279 45 15 10 また、こう言っている、「異邦人よ、主の民と共に喜べ」。
28280 45 15 11 また、「すべての異邦人よ、主をほめまつれ。もろもろの民よ、主をほめたたえよ」。
28281 45 15 12 またイザヤは言っている、「エッサイの根から芽が出て、異邦人を治めるために立ち上がる者が来る。異邦人は彼に望みをおくであろう」。
28282 45 15 13 どうか、望みの神が、信仰から来るあらゆる喜びと平安とを、あなたがたに満たし、聖霊の力によって、あなたがたを、望みにあふれさせて下さるように。
28283 45 15 14 さて、わたしの兄弟たちよ。あなたがた自身が、善意にあふれ、あらゆる知恵に満たされ、そして互に訓戒し合う力のあることを、わたしは堅く信じている。
28284 45 15 15 しかし、わたしはあなたがたの記憶を新たにするために、ところどころ、かなり思いきって書いた。それは、神からわたしに賜わった恵みによって、書いたのである。
28285 45 15 16 このように恵みを受けたのは、わたしが異邦人のためにキリスト・イエスに仕える者となり、神の福音のために祭司の役を勤め、こうして異邦人を、聖霊によってきよめられた、御旨にかなうささげ物とするためである。
28286 45 15 17 だから、わたしは神への奉仕については、キリスト・イエスにあって誇りうるのである。
28287 45 15 18 わたしは、異邦人を従順にするために、キリストがわたしを用いて、言葉とわざ、
28288 45 15 19 しるしと不思議との力、聖霊の力によって、働かせて下さったことの外には、あえて何も語ろうとは思わない。こうして、わたしはエルサレムから始まり、巡りめぐってイルリコに至るまで、キリストの福音を満たしてきた。
28289 45 15 20 その際、わたしの切に望んだところは、他人の土台の上に建てることをしないで、キリストの御名がまだ唱えられていない所に福音を宣べ伝えることであった。
28290 45 15 21 すなわち、「彼のことを宣べ伝えられていなかった人々が見、聞いていなかった人々が悟るであろう」
28291 45 15 22 こういうわけで、わたしはあなたがたの所に行くことを、たびたび妨げられてきた。
28292 45 15 23 しかし今では、この地方にはもはや働く余地がなく、かつイスパニヤに赴く場合、あなたがたの所に行くことを、多年、熱望していたので、――
28293 45 15 24 その途中あなたがたに会い、まず幾分でもわたしの願いがあなたがたによって満たされたら、あなたがたに送られてそこへ行くことを、望んでいるのである。
28294 45 15 25 しかし今の場合、聖徒たちに仕えるために、わたしはエルサレムに行こうとしている。
28295 45 15 26 なぜなら、マケドニヤとアカヤとの人々は、エルサレムにおる聖徒の中の貧しい人々を援助することに賛成したからである。
28296 45 15 27 たしかに、彼らは賛成した。しかし同時に、彼らはかの人々に負債がある。というのは、もし異邦人が彼らの霊の物にあずかったとすれば、肉の物をもって彼らに仕えるのは、当然だからである。
28297 45 15 28 そこでわたしは、この仕事を済ませて彼らにこの実を手渡した後、あなたがたの所をとおって、イスパニヤに行こうと思う。
28298 45 15 29 そしてあなたがたの所に行く時には、キリストの満ちあふれる祝福をもって行くことと、信じている。
28299 45 15 30 兄弟たちよ。わたしたちの主イエス・キリストにより、かつ御霊の愛によって、あなたがたにお願いする。どうか、共に力をつくして、わたしのために神に祈ってほしい。
28300 45 15 31 すなわち、わたしがユダヤにおる不信の徒から救われ、そしてエルサレムに対するわたしの奉仕が聖徒たちに受けいれられるものとなるように、
28301 45 15 32 また、神の御旨により、喜びをもってあなたがたの所に行き、共になぐさめ合うことができるように祈ってもらいたい。
28302 45 15 33 どうか、平和の神があなたがた一同と共にいますように、アァメン。
28303 45 16 1 ケンクレヤにある教会の執事、わたしたちの姉妹フィベを、あなたがたに紹介する。
28304 45 16 2 どうか、聖徒たるにふさわしく、主にあって彼女を迎え、そして、彼女があなたがたにしてもらいたいことがあれば、何事でも、助けてあげてほしい。彼女は多くの人の援助者であり、またわたし自身の援助者でもあった。
28305 45 16 3 キリスト・イエスにあるわたしの同労者プリスカとアクラとに、よろしく言ってほしい。
28306 45 16 4 彼らは、わたしのいのちを救うために、自分の首をさえ差し出してくれたのである。彼らに対しては、わたしだけではなく、異邦人のすべての教会も、感謝している。
28307 45 16 5 また、彼らの家の教会にも、よろしく。わたしの愛するエパネトに、よろしく言ってほしい。彼は、キリストにささげられたアジヤの初穂である。
28308 45 16 6 あなたがたのために一方ならず労苦したマリヤに、よろしく言ってほしい。
28309 45 16 7 わたしの同族であって、わたしと一緒に投獄されたことのあるアンデロニコとユニアスとに、よろしく。彼らは使徒たちの間で評判がよく、かつ、わたしよりも先にキリストを信じた人々である。
28310 45 16 8 主にあって愛するアムプリアトに、よろしく。
28311 45 16 9 キリストにあるわたしたちの同労者ウルバノと、愛するスタキスとに、よろしく。
28312 45 16 10 キリストにあって錬達なアペレに、よろしく。アリストブロの家の人たちに、よろしく。
28313 45 16 11 同族のヘロデオンに、よろしく。ナルキソの家の、主にある人たちに、よろしく。
28314 45 16 12 主にあって労苦しているツルパナとツルポサとに、よろしく。主にあって一方ならず労苦した愛するペルシスに、よろしく。
28315 45 16 13 主にあって選ばれたルポスと、彼の母とに、よろしく。彼の母は、わたしの母でもある。
28316 45 16 14 アスンクリト、フレゴン、ヘルメス、パトロバ、ヘルマスおよび彼らと一緒にいる兄弟たちに、よろしく。
28317 45 16 15 ピロロゴとユリヤとに、またネレオとその姉妹とに、オルンパに、また彼らと一緒にいるすべての聖徒たちに、よろしく言ってほしい。
28318 45 16 16 きよい接吻をもって、互にあいさつをかわしなさい。キリストのすべての教会から、あなたがたによろしく。
28319 45 16 17 さて兄弟たちよ。あなたがたに勧告する。あなたがたが学んだ教にそむいて分裂を引き起し、つまずきを与える人々を警戒し、かつ彼らから遠ざかるがよい。
28320 45 16 18 なぜなら、こうした人々は、わたしたちの主キリストに仕えないで、自分の腹に仕え、そして甘言と美辞とをもって、純朴な人々の心を欺く者どもだからである。
28321 45 16 19 あなたがたの従順は、すべての人々の耳に達しており、それをあなたがたのために喜んでいる。しかし、わたしの願うところは、あなたがたが善にさとく、悪には、うとくあってほしいことである。
28322 45 16 20 平和の神は、サタンをすみやかにあなたがたの足の下に踏み砕くであろう。
28323 45 16 21 わたしの同労者テモテおよび同族のルキオ、ヤソン、ソシパテロから、あなたがたによろしく。
28324 45 16 22 (この手紙を筆記したわたしテルテオも、主にあってあなたがたにあいさつの言葉をおくる。)
28325 45 16 23 わたしと全教会との家主ガイオから、あなたがたによろしく。市の会計係エラストと兄弟クワルトから、あなたがたによろしく。
28326 45 16 24 わたしたちの主イエス・キリストの恵みが、あなたがた一同と共にあるように、アァメン。〕
28327 45 16 27 すなわち、唯一の知恵深き神に、イエス・キリストにより、栄光が永遠より永遠にあるように、アァメン。
28328 46 1 1 神の御旨により召されてキリスト・イエスの使徒となったパウロと、兄弟ソステネから、
28329 46 1 2 コリントにある神の教会、すなわち、わたしたちの主イエス・キリストの御名を至る所で呼び求めているすべての人々と共に、キリスト・イエスにあってきよめられ、聖徒として召されたかたがたへ。このキリストは、わたしたちの主であり、また彼らの主であられる。
28330 46 1 3 わたしたちの父なる神と主イエス・キリストから、恵みと平安とが、あなたがたにあるように。
28331 46 1 4 わたしは、あなたがたがキリスト・イエスにあって与えられた神の恵みを思って、いつも神に感謝している。
28332 46 1 5 あなたがたはキリストにあって、すべてのことに、すなわち、すべての言葉にもすべての知識にも恵まれ、
28333 46 1 6 キリストのためのあかしが、あなたがたのうちに確かなものとされ、
28334 46 1 7 こうして、あなたがたは恵みの賜物にいささかも欠けることがなく、わたしたちの主イエス・キリストの現れるのを待ち望んでいる。
28335 46 1 8 主もまた、あなたがたを最後まで堅くささえて、わたしたちの主イエス・キリストの日に、責められるところのない者にして下さるであろう。
28336 46 1 9 神は真実なかたである。あなたがたは神によって召され、御子、わたしたちの主イエス・キリストとの交わりに、はいらせていただいたのである。
28337 46 1 10 さて兄弟たちよ。わたしたちの主イエス・キリストの名によって、あなたがたに勧める。みな語ることを一つにし、お互の間に分争がないようにし、同じ心、同じ思いになって、堅く結び合っていてほしい。
28338 46 1 11 わたしの兄弟たちよ。実は、クロエの家の者たちから、あなたがたの間に争いがあると聞かされている。
28339 46 1 12 はっきり言うと、あなたがたがそれぞれ、「わたしはパウロにつく」「わたしはアポロに」「わたしはケパに」「わたしはキリストに」と言い合っていることである。
28340 46 1 13 キリストは、いくつにも分けられたのか。パウロは、あなたがたのために十字架につけられたことがあるのか。それとも、あなたがたは、パウロの名によってバプテスマを受けたのか。
28341 46 1 14 わたしは感謝しているが、クリスポとガイオ以外には、あなたがたのうちのだれにも、バプテスマを授けたことがない。
28342 46 1 15 それはあなたがたがわたしの名によってバプテスマを受けたのだと、だれにも言われることのないためである。
28343 46 1 16 もっとも、ステパナの家の者たちには、バプテスマを授けたことがある。しかし、そのほかには、だれにも授けた覚えがない。
28344 46 1 17 いったい、キリストがわたしをつかわされたのは、バプテスマを授けるためではなく、福音を宣べ伝えるためであり、しかも知恵の言葉を用いずに宣べ伝えるためであった。それは、キリストの十字架が無力なものになってしまわないためなのである。
28345 46 1 18 十字架の言は、滅び行く者には愚かであるが、救にあずかるわたしたちには、神の力である。
28346 46 1 19 すなわち、聖書に、「わたしは知者の知恵を滅ぼし、賢い者の賢さをむなしいものにする」
28347 46 1 20 知者はどこにいるか。学者はどこにいるか。この世の論者はどこにいるか。神はこの世の知恵を、愚かにされたではないか。
28348 46 1 21 この世は、自分の知恵によって神を認めるに至らなかった。それは、神の知恵にかなっている。そこで神は、宣教の愚かさによって、信じる者を救うこととされたのである。
28349 46 1 22 ユダヤ人はしるしを請い、ギリシヤ人は知恵を求める。
28350 46 1 23 しかしわたしたちは、十字架につけられたキリストを宣べ伝える。このキリストは、ユダヤ人にはつまずかせるもの、異邦人には愚かなものであるが、
28351 46 1 24 召された者自身にとっては、ユダヤ人にもギリシヤ人にも、神の力、神の知恵たるキリストなのである。
28352 46 1 25 神の愚かさは人よりも賢く、神の弱さは人よりも強いからである。
28353 46 1 26 兄弟たちよ。あなたがたが召された時のことを考えてみるがよい。人間的には、知恵のある者が多くはなく、権力のある者も多くはなく、身分の高い者も多くはいない。
28354 46 1 27 それだのに神は、知者をはずかしめるために、この世の愚かな者を選び、強い者をはずかしめるために、この世の弱い者を選び、
28355 46 1 28 有力な者を無力な者にするために、この世で身分の低い者や軽んじられている者、すなわち、無きに等しい者を、あえて選ばれたのである。
28356 46 1 29 それは、どんな人間でも、神のみまえに誇ることがないためである。
28357 46 1 30 あなたがたがキリスト・イエスにあるのは、神によるのである。キリストは神に立てられて、わたしたちの知恵となり、義と聖とあがないとになられたのである。
28358 46 1 31 それは、「誇る者は主を誇れ」と書いてあるとおりである。
28359 46 2 1 兄弟たちよ。わたしもまた、あなたがたの所に行ったとき、神のあかしを宣べ伝えるのに、すぐれた言葉や知恵を用いなかった。
28360 46 2 2 なぜなら、わたしはイエス・キリスト、しかも十字架につけられたキリスト以外のことは、あなたがたの間では何も知るまいと、決心したからである。
28361 46 2 3 わたしがあなたがたの所に行った時には、弱くかつ恐れ、ひどく不安であった。
28362 46 2 4 そして、わたしの言葉もわたしの宣教も、巧みな知恵の言葉によらないで、霊と力との証明によったのである。
28363 46 2 5 それは、あなたがたの信仰が人の知恵によらないで、神の力によるものとなるためであった。
28364 46 2 6 しかしわたしたちは、円熟している者の間では、知恵を語る。この知恵は、この世の者の知恵ではなく、この世の滅び行く支配者たちの知恵でもない。
28365 46 2 7 むしろ、わたしたちが語るのは、隠された奥義としての神の知恵である。それは神が、わたしたちの受ける栄光のために、世の始まらぬ先から、あらかじめ定めておかれたものである。
28366 46 2 8 この世の支配者たちのうちで、この知恵を知っていた者は、ひとりもいなかった。もし知っていたなら、栄光の主を十字架につけはしなかったであろう。
28367 46 2 9 しかし、聖書に書いてあるとおり、「目がまだ見ず、耳がまだ聞かず、人の心に思い浮びもしなかったことを、神は、ご自分を愛する者たちのために備えられた」
28368 46 2 10 そして、それを神は、御霊によってわたしたちに啓示して下さったのである。御霊はすべてのものをきわめ、神の深みまでもきわめるのだからである。
28369 46 2 11 いったい、人間の思いは、その内にある人間の霊以外に、だれが知っていようか。それと同じように神の思いも、神の御霊以外には、知るものはない。
28370 46 2 12 ところが、わたしたちが受けたのは、この世の霊ではなく、神からの霊である。それによって、神から賜わった恵みを悟るためである。
28371 46 2 13 この賜物について語るにも、わたしたちは人間の知恵が教える言葉を用いないで、御霊の教える言葉を用い、霊によって霊のことを解釈するのである。
28372 46 2 14 生れながらの人は、神の御霊の賜物を受けいれない。それは彼には愚かなものだからである。また、御霊によって判断されるべきであるから、彼はそれを理解することができない。
28373 46 2 15 しかし、霊の人は、すべてのものを判断するが、自分自身はだれからも判断されることはない。
28374 46 2 16 「だれが主の思いを知って、彼を教えることができようか」。しかし、わたしたちはキリストの思いを持っている。
28375 46 3 1 兄弟たちよ。わたしはあなたがたには、霊の人に対するように話すことができず、むしろ、肉に属する者、すなわち、キリストにある幼な子に話すように話した。
28376 46 3 2 あなたがたに乳を飲ませて、堅い食物は与えなかった。食べる力が、まだあなたがたになかったからである。今になってもその力がない。
28377 46 3 3 あなたがたはまだ、肉の人だからである。あなたがたの間に、ねたみや争いがあるのは、あなたがたが肉の人であって、普通の人間のように歩いているためではないか。
28378 46 3 4 すなわち、ある人は「わたしはパウロに」と言い、ほかの人は「わたしはアポロに」と言っているようでは、あなたがたは普通の人間ではないか。
28379 46 3 5 アポロは、いったい、何者か。また、パウロは何者か。あなたがたを信仰に導いた人にすぎない。しかもそれぞれ、主から与えられた分に応じて仕えているのである。
28380 46 3 6 わたしは植え、アポロは水をそそいだ。しかし成長させて下さるのは、神である。
28381 46 3 7 だから、植える者も水をそそぐ者も、ともに取るに足りない。大事なのは、成長させて下さる神のみである。
28382 46 3 8 植える者と水をそそぐ者とは一つであって、それぞれその働きに応じて報酬を得るであろう。
28383 46 3 9 わたしたちは神の同労者である。あなたがたは神の畑であり、神の建物である。
28384 46 3 10 神から賜わった恵みによって、わたしは熟練した建築師のように、土台をすえた。そして他の人がその上に家を建てるのである。しかし、どういうふうに建てるか、それぞれ気をつけるがよい。
28385 46 3 11 なぜなら、すでにすえられている土台以外のものをすえることは、だれにもできない。そして、この土台はイエス・キリストである。
28386 46 3 12 この土台の上に、だれかが金、銀、宝石、木、草、または、わらを用いて建てるならば、
28387 46 3 13 それぞれの仕事は、はっきりとわかってくる。すなわち、かの日は火の中に現れて、それを明らかにし、またその火は、それぞれの仕事がどんなものであるかを、ためすであろう。
28388 46 3 14 もしある人の建てた仕事がそのまま残れば、その人は報酬を受けるが、
28389 46 3 15 その仕事が焼けてしまえば、損失を被るであろう。しかし彼自身は、火の中をくぐってきた者のようにではあるが、救われるであろう。
28390 46 3 16 あなたがたは神の宮であって、神の御霊が自分のうちに宿っていることを知らないのか。
28391 46 3 17 もし人が、神の宮を破壊するなら、神はその人を滅ぼすであろう。なぜなら、神の宮は聖なるものであり、そして、あなたがたはその宮なのだからである。
28392 46 3 18 だれも自分を欺いてはならない。もしあなたがたのうちに、自分がこの世の知者だと思う人がいるなら、その人は知者になるために愚かになるがよい。
28393 46 3 19 なぜなら、この世の知恵は、神の前では愚かなものだからである。「神は、知者たちをその悪知恵によって捕える」と書いてあり、
28394 46 3 20 更にまた、「主は、知者たちの論議のむなしいことをご存じである」と書いてある。
28395 46 3 21 だから、だれも人間を誇ってはいけない。すべては、あなたがたのものなのである。
28396 46 3 22 パウロも、アポロも、ケパも、世界も、生も、死も、現在のものも、将来のものも、ことごとく、あなたがたのものである。
28397 46 3 23 そして、あなたがたはキリストのもの、キリストは神のものである。
28398 46 4 1 このようなわけだから、人はわたしたちを、キリストに仕える者、神の奥義を管理している者と見るがよい。
28399 46 4 2 この場合、管理者に要求されているのは、忠実であることである。
28400 46 4 3 わたしはあなたがたにさばかれたり、人間の裁判にかけられたりしても、なんら意に介しない。いや、わたしは自分をさばくこともしない。
28401 46 4 4 わたしは自ら省みて、なんらやましいことはないが、それで義とされているわけではない。わたしをさばくかたは、主である。
28402 46 4 5 だから、主がこられるまでは、何事についても、先走りをしてさばいてはいけない。主は暗い中に隠れていることを明るみに出し、心の中で企てられていることを、あらわにされるであろう。その時には、神からそれぞれほまれを受けるであろう。
28403 46 4 6 兄弟たちよ。これらのことをわたし自身とアポロとに当てはめて言って聞かせたが、それはあなたがたが、わたしたちを例にとって、「しるされている定めを越えない」ことを学び、ひとりの人をあがめ、ほかの人を見さげて高ぶることのないためである。
28404 46 4 7 いったい、あなたを偉くしているのは、だれなのか。あなたの持っているもので、もらっていないものがあるか。もしもらっているなら、なぜもらっていないもののように誇るのか。
28405 46 4 8 あなたがたは、すでに満腹しているのだ。すでに富み栄えているのだ。わたしたちを差しおいて、王になっているのだ。ああ、王になっていてくれたらと思う。そうであったなら、わたしたちも、あなたがたと共に王になれたであろう。
28406 46 4 9 わたしはこう考える。神はわたしたち使徒を死刑囚のように、最後に出場する者として引き出し、こうしてわたしたちは、全世界に、天使にも人々にも見せ物にされたのだ。
28407 46 4 10 わたしたちはキリストのゆえに愚かな者となり、あなたがたはキリストにあって賢い者となっている。わたしたちは弱いが、あなたがたは強い。あなたがたは尊ばれ、わたしたちは卑しめられている。
28408 46 4 11 今の今まで、わたしたちは飢え、かわき、裸にされ、打たれ、宿なしであり、
28409 46 4 12 苦労して自分の手で働いている。はずかしめられては祝福し、迫害されては耐え忍び、
28410 46 4 13 ののしられては優しい言葉をかけている。わたしたちは今に至るまで、この世のちりのように、人間のくずのようにされている。
28411 46 4 14 わたしがこのようなことを書くのは、あなたがたをはずかしめるためではなく、むしろ、わたしの愛児としてさとすためである。
28412 46 4 15 たといあなたがたに、キリストにある養育掛が一万人あったとしても、父が多くあるのではない。キリスト・イエスにあって、福音によりあなたがたを生んだのは、わたしなのである。
28413 46 4 16 そこで、あなたがたに勧める。わたしにならう者となりなさい。
28414 46 4 17 このことのために、わたしは主にあって愛する忠実なわたしの子テモテを、あなたがたの所につかわした。彼は、キリスト・イエスにおけるわたしの生活のしかたを、わたしが至る所の教会で教えているとおりに、あなたがたに思い起させてくれるであろう。
28415 46 4 18 しかしある人々は、わたしがあなたがたの所に来ることはあるまいとみて、高ぶっているということである。
28416 46 4 19 しかし主のみこころであれば、わたしはすぐにでもあなたがたの所に行って、高ぶっている者たちの言葉ではなく、その力を見せてもらおう。
28417 46 4 20 神の国は言葉ではなく、力である。
28418 46 4 21 あなたがたは、どちらを望むのか。わたしがむちをもって、あなたがたの所に行くことか、それとも、愛と柔和な心とをもって行くことであるか。
28419 46 5 1 現に聞くところによると、あなたがたの間に不品行な者があり、しかもその不品行は、異邦人の間にもないほどのもので、ある人がその父の妻と一緒に住んでいるということである。
28420 46 5 2 それだのに、なお、あなたがたは高ぶっている。むしろ、そんな行いをしている者が、あなたがたの中から除かれねばならないことを思って、悲しむべきではないか。
28421 46 5 3 しかし、わたし自身としては、からだは離れていても、霊では一緒にいて、その場にいる者のように、そんな行いをした者を、すでにさばいてしまっている。
28422 46 5 4 すなわち、主イエスの名によって、あなたがたもわたしの霊も共に、わたしたちの主イエスの権威のもとに集まって、
28423 46 5 5 彼の肉が滅ぼされても、その霊が主のさばきの日に救われるように、彼をサタンに引き渡してしまったのである。
28424 46 5 6 あなたがたが誇っているのは、よろしくない。あなたがたは、少しのパン種が粉のかたまり全体をふくらませることを、知らないのか。
28425 46 5 7 新しい粉のかたまりになるために、古いパン種を取り除きなさい。あなたがたは、事実パン種のない者なのだから。わたしたちの過越の小羊であるキリストは、すでにほふられたのだ。
28426 46 5 8 ゆえに、わたしたちは、古いパン種や、また悪意と邪悪とのパン種を用いずに、パン種のはいっていない純粋で真実なパンをもって、祭をしようではないか。
28427 46 5 9 わたしは前の手紙で、不品行な者たちと交際してはいけないと書いたが、
28428 46 5 10 それは、この世の不品行な者、貪欲な者、略奪をする者、偶像礼拝をする者などと全然交際してはいけないと、言ったのではない。もしそうだとしたら、あなたがたはこの世から出て行かねばならないことになる。
28429 46 5 11 しかし、わたしが実際に書いたのは、兄弟と呼ばれる人で、不品行な者、貪欲な者、偶像礼拝をする者、人をそしる者、酒に酔う者、略奪をする者があれば、そんな人と交際をしてはいけない、食事を共にしてもいけない、ということであった。
28430 46 5 12 外の人たちをさばくのは、わたしのすることであろうか。あなたがたのさばくべき者は、内の人たちではないか。外の人たちは、神がさばくのである。
28431 46 5 13 その悪人を、あなたがたの中から除いてしまいなさい。
28432 46 6 1 あなたがたの中のひとりが、仲間の者と何か争いを起した場合、それを聖徒に訴えないで、正しくない者に訴え出るようなことをするのか。
28433 46 6 2 それとも、聖徒は世をさばくものであることを、あなたがたは知らないのか。そして、世があなたがたによってさばかれるべきであるのに、きわめて小さい事件でもさばく力がないのか。
28434 46 6 3 あなたがたは知らないのか、わたしたちは御使をさえさばく者である。ましてこの世の事件などは、いうまでもないではないか。
28435 46 6 4 それだのに、この世の事件が起ると、教会で軽んじられている人たちを、裁判の席につかせるのか。
28436 46 6 5 わたしがこう言うのは、あなたがたをはずかしめるためである。いったい、あなたがたの中には、兄弟の間の争いを仲裁することができるほどの知者は、ひとりもいないのか。
28437 46 6 6 しかるに、兄弟が兄弟を訴え、しかもそれを不信者の前に持ち出すのか。
28438 46 6 7 そもそも、互に訴え合うこと自体が、すでにあなたがたの敗北なのだ。なぜ、むしろ不義を受けないのか。なぜ、むしろだまされていないのか。
28439 46 6 8 しかるに、あなたがたは不義を働き、だまし取り、しかも兄弟に対してそうしているのである。
28440 46 6 9 それとも、正しくない者が神の国をつぐことはないのを、知らないのか。まちがってはいけない。不品行な者、偶像を礼拝する者、姦淫をする者、男娼となる者、男色をする者、盗む者、
28441 46 6 10 貪欲な者、酒に酔う者、そしる者、略奪する者は、いずれも神の国をつぐことはないのである。
28442 46 6 11 あなたがたの中には、以前はそんな人もいた。しかし、あなたがたは、主イエス・キリストの名によって、またわたしたちの神の霊によって、洗われ、きよめられ、義とされたのである。
28443 46 6 12 すべてのことは、わたしに許されている。しかし、すべてのことが益になるわけではない。すべてのことは、わたしに許されている。しかし、わたしは何ものにも支配されることはない。
28444 46 6 13 食物は腹のため、腹は食物のためである。しかし神は、それもこれも滅ぼすであろう。からだは不品行のためではなく、主のためであり、主はからだのためである。
28445 46 6 14 そして、神は主をよみがえらせたが、その力で、わたしたちをもよみがえらせて下さるであろう。
28446 46 6 15 あなたがたは自分のからだがキリストの肢体であることを、知らないのか。それだのに、キリストの肢体を取って遊女の肢体としてよいのか。断じていけない。
28447 46 6 16 それとも、遊女につく者はそれと一つのからだになることを、知らないのか。「ふたりの者は一体となるべきである」とあるからである。
28448 46 6 17 しかし主につく者は、主と一つの霊になるのである。
28449 46 6 18 不品行を避けなさい。人の犯すすべての罪は、からだの外にある。しかし不品行をする者は、自分のからだに対して罪を犯すのである。
28450 46 6 19 あなたがたは知らないのか。自分のからだは、神から受けて自分の内に宿っている聖霊の宮であって、あなたがたは、もはや自分自身のものではないのである。
28451 46 6 20 あなたがたは、代価を払って買いとられたのだ。それだから、自分のからだをもって、神の栄光をあらわしなさい。
28452 46 7 1 さて、あなたがたが書いてよこした事について答えると、男子は婦人にふれないがよい。
28453 46 7 2 しかし、不品行に陥ることのないために、男子はそれぞれ自分の妻を持ち、婦人もそれぞれ自分の夫を持つがよい。
28454 46 7 3 夫は妻にその分を果し、妻も同様に夫にその分を果すべきである。
28455 46 7 4 妻は自分のからだを自由にすることはできない。それができるのは夫である。夫も同様に自分のからだを自由にすることはできない。それができるのは妻である。
28456 46 7 5 互に拒んではいけない。ただし、合意の上で祈に専心するために、しばらく相別れ、それからまた一緒になることは、さしつかえない。そうでないと、自制力のないのに乗じて、サタンがあなたがたを誘惑するかも知れない。
28457 46 7 6 以上のことは、譲歩のつもりで言うのであって、命令するのではない。
28458 46 7 7 わたしとしては、みんなの者がわたし自身のようになってほしい。しかし、ひとりびとり神からそれぞれの賜物をいただいていて、ある人はこうしており、他の人はそうしている。
28459 46 7 8 次に、未婚者たちとやもめたちとに言うが、わたしのように、ひとりでおれば、それがいちばんよい。
28460 46 7 9 しかし、もし自制することができないなら、結婚するがよい。情の燃えるよりは、結婚する方が、よいからである。
28461 46 7 10 更に、結婚している者たちに命じる。命じるのは、わたしではなく主であるが、妻は夫から別れてはいけない。
28462 46 7 11 (しかし、万一別れているなら、結婚しないでいるか、それとも夫と和解するかしなさい)。また夫も妻と離婚してはならない。
28463 46 7 12 そのほかの人々に言う。これを言うのは、主ではなく、わたしである。ある兄弟に不信者の妻があり、そして共にいることを喜んでいる場合には、離婚してはいけない。
28464 46 7 13 また、ある婦人の夫が不信者であり、そして共にいることを喜んでいる場合には、離婚してはいけない。
28465 46 7 14 なぜなら、不信者の夫は妻によってきよめられており、また、不信者の妻も夫によってきよめられているからである。もしそうでなければ、あなたがたの子は汚れていることになるが、実際はきよいではないか。
28466 46 7 15 しかし、もし不信者の方が離れて行くのなら、離れるままにしておくがよい。兄弟も姉妹も、こうした場合には、束縛されてはいない。神は、あなたがたを平和に暮させるために、召されたのである。
28467 46 7 16 なぜなら、妻よ、あなたが夫を救いうるかどうか、どうしてわかるか。また、夫よ、あなたも妻を救いうるかどうか、どうしてわかるか。
28468 46 7 17 ただ、各自は、主から賜わった分に応じ、また神に召されたままの状態にしたがって、歩むべきである。これが、すべての教会に対してわたしの命じるところである。
28469 46 7 18 召されたとき割礼を受けていたら、その跡をなくそうとしないがよい。また、召されたとき割礼を受けていなかったら、割礼を受けようとしないがよい。
28470 46 7 19 割礼があってもなくても、それは問題ではない。大事なのは、ただ神の戒めを守ることである。
28471 46 7 20 各自は、召されたままの状態にとどまっているべきである。
28472 46 7 21 召されたとき奴隷であっても、それを気にしないがよい。しかし、もし自由の身になりうるなら、むしろ自由になりなさい。
28473 46 7 22 主にあって召された奴隷は、主によって自由人とされた者であり、また、召された自由人はキリストの奴隷なのである。
28474 46 7 23 あなたがたは、代価を払って買いとられたのだ。人の奴隷となってはいけない。
28475 46 7 24 兄弟たちよ。各自は、その召されたままの状態で、神のみまえにいるべきである。
28476 46 7 25 おとめのことについては、わたしは主の命令を受けてはいないが、主のあわれみにより信任を受けている者として、意見を述べよう。
28477 46 7 26 わたしはこう考える。現在迫っている危機のゆえに、人は現状にとどまっているがよい。
28478 46 7 27 もし妻に結ばれているなら、解こうとするな。妻に結ばれていないなら、妻を迎えようとするな。
28479 46 7 28 しかし、たとい結婚しても、罪を犯すのではない。また、おとめが結婚しても、罪を犯すのではない。ただ、それらの人々はその身に苦難を受けるであろう。わたしは、あなたがたを、それからのがれさせたいのだ。
28480 46 7 29 兄弟たちよ。わたしの言うことを聞いてほしい。時は縮まっている。今からは妻のある者はないもののように、
28481 46 7 30 泣く者は泣かないもののように、喜ぶ者は喜ばないもののように、買う者は持たないもののように、
28482 46 7 31 世と交渉のある者は、それに深入りしないようにすべきである。なぜなら、この世の有様は過ぎ去るからである。
28483 46 7 32 わたしはあなたがたが、思い煩わないようにしていてほしい。未婚の男子は主のことに心をくばって、どうかして主を喜ばせようとするが、
28484 46 7 33 結婚している男子はこの世のことに心をくばって、どうかして妻を喜ばせようとして、その心が分れるのである。
28485 46 7 34 未婚の婦人とおとめとは、主のことに心をくばって、身も魂もきよくなろうとするが、結婚した婦人はこの世のことに心をくばって、どうかして夫を喜ばせようとする。
28486 46 7 35 わたしがこう言うのは、あなたがたの利益になると思うからであって、あなたがたを束縛するためではない。そうではなく、正しい生活を送って、余念なく主に奉仕させたいからである。
28487 46 7 36 もしある人が、相手のおとめに対して、情熱をいだくようになった場合、それは適当でないと思いつつも、やむを得なければ、望みどおりにしてもよい。それは罪を犯すことではない。ふたりは結婚するがよい。
28488 46 7 37 しかし、彼が心の内で堅く決心していて、無理をしないで自分の思いを制することができ、その上で、相手のおとめをそのままにしておこうと、心の中で決めたなら、そうしてもよい。
28489 46 7 38 だから、相手のおとめと結婚することはさしつかえないが、結婚しない方がもっとよい。
28490 46 7 39 妻は夫が生きている間は、その夫につながれている。夫が死ねば、望む人と結婚してもさしつかえないが、それは主にある者とに限る。
28491 46 7 40 しかし、わたしの意見では、そのままでいたなら、もっと幸福である。わたしも神の霊を受けていると思う。
28492 46 8 1 偶像への供え物について答えると、「わたしたちはみな知識を持っている」ことは、わかっている。しかし、知識は人を誇らせ、愛は人の徳を高める。
28493 46 8 2 もし人が、自分は何か知っていると思うなら、その人は、知らなければならないほどの事すら、まだ知っていない。
28494 46 8 3 しかし、人が神を愛するなら、その人は神に知られているのである。
28495 46 8 4 さて、偶像への供え物を食べることについては、わたしたちは、偶像なるものは実際は世に存在しないこと、また、唯一の神のほかには神がないことを、知っている。
28496 46 8 5 というのは、たとい神々といわれるものが、あるいは天に、あるいは地にあるとしても、そして、多くの神、多くの主があるようではあるが、
28497 46 8 6 わたしたちには、父なる唯一の神のみがいますのである。万物はこの神から出て、わたしたちもこの神に帰する。また、唯一の主イエス・キリストのみがいますのである。万物はこの主により、わたしたちもこの主によっている。
28498 46 8 7 しかし、この知識をすべての人が持っているのではない。ある人々は、偶像についての、これまでの習慣上、偶像への供え物として、それを食べるが、彼らの良心が、弱いために汚されるのである。
28499 46 8 8 食物は、わたしたちを神に導くものではない。食べなくても損はないし、食べても益にはならない。
28500 46 8 9 しかし、あなたがたのこの自由が、弱い者たちのつまずきにならないように、気をつけなさい。
28501 46 8 10 なぜなら、ある人が、知識のあるあなたが偶像の宮で食事をしているのを見た場合、その人の良心が弱いため、それに「教育されて」、偶像への供え物を食べるようにならないだろうか。
28502 46 8 11 するとその弱い人は、あなたの知識によって滅びることになる。この弱い兄弟のためにも、キリストは死なれたのである。
28503 46 8 12 このようにあなたがたが、兄弟たちに対して罪を犯し、その弱い良心を痛めるのは、キリストに対して罪を犯すことなのである。
28504 46 8 13 だから、もし食物がわたしの兄弟をつまずかせるなら、兄弟をつまずかせないために、わたしは永久に、断じて肉を食べることはしない。
28505 46 9 1 わたしは自由な者ではないか。使徒ではないか。わたしたちの主イエスを見たではないか。あなたがたは、主にあるわたしの働きの実ではないか。
28506 46 9 2 わたしは、ほかの人に対しては使徒でないとしても、あなたがたには使徒である。あなたがたが主にあることは、わたしの使徒職の印なのである。
28507 46 9 3 わたしの批判者たちに対する弁明は、これである。
28508 46 9 4 わたしたちには、飲み食いをする権利がないのか。
28509 46 9 5 わたしたちには、ほかの使徒たちや主の兄弟たちやケパのように、信者である妻を連れて歩く権利がないのか。
28510 46 9 6 それとも、わたしとバルナバとだけには、労働をせずにいる権利がないのか。
28511 46 9 7 いったい、自分で費用を出して軍隊に加わる者があろうか。ぶどう畑を作っていて、その実を食べない者があろうか。また、羊を飼っていて、その乳を飲まない者があろうか。
28512 46 9 8 わたしは、人間の考えでこう言うのではない。律法もまた、そのように言っているではないか。
28513 46 9 9 すなわち、モーセの律法に、「穀物をこなしている牛に、くつこをかけてはならない」と書いてある。神は、牛のことを心にかけておられるのだろうか。
28514 46 9 10 それとも、もっぱら、わたしたちのために言っておられるのか。もちろん、それはわたしたちのためにしるされたのである。すなわち、耕す者は望みをもって耕し、穀物をこなす者は、その分け前をもらう望みをもってこなすのである。
28515 46 9 11 もしわたしたちが、あなたがたのために霊のものをまいたのなら、肉のものをあなたがたから刈りとるのは、行き過ぎだろうか。
28516 46 9 12 もしほかの人々が、あなたがたに対するこの権利にあずかっているとすれば、わたしたちはなおさらのことではないか。しかしわたしたちは、この権利を利用せず、かえってキリストの福音の妨げにならないようにと、すべてのことを忍んでいる。
28517 46 9 13 あなたがたは、宮仕えをしている人たちは宮から下がる物を食べ、祭壇に奉仕している人たちは祭壇の供え物の分け前にあずかることを、知らないのか。
28518 46 9 14 それと同様に、主は、福音を宣べ伝えている者たちが福音によって生活すべきことを、定められたのである。
28519 46 9 15 しかしわたしは、これらの権利を一つも利用しなかった。また、自分がそうしてもらいたいから、このように書くのではない。そうされるよりは、死ぬ方がましである。わたしのこの誇は、何者にも奪い去られてはならないのだ。
28520 46 9 16 わたしが福音を宣べ伝えても、それは誇にはならない。なぜなら、わたしは、そうせずにはおれないからである。もし福音を宣べ伝えないなら、わたしはわざわいである。
28521 46 9 17 進んでそれをすれば、報酬を受けるであろう。しかし、進んでしないとしても、それは、わたしにゆだねられた務なのである。
28522 46 9 18 それでは、その報酬はなんであるか。福音を宣べ伝えるのにそれを無代価で提供し、わたしが宣教者として持つ権利を利用しないことである。
28523 46 9 19 わたしは、すべての人に対して自由であるが、できるだけ多くの人を得るために、自ら進んですべての人の奴隷になった。
28524 46 9 20 ユダヤ人には、ユダヤ人のようになった。ユダヤ人を得るためである。律法の下にある人には、わたし自身は律法の下にはないが、律法の下にある者のようになった。律法の下にある人を得るためである。
28525 46 9 21 律法のない人には――わたしは神の律法の外にあるのではなく、キリストの律法の中にあるのだが――律法のない人のようになった。律法のない人を得るためである。
28526 46 9 22 弱い人には弱い者になった。弱い人を得るためである。すべての人に対しては、すべての人のようになった。なんとかして幾人かを救うためである。
28527 46 9 23 福音のために、わたしはどんな事でもする。わたしも共に福音にあずかるためである。
28528 46 9 24 あなたがたは知らないのか。競技場で走る者は、みな走りはするが、賞を得る者はひとりだけである。あなたがたも、賞を得るように走りなさい。
28529 46 9 25 しかし、すべて競技をする者は、何ごとにも節制をする。彼らは朽ちる冠を得るためにそうするが、わたしたちは朽ちない冠を得るためにそうするのである。
28530 46 9 26 そこで、わたしは目標のはっきりしないような走り方をせず、空を打つような拳闘はしない。
28531 46 9 27 すなわち、自分のからだを打ちたたいて服従させるのである。そうしないと、ほかの人に宣べ伝えておきながら、自分は失格者になるかも知れない。
28532 46 10 1 兄弟たちよ。このことを知らずにいてもらいたくない。わたしたちの先祖はみな雲の下におり、みな海を通り、
28533 46 10 2 みな雲の中、海の中で、モーセにつくバプテスマを受けた。
28534 46 10 3 また、みな同じ霊の食物を食べ、
28535 46 10 4 みな同じ霊の飲み物を飲んだ。すなわち、彼らについてきた霊の岩から飲んだのであるが、この岩はキリストにほかならない。
28536 46 10 5 しかし、彼らの中の大多数は、神のみこころにかなわなかったので、荒野で滅ぼされてしまった。
28537 46 10 6 これらの出来事は、わたしたちに対する警告であって、彼らが悪をむさぼったように、わたしたちも悪をむさぼることのないためなのである。
28538 46 10 7 だから、彼らの中のある者たちのように、偶像礼拝者になってはならない。すなわち、「民は座して飲み食いをし、また立って踊り戯れた」と書いてある。
28539 46 10 8 また、ある者たちがしたように、わたしたちは不品行をしてはならない。不品行をしたため倒された者が、一日に二万三千人もあった。
28540 46 10 9 また、ある者たちがしたように、わたしたちは主を試みてはならない。主を試みた者は、へびに殺された。
28541 46 10 10 また、ある者たちがつぶやいたように、つぶやいてはならない。つぶやいた者は、「死の使」に滅ぼされた。
28542 46 10 11 これらの事が彼らに起ったのは、他に対する警告としてであって、それが書かれたのは、世の終りに臨んでいるわたしたちに対する訓戒のためである。
28543 46 10 12 だから、立っていると思う者は、倒れないように気をつけるがよい。
28544 46 10 13 あなたがたの会った試錬で、世の常でないものはない。神は真実である。あなたがたを耐えられないような試錬に会わせることはないばかりか、試錬と同時に、それに耐えられるように、のがれる道も備えて下さるのである。
28545 46 10 14 それだから、愛する者たちよ。偶像礼拝を避けなさい。
28546 46 10 15 賢明なあなたがたに訴える。わたしの言うことを、自ら判断してみるがよい。
28547 46 10 16 わたしたちが祝福する祝福の杯、それはキリストの血にあずかることではないか。わたしたちがさくパン、それはキリストのからだにあずかることではないか。
28548 46 10 17 パンが一つであるから、わたしたちは多くいても、一つのからだなのである。みんなの者が一つのパンを共にいただくからである。
28549 46 10 18 肉によるイスラエルを見るがよい。供え物を食べる人たちは、祭壇にあずかるのではないか。
28550 46 10 19 すると、なんと言ったらよいか。偶像にささげる供え物は、何か意味があるのか。また、偶像は何かほんとうにあるものか。
28551 46 10 20 そうではない。人々が供える物は、悪霊ども、すなわち、神ならぬ者に供えるのである。わたしは、あなたがたが悪霊の仲間になることを望まない。
28552 46 10 21 主の杯と悪霊どもの杯とを、同時に飲むことはできない。主の食卓と悪霊どもの食卓とに、同時にあずかることはできない。
28553 46 10 22 それとも、わたしたちは主のねたみを起そうとするのか。わたしたちは、主よりも強いのだろうか。
28554 46 10 23 すべてのことは許されている。しかし、すべてのことが益になるわけではない。すべてのことは許されている。しかし、すべてのことが人の徳を高めるのではない。
28555 46 10 24 だれでも、自分の益を求めないで、ほかの人の益を求めるべきである。
28556 46 10 25 すべて市場で売られている物は、いちいち良心に問うことをしないで、食べるがよい。
28557 46 10 26 地とそれに満ちている物とは、主のものだからである。
28558 46 10 27 もしあなたがたが、不信者のだれかに招かれて、そこに行こうと思う場合、自分の前に出される物はなんでも、いちいち良心に問うことをしないで、食べるがよい。
28559 46 10 28 しかし、だれかがあなたがたに、これはささげ物の肉だと言ったなら、それを知らせてくれた人のために、また良心のために、食べないがよい。
28560 46 10 29 良心と言ったのは、自分の良心ではなく、他人の良心のことである。なぜなら、わたしの自由が、どうして他人の良心によって左右されることがあろうか。
28561 46 10 30 もしわたしが感謝して食べる場合、その感謝する物について、どうして人のそしりを受けるわけがあろうか。
28562 46 10 31 だから、飲むにも食べるにも、また何事をするにも、すべて神の栄光のためにすべきである。
28563 46 10 32 ユダヤ人にもギリシヤ人にも神の教会にも、つまずきになってはいけない。
28564 46 10 33 わたしもまた、何事にもすべての人に喜ばれるように努め、多くの人が救われるために、自分の益ではなく彼らの益を求めている。
28565 46 11 1 わたしがキリストにならう者であるように、あなたがたもわたしにならう者になりなさい。
28566 46 11 2 あなたがたが、何かにつけわたしを覚えていて、あなたがたに伝えたとおりに言伝えを守っているので、わたしは満足に思う。
28567 46 11 3 しかし、あなたがたに知っていてもらいたい。すべての男のかしらはキリストであり、女のかしらは男であり、キリストのかしらは神である。
28568 46 11 4 祈をしたり預言をしたりする時、かしらに物をかぶる男は、そのかしらをはずかしめる者である。
28569 46 11 5 祈をしたり預言をしたりする時、かしらにおおいをかけない女は、そのかしらをはずかしめる者である。それは、髪をそったのとまったく同じだからである。
28570 46 11 6 もし女がおおいをかけないなら、髪を切ってしまうがよい。髪を切ったりそったりするのが、女にとって恥ずべきことであるなら、おおいをかけるべきである。
28571 46 11 7 男は、神のかたちであり栄光であるから、かしらに物をかぶるべきではない。女は、また男の光栄である。
28572 46 11 8 なぜなら、男が女から出たのではなく、女が男から出たのだからである。
28573 46 11 9 また、男は女のために造られたのではなく、女が男のために造られたのである。
28574 46 11 10 それだから、女は、かしらに権威のしるしをかぶるべきである。それは天使たちのためでもある。
28575 46 11 11 ただ、主にあっては、男なしには女はないし、女なしには男はない。
28576 46 11 12 それは、女が男から出たように、男もまた女から生れたからである。そして、すべてのものは神から出たのである。
28577 46 11 13 あなたがた自身で判断してみるがよい。女がおおいをかけずに神に祈るのは、ふさわしいことだろうか。
28578 46 11 14 自然そのものが教えているではないか。男に長い髪があれば彼の恥になり、
28579 46 11 15 女に長い髪があれば彼女の光栄になるのである。長い髪はおおいの代りに女に与えられているものだからである。
28580 46 11 16 しかし、だれかがそれに反対の意見を持っていても、そんな風習はわたしたちにはなく、神の諸教会にもない。
28581 46 11 17 ところで、次のことを命じるについては、あなたがたをほめるわけにはいかない。というのは、あなたがたの集まりが利益にならないで、かえって損失になっているからである。
28582 46 11 18 まず、あなたがたが教会に集まる時、お互の間に分争があることを、わたしは耳にしており、そしていくぶんか、それを信じている。
28583 46 11 19 たしかに、あなたがたの中でほんとうの者が明らかにされるためには、分派もなければなるまい。
28584 46 11 20 そこで、あなたがたが一緒に集まるとき、主の晩餐を守ることができないでいる。
28585 46 11 21 というのは、食事の際、各自が自分の晩餐をかってに先に食べるので、飢えている人があるかと思えば、酔っている人がある始末である。
28586 46 11 22 あなたがたには、飲み食いをする家がないのか。それとも、神の教会を軽んじ、貧しい人々をはずかしめるのか。わたしはあなたがたに対して、なんと言おうか。あなたがたを、ほめようか。この事では、ほめるわけにはいかない。
28587 46 11 23 わたしは、主から受けたことを、また、あなたがたに伝えたのである。すなわち、主イエスは、渡される夜、パンをとり、
28588 46 11 24 感謝してこれをさき、そして言われた、「これはあなたがたのための、わたしのからだである。わたしを記念するため、このように行いなさい」。
28589 46 11 25 食事ののち、杯をも同じようにして言われた、「この杯は、わたしの血による新しい契約である。飲むたびに、わたしの記念として、このように行いなさい」。
28590 46 11 26 だから、あなたがたは、このパンを食し、この杯を飲むごとに、それによって、主がこられる時に至るまで、主の死を告げ知らせるのである。
28591 46 11 27 だから、ふさわしくないままでパンを食し主の杯を飲む者は、主のからだと血とを犯すのである。
28592 46 11 28 だれでもまず自分を吟味し、それからパンを食べ杯を飲むべきである。
28593 46 11 29 主のからだをわきまえないで飲み食いする者は、その飲み食いによって自分にさばきを招くからである。
28594 46 11 30 あなたがたの中に、弱い者や病人が大ぜいおり、また眠った者も少なくないのは、そのためである。
28595 46 11 31 しかし、自分をよくわきまえておくならば、わたしたちはさばかれることはないであろう。
28596 46 11 32 しかし、さばかれるとすれば、それは、この世と共に罪に定められないために、主の懲らしめを受けることなのである。
28597 46 11 33 それだから、兄弟たちよ。食事のために集まる時には、互に待ち合わせなさい。
28598 46 11 34 もし空腹であったら、さばきを受けに集まることにならないため、家で食べるがよい。そのほかの事は、わたしが行った時に、定めることにしよう。
28599 46 12 1 兄弟たちよ。霊の賜物については、次のことを知らずにいてもらいたくない。
28600 46 12 2 あなたがたがまだ異邦人であった時、誘われるまま、物の言えない偶像のところに引かれて行ったことは、あなたがたの承知しているとおりである。
28601 46 12 3 そこで、あなたがたに言っておくが、神の霊によって語る者はだれも「イエスはのろわれよ」とは言わないし、また、聖霊によらなければ、だれも「イエスは主である」と言うことができない。
28602 46 12 4 霊の賜物は種々あるが、御霊は同じである。
28603 46 12 5 務は種々あるが、主は同じである。
28604 46 12 6 働きは種々あるが、すべてのものの中に働いてすべてのことをなさる神は、同じである。
28605 46 12 7 各自が御霊の現れを賜わっているのは、全体の益になるためである。
28606 46 12 8 すなわち、ある人には御霊によって知恵の言葉が与えられ、ほかの人には、同じ御霊によって知識の言、
28607 46 12 9 またほかの人には、同じ御霊によって信仰、またほかの人には、一つの御霊によっていやしの賜物、
28608 46 12 10 またほかの人には力あるわざ、またほかの人には預言、またほかの人には霊を見わける力、またほかの人には種々の異言、またほかの人には異言を解く力が、与えられている。
28609 46 12 11 すべてこれらのものは、一つの同じ御霊の働きであって、御霊は思いのままに、それらを各自に分け与えられるのである。
28610 46 12 12 からだが一つであっても肢体は多くあり、また、からだのすべての肢体が多くあっても、からだは一つであるように、キリストの場合も同様である。
28611 46 12 13 なぜなら、わたしたちは皆、ユダヤ人もギリシヤ人も、奴隷も自由人も、一つの御霊によって、一つのからだとなるようにバプテスマを受け、そして皆一つの御霊を飲んだからである。
28612 46 12 14 実際、からだは一つの肢体だけではなく、多くのものからできている。
28613 46 12 15 もし足が、わたしは手ではないから、からだに属していないと言っても、それで、からだに属さないわけではない。
28614 46 12 16 また、もし耳が、わたしは目ではないから、からだに属していないと言っても、それで、からだに属さないわけではない。
28615 46 12 17 もしからだ全体が目だとすれば、どこで聞くのか。もし、からだ全体が耳だとすれば、どこでかぐのか。
28616 46 12 18 そこで神は御旨のままに、肢体をそれぞれ、からだに備えられたのである。
28617 46 12 19 もし、すべてのものが一つの肢体なら、どこにからだがあるのか。
28618 46 12 20 ところが実際、肢体は多くあるが、からだは一つなのである。
28619 46 12 21 目は手にむかって、「おまえはいらない」とは言えず、また頭は足にむかって、「おまえはいらない」とも言えない。
28620 46 12 22 そうではなく、むしろ、からだのうちで他よりも弱く見える肢体が、かえって必要なのであり、
28621 46 12 23 からだのうちで、他よりも見劣りがすると思えるところに、ものを着せていっそう見よくする。麗しくない部分はいっそう麗しくするが、
28622 46 12 24 麗しい部分はそうする必要がない。神は劣っている部分をいっそう見よくして、からだに調和をお与えになったのである。
28623 46 12 25 それは、からだの中に分裂がなく、それぞれの肢体が互にいたわり合うためなのである。
28624 46 12 26 もし一つの肢体が悩めば、ほかの肢体もみな共に悩み、一つの肢体が尊ばれると、ほかの肢体もみな共に喜ぶ。
28625 46 12 27 あなたがたはキリストのからだであり、ひとりびとりはその肢体である。
28626 46 12 28 そして、神は教会の中で、人々を立てて、第一に使徒、第二に預言者、第三に教師とし、次に力あるわざを行う者、次にいやしの賜物を持つ者、また補助者、管理者、種々の異言を語る者をおかれた。
28627 46 12 29 みんなが使徒だろうか。みんなが預言者だろうか。みんなが教師だろうか。みんなが力あるわざを行う者だろうか。
28628 46 12 30 みんながいやしの賜物を持っているのだろうか。みんなが異言を語るのだろうか。みんなが異言を解くのだろうか。
28629 46 12 31 だが、あなたがたは、更に大いなる賜物を得ようと熱心に努めなさい。そこで、わたしは最もすぐれた道をあなたがたに示そう。
28630 46 13 1 たといわたしが、人々の言葉や御使たちの言葉を語っても、もし愛がなければ、わたしは、やかましい鐘や騒がしい鐃鉢と同じである。
28631 46 13 2 たといまた、わたしに預言をする力があり、あらゆる奥義とあらゆる知識とに通じていても、また、山を移すほどの強い信仰があっても、もし愛がなければ、わたしは無に等しい。
28632 46 13 3 たといまた、わたしが自分の全財産を人に施しても、また、自分のからだを焼かれるために渡しても、もし愛がなければ、いっさいは無益である。
28633 46 13 4 愛は寛容であり、愛は情深い。また、ねたむことをしない。愛は高ぶらない、誇らない、
28634 46 13 5 不作法をしない、自分の利益を求めない、いらだたない、恨みをいだかない。
28635 46 13 6 不義を喜ばないで真理を喜ぶ。
28636 46 13 7 そして、すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてを耐える。
28637 46 13 8 愛はいつまでも絶えることがない。しかし、預言はすたれ、異言はやみ、知識はすたれるであろう。
28638 46 13 9 なぜなら、わたしたちの知るところは一部分であり、預言するところも一部分にすぎない。
28639 46 13 10 全きものが来る時には、部分的なものはすたれる。
28640 46 13 11 わたしたちが幼な子であった時には、幼な子らしく語り、幼な子らしく感じ、また、幼な子らしく考えていた。しかし、おとなとなった今は、幼な子らしいことを捨ててしまった。
28641 46 13 12 わたしたちは、今は、鏡に映して見るようにおぼろげに見ている。しかしその時には、顔と顔とを合わせて、見るであろう。わたしの知るところは、今は一部分にすぎない。しかしその時には、わたしが完全に知られているように、完全に知るであろう。
28642 46 13 13 このように、いつまでも存続するものは、信仰と希望と愛と、この三つである。このうちで最も大いなるものは、愛である。
28643 46 14 1 愛を追い求めなさい。また、霊の賜物を、ことに預言することを、熱心に求めなさい。
28644 46 14 2 異言を語る者は、人にむかって語るのではなく、神にむかって語るのである。それはだれにもわからない。彼はただ、霊によって奥義を語っているだけである。
28645 46 14 3 しかし預言をする者は、人に語ってその徳を高め、彼を励まし、慰めるのである。
28646 46 14 4 異言を語る者は自分だけの徳を高めるが、預言をする者は教会の徳を高める。
28647 46 14 5 わたしは実際、あなたがたがひとり残らず異言を語ることを望むが、特に預言をしてもらいたい。教会の徳を高めるように異言を解かない限り、異言を語る者よりも、預言をする者の方がまさっている。
28648 46 14 6 だから、兄弟たちよ。たといわたしがあなたがたの所に行って異言を語るとしても、啓示か知識か預言か教かを語らなければ、あなたがたに、なんの役に立つだろうか。
28649 46 14 7 また、笛や立琴のような楽器でも、もしその音に変化がなければ、何を吹いているのか、弾いているのか、どうして知ることができようか。
28650 46 14 8 また、もしラッパがはっきりした音を出さないなら、だれが戦闘の準備をするだろうか。
28651 46 14 9 それと同様に、もしあなたがたが異言ではっきりしない言葉を語れば、どうしてその語ることがわかるだろうか。それでは、空にむかって語っていることになる。
28652 46 14 10 世には多種多様の言葉があるだろうが、意味のないものは一つもない。
28653 46 14 11 もしその言葉の意味がわからないなら、語っている人にとっては、わたしは異国人であり、語っている人も、わたしにとっては異国人である。
28654 46 14 12 だから、あなたがたも、霊の賜物を熱心に求めている以上は、教会の徳を高めるために、それを豊かにいただくように励むがよい。
28655 46 14 13 このようなわけであるから、異言を語る者は、自分でそれを解くことができるように祈りなさい。
28656 46 14 14 もしわたしが異言をもって祈るなら、わたしの霊は祈るが、知性は実を結ばないからである。
28657 46 14 15 すると、どうしたらよいのか。わたしは霊で祈ると共に、知性でも祈ろう。霊でさんびを歌うと共に、知性でも歌おう。
28658 46 14 16 そうでないと、もしあなたが霊で祝福の言葉を唱えても、初心者の席にいる者は、あなたの感謝に対して、どうしてアァメンと言えようか。あなたが何を言っているのか、彼には通じない。
28659 46 14 17 感謝するのは結構だが、それで、ほかの人の徳を高めることにはならない。
28660 46 14 18 わたしは、あなたがたのうちのだれよりも多く異言が語れることを、神に感謝する。
28661 46 14 19 しかし教会では、一万の言葉を異言で語るよりも、ほかの人たちをも教えるために、むしろ五つの言葉を知性によって語る方が願わしい。
28662 46 14 20 兄弟たちよ。物の考えかたでは、子供となってはいけない。悪事については幼な子となるのはよいが、考えかたでは、おとなとなりなさい。
28663 46 14 21 律法にこう書いてある、「わたしは、異国の舌と異国のくちびるとで、この民に語るが、それでも、彼らはわたしに耳を傾けない、と主が仰せになる」。
28664 46 14 22 このように、異言は信者のためではなく未信者のためのしるしであるが、預言は未信者のためではなく信者のためのしるしである。
28665 46 14 23 もし全教会が一緒に集まって、全員が異言を語っているところに、初心者か不信者かがはいってきたら、彼らはあなたがたを気違いだと言うだろう。
28666 46 14 24 しかし、全員が預言をしているところに、不信者か初心者がはいってきたら、彼の良心はみんなの者に責められ、みんなの者にさばかれ、
28667 46 14 25 その心の秘密があばかれ、その結果、ひれ伏して神を拝み、「まことに、神があなたがたのうちにいます」と告白するに至るであろう。
28668 46 14 26 すると、兄弟たちよ。どうしたらよいのか。あなたがたが一緒に集まる時、各自はさんびを歌い、教をなし、啓示を告げ、異言を語り、それを解くのであるが、すべては徳を高めるためにすべきである。
28669 46 14 27 もし異言を語る者があれば、ふたりか、多くて三人の者が、順々に語り、そして、ひとりがそれを解くべきである。
28670 46 14 28 もし解く者がいない時には、教会では黙っていて、自分に対しまた神に対して語っているべきである。
28671 46 14 29 預言をする者の場合にも、ふたりか三人かが語り、ほかの者はそれを吟味すべきである。
28672 46 14 30 しかし、席にいる他の者が啓示を受けた場合には、初めの者は黙るがよい。
28673 46 14 31 あなたがたは、みんなが学びみんなが勧めを受けるために、ひとりずつ残らず預言をすることができるのだから。
28674 46 14 32 かつ、預言者の霊は預言者に服従するものである。
28675 46 14 33 神は無秩序の神ではなく、平和の神である。
28676 46 14 34 婦人たちは教会では黙っていなければならない。彼らは語ることが許されていない。だから、律法も命じているように、服従すべきである。
28677 46 14 35 もし何か学びたいことがあれば、家で自分の夫に尋ねるがよい。教会で語るのは、婦人にとっては恥ずべきことである。
28678 46 14 36 それとも、神の言はあなたがたのところから出たのか。あるいは、あなたがただけにきたのか。
28679 46 14 37 もしある人が、自分は預言者か霊の人であると思っているなら、わたしがあなたがたに書いていることは、主の命令だと認めるべきである。
28680 46 14 38 もしそれを無視する者があれば、その人もまた無視される。
28681 46 14 39 わたしの兄弟たちよ。このようなわけだから、預言することを熱心に求めなさい。また、異言を語ることを妨げてはならない。
28682 46 14 40 しかし、すべてのことを適宜に、かつ秩序を正して行うがよい。
28683 46 15 1 兄弟たちよ。わたしが以前あなたがたに伝えた福音、あなたがたが受けいれ、それによって立ってきたあの福音を、思い起してもらいたい。
28684 46 15 2 もしあなたがたが、いたずらに信じないで、わたしの宣べ伝えたとおりの言葉を固く守っておれば、この福音によって救われるのである。
28685 46 15 3 わたしが最も大事なこととしてあなたがたに伝えたのは、わたし自身も受けたことであった。すなわちキリストが、聖書に書いてあるとおり、わたしたちの罪のために死んだこと、
28686 46 15 4 そして葬られたこと、聖書に書いてあるとおり、三日目によみがえったこと、
28687 46 15 5 ケパに現れ、次に、十二人に現れたことである。
28688 46 15 6 そののち、五百人以上の兄弟たちに、同時に現れた。その中にはすでに眠った者たちもいるが、大多数はいまなお生存している。
28689 46 15 7 そののち、ヤコブに現れ、次に、すべての使徒たちに現れ、
28690 46 15 8 そして最後に、いわば、月足らずに生れたようなわたしにも、現れたのである。
28691 46 15 9 実際わたしは、神の教会を迫害したのであるから、使徒たちの中でいちばん小さい者であって、使徒と呼ばれる値うちのない者である。
28692 46 15 10 しかし、神の恵みによって、わたしは今日あるを得ているのである。そして、わたしに賜わった神の恵みはむだにならず、むしろ、わたしは彼らの中のだれよりも多く働いてきた。しかしそれは、わたし自身ではなく、わたしと共にあった神の恵みである。
28693 46 15 11 とにかく、わたしにせよ彼らにせよ、そのように、わたしたちは宣べ伝えており、そのように、あなたがたは信じたのである。
28694 46 15 12 さて、キリストは死人の中からよみがえったのだと宣べ伝えられているのに、あなたがたの中のある者が、死人の復活などはないと言っているのは、どうしたことか。
28695 46 15 13 もし死人の復活がないならば、キリストもよみがえらなかったであろう。
28696 46 15 14 もしキリストがよみがえらなかったとしたら、わたしたちの宣教はむなしく、あなたがたの信仰もまたむなしい。
28697 46 15 15 すると、わたしたちは神にそむく偽証人にさえなるわけだ。なぜなら、万一死人がよみがえらないとしたら、わたしたちは神が実際よみがえらせなかったはずのキリストを、よみがえらせたと言って、神に反するあかしを立てたことになるからである。
28698 46 15 16 もし死人がよみがえらないなら、キリストもよみがえらなかったであろう。
28699 46 15 17 もしキリストがよみがえらなかったとすれば、あなたがたの信仰は空虚なものとなり、あなたがたは、いまなお罪の中にいることになろう。
28700 46 15 18 そうだとすると、キリストにあって眠った者たちは、滅んでしまったのである。
28701 46 15 19 もしわたしたちが、この世の生活でキリストにあって単なる望みをいだいているだけだとすれば、わたしたちは、すべての人の中で最もあわれむべき存在となる。
28702 46 15 20 しかし事実、キリストは眠っている者の初穂として、死人の中からよみがえったのである。
28703 46 15 21 それは、死がひとりの人によってきたのだから、死人の復活もまた、ひとりの人によってこなければならない。
28704 46 15 22 アダムにあってすべての人が死んでいるのと同じように、キリストにあってすべての人が生かされるのである。
28705 46 15 23 ただ、各自はそれぞれの順序に従わねばならない。最初はキリスト、次に、主の来臨に際してキリストに属する者たち、
28706 46 15 24 それから終末となって、その時に、キリストはすべての君たち、すべての権威と権力とを打ち滅ぼして、国を父なる神に渡されるのである。
28707 46 15 25 なぜなら、キリストはあらゆる敵をその足もとに置く時までは、支配を続けることになっているからである。
28708 46 15 26 最後の敵として滅ぼされるのが、死である。
28709 46 15 27 「神は万物を彼の足もとに従わせた」からである。ところが、万物を従わせたと言われる時、万物を従わせたかたがそれに含まれていないことは、明らかである。
28710 46 15 28 そして、万物が神に従う時には、御子自身もまた、万物を従わせたそのかたに従うであろう。それは、神がすべての者にあって、すべてとなられるためである。
28711 46 15 29 そうでないとすれば、死者のためにバプテスマを受ける人々は、なぜそれをするのだろうか。もし死者が全くよみがえらないとすれば、なぜ人々が死者のためにバプテスマを受けるのか。
28712 46 15 30 また、なんのために、わたしたちはいつも危険を冒しているのか。
28713 46 15 31 兄弟たちよ。わたしたちの主キリスト・イエスにあって、わたしがあなたがたにつき持っている誇にかけて言うが、わたしは日々死んでいるのである。
28714 46 15 32 もし、わたしが人間の考えによってエペソで獣と戦ったとすれば、それはなんの役に立つのか。もし死人がよみがえらないのなら、「わたしたちは飲み食いしようではないか。あすもわからぬいのちなのだ」。
28715 46 15 33 まちがってはいけない。「悪い交わりは、良いならわしをそこなう」。
28716 46 15 34 目ざめて身を正し、罪を犯さないようにしなさい。あなたがたのうちには、神について無知な人々がいる。あなたがたをはずかしめるために、わたしはこう言うのだ。
28717 46 15 35 しかし、ある人は言うだろう。「どんなふうにして、死人がよみがえるのか。どんなからだをして来るのか」。
28718 46 15 36 おろかな人である。あなたのまくものは、死ななければ、生かされないではないか。
28719 46 15 37 また、あなたのまくのは、やがて成るべきからだをまくのではない。麦であっても、ほかの種であっても、ただの種粒にすぎない。
28720 46 15 38 ところが、神はみこころのままに、これにからだを与え、その一つ一つの種にそれぞれのからだをお与えになる。
28721 46 15 39 すべての肉が、同じ肉なのではない。人の肉があり、獣の肉があり、鳥の肉があり、魚の肉がある。
28722 46 15 40 天に属するからだもあれば、地に属するからだもある。天に属するものの栄光は、地に属するものの栄光と違っている。
28723 46 15 41 日の栄光があり、月の栄光があり、星の栄光がある。また、この星とあの星との間に、栄光の差がある。
28724 46 15 42 死人の復活も、また同様である。朽ちるものでまかれ、朽ちないものによみがえり、
28725 46 15 43 卑しいものでまかれ、栄光あるものによみがえり、弱いものでまかれ、強いものによみがえり、
28726 46 15 44 肉のからだでまかれ、霊のからだによみがえるのである。肉のからだがあるのだから、霊のからだもあるわけである。
28727 46 15 45 聖書に「最初の人アダムは生きたものとなった」と書いてあるとおりである。しかし最後のアダムは命を与える霊となった。
28728 46 15 46 最初にあったのは、霊のものではなく肉のものであって、その後に霊のものが来るのである。
28729 46 15 47 第一の人は地から出て土に属し、第二の人は天から来る。
28730 46 15 48 この土に属する人に、土に属している人々は等しく、この天に属する人に、天に属している人々は等しいのである。
28731 46 15 49 すなわち、わたしたちは、土に属している形をとっているのと同様に、また天に属している形をとるであろう。
28732 46 15 50 兄弟たちよ。わたしはこの事を言っておく。肉と血とは神の国を継ぐことができないし、朽ちるものは朽ちないものを継ぐことがない。
28733 46 15 51 ここで、あなたがたに奥義を告げよう。わたしたちすべては、眠り続けるのではない。終りのラッパの響きと共に、またたく間に、一瞬にして変えられる。
28734 46 15 52 というのは、ラッパが響いて、死人は朽ちない者によみがえらされ、わたしたちは変えられるのである。
28735 46 15 53 なぜなら、この朽ちるものは必ず朽ちないものを着、この死ぬものは必ず死なないものを着ることになるからである。
28736 46 15 54 この朽ちるものが朽ちないものを着、この死ぬものが死なないものを着るとき、聖書に書いてある言葉が成就するのである。
28737 46 15 55 「死は勝利にのまれてしまった。死よ、おまえの勝利は、どこにあるのか。死よ、おまえのとげは、どこにあるのか」。
28738 46 15 56 死のとげは罪である。罪の力は律法である。
28739 46 15 57 しかし感謝すべきことには、神はわたしたちの主イエス・キリストによって、わたしたちに勝利を賜わったのである。
28740 46 15 58 だから、愛する兄弟たちよ。堅く立って動かされず、いつも全力を注いで主のわざに励みなさい。主にあっては、あなたがたの労苦がむだになることはないと、あなたがたは知っているからである。
28741 46 16 1 聖徒たちへの献金については、わたしはガラテヤの諸教会に命じておいたが、あなたがたもそのとおりにしなさい。
28742 46 16 2 一週の初めの日ごとに、あなたがたはそれぞれ、いくらでも収入に応じて手もとにたくわえておき、わたしが着いた時になって初めて集めることのないようにしなさい。
28743 46 16 3 わたしが到着したら、あなたがたが選んだ人々に手紙をつけ、あなたがたの贈り物を持たせて、エルサレムに送り出すことにしよう。
28744 46 16 4 もしわたしも行く方がよければ、一緒に行くことになろう。
28745 46 16 5 わたしは、マケドニヤを通過してから、あなたがたのところに行くことになろう。マケドニヤは通過するだけだが、
28746 46 16 6 あなたがたの所では、たぶん滞在するようになり、あるいは冬を過ごすかも知れない。そうなれば、わたしがどこへゆくにしても、あなたがたに送ってもらえるだろう。
28747 46 16 7 わたしは今、あなたがたに旅のついでに会うことは好まない。もし主のお許しがあれば、しばらくあなたがたの所に滞在したいと望んでいる。
28748 46 16 8 しかし五旬節までは、エペソに滞在するつもりだ。というのは、有力な働きの門がわたしのために大きく開かれているし、
28749 46 16 9 また敵対する者も多いからである。
28750 46 16 10 もしテモテが着いたら、あなたがたの所で不安なしに過ごせるようにしてあげてほしい。彼はわたしと同様に、主のご用にあたっているのだから。
28751 46 16 11 だれも彼を軽んじてはいけない。そして、わたしの所に来るように、どうか彼を安らかに送り出してほしい。わたしは彼が兄弟たちと一緒に来るのを待っている。
28752 46 16 12 兄弟アポロについては、兄弟たちと一緒にあなたがたの所に行くように、たびたび勧めてみた。しかし彼には、今行く意志は、全くない。適当な機会があれば、行くだろう。
28753 46 16 13 目をさましていなさい。信仰に立ちなさい。男らしく、強くあってほしい。
28754 46 16 14 いっさいのことを、愛をもって行いなさい。
28755 46 16 15 兄弟たちよ。あなたがたに勧める。あなたがたが知っているように、ステパナの家はアカヤの初穂であって、彼らは身をもって聖徒に奉仕してくれた。
28756 46 16 16 どうか、このような人々と、またすべて彼らと共に働き共に労する人々とに、従ってほしい。
28757 46 16 17 わたしは、ステパナとポルトナトとアカイコとがきてくれたのを喜んでいる。彼らはあなたがたの足りない所を満たし、
28758 46 16 18 わたしの心とあなたがたの心とを、安らかにしてくれた。こうした人々は、重んじなければならない。
28759 46 16 19 アジヤの諸教会から、あなたがたによろしく。アクラとプリスカとその家の教会から、主にあって心からよろしく。
28760 46 16 20 すべての兄弟たちから、よろしく。あなたがたも互に、きよい接吻をもってあいさつをかわしなさい。
28761 46 16 21 ここでパウロが、手ずからあいさつをしるす。
28762 46 16 22 もし主を愛さない者があれば、のろわれよ。マラナ・タ(われらの主よ、きたりませ)。
28763 46 16 23 主イエスの恵みが、あなたがたと共にあるように。
28764 46 16 24 わたしの愛が、キリスト・イエスにあって、あなたがた一同と共にあるように。
28765 47 1 1 神の御旨によりキリスト・イエスの使徒となったパウロと、兄弟テモテとから、コリントにある神の教会、ならびにアカヤ全土にいるすべての聖徒たちへ。
28766 47 1 2 わたしたちの父なる神と主イエス・キリストから、恵みと平安とが、あなたがたにあるように。
28767 47 1 3 ほむべきかな、わたしたちの主イエス・キリストの父なる神、あわれみ深き父、慰めに満ちたる神。
28768 47 1 4 神は、いかなる患難の中にいる時でもわたしたちを慰めて下さり、また、わたしたち自身も、神に慰めていただくその慰めをもって、あらゆる患難の中にある人々を慰めることができるようにして下さるのである。
28769 47 1 5 それは、キリストの苦難がわたしたちに満ちあふれているように、わたしたちの受ける慰めもまた、キリストによって満ちあふれているからである。
28770 47 1 6 わたしたちが患難に会うなら、それはあなたがたの慰めと救とのためであり、慰めを受けるなら、それはあなたがたの慰めのためであって、その慰めは、わたしたちが受けているのと同じ苦難に耐えさせる力となるのである。
28771 47 1 7 だから、あなたがたに対していだいているわたしたちの望みは、動くことがない。あなたがたが、わたしたちと共に苦難にあずかっているように、慰めにも共にあずかっていることを知っているからである。
28772 47 1 8 兄弟たちよ。わたしたちがアジヤで会った患難を、知らずにいてもらいたくない。わたしたちは極度に、耐えられないほど圧迫されて、生きる望みをさえ失ってしまい、
28773 47 1 9 心のうちで死を覚悟し、自分自身を頼みとしないで、死人をよみがえらせて下さる神を頼みとするに至った。
28774 47 1 10 神はこのような死の危険から、わたしたちを救い出して下さった、また救い出して下さるであろう。わたしたちは、神が今後も救い出して下さることを望んでいる。
28775 47 1 11 そして、あなたがたもまた祈をもって、ともどもに、わたしたちを助けてくれるであろう。これは多くの人々の願いによりわたしたちに賜わった恵みについて、多くの人が感謝をささげるようになるためである。
28776 47 1 12 さて、わたしたちがこの世で、ことにあなたがたに対し、人間の知恵によってではなく神の恵みによって、神の神聖と真実とによって行動してきたことは、実にわたしたちの誇であって、良心のあかしするところである。
28777 47 1 13 わたしたちが書いていることは、あなたがたが読んで理解できないことではない。それを完全に理解してくれるように、わたしは希望する。
28778 47 1 14 すでにある程度わたしたちを理解してくれているとおり、わたしたちの主イエスの日には、あなたがたがわたしたちの誇であるように、わたしたちもあなたがたの誇なのである。
28779 47 1 15 この確信をもって、わたしたちはもう一度恵みを得させたいので、まずあなたがたの所に行き、
28780 47 1 16 それからそちらを通ってマケドニヤにおもむき、そして再びマケドニヤからあなたがたの所に帰り、あなたがたの見送りを受けてユダヤに行く計画を立てたのである。
28781 47 1 17 この計画を立てたのは、軽率なことであったであろうか。それとも、自分の計画を肉の思いによって計画したため、わたしの「しかり、しかり」が同時に「否、否」であったのだろうか。
28782 47 1 18 神の真実にかけて言うが、あなたがたに対するわたしの言葉は、「しかり」と同時に「否」というようなものではない。
28783 47 1 19 なぜなら、わたしたち、すなわち、わたしとシルワノとテモテとが、あなたがたに宣べ伝えた神の子キリスト・イエスは、「しかり」となると同時に「否」となったのではない。そうではなく、「しかり」がイエスにおいて実現されたのである。
28784 47 1 20 なぜなら、神の約束はことごとく、彼において「しかり」となったからである。だから、わたしたちは、彼によって「アァメン」と唱えて、神に栄光を帰するのである。
28785 47 1 21 あなたがたと共にわたしたちを、キリストのうちに堅くささえ、油をそそいで下さったのは、神である。
28786 47 1 22 神はまた、わたしたちに証印をおし、その保証として、わたしたちの心に御霊を賜わったのである。
28787 47 1 23 わたしは自分の魂をかけ、神を証人に呼び求めて言うが、わたしがコリントに行かないでいるのは、あなたがたに対して寛大でありたいためである。
28788 47 1 24 わたしたちは、あなたがたの信仰を支配する者ではなく、あなたがたの喜びのために共に働いている者にすぎない。あなたがたは、信仰に堅く立っているからである。
28789 47 2 1 そこでわたしは、あなたがたの所に再び悲しみをもって行くことはすまいと、決心したのである。
28790 47 2 2 もしあなたがたを悲しませるとすれば、わたしが悲しませているその人以外に、だれがわたしを喜ばせてくれるのか。
28791 47 2 3 このような事を書いたのは、わたしが行く時、わたしを喜ばせてくれるはずの人々から、悲しい思いをさせられたくないためである。わたし自身の喜びはあなたがた全体の喜びであることを、あなたがたすべてについて確信しているからである。
28792 47 2 4 わたしは大きな患難と心の憂いの中から、多くの涙をもってあなたがたに書きおくった。それは、あなたがたを悲しませるためではなく、あなたがたに対してあふれるばかりにいだいているわたしの愛を、知ってもらうためであった。
28793 47 2 5 しかし、もしだれかが人を悲しませたとすれば、それはわたしを悲しませたのではなく、控え目に言うが、ある程度、あなたがた一同を悲しませたのである。
28794 47 2 6 その人にとっては、多数の者から受けたあの処罰でもう十分なのだから、
28795 47 2 7 あなたがたはむしろ彼をゆるし、また慰めてやるべきである。そうしないと、その人はますます深い悲しみに沈むかも知れない。
28796 47 2 8 そこでわたしは、彼に対して愛を示すように、あなたがたに勧める。
28797 47 2 9 わたしが書きおくったのも、あなたがたがすべての事について従順であるかどうかを、ためすためにほかならなかった。
28798 47 2 10 もしあなたがたが、何かのことについて人をゆるすなら、わたしもまたゆるそう。そして、もしわたしが何かのことでゆるしたとすれば、それは、あなたがたのためにキリストのみまえでゆるしたのである。
28799 47 2 11 そうするのは、サタンに欺かれることのないためである。わたしたちは、彼の策略を知らないわけではない。
28800 47 2 12 さて、キリストの福音のためにトロアスに行ったとき、わたしのために主の門が開かれたにもかかわらず、
28801 47 2 13 兄弟テトスに会えなかったので、わたしは気が気でなく、人々に別れて、マケドニヤに出かけて行った。
28802 47 2 14 しかるに、神は感謝すべきかな。神はいつもわたしたちをキリストの凱旋に伴い行き、わたしたちをとおしてキリストを知る知識のかおりを、至る所に放って下さるのである。
28803 47 2 15 わたしたちは、救われる者にとっても滅びる者にとっても、神に対するキリストのかおりである。
28804 47 2 16 後者にとっては、死から死に至らせるかおりであり、前者にとっては、いのちからいのちに至らせるかおりである。いったい、このような任務に、だれが耐え得ようか。
28805 47 2 17 しかし、わたしたちは、多くの人のように神の言を売物にせず、真心をこめて、神につかわされた者として神のみまえで、キリストにあって語るのである。
28806 47 3 1 わたしたちは、またもや、自己推薦をし始めているのだろうか。それとも、ある人々のように、あなたがたにあてた、あるいは、あなたがたからの推薦状が必要なのだろうか。
28807 47 3 2 わたしたちの推薦状は、あなたがたなのである。それは、わたしたちの心にしるされていて、すべての人に知られ、かつ読まれている。
28808 47 3 3 そして、あなたがたは自分自身が、わたしたちから送られたキリストの手紙であって、墨によらず生ける神の霊によって書かれ、石の板にではなく人の心の板に書かれたものであることを、はっきりとあらわしている。
28809 47 3 4 こうした確信を、わたしたちはキリストにより神に対していだいている。
28810 47 3 5 もちろん、自分自身で事を定める力が自分にある、と言うのではない。わたしたちのこうした力は、神からきている。
28811 47 3 6 神はわたしたちに力を与えて、新しい契約に仕える者とされたのである。それは、文字に仕える者ではなく、霊に仕える者である。文字は人を殺し、霊は人を生かす。
28812 47 3 7 もし石に彫りつけた文字による死の務が栄光のうちに行われ、そのためイスラエルの子らは、モーセの顔の消え去るべき栄光のゆえに、その顔を見つめることができなかったとすれば、
28813 47 3 8 まして霊の務は、はるかに栄光あるものではなかろうか。
28814 47 3 9 もし罪を宣告する務が栄光あるものだとすれば、義を宣告する務は、はるかに栄光に満ちたものである。
28815 47 3 10 そして、すでに栄光を受けたものも、この場合、はるかにまさった栄光のまえに、その栄光を失ったのである。
28816 47 3 11 もし消え去るべきものが栄光をもって現れたのなら、まして永存すべきものは、もっと栄光のあるべきものである。
28817 47 3 12 こうした望みをいだいているので、わたしたちは思いきって大胆に語り、
28818 47 3 13 そしてモーセが、消え去っていくものの最後をイスラエルの子らに見られまいとして、顔におおいをかけたようなことはしない。
28819 47 3 14 実際、彼らの思いは鈍くなっていた。今日に至るまで、彼らが古い契約を朗読する場合、その同じおおいが取り去られないままで残っている。それは、キリストにあってはじめて取り除かれるのである。
28820 47 3 15 今日に至るもなお、モーセの書が朗読されるたびに、おおいが彼らの心にかかっている。
28821 47 3 16 しかし主に向く時には、そのおおいは取り除かれる。
28822 47 3 17 主は霊である。そして、主の霊のあるところには、自由がある。
28823 47 3 18 わたしたちはみな、顔おおいなしに、主の栄光を鏡に映すように見つつ、栄光から栄光へと、主と同じ姿に変えられていく。これは霊なる主の働きによるのである。
28824 47 4 1 このようにわたしたちは、あわれみを受けてこの務についているのだから、落胆せずに、
28825 47 4 2 恥ずべき隠れたことを捨て去り、悪巧みによって歩かず、神の言を曲げず、真理を明らかにし、神のみまえに、すべての人の良心に自分を推薦するのである。
28826 47 4 3 もしわたしたちの福音がおおわれているなら、滅びる者どもにとっておおわれているのである。
28827 47 4 4 彼らの場合、この世の神が不信の者たちの思いをくらませて、神のかたちであるキリストの栄光の福音の輝きを、見えなくしているのである。
28828 47 4 5 しかし、わたしたちは自分自身を宣べ伝えるのではなく、主なるキリスト・イエスを宣べ伝える。わたしたち自身は、ただイエスのために働くあなたがたの僕にすぎない。
28829 47 4 6 「やみの中から光が照りいでよ」と仰せになった神は、キリストの顔に輝く神の栄光の知識を明らかにするために、わたしたちの心を照して下さったのである。
28830 47 4 7 しかしわたしたちは、この宝を土の器の中に持っている。その測り知れない力は神のものであって、わたしたちから出たものでないことが、あらわれるためである。
28831 47 4 8 わたしたちは、四方から患難を受けても窮しない。途方にくれても行き詰まらない。
28832 47 4 9 迫害に会っても見捨てられない。倒されても滅びない。
28833 47 4 10 いつもイエスの死をこの身に負うている。それはまた、イエスのいのちが、この身に現れるためである。
28834 47 4 11 わたしたち生きている者は、イエスのために絶えず死に渡されているのである。それはイエスのいのちが、わたしたちの死ぬべき肉体に現れるためである。
28835 47 4 12 こうして、死はわたしたちのうちに働き、いのちはあなたがたのうちに働くのである。
28836 47 4 13 「わたしは信じた。それゆえに語った」としるしてあるとおり、それと同じ信仰の霊を持っているので、わたしたちも信じている。それゆえに語るのである。
28837 47 4 14 それは、主イエスをよみがえらせたかたが、わたしたちをもイエスと共によみがえらせ、そして、あなたがたと共にみまえに立たせて下さることを、知っているからである。
28838 47 4 15 すべてのことは、あなたがたの益であって、恵みがますます多くの人に増し加わるにつれ、感謝が満ちあふれて、神の栄光となるのである。
28839 47 4 16 だから、わたしたちは落胆しない。たといわたしたちの外なる人は滅びても、内なる人は日ごとに新しくされていく。
28840 47 4 17 なぜなら、このしばらくの軽い患難は働いて、永遠の重い栄光を、あふれるばかりにわたしたちに得させるからである。
28841 47 4 18 わたしたちは、見えるものにではなく、見えないものに目を注ぐ。見えるものは一時的であり、見えないものは永遠につづくのである。
28842 47 5 1 わたしたちの住んでいる地上の幕屋がこわれると、神からいただく建物、すなわち天にある、人の手によらない永遠の家が備えてあることを、わたしたちは知っている。
28843 47 5 2 そして、天から賜わるそのすみかを、上に着ようと切に望みながら、この幕屋の中で苦しみもだえている。
28844 47 5 3 それを着たなら、裸のままではいないことになろう。
28845 47 5 4 この幕屋の中にいるわたしたちは、重荷を負って苦しみもだえている。それを脱ごうと願うからではなく、その上に着ようと願うからであり、それによって、死ぬべきものがいのちにのまれてしまうためである。
28846 47 5 5 わたしたちを、この事にかなう者にして下さったのは、神である。そして、神はその保証として御霊をわたしたちに賜わったのである。
28847 47 5 6 だから、わたしたちはいつも心強い。そして、肉体を宿としている間は主から離れていることを、よく知っている。
28848 47 5 7 わたしたちは、見えるものによらないで、信仰によって歩いているのである。
28849 47 5 8 それで、わたしたちは心強い。そして、むしろ肉体から離れて主と共に住むことが、願わしいと思っている。
28850 47 5 9 そういうわけだから、肉体を宿としているにしても、それから離れているにしても、ただ主に喜ばれる者となるのが、心からの願いである。
28851 47 5 10 なぜなら、わたしたちは皆、キリストのさばきの座の前にあらわれ、善であれ悪であれ、自分の行ったことに応じて、それぞれ報いを受けねばならないからである。
28852 47 5 11 このようにわたしたちは、主の恐るべきことを知っているので、人々に説き勧める。わたしたちのことは、神のみまえには明らかになっている。さらに、あなたがたの良心にも明らかになるようにと望む。
28853 47 5 12 わたしたちは、あなたがたに対して、またもや自己推薦をしようとするのではない。ただわたしたちを誇る機会を、あなたがたに持たせ、心を誇るのではなくうわべだけを誇る人々に答えうるようにさせたいのである。
28854 47 5 13 もしわたしたちが、気が狂っているのなら、それは神のためであり、気が確かであるのなら、それはあなたがたのためである。
28855 47 5 14 なぜなら、キリストの愛がわたしたちに強く迫っているからである。わたしたちはこう考えている。ひとりの人がすべての人のために死んだ以上、すべての人が死んだのである。
28856 47 5 15 そして、彼がすべての人のために死んだのは、生きている者がもはや自分のためにではなく、自分のために死んでよみがえったかたのために、生きるためである。
28857 47 5 16 それだから、わたしたちは今後、だれをも肉によって知ることはすまい。かつてはキリストを肉によって知っていたとしても、今はもうそのような知り方をすまい。
28858 47 5 17 だれでもキリストにあるならば、その人は新しく造られた者である。古いものは過ぎ去った、見よ、すべてが新しくなったのである。
28859 47 5 18 しかし、すべてこれらの事は、神から出ている。神はキリストによって、わたしたちをご自分に和解させ、かつ和解の務をわたしたちに授けて下さった。
28860 47 5 19 すなわち、神はキリストにおいて世をご自分に和解させ、その罪過の責任をこれに負わせることをしないで、わたしたちに和解の福音をゆだねられたのである。
28861 47 5 20 神がわたしたちをとおして勧めをなさるのであるから、わたしたちはキリストの使者なのである。そこで、キリストに代って願う、神の和解を受けなさい。
28862 47 5 21 神はわたしたちの罪のために、罪を知らないかたを罪とされた。それは、わたしたちが、彼にあって神の義となるためなのである。
28863 47 6 1 わたしたちはまた、神と共に働く者として、あなたがたに勧める。神の恵みをいたずらに受けてはならない。
28864 47 6 2 神はこう言われる、「わたしは、恵みの時にあなたの願いを聞きいれ、救の日にあなたを助けた」。
28865 47 6 3 この務がそしりを招かないために、わたしたちはどんな事にも、人につまずきを与えないようにし、
28866 47 6 4 かえって、あらゆる場合に、神の僕として、自分を人々にあらわしている。すなわち、極度の忍苦にも、患難にも、危機にも、行き詰まりにも、
28867 47 6 5 むち打たれることにも、入獄にも、騒乱にも、労苦にも、徹夜にも、飢餓にも、
28868 47 6 6 真実と知識と寛容と、慈愛と聖霊と偽りのない愛と、
28869 47 6 7 真理の言葉と神の力とにより、左右に持っている義の武器により、
28870 47 6 8 ほめられても、そしられても、悪評を受けても、好評を博しても、神の僕として自分をあらわしている。わたしたちは、人を惑わしているようであるが、しかも真実であり、
28871 47 6 9 人に知られていないようであるが、認められ、死にかかっているようであるが、見よ、生きており、懲らしめられているようであるが、殺されず、
28872 47 6 10 悲しんでいるようであるが、常に喜んでおり、貧しいようであるが、多くの人を富ませ、何も持たないようであるが、すべての物を持っている。
28873 47 6 11 コリントの人々よ。あなたがたに向かってわたしたちの口は開かれており、わたしたちの心は広くなっている。
28874 47 6 12 あなたがたは、わたしたちに心をせばめられていたのではなく、自分で心をせばめていたのだ。
28875 47 6 13 わたしは子供たちに対するように言うが、どうかあなたがたの方でも心を広くして、わたしに応じてほしい。
28876 47 6 14 不信者と、つり合わないくびきを共にするな。義と不義となんの係わりがあるか。光とやみとなんの交わりがあるか。
28877 47 6 15 キリストとベリアルとなんの調和があるか。信仰と不信仰となんの関係があるか。
28878 47 6 16 神の宮と偶像となんの一致があるか。わたしたちは、生ける神の宮である。神がこう仰せになっている、「わたしは彼らの間に住み、かつ出入りをするであろう。そして、わたしは彼らの神となり、彼らはわたしの民となるであろう」。
28879 47 6 17 だから、「彼らの間から出て行き、彼らと分離せよ、と主は言われる。そして、汚れたものに触てはならない。触なければ、わたしはあなたがたを受けいれよう。
28880 47 6 18 そしてわたしは、あなたがたの父となり、あなたがたは、わたしのむすこ、むすめとなるであろう。全能の主が、こう言われる」。
28881 47 7 1 愛する者たちよ。わたしたちは、このような約束を与えられているのだから、肉と霊とのいっさいの汚れから自分をきよめ、神をおそれて全く清くなろうではないか。
28882 47 7 2 どうか、わたしたちに心を開いてほしい。わたしたちは、だれにも不義をしたことがなく、だれをも破滅におとしいれたことがなく、だれからもだまし取ったことがない。
28883 47 7 3 わたしは、責めるつもりでこう言うのではない。前にも言ったように、あなたがたはわたしの心のうちにいて、わたしたちと生死を共にしているのである。
28884 47 7 4 わたしはあなたがたを大いに信頼し、大いに誇っている。また、あふれるばかり慰めを受け、あらゆる患難の中にあって喜びに満ちあふれている。
28885 47 7 5 さて、マケドニヤに着いたとき、わたしたちの身に少しの休みもなく、さまざまの患難に会い、外には戦い、内には恐れがあった。
28886 47 7 6 しかるに、うちしおれている者を慰める神は、テトスの到来によって、わたしたちを慰めて下さった。
28887 47 7 7 ただ彼の到来によるばかりではなく、彼があなたがたから受けたその慰めをもって、慰めて下さった。すなわち、あなたがたがわたしを慕っていること、嘆いていること、またわたしに対して熱心であることを知らせてくれたので、わたしの喜びはいよいよ増し加わったのである。
28888 47 7 8 そこで、たとい、あの手紙であなたがたを悲しませたとしても、わたしはそれを悔いていない。あの手紙がしばらくの間ではあるが、あなたがたを悲しませたのを見て悔いたとしても、
28889 47 7 9 今は喜んでいる。それは、あなたがたが悲しんだからではなく、悲しんで悔い改めるに至ったからである。あなたがたがそのように悲しんだのは、神のみこころに添うたことであって、わたしたちからはなんの損害も受けなかったのである。
28890 47 7 10 神のみこころに添うた悲しみは、悔いのない救を得させる悔改めに導き、この世の悲しみは死をきたらせる。
28891 47 7 11 見よ、神のみこころに添うたその悲しみが、どんなにか熱情をあなたがたに起させたことか。また、弁明、義憤、恐れ、愛慕、熱意、それから処罰に至らせたことか。あなたがたはあの問題については、すべての点において潔白であることを証明したのである。
28892 47 7 12 だから、わたしがあなたがたに書きおくったのは、不義をした人のためでも、不義を受けた人のためでもなく、わたしたちに対するあなたがたの熱情が、神の前にあなたがたの間で明らかになるためである。
28893 47 7 13 こういうわけで、わたしたちは慰められたのである。これらの慰めの上にテトスの喜びが加わって、わたしたちはなおいっそう喜んだ。彼があなたがた一同によって安心させられたからである。
28894 47 7 14 そして、わたしは彼に対してあなたがたのことを少しく誇ったが、それはわたしの恥にならないですんだ。あなたがたにいっさいのことを真実に語ったように、テトスに対して誇ったことも真実となってきたのである。
28895 47 7 15 また彼は、あなたがた一同が従順であって、おそれおののきつつ自分を迎えてくれたことを思い出して、ますます心をあなたがたの方に寄せている。
28896 47 7 16 わたしは、あなたがたに全く信頼することができて、喜んでいる。
28897 47 8 1 兄弟たちよ。わたしたちはここで、マケドニヤの諸教会に与えられた神の恵みを、あなたがたに知らせよう。
28898 47 8 2 すなわち、彼らは、患難のために激しい試錬をうけたが、その満ちあふれる喜びは、極度の貧しさにもかかわらず、あふれ出て惜しみなく施す富となったのである。
28899 47 8 3 わたしはあかしするが、彼らは力に応じて、否、力以上に施しをした。すなわち、自ら進んで、
28900 47 8 4 聖徒たちへの奉仕に加わる恵みにあずかりたいと、わたしたちに熱心に願い出て、
28901 47 8 5 わたしたちの希望どおりにしたばかりか、自分自身をまず、神のみこころにしたがって、主にささげ、また、わたしたちにもささげたのである。
28902 47 8 6 そこで、この募金をテトスがあなたがたの所で、すでに始めた以上、またそれを完成するようにと、わたしたちは彼に勧めたのである。
28903 47 8 7 さて、あなたがたがあらゆる事がらについて富んでいるように、すなわち、信仰にも言葉にも知識にも、あらゆる熱情にも、また、あなたがたに対するわたしたちの愛にも富んでいるように、この恵みのわざにも富んでほしい。
28904 47 8 8 こう言っても、わたしは命令するのではない。ただ、他の人たちの熱情によって、あなたがたの愛の純真さをためそうとするのである。
28905 47 8 9 あなたがたは、わたしたちの主イエス・キリストの恵みを知っている。すなわち、主は富んでおられたのに、あなたがたのために貧しくなられた。それは、あなたがたが、彼の貧しさによって富む者になるためである。
28906 47 8 10 そこで、わたしは、この恵みのわざについて意見を述べよう。それがあなたがたの益になるからである。あなたがたはこの事を、昨年以来、他に先んじて実行したばかりではなく、それを願っていた。
28907 47 8 11 だから今、それをやりとげなさい。あなたがたが心から願っているように、持っているところに応じて、それをやりとげなさい。
28908 47 8 12 もし心から願ってそうするなら、持たないところによらず、持っているところによって、神に受けいれられるのである。
28909 47 8 13 それは、ほかの人々に楽をさせて、あなたがたに苦労をさせようとするのではなく、持ち物を等しくするためである。
28910 47 8 14 すなわち、今の場合は、あなたがたの余裕があの人たちの欠乏を補い、後には、彼らの余裕があなたがたの欠乏を補い、こうして等しくなるようにするのである。
28911 47 8 15 それは「多く得た者も余ることがなく、少ししか得なかった者も足りないことはなかった」と書いてあるとおりである。
28912 47 8 16 わたしがあなたがたに対して持っている同じ熱情を、テトスの心にも与えて下さった神に感謝する。
28913 47 8 17 彼はわたしの勧めを受けいれ、そして更に熱心になって、自分から進んであなたがたのところに行った。
28914 47 8 18 わたしたちはまた、テトスと一緒に、ひとりの兄弟を送る。この兄弟が福音宣伝の上で得たほまれは、すべての教会に聞えているが、
28915 47 8 19 そのうえ、彼は、主ご自身の栄光があらわれるため、また、わたしたちの好意を示すために、骨を折って贈り物を集めているわたしたちの同伴者として、諸教会から選ばれたのである。
28916 47 8 20 そうしたのは、わたしたちが集めているこの寄附金のことについて、人にかれこれ言われるのを避けるためである。
28917 47 8 21 わたしたちは、主のみまえばかりではなく、人の前でも公正であるように、気を配っているのである。
28918 47 8 22 また、もうひとりの兄弟を彼らと一緒に送る。わたしたちは、多くの事について彼が熱心であったことを、たびたび認めた。彼は今、あなたがたを非常に信頼して、ますます熱心になっている。
28919 47 8 23 テトスについて言えば、彼はわたしの仲間であり、あなたがたに対するわたしの協力者である。この兄弟たちについて言えば、彼らは諸教会の使者、キリストの栄光である。
28920 47 8 24 だから、あなたがたの愛と、また、あなたがたについてわたしたちがいだいている誇とが、真実であることを、諸教会の前で彼らにあかししていただきたい。
28921 47 9 1 聖徒たちに対する援助については、いまさら、あなたがたに書きおくる必要はない。
28922 47 9 2 わたしは、あなたがたの好意を知っており、そのために、あなたがたのことをマケドニヤの人々に誇って、アカヤでは昨年以来、すでに準備をしているのだと言った。そして、あなたがたの熱心は、多くの人を奮起させたのである。
28923 47 9 3 わたしが兄弟たちを送ることにしたのは、あなたがたについてわたしたちの誇ったことが、この場合むなしくならないで、わたしが言ったとおり準備していてもらいたいからである。
28924 47 9 4 そうでないと、万一マケドニヤ人がわたしと一緒に行って、準備ができていないのを見たら、あなたがたはもちろん、わたしたちも、かように信じきっていただけに、恥をかくことになろう。
28925 47 9 5 だから、わたしは兄弟たちを促して、あなたがたの所へ先に行かせ、以前あなたがたが約束していた贈り物の準備をさせておくことが必要だと思った。それをしぶりながらではなく、心をこめて用意していてほしい。
28926 47 9 6 わたしの考えはこうである。少ししかまかない者は、少ししか刈り取らず、豊かにまく者は、豊かに刈り取ることになる。
28927 47 9 7 各自は惜しむ心からでなく、また、しいられてでもなく、自ら心で決めたとおりにすべきである。神は喜んで施す人を愛して下さるのである。
28928 47 9 8 神はあなたがたにあらゆる恵みを豊かに与え、あなたがたを常にすべてのことに満ち足らせ、すべての良いわざに富ませる力のあるかたなのである。
28929 47 9 9 「彼は貧しい人たちに散らして与えた。その義は永遠に続くであろう」
28930 47 9 10 種まく人に種と食べるためのパンとを備えて下さるかたは、あなたがたにも種を備え、それをふやし、そしてあなたがたの義の実を増して下さるのである。
28931 47 9 11 こうして、あなたがたはすべてのことに豊かになって、惜しみなく施し、その施しはわたしたちの手によって行われ、神に感謝するに至るのである。
28932 47 9 12 なぜなら、この援助の働きは、聖徒たちの欠乏を補えだけではなく、神に対する多くの感謝によってますます豊かになるからである。
28933 47 9 13 すなわち、この援助を行った結果として、あなたがたがキリストの福音の告白に対して従順であることや、彼らにも、すべての人にも、惜しみなく施しをしていることがわかってきて、彼らは神に栄光を帰し、
28934 47 9 14 そして、あなたがたに賜わったきわめて豊かな神の恵みのゆえに、あなたがたを慕い、あなたがたのために祈るのである。
28935 47 9 15 言いつくせない賜物のゆえに、神に感謝する。
28936 47 10 1 さて、「あなたがたの間にいて面と向かってはおとなしいが、離れていると、気が強くなる」このパウロが、キリストの優しさ、寛大さをもって、あなたがたに勧める。
28937 47 10 2 わたしたちを肉に従って歩いているかのように思っている人々に対しては、わたしは勇敢に行動するつもりであるが、あなたがたの所では、どうか、そのような思いきったことをしないですむようでありたい。
28938 47 10 3 わたしたちは、肉にあって歩いてはいるが、肉に従って戦っているのではない。
28939 47 10 4 わたしたちの戦いの武器は、肉のものではなく、神のためには要塞をも破壊するほどの力あるものである。わたしたちはさまざまな議論を破り、
28940 47 10 5 神の知恵に逆らって立てられたあらゆる障害物を打ちこわし、すべての思いをとりこにしてキリストに服従させ、
28941 47 10 6 そして、あなたがたが完全に服従した時、すべて不従順な者を処罰しようと、用意しているのである。
28942 47 10 7 あなたがたは、うわべの事だけを見ている。もしある人が、キリストに属する者だと自任しているなら、その人はもう一度よく反省すべきである。その人がキリストに属する者であるように、わたしたちもそうである。
28943 47 10 8 たとい、あなたがたを倒すためではなく高めるために主からわたしたちに賜わった権威について、わたしがやや誇りすぎたとしても、恥にはなるまい。
28944 47 10 9 ただ、わたしは、手紙であなたがたをおどしているのだと、思われたくはない。
28945 47 10 10 人は言う、「彼の手紙は重味があって力強いが、会って見ると外見は弱々しく、話はつまらない」。
28946 47 10 11 そういう人は心得ているがよい。わたしたちは、離れていて書きおくる手紙の言葉どおりに、一緒にいる時でも同じようにふるまうのである。
28947 47 10 12 わたしたちは、自己推薦をするような人々と自分を同列においたり比較したりはしない。彼らは仲間同志で互にはかり合ったり、互に比べ合ったりしているが、知恵のないしわざである。
28948 47 10 13 しかし、わたしたちは限度をこえて誇るようなことはしない。むしろ、神が割り当てて下さった地域の限度内で誇るにすぎない。わたしはその限度にしたがって、あなたがたの所まで行ったのである。
28949 47 10 14 わたしたちは、あなたがたの所まで行けない者であるかのように、むりに手を延ばしているのではない。事実、わたしたちが最初にキリストの福音を携えて、あなたがたの所までも行ったのである。
28950 47 10 15 わたしたちは限度をこえて、他人の働きを誇るようなことはしない。ただ、あなたがたの信仰が成長するにつれて、わたしたちの働きの範囲があなたがたの中でますます大きくなることを望んでいる。
28951 47 10 16 こうして、わたしたちはほかの人の地域ですでになされていることを誇ることはせずに、あなたがたを越えたさきざきにまで、福音を宣べ伝えたい。
28952 47 10 17 誇る者は主を誇るべきである。
28953 47 10 18 自分で自分を推薦する人ではなく、主に推薦される人こそ、確かな人なのである。
28954 47 11 1 わたしが少しばかり愚かなことを言うのを、どうか、忍んでほしい。もちろん忍んでくれるのだ。
28955 47 11 2 わたしは神の熱情をもって、あなたがたを熱愛している。あなたがたを、きよいおとめとして、ただひとりの男子キリストにささげるために、婚約させたのである。
28956 47 11 3 ただ恐れるのは、エバがへびの悪巧みで誘惑されたように、あなたがたの思いが汚されて、キリストに対する純情と貞操とを失いはしないかということである。
28957 47 11 4 というのは、もしある人がきて、わたしたちが宣べ伝えもしなかったような異なるイエスを宣べ伝え、あるいは、あなたがたが受けたことのない違った霊を受け、あるいは、受けいれたことのない違った福音を聞く場合に、あなたがたはよくもそれを忍んでいる。
28958 47 11 5 事実、わたしは、あの大使徒たちにいささかも劣ってはいないと思う。
28959 47 11 6 たとい弁舌はつたなくても、知識はそうでない。わたしは、事ごとに、いろいろの場合に、あなたがたに対してそれを明らかにした。
28960 47 11 7 それとも、あなたがたを高めるために自分を低くして、神の福音を価なしにあなたがたに宣べ伝えたことが、罪になるのだろうか。
28961 47 11 8 わたしは他の諸教会をかすめたと言われながら得た金で、あなたがたに奉仕し、
28962 47 11 9 あなたがたの所にいて貧乏をした時にも、だれにも負担をかけたことはなかった。わたしの欠乏は、マケドニヤからきた兄弟たちが、補ってくれた。こうして、わたしはすべての事につき、あなたがたに重荷を負わせまいと努めてきたし、今後も努めよう。
28963 47 11 10 わたしの内にあるキリストの真実にかけて言う、この誇がアカヤ地方で封じられるようなことは、決してない。
28964 47 11 11 なぜであるか。わたしがあなたがたを愛していないからか。それは、神がご存じである。
28965 47 11 12 しかし、わたしは、現在していることを今後もしていこう。それは、わたしたちと同じように誇りうる立ち場を得ようと機会をねらっている者どもから、その機会を断ち切ってしまうためである。
28966 47 11 13 こういう人々はにせ使徒、人をだます働き人であって、キリストの使徒に擬装しているにすぎないからである。
28967 47 11 14 しかし、驚くには及ばない。サタンも光の天使に擬装するのだから。
28968 47 11 15 だから、たといサタンの手下どもが、義の奉仕者のように擬装したとしても、不思議ではない。彼らの最期は、そのしわざに合ったものとなろう。
28969 47 11 16 繰り返して言うが、だれも、わたしを愚か者と思わないでほしい。もしそう思うなら、愚か者あつかいにされてもよいから、わたしにも、少し誇らせてほしい。
28970 47 11 17 いま言うことは、主によって言うのではなく、愚か者のように、自分の誇とするところを信じきって言うのである。
28971 47 11 18 多くの人が肉によって誇っているから、わたしも誇ろう。
28972 47 11 19 あなたがたは賢い人たちなのだから、喜んで愚か者を忍んでくれるだろう。
28973 47 11 20 実際、あなたがたは奴隷にされても、食い倒されても、略奪されても、いばられても、顔をたたかれても、それを忍んでいる。
28974 47 11 21 言うのも恥ずかしいことだが、わたしたちは弱すぎたのだ。もしある人があえて誇るなら、わたしは愚か者になって言うが、わたしもあえて誇ろう。
28975 47 11 22 彼らはヘブル人なのか。わたしもそうである。彼らはイスラエル人なのか。わたしもそうである。彼らはアブラハムの子孫なのか。わたしもそうである。
28976 47 11 23 彼らはキリストの僕なのか。わたしは気が狂ったようになって言う、わたしは彼ら以上にそうである。苦労したことはもっと多く、投獄されたことももっと多く、むち打たれたことは、はるかにおびただしく、死に面したこともしばしばあった。
28977 47 11 24 ユダヤ人から四十に一つ足りないむちを受けたことが五度、
28978 47 11 25 ローマ人にむちで打たれたことが三度、石で打たれたことが一度、難船したことが三度、そして、一昼夜、海の上を漂ったこともある。
28979 47 11 26 幾たびも旅をし、川の難、盗賊の難、同国民の難、異邦人の難、都会の難、荒野の難、海上の難、にせ兄弟の難に会い、
28980 47 11 27 労し苦しみ、たびたび眠られぬ夜を過ごし、飢えかわき、しばしば食物がなく、寒さに凍え、裸でいたこともあった。
28981 47 11 28 なおいろいろの事があった外に、日々わたしに迫って来る諸教会の心配ごとがある。
28982 47 11 29 だれかが弱っているのに、わたしも弱らないでおれようか。だれかが罪を犯しているのに、わたしの心が燃えないでおれようか。
28983 47 11 30 もし誇らねばならないのなら、わたしは自分の弱さを誇ろう。
28984 47 11 31 永遠にほむべき、主イエス・キリストの父なる神は、わたしが偽りを言っていないことを、ご存じである。
28985 47 11 32 ダマスコでアレタ王の代官が、わたしを捕えるためにダマスコ人の町を監視したことがあったが、
28986 47 11 33 その時わたしは窓から町の城壁づたいに、かごでつり降ろされて、彼の手からのがれた。
28987 47 12 1 わたしは誇らざるを得ないので、無益ではあろうが、主のまぼろしと啓示とについて語ろう。
28988 47 12 2 わたしはキリストにあるひとりの人を知っている。この人は十四年前に第三の天にまで引き上げられた――それが、からだのままであったか、わたしは知らない。からだを離れてであったか、それも知らない。神がご存じである。
28989 47 12 3 この人が――それが、からだのままであったか、からだを離れてであったか、わたしは知らない。神がご存じである――
28990 47 12 4 パラダイスに引き上げられ、そして口に言い表わせない、人間が語ってはならない言葉を聞いたのを、わたしは知っている。
28991 47 12 5 わたしはこういう人について誇ろう。しかし、わたし自身については、自分の弱さ以外には誇ることをすまい。
28992 47 12 6 もっとも、わたしが誇ろうとすれば、ほんとうの事を言うのだから、愚か者にはならないだろう。しかし、それはさし控えよう。わたしがすぐれた啓示を受けているので、わたしについて見たり聞いたりしている以上に、人に買いかぶられるかも知れないから。
28993 47 12 7 そこで、高慢にならないように、わたしの肉体に一つのとげが与えられた。それは、高慢にならないように、わたしを打つサタンの使なのである。
28994 47 12 8 このことについて、わたしは彼を離れ去らせて下さるようにと、三度も主に祈った。
28995 47 12 9 ところが、主が言われた、「わたしの恵みはあなたに対して十分である。わたしの力は弱いところに完全にあらわれる」。それだから、キリストの力がわたしに宿るように、むしろ、喜んで自分の弱さを誇ろう。
28996 47 12 10 だから、わたしはキリストのためならば、弱さと、侮辱と、危機と、迫害と、行き詰まりとに甘んじよう。なぜなら、わたしが弱い時にこそ、わたしは強いからである。
28997 47 12 11 わたしは愚か者となった。あなたがたが、むりにわたしをそうしてしまったのだ。実際は、あなたがたから推薦されるべきであった。というのは、たといわたしは取るに足りない者だとしても、あの大使徒たちにはなんら劣るところがないからである。
28998 47 12 12 わたしは、使徒たるの実を、しるしと奇跡と力あるわざとにより、忍耐をつくして、あなたがたの間であらわしてきた。
28999 47 12 13 いったい、あなたがたが他の教会よりも劣っている点は何か。ただ、このわたしがあなたがたに負担をかけなかったことだけではないか。この不義は、どうか、ゆるしてもらいたい。
29000 47 12 14 さて、わたしは今、三度目にあなたがたの所に行く用意をしている。しかし、負担はかけないつもりである。わたしの求めているのは、あなたがたの持ち物ではなく、あなたがた自身なのだから。いったい、子供は親のために財をたくわえて置く必要はなく、親が子供のためにたくわえて置くべきである。
29001 47 12 15 そこでわたしは、あなたがたの魂のためには、大いに喜んで費用を使い、また、わたし自身をも使いつくそう。わたしがあなたがたを愛すれば愛するほど、あなたがたからますます愛されなくなるのであろうか。
29002 47 12 16 わたしは、あなたがたに重荷を負わせなかったとしても、悪がしこくて、あなたがたからだまし取ったのだと、人は言う。
29003 47 12 17 わたしは、あなたがたにつかわした人たちのうちのだれかをとおして、あなたがたからむさぼり取っただろうか。
29004 47 12 18 わたしは、テトスに勧めてそちらに行かせ、また、かの兄弟を同行させた。テトスは、あなたがたからむさぼり取ったことがあろうか。わたしたちは、みな同じ心で歩いたではないか。同じ足並みで歩いたではないか。
29005 47 12 19 あなたがたは、わたしたちがあなたがたに対して弁明をしているのだと、今までずっと思ってきたであろう。しかし、わたしたちは、神のみまえでキリストにあって語っているのである。愛する者たちよ。これらすべてのことは、あなたがたの徳を高めるためなのである。
29006 47 12 20 わたしは、こんな心配をしている。わたしが行ってみると、もしかしたら、あなたがたがわたしの願っているような者ではなく、わたしも、あなたがたの願っているような者でないことになりはすまいか。もしかしたら、争い、ねたみ、怒り、党派心、そしり、ざんげん、高慢、騒乱などがありはすまいか。
29007 47 12 21 わたしが再びそちらに行った場合、わたしの神が、あなたがたの前でわたしに恥をかかせ、その上、多くの人が前に罪を犯していながら、その汚れと不品行と好色とを悔い改めていないので、わたしを悲しませることになりはすまいか。
29008 47 13 1 わたしは今、三度目にあなたがたの所に行こうとしている。すべての事がらは、ふたりか三人の証人の証言によって確定する。
29009 47 13 2 わたしは、前に罪を犯した者たちやその他のすべての人々に、二度目に滞在していたとき警告しておいたが、離れている今またあらかじめ言っておく。今度行った時には、決して容赦はしない。
29010 47 13 3 なぜなら、あなたがたが、キリストのわたしにあって語っておられるという証拠を求めているからである。キリストは、あなたがたに対して弱くはなく、あなたがたのうちにあって強い。
29011 47 13 4 すなわち、キリストは弱さのゆえに十字架につけられたが、神の力によって生きておられるのである。このように、わたしたちもキリストにあって弱い者であるが、あなたがたに対しては、神の力によって、キリストと共に生きるのである。
29012 47 13 5 あなたがたは、はたして信仰があるかどうか、自分を反省し、自分を吟味するがよい。それとも、イエス・キリストがあなたがたのうちにおられることを、悟らないのか。もし悟らなければ、あなたがたは、にせものとして見捨てられる。
29013 47 13 6 しかしわたしは、自分たちが見捨てられた者ではないことを、知っていてもらいたい。
29014 47 13 7 わたしたちは、あなたがたがどんな悪をも行わないようにと、神に祈る。それは、自分たちがほんとうの者であることを見せるためではなく、たといわたしたちが見捨てられた者のようになっても、あなたがたに良い行いをしてもらいたいためである。
29015 47 13 8 わたしたちは、真理に逆らっては何をする力もなく、真理にしたがえば力がある。
29016 47 13 9 わたしたちは、自分は弱くても、あなたがたが強ければ、それを喜ぶ。わたしたちが特に祈るのは、あなたがたが完全に良くなってくれることである。
29017 47 13 10 こういうわけで、離れていて以上のようなことを書いたのは、わたしがあなたがたの所に行ったとき、倒すためではなく高めるために主が授けて下さった権威を用いて、きびしい処置をする必要がないようにしたいためである。
29018 47 13 11 最後に、兄弟たちよ。いつも喜びなさい。全き者となりなさい。互に励まし合いなさい。思いを一つにしなさい。平和に過ごしなさい。そうすれば、愛と平和の神があなたがたと共にいて下さるであろう。
29019 47 13 12 きよい接吻をもって互にあいさつをかわしなさい。聖徒たち一同が、あなたがたによろしく。
29020 47 13 13 主イエス・キリストの恵みと、神の愛と、聖霊の交わりとが、あなたがた一同と共にあるように。
29021 48 1 1 人々からでもなく、人によってでもなく、イエス・キリストと彼を死人の中からよみがえらせた父なる神とによって立てられた使徒パウロ、
29022 48 1 2 ならびにわたしと共にいる兄弟たち一同から、ガラテヤの諸教会へ。
29023 48 1 3 わたしたちの父なる神と主イエス・キリストから、恵みと平安とが、あなたがたにあるように。
29024 48 1 4 キリストは、わたしたちの父なる神の御旨に従い、わたしたちを今の悪の世から救い出そうとして、ご自身をわたしたちの罪のためにささげられたのである。
29025 48 1 5 栄光が世々限りなく神にあるように、アァメン。
29026 48 1 6 あなたがたがこんなにも早く、あなたがたをキリストの恵みの内へお招きになったかたから離れて、違った福音に落ちていくことが、わたしには不思議でならない。
29027 48 1 7 それは福音というべきものではなく、ただ、ある種の人々があなたがたをかき乱し、キリストの福音を曲げようとしているだけのことである。
29028 48 1 8 しかし、たといわたしたちであろうと、天からの御使であろうと、わたしたちが宣べ伝えた福音に反することをあなたがたに宣べ伝えるなら、その人はのろわるべきである。
29029 48 1 9 わたしたちが前に言っておいたように、今わたしは重ねて言う。もしある人が、あなたがたの受けいれた福音に反することを宣べ伝えているなら、その人はのろわるべきである。
29030 48 1 10 今わたしは、人に喜ばれようとしているのか、それとも、神に喜ばれようとしているのか。あるいは、人の歓心を買おうと努めているのか。もし、今もなお人の歓心を買おうとしているとすれば、わたしはキリストの僕ではあるまい。
29031 48 1 11 兄弟たちよ。あなたがたに、はっきり言っておく。わたしが宣べ伝えた福音は人間によるものではない。
29032 48 1 12 わたしは、それを人間から受けたのでも教えられたのでもなく、ただイエス・キリストの啓示によったのである。
29033 48 1 13 ユダヤ教を信じていたころのわたしの行動については、あなたがたはすでによく聞いている。すなわち、わたしは激しく神の教会を迫害し、また荒しまわっていた。
29034 48 1 14 そして、同国人の中でわたしと同年輩の多くの者にまさってユダヤ教に精進し、先祖たちの言伝えに対して、だれよりもはるかに熱心であった。
29035 48 1 15 ところが、母の胎内にある時からわたしを聖別し、み恵みをもってわたしをお召しになったかたが、
29036 48 1 16 異邦人の間に宣べ伝えさせるために、御子をわたしの内に啓示して下さった時、わたしは直ちに、血肉に相談もせず、
29037 48 1 17 また先輩の使徒たちに会うためにエルサレムにも上らず、アラビヤに出て行った。それから再びダマスコに帰った。
29038 48 1 18 その後三年たってから、わたしはケパをたずねてエルサレムに上り、彼のもとに十五日間、滞在した。
29039 48 1 19 しかし、主の兄弟ヤコブ以外には、ほかのどの使徒にも会わなかった。
29040 48 1 20 ここに書いていることは、神のみまえで言うが、決して偽りではない。
29041 48 1 21 その後、わたしはシリヤとキリキヤとの地方に行った。
29042 48 1 22 しかし、キリストにあるユダヤの諸教会には、顔を知られていなかった。
29043 48 1 23 ただ彼らは、「かつて自分たちを迫害した者が、以前には撲滅しようとしていたその信仰を、今は宣べ伝えている」と聞き、
29044 48 1 24 わたしのことで、神をほめたたえた。
29045 48 2 1 その後十四年たってから、わたしはバルナバと一緒に、テトスをも連れて、再びエルサレムに上った。
29046 48 2 2 そこに上ったのは、啓示によってである。そして、わたしが異邦人の間に宣べ伝えている福音を、人々に示し、「重だった人たち」には個人的に示した。それは、わたしが現に走っており、またすでに走ってきたことが、むだにならないためである。
29047 48 2 3 しかし、わたしが連れていたテトスでさえ、ギリシヤ人であったのに、割礼をしいられなかった。
29048 48 2 4 それは、忍び込んできたにせ兄弟らがいたので――彼らが忍び込んできたのは、キリスト・イエスにあって持っているわたしたちの自由をねらって、わたしたちを奴隷にするためであった。
29049 48 2 5 わたしたちは、福音の真理があなたがたのもとに常にとどまっているように、瞬時も彼らの強要に屈服しなかった。
29050 48 2 6 そして、かの「重だった人たち」からは――彼らがどんな人であったにしても、それは、わたしには全く問題ではない。神は人を分け隔てなさらないのだから――事実、かの「重だった人たち」は、わたしに何も加えることをしなかった。
29051 48 2 7 それどころか、彼らは、ペテロが割礼の者への福音をゆだねられているように、わたしには無割礼の者への福音がゆだねられていることを認め、
29052 48 2 8 (というのは、ペテロに働きかけて割礼の者への使徒の務につかせたかたは、わたしにも働きかけて、異邦人につかわして下さったからである)、
29053 48 2 9 かつ、わたしに賜わった恵みを知って、柱として重んじられているヤコブとケパとヨハネとは、わたしとバルナバとに、交わりの手を差し伸べた。そこで、わたしたちは異邦人に行き、彼らは割礼の者に行くことになったのである。
29054 48 2 10 ただ一つ、わたしたちが貧しい人々をかえりみるようにとのことであったが、わたしはもとより、この事のためにも大いに努めてきたのである。
29055 48 2 11 ところが、ケパがアンテオケにきたとき、彼に非難すべきことがあったので、わたしは面とむかって彼をなじった。
29056 48 2 12 というのは、ヤコブのもとからある人々が来るまでは、彼は異邦人と食を共にしていたのに、彼らがきてからは、割礼の者どもを恐れ、しだいに身を引いて離れて行ったからである。
29057 48 2 13 そして、ほかのユダヤ人たちも彼と共に偽善の行為をし、バルナバまでがそのような偽善に引きずり込まれた。
29058 48 2 14 彼らが福音の真理に従ってまっすぐに歩いていないのを見て、わたしは衆人の面前でケパに言った、「あなたは、ユダヤ人であるのに、自分自身はユダヤ人のように生活しないで、異邦人のように生活していながら、どうして異邦人にユダヤ人のようになることをしいるのか」。
29059 48 2 15 わたしたちは生れながらのユダヤ人であって、異邦人なる罪人ではないが、
29060 48 2 16 人の義とされるのは律法の行いによるのではなく、ただキリスト・イエスを信じる信仰によることを認めて、わたしたちもキリスト・イエスを信じたのである。それは、律法の行いによるのではなく、キリストを信じる信仰によって義とされるためである。なぜなら、律法の行いによっては、だれひとり義とされることがないからである。
29061 48 2 17 しかし、キリストにあって義とされることを求めることによって、わたしたち自身が罪人であるとされるのなら、キリストは罪に仕える者なのであろうか。断じてそうではない。
29062 48 2 18 もしわたしが、いったん打ちこわしたものを、再び建てるとすれば、それこそ、自分が違反者であることを表明することになる。
29063 48 2 19 わたしは、神に生きるために、律法によって律法に死んだ。わたしはキリストと共に十字架につけられた。
29064 48 2 20 生きているのは、もはや、わたしではない。キリストが、わたしのうちに生きておられるのである。しかし、わたしがいま肉にあって生きているのは、わたしを愛し、わたしのためにご自身をささげられた神の御子を信じる信仰によって、生きているのである。
29065 48 2 21 わたしは、神の恵みを無にはしない。もし、義が律法によって得られるとすれば、キリストの死はむだであったことになる。
29066 48 3 1 ああ、物わかりのわるいガラテヤ人よ。十字架につけられたイエス・キリストが、あなたがたの目の前に描き出されたのに、いったい、だれがあなたがたを惑わしたのか。
29067 48 3 2 わたしは、ただこの一つの事を、あなたがたに聞いてみたい。あなたがたが御霊を受けたのは、律法を行ったからか、それとも、聞いて信じたからか。
29068 48 3 3 あなたがたは、そんなに物わかりがわるいのか。御霊で始めたのに、今になって肉で仕上げるというのか。
29069 48 3 4 あれほどの大きな経験をしたことは、むだであったのか。まさか、むだではあるまい。
29070 48 3 5 すると、あなたがたに御霊を賜い、力あるわざをあなたがたの間でなされたのは、律法を行ったからか、それとも、聞いて信じたからか。
29071 48 3 6 このように、アブラハムは「神を信じた。それによって、彼は義と認められた」のである。
29072 48 3 7 だから、信仰による者こそアブラハムの子であることを、知るべきである。
29073 48 3 8 聖書は、神が異邦人を信仰によって義とされることを、あらかじめ知って、アブラハムに、「あなたによって、すべての国民は祝福されるであろう」との良い知らせを、予告したのである。
29074 48 3 9 このように、信仰による者は、信仰の人アブラハムと共に、祝福を受けるのである。
29075 48 3 10 いったい、律法の行いによる者は、皆のろいの下にある。「律法の書に書いてあるいっさいのことを守らず、これを行わない者は、皆のろわれる」と書いてあるからである。
29076 48 3 11 そこで、律法によっては、神のみまえに義とされる者はひとりもないことが、明らかである。なぜなら、「信仰による義人は生きる」からである。
29077 48 3 12 律法は信仰に基いているものではない。かえって、「律法を行う者は律法によって生きる」のである。
29078 48 3 13 キリストは、わたしたちのためにのろいとなって、わたしたちを律法ののろいからあがない出して下さった。聖書に、「木にかけられる者は、すべてのろわれる」と書いてある。
29079 48 3 14 それは、アブラハムの受けた祝福が、イエス・キリストにあって異邦人に及ぶためであり、約束された御霊を、わたしたちが信仰によって受けるためである。
29080 48 3 15 兄弟たちよ。世のならわしを例にとって言おう。人間の遺言でさえ、いったん作成されたら、これを無効にしたり、これに付け加えたりすることは、だれにもできない。
29081 48 3 16 さて、約束は、アブラハムと彼の子孫とに対してなされたのである。それは、多数をさして「子孫たちとに」と言わずに、ひとりをさして「あなたの子孫とに」と言っている。これは、キリストのことである。
29082 48 3 17 わたしの言う意味は、こうである。神によってあらかじめ立てられた契約が、四百三十年の後にできた律法によって破棄されて、その約束がむなしくなるようなことはない。
29083 48 3 18 もし相続が、律法に基いてなされるとすれば、もはや約束に基いたものではない。ところが事実、神は約束によって、相続の恵みをアブラハムに賜わったのである。
29084 48 3 19 それでは、律法はなんであるか。それは違反を促すため、あとから加えられたのであって、約束されていた子孫が来るまで存続するだけのものであり、かつ、天使たちをとおし、仲介者の手によって制定されたものにすぎない。
29085 48 3 20 仲介者なるものは、一方だけに属する者ではない。しかし、神はひとりである。
29086 48 3 21 では、律法は神の約束と相いれないものか。断じてそうではない。もし人を生かす力のある律法が与えられていたとすれば、義はたしかに律法によって実現されたであろう。
29087 48 3 22 しかし、約束が、信じる人々にイエス・キリストに対する信仰によって与えられるために、聖書はすべての人を罪の下に閉じ込めたのである。
29088 48 3 23 しかし、信仰が現れる前には、わたしたちは律法の下で監視されており、やがて啓示される信仰の時まで閉じ込められていた。
29089 48 3 24 このようにして律法は、信仰によって義とされるために、わたしたちをキリストに連れて行く養育掛となったのである。
29090 48 3 25 しかし、いったん信仰が現れた以上、わたしたちは、もはや養育掛のもとにはいない。
29091 48 3 26 あなたがたはみな、キリスト・イエスにある信仰によって、神の子なのである。
29092 48 3 27 キリストに合うバプテスマを受けたあなたがたは、皆キリストを着たのである。
29093 48 3 28 もはや、ユダヤ人もギリシヤ人もなく、奴隷も自由人もなく、男も女もない。あなたがたは皆、キリスト・イエスにあって一つだからである。
29094 48 3 29 もしキリストのものであるなら、あなたがたはアブラハムの子孫であり、約束による相続人なのである。
29095 48 4 1 わたしの言う意味は、こうである。相続人が子供である間は、全財産の持ち主でありながら、僕となんの差別もなく、
29096 48 4 2 父親の定めた時期までは、管理人や後見人の監督の下に置かれているのである。
29097 48 4 3 それと同じく、わたしたちも子供であった時には、いわゆるこの世のもろもろの霊力の下に、縛られていた者であった。
29098 48 4 4 しかし、時の満ちるに及んで、神は御子を女から生れさせ、律法の下に生れさせて、おつかわしになった。
29099 48 4 5 それは、律法の下にある者をあがない出すため、わたしたちに子たる身分を授けるためであった。
29100 48 4 6 このように、あなたがたは子であるのだから、神はわたしたちの心の中に、「アバ、父よ」と呼ぶ御子の霊を送って下さったのである。
29101 48 4 7 したがって、あなたがたはもはや僕ではなく、子である。子である以上、また神による相続人である。
29102 48 4 8 神を知らなかった当時、あなたがたは、本来神ならぬ神々の奴隷になっていた。
29103 48 4 9 しかし、今では神を知っているのに、否、むしろ神に知られているのに、どうして、あの無力で貧弱な、もろもろの霊力に逆もどりして、またもや、新たにその奴隷になろうとするのか。
29104 48 4 10 あなたがたは、日や月や季節や年などを守っている。
29105 48 4 11 わたしは、あなたがたのために努力してきたことが、あるいは、むだになったのではないかと、あなたがたのことが心配でならない。
29106 48 4 12 兄弟たちよ。お願いする。どうか、わたしのようになってほしい。わたしも、あなたがたのようになったのだから。あなたがたは、一度もわたしに対して不都合なことをしたことはない。
29107 48 4 13 あなたがたも知っているとおり、最初わたしがあなたがたに福音を伝えたのは、わたしの肉体が弱っていたためであった。
29108 48 4 14 そして、わたしの肉体にはあなたがたにとって試錬となるものがあったのに、それを卑しめもせず、またきらいもせず、かえってわたしを、神の使かキリスト・イエスかでもあるように、迎えてくれた。
29109 48 4 15 その時のあなたがたの感激は、今どこにあるのか。はっきり言うが、あなたがたは、できることなら、自分の目をえぐり出してでも、わたしにくれたかったのだ。
29110 48 4 16 それだのに、真理を語ったために、わたしはあなたがたの敵になったのか。
29111 48 4 17 彼らがあなたがたに対して熱心なのは、善意からではない。むしろ、自分らに熱心にならせるために、あなたがたをわたしから引き離そうとしているのである。
29112 48 4 18 わたしがあなたがたの所にいる時だけでなく、いつも、良いことについて熱心に慕われるのは、良いことである。
29113 48 4 19 ああ、わたしの幼な子たちよ。あなたがたの内にキリストの形ができるまでは、わたしは、またもや、あなたがたのために産みの苦しみをする。
29114 48 4 20 できることなら、わたしは今あなたがたの所にいて、語調を変えて話してみたい。わたしは、あなたがたのことで、途方にくれている。
29115 48 4 21 律法の下にとどまっていたいと思う人たちよ。わたしに答えなさい。あなたがたは律法の言うところを聞かないのか。
29116 48 4 22 そのしるすところによると、アブラハムにふたりの子があったが、ひとりは女奴隷から、ひとりは自由の女から生れた。
29117 48 4 23 女奴隷の子は肉によって生れたのであり、自由の女の子は約束によって生れたのであった。
29118 48 4 24 さて、この物語は比喩としてみられる。すなわち、この女たちは二つの契約をさす。そのひとりはシナイ山から出て、奴隷となる者を産む。ハガルがそれである。
29119 48 4 25 ハガルといえば、アラビヤではシナイ山のことで、今のエルサレムに当る。なぜなら、それは子たちと共に、奴隷となっているからである。
29120 48 4 26 しかし、上なるエルサレムは、自由の女であって、わたしたちの母をさす。
29121 48 4 27 すなわち、こう書いてある、「喜べ、不妊の女よ。声をあげて喜べ、産みの苦しみを知らない女よ。ひとり者となっている女は多くの子を産み、その数は、夫ある女の子らよりも多い」。
29122 48 4 28 兄弟たちよ。あなたがたは、イサクのように、約束の子である。
29123 48 4 29 しかし、その当時、肉によって生れた者が、霊によって生れた者を迫害したように、今でも同様である。
29124 48 4 30 しかし、聖書はなんと言っているか。「女奴隷とその子とを追い出せ。女奴隷の子は、自由の女の子と共に相続をしてはならない」とある。
29125 48 4 31 だから、兄弟たちよ。わたしたちは女奴隷の子ではなく、自由の女の子なのである。
29126 48 5 1 自由を得させるために、キリストはわたしたちを解放して下さったのである。だから、堅く立って、二度と奴隷のくびきにつながれてはならない。
29127 48 5 2 見よ、このパウロがあなたがたに言う。もし割礼を受けるなら、キリストはあなたがたに用のないものになろう。
29128 48 5 3 割礼を受けようとするすべての人たちに、もう一度言っておく。そういう人たちは、律法の全部を行う義務がある。
29129 48 5 4 律法によって義とされようとするあなたがたは、キリストから離れてしまっている。恵みから落ちている。
29130 48 5 5 わたしたちは、御霊の助けにより、信仰によって義とされる望みを強くいだいている。
29131 48 5 6 キリスト・イエスにあっては、割礼があってもなくても、問題ではない。尊いのは、愛によって働く信仰だけである。
29132 48 5 7 あなたがたはよく走り続けてきたのに、だれが邪魔をして、真理にそむかせたのか。
29133 48 5 8 そのような勧誘は、あなたがたを召されたかたから出たものではない。
29134 48 5 9 少しのパン種でも、粉のかたまり全体をふくらませる。
29135 48 5 10 あなたがたはいささかもわたしと違った思いをいだくことはないと、主にあって信頼している。しかし、あなたがたを動揺させている者は、それがだれであろうと、さばきを受けるであろう。
29136 48 5 11 兄弟たちよ。わたしがもし今でも割礼を宣べ伝えていたら、どうして、いまなお迫害されるはずがあろうか。そうしていたら、十字架のつまずきは、なくなっているであろう。
29137 48 5 12 あなたがたの煽動者どもは、自ら不具になるがよかろう。
29138 48 5 13 兄弟たちよ。あなたがたが召されたのは、実に、自由を得るためである。ただ、その自由を、肉の働く機会としないで、愛をもって互に仕えなさい。
29139 48 5 14 律法の全体は、「自分を愛するように、あなたの隣り人を愛せよ」というこの一句に尽きるからである。
29140 48 5 15 気をつけるがよい。もし互にかみ合い、食い合っているなら、あなたがたは互に滅ぼされてしまうだろう。
29141 48 5 16 わたしは命じる、御霊によって歩きなさい。そうすれば、決して肉の欲を満たすことはない。
29142 48 5 17 なぜなら、肉の欲するところは御霊に反し、また御霊の欲するところは肉に反するからである。こうして、二つのものは互に相さからい、その結果、あなたがたは自分でしようと思うことを、することができないようになる。
29143 48 5 18 もしあなたがたが御霊に導かれるなら、律法の下にはいない。
29144 48 5 19 肉の働きは明白である。すなわち、不品行、汚れ、好色、
29145 48 5 20 偶像礼拝、まじない、敵意、争い、そねみ、怒り、党派心、分裂、分派、
29146 48 5 21 ねたみ、泥酔、宴楽、および、そのたぐいである。わたしは以前も言ったように、今も前もって言っておく。このようなことを行う者は、神の国をつぐことがない。
29147 48 5 22 しかし、御霊の実は、愛、喜び、平和、寛容、慈愛、善意、忠実、
29148 48 5 23 柔和、自制であって、これらを否定する律法はない。
29149 48 5 24 キリスト・イエスに属する者は、自分の肉を、その情と欲と共に十字架につけてしまったのである。
29150 48 5 25 もしわたしたちが御霊によって生きるのなら、また御霊によって進もうではないか。
29151 48 5 26 互にいどみ合い、互にねたみ合って、虚栄に生きてはならない。
29152 48 6 1 兄弟たちよ。もしもある人が罪過に陥っていることがわかったなら、霊の人であるあなたがたは、柔和な心をもって、その人を正しなさい。それと同時に、もしか自分自身も誘惑に陥ることがありはしないかと、反省しなさい。
29153 48 6 2 互に重荷を負い合いなさい。そうすれば、あなたがたはキリストの律法を全うするであろう。
29154 48 6 3 もしある人が、事実そうでないのに、自分が何か偉い者であるように思っているとすれば、その人は自分を欺いているのである。
29155 48 6 4 ひとりびとり、自分の行いを検討してみるがよい。そうすれば、自分だけには誇ることができても、ほかの人には誇れなくなるであろう。
29156 48 6 5 人はそれぞれ、自分自身の重荷を負うべきである。
29157 48 6 6 御言を教えてもらう人は、教える人と、すべて良いものを分け合いなさい。
29158 48 6 7 まちがってはいけない、神は侮られるようなかたではない。人は自分のまいたものを、刈り取ることになる。
29159 48 6 8 すなわち、自分の肉にまく者は、肉から滅びを刈り取り、霊にまく者は、霊から永遠のいのちを刈り取るであろう。
29160 48 6 9 わたしたちは、善を行うことに、うみ疲れてはならない。たゆまないでいると、時が来れば刈り取るようになる。
29161 48 6 10 だから、機会のあるごとに、だれに対しても、とくに信仰の仲間に対して、善を行おうではないか。
29162 48 6 11 ごらんなさい。わたし自身いま筆をとって、こんなに大きい字で、あなたがたに書いていることを。
29163 48 6 12 いったい、肉において見えを飾ろうとする者たちは、キリスト・イエスの十字架のゆえに、迫害を受けたくないばかりに、あなたがたにしいて割礼を受けさせようとする。
29164 48 6 13 事実、割礼のあるもの自身が律法を守らず、ただ、あなたがたの肉について誇りたいために、割礼を受けさせようとしているのである。
29165 48 6 14 しかし、わたし自身には、わたしたちの主イエス・キリストの十字架以外に、誇とするものは、断じてあってはならない。この十字架につけられて、この世はわたしに対して死に、わたしもこの世に対して死んでしまったのである。
29166 48 6 15 割礼のあるなしは問題ではなく、ただ、新しく造られることこそ、重要なのである。
29167 48 6 16 この法則に従って進む人々の上に、平和とあわれみとがあるように。また、神のイスラエルの上にあるように。
29168 48 6 17 だれも今後は、わたしに煩いをかけないでほしい。わたしは、イエスの焼き印を身に帯びているのだから。
29169 48 6 18 兄弟たちよ。わたしたちの主イエス・キリストの恵みが、あなたがたの霊と共にあるように、アァメン。
29170 49 1 1 神の御旨によるキリスト・イエスの使徒パウロから、エペソにいる、キリスト・イエスにあって忠実な聖徒たちへ。
29171 49 1 2 わたしたちの父なる神と主イエス・キリストから、恵みと平安とが、あなたがたにあるように。
29172 49 1 3 ほむべきかな、わたしたちの主イエス・キリストの父なる神。神はキリストにあって、天上で霊のもろもろの祝福をもって、わたしたちを祝福し、
29173 49 1 4 みまえにきよく傷のない者となるようにと、天地の造られる前から、キリストにあってわたしたちを選び、
29174 49 1 5 わたしたちに、イエス・キリストによって神の子たる身分を授けるようにと、御旨のよしとするところに従い、愛のうちにあらかじめ定めて下さったのである。
29175 49 1 6 これは、その愛する御子によって賜わった栄光ある恵みを、わたしたちがほめたたえるためである。
29176 49 1 7 わたしたちは、御子にあって、神の豊かな恵みのゆえに、その血によるあがない、すなわち、罪過のゆるしを受けたのである。
29177 49 1 8 神はその恵みをさらに増し加えて、あらゆる知恵と悟りとをわたしたちに賜わり、
29178 49 1 9 御旨の奥義を、自らあらかじめ定められた計画に従って、わたしたちに示して下さったのである。
29179 49 1 10 それは、時の満ちるに及んで実現されるご計画にほかならない。それによって、神は天にあるもの地にあるものを、ことごとく、キリストにあって一つに帰せしめようとされたのである。
29180 49 1 11 わたしたちは、御旨の欲するままにすべての事をなさるかたの目的の下に、キリストにあってあらかじめ定められ、神の民として選ばれたのである。
29181 49 1 12 それは、早くからキリストに望みをおいているわたしたちが、神の栄光をほめたたえる者となるためである。
29182 49 1 13 あなたがたもまた、キリストにあって、真理の言葉、すなわち、あなたがたの救の福音を聞き、また、彼を信じた結果、約束された聖霊の証印をおされたのである。
29183 49 1 14 この聖霊は、わたしたちが神の国をつぐことの保証であって、やがて神につける者が全くあがなわれ、神の栄光をほめたたえるに至るためである。
29184 49 1 15 こういうわけで、わたしも、主イエスに対するあなたがたの信仰と、すべての聖徒に対する愛とを耳にし、
29185 49 1 16 わたしの祈のたびごとにあなたがたを覚えて、絶えずあなたがたのために感謝している。
29186 49 1 17 どうか、わたしたちの主イエス・キリストの神、栄光の父が、知恵と啓示との霊をあなたがたに賜わって神を認めさせ、
29187 49 1 18 あなたがたの心の目を明らかにして下さるように、そして、あなたがたが神に召されていだいている望みがどんなものであるか、聖徒たちがつぐべき神の国がいかに栄光に富んだものであるか、
29188 49 1 19 また、神の力強い活動によって働く力が、わたしたち信じる者にとっていかに絶大なものであるかを、あなたがたが知るに至るように、と祈っている。
29189 49 1 20 神はその力をキリストのうちに働かせて、彼を死人の中からよみがえらせ、天上においてご自分の右に座せしめ、
29190 49 1 21 彼を、すべての支配、権威、権力、権勢の上におき、また、この世ばかりでなくきたるべき世においても唱えられる、あらゆる名の上におかれたのである。
29191 49 1 22 そして、万物をキリストの足の下に従わせ、彼を万物の上にかしらとして教会に与えられた。
29192 49 1 23 この教会はキリストのからだであって、すべてのものを、すべてのもののうちに満たしているかたが、満ちみちているものに、ほかならない。
29193 49 2 1 さてあなたがたは、先には自分の罪過と罪とによって死んでいた者であって、
29194 49 2 2 かつてはそれらの中で、この世のならわしに従い、空中の権をもつ君、すなわち、不従順の子らの中に今も働いている霊に従って、歩いていたのである。
29195 49 2 3 また、わたしたちもみな、かつては彼らの中にいて、肉の欲に従って日を過ごし、肉とその思いとの欲するままを行い、ほかの人々と同じく、生れながらの怒りの子であった。
29196 49 2 4 しかるに、あわれみに富む神は、わたしたちを愛して下さったその大きな愛をもって、
29197 49 2 5 罪過によって死んでいたわたしたちを、キリストと共に生かし――あなたがたの救われたのは、恵みによるのである――
29198 49 2 6 キリスト・イエスにあって、共によみがえらせ、共に天上で座につかせて下さったのである。
29199 49 2 7 それは、キリスト・イエスにあってわたしたちに賜わった慈愛による神の恵みの絶大な富を、きたるべき世々に示すためであった。
29200 49 2 8 あなたがたの救われたのは、実に、恵みにより、信仰によるのである。それは、あなたがた自身から出たものではなく、神の賜物である。
29201 49 2 9 決して行いによるのではない。それは、だれも誇ることがないためなのである。
29202 49 2 10 わたしたちは神の作品であって、良い行いをするように、キリスト・イエスにあって造られたのである。神は、わたしたちが、良い行いをして日を過ごすようにと、あらかじめ備えて下さったのである。
29203 49 2 11 だから、記憶しておきなさい。あなたがたは以前には、肉によれば異邦人であって、手で行った肉の割礼ある者と称せられる人々からは、無割礼の者と呼ばれており、
29204 49 2 12 またその当時は、キリストを知らず、イスラエルの国籍がなく、約束されたいろいろの契約に縁がなく、この世の中で希望もなく神もない者であった。
29205 49 2 13 ところが、あなたがたは、このように以前は遠く離れていたが、今ではキリスト・イエスにあって、キリストの血によって近いものとなったのである。
29206 49 2 14 キリストはわたしたちの平和であって、二つのものを一つにし、敵意という隔ての中垣を取り除き、ご自分の肉によって、
29207 49 2 15 数々の規定から成っている戒めの律法を廃棄したのである。それは、彼にあって、二つのものをひとりの新しい人に造りかえて平和をきたらせ、
29208 49 2 16 十字架によって、二つのものを一つのからだとして神と和解させ、敵意を十字架にかけて滅ぼしてしまったのである。
29209 49 2 17 それから彼は、こられた上で、遠く離れているあなたがたに平和を宣べ伝え、また近くにいる者たちにも平和を宣べ伝えられたのである。
29210 49 2 18 というのは、彼によって、わたしたち両方の者が一つの御霊の中にあって、父のみもとに近づくことができるからである。
29211 49 2 19 そこであなたがたは、もはや異国人でも宿り人でもなく、聖徒たちと同じ国籍の者であり、神の家族なのである。
29212 49 2 20 またあなたがたは、使徒たちや預言者たちという土台の上に建てられたものであって、キリスト・イエスご自身が隅のかしら石である。
29213 49 2 21 このキリストにあって、建物全体が組み合わされ、主にある聖なる宮に成長し、
29214 49 2 22 そしてあなたがたも、主にあって共に建てられて、霊なる神のすまいとなるのである。
29215 49 3 1 こういうわけで、あなたがた異邦人のためにキリスト・イエスの囚人となっているこのパウロ――
29216 49 3 2 わたしがあなたがたのために神から賜わった恵みの務について、あなたがたはたしかに聞いたであろう。
29217 49 3 3 すなわち、すでに簡単に書きおくったように、わたしは啓示によって奥義を知らされたのである。
29218 49 3 4 あなたがたはそれを読めば、キリストの奥義をわたしがどう理解しているかがわかる。
29219 49 3 5 この奥義は、いまは、御霊によって彼の聖なる使徒たちと預言者たちとに啓示されているが、前の時代には、人の子らに対して、そのように知らされてはいなかったのである。
29220 49 3 6 それは、異邦人が、福音によりキリスト・イエスにあって、わたしたちと共に神の国をつぐ者となり、共に一つのからだとなり、共に約束にあずかる者となることである。
29221 49 3 7 わたしは、神の力がわたしに働いて、自分に与えられた神の恵みの賜物により、福音の僕とされたのである。
29222 49 3 8 すなわち、聖徒たちのうちで最も小さい者であるわたしにこの恵みが与えられたが、それは、キリストの無尽蔵の富を異邦人に宣べ伝え、
29223 49 3 9 更にまた、万物の造り主である神の中に世々隠されていた奥義にあずかる務がどんなものであるかを、明らかに示すためである。
29224 49 3 10 それは今、天上にあるもろもろの支配や権威が、教会をとおして、神の多種多様な知恵を知るに至るためであって、
29225 49 3 11 わたしたちの主キリスト・イエスにあって実現された神の永遠の目的にそうものである。
29226 49 3 12 この主キリストにあって、わたしたちは、彼に対する信仰によって、確信をもって大胆に神に近づくことができるのである。
29227 49 3 13 だから、あなたがたのためにわたしが受けている患難を見て、落胆しないでいてもらいたい。わたしの患難は、あなたがたの光栄なのである。
29228 49 3 14 こういうわけで、わたしはひざをかがめて、
29229 49 3 15 天上にあり地上にあって「父」と呼ばれているあらゆるものの源なる父に祈る。
29230 49 3 16 どうか父が、その栄光の富にしたがい、御霊により、力をもってあなたがたの内なる人を強くして下さるように、
29231 49 3 17 また、信仰によって、キリストがあなたがたの心のうちに住み、あなたがたが愛に根ざし愛を基として生活することにより、
29232 49 3 18 すべての聖徒と共に、その広さ、長さ、高さ、深さを理解することができ、
29233 49 3 19 また人知をはるかに越えたキリストの愛を知って、神に満ちているもののすべてをもって、あなたがたが満たされるように、と祈る。
29234 49 3 20 どうか、わたしたちのうちに働く力によって、わたしたちが求めまた思うところのいっさいを、はるかに越えてかなえて下さることができるかたに、
29235 49 3 21 教会により、また、キリスト・イエスによって、栄光が世々限りなくあるように、アァメン。
29236 49 4 1 さて、主にある囚人であるわたしは、あなたがたに勧める。あなたがたが召されたその召しにふさわしく歩き、
29237 49 4 2 できる限り謙虚で、かつ柔和であり、寛容を示し、愛をもって互に忍びあい、
29238 49 4 3 平和のきずなで結ばれて、聖霊による一致を守り続けるように努めなさい。
29239 49 4 4 からだは一つ、御霊も一つである。あなたがたが召されたのは、一つの望みを目ざして召されたのと同様である。
29240 49 4 5 主は一つ、信仰は一つ、バプテスマは一つ。
29241 49 4 6 すべてのものの上にあり、すべてのものを貫き、すべてのものの内にいます、すべてのものの父なる神は一つである。
29242 49 4 7 しかし、キリストから賜わる賜物のはかりに従って、わたしたちひとりびとりに、恵みが与えられている。
29243 49 4 8 そこで、こう言われている、「彼は高いところに上った時、とりこを捕えて引き行き、人々に賜物を分け与えた」。
29244 49 4 9 さて「上った」と言う以上、また地下の低い底にも降りてこられたわけではないか。
29245 49 4 10 降りてこられた者自身は、同時に、あらゆるものに満ちるために、もろもろの天の上にまで上られたかたなのである。
29246 49 4 11 そして彼は、ある人を使徒とし、ある人を預言者とし、ある人を伝道者とし、ある人を牧師、教師として、お立てになった。
29247 49 4 12 それは、聖徒たちをととのえて奉仕のわざをさせ、キリストのからだを建てさせ、
29248 49 4 13 わたしたちすべての者が、神の子を信じる信仰の一致と彼を知る知識の一致とに到達し、全き人となり、ついに、キリストの満ちみちた徳の高さにまで至るためである。
29249 49 4 14 こうして、わたしたちはもはや子供ではないので、だまし惑わす策略により、人々の悪巧みによって起る様々な教の風に吹きまわされたり、もてあそばれたりすることがなく、
29250 49 4 15 愛にあって真理を語り、あらゆる点において成長し、かしらなるキリストに達するのである。
29251 49 4 16 また、キリストを基として、全身はすべての節々の助けにより、しっかりと組み合わされ結び合わされ、それぞれの部分は分に応じて働き、からだを成長させ、愛のうちに育てられていくのである。
29252 49 4 17 そこで、わたしは主にあっておごそかに勧める。あなたがたは今後、異邦人がむなしい心で歩いているように歩いてはならない。
29253 49 4 18 彼らの知力は暗くなり、その内なる無知と心の硬化とにより、神のいのちから遠く離れ、
29254 49 4 19 自ら無感覚になって、ほしいままにあらゆる不潔な行いをして、放縦に身をゆだねている。
29255 49 4 20 しかしあなたがたは、そのようにキリストに学んだのではなかった。
29256 49 4 21 あなたがたはたしかに彼に聞き、彼にあって教えられて、イエスにある真理をそのまま学んだはずである。
29257 49 4 22 すなわち、あなたがたは、以前の生活に属する、情欲に迷って滅び行く古き人を脱ぎ捨て、
29258 49 4 23 心の深みまで新たにされて、
29259 49 4 24 真の義と聖とをそなえた神にかたどって造られた新しき人を着るべきである。
29260 49 4 25 こういうわけだから、あなたがたは偽りを捨てて、おのおの隣り人に対して、真実を語りなさい。わたしたちは、お互に肢体なのであるから。
29261 49 4 26 怒ることがあっても、罪を犯してはならない。憤ったままで、日が暮れるようであってはならない。
29262 49 4 27 また、悪魔に機会を与えてはいけない。
29263 49 4 28 盗んだ者は、今後、盗んではならない。むしろ、貧しい人々に分け与えるようになるために、自分の手で正当な働きをしなさい。
29264 49 4 29 悪い言葉をいっさい、あなたがたの口から出してはいけない。必要があれば、人の徳を高めるのに役立つような言葉を語って、聞いている者の益になるようにしなさい。
29265 49 4 30 神の聖霊を悲しませてはいけない。あなたがたは、あがないの日のために、聖霊の証印を受けたのである。
29266 49 4 31 すべての無慈悲、憤り、怒り、騒ぎ、そしり、また、いっさいの悪意を捨て去りなさい。
29267 49 4 32 互に情深く、あわれみ深い者となり、神がキリストにあってあなたがたをゆるして下さったように、あなたがたも互にゆるし合いなさい。
29268 49 5 1 こうして、あなたがたは、神に愛されている子供として、神にならう者になりなさい。
29269 49 5 2 また愛のうちを歩きなさい。キリストもあなたがたを愛して下さって、わたしたちのために、ご自身を、神へのかんばしいかおりのささげ物、また、いけにえとしてささげられたのである。
29270 49 5 3 また、不品行といろいろな汚れや貪欲などを、聖徒にふさわしく、あなたがたの間では、口にすることさえしてはならない。
29271 49 5 4 また、卑しい言葉と愚かな話やみだらな冗談を避けなさい。これらは、よろしくない事である。それよりは、むしろ感謝をささげなさい。
29272 49 5 5 あなたがたは、よく知っておかねばならない。すべて不品行な者、汚れたことをする者、貪欲な者、すなわち、偶像を礼拝する者は、キリストと神との国をつぐことができない。
29273 49 5 6 あなたがたは、だれにも不誠実な言葉でだまされてはいけない。これらのことから、神の怒りは不従順の子らに下るのである。
29274 49 5 7 だから、彼らの仲間になってはいけない。
29275 49 5 8 あなたがたは、以前はやみであったが、今は主にあって光となっている。光の子らしく歩きなさい――
29276 49 5 9 光はあらゆる善意と正義と真実との実を結ばせるものである――
29277 49 5 10 主に喜ばれるものがなんであるかを、わきまえ知りなさい。
29278 49 5 11 実を結ばないやみのわざに加わらないで、むしろ、それを指摘してやりなさい。
29279 49 5 12 彼らが隠れて行っていることは、口にするだけでも恥ずかしい事である。
29280 49 5 13 しかし、光にさらされる時、すべてのものは、明らかになる。
29281 49 5 14 明らかにされたものは皆、光となるのである。だから、こう書いてある、「眠っている者よ、起きなさい。死人のなかから、立ち上がりなさい。そうすれば、キリストがあなたを照すであろう」。
29282 49 5 15 そこで、あなたがたの歩きかたによく注意して、賢くない者のようにではなく、賢い者のように歩き、
29283 49 5 16 今の時を生かして用いなさい。今は悪い時代なのである。
29284 49 5 17 だから、愚かな者にならないで、主の御旨がなんであるかを悟りなさい。
29285 49 5 18 酒に酔ってはいけない。それは乱行のもとである。むしろ御霊に満たされて、
29286 49 5 19 詩とさんびと霊の歌とをもって語り合い、主にむかって心からさんびの歌をうたいなさい。
29287 49 5 20 そしてすべてのことにつき、いつも、わたしたちの主イエス・キリストの御名によって、父なる神に感謝し、
29288 49 5 21 キリストに対する恐れの心をもって、互に仕え合うべきである。
29289 49 5 22 妻たる者よ。主に仕えるように自分の夫に仕えなさい。
29290 49 5 23 キリストが教会のかしらであって、自らは、からだなる教会の救主であられるように、夫は妻のかしらである。
29291 49 5 24 そして教会がキリストに仕えるように、妻もすべてのことにおいて、夫に仕えるべきである。
29292 49 5 25 夫たる者よ。キリストが教会を愛してそのためにご自身をささげられたように、妻を愛しなさい。
29293 49 5 26 キリストがそうなさったのは、水で洗うことにより、言葉によって、教会をきよめて聖なるものとするためであり、
29294 49 5 27 また、しみも、しわも、そのたぐいのものがいっさいなく、清くて傷のない栄光の姿の教会を、ご自分に迎えるためである。
29295 49 5 28 それと同じく、夫も自分の妻を、自分のからだのように愛さねばならない。自分の妻を愛する者は、自分自身を愛するのである。
29296 49 5 29 自分自身を憎んだ者は、いまだかつて、ひとりもいない。かえって、キリストが教会になさったようにして、おのれを育て養うのが常である。
29297 49 5 30 わたしたちは、キリストのからだの肢体なのである。
29298 49 5 31 「それゆえに、人は父母を離れてその妻と結ばれ、ふたりの者は一体となるべきである」。
29299 49 5 32 この奥義は大きい。それは、キリストと教会とをさしている。
29300 49 5 33 いずれにしても、あなたがたは、それぞれ、自分の妻を自分自身のように愛しなさい。妻もまた夫を敬いなさい。
29301 49 6 1 子たる者よ。主にあって両親に従いなさい。これは正しいことである。
29302 49 6 2 「あなたの父と母とを敬え」。これが第一の戒めであって、次の約束がそれについている、
29303 49 6 3 「そうすれば、あなたは幸福になり、地上でながく生きながらえるであろう」。
29304 49 6 4 父たる者よ。子供をおこらせないで、主の薫陶と訓戒とによって、彼らを育てなさい。
29305 49 6 5 僕たる者よ。キリストに従うように、恐れおののきつつ、真心をこめて、肉による主人に従いなさい。
29306 49 6 6 人にへつらおうとして目先だけの勤めをするのでなく、キリストの僕として心から神の御旨を行い、
29307 49 6 7 人にではなく主に仕えるように、快く仕えなさい。
29308 49 6 8 あなたがたが知っているとおり、だれでも良いことを行えば、僕であれ、自由人であれ、それに相当する報いを、それぞれ主から受けるであろう。
29309 49 6 9 主人たる者よ。僕たちに対して、同様にしなさい。おどすことを、してはならない。あなたがたが知っているとおり、彼らとあなたがたとの主は天にいますのであり、かつ人をかたより見ることをなさらないのである。
29310 49 6 10 最後に言う。主にあって、その偉大な力によって、強くなりなさい。
29311 49 6 11 悪魔の策略に対抗して立ちうるために、神の武具で身を固めなさい。
29312 49 6 12 わたしたちの戦いは、血肉に対するものではなく、もろもろの支配と、権威と、やみの世の主権者、また天上にいる悪の霊に対する戦いである。
29313 49 6 13 それだから、悪しき日にあたって、よく抵抗し、完全に勝ち抜いて、堅く立ちうるために、神の武具を身につけなさい。
29314 49 6 14 すなわち、立って真理の帯を腰にしめ、正義の胸当を胸につけ、
29315 49 6 15 平和の福音の備えを足にはき、
29316 49 6 16 その上に、信仰のたてを手に取りなさい。それをもって、悪しき者の放つ火の矢を消すことができるであろう。
29317 49 6 17 また、救のかぶとをかぶり、御霊の剣、すなわち、神の言を取りなさい。
29318 49 6 18 絶えず祈と願いをし、どんな時でも御霊によって祈り、そのために目をさましてうむことがなく、すべての聖徒のために祈りつづけなさい。
29319 49 6 19 また、わたしが口を開くときに語るべき言葉を賜わり、大胆に福音の奥義を明らかに示しうるように、わたしのためにも祈ってほしい。
29320 49 6 20 わたしはこの福音のための使節であり、そして鎖につながれているのであるが、つながれていても、語るべき時には大胆に語れるように祈ってほしい。
29321 49 6 21 わたしがどういう様子か、何をしているかを、あなたがたに知ってもらうために、主にあって忠実に仕えている愛する兄弟テキコが、いっさいの事を報告するであろう。
29322 49 6 22 彼をあなたがたのもとに送るのは、あなたがたがわたしたちの様子を知り、また彼によって心に励ましを受けるようになるためなのである。
29323 49 6 23 父なる神とわたしたちの主イエス・キリストから平安ならびに信仰に伴う愛が、兄弟たちにあるように。
29324 49 6 24 変らない真実をもって、わたしたちの主イエス・キリストを愛するすべての人々に、恵みがあるように。
29325 50 1 1 キリスト・イエスの僕たち、パウロとテモテから、ピリピにいる、キリスト・イエスにあるすべての聖徒たち、ならびに監督たちと執事たちへ。
29326 50 1 2 わたしたちの父なる神と主イエス・キリストから、恵みと平安とが、あなたがたにあるように。
29327 50 1 3 わたしはあなたがたを思うたびごとに、わたしの神に感謝し、
29328 50 1 4 あなたがた一同のために祈るとき、いつも喜びをもって祈り、
29329 50 1 5 あなたがたが最初の日から今日に至るまで、福音にあずかっていることを感謝している。
29330 50 1 6 そして、あなたがたのうちに良いわざを始められたかたが、キリスト・イエスの日までにそれを完成して下さるにちがいないと、確信している。
29331 50 1 7 わたしが、あなたがた一同のために、そう考えるのは当然である。それは、わたしが獄に捕われている時にも、福音を弁明し立証する時にも、あなたがたをみな、共に恵みにあずかる者として、わたしの心に深く留めているからである。
29332 50 1 8 わたしがキリスト・イエスの熱愛をもって、どんなに深くあなたがた一同を思っていることか、それを証明して下さるかたは神である。
29333 50 1 9 わたしはこう祈る。あなたがたの愛が、深い知識において、するどい感覚において、いよいよ増し加わり、
29334 50 1 10 それによって、あなたがたが、何が重要であるかを判別することができ、キリストの日に備えて、純真で責められるところのないものとなり、
29335 50 1 11 イエス・キリストによる義の実に満たされて、神の栄光とほまれとをあらわすに至るように。
29336 50 1 12 さて、兄弟たちよ。わたしの身に起った事が、むしろ福音の前進に役立つようになったことを、あなたがたに知ってもらいたい。
29337 50 1 13 すなわち、わたしが獄に捕われているのはキリストのためであることが、兵営全体にもそのほかのすべての人々にも明らかになり、
29338 50 1 14 そして兄弟たちのうち多くの者は、わたしの入獄によって主にある確信を得、恐れることなく、ますます勇敢に、神の言を語るようになった。
29339 50 1 15 一方では、ねたみや闘争心からキリストを宣べ伝える者がおり、他方では善意からそうする者がいる。
29340 50 1 16 後者は、わたしが福音を弁明するために立てられていることを知り、愛の心でキリストを伝え、
29341 50 1 17 前者は、わたしの入獄の苦しみに更に患難を加えようと思って、純真な心からではなく、党派心からそうしている。
29342 50 1 18 すると、どうなのか。見えからであるにしても、真実からであるにしても、要するに、伝えられているのはキリストなのだから、わたしはそれを喜んでいるし、また喜ぶであろう。
29343 50 1 19 なぜなら、あなたがたの祈と、イエス・キリストの霊の助けとによって、この事がついには、わたしの救となることを知っているからである。
29344 50 1 20 そこで、わたしが切実な思いで待ち望むことは、わたしが、どんなことがあっても恥じることなく、かえって、いつものように今も、大胆に語ることによって、生きるにも死ぬにも、わたしの身によってキリストがあがめられることである。
29345 50 1 21 わたしにとっては、生きることはキリストであり、死ぬことは益である。
29346 50 1 22 しかし、肉体において生きていることが、わたしにとっては実り多い働きになるのだとすれば、どちらを選んだらよいか、わたしにはわからない。
29347 50 1 23 わたしは、これら二つのものの間に板ばさみになっている。わたしの願いを言えば、この世を去ってキリストと共にいることであり、実は、その方がはるかに望ましい。
29348 50 1 24 しかし、肉体にとどまっていることは、あなたがたのためには、さらに必要である。
29349 50 1 25 こう確信しているので、わたしは生きながらえて、あなたがた一同のところにとどまり、あなたがたの信仰を進ませ、その喜びを得させようと思う。
29350 50 1 26 そうなれば、わたしが再びあなたがたのところに行くので、あなたがたはわたしによってキリスト・イエスにある誇を増すことになろう。
29351 50 1 27 ただ、あなたがたはキリストの福音にふさわしく生活しなさい。そして、わたしが行ってあなたがたに会うにしても、離れているにしても、あなたがたが一つの霊によって堅く立ち、一つ心になって福音の信仰のために力を合わせて戦い、
29352 50 1 28 かつ、何事についても、敵対する者どもにろうばいさせられないでいる様子を、聞かせてほしい。このことは、彼らには滅びのしるし、あなたがたには救のしるしであって、それは神から来るのである。
29353 50 1 29 あなたがたはキリストのために、ただ彼を信じることだけではなく、彼のために苦しむことをも賜わっている。
29354 50 1 30 あなたがたは、さきにわたしについて見、今またわたしについて聞いているのと同じ苦闘を、続けているのである。
29355 50 2 1 そこで、あなたがたに、キリストによる勧め、愛の励まし、御霊の交わり、熱愛とあわれみとが、いくらかでもあるなら、
29356 50 2 2 どうか同じ思いとなり、同じ愛の心を持ち、心を合わせ、一つ思いになって、わたしの喜びを満たしてほしい。
29357 50 2 3 何事も党派心や虚栄からするのでなく、へりくだった心をもって互に人を自分よりすぐれた者としなさい。
29358 50 2 4 おのおの、自分のことばかりでなく、他人のことも考えなさい。
29359 50 2 5 キリスト・イエスにあっていだいているのと同じ思いを、あなたがたの間でも互に生かしなさい。
29360 50 2 6 キリストは、神のかたちであられたが、神と等しくあることを固守すべき事とは思わず、
29361 50 2 7 かえって、おのれをむなしうして僕のかたちをとり、人間の姿になられた。その有様は人と異ならず、
29362 50 2 8 おのれを低くして、死に至るまで、しかも十字架の死に至るまで従順であられた。
29363 50 2 9 それゆえに、神は彼を高く引き上げ、すべての名にまさる名を彼に賜わった。
29364 50 2 10 それは、イエスの御名によって、天上のもの、地上のもの、地下のものなど、あらゆるものがひざをかがめ、
29365 50 2 11 また、あらゆる舌が、「イエス・キリストは主である」と告白して、栄光を父なる神に帰するためである。
29366 50 2 12 わたしの愛する者たちよ。そういうわけだから、あなたがたがいつも従順であったように、わたしが一緒にいる時だけでなく、いない今は、いっそう従順でいて、恐れおののいて自分の救の達成に努めなさい。
29367 50 2 13 あなたがたのうちに働きかけて、その願いを起させ、かつ実現に至らせるのは神であって、それは神のよしとされるところだからである。
29368 50 2 14 すべてのことを、つぶやかず疑わないでしなさい。
29369 50 2 15 それは、あなたがたが責められるところのない純真な者となり、曲った邪悪な時代のただ中にあって、傷のない神の子となるためである。あなたがたは、いのちの言葉を堅く持って、彼らの間で星のようにこの世に輝いている。
29370 50 2 16 このようにして、キリストの日に、わたしは自分の走ったことがむだでなく、労したこともむだではなかったと誇ることができる。
29371 50 2 17 そして、たとい、あなたがたの信仰の供え物をささげる祭壇に、わたしの血をそそぐことがあっても、わたしは喜ぼう。あなたがた一同と共に喜ぼう。
29372 50 2 18 同じように、あなたがたも喜びなさい。わたしと共に喜びなさい。
29373 50 2 19 さて、わたしは、まもなくテモテをあなたがたのところに送りたいと、主イエスにあって願っている。それは、あなたがたの様子を知って、わたしも力づけられたいからである。
29374 50 2 20 テモテのような心で、親身になってあなたがたのことを心配している者は、ほかにひとりもない。
29375 50 2 21 人はみな、自分のことを求めるだけで、キリスト・イエスのことは求めていない。
29376 50 2 22 しかし、テモテの錬達ぶりは、あなたがたの知っているとおりである。すなわち、子が父に対するようにして、わたしと一緒に福音に仕えてきたのである。
29377 50 2 23 そこで、この人を、わたしの成行きがわかりしだい、すぐにでも、そちらへ送りたいと願っている。
29378 50 2 24 わたし自身もまもなく行けるものと、主にあって確信している。
29379 50 2 25 しかし、さしあたり、わたしの同労者で戦友である兄弟、また、あなたがたの使者としてわたしの窮乏を補ってくれたエパフロデトを、あなたがたのもとに送り返すことが必要だと思っている。
29380 50 2 26 彼は、あなたがた一同にしきりに会いたがっているからである。その上、自分の病気のことがあなたがたに聞えたので、彼は心苦しく思っている。
29381 50 2 27 彼は実に、ひん死の病気にかかったが、神は彼をあわれんで下さった。彼ばかりではなく、わたしをもあわれんで下さったので、わたしは悲しみに悲しみを重ねないですんだのである。
29382 50 2 28 そこで、大急ぎで彼を送り返す。これで、あなたがたは彼と再び会って喜び、わたしもまた、心配を和らげることができよう。
29383 50 2 29 こういうわけだから、大いに喜んで、主にあって彼を迎えてほしい。また、こうした人々は尊重せねばならない。
29384 50 2 30 彼は、わたしに対してあなたがたが奉仕のできなかった分を補おうとして、キリストのわざのために命をかけ、死ぬばかりになったのである。
29385 50 3 1 最後に、わたしの兄弟たちよ。主にあって喜びなさい。さきに書いたのと同じことをここで繰り返すが、それは、わたしには煩らわしいことではなく、あなたがたには安全なことになる。
29386 50 3 2 あの犬どもを警戒しなさい。悪い働き人たちを警戒しなさい。肉に割礼の傷をつけている人たちを警戒しなさい。
29387 50 3 3 神の霊によって礼拝をし、キリスト・イエスを誇とし、肉を頼みとしないわたしたちこそ、割礼の者である。
29388 50 3 4 もとより、肉の頼みなら、わたしにも無くはない。もし、だれかほかの人が肉を頼みとしていると言うなら、わたしはそれをもっと頼みとしている。
29389 50 3 5 わたしは八日目に割礼を受けた者、イスラエルの民族に属する者、ベニヤミン族の出身、ヘブル人の中のヘブル人、律法の上ではパリサイ人、
29390 50 3 6 熱心の点では教会の迫害者、律法の義については落ち度のない者である。
29391 50 3 7 しかし、わたしにとって益であったこれらのものを、キリストのゆえに損と思うようになった。
29392 50 3 8 わたしは、更に進んで、わたしの主キリスト・イエスを知る知識の絶大な価値のゆえに、いっさいのものを損と思っている。キリストのゆえに、わたしはすべてを失ったが、それらのものを、ふん土のように思っている。それは、わたしがキリストを得るためであり、
29393 50 3 9 律法による自分の義ではなく、キリストを信じる信仰による義、すなわち、信仰に基く神からの義を受けて、キリストのうちに自分を見いだすようになるためである。
29394 50 3 10 すなわち、キリストとその復活の力とを知り、その苦難にあずかって、その死のさまとひとしくなり、
29395 50 3 11 なんとかして死人のうちからの復活に達したいのである。
29396 50 3 12 わたしがすでにそれを得たとか、すでに完全な者になっているとか言うのではなく、ただ捕えようとして追い求めているのである。そうするのは、キリスト・イエスによって捕えられているからである。
29397 50 3 13 兄弟たちよ。わたしはすでに捕えたとは思っていない。ただこの一事を努めている。すなわち、後のものを忘れ、前のものに向かってからだを伸ばしつつ、
29398 50 3 14 目標を目ざして走り、キリスト・イエスにおいて上に召して下さる神の賞与を得ようと努めているのである。
29399 50 3 15 だから、わたしたちの中で全き人たちは、そのように考えるべきである。しかし、あなたがたが違った考えを持っているなら、神はそのことも示して下さるであろう。
29400 50 3 16 ただ、わたしたちは、達し得たところに従って進むべきである。
29401 50 3 17 兄弟たちよ。どうか、わたしにならう者となってほしい。また、あなたがたの模範にされているわたしたちにならって歩く人たちに、目をとめなさい。
29402 50 3 18 わたしがそう言うのは、キリストの十字架に敵対して歩いている者が多いからである。わたしは、彼らのことをしばしばあなたがたに話したが、今また涙を流して語る。
29403 50 3 19 彼らの最後は滅びである。彼らの神はその腹、彼らの栄光はその恥、彼らの思いは地上のことである。
29404 50 3 20 しかし、わたしたちの国籍は天にある。そこから、救主、主イエス・キリストのこられるのを、わたしたちは待ち望んでいる。
29405 50 3 21 彼は、万物をご自身に従わせうる力の働きによって、わたしたちの卑しいからだを、ご自身の栄光のからだと同じかたちに変えて下さるであろう。
29406 50 4 1 だから、わたしの愛し慕っている兄弟たちよ。わたしの喜びであり冠である愛する者たちよ。このように、主にあって堅く立ちなさい。
29407 50 4 2 わたしはユウオデヤに勧め、またスントケに勧める。どうか、主にあって一つ思いになってほしい。
29408 50 4 3 ついては、真実な協力者よ。あなたにお願いする。このふたりの女を助けてあげなさい。彼らは、「いのちの書」に名を書きとめられているクレメンスや、その他の同労者たちと協力して、福音のためにわたしと共に戦ってくれた女たちである。
29409 50 4 4 あなたがたは、主にあっていつも喜びなさい。繰り返して言うが、喜びなさい。
29410 50 4 5 あなたがたの寛容を、みんなの人に示しなさい。主は近い。
29411 50 4 6 何事も思い煩ってはならない。ただ、事ごとに、感謝をもって祈と願いとをささげ、あなたがたの求めるところを神に申し上げるがよい。
29412 50 4 7 そうすれば、人知ではとうてい測り知ることのできない神の平安が、あなたがたの心と思いとを、キリスト・イエスにあって守るであろう。
29413 50 4 8 最後に、兄弟たちよ。すべて真実なこと、すべて尊ぶべきこと、すべて正しいこと、すべて純真なこと、すべて愛すべきこと、すべてほまれあること、また徳といわれるもの、称賛に値するものがあれば、それらのものを心にとめなさい。
29414 50 4 9 あなたがたが、わたしから学んだこと、受けたこと、聞いたこと、見たことは、これを実行しなさい。そうすれば、平和の神が、あなたがたと共にいますであろう。
29415 50 4 10 さて、わたしが主にあって大いに喜んでいるのは、わたしを思う心が、あなたがたに今またついに芽ばえてきたことである。実は、あなたがたは、わたしのことを心にかけてくれてはいたが、よい機会がなかったのである。
29416 50 4 11 わたしは乏しいから、こう言うのではない。わたしは、どんな境遇にあっても、足ることを学んだ。
29417 50 4 12 わたしは貧に処する道を知っており、富におる道も知っている。わたしは、飽くことにも飢えることにも、富むことにも乏しいことにも、ありとあらゆる境遇に処する秘けつを心得ている。
29418 50 4 13 わたしを強くして下さるかたによって、何事でもすることができる。
29419 50 4 14 しかし、あなたがたは、よくもわたしと患難を共にしてくれた。
29420 50 4 15 ピリピの人たちよ。あなたがたも知っているとおり、わたしが福音を宣伝し始めたころ、マケドニヤから出かけて行った時、物のやりとりをしてわたしの働きに参加した教会は、あなたがたのほかには全く無かった。
29421 50 4 16 またテサロニケでも、一再ならず、物を送ってわたしの欠乏を補ってくれた。
29422 50 4 17 わたしは、贈り物を求めているのではない。わたしの求めているのは、あなたがたの勘定をふやしていく果実なのである。
29423 50 4 18 わたしは、すべての物を受けてあり余るほどである。エパフロデトから、あなたがたの贈り物をいただいて、飽き足りている。それは、かんばしいかおりであり、神の喜んで受けて下さる供え物である。
29424 50 4 19 わたしの神は、ご自身の栄光の富の中から、あなたがたのいっさいの必要を、キリスト・イエスにあって満たして下さるであろう。
29425 50 4 20 わたしたちの父なる神に、栄光が世々限りなくあるように、アァメン。
29426 50 4 21 キリスト・イエスにある聖徒のひとりびとりに、よろしく。わたしと一緒にいる兄弟たちから、あなたがたによろしく。
29427 50 4 22 すべての聖徒たちから、特にカイザルの家の者たちから、よろしく。
29428 50 4 23 主イエス・キリストの恵みが、あなたがたの霊と共にあるように。
29429 51 1 1 神の御旨によるキリスト・イエスの使徒パウロと兄弟テモテから、
29430 51 1 2 コロサイにいる、キリストにある聖徒たち、忠実な兄弟たちへ。
29431 51 1 3 わたしたちは、いつもあなたがたのために祈り、わたしたちの主イエス・キリストの父なる神に感謝している。
29432 51 1 4 これは、キリスト・イエスに対するあなたがたの信仰と、すべての聖徒に対していだいているあなたがたの愛とを、耳にしたからである。
29433 51 1 5 この愛は、あなたがたのために天にたくわえられている望みに基くものであり、その望みについては、あなたがたはすでに、あなたがたのところまで伝えられた福音の真理の言葉によって聞いている。
29434 51 1 6 そして、この福音は、世界中いたる所でそうであるように、あなたがたのところでも、これを聞いて神の恵みを知ったとき以来、実を結んで成長しているのである。
29435 51 1 7 あなたがたはこの福音を、わたしたちと同じ僕である、愛するエペフラスから学んだのであった。彼はあなたがたのためのキリストの忠実な奉仕者であって、
29436 51 1 8 あなたがたが御霊によっていだいている愛を、わたしたちに知らせてくれたのである。
29437 51 1 9 そういうわけで、これらの事を耳にして以来、わたしたちも絶えずあなたがたのために祈り求めているのは、あなたがたがあらゆる霊的な知恵と理解力とをもって、神の御旨を深く知り、
29438 51 1 10 主のみこころにかなった生活をして真に主を喜ばせ、あらゆる良いわざを行って実を結び、神を知る知識をいよいよ増し加えるに至ることである。
29439 51 1 11 更にまた祈るのは、あなたがたが、神の栄光の勢いにしたがって賜わるすべての力によって強くされ、何事も喜んで耐えかつ忍び、
29440 51 1 12 光のうちにある聖徒たちの特権にあずかるに足る者とならせて下さった父なる神に、感謝することである。
29441 51 1 13 神は、わたしたちをやみの力から救い出して、その愛する御子の支配下に移して下さった。
29442 51 1 14 わたしたちは、この御子によってあがない、すなわち、罪のゆるしを受けているのである。
29443 51 1 15 御子は、見えない神のかたちであって、すべての造られたものに先だって生れたかたである。
29444 51 1 16 万物は、天にあるものも地にあるものも、見えるものも見えないものも、位も主権も、支配も権威も、みな御子にあって造られたからである。これらいっさいのものは、御子によって造られ、御子のために造られたのである。
29445 51 1 17 彼は万物よりも先にあり、万物は彼にあって成り立っている。
29446 51 1 18 そして自らは、そのからだなる教会のかしらである。彼は初めの者であり、死人の中から最初に生れたかたである。それは、ご自身がすべてのことにおいて第一の者となるためである。
29447 51 1 19 神は、御旨によって、御子のうちにすべての満ちみちた徳を宿らせ、
29448 51 1 20 そして、その十字架の血によって平和をつくり、万物、すなわち、地にあるもの、天にあるものを、ことごとく、彼によってご自分と和解させて下さったのである。
29449 51 1 21 あなたがたも、かつては悪い行いをして神から離れ、心の中で神に敵対していた。
29450 51 1 22 しかし今では、御子はその肉のからだにより、その死をとおして、あなたがたを神と和解させ、あなたがたを聖なる、傷のない、責められるところのない者として、みまえに立たせて下さったのである。
29451 51 1 23 ただし、あなたがたは、ゆるぐことがなく、しっかりと信仰にふみとどまり、すでに聞いている福音の望みから移り行くことのないようにすべきである。この福音は、天の下にあるすべての造られたものに対して宣べ伝えられたものであって、それにこのパウロが奉仕しているのである。
29452 51 1 24 今わたしは、あなたがたのための苦難を喜んで受けており、キリストのからだなる教会のために、キリストの苦しみのなお足りないところを、わたしの肉体をもって補っている。
29453 51 1 25 わたしは、神の言を告げひろめる務を、あなたがたのために神から与えられているが、そのために教会に奉仕する者になっているのである。
29454 51 1 26 その言の奥義は、代々にわたってこの世から隠されていたが、今や神の聖徒たちに明らかにされたのである。
29455 51 1 27 神は彼らに、異邦人の受くべきこの奥義が、いかに栄光に富んだものであるかを、知らせようとされたのである。この奥義は、あなたがたのうちにいますキリストであり、栄光の望みである。
29456 51 1 28 わたしたちはこのキリストを宣べ伝え、知恵をつくしてすべての人を訓戒し、また、すべての人を教えている。それは、彼らがキリストにあって全き者として立つようになるためである。
29457 51 1 29 わたしはこのために、わたしのうちに力強く働いておられるかたの力により、苦闘しながら努力しているのである。
29458 51 2 1 わたしが、あなたがたとラオデキヤにいる人たちのため、また、直接にはまだ会ったことのない人々のために、どんなに苦闘しているか、わかってもらいたい。
29459 51 2 2 それは彼らが、心を励まされ、愛によって結び合わされ、豊かな理解力を十分に与えられ、神の奥義なるキリストを知るに至るためである。
29460 51 2 3 キリストのうちには、知恵と知識との宝が、いっさい隠されている。
29461 51 2 4 わたしがこう言うのは、あなたがたが、だれにも巧みな言葉で迷わされることのないためである。
29462 51 2 5 たとい、わたしは肉体においては離れていても、霊においてはあなたがたと一緒にいて、あなたがたの秩序正しい様子とキリストに対するあなたがたの強固な信仰とを見て、喜んでいる。
29463 51 2 6 このように、あなたがたは主キリスト・イエスを受けいれたのだから、彼にあって歩きなさい。
29464 51 2 7 また、彼に根ざし、彼にあって建てられ、そして教えられたように、信仰が確立されて、あふれるばかり感謝しなさい。
29465 51 2 8 あなたがたは、むなしいだましごとの哲学で、人のとりこにされないように、気をつけなさい。それはキリストに従わず、世のもろもろの霊力に従う人間の言伝えに基くものにすぎない。
29466 51 2 9 キリストにこそ、満ちみちているいっさいの神の徳が、かたちをとって宿っており、
29467 51 2 10 そしてあなたがたは、キリストにあって、それに満たされているのである。彼はすべての支配と権威とのかしらであり、
29468 51 2 11 あなたがたはまた、彼にあって、手によらない割礼、すなわち、キリストの割礼を受けて、肉のからだを脱ぎ捨てたのである。
29469 51 2 12 あなたがたはバプテスマを受けて彼と共に葬られ、同時に、彼を死人の中からよみがえらせた神の力を信じる信仰によって、彼と共によみがえらされたのである。
29470 51 2 13 あなたがたは、先には罪の中にあり、かつ肉の割礼がないままで死んでいた者であるが、神は、あなたがたをキリストと共に生かし、わたしたちのいっさいの罪をゆるして下さった。
29471 51 2 14 神は、わたしたちを責めて不利におとしいれる証書を、その規定もろともぬり消し、これを取り除いて、十字架につけてしまわれた。
29472 51 2 15 そして、もろもろの支配と権威との武装を解除し、キリストにあって凱旋し、彼らをその行列に加えて、さらしものとされたのである。
29473 51 2 16 だから、あなたがたは、食物と飲み物とにつき、あるいは祭や新月や安息日などについて、だれにも批評されてはならない。
29474 51 2 17 これらは、きたるべきものの影であって、その本体はキリストにある。
29475 51 2 18 あなたがたは、わざとらしい謙そんと天使礼拝とにおぼれている人々から、いろいろと悪評されてはならない。彼らは幻を見たことを重んじ、肉の思いによっていたずらに誇るだけで、
29476 51 2 19 キリストなるかしらに、しっかりと着くことをしない。このかしらから出て、からだ全体は、節と節、筋と筋とによって強められ結び合わされ、神に育てられて成長していくのである。
29477 51 2 20 もしあなたがたが、キリストと共に死んで世のもろもろの霊力から離れたのなら、なぜ、なおこの世に生きているもののように、
29478 51 2 21 「さわるな、味わうな、触れるな」などという規定に縛られているのか。
29479 51 2 22 これらは皆、使えば尽きてしまうもの、人間の規定や教によっているものである。
29480 51 2 23 これらのことは、ひとりよがりの礼拝とわざとらしい謙そんと、からだの苦行とをともなうので、知恵のあるしわざらしく見えるが、実は、ほしいままな肉欲を防ぐのに、なんの役にも立つものではない。
29481 51 3 1 このように、あなたがたはキリストと共によみがえらされたのだから、上にあるものを求めなさい。そこではキリストが神の右に座しておられるのである。
29482 51 3 2 あなたがたは上にあるものを思うべきであって、地上のものに心を引かれてはならない。
29483 51 3 3 あなたがたはすでに死んだものであって、あなたがたのいのちは、キリストと共に神のうちに隠されているのである。
29484 51 3 4 わたしたちのいのちなるキリストが現れる時には、あなたがたも、キリストと共に栄光のうちに現れるであろう。
29485 51 3 5 だから、地上の肢体、すなわち、不品行、汚れ、情欲、悪欲、また貪欲を殺してしまいなさい。貪欲は偶像礼拝にほかならない。
29486 51 3 6 これらのことのために、神の怒りが下るのである。
29487 51 3 7 あなたがたも、以前これらのうちに日を過ごしていた時には、これらのことをして歩いていた。
29488 51 3 8 しかし今は、これらいっさいのことを捨て、怒り、憤り、悪意、そしり、口から出る恥ずべき言葉を、捨ててしまいなさい。
29489 51 3 9 互にうそを言ってはならない。あなたがたは、古き人をその行いと一緒に脱ぎ捨て、
29490 51 3 10 造り主のかたちに従って新しくされ、真の知識に至る新しき人を着たのである。
29491 51 3 11 そこには、もはやギリシヤ人とユダヤ人、割礼と無割礼、未開の人、スクテヤ人、奴隷、自由人の差別はない。キリストがすべてであり、すべてのもののうちにいますのである。
29492 51 3 12 だから、あなたがたは、神に選ばれた者、聖なる、愛されている者であるから、あわれみの心、慈愛、謙そん、柔和、寛容を身に着けなさい。
29493 51 3 13 互に忍びあい、もし互に責むべきことがあれば、ゆるし合いなさい。主もあなたがたをゆるして下さったのだから、そのように、あなたがたもゆるし合いなさい。
29494 51 3 14 これらいっさいのものの上に、愛を加えなさい。愛は、すべてを完全に結ぶ帯である。
29495 51 3 15 キリストの平和が、あなたがたの心を支配するようにしなさい。あなたがたが召されて一体となったのは、このためでもある。いつも感謝していなさい。
29496 51 3 16 キリストの言葉を、あなたがたのうちに豊かに宿らせなさい。そして、知恵をつくして互に教えまた訓戒し、詩とさんびと霊の歌とによって、感謝して心から神をほめたたえなさい。
29497 51 3 17 そして、あなたのすることはすべて、言葉によるとわざによるとを問わず、いっさい主イエスの名によってなし、彼によって父なる神に感謝しなさい。
29498 51 3 18 妻たる者よ、夫に仕えなさい。それが、主にある者にふさわしいことである。
29499 51 3 19 夫たる者よ、妻を愛しなさい。つらくあたってはいけない。
29500 51 3 20 子たる者よ、何事についても両親に従いなさい。これが主に喜ばれることである。
29501 51 3 21 父たる者よ、子供をいらだたせてはいけない。心がいじけるかも知れないから。
29502 51 3 22 僕たる者よ、何事についても、肉による主人に従いなさい。人にへつらおうとして、目先だけの勤めをするのではなく、真心をこめて主を恐れつつ、従いなさい。
29503 51 3 23 何をするにも、人に対してではなく、主に対してするように、心から働きなさい。
29504 51 3 24 あなたがたが知っているとおり、あなたがたは御国をつぐことを、報いとして主から受けるであろう。あなたがたは、主キリストに仕えているのである。
29505 51 3 25 不正を行う者は、自分の行った不正に対して報いを受けるであろう。それには差別扱いはない。
29506 51 4 1 主人たる者よ、僕を正しく公平に扱いなさい。あなたがたにも主が天にいますことが、わかっているのだから。
29507 51 4 2 目をさまして、感謝のうちに祈り、ひたすら祈り続けなさい。
29508 51 4 3 同時にわたしたちのためにも、神が御言のために門を開いて下さって、わたしたちがキリストの奥義を語れるように(わたしは、実は、そのために獄につながれているのである)、
29509 51 4 4 また、わたしが語るべきことをはっきりと語れるように、祈ってほしい。
29510 51 4 5 今の時を生かして用い、そとの人に対して賢く行動しなさい。
29511 51 4 6 いつも、塩で味つけられた、やさしい言葉を使いなさい。そうすれば、ひとりびとりに対してどう答えるべきか、わかるであろう。
29512 51 4 7 わたしの様子については、主にあって共に僕であり、また忠実に仕えている愛する兄弟テキコが、あなたがたにいっさいのことを報告するであろう。
29513 51 4 8 わたしが彼をあなたがたのもとに送るのは、わたしたちの様子を知り、また彼によって心に励ましを受けるためなのである。
29514 51 4 9 あなたがたのひとり、忠実な愛する兄弟オネシモをも、彼と共に送る。彼らはあなたがたに、こちらのいっさいの事情を知らせるであろう。
29515 51 4 10 わたしと一緒に捕われの身となっているアリスタルコと、バルナバのいとこマルコとが、あなたがたによろしくと言っている。このマルコについては、もし彼があなたがたのもとに行くなら、迎えてやるようにとのさしずを、あなたがたはすでに受けているはずである。
29516 51 4 11 また、ユストと呼ばれているイエスからもよろしく。割礼の者の中で、この三人だけが神の国のために働く同労者であって、わたしの慰めとなった者である。
29517 51 4 12 あなたがたのうちのひとり、キリスト・イエスの僕エパフラスから、よろしく。彼はいつも、祈のうちであなたがたを覚え、あなたがたが全き人となり、神の御旨をことごとく確信して立つようにと、熱心に祈っている。
29518 51 4 13 わたしは、彼があなたがたのため、またラオデキヤとヒエラポリスの人々のために、ひじょうに心労していることを、証言する。
29519 51 4 14 愛する医者ルカとデマスとが、あなたがたによろしく。
29520 51 4 15 ラオデキヤの兄弟たちに、またヌンパとその家にある教会とに、よろしく。
29521 51 4 16 この手紙があなたがたの所で朗読されたら、ラオデキヤの教会でも朗読されるように、取り計らってほしい。またラオデキヤからまわって来る手紙を、あなたがたも朗読してほしい。
29522 51 4 17 アルキポに、「主にあって受けた務をよく果すように」と伝えてほしい。
29523 51 4 18 パウロ自身が、手ずからこのあいさつを書く。わたしが獄につながれていることを、覚えていてほしい。恵みが、あなたがたと共にあるように。
29524 52 1 1 パウロとシルワノとテモテから、父なる神と主イエス・キリストとにあるテサロニケ人たちの教会へ。
29525 52 1 2 わたしたちは祈の時にあなたがたを覚え、あなたがた一同のことを、いつも神に感謝し、
29526 52 1 3 あなたがたの信仰の働きと、愛の労苦と、わたしたちの主イエス・キリストに対する望みの忍耐とを、わたしたちの父なる神のみまえに、絶えず思い起している。
29527 52 1 4 神に愛されている兄弟たちよ。わたしたちは、あなたがたが神に選ばれていることを知っている。
29528 52 1 5 なぜなら、わたしたちの福音があなたがたに伝えられたとき、それは言葉だけによらず、力と聖霊と強い確信とによったからである。わたしたちが、あなたがたの間で、みんなのためにどんなことをしたか、あなたがたの知っているとおりである。
29529 52 1 6 そしてあなたがたは、多くの患難の中で、聖霊による喜びをもって御言を受けいれ、わたしたちと主とにならう者となり、
29530 52 1 7 こうして、マケドニヤとアカヤとにいる信者全体の模範になった。
29531 52 1 8 すなわち、主の言葉はあなたがたから出て、ただマケドニヤとアカヤとに響きわたっているばかりではなく、至るところで、神に対するあなたがたの信仰のことが言いひろめられたので、これについては何も述べる必要はないほどである。
29532 52 1 9 わたしたちが、どんなにしてあなたがたの所にはいって行ったか、また、あなたがたが、どんなにして偶像を捨てて神に立ち帰り、生けるまことの神に仕えるようになり、
29533 52 1 10 そして、死人の中からよみがえった神の御子、すなわち、わたしたちをきたるべき怒りから救い出して下さるイエスが、天から下ってこられるのを待つようになったかを、彼ら自身が言いひろめているのである。
29534 52 2 1 兄弟たちよ。あなたがた自身が知っているとおり、わたしたちがあなたがたの所にはいって行ったことは、むだではなかった。
29535 52 2 2 それどころか、あなたがたが知っているように、わたしたちは、先にピリピで苦しめられ、はずかしめられたにもかかわらず、わたしたちの神に勇気を与えられて、激しい苦闘のうちに神の福音をあなたがたに語ったのである。
29536 52 2 3 いったい、わたしたちの宣教は、迷いや汚れた心から出たものでもなく、だましごとでもない。
29537 52 2 4 かえって、わたしたちは神の信任を受けて福音を託されたので、人間に喜ばれるためではなく、わたしたちの心を見分ける神に喜ばれるように、福音を語るのである。
29538 52 2 5 わたしたちは、あなたがたが知っているように、決してへつらいの言葉を用いたこともなく、口実を設けて、むさぼったこともない。それは、神があかしして下さる。
29539 52 2 6 また、わたしたちは、キリストの使徒として重んじられることができたのであるが、あなたがたからにもせよ、ほかの人々からにもせよ、人間からの栄誉を求めることはしなかった。
29540 52 2 7 むしろ、あなたがたの間で、ちょうど母がその子供を育てるように、やさしくふるまった。
29541 52 2 8 このように、あなたがたを慕わしく思っていたので、ただ神の福音ばかりではなく、自分のいのちまでもあなたがたに与えたいと願ったほどに、あなたがたを愛したのである。
29542 52 2 9 兄弟たちよ。あなたがたはわたしたちの労苦と努力とを記憶していることであろう。すなわち、あなたがたのだれにも負担をかけまいと思って、日夜はたらきながら、あなたがたに神の福音を宣べ伝えた。
29543 52 2 10 あなたがたもあかしし、神もあかしして下さるように、わたしたちはあなたがた信者の前で、信心深く、正しく、責められるところがないように、生活をしたのである。
29544 52 2 11 そして、あなたがたも知っているとおり、父がその子に対してするように、あなたがたのひとりびとりに対して、
29545 52 2 12 御国とその栄光とに召して下さった神のみこころにかなって歩くようにと、勧め、励まし、また、さとしたのである。
29546 52 2 13 これらのことを考えて、わたしたちがまた絶えず神に感謝しているのは、あなたがたがわたしたちの説いた神の言を聞いた時に、それを人間の言葉としてではなく、神の言として――事実そのとおりであるが――受けいれてくれたことである。そして、この神の言は、信じるあなたがたのうちに働いているのである。
29547 52 2 14 兄弟たちよ。あなたがたは、ユダヤの、キリスト・イエスにある神の諸教会にならう者となった。すなわち、彼らがユダヤ人たちから苦しめられたと同じように、あなたがたもまた同国人から苦しめられた。
29548 52 2 15 ユダヤ人たちは主イエスと預言者たちとを殺し、わたしたちを迫害し、神を喜ばせず、すべての人に逆らい、
29549 52 2 16 わたしたちが異邦人に救の言を語るのを妨げて、絶えず自分の罪を満たしている。そこで、神の怒りは最も激しく彼らに臨むに至ったのである。
29550 52 2 17 兄弟たちよ。わたしたちは、しばらくの間、あなたがたから引き離されていたので――心においてではなく、からだだけではあるが――なおさら、あなたがたの顔を見たいと切にこいねがった。
29551 52 2 18 だから、わたしたちは、あなたがたの所に行こうとした。ことに、このパウロは、一再ならず行こうとしたのである。それだのに、わたしたちはサタンに妨げられた。
29552 52 2 19 実際、わたしたちの主イエスの来臨にあたって、わたしたちの望みと喜びと誇の冠となるべき者は、あなたがたを外にして、だれがあるだろうか。
29553 52 2 20 あなたがたこそ、実にわたしたちのほまれであり、喜びである。
29554 52 3 1 そこで、わたしたちはこれ以上耐えられなくなって、わたしたちだけがアテネに留まることに定め、
29555 52 3 2 わたしたちの兄弟で、キリストの福音における神の同労者テモテをつかわした。それは、あなたがたの信仰を強め、
29556 52 3 3 このような患難の中にあって、動揺する者がひとりもないように励ますためであった。あなたがたの知っているとおり、わたしたちは患難に会うように定められているのである。
29557 52 3 4 そして、あなたがたの所にいたとき、わたしたちがやがて患難に会うことをあらかじめ言っておいたが、あなたがたの知っているように、今そのとおりになったのである。
29558 52 3 5 そこで、わたしはこれ以上耐えられなくなって、もしや「試みる者」があなたがたを試み、そのためにわたしたちの労苦がむだになりはしないかと気づかって、あなたがたの信仰を知るために、彼をつかわしたのである。
29559 52 3 6 ところが今テモテが、あなたがたの所からわたしたちのもとに帰ってきて、あなたがたの信仰と愛とについて知らせ、また、あなたがたがいつもわたしたちのことを覚え、わたしたちがあなたがたに会いたく思っていると同じように、わたしたちにしきりに会いたがっているという吉報をもたらした。
29560 52 3 7 兄弟たちよ。それによって、わたしたちはあらゆる苦難と患難との中にありながら、あなたがたの信仰によって慰められた。
29561 52 3 8 なぜなら、あなたがたが主にあって堅く立ってくれるなら、わたしたちはいま生きることになるからである。
29562 52 3 9 ほんとうに、わたしたちの神のみまえで、あなたがたのことで喜ぶ大きな喜びのために、どんな感謝を神にささげたらよいだろうか。
29563 52 3 10 わたしたちは、あなたがたの顔を見、あなたがたの信仰の足りないところを補いたいと、日夜しきりに願っているのである。
29564 52 3 11 どうか、わたしたちの父なる神ご自身と、わたしたちの主イエスとが、あなたがたのところへ行く道を、わたしたちに開いて下さるように。
29565 52 3 12 どうか、主が、あなたがた相互の愛とすべての人に対する愛とを、わたしたちがあなたがたを愛する愛と同じように、増し加えて豊かにして下さるように。
29566 52 3 13 そして、どうか、わたしたちの主イエスが、そのすべての聖なる者と共にこられる時、神のみまえに、あなたがたの心を強め、清く、責められるところのない者にして下さるように。
29567 52 4 1 最後に、兄弟たちよ。わたしたちは主イエスにあってあなたがたに願いかつ勧める。あなたがたが、どのように歩いて神を喜ばすべきかをわたしたちから学んだように、また、いま歩いているとおりに、ますます歩き続けなさい。
29568 52 4 2 わたしたちがどういう教を主イエスによって与えたか、あなたがたはよく知っている。
29569 52 4 3 神のみこころは、あなたがたが清くなることである。すなわち、不品行を慎み、
29570 52 4 4 各自、気をつけて自分のからだを清く尊く保ち、
29571 52 4 5 神を知らない異邦人のように情欲をほしいままにせず、
29572 52 4 6 また、このようなことで兄弟を踏みつけたり、だましたりしてはならない。前にもあなたがたにきびしく警告しておいたように、主はこれらすべてのことについて、報いをなさるからである。
29573 52 4 7 神がわたしたちを召されたのは、汚れたことをするためではなく、清くなるためである。
29574 52 4 8 こういうわけであるから、これらの警告を拒む者は、人を拒むのではなく、聖霊をあなたがたの心に賜わる神を拒むのである。
29575 52 4 9 兄弟愛については、今さら書きおくる必要はない。あなたがたは、互に愛し合うように神に直接教えられており、
29576 52 4 10 また、事実マケドニヤ全土にいるすべての兄弟に対して、それを実行しているのだから。しかし、兄弟たちよ。あなたがたに勧める。ますます、そうしてほしい。
29577 52 4 11 そして、あなたがたに命じておいたように、つとめて落ち着いた生活をし、自分の仕事に身をいれ、手ずから働きなさい。
29578 52 4 12 そうすれば、外部の人々に対して品位を保ち、まただれの世話にもならずに、生活できるであろう。
29579 52 4 13 兄弟たちよ。眠っている人々については、無知でいてもらいたくない。望みを持たない外の人々のように、あなたがたが悲しむことのないためである。
29580 52 4 14 わたしたちが信じているように、イエスが死んで復活されたからには、同様に神はイエスにあって眠っている人々をも、イエスと一緒に導き出して下さるであろう。
29581 52 4 15 わたしたちは主の言葉によって言うが、生きながらえて主の来臨の時まで残るわたしたちが、眠った人々より先になることは、決してないであろう。
29582 52 4 16 すなわち、主ご自身が天使のかしらの声と神のラッパの鳴り響くうちに、合図の声で、天から下ってこられる。その時、キリストにあって死んだ人々が、まず最初によみがえり、
29583 52 4 17 それから生き残っているわたしたちが、彼らと共に雲に包まれて引き上げられ、空中で主に会い、こうして、いつも主と共にいるであろう。
29584 52 4 18 だから、あなたがたは、これらの言葉をもって互に慰め合いなさい。
29585 52 5 1 兄弟たちよ。その時期と場合とについては、書きおくる必要はない。
29586 52 5 2 あなたがた自身がよく知っているとおり、主の日は盗人が夜くるように来る。
29587 52 5 3 人々が平和だ無事だと言っているその矢先に、ちょうど妊婦に産みの苦しみが臨むように、突如として滅びが彼らをおそって来る。そして、それからのがれることは決してできない。
29588 52 5 4 しかし兄弟たちよ。あなたがたは暗やみの中にいないのだから、その日が、盗人のようにあなたがたを不意に襲うことはないであろう。
29589 52 5 5 あなたがたはみな光の子であり、昼の子なのである。わたしたちは、夜の者でもやみの者でもない。
29590 52 5 6 だから、ほかの人々のように眠っていないで、目をさまして慎んでいよう。
29591 52 5 7 眠る者は夜眠り、酔う者は夜酔うのである。
29592 52 5 8 しかし、わたしたちは昼の者なのだから、信仰と愛との胸当を身につけ、救の望みのかぶとをかぶって、慎んでいよう。
29593 52 5 9 神は、わたしたちを怒りにあわせるように定められたのではなく、わたしたちの主イエス・キリストによって救を得るように定められたのである。
29594 52 5 10 キリストがわたしたちのために死なれたのは、さめていても眠っていても、わたしたちが主と共に生きるためである。
29595 52 5 11 だから、あなたがたは、今しているように、互に慰め合い、相互の徳を高めなさい。
29596 52 5 12 兄弟たちよ。わたしたちはお願いする。どうか、あなたがたの間で労し、主にあってあなたがたを指導し、かつ訓戒している人々を重んじ、
29597 52 5 13 彼らの働きを思って、特に愛し敬いなさい。互に平和に過ごしなさい。
29598 52 5 14 兄弟たちよ。あなたがたにお勧めする。怠惰な者を戒め、小心な者を励まし、弱い者を助け、すべての人に対して寛容でありなさい。
29599 52 5 15 だれも悪をもって悪に報いないように心がけ、お互に、またみんなに対して、いつも善を追い求めなさい。
29600 52 5 16 いつも喜んでいなさい。
29601 52 5 17 絶えず祈りなさい。
29602 52 5 18 すべての事について、感謝しなさい。これが、キリスト・イエスにあって、神があなたがたに求めておられることである。
29603 52 5 19 御霊を消してはいけない。
29604 52 5 20 預言を軽んじてはならない。
29605 52 5 21 すべてのものを識別して、良いものを守り、
29606 52 5 22 あらゆる種類の悪から遠ざかりなさい。
29607 52 5 23 どうか、平和の神ご自身が、あなたがたを全くきよめて下さるように。また、あなたがたの霊と心とからだとを完全に守って、わたしたちの主イエス・キリストの来臨のときに、責められるところのない者にして下さるように。
29608 52 5 24 あなたがたを召されたかたは真実であられるから、このことをして下さるであろう。
29609 52 5 25 兄弟たちよ。わたしたちのためにも、祈ってほしい。
29610 52 5 26 すべての兄弟たちに、きよい接吻をもって、よろしく伝えてほしい。
29611 52 5 27 わたしは主によって命じる。この手紙を、みんなの兄弟に読み聞かせなさい。
29612 52 5 28 わたしたちの主イエス・キリストの恵みが、あなたがたと共にあるように。
29613 53 1 1 パウロとシルワノとテモテから、わたしたちの父なる神と主イエス・キリストとにあるテサロニケ人たちの教会へ。
29614 53 1 2 父なる神と主イエス・キリストから、恵みと平安とが、あなたがたにあるように。
29615 53 1 3 兄弟たちよ。わたしたちは、いつもあなたがたのことを神に感謝せずにはおられない。またそうするのが当然である。それは、あなたがたの信仰が大いに成長し、あなたがたひとりびとりの愛が、お互の間に増し加わっているからである。
29616 53 1 4 そのために、わたしたち自身は、あなたがたがいま受けているあらゆる迫害と患難とのただ中で示している忍耐と信仰とにつき、神の諸教会に対してあなたがたを誇としている。
29617 53 1 5 これは、あなたがたを、神の国にふさわしい者にしようとする神のさばきが正しいことを、証拠だてるものである。その神の国のために、あなたがたも苦しんでいるのである。
29618 53 1 6 すなわち、あなたがたを悩ます者には患難をもって報い、悩まされているあなたがたには、わたしたちと共に、休息をもって報いて下さるのが、神にとって正しいことだからである。
29619 53 1 7 それは、主イエスが炎の中で力ある天使たちを率いて天から現れる時に実現する。
29620 53 1 8 その時、主は神を認めない者たちや、わたしたちの主イエスの福音に聞き従わない者たちに報復し、
29621 53 1 9 そして、彼らは主のみ顔とその力の栄光から退けられて、永遠の滅びに至る刑罰を受けるであろう。
29622 53 1 10 その日に、イエスは下ってこられ、聖徒たちの中であがめられ、すべて信じる者たちの間で驚嘆されるであろう――わたしたちのこのあかしは、あなたがたによって信じられているのである。
29623 53 1 11 このためにまた、わたしたちは、わたしたちの神があなたがたを召しにかなう者となし、善に対するあらゆる願いと信仰の働きとを力強く満たして下さるようにと、あなたがたのために絶えず祈っている。
29624 53 1 12 それは、わたしたちの神と主イエス・キリストとの恵みによって、わたしたちの主イエスの御名があなたがたの間であがめられ、あなたがたも主にあって栄光を受けるためである。
29625 53 2 1 さて兄弟たちよ。わたしたちの主イエス・キリストの来臨と、わたしたちがみもとに集められることとについて、あなたがたにお願いすることがある。
29626 53 2 2 霊により、あるいは言葉により、あるいはわたしたちから出たという手紙によって、主の日はすでにきたとふれまわる者があっても、すぐさま心を動かされたり、あわてたりしてはいけない。
29627 53 2 3 だれがどんな事をしても、それにだまされてはならない。まず背教のことが起り、不法の者、すなわち、滅びの子が現れるにちがいない。
29628 53 2 4 彼は、すべて神と呼ばれたり拝まれたりするものに反抗して立ち上がり、自ら神の宮に座して、自分は神だと宣言する。
29629 53 2 5 わたしがまだあなたがたの所にいた時、これらの事をくり返して言ったのを思い出さないのか。
29630 53 2 6 そして、あなたがたが知っているとおり、彼が自分に定められた時になってから現れるように、いま彼を阻止しているものがある。
29631 53 2 7 不法の秘密の力が、すでに働いているのである。ただそれは、いま阻止している者が取り除かれる時までのことである。
29632 53 2 8 その時になると、不法の者が現れる。この者を、主イエスは口の息をもって殺し、来臨の輝きによって滅ぼすであろう。
29633 53 2 9 不法の者が来るのは、サタンの働きによるのであって、あらゆる偽りの力と、しるしと、不思議と、
29634 53 2 10 また、あらゆる不義の惑わしとを、滅ぶべき者どもに対して行うためである。彼らが滅びるのは、自分らの救となるべき真理に対する愛を受けいれなかった報いである。
29635 53 2 11 そこで神は、彼らが偽りを信じるように、迷わす力を送り、
29636 53 2 12 こうして、真理を信じないで不義を喜んでいたすべての人を、さばくのである。
29637 53 2 13 しかし、主に愛されている兄弟たちよ。わたしたちはいつもあなたがたのことを、神に感謝せずにはおられない。それは、神があなたがたを初めから選んで、御霊によるきよめと、真理に対する信仰とによって、救を得させようとし、
29638 53 2 14 そのために、わたしたちの福音によりあなたがたを召して、わたしたちの主イエス・キリストの栄光にあずからせて下さるからである。
29639 53 2 15 そこで、兄弟たちよ。堅く立って、わたしたちの言葉や手紙で教えられた言伝えを、しっかりと守り続けなさい。
29640 53 2 16 どうか、わたしたちの主イエス・キリストご自身と、わたしたちを愛し、恵みをもって永遠の慰めと確かな望みとを賜わるわたしたちの父なる神とが、
29641 53 2 17 あなたがたの心を励まし、あなたがたを強めて、すべての良いわざを行い、正しい言葉を語る者として下さるように。
29642 53 3 1 最後に、兄弟たちよ。わたしたちのために祈ってほしい。どうか主の言葉が、あなたがたの所と同じように、ここでも早く広まり、また、あがめられるように。
29643 53 3 2 また、どうか、わたしたちが不都合な悪人から救われるように。事実、すべての人が信仰を持っているわけではない。
29644 53 3 3 しかし、主は真実なかたであるから、あなたがたを強め、悪しき者から守って下さるであろう。
29645 53 3 4 わたしたちが命じる事を、あなたがたは現に実行しており、また、実行するであろうと、わたしたちは、主にあって確信している。
29646 53 3 5 どうか、主があなたがたの心を導いて、神の愛とキリストの忍耐とを持たせて下さるように。
29647 53 3 6 兄弟たちよ。主イエス・キリストの名によってあなたがたに命じる。怠惰な生活をして、わたしたちから受けた言伝えに従わないすべての兄弟たちから、遠ざかりなさい。
29648 53 3 7 わたしたちに、どうならうべきであるかは、あなたがた自身が知っているはずである。あなたがたの所にいた時には、わたしたちは怠惰な生活をしなかったし、
29649 53 3 8 人からパンをもらって食べることもしなかった。それどころか、あなたがたのだれにも負担をかけまいと、日夜、労苦し努力して働き続けた。
29650 53 3 9 それは、わたしたちにその権利がないからではなく、ただわたしたちにあなたがたが見習うように、身をもって模範を示したのである。
29651 53 3 10 また、あなたがたの所にいた時に、「働こうとしない者は、食べることもしてはならない」と命じておいた。
29652 53 3 11 ところが、聞くところによると、あなたがたのうちのある者は怠惰な生活を送り、働かないで、ただいたずらに動きまわっているとのことである。
29653 53 3 12 こうした人々に対しては、静かに働いて自分で得たパンを食べるように、主イエス・キリストによって命じまた勧める。
29654 53 3 13 兄弟たちよ。あなたがたは、たゆまずに良い働きをしなさい。
29655 53 3 14 もしこの手紙にしるしたわたしたちの言葉に聞き従わない人があれば、そのような人には注意をして、交際しないがよい。彼が自ら恥じるようになるためである。
29656 53 3 15 しかし、彼を敵のように思わないで、兄弟として訓戒しなさい。
29657 53 3 16 どうか、平和の主ご自身が、いついかなる場合にも、あなたがたに平和を与えて下さるように。主があなたがた一同と共におられるように。
29658 53 3 17 ここでパウロ自身が、手ずからあいさつを書く。これは、わたしのどの手紙にも書く印である。わたしは、このように書く。
29659 53 3 18 どうか、わたしたちの主イエス・キリストの恵みが、あなたがた一同と共にあるように。
29660 54 1 1 わたしたちの救主なる神と、わたしたちの望みであるキリスト・イエスとの任命によるキリスト・イエスの使徒パウロから、
29661 54 1 2 信仰によるわたしの真実な子テモテへ。
29662 54 1 3 わたしがマケドニヤに向かって出発する際、頼んでおいたように、あなたはエペソにとどまっていて、ある人々に、違った教を説くことをせず、
29663 54 1 4 作り話やはてしのない系図などに気をとられることもないように、命じなさい。そのようなことは信仰による神の務を果すものではなく、むしろ論議を引き起させるだけのものである。
29664 54 1 5 わたしのこの命令は、清い心と正しい良心と偽りのない信仰とから出てくる愛を目標としている。
29665 54 1 6 ある人々はこれらのものからそれて空論に走り、
29666 54 1 7 律法の教師たることを志していながら、自分の言っていることも主張していることも、わからないでいる。
29667 54 1 8 わたしたちが知っているとおり、律法なるものは、法に従って用いるなら、良いものである。
29668 54 1 9 すなわち、律法は正しい人のために定められたのではなく、不法な者と法に服さない者、不信心な者と罪ある者、神聖を汚す者と俗悪な者、父を殺す者と母を殺す者、人を殺す者、
29669 54 1 10 不品行な者、男色をする者、誘かいする者、偽る者、偽り誓う者、そのほか健全な教にもとることがあれば、そのために定められていることを認むべきである。
29670 54 1 11 これは、祝福に満ちた神の栄光の福音が示すところであって、わたしはこの福音をゆだねられているのである。
29671 54 1 12 わたしは、自分を強くして下さったわたしたちの主キリスト・イエスに感謝する。主はわたしを忠実な者と見て、この務に任じて下さったのである。
29672 54 1 13 わたしは以前には、神をそしる者、迫害する者、不遜な者であった。しかしわたしは、これらの事を、信仰がなかったとき、無知なためにしたのだから、あわれみをこうむったのである。
29673 54 1 14 その上、わたしたちの主の恵みが、キリスト・イエスにある信仰と愛とに伴い、ますます増し加わってきた。
29674 54 1 15 「キリスト・イエスは、罪人を救うためにこの世にきて下さった」という言葉は、確実で、そのまま受けいれるに足るものである。わたしは、その罪人のかしらなのである。
29675 54 1 16 しかし、わたしがあわれみをこうむったのは、キリスト・イエスが、まずわたしに対して限りない寛容を示し、そして、わたしが今後、彼を信じて永遠のいのちを受ける者の模範となるためである。
29676 54 1 17 世々の支配者、不朽にして見えざる唯一の神に、世々限りなく、ほまれと栄光とがあるように、アァメン。
29677 54 1 18 わたしの子テモテよ。以前あなたに対してなされた数々の預言の言葉に従って、この命令を与える。あなたは、これらの言葉に励まされて、信仰と正しい良心とを保ちながら、りっぱに戦いぬきなさい。
29678 54 1 19 ある人々は、正しい良心を捨てたため、信仰の破船に会った。
29679 54 1 20 その中に、ヒメナオとアレキサンデルとがいる。わたしは、神を汚さないことを学ばせるため、このふたりをサタンの手に渡したのである。
29680 54 2 1 そこで、まず第一に勧める。すべての人のために、王たちと上に立っているすべての人々のために、願いと、祈と、とりなしと、感謝とをささげなさい。
29681 54 2 2 それはわたしたちが、安らかで静かな一生を、真に信心深くまた謹厳に過ごすためである。
29682 54 2 3 これは、わたしたちの救主である神のみまえに良いことであり、また、みこころにかなうことである。
29683 54 2 4 神は、すべての人が救われて、真理を悟るに至ることを望んでおられる。
29684 54 2 5 神は唯一であり、神と人との間の仲保者もただひとりであって、それは人なるキリスト・イエスである。
29685 54 2 6 彼は、すべての人のあがないとしてご自身をささげられたが、それは、定められた時になされたあかしにほかならない。
29686 54 2 7 そのために、わたしは立てられて宣教者、使徒となり(わたしは真実を言っている、偽ってはいない)、また異邦人に信仰と真理とを教える教師となったのである。
29687 54 2 8 男は、怒ったり争ったりしないで、どんな場所でも、きよい手をあげて祈ってほしい。
29688 54 2 9 また、女はつつましい身なりをし、適度に慎み深く身を飾るべきであって、髪を編んだり、金や真珠をつけたり、高価な着物を着たりしてはいけない。
29689 54 2 10 むしろ、良いわざをもって飾りとすることが、信仰を言いあらわしている女に似つかわしい。
29690 54 2 11 女は静かにしていて、万事につけ従順に教を学ぶがよい。
29691 54 2 12 女が教えたり、男の上に立ったりすることを、わたしは許さない。むしろ、静かにしているべきである。
29692 54 2 13 なぜなら、アダムがさきに造られ、それからエバが造られたからである。
29693 54 2 14 またアダムは惑わされなかったが、女は惑わされて、あやまちを犯した。
29694 54 2 15 しかし、女が慎み深く、信仰と愛と清さとを持ち続けるなら、子を産むことによって救われるであろう。
29695 54 3 1 「もし人が監督の職を望むなら、それは良い仕事を願うことである」とは正しい言葉である。
29696 54 3 2 さて、監督は、非難のない人で、ひとりの妻の夫であり、自らを制し、慎み深く、礼儀正しく、旅人をもてなし、よく教えることができ、
29697 54 3 3 酒を好まず、乱暴でなく、寛容であって、人と争わず、金に淡泊で、
29698 54 3 4 自分の家をよく治め、謹厳であって、子供たちを従順な者に育てている人でなければならない。
29699 54 3 5 自分の家を治めることも心得ていない人が、どうして神の教会を預かることができようか。
29700 54 3 6 彼はまた、信者になって間もないものであってはならない。そうであると、高慢になって、悪魔と同じ審判を受けるかも知れない。
29701 54 3 7 さらにまた、教会外の人々にもよく思われている人でなければならない。そうでないと、そしりを受け、悪魔のわなにかかるであろう。
29702 54 3 8 それと同様に、執事も謹厳であって、二枚舌を使わず、大酒を飲まず、利をむさぼらず、
29703 54 3 9 きよい良心をもって、信仰の奥義を保っていなければならない。
29704 54 3 10 彼らはまず調べられて、不都合なことがなかったなら、それから執事の職につかすべきである。
29705 54 3 11 女たちも、同様に謹厳で、他人をそしらず、自らを制し、すべてのことに忠実でなければならない。
29706 54 3 12 執事はひとりの妻の夫であって、子供と自分の家とをよく治める者でなければならない。
29707 54 3 13 執事の職をよくつとめた者は、良い地位を得、さらにキリスト・イエスを信じる信仰による、大いなる確信を得るであろう。
29708 54 3 14 わたしは、あなたの所にすぐ行きたいと望みながら、この手紙を書いている。
29709 54 3 15 万一わたしが遅れる場合には、神の家でいかに生活すべきかを、あなたに知ってもらいたいからである。神の家というのは、生ける神の教会のことであって、それは真理の柱、真理の基礎なのである。
29710 54 3 16 確かに偉大なのは、この信心の奥義である、「キリストは肉において現れ、霊において義とせられ、御使たちに見られ、諸国民の間に伝えられ、世界の中で信じられ、栄光のうちに天に上げられた」。
29711 54 4 1 しかし、御霊は明らかに告げて言う。後の時になると、ある人々は、惑わす霊と悪霊の教とに気をとられて、信仰から離れ去るであろう。
29712 54 4 2 それは、良心に焼き印をおされている偽り者の偽善のしわざである。
29713 54 4 3 これらの偽り者どもは、結婚を禁じたり、食物を断つことを命じたりする。しかし食物は、信仰があり真理を認める者が、感謝して受けるようにと、神の造られたものである。
29714 54 4 4 神の造られたものは、みな良いものであって、感謝して受けるなら、何ひとつ捨てるべきものはない。
29715 54 4 5 それらは、神の言と祈とによって、きよめられるからである。
29716 54 4 6 これらのことを兄弟たちに教えるなら、あなたは、信仰の言葉とあなたの従ってきた良い教の言葉とに養われて、キリスト・イエスのよい奉仕者になるであろう。
29717 54 4 7 しかし、俗悪で愚にもつかない作り話は避けなさい。信心のために自分を訓練しなさい。
29718 54 4 8 からだの訓練は少しは益するところがあるが、信心は、今のいのちと後の世のいのちとが約束されてあるので、万事に益となる。
29719 54 4 9 これは確実で、そのまま受けいれるに足る言葉である。
29720 54 4 10 わたしたちは、このために労し苦しんでいる。それは、すべての人の救主、特に信じる者たちの救主なる生ける神に、望みを置いてきたからである。
29721 54 4 11 これらの事を命じ、また教えなさい。
29722 54 4 12 あなたは、年が若いために人に軽んじられてはならない。むしろ、言葉にも、行状にも、愛にも、信仰にも、純潔にも、信者の模範になりなさい。
29723 54 4 13 わたしがそちらに行く時まで、聖書を朗読することと、勧めをすることと、教えることとに心を用いなさい。
29724 54 4 14 長老の按手を受けた時、預言によってあなたに与えられて内に持っている恵みの賜物を、軽視してはならない。
29725 54 4 15 すべての事にあなたの進歩があらわれるため、これらの事を実行し、それを励みなさい。
29726 54 4 16 自分のことと教のこととに気をつけ、それらを常に努めなさい。そうすれば、あなたは、自分自身とあなたの教を聞く者たちとを、救うことになる。
29727 54 5 1 老人をとがめてはいけない。むしろ父親に対するように、話してあげなさい。若い男には兄弟に対するように、
29728 54 5 2 年とった女には母親に対するように、若い女には、真に純潔な思いをもって、姉妹に対するように、勧告しなさい。
29729 54 5 3 やもめについては、真にたよりのないやもめたちを、よくしてあげなさい。
29730 54 5 4 やもめに子か孫かがある場合には、これらの者に、まず自分の家で孝養をつくし、親の恩に報いることを学ばせるべきである。それが、神のみこころにかなうことなのである。
29731 54 5 5 真にたよりのない、ひとり暮しのやもめは、望みを神において、日夜、たえず願いと祈とに専心するが、
29732 54 5 6 これに反して、みだらな生活をしているやもめは、生けるしかばねにすぎない。
29733 54 5 7 これらのことを命じて、彼女たちを非難のない者としなさい。
29734 54 5 8 もしある人が、その親族を、ことに自分の家族をかえりみない場合には、その信仰を捨てたことになるのであって、不信者以上にわるい。
29735 54 5 9 やもめとして登録さるべき者は、六十歳以下のものではなくて、ひとりの夫の妻であった者、
29736 54 5 10 また子女をよく養育し、旅人をもてなし、聖徒の足を洗い、困っている人を助け、種々の善行に努めるなど、そのよいわざでひろく認められている者でなければならない。
29737 54 5 11 若いやもめは除外すべきである。彼女たちがキリストにそむいて気ままになると、結婚をしたがるようになり、
29738 54 5 12 初めの誓いを無視したという非難を受けねばならないからである。
29739 54 5 13 その上、彼女たちはなまけていて、家々を遊び歩くことをおぼえ、なまけるばかりか、むだごとをしゃべって、いたずらに動きまわり、口にしてはならないことを言う。
29740 54 5 14 そういうわけだから、若いやもめは結婚して子を産み、家をおさめ、そして、反対者にそしられるすきを作らないようにしてほしい。
29741 54 5 15 彼女たちのうちには、サタンのあとを追って道を踏みはずした者もある。
29742 54 5 16 女の信者が家にやもめを持っている場合には、自分でそのやもめの世話をしてあげなさい。教会のやっかいになってはいけない。教会は、真にたよりのないやもめの世話をしなければならない。
29743 54 5 17 よい指導をしている長老、特に宣教と教とのために労している長老は、二倍の尊敬を受けるにふさわしい者である。
29744 54 5 18 聖書は、「穀物をこなしている牛に、くつこをかけてはならない」また「働き人がその報酬を受けるのは当然である」と言っている。
29745 54 5 19 長老に対する訴訟は、ふたりか三人の証人がない場合には、受理してはならない。
29746 54 5 20 罪を犯した者に対しては、ほかの人々も恐れをいだくに至るために、すべての人の前でその罪をとがむべきである。
29747 54 5 21 わたしは、神とキリスト・イエスと選ばれた御使たちとの前で、おごそかにあなたに命じる。これらのことを偏見なしに守り、何事についても、不公平な仕方をしてはならない。
29748 54 5 22 軽々しく人に手をおいてはならない。また、ほかの人の罪に加わってはいけない。自分をきよく守りなさい。
29749 54 5 23 (これからは、水ばかりを飲まないで、胃のため、また、たびたびのいたみを和らげるために、少量のぶどう酒を用いなさい。)
29750 54 5 24 ある人の罪は明白であって、すぐ裁判にかけられるが、ほかの人の罪は、あとになってわかって来る。
29751 54 5 25 それと同じく、良いわざもすぐ明らかになり、そうならない場合でも、隠れていることはあり得ない。
29752 54 6 1 くびきの下にある奴隷はすべて、自分の主人を、真に尊敬すべき者として仰ぐべきである。それは、神の御名と教とが、そしりを受けないためである。
29753 54 6 2 信者である主人を持っている者たちは、その主人が兄弟であるというので軽視してはならない。むしろ、ますます励んで仕えるべきである。その益を受ける主人は、信者であり愛されている人だからである。
29754 54 6 3 もし違ったことを教えて、わたしたちの主イエス・キリストの健全な言葉、ならびに信心にかなう教に同意しないような者があれば、
29755 54 6 4 彼は高慢であって、何も知らず、ただ論議と言葉の争いとに病みついている者である。そこから、ねたみ、争い、そしり、さいぎの心が生じ、
29756 54 6 5 また知性が腐って、真理にそむき、信心を利得と心得る者どもの間に、はてしのないいがみ合いが起るのである。
29757 54 6 6 しかし、信心があって足ることを知るのは、大きな利得である。
29758 54 6 7 わたしたちは、何ひとつ持たないでこの世にきた。また、何ひとつ持たないでこの世を去って行く。
29759 54 6 8 ただ衣食があれば、それで足れりとすべきである。
29760 54 6 9 富むことを願い求める者は、誘惑と、わなとに陥り、また、人を滅びと破壊とに沈ませる、無分別な恐ろしいさまざまの情欲に陥るのである。
29761 54 6 10 金銭を愛することは、すべての悪の根である。ある人々は欲ばって金銭を求めたため、信仰から迷い出て、多くの苦痛をもって自分自身を刺しとおした。
29762 54 6 11 しかし、神の人よ。あなたはこれらの事を避けなさい。そして、義と信心と信仰と愛と忍耐と柔和とを追い求めなさい。
29763 54 6 12 信仰の戦いをりっぱに戦いぬいて、永遠のいのちを獲得しなさい。あなたは、そのために召され、多くの証人の前で、りっぱなあかしをしたのである。
29764 54 6 13 わたしはすべてのものを生かして下さる神のみまえと、またポンテオ・ピラトの面前でりっぱなあかしをなさったキリスト・イエスのみまえで、あなたに命じる。
29765 54 6 14 わたしたちの主イエス・キリストの出現まで、その戒めを汚すことがなく、また、それを非難のないように守りなさい。
29766 54 6 15 時がくれば、祝福に満ちた、ただひとりの力あるかた、もろもろの王の王、もろもろの主の主が、キリストを出現させて下さるであろう。
29767 54 6 16 神はただひとり不死を保ち、近づきがたい光の中に住み、人間の中でだれも見た者がなく、見ることもできないかたである。ほまれと永遠の支配とが、神にあるように、アァメン。
29768 54 6 17 この世で富んでいる者たちに、命じなさい。高慢にならず、たよりにならない富に望みをおかず、むしろ、わたしたちにすべての物を豊かに備えて楽しませて下さる神に、のぞみをおくように、
29769 54 6 18 また、良い行いをし、良いわざに富み、惜しみなく施し、人に分け与えることを喜び、
29770 54 6 19 こうして、真のいのちを得るために、未来に備えてよい土台を自分のために築き上げるように、命じなさい。
29771 54 6 20 テモテよ。あなたにゆだねられていることを守りなさい。そして、俗悪なむだ話と、偽りの「知識」による反対論とを避けなさい。
29772 54 6 21 ある人々はそれに熱中して、信仰からそれてしまったのである。
29773 55 1 1 神の御旨により、キリスト・イエスにあるいのちの約束によって立てられたキリスト・イエスの使徒パウロから、
29774 55 1 2 愛する子テモテへ。
29775 55 1 3 わたしは、日夜、祈の中で、絶えずあなたのことを思い出しては、きよい良心をもって先祖以来つかえている神に感謝している。
29776 55 1 4 わたしは、あなたの涙をおぼえており、あなたに会って喜びで満たされたいと、切に願っている。
29777 55 1 5 また、あなたがいだいている偽りのない信仰を思い起している。この信仰は、まずあなたの祖母ロイスとあなたの母ユニケとに宿ったものであったが、今あなたにも宿っていると、わたしは確信している。
29778 55 1 6 こういうわけで、あなたに注意したい。わたしの按手によって内にいただいた神の賜物を、再び燃えたたせなさい。
29779 55 1 7 というのは、神がわたしたちに下さったのは、臆する霊ではなく、力と愛と慎みとの霊なのである。
29780 55 1 8 だから、あなたは、わたしたちの主のあかしをすることや、わたしが主の囚人であることを、決して恥ずかしく思ってはならない。むしろ、神の力にささえられて、福音のために、わたしと苦しみを共にしてほしい。
29781 55 1 9 神はわたしたちを救い、聖なる招きをもって召して下さったのであるが、それは、わたしたちのわざによるのではなく、神ご自身の計画に基き、また、永遠の昔にキリスト・イエスにあってわたしたちに賜わっていた恵み、
29782 55 1 10 そして今や、わたしたちの救主キリスト・イエスの出現によって明らかにされた恵みによるのである。キリストは死を滅ぼし、福音によっていのちと不死とを明らかに示されたのである。
29783 55 1 11 わたしは、この福音のために立てられて、その宣教者、使徒、教師になった。
29784 55 1 12 そのためにまた、わたしはこのような苦しみを受けているが、それを恥としない。なぜなら、わたしは自分の信じてきたかたを知っており、またそのかたは、わたしにゆだねられているものを、かの日に至るまで守って下さることができると、確信しているからである。
29785 55 1 13 あなたは、キリスト・イエスに対する信仰と愛とをもって、わたしから聞いた健全な言葉を模範にしなさい。
29786 55 1 14 そして、あなたにゆだねられている尊いものを、わたしたちの内に宿っている聖霊によって守りなさい。
29787 55 1 15 あなたの知っているように、アジヤにいる者たちは、皆わたしから離れて行った。その中には、フゲロとヘルモゲネもいる。
29788 55 1 16 どうか、主が、オネシポロの家にあわれみをたれて下さるように。彼はたびたび、わたしを慰めてくれ、またわたしの鎖を恥とも思わないで、
29789 55 1 17 ローマに着いた時には、熱心にわたしを捜しまわった末、尋ね出してくれたのである。
29790 55 1 18 どうか、主がかの日に、あわれみを彼に賜わるように。――彼がエペソで、どれほどわたしに仕えてくれたかは、だれよりもあなたがよく知っている。
29791 55 2 1 そこで、わたしの子よ。あなたはキリスト・イエスにある恵みによって、強くなりなさい。
29792 55 2 2 そして、あなたが多くの証人の前でわたしから聞いたことを、さらにほかの者たちにも教えることのできるような忠実な人々に、ゆだねなさい。
29793 55 2 3 キリスト・イエスの良い兵卒として、わたしと苦しみを共にしてほしい。
29794 55 2 4 兵役に服している者は、日常生活の事に煩わされてはいない。ただ、兵を募った司令官を喜ばせようと努める。
29795 55 2 5 また、競技をするにしても、規定に従って競技をしなければ、栄冠は得られない。
29796 55 2 6 労苦をする農夫が、だれよりも先に、生産物の分配にあずかるべきである。
29797 55 2 7 わたしの言うことを、よく考えてみなさい。主は、それを十分に理解する力をあなたに賜わるであろう。
29798 55 2 8 ダビデの子孫として生れ、死人のうちからよみがえったイエス・キリストを、いつも思っていなさい。これがわたしの福音である。
29799 55 2 9 この福音のために、わたしは悪者のように苦しめられ、ついに鎖につながれるに至った。しかし、神の言はつながれてはいない。
29800 55 2 10 それだから、わたしは選ばれた人たちのために、いっさいのことを耐え忍ぶのである。それは、彼らもキリスト・イエスによる救を受け、また、それと共に永遠の栄光を受けるためである。
29801 55 2 11 次の言葉は確実である。「もしわたしたちが、彼と共に死んだなら、また彼と共に生きるであろう。
29802 55 2 12 もし耐え忍ぶなら、彼と共に支配者となるであろう。もし彼を否むなら、彼もわたしたちを否むであろう。
29803 55 2 13 たとい、わたしたちは不真実であっても、彼は常に真実である。彼は自分を偽ることが、できないのである」。
29804 55 2 14 あなたは、これらのことを彼らに思い出させて、なんの益もなく、聞いている人々を破滅におとしいれるだけである言葉の争いをしないように、神のみまえでおごそかに命じなさい。
29805 55 2 15 あなたは真理の言葉を正しく教え、恥じるところのない錬達した働き人になって、神に自分をささげるように努めはげみなさい。
29806 55 2 16 俗悪なむだ話を避けなさい。それによって人々は、ますます不信心に落ちていき、
29807 55 2 17 彼らの言葉は、がんのように腐れひろがるであろう。その中にはヒメナオとピレトとがいる。
29808 55 2 18 彼らは真理からはずれ、復活はすでに済んでしまったと言い、そして、ある人々の信仰をくつがえしている。
29809 55 2 19 しかし、神のゆるがない土台はすえられていて、それに次の句が証印として、しるされている。「主は自分の者たちを知る」。また「主の名を呼ぶ者は、すべて不義から離れよ」。
29810 55 2 20 大きな家には、金や銀の器ばかりではなく、木や土の器もあり、そして、あるものは尊いことに用いられ、あるものは卑しいことに用いられる。
29811 55 2 21 もし人が卑しいものを取り去って自分をきよめるなら、彼は尊いきよめられた器となって、主人に役立つものとなり、すべての良いわざに間に合うようになる。
29812 55 2 22 そこで、あなたは若い時の情欲を避けなさい。そして、きよい心をもって主を呼び求める人々と共に、義と信仰と愛と平和とを追い求めなさい。
29813 55 2 23 愚かで無知な論議をやめなさい。それは、あなたが知っているとおり、ただ争いに終るだけである。
29814 55 2 24 主の僕たる者は争ってはならない。だれに対しても親切であって、よく教え、よく忍び、
29815 55 2 25 反対する者を柔和な心で教え導くべきである。おそらく神は、彼らに悔改めの心を与えて、真理を知らせ、
29816 55 2 26 一度は悪魔に捕えられてその欲するままになっていても、目ざめて彼のわなからのがれさせて下さるであろう。
29817 55 3 1 しかし、このことは知っておかねばならない。終りの時には、苦難の時代が来る。
29818 55 3 2 その時、人々は自分を愛する者、金を愛する者、大言壮語する者、高慢な者、神をそしる者、親に逆らう者、恩を知らぬ者、神聖を汚す者、
29819 55 3 3 無情な者、融和しない者、そしる者、無節制な者、粗暴な者、善を好まない者、
29820 55 3 4 裏切り者、乱暴者、高言をする者、神よりも快楽を愛する者、
29821 55 3 5 信心深い様子をしながらその実を捨てる者となるであろう。こうした人々を避けなさい。
29822 55 3 6 彼らの中には、人の家にもぐり込み、そして、さまざまの欲に心を奪われて、多くの罪を積み重ねている愚かな女どもを、とりこにしている者がある。
29823 55 3 7 彼女たちは、常に学んではいるが、いつになっても真理の知識に達することができない。
29824 55 3 8 ちょうど、ヤンネとヤンブレとがモーセに逆らったように、こうした人々も真理に逆らうのである。彼らは知性の腐った、信仰の失格者である。
29825 55 3 9 しかし、彼らはそのまま進んでいけるはずがない。彼らの愚かさは、あのふたりの場合と同じように、多くの人に知れて来るであろう。
29826 55 3 10 しかしあなたは、わたしの教、歩み、こころざし、信仰、寛容、愛、忍耐、
29827 55 3 11 それから、わたしがアンテオケ、イコニオム、ルステラで受けた数々の迫害、苦難に、よくも続いてきてくれた。そのひどい迫害にわたしは耐えてきたが、主はそれらいっさいのことから、救い出して下さったのである。
29828 55 3 12 いったい、キリスト・イエスにあって信心深く生きようとする者は、みな、迫害を受ける。
29829 55 3 13 悪人と詐欺師とは人を惑わし人に惑わされて、悪から悪へと落ちていく。
29830 55 3 14 しかし、あなたは、自分が学んで確信しているところに、いつもとどまっていなさい。あなたは、それをだれから学んだか知っており、
29831 55 3 15 また幼い時から、聖書に親しみ、それが、キリスト・イエスに対する信仰によって救に至る知恵を、あなたに与えうる書物であることを知っている。
29832 55 3 16 聖書は、すべて神の霊感を受けて書かれたものであって、人を教え、戒め、正しくし、義に導くのに有益である。
29833 55 3 17 それによって、神の人が、あらゆる良いわざに対して十分な準備ができて、完全にととのえられた者になるのである。
29834 55 4 1 神のみまえと、生きている者と死んだ者とをさばくべきキリスト・イエスのみまえで、キリストの出現とその御国とを思い、おごそかに命じる。
29835 55 4 2 御言を宣べ伝えなさい。時が良くても悪くても、それを励み、あくまでも寛容な心でよく教えて、責め、戒め、勧めなさい。
29836 55 4 3 人々が健全な教に耐えられなくなり、耳ざわりのよい話をしてもらおうとして、自分勝手な好みにまかせて教師たちを寄せ集め、
29837 55 4 4 そして、真理からは耳をそむけて、作り話の方にそれていく時が来るであろう。
29838 55 4 5 しかし、あなたは、何事にも慎み、苦難を忍び、伝道者のわざをなし、自分の務を全うしなさい。
29839 55 4 6 わたしは、すでに自身を犠牲としてささげている。わたしが世を去るべき時はきた。
29840 55 4 7 わたしは戦いをりっぱに戦いぬき、走るべき行程を走りつくし、信仰を守りとおした。
29841 55 4 8 今や、義の冠がわたしを待っているばかりである。かの日には、公平な審判者である主が、それを授けて下さるであろう。わたしばかりではなく、主の出現を心から待ち望んでいたすべての人にも授けて下さるであろう。
29842 55 4 9 わたしの所に、急いで早くきてほしい。
29843 55 4 10 デマスはこの世を愛し、わたしを捨ててテサロニケに行ってしまい、クレスケンスはガラテヤに、テトスはダルマテヤに行った。
29844 55 4 11 ただルカだけが、わたしのもとにいる。マルコを連れて、一緒にきなさい。彼はわたしの務のために役に立つから。
29845 55 4 12 わたしはテキコをエペソにつかわした。
29846 55 4 13 あなたが来るときに、トロアスのカルポの所に残しておいた上着を持ってきてほしい。また書物も、特に、羊皮紙のを持ってきてもらいたい。
29847 55 4 14 銅細工人のアレキサンデルが、わたしを大いに苦しめた。主はそのしわざに対して、彼に報いなさるだろう。
29848 55 4 15 あなたも、彼を警戒しなさい。彼は、わたしたちの言うことに強く反対したのだから。
29849 55 4 16 わたしの第一回の弁明の際には、わたしに味方をする者はひとりもなく、みなわたしを捨てて行った。どうか、彼らが、そのために責められることがないように。
29850 55 4 17 しかし、わたしが御言を余すところなく宣べ伝えて、すべての異邦人に聞かせるように、主はわたしを助け、力づけて下さった。そして、わたしは、ししの口から救い出されたのである。
29851 55 4 18 主はわたしを、すべての悪のわざから助け出し、天にある御国に救い入れて下さるであろう。栄光が永遠から永遠にわたって主にあるように、アァメン。
29852 55 4 19 プリスカとアクラとに、またオネシポロの家に、よろしく伝えてほしい。
29853 55 4 20 エラストはコリントにとどまっており、トロピモは病気なので、ミレトに残してきた。
29854 55 4 21 冬になる前に、急いできてほしい。ユブロ、プデス、リノス、クラウデヤならびにすべての兄弟たちから、あなたによろしく。
29855 55 4 22 主が、あなたの霊と共にいますように。恵みが、あなたがたと共にあるように。
29856 56 1 1 神の僕、イエス・キリストの使徒パウロから――わたしが使徒とされたのは、神に選ばれた者たちの信仰を強め、また、信心にかなう真理の知識を彼らに得させるためであり、
29857 56 1 2 偽りのない神が永遠の昔に約束された永遠のいのちの望みに基くのである。
29858 56 1 3 神は、定められた時に及んで、御言を宣教によって明らかにされたが、わたしは、わたしたちの救主なる神の任命によって、この宣教をゆだねられたのである――
29859 56 1 4 信仰を同じうするわたしの真実の子テトスへ。
29860 56 1 5 あなたをクレテにおいてきたのは、わたしがあなたに命じておいたように、そこにし残してあることを整理してもらい、また、町々に長老を立ててもらうためにほかならない。
29861 56 1 6 長老は、責められる点がなく、ひとりの妻の夫であって、その子たちも不品行のうわさをたてられず、親不孝をしない信者でなくてはならない。
29862 56 1 7 監督たる者は、神に仕える者として、責められる点がなく、わがままでなく、軽々しく怒らず、酒を好まず、乱暴でなく、利をむさぼらず、
29863 56 1 8 かえって、旅人をもてなし、善を愛し、慎み深く、正しく、信仰深く、自制する者であり、
29864 56 1 9 教にかなった信頼すべき言葉を守る人でなければならない。それは、彼が健全な教によって人をさとし、また、反対者の誤りを指摘することができるためである。
29865 56 1 10 実は、法に服さない者、空論に走る者、人の心を惑わす者が多くおり、とくに、割礼のある者の中に多い。
29866 56 1 11 彼らの口を封ずべきである。彼らは恥ずべき利のために、教えてはならないことを教えて、数々の家庭を破壊してしまっている。
29867 56 1 12 クレテ人のうちのある預言者が「クレテ人は、いつもうそつき、たちの悪いけもの、なまけ者の食いしんぼう」
29868 56 1 13 この非難はあたっている。だから、彼らをきびしく責めて、その信仰を健全なものにし、
29869 56 1 14 ユダヤ人の作り話や、真理からそれていった人々の定めなどに、気をとられることがないようにさせなさい。
29870 56 1 15 きよい人には、すべてのものがきよい。しかし、汚れている不信仰な人には、きよいものは一つもなく、その知性も良心も汚れてしまっている。
29871 56 1 16 彼らは神を知っていると、口では言うが、行いではそれを否定している。彼らは忌まわしい者、また不従順な者であって、いっさいの良いわざに関しては、失格者である。
29872 56 2 1 しかし、あなたは、健全な教にかなうことを語りなさい。
29873 56 2 2 老人たちには自らを制し、謹厳で、慎み深くし、また、信仰と愛と忍耐とにおいて健全であるように勧め、
29874 56 2 3 年老いた女たちにも、同じように、たち居ふるまいをうやうやしくし、人をそしったり大酒の奴隷になったりせず、良いことを教える者となるように、勧めなさい。
29875 56 2 4 そうすれば、彼女たちは、若い女たちに、夫を愛し、子供を愛し、
29876 56 2 5 慎み深く、純潔で、家事に努め、善良で、自分の夫に従順であるように教えることになり、したがって、神の言がそしりを受けないようになるであろう。
29877 56 2 6 若い男にも、同じく、万事につけ慎み深くあるように、勧めなさい。
29878 56 2 7 あなた自身を良いわざの模範として示し、人を教える場合には、清廉と謹厳とをもってし、
29879 56 2 8 非難のない健全な言葉を用いなさい。そうすれば、反対者も、わたしたちについてなんの悪口も言えなくなり、自ら恥じいるであろう。
29880 56 2 9 奴隷には、万事につけその主人に服従して、喜ばれるようになり、反抗をせず、
29881 56 2 10 盗みをせず、どこまでも心をこめた真実を示すようにと、勧めなさい。そうすれば、彼らは万事につけ、わたしたちの救主なる神の教を飾ることになろう。
29882 56 2 11 すべての人を救う神の恵みが現れた。
29883 56 2 12 そして、わたしたちを導き、不信心とこの世の情欲とを捨てて、慎み深く、正しく、信心深くこの世で生活し、
29884 56 2 13 祝福に満ちた望み、すなわち、大いなる神、わたしたちの救主キリスト・イエスの栄光の出現を待ち望むようにと、教えている。
29885 56 2 14 このキリストが、わたしたちのためにご自身をささげられたのは、わたしたちをすべての不法からあがない出して、良いわざに熱心な選びの民を、ご自身のものとして聖別するためにほかならない。
29886 56 2 15 あなたは、権威をもってこれらのことを語り、勧め、また責めなさい。だれにも軽んじられてはならない。
29887 56 3 1 あなたは彼らに勧めて、支配者、権威ある者に服し、これに従い、いつでも良いわざをする用意があり、
29888 56 3 2 だれをもそしらず、争わず、寛容であって、すべての人に対してどこまでも柔和な態度を示すべきことを、思い出させなさい。
29889 56 3 3 わたしたちも以前には、無分別で、不従順な、迷っていた者であって、さまざまの情欲と快楽との奴隷になり、悪意とねたみとで日を過ごし、人に憎まれ、互に憎み合っていた。
29890 56 3 4 ところが、わたしたちの救主なる神の慈悲と博愛とが現れたとき、
29891 56 3 5 わたしたちの行った義のわざによってではなく、ただ神のあわれみによって、再生の洗いを受け、聖霊により新たにされて、わたしたちは救われたのである。
29892 56 3 6 この聖霊は、わたしたちの救主イエス・キリストをとおして、わたしたちの上に豊かに注がれた。
29893 56 3 7 これは、わたしたちが、キリストの恵みによって義とされ、永遠のいのちを望むことによって、御国をつぐ者となるためである。
29894 56 3 8 この言葉は確実である。わたしは、あなたがそれらのことを主張するのを願っている。それは、神を信じている者たちが、努めて良いわざを励むことを心がけるようになるためである。これは良いことであって、人々の益となる。
29895 56 3 9 しかし、愚かな議論と、系図と、争いと、律法についての論争とを、避けなさい。それらは無益かつ空虚なことである。
29896 56 3 10 異端者は、一、二度、訓戒を加えた上で退けなさい。
29897 56 3 11 たしかに、こういう人たちは、邪道に陥り、自ら悪と知りつつも、罪を犯しているからである。
29898 56 3 12 わたしがアルテマスかテキコかをあなたのところに送ったなら、急いでニコポリにいるわたしの所にきなさい。わたしは、そこで冬を過ごすことにした。
29899 56 3 13 法学者ゼナスと、アポロとを、急いで旅につかせ、不自由のないようにしてあげなさい。
29900 56 3 14 わたしたちの仲間も、さし迫った必要に備えて、努めて良いわざを励み、実を結ばぬ者とならないように、心がけるべきである。
29901 56 3 15 わたしと共にいる一同の者から、あなたによろしく。わたしたちを愛している信徒たちに、よろしく。
29902 57 1 1 キリスト・イエスの囚人パウロと兄弟テモテから、わたしたちの愛する同労者ピレモン、
29903 57 1 2 姉妹アピヤ、わたしたちの戦友アルキポ、ならびに、あなたの家にある教会へ。
29904 57 1 3 わたしたちの父なる神と主イエス・キリストから、恵みと平安とが、あなたがたにあるように。
29905 57 1 4 わたしは、祈の時にあなたをおぼえて、いつもわたしの神に感謝している。
29906 57 1 5 それは、主イエスに対し、また、すべての聖徒に対するあなたの愛と信仰とについて、聞いているからである。
29907 57 1 6 どうか、あなたの信仰の交わりが強められて、わたしたちの間でキリストのためになされているすべての良いことが、知られて来るようになってほしい。
29908 57 1 7 兄弟よ。わたしは、あなたの愛によって多くの喜びと慰めとを与えられた。聖徒たちの心が、あなたによって力づけられたからである。
29909 57 1 8 こういうわけで、わたしは、キリストにあってあなたのなすべき事を、きわめて率直に指示してもよいと思うが、
29910 57 1 9 むしろ、愛のゆえにお願いする。すでに老年になり、今またキリスト・イエスの囚人となっているこのパウロが、
29911 57 1 10 捕われの身で産んだわたしの子供オネシモについて、あなたにお願いする。
29912 57 1 11 彼は以前は、あなたにとって無益な者であったが、今は、あなたにも、わたしにも、有益な者になった。
29913 57 1 12 彼をあなたのもとに送りかえす。彼はわたしの心である。
29914 57 1 13 わたしは彼を身近に引きとめておいて、わたしが福音のために捕われている間、あなたに代って仕えてもらいたかったのである。
29915 57 1 14 しかし、わたしは、あなたの承諾なしには何もしたくない。あなたが強制されて良い行いをするのではなく、自発的にすることを願っている。
29916 57 1 15 彼がしばらくの間あなたから離れていたのは、あなたが彼をいつまでも留めておくためであったかも知れない。
29917 57 1 16 しかも、もはや奴隷としてではなく、奴隷以上のもの、愛する兄弟としてである。とりわけ、わたしにとってそうであるが、ましてあなたにとっては、肉においても、主にあっても、それ以上であろう。
29918 57 1 17 そこで、もしわたしをあなたの信仰の友と思ってくれるなら、わたし同様に彼を受けいれてほしい。
29919 57 1 18 もし、彼があなたに何か不都合なことをしたか、あるいは、何か負債があれば、それをわたしの借りにしておいてほしい。
29920 57 1 19 このパウロが手ずからしるす、わたしがそれを返済する。この際、あなたが、あなた自身をわたしに負うていることについては、何も言うまい。
29921 57 1 20 兄弟よ。わたしはあなたから、主にあって何か益を得たいものである。わたしの心を、主にあって力づけてもらいたい。
29922 57 1 21 わたしはあなたの従順を堅く信じて、この手紙を書く。あなたは、確かにわたしが言う以上のことをしてくれるだろう。
29923 57 1 22 ついでにお願いするが、わたしのために宿を用意しておいてほしい。あなたがたの祈によって、あなたがたの所に行かせてもらえるように望んでいるのだから。
29924 57 1 23 キリスト・イエスにあって、わたしと共に捕われの身になっているエパフラスから、あなたによろしく。
29925 57 1 24 わたしの同労者たち、マルコ、アリスタルコ、デマス、ルカからも、よろしく。
29926 57 1 25 主イエス・キリストの恵みが、あなたがたの霊と共にあるように。
29927 58 1 1 神は、むかしは、預言者たちにより、いろいろな時に、いろいろな方法で、先祖たちに語られたが、
29928 58 1 2 この終りの時には、御子によって、わたしたちに語られたのである。神は御子を万物の相続者と定め、また、御子によって、もろもろの世界を造られた。
29929 58 1 3 御子は神の栄光の輝きであり、神の本質の真の姿であって、その力ある言葉をもって万物を保っておられる。そして罪のきよめのわざをなし終えてから、いと高き所にいます大能者の右に、座につかれたのである。
29930 58 1 4 御子は、その受け継がれた名が御使たちの名にまさっているので、彼らよりもすぐれた者となられた。
29931 58 1 5 いったい、神は御使たちのだれに対して、「あなたこそは、わたしの子。きょう、わたしはあなたを生んだ」
29932 58 1 6 さらにまた、神は、その長子を世界に導き入れるに当って、「神の御使たちはことごとく、彼を拝すべきである」
29933 58 1 7 また、御使たちについては、「神は、御使たちを風とし、ご自分に仕える者たちを炎とされる」
29934 58 1 8 御子については、「神よ、あなたの御座は、世々限りなく続き、あなたの支配のつえは、公平のつえである。
29935 58 1 9 あなたは義を愛し、不法を憎まれた。それゆえに、神、あなたの神は、喜びのあぶらを、あなたの友に注ぐよりも多く、あなたに注がれた」
29936 58 1 10 さらに、「主よ、あなたは初めに、地の基をおすえになった。もろもろの天も、み手のわざである。
29937 58 1 11 これらのものは滅びてしまうが、あなたは、いつまでもいますかたである。すべてのものは衣のように古び、
29938 58 1 12 それらをあなたは、外套のように巻かれる。これらのものは、衣のように変るが、あなたは、いつも変ることがなく、あなたのよわいは、尽きることがない」
29939 58 1 13 神は、御使たちのだれに対して、「あなたの敵を、あなたの足台とするときまでは、わたしの右に座していなさい」
29940 58 1 14 御使たちはすべて仕える霊であって、救を受け継ぐべき人々に奉仕するため、つかわされたものではないか。
29941 58 2 1 こういうわけだから、わたしたちは聞かされていることを、いっそう強く心に留めねばならない。そうでないと、おし流されてしまう。
29942 58 2 2 というのは、御使たちをとおして語られた御言が効力を持ち、あらゆる罪過と不従順とに対して正当な報いが加えられたとすれば、
29943 58 2 3 わたしたちは、こんなに尊い救をなおざりにしては、どうして報いをのがれることができようか。この救は、初め主によって語られたものであって、聞いた人々からわたしたちにあかしされ、
29944 58 2 4 さらに神も、しるしと不思議とさまざまな力あるわざとにより、また、御旨に従い聖霊を各自に賜うことによって、あかしをされたのである。
29945 58 2 5 いったい、神は、わたしたちがここで語っているきたるべき世界を、御使たちに服従させることは、なさらなかった。
29946 58 2 6 聖書はある箇所で、こうあかししている、「人間が何者だから、これを御心に留められるのだろうか。人の子が何者だから、これをかえりみられるのだろうか。
29947 58 2 7 あなたは、しばらくの間、彼を御使たちよりも低い者となし、栄光とほまれとを冠として彼に与え、
29948 58 2 8 万物をその足の下に服従させて下さった」。
29949 58 2 9 ただ、「しばらくの間、御使たちよりも低い者とされた」イエスが、死の苦しみのゆえに、栄光とほまれとを冠として与えられたのを見る。それは、彼が神の恵みによって、すべての人のために死を味わわれるためであった。
29950 58 2 10 なぜなら、万物の帰すべきかた、万物を造られたかたが、多くの子らを栄光に導くのに、彼らの救の君を、苦難をとおして全うされたのは、彼にふさわしいことであったからである。
29951 58 2 11 実に、きよめるかたも、きよめられる者たちも、皆ひとりのかたから出ている。それゆえに主は、彼らを兄弟と呼ぶことを恥とされない。
29952 58 2 12 すなわち、「わたしは、御名をわたしの兄弟たちに告げ知らせ、教会の中で、あなたをほめ歌おう」
29953 58 2 13 また、「わたしは、彼により頼む」、
29954 58 2 14 このように、子たちは血と肉とに共にあずかっているので、イエスもまた同様に、それらをそなえておられる。それは、死の力を持つ者、すなわち悪魔を、ご自分の死によって滅ぼし、
29955 58 2 15 死の恐怖のために一生涯、奴隷となっていた者たちを、解き放つためである。
29956 58 2 16 確かに、彼は天使たちを助けることはしないで、アブラハムの子孫を助けられた。
29957 58 2 17 そこで、イエスは、神のみまえにあわれみ深い忠実な大祭司となって、民の罪をあがなうために、あらゆる点において兄弟たちと同じようにならねばならなかった。
29958 58 2 18 主ご自身、試錬を受けて苦しまれたからこそ、試錬の中にある者たちを助けることができるのである。
29959 58 3 1 そこで、天の召しにあずかっている聖なる兄弟たちよ。あなたがたは、わたしたちが告白する信仰の使者また大祭司なるイエスを、思いみるべきである。
29960 58 3 2 彼は、モーセが神の家の全体に対して忠実であったように、自分を立てたかたに対して忠実であられた。
29961 58 3 3 おおよそ、家を造る者が家そのものよりもさらに尊ばれるように、彼は、モーセ以上に、大いなる光栄を受けるにふさわしい者とされたのである。
29962 58 3 4 家はすべて、だれかによって造られるものであるが、すべてのものを造られたかたは、神である。
29963 58 3 5 さて、モーセは、後に語らるべき事がらについてあかしをするために、仕える者として、神の家の全体に対して忠実であったが、
29964 58 3 6 キリストは御子として、神の家を治めるのに忠実であられたのである。もしわたしたちが、望みの確信と誇とを最後までしっかりと持ち続けるなら、わたしたちは神の家なのである。
29965 58 3 7 だから、聖霊が言っているように、「きょう、あなたがたがみ声を聞いたなら、
29966 58 3 8 荒野における試錬の日に、神にそむいた時のように、あなたがたの心を、かたくなにしてはいけない。
29967 58 3 9 あなたがたの先祖たちは、そこでわたしを試みためし、
29968 58 3 10 しかも、四十年の間わたしのわざを見たのである。だから、わたしはその時代の人々に対して、いきどおって言った、彼らの心は、いつも迷っており、彼らは、わたしの道を認めなかった。
29969 58 3 11 そこで、わたしは怒って、彼らをわたしの安息にはいらせることはしない、と誓った」。
29970 58 3 12 兄弟たちよ。気をつけなさい。あなたがたの中には、あるいは、不信仰な悪い心をいだいて、生ける神から離れ去る者があるかも知れない。
29971 58 3 13 あなたがたの中に、罪の惑わしに陥って、心をかたくなにする者がないように、「きょう」といううちに、日々、互に励まし合いなさい。
29972 58 3 14 もし最初の確信を、最後までしっかりと持ち続けるならば、わたしたちはキリストにあずかる者となるのである。
29973 58 3 15 それについて、こう言われている、「きょう、み声を聞いたなら、神にそむいた時のように、あなたがたの心を、かたくなにしてはいけない」。
29974 58 3 16 すると、聞いたのにそむいたのは、だれであったのか。モーセに率いられて、エジプトから出て行ったすべての人々ではなかったか。
29975 58 3 17 また、四十年の間、神がいきどおられたのはだれに対してであったか。罪を犯して、その死かばねを荒野にさらした者たちに対してではなかったか。
29976 58 3 18 また、神が、わたしの安息に、はいらせることはしない、と誓われたのは、だれに向かってであったか。不従順な者に向かってではなかったか。
29977 58 3 19 こうして、彼らがはいることのできなかったのは、不信仰のゆえであることがわかる。
29978 58 4 1 それだから、神の安息にはいるべき約束が、まだ存続しているにかかわらず、万一にも、はいりそこなう者が、あなたがたの中から出ることがないように、注意しようではないか。
29979 58 4 2 というのは、彼らと同じく、わたしたちにも福音が伝えられているのである。しかし、その聞いた御言は、彼らには無益であった。それが、聞いた者たちに、信仰によって結びつけられなかったからである。
29980 58 4 3 ところが、わたしたち信じている者は、安息にはいることができる。それは、「わたしが怒って、彼らをわたしの安息に、はいらせることはしないと、誓ったように」
29981 58 4 4 すなわち、聖書のある箇所で、七日目のことについて、「神は、七日目にすべてのわざをやめて休まれた」と言われており、
29982 58 4 5 またここで、「彼らをわたしの安息に、はいらせることはしない」と言われている。
29983 58 4 6 そこで、その安息にはいる機会が、人々になお残されているのであり、しかも、初めに福音を伝えられた人々は、不従順のゆえに、はいることをしなかったのであるから、
29984 58 4 7 神は、あらためて、ある日を「きょう」として定め、長く時がたってから、先に引用したとおり、「きょう、み声を聞いたなら、あなたがたの心を、かたくなにしてはいけない」
29985 58 4 8 もしヨシュアが彼らを休ませていたとすれば、神はあとになって、ほかの日のことについて語られたはずはない。
29986 58 4 9 こういうわけで、安息日の休みが、神の民のためにまだ残されているのである。
29987 58 4 10 なぜなら、神の安息にはいった者は、神がみわざをやめて休まれたように、自分もわざを休んだからである。
29988 58 4 11 したがって、わたしたちは、この安息にはいるように努力しようではないか。そうでないと、同じような不従順の悪例にならって、落ちて行く者が出るかもしれない。
29989 58 4 12 というのは、神の言は生きていて、力があり、もろ刃のつるぎよりも鋭くて、精神と霊魂と、関節と骨髄とを切り離すまでに刺しとおして、心の思いと志とを見分けることができる。
29990 58 4 13 そして、神のみまえには、あらわでない被造物はひとつもなく、すべてのものは、神の目には裸であり、あらわにされているのである。この神に対して、わたしたちは言い開きをしなくてはならない。
29991 58 4 14 さて、わたしたちには、もろもろの天をとおって行かれた大祭司なる神の子イエスがいますのであるから、わたしたちの告白する信仰をかたく守ろうではないか。
29992 58 4 15 この大祭司は、わたしたちの弱さを思いやることのできないようなかたではない。罪は犯されなかったが、すべてのことについて、わたしたちと同じように試錬に会われたのである。
29993 58 4 16 だから、わたしたちは、あわれみを受け、また、恵みにあずかって時機を得た助けを受けるために、はばかることなく恵みの御座に近づこうではないか。
29994 58 5 1 大祭司なるものはすべて、人間の中から選ばれて、罪のために供え物といけにえとをささげるように、人々のために神に仕える役に任じられた者である。
29995 58 5 2 彼は自分自身、弱さを身に負うているので、無知な迷っている人々を、思いやることができると共に、
29996 58 5 3 その弱さのゆえに、民のためだけではなく自分自身のためにも、罪についてささげものをしなければならないのである。
29997 58 5 4 かつ、だれもこの栄誉ある務を自分で得るのではなく、アロンの場合のように、神の召しによって受けるのである。
29998 58 5 5 同様に、キリストもまた、大祭司の栄誉を自分で得たのではなく、「あなたこそは、わたしの子。きょう、わたしはあなたを生んだ」
29999 58 5 6 また、ほかの箇所でこう言われている、「あなたこそは、永遠に、メルキゼデクに等しい祭司である」。
30000 58 5 7 キリストは、その肉の生活の時には、激しい叫びと涙とをもって、ご自分を死から救う力のあるかたに、祈と願いとをささげ、そして、その深い信仰のゆえに聞きいれられたのである。
30001 58 5 8 彼は御子であられたにもかかわらず、さまざまの苦しみによって従順を学び、
30002 58 5 9 そして、全き者とされたので、彼に従順であるすべての人に対して、永遠の救の源となり、
30003 58 5 10 神によって、メルキゼデクに等しい大祭司と、となえられたのである。
30004 58 5 11 このことについては、言いたいことがたくさんあるが、あなたがたの耳が鈍くなっているので、それを説き明かすことはむずかしい。
30005 58 5 12 あなたがたは、久しい以前からすでに教師となっているはずなのに、もう一度神の言の初歩を、人から手ほどきしてもらわねばならない始末である。あなたがたは堅い食物ではなく、乳を必要としている。
30006 58 5 13 すべて乳を飲んでいる者は、幼な子なのだから、義の言葉を味わうことができない。
30007 58 5 14 しかし、堅い食物は、善悪を見わける感覚を実際に働かせて訓練された成人のとるべきものである。
30008 58 6 1 そういうわけだから、わたしたちは、キリストの教の初歩をあとにして、完成を目ざして進もうではないか。今さら、死んだ行いの悔改めと神への信仰、
30009 58 6 2 洗いごとについての教と按手、死人の復活と永遠のさばき、などの基本の教をくりかえし学ぶことをやめようではないか。
30010 58 6 3 神の許しを得て、そうすることにしよう。
30011 58 6 4 いったん、光を受けて天よりの賜物を味わい、聖霊にあずかる者となり、
30012 58 6 5 また、神の良きみ言葉と、きたるべき世の力とを味わった者たちが、
30013 58 6 6 そののち堕落した場合には、またもや神の御子を、自ら十字架につけて、さらしものにするわけであるから、ふたたび悔改めにたち帰ることは不可能である。
30014 58 6 7 たとえば、土地が、その上にたびたび降る雨を吸い込で、耕す人々に役立つ作物を育てるなら、神の祝福にあずかる。
30015 58 6 8 しかし、いばらやあざみをはえさせるなら、それは無用になり、やがてのろわれ、ついには焼かれてしまう。
30016 58 6 9 しかし、愛する者たちよ。こうは言うものの、わたしたちは、救にかかわる更に良いことがあるのを、あなたがたについて確信している。
30017 58 6 10 神は不義なかたではないから、あなたがたの働きや、あなたがたがかつて聖徒に仕え、今もなお仕えて、御名のために示してくれた愛を、お忘れになることはない。
30018 58 6 11 わたしたちは、あなたがたがひとり残らず、最後まで望みを持ちつづけるためにも、同じ熱意を示し、
30019 58 6 12 怠ることがなく、信仰と忍耐とをもって約束のものを受け継ぐ人々に見習う者となるように、と願ってやまない。
30020 58 6 13 さて、神がアブラハムに対して約束されたとき、さして誓うのに、ご自分よりも上のものがないので、ご自分をさして誓って、
30021 58 6 14 「わたしは、必ずあなたを祝福し、必ずあなたの子孫をふやす」と言われた。
30022 58 6 15 このようにして、アブラハムは忍耐強く待ったので、約束のものを得たのである。
30023 58 6 16 いったい、人間は自分より上のものをさして誓うのであり、そして、その誓いはすべての反対論を封じる保証となるのである。
30024 58 6 17 そこで、神は、約束のものを受け継ぐ人々に、ご計画の不変であることを、いっそうはっきり示そうと思われ、誓いによって保証されたのである。
30025 58 6 18 それは、偽ることのあり得ない神に立てられた二つの不変の事がらによって、前におかれている望みを捕えようとして世をのがれてきたわたしたちが、力強い励ましを受けるためである。
30026 58 6 19 この望みは、わたしたちにとって、いわば、たましいを安全にし不動にする錨であり、かつ「幕の内」にはいり行かせるものである。
30027 58 6 20 その幕の内に、イエスは、永遠にメルキゼデクに等しい大祭司として、わたしたちのためにさきがけとなって、はいられたのである。
30028 58 7 1 このメルキゼデクはサレムの王であり、いと高き神の祭司であったが、王たちを撃破して帰るアブラハムを迎えて祝福し、
30029 58 7 2 それに対して、アブラハムは彼にすべての物の十分の一を分け与えたのである。その名の意味は、第一に義の王、次にまたサレムの王、すなわち平和の王である。
30030 58 7 3 彼には父がなく、母がなく、系図がなく、生涯の初めもなく、生命の終りもなく、神の子のようであって、いつまでも祭司なのである。
30031 58 7 4 そこで、族長のアブラハムが最もよいぶんどり品の十分の一を与えたのだから、この人がどんなにすぐれた人物であったかが、あなたがたにわかるであろう。
30032 58 7 5 さて、レビの子のうちで祭司の務をしている者たちは、兄弟である民から、同じくアブラハムの子孫であるにもかかわらず、十分の一を取るように、律法によって命じられている。
30033 58 7 6 ところが、彼らの血統に属さないこの人が、アブラハムから十分の一を受けとり、約束を受けている者を祝福したのである。
30034 58 7 7 言うまでもなく、小なる者が大なる者から祝福を受けるのである。
30035 58 7 8 その上、一方では死ぬべき人間が、十分の一を受けているが、他方では「彼は生きている者」とあかしされた人が、それを受けている。
30036 58 7 9 そこで、十分の一を受けるべきレビでさえも、アブラハムを通じて十分の一を納めた、と言える。
30037 58 7 10 なぜなら、メルキゼデクがアブラハムを迎えた時には、レビはまだこの父祖の腰の中にいたからである。
30038 58 7 11 もし全うされることがレビ系の祭司制によって可能であったら――民は祭司制の下に律法を与えられたのであるが――なんの必要があって、なお、「アロンに等しい」と呼ばれない、別な「メルキゼデクに等しい」祭司が立てられるのであるか。
30039 58 7 12 祭司制に変更があれば、律法にも必ず変更があるはずである。
30040 58 7 13 さて、これらのことは、いまだかつて祭壇に奉仕したことのない、他の部族に関して言われているのである。
30041 58 7 14 というのは、わたしたちの主がユダ族の中から出られたことは、明らかであるが、モーセは、この部族について、祭司に関することでは、ひとことも言っていない。
30042 58 7 15 そしてこの事は、メルキゼデクと同様な、ほかの祭司が立てられたことによって、ますます明白になる。
30043 58 7 16 彼は、肉につける戒めの律法によらないで、朽ちることのないいのちの力によって立てられたのである。
30044 58 7 17 それについては、聖書に「あなたこそは、永遠に、メルキゼデクに等しい祭司である」とあかしされている。
30045 58 7 18 このようにして、一方では、前の戒めが弱くかつ無益であったために無効になると共に、
30046 58 7 19 (律法は、何事をも全うし得なかったからである)、他方では、さらにすぐれた望みが現れてきて、わたしたちを神に近づかせるのである。
30047 58 7 20 その上に、このことは誓いをもってなされた。人々は、誓いをしないで祭司とされるのであるが、
30048 58 7 21 この人の場合は、次のような誓いをもってされたのである。すなわち、彼について、こう言われている、「主は誓われたが、心を変えることをされなかった。あなたこそは、永遠に祭司である」。
30049 58 7 22 このようにして、イエスは更にすぐれた契約の保証となられたのである。
30050 58 7 23 かつ、死ということがあるために、務を続けることができないので、多くの人々が祭司に立てられるのである。
30051 58 7 24 しかし彼は、永遠にいますかたであるので、変らない祭司の務を持ちつづけておられるのである。
30052 58 7 25 そこでまた、彼は、いつも生きていて彼らのためにとりなしておられるので、彼によって神に来る人々を、いつも救うことができるのである。
30053 58 7 26 このように、聖にして、悪も汚れもなく、罪人とは区別され、かつ、もろもろの天よりも高くされている大祭司こそ、わたしたちにとってふさわしいかたである。
30054 58 7 27 彼は、ほかの大祭司のように、まず自分の罪のため、次に民の罪のために、日々、いけにえをささげる必要はない。なぜなら、自分をささげて、一度だけ、それをされたからである。
30055 58 7 28 律法は、弱さを身に負う人間を立てて大祭司とするが、律法の後にきた誓いの御言は、永遠に全うされた御子を立てて、大祭司としたのである。
30056 58 8 1 以上述べたことの要点は、このような大祭司がわたしたちのためにおられ、天にあって大能者の御座の右に座し、
30057 58 8 2 人間によらず主によって設けられた真の幕屋なる聖所で仕えておられる、ということである。
30058 58 8 3 おおよそ、大祭司が立てられるのは、供え物やいけにえをささげるためにほかならない。したがって、この大祭司もまた、何かささぐべき物を持っておられねばならない。
30059 58 8 4 そこで、もし彼が地上におられたなら、律法にしたがって供え物をささげる祭司たちが、現にいるのだから、彼は祭司ではあり得なかったであろう。
30060 58 8 5 彼らは、天にある聖所のひな型と影とに仕えている者にすぎない。それについては、モーセが幕屋を建てようとしたとき、御告げを受け、「山で示された型どおりに、注意してそのいっさいを作りなさい」と言われたのである。
30061 58 8 6 ところがキリストは、はるかにすぐれた務を得られたのである。それは、さらにまさった約束に基いて立てられた、さらにまさった契約の仲保者となられたことによる。
30062 58 8 7 もし初めの契約に欠けたところがなかったなら、あとのものが立てられる余地はなかったであろう。
30063 58 8 8 ところが、神は彼らを責めて言われた、「主は言われる、見よ、わたしがイスラエルの家およびユダの家と、新しい契約を結ぶ日が来る。
30064 58 8 9 それは、わたしが彼らの先祖たちの手をとって、エジプトの地から導き出した日に、彼らと結んだ契約のようなものではない。彼らがわたしの契約にとどまることをしないので、わたしも彼らをかえりみなかったからであると、主が言われる。
30065 58 8 10 わたしが、それらの日の後、イスラエルの家と立てようとする契約はこれである、と主が言われる。すなわち、わたしの律法を彼らの思いの中に入れ、彼らの心に書きつけよう。こうして、わたしは彼らの神となり、彼らはわたしの民となるであろう。
30066 58 8 11 彼らは、それぞれ、その同胞に、また、それぞれ、その兄弟に、主を知れ、と言って教えることはなくなる。なぜなら、大なる者から小なる者に至るまで、彼らはことごとく、わたしを知るようになるからである。
30067 58 8 12 わたしは、彼らの不義をあわれみ、もはや、彼らの罪を思い出すことはしない」。
30068 58 8 13 神は、「新しい」と言われたことによって、初めの契約を古いとされたのである。年を経て古びたものは、やがて消えていく。
30069 58 9 1 さて、初めの契約にも、礼拝についてのさまざまな規定と、地上の聖所とがあった。
30070 58 9 2 すなわち、まず幕屋が設けられ、その前の場所には燭台と机と供えのパンとが置かれていた。これが、聖所と呼ばれた。
30071 58 9 3 また第二の幕の後に、別の場所があり、それは至聖所と呼ばれた。
30072 58 9 4 そこには金の香壇と全面金でおおわれた契約の箱とが置かれ、その中にはマナのはいっている金のつぼと、芽を出したアロンのつえと、契約の石板とが入れてあり、
30073 58 9 5 箱の上には栄光に輝くケルビムがあって、贖罪所をおおっていた。これらのことについては、今ここで、いちいち述べることができない。
30074 58 9 6 これらのものが、以上のように整えられた上で、祭司たちは常に幕屋の前の場所にはいって礼拝をするのであるが、
30075 58 9 7 幕屋の奥には大祭司が年に一度だけはいるのであり、しかも自分自身と民とのあやまちのためにささげる血をたずさえないで行くことはない。
30076 58 9 8 それによって聖霊は、前方の幕屋が存在している限り、聖所にはいる道はまだ開かれていないことを、明らかに示している。
30077 58 9 9 この幕屋というのは今の時代に対する比喩である。すなわち、供え物やいけにえはささげられるが、儀式にたずさわる者の良心を全うすることはできない。
30078 58 9 10 それらは、ただ食物と飲み物と種々の洗いごとに関する行事であって、改革の時まで課せられている肉の規定にすぎない。
30079 58 9 11 しかしキリストがすでに現れた祝福の大祭司としてこられたとき、手で造られず、この世界に属さない、さらに大きく、完全な幕屋をとおり、
30080 58 9 12 かつ、やぎと子牛との血によらず、ご自身の血によって、一度だけ聖所にはいられ、それによって永遠のあがないを全うされたのである。
30081 58 9 13 もし、やぎや雄牛の血や雌牛の灰が、汚れた人たちの上にまきかけられて、肉体をきよめ聖別するとすれば、
30082 58 9 14 永遠の聖霊によって、ご自身を傷なき者として神にささげられたキリストの血は、なおさら、わたしたちの良心をきよめて死んだわざを取り除き、生ける神に仕える者としないであろうか。
30083 58 9 15 それだから、キリストは新しい契約の仲保者なのである。それは、彼が初めの契約のもとで犯した罪過をあがなうために死なれた結果、召された者たちが、約束された永遠の国を受け継ぐためにほかならない。
30084 58 9 16 いったい、遺言には、遺言者の死の証明が必要である。
30085 58 9 17 遺言は死によってのみその効力を生じ、遺言者が生きている間は、効力がない。
30086 58 9 18 だから、初めの契約も、血を流すことなしに成立したのではない。
30087 58 9 19 すなわち、モーセが、律法に従ってすべての戒めを民全体に宣言したとき、水と赤色の羊毛とヒソプとの外に、子牛とやぎとの血を取って、契約書と民全体とにふりかけ、
30088 58 9 20 そして、「これは、神があなたがたに対して立てられた契約の血である」と言った。
30089 58 9 21 彼はまた、幕屋と儀式用の器具いっさいにも、同様に血をふりかけた。
30090 58 9 22 こうして、ほとんどすべての物が、律法に従い、血によってきよめられたのである。血を流すことなしには、罪のゆるしはあり得ない。
30091 58 9 23 このように、天にあるもののひな型は、これらのものできよめられる必要があるが、天にあるものは、これらより更にすぐれたいけにえで、きよめられねばならない。
30092 58 9 24 ところが、キリストは、ほんとうのものの模型にすぎない、手で造った聖所にはいらないで、上なる天にはいり、今やわたしたちのために神のみまえに出て下さったのである。
30093 58 9 25 大祭司は、年ごとに、自分以外のものの血をたずさえて聖所にはいるが、キリストは、そのように、たびたびご自身をささげられるのではなかった。
30094 58 9 26 もしそうだとすれば、世の初めから、たびたび苦難を受けねばならなかったであろう。しかし事実、ご自身をいけにえとしてささげて罪を取り除くために、世の終りに、一度だけ現れたのである。
30095 58 9 27 そして、一度だけ死ぬことと、死んだ後さばきを受けることとが、人間に定まっているように、
30096 58 9 28 キリストもまた、多くの人の罪を負うために、一度だけご自身をささげられた後、彼を待ち望んでいる人々に、罪を負うためではなしに二度目に現れて、救を与えられるのである。
30097 58 10 1 いったい、律法はきたるべき良いことの影をやどすにすぎず、そのものの真のかたちをそなえているものではないから、年ごとに引きつづきささげられる同じようないけにえによっても、みまえに近づいて来る者たちを、全うすることはできないのである。
30098 58 10 2 もしできたとすれば、儀式にたずさわる者たちは、一度きよめられた以上、もはや罪の自覚がなくなるのであるから、ささげ物をすることがやんだはずではあるまいか。
30099 58 10 3 しかし実際は、年ごとに、いけにえによって罪の思い出がよみがえって来るのである。
30100 58 10 4 なぜなら、雄牛ややぎなどの血は、罪を除き去ることができないからである。
30101 58 10 5 それだから、キリストがこの世にこられたとき、次のように言われた、「あなたは、いけにえやささげ物を望まれないで、わたしのために、からだを備えて下さった。
30102 58 10 6 あなたは燔祭や罪祭を好まれなかった。
30103 58 10 7 その時、わたしは言った、『神よ、わたしにつき、巻物の書物に書いてあるとおり、見よ、御旨を行うためにまいりました』」。
30104 58 10 8 ここで、初めに、「あなたは、いけにえとささげ物と燔祭と罪祭と(すなわち、律法に従ってささげられるもの)を望まれず、好まれもしなかった」とあり、
30105 58 10 9 次に、「見よ、わたしは御旨を行うためにまいりました」とある。すなわち、彼は、後のものを立てるために、初めのものを廃止されたのである。
30106 58 10 10 この御旨に基きただ一度イエス・キリストのからだがささげられたことによって、わたしたちはきよめられたのである。
30107 58 10 11 こうして、すべての祭司は立って日ごとに儀式を行い、たびたび同じようないけにえをささげるが、それらは決して罪を除き去ることはできない。
30108 58 10 12 しかるに、キリストは多くの罪のために一つの永遠のいけにえをささげた後、神の右に座し、
30109 58 10 13 それから、敵をその足台とするときまで、待っておられる。
30110 58 10 14 彼は一つのささげ物によって、きよめられた者たちを永遠に全うされたのである。
30111 58 10 15 聖霊もまた、わたしたちにあかしをして、
30112 58 10 16 「わたしが、それらの日の後、彼らに対して立てようとする契約はこれであると、主が言われる。わたしの律法を彼らの心に与え、彼らの思いのうちに書きつけよう」
30113 58 10 17 さらに、「もはや、彼らの罪と彼らの不法とを、思い出すことはしない」と述べている。
30114 58 10 18 これらのことに対するゆるしがある以上、罪のためのささげ物は、もはやあり得ない。
30115 58 10 19 兄弟たちよ。こういうわけで、わたしたちはイエスの血によって、はばかることなく聖所にはいることができ、
30116 58 10 20 彼の肉体なる幕をとおり、わたしたちのために開いて下さった新しい生きた道をとおって、はいって行くことができるのであり、
30117 58 10 21 さらに、神の家を治める大いなる祭司があるのだから、
30118 58 10 22 心はすすがれて良心のとがめを去り、からだは清い水で洗われ、まごころをもって信仰の確信に満たされつつ、みまえに近づこうではないか。
30119 58 10 23 また、約束をして下さったのは忠実なかたであるから、わたしたちの告白する望みを、動くことなくしっかりと持ち続け、
30120 58 10 24 愛と善行とを励むように互に努め、
30121 58 10 25 ある人たちがいつもしているように、集会をやめることはしないで互に励まし、かの日が近づいているのを見て、ますます、そうしようではないか。
30122 58 10 26 もしわたしたちが、真理の知識を受けたのちにもなお、ことさらに罪を犯しつづけるなら、罪のためのいけにえは、もはやあり得ない。
30123 58 10 27 ただ、さばきと、逆らう者たちを焼きつくす激しい火とを、恐れつつ待つことだけがある。
30124 58 10 28 モーセの律法を無視する者が、あわれみを受けることなしに、二、三の人の証言に基いて死刑に処せられるとすれば、
30125 58 10 29 神の子を踏みつけ、自分がきよめられた契約の血を汚れたものとし、さらに恵みの御霊を侮る者は、どんなにか重い刑罰に価することであろう。
30126 58 10 30 「復讐はわたしのすることである。わたし自身が報復する」と言われ、また「主はその民をさばかれる」と言われたかたを、わたしたちは知っている。
30127 58 10 31 生ける神のみ手のうちに落ちるのは、恐ろしいことである。
30128 58 10 32 あなたがたは、光に照されたのち、苦しい大きな戦いによく耐えた初めのころのことを、思い出してほしい。
30129 58 10 33 そしられ苦しめられて見せ物にされたこともあれば、このようなめに会った人々の仲間にされたこともあった。
30130 58 10 34 さらに獄に入れられた人々を思いやり、また、もっとまさった永遠の宝を持っていることを知って、自分の財産が奪われても喜んでそれを忍んだ。
30131 58 10 35 だから、あなたがたは自分の持っている確信を放棄してはいけない。その確信には大きな報いが伴っているのである。
30132 58 10 36 神の御旨を行って約束のものを受けるため、あなたがたに必要なのは、忍耐である。
30133 58 10 37 「もうしばらくすれば、きたるべきかたがお見えになる。遅くなることはない。
30134 58 10 38 わが義人は、信仰によって生きる。もし信仰を捨てるなら、わたしのたましいはこれを喜ばない」。
30135 58 10 39 しかしわたしたちは、信仰を捨てて滅びる者ではなく、信仰に立って、いのちを得る者である。
30136 58 11 1 さて、信仰とは、望んでいる事がらを確信し、まだ見ていない事実を確認することである。
30137 58 11 2 昔の人たちは、この信仰のゆえに賞賛された。
30138 58 11 3 信仰によって、わたしたちは、この世界が神の言葉で造られたのであり、したがって、見えるものは現れているものから出てきたのでないことを、悟るのである。
30139 58 11 4 信仰によって、アベルはカインよりもまさったいけにえを神にささげ、信仰によって義なる者と認められた。神が、彼の供え物をよしとされたからである。彼は死んだが、信仰によって今もなお語っている。
30140 58 11 5 信仰によって、エノクは死を見ないように天に移された。神がお移しになったので、彼は見えなくなった。彼が移される前に、神に喜ばれた者と、あかしされていたからである。
30141 58 11 6 信仰がなくては、神に喜ばれることはできない。なぜなら、神に来る者は、神のいますことと、ご自身を求める者に報いて下さることとを、必ず信じるはずだからである。
30142 58 11 7 信仰によって、ノアはまだ見ていない事がらについて御告げを受け、恐れかしこみつつ、その家族を救うために箱舟を造り、その信仰によって世の罪をさばき、そして、信仰による義を受け継ぐ者となった。
30143 58 11 8 信仰によって、アブラハムは、受け継ぐべき地に出て行けとの召しをこうむった時、それに従い、行く先を知らないで出て行った。
30144 58 11 9 信仰によって、他国にいるようにして約束の地に宿り、同じ約束を継ぐイサク、ヤコブと共に、幕屋に住んだ。
30145 58 11 10 彼は、ゆるがぬ土台の上に建てられた都を、待ち望んでいたのである。その都をもくろみ、また建てたのは、神である。
30146 58 11 11 信仰によって、サラもまた、年老いていたが、種を宿す力を与えられた。約束をなさったかたは真実であると、信じていたからである。
30147 58 11 12 このようにして、ひとりの死んだと同様な人から、天の星のように、海べの数えがたい砂のように、おびただしい人が生れてきたのである。
30148 58 11 13 これらの人はみな、信仰をいだいて死んだ。まだ約束のものは受けていなかったが、はるかにそれを望み見て喜び、そして、地上では旅人であり寄留者であることを、自ら言いあらわした。
30149 58 11 14 そう言いあらわすことによって、彼らがふるさとを求めていることを示している。
30150 58 11 15 もしその出てきた所のことを考えていたなら、帰る機会はあったであろう。
30151 58 11 16 しかし実際、彼らが望んでいたのは、もっと良い、天にあるふるさとであった。だから神は、彼らの神と呼ばれても、それを恥とはされなかった。事実、神は彼らのために、都を用意されていたのである。
30152 58 11 17 信仰によって、アブラハムは、試錬を受けたとき、イサクをささげた。すなわち、約束を受けていた彼が、そのひとり子をささげたのである。
30153 58 11 18 この子については、「イサクから出る者が、あなたの子孫と呼ばれるであろう」と言われていたのであった。
30154 58 11 19 彼は、神が死人の中から人をよみがえらせる力がある、と信じていたのである。だから彼は、いわば、イサクを生きかえして渡されたわけである。
30155 58 11 20 信仰によって、イサクは、きたるべきことについて、ヤコブとエサウとを祝福した。
30156 58 11 21 信仰によって、ヤコブは死のまぎわに、ヨセフの子らをひとりびとり祝福し、そしてそのつえのかしらによりかかって礼拝した。
30157 58 11 22 信仰によって、ヨセフはその臨終に、イスラエルの子らの出て行くことを思い、自分の骨のことについてさしずした。
30158 58 11 23 信仰によって、モーセの生れたとき、両親は、三か月のあいだ彼を隠した。それは、彼らが子供のうるわしいのを見たからである。彼らはまた、王の命令をも恐れなかった。
30159 58 11 24 信仰によって、モーセは、成人したとき、パロの娘の子と言われることを拒み、
30160 58 11 25 罪のはかない歓楽にふけるよりは、むしろ神の民と共に虐待されることを選び、
30161 58 11 26 キリストのゆえに受けるそしりを、エジプトの宝にまさる富と考えた。それは、彼が報いを望み見ていたからである。
30162 58 11 27 信仰によって、彼は王の憤りをも恐れず、エジプトを立ち去った。彼は、見えないかたを見ているようにして、忍びとおした。
30163 58 11 28 信仰によって、滅ぼす者が、長子らに手を下すことのないように、彼は過越を行い血を塗った。
30164 58 11 29 信仰によって、人々は紅海をかわいた土地をとおるように渡ったが、同じことを企てたエジプト人はおぼれ死んだ。
30165 58 11 30 信仰によって、エリコの城壁は、七日にわたってまわったために、くずれおちた。
30166 58 11 31 信仰によって、遊女ラハブは、探りにきた者たちをおだやかに迎えたので、不従順な者どもと一緒に滅びることはなかった。
30167 58 11 32 このほか、何を言おうか。もしギデオン、バラク、サムソン、エフタ、ダビデ、サムエル及び預言者たちについて語り出すなら、時間が足りないであろう。
30168 58 11 33 彼らは信仰によって、国々を征服し、義を行い、約束のものを受け、ししの口をふさぎ、
30169 58 11 34 火の勢いを消し、つるぎの刃をのがれ、弱いものは強くされ、戦いの勇者となり、他国の軍を退かせた。
30170 58 11 35 女たちは、その死者たちをよみがえらさせてもらった。ほかの者は、更にまさったいのちによみがえるために、拷問の苦しみに甘んじ、放免されることを願わなかった。
30171 58 11 36 なおほかの者たちは、あざけられ、むち打たれ、しばり上げられ、投獄されるほどのめに会った。
30172 58 11 37 あるいは、石で打たれ、さいなまれ、のこぎりで引かれ、つるぎで切り殺され、羊の皮や、やぎの皮を着て歩きまわり、無一物になり、悩まされ、苦しめられ、
30173 58 11 38 (この世は彼らの住む所ではなかった)、荒野と山の中と岩の穴と土の穴とを、さまよい続けた。
30174 58 11 39 さて、これらの人々はみな、信仰によってあかしされたが、約束のものは受けなかった。
30175 58 11 40 神はわたしたちのために、さらに良いものをあらかじめ備えて下さっているので、わたしたちをほかにしては彼らが全うされることはない。
30176 58 12 1 こういうわけで、わたしたちは、このような多くの証人に雲のように囲まれているのであるから、いっさいの重荷と、からみつく罪とをかなぐり捨てて、わたしたちの参加すべき競走を、耐え忍んで走りぬこうではないか。
30177 58 12 2 信仰の導き手であり、またその完成者であるイエスを仰ぎ見つつ、走ろうではないか。彼は、自分の前におかれている喜びのゆえに、恥をもいとわないで十字架を忍び、神の御座の右に座するに至ったのである。
30178 58 12 3 あなたがたは、弱り果てて意気そそうしないために、罪人らのこのような反抗を耐え忍んだかたのことを、思いみるべきである。
30179 58 12 4 あなたがたは、罪と取り組んで戦う時、まだ血を流すほどの抵抗をしたことがない。
30180 58 12 5 また子たちに対するように、あなたがたに語られたこの勧めの言葉を忘れている、「わたしの子よ、主の訓練を軽んじてはいけない。主に責められるとき、弱り果ててはならない。
30181 58 12 6 主は愛する者を訓練し、受けいれるすべての子を、むち打たれるのである」。
30182 58 12 7 あなたがたは訓練として耐え忍びなさい。神はあなたがたを、子として取り扱っておられるのである。いったい、父に訓練されない子があるだろうか。
30183 58 12 8 だれでも受ける訓練が、あなたがたに与えられないとすれば、それこそ、あなたがたは私生子であって、ほんとうの子ではない。
30184 58 12 9 その上、肉親の父はわたしたちを訓練するのに、なお彼をうやまうとすれば、なおさら、わたしたちは、たましいの父に服従して、真に生きるべきではないか。
30185 58 12 10 肉親の父は、しばらくの間、自分の考えに従って訓練を与えるが、たましいの父は、わたしたちの益のため、そのきよさにあずからせるために、そうされるのである。
30186 58 12 11 すべての訓練は、当座は、喜ばしいものとは思われず、むしろ悲しいものと思われる。しかし後になれば、それによって鍛えられる者に、平安な義の実を結ばせるようになる。
30187 58 12 12 それだから、あなたがたのなえた手と、弱くなっているひざとを、まっすぐにしなさい。
30188 58 12 13 また、足のなえている者が踏みはずすことなく、むしろいやされるように、あなたがたの足のために、まっすぐな道をつくりなさい。
30189 58 12 14 すべての人と相和し、また、自らきよくなるように努めなさい。きよくならなければ、だれも主を見ることはできない。
30190 58 12 15 気をつけて、神の恵みからもれることがないように、また、苦い根がはえ出て、あなたがたを悩まし、それによって多くの人が汚されることのないようにしなさい。
30191 58 12 16 また、一杯の食のために長子の権利を売ったエサウのように、不品行な俗悪な者にならないようにしなさい。
30192 58 12 17 あなたがたの知っているように、彼はその後、祝福を受け継ごうと願ったけれども、捨てられてしまい、涙を流してそれを求めたが、悔改めの機会を得なかったのである。
30193 58 12 18 あなたがたが近づいているのは、手で触れることができ、火が燃え、黒雲や暗やみやあらしにつつまれ、
30194 58 12 19 また、ラッパの響や、聞いた者たちがそれ以上、耳にしたくないと願ったような言葉がひびいてきた山ではない。
30195 58 12 20 そこでは、彼らは、「けものであっても、山に触たら、石で打ち殺されてしまえ」という命令の言葉に、耐えることができなかったのである。
30196 58 12 21 その光景が恐ろしかったのでモーセさえも、「わたしは恐ろしさのあまり、おののいている」と言ったほどである。
30197 58 12 22 しかしあなたがたが近づいているのは、シオンの山、生ける神の都、天にあるエルサレム、無数の天使の祝会、
30198 58 12 23 天に登録されている長子たちの教会、万民の審判者なる神、全うされた義人の霊、
30199 58 12 24 新しい契約の仲保者イエス、ならびに、アベルの血よりも力強く語るそそがれた血である。
30200 58 12 25 あなたがたは、語っておられるかたを拒むことがないように、注意しなさい。もし地上で御旨を告げた者を拒んだ人々が、罰をのがれることができなかったなら、天から告げ示すかたを退けるわたしたちは、なおさらそうなるのではないか。
30201 58 12 26 あの時には、御声が地を震わせた。しかし今は、約束して言われた、「わたしはもう一度、地ばかりでなく天をも震わそう」。
30202 58 12 27 この「もう一度」という言葉は、震われないものが残るために、震われるものが、造られたものとして取り除かれることを示している。
30203 58 12 28 このように、わたしたちは震われない国を受けているのだから、感謝をしようではないか。そして感謝しつつ、恐れかしこみ、神に喜ばれるように、仕えていこう。
30204 58 12 29 わたしたちの神は、実に、焼きつくす火である。
30205 58 13 1 兄弟愛を続けなさい。
30206 58 13 2 旅人をもてなすことを忘れてはならない。このようにして、ある人々は、気づかないで御使たちをもてなした。
30207 58 13 3 獄につながれている人たちを、自分も一緒につながれている心持で思いやりなさい。また、自分も同じ肉体にある者だから、苦しめられている人たちのことを、心にとめなさい。
30208 58 13 4 すべての人は、結婚を重んずべきである。また寝床を汚してはならない。神は、不品行な者や姦淫をする者をさばかれる。
30209 58 13 5 金銭を愛することをしないで、自分の持っているもので満足しなさい。主は、「わたしは、決してあなたを離れず、あなたを捨てない」と言われた。
30210 58 13 6 だから、わたしたちは、はばからずに言おう、「主はわたしの助け主である。わたしには恐れはない。人は、わたしに何ができようか」。
30211 58 13 7 神の言をあなたがたに語った指導者たちのことを、いつも思い起しなさい。彼らの生活の最後を見て、その信仰にならいなさい。
30212 58 13 8 イエス・キリストは、きのうも、きょうも、いつまでも変ることがない。
30213 58 13 9 さまざまな違った教によって、迷わされてはならない。食物によらず、恵みによって、心を強くするがよい。食物によって歩いた者は、益を得ることがなかった。
30214 58 13 10 わたしたちには一つの祭壇がある。幕屋で仕えている者たちは、その祭壇の食物をたべる権利はない。
30215 58 13 11 なぜなら、大祭司によって罪のためにささげられるけものの血は、聖所のなかに携えて行かれるが、そのからだは、営所の外で焼かれてしまうからである。
30216 58 13 12 だから、イエスもまた、ご自分の血で民をきよめるために、門の外で苦難を受けられたのである。
30217 58 13 13 したがって、わたしたちも、彼のはずかしめを身に負い、営所の外に出て、みもとに行こうではないか。
30218 58 13 14 この地上には、永遠の都はない。きたらんとする都こそ、わたしたちの求めているものである。
30219 58 13 15 だから、わたしたちはイエスによって、さんびのいけにえ、すなわち、彼の御名をたたえるくちびるの実を、たえず神にささげようではないか。
30220 58 13 16 そして、善を行うことと施しをすることとを、忘れてはいけない。神は、このようないけにえを喜ばれる。
30221 58 13 17 あなたがたの指導者たちの言うことを聞きいれて、従いなさい。彼らは、神に言いひらきをすべき者として、あなたがたのたましいのために、目をさましている。彼らが嘆かないで、喜んでこのことをするようにしなさい。そうでないと、あなたがたの益にならない。
30222 58 13 18 わたしたちのために、祈ってほしい。わたしたちは明らかな良心を持っていると信じており、何事についても、正しく行動しようと願っている。
30223 58 13 19 わたしがあなたがたの所に早く帰れるため、祈ってくれるように、特にお願いする。
30224 58 13 20 永遠の契約の血による羊の大牧者、わたしたちの主イエスを、死人の中から引き上げられた平和の神が、
30225 58 13 21 イエス・キリストによって、みこころにかなうことをわたしたちにして下さり、あなたがたが御旨を行うために、すべての良きものを備えて下さるようにこい願う。栄光が、世々限りなく神にあるように、アァメン。
30226 58 13 22 兄弟たちよ。どうかわたしの勧めの言葉を受けいれてほしい。わたしは、ただ手みじかに書いたのだから。
30227 58 13 23 わたしたちの兄弟テモテがゆるされたことを、お知らせする。もし彼が早く来れば、彼と一緒にわたしはあなたがたに会えるだろう。
30228 58 13 24 あなたがたの指導者一同と聖徒たち一同に、よろしく伝えてほしい。イタリヤからきた人々から、あなたがたによろしく。
30229 58 13 25 恵みが、あなたがた一同にあるように。
30230 59 1 1 神と主イエス・キリストとの僕ヤコブから、離散している十二部族の人々へ、あいさつをおくる。
30231 59 1 2 わたしの兄弟たちよ。あなたがたが、いろいろな試錬に会った場合、それをむしろ非常に喜ばしいことと思いなさい。
30232 59 1 3 あなたがたの知っているとおり、信仰がためされることによって、忍耐が生み出されるからである。
30233 59 1 4 だから、なんら欠点のない、完全な、でき上がった人となるように、その忍耐力を十分に働かせるがよい。
30234 59 1 5 あなたがたのうち、知恵に不足している者があれば、その人は、とがめもせずに惜しみなくすべての人に与える神に、願い求めるがよい。そうすれば、与えられるであろう。
30235 59 1 6 ただ、疑わないで、信仰をもって願い求めなさい。疑う人は、風の吹くままに揺れ動く海の波に似ている。
30236 59 1 7 そういう人は、主から何かをいただけるもののように思うべきではない。
30237 59 1 8 そんな人間は、二心の者であって、そのすべての行動に安定がない。
30238 59 1 9 低い身分の兄弟は、自分が高くされたことを喜びなさい。
30239 59 1 10 また、富んでいる者は、自分が低くされたことを喜ぶがよい。富んでいる者は、草花のように過ぎ去るからである。
30240 59 1 11 たとえば、太陽が上って熱風をおくると、草を枯らす。そしてその花は落ち、その美しい姿は消えうせてしまう。それと同じように、富んでいる者も、その一生の旅なかばで没落するであろう。
30241 59 1 12 試錬を耐え忍ぶ人は、さいわいである。それを忍びとおしたなら、神を愛する者たちに約束されたいのちの冠を受けるであろう。
30242 59 1 13 だれでも誘惑に会う場合、「この誘惑は、神からきたものだ」と言ってはならない。神は悪の誘惑に陥るようなかたではなく、また自ら進んで人を誘惑することもなさらない。
30243 59 1 14 人が誘惑に陥るのは、それぞれ、欲に引かれ、さそわれるからである。
30244 59 1 15 欲がはらんで罪を生み、罪が熟して死を生み出す。
30245 59 1 16 愛する兄弟たちよ。思い違いをしてはいけない。
30246 59 1 17 あらゆる良い贈り物、あらゆる完全な賜物は、上から、光の父から下って来る。父には、変化とか回転の影とかいうものはない。
30247 59 1 18 父は、わたしたちを、いわば被造物の初穂とするために、真理の言葉によって御旨のままに、生み出して下さったのである。
30248 59 1 19 愛する兄弟たちよ。このことを知っておきなさい。人はすべて、聞くに早く、語るにおそく、怒るにおそくあるべきである。
30249 59 1 20 人の怒りは、神の義を全うするものではないからである。
30250 59 1 21 だから、すべての汚れや、はなはだしい悪を捨て去って、心に植えつけられている御言を、すなおに受け入れなさい。御言には、あなたがたのたましいを救う力がある。
30251 59 1 22 そして、御言を行う人になりなさい。おのれを欺いて、ただ聞くだけの者となってはいけない。
30252 59 1 23 おおよそ御言を聞くだけで行わない人は、ちょうど、自分の生れつきの顔を鏡に映して見る人のようである。
30253 59 1 24 彼は自分を映して見てそこから立ち去ると、そのとたんに、自分の姿がどんなであったかを忘れてしまう。
30254 59 1 25 これに反して、完全な自由の律法を一心に見つめてたゆまない人は、聞いて忘れてしまう人ではなくて、実際に行う人である。こういう人は、その行いによって祝福される。
30255 59 1 26 もし人が信心深い者だと自任しながら、舌を制することをせず、自分の心を欺いているならば、その人の信心はむなしいものである。
30256 59 1 27 父なる神のみまえに清く汚れのない信心とは、困っている孤児や、やもめを見舞い、自らは世の汚れに染まずに、身を清く保つことにほかならない。
30257 59 2 1 わたしの兄弟たちよ。わたしたちの栄光の主イエス・キリストへの信仰を守るのに、分け隔てをしてはならない。
30258 59 2 2 たとえば、あなたがたの会堂に、金の指輪をはめ、りっぱな着物を着た人がはいって来ると同時に、みすぼらしい着物を着た貧しい人がはいってきたとする。
30259 59 2 3 その際、りっぱな着物を着た人に対しては、うやうやしく「どうぞ、こちらの良い席にお掛け下さい」と言い、貧しい人には、「あなたは、そこに立っていなさい。それとも、わたしの足もとにすわっているがよい」と言ったとしたら、
30260 59 2 4 あなたがたは、自分たちの間で差別立てをし、よからぬ考えで人をさばく者になったわけではないか。
30261 59 2 5 愛する兄弟たちよ。よく聞きなさい。神は、この世の貧しい人たちを選んで信仰に富ませ、神を愛する者たちに約束された御国の相続者とされたではないか。
30262 59 2 6 しかるに、あなたがたは貧しい人をはずかしめたのである。あなたがたをしいたげ、裁判所に引きずり込むのは、富んでいる者たちではないか。
30263 59 2 7 あなたがたに対して唱えられた尊い御名を汚すのは、実に彼らではないか。
30264 59 2 8 しかし、もしあなたがたが、「自分を愛するように、あなたの隣り人を愛せよ」という聖書の言葉に従って、このきわめて尊い律法を守るならば、それは良いことである。
30265 59 2 9 しかし、もし分け隔てをするならば、あなたがたは罪を犯すことになり、律法によって違反者として宣告される。
30266 59 2 10 なぜなら、律法をことごとく守ったとしても、その一つの点にでも落ち度があれば、全体を犯したことになるからである。
30267 59 2 11 たとえば、「姦淫するな」と言われたかたは、また「殺すな」とも仰せになった。そこで、たとい姦淫はしなくても、人殺しをすれば、律法の違反者になったことになる。
30268 59 2 12 だから、自由の律法によってさばかるべき者らしく語り、かつ行いなさい。
30269 59 2 13 あわれみを行わなかった者に対しては、仮借のないさばきが下される。あわれみは、さばきにうち勝つ。
30270 59 2 14 わたしの兄弟たちよ。ある人が自分には信仰があると称していても、もし行いがなかったら、なんの役に立つか。その信仰は彼を救うことができるか。
30271 59 2 15 ある兄弟または姉妹が裸でいて、その日の食物にもこと欠いている場合、
30272 59 2 16 あなたがたのうち、だれかが、「安らかに行きなさい。暖まって、食べ飽きなさい」と言うだけで、そのからだに必要なものを何ひとつ与えなかったとしたら、なんの役に立つか。
30273 59 2 17 信仰も、それと同様に、行いを伴わなければ、それだけでは死んだものである。
30274 59 2 18 しかし、「ある人には信仰があり、またほかの人には行いがある」と言う者があろう。それなら、行いのないあなたの信仰なるものを見せてほしい。そうしたら、わたしの行いによって信仰を見せてあげよう。
30275 59 2 19 あなたは、神はただひとりであると信じているのか。それは結構である。悪霊どもでさえ、信じておののいている。
30276 59 2 20 ああ、愚かな人よ。行いを伴わない信仰のむなしいことを知りたいのか。
30277 59 2 21 わたしたちの父祖アブラハムは、その子イサクを祭壇にささげた時、行いによって義とされたのではなかったか。
30278 59 2 22 あなたが知っているとおり、彼においては、信仰が行いと共に働き、その行いによって信仰が全うされ、
30279 59 2 23 こうして、「アブラハムは神を信じた。それによって、彼は義と認められた」という聖書の言葉が成就し、そして、彼は「神の友」と唱えられたのである。
30280 59 2 24 これでわかるように、人が義とされるのは、行いによるのであって、信仰だけによるのではない。
30281 59 2 25 同じように、かの遊女ラハブでさえも、使者たちをもてなし、彼らを別な道から送り出した時、行いによって義とされたではないか。
30282 59 2 26 霊魂のないからだが死んだものであると同様に、行いのない信仰も死んだものなのである。
30283 59 3 1 わたしの兄弟たちよ。あなたがたのうち多くの者は、教師にならないがよい。わたしたち教師が、他の人たちよりも、もっときびしいさばきを受けることが、よくわかっているからである。
30284 59 3 2 わたしたちは皆、多くのあやまちを犯すものである。もし、言葉の上であやまちのない人があれば、そういう人は、全身をも制御することのできる完全な人である。
30285 59 3 3 馬を御するために、その口にくつわをはめるなら、その全身を引きまわすことができる。
30286 59 3 4 また船を見るがよい。船体が非常に大きく、また激しい風に吹きまくられても、ごく小さなかじ一つで、操縦者の思いのままに運転される。
30287 59 3 5 それと同じく、舌は小さな器官ではあるが、よく大言壮語する。見よ、ごく小さな火でも、非常に大きな森を燃やすではないか。
30288 59 3 6 舌は火である。不義の世界である。舌は、わたしたちの器官の一つとしてそなえられたものであるが、全身を汚し、生存の車輪を燃やし、自らは地獄の火で焼かれる。
30289 59 3 7 あらゆる種類の獣、鳥、這うもの、海の生物は、すべて人類に制せられるし、また制せられてきた。
30290 59 3 8 ところが、舌を制しうる人は、ひとりもいない。それは、制しにくい悪であって、死の毒に満ちている。
30291 59 3 9 わたしたちは、この舌で父なる主をさんびし、また、その同じ舌で、神にかたどって造られた人間をのろっている。
30292 59 3 10 同じ口から、さんびとのろいとが出て来る。わたしの兄弟たちよ。このような事は、あるべきでない。
30293 59 3 11 泉が、甘い水と苦い水とを、同じ穴からふき出すことがあろうか。
30294 59 3 12 わたしの兄弟たちよ。いちじくの木がオリブの実を結び、ぶどうの木がいちじくの実を結ぶことができようか。塩水も、甘い水を出すことはできない。
30295 59 3 13 あなたがたのうちで、知恵があり物わかりのよい人は、だれであるか。その人は、知恵にかなう柔和な行いをしていることを、よい生活によって示すがよい。
30296 59 3 14 しかし、もしあなたがたの心の中に、苦々しいねたみや党派心をいだいているのなら、誇り高ぶってはならない。また、真理にそむいて偽ってはならない。
30297 59 3 15 そのような知恵は、上から下ってきたものではなくて、地につくもの、肉に属するもの、悪魔的なものである。
30298 59 3 16 ねたみと党派心とのあるところには、混乱とあらゆる忌むべき行為とがある。
30299 59 3 17 しかし上からの知恵は、第一に清く、次に平和、寛容、温順であり、あわれみと良い実とに満ち、かたより見ず、偽りがない。
30300 59 3 18 義の実は、平和を造り出す人たちによって、平和のうちにまかれるものである。
30301 59 4 1 あなたがたの中の戦いや争いは、いったい、どこから起るのか。それはほかではない。あなたがたの肢体の中で相戦う欲情からではないか。
30302 59 4 2 あなたがたは、むさぼるが得られない。そこで人殺しをする。熱望するが手に入れることができない。そこで争い戦う。あなたがたは、求めないから得られないのだ。
30303 59 4 3 求めても与えられないのは、快楽のために使おうとして、悪い求め方をするからだ。
30304 59 4 4 不貞のやからよ。世を友とするのは、神への敵対であることを、知らないか。おおよそ世の友となろうと思う者は、自らを神の敵とするのである。
30305 59 4 5 それとも、「神は、わたしたちの内に住まわせた霊を、ねたむほどに愛しておられる」と聖書に書いてあるのは、むなしい言葉だと思うのか。
30306 59 4 6 しかし神は、いや増しに恵みを賜う。であるから、「神は高ぶる者をしりぞけ、へりくだる者に恵みを賜う」とある。
30307 59 4 7 そういうわけだから、神に従いなさい。そして、悪魔に立ちむかいなさい。そうすれば、彼はあなたがたから逃げ去るであろう。
30308 59 4 8 神に近づきなさい。そうすれば、神はあなたがたに近づいて下さるであろう。罪人どもよ、手をきよめよ。二心の者どもよ、心を清くせよ。
30309 59 4 9 苦しめ、悲しめ、泣け。あなたがたの笑いを悲しみに、喜びを憂いに変えよ。
30310 59 4 10 主のみまえにへりくだれ。そうすれば、主は、あなたがたを高くして下さるであろう。
30311 59 4 11 兄弟たちよ。互に悪口を言い合ってはならない。兄弟の悪口を言ったり、自分の兄弟をさばいたりする者は、律法をそしり、律法をさばくやからである。もしあなたが律法をさばくなら、律法の実行者ではなくて、その審判者なのである。
30312 59 4 12 しかし、立法者であり審判者であるかたは、ただひとりであって、救うことも滅ぼすこともできるのである。しかるに、隣り人をさばくあなたは、いったい、何者であるか。
30313 59 4 13 よく聞きなさい。「きょうか、あす、これこれの町へ行き、そこに一か年滞在し、商売をして一もうけしよう」と言う者たちよ。
30314 59 4 14 あなたがたは、あすのこともわからぬ身なのだ。あなたがたのいのちは、どんなものであるか。あなたがたは、しばしの間あらわれて、たちまち消え行く霧にすぎない。
30315 59 4 15 むしろ、あなたがたは「主のみこころであれば、わたしは生きながらえもし、あの事この事もしよう」と言うべきである。
30316 59 4 16 ところが、あなたがたは誇り高ぶっている。このような高慢は、すべて悪である。
30317 59 4 17 人が、なすべき善を知りながら行わなければ、それは彼にとって罪である。
30318 59 5 1 富んでいる人たちよ。よく聞きなさい。あなたがたは、自分の身に降りかかろうとしているわざわいを思って、泣き叫ぶがよい。
30319 59 5 2 あなたがたの富は朽ち果て、着物はむしばまれ、
30320 59 5 3 金銀はさびている。そして、そのさびの毒は、あなたがたの罪を責め、あなたがたの肉を火のように食いつくすであろう。あなたがたは、終りの時にいるのに、なお宝をたくわえている。
30321 59 5 4 見よ、あなたがたが労働者たちに畑の刈入れをさせながら、支払わずにいる賃銀が、叫んでいる。そして、刈入れをした人たちの叫び声が、すでに万軍の主の耳に達している。
30322 59 5 5 あなたがたは、地上でおごり暮し、快楽にふけり、「ほふらるる日」のために、おのが心を肥やしている。
30323 59 5 6 そして、義人を罪に定め、これを殺した。しかも彼は、あなたがたに抵抗しない。
30324 59 5 7 だから、兄弟たちよ。主の来臨の時まで耐え忍びなさい。見よ、農夫は、地の尊い実りを、前の雨と後の雨とがあるまで、耐え忍んで待っている。
30325 59 5 8 あなたがたも、主の来臨が近づいているから、耐え忍びなさい。心を強くしていなさい。
30326 59 5 9 兄弟たちよ。互に不平を言い合ってはならない。さばきを受けるかも知れないから。見よ、さばき主が、すでに戸口に立っておられる。
30327 59 5 10 兄弟たちよ。苦しみを耐え忍ぶことについては、主の御名によって語った預言者たちを模範にするがよい。
30328 59 5 11 忍び抜いた人たちはさいわいであると、わたしたちは思う。あなたがたは、ヨブの忍耐のことを聞いている。また、主が彼になさったことの結末を見て、主がいかに慈愛とあわれみとに富んだかたであるかが、わかるはずである。
30329 59 5 12 さて、わたしの兄弟たちよ。何はともあれ、誓いをしてはならない。天をさしても、地をさしても、あるいは、そのほかのどんな誓いによっても、いっさい誓ってはならない。むしろ、「しかり」を「しかり」とし、「否」を「否」としなさい。そうしないと、あなたがたは、さばきを受けることになる。
30330 59 5 13 あなたがたの中に、苦しんでいる者があるか。その人は、祈るがよい。喜んでいる者があるか。その人は、さんびするがよい。
30331 59 5 14 あなたがたの中に、病んでいる者があるか。その人は、教会の長老たちを招き、主の御名によって、オリブ油を注いで祈ってもらうがよい。
30332 59 5 15 信仰による祈は、病んでいる人を救い、そして、主はその人を立ちあがらせて下さる。かつ、その人が罪を犯していたなら、それもゆるされる。
30333 59 5 16 だから、互に罪を告白し合い、また、いやされるようにお互のために祈りなさい。義人の祈は、大いに力があり、効果のあるものである。
30334 59 5 17 エリヤは、わたしたちと同じ人間であったが、雨が降らないようにと祈をささげたところ、三年六か月のあいだ、地上に雨が降らなかった。
30335 59 5 18 それから、ふたたび祈ったところ、天は雨を降らせ、地はその実をみのらせた。
30336 59 5 19 わたしの兄弟たちよ。あなたがたのうち、真理の道から踏み迷う者があり、だれかが彼を引きもどすなら、
30337 59 5 20 かように罪人を迷いの道から引きもどす人は、そのたましいを死から救い出し、かつ、多くの罪をおおうものであることを、知るべきである。
30338 60 1 1 イエス・キリストの使徒ペテロから、ポント、ガラテヤ、カパドキヤ、アジヤおよびビテニヤに離散し寄留している人たち、
30339 60 1 2 すなわち、イエス・キリストに従い、かつ、その血のそそぎを受けるために、父なる神の予知されたところによって選ばれ、御霊のきよめにあずかっている人たちへ。
30340 60 1 3 ほむべきかな、わたしたちの主イエス・キリストの父なる神。神は、その豊かなあわれみにより、イエス・キリストを死人の中からよみがえらせ、それにより、わたしたちを新たに生れさせて生ける望みをいだかせ、
30341 60 1 4 あなたがたのために天にたくわえてある、朽ちず汚れず、しぼむことのない資産を受け継ぐ者として下さったのである。
30342 60 1 5 あなたがたは、終りの時に啓示さるべき救にあずかるために、信仰により神の御力に守られているのである。
30343 60 1 6 そのことを思って、今しばらくのあいだは、さまざまな試錬で悩まねばならないかも知れないが、あなたがたは大いに喜んでいる。
30344 60 1 7 こうして、あなたがたの信仰はためされて、火で精錬されても朽ちる外はない金よりもはるかに尊いことが明らかにされ、イエス・キリストの現れるとき、さんびと栄光とほまれとに変るであろう。
30345 60 1 8 あなたがたは、イエス・キリストを見たことはないが、彼を愛している。現在、見てはいないけれども、信じて、言葉につくせない、輝きにみちた喜びにあふれている。
30346 60 1 9 それは、信仰の結果なるたましいの救を得ているからである。
30347 60 1 10 この救については、あなたがたに対する恵みのことを預言した預言者たちも、たずね求め、かつ、つぶさに調べた。
30348 60 1 11 彼らは、自分たちのうちにいますキリストの霊が、キリストの苦難とそれに続く栄光とを、あらかじめあかしした時、それは、いつの時、どんな場合をさしたのかを、調べたのである。
30349 60 1 12 そして、それらについて調べたのは、自分たちのためではなくて、あなたがたのための奉仕であることを示された。それらの事は、天からつかわされた聖霊に感じて福音をあなたがたに宣べ伝えた人々によって、今や、あなたがたに告げ知らされたのであるが、これは、御使たちも、うかがい見たいと願っている事である。
30350 60 1 13 それだから、心の腰に帯を締め、身を慎み、イエス・キリストの現れる時に与えられる恵みを、いささかも疑わずに待ち望んでいなさい。
30351 60 1 14 従順な子供として、無知であった時代の欲情に従わず、
30352 60 1 15 むしろ、あなたがたを召して下さった聖なるかたにならって、あなたがた自身も、あらゆる行いにおいて聖なる者となりなさい。
30353 60 1 16 聖書に、「わたしが聖なる者であるから、あなたがたも聖なる者になるべきである」と書いてあるからである。
30354 60 1 17 あなたがたは、人をそれぞれのしわざに応じて、公平にさばくかたを、父と呼んでいるからには、地上に宿っている間を、おそれの心をもって過ごすべきである。
30355 60 1 18 あなたがたのよく知っているとおり、あなたがたが先祖伝来の空疎な生活からあがない出されたのは、銀や金のような朽ちる物によったのではなく、
30356 60 1 19 きずも、しみもない小羊のようなキリストの尊い血によったのである。
30357 60 1 20 キリストは、天地が造られる前から、あらかじめ知られていたのであるが、この終りの時に至って、あなたがたのために現れたのである。
30358 60 1 21 あなたがたは、このキリストによって、彼を死人の中からよみがえらせて、栄光をお与えになった神を信じる者となったのであり、したがって、あなたがたの信仰と望みとは、神にかかっているのである。
30359 60 1 22 あなたがたは、真理に従うことによって、たましいをきよめ、偽りのない兄弟愛をいだくに至ったのであるから、互に心から熱く愛し合いなさい。
30360 60 1 23 あなたがたが新たに生れたのは、朽ちる種からではなく、朽ちない種から、すなわち、神の変ることのない生ける御言によったのである。
30361 60 1 24 「人はみな草のごとく、その栄華はみな草の花に似ている。草は枯れ、花は散る。しかし、主の言葉は、とこしえに残る」。
30362 60 1 25 これが、あなたがたに宣べ伝えられた御言葉である。
30363 60 2 1 だから、あらゆる悪意、あらゆる偽り、偽善、そねみ、いっさいの悪口を捨てて、
30364 60 2 2 今生れたばかりの乳飲み子のように、混じりけのない霊の乳を慕い求めなさい。それによっておい育ち、救に入るようになるためである。
30365 60 2 3 あなたがたは、主が恵み深いかたであることを、すでに味わい知ったはずである。
30366 60 2 4 主は、人には捨てられたが、神にとっては選ばれた尊い生ける石である。
30367 60 2 5 この主のみもとにきて、あなたがたも、それぞれ生ける石となって、霊の家に築き上げられ、聖なる祭司となって、イエス・キリストにより、神によろこばれる霊のいけにえを、ささげなさい。
30368 60 2 6 聖書にこう書いてある、「見よ、わたしはシオンに、選ばれた尊い石、隅のかしら石を置く。それにより頼む者は、決して、失望に終ることがない」。
30369 60 2 7 この石は、より頼んでいるあなたがたには尊いものであるが、不信仰な人々には「家造りらの捨てた石で、隅のかしら石となったもの」、
30370 60 2 8 また「つまずきの石、妨げの岩」である。しかし、彼らがつまずくのは、御言に従わないからであって、彼らは、実は、そうなるように定められていたのである。
30371 60 2 9 しかし、あなたがたは、選ばれた種族、祭司の国、聖なる国民、神につける民である。それによって、暗やみから驚くべきみ光に招き入れて下さったかたのみわざを、あなたがたが語り伝えるためである。
30372 60 2 10 あなたがたは、以前は神の民でなかったが、いまは神の民であり、以前は、あわれみを受けたことのない者であったが、いまは、あわれみを受けた者となっている。
30373 60 2 11 愛する者たちよ。あなたがたに勧める。あなたがたは、この世の旅人であり寄留者であるから、たましいに戦いをいどむ肉の欲を避けなさい。
30374 60 2 12 異邦人の中にあって、りっぱな行いをしなさい。そうすれば、彼らは、あなたがたを悪人呼ばわりしていても、あなたがたのりっぱなわざを見て、かえって、おとずれの日に神をあがめるようになろう。
30375 60 2 13 あなたがたは、すべて人の立てた制度に、主のゆえに従いなさい。主権者としての王であろうと、
30376 60 2 14 あるいは、悪を行う者を罰し善を行う者を賞するために、王からつかわされた長官であろうと、これに従いなさい。
30377 60 2 15 善を行うことによって、愚かな人々の無知な発言を封じるのは、神の御旨なのである。
30378 60 2 16 自由人にふさわしく行動しなさい。ただし、自由をば悪を行う口実として用いず、神の僕にふさわしく行動しなさい。
30379 60 2 17 すべての人をうやまい、兄弟たちを愛し、神をおそれ、王を尊びなさい。
30380 60 2 18 僕たる者よ。心からのおそれをもって、主人に仕えなさい。善良で寛容な主人だけにでなく、気むずかしい主人にも、そうしなさい。
30381 60 2 19 もしだれかが、不当な苦しみを受けても、神を仰いでその苦痛を耐え忍ぶなら、それはよみせられることである。
30382 60 2 20 悪いことをして打ちたたかれ、それを忍んだとしても、なんの手柄になるのか。しかし善を行って苦しみを受け、しかもそれを耐え忍んでいるとすれば、これこそ神によみせられることである。
30383 60 2 21 あなたがたは、実に、そうするようにと召されたのである。キリストも、あなたがたのために苦しみを受け、御足の跡を踏み従うようにと、模範を残されたのである。
30384 60 2 22 キリストは罪を犯さず、その口には偽りがなかった。
30385 60 2 23 ののしられても、ののしりかえさず、苦しめられても、おびやかすことをせず、正しいさばきをするかたに、いっさいをゆだねておられた。
30386 60 2 24 さらに、わたしたちが罪に死に、義に生きるために、十字架にかかって、わたしたちの罪をご自分の身に負われた。その傷によって、あなたがたは、いやされたのである。
30387 60 2 25 あなたがたは、羊のようにさ迷っていたが、今は、たましいの牧者であり監督であるかたのもとに、たち帰ったのである。
30388 60 3 1 同じように、妻たる者よ。夫に仕えなさい。そうすれば、たとい御言に従わない夫であっても、
30389 60 3 2 あなたがたのうやうやしく清い行いを見て、その妻の無言の行いによって、救に入れられるようになるであろう。
30390 60 3 3 あなたがたは、髪を編み、金の飾りをつけ、服装をととのえるような外面の飾りではなく、
30391 60 3 4 かくれた内なる人、柔和で、しとやかな霊という朽ちることのない飾りを、身につけるべきである。これこそ、神のみまえに、きわめて尊いものである。
30392 60 3 5 むかし、神を仰ぎ望んでいた聖なる女たちも、このように身を飾って、その夫に仕えたのである。
30393 60 3 6 たとえば、サラはアブラハムに仕えて、彼を主と呼んだ。あなたがたも、何事にもおびえ臆することなく善を行えば、サラの娘たちとなるのである。
30394 60 3 7 夫たる者よ。あなたがたも同じように、女は自分よりも弱い器であることを認めて、知識に従って妻と共に住み、いのちの恵みを共どもに受け継ぐ者として、尊びなさい。それは、あなたがたの祈が妨げられないためである。
30395 60 3 8 最後に言う。あなたがたは皆、心をひとつにし、同情し合い、兄弟愛をもち、あわれみ深くあり、謙虚でありなさい。
30396 60 3 9 悪をもって悪に報いず、悪口をもって悪口に報いず、かえって、祝福をもって報いなさい。あなたがたが召されたのは、祝福を受け継ぐためなのである。
30397 60 3 10 「いのちを愛し、さいわいな日々を過ごそうと願う人は、舌を制して悪を言わず、くちびるを閉じて偽りを語らず、
30398 60 3 11 悪を避けて善を行い、平和を求めて、これを追え。
30399 60 3 12 主の目は義人たちに注がれ、主の耳は彼らの祈にかたむく。しかし主の御顔は、悪を行う者に対して向かう」。
30400 60 3 13 そこで、もしあなたがたが善に熱心であれば、だれが、あなたがたに危害を加えようか。
30401 60 3 14 しかし、万一義のために苦しむようなことがあっても、あなたがたはさいわいである。彼らを恐れたり、心を乱したりしてはならない。
30402 60 3 15 ただ、心の中でキリストを主とあがめなさい。また、あなたがたのうちにある望みについて説明を求める人には、いつでも弁明のできる用意をしていなさい。
30403 60 3 16 しかし、やさしく、慎み深く、明らかな良心をもって、弁明しなさい。そうすれば、あなたがたがキリストにあって営んでいる良い生活をそしる人々も、そのようにののしったことを恥じいるであろう。
30404 60 3 17 善をおこなって苦しむことは――それが神の御旨であれば――悪をおこなって苦しむよりも、まさっている。
30405 60 3 18 キリストも、あなたがたを神に近づけようとして、自らは義なるかたであるのに、不義なる人々のために、ひとたび罪のゆえに死なれた。ただし、肉においては殺されたが、霊においては生かされたのである。
30406 60 3 19 こうして、彼は獄に捕われている霊どものところに下って行き、宣べ伝えることをされた。
30407 60 3 20 これらの霊というのは、むかしノアの箱舟が造られていた間、神が寛容をもって待っておられたのに従わなかった者どものことである。その箱舟に乗り込み、水を経て救われたのは、わずかに八名だけであった。
30408 60 3 21 この水はバプテスマを象徴するものであって、今やあなたがたをも救うのである。それは、イエス・キリストの復活によるのであって、からだの汚れを除くことではなく、明らかな良心を神に願い求めることである。
30409 60 3 22 キリストは天に上って神の右に座し、天使たちともろもろの権威、権力を従えておられるのである。
30410 60 4 1 このように、キリストは肉において苦しまれたのであるから、あなたがたも同じ覚悟で心の武装をしなさい。肉において苦しんだ人は、それによって罪からのがれたのである。
30411 60 4 2 それは、肉における残りの生涯を、もはや人間の欲情によらず、神の御旨によって過ごすためである。
30412 60 4 3 過ぎ去った時代には、あなたがたは、異邦人の好みにまかせて、好色、欲情、酔酒、宴楽、暴飲、気ままな偶像礼拝などにふけってきたが、もうそれで十分であろう。
30413 60 4 4 今はあなたがたが、そうした度を過ごした乱行に加わらないので、彼らは驚きあやしみ、かつ、ののしっている。
30414 60 4 5 彼らは、やがて生ける者と死ねる者とをさばくかたに、申し開きをしなくてはならない。
30415 60 4 6 死人にさえ福音が宣べ伝えられたのは、彼らは肉においては人間としてさばきを受けるが、霊においては神に従って生きるようになるためである。
30416 60 4 7 万物の終りが近づいている。だから、心を確かにし、身を慎んで、努めて祈りなさい。
30417 60 4 8 何よりもまず、互の愛を熱く保ちなさい。愛は多くの罪をおおうものである。
30418 60 4 9 不平を言わずに、互にもてなし合いなさい。
30419 60 4 10 あなたがたは、それぞれ賜物をいただいているのだから、神のさまざまな恵みの良き管理人として、それをお互のために役立てるべきである。
30420 60 4 11 語る者は、神の御言を語る者にふさわしく語り、奉仕する者は、神から賜わる力による者にふさわしく奉仕すべきである。それは、すべてのことにおいてイエス・キリストによって、神があがめられるためである。栄光と力とが世々限りなく、彼にあるように、アァメン。
30421 60 4 12 愛する者たちよ。あなたがたを試みるために降りかかって来る火のような試錬を、何か思いがけないことが起ったかのように驚きあやしむことなく、
30422 60 4 13 むしろ、キリストの苦しみにあずかればあずかるほど、喜ぶがよい。それは、キリストの栄光が現れる際に、よろこびにあふれるためである。
30423 60 4 14 キリストの名のためにそしられるなら、あなたがたはさいわいである。その時には、栄光の霊、神の霊が、あなたがたに宿るからである。
30424 60 4 15 あなたがたのうち、だれも、人殺し、盗人、悪を行う者、あるいは、他人に干渉する者として苦しみに会うことのないようにしなさい。
30425 60 4 16 しかし、クリスチャンとして苦しみを受けるのであれば、恥じることはない。かえって、この名によって神をあがめなさい。
30426 60 4 17 さばきが神の家から始められる時がきた。それが、わたしたちからまず始められるとしたら、神の福音に従わない人々の行く末は、どんなであろうか。
30427 60 4 18 また義人でさえ、かろうじて救われるのだとすれば、不信なる者や罪人は、どうなるであろうか。
30428 60 4 19 だから、神の御旨に従って苦しみを受ける人々は、善をおこない、そして、真実であられる創造者に、自分のたましいをゆだねるがよい。
30429 60 5 1 そこで、あなたがたのうちの長老たちに勧める。わたしも、長老のひとりで、キリストの苦難についての証人であり、また、やがて現れようとする栄光にあずかる者である。
30430 60 5 2 あなたがたにゆだねられている神の羊の群れを牧しなさい。しいられてするのではなく、神に従って自ら進んでなし、恥ずべき利得のためではなく、本心から、それをしなさい。
30431 60 5 3 また、ゆだねられた者たちの上に権力をふるうことをしないで、むしろ、群れの模範となるべきである。
30432 60 5 4 そうすれば、大牧者が現れる時には、しぼむことのない栄光の冠を受けるであろう。
30433 60 5 5 同じように、若い人たちよ。長老たちに従いなさい。また、みな互に謙遜を身につけなさい。神は高ぶる者をしりぞけ、へりくだる者に恵みを賜うからである。
30434 60 5 6 だから、あなたがたは、神の力強い御手の下に、自らを低くしなさい。時が来れば神はあなたがたを高くして下さるであろう。
30435 60 5 7 神はあなたがたをかえりみていて下さるのであるから、自分の思いわずらいを、いっさい神にゆだねるがよい。
30436 60 5 8 身を慎み、目をさましていなさい。あなたがたの敵である悪魔が、ほえたけるししのように、食いつくすべきものを求めて歩き回っている。
30437 60 5 9 この悪魔にむかい、信仰にかたく立って、抵抗しなさい。あなたがたのよく知っているとおり、全世界にいるあなたがたの兄弟たちも、同じような苦しみの数々に会っているのである。
30438 60 5 10 あなたがたをキリストにある永遠の栄光に招き入れて下さったあふるる恵みの神は、しばらくの苦しみの後、あなたがたをいやし、強め、力づけ、不動のものとして下さるであろう。
30439 60 5 11 どうか、力が世々限りなく、神にあるように、アァメン。
30440 60 5 12 わたしは、忠実な兄弟として信頼しているシルワノの手によって、この短い手紙をあなたがたにおくり、勧めをし、また、これが神のまことの恵みであることをあかしした。この恵みのうちに、かたく立っていなさい。
30441 60 5 13 あなたがたと共に選ばれてバビロンにある教会、ならびに、わたしの子マルコから、あなたがたによろしく。
30442 60 5 14 愛の接吻をもって互にあいさつをかわしなさい。
30443 61 1 1 イエス・キリストの僕また使徒であるシメオン・ペテロから、わたしたちの神と救主イエス・キリストとの義によって、わたしたちと同じ尊い信仰を授かった人々へ。
30444 61 1 2 神とわたしたちの主イエスとを知ることによって、恵みと平安とが、あなたがたに豊かに加わるように。
30445 61 1 3 いのちと信心とにかかわるすべてのことは、主イエスの神聖な力によって、わたしたちに与えられている。それは、ご自身の栄光と徳とによって、わたしたちを召されたかたを知る知識によるのである。
30446 61 1 4 また、それらのものによって、尊く、大いなる約束が、わたしたちに与えられている。それは、あなたがたが、世にある欲のために滅びることを免れ、神の性質にあずかる者となるためである。
30447 61 1 5 それだから、あなたがたは、力の限りをつくして、あなたがたの信仰に徳を加え、徳に知識を、
30448 61 1 6 知識に節制を、節制に忍耐を、忍耐に信心を、
30449 61 1 7 信心に兄弟愛を、兄弟愛に愛を加えなさい。
30450 61 1 8 これらのものがあなたがたに備わって、いよいよ豊かになるならば、わたしたちの主イエス・キリストを知る知識について、あなたがたは、怠る者、実を結ばない者となることはないであろう。
30451 61 1 9 これらのものを備えていない者は、盲人であり、近視の者であり、自分の以前の罪がきよめられたことを忘れている者である。
30452 61 1 10 兄弟たちよ。それだから、ますます励んで、あなたがたの受けた召しと選びとを、確かなものにしなさい。そうすれば、決してあやまちに陥ることはない。
30453 61 1 11 こうして、わたしたちの主また救主イエス・キリストの永遠の国に入る恵みが、あなたがたに豊かに与えられるからである。
30454 61 1 12 それだから、あなたがたは既にこれらのことを知っており、また、いま持っている真理に堅く立ってはいるが、わたしは、これらのことをいつも、あなたがたに思い起させたいのである。
30455 61 1 13 わたしがこの幕屋にいる間、あなたがたに思い起させて、奮い立たせることが適当と思う。
30456 61 1 14 それは、わたしたちの主イエス・キリストもわたしに示して下さったように、わたしのこの幕屋を脱ぎ去る時が間近であることを知っているからである。
30457 61 1 15 わたしが世を去った後にも、これらのことを、あなたがたにいつも思い出させるように努めよう。
30458 61 1 16 わたしたちの主イエス・キリストの力と来臨とを、あなたがたに知らせた時、わたしたちは、巧みな作り話を用いることはしなかった。わたしたちが、そのご威光の目撃者なのだからである。
30459 61 1 17 イエスは父なる神からほまれと栄光とをお受けになったが、その時、おごそかな栄光の中から次のようなみ声がかかったのである、「これはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である」。
30460 61 1 18 わたしたちもイエスと共に聖なる山にいて、天から出たこの声を聞いたのである。
30461 61 1 19 こうして、預言の言葉は、わたしたちにいっそう確実なものになった。あなたがたも、夜が明け、明星がのぼって、あなたがたの心の中を照すまで、この預言の言葉を暗やみに輝くともしびとして、それに目をとめているがよい。
30462 61 1 20 聖書の預言はすべて、自分勝手に解釈すべきでないことを、まず第一に知るべきである。
30463 61 1 21 なぜなら、預言は決して人間の意志から出たものではなく、人々が聖霊に感じ、神によって語ったものだからである。
30464 61 2 1 しかし、民の間に、にせ預言者が起ったことがあるが、それと同じく、あなたがたの間にも、にせ教師が現れるであろう。彼らは、滅びに至らせる異端をひそかに持ち込み、自分たちをあがなって下さった主を否定して、すみやかな滅亡を自分の身に招いている。
30465 61 2 2 また、大ぜいの人が彼らの放縦を見習い、そのために、真理の道がそしりを受けるに至るのである。
30466 61 2 3 彼らは、貪欲のために、甘言をもってあなたがたをあざむき、利をむさぼるであろう。彼らに対するさばきは昔から猶予なく行われ、彼らの滅亡も滞ることはない。
30467 61 2 4 神は、罪を犯した御使たちを許しておかないで、彼らを下界におとしいれ、さばきの時まで暗やみの穴に閉じ込めておかれた。
30468 61 2 5 また、古い世界をそのままにしておかないで、その不信仰な世界に洪水をきたらせ、ただ、義の宣伝者ノアたち八人の者だけを保護された。
30469 61 2 6 また、ソドムとゴモラの町々を灰に帰せしめて破滅に処し、不信仰に走ろうとする人々の見せしめとし、
30470 61 2 7 ただ、非道の者どもの放縦な行いによってなやまされていた義人ロトだけを救い出された。
30471 61 2 8 (この義人は、彼らの間に住み、彼らの不法の行いを日々見聞きして、その正しい心を痛めていたのである。)
30472 61 2 9 こういうわけで、主は、信心深い者を試錬の中から救い出し、また、不義な者ども、
30473 61 2 10 特に、汚れた情欲におぼれ肉にしたがって歩み、また、権威ある者を軽んじる人々を罰して、さばきの日まで閉じ込めておくべきことを、よくご存じなのである。こういう人々は、大胆不敵なわがまま者であって、栄光ある者たちをそしってはばかるところがない。
30474 61 2 11 しかし、御使たちは、勢いにおいても力においても、彼らにまさっているにかかわらず、彼らを主のみまえに訴えそしることはしない。
30475 61 2 12 これらの者は、捕えられ、ほふられるために生れてきた、分別のない動物のようなもので、自分が知りもしないことをそしり、その不義の報いとして罰を受け、必ず滅ぼされてしまうのである。
30476 61 2 13 彼らは、真昼でさえ酒食を楽しみ、あなたがたと宴会に同席して、だましごとにふけっている。彼らは、しみであり、きずである。
30477 61 2 14 その目は淫行を追い、罪を犯して飽くことを知らない。彼らは心の定まらない者を誘惑し、その心は貪欲に慣れ、のろいの子となっている。
30478 61 2 15 彼らは正しい道からはずれて迷いに陥り、ベオルの子バラムの道に従った。バラムは不義の実を愛し、
30479 61 2 16 そのために、自分のあやまちに対するとがめを受けた。ものを言わないろばが、人間の声でものを言い、この預言者の狂気じみたふるまいをはばんだのである。
30480 61 2 17 この人々は、いわば、水のない井戸、突風に吹きはらわれる霧であって、彼らには暗やみが用意されている。
30481 61 2 18 彼らはむなしい誇を語り、迷いの中に生きている人々の間から、かろうじてのがれてきた者たちを、肉欲と色情とによって誘惑し、
30482 61 2 19 この人々に自由を与えると約束しながら、彼ら自身は滅亡の奴隷になっている。おおよそ、人は征服者の奴隷となるものである。
30483 61 2 20 彼らが、主また救主なるイエス・キリストを知ることにより、この世の汚れからのがれた後、またそれに巻き込まれて征服されるならば、彼らの後の状態は初めよりも、もっと悪くなる。
30484 61 2 21 義の道を心得ていながら、自分に授けられた聖なる戒めにそむくよりは、むしろ義の道を知らなかった方がよい。
30485 61 2 22 ことわざに、「犬は自分の吐いた物に帰り、豚は洗われても、また、どろの中にころがって行く」とあるが、彼らの身に起ったことは、そのとおりである。
30486 61 3 1 愛する者たちよ。わたしは今この第二の手紙をあなたがたに書きおくり、これらの手紙によって記憶を呼び起し、あなたがたの純真な心を奮い立たせようとした。
30487 61 3 2 それは、聖なる預言者たちがあらかじめ語った言葉と、あなたがたの使徒たちが伝えた主なる救主の戒めとを、思い出させるためである。
30488 61 3 3 まず次のことを知るべきである。終りの時にあざける者たちが、あざけりながら出てきて、自分の欲情のままに生活し、
30489 61 3 4 「主の来臨の約束はどうなったのか。先祖たちが眠りについてから、すべてのものは天地創造の初めからそのままであって、変ってはいない」と言うであろう。
30490 61 3 5 すなわち、彼らはこのことを認めようとはしない。古い昔に天が存在し、地は神の言によって、水がもとになり、また、水によって成ったのであるが、
30491 61 3 6 その時の世界は、御言により水でおおわれて滅んでしまった。
30492 61 3 7 しかし、今の天と地とは、同じ御言によって保存され、不信仰な人々がさばかれ、滅ぼさるべき日に火で焼かれる時まで、そのまま保たれているのである。
30493 61 3 8 愛する者たちよ。この一事を忘れてはならない。主にあっては、一日は千年のようであり、千年は一日のようである。
30494 61 3 9 ある人々がおそいと思っているように、主は約束の実行をおそくしておられるのではない。ただ、ひとりも滅びることがなく、すべての者が悔改めに至ることを望み、あなたがたに対してながく忍耐しておられるのである。
30495 61 3 10 しかし、主の日は盗人のように襲って来る。その日には、天は大音響をたてて消え去り、天体は焼けてくずれ、地とその上に造り出されたものも、みな焼きつくされるであろう。
30496 61 3 11 このように、これらはみなくずれ落ちていくものであるから、神の日の到来を熱心に待ち望んでいるあなたがたは、
30497 61 3 12 極力、きよく信心深い行いをしていなければならない。その日には、天は燃えくずれ、天体は焼けうせてしまう。
30498 61 3 13 しかし、わたしたちは、神の約束に従って、義の住む新しい天と新しい地とを待ち望んでいる。
30499 61 3 14 愛する者たちよ。それだから、この日を待っているあなたがたは、しみもなくきずもなく、安らかな心で、神のみまえに出られるように励みなさい。
30500 61 3 15 また、わたしたちの主の寛容は救のためであると思いなさい。このことは、わたしたちの愛する兄弟パウロが、彼に与えられた知恵によって、あなたがたに書きおくったとおりである。
30501 61 3 16 彼は、どの手紙にもこれらのことを述べている。その手紙の中には、ところどころ、わかりにくい箇所もあって、無学で心の定まらない者たちは、ほかの聖書についてもしているように、無理な解釈をほどこして、自分の滅亡を招いている。
30502 61 3 17 愛する者たちよ。それだから、あなたがたはかねてから心がけているように、非道の者の惑わしに誘い込まれて、あなたがた自身の確信を失うことのないように心がけなさい。
30503 61 3 18 そして、わたしたちの主また救主イエス・キリストの恵みと知識とにおいて、ますます豊かになりなさい。栄光が、今も、また永遠の日に至るまでも、主にあるように、アァメン。
30504 62 1 1 初めからあったもの、わたしたちが聞いたもの、目で見たもの、よく見て手でさわったもの、すなわち、いのちの言について――
30505 62 1 2 このいのちが現れたので、この永遠のいのちをわたしたちは見て、そのあかしをし、かつ、あなたがたに告げ知らせるのである。この永遠のいのちは、父と共にいましたが、今やわたしたちに現れたものである――
30506 62 1 3 すなわち、わたしたちが見たもの、聞いたものを、あなたがたにも告げ知らせる。それは、あなたがたも、わたしたちの交わりにあずかるようになるためである。わたしたちの交わりとは、父ならびに御子イエス・キリストとの交わりのことである。
30507 62 1 4 これを書きおくるのは、わたしたちの喜びが満ちあふれるためである。
30508 62 1 5 わたしたちがイエスから聞いて、あなたがたに伝えるおとずれは、こうである。神は光であって、神には少しの暗いところもない。
30509 62 1 6 神と交わりをしていると言いながら、もし、やみの中を歩いているなら、わたしたちは偽っているのであって、真理を行っているのではない。
30510 62 1 7 しかし、神が光の中にいますように、わたしたちも光の中を歩くならば、わたしたちは互に交わりをもち、そして、御子イエスの血が、すべての罪からわたしたちをきよめるのである。
30511 62 1 8 もし、罪がないと言うなら、それは自分を欺くことであって、真理はわたしたちのうちにない。
30512 62 1 9 もし、わたしたちが自分の罪を告白するならば、神は真実で正しいかたであるから、その罪をゆるし、すべての不義からわたしたちをきよめて下さる。
30513 62 1 10 もし、罪を犯したことがないと言うなら、それは神を偽り者とするのであって、神の言はわたしたちのうちにない。
30514 62 2 1 わたしの子たちよ。これらのことを書きおくるのは、あなたがたが罪を犯さないようになるためである。もし、罪を犯す者があれば、父のみもとには、わたしたちのために助け主、すなわち、義なるイエス・キリストがおられる。
30515 62 2 2 彼は、わたしたちの罪のための、あがないの供え物である。ただ、わたしたちの罪のためばかりではなく、全世界の罪のためである。
30516 62 2 3 もし、わたしたちが彼の戒めを守るならば、それによって彼を知っていることを悟るのである。
30517 62 2 4 「彼を知っている」と言いながら、その戒めを守らない者は、偽り者であって、真理はその人のうちにない。
30518 62 2 5 しかし、彼の御言を守る者があれば、その人のうちに、神の愛が真に全うされるのである。それによって、わたしたちが彼にあることを知るのである。
30519 62 2 6 「彼におる」と言う者は、彼が歩かれたように、その人自身も歩くべきである。
30520 62 2 7 愛する者たちよ。わたしがあなたがたに書きおくるのは、新しい戒めではなく、あなたがたが初めから受けていた古い戒めである。その古い戒めとは、あなたがたがすでに聞いた御言である。
30521 62 2 8 しかも、新しい戒めを、あなたがたに書きおくるのである。そして、それは、彼にとってもあなたがたにとっても、真理なのである。なぜなら、やみは過ぎ去り、まことの光がすでに輝いているからである。
30522 62 2 9 「光の中にいる」と言いながら、その兄弟を憎む者は、今なお、やみの中にいるのである。
30523 62 2 10 兄弟を愛する者は、光におるのであって、つまずくことはない。
30524 62 2 11 兄弟を憎む者は、やみの中におり、やみの中を歩くのであって、自分ではどこへ行くのかわからない。やみが彼の目を見えなくしたからである。
30525 62 2 12 子たちよ。あなたがたにこれを書きおくるのは、御名のゆえに、あなたがたの多くの罪がゆるされたからである。
30526 62 2 13 父たちよ。あなたがたに書きおくるのは、あなたがたが、初めからいますかたを知ったからである。若者たちよ。あなたがたに書きおくるのは、あなたがたが、悪しき者にうち勝ったからである。
30527 62 2 14 子供たちよ。あなたがたに書きおくったのは、あなたがたが父を知ったからである。父たちよ。あなたがたに書きおくったのは、あなたがたが、初めからいますかたを知ったからである。若者たちよ。あなたがたに書きおくったのは、あなたがたが強い者であり、神の言があなたがたに宿り、そして、あなたがたが悪しき者にうち勝ったからである。
30528 62 2 15 世と世にあるものとを、愛してはいけない。もし、世を愛する者があれば、父の愛は彼のうちにない。
30529 62 2 16 すべて世にあるもの、すなわち、肉の欲、目の欲、持ち物の誇は、父から出たものではなく、世から出たものである。
30530 62 2 17 世と世の欲とは過ぎ去る。しかし、神の御旨を行う者は、永遠にながらえる。
30531 62 2 18 子供たちよ。今は終りの時である。あなたがたがかねて反キリストが来ると聞いていたように、今や多くの反キリストが現れてきた。それによって今が終りの時であることを知る。
30532 62 2 19 彼らはわたしたちから出て行った。しかし、彼らはわたしたちに属する者ではなかったのである。もし属する者であったなら、わたしたちと一緒にとどまっていたであろう。しかし、出て行ったのは、元来、彼らがみなわたしたちに属さない者であることが、明らかにされるためである。
30533 62 2 20 しかし、あなたがたは聖なる者に油を注がれているので、あなたがたすべてが、そのことを知っている。
30534 62 2 21 わたしが書きおくったのは、あなたがたが真理を知らないからではなく、それを知っているからであり、また、すべての偽りは真理から出るものでないことを、知っているからである。
30535 62 2 22 偽り者とは、だれであるか。イエスのキリストであることを否定する者ではないか。父と御子とを否定する者は、反キリストである。
30536 62 2 23 御子を否定する者は父を持たず、御子を告白する者は、また父をも持つのである。
30537 62 2 24 初めから聞いたことが、あなたがたのうちに、とどまるようにしなさい。初めから聞いたことが、あなたがたのうちにとどまっておれば、あなたがたも御子と父とのうちに、とどまることになる。
30538 62 2 25 これが、彼自らわたしたちに約束された約束であって、すなわち、永遠のいのちである。
30539 62 2 26 わたしは、あなたがたを惑わす者たちについて、これらのことを書きおくった。
30540 62 2 27 あなたがたのうちには、キリストからいただいた油がとどまっているので、だれにも教えてもらう必要はない。この油が、すべてのことをあなたがたに教える。それはまことであって、偽りではないから、その油が教えたように、あなたがたは彼のうちにとどまっていなさい。
30541 62 2 28 そこで、子たちよ。キリストのうちにとどまっていなさい。それは、彼が現れる時に、確信を持ち、その来臨に際して、みまえに恥じいることがないためである。
30542 62 2 29 彼の義なるかたであることがわかれば、義を行う者はみな彼から生れたものであることを、知るであろう。
30543 62 3 1 わたしたちが神の子と呼ばれるためには、どんなに大きな愛を父から賜わったことか、よく考えてみなさい。わたしたちは、すでに神の子なのである。世がわたしたちを知らないのは、父を知らなかったからである。
30544 62 3 2 愛する者たちよ。わたしたちは今や神の子である。しかし、わたしたちがどうなるのか、まだ明らかではない。彼が現れる時、わたしたちは、自分たちが彼に似るものとなることを知っている。そのまことの御姿を見るからである。
30545 62 3 3 彼についてこの望みをいだいている者は皆、彼がきよくあられるように、自らをきよくする。
30546 62 3 4 すべて罪を犯す者は、不法を行う者である。罪は不法である。
30547 62 3 5 あなたがたが知っているとおり、彼は罪をとり除くために現れたのであって、彼にはなんらの罪がない。
30548 62 3 6 すべて彼におる者は、罪を犯さない。すべて罪を犯す者は彼を見たこともなく、知ったこともない者である。
30549 62 3 7 子たちよ。だれにも惑わされてはならない。彼が義人であると同様に、義を行う者は義人である。
30550 62 3 8 罪を犯す者は、悪魔から出た者である。悪魔は初めから罪を犯しているからである。神の子が現れたのは、悪魔のわざを滅ぼしてしまうためである。
30551 62 3 9 すべて神から生れた者は、罪を犯さない。神の種が、その人のうちにとどまっているからである。また、その人は、神から生れた者であるから、罪を犯すことができない。
30552 62 3 10 神の子と悪魔の子との区別は、これによって明らかである。すなわち、すべて義を行わない者は、神から出た者ではない。兄弟を愛さない者も、同様である。
30553 62 3 11 わたしたちは互に愛し合うべきである。これが、あなたがたの初めから聞いていたおとずれである。
30554 62 3 12 カインのようになってはいけない。彼は悪しき者から出て、その兄弟を殺したのである。なぜ兄弟を殺したのか。彼のわざが悪く、その兄弟のわざは正しかったからである。
30555 62 3 13 兄弟たちよ。世があなたがたを憎んでも、驚くには及ばない。
30556 62 3 14 わたしたちは、兄弟を愛しているので、死からいのちへ移ってきたことを、知っている。愛さない者は、死のうちにとどまっている。
30557 62 3 15 あなたがたが知っているとおり、すべて兄弟を憎む者は人殺しであり、人殺しはすべて、そのうちに永遠のいのちをとどめてはいない。
30558 62 3 16 主は、わたしたちのためにいのちを捨てて下さった。それによって、わたしたちは愛ということを知った。それゆえに、わたしたちもまた、兄弟のためにいのちを捨てるべきである。
30559 62 3 17 世の富を持っていながら、兄弟が困っているのを見て、あわれみの心を閉じる者には、どうして神の愛が、彼のうちにあろうか。
30560 62 3 18 子たちよ。わたしたちは言葉や口先だけで愛するのではなく、行いと真実とをもって愛し合おうではないか。
30561 62 3 19 それによって、わたしたちが真理から出たものであることがわかる。そして、神のみまえに心を安んじていよう。
30562 62 3 20 なぜなら、たといわたしたちの心に責められるようなことがあっても、神はわたしたちの心よりも大いなるかたであって、すべてをご存じだからである。
30563 62 3 21 愛する者たちよ。もし心に責められるようなことがなければ、わたしたちは神に対して確信を持つことができる。
30564 62 3 22 そして、願い求めるものは、なんでもいただけるのである。それは、わたしたちが神の戒めを守り、みこころにかなうことを、行っているからである。
30565 62 3 23 その戒めというのは、神の子イエス・キリストの御名を信じ、わたしたちに命じられたように、互に愛し合うべきことである。
30566 62 3 24 神の戒めを守る人は、神におり、神もまたその人にいます。そして、神がわたしたちのうちにいますことは、神がわたしたちに賜わった御霊によって知るのである。
30567 62 4 1 愛する者たちよ。すべての霊を信じることはしないで、それらの霊が神から出たものであるかどうか、ためしなさい。多くのにせ預言者が世に出てきているからである。
30568 62 4 2 あなたがたは、こうして神の霊を知るのである。すなわち、イエス・キリストが肉体をとってこられたことを告白する霊は、すべて神から出ているものであり、
30569 62 4 3 イエスを告白しない霊は、すべて神から出ているものではない。これは、反キリストの霊である。あなたがたは、それが来るとかねて聞いていたが、今やすでに世にきている。
30570 62 4 4 子たちよ。あなたがたは神から出た者であって、彼らにうち勝ったのである。あなたがたのうちにいますのは、世にある者よりも大いなる者なのである。
30571 62 4 5 彼らは世から出たものである。だから、彼らは世のことを語り、世も彼らの言うことを聞くのである。
30572 62 4 6 しかし、わたしたちは神から出たものである。神を知っている者は、わたしたちの言うことを聞き、神から出ない者は、わたしたちの言うことを聞かない。これによって、わたしたちは、真理の霊と迷いの霊との区別を知るのである。
30573 62 4 7 愛する者たちよ。わたしたちは互に愛し合おうではないか。愛は、神から出たものなのである。すべて愛する者は、神から生れた者であって、神を知っている。
30574 62 4 8 愛さない者は、神を知らない。神は愛である。
30575 62 4 9 神はそのひとり子を世につかわし、彼によってわたしたちを生きるようにして下さった。それによって、わたしたちに対する神の愛が明らかにされたのである。
30576 62 4 10 わたしたちが神を愛したのではなく、神がわたしたちを愛して下さって、わたしたちの罪のためにあがないの供え物として、御子をおつかわしになった。ここに愛がある。
30577 62 4 11 愛する者たちよ。神がこのようにわたしたちを愛して下さったのであるから、わたしたちも互に愛し合うべきである。
30578 62 4 12 神を見た者は、まだひとりもいない。もしわたしたちが互に愛し合うなら、神はわたしたちのうちにいまし、神の愛がわたしたちのうちに全うされるのである。
30579 62 4 13 神が御霊をわたしたちに賜わったことによって、わたしたちが神におり、神がわたしたちにいますことを知る。
30580 62 4 14 わたしたちは、父が御子を世の救主としておつかわしになったのを見て、そのあかしをするのである。
30581 62 4 15 もし人が、イエスを神の子と告白すれば、神はその人のうちにいまし、その人は神のうちにいるのである。
30582 62 4 16 わたしたちは、神がわたしたちに対して持っておられる愛を知り、かつ信じている。神は愛である。愛のうちにいる者は、神におり、神も彼にいます。
30583 62 4 17 わたしたちもこの世にあって彼のように生きているので、さばきの日に確信を持って立つことができる。そのことによって、愛がわたしたちに全うされているのである。
30584 62 4 18 愛には恐れがない。完全な愛は恐れをとり除く。恐れには懲らしめが伴い、かつ恐れる者には、愛が全うされていないからである。
30585 62 4 19 わたしたちが愛し合うのは、神がまずわたしたちを愛して下さったからである。
30586 62 4 20 「神を愛している」と言いながら兄弟を憎む者は、偽り者である。現に見ている兄弟を愛さない者は、目に見えない神を愛することはできない。
30587 62 4 21 神を愛する者は、兄弟をも愛すべきである。この戒めを、わたしたちは神から授かっている。
30588 62 5 1 すべてイエスのキリストであることを信じる者は、神から生れた者である。すべて生んで下さったかたを愛する者は、そのかたから生れた者をも愛するのである。
30589 62 5 2 神を愛してその戒めを行えば、それによってわたしたちは、神の子たちを愛していることを知るのである。
30590 62 5 3 神を愛するとは、すなわち、その戒めを守ることである。そして、その戒めはむずかしいものではない。
30591 62 5 4 なぜなら、すべて神から生れた者は、世に勝つからである。そして、わたしたちの信仰こそ、世に勝たしめた勝利の力である。
30592 62 5 5 世に勝つ者はだれか。イエスを神の子と信じる者ではないか。
30593 62 5 6 このイエス・キリストは、水と血とをとおってこられたかたである。水によるだけではなく、水と血とによってこられたのである。そのあかしをするものは、御霊である。御霊は真理だからである。
30594 62 5 7 あかしをするものが、三つある。
30595 62 5 8 御霊と水と血とである。そして、この三つのものは一致する。
30596 62 5 9 わたしたちは人間のあかしを受けいれるが、しかし、神のあかしはさらにまさっている。神のあかしというのは、すなわち、御子について立てられたあかしである。
30597 62 5 10 神の子を信じる者は、自分のうちにこのあかしを持っている。神を信じない者は、神を偽り者とする。神が御子についてあかしせられたそのあかしを、信じていないからである。
30598 62 5 11 そのあかしとは、神が永遠のいのちをわたしたちに賜わり、かつ、そのいのちが御子のうちにあるということである。
30599 62 5 12 御子を持つ者はいのちを持ち、神の御子を持たない者はいのちを持っていない。
30600 62 5 13 これらのことをあなたがたに書きおくったのは、神の子の御名を信じるあなたがたに、永遠のいのちを持っていることを、悟らせるためである。
30601 62 5 14 わたしたちが神に対していだいている確信は、こうである。すなわち、わたしたちが何事でも神の御旨に従って願い求めるなら、神はそれを聞きいれて下さるということである。
30602 62 5 15 そして、わたしたちが願い求めることは、なんでも聞きいれて下さるとわかれば、神に願い求めたことはすでにかなえられたことを、知るのである。
30603 62 5 16 もしだれかが死に至ることのない罪を犯している兄弟を見たら、神に願い求めなさい。そうすれば神は、死に至ることのない罪を犯している人々には、いのちを賜わるであろう。死に至る罪がある。これについては、願い求めよ、とは言わない。
30604 62 5 17 不義はすべて、罪である。しかし、死に至ることのない罪もある。
30605 62 5 18 すべて神から生れた者は罪を犯さないことを、わたしたちは知っている。神から生れたかたが彼を守っていて下さるので、悪しき者が手を触れるようなことはない。
30606 62 5 19 また、わたしたちは神から出た者であり、全世界は悪しき者の配下にあることを、知っている。
30607 62 5 20 さらに、神の子がきて、真実なかたを知る知力をわたしたちに授けて下さったことも、知っている。そして、わたしたちは、真実なかたにおり、御子イエス・キリストにおるのである。このかたは真実な神であり、永遠のいのちである。
30608 62 5 21 子たちよ。気をつけて、偶像を避けなさい。
30609 63 1 1 長老のわたしから、真実に愛している選ばれた婦人とその子たちへ。あなたがたを愛しているのは、わたしだけではなく、真理を知っている者はみなそうである。
30610 63 1 2 それは、わたしたちのうちにあり、また永遠に共にあるべき真理によるのである。
30611 63 1 3 父なる神および父の御子イエス・キリストから、恵みとあわれみと平安とが、真理と愛のうちにあって、わたしたちと共にあるように。
30612 63 1 4 あなたの子供たちのうちで、わたしたちが父から受けた戒めどおりに、真理のうちを歩いている者があるのを見て、わたしは非常に喜んでいる。
30613 63 1 5 婦人よ。ここにお願いしたいことがある。それは、新しい戒めを書くわけではなく、初めから持っていた戒めなのであるが、わたしたちは、みんな互に愛し合おうではないか。
30614 63 1 6 父の戒めどおりに歩くことが、すなわち、愛であり、あなたがたが初めから聞いてきたとおりに愛のうちを歩くことが、すなわち、戒めなのである。
30615 63 1 7 なぜなら、イエス・キリストが肉体をとってこられたことを告白しないで人を惑わす者が、多く世にはいってきたからである。そういう者は、惑わす者であり、反キリストである。
30616 63 1 8 よく注意して、わたしたちの働いて得た成果を失うことがなく、豊かな報いを受けられるようにしなさい。
30617 63 1 9 すべてキリストの教をとおり過ごして、それにとどまらない者は、神を持っていないのである。その教にとどまっている者は、父を持ち、また御子をも持つ。
30618 63 1 10 この教を持たずにあなたがたのところに来る者があれば、その人を家に入れることも、あいさつすることもしてはいけない。
30619 63 1 11 そのような人にあいさつする者は、その悪い行いにあずかることになるからである。
30620 63 1 12 あなたがたに書きおくることはたくさんあるが、紙と墨とで書くことはすまい。むしろ、あなたがたのところに行き、直接はなし合って、共に喜びに満ちあふれたいものである。
30621 63 1 13 選ばれたあなたの姉妹の子供たちが、あなたによろしく。
30622 64 1 1 長老のわたしから、真実に愛している親愛なるガイオへ。
30623 64 1 2 愛する者よ。あなたのたましいがいつも恵まれていると同じく、あなたがすべてのことに恵まれ、またすこやかであるようにと、わたしは祈っている。
30624 64 1 3 兄弟たちがきて、あなたが真理に生きていることを、あかししてくれたので、ひじょうに喜んでいる。事実、あなたは真理のうちを歩いているのである。
30625 64 1 4 わたしの子供たちが真理のうちを歩いていることを聞く以上に、大きい喜びはない。
30626 64 1 5 愛する者よ。あなたが、兄弟たち、しかも旅先にある者につくしていることは、みな真実なわざである。
30627 64 1 6 彼らは、諸教会で、あなたの愛についてあかしをした。それらの人々を、神のみこころにかなうように送り出してくれたら、それは願わしいことである。
30628 64 1 7 彼らは、御名のために旅立った者であって、異邦人からは何も受けていない。
30629 64 1 8 それだから、わたしたちは、真理のための同労者となるように、こういう人々を助けねばならない。
30630 64 1 9 わたしは少しばかり教会に書きおくっておいたが、みんなのかしらになりたがっているデオテレペスが、わたしたちを受けいれてくれない。
30631 64 1 10 だから、わたしがそちらへ行った時、彼のしわざを指摘しようと思う。彼は口ぎたなくわたしたちをののしり、そればかりか、兄弟たちを受けいれようともせず、受けいれようとする人たちを妨げて、教会から追い出している。
30632 64 1 11 愛する者よ。悪にならわないで、善にならいなさい。善を行う者は神から出た者であり、悪を行う者は神を見たことのない者である。
30633 64 1 12 デメテリオについては、あらゆる人も、また真理そのものも、証明している。わたしたちも証明している。そして、あなたが知っているとおり、わたしたちの証明は真実である。
30634 64 1 13 あなたに書きおくりたいことはたくさんあるが、墨と筆とで書くことはすまい。
30635 64 1 14 すぐにでもあなたに会って、直接はなし合いたいものである。
30636 64 1 15 平安が、あなたにあるように。友人たちから、あなたによろしく。友人たちひとりびとりに、よろしく。
30637 65 1 1 イエス・キリストの僕またヤコブの兄弟であるユダから、父なる神に愛され、イエス・キリストに守られている召された人々へ。
30638 65 1 2 あわれみと平安と愛とが、あなたがたに豊かに加わるように。
30639 65 1 3 愛する者たちよ。わたしたちが共にあずかっている救について、あなたがたに書きおくりたいと心から願っていたので、聖徒たちによって、ひとたび伝えられた信仰のために戦うことを勧めるように、手紙をおくる必要を感じるに至った。
30640 65 1 4 そのわけは、不信仰な人々がしのび込んできて、わたしたちの神の恵みを放縦な生活に変え、唯一の君であり、わたしたちの主であるイエス・キリストを否定しているからである。彼らは、このようなさばきを受けることに、昔から予告されているのである。
30641 65 1 5 あなたがたはみな、じゅうぶんに知っていることではあるが、主が民をエジプトの地から救い出して後、不信仰な者を滅ぼされたことを、思い起してもらいたい。
30642 65 1 6 主は、自分たちの地位を守ろうとはせず、そのおるべき所を捨て去った御使たちを、大いなる日のさばきのために、永久にしばりつけたまま、暗やみの中に閉じ込めておかれた。
30643 65 1 7 ソドム、ゴモラも、まわりの町々も、同様であって、同じように淫行にふけり、不自然な肉欲に走ったので、永遠の火の刑罰を受け、人々の見せしめにされている。
30644 65 1 8 しかし、これと同じように、これらの人々は、夢に迷わされて肉を汚し、権威ある者たちを軽んじ、栄光ある者たちをそしっている。
30645 65 1 9 御使のかしらミカエルは、モーセの死体について悪魔と論じ争った時、相手をののしりさばくことはあえてせず、ただ、「主がおまえを戒めて下さるように」と言っただけであった。
30646 65 1 10 しかし、この人々は自分が知りもしないことをそしり、また、分別のない動物のように、ただ本能的な知識にあやまられて、自らの滅亡を招いている。
30647 65 1 11 彼らはわざわいである。彼らはカインの道を行き、利のためにバラムの惑わしに迷い入り、コラのような反逆をして滅んでしまうのである。
30648 65 1 12 彼らは、あなたがたの愛餐に加わるが、それを汚し、無遠慮に宴会に同席して、自分の腹を肥やしている。彼らは、いわば、風に吹きまわされる水なき雲、実らない枯れ果てて、抜き捨てられた秋の木、
30649 65 1 13 自分の恥をあわにして出す海の荒波、さまよう星である。彼らには、まっくらなやみが永久に用意されている。
30650 65 1 14 アダムから七代目にあたるエノクも彼らについて預言して言った、「見よ、主は無数の聖徒たちを率いてこられた。
30651 65 1 15 それは、すべての者にさばきを行うためであり、また、不信心な者が、信仰を無視して犯したすべての不信心なしわざと、さらに、不信心な罪人が主にそむいて語ったすべての暴言とを責めるためである」。
30652 65 1 16 彼らは不平をならべ、不満を鳴らす者であり、自分の欲のままに生活し、その口は大言を吐き、利のために人にへつらう者である。
30653 65 1 17 愛する者たちよ。わたしたちの主イエス・キリストの使徒たちが予告した言葉を思い出しなさい。
30654 65 1 18 彼らはあなたがたにこう言った、「終りの時に、あざける者たちがあらわれて、自分の不信心な欲のままに生活するであろう」。
30655 65 1 19 彼らは分派をつくる者、肉に属する者、御霊を持たない者たちである。
30656 65 1 20 しかし、愛する者たちよ。あなたがたは、最も神聖な信仰の上に自らを築き上げ、聖霊によって祈り、
30657 65 1 21 神の愛の中に自らを保ち、永遠のいのちを目あてとして、わたしたちの主イエス・キリストのあわれみを待ち望みなさい。
30658 65 1 22 疑いをいだく人々があれば、彼らをあわれみ、
30659 65 1 23 火の中から引き出して救ってやりなさい。また、そのほかの人たちを、おそれの心をもってあわれみなさい。しかし、肉に汚れた者に対しては、その下着さえも忌みきらいなさい。
30660 65 1 24 あなたがたを守ってつまずかない者とし、また、その栄光のまえに傷なき者として、喜びのうちに立たせて下さるかた、
30661 65 1 25 すなわち、わたしたちの救主なる唯一の神に、栄光、大能、力、権威が、わたしたちの主イエス・キリストによって、世々の初めにも、今も、また、世々限りなく、あるように、アァメン。
30662 66 1 1 イエス・キリストの黙示。この黙示は、神が、すぐにも起るべきことをその僕たちに示すためキリストに与え、そして、キリストが、御使をつかわして、僕ヨハネに伝えられたものである。
30663 66 1 2 ヨハネは、神の言とイエス・キリストのあかしと、すなわち、自分が見たすべてのことをあかしした。
30664 66 1 3 この預言の言葉を朗読する者と、これを聞いて、その中に書かれていることを守る者たちとは、さいわいである。時が近づいているからである。
30665 66 1 4 ヨハネからアジヤにある七つの教会へ。今いまし、昔いまし、やがてきたるべきかたから、また、その御座の前にある七つの霊から、
30666 66 1 5 また、忠実な証人、死人の中から最初に生れた者、地上の諸王の支配者であるイエス・キリストから、恵みと平安とが、あなたがたにあるように。わたしたちを愛し、その血によってわたしたちを罪から解放し、
30667 66 1 6 わたしたちを、その父なる神のために、御国の民とし、祭司として下さったかたに、世々限りなく栄光と権力とがあるように、アァメン。
30668 66 1 7 見よ、彼は、雲に乗ってこられる。すべての人の目、ことに、彼を刺しとおした者たちは、彼を仰ぎ見るであろう。また地上の諸族はみな、彼のゆえに胸を打って嘆くであろう。しかり、アァメン。
30669 66 1 8 今いまし、昔いまし、やがてきたるべき者、全能者にして主なる神が仰せになる、「わたしはアルパであり、オメガである」。
30670 66 1 9 あなたがたの兄弟であり、共にイエスの苦難と御国と忍耐とにあずかっている、わたしヨハネは、神の言とイエスのあかしとのゆえに、パトモスという島にいた。
30671 66 1 10 ところが、わたしは、主の日に御霊に感じた。そして、わたしのうしろの方で、ラッパのような大きな声がするのを聞いた。
30672 66 1 11 その声はこう言った、「あなたが見ていることを書きものにして、それをエペソ、スミルナ、ペルガモ、テアテラ、サルデス、ヒラデルヒヤ、ラオデキヤにある七つの教会に送りなさい」。
30673 66 1 12 そこでわたしは、わたしに呼びかけたその声を見ようとしてふりむいた。ふりむくと、七つの金の燭台が目についた。
30674 66 1 13 それらの燭台の間に、足までたれた上着を着、胸に金の帯をしめている人の子のような者がいた。
30675 66 1 14 そのかしらと髪の毛とは、雪のように白い羊毛に似て真白であり、目は燃える炎のようであった。
30676 66 1 15 その足は、炉で精錬されて光り輝くしんちゅうのようであり、声は大水のとどろきのようであった。
30677 66 1 16 その右手に七つの星を持ち、口からは、鋭いもろ刃のつるぎがつき出ており、顔は、強く照り輝く太陽のようであった。
30678 66 1 17 わたしは彼を見たとき、その足もとに倒れて死人のようになった。すると、彼は右手をわたしの上において言った、「恐れるな。わたしは初めであり、終りであり、
30679 66 1 18 また、生きている者である。わたしは死んだことはあるが、見よ、世々限りなく生きている者である。そして、死と黄泉とのかぎを持っている。
30680 66 1 19 そこで、あなたの見たこと、現在のこと、今後起ろうとすることを、書きとめなさい。
30681 66 1 20 あなたがわたしの右手に見た七つの星と、七つの金の燭台との奥義は、こうである。すなわち、七つの星は七つの教会の御使であり、七つの燭台は七つの教会である。
30682 66 2 1 エペソにある教会の御使に、こう書きおくりなさい。
30683 66 2 2 わたしは、あなたのわざと労苦と忍耐とを知っている。また、あなたが、悪い者たちをゆるしておくことができず、使徒と自称してはいるが、その実、使徒でない者たちをためしてみて、にせ者であると見抜いたことも、知っている。
30684 66 2 3 あなたは忍耐をし続け、わたしの名のために忍びとおして、弱り果てることがなかった。
30685 66 2 4 しかし、あなたに対して責むべきことがある。あなたは初めの愛から離れてしまった。
30686 66 2 5 そこで、あなたはどこから落ちたかを思い起し、悔い改めて初めのわざを行いなさい。もし、そうしないで悔い改めなければ、わたしはあなたのところにきて、あなたの燭台をその場所から取りのけよう。
30687 66 2 6 しかし、こういうことはある、あなたはニコライ宗の人々のわざを憎んでおり、わたしもそれを憎んでいる。
30688 66 2 7 耳のある者は、御霊が諸教会に言うことを聞くがよい。勝利を得る者には、神のパラダイスにあるいのちの木の実を食べることをゆるそう』。
30689 66 2 8 スミルナにある教会の御使に、こう書きおくりなさい。
30690 66 2 9 わたしは、あなたの苦難や、貧しさを知っている(しかし実際は、あなたは富んでいるのだ)。また、ユダヤ人と自称してはいるが、その実ユダヤ人でなくてサタンの会堂に属する者たちにそしられていることも、わたしは知っている。
30691 66 2 10 あなたの受けようとする苦しみを恐れてはならない。見よ、悪魔が、あなたがたのうちのある者をためすために、獄に入れようとしている。あなたがたは十日の間、苦難にあうであろう。死に至るまで忠実であれ。そうすれば、いのちの冠を与えよう。
30692 66 2 11 耳のある者は、御霊が諸教会に言うことを聞くがよい。勝利を得る者は、第二の死によって滅ぼされることはない』。
30693 66 2 12 ペルガモにある教会の御使に、こう書きおくりなさい。
30694 66 2 13 わたしはあなたの住んでいる所を知っている。そこにはサタンの座がある。あなたは、わたしの名を堅く持ちつづけ、わたしの忠実な証人アンテパスがサタンの住んでいるあなたがたの所で殺された時でさえ、わたしに対する信仰を捨てなかった。
30695 66 2 14 しかし、あなたに対して責むべきことが、少しばかりある。あなたがたの中には、現にバラムの教を奉じている者がある。バラムは、バラクに教え込み、イスラエルの子らの前に、つまずきになるものを置かせて、偶像にささげたものを食べさせ、また不品行をさせたのである。
30696 66 2 15 同じように、あなたがたの中には、ニコライ宗の教を奉じている者もいる。
30697 66 2 16 だから、悔い改めなさい。そうしないと、わたしはすぐにあなたのところに行き、わたしの口のつるぎをもって彼らと戦おう。
30698 66 2 17 耳のある者は、御霊が諸教会に言うことを聞くがよい。勝利を得る者には、隠されているマナを与えよう。また、白い石を与えよう。この石の上には、これを受ける者のほかだれも知らない新しい名が書いてある』。
30699 66 2 18 テアテラにある教会の御使に、こう書きおくりなさい。
30700 66 2 19 わたしは、あなたのわざと、あなたの愛と信仰と奉仕と忍耐とを知っている。また、あなたの後のわざが、初めのよりもまさっていることを知っている。
30701 66 2 20 しかし、あなたに対して責むべきことがある。あなたは、あのイゼベルという女を、そのなすがままにさせている。この女は女預言者と自称し、わたしの僕たちを教え、惑わして、不品行をさせ、偶像にささげたものを食べさせている。
30702 66 2 21 わたしは、この女に悔い改めるおりを与えたが、悔い改めてその不品行をやめようとはしない。
30703 66 2 22 見よ、わたしはこの女を病の床に投げ入れる。この女と姦淫する者をも、悔い改めて彼女のわざから離れなければ、大きな患難の中に投げ入れる。
30704 66 2 23 また、この女の子供たちをも打ち殺そう。こうしてすべての教会は、わたしが人の心の奥底までも探り知る者であることを悟るであろう。そしてわたしは、あなたがたひとりびとりのわざに応じて報いよう。
30705 66 2 24 また、テアテラにいるほかの人たちで、まだあの女の教を受けておらず、サタンの、いわゆる「深み」を知らないあなたがたに言う。わたしは別にほかの重荷を、あなたがたに負わせることはしない。
30706 66 2 25 ただ、わたしが来る時まで、自分の持っているものを堅く保っていなさい。
30707 66 2 26 勝利を得る者、わたしのわざを最後まで持ち続ける者には、諸国民を支配する権威を授ける。
30708 66 2 27 彼は鉄のつえをもって、ちょうど土の器を砕くように、彼らを治めるであろう。それは、わたし自身が父から権威を受けて治めるのと同様である。
30709 66 2 28 わたしはまた、彼に明けの明星を与える。
30710 66 2 29 耳のある者は、御霊が諸教会に言うことを聞くがよい』。
30711 66 3 1 サルデスにある教会の御使に、こう書きおくりなさい。
30712 66 3 2 目をさましていて、死にかけている残りの者たちを力づけなさい。わたしは、あなたのわざが、わたしの神のみまえに完全であるとは見ていない。
30713 66 3 3 だから、あなたが、どのようにして受けたか、また聞いたかを思い起して、それを守りとおし、かつ悔い改めなさい。もし目をさましていないなら、わたしは盗人のように来るであろう。どんな時にあなたのところに来るか、あなたには決してわからない。
30714 66 3 4 しかし、サルデスにはその衣を汚さない人が、数人いる。彼らは白い衣を着て、わたしと共に歩みを続けるであろう。彼らは、それにふさわしい者である。
30715 66 3 5 勝利を得る者は、このように白い衣を着せられるのである。わたしは、その名をいのちの書から消すようなことを、決してしない。また、わたしの父と御使たちの前で、その名を言いあらわそう。
30716 66 3 6 耳のある者は、御霊が諸教会に言うことを聞くがよい』。
30717 66 3 7 ヒラデルヒヤにある教会の御使に、こう書きおくりなさい。
30718 66 3 8 わたしは、あなたのわざを知っている。見よ、わたしは、あなたの前に、だれも閉じることのできない門を開いておいた。なぜなら、あなたには少ししか力がなかったにもかかわらず、わたしの言葉を守り、わたしの名を否まなかったからである。
30719 66 3 9 見よ、サタンの会堂に属する者、すなわち、ユダヤ人と自称してはいるが、その実ユダヤ人でなくて、偽る者たちに、こうしよう。見よ、彼らがあなたの足もとにきて平伏するようにし、そして、わたしがあなたを愛していることを、彼らに知らせよう。
30720 66 3 10 忍耐についてのわたしの言葉をあなたが守ったから、わたしも、地上に住む者たちをためすために、全世界に臨もうとしている試錬の時に、あなたを防ぎ守ろう。
30721 66 3 11 わたしは、すぐに来る。あなたの冠がだれにも奪われないように、自分の持っているものを堅く守っていなさい。
30722 66 3 12 勝利を得る者を、わたしの神の聖所における柱にしよう。彼は決して二度と外へ出ることはない。そして彼の上に、わたしの神の御名と、わたしの神の都、すなわち、天とわたしの神のみもとから下ってくる新しいエルサレムの名と、わたしの新しい名とを、書きつけよう。
30723 66 3 13 耳のある者は、御霊が諸教会に言うことを聞くがよい』。
30724 66 3 14 ラオデキヤにある教会の御使に、こう書きおくりなさい。
30725 66 3 15 わたしはあなたのわざを知っている。あなたは冷たくもなく、熱くもない。むしろ、冷たいか熱いかであってほしい。
30726 66 3 16 このように、熱くもなく、冷たくもなく、なまぬるいので、あなたを口から吐き出そう。
30727 66 3 17 あなたは、自分は富んでいる、豊かになった、なんの不自由もないと言っているが、実は、あなた自身がみじめな者、あわれむべき者、貧しい者、目の見えない者、裸な者であることに気がついていない。
30728 66 3 18 そこで、あなたに勧める。富む者となるために、わたしから火で精錬された金を買い、また、あなたの裸の恥をさらさないため身に着けるように、白い衣を買いなさい。また、見えるようになるため、目にぬる目薬を買いなさい。
30729 66 3 19 すべてわたしの愛している者を、わたしはしかったり、懲らしめたりする。だから、熱心になって悔い改めなさい。
30730 66 3 20 見よ、わたしは戸の外に立って、たたいている。だれでもわたしの声を聞いて戸をあけるなら、わたしはその中にはいって彼と食を共にし、彼もまたわたしと食を共にするであろう。
30731 66 3 21 勝利を得る者には、わたしと共にわたしの座につかせよう。それはちょうど、わたしが勝利を得てわたしの父と共にその御座についたのと同様である。
30732 66 3 22 耳のある者は、御霊が諸教会に言うことを聞くがよい』」。
30733 66 4 1 その後、わたしが見ていると、見よ、開いた門が天にあった。そして、さきにラッパのような声でわたしに呼びかけるのを聞いた初めの声が、「ここに上ってきなさい。そうしたら、これから後に起るべきことを、見せてあげよう」と言った。
30734 66 4 2 すると、たちまち、わたしは御霊に感じた。見よ、御座が天に設けられており、その御座にいますかたがあった。
30735 66 4 3 その座にいますかたは、碧玉や赤めのうのように見え、また、御座のまわりには、緑玉のように見えるにじが現れていた。
30736 66 4 4 また、御座のまわりには二十四の座があって、二十四人の長老が白い衣を身にまとい、頭に金の冠をかぶって、それらの座についていた。
30737 66 4 5 御座からは、いなずまと、もろもろの声と、雷鳴とが、発していた。また、七つのともし火が、御座の前で燃えていた。これらは、神の七つの霊である。
30738 66 4 6 御座の前は、水晶に似たガラスの海のようであった。御座のそば近くそのまわりには、四つの生き物がいたが、その前にも後にも、一面に目がついていた。
30739 66 4 7 第一の生き物はししのようであり、第二の生き物は雄牛のようであり、第三の生き物は人のような顔をしており、第四の生き物は飛ぶわしのようであった。
30740 66 4 8 この四つの生き物には、それぞれ六つの翼があり、その翼のまわりも内側も目で満ちていた。そして、昼も夜も、絶え間なくこう叫びつづけていた、「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、全能者にして主なる神。昔いまし、今いまし、やがてきたるべき者」。
30741 66 4 9 これらの生き物が、御座にいまし、かつ、世々限りなく生きておられるかたに、栄光とほまれとを帰し、また、感謝をささげている時、
30742 66 4 10 二十四人の長老は、御座にいますかたのみまえにひれ伏し、世々限りなく生きておられるかたを拝み、彼らの冠を御座のまえに、投げ出して言った、
30743 66 4 11 「われらの主なる神よ、あなたこそは、栄光とほまれと力とを受けるにふさわしいかた。あなたは万物を造られました。御旨によって、万物は存在し、また造られたのであります」。
30744 66 5 1 わたしはまた、御座にいますかたの右の手に、巻物があるのを見た。その内側にも外側にも字が書いてあって、七つの封印で封じてあった。
30745 66 5 2 また、ひとりの強い御使が、大声で、「その巻物を開き、封印をとくのにふさわしい者は、だれか」と呼ばわっているのを見た。
30746 66 5 3 しかし、天にも地にも地の下にも、この巻物を開いて、それを見ることのできる者は、ひとりもいなかった。
30747 66 5 4 巻物を開いてそれを見るのにふさわしい者が見当らないので、わたしは激しく泣いていた。
30748 66 5 5 すると、長老のひとりがわたしに言った、「泣くな。見よ、ユダ族のしし、ダビデの若枝であるかたが、勝利を得たので、その巻物を開き七つの封印を解くことができる」。
30749 66 5 6 わたしはまた、御座と四つの生き物との間、長老たちの間に、ほふられたとみえる小羊が立っているのを見た。それに七つの角と七つの目とがあった。これらの目は、全世界につかわされた、神の七つの霊である。
30750 66 5 7 小羊は進み出て、御座にいますかたの右の手から、巻物を受けとった。
30751 66 5 8 巻物を受けとった時、四つの生き物と二十四人の長老とは、おのおの、立琴と、香の満ちている金の鉢とを手に持って、小羊の前にひれ伏した。この香は聖徒の祈である。
30752 66 5 9 彼らは新しい歌を歌って言った、「あなたこそは、その巻物を受けとり、封印を解くにふさわしいかたであります。あなたはほふられ、その血によって、神のために、あらゆる部族、国語、民族、国民の中から人々をあがない、
30753 66 5 10 わたしたちの神のために、彼らを御国の民とし、祭司となさいました。彼らは地上を支配するに至るでしょう」。
30754 66 5 11 さらに見ていると、御座と生き物と長老たちとのまわりに、多くの御使たちの声が上がるのを聞いた。その数は万の幾万倍、千の幾千倍もあって、
30755 66 5 12 大声で叫んでいた、「ほふられた小羊こそは、力と、富と、知恵と、勢いと、ほまれと、栄光と、さんびとを受けるにふさわしい」。
30756 66 5 13 またわたしは、天と地、地の下と海の中にあるすべての造られたもの、そして、それらの中にあるすべてのものの言う声を聞いた、「御座にいますかたと小羊とに、さんびと、ほまれと、栄光と、権力とが、世々限りなくあるように」。
30757 66 5 14 四つの生き物はアァメンと唱え、長老たちはひれ伏して礼拝した。
30758 66 6 1 小羊がその七つの封印の一つを解いた時、わたしが見ていると、四つの生き物の一つが、雷のような声で「きたれ」と呼ぶのを聞いた。
30759 66 6 2 そして見ていると、見よ、白い馬が出てきた。そして、それに乗っている者は、弓を手に持っており、また冠を与えられて、勝利の上にもなお勝利を得ようとして出かけた。
30760 66 6 3 小羊が第二の封印を解いた時、第二の生き物が「きたれ」と言うのを、わたしは聞いた。
30761 66 6 4 すると今度は、赤い馬が出てきた。そして、それに乗っている者は、人々が互に殺し合うようになるために、地上から平和を奪い取ることを許され、また、大きなつるぎを与えられた。
30762 66 6 5 また、第三の封印を解いた時、第三の生き物が「きたれ」と言うのを、わたしは聞いた。そこで見ていると、見よ、黒い馬が出てきた。そして、それに乗っている者は、はかりを手に持っていた。
30763 66 6 6 すると、わたしは四つの生き物の間から出て来ると思われる声が、こう言うのを聞いた、「小麦一ますは一デナリ。大麦三ますも一デナリ。オリブ油とぶどう酒とを、そこなうな」。
30764 66 6 7 小羊が第四の封印を解いた時、第四の生き物が「きたれ」と言う声を、わたしは聞いた。
30765 66 6 8 そこで見ていると、見よ、青白い馬が出てきた。そして、それに乗っている者の名は「死」と言い、それに黄泉が従っていた。彼らには、地の四分の一を支配する権威、および、つるぎと、ききんと、死と、地の獣らとによって人を殺す権威とが、与えられた。
30766 66 6 9 小羊が第五の封印を解いた時、神の言のゆえに、また、そのあかしを立てたために、殺された人々の霊魂が、祭壇の下にいるのを、わたしは見た。
30767 66 6 10 彼らは大声で叫んで言った、「聖なる、まことなる主よ。いつまであなたは、さばくことをなさらず、また地に住む者に対して、わたしたちの血の報復をなさらないのですか」。
30768 66 6 11 すると、彼らのひとりびとりに白い衣が与えられ、それから、「彼らと同じく殺されようとする僕仲間や兄弟たちの数が満ちるまで、もうしばらくの間、休んでいるように」と言い渡された。
30769 66 6 12 小羊が第六の封印を解いた時、わたしが見ていると、大地震が起って、太陽は毛織の荒布のように黒くなり、月は全面、血のようになり、
30770 66 6 13 天の星は、いちじくのまだ青い実が大風に揺られて振り落されるように、地に落ちた。
30771 66 6 14 天は巻物が巻かれるように消えていき、すべての山と島とはその場所から移されてしまった。
30772 66 6 15 地の王たち、高官、千卒長、富める者、勇者、奴隷、自由人らはみな、ほら穴や山の岩かげに、身をかくした。
30773 66 6 16 そして、山と岩とにむかって言った、「さあ、われわれをおおって、御座にいますかたの御顔と小羊の怒りとから、かくまってくれ。
30774 66 6 17 御怒りの大いなる日が、すでにきたのだ。だれが、その前に立つことができようか」。
30775 66 7 1 この後、わたしは四人の御使が地の四すみに立っているのを見た。彼らは地の四方の風をひき止めて、地にも海にもすべての木にも、吹きつけないようにしていた。
30776 66 7 2 また、もうひとりの御使が、生ける神の印を持って、日の出る方から上って来るのを見た。彼は地と海とをそこなう権威を授かっている四人の御使にむかって、大声で叫んで言った、
30777 66 7 3 「わたしたちの神の僕らの額に、わたしたちが印をおしてしまうまでは、地と海と木とをそこなってはならない」。
30778 66 7 4 わたしは印をおされた者の数を聞いたが、イスラエルの子らのすべての部族のうち、印をおされた者は十四万四千人であった。
30779 66 7 5 ユダの部族のうち、一万二千人が印をおされ、ルベンの部族のうち、一万二千人、ガドの部族のうち、一万二千人、
30780 66 7 6 アセルの部族のうち、一万二千人、ナフタリの部族のうち、一万二千人、マナセの部族のうち、一万二千人、
30781 66 7 7 シメオンの部族のうち、一万二千人、レビの部族のうち、一万二千人、イサカルの部族のうち、一万二千人、
30782 66 7 8 ゼブルンの部族のうち、一万二千人、ヨセフの部族のうち、一万二千人、ベニヤミンの部族のうち、一万二千人が印をおされた。
30783 66 7 9 その後、わたしが見ていると、見よ、あらゆる国民、部族、民族、国語のうちから、数えきれないほどの大ぜいの群衆が、白い衣を身にまとい、しゅろの枝を手に持って、御座と小羊との前に立ち、
30784 66 7 10 大声で叫んで言った、「救は、御座にいますわれらの神と小羊からきたる」。
30785 66 7 11 御使たちはみな、御座と長老たちと四つの生き物とのまわりに立っていたが、御座の前にひれ伏し、神を拝して言った、
30786 66 7 12 「アァメン、さんび、栄光、知恵、感謝、ほまれ、力、勢いが、世々限りなく、われらの神にあるように、アァメン」。
30787 66 7 13 長老たちのひとりが、わたしにむかって言った、「この白い衣を身にまとっている人々は、だれか。また、どこからきたのか」。
30788 66 7 14 わたしは彼に答えた、「わたしの主よ、それはあなたがご存じです」。すると、彼はわたしに言った、「彼らは大きな患難をとおってきた人たちであって、その衣を小羊の血で洗い、それを白くしたのである。
30789 66 7 15 それだから彼らは、神の御座の前におり、昼も夜もその聖所で神に仕えているのである。御座にいますかたは、彼らの上に幕屋を張って共に住まわれるであろう。
30790 66 7 16 彼らは、もはや飢えることがなく、かわくこともない。太陽も炎暑も、彼らを侵すことはない。
30791 66 7 17 御座の正面にいます小羊は彼らの牧者となって、いのちの水の泉に導いて下さるであろう。また神は、彼らの目から涙をことごとくぬぐいとって下さるであろう」。
30792 66 8 1 小羊が第七の封印を解いた時、半時間ばかり天に静けさがあった。
30793 66 8 2 それからわたしは、神のみまえに立っている七人の御使を見た。そして、七つのラッパが彼らに与えられた。
30794 66 8 3 また、別の御使が出てきて、金の香炉を手に持って祭壇の前に立った。たくさんの香が彼に与えられていたが、これは、すべての聖徒の祈に加えて、御座の前の金の祭壇の上にささげるためのものであった。
30795 66 8 4 香の煙は、御使の手から、聖徒たちの祈と共に神のみまえに立ちのぼった。
30796 66 8 5 御使はその香炉をとり、これに祭壇の火を満たして、地に投げつけた。すると、多くの雷鳴と、もろもろの声と、いなずまと、地震とが起った。
30797 66 8 6 そこで、七つのラッパを持っている七人の御使が、それを吹く用意をした。
30798 66 8 7 第一の御使が、ラッパを吹き鳴らした。すると、血のまじった雹と火とがあらわれて、地上に降ってきた。そして、地の三分の一が焼け、木の三分の一が焼け、また、すべての青草も焼けてしまった。
30799 66 8 8 第二の御使が、ラッパを吹き鳴らした。すると、火の燃えさかっている大きな山のようなものが、海に投げ込まれた。そして、海の三分の一は血となり、
30800 66 8 9 海の中の造られた生き物の三分の一は死に、舟の三分の一がこわされてしまった。
30801 66 8 10 第三の御使が、ラッパを吹き鳴らした。すると、たいまつのように燃えている大きな星が、空から落ちてきた。そしてそれは、川の三分の一とその水源との上に落ちた。
30802 66 8 11 この星の名は「苦よもぎ」と言い、水の三分の一が「苦よもぎ」のように苦くなった。水が苦くなったので、そのために多くの人が死んだ。
30803 66 8 12 第四の御使が、ラッパを吹き鳴らした。すると、太陽の三分の一と、月の三分の一と、星の三分の一とが打たれて、これらのものの三分の一は暗くなり、昼の三分の一は明るくなくなり、夜も同じようになった。
30804 66 8 13 また、わたしが見ていると、一羽のわしが中空を飛び、大きな声でこう言うのを聞いた、「ああ、わざわいだ、わざわいだ、地に住む人々は、わざわいだ。なお三人の御使がラッパを吹き鳴らそうとしている」。
30805 66 9 1 第五の御使が、ラッパを吹き鳴らした。するとわたしは、一つの星が天から地に落ちて来るのを見た。この星に、底知れぬ所の穴を開くかぎが与えられた。
30806 66 9 2 そして、この底知れぬ所の穴が開かれた。すると、その穴から煙が大きな炉の煙のように立ちのぼり、その穴の煙で、太陽も空気も暗くなった。
30807 66 9 3 その煙の中から、いなごが地上に出てきたが、地のさそりが持っているような力が、彼らに与えられた。
30808 66 9 4 彼らは、地の草やすべての青草、またすべての木をそこなってはならないが、額に神の印がない人たちには害を加えてもよいと、言い渡された。
30809 66 9 5 彼らは、人間を殺すことはしないで、五か月のあいだ苦しめることだけが許された。彼らの与える苦痛は、人がさそりにさされる時のような苦痛であった。
30810 66 9 6 その時には、人々は死を求めても与えられず、死にたいと願っても、死は逃げて行くのである。
30811 66 9 7 これらのいなごは、出陣の用意のととのえられた馬によく似ており、その頭には金の冠のようなものをつけ、その顔は人間の顔のようであり、
30812 66 9 8 また、そのかみの毛は女のかみのようであり、その歯はししの歯のようであった。
30813 66 9 9 また、鉄の胸当のような胸当をつけており、その羽の音は、馬に引かれて戦場に急ぐ多くの戦車の響きのようであった。
30814 66 9 10 その上、さそりのような尾と針とを持っている。その尾には、五か月のあいだ人間をそこなう力がある。
30815 66 9 11 彼らは、底知れぬ所の使を王にいただいており、その名をヘブル語でアバドンと言い、ギリシヤ語ではアポルオンと言う。
30816 66 9 12 第一のわざわいは、過ぎ去った。見よ、この後、なお二つのわざわいが来る。
30817 66 9 13 第六の御使が、ラッパを吹き鳴らした。すると、一つの声が、神のみまえにある金の祭壇の四つの角から出て、
30818 66 9 14 ラッパを持っている第六の御使にこう呼びかけるのを、わたしは聞いた。「大ユウフラテ川のほとりにつながれている四人の御使を、解いてやれ」。
30819 66 9 15 すると、その時、その日、その月、その年に備えておかれた四人の御使が、人間の三分の一を殺すために、解き放たれた。
30820 66 9 16 騎兵隊の数は二億であった。わたしはその数を聞いた。
30821 66 9 17 そして、まぼろしの中で、それらの馬とそれに乗っている者たちとを見ると、乗っている者たちは、火の色と青玉色と硫黄の色の胸当をつけていた。そして、それらの馬の頭はししの頭のようであって、その口から火と煙と硫黄とが、出ていた。
30822 66 9 18 この三つの災害、すなわち、彼らの口から出て来る火と煙と硫黄とによって、人間の三分の一は殺されてしまった。
30823 66 9 19 馬の力はその口と尾とにある。その尾はへびに似ていて、それに頭があり、その頭で人に害を加えるのである。
30824 66 9 20 これらの災害で殺されずに残った人々は、自分の手で造ったものについて、悔い改めようとせず、また悪霊のたぐいや、金、銀、銅、石、木で造られ、見ることも聞くことも歩くこともできない偶像を礼拝して、やめようともしなかった。
30825 66 9 21 また、彼らは、その犯した殺人や、まじないや、不品行や、盗みを悔い改めようとしなかった。
30826 66 10 1 わたしは、もうひとりの強い御使が、雲に包まれて、天から降りて来るのを見た。その頭に、にじをいただき、その顔は太陽のようで、その足は火の柱のようであった。
30827 66 10 2 彼は、開かれた小さな巻物を手に持っていた。そして、右足を海の上に、左足を地の上に踏みおろして、
30828 66 10 3 ししがほえるように大声で叫んだ。彼が叫ぶと、七つの雷がおのおのその声を発した。
30829 66 10 4 七つの雷が声を発した時、わたしはそれを書きとめようとした。すると、天から声があって、「七つの雷の語ったことを封印せよ。それを書きとめるな」と言うのを聞いた。
30830 66 10 5 それから、海と地の上に立っているのをわたしが見たあの御使は、天にむけて右手を上げ、
30831 66 10 6 天とその中にあるもの、地とその中にあるもの、海とその中にあるものを造り、世々限りなく生きておられるかたをさして誓った、「もう時がない。
30832 66 10 7 第七の御使が吹き鳴らすラッパの音がする時には、神がその僕、預言者たちにお告げになったとおり、神の奥義は成就される」。
30833 66 10 8 すると、前に天から聞えてきた声が、またわたしに語って言った、「さあ行って、海と地との上に立っている御使の手に開かれている巻物を、受け取りなさい」。
30834 66 10 9 そこで、わたしはその御使のもとに行って、「その小さな巻物を下さい」と言った。すると、彼は言った、「取って、それを食べてしまいなさい。あなたの腹には苦いが、口には蜜のように甘い」。
30835 66 10 10 わたしは御使の手からその小さな巻物を受け取って食べてしまった。すると、わたしの口には蜜のように甘かったが、それを食べたら、腹が苦くなった。
30836 66 10 11 その時、「あなたは、もう一度、多くの民族、国民、国語、王たちについて、預言せねばならない」と言う声がした。
30837 66 11 1 それから、わたしはつえのような測りざおを与えられて、こう命じられた、「さあ立って、神の聖所と祭壇と、そこで礼拝している人々とを、測りなさい。
30838 66 11 2 聖所の外の庭はそのままにしておきなさい。それを測ってはならない。そこは異邦人に与えられた所だから。彼らは、四十二か月の間この聖なる都を踏みにじるであろう。
30839 66 11 3 そしてわたしは、わたしのふたりの証人に、荒布を着て、千二百六十日のあいだ預言することを許そう」。
30840 66 11 4 彼らは、全地の主のみまえに立っている二本のオリブの木、また、二つの燭台である。
30841 66 11 5 もし彼らに害を加えようとする者があれば、彼らの口から火が出て、その敵を滅ぼすであろう。もし彼らに害を加えようとする者があれば、その者はこのように殺されねばならない。
30842 66 11 6 預言をしている期間、彼らは、天を閉じて雨を降らせないようにする力を持っている。さらにまた、水を血に変え、何度でも思うままに、あらゆる災害で地を打つ力を持っている。
30843 66 11 7 そして、彼らがそのあかしを終えると、底知れぬ所からのぼって来る獣が、彼らと戦って打ち勝ち、彼らを殺す。
30844 66 11 8 彼らの死体はソドムや、エジプトにたとえられている大いなる都の大通りにさらされる。彼らの主も、この都で十字架につけられたのである。
30845 66 11 9 いろいろな民族、部族、国語、国民に属する人々が、三日半の間、彼らの死体をながめるが、その死体を墓に納めることは許さない。
30846 66 11 10 地に住む人々は、彼らのことで喜び楽しみ、互に贈り物をしあう。このふたりの預言者は、地に住む者たちを悩ましたからである。
30847 66 11 11 三日半の後、いのちの息が、神から出て彼らの中にはいり、そして、彼らが立ち上がったので、それを見た人々は非常な恐怖に襲われた。
30848 66 11 12 その時、天から大きな声がして、「ここに上ってきなさい」と言うのを、彼らは聞いた。そして、彼らは雲に乗って天に上った。彼らの敵はそれを見た。
30849 66 11 13 この時、大地震が起って、都の十分の一は倒れ、その地震で七千人が死に、生き残った人々は驚き恐れて、天の神に栄光を帰した。
30850 66 11 14 第二のわざわいは、過ぎ去った。見よ、第三のわざわいがすぐに来る。
30851 66 11 15 第七の御使が、ラッパを吹き鳴らした。すると、大きな声々が天に起って言った、「この世の国は、われらの主とそのキリストとの国となった。主は世々限りなく支配なさるであろう」。
30852 66 11 16 そして、神のみまえで座についている二十四人の長老は、ひれ伏し、神を拝して言った、
30853 66 11 17 「今いまし、昔いませる、全能者にして主なる神よ。大いなる御力をふるって支配なさったことを、感謝します。
30854 66 11 18 諸国民は怒り狂いましたが、あなたも怒りをあらわされました。そして、死人をさばき、あなたの僕なる預言者、聖徒、小さき者も、大いなる者も、すべて御名をおそれる者たちに報いを与え、また、地を滅ぼす者どもを滅ぼして下さる時がきました」。
30855 66 11 19 そして、天にある神の聖所が開けて、聖所の中に契約の箱が見えた。また、いなずまと、もろもろの声と、雷鳴と、地震とが起り、大粒の雹が降った。
30856 66 12 1 また、大いなるしるしが天に現れた。ひとりの女が太陽を着て、足の下に月を踏み、その頭に十二の星の冠をかぶっていた。
30857 66 12 2 この女は子を宿しており、産みの苦しみと悩みとのために、泣き叫んでいた。
30858 66 12 3 また、もう一つのしるしが天に現れた。見よ、大きな、赤い龍がいた。それに七つの頭と十の角とがあり、その頭に七つの冠をかぶっていた。
30859 66 12 4 その尾は天の星の三分の一を掃き寄せ、それらを地に投げ落した。龍は子を産もうとしている女の前に立ち、生れたなら、その子を食い尽そうとかまえていた。
30860 66 12 5 女は男の子を産んだが、彼は鉄のつえをもってすべての国民を治めるべき者である。この子は、神のみもとに、その御座のところに、引き上げられた。
30861 66 12 6 女は荒野へ逃げて行った。そこには、彼女が千二百六十日のあいだ養われるように、神の用意された場所があった。
30862 66 12 7 さて、天では戦いが起った。ミカエルとその御使たちとが、龍と戦ったのである。龍もその使たちも応戦したが、
30863 66 12 8 勝てなかった。そして、もはや天には彼らのおる所がなくなった。
30864 66 12 9 この巨大な龍、すなわち、悪魔とか、サタンとか呼ばれ、全世界を惑わす年を経たへびは、地に投げ落され、その使たちも、もろともに投げ落された。
30865 66 12 10 その時わたしは、大きな声が天でこう言うのを聞いた、「今や、われらの神の救と力と国と、神のキリストの権威とは、現れた。われらの兄弟らを訴える者、夜昼われらの神のみまえで彼らを訴える者は、投げ落された。
30866 66 12 11 兄弟たちは、小羊の血と彼らのあかしの言葉とによって、彼にうち勝ち、死に至るまでもそのいのちを惜しまなかった。
30867 66 12 12 それゆえに、天とその中に住む者たちよ、大いに喜べ。しかし、地と海よ、おまえたちはわざわいである。悪魔が、自分の時が短いのを知り、激しい怒りをもって、おまえたちのところに下ってきたからである」。
30868 66 12 13 龍は、自分が地上に投げ落されたと知ると、男子を産んだ女を追いかけた。
30869 66 12 14 しかし、女は自分の場所である荒野に飛んで行くために、大きなわしの二つの翼を与えられた。そしてそこでへびからのがれて、一年、二年、また、半年の間、養われることになっていた。
30870 66 12 15 へびは女の後に水を川のように、口から吐き出して、女をおし流そうとした。
30871 66 12 16 しかし、地は女を助けた。すなわち、地はその口を開いて、龍が口から吐き出した川を飲みほした。
30872 66 12 17 龍は、女に対して怒りを発し、女の残りの子ら、すなわち、神の戒めを守り、イエスのあかしを持っている者たちに対して、戦いをいどむために、出て行った。
30873 66 12 18 そして、海の砂の上に立った。
30874 66 13 1 わたしはまた、一匹の獣が海から上って来るのを見た。それには角が十本、頭が七つあり、それらの角には十の冠があって、頭には神を汚す名がついていた。
30875 66 13 2 わたしの見たこの獣はひょうに似ており、その足はくまの足のようで、その口はししの口のようであった。龍は自分の力と位と大いなる権威とを、この獣に与えた。
30876 66 13 3 その頭の一つが、死ぬほどの傷を受けたが、その致命的な傷もなおってしまった。そこで、全地の人々は驚きおそれて、その獣に従い、
30877 66 13 4 また、龍がその権威を獣に与えたので、人々は龍を拝み、さらに、その獣を拝んで言った、「だれが、この獣に匹敵し得ようか。だれが、これと戦うことができようか」。
30878 66 13 5 この獣には、また、大言を吐き汚しごとを語る口が与えられ、四十二か月のあいだ活動する権威が与えられた。
30879 66 13 6 そこで、彼は口を開いて神を汚し、神の御名と、その幕屋、すなわち、天に住む者たちとを汚した。
30880 66 13 7 そして彼は、聖徒に戦いをいどんでこれに勝つことを許され、さらに、すべての部族、民族、国語、国民を支配する権威を与えられた。
30881 66 13 8 地に住む者で、ほふられた小羊のいのちの書に、その名を世の初めからしるされていない者はみな、この獣を拝むであろう。
30882 66 13 9 耳のある者は、聞くがよい。
30883 66 13 10 とりこになるべき者は、とりこになっていく。つるぎで殺す者は、自らもつるぎで殺されねばならない。ここに、聖徒たちの忍耐と信仰とがある。
30884 66 13 11 わたしはまた、ほかの獣が地から上って来るのを見た。それには小羊のような角が二つあって、龍のように物を言った。
30885 66 13 12 そして、先の獣の持つすべての権力をその前で働かせた。また、地と地に住む人々に、致命的な傷がいやされた先の獣を拝ませた。
30886 66 13 13 また、大いなるしるしを行って、人々の前で火を天から地に降らせることさえした。
30887 66 13 14 さらに、先の獣の前で行うのを許されたしるしで、地に住む人々を惑わし、かつ、つるぎの傷を受けてもなお生きている先の獣の像を造ることを、地に住む人々に命じた。
30888 66 13 15 それから、その獣の像に息を吹き込んで、その獣の像が物を言うことさえできるようにし、また、その獣の像を拝まない者をみな殺させた。
30889 66 13 16 また、小さき者にも、大いなる者にも、富める者にも、貧しき者にも、自由人にも、奴隷にも、すべての人々に、その右の手あるいは額に刻印を押させ、
30890 66 13 17 この刻印のない者はみな、物を買うことも売ることもできないようにした。この刻印は、その獣の名、または、その名の数字のことである。
30891 66 13 18 ここに、知恵が必要である。思慮のある者は、獣の数字を解くがよい。その数字とは、人間をさすものである。そして、その数字は六百六十六である。
30892 66 14 1 なお、わたしが見ていると、見よ、小羊がシオンの山に立っていた。また、十四万四千の人々が小羊と共におり、その額に小羊の名とその父の名とが書かれていた。
30893 66 14 2 またわたしは、大水のとどろきのような、激しい雷鳴のような声が、天から出るのを聞いた。わたしの聞いたその声は、琴をひく人が立琴をひく音のようでもあった。
30894 66 14 3 彼らは、御座の前、四つの生き物と長老たちとの前で、新しい歌を歌った。この歌は、地からあがなわれた十四万四千人のほかは、だれも学ぶことができなかった。
30895 66 14 4 彼らは、女にふれたことのない者である。彼らは、純潔な者である。そして、小羊の行く所へは、どこへでもついて行く。彼らは、神と小羊とにささげられる初穂として、人間の中からあがなわれた者である。
30896 66 14 5 彼らの口には偽りがなく、彼らは傷のない者であった。
30897 66 14 6 わたしは、もうひとりの御使が中空を飛ぶのを見た。彼は地に住む者、すなわち、あらゆる国民、部族、国語、民族に宣べ伝えるために、永遠の福音をたずさえてきて、
30898 66 14 7 大声で言った、「神をおそれ、神に栄光を帰せよ。神のさばきの時がきたからである。天と地と海と水の源とを造られたかたを、伏し拝め」。
30899 66 14 8 また、ほかの第二の御使が、続いてきて言った、「倒れた、大いなるバビロンは倒れた。その不品行に対する激しい怒りのぶどう酒を、あらゆる国民に飲ませた者」。
30900 66 14 9 ほかの第三の御使が彼らに続いてきて、大声で言った、「おおよそ、獣とその像とを拝み、額や手に刻印を受ける者は、
30901 66 14 10 神の怒りの杯に混ぜものなしに盛られた、神の激しい怒りのぶどう酒を飲み、聖なる御使たちと小羊との前で、火と硫黄とで苦しめられる。
30902 66 14 11 その苦しみの煙は世々限りなく立ちのぼり、そして、獣とその像とを拝む者、また、だれでもその名の刻印を受けている者は、昼も夜も休みが得られない。
30903 66 14 12 ここに、神の戒めを守り、イエスを信じる信仰を持ちつづける聖徒の忍耐がある」。
30904 66 14 13 またわたしは、天からの声がこう言うのを聞いた、「書きしるせ、『今から後、主にあって死ぬ死人はさいわいである』」。御霊も言う、「しかり、彼らはその労苦を解かれて休み、そのわざは彼らについていく」。
30905 66 14 14 また見ていると、見よ、白い雲があって、その雲の上に人の子のような者が座しており、頭には金の冠をいただき、手には鋭いかまを持っていた。
30906 66 14 15 すると、もうひとりの御使が聖所から出てきて、雲の上に座している者にむかって大声で叫んだ、「かまを入れて刈り取りなさい。地の穀物は全く実り、刈り取るべき時がきた」。
30907 66 14 16 雲の上に座している者は、そのかまを地に投げ入れた。すると、地のものが刈り取られた。
30908 66 14 17 また、もうひとりの御使が、天の聖所から出てきたが、彼もまた鋭いかまを持っていた。
30909 66 14 18 さらに、もうひとりの御使で、火を支配する権威を持っている者が、祭壇から出てきて、鋭いかまを持つ御使にむかい、大声で言った、「その鋭いかまを地に入れて、地のぶどうのふさを刈り集めなさい。ぶどうの実がすでに熟しているから」。
30910 66 14 19 そこで、御使はそのかまを地に投げ入れて、地のぶどうを刈り集め、神の激しい怒りの大きな酒ぶねに投げ込んだ。
30911 66 14 20 そして、その酒ぶねが都の外で踏まれた。すると、血が酒ぶねから流れ出て、馬のくつわにとどくほどになり、一千六百丁にわたってひろがった。
30912 66 15 1 またわたしは、天に大いなる驚くべきほかのしるしを見た。七人の御使が、最後の七つの災害を携えていた。これらの災害で神の激しい怒りがその頂点に達するのである。
30913 66 15 2 またわたしは、火のまじったガラスの海のようなものを見た。そして、このガラスの海のそばに、獣とその像とその名の数字とにうち勝った人々が、神の立琴を手にして立っているのを見た。
30914 66 15 3 彼らは、神の僕モーセの歌と小羊の歌とを歌って言った、「全能者にして主なる神よ。あなたのみわざは、大いなる、また驚くべきものであります。万民の王よ、あなたの道は正しく、かつ真実であります。
30915 66 15 4 主よ、あなたをおそれず、御名をほめたたえない者が、ありましょうか。あなただけが聖なるかたであり、あらゆる国民はきて、あなたを伏し拝むでしょう。あなたの正しいさばきが、あらわれるに至ったからであります」。
30916 66 15 5 その後、わたしが見ていると、天にある、あかしの幕屋の聖所が開かれ、
30917 66 15 6 その聖所から、七つの災害を携えている七人の御使が、汚れのない、光り輝く亜麻布を身にまとい、金の帯を胸にしめて、出てきた。
30918 66 15 7 そして、四つの生き物の一つが、世々限りなく生きておられる神の激しい怒りの満ちた七つの金の鉢を、七人の御使に渡した。
30919 66 15 8 すると、聖所は神の栄光とその力とから立ちのぼる煙で満たされ、七人の御使の七つの災害が終ってしまうまでは、だれも聖所にはいることができなかった。
30920 66 16 1 それから、大きな声が聖所から出て、七人の御使にむかい、「さあ行って、神の激しい怒りの七つの鉢を、地に傾けよ」と言うのを聞いた。
30921 66 16 2 そして、第一の者が出て行って、その鉢を地に傾けた。すると、獣の刻印を持つ人々と、その像を拝む人々とのからだに、ひどい悪性のでき物ができた。
30922 66 16 3 第二の者が、その鉢を海に傾けた。すると、海は死人の血のようになって、その中の生き物がみな死んでしまった。
30923 66 16 4 第三の者がその鉢を川と水の源とに傾けた。すると、みな血になった。
30924 66 16 5 それから、水をつかさどる御使がこう言うのを、聞いた、「今いまし、昔いませる聖なる者よ。このようにお定めになったあなたは、正しいかたであります。
30925 66 16 6 聖徒と預言者との血を流した者たちに、血をお飲ませになりましたが、それは当然のことであります」。
30926 66 16 7 わたしはまた祭壇がこう言うのを聞いた、「全能者にして主なる神よ。しかり、あなたのさばきは真実で、かつ正しいさばきであります」。
30927 66 16 8 第四の者が、その鉢を太陽に傾けた。すると、太陽は火で人々を焼くことを許された。
30928 66 16 9 人々は、激しい炎熱で焼かれたが、これらの災害を支配する神の御名を汚し、悔い改めて神に栄光を帰することをしなかった。
30929 66 16 10 第五の者が、その鉢を獣の座に傾けた。すると、獣の国は暗くなり、人々は苦痛のあまり舌をかみ、
30930 66 16 11 その苦痛とでき物とのゆえに、天の神をのろった。そして、自分の行いを悔い改めなかった。
30931 66 16 12 第六の者が、その鉢を大ユウフラテ川に傾けた。すると、その水は、日の出る方から来る王たちに対し道を備えるために、かれてしまった。
30932 66 16 13 また見ると、龍の口から、獣の口から、にせ預言者の口から、かえるのような三つの汚れた霊が出てきた。
30933 66 16 14 これらは、しるしを行う悪霊の霊であって、全世界の王たちのところに行き、彼らを召集したが、それは、全能なる神の大いなる日に、戦いをするためであった。
30934 66 16 15 (見よ、わたしは盗人のように来る。裸のままで歩かないように、また、裸の恥を見られないように、目をさまし着物を身に着けている者は、さいわいである。)
30935 66 16 16 三つの霊は、ヘブル語でハルマゲドンという所に、王たちを召集した。
30936 66 16 17 第七の者が、その鉢を空中に傾けた。すると、大きな声が聖所の中から、御座から出て、「事はすでに成った」と言った。
30937 66 16 18 すると、いなずまと、もろもろの声と、雷鳴とが起り、また激しい地震があった。それは人間が地上にあらわれて以来、かつてなかったようなもので、それほどに激しい地震であった。
30938 66 16 19 大いなる都は三つに裂かれ、諸国民の町々は倒れた。神は大いなるバビロンを思い起し、これに神の激しい怒りのぶどう酒の杯を与えられた。
30939 66 16 20 島々はみな逃げ去り、山々は見えなくなった。
30940 66 16 21 また一タラントの重さほどの大きな雹が、天から人々の上に降ってきた。人々は、この雹の災害のゆえに神をのろった。その災害が、非常に大きかったからである。
30941 66 17 1 それから、七つの鉢を持つ七人の御使のひとりがきて、わたしに語って言った、「さあ、きなさい。多くの水の上にすわっている大淫婦に対するさばきを、見せよう。
30942 66 17 2 地の王たちはこの女と姦淫を行い、地に住む人々はこの女の姦淫のぶどう酒に酔いしれている」。
30943 66 17 3 御使は、わたしを御霊に感じたまま、荒野へ連れて行った。わたしは、そこでひとりの女が赤い獣に乗っているのを見た。その獣は神を汚すかずかずの名でおおわれ、また、それに七つの頭と十の角とがあった。
30944 66 17 4 この女は紫と赤の衣をまとい、金と宝石と真珠とで身を飾り、憎むべきものと自分の姦淫の汚れとで満ちている金の杯を手に持ち、
30945 66 17 5 その額には、一つの名がしるされていた。それは奥義であって、「大いなるバビロン、淫婦どもと地の憎むべきものらとの母」というのであった。
30946 66 17 6 わたしは、この女が聖徒の血とイエスの証人の血に酔いしれているのを見た。
30947 66 17 7 すると、御使はわたしに言った、「なぜそんなに驚くのか。この女の奥義と、女を乗せている七つの頭と十の角のある獣の奥義とを、話してあげよう。
30948 66 17 8 あなたの見た獣は、昔はいたが、今はおらず、そして、やがて底知れぬ所から上ってきて、ついには滅びに至るものである。地に住む者のうち、世の初めからいのちの書に名をしるされていない者たちは、この獣が、昔はいたが今はおらず、やがて来るのを見て、驚きあやしむであろう。
30949 66 17 9 ここに、知恵のある心が必要である。七つの頭は、この女のすわっている七つの山であり、また、七人の王のことである。
30950 66 17 10 そのうちの五人はすでに倒れ、ひとりは今おり、もうひとりは、まだきていない。それが来れば、しばらくの間だけおることになっている。
30951 66 17 11 昔はいたが今はいないという獣は、すなわち第八のものであるが、またそれは、かの七人の中のひとりであって、ついには滅びに至るものである。
30952 66 17 12 あなたの見た十の角は、十人の王のことであって、彼らはまだ国を受けてはいないが、獣と共に、一時だけ王としての権威を受ける。
30953 66 17 13 彼らは心をひとつにしている。そして、自分たちの力と権威とを獣に与える。
30954 66 17 14 彼らは小羊に戦いをいどんでくるが、小羊は、主の主、王の王であるから、彼らにうち勝つ。また、小羊と共にいる召された、選ばれた、忠実な者たちも、勝利を得る」。
30955 66 17 15 御使はまた、わたしに言った、「あなたの見た水、すなわち、淫婦のすわっている所は、あらゆる民族、群衆、国民、国語である。
30956 66 17 16 あなたの見た十の角と獣とは、この淫婦を憎み、みじめな者にし、裸にし、彼女の肉を食い、火で焼き尽すであろう。
30957 66 17 17 神は、御言が成就する時まで、彼らの心の中に、御旨を行い、思いをひとつにし、彼らの支配権を獣に与える思いを持つようにされたからである。
30958 66 17 18 あなたの見たかの女は、地の王たちを支配する大いなる都のことである」。
30959 66 18 1 この後、わたしは、もうひとりの御使が、大いなる権威を持って、天から降りて来るのを見た。地は彼の栄光によって明るくされた。
30960 66 18 2 彼は力強い声で叫んで言った、「倒れた、大いなるバビロンは倒れた。そして、それは悪魔の住む所、あらゆる汚れた霊の巣くつ、また、あらゆる汚れた憎むべき鳥の巣くつとなった。
30961 66 18 3 すべての国民は、彼女の姦淫に対する激しい怒りのぶどう酒を飲み、地の王たちは彼女と姦淫を行い、地上の商人たちは、彼女の極度のぜいたくによって富を得たからである」。
30962 66 18 4 わたしはまた、もうひとつの声が天から出るのを聞いた、「わたしの民よ。彼女から離れ去って、その罪にあずからないようにし、その災害に巻き込まれないようにせよ。
30963 66 18 5 彼女の罪は積り積って天に達しており、神はその不義の行いを覚えておられる。
30964 66 18 6 彼女がしたとおりに彼女にし返し、そのしわざに応じて二倍に報復をし、彼女が混ぜて入れた杯の中に、その倍の量を、入れてやれ。
30965 66 18 7 彼女が自ら高ぶり、ぜいたくをほしいままにしたので、それに対して、同じほどの苦しみと悲しみとを味わわせてやれ。彼女は心の中で『わたしは女王の位についている者であって、やもめではないのだから、悲しみを知らない』と言っている。
30966 66 18 8 それゆえ、さまざまの災害が、死と悲しみとききんとが、一日のうちに彼女を襲い、そして、彼女は火で焼かれてしまう。彼女をさばく主なる神は、力強いかたなのである。
30967 66 18 9 彼女と姦淫を行い、ぜいたくをほしいままにしていた地の王たちは、彼女が焼かれる火の煙を見て、彼女のために胸を打って泣き悲しみ、
30968 66 18 10 彼女の苦しみに恐れをいだき、遠くに立って言うであろう、『ああ、わざわいだ、大いなる都、不落の都、バビロンは、わざわいだ。おまえに対するさばきは、一瞬にしてきた』。
30969 66 18 11 また、地の商人たちも彼女のために泣き悲しむ。もはや、彼らの商品を買う者が、ひとりもないからである。
30970 66 18 12 その商品は、金、銀、宝石、真珠、麻布、紫布、絹、緋布、各種の香木、各種の象牙細工、高価な木材、銅、鉄、大理石などの器、
30971 66 18 13 肉桂、香料、香、におい油、乳香、ぶどう酒、オリブ油、麦粉、麦、牛、羊、馬、車、奴隷、そして人身などである。
30972 66 18 14 おまえの心の喜びであったくだものはなくなり、あらゆるはでな、はなやかな物はおまえから消え去った。それらのものはもはや見られない。
30973 66 18 15 これらの品々を売って、彼女から富を得た商人は、彼女の苦しみに恐れをいだいて遠くに立ち、泣き悲しんで言う、
30974 66 18 16 『ああ、わざわいだ、麻布と紫布と緋布をまとい、金や宝石や真珠で身を飾っていた大いなる都は、わざわいだ。
30975 66 18 17 これほどの富が、一瞬にして無に帰してしまうとは』。また、すべての船長、航海者、水夫、すべて海で働いている人たちは、遠くに立ち、
30976 66 18 18 彼女が焼かれる火の煙を見て、叫んで言う、『これほどの大いなる都は、どこにあろう』。
30977 66 18 19 彼らは頭にちりをかぶり、泣き悲しんで叫ぶ、『ああ、わざわいだ、この大いなる都は、わざわいだ。そのおごりによって、海に舟を持つすべての人が富を得ていたのに、この都も一瞬にして無に帰してしまった』。
30978 66 18 20 天よ、聖徒たちよ、使徒たちよ、預言者たちよ。この都について大いに喜べ。神は、あなたがたのために、この都をさばかれたのである」。
30979 66 18 21 すると、ひとりの力強い御使が、大きなひきうすのような石を持ちあげ、それを海に投げ込んで言った、「大いなる都バビロンは、このように激しく打ち倒され、そして、全く姿を消してしまう。
30980 66 18 22 また、おまえの中では、立琴をひく者、歌を歌う者、笛を吹く者、ラッパを吹き鳴らす者の楽の音は全く聞かれず、あらゆる仕事の職人たちも全く姿を消し、また、ひきうすの音も、全く聞かれない。
30981 66 18 23 また、おまえの中では、あかりもともされず、花婿、花嫁の声も聞かれない。というのは、おまえの商人たちは地上で勢力を張る者となり、すべての国民はおまえのまじないでだまされ、
30982 66 18 24 また、預言者や聖徒の血、さらに、地上で殺されたすべての者の血が、この都で流されたからである」。
30983 66 19 1 この後、わたしは天の大群衆が大声で唱えるような声を聞いた、「ハレルヤ、救と栄光と力とは、われらの神のものであり、
30984 66 19 2 そのさばきは、真実で正しい。神は、姦淫で地を汚した大淫婦をさばき、神の僕たちの血の報復を彼女になさったからである」。
30985 66 19 3 再び声があって、「ハレルヤ、彼女が焼かれる火の煙は、世々限りなく立ちのぼる」と言った。
30986 66 19 4 すると、二十四人の長老と四つの生き物とがひれ伏し、御座にいます神を拝して言った、「アァメン、ハレルヤ」。
30987 66 19 5 その時、御座から声が出て言った、「すべての神の僕たちよ、神をおそれる者たちよ。小さき者も大いなる者も、共に、われらの神をさんびせよ」。
30988 66 19 6 わたしはまた、大群衆の声、多くの水の音、また激しい雷鳴のようなものを聞いた。それはこう言った、「ハレルヤ、全能者にして主なるわれらの神は、王なる支配者であられる。
30989 66 19 7 わたしたちは喜び楽しみ、神をあがめまつろう。小羊の婚姻の時がきて、花嫁はその用意をしたからである。
30990 66 19 8 彼女は、光り輝く、汚れのない麻布の衣を着ることを許された。この麻布の衣は、聖徒たちの正しい行いである」。
30991 66 19 9 それから、御使はわたしに言った、「書きしるせ。小羊の婚宴に招かれた者は、さいわいである」。またわたしに言った、「これらは、神の真実の言葉である」。
30992 66 19 10 そこで、わたしは彼の足もとにひれ伏して、彼を拝そうとした。すると、彼は言った、「そのようなことをしてはいけない。わたしは、あなたと同じ僕仲間であり、またイエスのあかしびとであるあなたの兄弟たちと同じ僕仲間である。ただ神だけを拝しなさい。イエスのあかしは、すなわち預言の霊である」。
30993 66 19 11 またわたしが見ていると、天が開かれ、見よ、そこに白い馬がいた。それに乗っているかたは、「忠実で真実な者」と呼ばれ、義によってさばき、また、戦うかたである。
30994 66 19 12 その目は燃える炎であり、その頭には多くの冠があった。また、彼以外にはだれも知らない名がその身にしるされていた。
30995 66 19 13 彼は血染めの衣をまとい、その名は「神の言」と呼ばれた。
30996 66 19 14 そして、天の軍勢が、純白で、汚れのない麻布の衣を着て、白い馬に乗り、彼に従った。
30997 66 19 15 その口からは、諸国民を打つために、鋭いつるぎが出ていた。彼は、鉄のつえをもって諸国民を治め、また、全能者なる神の激しい怒りの酒ぶねを踏む。
30998 66 19 16 その着物にも、そのももにも、「王の王、主の主」という名がしるされていた。
30999 66 19 17 また見ていると、ひとりの御使が太陽の中に立っていた。彼は、中空を飛んでいるすべての鳥にむかって、大声で叫んだ、「さあ、神の大宴会に集まってこい。
31000 66 19 18 そして、王たちの肉、将軍の肉、勇者の肉、馬の肉、馬に乗っている者の肉、また、すべての自由人と奴隷との肉、小さき者と大いなる者との肉をくらえ」。
31001 66 19 19 なお見ていると、獣と地の王たちと彼らの軍勢とが集まり、馬に乗っているかたとその軍勢とに対して、戦いをいどんだ。
31002 66 19 20 しかし、獣は捕えられ、また、この獣の前でしるしを行って、獣の刻印を受けた者とその像を拝む者とを惑わしたにせ預言者も、獣と共に捕えられた。そして、この両者とも、生きながら、硫黄の燃えている火の池に投げ込まれた。
31003 66 19 21 それ以外の者たちは、馬に乗っておられるかたの口から出るつるぎで切り殺され、その肉を、すべての鳥が飽きるまで食べた。
31004 66 20 1 またわたしが見ていると、ひとりの御使が、底知れぬ所のかぎと大きな鎖とを手に持って、天から降りてきた。
31005 66 20 2 彼は、悪魔でありサタンである龍、すなわち、かの年を経たへびを捕えて千年の間つなぎおき、
31006 66 20 3 そして、底知れぬ所に投げ込み、入口を閉じてその上に封印し、千年の期間が終るまで、諸国民を惑わすことがないようにしておいた。その後、しばらくの間だけ解放されることになっていた。
31007 66 20 4 また見ていると、かず多くの座があり、その上に人々がすわっていた。そして、彼らにさばきの権が与えられていた。また、イエスのあかしをし神の言を伝えたために首を切られた人々の霊がそこにおり、また、獣をもその像をも拝まず、その刻印を額や手に受けることをしなかった人々がいた。彼らは生きかえって、キリストと共に千年の間、支配した。
31008 66 20 5 (それ以外の死人は、千年の期間が終るまで生きかえらなかった。)これが第一の復活である。
31009 66 20 6 この第一の復活にあずかる者は、さいわいな者であり、また聖なる者である。この人たちに対しては、第二の死はなんの力もない。彼らは神とキリストとの祭司となり、キリストと共に千年の間、支配する。
31010 66 20 7 千年の期間が終ると、サタンはその獄から解放される。
31011 66 20 8 そして、出て行き、地の四方にいる諸国民、すなわちゴグ、マゴグを惑わし、彼らを戦いのために召集する。その数は、海の砂のように多い。
31012 66 20 9 彼らは地上の広い所に上ってきて、聖徒たちの陣営と愛されていた都とを包囲した。すると、天から火が下ってきて、彼らを焼き尽した。
31013 66 20 10 そして、彼らを惑わした悪魔は、火と硫黄との池に投げ込まれた。そこには、獣もにせ預言者もいて、彼らは世々限りなく日夜、苦しめられるのである。
31014 66 20 11 また見ていると、大きな白い御座があり、そこにいますかたがあった。天も地も御顔の前から逃げ去って、あとかたもなくなった。
31015 66 20 12 また、死んでいた者が、大いなる者も小さき者も共に、御座の前に立っているのが見えた。かずかずの書物が開かれたが、もう一つの書物が開かれた。これはいのちの書であった。死人はそのしわざに応じ、この書物に書かれていることにしたがって、さばかれた。
31016 66 20 13 海はその中にいる死人を出し、死も黄泉もその中にいる死人を出し、そして、おのおのそのしわざに応じて、さばきを受けた。
31017 66 20 14 それから、死も黄泉も火の池に投げ込まれた。この火の池が第二の死である。
31018 66 20 15 このいのちの書に名がしるされていない者はみな、火の池に投げ込まれた。
31019 66 21 1 わたしはまた、新しい天と新しい地とを見た。先の天と地とは消え去り、海もなくなってしまった。
31020 66 21 2 また、聖なる都、新しいエルサレムが、夫のために着飾った花嫁のように用意をととのえて、神のもとを出て、天から下って来るのを見た。
31021 66 21 3 また、御座から大きな声が叫ぶのを聞いた、「見よ、神の幕屋が人と共にあり、神が人と共に住み、人は神の民となり、神自ら人と共にいまして、
31022 66 21 4 人の目から涙を全くぬぐいとって下さる。もはや、死もなく、悲しみも、叫びも、痛みもない。先のものが、すでに過ぎ去ったからである」。
31023 66 21 5 すると、御座にいますかたが言われた、「見よ、わたしはすべてのものを新たにする」。また言われた、「書きしるせ。これらの言葉は、信ずべきであり、まことである」。
31024 66 21 6 そして、わたしに仰せられた、「事はすでに成った。わたしは、アルパでありオメガである。初めであり終りである。かわいている者には、いのちの水の泉から価なしに飲ませよう。
31025 66 21 7 勝利を得る者は、これらのものを受け継ぐであろう。わたしは彼の神となり、彼はわたしの子となる。
31026 66 21 8 しかし、おくびょうな者、信じない者、忌むべき者、人殺し、姦淫を行う者、まじないをする者、偶像を拝む者、すべて偽りを言う者には、火と硫黄の燃えている池が、彼らの受くべき報いである。これが第二の死である」。
31027 66 21 9 最後の七つの災害が満ちている七つの鉢を持っていた七人の御使のひとりがきて、わたしに語って言った、「さあ、きなさい。小羊の妻なる花嫁を見せよう」。
31028 66 21 10 この御使は、わたしを御霊に感じたまま、大きな高い山に連れて行き、聖都エルサレムが、神の栄光のうちに、神のみもとを出て天から下って来るのを見せてくれた。
31029 66 21 11 その都の輝きは、高価な宝石のようであり、透明な碧玉のようであった。
31030 66 21 12 それには大きな、高い城壁があって、十二の門があり、それらの門には、十二の御使がおり、イスラエルの子らの十二部族の名が、それに書いてあった。
31031 66 21 13 東に三つの門、北に三つの門、南に三つの門、西に三つの門があった。
31032 66 21 14 また都の城壁には十二の土台があり、それには小羊の十二使徒の十二の名が書いてあった。
31033 66 21 15 わたしに語っていた者は、都とその門と城壁とを測るために、金の測りざおを持っていた。
31034 66 21 16 都は方形であって、その長さと幅とは同じである。彼がその測りざおで都を測ると、一万二千丁であった。長さと幅と高さとは、いずれも同じである。
31035 66 21 17 また城壁を測ると、百四十四キュビトであった。これは人間の、すなわち、御使の尺度によるのである。
31036 66 21 18 城壁は碧玉で築かれ、都はすきとおったガラスのような純金で造られていた。
31037 66 21 19 都の城壁の土台は、さまざまな宝石で飾られていた。第一の土台は碧玉、第二はサファイヤ、第三はめのう、第四は緑玉、
31038 66 21 20 第五は縞めのう、第六は赤めのう、第七はかんらん石、第八は緑柱石、第九は黄玉石、第十はひすい、第十一は青玉、第十二は紫水晶であった。
31039 66 21 21 十二の門は十二の真珠であり、門はそれぞれ一つの真珠で造られ、都の大通りは、すきとおったガラスのような純金であった。
31040 66 21 22 わたしは、この都の中には聖所を見なかった。全能者にして主なる神と小羊とが、その聖所なのである。
31041 66 21 23 都は、日や月がそれを照す必要がない。神の栄光が都を明るくし、小羊が都のあかりだからである。
31042 66 21 24 諸国民は都の光の中を歩き、地の王たちは、自分たちの光栄をそこに携えて来る。
31043 66 21 25 都の門は、終日、閉ざされることはない。そこには夜がないからである。
31044 66 21 26 人々は、諸国民の光栄とほまれとをそこに携えて来る。
31045 66 21 27 しかし、汚れた者や、忌むべきこと及び偽りを行う者は、その中に決してはいれない。はいれる者は、小羊のいのちの書に名をしるされている者だけである。
31046 66 22 1 御使はまた、水晶のように輝いているいのちの水の川をわたしに見せてくれた。この川は、神と小羊との御座から出て、
31047 66 22 2 都の大通りの中央を流れている。川の両側にはいのちの木があって、十二種の実を結び、その実は毎月みのり、その木の葉は諸国民をいやす。
31048 66 22 3 のろわるべきものは、もはや何ひとつない。神と小羊との御座は都の中にあり、その僕たちは彼を礼拝し、
31049 66 22 4 御顔を仰ぎ見るのである。彼らの額には、御名がしるされている。
31050 66 22 5 夜は、もはやない。あかりも太陽の光も、いらない。主なる神が彼らを照し、そして、彼らは世々限りなく支配する。
31051 66 22 6 彼はまた、わたしに言った、「これらの言葉は信ずべきであり、まことである。預言者たちのたましいの神なる主は、すぐにも起るべきことをその僕たちに示そうとして、御使をつかわされたのである。
31052 66 22 7 見よ、わたしは、すぐに来る。この書の預言の言葉を守る者は、さいわいである」。
31053 66 22 8 これらのことを見聞きした者は、このヨハネである。わたしが見聞きした時、それらのことを示してくれた御使の足もとにひれ伏して拝そうとすると、
31054 66 22 9 彼は言った、「そのようなことをしてはいけない。わたしは、あなたや、あなたの兄弟である預言者たちや、この書の言葉を守る者たちと、同じ僕仲間である。ただ神だけを拝しなさい」。
31055 66 22 10 またわたしに言った、「この書の預言の言葉を封じてはならない。時が近づいているからである。
31056 66 22 11 不義な者はさらに不義を行い、汚れた者はさらに汚れたことを行い、義なる者はさらに義を行い、聖なる者はさらに聖なることを行うままにさせよ」。
31057 66 22 12 「見よ、わたしはすぐに来る。報いを携えてきて、それぞれのしわざに応じて報いよう。
31058 66 22 13 わたしはアルパであり、オメガである。最初の者であり、最後の者である。初めであり、終りである。
31059 66 22 14 いのちの木にあずかる特権を与えられ、また門をとおって都にはいるために、自分の着物を洗う者たちは、さいわいである。
31060 66 22 15 犬ども、まじないをする者、姦淫を行う者、人殺し、偶像を拝む者、また、偽りを好みかつこれを行う者はみな、外に出されている。
31061 66 22 16 わたしイエスは、使をつかわして、諸教会のために、これらのことをあなたがたにあかしした。わたしは、ダビデの若枝また子孫であり、輝く明けの明星である」。
31062 66 22 17 御霊も花嫁も共に言った、「きたりませ」。また、聞く者も「きたりませ」と言いなさい。かわいている者はここに来るがよい。いのちの水がほしい者は、価なしにそれを受けるがよい。
31063 66 22 18 この書の預言の言葉を聞くすべての人々に対して、わたしは警告する。もしこれに書き加える者があれば、神はその人に、この書に書かれている災害を加えられる。
31064 66 22 19 また、もしこの預言の書の言葉をとり除く者があれば、神はその人の受くべき分を、この書に書かれているいのちの木と聖なる都から、とり除かれる。
31065 66 22 20 これらのことをあかしするかたが仰せになる、「しかり、わたしはすぐに来る」。アァメン、主イエスよ、きたりませ。
31066 66 22 21 主イエスの恵みが、一同の者と共にあるように。